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【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】
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77 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:11:33.18 ID:5Y/XF1Bxo
X大佐「食糧支援はしばらく必要になるということだね?」
提督「あんまり世話になりたくねえんだが……当分は資源や鉱物との物々交換で頼む」
金剛「No probrem... これからのテートクのsupportは、全部私に任せて All Okey デース」ホオズリホオズリ
提督「お前なあ……」
青葉「本当に金剛さんは司令官が大好きですねえ」
島風「提督、ただいまー!」
提督「よう、おかえり……って、お前たちだけか? 武蔵や比叡や白露とかも戻ってくる予定だっただろ?」
青葉「武蔵さんは那智さんと一緒に与少将のところで、もうしばらく勉強したい旨の連絡がありました!」
青葉「比叡さんはW大佐のところの榛名さんにくっつかれているそうで、離れるまでもう少し時間がかかりそうです」
提督「あー……あっちの榛名も比叡の件は相当泣きじゃくってたからな。んじゃ、しゃあねえか」
島風「それから白露も、第二改装が適用できそうだって話で、本営で診てもらってるんだけど……」
島風「今の艤装を改造した経緯? ってのを細かく聞かれてるらしくて、まだ戻ってきてないんです」
提督「あの魔改造、そんなに深刻なのか? 仁提督んとこの明石は、白露の艤装になにしてくれてんだよ」
島風「あっちの明石さんは悪くないですよー、あの改造は白露の希望通りにしてくれた結果ですし!」
提督「そりゃあそうかもしれねえけどな……」
78 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:12:32.09 ID:5Y/XF1Bxo
島風「超がつくほど改造好きなのは問題かもしれないですけど、島風たちには優しかったですよ?」
島風「もともと仁提督が駆逐艦に興味なかったせいで、最低限の駆逐艦しかいなかったって言うのもあるんですけど」
島風「あの明石さんも駆逐艦が好きらしくて。どれだけ最高の駆逐艦を作れるか、って、長門さんと夜通し話し込んでたって聞いてます!」
提督「やべえ奴じゃねえか……!?」
島風「そうかなあ? 島風の艤装とか、すっごい念入りにメンテナンスしてくれましたし、悪い人じゃないと思いますけど」
提督「あいつんとこの長門が問題児だからな……そいつと馬が合う明石とか、想像したくねえ」ウヘェ…
青葉「いろいろ思うところはありますが、青葉的にはさっきからずっと抱き着いて離れない金剛さんもなかなかのものだと思いますよ?」
提督「……昔、10分間は抱き着いてもいいってルール作ったこともあるしな。ま、このくらいは黙認してやるよ」ナデナデ
金剛「うへへへ、テートク、愛してマース……!」ンチュー
提督「調子乗んな」アタマガシッ
金剛「ひっ」ビクッ!
島風「ん−、でも、しょうがない感じはありますよね、さっきの話を聞いちゃうと」
提督「ん? どういうことだ?」
島風「金剛さん、あっちの鎮守府で追い掛け回されたんですって!」
朧「は?」
79 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:13:16.28 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「なんでも、そこの男性に求婚されてたらしいんですよ」
提督「なんだそりゃ。相手はQ中将の後釜の新しい提督か?」
金剛「No ! 違いマース! あちらの鎮守府の新しい提督は、すでに結婚済みで、落ち着いた人デース!」
金剛「私を追いかけてきたのは、その提督の息子さんデス……!」アオザメ
朧「金剛さんが青ざめるほど、嫌な要素があったんですか?」
金剛「Yes...! いくら私でも、小学生と結婚するのは無理デース!!」
提督「はあ?」
朧「しょうがくせい?」
青葉「Q中将の後釜についた提督の息子さんが、金剛さんを気に入ってしまったらしいんですよ」
青葉「大きくなったら金剛お姉ちゃんをお嫁さんにする、とか言って、とにかくくっついてきてたらしいんです」
金剛「私も子供自体は嫌いじゃありまセン。But !! 未成年者とのLoveを育むのはお断りデェース!!」
提督「金剛の倫理観がいまいちよくわからねえ」
島風「なんか、未成年者の略取誘拐罪っていうのに抵触するーって、金剛さんが言ってましたけど本当ですか?」
提督「その辺の法律はわかんねえっつうか知らねえよ」
80 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:14:01.16 ID:5Y/XF1Bxo
陸奥「子供の言うことなんだし、適当に流してあげてもいいんじゃないの?」
金剛「子供だからこそ真面目に返してるデース!! 彼が二十歳になるのに11年も待ってられまセン!」
提督「ここのつ、か」
青葉「ここのつ、だそうです」
金剛「最近の小学生はマセすぎデス! 一緒にお昼寝しようとか言い出して胸とか触ろうとするんデスヨ!?」
朧「うわ、確かに触られるのは嫌だなあ……」ウーン
金剛「それに、どこで仕入れたかわからない変な知識を、変な口調でお構いなしに喋り出シテ! 私だって反応に困りマス!」
提督「なんつうか、自分に興味持ってほしくて必死になってる感じか?」
青葉「そんな感じでしょうねえ。とにかく自分を見てほしいんでしょう」
提督「そんな齢の話なんて忘れちまうだろ。陸奥の言う通り適当にあしらっちまえよ」
金剛「No、子供であるほど冗談は通じないものデスヨ? 仮に子供の約束でも、その子が本気なら無碍にはできまセン」
金剛「それに、自分が子供であることを利用して、冗談と本気のギリギリの間を攻めてくるような子供に、中途半端な答えは禁物デス」
金剛「スマホを隠し持って、録音までしようとしてたくらいデスから」
提督「録音とはまた……スト−かーかモラハラ気質になりそうなガキだな。そりゃ将来が思いやられるぜ」
81 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:14:46.55 ID:5Y/XF1Bxo
X大佐「注意喚起が必要だね」
提督「よせよせ。親になったことのねえ奴が、他人の子育てに口出ししても、ろくな事にならねえよ。放っとけ」
X大佐「そういう意味じゃなくてね。子供が勝手に鎮守府内をスマホをもって歩き回ることに、だよ」スクッ
提督「!」
チャッ パタン
陸奥「X大佐がどこかへ行っちゃったんだけど」
青葉「X大佐が怒ってるところ、初めて見ましたねえ?」
島風「あれ、怒ってたの?」
青葉「目は笑ってませんでしたね。なるほど、X大佐は怒ると真顔になるんですねえ」
提督「さては新しい提督を始末しに行ったか?」
朧「始末……そうかもしれませんね」
島風「提督は怒らないんですか?」
提督「関わるのが面倒臭え。これ以上、艦娘に害が及ばない限りは俺はどうでもいいや。現にX大佐が動いてるしな」
82 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:15:31.96 ID:5Y/XF1Bxo
金剛「私はひどい目に遭いマシタヨ?」
提督「拒絶して逃げおおせてきたんだろ? もう行く必要がねえなら、それで縁切りでいいじゃねえか」
提督「そのガキが島に来ようものなら、メディウムに歓迎してもらうだけだ」
金剛「……Q中将の奥様が心配デス」
提督「鎮守府の外で会えばいいだろ。っつか、鎮守府勤め自体辞めてもいいんじゃねえか? 海軍の直接の関係者ってわけでもねえんだし」
金剛「そうかもしれマセンネー……」
陸奥「それより、金剛はもう10分以上抱き着いたままだと思うんだけど」
金剛「Hey, 陸奥……? これまで1か月近く提督のもとを離れていたんデス、ちょっとくらい大目に見まセンカ?」
陸奥「2週間くらいじゃなかった?」
金剛「どのくらい誤差デース! テートクから離れていた私のカラダは、テートク分を求めているんデース!!」
提督「なんだその提督分ってのは」
金剛「艦娘に必要な成分のひとつデス。不足すると艦娘の活動に支障をきたす物質で、シレイニウムとも呼ばれていると聞きマシタ!」
提督「なんだそりゃ??」
83 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:16:16.50 ID:5Y/XF1Bxo
金剛「とにかくこうやってテートクにくっついて、テートク分を私の体に補充してるデース!」ヒシーッ!
陸奥(わかる気がする……)
朧(わかる気がする……)
扉<ガチャー!
伊58「ゴーヤもわかるでち!!」
提督「うお、びっくりした。誰だお前」
伊58「あ、はじめまして、伊58です! X提督の潜水艦娘だよ! ゴーヤって呼んでもらってるんだ!」
X大佐「今日は彼女に秘書艦をしてもらっててね」
伊58「X提督、最近はずーっと海外艦と一緒だったから、秘書艦は久し振りなんでち!」ピトッ
X大佐「ゴーヤ、お客さんの前なんだから、あまりくっつきすぎないようにね?」
伊58「えー、なんでー? あっちの金剛さん、ゴーヤよりくっついてるよー?」
提督「金剛。お前、あっちの潜水艦娘よりべったりくっつきすぎだ。見苦しいから少し恥を知れ」
金剛「」
島風「言い方きっつーい!」
84 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:17:16.41 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「それでX大佐、あちらの提督には釘を刺したんで?」
X大佐「彼の上官に連絡を取ったよ。彼は新婚で息子はいないはずと言っていたから、親戚の子を預かったのかもしれない、だって」
朧「それ、完全に部外者じゃないですか……?」
X大佐「今頃、特別警察が動いてるだろうね。彼が提督業を続けられるかどうかも審査することになりそうだ」マガオ
青葉「釘どころじゃないものがブッ刺さりましたか……」アタマオサエ
島風「良かったですね金剛さん! 二度と会わなくて済みそうですよ?」
金剛「」
朧「提督に突き放されてそれどころじゃないみたいだね……」
陸奥「今のうちに物理的にも引き剥がしとく?」
伊58「こんなにべったりくっつきたがる戦艦さんは初めて見たでち」
X大佐「……ゴーヤといい勝負だと思うけどなあ。君だって隙あらば膝の上に座ってくるじゃないか」
伊58「それは最近X提督がゴーヤたちと向き合ってくれないからでち」
陸奥「あらあら。X大佐も隅に置けないわね」クスクス
X大佐「場を弁えてほしいんだけどね……」
85 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:18:01.40 ID:5Y/XF1Bxo
陸奥「まあ、それもそうね。ほどほどにしておかないと……」チラッ
金剛「私は見苦しくないデース!」ダキツキーッ!
提督「いい加減にしろっつってんだ!」アイアンクロー
金剛「Nooooooooo !!」メキメキメキ
伊58「うわあ……」ヒキッ
陸奥「ああなっちゃうかもしれないし、ね?」
青葉「普通はならないと思います」タラリ
朧「提督は普通じゃないですから」
X大佐「そうとは聞いてるけど……戦艦が痛がるとか、いったいどんな握力してるんだ」タラリ
伊58「あの人はツ級の生まれ変わりでちか……」ガクブル
青葉(半分深海棲艦だというのは当たってるから、ノーと言いきれないのが複雑ですねえ)
朧「そういえば、X大佐は金剛さんとは邂逅してないんですか?」
X大佐「できてないんだよなあ。金剛型どころか、戦艦自体と縁がなくてね。大型建造でも伊401が建造できたくらいだし」
X大佐「初めて来た戦艦がビスマルクで、次がローマなのは僕だけなんじゃないかな?」
青葉「それはX大佐しかいないでしょうねえ……」
86 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:18:46.24 ID:5Y/XF1Bxo
* 墓場島 南西に新築された屋敷 *
* 屋敷の中央の大広間 *
島風「うわ、ひっろーい! ここで交渉が始まるんですね!」
提督「まだテーブルや椅子が入ってねえけどな。海軍が友好を示すために寄贈するとか言ってて、あとでここに運んでもらう予定だ」
電「派手な飾りもないのに、立派なお部屋なのです。ここにお客さんをお招きするのですね」
提督「まあ、招くっつうか堰き止めるっつうか……」
吹雪「堰き止めるって、水門みたいな言い方しますね!?」
提督「実際そうなんだよなあ。この島自体が俺たちの家みたいなもんで、この屋敷がいわば客間だ。長崎の出島みたいなもんだ」
提督「この島に住むのは、穏やかに過ごすことに賛成してくれた連中だ。面倒ごとからは遠ざけたい」
電「メディウムのみなさんもここにいるということは、このお屋敷で戦うことも想定しているってことですか?」
エミル「ぼくはどっちでもいいけどね。ここから奥に入ってきたら、誰だろうととっちめるだけだし!」
オリヴィア「ああ、そうだね。身の程を弁えない、生意気な奴はアタイがのしてやるよ!」
カトリーナ「あたしだって! アニキの敵は、全部ぶっとばしてやるぜ!!」
電「……いささか、血の気が多すぎる気がするのです」
クリスティーナ「そうね。罠なんだから、息を潜めることも大事よ? 血気ばかりが逸るのはどうかしら」
吹雪「そこはそういう意味じゃないと思うんだけど……」
87 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:19:31.12 ID:5Y/XF1Bxo
提督「まあ、必ずしも善人だけがここに来ると決まったわけじゃねえからな。残念ながら」
提督「そもそも、メディウムが手を出さない条件は、この島の鎮守府に所属したことのある艦娘を連れていることだ」
エミル「最上とかが連れてきた人間は殺しちゃダメだってことだよね!」
電「加減……は、難しいんでしたね」
カトリーナ「電が殺しちゃ駄目だって言うんなら、ちょっとくらいは考えて戦ってもいいけど、あたしの武器で加減ってのはなあ」
電「確かに、難しそうなのです」
提督「それに、下手に加減すると、勝てると勘違いして向かってくる馬鹿もいるからな」
提督「どうしても、ってんなら、先に電がその相手に会って、信じられるかどうか判断するしかねえんじゃねえか?」
電「かもしれませんね……」
オリヴィア「アタイらの経験上、人間はズルいだからねえ。お人好しの電を騙すかもしれないよ?」
カトリーナ「そんな不届きな奴だったら、なおのこと、あたしが世界の果てまでぶっ飛ばしてやるぜ!!」
提督「なんだ、やけに気合入ってんな」
カトリーナ「あたし、電にはいろいろ世話になってるからさ。その、飯の作り方を教えてもらったりもしてるし……」
電「カトリーナさんのハンマーを勝手に持ち出したこともありましたので、電のできる範囲でやってるだけなのです」
88 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:20:18.72 ID:5Y/XF1Bxo
提督「ふーん……お前たち、そこまで仲良くしてたのか。ちょっと意外だな」
オリヴィア「カトリーナはこれでも素直だからねぇ。みんなは単純だなんて言うけど、そこがいいところだとアタイは思うよ?」
カトリーナ「な、なんだよいきなり……照れるじゃねえか」セキメン
オリヴィア「アタイはあんたのことを認めてんだよ。純粋なパワーでアタイに太刀打ちできるメディウムは少ないからねえ」
提督「なるほどなあ……パワー自慢のメディウムって確かに少ねえって、誰かも言ってたな?」
島風「スピードなら負けない!!」
クリスティーナ「高さなら負けないわ!!」
エミル「うぐぐ……ち、ちくしょー! ぼくだって、ぼくだってえええ!!」
提督「張り合うな、って言いたいところだが……まあ、得意分野のひとつやふたつは開拓してもいいかもしれねえな」
エミル「ほんと!? じゃあ、ぼくは何が得意だといいかな!?」
提督「そこは俺に訊くなよ、自分の好みから好きに選べ。こういうのは誰かから押し付けてもらうもんでもねえだろ」
エミル「好み? 好みかあ……うーん」
89 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:21:16.74 ID:5Y/XF1Bxo
島風「ねえねえ提督? 思ったんですけど、この部屋の柱、走り回るのになんだか邪魔じゃないですか?」
提督「いや走るなよ……まあ、確かに部屋の見通しは良くねえな?」
カトリーナ「ああ、その柱なら、あたしがハンマーでぶっ倒して下敷きにできるように立ててもらってるんだよ」
島風「はい?」
電「ぶっ倒すんですか?」
吹雪「この柱を?」
提督「そう来るか……」アタマオサエ
カトリーナ「なんなら壁でも天井でもぶっ倒すなりぶち落とすなりして下敷きにしてやっていいんだぜ!」
電「というか、倒したら建物が崩れたりしないのですか?」タラリ
クリスティーナ「柱を抜いただけで天井が落ちてくるほど、やわな造りにはしてないって聞いてるけど」
オリヴィア「それに天井を落としたいなら、フォールニードルのナンシーがいるじゃないか」
カトリーナ「あ、それはそうだな!」
提督「屋敷をぶっ壊す気かよ。元に戻すのが大変すぎるだろうが」
90 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:22:17.10 ID:5Y/XF1Bxo
カトリーナ「そうは言うけど、あたしたちが柱をぶっ倒さなきゃならない時点で、敵さんだってなりふり構ってらんねえだろ?」
カトリーナ「抵抗するときでも逃げるときでも、この屋敷を壊さないように、なんて考えたりしないんじゃねえかなあ」
カトリーナ「窓どころか、壁をぶち破ってでも出て行こうとするかもしれねえぜ?」
提督「それもそうか。命の危険を感じてるときに、余所の屋敷の心配する奴はいねえな」
吹雪「……あの、司令官? ちょっと思い出したんですけど」
提督「ん?」
吹雪「メディウムが一番最初に鎮守府を乗っ取ったときのこと、覚えてますか? 私たちはロビーでメディウムの皆さんと戦ったんですけど」
吹雪「その時、アローシューターみたいな矢や、ファイアーボールとかローリングボムみたいな炎や爆発物が飛び交ってたんです」
吹雪「でも、戦い終わってロビーに戻ってみると、例えば矢が刺さった痕跡とか、燃えたり爆発してできた焼け跡とかがなかったんですよ」
提督「……そういやそうだったか?」
クリスティーナ「それは私たちメディウムがつけた傷だからでしょうね」
クリスティーナ「私たちは気付かれずに人間たちを殺さなきゃいけないから、現場に痕跡が残らないようにしてるの」
提督「それも魔力でか?」
クリスティーナ「そういうことになるわね」
91 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:23:01.11 ID:5Y/XF1Bxo
提督「随分都合がいい能力だな」
クリスティーナ「当然じゃない。私たちの都合のいいように力を使っているんだもの」
クリスティーナ「私のライジングフロアを発動させるたびに、床に穴をあけてたらきりがないわ」
提督「ああ……それもそうか」
クリスティーナ「さすがに、ライジングフロアで飛ばした人間が壊した天井とかは、復元できないけどね」
オリヴィア「まあ、柱に関しては別にアタイたちだけじゃなく、人間にとっても都合が良かったりするんじゃないかい?」
オリヴィア「逃げ回るときに柱がこのあれば、弾除けくらいにはなるだろうしさ」
提督「深海棲艦だって馬鹿力が多いぞ。ハンマーで倒れちまうような柱が役に立つのか?」
カトリーナ「そうならないように、人間は深海棲艦のご機嫌を取らなきゃいけないんじゃないのか?」
エミル「え? そうなの? ぼく、てっきり、ここで暴れた奴らは、人間でも深海棲艦でも全員やっつけるんだって思ってたけど」
吹雪「ちょっ!? だ、駄目だってば!」
オリヴィア「いや、意外とアリだねえ。話し合う場だって言ってんのに、従わないんじゃあ示しがつかないね。違うかい、アミーゴ?」
提督「確かに、暴れて建物壊されるよりは、そのほうがいいかもしれねえな。そうなったら一番手は、この中からだとエミルか?」
エミル「えっ!? ぼくなの!?」
92 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:23:46.42 ID:5Y/XF1Bxo
提督「暴れようとした相手に、警告として軽く一発どつく分には、エミルのトイハンマーか、ジュリアのハリセンが適任じゃねえか?」
提督「複数人の動きを封じるって点ではクエイクボムがいいだろうな」
エミル「やったあ! ぼくが一番乗りなんだ!!」
クリスティーナ「私のほうが適任だと思うけど……」
提督「罠としての発動の速さならな。お前の攻撃を避けられる奴はそうそういねえだろう」
提督「けど、ここでお前のライジングフロアで吹き飛ばしたら、そいつは天井に激突するだろ? 脅しの初手にしては重すぎる」
提督「それにライジングフロアは意外と範囲が広い。一人だけ暴れた時は、ピンポイントにそいつだけ叩きたいとなると、難しいだろ?」
クリスティーナ「……そういうことなら、仕方ないわね」
提督「歯向かうのが一人だけならエミルかシャルロッテ、団体様ならジュリアかオリヴィア、ってとこだろうな」
吹雪「司令官、だんだんと罠の扱いに慣れてきてますね……」
提督「うーん、なんでだろうな? なんとなく、直感でこの罠はこう使う、ってのがわかるんだよな……」
エミル「魔神様なんだから当然じゃないの?」
オリヴィア「そうだよ、アミーゴはアタイたちのことを知ってなきゃおかしいんだ」
カトリーナ「アニキがいるから、ここの艦娘たちと仲良くなれてんだぜ?」
93 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:24:31.66 ID:5Y/XF1Bxo
クリスティーナ「もう少し自信を持って、私たちを率いてもらわないと困るわね」
提督「……ま、善処するよ」
電「どう見ても面倒臭がってるのです」
提督「ぶっちゃけ、メディウムが活躍するような事態にはなって欲しくねえってのはあるがな」
クリスティーナ「……まあ、平穏を望むのなら、そうあって欲しくもあるわね」
扉<ギィッ
青葉「おお、こちらが会議室ですか! なかなか広いですね、このお部屋は!」
金剛「Hmm... 椅子とテーブルがまだだとは言え、Simpleでいいと思いマス」
提督「よう、お前たちが見てきた客間はどうだった?」
金剛「ン−、客室としては本当に最低限、と言う感じデスネー。あまり居心地が良くても問題でショウけど」
提督「準備するだけの控室だからな。全身映せるでかい鏡と化粧台、水回りを置いただけでも、この島の施設としては上等なもんだ」
提督「間違っても人間どもを寝泊まりさせるような設備は置きたくねえし、そもそも居座って欲しくねえ」
青葉「そこは大丈夫ではないでしょうか? 今もお近づきになりたくない人がいるくらいには、忌避されている島ですから」
提督「だといいけどなあ」
94 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:25:16.47 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「もっとも、このお屋敷をわざわざ鎮守府から一番遠いところに置いたあたりからも……」
青葉「人と関わりたくないからじゃないかと、感じられるところはありましたけどね」
金剛「ところで、このお部屋にメディウムの皆さんがいるということは……」
オリヴィア「アタイたちも部屋の間取りの下見だよ」
オリヴィア「いくら連中のために用意したとはいえ、暴れるようならアタイたちにお呼びがかかるわけだからね」
提督「とはいえ、暴れるのが人間とは限らねえ。この島は、人間と深海棲艦の交渉の場として使われる」
提督「人間を騙し討ちしようとする深海棲艦が来るケースも想定しとかなきゃいけねえんだ。むしろそっちの方が可能性は高い」
金剛「!」
吹雪「そ、そっか……最近、深海棲艦と仲良くしてたから、気が緩んでました」
提督「その時はメディウムだけじゃなく、艦娘の力も借りねえと駄目だ。特に避難誘導とかは艦娘にしか任せられないからな」
金剛「Yes ! そういうことなら、私たちに任せるネー!」
提督「頼むぜ。マジで頼りにしてんだからな……」フゥ…
クリスティーナ「? そういう割にはテンションが低いというか、落ち込んでるように見えるわね?」
電「あ、それは、単に司令官さんが面倒臭がってるだけだと思うのです」
クリスティーナ「」
95 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:26:01.09 ID:5Y/XF1Bxo
青葉「各国の代表を受け入れるとなれば、その受け入れ準備とか会場設営とか警備の手配とか、やることは山ほどありますからねえ」
エミル「人間たちの意味でおもてなしが必要なのかあ……それは嫌だね?」
提督「んっとに、マジでやってらんねえ……面倒臭えし、結局お前たちに苦労かけてるし」ガックリ
金剛「Hey, テートク? 私たちがテートクと島のために働くことは当然のことデス。お手伝いするからしっかりするデース」
吹雪「そうですよ、私たちに任せてください!」
提督「んあー、悪いな……」
*
青葉「ところで司令官? 来月、政府との交渉を決めたそうですが、こちらのお屋敷でやるんですか?」
提督「いや、まだこっちは使わねえよ。そもそも海軍が調度品持ってくるのが来月だし、準備してたら多分間に合わねえ」
提督「つうか、その話は俺たちと政府の対話だからな。こっちの屋敷を使うまでもねえ」
提督「あいつらが船を出して、そこの一室を会場にしたいって言ってきてるから、今回はそれに乗っかるつもりでいる」
青葉「なるほど……そこへ司令官が直参すると」
提督「俺が行くかどうかはまだ決めてねえな」
青葉「そうなんですか?」
提督「今回は向こうの要求を聞くだけだ。何が望みか、何がしたいのかを一通り聞いて、突っぱねるものと受け入れるものを明確にしたい」
提督「だから、あっちの話を聞くのと、必要な資料をまとめてこっちに送る準備をしとけとだけ言っておいた」
提督「それから、あいつらが真面目に俺たちと話そうとしてるかも確かめたいから、その場には深海棲艦にも同行してもらおうと思ってる」
青葉「となると、出向くのは泊地棲姫さんですかねえ……?」
提督「さすがに姫級じゃあいつらもビビるだろ。ル級あたりがいいんじゃねえかな? 良いと言ってもらえたら、だけどな」
提督「できるだけ話のわかる奴がいいな。誰にしようかねえ……」ウーン
96 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/09(土) 23:27:43.59 ID:5Y/XF1Bxo
と言うわけで今回はここまで。
>71
無人島ですので、使える物は使わないと、ですね。
これから起こる交渉のシーンや、曽大佐艦隊とのやりとりは
ある程度できているので、このあとのシーンが書き切れれば
それなりのスピードで投下できるかもです。
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2023/09/10(日) 11:21:47.43 ID:oe6HCyRL0
乙です
9児にして盗聴とはなかなか…
98 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2023/09/18(月) 20:35:33.91 ID:ZMlzCDNW0
うーんこれはなかなか、、、
99 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/09/19(火) 14:08:18.78 ID:9EFzw5F50
あかん9日経ってから気づいたけどsage忘れてた
100 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:54:50.55 ID:n94mTdCVo
今回登場のメディウムはこちら。名前だけ出てくる子もいます。
・リンダ・ローリングボム:ボーリング選手のような風貌のメディウム。ボール状の爆弾が床を転がり、触れた人間を爆風で吹き飛ばす罠。
何故か関西弁でボケ倒す、おしゃべり大好きねえちゃん。人を笑わせたいのか気を引きたいのか……というより、そういう性分なのかも。
・ニーナ・ペンデュラム:胸当てとドレスを身に纏ったメディウム。巨大なペンデュラム(振り子)の刃が往復して人間を切り刻む罠。
花のお世話が趣味のお淑やかな女性。魔神を守る騎士を名乗るだけあって真面目で誠実。細身の体に似合わず巨大な鎖鎌を振り回す。
・ブリジット・ガトリングアロー:陸軍系の軍人っぽいメディウム。ガトリングガンから矢を連射して、人間を蜂の巣にする罠。
規律正しい軍人と思いきや、実は趣味のコスプレ姿。実戦経験に乏しいので、その場の勢いやテンションの高さで誤魔化している。
・タチアナ・トリックホール:キャリアウーマン風のメディウム。深い落とし穴が突如現れ、足元がお留守な人間を嵌めてしまう罠。
スーツ姿に眼鏡をかけた、お仕事大好きな真面目さん。書類仕事はお手の物、魔神のためにメディウム運用の効率化まで考えるほど。
・ノイルース・ファイアーボール:エルフのような長い耳を持つ魔導士のような姿のメディウム。火の玉が飛んできて、人間を燃やす罠。
杖を携え炎を操る、長身のエルフの女性。四姉妹の長姉らしく、物腰柔らかく落ち着いた雰囲気を持つが、炎の話になると饒舌になる。
・キャロライン・ニードルフロア:金髪碧眼で着物姿、海外留学生風なメディウム。とげ付きの床がせり上がり、人間を串刺しにする罠。
魔神をダーリンと呼び慕う、天真爛漫でアメリカナイズな女の子。生け花を嗜むが正座は苦手で、しょっちゅう足を痺れさせている。
・ケイティー・チャペル:花嫁衣裳のメディウム。教会の鐘が落ちてきて人間を閉じ込める罠。外から衝撃を与えると鐘の音で追撃できる。
少々とは言えないほど独占欲が強すぎる女性。自分以外に魔神に近づく者をすべて排除し、鐘の中で二人きりになろうと企んでいる。
それでは続きです。
101 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:55:34.97 ID:n94mTdCVo
* 鎮守府内 執務室 *
提督「それで推薦されてきたのが、時雨を見つけてくれたお前か。さっきまでも島の哨戒任務してくれてたんだってな」
ヲ級「……」コク
由良「ずっと哨戒任務を引き受けてくれてるし、この海域に迷い込んだ深海棲艦も保護してくれてるそうです」
提督「そんなことまでしてたのか? お前、すげえな」
ヲ級「……ソウカ? 誰カガ、ヤラナケレバナラナイコトダ。駆逐艦タチニモ手伝ッテモラッテイル」
提督「なんにせよ協力してくれてるのはありがたいぜ。そこに余計な仕事まで押し付けるようで悪いな」
提督「どんな話かは泊地棲姫から聞いたか? いきなり人間たちと話し合えって言われて、戸惑ってないかと思ってたんだが」
ヲ級「イヤ、ソレ程デモナイ。オ前ト話スヨウナモノダト、認識シテイル」
提督「……俺と、ねえ」
ヲ級「ナンダ? ソノ表情ハ」
提督「いや……海軍の人間も言ってたんだが、普通の人間にとって深海棲艦は脅威なんだ」
提督「実際に、お前の持ってる艦載機を使えば人間は殺すのは簡単だろ? お前以外の深海棲艦も砲撃なりなんなりの攻撃手段がある」
提督「何より、お前たち深海棲艦が、敵意を持って人間に触れると、その体が壊死するっつうか、朽ちていくとか言う話もあるし……」
102 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:56:18.93 ID:n94mTdCVo
提督「それがどういう理屈なのかはうまく説明できないが、それが事実なもんで、人間たちは深海棲艦をひどく恐れている」
ヲ級「触レルト……? 提督ハ、ナントモナイノカ?」
提督「魂が半分深海棲艦なせいか、俺の身には特に何も起きてねえな。というか、すでに人間じゃないからかもしれないが」
提督「ただまあ、そういう理由があるんで、お前と話す人間たちからそれなりに怯えられたり、嫌がられたりすると思うんだ」
提督「特に、来月乗り込むであろう船には、いろんな奴が乗船してると思う。深海棲艦が嫌いで、あからさまな態度の奴もいるはずだ」
提督「最悪、乗船した艦娘に威嚇されたり攻撃されるかもしれねえ。そういう状況下で落ち着いていられるか、その辺を確認したいんだ」
ヲ級「……イマノ時点デハ、ドウナルカハ想像デキナイ」
提督「うーん、まあ、それもそうだよな……」
由良「ねえ提督さん? その交渉に一緒に行く艦娘は誰にするか、決めてるんですか?」
提督「いや、そっちも決めてねえんだ。朧を候補にと考えてたんだが、露骨に嫌な顔されて断られた」
由良「そうなんですか? それじゃ、扶桑さんや陸奥さんは? 落ち着いてるし、話を聞くのは上手そうですけど」
提督「その二人だと、どっちも頷くと思えねえなあ。あれで扶桑は山城たちから離れたがらねえし」
提督「陸奥もちょっと人間嫌いなところがあってな。大勢の人間の前に立ちたいとは思ってねえんじゃねえかな」
提督「肝が据わってるって点では比叡なんだが、ちょっと素直過ぎて丸め込まれねえか不安だし、何よりまだこっちに戻ってきてねえ」
103 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:57:05.37 ID:n94mTdCVo
提督「ほかに適任そうなのは長門や霧島だが、余所の鎮守府に馴染み始めてるし、ここであの二人を頼っても後々うちのためにはならねえ」
由良「いま、この島にいる艦娘の中から選ぶのが賢明、ってことですね」
提督「そういうことだ」
ヲ級「……人間ハ、私タチト、話ガシタイノカ?」
提督「ん? 一応、そうだって言ってきているが」
ヲ級「仮ニ、私ト、艦娘ノ誰カト、提督ガ向カッタトシテ、私ニ声ヲカケテクルダロウカ?」
由良「!」
ヲ級「私ガ……深海棲艦ガ、人間ニ怖ガラレテイルト言ウノナラ、私ガ行ッテモ、提督ヤ艦娘トシカ話サナイコトニナルト思ウガ」
提督「……そうだな。いくらか慣れてる海軍の人間でも、深海棲艦との対話となると、多少なりともビビったりするはずだ」
提督「お前の言う、深海棲艦と艦娘と俺の面子だと、おそらく俺にしか話しかけてこないだろうな」
由良「艦娘にも話しかけてこない、ですか?」
提督「だと思うぜ。俺が島のことを仕切ってるわけだし、だとすれば、連中も俺以外と話をしようなんて思わないだろ」
提督「最悪その場で言質を取ろうと画策してくるかもしれねえ……となると、俺は出ないほうがいいんじゃないか、とも思えるな」
由良「……うーん」
104 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:57:49.39 ID:n94mTdCVo
提督「まあ、どっちみち、初回はあくまで顔合わせで済ませたいんだ」
提督「話を聞いて資料をもらって、あとはこっちで持ち帰ってから回答する、で終わらせたい」
提督「ただ、今回が単なる顔合わせだとしても、必ず深海棲艦が関わってくるぞ、って印象付けておきたいとは思ってる」
提督「俺たち全体があいつらに避けられること自体は構わねえが、深海棲艦だけが除外されて扱われるようなことは避けたい」
由良「そうですね。国交の話になると、資料とか山ほどあるでしょうし、その中でおかしな文言が入ってないか確認が必要ですよね……」
ヲ級「……」
提督「そういうわけなんで、まずはあいつらの社交辞令を適当に受け流してもらいながら、睨みを利かせてほしい、っていう難しいお願いだ」
提督「あいつらの無礼もある程度我慢してもらわねえといけなくなるはずだ。嫌な役割だが、頼めないか?」
ヲ級「……構ワナイ。引キ受ケル」
提督「本当に助かる。悪いな」ニコ
由良「……提督さん? 艦娘の出席者も決めないといけないですよね? ねっ?」
提督「そうだな」
由良「でしたら、ゆ」
ヲ級「私カラ、希望シテモイイカ?」
提督「ああ、もちろんだ。誰か一緒に行きたい艦娘がいるのか?」
105 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:58:34.62 ID:n94mTdCVo
ヲ級「誰、トイウノハ、ナイガ……艦娘ハ、駆逐艦ヲ連レテイキタイ」
由良「ええっ!?」
提督「……その理由は?」
ヲ級「駆逐艦ハ、人間ノ幼体ニ似テイルノダロウ? 成体ガ私ダケナラ、私ニ話シカケザルヲ得ナイ状況ニナルト思ウガ?」
提督「なるほど。確かに、駆逐艦娘は子供扱いされそうだな」
ヲ級「ソレカラ、イマノ話ニ少シ興味ガ湧イタ。オ前ノ言ウ、私タチニ怯エテイルノニ、軽視シタ態度ヲトル人間ガイノルカ、見テミタイ」
提督「そっちはあまり感心しない理由だな……」
ヲ級「ソウナノカ?」
提督「面白半分でやると痛い目見そうだからな。やるなとは言わないが、人間が用意した席での交渉ごとだ、油断だけはしないでくれ」
ヲ級「……ワカッタ」コク
由良(由良が行って褒めてもらおうと思ったのに)ションボリ
提督「さて、それはいいとして、朧以外に候補と言うと……朝潮は素直過ぎるし、若葉もいねえし、誰がいいかねえ」ウーン
由良「えっと……如月ちゃんは駄目なんですか?」
提督「人間に、肉体的に嫌な思いさせられてるからな。できればそういうトラウマが少なさそうな艦娘を選びたい」
106 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 10:59:19.23 ID:n94mTdCVo
由良「それなら……」
扉<コンコン
敷波「しれーかーん、入るよー!」ガチャー
初雪「お邪魔します……」
敷波「水路のことで相談が……って、ごめん、取り込み中だった?」
由良「ううん、大丈夫よ。丁度良かった、提督さん、敷波ちゃんはどうですか?」
敷波「へっ?」
* *
敷波「ふーん。いいよ」
提督「マジか。敷波は、こういうのは嫌がるもんだと思ってたんだが」
敷波「うん、好きじゃないけどね。でも、話としては、相手に適当に愛想良くして、書類をもらってくる、ってことでいいんでしょ?」
由良「そ、その通りだけど……」ウーン
敷波「由良さんさー。多分だけど、あたしのこと、可愛げがなくなったとか思ってない?」
由良「……以前はもう少し、言い方が柔らかかったって言うか、そこまでずけずけ言わなかったんじゃなかったかな、って」
107 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:00:06.98 ID:n94mTdCVo
敷波「今更だと思うんだけど」
由良「提督さんのせいですよ?」ジロッ
提督「そんなこと言われてもなあ……」
敷波「もー、由良さんてば、電のこともそうだけど、あたしのこと心配しすぎだって。ヲ級ちゃんもいるんだし、大丈夫だって」
ヲ級「……ヲキューチャン? 私ノコトカ?」クビカシゲ
敷波「あ、なんか違う呼び方のほうがいい?」
ヲ級「……イヤ、オ前タチガ呼ビヤスイナラ、ソレデイイ。私ノ名前ヲ訊カレテモ、思イ出セテイナイカラ」
初雪「名前?」
提督「俺たちは深海棲艦をル級とかヲ級とか呼んでるけど、それは海軍に発見された順につけられた、便宜上の名前だろ?」
提督「もともとはこいつもどこかの国の航空母艦で、その名前が思い出せないまま蘇ったのがこの姿なんじゃないか、って」
ヲ級「ソウイウ話ヲ、提督ト、シテイタ。モトモト私タチハ、人間ニ遭遇スルマデ、名前ナンテ意識シテイナカッタカラ」
敷波「……それじゃあ、そのうち名前を思い出すかもしれない、ってこと?」
提督「そこはわからねえな」
敷波「ふーん。どっちにしても『ヲ級ちゃん』は仮の名前だね」
初雪「メイメイカッコカリ……?」
108 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:01:04.53 ID:n94mTdCVo
ヲ級「タシカ……ソウイウノヲ、愛称ト、呼ブンジャナカッタカ?」
初雪「アイショウカッコカリ……!」
提督「そこにカッコカリはいらねえだろ」ツッコミ
リンダ「ええ感じのツッコミが聞こえたでぇ!」ガチャバーン!
提督「……」ムゴンデアタマツカミ
リンダ「へっ!? ちょ、にいさんちょっとタンマ! タンマや!!」アタマツカマレ
提督「ああ、ちなみにだが、お前たちが政府の連中と会うときには、一応だがメディウムも乗せてってもらうからな?」
敷波「はーい」
リンダ「はっ!? も、もしかしてにいさん、うちにそういうお役目を……」
提督「お前は駄目だ。半ば潜入任務みたいなもんだってのに、お前は1分と黙ってられねえだろ」メキッ
リンダ「ひ、ひいい!? そ、そないなことあらしまへんよ!? ううううち、こう見えてヤマトナデシコでございますやし!?」オタオタワタワタ
提督「滅茶苦茶怪しくなってんじゃねえか。そんなんで任せられるか、っての」パッ
リンダ「!」
提督「あまり話を脱線させるなよ。お前はボケられればそれでいいのかもしれねえが、話の邪魔はすんじゃねえ」
リンダ「えへへぇ……その、堪忍な?」
109 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:01:49.96 ID:n94mTdCVo
提督「とりあえずだ。敷波とヲ級に行ってもらうことにして、もう一人くらいついて行ってもらえると助かるな」
敷波「ふーん……初雪、一緒に行かない?」
初雪「え。いや……いいけど」
リンダ「いいんかーい!」ツッコミ
提督「初雪がやる気になるなんて珍しいな。大丈夫か?」
初雪「うん、まあ。面倒そうなことは、答えなくていい、なら」
提督「あー……そういう意味では適任か。確かに、ぱっと行って、ぱっと帰ってくるだけの話だしな」
由良「とにかく、会見の実績だけ作っておく、ということですね」
リンダ「なんや、せっかく行くのに挨拶だけで帰るん?」
提督「深海棲艦が政府の船に乗り込んで、書状を受け取って帰るってだけでも、向こうにしてみりゃ大前進だろ」
リンダ「いやいやー、どうせなら派手に一発……」
提督「そういう面倒臭え真似はよせっつってんだろ」テノヒラワキワキ
リンダ「ひっ! いや、いややなあ、ほんの冗談やぁて、冗談? な?」
110 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:02:33.98 ID:n94mTdCVo
提督「ま、向こうに落ち度があるんだったら、ぶちかましてもいいけど……かますにしても、ある程度落ち着いてるメディウムがいいな」
リンダ「はいはーい! うち! うちが」
提督「お前は駄目だっつったろ」
リンダ「ぎゃふーん!!」ズコー!
由良「普通、そうなるわよね、ね」
初雪「……司令官のリアクションが分かっててボケてる気がする」
敷波「ていうかさ、連れてったら、絶対うるさくて気が散るよね」
ヲ級「私モソウ思ウ」ウナヅキ
リンダ「なんでや! リンダちゃん泣いてまうで!?」ウルウルッ!
提督「ところで水路の件って何のことだ?」
リンダ「無視かーい!?」
敷波「あー、それさ、周りの建物のせいだと思うんだけど、一部の水路が直角に曲がってるんだよね」
敷波「そのせいで、曲がり切れずに怪我する深海棲艦がいてさ?」
ヲ級「……ソウイエバ、イ級タチガ、カラダヲブツケテタ」
初雪「海水が飛び散って、ビニールハウスの近くや花壇とかに入っちゃうから、見直してほしい……」
111 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:03:19.23 ID:n94mTdCVo
提督「あの水路、かなり頑丈に作ってたはずだな……作り直しができるか、タチアナや泊地棲姫に相談してみるか。最悪封鎖だな」
提督「ちょっと行ってみるか。リンダ、悪いが留守番頼む」
リンダ「へっ? にいさん……遂にうちを頼ってくれるん? しょうがないなあ、うちにまかしときや!」
リンダ「こう見えて待つのは得意なんやで? こう、ローリングボムを当てる! っちゅう、集中力ってえの?」
リンダ「百発百中のうちの腕前は、こう、待つことから始まるよってな? 隙を見つけたらこう、ズバーッと!」
リンダ「ズバーッと、て、うちの武器は刃物やないけど、鋭く投げる! こう! こうやで! な?」フリムキ
シーン
リンダ「って、誰もおらんのんかーい!!」
リンダ「うう、寂しいなあ、あんまりやで、この仕打ち。なんでうちひとりで喋り続けてなきゃあかんねん……あ」
リンダ「ちょっと。そこの画面の前のきみ! そう、きみや! ちょーっと、うちとおしゃべりせぇへん?」
リンダ「あっ、ちょっと、スクロールするのやめてもろて! うちが消える! 消えるて!」
リンダ「ちょ、待ってえなーーー!」
* 鎮守府 埠頭 *
那珂「メタネタは、使用上の注意をよく読み、用法、用量を守って正しくお使いくださいっ!」ビシッ!
山城「那珂ちゃん? 突然何を言ってるの……!?」
112 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:04:04.20 ID:n94mTdCVo
* 工廠 *
明石「あ、提督! こちらにいらっしゃるなんて珍しいですね?」
提督「よう。忙しそうだな」
明石「いえいえ、いまはそうでもありませんよ? 怪我と言っても、みんな戦闘以外でできた大したことない怪我ばかりですから」
提督「今のところは一応、平和なわけか」
明石「そうですねえ。まさかル級さん以外の深海棲艦も診てほしいとか言われるなんて、思いもしませんでしたけど」
プール内のイ級「」チャプチャプ
プール内のロ級「」チャプチャフ
ヲ級「駆逐艦ノ傷ハ、スグ、治リソウカ……?」
明石「はい、大丈夫ですよ! もうすぐ修理完了です!」
提督「つうか、深海棲艦も診られるようになったこと自体もすげえな」
明石「ええ、もっと褒めてください!」ドヤッ!
提督「お前なあ……まあ、いいか。調子に乗ってもいいくらいの仕事をしてるしな。なんか入用なもんがあるなら、遠慮なく言えよ?」
明石「あれ、いいんですか? それじゃあ……」テマネキ
提督「ん?」
113 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:04:48.95 ID:n94mTdCVo
明石「マッサージ用のお部屋をひとつ作ってください。遮音性が効いてるお部屋で……!」ヒソヒソ
提督「……それ、今更じゃねえか?」
明石「今更でもいいんですぅー! 提督、お願いしますよ!?」
提督「お前の場合、自分で作れそうだけどな……まあいいや、あったほうがいいことは確かだし、予定には入れとくか」
ニーナ「遮音性と仰るのでしたら、神殿の中で行ってもよろしいかと思いますが」
提督「うお!?」ビクッ
明石「ひえっ!?」ビクッ
ニーナ「あ、申し訳ありません、驚かせてしまいましたか」
提督「くそ、お前ら気配の消し方うますぎんだよ……」
ヲ級「隠レテタノカ」
ニーナ「はい。時々練習しませんと、いざと言うときに力を出せませんので」ニコ
敷波「遮音性って何の話?」
明石「あ、いえいえ、なんでも……」
提督「内密な話をするときに聞き耳立てられないようにしたいんだよ。そういう場所が欲しいってだけだ」
由良「そうなんですか?」
114 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:05:49.06 ID:n94mTdCVo
敷波「ふーん?」
初雪「怪しい……」
ヲ級「……?」クビカシゲ
提督「揃いも揃って疑いの目を向けるなよ。別にいいけどよ」
明石「いいんですか」タラリ
提督「とりあえず、ニーナの申し出は悪くねえが、その前に艦娘を神殿に招き入れること自体は問題ないのか?」
ニーナ「はい、問題ないと思います。以前、魔神様が体を痛めた時に、赤城さんに連れてきていただいていますし」
提督「ああ、俺が魔力槽に入ったときか……」
ニーナ「それから、一番最初に捕縛した如月さんを治療するときにも、入っていただいています」
ニーナ「もちろん、入ってはいけないお部屋も神殿内にはありますが、そうでなければニコさんも何も言わないでしょう」
敷波「入っちゃいけない部屋?」
提督「いろいろ仕掛けのある危ない部屋があるんじゃなかったか。確か、あっちの世界じゃ人間に攻め込まれてたんだろ?」
敷波「危ないものが置いてあるお部屋じゃなければ、入ってもいいってこと?」
ニーナ「はい、そうですね。ただ……」
敷波「ただ?」
ニーナ「よく考えたら、危ないものが置いていないお部屋のほうが少ないですね?」
明石「それじゃ駄目じゃないですか」ガクッ
115 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:06:34.29 ID:n94mTdCVo
ニーナ「私が一緒なら、危険な場所は回避できますよ」
提督「そうかもしれねえけど、それじゃ神殿内に一人で入るな、と言ってるようにしか聞こえねえぞ」
初雪「うん……危ないなら入りたくない」
奥の扉<ガチャッ
ブリジット「自分も入る機会はない方が良いと思うであります!」ビシッ!
ニーナ「あらっ、ブリジット? ここにいたの?」
明石「結構な頻度で来てますよ? ここにある使ってない装備を見せてほしいとお願いされてまして」
ブリジット「様々な装備品がありますので、今後の参考にさせていただいているであります!」
ニーナ「そういえば、隼鷹さんたちがいた時も、飛行機を嬉しそうに眺めてたわね……」
敷波「へー、なんか参考にできるもの、あったの?」
ブリジット「残念ながら、自分の武器は簡単に刷新できるわけではありませんので、眺めて想像するだけであります……」ショボン
明石「そういえば、メディウムの皆さんの武器の強化って、どうするんです?」
ニーナ「私たちの武器で強化できるのは、純粋な威力だとか発動回数、再発動までの時間短縮などです」
ニーナ「あとは、私たちの武器が通用しない相手がいますので、そういった相手の不意を打つ力であったり……」
ニーナ「連撃や複数回攻撃を当てることで、強制的に相手の装甲を破砕する力を、私たちの武器に付与することは可能です」
ブリジット「自分のガトリングアローには、連撃によるアーマーブレイクの力が備っているであります!」エッヘン!
116 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:07:19.12 ID:n94mTdCVo
ヲ級「……オ前カ」セキメン
ブリジット「はい?」
ヲ級「アノ時、私タチヲ丸裸ニシタノハ、オ前カ……!」ゴゴゴゴ…
ブリジット「ひいっ!? んななな、何事でありま……あ! も、もしや、貴殿はあの時の……!?」
ニーナ「そういえば、ブリジットは隼鷹さんの流星に乗せてもらっていただったわね。その時に敵空母群に大打撃を与えた、って……」
ヲ級「オ前ノセイデ、私タチハ恥ズカシイ目ニ……!」ズイッ
ブリジット「ひええ! ご、ごめんなさいごめんなさいっ!」
提督「落ち着け落ち着け。何があったかは後で聞く、まずは落ち着け」ワリコミ
ヲ級「……!」
提督「ブリジットも心当たりがあるんだな?」
ブリジット「は、はいであります。おそらく、自分はその航空母艦の深海棲艦殿と交戦し、装甲というか、衣装を破砕したのでは、と……」
提督「衣装を破砕?」
ヲ級「……」ナミダメ
提督「……こりゃ、何も聞かないほうが良さそうか?」
明石「かもしれませんねえ……」
117 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:08:04.83 ID:n94mTdCVo
ブリジット「え、ええと、その、その節は、大変申し訳ないことを……」オソルオソル
提督「待て待て。むしろこの場合は俺が謝らなきゃならねえんじゃねえか? 俺が迎撃指示を出したわけだし」
ブリジット「!?」
ニーナ「魔神様!?」
明石「んー、でもまあ、それが一番すっきりしますかね。提督があの戦いの最高責任者であったわけですし」
提督「そういうわけなんで、ブリジットに対しては水に流してくれ。代わりに俺がお前たちの希望を聞くことで勘弁してほしい」
ヲ級「……」ジロリ
ブリジット「ひっ……そのぉ、本当に申し訳ないであります……」
ヲ級「……ワカッタ。責任ハ、オ前ニトッテモラウ」
提督「ああ。あとでもう一度、執務室に来てもらっていいか?」
由良「」ギラギラッ
ブリジット(こっちからも殺気が溢れてるであります!?)ビクッ
明石(うわあ……『責任』の一言で目の色が変わってる)
ニーナ(魔神様は魔神様で平然としすぎです……慣れておいでなのでしょうか)タラリ
118 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:08:51.72 ID:n94mTdCVo
敷波「由良さーん、目つき怖くなってるよー」ヒソッ
由良「えっ!? そ、そう?」
敷波「うん。落ち着いて」
明石(敷波ちゃんが落ち着きすぎてる……)
ニーナ(なんて頼もしい……)
初雪「……とりあえず、水路はどうするの」
提督「おう、すっかり話が脱線してたな。作り直せるようなもんか、見に行かねえと。明石にも話を聞きたいんだが、いいか?」
明石「あ、はい! わかりました!」
提督「ニーナはタチアナを連れてきてくれるか? 水路の設計にはあいつも一枚噛んでんだろ?」
ニーナ「そうですね。呼び出しますので、しばらくお待ちください」
提督「あとは泊地棲姫は……」
明石「最近は食堂にいますよ。最近は自分でコーヒーの焙煎を始めたみたいです」
提督「本格的だな……そのうちコーヒー畑でも作りそうだな」
初雪「そうなったら、紅茶派が黙っていなさそう」
119 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:09:34.37 ID:n94mTdCVo
* その後 *
* 執務室 *
タチアナ「水路の改修工事の件、承りました。あとはこのタチアナにお任せを」ペコリ
提督「ああ、頼むぜ。ところでお前、結構夜遅くまで書類仕事してるんだって? 無理はしなくていいからな?」
タチアナ「ありがとうございます。私は大丈夫ですので」
提督「大丈夫だからって言って無理する奴、数人、心当たりがあるんだよなぁ」ジトッ
タチアナ「そう仰る猊下こそご無理なさらぬよう、面倒ごとがありましたら、私どもにご下知いただければと」
提督「俺は最初から無理はしてねえよ。面倒なことも嫌いだからな。お願いしたいことがありゃあ、誰に対してもそれなりに頼ってるさ」
敷波「……今はね」ジトッ
提督「今は今でいいだろ。昔に戻ったほうがいいのか?」
敷波「それはよくないね。っていうか、いつ戻っちゃうか心配なんだけど」
提督「……」
タチアナ「あの……あまり猊下をからかうべきではないかと」
敷波「からかうつもりはないよ。自分で全部やろうとしたりしてほしくないだけ」
初雪「……それはそう」ウナヅキ
120 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:10:19.69 ID:n94mTdCVo
提督「まあ、そういうのをやめろと言われたからな。できる限り分配するっつうか……」
提督「今はさすがに忙しすぎて、協力してもらわねえと俺も休めたもんじゃねえ。勝手を知ってる艦娘が減って、新しい深海棲艦が増えて」
提督「顔覚えるのもそうだし、各々が衝突しないためのルールも決めていかなきゃならねえからな」
敷波「今後あたしたちが生活する場所だし、無関係じゃないんだからさ。あたしたちも司令官に倣ってるだけだよ?」
タチアナ「……異種族との共同作業と言うのは、往々にして衝突が発生します。それを克服しようとする猊下と、その艦娘……」
タチアナ「なんとも、その姿勢に感服いたします」
提督「そんなに堅苦しくなくていいぞ? 楽にしろ、楽に」
タチアナ「いえ、私はこれが普通ですので」
初雪「……朝潮と同じタイプっぽい」
提督「だな」
タチアナ「ところで、先ほどから不機嫌そうにしておいでのそちらのお二人はどうなさったのですか?」
由良「……」
ヲ級「……」
提督「ヲ級にはちょっとした補償をしてやらねえといけねえんだ」
タチアナ「補償……ですか?」
121 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:11:04.03 ID:n94mTdCVo
提督「ああ。さてと、待たせたな。ヲ級、とりあえずお前の希望を聞きたいんだが」
ヲ級「ナンデモ、イインダナ?」
提督「俺が出来る範囲でな」
ヲ級「……デハ」コホン
ヲ級「『御褒美』ヲ、ヨコセ」
敷波「……」
初雪「……」
由良「……」
タチアナ「……」
提督「……は?」
ヲ級「聞コエナカッタノカ。『ゴホウビ』ヲヨコセ、ト言ッタンダ」
提督「ごほうび?」
ヲ級「トボケルナ。オ前ハ、任務ヲ終エタ艦娘ニ、御褒美ヲアゲテイルト聞イタゾ」
提督「……どういうこった?」
122 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:11:49.19 ID:n94mTdCVo
初雪「あー……もしかして」
タチアナ「何か心当たりがおありで?」
初雪「頭撫でてあげたりする、あれのこと?」
タチアナ「……それが、御褒美ですか」
提督「それでいいのかよ」
ヲ級「ソレハ、ドンナモノダ?」クビカシゲ
提督「どんなものって……」
初雪「……私にやってみたらいいと思う」
敷波「あ、ずるい! あたしも!」
提督「……いいのか?」
敷波「いいんじゃない?」ニコニコ
提督「……」
ナデナデ…
敷波「ふふーん……♪」
初雪「んふぅ……♪」
タチアナ「……」
由良「……」
123 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:12:34.15 ID:n94mTdCVo
ヲ級「……コレガ、御褒美、カ?」
敷波「そうだよー」ニヒヒッ
ヲ級「私ニモ、ヤレ」
提督「いいのかよ……」
初雪「その、あたまの帽子? それって取れないの?」
ヲ級「外サナイト、ダメナノカ?」
初雪「外さなないと、効果は半減する」
ヲ級「……一応、外セル」カポッ
敷波「外せたんだ……!」
ヲ級「コレデイインダナ。サア、来イ、提督……!」キッ!
提督「いや、そんなに力まなくていいぞ? 肩の力を抜け」
ナデナデ…
ヲ級「……」
提督「……」
124 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:13:19.07 ID:n94mTdCVo
タチアナ「なんなんでしょう、この頭を撫でてるだけだというのに、微妙に張り詰めた空気感は」
初雪「由良さんのせいだと思う……」
由良「……」ヌゴゴゴゴ…
敷波「由良さんも司令官へのお願いがいろいろ遠回しすぎて、多分司令官には全然伝わってないんだよねー」
初雪「というか、如月や大和さん、金剛さんと比べて、アピールが弱すぎるんだと思う」
タチアナ「よく見てらっしゃいますね……」
敷波「まあ、いろいろとね?」
提督「これでいいのか……?」
ヲ級「……」ナデナデ…
ヲ級「ナルホド。悪クナイ」スッ
提督「!」
ヲ級「今日ハ、コノクライニシヨウ。マタ、貰イニ来ル」クルリ
スタスタ…
初雪「行っちゃった……」
敷波「満足したのかな」
125 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:14:04.67 ID:n94mTdCVo
タチアナ「げ、猊下、大丈夫なのですか?」
提督「俺は大丈夫だが……あいつの髪、ちょっとごわごわしてたな。なんかいいシャンプーでも見繕ってやらねえと」
敷波「そこを心配するんだ」
提督「みんな気にするんじゃないのか?」
敷波「しないとは言わないけどさ」
初雪「タチアナさんも、司令官に撫でてもらう……?」
タチアナ「はっ!? い、いえ、私は、そのようなことは! とても恐れ多い……」
敷波「して欲しいって言えばしてくれるよ? 遠慮すると損だよ?」
提督「まあ、いつも頑張ってるみたいだしな。頭撫でられるのが嫌な奴もいるだろうし、希望があるなら言っていいぞ?」
由良「……提督さん?」ゴゴゴゴゴゴ…
敷波「あ」
由良「由良も秘書艦の御褒美を前倒しでいただきますねっ! ねっ!」ガッシィ!
提督「うおっ!?」ダキツカレ
由良「しばらくこのままです! このままですから! ねっ!!」グリグリグリ
提督「鼻を押し付けてんじゃねえ! 犬を通り越して猪か、お前は!」
初雪「……由良さん……」ドンビキ
敷波「ため込みすぎるとこうなるんだよねー。タチアナさんは本当に大丈夫?」
タチアナ「はい……あそこまでひどいことに、ならないように努めます」タラリ
126 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:14:50.18 ID:n94mTdCVo
* 居住区 寮ロビー *
如月「……というわけで、来週以降の司令官のお部屋へのお泊りスケジュールは、この通りね」
ル級「来月マデ、予定ガ埋マッテイルノカ。スゴイナ」
軽巡棲姫「アア……待チ遠シイワ」モジモジ
伊8「……大淀さんも予定を入れてるんですか?」
陸奥「あら? これまで入れてなかったの?」
伊8「入れてませんでしたね。陸奥さんも入れてるんですか」
陸奥「私はこれまで遠慮してたんだけど、せっかくだから一回くらいは、ね」ウフフッ
扶桑「……由良は、まだ自分の名前を入れてないのかしら?」
伊8「夜を一緒にするのはちょっと違う、みたいなこと言ってたのを聞きましたけど?」
扶桑「変なところがお堅いのね……? 朝、留守になったあとの提督のベッドに、結構な頻度で飛び込んでいるのに」
陸奥「そんなこと、何で知ってるの?」
扶桑「毎朝、洗濯した提督のお召し物を届けに行ってるの。その時に、ね」
伊8「そんな役得があったんですか……!」
扶桑「届けに行ってるだけだから、残念だけど特に何もないわよ?」ウフフッ
127 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:15:34.03 ID:n94mTdCVo
大和「……さりげなくメディウムも入ってきてますね」
朝潮「キャロラインさん……ああ、あの剣山を持った金剛さんのような口調の人ですね」
吹雪「ニコちゃんは入ってないんだ。意外!」
ノイルース「失礼。お邪魔しますよ。この人だかりは何かありましたか?」
吹雪「あっ、あなたは確か……ファイアーボールの」
ノイルース「ええ、ノイルースです。それでこの張り紙はなんと……これは、何かの当番ですか?」
朝潮「こちらは、司令官のお部屋へのお泊りスケジュールになります!」
ノイルース「お泊り? 魔神様と、一夜を共にするということですか……?」
吹雪「ちょ、ちょっと朝潮ちゃん!? 話して良かったの? なんか、聞いてないみたいな反応なんだけど!」
朝潮「キャロラインさんが入っているから問題ないのでは?」
吹雪「いや、でも……!」
ノイルース「ふむ……面白そうですね。良ければ、私の名もそこに書き加えていただけますか」
吹雪「へっ?」
128 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:16:19.22 ID:n94mTdCVo
如月「最後になるけれど、いいんですか?」
ノイルース「構いませんよ。魔神様とは、一度ゆっくりとお話ししてみたかったので」ニコ
ノイルース「それ以上に、魔神様のプライベートスペースへお邪魔できると思うと……胸が熱くなりますね。昂ります」
如月(司令官の私室とはいえ、司令官の私物が着替えくらいしかないけれど……)ウーン
大和(むしろ私たちの私物のほうが多い気が……)タラリ
ノイルース「しかし……この話はもっと早くに聞いておきたかったですね。ニコさんは存じておいでなのですか?」
大和「知っていますよ。ニコさんがいるときにこの話をしたことがありますから、聞いていないということはありません」
ノイルース「ふむ。そこにキャロライン以外のメディウムの名前は載っているのですか?」
如月「載っているのはキャロラインさんだけかしら?」
ノイルース「そうでしたか。ではなぜキャロラインだけ……? ニコさんには改めて事情を伺うとしましょうか」
ル級「オ前以外ノ、メディウムモ、参加スルノカ?」
ノイルース「話せば何人かは興味を持つと思いますし、知らないだけなら参加する者はいるはずですよ」
129 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:17:19.33 ID:n94mTdCVo
ノイルース「もし、ケイティーがこの話を聞いていたとしたら、真っ先に入っていたと思いますが」
伊8「あ、ケイティーさんなら出禁になりましたよ」
ノイルース「……」
軽巡棲姫「順番ヲ無視シテ、イキナリ寝室ノ提督ニ襲イカカッテ、返リ討チニ遭ッタラシイワネ?」
伊8「飛び掛かったところを頭を掴まれて、そのまま片手でぐるんぐるんぶん回されてから地面に叩きつけられたとか」
如月「本当かどうかはわからないけど、その時一緒にいた人が巻き込まれそうになったから、司令官も相当怒ってるみたいだったわ」
大和「ニコさんも、お仕置き部屋に送ったって言ってましたね」
ノイルース「そういうことですか。そのせいで、ニコさんから我々に話が回って来なかったのかもしれませんね……やれやれ」アタマオサエ
陸奥「ところでノイルース? あなたというか、メディウムがこの寮を訪ねてくるなんて初めてじゃないかしら。なにかあったの?」
ノイルース「いえ、皆さんが普段どのような環境でお休みかと思いまして。勝手ながら興味本位でお邪魔いたしました」
陸奥「あら、そういうことなら案内するわ。炎は出さないように気を付けてね」
ノイルース「ええ、心得ております。よろしくお願いします」ニコ
ル級「ソウイエバ、メディウムガドンナ場所デ休ンデルカハ、見タコトナイナ」
軽巡棲姫「私タチト一緒ニイタトキモ、神殿ニ移動シテタワネ」
大和「どんなところで寝てるのかしら……」
130 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/09/24(日) 11:18:35.63 ID:n94mTdCVo
というわけで、今回はここまで。
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/26(木) 11:50:16.76 ID:Q1BS4+xu0
漸く追い付いた。仁提督いいキャラしてて好きやで
132 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:43:31.29 ID:f+WBbV1Vo
今回登場のメディウムはこちら。
・ミリーエル・アローシューター:エルフのような長い耳を持つ、弓矢を携えた姿のメディウム。矢が飛んできて、人間を攻撃する罠。
エルフと呼ばれる森の民のような風貌の女性。四姉妹の末妹で特徴のない自分を未熟だと思っている。性格も真面目で素直な優等生。
・コーネリア・ギルティランス:黒いドレス姿のメディウム。壁から返しのついた多数の槍が飛び出し、人間を刺し貫いて引き寄せる罠。
無数の槍を背負いバトルマニアを自称する女性。好戦的だが戦い続けるためにも引き際は弁えている。他人に心配されるのが嫌い。
・グローディス・サンダージャベリン:エルフのような長い耳を持つ戦士のメディウム。帯電した槍が飛んできて、人間を刺し貫く罠。
四姉妹の一人で、その中では珍しい肉体派。性格も豪快で少々直線的。姉妹それぞれ美人だが、それを武器にするのは苦手の様子。
・セレスティア・ホットプレート:鉄板を持ったシェフ姿のメディウム。焼けた鉄板が足元に現れて、人間を焼いて飛び上がらせる罠。
メディウム随一の料理人。マーガレットを良きライバルと認識しているが、同時に彼女のつまみ食いと食べ過ぎも気にしている。
・スズカ・フライガエシ:ねじり鉢巻きをした和装のメディウム。巨大なフライ返しが、人間を空高く打ち上げひっくり返す罠。
お好み焼きでも焼いてそうな雰囲気の女の子。でもお好み焼きを知らない。調子に乗って大きなことを言うのが欠点、とは本人の談。
・マーガレット・フライングケーキ:パティシエのメディウム。飛んできたホールケーキが人間の顔にはりついて、視界を奪う罠。
暇さえあればケーキを作るケーキ好きの女の子。作ったケーキを残さず食べる上に運動不足のため、よく足がもつれて転んでいる。
というわけで、続きです。
133 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:44:16.25 ID:f+WBbV1Vo
* それから数日後 *
* 執務室 *
武蔵「そういうわけで、白露の体調と艤装の調査はもう少しかかるそうだ」
提督「……しばらくこっちには来られねえってか」
島風「だそうです」ショボン
大淀「白露さんは、そんなに体の具合がおかしかったんですか?」
島風「やっぱり無理してたのかなあ……」
提督「俺は本営の連中の我儘だと思うぞ。あの白露が個体として珍しいから手放したくねえんだろ」
提督「白露型に、島風に比肩する性能を持たせたんだ。仁提督の明石のところにも本営が出しゃばりそうだな」
大淀「そういえば提督も、医療船で本営のお医者様に、検査だなんだと迫られていましたね」
武蔵「ああ……それと同じことが白露の身に起きているということか」
提督「いくら轟沈してねえとはいえ、あいつらに好きにさせすぎたか……?」
武蔵「いや……むしろ好き勝手し過ぎたのは我々かもしれんぞ。ここでは艦娘が好きに出撃できているからな」
武蔵「同じ感覚で過ごそうとして、調査そのものが順調ではないのかもしれん」
134 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:45:01.44 ID:f+WBbV1Vo
提督「その理屈だと、島風も向こうで好き勝手してたことになるが」
島風「……」メソラシ
提督「……おい。冗談で言ったつもりなのに、本当かよ」
島風「だって、走り回っちゃ駄目とか言うんですもん」プー
武蔵「少しの間だけじっとしていれば、それで済むはずなんだがな」
提督「そのじっとしてるのが苦手だからな。それが理由なら長引くのもやむなしだが、そうだとしても適当に切り上げてくれねえかな」
武蔵「それは無理だろう。仕事に手を抜けと言っているようなものだぞ。それに……」
提督「あくまで艦娘は海軍が管理するものだから、全部知っておかなきゃいけないってか? 面白くねえな」チッ
神殿への扉<ガチャッ
ニコ「だったら、遠慮なく脅しをかければいいじゃないか。人間の言いなりになるなんて、魔神様らしくないよ」
ミリーエル「失礼いたします、魔神様」ペコリ
提督「ニコはまーた俺たちの話を聞いてたのかよ……話が早いからいいけどよ」
ミリーエル「あの、私も聞いていましたが、魔神様が人間にそこまで気を使われる理由は一体……?」
提督「んー……半分は、単純に白露が心配だから、だな」
提督「あいつの体が本当に何も問題ないのか、俺もその辺を確認したいっつうか、確証を得たい、保証して欲しいってのはある」
ニコ「……そう言われると仕方ないなあ」
135 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:45:45.79 ID:f+WBbV1Vo
島風「もう半分は面倒臭いからですよね?」
提督「まあな。余計なことを言って面倒を起こしたくねえ」
ミリーエル「しかしこれでは、まるで人質ではありませんか」
提督「こればっかりは仕方ねえよ。いまできることっつったら、白露に問題がないなら早く返せと言うくらいしかねえな」
大淀「X大佐に連絡を入れましょうか。政府との会談ももうすぐですし」
提督「そうだな……言うだけ言ってみるか。そのついでに、工作艦も増えてくれねえかな……」
大淀「工作艦……ですか?」
提督「ああ。明石もそれなりに忙しいし、明石以外の艦娘の艤装の面倒を見れる誰かの手を借りたいんだが……」
提督「ま、仮にいたとしても、都合よくこっちに来るとは思っちゃいねえけどよ」
ミリーエル「……魔力槽ではいけないのでしょうか」
提督「あれもあれで原理がよくわからねえし、別に何かを治そうって話でもねえからな」
提督「むしろ、あれに突っ込んだせいで白露が改装前に戻ったりしても問題だ。『元に戻す』と『治癒する』じゃ意味が違う」
ミリーエル「なるほど……」
提督「そういう意味じゃあ深海棲艦も心配なんだがな。深海棲艦の入渠ドックも作ってもらったが、面倒見てるのは艦娘の明石だし」
提督「というか、艦娘も深海棲艦も、ついでに酒保も明石に任せちまってるから、ちょっと負荷を減らしてやりてえな」
136 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:46:30.78 ID:f+WBbV1Vo
提督「ちなみに魔力槽はニコに全部任せててもいいよな?」
ニコ「うん。大丈夫、ぼくに任せてよ」
提督「ひとまず、島風は白露が心配なら、もう少し本営にいてもいいぞ。練習がてら、本営とこの島を結ぶ便の護衛哨戒をしてもいいし」
島風「うーん……わかりました。島風、いったん白露のところに戻ります。様子を見てから、決めてもいいですか?」
提督「おう、いいぞ。で、武蔵はもうしばらく与少将んところにいる気か?」
武蔵「ああ、この鎮守府と向こうの鎮守府ではいろいろ勝手が違うのでな。そのあたりの報告もさせてもらいたい」
提督「……いっそのこと、那智と一緒に向こうの鎮守府に転籍してもいいんじゃねえか?」
武蔵「な……!?」
提督「お前の話しぶりを見る限り、与少将にはよくしてもらってるみたいだしな。中将の引継ぎもしてるし、X大佐との連携も取れてる」
提督「お前が与少将の戦力になりそうなら、わざわざこっちに来て暇を持て余す必要もねえだろ。むしろこの島への案内役として適任だ」
ミリーエル「……」
大淀「どうかしましたか?」
ミリーエル「いえ……武蔵さんがこの鎮守府を離れるとなると、一部のメディウムが荒れそうだなと思いまして」
武蔵「……コーネリアとかか?」
ミリーエル「そうですね……グローディス姉さんとしょっちゅう演習という名目で模擬戦と言いますか」
137 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:47:15.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「喧嘩してストレス発散してる、と」
ミリーエル「……有体に申し上げれば、その通りにございます」
提督「萎縮しなくていいぞ、好きにしろっつってんだし、死なない程度にやる分には構やしねえよ」
武蔵「確かに、その二人やオリヴィアやカトリーナと談笑できなくなるのは寂しいな。代わりにいろいろな土産話を用意せねばならないか」
提督「与少将に貸しを作りたいわけじゃねえが、いまの与少将の仕事はこの島に関わることも多いはずだからな」
提督「お前が働いてくれれば、この島のためにもなるだろう。こっちから直接外に手を出すのは控えたいしな」
武蔵「なるほど。私は実働部隊になるわけか」
提督「もちろん、なにかあったら俺たちも出るとこ出るつもりだ。メディウムも黙っちゃいないし、深海棲艦も手を貸してくれるはずだ」
ニコ「そうだね、この島に関わるんなら、ぼくたちも力を貸すよ」
扉<トントントン ガチャー!
間宮「す、すみません、どなたか手を貸してください!」
提督「んん? 何があった?」
138 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:48:01.05 ID:f+WBbV1Vo
* 厨房 *
タ級1「ケーキニアウノハ、コーヒーダ!」
タ級2「紅茶ノホウガ、オイシイ!!」
マーガレット「はわわわ……お、落ち着いて欲しいのです」
電「……私の口調を取らないで欲しいのです」
スズカ「しばらく一緒におったから、口調が移ったんかねえ?」
セレスティア「かもしれないわね……」
金剛「呑気なことを言っている場合ではありまセン」
比叡「そうですよ、早く止めないと」
金剛「紅茶こそが最高の飲み物であることを、皆さんにlectureしてあげないといけまセンネーー!!」
比叡「金剛お姉様!?」
泊地棲姫「マッタク……同ジ深海棲艦デ、同ジ戦艦クラスナノニ、コウモ好ミガ別レルトハネ」
セレスティア「確かあなたは、コーヒー派ではありませんでしたか?」
泊地棲姫「確カニコーヒーガ好キダケド、紅茶モ嫌イジャナイワヨ」
139 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:48:46.09 ID:f+WBbV1Vo
提督「なにを面倒臭え言い争いしてんだ」ヌッ
比叡「あっ、司令!」
提督「折角、間宮が以提督の鎮守府からこっちに来てくれたっつうのに、しょっぱな喧嘩してる奴があるかよ……」
タ級1「ダッテコイツガ、コーヒーヲ馬鹿ニスルカラ!」
タ級2「オ前コソ、紅茶ヲ飲ム私ヲ馬鹿ニシタダロウ!」
泊地棲姫「提督、私ノ身内ガ、スマナイナ」
提督「まあいいけどよ。こういう話で争えるのは平和な証拠だ。俺にしてみりゃ本当にどうでもいい争いだしなあ……」
間宮「だ、大丈夫なんですか、そんなこと言って」ハラハラ
タ級1「ソウイウ提督ハ何ヲ飲ムンダ? 何ガ好キナンダ」
提督「水」
タ級2「……」
比叡「司令は氷水があればいい人ですからね〜」
タ級2「……ジャア、比叡ハ?」
比叡「あ、私は緑茶が好きです! ケーキにもあいますよ!」
金剛「紅茶じゃないんデスカ……!」
比叡「こ、好みに嘘はつけませんよ!?」
140 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:49:30.43 ID:f+WBbV1Vo
提督「ちなみにお前たちはどうなんだ?」
スズカ「好きな飲み物なあ? いうたら、うちは麦茶じゃな!」
セレスティア「特にこだわりはありませんが……強いて言えばトマトジュースでしょうか」
マーガレット「私はホットミルクが好きです!」
電「好みまで同じなのです……」
提督「間宮はどうだ?」
間宮「えっ? わ、私は緑茶派なんですが……抹茶が一番好きですね」
提督「茶室でたてるようなやつか?」
間宮「はい」
提督「それなら、茶室も作るか」
間宮「えええ!? そ、そこまでは!!」
タ級1「見事ニ、バラバラダナ……」
泊地棲姫「コレダケ綺麗ニバラケルト、感動スラ覚エルワネ」
141 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:50:30.81 ID:f+WBbV1Vo
提督「ま、好みはそれぞれだからな。それこそ好き好きなんだ、押し付けるのも馬鹿にするのもやめとけ」
タ級1「ムー……」
タ級2「仕方ナイナ……」
提督「あ、でも、見た目とかが汚え飲み食いしてたときは注意していいぞ。そういうのは萎えるからな」
タ級1「ソレハ確カニ嫌ダナ」
タ級2「同意スル」
提督「そういえば、コーヒーはこの前ガンビア・ベイが買ってきてくれた奴をまた頼んでるが、紅茶はどうだ? まだあるのか?」
金剛「私のお気に入りのEarl grayを取り寄せてマース!」
タ級2「! 待テ。私ハ、フレーバーティージャナイホウガイイ」
金剛「!?」
提督(あ、これも面倒な奴だ)
金剛「What did you say ? Earl grayが美味しくないとでも……!?」
タ級2「ミルクティーヲ楽シム分ニハ、ベルガモットハ余計ダロウ。ダージリンノ茶葉ダケノ方ガイイ」
泊地棲姫「ミルクティー? 牛乳ヲ加熱シテ、ソコニ茶葉ヲイレテ作ルヤツカ?」
142 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:51:15.58 ID:f+WBbV1Vo
比叡「そっちはロイヤルミルクティーって呼ばれるほうですね。普通にお湯で淹れた紅茶にミルクを入れるほうが一般的じゃないかな?」
セレスティア「ラテとは違うのですか?」
間宮「ラテは確かエスプレッソコーヒーを使うものではなかったかと……」
タ級1「イロイロ、ヤヤコシイナ? ブラックデ、イイダロウニ」
マーガレット「ホットミルク派の私たちには、あまり関係のない話ですねー」
電「なのです」
スズカ「それはええけど、マーガレットの飲み方はちょっとなあ。なんでホットミルクに砂糖入れるんよ?」
マーガレット「えっ? おいしいですよ?」
電「え……お砂糖、入れるのですか……?」ヒキッ
マーガレット「ええ!? 何ですか、その反応!?」
タ級1「私モ牛乳ニ砂糖ハチョットナ……」
タ級2「イクラナンデモ、甘スギナイカ?」
金剛「ケーキに合わせるなら、なおのこと考えづらいデース……」
泊地棲姫「期セズシテ意見ガマトマッタナ」
143 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:52:00.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「すげえなマーガレット」
比叡「それって、意見がまとまったって意味でですか? それとも、牛乳にお砂糖のほう?」
提督「両方」
比叡「ですよねー」
マーガレット「そんなあ! おいしいんですよ!?」
セレスティア「味はともかく、お砂糖を摂り過ぎなのでは?」
タ級2「ダト思ウゾ。アイツ、普通ニ、ケーキヲ食ベ過ギダト思ウガ」
タ級1「胸焼ケ起コシソウナレベルデ、タイラゲテルヨナ? モッタイナイ、トカ言ッテ」
セレスティア「ただでさえケーキを運ぶときに転んで何個も駄目にしているというのに、もったいないとは……」トオイメ
電「……」モニュッ
マーガレット「きゃあ!? きゅ、きゅうにおなかをつままないでください!」
電「……しっかりつまめるくらい、あったのです」ドンビキ
提督「健康のために走るとか言ってなかったか?」
スズカ「なんか、疲れたから今日はお休みー、ちゅうんがここ最近ずっと続いとったんじゃがの」
提督「三日坊主かよ」
144 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:52:45.54 ID:f+WBbV1Vo
マーガレット「は、走ってると、ケーキを作る時間がなくなっちゃうんですよ!」
比叡「しばらく作るの休んだらいいんじゃないかな?」
マーガレット「そんなあ!?」
提督「そうだ、せっかくだからうちの艦娘の練習に付き合え。島風がランニングしたいっつうから一緒に走ってこい」
マーガレット「あの足の速い子ですか!? 絶対おいていかれます!」
提督「んじゃ武蔵と一緒に畑仕事してこい。お前の作ってるケーキの原材料を育ててこいよ」
マーガレット「ケーキ作るのに、そんなことする人いるんですか!?」
金剛「本営で流れてた TV program で見ましたが、ラーメンを作るのに必要な小麦を育てる畑から作った人たちなら、いましたヨー」
電「畑!? って、土壌からお世話するのですか!?」
提督「マジか。じゃあそれやるか、畑も増やしたいし」
マーガレット「無理ですうううう!!」ナミダジョバー
タ級1「……コノ島デ、小麦ッテ育テラレルノカ?」
タ級2「サア……? デカイ農場ジャナイト、無理ジャナイノカ?」
145 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:53:31.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「仮に作ったとしてもそんなに土地があるわけでもねえからな。この島の住人の消費量を考えると、少なすぎるかもなぁ」
タ級2「ダトスルト、畑仕事ヨリ、遠征デ資材ヲ調達シタホウガ、私タチハ役ニ立テソウダナ」
タ級1「駆逐艦ヲ連レテ、北方ニデモ行クカ?」
比叡「それならお弁当を用意しなくっちゃ!」
セレスティア「そうですね。予定をいただければ、それまでに準備しましょう」
タ級1「ア、ソウダ。オマエ、ワ級ニ乗ッテ、一緒ニ遠征ニ行クカ?」
マーガレット「ふえええええ!? なんで、わたしがー!?」
タ級2「ダメダロ、コイツガ運動スルワケジャナイシ」
タ級1「ア、ソウカ」
電「やっぱりこの鎮守府の中で体を動かしてもらうのです」ウンウン
マーガレット「決定なんですかああ!?」
セレスティア「健康のためよ、マーガレット。頑張って」
マーガレット「そんなああ!?」
間宮「……」アッケ
金剛「Hey, 間宮。ぼーっとしてどうしまシタ?」
間宮「いえ……本当に、深海棲艦の方々と、普通にお話してるのが信じられなくて。こちらの提督は、すごい方なんですね」
金剛「フフッ、それはもう、人間以外の誰にでも優しい人デスカラ」
146 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:58:46.18 ID:f+WBbV1Vo
* 政府との会談予定日 5日前 *
* 墓場島鎮守府 執務室 *
(執務室のソファに、提督と向かい合って、妙高、N特務大尉、磯波が座っている)
提督「なるほど。曽大佐もそれなりの血筋ってことか」ペラリ
妙高「そうですね。とりあえず、与少将からお預かりした資料は以上です」
N特尉「……」
磯波「……」ビクビク
ヲ級「ソンナニ、緊張シナクテモイイゾ」
磯波「は、はひっ」ガチガチ
タ級「ガチガチダナ。オイ、人間、緊張ヲ解イテヤレ」
N特尉「……はひっ!?」ビクーーッ!
軽巡棲姫「人間ガ、一番緊張シテルワネエ……」テイトクニウシロカラダキツキ
妙高「無理もありませんよ。ただの人間が深海棲艦にかなうわけがないというのに、こんなふうに囲まれているんですから……」
提督「……軽巡棲姫はいい加減、俺の背中から離れてくれねえか。書類が読みづれえ」
軽巡棲姫「ジャア、隣ニ座ッテモイイ?」
提督「読み物の邪魔さえしなきゃ、いいぞ」
軽巡棲姫「ソウ? フフフッ」ストン
147 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 21:59:31.23 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「……なあ、提督。どうして執務室が深海棲艦ばかりなんだ? 艦娘はいないのか」
提督「今のタイミングで、たまたまそうだ、ってだけだぞ。深海棲艦がいなくて艦娘が寛いでるときもある」
N特尉「だ、だからって、どうして執務室に……」
タ級「ドウシテッテ、ココナラ、ソファニ座ッテ、コーヒーガ飲メルカラナ」ズズッ
N特尉「……そ、それでいいのか?」
提督「ああ、俺は自由にさせてる。ここが好きな奴は、艦娘、深海棲艦問わずいるんでな」
提督「俺が仕事してると静かにしてくれるし、聞き分けがいい奴が多くて助かってる」
ヲ級「静カナ場所ハ、好キダゾ。普段騒ガシイ艦娘モ、提督ガ仕事ヲシテイルト、静カニナルノハ、見テテオモシロイ」
ヲ級「ソレニ……カグワシイコーヒーノ香リト、波ノ音……深海ニハナイ、ヤワラカイソファ……」ウットリ
妙高「ああ……そういうことですね」
N特尉「な、なるほど。わかる気がするな」
提督「俺のそろばんの音がいろいろと台無しにしてるような気がするんだけどな」
ヲ級「ソレハソレ、ダ」
N特尉「おみやげは、せんべいより洋菓子のほうが良かったか……」
妙高「コーヒーに合わせるのでしたら、そのほうが良かったですね」
148 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:00:18.35 ID:f+WBbV1Vo
提督「とりあえず、曽大佐のことはわかった。軍人の家系の傍流ねえ……これだと、本家を見返してやりたいってタイプかもしれねえな」
N特尉「ああ……ちなみに彼は男一人、女六人の七人姉弟の五番目だそうだ」
N特尉「一応は長男だから、張り切っているんだろう。そのせいで張り切り過ぎて、極端に振り切れてる感じもするが」
提督「古い家だと、家を任されてる重圧なんてのも考えられそうだな」
N特尉「それで必死なのかもしれない……か。とにかく彼は、深海棲艦は撃滅せよの一点張り、そこは曲げられないと主張している」
N特尉「だから、艦娘が口答えしようものなら、すぐ解体処分を言い渡すくらいには苛烈と言うか極端と言うか、言ってしまえば過激派か」
提督「そんなんじゃあ、部下の艦娘に謀反でも起こされるんじゃねえか?」
N特尉「いや、結果も出しているだけあって、彼の考えに賛同している艦娘も少なからずいるようだ」
N特尉「崇高な使命を掲げ、覚悟を決めてかかっている姿に、ついていこうと共感しているんだろうな」
N特尉「実際、曽大佐は自分でも戦いたいらしく、鎮守府内のジムで毎日格闘訓練に励んでいて」
N特尉「そういった姿を艦娘に見せていることもあって、彼の方針は鎮守府内では比較的受け入れられているようなんだ」
149 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:01:00.97 ID:f+WBbV1Vo
妙高「ちなみに、こちらが曽大佐の写真です」
提督「ふーん」
軽巡棲姫「……暑苦シイ顔ネエ?」
N特尉「今はその写真より一回り筋肉がついて、ごつくなってるらしい」
提督「やる気見せて巻き込んでる感じか? マジで暑苦しい奴だな」
軽巡棲姫「同ジ感想ヲ抱イテクレルノォ? 嬉シイワァ」スリスリ
提督「……」
N特尉「……提督、お前、大和と言う艦娘がいるのに、なんでこう……」
軽巡棲姫「ナニカ文句アルノォ?」ヌラァ
N特尉「ナンデモアリマセン」ビクッ
妙高「N提督も余計なことを言わなければいいのに……」
提督「お前も威嚇すんな、少し落ち着け」ナデナデ
軽巡棲姫「ハウゥ……!」ウットリ
磯波(姫級が猫みたいに……!?)
150 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:01:45.93 ID:f+WBbV1Vo
妙高「ところで提督。来週早々に政府との面談があると聞きましたが」
提督「おう。こっちはまあ、形式的な挨拶を交わして、あいつらの言いたいことを聞くだけになると思ってる」
提督「これまでの情報を考えても、おそらく曽大佐がそれを邪魔しに来るだろう」
妙高「政府の要人が来るのです。そこまでするでしょうか……?」
提督「だからこそやると思ってる。さっきN特尉も言ってたが、極端に振り切れてる奴が、まともな手段で止めに来るとは思えねえ」
提督「最悪、政府の船を攻撃して、俺たちに罪を擦り付ける可能性もある。というか、そういう手を堂々と使ってきそうで、鬱々としてるぜ」
磯波「い、いくらなんでも、悪く考えすぎでは……」
提督「甘えよ。お前たちだって特別警察の仕事をしてるんなら見てきただろ? くっそ汚え人間の裏っ側てやつをよ」
磯波「……」
提督「人間同士でも絶句するような黒い悪だくみをしてる連中がいるんだ」
提督「相手が人間じゃなくて人間の権利を持ってない相手なら、なおのこと欲望を抑えようとしない奴が現れると思ってるけどな?」
妙高「……」
提督「ましてや、悪と決めつけている深海棲艦が相手なら、極端な悪者に仕立てることに躊躇なんかしねえだろ」
N特尉「暴走する可能性が高い、か」
提督「これが成功したら、目の前にいる深海棲艦を無条件で殺せなくなる。それが嫌なら、どんな手を使ってでも邪魔しに来ると思うがな」
151 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:02:45.69 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「それは……人を犠牲にしてでも、か?」
提督「当然。むしろ人間が犠牲になったほうが、奴には好都合だろ」
N特尉「……考えたくはなかったが、やはりそうなるのか……!!」
提督「今回はあくまで形式的な挨拶をかわすだけになるだろうが、それでも、政府にとっては大きな前進であることに変わりはねえ」
提督「だからこそ、曽大佐は『次の機会』なんてものが絶対に発生しないように、決定的な亀裂を入れようとしてるんだろうさ」
N特尉「頭が痛いな……!!」
提督「ま、そういうわけなんで、せいぜい曽大佐の動向は注視しとけ。俺たちは俺たちなりのやり方で迎撃させてもらうからよ」
妙高「曽大佐の艦娘と、一戦交えることになると……?」
提督「いまのままなら、多分そうなる。そうならねえようにしたいが……連中が素直に言うこと聞くとは到底思えねえ」
提督「どうにかして足止めしておとなしくさせて、その間に交渉、ってのが最善手になるだろうな。できなきゃ、捕縛しとくしかねえ」
提督「俺たちも使える手段もそんなにねえし、時間ももうねえしな」ハァ…
妙高「……」
磯波「……」
152 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:03:31.37 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「……とんでもない問題にかかわることになったなあ……」ガックリ
妙高「N提督!? ぶっちゃけすぎですよ!?」
N特尉「……そんなこと言われてもなあ……」
タ級「コイツ、ナンデコンナニ、ガックリシテルンダ?」
提督「この島へ攻めてくるであろう、艦娘の司令官のところに行って、捕まえてこなきゃなんねえだろうから、だな」
タ級「ソウナノカ!? ソレナラ早ク行ケ!」
提督「それが、今の海軍のルールだと出来ねえんだよ。ただ艦娘を出撃させるだけなら、それを抑止することもできねえし」
提督「各地で暴れている深海棲艦の討伐は、いまの海軍のメインの任務だ。それを否定したら海軍の存在自体を否定することになる」
提督「今の時点で俺たちに被害が出ないと、おそらくそいつを捕まえていい、って指示は飛んでこねえだろうし」
提督「その指示がない以上はN提督も動きようがねえ。相手がやらかしたあとでねえと、越権行為される可能性もあるからな」
タ級「ムー……メンドウクサイナ」
N特尉「提督、そこはひとつ訂正させてくれ。我々海軍は何のために存在するか……それは国民の人命と財産を守るため、だ」
N特尉「誰かを殺したり滅ぼしたりするのが正しいから、力を行使するわけじゃない。そこは誤解のないように頼む」
提督「……」
153 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:04:15.94 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「確かに、いまの海軍の主な任務は深海棲艦の討伐ではあるが……」
N特尉「本来の我々の本分を省みるならば、深海棲艦との和睦も大いに結構。戦いをなくし、犠牲を減らせるのは良いことだと思う」
N特尉「しかし、感情的にであっても、それを拒む者がいるのは、やはりこれまでの……失われた命の重さが、そうさせているんだろう」
N特尉「君たちがそれをやったわけじゃないとしても、それを簡単に割り切れない人たちもいるからな……」
タ級「……」
ヲ級「……」
軽巡棲姫「綺麗事ネ」フン
N特尉「……そうかもしれないな」
提督「……」
N特尉「しかもおそらく、深海棲艦以上に、人間も深海棲艦を無数に討伐してきた……殺してきた」
N特尉「その我々が、深海棲艦と歩み寄れるか、などと上から目線で言うのは、きっとおこがましいんだろう」
N特尉「だが、やらなければ、また殺し合いだ。お互いのためにも、やらなくてはならないんだ」
N特尉「だからこそ、海軍のいち大佐が、日本政府と深海棲艦の和平交渉の邪魔をするのを、放っておくわけにはいかない……!」
提督「……」
154 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:05:15.79 ID:f+WBbV1Vo
N特尉「そのためにも、協力的な上官を増やしたいところなんだが……せめて大将格がもう数人くらい賛同してくれないものかな」
提督「こっちの理解者は、H大将くらいか?」
N特尉「いや、大湊と呉の大将殿も協力的なほうだ。あとは少し苦言を呈されたり、一任するというか静観するというか」
ヲ級「マルナゲ、カ」
N特尉「身も蓋もないな!?」
タ級「デモ図星ダロウ?」
N特尉「た、確かに、そんなところだ……未だに君たちを信用していいのかどうか、疑心暗鬼の大将もそれなりにいる」
N特尉「同様に中将や少将の見解も、五分五分で拮抗しているな」
提督「ま、仕方ねえだろうな。深海棲艦と今更和解できるか、って意地張ってる連中とか」
提督「この話し合いが侵略の足掛かりになるんじゃないかって疑ってる連中だっていそうだしな」
N特尉「ああ、言われたよ。これが罠じゃない保証がどこにあると、H大将がなじられる一幕もあった」
提督「それにしても、いいのかよ? そんなことまでべらべら喋って」
N特尉「中将の息子の件といい、J少将の件といい、海軍の暗部と言うか恥部というか……」
N特尉「言い逃れできないような不祥事ばかり見てきたお前に、今更、海軍の建前で話をしてもしょうがなくないか?」
提督「……半ばやけくそになってないか? 大丈夫かよ」
155 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:06:00.79 ID:f+WBbV1Vo
妙高「いまのお仕事を始めてから、少し愚痴っぽくはなりましたね」
N特尉「……今の仕事は、同じ海軍の仲間の仕事の、あら捜しをしているようなものだからな」
N特尉「私が働いたから深海棲艦からの襲撃が減ったとか、そういう成果を生み出せる仕事じゃない」
N特尉「むしろ同じ仲間の足を引っ張るような仕事だ。仲間を捕まえれば、その分、外敵から人間を守る者が減る」
N特尉「そう考えると、俺の仕事は……いまやっていることは、本当に正しいことなのか、悩ましく思うときもある」
N特尉「長期的に見れば正しいのかもしれないが、いまも悩み苦しむ一般人がいることを考えるとな……」ハァ…
提督「……」
N特尉「……いや、本当に悪い。こんな愚痴まで零すつもりはなかったんだ」
N特尉「ましてや、提督に同調して人を襲うことをやめた深海棲艦たちに聞かせる話でもなかったな。私も、まだまだ未熟だ……」
提督「……あの村は今どうなってる?」
N特尉「……どうなってるだろうな。どうなっているか、怖くて連絡も取っていない」
提督「けっ、連絡くらいしろよ。あんたの守りたいものなんだろ?」
N特尉「……そうだな……ああ、そうだ……」
妙高「……」
磯波「……」
156 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:06:45.73 ID:f+WBbV1Vo
*
妙高「提督、お気遣いいただきありがとうございます」
提督「何の話だ」
妙高「最後に、N提督に親に連絡しろと仰ってたではありませんか」
提督「別にそんなつもりで言ったつもりはねえよ。村が再興しなきゃ、朧や初雪がああなった意味がねえってだけだ」
妙高「そうであってもです。N提督も、ご自身の仕事で悩んでおいででしたから。一度、お休みしてもいいのではないかと……」
提督「そういうのは、お前が言えば良かったんじゃねえの?」
妙高「私が甘やかすのもどうかと思いまして」
提督「そうか? あいつの手綱握ってんのはお前だろ?」
磯波(私も妙高さんがN提督を甘やかしていいと思いますけど……)ウンウン
妙高「……磯波さん?」
磯波「いえ……むしろ妙高さんがN提督に甘えるのもありかも……?」ブツブツ
妙高「磯波さん?」
磯波「さっきだって、提督さんに軽巡棲姫が甘えてたのを見てぼやいていたんだし……」
磯波「N提督も、妙高さんに頼られたいと思っているんでは……」ブツブツ
妙高「磯波さん?」
磯波「……あ、はい。妙高さん、どうしました?」
妙高「今のお話、少し詳しく聞かせてもらえますか」ニコリ
磯波「……」ゾワワッ
157 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:07:45.59 ID:f+WBbV1Vo
提督「聞くほどのもんかねえ」ボソッ
妙高「提督?」ジロリ
提督「なんだよ。俺に凄むなよ、面倒臭え」
妙高「……」
提督「茶化すつもりはねえぞ。何でも言わなきゃ伝わらねえ。人が何を考えてるかなんて、所詮他人にはわからねえんだ」
提督「あいつがお前たちに何をして欲しいのか、直接あいつの口から吐かせろよ」
提督「俺だって、艦娘や深海棲艦たちが何を望んでいるかがわからねえから、逐一訊いてんだぞ?」
提督「いま、N提督に直接的に力になれるのはお前たちだけなんだぞ。そんなんでやっていけてんのかよ」
妙高「……っ! し……失礼します!」クルッ スタスタスタ…
提督「……」
磯波「あ、あの……提督さん、デリカシーがないって、よく言われません?」
提督「みんな知ってるから誰も言わねえよ」
磯波「……」
提督「つうか、妙高もなんであんなにプリプリしてんだよ。心配ならアドバイスしてやりゃあいいじゃねえか、わけわかんねえ」
磯波(……ああ、この人、恋愛事に疎い朴念仁タイプなんだ……)タラリ
158 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:08:31.26 ID:f+WBbV1Vo
* 政府との会談予定日 前日夜 *
* 日本 某港 *
蒼龍改二「……ここが集合地点で良かったのよね?」
綾波改二「はい! 間違いないですよ!」
飛龍改二「もー、蒼龍ってばその質問、何回目?」
天龍改二「しょうがねえって、飛龍さん。なんせもう1時間以上待ってんだぜ? 本っ当、遅っせえよなあ……ちゃっちゃと準備しろよ」
霧島改二「念には念を入れて準備するのは悪いことではないでしょうけど……確かに、いくら何でも遅すぎね?」
コロラド「……気に入らないわ……!」
飛龍改二「? 気に入らない、って、なにが?」
蒼龍改二「待たされてるのが気に入らないんじゃない?」
コロラド「ビッグセブンであるこの私がいるのに、どうして奇襲じみたアタックを仕掛けなきゃいけないのよ……不服だわ!」
蒼龍改二「そっち!?」
飛龍改二「まあまあ、そう怒んないでよ。そもそも今回の私たちは支援艦隊だよ?」
コロラド「そこもよ!」
蒼龍改二「待たされるのはいいんだ……」
159 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:09:15.73 ID:f+WBbV1Vo
天龍改二「お! やっと来たみたいだぜ……!」
ザザァ…
大和改二「曽大佐艦隊、旗艦、大和。以下、榛名、陸奥、赤城、由良、朝潮。ただいま推参しました……!」
コロラド「やっと来たわね……私は川提督艦隊の旗艦、コロラドよ! こっちは飛龍、蒼龍、霧島、天龍、綾波よ!」
大和改二「……予定より大幅に遅くなり、大変申し訳ございません。このたびの川提督艦隊のご協力に感謝いたします」ペコリ
大和改二「それにしても、川提督のところに海外艦が所属していたとは、存じませんでした」
コロラド「川提督が私のことを隠してたのよ。ヒミツヘイキ? と言っていたかしら。ここぞという場面で出番が来るようにね!」
コロラド「それにしても、大和のいる艦隊とこんな重要な場面で協力ができるなんて思わなかったわ!」
コロラド「同じビッグセブンの陸奥もいるし、戦力は十分ね!」
天龍改二「十分ってなあ……あっちの艦娘、全員指輪してやがるぜ?」ヒソヒソ
綾波改二「練度も雰囲気も違いますからね。私たちは下手に出しゃばらずに、サポートに徹したほうが良さそうです」ヒソヒソ
大和改二「それでは早速、今回の作戦ですが……私たちは、あの島の深海棲艦を撃滅するため、島の西から南へ回って、敵拠点へ向かいます」
蒼龍改二「西? 敵の拠点が島の東にあるのに、遠回りするの?」
大和改二「島の北にある海底火山の影響で、あの島の近海の潮流が特殊だということです。噴火したことで若干変わったとは思いますが」
大和改二「島の西を通って反時計回りに回り込んだ方が、潮流に邪魔されず速やかに進軍できると思われます」
蒼龍改二「な、なるほどぉ……?」
160 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:10:01.34 ID:f+WBbV1Vo
大和改二「そしてこれから出立した到着予定時刻に合わせて、政府高官を乗せた艦艇が、島の東沖に停泊する予定です」
飛龍改二「え!?」
大和改二「私たちは、その艦艇を背にして敵本拠地を叩き、深海棲艦の拠点を崩壊させます」
大和改二「政府の人間に、深海棲艦との交渉など不要であるということを、この戦いで見せつけるのです……!」
霧島改二「ほ、本気ですか!? もし深海棲艦が反撃して、その流れ弾がそちらに向かったら……!」
大和改二「そうなればなおのこと、交渉どころではなくなるでしょう?」ニコッ
霧島改二「……」ドンビキ
綾波改二(ぶっ飛んでますね……)
天龍改二(手段を選ばねえ気かよ。狂ってやがんな)
大和改二「連携に関しては先週打ち合わせた通りですので、ここで改めて話すことはないと思いますが……」
天龍改二「あ、悪ぃ、俺からひとつ質問していいか?」
大和改二「はい、なんでしょう?」
天龍改二「曽大佐の艦隊じゃあ、長門さんが滅茶苦茶強えって聞いてたんだけどよ」
天龍改二「先週うちに連絡が来た時も思ったんだけど、今回の作戦に長門さんが参加していないのはなんでなんだ? 殲滅戦だろ?」
大和改二「……私たちが選ばれたのは、これから攻め込むあの島の鎮守府にいる艦娘と、同じ艦娘だからです」
161 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:10:45.83 ID:f+WBbV1Vo
天龍改二「同じ? 向こうの鎮守府に誰がいるかわかってて、それに合わせたってことか? なんでわざわざそんなことを?」
大和改二「曽大佐のお考えです。これから深海棲艦と一緒に住まう艦娘と同じ艦娘なら、相手の動揺を誘えるかもしれない、と……」
天龍改二「ふーん、そういうことか……確かに、俺も演習で龍田がいるとやりづれーな」
綾波改二「自分と同じ顔の艦娘を、躊躇なく撃って沈めようものなら、向こうの鎮守府の艦娘もいい気分にはならないでしょうね」
大和改二「はい。ただ、向こうの艦娘がそこまでのナイーブさを持ち合わせているかどうかは疑問ですが」
飛龍改二「で、でも、その理屈だと、大和さんたちも同じなんじゃないの?」
大和改二「いいえ……! そんなことは、断じてありません……!」
飛龍改二「!」ビクッ
大和改二「忌むべき存在である深海棲艦に与し、正義を執行する海軍に背く愚か者が同型艦にいる事実は、恥でしかありません」ギラッ…!
大和改二「ですから、私たちが『敵』に手心を加えるようなことはあり得ません。ご安心ください」ニコ…
コロラド「……そ、そう!? さすがね!!」ナミダメ
飛龍改二(めっちゃ怖かった……!)ナミダメ
霧島改二(コロラドさん、よく気圧されませんでしたね……)ビクビク
天龍改二「こりゃあ最初から全力で潰す気だな」ヒソヒソ
綾波改二「気を抜く間はなさそうですね」ヒソヒソ
天龍改二「……よぉし、よくわかったぜ。気掛かりもなくなったし、他になけりゃ、そろそろ出発すっか」
コロラド「そ、そうね! 私たちが先行するわ! ツユバライ? は、任せておきなさい!」
大和改二「ありがとうございます。では、参りましょう……!」
162 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/10/29(日) 22:11:30.82 ID:f+WBbV1Vo
今回はここまで。
ここからは少しペース上げて落とせるかもです。
>131
ありがとうございます。
ただ最近は、仁提督を丸くしすぎたかな? と思ってますので、またどこかでガハハ笑いさせたいと思います。
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/10/31(火) 22:38:09.81 ID:GijeE8il0
さあさあ面白くなってまいりました!!!!
ついに動き出した曽提督!洗練された艦娘たちが、墓場島へと牙を向く!
迫る魔の手をへし折って、無事に会談を終えられるのか?立ちはだかるは無数の深海棲艦と攻められこその罠娘、メディウムたち。最強の艦隊は最凶の守りを突破することはできるのか!?
艦娘、深海棲艦、メディウム、人類、四つの種族を巻き込んだ混沌の大勝負。
波乱万丈の会談が今始まる!
164 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:33:31.30 ID:QNJUjz5Qo
今回初登場のメディウムはこちら。
・エレノア・メイデンハッグ:ちょっとパンクスタイルなシスターのメディウム。アイアンメイデンが人間を取り込み体中を刺し貫く罠。
派手な修道服を着た女性。鋼鉄の処女を模した大きなとげ付き盾を持つ。大の酒好き。仲間思いでリスキーな行動も躊躇わない女傑。
>163
残念ながら提督は(艦娘に甘いせいで)極力戦闘を避けようとしてますので、
口上のご期待に添えられないかもしれません。
それでは続きです。
165 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:34:31.38 ID:QNJUjz5Qo
* 政府との会談予定日 当日早朝 *
扉<コンコンコン!
大淀「提督、N特務大尉より連絡です!」チャッ
提督「やっぱり、来やがったか……!」
大淀「曽大佐の艦隊と思しき艦娘12名が、この島に向けて出港したとの通信が入りました!」
提督「2艦隊か……ぎりぎり隠密行動できそうな人数だな。思ったより少なくて何よりだぜ」
エレノア「それにしても、会談を邪魔されるのは想定済みとはいえ、こんなに素直に釣られてくれるものなのかしら」
提督「やるんなら今しかないだろうからな。戦争を回避できる可能性があることで、今だけは海軍も深海棲艦討滅に慎重になってる」
提督「かつ、会談をなるべく早い時期に設定すれば、妨害する側も思うように動けず準備不足にもなるだろう」
提督「そうなると、妨害の仕方は多少強引にならざるを得なくなるはずだ」
提督「俺はそいつらの落ち度を突いて追い返し、海軍へ事の顛末を報告して、二度と妨害できないようにしてもらう」
エレノア「魔神様が攻めてくる奴らと話し合うの?」
提督「ああ。政府の船には会談の予定時刻より前に赴いて、いま起こっている不測の事態について話をして、退避してもらう」
提督「予定外のことが起こって、あいつらがなにか焦ってやらかしてくれりゃあ、責められるのは海軍と曽大佐だ」
大淀「正当防衛が認められるように立ち回る、ということですね」
提督「俺たちが戦争の起点になりたくないからな。後から責任追及されたくねえし」
166 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:35:15.82 ID:QNJUjz5Qo
エレノア「私たちを倒そうとしている奴らが、政府の船と一緒にやってくる可能性はないの?」
提督「政府の艦艇の護衛は、中将や与少将の関係者で固めてくれとお願いした。護衛に部外者が入らないようにも頼んである」
提督「そもそも、H大将の決定に背いて離反したばかりの曽大佐の評価は、以前よりも下がってるってN特尉の報告書にもあった」
提督「その状況下で、中将が主体となって編成する政府艦艇の護衛艦隊に加えてもらおうとしても、断られるのがオチだろう」
提督「そんなことが起きないように、事前にX大佐経由で特別警察隊へ調査と警戒を依頼したわけだしな」
エレノア「用意周到ね、それでこそ魔神様だわ。穏便にってところ以外は」
提督「ま、それでもどうなるかはわからねえからな……あいつの艦隊そのものは実力もある。力押しで来られたら、やばいのは変わらねえ」
大淀「正直に申し上げて、ここまで提督の思い通りなのが不思議ですね。曽大佐は、もっと柔軟に動けなかったんでしょうか」
提督「……そう動かざるを得なくなった、引っ込みがつかなくなったのかもな。他人に厳しい奴は自分の失敗を認めたがらない」
提督「自分が間違っていないことを証明するため、自分の考えている通りの現実にするため、無理を通そうとしている……とか」
提督「あるいは、自分が絶対的に正しいと確信していて、海軍も政府の人間も、深海棲艦に丸め込まれた奴を皆殺しにしたがってるとか」
大淀「いくらなんでもそれは……」
提督「わかんねえぞ。政府の人間が来るタイミングで戦闘仕掛けようって時点で、狂ってることには違いないからな」
エレノア「人間の分際で、傲慢極まりないわね?」
提督「あとは、海軍が深海棲艦を許容した事実を信じたくないのかもな。理想にしがみつきたいだけとも考えられる」
167 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:36:00.79 ID:QNJUjz5Qo
提督「でもまあ、これで不祥事になるのは確実だし、曽大佐やその模倣犯がこれ以降絡んでくることもないと思いたいな」
提督「ついでに、政府にも、深海棲艦との交流を妨害しようとする獅子身中の虫がいるってことを自覚させるのに丁度いい」
大淀「……提督は、政府と海軍の間に亀裂を入れたいんですか」
提督「そんなことはねえよ。雨降って地固まって欲しいぜ?」
エレノア「白々しいわねえ……」
扉<コンコン
敷波「おはよーございまーす」ガチャ
初雪「おはよう、ございます」
ヲ級「……オハヨウ」
提督「よう、大丈夫そうか?」
敷波「まあね。メディウムのみんなは大丈夫なのかな」
提督「さっき俺が叩き起こしてきた。エレノアはすでに準備出来てたがな」
エレノア「あらかじめそういう約束だったものね。たまには、朝のすがすがしい空気を吸うのも悪くないし」
提督「とりあえず、支度ができ次第、出発してもらうぞ」
* * *
* *
*
168 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:36:45.57 ID:QNJUjz5Qo
* それからしばらくして *
* 墓場島沖 北西の海域 *
赤城改二「ここからが、あの島の領海です。まずは遠巻きに島の南側へ向かい、島の南東から領海に侵入します」
大和改二「何があるかわかりません。気を引き締めて進みましょう」
陸奥改二「支援、よろしく頼むわね」
綾波改二「はい! 皆さんも、お気を付けて!」
コロラド「……ねえ、少し待って。この景色……おかしくない?」
霧島改二「どうかしましたか?」
コロラド「なんていうか、これまでの海域と雰囲気が違いすぎないか、って言ってるのよ」
飛龍改二「んー、まあ……確かにそうねぇ」
コロラド「これまで戦ってきた大物の深海棲艦のいる海は、どこも黒い雲に覆われて暗かったでしょう?」
コロラド「ブキミって、そういう雰囲気のことを言うと思ってたんだけど、この島の海域は全然そんなことなくて、いい天気よね」
綾波改二「確かに、まるで鎮守府近海のような穏やかさですねえ」
コロラド「情報が間違ってるとは思わないけど、本当にこの島に深海棲艦のBossが棲んでるの……?」
朝潮改二「この島に深海棲艦が海域に与える影響が弱い、ということでしょうか……?」
169 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:37:30.96 ID:QNJUjz5Qo
榛名改二「もしかしたらですが、この島に巣食う深海棲艦の力がそれほどではないのかもしれません」
天龍改二「だとしたら、いまがチャンスだってことだよな!」
コロラド「……」
榛名改二「もちろん、この雰囲気自体が罠だという可能性も十二分にあります」
陸奥改二「そうね。くれぐれも油断せず、慎重にね?」
赤城改二「さあ、参りましょう……!」
ザザーン…
霧島改二「……それでは、私たちも支援可能な場所へ移動しましょう」
蒼龍改二「そうだね。ねえ飛龍、偵察機、飛ばしとく?」
飛龍改二「そうね」バシュッ
彩雲<バウーン…
飛龍改二「……」
蒼龍改二「……」
飛龍改二「……ねえ。すっごい穏やかなんだけど。艦載機を警戒されてる感じもないし」
蒼龍改二「うーん、もうちょっと飛ばしてみてよ?」
170 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:38:15.74 ID:QNJUjz5Qo
飛龍改二「……」
蒼龍改二「……」
飛龍改二「……島の西岸に到達。でも、深海棲艦らしい敵影は全然……あれ? 南のほうへ誰か歩いてる」
蒼龍改二「南に?」
飛龍改二「うん、男の人がひとりで、てくてくと」
天龍改二「男? あの島、確か住んでる人間はそこの提督だけっつったよな? なんか、普通じゃねえって聞いてるけど」
綾波改二「ああ、何回か死にかけた、って話でしたっけ?」
飛龍改二「それ以外になにかあったような気がするんだけど……」
蒼龍改二「とりあえず、曽大佐艦隊にも、誰かが出歩いてる話を展開しておきましょ」
霧島改二「島の様子も大事ですが、私たちも曽大佐艦隊について支援するのですから、つかず離れず追いかけましょう」
コロラド「……」
綾波改二「コロラドさん?」
コロラド「……あ、ごめんなさい。どうにも納得できなくて……」
天龍改二「わからなくはねえけどよ。一応は敵の領海内なんだ、慎重に行こうぜ?」
コロラド「……そうね」
171 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:39:01.07 ID:QNJUjz5Qo
* 墓場島 南岸 *
提督「……偵察機……」
提督「ってことは、南を回って艦隊が近づいてるってことか」
提督「……」メヲツムリ
提督「……侵入者は2艦隊、12人だったな……ほぼ全員が第二改装済みか」
提督「所属は……曽大佐と……川提督? 誰だ? 曽大佐の協力者か?」
提督「……なるほど」メヲヒラキ
提督「それにしてもやべえな、この『魔神の目』の力は。この島の海域に入った奴らの能力が見えるってのは、ちょっと便利すぎる」ハァ…
提督「いろいろ、見えたくないものまで、見えちまうぜ……」
(提督がそう呟いて、北東沖の政府専用艦艇の方角を睨みつける)
172 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:39:46.33 ID:QNJUjz5Qo
* 墓場島 北東沖 *
* 政府専用艦艇 搭乗口 *
敷波「よいしょっと。お邪魔しまーす」
初雪「……大丈夫?」
ヲ級「……」コク
ザワザワ…
「あれが深海棲艦……」ヒソヒソ
「本当に対話できるのか……」ヒソヒソ
「こんなに間近で見られるなんて……」ヒソヒソ
敷波「……」ムッ
ヲ級「……」
初雪「……なんか、好き勝手言われてる?」
敷波「気にしなくていいからね」
ヲ級「……」コク
173 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:40:31.01 ID:QNJUjz5Qo
ブリジット(敷波の艤装に搭乗)「むう……敷波殿はそう仰るものの、いい気分はしないでありますな!」ヒソヒソ
イサラ(初雪の艤装に搭乗)「……早く帰りたい」ヒソヒソ
エレノア(ヲ級の艤装に搭乗)「ほんと、気に入らないわね……お酒の匂いもしないし、話なんかささっと済ませて早く帰りましょ」ヒソヒソ
敷波「……みんな、こっちから手を出しちゃ駄目だからね?」
ブリジット「はっ! 重々承知であります!」
タタタッ
船員「よ、ようこそおいでくださいました……君たち……いや、あなたがたが、あの××島の代表……ということで良かったのでしょうか?」
敷波「うん。あたしの名は敷波です」
初雪「初雪、です……」
敷波「で、こっちは深海棲艦の空母ヲ級ちゃん」
ヲ級「……」チラッ
船員「おお……か、歓迎いたします。我々は日本政府より派遣された使節団です」
敷波「あー、握手はいらないよ。ヲ級ちゃんが握手できないから」
船員「あ、そ、そうか、これは失礼を……こほん、失礼しました」ピシッ
初雪(……気合入れ直したっぽい)
174 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:41:17.23 ID:QNJUjz5Qo
敷波「あたしたちが、司令官の代わりにあなたたちの話を聞きに来たんだけど……あなたが代表?」
船員「いえ、私はあなた方に船内を案内するよう仰せつかっています」
船員「本来ならば鎮守府の東沖まで、もう少し南下してからご挨拶に伺う予定だったため、我々の準備が整っておりません」
船員「恐れ入りますが、しばらくお待ちいただきたいのですが……」
敷波「あ、悪いんだけど、今回は話し合いはできないから、資料だけもらいたいんですけど。お願いできますか?」
船員「話し合いができない? それは、どういうことです?」
敷波「知ってるかもしれないけど、この島の南側の海に、ある海軍大佐の艦隊が、私たちと戦うために展開してるの」
船員「な……!? では、戦闘が……!?j
敷波「あ、まだ戦ってないし、私たちも戦う気はないよ。だけど、あっちがやる気満々らしくて、物々しい雰囲気になっててさ」
敷波「戦わずにどっか行ってくれれば一番いいんだけど、万が一でもこっちに流れ弾や魚雷が来たら問題になるじゃない?」
船員「え、ええ、問題ですね……そもそも今の状況下で艦隊を出すこと自体、大問題ですが」
敷波「この船の人たちはあくまで話し合いに来てるんだから、戦闘を回避したいなって考えてるんだけど、その保証がないからさ」
敷波「巻き込まれる前にすぐ退避できる準備をしておいてもらえないかな、って。それで早めに来てお願いをしに来たんです」
船員「なるほど……承知しました、使節団の代表にその話を伝えて判断を仰ぎますので、少しお待ちいただけますか」スマホトリダシ
敷波「わかりました、よろしくお願いしまーす」
175 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:42:00.50 ID:QNJUjz5Qo
エレノア「へー、ちゃんと話ができる人間もいるのね。まあ、そうじゃないと魔神さんが困るんだけど」
初雪「! 誰か来た……」
ビスマルク「Guten Morgen ! あなたたちがあの島の代表ね? ずいぶん早かったわね、あの提督は来ていないの?」
敷波「来てないですけど、えーっと……あなたは?」
ビスマルク「ああ、自己紹介はまだだったかしら。私はビスマルク、X大佐の艦娘よ」
敷波「ああ、X大佐の! お世話になってます、私は敷波です」ペコリ
初雪「初雪、です。あの、さっき、海でも海外艦娘に会ったけど……」
ビスマルク「ああ、レーベたちのこと? 彼女たちもX大佐の艦娘よ」
ヲ級「……」
ビスマルク「あなたと顔を合わせるのも、初めてだったかしら?」
ヲ級「……オソラク、ソウネ」
ビスマルク「そう、それじゃ、初めまして、ね。それにしても、本当に深海棲艦が話し合いの場に現れるなんて……感慨深いわ」ニコッ
ビスマルク「残念ながら、私はこの船の警備を任されているから、話し合いの場には参加できないけど」
ビスマルク「あなたたちの話し合いが、良いものになることを祈っているわ! また後で会いましょう!」ビシッ!
敷波「うん、ありがとねー……って、今日は話し合いはできないんだけどさ」フリフリ
176 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2023/11/06(月) 22:42:45.66 ID:QNJUjz5Qo
初雪「……X大佐もこの船にいるのかな」
敷波「かもねー」
ヲ級「……」
初雪「……大丈夫?」
ヲ級「? ナニガ大丈夫ナンダ?」
初雪「こんなにたくさん人がいて、緊張しないか、って思って」
ヲ級「……ソレハ、心配ナイ。ムシロ、オマ……アナタタチノホウコソ、人間ノ視線ガ気ニナラナイノ……?」
敷波「あー……」
初雪「……」
「こちらも不知火とかいう艦娘を頼りにしてるとはいえ、駆逐艦を使いに寄越すのか……」ヒソヒソ
「我々は国を代表してここに来たというのに……」ヒソヒソ
「それより、本当に深海棲艦と一緒にいるような艦娘を信用していいのか……?」
敷波「ま、いいんじゃない? 好きに言ってればいいよ、ふんっ」
ブリジット「実に大人の対応でありますな……!」
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