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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】

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688 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/02(土) 23:47:50.17 ID:8/Urd9QA0
―不格好なテント内

 ランプ「」ユラユラ

アリシラ「それじゃあ灯り消すよ〜」

フメイ「うん」

 ランプ「」フッ

アリシラ「おやすみ〜」

フメイ「うん……」



フメイ「……」

アリシラ「……」zzz

フメイ「……」



フメイ(テントの外から、そよ風の音と虫の声が聞こえる)

フメイ(でもこのテントの中は真っ暗で、何も見えない。まるでここだけ、外から切り離されてしまったかのよう)

フメイ(……もしここが、あの集落だったら……)

フメイ(クロシュと、みんなと、こうやって……テントのお泊りを楽んでいるのだったら……)

フメイ(どれだけ………)ジワ…

 ポロポロ グスッ スンッ ポロポロ


アリシラ?(……)

アリシラ?(フメイちゃんも……まだ、赤ちゃんみたいなものだもんねえ……)

アリシラ?(ああ――どうして世界は、この無垢なる子供たちに、かくも残酷な運命を強いるのでしょう――)

アリシラ?(――ごめんね。でも、だからこそ……利用させてもらうよ。あなたの、炎を)

アリシラ?(この最悪の世界を――焼き尽くして、終わらせる為に――)

 ◆
689 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/02(土) 23:48:41.16 ID:8/Urd9QA0
―森林開発現場

マーベル「郊外の空き地で、そこのクロシュちゃんと同じ容姿の女の子と薄茶髪の少女がテントを設営していたらしい」

クロシュ「!!」

マーベル「だがその情報を聞いたのは実際に目撃した翌日でな……。俺たちは急いで現地に向かったんだが、そこには焚き火の跡が残っているくらいで既に誰もいなかった」

イリス「フメイちゃんともう一人の人は、テントで寝泊まりしながら郊外を転々としている……ということ!?」

マーベル「まあその可能性は高いだろうな。だが郊外と一口に言ってもかなり広い。毎日寝床を変えているとなると見つけるのは簡単じゃないぜ。ただでさえ今の時期は他にもテントを張って寝泊まりしてる観光客や冒険者が大勢いるからな」

ミスティ「でもこれも大きな前進よ……! 寝泊まりは郊外で、日中は首都にやってきて何かをしているということなのかも……!」

ティセリア「しかし、一体どういう状況なのでしょう? この国へ来ているのなら、どこかであのビラを見ることもあるでしょうし、それならクロシュちゃんに直接会いに来てもおかしくなさそうなものですが……」

妖精「あー、それはまあ、ちょっと込み入った事情があってね……」

マーベル「家出とかか?」

妖精「家出……言われてみれば、家出みたいなものなのかも」

クロシュ「……」

ティセリア「……私たちも目を増やしましょう。マノシシの件のみならず、魔王樹の討伐などについても、あなたたち復権派には大きな恩がありますから」

マーベル「まあ、俺もできる範囲で探しといてやる。元はと言えばあの魔王樹のせいで開発に支障が出たわけだからな。借りっぱなしは性に合わねえ」

クロシュ「えと……ありがと、ございます」ペコリ

ティセリア「いえいえ、恩を返すだけですから!」

マーベル「おう。借りを返すだけだ。礼はいらねえぜ」

妖精「だってさ。何にしても良い感じに進みそうだね、クロシュ」

クロシュ「うん……!」


ティセリア「ところで皆さん、本日は一緒にお夕飯などいかがですか?」

マーベル「は?」

妖精「いいよ」

イリス「え、ええと」

ミスティ「いいのかしら……?」

ティセリア「はい。昨晩の戦は急だったので、終わった後はそのままへとへとで解散してしまいましたが、祝勝会をやっていなかったなあと思いまして」

ローガン「なるほど……。確かに、魔王を倒したのであれば祝杯くらいは上げたいものですな」

マーベル「いや、だがこのタイミングで祝勝会って……。もう選挙まで日も少ないのに呑気すぎるだろ……」

紫髪のエルフ幼女「これが伝統派のやり方です。で、あなたは来るんですか?」

マーベル「……行くが。伝統派と復権派だけで食事会なんてどんな談合が行われるかわかったもんじゃねえ」

ティセリア「決まりですね! では突発的ですが、三派閥で食事会です!」

 ◇
690 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/02(土) 23:49:20.43 ID:8/Urd9QA0
本日はここまでです。次回は食事会編からとなります

フメイちゃんとアリシラ?さんは隠れる気があるんだかないんだかわからない行動をしているようです。ばったり街中でクロシュちゃんと会ってしまったらどうするつもりなのでしょう。多分、どうするつもりでもないのでしょう。実際のところ、フメイちゃんはばったりクロシュちゃんと会いたいとすら思っているかもしれません。偶然なら仕方ないよね、くらいの甘えがあっても良いと思います

それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 01:08:08.61 ID:J8snD3daO

アリシラ?さんラスボス説
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 01:57:19.19 ID:fUICvygXo

今ならフメイに会いに行くとかコンマだけど通りそうな感出てきたなw
そしてアリシラ?さんの中味やべー奴だこいつ
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 13:41:37.47 ID:i4Lm5S3eO
王国だけだと敵が足りないからねアリシラさんには頑張って貰いたいね光堕ちしそうだけど
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 15:03:55.66 ID:T98ojF2DO
乙です
個人的にはアリシラ?さんは>>67の時の頃のアリシラの人格を取り戻してまたクロシュやフメイと一緒に仲良くやって欲しいから、当時の人格はまだいきていて欲しいな
695 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 18:13:33.39 ID:sMwqW2700
アリシラ?さんが今後クロシュちゃんたちの前に立ちふさがるかどうかは今のところわかりませんが、彼女は少々変わった価値観を持ち、世界を破壊しようとしているようです
また、以前のアリシラ氏であれば知り得ないはずのことを知っていたり独特の価値観を披露したりなど人格が異なっているかのような言動を繰り返していますが、野宿や熱いものが苦手だったりなど、以前のアリシラ氏と共通する面も有しているようです。完全に何者かに成り代わられてしまったわけではないのかもしれません。真相は闇に包まれています

自由行動でフメイちゃんを捜すことももちろん可能です。成否はコンマ次第ではありますが、ビラ配り効果や目撃情報なども集まってきているため、全く手がかりなしで捜すよりは成功率が高くなっているかと思います
696 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 18:14:46.20 ID:sMwqW2700
―夕方
 どんぐり食堂

 ワイワイ キャッキャ

ミスティ「祝勝会もここなのね」

紫髪のエルフ幼女「見かけこそ庶民的ですが、ここは食材も料理人も最高水準です。他の国の三ツ星店にも引けを取りません」

ティセリア「産地直送でお値段も抑え、誰でも気軽にご利用いただけるようにあえて庶民的な雰囲気にしているそうですよ」

食堂妖精「そうそう! いかにも高級って感じの雰囲気だと気後れしちゃうからね〜」

イリス「へ〜そうなんですね。でも確かにこっちの方が親しみやすいと思います!」


セイン「……」

クロシュ「……」

妖精「あら、あなたもいたんだ」

セイン「ああ。魔王樹との戦には参加できなかったが」

マーベル「護衛なのに護衛してくれねえんだよ、こいつ。いつもふらっとどっか行っちまうし」

セイン「逆だ。何も言わずどこかに行くのはマーベルの方だろう」

マーベル「そうだっけか? 悪いな、護衛を連れるってのがどうも慣れなくてな」

ローガン「セインくんもなかなか苦労をしているようだな……」



食堂妖精「それで、今日の食材はどうするの?」

↓1〜2 食材を1〜2つ選択
肉類:畑の肉、マノシシ肉(期間限定)
野菜:食べられる野草、マンドラ大根、マジカルトリュフ、森ニンジン、ゴボウの根っこ
穀物:ウルティ米、パン、ヤマイモ
魚介:サワガニ、ザリガニ、淡水海竜の大トロ
果実:森林木苺、どんぐり、精霊樹の果実
卵乳:ニワトリの卵、エルフミルク、エルフチーズ、エルフバター
特殊:アルラウネオイル、スライムゼラチン、フェアリーシロップ
※表にない調味料などが使われることもあります
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 18:23:20.04 ID:Q8BUp91CO
海竜の大トロ、マノシシ肉
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 18:23:46.61 ID:hOJrVWiLo
マンドラ大根
スライムゼラチン
699 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 21:28:39.31 ID:sMwqW2700
ミスティ「前回はデザートみたいな感じだったけど、今回はどうする……?」

イリス「せっかくだから今回はがっつりいきたいかも!」

紫髪のエルフ幼女「がっつりいくのなら、本日最適の食材があります」スッ

 メニュー表「マノシシ肉(期間限定)」

ローガン「これは……もしや!」

ティセリア「はい。あなたがたに制圧していただいたマノシシたちの肉を加工し、このどんぐり食堂に納入しました」

ミスティ「マノシシって食べられるのね……」

紫髪のエルフ幼女「常闇の樹海出身の生物は全体的に黒みがかっているため敬遠されがちですが、マノシシの肉に毒性はなく、味もイノシシ肉とさほど変わらないものです」

マーベル「ちょっとクセは強いけどな。俺は嫌いじゃない」

イリス「じゃあ一つはマノシシ肉にしようよ! 私たちのお手柄でもあるんだしさ」

ミスティ「そうね……。そういえば前も気になったのだけど……淡水海竜って、矛盾してないかしら……。海竜なのに、淡水って……」

紫髪のエルフ幼女「ああ……きっと、初めて海竜が発見されたのは海だったんでしょうね。だから当時の発見者たちはその竜を海竜と名付けてしまい……」

イリス「そっか……! 後になって、淡水域に生息する海竜の仲間が発見されちゃったんだ……!」

紫髪のエルフ幼女「恐らくはそういうことなのだと考えられます」

ミスティ「なるほどね……。合点がいったわ……」

妖精「そういえば大トロって生で食べるんだっけ……?」

紫髪のエルフ幼女「はい。このフォレスティナでも、魚類を生で食べる文化が浸透してきたのはごく最近のことですが」

マーベル「大陸より東の文化圏じゃ昔から生で食ってたらしいがな」

妖精「う〜ん……でも魚を生で食べたりして大丈夫なの? なんか気持ち悪くなりそう……」

マーベル「なんだい、おばあちゃん大トロ食ったことねえの? じゃあせっかくだから頼もうぜ、大トロ!」

妖精「ええっ!? い、いらないよ! ていうかおばあちゃん言うな!」

マーベル「一度食ってみろって! 絶対美味いから!」

妖精「うへぇ……」

ティセリア「妖精ほど長く生きていても、食べたことのない食材があるのですね……。さて、あと二品は……」
700 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 21:29:09.53 ID:sMwqW2700
マーベル「セイン、お前は何か食いたい食材とかないのか?」

セイン「特にない。だが出されたものはなんでも食べるつもりだ」

イリス「あ、ローガンさんも似たようなこと言ってましたよね」

ローガン「そうだったろうか……。まあ、私も出されたものはなんでも食そう。皆で好きに選ぶと良い」

紫髪のエルフ幼女「セインさんとローガンさんは紳士的で奥ゆかしい方なのですね。私も普段からこの食堂を利用しているので……ティセリアはどうしますか?」

ティセリア「私もいつも美味しいものを食べさせてもらっていますから、復権派の皆さんに選んでいただきたく思います」

ミスティ「……それじゃあ、肉と魚でこってりしているから……野菜も入れたいわ……。マンドラ大根、良いかしら……?」

イリス「た、確かにお肉とお魚じゃ重いよね……! 良いと思う! それじゃあ、あと一品だけど……クロシュちゃん、どれが良いとかある?」

クロシュ「……えと……この、スライムゼラチン、っていうのは……?」

紫髪のエルフ幼女「これは森スライムの皆さんから分けていただいているスライム性ゼラチンです。美容と健康にとても良いと多くの種族の女性から好評をいただいている人気食材の一つなんですよ」

クロシュ「……わたしからも、出せる……? ゼラチン……」

紫髪のエルフ幼女「それは……わかりません。私たちが契約しているのは他種族が食しても問題のない種の森スライムの方々なので……黒いスライムであるクロシュさんの体から採れるゼラチンを他種族が摂取しても問題ないかは、一度調べてみないとわからないかと」

クロシュ「そうなんだ……」

妖精「なあに、もしかして自分から採れたゼラチンをみんなに食べさせたいの?」

クロシュ「え、えと……体に、良いなら……。非常食代わりにも、なるかも……」

イリス「いやいやいや! クロシュちゃんを非常食代わりになんてしないよ!?」

ミスティ「何を言っているのよ、もう……。クロシュを食べたりなんてしないわよ……」

妖精「ほんとにもう、この赤ちゃんスライムは……」

ローガン「フッ……他のメンバーはともかく、クロシュくんはやはり放っておけんな……」

紫髪のエルフ幼女「復権派の皆さんが、クロシュさんのお友達を一緒に捜してあげている理由が少しわかる気がします」

ティセリア「ふふ、ええ……。クロシュちゃんは優しい子なのですね」

マーベル「危うい優しさだがな。俺もそこのおっさんと同意見だ、もしパーティメンバーだったら放っておけん」

ローガン「私はマーベル氏よりも遥かに年下なのだが……」

セイン「……」

 ◇
701 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 21:30:54.65 ID:sMwqW2700

 薄切り大根と角煮マノシシ肉のスライムあんかけ大トロカルパッチョ「」ジャン!

ミスティ「こ、これは……初めて見る料理だわ……。カルパッチョ、と言うの……?」

食堂妖精「うん! 見た目はちょっと独創的だけど、味はしっかり美味しいから安心してよ!」

イリス「盛り付けの仕方も勉強になるなあ……」


ティセリア「それでは料理も揃ったので、皆さん祝杯の準備を」

マーベル「はいよ」スッ

セイン「……」スッ

ミスティ「祝杯なんて、いつぶりかしら……」スッ

イリス「私もすっごい久し振りかも……。魔族国では復興最優先でそんな余裕なかったもんねえ」スッ

ローガン「次に魔族国に立ち寄ることがあれば、改めて上げたいものだな」スッ

妖精「ほらクロシュも、グラスを持って」クイクイ

クロシュ「えと……こ、こう……?」

紫髪のエルフ幼女「お願いします、ティセリア」

ティセリア「はい! それでは――今回の勝利を祝い、この国の輝かしい未来を祈って――」

「乾杯!」カチャン!

 *
702 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 21:32:09.96 ID:sMwqW2700

イリス「もぐもぐ……ごくん。これ美味しいかも……!」

ミスティ「ええ……! 実をいうと私もスライムあんかけと大トロは初めてだったんだけど、美味しく感じるわ……!」

ローガン「これは……! 柔らかく煮込まれたマノシシの角煮と冷たくも濃厚な大トロの二つがスライムあんかけによって絶妙な味を作り出している……! そして大根の薄切りがアクセントとなってそれを引き立てているのも見逃せん……!」

紫髪のエルフ幼女「ふふふ、流石はどんぐり食堂です。やはりここに来て正解でしたね、ティセリア」

ティセリア「ええ。こうやって、食材を選んで出てきた予想外の料理を楽しむのもこの店の楽しさですよね」

マーベル「で、どうよおばあちゃん。美味いだろ? ちょっと俺が想像してた大トロとは違ったけどな!」

妖精「もぐもぐ……。なんか……不思議な味と食感……。まあ、悪くはないけど……。あとおばあちゃん言うな」モグモグ

クロシュ「もぐもぐ」モグモグ

妖精「クロシュ、スライムの姿で食べても良いよ。緑の国ならスライムの姿を気にする人はいないから」

クロシュ「! う、うん……ありがと」デロデロ

スライムクロシュ「〜〜♪」モニョモニョ モグモグ

セイン「……」モグモグ

 ☆各派閥の親交が深まりました

 ◆
703 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 22:36:49.74 ID:sMwqW2700
―緑の国フォレスティナ 滞在8日目
 ◆パーティメンバー
 ◇クロシュ 武:鉄の小盾  防:旅人の服
 ◇妖精   武:なし    防:蜘蛛絹のレオタード
 ◇イリス  武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
 ◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
 ◇ローガン 武:鋼の剣   防:鎖帷子

◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
・精霊樹の種

◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・選挙で勝つ

◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、森林開発現場、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
704 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 22:37:51.47 ID:sMwqW2700
―朝
 大樹の宿 ロビー

 チュンチュン

イリス「昨日は楽しかったなあ……!」

スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ

ローガン「うむ……! 私も久し振りに羽目を外せた気分だ」

ミスティ「ええ……。伝統派と革新派の人たちのことを……少しだけ知れたような気がするわ……」

妖精「明日には票を巡って争う相手だけどね……」

イリス「はっ……! も、もう明日だっけ!? 投票日!!」

ローガン「明日だな……」

妖精「まあやれるだけのことはやってきたと思うし、後はなるようになるよ」

イリス「で、でも勝てるかなあ……。もし私たちが負けちゃったら、この国は王国の靴を舐めることになるんでしょ……?」

ミスティ「私たちが勝ったら、靴を舐めるどころじゃ済まなくなる可能性もあるけどね……。でも対策はあるんでしょ? 妖精」

妖精「……まあ、ないわけじゃないよ。でもマーベルは絶対に反対するだろうし……ティセリアは……どうだろう」

イリス「え、ええ……? それ、どういう対策なの……?」

妖精「聖域の範囲を緑の国全域まで広げて、フォレスティナを完全に鎖国する」

イリス&ミスティ&ローガン「!!?」

妖精「自由な往来は妖精と精霊と、あとは一部の認められた者だけしか行えなくなる。聖域を広げる際に適切な選別を行えば観光客や冒険者も聖域外に追い出せるし、あのセインってやつもそれは例外じゃない。だからフォレスティナの安全は確実に保てるようになるよ」

イリス「そ、それはそうかもしれないけど……!」

妖精「王国に滅ぼされるか、王国の靴を舐めるか、閉じた楽園にみんなで引きこもかの三択なんだよ。その中なら一番マシでしょ」

ミスティ「……私たちは、どうなるの?」

妖精「確実に外患とならないことがわかっている者には、聖域の通行許可を与える。まあ、最初はあなたたちくらいだけどね」

スライムクロシュ「〜」モニョ…

妖精「大丈夫。フメイも聖域の中にいれたままにしてあげるから。聖域を閉じた後、みんなで捜せばきっと見つかるよ」

ローガン「……しかし、国民は納得するだろうか? 彼らの理解を得られないまま強行するのは危険だと思うのだが……」

妖精「世界樹の意思ってことにすれば良い。私の意図で行えば反対も出るだろうけど、世界樹が気まぐれに聖域を広げたのなら受け入れざるを得ないよ。世界樹は、この国の根幹なんだもん」

イリス「……そもそも、妖精さんの手で聖域を広げることなんて可能なの? それこそ、世界樹自身でもないのに」

妖精「私を誰だと思っているの? 千年間も世界樹の近くにいて、この国を支え続けた建国の太母だよ? 聖域の結界はとっくの昔に解析済みだし、範囲を変更する手法も確立してる……ていうか今の聖域も実は範囲を変更した後なんだよね」

イリス「え、ええ!? そうだったの!?」

妖精「うん。元々、世界樹の結界は緑の森を覆うくらい広かったんだよ。でもそれじゃ往来に不便だったから、建国の時に私が手を加えたの。だからまあ、厳密に言えば聖域を広げるっていうよりは元の広さに戻すって感じかな」

ミスティ「元に戻すだけ……確かに、それなら仕方ないような気もするわ……」

イリス「う〜ん……それしかないのかな……」

ローガン「……気持ち的には納得し難いところだが……これより良い作戦も思いつかん……」

妖精「まあ、納得できない気持ちはわかるよ……。でも国際競争なんかに挑んだって、その行く末はきっと慈悲も仁義もない弱肉強食だもん。だったら閉じた聖域の中で、食うのも食われるのも最小限に留めて穏やかに暮らした方が良いと私は思う」

イリス「……そうなの、かも……?」

ミスティ「……そうね。異議はないわ……。あの森妖精の子も……きっとその方が、穏やかに暮らせるだろうし……」

ローガン「……奪うことも奪われることもなく、穏やかに暮らせるのなら……それに越したことはない、か……」

スライムクロシュ「……」

妖精「……すぐに納得してくれとは言わないよ。でも、生きることの痛みを知っているあなたたちなら……きっと、わかってくれると思う。いや、無理にわかれとも言わないけども……」

スライムクロシュ「〜〜」モニョニョ

妖精「クロシュ……ありがと」ニコ


フォレスティナ滞在8日目です(投票日までの残り行動可能日数1、選挙前最終行動です)
↓1〜3 自由安価 何をする?
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 22:39:33.20 ID:rrqZ4NBU0
ミスティ、個人で魔法の特訓
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 22:42:46.09 ID:T98ojF2DO
フメイとアリシラ?を目撃された所を中心に探してみる
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/03(日) 22:50:11.10 ID:hOJrVWiLo
セインくんに王国ファッキューと喧嘩でも売る
708 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/03(日) 23:04:33.54 ID:sMwqW2700
あまり進まずに申し訳ありませんが、本日はここまでとさせていただきます
次回はミスティの特訓編、フメイちゃんとアリシラ?さんを捜す編、セインくんの真意を探る編となります

突然の鎖国宣言ですが、果たして上手くいくでしょうか。それは実際にやってみなければわかりません。そもそも選挙で復権派が勝てるかどうかもわからないので、あまり気にする必要もないかと思います
そしてもう選挙の前日です。当初は険悪だった三派閥ですが、いろいろあってお食事会を楽しめる程度には仲良くなれたようです。これが実際の投票日にどのような影響を及ぼすかはわかりませんが、恐らく悪い方には傾かないことでしょう。緑の国の平和を願う気持ちは、概ねみんな共通しています

それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/04(月) 01:11:03.98 ID:+Eup+wAsO

妖精おばあちゃんかわいい
クロシュちゃんの末っ子感も良き
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/04(月) 01:22:19.08 ID:Q0tCnD3No
おつ
またクロシュ殿が庇護欲チャームを発動しておられるぞ!
クロシュゼラチンはなんか苦そう(暴言)
711 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 19:49:08.57 ID:5xNdH34H0
妖精おばあちゃんは国の運営に関してはともかく、個人的な趣味嗜好については割と保守的なため、生魚を食べたことがなかったようです。ちなみに緑の国のエルフは肉も魚も食べるので、細身ではない人も多く見られます

クロシュちゃんは実際、パーティの末っ子のような感じなのかもしれません。もう穀潰しではありませんが、その立ち位置はあまり変わっていないようです
クロシュゼラチンがどんな味かは、実際に食べてみないとわかりません。また、スライムゼラチンは種によって毒性があったりもするので、摂取には注意が必要です。どんぐり食堂で提供されている森スライムのゼラチンは、おおよそほとんどの生物が食しても毒性を示すことがない安心安全なゼラチンです
712 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 19:49:37.70 ID:5xNdH34H0
―朝
 大樹の宿 ロビー

ミスティ「それで……今日はどこで活動するの?」

妖精「それなんだけど、今日は各自自由行動にしない?」

イリス「えっ!? 明日選挙だよ!?」

妖精「知名度は十分上がったし、やれることも大体やったもん。あとはなるようになるよ」

ローガン「妖精くんが言うならそうなのだろう。私には未だに選挙のせの字もわからんしな……」

ミスティ「それはその通りね……。妖精がもう十分だと思ったのなら、私たちはそれを信じるしかないわ……」

妖精「まあそういうわけで私はちょっとやることあるから、みんな今日は自由に好きなことやっててね」

クロシュ「……? 妖精さん……」ジッ

妖精「この前みたいに一人で危ないことしに行くわけじゃないから大丈夫だよ。ちょっとティセリアたちと話をしてくるだけ」

ミスティ「……さっき言った作戦を話してくるのね」

妖精「そういうこと。あなたたちがいても、その……できることがないと思うからさ……」

イリス「遠回しに戦力外通告されちゃった! 事実だけど!」

ローガン「う、うむ……。実際、妖精くん以外はつい先日ここに来たばかりの部外者だからな、我々は……」

妖精「今更だけど悪かったね、この国のゴタゴタに巻き込んじゃってさ……」

ミスティ「いいえ、首を突っ込んだのは私自身の意思よ。巻き込まれたつもりはないわ」

イリス「右に同じく!」

ローガン「うむ。微力ではあろうが、建国の太母に力添えできて光栄だ」

クロシュ「ん……」コクリ

妖精「ありがと! それじゃ行ってくるよ」フワッ パタパタ
713 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 19:50:17.96 ID:5xNdH34H0
 *

ミスティ「……それじゃあ、私も一人でやりたいことがあるから出るわね」スクッ

イリス「えっ? 一人で?」

ミスティ「ええ」

ローガン「相わかった。しかしいくらこの国の治安が良いと言えど……いや、君には言うまでもないか」

ミスティ「ええ、心得ているわ。元より一人で放浪してきた身だもの、警戒は怠らない」

ローガン「ならば良し」

イリス「さ、流石だなあ……」

ミスティ「日が暮れるまでには帰るわ。それじゃあ行ってくる」スタスタ

クロシュ「いってらっしゃい……」

 *

クロシュ「……」

イリス「……それじゃあ私たちは、フメイちゃんを捜しに行こっか!」

クロシュ「!」

ローガン「うむ。目撃された場所を中心に捜してみるとしよう」

イリス「はい!」

クロシュ「えと……ありがと、ございます」ペコ

 *
714 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 19:50:46.21 ID:5xNdH34H0
―郊外
 精霊の泉

 ホーホケキョ
 ポッポーホーホー

ミスティ「……」

ミスティ(先日の戦いで……私だけ、無様に攻撃を食らって気を失ってしまったわ……)

ミスティ(イリスを庇う為だった……なんてのは言い訳にしかならない……。わざわざ体を張らずとも、氷の壁を張るとか他に手はあったはずだもの……)

ミスティ(……歴戦の戦士であるローガンさん、複数属性扱えるイリス、最近戦えるようになってきたクロシュ、実は凄い人物だった妖精……。みんな、凄い人……)

ミスティ(それに比べて……私は……。かき氷が作れて、ソリを動かせるだけの女……。このままでは……みんなに、申し訳が立たないわ……)

ミスティ(強く……ならないと……)グッ

 *

 宙に浮く氷柱「」キラキラ

ミスティ(私の作る氷柱……相手が人や獣であればある程度は有効だけど……樹木にはまるで刃が立たなかったわ……)

ミスティ(……樹木だけじゃない。強固な装甲を纏っている相手には、同様に通じないはず……)

ミスティ(今までは自分が生き残ることさえできれば、必ずしも戦いに勝つ必要はなかったけれど……。この前みたいに、仲間の誰かが敵対者に捕まったりしたら、そうも言ってられないわね……)

ミスティ(でも、勝つ為にはどうすれば良いのかしら……。イリスみたいにしっかり魔法を学んで来たわけじゃないのが災いしたわ……。我流以外のやり方がわからない……)

ミスティ(イリスも氷属性は使えないらしいし……。ここはやはり、魔力の限り氷柱を重く鋭くしていくしか……)


↓1コンマ
01-60 燃費の悪い新技を開発
61-90 燃費の良い新技を開発
91-00 負属性への理解
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 19:54:14.82 ID:P/dEHdxMO
過負荷
716 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 20:31:16.07 ID:5xNdH34H0
 宙に浮く巨大な氷柱「」グググ

 バリンッ

 砕け散った氷柱「」シュウウ…


ミスティ「っ、だめね……。魔力量に見合わない真似をしても、燃費が悪すぎる上に不安定……。実戦じゃとても使えないわ……」

ミスティ「……それにしても……」

 砕け散った氷柱「」

ミスティ「この無理矢理大きくしようとして砕けた氷柱の破片……やけに白っぽいわね……。なんでかしら……」スッ

ミスティ「……そもそも普段から私の作る氷は妙に白みがかっているけれど……。この氷柱は特に白っぽいというか……」

ミスティ「昔、ママが作った魔法の氷はもっと透明で澄んでいたわ……。一体何が違うのかしら……」

 砕け散った氷柱「」パキン…

ミスティ「……! ……これ、空気なんだわ! 製氷の精度が甘いせいで空気が混ざり込むから……!」

ミスティ「この大きくしすぎた氷柱がいつもよりさらに白っぽいのは、無理矢理大きくしたせいで普段よりさらに精度が失われていたから……!」

ミスティ「それなら空気が混ざらないように――ママの魔法みたいに、氷を作ることができれば――」グッ

 ◇

 澄んだ透明な氷柱「」キラン…

ミスティ「……コツを掴めば意外と簡単にやれたわ。あとはこれを――」

 ヒュンッ
 ドスッ

 大岩に深々と突き刺さった透明な氷柱「」

ミスティ「よし……。これなら岩のゴーレムが相手でも有効打を与えられるわね……」

ミスティ「ついでに、氷柱ばかりだと刺突に強い相手には不利だから――」ヒュオオ

 宙に浮く氷の刃「」シャキン
 宙に浮く氷塊「」ゴゴゴ

ミスティ「これで斬撃も打撃もカバーできるわ……」

ミスティ「……それにしても……コツを掴んだお陰かしら。製氷の燃費が良くなった気がするわ……。空気という不純物のせいで余計な消耗を強いられていたかも……」

ミスティ「ふう……。とりあえずまだやれそうね……私も……」

 ☆ミスティの製氷技術が上がりました

 ◆
717 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 20:32:28.52 ID:5xNdH34H0
―露店通り

イリス「まずはここだね。ヤマイモ餅を食べてたってことは――」

ヤマイモ餅屋台の森妖精「ヤマイモ餅が食べたい? 焼き立てホヤホヤだよ〜、どうぞどうぞ〜」

イリス「ヤマイモ餅屋さん、何日か前にここへ来た二人組について知らない? 一人は――」

クロシュ「……えと……わたしに、似てる……黒髪の、女の子……」

ヤマイモ餅屋台の森妖精「あっ、この前買ってってくれたお客さん! ……に似てる子……?」

イリス「うん……。なんていうのかな……まあ、双子みたいなものなんだけど、私たちはその子を捜してるの」

ヤマイモ餅屋台の森妖精「双子ちゃんかあ〜! 迷子なの? 大変だねえ」

クロシュ「えと……薄茶色の、お姉さんも……一緒だった……?」

ヤマイモ餅屋台の森妖精「うん、一緒だったよ〜。なんだか面白い二人組だったから印象に残ってるかも〜」

ローガン「その二人組がどこへ向かったか、知らないだろうか」

ヤマイモ餅屋台の森妖精「それはわかんないな〜。私はヤマイモ餅を買って食べた後は、人混みに紛れてどっか行っちゃったと思うよ〜」

イリス「うーん、そう簡単には見つからないか……。でもありがとう! ヤマイモ餅買うね! 三本!」

ヤマイモ餅屋台の森妖精「えへへ、ありがと〜。熱いうちに食べてね〜」

 *

 ヤマイモ餅「」ホカホカ

イリス「いただきまーす! あむっ……あふいっ!」

ローガン「熱いうちに、と言うがこれは熱いうちは食べられん熱さだな……」

クロシュ「あむ……もぐ、もぐ……」モグモグ

イリス「わあ、クロシュちゃん凄いな! こんなに熱いのに食べれるんだ……!」

クロシュ「ごっくん……。うん……」

 ◇
718 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 20:35:14.62 ID:5xNdH34H0
―郊外 空き地

 焚き火跡「」

ローガン「ここだな。次の目撃現場は」

イリス「微かに、あの時食らった炎の魔力の残滓を感じる……。フメイちゃんがここにいたのは間違いないと思う」

クロシュ「フメイちゃん……」

ローガン「だがやはりここにはいないようだな……。せめて足跡が見つかれば良いのだが……」キョロキョロ

イリス「私ももっと魔力探知してみる……!」

クロシュ「……」


探索度合計100%以上でフメイちゃんを見つけます
イリスの魔力探知
↓1コンマ(目撃情報により+10)
01-05 空振り
06-35 探索度+10%
36-65 探索度+20%
66-95 探索度+40%
96-00 イリス「近くにいる!」

ローガンの斥候術
↓2コンマ(目撃情報により+10)
01-05 空振り
06-35 探索度+10%
36-65 探索度+20%
66-95 探索度+40%
96-00 ローガン「この足跡は新しいぞ!」

クロシュの発想
↓3コンマ(目撃情報により+10)
01-05 空振り
06-35 探索度+10%
36-65 探索度+20%
66-95 探索度+40%
96-00 クロシュ「フメイちゃん!」
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 20:35:46.82 ID:3oRZ2lMwo
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 20:35:53.65 ID:PL2k9n3S0
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 20:38:01.97 ID:Nkdw7v6GO
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 20:38:10.31 ID:DdwxTlTuO
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 20:38:29.29 ID:JW0mXv2k0
えい
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 20:46:52.35 ID:YaELrgGqo
やるぅ!
725 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 22:49:09.97 ID:5xNdH34H0
イリス「魔力反応は……微かだけど、こっちに続いてる」

ローガン「私も足跡を発見した。方向は……イリスくんの示すものと同様だな」

イリス「本当ですか! それなら間違いなさそうです……!」

犬クロシュ「……」クンクン

イリス「わっ、クロシュちゃんいつの間に犬の姿に……!?」

犬クロシュ「……!」

犬クロシュ「」シュバッ

イリス「急に走り出さないでよぉ!」ダッ

ローガン「くっ、なんという速さだ……! しかしあの様子は、まさか――」ダッ

 *
726 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 22:50:11.48 ID:5xNdH34H0
―郊外 森の境

犬クロシュ「」シュタタタッ

 デロッポンッ

クロシュ「フメイちゃん!!」トタトタ


フメイ「え……? クロ、シュ……?」

クロシュ「フメイちゃん!」

フメイ「クロシュ……どうして……」

クロシュ「…………かえろ……? 一緒に……」

フメイ「…………」


アリシラ?「あ〜クロシュちゃんだ〜! お久しぶり〜!」ヌッ

クロシュ「!」ビクッ

フメイ「……」

アリシラ?「あれぇ? 私のこと忘れちゃったの? アリシラちゃんだよぉ、お隣さんの〜」

クロシュ「え、えと……」オロオロ

フメイ「……アリシラは、少し変になってるの。放っておいてあげて」

アリシラ?「も〜、変になんてなってないよ〜」

フメイ「……」

クロシュ「……あ、アリシラさんも……。かえろ……?」

アリシラ?「ん〜? どこに?」

クロシュ「あ……」

アリシラ?「うふふ……。帰るとこなんて、ないよ。私たちの住んでたとこがどうなったか、覚えてるでしょ? お母さんもお父さんも、村のみんなも……私たち以外、みーんな死んじゃったもの」

フメイ「……」

アリシラ?「だからごめんね? クロシュちゃんと一緒には帰れないかな〜」

クロシュ「えと……でも……お墓、だけでも……」

アリシラ?「お墓かあ……。それも悪くないけど……うふふ……むしろクロシュちゃんこそ、私たちと一緒に行こうよ。この最悪の世界を、私たちと一緒に綺麗にしよう?」

クロシュ「えっ……?」

フメイ「……」

アリシラ?「クロシュちゃんも見たでしょ? 惨たらしくいたぶられ、辱められ、殺される人間たちと……人間の赤ちゃんを惨たらしくいたぶって殺しながら、哄笑を上げる魔族たちの姿を……。かつて虐げられた魔族が、立場が変わった途端に同じことをし返すの。あれはあの魔族たちが特別悪い奴らだったというわけではないんだよ? 誰だってああなるの。誰もが魔王≠ノなる可能性を秘めているの」

クロシュ「……」

アリシラ?「うふふ……怖いねぇ。でも大丈夫。クロシュちゃんを傷付けようとする者は全てこの世から追い出してあげるから。ね、フメイちゃん?」

フメイ「……うん。フメイが……みんな、焼き払う。私たちをいじめる奴らは……全員……」

クロシュ「フメイちゃん……」

アリシラ?「そういうわけだから、私たちはまだ帰れないの。お墓はいつか作ってあげたいけどね。それで……どう? クロシュちゃんも一緒に来ない?」

フメイ「……クロシュを巻き込まないで。これは、私とあなたが始めたことでしょ」

アリシラ?「クロシュちゃんに聞いてるの〜。フメイちゃんは黙っててよぉ」

クロシュ「……」
727 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 22:50:52.09 ID:5xNdH34H0

クロシュ(アリシラ?さんの言うことも……ちょっと、わかる……)

クロシュ(まさにその時、妖精さんが言っていたように……命には、どうにもならない面がある……)

クロシュ(フメイちゃんとアリシラ?さんは……そのどうにもならないものを、どうにかしようとしているのかもしれない……)

クロシュ(でも口ぶりからすると……そのやり方もまた、きっとどうにもならないくらい悲惨なものだ……)

クロシュ(どっちに転がっても……どうにもならないことに変わりはない……)

クロシュ(わたしは……)


↓1〜3多数決
1.やっぱりどうにもならないと思う。一緒には行けない
2.やっぱりどうにかしたいけど、悲惨なやり方はだめ。一緒には行けない
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 22:52:10.25 ID:YaELrgGqo
2
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 22:52:11.02 ID:PL2k9n3S0
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 22:52:44.56 ID:5biNd+1DO
2
731 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/09(土) 23:20:41.31 ID:5xNdH34H0
クロシュ(……)

クロシュ(聖女さんは……あの光景を目の当たりにしながら……それでも、命は苦しめ合うだけじゃないって……魔族国でがんばってる……)

クロシュ(妖精さんも……どうにもならないと口では諦めたようなことを言いながら……今この国で、必死に奔走してる……)

クロシュ(……それに……森妖精の子のおうちだって……)

クロシュ(わたし一人じゃ、何もできなかったかもしれないけれど……みんなで諦めずにがんばったから……助けられたんだ……)

クロシュ(……)

クロシュ(どうにもならないことは、やっぱりどうにもならないかもしれないけれど……)

クロシュ(それでも……やっぱり、わたしも……)

クロシュ(諦めたくない……!)



クロシュ「……一緒に……行けない」

フメイ「……うん。クロシュは、安全なところに……」

クロシュ「んーん……。フメイちゃんも……アリシラさんも……危ないことは、やめて……やっぱり、一緒にかえろ……?」

フメイ「え……」

アリシラ?「……」

クロシュ「えと……ひどいやり方は……だめ……。それじゃあ、本当に……どうにも、ならなくなっちゃう……」

フメイ「……」

アリシラ?「まあ、優しいクロシュちゃんには向いてないとも思ってたし仕方ないかな。やっぱり私とフメイちゃんの二人でやるしかないねぇ」

フメイ「……」

アリシラ?「うふふ……もしかしてフメイちゃん、帰りたくなっちゃった?」


↓1コンマ
01-95 それでも……
96-00 帰りたくなっちゃった
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 23:21:44.31 ID:bwRLZh0o0
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 23:22:00.20 ID:5biNd+1DO
はい
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 23:22:00.20 ID:JW0mXv2k0
もうやだおうちかえるぅ!
735 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 00:07:09.14 ID:R0Lzpolx0

――
――――

 ―燃える集落

  ゴオオオ……
  メラメラ… パチパチ…

 燃える大人の死体「」メラメラ

 燃える子供の死体「」メラメラ

 燃えるスライムの死骸「」ジュクジュク…

  ◆

 ―焼け落ちた集落跡

  雨「」ザァァァァ…

 大人の焼死体「」

 子供の焼死体「」

 スライムの焼死骸「」
736 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 00:08:04.45 ID:R0Lzpolx0
――――
――


フメイ「……」グッ

クロシュ「フメイちゃん……」

フメイ「……クロシュ……。ごめん……。フメイ……一緒に、帰れない……」

クロシュ「あ……」

フメイ「……みんなを焼いたの……フメイの炎、だから……。フメイに……帰る資格なんて……ない……」

クロシュ「そんな……こと……。だって、フメイちゃんは……仕方なかったもん……」

フメイ「仕方なく、ない……。フメイのせいで……みんな、死んじゃった……」

アリシラ?「……」

フメイ「だから……あの村のみんなが夢見てた……差別も暴力もない、平和な世界を……フメイが、作る……。あんなこと……二度と、起こさせないために……」

クロシュ「……フメイ、ちゃん……」

アリシラ?「ごめんねぇ。フメイちゃんも本音ではクロシュちゃんと一緒にいたいんだけどね? それ以上に、やらなっきゃならないことがあるの……」

クロシュ「……」

フメイ「……クロシュは……安全なとこで、待ってて……」

クロシュ「…………」ジワ

フメイ「……ごめんね、クロシュ。本当に……ごめんね……」

アリシラ?「うふふ……つらいねぇ……。待つ身も、待たせる身も……」



イリス「クロシュちゃーん!」タッタッタッ

ローガン「クロシュくん!」タッタッタッ



アリシラ?「あらら、クロシュちゃんの新しいお友達? 鉢合わせるのも面倒だしお暇しよっか、フメイちゃん」

フメイ「あっ……。クロシュ……! これ……!」ビリッ

 スッ
 フメイの服の切れ端「」

クロシュ「ふえ……?」

フメイ「涙、拭いて……。毎日熱殺菌してるから、清潔だから……」

クロシュ「あ……」

フメイ「それじゃあ、またね……!」

 ボンッ!

アリシラ?「それじゃあまたねぇ、クロシュちゃん。あそうそう、選挙の日はあんまり世界樹に近付かない方が良いかもよ? じゃ!」タッタッタッ

クロシュ「あ、うん……」

 *
737 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 00:21:15.63 ID:R0Lzpolx0
本日はここまでとなります。クロシュちゃんのメンタリティにまた少し変化があったようです

今回はミスティさんが魔法のコツを掴み、フメイちゃんとの接触に成功しました
コンマ表にちらっとありましたが、ミスティさんの魔法はさらにもう一段上の可能性を秘めています。もし機会があれば、今回のようにパーティメンバーの成長を促すような行動をするのも良いかもしれません
そしてフメイちゃんを説得するのはとても難しそうに見えますが、アリシラ?さんを説得するよりは易しいかもしれません。今回ある程度のコミュニケーションが取れたのは、クロシュちゃんにとってもフメイちゃんにとっても良いことだったと思います

それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 02:49:18.41 ID:xAbX2HRfo

なんか世界樹にやるつもりなんかフメイちゃんたち……
修行はやればいい事ある、前作でもそうだった
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 10:11:45.95 ID:W+ELYYdDo
乙乙
なんかフォレスティナ編でフメイちゃん問題解決できそうな勢い
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 15:40:15.82 ID:YjytK3sl0


何だかんだパーティに愛着わいてるミスティさん
741 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 20:24:31.25 ID:R0Lzpolx0
フメイちゃんとアリシラ?さんが何をしようとしているかはわかりませんが、アリシラ?氏がろくでもないことを考えているのは確かだと思われます。気を付けましょう

フメイちゃんは心情的にはクロシュちゃんと一緒にいたいようなのですが、村を焼いた罪悪感やら、王国や人間等への憎しみやら、平穏な世界を作りたい願いやら、様々な感情が絡まり、折り合いが付かなくなってしまっているようです。クロシュちゃんはフメイちゃんと一緒に帰りたいだけなのに、なかなか上手くいかないようです

ミスティさんの氷魔法は、一人で旅をする中ほぼ独学で身に付けたもののため、実は意外と荒削りだったりします。そういう点では、自分の属性を正しく理解できていない状態で複数属性を使っているイリスと良い勝負かもしれません。二人ともちゃんと自分の属性を理解すればもっと凄いことができるようになります。クロシュちゃんやローガンさんも、修行をすれば良い発見があるかもしれません

実はミスティさんはこのパーティに愛着が湧いています。今まで誰も信用せずに一人で旅をしてきた彼女にとって、警戒せず一緒にいられる仲間というのはとても新鮮で心地良いものだったのかもしれません。それゆえに、パーティの仲間に迷惑をかけかねない自らの不甲斐なさが許せなかったのでしょう
742 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 20:25:20.23 ID:R0Lzpolx0
―郊外 森の境

イリス「そっか……。説得、できなかったんだね……」

クロシュ「うん……」

イリス「……でも、フメイちゃんはクロシュちゃんのことを今でも大切に思ってくれてるんでしょ? だったら……きっと、まだ手はあるよ……!」

ローガン「うむ。しかしアリシラという子の性格が以前と大きく異なっているとのことだが、もしかするとフメイくんよりもアリシラくんの奇妙な変化について調べた方が良いかもしれんな」

イリス「そうですね……私もそれは思いました。もしかしたらフメイちゃんは、変になったアリシラちゃんに引っ張られてるのかもしれませんし……」

クロシュ「うん……。アリシラさん……前はもっと、静かで優しい人だったのに……」

ローガン「謎は深まるばかりだな……」

イリス「とりあえず今日はもう帰りましょう。そろそろミスティも戻ってるかもしれない」

クロシュ「うん……」

 *
743 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 20:27:12.49 ID:R0Lzpolx0
―夕方
 郊外 街道

 カァー カァー
 スタスタスタ…

イリス「……」スタスタ

ローガン「……」スタスタ

クロシュ「……」ヨタヨタ


セイン「……」スタスタ


イリス「セインくん!」

ローガン「なんと」

クロシュ「……!」

セイン「……お前たちか」

イリス「うん! セインくんも帰るとこなの?」

セイン「いや、マーベルを探している」

ローガン「……やはり大変なのだな。彼の護衛というのは」

セイン「もう慣れた。お前たちはマーベルを見ていないか?」

イリス「見てないなあ……。ごめんね、役に立てなくて」

セイン「いや、いい。護衛でありながら奴を見失った僕の責任だ」

イリス「真面目!」

ローガン「勤め人の辛いところだな……。旅人は気楽で良いぞ。セインくんも旅人にならないか?」

セイン「僕にはやらなければならないことがある。気楽に旅をしている暇などない」

ローガン「ふむ……。彼の護衛もその一環なのか?」

セイン「……お喋りが過ぎたな。僕はもう行く」スタスタ

イリス「あっ……!」

ローガン(……これ以上は無理か。前に釘を刺されたばかりだし、深追いは禁物――)


クロシュ「……なんで……王国なんかのために、動いてたの……?」

イリス&ローガン「!!?」


セイン「……」ピタ
744 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 20:28:19.06 ID:R0Lzpolx0
クロシュ「みんな……王国のせいで、ひどい目にあって……苦しんでる……。セインさんは……悪い人じゃ、なさそうなのに……どうして……?」

セイン「……」


ローガン「く、クロシュくん! もうやめておけ! それ以上はまずい!!(小声)」

イリス「そ、そうだよクロシュくん! セインくんは怒らせない方が……!(小声)」

クロシュ「あっ……ご、ごめんなさ……(小声)」


セイン「……」


↓1
01-50 無視
51-90 僕は悪人だ
91-00 ??
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 20:29:05.96 ID:YjytK3sl0
746 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 22:16:10.17 ID:R0Lzpolx0
セイン「……僕は……守るべきものを、守りたいだけだ」

クロシュ「え……?」

セイン「その結果、王国の悪しき陰謀の走狗となり――罪のない者たちを手にかける、悪そのものに堕ちるとしても――構わない」

イリス「……!」

ローガン「セインくん、君は――」

セイン「僕の邪魔をする者は、誰であろうと――」クルッ

クロシュ「――」

セイン「……!」ズキッ

セイン「う、ぐ……」グラッ

クロシュ「あっ……! せ、セインさん……!」トテトテ

 ポフッ(クロシュがセインを支える音)

セイン「はあ、はあ……! まさか……お前は……お前、たちは……!!」

クロシュ「??」

セイン「う、ぐ、ああああっ……!!」


「はいそこまで」フォン


クロシュ&イリス&ローガン「!?」

僧侶「困るんですよね。私たちのセインくんに勝手なことされると」スタスタ

イリス「あ、あなたは……?」

僧侶「私ですか? セインくんの仕事仲間……ってとこですかね」

ローガン「では、あなたも革新派の護衛を?」

僧侶「革新派の護衛ィ?? ぷっ……あっはははは!! なんで神の僕たるこの私が、こんな土臭い国の泥臭い奴らの護衛なんかしなきゃならないんです??」

イリス「……セインくんは、その土臭くて泥臭い革新派の護衛やってるみたいですけど」イラッ

僧侶「あーはいはいそういえばそういうことになってましたね。私としたことが、ロールをすっかり忘れていました。反省反省」

ローガン「……貴様、何者だ」

僧侶「……まあ、いいでしょう。教えて差し上げます。私は――」

僧侶「ロイエ教原理派幹部――名前は、神に捧げたのでもうありません。ただの僧侶とお呼びくださいませ」カーテシー
747 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 22:19:16.50 ID:R0Lzpolx0
イリス「ろっ……ロイエ教原理派幹部!!? な、なんでそんな人がここに――」

僧侶「さあ、なんでだと思います?」

ローガン「明日の選挙へ向けた内政干渉……いや、工作か?」

イリス「そ、それって条約違反じゃ――」

僧侶「神の代行者である私たちが、人間同士の取り決めに従う必要なんてあります?」

イリス「滅茶苦茶だ……!」

ローガン「……何を企んでいる? セインくんの仕事仲間とはどういう意味だ?」

僧侶「いきなり質問攻めとかやめてくれません? デリカシーのないおじさんとか最悪なんですけど」


クロシュ「……」ギュッ

セイン「…うっ……」

クロシュ「セインさん……。あの人は……だめ……」

セイン「………やはり……お前、は……」


僧侶「うわっ、よく見たらそれスライムじゃないですか。穢いなあ、セインくんから離れてよ」シッシッ

クロシュ「……」キッ

僧侶「は? 何ですかその目つき。スライムの分際で生意気ですね」

クロシュ「……」

僧侶「うざ……。もういいです、浄化して差し上げます。来世では馬頭くらいになれると良いですね」コオオ…


イリス「あ、ああっ! だめっ!!」

ローガン「クロシュくん!!」


セイン「や……めろ……!」ザッ


クロシュ「セインさん……!」

僧侶「んん? ちょっとセインくん、何のつもりですか?」

セイン「……こいつを殺したら……僕は、お前たちと手を切る……」

僧侶「は?」

セイン「……」

僧侶「あなた自分が何を言っているかわかっているのですか? あなたが手を切ったら、あの子たちは――」

セイン「だが、お前たちは……僕という戦力を失う……」

僧侶「……チッ。交渉ごっこですか? 悪知恵を付けましたね」

セイン「……」

僧侶「はあ、わかりましたよ。セインくんに機嫌を損ねられると困るのは私たちですからね」

セイン「……」

僧侶「そういうわけですから、本日は見逃して差し上げます。帰りますよ、セインくん」

セイン「いや……僕は、マーベルを探さなければ……」

僧侶「それはもういいです!!」

 *
748 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 22:19:59.49 ID:R0Lzpolx0
イリス「……何だったんでしょうか。あの人」

ローガン「……いろいろ、聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がするな」

イリス「正直、生きた心地がしませんでした。消されなかったのは奇跡じゃないですか、これ……」

ローガン「うむ……。恐らくセインくんのお陰だろうが……。しかしロイエ教原理派、か……。王国と言い、良からぬ企みが渦巻いているな。この大陸には……」

イリス「明日の選挙……心配ですね……」

ローガン「妖精くんには報告しておいた方が良いだろうな」


クロシュ「セインさん……」

イリス「セインくんも……心配だね……」

ローガン「彼は……不本意に利用されているのかもしれんな」

 ◆
749 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 22:50:10.72 ID:R0Lzpolx0
―首相官邸 応接室

ティセリア「今日は一人なのですね」

妖精「あの子たちがこの場にいても仕方ないからね。フメイ捜しとか他にもいろいろやりたいことがあるだろうから、今日は選挙活動はお休みだよ」

紫髪のエルフ幼女「前日だというのに余裕ですね。建国の太母だからって甘く見ていると足元を掬われますよ」

妖精「その時はその時だよ。大体、不正を働くあなたたちには正攻法じゃ勝ちようがないでしょ?」

紫髪のエルフ幼女「……」

ティセリア「……では、正攻法ではないやり方があるのですか?」

妖精「そういうこと。今日は交渉に来たの。不正をやめさせるためのね」

紫髪のエルフ幼女「交渉……? この国の未来を天秤にかけるほどの交渉材料があるとは思えませんが」

妖精「それがあるんだよね。それも、王国の干渉を完全に遮断することのできる名案が――」

ティセリア&紫髪のエルフ幼女「!?」

妖精「簡単に言うと――聖域で、フォレスティナを鎖国するの」

 *

ティセリア「た、確かにそれは、王国の干渉を完全に遮断することができますが……」

紫髪のエルフ幼女「しかし他のあらゆる国や地域との国交もほとんど断絶してしまいます! この国がこれまでに築き上げ、諸外国からも人気を博してきた数多の観光産業はどうなるんです!! 鎖国なんて簡単に言いますが、妖精のお宿のように外貨で生計を立てている者たちもいるんですよ!? 国外資源の輸入もできなくなれば、生活水準も……!!」

妖精「でも、王国を排除できる」

ティセリア&紫髪のエルフ幼女「……!!!」

妖精「鎖国によって収入が減ったり失業したりした事業者や労働者には手厚い補償を与える。衣食住に関する自給率はどれも余裕で十割を越えてるんだから、みんなが生きるのに困らない程度に資源を分配しても問題はないでしょ?」

ティセリア「それは、まあその通りですが……。国外へ輸出する分を国内へ回せば、むしろ供給過多なくらいですし……」

妖精「国外資源についてはまあ……私たち妖精とか認められた者は聖域を自由に通行できるから、国外との交流が完全に絶たれるわけじゃないし、なんとかできるでしょ。完全に信頼できる相手としか取引はできないから難しくはなるけれど、不可能ってわけじゃない。まあ私としては、王国以外とも完全に国交を絶って昔ながらの森と共に生きる生活に戻っても良いと思うんだけど……これは流石に老害意見すぎるかな……」

ティセリア「…………」

妖精「……どう? 王国の奴隷になるのと、多少の痛みを我慢してこの国の秩序と尊厳を守るのは……どっちが良い?」


 ☆太母の威光、復権派の名声、伝統派との親交により判定は自動成功となります
750 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 22:51:53.20 ID:R0Lzpolx0

紫髪のエルフ幼女「……例え、手厚い補償を与えられても……これまでに築き上げてきたものが崩れ去る苦しみは、簡単には癒えません……」

妖精「……わかってるよ。でも……あったかいご飯と、あったかい寝床と……家族や友達と穏やかに過ごせる時間があれば……それもいつか、癒やされると思う……」

紫髪のエルフ幼女「そんなの……ただの、根拠のない楽観でしょう……。そうやって楽観視した結果が、あの魔王樹だったのではありませんか」

妖精「……でも、今度は……誰にもお腹を空かさせないし、寂しい思いもさせない」

紫髪のエルフ幼女「口だけなら、なんとでも……」

ティセリア「サリー。もう良いでしょう……」

紫髪のエルフ幼女「……!」

ティセリア「あなただって……わかっているはずです。王国に隷属すれば……鎖国するどころではない痛みと苦しみが、この国に吹き荒れることを……」

紫髪のエルフ幼女「……」

ティセリア「滅亡でも、降伏でもない……私たちが夢にまで見た、第三の選択肢なのです……。それが完全に理想的なものではなかったとしても……十分すぎるではありませんか」

紫髪のエルフ幼女「…………はい……。私も……わかって、いるのです……。申し訳、ありません……」


ティセリア「……妖精。私たち伝統派はあなたの提案を支持し、公正公平な選挙を執り行うことを約束します」

妖精「ありがとう。当日は正々堂々戦おう」

ティセリア「はい。もし私たち伝統派が勝った時は、鎖国の施行を手伝ってもらいますからね」

妖精「当然。あなたたちこそ、もし私たちが勝ったらいろいろ手伝ってもらうからね」

ティセリア「ええ、もちろんです」

 ◆
751 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/10(日) 22:54:30.15 ID:R0Lzpolx0
―森林開拓現場

マーベル「よし、もう十分だな。地質良し、星脈良し、リスク無し! ドワーフたちを呼び戻して開発再開を――」

妖精「やっぱりここにいたね、マーベル」フヨフヨ

マーベル「復権派の妖精に――伝統派のおばさんたちか。なんだ、また食事のお誘いか? 若いイケメンが恋しいのか?」

ティセリア「……この国の未来を左右する、大事なお話をしに来たのです」

マーベル「なんだ? 明日の選挙のことか? それならもうやることは決まってるだろ、王国を敵に回さないように――」

妖精「私から提案がある。その王国に降伏も隷属もしないで済む方法を、伝えに来たの」

マーベル「なんだと……?」

 *

マーベル「さ……鎖国だと!!?」

妖精「うん。この国を守るためには、もうそれ以外の選択肢はない。先んじて王国の靴を舐めるという革新派の路線は、国家滅亡という最悪こそ避けられるかもしれないけれど……結局その先は、かつての魔族自治区のような、王国からの苛烈な差別と搾取がまかり通る生き地獄にしかならないよ」

マーベル「ぐっ……それは、そうかもしれねえが……。しかし、鎖国なんてしちまったら――」

妖精「……革新派が目指していた、外貨を獲得して国全体を豊かにしていく方針は……多分、達成できなくなるね」

マーベル「そうだよ! 鎖国なんてしちまったら、この国は今より更に土いじりしか脳のない土人国家になっちまう!! 俺たちの森林開発だけじゃねえ、他の連中の観光業もようやく軌道に乗ってきたとこなんだぞ!? それをお前……お前!! 鎖国なんて……!!!」

紫髪のエルフ幼女「……しかし王国を受け入れれば……この国の観光業は、破壊と搾取の限りを尽くされます。私たちが大切に育て上げた観光業を……王国に踏み躙られるか、私たち自身の手で終わらせるか……そのどちらかなのです……」

ティセリア「マーベル……どうか、賢明な判断を……」

マーベル「……」


↓1コンマ(復権派の名声、革新派との親交により+40)
01-50 認めねえ!!!
51-90 仕方ねえか……
91-00 待てよ?
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 22:55:24.21 ID:xAbX2HRfo
マーベルわかってくれ
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 22:56:26.94 ID:W+ELYYdDo
待てよ?
754 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/11(月) 00:04:44.47 ID:U5ZzJzPU0
マーベル「……チクショウ。わかってんだよ……。王国なんぞの軍門に下るくらいなら、鎖国しちまった方が遥かにマシだってことくらい……」

ティセリア「マーベル……!」

マーベル「俺一人の我儘で、王国のカス共をこの国に入れさしたら……国民も、産業も、何もかもが王国の慰み者になっちまう……。んなことくらい……わかってんだよ……」

紫髪のエルフ幼女「マーベル……」

マーベル「俺はさ……。この国をもっと、盛り上げたかったんだ。諸外国の新しい文化を取り入れたり、開発や観光で外貨をもっと稼いだりして……この国をより豊かに、より楽しい国にしたかったんだ。いつも元気に飛び回る妖精たちも、意外と順応性の高いアルラウネの奴らも、言葉足らずながら気の優しい馬頭の連中も、頭の固い老害ばかりのエルフも……誰もが豊かに楽しく暮らせるようにしてえって、本気で思ってたんだぜ」

妖精「うん……」

マーベル「だがまあ……潮時だったのかもな。目先の開発に固執して、聞こえているはずの声を、見えていたはずの涙を無視しちまった……。上に立つ者として、やっちゃいけないことをしちまったんだ。しかもそれで魔王樹っつー脅威を見落としていたんだぜ? 笑い話にもならねえよ」

ティセリア「……」

マーベル「……まあ、そういうわけだ。革新派は……復権派の提案を受け入れる」

妖精「……ありがとう」

マーベル「この国のことを考えりゃ当然の判断だろ。しかしこうなると……選挙は普通にやるってことか?」

ティセリア「はい。どうやら、私たちの誰が勝っても鎖国する方針は確定のようですから」

紫髪のエルフ幼女「私たち以外の候補者が勝った場合は……どうしますか」

ティセリア「その時は改めて、新首長へこの提案をしましょう。私の知る限り、どの候補者もこの国の現状をしっかり理解している方々ですから、きっと受け入れてくれるかと……」

マーベル「俺が受け入れたんだから大丈夫だろ。はっきり言って俺以外は全員伝統派よりの考え方だしな」

紫髪のエルフ幼女「それもそうですね……。革新派はそういう意味では貴重な存在です」

マーベル「フッ……。さっきは潮時と言ったが、革新を求める支持者がいる限り革新派は不滅だ。まあ、今後の活動は少々慎重になるかもしれんが……」

妖精「鎖国って言っても、完全に国交を断絶するわけじゃないからさ。妖精と精霊と、認められた者には通行の許可を与えることができる。だから、規模は縮小しちゃうかもしれないけど……」

マーベル「おう。やれることを模索していくぜ」

 ☆伝統派と革新派の説得に成功しました

 ◆
755 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/11(月) 00:19:19.49 ID:U5ZzJzPU0
三派閥の合意を得られたところで、本日はここまでです。次回はついに、フォレスティナ首長選挙編開始です

ついに姿を現した、セインくんを裏で操る巨悪の影――ロイエ教原理派。セクリエ・ロイエで急進派と呼ばれているのは何を隠そうこの原理派のことでもあり、その実態は闇に包まれています。大陸の闇に蠢くその悪意を前に、クロシュちゃんはどうすれば良いのでしょう。一介の赤ちゃんスライムにできることなどあるのでしょうか
そして今回は三派閥がついに手を取り合いました。これで選挙は、誰が勝っても鎖国する方向で統一されることでしょう。しかし暗躍する王国や原理派、そしてアリシラ?さんの世界樹に近づくなという不可解な発言など、不確定要素も少なくないようです。選挙は無事に始まり、そして無事に終わることができるのか――

それでは本日はありがとうございました。次回も恐らく土日です。よろしくお願いたします
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 00:47:31.87 ID:t7DOiXMDO
乙です
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 18:06:17.33 ID:HN+yNsOmO

三派閥団結できたけど不穏だな
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 20:28:28.57 ID:5Sy/Dn7a0

中々の胸糞野郎出てきましたね・・・
セイン君上司への忠誠心は一応本物なのかな。
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 22:14:32.51 ID:V7bwC0nPo
おつ
セインくんも色々抱えてるなぁ
760 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 17:55:58.50 ID:gsRHWqSF0
候補者たちの思惑は異なれど、国への想いは皆本物なのかもしれません。団結できたのは良いことと思います
しかしこの選挙の行方がどうなるかは誰にもわかりません。クロシュちゃんは、真なる敵の姿を見極めることができるでしょうか

僧侶氏は、少なくともクロシュちゃんにとってはかなり嫌な存在だったようです。クロシュちゃんはできればあまり関わりたくないと思っているようですが、それだけにセインくんのことが心配でもあるようです
彼女がセインくんの上司にあたる関係なのかはわかりませんが、僧侶氏の行動をセインくんが邪魔した辺りを見ると明確な上下関係があるわけではないようです。しかしはっきりしたことはまだわかりません

セインくんにも彼自身の考えや目的があるようです。その事情は明らかになっていませんが、やはりクロシュちゃんのことが気になるようです。好みのタイプというわけではないらしいですが、真相は闇に包まれています
761 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 17:56:31.73 ID:gsRHWqSF0
―緑の国フォレスティナ 滞在9日目
 ◆パーティメンバー
 ◇クロシュ 武:鉄の小盾  防:旅人の服
 ◇妖精   武:なし    防:蜘蛛絹のレオタード
 ◇イリス  武:精霊樹の杖 防:魔術師のローブ
 ◇ミスティ 武:魔銀の短剣 防:旅人のローブ
 ◇ローガン 武:鋼の剣   防:鎖帷子

◯所持アイテム
・鉄鍋+携帯調理器具
・蜘蛛絹の下着
・ザリガニのお守り
・魔術書「星の魔力」
・魔族国永久旅券
・マジカルブラッドワイン
・反魂丹×2
・運命賽
・雨乞い傘
・精霊樹の種
・フメイの服の切れ端

◯現在の目標
・フメイちゃんを探す
・選挙で勝つ

◯仲間の目標
・星の魔力を読む[2/4](イリス)
……………………………………………………………………………………
□フォレスティナ首都 主要施設
郊外:緑の大森林、農園、果樹園、精霊の泉、おうちの木、森林開発現場、他
首都:露店通り、大樹の宿、武具店、雑貨店、魔法店、工芸品店、八百屋、甘味処、食事処、冒険者ギルド、他
聖域:世界樹 ※許可なき者は聖域に入れません
762 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 17:57:32.68 ID:gsRHWqSF0
―フォレスティナ首長選挙投票日
 露店通り 広場

 ワイワイ ガヤガヤ

森妖精の屋台「太母まんじゅうだよ〜! フェアリーシロップたっぷりでとっても甘いよ〜!」

エルフの屋台「こっちはティセリア様のお手製クッキーですよ〜! エルフミルクたっぷりでとっても濃厚ですよ〜!」

観光客の男性「太母のシロップとティセリア様のミルクだと!? おれはどっちを選べば良いんだ……!!!」

エルフの男性「私は当然、ティセリア様の濃厚ミルクですね」

 *

エルフの吟遊詩人「無数の触手に捕まり、四肢を拘束されて絶体絶命の太母――。万事休す、運命はここで潰えてしまうのか――」ポロロン

エルフの子供「たいぼさま……しんじゃやだ……」ウルウル
観光客の女性「無数の触手に四肢を拘束された伝説の妖精……ゴクッ……」
宿屋アルラウネ「そ、それでどうなっちゃうの……!?」

エルフの吟遊詩人「しかしそこへ業火一閃! 無数の触手を炎の刃で切り払って現れたのは――我らがダークヒーローイリス!!!」ポロロン

エルフの子供「わあああ!! だーくひーろーいりす!!」
観光客の女性「うおおお!! ダークヒーローイリス!!」
宿屋アルラウネ「来たあああ!! ダークヒーローイリス!!!」

 *

マーベル「富国強兵文明開化! 革新革命近代化! イエーッ!」シュババッ
森妖精の踊り子「イエーッ!」シュババッ
エルフの踊り子「イエーッ!」シュババッ
アルラウネの踊り子「イエーッ!」シュババッ
馬頭の踊り手「イエーッ!」シュババッ
革新派支持者たち「イエーッ!」

観光客のマーベルファンA「キャーマーベル様ー!」
観光客のマーベルファンB「こっち向いて〜!」
観光客のマーベルファンC「素敵です、マーベル様……」

 *

イリス「わあ……! すっごい盛り上がってる……! 流石は四年に一度の特大イベント……!!」

ミスティ「あのダンサーの募集、革新派だったのね……」

ローガン「伝統派もお菓子の屋台を出しているようだな。しかし太母まんじゅうはいつ手配したのだ?」

妖精「あの妖精たちが勝手に私を使って商売してるだけだと思う……。私は何もしてないし許可も出してないし……」

イリス「あ、あはは……妖精って自由な種族だよね」

 *

―郊外の投票所

紫髪のエルフ幼女「投票用紙をお書きになりましたらこちらの箱へお入れください」

森妖精の子「えと……ここ……?」

紫髪のエルフ幼女「はい」

森妖精の子「ありがと……」ヒョイ

紫髪のエルフ幼女「……ところで、あなたはお祭り会場には行かないのですか?」

森妖精の子「」「……うん。今は……木さんといっしょに……いたいから……」ニッコリ

紫髪のエルフ幼女「……ふふ。そうですか」

 *
763 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 17:58:16.31 ID:gsRHWqSF0
―夕方
 露店通り 広場

ティセリア「フォレスティナ国民の皆さん、投票ありがとうございました。観光に来た方々も、お越しいただきありがとうございます。現首長のティセリアです」ペコリ

 ワーワー ティセリアチャン!!

ティセリア「皆さんに支えられ、私はここまで首長として歩んでくることができました。今回の結果がどうなろうとも、皆さんへの感謝と、緑の国への想いが変わることはありません」

ティセリア「本当に、本当に……ありがとうございました」

公務員エルフ「……」ススッ

ティセリア「……ありがとう。それでは――たった今開票結果が届きましたので、読み上げさせていただきます」

ティセリア「今回のフォレスティナ首長選挙は――」


↓1コンマ
01-05 ??
06-15 革新派
16-55 伝統派
56-00 復権派
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 18:04:51.83 ID:l9Il6YJGo
はい
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 18:05:41.82 ID:yrqqU8o00
どうなる
766 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 18:58:40.35 ID:gsRHWqSF0
ティセリア「――復権派の妖精――建国の太母、堂々の再当選です!!」

 ワアアアア!! タイボ! ヨウセイ!! ソンナァー! マーベルサマァァ!!!

妖精「えええええ!!!? いや、もう私が当選する必要は――」

ティセリア「新首長!! 当選のお言葉をお願い致します!!」

妖精「……あー、こほん。みんな、ありがとう――。前と同じように――私は、みんなが平和で幸せに生きていけるよう、最善を尽くすから――。よろしくね――」

 ワアアアアア!! オメデトオオオ!! パチパチパチ!!


ティセリア「それでは、続けて新首長就任式を聖域にて行います。本日は、厳正な審査を受けて頂ければ一般の方も聖域に入ることができます。参加をご希望で未だ審査を受けていない方は、こちらで審査を行っておりますので――」

 *

妖精「なんてことだ……こんなことになるなら直前に棄権すれば良かった……。もう鎖国の合意が取れている今、私が当選する必要なんて全くなかったのに……」

イリス「ま、まあまあ……! この国のみんな、妖精さんのことをちゃんと覚えてくれてて、今でも好きでいてくれたってことだよ!」

クロシュ「うん……! 妖精さん……大人気……!」

妖精「う〜ん……まあ、確かに悪い気はしないけれど……。でもまあ、この国の運営についてあそこまで口出ししちゃったんだから仕方ないか……」

ミスティ「そうね……。四年間の任期、頑張りましょう……」

ローガン「フッ……思っていたよりも長い間この国に滞在することになりそうだな」


妖精「……それにしても……昨日イリスが言っていた奴ら、影も形も見せないね」

イリス「そうだね……。もう工作とかをするタイミングは過ぎたように思えるけれど……はっ!? まさか暗殺――」

ローガン「一応、私も細心の注意を払っている。今のところ厄介な気配は感じないが……」

ミスティ「聖域に侵入して何かするつもりなんじゃ……? 審査があるとは言え、今日は聖域が一般公開されるわけだし……」

妖精「まあ、流石に聖域に入り込んで不届きを働くなんて狂った真似をする輩がいるとは思いたくないね……」

クロシュ「……」


ティセリア「復権派の皆さん、ここにいらしたんですね」スタスタ

妖精「ティセリア……」

ティセリア「ふふ、首長就任おめでとうございます、妖精」

妖精「あー、うん……ありがと……」

ティセリア「先ほども話しましたが、就任式を聖域で執り行いますので、妖精だけでなく復権派の皆さんにもご出席をお願いしたいのです」

イリス「えっ! いいんですか!?」

ティセリア「良いに決まっているじゃありませんか。あなたがたが世界樹に狼藉を働くような輩でないことはとっくにわかっておりますし」

ミスティ「それはありがたいけれど……。一般の人に対しては、審査はちゃんとやるのよね……?」

ティセリア「もちろんです。世界樹はこの国の象徴というだけでなく、世界そのものを維持する存在なのですから。不届き者の侵入を許すことは決してありません」

ローガン「うむ……。それなら安心だが……」

ティセリア「そういうわけですから、ご都合がよろしければ是非ともご参加くださいね」

 ◆
767 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 19:00:23.37 ID:gsRHWqSF0
―聖域

 世界樹「」キラキラ


イリス「ここが……世界樹の聖域……!!」

ミスティ「清浄な……それでいて力強い魔力に満ちているわ……!」

ローガン「不思議だ……。鋼の力すら感じられる……」


イリス「……」

イリス(鋼だけじゃない……ものすごく多様な魔力が……ここに集まってきてる……)

イリス(これが……星の魔力……?)

イリス(……でも……それならどうして……)

イリス(私……この魔力が、こんなにも体に馴染むんだろ……?)


↓1コンマ
01-30 まあそういうこともあるか!
31-60 私の複数属性って、もしかして星属性にも適性がある!?
61-90 私の本当の属性って――
91-00 ??
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 19:06:35.21 ID:4zjXfLimo
なじむ実に! なじむぞ
769 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 20:32:28.81 ID:gsRHWqSF0
イリス(まあそういうこともあるか!)

イリス(……そういえば最近あの本読めてないなあ。選挙が終われば、読む時間も取れるかな……?)

 *

―聖域
 首長就任式

紫髪のエルフ幼女「それでは、伝統派ティセリアより復権派妖精へ、首長交代の儀を行います。ティセリア、妖精、お願い致します」

ティセリア「はい」

妖精「はい」

ティセリア「……妖精。あなたが、またこの国の首長になってくれて……私は、とても嬉しいです。どうか、この国の未来と、民の幸せを――よろしく、お願い致します――」

妖精「ええ――。後は、私が――」



クロシュ(世界樹の前で、ティセリアさんと妖精さんが言葉を交わしてる……)

クロシュ(わたしたち復権派も、伝統派も、革新派も、他の参加者も……みんな、静かにそれを見守ってる……)

クロシュ(これから、きっといろいろ大変だけど……みんなで協力してがんばれば、きっとこの国は大丈夫……)

クロシュ(だから、どうか――変なことは、起こらないで――)


クロシュ(でも――そんな、わたしの祈りは――)

クロシュ(どこにも、届かなかったみたい――)


 カッ
 ドガアアアアアン!!!!

 キャアアアア!!! ナ、ナンナンダ!? ナニガオキタ!!!?


イリス「な、何が起きたの!?」

ローガン「くっ……!! 煙で何も見えん……!! 皆無事か!?」

ミスティ「わ、私は無事よ!! クロシュと妖精は!!?」


クロシュ(これは……フメイちゃんの炎だ……)

クロシュ(フメイちゃんたちの気配が、世界樹の上の方へ向かっていってるのがわかる……)

クロシュ(わたしも……行かなきゃ……!)


クロシュ「わたし……世界樹の上に、行く……!!!」シュバッ


イリス「え、えええ!!? なんで!?」

ミスティ「説明不足よクロシュ!!!!」

ローガン「くっ……! 我々もクロシュくんを追うぞ……!!」

 *
770 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 20:35:18.82 ID:gsRHWqSF0
―世界樹

スライムクロシュ「〜〜」モニョモニョ ヨジヨジ

妖精「クロシュ!! 何してるの!?」パタパタ

スライムクロシュ「〜〜!」モニョモニョ ヨジヨジ

妖精「フメイが……! なら早く追うよ!! 上昇気流の魔法を使って上げるから凧か何かに化けて!」

スライムクロシュ「!」デロデロ


綿毛クロシュ「!」フワッ

妖精「いくよ!!」

 ビュオオオオオッ

 *
771 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 20:36:42.04 ID:gsRHWqSF0
―世界樹 中腹

アリシラ?「うふふ……面白いくらい簡単に来れちゃった……!」

フメイ「……本当に、ここにあるの? 世界を覆すほどの……力が……」

アリシラ?「あるよ。その力があれば、嫌な奴らをみんなまとめて焼き払える。フメイちゃんの理想の世界が実現するんだよ」

フメイ「……」

アリシラ?「まだ半信半疑だね。でも力さえ手に入れば、全てはフメイちゃんの思うがまま……。フメイちゃんが今まで奪われてきたものを、存分に奪い返して――」


「その力って――これのことですかぁ?」スタスタ


フメイ「!」バッ

アリシラ?「……誰?」

僧侶「下賎な者どもに名乗る名なんてありませんけど? それで……その力って、これのことですよね?」スッ

 僧侶の手に抱えられた大きな果実「」キラキラ

アリシラ?「……!」

僧侶「図星みたいですねえ? うふふ……あなたたちのような下賎なる者共が手にして良いものではありませんよ? これは」

アリシラ?「……フメイちゃん。あいつ、焼いていいよ」

フメイ「ん」チリッ


 爆炎「」ゴウッ!
 ブンッ
 切り払われた爆炎「」シュウウ…


セイン「……」シャキン

僧侶「危ないなあ。セインくんがいなかったら火傷しちゃってましたね」


アリシラ?「へえ……また会ったねえ」

セイン「……」

フメイ「お前……クロシュを殺そうとした……」

セイン「…………」


僧侶「セインくん、こんな奴らとも知り合いなんですか? 友達は選べと言ったはずですが?」

セイン「言われた記憶はないが」

僧侶「もう、冗談の通じない子ですねえ。でも、やることはわかってますよね?」

セイン「ああ」

僧侶「そうです。神に仇なす下賎の者どもを、救済して差し上げなさい」

セイン「……」シャキン

 *
772 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 20:37:33.51 ID:gsRHWqSF0

 ビュオオオオッ

綿毛クロシュ「」フワフワ

妖精「見えてきたよ……! でも、あれは……」

 キンキンキンッ!!
        ゴオオオッ!!
   ギュオオオン!!

妖精「え、枝の上で戦ってる!! フメイたちと……セインと、変な女!」

綿毛クロシュ「!」フワフワ

妖精「ど、どうする!? 下手に突っ込んだら巻き添えで死ぬよアレ!?」


↓1〜3多数決
1.制止を呼びかける
2.戦いに割って入る
3.様子を見る
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 20:38:14.15 ID:yrqqU8o00
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 20:41:08.22 ID:ODWz7FtHO
3
775 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 21:34:42.83 ID:gsRHWqSF0
セイン「……」ビビビッ

フメイ「ううっ!」ササッ

アリシラ?「吸収!」バッ

セイン「同じ手は食わない」ヒョイ


アリシラ?「勇者モドキ、やるなあ……!!」

フメイ「やるどころじゃない、強すぎる……! どうするの……!?」

僧侶「当然です。お前たち如き虫けらなど、セインくんの敵ではありません。しかし――」

セイン「……」

僧侶「さっきから何を遊んでいるのですか!! さっさと救済しろと言ったはずです!!」

セイン「僕は全力だ。奴らが想定以上に強い」

僧侶「くっ……! あの薄穢いスライムのせいですね……セインくんに下らない感傷を植え付けて……!!」

フメイ「……スライム?」

僧侶「……丁度お前にそっくりな容姿の小穢いスライムでしたね。ああ、思い出すだけでイライラしてきます……早く殺してしまいなさい!!」

フメイ「お前……クロシュに何をした」ゴオオオオッ

 *
776 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 21:35:18.85 ID:gsRHWqSF0
綿毛クロシュ「」フワフワ

妖精「あいつらが何を喋っているかまでは聞き取れないけど、あの変な女が手に持ってるアレ世界樹の果実だ……!!」パタパタ

綿毛クロシュ「?」フワフワ

妖精「詳しく説明してる暇はないけど、簡単に言うと世界を内包する卵みたいなものなんだよ! アレは誰かの手に渡って良いものじゃない!! 下手に扱えば世界が滅びる!!」パタパタ

綿毛クロシュ「!」フワフワ

妖精「なんとかアレだけでも奪い返さないと……!」


世界樹の精霊「……」ジーッ


妖精「……!? あなたは……世界樹の精霊!」

世界樹の精霊「……森の脅威を……解決してくれて、ありがとう……」

妖精「あ、うん……いや、今はそれどころじゃなくて……!」

世界樹の精霊「うん……。果実を……取られちゃって……今……とても、困っている……」

妖精「だろうね!」

世界樹の精霊「だから……度々申し訳ないけれど……取り返して欲しい……」

妖精「言われなくてもそうするよ! でも今回はあなたも手伝って!」

世界樹の精霊「えっと……何をすれば、いいの……?」

妖精「ええと、そうだな……じゃあ囮になってあいつらの目を引き付けて! その間に私たちが果実を奪い返すから!」

世界樹の精霊「ええ……痛いのは、やだ……」

妖精「精霊なら殴られても物理的なダメージは受けないでしょ!!」

世界樹の精霊「ダメージはないけど……気分は、悪い……」

妖精「ああもうつべこべ言うな!! あなた自身の果実が危ないんでしょうが!!!」

世界樹の精霊「……そうだった。じゃあ……やるだけ、やってみる……」フヨフヨ

妖精「全くもう、これだから精霊ってやつは……! 私たちもこっそり行くよ、クロシュ……!」

綿毛クロシュ「!」フワフワ

 *
777 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 21:36:01.23 ID:gsRHWqSF0
フメイ「……」ゴオオオオッ

セイン「っ……!」

アリシラ?「フメイちゃん……凄い、凄いよ! あの勇者モドキを圧倒する炎……!! それでこそ――」

僧侶「な、なんだと言うのです、薄穢いガキどもめ……!! セインくん、早く殺ってしまえと言っているで――」

世界樹の精霊「ばあ」ヌッ

僧侶「ひゃあああああ!!!」ドテッ



妖精「今だよクロシュ!」

クロシュ「!」シュバッ


↓1コンマ
01-20 転ぶ
21-80 果実を奪うが……
81-00 果実を奪う
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 21:39:48.85 ID:2QotgElDO
はい
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 21:39:59.14 ID:yrqqU8o00
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/16(土) 22:16:48.95 ID:Ab2zNFwho
おや……僧侶(ちゃん?)の様子が……?
781 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 23:41:41.46 ID:gsRHWqSF0
 シュバッ ガッ

僧侶「あっ……!!」


クロシュ「!」タタッ
 クロシュの手に収まった果実「」キラキラ


僧侶「こ、この劣等種がァァァ!!! セインこいつを殺せェェェェ!!!」

フメイ「クロシュ……!! させない……!!!」ゴウッ

セイン「!!」ササッ


妖精「でかしたクロシュ! さあ、世界樹の果実はクロシュの手の中だぞ!! 異邦の者共よ、矛を納めなさい!!」

僧侶「劣等種の分際で……!! 私たちの聖務を妨害するなどと……!!!」

セイン「……」
782 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 23:42:22.14 ID:gsRHWqSF0
アリシラ?「……ねえ、クロシュちゃん……その果実、私たちにくれない?」

クロシュ「……」

妖精「あげないよ。これは誰のものでもない。世界樹に還さなきゃならないものだ」

アリシラ?「クロシュちゃんに聞いてるの。ねえ……それがあれば、この世界をとっても綺麗にできるんだよ? そうしたら、クロシュちゃんはまたフメイちゃんと一緒に暮らすことができるの……。あの頃、あの村で過ごしたみたいに……みんなで、ずうっと、平和に、幸せに……。だから――それ、私たちに頂戴?」

クロシュ「……」

妖精「クロシュ、耳を貸さないで! これはそんな都合の良いものじゃ――」


 光の残像「」パヒュンッ


フメイ「はっ! クロシュ――」

クロシュ「え――」

アリシラ?「させるか!!」バッ

セイン「!!」キキッ

アリシラ?「全く、こっちが丁寧にクロシュちゃんを説得しようとしてる時にさあ……」

セイン「……」



妖精(……まずい。果実を奪い返せたは良いけど、こいつらを相手に逃げ回り続けるのは不可能だ……)

妖精(いっそクロシュに果実を食べてもらう? いや……それはだめだ。一番だめ)

妖精(ああもう、どうすれば良い……!?)



アリシラ?「クロシュちゃん、わかったでしょ? こんな暴力的な奴らにその果実を渡したら大変なことになるんだよ。でも私たちなら、それを有効に活用できるの。さあ、早くそれをこっちへ渡して?」

セイン「……」

フメイ「クロシュ……」

僧侶「くそっ……!!」ギリギリ


クロシュ「……」
783 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 23:44:25.84 ID:gsRHWqSF0

世界樹の精霊「……」

世界樹の精霊「クロシュちゃん」

クロシュ「?」

世界樹の精霊「もうどうしようもないみたい。だから……それ、壊しちゃって」

全員「!!!?」

世界樹の精霊「それでも、世界には戻るから――。少し、歪になるかもしれないけれど――」

クロシュ「……本当に……いいの?」

世界樹の精霊「いいの。多分……それが、一番まし」

クロシュ「……わかった」コク

 スッ……

僧侶「だめええええええ!!」

 グシャッ――
784 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 23:46:41.53 ID:gsRHWqSF0
―聖域

 世界樹上空「」パァァァァァ


紫髪のエルフ幼女「あ、あれは……? 世界樹上空から――夜空に、色とりどりの光が、広がって――」

マーベル「一体何が起きてやがんだ……?」

ティセリア「とっても、綺麗だけれど――なんだか――」

 *

―世界樹下層

 世界樹上空「」パァァァァァ


ローガン「くっ、この歳になって木登りは……む? あの光は――」

ミスティ「……オーロラ……? いえ……この地方でオーロラが見えるはずが……」

イリス「……!! 体の奥底が……震えるような……。これは……何? 何なの……?」

 *

―露店通り

 世界樹上空「」パァァァァァ


 ザワザワ…

観光客の男性「なんだあ、あれは……?」

観光客の女性「すっごく綺麗……。これ、選挙祭の演出……?」

エルフの男性「長年生きてきたが、こんな演出は初めてだ……」

エルフの吟遊詩人「世界樹の空から放たれる、命の光――。それは、愛の輝き――あるいは、哀の叫び――」ポロロン

宿屋アルラウネ「……世界樹に、何かあったのかしら……」

マーベルファン「マーベル様……」

ヤマイモ餅屋台の森妖精「こんな時こそヤマイモ餅だよ!」

ハーピィ記者「こりゃ面白い現象ですねえ……。ヤマイモ餅一つお願いします」

 *

―郊外

 世界樹上空「」パァァァァァ


森妖精の子「わあ……きれい……。でも……」

元気になったおうちの木「」サワサワ

森妖精の子「どうして……こんなに……むねが、くるしいの……?」ジワワ

元気になったおうちの木「」サワサワ…

森妖精の子「木さんも……かなしいの……? えへへ……いっしょだね……」ポロポロ

 *
785 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 23:47:52.09 ID:gsRHWqSF0
―魔族国
 旧市街 広場

 フォレスティナ方面の夜空「」パァァァァァ


フラナ「あれは……星属性の光? 世界樹に何かあったのかしら……」

竜人の女性「あいつら大丈夫か……? 今はフォレスティナにいるんだろ?」

ムチムチラミア「なんだか政治活動をしているらしいわよお……。変なことに巻き込まれてなきゃ良いけどお……」

ムキムキオーク「ははっ、あいつらなら変なことに巻き込まれていても大丈夫だろう!」

フラナ「もしあの光の近くにいるのなら、何か掴めると良いわね。星属性の申し子、イリス・プラネットよ――」



聖女「美しい光……ですが、どこか胸騒ぎがします……。クロシュさん……妖精さん……皆さん……どうか、ご無事で……」

淫魔の幼女「あの光の下に、いるのかな……クロシュちゃん……」

魔族国スライム「〜〜…」モニョモニョ…

魔族の子供「きっと元気でやってるよ! もう友達とも会えたかもしれないし!」

聖女「ええ……。きっと元気でやっています。待ちましょう、あの子たちが再び、ここに来る日を――」

 *
786 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 23:48:28.12 ID:gsRHWqSF0
―世界樹中層

クロシュ(わたしが壊した世界樹の果実から、五色の光が放たれていった)

クロシュ(世界樹が永い年月をかけて実らせた、世界を形作る命の光――)

クロシュ(それが、こうして不意に放たれてしまったことの意味は――――)
787 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2024/03/16(土) 23:49:14.56 ID:gsRHWqSF0
本日はここまでとなります。次回は、選挙祭の後始末編です

今回は復権派の妖精さんが首長に返り咲き、聖域で行われたテロに対してクロシュちゃんが独自のアプローチを仕掛けるお話と相成りました
今回、イリスさんが何やらアホの子のような感じになってしまいましたが、星の魔力についての本を読むことによって今回自分の身で感じたことを整理することができるかもしれません。今回の出来事が自身の属性について考える切っ掛けとなれば良いねえとフラナ氏も考えているようです
そして、果実を壊したことによって世界に放たれた五色の光。それの意味するものが何なのかは現時点ではわかりませんが、もしかしたら世界に何かしらの影響があるかもしれません。状況を注視していただければと思います

それでは本日もありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします
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