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デジタルモンスター研究報告会 season2 後編

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802 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 09:20:40.50 ID:ZRae2xG0o
ファンビーモンの群れは、毒針を飛ばし続けている。

大体はハズレており、蛮族デジモンに命中しそうでしないギリギリのところのようだ。

しかし、中にはきちんと命中する毒針もある。

そんなカオスな状況で、ファンビーモンを注視して警戒している敵デジモンを…
ティンクルスターモンが、背後から回転手裏剣タックルで切り裂く!

「キャドオォォオオ!?」
キャンドモンの一体が、ティンクルスターモンに切り裂かれた。

この連携攻撃は、敵にとって相当厄介だろう。

「ウキッ!」
セピックモンの一体が、ブーメランを握りしめた。
「ウキャアアアア!」
セピックモンは、空中を飛ぶファンビーモンに向かってブーメランを投げ飛ばした。
803 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 09:22:46.89 ID:ZRae2xG0o
つづく
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 09:23:14.90 ID:RzVVH3UDo
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 09:24:40.76 ID:JqwF3fs00

エスカレートする戦争
806 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 19:49:30.55 ID:ZRae2xG0o
投げられたブーメランは…

ファンビーモンの体をすり抜けた。

「ウキッ!?」
ブーメランがすり抜けるという異常な現象に驚くセピックモン。

「う、ウキー!」
攻撃が効かないと見ると、セピックモンもファンビーモンから逃げた。

16体のファンビーモンのうち15体は、ドーガモンがファンビーモンの姿を深層学習して、デジタル空間へ投影している「立体映像」である。
16体のうち1体だけが本物のファンビーモンだ。

作戦前にモリシェルモンを片付けたのは、そうしないとファンビーモンは敵へ攻撃せず、大きなモリシェルモンの死骸を貪って空腹を満たすだけになるためだ。

ドーガモンとファンビーモンの連携(?)によるこの作戦は、敵をパニックに陥れることには成功したが…

あいにく、決定力に欠ける状況だ。
まず、ファンビーモンの毒針は無限に飛び出るわけではない。
毒針が尽きるなり、食欲が満たされるなりすればファンビーモンは攻撃を止めるだろう。

そして、ファンビーモンが戦場にいる間、パルモンやブイモン、オタマモンはデジタル空間に出てこれない。
ファンビーモンは敵味方の区別なく、食えそうなデジモンを無差別に攻撃する。
そのため、食えなさそうなケンキモンとティンクルスターモン以外の味方デジモンは、この場に出てきたらファンビーモンのターゲットになりかねないのだ。

そういうわけで、今戦場で戦えるのはティンクルスターモン、ファンビーモン、ケンキモンだけだ。

だが、ケンキモンはガニモンの攻撃で脚部を破壊されており、満足に移動できない。

一方、敵の戦力は…
ドリモゲモン、ガニモン、プラチナスカモンは倒したが…
シマユニモンに乗ったフーガモンや、キンカクモン、キャンドモン…
あとはジャングルモジャモンやセピックモン、成長期の蛮族デジモンが何体か残っている。

ハゲオヤジデジモンは、相変わらず高いところで戦いを見物しながら、干物を食ったり酒を飲んだりしている。
なんなんだこいつは。

成熟期のデジモンは、(ハゲオヤジデジモンは分からないけど)どれも強敵だ。
この三体でどうにかできるのか…!?

…しかし、なにか妙な悪寒がする。
何かを、忘れているような…。

本来いるはずの敵が、その場に欠けているような…。
不思議な感覚だ。
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 19:52:13.74 ID:poizqX8Go
少数精鋭過ぎる…
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 19:57:44.61 ID:HMUIEPY50
もう手札が残ってないのか
809 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 20:12:09.49 ID:ZRae2xG0o
現在戦闘可能なジャングルモジャモンは3体。
セピックモンも3体だ。

『フーガモン!ジャングルモジャモン!セピックモン!キンカクモン!あの蜂共を片付けろ!』

「う、ウホオォ!」
成長期の蛮族デジモン達やキャンドモンは、ファンビーモンの毒針が届かないところへ隠れているが…

今名指しで呼ばれた成熟期達は、腹を決めたらしく、空を飛ぶファンビーモン達へ攻撃を仕掛けるようだ。

ジャングルモジャモン達は、倒れ伏している蛮族デジモン達の手元から、青銅の武器をひったくり…
しこたま投げまくった。

セピックモンは、手持ちのブーメランを投げまくった。

キンカクモンとフーガモンは、打撃武器を構えてファンビーモン達をじっと観察している。

ファンビーモン達は、投げられた武器を回避する。

そして毒針を放って反撃するが…
その殆どは、蛮族デジモン達から命中寸前でハズレた。

それらは全て立体映像の偽物だが…
防御しないわけにはいかないのだ。
既に毒針で何体かの蛮族デジモンが仕留められているのだから。

シマユニモンは、再び角に放電攻撃のエネルギーをチャージしている。

今の敵の中で、最も厄介な相手は…
シマユニモンだ。

何故なら、電気は「通りやすいところへ流れる」性質を持っているからだ。

シマユニモンは、群れの中から、本物のファンビーモンを、電流が自動で探知して感電させることができる。

再び放電を放たれたら、本物のファンビーモンがやられる…!
そうなる前に、シマユニモンだけは仕留めなくてはいけない!
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 20:14:43.61 ID:JqwF3fs00
研究所は各所のデジモン関連の仕事の要だろうに力貸してくれる人少ないの悲しいな
811 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 20:21:13.99 ID:ZRae2xG0o
ティンクルスターモンが、シマユニモンをめがけて回転しながら飛んできた。

シマユニモンは、それを素早い身のこなしで回避した。
シマユニモンはとんでもなくスピードに優れている。

「ウガーオゥ!」
フーガモンは、空中で青銅棍棒を振るってティンクルスターモンへ振りかざした。

ティンクルスターモンは、空中で青銅棍棒を回避する。

スピード自慢同士の戦い。
互いに攻撃を躱し続けている。

だが、シマユニモンのチャージが終わったら、その戦いも終わるだろう。

シマユニモンの放電攻撃は、回避が極めて困難。
ティンクルスターモンがいくら素早くても、電流はそれを追尾して感電させてしまう…!

やがて、シマユニモンの角に放電攻撃のチャージが溜った。

『フーガモン!その手裏剣デジモンを撃ち落とせ!』

シマユニモンは、角をティンクルスターモンへ向けて…
電撃攻撃を放った!


電撃攻撃は…
ティンクルスターモンの方ではなく、ファンビーモンの方でもなく。

シマユニモンの真上へと飛んだ。

『なに!?』
812 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 20:29:08.27 ID:ZRae2xG0o
シマユニモンの直上には、巨大なデジタルゲートが開いており…

その中から、ケンキモンが落下してきたのだ。

電気は「流れやすい方向へ流れる」。
ゆえにティンクルスターモンの方でなく、巨大な鉄の塊であるケンキモンのボディへ流れるのは必然だ。

『よけろ!シマユニモン!』

シマユニモンは、自分の真上に落下してきたケンキモンを…
死物狂いで回避した。

ケンキモンは、大きな音を立てて地面に落下・衝突する。
脚部が大破し、パーツが飛び散った。

これだけのダメージを負ったら、ケンキモンはもう戦えないだろう。

『くっくっく…自爆覚悟の投身攻撃か!だが無駄に終わったなぁ!』

シマユニモンは放電を止めて、再びティンクルスターモンの方を向いた。

『セピックモン!いったん蜂共はいい!その手裏剣デジモンを全員で仕留めろ!』

ううっ、それはまずい!
セピックモンのブーメラン攻撃は、空中で予測不可能な軌道を描いて敵に当たりに行く。
その攻撃力も強力だ。

それを3つも投げられたら…
いくらティンクルスターモンでも躱しきれない!
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 20:31:14.62 ID:DS26LGM7o
ケンキモンの命を懸けた最後の攻撃が…
814 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 20:38:42.77 ID:ZRae2xG0o
敵デジモンの意識がすべてティンクルスターモンに注がれた、その時…

ケンキモンのコックピットが開き…
中からケンキモンの本体が飛び出してきた。

ゴーグル付きの黄色いヘルメットをかぶり、右手がハンマー、左手がドリルになっているその姿は、まるでロボットのようだ。

https://i.imgur.com/SNibQvY.jpg

…今だ、やれ!
ケンキモン…
いや!

クラフトモン!

「うおおおぉ!」

クラフトモンは、シマユニモンの直上から襲い掛かり…
右手のドリルを回転させ、シマユニモンの脳天へ叩き込んだ。

「ブルッギャアアアアアアアアーーーーー!!!」

ドリルはシマユニモンの眉間を貫通した。

シマユニモンに乗っていたフーガモンは驚いた。

『そのデジモン…中に別のデジモンがいたのか!フーガモン!やれ!』

シマユニモンに乗っていたフーガモンは、青銅棍棒でクラフトモンの頭部を思いっきり殴打した。

クラフトモンのヘルメットがバラバラに飛び散った。

…だが、クラフトモンは飛び退いた。
このヘルメットは「壊れることで衝撃を受け止める」タイプだ。

頭部にもろに打撃を食らっていたら即死だったかもしれないが…
ヘルメットがたった一度だけ、その致命傷級のダメージを肩代わりしてくれたのだ。
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 20:41:49.22 ID:DS26LGM7o
クラフトモン、お前だったのか!
816 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 20:52:36.80 ID:ZRae2xG0o
シマユニモンは…

「ブ…ブルルヒ…」

横に倒れた。
乗っていたフーガモンは、地面に自身の脚で着地した。

『…シマユニモンが殺られたか…』

よし!
これで、ティンクルスターモンとファンビーモンを確実に倒せるシマユニモンを討ち倒した!

勝ち筋が見えてきたぞ!
ファンビーモン軍団が撹乱しつつ、ティンクルスターモンとクラフトモンがデジタルゲートを駆使してヒット・アンド・アウェイで攻撃を仕掛ければ…

キンカクモンとフーガモンに勝つ目が出てくる…!

『…くっくっく…ははははは…!ようやく手札を出し尽くしたようだな!』

そっちもだろうが!

『貴様達は不利な状況を、敵の戦力を観察・分析し、弱点を突く戦略で不利を覆す戦いをしていた。まるでパズルのピースを埋めるようになぁ…!』

な…なんだ。
その余裕は。

『くっくっくっく!そう、貴様達の最大の弱点は…!手繰り寄せた細い細い勝ち筋を…未知の情報で潰されることだ!はっはっは!』

な、なんだ…
何を言っている!
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 20:54:33.38 ID:UFU1+oXwo
イレギュラーって大抵の人は弱いと思う…
818 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 20:56:45.44 ID:ZRae2xG0o
ジャングルモジャモンのうち一体が、群れに紛れた本物のファンビーモンの毒針を食らった。

「ウホギャアア!」

ばたりと倒れるジャングルモジャモン。
ファンビーモン…まだいけるか?

その時…

ファンビーモンの群れの上から…
突如。

大量の溶けた蝋が落下してきた。

群れの中で、たった一体だけのファンビーモンは、その突然の攻撃を察知しきれずに、蝋に絡め取られた。

「ズビィ!?」

ファンビーモンを絡め取った蝋は、地面に落下してべちょっと貼り付いた。

ファンビーモンは、蝋から脱出しようとするが…
既に蝋は固まっている。
抜け出せない!

「ズ、ズビ、ズビィ!」

なんだ…
何が起こったんだ!
819 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 21:01:47.63 ID:ZRae2xG0o
『そういうからくりか。まとめて全員仕留める算段だったが…。どうやっているかは知らないが、1体を除けば全ては蜃気楼のようなものだったらしいな』

ば、バレた…!
ドーガモン作戦が!

『くっくっくっく!これで厄介な蜂の動きは封じた!お前達、もういいぞ、出てこい!』

AAAがそう言うと…
ファンビーモンに恐れをなして逃げていた、成長期の蛮族デジモン達やキャンドモン達が、物陰からぞろぞろと出てきた。

『はーっはっはっは!どんな気分だ!?セキュリティ共!切り札を潰された瞬間は!』

カリアゲは顔を真っ青にしている。
「何だよ…何だよあの蝋は!」

…そうだ。
なにか忘れていたと思ったが…
これだ!

確実に、存在することが分かっていたはずなのに…
今までここにいなかった存在。

それが今まで潜伏していた可能性に…
私達はなぜ気付けなかったのだろう。

そう…
キャンドモン達の親デジモンが…!
820 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 21:08:25.27 ID:ZRae2xG0o
ファンビーモンを蝋で捕獲したデジモンは…
大きな翼を羽ばたかせながら、上空からゆっくりと降り立った。

https://i.imgur.com/Wrtk29D.jpg

真っ白な…
悪魔のような姿だった。

これが、今まで隠れていた…
キャンドモンの親か!

『真の切り札は、伏せておくものだ…そうだろう?くっくっく…!はーっはっはっは!』

ま、まずい…
ここに来て、わけのわからない性質のデジモンが出現するなんて…!

想像していなかった。
完全に虚を突かれた。

プラチナスカモンを、ドリモゲモンを、シマユニモンをも失ってまで…
奥の手を隠し続けていただんて。

そんなの、予想していなかった…!

『まとめて蝋人形にしてやれ!アイスデビモン!』
821 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 21:09:11.67 ID:ZRae2xG0o
つづく
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 21:11:22.81 ID:UFU1+oXwo

今度こそもうダメか…
823 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 21:15:52.32 ID:ZRae2xG0o
※調子がいいので今日はもうちょっとだけ書きます
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 21:17:09.34 ID:z0RROQHd0
気になるところだったから助かる
825 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 21:25:42.20 ID:ZRae2xG0o
「ズ…ズビ…!」
固まった蝋から、頭部だけが出ている状態のファンビーモン。

そこへ、キャンドモンが二体やってきた。
や…やめろ!

「ドキャーー!」
キャンドモン達は、口から火を吐いた。

キャンドモンやアイスデビモンの蝋は、特別に高温で燃えやすい性質のようだ。
火は蝋に燃え移り、ファンビーモンを焼いていく。

「ズビィイーーーッ!」

あああ…
ファンビーモンが燃やされていく…!

ファンビーモンの翅は溶けた蝋が絡み付いているため、羽ばたかせても飛べないようだ。

それだけじゃない。
ファンビーモンは昆虫型デジモン。腹部の気門で呼吸をするタイプだ。
その気門に溶けた蝋が流れ込んでいるようであり、呼吸器官を焼かれている!

し…
死んでしまう…ファンビーモンが…!

「ズビ、ズビィィ!」

めらめらと燃えていくファンビーモン。
シャーマモンやコエモン達は…

「ウガァアア!」

先程さんざんビビらせられたことで鬱憤が溜まっているのだろうか。
ファンビーモンを寄って集って、青銅棍棒で滅多打ちにし始めた。
826 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 21:28:56.07 ID:ZRae2xG0o
そこへ…

「やめろよおおお!」

なんと、ブイモンが腕をブンブン回しながら走り込んできた。

「ウガ!?」
シャーマモンの一体を殴り飛ばしたブイモン。
溶けた蝋の中からファンビーモンを引っ張って救出した。

「うあっちいぃいいいいい!」
溶けて燃えた蝋はブイモンの手を灼いていく。
だが、ブイモンは構わずにファンビーモンを背負って、走った。

「ゲート!はやく!」

私は、デジタルゲートをブイモンの眼の前に開いた。
ブイモンは、ファンビーモンを抱えてゲートへ飛び込んだ。
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 21:29:57.98 ID:JqwF3fs00
ろくに話したこともない言うことも聞かない蜂野郎のために…
828 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 21:31:13.17 ID:ZRae2xG0o
一旦ここまで
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 21:31:56.75 ID:z0RROQHd0

続きがやはり気になるところだった
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 21:36:57.37 ID:1gcRJjUwo

こういう判断できるブイモンは大きな可能性秘めてそうね
831 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 22:40:51.53 ID:ZRae2xG0o
ブイモンを送り込んだ先はビオトープだ。
ここは飲み水をたくさん保存してある。

今のフローティア島は、井戸を作っている最中。
だから飲み水はこのビオトープに貯蔵しているものを使っているわけだ。

ブイモンは、燃えているファンビーモンを、自分の手ごと大きな水瓶に突っ込んだ。

水が蒸発するジュウ〜という音が鳴る。

「あっちちちち!」

しばらく水につけると、溶けた蝋がファンビーモンの体から剥がれて水面に浮かんできた。
火は鎮火したようだ。

ブイモンは、ファンビーモンを水瓶から出して、床へ寝かせた。
ブイモンの手は火傷しているようだ。

ぐったりしたファンビーモンは、ブイモンの方を見ている。

全身を焼かれ、呼吸器を灼かれ…
蛮族デジモン達に青銅の棍棒で叩きのめされたファンビーモンの外骨格はボロボロに割れていた。

せっかく助けはしたが…長くないかもしれない。
「ファンビーモン…おまえのこと、いまでもだいっキライだよ」

ブイモンは、ファンビーモンに向かって話しかけ始めた。
「ちいさいころ…おまえにおそわれて、ハリをめにさされて…しにそうになった。ワームモンがたすけてくれなきゃ、オイラはおまえにくいころされてた」
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 22:41:59.01 ID:XhrP/oAho
人間並みの感受性…
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 22:43:28.74 ID:I41UtgsYo
戦闘はよわっちいかもしれんがどんな育て方したのか他のデジモンに比べて異質だブイモン
834 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 22:47:12.72 ID:ZRae2xG0o
ブイモンは静かに話しかけている。
「いまでも、おまえのこと、だいっきらいだ。ついさっきまで、いなくなってほしいって、ずっとおもってた。…でも、おまえは、あんなおっきなやつらと、ひとりでたたかってた」

「なあ、おまえはなんであんなつよくてこわいやつらとたたかえるんだ?つよいからか?」

ファンビーモンの体の傷を見ているブイモン。
「…ちがうよな。ファンビーモンも、オイラとおんなじチビッコなんだ。たたかれたらケガするし、よわいチビッコなんだ。それなのに…おまえは、デカいオトナとたたかって…なんたいもやっつけた」

ブイモンは目に涙を浮かべた。
「おまえのこと、キライだけど、でも…、カッコいいっておもっちまった。おまえみたいにカッコよくなりたいって…あこがれちまったんだ」

ファンビーモンの体を揺さぶっているブイモン。
「オイラがきらいでも…オイラがだいすきなひとたちにとって、おまえはたいせつなんだよ!だから…しんじゃだめだよ、ファンビーモン…!」
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 22:52:58.88 ID:qi+tozCO0
言うこと聞かないただの狂犬だったファンビーモンでもこんなこと言われると死ぬの悲しくなる(´;ω;`)
836 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 22:53:10.34 ID:ZRae2xG0o


戦場では、ファンビーモンの立体映像が消えた。
もはや映していても意味がないので、ドーガモンが立体映像を消したのだ。
デジモンの体力は有限だ。あれだけの立体映像を個別に動かし続けていては疲弊してしまう。

ドーガモンはいったんビオトープに入り、特性栄養ドリンクで栄養補給をして休憩した。

リーダーが、ドーガモンに話しかけた。

「ドーガモン、休んでいるところ済まないが…新たな教師データで深層学習してほしい。頼めるか?」

『いいケド… なんだ』

「今までの戦いの録画データだ。ここから、ある情報を抜き取って、学習してほしい。できるだけ急ぎで」

『…クラフトモンがたたかってるもんナ おちおちネてもいられねーカ…』
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 22:55:49.48 ID:7ODOdQ1vo
ブイモンの姿全国で放送したら世間泣いちゃいそう(´;ω;`)
838 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 23:33:54.10 ID:ZRae2xG0o
戦場の状況は、圧倒的に不利だ。

クラフトモンは、先程まで巨大でパワフルなケンキモンを自身の体内の貯蔵エネルギーで操作していたため、だいぶエネルギーを消耗している。

それにクラフトモン本体の腕力はそれほど強いわけではないのだ。
ドリルの殺傷力は高いが…。

ティンクルスターモンも、かなりエネルギーを消耗している。
成長期の小さな体で、あれほどの殺傷能力のある回転タックルを放ち、既に敵デジモンを何体も斬り殺している。
ティンクルスターモンの高速飛行は、物理的な推進機構がなく完全にエスパー能力だけで推進力を得ているので、エネルギー効率が悪いのだ。

さすがはジャスティファイアが鍛え上げた国防用デジモン。
成長期どころか並の成熟期より強いが…スタミナが低めの短期決戦デジモンであるらしい。

カリアゲがAAAのデジドローンに話しかけた。
「AAA…てめえなんで今までアイスデビモンを繰り出してこなかったんだ。はじめっからアイスデビモンを繰り出していれば、シマユニモンも、ドリモゲモンも、失わずに済んだかもしれないじゃねーか!大事な部下じゃねえのかよ!」

『ん?そいつらなど、所詮は野生デジモンだ、どれだけ失おうが勝手にデジタルワールドから生えてくるだろう。畑のキャベツより容易くなぁ』

「なんだって…!?」
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 23:36:31.01 ID:ThSwC4gTo
ひ、人でなし…
840 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 23:38:50.16 ID:ZRae2xG0o
『てっきり貴様らはズバモンとルドモンを手懐けているとばかり思っていたが…その様子だと奴らを手懐けてはいないようだなぁ!くっくっく!』

「ふざけるな…お前…デジモンを何だと思ってやがる!」

『ん?その質問には前に答えたはずだぞ?同じことを何度も言わせるな… 道具だ!』

「んだとてめえ…」

リーダーがマイクを握った。
「…デジモン伝送路は遮断したはずだ。いつの間にアイスデビモンを送り込んだんだ」

『くくく、自分で考えてみたらどうだ?』

メガがサーバーの状況を確認している。
「うわ、そんな!デジモン伝送路が再び繋がってるよ!」

リーダーは驚いている。
「どういうことだ!」

メガが色々調べた。
「そうか…最初に伝送路を繋がれたときは、チビマッシュモンにマルウェアを仕込んでいた。でも今はファイヤウォールが破壊されてしまっているから…直にマルウェアを送り込んできて伝送路を繋げたんだ!」

クルエが驚いている。
「そんな…マルウェアはチビマッシュモン達が駆除したはずじゃ!?」

…ごめん。
戦場にモリシェルモンを放ったとき、チビマッシュモンにはいちど退却させたんだ。
あのまま戦場にいると、蛮族より優先してチビマッシュモンを食べるから。

…きっと、その僅かなチビマッシュモン不在期間を突かれたんだ。

『くっくっく…!勘付いたか!既に手遅れだがな…!』

こ…
こいつ…!

『さて、おしゃべりはもういいか?時間稼ぎにはもう付き合えん。終わらせよう、このゲームをな!』

カリアゲは怒りの表情を向けた。
「ゲームだと…ふざけんな!デジモンの命を、ゲーム感覚で…!」

『フーガモン、キンカクモン、アイスデビモン…そしてセピックモン!そいつらを片付けろ!』
841 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/20(水) 23:39:37.46 ID:ZRae2xG0o
つづく
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 23:42:06.52 ID:ThSwC4gTo
乙乙
何度手を尽くしても届かない
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 23:43:59.20 ID:JqwF3fs00

何もかも負けてて勝てる気しないな
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/20(水) 23:47:29.77 ID:LthkEqOP0

重要拠点のはずなのに自前の防衛戦力も協力してくれる戦力もクラッカーに比べるとあまりにも力不足
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/21(木) 02:09:35.03 ID:6vR+Djtb0

一日目を離した間に滅茶苦茶投稿されてて嬉しい
最初から最後まで面白いよ
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/21(木) 13:15:42.55 ID:NrndiDH80
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/21(木) 15:17:29.40 ID:B8y79Dkao
こっちは本拠地バレてて常に一方的に攻撃される危険性があるのに向こうはどれだけ攻撃しても捨て駒消耗するだけで本拠地バレなくて何の心配もなく攻撃出来るという不公平なウォーゲームだ
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/21(木) 19:52:27.25 ID:t8vgFj2I0
戦力差は歴然だからか引きはいつも大ピンチだ
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/22(金) 00:45:06.73 ID:JSboRWIv0
デジモンは後悔が進化の鍵って仮説だけど後悔してももう遅いって言われそうなマジで死にそう数秒前って状況の連続
850 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 12:23:50.33 ID:TlnrVhSsO
『かかれ!』
AAAの号令と同時に、成熟期蛮族とアイスデビモンだけでなく、シャーマモンやコエモン、キャンドモン達も、一斉に襲いかかってきた。

数が…
数の差がありすぎる!

どうする…!?
一旦クラフトモンとティンクルスターモンをビオトープへ引っ込めるか…?

だが、そうしたとしてどうなる…?
無抵抗で我々のサーバーを破壊されて、壊滅するだけだ。

何か…!
何か手はないのか!?

クルエさん!
ベーダモンの説得はできないか!?

「た、助けてぇベーダモン!」

『なんだ ここまでなのか? つまらん』

「だめだぁ、手を貸してくれない!」
ちくしょう、だめか!

その時。パルタス氏から通信がきた。
『貴様ら喜べ!上を必死にスターモンとジオグレイモンの出撃許可が出たぞ!』

おお、それは助かる!
すぐデジモンを送ってください!

『わかった!だから伝送路の接続を許可しろ!』

え…
め、メガ!できそう!?

『ダメだ!デジモン伝送路の接続切り替えシステムがAAAに乗っ取られてる!ジャスティファイアのサーバーに繋げない!』

そ、そんな…
ジャスティファイアからの救援は来れないのか!

つ…
詰んだか…ついに…!?
851 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 12:43:48.03 ID:TlnrVhSsO
デジタル空間の上空にデジタルゲートが開き…
パルモンが出現した!

「さいごののこり! ぜんぶ!」

パルモンは、花粉の備蓄ストックを、今自分自身の頭の花から出せる花粉とともにありったけ蛮族デジモン達の頭上からばら撒いた。

おお、いいぞパルモン!
花粉で目潰しをすれば、奴らの集団攻撃は封じられる!

花粉アレルギーによる催涙効果が効いている間に、クラフトモンのドリルやティンクルスターモンのカッターで攻撃すれば、ワンチャン…!

『ワンチャンあると思ったか?その手は二度通じん!キンカクモン、電撃バットへマントを巻き、空中へ放電しろ!』

キンカクモンは、言われたとおりに毛皮のマントを脱ぎ、バットへ巻いて空中へ掲げた。

そして、キンカクモンのバットから放電が放たれた。
キンカクモンも電気を使えたのか…!


すると…
ばら撒かれた花粉が、全てマントに吸い寄せられた。

「ゲホ!ゴホ!」
キンカクモンは花粉が効いているためか、苦しそうに涙と鼻水を出し始めたが…
他の蛮族デジモンや蝋燭デジモン達は平気そうだ!

か…花粉が…
対処された!

カリアゲが驚いた。
「なんだ!?何が起こったんだ!?」

リーダーは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「静電気だ…!ヤツはマントに強力な静電気を蓄電させることで、ばら撒かれた花粉をクーロン引力で吸い寄せたんだ!」

そ、そんな…!

『仕留めろ、セピックモン!』

セピックモン三体は、パルモン目掛けてブーメランを投擲した!

パルモンはデジタルゲートへ飛び込んで逃げようとしたが…
両足にブーメランが1つずつ命中した!

「ぎゃああっ!」

パルモンの両足はへし折れてしまった…!
どう見ても骨折している。

だが、パルモンはツルを伸ばしてデジタルゲートを掴み、どうにかビオトープへ戻ってきた。
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 12:52:29.25 ID:PGVJP5TIo
えっぐ…
853 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 12:56:12.63 ID:TlnrVhSsO
ビオトープに戻ってきたパルモン。
「あううぅぅ…!」
折れた両足がひどい内出血を起こしている。
「いたい…!」

カリアゲがパルモンに話しかける。
「パルモン…今できる中で一番の手は…!やっぱ進化だ!」

「しんか…!」

「このままじゃクラフトモンとティンクルスターモンはきっと蛮族たちに殺される…!他のみんなも!頭数に差がありすぎるんだ!」

「うぅ…!」

「パルモン…ブイモン…!そしてボスマッシュモン!きっとやれるはずだ!今こそ…進化だ!」

パルモンとブイモン、そして体をようやくいつものサイズにまで形成し終えたボスマッシュモン(真・ボスマッシュモンの分身)は、カリアゲの言葉に頷いた。

「パルモン…しんかぁーー!」
「ブイモン!しんかーーー!」
「マシュモ、ミシュマァーーー!!」



「「しんかできない…」」
「マシュマ〜…」

ううっ…
やっぱり進化は気合いを込めるだけですぐに反応が始まるものではないんだ…!

「スコピオモンやルカモンが戦闘中にレベル5へ進化したから、いけると思ったんだけどな…ちくしょう…!」
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 12:56:47.25 ID:YTyJ/5g60
セピックモンまだ3体もいるんだ……
トータルで成熟期の半分以上倒せてない状況なんだな
855 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 13:03:43.78 ID:TlnrVhSsO
やむを得ない!
ティンクルスターモン、クラフトモン!いったんゲートに入れ!

そう指示すると、ティンクルスターモンとクラフトモンは、私が開いたデジタルゲートへ入った。

二体はビオトープに入ってきた途端、地面に腰を下ろした。(ティンクルスターモンに腰はないが)
だいぶ疲労しているようだ。

とりあえず、特製栄養ドリンクを与えて栄養補給をさせた。

こ…
これからどうします!?リーダー!

「俺達の最後の切り札、それは…この自由自在にデジタルゲートを開けるランドンシーフだ。これを使って…粘れるだけ粘る!マッシュモン達は、伝送路を乗っ取っているマルウェアを探して駆除してくれ…できるか!?」

「シマッ!」

ボスマッシュモンとチビマッシュモン達は、敬礼のポーズをとった。

頑張ってくれ…!
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 13:05:06.88 ID:PGVJP5TIo
まだ足掻く
857 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 13:35:20.19 ID:TlnrVhSsO
しかし、これだけの数の蛮族デジモン…
戦力差を覆す方法はあるんですか!?

「…ドーガモン。深層学習は終わったか?」

『なんとか おわったゼ』

「よし…」

…何か秘策があるんですね。
858 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 13:35:49.66 ID:TlnrVhSsO
『…デジタルゲートを開く技術がうっとうしいな。どこかにデジタルゲートを制御するシステムがあるはずだ、虱潰しに破壊しろ!』

蛮族デジモン達は、デジタル空間を次々と破壊していく。

メガは顔を青くしている。
「あああああ!サーバーのシステムが次々に破壊されていく!!」

『デジモン達だけに任せるのは非効率か。ファイヤウォールがない今、通常のマルウェアも送り付けてやるか…くっくっく…!』

すると…
AAAのデジドローンのすぐ近くに、デジタルゲートが開き…
ティンクルスターモンが出てきた。

ティンクルスターモンは、AAAのデジドローンを真っ二つに切り裂いて破壊した。

これでもう、AAAはデジモン達に指示は出せないし、デジクオリアでデジタル空間内を覗くこともできないはず…!

『くくく、ハズレだ』
そう言って、物陰からデジドローンが出てきた。
くそ、さっきのはダミーか…!

ティンクルスターモンは、今出てきた方のデジドローンに向かって飛んでいく。

『…軌道が決まったな!フーガモン、やれ!』

AAAがそう言うと、物陰からフーガモンが飛び出てきて…

青銅の棍棒を構えた。

しまった、罠だ!
戻れティンクルスターモン!

逃走用デジタルゲートを開こうとしたが、間に合わず…
フーガモンがフルスイングした棍棒が、ティンクルスターモンに当たった!

カキーンと甲高い音を立てて、勢いよく吹っ飛んでいったティンクルスターモンは、そのままデジタル空間の壁に突き刺さった。

だ…大丈夫かティンクルスターモン!

『ウゥ ダ ダメソウッス』

…致命傷を負っていないのが救いか…。
蛮族デジモンがトドメを刺しに来る前に、デジタルゲートを開いてビオトープにティンクルスターモンを回収した。
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 13:39:18.43 ID:PGVJP5TIo
も、もうダメだぁ…おしまいだぁ…
860 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 13:43:45.61 ID:TlnrVhSsO
てぃ、ティンクルスターモンまで…!
もうクラフトモンしか、成熟期相手にまともに戦えるデジモンがいない…!

クルエが席から立った。
「…確か、キノコ生成用のスパコンありましたよね。少し借りますね」

リーダーが答えた。
「い、いいが…何をする気だ?」

「あと、電話もちょっと借ります」

「いいが…だから何をする気だ!?」

「…リーダーには言えないことですが…今、私達に必要なことです」

「…そうか。信じよう」

「あざまっす」

クルエさん…
何か策があるんだろうか…?
861 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 13:48:47.22 ID:TlnrVhSsO
『くっくっく!もう貴様達にできることはないぞセキュリティ!蛮族共、システムを徹底的に破壊し尽くせ!』

AAAのデジドローンがそう言い放つが…

『…?おい、シャーマモン共、コエモン共…どうした。聞こえていたら返事をしろ』

…成長期蛮族からの返答がないらしい。

『ん?おかしい…シャーマモン!コエモン!貴様らどこへ行った!?』

あれだけたくさんいたシャーマモンとコエモン達は…
いつの間にか
どこにもいなくなっていた。

『なんだ…何をした貴様ら…!?成長期蛮族どもをどこへやった!』

確かに…
どこへ行ったんだあいつら!?

私の隣で、リーダーが呟いた。
「戦えるデジモンは残り少ない。だが、まだ俺達には武器が残っているということだ。…思考という武器がな」

『何を言っている…!』

リーダー…
何をしたんだ…?
862 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/23(土) 13:49:14.06 ID:TlnrVhSsO
つづく
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 13:57:33.38 ID:PGVJP5TIo
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 14:02:01.50 ID:jHMWlyocO
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 14:10:17.12 ID:Hi/nyrvz0

このチームスタンドプレー多いな…
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 16:14:07.80 ID:jhD7Md8xo

もがき足掻く事こそ生命の本質
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 20:50:54.80 ID:SBfIyhan0
「何をした?」と問われてもその場にいる殆どの人は知らない
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/23(土) 23:32:12.62 ID:Tb+i1BnW0
中々の長丁場ね
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 19:32:16.79 ID:lgbTJ6wWo
人間もデジモンも結構独断行動多いのによく瓦解しないなこのチーム
870 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 20:24:41.98 ID:aRWUSx6po
何したんですかリーダー?

リーダーは、マイクを切って少しだけ呟いた。
「…ドーガモン。投影。AAA。以上だ」

それだけ言った後、リーダーは再びマイクをONにした。

それだけ言われても…全然わからん…!
できればもっとちゃんと教えてほしい…!
あと、できれば何かするなら先に言ってほしい。

…だが、この状況では仕方ない。

もしも私達の会話の間に、敵が都合よく攻撃の手を止めてくれるのなら。
もしも話す時間が無限にあるのなら。
リーダーは事細かに、これから何をするか、今何をしたのか、丁寧に相談し、教えてくれるだろう。

チェスの駒を指し合うように、考える時間がいくらでも取れるのなら。
誰がどのデジモンに何をどう指示するか、チームのみんなでじっくり話し合って決めることができるだろう。

だが現実には、敵は我々が話し合っている間に攻撃を待ってくれなどしない。

一分一秒ごとに状況が変化する戦場だ。
攻撃のチャンスが一瞬で生まれては、一瞬で消えていく。
危機が一瞬で訪れ、パートナーデジモンに襲いかかってくる。

たとえ、その度に「待った」を宣言し、チームみんなでじっくり相談をしようとしたところで、ただ攻撃のチャンスが去っていき、新たな危機が訪れるだけだ。

もしかしたら、リーダーが成長期蛮族を消した手品は、事前に私にじっくり説明する時間をとっていたら、機を逃して間に合わずに失敗していたものだったのかもしれない。

…そう考えると。
たとえ軽率な行動で悪手を指し、大失敗するリスクを抱えてでも、今できることを、間に合ううちに、とにかくやり続けるしかない。

リーダーもクルエも、誰も彼も説明不足になるのは仕方ないといえるだろう。
説明する余裕がない状況なのだから。
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 20:26:15.48 ID:lXh+hupv0
それでパズルのピースが噛み合うのは奇跡なのかチームワークの賜物なのか
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 20:29:18.84 ID:vDAwGCuA0
「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。」とは正にこのことだ
873 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 20:40:36.19 ID:aRWUSx6po
しかし、とうとう攻撃できるのがクラフトモンだけになってしまった…

敵の蛮族デジモン達は、我々最後の武器であるランドンシーフのシステムを破壊して、デジタルゲートを自在に開く戦術を無効化しようとしている。

今、こうしている間にも、次々と蛮族デジモン達は我々のサーバーのシステムを破壊している。
じっと機を伺っていれば手遅れになるだけだ。
なんとかしないと…!

…でも、ここからどうしますか。
さっきの手品で、残りの成熟期達も消せませんか?

「AAAが見ている所では使えない手だ。それに、まだ戦力差を覆せる可能性はゼロじゃない」

どうするんですか…?

「チビマッシュモン達を繰り出して、デジタル空間内のマルウェアを駆除させて、デジモン伝送路のコントロールを取り戻せれば、ジャスティファイアからスターモンを呼べる…!」

…できますか?
この状態で。

「じゃあ他にどうする」

…やりましょう。
たとえ破れかぶれでも、本当の手遅れになる前に。
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 20:47:09.65 ID:yNnbHN/jo
詰み一歩手前、土俵際で長時間踏ん張ってるようだ
875 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 20:52:11.48 ID:aRWUSx6po
「マシ〜〜〜〜〜〜!!」

デジタルゲートから、チビマッシュモン軍団が飛び出した。

チビマッシュモン達は、デジタル空間内にばら撒かれたマルウェアの匂いを嗅ぎつけ、散らばって走った。

最新のマルウェアは恐ろしい。
AAAが我々のサーバーに送り付けてきたマルウェアは、何も対処しなければ蛮族デジモン達が暴れまわるよりも早くサーバーのシステムを破壊してしまうものかもしれない。

だが、現状どうにか被害を押し留めることができているのは、うちの研究所のセキュリティ部門やメガが頑張ってマルウェアに対抗してくれているからだ。

敵の方が優勢だが、どうにか必死に綱引きをしている状況だ。

だがデジタル空間においては、情報生命体デジタルモンスターが絶対強者だ。
デジモンにとっては、マルウェアは楽に狩れる餌のようなものだ。

チビマッシュモン達は、次々とマルウェアを見つけては食べていく。

『始末しろ!そいつらを!』

「ガウオオオオ!」

フーガモン達は、チビマッシュモンを殺すべく、青銅棍棒を掲げて襲いかかってきた。
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 20:54:11.11 ID:aI32PQ89o
何百何千何万のチビマシュが天に召されていったのか
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 20:59:19.65 ID:31qNuXTA0
所詮分身とか髪の毛みたいなもんでマッシュモンが気にしてないとしてもチビ達殺されてく度に断末魔挙げるから見てる人間は気にしちゃうよね
878 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 21:07:29.60 ID:aRWUSx6po
「オ゛ォン!」

フーガモンは、地面でマルウェアを貪っているチビマッシュモンを棍棒で叩き潰した。

「マ゛シィイイイイ!」

…今だ!

フーガモンの頭上でデジタル空間が開き…
クラフトモンがドリルを回しながら飛び出してきた!

ドリルの回転音に驚き、左手を後ろに回しながら振り返るフーガモン。

クラフトモンは、ドリルを突き出した。

フーガモンがとっさにかざしてきた左手の平を貫き、フーガモンの胸部にドリルが突き刺さる。

「ギャアアアアアァアアア!!」

いけ!
そのまま大動脈をブチ抜け!

フーガモンは、棍棒を振りかざした。
ヘルメットが破壊されて素の頭部が露出しているクラフトモンの側頭部に、棍棒がヒットした。

すさまじい金属音だ。
あの状況で反撃してくるなんて…なんて奴!

クラフトモンはぐらりと揺れたが…
手を緩めず、フーガモンの胸部へさらに深くドリルを突き刺した。

「ガギャアアアアアアアア!」

フーガモンの傷口から勢いよく血が吹き出した。
やったぞ!

「クラフトモン!後ろだ避けろ!」
リーダーの声がした。
879 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 21:15:08.37 ID:aRWUSx6po
クラフトモンはとっさに横へ飛び退いた。

…クラフトモンの脚に、大量の溶けた蝋がぶちまけられた。

「グウゥ!?」

クラフトモンは距離を取った。

『フン…素早い奴だ。もう少しで頭から蝋を被らせて窒息させたやれたものを』
AAAの声がした方を見ると…
デジドローンのとなりに、アイスデビモンがいた。

クラフトモンの脚についた蝋は、早くも固まった。
カチカチになったクラフトモンの脚は、だいぶ動かしづらそうだ。

キャンドモンの親…
ガソリンのように高いオクタン価の特殊な蝋を操る、白き悪魔…アイスデビモン!

メガが口を挟んだ。
「なんでアイスデビモンなのに蝋なんだ!それじゃワックスデビモンだろ!」

『む…』

「お前もしかして蝋と氷の区別つかないのか?そんなの令和の小学生ならみんな分かるぞ!ヘボエンジニアどころか幼稚園児以下の語彙力だお前は!」

何急に!?
とつぜんメガがAAAのネーミングを罵り始めた。
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 21:16:34.67 ID:Gm60WTsJ0
そもそもアイスデビモンってなんだよ!
アイスじゃないデビモンいるのか!
881 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 21:27:45.56 ID:aRWUSx6po
「バーカバーカ!」

『バカは貴様の方だメガ。アイスデビモンは、蝋だけでなくガラスや石灰も取り込んで操れるのだ!私の傑作デジモンだ!』

アイスデビモンはAAAの指示を待っており、クラフトモンはアイスデビモンの様子を伺っている。

「ガラスも石灰も氷じゃないじゃん!何がアイスデビモンだ!氷を武器にしないくせに!そいつの名前はセメントデビモンとして登録してやる!」

『浅学!短慮!!短絡的!!!英語のスラングでは氷のように美しく輝く宝石やガラスをiceと呼ぶのだ!だいたい常温で融解する氷なんか武器にしてどうする!解けてしまうだろ!流体を敵に浴びせて硬化させたいなら、常温で個体の物質を武器にした方が合理的だ!』

「今だ!デジタルゲート開け!」

クラフトモンの隣にデジタルゲートが開いた。
クラフトモンはゲートへ飛び込んだ。

『しまった!逃げられた!クソ!』




ビオトープでは、オタマモンがクラフトモンの脚を火で炙って、蝋を溶かした。

クラフトモンは、フーガモンに殴られた側頭部を押さえて痛そうにしている。

よくやったクラフトモン!
これでフーガモンは仕留めたか!

そう思ってデジタル空間を見ると…

アイスデビモンは、フーガモンの傷口に蝋を詰め、止血をしていた。

ううっ…
あんなことまでできるのか…
882 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 21:29:41.70 ID:aRWUSx6po
一旦ここまで
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 21:29:57.21 ID:iCA5tmCP0
割とセコい手に頼ってもダメだったか
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 21:30:40.24 ID:gU1zdM7Fo
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 21:32:41.05 ID:31qNuXTA0

クラフトモンもダメージは小さくなくていよいよ手がなくなってきた
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 21:33:14.87 ID:AGYFP8V60
887 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 21:57:18.65 ID:aRWUSx6po
衝撃とともに、ビオトープ内に警報ブザーが鳴り響いた。

デジタルゲートを開くシステムが破損し始めている!
いよいよ敵の手が王手に届きかけている。

これまで、インターバルを挟みながらヒット・アンド・アウェイを繰り返してきたが…
一休みできるのはこれが最後になりそうだ。

い、いけるかクラフトモン!
だいぶ辛そうだけど…

「…」

クラフトモン?

「しまには わたしのタマゴが ひとつある かしこく やさしい りっぱなせんしに そだててくれ」

…分かった。

「いこう さいごの たたかいだ!」

クラフトモンは、よろめく脚に力を入れて踏ん張った。
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 22:00:11.87 ID:iIYfscv/o
死亡フラグ建てるなよぉ(´;ω;`)
889 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:03:50.37 ID:aRWUSx6po
アイスデビモンは、逃げ惑うチビマッシュモン達を蝋で次々と固めている。

そんなアイスデビモンの背後に…
デジタルゲートがひとつ開いた。

そして、クラフトモンが飛び出してきた。

『アイスデビモン!後ろだ!』

アイスデビモンは後方を振り返り、クラフトモンへ蝋を浴びせた!

…だが。
蝋はクラフトモンをすり抜けて、地面に貼り付いた。

『…幻影だ!ファンビーモンと同じ!囮だ!』

本物のデジタルゲートは…
フーガモンの頭上に空いた。

『フーガモン!頭上だ!迎え撃て!』

「ウガウ!」

先程胸部をドリルで抉られてよほど怒っているのだろう。
怒りの表情を向けて、棍棒を構えて頭上を向くフーガモン。
棍棒で迎撃する気だ…!

ゲートから落ちてきたのは…
透明な粘液だった。

粘液はフーガモンの顔にかかった。

「ウガ!?」


次に顔を出したのは…
クラフトモンでなく、オタマモンだった。
890 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:11:52.10 ID:aRWUSx6po
オタマモンは、フーガモンの顔に火炎放射を放った。

粘液もとい燃料に引火し、フーガモンの顔面が燃えた。

「アガアアォァアアアアア!!!」

顔を押さえるフーガモン。
よし、これでフーガモンは目が効かない!

オタマモンに続いて、クラフトモンが飛び出した。

クラフトモンは、フーガモンの後頭部目掛けて…
ドリルを突き出した!

フーガモンは…
空中で宙返りをし…

なんと、全く視界が効かない状況にもかかわらず、強烈無比なキックを放ち、クラフトモンを蹴り飛ばした!

地面を転がるクラフトモン。
「ゴボッ…ぐ…!」

なんだ!?
一体どうやって、クラフトモンを探知した!?
視界が効かず、顔面が燃えているのに!
AAAの指示も無かったのに…!
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 22:13:56.22 ID:iIYfscv/o
ベスト尽くしてるはずなのにまだ届かんか
892 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:17:42.39 ID:aRWUSx6po
まさか、テレパシーのような能力が…!?

リーダーが驚いている。
「ヤツは…おそらく『勘』で蹴りを放った…!」

勘!?
そんなバカな!

「長い間、パイルドラモン現役時代のディノヒューモン農園の勢力と戦い続け、野菜の強奪を成功させてきた奴らだ。信じられないが…『戦いの勘』で、俺達の策を打ち破ってきた…!」

な、なんてヤツ!
フーガモン…蛮族の王。
あいつを甘く見ていたのだろうか。

クラフトモンは立ち上がろうとしている。
「キー!キキー!」

セピックモン達が、遠くからブーメランを投げ、クラフトモンを攻撃している。
一発一発が強烈なダメージだ…!

や、やばい!
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 22:20:22.17 ID:31qNuXTA0
勘などという運というか非科学的というか奇跡的なものすら向こうに味方してくるか
894 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:23:02.44 ID:aRWUSx6po
フーガモンは、瀕死コエモンの腹部をパンチで貫き、傷口から出る出血で顔を洗った。
そしてコエモンの衣類を剥ぎ取り、頭を擦り付けて、粘液を拭き取ったようだ。

そして、クラフトモンのところへ来て…
クラフトモンを力いっぱい、何度も踏みつけた。

く、クラフトモン…!
戻れ!

システム不調で不安定気味なデジタルゲートを、クラフトモンの真下へ空けた。

だがフーガモンは、クラフトモンを蹴り飛ばし、ゲートが空いた位置から移動させた。

クラフトモンは、立ち上がろうとしているが…
ボロボロだ。
ロボットのように見えるその体の至るところから出血している。

もう、クラフトモンは戦えない…!

「トドメエエェェ!」

フーガモンは、棍棒を構えて、クラフトモンへ突撃した。




「やめろおおおおおおお!」
何者かが、鎌を振りかざしてフーガモンを攻撃した。
フーガモンはその鎌を躱して、立ち止まった。


「ふぅーっ…ふぅーっ…!クラフトモンを…それ以上…いじめるな…!」
スナイモンの鎌を構えたブイモンだ。
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 22:24:47.71 ID:O3egGQFJo
お久しぶりのブイモン
896 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:27:40.10 ID:aRWUSx6po
ぶ、ブイモン…

「あああああ!おいらが!あいてだあああああ!」

ブイモンはスナイモンの鎌をブンブンと振り回して、フーガモンを攻撃する。

フーガモンは軽々とそれを躱して…
ブイモンの腕を蹴り、鎌をふっとばした。

「う、ああぁ!ぶ…ぶきが!なくったって!だああ!」

ブイモンは己の拳でフーガモンに殴りかかるが…
強烈なカウンターパンチを食らって、地面を転げ回った。

「ぎゃう!」

『くっくっく…!もうそんなザコしかいないのか!農園にいるブイモンだな?私の忠実な信徒達は、そいつと同じ顔をしたデジモンをこれまで何体もブチ殺してきたぞ!』
897 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:35:13.97 ID:aRWUSx6po
『はーっはっはっは…もう終わりだなぁ!ナニモン、私からの通信が途切れた時にどうすればいいかは分かっているな?』

AAAがそう言うと…
高いとこで寝っ転がってるハゲオヤジデジモンが、「ウィー」と言いながら手を上げた。
…あいつナニモンって名前なのか。

『トドメをさせ…フーガモン!』

フーガモンは、ブイモンににじり寄って…
棍棒を振りかざした!

「ガオォーー!」

「ちく…しょう…!」

その時。

横から飛び出してきた何かが、ブイモンとフーガモンの間に割って入り…
ブイモンの代わりに棍棒を食らった。

「ひっ…!え…!?」

『なに…!?』

攻撃を受け止めたのは…
白い大きなデジタマだった。

ワームモンとサラマンダモンが、割れたデジタマと融合してできたタマゴだ。


棍棒の強烈な一撃を受けたデジタマは…
ビシビシと大きなヒビが入った。

『なんだ?ゲートから出てきたデジタマが…自ら転がって、ブイモンを庇っただと?あり得ない現象だ…!』

「あ、ああ、ワームモン…!なんで…お前また…!」

デジタマの割れた部分からは、何かのエネルギーが流れ出ている。

「ワームモン…おいらまた、オマエを盾に…!あ、ああ…!」
ブイモンは、デジタマを抱きしめた。
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 22:37:06.87 ID:O3egGQFJo
デジタマでもガチれば動けるという新たな発見
899 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:43:04.68 ID:aRWUSx6po
『くっくっく…!何やら知らんが面白い現象だな…デジタマがひとりでに動き回るなど…!どうやって動いている?手足も感覚器もないのに!』

AAAがそう言うと、フーガモンがブイモン達を見て余裕そうに嘲笑った。
「ガッハッハッハッハ!!」

「…そっか…そうだったんだ…。オイラ…かんちがいしてた。ワームモン…おまえのこと…」

「おまえは…オイラがみがわりにしようとしても…あのときほんとは…」

「じぶんでオイラのうでから、にげられたんだ」

「でも、そうしなかったのは…」

「オイラを…かばってくれたんだな…ワームモン…!」

ブイモンは目を閉じて、割れたデジタマを抱き締め…
目を見開いた。

『くっくっく!傑作だ、割れたデジタマに何を話しかけている?』

「…ワームモン…またいっしょにたたかおう…」

ブイモンは立ち上がった。

「ちがう、いっしょにたたかうんじゃない…」



「ひとつになって!たたかうんだ!」

割れたデジタマから、突如不思議な光が放たれ…
ブイモンを包んだ。

『ん?何だ…?この光は?』
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/25(月) 22:44:52.06 ID:OHN8Rklx0
おぉ…ついに来るのか
901 : ◆VLsOpQtFCs [saga]:2023/12/25(月) 22:52:41.19 ID:aRWUSx6po
割れたデジタマに、さらにヒビが入り…
外角が細かく分離した。

デジタマの中から放たれる光は、力強い眼光を秘めたブイモンを包み込む。

ブイモンのシルエットは、少しずつ背が高くなっていく。

デジタマの割れた外殻が、光り輝くブイモンの手足や胴体、頭部に貼り付き、装甲を形成していく。

『なんだ…なんなんだこの現象は!フーガモン!何かわからんが殺せ!』

「ウガアアァァ!」

フーガモンは、青銅の棍棒でブイモンに殴りかかった。


その棍棒を…
ブイモンは片手で止めた。

「ガウウゥ!?」

「よくも…クラフトモンを…ファンビーモンを…みんなを…!」

やがて光が消えると、そこには…
燃え上がる勇気のように勇ましい、炎のような紋様が刻まれた装甲を手足と胴体、頭部に纏ったデジモンがいた。

手足の装甲と頭部には、ナイフのように鋭いツメとツノが生えている。

「てめえら…灰になっても燃やし尽くしてやる!」
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