くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」

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76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:00:53.99 ID:0Oqbp7Vz0
病院

くーちゃん「みんあ、くーちゃんの嘘、ほめてくれました」

くーちゃん「帰ってから、ずっとずっと泣いていました」

くーちゃん「みんな、本当のことが知りたかったわけじゃないんです」

くーちゃん「自分にとって、都合のよいことなら。神秘的で、美しく見えたら。なんでもよかったんです」

医師「…もう、やめたらいいんじゃないかな」

くーちゃん「…そう簡単には行きません」

くーちゃん「おうちのお金に、なってますから」


 
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:01:45.29 ID:0Oqbp7Vz0
医師「…ねえ、空ちゃん」

医師「お友達は、いるかい?」

くーちゃん「いません。いりません」

くーちゃん「くーちゃんは、人間が、好きじゃなくなりました」

医師「…そうか」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:03:08.35 ID:0Oqbp7Vz0
帰り道

女1「あ! あの子! 巫女さんの天野さんじゃない!」

女2「ほんとだ! すごい! かわいい!」

女3「植物の声、聞こえるなんてすごいわn」

女1「握手してもらっても

くーちゃん「うるさいです」

女1「え」

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:36:52.71 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん(くーちゃんの嘘にまみれた対話もどきを褒められても、何もうれしくないです)

くーちゃん「うるさいです、来ないでください。うるさいです」

話しかけられないほうが楽でした。
 
嫌われているほうが楽でした。
 
くーちゃんの嘘が神聖視されるより、ずっとずっとマシでした。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:38:26.02 ID:0Oqbp7Vz0
学校行事も、休み時間も、全部全部嫌いになりました。

でも学校に行かないと、お母さんが心配するのは目に見えたので

渋々舌打ちしながら、小石を蹴って、学校に通い続けて。

なんとかくーちゃんは小学校という一つの山を終えることができました。
 

まあそのあと中学校もあるのか思うと、憂鬱なのは変わりませんが。

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:39:28.04 ID:0Oqbp7Vz0
卒業式

くーちゃん(ようやく終わりました)

くーちゃん(中学校を卒業したら、山にこもって、草でもかじりながら、一生過ごすのもありかもです)

くーちゃん(お母さんのために、頑張っては来ましたけど)

くーちゃん(中学を卒業すれば、もういい年です)

くーちゃん(お母さんの顔色を窺わなくてもよいでしょう)

母「くーちゃん」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:40:16.98 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「はい、なんでしょう」

母「みんなと写真、撮らなくていいの?」

くーちゃん「いいでs」

?「天野さん」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「校長先生」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:45:00.94 ID:0Oqbp7Vz0
校長先生「よかったら、一緒に写真でも、撮りませんか?」

くーちゃん「・・・・・・・」

くーちゃん「校長先生なら、よいです」

84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:46:02.76 ID:0Oqbp7Vz0
パシャッ

校長先生「天野さん、笑ってくれてもいいんですよ」

くーちゃん「くーちゃんはうそがきらいです。笑いたくないのに笑えません」

校長先生「なるほど」

校長先生「天野さん。少しお話をしませんか?」

くーちゃん「おはなし?」

校長先生「喋りたいことがあります」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:48:17.19 ID:0Oqbp7Vz0
体育館裏

くーちゃん(久しぶりに来ました。あの日、以来です)

校長先生「ずいぶんと、お花、増えたでしょう」

くーちゃん「すごいです。きれいです」

くーちゃん「赤、青、黄色のパンジー、にタンポポまであります。たくさんです。たくさん」

くーちゃん「まるでお花のじゅうたんです」

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:49:07.54 ID:0Oqbp7Vz0
優しいお花さんたちの声が聞こえてきそうで、

くーちゃんはいつものように土の上に寝そべって、

トンネルを感じることにしました。

温かくて甘い香りで満たされたトンネル。

中には、あの時の切り株さんみたいに、子どもたちの笑い声がたくさんたくさんしみ込んでました。

くーちゃんに友達はいませんが、

いろんな子たちにとって、学校生活は、充実した時間になってたみたいです。

そんな子どもたちに踏みしめられながら生きてたお花たちは、子どもたちのことが大好きでした。

誰にも邪魔されない。本物の対話です。

巫女もどきのお仕事より、ずっと幸せでした。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:51:58.60 ID:0Oqbp7Vz0
校長先生「天野さん。校長先生は」

くーちゃん「ごめんなさいは、いりません」

校長先生「……」

校長先生「……天野さん、それでもあなたの望んでいたことは、きっとこんなことでは」

校長先生「だから、せめて…」

くーちゃん「いりません」

くーちゃん「校長先生は、くーちゃんのこと、思ってやってくれたです」

くーちゃん「だからごめんなさいは、いりません」

くーちゃん「校長先生は頑固ですが、やさしい人です」

くーちゃん「それが少し大きくなりすぎて、違う形になってしまっただけです」

くーちゃん「だから、気にしてません」

くーちゃん「少なくとも、変な視線を向けてくる人より、校長先生はすきです」

くーちゃん「くーちゃんは人間が嫌いですけど、校長先生のことはすきです」

88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:53:22.14 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「くーちゃんのこと、わかってくれて、うれしかったです」
 
くーちゃん「くーちゃんは、謝られるのが、好きじゃありません」

くーちゃん「謝られても、くーちゃんにできることは何もないですし、過去は変わらないので」

くーちゃん「だから、大丈夫です」

校長先生「……天野さん、ありがとう」

校長先生「何かあったら、何でも相談してください。校長先生は、天野さんの味方です」
 
くーちゃん「なるほど」

くーちゃん「じゃあ、一つだけ」

89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:54:19.92 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃん「「天野さんじゃないです。くーちゃんです」


校長先生「・・・・・・・ふふっ」

校長先生「わかりました。くーちゃん」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:54:48.16 ID:0Oqbp7Vz0
くーちゃんはくーちゃんという名前が大好きなんです。

だから、大切な人には呼んでほしいです。

皆さんも、いつでもくーちゃんと気楽に呼んでください。
 
何はともあれ、くーちゃんの小学校のお話は終わりです。長すぎましたね。

ですが、まだ大事な人、出てきてません。

安心してください。ここからちゃんと出てきます。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/03(土) 21:55:16.92 ID:0Oqbp7Vz0
また明日ノシ

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/03(土) 22:05:17.13 ID:65n6n0fxo

いじめられるよりはよかった
いやよくねぇ
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/04(日) 02:55:06.05 ID:pgv19obDO
優しい世界かな?って思ったらちょっと違った
でもやっぱり優しい世界かな?
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:32:18.68 ID:xw7vYgqJ0
TRACK4 ハナちゃん

病院

医師「早いね、空ちゃんももう中学生か」

くーちゃん「はい、まあでも、やることそんなに変わりません」

くーちゃん「嘘ばかりの奉納。嘘ばかりの歌。嘘ばかりの踊り。嘘ばかりの言葉」

くーちゃん「頭、おかしくなりそうです」

医師「やめたらいいのに」

くーちゃん「そういうわけにもいかないのです」

くーちゃん「くらしの、お母さんのためですから」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:34:12.14 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん「まあでも、昔より、クラスメイトに巫女もどきの話をされることも減りました」

医師「さすがにそうだよね」

医師「友達はできた?」

くーちゃん「いえ、くーちゃん、もう誰かに温かい態度、とるのしんどかったので」

くーちゃん「くーちゃんは、冷たい態度をとる人間として評判なのです」

医師「嫌な評判だね」

くーちゃん「おかげで話しかけられなくて助かるのです」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:36:47.26 ID:xw7vYgqJ0
とある10月の月曜日

先生「転校生を紹介します」

先生「ほら、自己紹介を」

転校生「・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「・・・・・・・・・・・・え、あの、自己紹介を」

転校生「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん(すごく、長い髪です。いつから切ってないのでしょう)

くーちゃん(丸いメガネが、かわいいです)

それが、転校生、ハナちゃんとの出会いでした。


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:40:45.45 ID:xw7vYgqJ0
先生「えっと、その……」

先生「浜辺ハナさんは、その、××県からやってきてて」

先生「すごい、穏やかな海が、綺麗な場所、なんだよね」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「絵が、好きなんだっけ…」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「あの、なんかせめて頷くとか…」

くーちゃん(…おしゃべりな人、無口な人、いろいろいますけど)

くーちゃん(何もしゃべらないのは、めずらしいです)

くーちゃん(安心します)

くーちゃん(嘘を沢山つく人たちより)

くーちゃん(ずっと、ふつうのひとです)
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 18:42:53.79 ID:xw7vYgqJ0
生徒1「え、あの子大丈夫…?」

生徒2「おとなしいだけ、じゃないのかな…」

生徒3「でも自己紹介くらい…」

生徒4「なんかこわい」

くーちゃん(…わからないから、こわいんですね)

くーちゃん(おばけがこわいのと、おなじです)
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:01:06.55 ID:xw7vYgqJ0
授業中

先生「では、浜辺さん」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「…浜辺さん?」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生「浜辺さん!!」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

プルプルプル

生徒1「…ねえ、多分あれだよね、転校してきたのって」

生徒2「絶対親の事情とかじゃないよね」

生徒3「ねえ、ああいうのって、どうしたらいいの?」

生徒4「知らないよ…下手なこと言って地雷踏んだらめんどくさそうじゃん」

くーちゃん「…」

くーちゃん(いいですね)
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:02:34.63 ID:xw7vYgqJ0
休み時間

生徒1「ハマベさん、またどこか行ってるね」

生徒2「保健室とか?」

生徒3「保健室この間休んだけど、いなかったよ」

生徒4「えー、なんかこわっ」

くーちゃん(まるでおばけみたいに言われてます)

くーちゃん(でも、みんなの方が、他人を勝手に判断してて)

くーちゃん(おばけよりこわいです)
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:04:46.54 ID:xw7vYgqJ0
ガラッ

ハナ「…」

生徒1「あ、戻ってきた」

ハナ「……」チラッ

くーちゃん「…?」

くーちゃん(きれいな目で、くーちゃんのこと、見てきました)

くーちゃん(…何か、言いたいのでしょうか)

ハナ「・・・・・・・・」

くーちゃん(まだ、話す準備ができてないようですので)

くーちゃん(待ちましょう)

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:08:12.66 ID:xw7vYgqJ0
翌朝

くーちゃん「…今日は金曜日です」

くーちゃん「明日、またお仕事ありますね」

コンコン

母「くーちゃん、入るわよ」

ガチャッ

ゴトッ

くーちゃん「なんですか、この箱」

母「これね」

母「いつもくーちゃんが奉納とかするとき」

母「私服なのがあまりよくないんじゃないかって言ってて」

パカッ

母「これ、巫女服」

くーちゃん「」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:09:36.19 ID:xw7vYgqJ0
母「ね、このヒラヒラとかきれいで」

ダッ

母「え、ちょ、くーちゃん?」

くーちゃん(わかってくれない人だけど、母親だから気を使ってましたが)

くーちゃん(もういいです)

くーちゃん(ここまでわからない人だとは、思わなかったです)
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:22:54.48 ID:xw7vYgqJ0
タッタッタッタッ

くーちゃん(あ、くつ、履き忘れました)

くーちゃん(まあ、学校行けば、うわばきありますし、はだしはすきです。地面、感じられます)

くーちゃん(巫女服の嫌な感じ、地面の石の感触で忘れられるかもしれません)

くーちゃん(飛び出てしまいましたけど、まあよいです)

くーちゃん(お母さんのためだけに生きるの、つかれました)

くーちゃん(でも、このままどこいきましょう)

くーちゃん(山でもいって、本当に草でもかじって生きていきましょうか)

くーちゃん(巫女もどきの仕事続けるより、数億倍ましです)
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:24:00.73 ID:xw7vYgqJ0
空地

?「・・・・・・・・・・・・・・・・」

カキカキ

くーちゃん「?」

くーちゃん「あ、あれは」

くーちゃん「ハナちゃんです」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:26:15.06 ID:xw7vYgqJ0
ハナちゃん「♪♪♪♪」

カキカキ、サラサラ

くーちゃん(何か、スケッチに描いてます)

くーちゃん(初めてハナちゃん見たとき、夜の底みたいな目でしたのに)

くーちゃん(すごくたのしそうです。きらきらしてます)

くーちゃん(流れ星みたいな目です)

くーちゃん(いったい、何の絵を描いてるのでしょうか)

ソッ

くーちゃん「」

くーちゃん「えっ…」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:30:53.91 ID:xw7vYgqJ0
ハナ「!!」

くーちゃん「ハナ、ちゃん」

くーちゃん「なんで、しってるですか」

くーちゃん「なんで、くーちゃんしか知らないトンネルの絵」

くーちゃん「しってるですか」


108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:31:45.54 ID:xw7vYgqJ0
ハナ「!!」

くーちゃん「ハナ、ちゃん」

くーちゃん「なんで、しってるですか」

くーちゃん「なんで、くーちゃんしか知らないトンネルの絵」

くーちゃん「しってるですか」


109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:33:03.65 ID:xw7vYgqJ0
ミスです。連投失礼



ハナ「あ、えあ、えあ」

くーちゃん「知ってるん、ですね?」

ハナ「・・・・・・・」

コクリ

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「もっと、ありますか?」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:37:18.53 ID:xw7vYgqJ0
学校。屋上につながるドアの前にあるスペース

くーちゃん「ハナちゃん、どして、こんなとこに」

くーちゃん「もしかして、休み時間、ここで絵、描いてたですか?」

ハナ「」にやっ

こくり

くーちゃん(…かわいいですね、ハナちゃん)

くーちゃん(今すぐにでも抱きしめたくなるほどですが)

くーちゃん(人間同士のスキンシップはよくわからないので、やめときましょう)


その屋上の入り口前には、使われていない勉強机が乱雑に置かれていて、そこには、何冊か大きなスケッチブックが入ってました。ハナちゃんは、机から一冊のスケッチブックを取り出して、開きました。そこには、黒やら灰色やら、少し緑の入り混じった不思議な絵が描かれていたんです。

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:38:55.42 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん「ハナちゃん、これは、なんですか?」

ハナちゃんはスケッチブックからその絵を切り離して、床の上に置きました。

そして、また一枚、また一枚と、別のページに描いていた絵を切り離して、

並べていきます。

やがてそれは、大きな絵になりました。
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:40:48.49 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん(今まで、見たことないトンネルの世界です)

くーちゃん(ずっと大きく深く、静かな、世界です)

ゴロン

くーちゃんは、ハナちゃんの並べた絵の上に、トンネルの時間を思い出しながら寝そべります。

くーちゃん(ふしぎです。絵は植物さんとちがって、生きてないのに)

くーちゃん(冷たくて、優しい感じ、します)

くーちゃん(あ)

くーちゃん(何か、聞こえます)




 きてほしい。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:43:04.81 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん(…誰でしょう、なぜ、呼ぶのでしょう)

くーちゃん(すごく、つよい、思いです)

くーちゃん(絵なのに、トンネルを感じられるなんて、ふしぎです)

くーちゃん(でも、この感じ、きっと本物です)

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「このトンネル、どこに、つながってますか?」

ハナ「」ブンブン

くーちゃん「わからないのですね」

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「くーちゃん、ここ、行きたいです」
 
ハナ「・・・・・・・・・・・・・え」

ハナ「い、いきたい?」

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:48:31.69 ID:xw7vYgqJ0
くーちゃん(ハナちゃんの声、はじめてききます)

くーちゃん(かすれた喉の奥から絞り出すような音ですけど)

くーちゃん(とてもやさしい音です)

くーちゃん「はい。行きたいです。呼んでます」

くーちゃん「くーちゃんが、このトンネルの向こうのだれかから、必要とされてます」

くーちゃん「だから、行きたいです」
 
くーちゃん「嘘っぱちのくーちゃんじゃなくて、本当のくーちゃんを必要としてくれるこの方のために」

くーちゃん「くーちゃんは、自分を使いたいんです」

115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:50:22.68 ID:xw7vYgqJ0
ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「ん」

 言葉なのかどうか、よくわからない音を出して、ハナちゃんは頷きます。

くーちゃん「ハナちゃん」

 寝そべりながら、くーちゃんは、ハナちゃんに言いました。

くーちゃん「くーちゃんと、一緒に、この絵のトンネル、探しませんか?」

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/04(日) 19:50:54.68 ID:xw7vYgqJ0
また明日ノシ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:25:21.69 ID:hX7kkdOe0
病院

くーちゃん「というわけで、くーちゃんは」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「このハナちゃんと旅に出ることにしたので、今日が最後の診察です」

医師「いやいやいやいやいや」

医師「話が急ピッチ過ぎてついていけないよ」

くーちゃん「安心してください」

くーちゃん「旅のプランは考えてます」

医師「いやそういう問題じゃないから」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:26:40.88 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「くーちゃん、天才的な頭脳で考えたのです」

くーちゃん「トンネルを探す計画」

医師「…では、一応聞こうか」

くーちゃん「トンネルは、植物さんのところからいけます」

くーちゃん「つまり」

くーちゃん「日本中の森とか山をしらみつぶしに探せば」

くーちゃん「ハナちゃんの絵のトンネルにたどり着けると考えました」

医師「それ計画?」

くーちゃん「はい、天才的な計画です」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:27:51.63 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「でも見てください、ハナちゃんのこのトンネルの絵」

バサッ

くーちゃん「すごいとおもいませんか?」

医師「いやすごいけど、折り目やばいよ」

医師「いいの、ハナちゃんは」

ハナ「」こくり

医師「いいのかよ」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:29:13.85 ID:hX7kkdOe0
医師「ただ、このハナちゃんが描いたトンネルなんだよね」

医師「もっと、なんでこの絵を描いたのかとか、聞いたらいいんじゃないかな」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「こんな感じなのでむずかしいのです」

医師「なるほど…」

くーちゃん「とゆうわけで、お世話になりました」

くーちゃん「先生は、校長先生と、ハナちゃんの次に」

くーちゃん「すきなにんげんでした」

医師「…どうもありがとうね」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:30:24.38 ID:hX7kkdOe0


くーちゃん「ではハナちゃん、荷造りをして夕方に公園前で集合です」

くーちゃん「今日は半日授業だったので、これはチャンスなのです」

くーちゃん「やるなら、今日しかありません」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ハナ「」こくり


くーちゃん「さすがです、ハナちゃん」

くーちゃん「では、また後程」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:31:59.58 ID:hX7kkdOe0
自宅前

くーちゃん(あ、今日お母さん、仕事休みでした)

くーちゃん(堂々と旅の準備なんかしたらばれますよね)

くーちゃん(となると、こっそりやるしかないです)

くーちゃん(裏庭に回って、くーちゃんの部屋の窓から出入りすれば、ばれません)

くーちゃん(くーちゃんのおうちが、平屋でよかったです)

ガチャガチャ

くーちゃん「カギ閉めてました」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:33:07.80 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「仕方ありません」

パリン!

くーちゃん「聞いたことがあります。窓の修理費より鍵の修理費の方が高いと」

くーちゃん「窓の修理費は、見逃してもらいましょう」

母「…まじでなにしてるのあなた」

くーちゃん「」
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:35:38.14 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「…鍵、わすれたので」

母「ピンポンおしなさいよ、わたしいるんだから」

くーちゃん「…そういうわけにはいかないので」

母「旅に出るから?」

くーちゃん「なんでしってるのですか」

母「病院から連絡あったからよ」

母「あんな話したら私に連絡行くのわかるでしょう」

くーちゃん「先生は、口が軽いです」

くーちゃん「許せません」

母「逆恨みしないで」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:39:15.23 ID:hX7kkdOe0
母「いつからそんな不良娘になったの」

くーちゃん「思春期ですお母さん。思春期に少年から大人に変わってるです」

母「大人は鍵が開かないからって窓を割ったりしないのよ」

くーちゃん「お母さんの顔、見たくないので」

母「走って出ていったと思ったら、ずいぶんと言うじゃない」

くーちゃん「くーちゃんは嘘が嫌いですので」

126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:40:51.92 ID:hX7kkdOe0
母「……とりあえず、ちゃんと説明してもらいたいところなんだけど」

くーちゃん「あの巫女服を、平気な顔してもってきたお母さんに、なにかを説明したい気分にはなれません」

くーちゃん「説明したら、わかってくれるんですか?」

母「あれは、悪気があったわけじゃ」

くーちゃん「悪気がなかったらなにしてもよいわけじゃないです」

くーちゃん「そういうところが嫌なんです」


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:44:54.86 ID:hX7kkdOe0
くーちゃん「もういいです。貯めてたお小遣い、机に入れてるので」

くーちゃん「それだけ回収します。移動費に使います」

ゴソゴソ

ガシッ

くーちゃん「放してください」

母「いやよ」

母「もうだれにも」

母「いなくなってほしくないの」

くーちゃん(…意味が分かりません)

くーちゃん(あ、そういえば)

くーちゃん(くーちゃんと、お母さんと)

くーちゃん(今はもういない、もう一人のことでしょうか)

その人が、どうしてもういないのか。お母さんは言ってくれません。

それに今この場で話すことでもありません。きっと、楽しい話ではないので。

くーちゃんも、現実の世界に見切りをつけ、旅に出ようとしてます。

お母さんを、本当の本当に一人にすることになりえる片道切符だと思います。
 
そして、お母さんも、そのことをきっと察してたんです。
 
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:46:32.08 ID:hX7kkdOe0
ぶんっ!!

力いっぱいお母さんの腕を振りほどきます。

ギギッ

くーちゃん(お母さんの爪の痕、残りました)

くーちゃん(でもいいです。だって)

くーちゃん「くーちゃん、やらなきゃいけないこと、あります!!!!!!!」

ダッ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:50:47.40 ID:hX7kkdOe0
公園

ハナ「・・・・・・・・・・・・・」

「はあ…はあ…はあ…」

ハナ「…?」

くーちゃん「ハ、ハ、ハナちゃん…!」

くーちゃん「ちょっとめんどくさいことになったので! 旅! いそぎます!」

ハナ「…?」

くーちゃん「信頼できる人のところ、いきます!」

くーちゃん「きて、くれますね!?」

ハナ「・・・・・・・」こくり

 その旅は片道切符かもしれません。

トンネルの向こう側に行けば、人間のいるこっち側に戻ってこられないかもしれません。

でも、そんなのくーちゃんにとって、どうでもよかったですし、

くーちゃんの知っている世界を理解してくれてるハナちゃんとなら、一緒に行けるような気がしたんです。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:51:53.64 ID:hX7kkdOe0
小学校

?「…お久しぶりですね」

校長先生「天野さん」

くーちゃん「くーちゃんです」

校長先生「それで、相談ってなんですか?」

くーちゃん「トンネルを探す旅、手伝ってください」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/05(月) 21:52:58.15 ID:hX7kkdOe0
また明日ノシ
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/06(火) 13:47:40.07 ID:d9/oBxQwo
おつおつ
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:18:20.62 ID:gZx10ktQ0
校長室

校長先生「トンネル…以前から天野さんから聞いてはいましたが」

ハナ「」カチコチ

くーちゃん「ハナちゃん、そんなに固まらなくてだいじょぶです」

くーちゃん「自分の家だと思ってリラックスしてください」ゴロゴロ

校長先生「だからといって転がるのはやめてください」

校長先生「あとそれは校長先生のセリフです」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:20:06.15 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「ハナちゃん、このリュックに絵、ありますね?」

ハナ「」

くーちゃん「」

ごそごそ

校長先生「何も言ってないのに人の荷物をあさるのはやめましょう」

校長先生「それにしてもずいぶん大荷物ですね、そのハナさんは」

校長先生「天野さんは手ぶらですか」

くーちゃん「現金が数十万円ポケットにつっこんでいます」

校長先生「それはそれで不気味です」

くーちゃん「ありました」

バサッ

くーちゃん「この絵です。この絵のトンネルに、行きたいんです」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:22:01.08 ID:gZx10ktQ0
校長先生「なるほど…これは、すごい」

校長先生「たしかに、天野さんからずっと聴いていたトンネルの描写と一致します」

校長先生「で、そのハナさんは、なぜこの絵を描けたか、言葉にしにくい、といったところですか」

くーちゃん「そのとおりです。さすがです」

校長先生「この絵からは、確かにエネルギーのようなものを感じますが」

校長先生「その一方で」

校長先生「どこか、さみしく、冷たい印象も受けます」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:24:07.08 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「そうなんです。だからきっとこのトンネルの植物さん、さみしがってます」

くーちゃん「とても、とても、長い間」

くーちゃん「だから、すごい植物さんがいるところだと思うのです」

くーちゃん「校長先生は、心当たりないでしょか」

校長先生「天野さんは、今の段階ではどう考えてますか?」

くーちゃん「ジャングルとかですかね、となると海外…」

くーちゃん「不法入国の罪、重いのでしょうか。パスポート、もってないです」

校長先生「ええ、重いです。さすがの校長先生でもそれは止めます」

137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:26:25.16 ID:gZx10ktQ0
校長先生「それに、ジャングルとは限らないでしょう」

校長先生「どことなく、和風の感じもしますし、日本の可能性の方が高いのでは?」

くーちゃん「うむむ、たしかに」

校長先生「となると、シンプルに、日本の山、でしょうか」

くーちゃん「やはりしらみつぶし作戦が最強そうですね」

校長先生「しらみつぶし作戦?」

くーちゃん「日本中の森とか山をしらみつぶしに探していく作戦です」

校長先生「恐ろしい計画ですね」

くーちゃん「ありがとうございます」

校長先生「褒めてないです」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:28:38.46 ID:gZx10ktQ0
TRACK6 山

バス停

くーちゃん「とりあえず、この町で一番大きな山があるところまで、バスで行きましょう」

ハナ「」ジッ

くーちゃん「どしたですか、ハナちゃん」

ハナ「」スッ

くーちゃん「あ、パトカーですね」

くーちゃん「…まずいかもです」

くーちゃん「どうしましょう」

ハナ「」ごそごそ

スッ

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 21:30:30.72 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「メガネですね」

ハナ「」こくり

くーちゃん「…たしかにこれなら、お母さんが通報してても」

くーちゃん「顔写真とは違う印象になるかもです」

くーちゃん「あ、でも髪型が」

ハナ「」ごそごそ

スッ

くーちゃん「…え」

ハナ「」

チャキンチャキン

くーちゃん「まさかのハサミとは」

くーちゃん「なんでくーちゃんより用意周到なんですかハナちゃん」

ハナ「」てれてれ
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:44:19.56 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「でもさすがです、ハナちゃん」

くーちゃん「このハサミなら眉毛、鼻毛の手入れもできますね」

ハナ「」ぶんぶん

くーちゃん「あ、普通に髪を切るだけでしたか」

ハナ「」こくり


141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:46:44.21 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「じゃあ、カットおねがいします」

くーちゃん「あ、でも先にハナちゃん切った方がよいかもです」

くーちゃん「ハナちゃんもご両親に捜索願だされてるかもしれません」

ハナ「」こくり

ジョキン

くーちゃん「」

くーちゃん「結構思い切り切るんですね」

ハナ「」テレテレ

くーちゃん「ほめてないです」

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:49:09.48 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん「じゃあ、くーちゃんもおねがいします」

ハナ「」ソーッ…

ハナ「」

くーちゃん「どうしたですか? ハナちゃん」

ハナ「」ジッ

くーちゃん「くーちゃんの腕のあざですか?」

くーちゃん「気にしなくてよいです」

くーちゃん「事故みたいなものです」

ハナ「」ぺこり
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:51:02.09 ID:gZx10ktQ0
ブーン

くーちゃん「パトカーも無事に通り過ぎてくれました」

くーちゃん「ハナちゃん、切るのうまいですね」

ハナ「」テレテレ

ブーン

くーちゃん「バスも来たので乗りましょう」

くーちゃん「終点に、その山、たどりつけます」

くーちゃん「だいぶ田舎のバス停なので、きっと一目にはつきません」

ハナ「」こくり
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:55:18.02 ID:gZx10ktQ0
バス内

くーちゃん「貸し切りですね。だれもいません」

くーちゃん「経営が続いてるの、ふしぎなくらいです」

ハナ「」カキカキ

くーちゃん「ハナちゃん、お絵かきですか?」

くーちゃん「また、トンネルの絵ですか?」

ハナ「」スッ

くーちゃん「これは…」

ハナ「」ジッ

くーちゃん「窓の外の空、ですか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「すごいです」

くーちゃん「あおいろ、いっこもつかってません」

ハナ「」テレテレ
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:57:28.73 ID:gZx10ktQ0
くーちゃん、絵のこと、からっきしなんですけど、

絵が描かれる過程、見るの大好きなんです。

今生きてる世界と違う世界、作られてるみたいで、旅行してる気分になります。

特にハナちゃんの絵は素敵でした。

見えてる世界より、たくさんの色を使って、形も変わってたりするです。

すっかりくーちゃんは、ハナちゃんのファンになってしまいました。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/06(火) 22:58:17.73 ID:gZx10ktQ0
また明日ノシ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:18:18.78 ID:/+CsG3T+0
終点

運転手「どちらへ?」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、あ」

くーちゃん「行きたいところがあるので」

運転手「そうですか」

運転手「だいぶ日も暮れてきましたので、気を付けて」

くーちゃん(こういう時、親戚のおばさんの家へ行きますとか言っておけばよいのかもですが)

くーちゃん(くーちゃんは、正直なのが、もっとーなのです)
 
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:25:40.13 ID:/+CsG3T+0
田舎の夜道。

くーちゃん「街灯、ほとんどないですね」

ハナ「…ん」

くーちゃん「目を閉じても開けてもほとんど変わらないほど暗いです」

くーちゃん「今が現実なのか、夢の中なのか、わからなくなりそうですね」

くーちゃん「でも、目を閉じるとそれだけで音や匂い、よくわかります」

くーちゃん「草、土、雨の匂いが混じった、素敵な香りです」

くーちゃん「体に巡ってゆくんです」

ピカッ

くーちゃん「…まぶしいです」

ハナ「」にこっ

くーちゃん「懐中電灯、忘れてました」

くーちゃん「用意周到ですね、ハナちゃん」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:28:02.88 ID:/+CsG3T+0


くーちゃん「この山なら、トンネルにつながる木、ある可能性」

くーちゃん「ゼロじゃないかもです」

ハナ「」よろっ、よろっ

くーちゃん「ついてきてますかー」

ハナ「え、あ、う、ん」

くーちゃん「ハナちゃん、運動苦手ですか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「がんばりましょう」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり
 しばらく歩いた後、くーちゃんは、山の中で空を見上げました。木はあまり生えてない、開けた場所です。吸い込まれそうな夜空が、どこまでも広がってました。お月様が浮かんでて、ハナちゃんの懐中電灯が、いらないほど明るかったです。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:49:02.75 ID:/+CsG3T+0
山中

くーちゃん「ここでよいんではないでしょか」

ハナ「はあ……はあ……はっあ……う……ん」

くーちゃん「…返事、でいいんですよね」

ゴロン

くーちゃん(ハナちゃんは寝転がらないのですね)

くーちゃん(まあ、過ごし方は人それぞれです)

くーちゃん「すーっ、はーっ」

息を吸って、吐きました。

全身が土に溶けてゆくような感じでした。

山から漂う、温かさ、優しさ、冷たさ。そんなものが混じりあったトンネルに、

くーちゃんはいつのまにかいたんです。

151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 22:52:03.05 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん(このトンネルは悪い感じ、しません)

くーちゃん(広くて大きくて安心します)

くーちゃん(でも、くーちゃんのことを呼んでません)

くーちゃん(それに、ハナちゃんの描いていたトンネルと、違う色な気がします)

くーちゃん(あの絵で感じた、さみしさも、感じません)

くーちゃん(それに)

くーちゃん(別の何かの気配がします)
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:00:14.53 ID:/+CsG3T+0
パチクリ

ハナ「?」

くーちゃん「ここ、違います」

ハナ「?」

くーちゃん「この山、違います。くーちゃん、呼ばれてません」

くーちゃん「きっと、別の誰かの場所です」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:03:19.46 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「ほかの山です。ハナちゃん、地図帳とか、もってますか?」

ハナ「」こくり

バサッ

くーちゃん「さすがです、ハナちゃん。ここからちゃんと、それっぽい山を選んで…」

くーちゃん「あ」

ハナ「?」

くーちゃん「ハナちゃん、くーちゃん、気づいてませんでした」

くーちゃん「日本には、山が多すぎます」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「」こくり
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:04:24.90 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「困りました。なんでこんなに山、多いですか!」

くーちゃん「ハナちゃん! どうゆうことですか!」

ハナ「」

くーちゃん「ごめんなさい、八つ当たりでしたね」

ハナ「」こくり
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:07:38.25 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「とにかく、もうおそいです」

くーちゃん「とりあえず、きょうはここで夜、明かしましょう

ハナ「」こくり

バサッ

くーちゃん「なるほど、寝袋、もってきてたですね」

くーちゃん「さすがです」

くーちゃん「とりあえずくーちゃん、お布団にできそうな落ち葉、拾ってきます」

ハナ「」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:09:36.45 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん「あの、もしかして、くーちゃん、何か変なことしてますか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「まあ、たしかに、風邪、ひくかもですね」

くーちゃん「植物さんの、トンネルの向こうへ行くにしても、健康が一番です」

くーちゃん「ですが、着替えも寝る道具も忘れました」

くーちゃん「ハナちゃん、地図帳かしてください。おふとんにします」

ハナ「」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:11:48.96 ID:/+CsG3T+0
ハナ「」スッ

くーちゃん「ハナちゃん、もしかして寝袋、ゆずってくれてますか?」

ハナ「」こくり

くーちゃん「ハナちゃんがそれだと風邪ひきます、だめです」

ハナ「」ぶんぶん

くーちゃん「うーむ、なら」

くーちゃん「二人で、入りましょう」

くーちゃん「つめれば、きっと入ります」
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:13:17.30 ID:/+CsG3T+0
ぎゅうぎゅう

くーちゃん「ちょっとせまいですね」

くーちゃん「まあでも、なんとかなりそうです」

ハナちゃんの汗の香りが好きで、心は落ち着きました。

目を閉じると、昔、とても大切な人と行った場所を思い出します。

波の音や潮の香り。おひさまが、きらきら反射してた海です。

とても、懐かしい気持ちになりました。

幼稚園にいた時より、もっともっと昔の思い出です。

159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:16:07.54 ID:/+CsG3T+0
くーちゃん(どんな顔の人と行ったでしょうか)

くーちゃん(思い出せませんね)

くーちゃん(そういえば、海の向こうには)

くーちゃん(たしか…)

くーちゃん「あ!!!!!」

ハナ「!!!!」ビクッ

くーちゃん「島です!!!!!!!」

くーちゃん「山じゃないです!!!!!! 島です!!!!!!!」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:16:43.45 ID:/+CsG3T+0
ガサ

ガサ

ガサ

?「どこだ…どこだ…」

?「この子の…母親は…」

?「どこに、いる…?」

161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/07(水) 23:17:17.38 ID:/+CsG3T+0
また明日ノシ
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/08(木) 00:03:42.15 ID:FedE/ynOo
おつ〜
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:28:14.60 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「ハナちゃん! 地図です! 地図見せてください!」

ハナ「」スッ

くーちゃん「やっぱりです」

くーちゃん「島の方が!!」

くーちゃん「山より数が! 少ないです!」

ハナ「」

164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:30:09.17 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「それに、島の方が、ハナちゃんの描いていたトンネルに、近い感じします」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり

くーちゃん「やっぱりです!」

くーちゃん「となると、ハナちゃん、たしか、海沿いの町に住んでたと、言ってましたね」

ハナ「」こくり

くーちゃん「どこですか?」

ハナ「」すっ

くーちゃん「やはりです。この町」

くーちゃん「島、いくつかありますね」

165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:31:35.46 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「これです」

ハナ「?」

くーちゃん「この島です」

くーちゃん「この島、名前がありません」

くーちゃん「名前がない、孤独な島」

くーちゃん「あのトンネルの感じと、近い気がしました」


166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:32:50.27 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「それにしてもハナちゃん、ずいぶん遠くからおひっこししてきたですね」

くーちゃん「この町に行くなら、大移動となります」

くーちゃん「ただ、旅です。旅はこれくらいじゃないと、面白くありません」

くーちゃん「さあ、ハナちゃん! 行きましょう!」

ハナ「」ブンブン

くーちゃん「あ」

くーちゃん「…せめて夜が明けてからにしますか」

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:39:19.63 ID:bEJFPFt/0


くーちゃん(結局一睡もできませんでした)

くーちゃん(ぽかぽかおひさま、いい気持ちです)

くーちゃん「ハナちゃん! 朝です! 行きましょう!」

ハナ「…ん」もぞもぞ

くーちゃん「…朝、弱いんですね」

くーちゃん「近くに、川あるので、顔洗ってきます」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:41:46.47 ID:bEJFPFt/0
ぱちゃん

くーちゃん(つめたくて気持ちよいです)

ザブン

ついでにくーちゃんは水の中に頭を突っ込んで、目を閉じてみました。

昨日、土に顔をうずめたときより、ずっとずっと山に近づけた感じがしました。

?「くる、しくない?」

ザブン

くーちゃん「!」

くーちゃん「ハナちゃん!!」

くーちゃん「すごい! ちゃんと初めて単語聞きました!」

ハナ「」テレテレ
 ハナちゃんは、一緒に夜を明かしたからかわかりませんが、少しだけお話してくれるようになりました。

「はい。だいじょぶです」

 くーちゃんは、顔をあげてそう言いました。

 ハナちゃんも、くーちゃんの感じていたトンネルを描けたとゆうことは、もしかしたらハナちゃんも、不思議なトンネルに心をゆだねることができるのかと思いました。直接確かめてもよかったんですけど、ハナちゃんも川に、顔をばちゃんとつけたので、尋ねるタイミングを失ってしまいました。くーちゃんはしばらく息を止められたのですが、ハナちゃんは、長く息を止めれなかったようで、すぐに顔を出しました。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:44:12.06 ID:bEJFPFt/0
ザブン!

ハナ「はーっ…はーっ! き、きもち、いいね」

 あんまり顔的に、気持ちよさそうには思えなかったですけど

 気持ちいいと言っていたから、多分気持ちよかったんだと思います。

後で確かめてみますね。もうずいぶん前のことですから、本人、忘れちゃってるかもしれませんけど。

 
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:45:31.38 ID:bEJFPFt/0
朝ごはんタイム

ハナ「」パキッ

くーちゃん「ハナちゃんは板チョコですか」

ハナ「」スッ

くーちゃん「あ、そういえば、くーちゃん、手ぶらでした」

くーちゃん「だいじょぶです」

くーちゃん「なんかおなかの中、ずっしりと重たいもの、乗ってる感じするので」

くーちゃん「今、いらないんだと思います」

171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:47:39.53 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「ともかく、島に行くには、ハナちゃんの住んでた町へ向かう必要あります」

くーちゃん「ただ歩くには、ちょっと遠すぎます」

くーちゃん「また、バスですかね」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ハナ「よくない、かも」

くーちゃん「よくない?」

ハナ「私たち、行方不明」

くーちゃん「…言われてみればそうです」

くーちゃん「お母さんもですけど、ハナちゃんのご両親も、そろそろ通報しててもおかしくありません」

くーちゃん「変装をしてますが、年まではごまかせません」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:48:49.20 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「声を掛けられる可能性、ありますし」

くーちゃん「くーちゃんは嘘が苦手です。きっとばれてしまいます」

くーちゃん「完全に失念してました」

くーちゃん「ハナちゃんは、頭の回転がコンピューター並みに速いです。

くーちゃん「「スーパーコンピューター、ハナちゃんですね」

ハナ「……そ、そうかな」

くーちゃん「そうです。くーちゃんも頭脳、天才的ではあるのですが、ハナちゃんもすごく頭、よいです」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:51:40.15 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「となると、移動手段です」

くーちゃん「お金、あるにはあります。きっと電車だろうと飛行機だろうと大丈夫です」

くーちゃん「スペースシャトルには乗れないかもしれませんが」

くーちゃん「ですが、公共のやつは、見つかってしまいます。となると」

くーちゃん「信用できる人に助けてもらうしか、ありませんね」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「そんな心配そうな顔しないでください」

くーちゃん「心当たりがあります」

くーちゃん「この山です」

ハナ「え、」

174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:53:55.21 ID:bEJFPFt/0
くーちゃん「トンネルで感じました」

くーちゃん「この山には、くーちゃんたち以外の人、溶け込んでます」

くーちゃん「きっと、います。この山と共に生きてる、優しい人が」

くーちゃん「だから、その人を探しましょう。優しい人なら、きっと助けてくれるはずです」

ハナ「」こくり

くーちゃん(ハナちゃんの頷き方、大好きです)

くーちゃん(しっかり考えて、なにか決めてくれたのが伝わるので)

くーちゃん(それがハナちゃんのよいとこなんです)
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/02/08(木) 21:55:52.79 ID:bEJFPFt/0
山道

ハナ「…ど、どこ、いるの?」

くーちゃん「宛はなんとなくあります」

くーちゃん「トンネルで感じられた匂い、山を歩いてると漂ってきます」

くーちゃん「自然の匂いと少し違います」

くーちゃん「まるで体育の後の体操服みたいな、そんな汗のにおいです」

ハナ「」

くーちゃん「くーちゃんの好きなにおいです」

ガサッ


?「駄目だなあ、これじゃあねえんだよなあ」
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