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【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】

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13 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 16:21:45.86 ID:mHCNoPnp0
>>12

…………そっか。今みたいなときこそ、……会ったほうがいいのかもしれないのか。
ならそのうちにでも行こうかな、えへへ……アルクさんとレグルスさんってどんなものが好き?
プレゼント、持っていきたいの――あたしはアルクさんにもらってばっかりだったから、……、

【曇り行く空気を振り払うようにして、またしても話題の転換。ふたりの墓前に供えるものについて】
【あれやこれやと思いを広げていくのも――束の間の話でしかなかったのだろう】
【近くのベンチにでも座って、三人は休息を取り始めるだろうか。そしたら、ブラックハートは見てしまうから】

【蜜姫かえで。外務八課。その単語が耳に入っただけだとしても、きっと夕月は怯えただろう】
【何せ前者は友達だった。後者に至っては、伴侶の属する組織だった。それが今や「炎上」だなんて】
【そんなスラングじゃ言い表せないほどに燃え上がっている。だけど問題はその次であり、】

……………………っヒ、………………、

【冒涜。その単語が、低い声にて紡がれたことに関して。夕月は間違いなく怯えの表情を見せた】
【なんなら顔なんか見ていなくてもわかってしまうのだろう。びく、と痙攣するように体が震えていた】
【それはどういう感情によるものだったろう。……ブラックハートが思い当たった節、「自分みたいな」、――】
【そこが引っかかるのかもしれなかった。すなわち、この少女は“冒涜者”とやらに害されたのではないか、と】

【そう考えることもできた。けれど実態は少し違うようにも見えた――夕月の表情を見返してみるなら】
【限りなく、「そんな怖い声を出さないで」と言いたげな。そんな顔をしているのだから】
【おかしな話だった、まるでこの少女が、“冒涜者”とやらの身内――それもいい意味でのもの、みたいな態度、取るのだから】
14 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 16:42:00.65 ID:QhqfSCns0
>>13

……本当ならね。会えるうちに会っておく。今はそれ、馬鹿に出来ないんじゃないか、多分ね……
――――2人の場所だったら、あたしも知ってるし、レグルスは1度、『会って』きた……

【今のご時世、どうしてもネガティブな意味合いを払拭し切れないが、それは大事な事なのだろう】
【レグルスの言っていた「悔いのない様に」――――例え戦士として生きる人間でなくても、個の心がまえは、大事なのかもしれない】
【それは、生者に対してだけでなく、死者に対しても同じ事だと言わんばかりに】

アルク? ……あいつはね、なんでも……意外と、料理なんかが好きだったそうだよ
よく、サンドイッチだのラスクだの、頬張ってたらしいし、たまに自分で作ってたらしいね……
<レグルスは……レグルスさんは、お酒……重たいビールなんかが、好きだって言ってました……
 お姉ちゃん……お墓参りに、お酒持って行ったって……>

【彼らは、アーディン程にはレグルスとアルクについては、詳しくない。それでも、その人となりを伝えることくらいは出来た】
【アルクについては――――かつての『たんぽぽ』でのやり取りが思い出されるだろう。中性的な風貌だったが、そういうところは得意だったらしい】
【そしてレグルスは、ある意味、言うまでも無い事かもしれない。見た目からして、豪快に酒を煽っているのが似合う奴だった】
【彼の下に持っていくとなると、もう酒以外に思いつかない。それが2人の見解らしい。それも、妥当なものだろう】

【――――そんなやり取りも、すぐに上塗りされることになる、その異変――――】

……背の、馬鹿高い女……? ――――まさか、アリア……!?

【関連情報を覗いていくと、1つ気になるものがあった。そのキーワードに、引っかかる人物が、記憶の中にあったのだ】
【――――自分の同類。恐らくはそうだった彼女。同じくレグルスを弔った彼女が、この騒動に関係している――――】

――――考えてみたら、このかえでってのも、あたしみたいなもんか――――

【呆れつつも情報を流し見して、その中にブラックハートの中に、妙な感慨がわき上がった】
【本当だったら、自分だって、今すぐにでも往来から石を投げつけられ、打ち殺されていてもおかしくない人間なのだ】
【それが、話題の渦中にあるという事――――思わず、己が身と重ね合わせて考えてしまい】

ッ――――、ゆ、夕月、どうした……?
お前、こいつと――――「この畜生」と、何かあったんだな……!? ――――ごめんな、それでそんなに……
<…………ッ、おね――――――――ブラックハート……ッ!>
あぁ、なんだ……ッ? ――――――――ッ?

【夕月の失調に、ようやく気付いたブラックハートが、慌てた様子でその顔を覗き込む】
【夕月を心配している様ではあったが、その言葉は、そして頬のヒクつきは、明らかな怒りを押し殺しているもので】
【ようやく、夕月の不調の原因が、この一連の騒動にあるのだと理解して、ブラックハートはバツが悪そうに、夕月に謝罪する】

【――――それが、「それだけではない」事に気づいたのは、リベルの方だった。彼女も、低いトーンでブラックハートの名前を呼びながら、その袖を引っ張り】
【改めて、ブラックハートは、夕月を、何かを言いたくて言い出せなさそうな、その微妙な態度に気づくのだった】
15 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 16:58:15.07 ID:mHCNoPnp0
>>14

………………、そっか、じゃあアルクさんにはお料理――ピクニックに持ってくみたいなやつがいいのかな。
あたし最近練習してるんだ、だからきっとマシなのが作れるようには、なったし、……レグルスさんはお酒、
そっか、………………そっか。ふふ、ふつうに、パーティの準備、するみたいな――――

【青い顔のまま。話の節々に意味深な沈黙を挟んで。話すのはやっぱり、話題を逸らしたいからか】
【少なくとも無理矢理作った笑い顔はもはや引き攣り顔と言ってしまったほうが、正しかった】
【そのまま楽しい、幸せな――近しい未来の話だけしていたい。させてほしい。どうか、そうさせて】
【願うように呟くのはほとんど譫言のような響きを持って、……しかし、ブラックハートは気づいてしまうから】

ち、が…………違うっ、……ちがわないけどっ、何もなかった、わけじゃないけどっ、
…………むしろたくさんあるんだけど、…………、そうだよね、「畜生」だよね。
ハートさんだってわかるもんね、何もされてないハートさんでも……こいつはひどいヤツだって。

あたしだって、…………あたしだってわかってるよ、“冒涜者”だなんて、
本当だったら生きてていいようなヤツじゃないってわかるよ、真っ先に死ぬべきヤツだって、わかってるよ――

【ほとんど独白のように一方的に喋り始めるのは、どこか強迫観念に囚われた患者にも似て】
【表情は依然として引き攣り笑いのままだった。いま自分が口にしていることが限りなく正しいと】
【自分で自分に言い聞かせて安心を得たがっているような――だのに身体はそれに反比例して】
【震え始めるのを、二の腕を掴んで抱きしめて、押さえつけるようにして――血反吐を吐くみたいに言うから、】

―――――やっぱりそうだよね。あたしがおかしいんだ、……ミアが今度こそ間違いなく殺されちゃうかもって!
そんな当たり前のことが、………………あたし怖いんだよ、だって、だってミアは、あたしの…………

【吐くものがなくなってしまったなら最後、本当に本当のことしか言えなくなってしまうのは道理だった】
【それでも最後の言葉だけはどうにか言わないようにして、我慢しているのは明白だった】
【唇は依然狂ったみたいに端を吊り上げて笑うのに、目だけが限界まで見開かれて、ぎちぎち音を立てそうなくらい】
【であれば、わからせてしまうのだ。この少女もどこか「おかしい」。だって何故だか、“冒涜者”を想うような言葉を、口にしている】
16 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 17:20:01.81 ID:QhqfSCns0
>>15

(……考えようによっちゃ、これ……これも、残酷だな……ドラッグに逃げるってのを、まんま見てるみたいだ……)

【なんて事のない話題に興じながら――――興じようとしながら、必死の作り笑いをしている夕月に、なんとも言えない心境になる】
【無理をしている事が、手に取る様に分かってしまうから。そして、その無理を、更なる『無理』で塗りつぶそうとしている】
【――――こんな時に「しっかりしろ」などと言うべきではない。正解が、正着手が見えないから、ブラックハートは何も言う事が出来なかった】

<……ブラックハート、ちょっと……>
――――夕月、今はもう何も考えなくていい。余計な事は、雑音は、もうこれ以上……ッ――――!?

【そんな無理が、逆方向に溢れ始めた――――リベルはもう、偽装している口調を投げ捨てて、ブラックハートに厳しい視線を向ける】
【ブラックハートとしても分かっていた。夕月に、この現実を見せるべきではない。シャットしなければならない、と】
【――――だが、もう遅すぎた。恐らく、崖際の巌を、転がしてしまったのだ】

――――ッ、ミア…………!?
<……ブラス、フェ、ミア――――ブラックハート、もしかして、夕月は……!?>
……言うんじゃないよ、『ランド』――――分かってる……分かってる。安くはないよ……何か、とんでもない、何か……あるのは、分かってるんだよ……!

【そして、夕月の口から漏れ出た愛称――――『ブラスフェミア』を表すのだろうその言葉に、2人は息を飲む】
【ブラスフェミア。恐らくは、夕月にとって、因縁浅からぬ関係であり、そして――――話題の渦中に居る、台風の目】

【――――もっと言えば、何よりも――――】

――――――――夕月、ちょっと良いかい…………――――この刻印、見た事は無いか……?

【ブラックハートは、少し間をおいて、取り出した紙に何やらマークを書いていく。30秒は掛からないだろう、書き上がったそれを、夕月へと示して】

――――これは、『ブラスフェミア』と言う人物を表す、或いは……彼女が自身で使っている、シンボルマークだって話だ……

【やりきれない様に、しかし抑えきれない怒りを表すように、ブラックハートは、努めて平明な事実を口にする】

――――アーディンの旦那の保護してた『子供』が、このマークを刻み付けられて、バラバラにされちまったんだ
……アーディンの旦那に、一杯食わした敵って言うのが……子供をズタズタにしてのけた、ブラスフェミアって女なんだよ……!

【そのマークの出所。それは、アーディンの――――恐らくは、彼の善意か何かで面倒を見ていた子供の、凄惨な有様にされた体に残っていたモノ】
【――――アーディンが現在、敵として戦っているのは。――――そこから先は、もう言う必要も無いんだろう】

【――――しかし。ここに来てブラックハートは、全く突拍子もない事を、口にし始める】

――――夕月。あたしゃ実は……元『機関』の操り人形だったんだ。セリーナが……命がけで助け出してくれて、アーディンの旦那が、世話を焼いてくれた……
おかしいよな? そもそも、敵としてさえ会った事のない、知らない他人に過ぎなかったってのに、さ……

――――他人であっても良い。話せる事があるなら、話してくれないかい? 思い違いかもしれないけど、あたしゃ……なんだか、あんたが……

【他人に隷属させられていた過去。それを持っているブラックハートは、夕月の事を「放っておけない」と思ったのだ】
【もしかしたら、何か束縛の下にあるのかもしれない。それが事実ならば、どうか話して欲しい、と――――】
17 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 17:41:07.81 ID:mHCNoPnp0
>>16

【描かれたシンボルを見て、引き攣っていた唇がぐっと噛みしめられる。それだけで十分だった】
【肯定も否定もしなかった、けれど前者であるのは明らかだった。だって見覚えのないものを見るなら】
【こんな顔などしないはずだ。こんな、――ああ全部が終わってしまった、なんて悟ったような、顔】

……………………こども、を、…………ずたずた……?

【そうしてオウム返しのように呟く声色にも――やはりどこか心当たりがあるとでも言いたげな色が含まれる】
【だって彼女は、件の女から直接聞いていた。「ちょっと難しいお仕事があるから」、つい最近のこと】
【であれば「それ」が「そう」だったのだと、理解してしまうのだ。もはや逃げる場所、逸らせる話題などどこにもなく】

【――――もいちどぐう、と唇を噛みしめる。何も言い返せることなどない。これで終いだと思って、けれど】
【ブラックハートがいくらでも言葉を選んで、思慮して、言ってくれているのがよくわかった。……わかったからこそ】
【夕月はひどくつらそうな顔をする。俯いてしまう。軽く頭を横に振るのであれば、それは決別の証となって】

………………ハートさん。ハートさんとあたしは、きっと、……違うよ。
ハートさんはきっとひどい人に無理矢理言うこと聞かされてたんでしょう? ……あたしはそうじゃない。
あたしはあたしの意思で生きてる、今も、昔も、これからも――だからあたしはかわいそうなんかじゃない。

あたしは、………………あたしの意思で、ブラスフェミアを見捨てない。
見捨てられない、じゃなくて――――見捨てたくない。だから、………………だから、

――――――――――――ごめんなさい。ねえ、伝えておいてくれる?
アーディンさんに、…………シャッテンさん、ラベンダーちゃん、……アルクさんと、レグルスさんにも。
あたしきっと、…………みんなに銃口を向ける、悪い子になる。ミアのこと、殺されるの、いやだから――

【束縛されている、と言うのなら――きっとその感情にそうされているのだ。“冒涜者”が術をかけたとか、】
【そういう話ではなくて。この少女はきっと、あの女に、捨てきれない――膨大な熱量を持った感情を抱いている】
【それはきっと、今しがた口にした人々への感情を束ねたって叶わないくらいに轟轟と燃えているものだった】
【もう消し方すらわからないのだろう。抑える方法すら。だから、――少女は徐に、提げていたショルダーバッグを探って】

――――――――ほんとうはごめんなさい、だなんて言えないくらいひどいことしてる自覚はあるの、
だけどやっぱり、どうしても、…………ごめんなさい。だから、…………アルクさんに、これを……
…………もうあたしにはこれを使う資格なんてないから。だから、……返しますって。ごめんなさいって。

あたしのことを赦さないでくださいって、………………伝えておいてくれるかな。

【取り出すのは――やさしい桃色に輝くクリスタル。上質な布に包んであって、大切にしていたことを示すそれ】
【それをそっと手渡そうとして、そのまま――立ち上がって帰っていこうとするのだろう。今度こそ。ふらついた足取りでも】
【引き留められたって振り返りそうにはなかった。だって、たった今、敵対宣言したばかりの相手だった。顔なんかもう合わせられない】
18 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 18:06:53.32 ID:QhqfSCns0
>>17

<……やっぱり、な……>
…………

【その反応を、傍から見ていれば、実に分かりやすいものだったのだろう。『リベル』――――現在は『ランド』の人格だが――――は、静かに頷いた】
【それを、ブラックハートも理解して。すぐにその紙を握りしめて、手を下ろす】

あぁ――――この国の、大物と手を組んで、上手い事その子を誘拐して、その『大物』に言われるままに、道具に仕立て上げちまったんだよ……ッ
あたしゃ、アーディンの旦那があんなにキレたの、見た事ないよ……

【自分たちの身に何があったのか、それをブラックハートは、知ってる限りに話していく】
【つまるところ、ブラスフェミアと言うその女は――――アーディンにとって、シャッテンにとって、不倶戴天の敵と化したのだろう】
【それこそ――――ラベンダーにとっての、アルクにとっての、鈴音の様に】

ッ、夕月……あんた…………ッ!

【被りを振る夕月の言葉――――それは決別の文句だった。ブラックハートは、やはり低い声で唸る】
【夕月の中に何があるのか。それは当然、今日初めて会ったばかりのブラックハートには分からない】
【分かるのは――――夕月は、その本心を明かす事は出来ないと決意し、そしてその『本心』に従い、自分たちと決別しようとしている、その事実だけだ】

――――夕月、違わない…………違うなんて、事はない!!

【渡された、アルクの形見。その中身は分からないが、ともあれ、ブラックハートの中に、それを叫ばずには居られない衝動が、込み上げてきていた】
【またも、無理をしながら歩きだそうとしている夕月の姿を前にして――――その衝動は、もう抑えが効かなくなっていたのだ】

――――自分の意志だからって、言ったな……? そりゃ、あたしも同じ事だ……同じなんだよ、夕月……ッ!
そりゃ、無理やりさ……無理やり、あたしゃ戦わされてた。でも……あたしゃ、別に嫌だなんて思っちゃいなかった!

――――あたしゃ、『人間』なんざ大っ嫌いなんだ……! 今も、正直言えば、それは変わらない……! 無理して、押さえつけてるだけさ……ッ!!
……両親はあたしを売り飛ばしやがった。友達は、あたしを嘲笑いやがった。機関はあたしから『人間』を奪っていったッ!
だから、あたしゃ……『人間』なんか大っ嫌いだった。どれだけ殺しても、飽きるなんて事は無かったんだ!!

気持ちだけが、己の道の全てじゃない!! あんた、そんな辛そうな顔で、旦那やラベンダーに「殺してやる」なんて言えるのかよ!?

【思いの丈を、それこそぶちまけるというに足る勢いで、ブラックハートは叫ぶ】
【――――自分の中の黒い火は、未だにくすぶり続けている。その中で、それでも自分には道がある】
【なぜ、夕月は違うなどと言えるのか。そして――――そんな状態で、どうして選んだ道に後悔しないなどと言えるのか】
【追いはしない。だが、その言葉を叩きつける。ブラックハートは、苛立ちとも辛苦とも取れない何かに、突き動かされていた】

/すみません、飯行ってくるので、次遅れますー
19 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 18:21:31.51 ID:mHCNoPnp0
>>18

………………そっか。あいつ、代価さえ貰えればなんでもやるもんね。
どれほどひどいことでも、……ひどいことされるのでも、なんでも、やるもん……

【どこか納得したように、やはり諦めきった声で呟くのだろう。しかし、代わりに謝るなんてことはしなかった】
【そんなことをしても無意味だと知っていた。冒涜者、その死で償うことすらできるのかもわからないのに】
【そんな無責任な言葉で、この場をなあなあにしようだなんて、できなかった。ぎゅうと目を瞑って】

違わないかな。どうだろう――――あたしはハートさんのこと、よく知らないから、あれだけど。
…………あたしは人のことが、みんなのことが大好きだよ。大好きな人のこと、傷つけるヤツ以外はみんな好き。
いろんな好きのカタチがあるの、友達としての好きとか、信頼できるから好きとか、それ以外にも――

――――――――でもね、「好き」にはね、順番があるの。どうしても。
覆せないの、みんなのこと好きだけど――それでも特別好きな人のことのことを、どうしても優先しちゃう。
あたしはそういう、―――――化物だから。化物だから殺すよ、みんなのこと。


     だってあたし、イズルのことが好き。…………冒涜者だなんて呼ばれていても。


【――唐突に、ふたりの知らぬ人名が出される。それが“冒涜者”の本名であることは想像に難くない】
【振り返らなかった。背を向けたままだった。然るに表情は見えなくて――見せたくなかったのかもしれない】
【辛そうな顔してるだなんて思わせたくなかった。あるいは、最早目にするだけでも悍ましいくらいの】
【化物の顔になっていたのかもしれなかった。だから見せなかったのは、少なくとも、最後の恩情であり】

【――――やはり立ち去ろうとするのだろう。分厚い靴の底を鳴らして、……今度は背中にどんな声をかけられても】
20 : ◆rZ1XhuyZ7I [ saga]:2019/03/23(土) 18:29:56.76 ID:juD1R3Ct0
>>764


「氷の国軍上級大佐メルツェル≠ニいう、ロクな手合いでないという事は肯定しておくよ。」


                ―――メルツェル先生。


【現れたのは無機質な雰囲気を漂わせる存在だった。】
【絹のような腰まで伸びる白髪、機械で出来た二本の角のようなものが耳の上より伸びており】
【瞳はカメラのシャッターのように幾重にも層が重なっており金属的な光を放っている】
【ネイビーのロングスカート型軍服の上から銀色のマントを羽織っている長身の女性。】

【その姿を見て少年は感極まったような、悲しみのような、複雑な表情をしてから】
【何か言葉を発しようとするが、メルツェルと名乗った女性はそれを制して少女へと向き直る。】


「貴女方の求めるシステムは我々の目指すところにも含まれる。それに」
「ご存知の通り、先日の戦闘によって我が軍は大きなダメージを受けた。尤も私もアーカイブで見たのみだが」
「故にそこを補う戦力のためのコストはそれなりに出せるだろう、貴女が求める額かは分からないが。」


「ただ、今すぐにでもというのであればそのようなシステムを一つ知っている。」
「石板の中の老人達≠ェ織りなす巨大な経済システムをね。」


【メルツェルと名乗った女は機械音声のような声色で淡々と話す。】
【氷の国軍―――先日の櫻州≠ナの戦闘において魔導海軍に敗れ去ったのは記憶に新しい。】
【であれば、狡猾な少女はそんな負け犬の話など相手にしない可能性もあるが】
【さっきまで騒がしかった少年も背後ですっかりとおとなしくなっていた。】
21 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 18:51:18.13 ID:qRStJCCTo
>>20



    「 ─── 大仰な名前だなァ。」「チェスの得意なツラには見えないけれど、まァ、いい。」



【パーカーのポケットに両手指を突っ込んだまま、少女は対手と向き合った。気取らない立ち方をしていた】
【肩の力を抜くというにも幾らかラフな体勢に過ぎるようだった。 ─── それでも笑っているのだから】


「"顧問"として働く分にはワタシも嫌いじゃない。 ─── そっからも少しデカい生き物にノシ上がれるなら文句はない」
「聞かせてみなよ。けれど手短にね」「枝葉末節のムズカシイ話は好きじゃあないんだ。そういうのは飛び込んでみてから判断する」


【小首を傾げながら問う声だった。 ─── 紅いフードの奥で色素の皆無な髪先が揺れた】
【慮外に大雑把な所のある少女であるらしい。だとしても、斯様に彼女は命を繋いでいるのだから】
【そういう遣り方に支障が無いほど世渡りに手馴れているのも事実であるのだろう。 ─── ポケットからガムを探っていた】
22 : ◆rZ1XhuyZ7I [ saga]:2019/03/23(土) 19:07:58.02 ID:juD1R3Ct0
>>21


「良ければ貴女の名前も教えてくれないか、その方がより接しやすい。」


【本当にそう思っているのか分からない無機質な表情でそう言った。】
【口元には微笑みすらも浮かばない、むしろ設計上そうできないかのように。】
【「いい佇まいだ」と、ポツリと呟くように相手を見つめると本題に入る。】


「ああ、ではまず顧問として契約を結ばせてもらうとしよう。」
「―――先程そこの男からも話があったと思うが昼の国≠ヨ介入する。」

「私が引き継いだアーカイブによればすでに星の国≠フ企業と共同して波紋は起こしているようだ」
「そしてそこに引き寄せられるように大きな渦が起こる。」


「貴女にはオブザーバーとして我が軍への進言を随時行って頂きたい。」
「できれば貴女の知るルートでの情報収集も行って欲しい所だが、それは本意ではないのだろう。」


「基本は、私とやりとりして頂ければいい―――。」


【そう言うとメルツェルは電源が落ちたように何も言葉を発さなくなる。】
23 :ブラックハート&リベル=アシェル ◆auPC5auEAk [saga sage]:2019/03/23(土) 19:31:49.79 ID:QhqfSCns0
>>19

…………ッ!
<……『冒涜者』の肩書に、偽り無しって訳かよ……ッ!>

【2人は、思わず口元を噛み締める。それが、怒りから来るものである事は、容易に見て取れるだろう】
【尊厳ある個人から、命だけを残して、全てを引き剥がしていく。そんな事さえも涼しい調子でやってのける、そんな奴なのだろうと、2人は理解した】
【――――ブラックハートは、かつての己の『飼い主』を思い出して、ランドは、ただ義憤の故に、怒りを燃え上がらせる】
【あのアーディンが、怒りに我を忘れるのも、無理はないと、共感が一致して】

――――――――だから……だから――――それで、ブラスフェミアの為に、本気で好きだって言える友達を、弟分妹分を、1人残らず、殺していくって言うのかい……ッ?

【夕月の言葉は紡がれ、そして結ばれる。その全てを聞き届けて――――ブラックハートは、やはり低く、呻くような言葉を吐いた】

――――あんたは『化物』なんかじゃない。『人間』だ、呆れ果てるほどに『人間』なんだッ!!
誰かの事を「好きだ」なんて言える奴が……それを殺して回って、血にまみれる事に、後悔しないとでも思うのかッ!?
自分の手で、そばに居て嬉しいと思う人の命を捻り潰して、平気で居られる、そんなつもりでいるのかッ!?

そんな奴は初めから、誰かに心を許したりはしない――――嫌いでもない奴を殺せる奴は、そんなにみんなを好きになったりしないんだよッ!!

【――――『人間』だ。これは自分の最も憎む、愚かしさの代名詞としての『人間』そのものだ】
【ブラックハートは気づく。そして気づいたからには、もう黙っていられるはずがない。仲間たちのために、夕月には、爪痕を残しておかなければならない】
【無意味だろうが、過ちに気づかせる取っ掛かりになろうが、いずれ敵対した時の布石になろうが――――そこに何かを、残しておかなければならないのだ】

――――今のあんたに言っても無駄だろう。けど、これだけは覚えておきな……
そのまま行ったら……あんた死の間際、苦しむぞ、泣き叫ぶ事になるぞ……煉獄の火は、あんたに「これが正解だった」なんて、一瞬だって思わせてはくれないぞ……ッ!

――――レグルスが、愛してたと言った女を、自分で殺した時、どれだけ苦しんだか……夕月、見てなかったから、分からないんだろう……!
……アーディンの旦那たちが、やると言ったら、絶対だぞ……――――例え死んでも、思いを貫く方が大事だって、頑固者……
夕月……あんたもそうなんだろうが――――あいつらだってそうだぞ……あいつらは、死んでもあんたを止める
止められる前に……自分で止まらなきゃ、あんた――――「絶対に後悔する」。これだけは――――何があっても、忘れるな……ッ

【まるで、ifの自分を見ている様だった。グラトンの下から解き放たれなければ――――ブラックハートは、正に今語った言葉の通りに、死んでいただろう】
【――――先に逝ってしまったレグルスと、アルクの事を思い出す。彼らは、今の夕月を見れば――――死ぬだの死なないだの、考えるよりも前に止めようとするだろう】
【だが、哀しいかな。ブラックハートはもう、そんな力を宿してはいないのだ。彼らの様な、我を通す力を、彼女は持ち合わせていない】
【だから、悲鳴のように叫ぶ事だけで精一杯だった。捨て石として命を使うには――――これも残念な話だが、夕月は、彼女の中で、さほどに重くなかったのだ】
【それこそ、夕月の言う『順番』そのものだった。己以外のモノを背負うと、人はどうしてもそうなる。そんな己をブラックハートは歯がゆく思った】

【――――だからこそ言わなければならない。それで立ち止まるにしろ、死の際で後悔として焼き付くにしろ】
【少なくともその歩みは、過ちの道にあったのだと。それを、確信を以て――――】



<……ブラックハート……>
――――行くよ。みらいを……みらいを何とか、この国から運び出さなきゃ、ね……

【ケースの中、正にブラスフェミアの仕上げた『仕事』を携え、ブラックハートたちは去っていく】
【――――戦士の心が、慰められる時は、果てしなく遠いのかもしれない】

/戻りました&ありがとうござましたー!
24 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 19:33:03.14 ID:qRStJCCTo
>>22



   「イュン。 ─── イュン・ベルクト。そンな大切な名前でもないんだ。忘れて貰ってもいいよ」



【求められるなら、端的に少女は名前を述べた。軽薄に名乗っていた。音節全てに異国の訛りがあった】
【見れば顔立ちは真白く在ったが、鼻梁の輪郭は東洋の階調を帯びていた。得意な体質であるのかもしれない/いずれにせよ】



「ふゥん。 ……… ま、素性も知れないPMCsに任せて貰う分には、中々悪くない仕事を当てがってくれるのだ。」
「いいだろう。 ─── 引き受けようジャン?」「きししッ。 ……… 期待以上の働きは、してやるよ。」

「契約だの定款だの面倒臭いコトはこっちで遣り取りしてくれるカナ。」「 ─── そいじゃ、またネ?」



【 ─── 簡潔に快諾して少女は笑った。幼気な笑い方だった。死を鬻ぐ人間の面構えではなかった】
【対手に投げ付ける名刺も複雑な意匠ではなかった/「L.B.」判然としないそのイニシャリズムに】
【連絡先は綴られているのだから、確かに交わす言葉へ不足はないのだろう。 ─── 消え始めた夕焼けの残滓へ、広がり始めた夜の宵闇へ、去りゆき溶ける紅色の背中】


/このあたりでシメで……。おつかれさまでした&ありがとうございました!!
25 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/03/23(土) 19:42:54.11 ID:mHCNoPnp0
>>23

後悔なんかするくらいならその前に死んでやる。

【ただ一言だけ、言い返したのはそれだけだった。強がりの嘘っぱちかもしれないが】
【化物じゃないって言われても、人間だって言われても――彼女はもう、その道を選んだのだから】
【間違いだったって正解だったって構わない。彼女にとって肝要なのは、最後まで道を走り切って】
【燃え尽きて死ぬことだけ。踊り狂って死ぬ運命を選ぶ。誰かに足を斬ってもらって、楽になろうだなんて思わない】


【だって誰も知らないんだ。彼女にとって、冒涜者と呼ばれる女が――どういう存在であるかなんて】
【彼女だけが知っていればよかった。誰にわかってほしいわけでもなかった。だから、】
【――この日限りで少女は、日常風景から消え失せるのだろう。あんなに熱心にやってた料理の練習だって、無に帰して】


//おつかれさまでした、ありがとうございました!
26 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 21:24:07.67 ID:6YQiD33u0
>>9
【陽が首を傾げる。山々の稜線、地平の筋が赤々と燃え上がる。朱のインキが空に落とされ、滲む】
【人々は家路に着く。歩を進め、或いは歩を止め、自らの行く先を確かめている。誰も彼も、マスメディアに踊らされながら】
【騒めきが耳を満たす。狂騒が喉を潤す。変わりない街を一人行く】

【それは、白いトレンチコートを着た銀髪の男だった。やや老けた十代にも、若々しい三十代にも見える】
【ふらり、と高層ビルへ近づいていく。ポケットに手を突っ込み、ただの一般人にしか見えない風体で】


───────────────


【空気は未だ肌寒い。吐く息がほんのりと白く染め上がる。もうすぐ春が来ると言うのに、星はまだ目覚めてくれない】
【にわかに、その碧眼が入り口近くに佇む男を見据える。とても澄んだ、宝石のような双眸だった】

/よろしくお願いします!
27 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 21:31:52.26 ID:qRStJCCTo
>>26



【 ─── 射殺すような眼睛に、されど男は動じなかった。その装束は果たして隠れ蓑に類していた】
【インカムの入出力系を幾度か弄って、通信の指向性を変更しているようだった。張り巡らされるような静寂】



  「 ───………… 。」「 …………、 ─── 。」



【白いマスクに隠された口許が微妙ながら動きを示していた。 ─── 何か言葉を発しているらしい】
【然してそれも現今この彼我距離においては判然としなかった。何を語っているのか/誰に語っているのか】
【近付く事は容易であるのだろう。エントランスは疎らな人混みであるとはいえ、それだけの接近遭遇を図るには十分であった。であるなら】
28 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 21:40:34.51 ID:6YQiD33u0
>>27
【白い息を突き破る様に進む。両者を隔てるゲートを横切り、出入りする人々にぶつかることも無く】
【まるで、世界に干渉していないかのような歩み。誰一人として、彼の歩みを阻む者は存在しない】

貴方は─────────

【ひどく落ち着いた、聞いた者に安堵や高揚を抱かせるような声だった。それは1/fゆらぎとも呼称される】
【コンマ数秒の間、上唇と下唇が触れ、瞬きの後には既に開かれる】


円卓≠フ方ですか?


【穏やかに、和やかに、男はそう問いかけた】
29 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 21:51:30.21 ID:qRStJCCTo
>>28


               【掠れたような銃声が、だが甲高く共鳴した。】


【外套のポケットから仄かな白煙が立ち昇る。黒い風穴が在った。リノリウムに薬莢が転がった】
【1発/2発/3発 ─── 対手の頭部に照準されていた。精確であった。アイアンサイトさえ介していなかった】
【流れ弾もしくは貫徹した弾頭はアトリウムの構造に着弾した。偶然にそこは応力的な脆弱性であったらしい】
【 ─── 大袈裟な罅が入った。辛うじて割れていなかった。人混みの誰かが悲鳴を上げた】



     「 ─── 状況終了。状況終了。」「エコー、デルタ05よりチャーリー37」



【何れにせよ男は転瞬に駆け出していた。 ─── 蜘蛛の子を散らすような群衆に紛れようとしていた】
【その速度はしかし尋常なものであった。乾いた色味の背中を追う事は難しくなかった。または追いつく事も同等に】
30 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 22:05:02.50 ID:6YQiD33u0
>>29
【白煙が立ち昇る。まぁ、そうなるよなと思いながら、今日は非番だったことを思い出す】
【子飼いの能力者なのだから非番などある筈も無いのだが、任務を言い渡されていないのなら一応非番だ】
【ふっとポケットから出した手を弾道に合わせて振り抜く。次いで振り下ろす】
【銃弾は、豆腐を切るかの如く丁寧に裁断されていた】

そうですか

【虚空へ向けて返答する。騒めく人混みを一瞥もせず、駆け出す男を追従する】
【風を切り、群衆を抜け、なおも視線は一点を見つめる。付近のビル壁を駆け昇りながら疾駆そして、男の正面まで跳躍する】

悪いが、仕事なんだ
仲間の居場所を教えてくれるなら有り難い

【語り掛ける男は何をどう見ても、丸腰だった。振り抜かれた手に握られた、余りにも小さな何かを除いて】
31 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 22:12:38.34 ID:qRStJCCTo
>>30



  「 ────…………… 。」


【痙攣のような機微を男は示した。なにか明らかに動揺していた。それでもそれ以上を示す事はなかった】
【 ─── 諸手を上げて彼は降伏した。掌中には何も収まっていなかった。瞳だけが矢張り灰色だった】



  「出来ない相談だな。」「もう少し、妥協してくれ」



【マスクの下に隠した唇が述べた。微かに声が震えていた。動揺であるのに相違はなかった】
【追い詰められた立場の人間としては随分と悠長であった。妥協の余地があるものと信じているのだろうか】
【或いは何らかの時間を稼いでいるのかも知れなかった。少なくとも死に恐怖しない類の人間ではないらしい ─── 雑踏の誰かが携帯電話を取り出した】
32 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 22:28:27.23 ID:6YQiD33u0
>>31
【寸分の揺らぎすら介在しない瞳で、降伏の意を示す男を見据える。ヒットマンにしては、些か簡単すぎやしないか】
【そう疑問符が浮かぶ。先程所持していた拳銃であろう武装はどこに捨てた?放たれた弾丸は三発】
【仮にリボルバー式だとしても、後三発は残っている筈だ。故に、どこかおかしさも感じていた】

そこ、そこの貴方。撮影は厳禁です
皆さんも、これはちょっとした企画です。撮影してSNSに上げたりするのはご容赦を

【周囲の人間にそう告げる。どうやら、街中の人間を巻き込むつもりは毛頭無いようだった】


妥協、か
ウォーターゲートを狙うと言うことは、つまりそう言うこと
手放しに妥協してもらえるとでも?


【ゆっくりと距離を詰める。少なくとも、政府高官───それも野党側の───を狙ったであろう暗殺者】
【それをみすみす見逃す訳にはいかなかった】
33 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 22:36:33.35 ID:qRStJCCTo
>>32



「衆人環視の中、尋問でもやるつもりかい。」「 ─── "そういう約束"には、なっていない筈だが」


【 ─── 奇妙な台詞を男は吐き出した。明白になにか狼狽していた。恐怖しているようでもあった】
【コンバット・ハイに見失っていた本質性を漸く自覚してきた人間の声だった。落ち着くように彼は息を零した】


「なあ、何かの間違いじゃないか。」「 ……… こっちから撃っておいて何だが、妙な話だ」
「アンタみたいなのが"来る"とは聞かされてない。」「それなら、おれは抵抗したくない」


【成る可く冷静に事態を説明しようとしている語り口だった。 ─── それが例え第三者に理解しようもない内実であるとしても】
【語るというその行為に何かしらの希望を見出している挙措であった。続ける言葉には懇願さえ入り混じっていた】


「警察を呼んでくれたら、洗いざらい話す。」「 ……… それで手打ちにしてくれないか」
34 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 22:57:03.62 ID:6YQiD33u0
>>33
【男の語り口を聞かされても、彼には何ら理解のしようもない】
【そう言う約束にはなっていないと言われても、此方も何一つ聞かされていないからだ。故に、彼は既定の路線を維持するのみ】

申し訳ないが
此方は何も聞かされていない。それが事実だ
警察を呼んでも構わないが……

【彼は所謂野党側の人間だった。と言うよりは、野党側に協力する一部の、そう反異能派の飼い犬】
【秘匿され、隠匿され、その所業が表に出ることはない。しかし、確かに世界に存在する】

恐らく、君はここにいなかったことになる
それでも、良いと?

【確かに事件は起こった。だが、そこから先に起こした者がどうなるかは、わからない】

35 : ◆rZ1XhuyZ7I [ saga]:2019/03/23(土) 23:02:27.31 ID:juD1R3Ct0
>>24

「イュンか、いや覚えておくとしよう。」
「素性は先程の銃の腕を見れば十分さ、期待させてもらうとしよう。」


【イュンの去り行く背中を少年とメルツェルは見送り】
【投げ渡された名刺を軍服へと仕舞いながらその姿が見え無くなれば少年へと向き直る。】
【少年はやはり哀しそうな顔でメルツェルを見ていた。】


先生、俺たちは………。

「ああ、分かっているさ。ミヒャエルとコニーが斃れたのであればそれもやむなしだろう。」


【まるで諭すように無機質な声でメルツェルはそう告げた。】


//お疲れ様でした!ありがとうございました〜
36 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:06:23.32 ID:qRStJCCTo
>>34



「 ─── 雇い主の"背後"から詰められるよりはマシだ。」「 ……… アンタらの力にはなれると思うぜ」


【であれば、彼もまた"立場"を十全に理解しているようだった。今一度零す呼吸は絶望にも似ていた】
【 ─── 遠くからサイレンが聞こえ始めた。群衆を掻き分けて、数台のパトカーが現れるのだろう】
【携帯を取り出した何人かは既に警察への通告を行なっていたようだった。 ─── 安堵したように男は続けた】


「アンタが話の通じる人で助かったよ。」「 ……… 何か聞きたい事があるなら、今のうちに頼む。」


【軈て現れる警官の数人が、彼の両手に手錠をかけるのだろう。 ─── 去り際に対手へ向けられる男の瞥見は 】
【己れを制止してくれた彼に対して感謝さえしているようだった。最後に男は立ち止まった。それが短い出会いの最後であるらしい】
37 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 23:15:42.85 ID:6YQiD33u0
>>36
【男の素性がどうあれ、彼は上から指示によって動くのみ。引き渡しても、しなくても、正直どちらでも良い】

いいや、無い
どの道、君達と出会うのはこれが最後になるだろうから

【警察へと連行されていく男を見つめる。だが、最後に一つだけ聞きたいことが見つかった】
【警官を気にする素振りすら見せず、彼は男へと近づいていく。そして、互いの声しか聞こえない程の距離】


君はどこの誰だ?


【それは極めて個人的な興味だった。彼らがどこに所属する者なのか、その背後にいる者が誰なのか】
38 : ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:23:33.69 ID:qRStJCCTo
>>37



「 ─── アンタ、」「それくらいは知ってるんじゃないのか?」「 ……… まあ、いい。」




【 ─── 純粋に一驚を喫しながら、外される帽子とマスクと共に、彼は告げた。】
【卑近に過ぎる距離感には物怖じしていないようだった。声を潜めた意味合いを理解していないらしい】
【唇の片端を吊り上げて、彼は一息を吸い込んだ。 ─── 晒された素顔は、限りなく在りふれた面構えだった】





          「水国"最高議会"与党」「 ─── ご存知、イスラフィール議員だよ。」





        【にわかに群衆が動揺した。 ─── それきり、彼は警邏車両の座席へと消えていくのだろう】




/このあたりで〆でいかがでしょうか ……… !!
39 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 23:37:19.83 ID:6YQiD33u0
>>38
【男の言葉を聞き、彼はほんの少しだけ押し黙る】

あぁ、それが聞ければ十分だ

【そして、彼は限りなく平凡で、どこにでもいるだろう雰囲気の男が連行されて行くのを静かに見守った】
【車両の影が視界から消えた時、彼はおもむろに携帯端末を取り出し、何処かしらへ連絡を取る】


はい、はい、そうなります。あれはただの使い走りでしょう




えぇ────────────イスラフィールが、動きます




【邂逅、終幕】

/ありがとうございました〜!
40 :『駈込み訴へ』 ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:42:14.15 ID:qRStJCCTo


        <以下、水国全国紙"フルーソ・タイムス"■■■■年■■月■■号1面より一部抜粋>




「 ……… そうですね。おれが元々は水国の中央情報局に所属していたというのは、事実です」
「向こうでヘマをやらかして、丁度飯の食い上げって所でしてね。そんな時にお呼ばれした訳です」



「言っておきますが暗殺未遂で詰めるのはやめてくださいね。」「 ─── おれが依頼されたのは盗聴と盗撮です」
「次の最高議員選に向けて、彼らの決定的なスキャンダルを取ってこいと、 ……… そんな所でした」



「まァ実際、"本当に"議員の指示であったかは分かりませんよ。おれも実際に会った訳じゃないですから」
「ただ間違いなく彼女の息が掛かった人間からの下請けだったとは思いますね。 ─── 確信を持っています」



「 ─── ええ。"外務八課"でしたっけ?」「確かにそのような部署が、外務省の内部に存在しているというのは、事実のようですね。」
「詰まる所、彼らは"暗殺部隊"だ。設立時期は比較的新しいようですが、余り表沙汰にすべきではないブラック・オプス(注1:秘匿作戦)に関わっていたようです」


「その性質上、"適切"な人材は配属されていなかったようです。本来であれば死刑囚になるべき人材だとか、陸軍の実験機関が持て余していた戦闘用サイボーグだとか」
「今回の件について"彼女"が雇用されていたのも、理由としてはそんな所でしょう。 ─── 珍しくはありませんよ。この国の暗部には、"そういう"手合いが山ほど居る」


「"櫻州"に関わる諸々の事件にも噛んでたらしいですよ。おれも詳しくは知らないんですが、 ─── "そういう"連中が懇意にしてる集まりもあるとか」


「風国の"導人会"や氷国の"イヴァン"を始め、各国のマフィアだの情報機関だの解放戦線だの、そういう所とは敵対していたようですねえ。」
「いずれも多くは国益を損なう組織です。 ……… 時の政権から疎まれるのも無理はない。随分と重用されていたようですね。」


「え?  ─── そんなの無意味に決まってるじゃないですか。」「おれと同じく、彼らは"下請け"ですよ」
「幾ら八課をブッ叩いても蜥蜴の尻尾切りです。本当の病巣というのはホコリが出た先にあるものですから」




    「そうです。それが例えば、 ─── イスラフィール"最高議会"議員。」「彼女のような人間に、あたる訳ですね」




                          <引用終了>
41 :『駈込み訴へ』 ◆1miRGmvwjU [saga]:2019/03/23(土) 23:48:44.92 ID:qRStJCCTo
/Q.なにこれ
/A.水国"最高議会"野党の本拠にて、暗殺未遂・不法侵入・凶器準備集合などの嫌疑で逮捕された男の供述のようです

/Q.なんて言ってるの?
/A.「イスラフィール最高議会議員」が、次の選挙で有利な結果を出そうとする為、自身に不法な内偵を命じたと述べています。
  また先日より種々の疑義が向けられている「外務八課」に対しても彼女の深い関与があり、追及の対象は彼女"たち"に向けられるべきだとも述べています

/Q.これからどうなる?
/A.ちいさな火種から始まったスキャンダルが、水の国の政治体系全体に広がっていくかもしれません。流れに身を任せましょう
42 : ◆ImMLMROyPk [saga]:2019/03/23(土) 23:51:56.40 ID:6YQiD33u0
>>39
/此方のレスは取り下げさせていただきます。申し訳ないです
43 : ◆Kh0dBGYsiPBw [sage saga]:2019/03/26(火) 21:46:19.57 ID:sOeATM5R0
【路地裏】

【昼夜問わずほの暗いその空間に微かに鳴ったのは、硝子製の何かが割れる音】
【ややあってそれを踏み砕く音が鳴れば】


…………ッ、ぐ……うぅ……がァ……

【若い女の呻き声。一つ響いて】


【白い少女、だった】
【月白色の肩まで伸びた髪に襟も装飾もないシンプルなデザインの白いワンピース。それ以外は何もない。足だって裸足で】
【金色の瞳。ひどく濁っていた。その下には隈が出来ていて】

……ひ……っ、ギ……っあ……っ

【苦し気に吐かれる息。ぶわり、と少女の身体から赤黒い光が沸き上がり、その全身を覆って】

──────ッ!

あ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァあぁぁぁ!!!!!

【ぎしり、とその金色の瞳が大きく見開かれたと思えば咆哮】

【瞬間、少女の頭頂部から髪と同じ色をした猫の耳が飛び出し、ワンピースの裾からも同じ月白色の猫の尾が飛び出て】
【その尾が狐のそれのように大きく膨れ上がる】
【尾の膨張は更に続き、やがて破裂するかのように二本に裂けて】

【少女は汗で顔に張り付いた髪を除ける事すらせず、荒く呼吸を繰り返し】
【片手の中、鋭い氷柱を一本生成して】
【震える息を大きく長く吐き出せば赤黒い光は二本に裂けた尾の片方へと移動し始め、やがてその全てが尾の一方へと纏わりつく】

【尾の一本がそう成り切ったならば少女は赤黒く光る尾を掴み、その根元目掛けて持っていた氷柱を振り下ろして】
【そのまま振り抜けば尾を掴んだ手でその赤黒く光る尾を千切り取ってしまい、地面へと放り投げる】

【次第に光を失っていく千切れた尾】
【少女は自分の方に残った尾の断面へと触れて凍らせるとふらり、と踵を返し】

……これ、で……やっと……眠れ、る……
【覚束ない足取りで何歩か進んだかと思えば、がくり、とその場に倒れてしまう】


44 : ◆Dfjr0fQBtQ [saga]:2019/03/28(木) 23:03:51.85 ID:KERTOXHzo
>>751

【ふん、と鼻を鳴らす、──── 溜息を漏らさなかっただけでも立派であった】


それを理解していただけるのでしたら、俺の考えている事を微かでも理解出来る様に尽力してもらいたいな
バカに付ける薬は無いが、バカをマシにする薬は山ほどある、古今東西ありとあらゆる王座に就く人材はバカ勢揃いだが
少なくとも俺がその国に関わっている以上、その人間そのものに関わらず啓蒙しなければならない


【敢えてクーデリアに対する言及は控えた、マナーニャには視線一つ向けない、端から興味など無い様子で】


人間に経済観念を叩き込みすぎるのも考え物でな、適度に愚鈍な大衆が居た方が経済は良く回る
うちの国民だけが聡明になったところで先細りなのは目に見えてる、些かあのソフトはオーバーテクノロジーの上
何よりコストが掛かりすぎる、現状アンタ一人で打ち止めだよ、言いたいこと分かるよな?

普通に考えれば分かる事を教える為にわざわざお膳立てしてる訳だ、成果は出て当たり前だろう


【胸を張るクーデリア、視線は微塵も揺るがない、女好きという噂であったが】


だから俺としてはアンタには今まで通り "お飾り" で居てもらいたい訳だがな、中身は兎も角 "ガワ" は男ウケには十分だ
俺を始めとした脳みそが考えた事をただ伝えるだけ、俺が求めてるのはそれだけの役割と、何回も言っているだろう?

それでもアンタは為政者になることを選んだ、本心で言ってるのかは知らんが言葉には責任を持て
現実を知らん脳内お花畑の女王様ほど、邪魔な身内はいないからな


【】
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/03/29(金) 01:49:19.49 ID:J2G3IGXO0
【街中――川沿いの土手】
【太陽の傾く時刻だった、うすぼんやりと霞んだような春の空の向こう側、少しずつ夕暮れに染まって、カラスがどこかへ帰っていく空を】
【ゆったりと雲が横切っていく。だからきっと雲だってどこか家に帰るのに違いなかった。なれば夕方のチャイムの残響も遠く消えて、子供たちの嬌声、駆け抜けていく】

――――、そしたら、

【――新芽の吹き出した土手に並んで腰かける人影が二つあった。片方はまだあどけなさを残す少女だった。ならば学校帰りの女子高生に似て、】
【それでいて落ち着いた春らしい装いをしていた。投げ出した風に斜面を捉える爪先まで女の子だった。――浮かべる表情の幼さは幾らも子供ぽいのだとして、きっと個性であれば】
【けれどその傍らに腰を落ち着ける人影はきっと"それ"ではありえない。――ごく豪奢な狐の面を付けていた。そうして服装は櫻の着物であった、なら】
【端的に述べるのならば違和感の塊であるのだろう。少なくとも土手にいきなり座っている格好はしていなかった。そうなのだとして、二人、なにか仲良さげに話していた】

それでね、――――――――――――――、だから――――、うん……――――――――。

【そうして二人きっと真っ黒い髪と真っ白い肌が共通していた。そのうえで少女の眼差しは左右で色合いが異なっていた。黒色と赤色。瞬きのたびに色の変わる夕焼けを映し込んで】
【ふわりとした裾のロングワンピースに淑やかなボレロを重ねていた。これもお上品な踵の高さのサンダル、それでも剥き出しの素足の爪先、枯草の欠片が纏わりつくから】
【本当ははしゃぐ方法を十分に知っている子なのだと思わせた。――思いついたように膝を抱えた、その膝に甘えるよう、そうして見上げるようにとなりへ目を向けるなら】
【また何かを話す。きっと返事が返って。――そうしてきゃらきゃらと笑う声が鈴の音に似ていたなら、夕暮れの土手の景色、きっとりんと響くのだろうか】

ほんと? ――、――――すごい、――――――――――そうなんだ――、――――――――――――――――――……。

【――――――そうしてさらにいくらかの話題をやり取りしたのだろう時間の後、先に立ち上がるのは、きっと、櫻の装いをした方。うんとうんと長い毛先をそろと揺らして】
【口元に添えた指先が何か思いだして語る言葉を証明していた。――――、少しだけの間の後に、ふわと上体を折ったなら、未だ座ったままの少女の耳元、塞ぎ、】

「――――――やっぱり、あんた、世界なんて滅ぼしておくべきだったわ。馬鹿みたいね、"あたしたち"」

【それだけで音を防げるはずはなかった。櫻装の指先になにか魔術が煌めいていた。そうして事実指先を離された少女はきょとんと瞬いていた。何も聞こえなかったみたいに、なら、】

「――じゃね、あんまり心配かけさせちゃ駄目よ、"おかあさん"に。――――親孝行したいときには親は居ないっていうのが、世界のルールみたいだから」

――、うん! ばいばぁい、またね――。

【ひらり翻して櫻装は歩き出すのだろうし、取り残された少女は"はてな"を浮かべながらも、それでもまだもう少しだけ、その場に留まるつもりのようだった】
【誰かが居合わせるなら、どちらを観測することも十全に叶えられた。――少なくとも意味深に立ち去った狐面は思いのほか緩やかな足取りをしていた。少女は夕暮れを見ていた】
【そのうえで強いて何か述べることがあるとすれば、――やがて少女に見えぬ角度で土手から街並みへ降りた人影はその時点で指先に狐面を携えていた、ならばその顔すら夕暮れ色】
【赤色と黒色の色違いの眼差しが特徴的だった、少女と呼ばわるにはいくらか大人びていた。――なにか感情を抑え込むように深く細く吐く息の意味合い、春には似つかわしくない】
46 : ◆moXuJYo6C0cW [sage]:2019/03/29(金) 02:10:28.96 ID:Uz5dw65/o
前スレ>>359
前スレ>>726
【横にいるミラの嬉しそうな顔も無理はあるまい。彼女は今、伴侶や友人たちを失い】
【孤独の中をさ迷い歩いている真っ最中だ。そこに、死した友との再会が待っていようとは】
【彼女の性格上、すぐ飛びついてもおかしくないところだったが、抑えているのは意地か空気を読んだか。いずれにせよツッコミを入れるほど無粋ではない】

【そう思いつつも、どこかカニバディールも高翌揚している自分を認識していた】
【大した仲でもない悪党同士、だというのにどうにも憎み切れない男だったから】

ふ、ふふ……探偵のお墨付きとは光栄だな。歳を経ても、その辺りの目利きは信頼できる

【だが、笑ってばかりもいられない。そこから語られる未来の姿は、あまりにも凄絶であったから】
【円卓は己の欲望の通りに事を運んだ。初瀬麻季音の死。タイムマシンの破壊。ロッソは探偵からまたお尋ね者へ】

【そして、戦争。支配。全ては円卓の望み通りに。きっとそれは、王も王妃も望まない形の未来だったことだろう】
【加えて、己の名がその未来でどんな意味を持つのか。聞いたカニバディールは、何とも微妙な表情を作った】

――――なるほど。ひとまず前言撤回だ、元探偵≠ニいうわけだな
しかし……確かに良いニュースと悪いニュースだ。名が売れるのはまあ悪い気分でもないが、私もとうとう人間をやめて病気になったか

円卓の望む戦争と支配、金と暴力の世界に水を差すには少々過激だな
黒幕どもへの対抗手段の一つとして、似た効果の薬を作って撒いた覚えはあるが
そんな何番煎じかのホラー映画のような効果を持たせた覚えはない……だが、いかにも私がやりそうな嫌がらせでもある

だが、それすら円卓どもにとってはかすり傷にもならず、その支配を後押しする結果にしかならなかったわけかね
後には、ノブレス・オブリージュの対極とも言うべき、究極の利己で塗り固められた箱庭の都市と、その支配者と奴隷たち
そしてそこからも弾き出された者たちが、荒野をさ迷う終末世界……

流行りのオープンワールド・ゲームの設定かと思うくらい、出来過ぎた話だな
円卓はそんなことを望んでいたのか。支配といっても、要は周りの世界を削り取って自分たちの掌に収まる範囲に仕立てただけじゃあないか
全く面白くもない……だが、そこにいたるまで僅か10年とは

――――私は、恐らくは今とそう変わらず、その混沌の中を溝鼠のように這い回っているのだろうな、恐らくは。私ならそうする
通信も制限……いやむしろ、円卓の都市以外で残っている方が不自然だな

その中で、お前は元の強盗団として生き、ミラさんやゾーイと再会して――――ああ、ミラさんなら切ってやったのだろうさ
そんなつまらん世界で、円卓の中に閉じこもっているはずもない。貴女ならそうだろう? ミラさん
ふ、ふ、音楽性に関しては、時間が必要だったようだな

……オーウェル。黒幕が破れたのなら、あの会社も崩壊したということか
その置き土産が、ニューロンシティに……未来のニューロンシティも、さぞかし物騒で愉快になっていそうだな
今でさえ、あの混沌具合だ。いや、それは今は関係ないな

事実、それはあった。お前たちはタイムマシンを使い、この時代へ飛んだ。だが上手くいかず、その新しい仲間とお前だけが
意図せずタイムスリップを起こし、この時代へ流れ着いた、と

この時代のロッソを殺したのは、そちらの時代の刺客かね。ミラさんの言う通り、まさにターミネーターだな
そうして、お前の方は記憶を取り戻して、霧崎さんとこうして再会も果たした……なるほど、なるほど……
どうやら、状況は依然として逼迫したままということだな

お前もこちらで情報を集めているだろうから知っているかもしれないが、ついこの間も水と櫻の間で
そちらの世界の布石になりそうな大惨事があったばかりだ。今なお、この世界すら着実にそっちの未来に近づいている
あるいは、黒幕勝利の世界に。どちらでも同じようなものだがな

【息をついてそう言うと、ひとまず異形は居住まいを正す。そしてミラへのちょっとした講義を聞いた】

……確かに年季に見合った語り口だ、ロッソ
ノー・パラドクス……事実としてお前がここに現れ、それによって生き返った。そういう世界になった
私もその辺りの理論は門外漢だが、事実だけを見ればいいのはわかりやすいな

シンプルにいこう。ロッソは蘇った。世界は依然として危機
ならば、それをどうにかするには。黒幕と円卓を潰すにはどうするか
やはり、まだここでは完成していないタイムマシンに戻ってくるのだろうな?
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/03/29(金) 18:11:14.29 ID:SspT+wjD0
>>45
/パソコン設定しながらですがのんびり再掲しておきまうっ
48 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/02(火) 17:22:59.27 ID:OGvwE10S0
【風の国、市街地】

【空と草原と風車が織りなす風の国の風景イメージとは、少々異なる場所だ】
【近隣にトリカゴ本部もある、その地域での中心的な市街地】
【立ち並ぶ煉瓦造りと、石畳みは、伝統的な情緒を醸し出し】
【その中でも、若者向けのカフェやレストラン、ブランドショップやその他雑貨店は上手く街の雰囲気に溶け込み】
【近年はSNSにアップロードする写真の、代表的なモデル区域である】
【そんな街中を、トテトテと人をすり抜け走って行くのは、1人の少年だった】
【黄に近い金色の髪の、歳の頃10か11位の少年、ハーフパンツに白い長袖のフード付き春用コート、背中には何か楽器のような物を背負って】
【時折、奇妙な事に女性向けのアクセサリーショップやブランドショップ、雑貨店に足を止めて、中を覗き見て】
【その度に、人にぶつかりそうになったりと危うい】

「雉……お姉ちゃん、何が嬉しいのかな?」
「此処良さげだけど、でも、足りないな」

【時折財布を覗き込みながら、時折肩を落としながら、そんな呟きとともに、また足を別の方に向けて】
【だが、他に目が行っていない為か、或いはやはり別の何かに気を取られている為か、誰かにぶつかり後ろに転んでしまい】
【財布の中身を路上にぶち撒けてしまう】
【多量に転がる小銭群】

「す、すみません!前を見てなくて……」

【慌てて起き上がり、小銭を拾い集めながら、ぶつかってしまった人にこう謝罪して】


//ゆっくりと待ちます

49 :クーデリア ◆UYdM4POjBM [sage]:2019/04/04(木) 22:09:37.70 ID:jNO2o3Vro
>>44

【マーリンの発言に対し、クーデリアはぎぃー、と小さく歯を見せて食いしばる】
【この歯に着せぬ物言いに何度腹を立てた事かもはや数えてすらいないが言い返すべきと判断したところは言い返す】


おいその理屈だと5年前には誰もなりたがらなかった王位を
得た余なんかとびっきりのバカになるではないか!よくないぞ!その言い方はよくない!!

……そう、誰もなりたがらなかったんだよな。"キル"や先代……"ルーミア大姉上"の一件で荒れに荒れた直後だ
その復興の道のりはどうやっても自分の手に負えるとは思えない。他の王家の者達は当時それを恐れてなかなか勇み足が出せなかった
だからその間に率先して動いた事で王位継承権の低かった余が今の王になれたわけだが……

バカがなりたがるような役職かもしれんが、だからと言って誰も自分の愚かさを認めるのを恐れて王座を空席のままにする方がまずいからな
この国は「王国」だ、誰かがその座について民を収める事で国の安寧を保つ役割を行い皆を安心させてやらねばならぬのは事実


……なにより、そのバカで幼い者が王になると自ずと知恵者の助けを広々と借りやすくなるしな……おかげで物言い以外は実に頼りになる奴を呼寄せられたのだ


【本当に、物言いだけは本当に気に入らないがマーリンは本当に頼りになった】
【彼女が王になってから、いろいろな人間が外部からなんらかの『チャンス』を感じて足を運ぶようになった者達が大勢いたが】
【その中からクーデリアと"主任"たちが自分たちの目でアドバイザー候補者を面接などでふるい落とし、選んだのがマーリンだった】

【"教会"の枢機卿という確かな地位を持ち、なおかつ現実的な目線で物事を裁定し啓蒙していく手腕は本物だった】
【この4年、この男に世話になった事は数知れない……王座に直りながらクーデリアはこれまでの彼の働きぶりを軽く思い出したりもする】
【そしてAcquiesce≠ノ纏わる話の返事を受け取ると、クーデリアは頷きながら】


……「コストが掛かりすぎる」という言葉はオヌシが特に嫌う言葉だな、そこを余に優先し用意してくれた事も感謝してる
いずれは余がオヌシが何も言う必要すらなくバリバリ経済を回していける王になってくれることを期待しているのだろう?
だからこそ……最後のだけは断る。―――「オヌシらの脳みそが考えた事をただ伝えるだけ」の役割になるわけにはいかぬのだ


【傍らのマナーニャが、門前の秋雨が、赤絨毯の両側に並ぶ護衛官たちの表情が変わる―――要望を断るとは思わなかった】
【こんなところで彼の言葉に反するとはどういうことか……と考えてる彼らを尻目にクーデリアは涼やかにマーリンに微笑みつつ言葉を続ける】


今、余は「オヌシの考えた政策を一字一句歪めることなく」実行しておる。今の時勢だとなおさらそうするべきだからの
"結果"はオヌシの要望通りになってはいるから文句は言わせぬ。だがオヌシの政策を一字一句見直し、この政策を行う事でどんな効果が表れるかも
ちゃんと見直し、メリットとデメリットを入念に確認し、この政策に我らの命運を任せていいかを最終的に決断するのが王である余の役目であろう

成功した時は喜びを分かち合いつつ功労者のオヌシに労いの品を送り、失敗した時は余が批難を受け、損失補填も肩代わりなのだからな
"オヌシを任せて賭ける"のが今余にできる最大の王の務めだ…………未熟な今の余にはオヌシの力が必要だ、ゆえに一番大変な仕事を任せてるからの……

マーリン、オヌシの仕事は完璧だ。だから信じて『共に戦う』。……いざって時にはケツは持ってやるという奴だ
……"責任を持つ"というのはこういうものであろう?


【"主任"は陰で柔らかく微笑んだ。傀儡のイエスマンだけしかできない王でいるのではなく】
【現状、マーリンのやり方を伝えるだけしかできないならできないなりで、失敗した時はかばうと約束するのがクーデリアなりの誠意だと考えているらしい】
【人間面は好きに離れないが、それだけ、マーリンのやり方は信頼が置ける。ならば仲間なりに駄目では?と思った所は直し、必要がないと判断したらそのまま通す】
【そしてマーリンの仕事はケチの付けようがないと、クーデリア自身が判断した。ゆえに彼を信じて手持ちを賭ける所までが自分の務めと考えているようだ】
50 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 :2019/04/05(金) 20:24:45.62 ID:zF/yok9K0
【表通りから、そう遠くない路地裏。】
【差し込んだ月光とまばらに点いた建物の明かりだけが、】
【ひび割れたコンクリートに囲まれた無機質な世界を映し出す。】

【そこに荒い息を吐く複数の影があった。】
【影は大きく二つに分かれていた。】
【壁を背にし、両手を頭の上に挙げた一人の男。】
【そしてそれを囲む、多様な男たちの影。】

【囲む者たちの手には一様に木製のバットが握られている。】
【月光が照らす顔は、いずれも普通の市民の出で立ち、】
【しかし、その瞳には黒々とした憎悪の炎が揺れていた。】

お…おいちょっと待てよ、俺は助けようと…。

【囲まれている方はというと無精ひげの伸びた憂鬱とした顔、】
【鼻を横断する傷跡に、使い古された衣類。】
【光を失った瞳は暗く、濁りきった溝川の黒いヘドロの如く淀んでいた。】
【その相貌から老けて見えるが、声からして歳は三十代くらいか。】

一体全体、なんだよ!敵味方の区別もつかねぇのか!
「うるせぇ!糞能力者が!」
「黙りやがれ悪魔め!」
【男が何やら説明しようとするも市民達に遮られ、バットの一撃を肩に食らう。】
【痛みに唸る男は地面に倒れ伏し、自身を囲む者達を睨みつける。】
【一瞬、市民たちはたじろぐも直に憎悪を顔に浮かべ男に迫ってくる。】

OKだ。OK。好きに殴れ。
正し一分間だけ待――。
【鼻を横断する古傷をなでながら立ち上がった男。】
【その背中を木製バットの一撃が打ち抜く。】
【男は何とか前屈みで踏ん張る。】
【しかし腹部に強烈なひざ蹴りを食らい、また地面に倒れてしまう。】

ああ…ついてねぇな俺。
【男の瞳には止めとばかりにバットを振り上げる市民達の姿が映っていた。】
51 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/05(金) 20:49:20.11 ID:zF/yok9K0
【表通りから、そう遠くない路地裏。】
【差し込んだ月光とまばらに点いた建物の明かりだけが、】
【ひび割れたコンクリートに囲まれた無機質な世界を映し出す。】

【そこに荒い息を吐く複数の影があった。】
【影は大きく二つに分かれていた。】
【壁を背にし、両手を頭の上に挙げた一人の男。】
【そしてそれを囲む、多様な男たちの影。】

【囲む者たちの手には一様に木製のバットが握られている。】
【月光が照らす顔は、いずれも普通の市民の出で立ち、】
【しかし、その瞳には黒々とした憎悪の炎が揺れていた。】

お…おいちょっと待てよ、俺は助けようと…。

【囲まれている方はというと無精ひげの伸びた憂鬱とした顔、】
【鼻を横断する傷跡に、使い古された衣類。】
【光を失った瞳は暗く、濁りきった溝川の黒いヘドロの如く淀んでいた。】
【その相貌から老けて見えるが、声からして歳は三十代くらいか。】

一体全体、なんだよ!敵味方の区別もつかねぇのか!
「うるせぇ!糞能力者が!」
「だまりやがれ!悪魔め!」
【男が何やら説明しようとするも市民達に遮られ、バットの一撃を肩に食らう。】
【痛みに唸る男は地面に倒れ伏し、自身を囲む者達を睨みつける。】
【一瞬、市民たちはたじろぐも直に憎悪を顔に浮かべ男に迫ってくる。】

OKだ。OK。好きに殴れ。
正し一分間だけ待――。
【鼻を横断する古傷をなでながら立ち上がった男。】
【その背中を木製バットの一撃が打ち抜く。】
【男は何とか前屈みで踏ん張る。】
【しかし腹部に強烈なひざ蹴りを食らい、また地面に倒れてしまう。】

ああ…ついてねぇな俺。
【男の瞳には止めとばかりにバットを振り上げる市民達の姿が映っていた。】
52 : ◆moXuJYo6C0cW [sage]:2019/04/05(金) 22:47:48.96 ID:q9wOqLb80
>>51
/まだいらっしゃいますか?
53 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/06(土) 00:06:48.15 ID:H7OHEUHk0
>>52
/スイマセン諦めて本読んでました。
54 : ◆moXuJYo6C0cW [sage]:2019/04/06(土) 00:10:48.09 ID:3AJ62OFR0
>>53
/いえいえ、かなり遅れてのことでしたしお気になさらず!
/今からだと置き移行は確実ですし、きつそうですかね?
55 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/06(土) 00:27:17.64 ID:H7OHEUHk0
>>54
/申し訳ありません。明日は朝から用事が…
/昼ごろまた再度投下すると思います。もしお暇でしたら絡んでやってください。
/それでは、すみませんが、おやすみなさい〜
56 : ◆moXuJYo6C0cW [sage]:2019/04/06(土) 00:28:53.61 ID:3AJ62OFR0
>>55
/わかりました、どうもすみません……
/私も明日はお昼以降は用事があるので、今回は残念ながら無理そうですが
/またの機会を心待ちにしております。おやすみなさい!
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2019/04/06(土) 16:13:03.43 ID:be51ApTS0
【酒場】


【とにかくその日、俺は昼間っから酔っ払っていた】
【この街のくたびれた酒場はそんな酔狂な数人の客のために】
【昼間から店を開けていた。店主は椅子に腰掛け、アンナ・カレーニナを読みふけっていた】

【店主は俺と同じぐらいの年でどちらも白髪で、白ひげをはやして80年代で時が止まっている】

【俺は酔っ払っていた。何をするでもなく今日はジョイ・ディヴィジョンの死を悼んでいる】

【サングラスをかけ、赤い派手な柄のシャツ、ジャケット。俺のスタイルはずっと変わらない】

【酔っ払っていて、白昼夢みたいな気分だった。そのほうがありがたかった】
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/06(土) 21:08:45.35 ID:riRCloU30
【街中――コインランドリー】
【夜遅い時刻だった、ゆえに一層目立つ室内の明るさに、けれど我先にと寄り付く虫は未だ出ぬ時期なら、虫取りのランプも今は沈黙を貫き通して】
【がうんがうんといくつかの洗濯機やら乾燥機が稼働している音以外はごく静かであるのだろう、――――――嘘。室内に設置された"時間つぶしエリア"のベンチ、誰かいて】
【傍らの机に伏せておかれたスマートフォンから流された音楽がコインランドリーの中、それでもうるさくはなく響いていた。音楽ゲームにもいくつか曲を出しているような同人メインのボーカリストの曲】

【――けれども、誰かが入ってくるならば、彼女は容易く音楽など消してしまうのだろう。つまんなげに膝に広げられているのはだいぶ古い雑誌だった。窓だらけの店内は昼間には快いかと思いきや、本には過酷であるらしく】
【表紙なんかはだいぶ色あせてしまっているから、表紙を飾る有名なアイドルもきっと浮かばれない。死んでないけど。――ふうとため息を吐いたなら雑誌を閉じる、百円ショップのちゃちな雑誌ラックに戻してしまって】
【こちらは単純に古びて色あせたらしいベンチに背中を預けたならあんまり心地よくない音で軋んだ、――そうだとしても、夜のコインランドリーはいやに静かで、なんだか別の世界にきてしまったみたいだけれど】

――――、――――――。

【――ごく黒に近い紺色の髪はけだるげに一つにまとめられていた。同色の瞳もけだるく瞬きを繰り返すなら、"こんな場所"に来るのに化粧なんてするはずもなく、ましてや肌には消えきらぬ日焼けが目立つなら】
【もともと化粧なんてものはあんまりしないのかもしれないなんて余談なのだとして。――部屋着にするにはまだ"生きて"るのだとして、外着にするにはちょっと"死んでる"ようなTシャツ、それからかざりっけのないジーンズと】
【足元はごくやる気のないスニーカーだった。それでもまだ何か許されるように見えるのはきっと彼女が百七十も超えるような背をしているからで。――――雑誌の代わりに眺める携帯電話、着信のバイブが響いたら】

…………――あ? 今どこ? あんたが溜め込んだ服と冬の毛布、洗いに来てんですけど。………………あ? ――小学生の留守番じゃないんだから掛けてこないでくれる……。
あんた大人でしょうよ。………………………………あん? コンビニなんか寄んないわ。コーヒーゼリー? コインランドリー代を誰が出してると思ってんの? やよ。
大人は自分で好きなもの買いなさいな。あたしは自分の分のコーヒーでも買っていこうかしら。じゃ。

【ごくうんざりした仕草だった、なれば漏れる声もまたごくうんざりとしたもので。――ぽつりぽつりと漏れ聞こえてくる声、もし誰か聞いているなら、それでもいくらか親し気な色を帯びるから、家族、なのかもしれなくて】
【そうだとしてげんなりする瞬間はどこまでも心底まで面倒くさがっているようだったから面白かった、――――やがて終わる、というよりか、いくらも"終わらせた"電話、終わるのなら、】

――――――、

【誰かいるのなら、謝罪と呼ぶには簡単に済ませすぎる目くばせが向くのだろう。目礼にも物足りない瞬き一つ。彼女はまた携帯電話、眺めだすから】
【――室内に休憩用のいすはそこしかなかった。同じベンチに腰掛けるのだとして、彼女は端っこにいたし、まして誰か来るならもういくらか端に寄るだろうか、――なんて】
【どうあれ彼女の用はまだ終わらないらしかった。そうして確かなのは、退屈げにソファのひじ掛けについた頬杖、とげとげと他人を拒むような気配は、きっとしていなくって、】
59 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/06(土) 21:39:38.90 ID:be51ApTS0
前スレ>>279 黒鉄さん宛

私は、ある事実に気づいてしまったのです。

私は数年前、AIの研究をしていました。
いや、アンドロイドのというべきですかね。ソフトとハード両面での研究です。

それは単に労働力の代替品としてではなく、真に人間とはなんたるかを知りたかったからです。
神に成り代わるつもりもありません。いえ、むしろこの世界の全てと同じように
我々も、偶然の産物でしか無いとしか言えないと言うことに気が付かされました。

ですが、それは我々が観察者という特別な存在であるが故なんですよ。

そして私は、もう一つ並行して研究していたものがあります。

ですがどれもこれも。この会社すら、結局は。

ある一つの願いをかなえるため他なりません。

世界の終わりはもう其処まで迫っています。

そのままの意味です。

等しく平等に。収束する先は一つです。大変、残念ですが。
60 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2019/04/07(日) 10:56:36.27 ID:KL9vjwRy0
スレをろくに使わないのに乱立だけしてパー速を汚していくRPGツクスレ住民
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1553305198/
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1553308211/
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1553313362/
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1553792134/
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1554359912/
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1554370531/
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1554401405/
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1554477730/
そんなゴミの溜まり場はこちら
厳重に処罰すべし
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/47528/1554267128/
61 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/07(日) 20:37:21.79 ID:ahaa66VV0
【元櫻州軍港】

「ーーッ!?」
「ぐッ!……」

【闇夜であった】
【それは先だっての、氷国海軍艦隊と魔導海軍連合艦隊の戦闘の跡地、まだ幾らも復興は遅れ、戦火の傷痕生々しき場所】
【春の夜は暖かくも、月のない日であった】
【人影が動いたとあれば、途端に苦悶の声を上げて、その場に倒れ伏して】
【そんな事が幾度も繰り返され、そして次にはその場に2人の人影がその身を起こした】

「杉原、妙だな」
「妙ですね軍曹」

【都市用迷彩に身を包んだ、2人組】
【男女の様で、手にはアサルトライフル、腰の弾帯には幾らかの武装を所持して】
【特徴的な程に身長の差のある2人だ】
【足元に転がる数体の死体を一瞥して、暗視ゴーグルを外して会話する】

「こりゃ復興とか死体回収とかじゃねーな、コイツら何か探してやがる」
「探し物なら我々もいっぱいありますがね……でもまあ、取り敢えずの予定時刻までには、掃除も間に合いそうですが」

【海兵であろうか、足元の陸戦用水兵服の死体を蹴飛ばしながら】
【2人は暗い汚れた海を見つめる】
【怪しく不安な夜だった】
【さりとて、この様な場所に誰か来る者がいるだろうか?】
【未だに船や航空機の残骸が所々浮かび、海底には無数の敵味方問わず、亡骸が沈む、この港に】
【訪れる者がもし居るならば、それはきっと、この2人と同じく表には出来ない誰かか、或いは何も知らない無垢な存在か】



//予約の投下です!
62 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/07(日) 21:02:46.16 ID:ffT8itun0
>>61

【宵闇に浮かび上がる丸いオレンジの光の列は櫻国から輸入した人魂ではなくて】
【軍用の乗用車の車列のヘッドライト。闇夜に対応するべく探照灯と機関銃を据え付けたそれだ】

【一体どこのだろうと考える必要もない。それは水国軍の迷彩と識別が備えられた公式の車列だ】

【探照灯は目ざとく、眩しく。2人を照らした。】


<其処ッッ!!何者だッッ!!武器を捨てて、その場に伏せろッッ!!>


【探照灯を向ける水国軍の兵士が車上より叫んだ。車は3台もあり、装備を見ると前後が護衛】
【真ん中が護衛対象といったような雰囲気だった。赴任して来た将校でものせているのだろうか】

【車を停め、兵士が2名降りてくる。車上より目のくらむような探照灯と銃口は向けられたままだ】
【護衛車両の助手席から顔を出す。見覚えがあるかもしれない。派手なビビットブルーのヘアカラー】
【片方を刈り上げたロングヘア。落書きだらけのSMGを握ったパンクスの女。】
【あの時、霧崎の護衛に居た、構成員の女だ。】
63 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/07(日) 21:19:18.94 ID:ahaa66VV0
>>62

「やべっ!杉原!軍だ!水国軍だ!」
「くっ……こんな時に!」

【照らされる探照灯に続き】
【軍用車の上から叫ばれる勧告】
【眩しげにそれらを確認すれば、言うが早いが、瓦礫を飛び越え身を隠す2人】
【アサルトライフルを構えて、そしてゆっくりと声の方向、軍用車両の車列を視認すれば】
【それは、まるで中央の車両を護衛するかの様な車列で、何処ぞの高級将校の着任であろうか、兎にも角にも運がない状況と言える】

「杉原……!」
「解ってますよ、目眩しぶち込んで、その後はモーターボートで離脱ですね……いえ、軍曹ちょっと待って下さい!」

【護衛車両の助手席、杉原と呼ばれた男はその女性を見た】
【パンキッシュな髪型、出で立ち、忘れもしない霧崎舞衣の身辺を警護していた、あの女性構成員だ】

「ちょっと待って下さい!」
「杉原です!霧崎さんですよね?お久しぶりです!」

【徐に立ち上がり、両手を上げて、護衛車両に向かい声をかけた、慌てて少女も立ち上がり、同じ様に両手を上げて】
64 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/07(日) 21:54:31.75 ID:ffT8itun0
>>63

【パンクスの女は気がついたようで、窓を開けあの気だるそうな目で見ていた】
【そして、中指を立てる。口がなにか言っている。聴こえないが、多分、Fから始まる言葉だ】
【振り返り、誰かと話している。しばらくの後、女が車から降りてきた】

ウチの知り合いだ。テェ出すな。

【気だるそうに、SMGを片手で肩に担ぎながら、兵士に言った】


<しかし………>

てめぇらは、イエッサーだけ言っとけ。

姐さんが呼んでる。

【構成員の女は杉原らの方に一瞥だけくれて、踵を返した。】
【兵士はなにか言いたげな様子だったが、どちらが上かはハッキリしているようだった】

まぁ、こんなところでまたお会いするとは。

【後部座席には霧崎一人が乗っていた。運転手は大男で…いや、大男というには】
【あまりにも大きく、あまりにも人間とは思えなかった。――多分、人狼?】

【霧崎はまたスーツ姿で飾り気は無いものの佇まいと気品でそれらをカバーしていた】
【側に置かれた一振りの赤い鞘の刀すら彼女からすれば彩りであった】

どうぞ、狭いですが。乗られますか?

【助手席に一人、後部座席に一人と言ったところだろう。――となると乗っていたパンクスは定員オーバーなのだが】
【乗れなくはないが後部座席を窮屈にするわけにもいかず】


『おら、降りろアーミー共。走って帰れ。クソッタレ。』


【と、先頭の車両に銃口を突きつけて、運転手以外をおろしていた】
65 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/07(日) 22:22:30.27 ID:ahaa66VV0
>>64

「あ、あいつ!確か冨獄会の!」
「相変わらずですね、一目で解りましたよ、でもこれで活路は見出せました」

【女性構成員は、杉原に対しては相変わらずの反応であった】
【最も、此れは杉原に対する個人的感情もあるのだろう】
【兎にも角にも、武装した兵士達はその場は構えた武器を下ろして渋々構成員に従った】
【どうにも、やはりと言うべきか、力関係は霧崎が上の様だ】

「霧崎さん、ご無沙汰しております」
「助かった〜、すまなかった、危うく水国軍とも一悶着やらかすとこだった……で、杉原何で嬉しそうなんだ?」

【あの時と同様のスーツ姿の霧崎は、やはり凛として高貴に佇んで】
【対して此方は迷彩に各種の装備と、軍人然としたそれで】
【後部座席へと乗り込んで、口々に挨拶を告げて】
【そして運転席の巨大なワーウルフと思しき、その人物に目を奪われ、次には哀れ、車両から強制的に下される兵士達はを可哀想な目で見送ると】

「霧崎さんは、どうして此方に?」

【此処は言わずもがな、櫻州の軍港があった場所】
【先の戦いで壊滅的被害を受けた場所、逆に言えば今はその痕以外は何も無い場所、霧崎が此処にいるのは、何か相応の理由があるのではないか、と杉原は聞いた】
66 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/07(日) 22:40:39.91 ID:ffT8itun0
>>65

【車列は数人の兵士を置き去りにて再び走り出した】
【これならば大手を振って検問も突破は容易だろう】

どうもすみません。最近、大きいのを雇ったもんで。
鼻が利きますので、重宝しているんですが。

【一体どこで拾ったかは一切謎であるが、パンクスに人狼】
【他の構成員も櫻の人間以外はそんな風変わりが多い。】
【そのことをとやかくいうのは野暮と言うものだろう】

端的に言えばビジネスです。水国絡みのゴタゴタを解決する
手伝いをとある人物から依頼されていまして。
まあ、櫻の国のことまでは頼まれてはいないんですが。

何分、櫻は顔が聞きます故、今後のことを考えて少し挨拶回り
しつつ…といったところですかね。軍関係者は古い武家の人間も
多く士官におりますから。私も武人の端くれ。コネクションは多少。

この辺の再整備なんかマフィアと役人の懐を潤すには絶好なんですよ?

【なんて冗談じみて笑うが、一切冗談には感じられず】
67 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/07(日) 23:00:49.90 ID:ahaa66VV0
>>66

「なるほど……」
「確かに、鼻は効きそうだな、後強そうだ」

【個性的なメンバーを揃えた冨獄会、社会から弾かれた者の受け皿としての極道、そのシステムは尚脈々と生きている様で】
【故に、強固な結束と仁義が盤石なる体制を築いていると言えるのだろう】

「流石ですね、霧崎さん」
「土地に事後処理に不動産、目の付け所はやっぱりって感じだな」

【往々にしてわかり易い話であって、こういった土地の利権関係や不動産業は、議員クラスの役人とそしてヤクザには伝統的に稼げるチャンスなのだろう】
【コネクションがあれば尚更であり、嗅ぎ取る嗅覚はまさにその道のプロ故だろう】

「こっちは散々だけどな……で、水国関係のゴタゴタってのは一体?」
「気になりますね、この状況下で櫻関係では無いとすると、我々が知らない話でしょうから……」

【検問も何も問われず通過する中、霧崎の何気ない一言が妙に気になって、そう聞いた】
68 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/07(日) 23:44:55.47 ID:ffT8itun0
>>67

【狼は寡黙であった。ただ黙々と運転手としてその仕事を全うしている】
【鼻を利かせ、耳をそばだてて、護衛にふさわしい仕事をしていた】

そんなヤクザに大手を振って歩かせるほどには情勢は悪いということですね。
バレて任を解かれるより、目先の小銭のほうが良いということは
それだけ政情を誰も信頼していないということです。

といっても、私は今、准公人のようなもの。ある人物の手回しあってのことです。

【霧崎は軍用の揺れる車内であっても、その姿勢を崩すことはなく】
【それは礼儀というよりかは武人としてのそれで、常に刀を抜ける、気を緩めることは無い】

黒幕と、円卓のそれですよ。それと新楼市に関する所。詳しくはお話することは出来ませんが
政治というゲームに相乗りする算段をつけているところです。

よもや私も駒の一つになるとは…面白いものですね。
69 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/07(日) 23:59:08.91 ID:ahaa66VV0
>>68

「まあ、この国の政治状況は今更言うまでも無いけどな」
「なるほど……ちなみに、そのある人物とは?」

【寡黙な人狼が器用に運転をこなし、また周囲に気を張り警戒をする中、霧崎の話に耳を傾ける】
【先程から、決して乗り心地の良く無い車内にあっても、姿勢を正し、崩さない霧崎はやはり格上の存在なのだろう】
【剣客としても、また、社会的立場としても、それをひしひしと感じてか、百合子は少々複雑な顔を見せて】

「政治に?」
「何だ、まるで議員選挙にでも立候補するみたいな言い方だな?」

【詳しくは言えない、この点もまた先だってと同じであるが】
【政治に参加する、という部分が気になる話で】
【訝しげに、そう2人は尋ねた】
70 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/08(月) 01:01:01.81 ID:FA0+oMxY0
>>69

その人物については…まだ伏せさせていただきます。
非常にシビアな段階です。それに私もまだ半信半疑と言ったところでして
本当に思惑通りに行くかはまだわからないのです。

【検問を過ぎ、軍関係者の詰所や資材置き場なんかが連ねる仮設の基地のような場所を抜けていく】
【こうも簡単に通り抜けるのだから彼女の言う話の説得力になる。】

まあ、そんなところです。例え、出馬しなくとも有力者の裏の仕事人という立場なら
相当な水国内での力を持つことができるでしょう。情報収集もたやすくなる。

黒幕はいざしらず、円卓と接触することはできるでしょう。もしかしたら
私も円卓になれるかも。

【また、彼女は笑ってみせるが――察しのいい者ならそれが完全なる冗談ではないと】
【その目が笑っていないことから察することができるだろう】

それで…貴方方は?こんな夜更けに散歩には少し、遠出もすぎるのでは?


/ここらで時間的に落ちさせていただきます…
/お疲れ様でした
71 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/08(月) 01:20:58.47 ID:dwakV2Lm0
>>70

「なるほど……いえ、すみません立ち入った質問を」
「ああ、流石に内情の奥までは聞けるとは思って無い、色々と気になる部分は出来たけどね」

【車窓から外は、軍の検問やら主要施設やらで】
【通常では、決して通り抜ける事は出来ない場所、霧崎の話はやはり事実の様で】

「出馬、やはり選挙に?」
「凄いな!当選すれば水国議員じゃないか!」

【やはり、と言うべきか、帰って来た返答は議員選挙への出馬の意思】
【真実味ある話であって、百合子などは目を丸くして感嘆するも、次に聞かされたワードに、2人は同時に眉を潜めて】

「明かせない話なのは承知ですが、霧崎さん……まさか、貴女に選挙出馬を要請した人物、有力者……コネクションとは」
「まさか、イスラフィール議員ですか?」

【目を笑わせない、その笑みに、幾分か落ちたトーンで杉原が問うた】
【眉根には皺がより、話の真剣味がかなり増していて】
【この問の裏に何かがある事を、霧崎も察するやも知れない】

「あ、ああ私達はアレだ、先の氷艦隊と魔導海軍の戦いで、事後処理に動いている魔導海軍の海兵の一部に、不審な動きありと掴んでな、こうして杉原と調査に来てたわけだ」
「ついでに、陸軍の仲間を櫻国から呼んでましてね、到着時の露払いも兼ねて少々……」



//了解です!ありがとうございました!お疲れ様です
72 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岐阜県) [sage]:2019/04/08(月) 17:38:26.55 ID:0cs3Udwh0
【路地裏】

【獲物を前にした獣の吐息のごとく、不気味なほど生暖かい空気が、しなりと女の肌を撫でる】
【街の灯りは路地の先へと吸い込まれるように消え失せ、仄かな月光のみを足がかりにしなければならなかった】
【この場所、この時刻――この世界の住人ならば誰しもが知っている。それがいかに命知らずな歩みなのかを】


 ふーむ……。
 いい雰囲気だ。実に匂うじゃないか。


【それは、すらりと背の高い、二十代半ばぐらいの女である】

【白いジャケットに深紫色のインナー、黒いレギンスに赤褐色のブーツ。腰には大小多くのポーチが付いたベルトと、活動的な服装】
【桜花の柄の腰布とハーフアップに編み込んだ髪を留める二本の紅の簪が、どこか桜の国を思わせる風情を醸し出している】
【淡く月の光と同じ色を差す長髪は、毛先へと流れるにつれ鮮やかな新緑の色へと彩りを変えており――】
【深紫の瞳は優しく抱く宵闇のようでもあって、だがこの隘路の先の先よりまだ深く、見通しきれない何かを秘めていた】


 いるとしたら、このあたりのはずだ。
 ……ここまで来て見間違いでした、ってのはナシで頼むよ……。


【女は無造作な歩調で、きょろきょろと周囲を見渡しながら、誘われるかのように路地裏の奥へ奥へと進んでいく】
【こういう手合はおおよそ二種類に区別されるのが常である。すなわち、よほど腕に自身があるか、あるいはよほどの莫迦かだ】
【果たして女はそのどちらか。その目的はなんなのか。暗闇のなかにぽっかりと、怪奇と謎が浮かんでいる】

【銀色の風が吹いた。少なくとも、今宵の"怪異"はまだ、誰にも視られず此処にある】



/20時頃までまったり募集です
73 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2019/04/09(火) 03:54:40.32 ID:4JGzCKlZ0
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74 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岐阜県) [sage]:2019/04/12(金) 19:26:47.50 ID:Fx9AeUNe0
/>>72で再募集 日付変わるまではおります
75 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) :2019/04/13(土) 17:26:47.57 ID:skfhwBbr0
>>72

やぁ、お姉さん。
良ければ僕と遊んでいかなぁい?

【相手から見て路地裏の奥側にある、影になってなっている室外機の上に座っている少女が声を掛ける】
【その少女は見た目14,5歳ほどで月光を反射する腰まで届く薄い色感の銀髪を有している】
【その銀髪は右側の側頭部でワンサイドアップで結われ、それをさらに三つ編みにして毛先を黒いリボンで結んでいる】

【服はこの闇夜に溶け込んでしまいそうな黒いセーラー服。その上に淡く広がるように血のような色のスカーフが浮かんでいる】
【タイツもパンプスも黒いので闇との境界線が滲んでいるようだ】

【顔には幼さの残る顔に違和感を刻むように右眼を縦に大きく通って刀傷が奔っている。しかし視力はあるようだ】
【だが違和感はそれだけではなく眼がその幼さの残る顔には不似合いなほどトロンと蕩けて口が無邪気に開けられている】

【室外機の上に片膝だけ立て刀を抱きかかえるように大事に抱えている】
【片方だけ放り出された脚がぶらぶらと揺れている】

/もしよければお相手お願いします
76 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2019/04/13(土) 18:07:44.93 ID:skfhwBbr0
/日にち見落としてました。
77 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/13(土) 21:47:31.19 ID:XM8fmrz/0
>>71

―――議員程度で、ですか。

そうです。イスラフィール議員です。
彼女の使いの者と接触したのです。

その密談からずいぶんの時間が経ちどうなるかはわかりませんが。
そして、正確にはニューロンシティの市長選挙です。

【明らかに、声色が変わった。表情は相変わらずの印象は悪くないが】
【何処と無く凄みを持った1000倍に希釈した微笑であった】

【彼女は最初はぼかしていたもののその話を詳らかにしたのだ】

言いたいことはわかります。ですが、しょうもない愚策程度では
いつになれば敵の懐になど飛び込めますでしょうか。

私はヤクザ、貴方方も国軍の一兵卒。所詮この程度。
どれだけ全力を尽くしたとて、世界を返せはしません。
鉄火場のニューロンシティを手中に収めるぐらいはできなければ。

世界の支配構造を変えることなどできません。

――それに霧崎家は“城無し”の霧崎と呼ばれたものです。
そろそろ、城を持てば先祖も喜びましょう?

【櫻の国の歴史を紐解けば何百年も前の戦、封建主義が色濃い時代】
【各地方の大名に仕える家々の一つに霧崎家はあった。】
【ときに先陣を切り、時に殿を務める。桐崎家はその戦の尤も過酷なところで戦った】
【その武は味方すら恐れさせ、どれだけの武勲をあげようと与えられたのは斬り裂きの異名だけだった】
【“城無し”の霧崎。もはや歴史にも殆ど残っていない。一族の殆どが戦場で死に絶えたのだから。】

【正義の名のもとにある、野望。富嶽会という組織の毛色はやはりこの女がもとであった】
78 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/13(土) 22:06:24.02 ID:XM8fmrz/0

【酒場】


【ここが何処の国でどんな雰囲気の店かはあなたに任せよう】
【天気も、時間も。星座占いの順位も任せよう】
【ただ、其処にふらっと来た男にBGMだけは任せさせてほしい】

【それとこの男を狙った刺客が約30分後にやってくることは運命づけられている】

【背の高い痩せた男だった。ボサボサの白髪であごひげをはやしていた】
【サングラスを掛けていてわかりにくいが、年は相応、50かもう少しといったところだろうか】
【ジャケットスタイルだがTシャツで、ブーツは編み上げ10ホールで脱ぐのがめんどくさそうだった】
【細身のジーンズの裾を捲って、開いているところに勝手に座るだろう】

来たのは20年ぶりだ

【なんて、冗談を真顔で言う。だって20年前にはここは存在していない。】

いいや、俺が20年後から来ただけさ

【なんて言い返すのだから。質が悪い。変わり者だ。赤マルに火をつけて彼は言った】


世界を変える気はないか?
79 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2019/04/14(日) 01:42:14.97 ID:3+hDHB7T0
【静寂が帳を下ろす夜の公園】
【日の下に見せる顔とは違い、そこに人を向かい入れるような雰囲気はない】

【だが今その闇の中に違和感を浮き上がらせて、少女が立っている】
【だらりと力なく垂らされた右手に握られた刀だけが、まるで闇の住民である証のようだった】

【風のない闇に長い銀色の髪が撫でられる】
【右側頭部の高い位置で三つ編みに編まれた髪が風を探すように、だが揺れることなく佇んでいる】

へぇ〜、こっちにもあんたみたいな奴っていたんだ。

【銀髪の少女の顔がいびつに歪む。口角が釣り上がっている】

【少女の目の前にいるのは巨大な犬のような…狼のような】
【だが唸っているように見えて一切声のようなものは発さず】
【双眸の眼窩に溢れそうに留まっている赤は実際に血なのか、視覚の機能を有しているのか判断つかない】

【それは闇が動物の形を模して形取っているだけのなにかだった】

【少女と闇が動いたのは同時だった】
【動物を模した闇は力強く走り、少女は自重を推進力の所以とする古武道に継承される動きで互いの間にある空間を潰合ってしていく】

【闇が一際大きく跳ねその漆黒の牙が少女の首元に届かんとしたとき、刀身が間を割って入り込みその進行を防ぐ】
【闇の方へと踏み込み、身体を入れその脚を軸足にすることで反転し、闇の力を受け流し進行方向へと切っ先を向けることで】
【闇は自らの力で前方方向へと身が流されていく】

【相手に力を加えられることなく自身の行動を制されるので、そのことに理解するのに反応が遅れる】
【だが、その身体能力を以て空中で捻りを加えながら反転し、後方の相手の方に向き直りつつ着地を決める】

遅イッッ!!

【闇が相手の姿を捉えたときにはもう既に必中の、必殺の間合いだった】
【闇は反射のように地を蹴っていた】

【二つの影が交差する】
【少女が落とした腰を通常の姿勢に戻すと顔には黒い何かがベットリと付いていた】
【口端をぺろりと舐めながら刀身を腰の鞘へと収めていく】

フフ

【笑い声が漏れていた。脚が公園の出口へと向かっていく】
80 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/14(日) 18:32:32.39 ID:kIopf3CM0
>>79
/まだいらっしゃったりしますでしょうか……?
81 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/14(日) 20:07:13.71 ID:WJvnTUuj0
/>>78で再投下します
/違う内容でも一向に構いませぬ
82 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/16(火) 19:37:29.09 ID:aFr+Jfgm0
>>77

「ッ!?」
「す、杉原……」

【空気が変わった】
【その単語に、人名に明らかな反応を示したのだ】
【そして告げられるのは、やはりとも言うべき、そして考えたく無かった事実で】

「霧崎さん、貴女……」
「その様子じゃ、イスラフィールってのが何者か、チームMにとってどういう存在か、櫻州のあの戦いの裏で何をしたのか、知っているのか?」

【驚愕は隠せなかった】
【ニューロンシティの次期市長選挙、出馬の打診を飲んだと言う霧崎】
【だが、様子からすれば、ある程度の情報は得ているのだろうか】
【最も、それがアーディンやカニバディール、そして外務八課の知る情報と同一とは限らないが】
【少なくとも、それらをある程度知るこの陸軍諜報部の二人からすれば、彼女の決意が何を意味するのか……理解が出来てしまうのだ】

「支配構造に、ついには先祖ね、私は武家の出じゃ無いからな解らんが、明確だが曖昧な敵に取り入る事が城持ちになるのかねえ、なあ杉原」
「私は武家の出ですが、何分良いご身分の出自では無いので、しかし、武家には武家の大名や領主にはそれぞれの統治者の、矜持はあるのでしょう」
「ですが……霧崎さん、何を、いったい貴女は何を企んでいるのですか?」

【極道組織冨獄会、霧崎が見せた野望には、並々ならぬ執念と野望を感じて】
【圧倒されていた、二人は完全に霧崎の側面に呑まれていた】
83 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/19(金) 21:49:13.31 ID:r1wr6yY60
【表通りから、そう遠くない路地裏。】
【差し込んだ月光とまばらに点いた建物の明かりだけが、】
【ひび割れたコンクリートに囲まれた無機質な世界を映し出す。】

【そこに荒い息を吐く複数の影があった。】
【影は大きく二つに分かれていた。】
【壁を背にし、両手を頭の上に挙げた一人の男。】
【そしてそれを囲む、多様な男たちの影。】

【囲む者たちの手には一様に木製のバットが握られている。】
【月光が照らす顔は、いずれも普通の市民の出で立ち、】
【しかし、その瞳には黒々とした憎悪の炎が揺れていた。】

お…おいちょっと待てよ、俺は助けようと…。
【囲まれている方はというと無精ひげの伸びた憂鬱とした顔、】
【鼻を横断する傷跡に、使い古された衣類。】
【光を失った瞳は暗く、濁りきった溝川の黒いヘドロの如く淀んでいた。】
【その相貌から老けて見えるが、声からして歳は三十代くらいか。】

一体全体、なんだよ!敵味方の区別もつかねぇのか!
「うるせぇ!糞能力者が!」
「だまりやがれ!悪魔め!」
【男が何やら説明しようとするも市民達に遮られ、バットの一撃を肩に食らう。】
【痛みに唸る男は地面に倒れ伏し、自身を囲む者達を睨みつける。】
【一瞬、市民たちはたじろぐも直に憎悪を顔に浮かべ男に迫ってくる。】

OKだ。OK。好きに殴れ。
ただし十秒だけ待――。
【鼻を横断する古傷をなでながら立ち上がった男。】
【その背中を木製バットの一撃が打ち抜く。】
【男は何とか前屈みで耐える――が、】
【腹部を強烈なひざ蹴りが打ち抜き、またもや地面に倒れてしまう。】

ああ…ついてねぇな俺。
【仰向けになり、空を見上げた男の瞳には、】
【止めとばかりにバットを振り上げる市民達の姿が映っていた。】
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2019/04/20(土) 19:23:55.48 ID:t6lvAVAb0

【水面に月が映るころ、春先の涼しい夜のこと――】

【風すらも凪いで、虫のさざめきがまばらに聞こえるだけの森のなかである】
【細い獣道を抜けた先、人気のない湖のほとり。そこに、すらりと背の高い、二十代半ばぐらいの女が佇んでいた】


 ふぅ。
 ……まあ、仕方ないか。


【白いジャケットに深紫色のインナー、黒いレギンスに赤褐色のブーツ。腰には大小多くのポーチが付いたベルトと、活動的な服装の女だ】
【桜花の柄の腰布とハーフアップに編み込んだ髪を留める二本の紅の簪が、どこか桜の国を思わせる風情を醸し出している】
【淡く月の光と同じ色を差す長髪は、毛先へと流れるにつれ鮮やかな新緑の色へと彩りを変えており、】
【深紫の瞳は優しく抱く宵闇のようでもあって、しかし視線の先の湖の深みのように、見通しきれない何かを秘めていた】

【女は困ったようにため息をひとつ付いた後、やがて意を決したかのように、ゆるやかに歩き出した】
【その行く先には一面に広がる湖しか存在しない。このまま行けば入水する羽目になるが、それでも止まる様子はなく――】


/日付変わるまで募集です!
85 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/20(土) 21:21:04.75 ID:0fqHGrsg0
>>84
糞…糞がっ…あいつらしこたま殴りやがって…。
【涼風に吹かれ藪をかき分けながら一人の男が湖に向かってくる】

糞ったれ、ド素人どもが…加減もしらねぇくせして…糞!
【大きくはれ上がった左瞼は片目をふさぎ、悪態を吐くだびに血がにじんだ口元が痛む】
【裂けた額からこぼれた血液に染められた顔は痛みと怒りに歪められ、まさに狂相と呼ぶにふさわしい】
【足を引きずる姿は手負いの獣といったところだろうか】

お!ついてる湖だ!
まずは顔を洗…

【湖をみつけ足を速めるが、先客の存在に気づき足を止める】
【しばらくそのまま見ていたが、ふと先客の足が湖に進むのを確認すると――】

おおっい!まて!早まんじゃねぇ!

【さっきまで引きずっていた足を懸命に動かし女性を追う】
86 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岐阜県) [sage]:2019/04/20(土) 21:51:11.54 ID:t6lvAVAb0
>>85

【女の表情に躊躇いはなかった。静寂が支配する夜の森でなければ、声に気づかずそのまま湖に突っ込んでいったかもしれない】
【だが実際には男の介入が間に合った。女はブーツが濡れるのも構わず歩を進め、膝まで浸かったところで、「おや?」と呟いて振り返り――】


 ………ええ!?
 なんだなんだ! 入水自殺した自殺者の亡霊かなにか? それとも落ち武者とか!?


【男があまりに傷だらけだったので、女はそちらを幽霊かなにかと誤解したようである】
【しかし、それで逃げるでも怯えるでもなく。なぜか目を輝かせて男に近づき、至極失礼な台詞を浴びせるだろう】
【その様子を見るに……とりあえず、男が危惧したような意図で湖に入ろうとしたわけではないらしかった】


 うわ、それにしてもひどい怪我だね。
 一応応急処置用のキットは持ってるけど……幽霊に治療とか、意味あるのかな?
 キミ、そこんとこどうなの? 


【そちらに駆け寄った女は、興味津々といった様子でまじまじと男の全身を見つめ始める】
【そして迷った末に腰元のポーチから治療用具を取り出して、どうしたものかと首を傾げるのだった】
【……男が普通の人間であるのなら、とりあえず誤解を解くところから始めないとどうにもならなそうである】

87 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/20(土) 22:23:30.95 ID:0fqHGrsg0
…どっちかってーと他殺の線を疑うべきだろ。

【いきなり湖から引き返したと思えば故人として扱われる】
【先ほどまで自分が、入水しようとした相手を止めようとしてたのでは?】
【痛々しい口元が苦笑いで歪む】

なんだ、その感じだとそっちも男に振られて思いあまってたわけでも、
逆らい難い水への執着から水底の名状しがたき古き神々遺跡に向ってたわけじゃぁないようだ。
おっと俺の誤解は謝らんぞ。
夜中に水辺にまっ直線に向かう人間が、他に何に見える?

【仕返しとばかりに寂しい女性か、邪神を信奉するインスマ面の魚人と思ってたと言う】
【おまけに自己正当化…】
【呆れるばかりだが軽口が出るほどの余裕は取り戻したらしい】

後、一応まだ生者だ。
ほら見ろ足すけてないだろ。

【足元を見れば土まみれのブーツ】
【クタクタで色あせた様は男そのものを映すかのようだ】
【服も血に染まった白シャツにジーンズとみすぼらしく、】
【夜の山道には到底足りぬ装いだ】
【わけのわからない軽口をたたく余裕はあったようだが、全身には複数の暴行の痕跡がある】

後だ、応急処置はぜひともお願いしたいが…あいにくと返せるものなんてなくてな。

【気まずそうに血で固まった黒髪ごと頭を掻く】
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/20(土) 22:39:15.37 ID:t6lvAVAb0
>>87

【男の了承を確認すると、「別にお返しなんていらないよ」と軽く笑って、女は応急処置に取り掛かるだろう】
【そうして体に触れていれば、必然、男が死人ではないことにも気づく。……なぜだか、ちょっと残念そうだった】
【ずいぶん手慣れた調子で処置を終える頃には、傷の痛みも多少はマシになっているだろうか】


 ああ、そういうことか。ごめんね、誤解させて。
 神秘を追っていたって意味では、その推理もあながち間違いじゃないんだけど……。
 まあとにかく、世を儚んで湖に飛び込もうとしたわけじゃなから安心してよ。


【ころころと楽しげに表情を変えながら、女はそんなことを云う】
【そもそもこんな夜中に人気のない森に踏み入る行動力といい、血や腫れに怯えひとつ見せない応急処置の手際といい、】
【一般的な女性の平均からはだいぶ外れた女のようだ。只者ではない――という表現よりは、単に"変人"と評する方が正しそうではあったが】


 ……ふふっ。
 にしてもキミ、面白い人だね。自分がこんな大怪我してるのにわたしを助けようとしてくれたのか。
 そんなお人好しさんが、いったいどんな大喧嘩に巻き込まれてきたのかな?
 

【いたずらっぽく上体をかがめて上目遣いで男を見やると、女は微笑して質問を投げかけた】
【怪我の様子から、男がなにか人為的なトラブルに巻き込まれたらしいということは察せられたようだ】
89 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/20(土) 23:11:55.62 ID:0fqHGrsg0
>>88

【楽しげに表情を変える女性】
【その姿を見たからか男の表情も和らいでいく】
【顔の血を拭えば鼻を横断する古傷以外は無精ひげが生えた普通の30代の男だ】

探検家か何かか?
なんだ本当に湖の底に遺跡か宝でもあるのか?

…その前に自己紹介まだだったな。

【気を使ってか傷に消毒液の類が染みても、表情は変えない】
【そのまま普通に会話を行おうとする】

ポール…ポール=ベイクドバットだ。
ありがとう、どうにも最近ついてないと思ってたが…。
今夜は例外らしい。

【自己紹介を終えると事情を話し始める】
【始まりはこうだ、普通のコンビニエンスストアで能力を用いた強盗を捕縛したが、】
【周囲の市民の反応が危険であり、また強盗が少年であったため、つい逃がしてしまった】
【市民の標的は彼に変わり、路地裏に追い詰められ怒りの制裁を受けることになってしまった】
【そこからは必死に逃げだしこの山にたどり着いたというわけだ】

【強盗を取り押さえる際、能力を使ったこと】
【最初から自分も標的であった可能性が高いことは伏せて上記の内容を話し終えると、】

お人よし何かじゃないさ…。
ただ…間抜けだっただけだ。

【自嘲しながら空を見上げる】

なぁ、今世界はどうなっちまってるんだ。

【浮世離れした事を言いながら空を見上げる黒い瞳には、】
【星も月も写らない、ただ狭間にある闇を見るだけ】
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/20(土) 23:39:52.43 ID:t6lvAVAb0
>>89

【傷口に染み入る痛みも顔には出さず、淡々と話し続けるその仕草を、果たして女は見抜いていたかどうか】
【それはわからないが、女はさも「かわいいものを見た」とでも言いたげにくすりと笑って】


 いかにも。わたしは探検家であり、冒険家であり――"蒐集家"だよ。

 わたしはイスト。よろしくね。


【男の名乗りに、こちらもまた名乗り返す。女――イストは、どこか誇らしげにいくつかの肩書を並べ立てるだろう】

【ポールの話を聞きながら、女は近くの茂みに歩み寄ると腰をかがめて、入水前に置いておいたいくつかの荷物を抱え上げた】
【水筒や缶詰、火起こし用のライターなど、野宿用の道具らしきものがいくつか。さらに手帳サイズの冊子のようなもの】
【――そして最後に、深い緑に金細工が施された鞘を持つ、一本の刀】

【それらを回収すると適当に周囲を見渡し、近くに転がっていた大きめの石の上に腰掛ける】
【「まあ、座って話そうじゃないか」と笑い、紙コップに水筒の中身を注いでそちらに手渡すだろうか】
【ちなみに中身は酒だとかの小洒落たものではなく、ただのお茶。まあ刺激物ではないので、口の中の傷に染みることも無さそうだ】


 ふぅむ。それはまた、波乱万丈な夜だったね……。

 それでキミは――その子を逃したことを後悔してるの?
 そうでないのなら、わたしはキミが間抜けだとは思わないよ。


【一通り聞き終えると、芝居がかった挙措で神妙そうに唸ってみせる】
【話題の重さの割にイストの言葉は飄々としていたけれど、放たれたその問いだけは、妙に真剣であるだろうか】


 いま、キミに世界がどう見えているかはわからないけれどね。
 少なくともわたしには、この世界が輝いて見えている。
 自分の足で歩き回って探してみれば、楽しいことはあちこちに転がっているものさ。

 たとえばそう――。
 実はわたしは今日、この湖にネッシーを探しに来たんだって言ったら、キミは笑ってくれるかな?


【そうしてにまりと笑い、イストは自らがここに来た目的を告げる。……どう聞いてもふざけているとしか思えない話だ】
【しかし彼女の瞳は、彼が見上げる闇の只中にぽつぽつと光る星々よりも、爛々として真っ直ぐに輝いている】


91 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/21(日) 00:07:33.91 ID:/9DzDZSa0
>>90

【探検家または冒険家であり蒐集家――そしてイスト】
【相手の名乗りから必要な情報を抜き出し正体を推測する】
【これは疑心から来る行動ではなくポールが修羅場を経て得た習性だ】
【しかし、相手がどこにでもいて、何処にもいない生粋の趣味人といった結果しか出てこない】

後悔してるさ…助けてはやれなかったからな。
 
【茶を受け取り一言例をいってから飲む】
【一口目は切れた口内のせいで血の味がしたが、それでもポールにとっては救われるものがあった】

今頃逃げ切ってくれりゃぁ…いやそれも変か…。
まぁ自首して拘置所に泊ってくれてんのが最善かね。

【特に傷に染みることなく二口目】
【相手の飄々とした態度はむしろポールにとっても有難かった】
【芝居がかってはいるが決してこちらを軽んじてないのも伝わってくる】

ねっしーぃ???
おいおい本当かよ冗談だろ。


【噴出さずに済んだのは三口目にいってなかったからで――】
【なので心からの驚きと笑いだった】

見つけて、どうするんだ?
刺身にしてみるか?

【つい軽口をたたくが、その瞳に輝く星を見て、】
【ポールの瞳の中にもわずかな篝火がともる】
【まだ小さい光だが昔の自分を思い出す余裕が出てきたようだ】
92 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/21(日) 00:31:40.14 ID:Nzsdb6a90

>>91

 くふふっ……そっかそっか。
 ヒトがやれることにはどうしたって限界がある。たとえ目的が達せられなかったとしても……。
 キミがその子に手を差し伸べてやったことだけは、悔いることじゃあないさ。


【ポールの答えに、イストはなぜか嬉しそうに吹き出した。励まそうとかけた言葉もどこか弾んでいて】
【「今度街で見かけることがあったら、説教しておいてあげるよ」などと軽口まで飛ばしてみせる】
【イストがポールを見る目は、まるで小さな子供でも見るかのように、妙に優しいものだった】


 いやぁ、あいにくと大真面目だよ。
 あちこち旅して回って、いろんな"怪異譚"を蒐集するのがわたしの趣味なんだ。
 ほら、この湖のこともめちゃくちゃ真剣に調べたんだよ?


【そこまで言うと先ほど回収した冊子をめくって、イストはあるページをポールへ開陳するだろう】
【さも論文でも仕立てるかのごとく、湖に棲むバケモノの目撃情報やスケッチなどが詳細に書き込まれている――】
【しかも途中の一説に「人間を好んで捕食するらしい」などという眉唾ものの情報もあって】
【どうやらさっきの入水は、およそ信じがたいことに、自分をエサにして怪物を釣るつもりだったようである】

【とにかく、ふざけているわけではない。この女はきわめて大真面目に、湖の怪異を探しているらしかった】


 わたしが蒐めるのは"怪異譚"だからね。無為に殺したりはしないさ。
 だから見つけた後は……そうだな。もし知性があったら友達になってみたいところだね。
 背中に乗っけてもらって海に繰り出すとかさ。ほら、ロマンがあるでしょ?


【生粋の趣味人――とポールはイストを評したが、それはきわめて正鵠を射ているようである】
【好奇心に駆られる少年のように、あるいは夢見る少女のように。イストは荒唐無稽な夢物語を語るのだ】
【まあ、これがいい歳をした女として正しいのかどうかはともかく。――彼女の世界が輝いているのだけは、たぶん間違いない】
93 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/21(日) 01:04:42.92 ID:/9DzDZSa0
>>92

説教ね…。

【自分も大した人間じゃないが…まぁ自分も会えたら言うだけ言っといてやるか】
【などと考えつつイストの話を聞く】

怪異譚か…なるほどなるほど。
大真面目だって事はよーくわかったよ。

【イストの冊子を見ながら話を聞いてると、】
【いきなり人を食べるという文字が目に入ってくる】

ええ!食うのかよ人!
まるでケルピーじゃねぇか!
あぶねぇ、こっちがネッシーの飯に…。

【眉唾なうわさに大げさに驚いて見せるも、あることに気づき不意に黙り込む】

イスカ…一つ聞きてぇんだけどさ…。
どうやってネッシー探すつもりだったんだ?
まさか…だがな最初湖に入っていったのって…。

【大真面目に夢を追い、世界を輝いてると捉える】
【その価値観はとても素晴らしい物なのは間違いない】
【しかし、ある種そういった人間がやりがちな危険な行動】
【さすがに己を餌にするというのはポールの予想と常識から大きく外れてた】

お前バカか!どうやったら自分を食おうって相手に知性と親交を期待できんだよ!
本当にケルピーの背中にのるのと同レベル…。
いや馬ほしがってるだけケルピーのがましか?

【思わず声を上げてしまうが逆に頭を抱えてぶつぶつと呟きだす】
【厄介なのは肉食川馬妖精が馬の姿に見入られた結果なのに対し、】
【イスカは形のない『怪異譚』というものを追いかけ、そのためなら命を賭けれるという点だ】
【ポールの頭の中ではもしかしたらケルピーに襲われた犠牲者のように、】
【水面に肝臓だけが浮かぶ事態になってたのでは…しかも自分も、という考えが浮かんでいた】




94 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/21(日) 01:24:34.16 ID:/9DzDZSa0
>>93

/イスカ…一つ聞きてぇんだけどさ…→イスト…一つ聞きてぇんだけどさ…
/訂正です。すみません。
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/21(日) 01:28:03.89 ID:Nzsdb6a90

>>93

【声を張り上げるポールに対し、イストはくつくつと楽しげに相好を崩すだろう】
【怪異譚なんてモノを集めているだけあって、本人もどこか"怪異的"というか。ヒトの驚く顔を見るのが好きらしかった】


 はっはっは! まあ、この情報が本当かどうかはわからないんだけどね。だから確かめたかったんだ。
 別に死ぬ気だったわけじゃないから、そこは安心してよ。襲われても生き残る自信はあるからね。
 こういうのも慣れっこなんだ。ほら、こういうお話に人食いのウワサは付き物でしょ? 


【真偽が確かでなかったとはいえ、間違いなく命懸けの試みだったそれを、イストは豪快に笑い飛ばして】
【口ぶりからするに、いままでも何度か、そういう"人食いのバケモノ"にも出会ったことがある……の、かもしれない】
【意外にも修羅場を潜ってきているのか――少なくとも、子供じみて笑う表情からは、そういう剣呑な雰囲気は感じられないけれど】


 そういうキミはどうなんだ、ポール。
 わたしはさ、冒険と浪漫のためなら――この異能に満ちた世界を"蒐める"ためなら、命を縣けられる。

 キミには、そういう"夢"はないの?


【自分のお茶をぐいと飲み干すと、イストはポールへ向き直って、今度はこちらから質問を投げかけるだろう】
【空の果てのように深く、瞬く星のように純真な光が宿る双眸。それがポールの瞳に灯った篝火を、正面から射抜かんとしていた】
96 :ラスラドーラ ◆nihwMyGNc6 [sage]:2019/04/21(日) 02:21:53.51 ID:/9DzDZSa0
>>95

【驚く自分に対し、楽しげなイストを見て言葉を失うが、次第に同じように楽しげに笑い出す。】

慣れっこかぁ。
ま、確かにそういうもんだよな。

【ポール自体も犯罪者相手に体を張る事は多い】
【それは覚悟だの信念だのというより、それを生業にしている故に身に着いた自信と慣れの面が大きい】
【前提として確かな経験と技術が必要だが、それについては二人ともノープロブレムだろう】

夢…ね。 

【篝火の炎が揺れる】
【それは一瞬消えかけ――不意に大きく燃え上がる】

ないな。俺にはない。

【確かな断言と共に言葉を続ける】

あるのは贖罪と実利だ。

【真剣な眼差し、だが贖罪と口にしながらもその眼差しは許しをこう罪人のものでなく】
【むしろ、己を含め全てを裁くかのような『覚悟』が見られる】

そのためなら命は惜しくない。
――だが絶対に死ぬわけにはいかない。

【逆、ある意味では同じ思い】
【射抜かれた瞳の炎は今だ輝きを放ち、過去の原罪を燃やしている】
【しかし取り返しのつかない罪は人の生では贖いきれない】
【だからこそ命は惜しまないし、絶対に[ピーーー]ない】
【許されない…ゴールのない旅路は夢と言うには荒涼としている】

まぁ、後は約束やらツケやらプライドやら…。
色々あるがお前みたいに『輝かしい黄金の夢』なんてのは俺にはない。

【そこまで話すと茶を口に運び、そのまま飲み干す】

色々とありがとな。
街の連中も徹夜で俺を探すほど暇人じゃないだろうし、街に降りるとするよ。
夜道だがこの程度何とかするくらいの『力』はある。

【もし町を抜けるなら今しかない】
【器を返すと立ち上がり礼を言う、その顔に藪を掻きわけていた時の狂相はない】

楽しかったよ、久しぶりにまともに人と話せた気がする。

【そして、ありふれた店名のダイナーの連絡先が書かれたショップカードを渡すと、】
【そのまま手を振りながら獣道を引き返していく】

じゃあなイスト!
もし治療費請求したくなったら、その店にかけてくれ。
代替何時もそこにいるからよ!
あと余計な御世話だが『力』があるなら街中じゃあんま使うな。

【月光に照らされながら、確かな足取りでポールは去って行った】

/すいません、眠気が…
/久しぶりのロールでしたが楽しかったです。ありがとうございました。
/それでは乙彼様でしたー。

97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/21(日) 02:54:47.13 ID:Nzsdb6a90
>>96

【ここまでの会話で、なんとなくではあったが――イストもポールの身の上を多少、読み取ろうとはしていた】
【他者に手を差し伸べる優しさを感じつつも、同時に荒事に慣れていそうな雰囲気は確かに感じ取っていたのである】
【そんな彼の瞳に滾る炎を、イストは静かに見据えていた。なによりも尊い宝物を見るような目で――】


 そっか、それは残念だ。
 けれど……キミがその"覚悟"を貫き通した果てに安寧を得られることを、わたしは心から祈るよ。ポール。


【イストは最後まで目を逸らさないままに、ポールの"覚悟"を聞き届ける。ふと、夜空を見上げて】
【彼にささやかなエールを送るのだった。それぐらいしか、いまは出来ることがなかったから】
【――黄金のように価値あるものでも、誰かに胸を張れるものでなくてもいい】
【彼の物語の最後のページに、輝かしい未来が記されることを祈って。最後に、目を伏せるのだった】


 わかったよ、もう遅いしね。名残惜しいけど今日はここまでだ。

 ふふっ――思えば、湖の怪異を探し求めた森の奥で、血みどろ男と語り合うなんて。
 これはこれで、大いに"怪異的"な夜だったと思わない?


【ポールから器と一緒に別れの言葉を受け取ると、イストは心底残念そうに眉を歪めたが、やがて自らも立ち上がった】
【いたずらっぽく目を細めて怪しく笑うその顔は、最後まで飄々としつつも、優しいものであっただろうか】


 ああ、ありがとう。縁があったら遊びに行かせてもらうよ。
 治療代はいらないから、ご飯でもおごってくれると嬉しいかな。

 ……それじゃあ、また会おう。
 もちろん、力の使い道には気をつけるさ。ふふふ、血みどろで森を彷徨う羽目になるのは嫌だからね!


【ショップカードを懐に仕舞うと、月明かりに照らされたその背中に下らない冗談を投げかける】
【そして、再び森に静寂が満たされたなら――あの冊子の新しいページを開いて、早速とばかりに筆を執るのである】

【書き記すは今宵の出会い。湖畔で飲んだ粗茶の味と、ポール=ベイクドバットの"怪異譚"――】



/お疲れさまでしたっ!
98 : ◆KP.vGoiAyM [sage]:2019/04/21(日) 13:33:46.98 ID:Ak/YWhMM0
>>82

……さぁ?

【霧崎は微笑む】

その首を刎ねるべき相手、というのだけ判っていれば良いのでは?

私は円卓を打倒することが目標です。ならばそれに見合ったスケールで
なければ意味がありません。世界の支配者と張り合うだけの。

その円卓に置かれた杯に毒を盛るにはそうしなくてはならないと言うことです。
堅牢に閉じられた扉をいくら叩いたとて、か細い我々には打ち破ることができません。
ならば、自ら招いてもらいましょう。

知っているでしょう?チームMの顔ぶれを。国盗りにはもってこいじゃないですか。

【霧崎は楽しそうだった。彼女の目には謀略が張り巡らされた戦が写っていた】
【昂ぶっていた。単に刀で切り合う、銃を撃ち合うような有り触れた争いを超えた】
【盗みを成そうとしているのだから。楽しくないわけがなかった】

とはいえ、黒幕を何とかするのが今は先決です。
生憎…そっちが難しいのですが。

さて…私はこれから新楼に向かわなくてはなりません。お二人はどうなさいますか?
その格好で街を歩くのは些か、目立ちましょう。
99 : ◆zlCN2ONzFo :2019/04/23(火) 23:05:36.64 ID:zPCLLi700
>>98

「円卓相手に、政治闘争の舞台で立ち回ろうってか?」
「しかも、その為に相手の用意した土台に敢えて乗っかる、と?」

【霧崎が示したのは、意図的に相手の懐へと飛び込む策】
【当然、危険と言えば相応の危険が付き纏い、そして何より得体が知れない】

「その様子なら、円卓の、イスラフィールが何をしていたか、先だっての戦いでどんな謀略行動に出ていたか、解っている様子だが、どの部分まで知っているんだ?」

【魔導イージス艦みらいといぶき、それを巡る一連の謀略】
【外務八課を巻き込んでの作戦行動、これらを霧崎が何処まで知っているのだろうか、と】

「随分と楽しそうですね……いえ、武家とは本来そう言う物なのかも知れませんが……」
「何人かは面識がある、が、そのチームMで国盗り?こりゃまた大層な事を考える……」

【霧崎の様子は、幾分にも、二人には奇異に映った】
【切迫した謀略の場において、何よりもその状況を楽しんでいるのだ】

「まあ、チームMの本分は本来そっちだからな〜、こうなっちゃ円卓も黒幕も無いのが現状だけど、杉原どうする?」
「……我々も同行します、新楼市まで」

【同行の意思を、霧崎に答えて】
【陰謀と謀略、暴力が渦巻く、その街まで……】
100 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 18:10:10.92 ID:eglF3Egj0
【路地裏】

【獲物を前にした獣の吐息のごとく、不気味なほど生暖かい空気が、しなりと女の肌を撫でる】
【街の灯りは路地の先へと吸い込まれるように消え失せ、仄かな月光のみを足がかりにしなければならなかった】
【この場所、この時刻――この世界の住人ならば誰しもが知っている。それがいかに命知らずな歩みなのかを】


 ふーむ……。
 いい雰囲気だ。実に匂うじゃないか。


【それは、すらりと背の高い、二十代半ばぐらいの女である】

【白いジャケットに深紫色のインナー、黒いレギンスに赤褐色のブーツ。腰には大小多くのポーチが付いたベルトと、活動的な服装】
【桜花の柄の腰布とハーフアップに編み込んだ髪を留める二本の簪、左腰に佩いた緑鞘の刀が、桜の国特有の風情を醸し出している】
【淡く月の光と同じ色を差す長髪は、毛先へと流れるにつれ鮮やかな新緑の色へと彩りを変えており――】
【深紫の瞳は優しく抱く宵闇のようでもあって、だがこの隘路の先の先よりまだ深く、見通しきれない何かを秘めていた】


 いるとしたら、このあたりのはずだ。
 ……ここまで来て見間違いでした、ってのはナシで頼むよ……。


【女は無造作な歩調で、きょろきょろと周囲を見渡しながら、誘われるかのように路地裏の奥へ奥へと進んでいく】
【こういう手合はおおよそ二種類に区別されるのが常である。すなわち、よほど腕に自身があるか、あるいはよほどの莫迦かだ】
【果たして女はそのどちらか。その目的はなんなのか。暗闇のなかにぽっかりと、怪奇と謎が浮かんでいる】

【銀色の風が吹いた。少なくとも、今宵の"怪異"はまだ、誰にも視られず此処にある】



/20時まで募集〜
101 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/04/25(木) 19:05:57.67 ID:W2213yFJ0
>>100

【――――腥いにおいがする。腥いにおいがする。腥いにおいがする。腥いにおいがする】

【たとえば牛、豚、鳥、なんでもいいけれど、ぎっしりと肉の入った――それもあまり新鮮でなくて】
【赤い液のしたたりが底にたまっているタイプのパック、そのラップを開いた瞬間のようなにおいが、きっと】
【あなたを、襲って――――。……異常を察知してそのまま逃げるのならば、それで平和に終わるのだけど】

【そうでないのなら。においの源を探して足を進めてしまうなら――行き着く先は袋小路だ】
【人影がある。立っているのがひとり、地面に頽れているのがひとり。ここまで書けば、もう、わかるのだろう】
【言うまでもなく周囲の地面には、赤い水面が広がっている。どこかから入り込んできた光がぎらり、】
【なにかに当たって反射される――刃だ。立っているほうがそれを持っている(あたりまえだが)、そして】

――――――――――ア、見られちゃったア!

【――「そいつ」は屈託のない笑顔であなたを出迎えるのだろう。女だった。幼い顔つき、けれど身体は】
【成熟して女性らしい丸みを帯びているのを――薄い薄い生地で構成された煽情的な下着で隠し】
【その上からモッズコートを羽織っている、なんて、とんでもないコーディネイトのやつだった。靴は履いていなくて】
【ぴちゃり。血だまりを裸足で踏み締めながらあなたのほうへ身体を向けるのだろう。笑ったまま】

ねえね、お姉さん。見逃してくれない? きょーはちょっと疲れちゃったのお、だから、
「ふたり」も「相手」するのはちょっとナー、って、思ってるところなんだけどお……

【顎の下あたりで内側に曲がる黒髪がひょこひょこ揺れていた。もみあげ部分だけ何故か長くて、銀色なのも】
【ばかみたいに楽しげに踊っていて――ぱかっと開いてあははと声を零す口には八重歯、それから】
【すみれ色した瞳はごく人懐こい色合いを帯びて輝いていた。少なくとも今はなかよしでいましょう、って】

――――――お姉さんが「その気」ならそれでもいいヨオ。どーする?

【しかしそれも次の瞬間には、獰猛に細められる。つまるところ、何も見なかったことにしてこの場を去るか】
【はたまたコレと同じになりたい? ――片手に握った刃の先で転がる死体を指す。首が、刎ねられていた】
【――――どちらか選べ。そう訊く側になっている。あるいは第三の選択肢でも探せるのなら、それでいいけど】

//よろしければ!
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 19:33:01.47 ID:eglF3Egj0

>>101

【――はてさて。まず最初に述べるならば、女はまごうことなき変人である】
【先に言ってしまえば、この路地に迷い込んだ理由も"幽霊を探しに来た"という訳のわからないものなのであった】
【人並みの良識を持ち合わせているなんてお世辞にも言えない。――しかし、ただひとつだけ、】


 …………これはまた、参ったね。
 荒事ぐらいは想定のうちだったんだけどな。
 

【予想の百倍ぐらいひどい、なんて。異臭を察知してなんの迷いもなく突き進んだその先で、女は思わず自嘲する】
【血だまりに転がるかつてヒトだったものを前に――やや顔を顰めはするも、悲鳴を上げることも逃げ出すこともせず】
【この状況にあっていっそ清々しいほど真っ直ぐな視線で、下手人の彼女を射抜くのだった】


 見逃してくれって、それはどっちかっていうとこっちの台詞なんじゃないかなぁ。
 背を向けて逃げ出した瞬間に首と胴体がサヨナラしてそうな予感がプンプンするんだけど……わたしの気のせい?


【そんな風に、友達にでも語るかのような調子で笑いかけたなら――女は黙って腰の刀に右手を添えるだろう】
【あるいは踵を返せば本当に見逃してくれるのかもしれない。しかしどうしても、"そいつ"に背中を向けるなという本能の警告が消えない】
【逃げるよりも、戦ったほうがまだ生存確率が高い。それが女の出した結論で、それ故の臨戦態勢であった】

【――、いや】
【それ以上の理由も一つだけある。そう、ただひとつだけ、この軽薄な女にも明確に嫌いなものがあったからだ】


 それで、……そのヒト、なんで殺した?


【女は――無意味な人死にというものが、なにより嫌いだった】
103 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/04/25(木) 19:52:12.11 ID:W2213yFJ0
>>102

【彼女が刀に手を添えたのを見るなら、わあ、と歓声を上げるのだろう。疲れただなんてきっと嘘だった】
【そうして、女は――完全にそちらへ身を向けるのだろう。両手にひとつずつ曲刀を握っていて】
【ほとんど裸みたいな身体、白い肌には言い訳のしようもないくらいにべっとりと返り血がついていた】

【そして、】

? なんで殺したかってそんなに重要かナア? まあ、いいけどお……
ギンちゃんね、あっあたしギンコって言うの、だからギンちゃん――娼婦やってンだよネ。
そんでこの人が今日の「お客さん」だったからあ、

【「だからだよ」。 ――――、――、】

【理由にもなっていないのは明白だった。そもそも返答として成立していない。それでも女は平然としていた】
【自分が娼婦で、相手が客だから殺した。文章としておかしい。だけど奇妙なことに、こいつはそれを】
【あたりまえのことだと思っているらしい。口を開けたままヘラヘラ笑っていた。だからこいつは間違いなく、】
【社会的に存在を許されていいものではなく、そして――彼女のなにより嫌うものであるのだろう】

あははっ、アハ――――じゃあネ、質問返すけど、ギンちゃんはさっきみたいに答えましたア。
そしたらお姉さんはどーしますかっ? ギンちゃんのこと……殺しますかア??

【ぎしり、――牙を噛みしめるような笑みを浮かべて。ギンコと名乗るそいつは、両手の刃を握り直し】
【彼女の返答を皮切りにして、動き始めるのだろう。すみれ色はすっかり血を求める温度に昂って】
【とん、とん。裸足の爪先が地面を蹴る準備を始めていた――すっかり血に塗れているから、ペディキュアも見えない】
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 20:17:01.43 ID:eglF3Egj0
>>103


 ……そっか。「だから」か。
 うん。納得した。


【その、あまりにも子供じみて――。まるで、殺すための理由なんかなくて、殺したあとに勝手に理由がくっついて来たみたいなそれを】
【女は一度頷いて、あまりにもあっさりと受け入れるのだった。微笑を浮かべたまま半身を引き、鞘を握り込んで】


 ギンコちゃんか。可愛い名前だね。
 わたしの名前はイスト。職業は……自称になるけど"蒐集家"だよ。
 こういう怪しい場所を探検して、隠れている"怪異"を探すのが趣味なんだ。


【実を言えば。この子とは相容れないのだという、そのどうしようもない実感は、既に女のなかで事実となり始めていたのだけども】
【――決して表情は変えなかった。あまつさえ、そのへんの子供にでも自慢するみたいに、「かっこいいでしょ?」とウィンクをひとつ】
【その空々しいまでの場違いさには、しかし狂気も恐怖も感じ取れない。おそらくはこれが、この女のやり方なのだろう】
【たとえこれから殺す相手でも、どちらかが死ぬそれまでは。"少なくとも今はなかよしでいましょう"――ああ。ちょっとだけ、似てはいる】


 いやはやまったく。それにしても。
 幽霊目当てに彷徨えば、饐えたニオイに転がる素っ首! 飛び交う狂気と血塗れの刃ときたもんだ――!
 はは、嗤っちゃうほど"怪異的"だ。ぜんぜん嬉しくないけどね!

 そしてたぶん……キミという"怪異"には、こういう蒐め方が一番、相応しいようだ。
 ――悲しいけどね。それがわたしの答えだよ。


【相好を崩し、ため息混じりに演劇じみた台詞を吐いて、がっくりと肩を落とす。――それが最後であり、合図であった】
【上体が倒れたその勢いのままに、女……イストは一気に駆け出すだろう。悲しげに呟いたその声はしかし――】

【――抜刀。ギンコから見て右から左へ、横一閃の斬撃と同時に、彼女へと届くことになるだろうか】 
【ただシンプルに"速い"だけの斬撃である。避けられやすくもあるが、そうなったとき退避に転じやすい、そういう力の抜き方だ】
105 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/04/25(木) 20:32:38.73 ID:W2213yFJ0
>>104

イストさんって言うんだネエ。しゅーしゅーか? ……コレクターってことかナア。
うふふ、変なのお、ユーレイなんてどうやって集めるのお? ハコとかに入れとけるの?

【「まあそれはどうでもいいけどネ」、】

イストさんはこーいうトコあんまり来たコトないのかナ? じゃあひとつ教えといてアゲル。
たぶんネエ、ユーレイってもうちょっとお上品なトコにいるんだと思う――だってさ、

自分の死体見つめ続けるのってきっと悲しいコトじゃない。こんなトコ、ユーレイだって居たくないよ――

【――――じゃあなんでこいつはここに居るんだろう。決まっていた。死体を作るのが好き、だからだ】
【だからきっとイストのことだって殺す。両腕を動かす、コートの裾を棚引かせる――二本とも右へ】
【すればぎィんと甲高い金属音が鳴るのだろう。受け止めた。鍔迫り合いに持ち込むつもりだろうか、】

【だとすれば――イストは気付くだろう。こいつの膂力、左程鍛えてもいないような細さのそれから出すには】
【あまりにも過ぎた力を持っている。少なくとも人間の領域には収まらない怪力、ならばこいつは人間ではない】
【イストの力が「そうでない」なら、弾き返してしまうのだろう。あるいはそのまま押し合いに持ち込めたとしても】

――――――――――――――あッは!

【次の瞬間には、右足の裏をまっすぐ押し出してくるような前蹴りが飛んでくる。狙いは胴体、おなかの辺り】
【少なくとも何か練り込まれた技術、その一端として繰り出される「技」ではなかった。けれど】
【やはり並外れた怪力を持っているのであれば――直撃するのはあまりに危険だと悟らせる。だけどそれだけだ】
【所詮は乱雑に繰り出される喧嘩殺法にすぎない。回避だって簡単、だろうが――受け止めるには少し躊躇する】
【それくらいの勢いを持っている。少なくともノーガードで受けるなら、内臓のひとつやふたつは潰せるだろうが】
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 21:06:33.03 ID:eglF3Egj0
>>105


 ご忠告ありがとう、"ギンちゃん"。……ふふ、かわいいからこっちで呼ばせてもらおうかな。
 わたしが蒐めるのは怪異そのものじゃなく、それが生み出す物語……"怪異譚"の方なんだ。ああ、ちょっと難しいかな?


【顔も知らない誰かの死に、本気で涙を流せるほどに善くはなく。本気で怒りを覚えるには、少しばかり博愛が過ぎる】
【ギンコを恨み切ることも、動かない死体を悼み切ることもなく、ただただ、この物語を"蒐める"ことをいま決めた】
【せめて、そのヒトが"ここで死んだ"という物語だけは、この手に収めて持ち帰る。……たとえ、ギンコを殺しても】
【これがイストの性格であり、習性だ。そしてその悲しげな表情のまま、平気で刀を振るえるのもまた――】


あぁ――――重っもいな!?


【ガギギ、と。白く光る銀と赤く光る銀とが、その軌跡の交錯点で火花と共に停止した。受け止められる、そこまでは想定内】
【だが、三つの刃が拮抗していたのはほんの一瞬であって。――イストは「そうではない」側の存在なのだった】
【押し負けると見るや悪態をひとつ。即座に刀を引き寄せると体の前に晒しながら、後方に跳んだ】

【……予想の百倍ぐらい強い蹴撃、衝撃が刀越しに両腕を貫いて】
【よほど硬いのか刀身には傷一つなかったけれど、イストは痛みを堪えながら数メートル吹き飛ぶだろう。距離が、空いた】


 可愛い顔して怪力無双とは、恐ろしい子だなまったく。
 ――ならわたしも、少しばかり本質をさらけ出すとしよう!


【わざと跳んだのが功を奏して、刀を握れなくなるほどのダメージにはならかった。なのにイストは、刀を振るうことはなく】
【右手の刀はそのままに、なぜかなにも持っていない左手を振りかざすのだ。――桜の花弁じみた光の粒子は、"異能"の証】
【その袖口から突如、路地裏の闇を切り裂いて、淡く藤色に発光する奇怪な"蔓"が伸び上がるのが見えるはずだ】

【イストは勢いよく左腕を振り下ろす。つまりこれは――空を切ってしなる"蔓の鞭"による打撃攻撃!】
【蔓はそこそこ太く、強度も普通の植物よりは上だ。普通の女性の力だと、素手で引き千切るにはやや力不足だろう】
【……この場に普通の女性などひとりもいない、というのはさておき。この一撃、普通の鞭で打たれるのと変わりない威力はある】


【ただまあ、所詮はただの蔓だ。引き千切るのはともかく、刃物があるなら簡単に斬れる。しかし、ひとつ注意点を挙げるなら――】
【イストの作り出す植物はどれも、焼き払おうと思えば千度を超える熱量が必要になるほどの、異常なまでの"耐熱性"を誇っている点か】
【ただの植物と思って火で焼き払おうすると痛い目を見るかもしれない。――そもそも火なんて持ってないなら、関係のない話だが】
107 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/04/25(木) 21:22:48.37 ID:W2213yFJ0
>>106

うんっ、難しーい! だからもっとシンプルに行こーヨ、――イストさんの首を刎ねられたらギンちゃんの勝ち、
イストさんがギンちゃんの物語を持って帰れたら――イストさんの勝ち! あっはは、負けないぞー、お……

【離れる距離を詰めるためにギンコも駆ける――蹴りつけた地面に小さな小さなクレーター、のような罅割れ】
【そこまで観察できるのであれば、こと「脚力」に至っては殊更に異常であることを伝えるのだろう】
【そのままの勢いで愚直に突っ込もうとする。しかし――発光、異能の気配を察知するならば】
【急停止。すればまた踏み締める地面に罅が入り、笑うのをやめて――蔓を真っ向から睨みつけるのだろう】

ああっははハ――――おっきくて、ふっとぉい、こんなの受けたらひとたまりもないネエ!

【だけどそれも一瞬のこと。可笑しくて仕方ないみたいに笑う、そうしたらまた地を蹴りつけて――罅が一層細かくなる】
【ギンコは跳んだ。真上に、そして――轟とうなる風切り音を伴って伸びる蔓の上に、着地しようとするだろう】
【そのままその上を走る、走る、伝って、――接近が叶ったのなら「投げる」。右手に持っていた獲物を】
【見れば両手の獲物は、それぞれの柄同士が細いワイヤーのようなもので繋がれていた。ならば】
【鎖鎌のように扱うこともできるのだろう。事実ギンコはそうしていて、投げたそれが当たらなければ】
【即座に左の手首を返して、元の位置に戻そうとするのだろう。だけど、先程の蹴りと同じ。直線的で単純な攻撃で】

【――加えて。きっと彼女は頭がよくなかった。だからこの、光る蔓が「なにか」他の効力を持っている、とか】
【たとえば炸裂するとか――そういったことはまったく考えていないのだろう。だからこうして堂々と足場にしたし】
【それにきっと過信していた。自身の自慢の脚力ならば、何かあってもすぐ逃げられる。楽しげな顔がそう言っていた】
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 21:57:46.45 ID:eglF3Egj0
>>107


 ああ、そうさせてもらうとしよう。
 ……喋りすぎるのはわたしの悪い癖でね。ここからは、こっちで語り合うとしようか……!


【跳ねるギンコの声を受け止めたなら、にまりと笑ってそう返す。彼女の言う通り、シンプルに戦闘用の思考だけが頭を支配して】
【然らばここまでのやり取りで、その怪力の――恐ろしき"脚力"の怪異にこの蒐集家が気づかないわけもなかった】
【距離を取れたはいいけれど、あの調子では一瞬で詰められる。さてどうしたものか、暢気に考えていたその矢先に、】


 ――――うわ!?
 くっ、思ったより器用なことをするなあ……!
 

【ひゅう、と思わず口笛が衝いて出た。冷や汗も一緒にだ。蔓を踏み台に走ってくるギンコに抱く感情は、心の底からの驚嘆と恐怖】
【蔓はイストの意思で自在に動かせるものの、残念ながらそこには、ヒトの重みを乗せたまま空中に静止できるほどの力はない】
【畢竟、蔦はギンコの体重に負けて踏み潰される形となるだろう。――となれば、蔓と左手で接続されたイストの体は、がくりと前へ引かれ】

【そこへ飛来してくる刃。防御の体勢は明らかに取れていなかったけれど――】
【あえて、イストは踏ん張るのをやめた。引かれる力のまま思いっきり転倒したのである。「ぶべっ」と情けない悲鳴が地面と頭との間に響いた】


 いてて……!
 やるね。だけど"その上"は――わたしの領域だよ、ギンちゃん。


【無様に地面に這いつくばるその醜態の結果……投げられた刃はイストの背中の上を通過し、ギンコの元へ帰ることとなるだろうか】
【同時に素早く起き上がり、脚に力を込めて跳躍。ギンコが距離を詰めてきていたこともあり、彼我の距離はすぐに剣の間合いへ】
【そして、怪しげな笑みと共に――イストの異能が発動する。ギンコの踏み付けているまさにその部分の蔓が、桜色の粒子を発し】

【――蔓がそこで、新しく四本に"分岐"する。すべてが一気に伸び上がって、ギンコの全身に巻き付こうとするだろう】
【加えて、この"蔓の拘束"の発動、タイミングとしては投げた刃がギンコの手元に戻るのとほとんど同時、といったところ】
【刃で切り払うのが間に合うか。捕まったとして、拘束する力は"普通の人間"なら脱出に相当手こずるだろうというぐらい】
【もちろん蔓の強度は相変わらずなので、たとえ捕まったとしてもギンコの力なら引きちぎれはするだろうが、】


 ――はッ!!


【そのために、一瞬でも隙が生じるのは必定。拘束が成ろうと成るまいと同じとばかり、"その瞬間"と重なるように、イストは刀を突き出す!】
【右肩へ向けて放たれるは、素早い刺突攻撃だ。先程の斬撃より膂力と体重を大きく乗せた、本気で"突き貫く"ための鋭い一撃――】
109 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/04/25(木) 22:25:34.69 ID:W2213yFJ0
>>108

【刃が空ぶることは想定内。だから涼しい顔して右手でぱしりとキャッチする、の、だが】
【――続く事象までは読めていなかった。見開かれるすみれ色、宙に投げ出される身体】
【まずいと思った瞬間にはもう捉えられていた。その瞬間にはもう、イストの刃が、届かんとするのだから】

――――――――――≪パーティ≫!!

【なれば此方も出し惜しみナシ、ということ。ギンコもまた異能を行使する――単純な術だった】
【目の届く範囲に、そう大きくはない障壁を生み出す。それだけのこと、しかも強度もそれほどではなく】
【突きを受ければばりんと音を立てて破片を撒き散らすのだろう、それ自体にさしたる殺傷能力はないけれど】

【そうして役目を終えた/終えさせられた障壁は、けれど立派に働いたのだろう。突きの衝撃を幾らか殺して】
【蔓を引き千切るだけの余裕を作り、しかし逃げ果せるには叶わず――貫かれるまでは行かずとも】
【浅い膚を引き裂さかれ、その内から鮮やかな赤色を撒き散らすところまでは「届く」。――地を蹴りつける音、】
【今度はギンコが後ろへ飛び退く番だった。相変わらず見開いた眼には、痛覚で刺激された興奮の色が混じり】

………………っはは、やーるぅ。ワリとイタいよ、コレ……
じゃあ何倍返しに、させて、もーらおっかなあ…………!

【またしても地を蹴るのだろう。距離を詰めるため――かと思いきや、今度は、軌道が違う】
【斜め上に跳んだ。逃げ場のないはずの空中へ? しかも、切っ先は未だイストに向けていない】
【ならばこれは何かしらの準備運動であることをわからせるのだろう。宙をはためくコートの裾が、まるで羽のようで】
【だけど落下に任せて毛先を上に向ける銀髪部分だけがウサギの耳のよう。いずれにせよ、人間の動きではない】
【そのまま、いくらか宙に滞在するのだろう。それを隙と見るかどうかはイストの自由だった、獣はそれを、待ち構えるから】
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 22:51:15.86 ID:eglF3Egj0
>>109

【渾身の銀閃が煌いて、――結果的には彼女に血を流させることには成功した】
【しかしイストの意識は既にそこにはない。掌に残る硝子を砕いたような手応え、眼の前で展開されたそれを、】


 障壁の展開、か。なるほど、これがキミの異能というわけだね。
 興味深い……ふふ、楽しくなってきた!


【思わず、真っ先に楽しんでしまうのが、この女の性だった。砕ける障壁のその一欠片すら"蒐集"せんと、しかとその光景を見届け】
【そうしたならばようやく、ギンコに意識を向けた。反撃が来るかと思いきや後方へ退かんとするその矮躯を、熱に浮かされた瞳が追う】
【夜天に揺れる銀の髪に、月の兎を幻視した。愛らしくも美しくもあり、――油断すれば狩り殺される。その殺気を感じ取って、】

【――ならば輝く月輪ごと、わたしはキミを撃ち墜とす。瞬時に、そう考えた】


 さあ、来なさい。――勝負と行こうか!


【刀を一度、鞘に収める。桜色が舞う。先ほどまで展開していた蔓がするりと袖口に戻れば、次に現れるのは――太い"木の枝"だ】
【べきべきと痛々しくも逞しい成長音を響かせ、その木は肥大し、弧を描き、さらに細く編み込まれた蔓がそれを繋ぐ】
【―― 一瞬のうちに出来上がるのは、木製の"弓と矢"であった。その器用な錬成術は、"植物"でさえあれば変幻自在に操れる、そういうわけか】

【石の鏃を持つ矢を番え――"石"?――、弓を強く強く引き絞る。落下速度を計算して、狙うは彼女の腹の芯】
【そして――ギンコの目が良ければ。ほんの少しだけ、矢の一部であの桜色の粒子が散ったのが見えたかもしれないが、】

【――――手を離すだけの行為に、一秒と時間はかからなかった】
【目にも留まらぬ速度で、太い木の矢が風を切る。狙いは正確、刺されば血みどろ。――闇を穿ったこの一射を、ギンコはどう受け止めるのか】
111 : ◆S6ROLCWdjI [sage saga]:2019/04/25(木) 23:09:00.10 ID:W2213yFJ0
>>110

【あなたが楽しいならわたしも楽しい。そうとでも言いたげに、ギラつく笑顔が顔に固定され】
【空に月でも浮かんでいればよかったのに。そうすればそれを背負って、もっと美しく/狂おしくなれたのに】
【いずれにせよギンコと言う女は、楽しむのだろう。命の遣り取り、一方的に奪うのとはまた別の感触】

あっははははァ――――器用だネエイストさん、でもそれじゃダァメ。

【「あたしを撃ち落としたいんなら、もっと速くないと」 ――――転瞬。またもや障壁が展開される、】
【しかしそれは間違いなく防御のためにされたものではないと、わかる。だって射線上に作られていない】
【二枚、三枚。それはギンコの落ちゆく先、落下の軌道上に作られて――――「ばりん」!】

【砕ける音。それはギンコが踏み締めた衝撃で割れてしまった障壁の悲鳴。であるなら、】
【この瞬間、これらの障壁は彼女の「足場」となるために作られたものであったことを明かす。「ばりん!」】
【何枚も何枚も作っては砕いてゆく音。足場にしては飛び移り、足場にしては飛び移り――自由自在に】
【メチャクチャな軌道を描いてギンコは「駆け降りて」くるのだろう。結論としては、受け止めない。避ける】
【放たれた一射とすれ違うようにして――目まぐるしい速度でウサギは地上へ向かってゆく。そうして】

――――――――――首ィ、頂戴なッ!!!

【イストに向かって宙から駆け降りると同時、交差した両腕を解き放つようにして――左右から同時の斬撃】
【まるでハサミで切り落とすような軌道で。イストの首、まっすぐにそこだけを、狙うのだろう】
【夜闇を文字通り切り裂いて二重の銀色が走る。全力を掛けた攻撃、であれば速度も凄まじいもので】

【――――だからこそその後に残る隙は、大きなものになるのだろう。そうして彼女はまた、何も考えていなかった】
【どうして「石」が発生したか。そしてそこで咲き誇った桜色の意味。どうでもいいと思えるくらいには、血が滾っていたから】
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage saga]:2019/04/25(木) 23:45:17.23 ID:eglF3Egj0
>>111

【最初の感想は――しまった、とか、やばい、とかそういうものではなく。そういう使い方もあるのね、と。感心の方が強いのが、この女らしかった】
【障壁を足場に兎が跳ねる。空を駆けた一矢は容易くかわされた。間髪入れず、必殺の一撃が首筋に迫る。その、致命の瞬間に――】


 はぁ……。
 いや参ったよ。ギンちゃん、キミ強いなあ。


【――――そう、実を云うならば】
【それをすべて、イストは想定していた。足場にしたのは予想外だったが、障壁で防がれて失敗するぐらいのことは考えていた】
【蒐集家などと容易く自称はするが、それは即ち、ギンコのような凄まじい脅威とも数多くやり合ってきた――そういうことに他ならず】
【ひどく、戦い慣れている。格上に打ちのめされることに慣れている。なればこそ、この女のやることは、常に徹底していた】
【手札を隠し、最後の最後で背後から騙し討つ。――まさに今が、その時だった】


 わたしはキミほど速くないし、力も弱い。
 ただね――身持ちの"硬さ"には、結構自信があったりして。


【左右から迫る致死の刃、まずその右手側を受け止めていたのが、先ほど作った弓である】
【当然、ただの木などで受けられるはずもなく。これまでと違う千種色の粒子を見たならば、弓が――まるごと"石化"している】
【そして右から迫るもう一刃。――間違いなく首に直撃している。ならば何故、この憎らしい顔を貼り付けた首は落ちていないのか】
【首筋が、弓のそれとまったく同じように"石化"しているからだ。いや、剛力ゆえに藍鉄色の岩に刃は食い込み、そこから血が滲んではいるが】
【――生命を絶つ為に必要な血管には、ギリギリ届いていない。イストにとっても、ここは限界の賭けだった】

【"植物"だけではない。ここまで隠してきたもう一つ、すなわち"石化"の異能】
【ここでそれを使ったのは――必殺の後の大きな隙に。滾る熱狂からくるその油断に。滑り込ませる手を用意していたからだ】


 "咲きて"


【呟くのと、納めた刀に再び手を置くのが同時。――"居合"の構え】
【だがそれは、本命であり嘘でもあった。ギンコは気づけるか、抜刀せんとするその姿だけを警戒していたのなら、危うい】


 ―――― "惑彩" !


【斯くして、居合の一閃が放たれるだろう。逆袈裟に、鋭く速く。それは確かに驚異的だ。だがこの呟きは――居合の技に付けた名ではない】
【ギンコの背後の天空。先ほど放たれた矢が、空中で桜色に輝く。矢のなかに埋め込んで込めておいた"種子"が、主に呼号に応じて芽吹いて、】

【――――矢を"苗床"にして。凄まじい勢いで伸び上がった鋭い木の枝が、背後からギンコに襲いかかる!】
【前方からは居合。後方からは枝木の槍。どちらも皮膚を引き裂き臓腑に達する威力はある。その渾身の"挟撃"の結果は――――】
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