【安価コンマ】オリウマ娘と共に Part2

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160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/09(月) 09:35:45.68 ID:OlHaJCdp0
ウマ娘の力で抱き付かれれたら逃げられる訳が無いししょうがない
親公認も同然だしあとはパピヨンが踏み出すだけ!
161 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/12(木) 01:26:38.10 ID:QmwUSRYI0
>>158
とても仲良し!意識しなければずーっと密着してる!

>>159,160
流石におっぱいとか太ももとか押し付けられたら柔らかいので意識はしちゃいます。それはそれとしてお兄さんは担当ウマ娘に恋愛的な好きとかそういう感情はあんま抱かない……。
パピヨン踏み出せー!意識して自分から手くらい繋げー!

こんばんは、本日夜やる気です。よろしくお願いいたします。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/12(木) 01:59:30.81 ID:g/Ehk85Po
了解
163 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/12(木) 21:33:37.94 ID:QmwUSRYI0
夏合宿初日。ドバイを勝利したからこれからは楽勝だ――なんて考えている担当トレーナーがいるわけなく。今年は今年で組みなおしたパピヨン用のトレーニングメニューを試す機会である。

パピヨン「変態、ロリコン!」

夏の暑さは根性を鍛え。灼熱の砂浜は足腰の筋力を磨き、体力を増強させる。来月のエルムステークスで連覇を決めるためしっかりとトレーニングを……。

パピヨン「ちょっと聞いてるのキモお兄さん!返事しないとたづなさんとか理事長さんとか先生に言いつけるから!」

『はぁ…………』

……あの日パピヨンの家で事件があってからというもの、何かとバカにされている。それだけショッキングな出来ことだったんだろうが……それにしても、長い。

今までなら長くても一週間くらいで機嫌を治してくれているものだが、今回はもうそれ以上の時間が経過している。まあ、自分みたいな男が女の子と一緒に寝てしまったんだ、嫌われてもしょうがないか……。

『……どうしたパピヨン』

パピヨン「熱い!日傘持って!パラソル!トレセン学園に置かせられないようなロリコンのお兄さんをトレーナーにしてあげてるんだから感謝してよ!」

『キミなぁ』

自分悪いとはいえ流石に怒るぞ……?いや、まあ……熱中症とか怖いし全然日傘持ちくらいはするけど。

――前途多難の夏合宿。どこかで謝りたいところだが、パピヨンがこの調子ではなぁ……。トレーニングはちゃんとやってくれると嬉しいんだが……。

パピヨン「…………」
164 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/12(木) 21:39:28.64 ID:QmwUSRYI0
シニア夏合宿!一週目!:安価下2まで

1 パピヨン「お兄さんの顔が見れない……!」
2 『なんだか併走トレーニングのお願いが沢山来るな』
3 自由安価
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/12(木) 22:49:01.39 ID:g/Ehk85Po
1
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/12(木) 22:50:30.32 ID:SPc8LAGp0
2
167 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/13(金) 00:14:55.03 ID:45MaiGob0
パピヨン「……〜〜っっ!!!」

――宿舎に戻って早々、アタシはお布団にダイブをして枕に顔を埋める。もがもがもがと足をバタバタ、手をバタバタ動かして、この行き場のない感情を外に放出させる。

パピヨン「お兄さんの顔が見れないよぉ……!」

そう、お兄さんが寝ているアタシをお布団に連れ込んだあの日から……アタシはお兄さんの顔が全然見れなくなっていた。

お兄さんの顔を見るたびに、あの日のことを思い出しちゃって顔が一瞬でヒートアップ。心臓が爆発しそうになっちゃって、その思いをトレーニングを必死にこなして忘れようとするだけ。

パピヨン「…………う"ぅ"う"う"〜〜!!!」

お兄さんがアタシを布団に連れ込んだ――ってことは、もちろん……そ、その、そういう気があるってこと……だよね!?

ま、まあついにようやくお兄さんがアタシの魅力に気づいてくれたってこと!あとちょっと待てばお兄さんの方からモジモジしながら……告白してくるはず!きっとそう!

………………ほ、ほんとうにぃ?

パピヨン「ふっ、ふーっ…………お、落ち着かないと。ほ、本当にお兄さんがこ、ここ告白とかしてきちゃったらぁ……!」

――ダメ、頭おかしくなっちゃいそう。こうやってすぐに沸騰しちゃうから、最近お兄さんからすぐ離れないと!ってなっちゃうし……お、お兄さんに変に思われてないよね?

……でも本当にお兄さんがアタシのこと好きだったら……。

パピヨン「…………えへへぇ……あっ、ゃ、違う違う違う〜〜〜っっっ!!!」

脚をバタバタ、手をモガモガ。枕に頭を何度も何度も頭突きする。



パピヨン「……明日も明後日もトレーニング。そして札幌でレース……お兄さんとずっと一緒に」

今のアタシに耐えられるか?いや、いや……とてもじゃないけど無理!

顔を見るとあの日のお兄さんの寝顔を思い出しちゃう。ちょっと近くになるとなんだかとっても良い匂いがするお兄さん。男の人なんだな〜……ってなる、体付き……。

パピヨン「…………ぅ」

だ、誰かに相談しようかなぁ……ぅ、でもあの色ボケ恋愛三人娘には相談したくない……!けど……なぁ……!

パピヨン「去年はアタシがネタにする方だったのにぃ〜〜〜!!!」

絶対バカにされる!あー!うわー!んもー!!!


恋愛よわよわドバイウマ娘、誰かに相談する:安価直下
1 ほぼ付き合ってそうな幼馴染がいるライバルウマ娘に相談
2 親友の弟からアタックされまくってる同室のウマ娘に相談
3 同年代サッカー少年と夢を追いかけあってるウマ娘に電話
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/13(金) 00:33:29.59 ID:EDY+T4UDO
2
169 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/13(金) 00:53:47.74 ID:45MaiGob0
とりあえず今日はこれで終わりにしたいと思います。お疲れさまでした。

一つしかできなくて申し訳ないです。眠い。
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/13(金) 18:41:06.52 ID:2fiUxAKVo
卑しか杯でも同期から頭一つ抜けてないですかねえ、パピヨン
171 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/14(土) 00:25:36.11 ID:pdQNYH3+0
シルフィー「はぁ、つまり……その。パピヨンさんのお友達が……?」

パピヨン「そ、そう!アタシの友達がね!?好きな人の顔も見れなくて声聞くとドキドキしちゃってすぐに逃げちゃうんだって!」

ど、どうすればいいかなぁ!と、アタシはシルフィーに尋ねる。

……こ、これならばれないよね?た、多分……。

シルフィー「…………ふふっ」

パピヨン「!?」

わ、笑った!シルフィーが笑った!?ば、バレた!?

シルフィー「ご、ごめんなさい……!ふふふっ……!んっ、こほん。切り替えます」

笑いを止めるように咳ばらいを一回。そしてシルフィーはアタシの方をじーっと見つめてきた。

シルフィー「……とりあえずそのお友達に、素直になるようにおっしゃったどうですか?」

パピヨン「はっ!?す、素直とか……い、意味わかんないけど!?その子はずっと素直ですけど!」

シルフィー「……どうですかね?」

あー!あー!ニヤニヤ笑ってる!や、やっぱこれバレてる……!?

シルフィー「でも、そうですねぇ……パピヨンさん――じゃなくて、そのお友達の悩みなんでしたら、私も力になりたいですけど……」

パピヨン「!!!」

シルフィー「そんなにもその好きな人にぞっこんだと、色々と大変ですよね。きっと」

パピヨン「そうそうそう!そうそうそう!」

シルフィー「…………えぇっと」
172 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/14(土) 00:37:33.71 ID:pdQNYH3+0
グリーンシルフィーアドバイス:安価直下

1 ……え、えぇ〜っとぉ……。
2 ……思い切って告白しちゃえばいいんじゃないですかね。
3 自由安価



今日はこれで終わりです。おやすみなさい。

色ボケ卑しかウマ娘、大好きです。
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/14(土) 01:46:14.37 ID:L61Mcfbmo
2
おつ
色ボケはなんぼあってもいいですからね
174 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/15(日) 00:26:10.40 ID:elBstn6D0
シルフィー「……思い切って告白しちゃえばいいんじゃないですかね?」

パピヨン「はっ、はぁ!?」

い、いきなり何言ってんの!?バ、バカじゃないの!?

パピヨン「で、出来るわけないじゃん!も、もし、こ、断られちゃったら、ど、どうすんの!?」

シルフィー「お、落ち着いて、落ち着いてくださいパピヨンさん!でも、ほら、そのパピヨンさん……のお友達も、ずっとそんな気持ちだと辛いんじゃないですか?」

パピヨン「うっ……」

シルフィー「ですから思い切って告白してしまって、その気持ちに区切りをつけるんですよ!」

パピヨン「…………じゃあシルフィーはおんなじ気持ちになったら、弟くんに告白するの?」

シルフィー「…………それは、そのぅ」

パピヨン「やんないんじゃん!だから無理無理!ぜーったいに無理!!!」

シルフィー「ぱ、パピヨンさん待って!これは違うんです!!!」

ヒシアマ「――うるさいねアンタたち!アンタたちだけの部屋じゃないんだから静かにしな!」

――わーわーぎゃーぎゃー叫んでたらヒシアマの姐さんに怒られちゃった……。撤退撤退!

175 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/15(日) 00:41:38.49 ID:elBstn6D0
パピヨン「む、むむ、むぅ……」

――告白、告白、こくはく……。いや、いやでも……お兄さんアタシのこと大好きだし……!告白すれば全然……!

でも断られたら……!む、むり!考えられない!断られたら一生お兄さんと一緒にいれない!やだやだやだ!

パピヨン「……うぅ」

告白して気持ちに一区切り、なんて分かってる、分かってるけどさぁ……!

一区切りしすぎてお兄さんとの今の関係も区切っちゃう。嬉しくて心臓が飛び出ちゃうか、悲しくて心臓が潰れちゃうか。

告白なんて一か百か。失敗したら……アタシはもう、もう、戻れない。

パピヨン「…………そ、そもそもお兄さんがアタシにあんなことしたから、お兄さんがあんなに優しくしてくれたから……アタシは、アタシは」

アタシがずっとずっと悩んでたことを、あんなに解きほぐしてくれたお兄さんのことをアタシが好きにならないわけなくない!?アタシがお兄さんのこと好きなのも、全部全部お兄さんのせい!あの変態ロリコン脚フェチお兄さんが、アタシにあんな……あんなさぁ……!

パピヨン「…………お兄さんの方から告白してくれないかなぁ」

そうしたら、アタシが悩む必要もないのに……てか一緒に寝たんだしもう秒読みじゃない!?そうでしょ!絶対に!……ぜ、絶対に……絶対……。

パピヨン「……んもぉおおおおおおお〜〜〜っっっ!!!」

ダメダメダメ!全部悪い方に考えちゃう!ア、アタシ、アタシ告白……告白するのぉ……?し、しるふぃ……。


お兄さんに何か行動を……:安価直下
1 ……と、とりあえず保留でぇ……
2 お兄さんから告白待ち!というか告白しやすくしてあげよう!
3 ………………こ、告白
4 『……パピヨン?』
5 自由安価
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/15(日) 01:47:16.99 ID:fVDRSL0DO
3
177 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/15(日) 02:54:31.50 ID:elBstn6D0
パピヨン「………………っ」

心臓のバクバクが抑えきれない、最悪な展開を考えるだけでも涙があふれてしまいそうで、何かが崩れてしまいそうで。

だけど、だけど――一度自覚しちゃったこの気持ちを隠してこのままお兄さんと一緒に過ごすだなんて――アタシには無理だし、そもそも隠せない。

お兄さんが好き。お兄さんの顔も、声も、体も、性格も、匂いも、厳しいところも優しいところも、甘いところもチョロいところも全部全部――好きで好きでたまらない。

パピヨン「……告白は……うん、まだ……まだ止めよう」

夏合宿中に告白は、ちょっと他の人に見られたりしたら怖いし……レース前に振られたりしたら、メンタルボロボロで多分やばいし……。

――――札幌、そこでなら二人きりだし。多分……大丈夫なはず。

パピヨン「……ぅ、ぅうぅうぅ〜〜〜……っ!!!」

――覚悟を決めろアタシ!お兄さんはアタシのこと大好き!だからきっと――悪い方向には進まない。

担当契約解除とか、お兄さんがアタシのこと嫌いになるとか。そんなことには……ならない。ここではっきりと、断言する。

……普段通りのアタシで行け。我儘で自分勝手、だから自分の気持ちにも素直でありたいし、お兄さんの気持ちも――欲しい。アタシのものにしたい。

パピヨン「どれもこれも全部お兄さんが悪いんだからね……!」

担当ウマ娘のこの気持ちくらい受け止めてよねお兄さん……!ゆ、勇気、振り絞るんだからなぁ……!

――責任取ってよね。アタシをこんなにさせた責任を。

178 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/15(日) 03:02:01.54 ID:elBstn6D0
今日はこれだけ、こんな時間にしかできないので全然進まなくて申し訳ないです。お疲れさまでした、おやすみなさい。

女子中学生の担当ウマ娘をこんな気持ちにさせるお兄さん許せねぇですよ……。

そろそろ時間に余裕出てくるんじゃないかなって感じがするので、やる時間早めるかもです。22時とか……。明日はできないですけど。
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/15(日) 04:27:30.64 ID:5N/PyEZ5o
乙でした
お兄さん罪なお方だ…… 
180 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/20(金) 02:50:01.54 ID:cI5zJ7Tp0
『……なんだか併走トレーニングの依頼が沢山来るな』

シルヴァーパピヨンと併走をしたい、一緒に走らせてほしいというお願いが他のトレーナー陣、ウマ娘から殺到している。

理由は明白である。パピヨンの頭に戴冠されたドバイの冠。そんなウマ娘が誕生したとなれば、併走トレーニングで力を付けたい――まあ、その気持ちも理解できる。

『トレーナーの自分としては受けてもいいが、最優先はパピヨンの――あ、いた。おーいパピヨン!』

パピヨン「ひぅぁ!?」

そう考えていたところ、ちょうどいいタイミングでパピヨンが視界に映る。いつも通り声をかけてみると、パピヨンはビクっ!と大きく体を震わせて、変な声を出して、こちらを向いた。

……今絶対に見つかりたくない相手に見つかってしまった、そんな表情だった。

パピヨン「おっ……お、お兄さんじゃーん。ど、どしたの〜?あ、アタシいま忙しいんだけど〜……」

『いや、忙しいって……まあいいか。実はキミと併走したいっていうお願いが沢山来ていてな、もしパピヨンが大丈夫そうなら受けようと思うんだが――』

パピヨン「へ、へいそぉ?ふ、ふーん……ま、まあ、別にいいけど……」

……目が合わない。それになんだか顔が赤いし、声が震えている。

おかしい……夏合宿初日はこんな様子ではなかったはずだ。もしや……。

『悪いパピヨン、ちょっと額触るぞ』

パピヨン「ぴゃっ!?」

額に手のひらをくっつけて熱を測る。ひどい熱……とは言わないが、ちょっと熱いかもしれない。まさか熱中症……!?

『悪いパピヨン!すぐに日陰で休むぞ!』

パピヨン「ぁ、へっ?!ちょ、お、お兄さん急展開過ぎるって……!!ひあ!?」

パピヨンを持ち上げて急いで宿舎に戻る。担当ウマ娘の体調も管理出来ないなんて、トレーナーとして失格だ……!

181 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/20(金) 03:00:44.78 ID:cI5zJ7Tp0
パピヨン「………………」

『ほら、お水。あとこれで首筋を冷たくして』

宿舎の保健室でパピヨンにスポドリと保冷剤を渡す。気まずそうにしながらスポドリと自分を見比べてから、パピヨンはちびちびと水分補給をし始めた。

……どうやら大事にはなっていないらしい。意識もはっきりしているし、本当に熱があっただけのようだ。

『……悪かった、キミの体調にも気づけなくて』

パピヨン「い、いやっ。お、お兄さんは悪くないし……そ、そもそも、別に熱中症とかじゃ――」

「……キミは優しいな。けど今回は自分の責任だ、何かあってからじゃ手遅れだしな」

思えば自分はパピヨンの我儘に甘えていたのかもしれない。何か違和感があればすべて言ってくれる、嫌なことも不調も全部教えてくれるはずだと――今までのパピヨンへの信頼が、自分の甘えになってしまっていたのだ。

……最初から気付いている。パピヨンは責任感がとても強くて、頑張り屋なウマ娘だ――だから、きっとパピヨンはこうやって抱えてしまうこともあると。

「キミのことをすべて分かってこそのトレーナーだ。だから今日はゆっくり休んでくれ」

パピヨン「い、いやいや!い、いーよいーよ!ほんと、ちょっと……あ、暑かっただけだから!それよりほら、なんか併走とか言ってなかった?じゃあやろうよ併走!アタシ張り切っちゃつめたぁ!?」

頬っぺたにもう一つ持っていた保冷剤を押し当てる。

「ダメだ、今日はしっかりと休もう。やる気があるのは嬉しいが……今日は自分の言うことを聞いてくれないか?」

パピヨン「…………ぅ、しょ、しょうがないなぁ……!アタシがお兄さんの我儘を聞いてあげるとか、滅茶苦茶レアだからね?」

「はは、ありがとうパピヨン――じゃあキミの我儘を一つかなえてあげるよ。うん、何でも言ってくれ」

パピヨン「――」

……まずい、またパピヨンの顔が固まってどんどん赤くなってきた!
182 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/20(金) 03:14:24.69 ID:cI5zJ7Tp0
パピヨンの我儘。:自由安価直下

これだけです。次更新土日予定です。おやすみなさい。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/20(金) 11:04:28.64 ID:oRf3qgTG0
ずっと私を見ていて
184 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:18:21.13 ID:vFuKj4tL0
パピヨン「…………じゃあ、じゃあさ」

――ずっとアタシだけ見ていて。今日はずっと、一緒にいて。

と、パピヨンは恥ずかしそうに照れくさそうに、小さな声で言った。

『……それだけでいいのか?』

パピヨン「は、はぁ!?お、お兄さんなにそれ!あ、アタシ結構勇気出したんだからね!?」

『あ、いや悪い。そんなバカにするつもりじゃなかったんだが……いや、なんでもない』

もっとキミらしい我儘を言われると考えていたところに、ずっとキミだけを見ていてほしいなんて言われるとは思わなかった。だから思わずそんなことを言ってしまった。

……ずいぶんと可愛らしい我儘だった。というか、そんなことをわざわざ言わなくても自分はそのつもりだった

パピヨン「…………なに、その眼」

『何でもないよ、ほら今日は休んで、明日からまた調子を見て頑張ろう』

ジトーっとした目を向ける彼女に、にこりと微笑み返す。

外からセミのうるさい鳴き声がジージーと聞こえてくる。エアコンの効いたこの保健室、パピヨンと自分だけがいる場所で、目を離さないように見つめている。

パピヨン「…………そ、そんなに見ないで。ほんと、キモいから」

『……キミが見ていてほしいといったんだろう』

パピヨン「う、うるさいなぁ!ほら!休んでほしいならなんか面白い話して!あと飲み物とアイス!」

『……はいはい』

彼女の熱が収まるまで、保健室のベッドの上に寝っ転がった彼女と何かをおしゃべりし続けた。

…………いつの間にかスヤスヤと眠ってしまった彼女からも、目を離さなかった。

185 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:21:49.98 ID:vFuKj4tL0
パピヨン「――――ふぁぁあ。ん、ねむ……」

『おはよう、パピヨン』

パピヨン「ん、おはようおにーさん…………んぇぁ!?」

寝ぼけ眼をこすりながら体を起こすパピヨンにおはようの挨拶をすると、彼女は普通に返事をした後、勢いよく自分から距離を取った。

パピヨン「な、なんでいるの!?!?」

『……キミ、寝る前のことあんまり覚えないタイプだろう。キミが言ったんだろ、ずっとアタシを見ていてって』

パピヨン「い、いや覚えてるけど!?だ、だから、いやでも、ずっと寝てたアタシを見てるとか……」

『いや、約束したんだから当然だろう。キミがそうして欲しいと言ったんだから」

もし急に具合が悪くなりだしたりしたら大変だ、そう伝えると彼女は信じられない表情でこちらを見た後、何かあきらめたように溜息を吐いた。

『ど、どうした!?』

パピヨン「いや、別に〜……お兄さんさ、ほんっと……アタシのこと好きすぎない?」

『……?そりゃそうだろ、キミのトレーナーなんだから』

パピヨン「…………はいはい。んーお腹空いた!お兄さんご飯!」

『ああ、今持ってくるよ。宿舎の方にお願いしてキミ用のご飯をちょっと作ってもらったんだ』

立ち上がって保健室から出ようとすると、「待って!」とパピヨンに呼び止められる。

パピヨン「アタシから目を離さないで!まだこれ続いてるから!」

『いや、だが……ああ、じゃあ一緒に行こうかパピヨン。もう立ち上がれるか?」

パピヨン「ん、余裕余裕〜」

……そしてパピヨンと一緒に部屋を出た。道中、彼女の尻尾がすりすりと自分の足に絡みついてきたのが、くすぐったくて何とも言えなかった。
186 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:39:56.13 ID:vFuKj4tL0
パピヨン「あ"〜……!お兄さん暑い!疲れた!」

『……まだ練習を始めたばかりなんだが』

パピヨン「あー!そんなこといって!ほら水分とスイカ!」

――あの日以降、なんだかパピヨンに遠慮がなくなった。

パピヨン「何その眼。ほらほら、アタシの体調が悪くならないようにしっかり見てしっかり休ませてね〜?」

『キミなぁ、そんな調子で次のレース――』

パピヨン「じゃあ、次のレースアタシ負けちゃう?」

『…………』

パピヨン「……えへ、正直なお兄さん。負けるとこなんて想像しないし、そもそも勝たせるようにするのがお兄さんだもんね?』

大丈夫大丈夫、ほんとちょっと休んだら練習頑張るから、ね?

『……はあ、分かってるよ。ほら、スイカと飲み物』

パピヨン「ん、ありがとー♪」

――エルムステークスまであと少し、追い込みの時期だ!
187 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/23(月) 23:51:00.43 ID:vFuKj4tL0
シニア夏合宿!エルムステークス前:安価直下

1 ライムと夜の砂浜練習
2 自由安価



土日できなくてごめんなさい。今日はこれだけです。

お疲れさまでした。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/24(火) 00:46:20.10 ID:Omoyrs+DO
1
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/24(火) 12:45:28.23 ID:Ik9SHPLVO
そろそろパピヨンの話終わりそうですけど終わったら次のウマ娘に行く感じですか?
それともこれでスレおしまいですか?
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/24(火) 16:59:17.74 ID:/JpF1c5Xo
関係線が少しは進展した…のか?
おつー
191 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:05:26.10 ID:4sxshuEX0
ライム「すみません、急にこんな時間に呼び出したりしてしまって……」

パピヨン「ほんとだよー。アタシそろそろ寝る準備とかしようかなーって考えてたのに」

夜の砂浜はなんだかとてもジメーっとしていて気持ちが悪かった。というのにアタシを呼び出した張本人であるステラライムは申し訳なさそうにしながら、けどなんだか嬉しそうにしながらアタシの方を向いていた。

ライム「……実は断られちゃうかもと思ったんですけど、来てくれてよかったです。本当にすみません、けど……ありがとうございます。パピヨンさん」

パピヨン「絶対にすみませんって思ってる顔じゃないでしょ。はぁ……んま、来ちゃったアタシもアタシなんだけどさ」

ライム「パピヨンさん、優しいですもんね!」

パピヨン「帰る、暑いし」

ライム「わー!わーっ!?ま、待ってくださいパピヨンさん!折角ですから!折角会いに来てくれたんですから!ちょっと走りましょうよ!パピヨンさん!」

帰る!このウマ娘アタシになら何してもいいとか考えてる!

もう寝る!!!
192 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:06:01.66 ID:4sxshuEX0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

ライム「ふっ、ふっ……はぁ。やっぱりパピヨンさんは優しいですね」

パピヨン「うっさい。静かに走って」

あまりにも五月蠅かったから少しだけライムと走ることにした、といっても寝る前の簡単な運動みたいなもので、トレーニングとは言えないものだった。

真横から嬉しそうなライムの視線を感じる……ええい見るな見るな!

ライム「ふふっ……はは」

パピヨン「…………」

海の音、風の音、砂浜を駆ける音。

この音に加えてお互いの呼吸が聞こえてくる。何も喋ってはいないはずなのに、なんだか言葉を交わすよりも相手のことを知ることができている気がする。

――思えば、ドバイに行くちょっと前の日もこんな風に走ったっけ。いや、あの時はもっと本番って感じだったっけ。

ライム「………………ドバイのレースを見たとき、私。実はちょっとだけ泣いちゃったんですよ」

パピヨン「へっ?」

急に何を言い出すんだろうこの人は、しかしライムは続けて話す。

ライム「あまりにも綺麗で、あまりにも清々しくて、あまりにも……楽しそうで。あの日の貴女の走りを見た瞬間、体全身にゾクゾクと鳥肌が立って、なぜだか涙が零れてしまって」

と言ってすぐにその涙は止まったんです。そのおかげでシルフィーさんにはバレませんでしたけど……と、ライムは語る。

……少し、速くなる。

ライム「よく美術品を見たり、オーケストラを聞いて泣いてしまうというじゃないですか。多分、あの時のパピヨンさんの走りは……それと同じなんです」

パピヨン「な、なになに?いきなりそんな……ほ、褒めてるんだよね?」

勿論です!本当にすごくて、感動して――。

193 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:06:44.39 ID:4sxshuEX0


ライム「――――そんな貴方を追い越せたらどれだけ気持ちがいいでしょうか、パピヨンさん」


パピヨン「…………!」

――また、速くなる。負けないように、こちらも脚を速くする。

ライム「ドバイの地で勝利を勝ち取ったパピヨンさん、私たちの世代で最強のダートウマ娘なんて言われるようになったパピヨンさん、そしてそんな姿を魔王とか銀の蝶とか言われるパピヨンさん」

貴女は強い、そんなの誰だって知っています。私も――当然知っています。だからこそ、だからこそ私は……!

ライム「最高のライバルとして、"世代最強のダートウマ娘"として、私は貴方を――ねじ伏せたい……!」

――速くなる。どんどんどんどん、加速する……!準備運動なわけがない、もうこれは模擬レースの域に――!

全身全霊で脚を動かす、前を往くライムに負けないよう必死に走る!

――――笑い声が、聞こえてくる。

ライム「パピヨンさん――私待っていますよ!チャンピオンズカップで!私はあの日のリベンジを!パピヨンさんは――いえ、言わないでも大丈夫ですよね!」

パピヨン「――――っ!ほんっと!ライムってそういうとこあるよね!!!ライムにリベンジしたいことなんて――こっちは数えきれないくらいあるのに!」

良いよ、乗った!チャンピオンズカップ――どっちが最強か!決めようよライム!

こっちは約束してんだ!最強になって待ち受けるって――だったら一番の障壁を、今ここで――打ち壊す!

ライム「ああ、やっぱりパピヨンさんは――ほんっとうに!最高ですね!私、この世代で、貴女と一緒に走ることができて――本当に良かったです!」

まるで星のように眩しい笑顔――そう感じさせる声だった。

真夏の夜、砂浜に輝く一番星。ずっとずっとアタシを照らしてくれた、眩い星を――アタシは、集大成として撃ち落さなければならない。

ああ、なんて最高なんだろう。と、アタシも嬉しくなって、笑った。
194 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:07:43.14 ID:4sxshuEX0



――――最終目標が12月後半"チャンピオンズカップ"に決定した!


195 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/25(水) 01:12:49.49 ID:4sxshuEX0
>>189
悩み中です。最近あんまりできてないので、新しい子続けられるかなぁと思う気持ちとそれはそれとして新しい子を書きたい気持ちがあります。


今日はこれだけ、安価なしです。おやすみなさい。

次、エルムステークスです。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/25(水) 01:59:05.21 ID:LMnxh7fio
乙乙
これこれ、この純粋にパピヨンを倒すと向かってきてくれるライムも好きだ!
実馬でも2強どちらが好きか論争起きそう
197 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:16:05.06 ID:OA3BgWtT0
『去年に比べるとずいぶん人が多いな……』

去年以上の観客数、その理由はといえば……もちろんパピヨンだよなぁ。

エルムステークス連覇を賭けたレース、そしてなによりドバイゴールデンシャヒーン優勝後の初国内レース。一目その走りを見ておきたいと札幌まで足を運ぶ観客が多かった。

――グッズやらなにやらもシルヴァーパピヨンのものが多かった。まさかここまで影響力があるとは、想像していなかった……とは言えないが、それにしても多い。

『……大丈夫かパピヨン?国内での復帰戦、観客数も注目も今までよりも――パピヨン?』

パピヨン「…………へっ!??!な、なに!?」

振り向いてパピヨンを見ると、なんだか心ここにあらず、という感じだった。

自分が声をかけるまで意識がレースとは違う別のどこかに行っていたような……なんだかレースの緊張とは違った緊張もしていそうだし。

『……何を考えているのか自分には分からないが、今はレースに集中だパピヨン。体調もコンディションもばっちりだろう?』

パピヨン「あ、あったりまえでしょ!今のアタシが観客の人数とか、注目だとか人気とかでグラグラ揺さぶられるウマ娘じゃないの、お兄さんも知ってるでしょ?」

と、堂々と胸を張って応える。

――なら大丈夫だ。夏合宿中の練習でも、脚や走りに問題なし。あとはただ――そんなパピヨンのことを信じて待つだけだ。

『よし、じゃあ行ってこいパピヨン!――そして、楽しく走ってこい!』

パピヨン「おっけ、任せてよ!ダート最強のアタシの走りを――手のひらクルクルの観客たちに見せつけてやるから」
198 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:17:22.07 ID:OA3BgWtT0
――――G3エルムステークス。一番人気シルヴァーパピヨン。

いつも以上の視線。観客席からも、この地下バ道からも、そしてもちろんパドックの上からも。

アタシをマークするウマ娘も多いけど――まあ、変わらない。

パピヨン「………………っし」

ちょっと控室では別のこと考えてたけど……それはちょっと置いといて。レースに気持ちを切り替える。

――全部全部圧倒して、アタシが逃げ切る。

ただそれだけ、それだけで十分。

パピヨン「…………見ててねお兄さん」
199 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:20:42.15 ID:OA3BgWtT0
エルムステークス、結果は?:コンマ直下
1-3 圧勝圧勝!
4-7 一着だ連覇だ!
8-9 ずこーっ
0 おおっと
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/27(金) 00:46:36.26 ID:NWnnZdado
ぬん
201 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/27(金) 00:51:15.61 ID:OA3BgWtT0
結果!連覇だ連覇!

おやすみなさい。
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/27(金) 00:53:31.40 ID:AP0pNWU9o
おつ
流石にライバルが、憧れてくれる者がいる中でここは落とせねえよなぁ!
連覇おめでとうパピヨン!
203 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:45:31.38 ID:zwE3mDPH0
――シルヴァーパピヨン先頭だ!逃げる逃げる!ドバイで見せたその走りは日本国内でも健在か!後続とは4バ身ノリード!

――シルヴァーパピヨン逃げ切ったー!そして2着に8番、3着に4番!シルヴァーパピヨンエルムステークス見事連覇!

――――わぁあああああああ!っと、歓声が上がる。

パピヨン「ふぅううう……はぁ。ほんっと、何この歓声」

――けど悪い気はしない。ずっとずっと応援してくれてるファンがいることを知ってるから、アタシの走りを待ってるライバルがいるから。

そっか、そっか……うん。だったら――。

パピヨン「――――ほんっと!バカみたいだよねー!そんな嬉しそうに声出して!ずっとずっと!アタシのことなんて見向きもしなかったくせに!」

アタシはずっと凄かったの!デビューしてから今に至るまで!気持ちよく走ってるだけなのに――こんな風に盛り上がって!

パピヨン「――けどね!」

そんなバカみたいなファンの皆が、ミーハーですぐに手のひら返して見向きもしなくなるようなファンの皆だけど――――アタシのことを応援してくれて、ありがとー!!!


アタシは勝手に走るから!皆も自分勝手にこれからも応援してね!


――精いっぱいの、感謝の気持ち。ちょっとは、伝えてもいいよね。

また湧き上がる歓声。より一層高ぶった感情がぶわーっとこっちに向かってくる。うわっ、うわ〜……!

パピヨン「……気持ちわるーい、ぞ!」

204 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:49:04.77 ID:zwE3mDPH0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『お疲れ様パピヨン。エルムステークス連覇おめで――!』

パピヨン「あー疲れた!お兄さんマッサージ!あと尻尾の手入れ!」

控室に戻って来て早々、パピヨンはそのままソファに直行し、脚をこちら向けてくる。

……揉めということだろうか。

パピヨン「は〜……あ。いやっ、ちがっ……ご、ごめんごめん!冗談!」

『えっ』

まあ脚のマッサージくらいトレーナーとしての務めだろうと手を伸ばすと、パピヨンはやってしまった!といった表情で脚を引っ込めてしまった。

……自分から脚を差し出したのに?

『……だ、大丈夫か?その、脚の調子とか』

パピヨン「だ、大丈夫大丈夫!んもー全然平気!あ、尻尾の手入れは……お、お願いするけど。脚はいいや!』

『そ、そうか。それならいいんだが……』

205 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:49:38.62 ID:zwE3mDPH0
――――あ、危ない!!!いつもの感じでマッサージとか頼んじゃった!

今日はだめ!今日はだめ!ア、アタシは今日覚悟してきてるんだから……!脚のマッサージいきなりとか、ちょっと印象悪いよね、うん。そうそう。

パピヨン「………………」

『なあパピヨン。くすぐったかったり変な感じがしたりしないか?』

――今日一晩ホテルに泊って、明日帰る!だからその間に――――!

『――パピヨン?』

パピヨン「ふひゃぁあ!?」

『わっ!ご、ごめんパピヨン!そんなに驚くとは……』

み、耳元で喋らないで!し、心臓飛び出ちゃうかと思った……!

パピヨン「お、驚かせないでよおお兄さん!あ、も、もー!尻尾もっと手入れして!ほらほら、ウイニングライブまでまだ時間あるから!」

――ど、ドキドキしてるのバレてないよね?アタシいつも通りだよね?

――――お、落ち着けアタシ、落ち着け。だ、大丈夫、大丈夫だから……!
206 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/09/30(月) 22:57:03.26 ID:zwE3mDPH0
ウイニングライブ終了後!パピヨンと【貴方】は――。:安価直下

1 ホテル
2 夏祭り
3 その他(自由安価)
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/30(月) 23:26:05.81 ID:Is5uIwvDO
2
208 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 00:34:18.44 ID:nqvApMSj0
『そういえば』

――アタシの尻尾の手入れを続けながら、お兄さんは口を開いた。

『実は今日近くでお祭りやってるみたいなんだ、もしパピヨンが良かったら……今日一緒に行かないか?』

パピヨン「えっ!?」

な、夏祭り!?お、お兄さんから誘って!?

……で、デート!?こ、これそういうことだよね!?

パピヨン「え、え〜?もしかしてお兄さん、それデートのつもり〜?」

『こら、揶揄うなパピヨン。ほら、去年楽しみにしてたじゃないか夏祭り、だからちょっと調べてな』

パピヨン「ぷ、ぷぷぷ!お兄さんってば、そんなにアタシと夏祭り満喫したいんだ〜……しょうがないなぁ、お兄さんの思い出に残る楽しいデートにしようね?」

『……ああそうだな。楽しい夏祭りにしよう』

――――ど、どうしようどうしよう!えっ、えっ!夏祭りデート……!や、やっぱりお兄さんアタシのこと好きすぎでしょ……!

うっ、うぅ〜〜〜!!!絶対あの色ボケ三姉妹に影響されてる……!アタシの頭の中こんなにピンク色になるとかぁ……!

パピヨン「…………❤」

『……尻尾がすごい揺れてるな』

な、夏祭りで告白とか……も、もしかしてお兄さんからしてくれるとか!?お兄さんもそのつもりとか!?

……『そういえば』

――アタシの尻尾の手入れを続けながら、お兄さんは口を開いた。

『実は今日近くでお祭りやってるみたいなんだ、もしパピヨンが良かったら……今日一緒に行かないか?』

パピヨン「えっ!?」

な、夏祭り!?お、お兄さんから誘って!?

……で、デート!?こ、これそういうことだよね!?

パピヨン「え、え〜?もしかしてお兄さん、それデートのつもり〜?」

『こら、揶揄うなパピヨン。ほら、去年楽しみにしてたじゃないか夏祭り、だからちょっと調べてな』

パピヨン「ぷ、ぷぷぷ!お兄さんってば、そんなにアタシと夏祭り満喫したいんだ〜……しょうがないなぁ、お兄さんの思い出に残る楽しいデートにしようね?」

『……ああそうだな。楽しい夏祭りにしよう』

――――ど、どうしようどうしよう!えっ、えっ!夏祭りデート……!や、やっぱりお兄さんアタシのこと好きすぎでしょ……!

うっ、うぅ〜〜〜!!!絶対あの色ボケ三姉妹に影響されてる……!アタシの頭の中こんなにピンク色になるとかぁ……!

パピヨン「……えへ❤」

『……尻尾がすごい揺れてるな』

な、夏祭りで告白とか……も、もしかしてお兄さんからしてくれるとか!?お兄さんもそのつもりとか!?

……❤
209 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 00:36:13.14 ID:nqvApMSj0
おやすみなさい。お疲れさまでした。

なんか桃色脳内過ぎるなぁって思いましたが、素直になったらパピヨンはこうなるかって思いながら書いてます。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/01(火) 01:02:56.53 ID:nRqXYkvGo
おつおつー
ウマ娘の脳内はいくら桃色でもよい、みんな知ってるね
211 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 22:13:11.17 ID:nqvApMSj0
パピヨン「ちょっとお兄さん!早く早く!」

『こらこら走るな走るな』

――ウイニングライブが終わってからすぐにパピヨンと一緒に夏祭りが行われる場所へと向かう。

全く、本来ならレース直後は休ませるべきなんだろうが――パピヨンのあんな顔を見てしまったら、行くしかないだろう。もともと行くつもりではあったが……せめて次の日とかの予定だった。

尻尾がフリフリと揺れる、年相応の声を響かせ嬉しそうに駆けていく少女。目を輝かせ、普段の悪態をついた言動なんて忘れてしまうくらい純粋な担当ウマ娘。

『……もうそんなに喜んでくれたのなら、こっちとしても嬉しいよ』

パピヨン「お兄さんだって!こんなかわいいアタシとデートとか〜、一生分の幸せでしょ〜?」

いつもの煽り……のようであるが、全然こちらをバカにしたような意図を感じない。

……本当に嬉しいんだな、今日夏祭りに来れたことが。

「お、おいあれ。もしかしてエルムステークスの……」

「あ!ほんとだ、えっサインとか――」

『むっ……』

――――ざわざわと周りの人が騒ぎ始める。そりゃ、今日重賞を連覇したばかりのウマ娘、海外G1を制したこともあって話題性としても抜群。そんな彼女が何の対策もしないでこんな場所に居たら、こうもなる。

パピヨン「あ、どうも〜。もしかしてアタシの――きゃっ!?あ、ちょっと、お兄さん……!?」

どうしたものかと一瞬考えて――パピヨンの手を力強く握りしめ、その場から逃げるように人ごみの中に入っていった。

212 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 22:14:02.95 ID:nqvApMSj0
パピヨン「…………ねえ、これは?」

人から隠れるように木の裏に隠れ、パピヨンに先ほど購入したそれを渡す。

『ほら、お面だよ。これでちょっと今日はお忍びといこう』

可愛らしいくデフォルメされた狐のお面。それをパピヨンにつけてもらって、少しでも顔を隠そうという魂胆だ。

……まあ、それでもバレるときはバレそうだが……なにもしないよりかはマシだろう。

パピヨン「……お兄さんありがと。でもさ、別にアタシは気にしてないよ?ほら、アタシファンサとかも全然できるようになったし――」

『キミにとってデートなんだろう?今日は』

パピヨン「えっ」

デートだというなら、二人きりで楽しむべきだろう。キミと自分だけで楽しむべきで……そのつもりでパピヨンも夏祭りに来たはずだ。

『だったら他の人には邪魔されない方が良いと思ったんだが……ダメだったか?』

パピヨン「――――」

……まずい、固まってしまった。もしかして気持ち悪いことをしてしまったか……どれもこれも勝手にパピヨンの気持ちを考えてみたいな風に言って、自分勝手だったか――。

パピヨン「ぷぷ……♪うわ、うわ〜……!お兄さんそれ……凄いね?」

『パピヨン?』

パピヨン「うん、アタシもおんなじ気持ち!じゃ、早く行こ!」

今度はパピヨンに手を引かれ、夏祭りに戻っていく。

狐のお面に隠れた彼女の顔が、なんだかとっても嬉しそうに、輝いていた。
213 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 22:21:33.57 ID:nqvApMSj0
夏祭り!何かイベント――:自由安価直下
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/01(火) 22:41:35.04 ID:QaoxPPXH0
射的とか金魚救いとかなんでもいいけど真剣な顔→悔しがる顔→無邪気に喜ぶ顔のコンボに思わず見惚れる
215 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/01(火) 23:56:52.07 ID:nqvApMSj0
ごめんなさい終わりです。おやすみなさい……。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/02(水) 01:27:10.53 ID:ZER39uvGo
おつおつ
どっちだ……?
217 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/03(木) 00:24:58.36 ID:Tu5vfEY7o
次に告白安価とかお兄さん反応安価とか色々やるつもりなんですけど

これパピヨンどう転んでも凄いことなりそうでヒリヒリしてきました。無事に終われるのかなこれお兄さん
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/03(木) 00:58:37.41 ID:xZJLcd/qo
ある意味レースよりドキドキする
見届けるぜパピヨン…!
219 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 22:36:21.53 ID:XYKyijZC0
パピヨン「あ、お兄さん射的射的!射的やりたい!」

パピヨンが指をさす方を見ると、そこにはお菓子が景品となって台に並べられた射的。なるほど、確かに夏祭りといえばの代表格だ。

『分かったよ、ほらお金あげるからやってきな』

パピヨン「ありがとーお兄さん!ねえおじさん!射的一回!」

渡した百円玉をパピヨンが受け取り、それが射的屋の店主に払われる。店主から渡された射的銃を見て、きらきらと目を輝かせながら尻尾を振る。

……やっぱりこういうところは年相応なんだよな。

パピヨン「よぉし、じゃあ何狙っちゃおうかな〜。んー……よし、決めた」

しっかりと両手で銃を構え、コルクが入った銃口をお菓子に向ける。狙いが何かわからないが、パピヨンの瞳にはそのターゲットだけが映っている。

『…………』

――まるでレース前のような真剣な表情。そして、ぱぁんと音が鳴ってコルクが跳んでいき――。

パピヨン「あー!外れた!ちょっとおじさん!コルクも一個頂戴!え、ダメ?う〜……お兄さん!もっかい!」

『……あ、ああ。分かった分かった、もう一回だけな』

真剣な表情から一転、悔しそうな表情へ。コロコロと変わる表情を見てしまってパピヨンへの反応が遅れる。

自分でもスムーズすぎるくらいに百円玉をもう一つ渡し、パピヨンがまたチャレンジする。

パピヨン「ん、ありがと!よ〜し、集中集中……」

また表情が変わる。普段からパピヨンの真剣な表情は見ているつもりだが、こうやって改めて見ていると……やはりそのギャップに驚いてしまう。

少女の顔から、競争者への顔へ。パピヨンの静かな呼吸音が、こんなにも大きく聞こえてくる。

パピヨン「――――っ!」

ぱぁん。と、コルクが跳んで……そして、それにぶつかったお菓子の箱が棚から落ちる。

パピヨン「わっ……!やった!やったお兄さん見た見た!?すっごい綺麗に落ちてったよ!?アタシ射的の才能あるかも!」
220 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 22:37:27.89 ID:XYKyijZC0
自分の手を握って、嬉しそうな明るい表情でぴょこぴょこ飛び跳ねるパピヨン。いつもの見慣れたパピヨン、けど……さっき見たあの表情を思い出すと。

『…………ああ、見てたよちゃんと。凄いじゃないか』

パピヨン「でっしょ〜!ふふん、じゃあそんなお兄さんにはさっきとったお菓子をちょっと分けてあげよ〜」

ルンルン気分で店主さんから落とした景品のお菓子をもらい、自分に見せる。

……缶に入ったキャンディだった。他のお菓子と比べるとそこそこな重さがあるだろうに、本当に当たり所が良かったんだな。

パピヨン「缶に入った飴って珍しくない?だからなんか欲しくなっちゃったんだ〜、はいお兄さんに一粒!」

小さな掌に転がったキャンディ一粒を自分に手渡してくれる。

『……ああ、ありがとうパピヨン』

パピヨン「味わって舐めてよね〜?噛んだりしちゃダメなんだからね?」

――思えばパピヨンは相応に表情が豊かな子だ。明るい表情も、悲しい表情も、真剣な表情も……担当になってからより一層、それが顔に出ているウマ娘だ。

――――一緒にいて楽しいと言えば、きっと事実だろう。だからこそ改めて……その彼女の表情を見つめてしまった、自分は。

『……あっまいなこれ』

……暫くはあの表情が離れなさそうだ。
221 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 22:52:46.58 ID:XYKyijZC0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『そろそろ花火の時間だな』

パピヨン「えっ!花火まであるの!?」

狐のお面をかぶったパピヨンが嬉しそうな声でそう聞いてくる。右手には溶けかかったかき氷、そして左手には水風船。誰がどう見ても夏祭りを満喫している、そう思えた。

パピヨン「うっわ〜!どうしよどうしよ!ねえ今から場所取りに行く!?いい場所で花火見たいよね!?」

『いや、どうだろうな……最初から場所を取ってる人に取られてる気もするし……そもそも、ここの夏祭りならどこから見ても――』

パピヨン「むっ……じゃあそうだなぁ……』

自分の言葉に納得したのか、パピヨンがむむむと何か考えながら溶けたかき氷をストローで啜る。

パピヨン「…………えっと、じゃあさ」

……お、お兄さんと二人っきりで花火見たいな。ここ、人も多いし……で、デートなんでしょ?お兄さん。

恥ずかしそうにしながら、小さな声でパピヨンはそう言った。

『……その通りだな』

キミからデートだと言い出したんだろう、というツッコミはしないでおく。とにかく二人きりで花火が見たいというなら……叶えてあげるのが自分の役割だろう。
222 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 23:24:00.11 ID:XYKyijZC0
パピヨン「……よく見つけるねお兄さん」

『……人があんまりこなさそうな場所を見つけようと思ったら、案外すぐにな』

見つけた場所は夏祭り会場の裏手の部分、出店からはそこそこ離れているので人も中々来ないのだろう。

……その分、花火も少し小さくなってしまうだろうが。

『ほら、そこに座りな。ハンカチ敷くから』

パピヨン「え、あ、うん。ありがとお兄さん」

地べたにそのまま座らせるのもあれだろうと、せめてハンカチの上に。近くに何か腰を掛けれそうなものがあればよかったのだが……。

パピヨン「……あ、始まった!うわ、ちっちゃ〜!」

『……ごめんな、事前に場所を取っておけばよかったな』

パピヨン「あ、んもー違う違う!そんなしょんぼりしないでよお兄さん!全然気にしてないから!」

――遠くに花火が見える。音はだいぶ響いてくるが、その大きさはかなり小さかった。

……でも、久しぶりに花火なんて見た。この年になってから夏祭りになんて行く機会もなかったし、一人で行くつもりにもなれなかった。

『パピヨン、ありがとうな。キミがいなかったら……今日花火なんて見れなかったよ』

パピヨン「……えへ、そっかぁ。じゃあ、今日は一緒にありがとう、だね」

『――――そうだな』

彼女の隣に腰を下ろす。今日はなんだかとても疲れた……花火を見ながら、休憩しよう。

パピヨン「………………」
223 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/04(金) 23:33:30.34 ID:XYKyijZC0
パピヨンの恋愛強さ:コンマ直下

コンマが高いほど滅茶苦茶告白までスムーズに、低いほど恋愛弱者すぎる。
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/04(金) 23:36:49.81 ID:LtIfVSkQo
ヌッ
225 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 00:49:43.94 ID:vHOD/oG80
パピヨン「…………ねえ、お兄さん」

『ん、どうしたパピヨン……――』

パピヨンが、じーっとこちらを見つめてくる。花火ではなく自分を、目と目を合わせて、視線を逸らさず真っ直ぐと。

――レース前のような真剣さ、何か決心をしたようなその表情に。思わず息を呑む。

ドーン、ドーン……と花火の大きな音が。しかし、それも今は気にならない。


パピヨン「アタシ、今から大事な話があるんだけど――聞いてくれる?」


『…………もちろん、キミの話ならいくらでも』


――聞こう、彼女の話を。他ならぬシルヴァーパピヨンの話を。

226 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 00:55:11.65 ID:vHOD/oG80
パピヨン「初めて会った日のこと覚えてる?あの日、模擬レースでアタシが……6着くらいで終わっちゃった奴」

『ああ勿論覚えてるよ。あの日キミが模擬レースに出ていなかったら、もしあの日自分がレースを見に行かなかったら……自分とパピヨンは出会えなかったから』

どんな時でもあの日のレースは思い出せる。それだけ、自分の脳に焼き付いて離れない――魅了されてしまったシルヴァーパピヨンの走りを。

パピヨン「うん、本当にね……担当トレーナーとウマ娘の出会いはそんな奇跡の積み重なりだーって、誰かが言ってたけど本当にそう。アタシはね、そういうのあんまり信じてなかったけど……信じれるようになったよ」

『…………』

パピヨン「お兄さんがアタシのトレーナーだったから――アタシは今こうして走ってて、ライバルができて、色んなレースに出て、海も越えちゃって。勝って負けて、泣いて笑って、それでそれで……もっともっと走りたいなって思えて」

だからきっと、お兄さんがトレーナーじゃなかったらアタシは……トレセン止めちゃってたかもね。なんて、笑いながら語るパピヨン。

パピヨン「だから、さ――アタシ、いつからかずっと思っちゃってたんだけど――お兄さん以外がトレーナーとか考えられないなーって」

『――――そんな風に、思ってくれたのか?こんな新人の……トレーナーで、後悔はしていないか?』

パピヨン「……ぷはは!そんな風に思ってたら――ここまで来れてないよ、お兄さん」

――思わず、視界が滲む。

そうか、そうか――キミは、そんな風に思っていてくれたのか……パピヨン。

227 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 00:58:00.04 ID:vHOD/oG80
パピヨン「だからね……お兄さん」

ほんの一瞬だけ考えた後、パピヨンは真剣な表情から――――いつもの変わらない表情に戻って。

パピヨン「アタシはお兄さん以外のトレーナーなんて嫌、考えられないし考えたくない。そう思ってたら…………まず表情が好きになっちゃった」

『……え』

パピヨン「アタシのトレーニングメニューを考えてる時の真剣な表情とか、アタシの我儘をなんだかんだ聞いてくれる時の表情、真面目だけど結構ノリが良くて一緒にふざけてくれる時の表情も」

――ずっとずっとアタシのことを応援してくれて、アタシが間違えても失敗しても見捨てないでくれて。どんなアタシでも……受け入れてくれた。

パピヨン「お兄さんはトレーナーだから当たり前、だなんて片付けるのかもしれないけど――これ、普通に考えてヤバすぎるからね?」

『……そう、なのかも、しれないな』

パピヨン「うん。だから――――責任取ってよね、お兄さん」

そういうと、パピヨンは顔を赤くしながら――とても嬉しそうに、笑顔で。まるでようやく我慢しなくて済む、みたいな表情で。



――――お兄さんのことが大好きです。こんな我儘なウマ娘ですけど……付き合って、ください。


228 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 01:08:25.20 ID:vHOD/oG80
『――――』

パピヨン「………………」

――パピヨンは何も言わない。自分からの答えを待つように、願うようにこちらを見つめている。

…………好きという感情を向けられたことが、そもそも告白をされたことも――初めてで。思わず固まってしまう。

『……自分、は』

答えを出さないわけないはいかない、先延ばしにすることも許されない。それは彼女のこの想いを踏みにじることになる。

……パピヨンは担当ウマ娘で、自分はそのトレーナーで。

好きとか、付き合うとか、そんな関係は…………。

パピヨン「…………っ」

『…………パピヨン』


自分は、パピヨンの、ことを――――。



【貴方】は:コンマ直下

1-3 …………その想いには応えられない
4-7 ……"今は"応えることができない
8-0 ――言葉より行動で。断る理由なんて、どこにも…………。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 01:26:23.05 ID:i/apwZKPo
パピヨンがこんなにはっきり言えたんだお兄さんもたのむ………!
230 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:26:57.35 ID:vHOD/oG80
『…………申し訳ないけど、今はキミの想いに応えることは……出来ない』

パピヨン「…………っ。そっ……か、うん。そう、だよね」

自分の言葉を聞いて、パピヨンはぐしゃりを顔を一瞬だけ歪ませた後、また何でもないいつも通りみたいな表情で、笑った。

――違う、違う。待ってくれ、まだ話は……!

『パピヨン』

パピヨン「…………そうだよね、そうだよね!普通に考えてお兄さんがアタシと……なんてあるわけないよね!告白する前から考えてたけど、でもやっぱ……やっぱりさぁ……!ぐずっ……ぅ、ぅぁ……!」

『パピヨン、まだ話は終わってないんだ……パピヨン!』

パピヨン「ふぇぁ!?」

瞳に涙をにじませて、プルプルと震えて自分から目を逸らそうとするパピヨン――その肩をつかんで、無理やり目線を合わせる。

顔がぐちゃぐちゃで、今何が起こっているのか分かっていないパピヨンに――ちゃんと伝える。

『――今は、と言ったんだ。今すぐにキミの想いに応えることはできないと、自分は言ったんだ』

パピヨン「…………おに、いさん?」

『……自分とキミは、トレーナーと担当ウマ娘で、そういう関係は――まだ早いと、この担当の関係は、これ以上の関係になってはいけないと、自分はずっと……ずっと思っている』

パピヨン「…………っ」

『でも……でもだ!"俺"は――だからといって……気持ちをごまかしたりは、したくない』

体が熱い、心臓がドクンドクンと激しく痛い。この鼓動がパピヨンに聞かれたりなんかしたら――一生モノのネタにされてしまうだろう。

ただただ伝える、俺の本音を。トレーナーとしてではなく――――として。

『……もし、もしもキミがトレセン学園を卒業して。それでもまだキミの気持ちが……変わらなかったら』

パピヨン「ぁ……っ、うそ、うそぉ……!そんな、お兄さん……っ!」



『――――その時、改めてキミの気持ちに応えさせてほしい……パピヨン』



231 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:28:25.32 ID:vHOD/oG80
パピヨン「ぁ――ぁああぁあああぁあああああぁ……っっっ!!!」

――壊れたダムのように、パピヨンの目から涙があふれて零れる。パピヨンは抑えきれなくなってしまったように、胸の中に飛び込んできて……。

パピヨン「ばか、ばか、ばかぁ!お兄さんのバカ!勘違い、するじゃん!勘違いしちゃったじゃん!!!」

『……悪かった』

パピヨン「絶対に許さない、絶対に許さないから!もう一生、お兄さんは……アタシの我儘に付き合って、付き合ってもらうんだからぁ……!ぐす、うぁ、あああぁああぁぁ〜〜〜っっっ!!!」

『…………』

泣きじゃくる彼女の頭を、優しく撫でる。とてもよく手入れされた銀色の髪が、指の間を通り気持ちがいい。

パピヨン「もっと撫でてぇ!ぅぁ、ずびっ……うわぁあああああああぁん……!」

『…………なあ、パピヨン』

彼女に言われるがまま、頭を撫で続ける。

『キミは俺以外のトレーナーなんて考えられない、そう言っていたが……自分も同じだよ』

あの日、自覚した自分の本心。それがパピヨンと同じ想いだったことに――胸が高鳴り、嬉しくて嬉しくて堪らなかった。

『……俺だって、パピヨンのトレーナーが俺意外だなんて考えられない。キミのトレーナーの役割なんて、誰にも渡してやるもんか』

――――いつの間にか花火はもう止まっていて、だんだんと夏祭りの片づけが始まろうとしていた。

泣きじゃくっていたパピヨンはいつの間にか泣き止んでいて、そのまま一緒に今日のホテルへと戻っていった。

――お互いに手だけ繋いで、同じ歩幅で歩く。特に何も会話はなかったが……なんだかそれがお互いに、とても嬉しかった。
232 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:30:06.33 ID:vHOD/oG80
それじゃあ今日はこれでおしまいです、お疲れさまでした。

とりあえず安全に終わってよかったです。告白までお付き合いいただきありがとございました。
233 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 02:32:28.80 ID:vHOD/oG80
――――今後のパピヨンの様子は?:コンマ直下

コンマが高いほどべったり甘々いちゃいちゃ、低いほどいつも通り。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 03:22:26.86 ID:4pG5Qq+r0
ほい
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 08:51:47.10 ID:i/apwZKPo
おつ
これ絶対シル・ライ・マンティに気付かれるやつ〜
やっぱりお兄さんのバランス感覚素晴らしいよ、ここでパピヨンが恋愛よわよわ発動してたらまた違ったかも
236 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/05(土) 15:00:30.19 ID:vHOD/oG80
コンマが高いので隙あらばイチャイチャしに行きます。無意識にも意識してでも。

今のパピヨンは攻めがとんでもなく強いです。守りは変わらないです。
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 15:30:19.06 ID:RNIBnxwmo
大胆な告白と闘争心はウマ娘の特権
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/05(土) 17:24:53.07 ID:XDgU+Seio
意識しても攻めが継続できれば最強…ってコト!?
239 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 01:46:21.21 ID:WWIxNlds0
――――エルムステークスを勝利し、飛行機に乗り夏合宿に合流する。

もっと札幌を観光したりゆっくりしてもよかったのだが、パピヨンの次の次走予定を聞けばその考えもどこかに行ってしまった。

『……チャンピオンズカップか』

12月に中京レース場で行われる1800mのマイル戦。今のパピヨンのスタミナであれば走り切ることは可能だろうが――勿論、チャンピオンズカップといえば彼女がいる。

――――ステラライム。去年のチャンピオンズカップでのレコード覇者。思えばあのレースからステラライムがダート最強だと言われるようになった。

『……連覇を狙いに行くだろう。ステラライムの適正的にはばっちりだからな』

――教科書のお手本のような完璧な先行策。前でレースを走り、最終コーナー最終直線で一気に外から抜き去っていく。それが、彼女の走りだ。非の打ち所がない、綺麗な走り――でも。

『だからと言って負けるつもりはない、パピヨンだってこのレースを選んだのは……彼女にリベンジをするためだろう』

チャンピオンズカップでうちの担当ウマ娘を勝利させるためにも、どちらが最強かをハッキリさせるためにも――気合を入れよう。自分は、パピヨンの担当トレーナーなんだから。
240 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 01:54:05.44 ID:WWIxNlds0
『――――ところで、だ。いつまで引っ付いてるつもりだ、パピヨン』

パピヨン「えぇ〜?お兄さん難しそうな顔してるから、アタシが癒してあげようと思って〜?」

……ニヤニヤ笑いながら、パピヨンは押し付けるみたいに自分の後頭部にそれを当ててくる。

『……年頃の女の子がそんなことしない方が良いぞ』

パピヨン「でもお兄さんアタシのこと好きでしょ?じゃあ良いじゃーん♪ほらほら、むぎゅむぎゅ」

――――この前の札幌でのあの出来事から。パピヨンはなんというか……こう、一層絡んでくるようになった。

人目を気にしてか人前ではやらないが、二人きりになると我慢してたぶんを解き放つみたいに、密着してきたりからかってきたり。

『…………とにかくダメだ。ほら、離れた離れた』

パピヨン「あ〜!もしかして照れてる?照れてるでしょ!ふふーん、お兄さんアタシ以外に彼女とか居たこといないもんね〜!」

そう言いながら頬っぺたをふにふにと触ってくる。はあ、あんなふうに答えてしまった責任か……こんなことトレセン学園の他のトレーナーなどに聞かれたら……。

…………案外大丈夫か?いや、けど流石に未成年だしな……。

『……そろそろトレーニングするから。準備してくれ』

パピヨン「ぷはは、んも〜しょうがないなぁ。じゃあ準備してくるね!お兄さん!」

……こういうところは素直で助かった。いや、まさかパピヨンがあんな……いや、でも。分からないでもないのか……?
241 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 02:05:16.16 ID:WWIxNlds0
シニア夏合宿最終日:安価直下

1 恋愛脳ウマ娘3人、ザワつく
2 自由安価


おやすみなさい!
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 05:06:27.06 ID:mxpb6tVwo
1

おつおつ
お兄さんの理性あんまり変わってなくて草
パピヨンは意識しても大胆になってすぐバレる…と
243 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 17:14:22.18 ID:WWIxNlds0
ライム「シルフィーさんどうしましたか?急に呼び出したりして……」

――夏合宿もあと少しというある日。シルフィーさんにLANEで連絡を受けて待ち合わせ場所に向かいました。何かレースごとで相談でしょうか……?

シルフィー「す、すみませんライムさん……その、実はちょっとお話したいことが……あ、マンティさんも呼んでます」

マンティ『――あ、こ、こんばんはライムさん』

シルフィーさんが持っているスマホの画面にはマンティさんの顔が映っていて、私が来たのを確認すると慣れない笑顔で笑ってくれました。

ライム「マンティさん!マンティさんも呼ばれてたなんて……あ、その脚は大丈夫なんですか?」

マンティ『は、はいぃ。そろそろトレセンに復帰しても大丈夫とお医者さんにも言われましてぇ……そ、その。リハビリの成果が想定よりも早く出たみたいで……』

ライム「本当ですか!?じゃあもうレースにも……?」

マンティ『い、いえいえ!トレセン学園で、またもう少しトレーニングを重ねてからになりますけど…………はい。それが終われば、レースにも……』

ライム「――――!」

――マンティさんがレースに戻ってくる。ようやく、ようやくトレセン学園で……彼女と!これはパピヨンさんにも知らせてあげましょう……!

……あれ、そういえばパピヨンさんがいませんね……?

ライム「シルフィーさん。パピヨンさんは呼んでいないんですか?」

シルフィー「そう!そうなんですよライムさん!今日はその……パピヨンさんについてお話がありまして」

244 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 17:15:16.24 ID:WWIxNlds0
マンティ『……?パピヨンさん、ですか?な、なにか……あったんですか?』

シルフィー「そ、そうなんですよマンティさん……!ライムさんならわかりますよね?その……エルムステークスから帰ってきたパピヨンさんが……な、なんだかその……!」

ライム「あー……」

手をせわしなく動かして何かを伝えようとしてくるシルフィーさん。ええ、ええ分かります。分かりますよシルフィーさん……!

ライム「…………パピヨンさん、何かありましたよね。絶対」

マンティ『へっ?』

そう、エルムステークス連覇を見事に決めて帰ってきたパピヨンさんは……なんだか変わっていた。

何が変わったか?というと……ちょっと、具体的には指摘できません。けど確実に……確実に何かが変わった!そう断言できます!

マンティ『な、何があったんでしょうか……?レースはいつも通りのパピヨンさんの……いえ、今までよりももっと早く……な、なってましたけど』

シルフィー「なんというか……ちょっと余裕が出てきたというか。甘く……?なったと言いますか」

ライム「…………誰かに訊いてみますか?」

シルフィー「……そうしましょうか!」

というわけで誰かに訊いてみましょう。パピヨンさんに何があったのか……!


どうしましょう……:安価直下
1 パピヨンさんに直接訊きましょう!
2 パピヨンさんのトレーナーさんに!
3 ……おやあれはパピヨンさんとそのトレーナーさん……。
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 17:28:35.97 ID:lsnWqxpDO
2
246 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 18:20:23.32 ID:WWIxNlds0
『ん、やあシルフィーにライム……それにマンティまで?どうしたんだ?』

パピヨンさんのことを一番近くで見ているトレーナーさんなら、きっと何があったか知っているでしょう!

シルフィー「こんばんはパピヨンさんのトレーナーさん!すみませんちょっとお聞きしたいんですけど……」

こうして私たちの疑問を訊ねてみます。エルムステークスの後、帰ってきたパピヨンさんの様子がなんだかおかしい気がする……と。

…………!なんだかトレーナーさんの表情が硬くなったような気がします!これはなにか知っていそうです!

ライム「もし何かご存じでしたら教えていただけませんか?実はそれが気になって気になって……」

マンティ『わ、私もお願いします!さ、札幌で何かあったんですか!?』

『…………そう、だね。うーんパピヨンに何があったか……』


トレーナーさんの回答:安価直下
1 『…………いや?特に何もなかったよ?』
2 『……パピヨンとちょっと、色々と約束をしたというか……ええと』
3 『……ふふ、何があったと思う?』
4 自由安価
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 19:04:27.31 ID:mxpb6tVwo
2
248 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 20:11:42.79 ID:WWIxNlds0
『……パピヨンとちょっと、色々と約束をしたというか……ええと』

シルフィー「色々と……!」

マンティ『や、約束……!?』

『そ、そうなんだ。こう……ご褒美……みたいな……』

ライム「ご褒美っていったい何なんですか!」

――気まずそうに目線を逸らすトレーナーさん……こ、これ絶対ご褒美じゃないです!しかしこのまま押せばきっと――!

パピヨン「――ねえ、ちょっとなにお兄さんに集まってるの」

――が、その目論見はどうやらダメになってしまいそうでした。

ライム「あ……ぱ、パピヨンさん……」

パピヨン「ライムにシルフィーに……あ、マンティも。三人でお兄さんに用事?」

ムスっとした顔のパピヨンさんが、私たちからトレーナーさんを守るように横に移動しました。

……流れるように彼の脚に尻尾がするすると絡みつきました。

パピヨン「…………」

マンティ『そ、そんな用事ってわけじゃなくて……う、うぅ……』

シルフィー「ちょっとお話がしたかっただけなんです!そんなパピヨンさんを怒らせるみたいなつもりじゃ……」

パピヨン「……別に怒ってないんですけど」

――――これはいけません。三人そう思ったみたいで、トレーナーさんに謝罪をした後そそくさとその場を立ち去りました。

――――ぜ、絶対パピヨンさんとトレーナーさんで何かあったやつです……!それにトレーナーさん、すっごいパピヨンさんの匂いが染み付いてました……!

……な、何があったんですか……!?ま、まさかそういう……え、えっ……!?
249 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 20:22:08.20 ID:WWIxNlds0
『……助かったよパピヨン……パピヨン?』

パピヨン「………………」

……パピヨンが腕にくっついて離れない。

パピヨン「ライムもシルフィーもマンティも集まってお兄さんと喋ってて……ちょっと、モヤモヤしちゃった」

『えっ?』

パピヨン「アタシのお兄さんなのに……あの三人がそんなことするわけないのは分かってるけど、でも……」

『……ごめんな、心配させちゃって。でも大丈夫だから』

彼女の頭を撫でる。ぁぅ、と小さな声が漏れて、気持ちよさそうになでなでを受け入れている。

パピヨン「…………やっぱり大々的に公表した方が良いと思うんだけど」

『だからまだ自分とキミはそういうのじゃないって……あの、パピヨンさん、力が……力が強い!』

パピヨン「…………♪」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 20:27:25.54 ID:mxpb6tVwo
独占欲!
251 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 21:03:02.70 ID:WWIxNlds0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

パピヨン「――っやぁああああああああああ!!!」

夏合宿を終え、パピヨンの走りにはますます磨きがかかっていた。存分に鍛え上げられた足腰は力強く、小さな体躯からは想像もできない瞬発力。

――あとはこの走りを持続できるかどうか。そしてどれだけ――パピヨンに気持ちよく走ってもらえるか。

『よし、じゃああと一本走ったら休憩にしよう。パピヨン』

パピヨン「ふぅううう……ん、オッケー!」

その返事とともにパピヨンはまた勢いよく駆けて往く。手元のストップウォッチを見ると……うん、やはり明らかに速くなっている。

『…………』

……もっともっと頑張ろう。あの日、想いを告白してくれた彼女に呆れられないように、精一杯尽くそう。

…………九月だというのにまだまだ蒸し暑い。12月までまだまだ時間はあるが――油断すると一瞬だ。
252 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 21:10:05.10 ID:WWIxNlds0
チャンピオンズカップ前イベント1:自由安価下2まで。




ちょっと離席します。パピヨンのイベントも残り数回です。早いような長いようなそんな気分ですね。
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 23:00:11.76 ID:mxpb6tVwo
マンティと会って話す
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/06(日) 23:07:31.43 ID:Io45ylbw0
世間のライム-パピヨン強さ論争を眺めるトレーナー
255 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 23:31:58.56 ID:WWIxNlds0
ありがとうございました。すみません寝ます。
256 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/06(日) 23:37:02.04 ID:WWIxNlds0
お疲れさまでした。

お兄さんは告白されてからできるだけ意識しないようにしようと必死です。今まで担当ウマ娘とトレーナーだった関係が変わっちゃったので。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/07(月) 01:25:42.11 ID:3hDTIP3Qo
おつ
パピヨンと立場逆転かな?お兄さん
258 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/07(月) 12:00:54.85 ID:Rde5myqmO
『トレセン卒業まではこっちも我慢しなくちゃ…パピヨン自分のこと好きだったのか…』

パピヨン「お兄さんとほぼ両想いだしもう今まで我慢してたこと全部やっちゃお!お兄さんも嬉しいもんね!好き!」

立場が逆転してんですよね。
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/10/08(火) 04:59:43.17 ID:IbmTnT040

      提  供


   ボートレースからつ


 
260 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 00:03:00.09 ID:Gr51D2Pw0
パピヨン「えっ!マンティそろそろトレセンに戻ってくるの!?」

マンティ「は、はい……!お医者さんからももう大丈夫だと言われまして……あ、歩くのももう一人でも、へっちゃらなんです!」

――病室のベッドの上で、マンティは誇らしげに力こぶを作って見せた。普段のマンティならしないような仕草に、ちょっと笑っちゃう。

そっか、そっかぁ……マンティ。復帰するんだぁ……。

パピヨン「じゃあ、早くても来年とか?マンティがレースに戻ってくるの」

マンティ「そう、ですね。もう少し早くトレセンに戻れていたら12月のレースに出走できるくらいにはなっていたかもしれませんけど……う、うぅ……」

悲しそうに俯くマンティ。ああ、そっかなるほどね。

パピヨン「今年のチャンピオンズカップ。アタシとライムが出走するもんね。マンティ、出たかったんだ?」

マンティ「…………はぃ。その……一度は、G1の舞台を三人で……走れたらと思っていたんですけど……」

……またなんかネガティブになってる。意味わかんない。けど――。

パピヨン「こらこらなーに言ってるの!アタシとライムとマンティがもうG1で一緒になる機会はないみたいな言い方しちゃって」

――ずっとずっと、ずーっと走り続けてたら。絶対何時かは同じ舞台で競い合う。ならその時までアタシは――。

パピヨン「――言ったでしょ。アタシは、マンティの憧れも吹き飛ばしちゃうくらい最強のウマ娘であり続ける。そしてそれにマンティが挑む」

マンティ「!」

パピヨン「これ、去年の約束。ちゃんと覚えてるから、今日までリハビリ頑張ったんでしょ?」

261 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 00:06:13.96 ID:Gr51D2Pw0
マンティ「は、はぃ……はい!ご、ごめんなしゃい!」

パピヨン「んま、アタシとしても一緒に走りたいって気持ちはあるし、ライムの方にも頑張ってもらわないと……今度のレースでボコボコにしちゃって引退とかしちゃったらどうしよ」

いや、まあないだろうけど。それくらい圧倒的な勝利で分からせちゃう気持ちはあるし?

マンティ「……ふふっ。パピヨンさんは、変わらないですね」

パピヨン「とーぜん!アタシは何時だって変わらない!」

ピースサインでアピールなんかしちゃって。それに「おー……」とパチパチ拍手の音。

……と、なんだ自慢げに言っちゃったけど。アタシだって変わる、トレセン学園に入学してから今に至るまでアタシが変わらなかったことなんてない。

どれもこれも全部お兄さんのせいで、お兄さんのおかげ。

パピヨン「…………じゃあアタシ次のレース頑張るからね。チャンピオンズカップ、応援してね〜?」

マンティ「そ、それはもちろんです!あ、いやでもライムさんのことも……ど、どうしましょう……!ふえぇ……」

パピヨン「あー分かってる分かってる。勿論ライムも応援してあげてね?」

アタシだけ応援独り占めとかちょっとズルだしね?
262 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 00:32:19.37 ID:Gr51D2Pw0
『…………』

トレーナーの業務の一環として担当ウマ娘が世間一般的にどのように思われているかの調査がある。これは担当ウマ娘へ危害を加えるような発言などがないかのチェックの一環として行われているもので、殆どがエゴサーチのようなものになっている。

――雑誌やテレビでは、少し早いがチャンピオンズカップの話題がちらほらと出ている。時期的にはスプリンターズステークス、少し先の菊花賞や秋華賞、天皇賞秋の話題が多いだろうに。

"――国外を制したウマ娘と国内現役最強のウマ娘、ダート二大ウマ娘激突!!"そんなタイトルの記事が目に滑り込んでくる。

シルヴァーパピヨン、そしてステラライム。どちらが勝つのか――そしてどちらが強いのか。そんなレースにおいて鉄板のような話題が今世間をにぎわせていた。

SNSなどを眺めてみてもどちらかを応援してるような書き込みや、どっちも応援しているという書き込みなど……勿論、ファンが多くなれば多くなるほどアンチというものも切っても切り離せない存在ではあるが……。

『まあ、それも当然だよな』

――では、今現在パピヨンとライム、どちらが世間的に優勢かというと――。


どっちに今軍配が:コンマ直下
コンマが高いほどパピヨン優勢、低いほどライム優勢。真ん中で同じくらい。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 00:54:18.71 ID:KqjBN7hDO
はい
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 07:33:25.29 ID:Hq49Sn3ho
海外G1の威光や!
265 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 18:38:34.55 ID:Gr51D2Pw0
ごめんなさい昨日寝落ちしてそのまま外出てました……再開します。



「シルヴァーパピヨンでしょ今回は。あのドバイのレースを見たら確信できる」

「パピヨンちゃんならきっと国内G1も勝てる!!」

「もうあの逃げにはステラライムも流石に無理でしょ」

――どうやら今の段階ではパピヨンの方が優勢だったみたいだ。SNSの書き込みを見て見るとやはりその要因にはドバイでのG1勝利……それが影響しているようだった。

だがその一方で「流石にステラライム相手にこの距離はスタミナ切れるでしょ」「海外の砂が合っていただけで日本で勝てるわけじゃない」という意見も見える。

……勿論言っていることの意味は分かる。パピヨンは生粋のスプリンター。初めて会ったあの日からスタミナには悩まされ続け、ステラライムと戦うときはいつも最後の最後で躱されている。

『……でも、だ』

それが事実だとしても――自分はそれに勝てるようにトレーニングを考えたつもりだし、自分の考えにパピヨンは乗ってくれている。

――――最高のライバル"青の流星"ステラライム。

ぜひ見てくれ。その流れる星よりも先に瞬く――蝶の羽ばたきを。そしてその頃にはもう、どちらが最強かなんて議論するまでもないだろう。
266 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 18:40:36.93 ID:Gr51D2Pw0
パピヨン「お、に、い、さ、ん!」

放課後。トレーナー室にパピヨンが突撃してくる。勢いよく開かれた扉から駆け足でこちらに向かってきて、ニコニコした可愛らしい表情をこちらに見せつけてくる。

パピヨン「今日のアタシ、いつもと違います!何が違うでしょうか!」

『突然だないきなり』

さあ当ててみて当ててみて!と、その場でくるりと一回転……いや、パっと見だと何が変わっているのか何もわからないんだけど……。

パピヨン「…………じー」

『……』

…………ちらりと、尻尾を見る。

『尻尾に使ってるシャンプー……じゃないな、オイルがいつもと違う?新しい奴か?』

パピヨン「えっ!?なんでわかるの!?キモーい!!!」

『キミなぁ……』

折角当てたのに何でそう言われなくちゃいけないんだ。

パピヨン「好きなブランドの最新作なんだー、尻尾の艶とか毛並みもいつもよりちょっと違うでしょ?あとほら、匂いも違うし」

と、言いながらすりすり脚に尻尾をこすりつけてくる。まあ、確かにこうして近くで見ると結構違うな……匂いも甘いというより、スッキリした匂いだ。

パピヨン「…………えへ、お兄さんこんなところまで気づいちゃうんだ……❤アタシのこと大好き過ぎるでしょ〜❤」

……ニヤニヤこっちを見てくる瞳から逃げるように、視線を逸らす。
267 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/09(水) 18:57:04.15 ID:Gr51D2Pw0
以前募集して書くと言った小ネタですけどちょっとムリそうなのでここで消化させてください……全部書けなくて申し訳ないです。



チャンピオンズカップ前イベント2:安価下2まで。

1 パピヨンが【貴方】にウマ耳マッサージされる話
2 パピヨンがお兄さんが買った抱き枕に嫉妬する話
3 煽りすぎてちょっと分からせられるパピヨンの話
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 19:08:53.21 ID:2j+n/QXuo
1
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/09(水) 19:23:20.62 ID:KqjBN7hDO
2
270 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:14:39.97 ID:XYThoUOX0
パピヨン「かり、かり、かり……かりかり、かきかきかき……」

パピヨン「ぷぷ、お兄さんほんっとすぐ情けない声出ちゃうね〜?もうアタシ以外の耳かきじゃ満足できないよわよわざこざこのお耳になっちゃったね〜?」

パピヨン「……将来はお兄さんのお耳はぜーんぶアタシがお掃除してあげちゃうからね❤」

パピヨン「こら、動かないでお兄さん!あ、もうっ……!」

パピヨン「――ふ〜っ……❤」

パピヨン「はーい、アタシのお耳ふーふーでお兄さん黙らせちゃいま―す❤はいはい、もうちょっとで終わるから、我慢我慢だよ、お兄さん?」
271 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:15:24.21 ID:XYThoUOX0
『…………』

何時からだろう、月に数回パピヨンに耳掃除をしてもらうようになったのは。

パピヨンから数回耳かきをさせろとお願いされて、言われるがまま耳を貸し……それが習慣化されているこの状況。不健全だと思ったことは――勿論ある。

しかし、事実気持ちが良いし睡眠も取れる。耳かき後のパピヨンの機嫌がすこぶる良いのもあって――止めようと言い出す機会が中々ない。

『……よし』

読んでいた本を閉じる。実は以前からパピヨンに対して何かお返しができないかと考えていたところこの本と出会った。

……自分が満足させてあげられるだろうか。パピヨンが嫌な気持ちになったらどうしようかと考えることもあったが――まあ、パピヨンなら許してくれるだろう。

――――ウマ娘にとって耳というのはとても重要な部分だ。感情表現や周囲の警戒、レース中も走る音一つで位置をキープしたりなど、用途は多岐に渡る。

――つまり、それだけ凝っているということだ。

272 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:15:53.84 ID:XYThoUOX0
パピヨン「へっ?お兄さんがマッサージしてくれるの?」

『ああ、この前も自分の耳を掃除してくれたしそのお礼と思ってくれ。これでも色々と勉強したんだぞ?』

パピヨン「あー、確かにウマ耳って結構疲れとか溜まってるっていうよね?だからマッサージで揉み解そう〜ってこと?」

ちょっと前に友達がお店でやってもらったって言ってたかも。と、ぼんやりパピヨンが喋る。

……まあ、そういう専用のお店ほどではないが、そこそこいい線行くんじゃないかと自負している。

パピヨン「アタシも一時期極めよう!って思ってた時はあったけど、自分でやってもなんかよく分かんないし、尻尾のお手入れする方が気分も上がるから結局全然なんだよね〜……へ〜、お兄さんアタシのお耳マッサージしてくれるんだ?」

ニヤニヤと上目遣いで見つめてくるパピヨン。へ〜?ふ〜ん?と、まるでバカにするみたいな表情で。

パピヨン「もしかして〜普段アタシに耳かきでよわよわにされてるから仕返しってこと〜?ぷ、ぷぷぷ!お兄さんのそういうところ、良くないと思うな〜?」

『……別にそんな意図はないさ。いつもキミに手入れさせてばかりだと、不公平だと思ってな』

パピヨン「ぷっ、ぷはは!うんうんそうだね〜!お兄さんばっかり気持ちよくなってちゃアタシが損だもんね〜?でも〜……アタシそんな気持ちよくなるかな?」

アタシがウマ耳マッサージあんまやんなくなっちゃったのも、自分でやってあんまり気持ちよくなかったからなんだよね。なんかくすぐったいだけって感じ。

……そ、そうだったのか。じゃあパピヨンにはマッサージ効果がないのかもしれないな……。

パピヨン「でも、お兄さんがせっかく覚えてくれたなら、一回くらいやらせてあげよっかな〜。はい、じゃあどうぞ!」

そう言って、パピヨンは自分の膝の上にちょこんと座り。右耳に何時も付けている銀色のパピヨンマスクを外す。

……ふわふわとしていそうな銀色のウマ耳が目の前にある。心を落ち着かせて、まずは右耳から――。

パピヨン「お兄さんはアタシになっさけなーい声を出させて楽しみたいのかもしれないけど、ちょっとくすぐったいだけでそんな声なんてひゃんっ!?」

273 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:16:36.27 ID:XYThoUOX0
『!?』

パピヨン「へっ……?やっ、ぇ……?」

――右耳の根元の部分を優しく触った瞬間、パピヨンの体がビクン!と揺れ、可愛らしい声がトレーナー室に響いた。

なっ、ぱ、パピヨン……?

『だ、大丈夫かパピヨン!?い、痛くなかったか!?』

パピヨン「ち、ちがっ……!こ、これはその、ちょっとびっくりしただけだから!ほ、ほら続けて続けて!」

……ほ、本当に大丈夫なんだろうか。しかし、パピヨンが大丈夫だというなら大丈夫か……?

……気を取り直して右耳を触る。

パピヨン「んっ……」

耳の根元を親指で軽くぐりぐりと押してあげる。円を描くように揉み解すと、モジモジとパピヨンの体が動き甘い声が漏れてくる。

耳の根元を揉み解した後、次は耳全体を刺激させていく。親指と人差し指を使ってぎゅっ、ぎゅっ……と左右から耳を押しつぶす。

パピヨン「ふっ、くぁ……!ひぅぁ……!」

あとはそうだ、確か……。

『……声、我慢しなくていいからなパピヨン。パピヨンの耳、ふわふわしてて気持ちが良いな』

パピヨン「ひゃぁ!?み、耳元で喋んないでぇ……!ひぅ……!」

いつも自分にしてくれているみたいにパピヨンの耳元で囁いてあげる、うん。だいぶいい感じだ。

274 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:17:14.67 ID:XYThoUOX0
――右耳の先っちょをつまんで、真上に軽く伸ばして伸ばして……ぺたんと折り畳み潰す。

パピヨン「んっ、んぁ、ふぁ……ぃ……っ!」

――ぎゅーっ、ぺたん。ぎゅーっ……ぺたん。気持ちいいか?

パピヨンの耳全体がぽかぽかとあったかくなってくる。次は軽く爪を立ててこしょこしょと擽ってみたりする。

――こしょこしょ、こしょこしょこしょ。

パピヨン「ぁああぁあぁあぁ〜〜〜っっっ❤❤❤」

ふにゃふにゃの声と一緒にパピヨンの体重が自分の胸にかかってくる。よし、問題なさそうだな。

次は左耳だ。先ほどと同じように解して押して潰して擽って……とにかく耳を揉みくちゃにしてあげよう。

パピヨン「ぁ……!やっ、それ、やだっ……っ!ぃ……んっ」

パピヨン「にゃ……ぁ……❤ふぃ……んっんぅ、ひゃぁ……!」

もみもみ、ぎゅっぎゅっ……ぺたんぺたん。

かりかり、こしょこしょ、ぽしょぽしょ…………。

――――ふーっ。

パピヨン「っっっ!?!??!?!❤❤❤」

275 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:17:45.43 ID:XYThoUOX0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『……よし、終わりだパピヨン!…………パピヨン?』

マッサージが終わりパピヨンに声をかけるが、反応がない。

パピヨン「…………っ、ぁ……?」

眠ってしまっていたか……?と思い不安になったが、どうやら意識はあるようだった。

……完全に自分に体重を預け、目元も口元もとろんと蕩け切ったパピヨン。口からは少し涎も垂れてしまっていた。

近くのティッシュ箱からティッシュをつかみ、パピヨンの口元を拭ってあげる。

パピヨン「………………」

『……大丈夫か?パピヨン?おーい……?』

――――結局、パピヨンの意識がはっきりしたのは十分ほど経ってからだった。

意識を取り戻したパピヨンは顔を真っ赤にしながら何か大きな声で怒り、ぷんすことトレーナー室を飛び出してしまった。

……もしかして嫌だったか、と不安になったが……。

パピヨン「………………お、お兄さん。その、あの……あ、あのさぁ……」

――――後日、モジモジと恥ずかしそうにしながらもう一度マッサージをして欲しいとお願いされて。その不安も吹き飛んでしまった。
276 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/10(木) 00:19:39.91 ID:XYThoUOX0
凄い時間かかっちゃいましたけど今日はこれで終わりです。お疲れさまでした。

次更新は抱き枕に嫉妬する話です。


パピヨンの耳はもう後戻りできない。
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/10(木) 12:39:44.84 ID:4mzKYFSqo
普段隠してる部分を露出させて、手でもみくちゃにして蕩けさせて、快楽の虜にさせる
うーん健全!!!

やっぱり>>1のお耳マッサージ描写ーよ最高だよ!
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/10(木) 21:56:18.34 ID:sT2AUxsM0
相変わらず防御が紙だけど関係性が進みまくってる…同期組で完全に抜けたな
279 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/12(土) 00:37:31.03 ID:tOAnJqPx0
パピヨン「お兄さんいる〜?実はお願いがあるんだけど……ぉ?」

『…………』

ちょっと欲しいものがあったからお兄さんにおねだりしようとトレーナー室に入ると……お兄さんが眠ってた。

ずっと前から置いてあるソファに横になって、すぅすぅ小さな寝息を立てながら。気持ちよさそうに眠ってる。

パピヨン「わっ……わぁ〜!お兄さん、寝てる〜……!」

お兄さんを起こさないように近寄って、寝顔をまじまじと見つめる。わ〜……ぷぷ、お兄さんの寝顔かわい……❤

……てかお兄さん、こんなところでぐっすり眠っちゃうくらい疲れてたんだ。いつものことなのは分かってるけど、お兄さんあんまりこういう姿見せないからなぁ……。

…………うりうり、トレーナー室で寝るならちゃんと家で寝ないとでしょ〜?

パピヨン「……というか、お兄さん抱き枕抱いてるじゃん」

よくよく見るとお兄さんは何かを抱きしめながら眠ってた。寮のアタシの部屋に置いてあるのと同じペンギンの……えっ!?

パピヨン「な、なんで――あ。そうだ、前に同じペンギンのぬいぐるみ買おうか悩んでるって言ってたっけ」

お兄さんが寝不足っぽかったからアタシのペンギンぬいぐるみを貸してあげて、それで睡眠の質を〜……って話の時だ。てか、睡眠の質とか考えてぬいぐるみ買うなら最初からちゃんと寝なきゃダメだって。

『……すぅ』

パピヨン「…………』

お兄さんがソファの上で、ぎゅうっとぬいぐるみを抱きしめながら眠ってる。

…………なんかモヤモヤする。

280 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/12(土) 00:38:45.71 ID:tOAnJqPx0
パピヨン「……」

お兄さんが気持ちよさそうに眠ってることはとても嬉しい。けどなんでこんなにモヤモヤするの……?

パピヨン「……おいペンギン。えいえい」

――何このペンギンお兄さんに抱かれてるの?アタシの方が先にお兄さんにぎゅうううって抱きしめられたし、一緒に寝たんだけど?

ぬいぐるみを抱くよりも、アタシを抱いた方がお兄さんもぐっすり眠れるんだけど?アタシの方がいろいろ柔らかくて気持ち良いんけど?

パピヨン「…………えいっ!」

お兄さんの腕を緩めて、一気にぬいぐるみを引っこ抜く。そして慎重にゆっくりと……お兄さんと一緒にソファに横になる。

ソファが狭いせいで下手したら落ちちゃうから……ぎゅううう、ってお兄さんを抱きしめて。落ちないように工夫する。

パピヨン「…………えへっ。抱き着いちゃった……❤」

あの日はお兄さんがアタシをお布団に引き込んだけど、今日はアタシが……お兄さんのソファに入り込んじゃった。うわっ、お兄さんの顔近すぎ……。

パピヨン「ん〜……❤お兄さんポカポカで、なんだか良い匂いもする……スンスン」

お兄さんの胸に顔を埋めて匂いを堪能する。すりすりと頬もこすりつけて、マーキングもしちゃう。

『……んんっ……?んぅ……』

パピヨン「きゃっ、お兄さんモゾモゾしないで……くすぐったいよ❤」

ペンギン見てる〜?やっぱりお兄さんはぬいぐるみよりアタシの方が嬉しいみたいだよ〜?せっかくお兄さんが睡眠のために買ったのに、ごめんね〜?

…………ふぁぁ。

パピヨン「なんだか眠くなってきちゃった……寝ちゃお」

今日はお兄さんに用事があったけど……まあいいや、今日は……お兄さんとお昼寝の休憩日にしちゃお。

おやすみなさいお兄さん。ぎゅううう…………。

…………すぅ。
281 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/12(土) 00:39:59.86 ID:tOAnJqPx0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『…………』

パピヨン「……むにゃむにゃ」

仕事中、少し疲れがたまっていたのと感じて仮眠をしたんだが……どうしてこうなった。

『……パピヨン、パピヨン?』

軽くゆすってみるが起きる気配はない。自分はペンギンのぬいぐるみを抱いて眠ったはずなのに……ああ、地面に落ちてる……。

『……パピヨンの家でもこんなことあったな』

パピヨンの部屋の次はトレーナー室で。はあ、どうしてパピヨンは自分と一緒に……。

……甘い匂いと花のような匂いがする。多分使っているオイルの匂いだろう。サラサラとした尻尾が自分の脚をくすぐって、妙にドキドキしてしまう。

パピヨン「すぅ、すぅ……」

『はぁ……』

もしかしてこれもパピヨンからの揶揄いの一部なんだろうか。こうやって体を密着させて、自分の反応を楽しむみたいな……いや、にしてもぐっすり眠っているな。

…………いつか本当に捕まりそうだな自分。しかしまあ、このトレーナー室ならきっと……ギリギリ問題ないだろう。

『……いつの間にか、じゃなくて……ちゃんとお互いに一緒に眠れる日が来るといいな、キミと』

そう思いながら、静かに自分は目を閉じた。
282 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/12(土) 00:55:03.00 ID:tOAnJqPx0
>>277,278
ありがとうございます。健全なのばかり書きたいです。
パピヨンは告白してすべてぶち抜けた……お兄さんもそれにつられていろいろぶっ壊れた……


今日はこれだけ。おやすみなさい。次、チャンピオンズカップ前イベント最後です。そしておそらくパピヨン自由イベント最後です。

特に何も決めてないので、自由安価になるか良いの思いつくかになりそうです。
283 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/12(土) 00:56:42.30 ID:tOAnJqPx0
あと質問なんですけど、次ウマ娘募集するとき用のオリウマ娘もう作って温めてる人いますか?

色々考えてるので作ってる人が多かったら色々考えてます。前作成した時のテンプレもありますので。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/12(土) 05:04:44.05 ID:AIy7wzgDo
おつおつ
これで清い関係は保ってるからバレても相手が赤面するわ!

パピヨンの物語もいよいよクライマックスか、感慨深い

案はありまーす
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/12(土) 13:22:38.38 ID:wr/0og+Q0
万一負けてもトレーナーに慰めて貰えるぜ
キャラはあるにはある
286 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/12(土) 21:02:29.92 ID:tOAnJqPx0
結構キャラ作ってる人いる感じですね、じゃあまあ普通に募集しようと思います。

ありがとうございましたー。



11月。チャンピオンズカップまで残り一か月。

――ライバル、ステラライムとの決戦に向けてトレーナーとして何ができるか――トレーニング以外にも何かパピヨンにしてやれるんじゃないかと考える。

パピヨン「お兄さん揺れないで、座りにくいから」

『……パピヨン、ちょっとパソコンが見えないんだけど』

パピヨン「えー、今はお休みしようよお休み。アタシ今スマホ見てるから、もう少し待って」

……当然のように自分の膝の上に座り、スマホをいじってるパピヨン。パピヨンの後頭部でパソコンの画面は隠れ、何も見えない。

『今からキミのために色々と仕事しようと思ってたんだけど』

パピヨン「トレーニング以外で何かできないか〜みたいな?さっき言ってた気がするけど、アタシはこれが今一番嬉しいけど?」

そう言って、嬉しそうにニヤニヤ笑いながら頭を自分にこすりつけてくる。いや、まあそう言ってくれるのは嬉しいんだけど……。

パピヨン「別にさぼりたいわけじゃないよ?お兄さんが頑張って仕事してるのも、色々トレーニングの論文とか見てるのも知ってるけど――でも、アタシがこうやって休んでるときは、お兄さんも休んで欲しいな〜……なんて」

だって、レースの時に体壊して入院しちゃいました!とか……笑えないからさ。

『……パピヨン』

パピヨン「だから今日くらいはお休みしよ?ね、今日一日くらい大丈夫だって――勿論、トレーニングとかレースの研究もアタシ頑張るからさ」

――――レースまで残り一か月。頑張りすぎだとパピヨンに言われ、とりあえず今日は色々とお休みすることになった。

――だいぶパピヨンに甘くなったし、自分にも甘くなった気がする――けどまあ、問題ないというなら、問題ないだろう。
287 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/12(土) 21:06:29.91 ID:tOAnJqPx0
チャンピオンズカップ前イベントラスト:自由安価下2まで
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/12(土) 22:18:36.56 ID:AIy7wzgDo
シルフィに勝ってくるから宣言しとく
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/12(土) 23:34:42.35 ID:DD6ExtiUo
ここでライム陣営の様子を見たい
290 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/13(日) 00:01:23.79 ID:CSIuROC1o
お疲れ様です。

ごめんなさいちょっと寝ます…ありがとうございました。
291 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/13(日) 23:46:42.53 ID:CSIuROC10
パピヨン「シルフィーって来週のG1出るんだよね。エリザベス女王杯」

自室。勉強机に向かって何か本を読んでいるシルフィーに話題を振る。

シルフィー「あ、は、はい!お、覚えていてくれたんですね……」

パピヨン「そりゃアタシだってルームメイトのレースくらい把握してるって。現地には行けないけど、テレビで応援してるね〜」

おりゃおりゃ、とシルフィーの頬っぺたを後ろからムニムニと触ってマッサージ。や、止めてくださいよぉ……!涙目で言われてしまってので止めてあげる、ムニムニ。

シルフィー「今年はG1にまだ挑戦していませんでしたので、エリザベス女王杯が今年初のG1レースとなるんです……ですから、み、見ていてくださいね……パピヨンさん」

パピヨン「――――うん、勿論見るよ。シルフィーが勝つところ、だってシルフィーもずっと頑張ってたもんね」

頑張ったから勝てるなんて甘い世界じゃない、けどそれでも――頑張った人には勝って欲しいし、仲が良い人ならなおさらだ。

パピヨン「んじゃ、今月来月でG1勝利部屋にしちゃおうここ!今月はシルフィーで、来月はアタシ!」

シルフィー「……!ふふ、パピヨンさんそれ良いですね……凄い話題になっちゃいそうで」

パピヨン「でしょ〜?」

292 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/13(日) 23:47:35.52 ID:CSIuROC10
パピヨン「じゃ、来月のアタシのチャンピオンズカップ、テレビで応援しててね」

――勝ってくるから。ステラライムに。シルフィー相手に宣言して、約束する。

シルフィー「……はい、見てますよパピヨンさん」

パピヨン「ぷぷ、ほんとかな〜?実はライムの方応援しちゃうとかない〜?」

シルフィー「なっ……!や、止めてください!そりゃ、ライムさんも……友達ですけど!」

パピヨン「ぷはは!冗談冗談、いやまあ別にライムを応援してもいいよ?勝つのはアタシだけど」

シルフィー「むぅ……なんか意地悪です。じゃ、じゃあ良いです!私も……ぱ、パピヨンさんの応援とかいらないですから!」

――あ!シルフィーもそういうこと言うんだ!

パピヨン「なにおー!?すっごいシルフィーのこと応援するけど!?当日は横断幕とか作っちゃうし!」

シルフィー「わ、私は……お、応援歌とか作っちゃいますけど!」

ぎゃーぎゃー!わーわー!

――――とかこんなことを言い合って、最後はバカみたいに笑いあってお互いに眠った。

うん、シルフィーとはこういうことが結構できるからいいよね〜。

……ちゃんと、勝たないとな。あーあ、ここでも約束しちゃった……けど、それも全部全部背負っていこう。
293 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/13(日) 23:51:28.47 ID:CSIuROC10
グリーンシルフィー、久しぶりのG1エリザベス女王杯:コンマ直下

1-3 1着!
4-5 2着……
6-7 3着……
8 掲示板……
9 あちゃぁ
0 おおっと
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/14(月) 00:00:43.38 ID:oqZj7N8Oo
ヌッ
295 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 00:34:06.57 ID:Nw/DCeu3o
やっぱりなかなかレース結果が振るわないっすねぇ
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/14(月) 01:13:13.60 ID:hpECAwbIo
ここのコンマ神ここっ! てときにしかデレないの徹底してるよな…
297 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 02:47:27.59 ID:Nw/DCeu30
エリザベス女王杯当日。トレーナー室のテレビで中継を見て、シルフィーを応援していたけど――。

パピヨン「あ"ぁ"ぁ"〜〜〜……!!!」

『……スパートのタイミングが少し遅かったな。あと近くに居た4番のウマ娘……あの子の位置取りを考えると――いたっ!』

パピヨン「冷静に分析しないで!」

――5着。そりゃ、レース展開とかタイミングとかが重要なのは分かるけど。あんなずっと頑張ってたシルフィーが……いや、分かってる、分かってるけど……。

パピヨン「…………ますます負けられないじゃん」

『……?』

パピヨン「約束してたの!シルフィーがエリザベス女王杯勝って、来月のチャンピオンズカップでアタシも勝つ!それで二か月連続G1勝利コンビ!って!」

『あ、あぁ……そんな約束してたのか。そっか……じゃあ、せめてな』

パピヨン「……うぅ〜!シルフィー、大丈夫かな……後で電話しよ」

負けちゃったシルフィーの分まで、次のレース頑張らないと……絶対勝つ!ぞー!

パピヨン「あ、帰ってきたシルフィーが落ち込んでたら……尻尾の手入れと、ハグと……あ、じゃあウマ耳のマッサージも気持ちよかったし……」

『……尽くすの好きだな、キミは』
298 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 02:57:11.98 ID:Nw/DCeu30
お疲れ様でした、今日はこれで終わりです。ありがとうございました。
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/14(月) 04:29:41.43 ID:hpECAwbIo
おつー
その感想はお兄さんよくパピヨン見てるなあやっぱり
果たしてVSライムは……!
300 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 20:29:09.87 ID:Nw/DCeu30
ライム「――――今だ、ここ……!」

最終コーナーを回り最終直線に入ろうとしたタイミングで一気にスパートをかける――!脚に力を入れ、地面を蹴り飛ばし前に突き進む――タイムは!

ライトレ「よし、タイムに狂いはないぞライム。いったん休憩の後もう一度だ!」

ライム「っはい!」

駆け足でトレーナーさんの元に向かい、ボトルとタオルを受け取る。11月のもう冬に足を踏み入れたこの時期に、むわむわと汗が乾き、私の体から蒸気が昇る。

――チャンピオンズカップのための練習。逃げるウマ娘とのレースでも自分のペースを忘れないため体内時計をしっかり整える練習。

そして最後、絶対に相手を差せるタイミングでスパートをかける――逃げを許さない、先頭の景色なんて見させない。

ライトレ「……ライム、調子の方は大丈夫か?脚に違和感とかはないか?」

ライム「はい!トレーナーさん、大丈夫です!特に違和感はなく、問題なくトレーニングできてます!」

ライトレ「なら良かった……ライムの年内最後となるG1レースだからな、トレーナーとしては怪我無く安全に走ってほしいんだ」

――優しそうな笑みを浮かべながら、私にそう語るトレーナーさん。

ライトレ「……それにライムにとっては、シルヴァーパピヨン……彼女との対決になるわけだしな」

ライム「はい、パピヨンさんに対してのリベンジで――この3年間の区切りとして、私は――世界に羽ばたくあの蝶を、捕まえなければいけないんです」

――きっと、パピヨンさんもおんなじことを考えているはずです。なんて自分で言うけれど、なんだか恥ずかしい。

301 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 20:30:20.27 ID:Nw/DCeu30
ライトレ「――――ドバイゴールデンシャヒーンでの彼女のレースは見事だった、しかしそれは――彼女の適正に合っていたから」

世界の土が、1200mという距離が彼女の脚にハマっていた。だからこそあんなにも素晴らしいレースができた……しかし、彼女の脚はそれ以上の距離に対応していない。

――ずっと前からそう思っている、今も変わらずそう考える。なのに――――。

ライトレ「適性を無視した走りはトレーナーか担当ウマ娘のエゴで、そんな走りは脚にダメージを溜める――というのに、今の彼女からは……」

ライム「そんな適正も跳ね返して脅威になりえる存在――ですよね?」

ライトレ「………………」

何とも言えない表情で私を見た後、こくりと頷いたトレーナーさん!ふふっ、なんだかちょっと誇らしいです!

ライム「パピヨンさんはちゃんとマイル戦も勝っていますし、この間のエルムステークスも1700mで去年とで連覇していますし……それでも認めてませんでしたよね?」

ライトレ「……いや、今はちゃんと考えを改めている。適性に合った走りをするべきで、適性に合っていないレースには出るべきではないとは今も思っているが……シルヴァーパピヨンにとってはそれが少し違っていた」

真面目な表情になって、トレーナーさんがパピヨンさんのことを語り始める

ライトレ「そう、シルヴァーパピヨン――彼女はマイルじゃなくて長めの短距離を走っていたんだ。彼女のスピードとパワーが長い短距離も走れるだけの適性を生み出した……そう考えている」

ライム「…………長めの短距離?」

ライトレ「そうだ、長めの短距離だ。1700mも1800mも……彼女にとっては短距離に分類されるんだ」

……う〜ん。う〜ん……。

ライム「…………そうですね!確かにちょっと長い短距離かもしれませんね!」

ライトレ「ああ、やはりそうだよな。トレーナーになってから結構な経験を積んだが、まだまだ自分も――」

トレーナーさんって、なんかこういうところあるんですよねぇ……真面目な方なんですけど。

――――待っていてくださいねパピヨンさん。どちらが最強か、知らしめてあげますから。
302 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 20:31:53.24 ID:Nw/DCeu30
とりあえずこれだけ。書けたら今日中にチャンピオンズカップ結果コンマ判定まで。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/14(月) 20:40:17.96 ID:hpECAwbIo
まあ有馬はマイルとも言われますし………
304 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 23:19:20.94 ID:Nw/DCeu30
――中京レース場、ダート1800m、G1"チャンピオンズカップ"

寒空のレース場に最高峰のダートウマ娘が集う。出走ウマ娘を見ても、ダートで名を挙げた強者ばかりのそのレースに……彼女は参加できるだけの実力があった。

『最後に確認をしよう』

今回のレースに逃げウマ娘はシルヴァーパピヨンしかいない。つまりパピヨンが今回のレース展開を操作すると言っても過言ではない。

キミの走りで後方のウマ娘はペースを変えるかもしれない、それによってスタミナをぐちゃぐちゃにかき混ぜて最後逃げ切れる――そんな作戦もありえたかもしれない。

が――しかし。

『……キミにはそんな作戦必要ないだろう』

ただただ脚を動かして、腕を振り、全力を出し切る。最後の最後まで気力を振り絞り、スタミナ全てを使い切って――駆け抜ける。それがシルヴァーパピヨンのレースだし。それ以外にシルヴァーパピヨンのレースは存在しない。

自分が憧れた走りがそれで、見惚れた走りはそれ以外にあり得なかった。

『パピヨン……?』

レース場控室でこうして確認をしているが、パピヨンからの返事が一つもない。何か不調かと不安になったが――どうやら問題はなさそうだった。

パピヨン「ん……ごめんお兄さん。ちょっと集中してた、ちゃんと話は聞いてたから大丈夫だよ」

――――目を瞑って、瞑想をしていたパピヨン。勝負服の背中にプリントされた溶けた銀色の蝶が、まるで彼女の滾る熱によって溶けてしまっている――そんな風に見えてしまう。

……膝下のダメージソックスも、ピンヒールブーツも、どんな意図でデザインしたのか分からない面積のインナーも、いつも身に着けているパピヨンマスクも、そして一枚のパーカーも。彼女を表すには十分すぎる勝負服だった。

――どんなに傷を負っても、どれだけ不安定な適性で、周囲をハラハラさせるその性格も、己の本質を隠す小さな仮面も、燃えるレースへの情熱も――全部全部、シルヴァーパピヨンというウマ娘の要素そのものだった。

……いや、多分考えすぎだと思う。パピヨンはそこまで考えてデザインしていないはずだ。
305 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 23:19:57.40 ID:Nw/DCeu30
パピヨン「……ねえ、お兄さん」

『ん、どうした――』

パピヨンが静かに立ち上がって、何も言わずにスタスタとこちらに向かって歩いてきて……ぎゅっ、と抱き着いてきた。

自分の胸に顔を埋め、静かに抱きしめる力を強めてくる。

『……』

パピヨン「…………ん、ありがと。最後に充電したかったんだ〜……えへ」

埋めていた顔を上げて、上目遣いでにや〜っと笑う。すりすりと尻尾が脚に絡みついてきて擽ったい。彼女がこうやって尻尾を脚に絡ませてくるときは大抵、甘えたかったり心がちょっと不安定だったりするときだ。最近気づいたことだが。

『……不安か、やっぱり』

パピヨン「……そりゃね、色んな人と約束しちゃったから」

ステラライムとはどちらがダート最強か決めると約束し、ブラックマンティスとは最強となって立ちはだかると約束を、そしてグリーンシルフィーの分まで今回のレースを走り、勝利をすると約束をして。

沢山の約束があった、つまりそれだけパピヨンには――期待をされている。約束を果たしてほしいと、色んなウマ娘の想いが乗りかかっている。

パピヨン「沢山走って色んな人からそういうの貰ってるから、ちょっとは慣れたっちゃ慣れたけど……まだまだ怖いし、不安なんだよね」

『……ああ、そうだな』

パピヨン「勿論、そういうのからはもう逃げないって決めたけど……逃げないために、ちょっとだけ。お兄さんのことを補充したいな〜って、お兄さんパワーをアタシに吸わせろ〜って感じで」

なんなんだお兄さんパワーって、とは思いながら……要するにハグをして心を落ち着かせてレースに行きたいということだろう。

…………自分の両腕を、彼女の背中に回す。
306 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 23:20:31.13 ID:Nw/DCeu30
パピヨン「ひゃぁ!?お、お兄さん……?」

『もっと沢山充電しよう、それでキミが落ち着けるなら幾らでも。それでしっかりと……満足する走りを皆に届けよう』

パピヨン「…………えへ、お兄さんってアタシに甘いよね。そういうところ、アタシ大好きだよ」

『……自分もキミのそうやって素直に伝えてくれるところ、好きだぞ』

パピヨン「…………!??!?!??!?!?」

しまった……言い過ぎたか。レース前にこれはちょっとまずいな。

パピヨン「はっ…………は、はーい!はいはいはい!もうお兄さんパワー終わり終わり!これ以上は……あ、溢れちゃうから!もったいないもったいない!!!」

『……ん、そうか』

顔を真っ赤にしてパピヨンが離れてしまった……離れるときにちょっとお腹をパンチされたな、痛くはなかったが。

パピヨン「じゃ、じゃあ行ってくるから!!!お兄さん……応援しててね!」

逃げるように控室から出ていこうとするパピヨン――ダメだ、まだ言っていないことがある。

『パピヨン!』

パピヨン「ちょ、ちょっとなにお兄さん!ア、アタシいま恥ずかしいんだけど……!顔も熱いし――」

307 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 23:21:15.65 ID:Nw/DCeu30


『――――頑張れ!キミは、キミらしい走りをしてくればいい!』

とても楽しそうに走るキミの姿に――自分も、皆も期待してるよ!と、叫ぶ。

パピヨン「…………!」

……一瞬の、沈黙。そしてパピヨンは、嬉しそうに笑って。



パピヨン「あーあ、そんなこと言われたら――背負うしかないじゃん!お兄さん!」



――――オッケー任せておいて!アタシはアタシらしく走るから!行ってきます!



ああ、行ってらっしゃい――!その言葉が、パピヨンの耳に届いているかは分からないけれど、この想いはきっとパピヨンに届いているだろうと確信は――あった。



308 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 23:21:48.80 ID:Nw/DCeu30
"砂上の戦いを求める猛者が集う!ダート王決定戦、チャンピオンズカップ!"

"今日の主役はもちろんこのウマ娘!一番人気シルヴァーパピヨン!ドバイゴールデンシャヒーンでは見事な逃げ切り勝ちを決め、前走エルムステークスでは連覇も決めております。蝶のように舞う華麗な逃げはこの日本でもその力を証明できるか!"

"そしてこの人気は少々不満か。二番人気、去年チャンピオンズカップ覇者にしてレコードホルダー!ステラライム!流星のごとくその走りは逃げる蝶を打ち抜くか!そしてチャンピオンズカップ連覇を果たすことはできるか――!"

パピヨン「…………会えたね、ライム」

ライム「そうですね……パピヨンさん。会いたかったですよ」

わぁあああああああああ……!!!と観客の歓声が聞こえてくる、アタシとライムが向かい合って何か喋っているんだ、何か宣戦布告とかしてるんだろうと盛り上がってるんだろうなぁ……。

……でも、そういうのって全部全部前にやっちゃってるからなぁ。

パピヨン「ん、今更何か言うつもりはないけど――宜しくね。そっちも別に何か言いたいこととかないでしょ?」

ライム「ええ、話したいことも語りたいことも、全部あの日夏合宿の夜に話しましたから」

――――ライムの後ろから隠しきれないオーラみたいなものが見える。今すぐ走りたい、今すぐアタシと競いたいという思いが――いや、隠し切れないじゃなくて隠してないんだ。これ。

……嬉しいじゃん。だったらアタシも――相応に応えてあげるから。

パピヨン「……っし、じゃあちゃっちゃと決めちゃおうか。どっちがダート最強か――!」

ライム「――お互いがお互いのリベンジのために。証明しましょう、パピヨンさん!」

"どのウマ娘も気合十分!良い表情をしております!"

"――各ウマ娘ゲートイン完了、出走準備整いました!"

パピヨン「…………っ!」

――よし、頑張ろう。ゆっくり息を吸って、吐いて――心を、落ち着かせて。

――――あとは、ゴールの向こうだけを見つめよう。



"さあ今ゲートが開きG1チャンピオンズカップ!スタートいたしました!!!"



309 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 23:23:11.33 ID:Nw/DCeu30

結果は:コンマ直下
1 自由に、楽しく、奔放に――逃げる、ただそれだけで
2-4 "砂上の銀の蝶"
5-7 "青の流星"
8-9 煌めく流星は瞬いて、誰もが目を奪われて――。
0 おおっと
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/14(月) 23:23:38.08 ID:l8R9W6/Yo
いざ勝負
311 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/14(月) 23:33:27.06 ID:Nw/DCeu3o
お疲れさまでした!今日は終わりです!ありがとうございました!

ステラライムが強すぎる!最後の最後まで!!!
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/15(火) 01:00:52.27 ID:wiSxMGOpo

このスポ根爽やか魔王最後まで堂々高い壁だったな
でもライムいなかったらパピヨン海外挑戦なんてならなかったと思うしいいライバルよなー
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/15(火) 12:19:13.31 ID:9o76oXEAo
ドバイ前国内ライム:厳しい国内ダート適正と距離適性+バカつよライム=どうやって勝つんですか?(現場猫)

ドバイゴールデンシャヒーン:適正ヨシ!距離ヨシ!相手は強いけどここまで来れたなら勝ちの目は十分ある実質ラストバトル

ドバイ後チャンピオンズカップ:今だから改めて分かる初期ライムの強さ(ここまで鍛えたパピヨンでほぼ互角の)、イベントマッチ

ゲームだとこんな感じかなぁ
立派だ、よく頑張ったよ
幻視する実馬正史は多分ドバイ走ってない、子が国外砂でめっちゃ活躍して、パピヨンも走れたなら……を言われただろうし、そのアンサーを見れるシナリオは大変人気なのですね(早口)
314 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/17(木) 02:16:31.93 ID:GphOy83Z0
――砂を蹴り飛ばす。その体全部を使って、ただひたすらに全力に前を往く。

目の前には誰もいない、自分一人だけが独占しているこの景色が――どうしようもないくらいに、キラキラ輝いて……綺麗だった。

"最終コーナー!先頭は依然としてシルヴァーパピヨンが突き進む!3バ身ほど離れた位置に5番!そしてその後ろをステラライムが追う!そして2番、11番――!""

パピヨン「――――!」

は、はは、ははは――!と、笑いが止まらない。何か自分の中のネジがぶっ飛んでしまったんじゃないかとも思うが、きっとこれは正常だ。

――いや、正常なんかじゃない。こんな大舞台で笑いながら走るウマ娘なんて――きっとイカれている。

楽しくて楽しくてしょうがない。自由に走れるこのレースが、ライバルと競うこのレースが、色んな期待を背負って駆けるこのレースが――今のアタシには最高の時間だった。

――――ずっとずっと、この時間が続いてほしいとアタシは願う。

ライム「――――は、はははは!!!」

"さあ最終直線先頭はシルヴァーパピヨン!そしてその後ろからは――上がってきた上がってきたー!ステラライムが5番を交わし一気に先頭を狙いに行く!

"世界王者か!国内王者か!二人の王者の一騎打ち!シルヴァーパピヨン逃げる!ステラライム追走!残り――あと400m!"

――観客から、今日一番の歓声が沸き上がる――より一層、神経を集中させる。

315 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/17(木) 02:17:24.47 ID:GphOy83Z0
パピヨン「っ……ぁあああああああああああああああ!!!!!」

叫ぶ、自分の力全てを出し切るために。スピードもスタミナも全て限界を超えて出し切って、最後に出せるものは――ギリギリの根性だけだった。

負けたくない、絶対に勝ちたいという想い。ステラライムに絶対に負けないという想い一つで――駆ける。駆ける。駆ける!

ライム「やぁあああああああああああああ!!!!!」

後ろから近づいてくるステラライムの声。先頭は、先頭はアタシのものだ……!絶対に奪わせてたまるものか……!

心臓が爆発しそう、息が苦しい、今にもぶっ倒れそうな体を、根性で動かして――全力で突き進む。

――ずっと続いてほしいと願ったレースにも終わりがくるものだ。


パピヨン「あ"ぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」

ライム「っ―――ぁああああああああああああああああああ!!!!!」


――――青いウマ娘が、一瞬だけアタシと並ぶ。そして、瞬き一つする間に――アタシの視界が、一瞬だけ青く瞬いた。

"――ステラライム!ステラライム先頭!ステラライム先頭!ぐんぐんぐんぐん突き放す!これはシルヴァーパピヨン追いつけないか!?"


パピヨン「――――っ」

誰もいない景色に――青い星が流れてくる。

――ああ、くそ、くそっ……!なんで、こんな、こんなにさぁ……!

――――悔しいなぁ……!悔しいなぁ!

――――楽しいなぁ……っ!

316 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/17(木) 02:19:04.42 ID:GphOy83Z0
"――――ゴーーーール!一着ステラライム!二着シルヴァーパピヨン!ステラライム、見事チャンピオンズカップ連覇達成!国内王者はやはり強かった!!!"

パピヨン「はっ……はっ、はぁ……っ」

ゆっくりとゆっくりとスピードを落としていき――ゆっくりと、地面に倒れこむ。

前からべしゃぁと倒れる。全身砂まみれになって、寝返りをうち、空を見上げる――ダメだ、もう動けないや。全部全部使い果たして、完全燃焼……だなぁ。

……誰かの足音が、聞こえてくる。

パピヨン「ぉぇ……はぁ。はぁ……どしたの、王者様?」

いつもなら観客に向かって感謝の気持ちを伝えているはずのライムが――敗者のアタシを、見下ろしてくる。

ライム「――――今日は私がリベンジさせていただきました」

誰がどう見ても私の勝ちで、ダート最強は私だと証明されました――ですよね、パピヨンさん?と、語ってくる。

パピヨン「…………」

ライム「悔しいですよね、今すぐここで騒ぎたいくらいですよね?だったら――私は何時でも、貴女を待ち受けますから」

王者として、貴女の挑戦を待ちますと――ステラライムは、眩しい笑顔で、言いやがった。

…………。

パピヨン「はぁあああああああああ!!!んもームカつく!!!くそ、くそくそくそ!ライムさぁ――強すぎ!!!」

脚をじたばたと動かす!G1の舞台がなんだ!観客がなんだ!ムカつくものはムカつくし――悔しい悔しい悔しい!

パピヨン「絶対リベンジするから!――最強の椅子温めておいてよ!」

ライム「――――ええ、もちろんですよ。パピヨンさん」

それでこそ――私の最高のライバルです。

アタシのその宣言を、ライムはとても嬉しそうな表情で――受け止めた。

317 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/17(木) 02:19:48.35 ID:GphOy83Z0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『――お疲れ様、パピヨン』

パピヨン「ん……ごめん、負けちゃった」

戻って来て早々、彼女の口から出たのは謝罪だった。

彼女らしくないとは思いつつ、それだけ彼女にとってこのレースが大きかったのか……それが伝わってくる。

『……とてもいいレースだった。確かに負けてしまったけれど……キミならこの負けを糧にできるだろう?このままライムに負けて終われるウマ娘じゃないのは、自分がよく知っている』

パピヨン「それはそうだけど!違うじゃん!ほら、ほらもっとアタシが喜ぶことして!」

滅茶苦茶怒られてしまった。

――パピヨンが喜ぶこと。尻尾の手入れを最初に思い浮かべたが――今のパピヨンと、自分ならきっと……。

『…………パピヨン』

そして自分は、最高の愛バに対して――大きく腕を広げて。

おいで。と、そう言ってあげる。

パピヨン「――――っ!!!」

『…………ぐえっ』

――突っ込んでくるパピヨンの力が強すぎて思わず声が漏れるが――倒れないよう堪えて、優しく抱きしめる。

――――悔しい悔しい悔しい!絶対次は勝つ!負けない負けない負けなーーーーい!!!

パピヨンの悔しい思いが響く。どんどん声が震えて、涙声になる……顔は見れないけど、頭をなでなでと撫でてあげる。


…………次は勝とう。キミと自分で、二人一緒ならどこへだって――手が届くはずだから。


318 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/17(木) 02:20:37.52 ID:GphOy83Z0



――――全ての目標を達成しました!


319 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/17(木) 02:22:33.28 ID:GphOy83Z0
安価無し、今日はこれで終わりです。ありがとうございました。

次クリスマスイベ、温泉イベ、そして最後の育成終了イベントです。どこかで安価挟みたいけど、なにかあるかなぁ……。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/17(木) 12:17:09.01 ID:04EI4xQNo
おつおつ
青春よきかな…!
321 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/17(木) 20:26:46.89 ID:GphOy83Z0
クリスマスイベ、悩んでます
1 【貴方】宅、パピヨン突撃
2 クリスマスデート編
3 風邪を引いた【貴方】を看病してくれるパピヨン
4 それ以外

どれが良いですか。安価とかじゃないのでいいなーってやつください。
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/17(木) 21:43:14.82 ID:e0QNQ3Fpo
寮の皆でクリスマス前の忘年会、からの2への戦略会議へ
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/17(木) 22:35:55.38 ID:fifyN/8Wo
>>322
これに一票
324 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/18(金) 12:16:16.73 ID:aO1TTeFAO
これ作戦会議どっちがやるんだ…?パピヨンといつものメンツかな?

恋愛大好き娘の知恵が合わさるのか…?
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/18(金) 12:33:09.50 ID:P0Md6c9jo
イツメンだと思った
そうなると彼女らにトレーナーとの事が露呈する流れになるが……まあ時間の問題だったな!
326 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/18(金) 20:23:40.11 ID:aO1TTeFAO
何歩も先に進んだパピヨンを見ていつメンはなにを思うのか……

これは負けられないと幼馴染み君にもうアタックするステラライム……震え上がるシルフィーとマンティ……?
327 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/24(木) 23:15:26.73 ID:/gRpbJuM0
お久しぶりです。
そろそろ再開します。明日明後日とか。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/24(木) 23:43:19.79 ID:rwD8TKy+o
おかえりー
329 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/26(土) 22:55:00.12 ID:YfXsexqa0
パピヨン「――――マンティ〜〜〜!!!」

マンティ「うひゃ!?ぱ、パピヨンしゃん……っ!?ちょ、わっ、わぁ……!」

――チャンピオンズカップを終えて。世間はクリスマス前ということでそれらの話題で持ちきりだったり、有馬記念とかのレースで大騒ぎだけど――少なくとも今この場所では違った。

パピヨン「お帰り〜〜〜!!!すっごい久しぶりな感じがする〜〜〜!」

そう、ついにマンティがトレセン学園に帰ってきた……!長い長い病院生活から、脚をちゃんと治して――戻ってきた!

ライム「マンティさんお疲れさまでした!無事に治ったようでよかったです……!」

シルフィー「お、おかえりなさいマンティさん…………!」

マンティ「あ、あのぉ……!う、嬉しっ、嬉しいんですけどぉ……!ひゃぅぁ、ぱ、ぱぴよんしゃんがぁ…………!」

ライム「……パピヨンさん、そろそろ離れましょうか。凄い困ってますよ」

パピヨン「やーん。マンティ……」

流石に抱き着いてむぎゅむぎゅするのはダメだった見たい。マンティの顔が真っ赤で今にも爆発しちゃいそうだもんね……失敗失敗。

でも、それだけ嬉しいってこと!

マンティ「ひゃぁ…………はっ!す、すみっませんっ!ちょっとぼーっとしちゃいました……!で、でも!脚は治ったんですけど、もう少しちゃんと走るリハビリとか練習も必要なので…………」

パピヨン「ん、良いの良いの!またマンティと走れるのが分かったんだから!――――ぷぷぷ、早く追いつかないと、待ちくたびれちゃうからね?」

マンティ「――はい、待っていてくださいね。パピヨンさん」

――――あーあ、これライムに勝ってから言いたかったなぁ!んもー!
330 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/26(土) 22:55:31.28 ID:YfXsexqa0

マンティ「……と、ところで今は何を……?ちょっと騒がしいような……?」

シルフィー「あ、そういえばマンティさんは知らないんですっけ?えっとですね――」

――クリスマスパーティーにはまだ早い、しかし現に美浦寮に所属するウマ娘たちは騒がしい。

色んなところに飾り付けがあり、寮の広間には様々な料理が並べられている。

ライム「今年はだいぶ早いですよね、クリスマス前に……」

――ヒシアマ姐さん主催で毎年行われている恒例の、忘年会だ!

331 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/26(土) 23:02:02.02 ID:YfXsexqa0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

今年は特に特に盛り上がった一年だった。それはきっとみんながそう思う――そんな一年だったと、忘年会の中、振り返る。

……ドバイゴールデンシャヒーンの勝利、エルムステークス連覇、そして――チャンピオンズカップでのステラライムとの対決。

記録にも残る、記憶にも残る――少なくともアタシはこの年のことを忘れることはない、絶対にない。

パピヨン「……えへ」

それに……お兄さんとも……えへ。

…………えへへっ。

シルフィー「…………パピヨンさんがずっとニヤニヤしてますよ」

ライム「あの、やっぱり……」

マンティ「…………パピヨンさん、やっぱり……うぅ」

……なんかめっちゃ見られてるんだけど。なに、そんなうわぁ……みたいな!

パピヨン「ちょっとそっちの三人!何見てんの!」

ライム「あ、いえいえパピヨンさん!私たちはそんな――――いえ、ここはもうはっきりと訊いちゃいましょう」

シルフィー「えっ、ら、ライムさん…………!」

ライム「パピヨンさん!貴女――と、トレーナーさんとその……な、なったんですか、そういう……仲に?」

真剣な表情で、興味津々そうな表情で、ライムがアタシとお兄さんとの仲を訊ねてくる。

もしここではっきりそうだと言ってしまったら……多分お兄さんが困るだろうなぁ。うん、別に言ってもいいけどここはお兄さんのためにもはっきりと…………。

パピヨン「え〜〜〜?えっ、そっ、そんな…………お兄さんと恋人とか…………そ、そんなわけないじゃん!で、でもぉ……そ、そっかぁ、そんな風に見えちゃうんだアタシたち……お兄さんの恋人みたいな……ふふっ」

マンティ「ぱ、パピヨンさぁん…………!」

332 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/26(土) 23:35:43.84 ID:YfXsexqa0
パピヨン「えへっ、それでさ、お兄さんがさぁ…………」

お兄さんとアタシが付き合ってることがバレちゃった……❤けどバレちゃったならしょうがないよね〜?

じゃあ隠す必要もないし、この三人は興味津々みたいだし……色々教えてあげちゃお〜。

あの日の告白のことも、お兄さんの返事も、そして今日までやった色んなことを!

パピヨン「凄い優しくて、良い匂いして……体つきとかも、すごい男の人って感じでぇ……❤」

シルフィー「ほ、ほほぉ……ほぉ……!」

マンティ「ふぇぇ……そ、そんな……パ、パピヨンさん凄い…………うわぁ……」

ライム「……今までの態度が一気に変わりましたね」

パピヨン「べ、別に変わってなんてないけど?ライムもさ〜、自分からアタックアタックしないと〜……幼馴染くんとか逃げられちゃ――痛い!抓らないで手の甲!」

ライム「パピヨンさん!!!」

興味津々に色々聞いてくるシルフィー、顔真っ赤ではわはわしてるマンティ、そしてなんとも素直じゃなさそうなライム。

ライムちょっとムスーっとしてるけど……耳がちゃんとこっち向いてるんだもんな〜!興味津々恋愛脳ウマ娘の一角のむっつりさんめ〜!

シルフィー「じゃ、じゃあ……!クリスマスにも……デートとかするんですか!?」

パピヨン「もちろん!きっとお兄さんから誘ってくれるだろうし……すっごい楽しみ!」

シルフィー「……あれ、パピヨンさんから誘うんじゃないんですか?」

パピヨン「だってクリスマスだよ〜?お兄さんからきっと誘ってくれるって!お兄さん優しいし……多分すっごいデート考えてくれてるよ!」
333 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/26(土) 23:55:20.47 ID:YfXsexqa0
ライム「…………それ、大丈夫ですか?」

パピヨン「は?なに、お兄さんとアタシの仲疑ってるのライム?」

ライム「別にそういうわけじゃないですけど……その、さっきのパピヨンさんの話だと…………まだ正式な恋人ではないんですよね?」

いや、もうほとんど恋人みたいなものだけど……ま、まあ。一応、トレセン卒業まで回答は未定ってことで…………。

でも!いや、そんなのほぼ恋人決定でしょ!?じゃあもう恋人!両想い!

ライム「……トレーナーさん、クリスマス忙しいんじゃないですか?年末ですし、恋人……いえ、パピヨンさんまだトレセン生ですし、世間的には……」

パピヨン「…………ぇ」

…………お、お兄さん考えてない?いや、いや、でもお兄さんとアタシは……で、でも……ぇ。

パピヨン「…………」

ライム「パ、パピヨンさん!?ち、ちがっ……す、推測!推測ですから!」

マンティ「パ、パピヨンさん!き、きっと考えていますよ!パ、パピヨンさんの……トレーナーさん、良い人ですから!」

シルフィー「じゃ、じゃあいっそのことデートのことこっちから誘っちゃうとか!」

パピヨン「そ、そそ、そう!いや、でもお兄さんがぁ……さ、誘ってくれる…………」

マンティ「と、トレーナーさんにデートを誘ってもらうため……デートまでの作戦会議しましょう!そ、それならどうでしょうか!?」

……ぐすっ。デートしたい…………じゃあ、お兄さんに色々……うぅ。

ライム「わ、私も手伝いますから……す、すみませんパピヨンさん……」
334 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/27(日) 00:08:28.04 ID:BqXiCNkd0
――――デートまでの作戦会議。

こんなことしなくてもお兄さんはデート……誘ってくれるはずだけど。でも、やっぱり、デートは絶対したいし……。

パピヨン「お、お兄さん、普通にデート誘って大丈夫かな……?め、迷惑じゃ……」

ライム「自分から告白してるのにいまさら何言ってるんですか……大丈夫ですって。ほら、お菓子食べて落ち着いてください」

パピヨン「……ありがと」

シルフィー「デートと言えば色々ありますよね。クリスマスですから、イルミネーションを見に行ったりとか……あ、レストランで一緒にご飯とか……!」

マンティ「お、お家デートとかもあります、よね……!聖夜に、二人っきりで…………!」

ライム「シルフィーさんとマンティさんはなんだかいつも以上にやる気ですね?」

……い、いえ。私も、ちょっと……興味はありますし、ドキドキもしますけど…………こ、こほん!

パピヨン「……お兄さん忙しいし、クリスマスもお仕事とかしてたし……」

ライム「パピヨンさん!ちょっと、いきなり弱気になるの止めましょう!?普段通りで行きましょう普段通りで!」

…………うぅ、なんか、一気に不安になってきちゃった……おにいさぁん……。
335 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/27(日) 00:14:30.35 ID:BqXiCNkd0
クリスマスデート作戦会議編

まずデート場所は……:安価直下
1 イルミネーション!
2 家デート!
3 その他(自由安価)
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/27(日) 00:16:34.68 ID:VAb4Hrhlo
1
337 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/27(日) 00:38:51.66 ID:BqXiCNkd0
お兄さんとイルミネーションを見たい!

どうやってデートまで持っていこう……:安価直下
1 それとなーくデートのこと匂わせてみるとか……
2 素直にデートしたいって言えばいいんじゃ……
3 その他(自由安価)
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/27(日) 03:22:11.60 ID:N7XM2gzEo
2
339 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/28(月) 00:19:18.11 ID:6JVayfYH0
『……そういえば今日はクリスマスか』

――クリスマス。年に一度の聖夜ということで世間は盛り上がり、一般的には彼女とデートをしたり家族と過ごしたり……というのが一般的だろう。

しかし、自分はトレセン学園のトレーナーだ。自分にそんなことをする余裕は…………ない。

『いつも以上に仕事が多いな……』

担当ウマ娘の取材依頼に撮影依頼、学園の必要書類の提出に、トレーニングメニューの見直しや研究……やることで言ったら盛りだくさんだ。

…………それに。

『……他の担当、か』

わが学園の理事長である"秋川やよい"理事長から依然このような相談を受けた。

端的に言えば――シルヴァーパピヨン以外のウマ娘を担当するつもりはないか、と。

学園の中にはチームを持ち複数のウマ娘を担当しているトレーナーもいる、しかしそれは経験豊富なトレーナーが行うものだが――おそらく、パピヨンを海外のG1で勝利に導いた実績を考慮されてのものだろう。

――あと、あのパピヨンと二人三脚で三年間無事にやっていけた対応力、も評価されているらしい……まあ、それは光栄なものだ。天晴ッ!とかかれた扇子がとても目立っていたことを思い出す。

『…………』

…………新米トレーナーの自分が、シルヴァーパピヨン以外のウマ娘も担当する。となると、当然パピヨンに割ける時間も減ってしまうだろう。

――はぁ。とため息をついてコーヒーに口を付ける。トレセン学園の来たばかりのころはコーヒーなんて飲めなかったら、今では燃料を補給するみたいに飲めてしまうのだから、恐ろしいものだ。

『パピヨンは、どう思うかな』

もし、自分が他のウマ娘も担当するという話をパピヨンにしたらどうなるか、そう考えていると――トレーナー室の扉が開いた。

340 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/28(月) 00:26:03.78 ID:6JVayfYH0
パピヨン「…………お、お兄さん?」

『ん……どうした、パピヨン』

トレーナー室に入ってきたのはパピヨンだった。なにやら緊張した様子で、自分と目線が合わない――今日はトレーニングも何も休みだから、特に何も連絡はしていないんだが――。

パピヨン「い、今大丈夫!?ちょ、ちょっと、おっ……お願い、があるん、だけど……」

『キミのお願いなら大丈夫さ、どうしたんだ?』

……耳がピコピコとせわしなく動いている。顔が赤く「えっと、あの……そのぉ……」と、中々お願い事が出てこない。こういう時のパピヨンは――――あっ。

そうか、さっき思い出したばかりだった――今日は、クリスマスで…………。

パピヨン「…………で、デート!……したいんだけど。今日、クリスマスだから……お、お兄さんが忙しくなかったら――ひゃっ!?」

『悪いパピヨン!そうだ、そうだよな……きっと、こういうのは自分から言うべきだった』

当然パピヨンと自分はそういう仲じゃない、それはあの夏祭りの日に宣言したしパピヨンも分かっている……はずだ。

けど、だからといって……そんな仲の女の子に、こんな思いをさせるわけにはいかないだろう。

彼女の手を握って、言う。

『――デートしようパピヨン。当日になってからで申し訳ないけど……もしキミが自分と過ごしてくれるなら』

パピヨン「…………っ!ぷっ……ぷはは!なにそれ、お兄さんさぁ……えへ。こんな日にお兄さんと一緒に過ごしてくれる女の子とか……アタシ以外にいないんだからね?」

感謝してよね、お兄さん?と、彼女は満面の笑みでそう言った。嬉しそうに尻尾がブンブンと揺れていて……思わず、こっちも笑ってしまった。
341 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/28(月) 00:52:36.44 ID:6JVayfYH0
昨日はすみません、途中で寝てしまってました。

安価もなしでこれだけです。お疲れさまでした。おやすみなさい。
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/28(月) 03:00:09.00 ID:1TB7dIWWo
おつ
甲斐性、甲斐性だよお兄さん
343 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/29(火) 01:49:09.61 ID:D4BrmwKA0
パピヨン「…………〜♪」

トレセン学園から少し歩くとカップルであろう男女がちらほらと見えるようになってきた。

……傍から見るとこっちもそういう風に見えているのだろうか。と、自分の腕にぎゅううっと密着して離れないパピヨンを見る。

黒いゴスロリチックの、全体的にもこもこふわふわとしたコートを羽織り耳当てを装備した完全防寒仕様のパピヨン。その見た目がなんだか羊みたいで可愛らしい。きっと触り心地も良いのだろう。

パピヨン「ほら、お兄さん!もっともっと近づかないと寒いよ〜?」

『……歩きにくいって。ほら、手は繋いであげるからもう少し離れて』

パピヨン「え〜?んー、もうちょっとこうしてる!」

…………今日のパピヨンには何も言えないな、と自分の中でパピヨンを受け入れる。つくづくパピヨンに甘いと思うが、もうこれが平常運転になってしまっているのだからしょうがない。

『まったく、転んでも知らないからな?』

パピヨン「だって転びそうになったらお兄さんが支えてくれるでしょ?」

『……まあ、それはそうだけど』

パピヨン「じゃあ問題ないじゃーん!えへへ、お兄さん暖かいでしょ?」

……自分の腕に抱きつく力がまた強くなった。もう何を言っても離れないだろうなぁ……。

パピヨン「……❤」

じぃ〜……っと、上目づかいで見つめられている。ほんの少しだけ目を細めて、まるで自分を誘惑するみたいに、クリスマスの街並みを歩きながら――パピヨンはなにも言わずにただただ見つめて、自分の反応を楽しんでいた。

344 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/29(火) 01:49:34.17 ID:D4BrmwKA0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

パピヨン「わっ……すごー……!」

『……本当だな、いや凄いな』

軽く食事を済ませて目的地であるイルミネーションが見れるスポットに向かうと――それはまさに圧巻だった。

木々に飾り付けられたLEDが、白く青く輝ききらきらと街を照らす。まるで雪が降っているように見えて、自分も目を奪われる。

――イルミネーションなんてまともに見たことはなかった、この時期のテレビでたまに見るくらいだったが……自分の目で見ると、やっぱり……凄いな。

『こんな綺麗に彩られるものなんだな、パピヨン……パピヨン?』

パピヨン「……わぁ…………!」

ちらりと、横にいるパピヨンに視線を向ける――イルミネーションにも負けないくらい、きらきらとした瞳をまっすぐ向けて、見つめている年相応の横顔に思わず……息を呑む。

――――あの日告白されたとき、自分の表情を好きになったと……パピヨンは言っていたが。なるほど。

……うん、分かるな。分かってしまうな、恥ずかしいけど。

パピヨン「……ぁ、ちょ、ちょっとなにお兄さん!アタシじゃなくて、イルミネーション見てよ!」

『あ、いや悪い悪い、ちょっと見惚れちゃってたよ……』

パピヨン「へっ?」

『イルミネーションとか実際に見るとこんなに凄いんだな。やっぱりキミと一緒じゃなかったらこの光景も一生見ることは――パピヨン?』

パピヨン「…………〜〜〜っっっ!!!ほんっと、お兄さんさぁ…………!ばか、ばかばかばか…………!」

ぽこぽこわき腹のところを殴られてしまう。な、なんでだ……いたっ、痛いっ!痛い!

345 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/29(火) 01:50:18.59 ID:D4BrmwKA0
パピヨン「お兄さんもうアタシにそういうこと言うの禁止!…………いや、ダメ、やっぱりダメ!もっと言って欲しい……」

『どっちなんだそれは』

そもそもそういうこととは一体?何を言ったんだ自分は?

パピヨン「う〜…………お兄さんのそういうところが、まあ好きだけどさぁ……」

『……こら、他の人もいるんだからそういうことは言わない』

一応自分とパピヨンはごくごく普通の一般的なトレーナーとウマ娘。そんな……軽率に好きとか言ったら、どこで拡散されてしまうか分からない。

パピヨン「…………じゃあ二人っきりだったらいいの?」

『…………』

……なんだかこっちも恥ずかしくなってくる。顔が熱くなっていくのを感じながら、何も言わず縦に首を振ると、パピヨンはとても嬉しそうににや〜っと笑う。

パピヨン「……お兄さん、大好き❤」

『……ああこら!パピヨン!』

パピヨン「えへ〜……❤好き、好き好き、だーいすき!」

無邪気に笑いながら好意を伝えてくるパピヨン。少し前のパピヨンでは絶対に考えられない……が、これまでの道のりがパピヨンをこうさせたのだと、自分は理解している。

――変わらないなんてできっこない、自分もパピヨンもずっと変わり続けていく。この関係も、この時間も、この気持ちも……。

パピヨン「ほらほら、お兄さんも何か言ってみたらどう〜?ぷぷ、返事はアタシが卒業したらなんだっけ〜?お兄さんヘタレだし、当日になったら何も言えなくなっちゃいそ〜!」

346 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/29(火) 02:03:40.00 ID:D4BrmwKA0
『……むっ』

――明らかにパピヨンが煽りのモードに入った。言葉の節々から愛情は感じるが、自分をちょっと小ばかにしたような……そんな喋り方。

パピヨン「ほらほら、お兄さんもアタシのこと好きでしょ?じゃあ言っちゃいなって〜!自分の気持ちも素直に伝えられない〜……よわよわお兄さん〜?」

…………そして気づく。にやにやと笑っているが……明らかに顔が赤くなっていることを。冬の寒さでは言い訳出来ないような、頬の赤み。

……どうしてあげよう。このあまりにも可愛い担当ウマ娘を。


どうしてやろう。クリスマスに:安価直下
1 …………何も言えない。敗け。パピヨンが凄い調子に乗る。
2 誰にも聞こえないように、耳元でそっと。
3 その他行動(自由安価)
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/29(火) 08:41:23.47 ID:yUR1W9xyo
2
348 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/30(水) 01:23:32.96 ID:oP30TQ3I0
パピヨン「どうどう?今のうちにちゃんと好き〜って伝えておかないと、アタシがどっかに行っちゃう――――」

止まらないパピヨン。だと言うのなら――しっかりと伝えてあげよう。

『――――俺もキミのことが好きだよ。パピヨン』

そっと彼女の耳元で、誰にも聞こえない小さな声で囁いて。

紛れもない本心を、この特別な夜なのだから――伝えるべきだ。

パピヨン「――へぇぁ?」

その瞬間、パピヨンの顔が真っ赤に染めあがり。組んでいた腕を放して……ゆっくりよたよたと後方に下がる。

――まるで想像していなかったかのように自分を見つめ、言葉にならない声を漏らして。

パピヨン「なっ、はっ、ぇ……?ぁ、お、お兄さん、だって……それは――」

『……ああ、勿論卒業したらキミにはしっかりと想いを伝えるよ』

今の言葉よりももっと凄い言葉を、強い想いを、キミに知ってもらうから。

――――と、俺はパピヨンの綺麗な髪の毛を撫でながら、言った。

パピヨン「――――」

ぷひゅっ。とパピヨンの口から空気が漏れた音が聞こえ、ぱたんと自分の胸の中に顔を埋める。

『……覚悟しておいてくれよ。何倍も凄いからな、きっと。ちゃんと伝えてもらえるか不安みたいだから――今のうちにキミには言っておくよ』

パピヨン「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってぇ……ムリ、ムリムリムリ……っ!」

青白いイルミネーションの光に、紅潮したパピヨンの顔が目立つ。クリスマスの寒さも気にならなくなって、自分もなんだが恥ずかしくなってきたが――顔は、背けなかった。

349 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/30(水) 01:24:01.72 ID:oP30TQ3I0
――――シルヴァーパピヨン以外のウマ娘も担当して欲しい、理事長にお願いされた言葉を思い出す。

理事長には申し訳ないが……今回は断らさせていただこう。

パピヨン「…………お兄さん、こんなんとか知らなかったんだけど。なに、あれぇ……言う感じのタイプ、じゃないえしょぉ……」

『……キミとずっと一緒に居たらあんなことも言えるようになるさ』

別に他のウマ娘以外担当したくないわけじゃない、シルヴァーパピヨンが引退したら一緒にトレーナーを辞めるつもりも、今のところない。

ただ、シルヴァーパピヨンがレースを走り続ける限り――自分は、その走りに夢中になっていたい。

……それにきっとパピヨンもそれは嫌がるだろう。

『……ははっ、顔が赤いな』

パピヨン「はっ!?いや、ちがっ……さ、寒いから!寒いから赤くなってるだけ!お兄さん!おーにーいーさーんー!」

――今日この聖夜を、自分は一生忘れないだろう。

350 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/30(水) 01:27:01.17 ID:oP30TQ3I0
こんな時間に更新で終わりです。おやすみなさい。

次、温泉旅行イベントです。
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/30(水) 07:32:16.86 ID:eo7Hdsi3o
ニヤニヤニヤニヤ
ごちそうさまです!
352 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/10/30(水) 21:15:34.11 ID:oP30TQ3Io
パピヨンがそろそろ終わることに耐えきれ無くなってきました。ずっとだらだらイチャついて欲しいです、コイツら。

想定してたIFとかそういうのは沢山ありますが、それはまあ書かない方が良いですよねとは思います。骨折してメンタルぐちゃぐちゃパピヨンとか、ライムの前でヒスっちゃってライムにぶちギレられるパピヨンとか…

今日深夜ちょっとだけ投下して、来週には完結予定です。よろしくお願いします。
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/30(水) 23:14:27.43 ID:eo7Hdsi3o
正史=今の物語が一番優れているからこそifルートが輝くのだ……

じゃあ海を渡って逃さないと追いかけてきた魔王と決戦とか、告白を突き放されてズタズタになったパピヨンは妄想で愉しむことにするから
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/10/31(木) 02:10:38.15 ID:cDb3R0Ha0
もっとマンティやシルフィとレースでバチバチするの見たかったけどこればかりはコンマのお導きだからしゃーない
355 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 03:37:18.22 ID:lcqyPAtO0
シルヴァーパピヨンと共に駆け抜けたトゥインクル・リリーズでの3年間――彼女は色々なものを背負い抱えてここまで来た。

期待も想いも、信頼も本音も。全部全部投げ出さずに抱えたパピヨンの軌跡に……色々な人が魅了されていった。勿論、自分もその一人だ。

『…………』

机の引き出しを開けてそれを取り出す、去年商店街の福引で見事引き当てた温泉旅行券。3年間見事に戦い抜いた彼女、その一区切りの今の時期ならば……これも使えるだろう。

『実は期限も結構ギリギリだしな』

そう言えばパピヨンはいったい誰と温泉旅行に行くんだろうか。確かあの日は……友達を誘っていくんだったか。それとも親と水入らずの休養を……うーん、あまり覚えていない。

しょうがない、とりあえずこの温泉旅行券だけパピヨンに渡してあとは彼女に任せるか。レースもしばらくは入れていないし、いつでも練習休みは取れるスケジュールだ。

パピヨンが休んでいる間、自分も色々と休憩でもしようか……もちろん仕事は沢山あるが、少し休むくらいの時間はあるだろう。

『そろそろ練習だし来ると思うんだが――』

パピヨン「お兄さんどうも〜、あーさむさむ……」

とか噂してたら早速パピヨンが入ってきた、もう自分の家みたいに遠慮なくソファに腰を掛けて当然のようにお菓子を食べ始めたその姿は、今では何も珍しくない。

『パピヨンパピヨン、ちょっと話があるんだがいいか?』

パピヨン「え〜?んもー、なになに?」

寒そうにしながらこっちに近づいてくるパピヨン。そして、自分はその温泉旅行券をパピヨンに見せて…………。

356 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 03:38:42.35 ID:lcqyPAtO0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

パピヨン「あ〜着いた〜!結構長かったね〜!」

『…………』

――温泉旅行の話をした次の日、自分とパピヨンは温泉旅館の前まで来ていた。

パピヨン「ほらほら早く部屋に行こ!荷物置いて、温泉街見て回ろ!」

『……あ、ああ』

手をぐいぐいと引っ張られて、パピヨンに引きずられるがまま旅館内に入る。

昨日パピヨンに温泉旅行の話をしたとき、誰と一緒に行くのかを訊ねた。ペアの旅行券なのだから一人で行くわけにもいかない。友人……ライムやシルフィーにマンティ、それかあの仲が良い親のどちらかと行くものだと――しかし。

パピヨン『――――お兄さんとに決まってるじゃん、むしろそれ以外にある?』

……と、断言されてしまっては何も言えなかった。パピヨンに告白されてからというもの、こういったところをストレートに伝えられてしまうので、少し恥ずかしい。

…………いや少し考えれば分かったことだ。パピヨンが一緒に温泉に行く相手に自分を指名することなんて。3年間二人三脚で共に歩み、クリスマスデートをして、あの告白に答えをハッキリすると誓い――ほとんど、トレーナーと担当ウマ娘という関係を越えている。

いや、温泉とかクリスマスデート自体は他のトレーナーも行ったことがあるという話は聞いたことがある。なんでも有名なトレーナーは毎回温泉旅行に行っているとか――。

パピヨン「……一緒に温泉とか入っちゃう?」

『……入るわけないだろ』

え〜、でもお兄さんも一緒に温泉入りたいでしょ?一応混浴とかもあるらしいよ?と、ニヤニヤと笑いながらこっちを見てくる。随分と慣れてきたつもりだが、今でも少しビックリしてしまう。

……というか混浴なんてあるのかこの温泉旅館。

パピヨン「ぷぷ、あーあ。お兄さんのお背中とか流してあげたかったのにな〜。お兄さんもったいなーい」

357 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 03:40:32.92 ID:lcqyPAtO0
――――温泉街を歩き、人気のある観光名所を巡り、そして旅館での料理に舌鼓を打つ。そして……。

『……ふぅ』

温泉に肩まで浸かり、体の芯までポカポカと温まる。今までの疲れがじんわりと溶けていく、そんな風に思えてしまう。

……これが温泉の効能って奴だろうか。トレーナーの間でも湯治でウマ娘のケアをするなんてのは聞かない話ではない。

『というか、本当に混浴あるんだなここ……』

時間帯で温泉が混浴に切り替わるらしい……今時あるのかそんな温泉が。いやまあ、今の時間から混浴の時間まではだいぶあるし関係ないか。

『……それにしても気持ちいいな』

体が温泉の温かさで、溶けて混ざり合っていく。はぁ、時間さえ忘れてしまいそうだ……。


混浴温泉:コンマ直下

コンマ5以上でパピヨン行ったー!
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/02(土) 06:02:08.83 ID:2lDoRVCUo
ヌッ
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/02(土) 11:42:04.99 ID:UrdJ1j5bo
ヘタれたー!
360 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 14:05:36.18 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「あっ、あっ…………あ〜!お兄さん長かったね!温泉そんなに良かった?」

『ああ、良い温泉だったよ……ふぅ、時間を忘れて堪能しちゃったな』

もっと早くに上がるつもりだったんだが。温泉……良いものだな、少しハマってしまうかもしれない。

パピヨン「も、もしかして〜。混浴で女の人が入ってくるの期待してたとか?実はちょっとだけ混浴の時間になっちゃってたもんね?」

『はは、確かにな。時間的には混浴になってたが誰も入ってこなくて助かったよ』

……まあ今時混浴の温泉に女性が入ってくるなんて滅多にない気がするけど。それでも可能性があるならちょっと怖いしな。

『……というかパピヨンまだ温泉入ってなかったんだな。早く入ってきたらどうだ?』

パピヨン「わっ、分かってるって!あ、あ〜あ〜温泉楽しみだな〜!」

わざとらしくそう言うとパピヨンは自分から逃げるように小走りで温泉に向かっていった。どうやらもう着替えの準備はしていたみたいで、ちょうど温泉に行くというタイミングで自分が戻ってきたんだろう。

『さて…………』

―――ーもう一度部屋をぐるりと見渡す。ペアのチケットということで……部屋が一つしかもらえなかった。一つの部屋に、布団が二つ。

……気持ち布団同士の距離が近い気がする。少し離しておこう。

361 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 14:06:28.75 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「……あっ、きもちっ……」

思わず声が出ちゃった……確かに、お兄さんがあんなに幸せそうに言うくらいだし、本当に気持ちいな……。

…………それにしても。

パピヨン「……もっと早く行けばよかったぁ……」

混浴ぎりぎりの時間前待って、それでお兄さんと……お、温泉に入るつもりだったのに。適当に時間間違えちゃったとか言い訳して、お兄さんに……色々してあげたかったのに。

でも最後にちょっとビビちゃって本当に大丈夫かなとか考えちゃったせいで!お兄さん戻ってきちゃったぁ……うぅ。ヘマしちゃったぁ……。

パピヨン「あ〜!今頃お兄さんと一緒に温泉でそれっぽい雰囲気になる予定だったのに〜……!」

――けどまだ大丈夫、まだプランはある。いくらお兄さんがアタシの気持ちを受け入れたうえで、のらりくらりと躱すのなら……逃げられないようにするだけだ。

お兄さんはアタシを傷つけない。お兄さんは、アタシを傷つけられない。

だから今日……いや今夜!アタシは……き、キス。キス、するぞ!

パピヨン「……〜〜っっっ!!!」

やばい、想像するだけで顔から火が出そう。ばしゃばしゃと手のひらで温泉を叩いて気を紛らわす。キス、口づけ。頬っぺたにちゅーじゃなくて、唇と唇で……だ、大丈夫。大丈夫、アタシなら……行ける。

…………でも、お兄さんはどう思うかな。無理やり唇奪うとか、お兄さん……い、嫌がるかな……ダメだよね……。

パピヨン「いや!大丈夫!アタシは負けない!大丈夫!」

そもそもお兄さんが悪い!クリスマスにアタシに好きとか言っといて!沢山アタシに優しくして!全部全部甘やかしてくれ!好きになるに決まってるじゃん!!!

――そう、アタシをこんな気持ちにさせてるお兄さんに教えて上げるんだ!こんなことばっかりしてたら……いつかこうなるぞって!

パピヨン「…………よし、頑張ろう!」

温泉の準備してる時に、ほんのちょっとお布団の距離も近くしておいたし!こんなチャンス、滅多にないもん!

362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/02(土) 14:14:49.47 ID:+IJUCGXCO
キスだけでええのかおーん?!
363 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 15:35:56.21 ID:lcqyPAtO0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

『よし、じゃあ明かり消すぞ』

パピヨン「あ、うん!オッケー!」

温泉から上がり、浴衣に着替えた自分とパピヨン。ちょこんとお布団の上に座っているパピヨンがなんだか小動物みたいで、可愛らしい。

……まだ体がぽかぽかするな。流石温泉だ、そういう効能があるんだろう。

天井の明かりからぶら下がっている紐を引っ張って明かりを消す。別に気温が下がったわけじゃないのに、これだけでほんのりと冷えたような感覚がする。

部屋の縁側にある大きな窓から差し込んだ月明かりだけが、今この部屋をうっすらと照らしている。その月明かりで見えるパピヨンの顔が……なんだかとても、綺麗に見えた。

パピヨン「お、お休み……お兄さん」

『ああ、お休みパピヨン。ふぁぁ……よく眠れそうだな、今日は』

パピヨン「…………」

364 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 15:38:17.82 ID:lcqyPAtO0
『…………』

……ぼんやりと意識が残っている。眠っているような起きているような……気持ちのいい夢をずっと見ている、そんな感覚。

……パピヨンはもう眠ってしまっているのだろうか。背を向けて眠ってしまったせいで、様子を見ることが出来ない。

まあ、早く眠ってしまおう……そう思った、瞬間。

『…………ん』

ゴソゴソと、布団の中に誰かが入り込んでくる。今この状況で、布団に入ってくるのなんて……一人しかいない。

『……ぱぴ、よん?』

パピヨン「ひぁ。お、おにい、さん……」

びくっ。と自分の背中にくっついてきたパピヨンから可愛い声が聞こえてくる。自分が起きているとは思っていなかった……もしかしたら、自分が眠っていると判断したからこうやって布団の中に入り込んできたのかもしれない。

パピヨン「…………ちょ、ちょっと。さ、寂しくなっちゃって……ごめん、起こしちゃって」

『……良いよ。そんな謝らなくて』

背中からパピヨンの温もりを感じる。一つの布団の中でこうやって密着するなんて良くないことだが……今日くらいは、目を瞑ろう。

……ボソッと、パピヨンが口を開く。

パピヨン「…………ごめん、お兄さん」

『え―――ー』

瞬間、自分の体がぐるんと回転して仰向けに、そして……それに覆いかぶさるように、パピヨンが自分の上に跨った。

見えていた天井の景色にパピヨンが映りこむ。少しだけ開けた浴衣と、ほんのりと汗ばんだパピヨンの顔が。

365 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 15:40:16.49 ID:lcqyPAtO0
『…………パピヨン』

パピヨン「ねえ、アタシお兄さんのこと……大好きだよ。前にも言ったけど、今までも沢山伝えてきたけど……今も変わらず、大好きだよ」

ずしっ……と、パピヨンの体重が掛かる。

パピヨン「お兄さんさ、アタシをからかいすぎだよ。ずっとずっとアタシに優しくして、卒業後に気持ちを伝えるなんて言って……クリスマスに好きとか言っちゃって」

彼女の顔が近づいてくる、いつもは四つに纏めている青みがかった銀色の髪の毛が、宝石みたいにきらきらと輝いて。ふんわりと、彼女の匂いが鼻をくすぐる。

思わず――見惚れてしまう。

パピヨン「頭を撫でてくれて、手を握りしめてくれて、優しく抱きしめてくれて……そんなことされたらさ、お兄さん……こうなっちゃうんだよ?」

お兄さんが悪いんだよ?なんて言いたげな表情、だけど……こっちまで聞こえてくる、彼女の心臓の音が。

小さく震えている、彼女の手が。

『……落ち着いてくれ、パピヨン』

パピヨン「お、落ち着いてるよ。アタシはずっと……ずっと落ち着いてる」

キスがしたい、お兄さんと一緒になりたい、お兄さんに……アタシのことをもっともっと知ってほしい。ずっと前から思ってたアタシの気持ち、勢いでやってるわけじゃ……ないんだよ?

『……』

パピヨン「お兄さん……抵抗、しないんだね。跨って、お兄さんを押さえてるのに」

『……万が一、キミを傷つけるわけにはいかないからな』

パピヨン「……っ!」

366 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 15:46:04.69 ID:lcqyPAtO0
パピヨン「お兄さん……っ!ほんと、そういうところが……っ!」

『……キミが大事だからな』

自分の本心を隠さず伝えると、どんどんとパピヨンがヒートアップしていく。彼女の中の何かを、刺激してしまっている……。

パピヨン「ふーっ……お兄さん。アタシの……お願い、訊いてくれる?」

『……ああ』

パピヨン「――――キス、してもいい?」

真剣な表情で、お願いをしてくる。彼女の心臓の音が嫌でも聞こえてくる。この状況だ、ムリやりにでも奪うことだって出来るはずなのに、わざわざこうやってお願いしてくるというのは……。

…………やっぱり優しいな、キミは。

『――――パピヨン』


コンマ判定:コンマ直下
1-3 ……今はこれで我慢してくれ。
4-6 ……寝ている間にされたことなら、自分は気が付かないだろうな
7-9 …………おいで、パピヨン。
0 ――――。
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/02(土) 16:21:31.42 ID:JULCxunCo
踏み切ってージャンプー!
368 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 17:17:36.15 ID:lcqyPAtO0
『……悪いな』

俺はまた、キミにこんな思いをさせてしまって……でも、今はこれで我慢してくれ。

そう囁いて、俺はパピヨンの顔に唇をそっと近づけて――――。

パピヨン「ひぅ……!?」

――可愛らしいその頬っぺたに唇をくっ付けた。ちゅっ、と小さなリップ音が鳴って、突然のキスに……パピヨンは理解できていないようだった。

パピヨン「へっ……?あっ、ぇ、ふぇ…………?」

口をパクパクを開いて、俺の顔を見つめて……明らかに狼狽えている。きっと、パピヨンの方からキスをするつもりだったのに、俺からキスをされて……ぽかーんと、固まってしまっている。

パピヨン「…………い、いやいや。ダメ、違う、違うって。ア、アタ、アタシは……!」

『……今はこれだけだ。キミがしたいことも、して貰いたいことも…………全部全部、卒業したらな』

パピヨン「……〜〜〜っっっ!!!」

パピヨンは俺が言ったこの言葉に、何か言おうとして……そして、ぺたりと顔を胸に埋めた。

うううぅううう〜〜〜…………!と、うめく声が、聞こえてくる。

パピヨン「バカ、バカ、バカ!お兄さんズル、ズルだよぉ……!卑怯者ぉ……!」

『……反省してるよ』

パピヨン「そんな、そんなこと、言われたら…………我慢、するしか、ないじゃん…………!」

『キミは優しいから、俺のこんなお願いも訊いてくれると思ったんだ……だってキミは……無理やり奪わないだろ?』

パピヨン「…………そっちが勝手にキスしたくせにぃ……!」

『……嫌だったか?』

……何も答えず、パピヨンは自分の胸に顔を埋めながらぎゅうっと抱きしめてくる。

369 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 17:29:48.55 ID:lcqyPAtO0

パピヨン「……じゃあ今日は一緒に寝て、一緒のお布団で」

『……それは』

パピヨン「これくらいしてくれなきゃ、お兄さんのあることないこと言い触らすから」

『……それはまずいなぁ』

――ゆっくりとパピヨンは顔を上げ、自分の体から降りて……横に寝そべった。

パピヨン「ん」

『……ありがとうな』

自分の腕を枕にして、彼女は満足そうに鼻を鳴らす。

パピヨン「…………卒業したら覚悟しておいてよね、お兄さん」

『……ふふっ、それをキミが言うか?』

――――ああ、未来が怖い。何をされてしまうんだろうか。それを考えるだけで……思わず、笑ってしまいそうだった。

キミを愛する。告白させた責任も、今日こんなことになってしまった責任も全部取る。だから――だから。

今この瞬間、悪いお兄さんでいることを……許してくれ。パピヨン。

パピヨン「…………うん。いいよ、許してあげる」

だって――お兄さんは、こんな我儘なアタシを、ずっと許してくれてるんだもん――――えへへっ。
370 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 17:30:46.39 ID:lcqyPAtO0



――――シルヴァーパピヨンとの間に、かけがえのない絆を感じたひとときだった……。


371 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 17:34:36.56 ID:lcqyPAtO0
一旦休憩。続きは深夜くらいか明日に。

シルヴァーパピヨン最終イベントです。
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/02(土) 17:42:12.09 ID:UrdJ1j5bo
おつおつー
相変わらず鉄壁のお兄さん理性
でもちょっと、いやかなりデレてない?デレてるでしょ
373 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 23:59:06.51 ID:lcqyPAtO0


――スタートダッシュでハナを握り、その小さな体を懸命に動かして、最後の直線までスタミナ全てを燃やし尽くして走りぬく。それが、シルヴァーパピヨンというウマ娘のレースだった。

作戦は要らない、ただただ駆ける。余計な雑念はすべて吹っ飛ばして、必死に前を往く――見る人が見ればその走りは愚かで、合っていない適性も走るスプリンターであると、笑い飛ばすだろう。

ダートの短距離しか走れないウマ娘で。

それより長い距離はスタミナを使い切ってしまう、後先の考えられないウマ娘だと。

しかし、だからこそ彼女の走りは記憶に残る。ある者はその走りに勇気をもらい、ある者は何があるか分からない未来を、信じて生きていこうと願うことが出来た。

――テレビでも中継されたその海の向こうの走りは、様々なウマ娘を焼き尽くして――。

――――美しい蝶の舞を見るように、魅了されて。

374 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/02(土) 23:59:38.35 ID:lcqyPAtO0

パピヨン「…………」

『…………』

手に馴染ませたオイルを全体に塗り広げていく、輝きにムラができないように全体に均一にオイルが浸透するように。櫛も使い毛も整えて……確認する。

あの日クリスマスに見たイルミネーションのように、彼女の尻尾は今……輝いていた。

『どうかなパピヨン』

パピヨン「ん〜……」

師匠は確認するように尻尾を軽く振る。ゆらゆらと横に揺らしたかと思えば、いきなり力強くブンブンと尻尾を振ってみたり。自分で尻尾を触ってみて触り心地も確認して……暫くすると。

パピヨン「……ん〜!90点上げちゃお!残りの10点も頑張って取れるように精進してね弟子〜?」

『あぁ〜……惜しいなぁ。……因みにどこがマイナス10点だったんだ?』

パピヨン「根っこのところがちょっと硬い気がする。もう少し力入れて櫛とか入れてもいいと思うよ?お兄さんの手つき、優しいけどちょっと弱いもん」

ぷぷぷ、とにやにや笑いながら尻尾でぺちぺちと叩いてくる彼女は、自分のウマ娘尻尾手入れの師匠だった。彼女を担当するようになってからの3年間で、最初は全然だった腕前も今では中々のものであると自負できるくらいには上手くなっていた。

自分がパピヨンの尻尾の手入れをするという情報は彼女の友達から漏れたりしているらしくて、たまに自分に尻尾の手入れをお願いするウマ娘が出てくることもあったが……大体はパピヨンが何処からともなく現れて、代わりにやってくれていた。

つまり、自分の腕前はパピヨンと同等か――いや、まあそこまで自惚れるわけではないが、嬉しいものだ。

パピヨン「お兄さんの腕前で他のウマ娘に手入れさせるなんで恥ずかしいからね、まだまだアタシの尻尾で練習させてあげないと〜……ね?」

……この調子じゃ自分がパピヨン以外のウマ娘に尻尾手入れをするのは当分先だな。

375 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:00:31.43 ID:2/VoYCQc0

『キミの後輩?』

尻尾の手入れを終えて、今後のレース展開やトレーニング方針について話し合っていると急にパピヨンがそんな話をし始めた。

パピヨン「そうそう、前に話さなかったっけ。○○ちゃんって言うんだけど、トレセン学園無事に入学できたんだって」

ほら、この子この子。とパピヨンがスマホで写真を見せてくれると、ぎこちない笑顔でこっちにピースをしているウマ娘がいた……あ。そうだ、だいぶ前にパピヨンが話していた、ファン感謝祭の……。

『へえ、よかったじゃないか。もしかしてパピヨンが走りとか見てあげたのか?』

パピヨン「いや?アタシがやったのは尻尾手入れの道具相談とか、入学試験の勉強とかそういうの?レースの相談は……されてないなぁ」

『えっ……あ、そうなのか』

パピヨン「んま、アタシも問題ないと思ってたし?というか、そろそろ約束の時間だから行ってくるね?」

そう言うと彼女はどこかに行こうとする、今日は練習休みだというのにジャージに着替えていたのは……もしかして。

『……ふふっ。そうか、じゃあ自分も行こうかな。キミが言う後輩がどんな子なのかも気になるしな』

パピヨン「うーわ、お兄さんキモっ……新入生に会えるとわかってすぐにニヤニヤして……だからアタシ以外の担当ウマ娘居ないんじゃないの?」

……それをキミに言われるとなんだかモヤモヤするな。

パピヨン「……あーあ、○○ちゃんにアタシのお兄さんがキモいのバレちゃうじゃん。○○ちゃんはアタシのことをカッコいい先輩だ〜って思ってくれてるのに」

『キミなぁ……』

376 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:01:30.70 ID:2/VoYCQc0
――――――――――――――――

――――――――

――――

――

後輩ウマ娘「――は、初めましてパピヨンさんのトレーナーさん!わ、私○○って言います!ま、前のファン感謝祭でパピヨンさんと連絡先を交換しまして、その……!あの!」

練習用コースに向かうとパピヨンが見せてくれた写真の彼女がいた。パピヨンと同じくらいの背丈で……いや、少しだけ○〇さんの方が大きいか?

『初めまして○○さん。パピヨンからキミのことは訊いているよ……だから一旦落ち着いて」

ガチガチに緊張している彼女に優しく声をかける。「は、はい!」と大きな返事をして、大きな深呼吸をする。

後輩ウマ娘「ぱ、パピヨンさんの走りをテレビで見てから、パピヨンさんの走りにずっと憧れていて……それで私、トレセン学園にまで来てしまって……!」

『……へえ、それは凄いな。トレセン学園に入学だなんて、それは凄い頑張ったんだろう?』

やはりまだどこか落ち着いていない彼女。その体をじーっと見る……なるほど、確かに入学したてのウマ娘としては中々に鍛えられていた、特にトモの筋肉は初めて会った時のパピヨンのそれを髣髴とさせるような……。

パピヨン「うわ、○○ちゃんを舐めまわすように見てる……○○ちゃん、こういう時はちゃんとキモいって言ってあげないとダメだよ?そうしないとお兄さん犯罪者になっちゃうから」

『いやいや、自分はだな……』

後輩ウマ娘「き、キモいです!パピヨンさんのトレーナーさん!!!」

『えっ』

――パピヨンがにやにやと笑ってみている。まさか何か吹き込んだのか……?

パピヨン「は〜、可愛いなぁ○○ちゃん。後で一緒に駅前のパフェ食べに行こうね、お兄さんのお金で」

あ、違うな。ただ初めてできた後輩が可愛くて仕方ないんだ。それで後輩を甘やかすもんだし、自分のことも色々と言っているだろうから……はぁ。

……まあ、○○さんなら問題ないだろう。良い子だろうし。

後輩ウマ娘「ご、ごめんなさい!と、トレーナーさんを犯罪者にはしたくなくて……!』

377 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:02:30.59 ID:2/VoYCQc0

後輩ウマ娘「――――わ、私パピヨンさんに言われて楽しく走れるようになったんです。勝った時はもちろん、負けた時も……も、もちろん負けたら悔しいですけど!どうすればもっと早く走れるのかとか、色々と考えられるようになって……ウジウジすることが少なくなったと言いますか」

――負けが続いて、走ることが楽しくなくなった……けどそんなときにパピヨンの走りを見て、それが彼女の希望になった。

パピヨン「……えへへ、やっぱり恥ずかしいな正面から言われると」

後輩ウマ娘「パピヨンさんがいなかったら、きっとアタシは……今この場に居ませんでしたから」

きらきらと輝くその瞳で、真っ直ぐとパピヨンを見つめる――きっと昔のパピヨンならここで変に茶化したり、煽ったりするのだろうけど……今のパピヨンは違った。

その好意をきちんと受け止めて、返してあげられる。優しい後輩想いなウマ娘だった。

後輩ウマ娘「――で、その、お願いなんですけど……ぱ、パピヨンさん!わ、私と……走ってくれませんか!」

パピヨン「――――えっ」

後輩ウマ娘「トレセン学園に入学出来たら……さ、最初はパピヨンさんと走りたいなって!ずっと思っていまして……だ、ダメです、か?」

申し訳なさそうな表情の彼女を見て、自分はパピヨンをちらりと見る。驚いたような表情、そして――すぐにその表情はスプリンターとしてのものになって。

パピヨン「――いいよ、コースは?」

後輩ウマ娘「あ、ありがとうございます!コースは……ダートの1,200m左回りで、お願いします!」

パピヨン「!」

――――ダート1,200m左回り。それは、彼女があの世界で一着となったレースの……。

パピヨン「ぷっ……ぷはははは!え、○○ちゃんさぁ……言うじゃん。でもアタシ、○○ちゃんボコボコにしたくないしなぁ」

後輩ウマ娘「わ、私を。ただのウマ娘だと思うと……い、痛い目見ますよ!」

パピヨン「――――へぇ。成長したね」

そして、二人のダートスプリンターは……コースに向かって歩いていき……さて、自分は計測係をしなくてはな。

378 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:02:57.49 ID:2/VoYCQc0

――――レースの結果は当然のようにパピヨンの圧勝だった。短距離レースの着差とは思えないほどの――圧勝。

パピヨンの走りは何も変わらない、ただただ全力で先頭を走る――それだけだった。それだけが作戦なのだ。

後輩ウマ娘「はっ……はっ、はぁ……!っ……!」

膝に手を置いて、必死に息を整えている彼女に対して。パピヨンは……。

パピヨン「――っ。はぁ、はぁ……!うぷっ……お、お兄さん!お兄さんドリンク!二人分ね!」

――地面に横になっていた。スタミナを全て使い切ったんだろう、もう立つのも暫くは難しいだろう。○○さんの分も含めて二つドリンクを持っていく。

『……お疲れ様パピヨン。○○さんも良い走りだったよ』

後輩ウマ娘「はぁ、はぁ……!あ、ありがとう、ございます……!」

パピヨン「ん、ありがとー……おぇ」

きっとこれもパピヨンなりのファンサービスだったのだろうか……いや、違う。

シルヴァーパピヨンは誰が相手でも自分の全力を出す、スタミナ全てを使い切って1,200m先のゴールまで駆ける――なぜならそれが一番、楽しいのだから。

パピヨン「ねえ、○○ちゃん――今日はアタシがボコボコにしちゃったけどさぁ……待ってるね」

後輩ウマ娘「へ……?」

パピヨン「○○ちゃんが正式なレースに出て、ダートのG1とかに出場出来たらその時は――アタシがそこでまた戦ってあげる。それってきっと……めっちゃくちゃに楽しいよね!」

後輩ウマ娘「!」

パピヨン「――ぷはは、アタシはまだまだ現役だからね。衰えなんて、感じさせないから」

後輩ウマ娘「は――はい!私、私……!すぐにそこまでたどり着きますから!それで、私はパピヨンさんに教えてもらった……楽しい走りで!貴女と走るために!!!」

379 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:03:39.61 ID:2/VoYCQc0



――――シルヴァーパピヨンの走りに焼かれたウマ娘は多い。華麗に舞う蝶の美しさに魅了されて近づいたウマ娘は、目に見えない灼熱の炎に燃やし尽くされてしまうのだ。



全身全霊、完全燃焼、全力投球。



あるいはそれを運命と呼ぶのかもしれない。パピヨンとともに走ったライバルたちもまた、そんな灼熱の炎に焼かれた者ばかりだった。



彼女は駆ける。"楽しい"気持ちを忘れずに、"魔王"か"砂上の銀の蝶"とか大層な肩書も身に着けて、どんな期待も約束もプレッシャーも抱えて――――ただただ、その一瞬に命を懸けて。



だから彼女は――どこまでも人々を魅了した。何もかもを燃やし尽くす、その銀色の炎で。



――人々の頭のフィルムに、その激動のレースを焼き付けて。



380 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:04:23.47 ID:2/VoYCQc0





パピヨン「――――期待してるね、ずっとずっとアタシは――前で待ってるから!」




381 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:06:45.19 ID:2/VoYCQc0
お疲れ様でした、これにてシルヴァーパピヨン育成完了となります。

とても長い間付き合ってくださった皆さん、本当の本当にありがとうございました。

しっかりと書くことが出来て、とても満足しています!
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/03(日) 00:14:23.21 ID:3cdqDGujo
ブラボー…!ブラボー!!
めっちゃ綺麗に書ききってて凄い!
次世代に繋がっていく描写好きだぁ
383 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 00:53:44.51 ID:2/VoYCQc0
次育成キャラについてのお知らせです。一応もう一人はオリウマ娘を育成するつもりです。

明日の夜19:00くらいに次スレを建ててやる予定なので考えている人はその時間くらい来てくださると嬉しいです。

シルヴァーパピヨンがダートウマ娘だったので次の子は芝適性の子にするつもりです。距離適性は安価かコンマか、それで最後にキャラ募集をしてスタートです。

ではよろしくお願いいたします。本当に付き合ってくださりありがとうございます、おやすみなさい。

何か質問とかもあったら何でも大丈夫です。
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/11/03(日) 01:59:28.00 ID:gRP06ZXqO
おつかれー
楽しかったよー
次スレも参加するよ
パピヨンはいる時空で考えて良い?
385 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 12:36:39.10 ID:2/VoYCQc0
>>384
パピヨンはいる感じで考えてます。なんでお兄さんもいます。

マンティはコンマであんま一緒に走れない感じになってしまったんですけど、シルフィーとはもっとやれたよなぁって反省してます。同室キャラにしなくても良かったかも……。
386 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 19:03:25.12 ID:2/VoYCQc0
シルヴァーパピヨンの競争成績

メイクデビュー 1着
Pre-OP_プラタナス賞 1着
G1_全日本ジュニア優駿 2着
G3_ユニコーンステークス 5着
G3_エルムステークス 1着
G2_東京盃 2着
G3_カペラステークス 1着
G1_ドバイゴールデンシャヒーン 1着
G3_エルムステークス 1着
G1_チャンピオンズカップ 2着

通算成績:10戦6勝

387 : ◆b0/EDFEyC136 [saga]:2024/11/03(日) 19:10:39.35 ID:2/VoYCQc0
お疲れ様です。次スレとなります。
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1730628544/

こっちのスレの残りはなんか書いたりできたらなぁと思っています。
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