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穂乃果「バトル・ロワイヤル」
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20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/10(火) 18:42:27.99 ID:tcWjjeLVO
>>19
こんなところまで見に来て頂けるとは……!
ありがとうございます、相変わらず亀みたいな更新速度ですがよろしくお願いします
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/12(木) 20:17:23.46 ID:pTiCDHH50
「千歌ちゃん」
曜が空いていた左手を千歌の手に重ね合わせる。
「私も言ったよ、千歌ちゃんには人は殺せないって」
「そんなことっ……!」
「いいんだよ、千歌ちゃんはそんなこと考えなくていい。見張りを代わってくれるだけでも充分助かってる。私が──Aqoursを勝たせるから」
曜はそこで言葉を切り、その話はそれでおしまいと言わんばかりに、すくっと立ち上がった。
「銃は私が持ってるから。何かあったらすぐに起こして」
眠りにつくつもりは全くなかった。ただ千歌を納得させるために、体を横たえるだけにするつもりだった。
「……っ」
曜が千歌の横を通り過ぎる間、千歌は唇を噛み締めていた。
千歌を守る。曜はそれだけを考えていたため、当の千歌がどんな思いでいるのかまでは考えが至らずにいた。
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/14(土) 23:01:35.89 ID:888Vj+naO
02:27 松浦果南
東側の拠点エリアから北へおよそ百数十メートル。端末の表示上では東側の拠点エリアから一コマ分上の位置の森の中で。
草木が揺れる音の後に、微かな光線が踊っている。
「はっ……はっ……………っっ…」
果南は涙で滲む視界を必死に凝らして、懐中電灯の光の先を追い続けていた。
鞠莉の最期の姿は目に焼きつき、最期の言葉は頭の中に響き続けている。
鞠莉は逃げろと言った。言葉の通り、一度は集落を離れかけた果南を連れ戻したのは、突如聞こえた爆発音だった。
瞬間、果南の頭に浮かんだのは─ダイヤの姿だった。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/18(水) 17:56:21.97 ID:fzlLlSi8O
鞠莉はもう……いない。
その上ダイヤまで失ってしまったら、私はきっとどうにかなってしまう。曜が言っていた通り、私がダイヤの側にいても何も変わらないどころか、邪魔になるだけかもしれない。それでも……
「嫌だよ……見捨てられないよ……逃げてなんかいられないよ…!」
果南は爆発音があった場所を中心に、集落から距離を取って円を描くように捜索を続けていた。
爆発音の後には何も音は聞こえてこなかった。ダイヤの武器は銃だけだ。μ’sのメンバーが使った武器が爆弾なら、そこで一度戦闘は途切れたはずだ。戦闘が継続しているなら、銃声が聞こえてくるはずだから──
果南はそこまで考えて動いていた訳ではなかった。ただ、ダイヤに会いたいという気持ちだけが彼女を突き動かしていた。
「……!!」
捜索を続ける果南の動きが突然止まった。
視界が悪い事で鋭敏になった嗅覚が、不快な臭いを嗅ぎ取った。
微かに漂ってくるそれは、ここ数時間で何度も経験した─血の臭いだった。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/18(水) 20:04:14.19 ID:iLatUWQm0
果南は驚きを感じつつも、臭いのする方向へ脚を踏み出していた。それほど恐怖を感じなくなっている自分には気づいていないようだった。
歩を進める度に血の臭いはどんどん増していく。別の誰かである可能性も頭をよぎったが、確かめずにはいられなかった。
数分の後─果南の持つ懐中電灯の光が地面に倒れ伏したそれを暗闇の中に浮かび上がらせた。
「…………ダイヤ……?」
発した声が疑問形になったのは、それがダイヤである確信が持てなかったからだった。それほどまでにその人物の身体の傷は深く─
「ダイヤっ!!」
果南はすぐさまその人物の傍らに膝をつき、顔を確認した。見知った顔だった。顔の半分ほどが赤黒い血に覆われていても、見間違えるはずがない。ダイヤだった。
果南がもう一度名前を呼ぶ前に、誰かを呼ぼうとするかのように、ぴくりとダイヤの口元が動いた。
生きてる──ダイヤは…まだ生きてる……!
果南は溢れ出しそうになった涙をぬぐい、言った。
「たすける……絶対助けるからっ!」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/22(日) 15:05:53.73 ID:pzuc7hlIO
02:30 桜内梨子
島の西側、波打ち際に程近い林の中。
そこでは微かに波の音が聞こえ、潮の香りが漂ってくる。今そこにいる人物にはそんな事を気に留める余裕はなかったけれど。
Aqoursの桜内梨子は膝を折ってうずくまり、両手で耳を塞いでいた。ゲーム開始から唯一、敵にも味方にも遭遇していないのは彼女だけだった。
最初の内は他のメンバーを探そうと動いていた彼女だったが、時間を置いて聞こえてくる不吉な音が、一人で行動する勇気を奪っていった。
今はただ、暗闇の中に一人、震えている事しかできない。禁止エリアの確認も、周囲への警戒も、自分がしなければならない以上、眠りにつく事も出来ない。
(光が欲しい……)
何度思ったことだろう。
光が欲しかった。この暗闇を切り裂き、救いをもたらしてくれる眩い光が。
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/22(日) 15:06:32.35 ID:pzuc7hlIO
02:30 桜内梨子島の西側、波打ち際に程近い林の中。そこでは微かに波の音が聞こえ、潮の香りが漂ってくる。今そこにいる人物にはそんな事を気に留める余裕はなかったけれど。Aqoursの桜内梨子は膝を折ってうずくまり、両手で耳を塞いでいた。ゲーム開始から唯一、敵にも味方にも遭遇していないのは彼女だけだった。最初の内は他のメンバーを探そうと動いていた彼女だったが、時間を置いて聞こえてくる不吉な音が、一人で行動する勇気を奪っていった。今はただ、暗闇の中に一人、震えている事しかできない。禁止エリアの確認も、周囲への警戒も、自分がしなければならない以上、眠りにつく事も出来ない。(光が欲しい……)何度思ったことだろう。光が欲しかった。この暗闇を切り裂き、救いをもたらしてくれる眩い光が。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/22(日) 17:51:32.95 ID:39i7n7dnO
(誰か……誰か……!)
梨子は心の中で思い続ける。自分をここから救い出してくれる誰かの存在を。
「光をもたらすのはあなたですよ、リリー」
梨子はぱっと顔を上げた。今、確かに聞こえた。私に語りかける声が。
「あなたがこの戦いに終止符を打ち、世に光をもたらすのです。それこそがあなたの役割、あなたの使命です。光の戦士リリー」
(光の戦士…? あなたは…? あなたは誰なんですか?)
「リリー、リリー。勇気を奮い立たせて悪を打ち砕くのです。あなたこそが…あなたこそが…」
梨子は一人、ぶつぶつと呟き続けている。
極度の緊張と疲労が少しずつ、確実に梨子の精神を蝕んでいた。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/22(日) 19:20:14.03 ID:+5/eQ/lw0
ひぇっ……
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/24(火) 23:59:43.51 ID:wUcPngVl0
02:48 平安名すみれ
「ねぇ、花陽はLiella!の中だと誰推しなの?」
すみれは前方に向けていた目をぱっと横に移した。突然問われた花陽は面食らったのか、目を丸くし、困ったように少しだけ眉を下げた。
「え、えっと……」
「遠慮しなくていいのよ、正直に言ってみなさい。あ、もしかして私?」
すみれはふふっと笑い、肩を揺らした。すみれの笑顔につられたのか、花陽は少しだけ笑顔を浮かべると、ぽつぽつと話しだす。
「……選べないです、皆さん好きなので。箱推しってことになるんでしょうか」
「何よもう、当たり障りのない回答ねー」
すみれが大げさに唇を尖らせると、花陽はまた困ったように眉を下げた。
二人の間に、僅かな沈黙が訪れる。
「……ああそうだ。私さ、妹がいるんだけど─」
すみれは無理やりにでもその沈黙を埋めようと、再び話しだした。花陽と二人で見張りに入ってから、何度も繰り返していることだった。
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/26(木) 19:22:52.25 ID:k86je4zLO
四季とルビィが北の灯台へ来てから、二人ずつ見張りに立とうと提案したのはすみれだった。異論を唱える者はなかった。四季の姿を見て、誰もが一人で見張りに立つ事が恐ろしくなっていた。
何があったのか。それはまだ四季から聞き出せてはいない。話が出来るような状態ではなかったからだ。今、四季の事はメイに任せている。
「妹がいるって言うと、羨ましがられたりする事もあるんだけどね。姉っていう立場、たまに重かったりするのよね」
すみれは花陽と会話をしようと言葉を紡いでいる訳ではなかった。ただただ、何となく思いついた言葉をそのまま吐き出しているだけだ。
そうしていないと、すぐに四季のこぼした言葉に考えが向かってしまうから。
『恋先輩が──』
血に染まった四季の両脚が頭に浮かぶ。
あの血は……恋は、まさか……
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/27(金) 00:00:46.58 ID:dREhkkVH0
「昔は親からお姉ちゃんなんだから、とか言われて欲しい物我慢させられた事もあるし、損な役回りだったりするのよね」
すみれは上の空でつらつらと言葉を並べていく。頭の中には恋の姿が浮かんでは消えていく。
「まぁそんな事言っても、やっぱり妹の事は可愛いもんだから。あの子に何かあったら私が飛んでいくけどね」
独り言なのか何なのか、喋っている本人にもよく分かっていない。ただ、恋の事を考えないようにするために脈絡もなく話を続けているだけだ。
「……すみれさん」
ずっと黙って話を聞いていた花陽が、そこで初めて口を挟んだ。
花陽はすみれの手を取り、勇気づけるように両手で包み込んだ。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/29(日) 17:14:03.98 ID:AJjdyzDkO
「私も……怖いです、すごく不安です。でも、ここにいる皆さんのおかげで何とか耐えられてます」
花陽はすみれの目をまっすぐに見つめて言った。
「すみれさん、言ってくれました。ここにいる人達は絶対に、殺……争い合ったりなんてしないようにしようって。協力してここから出る方法を考えようって。すごく─勇気づけられました」
「頼りにならないと思いますけど、私も一緒ですから。何があっても、皆で…何とかしましょう」
花陽の言葉を聞いて、すみれは自分が宣言した事を思い出した。
そうだ─何があっても、私達は殺し合いなんてしない。協力してここから出ると、そう誓ったんだ。
「……ありがとう、花陽」
しっかりしなさい、平安名すみれ。私が動揺していたら、周りの子達まで不安になる。
諦める訳にはいかない。何があっても。何が起きていたとしても。
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/09/29(日) 22:35:21.72 ID:EYKiNCMRO
02:55 米女メイ
灯台の中には花陽達が食事を取った部屋の他に幾つかの小部屋が存在し、綺麗とは言えないまでも、必要最低限の調度類が備えつけられていた。
その一室、木製のベッドの縁に腰掛けた四季は、暗く、生気が削がれた目を向いに座るメイへ向けた。
「……『これ』が始まってから私が経験してきた事は、今ので全部」
四季は全てをメイに話した。μ’sのメンバーと出会ってから起きた事の全て。大怪我を負った絢瀬絵里に血液を提供した事。その怪我を負わせたのが可可である事を知った事。それを知ったμ’sのメンバーに殺されかけた事。逃げ出した先で、恋が何者かに撃たれた事。思い出せる事の全てを。
聞き終えたメイはしばし沈黙した後、ぽつりと呟いた。
「なんだよ………それ……」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2024/10/15(火) 18:39:55.17 ID:hP2orqG6O
ずっと探してたSSがこんなところで見つかるとは。
続き読みたいです!
更新まってます!
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2024/10/20(日) 22:42:12.96 ID:HweMPSfB0
こっちでやってるの知らんかった
続き期待ったら期待よ!
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/21(月) 01:15:17.88 ID:MJY+hQQp0
光の戦士枠で不覚にも草
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/21(月) 11:11:31.11 ID:X9TbBR02o
初投稿の頃から見てたから続き嬉しい
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/22(火) 11:45:53.69 ID:3z+KFSmPO
>>34-37
レス感謝です、励みになります!
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/24(木) 11:49:08.86 ID:oMTuYALqO
『協力し合おうとしているのは私達だけじゃないはずだ』
数時間前の自分の言葉がメイの頭に浮かぶ。
続いてμ’sとAqoursのメンバー全員の顔、顔、顔、そこに、合同ライブの知らせを受けて可可と手を取り合って喜んだ時の記憶が混ざり込み、次に浮かんできたのはピアノの鍵盤に向かう自分と恋の姿、メイの隣にいる恋が目を細めてこちらに笑いかけ─
「……っ」
メイはぐちゃぐちゃになった思考を振り払うようにぎゅっと目を閉じた。一呼吸置いて再び目を開けて、四季を見つめる。
「四季は…大丈夫なんだよな。そこ以外、怪我してないんだよな?」
メイは包帯が巻かれた四季の左腕に目をやった。話にあった、絵里に輸血するために使った左腕。
四季はメイが言及した事について少し驚いたのか、僅かに目を見開いた後、おずおずと頷いた。
「……そっか」
メイは立ち上がり、四季の方へ歩き出した。戸惑っている本人をよそに、そのまま四季の顔を自分の胸へと抱き寄せる。
「怖かったよな。辛かったよな」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/24(木) 17:11:01.29 ID:PRpO4vOiO
メイの胸に顔をうずめたまま、四季の両手がメイの背へ回った。くぐもった声が聞こえ、やがてそれが嗚咽に変わっていく。
「可可先輩も、恋先輩も、まだ会えていない皆も─今、どうしているかは分からないけど」
四季を抱きしめながら、メイが呟いた。
「私はここにいるよ。私も四季も、まだ生きてるよ」
四季の泣き声が徐々に大きくなっていく。それが止むまで、メイは四季の事を抱きしめ続けた。
(そうだ、まだ生きてる。私たちはまだ──)
部屋の外、扉の前から僅かに床が軋む音が響いた。メイも四季もそれには気がつくことはなかった。
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/24(木) 17:21:08.68 ID:Fh16SnzfO
03:04 黒澤ルビィ
ルビィは出来るだけ音を立てないようその場から離れるつもりだったが、年季を感じさせる変色した木製の床はルビィの思いを裏切った。
ぎしっ、という音が響き、飛び上がりそうになるのを何とか堪える。
そのまま数秒間、じっと身を縮こまらせていたが、幸い、中の二人が扉の外を確認しに来る事はなく、ほっと胸を撫で下ろした。
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/26(土) 23:36:41.31 ID:yhi4WOuR0
今度こそ音を立てないよう、慎重に脚を移動させる。目指すのは通路の突き当たり、扉が開け放たれた部屋だ。
足を忍ばせて歩くうち、ルビィの脳裏に姉のアイスを盗み食いした記憶が蘇った。あの時も見つからないよう夜中にこっそり起き出して、こうして歩いたものだった。緊張感は比べものにならないけれど。
扉が開け放たれた部屋に、滑り込ませるように身体を入れる。開閉の際に音が出る事を危惧して開けたままにしておいたのはやはり正解だったようだ。何事もなかったように、ゆっくりと扉を閉める。
中では善子がベッドに身を横たえて、小さく寝息を立てていた。
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/29(火) 15:00:30.94 ID:f7zEkbY6O
血塗れの四季の姿を見た衝撃よりルビィに会えた安心感が勝ったのか、善子は眠りにつく事が出来たようだった。つまりは─ルビィとは正反対だった。
ルビィはそっと善子の側に腰を下ろした。目を閉じて、先ほど盗み聞いた話を思い返す。
μ’s、Liella!……話に出てくる人達は姉と何度も語り合った名前だった。怪我をしたという絢瀬絵里は姉が大好きなスクールアイドルだ。その怪我を負わせたという唐可可の事だってルビィは知っている。四季達を殺そうとしたμ’sのメンバーの事も─
「……ぅゅっ…」
ルビィは声を上げて泣き出しそうになるのを何とか堪えた。
どうしても信じられなかった。自分の大好きなスクールアイドルがそんな事をするはずはないと。
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/29(火) 17:58:24.06 ID:L3y+UHGKO
「………ん…………ルビィ…?」
善子が僅かに身じろぎをした後ルビィの姿を認め、ゆっくりと身体を起こした。
「……泣いてるの?」
善子は俯いたままのルビィを抱き寄せて頭を撫でる。
「大丈夫、大丈夫よ。きっと何とかなるから…」
善子の体温を意識しながら、ルビィは自分の頭の中にある恐ろしい考えが形作られていくのを感じた。
さっきの話は─本当に…本当なんだろうか?
もしもあの血が、誰かを襲って付いた物だとしたら──?
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/29(火) 22:19:36.71 ID:70RexKYd0
03:26 嵐千砂都
千砂都はイメージトレーニングは得意だった。ダンスを踊る前、身体が思い通りに動くイメージを固めるのは大切だと教わっていたからだ。
今、自分が行なっているイメージトレーニングも非常に大切なものだと断言出来る。もしも想像通りにこなせなければ、そこで全てが終わりになってしまうかもしれないのだから。
もう一度、最初からやってみよう。
呼吸を整える、目の前の目標をよく見る、両手でしっかりと構える、無心で、右手の指先に力を込める──
「千砂都先輩…」
何百回目かのイメージトレーニングは途中で終わり、千砂都は声のした方へ顔を向けた。夏美が怖いものでも見るかのような引き攣った顔でこちらを見ている。
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/29(火) 22:44:40.49 ID:70RexKYd0
「交代、の時間ですの…」
夏美はほとんど卑屈といってもいいくらいの表情で千砂都に告げた。
もうそんな時間か、と千砂都は思った。イメージトレーニングに没頭しすぎて時間の感覚が狂っていたようだった。
「じゃあお願いしようかな。大丈夫だと思うけど、逃げ出そうとしたらすぐ撃つんだよ?」
千砂都がクロスボウを手渡すと、夏美は「ひっ」と声を上げた後、こくこくと頷いた。
無理だろうな、と千砂都は思った。しかし、人質(人生でこんな単語を使う事になるとは夢にも思わなかった)は逃げないだろうという確信があったので、気にはしなかった。
念のため──仮眠を取る前に、もう一度釘を刺しておく事にしよう。
千砂都は腰からダガーナイフを抜き出し、冷たく光る抜き身の刃を地面に横たわる人質の首筋にぴたりと当てた。
死んだように身動き一つしていなかった花丸の身体が、びくっと反応した。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/29(火) 23:04:00.54 ID:70RexKYd0
「花丸ちゃん、もう一回言うね。勝手に動いたり、声を上げたりしたらダメだからね?」
ささやくように伝えると、かたかたと奥歯が触れ合う音が聞こえてきた。返答としてはそれで充分だった。
千砂都は満足そうに微笑むと、ナイフを鞘に収めた。その様子を見る夏美は、千砂都の姿がどんどん遠くに離れていくような錯覚を覚えていた。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/29(火) 23:44:35.49 ID:X5BkKlhd0
文体が原作っぽくてイイネ
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/30(水) 08:02:18.94 ID:l+ESoA/N0
>>48
めっちゃ嬉しいお言葉です、ありがとうございます!
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/10/31(木) 01:31:22.67 ID:XaP8baMK0
03:38 桜小路きな子
ここに来てどれくらい経ったろう?
きな子はふと作業をする手を止めた。左手で握っていた細長い枝と、右手に持ったナタ(可可の武器だ、付着していた血は洗い流した)を傍らに置いた。周囲には細かい木屑と木片が散らばり、まるで彫刻家が傑作を生み出そうと苦心した後のようだった。
可可と出会い、ここ─南側の拠点エリアに着いてから現在に至るまでの事を、きな子は思い返した。
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/10(日) 23:03:31.03 ID:9tHw0lZno
期待
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/11/20(水) 21:42:29.40 ID:2ooPd97V0
まだかな
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2024/12/22(日) 13:12:38.71 ID:bA3xK+rbo
楽しみ
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2024/12/24(火) 21:57:30.59 ID:ex24dinQO
いつまでも待ってます
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2024/12/24(火) 22:05:53.77 ID:ex24dinQO
いつまでも待ってます
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