【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.2

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1 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:19:42.15 ID:3andVLbp0
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※注意

・本作は「ダンガンロンパ」シリーズのコロシアイをシャニマスのアイドルで行うSSです。
その特性上アイドルがアイドルを殺害する描写などが登場します。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
・キャラ崩壊・自己解釈要素が含まれます。
・ダンガンロンパシリーズのネタバレを一部含みます。
・舞台はニューダンガンロンパv3の才囚学園となっております。マップ・校則も原則共有しております。
・越境会話の呼称などにミスが含まれる場合は指摘いただけると助かります。修正いたします。

※前スレ
【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.1
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1685189569/

※過去シリーズ
【シャニマス】灯織「それは違います!」【ダンガンロンパ】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1613563407/
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「その矛盾、撃ち抜きます!」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1616846296/
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「私はこの絆を諦めません」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1622871300/
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「これが私たちの答えです」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1633427478/

【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1637235296/
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642918605/
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1649764817/
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.4
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1655983861/
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.5
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1669646236/

以上のほどよろしくお願いいたします。

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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1694697582
2 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:27:11.53 ID:3andVLbp0
‣2章学級裁判終了時の通信簿

【超研究生級のブリーダー】櫻木真乃
【超研究生級の占い師】風野灯織
【超研究生級のスポタレ】八宮めぐる【DEAD】
【超研究生級の料理研究家】月岡恋鐘
【超研究生級のドクター】幽谷霧子
【超研究生級のギャル】大崎甘奈
【超研究生級のストリーマー】大崎甜花
【超研究生級の文武両道】有栖川夏葉【DEAD】
【超研究生級の大和撫子】杜野凛世
【超研究生級のサポーター】西城樹里
【超研究生級の博士ちゃん】芹沢あさひ
【超研究生級の書道家】和泉愛依
【超研究生級の映画通】浅倉透
【超研究生級のコメンテーター】樋口円香
【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ【DEAD】
3 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:05:42.67 ID:zl78yZoQ0
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    CHAPTER 02

 退紅色にこんがらがって

    裁判終了




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4 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:09:35.38 ID:zl78yZoQ0

裏庭の扉は頑丈な作りだから、ただでさえ開けようとするとかなりの力が必要だった。
甜花は他のみんなよりも力も弱いし、ここまでの犯行計画ですでにちょっと息も上がってる。
片手で口元にハンカチを当てて、心臓の鼓動がバクバク言っている今の甜花からすれば、その重みは何倍、何十倍にも感じられたんだよね。

でも、逃げ出すわけにはいかない。
なーちゃんは甜花のことを信じてくれて、もう……八宮さんのことを殺しちゃったから。
甜花たち姉妹にはもう逃げ道はなくて、一度走り出したからには最後の最後、タイマーストップのボタンを押すところまで突き抜けなくちゃいけないの。
だから甜花は……有栖川さんを殺さなくちゃ。

「せーの……!」

意を決して扉を開けた。
扉が開いた瞬間に気圧差でブワッと風が顔の横を突き抜けた。ハンカチが飛んじゃわないように必死に押さえ込む。

「……有栖川さん?」

返事がないことを理解した上で呼びかけた。
裏庭には雲海みたいに気化麻酔の薄靄がかかっていて、その中に有栖川さんは沈んでいる。
いつもの気高い姿とは対照的に、開いた口の隙間から涎が滴り落ちていた。
5 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:10:38.57 ID:zl78yZoQ0

じりじりと少しずつ有栖川さんに近づいていく。
鉄板の床にローファーがぶつかるたびコツンコツンと音が響くのが嫌だった。
この音で目を覚ましたりしませんように、そうやってずっと祈りながら近づいていった。

「……ふぅ」

有栖川さんの真ん前に来て、近くに落ちていた鉄パイプを手に取る。
ひんやりとした感触に肌がひっつくのが心地悪い。喉に汗が伝うぐらい火照る体と真逆だから、余計にだったんだと思う。
鉄パイプの先端を、垂れ下がった有栖川さんの頭部に向けた。
有栖川さんの体の芯を捉えるように一直線になったパイプ、これを目一杯振り上げて、下ろせばそれで終わり。
それで終わり、なんだけど。

「う、うぅ……」

ドクンドクンと脈が打つ。体中に走る血液は熱く、激しく沸騰している。
頭からは早くやれと信号が絶えず流れているのに、体への伝達の過程でエラーが生じているようで甜花の体は仏像みたいに動かない。

早く、やらなくちゃ。
今こうしている時にも他のみんなが有栖川さんのことを見つけ出そうと血眼になっている。
中庭に向かった二人がいつこっちに踵を返してやってくるとも限らない。
6 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:12:22.39 ID:zl78yZoQ0

猶予はない。
甜花がここでやらなくちゃ、なーちゃんも助からない。甜花はお姉ちゃんだから、守ってあげなくちゃいけないのに。

バクバク、ドキンドキン。

はぁ、はぁ。

鼓動と呼吸が交互に入り混じる爆音で耳鳴りがした。

耳鳴りがするほどだったから、多分煩すぎたんだと思う。

「へ……?」

ゆっくりと、目の前の頭が上がっていった。



「てん、か……?」



有栖川さんはゆっくりと甜花の顔を確かめたかと思うと、すぐに両目をかっ開いた。甜花の手に握られていた鉄パイプに気づいたんだと思う。
7 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:14:08.20 ID:zl78yZoQ0

まずい、今からでもやらなきゃ。
咄嗟に覚悟を固めたけどもう遅い。
飢えた獣みたいに飛びついてきた有栖川さんに握っていた鉄パイプは鷲掴みにされてしまった。

「は、離して……!」
「甜花……あなた、私のことをその鉄パイプで殺すつもりだったの……?!」

有栖川さんはさっきまで意識を失っていたとは思えないぐらい力が強くて、甜花も両手で応戦しなくちゃすぐに引っ張られちゃうぐらいだった。
ハンカチで口元を抑えるのも忘れて、甜花は必死に抗った。

「悪いけれど……殺されるわけにはいかない……あなたのことをここで食い止めて、ほかのみんなにも伝えさせてもらうわね!」

ダメ、なんとしても有栖川さんを殺さなくちゃ。
甜花が失敗しちゃったせいでこの犯行計画が台無しになっちゃう。

なーちゃんが死んじゃう……!
切迫した状況の中、甜花は一生懸命火事場の馬鹿力を引き出そうとしたけど、甜花の力の底は思っていたよりも浅くて、せいぜい有栖川さんと拮抗する程度。
それもどんどん圧されていく一方。
いつのまにか殺しに来たのがどちらかも分からないほどの力関係で、甜花は有栖川さんのことを見上げるようにしていた。

「お願いだから……なーちゃんのために……死んでよ……!」


ガンッ

8 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:15:44.13 ID:zl78yZoQ0

甜花が叫んだ瞬間、鈍い音が響いた。
スーパーで買って帰った卵を途中で落として割っちゃった時みたいな、全てが台無しになって力が抜けちゃう感じの音。
そんな音がしたかと思うと、みるみるうちに甜花の握る鉄パイプからは手応えがなくなっていって、やがてずるりと有栖川さんはその場に倒れ込んだ。

「へ……?」

じんわりと有栖川さんの綺麗な髪の間に赤い液体が滲んできた。
もう動かない頭からゆっくりと視点を上げていくと、そこで甜花は彼女の目があった。

「甜花ちゃん、大丈夫? 怪我はない?」

そこに立っていたのはなーちゃん。
握っていた鉄パイプからはポタポタと血の滴が伝っていた。

「な、なーちゃん?! どうして……どうしてここに……?!」
「えへへ、変な胸騒ぎがして甘奈も様子を見に来ちゃった。虫の知らせ……ってやつかな?」

なーちゃんは有栖川さんの体を起こしてから引きずって、壁にもたれかかるようにした。
力の入っていない有栖川さんの首はカクンと落ちた。

「でも、勘違いじゃなかったみたいだね。こっちに来て正解だった」
「ごめん……ごめんね、なーちゃん……甜花、有栖川さんのことを殺すのに失敗しちゃって……」

甜花の体にもやっと力が戻ってきた。
慌てて立ち上がって、なーちゃんの元に駆け寄る。
9 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:16:56.86 ID:zl78yZoQ0

「ううん、大丈夫。人なんてそう簡単に殺せないもん。むしろ甘奈の方こそごめんね、甜花ちゃんに人殺しなんかお願いしちゃって……辛かったよね?」

首をふるふると横に振る。甜花に謝られるいわれなんかない。
約束を守れなかった甜花の方がずっと悪いに決まってる。

「甘奈……自首する。みんなに甘奈がやりましたって正直に話すことにするよ」
「え……な、なんで……?!」
「だって……甘奈が学級裁判で勝っちゃったら甜花ちゃんが死んじゃうんだよ? そんなの……甘奈は嬉しくない。甘奈だけが生き残ってもしょうがないじゃん」

それなのに、なーちゃんは自分自身のことを執拗に責めた。
辛くて苦しくて寂しい気持ちを抑え込んだ、嘘の笑顔で甜花に向かって語りかける。
その笑顔から発せられる言葉が傷ましくて、甜花はぎりりと奥歯を噛んだ。

「……ダメ、ダメだよなーちゃん」
「え……!」

甜花は、なんてことを言わせてしまっているんだろう。
こんなにも大好きでこんなにも愛おしくて、こんなにも大切な妹に、自分の死を望むような言葉を言わせるなんて、お姉ちゃん失格だ。
10 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:19:10.74 ID:zl78yZoQ0

「甜花こそ、なーちゃんを犠牲にして生き延びたくなんかない……甜花は、甜花自身よりもなーちゃんに生き延びてほしい……!」
「そ、そんなの甘奈だって同じことを……!」

だから、今からでも取り戻したいと思った。
甜花が損なってしまったお姉ちゃんとしての威厳を、取り戻す。

「でも、甜花はなーちゃんのお姉ちゃんだから」
「甜花ちゃん……?」

それはきっと、最後まで戦い尽くすことで叶うと思った。
自分の命を代償にしてでも妹を守り抜くことができたなら、甜花はきっとまたお姉ちゃんになることを許される。

「甜花は、最後まで大切な妹を守ったお姉ちゃんとして……死にたい。大切な妹を守れなかったお姉ちゃんとして生きていきたくはないんだよ……」

『大崎甘奈のお姉ちゃん』に戻ることができるとそう思った。



「ねえ、甜花のわがままを聞いてもらっても……いい? 甜花に……なーちゃんを守らせてよ……!」


11 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:20:27.69 ID:zl78yZoQ0

甜花の言葉にしばらくなーちゃんは考え込んでいた様子だった。
途中何度か言葉を返そうとしたのか、口を開いたり閉じたりして、その度に表情も晴れたり曇ったり。
なーちゃんは優しいから、甜花の言葉をやんわりと拒絶しようとしているんだろうなと思った。

でも、甜花もここは譲れないから、ずっとなーちゃんの瞳をまっすぐに見つめた。
甜花の想いを伝えるにはそれが一番だった。
次第になーちゃんの水晶玉みたいに綺麗な瞳は、小刻みに振動を始め、そこからうっすらと雫が溢れ出してきた。
それを瞼を下ろしてギュッと仕舞い込むと、なーちゃんは甜花に背を向けて走り出した。

「……ごめん、ごめんね甜花ちゃん!」

裏庭の扉がバタンと閉じて、残ったのは甜花ただ一人。
大きな深呼吸を一つしてから、手に持った鉄パイプを元の場所に戻し、なーちゃんが使った後の手のついた鉄パイプを近くに放った。
有栖川さんの亡骸に拝んでから、すくりと立ち上がる。

「……よし」

裏庭の扉に手をかけた。
なーちゃんは今頃食堂の裏口から校舎に戻ったかな。

「なんだか……ドキドキする、けど……」

さあ、ここからが甜花の本当の戦いだ。一度戦いから逃げ出してしまった甜花がなんとか漕ぎつけた延長戦。
なんとしてでもこの戦いには勝たなくちゃいけない。
12 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:21:51.17 ID:zl78yZoQ0





「やるしか……ない……!」

……甜花も、行くね。





13 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:23:23.61 ID:zl78yZoQ0
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モノクマ「こんぐらっちゅれーしょん! 超研究生級のスポタレ、八宮めぐるさんと超研究生級の文武両道、有栖川夏葉さんを殺害した犯人は……」

モノクマ「超研究生級のストリーマー、大崎甜花さん!」

モノクマ「……になりすましていたその妹さん、超研究生級のファッションモデルの大崎甘奈さんなのでしたー!」

モノタロウ「うぅ……正直事件が難しくてまだよくわかってないや」

モノタロウ「結局、有栖川さんが3人いたってことであってる?」

モノスケ「アホ! なんもかんも違うわ!」

モノタロウ「頭が沸騰しちゃいそうだよぉ〜……」

……自分でも驚くぐらい現実味がなかった。
それぐらい今回の事件は複雑で、ややこしくて、最後の真実に辿り着けたのがキセキみたいに思えた。

でも、このキセキって多分、ミラクルの方の奇跡じゃなくて……みんなと一緒にたどり着くことができた、その道のりを指す軌跡なんだろうなって思う。
私たちがここまで突き進んできてこれたことが実を結んで、今になるんだろうな。

甘奈「もぅ……甜花ちゃん、泣きすぎだよ」

甜花「ぐす……ぐす……」

だけど、それは彼女たちにとってはあってはならないキセキ。
ヒゲキの別れを招くことになる最悪のキセキ。
そのことから私たちも顔を背けちゃいけないんだ。
14 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:24:28.83 ID:zl78yZoQ0

円香「……しかし、よくやったね。まさか二人がここまでのことをやってくるとは思わなかった」

樹里「完全に手のひらの上で踊らされてた……この裁判もあと一歩の危ないところだったな」

あさひ「うんうん、このゲームをこんなに面白くしてくれて二人にはありがとうが言いたいっすね!」

(……芹沢さんはこの裁判でどこまで見通していたんだろう)

(思えば、ずっと私たちを誘導するような言動を繰り返していたけど……この子は……)

甘奈「甘奈がここまで戦えたのは、甜花ちゃんのおかげだよ……甜花ちゃんが甘奈のことを心から想ってくれて、矢面に立って戦ってくれたから」

愛依「キョーダイ愛ってやつだよね……なんか、分かる気がする」

愛依「うちも……弟と妹がいるからさ」

灯織「……あの、二人に聞きたいことがあるんですがいいですか?」

甘奈「うん……何かな?」

灯織「今回の事件を引き起こした動機……それについて聞いておきたいんです」

にちか「あっ……!」

そうだ、事件の流れを追うのに一生懸命で完全に頭からすっぽ抜けていたけど、どうして二人はこんな事件を起こしたんだろう。
二人でそれぞれ別な事件を起こそうとしていたということは、二人ともにこの学園を出て行こうと望んだということ。
私たちにはそこに至るまでの経緯のイメージが持てずにいた。
15 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:26:24.05 ID:zl78yZoQ0

甘奈「それはもちろん……モノクマーズたちに渡された動機だよ。あのビデオを見ちゃったから甘奈と甜花ちゃんは……」

甜花「この学園を絶対に出て行かなくちゃって、そう思ったんだ……」

恋鐘「あれ? それって変じゃなか?」

恋鐘「あん動機ビデオって……配られたのは自分のじゃない、別の人のビデオだったはずばい」

(……そうだ! 私も渡されたビデオは真乃ちゃんのものだったし、それに第一)

(動機ビデオの内容の共有は夏葉さんによって控えるように取り決められていた!)

(あの場にいた人なら中身の共有なんてしなかったんじゃ……)

甘奈「うん……甘奈がもらったビデオも甘奈向けのものじゃなかったよ」

甜花「甜花も、同じ……」

透「……あ、そういうこと」

円香「……浅倉?」

透「ここの【二人同士】だったんだ。姉妹で、それぞれの動機ビデオを取り違えられてたんだよ」

真乃「そ、そんなことって……!」
16 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:27:12.33 ID:zl78yZoQ0

甘奈「透ちゃんのいう通りだよ。甘奈が見たのは、甜花ちゃんの動機ビデオ」

甜花「甜花が見たのはなーちゃんの動機ビデオ」

凛世「お二人は互いにそれぞれの動機を握り合う間柄だった……」

凛世「協力関係になったのも已むなし……で、ございましょうか……」

あさひ「ま、あんまりそれは関係ないと思うっすけどね」

霧子「え……? どうして……?」

あさひ「あの動機ビデオの中身って、その人にとって大切な人が不幸な目に遭う内容だったじゃないっすか」

あさひ「甘奈ちゃんと甜花ちゃんは元々姉妹っすよ? その大切な人ってのが同じでも何もおかしくないっす」

あさひ「姉妹のうち一方が自分たちの動機ビデオを持っちゃってたら自然と内容も共有しただろうし、これは自然な成り行きだったんじゃないっすかね」

甘奈「すごいなぁ……どこまでもお見通しなんだね」

甘奈「ねえ、甜花ちゃん……みんなにあのビデオを見せてもいいかな? それが一番、甘奈たちの気持ちをわかってもらえると思うから」

甜花「……うん」

そういうと、甘奈ちゃんは懐からモノクマーズパットを取り出して、私たちの方へ向けた。
指を画面にそわせ、やがてそれは始まった。
17 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:28:16.72 ID:zl78yZoQ0


【☆大崎甜花の動機ビデオ☆】

『さーて、大好評につき復活した動機ビデオの時間だよ! オマエラにとって大切な存在は今、どんな生活をしているのかな? それでは始まり始まり……』

大崎母『甜花ちゃん、甘奈ちゃん見てる? そっちでも二人で仲良くしてるよね』

大崎父『二人とも頑張り屋さんだからな、ついつい無茶をしちゃったりしてないか?』

大崎母『ママの作る料理が恋しくて寂しくなったりしてない?』

大崎父『二人ならきっと向こうでも友達をいっぱい作っているだろうし大丈夫さ。それに……姉妹揃っていればどんな難局だって乗り越えられる』

大崎母『そうね、ママも二人以上に仲のいい双子ちゃんは知らないから』

『なんとなんと……大崎ファミリーはなんとも仲睦まじい! メッセージを見ているだけで親の愛を感じて胸が温かくなってきますね』



……ザザッ



『まあそんな大崎さんちのシャレオツなおうちも見ての通り今ではすっかり廃墟になってしまってるわけなんですが』

『ママさんとパパさんは一体どこに行ってしまったんでしょうかね? 見る限りでは、グッシャグシャのめっちゃめちゃなお家しかないですけど』

『ま、それが知りたきゃこの学園を出るしかないってわけだね。自分の目で確かめるのが一番だからね』


プツン

18 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:29:31.00 ID:zl78yZoQ0

真乃「酷い……」

愛依「こんなん見せられて冷静でいられないっしょ……」

一度真乃ちゃんの動機ビデオを見て内容こそ大まかな見当はついていたけど、やっぱり辛い。
目を背けたくなる惨状に、裁判場にいる全員が思わず言葉を失った。

甘奈「甜花ちゃんにすぐにこの映像を見せて……正直パニックになってたよ」

甘奈「……でもね、この映像の中でもパパが言ってるでしょ?」

甘奈「姉妹二人が揃っていればどんな難局だって乗り切れるって」

甜花「だから甜花たちは二人で一緒にこの学園を出ようって……二人なら、絶対一緒に出られるって……そう思ったんだ……」

……もし私も、この場所にお姉ちゃんがいて、同じような状況だったのなら。
甘奈ちゃんたちと同じような行動に走らなかったとは断言できない。

近くに縋ることのできる存在がいるということはある意味では救いであり、ある意味では追い詰める最後の一手になりうる。
一人だけでは超えられない一線も、一緒なら超えられる。超えることができてしまうんだ。
私が真乃ちゃんと灯織ちゃん、そしてめぐるちゃんの存在があったおかげで臆すことなく真実に向き合うことができたのと、同じこと。
まさに表裏一体の結末だったんだと思った。
19 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:30:42.83 ID:zl78yZoQ0

甘奈「でも、そんなのって……他のみんなのことを顧みない自分勝手な話なんだよね」

甜花「うん……甜花たちのために、他のみんなを巻き添えにしようとしたのは事実だから……」

樹里「……二人がやったことは到底許されることじゃない。それは間違いないよ」

樹里「でも……アンタらがここに至ったまでの気持ちはよく分かった。お互いを本気で思い合う気持ちがあったのも……分かったよ」

甘奈「……本当に、ごめんね」

甜花「ごめんなさい……」

樹里「だから……最後の時間くらい、二人で向き合う時間にしてくれていいから」

甜花「え……さ、西城さん……?」

霧子「甜花ちゃん……この裁判に挑む時、どんな気持ちだったのかな……」

霧子「甘奈ちゃんのことを守りたい……その気持ちは本当だと思うけど……」

霧子「甜花ちゃんの中に……甘奈ちゃんに送りたい言葉が……他にもあるんじゃないかな……」

甜花「なーちゃんに、送りたい……言葉……」
20 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:31:55.82 ID:zl78yZoQ0

にちか「甘奈ちゃんも一緒だよ」

甘奈「えっ……」

にちか「甜花さんが自分のために戦ってくれるって、そう言ってくれた時にどう思ったの? その時の気持ちを伝えなくていいの?」

甘奈「……」

にちか「思ってることを伝えきれないまま終わるってきっと……すごく辛いと思うんだ」

にちか「ほら、私は……今も悩むことがあるから、ルカさんとのお別れがあれでよかったのか……って」

甘奈「み、みんな……」

モノスケ「なんやけったくそ悪いお涙頂戴劇が始まってしもうたな。お父やん、ここらでおしおきをぶちかましてこの雰囲気をぶち壊すのはどうや?」

モノスケ「やっぱりコロシアイはバイオレンス、アンド、トラジェディー! 無念の死こそがコロシアイの醍醐味やろ!」

モノクマ「うるさいなぁ、黙ってなよ」

モノスケ「え、お、お父やん……?」

モノクマ「今いいところなんだよ、邪魔すんなよ。今この光景こそが、みんなの見たがってたものなんだからさ」

モノダム「……」

私たちに促されて二人は向き合った。
こうしてみると本当にそっくりな二人。
生まれた時からずっと一緒だった二人が今分たれようとしている。
……もう誰も口を挟み込もうとはしなかった。
21 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:32:56.55 ID:zl78yZoQ0

甜花「なーちゃん……あの、ね……今、ちょっと思い出してみたんだけど……」

甘奈「何かな、甜花ちゃん……」

甜花「有栖川さんを殺せなくて、なーちゃんが代わりに殺しちゃった時なんだけど……甜花、その時に思っちゃってたんだ……」

甜花「あっ、甜花が殺さなくて済んだんだ……って」

甘奈「えっ……?!」

甜花「でも、違うよ……?! なーちゃんを出し抜こうとか、そんなことを考えたんじゃなくて……」

甜花「甜花は、自分のやりたくないことをしなくて済んだんだ……ってそんなことを思っちゃったんだ」

甜花「ズルい、よね……自分だけ、嫌なことをやらないでなーちゃんに押し付けて……それで、なーちゃんをクロにまでしちゃった……」

甜花「どれだけ謝っても足りないけど……何度でも言わせて欲しいんだ……」

甜花「ごめんね……! ごめんね……なーちゃん……!」

甜花さんの平謝りがこだました。
何度も繰り返すたびに裁判場には湿り気を帯びていき、私たちの胸を刺した。
別れが近づくにつれて、最後に見せる自分の姿を取り繕おうとするのではなく、
自分自身の弱さを曝け出して、その罪に真正面から向き合おうとする甜花さんの姿はどこまでも気高く、強い姿に見えたんだ。
22 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:34:41.62 ID:zl78yZoQ0

甘奈「甜花ちゃん、甘奈からも言わせてもらうね」

そして、甜花さんのその強さは……同じ血の流れる彼女にも受け継がれていた。

甘奈「ズルいのは、甜花ちゃんだけじゃないよ。甘奈も……ズルしちゃった」

甘奈「それはね、甜花ちゃんに……孤独を押し付けちゃったこと」

甘奈「甘奈はこれからおしおきで死んじゃうけど……そうしたらここから60年、いや70年、80年、90年って……甜花ちゃんを一人にしちゃう……」

甘奈ちゃんの強さは、他の人を包み込む強さ。
今この場で誰よりも辛く、苦しく、そして恐怖を感じているのは彼女のはずなのに、
甘奈ちゃんはそれでも甜花さんの肩にのしかかる罪悪感を取り除こうと努めた。

きっと甘奈ちゃんにとってはそれこそがやりたいこと。
それこそが甘奈ちゃんにとっての【生きる】っていうことだったんだと思う。

大好きなお姉ちゃんをすぐ側で支え続けること。そのこと自体が大好きなんだって、私たちが一緒に過ごす中で見てきた笑顔が物語っていた。
だから、甘奈ちゃんは最後の最後、その一瞬まで生き続けようとしていたんだ。

甘奈「そんな辛い思いを甜花ちゃんにだけ押し付けるなんて、甘奈の方がよっぽどズルいよ」



その終わりの一瞬は……唐突に持ち出されることになるのだけど。



モノクマ「よし……そろそろかな。撮れ高もバッチリでしょう!」



23 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:37:20.18 ID:zl78yZoQ0

真乃「そ、そろそろって……まさか……?!」

にちか「お、【おしおき】……!?」

モノクマ「前回の事件ではちゃんとしたおしおきが出来ずに消化不良でしたからね! 今回はきっちりしっかりと最後までやり通しますよ!」

モノスケ「ようやく、ようやく血が見れるんやな! この時を待ちかねたで!」

モノファニー「ひえ……グロいのだけは嫌よ……」

甘奈「あーあ……時間切れか。甜花ちゃんと、みんなといよいよお別れしなくちゃなんだね」

甜花「な、なーちゃん……!!」

甘奈ちゃんは指で涙を掬い上げた。
今から迎えるその時に備えて、不出来な笑顔を作ろうとしている。
24 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:38:41.90 ID:zl78yZoQ0

モノクマ「今回も、超研究生級のギャルである大崎甘奈さんのために、特別なおしおきを用意しました!」

甘奈「あはは……散々時間をもらって話したつもりなのに、まだ物足りなく感じちゃうや」

甘奈「もっと色んなところに行って、もっと色んな服を着て、もっと色んな思い出を作りたかったな」

甘奈「でも、もう甘奈にはそれは叶えられない……だから、この思いは全部、甜花ちゃんに託します」

甜花「え……?」

それはどこまでもぎこちない。
肩もこわばって、口角もちゃんと上がってない。
目に見える、死への恐怖に私たちの肌も引き締まる思いだ。

モノクマ「それでは張り切っていきましょう!」

甘奈「甜花ちゃんの体には、甘奈と全く同じものが流れてるから。甜花ちゃんがこれから一生懸命生きてくれれば、甘奈の想いもきっと叶うんだよ」

甘奈「甘奈たちは最高の姉妹……そうだよね?」

甜花「うん……わかった、任せて……!」

どこまでも私たちは無力だ。
今目の前で殺されようとする友達に向けて、手を伸ばすだけで何もできない。
彼女を守ることはできない。
25 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:39:33.61 ID:zl78yZoQ0





モノクマ「おしおきターイム!」

甘奈「……最後に、お返事を聞けて良かったよ。甜花ちゃん」

消えゆく命を、訪れゆく別れを……そのままに受け入れることしかできなかった。




26 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:40:44.21 ID:zl78yZoQ0
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       GAMEOVER

オオサキさん(いもうと)がクロに決まりました

     おしおきをかいしします




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27 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:41:57.28 ID:zl78yZoQ0

ありとあらゆるコンテンツで溢れかえったこのエンタメ飽和時代!
女の子たちはこぞってスマートフォンに夢中になって、数秒にも満たない動画を次々に消費していきます。
目を引く何かがないと、あっという間に画面の外へとスワイプされちゃう無条理。
甘奈さんは女の子たちの注目を集められる華々しい存在になることができるでしょうか?

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めざせ☆インフルエンサー

超研究生級のギャル 大崎甘奈処刑執行



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スマートフォンを模した直方体の装置へと放り込まれた甘奈さん。
出して欲しいと必死に液晶を叩きますが、当然出れるはずはありません。
甘奈さんの必死さとは無関係に流れ始める音楽。
流行りのポップスを1.5倍速かいくらかにした曲はピッチも上がって耳鳴りがするほどに甲高い。

……おっと、甘奈さん。そんなにボーッとしてていいんですか?
曲が流れているのに棒立ちだなんて、この時代じゃそんなショートスナップビデオはすぐにスワイプされちゃいますよ!
28 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:43:13.67 ID:zl78yZoQ0

ズガン! ズガン!

向こうのほうから、音楽にいまいちノれていない女の子の映ったスマホは次々に潰されていきます。
指先一つでどんな人の人生も簡単に潰せてしまうんだから、情報化社会は恐ろしいですね。

ズガン! ズガン!

このままじゃ自分も潰されてしまう!
それを察した甘奈さんは意を決して踊り始めました。
幸い、この曲自体は知っていました。
キャッチーな振り付けで話題を集めて、同世代の女の子が似たり寄ったりな動画をいくつも投稿していたので。

ズガン! ズガン!

どんどん他のスマホが潰されていく中で、甘奈さんは持ち前のビジュアルと動きのキレでなんとか生き残っていきます。
ブッサイクな踊りを披露したモノスケの入ったスマホがすぐ隣で潰されようとも、甘奈さんは怯まず踊り続けました。

その結果……どうでしょう。
甘奈さんのスマホからは無数のハートが吹き上がり始めたのです。
それは、同世代の女の子たちから支持を獲得した証拠。
追いきれないほどのインプレッションが一気に押し寄せるバズの到来です!



……でも、甘奈さんは所詮は一般人。
どれだけインターネットで持て囃されようと、ちょっと可愛い素人どまり。
過ぎた名声は時に身を滅ぼします。
スマホから吹き上がったハートは画面の上を一気に埋め尽くし、甘奈さんはハートの中に生き埋めになってしまいました。

やれやれ、バズるというのもいいことばかりじゃありませんね。
29 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:44:35.84 ID:zl78yZoQ0
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モノクマ「はい、これで終了! みんなご苦労さん!」

モノタロウ「うわー! モノスケー!」

モノファニー「う……う……」

モノファニー「でろでろでろでろでろ……」

モノダム「オイラタチノ兄弟ガ二人モ死ンジャッタ……」

甘奈ちゃんの命が目の前で奪われた。
芹沢さんの時とは違う、正真正銘の本物の死。
甘奈ちゃんの尊厳を嘲笑うような理不尽で悪趣味な最低最悪な死の形に私はむせかえるほどの嫌悪感を抱いていた。

甜花「なーちゃん……が……」

愛依「マジでサイアク……なんでこんなことができんの……?」

樹里「ふざけんな……ふざけんなよ! ただ命を奪うだけじゃなくて、どうしてテメーらはそんな死体に砂をひっかけるような真似ができるんだよ!」

モノクマ「そりゃこれがおしおきだからに決まってるじゃん! おしおきは断罪でも、処罰でもない……求められるのは酒の肴になるぐらいとびっきり派手でユーモラスな死なんだよね!」
30 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:46:53.41 ID:zl78yZoQ0

真乃「ふざけないでください……! 私たちは見せ物なんかじゃないんですよ……っ!」

モノクマ「うぷ……うぷぷぷ……」

円香「……何がおかしいんですか?」

モノクマ「いやさ、オマエラってば散々人のことを見せ物にしておいて、それをよく棚に上げられるなって思うんだよ」

にちか「はぁ……?」

モノクマ「オマエラも経験あるでしょ? ニュースやワイドショーで芸能人の訃報なんかを聞いて、次の日の学校でその話題で盛り上がったこと!」

モノクマ「どんな気持ちで死んでいったのか、とか……残される遺族はこれからどうするんだろう、とか」

モノクマ「そんな偽善すら頭によぎることもなく、死を話題にした数秒後には平然と笑顔を浮かべられる」

モノクマ「そんな異常者たちに文句を言われる筋合いはボクにはないよ!」

恋鐘「う、うちらが異常者ならあんたはなんね!」

恋鐘「ただ殺すだけじゃなくて、人の死を笑うなんて……人のすることじゃなかよ!」

モノクマ「ボク、クマなんですけど! ヒトじゃないんですけど!」
31 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:48:35.15 ID:zl78yZoQ0

モノクマ「まあそんな言葉の揚げ足取りはともかくとして、ボクはオマエラと違って異常であることを受け入れているからね」

モノクマ「自分のものじゃない死なんて、所詮見せ物に過ぎない。エンタメの一つだって、そう捉えてしまう誰しもが持つ異常をボクは受け入れているんだ」

モノクマ「だからどれだけ糾弾されようがノーダメージ! 正常ぶった異常者に何を言われようが全く痛くも痒くもないもんねー!」

凛世「そんなもの……ただ自分を肯定するだけに都合よく作られたあなたさまの理屈です……!」

モノクマ「ま、ボクはこれ以上オマエラと問答をする気もないからね。道徳の授業をやりたいなら、せいぜいオマエラで好きにやりなよ!」

バビューン!!

モノタロウ「あっ……お父ちゃんが帰っちゃった! ど、どうしよう……オイラたち、もう3人になっちゃったよ!?」

モノファニー「うぅ……心ぼそいわ……心にぽっかり穴が開いたようよ……誰かこの穴を埋めてくれないかしら……」

モノダム「二人トモ、安心シテ」

モノタロウ「モ、モノダム?」

モノダム「モノスケハオラタチガ仲良クスル邪魔バカリシテタカラ、ムシロ居ナクナッタコトデ、オラタチハヨリ一層仲良クナレルハズダヨ」

モノダム「オラタチデ協力スレバ、キット大丈夫」

モノタロウ「そうだよね……オイラたちには仲間がいるんだ! 絆があるんだ!」

モノファニー「絆がある限り、未来に向かって歩いていけるわ!」

モノダム「ミンナ仲良ク、ダヨ」

【ばーいくま〜〜〜!!!】
32 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:50:10.10 ID:zl78yZoQ0

円香「……邪魔者はいなくなりましたね」

樹里「……あー! 胸糞悪いな……ったく」

にちか「マジでなんなんですかねー! 勝手なこと言いすぎじゃないですか?!」

恋鐘「甜花……モノクマたちの言っとったことなんか気にする必要なかやけんね?」

甜花「……」

灯織「はい……私たちの感傷を異常だなんて言わせません。甘奈のことを思い、怒る気持ちは正常そのものです」

甜花「そう、だよね……」

不快感だけを撒き散らしたモノクマたちが姿を消し、残された私たちは痛烈な無力感に襲われた。
甘奈ちゃんの死をただ黙って見守ることしかできなかったこと。
モノクマの言葉に反論らしい反論ができず、甘奈ちゃんの死に対して庇い立てができなかったこと。
そして、今こうして遺された私たちの心の片隅のどこかに、生き延びることができたという安堵があること。
そんな弱々しい自分の姿をまざまざと見せつけられたようで、私たちは苛立ちを抱かずにはいられなかった。



あさひ「あー、面白かった!」



そんな中で、更なる不和を生じさせる存在が一人。
33 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:51:56.67 ID:zl78yZoQ0

甜花「え……?」

愛依「あ、あさひちゃん……?」

あさひ「前回はみんなに勝負を挑む側だったっすけど、推理して解き明かす側も面白いっすね! だんだんと謎が解けていく感覚が気持ちよかったっす!」

大切な家族を失って間もない甜花さんを前にして発する言葉にしてはあまりに短慮で、あまりに衝動的。
嬉々として発する様子を見ても、本当に彼女に悪意はないんだと思う。

あさひ「次は誰がどんな事件を起こすのかなー、ワクワク!」

純粋無垢にゲームに向き合っている彼女のその言葉は……甜花さんでなくともイラついた。

にちか「ちょっと……いい加減にしてよ」

あさひ「あ、にちかちゃん。今回の事件、にちかちゃんと協力できて楽しかったっす。一緒に推理するのも面白いんっすね!」

にちか「あのね……お願いだから黙ってよ。あなたがどう思ってるのかは知らない、今のこの状況を楽しんでるのもどうだっていい」

にちか「だけどさ、流石にデリカシーなさすぎてドン引きって言うか、早くどっかいってほしいって言うか……」

にちか「とにかく……このままだとあなたにパンチしちゃいそうだから……黙っててよ」

自分でも「あっ」て思った。
思っていたよりも強い言葉が自分から飛び出したので、自分の中にも誰かのために本気で怒れるぐらいの思いやりはあるんだって気づいた。
34 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:53:00.41 ID:zl78yZoQ0

でも……ちょっと、行きすぎてたと思う。

あさひ「えっ……」

芹沢さんは私の言葉に少し面食らった表情の後、なにやら寂しそうな顔をした。

あさひ「にちかちゃんも……そうなんすか?」

にちか「はぁ……?」

あさひ「……なんでもないっす。わたし、先に戻ってるっす」

(……やけにあっさり引いたな)

芹沢さんは肩を落として、トボトボと歩いてひと足先にエレベーターで地上へと上がっていった。

樹里「にちか……ちょっと言い方キツすぎたんじゃねーか」

にちか「あ、いや……でも……」

樹里「……まあ、難しい相手だけどさ」

(……そんなこと言われても、あんな子相手なんだししょうがなくない?)
35 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:54:21.69 ID:zl78yZoQ0

甜花「……」

芹沢さんがいなくなって、ひとまず甜花さんが不必要に傷つくことは無くなったけど……甜花さんの表情は相変わらず沈んだままだ。
甘奈ちゃんのおしおきの時から、茫然自失といった感じ。

霧子「甜花ちゃん……やっぱり、ズキズキ痛むよね……」

凛世「生まれた時より共に過ごされた相手を亡くした心痛……察して余りあるものがございます……」

甜花「なんで……なーちゃんじゃなくて、甜花が生きてるんだろう……」

(……!)

私たちの言葉に、ぽつりぽつりと甜花さんは独り言のように言葉を漏らし始めた。

甜花「甜花は臆病者だし……怠け者だし……」

甜花「ここから先、一人で生きていける自信がない……」

自分を貶める弱音がつらつらと続いていく。
やっぱり、お姉さんとして、事件の結末に納得のいかない部分は多いんだろうし、共犯者の自分がなぜ、という感情はよく理解できた。
36 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:56:45.06 ID:zl78yZoQ0

甜花「なーちゃんじゃなくて、甜花がおしおきされてれば良かったのに……」

でも、そうだとしても……甘奈ちゃんから託されたものを忘れたような言葉はダメだ。
それを甜花さんが口にすることは、何よりも虚しい。

にちか「それはダメ!」

甜花「え……な、七草さん……?」

私自身が甜花さんと同じだから、口を挟まずにはいられなかった。
自分たちの望まぬ形の幕引きを迎えて、私だって不本意な生き永らえ方をしている。
それでも自暴自棄にならず、投げ出さないでこうして歩み続けることを選んだ。

にちか「そんな言葉……甘奈ちゃんに聞かせられるんですか? 自分だけが生き延びちゃったのは不本意だし、こんな結末を望んでないってのもわかります……」

にちか「でも、だからってその結末から逃げちゃうのは……その結末まで一生懸命に走り抜けた甘奈ちゃんのことを否定するのと同じだと思うんです」

甜花「……え」

にちか「私は今、ルカさんの信念を無駄にしないために生きてます。私とルカさんのやったことはきっと正しいことじゃなかった。それでも……」



にちか「最後の最後までもがき続けようとしたルカさんのあり方自体は正しかったって思ってるので!」



まあ、それは自分の力だけでこうなったわけではないけど。

真乃「……」
37 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:57:57.42 ID:zl78yZoQ0

それでも、今の私の意志はちゃんと固まってる。
他の人の支えがありながらだけど、ちゃんと生き抜こうと決めた。
ルカさんの思いに一番間近で触れた私が生き抜くことで守れるものがきっとあるから。

にちか「甜花さん……お願いです。死ぬべきなのは自分だったとか、そんな虚しいこと……考えないでください!」

甜花さんにもそうであってほしいと願って、私は手を差し伸べた。
私の背中に生えた翼はもう血で汚れて、穢れてしまっているだろうけど……悪魔が心変わりしたっていいじゃん。

甜花「七草、さん……」

霧子「甜花ちゃん……胸に手を当ててみて……」

甜花「……」

霧子「トクン、トクンって音を感じるでしょ……?」

霧子「それは甜花ちゃんと一緒に歩いてきた200グラム……甘奈ちゃんと同じ200グラムだよ……」

甜花「なーちゃんと、同じ……」

霧子「だから、甜花ちゃんが生き続けてる限り……甘奈ちゃんも生き続けてるんだよ……」

甜花「そ、か……甜花は今もなーちゃんと一緒に、生きてるんだね……」

愛依「うん! そーだよそーだよ! 家族の血の繋がりって切っても切れないかんね!」

私たちの言葉を受けて、甜花さんは表情を一変させた。
これまでずっとみてきたどこか自信がなさそうな表情ではなく、輝きとまではいかずとも、確かな光の携えた凛とした表情。
その表情に、ほんの少しだけ……甘奈ちゃんが重なって見えた。

恋鐘「よーし、そんなら地上にうちらも戻らんね! みんなで揃って新しい一歩を踏み出して行くばい!」

透「だね。レット・イット・ビー」

真乃「うん……行こう!」

エレベーターにみんなで揃って乗り込んで、地上へと戻っていった。
きっとこれから先の未来には、みんなで歩む未来には、燦然と輝く光があると信じて。
38 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:58:44.63 ID:zl78yZoQ0



でも、それは見当違いだったのかもしれない。
みんなで歩む未来なんてものは_____あっという間に絶たれてしまったのだから。

地上に戻った私たちを待ち受けていたのは……




あさひ「みんな遅かったっすね。待ちくたびれたっすよ」




39 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 21:59:53.81 ID:zl78yZoQ0

にちか「せ、芹沢さん……?!」

ひどく胸騒ぎがした。ついさっき私が強引に追い払った時とは違って、彼女には笑顔が戻っていた。
悪意の一切ない、純粋無垢な眩すぎる笑顔。
彼女の笑顔は眩すぎる、それゆえに、私たちに影を落とす。

あさひ「でもおかげで、円香ちゃんの才能研究教室……じっくり見てこれたっす」

円香「……は?」

やられた……!
あの時の彼女は反省して出て行ったわけじゃなかったんだ。
私たちが甜花さんを励ますのに集中しているその隙をつくために、抜け出すための口実に【私は利用された】んだ……!
40 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 22:00:44.58 ID:zl78yZoQ0

あさひ「いやぁー、ビックリしたっすよ。わたしたちはすっかり騙されてたんっすね」

円香「……やめて、何のつもり」

あさひ「円香ちゃんの才能、てっきり超研究生級のコメンテーターだと思ってたんっすけど……あれ、嘘だったんっすね」

円香「それ以上は、冗談じゃ済まない」

あさひ「円香ちゃんの才能研究教室にコメンテーターっぽいものなんて一つもなかったっす。いや、それどころか……芸能界っぽいものすら。モノクマの言ってた才能ってのもいい加減なものっすね」

円香「……っ!」

にちか「ちょ、樋口さん?!」


気づけば樋口さんは芹沢さんに向かって駆け出していた。
その口を塞ごうとしたんだと思う。
樋口さんはらしくなく取り乱した様子で、その手を芹沢さんに向かって伸ばしていたけど……



間に合わなかった。


41 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 22:01:35.88 ID:zl78yZoQ0





あさひ「円香ちゃんは【超研究生級の内通者】っすね?」





42 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 22:02:32.16 ID:zl78yZoQ0



にちか「え……?」



私たちにあったのは、全員が横並びで歩む未来なんかじゃなかった。
そんなものはとっくの昔に根底から崩壊していた、ハリボテの未来。

私たちは幻想に魅入られていただけなんだとその時に理解したんだ。
43 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 22:03:13.78 ID:zl78yZoQ0
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CHAPTER 02

退紅色にこんがらがって

END

残り生存者数
12人

To be continued…



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44 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 22:05:33.63 ID:zl78yZoQ0


【CHAPTER02をクリアしました!】

【アイテム:デビ太郎とエン次郎のキーチェーンを手に入れました!】
〔大好きな姉の大好きなものは自分も大好き。姉妹の絆を何よりも雄弁に語る証拠は持ち主を失った〕

45 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/15(金) 22:08:49.43 ID:zl78yZoQ0

というわけで2章はここまで。
大崎姉妹の入れ替わりネタはシリーズ一作目の時からやりたいなと思っていたのですが、タイミングを逃してしまっていたので、
ここでやっと書くことが出来て満足しています。

今回は途中でかなり間を空けてしまって申し訳ありませんでした。
前スレでも言った通り、これからは進行方法を多少変えて更新の際はをペースをある程度は維持できるように努めて参ります。

さて、三章は裁判終了まですでに書き終わっているので近いうちに更新できると思います。
ある程度準備をし終えたら、また再開いたします。

またよろしくお願いします。

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/15(金) 23:14:23.02 ID:tcUu/ZUI0
更新ありがとうございます&お疲れ様です
第二章もすごく楽しませていただきました
続きの更新も楽しみにお待ちしてます
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/16(土) 07:56:33.80 ID:GDvTFpOA0
事件のトリックはシンプルなのにシンプルだからこそほころびが出にくくて強固なのに加えて、
双子の入れ替わりによって犯人が特定できないという点で真相が分からなくなるという点がとても面白かったです。
特に血縁での参加は原作では1の絶望姉妹ぐらいしかなく、原作だと見られないようなギミックでよかったです。
大崎姉妹の絡んだ連続事件は1作目の3章でもありましたが、その時はただ利用されるだけだったのが
今回はシンプルかつ難解な事件を仕立て上げていてその違いも面白いと思いました。
相変わらずトリックスター的に動きの読めないあさひなども含めて今後の展開が楽しみです。
48 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/19(火) 21:40:46.05 ID:AAQxISte0
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      GAME OVER

 ハチミヤさんがクロにきまりました

    おしおきをかいしします



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49 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/19(火) 21:42:17.18 ID:AAQxISte0

いつの時代も私たちを熱狂させてくれるもの。
それは元来、神への捧げ物としての側面を持ち、いつしか大衆からは見せ物として興じられるようになったもの。
自分たちでは辿り着けなかった高みでプレーを行う彼ら選手たちを見て、人々は期待し、興奮し、そして同じ時を生きていることに感謝をするのです。

____最終的には、自分たちと同じように選手もいつか死ぬということを噛み締めながら。

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      おしおき近代五種

超研究生級のスポーツタレント 八宮めぐる 処刑執行



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さあ今年も始まりました、生と死の祭典『御臨終ピック』!
我が国を代表して戦ってくれるのは、おしおき界のサラブレッド八宮めぐる選手!
彼女はこれより自らの肉体を武器にモノクマーズたちと鎬を削ります!
50 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/19(火) 21:43:17.04 ID:AAQxISte0

近代五種はフェンシング、水泳、馬術、ランニング、射撃を一人で行うスポーツの極地!
最初に挑むのはフェンシング。
しなやかな身のこなしでモノキッドの防具の隙間を見事に突いてみせました。
続いての水泳も、モノスケを全くものともせず。単独ぶっちぎりで泳ぎ切ります。
馬術だって何のその! モノタロウが落馬している間にあっという間にゴールライン!
ランニングはむしろ得意分野。モノファニーにコーナーで差をつけます!

そして最後に挑むのは射撃。遠く離れた的を狙って狙って……当てた!
モノダムでは当てることができなかった的を見事ぶち当てて、見事金メダル獲得です!

表彰台の上で、私たち応援していたファンに手を振ってくれる八宮さん。
その姿にはステージで朗らかな笑顔を浮かべるアイドルの姿も重なって見えそうです。



でも、彼女はあくまで一般人。
その背中に翼はないし、陽の当たる場所にいる存在ではないのです。
首に下げられたメダルの輝きは、彼女にはあまりにも眩しく、良くないものまで惹きつけてしまったようです。

ガブッ

頭から巨大な『何か』に齧られてしまった八宮さん。
そういえば昔、競技者をそっちのけでメダルを齧った不届きものがいたとかいないとか……

やれやれ、見ている側というのはいつも傲慢なものなんですね。
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