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【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.1

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575 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/06/17(土) 22:42:13.49 ID:EJLX27IQ0

というわけで一章のお話はここまで。
今回のシリーズを書くにあたって、あさひを十神や狛枝のようにかき乱す枠として描きたいというのが最初にありました。
前シリーズではなんだかんだ彼女は大人しかったので、今回は存分に暴れてもらおうと思っています。
あさひに限らず、これまでのシリーズでは描き切れなかったアイドルたちの描きたい姿を今回のシリーズでは拾っていけたらな〜というスタンスです。

さて、二章なのですが、実はもうあらかた書き終わっているので近日中にまた更新できるんじゃないかと思います。
一二週間は準備の時間を貰おうかとは思うのですが、また物語を始めました際は安価のご参加など是非よろしくお願いします。

それではお疲れさまでした。
またよろしくお願いします。
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/17(土) 23:33:45.05 ID:u4nefy1y0
お疲れさまでした。
書き方的に何となく1章はルカはほぼ確実で、多分あさひも死ぬと思っていたので、
事件発生時には、なるほど今回はこのパターンで来たか……!と面白く思いながら話がどんどん進んでいき、
最終的には最初の予想が当たっていたうえで想像とは三ひねりぐらい違った展開になっててすごく驚きました。
今後の展開がすごく楽しみです。
577 : ◆vqFdMa6h2. :2023/07/27(木) 21:36:33.57 ID:5pp+9EB+0
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   GAME OVER

イカルガさんがクロにきまりました。
  おしおきをかいしします。



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578 : ◆vqFdMa6h2. :2023/07/27(木) 21:37:43.46 ID:5pp+9EB+0

他の人から羨望の眼差しを受ける存在、そうそれこそがカリスマ!
ファンはもちろん、同じステージに立つものですらも魅了する彼女のカリスマ性はもはや神がかってすらいます。
ただ、生まれた時代が良くなかった。
人智を超えたような力は時として、他者からは畏れを持ってみられることがあるのです。

斑鳩さんはその槍玉に挙げられてしまいました。
長く、険しい坂の頂上で、今彼女は磔にされています。


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      ロンリネスの槍

 超研究生級のカリスマ 斑鳩ルカ処刑執行





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579 : ◆vqFdMa6h2. :2023/07/27(木) 21:39:45.74 ID:5pp+9EB+0

帝国の支配者モノクマが、兵士のモノクマーズに指示を出すと、一斉に5匹はその槍を構えました。
鏃には聖印が刻まれた、信仰の槍です。
それが“カミサマ”を貫こうとしているのだから皮肉なものですね。

ですが、彼女は悲嘆することも、みっともなく命乞いをすることもありませんでした。
彼女には強い芯があるわけではない、ただ一度悪路に外れたからには最後までその泥濘の中を進むと決めた意志がある。
頬を吊り上げ、目を細めてモノクマーズを見下ろしたかと思うと、その顔に向かって唾を吐きかけます。

そのことが誇り高き指導者モノクマの反感を買った!
モノクマが右手を下ろした瞬間、モノクマーズたちは槍を構えて突進!
磔になっている斑鳩さんは身動きを取ることもできず、その槍に四方八方から貫かれてしまいました。

ああ、カミサマ……
たくさんの人々に依存を受け、身勝手な投影を被り、救いをもたらさんとした……未来に息づくカミサマよ
私たちはそのお姿を見ることもなく、終わってしまうのですね。




と、その時!
近くの町内会でやっていたお祭りの神輿が処刑場に侵入!
参加しているクソガキどもはその神輿に神を乗せていることも、この馬鹿騒ぎも神へ捧ぐ興の一つだということもまるで理解せず、斑鳩さんの固定されている磔を倒して、踏みつけて、ズイズイと進んでいってしまいました。

____残ったのは、血に塗れてぐちゃぐちゃに踏み潰された哀れな人間の末路。
そこにカリスマらしい威光なんて、まるで見当たりませんでしたとさ。
580 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:41:49.47 ID:5pp+9EB+0



……カチッ

???『_____これ、ちゃんと撮れてるか?』



581 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:43:23.53 ID:5pp+9EB+0

ガタタ

???『あーあ、よし……いけてそうだな』

ガタ

ルカ『この映像を見てる私は今頃、何がなんだか訳分かんなくなってんだろうけど……安心しな。今の私は正真正銘のあんた、斑鳩ルカだ』


ルカ『この映像の記憶が今のあんたにはまるでないだろうけど……それは忘れちまってるからだ。それ以上でもそれ以下でもない』


ルカ『……っと、あんまり時間もないし用件だけ先に話させてもらうぞ』


ルカ『いいか? このコロシアイは避けられないコロシアイなんだ。これは私たちにとって決められていた道筋なんだ』


ルカ『だから逃げだそうだとか、抗おうだとか余計なことは考えるんじゃねーぞ』


ルカ『あんたが考えるべきなのはただ、このコロシアイを生き抜くということ』


ルカ『絶対に、死ぬんじゃねーぞ。死んだらあんたも……ほかの連中と【同じ】になっちまうからな』



___プツン

582 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:44:25.05 ID:5pp+9EB+0
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    CHAPTER 02

 退紅色にこんがらがって

  (非)日常編




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583 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:45:40.09 ID:5pp+9EB+0
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【夜時間 1F 女子トイレ】

ルカさんの事件の裁判が終わり、芹沢さんを寄宿舎の個室に戻した後。
私たちは学園内の女子トイレに集結していた。

灯織「七草さん、全てを詳らかにしていただきますよ」

にちか「……」

夏葉「あなたが隠し通路の存在を隠匿し、私たちを欺こうとしたことは変えようのない事実。あなたにはその説明の義務があるわ」

にちか「わかってます」

地上に上がってすぐに、私の自供した犯行内容の検証が行われた。
というのも、犯行における最も重要なピースである隠し通路は私とルカさん、そして芹沢さんしか知らなかった存在であり、
私たちが辿り着いた真相の意味を確認する上で、その立ち合いが必要だろうということになったのだ。
私は他の人が見守る中で、用具入れの壁を強く押した。

ゴゴゴゴ

すると、聞き慣れた音と共に壁は横にスライドしていき……
空洞が現れた。

真乃「ほわぁ……ほ、本当に隠し通路があったんですね……っ」

甜花「す、すごい……トイレの隠し部屋なんて、どこかの魔法学校みたい……!」

にちか「ここを進めば図書室に出られます。ついてきてください」

私に続いてゾロゾロと通路を進む。コンクリートで四方を囲われた空間は足音が過剰なほどに反響した。
ムカデのような足音が続くこと数十秒ののち、あの悪意の部屋へとたどり着く。

584 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:46:58.99 ID:5pp+9EB+0
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【B1F 隠し部屋】

めぐる「……っ!」

円香「……何? ここ」

流石に初めて訪れた人たちは面食らった様子だった。
明らかにこの部屋は異質。前にいた人間の息吹が、残り続け、それが今にも自分たちの尋常を蝕もうとしてくるのだから。

にちか「そこの壁付の扉から図書室に出られます。扉からは一方通行で、向こうからは入れません」

霧子「図書室に行くためだけの隠し通路ってことなんだね……」

にちか「というより、向こうから入るにはカードキーが必要みたいで。そのキーは持ってないのでどうしようもないんですよね」

灯織「カードキー……」

私は粛々と説明に徹した。他の人からの視線には明らかに不信が混じっていることを悟っているからだ。
下手な作り笑顔なんかすれば反感を買うだけだ。

585 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:48:36.66 ID:5pp+9EB+0

透「……ね、あれって聞いていいやつ?」

凛世「凛世も、足を踏み入れし時より……気になっておりました……」

そして、関心は当然【あれ】に惹きつけられていく。
異様だらけのこの部屋で、一際目立つ異様。もはや異常と言ってもいいかもしれない。
私たちにコロシアイを強いり、生と死とを嘲笑うモノクマの巨大な頭部。気にならないわけがない。

にちか「私にも、あれがなんなのかはわからないです。ただ、ルカさんはあれに手がかりがあるんじゃないかって言ってました」

にちか「今は故障してしまってるみたいですけど、内部のコードが引きちぎれちゃってるだけなので、それさえ補修すれば元通りになるかも……と」

恋鐘「ルカはこいを修理する気やったとね?! 」

樹里「おいおい……そんなことして大丈夫なのか? だって、モノクマだぞ?」

にちか「リスクがあることは承知の上。それでもこのモノクマが私たちの知らない何かを握っていること自体は確かですから」

円香「ちなみに、そのコードっていうのは?」

にちか「あ、そこの電子盤に書いてあるんですけど……」

円香「【SHU-1ケーブル】【YM2ケーブル】【HR-MKケーブル】【K-Bケーブル】【SG-TMケーブル】この5種類が必要なんだ」

甘奈「えっ?! ちょっと円香ちゃん、それ直すつもりなの?」

586 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:50:33.81 ID:5pp+9EB+0

円香「……別に。興味本位で見てるだけ」

透「んー、でも直すのはありじゃん?」

樹里「はぁ? ナシだろナシ! こんなの敵の罠に決まってるって!」

夏葉「……いえ、そう断ずるのも早計だわ」

樹里「えっ?」

夏葉「今の私たちは少しでも情報が欲しい。自分自身が置かれている状況も、今何が起きているのかも何もわからないままだわ」

夏葉「それを知るためなら藁にもすがる思い。まさにこのモノクマの頭部はその藁になり得る材料だと思わない?」

愛依「毒をくらわば皿まで……ってことだね!」

樹里「それ使い方合ってるか?」

めぐる「わたしも賛成……! このモノクマを直したからすぐに襲われるってわけでもなさそうだし……やれることは全部やってみたいかな!」

にちか「……今の所、ケーブルは一つも見つけられてないです。本当にこの学園の中にあるのかもわからないんで、当てにはしすぎない方がいいと思います」

夏葉「……そうね、それぐらいのスタンスで行かせてもらおうかしら」

モノクマの頭部の修理は全体で仮で進める案件となった。
少しでもルカさんの遺志が残ってくれるのは、ありがたいかな。
587 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:52:57.29 ID:5pp+9EB+0
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【にちかの部屋】

女子トイレと図書室を繋ぐ隠し通路の確認を終えると、私たちはそのまま解散することになった。
何も失うことのなかったはずの学級裁判で、信頼という大切なものを落としてしまった私たちに長く語らう意欲は残されていなかった。
今はただ、現実に向き合うだけの体力を取り戻したい。
それが総意だった。

「……帰って、きちゃった」

私は学級裁判で勝てなかった。
ルカさんとの約束を果たすことができなかった。
それどころか、私ははじめから芹沢さんに出し抜かれていて、惨めに踊らされただけだったんだ。

他の人を欺いたことに後悔がないとは言わない。
風野さんが私に向けた視線の冷たさに私は初めて軽蔑というものを知ったし、愛依さんの涙交じりに無実を訴える声は今も耳にこびりついている。
588 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:53:59.85 ID:5pp+9EB+0

無力感と罪悪感は心臓を内側からずんずんと突き破ってきそうで、ベッドの上で何度も身を捩った。
その衝動に任せて、首を括りでもすれば楽になるんだろう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

真乃「ルカさんがにちかちゃんに生きてほしいって……ずっとずっと思ってくれてたんだよね……?」

真乃「だとしたら、にちかちゃんはこれからを生きて……私たちと向き合ってほしいな……」

真乃「私は、にちかちゃんを信じてるよ……っ! 一緒に生きていける、【仲間】だって……っ!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

でも、そんな私のことをまだ信じると言ってくれた人がいた。

ただ、憎しむことができない不器用なだけな人なのかもしれない。私のように、口から出まかせを吐いただけかもしれない。そこに何の芯も通っていない空虚な信用かもしれない。

でも、その空洞は今からでも埋め尽くせることができる。贖罪なんて大層なものではない。約束一つ守れない人間が罪を注ぐことなんて不可能だ。
だからこれは、無謀な挑戦だ。今から信頼を取り戻すなんて絶対不可能な難題に、遮二無二に挑戦する。
たとえそれが叶わずとも、その挑戦の中で拓ける運命もあるかもしれないから。
そう盲信して突き進むしかない。
自分に何度も言い聞かせて、覚醒する瞳孔を何とか閉じさせた。

589 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:54:58.70 ID:5pp+9EB+0
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【School Life Day7】
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】


モノダム『キサマラ、オハヨウ』

モノダム『健全ナ学校生活ハ気持チノイイ挨拶カラ始マルヨ』

モノダム『キサマラモ、友達ニ会ッタラ大キナ声デ自分カラ挨拶ヲスルトイイヨ』

モノダム『ミンナ仲良ク、ネ』


みんな仲良く、なんて私から最も程遠い概念だ。
モノクマーズの放送でいきなり気が沈みかけたが、何とか自分を叩き起こして、ベッドから立ち上がる。
私は今の自分と向き合うって決めたんだ。
少しでも甘えている時間はないぞ。

いつも以上に忙しなく朝の支度をすると、私は食堂へと向かった。

590 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:56:09.68 ID:5pp+9EB+0
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【1F 食堂】

そして足を踏み入れた食堂で私は、予想だにしなかった光景を目にすることになる。





あさひ「あ、にちかちゃん。おはようっす!」





昨日学級裁判の終わりに、廃人状態に追い込まれたはずの芹沢さんが飄々と、いつも通りと言わんばかりに待ち構えていたのである。
591 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:58:05.73 ID:5pp+9EB+0

にちか「せ、芹沢さん……?! ど、どうして……?!」

あさひ「どうしても何も……ルカさんは死んじゃったっすけど、朝食会は続けるっすよね? いっつもこの時間には集まってたし、来ただけっすけど」

樹里「な……っ!」

あさひ「にちかちゃん、昨日はわたしが負けちゃったっすけど……次は負けないっすよ!」

みんな何かを言ってやりたいが、うまくまとまらず口籠る。
体を気遣うような言葉は仲間の仇にかけるには優しすぎるし、排斥するような言葉は自分たちよりも年下の少女にかけるには気が咎める。
とにかく厄介な立ち位置にいる相手だ。

あさひ「びっくりしたっすよ。目が覚めたら自分の部屋だったんで、あの裁判は夢だったのかと思ったっす」

甜花「いっそ、夢だったらよかったのに……」

あさひ「えー、ダメっすよ。あんなに盛り上がったのに勿体無いじゃないっすか」

夏葉「……あさひ、あなたが昨日やったことの意味と重大さは理解しているのよね?」

あさひ「昨日やったこと……ああ、ルカさんを殺しちゃったことっすか?」

甘奈「そ、そんな軽々しく言うんだね……」



あさひ「でも、あれって元はルカさん自身が望んだことじゃないっすか」



にちか「……!」
592 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 21:59:27.04 ID:5pp+9EB+0

あさひ「にちかちゃんにルカさんは自分を殺して欲しいって、そう言ったんっすよね? 自分の命を犠牲にして、わたしたちに生き延びてもらうのが元々ルカさんの希望だったはずっす」

あさひ「それで、わたしがルカさんを殺して何がダメなんっすか?」

その瞳はどこまでも真っ直ぐだった。
わたしがこの子に抱いていた第一印象は何一つ間違っていなかったんだと思う。
この場にいる誰よりも純真無垢。誰よりも等身大であり続ける彼女は、私たちの誰よりも早く、そして深くこの状況に適応してしまった。
彼女の白は、この学園に渦巻く悪意の色に染め上がっている。そのことに、彼女自身が違和感を抱くこともなく、疑問を持つこともなく。

あさひ「モノクマも言ってたっすけど、これはコロシアイのゲームなんっすよ? みんなはゲームに勝ちたくないんっすか?」

もはや生き死により先に、ゲームの勝敗が立つ。
彼女の底なしの好奇心は、歪な形に変えられてしまっていた。

円香「……」

霧子「……」

真乃「……」

私たちは彼女の瘴気に当てられたようで口を挟めずにいた。
彼女の発言は間違っている。必死に否定したい衝動は何度となく走るのだが、嫌なくらいに澄み渡った彼女の瞳がそれを許さない。
593 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:00:14.93 ID:5pp+9EB+0





愛依「ちがう……ちがうよ、あさひちゃん」





……だけど、一人だけは違っていた。
594 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:01:52.30 ID:5pp+9EB+0

愛依「こんなのゲームなんかじゃない、勝ち負けなんかないって!」

あさひ「愛依ちゃん? これはゲームっすよ? 他の人をいかに欺いて、自分だけが得をするかのゲームっす」

愛依「ちがう、ちがうって!」

あさひ「……ちがうって何がちがうんすか? ちゃんと教えて欲しいっす」

愛依「ちがう……何が、とかわかんないけど……今のあさひちゃんはずっと、間違ってるって!」

芹沢さんから向けられる、排他的な純真さを真正面から受け止めたその上で、怯むことなく手のひらを差し伸べ続けた。
口も立たない、理論もない。直向きに、ただ感情だけでぶつかっていった。
芹沢さんにはそれが響いているようには見えなかった。キョトンとした表情で、自分の方が正しいとまるで聞く耳も貸していなかった。

でも、傍目に見ていた私たちは違う。
和泉さんの無謀なその後ろ姿に、私たちは俄かに勢いづく。

恋鐘「自分の命も他人の命も、遊びなんかに使っていいもんじゃなか! もっとちゃんと……考えんね!」

夏葉「ルカが自分の命を賭したのはゲームに乗じたわけじゃない。あなたの独りよがりなプレーとは文脈を異にする覚悟よ」

真乃「あさひちゃん……お願い、今からでも考え直して……っ!」

あさひ「……あー、みんなはそういう感じなんっすね」



【おはっくま〜〜〜〜!!!!】



芹沢さんへの呼びかけで、勢いづき始めたところで、狙い澄ましたかのようにモノクマ達が割り込んできた。
私たちと芹沢さんの間に立つ連中。空気が読めないにも……いや、読めすぎているにも程がある。
595 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:03:36.42 ID:5pp+9EB+0

モノクマ「うぷぷぷ……キミはやっぱり面白いよ。今までにも色んなヤツがいたけど、そこまでゲームに真摯に向き合ってくれる奴は珍しいよ」

モノクマ「きっと芹沢さんは長生きするだろうね。このゲームではキミのようなヤツが強いんだ」

あさひ「えへへ、ありがとうっす!」

モノクマ「それに引き換えオマエラと来たら……さっきからなんだいなんだい! 命の価値だとかゲームに乗らないだとか!」

モノクマ「くだらないくだらない! オマエラの命の価値なんて、砂粒一つなんかよりも軽いんだよ!」

樹里「はぁ? アンタ、この前はアタシ達には未来があるって言ってたじゃねーか」

モノクマ「うぷぷぷ……そうだね、オマエラには未来があった。それは間違いないよ」

モノクマ「でもそれと命の価値はまた別の話だよ。何も為していない今のオマエラなんて、誰も必要としてないんだ」

めぐる「そんなことない! 人はみんな必ず……誰かに必要とされてるんだよ!」

モノダム「ソウダヨ。誰モガ、生マレテキタ意味ガアルンダ」

(えっ……!?)

モノダム「人ト人ガ巡リ合ッテ絆ガ生マレル。ソウシテ、意味ト価値ハ育ッテイクンダヨ」

モノタロウ「モ、モノダム! ダメだよ! そんなお父ちゃんに歯向かうようなこと言ったら!」

モノクマ「……」プルプルプルプル

モノスケ「あ、あかん! お父やんが怒りで体が震えとるで!」

モノファニー「いやー! 地震と雷と火事が同時にやってくるみたいだわー!」

モノクマ「モノダム……オマエと来たら……」プルプルプルプル
596 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:04:55.02 ID:5pp+9EB+0


モノクマ「なんて青臭くてかわいらしいんだ〜! 綺麗事を盲信して、厚顔無恥に演説するその姿!」ペロペロペロペロ

モノクマ「水彩画にしてリビングに飾りたいほどの愛らしさだよ〜!」ペロペロペロペロ

モノダム「ワァァァァ……」


(な、なんなの……? モノクマとモノクマーズは必ずしも意見が合致してるわけじゃないの?)

甘奈「ね、ねえ! 一体何しに来たの?! 今、甘奈たちは大切なお話をしてたんだけど……」

モノクマ「おっと、愛しの我が子の愛らしさに目的を見失うところだった!」

モノクマ「そう邪険にしないで欲しいな、今日はボクからオマエラに【プレゼント】があるんだ」

霧子「プレゼント、ですか……?」

モノタロウ「うん! キサマラの道を切り拓く、素敵なプレゼントだよ!」
597 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:06:29.12 ID:5pp+9EB+0

モノスケ「この才囚学園がずっとエグイサルで工事をしとったのはキサマラもよく知るところだと思うんやが……」

モノファニー「ぱんぱかぱーん! ついに一部のエリアの工事が終わったのよ!」

モノダム「キサマラガ行ケル範囲ガ広ガッタンダ」

凛世「行動圏内にいくつか閉まったままの扉がありましたが、そちらが開いたということでしょうか……?」

モノタロウ「えっとね、そうじゃなくてね。今までただの壁だったところの幾つかをエグイサルで取っ払ったんだ!」

灯織「か、壁を壊した……?」

モノファニー「具体的にいうと、一階の体育館前の廊下の横壁を取り壊したわ! これで行けなかった部屋もいくつか開放されてるのよ!」

モノダム「【二階】や【三階】ニモ上ガレルカラ、探索シテミテネ」

夏葉「……なぜ?」

モノクマ「はぬ?」

夏葉「なぜ、そんなことをするの? 私たちの活動領域を増やして……何が狙いなの?」

モノクマ「狙いなんかないよ、これはただの労い! オマエラは越えるべき障害をちゃんと超えてくれたからね。ソレに見合うだけのご褒美を用意したってだけのことだよ」

樹里「ご褒美なんて言われても信用ならねーよ、何か罠を仕掛けてるんじゃないのか?」

モノタロウ「そんなことないよ! むしろキサマラにとってプラスになる【宝物】も用意されてるからね!」

あさひ「えっ! 宝物っすか!? すごい、見つけてみたい!」

霧子「宝物ってなんなのかな……?」

モノクマ「それは見てみてのお楽しみ! 損だけはさせないから安心してよね!」

愛依「や、全然安心はできないけど……」

(絶対ろくなもんじゃないでしょ……)


【ばーいくま〜〜〜〜!!!!】


真乃「……行っちゃいましたね」
598 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:07:27.86 ID:5pp+9EB+0

樹里「なんかとっちらけになっちまったな……あさひのことでだいぶヒートアップしてたんだが」

あさひ「……?」

透「とりあえずは新しく行けるようになったとこ。見といた方がいいんじゃん?」

甘奈「甘奈もそれに賛成かな……手がかりは少しでも多いに越したことないよ」

愛依「あさひちゃんのことは大丈夫! うちがつきっきりで見とくから!」

あさひ「えー? 愛依ちゃん、わたしのペースにちゃんとついてきてくれるっすか?」

愛依「が、がんばるから……! もう、目は離さないかんね……!」

夏葉「愛依……ありがとう。あなたの想い、よく伝わってくるわ」

円香「……当の本人にそこまで伝わってないようですけどね」

灯織「監視というのなら、七草さんにも必要なのでは?」

にちか「……!」

灯織「前回の裁判、結論としては犯人はあさひでしたが……事実上の犯人は七草さんです」

灯織「そして何より、七草さんは私たちを欺き、裏切った事実がある」

出会った時から、壁を感じる人だとは思っていたけど今はそれとは比にならない。
風野さんとの間にできてしまった隔たりは、断崖のように大きい。
それほどまでにその口調は冷たく、鋭いものだった。
599 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:08:51.23 ID:5pp+9EB+0

真乃「だ、だったら……私がにちかちゃんにはついて行きます……っ」

灯織「さ、櫻木さん……?」

真乃「めぐるちゃん、今回は灯織ちゃんについていってあげてもらえるかな」

めぐる「う、うん……いいけど……」

(櫻木さん……この前の裁判の終わりから私に歩み寄ってくれてるけど、どうしたんだろう)

灯織「……なんで?」

誰も監視にはつきたがらないとでも思っていたのだろうか。
櫻木さんの申し出が余程予想外だったらしく、風野さんはしばらく面食らったような反応を見せていた。

まあ、それは私も同じこと。
櫻木さんのように、気が強いわけでもない、むしろ推しに弱いような女の子が殺人の前科がある私に寄り添おうとしているのかはよく分からない。

にちか「よ、よろしくお願いします……」

真乃「は、はい……こちらこそ……っ」

とはいえ、私には拒む権利もそんな気もない。
とにかく、自分に向けられたこの不信に挑み続けるとルカさんに誓ったのだから。
600 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:10:38.58 ID:5pp+9EB+0

探索のメンバー分担が終わると、すぐに全員が食堂を出て散策へと向かった。
残ったのは私と櫻木さんのただ二人。
……先に口を開いたのは櫻木さんだった。

真乃「なんで私が、にちかちゃんの監視を申し出たのかって……不思議に思ってますよね……?」

にちか「それは、正直……はい。私のこと、怖くないんですか?」

真乃「怖い……気持ちもあるかもしれません。でも、私が思ってるのは裁判終わりに言ったこととずっと同じなんです……っ」

(裁判終わりって……)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

真乃「あ、あの……っ!」

にちか「……なんです?」

真乃「えっと……正直、にちかちゃんがルカさんを……その……刺しちゃったのはまだびっくりしてて……」

真乃「許されることじゃないと、思う……けど……」

にちか「そんなの、言われなくたってわかってますよ」

真乃「で、でも!」

真乃「ルカさんはにちかちゃんに生きてほしいって……ずっとずっと思ってくれてたんだよね……?」

真乃「だとしたら、にちかちゃんはこれからの生きて……私たちと向き合ってほしいな……」

(……)

真乃「私は、にちかちゃんを信じてるよ……っ! 一緒に生きていける、仲間だって……っ!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

真乃「あの、嬉しかったの……にちかちゃんが、今日の朝もちゃんと朝食会に来てくれたのが……」

真乃「私たちと向き合ってくれるんだ……これからも私たちと生きてくれるんだ……」

真乃「私たちの仲間であり続けようとしてくれてるんだって、そう思えたから……っ」

櫻木さんの目は潤んでいて、言葉の一つ一つを口にするのにも肩を震わせていた。
その怯えは、殺人犯と接することに向けられたものではない。
自分との間にできた縁が途絶えてしまうこと、その手から真っ白な珠がこぼれ落ちてしまう事を惜しむ畏れだったのだ。

ほんの数日前に会っただけ。たまたま同じ状況に居合わせただけ。
それだけの関係性の相手をこれほどまでに慈しみ、尊ぶことができるなんて随分とできた人物だ。
601 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:11:56.71 ID:5pp+9EB+0

にちか「私が櫻木さんが思ってくれてるほど、大層な決断を下したわけじゃないんです」

櫻木さんの太陽のような眩しさが、自分自身に影を落としているのを感じている。
私は、こんな風にはなれない。学級裁判で出し抜こうとした独善主義な人間が何を望むんだって話だし、憧れるのも烏滸がましい。

にちか「ルカさんが前に言ってたんです。不可能なことだとしても、挑み続けることで拓ける運命はあるかもしれないって」

だからせめて、彼女の邪魔にはならないようにしようと思った。
どれだけ騙されても他の人を信じ続けようとする、その不器用な実直さが歪められてしまうことがないように。
その軽やかな足取りが、段差に蹴つまずいてしまうことがないように。



にちか「私が殺人に手を染めた事実は変わらないですし、失った信頼はもう取り返せないかもしれない。それでも……誰かと歩んでいくことだけは諦めずに、挑み続けていたいんです」


___私はせめて、彼女の成功体験の一つでありたいとそう思った。



にちか「な、なんて! すみません、なんか長々と! 変なこと言っちゃいましたかね!? 言っちゃいましたよね?!」

真乃「にちかちゃん……ありがとう、嬉しいなぁ……っ」

(ああ、ずるいなぁ……そんな風に笑える人、本当に羨ましい)

602 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/27(木) 22:14:36.35 ID:5pp+9EB+0

ひとまず本日は2章を始めるところまで。
なんだかんだレインコードの発売や我儘なままの開催があり、再開が遅くなりました……すみません。
ただ、その分3章までの書き溜めも進んだので……何卒

明日辺りから行動の指定を取りつつ進めていけたらなと思っています。
これからまたよろしくお願いします。
603 :ドタバタして放置気味でしたが、安価だけ出しておきます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/29(土) 21:47:33.44 ID:m1BaiMcd0
------------------------------------------------

真乃「そろそろ私たちも探索に向かおうか」

にちか「そうですね、とりあえずマップを見てみますね……」

にちか「新しく行けるようになったのは……」

〔校内〕

【1F 超研究生級の占い師の才能研究教室】
【2F 超研究生級のブリーダーの才能研究教室】
【2F 超研究生級のドクターの才能研究教室】

〔校外〕

【プール】
【カジノエリア】
【中庭 超研究生級の文武両道の才能研究教室】

真乃「ほわっ……一気に行けるところが広がったね……!」

にちか「基本は才能研究教室の類っぽいですけど、学校設備で開放されたものもあるみたいです。こりゃ見て回ると結構かかるぞー……」

真乃「が、頑張ろうね……っ!」

(さて、どこから回ろうかな……?)

【選択コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/29(土) 22:32:38.41 ID:0am4jOZi0
占い師の研究室
605 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/29(土) 22:44:34.93 ID:Es4PfSJF0

【コンマ41】

【モノクマメダル1枚を手に入れた!】

【現在のモノクマメダル枚数71枚】

------------------------------------------------

【1F 超研究生級の占い師の才能研究教室】

体育館前の廊下の壁の突き崩された先に、袋小路のような形で設置された部屋。
扉には怪しげな紋様が描かれていて、他の教室とも雰囲気が少し異なる。
ちょっとだけ緊張しながら、その扉を開けた。

(こ、これは占い師の才能研究教室か……!)

部屋の中央にこれみよがしに置かれた水晶玉やタロットカード。
壁にはドリームキャッチャーや卜占術の表がくっついていて、エキゾチックな空間といった感じ。
なんとなくいるだけで、踵が浮くような感覚がする部屋だ。

めぐる「ねえ灯織! 灯織はここの道具を使って占いができるの?」

灯織「うーん……知識として、なんとなく知ってはいる範疇だけど……自信はないかな」

(……風野さん!)

……まずったな。
この部屋の持ち主と早速出会してしまった。
向こうも視界の隅に私の存在を捉えたらしく、バツ悪そうに視線を逸らしてきた。

606 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/29(土) 22:45:26.71 ID:Es4PfSJF0

にちか「さ、櫻木さんこの部屋はもう見終わったってことで……」

風野さんの醸す敵対的な雰囲気にのされ、思わず及び腰な態度をとってしまう。
櫻木さんはそんな私の手を取って、静かに首を横に振った。

真乃「にちかちゃん……ルカさんの言葉、覚えてるよね」

にちか「ルカさんの言葉……」

真乃「灯織ちゃんともう一度仲良く……それは難しいかもしれないけど、そのことに挑み続ける価値はある」

真乃「大丈夫……私たちと向き合うって決めてくれたにちかちゃんなら……運命を切り開けるはずだよ……っ!」

にちか「……」

もう、勝手なことを言ってくれちゃうな。
一度啖呵を切った手前、引っ込みがつかなくなってしまっているのを見越してなのか、無自覚なのか。私の逃げ道を綺麗に櫻木さんは潰してしまった。

……いいよ、元からその気だ。
どれだけみっともなくても、どれだけ哀れでも、このスカスカの信頼に縋って生きていくと決めたんだから。
607 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/29(土) 22:46:22.09 ID:Es4PfSJF0

にちか「風野さん!」

灯織「……なんですか?」

にちか「ずっとずっと騙していて……ごめんなさい! 一番近くで、私のことを信じて、捜査を手伝ってくれていた風野さんにあまつさえ罪をなすりつけるような真似……」

にちか「どれだけ謝っても足りないのはわかってます! ですけど……私もこうして生き永らえてしまったからには……精一杯他のみんなのために出来ることをやるつもりなので!」

灯織「……それはなし崩し的な結論ですよね。学級裁判に負けてしまったから、この学園からの脱出に失敗したから。妥協の選択なだけです」

灯織「七草さんの言葉に信用もできません。なので、私はあなたの手を取ることも、あなたに手を差し伸べることもできないです」

めぐる「灯織……」

真乃「……」ギュッ

櫻木さんも八宮さんも言葉を挟まない。
これは当事者間の話だ、誰かに促されてその結論を歪めうるものではないし、そんなことは望まれない。
608 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/29(土) 22:48:21.49 ID:Es4PfSJF0

にちか「それでもいいです! 他の誰かから助けてもらう権利はとっくに失ってるのは理解してます」

にちか「一緒に歩むことが難しいのなら、その後ろをついて行かせて欲しいんです」

にちか「せめて、同じ道を行く存在ぐらいでは……いさせてもらえないですかね……?」

私に望めるのはこれくらいだ。仲間としての承認なんて高望みがすぎる。
下げた頭だって、風野さんの瞳には空っぽに映っているんだろうから。

灯織「……八宮さん、行こう」

めぐる「えっ!? う、うん……」

風野さんは傍に控えていた八宮さんに呼びかけた。

灯織「……勝手にしてください。七草さんがこれからどうするのか、それを止める権利は私にもないですから」

小走り気味に出ていくその背中を見ることは叶わなかった。
音が遠くに消えたのを確かめて、やっと顔を持ち上げる。

真乃「にちかちゃん……頑張ったね……っ」

にちか「頑張れた……んですかね、よくわかんないです」

真乃「きっと、今ので拓けた運命はあるよ。光も、音もしないけど……そんな気がしたんだ」

にちか「……ありがとうございます」

身に余る慰めを、胸にギュッと手繰り寄せた。

------------------------------------------------
〔校内〕

【2F 超研究生級のブリーダーの才能研究教室】
【2F 超研究生級のドクターの才能研究教室】

〔校外〕

【プール】
【カジノエリア】
【中庭 超研究生級の文武両道の才能研究教室】

【選択コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/07/30(日) 10:35:00.38 ID:eGye1jMx0
なるほどAAAはアナルのAだったのかー!なるほどなるほど
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 12:37:07.80 ID:8psmUWKcO
ドクター
611 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/30(日) 20:35:17.42 ID:ZszPDsn20

【コンマ80】

【モノクマメダル10枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数81枚】

------------------------------------------------

【2F 超研究生級のドクターの才能研究教室】

よくドラマとかで見る診察室ってこんな感じだ。
レントゲン写真を白板に貼り付けて、微妙に薄暗い電灯の下、丸い椅子に座って深刻な表情。
ただ完全にそれと言い切れないのは、周りに人体模型やら骨格標本やら、はては正体不明のホルマリン漬けまでが並んでいることに起因する。
どこかの遊園地のお化け屋敷にこんな感じの内装もあったな〜と思う。

恋鐘「な、なんか幽霊とか出そうな雰囲気ばい……」

霧子「恋鐘ちゃん、怖らがらなくていいよ……この子たちはみんな、おやすみ中だから……」

恋鐘「今後目を覚ます可能性があるばい?!」

霧子「ううん……そうじゃなくて……みんな、未来に向けて……過去の中に眠ってるんだ……」

恋鐘「タイムカプセルみたいなもんやね! 霧子は賢かねぇ〜」

……とはいえ、そんな不気味さは騒がしい二人組でかき消されていた。
612 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/30(日) 20:36:58.39 ID:ZszPDsn20

真乃「霧子ちゃん……この部屋の設備はどう?」

霧子「うん……私も専門的なことはそこまで分からないんだけど……簡単なケガの処置なら問題なくできると思うな……」

霧子「一般的な市販薬も一通り揃ってるから、病気も問題ないと思う……」

にちか「そう長居する気もないですけどケガの処置が出来るのは助かりますね!」

(……っ!)

自分で言葉を発した瞬間あの時の光景がフラッシュバックした。
私の手に握る包丁がルカさんの腹を貫いた、あの赤と熱で満ちた光景。
肌にいまだ生きている実感と恐怖が、頭から足先に突き抜けた。

霧子「にちかちゃん……ゆっくり深呼吸だよ……」

にちか「へ、え……?」

真乃「にちかちゃん、大丈夫……! 私たちがそばにいるよ……っ!」

櫻木さんにギュッと両手を握られて、その時初めて自分の体の震えに気がついた。
613 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/30(日) 20:37:57.70 ID:ZszPDsn20

恋鐘「にちかにとっても、辛い経験だったはずたい……焦らず、ゆっくり向き合えばよかよ」

にちか「あ……」

霧子「大丈夫、一人じゃないから……」

真乃「にちかちゃん、大丈夫……大丈夫……」

私を囲んで、大丈夫と何度も声をかけてくれた。
澄み切ったその声が浸透していくごとに、心臓は少しずつ落ち着きを取り戻していき、やがて私の焦点はやっとブレずに静止した。

にちか「す、すみません……ご心配をおかけしちゃいました」

真乃「ううん……仕方ないよ、みんなにとってショッキングなことなんだもん……当事者ににちかちゃんは尚更だよ」

霧子「自分のことを大切にしてあげて欲しいな……必要以上に責めちゃうと、にちかちゃんの中のにちかちゃんも弱り切っちゃうから……」

にちか「……はい」

そうは言われても、早々自分を赦せるようになるとは思えない。
未だルカさんの言葉を飲み込んで手にかけた自分が正しかったのか、間違っていたのか。
その答えが私の中で出ていないから。

……長く苦しみ続けよう。
そうじゃなきゃ、嘘だ。

------------------------------------------------
〔校内〕

【2F 超研究生級のブリーダーの才能研究教室】

〔校外〕

【プール】
【カジノエリア】
【中庭 超研究生級の文武両道の才能研究教室】

【選択コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/30(日) 20:50:26.77 ID:G6LFs/j80
【2F 超研究生級のブリーダーの才能研究教室】
615 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/30(日) 20:53:04.83 ID:ZszPDsn20

【コンマ77】

【モノクマメダル7枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…81枚】

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【2F 超研究生級のブリーダーの才能研究教室】

扉を開けた瞬間に鼻を撫でる獣の匂い。
ペットショップというよりは動物園の方が近いかもしれない。
動物が長くいる空間ってどうしてこう匂いが充満するんだろう。
犬や猫の類はいないけど、壁に埋め込まれているケージの数々には文鳥やインコがたくさん入っている。

真乃「ほわぁ……! 鳥さんがいっぱい……!」

にちか「櫻木さん、鳥が好きなんです?」

真乃「うん……! 休みの日には花鳥園に行くこともあるし、私自身仲良しの鳩さんもいるんだ……っ!」

真乃「セキセイインコさんにオウムさん、文鳥さん……! ハクセキレイさんにキジバトさん、シマエナガさんもいる……っ!」

(す、すごいはしゃぎようだ……)

夏葉「やはり動物との交流は癒しを与えてくれるわね。失ってしまった日常を少し思い出せるわ」

樹里「アンタ、ペット飼ってたのか?」

夏葉「ええ、カトレアという大型犬を飼っているの。人懐っこくて、そして気品ある子なのよ」

樹里「ふーん……」

有栖川さんに西城さん……ルカさんの裁判を受けて、かなり憤慨していた二人だ。
このコロシアイに屈してしまった私のこともよく思っていないだろうな……
616 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/30(日) 20:54:07.28 ID:ZszPDsn20

夏葉「……あら? 真乃とにちかもこの部屋に来ていたのね」

にちか「ど、どうも……」

樹里「おいおい……そんな怯えなくてもいいって」

にちか「い、いやでも私はつい昨日の裁判で皆さんを裏切った人間で、そのことに大分お怒りなのでは……?」

夏葉「ええ、憤りはいまだに治まることはないわね。たとえルカ本人が望んだことであろうとも、あなたは人を殺めるという最もあってはならない罪を犯した」

夏葉「でもあなたはその罪に正面から向き合うと決めたのでしょう?」

にちか「……!」

樹里「にちかは逃げずに今日の朝食会にもやってきて、そしてルカのことであさひにも怒りをぶつけてくれたじゃねーか」

樹里「裏切ったことと、そのことはまた別だ」

夏葉「ええ、あなたは信頼を全て失ってしまったと思っているかもしれないけれど、私はこれからあなたという人間を見定めていくつもりよ」

にちか「有栖川さん……」

樹里「あさひに比べれば、にちかはちゃんと反省してる分まだマシだかんな……」

真乃「あさひちゃん……このコロシアイに乗り気な様子でしたけど……」

夏葉「これ以上の横暴は例えあさひのような少女だとしても看過できない……対策は考えておくべきね」

樹里「お、おい……手荒な真似をする気じゃないだろな……」

夏葉「そこまでのことは考えていないわ。少なくとも、愛依が見張ってくれている今のうちは……ね」

芹沢さんにどう対処するのか、目下の一番の課題だろうな。
それにしても、私のことを受け入れようとしてくれる人が櫻木さん以外にもいてくれることが分かったのはちょっと嬉しいかも。

------------------------------------------------
〔校外〕

【プール】
【カジノエリア】
【中庭 超研究生級の文武両道の才能研究教室】

【選択コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 21:14:59.87 ID:bZQpE9V2O
カジノ
618 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:21:07.82 ID:m7gMFJ1H0

【コンマ87】

【モノクマメダル7枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…88枚】

------------------------------------------------

【カジノエリア】

学校の真正面に存在するやたら高い塀で区切られたエリア。
ずっと城門みたいな扉は固く閉ざされていたんだけど、今回の開放に伴ってここも行けるようになったみたい。
意を決して飛び込んでみると、もはや別世界。
ハリウッドのセレブが歩くような華やかな道の向こうに、これまた巨大な建造物。
金ピカで巨大なそれを、四方八方からギラギラとしたライトが照らしている。

真乃「ほ、ほわぁ……」

(櫻木さんが思わず言葉を失っている……)

甘奈「す、すごいよね……完全に、テレビで見る世界だよ……」

甜花「これ、もしかして……あの、大人の夢と希望で溢れている……テーマパーク的な、それ……!?」


【おはっくま〜〜〜〜!!!!】


モノタロウ「キサマラ、カジノへようこそ!」

甜花「や、やっぱり……!」
619 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:23:06.05 ID:m7gMFJ1H0

にちか「か、カジノ?! カジノってあの……お金とかを賭ける?!」

モノファニー「そう! ギャンブルと物欲のメッカ、カジノ!」

モノスケ「狂気の沙汰ほど面白いことでよく知られるカジノや!」

モノダム「デモ、ココハオ金ヲ賭ケル訳ジャナインダ」

にちか「……え?」

モノタロウ「ほら、学園の中でお父ちゃんの顔が描かれたメダルがいくつも見つかったでしょ?」

真乃「そういえば……私も何枚か拾いました!」

モノスケ「このカジノではそのメダルを専用のコインに換金してゲームに挑戦してもらうんや」

モノダム「ココデシカ手ニ入ラナイ道具ヤスキルモアルカラ、チェックシテミテネ」

カジノか……運にそこまで自信はないけど、メダルに余裕があるんだったらやってみてもいいかもしれないな。
また自由時間にでも空いた時があれば見にきてみよう。

620 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:24:11.96 ID:m7gMFJ1H0

甜花「なーちゃん、甜花に……全部預けて! 絶対、何十倍にもしてみせるから……!」

甘奈「て、甜花ちゃんすごい自信……!」

甜花「大丈夫……! この手のゲームは慣れてるから……」

甜花「ギャンブルには、必勝法があるんだ……!」

……甜花さんはのめり込みすぎなきゃいいけど。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
カジノエリアではモノクマメダルをカジノコインへと変換してゲームで遊ぶことができます。
ゲームは全部で三種類。
・スロットゲーム
スレ主と参加者それぞれ連続で三つのコンマを参照し、その合計値でスレ主との勝負を行う

・ここ掘れ!モノリス
裁判中の発掘イマジネーションと同様のシステムで規定回数で指定域内のコンマを出せるかに挑戦する

・じゃんけんゲーム
名前欄に!jyankenを入力することで表示される手で勝負する

このカジノコインでしか入手できないアイテム、スキルもございますのでぜひ自由行動の際にお試しください。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

------------------------------------------------
〔校外〕

【プール】
【中庭 超研究生級の文武両道の才能研究教室】

【選択コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1

621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 21:32:46.80 ID:0vpe+wH9O
プール
622 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:34:22.39 ID:m7gMFJ1H0

【コンマ80】

【モノクマメダル10枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…98枚】

------------------------------------------------

【プール】

校舎に隣接する形で建てられていた屋内プール。
前に見ていた時は中が見えないほどに蔦が生い茂っていて、ほとんど廃墟みたいになっていたけど、今は中の照明も灯り、新品同然に清掃もされている。
これをモノクマーズたちがやったのかな?
だとしたらまあまあ重労働な気がする……。

あさひ「すごい! 飛び込み台高いっすね! あそこからジャンプしたらすごい水飛沫が上がりそうっす!」

愛依「ひゃ〜〜〜! こわ! あさひちゃん、やる時はみんなに相談してからにしよ?」

あさひ「えー、いちいち面倒っすよ〜」

(……っ!)

(芹沢……さん……っ!)

ダメだ、彼女の存在に気づいた瞬間に心臓の鼓動が激しくなる。
血は沸騰したようで、手には血管が浮き上がり、奥歯同士が擦れ合う。
掴み掛かりそうになる衝動を抑えるので必死だ。

真乃「に、にちかちゃん……」

櫻木さんの存在がストッパーになっている。
努めて息を整え、狭窄する始解の中央の少女をじっと睨みつけた。
623 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:35:48.26 ID:m7gMFJ1H0

あさひ「あ、にちかちゃん。どうっすか? だいぶ行ける範囲は広がったみたいっすけど」

にちか「……」

あさひ「これだけ色んなものがあるとまたゲームが面白くなりそうっすよね!」

真乃「ゲーム……あさひちゃんは、まだこのコロシアイに乗る気なの?」

あさひ「はいっす! 当たり前じゃないっすか! こんな非日常の体験、普通じゃできないっすもん」

あさひ「せっかくなら、わたしはこのゲームを誰よりも楽しんで、そして勝ってみたいんっすよ!」

やっぱりこの子には何を言っても効かない。
一度死を体験したにも関わらず、他人の生死を何とも思わないままの相手に、説得なんて効くわけがないんだ。

愛依「……あさひちゃんはまた、うちらの誰かを殺す気なん?」

あさひ「んー……今はまだその気はないっすね。ちゃんと勝てる準備を整えてからじゃないと」

あさひ「ほら、にちかちゃんは強敵っすから!」

(……っ!)

にちか「私は、このゲームに乗る気なんかない……! あなたと勝負なんかする気はないよ!」

あさひ「えー、つれないっすね。にちかちゃんとの勝負は面白かったのに」
624 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:37:26.68 ID:m7gMFJ1H0




愛依「それじゃあさひちゃん、うちと勝負しよ」




にちか「え……?」

真乃「ほわっ……!?」

あさひ「愛依ちゃんと? うーん、このゲームで愛依ちゃんはそんなに強いわけじゃなさそうっすけど」

愛依「ううん、うちとあさひちゃんの勝負はこのコロシアイじゃなくて……」



愛依「うちがあさひちゃんを止められるかどうか」



(愛依さん……!)
625 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:40:27.37 ID:m7gMFJ1H0

愛依さんの強張った表情には緊張以上の覚悟が見えた。
思えば愛依さんはこの学園に来た時からずっと最年少の芹沢さんのことを気にかけて、面倒を見ていた。
そんな相手を止めることができなかった後悔と責任が今の愛依さんを突き動かしているんだろう。
その全てを推し量れはしないけど、私が芹沢さんに感じている怒りと同じぐらいの出力の感情がひしひしと伝わってくる。
そんな愛依さんをまじまじと見つめた後、芹沢さんはまた無邪気に笑った。

あさひ「あはは、愛依ちゃんにできるっすか?」

愛依「あんま舐めない方がいいよ。うち弟とのチャンバラは百戦錬磨だかんね」



あさひ「……ふーん、それじゃちょっと期待しとくっす」

そういうと芹沢さんは奥の倉庫に引っ込んでしまった。
姿が見えなくなると、緊張の糸が切れたように愛依さんは息を吐き出した。

愛依「あさひちゃん、すごいプレッシャー……はー、なんかベツジンみたい」

真乃「愛依さん……だ、大丈夫ですか?」

愛依「うん、ダイジョーブ! 一度吐いた唾はうち、飲み込まないから!」

にちか「そ、それ使い方合ってます……?」

愛依さんに駆け寄り、その肩を支える私と櫻木さん。
愛依さんだって昨日の今日でだいぶ参っている。
それなのにここまで背負い込むこともないのに。
626 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:41:22.90 ID:m7gMFJ1H0

にちか「あ、あの……無理だけはダメです! 芹沢さんは最重要警戒人物ですんで、あの可愛さに油断しちゃダメですからね!」

愛依「にちかちゃん……あんがと。でもさ、これはうちが決めたことだから」

愛依「これ以上あさひちゃんに辛い思いはさせらんない」

真乃「辛い思い……ですか?」

愛依「うん、あさひちゃん自身は気づいてないかも知んないけどさ。他の人の命を奪って、何も思わないはずがないって」

愛依「あさひちゃんの中の何かがカクジツに、すり減ってるような……そんな気がするんだよね」

私たちはルカさんのことで、その憎しみをぶつけるばかりだったが、愛依さんだけは違った。
愛依さんははじめから今に至るまで、ずっと芹沢さんという一人の人間に向き合い続けている。
私たちの手を愛依さんは振り解くと、そのまま芹沢さんを追って倉庫の方へ。

愛依「二人とも、サンキュね! うちだけで抱えきれなくなったら……みんなの力も借りるから!」

(愛依さん……)

その背中を見守りながら、自分の胸の中に燻る何かを探していた。
627 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:44:15.47 ID:m7gMFJ1H0


真乃「プールの調査は私たちもちゃんとやっておこう……!」

にちか「はい! 結構深くてでかいプールですよね……プールサイドから手を伸ばしても水面に手が届かないくらい」


【おはっくま〜〜〜〜!!!!】


モノダム「キサマラ、プールニ入ル時ハチャント水着ニ着替エテカラ、ダヨ」

モノファニー「制服のままプールなんて、清涼飲料水のCMみたいな青春は許さないんだから!」

モノタロウ「透け透けの制服なんて第二次性微もまだのオイラには刺激が強すぎるんだよ〜!」

にちか「別に私たちはプールに入ろうとしてたわけじゃないよ。どんなもんか確かめようとしただけで」

モノスケ「ほーん。まあええわ。そこの【利用規則】にも書いてあることやから気をつけるんやで」

真乃「ほわっ……利用規則……ですか?」
628 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:45:08.09 ID:m7gMFJ1H0

モノタロウ「うん! キサマラに安全にこのプールで遊んでもらうために定めたルールがあるんだ。よく読んでおいてね!」

『プールを使う時のルール!
@プールで泳ぐ時は水着に着替えてからにしてください
A夜時間のプールの利用は禁止です。敷地内に入ることは可能です。
B入念にストレッチをした上で泳ぐごと!』

にちか「まあ……ごく一般的なルールですね。気にした方がいいのは夜時間に使えないってのぐらい?」

モノタロウ「夜に水に浸かると良くないからね! 親の死に目に会えなくなるって言うから!」

モノスケ「その点ワイらのお父やんが死ぬことはあらへんから安心やな! 夜でもジャブジャブや!」

モノダム「……」

モノスケ「じょ、冗談やて……ワイもルールは守る。プールは夜は使わん」

モノファニー「夜はどうしても暗いから水難事故が発生しやすいでしょう? それを防ぐためのものなのよ」

(殺しあえとか言っておきながら、事故の防止だとか曰うダブスタはなんか腹立つな……)

真乃「でも、これはみんなに共有しておいた方がいいかもしれないね。万が一があっちゃいけないから……っ!」

にちか「まあ、そうですね。情報として持ち帰っときますか」

629 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:46:05.60 ID:m7gMFJ1H0


にちか「このプール、ちょうど校舎と体育館の間なんですね」

天井の方を見ると、プール側に向けられた窓が両サイドに見つかる。校舎側は三階だろうか、かなりの高さのところにあるみたい。

真乃「高校でプールが学校の中にあるって珍しいね……!」

にちか「あー、言われてみればそうですね。櫻木さんの学校はどうでした?」

真乃「私は中学校から、近くの市民プールで授業はやってたかな……今の学校にもプールはないはずだよ……っ」

にちか「ああ言うのって結構地域性ありそうですよね!」

(そういえばみんなって共学……なのかな)

(だとしたらプールの授業、男子の視線を集めそうな人が何人か……)

(うーわ、なんかおじさんくさいこと考えちゃったな。我ながらキモすぎ)

630 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 21:47:25.21 ID:m7gMFJ1H0


プールの奥には重厚なスライド式の扉で区切られた空間がある。プールで使うための道具が収められた倉庫みたいだ。

真乃「さっきあさひちゃんも入っていった倉庫だね。浮き輪が沢山……競泳用のレーンの浮きもある……」

にちか「これは空気入れですかね? 色んな使い方ができるプールみたいですね」

にちか「……芹沢さんが変なもの持ち出したりしてないといいけど」

真乃「愛依ちゃんが見てくれてたし大丈夫だと思うよ……?」

そうして中を漁ること数分。

にちか「……あれ? 櫻木さん、ちょっとこれ」

真乃「どうしたの、にちかちゃん? ……ほわっ、これって」

私は、浮き輪の一つに不自然な筋のようなものが通っているのを発見した。
明らかに後で入れられたような、不細工なやり方のテープで誤魔化してある。

にちか「中のもの、取り出してみますね!」

私はその場で浮き輪のゴムを引きちぎってみた。
すると中から出てきたのは……ケーブルだ。

真乃「みたことがない形式のケーブルだね……」

にちか「ですです……えっと、【SG-TMケーブル】って書いてあります」

真乃「そ、それって……!」

(これ、隠し部屋の巨大なモノクマの頭の修理に使うケーブルの一つだ!)

にちか「これ、持ち帰って皆さんに共有しましょう! もしかしたら大きな手掛かりになるのかも!」

真乃「う、うん……!」

まだ五つあるうちの一つ目だけど……大きな進歩だ。
ルカさんの遺志を果たす一歩を踏み出すことができたんだ……!

------------------------------------------------

【選択肢が残り一つになったので自動進行します】

【直下コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 22:11:41.67 ID:ercE9qOPO
632 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:13:23.72 ID:m7gMFJ1H0

【コンマ67】

【モノクマメダル7枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…105枚】

------------------------------------------------

【超研究生級の文武両道の才能研究教室】

エグイサルによる整備はどうやら建造だけでなく、敷地内の草刈りや舗装なんかもやっているらしい。
中庭の方に来てみると、これまで雑草が生い茂っていたところが借り尽くされ、日本式の道場のような建物が姿を現していた。

真乃「これは、超研究生級の文武両道の才能研究教室みたいだね……」

にちか「っていうと有栖川さんのか……行ってみよう」

こんな道場に足を踏み入れるなんてほとんど経験ないし、心の中で「頼もう!」なんて唱えちゃったりして。
そんなちょっと浮かれ気分で扉を開けたら、



「わあああああああああ!?!?」


ドシーン!


急に人が飛んできた。


633 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:15:10.04 ID:m7gMFJ1H0

凛世「にちかさんに、真乃さん……!? 申し訳ありません、お怪我は……!?」

にちか「だ、大丈夫です……こ、これは……!?」

夏葉「痛た……やるわね、凛世……」

私の足元からすくりと立ち上がったのは有栖川さん。
正面に構えている杜野さんと揃って二人は道着を着ている。

樹里「ったく……なーにやってんだ。だらしねーぞ、夏葉!」

夏葉「やるわね、凛世……まさかここまでの使い手だとは思っていなかったわ」

凛世「ふふ……今のが凛世の持つ全てだと思われたのならば……まだ甘いと言わざるを得ません……」

何やら不気味な気を放つ杜野さんと少年漫画的な雰囲気を醸し出す有栖川さんの横をすり抜けて、壁にもたれかかって座っている西城さんの元へ。
どうやらここは安全圏らしい。

真乃「二人は、何をしてるんですか……?」

樹里「もともとここはアタシたちの3人で調べてたんだけどよ。夏葉のやつが道着を見つけてきて」
634 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:17:13.64 ID:m7gMFJ1H0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

夏葉『樹里、凛世! あなたたち、日本武道の心得はあるかしら』

樹里『は? 急にどうしたんだよ』

夏葉『いや……これをみてちょうだい。どうやらこの教室には人数分の道着が揃えられているようなのよ』

夏葉『私は幼少期から色んな学問やスポーツを収めてきたのだけど、その中に日本武道も含まれているの』

夏葉『ふふっ、久しぶりにこの道場と道着を見ていたら昂ってしまったのよ!』

樹里『昂ってしまったのよ! と言われてもな……アタシは体育でも剣道選択だったし、柔道とか空手とかは……』

凛世『夏葉さん……ご存じかどうか……』

凛世『山陰は平家の落人が身を隠し、芸を磨いた武道の聖地……』

凛世『合気の心得なら、凛世も少々……』

樹里『な、マジか……!?』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
635 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:18:39.56 ID:m7gMFJ1H0

樹里「ってな流れであーなってる」

夏葉「一本、いただくわ!」

凛世「させません……!」

にちか「そ、それは災難でしたね……」

樹里「熱くなったらどっちも聞かなくてよ……収まるまでここで待ってるってわけだ」

真乃「ほわ……いつから二人は組み合ってるんですか……?」

樹里「あー、かれこれ1時間近くは」

にちか「ま、マジです?」

樹里「マジだよ。ほら、二人ともそろそろ水分補給しとけ。無茶すんなよー」

樹里「ほら、にちか、真乃。ここはアタシに任せて別の所に行きな。ここにいるといつアンタらまで巻き込まれるかもわからねーから」

にちか「さ、櫻木さん……」

真乃「う、うん……っ!」

私と櫻木さんはそそくさと研究教室を後にした……
636 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:19:31.80 ID:m7gMFJ1H0

にちか「これで一通り、一階と二階までは見終わりましたねー」

真乃「次はいよいよ三階に上がるんだね……?」

(三階、か……外観だけ見ているともっと高さはありそうな校舎だけど……)

(上の階では何が私たちを待ち受けているんだろう……?)

【3F 超研究生級のスポタレの才能研究教室】
【3F 超研究生級のコメンテーターの才能研究教室】

【選択コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/07/31(月) 22:26:36.32 ID:mtpH2ETM0
【3F 超研究生級のスポタレの才能研究教室】
638 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:35:25.67 ID:m7gMFJ1H0

【コンマ32】

【モノクマメダル2枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…107枚】

-------------------------------------------------

【3F 超研究生級のスポタレの才能研究教室】

他の教室に比べると随分と広い空間だと思ったけど、研究対象の才能の都合上致し方ないのだろう。
ゲームをするには十分な広さのテニスコートに、野球のピッチング練習もできるようなマウンド、サッカーのストラックアウトのようなものも見える。
雑多な種類のスポーツが集められている感じが、ゴールデン帯のスポーツバラエティといった感じだ。

めぐる「うーん、ここなら色んなスポーツができそうだよ! 体を思いっきり動かせる場所がちょうど欲しかったんだ!」

灯織「八宮さんは色んな部活の手伝いをしてたんだっけ」

めぐる「うんうん! 灯織はどう? 好きなスポーツってある?」

灯織「私は……スポーツにはあんまり詳しくないから」

(……!)

し、しまった……そりゃそうだよね。
八宮さんと一緒に行動してるんだからここには風野さんも来ているはずだ。
さっきの今のこともあって、お互いなんとなく気まずいぞ……
639 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:37:24.62 ID:m7gMFJ1H0

めぐる「……! 灯織、あっちシャワールームになってるみたいだからちょっと見てきてもらってもいい?」

灯織「え? いいけど……八宮さんは?」

めぐる「ちょっとお話! ごめんね!」

八宮さんは適当に理由をつけると風野さんを奥の別の部屋に差し向けてから、私たちの方に駆け寄ってきた。

めぐる「お疲れ様! 調査はどんな感じかな?」

真乃「う、うん……あのね、私も才能研究教室が見つかって……鳥さんと一緒に過ごせそうなんだ……」

めぐる「わー! よかったね、真乃ー!」

にちか「あー……えっと、その……」

めぐる「あ、そうだったそうだった! ちょっとにちかちゃんと灯織のことでお話がしたくて……」

にちか「な、なんでしょう……」

めぐる「灯織も、本当は分かってると思うんだ。にちかちゃんが昨日のことを全力で反省してて、自分のやったことに向き合おうとしてるって」

めぐる「それでもそれが中々受け入れられずにいるのは……灯織の中の【壁】の問題だと思うんだ」

にちか「壁……ですか」

めぐる「灯織は私たちと接する時も、少し引いた目線で話そうとして、深いところに踏み込むのに躊躇してる。それは灯織がすごく優しいからだと思うんだけど、それと同時に灯織は摩擦のある接し方に抵抗があるんだと思うんだ」

八宮さんの見立てにはすんなりと同調できた。
風野さんは私たちに対して、言葉を慎重に選んで話している節がある。
適切な距離感をずっと測っているというか、常に安全な膜の向こう側にいようとする感じだ。
640 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:38:46.70 ID:m7gMFJ1H0

にちか「傷つくのを恐れてる……ってことです?」

めぐる「うーん、どうなんだろう……ハッキリとは私も分からないや」

めぐる「でもね、そうだとしても灯織はそこから逃げるような女の子じゃないよ。そうだったらとっくにわたしたちからも距離を置かれちゃってる……かも、えへへ」

めぐる「少し時間はかかるかもしれないけど……さっきのにちかの言葉だって灯織に届く日はきっと来ると思うんだ!」

こちか「八宮さん……」

めぐる「わたしに出来るのは側で応援することぐらいだけど……灯織とにちかの二人ならきっと仲直りできるってそう思うな!」

めぐる「あ、急に下の名前で読んじゃってごめん……つい」

にちか「い、いや大丈夫です……けど」

少し驚いた。
八宮さんはもっとパーソナルスペースとか気にせずグイグイ踏み込んだり引っ張ったりする人だと思っていたから、
状況を静観するような姿勢は予想していなかった。
この歩み寄りはすごく有難い……かな。

めぐる「わたしも、少しずつだけど灯織とお話ししてみようと思ってる。もちろんにちかのことを勝手に話したりはしないから安心して!」

めぐる「でも、今の二人がすれ違ったままで終わってほしくはないから……」

にちか「……どうもです」
641 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/07/31(月) 22:39:47.89 ID:m7gMFJ1H0

キィ

灯織「……終わった?」

ちょうど八宮さんの話が終わったタイミングでシャワー室から風野さんが顔を出した。
しばらく出るタイミングを窺っていたのだろう、なんとなくバツ悪そうな顔をしている。

めぐる「うんうん、ありがとー! どうだった?」

灯織「えっと……シャワーの個室が三つ併設であったのと……窓が付いてて、そこからはプールが見渡せるみたい」

(ああ、そういえばここの三階はプールを挟んで体育館と隣接している構造なんだ)

灯織「それ以外は特に気になったものはないかな。運動終わりに八宮さんも使ってみるといいと思う」

めぐる「わかった! そうするね!」

灯織「……では、失礼します」

風野さんは私と視線を合わせることなくそのまますごすごと出ていった。
今はまだ、この蟠りはどうしようもないけど周りで支えてくれる他の人たちの存在があれば、いつかは。
そんなことを願ってしまうな。

------------------------------------------------

【選択肢が残り一つになったので自動進行します】

【直下コンマの末尾の数ぶんモノクマメダルを獲得します】

↓1
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/01(火) 11:28:23.31 ID:dWdUSs8LO
643 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 21:56:07.64 ID:34Zm1vKx0

【コンマ31】

【モノクマメダル1枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…108枚】

-------------------------------------------------

【超研究生級のコメンテーターの才能研究教室】

三階で新しく解放されているのはもう一部屋。
これまた結構大きなスペースを陣取っている才能研究教室なのだけど……
その持ち主は、不機嫌そうな表情で扉の前に陣取っていた。

円香「……入室禁止」

にちか「え、ええ……?」

真乃「円香ちゃん、そこって円香ちゃんの才能研究教室なんだよね? 何かあったの……?」

円香「なんにもない」

にちか「や、だったら……」

円香「ナン・ニモ・ナイ」

(うぅ……とりつく島もない)
644 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 21:56:49.28 ID:34Zm1vKx0

透「あー、ダメだよ。私も入れてくんないから」

にちか「浅倉さん……これって?」

透「分かんない。先に部屋に入った樋口が、そっから血相変えて」

透「ここには誰も入れないの一点張りよ」

真乃「ほわ……何か、見られたくないものがあったんでしょうか……」

円香「悪いけど、微塵たりとも譲歩するつもりはないから。他を当たって」

透「ってさ」

(うーん、これはテコを使っても動きそうにないぞ……)

透「あ、そういや別件いいすか」

にちか「別件? なんですか?」

透「じゃじゃーん、なんとかライト〜」

浅倉さんがこれみよがしに出してきたのはどこかの国民的アニメで出てきそうな、ポップな色合いの懐中電灯。
だけどその周辺には見慣れないコードのようなものがいくつかくっついている。

透「これ、そこの宝箱に入ってたんだよね。あれじゃん? モノクマーズの言ってたプレゼントっての」

真乃「で、でもただのライトじゃないのかな……?」

透「んー、わっかんない。とりあえず後で食堂に持ってくから。そこで色々試してみよ」

正体不明の懐中電灯……?
ただのライトじゃないの……?
捜査が終わったら食堂に行ってみるか……
645 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 21:57:44.32 ID:34Zm1vKx0
-------------------------------------------------
【食堂】

一通り新しく解放されたエリアの探索を終えた私たちは、浅倉さんの持ち帰ったライトの検証をするために食堂へと集まっていた。

夏葉「ふぅ……いい汗をかいたわね、凛世!」

凛世「はい……ここまで、本意気の凛世を出せたのは久方ぶり……まだ血が沸いております……」

樹里「おいおい、まだやる気かよ……」

甜花「甜花も、今から血が沸きたってる……これは勝負師としての、カン……!」

甘奈「甜花ちゃんに甘奈はオールベットだよ☆」

(結局甘奈さんは甜花さんに全部メダルあげるんだ……)

愛依「あれ、肝心の透ちゃんはまだなん?」

あさひ「透ちゃんの見つけたライト? 気になるっす〜!」

灯織「私たちにとってプラスになるものとモノクマーズは言っていましたけど、実際のところはどうなのでしょうか……」

浅倉さんは、私たちの集合から少し遅れてやってきた。
どうやら樋口さんの説得に手こずったらしい。
苦い表情をした彼女を見るに、渋々合流をしているらしい。
646 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 21:59:10.08 ID:34Zm1vKx0

円香「ちょっと……私はあそこを離れたくなかったんだけど」

透「まあまあ、みんなに共有しとかなきゃなことだからさ。仲間はずれも良くないし」

円香「……」

あさひ「透ちゃん! 見つけたライトってなんなんすか?!」

透「おー、これなんだけどさ」

恋鐘「見たところ、普通の懐中電灯ばい。こいがモノクマーズの言うとった宝物?」


【おはっくま〜〜〜〜!!!!】


モノタロウ「おっ! ちゃんと発見できたんだね! チパチパチパ〜!」

モノスケ「手の甲で拍手しとるで……器用なもんやな」

モノファニー「それがアタイたちとお父ちゃんで用意した宝物の【思い出しライト】よ!」

にちか「お、【思い出しライト】……?」

ライトの前についている聞き馴染みのないフレーズに思わず反芻する。
647 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:00:35.67 ID:34Zm1vKx0

モノクマ「思い出しライトはその名の通り、オマエラの失った記憶を取り戻させてくれるライトなんだ」

モノダム「今ノキサマラハ、アル時カラノ記憶ガナイ記憶喪失状態ナンダケド……」

モノダム「コレハ、ソノ【記憶ノ一部】ヲ呼ビ覚マス効果ガアルンダヨ」

愛依「記憶ソーシツ……?」

霧子「誘拐されて、この学園にやってくるまでの記憶のことかな……」

霧子「みんな、どうしてこの学園にいるのか。ここまでどうやってきたのか覚えていなかったよね……?」

私たちは思わず顔を見合わせた。
そういえば、この学園生活が始まった時、ルカさんも同じことを言っていた。
私たちは全員、どうしてここに居るのか、どうして私たちが選ばれたのかが分からない。
外の世界が今どうなっているのかも、今が最後の記憶からどれほど経った時なのかも、全てが真相不明の闇の中に眠っている。
648 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:02:36.41 ID:34Zm1vKx0

樹里「このライトを使えば、そのヒントがもらえるってのか……?」

モノクマ「そういうこと! みんなで仲良くこのライトを浴びてくれればそれでOK!」

モノクマ「このライトから照射される光線は視神経を通って脳の視床下部の分泌系に作用して……」

モノクマ「まあ細え理屈はどうでもいいよね! 浴びれば分かるさ、浴びねば分からぬさ、それだけの理屈!」

(……どうなんだろう)

(確かに今の私たちの記憶はどこか抜き取られたようにがらんどうになっているけど……)

(モノクマの言うことを信用して、このライトを浴びてもいいのかな)

(そもそも、ライトの光を浴びたぐらいで記憶が戻るなんてことが______)

みんなきっとそんなことを考えていたんだと思う。
この最悪だらけの学園で見つかる、新しい未知に身構えない道理がない。

だから、みんな彼女の行動に、一歩遅れてしまった。

649 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:04:58.22 ID:34Zm1vKx0

あさひ「みんな、これ使わないんっすか?」ヒョイッ

透「あ、やば。取られた」

愛依「ちょ、あさひちゃん! 待って! みんなでもーちょい話し合ってから_____」

あさひ「使わないんじゃ意味ないっすよ」

カチッ

芹沢さんは私達が制止の手を伸ばすよりも先に、そのライトのボタンを押してしまった。
ライトから飛び出た光はそのまま私たちの目の中に飛び込んでいき、そのまま脳にまで一気に突き抜けていって……



______白い世界の中に、それを見た。



650 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:06:11.04 ID:34Zm1vKx0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ガッシャーン!


学生A「なあ、お前なら持ってんだろ? お前んとこの親父は……県議会の議員なんだからよ」

学生B「ち、ちがう、僕も持ってないんだ……て、テレビで見ただろう? あれは公平にランダムで選ばれた人だけに配られるモノで……」

学生A「そんな訳ねえ! 俺はネットで見たんだよ! 優先的に権力者の親族に配られてるってな!」

学生B「そんなのでまかせだって! ただの陰謀論だよ!」

学生A「うるせえ! さっさと出しやがれ!」

ガッシャーン!

学生C「おい! トイレにはいなかったぞ!」

学生D「探せ探せ! あいつは開業医の一人娘だぞ……絶対持ってるに違いない」

学生E「ぶっ殺してでも奪い取れ! じゃなきゃ俺たちにチャンスなんか一生回ってこない!」

ガッシャーン!

にちか「……最悪最悪最悪」

にちか「もう授業どころじゃない……先生だって頼りにならない……」

にちか「もう、学校なんか来るんじゃなかった……」

ガッシャーン!

学生F「おい! まさか俺たちに隠し持ってるやつなんかはいねーよな!」

にちか「……ひぃ!」

にちか「し、知らない知らない……私は何も知らないから……!」

学生F「あ、テメェ……逃げやがったな! おいコラ、待ちやがれ!」

にちか「い、いや……来ないで、来ないでよ……!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆
651 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:09:23.29 ID:34Zm1vKx0

(……は?)

(何? 今の記憶)

モノクマ「うぷぷぷ……どうやらオマエラはみんな思い出したみたいだね」

モノクマ「オマエラの中に眠ってる最悪の記憶の一端を」

最悪、どころじゃない。
私が思い出したのは、自分の通っていた学校の荒れ果てた姿。
そこら中でいじめと暴行が横行して、窓ガラスもが破られるのも日常茶飯事。先生も役に立たずにろくに授業なんかも行われない。
学校としての機能が完全に終わった施設の中で逃げ惑う自分自身の姿だった。

恋鐘「な、なんね……今の記憶……」

灯織「私の学校が……あんな、荒れ果てたことになっていた……?」

樹里「お、おい……まさか、【同じ】なのか……?」

(……え?)
652 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:11:00.06 ID:34Zm1vKx0

凛世「今しがた凛世が思い出した記憶は……凛世の通っていた高校の惨状……」

凛世「いじめと暴力で、学校崩壊を迎えていた光景にございます……」

甘奈「お、同じだよ……! そんな状態で、甘奈は甜花ちゃんと一緒に逃げるしかなくて……」

めぐる「う、うん……! 他の子達に見つかると、自分も襲われちゃうからって必死に逃げてたんだ……!」

モノクマ「うぷぷぷ……これはこれは、妙なことになりましたね」

モノタロウ「ど、どういうこと?! なんでみんな同じ記憶を思い出してるの!?」

モノスケ「簡単な話や。これでキサマラがここに集まった【共通点】が見つかったっちゅうことやな」

(共通、点……?)

あさひ「ねえ、モノクマ。これは最悪の記憶の一端って言ってたっすけど……」

あさひ「それってつまりこの記憶には続きがあるってことっすよね?」

モノクマ「うん! もちろんだよ。この思い出しライトはオマエラの記憶をいくつかに等分して切り離した一欠片なんだ」

モノクマ「すべてのライトを集めた時、初めてオマエラは理解するんだ。ここにいる意味と」
653 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:11:56.84 ID:34Zm1vKx0





モノクマ「_____オマエラ自身の【罪】をね」

にちか「は? つ、罪……?」





654 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:14:09.34 ID:34Zm1vKx0

樹里「なんだそれ! どういう意味なんだよ?!」

モノクマ「分からないことがあればすぐに質問! 新卒社会人としては見上げた姿勢ですが、コロシアイ参加者としては下の下ですね!」

モノクマ「モノクマからのことば……! なぞはじぶんのあしでかいけつするものだ……!」

バビューン!


【ばーいくま〜〜〜〜!!!!】


樹里「クソッ……逃げやがったな」

愛依「な、なんなん……この記憶……うち、なんで友達のみんなから逃げるように……?」

透「……記憶って、すごいんだね」

円香「……」

透「ただ風景を思い出すだけじゃなくて、音とか感触とか……その時に感じてた恐怖まで蘇ってきた」

透「なんかさ、震えてんだよね。さっきから」
655 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:15:12.98 ID:34Zm1vKx0

確かにモノクマの言う通り、あのライトには失われた記憶を取り戻す作用があった。
だけど、取り戻した記憶は、私たちの中に波紋を生むきっかけに過ぎず。
私たちを取り巻く状況の謎がより深まる結果となってしまった。
それどころか、自分がこれまで抱いていた『戻りたい日常』に疑いの目すら向けなくてはいけなくなってしまった。

あさひ「……」

流石に今回ばかりは芹沢さんも困惑しているようで、何度も深く考え込むような素振りが見てとれた。

にちか「あ、あの……!」

そんな深く沈みかけた状況を打開すべく、私は声を上げて、櫻木さんにアイコンタクトした。
すぐにその意図を解してくれたようで、櫻木さんも私に続いて声を上げる。

真乃「今は少し頭がパニックだと思うんですけど……私とにちかちゃんから発見があるんです……っ!」

円香「……発見?」

灯織「……」

にちか「私と櫻木さんでプールの倉庫を探索してたら、浮き輪の中にコレが入ってて……」

甜花「これって、ケーブル……? 見たことない端子、なんのやつだろ……」

真乃「書いてあるアルファベットを見てみてください……っ!」

甘奈「【SG-TMケーブル】……? あれ、これってどこかで見たような……」

めぐる「あー! 隠し部屋のモノクマの!」

にちか「そうなんです。あのモノクマの修理に必要な五つのケーブルのうち一つを見つけたんですよ!」

樹里「マジか……! じゃああと四つ見つけることができれば……!」

凛世「もしかすると、残りのケーブルも学園内の未開拓の場所に存在するやもしれません……」

愛依「すご! 二人ちょ〜大発見じゃん!」
656 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:16:57.22 ID:34Zm1vKx0




灯織「……それ、喜ぶことなんですか?」

(……え?)



657 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:17:58.00 ID:34Zm1vKx0

灯織「いや、隠し部屋のモノクマに関して一応修理する方針にはなりましたが……本当に、大丈夫なのかは分からないですよね」

灯織「直してしまったことでこちらに害があるかもしれない。その可能性は全然ある訳ですし」

樹里「お、おいその話をまた蒸し返すのか……?」

灯織「私はまだ直すことに賛同していません」

めぐる「灯織……」

風野さんは明らかに冷静さを欠いていた。
多分、さっきの思い出しライトによる混乱もあったんだろうし、私への不信が理性よりも先走っていた。

真乃「灯織ちゃん……」

そんな彼女は、私の横で寂しそうな表情をする櫻木さんを見て、ハッとした様子。
自分の口から出た言葉をどうにかしようと足掻いて、口に手を当てがったが、もう遅い。
私たちの中に漂うこの凍りついた空気は、風野さん自身を蒼白とさせた。

灯織「……! す、すみません……私、空気を乱すような発言を」

樹里「あ、おい! 灯織!」

そのまま彼女はパタパタと足音を立てて逃げ去るように食堂を出ていってしまった。
658 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:19:13.69 ID:34Zm1vKx0

夏葉「……困ったものね」

(うう、そんな目で見られても……こんなの、どうしろっていうの)

めぐる「わたし、灯織の後を追ってくるね」

甘奈「う、うん……気をつけて!」

めぐる「真乃、にちか……ありがとう。みんなのためにケーブルを見つけてくれたその気持ち、伝わってるからね!」

真乃「めぐるちゃん……」

めぐる「それじゃ、いってきます!」

八宮さんもいなくなり、手持ち無沙汰なケーブルだけが残された。

夏葉「ひとまず、そのケーブルは隠し部屋に置いておくことにしましょう。まだケーブルが揃っているわけでもないし、使うかどうかはその時に考えればいいわ」

霧子「うん……焦る必要はないから……」

にちか「分かりました。後で行ってきます」
659 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:19:44.41 ID:34Zm1vKx0

樹里「よし、それじゃあ今日のところはこんなもんでいいか。新しいエリアを見て回るので結構疲れただろ」

甜花「うん……学園が広くなって、甜花もうクタクタ……」

あさひ「え? まだわたし見れてないところがあるっすよ」

円香「……愛依さん、彼女の監視をお願いします」

愛依「え、うん……やっぱ円香ちゃんの才能研究室は入っちゃダメなん?」

円香「お願いします」

(樋口さん……この後もまた才能研究教室に戻るつもりなのかな)

夏葉「それじゃあ今日のところは解散にしましょう。夜時間になる前に食堂から退散ね」

新しく解放されたエリアの探索を終えて私たちは解散となった。
それぞれの個室にみんなが戻っていく中、私と櫻木さんは二人でケーブルを置きに隠し部屋に向かった。

660 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:21:02.08 ID:34Zm1vKx0
---------------------------------------------
【B1F 隠し部屋】

にちか「……これでいいですかね」

真乃「うん……机の上ならすぐに分かるし、大丈夫だと思う」

にちか「すみません、櫻木さん。ずっと同行してもらっちゃって」

真乃「ううん、大丈夫。私が一緒に行動していることで、にちかちゃんがみんなの信頼を得ることにも繋がるから……」

にちか「あはは……そうですね」

本当に櫻木さんの存在には今日一日助けられた。
私の言葉をみんなが聞いてくれたのも、櫻木さんを通して共有してくれたところが大きいだろうし、
探索の時にも気兼ねなく相談できる相手がいたのは気が楽だった。
ルカさんを殺めたことで直面することになった課題と真正面からぶつかるという決意が少し鈍ってしまうぐらいには彼女の存在は緩衝剤になっていた。
661 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:21:59.85 ID:34Zm1vKx0

にちか「……あの、櫻木さん」

真乃「にちかちゃん……?」

にちか「本当に、ありがとうございました!」

真乃「わ、わわ……! 頭なんて下げないで……っ! 私は何もしてないから……っ!」

にちか「いえ……私の覚悟を支えてくれたのは他でもない櫻木さんなので! 一緒にいてくれた、それだけで今日はすごくすっっごく! 助けられたんです!」

真乃「……嬉しいな。私の言葉で、行動で誰かを勇気付けることができるのって」

にちか「櫻木さん?」

真乃「ううん、なんでもない。私こそ、今日一日ありがとう! にちかちゃんと一緒に学園を見て回れて楽しかったよ!」

にちか「は、はいー!」

なんていうか、本当に恵まれすぎてる。
これがルカさんの言ってたことなのかな。
どれだけ不可能に見えることでも、遮二無二に挑めば開ける運命がある。
少なくとも今私が歩んでいる運命は、昨日の私が思っていたよりもずっといい運命だ。

662 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:23:31.96 ID:34Zm1vKx0
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノダム『キサマラハ今日一日ヲ過ゴシテドウ思ッタカナ?』

モノダム『思イ出シタ記憶ノオカゲデ仲良シノ重要性ヲ再確認デキタンジャナイカナ』

モノスケ『ケッ、仲良し仲良しって胃もたれがするで』

モノダム『……』

モノスケ『な、なんや……ワイはビビらんで、モノクマーズはギスギスあってこそなんや!』

モノスケ『歪み合いの中でこそワイらは輝ける!』

モノダム『……モノスケノ意見ヲ否定ハシナイヨ』

モノダム『寛容デアルコトモ、仲良シノ第一歩ダカラネ』

プツン

(なんなの……? あの緑のモノクマーズ、ずっと他のモノクマーズと意見主張が違うみたいだけど)

部屋に戻ってからも、私は櫻木さんとの会話を何度も思い返していた。
本当に彼女の存在は温かくて、今のその笑顔が目に焼き付いているよう。
櫻木さんはこんな私のことを、私と一緒に歩む未来のことを信じてくれている。
だとしたら、私からも信じないとだめだよね。
一緒に歩むと決めた仲間たちのことを、どこまでも信じて、信じ抜いて……

あさひ『……』

灯織『……』

……ううっ、まだ順風満帆とは行かないか。
それでも、信じようという歩み寄りを辞めちゃいけない。
蟠りの解消を諦めちゃいけない。
何度だって挑んで挑んで、その度に砕けて立ち上がって……不格好でも運命を切り開くんだ。


でも、この時の私はまだ気づいちゃいなかった。
不可能に挑み続けることで開ける運命もあれば、



____閉ざされる運命もあるってことに。



663 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:25:32.17 ID:34Zm1vKx0
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【3F 超研究生級のコメンテーターの才能研究教室前】

あさひ「……本当にいる」

円香「……愛依さんは?」

あさひ「寝ちゃったっすよ? わたしが寝たふりしたら、安心してそのまま寝ちゃったんで出てきたっす」

円香「……」

あさひ「ねえ、円香ちゃんはどうしてそこまでその部屋の中を見られたくないんっすか?」

円香「……」

あさひ「円香ちゃんの才能には何か秘密があるんっすか?」

円香「……」

あさひ「もしかして、わたしと似たもの同士だったりするんっすか?」

円香「……どういう意味?」
664 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:26:50.14 ID:34Zm1vKx0




あさひ「昨日の裁判でも明かした通り、わたしはルカさんをこの手で殺したっす」

円香「……」

あさひ「円香ちゃんも……そうなんじゃないっすか?」

円香「……!」



665 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/01(火) 22:28:08.68 ID:34Zm1vKx0

あさひ「円香ちゃんからはわたしとよく似た匂いがするっす」

円香「……勘違い」

あさひ「じゃあ退いてほしいっす。ただのコメンテーターの才能研究教室なら隠す必要もないっすよね」

円香「嫌だ」

あさひ「強情っすね」

円香「あんたもね」

あさひ「……まあいいや、円香ちゃんも人間だからいつかはここに立てないタイミングもくるっすよね。その時を待つことにするっす!」

円香「……好きにすれば」

あさひ「じゃあまた明日っす! ばいば〜い!」

パタタタタ…

円香「……いやに鋭いんだから」

円香「明日から……透にも頼るか」
666 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/02(水) 19:51:39.52 ID:rkMJVrzi0
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【School Life Day8】
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノダム『今日ハミンナノタメニ、オラガ朝ゴハンヲ作ッタンダ』

モノタロウ『わーい! モノダムの手料理なんていつ以来だろう!』

モノダム『4枚切リノ厚メノ食パンヲ、苺ミルクニ一晩浸シテ置イタモノヲオーブンデ焼イテ』

モノダム『ソノ上ニマーガリンヲ塗リタクッタ、贅沢スイートトーストダヨ』

モノスケ『こりゃあたまらんで! 幸福度と血糖値が朝から鰻登りや!』

モノファニー『残念だけど、これはモノダムがアタイたちのためだけに作ってくれた朝食だからキサマラの分はないわ!』

モノタロウ『キサマラは貧相なシリアルを牛乳なしに頬張ってお口ズタズタになっちゃえばいいんだーい!』

プツン

(なにあれ……あんな糖尿病一直線のトースト食べたくなると思ってんの?)

昨日は学園中を歩き回った疲れからか割とすんなりと寝ることができた。
気がかりなことはいくつかあるけど、それよりも体力の回復が重要だもんね。
睡眠は取れるうちに取っておかないと。

さあ、今日も食堂に行くところから頑張るぞ!

667 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/02(水) 19:53:19.97 ID:rkMJVrzi0
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【食堂】

……と意気込んで食堂に飛び込むと、私を出迎えたのは何か揉め事が起きているであろう大喧騒だった。

恋鐘「あさひ……そいは食べたらいかん! そいは円香の分の朝ごはんばい!」

あさひ「どうせ円香ちゃん来ないんだからいいじゃないっすか〜! わたし、恋鐘ちゃんの料理美味しくて大好きなんっすよ〜!」

恋鐘「え……あさひそがんにうちの料理のことを思うてくれとったと……?」

樹里「おい! 懐柔されんな! チョロすぎるだろ?!」

にちか「え、えーっと……これは……?」

真乃「あ、にちかちゃん……えっと、昨日から円香ちゃんが自分の才能研究教室を封鎖してるのは知ってるよね」

にちか「はい……」

真乃「どうやら夜通しで全く扉の前を離れないらしくて、ご飯も食べてないみたいなんだ……」

にちか「え……」
668 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/02(水) 19:54:25.57 ID:rkMJVrzi0

真乃「だから、恋鐘ちゃんが今別で用意してあげてたんだけど……」

樹里「それを食い意地のはったあさひが食べようとしてるんだ……! おい、もう自分の分は食べただろ!」

あさひ「えー、足りないっすよ! それに恋鐘ちゃんの作る料理だったらいくらでも無限に食べれるっす!」

恋鐘「も〜、そげん誉めてもうちからは何も出んよ〜」

樹里「デレデレじゃねーか!」

透「とりあえず、樹里ちゃんが抑えている今のうちに持ってくわ。サンキュ」

樹里「おう、円香によろしくな!」

あさひ「あー、わたしの朝ごはん〜!」

(あ、朝から騒々しいな……)

とりあえずは浅倉さんが持って行って物理的に取り上げることで解決。
芹沢さんは結局愛依さんのご飯をちょっと分けてもらったみたい。
669 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/02(水) 19:55:59.51 ID:rkMJVrzi0

甜花「樋口さん、ずっとあそこにいるけど……そんなに秘密にしたいことがあるのかな……?」

甘奈「才能は超研究生級のコメンテーター……だったよね? そんなにおかしなものがあるとも思えないけど……」

めぐる「うーん、人には人の事情があるんだろうしあんまり詮索するのも良くないよね……」

あさひ「……」

夏葉「あさひ、気になるのは分かるけど不要な探りを入れるのは控えてちょうだいね」

あさひ「はいっす」

(……信用ならないなぁ)

愛依「にしても昨日から円香ちゃん寝てないんよね。大丈夫なんかな……?」

霧子「少しでも、休んでもらわないとダメだけど……」

霧子「その前に私たちは誰も覗かないって信じてもらわなきゃだから……」

信じてもらう、か。
私たちは信頼という行為のリスクと、その行為の信憑性の希薄さを身に染みて理解してしまっている。
樋口さんがそう易々と会って間もない私たちの言葉に耳を貸すとも思えない。

どうしたものかと首を捻っていると……

キィ……

円香「……ご心配をおかけしています。その件は解決しましたので」

凛世「円香さん……? お部屋は離れても良いのですか……」

円香「代役を立てたので。浅倉に任せて、私はしばらく寝させてもらいます」

(ああ、浅倉さんとは元々幼馴染なんだっけ……)

(でも、あの人だいぶ適当そうだけどいいのかな……)

樋口さんはそのままフラフラとした足取りで食堂を後にし、寄宿舎へと向かっていった。
徹夜で監視していたんだろうし、当分は休憩するのかな。

私たちも朝食を終えると、それぞれの部屋へと戻ることにした。

670 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/02(水) 20:03:56.94 ID:rkMJVrzi0
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【にちかの部屋】

さて、今日の行動からが重要な意味を持つぞ。
私がみんなとどんな交流をしてどんな言葉を交わすのか、それによって私を見る目は大きく変わってくるはずだ。
ルカさんに誇れるくらいの成果を挙げて見せなきゃね。

【自由行動開始】

◆◇◆◇◆◇◆◇◆
現在のにちかの状態

・親愛度
【超研究生級のブリーダー】櫻木真乃…0.0
【超研究生級の占い師】風野灯織…0.0
【超研究生級のスポタレ】八宮めぐる…0.0
【超研究生級の料理研究家】月岡恋鐘…0.0
【超研究生級のドクター】幽谷霧子…0.0
【超研究生級のギャル】大崎甘奈…0.0
【超研究生級のストリーマー】大崎甜花…0.0
【超研究生級の文武両道】有栖川夏葉…0.0
【超研究生級の大和撫子】杜野凛世…0.0
【超研究生級のサポーター】西城樹里…0.0
【超研究生級の博士ちゃん】芹沢あさひ…0.5
【超研究生級の書道家】和泉愛依…8.0
【超研究生級の映画通】浅倉透…0.0
【超研究生級のコメンテーター】樋口円香…0.0
【超研究生級のカリスマ】斑鳩ルカ…2.0【DEAD】

・交換用アイテム
【現在のモノクマメダル枚数…108枚】
【現在の希望のカケラ…19個】

・所持品
【タピオカジュース】
【誰かの顔の餃子】
【クリスタルバングル】
【ストライプのネクタイ】
【クロの章】
【レイヤーキャリーバッグ】
【三度サンドバッグ】
【猿の手】
【死亡フラッグ】
【生存フラッグ】
【占い用フラワー】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆

1.交流する【交流相手の名前指定】※灯織と円香は選択不可
2.購買に行く
3.カジノに行く
4.休む(自由行動をスキップ)

↓1
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/08/02(水) 21:00:32.12 ID:zgfmSQFo0
1.愛依
672 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 21:47:58.09 ID:ix2byaw/0
一か月近くスレを空けてしまってすみません……

過去2シリーズと同じぐらいに安価をやるつもりではいたんですが、あまり今作では捌くことが出来ず、
なんとなくモチベーションがなくなって放置してしまいました。

とはいえ、一度始めた話を完結させることなく放置するのは私としても望むところではないので、
(非)日常編の交流パートを今作では暫くカットして、学級裁判パートで安価進行を取り入れる形で再開しようと思います。
このシリーズではコンマの緩和などをスキルという要素で担っていたのですが、その獲得も見込めない形となるので、裁判のミニゲームなども簡略化を考えています。
物語は完結まで続けるつもりではありますので、どうかよろしくお願いいたします。
673 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:06:08.66 ID:ix2byaw/0
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【寄宿舎前】

一通りの交流を終えて、そろそろ夜時間を迎えようかという頃。
自分の部屋に戻ろうとしていたとき、ある人に呼び止められた。

樹里「おっ、にちか。ちょうど良かった。ちょっと話がしたいんだけど……今時間いいか?」

にちか「え? は、はい……なんです?」

樹里「いや……アタシが口出すのも違うのかも知れねーけど、灯織とのことだよ」

(……!)

にちか「すみません……やっぱり気になりますよね」

樹里「んまぁ……気になるっつーか、なんつーか……しょうがないところもあるとは思うけどな」

にちか「はい……私はそれだけのことをしたので」

樹里「にちかが本気で反省してること、あいつだって本当は知ってるとは思うんだ。だけど、裏切られたことのショックでそれをなかなか認められない」

樹里「今の灯織に言葉を届けるのは、簡単なことじゃないと思うんだ」

にちか「……」

樹里「……あのさ、つい昨日の夏葉と凛世の組み手。にちかも見てたよな」

にちか「……? え、はい……」

樹里「あれってただ夏葉がけしかけただけの話じゃねーんだよ」
674 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:06:59.81 ID:ix2byaw/0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

夏葉『凛世……やっぱり裁判のことでだいぶ堪えているみたいね』

樹里『え? あー……おう、そうだな。凛世はいつも以上に慣れない環境だし、ショックも大きいみたいで』

夏葉『……何か、私たちで出来ることはないかしら』

樹里『……』

夏葉『あの子……会って間もないけれど、どうも気にかかるの。私自身箱入り娘のようなところがあるからかしらね』

樹里『ははっ……アンタ、結構気回るんだな』

樹里『そうだな……私は悩んだり落ち込んだりしたときは汗を流すかな。バッセン行ったり走ったり……』

樹里『嫌なことも全部汗と一緒に流す! 時間が経てば嫌な記憶も思い出に変わるもんだからさ』

夏葉『なるほど……体を動かすことは精神的な快楽をもたらすホルモンを分泌する作用もあるものね』

夏葉『ありがとう、樹里。参考にさせてもらうわね』

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

樹里「まあ、流石に組み手って形はアタシも想定してなかったけどな……はは」

樹里「でもアレで、凛世も結構助かったみたいなんだぜ? 前よりも笑顔を見せてくれる回数も増えたしな」

にちか「いや、でも私に武道の心得はてんでないので……」

樹里「いや、そういうことじゃねーよ! あー、その……なんだ。蟠りを解消するのは説得とか奉仕だけが手段じゃないって、そういうことが言いたかったんだ」

にちか「アドバイス、ありがとうございます。自分でもちょっと考えてみますね」

樹里「おう! 相談ならアタシも乗るからさ」

西城さんは少し照れくさそうに自分の部屋へと戻って行った。
この学園には不思議とお節介な人が多く集まってるんだな。
何かと気にかけてもらってるし、私からもちゃんと解決に向けて動かなきゃ。
675 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:07:47.54 ID:ix2byaw/0
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノタロウ『えっと……今日はオイラだけでこの放送をお送りするよ!』

モノタロウ『なんだかみんな忙しいみたいでオイラしか出られないんだよね。あ、これって言っていいんだっけ?』

モノタロウ『なんでもないんだよ! 本当に!』

モノタロウ『たまにはオイラだけでやってみたいなーってそう思っただけだから!』

モノタロウ『あれ? この放送って何言えばいいんだっけ?』

モノタロウ『えーっと……』

モノタロウ『上は大火事、下は洪水。これな〜んだ!』

モノタロウ『あれ? なんか変だな』

モノタロウ『あっ、間違えた! 答えはお風呂だから上としたが逆なんだ!』

モノタロウ『上は洪水、下は大火事。これな〜んだ!』

モノタロウ『答えがわかったら明日オイラだけにこっそり教えてね!』

プツン

(何今の……答えはっきり言っちゃってたし)

ベッドに横になって、西城さんの言葉を考える。
私が風野さんとの蟠りを解消するのに今求められていることはなんなんだろう。
きっと西城さんは同じ時間を共有することの意味を説いてくれたんだろうけど、それも簡単なことじゃないよね……

うーん、集団行動が苦手な人間じゃないけど、クラスのカースト最上位みたいな人たちとはちょっと距離を置いてた身からすると、あんまりアイデアが浮かばないな。

うんうんと唸りながら、何をすべきかを考えていると、自然と私の意識は夜の中に溶け出していた。
676 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:08:35.37 ID:ix2byaw/0
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「……大丈夫? ちゃんと寝てる?」

「すっかりグースカピーや。アホ面晒してよう寝とるで!」

「よーし、それじゃあ今のうちに歯ブラシを探して……」

「アホか! んなもんする前にちゃんとやることすませんかい!」

「ちょっと! 大騒ぎしたら目を覚ましちゃうじゃない!」

「モノタロウ、用意シテキタモノヲ早ク置イテ」

「う、うん……ちょっと待ってね、暗くてよく見えないんだ」

「早よせんかい! この夜のうちに15人分配らなあかんのやで!」

「わー、急かさないでよー!」

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677 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:10:19.80 ID:ix2byaw/0
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【School Days 9】
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノタロウ『キサマラおはよう! 一仕事終えた後の朝は清々しいね!』

モノファニー『キサマラ、顔を洗ったらそれぞれの個室の机の上を見てちょうだい!』

モノスケ『ワイらからのとっておきのプレゼントがあるで!』

モノダム『ソレゾレニ一ツズツ、キサマラニ合ワセタモノガ置カレテイルヨ』

モノスケ『それを生かすも殺すもキサマラ次第や! 大事にするんやで!』

『ばーいくま〜〜〜〜!!!!』

プツン

(……プレゼント?)

そういえば昨日の夜の放送でもモノタロウが妙なことを口走っていたけど、今の放送とも関係があるのかな?
寝ぼけ眼を擦りながら、ベッドから身を引き起こすと……あった。
机の上に置かれているのは液晶タッチパッド。
すでに配られている電子生徒手帳とは違って、派手な装飾がついてある。

「……何? これ」

プレゼントと呼ばれていたこともあってか、私はさほど警戒せずにそれを手に取り、横についた電源ボタンをそのままに押してしまった。
678 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:11:06.05 ID:ix2byaw/0





【☆櫻木真乃の動機ビデオ☆】


「……え?」





679 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:11:52.14 ID:ix2byaw/0

『さーて、大好評につき復活した動機ビデオの時間だよ! オマエラにとって大切な存在は今、どんな生活をしているのかな? それでは始まり始まり……』

真乃母『真乃ちゃん、こんにちは。今、どうしてる? 元気に過ごせてるかな』

真乃父『お父さんたちも元気にしてるよ。はは、お父さんはこう見えて体が結構頑丈みたいだ』

真乃父『……けほっ、こほっ!』

真乃母『お、お父さん……』

真乃父『いや、何……さっき飲んだお茶が気管に入っただけなんだ』

真乃父『真乃の大切にしていたピーちゃんも健康そのものだよ。ほら』

ピーちゃん『ぽるっぽー』

真乃母『だから、お母さんたちのことは心配いらないからね。真乃ちゃんは真乃ちゃんで、元気に楽しく過ごしてくれればいいんだからね』

『いやはや……櫻木さんによく似たほんわかしていて優しそうな親御さんですね。メッセージからも愛情がよく伝わってきます』

680 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:13:28.04 ID:ix2byaw/0



……ザザッ、ガッ




「……は?」

『しかしながら! そんな食物連鎖のピラミッド最下層インパラ家族の身に何かがあったようです!』

『おやおや……? お家は荒れ果てて、お二人と一羽の姿がありませんね?』

『一体彼らに何があったのか……!?』

『ま、それは卒業してからのお楽しみってことで。気になる人はサクッと他の人を殺してみるといいよー』



プツン

681 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:14:30.00 ID:ix2byaw/0

「……な、なにこれ!?」

映像を見終わった私は思わず絶叫してしまっていた。
当然だ、自分の家族のことでなくても、こんなのを見せられて冷静じゃいられない。
映像に映っていた家の荒れ具合は並のものじゃない。家具はズタズタ、窓は破られ、観葉植物は根本から折られていた。
どう考えても家族の身にも危険が及んでいる。

「は、早く櫻木さんに伝えなきゃ……!」

気がつけば私は部屋を飛び出して食堂へと向かっていた。

682 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:15:42.82 ID:ix2byaw/0
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【食堂】

食堂に入ると、他の人たちも私と同じように焦燥した表情で口をパクパクとさせていた。
どうやら状況はみんな同じらしい。
映像を見てすぐに居ても立っても居られなくなったんだろう。

愛依「あ、あの映像はなんなん?! あれって……マジなん?!」

めぐる「作り物って感じじゃなかったよね……」

にちか「や、やっぱりみんな動機ビデオを見せられてたんですね?!」

凛世「はい……朝からとんでもないモノを見てしまいました……」

恋鐘「あん家族の身に何が起きたとね!? うちらが思い出しライトで思い出した記憶となんか関係があるばい?!」

みんなが狼狽える中で、私の目に櫻木さんの存在が目に留まる。

(そうだ……櫻木さんに早く教えてあげなきゃ!)

そう思い、動き出したその瞬間。



夏葉「待って。一旦、落ち着きましょう」

にちか「……!」

683 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:17:10.53 ID:ix2byaw/0

夏葉「みんなの動揺は分かる。私も同じだもの。だけどそれに踊らされているようじゃモノクマたちの狙い通りよ」

甘奈「そ、そうだよね……深呼吸深呼吸……」

甜花「ひ、ひ、ひぃん……」

樹里「独特な深呼吸だな……」

夏葉「状況を一旦整理しましょう。ここにいる全員が動機ビデオを受け取っているのよね?」

ここにいる全員とは、樋口さんを除いた全員のことだ。
みんな有栖川さんの問いかけに黙って頷いた。

夏葉「そしてその中身も確認した。そこでその中身について確認しておきたいのだけど……」

夏葉「その映像は自分に当てられたものではなかったのではないかしら?」

(……!)

甘奈「う、うん! ちがった……甘奈のは、別の人の映像だったよ……!」

凛世「はい、凛世がいただいた動機ビデオを凛世のものではなく________」

夏葉「待って。それを開示するのはやめておくべきではないかしら」
684 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:18:43.86 ID:ix2byaw/0

あさひ「えー? どうしてっすか。みんな自分のビデオが見たいはずっすよー」

夏葉「だからこそよ。自分の映像でないものでこれほどの混乱が起きている。もし自分に当てられた映像を見てしまったらどうなると思う?」

真乃「今以上の混乱が起きてしまいます……っ」

灯織「あの動機ビデオ、明らかにコロシアイを促すためのものでした。自分に当てられたものを見てしまうと、鵜呑みにして行動に移してしまう恐れもあるってことですね?」

夏葉「ええ。だからあの動機ビデオに関してはこれ以上触れるべきでないし、詮索もするべきじゃないと思うの」

有栖川さんの提案で、私たちはにわかに冷静さを取り戻していった。
危ないところだった、私も櫻木さんへの共有を急いていたし、自分の映像を持っている人は誰か問いただそうという考えが頭の中によぎっていた。
その先にどんな展開が待っているのか予想できないわけでもないのに。

樹里「しかし陰湿なことしてきやがるな。こっちの心情を手玉に取るような真似しやがって……」

めぐる「うん、的確にわたしたちの知りたいっていう気持ちを突いてきてる……厄介な手段だよね!」

【おはっくま〜〜〜〜!!!!】

モノタロウ「そ、そ、そ、そうだよ! オイラたちの狙い通りなんだよ!」

モノスケ「は、は、は、はなからそのつもりやったんや! バラバラに置くことで混乱を引き起こす!」

モノファニー「さ、さ、さ、さすがねモノタロウ! ナイスアイデアだわ!」

モノダム「……」
685 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:20:03.86 ID:ix2byaw/0

にちか「な、なにこの反応……」

甜花「もしかして……映像の取り違えって、想定外……?」

モノタロウ「ギクゥ!?」

モノスケ「ギギクゥ!?」

愛依「本来は映像はちゃんと持ち主に渡す予定だった系 ?」

モノファニー「ギギギクゥ!?」

モノダム「……」

モノタロウ「お、お願いだよう! お父ちゃんにはこのことは黙っておいて! こんな失敗、バレたらお尻ぺんぺんじゃ済まないかもしれないんだ!」

モノスケ「お尻ペンペンどころじゃのうてお尻ゲンゲン、果てはお尻ゾンゾンまで行くかもしれん! 堪忍や!」

灯織「それはどんな懲罰なんですか……」

甘奈「擬音からじゃまるで想像できないね……」
686 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:21:06.47 ID:ix2byaw/0

モノダム「ミンナ、焦ル必要ハナイヨ。サッキノザコドモヲ見ル限リ、別々ニ配ッテモ十分混乱ハ引キ起コセタミタイダカラ」

モノタロウ「モノダム……」

モノダム「オ父チャンモ許シテクレルハズダヨ」

モノファニー「そ、そうよね……お父ちゃんの好物の蜂の巣のしぐれ煮も一緒に献上すればまだワンチャンあるわ」

モノスケ「重箱の下に小判を敷き詰めればモーマンタイや!」

モノタロウ「よかった……これでオイラのお尻は守られたんだね」

【ばーいくま〜〜〜〜!!!!】

灯織「どうやら、動機ビデオは取り違えだったみたいですね……」

夏葉「騒々しかったけど……やることはさっきと変わりないわ。私たちはこれ以上は動機ビデオにはノータッチ。それでいいわね?」

有栖川さんの提案に全員が同意。
私たちはそれぞれの動機ビデオを自分の部屋に持ち帰って、それぞれに保管することになった。


あさひ「……つまんないなぁ」


……もちろん、それは表面上の合意。
納得のいっていない人間は明確に約1名いたみたいだけど。
687 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/30(水) 22:22:07.21 ID:ix2byaw/0
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【にちかの部屋】

「……よし」

デスクの引き出しの中に動機ビデオをしまい込むと、頬をピシャリと叩いた。
もう忘れちゃおう。いくら気にしたってこんなの仕方がないんだから。
私の動機ビデオも気になるんだけど、それを詮索するのはそれこそ裏切りになる。
今の私が絶対避けるべき行為だよね。

それよりも今は、他の人との親交を深めること。
時間が許す限り、同じ時間を過ごすように努めなきゃ。

688 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:24:22.00 ID:SZAKbp9W0
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【寄宿舎前】

今日も交流を終えて、夜時間が近づく中自分の部屋に戻ろうとしていたところ……

真乃「あっ、にちかちゃん……ちょうど探してたんだ……!」

にちか「櫻木さん……どうしたんです? 私に何か用ですかねー?」

真乃「うん、あのね……! ちょっとめぐるちゃんと話してたところなんだけど……」

めぐる「にちかも一緒に相談に乗ってもらえないかな!」

にちか「……ってことはもしかして風野さんのことです?」

めぐる「ですですー!」

この二人は私とも同年代で、風野さんとの距離も近い。
本人に直接訴えかけるやり方が通用しないのなら、この二人の力を借りるのがやっぱりキーになりそう。
それに、昨日西城さんから聞いた正攻法でないやり方の知見もある。
私たちで何かできないか相談をすることにした。
689 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:26:11.85 ID:SZAKbp9W0

真乃「灯織ちゃん、あれから私たちともちょっと距離を置きがちなんだ……」

めぐる「他の人を信じることにちょっと恐怖感を抱くようになっちゃったみたいで……」

にちか「……」

めぐる「ご、ごめんね! にちかを攻めるつもりじゃないんだけど……」

にちか「いや、いいです。その責任はもちろん取る気なので。それよりも、風野さんに私たちを受け入れてもらうための方法なんですけど……」

にちか「何かみんなで一緒にできることはないですか? タスクっていうか、レクリエーションっていうか……」

にちか「とにかく夢中になって一緒に何かをする時間があれば、心も開きやすくなるのかなーって」

真乃「ほわっ……【レクリエーション】……?」

めぐる「うーん、みんなで一緒に遊ぶってことかな。何がいいんだろー……」

(西城さんのアドバイスを参考にするならそれこそスポーツとかだけど……)
690 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:27:14.71 ID:SZAKbp9W0

めぐる「あっ! ちょうどわたしの才能研究教室のスポーツ用の道具がいっぱい揃ってるからあれを使うのはどうかな!」

にちか「あ……確かに球技とかなら、複数人で一緒にできますもんね」

めぐる「うんうん、たくさんの人数で同時にプレーできるなら灯織も参加しやすくなるんじゃないかな!」

真乃「わ、私みんなについていけるかな……」

めぐる「大丈夫大丈夫! みんなのペースに合わせるよー!」

にちか「じゃあずばり、才囚学園体育祭の開催ってことですね!」

めぐる「うん! それで行こう! 明日の朝食会でみんなにも相談してみようよ!」

めぐる「そうと決まったらなんだか燃えてきたー! ちょっと今から才能研究教室見てくる! みんなで何ができるか考えておくねー!」

シュバババババ……

にちか「は、八宮さん!? 早……もう行っちゃった」

真乃「ふふ……すごく嬉しそうだったね」

にちか「風野さん、参加してくれるといいですけど」

真乃「きっと参加してくれるよ。大丈夫」

私と櫻木さんはそれから体育祭の構想について話しながら寄宿舎へと戻っていった。
ぼんやりと何かみんなで出来たらいいなとは思っていたけど、ここまでとんとん拍子で進んだのは二人の存在あってこそだったな。
691 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:28:00.57 ID:SZAKbp9W0
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノファニー『え、えっと……今日はアタイだけで放送をお届けするわね……』

モノファニー『そ、そう……今モノタロウとモノスケとモノダムはお父ちゃんにお尻ゾンゾンされてるところなの』

モノファニー『アタイは女の子だから、免除されてるけど……3人とも、げっそりとしちゃってたわ』

モノファニー『キサマラはお尻を大事にしてあげてね』

モノファニー『お尻は唯一絶対の生涯のお友達だから……』

プツン

(な、なんなの……結局お尻ゾンゾンって……)

今頃八宮さんは才能研究教室でスポーツを見繕っているところなんだろうか。
私はスポーツ経験が豊富なわけではないから、彼女にそこはお任せしたいな。
それよりも大事なのは何より風野さんを引き入れること。
招待を断られることのないように、失礼がないようにしないと。

うぅ……なんだかソワソワしちゃうな。
妙に昂る気持ちを必死に押さえつけて、目を瞑った。
692 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:28:52.73 ID:SZAKbp9W0
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【School Days 10】
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノタロウ『才囚学園放送部から朝のお知らせだよ……』

モノスケ『朝8時になったで……キサマラ、目を覚まさんかい……!』

モノダム『今日モ一日張リ切ッテ行コウネ……』

モノファニー『う、うぅ……見ていられないわ……』

モノタロウ『ど、どうしたのモノファニー……?』

モノファニー『みんなお尻をそんな抑えながらの放送なんて、痛々しくてアタイ見ていられないのよ!』

モノスケ『もはやワイらのお尻はスゴスゴのガスガスなんや……堪忍してくれや……』

モノダム『ア、アァ……』

プツン

(何あれ……めちゃくちゃ最悪なんだけど……)

悪化していく朝の放送にため息をつきながらの起床。
せっかく昨日櫻木さんと八宮さんと相談して決起したところだったのに、しょうもないことで出鼻をくじかないで欲しいな。
今日は他の人たちも巻き込んでの体育祭の立案を行う日。
張り切って朝食会に赴かなくちゃね!

私は足早に支度を終えると、すぐに食堂へと向かった。
693 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:30:18.57 ID:SZAKbp9W0
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【食堂】

めぐる「おっはよー! にちか!」

食堂に入ると八宮さんのいつも以上に溌剌とした笑顔。
夜時間の後、研究教室での作業はかなり順調だったとみえる。
清々しい挨拶に、思わず私も笑顔で返事をした。

灯織「……?」

肝心の風野さんはというとやけにテンションの高い八宮さんを怪訝そうな表情で見つめていた。

夏葉「みんなおはよう、今日も揃ってるわね」

透「あ、樋口は……」

夏葉「ええ、大丈夫。把握してるわ。無理強いはしないから安心してちょうだい」

(樋口さん、ホント頑なに離れようとしないな……)

恋鐘「今日はなんかめぐるから話があるって聞いたけど、一体なんね?」

めぐる「うん、あのね! せっかくこうして15人が出会えたんだから……みんなで親交を深める取り組みがやりたいなって……真乃とにちかと!」

灯織「……! 櫻木さんと、七草さんと?」

めぐる「うん!」

(……し、視線を感じる)
694 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:31:27.61 ID:SZAKbp9W0

にちか「あの、もしよければでいいので……みなさんで一緒に汗を流しちゃったりしませんか?!」

にちか「私が言えたことじゃないかもしれないですけど……みんなで一緒に何かをするって、すごく大事な……貴重な体験だと思うんです!」

真乃「才囚学園体育祭として、3人で企画してみたんです。大きな体育館もありますし……めぐるちゃんの才能研究教室もあります……っ!」

めぐる「色んなスポーツをみんなでやる一日にするの! どうかな?」

私たちの提案から間が開くこと数瞬。
このコロシアイ学園生活という非日常で、常に肌のひりつくような感覚にさらされていた中で急に平和ボケしたワードが持ち出されたことで少しショートしている様子だったみんなの顔は、



樹里「おー! めちゃくちゃいいじゃねーか、それ!」



______すぐに笑顔でいっぱいになった。

695 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:33:10.32 ID:SZAKbp9W0

夏葉「素晴らしい提案だわ! これだけの設備を持て余しているのを勿体無いとずっと思っていたところだったのよ!」

甘奈「うん! なんだか体が鈍っちゃってる気がしてたところだったんだよね!」

愛依「めっちゃ楽しそうじゃん! ここのみんな運動できそーな感じするもんね!」

どうやらこの学園生活で溜め込んでちょうどみんな溜め込んでいるところだったらしく、
一度誰かが賛同の意を示すとあちこちで和気藹々とした声が上がり始めた。

甜花「あ、あうぅ……甜花、運動ちょっと苦手……」

めぐる「大丈夫! 運動が苦手な人もいるだろうから、色んな種類のスポーツを用意するよ!」

真乃「めぐるちゃんの教室に、玉入れなんかもあったよね?」

甜花「玉入れ……! ちょっと、やってみたい……かも」

こんなにも多くの人たちが一つの形に纏まろうとしているのは、この学園生活始まって以来初めてと言っていいほどかもしれない。
696 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:33:48.50 ID:SZAKbp9W0

あさひ「みんなで一緒に遊ぶの楽しみっす〜! ワクワクしてきたっす!」

霧子「ふふ……あさひちゃんも、体を動かすのは好き……?」

あさひ「はいっす! 学校の授業も体育の授業は毎回楽しみにしてるっすよ!」

(芹沢さんもなんだか普通の女の子に戻ったみたいに見えるな……)

思えば出会ったその日から私たちはコロシアイを要求され、常に猜疑心の目を向け合っていた。
そんな生活の中で同年代、同じ性別、同じ言語の間柄の相手に本来寄せるべき感情を見失いかけていたけれど、
今ようやく、それを拾い上げることができそうだ。

恋鐘「灯織は得意なスポーツとかあるばい?」

灯織「わ、私ですか……? えっと、そうですね……テレビでたまに観戦はしますが、自分でプレーしたりだとかは……」

恋鐘「だったらせっかくの機会だし、色々試してみんとね! 灯織の中ん潜在能力うちらで見つけ出しちゃるけん!」

灯織「ふ、ふふ……大袈裟ですよ、月岡さん」

そして、それは私にとって一番のターゲットである風野さんもまた同じこと。
周りをキョロキョロと見渡してしばらく様子を見ていた彼女も、気がつけば私たちの輪の中に抱き込まれ始めていた。

697 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:34:36.51 ID:SZAKbp9W0


めぐる「それじゃあ体育祭の開催は明日! 今日はその準備に当てようと思います!」

甘奈「うん! せっかくだから思い出に残る、楽しい会にしようね☆」

にちか「準備って何すればいいですかね?」

夏葉「そうね……そうはいっても、設備自体は十分整っているものね。やりたい種目の洗い出しや、飲食物の準備、スポーツ用品の搬入などになるかしら」

霧子「応急処置の準備もやっておくね……」

夏葉「おっと、いちばん大切なことが抜けていたわね。ありがとう霧子」

霧子「ふふ……♪ おまかせあれ……♪」

愛依「そんぐらいの準備なら、一日がかりでやらなくても十分明日に間に合いそうなカンジがすんね」

真乃「そうですね。夕方くらいから、少しずつ準備を進めて行きましょうか……っ」

夏葉「透、一応円香にも声はかけてみてもらえるかしら。せっかくだから、親睦を全員で深められたらと思うの」

透「あー……うん、了解」

夕方からの準備を約束し、私たちは一旦は解散することになった。
樋口さん、それに浅倉さんは参加するかどうか分からないけど……それ以外のみんなは参加してくれそう。
昨日声をかけてくれた八宮さんには頭が上がらないな。
698 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:36:18.42 ID:SZAKbp9W0
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【にちかの部屋】

「そろそろみんな準備に動き出す頃かな?」

時計に目をやると短針は5の少し先を指していた。
立案者のうちの一人として、私が動かないわけにはいかないよね。
うんと伸びを一つしてから、私は校舎の方へと歩いて向かった。
699 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:37:48.23 ID:SZAKbp9W0
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【1F 体育館】

明日の体育祭は基本この体育館の中で行う予定。
バスケットボールのコートがまるまる2面入るぐらい大きな敷地に、私が何人も縦に積み上がるぐらい高い天井。
体を動かすにはもってこいの会場だ。
既に何人か集まって、準備のために動き出しているみたい。

にちか「すみません! 言い出しっぺなのに遅くなっちゃったみたいで……!」

真乃「ううん、今さっき始めたところだから大丈夫だよ」

櫻木さんは私の謝罪をやんわりと諌めると、すぐに向こうにいる八宮さんを呼び寄せた。
八宮さんは小型犬みたいな笑顔と共にこっちに駆け寄ってくる。

めぐる「あっ、にちか! 来てくれたんだね! えへへ、一緒に準備頑張ろうねー!」

にちか「はい……よろしくお願いします。えっと、何からやりますかねー」

めぐる「えっとね……さっき夏葉さんとも話をしたんだけど、私たちはスポーツ用品の搬入を行おうかなって」

にちか「ってことは八宮さんの才能研究教室とここの往復ってことですかね?」

(うっ……いちばんの重労働……)

めぐる「あはは……3人で一緒に持ち運びすればそんなにたくさん往復する必要はないと思うから、頑張ろう!」

(まあ元は私たちが言い出したことだしな……しょうがないか)

真乃「他の食べ物や飲み物、会場のセッティングは残りのみんなでやってくれるみたいだから頑張ろうね……にちかちゃん!」

真乃「ファイトだよ! むんっ!」

(む、むん……?)

そこから私たちは八宮さんの才能研究教室に3人で向かって作業を開始した。

700 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:39:20.22 ID:SZAKbp9W0
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【3F 超研究生級のスポタレの才能研究教室】

教室には既にいくつか荷物の積み込まれた袋が積まれていて、すぐに持ち出せるようになっていた。
本当に昨日の晩に八宮さんは一人で黙々と準備をしていたらしい。
なんだかちょっと申し訳ないな……

めぐる「使いそうなラケットとかボールとかは昨日の晩にちょっとまとめておいたから、持てそうな分だけ持ってみて!」

真乃「う、うん……この袋のことかな?」

めぐる「そうそう! 気をつけて持ってね!」

にちか「あ、櫻木さん! そっちのやつは私持ちますよ!」

八宮さんの指示に従って、順番に荷物を持ち出していく。
15人がプレーする分の荷物となると、結構な重量で嵩張る代物だ。
一度に全部持っていくことはできないだろう。

真乃「うんしょ……うんしょ……」

にちか「はぁ……はぁ……」

めぐる「頑張ろう! まだまだ始まったばかりだよ!」

両手に荷物を抱えては体育館まで持って降りて。
荷物を下ろしたら今度はまた三階まで取りに戻る。

真乃「結構……大変だね……っ!」

にちか「で、ですね……明日筋肉痛になんなきゃいいけど……」

めぐる「あはは、本番は明日なんだよー?」

階段の上り下りってだけで大変なのに、両手で大きな荷物を抱え込んでいる。
二、三回運んだ後には既に汗だく状態になっていた。

……そんな状態だから、気が漫ろになってしまっていたんだと思う。
701 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:40:14.36 ID:SZAKbp9W0

真乃「めぐるちゃん、次はこれかな……?」

めぐる「うん、ゆっくりでいいからね。体を痛めないことがいちばん大事だよ!」

にちか「ふぅ……あっついなぁ……」

真乃「よいしょ……それじゃあ持っていくね……っ!」

めぐる「うん……あっ、真乃! ちょっと待って!」

真乃「え? ……わ、わわっ!?」

制服の襟元を指で掴んでパタパタと風を仰ぐのに必死になっていた私は、すぐ後ろに近づいていた櫻木さんの存在に気づいていなかった。
櫻木さん自身も、抱き抱えている荷物のせいで前が見えておらず……

衝突は避けられようがなかった。



ガッシャーン!



702 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:41:57.75 ID:SZAKbp9W0

床に荷物がぶつかって立てる音が部屋に響き渡った。
轟音が耳を突き抜けて、頭の中を反響するのがうざったくて眉間に皺を寄せてから、数秒。
そこでやっと自分自身の右腕からの痛みの信号に気がついた。

にちか「痛っ……」

真乃「に、にちかちゃん! ごめんなさい……だ、大丈夫……?」

どうやら袋のファスナーが半開きになっていたらしく、そこから飛び出したバドミントンのラケットが私の右手に強くぶつかったらしい。
私の右腕は軽い内出血を起こしたようで、出来立てほやほやの痣が浮かび上がっていた。

にちか「あー、なんかちょっと打っちゃったみたいです」

めぐる「だ、大丈夫?! ちゃんと動く?!」

見た目ほど深刻な怪我じゃない。
手で押してみるとちょっと痛むけど、それぐらい。
普通に動かす分には問題ないし、荷物だって持てる。
703 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:43:24.30 ID:SZAKbp9W0

真乃「ごめん、ごめんね……にちかちゃん……っ」

にちか「いやいや、そんな謝ってもらうほどの怪我じゃないんで……頭上げてください」

さっき遅刻の謝罪をしていた時とは態度が逆転。
必要以上の謝罪を繰り返す櫻木さんを私が諌める構図になった。

めぐる「大した事故にならなくてよかったけど……今日はこれぐらいにしておいた方が良さそうだね」

とはいえ、流石に衝突があった後で作業を続けるわけにもいかず。八宮さんの方からストップがかかってしまった。

めぐる「二人とも、疲れが溜まってるよね? 殆どは運び終えたんだし、続きは明日の朝にやろうよ」

真乃「め、めぐるちゃんはまだ元気そうだね……」

にちか「ここは……八宮さんの言うことに従っておきましょうか」

真乃「う、うん……」

しゅんとしてしまった櫻木さんを私と八宮さんで励ましながら、寄宿舎へと戻った。
704 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:44:44.40 ID:SZAKbp9W0
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【寄宿舎前】

真乃「今日はごめんなさい……せっかくにちかちゃんも張り切って準備をしてくれてたのに、それを邪魔するような真似をして」

にちか「いや、だからもういいですって! 大体不注意の責任は私にもありますので!」

夜時間までの時間もそう残っていない。
檻越しに見える空もオレンジ色に染まってきた。
私たち3人は明日の体育祭のことを話しながら、ゆっくり寄宿舎へと向かっていた。
すると、丁度道の合流地点あたりに華奢なシルエットが見える。

遠目でも分かった。あの警戒した足取りは、風野さんだ。

灯織「……こんばんは」

近づいてくる私たちに逃げられないと悟ると、低い声で風野さんは挨拶をした。

めぐる「灯織〜! こんばんは! お散歩中?」

灯織「えっと……その……」

八宮さんはそれを知ってか知らずか、いつもと変わらぬ調子で距離を詰める。
たじろいだ風野さんの右手からはカサッとビニールが擦れるような音がした。
705 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:46:19.09 ID:SZAKbp9W0

にちか「……? それって……」

めぐる「何持ってるの? 灯織?」

灯織「えっと、その、これは……」

真乃「……!」

真乃「違ったらごめんね……っ! もしかすると、灯織ちゃんが手に持ってるそれ……明日の体育祭のお弁当だったりしないかな」

櫻木さんの推測に、風野さんは口をあんぐりと開いた。

灯織「……当たり」

どうやらご明察だったらしい。
私たちはずっと道具の搬入をしていたけど、明日の準備は他の人たちも動いてくれていた。
体育館のセッティングが飲食物の用意。
風野さんも、裏でそのために動いていてくれたらしいのだ。
今朝は場の雰囲気に流されて渋々といった様子だったけど、風野さん自身も乗り気でいてくれたのかなと俄かに嬉しくなる。

706 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:47:44.37 ID:SZAKbp9W0


にちか「風野さん……明日の体育祭に参加してくださるんですね」

思わず、そんな言葉が口から出た。
返事なんて返ってこないこと、分かっていた。



灯織「……はい」



(……! 今、私の問いかけに言葉を返してくれた……!?)

______はずなのに。

私のみならず、櫻木さんと八宮さんもこれには驚いた様子。
3人の反応を悟った風野さんは伏し目がちに、辿々しく言葉を紡ぐ。
707 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:49:09.57 ID:SZAKbp9W0

灯織「……ずっと、ずっと悩んでるんです」

灯織「この数日間、私が見てきた七草さんは直向きで、全力に……私たちに向き合っていて、そこに裏なんて何も見えない」

灯織「私たちを欺いて、出し抜こうとした裁判の時の七草さんとは違って見えるんです」

灯織「でも、だからってそれを認めてしまっていいものか……と。私はまた騙されているんじゃないかって」

それは、私が彼女を抉った爪痕。
彼女の純真無垢だった心に、私は消えない引っ掻き傷を作った。
自身で作り出した壁の中に篭りがちだった彼女が、極限状態の中意を決して飛び出したところに私がした仕打ちは、
トラウマとして残るには十分なものだったらしい。

灯織「私にはもう……自信がないんです。誰かを信じ抜く自信が。他の誰かを信じようとする度に、また裏切られるんじゃないかって考えが頭をよぎってしまう」

灯織「今はただ……他の人の領域に踏み込んでいくのが……怖くて」

裁判で与えてしまったトラウマは色濃く。
肩を振るわせ、色を失った瞳は虚を見つめる。
血の気の引いた顔は、見ているこちらもくらりと倒れてしまいそうなほど。



めぐる「わたしは灯織のことを信じてるよ」




そんな彼女の手を、迷いなく八宮さんは握った。
708 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:51:12.12 ID:SZAKbp9W0

灯織「……えっ?」

めぐる「あのね、信じるってことは……その人に全部を委ねるって言うこととはちょっと違うと思うんだ」

柔らかく温かい手のひらからはじんわりと熱が伝わっていく。
それは八宮さん自身の思いやりであり、感情であり、そして、言葉だ。

めぐる「この人と一緒にいたい、一緒に笑いたい、一緒に歩いて行きたい……そういう気持ちが信じるってことなんじゃないかな」

めぐる「もちろん、そう思った相手が自分の思ってたのと違う面を見せることだってあるかもしれない。裏切られたーって感じる時だってあるかもしれない」

めぐる「でも、だからといって灯織がその人のことを信じたことが間違いだったわけじゃない。信じたことを間違いだって決めつけちゃうのは、その時の灯織の気持ちを否定しちゃうことになるんだよ」

めぐる「人を信じたいって思うのはその時の素直な気持ち……そこには責任もしがらみも、無いんじゃないかな」

そう、私たちは始めから思い違いをしていた。
誰かを信じたからには、運命を共にする義務があると思っていた。
必ずしもそれは間違いじゃないのかもしれない。
だとしても、共に歩む友人、仲間に向ける信頼はもっと軽率で、安易で、単純なものでいい。
この人を手放したくないという気持ちを仲介するものこそが信頼なのだと八宮さんは説いた。
709 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:52:19.69 ID:SZAKbp9W0

灯織「……」

風野さんを取り囲む壁越しの、八宮さんの説得。
壁は分厚く、高く、よじ登ることは難しい。
外から中に入ることなど、出来ないのかもしれない。

めぐる「もしよかったら、なんだけど……灯織は今、どう思ってるのか聞かせてもらえたら嬉しいかな」

ただ、壁の向こうから聞こえてきたその溌剌とした声は……

灯織「私、は_______」



_____壁の中の少女を、外の世界へと誘った。


710 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:53:51.87 ID:SZAKbp9W0


「私のことをこんなにも大切に思ってくれる人がいる」

「私のことを友達だって言ってくれた人がいる」

「何度拒絶されても、私に向き合おうとしてくれる人がいる」

「そんなみんなと、一緒に生きていきたい」


(……!)

風野さんの笑顔を、初めて見た。
星の輝きのように、見るものを惹きつけるような、澄んで美しい表情。
ずっとこのコロシアイの闇世の中に飲まれていたその光が、やっと雲の合間をぬって出た。
私たちの元に届いたその純な光が、胸を打った。
711 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:55:39.74 ID:SZAKbp9W0

灯織「……そっか、私は自分自身の感情にすら、向き合えてなかったんだね」

灯織「教えてもらえなきゃ、ずっと気づけなかったかもしれないな」

灯織「ありがとう、【めぐる】」

めぐる「ひ、灯織……今、わたしのこと……!?」


外の世界へと踏み出した少女の足取りは、軽やかで、そして勇ましい。


灯織「それに、ずっと私のことを気遣ってくれてありがとう。【真乃】」

真乃「ほ、ほわっ……」


一歩一歩着実に踏みしめて、私たちの元へと歩み寄る。


灯織「素直に気持ちを受け止めることができなくて、ごめんなさい。辛い思いを何度もさせたと思う」


そしてその足跡は、



灯織「これからは、私もあなたに向き合うつもりだから……いいかな、【にちか】」



私の元へと続いてくれた。
712 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:56:46.55 ID:SZAKbp9W0

にちか「は、はい……! もちろん、喜んで……!」

風野さんが私へと差し伸べた手のひら。
私はそれを寸分の悩みもなく、握りしめた。
風野さんの体温は低く、私の熱がどんどんと吸われているような気すらした。
でも、それと同時にこちらに返ってくるものがある。
風野さんが私に向けてくれる信頼、一緒に歩みたいと思ってくれたその心が、確かな実感として伝わってくる。
そのことが、これ以上になく心地よかった。

めぐる「灯織……なんだか、本当の意味で今友達になれた気がするよ……!」

灯織「うん……ありがとう、めぐる。あと少しで私は大切なものを取り逃すところだった」

真乃「ううん、遅すぎるなんてことはないと思う……これからしっかりと、一緒に歩いていこうね……っ!」

にちか「よかったです……風野さん。私、もう風野さんには一生認めてもらえないんじゃないかって思ってたので」

灯織「……」
713 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:58:20.39 ID:SZAKbp9W0

灯織「ねえ、真乃、めぐる。私、今結構勇気出して一歩を踏み出したんだけど……この中に一人、まだ安全圏にいる人がいる気がするんだ」

にちか「え? な、なんです……?」

めぐる「おやおや〜、それは誰のことなのかな〜? 真乃、灯織、誰のこと〜?」

真乃「ふふ……一体誰のことなんだろうね、灯織ちゃん、めぐるちゃん!」

(……うっ、3人からの視線を感じる)

(これは……逃げられない、腹を括るしかないみたいだ)

にちか「分かった、分かりましたよ……これからは私も下の名前で呼ばせてもらいますから!」


にちか「あ〜、もう! これからよろしく! 【真乃ちゃん、灯織ちゃん、めぐるちゃん】!」


めぐる「こちらこそだよ〜〜〜!!」

にちか「わっ、ちょっと! 急に抱きしめないで!」

灯織「め、めぐる……苦しい……!!」

ようやく、辿り着けた。
ずっと果ての見えない過酷な道を歩き続けていた。
必死に必死にもがき続けて、結果を望むことは傲慢だと思って、足掻くことが責務だと思って闇雲に遮二無二になっていた。
その結果、ルカさんのいう通り、開けた運命があった。
掴み取れた運命があった。
この悪路を進んでいなければ、この今はなかっただろうと思う。


______本当に、諦めなくてよかった。

714 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 20:59:19.94 ID:SZAKbp9W0

灯織「ごめんね、3人の手伝いに行ければよかったんだけど」

にちか「いや、気にしないで大丈夫! 明日の朝にちゃちゃっとやっちゃえば終わるはずだから!」

真乃「うん、灯織ちゃんは今日はお弁当を作ってくれてたんだよね? 明日食べられるのが楽しみだなぁ……」

めぐる「明日がすごい楽しみになってきた……どうしよう、今日寝られないかもしれない!」

灯織「もう……明日に体力を残しておかなくちゃでしょ? 今日はしっかり休もう」

にちか「ほんと、すでにくったくただから……今日は早いとこ寝とこ〜……」

真乃「お疲れ様、にちかちゃん」

私たちは胸にこれ以上ない充実感を抱きながら、それぞれの個室へと戻っていった。

715 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:00:14.72 ID:SZAKbp9W0
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノダム『今日ハ夜食ニピッタリナメニューヲ紹介スルヨ』

モノスケ『全国の受験生、それに受験生をお持ちの親御さん必見や!』

モノファニー『メモ用紙を持ってモニターの前に集まってちょうだいね!』

モノダム『マズ、国産牛ノサーロインステーキヲミディアムレアマデジックリ焼クンダ』

モノダム『ステーキガ仕上ガッタラソノママノ勢イデ唐揚ゲ粉ノ中ニダイブ』

モノダム『ソノママ250℃の油デ揚ゲチャオウネ』

モノタロウ『ステーキの唐揚げなんて超贅沢! 涎が止まらないよ〜!』

モノダム『ゴ飯ニ乗セテマヨネーズヲカケレバ完成ダヨ』

モノスケ『うんこの香りや〜! たまらん、たまらんでぇ!』

モノファニー『例の如く、これはアタイたちだけの夜食だからね!』

モノタロウ『キサマラはひもじくおにぎりでも食べてればいいんだよ!』

『ばーいくま〜〜〜〜!!!!』

プツン

(うぅ……何あれ、見てるだけで胃もたれというか……吐き気までしてくる)

相変わらず最悪な中身の放送は見なかったことにして、ベッドの上にゴロリと転がり込む。
この学園に来て初めての感覚だ。
まだ体がなんだかフワフワしてる。
信頼を勝ち取ると言うことがこれほどまでに充実感と自己肯定感が得られるモノだとは知らなかった。
お互いを下の名前で呼び合う仲なんて、久しく構築していなかったし、特別な存在だって相互に認識できたのは素直に嬉しい。

始まる前から成功体験を得られて浮き足立つのを、必死にベッドに縛りつけた。
もうこれだけのものが得られたのだから、明日の体育祭は最高の経験になるはずだよね!
716 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:01:15.06 ID:SZAKbp9W0

……私は本気でそんなとぼけたことを思っていた。
自分は今日常の中にいない。
コロシアイという非日常の中にいるってことを完全に失念していた。
私は嫌というほどに知っていたはずなのに。



期待というのは、簡単に裏切られるものだということを忘れていた。



717 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:02:00.73 ID:SZAKbp9W0
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【???】

灯織「失礼します……」

灯織「……あの、どうしたんですか? 明日の体育祭のことで、何か……?」

灯織「……誰もいないのかな」

灯織「呼び出し場所は、ここで間違いないはずだけど……」

???「……」

灯織「……っ?! 誰っ?!」



ガンッ


718 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:03:27.24 ID:SZAKbp9W0
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【School Days 11】
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【にちかの部屋】

【キーンコーンカーンコーン……】

モノタロウ『おはっくまー! 何やらキサマラ、今日は楽しそうなことをやるみたいだね!』

モノダム『ミンナデ仲良ク体育祭、イイナァ……』

モノファニー『アタイも一緒に混ざってやりたいわ! 汗をかくのは老廃物を流してくれるし美容にもいいもの』

モノスケ『ケッ、くだらんくだらん。そないなことしてもビタ一文の儲けにもならへんやないか』

モノダム『……』

モノスケ『大体ワイらはギスギスあってこそのモノクマーズや! ザコどもに感化されたりしたらなんかあかん!』

モノスケ『キサマラもその体育祭とやらですっ転んで怪我してしまえばいいんや!』

モノスケ『擦りむいた膝小僧に砂利が入り込んで消毒液が染み込んじまえ!』

モノダム『……』

プツン

うーん、いい目覚め。
昨日の夜、かけがえのないものを得た私はいつも以上にすんなりと眠りに入ることができた。
体の疲れもちゃんと取れてる、かつてないほどのベストコンディション!
これなら今日は一日目一杯楽しめそうかな。

私はいつもより早足で朝の支度を終えると、靴もつっかけで履いて、バタバタと体育館へと向かった。
719 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:05:25.86 ID:SZAKbp9W0
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【体育館】

にちか「おはようございますー! あ、真乃ちゃん……もう来てたんだね」

真乃「にちかちゃん、おはよう。昨日はよく眠れたみたいだね!」

にちか「そりゃもう! おかげで元気満タン! ムキムキにちかだよ!」

真乃「ふふ……にちかちゃん、すごく楽しそう……!」


体育館には既に多くの人が集まっていた。


恋鐘「昨日のうちにいっぱい灯織と凛世と一緒にお弁当作っといたからね! 今日はた〜んと食べてもらうばい!」

凛世「ちゃんと冷蔵庫にも入れておきましたので……衛生面も万全にございます……」


昨日のうちからお弁当の用意をしてくれていた月岡さんに杜野さん。


霧子「絆創膏に包帯、湿布、消毒液……怪我をしたり、しんどくなったりしたらいつでも声をかけてね……」

甘奈「倉庫から扇風機も持ってきたから、汗をかいたら涼むのに使ってね☆」


みんなの体のことを気遣って、無理をしないように注意を促してくれてる幽谷さんと甘奈さん。

720 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:06:41.68 ID:SZAKbp9W0

樹里「うっし……今日はとにかく体を動かして楽しむかんな!」

愛依「うっひゃ〜、燃えてきた〜! うち、マジの全力見せちゃうかんね!」

あさひ「あはは、負けないっすよ! 二人とも!」


これから始まる激闘を間近に、昂りを隠せずにいる西城さん、愛依さん、芹沢さん。


真乃「ふふ……みんな、楽しみにしてくれてたんだね!」


そして、ずっと一緒に準備をしてきた大切な友達の真乃ちゃん。


にちか「……あれ? なんか……少なくない?」


体育館には私を含めたこの【9人しか】、姿がなかった。

721 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:08:01.45 ID:SZAKbp9W0

真乃「円香ちゃんと透ちゃんは……参加は難しかったのかな?」

あさひ「その二人はまあなんとなくわかるっすけど……夏葉さんとかもいないっすね」

樹里「ったく、相変わらず朝に弱いんだから……どうせ寝坊してんだろ?」

甘奈「甜花ちゃんは昨日は参加するって言ってたからいずれ来ると思うけど……」

恋鐘「灯織も準備手伝うてくれたし、来てくれるはずばい」

真乃「にちかちゃん、めぐるちゃんはもしかすると……才能研究教室にいるのかもしれないよ」

にちか「あー……そういえば、昨日の作業がまだ途中だったもんね。めぐるちゃんだけ先に行って作業をしてるのかも」

甘奈「あれ、二人はめぐるちゃんの居場所に心当たりがあるの?」

真乃「うん……ちょっと呼んでくるね」

甘奈「だったら甘奈も一緒に行くよ! 荷物運びだったら人手が必要でしょ?」

にちか「ありがとうございます、甘奈さん!」

樹里「じゃ、アタシは寄宿舎に戻って夏葉と甜花を呼んでくるよ。どうせ二人とも寝てるんだろうしさ」

恋鐘「灯織は食堂に行ったとやろか……うち、ちょっと様子見てくるばい」

凛世「では、凛世も随伴いたします……」

愛依「おっけー! それじゃうちらは体育館で待機しとくね!」

霧子「気をつけて、行ってきてね……」

まあまだ朝のアナウンスが鳴って間もないし、全員が集まってなくてもおかしくはない。
私たちは三手に分かれて、それぞれまだ来てない人たちを呼びに行くことにした。
722 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:09:25.36 ID:SZAKbp9W0

体育館から3階までは結構距離があるので、その道中は呑気に雑談をしていた。
同年代の女子らしく、小突きあいながら、戯れ合いながら、これから始まる楽しいひとときに思いを馳せていた。
階段を一段一段登るたびに、気持ちも弾んでいく。
上がるテンション、早まる鼓動。
早く早くと急かす心から溢れ出すワクワクとドキドキに、すっかり緩み切っていた。

甘奈「せっかくだから円香ちゃんにも声をかけてみようか。3階の上がりついでに!」

真乃「うん……一緒に遊べたら、嬉しいけど……」

にちか「いやー……どうだろう……樋口さん、だいぶ頑なだしなー……」

甘奈「……あれ? そういえばにちかちゃんって前から真乃ちゃんのこと下の名前で呼んでたっけ?」

にちか「え。あ、あー……あはは、ちょっと昨日から、流れで」

甘奈「えー、いいなー! ずるいよ、甘奈も下の名前で呼んでほしい!」

にちか「甘奈さんは元から下の名前で呼んでますよ?」

甘奈「甘奈さんじゃなくて、甘奈がいいの。せっかくこうして出会えたんだから、みんなと仲良くなった証明が欲しいんだ〜」

甘奈「年上だからって遠慮とかいらないから……ね?」

にちか「えー……じゃあ、甘奈ちゃん……?」

甘奈「やったー☆」

真乃「ふふっ……それじゃあ私も甘奈ちゃんって呼んじゃってもいいかな?」

甘奈「もちろんだよ〜!」
723 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:10:35.21 ID:SZAKbp9W0

にちか「よいしょ……着いたね、二人とも」

真乃「物音は……しないね。ここじゃなかったのかな?」

甘奈「奥の方で作業をしてるのかも? とりあえず覗いてみようよ」

にちか「そうだね……とりあえず扉、開けますね」

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【超研究生級のスポタレの才能研究教室】

甘奈「めぐるちゃん……いないね」

真乃「ほわ……どこに行っちゃったんだろう」

部屋に入ってみたけどめぐるちゃんの姿はそこにはない。
昨日作業が中断されたスポーツバッグの山もそのままになっている。

にちか「めぐるちゃーん? いないのー?」

とはいえ、めぐるちゃんが他に行きそうなところも思いつかないしな。
どこかに隠れたりでもしてるんじゃないだろうか。
そんな能天気なことを考えながら、呼びかける声を上げながら、部屋の中を歩き回って、

シャワールームの中を見た。
724 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:11:29.09 ID:SZAKbp9W0





______見てしまった。





725 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:11:55.45 ID:SZAKbp9W0





【シャワールームの壁にもたれかかるようにして頭から血を流して息絶えているめぐるちゃんの姿を、目撃してしまった】




726 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:12:22.17 ID:SZAKbp9W0
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CHAPTER 02

退紅色にこんがらがって

非日常編



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727 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/08/31(木) 21:15:53.06 ID:SZAKbp9W0

かなり間延びさせてしまいましたが、ここまでで2章の事件発生までの一区切りです。
先述の通り、ココから先は安価の領域を縮小して更新していきます。
捜査パートにおいても、安価は取らずに自動進行で進めることとします。
また明日以降、合間を見つけて書き込みにまいります。
728 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:06:13.69 ID:jj1t/rmq0

【ピンポンパンポーン……】

『死体が発見されました! 死体発見現場は3階の超研究生級のスポタレの研究教室ですよ〜!』

『ハリアップ! みんな現場まで集まってくださ〜い!』


「う……そ……」

全身を包み込む虚脱感に、思わず膝から崩れ落ちる。
つい昨日の私は、こんな予想なんてしていなかった。
今日という未来には、希望しか待っていないと本気で信じて、期待に胸を膨らませていた。
期待が泡と消えた今となっては、そんなのはただの伽藍堂だ。
ぽっかりと空いてしまった空虚な胸の内に、喪失感が絶望を埋め尽くしていく。

「やっと……友達になれた……友達だって認められたばっかりだったのに……」

落下して地面にぶつかった時の衝撃は、より高いところから落ちたときの方が大きい。
昨日のことがあった手前、私を打ちのめさんとする衝撃は筆舌に尽くし難いものがあった。
729 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:07:16.14 ID:jj1t/rmq0


しばらくして、アナウンスを聞いたみんながやって来た。

恋鐘「い、今のアナウンスはなんね?! し、死体ってそげなことあるわけが……」

恋鐘「ふぇぇぇぇ?! め、めぐるが頭から血流しとる?!?!」

愛依「う、嘘だよね……?! めぐるちゃん……?!」

樹里「なっ……ま、マジかよ……」

霧子「そんな……」

凛世「また、起きてしまったのですか……」

円香「……」

部屋に入った瞬間全員が言葉を失う。
当然だ、こんなの予想なんかしてない。
あっちゃならない。
よりにもよって、私たちを笑顔へと導いてくれるはずの彼女がこんなところで血に沈んでいいはずがないんだから。

……そんな状況でも、彼女は違った。
いや、彼女だからこそ違ったんだ。
私たちが絶句し、悲しみにその肩を振るわせる中で、ただ一人だけが……ほくそ笑んでいた。



あさひ「……あははっ、ついに始まったっすね」


730 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:08:19.91 ID:jj1t/rmq0

にちか「芹沢さん……」

彼女は意気揚々とした様子でめぐるちゃんの亡骸へと近づいていく。
新しい玩具を見つけた時のように、首を小さく傾げながら、自重にもたげる顔を覗き込んだ。

あさひ「二人目はめぐるちゃんっすか……意外なところで来たっすね」

樹里「あさひ……やめろ、もうやめてくれよ……なんでそんな嬉しそうな表情ができるんだよ」

あさひ「……? 別にわたしだってめぐるちゃんが死んで嬉しいわけじゃないっすよ?」

あさひ「でも、また学級裁判ができるっす! 犯人とわたしたちの真剣勝負……どっちがこのゲームに勝てるかの騙し合いが始まるっすから」

あさひ「気合を入れていかないと、負けちゃうっすよ! 樹里ちゃん!」

芹沢さんはどこまでも私たちの言葉を意に介そうとしない。
彼女は純粋に、学級裁判をゲームとして楽しんでいる。
自分自身がゲームに勝つこと、それしか彼女の頭にはないんだ。

【おはっくま〜〜〜〜!!!!】

モノタロウ「わー! 大変だ! またしても犠牲者が出ちゃったよ〜!」

モノファニー「うそ……もしかして、その子死んじゃってるの……?」

モノダム「ホント、ダヨ」

モノファニー「でろでろでろでろでろでろ……」
731 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:10:19.90 ID:jj1t/rmq0

モノスケ「おもろなってきたやん! ずっと日常系アニメ未満の起伏のないストーリーを見せられて、こちとらイライラしてきとったところなんや!」

モノスケ「やっぱり血みどろにドロドロの騙し合いあってこその学園生活やな!」

モノクマ「うんうん、青春とはこうじゃなくっちゃね! 麗しき友情と別れ!」

モノクマ「うぷぷぷ……友と友が分たれる時のカタルシスこそが青春の醍醐味だよね」

モノスケ「流石お父やんや……歪んだ認知が最高にイカしとるで」

しばらくして、私たちの雰囲気に一切配慮をしない騒々しいやり方でモノクマとモノクマーズも姿を現した。
私たちをどこまでもおちょくるような態度が腹立たしい。

霧子「モノクマさん……あなたがこうやってまた出てきたということは……」

霧子「また、学級裁判をやるんですか……?」

モノクマ「もっちもち! 芹沢さんもやりたくてウズウズしてるよね?」

あさひ「あはは、そうっすね!」

愛依「また……あれが始まるん……? うちら同士で疑い合う、犯人当てが……」

透「マジかー……きっつ」

……まだ前回の学級裁判からは一週間も経ってない。
私の体はまだあの時の感覚を覚えている。
他の人たちを騙すために、必死に裏を掻こうとする焦燥感。
常に他人の目が自分に向けられているのではないかと気にしてしまう不安感。
そして何より、自分自身が生きるか死ぬかの瀬戸際に立っているという恐怖感。
あの時と変わらない、いやむしろまた同じことを繰り返してしまったという後悔はより一層その嫌な感情の波に拍車をかけてすらいる。
ゾワゾワという言葉で足りないぐらいの悪寒が私を襲った。
732 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:11:19.22 ID:jj1t/rmq0

あさひ「それじゃ早速、モノクマファイルを貰えるっすか?」

真乃「……やらなくちゃ、いけないんだね。また、捜査から……」

モノクマ「……」

モノタロウ「あ、あれ……? お父ちゃん? 聞こえてる?」

樹里「……あ? 何出し渋ってんだよ。そっちからこのコロシアイは仕掛けてきてるんだろ。だったら最低限ちゃんと運営ぐらいしろって」

モノクマ「……」

甘奈「な、なんか様子がおかしいね……?」

モノクマ「うぷぷぷ……オマエラ、どうして疑問に思ってないの?」

(……え?)

モノクマ「さっきのアナウンス、斑鳩さん殺しの時と【違った】よね?」

(ルカさんの時と、アナウンスが違う……?)
733 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:12:38.92 ID:jj1t/rmq0
◆◇◆◇◆◇◆◇

【ピンポンパンポーン……】

にちか「な、何?!」

霧子「あっ……モニター……何か出てきたよ……!」

『来た! ついに来た! 死体が発見されましたよ〜!』

『いや〜、まさか本当にコロシアイが起きないんじゃないかとヤキモキしたけどオマエラを信じて正解だったよ〜!』

『死体発見現場の地下図書室までオマエラ【全員】お集まりください! モノクマからお話がございます!』

◆◇◆◇◆◇◆◇

【ピンポンパンポーン……】

『死体が発見されました! 死体発見現場は3階の超研究生級のスポタレの研究教室ですよ〜!』

『ハリアップ! みんな現場まで集まってくださ〜い!』

にちか「う……そ……」

◆◇◆◇◆◇◆◇


(……それってもしかして)

にちか「【全員に】集まれって言ってない……?!」

愛依「え、ええ?! そ、それどーいうことなん?! なんか変わんの?!」

あさひ「あっ、そういう意味っすか。まだみんな揃ってないのにモノクマたちが出てきておかしいなって思ったけど」
734 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:13:38.90 ID:jj1t/rmq0



あさひ「____他の人たちは自分の意思でここに来れない状況にあるってことっすね?」




霧子「そ、それってどういう意味……?」

恋鐘「今ここにおらんのは灯織、甜花、夏葉の3人ばい?」

甘奈「そういえば、樹里ちゃんたちもみんなを呼びに行ってたよね? あれはどうなったの?」

樹里「いや……それが寄宿舎のインターホンを鳴らしても反応がねーんだよ。甜花も、夏葉も」

甘奈「甜花ちゃんも?!」

恋鐘「食堂に灯織もおらんかったし、先に3階にきとるもんだとばかり思うとったけど……」

真乃「モ、モノクマさん教えてください! どこに灯織ちゃんはいるんですか……?!」

モノクマ「うぷぷぷ……さあね、ボクからは言えないなぁ。彼女たちの居場所も」
735 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:14:29.41 ID:jj1t/rmq0





モノクマ「生きてるのかどうかも」




736 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:15:24.75 ID:jj1t/rmq0

にちか「……は?」

真乃「な、何言ってるんですか……?」

にちか「い、言ってる意味がわかんないんですけど……」

モノクマ「うぷぷぷ……目は口ほどに物を言うと言うじゃない」

モノクマ「ボクの今の言葉の意味を知りたいのなら、オマエラは自分の目で確かめるべきだろうね!」

額を汗が伝っていた。
皮脂を吸いあげ降ろす玉のような滴は、拭き取る指先にべったりとくっついて、嫌な感触がした。
纏わり付くようなざわつきが襲いくる。

樹里「……もう一度、学園中を探し回ろう! 絶対どこかにいるはずだ」

樹里「大丈夫! 絶対に……無事だ、無事じゃなきゃいけないんだ……!」

恋鐘「また別れて捜索せんね! 分担はどがんするのがよかね?」
737 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:16:39.41 ID:jj1t/rmq0

円香「その前に、【監視】をつけた方がいいんじゃないですか?」

にちか「監視……ですか?」

円香「……学級裁判はどのみち避けられないんです。この発見現場の保全をしておく必要はあると思いますが」

凛世「でしたら、凛世がお引き受けいたします……」

霧子「現場の保全は二人以上必要だよね……私もここに残るよ……」

にちか「じゃあ残りで分担して3人を探しましょう! 学園を隅々まで探し尽くさなきゃ……!」

甘奈「三階から順繰りに探していくのがいいかな?」

樹里「そうだな……手際よくやらないとな。

あさひ「それじゃあわたしは三階を探すっす!」

愛依「じゃあうちも三階……ここの教室以外に見落としがないか見るね!」

円香「いえ、愛依さんは他に回ってください。この階は私が引き受けます」

愛依「え? わ、分かった……それじゃああさひちゃんをよろしく頼むね!」

(……芹沢さんが才能研究教室に行かないかどうか見張るつもりだな)
738 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:17:24.37 ID:jj1t/rmq0

透「じゃあ、うちは二階行きます。同行者募集」

恋鐘「そいやったらうちも二階に行くばい! 一階はさっきうちも一度見とるし……他の人が行った方がよかやろ?」

甘奈「それじゃあ甘奈は一階を探すよ! さっきはすぐに三階に来ちゃったし……」

にちか「私も着いていきます! 一階は広いから人手が必要ですよね」

真乃「それじゃあ私も行くね……!」

樹里「アタシも行こう。さっき寄宿舎は一度調べたんだ、学校をアタシも見てまわりたい」

愛依「えっと……そんじゃうちは地下を見てくる! 地下は教室も少ないし、スペースもそんな無いから……多分うち一人でも見れると思う!」

樹里「よし……そんじゃとりあえずはこれで決まりだな。各階、何か発見があったらすぐに声を上げて教えてくれ!」

私たちは決めた分担の通り、すぐに分かれて行動を開始した。
とにかく焦っていた。
最悪を否定したくて、学園内を駆けずり回った。
739 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:18:01.72 ID:jj1t/rmq0
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【才囚学園 1F】

樹里「1Fはかなり広い……さらに細分化して見て回ろう」

甘奈「そうだね……甘奈は倉庫とか食堂、購買の方を見に行ってみる!」

にちか「それじゃあ私は体育館の方に行ってみます!」

真乃「えっと……それじゃあ灯織ちゃんの才能研究教室の方を見てきます……っ!」

樹里「おし、そんじゃアタシは地下階段近くの教室を見てくるよ!」
740 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:19:07.52 ID:jj1t/rmq0
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【1F 体育館】

人数が揃っていないと話題になってから、愛依さんや芹沢さん、幽谷さんが待機していた場所だし、
まさか体育館で入れ違いになってはいないだろう……とは思うけど、念のため。
私は垂れ幕のぶら下がっているステージの上へと上がり込んだ。

「こういう舞台袖とかに隠れてたり……しないか」

ステージの上手と下手、その裏側まで丁寧に見て回ったが、誰かが隠れられそうな空間はない。
垂れ幕のバトンを上下させるための調整室なんかも覗いては見たけど誰かが出入りしたような痕跡も残っちゃいない。

……うん、やっぱり体育館には居そうにないかな。

ことは一刻を争うんだ。
不必要に同じ場所に留まる理由もない。
ステージの上、ちょっとした段差から飛び降りて、駆け出そうとした時……【奇妙なもの】がステージの上から目についた。

「……なんだろ、アレ」

体育祭で使う予定だった道具はひとまとめにして壁の方に寄せてあるはずだ。
あんなふうに、ポツンと一つだけ落ちているのはおかしいし……何よりその形状がおかしいのだ。

「これ、ホッケーのスティック……?」

パックを勢いよく弾いて飛ばすためには、真っ直ぐに芯が通ったスティックが欠かせないはずだ。
それなのに私が手に取ったスティックはちょうどその真ん中ぐらいでくの字にひん曲がっていて、とても競技に即したものには見えない。
741 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:20:11.50 ID:jj1t/rmq0




「ちょい! みんな! 早く地下に来てくんない!? キンキュー事態なんだけど?!」





ちょうどそんな時だった。
学園中に響き渡るぐらいに大きな声が聞こえてきたのは。

「今のは……愛依さん!?」

愛依さんと言えば一人で地下に向かったはずだ。

(きっと3人を地下で見つけてくれたんだ……!)

私はすぐに手に持っていたものを投げ出して、考えるよりも先に走り出した。
742 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:21:31.68 ID:jj1t/rmq0
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【B1F】

「はぁ……はぁ……いったい、どこで……!?」

地下への階段を駆け降りると、ゲームルームの扉が開けっぱなしになっているのが目に入った。
遠くの方から、誰かの話し声も聞こえてくる。
きっと愛依さんの言う『キンキュー事態』はこの奥で起きているに違いない。

「急げ……! 大丈夫だ、まだ間に合う……!」

自分にそうやって言い聞かせながら、私は部屋へと飛び込んでいった。



……飛び込んで、いった。


743 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:23:10.57 ID:jj1t/rmq0



「〜〜〜!! 〜〜〜!!」



にちか「ちょっ、大丈夫!? 灯織ちゃん……!? それに、甜花さん……!?」

急ぎ踏み込んだのはゲームルームのさらに奥。
AVルームの中で二人は両手に両足を拘束され、さらには目隠しや耳栓までされた状態で見つかったのだ。

愛依「あっ、にちかちゃん! ごめん……二人を助けるのちょっと手伝ってくんない!?」

にちか「は、はい! もちろんです!」
744 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:24:24.00 ID:jj1t/rmq0


私は愛依さんに求められるままに二人の拘束を解いた。
私が触った限りでは、かなり入念に縛り付けられており、自力での脱出は難しいと思う。
実際私が解くのでもかなり手こずったし、その間に愛依さんの声を聞いて駆けつけた人たちが何人もいたぐらいだ。
長くこの状態で放置されていたら、危なかっただろうな。

甜花「あうぅ……手と足の首がまだ痛い……」

愛依「だいぶキツく結んであったもんね……大丈夫? 痺れたりしてない?」

真乃「灯織ちゃん……よかった、無事だったんだね……」

灯織「真乃……うん、なんとか。にちかもありがとう」

にちか「うん……」

透「二人とも、いつから?」

甜花「えっと、いつだっけ……確か、呼び出しを受けたからその時の紙が……」

甜花「あ、あれ……? 持ってきてた、はずなんだけど……」

灯織「任せてください甜花さん、私はポケットにちゃんとしまい込んで……」

灯織「あ、あれ……? すみません、私も……なくしてしまったみたいです……」

(……やれやれ)
745 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:25:34.88 ID:jj1t/rmq0

愛依さんの呼びかけを聞いて集まってきたのは私、真乃ちゃん、浅倉さん、月岡さんの4人。
地下階から割と近い位置にいた面々がすんなりと集まった形だろう。

甜花「えと……他の人たちは?」

(……!)

灯織「他の皆さんは……無事なんですよね?」

真乃「えっと、その……」

ばつ悪そうな表情。誰も進んで自ら言おうとしない。
そりゃそうだ。こんなこと、自分の口から通達なんて……お願いされてもしたくない。
言葉にしてしまったら、その事実を認めてしまったようで、きっと今以上にもっと辛くなる。
だからこそ、私がそれを伝えなくちゃ。


にちか「……めぐるちゃんが、死んでた」

灯織「……え? う、嘘……だよね?」

にちか「嘘じゃないよ……本当に、死んでた。間違いない」


見る見るうちに灯織ちゃんの顔からは血の気が引いていき、そして、



バターン!!



ふっと意識を失って、その場に倒れてしまった。
746 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:26:56.40 ID:jj1t/rmq0


愛依「息はしてる……多分、ショックを受けてちょっと気絶しちゃっただけだと思うから……意識はちゃんと戻ると思うよ」

愛依「念のため、後で霧子ちゃんに診てもらお。うちが連れてくから!」

(……酷なことをしてしまったんだろうな)

(ただでさえ、拘束状態で体力を削られていたのにトドメを指すような真似を……)

甜花「八宮さんが、死んじゃった……本当、なんだね……?」

真乃「はい……頭から血を流していて……相当強い力で殴りつけられたみたいなんです……」

甜花「そ、か……そう、なんだ……」

恋鐘「それにしても他のみんなは中々集まらんね。愛依の声が聞こえとらんばい?」

にちか「うーん……全体のアナウンスがあった訳でもないですし、仕方ないかもしれないですね。流石に一階から三階までは声も届きにくいでしょうし」

恋鐘「そいやったらうちがひとっ走りして伝えてくるとよ! 特に甘奈はすぐにでも甜花の無事を知りたかはずやけん!」

透「……でも、どうする? まだ終わってないよね?」

真乃「夏葉さん……だよね」

(……!)
747 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:28:27.43 ID:jj1t/rmq0

愛依「そっか……そうじゃん! まだ夏葉ちゃんが見つかってないんだもんね」

恋鐘「愛依以外に誰かの声は聞いとらんし、まだ見つかっとらんばい……? こげんみんなで探しとるのに……?」

真乃「もしかしたら、学校の中じゃないのかもしれません……中庭とか、裏庭とか……校外はまだ見てないですよね……?」

にちか「そうだ……! これだけ校舎を入念に見てるのに見つからないってことはそうに決まってるよ!」

透「あー、でも……どうする? 探しにいきたいのはわかるけど。ここも一応保全とかしといたほうがよくない?」

にちか「そっか……そうですよね」

愛依「だったらうちは残るよ。灯織ちゃんの様子が気になるしさ……」

透「じゃ、私もステイしよ」

にちか「浅倉さん?」

透「真乃ちゃんとにちかちゃん、動きたくて仕方ないって顔してるから。譲るよ」

(……この人、面倒くさがってない?)

真乃「にちかちゃん、急ごう……っ! 私たちが頑張るしかないよ……!」

にちか「そ、そうですね……!」

甜花「あ、あの……甜花も、動いていいかな……?」

甜花「何が起きてるか、甜花も知りたい……有栖川さんを探すの、手伝う……!」

愛依「甜花ちゃんは体とか大丈夫なん……? 無理してない?」

甜花「うん……大丈夫、ちょっと腰が痛いけど……」

にちか「それじゃあ私と真乃ちゃんと甜花さんの3人で外を見てきますね」

透「うす。頼んだ」

748 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:29:12.54 ID:jj1t/rmq0
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【校外】

にちか「また分担して捜索しましょうか……どう分けます?」

甜花「えと……中庭の方は建物がちょっと多いし、人手がいるかも……」

真乃「そうですね……にちかちゃん、一緒に行ってもらえるかな」

にちか「わかった。甜花さん、裏庭をお願いしてもいいです?」

甜花「う、うん……わかった、頑張るね……」

私たちは二手に分かれて有栖川さんの捜索を開始。



彼女の才能研究教室、裁判場へと向かう裁きの祠……草の根を掻き分けて捜索をしたけど、その姿はどこにも見当たらなかった。

にちか「中庭の方じゃないのかな……一回甜花さんと合流しに行く?」

真乃「そうだね……こっちにいないのなら、裏庭の方にいるのかも……」

749 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:29:52.17 ID:jj1t/rmq0


真乃ちゃんと二人で校舎の前へとちょうど戻ってきた頃。
校舎の左手、食堂側の方から息を切らしながらこちらに走ってくる甜花さんの姿が目に入った。

甜花「ひぃ……ひぃ……二人とも、こっち……来て!」

にちか「て、甜花さん? どうしたんですか? な、なにが……」

甜花「あ、有栖川さんが……有栖川さんが……大変なの……!!」

(……!)

思わず私と真乃ちゃんは顔を見合わせた。
甜花さんの声からは並ならぬものを感じる。
裏庭の中で甜花さんが見たもの……それを今すぐにでも確かめないと。
750 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:31:21.68 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------
【校舎裏 裏庭の扉前】

「七草さん、ここ……この中で……!」

甜花さんに促されるままに手をドアノブにかける。
ボイラー室も兼ねている裏庭の扉は鉄製の重厚な作りの扉だ。
ただ、今回私が感じている重量はそれだけの話じゃない。
単純な質量以上の『圧』を、扉を隔てた先から感じていた。
それは予感と言ってもいいかもしれない。
この扉を開けた先で待っているものが、私たちにとって、打ちひしがれるほどに甚大で、深刻で、惨憺たるものであるという予感。

「にちかちゃん、行こう……」

私は必要以上に大きく首を縦に振った。
さっきまで頭の中を埋め尽くしていた予感を、振り落とそうとしたのかもしれない。
扉を開けるのに、助走が必要だったのかもしれない。
とにかく私は、その勢いのままに、一思いに扉を開けた。



その先で、見たのは……



見て、しまったのは……
751 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:32:06.59 ID:jj1t/rmq0





【まるでめぐるちゃんの死因をなぞるかのように頭から血を流して事切れている有栖川さんの姿だった】





752 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:33:00.46 ID:jj1t/rmq0

【ピンポンパンポーン……】

『死体が発見されました! 一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます!』

『うぷぷぷ……やっぱり、こうなったね。こうなっちゃったね』

『コロシアイは一度はじまり出したら止まらない! オマエラはもうこの連鎖から逃げられないんだよー!』

『アーッハッハッハッハ!』

『……あ、忘れてた。死体発見現場は裏庭だよ。可及的速やかにお集まりくださいね!』


モノクマのアナウンスにより、すぐに【全員】が裏庭へと集まった。
一回目のアナウンスの時には集まれなかった全員がこうして集まったということは、事件の終末を意味することになる。
血で飾られた、デッドエンドの終末に辿り着いてしまったのである。

樹里「……んで、なんで夏葉が死んでんだよッ!」

凛世「樹里さん……」

樹里「こいつはアタシたちの中でも一番仲間のことを考えて、全員生還を本気で目指してたのに……なんで殺されなくちゃいけなかったんだよ!」

西城さんの慟哭が虚しく響いた。
誰もそれに言葉を返すことなどできない。
有栖川さんの在り方も、それが死によってふみにじられたことも、そしてそれに対する怒りも全員が同じだからだ。
753 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:35:12.25 ID:jj1t/rmq0

【おはっくま〜〜〜〜!!!!】

モノファニー「一日に2回も死体を見ることになるなんて……グロいわ、グロのキャパオーバーだわ……」

モノファニー「でろでろでろでろ……」

モノスケ「ハンッ、1回目の事件は物足りへんかったからな。今回はその分期待ができそうや」

モノスケ「この事件の犯人からはドロドロに淀んだ悪意が透けて見えるで……!」

モノクマ「うぷぷぷ……まさかこんなに早い段階でこの二人が退場するなんて、みんなも予想外だったよね!」

にちか「誰であろうと予想外だよ……みんな、死ぬなんて思ってなかった」

モノクマ「うぷぷぷ……まあオマエラはそう言うよね」

にちか「はぁ……?」

あさひ「ねえモノクマ、これでやっと捜査に移れるんだよね? これ以上のことはもうないんだよね?」

モノクマ「そうだね。もう今から死者が増えることはないと思われるよ。今回の裁判については八宮さんと有栖川さんの二つの死体について議論をしてもらうかたちになります」
754 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:37:38.54 ID:jj1t/rmq0

あさひ「ふむふむ……一つ聞いておきたいんっすけど、今回の二つの事件。犯人はそれぞれ別々なんっすか?」

霧子「犯人が別……? 二人の命を奪ったのは、それぞれ別な人なのかな……?」

あさひ「その可能性は結構あると思うんっすよね。時間と距離も結構空いてるし……こういう時ってどう考えればいいのかなって」

モノクマ「うーん、そうだね。この手のお悩み相談は毎回恒例のことなんですけれど、今回のコロシアイ学園生活については」

モノクマ「どちらの事件についても【そのクロは学級裁判の対象となります】!」

モノクマ「仮に八宮さんと有栖川さんを殺害したクロが別だったとしても、シロ側の生徒にはその【両方を特定する義務】が課せられるわけだね」

あさひ「ふーん……その場合は投票も2回するんっすか?」

モノクマ「そうなるね、それぞれのクロについて投票を行い、それぞれの結果によって判定が行われるよ」

あさひ「たとえば、片方のクロを当てることに成功して、もう片方のクロを当てるのに失敗した場合は?」

モノクマ「その場合は当てられたクロと、シロ全員がおしおきだね。シロを欺いたクロのただ一人だけが卒業することになる」

あさひ「……了解っす! 大体把握できたっす」
755 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:39:14.87 ID:jj1t/rmq0

モノファニー「ちょっと複雑な構造にはなるから、気になったらアタイたちに聞いてちょうだいね」

モノタロウ「一生懸命マニュアルを読み上げさせてもらうからね!」

モノクマ「それじゃあ学級裁判についての説明も終わったし、オマエラには捜査に移ってもらおうと思うんだけど……」

モノクマ「……やる気ある?」

にちか「……は?」

モノクマ「現実が受け入れられないって顔だよね。まあ気持ちは察してやるけどさ、オマエラの感傷にそうそう付き合ってやる時間もないんだよ」

モノクマ「いつまでも物語が進まないとほら、退屈しちゃうでしょ?」

甘奈「た、退屈って……! 甘奈たちは大切なお友達を失ってるんだよ……?! そう簡単に切り替えられるわけが……」

樹里「いや、だからこそだ」

(……西城さん)

樹里「大切な友達を失った今だからこそ、私たちはすぐに頭を切り替えて、この現実に立ち向かわなくちゃいけない」

樹里「そうじゃなきゃ、こいつらの死はモノクマたちに弄ばれて終わっちまう……そうだろ?」

有栖川さんの一番近くにいたのは、彼女だった。
有栖川さんとは度々衝突をしながらも、彼女の持つ志や信念に共通するものを見出し、いつしか彼女たちは戦友のような間柄となっていた。
だからこそ彼女は戦旗を掲げることができたんだろう。
最後まで私たちを先導してくれようとしていた、有栖川さんの遺志を引き継いで、西城さんは焼け野原に立つ。

756 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:40:20.03 ID:jj1t/rmq0

あさひ「樹里ちゃんのいうとおりっすよ。せっかくのゲームなんだからみんなが真面目にやってくれなきゃ面白くないっす」

樹里「アタシはあさひに同調してるわけじゃない……ただ、ここで現実を解き明かすことはアタシたちが生き続けること、そして歩み続けることに不可欠なステップなんだ」

樹里「みんなも力を貸してくれ」

私は昨日の晩のことを思い出していた。
灯織ちゃんとずっとすれ違う私のことを気にかけてくれためぐるちゃんが、踏み出し、繋いでくれたあの晩。
私たちの間には確かな絆が生まれていた。
めぐるちゃんがぎゅっとひとまとまりに抱きしめた私たちがお互いに感じていた温かさ。
これを刹那の記憶の中に忘れるわけにはいかない。

にちか「真乃ちゃん、灯織ちゃん……やろう」

私たちは、この裁判を生き抜いて……めぐるちゃんから貰ったものをずっと胸に刻んで生きていかなくちゃいけないんだ。

真乃「うん……にちかちゃん、頑張ろう……っ」

灯織「当然だよ……今回のクロは絶対に解き明かす。私たちの力でね」

あさひ「……あはは、今回の裁判も面白くなりそうっすね!」

にちか「芹沢さん、あなたがこの裁判にどう挑もうと勝手だけど……」

にちか「_____私たちも、絶対に負けないから」



【捜査開始】


757 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:41:27.41 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------
モノダム「ソレジャア早速、モノクマファイルヲ配布サセテモラウヨ」

モノスケ「今回は2回分のファイルがあるから間違えんように注意して読むんやで!」

私たちは2回の事件についてそれぞれ別のタブレットを手渡された。
あくまでまだそれぞれ別の単一の事件とみなして考えるべきだということなのかもしれない。

一つ目のモノクマファイルを起動する。

『被害者となったのは超研究生級のスポタレ、八宮めぐる。死亡推定時刻は午前8時前後。死因となったのは前頭部を強く殴りつけられたことによる頭蓋骨陥没および脳挫傷。死体に他に目立った外傷はない』

灯織「めぐるの死体……後で私も見に行かせてもらってもいいかな」

にちか「うん、当たり前だよ。めぐるちゃんのことも調べなくちゃいけないし……お別れも、灯織ちゃんの口から伝えてあげて」

灯織「うん……そうする」

真乃「……」

コトダマゲット!【モノクマファイル2】
〔被害者となったのは超研究生級のスポタレ、八宮めぐる。死亡推定時刻は午前8時前後。死因となったのは前頭部を強く殴りつけられたことによる頭蓋骨陥没および脳挫傷。死体に他に目立った外傷はない〕
758 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:42:50.51 ID:jj1t/rmq0
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そして二つ目のモノクマファイル。

『被害者となったのは超研究生級の文武両道、有栖川夏葉。死亡推定時刻は午前8時30分前後。死因となったのは後頭部を強く殴りつけられたことによる頭蓋骨陥没および脳挫傷。死体に他に目立った外傷はない』

にちか「有栖川さんの死亡推定時刻……めぐるちゃんよりも明確に後なんだね」

真乃「私たちがめぐるちゃんを3階で発見していた頃にはまだ夏葉さんは生きていたことになるね……」

にちか「ちょうどあの後殺されたわけだ……」

灯織「私と甜花さんが解放してもらえたのとどっちが先なんだろうね……」

にちか「うーん、夏葉さんの方が後だと思うな。ちゃんと時計を見ていたわけではないけど……」

(似たような死因で、順番に殺されている二人)

(こうしてみると連続殺人のように思えるけど……)

コトダマゲット!【モノクマファイル3】
〔被害者となったのは超研究生級の文武両道、有栖川夏葉。死亡推定時刻は午前8時30分前後。死因となったのは後頭部を強く殴りつけられたことによる頭蓋骨陥没および脳挫傷。死体に他に目立った外傷はない〕
759 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:44:23.53 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------

灯織「今回捜査はどう進めようか……にちか、この前の事件と同じで私も一緒にやってもいい?」

にちか「うん、それはこちらからもお願い。私だけだと多分見落としめっちゃ出るし……」

真乃「あの……わ、私もいっしょにいいかな……?」

にちか「真乃ちゃん……」

(そっか、前はめぐるちゃんと一緒にやってたけど……彼女が死んでしまったから)

にちか「うん、3人でやろう。3人よれば文殊の知恵って言うしね」

灯織「よし……それじゃ頑張ろう。えっと……どこを調べるのがいいかな」

にちか「まずは有栖川さんの死体発見現場であるこの裏庭をくまなく調べよう」

真乃「その後は、めぐるの死体発見現場である校舎3階の【超研究生級のスポタレの才能研究教室】だね……!」

灯織「私と甜花さんが拘束されていた地下階の【AVルーム】も見に行ったほうがいいかな」

にちか「あ、そうそう……灯織ちゃんと甜花さんを探してる時に気になったものがあったから【体育館】にも行ってみてもいい?」

灯織「うん、時間が許す限りは全部を見ておこう」

今回は前回と違って私は謎を解き明かすシロの視点での捜査になるし、二人の犠牲者の謎を解き明かす必要がある。
気合を入れていかないといけないぞ……よし!

(まずは裏庭の捜査からだよね……どこから調べよう)

760 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:45:49.29 ID:jj1t/rmq0
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【真乃と話す】

今回の事件は死体が二つも見つかっているし、事件はリアルタイムに起きたものだ。
私はともかく、灯織ちゃんは途中まで離脱していたわけだし、改めて整理しておいた方がいいかもしれないな。

にちか「ねえ、真乃ちゃん。事件をはじめから振り返ってみるのを手伝ってもらってもいい? 灯織ちゃんへの説明も兼ねて」

灯織「にちか……そうだね、私からもお願い。この事件の顛末を私も知っておきたいかな」

真乃「う、うん……! それじゃあ私の目線での事件を整理していくね……っ」

真乃「まず最初に私、にちかちゃん、恋鐘ちゃん、霧子ちゃん、樹里ちゃん、凛世ちゃん、甘奈ちゃん、愛依ちゃん、あさひちゃんが体育館に集まったの」

にちか「体育祭に参加するためだね。朝のアナウンスと同じぐらいに動き出す約束にはしていたから……」

真乃「それで、めぐるちゃん、灯織ちゃん、甜花ちゃん、夏葉さんの姿がないってことが話題になって……」

灯織「樋口さんと浅倉さんは?」

にちか「不参加だろうってことで片付けた。なんだかのっぴきならない事情って感じだし、踏み込みづらいんだよね」
761 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:47:09.75 ID:jj1t/rmq0

真乃「だから、私とにちかちゃん、甘奈ちゃんの3人で三階のめぐるちゃんの才能教室を」

真乃「恋鐘ちゃん、凛世ちゃんの2人で食堂を」

真乃「樹里ちゃんが1人で寄宿舎にそれぞれを呼びに行ったの。残った3人はあさひちゃんの様子をみる意味合いも兼ねて待機」

にちか「そこで私たちがめぐるちゃんの死体を最初に発見したんだよね」

にちか「ここで灯織ちゃん、甜花さん、有栖川さん以外の全員が集まったから逆に3人には何か集まれない異常事態が起きてるんだってことになって……」

にちか「三階を芹沢さんと樋口さん、二階を浅倉さんと月岡さん、一階を私と真乃ちゃんと甘奈ちゃんと西城さん、地下を愛依さんで探すことになったんだ」

真乃「凛世ちゃんと霧子ちゃんにはめぐるちゃんの死体発見現場の保全をお願いしたんだ……!」


灯織「それで、愛依さんが私たちを見つけてくれた……愛依さんの呼びかけに応じて集まったのはにちか、真乃、浅倉さんの3人だったんだっけ」

にちか「そう、ここで最後の有栖川さんを探すために私と真乃ちゃんと甜花さんで動き出して……」

真乃「裏庭に向かった甜花さんが夏葉さんの死体を発見したんだね……っ」

にちか「うう……なんだか長い事件だったな」

灯織「それぞれ現場が学校のあちこちに点在してるから……場所と分担は覚えておかないと忘れちゃいそうだよね」

(探した場所とその分担か……)

(一応、覚えているところはしっかりと押さえておこうかな)

コトダマゲット!【事件の経緯】
〔めぐると夏葉の死体を発見するまでの経緯は以下の通り。
@体育館に集まった真乃、恋鐘、霧子、樹里、凛世、甘奈、あさひ、愛依、にちかが異常に気づく。
真乃、にちか、甘奈が3階の才能研究教室、恋鐘、凛世が1階の食堂、樹里が寄宿舎の捜索を担当。
A3階の才能研究教室にてめぐるの死体を発見。残る行方不明の灯織、甜花、夏葉の捜索を開始。
あさひと円香で3階、透と恋鐘で2階、真乃とにちかと樹里と甘奈で1階、愛依で地下を探索。
B愛依が地下で灯織と甜花を発見。
残る夏葉の捜索に真乃とにちかと甜花が行動開始。
真乃とにちかが中庭、甜花が裏庭を担当。
C裏庭で甜花が夏葉の死体を発見〕

762 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:48:37.23 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------
【死体の周辺】

有栖川さんの亡骸は、ボイラーの装置にもたれかかるようにして眠っている。頭から滴る血液が、下の鉄板に血溜まりを作っているのが何とも痛ましい。

真乃「めぐるちゃんの死体と、本当にそっくりだね……」

灯織「めぐるもこんな風に殴られて命を落としたんだよね……何か関係あるのかな」

にちか「うーん……ちょっと見てみよっか」

有栖川さんの死体に近づいてペタペタと触ってみる。
とはいえ、私に専門的なことは何も分からない。
モノクマファイル以上の情報は手に入らないかもな……

あさひ「にちかちゃん、そんな調べ方じゃダメっすよ!」

にちか「わっ!? 芹沢さん?!」

あさひ「モノクマファイルに書いてあることをなぞっても新しい発見はないっす。注目するのならモノクマファイルに書いてないところ……っす!」

芹沢さんは私の傍から突然に姿を現したかと思うと、その勢いのままに有栖川さんの死体に近づいて、その右手を持ち上げてじっと見つめ始めた。
763 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:50:07.27 ID:jj1t/rmq0

真乃「あさひちゃん……? 夏葉さんが何か持ってるの?」

あさひ「ううん、その逆っす。何も持ってないけど……何かを持とうとした痕跡があるっすよ。ほら」

灯織「ん……? あ、あれ? 爪が……割れてる?」

芹沢さんが私たちに示した有栖川さんの指先は、爪がパキパキと割れてしまっていた。
しかもこの割れ方からして、何かを落としたとかではなさそうだ。

あさひ「なんなんすかねこれ」

芹沢さんはそう言いながら、手を自分の方へと近づけると……

あさひ「くんくん……」

鼻を近づけて指の匂いを嗅ぎ始めた。

にちか「な、なにやってんの芹沢さん?!」

あさひ「爪の間になんか灰色の粒々が見えるんで、何かなって……舐めないだけ大目に見て欲しいっす」

(いや、よくも抵抗なく嗅げるな……)

あさひ「……夏葉さんの指の爪、なんか鉄みたいな匂いがするっすよ」

真乃「鉄……? 血の匂いも鉄っぽいって言うけどそれとは違うの……?」

あさひ「そうっすね。公園のジャングルジム、メッキが剥がれた時みたいな匂いがするっす」

(鉄の匂いがする、割れた指の爪……か)

(何か有栖川さんは鉄製のものを引っ掻いていたってことなのかな……?)

コトダマゲット!【夏葉の割れた指の爪】
〔夏葉の死体の手指の爪は割れていた。あさひ曰く、爪からは鉄の匂いがするらしく、鉄製のものを引っ掻いて割れたのではないかと推測できる〕
764 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:51:14.61 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------

あさひ「まあこんな感じっすね。死体に抵抗があるのはわかるっすけど、ちゃんと調べなきゃ手がかりは手に入らないっすよ」

芹沢さんは私たちにそう言うとまたどこかに引っ込んでしまった。
相当私たちの拙い捜査っぷりが彼女には目に余ったんだろう。
こうして一緒に捜査をしている限りでは芹沢さんは悪い人間ではないのにな……

灯織「あさひが犯人となっていない限りは協力はしてくれるはずだよ。素直に証拠の類も受け入れていいと思う」

にちか「灯織ちゃん……バレてた?」

灯織「まあ……私がにちかにずっと向けてた視線にそっくりだったから」

(それは、相当だな……)

だとすると、私がいつか芹沢さんのことを信じる時、信じたいと思える時も来るんだろうか。
それはなんだか、想像ができなかった。

765 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:52:03.72 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------
【鉄パイプ】

死体の近くに落ちている鉄パイプだ。
先端の部分にはベッタリと有栖川さんの血が付着している。

樹里「この部屋で使われているパイプの同じものの廃材みたいだな」

西城さんのいうとおり、これ以外にも使われていないパイプが向こうのほうにいくらか積まれているのが見て取れる。
犯人はパイプの山から一本を抜き取って凶器として使ったんだろう。

灯織「相当強い力で殴りつけたんだね……ちょっと曲がっちゃってるし……」

真乃「このパイプが凶器になったのは間違いなさそうだね……っ」

樹里「重さとしても手頃なぐらいだしな。これを使えば誰でも難なく撲殺できたはずだ」

にちか「……」

樹里「……あ? なんだよその視線」

にちか「いや……西城さん、そのパイプをこう肩に担ぐ感じで持つのすごい様になるなって」

樹里「……」

西城さんは不機嫌そうにパイプをそこに放った。
床の鉄板とパイプが奏でる物悲しい金属音がそこら中に響き渡った……

コトダマゲット!【凶器の鉄パイプ】
〔夏葉の命を奪った凶器の鉄パイプ。裏には廃材の鉄パイプがいくつか積まれており、犯人はそのうちの一つを使ったものと思われる〕
766 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:53:42.73 ID:jj1t/rmq0
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【ボンベ】

有栖川さんの死体の側には見慣れないパッケージのボンベのようなものが落ちている。

霧子「これ……私の才能研究教室から持ち出されたお薬みたい……」

灯織「幽谷さんの……? ということは医療用の薬ですか……?」

霧子「うん……これは医療用の【麻酔薬】だよ……」

にちか「へー、これが麻酔なんですね! 私初めて見ましたよー!」

にちか「これに入ってるものを飲んじゃえば意識を失っちゃうわけなんですね!」

霧子「えっと……医療用麻酔には大きく分けて四つの種類があるの……」

霧子「意識を失うと同時に痛みを感じなくして、手術の進行を円滑にする全身麻酔……」

霧子「脊椎の痛みを伝達する硬膜外腔に作用して、痛みの信号をブロックする硬膜外腔麻酔……」

霧子「硬膜外腔とよく似ているんだけど、より強力な効果を持つ脊椎麻酔……」

霧子「そして、治療部位の痛みだけをシャットアウトする局所麻酔の四つ……もっと詳しく分けることもできるんだけど……」

にちか「?????」

霧子「こ、今回はそれは省略するね……」

(幽谷さんに露骨に気を使わせてしまった……)
767 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:54:48.10 ID:jj1t/rmq0

霧子「それで、大事なのはこのお薬が全身麻酔用ってことなんだけど……」

霧子「にちかちゃんが言ってくれたように、飲んで使うお薬ではないの……」

灯織「というと注射……ですか?」

霧子「ううん、そうでもなくて……このお薬は濃度の高い『亜酸化窒素』と酸素の化合物……【吸引性の麻酔】なんだ」

にちか「それってつまり、吸っちゃうと意識を失っちゃう薬ってことですか?」

霧子「うん、簡単に言えばそうなるかな……意識を失っている時間の調整に、本当は配合も慎重にしなくちゃいけないし専門の資格も必要なんだけど……」

霧子「多分、これはそんな扱い方はされてないよね……」

幽谷さんはひどくつらそうな表情をしている。
医療の道に近い存在の彼女だからこそ、人の命を救うための技術が悪用されたことに胸を痛めているんだろう。

霧子「ボンベの蓋も開けっぱなしになっているから、この部屋はこのガスで充満していたはずだよ……」

霧子「もし夏葉さんもここに監禁されていたのなら……意識を自力で取り戻すことは不可能だっただろうね……」

真乃「わ、私たちはここにいても大丈夫なんでしょうか……」

霧子「扉を開け放した状態にしてあるからもう大丈夫だと思うよ……」

霧子「ちょっとでも吸ってしまったら指先に麻痺が起きたりするはずだから……」

灯織「よかった、ちゃんとトノサマガエルも作れます」

(死体発見現場は気化した麻酔で充満していた……か)

(有栖川さんが朝から行方知らずになっていた理由がだんだんと見えてきた気がするな)

コトダマゲット!【気化麻酔】
〔夏葉の死体発見現場には医療用気化麻酔が充満していた。監禁状態にあった夏葉が意識を取り戻すことは困難だったと思われる〕

768 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:55:55.62 ID:jj1t/rmq0
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【隅に落ちているハンカチ】

雑草が繁茂している裏庭の一角で、その草むらの中に姿を隠すようにしているハンカチを見つけた。
桃色の布で、ワンポイント可愛らしい刺繍が入っている。

真乃「ふふ……誰かの落とし物かな? 裏庭をお散歩してたら、ついうっかり落としちゃったのかも」

灯織「いや、これは犯人の手がかりなんじゃない? 有栖川さんを殺害して動転した犯人がついうっかり落としてしまった証拠なんだよ」

(二人の間でこのハンカチの第一印象の落差がすごいな……)

凛世「にちかさん……少しそちらのハンカチを見させていただいても……?」

にちか「え? は、はい……」

凛世「……」

凛世「まだ今は朝の放送があってからそれほど時間はたっておりません……朝起きて、自分の部屋を出てからすでにこのハンカチの落とし主はお手洗いに一度行かれたのでしょうか……?」

にちか「え……? あ、確かにこのハンカチ、折り目と畳み方がちょっと違うね……」

真乃「個室のトイレを使う時は備え付けのタオルを使うのが普通……だよね」

灯織「もしかすると落とし主は頻尿なのかもしれませんね。若くても精神的なストレスなどから頻尿の悩みを抱えている人はいると聞きます」

灯織「この極限状態の学園生活の中で、悩み、思い、患ってしまった可能性もあるのでは……?」

(……流石に頻尿ってことはないだろう)

凛世「通常、ハンカチは毎日変えるものです……朝のこの時間に使った痕跡が既にあるのは少し違和感を感じます……」

杜野さんの指摘はごもっともだと思う。
ハンカチの使い道はただお手洗いの後に手を拭くだけじゃない。
もっと他の何かで使った可能性だってあるはずだ。

にちか「ですね! ハンカチは普通毎日変えるもんですもん!」

そう言って杜野さんに同調しながら、スカートのポケットに入れたまんまのハンカチを奥の方に押し込んだ。

コトダマゲット!【現場に落ちていたハンカチ】
〔裏庭の隅に落ちていたハンカチ。今日になって既に使われた痕跡がある。落とし主は不明〕

769 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:57:22.43 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------
【モニター】

今回はこのモニターにだいぶ弄ばれた気がする。
ルカさんの事件の時とのアナウンスの違いから学園中を駆け回ることになったわけだし、実際その裏には私たちの知らない惨劇が隠されていた。
画面は今はなにも映さずにダンマリだけど、モノクマの残影を見ているようで、画面の前にいるだけでイライラしてくるようだった。

愛依「モノクマの笑い声、今も頭に残っててめっちゃ腹立つわ……マジ、なにが楽しいわけ?」

灯織「愛依さん……その怒りはよく分かります。モノクマの態度はどこまでも私たちを逆撫でしていますよね」

にちか「今も私たちのことをどこかで監視してるんだろうな……はー、うざ」

真乃「そういえば、今回も、前回のルカさんの事件でも鳴ってましたけど……死体を発見するとアナウンスが流れるんですね」

愛依「そーだね……モノクマファイルを配ったり色々あるからみんなを集める必要があるんじゃん?」

真乃「少し疑問なんですけど……あれってどういう基準で鳴らしているんんでしょうか……?」

灯織「基準……? 単純に誰かが死体を見つけた時、じゃなくて?」

真乃「うん……それだったら、今回の事件だと夏葉さんの死体で鳴るアナウンスはもっと前になるはずなんだ……」

(……そうだ!)
770 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:58:26.71 ID:jj1t/rmq0

◆◇◆◇◆◇◆◇

甜花「ひぃ……ひぃ……二人とも、こっち……来て!」

にちか「て、甜花さん? どうしたんですか? な、なにが……」

甜花「あ、有栖川さんが……有栖川さんが……大変なの……!!」

(……!)

◆◇◆◇◆◇◆◇

(今回の事件では、甜花さんが私たちよりも先に死体を発見している)

(でも、その時にアナウンスは鳴っていない……!)

(私と真乃ちゃんの二人で同時に踏み込んだ時に初めてアナウンスが鳴った……)

(もしかして、何か死体発見アナウンスが鳴ることには真乃ちゃんの言うとおり別な条件があるの……?)

【おはっくま〜〜〜〜!!!!】

モノスケ「やるやん、なかなか目ざとくて感心したで。キサマラもただ息して飯食って排泄して寝とるだけやないんやな!」

モノタロウ「そう、キサマラの予測しているとおり死体発見アナウンスが鳴るのには条件があるんだよ!」

愛依「マジ?! なんなの、その条件って?!」
771 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 14:59:45.57 ID:jj1t/rmq0

モノダム「……」

灯織「そう簡単には教えてくれない……ですよね」

灯織「モノクマたちの考えそうなことです。断片的なことだけ教えて肝心のことは伏せる!」

灯織「そうして悩む私たちのことを嘲笑うつもりなんです!」

モノファニー「殺害したクロを除いた【シロ三人以上】が死体を発見することが条件よ!」

灯織「あ、あれ……?」

モノタロウ「オイラたち、こんなことも教えてくれないぐらい冷たいと思われてたの?! 心外だなぁ」

モノスケ「そもそもこの条件については【キサマラにも一度質問を受けとる】ことやしな」

(……え?)

モノスケ「ま……ソイツは他の連中と共有をする気もなさそうやし、キサマラで改めて共有しておいてや」

モノタロウ「情報は水だよ! 独占しちゃいけないんだ!」

【ばーいくま〜〜〜〜!!!!】

真乃「い、行っちゃいましたね……」

死体発見アナウンスには条件があった。
ただ死体が見つかるだけでなく、クロ以外のシロ3人による目撃が必要になる。
これって要は死体の発見時の3人は確実にクロではなくなるってことだよね……これは情報としてめちゃくちゃでかいんじゃない?!

そしてもう一つ大きな情報は……
この死体発見アナウンスの情報については既に知っている人物がいたということ。
しかもそれは誰にも共有されることなく今この瞬間までその人物によって独占された情報だったと言う事実。
明らかに意図的だ。

このことは、裁判まで覚えておいた方がいいに違いない……!

コトダマゲット!【死体発見アナウンス】
〔殺害犯であるクロ以外のシロの生徒3人以上が死体を発見した際に、現場を周知するために鳴らされるアナウンス。その条件については既にモノクマーズに尋ねた生徒がいるらしい〕

772 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 15:03:38.96 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------

にちか「裏庭で調べられるのはこれぐらいかな……」

真乃「それじゃあ次は……めぐるちゃんの現場だね」

灯織「……」

にちか「二人とも、大丈夫? ……辛かったら」

真乃「大丈夫……私もいっしょに立ち向かうって決めたから……っ」

灯織「私も同じだよ。めぐるは私に勇気をくれた人だから……彼女の死に向き合う勇気がなくちゃ、嘘になる」

にちか「……よし、行くよ」

私たちは3人でめぐるちゃんの死体発見現場へと走り出した。

773 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 15:05:20.93 ID:jj1t/rmq0

一旦ここまでで区切ります。
今回捜査パートが長めなので分割してまた書き込みます。
774 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:09:14.50 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------

【3F 超研究生級のスポタレの才能研究教室奥 シャワールーム】

めぐるちゃんの死体は時間が止まってしまったかのように、発見当時そのままの姿が残されていた。
有栖川さんの死で僅かの間忘れることができていた喪失感が再び私たちを襲う。
気を抜けば今すぐにでもその亡骸に縋り泣き叫びたくなる衝動を、必死に飲み込んでしたいと向き合った。

灯織「めぐる……今までありがとう。あなたのおかげで私は大切なものを手にできたし、この現実に向き合う勇気を得た」

灯織「絶対に仇は私が討つから」

(……私たちも同じ気持ちだよ)

めぐるちゃんの死体に手を合わせ、そうつぶやく灯織ちゃんを二人でじっと見つめていた。

灯織「……さ、二人とも。どこから調べようか」

にちか「そうだね……ここも色々と調べたいところはあるから、手早く調べないとね」

775 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:10:27.40 ID:jj1t/rmq0
-------------------------------------------------
【めぐるの死体】

めぐるちゃんは昨日までの元気溌剌さが嘘のように静かに押し黙っている。
もう彼女の口から誰かを励ますような言葉も聞こえてはこないし、もうこちらの声に反応を返してくることもないのだ。

にちか「めぐるちゃん……私が今こうやって二人と協力できているのも全部あなたのおかげだよ。ちゃんとお礼……したかったな」

真乃「にちかちゃん……」

彼女と話をしたのは昨晩が最後。
彼女にギュッと抱きしめられて、それが照れ臭くてそそくさと自分の部屋に戻ったのが今になって惜しくなる。
その時の感触を思い出したくなったのか、私の手は無意識に自分自身の右腕を強く握り込んでいた。
瞬間、思い出す。

にちか「____痛ッ?!」

◆◇◆◇◆◇◆◇

真乃「めぐるちゃん、次はこれかな……?」

めぐる「うん、ゆっくりでいいからね。体を痛めないことがいちばん大事だよ!」

にちか「ふぅ……あっついなぁ……」

真乃「よいしょ……それじゃあ持っていくね……っ!」

めぐる「うん……あっ、真乃! ちょっと待って!」

真乃「え? ……わ、わわっ!?」

ガッシャーン!

にちか「痛っ……」

真乃「に、にちかちゃん! ごめんなさい……だ、大丈夫……?」

◆◇◆◇◆◇◆◇
776 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:11:22.49 ID:jj1t/rmq0

真乃「……にちかちゃん?」

にちか「あ、いや……な、なんでもない……」

そういえば一気にいろんなことが起きすぎていてすっかり忘れていた。
そもそも昨日やっておくべき準備が今朝にまでもつれ込んだのは私と真乃ちゃんによる接触事故があったから。
あれがなければ、今日の朝のアナウンスと同時に体育祭は始まっていたのだろうか?
少なくとも、めぐるちゃんが一人で先に才能研究教室に行くことはなかっただろう。

(……)

(……え? そ、それって)

真乃「……にちかちゃん? さっきから様子がおかしいけど、どうしたの?」

ダメだ。気づいちゃいけないことに気づいてしまったかもしれない。
このことは絶対に、誰にも言えない。
特に、真乃ちゃんだけには……

昨日私と真乃ちゃんの事故がなければ、めぐるちゃんは死なずに済んだのかも、なんて


コトダマゲット!【にちかの打ち身】
〔昨晩の体育祭の準備の際にうっかり真乃とにちかがぶつかったことでにちかは右腕に打ち身を負ってしまっている。そのせいで準備は昨晩中断され、今朝にスポーツ用品の搬入がもつれ込んだ〕
777 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:12:31.47 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------
【シャワールームの窓】

めぐるちゃんの死体がもたれかかっている壁には窓が取り付けられていて、そこから外を見ることができる。
ちょうど窓に真正面から向き合っているのが体育館の窓。
両方の窓の間にある空間にはプールの建物が鎮座している。

灯織「この窓、いつから開いてたの? 最初に死体を見つけた時にはもう開いてたの?」

にちか「えっと……確かそのはず、そうだったよね?」

真乃「う、うん……」

灯織「普段から開けっぱなしの窓ってわけでもないよね……めぐるが開けたのかな」

そう呟きながら灯織ちゃんは窓に近づいていき、窓の隙間から下を覗き込んだ。

灯織「この真下はプール……遊泳ゾーンなんだ」

真乃「うん……そうだね。ここは三階だから飛び込み台よりももっと高い場所になるね……」

にちか「うへー……下手な着地をしたらただですまなそー……」

灯織「……ねえ、二人とも。二人は朝、体育館に集まってたんだよね?」

真乃「う、うん……私とにちかちゃんは体育館に集まってから、ここに来たんだけど……それがどうかしたの?」

灯織「ここの向かい……あの体育館の窓も開いてるんだけどあれは誰が?」

にちか「……え? ちょ、ちょっと見せて……?」

(ホントだ……! ここの窓と同様に体育館側の窓も開いてる……!)

灯織「体育祭をやるんだったら風通しをよくしておくことはあるだろうし、別に変わったことでもないような気はするけど……確認しておきたくて」

(……)

向かい合う位置関係にあって、共に開け放たれていた二つの窓か……何か意味を感じずにはいられないな。
これは改めて、あとでもう一回体育館にも調査に行ったほうがいいだろうな。

コトダマゲット!【シャワールームの窓】
〔めぐるの殺害現場である才能研究教室奥のシャワールームの窓は死体発見当時から開け放たれていた〕
778 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:13:24.63 ID:jj1t/rmq0
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窓の位置関係を把握した私たちは一度窓から離れた。
後退りして、遠目に窓を見直したその時。
窓の外周に、違和感を感じた。
ガラスの窓をはめ込むアルミサッシのフレーム、その柱の部分に、何か黒い線のようなものが走っているのである。

にちか「ねえ二人とも、これなんだと思う?」

真乃「これは……引っ掻き傷、かな……?」

灯織「何か硬くて細いものが上下してついた後みたい。絞殺死体につきがちな柵状痕によく似てるかも」

真乃「ほ、ほわ……っ?!」

灯織「ひ、比喩だから! 違うの、ドラマでそういうのを見たことがあるってだけで……」

灯織ちゃんの例えは物騒だけど、的外れでもないような気がする。
こんな痕のつきかたは、ただ擦れただけじゃつかないもの。
硬くて細いものを、くくり付けでもしない限りはつかないはずだ。

そんな条件を満たすもの……どんなものが考えられるんだろうか?

コトダマゲット!【シャワールームの窓のフレーム】
〔めぐるの殺害現場となった才能研究教室奥のシャワールームの窓のフレームには細くて固いものをくくり付けたような擦れた痕跡が残っていた〕
779 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:14:41.07 ID:jj1t/rmq0
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【金属バット】

めぐるちゃんの死体の近くに落ちているこれが直接の凶器だ。
高速で投げられる硬球に負けることがないように頑丈に作られたその芯で、頭蓋骨を強く殴られればひとたまりもない。
きっと即死だったんだろうなと素人でも感じるぐらいには、硬くて、太くて、恐ろしい凶器だ。

樹里「バットはこんなことに使うために作られたもんじゃねーのによ……」

にちか「……」

樹里「おい、さっきと同じことまたアタシで考えてるんじゃねーだろうな」

にちか「いや、バットはこんなこと〜のセリフも相まって親和性バチバチでお見それしてます」

樹里「お前なぁ……」

西城さんは呆れた顔をした後、気にすることなくバットをあちこちいろんな角度から眺めて調べ始めた。
それにしてもよく似合う。金髪ショートの女の子に何の武器を持たせるかの街頭アンケートをとれば文句なしの一位だ。

灯織「犯人はどちらも凶器を現場で調達しているんですね」

真乃「裏庭の鉄パイプ、才能研究教室の金属バットだもんね……っ」

にちか「凶器を使い分けたことに何か理由はあるのかな?」

灯織「単純に証拠品を持った状態で移動して見つかるのを恐れたから……?」

灯織「それかもしかすると、犯人は別だから……とか」

どちらにしても決めつけるのは危険かな。
とはいえ、凶器がそれぞれ違うことは押さえておくのは重要かもしれない。

コトダマアップデート!【凶器の鉄パイプ】→【二人を殺害した凶器】
〔めぐるを殺害したのは才能研究教室の金属バットで、夏葉を殺害したのは裏庭の鉄パイプでそれぞれ命を奪った凶器が異なる。犯人は現場にあったものを使って犯行を行ったようだ〕
780 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:15:34.70 ID:jj1t/rmq0
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【ボンベ】

夏葉さんの現場でも見たのと同じパッケージのボンベが床に転がっている。
こちらも蓋が開けられていて、中の気体が放出された後の空き容器みたいだ。

恋鐘「こいが霧子の言うとった『キカマスイ』たいね! こいがあったけん、めぐるも夏葉も逃げ出すことができんかったばい!」

灯織「……よかった、ちゃんと影絵でうさぎが作れた」

灯織「この部屋も危険な気体は既に換気されて無くなってるみたいだよ」

真乃「ふふ……よかったね、灯織ちゃん」

(二つの現場で共通する気化麻酔……か)

(幽谷さんの才能研究教室から持ち出した、出所も同じだろう)

(犯人はどうして二人の意識を麻酔で奪う必要があったのかは気になるところだな)

コトダマアップデート!【気化麻酔】
〔夏葉とめぐるの死体発見現場には医療用気化麻酔が充満していた。監禁状態にあった二人が意識を取り戻すことは困難だったと思われる〕
781 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:16:45.10 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------

にちか「……よし、めぐるちゃんの才能研究教室で調べたいのもこれくらいになるかな」

灯織「どちらの現場も見ることはできたね……これからどうしようか」

にちか「さっき窓から覗き込んで気になったからプールと体育館はどっちも一回見ておきたいよね……」

真乃「それに、灯織ちゃんと甜花ちゃんが監禁されてたAVルームにも行っておきたいよね……」

灯織「よし、急ごう。あんまり時間は残ってないよ」

そうして才能研究教室を後にして、下の階へと向かおうとした時。


「え〜! 何か証拠があるかもしれないじゃないっすか〜!」


廊下に響き渡って聞こえてきたのは、あの子が駄々をこねる声。
その声を発した主は、向こう端で揉め事を起こしていると見えた。

にちか「……ちょっと様子見に行こうか」

真乃「う、うん……!」

782 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:17:51.20 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------
【超研究生級のコメンテーターの才能研究教室前】

円香「しつこい。何回言えばいいの? ここを退く気はないから」

あさひ「円香ちゃん、ちょっとぐらい捜査したほうがいいっすよ〜! ずっとここにいても何も分からなくないっすか〜?」

円香「じゃああんたもここに入る理由はないね」

あさひ「む〜」

円香「捜査は浅倉に任せてる。裁判になったらちゃんと協力するから」

あまりにも想定通りの二人の問答だった。
この期に及んで侵入を試みようとする芹沢さんに、断固として譲らない樋口さん。
裁判を目前に控えていると言うのにこの二人のスタンスは全く変わらないな。

あさひ「あっ、にちかちゃん、真乃ちゃん、灯織ちゃん! みんなもお願いして欲しいっす! この部屋の中に手がかりがあるかもしれないっすよ!?」

(手がかり……ねぇ?)
783 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:19:25.19 ID:jj1t/rmq0

にちか「樋口さん、この部屋が開放されてからずっとここに居るんですよね?」

円香「そうだね。浅倉と交代で、どっちかは基本ずっといるようにしてる」

にちか「……」

(実際樋口さんと浅倉さんがここをまんじりとも動かず見張っている様子は何度も目撃している)

(この教室も、この二人も事件に関与している可能性はかなり低いと思うけど……どうしたもんかな)

にちか「それだけずっとここにいたら怪しい人影とか、物音とかは?」

円香「それも別に。事件が起きたのは同じ階みたいだけど生憎私は何も知らないから」

にちか「……」

(うぅ、暖簾に腕押しって感じかも)

灯織「……あさひ、この教室に手がかりはないよ。別を当たろう」

あさひ「えー! みんなはこの部屋みたくないんっすか?」

にちか「そりゃ気になるけど……これだけ拒絶されたら引き下がるしかないでしょ」
784 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:20:29.52 ID:jj1t/rmq0

あさひ「よくわかんないっすね、みんな。わたしの方がゲームに全力になって、引いてはみんなが生き残る方にプラスな存在のはずなのに、非協力的な円香ちゃんの方の方を持つんっすか?」

真乃「そ、それは……」

にちか「ちがう……まだ、この段階じゃあなたがゲームに勝とうとしてることが私たちにプラスになるかどうかわからないでしょ」

あさひ「……あ、それも確かにそうっすね」

あさひ「あはは、それじゃ仕方ないっすね!」

にちか「あっ、ちょっ、急に逃げんな!」

芹沢さんはこれ以上は居座っても意味がないと観念したのか、くるっと背を向けて走り去ってしまった。
言いたいことだけ言って、本当に自分勝手。
残った私は大きなため息を一つ。

円香「……ありがとう。追い払ってくれて」

それを見かねてか、樋口さんがお礼の言葉をくれた。

にちか「いや、別に何もしてないんで……」
785 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:21:35.11 ID:jj1t/rmq0

円香「……ごめん。いつか、説明したいとは思ってるんだけど今はまだ」

にちか「え? あ、ああ……」

本音を言えば、この期に及んで妥協すら見せない樋口さんに少し苛立っていた部分はあった。
人の生き死によりも優先すべき自分の秘密なんてもの、想像もできないし、計りかねる。
だから現実味がないし、樋口さんも折れてくれればいいのになと軽く思っていた。

(……)

ただ、その安易な考えは、樋口さんが袖に寄せた皺と同じようにグシャグシャになった。
樋口さんの伏せた視線から感じるのは、私たちに向けた申し訳なさ。そして彼女の抱える秘密の重みだ。
私たちがただの好奇心で開けていい扉ではないことが、すぐにわかった。

にちか「了解です。樋口さんはここで見てくれてて大丈夫ですから」

円香「……助かる」

にちか「それじゃ、行きますね……」

円香「……あ、ちょっと待って」

灯織「どうかしましたか?」



円香「……ひとつ、証言をさせてもらってもいい?」


786 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:22:56.80 ID:jj1t/rmq0

真乃「ほわ……証言、ですか……?」

円香「うん。私と浅倉でここを監視してたことに関係する話なんだけど」

円香「基本はずっとここに二人のどちらかがいたんだけど……一瞬だけ誰もいなくなっているタイミングがあった」

円香「これが何かの手掛かりになるかはわからないけど、伝えとく」

にちか「え、そ、それっていつですか?!」

円香「……今朝の朝6時。私と浅倉が交代したタイミング」

円香「夜通しで見てくれてた浅倉と本来私の方から寄宿舎から合流して交代するはずだったんだけど、浅倉がそれを失念して」

円香「直接寄宿舎の私の部屋にまで来てた。それが朝6時」

(……樋口さんも浅倉さんもいない時間が一瞬だけだけど存在していた)

(この事実は何か大きな意味を持つかも知れないぞ……!)

コトダマゲット!【円香の証言】
〔円香と透は部屋が解禁されて以来、ずっと3階の超研究生級のコメンテーターの部屋に誰も入らないように監視をしている。しかし、事件の起きた当日の朝6時は透が直接寄宿舎に行って交代をしてしまったため、僅かに誰もいない瞬間があった〕

787 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:24:02.48 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------

円香「……ここを離れていないから事件の全貌はわからないけど、同じ階で起きたことだから」

円香「他にもここにいたままで出来ることがあったら言えばいい。協力はするつもりだから」

にちか「はい……ありがとうございました!」

灯織「思わぬところで証言が得られたね」

真乃「うん……朝の6時、アナウンスよりもちょっと前だね」

(今回の事件の犯人の足取り、ちょっと見えてきたかもしれないな)

灯織「それじゃあ改めて捜査を始めようか。えっと……見に行く必要があるのは体育館、AVルーム、プールの三箇所だっけ」

にちか「そうだね、早いとこ行っちゃおう!」

788 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:24:55.87 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------
【体育館】

本来は今朝から全員揃っての体育祭が行われるはずだった空間。
部屋の壁に寄せられたドリンクやお弁当、スポーツ用品なんかがもの寂しく映る。

真乃「……めぐるちゃん、本当に楽しみにしてたのにね」

私だってそうだった。昨日の晩からだらしない笑顔を晒して、年柄でもなく浮き足立っていた。
悲しみだらけのこの学園で、やっと楽しい、嬉しいと思える瞬間が来るのだと本気で信じていた。

灯織「……めぐる」

虚しさだけが残ったこの空間は、やけに広く感じてしまうな。
789 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:26:12.13 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------
【曲がったホッケースティック】

真乃「ほわっ……これ、なんのスポーツで使う道具なのかな……あんまり授業とかで見たこともないけど……」

灯織「これは多分、ホッケーだね。室内でできるレクリエーション的な種目もあったはずだから、多分そのためにめぐるが用意してくれてたんだと思う」

めぐるちゃんの死体を見つけてから間も無く。
それぞれ別の方向にバラけて残りの消息不明の3人を探していた時に私が一度目をつけたものだ。
他に並んでいるスティックとは明らかに違う形状をしていて、しかもこれは通常の使い方で曲げられたものではない。
明らかに、何か強い力を作為的にかけられて曲げられたものだ。

樹里「しかしこいつは……どうなってんだ?」

樹里「鉄パイプや金属バットの時みたく血がついちゃいねーけど、なんでこんな曲げられちまってんだよ」

にちか「……」

樹里「おい、にちか……もういい! もういいからな! とにかく私と長手物の武器を合わせたら似合うとか考えるのはもういいから!」
790 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:27:18.26 ID:jj1t/rmq0

にちか「なんかお姉ちゃんが呼んでた漫画であったんですよね……学校の何でも屋みたいなギャグ漫画」

にちか「そこの武闘派担当の女の子がちょうどホッケーのスティック使いでした」

樹里「もうなんでもありだな……髪染めた方が早いか」

西城さんが乱暴に手放したスティックを私も手に取った。
それなりの硬さ、重さはあるけど凶器となった二つに比べると『それなり』に止まる。
これで人を殴っても直接死には至らないだろうし、形状としてもそれには不向きだ。

にちか「……ん?」

それに、折れ曲がっていることに加えて奇妙な痕跡が残っている。
何か細いものが擦れたような……これは火傷の痕?
表面のメッキ部分が焼け落ちたような跡がついていた。

灯織「これはなんの痕だろう……」

真乃「普通に使ってつく痕跡じゃ、ないよね……」

にちか「犯人が何かに使ったのは間違いなさそうだよ。ちゃんと覚えておこう」

コトダマゲット!【折れ曲がったホッケースティック】
〔体育館の中に落ちていたホッケースティック。中央部分で折れ曲げられており、細いものが擦れてメッキ部分が焼けこげたような痕が残っている〕
791 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:28:33.49 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------
【体育館の窓】

灯織「やっぱり……めぐるの才能研究教室から見たのと同じだ。体育館側の窓も開けられてるね」

灯織ちゃんの指摘通り。
私たちの背丈の倍ほどの高さに取り付けられている窓は、開放されていた。

にちか「ほんとだ……けど、どうなんだろう。これぐらい普通にありそうなことな気もするけど」

真乃「昨日、体育館の設備の確認や準備をしてくれてたのは……」

甘奈「夏葉ちゃんだね。遅くまで残って夜のアナウンスギリギリまで準備してくれてたはずだよ」

灯織「夜のアナウンスギリギリ?」

甘奈「ああ、体育館も食堂と同じで夜時間は封鎖されるから______」

【おはっくま〜〜〜〜!!!!】

モノタロウ「夜の体育館はやばいんだよ! すっごく怖くて……奴が出るんだ!」

モノスケ「インターハイ出場も期待されとったのに、その直前になって大怪我してもうて諦めざる得なくなったバスケ部員の怨霊」

モノファニー「夜な夜な彼女が得点板をめくっているとかいないとか……」

灯織「あ、引退後の行動を繰り返してるんだ……」
792 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:29:37.25 ID:jj1t/rmq0

モノダム「夜ニスポーツヲスルノハ危ナイカラネ。自然光がガ沢山入ル中デスポーツハヤロウネ」

(夜時間に侵入できなかった体育館……)

(ってことは窓が開けられたのはその前か後ってことになる……)

にちか「甘奈ちゃん、私より先に体育館に今朝は集まってたけど一番早く来てたのは誰かわかる?」

甘奈「一番早く来てた子……? うーん……樹里ちゃんかな? でも恋鐘ちゃんも早く来て、その痕食堂に戻ったりあったし……」

真乃「うーん……入れ替わりが激しかったから最初に誰が来たのかは分からないね……」

(最初に来た人はわからない……けど、入れ替わりがそれだけ激しかったのなら窓を開けるタイミングもあったってことになる)

灯織「それよりにちか、窓を調べるんだったらこの脚立を使う?」

にちか「あ、ありがとう灯織ちゃん。その梯子、使わせてもらうね!」

灯織「……梯子? これは自立して使うから脚立だよ?」

にちか「どっちも手足をかける道具でしょ? 使用用途に違いはないんだしどっちでもいいって」

にちか「もっと本質を見ようよ、灯織ちゃん」

灯織「……」

灯織ちゃんに用意してもらった梯子によじ登って窓を見た。

にちか「……やっぱり」

この窓からは才能研究教室の窓は見上げるような位置関係にあり、そして、この窓のフレームにも同様に細く固い何かが擦れた痕が残っている。
犯人が二つの窓を使って何かをしたのはもはや間違いないんだ。

コトダマゲット!【体育館の窓】
〔才能研究教室の窓を見上げるような位置にある体育館の窓は事件前後で開けられていた。体育館は夜時間の間は封鎖されるため、開くにはその前後に立ち入る必要がある〕

793 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:30:47.36 ID:jj1t/rmq0
---------------------------------------------
【プール】

才能研究教室と体育館をつなぐ間の空間。
体育祭ではプールで泳ぐ活動を取り入れるつもりはなかったけど、まさかこんな捜査目的で足を踏み入れることになるとも思ってはいなかったな。

真乃「灯織ちゃん、にちかちゃん! あれ……!」

にちか「うん……やっぱり二つの窓がこのプールの下から見渡されるね。何かを掴む手がかりがこのプールにもきっとあるはずだよ」

【おはっくま〜〜〜〜!!!!】

モノタロウ「キ、キサマラ何考えてるの!? こんな時に!?」

にちか「……は、はぁ?」

モノファニー「捜査の時間は貴重なのよ、青春のスイミングに当てるには惜しいと思わない?」

真乃「べ、別に泳ぎに来たわけじゃないですよ……っ!」

モノスケ「なんや違うんかい……カメラを持ってきて損したで。せっかくボロ儲けのチャンスやと思うたんやけどな」

モノダム「……」

(最悪の動機でモノクマーズたちがやってきた……けどちょうどいい。モノクマーズに聞いておきたいこともあったからね)

(逃げないうちに聞いておくべきことは聞いておこう)
794 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:31:54.26 ID:jj1t/rmq0
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【ワイヤー】

プールサイドに落ちている金属製の長いヒモ。
コースを仕切るために使うブイの類かと思ったけど、よく見ると違う。
浮かび上がる目的のものにしては、金属質だし、手で触れた時にうっかり肌を切ってしまいそうなざらざらとした感触があった。

灯織「これは……ワイヤーだね。しかもかなり頑丈なもの」

モノタロウ「あっ、これってワイヤーだったんだ! でっかいでっかいハリガネムシなのかと思っちゃった!」

モノファニー「やだ……巨大なカマキリの腹からウニョウニョ出てくるの想像しちゃったじゃない……グロいわ……」

真乃「でも、なんでプールにワイヤーなんかがあるのかな……金属製だし、錆びちゃったら良くないと思うけど……」

(確かにそうだ……剥き出しのワイヤーがこんなところにあるのは違和感しかない)

(何かの都合で、誰かに持ち込まれたものと考えるのが自然なんじゃないかな……?)

コトダマゲット!【ワイヤー】
〔プールサイドに落ちていたワイヤー。もともとプールの設備だったものではなく、どこかから持ち込まれたモノだと思われる。丈夫でかなり長い〕
795 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:32:59.37 ID:jj1t/rmq0
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【ワイヤー】

プールサイドに落ちている金属製の長いヒモ。
コースを仕切るために使うブイの類かと思ったけど、よく見ると違う。
浮かび上がる目的のものにしては、金属質だし、手で触れた時にうっかり肌を切ってしまいそうなざらざらとした感触があった。

灯織「これは……ワイヤーだね。しかもかなり頑丈なもの」

モノタロウ「あっ、これってワイヤーだったんだ! でっかいでっかいハリガネムシなのかと思っちゃったわ!」

モノファニー「やだ……巨大なカマキリの腹からウニョウニョ出てくるの想像しちゃったじゃない……グロいわ……」

真乃「でも、なんでプールにワイヤーなんかがあるのかな……金属製だし、錆びちゃったら良くないと思うけど……」

(確かにそうだ……剥き出しのワイヤーがこんなところにあるのは違和感しかない)

(何かの都合で、誰かに持ち込まれたものと考えるのが自然なんじゃないかな……?)

コトダマゲット!【ワイヤー】
〔プールサイドに落ちていたワイヤー。もともとプールの設備だったものではなく、どこかから持ち込まれたモノだと思われる。丈夫でかなり長い〕
796 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:34:12.45 ID:jj1t/rmq0
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【プールの利用規則】

私は改めてプールの壁に取り付けられた看板をじっくりと見直した。

『プールを使う時のルール!
@プールで泳ぐ時は水着に着替えてからにしてください
A夜時間のプールの利用は禁止です。敷地内に入ることは可能です。
B入念にストレッチをした上で泳ぐごと!』

モノスケ「プールに入る時はちゃんと水着に着替えなあかん! 制服のまま言うフェチの親父もおるけど……やっぱり出すもんは出しとるのが一番や!」

にちか「最悪すぎる……」

真乃「プールで泳ぐってあるけど……ちょっと入るぐらいでもダメなんですか?」

モノダム「ダメダヨ。制服ヲ着タ状態デ水ニ浸カッテイルノヲ感知シタラスグニアラートガ鳴ッチャウネ」

灯織「そうなると、早着替えの達人でもない限り犯行に取り入れるのは難しそうですね……」

にちか「まあ髪を乾かしたりとかもあるし、難しいとは思うかな……」

真乃「体育館と同じで夜時間には使用禁止なんですね」

モノタロウ「ま、まさかこのプールにも悪霊が……?」

モノスケ「かつてオリンピック強化指定選手に選ばれ、将来を期待された競泳選手がおった……」

モノスケ「そんな彼女は競泳記録大会の最中、ある事故を起こしてしまう……」

モノスケ「飛び込みの勢いで水着が捲れてしもうたんやな……」

モノスケ「そのことがショックとなり彼女は競泳を引退。以来誰もいない夜のプールでは、誰かが飛び込む音ばかりが響くと言う……」

にちか「多分その女の子関係ない案件だよね……それ」

モノファニー「プールの中に入ることはできないけれど、プールサイドを歩くとかは問題なくできるわ」

灯織「建物自体が使用禁止になるわけではないんですね」

(夜時間にもこの建物自体は使うことができた……)

(犯人の犯行計画に組み込むことは可能だったんだろうな)

コトダマゲット!【プールの利用規則】
〔『プールを使う時のルール!
@プールで泳ぐ時は水着に着替えてからにしてください
A夜時間のプールの利用は禁止です。敷地内に入ることは可能です。
B入念にストレッチをした上で泳ぐごと!』〕
797 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:35:20.31 ID:jj1t/rmq0
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【モノクマーズに聞き込み】

にちか「ちょうどよかった。あなたたちに聞きたいことがあったんだよね」

モノスケ「な、なんや! ワイらは何も知らんで!」

モノファニー「そうよ! 加担しすぎたら後でお父ちゃんに怒られちゃうんだから!」

モノタロウ「怒られてボコられてモコられるんだよー!」

モノクマーズに聞きたいことというのは、今回の動機のことだ。
事件の数日前各人に配布されたあの動機ビデオ。
明らかに内容と配る相手がチグハグになっていた。
誰のもとに誰が配られたかを明らかにはしなかったけど、実際のところどうなったのか聞いておいた方がいいかもしれない。

にちか「ねえ、モノクマーズ。今回の動機のビデオなんだけど……シャッフルして配られていたけど、あなたたちはどれが誰に配られたのか把握してるの?」

モノスケ「あ、あ、当たり前やろ! せやないと何のために配ったのかもわからんやんけ!」
798 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:37:02.26 ID:jj1t/rmq0

にちか「じゃあ私の元に配ったのは?」

モノスケ「……」

(どうやら、モノクマーズも誰にどれを配ったのかは把握してないみたいだね)

真乃「動機ビデオは全員に行き届くことは行き届いたんですよね?」

モノファニー「ええ、それは間違いないわ。用意していた分のビデオは全部なくなっていたし、一人に一つずつちゃんと用意したはずよ」

灯織「……なるほど、その中身を他の人が見ることは?」

モノダム「現状ハキサマラ同士デ見セ合ウ以外ノ方法ハナイヨ」

モノスケ「なぁ、堪忍や……またその話題になるとお父ちゃんの機嫌が悪くなってまうんや」

モノスケ「もうワイのお尻は限界なんや! 頼むで!」

【ばーいくま〜〜〜〜!!!!】

よほど失態を触れられたくないらしく、モノクマーズは話題に出すや否やすぐにその姿を消してしまった。
今回の事件のきっかけとなったのもほぼ間違いなく奴らの用意した動機なはずだ。
その動機について、誰のものが誰に渡っていたのかわかれば大きく一歩進みそうな気がしたんだけど……流石にそううまくはいかないか。

799 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:38:13.86 ID:jj1t/rmq0
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【AVルーム】

地下の中でも奥まったところにあるこの部屋に灯織ちゃんと甜花さんの二人は閉じ込められていた。
すでにかなり体力を消耗していた様子だったし、愛依さんが見つけてくれなかったら危なかったところだろうと思う。

にちか「灯織ちゃんはこの部屋にいつ来たの?」

灯織「いや……私が自分でここに来たんじゃなくて、呼び出しを受けたのはもともと図書室だったんだよね」

真乃「ほわっ……お隣の部屋なの?」

灯織「うん、図書室に明け方に呼び出しを受けて」

にちか「そ、そんな早い時間に一人で出向いたの……?!」

灯織「うん……呼び出された内容が内容だったから。『隠し部屋に入るカードキーを見つけた』……これって黒幕に繋がる大きな手がかりだと思ったから」

にちか「でも、実際はそんなことはなかった……」

灯織「うん、いつのまにか後ろに立っていた犯人に襲われて、そのまま意識を失っちゃったんだ」

(そして私たちが発見するまで拘束状態だった……か)

あの時の拘束について、愛依さんと甜花さんとも話をすり合わせておく必要はありそうだな。
800 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:40:12.96 ID:jj1t/rmq0
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【愛依と甜花に聞き込み】

にちか「あの、お二人とも今いいです?」

愛依「うん、オッケー! 何でもじゃんじゃん聞いて!」

甜花「な、七草さん……さっきはどうも……」

灯織ちゃんと甜花さんを最初に見つけたのは愛依さんだ。その呼びかけに最初に答えた私が部屋に到着して、二人の拘束を解いた。
そうしているうちに何人か集まってきたんだったかな。

にちか「愛依さんが発見した時のことを聞かせてもらってもいいですか?」

愛依「うん……まず、うちが丁度地下に降りたタイミングでガララララ……パタンって【扉が閉じる音】が聞こえてきたの」

灯織「音……ですか?」

真乃「灯織ちゃんは聞いてなかったの?」

甜花「甜花も風野さんも耳栓をさせられてたから、何も聞くことはできなかったんだ……」
801 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:42:30.56 ID:jj1t/rmq0

愛依「だから誰かいんのかなって思ってゲームルームを覗いたの」

愛依「ほら、図書室はどっちの扉も引き戸だけど、ゲームルームはスライドドアだからさ」

にちか「なるほど……」

愛依「でも、ゲームルームには誰もいなくて……で、よく見たらAVルームの扉もスライドドアだったんだよね!」

愛依「だから誰かが逃げ込んだのかなと思って急いでAVルームを覗いたわけ!」

愛依「したら二人が縛られてたからヤバい焦ったよね! スグに大きな声をだしてにちかちゃん呼んでさ〜!」

(それじゃああれは愛依さんが地下に降りてスグのことだったのか……)

真乃「二人はどんな状態で縛られてたんですか?」

愛依「手と足の首を縛られて……目隠しと耳栓、それになんつーのかな、タルカツラ……?」

灯織「……猿轡をかまされてたの」

つまり、二人はずっと五感が封じられた状態だったわけだ。
実際二人ともめぐるちゃんの死体発見アナウンスのことは知らなかったみたいだし、
私が解いた限りでも拘束されている本人一人でどうにかできる代物じゃなかった。
802 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:43:21.29 ID:jj1t/rmq0

愛依「二人ともあれから大丈夫? 体に何かエイキョーとか出てたり……」

甜花「う、うん……大丈夫。なーちゃんにはかなり心配されたけど……」

灯織「私も今は大丈夫です。気絶した時はご迷惑をおかけしました……」

愛依「ううん、気にしないで! 今が元気なら全然オッケーだから!」

二人の様子にも怪しいところはない……
けど、この二人とめぐるちゃん、夏葉さんの命を奪われた二人との違いは一体何なんだろう。
どうしてこの二人は……標的にはならなかったのかな。

にちか「……」

_____考えすぎ、なのかな。

コトダマゲット!【灯織と甜花の拘束】
〔灯織と甜花はAVルームで目隠しに耳栓、猿轡までされた上で手足を拘束されていた。捕まっている本人でどうにかできるような拘束ではない、入念なモノだった〕

803 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:44:03.75 ID:jj1t/rmq0
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【裏口の扉】

AVルームには二つの入り口がある。
前回の裁判でもそれが争点となって、私はこの扉の立て付けの悪さの苦渋を飲むことになったんだけど……

にちか「あれ?」

今度はその扉がすんなりと開いた。
しゃがんで見てみると、埃の溜まっていたであろうレーンは見違えるほどに綺麗に掃除がされていて、油を刺されたような跡も垣間見えた。

愛依「あ、その裏口はこの前凛世ちゃんが直してるの見たよ〜?」

にちか「杜野さんが?」

愛依「裁判の終わった次の日だったっけな? 頻繁に出入りする部屋で、壊れたままなのも都合が悪いだろうから……って」

愛依「すごい気が効くよね、気遣いの鬼ってカンジ〜!」

私は普段地下室に近づくことがなかったから全然気づいていなかったけど……みんなは知っていたのかな。
少なくとも、前回の事件では使えなかった扉が今回の事件では使えるようになっていたという事実は覚えておいた方がいいのかも。

コトダマゲット!【AVルーム裏口の扉】
〔AVルームの裏口の扉は前回の裁判の後に凛世が修理をして使えるようにしたらしい。今もスライド式のドアは自由に使える状態である〕
804 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:44:50.59 ID:jj1t/rmq0
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【キーンコーンカーンコーン……】

『はい、お時間になりました。ヌルヌルテカテカ隅々まで捜査じっくりコースは以上になります』

『ご延長なさりますか? 追加料金が発生いたしますが……以上で? はい、了解しました』

『本日は当モノクマラバーズクラブ、クマ娘をご利用いただきありがとうございました! こちら次回使えるクーポン券になりますのでぜひお使いくださいね』

『それではお客様、中庭の赤い扉裁きの祠にてご退店の方よろしくお願いします』

『また次回、ハチミツまみれコースで待ってます♡』

プツン

……時間が来たみたいだ。
今回の裁判に私は初めてシロとして挑む。
この裁判でクロを見つけられないと、終わる。
仲間たちと一緒に死んでしまう。
その初めての緊張感を感じて、さすがに背筋がいつもより伸びた。
805 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:45:50.41 ID:jj1t/rmq0

灯織「にちか、大丈夫だよ。私たちがついてる」

にちか「灯織ちゃん……」

真乃「頑張ろうね、にちかちゃん……っ!」

にちか「真乃ちゃん……」

でも私は一人じゃない。
共に戦う仲間がいる。
前回の裁判と大きく違うのは、そこだ。
一緒にいたいと思える仲間と同じ目的に向かって、戦うことができる。
これだけでどれほど心強いことか。

にちか「うん、絶対に……生きて帰ろう」

私たちは揃って、その第一歩を踏み出した。
806 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:47:06.78 ID:jj1t/rmq0
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【中庭 裁きの祠】

中庭にはすでに私たちを待ち受けている他の人たちの姿があった。
不安げな表情を浮かべる人、まだ困惑の中にいる人、そして好戦的な笑みを浮かべ昂る人。
この裁判に挑む姿勢はまちまちだ。
でも、目的は同じ。全員が、この裁判から生きて戻ることを目指してここに集っている。

あさひ「あ、にちかちゃん! どうっすか? 犯人は分かったっすか?」

にちか「……それはこれから先の裁判で明らかにすることでしょ」

あさひ「あはは、そうっすね。まあにちかちゃんがこのゲームに協力的でよかったっす」

あさひ「いっしょにゲームを楽しんでくれる人がいないと、どんなに面白いゲームでも退屈っすから」

愛依「……あさひちゃん」

樹里「おい、それより透と円香はまだなのかよ。アナウンス鳴ってからもう結構経ってるぞ?」

甜花「あ、そういえば……来てない……」

甘奈「捜査中も円香ちゃんは自分の才能研究教室の前にいたと思うけど……」

しばらく私たちが二人の噂をしていると、祠の扉が開いた。
モノクマーズに背中を強引に押されながら、渋々といった感じで二人の重役出勤だ。
807 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:48:46.66 ID:jj1t/rmq0

モノタロウ「もう! 学級裁判に参加しないとおしおきされちゃうんだよ!? 困るのはキサマラなんだよ?!」

透「お、ついたついた。ご苦労」

モノスケ「ご苦労やあらへんねん! ワイらはキサマラのホームヘルパーさんとちゃうねんぞ!」

円香「次は椅子に乗せて運んでくれると助かる」

モノスケ「そんなん神輿やないねんから!」

凛世「お二人とも……今の今まで、樋口さんの才能研究教室に……?」

透「や、うちは捜査してたよ。ちゃんと」

円香「来る途中に浅倉から話は聞いてます。大丈夫、裁判自体は真面目に参加するので」

恋鐘「そいならよか! な〜んも知らんと裁判に参加しても、訳わからんっちゃんね! 前回のうちみたいに!」

樹里「恋鐘……アンタ前回の裁判勘で参加してたのか……」

そして私たちが揃ったタイミングを見越したかのように、石像が動き出した。
手に持っていた水瓶を砕くと、そのまま噴水の中に姿が消え、滝が割れてエレベーターが姿を現す。

モノファニー「ほら、キサマラは裁判場に急ぎなさい! お父ちゃんはとっくに待ちくたびれてるわよ!」

モノダム「キサマラ、頑張ッテネ」

モノクマーズに促されるままに私たちはエレベーターへと乗り込んでいく。
そして全員が乗り込むと、ガコンと音を立ててから、下降が始まった。

808 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:50:27.65 ID:jj1t/rmq0


霧子「なんだか……寂しくなっちゃったね……」

前回の裁判の時にエレベーターに乗り込んだのはルカさんを除いた15人。それが更にめぐるちゃんと夏葉さんの分も抜けた13人となった。
人数が減るとそれだけ空間が広くなる。
元は誰かがいた空間、そこに漂う残香のようなものが、どことなく切なく胸を刺した。

あさひ「でも、帰る頃には更にもう一人減るっすよ?」

あさひ「いや、もしかしたら二人……かもしれないっすけど」

認めたくはないが芹沢さんの言うとおりだ。
私たちがこの切なさを感じているのは生き延びているからに他ならず、そしてまた生き延びるためには更なる犠牲を出さねばならない。
今こうして感じている寂しさは、まだその前段階に過ぎないと言うことを戒めるような芹沢さんの言葉に、誰も口を挟み込みはしなかった。

みんな、覚悟を決めている最中だった。
これから自分たちは仲間のうちの『誰か』を切り捨てることになる。

その『誰か』にどうやって向き合うのか。
その『誰か』にどんな言葉をぶつけるのか。
その『誰か』にどんな想いを抱くのか。
自分がどんな反応を抱くことになるのかもわからないままに、そんな曖昧な覚悟だけを必死に抱こうとしていた。


チーン!


でも、そんな覚悟が定まるほどの時間もないままに、エレベーターは目的地へと辿り着いてしまう。

809 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:52:10.40 ID:jj1t/rmq0


モノクマ「おっせ! おせおせおせおせ! おっせーの!」

モノクマ「何をぐだぐだやってんのさ! こちとら学級裁判がやりたくてやりたくて……待ち遠しくて待ち遠しくて……」

モノクマ「千羽鶴を着払いで児童病院に送りつけちゃったよ!」

モノタロウ「うわー! SNSで本格的な炎上をしちゃうよ!」

モノファニー「厚意の押し付けと顰蹙を買う一方で拒絶しない病院サイドにも問題があると議論になってより炎上が加速するインターネット永遠の沸騰の話題になってしまうわ!」

樹里「なあ、みんな。裁判が始まる前にこれだけ、言っておきたいんだけど……いいか?」

凛世「樹里さん……?」

樹里「さっきあさひの言ってた通り、アタシたちはこの裁判でも仲間のうちの誰かを確実に犠牲にすることになる」

樹里「でも、だからって……怖がって進むのを辞めちゃダメだ。どれだけ残酷な結末が待ってても、どれだけ認めたくない真実が待ってても」

樹里「その先にしか、私たちが生き残る未来はなんだからな」
810 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:53:22.53 ID:jj1t/rmq0

あさひ「そうっすよ、みんなが諦めちゃったらゲームに勝てなくなるっす」

あさひ「ちゃんとゲームに勝ちたいなら、最後まで頑張るっすよ!」

愛依「うん……そーだよね! やっぱそうだよね! うち……なんか震えてたけど、今の樹里ちゃんの言葉聞いていけそう!」

甘奈「甘奈も……勇気をもらえた!」

霧子「とくんとくんって……鼓動が早くなって……」

恋鐘「やる気十分ばい〜〜〜〜〜!!」

私たちは西城さんの発破を受けて、すぐにそれぞれの席へとついた。
あの西城さんの言葉は、きっと夏葉さんが私たちに見せ続けていた姿に基づくものだったんだろうと思う。
811 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:54:42.36 ID:jj1t/rmq0

超研究生級の文武両道、有栖川夏葉さん。
ルカさん亡き後に私たちを引っ張り続けてくれていたリーダー格の人物で、
その勇敢に真実に向き合い続け、仲間を鼓舞しようとする姿には何度も力をもらっていた。


そして超研究生級のスポタレ、八宮めぐるちゃん。
彼女には私は大切なものをいくつももらったし、今こうしてこの場に立つための力をくれたのも彼女だ。
返し尽くせないぐらいの恩をもらっていたところに、その恩を返す機会をとりあげられた。


私たちを照らし続けた太陽のような二人を殺した人間が、私たちの中に……いる。
それは何者なのか、その人物が何を腹に抱えているのか。
まだ全ては闇の中にある。
真実への道筋はまだ見えないし、そこにどんな障害が待ち受けているのかもわからない。
でも、そうだとしても私たちは遮二無二に進み続けることしかできない。
寸分先も見えない真っ暗闇の中を突き進んで突き進んだ先にしか、真実は待っていないのだから。

やるしか、ないんだ。
812 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:56:15.75 ID:jj1t/rmq0






____私たちが生きて帰る、その運命を切り開くために。





813 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/03(日) 21:59:47.58 ID:jj1t/rmq0

2章非日常編までを早足ですが進めさせていただきました。
ここからの学級裁判パートでは、出来る限りこれまで通り安価での進行をしたいと考えていますので、よろしければ参加をご検討ください。
交流パートカットに伴うスキル入手機会の喪失もあるので、コンマなどは緩和もしくは廃止となると思います。

学級裁判パートの開始は9/6(水)の21:00〜を予定しております。
よろしくお願いします。
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/09/06(水) 14:28:41.16 ID:O47vjLg1O
更新ありがとうございます。
大好きなシリーズなので、ゆっくりでもいいので続けてくれると嬉しいです!
815 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 20:40:54.51 ID:Dl97oGhJ0
>>814
ありがとうございます。大変励みになります! 
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コトダマ
‣【モノクマファイル2】
〔被害者となったのは超研究生級のスポタレ、八宮めぐる。死亡推定時刻は午前8時前後。死因となったのは前頭部を強く殴りつけられたことによる頭蓋骨陥没および脳挫傷。死体に他に目立った外傷はない〕

‣【モノクマファイル3】
〔被害者となったのは超研究生級の文武両道、有栖川夏葉。死亡推定時刻は午前8時30分前後。死因となったのは後頭部を強く殴りつけられたことによる頭蓋骨陥没および脳挫傷。死体に他に目立った外傷はない〕

‣【事件の経緯】
〔めぐると夏葉の死体を発見するまでの経緯は以下の通り。
@体育館に集まった真乃、恋鐘、霧子、樹里、凛世、甘奈、あさひ、愛依、にちかが異常に気づく。
真乃、にちか、甘奈が3階の才能研究教室、恋鐘、凛世が1階の食堂、樹里が寄宿舎の捜索を担当。
A3階の才能研究教室にてめぐるの死体を発見。残る行方不明の灯織、甜花、夏葉の捜索を開始。
あさひと円香で3階、透と恋鐘で2階、真乃とにちかと樹里と甘奈で1階、愛依で地下を探索。
B愛依が地下で灯織と甜花を発見。
残る夏葉の捜索に真乃とにちかと甜花が行動開始。
真乃とにちかが中庭、甜花が裏庭を担当。
C裏庭で甜花が夏葉の死体を発見〕
816 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 20:41:47.58 ID:Dl97oGhJ0

‣【夏葉の割れた指の爪】
〔夏葉の死体の手指の爪は割れていた。あさひ曰く、爪からは鉄の匂いがするらしく、鉄製のものを引っ掻いて割れたのではないかと推測できる〕

‣【二人を殺害した凶器】
〔めぐるを殺害したのは才能研究教室の金属バットで、夏葉を殺害したのは裏庭の鉄パイプでそれぞれ命を奪った凶器が異なる。犯人は現場にあったものを使って犯行を行ったようだ〕

‣【気化麻酔】
〔夏葉とめぐるの死体発見現場には医療用気化麻酔が充満していた。監禁状態にあった二人が意識を取り戻すことは困難だったと思われる〕

‣【現場に落ちていたハンカチ】
〔裏庭の隅に落ちていたハンカチ。今日になって既に使われた痕跡がある。落とし主は不明〕

‣【死体発見アナウンス】
〔殺害犯であるクロ以外のシロの生徒3人以上が死体を発見した際に、現場を周知するために鳴らされるアナウンス。その条件については既にモノクマーズに尋ねた生徒がいるらしい〕

‣【にちかの打ち身】
〔昨晩の体育祭の準備の際にうっかり真乃とにちかがぶつかったことでにちかは右腕に打ち身を負ってしまっている。そのせいで準備は昨晩中断され、今朝にスポーツ用品の搬入がもつれ込んだ〕

‣【シャワールームの窓】
〔めぐるの殺害現場である才能研究教室奥のシャワールームの窓は死体発見当時から開け放たれていた〕

‣【シャワールームの窓のフレーム】
〔めぐるの殺害現場となった才能研究教室奥のシャワールームの窓のフレームには細くて固いものをくくり付けたような擦れた痕跡が残っていた〕
817 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 20:42:34.10 ID:Dl97oGhJ0

‣【円香の証言】
〔円香と透は部屋が解禁されて以来、ずっと3階の超研究生級のコメンテーターの部屋に誰も入らないように監視をしている。しかし、事件の起きた当日の朝6時は透が直接寄宿舎に行って交代をしてしまったため、僅かに誰もいない瞬間があった〕

‣【折れ曲がったホッケースティック】
〔体育館の中に落ちていたホッケースティック。中央部分で折れ曲げられており、細いものが擦れてメッキ部分が焼けこげたような痕が残っている〕

‣【体育館の窓】
〔才能研究教室の窓を見上げるような位置にある体育館の窓は事件前後で開けられていた。体育館は夜時間の間は封鎖されるため、開くにはその前後に立ち入る必要がある〕

‣【ワイヤー】
〔プールサイドに落ちていたワイヤー。もともとプールの設備だったものではなく、どこかから持ち込まれたモノだと思われる。丈夫でかなり長い〕

‣【プールの利用規則】
〔『プールを使う時のルール!
@プールで泳ぐ時は水着に着替えてからにしてください
A夜時間のプールの利用は禁止です。敷地内に入ることは可能です。
B入念にストレッチをした上で泳ぐごと!』〕

‣【灯織と甜花の拘束】
〔灯織と甜花はAVルームで目隠しに耳栓、猿轡までされた上で手足を拘束されていた。捕まっている本人でどうにかできるような拘束ではない、入念なモノだった〕

‣【AVルーム裏口の扉】
〔AVルームの裏口の扉は前回の裁判の後に凛世が修理をして使えるようにしたらしい。今もスライド式のドアは自由に使える状態である〕

818 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 20:43:28.71 ID:Dl97oGhJ0
---------------------------------------------




【学級裁判 開廷!】




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819 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 20:44:45.81 ID:Dl97oGhJ0

モノクマ「これより学級裁判のルールの説明をいたします」

モノクマ「学級裁判では殺人の実行犯であるクロとそれ以外のシロとに分かれて、オマエラの中に潜むクロは誰か?を話し合ってもらいます」

モノクマ「無事クロの生徒を指摘できればクロだけがおしおき。もし間違った生徒をクロとしてしまった場合には……」

モノクマ「それ以外のシロ全員がおしおきになって、全員を欺いたクロはこの学園から卒業となります!」

モノクマ「ちなみに今回は被害者が二人いるわけだけど……この学級裁判の中でその両方のクロを推理してもらうからね!」

モノクマ「死体が先に見つかった方だけとかそういう死者の尊厳を軽んじるローカルルールとかは良くないんだからね!」

樹里「前回以上にしんどい戦いになるな……一回の学級裁判で両方のクロを当てなくちゃならねーなんてな……」

愛依「ねえ、それなんだけどさ……」

愛依「今回の事件ってクロはそれぞれ別なの?」

愛依「事件が起きたのって両方今日の朝の話だしさ……うちには同一犯に見えるんだけど」

甘奈「今回の事件は甘奈たちの目の前で連続して起こったんだもんね……」

甘奈「直接的に犯人を見ていたわけじゃないけど……一人のクロが暗躍してたみたいな印象を受けるよ」

凛世「では、今回の議論はその点から話し合うことといたしましょう……」

凛世「めぐるさんと夏葉さん……二人を殺めたクロはただの一人だったのか」

凛世「それとも複数人のクロによる別々の事件だったのか……」

(今回の事件が連続殺人だったのかどうか……)

(判断が難しいところだけど……二つの事件において唯一はっきりしている違いがあったはずだよね)
820 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 20:45:52.18 ID:Dl97oGhJ0
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【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【モノクマファイル3】
‣【にちかの打ち身】
‣【折れ曲がったホッケースティック】
‣【二人を殺害した凶器】

恋鐘「今回の裁判は被害者が二人ばい!」

恋鐘「めぐるに夏葉……」

恋鐘「どっちも頭をごちーんと【殴られて死んどった】ばい!」

甜花「死亡推定時刻は八宮さんが朝8時……」

甜花「有栖川さんが朝8時半……」

甜花「先に八宮さんの方が襲われた、みたい……?」

愛依「やっぱ【単独犯】による連続殺人なんじゃん?」

愛依「どっちも撲殺されて死んでるし」

愛依「【凶器だっておんなじ】じゃん?!」

愛依「一人のクロが二人を殺して回ったんだよ!」

樹里「白昼堂々二人を殺して回るだなんて」

樹里「随分肝が据わった犯人もいたもんだぜ!」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/06(水) 20:59:58.61 ID:6y9msbOg0
【凶器だっておんなじ】に【二人を殺害した凶器】
822 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 21:02:06.14 ID:Dl97oGhJ0

にちか「それは違くないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「確かにこの事件は私たちの目の前でリアルタイムに二人の命が奪われました……」

にちか「同一犯の事件のようにも見えるんですが……二つの事件には明確な違いがあったはずです!」

愛依「え……そうなん?」

にちか「二人の命を奪った凶器ですよ! めぐるちゃんを殺したのは彼女の才能研究教室にあった金属バット!」

にちか「その一方で有栖川さんを殺したのは裏庭にあった鉄パイプの廃材なんです」

にちか「犯人はその場その場で現場にあったモノで殺害をしたことになるんです!」

灯織「もちろんこれは同一犯の犯行を否定するものではないですが……わざわざ凶器を使い分けたことには何か理由があるのかもしれません」

灯織「二つの事件を同一に見てしまうのは何か見落としが生じるリスクがあるかもしれない。にちかが言いたいのはそういうことだと思います」

(おっ、灯織ちゃんナイスサポート!)

甘奈「そっか……それじゃあ二つの事件について、一つ一つ丁寧に見て行ったほうがいいかもしれないね☆」

円香「それなら時系列順に辿って考えるのが良さそうですね」

円香「私と浅倉のように、その場にいなかった人間にとって情報の整理にもなりますから」

透「おなしゃーす」

甜花「そうだね……! 甜花もそうしてくれたら、嬉しい……!」

樹里「つーと、まずはめぐるの事件からだな」

樹里「そんじゃあアタシたちが知ってる情報を整理するところから始めるぞ! 準備はいいな?」

霧子「うん……お願いします……」

823 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/06(水) 21:03:23.98 ID:Dl97oGhJ0
------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【モノクマファイル2】
‣【体育館の窓】
‣【灯織と甜花の拘束】
‣【夏葉の割れた指の爪】

真乃「めぐるちゃんは自分の才能研究教室で亡くなっていました……」

真乃「めぐるちゃんは体育祭の立案者の一人で、準備も精力的だったので……」

真乃「その【最中に襲われた】んだと思います……っ!」

恋鐘「体育祭の準備は昨日から始まっとったばい!」

恋鐘「うちもお弁当を昨日のうちにいっぱいつくっとったけんね!」

恋鐘「振る舞う機会がなくなってしまって残念ばい……」

霧子「めぐるちゃんは【その前の日にも準備をしてた】んだよね……」

霧子「働き者のアリさんみたいだね……」

樹里「めぐるは昨日の【夜時間の準備中に】ぶん殴られたってわけか……」

樹里「めぐるが準備をしてたのはみんな知ってるし……」

樹里「アリバイから絞り込むのは難しいかもしれねーな」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/06(水) 22:58:28.45 ID:MVyA8Vu+0
【夜時間の準備中に】>【にちかの打ち身】
825 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:02:57.26 ID:6YaMnVE80
上記コトダマにないため再安価↓1
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 20:15:44.44 ID:PTTiaO4X0
【モノクマファイル2】>【夜時間の準備中に】
827 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:24:14.89 ID:6YaMnVE80

にちか「それは違くないですかー?!」

【BREAK!】

にちか「ちょっと待ってください! めぐるちゃんは夜中にも準備をしてたみたいですけど……死亡したのは夜の話じゃないですよ!」

にちか「モノクマファイルにはっきりと死亡推定時刻は書いてあります! 今日の朝、アナウンスとほぼ同時刻に撲殺されたんです!」

樹里「え? ああ……そうか、そうだったな。悪い、間違えちまった」

真乃「めぐるちゃんは私とにちかちゃんと3人で昨晩も夜時間まで準備をしてたんですけど……」

真乃「準備が間に合わなくて、それで朝早くにめぐるちゃんが先に一人で行って準備をしてくれたみたいなんです」

恋鐘「そん時に殴られて殺されたってことやね。めぐるの厚意を利用して、狡猾か犯人たい」

霧子「めぐるちゃんの頭から流れてた血もまだ乾いてなくて新しかったから……」

霧子「私たちが発見するすぐ前に死んじゃったのは間違いないと思います……」

あさひ「ふーん……それならだいぶ犯人は簡単に絞れそうっすね」

愛依「え? そ、そーなん!?」
828 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:24:50.77 ID:6YaMnVE80

あさひ「だって、その時間には多くの人にアリバイがあるじゃないっすか」

あさひ「犯人は円香ちゃんか透ちゃん、この二人になるっすね」

円香「……は?」

透「おー」

樹里「……おいおい!? 結論が早すぎねーか?」

あさひ「でもそうじゃないっすか? 体育館にあの時集まっていた9人に殺害はできない」

あさひ「そして灯織ちゃんと甜花ちゃんはAVルームに監禁されていて自由が効かない」

あさひ「ほら、残るのは円香ちゃんと透ちゃんの二人しかいないっす!」

(……確かにアリバイの上ではそうなる)

(だけど、それだけの単純な話なのかな?)
829 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:25:43.35 ID:6YaMnVE80
---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【事件の経緯】
‣【現場に落ちていたハンカチ】
‣【シャワールームの窓】
‣【円香の証言】

あさひ「今回の犯人は透ちゃんか円香ちゃん!」

あさひ「このどっちかっすよ〜!」

愛依「他のみんなには【アリバイがある】もんね……」

愛依「みんな体育館に揃ってた系!」

甜花「風野さんと甜花は【捕まってて動けなかった】し……」

甜花「自由に動けたのは、その二人だけ……?」

恋鐘「殺害方法も撲殺ときとる!」

恋鐘「現場におらんと不可能な方法やけんね!」

円香「違う……私は【自分の才能研究教室の前にいた】だけ」

円香「そこからは一歩も動いてない……!」

甘奈「円香ちゃんのその証言も本当なのかな?」

甘奈「同じ階にいたんだもん、自分が犯人じゃないって主張するなら」

甘奈「怪しい人物を見たって普通【証言するはず】だよね?」

真乃「それがないってことは……!」

円香「……」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 20:34:21.85 ID:PTTiaO4X0
【円香の証言】>【証言するはず】
831 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:41:39.14 ID:6YaMnVE80

にちか「それは違わないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「待って、甘奈ちゃん! 確かに樋口さんの才能研究教室は今回の事件現場と同じ階にあるけど……だからって不審な人物を目撃した証言をしていない樋口さんが怪しい道理にはならないよ!」

甘奈「え? どうして?円香ちゃんが犯人じゃないなら、怪しい人物を目撃するはずだよね?」

にちか「3階の地図を思い出してみてよ。3階の中でも二人の才能研究教室は玄関ホールを挟んでそれぞれ別の島にあるんだ」

にちか「樋口さんが自分の才能研究教室の前にいたとして、めぐるちゃんの才能研究教室の方が見えていなかったとしてもなんの不自然もないんだよ」

凛世「更に事件が起きたのは今朝の未明……学園内も自然光ではまだ薄明かりの時間にございます……」

樹里「見落としがあったとしてもおかしくはねーってことか……」

樹里「いや、だとしても……アリバイの件は無視できねーだろ。実際事実として円香と透の二人だけがアリバイがないんだからな」

甜花「体育祭に参加してればこうはならなかったのにね……!」

円香「……」ジト…

甜花「ひぃん……」
832 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:42:51.39 ID:6YaMnVE80

恋鐘「とにかく二人が犯人の最有力容疑者なのは間違いなかよ! うちは二人に証言ば要求するばい!」

透「あー、反論。やんなきゃダメっぽいな」

透「いける? 樋口」

円香「……まあ」

あさひ「よーし、それじゃあ二人には自分が犯人じゃないって主張してもらうっすよ!」

あさひ「にちかちゃん、どっちが本当のことを言ってるかちゃんと聞き分けてほしいっす!」

あさひ「この二人のどっちかが犯人なんっすからね!」

(……芹沢さんの言動なんか気になるな)

(やたらとこの二人が犯人って念押ししてくるけど……この子は本気でそう思ってる?)

真乃「にちかちゃん、落ち着いて二人の言葉を聞いてね……!」

灯織「大丈夫、私たちもついてるから」

にちか「二人とも……ありがとう! 頑張ってみる!」


円香『……』
透『反論、反論かぁ』

---------------------------------------------
833 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:43:57.74 ID:6YaMnVE80
---------------------------------------------
【パニック議論開始!】

コトダマ
‣【事件の経緯】
‣【円香の証言】
‣【ワイヤー】
‣【シャワールームの窓】

円香「とにかく私は才能研究教室から動いていないんです」
透「事件があったのって朝のアナウンスの時だっけ」

円香「朝のアナウンスを聞いたのも、才能研究教室の前」
透「そん時……そん時……」

円香「死体発見アナウンスが聞こえてくるまで怪しい人影も物音も私は【聞いていません】よ」
透「商店街。あそこをお相撲さんの肩に乗って歩いてた」

樹里「1階から3階まで行くルートは【一つだけ】だったよな?」
恋鐘「ふぇ????」

樹里「でもにちかたちが朝の放送から死体を発見するまでの道中は不審な人物に誰にも出会していない」
透「お相撲さんめっちゃ肩でかいの。5メートルぐらいあってさ」

樹里「逃げるとしたら【円香の才能研究教室の方向しかない】と思うけどな」
透「びびったね。四股踏んだらビルもぶっ壊れてた」

円香「さあ? 私はそんな人影は見ていません」
恋鐘「こ、これ何の話〜〜〜???」

円香「そして、私は犯人でないとも口添えておきます」
透「あ、ごめん。その時間【寝てた】から」

円香「そして、浅倉も無実です」
透「夢の話」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 20:53:47.68 ID:PTTiaO4X0
【シャワールームの窓】>【円香の才能研究教室の方向しかない】
835 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:55:18.13 ID:6YaMnVE80

にちか「壁に耳あり障子に目ありです!」

【BREAK!】

にちか「真乃ちゃんと甘奈ちゃんと階段を登って、才能研究教室に向かう最中。私たちは誰ともすれ違いませんでした」

甘奈「そうだよね。雑談しながらではあったけど、道は一通りしかないはずだから……」

甘奈「犯人が逃げようとしていたなら、どこかですれ違うはずだと思うけど」

にちか「いや、そうじゃないよ。犯人が逃走に使えたルートは一通りじゃない」

真乃「ほわっ……?!」

にちか「死体発見現場、シャワールームの窓だよ。真乃ちゃんと灯織ちゃんと捜査した時にも確認をしたでしょ?」

にちか「あそこからなら階段を経由しなくても直接一階にまで降りることができたはずだよ!」

樹里「シャ、シャワールームの窓ぉ?!」

恋鐘「あっこの窓は丁度プールと繋がった場所にあったはずやね。確かに逃走経路としてはこれ以上なか!」
836 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:56:02.80 ID:6YaMnVE80

霧子「確かに、窓からなら誰とも出会わずに脱出ができるね……」

甜花「壁を隔ててるから、樋口さんに音を聞かれることもない……」

甜花「すごい……スパイのテクニックみたい……!」

あさひ「……」

あさひ「でも、これって別に円香ちゃんのアリバイを証明することにはならないっすよね?」

にちか「いや、そうとも限らないんじゃないかなー?」

にちか「もし、ここから犯人が脱出したんだと確定させることができたなら、犯人は私たちが死体を発見した時に一階相当の高さにいたことになるよね?」

にちか「そしたら死体発見からすぐにやってきた樋口さんは物理的に、時間的に無理って話にならない?」

円香「……!」

あさひ「へー! なるほど、それは面白いっすね!」

あさひ「それじゃ次はにちかちゃんの言う、窓からの脱出方法について検討するってことなんっすね!」

(……この子、分かった上で楽しんでるな)

(いいよ、乗ってやる。あなたはゲームに勝つためか知らないけど、私たちは生き残るためなんだもん)

(目的のためなら手段は選んでいられない……!)
837 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 20:57:00.04 ID:6YaMnVE80
---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【事件の経緯】
‣【シャワールームの窓】
‣【プールの利用規則】
‣【二人を殺害した凶器】

あさひ「犯人が窓から逃走したのが本当なら」

あさひ「円香ちゃんは【犯人にはならない】かもしれないっすね!」

甘奈「甘奈たちがめぐるちゃんを発見するまでには」

甘奈「【誰ともすれ違わなかった】よ!」

恋鐘「犯人はシャワールームの窓から」

恋鐘「【プールに向かってダイブ】したばい!」

恋鐘「シャワールームは高いけど、これなら衝撃も分散するけんね!」

愛依「はー、プールがクッションの代わりになったんだ」

愛依「犯人も頭いいね〜、うち全然思いつかんかったわ!」

樹里「犯人に感心してんじゃねーよ!」


【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 20:58:47.64 ID:PTTiaO4X0
【プールの利用規則】>【プールに向かってダイブ】
839 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 21:14:30.90 ID:6YaMnVE80

にちか「それは違くないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「いやいや、確かに窓からの脱出を言い出したのは私ですけど……プールに着水はあり得ないですって」

恋鐘「な、なんねにちか! 人がせっかく味方してあがとるのに梯子を外すような真似してせからしか!」

にちか「い、いや……窓から出たこと自体を否定したわけじゃなくですね……?」

にちか「プールに着水するのは不可能なんですよ。あのプールには水着以外で入っちゃいけないって決まりがあるんです」

モノタロウ「ねえねえ、水着以外で入っちゃったらどうなるの?」

モノスケ「そりゃもうどえらいおしおきを受けることになるわな!」

モノスケ「エグイサルにザルを持たせて人間どじょうすくいの罰や!」

モノタロウ「うわ〜! 具体的な実害がいまいちピンとこないよう〜!」
840 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 21:15:12.84 ID:6YaMnVE80

真乃「他にも、プールには夜時間の侵入禁止ってルールもあるみたいです……っ」

樹里「つーか、そもそもあの窓の高さから飛び込んだら流石に水といえど無事じゃ済まねーんじゃねーか?」

凛世「プールの深さは一般的なものと対して変わりませんので……」

凛世「着水の勢いのまま、底にぶつかってしまうやもしれません……」

恋鐘「そいやったら犯人はどがんしてシャワールームから脱出したばい?」

恋鐘「まさか犯人に羽が生えとったわけじゃなかよね?」

甜花「犯人は直前に魔剤を飲んでいた……!」

甜花「翼を、授けられてたんだよ……!」

(犯人があの窓を脱出に使った可能性はかなり高いと思う)

(でも、飛び降りたわけじゃない。もっと安全で確実な方法が確かに存在したはずだ……!)
841 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 21:16:42.87 ID:6YaMnVE80
---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【事件の経緯】
‣【体育館の窓】
‣【死体発見アナウンス】
‣【AVルーム裏口の扉】

凛世「シャワールームの窓から脱出したとて……」

凛世「プールを使うことは不可能です……」

霧子「そもそも水の上でもあの高さから落ちたら……」

霧子「なかなか無事じゃいられないかな……」

樹里「でも、あの【窓から繋がってるのはプールだけ】だ」

樹里「他のどこに脱出するってんだよ?」

愛依「もしかしてまた≪隠し通路的≫な?!」

愛依「どっかの女子トイレにつながる道があったりして!」

甘奈「ま、また女子トイレなんだ……」

あさひ「プールに制服で入るのは校則違反なんで……」

あさひ「犯人は≪水着だった≫のかもしれないっす!」

あさひ「返り血も洗い流せて一石二鳥っすよ」

甜花「スクール水着の殺人犯……」

甜花「にへへ、どことなく同人ゲームっぽい……」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破か正しい発言に同意しろ!】

↓1
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 21:19:24.20 ID:PTTiaO4X0
【体育館の窓】>【窓から繋がってるのはプールだけ】
843 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 21:26:48.78 ID:6YaMnVE80

にちか「それは違くないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「灯織ちゃん、あの窓から外を見た時……何が見えたか言ってもらってもいい?」

灯織「え? えっと確か……プール、と……」

灯織「……向かいの体育館の窓?」

円香「それってつまり、体育館とプールを挟んで向かい合っていると言うことですか?」

真乃「はい……! 実はシャワールームの窓と体育館の窓は丁度同じくらいの高さ……ちょっとシャワールームの方が気持ち高めくらいなんです……っ」

にちか「今までの話ではプールしか出てきませんでしたけど、あの窓から届いたのは体育館の窓も同じ!」

にちか「プールに着水することはできずとも、窓から窓に経由して脱出すること自体は可能だったはずです!」


【甜花「その推理はハードモード……!」】反論!


---------------------------------------------
844 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 21:35:08.19 ID:6YaMnVE80

甜花「あ、あれ……おかしいな……甜花が、聞き間違えちゃったのかな……」

甜花「犯人が窓から窓に脱出って言ったので……合ってる……?」

にちか「は、はい……そうですけど……」

甜花「えと……それって変じゃない……?」

甜花「ご、ごめんね……その推理は多分、間違ってると思うから……」

甜花「甜花と対戦……よろしくお願いしましゅ!」
---------------------------------------------
【反論ショーダウン・真打開始!】
コトノハ
‣【シャワールームの窓】
‣【体育館の窓】
‣【ワイヤー】
‣【プールの利用規則】

甜花「事件現場のシャワールーム……」

甜花「その窓は開いてたけど脱出に使うのは難しいんじゃないかな……」

甜花「プールは制服じゃ入れないし……」

甜花「結構窓は高さあるから……」

甜花「スペランカーじゃなくても大怪我しちゃう……!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【発展!】

にちか「確かに高さこそありますけど……」

にちか「犯人には安全に脱出する方法があったはずです!」

にちか「体育館を経由する方法が!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

甜花「それなんだけど、おかしいよね……?」

甜花「だって、シャワールームと体育館の両方の窓の間には」

甜花「結構距離ある……よ?」

甜花「犯人は【その間を飛び越えた】の……?」

甜花「並の運動神経じゃできない……」

甜花「普通の人には不可能じゃない……?」


↓1
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 21:42:01.19 ID:PTTiaO4X0
【ワイヤー】>【その間を飛び越えた】
846 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 21:52:31.31 ID:6YaMnVE80

にちか「その言葉切っちゃいます!」

【BREAK!】

にちか「窓と窓の間には大きな距離が空いている! だから犯人は脱出には使えない! そう仰いたいわけですね?」

甜花「は、はい……その通りでしゅ……!」

にちか「なら、その間を繋ぐ何かがあれば解決! これを見てください!」

透「うおー、デカ太ワイヤー」

モノクマ「え?! そのワイヤーがなんだって?! 浅倉さん、なんだって?!」

透「デカくて……ぶっといね」

モノクマ「その調子でもう一回行ってみようか!」

透「デカくて……ぶっっっとい」

円香「……」

(……最悪すぎる)
847 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 21:53:32.31 ID:6YaMnVE80

甘奈「人一人を支えられるぐらいには丈夫そうなワイヤーだね」

にちか「ですです、こんだけゴン太なものがあれば、二つの窓を繋ぐことだって出来たと思うんです」

恋鐘「ん〜……? そんワイヤーって体育館に落ちとったもんなんやったよね?」

恋鐘「だったら、あくまでこいは体育館の設備であって……逃走に使うかどうかはまた別の話になるんじゃなか?」

あさひ「にちかちゃん、このワイヤーが犯人の逃走に使われた証拠……残ってないんっすか?」

(犯人がワイヤーを使って逃走した証拠か……)

(それは現場に残されていたあの痕跡のことだ……)

【正しいコトダマを選べ!】

>>815>>817
↓1
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 21:56:54.85 ID:PTTiaO4X0
【シャワールームの窓のフレーム】
849 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 22:03:45.35 ID:6YaMnVE80

にちか「これだー!」

【解!】

にちか「シャワールームの窓のサッシ。その柱の部分に引っ掻き傷みたいなのがついてたんです」

真乃「紐状のものを括り付けたみたいな傷で、このワイヤーなら条件を満たすと思います……っ!」

凛世「他に現場に条件を満たすようなものは見当たりません……」

凛世「ワイヤーを使ったと言うのは納得はできます、しかし……」

愛依「マジな話そのワイヤーでどうやって脱出すんの?」

(……へ?)

樹里「ワイヤーを二つの窓に通すだけじゃ脱出なんてできない。まさか綱渡をしたわけじゃないだろうしな」

恋鐘「万が一にでも落ちたら大怪我をしてしまうばい!」

円香「まさかそんなリスキーな真似をするわけはないでしょうし……ワイヤーは一つの要素に過ぎないのでは?」

円香「何か大掛かりな仕掛けの、舞台装置の一つ」

(大掛かりな仕掛け……か)

(あの二つの窓は少し傾斜がついた位置関係になっている。そこにワイヤーを通したとして……)

(どうやったら二つの窓を移動することができるのかな……?)

---------------------------------------------
【ひらめきアナグラム開始!】


プッンイジラ


【正しい順番に並べ替えろ!】

↓1
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 22:10:29.26 ID:S387JLNz0
ジップライン
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 22:10:51.90 ID:PTTiaO4X0
ジップライン
852 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 22:13:51.18 ID:6YaMnVE80

にちか「そうか、分かりましたよ!」

【COMPLETE!】

にちか「閃いた、閃いちゃいましたよ! 二つの窓を利用して、移動した方法!」

愛依「ま、マジで?! にちかちゃん、すご! ひらめきの天才じゃん!」

甘奈「教えて! どうやってワイヤーを活用して移動するの?」

にちか「ジップラインですよ!」

樹里「ジップ……な、なんだ?」

透「あー、体にくくりつけるターザンロープみたいな」

にちか「ですです! ロープウェイと似た仕組みではあるんですけど……斜めったワイヤーの上を滑車とかの装置のついた別のワイヤーで体をくくりつけることで滑る仕組みなんです」

恋鐘「うちん地元の遊園地にばり大きかジップラインがあるとよ! 園の池の上を滑るのは気持ちよかね〜」

あさひ「にちかちゃん、それはおかしいっすよね? ジップラインの要領で脱出したって言うのなら……」

あさひ「ワイヤーを滑り落ちるための使った道具もないと成立しないっすよ」

あさひ「にちかちゃんはそれも見つけてるんっすか?」

にちか「……あるよ」

(犯人がワイヤーを滑り落ちる時に使った道具……)

(それはきっとアレのことだ……!)

【正しいコトダマを選べ!】

>>815>>817

↓1
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/07(木) 22:17:19.02 ID:S387JLNz0
【折れ曲がったホッケースティック】
854 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 22:23:08.72 ID:6YaMnVE80

にちか「これだー!」

【解!】

にちか「ワイヤーと同じで体育館に落ちていたんですけど、このホッケースティックに心当たりがある人はいますか?」

透「ホッケー? それってあれじゃないの」

透「ホンジャマカ」

樹里「それはエアホッケーだ。てか世代でもないだろ」

灯織「もともとスポーツとしてのホッケーはこのようなスティックでパックを弾いて相手のゴールに入れるスポーツなんです」

灯織「ハンドボールやサッカーのようなルールをイメージすると分かりやすいと思います」

霧子「でもそのスティックは折れ曲がってるから使えそうにないね……」

甜花「それを使って脱出、するの……?」

愛依「そっか! 誰かにスティックで打って飛ばしてもらったんだ!」

モノスケ「どこのど根性野球やねん!」

モノスケ「はっ、つい雑なボケに関西の血が騒いで差し出がましく突っ込んでしもうたで!」

真乃「このスティックが半分になってることに意味があるんだね……?」

にちか「うん、そうなんだ。ちょうどこの俺曲がってるところにワイヤーを掛けると……ほら!」

樹里「なるほど、両端を掴んで滑り落ちることができるわけか!」

甜花「あっ! パラセーリングみたいな形……!」


855 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 22:25:16.24 ID:6YaMnVE80

にちか「犯人はこの方法でシャワールームから脱出した後、ワイヤーとスティックを体育館に投げ込んでプールを経由して外に出たんじゃないですかね!」

あさひ「ふーん……現場の証拠からしてもその方法で脱出したのは間違いなさそうっすね」

あさひ「それじゃあみんなで透ちゃんに投票するっすよ! モノクマ、投票タイムでお願いっす!」

(……えっ?!)

モノクマ「あいさー! それではオマエラ、お手元のスイッチで______」

樹里「ちょ、ちょ、ちょっと待て! 何勝手に進めてんだ!」

あさひ「勝手って……なんっすか?」

モノクマ「おや? まだ投票タイムには行かないの?」

樹里「行かねえ! ちょっと黙って見てろ!」

モノクマ「はーい! 分かりましたー!」

モノタロウ「びっくりした……もう裁判が終わっちゃうのかと思ったよ!」

モノファニー「こんなに早く終わられたら時間外手当が出ないから困るわ!」

モノスケ「表を開いたり閉じたりして時間を稼いで定時をはみ出さんとな!」

モノダム「裁判ハ真面目ニオ願イネ」

あさひ「えー、これ以上の議論は無駄っすよ? だって、他のみんなにはアリバイがあって、この脱出方法は円香ちゃんには不可能っす」

あさひ「そうなると透ちゃんしか候補はいなくなるっすよ」

透「うおー、私か」

円香「ちょっと、まともに反論しなよ」

透「あー、えー……ヤバ。思いつかん」

円香「……はぁ」

恋鐘「ばってん、あさひの言う通りかもしれんたい……実際、他のみんなにはこんなトリックやる余裕がなかよね?」

霧子「体育館に来ていたみんなはお互いを見合っているから……お互いにアリバイの証人だもんね……」

(消去法で考えると浅倉さんがどうしても候補になってしまう……)

(でも、本当にそれでいいの……?)

透「……殺してないよ、私は」

(浅倉さんが、二人を……?)

856 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/07(木) 22:26:20.67 ID:6YaMnVE80
------------------------------------------------

【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【円香の証言】
‣【シャワールームの窓】
‣【AVルーム裏口の扉】
‣【事件の経緯】

あさひ「体育館に集まっていたみんな」

あさひ「AVルームに拘束されていた二人」

あさひ「才能研究教室の前にいた円香ちゃん」

あさひ「透ちゃん以外にはジップラインでの【脱出はできない】っすよ!」

霧子「透ちゃん……事件当時のアリバイはないのかな……?」

透「【寄宿舎で寝てた】から……」

透「証人になってくれるのは、ハワイ出身のトゲトゲ力士ぐらい?」

凛世「にほんごであそぶ夢をご覧になられていたのですか……?」

甘奈「寄宿舎で寝てたなんて、【アリバイを証明することはできない】もんね……」

甘奈「やっぱり、透ちゃんが犯人になっちゃうのかな」

円香「真面目に反論しなよ」

透「あー、えっと」

透「潔白です」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/08(金) 19:28:55.64 ID:Rbl5Sqfi0
【円香の証言】>【アリバイを証明することはできない】
858 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 21:00:37.13 ID:0qDC1rLb0

にちか「それは違くないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「浅倉さんのアリバイ……証明できるかもしれません」

透「え、マジ?」

にちか「浅倉さん、しっかりしてくださいよ! あなたは昨日の夜は徹夜で樋口さんの才能研究教室を見張ってたんですよね?」

愛依「え、そうなん? 大丈夫? 今眠くないん?」

透「ギリ耐えてる」

霧子「ギリギリではあるんだね……」

甜花「あれ……? でも、事件の時見張りについてたのは樋口さんだったよね……?」

にちか「そう、浅倉さんと樋口さんは事件の前に入れ替わっているんです。しかも、直接浅倉さんが樋口さんの個室を訪れる形で」

円香「だったね。……ったく、呼ばれなくても私が自分で行ったのに」

透「眠気が限界だったから。ごめんて」

にちか「その際のことを樋口さんはこう証言しているんです」

にちか「浅倉さんが個室に入るのを確認してから3階に向かったって」

にちか「これって浅倉さんの証言の裏付けになりませんか?」
859 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 21:01:41.15 ID:0qDC1rLb0

真乃「円香ちゃん、それっていつ頃のことだったかはわかる?」

円香「朝の6時……だったはず」

霧子「アナウンスの2時間前……事件が起きる2時間前だね」

にちか「朝の8時にはみんな体育館に集まっていましたし、それまでの間に浅倉さんの姿を見ていない人がいないのなら部屋で寝ていたと言う証言の信憑性はかなり強くなると思います!」

愛依「うーん……これって、どうなん……?」

あさひ「弱いっすね!」

にちか「えっ……?」

あさひ「透ちゃんの寝顔をずっと事件の瞬間まで見守ってたとかならまだしも、個室に入る姿を見たってだけっすよね?」

あさひ「円香ちゃんが才能研究教室に行った後すぐに透ちゃんが個室を出た可能性もあるじゃないっすか」

にちか「……うぐっ!」

円香「浅倉は本気で眠そうだった。嘘はついてないと思うけど」

あさひ「そんなの主観っすよ、信頼のできる証言とは言えないっすね!」

(くっ……どうなんだ……今の樋口さんの証言じゃ証明するには足りないのか……)

透「ふわぁ……」

(それとも、浅倉さんは本当に……?)

透「ねみー」

(あー、もう! 人が必死になって考えてるのに何あの人?!)
860 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 21:02:45.53 ID:0qDC1rLb0

灯織「にちか、落ち着いて」

にちか「灯織ちゃん……?」

灯織「浅倉さんのアリバイは確かに不完全だと思う。だったら視点を切り替えて見たらどう?」

にちか「視点を……? それってどう言う意味?」

灯織「例えば……今の樋口さんの証言で……何か浮上した可能性はない?」

(新しい……可能性……?)

真乃「にちかちゃんは透ちゃんを信じたいと思ったから、円香ちゃんの証言を持ってきたんだよね……?」

真乃「だったら、その気持ちに応える何かが……その証言にはあったんだよ……っ!」

(樋口さんの証言で浮上する新しい可能性か……)

(考えろ……考えるんだ……!)

(その可能性が、私たちの活路を開く手掛かりになる……!)
861 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 21:03:55.00 ID:0qDC1rLb0
---------------------------------------------
【検討プロセッシング開始!】

樋口さんは事件が起きる前、自分の才能研究教室が開放されてからずっと見張りについていた。
そこには何かのっぴきならぬ事情があるんだろうけど、今はそれは置いとこう。
とにかく、今重要なのはその見張りのせいで浅倉さんと樋口さんのアリバイが宙に浮いていると言うこと。
この二人は単独行動をしていたのでアリバイを証明するのは難しいだろう。
それなら、さっきの樋口さんの証言で生まれる可能性を提示するんだ……!

樋口さんの証言が出る以前から樋口さんと浅倉さんが交代交代で見張りを代わっていたのはみんな知っていたところ。
もしかすると、その交代の隙をついて犯行に利用することは可能だったかもしれない……

今回二人の交代は朝6時に浅倉さんが直接樋口さんの部屋を訪れることで行われた。
この交代で重要なのはどのポイントだろう?

・朝6時以前は透が監視をしていたこと
・透が円香の部屋を直接訪れたこと
・朝6時以降は円香が監視をしていたこと

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/08(金) 21:19:57.48 ID:Rbl5Sqfi0
透が円香の部屋を直接訪れたこと
863 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 21:23:26.31 ID:0qDC1rLb0
------------------------------------------------
・透が円香の部屋を直接訪れたこと
------------------------------------------------

【CORRECT!】

そう。この交代は樋口さんと浅倉さんが直接寄宿舎で顔を合わせて行なったんだ。
つまりその瞬間、学校の校舎内には二人の姿はなかったことになる。
これこそが犯人にとっては重要な『隙』になるんだ。
じゃあこの『隙』を犯人はなんのために利用したんだろう……?

・誰にも見つからずに犯行現場に向かうため
・円香の才能研究教室に忍び込むため
・誰にも見つからずに犯行現場から脱出するため
・透を襲撃するため

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/08(金) 21:31:52.12 ID:Rbl5Sqfi0
円香の才能研究教室に忍び込むため
865 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 21:51:53.45 ID:0qDC1rLb0

うーん……樋口さんの才能研究教室に忍び込むため、なのかな……?
事件自体にこの部屋が関与しているかどうかは不透明だし、何より忍びこんだ後には出ていくのに都合が悪すぎる。
見張りには今度は樋口さんが経っているんだから、犯人は逃走は勿論反抗も不可能になっちゃうよ……!



そう。この交代は樋口さんと浅倉さんが直接寄宿舎で顔を合わせて行なったんだ。
つまりその瞬間、学校の校舎内には二人の姿はなかったことになる。
これこそが犯人にとっては重要な『隙』になるんだ。
じゃあこの『隙』を犯人はなんのために利用したんだろう……?

・誰にも見つからずに犯行現場に向かうため
・円香の才能研究教室に忍び込むため
・誰にも見つからずに犯行現場から脱出するため
・透を襲撃するため

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/08(金) 21:56:14.67 ID:Rbl5Sqfi0
誰にも見つからずに犯行現場に向かうため
867 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 21:59:29.28 ID:0qDC1rLb0

【CORRECT!】

3階に上がるまでのルートは一通りしかない。
うっかり交代の最中にそのルートを歩いてしまうと樋口さんか浅倉さんに目撃されちゃうんだ。
二人の交代のタイミングを把握していたのだとしたら、それを意図的に狙って3階に身を潜めた可能性がある!
あとはめぐるちゃんが準備のためにやってくるのを待っていれば、その場で襲えばいいんだ!

樋口さんの証言は、【交代のタイミングで誰かが犯行現場に忍び込んだ可能性】を提示していたんだ……!

【FORGING!】
【円香の証言】→【円香と透の交代】
〔円香の才能研究教室の監視は事件当日は透が朝6時に直接円香の個室を訪れることで交代した。犯人は校舎内に誰もいなくなった隙を見計らって犯行現場の一つであるめぐるの才能研究教室に忍び込んだ可能性がある〕

---------------------------------------------
868 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:01:20.53 ID:0qDC1rLb0

にちか「見えた……見えましたよ! 樋口さんの証言によって明らかになった隙が!」

円香「隙……?」

にちか「浅倉さんと樋口さんは、寄宿舎の相方の部屋に直接行って交代を行なっています。つまり、そのタイミングのわずかな時間なら3階から人がいなくなるんですよね」

にちか「その隙に3階まで上がれば、樋口さんに見つかることなく犯行現場に忍び込むことが可能になるんです!」

恋鐘「えーっと……?」

真乃「3階に上がるまでの道は一通りしかないので、交代のタイミングを測り損ねるとその道中で入れ替わる二人に出会してしまう可能性があるんです……っ」

真乃「円香ちゃんの才能研究教室か、寄宿舎に向かっているか。そのどちらかでルート上を歩いている二人に不審な動きをしているのを見つかっちゃうんです」

円香「私と浅倉が交代するタイミングは基本的にいつもこの時間、朝の6時にしてたから」

円香「私たちのことをずっと観察していた人間ならそれを加味して計画することは可能かもね」

あさひ「むー、そのことにもっと早く気づいてたら円香ちゃんの才能研究教室に忍び込めたのにな〜」

凛世「つまり、犯人は灯織さんと甜花さんを襲って監禁した後……」

凛世「円香さんと透さんが入れ替わる隙をついてめぐるさんの才能研究教室に身を隠したということでございますか……?」

にちか「はい、そうだと思います!」
869 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:02:49.01 ID:0qDC1rLb0

灯織「めぐるが準備のために才能研究教室に向かうことは容易に想像できたはずなので、そこで犯人はめぐるがやってくるのを狙いすましたんでしょうね」

恋鐘「めぐるが部屋に入ってきたのを狙ってごちーんとやったばい?」

甘奈「えっと……多分犯人がその場でやったのは意識を奪うことぐらいじゃないかな」

甘奈「ほらだって、めぐるちゃんの死亡推定時刻は午前8時でしょ?」

樹里「そういえばそうだったよな……なんで犯人はその場で殺さなかったんだ?」

(犯人の狙いはきっと……多分そういうことなんだと思う)

・めぐるを殺すのにてこずったため
・犯行をリアルタイムで起こすため
・手ごろな凶器が見つからなかったため

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/08(金) 22:06:22.84 ID:Rbl5Sqfi0
犯行をリアルタイムで起こすため
871 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:16:38.85 ID:0qDC1rLb0

にちか「これだ!」

【解!】

にちか「犯行をリアルタイムで起こすため、じゃないでしょうか?」

樹里「リアルタイムで……?」

にちか「実際今回の事件は私たちの行動の先をいくように展開して、めぐるちゃんと有栖川さんの命が順番に奪われました」

にちか「多分犯人には、この現在進行形で事件が展開する仕組みが重要だったのではないか……とそう考えられます!」

愛依「でも、そんなことしてなんになんの? むしろ犯人にとってはマイナスじゃね?」

愛依「ほら、だってうちらの目の前で事件が進んじゃってるせいでアリバイのない人が絞られちゃってバレやすくなってるんじゃん」

にちか「だったら、逆なんですよ」

愛依「ギャク……?」

にちか「アリバイのない人を絞ることで、その人に罪をなすりつけようとした……その可能性もあるんじゃないですか?!」

透「そのターゲットがうちらってこと?」

円香「単独行動をしがちだったし、標的には最適かもね」
872 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:17:56.04 ID:0qDC1rLb0

あさひ「うーん、面白い推理っすけど……それはちょっと難しいかもしれないっすね」

あさひ「今回の事件、被害者はどっちも撲殺されてるっす。しかもその凶器は手に持つタイプのもので、どちらも判明している」

あさひ「犯人がその場にいないとできない犯行っすよね?」

(……そうだ。アリバイがない二人が容疑者になっている大きな原因はそこなんだ)

(撲殺という特性上、絶対に犯人がその場にいないと命を奪うことはできない)

(トリックでどうこうできるものじゃないんだよね……)

あさひ「やっぱり、この問題がある以上はアリバイのない二人。中でも死体発見のタイミングで来るのが遅かった透ちゃんが犯人で確定するっすね!」

透「うげー、またこうなんの」



真乃「にちかちゃん……諦めないで!」



にちか「真乃ちゃん?」
873 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:18:50.87 ID:0qDC1rLb0

真乃「にちかちゃんが正しいと思って進んだ道なんだよね? だったら私もそれを信じてついていくよ……っ!」

真乃「まだ先が見えない道でも、進み続ければ見える景色があるかもしれないよ……」

真乃「先が見えないと思っているだけで、本当は見えているのかもしれないし……」

(本当は、見えている……?)

(……)

(もしかして、前提を覆すってこと……?)

(でも、それって……)

真乃「……」

灯織「……」

(……いや、悩むな。一度進むと決めた以上は突き進み続けるんだ!)
874 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:21:34.30 ID:0qDC1rLb0
---------------------------------------------
【偽証ミスディレクション開始!】

コトダマ
‣【事件の経緯】
【シャワールームの窓】
‣【モノクマファイル2】
‣【灯織と甜花の拘束】

あさひ「犯人が被害者を撲殺するには」

あさひ「現場で直接【殴りつける以外の方法はない】っすよ」

あさひ「つまりこの事件においてアリバイは絶対なんっすよ!」

真乃「体育館に集まっていたのは」

真乃「私、にちかちゃん、恋鐘ちゃん、霧子ちゃん」

真乃「樹里ちゃん、凛世ちゃん、甘奈ちゃん、あさひちゃん、愛依ちゃん」

真乃「この8人には【動かぬアリバイ】があります……!」

灯織「その頃私と甜花さんはAVルームで拘束されていたので」

灯織「私たちにも【犯行は不可能】ですね」

円香「私は自分の才能研究教室の前にいたし」

透「私は部屋で寝てた」

あさひ「ちゃんとしたアリバイがないのは【円香ちゃんと透ちゃんだけ】!」

あさひ「状況証拠からしても」

あさひ「やっぱり透ちゃんが犯人っすね!」

【嘘のコトダマで議論の流れを捻じ曲げろ!】

↓1
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/08(金) 22:32:46.88 ID:Rbl5Sqfi0
【事件の経緯】>【動かぬアリバイ】
876 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:46:43.95 ID:0qDC1rLb0

(だ、ダメ……事件の流れ自体は既に議論の流れで確認をしている……)

(ここに嘘をついても、すぐに露呈しちゃうよ……!)

(まだ議論に昇ってない情報で、私の口先でゆがめられるものは何かないか……!?)

---------------------------------------------
【偽証ミスディレクション開始!】
コトダマ
‣【事件の経緯】
【シャワールームの窓】
‣【モノクマファイル2】
‣【灯織と甜花の拘束】

あさひ「犯人が被害者を撲殺するには」

あさひ「現場で直接【殴りつける以外の方法はない】っすよ」

あさひ「つまりこの事件においてアリバイは絶対なんっすよ!」

真乃「体育館に集まっていたのは」

真乃「私、にちかちゃん、恋鐘ちゃん、霧子ちゃん」

真乃「樹里ちゃん、凛世ちゃん、甘奈ちゃん、あさひちゃん、愛依ちゃん」

真乃「この8人には【動かぬアリバイ】があります……!」

灯織「その頃私と甜花さんはAVルームで拘束されていたので」

灯織「私たちにも【犯行は不可能】ですね」

円香「私は自分の才能研究教室の前にいたし」

透「私は部屋で寝てた」

あさひ「ちゃんとしたアリバイがないのは【円香ちゃんと透ちゃんだけ】!」

あさひ「状況証拠からしても」

あさひ「やっぱり透ちゃんが犯人っすね!」

【嘘のコトダマで議論の流れを捻じ曲げろ!】

↓1
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/08(金) 22:53:50.49 ID:Rbl5Sqfi0
【灯織と甜花の拘束】>【犯行は不可能】
878 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/08(金) 22:58:59.89 ID:0qDC1rLb0

偽証成功で本日はここまで。
ペナルティもないのでがんがん答えてくれて大丈夫です。
明日は同じ時間の更新は厳しいと思うので、明後日以降になると思います。
それではお疲れさまでした…
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/09(土) 10:21:25.07 ID:QD71TcMb0
全然更新されてなかったからエタったのかと勝手に残念に思ってたけど更新再開されてて嬉しくなった
確認頻度が落ちてて再開に気づくのが遅れたのを不覚に思う
完結まで続けてくださるみたいだし楽しみに応援してます、めっちゃ
880 :励みになります、ありがとうございます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:16:30.50 ID:NNx5t+Fh0

にちか「この嘘は、前に進むためのもの」偽証!

【BREAK!】

(ごめん……灯織ちゃん)

(私もこの嘘でどんな未来が開けるのかはわからないんだ)

(でも、今はこのアリバイに誘導されているような気がする……それを打破するために、今一度私は)

(あなたのことを裏切るよ……!)

にちか「あの……愛依さん、灯織ちゃんと甜花さんを発見した時のことなんですけど」

愛依「え? どしたん、急に」

にちか「あの二人の拘束のされ方……なんだか変な結び方をされてませんでした?」

灯織「……え?」

甜花「へ……?」

愛依「え、いやぁ〜……どうだったっけ? あんまちゃんと覚えてないけど……」
881 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:18:00.93 ID:NNx5t+Fh0
にちか「私、実は前に本で読んだことがあるんです。マジシャンが縄抜けのマジックとかに使うやり方なんですけど……スリップノットっていうのを利用した結び方なんです」

にちか「ほら、縄跳びを縛ったり、スーパーで氷を持って帰る時とかに使う一方向に引っ張ったら解ける結び方ですよ」

愛依「うーん……そんなだった、ような……」

にちか「だったんですよ! 二人の手足の結び方って!」

樹里「ちょ、ちょっと待て! 急になんだよ!」

にちか「おかしいなってずっと思ってたんです……アリバイがみんなあまりにもちゃんと成立しすぎてるって」

にちか「まるで樋口さんと浅倉さんに疑いが向くように誘導されているような……そこで思い返してみたら、灯織ちゃんと甜花さんの拘束に違和感を覚えたことを思い出したんです」

灯織「……にちか」

(ごめん、灯織ちゃん……本気で私もあなたが犯人だと思ってるわけじゃない)

(けど、ここは推し進む……!)

にちか「あの二人のアリバイは完全ではないんです。私たちは監禁されていたという事実だけに目を奪われて、あの二人のアリバイが成立していると思い込んでいたけど」

にちか「それは不十分! あの二人は自力で脱出可能だったんですから!」
882 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:18:44.54 ID:NNx5t+Fh0

透「ってことは……あの二人が、めぐるちゃんを殴り殺した後に自分で自分を縛り直した」

透「そういうこと?」

甘奈「そ、そんなの……あり得ないよ! 甜花ちゃんが誰かを殺すはずない!」

にちか「あの二人、あるいはその一方の校則が狂言だった可能性はあると思います」

にちか「私たちがめぐるちゃんの死体を見つけてから二人を地下で見つけるまでにはそれなりに時間がありましたし」

にちか「シャワールームから脱出してその足でAVルームに向かった可能性もあります!」

甘奈「そ、そんなのただの推測だよね……?!」

にちか「確かにこれは一つの可能性です。でも、この可能性を後押しする証言もあるんだよ」

甘奈「しょ、証言……?」

(拘束のやり方自体は真っ赤な嘘だけど……あの監禁に違和感を感じたこと自体は本当だ)

(あの人のあの証言が……ずっと気になってるんだよね)

---------------------------------------------

【怪しい人物を指摘しろ!】

↓1
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/10(日) 21:37:18.95 ID:oK/Dq/QG0
愛依
884 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:39:29.42 ID:NNx5t+Fh0

にちか「お前だー!」

【解!】

にちか「愛依さん、二人を発見した時のことをもう一度証言してもらってもいいですか?」

愛依「え? う、うち……? や、でもどんなふうに縛られてたかはやっぱあんま覚えてなくて……」

にちか「いや、そこじゃなくて今度はどうして二人を見つけられたのか……です!」

樹里「え? 何か手掛かりがあって愛依は二人を発見したのか?」

愛依「……あー! あれのこと!? 扉が閉まる音じゃんね?!」

甜花「と、扉が閉まる音……?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

にちか「愛依さんが発見した時のことを聞かせてもらってもいいですか?」

愛依「うん……まず、うちが丁度地下に降りたタイミングでガララララ……パタンって扉が閉じる音が聞こえてきたの」

灯織「音……ですか?」

真乃「灯織ちゃんは聞いてなかったの?」

甜花「甜花も風野さんも耳栓をさせられてたから、何も聞くことはできなかったんだ……」

愛依「だから誰かいんのかなって思ってゲームルームを覗いたの」

愛依「ほら、図書室はどっちの扉も引き戸だけど、ゲームルームはスライドドアだからさ」

にちか「なるほど……」

愛依「でも、ゲームルームには誰もいなくて……で、よく見たらAVルームの扉もスライドドアだったんだよね!」

愛依「だから誰かが逃げ込んだのかなと思って急いでAVルームを覗いたわけ!」

愛依「したら二人が縛られてたからヤバい焦ったよね! スグに大きな声をだしてにちかちゃん呼んでさ〜!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

愛依「そーそー! うちが地下にちょうど降りたタイミングでガララララ……パタン!って扉の音がしたの!」

円香「その音からして、スライド式の扉みたいですね」

恋鐘「地下にある教室でスライド式の扉なのは図書室じゃなくてゲームルームの方ばい!」

愛依「うん、だからうちはゲームルーム、AVルームって覗いて二人を発見できたわけ!」

愛依「でも……これのどこが気になんの?」

(愛依さんの証言で気になるのは……ここだ)

---------------------------------------------

【スポットセレクト】

・覗き込む部屋がおかしい
・灯織たちが音を聞いてないのがおかしい
・そもそも音が聞こえるのがおかしい

【怪しい点を指摘しろ!】

↓1
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/10(日) 21:42:03.52 ID:oK/Dq/QG0
そもそも音が聞こえるのがおかしい
886 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:44:32.61 ID:NNx5t+Fh0

にちか「これだ!」

【解!】

にちか「私が気になってるのは、どうして愛依さんがその音を聞くことができたのか……です」

愛依「え?! いや、うちなんもしてないよ?! マジでただ地下に降りただけで……」

にちか「あ、言い方が悪かったんですけど……もし二人の拘束が本当なんだとしたらそもそも扉が閉まる音なんかしようがなくないです?」

にちか「だって愛依さんが降りてくるより【ずっと前から二人は捕まってた】はずなんですから」

真乃「た、たしかに……! 犯人が閉じ込めるにしても、扉の開け閉めはとっくの前に終わってるはずだよね……っ!」

恋鐘「ふ、二人ともどがんね?! そい音については何かわからんと?!」

灯織「いえ、すみません……私も甜花さんもアイマスクに耳栓をされていたのでその音も聞いていないんです」

甜花「う、うん……知らない……」

あさひ「ま、そういうしかないっすよね」


あさひ「たとえ自分がその音を立てた狂言監禁の犯人だとしても」


887 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:45:33.70 ID:NNx5t+Fh0

樹里「そうか……愛依が聞いた扉の音ってのは犯人がAVルームに逃げ込んだ音だった可能性があんのか……!」

甘奈「ちょ、ちょっと待ってよ! そんな扉の音だけで甜花ちゃんをクロにするつもりなの?!」

甘奈「愛依ちゃんしかその音は聞いてないんだよね?!」

愛依「うちも……なんか自信無くなってきたわ。ちゃんと聞いたと思ってたんだけど……うちの証言にそんなに責任がのしかかってくると……」

灯織「……」

(灯織ちゃん……ごめんね、またしても容疑をなすりつけるような真似をして)



灯織「にちか、気にしないで」



(え……?)
888 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:46:51.29 ID:NNx5t+Fh0

灯織「私は気づいてるよ。あなたがこの議論にもつれ込むまでにしてた表情の変化に」

灯織「悩んだ末の苦渋の決断だったんだよね?」

灯織「大丈夫。私はにちかのことを信じてるから、今は真実に辿り着くための道程なんでしょ?」

灯織「だったら私は声を荒げたりしない。にちかの進もうとする道を私もついていく」

灯織「一緒に戦うよ」

(灯織ちゃん……!)

(……心強いな)

(一人じゃなくて、一緒に戦ってくれる存在がいるってわかっただけでこんなにも気持ちが楽になるんだ)

(これを思うと、ルカさんの裁判の時がどれほど辛いものだったか……)

(大丈夫、いける……! 私たちなら真実にきっと辿り着ける……!)

889 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:49:27.79 ID:NNx5t+Fh0

真乃「地下のAVルームで監禁されていた二人のアリバイは不十分だった可能性があります……」

真乃「お互いに目隠しと耳栓をしていたので、体育館にいた人たちと違って相互の見張りも成立しません……っ!」

愛依「キーになってんのはうちが聞いた扉の音……」

愛依「あれは二人のどっちかがAVルームに逃げ込む音だったっぽいんだよね」

甜花「あ、あうぅ……そんなの、知らないのに……」

灯織「私も心当たりがないと証言しておきます」

あさひ「本来ならアリバイがないのは透ちゃんだけだったっすけどにちかちゃんの主張で二人のアリバイが揺らいだ今」

あさひ「容疑者はかなり増えたっすね!」

樹里「透と灯織と甜花……この3人か」

(灯織ちゃんは私を信頼して議論の流れに身を委ねてくれた……)

(だったら私は彼女のための突き進み続けるだけだ……!)

(ただ一つの真実に向けて……この歩みを止めるわけにはいかない……!)

透「しゃーない、反論しますか」

灯織「私ではありません! 私は本当に監禁されていただけなんです!」

甜花「て、甜花も違う……よ?」


透『アイム・イノセント』
灯織『私はやってません!』
甜花『甜花は……無実……!』

890 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:50:59.05 ID:NNx5t+Fh0
-------------------------------------------------
【パニック議論開始!】
コトダマ
‣【死体発見アナウンス】
‣【事件の経緯】
‣【円香と透の交代】
‣【気化麻酔】

透「寄宿舎の個室のベッドさ」
灯織「私は図書館に呼び出しを受けてから」
甜花「甜花はずっと捕まってたんだよ……?」

透「枕がちょっと低いんだよね」
灯織「背後から襲われて意識を失い」
甜花「三階に行くなんて、無理……!」

透「ほら、うちのやつもうちょい高いの」
灯織「ずっと拘束されたままだったんです」
甘奈「甜花ちゃんはめっちゃ優しいの」

透「そんで昨日倉庫から新しいの持ってきて」
霧子「愛依ちゃんの言う【扉の音も聞いてない】んだよね……?」
甘奈「甘奈が熱を出した時だって一生懸命看病してくれたし……」

透「したら寝れた。めっちゃ」
灯織「はい、私も甜花さんも耳栓をしていたので」
甘奈「そんな甜花ちゃんが【二人を殺すはずない】よ!」

透「だからずっと寝てた」
灯織「愛依さんとにちかが助けてくれるその時まで」
甜花「にへへ……なーちゃん、ありがと……」

樹里「いやだから透はちゃんと反論をしろよ?!」
灯織「私は【なんの物音も聞いてない】んです」
甜花「甜花は清廉潔白……!」

【正しいコトダマで正しい発言に同意しろ!】

↓1
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/10(日) 21:55:14.07 ID:oK/Dq/QG0
【死体発見アナウンス】>【二人を[ピーーー]はずない】
892 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:58:40.93 ID:NNx5t+Fh0

にちか「それに賛成ですー!」同意!

【BREAK!】

にちか「今有力な容疑者に挙がっている3人……そのうちの一人は犯人候補から外してもいいかもしれません」

透「ナイス、にちかちゃん。信じてたよ」

にちか「……い、いや浅倉さんじゃなくて甜花さんなんですけど!」

甜花「て、甜花……?! や、やった……!」

真乃「にちかちゃん、他の二人と甜花ちゃんは何が違うの?」

にちか「甜花さんは二人と違って死体の第一発見者なんだよ」

にちか「思い出して欲しいんですけど、私たちが死体を発見した時にモノクマがアナウンスをしてるじゃないですか。あれって実は条件があるらしいんです」

愛依「ジョーケン……?」

にちか「殺害したクロを除いた生徒3人が死体を目撃すること。つまり死体発見アナウンスがなったタイミングで【現場に居合わせていた人たちは容疑者から外していい】んです」

真乃「確かに……夏葉さんの死体を最初に発見したのは甜花ちゃんだったね……!」

モノクマ「死体発見アナウンスはあくまでコロシアイの円滑な進行のためのシステムだから基本的に推理の一要素として組み込むのはよしとしてないんだけど……」

モノクマ「今回の事件は死体発見アナウンスが結構大きなピースになっているみたいだからね。ここはモノクマ、静観に徹します」
893 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 21:59:56.04 ID:NNx5t+Fh0

にちか「ちょうど私と真乃ちゃんが死体を見に行ったタイミングで死体発見アナウンスが鳴ったので、甜花さんを含めてちょうど三人」

にちか「他に名乗り出る人がいなければ甜花さんはシロだと見ていいと思います」


「……」


甘奈「やったね甜花ちゃん☆ これで無実が証明されたよ!」

甜花「にへへ……甜花、大勝利……!」

灯織「こうなると……残るのは私か浅倉さん……ですか」

(うぅ……どうして……)

(真実に近づこうともがけばもがくほど……灯織ちゃんの容疑が濃くなっていく……)
894 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:01:23.30 ID:NNx5t+Fh0

恋鐘「ずっと容疑者のまんまの透がうちにはどうしても怪しく映るばい……」

凛世「ですが……愛依さんが地下で聞いた音のことも気になります……」

樹里「アリバイはどっちも成立してるとは言い難いもんな……」

(……私には、まだ犯人はわからない)

(でも灯織ちゃんはクロじゃないって、そう思う。そう信じたい)

灯織「……」

(……この気持ちは、本物だ)

(誰かを信じるっていうのは、その人と一緒に歩んでいきたい。生きていたいって言う気持ちの現れ……)

(この学級裁判が自分たちの生を掴み取るための戦いだと言うのなら……)

(守りたいものを守らなきゃ、それは本当の意味で裁判で戦っているとは言えない……!)

895 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:02:44.91 ID:NNx5t+Fh0
------------------------------------------------
【偽証ミスディレクション開始!】

コトダマ
‣【死体発見アナウンス】
‣【事件の経緯】
‣【にちかの打ち身】
‣【円香と透の交代】

樹里「アリバイがないのは灯織と透」

樹里「クロになれるのはこの二人だけだ!」

甘奈「【甜花ちゃんは夏葉さんの死体を見つけてる】から」

甘奈「クロにはならないよ!」

あさひ「円香ちゃんと透ちゃんの見張りの交代があったのは【朝6時】」

あさひ「【その時を狙って】めぐるちゃんの才能研究教室に行って」

あさひ「やってきためぐるちゃんを襲ったんっすね!」

恋鐘「そいをやったんはどっちやろ?」

霧子「何か絞れる方法は……ないかな……?」

愛依「こうなったらいっせーのーでで投票しちゃう!?」

愛依「多数決で多かった方がクロってことで!」

樹里「そういうわけにもいかねーだろ……」

【嘘のコトダマで議論の流れを捻じ曲げろ!】

↓1
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/10(日) 22:12:12.55 ID:oK/Dq/QG0
【事件の経緯】>【その時を狙って】
897 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:16:46.60 ID:NNx5t+Fh0

あさひ「にちかちゃんたちは昨日の夜時間にめぐるちゃんと一緒に作業をしてたんっすよね?」

あさひ「だったら狙うタイミングは円香ちゃんと透ちゃんの見張りの交代のタイミングしか無くないっすか?」

(うっ……この事実自体は動かすことは出来なさそうだ……)

(どうにかして灯織ちゃんの容疑を晴らしたい……)

(何か、私たちと灯織ちゃんとの間だけで共有している情報で彼女を救えないかな……)

------------------------------------------------
【偽証ミスディレクション開始!】

コトダマ
‣【死体発見アナウンス】
‣【事件の経緯】
‣【にちかの打ち身】
‣【円香と透の交代】

樹里「アリバイがないのは灯織と透」

樹里「クロになれるのはこの二人だけだ!」

甘奈「【甜花ちゃんは夏葉さんの死体を見つけてる】から」

甘奈「クロにはならないよ!」

あさひ「円香ちゃんと透ちゃんの見張りの交代があったのは【朝6時】」

あさひ「【その時を狙って】めぐるちゃんの才能研究教室に行って」

あさひ「やってきためぐるちゃんを襲ったんっすね!」

恋鐘「そいをやったんはどっちやろ?」

霧子「何か絞れる方法は……ないかな……?」

愛依「こうなったらいっせーのーでで投票しちゃう!?」

愛依「多数決で多かった方がクロってことで!」

樹里「そういうわけにもいかねーだろ……」

【嘘のコトダマで議論の流れを捻じ曲げろ!】

↓1
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/10(日) 22:20:05.71 ID:oK/Dq/QG0
【にちかの打ち身】>【朝6時】
899 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:24:19.68 ID:NNx5t+Fh0

にちか「この嘘で、守ってみせる!」偽証!

【BREAK!】

私は真乃ちゃんに向かって目配せをした。
それに気づくと、真乃ちゃんも黙って頷いて見せた。
二人で思いは同じだ。私たちは灯織ちゃんの無実を信じてる。灯織ちゃんを守りたいと思っている。
だったら、やることはただ一つ。
この二人で真実に立ち向かってみせる。
私たちだけが持っている武器で、運命を切り開く。
灯織ちゃんを救えるのは、私たちだけなんだ……!

にちか「ここで一度、今回の犯人の足取りを振り返りたいんですけど……お付き合いいただいてもいいです?」

あさひ「……? 何考えてるっすか?」

樹里「そりゃ別にいいけど……どこからだ?」

真乃「はじめのはじめからです! 全てが起きる、その時から」

灯織「にちか、真乃……? 何を考えてるの……?」
900 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:26:15.31 ID:NNx5t+Fh0

甘奈「えっと……犯人が今回やったのは、灯織ちゃんと甜花ちゃんの監禁、めぐるちゃんと夏葉さんの殺害だよね?」

甘奈「犯人はまず、円香ちゃんと透ちゃんの交代のタイミングを狙ってめぐるちゃんの才能研究教室に行った……」

円香「浅倉が私の部屋に来たのが朝の6時。つまりそのタイミングで犯人が3階に行ったことになる」

円香「一応改めて証言しておくと、私はこの時に浅倉が自分の部屋に入るのを見ています」

にちか「ってことは……犯人がめぐるちゃんの才能研究教室に隠れたのも朝の6時ってことになりますよね?」

あさひ「そうっすね。そこしかタイミングはないっすから」

にちか「……おかしいですね、灯織ちゃんにその時間に忍び込むのは不可能なはずなんですけど」

灯織「……え?」

樹里「は、はあああああ?! 急に何言い出してんだ?!」

あさひ「にちかちゃん、どういうつもりっすか? ここまでにまだ出てない証拠や証言があるとでも言うつもりっすか?」

にちか「……うん、これを見て欲しいの」

そう言うと、私は自分の右腕を持ち上げて、他のみんなに見せつけた。

愛依「なっ……だ、大丈夫?! すごいアザになってんじゃん?!」
901 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:27:36.91 ID:NNx5t+Fh0

にちか「ああ、心配しなくて大丈夫です。ただの内出血なんで、見た目ほど酷い怪我ではないんで!」

にちか「でも、問題はこの【怪我をしちゃったタイミング】なんですよ」

真乃「ほわっ……に、にちかちゃん……その怪我、昨日おやすみなさいをした時にはなかったよね……?」

(ナイス、真乃ちゃん! その通り……!)

にちか「そうなんだ……この怪我をしたのは、今朝の出来事だから」

にちか「ほら、私ってルカさんの裁判の一件でかなり風野さんに嫌われちゃってたじゃないですか。なのに今朝、才囚学園体育祭をやるからその前に蟠りを解消したいって理由で詰め寄っちゃって」

にちか「その時に揉みくちゃになってできちゃった怪我なんですよねー」

灯織「……!」

にちか「それが確か朝の6時半ぐらいの出来事だったと思うんです」

(灯織ちゃんも甜花さんも図書室に呼び出された時の時間についてはまだ証言も証拠も出ていない……)

(というか実際、二人ともかなりあやふやな様子だった。多分ちゃんと把握はしてないんだ)

(それなら、めぐるちゃんの才能研究教室に忍び込んだ犯人の行動との前後関係は嘘である程度操作できる……!)
902 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:28:59.99 ID:NNx5t+Fh0

円香「ちょっと、急に何? 今までそんな話一度もしてなかったでしょ」

にちか「いやすみません……前回の裁判のことがあるのに、自分の身もわきまえない行動をしちゃったことをあんまり言いたくなくて……」

樹里「灯織、今のにちかの話は本当なのか?」

灯織「……えっと」

にちか「灯織ちゃん……!」

灯織「……」




灯織「……は、はい」



903 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:30:33.67 ID:NNx5t+Fh0

愛依「マ、マジなん……?! せめてどっちかだけでも証言してくれてたら、こんなに悩む必要もなかったのに……!」

灯織「……すみません、私の手で怪我をさせたと言うことを認めたくなくて」

真乃「ごめんね、灯織ちゃん……」

(ま、真乃ちゃん……すごい申し訳なさそうにしてる……)

(優しいんだけど……嘘がバレる弱点になりそうだからやめてほしいなー……)

あさひ「……ほんとっすかぁ?」

(ほらー! 芹沢さんめっちゃ疑ってるー!)

にちか「ほんとだよ! どう見てもこのアザは本物でしょ!?」

霧子「あれ……でも、めぐるちゃんの部屋に忍び込んだのより、灯織ちゃんたちが襲われたのが後なんだとしたら……」

霧子「辻褄が合わなくなるんじゃないかな……?」

樹里「確かに……犯人がシャワールームにいながらに図書室に来た二人を襲うことなんてできないもんな」

にちか「いや、そうとも限らないですよ」

甘奈「え……? 3階と地下1階だよ? 行き来なんてどうやってもできないよね?」

にちか「それなら、行き来をしなければいいんです!」

凛世「頓知でございましょうか……?」

(犯人がシャワールームに潜みながら図書室を訪れた二人を襲った方法……それはきっと……!)

---------------------------------------------
【ひらめきアナグラム開始!】

はくうんふす

【正しい順番に並べ替えろ!】

↓1
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/10(日) 22:32:59.42 ID:oK/Dq/QG0
ふくすうはん
905 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:35:15.97 ID:NNx5t+Fh0

にちか「そうか、分かりましたよ!」

【COMPLETE!】

にちか「シャワールームに潜んでめぐるちゃんを殺した犯人、図書室で灯織ちゃんと甜花さんを襲った犯人」

にちか「それが必ずしも同一である必要はないはずです!」

甘奈「え……?! それって、犯人は複数いたってこと……?!」

にちか「はい……さっきもちょっと触れたことではあるんですけど」

にちか「今回の事件ってわざわざ被害者を気絶させて私たちの行動を待ってから殺害したりで」

にちか「リアルタイムであることにすごい拘りがあるみたいなんです」

にちか「まるで一人の人間による連続殺人だと印象付けるのに必死になっているようじゃないですか?」

あさひ「さっきも言ってたっすよね。アリバイが確保されている人間が多すぎて、アリバイのない人間が不自然なぐらいに浮いてるって」

透「私とか樋口とかがデコイに使われてるんだよね」

にちか「それに、一人の人間による犯行じゃないと仮定したら……アリバイの問題だって解決するんですよ」

にちか「すべての事件について、アリバイが成立していなかったとしても……全体を通して成立をしていない人間を盾にして雲隠れできるんですから」
906 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:36:29.19 ID:NNx5t+Fh0

凛世「間違えれば命はない、そんな状況の学級裁判なら尚更です……」

凛世「容疑がより濃い方へ……安牌へと流れてしまうのは自然の理です……」

樹里「いや……でもどうなんだ? めぐるの殺害の時にはアリバイがあって、夏葉の時にはアリバイがない……そんな奴って」

真乃「沢山います……!」

甜花「た、たくさん……?!」

真乃「めぐるちゃんの死体を発見してから、残りの行方不明の三人を捜索する時……」

真乃「私たちは大まかに階数だけを決めて、あとは個人で探してました。見つけたら大きな声をあげるって約束だけをして……」

にちか「その口約束しかしておらず、お互いの姿も見ていない……」

にちか「そして実際、灯織ちゃんと甜花さんが見つかった時にも全員は集まってないですよね?」

愛依「うちの呼びかけに答えて集まってきてくれたのは確か真乃ちゃん、にちかちゃん、透ちゃんの三人だった……よね?」

透「うすうす」

にちか「めぐるちゃんの死体発見現場の保存を行っていた幽谷さんと杜野さんは互いに見合っているので除外してもいいとしても」

にちか「残りの月岡さん、西城さん、甘奈ちゃん、芹沢さん、樋口さんのアリバイは有栖川さんの殺害時には浮いてます!」

恋鐘「う、うちも〜〜〜〜〜?!」

甘奈「あ、甘奈も……?!」

樹里「マジかよ……?!」

あさひ「あはは、わたしも容疑者っすか?」

円香「……」

にちか「二人の人間が共謀して、互いにアリバイを確保する形で事件を起こした可能性……否定できないんじゃないでしょうか!」

(今回の犯人はアリバイというものを自分の犯行のために利用している……)

(だったら、そのアリバイの穴をとことん暴き出してやる!)

(さあ、やるぞやるぞやるぞーーーー!!)
907 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/10(日) 22:38:39.15 ID:NNx5t+Fh0

少し早いですが本日はここまで。
次回9/11(月)21:00〜ノンストップ議論より再開予定です。
それではお疲れさまでした。
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/10(日) 22:44:51.36 ID:oK/Dq/QG0
お疲れさまでした
偽装は反論とか同意とかと考え方が全然違うから難しい……
909 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 20:57:04.22 ID:gCHc5dH90
---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【にちかの打ち身】
‣【円香と透の交代】
‣【モノクマファイル3】
‣【灯織と甜花の拘束】

真乃「今回の事件は複数犯による別々の事件だった可能性があります……っ!」

真乃「灯織ちゃんがにちかちゃんに間違って怪我をさせたのは【朝6時半】のこと」

真乃「朝の6時に円香ちゃんと透ちゃんは監視を交代して」

真乃「めぐるちゃんを殺した犯人はその時に現場に忍び込んでいたんです!」

灯織「私と甜花さんが襲われたのは【6時半から8時までの間】ということになりますね……」

灯織「これは犯人が二人以上じゃないと成立させるのは不可能です!」

樹里「でも今回の事件は【手口が両方一緒】だろ?」

樹里「凶器こそ違うけど先に気絶させといて後で撲殺するって方法も同じ」

樹里「【死因が同じ】なあたり単独犯っぽく見えるけど……」

円香「めぐるの事件の時にアリバイがない浅倉も」

円香「灯織と甜花の発見の時には現場に居合わせて」

円香「現場の保全をやっていたと聞きました」

円香「単独犯だと主張するなら浅倉に夏葉さんの殺害は不可能では?」

恋鐘「あ〜! こんがらがってきたばい!」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/11(月) 21:13:33.62 ID:gTJsdYtu0
【モノクマファイル3】>【死因が同じ】
911 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:18:54.85 ID:gCHc5dH90

にちか「それは違くないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「めぐるちゃんも夏葉さんも死因が同じ……確かに死体の状況だけ見ればそう見えますけど、実際はそうじゃないんです」

樹里「なっ……いや、どっちも撲殺だっただろ?! 凶器だって金属製の長いもので共通してるし、現場で発見されてるじゃねーか!」

真乃「死因が違うって言うのは致命傷を受けた箇所の違いだよね?」

愛依「えっ? 二人とも頭から血を流して死んじゃってたよ?」

にちか「同じ頭でも前頭部と後頭部で違うんですよ! ほら、モノクマファイルに書いてあるでしょ?」

霧子「本当だね……夏葉さんのモノクマファイルにははっきり後頭部の打撃が致命傷って書いてある……」

にちか「西城さんが言った通り、今回の事件はやり口は共通してるんです。先に麻酔で意識を奪った後にタイミングを見計らっての撲殺」

にちか「それなのに、頭に受けた打撃の場所が違う。これって同じ人物がやったことならおかしくないですか?」

凛世「ただ同じ犯行を繰り返したのではなく……」

凛世「それぞれ別の人間が頭を殴りつけての撲殺という手段だけ共有して事件を起こした……」

凛世「そんな印象を受けます……」

恋鐘「そんなんただの偶然かもしれんばい!」

恋鐘「たまたま殴りつける時に手が滑ったとか……」

愛依「あ〜! もううちも分かんなくなってきた!」

愛依「この事件の犯人って一人なの?! 何人もいるの?!」



【真実は二つに一つ!】


912 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:20:45.81 ID:gCHc5dH90

モノクマ「思えば長い旅でした……この裁判が始まった時からずっとアリバイがあるだのアリバイがないだの……」

モノクマ「あれ? ずっとオマエラ、アリバイの話しかしてなくない?」

モノタロウ「なんかオイラ、アリバイって四文字が栗タルト崩壊しちゃったよ」

モノファニー「モノタロウ、タルトに乗せる具材が違うわよ」

モノスケ「タルトに乗せるのは栗やのうてゲシュやゲシュ!」

モノスケ「ってゲシュってなんやねん!」

モノダム「ソロソロコノ足踏ミモ終ワリニシヨウ」

モノダム「コノ事件ガ単独犯ニヨル物ナノカ、複数犯ニヨルモノナノカ」

モノダム「今コソ決着ヲツケヨウネ」

------------------------------------------------
【意見対立】
【議論スクラム開始!】

「この事件は単独犯によるものだ!」vs【この事件は複数犯によるものだ!】

恋鐘「めぐるも夏葉も殴られて死んどる! 死因が一緒なら連続殺人じゃなか!?」

樹里「めぐるの殺害のときのアリバイが透と灯織以外の全員には成立してるんだぞ!」

あさひ「円香ちゃんだってめぐるちゃんの殺害は可能っすよ」

甜花「甜花は有栖川さんの死体の第一発見者……クロにはなり得ない、よ……!」

愛依「単独犯じゃなくて複数犯だったら投票はどうすればいいの?!」

甘奈「灯織ちゃんの拘束は自分で解けた……狂言の監禁だったんじゃないかな」

あさひ「にちかちゃんが言ってるだけっすよ? 本当に腕の怪我は灯織ちゃんがつけたものなんすか?」

-------------------------------------------------
【意見スロット】

【死体の発見】
【腕の怪我】
【アリバイ】 
【死因】
【投票】
【窓】
【監禁】
-------------------------------------------------

【意見スロットを正しい順番に並び替え、敵スクラムを向かい討て!】

↓1
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/11(月) 21:23:49.23 ID:gTJsdYtu0
【死因】
【アリバイ】
【窓】
【死体の発見】
【投票】
【監禁】
【腕の怪我】
914 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:26:11.31 ID:gCHc5dH90

【CORRECT!】

【にちか「運命を切り開いて見せます!」】

恋鐘「めぐるも夏葉も殴られて死んどる! 死因が一緒なら連続殺人じゃなか!?」
【にちか「幽谷さん!」
霧子「死因となった一撃を受けたのは、前頭部と後頭部で位置が違うんだ……」】

樹里「めぐるの殺害のときのアリバイが透と灯織以外の全員には成立してるんだぞ!」
【にちか「樋口さん!」
円香「夏葉さんの殺害の時にはアリバイは不透明な人がたくさんいるはずだけど」】

あさひ「円香ちゃんだってめぐるちゃんの殺害は可能っすよ」
【にちか「浅倉さん!」
透「でも、あの窓から脱出したのは確かじゃん。樋口があれやる意味なくないですか」】

甜花「甜花は有栖川さんの死体の第一発見者……クロにはなり得ない、よ……!」
【にちか「杜野さん!」
凛世「夏葉さんの事件の時にはシロでも、めぐるさんの時の嫌疑は未だ腫れておりません……」】

愛依「単独犯じゃなくて複数犯だったら投票はどうすればいいの?!」
【にちか「灯織ちゃん!」
灯織「落ち着いて投票すれば大丈夫です。それぞれの犯人を見つけ出すんです!」】

甘奈「灯織ちゃんの拘束は自分で解けた……狂言の監禁だったんじゃないかな」
【にちか「ここは私が!」
にちか「だとしても灯織ちゃんは6時半に私と会ってる……めぐるちゃんの殺害のクロにはなれないんだよ!」】

あさひ「にちかちゃんが言ってるだけっすよ? 本当に腕の怪我は灯織ちゃんがつけたものなんすか?」
【にちか「真乃ちゃん!」
真乃「私が証言するよ……にちかちゃんの怪我は昨日の夜にはありませんでした……っ!」】

-------------------------------------------------

【ALL BREAK!】

「「「「「「「これが私たちの答えだ!」」」」」」」」

915 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:27:34.27 ID:gCHc5dH90

にちか「アリバイが確かに成立している人は多いですが、それは事件を通してずっとではない。ちょっと複雑ではありますけど、それぞれについては犯行が可能だった人が別にいるはずなんです」

にちか「それを一つ一つ紐解いていきましょう。足取りはだいぶ見えてきているんです、あとはその輪郭をくっきりとなぞるだけ!」

あさひ「夏葉さんの犯行に関しての議論はまだ進んでないっすもんね」

あさひ「そっちを話してみたら見えてくるかもしれないっす!」

樹里「だー……マジか……マジで犯人は複数人なのかよ……」

灯織「にちか……やったね」

にちか「うん、でもまだ灯織ちゃんの容疑を晴らせたわけじゃない。議論の流れをなんとか引き寄せられてる……今のうちに詰めていかないと」

真乃「がんばろう、後少しだよ……っ!」

霧子「それなら……死因の違いがずっと気になっているんだけど……」

恋鐘「死因が違うからって犯人が違うってにちかは言うとったね……」

恋鐘「どがんしてこん違いは生まれたばい?」

(前頭部と後頭部の致命傷の位置の違いか……)

(それは撲殺された瞬間のことを想定してみると分かるかもしれないな……)

透「じゃ、次は致命傷の位置がなぜ違ったのかについて」

透「よーい、スタート」

円香「あんたが仕切んの?」
916 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:28:15.99 ID:gCHc5dH90
-------------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【事件の経緯】
‣【気化麻酔】
‣【死体発見アナウンス】
‣【夏葉の割れた指の爪】

恋鐘「なんで二人の致命傷は前頭部と後頭部で場所が違ったばい?」

凛世「犯人はめぐるさんと夏葉さん共に……」

凛世「気化麻酔を用いて【意識を奪った上で】撲殺をいたしました……」

凛世「同じ人物が犯人なら、狙い損じることはそうそうないものかと……」

甘奈「【動いていない】標的を殴るだけだもんね」

甘奈「慣れてなくても普通は当たるはずだよ☆」

霧子「もしかして犯人は腕に怪我をしてたのかも……」

霧子「その痛みで狙い損ねたとか……」

あさひ「おっ、にちかちゃんも容疑者に急浮上っすね!」

真乃「に、にちかちゃんはどっちの事件にも【アリバイがあります】から……!」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/11(月) 21:35:22.71 ID:gTJsdYtu0
【夏葉の割れた指の爪】>【動いていない】
918 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:37:47.50 ID:gCHc5dH90

にちか「それは違くないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「致命傷の位置の違い……その原因は意識があったかどうかですよ!」

霧子「えっ……? でも、現場にはお薬のボンベが残ってたよね……?」

にちか「はい、幽谷さんの才能研究教室にあった気化麻酔です」

霧子「あの気体は濃度に調整が必須で……ボンベに溜まっているものを直に吸引すると、意識を自力で取り戻すのは困難だと思う……」

にちか「私もそうだとは思うんです……でも、夏葉さんの死体に残された手がかりはそうじゃない、意識はあったってそう訴えかけてくるんです!」

あさひ「夏葉ちゃんの手の爪っすよ!」

甜花「つ、つめ……?」

あさひ「何か鉄製のものを力一杯引っ掻いたみたいなんすよね。爪はパキッと割れちゃっててそこからは鉄の匂いがしたっす」

樹里「か、嗅いだのか?! 死体の指の爪を?!」

あさひ「……? うなじの匂いを嗅いだんじゃないからいいじゃないっすか」

(何その価値基準……)
919 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:39:14.13 ID:gCHc5dH90

にちか「と、とにかく……あの爪は自分の力じゃないと割れないんですよ。事件の瞬間に意識があった証拠です!」

愛依「で、でもそんなん無理なんっしょ? 麻酔薬めちゃくちゃ強いやつなんでしょ、霧子ちゃん?」

霧子「うん……インドゾウさんでも気絶しちゃうぐらいだと思う……」

モノクマ「タチサレ……タチサレ……」

モノタロウ「うわー! 幽霊の話はやめてよー! オイラ幽霊の話と住民税の話だけは怖くて怖くてたまらないんだー!」

モノファニー「ここは人形をピッピッと投げつけて退散しましょう!」

恋鐘「そがんに強い麻酔吸って意識があった夏葉……なにもんばい!」

恋鐘「常識的に考えてあり得なかよ!」

灯織「……常識的に考えたらいけないのかもしれない」

真乃「灯織ちゃん……?」

灯織「いや、正直馬鹿げてるとは思うんだけど……夏葉さんって超研究生級の文武両道だったよね?」

灯織「その、体とかも鍛えてらしたし……精神力も並じゃなかったというか……」

樹里「お、おいおい! 根性で目を覚ましたとでも言うつもりかよ!?」
920 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:40:03.06 ID:gCHc5dH90

にちか「意識を取り戻した方法は分からないです、それこそボンベの中の麻酔が漏れ出ていたとかの可能性もありますし……」

にちか「ただ、夏葉さんは意識があったことは確かなんです! そして、これによって明らかになる【事実】もあるんです!」

真乃「意識があったことで浮かび上がる事実……?」

あさひ「みんなにヒントを出してあげるっす! 夏葉さんは何を引っ掻いて爪を割ったと思うっすか?」

にちか「は? ちょ、ちょっと急になに、芹沢さん?」

あさひ「ほらほら、にちかちゃんも考えるっすよ! ウンウン頭を捻って考えて欲しいっす!」

(夏葉さんが何を引っ掻いて爪を割ったか……?)

(……夏葉さんが命を落としたときの現場の状況、思い返してみよっか)

---------------------------------------------
【ブレインドライブ開始!】

Q1.撲殺された時の夏葉の意識は?
a.意識があった b.意識がなかった

Q2.意識を取り戻した夏葉は何をした?
a.犯人に説得を試みた
b.脱出を試みた
c.犯人につかみかかった
d.ダイイングメッセージを書いた

Q3.夏葉が爪を割る原因になった物とは?
a.裏庭のマンホール
b.凶器の鉄パイプ
c.気化麻酔のボンベ
d.裏庭の扉

【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】

↓1
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/11(月) 21:46:14.17 ID:gTJsdYtu0
abd
922 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 21:52:09.94 ID:gCHc5dH90

(うーん……どうだろう。犯人に撲殺されるときに有栖川さんに意識があったのは間違いないだろうけど……)

(それに、必死に逃げ出すなら……扉をひっかくというよりもドアノブを必死に捻るんじゃないかな……)

---------------------------------------------
【ブレインドライブ開始!】

Q1.撲殺された時の夏葉の意識は?
a.意識があった b.意識がなかった

Q2.意識を取り戻した夏葉は何をした?
a.犯人に説得を試みた
b.脱出を試みた
c.犯人につかみかかった
d.ダイイングメッセージを書いた

Q3.夏葉が爪を割る原因になった物とは?
a.裏庭のマンホール
b.凶器の鉄パイプ
c.気化麻酔のボンベ
d.裏庭の扉

【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】

↓1
923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/11(月) 21:53:42.65 ID:gTJsdYtu0
acb
924 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 22:01:28.95 ID:gCHc5dH90

にちか「推理はつながった!」

【COMPLETE!】

にちか「そっか、意識を取り戻した夏葉さんが起こしたアクション、それに爪を割った理由があるんだ!」

恋鐘「そいはそうやろうけど……そんなことがわかるばい?」

あさひ「現場に残った痕跡を思い出して欲しいっす。あの現場には何が残ってたっすか?」

樹里「何って……気化麻酔のボンベと、凶器の鉄パイプだろ?」

真乃「これを引っ掻いて爪を割ったってことなんだよね……?」

にちか「そう、そしてもう一つのポイントは意識を取り戻したタイミングなんだよ」

灯織「撲殺された瞬間に、夏葉さんは意識があったんだよね? ってことは……夏葉さんは犯人と相対していたことになる」

あさひ「いっそ、犯人が凶器を振り上げているところで目を覚ましたのかもしれないっすね!」

甘奈「えっ?! それじゃあ夏葉さんは間一髪のところで助かったの?!」

にちか「助かった……というか抵抗をしたんだと思う。頭に鉄パイプを振り下ろされそうになってるのに気づいて、【犯人につかみかかった】んだよ」

樹里「夏葉はアタシたちの中じゃ背丈も高いし力も強い。意識を取り戻して間もないとはいえ十分に抵抗はできただろうな」

にちか「犯人との攻防の最中、力がこもってつい鉄パイプを引っ掻いてしまって、それで爪が割れちゃったんじゃないですかね」
925 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/11(月) 22:02:53.75 ID:gCHc5dH90

あさひ「うんうん、そうっすね。じゃあ次のクイズっす!」

円香「……まだ続くの?」

あさひ「じゃあ夏葉さんは犯人と押し合いになってる時にどうやって死んだんっすかね?」

愛依「ま、また死因の話? それは撲殺で……」

にちか「そっか! そうだったんだ……! 致命傷の位置の違いは……その違いを物語ってたんだ!」

透「違いって……めぐるちゃんの時とは他にも違うところがあるの?」

にちか「はい……しかもめっちゃ重大な違いです。この事件について根っこの部分になる大きな大きな違いなんです……!」

甜花「な、何が違うの……?」

(間違いない……)

(めぐるちゃんの殺害現場にはなくて、夏葉さんの殺害現場には存在した物)

(アレが存在していたかどうかで、事態は大きく動く……!)

---------------------------------------------

【にっちー危機一髪 スタート!】

夏葉の殺害現場には■■■■■が存在していた!

ん ま だ し や
う い さ つ ち

【正しいワードで推理をぶちかませ!】

↓1
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/12(火) 00:20:46.84 ID:AsSDbPjX0
だましうち
927 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/12(火) 19:36:48.02 ID:GbT38VB50

昨日は途中で抜けてしまってすみませんでした。
新規システムを特に解説もせずにぶん投げてすみません。
既にやっていただいている通り、レインコードに出てきた死神ちゃん危機一髪を踏襲した設問です。
並んでいる文字列から適切な文字だけを抜き取って配置するシステムとなっています。

そして、今になって気が付いたのですが出題時の文字数を誤っていました。すみません。
想定解は「だいさんしゃ」だったのですが、■が5つになっていましたし、だましうちでも意味として通るところなのでここは正答でクリアにします。

今日は所用のため更新はできませんが、次回更新時はこの続きより開始します。
928 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 20:41:45.66 ID:08dU+VzG0
---------------------------------------------
夏葉の殺害現場には騙し討ちが存在していた!
---------------------------------------------

にちか「閃いた!」

【解!】

にちか「さっきの話の続きです! 意識を取り戻した夏葉さんと犯人は鉄パイプ越しに押し合いになっていた……」

にちか「西城さんが言ってた通り、夏葉さんは私たちの中でも身体能力が高い方でした。そんな人に押し合いに持ち込まれたら、犯人に勝ち目はあったでしょうか?」

凛世「麻酔の影響があり、意識が曖昧だった可能性はあるやもしれませんが……」

凛世「夏葉さんの方がやはり、有利になるのではないでしょうか……?」

にちか「私もそうだと思います。でも思い出してください! 夏葉さんの致命傷ってどこに受けてましたっけ!?」

甜花「後頭部……頭の後ろ、だね……」

あさひ「押し合いにも負けそうな犯人がどうやってそんなところ殴るっすかね?」

灯織「不可能、ですね……」

にちか「そう、できないんだよ。力で負けている犯人には、決してね」

透「え。じゃあどうすんの」

透「まさか……生きてる?」

樹里「いやいやいやいや! 流石にそれはねーって!」
929 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 20:42:47.29 ID:08dU+VzG0

あさひ「不可能なのは、押し合いになってる犯人が殴り殺すことっすよ?」

あさひ「【他の誰か】なら撲殺はできたっす」

恋鐘「ほ、他の誰か……?! そ、それってつまりあの現場には三人の人間がおったってことになると?!」

にちか「やっぱりこの事件は複数犯による物だったんです! アリバイの確保、二人の監禁、事件現場の潜伏……」

にちか「それを可能にしたのはこの濃密な協力体制があったからなんです!」

円香「なんとなく犯人像が見えてきたかもね」

円香「今回の犯人は並大抵の信頼関係で結ばれた物じゃない」

円香「損とか利益とかそんなレベルじゃない結束」
930 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 20:43:49.81 ID:08dU+VzG0

樹里「それって透と円香もそうだろ?」

樹里「アンタらは幼馴染、アタシたちの中では一緒にいる時間がかなり長い二人のはずだ」

透「でも私は夏葉さんの殺害現場には行けない」

透「ね、愛依ちゃん」

愛依「う、うん……! そーだよ、死体発見アナウンスまで一緒にいたもん!」

透「樋口はめぐるちゃんの殺害はできない。窓から逃走してた時間がないからね」

円香「……そういうこと」

(そう、今回の事件の犯人は夏葉さんの殺害の時に現場に居合わせることができた二人組)

(めぐるちゃんの時にも不完全ながら一応のアリバイは確保していたし、私の嘘がなくちゃそれも突き崩されてはいなかっただろう)

(複数犯による犯行だったと明らかになった今、それが可能なのはあの二人しかいない……!)

---------------------------------------------
【クロを指摘しろ!】

※二人同時指摘

↓1
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/09/13(水) 21:01:17.82 ID:jxBDNiY+0
大崎甘奈 大崎甜花
932 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:05:54.14 ID:08dU+VzG0

にちか「犯人は……あなたです!」

【解!】

にちか「甘奈ちゃん、甜花さん……あなたたちなんですよね。今回の事件を仕掛けたのは」

甘奈「えっ……?!」

甜花「ひぃん……!」

甘奈「ちょ、ちょっと待ってよ! なんでそうなるの?!」

にちか「今回の事件の犯人は夏葉さんの殺害現場に居合わせることができた二人組。そのタイミングでアリバイが浮いているのはあなたたち二人なんですよ」

甜花「ほ、他にも月岡さんとか……西城さんとか……いるよ……?」

あさひ「めぐるちゃんの事件も忘れちゃいけないっすよ。シャワールームの窓からの脱出ができた人間は透ちゃん、灯織ちゃん、甜花ちゃんの三人だけ」

あさひ「そのうち夏葉さんの現場に行くこともできるのは甜花ちゃんだけっす」

甜花「ひぃん……?!」
933 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:08:29.80 ID:08dU+VzG0

甘奈「で、でも……そう! 死体発見アナウンス! さっきにちかちゃんも言ってたけどあれってシロの3人が死体を発見しないと鳴らないんだよね?!」

甘奈「甘奈も甜花ちゃんも、死体発見アナウンスが鳴った時の三人に含まれてるよ!?」

真乃「うん……だから甘奈ちゃんはめぐるちゃんの殺害に関してはシロ、甜花ちゃんは夏葉さんの殺害には関してはシロになるよ……」

真乃「でも、事件を通してのシロじゃないの……ごめんね……」

灯織「むしろ、その死体発見アナウンスを利用したのかもしれません。ほら、モノクマーズが言ってたよね?」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

モノタロウ「オイラたち、こんなことも教えてくれないぐらい冷たいと思われてたの?! 心外だなぁ」

モノスケ「そもそもこの条件については【キサマラにも一度質問を受けとる】ことやしな」

(……え?)

モノスケ「ま……ソイツは他の連中と共有をする気もなさそうやし、キサマラで改めて共有しておいてや」

モノタロウ「情報は水だよ! 独占しちゃいけないんだ!」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

灯織「今回の事件で、死体発見アナウンスの条件について私たちよりも先に質問した人がいるって」

灯織「二人は死体発見アナウンスがなった時のメンバーにそれぞれを忍び込ませることで無実を印象付けようとしてたのかもしれません」
934 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:09:35.09 ID:08dU+VzG0

モノクマ「ちょっと! オマエたち、そんな重要なことを教えちゃったの?!」

モノタロウ「ご、ごめんなさいー!」

モノスケ「モノダムのやつが知識は水だとか抜かすからあかんのや! ワイらは隠し通すつもりやったんや!」

モノダム「……」

にちか「むしろ、二人は犯人だからこそ死体発見アナウンスを鳴らす三人のうちに滑り込めたんじゃないですか?」

にちか「死体のある場所をそれぞれ知っていたから……!」

甘奈「い、言いがかりだよ! そんなの……証拠もないって!」

(うぅ……胸が痛い)

(甘奈ちゃんとは今朝、仲がさらにもう一段階前に進んだ感触があったから……そんな日にすぐにクロと指摘する指先を突きつけなくちゃいけなくなるなんて)

(でも……これが守りたいものを守るために戦い続けて……たどり着いた真実なんだ)

(ここから退くわけには……いかない!)
935 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:10:26.76 ID:08dU+VzG0

愛依「えっと……二人が犯人なんだとしたら、めぐるちゃんを殺害したのが甜花ちゃんで」

愛依「夏葉ちゃんを殺害したのが甘奈ちゃんなんだよね?」

凛世「はい……そうなります……」

凛世「ですので……シャワールームより脱出するジップラインを使用なされたのも甜花さんということに……」

甜花「て、甜花インドア派だから……そんなのできない、よ……?」

にちか「落ちないように掴むだけです! 甜花さんのスポーツテストがEランクでも不可能じゃないですよ!」

甘奈「むー! 失礼な! 甜花ちゃんはかなりE寄りのDだよ!」

円香「運動神経悪くはあるんだ」

甜花「えと……えと……」

甜花「あっ! あ、あの……反論、あります……!」

甘奈「……! 甜花ちゃん?」

甜花「七草さんの推理だと、甜花が八宮さんを殺して……その後でAVルームに行って、風野さんと一緒に監禁されたフリをしたことになるんだよね……?」

甜花「シャワールームからプールに出て、そこから地下に行く……」

甜花「で、でも甜花にはそれ……できない、から……」

(……え?)

甜花「なーちゃん、任せて……甜花が守ってみせるから……!」

甜花「なーちゃんを犯人なんかにはさせない……!」
936 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:11:47.53 ID:08dU+VzG0
---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【プールの利用規則】
‣【シャワールームの窓のフレーム】
‣【灯織と甜花の拘束】
‣【AVルーム裏口の扉】

甜花「八宮さんを殴ってシャワールームからジップラインで脱出……」

甜花「プールに降りたら、そのまま地下に行く……」

甜花「あとは【自分で目隠しと耳栓をして、手足を縛る】……?」

甜花「甜花には……これはできないんだ……」

甜花「だって、【そんな時間はない】から……」

甜花「和泉さんの証言を思い出してみて……!」

甜花「甜花たちを発見したのって、【扉を閉まる音を聞いたから】……だよね?」

甜花「それってつまり【犯人が逃げ込んだ】時に和泉さんが居合わせたから……!」

甜花「甜花、手先が不器用だから……そんな音を聞かれてからじゃ縛るの間に合わない……!」

樹里「そんな威張って言うことか……?」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/13(水) 21:48:55.23 ID:gBMvCukz0
【犯人が逃げ込んだ】に【AVルーム裏口の扉】
938 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:50:43.96 ID:08dU+VzG0

にちか「それは違くないですかー?!」論破!

【BREAK!】

にちか「地下にある教室でスライド式の扉なのはゲームルームとAVルームの二つ。だから愛依さんが聞いた音は犯人が逃げ込んだ音になる」

甜花「そう、だから……そんな直後に手足を結ぶなんてできない……!」

にちか「そうじゃないんですよ。地下にはもう一つスライド式の扉があるんですから」

甜花「うん……それは知ってるよ……」

甜花「AVルームの裏口の扉……だよね? でも、前に幽谷さんと使った時に確認したけどあの扉は建て付けが悪くて開かなかったはず……」

凛世「甜花さん……裏口の扉は、凛世が直させていただきました……」

凛世「図書室で読んだ書籍の映像化した作品を見たくなった際に、逐一迂回するのは手間でしたので……」

凛世「油を差したり、扉を外したり……色々と試させていただきました……」

(杜野さん、見かけによらず結構アクティブだよね……)

にちか「そう、裏口が事件当時も使えたんですよ。だとすると、愛依さんが聞いた音は必ずしもAVルームに逃げ込む音じゃなくて……」

にちか「その逆、AVルームから出ていく音だった可能性もあるんですよ!」
939 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:51:40.00 ID:08dU+VzG0

恋鐘「ど、どういうことばい? 甜花がAVルームで見つかったのは事実やろ?」

にちか「そう、甜花さんの今の反論自体は間違ってないんです。あの音がしてからセルフで体を縛るのは現実的じゃない」

にちか「だから、そうじゃなくて甜花さんは別の人に縛ってもらったんです」

甘奈「……!」

真乃「あっ、だからAVルームから出ていく音なんだね……!」

真乃「甘奈ちゃんが甜花ちゃんのことを縛って、それから出て行った音……!」

愛依「そっか……それなら間に合うんじゃん!」

甘奈「ううん……間に合わないよ」

甜花「なーちゃん……?」

甘奈「甜花ちゃん……守ってくれてありがとう。でも甘奈も一緒に戦わせて」

甘奈「甘奈も甜花ちゃんをクロになんかさせたくないんだ……!」


【甘奈「甘奈もここは譲れない!」】決闘!

940 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 21:53:39.96 ID:08dU+VzG0
---------------------------------------------
【舌戦デュエルマッチ開始!】

甘奈「にちかちゃん、思い出して」

甘奈「甘奈はめぐるちゃんの死体を発見した後は」

甘奈「一階の食堂方面でみんなを探してたんだよ?」

甘奈「愛依ちゃんよりも先回りして地下に行って」

甘奈「甜花ちゃんを縛って出ていくなんて」

甘奈「どう考えても間に合わないよ!」

(……確かに甘奈ちゃんと愛依さんがみんなを探した階数はチグハグだ)

(だけど、そのチグハグさを解消するための答えがある……!)

---------------------------------------------

甘奈は■■■■■■を利用した!

ろ る し う に
け か よ く つ

【正しいワードで推理をぶちかませ!】

↓1
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/13(水) 21:56:02.30 ID:6hQVJNq90
、ォ、ッ、キ、ト、ヲ、
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/13(水) 21:59:34.02 ID:gBMvCukz0
かくしつうろ
943 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:01:15.36 ID:08dU+VzG0
---------------------------------------------
甘奈は隠し通路を利用した!
---------------------------------------------
にちか「切り伏せる!」

【SLASH!】

にちか「逆だよ! 甘奈ちゃんは食堂エリアに行ったからこそ先回りして甜花さんを縛ることができたんだ」

甘奈「ど、どういう意味……?」

にちか「私も使った方法だよ。食堂近くの女子トイレの用具入れ、あそこにあった隠し通路……まさか知らないとは言わないよね」

甘奈「……!」

にちか「前回の裁判が終わった後、私はここにいる全員を連れて隠し通路を見せに行った。どこに隠し通路があって、どこに通じているのかも確認したはずだよ」

透「隠し通路を通ってAVルームで、甜花ちゃんと待ち合わせ」

透「そんで縛った後は……」

あさひ「それも前回の事件と同じじゃないっすかね。わたしが使った方法っすよ!」

(……)

にちか「通気口。あそこからなら愛依さんと鉢合わせることなく脱出できたはずだよ」

944 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:02:04.69 ID:08dU+VzG0

モノクマ「いやー、大崎さんちの妹さんは勤勉でございますなぁ! コロシアイの復習をしっかりやってるんだから!」

モノタロウ「あっ! これコロシアイゼミでやった問題だ!」

モノファニー「えらいわモノタロウ。後でオレンジジュースを持ってきてあげましょうね」

にちか「さあ、これで甜花さんの脱出ルートも実現可能なことが証明できましたよ」

にちか「まだ反論はありますか!」

甘奈「むむむむ……」

甜花「えっと……えっと……!」

真乃「にちかちゃん……あとひと押しだよ。もう事件の全貌は見えてるから」

灯織「にちか、最後に事件を最初から全部振り返ってみて……それで二人に突きつけてみよう」

灯織「それでなお反論がなければ……きっとそれが真実なんだと思う」

にちか「真乃ちゃん、灯織ちゃん……」

にちか「うん……任せて! これでこの長かった事件も終わりにする」

にちか「真実を私の手で明らかにするよ!」

945 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:03:20.23 ID:08dU+VzG0
---------------------------------------------
【クライマックス推理開始!】

【act.1】

「今回の事件はかなり複雑……二つの事件が一つに結びついてできているものだったんです。なので、順を追って一つずつ説明しますねー!」

「最初に襲われたのは……多分夏葉さんだと思います。私たちはめぐるちゃんの発案で才囚学園体育祭の開催をすることになって、その前日から準備をしていました。夏葉さんは中でも遅くまで体育館に残って準備をしてくれてました。でも、多分今回はその厚意が裏目に出てしまったんだと思います」

「だって今回の事件において重要な脱出トリックは体育館の窓を使用したものだったんですから。長く体育館に残っていた夏葉さんの存在は犯人たちにとって目の上のたんこぶ。犯人たちは夏葉さんを襲うと気化麻酔を使ってその意識を奪いました……」

「夏葉さんが気絶した後は工作の時間。体育館の窓をよる時間が始まる前に開けておいて、そのフレームにワイヤーを結びつけました。ワイヤーの端はプール側に垂らして、プールから回収できるようにして……です」


【act.2】

「夏葉さんを裏庭にまで連れて行き、気化麻酔がボンベから溢れ出る状態にして扉を閉めたら犯人たちはもう一つの事件に向けての準備に移りました。といってもだいぶ間の時間は空いたと思いますけどね」

「朝の6時、樋口さんと浅倉さんが才能研究教室の見張りを交代するタイミングを知っていた犯人たちは、一方をそのタイミングでめぐるちゃんの才能研究教室に忍び込ませました。このタイミングでなら校舎内に人はいなくなり、見つかるリスクもなくなるからです。後は朝の準備のタイミングでやってくるめぐるちゃんを待つだけ。その時に備えて金属バットを脇に構えました」

「もう一人の犯人は自分への容疑を薄くするための狂言監禁の準備に取り掛かりました。灯織ちゃんを図書館に呼び寄せると、そこで襲撃。手足と目、耳を封じるとAVルームに閉じ込めたんです。後に灯織ちゃんと一緒に自分もそこで同じ状態になることで、被害者一団を装おうとしたんですね」

946 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:04:23.84 ID:08dU+VzG0
【act.3】

「そして、朝が来た。昨晩のうちの準備に決着がついていなかったのでめぐるちゃんはアナウンスと同時かそれより少し早いぐらいに才能研究教室に向かってしまった……自分の命が狙われているとも知らずに……」

「とはいえ、すぐに犯人は命を奪ったわけではありません。今回の事件はリアルタイムに進行し、その間のアリバイを有耶無耶にすることが目的だったのでまずは意識を気化麻酔で奪うだけにしました」

「一方その頃体育館に集まっていた私たちは、めぐるちゃんと灯織ちゃんと夏葉さん、そして犯人の一人が集まっていないことに気づく。そのまま3人の捜索に移ることになるのですが、この時から誘導されていたのかもしれませんね。だって、めぐるちゃんの死体発見アナウンスの条件であるシロ3人の目撃に、犯人は割り込んできたんですから」

「私たちがめぐるちゃんの死体を発見しにくるタイミングを狙って犯人の一人はシャワールームからの脱出を開始。あらかじめ通しておいたワイヤーを折れたホッケースティックを使ってジップラインの要領で滑走。プールに降り立った犯人はAVルームに急ぎます」

「めぐるちゃんの死体を発見した後の私たちは残りの3人の捜索を再開。この時に犯人は自然な形で1階の食堂の捜索を申し出ています。それは食堂付近の女子トイレ、その中の隠し通路を利用するため。隠し通路を利用して愛依さんより先に地下に辿り着いた犯人は、もう一人の犯人をその場で縛り上げ、あたかも灯織ちゃんと同様にずっと監禁されていたかのように装ったんです」


【act.4】

「偽装の拘束を終え、通気口を介して地上に出た犯人はそのまま裏庭へ。そこで今度は夏葉さんを撲殺しました。これによって犯人二人、それぞれの犯行が終了。連立する二つの事件が成功したんです」

「後は私と愛依さんによって拘束を解かれた犯人が夏葉さんの死体を発見することで事件は完結する。犯人二人が、自分の事件ではない事件についてアリバイを確保し、死体発見アナウンスによりシロの証明をもらうことで雲隠れを狙った……その目論見を完遂したんですよ!」

「こんな複雑な事件を実現できたのは、波ならぬ信頼関係で結ばれた二人だからこそ!」


「甘奈ちゃん、甜花さん……そうですよね?」


【COMPLETE!】
---------------------------------------------
947 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:05:28.17 ID:08dU+VzG0

にちか「……どうです? 事件を一通り振り返りましたけど、これに反論はありますか?」

甘奈「うぅ……」

甜花「……」

にちか「ない、みたいですね……」

樹里「終わった……のか……なんか、すげー長い戦いだった気がするよ」

愛依「うち一生分の頭使った気がする……もうこんがらがってしゃーないわ……」

真乃「アリバイにトリック、いろんな要素が絡んで……難しい事件でした……」

真乃「そんな中でも真実を見つけられたのはみんなが諦めずに立ち向かったからだよ……っ」

(……終わった)

(やっと、真実に辿り着けたんだ)

(ルカさん……私、なんとかやれてます)

(必死に足掻いて、運命をなんとか切り開いて……今こうして立ってる。立っていられてる)

(なんとか、生きられてる)

甘奈「甜花ちゃん、終わっちゃったね……」

甜花「……」

甘奈「えへへ……ごめんね、甘奈……負けちゃった」

甜花「なーちゃん……」
948 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:06:39.77 ID:08dU+VzG0




あさひ「あはは、甘奈ちゃんも甜花ちゃんも嘘つくのが上手いっすね」



949 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:07:29.83 ID:08dU+VzG0

甘奈「……え?」

にちか「……は?」

あさひ「全部終わったって諦めたみたいに言ってるっすけど……」

あさひ「本当は自分たちの狙い通りになったって喜んでるんじゃないっすか?」

にちか「な、何言ってるの?! これ以上はもう何もない! 今の推理だって全部通ってるし、間違いなんかない!」

にちか「今のが真実なんだよ?!」

あさひ「……本気でそう思ってるんっすか?」

にちか「……え?」
950 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:08:21.04 ID:08dU+VzG0

あさひ「改めて言うんすけど、このコロシアイはゲームなんっす。自分たちの生きるか死ぬかがかかった真剣勝負」

あさひ「クロとシロが自分の持つ全部、自分が出せる最高をぶつけあうゲームっす」

あさひ「ゲームに勝つためならなんだってする、それは当然のことなんっすよ」

あさひ「だから_______」



あさひ「まだまだゲームはここからっす! だってにちかちゃんの推理には一つ大きな【矛盾】があるっすからね!」



(私の推理の抱える、矛盾……?)

(そ、そんなの……どこに……?)

あさひ「甘奈ちゃん、甜花ちゃん。わたし楽しいっすよ……まさか二人がここまでやってくれると思ってなかったっす」

あさひ「でも負けないっすよ! わたしはこのゲームに本気で勝つつもりっす!」

あさひ「だからみんな……わたしについてきてほしいっす!」

甘奈「……」

甜花「……」

樹里「い、いったい何が始まるってんだよ?! まだ……アタシたちの気付いてない事実があるってのか?!」
951 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/13(水) 22:09:18.33 ID:08dU+VzG0
---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【灯織と甜花の拘束】
‣【二人を殺害した凶器】
‣【夏葉の割れた指の爪】
‣【モノクマファイル2】

あさひ「にちかちゃんの推理にはすっごく大きな矛盾があるっすよ!」

あさひ「甜花ちゃんが【めぐるちゃんを殺して】」

あさひ「シャワールームから脱出して」

あさひ「AVルームで甘奈ちゃんに縛ってもらって」

あさひ「甘奈ちゃんが裏庭で【夏葉さんを殺した】」

あさひ「ほら、矛盾してるっすよね?」

恋鐘「な、なに〜〜〜?! あさひはなんのことを言うとると〜〜〜?!」

霧子「ここまでの道のりに、分かれ道はなかったと思うけど……」

霧子「何か、見落としたものがあったのかな……」

真乃「にちかちゃん……真実を見失わないで」

灯織「にちか……見るべきものを見出そう」

あさひ「やっぱり学級裁判は面白いゲームっすね!」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
952 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 05:07:46.10 ID:0uSrSVvk0
【灯織と甜花の拘束】>【夏葉さんを殺した】
953 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 19:13:30.16 ID:3andVLbp0

あさひ「甘奈ちゃんが甜花ちゃんを縛って、そのまま夏葉さんも撲殺した」

あさひ「その死体を発見したのが甜花ちゃんっす。このことはにちかちゃん自身も目撃した事実っすよね?」

あさひ「わたしが言いたいのは、この事実との間に生じている矛盾っすよ」

(どういうこと……? 事実と証拠品に何か食い違いでもあるっていうの……?)

---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【灯織と甜花の拘束】
‣【二人を殺害した凶器】
‣【夏葉の割れた指の爪】
‣【モノクマファイル2】

あさひ「にちかちゃんの推理にはすっごく大きな矛盾があるっすよ!」

あさひ「甜花ちゃんが【めぐるちゃんを殺して】」

あさひ「シャワールームから脱出して」

あさひ「AVルームで甘奈ちゃんに縛ってもらって」

あさひ「甘奈ちゃんが裏庭で【夏葉さんを殺した】」

あさひ「ほら、矛盾してるっすよね?」

恋鐘「な、なに〜〜〜?! あさひはなんのことを言うとると〜〜〜?!」

霧子「ここまでの道のりに、分かれ道はなかったと思うけど……」

霧子「何か、見落としたものがあったのかな……」

真乃「にちかちゃん……真実を見失わないで」

灯織「にちか……見るべきものを見出そう」

あさひ「やっぱり学級裁判は面白いゲームっすね!」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/09/14(木) 20:10:44.02 ID:hQnj4EhZ0
【2人を殺害した凶器】→【夏葉さんを殺した】
955 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 20:15:11.08 ID:3andVLbp0

あさひ「二人の命を奪った金属バットと鉄パイプ、それぞれに何かおかしいところがあるんっすか?」

あさひ「指紋でも取れたら話は別かもしれないっすけど……ここじゃそんなのできないっすよ」

(これでもないか……だとしたら、矛盾って何……?)

(甜花さんがめぐるちゃんを、甘奈ちゃんが夏葉さんを順当に殺した場合……今手元にある証拠がおかしかったりするのかな)

(存在するはずがない証拠……とか?)

---------------------------------------------
【ノンストップ議論開始!】

コトダマ
‣【灯織と甜花の拘束】
‣【二人を殺害した凶器】
‣【夏葉の割れた指の爪】
‣【モノクマファイル2】

あさひ「にちかちゃんの推理にはすっごく大きな矛盾があるっすよ!」

あさひ「甜花ちゃんが【めぐるちゃんを殺して】」

あさひ「シャワールームから脱出して」

あさひ「AVルームで甘奈ちゃんに縛ってもらって」

あさひ「甘奈ちゃんが裏庭で【夏葉さんを殺した】」

あさひ「ほら、矛盾してるっすよね?」

恋鐘「な、なに〜〜〜?! あさひはなんのことを言うとると〜〜〜?!」

霧子「ここまでの道のりに、分かれ道はなかったと思うけど……」

霧子「何か、見落としたものがあったのかな……」

真乃「にちかちゃん……真実を見失わないで」

灯織「にちか……見るべきものを見出そう」

あさひ「やっぱり学級裁判は面白いゲームっすね!」

【正しいコトダマで矛盾する発言を論破しろ!】

↓1
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 20:21:42.77 ID:/27xLWmO0
【夏葉の割れた指の爪】 に【夏葉さんを殺した】
957 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 20:22:26.41 ID:/27xLWmO0
すみません逆ですごめんなさい
958 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 20:28:17.30 ID:3andVLbp0

にちか「そういうこと……!?」論破!

【BREAK!】

にちか「そうだ……芹沢さんの言う通りだ……! 私ってば、めちゃくちゃ大きな矛盾を見落としちゃってた……!」

真乃「にちかちゃん、分かったんだね……っ!」

にちか「うん……甘奈ちゃんが夏葉さんを殺した……これって、そんなわけがないんだよ」

愛依「え? は? な、なんで……?!」

にちか「思い返してみてください。夏葉さんが撲殺された時の状況を、もう一度」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

灯織「撲殺された瞬間に、夏葉さんは意識があったんだよね? ってことは……夏葉さんは犯人と相対していたことになる」

あさひ「いっそ、犯人が凶器を振り上げているところで目を覚ましたのかもしれないっすね!」

甘奈「えっ?! それじゃあ夏葉さんは間一髪のところで助かったの?!」

にちか「助かった……というか【抵抗をした】んだと思う。頭に鉄パイプを振り下ろされそうになってるのに気づいて、犯人につかみかかったんだよ」

樹里「夏葉はアタシたちの中じゃ背丈も高いし力も強い。意識を取り戻して間もないとはいえ十分に抵抗はできただろうな」

にちか「犯人との攻防の最中、力がこもってつい鉄パイプを引っ掻いてしまって、それで爪が割れちゃったんじゃないですかね」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

にちか「夏葉さんは気化麻酔を吸った後に意識を取り戻した。犯人に襲われる直前で」

霧子「あ……!」

にちか「そう、本来ここで夏葉さんを撲殺するはずだったのは甘奈ちゃん。だけど……夏葉さん自身の抵抗にあってそれは【失敗している】はずなんだよ」

透「それは後頭部の致命傷が証明してるんだよね」

透「あんな血は流れない……後ろからじゃないと、ね」

959 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 20:28:59.39 ID:3andVLbp0

灯織「そして現場に3人の人間が存在したこともすでに証明済み。そこにいたのが甜花さんなのだとしたら……」

にちか「本当に夏葉さんを撲殺したのは、【甜花さんの方だった】ことになります!」

甜花「……!!」

甘奈「て、甜花ちゃん……」

愛依「え……そんじゃまさか、今回の事件って本当は甜花ちゃんが犯人の……【連続殺人】ってことになんの?!」

円香「……待ってください。それはおかしくないですか?」

円香「甜花による連続殺人も何も……彼女は夏葉さんの死体の【第一発見者】だったはずです」

霧子「死体発見アナウンスの条件であるシロ3人……その中に甜花ちゃんは含まれてたはずだよね……?」

霧子「だとしたら、甜花ちゃんが夏葉さんを殺すことは……あり得ないんじゃないかな……」

にちか「……」

(甜花さんは死体の第一発見者だった……)

(でも、状況的に甜花さんが夏葉さんを撲殺したことは間違いない……)

(この致命的な矛盾を解決する方法って……)

960 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 20:29:44.20 ID:3andVLbp0

あさひ「にちかちゃん、どうっすか? 最高にワクワクしてこないっすか?」

にちか「はぁ? ちょ、ちょっと今考えてるから話しかけないでよ……」

あさひ「そんな邪険にしないでほしいっす。わたしはにちかちゃんの味方っすよ?」

にちか「うっさいなぁ……! あなたのせいでみんな頭がこんがらがってるって言うのに……」

あさひ「みんな考えすぎなんっすよ。もっと簡単に考えればいいっす」

あさひ「矛盾の謎を解くのが難しければ……」





あさひ「矛盾自体がなかったものとして捉えればいいっす」




961 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 20:30:13.70 ID:3andVLbp0

にちか「は……? な、なにそれ……?」

あさひ「後はにちかちゃんが自分自身で答えを見つけるっすよ〜!」

(何この子……本当勝手すぎ……!)

(矛盾自体がなかったものとして捉える……? 意味わかんないって……!)

(……考えろ、考えるの。七草にちか)

(ここを乗り越えなきゃ、明日はないぞ……!)

---------------------------------------------
【ブレインドライブ開始!】

Q1.めぐるを撲殺したのは?
a.甘奈 b.甜花

Q2.夏葉を撲殺したのは?
a.甘奈 b.甜花

Q3.夏葉の死体の第一発見者は?
a.甘奈 b.甜花

Q4.この矛盾を解消するための答えは?
a.偽証 b.なりすまし

【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】

↓1
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 20:32:15.34 ID:hQnj4EhZ0
bbab
963 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 20:37:31.76 ID:3andVLbp0

(この二人の目論見は見抜けた……あとは事実関係を正しく抑えることが大事だ)

(私の目視上で起きたことを、ありのままに辿ろう)

(そうじゃないと、矛盾を正しく指摘できない……)

---------------------------------------------
【ブレインドライブ開始!】

Q1.めぐるを撲殺したのは?
a.甘奈 b.甜花

Q2.夏葉を撲殺したのは?
a.甘奈 b.甜花

Q3.夏葉の死体の第一発見者は?
a.甘奈 b.甜花

Q4.この矛盾を解消するための答えは?
a.偽証 b.なりすまし

【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】

↓1
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 20:55:06.55 ID:0uSrSVvk0
bbaa
965 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:00:43.73 ID:3andVLbp0

(いや……そうじゃない……)

(有栖川さんの死体を見つけたのは、あの人だったんだ……)

(そして、この矛盾を解消する答えはあれで間違いない!)

---------------------------------------------
【ブレインドライブ開始!】

Q1.めぐるを撲殺したのは?
a.甘奈 b.甜花

Q2.夏葉を撲殺したのは?
a.甘奈 b.甜花

Q3.夏葉の死体の第一発見者は?
a.甘奈 b.甜花

Q4.この矛盾を解消するための答えは?
a.偽証 b.なりすまし

【正しい道筋を選んで推理を組み立てろ!】

↓1
966 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 21:06:29.09 ID:0uSrSVvk0
bbbb
967 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:08:46.57 ID:3andVLbp0

にちか「そんなことって……!」

【COMPLETE!】

(……そ、そんなことあり得るの?)

(でも、これならこの矛盾を根底から否定できる)

(アリバイとか死体発見アナウンスとかそんなの目じゃない……けど、流石に現実的じゃない気が)

(……いや、現実的じゃないからこそ……だ)

(こんなトリックが出来るのは彼女たちが【超研究生級の双子】だからこそなんだ……!)

にちか「私たちは、最初から間違えていたのかもしれないです」

にちか「目に見えているものだけが正しい。自分の主観で観測してるものが真実だって、ずっと思い込んでいた」

にちか「目の前にいる人物が、大崎甘奈だ。大崎甜花だって……疑うこともなく受け入れちゃってたんですよ!」

灯織「え……?! そ、そんなこと……あり得るの?!」

真乃「それって……双子でお互いになりすましてたってこと……?!」

樹里「はあああああああああああ?!」
968 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:10:01.03 ID:3andVLbp0

円香「そ、そんなの……いくら双子とはいえ、出来っこない……!」

甘奈「そ、そうだよ〜! にちかちゃん、流石に突飛すぎるって〜」

にちか「じゃあ甜花さんが夏葉さんの殺害犯でありながら死体の第一発見者でもある事実をどうやって説明づけるんですか?」

甜花「あ、あ、ああ……」

にちか「あれは二人の計画に生じたイレギュラー。全く予期してない出来事だったがために生じてしまった矛盾だったはずです……」

愛依「じゃあ……マジなん? マジに二人は、お互いになりすましてたってワケ……?」

あさひ「あははははははは! すごい、すごいっすね! この二人じゃなきゃ出来ない大胆なトリックっすよ!」

凛世「しかし……お二人はいつから入れ替わられていたのでしょうか……?」

凛世「凛世たちが言葉を交わす限りでは目立った違和感はなかったですが……」

(焦点はそこになるよね……)

(二人を見掛けの特徴や話し方から見分けるのは難しい……ここまでの推理の中でどちらがどっちだったのかを見分けなくちゃいけないんだ)

(鍵になるのは、夏葉さんの殺害現場におけるアクシデント……抵抗されるのはまず間違いなく予想外だったはず)

(逆に言えば……そこまでの計画は狙い通りだったことになるんだよね)

にちか「甘奈ちゃん、甜花さん……私は負けない……絶対に真実を暴いて見せるから!」

甘奈「……」

甜花「……」

---------------------------------------------
【検討プロセッシング開始!】

甘奈ちゃんと甜花さんの間に起きた入れ替わり……そのタイミングを見極めるヒントは夏葉さん殺害時のアクシデント。
あれによって、本来殺害する予定だった側とは逆の人間が夏葉さんを撲殺することになってしまったはずなんだ。
そう、それまでは計画は予定通りに進んでいたはずなんだ。

じゃあその計画における一番の狙いってなんなんだろう?
入れ替わることで二人は何を狙っていたんだろうか?

・目撃証言の妥当性を下げる
・それぞれの事件についてクロを逆転させる
・同じ人物の目撃証言を複数獲得する

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
969 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 21:10:42.65 ID:0uSrSVvk0
それぞれの事件についてクロを逆転させる
970 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:13:27.47 ID:3andVLbp0

【CORRECT!】

そうだ! 双子で入れ替わってなりすましていれば、自分が起こした事件について自分が死体発見アナウンスの条件を満たすシロになることができる……!
つまり、投票の時に正しい犯人に投票したとしてもそれが誤答になる逆転の目が生まれるってことなんだ。
夏葉さん殺害のときまで計画は順調に進んでいたはず……つまりめぐるちゃんの殺害は本来の計画通りの犯人が殺害を行ったことになる。
あの時、死体発見アナウンスの条件に入って確定のシロ認定をされていたのは……

・甘奈
・甜花

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
971 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 21:16:41.60 ID:0uSrSVvk0
甘奈
972 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:19:46.60 ID:3andVLbp0

【CORRECT!】

そう、甘奈ちゃんだ。
つまり、あの時私たちと一緒に行動を共にしていた甘奈ちゃんは本当は甜花さんで、めぐるちゃんを殺害したのこそが甘奈ちゃんと言うことになる。

そうなると、甘奈ちゃんこそが地下のAVルームに逃げ込んだことになって、その後を追ったのが甜花さんになる。

えーっと……二人の狙いは自分が起こした事件においてシロ認定を貰うことにあるわけで、二人が協力してるってことはそれぞれの事件で犯人は別になる予定だったわけで……

そうなると、夏葉さんを元々殺害する予定だったのはどっちだろう?

・甘奈
・甜花

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
973 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 21:22:21.96 ID:0uSrSVvk0
甜花
974 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:29:46.75 ID:3andVLbp0

【CORRECT!】

うん、そうだよね……元々は甜花さんが夏葉さんを殺害するはずだった……
だから、AVルームでの二人も入れ替わりが生じていたはず。
愛依さんが発見した甜花さんは甘奈ちゃんで、通気口を抜けて裏庭に向かった甘奈ちゃんが甜花さんだったんだ。

そして、甜花さんが夏葉さんを殺害しようとした時抵抗にあって……

最終的に夏葉さんを殺害したのは……

・甜花
・甘奈

【正しい選択肢を選べ!】

↓1
975 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 21:31:35.08 ID:0uSrSVvk0
甘奈
976 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:34:25.23 ID:3andVLbp0

うん、間違いない。
夏葉さんを殺害したのも……甘奈ちゃんになるはずだ。
二つの事件について、そのクロはどちらも甘奈ちゃんだったんだ……!

夏葉さんの死体発見アナウンスが鳴った時の3人に甜花さんが含まれていた。
ということはあの時の甜花さんは本物だったことになる。

今までの話を総合するとこうだ。
【二人は最初から入れ替わっていたが、夏葉さん殺害の際にアクシデントが起き、そこで入れ替わりを解消した】

こういうことだよね……!

【COMPLETE!】

977 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:36:57.00 ID:3andVLbp0

にちか「……っぷはぁぁぁ!」

にちか「はぁ……はぁ……考えすぎで息止まるかと思った……しんど」

霧子「にちかちゃん……大丈夫……? 突然静かになるから何があったのかと思って……」

にちか「すみません……色々と整理してたら、喋るどころじゃなくて。でも、おかげで全部分かりましたよ!」

甜花「ぜ、全部……?」

にちか「そもそも双子で入れ替わるメリットっていうのは、自分が起こした事件でシロ認定を貰えるってところにあるんです」

にちか「甜花さんが起こした事件に、甘奈ちゃんがなりすましてる甜花さんが目撃者になる……みたいな。これをすることで、私たちの認識は逆になって、クロの投票が誤答になるわけです」

円香「なるほど……事件を起こした時の正体の如何によって正誤が左右されると」

恋鐘「ん、んん……?」

にちか「で、もう一個重要なのが夏葉さんの殺害まで計画は全部順調に進んでたってことです」

真乃「目立ったミスはなく、イレギュラーな事態もなかったもんね……」

にちか「だから、めぐるちゃんの殺害は狙い通り。甘奈ちゃんが死体発見アナウンスでシロになってるってことは裏を返せば」

灯織「甜花さんが甘奈になり変わって死体を発見したということ……!」

霧子「じゃあ本当にめぐるちゃんを殺害しちゃったのは、甘奈ちゃんになるんだね……!」

にちか「ですです。で、同じやり方で今度は甜花さんが夏葉さんを殺害しに行く……」

あさひ「でも、そこで予想外に夏葉ちゃんの抵抗を受けた」

凛世「甜花さんは殺害に失敗、夏葉さんと押し合いになっているところを……」

凛世「甘奈さんが、撲殺……?!」

にちか「……そういうことです。この事件は双子によるそれぞれ別の事件となるはずだったのが、夏葉さんの抵抗によって」

にちか「【甘奈ちゃん一人による連続殺人になっちゃった】んですよ!」

甘奈「……」
978 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:37:56.72 ID:3andVLbp0

透「ってことは……二人が入れ替わってたのって最初から夏葉さんが死ぬまでの間?」

にちか「そうです……二人は初めから入れ替わっていたのを、夏葉さん殺害の時に逆に解消してたんですよ!」

あさひ「流石にわたしも予想してなかったんで、すごくワクワクしたっす。これで夏葉さんの抵抗がなければ完全犯罪が成立してたかもしれないっすね!」

(……芹沢さんのいう通りだ)

(もし夏葉さんが意識を取り戻すことなく、予定通り甜花さんに撲殺されていたのなら私たちは二人の入れ替わりに気づくことなく投票に行っていた)

(完全に、終わりかけてた……私たちの負けで、バッドエンド)

(夏葉さんの執念が、私たちの生を守り抜いてくれたんだ……)

にちか「でも、これで終わりです。甘奈ちゃんと甜花さん……二人の仕掛けたトリックは全部見破りましたから」

甘奈「……」

甜花「……」

にちか「モノクマ……投票タイムに行こうよ。この学級裁判を終わりにするんだ」

モノクマ「あいさー! それではオマエラの結論も出たようなので……」

モノクマ「オマエラ! お手元のスイッチでクロだと思う生徒に投ひょ
979 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:38:50.81 ID:3andVLbp0





あさひ「そうはいかないっすよ」





980 :やばい…スレ中に収まるか怪しい… ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:40:11.19 ID:3andVLbp0

(え……?!)

あさひ「なんだ、にちかちゃん気づいてなかったんすか? てっきり最後まで分かってるもんだと思ってたっす」

にちか「何……? 何か私の推理に間違いでもある?!」

あさひ「にちかちゃんの推理が合ってるとか間違ってるとかそういう次元じゃなくて、まだこの事件は終わってないんっすよ」

にちか「は……? なに言ってんの? 意味わかんないんだけど!」

あさひ「だから、さっきにちかちゃんが言った通りっすよ」




あさひ「なんで今目の前にいる二人を、【二人が言う通りの人物だ】って信じてるんっすか?」




にちか「なっ……」

981 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:41:25.58 ID:3andVLbp0

あさひ「今わたしたちの目の前にいる二人……甘奈ちゃんの席にいる『甘奈ちゃん』」

あさひ「甜花ちゃんの席にいる『甜花ちゃん』、それはそっくりそのまんまなんすかね?」

モノクマ「うぷぷぷ……うぷぷぷぷぷ……」

モノクマ「あぁ……たまんないな、ボクはこの瞬間が見たくて見たくてこの裁判中ずっとウズウズしてたんだよ」

モノファニー「お父ちゃんのウズウズから成る貧乏ゆすりが激しすぎて軽く脳震盪を起こしかけてたわ!」

モノクマ「本当に面白いことを考えるよね、事件だけじゃなくて裁判中にまで入れ替わりトリックを活用しようだなんて!」

モノクマ「……ま、実際入れ替わってるかどうかは言えないけどね!」

愛依「うっそ……今も入れ替わってるんだとしたら、さっきのまま投票してたらうちら……不正解になってたの……?」

透「うーん、普通に正解になってたかもしんないよね」

円香「議論せずに投票してたらニコイチの賭けになってた。危なかったのは確かだね」

甜花?「まだ……まだ……」

甜花?「まだ甘奈たちは負けてないよ!」
982 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:42:21.12 ID:3andVLbp0

甘奈?「甘奈たちのどっちが本物の甘奈なのか、みんなには分からないよね?」

甜花?「捜査時間中、ずっと甘奈たちのことを監視してた人はいる? いないよね?」

甘奈?「実は、捜査中に入れ替わってたり……」

甜花?「でも、入れ替わるの……大変だから……そのままかもしれない……」

甘奈?「見極めることなんてできないよね?」

甜花?「区別することなんてできないよね?」



甘奈?「どっちが甜花かなんてわからないよね?」
甜花?「どっちが甘奈かなんてわからないよね?」



にちか「うっ……うっ……」

にちか「うわああああああああああああああ?!?!」

(こんなの……一体、どうすればいいの……?!)

(二人を見極めるなんて不可能だよ! だって二人のなりすましのレベルは破茶滅茶に高い)

(今日、裁判に至るまで二人のなりすましに気づいた人なんて一人もいなかったんだから)

(それを今この場で突き止めろって……?!)

(そんなの、そんなの……不可能すぎる……!!)
983 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:44:43.61 ID:3andVLbp0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「…………」

「まあ……怖いよな。今までやったことがないことに飛び込むことになって、しかもそれはオマエ一人っきりでよ」

「だけど運命を切り開くのはいつもそういう無謀な挑戦だったりすんだ」

「自分の身の丈なんか気にしないでよ、遮二無二に、自分のことも顧みずにやってみるもんだ」

「それが報われることばかりじゃないかもしれないけど……少なくとも、前いた場所とは状況は変わってるはずだ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(……!!)

(そうだ、そうだよ……何やってんだ、私)

(不可能だから何? やったことない、誰もできなかったことだから何?)

(そんなの、諦める理由にはなんないでしょ……!)

(ルカさんの裁判を戦い尽くしたあの日から、私は決めたんだ)

(どんなに苦しくても、どんなに絶望的な状況でも醜く、みっともなく、なりふり構わず遮二無二に足掻き尽くすって)

(だったら……今だってそう!)

にちか「……諦めないよ」

にちか「私は絶対に諦めない。今この場で二人の正体を見抜いてみせる」

にちか「最後まで、戦い抜いてみせるんだから……!!」
984 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:46:24.10 ID:3andVLbp0

甜花?「やっぱり……そうなる気はしてたんだ」
甘奈?「にちかちゃんとは正面から勝負しなくちゃいけない時が来るって……裁判が始まった時からそんな予感があったんだ」

甜花?「だったら、甘奈たちも逃げない」
甘奈?「甜花たちも戦う」

甜花?「それが八宮さんと有栖川さんの命を奪った責任だから……!
甘奈?「それが甜花たちの背負い込んだ宿命だから……!」

真乃「にちかちゃん……答えは絶対どこかにあるはずだよ……っ!」

灯織「ここまでのにちかの推理は全部正しかった……だったら、その推理のおかげで浮かび上がってくるものもあるんじゃないかな」

真乃「まだ検討していないものが何か残ってたりしないかな……!」

にちか「真乃ちゃん、灯織ちゃん……」

にちか「分かった、二人ともありがとう。自分を信じて、やってみるよ」

真乃「ファイトだよ……! むんっ!」

灯織「うん、頑張って!」

(これが正真正銘、最後の戦いだ……!)

(どうやって二人に勝つのか、そのビジョンはまだ見えないけど……)

(……やるしかない!)
985 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:51:39.95 ID:3andVLbp0
-------------------------------------------------
【理論武装開始】

甘奈?「甘奈たちの入れ替わりは完璧だよ☆」
甜花?「にへへ……誰にも見破られなかった……!」

甘奈?「最後に正体がはっきりしてるのは有栖川さん殺害の時……」
甜花?「裁判まではかなり時間があったから、入れ替わる余裕はあったはずだよね?」

甘奈?「そう言っておいて入れ替わってない可能性もあるけどね!」
甜花?「でもやっぱり入れ替わるのが……安牌?」

【TEMPO UP!】

甘奈?「甜花たちを見分ける方法は……ゼロ……!」
甜花?「パパとママなら分かったかもしれないけど……」

甘奈?「見た目にも違いはないし……」
甜花?「話し方だってカンペキ☆」

甘奈?「絶対に……譲らない……!」
甜花?「絶対に……負けない……!」

甘奈?「なーちゃんを殺させなんてしないよ……!」
甜花?「なーちゃんを殺させなんてしないよ……!」

【トドメを刺せ!】

甘奈?「甘奈たちを見分ける方法なんてないよ!」
甜花?「甜花たちを見分ける方法なんてないよ!」

-------------------------------------------------

ていた/ハンカチ/に落ち/現場

【正しい順番に並べ替えろ!】

↓1
986 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 21:52:55.80 ID:0uSrSVvk0
現場に落ちていたハンカチ
987 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/09/14(木) 21:56:12.28 ID:hQnj4EhZ0
現場に落ちていたハンカチ
988 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:56:17.12 ID:3andVLbp0
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現場に落ちていたハンカチ
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【BREAK!】

にちか「……あの、二人に聞きたいんですけど。夏葉さんの殺害の時に、意識を取り戻した瞬間ってやっぱ相当焦りました?」

甘奈?「……」

にちか「まあ、そりゃ焦りますよね。今から殺すって相手が抵抗してきて、しかも相手の方が身長もあるし力もある」

にちか「咄嗟に押さえつけるんだったら、両手を使わなくちゃいけなかったはずです。片手間に対処できる相手じゃないですから」

甜花?「……」

にちか「口を抑えてたハンカチを【手放さなくちゃいけなかった】んですよね……甜花さん」

甘奈?「……!!」
甜花?「……!!」

恋鐘「ハ、ハンカチって……裏庭に落ちてたあの落としもんのこと……?」

透「そういえば……あったね。持ち主不明」

樹里「あれは甜花が犯行の時に使ってたものだったのか……でも、ハンカチなんか何のために?」

霧子「気化麻酔を吸い込まないようにするためだね……」

愛依「あっ……!」
989 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:57:26.04 ID:3andVLbp0

にちか「そうです。夏葉さんの意識を奪い続けるためにボンベから流しっぱなしにしてた気化麻酔、あれを犯人が吸い込んじゃったら元も子もないですから」

にちか「甜花さんが裏庭にやってきた時、口にハンカチを当てて気化麻酔を吸わないようにしてたはずなんですよ」

灯織「でも、夏葉さんの反撃にあったことでハンカチを手放してしまった……」

あさひ「甜花ちゃんはその時に気化麻酔をちょっと吸っちゃったんっすね」

にちか「幽谷さん……あの麻酔は相当キツいんでしたよね?」

にちか「ちょっと吸っただけでも……手指に痺れが出るぐらいに」

霧子「うん……吸ったその瞬間に効果は出なくても……時間が経ってから影響が出てくることも考えられるかな……」

真乃「それじゃあ、今手の指に痺れがある方が……甜花ちゃんになるんだね……!?」

にちか「……灯織ちゃん、捜査中何度か手遊びをしてたけど今何か一つ教えてもらってもいいかな」

にちか「トノサマガエルでも影絵のウサギでも……なんでもいいから、二人にやってもらおうよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

霧子「ちょっとでも吸ってしまったら指先に麻痺が起きたりするはずだから……」

灯織「よかった、ちゃんとトノサマガエルも作れます」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

灯織「……よかった、ちゃんと影絵でうさぎが作れた」

灯織「この部屋も危険な気体は既に換気されて無くなってるみたいだよ」

真乃「ふふ……よかったね、灯織ちゃん」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

甘奈?「あ……ああ……」
甜花?「ダメ……ダメ……」
990 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 21:58:23.73 ID:3andVLbp0

灯織「……分かった。私の手の動きを真似て、やってみてもらえますか?」

甘奈?「いや……いやだよ……やりたくない……!」
甜花?「できない……それだけは……できないって……!」

灯織「これはフィンガーダンスの一種なんですが……滑らかな指の動きが求められるんです」

甘奈?「やめて……もう、やめて……!」
甜花?「お願い、お願いだから……!」

灯織「……指に痺れがあれば、出来ないものかと」




「いやあああああああああああああああ!!!」





裁判場に“彼女”の絶叫が響き渡ってから数秒、静寂が訪れた。
私たちは”彼女“をじっと見つめ、面を上げる時を静かに待った。
やがて、ゆっくりと首は持ち上がり、そこに私たちは真実を見た。


991 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:00:58.06 ID:3andVLbp0

「……もう、いいよ」

「甜花ちゃんにこれ以上嘘はつかせられないよ」

「甜花ちゃんは優しいね……甘奈のことを庇ったりしたら、死んじゃうのは甜花ちゃんなんだよ?」

「そんな甜花ちゃんにずっと甘えて……ああ、甘奈、ダメな子だなぁ……」

その頬を伝う、涙を見た。

樹里「……そう、だったんだな。甘奈に甜花……二人は、この裁判中ずっと……」

樹里「自分じゃない方を、演じてたんだな……」

涙を流しているのは、『大崎甘奈』。
大崎甜花の席に立って、つい先ほどまで自分の姉の演技をしていた少女だった。

甘奈「うん……甜花ちゃんのフリしちゃってました。ごめんなさい」

甘奈「でも、そっくりだったよね? みんな、分かってなかったよね?」

愛依「う、うん……マジで気づかんかった……」

甘奈「えへへ、甘奈……甜花ちゃんのことがめっちゃ大好きだからどんな話し方をするのか、何を考えてるのかも、何を思ってるのかも全部わかっちゃうんだ」
992 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:01:36.94 ID:3andVLbp0

甘奈「だから、あのね……?」

甘奈「今甜花ちゃんがすごく辛いのも……分かっちゃうの」

甜花「なーちゃん、ごめんね……なーちゃんのことを守ってあげられない弱いお姉ちゃんで、ごめんね……」

甘奈「ううん、そんなことない。こんなに一緒に戦ってくれる強いお姉ちゃんなんて、地球のどこを探したっていないよ」

甘奈「甘奈にとって甜花ちゃんは、最強で最高の……ただ一人のお姉ちゃんだよ」

甜花「うぅ……ひっく……ひっく……」

モノクマ「さて! これで全部解決ですね!」

モノクマ「えー、本日何回目かもわかりませんが今度こそ本番! 投票タイムに移りたいと思います!」

モノクマ「オマエラはこの事件のクロだと思う人一名に投票をしてください! ちなみに投票するのはその人宛ではなく、証言台宛ですのでお間違えなく!」

恋鐘「えっと……そいやったらつまりは……」

円香「甜花の席に投票すればいいと思います。そこに立っているのが、甘奈ですから」

甘奈「うん……そうだね……」

モノクマ「それじゃあ行ってみましょうか! クロとシロの運命を分けるドッキドキでワックワクの」



「「「「投票ターイム!!!!」」」」」


993 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:02:38.74 ID:3andVLbp0
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   【VOTE】
〔甜花〕〔甜花〕〔甜花〕

 CONGRATULATIONS!!!!

   パッパラー!!!



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994 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:03:24.19 ID:3andVLbp0






【学級裁判 閉廷!】





995 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:10:18.72 ID:3andVLbp0

というわけでなんとかスレ中に2章学級裁判を終わらせられました…
裁判終了からは次スレで行いますね。
スレ立てを今日明日のうちにやっておきます。

それではお疲れさまでした…
996 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2023/09/14(木) 22:30:34.96 ID:3andVLbp0
とりあえずスレ立てをしました。

次はこちらで進めていきます。
明日も大体21時ごろから更新予定です。
【シャニマス×ダンガンロンパ】シャイニーダンガンロンパv3 空を知らぬヒナたちよ【安価進行】Part.2
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