侑「ポケットモンスター虹ヶ咲!」 Part3

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233 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:22:48.73 ID:Vp8VUFfr0

龍神様はただ、目の前にいるだけなのに──強い存在感を放っている。


 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (翡翠の巫女よ、力を返すがいい)

栞子「……力をお返しする前に……龍神様にお話ししたいことがあります」

 「リュリシィ…、リュリキリュリシィ」 (話だと……? 矮小な人の子が我に何を話そうと?)

栞子「この地方の人々に……危害を加えないでいただけませんか」

 「リュリシィ、キリュリリュリシイィィィィィィ…!!!!」 (またその話か? 巫女風情が何様だ!)


龍神様は私の言葉に怒るように咆哮をあげる。


かすみ「め、めっちゃ怒ってるよ……!?」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ…!!!! キリュリリュリシイィィィィィィ!!!!」 (巫女よ、貴様も人がポケモンに何をしたかをわかっているだろう。人間のために、これまでどれだけの数のポケモンが命を落とした)

栞子「それは理解しています……ですが、それは過去の話です……! 今生きている人々にまで背負わせる罪科ではないはずです……!」

 「キリュリ…キリュリリュリシイィィィィィィ!!! キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (過去? よく言ったものだな。人は過ちを繰り返し今でもポケモンの命を奪い、危機に晒しているではないか)

栞子「確かに、そういう人間もいるかもしれません……。ですが、全ての人々がそのような悪しき心を持っているわけではありません……!」

 「キリュシィ、リリュリシィ…キリュリリュリシィ」 (仕える巫女でありながら、あくまで人の肩を持つか……愚かな)

栞子「……そうではありません……。人に、ポケモンに、危害を加える悪しき人間も居ますが……それ以上に、ポケモンを大切に想い、慈しみ、共に生きている人々も大勢いるんです……!」

 「…………」 (…………)

栞子「私は……あの洞の中で過ごしていたら、一生それに気付くことはありませんでした……。ですが、自分の目で……見てきたんです。人とポケモンが、手を取り合い、生きている姿を……」


私は龍神様に、この地方で見てきたものを伝える。


栞子「知っていますか……コメコシティでは、人とポケモンが力を合わせて毎日農業に励んでいます。フソウタウンでは、人のお祭りでありながら、ポケモンのためだけに作られた軽食が存在していました。ダリアでは日々ポケモンと共に生きる文化を学び、ローズではポケモンと共に生きるための技術が研究されているそうです……人は、ポケモンの敵ではないんです」

 「キリュリリュリシィ」 (だから、過去の過ちをなかったことにしろと?)

栞子「そうではありません……! 確かに、人間が戦禍にポケモンを巻き込んだことは事実です……ですが、今の人々はそれを繰り返さないよう、良き隣人として、ポケモンと共存する道を選んで前に進んでいるんです……! 龍神様の目指される世界がポケモンにとってより良き世界であるなら……そこに人間は必要だと、私は感じました」

 「キリュリリュリシィ…」 (ポケモンが生きる世界に、人間が必要だと?)

栞子「そうです。……人間もポケモンも、この地方に住まう仲間です……。……必要なことは、どちらかのためにどちらかを追い出し、滅ぼすことではなく……手を取り合い、共存する道なのではありませんか? この地方を作られたディアンシー様が望んだ世界も、そうだったはずです……違いますか……?」

 「…………」 (…………)

栞子「龍神様……。……もう、龍神様が人間を監視などしなくても……人はポケモンと共に生きることを選び取れるくらい、強くなりました。……ですから……」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ…!!!!」 (ならば、先の異変はなんだ!!!)

栞子「……っ!」


龍神様の雄叫びと共に、突風が吹きつけ、私は尻餅をつく。


歩夢「栞子ちゃん……!?」

栞子「へ、平気です……!」


私はすぐに立ち上がる。
234 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:24:03.63 ID:Vp8VUFfr0

 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!! キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (あれこそ、人が起こした災禍に他ならぬ、しかもこの短い間に二度も……!!! それでも尚、貴様は人がポケモンと共に生きることを選び取れていると申すか!!!)

栞子「ですが……勇気ある人たちとポケモンたちが力を合わせて、解決して見せたはずです……!! 人とポケモンが手を取り合い、共に危機を退けた……これは、人とポケモンが共に生きることを選び取っている何よりの証拠ではありませんか!?」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (そもそも、人がいなければ起こらなかった災禍ではないか!!!)

栞子「だとしても、人を一方的に傷つけても、人とポケモンの間に溝が深まるだけで、何も解決しません……!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィィ!!!」 (だから、滅ぼすのだ、全て……!!!)

栞子「……龍神様でも、そんなことは出来ません」

 「リュリシィ…」 (なんだと……?)

栞子「かつて龍神様が滅ぼした町──ヒナギクシティは……あのとき龍神様が焼き尽くしたことが嘘のように、活気のある町となっていました。人は龍神様が思っている以上にたくましい生き物です……きっと根絶やしになど出来ず、龍神様の怒りを受け、親しき友を失い残された人間たちは……今度はポケモンへの報復を考えるようになる……。……そうしたら、もっと多くの失われなくてよかった命が失われるのではありませんか」

 「…………」 (…………)

栞子「滅びによる平和など……ありえないんです。それは龍神様の御力を持ってしてもです……」

 「キリュリリュリシィ」 (我が力を恐れ、巫女という存在を仕えさせている翡翠の民の言葉とは思えぬな)

栞子「……翡翠の巫女も……翡翠の民も……そして、龍神様、貴方様も……私たちは、今の世界を知らなさすぎた。もう一度言います。今の人々は、ポケモンたちと、良き隣人として手を取り合って生きていくことが出来ます……!」

 「リュリシィ…キリュリリュリシィ」 (仮にそれが真だったとして……貴様の言っていることは、今後も人の起こす厄災がポケモンに降りかからない保証になっていない)

栞子「大丈夫です。……そのときは、勇気ある人たちが、親しきポケモンたちと力を合わせて、世界を守ります」

 「キリュリリュリシィ、リリュリシィ、キリュリリュシィ」 (その保証はどこにあると聞いている。善なる者、悪しき者がいるのは理解しよう。しかし、善なる者が必ず悪しき者に勝つと誰が保証する)

栞子「……大丈夫です」


私は力強く頷いて、後ろにいる仲間たちに目を向ける。


栞子「正しき心を持った人たちが、ポケモンと共に引き出す力は……悪しき力に屈したりしません」

歩夢「栞子ちゃん……」

栞子「私は……この方たちと共に、この地方を巡る中で、それを教わりました」


人とポケモンがお互いを信頼し合い、戦う姿は──信じられないような力を引き出し、驚くような結果をもたらしてくれる。私はそれを知った。それを目の当たりにし──自らも経験した。


栞子「かつて人はポケモンを畏れ……ポケモンは人を恐れていました。……ですが、今は共に生きる仲間としてお互いを認め合い、歩んでいます。……それを否定する権利は誰にもないはずです。例え、龍神様であっても……」

 「…………」 (…………)

栞子「龍神様……もう一度……人を……ポケモンと共に生きる人々を、信じてくれませんか……」

 「…………」 (…………)


龍神様はしばらく黙り込んでいましたが──


 「キリュリリュリシィ」 (ならば……その力とやらを見せてみろ)


そう口にする。


 「キリュリリュリシィ」 (我が力を必要とせずとも、災禍を退けるだけの力があることを示して見せろ。そうしたら、私も認めよう)

栞子「…………」

歩夢「栞子ちゃん……龍神様は、なんて言ってるの……?」

栞子「力を示せと……。……これから先、災いが起こったとしても、人とポケモンが力を合わせて、それを退けるだけの力を持っているということを証明しろと、仰られています」

しずく「それってつまり……」

せつ菜「今ここで龍神様──レックウザを超えてみせろ、ということですね」

ランジュ「簡単に言うと……倒してみろってことかしらね!」

かすみ「わかりやすくていいですね! やってやろうじゃないですか!!」

侑「そうだね。それで認めてもらえるなら、戦おう!」
235 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:24:32.20 ID:Vp8VUFfr0

仲間たちは、力強く頷く。

それに応えるように私も頷く。


栞子「わかりました……力をお見せします。人とポケモンの──キズナの力を」

 「キリュル、リリュリシィ、キリュリリュリシィ」 (ならば巫女よ。力を返せ。その者たちが全力の私に勝てれば、貴様の言葉を信じ、私はこの地を去ろう)

栞子「……皆さん、龍神様に全ての力をお返しします。……よろしいですか?」


皆さんに訊ねると──


ミア「まあ、そうなるよね」

しずく「示す以上、全力を上回らないと証明になりませんからね」

せつ菜「むしろ望むところです!! 人とポケモンの可能性……見せてあげましょう!!」

ランジュ「ま、力が戻ったところでランジュは負けないけどね!」

かすみ「相変わらず自信満々ですねぇ……でも、負けるつもりがないのは、かすみんも同じですけどねっ!」

リナ『繋がる明日のために……私も戦う!』 || > ◡ < ||

侑「大丈夫! ポケモンたちとのキズナがあれば……絶対に負けないから!!」
 「イッブィ!!!」

歩夢「栞子ちゃん」


歩夢さんが、歩み出て私の手を握る。


歩夢「……みんなで、前に進もう。人と……ポケモンと……この世界を生きる、全てのために……」

栞子「……はい!」


私は龍神様に振り返り──


栞子「……力を、お返しします」


手の平に“もえぎいろのたま”を乗せ──龍神様に向かって、差し出した。





    🎹    🎹    🎹





栞子ちゃんの手から“もえぎいろのたま”が浮かび上がり──


 「キリュリリュリシイ…!!!」


レックウザの体の中に吸い込まれていく──珠が完全に取り込まれると、眩い光に包まれる。


 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」


雄叫びと共に、光を破るようにして現れたレックウザは、先ほどまでとは違った容姿になっていた。

顎が幅広な刃状になり、その顎や角からは、黄色い光を放つ長い髭が流れるように伸びている。

そして、それと同時に、周囲に先ほどよりも強い風が火道内に吹き荒れ始める。
236 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:27:20.16 ID:Vp8VUFfr0

かすみ「姿が変わりましたよ……!?」

栞子「あれが龍神様の……真のお姿です」

リナ『メガ……レックウザ……』 || ╹ᇫ╹ ||

侑「メガレックウザ……メガシンカした姿……!」

せつ菜「それにしても……この風は……!」

栞子「龍神様の天候を操る力が発生させているものです……!」

リナ『メガレックウザの特性“デルタストリーム”だよ……! 天候が“らんきりゅう”になってる!』 || ˋ ᇫ ˊ ||

 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」

ランジュ「お喋りしてる場合じゃないわ……!! 来るわよ!!」


メガシンカしたレックウザから──風の刃が飛び出してくる。


リナ『“エアスラッシュ”だよ!』 || ˋ ᇫ ˊ ||

かすみ「いや、でかすぎです!?」


かすみちゃんの言うとおり──とてつもない大きさの風の刃が、こちらに向かって一直線に飛んでくる。

避けられない……!? そう思った瞬間、


しずく「バリコオル!! “ひかりのかべ”!!」
 「──…………」


しずくちゃんの繰り出したバリコオルが、巨大な障壁を発生させ、それに直撃した“エアスラッシュ”が轟音を立てる。

どうにか、食い止めたように見えたけど──


 「…………!!」
しずく「威力が……! 強すぎる……!!」


風の刃は障壁に阻まれて霧散するどころか、そのまま少しずつ、障壁に食い込むように前進してくる。


かすみ「加勢しなきゃ……!! サニゴーン!!」
 「──ニゴーーン」

歩夢「ウツロイド!!」
 「──ジェルルップ…」


かすみちゃんと歩夢が同時に手持ちを繰り出し──


かすみ・歩夢「「“ミラーコート”!!」」
 「ニゴーンッ!!!」
 「…ジェルップ」


“ミラーコート”を纏いながら、“ひかりのかべ”に食い込んでくる、“エアスラッシュ”を2匹掛かりで反射する。

だけど反射した、“エアスラッシュ”は、


 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」


レックウザに当たる直前で霧散して消えてしまう。


かすみ「き、消えちゃいましたよ……!?」

せつ菜「恐らく、風を操る力で無効化したんだと思われます……!!」

リナ『風を自在に操るポケモンなだけあって、反射しても効果がない……』 ||;◐ ◡ ◐ ||


なんて言っている間にも、レックウザは口にドラゴンタイプのエネルギーを集束し始める。
237 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:27:57.90 ID:Vp8VUFfr0

 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」


集束したドラゴンのエネルギーが“りゅうのはどう”となって、こちらに発射される。


しずく「バリコオル……!!」
 「…………!!」


再び、バリコオルが壁を展開し、攻撃の勢いを弱め、


ランジュ「ジジーロン!! “りゅうのはどう”!!」
 「──ジーーーロンッ」


ランジュちゃんの繰り出したジジーロンが、“りゅうのはどう”を放って、レックウザの攻撃を相殺する。

バリコオルの壁もあって、相殺自体は十分に出来ているけど──


ランジュ「相手が浮いてるのが厄介ね……」


なかなかこちらが攻撃に転じるタイミングを計りかねている。

レックウザは溶岩の上に浮いているため、手が出しづらいけど──このまま、手をこまねいていても、埒が明かない。


侑「仕掛けよう……! ウォーグル!!」
 「──ウォーーグッ!!!」

栞子「はい……! 出てきてください、ウォーグル!」
 「──ウォーグ…」


2匹のウォーグルが、ボールから飛び出し、レックウザの両側面を取るように回り込みながら飛んでいく。


 「ウォォォォォ!!!!!」
 「ウォーーグ…!!!」


2匹のウォーグルは翼を構え──


侑「“ダブルウイング”!!」
栞子「“オーラウイング”!」

 「ウォォォォーーグッ!!!!!」「ウォーーーグ…!!!!」


片や力を込めた両翼を叩き付け、片やオーラで強化した翼を叩き付けて攻撃する。


 「キリュリリュリシイ…」


しかし、レックウザは意に介することもなく、


 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!」

 「ウォーーグ…!!!?」「ウォーーーッ…!!!」


“ぼうふう”を発生させ、2匹のウォーグルたちを退ける。


侑「ウォーグル……!?」


しかも、巻き起こされる“ぼうふう”はそのまま──2匹のウォーグルを風圧で真下に向かって吹き飛ばした。

下ということは──
238 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:28:29.04 ID:Vp8VUFfr0

リナ『溶岩に落ちちゃう!?』 || ? ᆷ ! ||

栞子「ウォーグル……!! 飛んでください……!!」

 「ウォーーグ…!!!」
 「ウォォォォォォッ!!!!」


2匹のウォーグルは懸命に翼を羽ばたかせながら、姿勢を戻そうとするが──勢いが強すぎる。

そのとき、


しずく「バリコオル!! ウォーグルたちの真下に“バリアー”!!」
 「…………」


バリコオルが“バリアー”で作った足場を伸ばすように作り出し、


 「ウォーグ…!!!」
 「ウォォォッ…!!!」


2匹のウォーグルはその上に落ちて跳ねた後、再び飛び立ち始める。


しずく「ま、間に合った……」

栞子「しずくさん……! 助かりました……!」

侑「ありがとう、しずくちゃん……!」

しずく「いえ、ウォーグルたちが無事で何よりです……!」


しずくちゃんの機転のお陰でギリギリ難を逃れる。

そして、


せつ菜「お二人のお陰で──パワーを充填する時間が稼げました……!!」
 「──フゥ…!!!」


いつの間にか、攻撃の準備を整えていたスターミーの体に──宇宙の力があふれだす。


せつ菜「スターミー!! “メテオビーム”!!」
 「フゥ!!!!!」


スターミーから、極太のビームが発射され、洞窟内に光が迸る。

猛スピードで迫る“メテオビーム”に反応しきれなかったのか、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


攻撃が直撃し、ビームの威力でその巨体ごと、火口内の岩壁に押し付けられる。


せつ菜「一気に決め切りますよ……!!」
 「フゥ…!!!」


壁に叩き付けても、まだ極太ビームは終わらない。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザは“メテオビーム”をその体で受けながらも、鳴き声をあげて、口にエネルギーを集束し反撃を試みようとするが──


ランジュ「させないわ!! “りゅうのはどう”!!」
 「ジーーロンッ!!!」

 「キリュリシイィィィィィ…!!!!」
239 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:29:01.78 ID:Vp8VUFfr0

ランジュちゃんのジジーロンが、レックウザが発射するよりも先に“りゅうのはどう”をレックウザの頭部に炸裂させ、技を中断させる。

そして、それと同時に、


せつ菜「これで……トドメです!!」
 「フゥ…!!!!」


せつ菜ちゃんの掛け声と共に、レックウザを壁に押し付けるように発射され続けている“メテオビーム”がさらにもう一段階、その勢いを増して──逃げきれなくなったエネルギーが大爆破を起こした。


かすみ「やりました……!」

侑「さすが、せつ菜ちゃん……!」
 「イブィ♪」

せつ菜「はい! 伝説のポケモンとはいえ、ひこうタイプ……! “メテオビーム”の直撃を食らって、無事ではいられないはずです……!」


爆発によって生じた煙の中から──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…ッッ!!!!!!!!」


爆音が轟き、洞窟内を反響しながら衝撃波となって襲い掛かってくる。


かすみ「ぴゃぁぁぁ!!?」

ランジュ「かすみ、危ない……!?」


衝撃で転がるかすみちゃんを咄嗟にランジュちゃんが受け止める。


ランジュ「大丈夫……!?」

かすみ「は、はいぃ……助かりましたぁ……」

ミア「これは……“ハイパーボイス”か……!?」

侑「みんな、吹き飛ばされないように一塊になって……!!」
 「ブ、ブィィ…!!!」

歩夢「う、うん……!」


全員で身を寄せ合って、衝撃を耐え忍ぶ。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」

かすみ「ぜ、全然倒れてませんよ……!?」

せつ菜「“メテオビーム”は直撃したはずなのに……!」

リナ『データがほとんどないから、確証はないけど……ダメージを見る限り、“らんきりゅう”にはひこうタイプの弱点をなくす効果があるのかもしれない』 || 𝅝• _ • ||

しずく「やはり、火口の中では、攻撃方法が限定されすぎてしまいます……」


相手は自由自在に空を飛び、さらに風を操って攻撃が出来る以上、このままじゃジリ貧だ……!


かすみ「なら……外におびき出しましょう……!」
 「──カインッ!!!」


かすみちゃんは、サニゴーンをボールに戻す代わりにジュカインをボールから出し、


かすみ「メガシンカ……!!」


“メガブレスレット”を光らせ、ジュカインをメガシンカさせる。


侑「どうするの!?」

かすみ「簡単です……!」
240 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:30:57.39 ID:Vp8VUFfr0

かすみちゃんは上を指差し──


かすみ「上の火口から外に飛び出せば、レックウザも追ってくるはずです!! 行くよ、ジュカイン……!!」
 「カインッ!!!」


かすみちゃんはジュカインの片腕に抱きかかえられながら、飛び出して行く。


しずく「ちょっと!? かすみさん!?」


ジュカインは、軽い身のこなしで、火口内の岩壁を蹴りながらどんどん上昇していく。

だけど──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザも黙って見ているわけもなく、かすみちゃんたちに向かって、“エアスラッシュ”を飛ばす。


かすみ「しず子!! 援護して!!」

しずく「ああもう……!! バリコオル!! “ひかりのかべ”!!」


かすみちゃんたちに当たる直前で、伸びてきた“ひかりのかべ”によって、“エアスラッシュ”の前進速度が落ち──その隙に、ジュカインは攻撃範囲から離脱するように、さらに上へ……。

その直後、“エアスラッシュ”が先ほどまでかすみちゃんたちが居た岩壁に炸裂し──その場所を抉り取る。


かすみ「しず子ーーー!! ナイスフォローーーー!!」

しずく「む、無茶するんだから……!!」


確かに、かすみちゃんはかなり無茶なことをしているようには見えるけど──


侑「私たちもかすみちゃんに続こう……! このままここに居ても、勝ち目がない……! ウォーグル!!」
 「ウォーグ!!!」


私はウォーグルを呼び寄せ、


せつ菜「ですね……! エアームド!!」
 「──ムドーーー!!!」


せつ菜ちゃんがエアームドの背に乗る。


栞子「私も行きます……!」


そう言って、栞子ちゃんがウォーグルを呼び戻すのと、ほぼ同時に、


ランジュ「栞子! 貴方は危ないから、来た道を戻って外から飛んできて……!」


ランジュちゃんがジジーロンの背に乗りながら、栞子ちゃんに向かって言う。


栞子「え!? で、ですが……!!」

せつ菜「確かに、全員で同時に昇るのは危険かもしれません……! 下は溶岩です……撃ち落とされでもしたら、一巻の終わりです……!」

しずく「ですね……。上に行くのはかすみさんたちに任せて、私たちは下から援護します……!」

侑「ごめん……! お願い……! 私たちが全員抜けたら、歩夢たちは来た道を戻って退避して……!」

歩夢「侑ちゃん……でも……」

侑「大丈夫……! 信じて……!」

歩夢「……わかった」
241 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:31:33.58 ID:Vp8VUFfr0

歩夢は心配そうな表情を浮かべていたけど──私の言葉を聞いて、コクリと頷いてくれた。


侑「せつ菜ちゃん! ランジュちゃん! かすみちゃんに続くよ!」
 「ウォーーグッ!!!!」

せつ菜「はい!!」
 「ムドーーーッ!!!!」

ランジュ「ええ、行くわよ!!」
 「ジーーロンッ!!!!」


気付けばもうかなり上の方まで登っているかすみちゃんたちを追いかけて、私たち3人も飛び立つ。

と同時に──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


私たちに向かって、“りゅうのはどう”が飛んでくる。


しずく「バリコオル!!」

歩夢「ウツロイド!!」

しずく「“ひかりのかべ”!!」
歩夢「“ミラーコート”!!」
 「…………」「──ジェルルップ…」


歩夢としずくちゃんの指示で、レックウザと私たちの間に“ひかりのかべ”が展開され、目の前に飛び出してきたウツロイドが“ミラーコート”で“りゅうのはどう”を弾き飛ばす。


侑「二人とも、ありがとう!!」

せつ菜「今のうちです……!!」


一気に急加速するが──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザが雄叫びをあげると共に──激しい“ぼうふう”が発生し、私たちの飛行を阻む。


せつ菜「うわぁ……!?」
 「ム、ムドー…!!!」

侑「くっ……!? 頑張って、ウォーグル……!!」
 「ウ、ウォーーーッ…!!!!」


風に煽られながらも、どうにか上を目指すが──あまりに風が強い。


かすみ「か、風が強すぎますぅ〜〜!!!」
 「カインッ…!!!」


かすみちゃんたちもあまりの暴風に、壁に張り付いたまま動けなくなっている。


侑「このままじゃ……っ!」
 「ブ、ブイ…」

ランジュ「ここはランジュに任せなさい……!! ジジーロン、“たつまき”!!」
 「ジーーロンッ!!!」


そう言いながら、ランジュちゃんのジジーロンが自分を中心とする巨大な“たつまき”を発生させ──“ぼうふう”を防ぐ風の壁を作る。
242 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:32:19.95 ID:Vp8VUFfr0

せつ菜「風が消えました……!」

ランジュ「“たつまき”の目の中なら、風はほとんどない! これなら、上にのぼれるはずよ!」

侑「うん……! 今のうちに、上まで抜けよう!! かすみちゃんも!!」

かすみ「は、はい!! ジュカイン!!」
 「カインッ!!!」


4人で一気に頂上を目指して、急上昇する。

しかし、


 「──キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


下の方で、レックウザが“たつまき”を突っ切って侵入してくる。


ランジュ「く……追ってくるのが早い……!」

侑「ウォーグル、急いで!!」
 「ウォーーッ!!!」


全速力で上へと逃げる──その間にも、


 「キリュリリュリシ…!!」


レックウザの口にエネルギーが集束されていく。


せつ菜「“りゅうのはどう”が来ます……!!」

侑「間に合わない……!!」

ランジュ「くっ……ジジーロン!! “りゅうのはどう”!!」
 「ジーロンッ!!!!」


殿を務めるランジュちゃんたちが下方に向かって、“りゅうのはどう”を発射する。


かすみ「ジュカイン!! かすみんたちも援護するよ!! “りゅうのはどう”!!」
 「カインッ!!!」


そして、私たちの上にいるかすみちゃんたちからも援護射撃が飛んできて、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


発射される、レックウザの“りゅうのはどう”と衝突し──ぶつかり合った両者のドラゴンのエネルギーが膨張し、爆発した。


ランジュ「くっ……!!」

侑「うわぁ……!?」


下方からの爆発によって、4人と4匹が上空に打ち上げられ──そのまま、火口の外へと放り出される。

爆風に煽られながらも、どうにか体勢を立て直す。


せつ菜「……ぬ、抜けました……!!」

侑「かすみちゃんは……!?」


ハッとして、かすみちゃんを探すと──


かすみ「お、落ちるぅ〜〜〜!!?」
 「カインッ…!!!」


上に吹っ飛んだあと、揚力を持たないかすみちゃんが火口の中に向かって落下を始めていた。
243 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:32:50.21 ID:Vp8VUFfr0

ランジュ「助けないと……!?」


でも、距離がある。それに、ジュカインの体重ごと支えるのは無理だ。

かすみちゃんにジュカインを戻すように指示する……!? 間に合うの……!?

頭の中で、激しく思考する中、


せつ菜「侑さーーーーんっ!!!」


真っ先に動き出したのは、せつ菜ちゃんだった。

声に振り返ると──


せつ菜「受け止めてくださいーーーーいっ!!!」

侑「え!?」
 「ブイ!?」


せつ菜ちゃんがエアームドの背中を踏み切って、私たちに向かって跳んでいた。


侑「わぁぁぁっ!!?」


驚きながらも、咄嗟に手を伸ばして、どうにかせつ菜ちゃんの手首を掴み──せつ菜ちゃんが宙ぶらりん状態になる。


せつ菜「侑さん、ナイスキャッチです!! エアームド!! “こうそくいどう”!!」

 「ムドーーーッ!!!」


せつ菜ちゃんが飛び降りて軽くなった分、機動力を増したエアームドが風を切って飛び出し、


せつ菜「かすみさんっ!! 足場を作ります!!! “てっぺき”!!!」

 「ムドーーーッ!!!!」


鋼鉄の翼を広げながら、垂直に下を向いて、ジュカインに背を向ける。


かすみ「……!! ジュカインッ!! 蹴って!!」
 「カインッ!!!!」


迫ってきたエアームドの背を蹴るようにして──ジュカインは火口周辺の地面へとジャンプする。


侑「やった……! ウォーグル!」
 「ウォーーッ!!!」


そして、そのままかすみちゃんの降り立った場所へと合流していく。


かすみ「た、助かりましたぁ……せつ菜先輩、ありがとうございます……死ぬかと思いましたぁ……」

せつ菜「私も侑さんがキャッチしてくれなかったら、たぶん死んでいたところでした!」

リナ『さらっと、命を懸ける辺り……さすがせつ菜さん……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

侑「ちゃんと、キャッチ出来てよかった……」

せつ菜「いえ! ちゃんと受け止めてくれると、信じていましたので!」

ランジュ「感動を分かち合うのもいいけど──お出ましみたいよ」


ランジュちゃんの言葉に、振り返ると──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」
244 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:34:07.52 ID:Vp8VUFfr0

火口の外へ飛び出した私たちを追って──レックウザがこちらを見下ろしていた。





    🎹    🎹    🎹





“デルタストリーム”によって、“らんきりゅう”が渦巻く中──急に轟音と共に、閃光が迸った、

ギョッとして、光の落ちたところを見ると──


かすみ「び、び、びっくりしましたぁ……!?」
 「カ、カイン…!!!」


それはジュカインの尻尾に落ちていた。

今のは──


せつ菜「“かみなり”……!?」


“かみなり”がメガジュカインの“ひらいしん”に向かって落下したところだった。

そして、間髪入れずに──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザが爪を構えて突っ込んでくる。


せつ菜「ウーラオス!!」
 「──ラオスッ!!!」

侑「ドラパルト!!」
 「──パルトッ!!!」

ランジュ「コジョンド!!」
 「──コジョッ!!」


レックウザが勢いを乗せたまま、“ドラゴンクロー”を振りかぶる。

それを──ギィンッ!!! と音を立てながら、


かすみ「斬撃なら、負けませんよ!!」
 「カインッ!!!」


ジュカインが“リーフブレード”で受け止める。

受け止めると同時に、あまりのパワーからか、ジュカインの足元がバキリとひび割れるが──

一瞬動きが止まった瞬間に、レックウザの顎下に潜り込む影──


せつ菜「“ばくれつパンチ”!!」
 「ラオスッ!!!!」

 「リュリシイィィィィィ…!!!!」


ウーラオスの拳が真下からレックウザの顎を跳ね上げる。

跳ねあがったレックウザの頭に向かって──


侑「“ドラゴンアロー”!!」
 「パルトッ!!!!」
 「メシヤーーーッ!!!!」「メシヤーーーッ!!!!」

 「リュシィィィ…!!」
245 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:34:49.26 ID:Vp8VUFfr0

音速の竜矢が直撃し、さらに仰け反らせ──


 「──コジョッ!!!!」


仰け反ったレックウザの上に、跳び上がったコジョンドが──


ランジュ「“とびひざげり”!!」
 「コジョン、ドッ!!!!」

 「キリュリリュシィィィィ…!!!!」


猛烈な蹴りをかまして、レックウザの体躯を地面に向かって蹴り飛ばす。

巨大な体躯が地面に崩れ落ち、大量の土煙を巻き起こしながら、地面を揺らす。


せつ菜「やはり、地上戦なら十分張り合えますね……!」

侑「うん!」


せつ菜ちゃんの言葉に頷くと同時に──土煙の中から、青白い光線が一閃。


 「パルトッ…!!!?」


直撃したドラパルトが氷漬けになる。


侑「ドラパルト……!?」

リナ『今の“れいとうビーム”……!?』 || ? ᆷ ! ||


さらに煙の中から──ジュカインに向かって大の字の業炎が飛び出してくる。


せつ菜「……! ウインディ!! “だいもんじ”!!」
 「──ワォンッ!!!!」


咄嗟にせつ菜ちゃんがウインディを繰り出し、ジュカインを庇って“だいもんじ”で攻撃を相殺する。

と、思ったら──今度は水流が飛び出してきて、


 「ワォンッ…!!!?」


ウインディを吹き飛ばす。


せつ菜「ウインディ……!?」

ランジュ「今度は“ハイドロポンプ”……!?」


多種多様な技に翻弄されている間に──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザが土煙の中を突っ切り、コジョンドに向かって突っ込んでくる。


ランジュ「太快了……!?」


ランジュちゃんがそのスピードに驚く頃には──


 「コジョッ…!!!」
ランジュ「コジョンド……!」


コジョンドを撥ね飛ばし、そのまま直角に曲がるようにして、天に舞い上がっていく。
246 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:35:20.82 ID:Vp8VUFfr0

せつ菜「今の技は……“しんそく”……!」


空に舞い上がったレックウザは真下を向き、息を吸い込むのが見えた。

──“ハイパーボイス”の予兆。


かすみ「わ、やばっ!?」


あんな上空から、強烈な音波攻撃を放たれたら避ける場所がないし、一網打尽にされてしまう。


侑「ニャスパー!!」
 「──ウニャァーー!!!」

かすみ「……! 加勢します!! ブリムオン!!」
 「──リムオンッ!!」


2匹が同時に上を向き──


 「──キリュリリュシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!!!!!!!!!!!」

侑・かすみ「「“サイコキネシス”!!」」
 「ウニャァァァァァ!!!!!」「リーーームオーーーーンッ!!!!!!」


爆音に、念動力の衝撃波をぶつける。

2匹のフルパワーの“サイコキネシス”をぶつけ、減衰させてなお──地上に響く音波が脳を揺さぶる感覚に襲われる。


侑「ぐ、ぅぅぅぅっ!!!」

かすみ「ぐぅぅぅぅっ!!! うるさいですぅぅぅぅっ!!!!」

せつ菜「くっ……!!!」

ランジュ「太吵了……!!」


4人で耳を押さえて耐える。

やっと音が収まる頃には、耳がキンキンしていた。


侑「……っ……イーブイ……平気……?」
 「ブ、ブィィ…」


でも、これくらいで済んでよかった。

何も対策をしていなかったら、もっと酷いことになっていたはずだ。

でも、


せつ菜「……皆さんっ!! 次が来ます……!!」


息をつく暇もなく、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


逆巻く風がレックウザの周囲で複数の風の刃を形成していく。


ランジュ「また“エアスラッシュ”……!」

リナ『でも、今度は複数……!?』 || ? ᆷ ! ||


あれだけの数……捌ききれる……!?

そう思ったけど、
247 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:35:50.71 ID:Vp8VUFfr0

かすみ「ちょうど……こっちも温まってきたところなんですよね……!」
 「カインッ!!!」


かすみちゃんとジュカインが空のレックウザを見上げながら息巻く。


かすみ「侑先輩!! 足場、作ってください!!」

侑「! わかった! イーブイ! “すくすくボンバー”!!」
 「ブイッ!!」


イーブイが、地面にタネを撒き──


かすみ「ジュカイン! 成長させますよ!」
 「カインッ!!!」


ジュカインが背中の栄養満点のタネを地面に落とすと──とてつもないスピードで樹木が成長していく。

成長する樹木の先に乗って、ジュカインとかすみちゃんは一気に上空へと、持ち上げられていく。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!!」


直後、複数発射される、“エアスラッシュ”。


かすみ「ジュカイン!! 集束!!」
 「カインッ!!!!」


ジュカインが腕にソーラーパワーを集束し──集束“ソーラーブレード”を作り出す。


かすみ「かすみんとジュカインに──斬れないものなんて、ありませんっ!!」
 「カインッ!!!」


ジュカインが連続で刃を振るい、次々と降り注いでくる“エアスラッシュ”を斬り伏せる。


ランジュ「かすみ……! すごいわ……!」


全ての“エアスラッシュ”を斬り伏せると同時に──


かすみ「行くよっ!!」
 「カインッ!!!!」


かすみちゃんとジュカインは樹木のてっぺんから、跳躍し──


かすみ「“ソーラーブレード”!!」
 「カインッ!!!!」

 「キリリュリシイィィィィィ…!!!!?」


レックウザの頭部に一太刀を加え──レックウザは痛みに悶えて、大きな鳴き声をあげる。


かすみ「どんなもんですかっ!!」
 「カインッ!!!」


だけど、レックウザはすぐに平静さを取り戻し──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!」


大きな尻尾を振るって、


かすみ「……やば!? 逃げ──」
248 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:36:24.99 ID:Vp8VUFfr0

空中にいるかすみちゃんとジュカインに叩き付けた。


侑「フィオネ!! ニャスパー!!」
 「──フィーーッ!!!」「ウニャァ!!!」


ボールから飛び出したフィオネがすぐさま水を噴射し、それをニャスパーが球状にする。

そこに向かって──ザブンッ!!!


かすみ「──ごぼがぼぼ……」


かすみちゃんとジュカインが着水したのを確認すると同時に、サイコパワーを解除し、水球が壊れてザバァと水が流れ出す。


侑「かすみちゃん、大丈夫!?」

かすみ「は、はい……助かりました……」
 「カ、カイン…」

かすみ「でも一発かましてやりましたよ……!」

せつ菜「ですが……まだ、終わりにはしてくれそうにありませんね」

かすみ「へっ?」


レックウザを見やると──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


全身に風を纏いながら、こちらに狙いを定めていた。


侑「あの技……!」

せつ菜「前にも見ましたね……!」

リナ『“ガリョウテンセイ”……!?』 || ? ᆷ ! ||


回避の準備を整える暇もなく──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!」


レックウザが猛スピードで突っ込んでくる。


せつ菜「ウーラオスッッッ!!!!!!」
 「ラオスッ!!!!!!!」


せつ菜ちゃんとウーラオスが脚を踏み鳴らしながら、私たちの前方に躍り出る。


せつ菜「“あんこくきょうだ”ッッッ!!!!!」
 「ラオスッッッ!!!!!!!」


“ガリョウテンセイ”に合わせるように──ウーラオスが強烈な正拳突きを真正面からぶつける。

インパクトの瞬間、レックウザの軌道が逸れ、私たちのすぐ横の地面に突き刺さるように落下し──

直後、衝撃波が私たちに襲い掛かり、前回同様──全員吹き飛ばされる。

飛ばされながらも、


侑「くっ……!! ウォーグル!!」
 「ウォーーーーッ!!!!」


すぐさま、ウォーグルに掴まり、衝撃と“らんきりゅう”の渦巻く空の中で、
249 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:37:05.70 ID:Vp8VUFfr0

 「ウニャァーーー」「フィオ〜〜〜!!!」

侑「ニャスパー!! フィオネ!! 戻れ!!」


飛ばされている手持ちたちにどうにかボールを投げて、控えに戻す。


ランジュ「な、なんてパワーなの……!?」
 「…ジーロンッ」

せつ菜「そ、逸らすのがやっとです……!」
 「ムドーー…!!!」


ランジュちゃんとせつ菜ちゃんも同じような感じで──


侑「かすみちゃんは!?」


周囲を見回すと──


かすみ「──ぴゃぁぁぁぁぁ!!!?」
 「カインッ…!!!」「リムオン…!!?」


吹っ飛ばされていく、かすみちゃんとジュカイン、それに近くにいたブリムオンの姿が見えた。

かなり吹き飛ばされていて──このままだと、山の麓まで落ちかねない。でも、今度こそ、助けに行くのが間に合わない距離。


侑「かすみちゃんっ!!!」

かすみ「──こ、の、く、ら、い、でぇぇぇぇ……!! ダストダス!!」
 「──ダストダァ!!!!!」


かすみちゃんは空中でダストダスを繰り出し──


かすみ「腕ぇ!! 伸ばしてぇ!!」
 「ダストダァッ!!!!」


ダストダスが腕を目いっぱい伸ばして──どうにか崖を掴む。


かすみ「ブリムオンッ!! “サイコキネシス”!!」
 「リムオンッ!!!!」


そして、無理やりダストダスの体をサイコパワーで浮かして、自由落下を免れる。

山肌に向かって下降しながら──


かすみ「みなさーーーーーんっ!!!!! かすみんが戻るまで、持ちこたえてくださぁぁーーーーーいっ!!!!」


叫び声と共に──かすみちゃんは山の陰に隠れて見えなくなってしまった。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザが再び空に飛び立ち、こちらを睨みつけてくる。


侑「みんな、一旦下に降りよう……!」

せつ菜「そうですね……! 空中戦では分が悪いですし……!」

ランジュ「わかったわ……!」


3人で地上に降下し、再びレックウザを見上げる。
250 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:37:42.83 ID:Vp8VUFfr0

侑「強いね……レックウザ……」

ランジュ「あら、怖気付いちゃったの?」

せつ菜「まさか。侑さんがこんなことで諦めるはずありません! ですよね!」

侑「うん……!」


そう言いながら、私たちは次のポケモンを繰り出す。


侑「行くよ、ライボルト!!」
 「──ライボォッ!!!」

せつ菜「ゲンガー!! 出番ですよ!!」
 「──ゲンガァーー!!!」

ランジュ「ギャラドス、出てきなさい」
 「──ギシャァァァァ!!!!」


ポケモンを繰り出すと同時に、私とせつ菜ちゃんは腕を前に構え、ランジュちゃんは髪をかき上げ、耳を外に晒す。


侑・せつ菜・ランジュ「「「メガシンカ!!!!」」」


“キーストーン”が光り輝き──ライボルトがメガライボルトに、ゲンガーがメガゲンガーに、ギャラドスがメガギャラドスへと姿を変える。


せつ菜「向こうは大技を出した直後で、少し動きが落ち着いていますね……!!」

ランジュ「ええ! 今のうちに、パワーで押しきるわよ!!」

侑「まずは、地面に落とす……!!」
 「ライボォッ!!!!!」


ライボルトが稲妻のような速度で走り出し── 一気にレックウザの真下まで移動する。

ライボルトの体はイカズチを引き寄せる導雷針そのものだ。


侑「“かみなり”!!」

 「ライボォッ!!!!」


ライボルトが真下で自身に向かって“かみなり”を落とし、雷撃を直撃させる。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザは多少表情を歪めるが──ダメージがそこまで通っている印象も受けない。


侑「やっぱり、“デルタストリーム”の影響ででんきタイプは相性が悪い……」


だけど、私たちの役割は足止めだ。強力な電撃で痺れさせる……!


 「ライボォッ!!!!」


ライボルトが“かみなり”を確実にヒットさせながら──


せつ菜「ゲンガー……!! 行きますよ!!」
 「ゲンガァッ!!!!」


ゲンガーが集束させた特大の“シャドーボール”をレックウザに向かって発射する。

“かみなり”を受け続け、動けないレックウザに“シャドーボール”が炸裂する。


 「キリュリリュリシイィィィィィ………!!!」


影の球が着弾と同時に爆発し、その衝撃で吹き飛ばされ、宙で後退るレックウザ。
251 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:38:43.88 ID:Vp8VUFfr0

ランジュ「ランジュたちの準備も出来たわ……!」
 「ギシャラァァァ!!!!」


私たちが攻撃をしている間に“りゅうのまい”で能力を上げていたギャラドスが──“とびはねる”。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!」


大きな体躯を躍動させながら、飛び跳ねたギャラドスは──レックウザの真上から落下し、


ランジュ「“かみくだく”!!」
 「ギシャラァァァァ!!!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!??」


強靭な顎で、レックウザの刃状の顎を“かみくだく”。

鋭い牙を立てられ──レックウザの顎に、ビシリとヒビが入る。


侑「……! 効いてるよ! ランジュちゃん!」

ランジュ「当然でしょ! ランジュのポケモンなんだから!」

せつ菜「メガシンカのパワーなら十分に渡り合える……! このまま、押し切りましょう!!」


畳みかけようとした、まさにそのとき──


 「キリュリリュリシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」


劈く雄叫びと共に──ギャラドスが噛み付いたままのレックウザが、激しく電撃をスパークさせた。


 「ギシャラァァァ…!!!?」

ランジュ「な……!? “10まんボルト”……!?」


直接電撃を受けたギャラドスは堪らず噛み付いた顎を離してしまい──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


逆にその身をレックウザの鋭い顎で噛みつかれ──


 「ギシャラァァァッ!!!!!?」


そのまま、レックウザは噛み付いたギャラドスごと、山肌に向かって急降下してくる。


ランジュ「ギャラドス……!?」

 「ギ、シャラァァァ……」


レックウザは地面にギャラドスを叩き付け──さらに、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


至近距離から連続で“エアスラッシュ”を放って、ギャラドスを攻撃する。


 「ギ、シャ、ラァァァァ…」


猛攻により、一気にギャラドスが戦闘不能まで追い込まれる。
252 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:39:33.57 ID:Vp8VUFfr0

ランジュ「侑……!! ギャラドスごと、やりなさい!!」

侑「……っ! ごめん……!! “かみなり”!!」

 「ライボォッ!!!!!」


ライボルトが、ギャラドスごと巻き込んで“かみなり”を発生させる。

“かみなり”の直撃を受け、動きを鈍らせたつもりだったが──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


激しい雷光の中でも、レックウザは動いていた。


 「ラ、ライボッ…!!!!」


雷撃を受けながらも、レックウザ自らの尻尾を打ち鳴らすように振るい──それに呼応するように、ライボルトの足元から大地のエネルギーが噴出して、


 「ライボォォオッッ…!!!?」


ライボルトを吹き飛ばした。


侑「だ、“だいちのちから”……!?」


ライボルトまで一瞬で戦闘不能に──

そのとき、


 「أ̷͕͈͈͆͊̂̀͂̾͂̃̿̂ͅن҉̱͚̬͍̘̟͎̙́̏̉̓́ا̸͈̞̭͎̰͚̥̮̮̱͔̄̓̌͒͂̇́́̑ ل̸̫̝͖̝̘̝͍̦̝͕̈͒̉̄͛ع̴͎͇̗̯͉̳̰̫͚̘͇͙̽̀̄̈́̐̽̃̈́̓́̓ن̷̗̲̠͎͖͖͖͉͂̃̈́̋̌̀̐̑̆͐͊ ي̶͙̙͖̙̘͔͖̬̰͙́̊̂͂̐̃م҉͔͚̳̦̗̍̀̀̌̿̚ك҈̖͍͙͍̞̩̾͂͒̈́̌̿̍̚ͅن҈̰̫͍͙͓̬͚̍̉͊̿̌̚ك҉̲̥̥̮̗̫͕̟̋̔̈̇̅̓́̀̍͆ ا҉̞͙̖͍̭̈̍̏̽ͅل̷͈̫̮͈̙͔̖̠̞͒̽̍͑̎̓̑̉̈͗͊ق̸̩̤̝͓̥̜̜̝̠̐͊͛̍̔̈́̿̍͋̓ي̶͖͎͚͇̥̙̩̊̔͂̅̿ا̴͔̣̗̲̫̳̠̫̙̦̃̉̓͛ͅͅم̸̟͓͇͚̯̜͓̥̮̞͚͆̑̓̌ ب҈͚͎͓̯͖̥̓̈̅̆ͅه̷͚͉̦̝̥̘͉̩͙̥̆̌͂̄̑́̊̽̐͑」


侑「っ……!?」


突然横から、耳を覆いたくなるような、身の毛もよだつ旋律が流れ出す。

それが、ゲンガーの“ほろびのうた”だと気付いたときには──


 「キリュリリュリシイィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」

せつ菜「うわぁっ……!?」
 「ゲンガァッ…!!!!?」


“ほろびのうた”を歌うゲンガーを“ハイパーボイス”でピンポイントに攻撃して、音を掻き消しながら、せつ菜ちゃんたちを吹き飛ばす。


侑「せつ菜ちゃん!?」


私はせつ菜ちゃんに駆け寄る。


せつ菜「へ、平気……です……。……あまり、大きく息を吸い込んでからの攻撃ではなかったので……」


せつ菜ちゃんは表情を歪め、耳を押さえながら立ち上がる。

でも、レックウザの“ハイパーボイス”は本来ゴーストタイプには効果がないはずなのに、その衝撃波だけで、ゲンガーごと吹き飛ばした。

トレーナーに当たったのが余波とは言え、せつ菜ちゃんにも少なくないダメージがあったのは目に見えて明らかだった。


ランジュ「侑!! せつ菜!!」

侑・せつ菜「「……!」」


ランジュちゃんの声でハッと顔を上げると──再びレックウザが全身に風を纏い、こちらに狙いを定めていた。

──“ガリョウテンセイ”の構えだ。
253 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:40:47.95 ID:Vp8VUFfr0

リナ『3人とも一旦逃げて!?』 || ? ᆷ ! ||


叫ぶリナちゃん。でも──もうこの距離で狙いを定めたレックウザから逃げる術なんてない。


せつ菜「ウーラオスッ!!!」
 「──ラオスッ!!!」


再びボールから飛び出すウーラオスが構える。


 「──キリュリリュリシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」

せつ菜「“あんこくきょうだ”ァッ!!!」
 「ラオスッ!!!!!!!」


再び真正面から撃ち合う──だけど、今回は咄嗟の判断だったため、完璧に攻撃に威力を乗せ切れなかったのか、


 「ラオ、スッ…!!!!」
せつ菜「……っ……!!」


満足に逸らすことも出来ず──目の前で衝撃波となって、私たちを襲う。


せつ菜「……っ……侑さんっ!!!」

侑「せつ菜ちゃ……!?」


咄嗟に、せつ菜ちゃんが私の盾になるように、衝撃波に背を向けながら、私に飛び付いてきた。

────…………。

…………。

……。

  「ブイッ‼ ブイィィッ!!!!」
 『──うさん──……侑さんっ!! せつ菜さんっ!!』

侑「……ぁ……ぐ、ぅ…………」
 「ブイッ…!!!」

リナ『侑さん……!!』 || > _ <𝅝||


イーブイとリナちゃんが呼び掛ける声で、目が醒めると、全身を鈍器で殴られたかのような激痛に襲われる。

痛みと衝撃で、意識が飛んでいたらしい。

目を開けると──


せつ菜「…………」

侑「……せつ、菜……ちゃ……」


せつ菜ちゃんが私の上に覆いかぶさるように……頭から血を流しながら、気絶していた。


侑「せつ菜……ちゃん……私、を……かば、って……っ……」


ゆっくりと身を起こすと──


ランジュ「ローブシン!!! エレキブル!!! レックウザを侑たちに、近付けさせちゃダメ!!!」
 「ブシンッ!!!!」「キブルッ!!!!」


ランジュちゃんがぼろぼろになりながらも、ポケモンに指示を出し続けて戦っていた。

エレキブルが電撃で牽制し、ローブシンが両手の柱を振るいながら、レックウザを追い払って近寄らせないようにしているところが目に入る。
254 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:41:33.60 ID:Vp8VUFfr0

侑「どれ、くらい……気絶してた……」

リナ『ご、5分くらい……』 || 𝅝• _ • ||


つまりランジュちゃんは5分もの間、私たちを守るために一人であのレックウザの猛攻を捌いていたということだ。

私はボールから、フィオネとニャスパーを出す。


 「フィオ…」「ウニャァ」
侑「リナ……ちゃん……」

リナ『な、なに……?』 || 𝅝• _ • ||

侑「フィオネと、ニャスパーに指示して……せつ菜ちゃんの応急処置……して、あげて……」


私は応急処置道具の入ったバッグをその場に置きながら立ち上がる。


リナ『侑さんも大怪我してる……!!』 || > _ <𝅝||

侑「でも……!! ランジュちゃんをいつまでも、一人で戦わせるわけにいかない……!!」
 「ブイ…!!!」


イーブイと一緒にランジュちゃんのもとへ駆けだす。

その間にも、


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」

 「キブルッ…!!!」


暴れまわるレックウザが、エレキブルの頭を手で掴み持ち上げる。


ランジュ「くっ……!! エレキブル!! “ほうでん”!!」

 「キブルッ!!!!」


エレキブルは逃れるために“ほうでん”するが、レックウザは意にも介さず。


 「キリュリリュリシイィィ!!!!」

 「キブルッ…!!!!」


エレキブルを地面に叩き付けて戦闘不能に追い込む。

そして、爪を構えながら、ランジュちゃんを狙う。


ランジュ「ローブシン!! “ぶんまわす”!!」
 「ブシンッ!!!」


大きな石柱をぶん回して、レックウザの爪を弾くように振るうが──バキンッ!


ランジュ「……っ!!」
 「ブシンッ…!!!」


ローブシンの持っている石柱が、爪撃によって、割り砕かれる。

それと同時に──レックウザの振るった尻尾が、猛スピードで横から薙ぐように迫っていた。


ランジュ「……くっ……!?」

侑「イーブイッ!!! “こちこちフロスト”ッ!!!!」
 「ブゥゥゥーーーイィィィィ!!!!!!」


黒い氷がレックウザとローブシンの間に盾のように迫り出す。

だけど、薙がれる尻尾の勢いを止めることは出来ず──氷をバキバキと割り砕きながら、ランジュちゃんもろとも尻尾を叩き付けられて、吹き飛ばされ──
255 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:43:02.44 ID:Vp8VUFfr0

ランジュ「っ゛……ぅ゛……」

侑「ぐ……っ……」


二人で地面を転がる。


ランジュ「……っ……氷の壁のお陰で……威力がちょっと減った、みたいね……」

侑「大丈夫……? ランジュ、ちゃん……っ……」

ランジュ「お陰様で……ね……」


ランジュちゃんは腕を押さえながらよろよろと立ち上がる。


ランジュ「でも……任せてくれれば、ランジュが……片づけておいたのに……」

侑「あはは、ごめん……心配でさ……」


二人で立ち上がると──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


レックウザがこちらを見下ろしていた。

そして、


 「キリュリリュリシイ…キリュリリュリシィ…」


何かを語りかけてくる。


ランジュ「……ふふ……何言ってるかわかる……?」

侑「……なんとなくは……」


「諦めろ」とか、「力の差は歴然だ」とか、「やはり思ったとおりだ」とか……きっとそういう感じの内容なんだと思う。

でも──


侑「諦めないよ……」


だって、私には──


 「ブイ…!!」
侑「まだ、一緒に戦うポケモンが──相棒がいるから……」

 「…………。キリュリリュリシィ…」


レックウザが身に風を纏う。恐らく──“ガリョウテンセイ”。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザがこちらに狙いを定める。

でも、諦める気なんて、さらさら起きなかった。

だって──


侑「……まだ、私たちには……仲間がいるから……!!」


レックウザが、飛び出そうとした瞬間──
256 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:43:40.62 ID:Vp8VUFfr0

 「──ウォーグル!! “ブレイブバード”!!」
 「──アーマーガア!! “ゴッドバード”!!」

  「──ウォォォォォグッ!!!!!!」
  「──ガァァァァァァァッ!!!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!??」


2匹の鳥ポケモンが──レックウザに真横から突撃し、突き飛ばした。


侑「ほらね……!」

しずく「侑先輩!! ランジュさん!!」

栞子「ランジュ!! 侑さん!!」


しずくちゃんと栞子ちゃんがこちらに向かって駆けてくる。


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザが飛び立とうとするところに向かって──


歩夢「サスケ!! ウツロイド!! “ヘドロウェーブ”!!」
 「シャーーボッ!!!」「──ジェルルップ…」

 「キリュリリュリシイィィィィィ……!!!」


ヘドロの波が襲い掛かり、レックウザが飛び立つことを阻害する。


侑「歩夢……っ」

歩夢「侑ちゃん……!!」


歩夢が駆け寄ってきて、私を支えてくれる。


侑「ナイスタイミング……」

歩夢「ごめんね……こんなにボロボロになるまで……」

 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!!!!!!」


レックウザが咆哮をあげながら、“ヘドロウェーブ”を吹き飛ばすが──


 「──ダメですよっ!!」
  「カインッ!!!!」


極太の光の剣が──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…!!!!」


またしても、レックウザを地面へと叩き落とす。

この攻撃──“ソーラーブレード”……。


侑「かすみ……ちゃん……」

かすみ「皆さん……!! お待たせしました……!!」
 「カインッ!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ……!!!!」


度重なる妨害に、レックウザが怒りを顕わにし、体を持ち上げるが──
257 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:44:45.91 ID:Vp8VUFfr0

ミア「Stay there. Jigglypuff, "Gravity".」
 「プュッ」

栞子「ピィ! “じゅうりょく”です!」
 「ピィッ!!!」

 「リュリシイィィィィィ……!!!!」


ぐぐぐっと、レックウザの頭が下がっていく。


ミア「無駄だよ、2匹掛かりで“じゅうりょく”を発生させた」

ランジュ「ミア……!」

ミア「全く何やってるんだ……ボロボロじゃないか……ランジュらしくない」

ランジュ「ホントにね……!」


みんなが──駆けつけてくれた。

もう私はボロボロの満身創痍だけど──


侑「……みんなが居てくれれば……負ける気なんて、これっぽっちもしないよ……!」

 「──その……とおり、です……!」

侑「……!」


声に振り返ると──


せつ菜「……みんなが揃えば……負けることなんて、ありえませんよ……!」

侑「せつ菜ちゃん……!」


せつ菜ちゃんが足を引き摺りながら、こちらに歩み寄ってくる。


リナ『応急処置はした……でも、無理しないで』 || > _ <𝅝||
 「フィオ〜」「ウニャァ〜」

せつ菜「いえ……寝てなんていられませんよ……皆さんが、いるんですから……!」


これで──全員、揃った。

すごいなと思った。

あんなに絶望的な戦いだったのに、強さを見せつけられたのに、負ける気なんて、これっぽっちもしなかった。

そして、そんな私の気持ちに呼応するかのように──


 「ブィッ…!!!」


イーブイの体が光り輝く。


侑「……うん!」
 「ブイッ!!!!」


イーブイが構えるのを見て、


 「キリュリリュリシイィィィィィ……!!!!」


レックウザもその身に風を纏う。

“ガリョウテンセイ”の構え。

その威力は何度も見たけど──
258 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:45:25.65 ID:Vp8VUFfr0

侑「大丈夫……イーブイとのキズナが、ここにあるから。……旅で出会った全ての人たち、全てのポケモンたちとの繋がりがここにあるから……」
 「ブイッ!!!!!」


イーブイの光がより強く増していく。

イーブイと私の、全部の大好きの気持ちを込めた、この一撃で──証明するから……!!


侑「……人とポケモンのキズナは──負けたりしないって!!!」
 「ブィィィィッ!!!!!!」

 「キリュリリュリシイィィィィィ!!!!!!!!!」


2匹のポケモンが──同時に飛び出した。

片や翡翠色の龍神。

片や人とキズナを交わした、小さきポケモン。

両者が──“ブイブイブレイク”と“ガリョウテンセイ”がぶつかり合う。

巨大な力がぶつかり合い、エネルギーとなって爆ぜ散っている。

風は乱れ、光が周囲を眩く照らす。

ただ、不思議と──確信があった。


 「ブゥゥゥゥイィィィィィッ!!!!!!!」

 「キリュリシイィィィィィ…………!!!!!!!!!」


──私のイーブイは……絶対に負けないって。





    🎹    🎹    🎹





 「キリュリリュリシィ……」


レックウザの姿が……メガレックウザから元の姿に戻るのと同時に──ゆっくりと、その巨体が崩れ落ちたのだった。


侑「…………勝った」


勝つと同時に、身体の力が抜けて倒れそうになる。


歩夢「侑ちゃん……!!」


そんな私を、歩夢が支えてくれる。

そして──


 「ブィィィィッ!!!!」


イーブイが私の胸に飛び込んでくる。

私はそんなイーブイを受け止めて、


侑「ふふ……すごいよ、イーブイ……。……やっぱ、私の最高の相棒だ……」
 「ブイ…♪」


イーブイの頭を撫でながら、ぎゅっと抱きしめた。

そして、みんなが駆け寄ってくる。
259 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:46:08.98 ID:Vp8VUFfr0

かすみ「侑先輩!! やりましたよ!! かすみんたち!!」

しずく「この地方を……守ったんですね……。すごいです……」

せつ菜「仲間と共に、駆け抜けたんです……最後は勝たないと、締まりませんよね……えへへ」

リナ『侑さんっ!! すごかったっ!! みんなも、勝ててよかったっ!! 無事でよかったっ!!』 || > _ <𝅝||

ランジュ「まぁ、ランジュに掛かれば……これくらい朝飯前だったけどね……!」

ミア「全く……キミたちは、本当にPerfectだよ……」

栞子「皆さん……本当に、ありがとうございます……」


栞子ちゃんは私たちに頭を下げ、お礼を言ったあと──ゆっくりとレックウザの方へと歩いて行く。


かすみ「し、しお子……!? 危なくない……!?」

栞子「大丈夫です」


栞子ちゃんはゆっくりとレックウザの前まで進み、目の前で足を止める──

栞子ちゃんの気配を察したのか……レックウザは倒れたまま、ゆっくりと目を開け、栞子ちゃんを見つめる。


 「キリュリリュリシィ…」

栞子「……ありがとうございます。龍神様」

 「キリュリリュリシィ……」

栞子「……それでは……」

 「リュリシィ…キリュリリュリシイィィィィィ…リュリリュリシイィィィィィ…」

栞子「……尊大なお言葉……感謝いたします。……今まで、長きに渡り、この地方を見守ってくださって……ありがとうございました……」


レックウザはその言葉を聞くと、ゆっくりとその身を持ち上げた。
260 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:46:40.97 ID:Vp8VUFfr0

かすみ「わひゃぁ!!? 起きた!? ま、まだやるってんですか!?」

しずく「たぶん、大丈夫だと思うよ」

かすみ「ほ、ホントに……?」

栞子「……はい。本当です」


栞子ちゃんが頷くと──


 「キリュリリュリシイィィィィィ…」


レックウザは、静かに鳴いて──空へと、飛び立っていった。

遥か、遥か高くへと──


栞子「…………」


栞子ちゃんは──


栞子「…………龍神様」


レックウザの消えていった空を見つめながら……少しだけ、寂しそうな顔をしていたのが、印象的だった。


ランジュ「……栞子」


ランジュちゃんが、栞子ちゃんの背中を叩く。


栞子「……ランジュ」

ランジュ「……今度……一緒に、月を見に行きましょう」

栞子「……はい。喜んで」


栞子ちゃんは、柔らかい笑顔で、ランジュちゃんの言葉に答えるのだった。



261 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:47:13.98 ID:Vp8VUFfr0

>レポート

 ここまでの ぼうけんを
 レポートに きろくしますか?

 ポケモンレポートに かきこんでいます
 でんげんを きらないでください...


【天睛山】
 口================== 口
  ||.  |○         ●             /||
  ||.  |⊂⊃                 _回/  ||
  ||.  |o|_____.    回     | ⊂⊃|  ||
  ||.  回____  |    | |     |__|  ̄   ||
  ||.  | |       回 __| |__/ :     ||
  ||.○⊂⊃      | ○        |‥・     ||
  ||.  | |.      | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     ||
  ||.  | |.      | |           |     ||
  ||.  | |____| |____    /      ||
  ||.  | ____ 回__o_.回‥‥‥ :o  ||
  ||.  | |      | |  _.    /      :   ||
  ||.  回     . |_回o |     |        :  ||
  ||.  | |          ̄    |.       :  ||
  ||.  | |        .__    \      :  .||
  ||.  | ○._  __|⊂⊃|___|.    :  .||
  ||.  |___回○__.回_  _|‥‥‥:  .||
  ||.       /.         回 .|     回  ||
  ||.    _/       o‥| |  |        ||
  ||.  /             | |  |        ||
  ||. /              o回/         ||
 口==================口
262 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/21(土) 12:47:45.03 ID:Vp8VUFfr0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.84 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.80 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.81 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.78 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.79 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.75 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:289匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.69 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.70 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.74 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:269匹 捕まえた数:24匹

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.85 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.78 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.75 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.76 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.75 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.77 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:311匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.69 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.69 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.69 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.68 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.69 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.69 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:292匹 捕まえた数:23匹

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.80 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.88 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.84 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.86 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.82 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.84 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:218匹 捕まえた数:51匹

 主人公 栞子
 手持ち ピィ♀ Lv.34 特性:メロメロボディ 性格:やんちゃ 個性:かけっこがすき
      ウォーグル♂ Lv.72 特性:ちからずく 性格:れいせい 個性:かんがえごとがおおい
      ウインディ♀ Lv.71 特性:もらいび 性格:さみしがり 個性:のんびりするのがすき
      ゾロアーク♂ Lv.69 特性:イリュージョン 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      イダイトウ♀ Lv.68 特性:てきおうりょく 性格:さみしがり 個性:にげるのがはやい
      マルマイン Lv.69 特性:ぼうおん 性格:きまぐれ 個性:すこしおちょうしもの
 バッジ 0個 図鑑 未所持

 主人公 ミア
 手持ち プリン♂ Lv.76 特性:フレンドガード 性格:のんき 個性:ちょっぴりみえっぱり
 バッジ 0個 図鑑 未所持

 主人公 ランジュ
 手持ち コジョンド♀ Lv.81 特性:すてみ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      ジジーロン♂ Lv.77 特性:ぎゃくじょう 性格:れいせい 個性:ひるねをよくする
      エレキブル♂ Lv.78 特性:でんきエンジン 性格:せっかち 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ローブシン♂ Lv.78 特性:てつのこぶし 性格:ゆうかん 個性:うたれづよい
      ギャラドス♂ Lv.76 特性:じしんかじょう 性格:いじっぱり 個性:あばれることがすき
      パラセクト♂ Lv.71 特性:しめりけ 性格:ようき 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 8個 図鑑 未所持


 侑と 歩夢と かすみと しずくと せつ菜と 栞子と ミアと ランジュは
 レポートに しっかり かきのこした!


...To be continued.



263 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:30:27.76 ID:WJlAx85d0

■FINAL Chapter 『虹の咲く場所』





──さて、あの後……当たり前だけど、私とせつ菜ちゃんは病院に行くなり即入院だった。

真姫さんからは何をしたらこうなるんだと、こっぴどっく説教を受けたし──答えられないけど──あちこちの骨にヒビが入っているわ、折れているわで当分はベッド生活を余儀なくされた。

特に、せつ菜ちゃんは肺に肋骨が刺さるなどの重傷で、一歩間違えれば相当危ない状況だったらしい。

当の本人は、


せつ菜「……確かに、なんだか息苦しいなとは思っていましたけど……そんなことになっているなんて、全然気付きませんでした!」


なんて無邪気に言うもんだから、真姫さんから私以上にこっぴどく叱られたとかなんとか……。

そして、ランジュちゃんも怪我をしていたらしいけど……私たちよりも酷い傷ではなかったらしく、すぐに退院となったようで……。

最後に──


ランジュ「また、貴方たちに会いに来るわ! そのときはまた勝負しなさい! もちろん、ランジュが全戦全勝だけど!!」

ミア「やれやれ……ま、ランジュらしいけどね」


そう残して去っていった。

その後……ミアちゃんと共に、あちこちの大会で活躍しているという話を風の噂で聞く。

そして、栞子ちゃんは──


歩夢「それじゃ……一度、翡翠の里に帰るんだね」

栞子「はい。……龍神様のことは報告はしましたが……翡翠の民が存在していた理由がなくなってしまったので……。今後、翡翠の民たちがどう生きていくかも含めて、しっかり話し合ってこようと思います」

かすみ「話し合って、最終的にしお子はどうするの?」

栞子「そうですね……。……落ち着いたら……旅に出ようかなと」


栞子ちゃんは……窓の外の空をぼんやりと見つめながら言う。


栞子「私も……皆さんのように、ポケモンたちといろんな世界を見てこようかなと」

歩夢「……うん、いいと思う」

しずく「是非、その旅が終わったら……栞子さんが旅で見て、感じたことを教えてくださいね……!」

栞子「はい、必ず」

せつ菜「旅の中で困ったことがあったら、いつでも連絡してください! 駆けつけますから!」

栞子「ふふ、出来る限り自分で頑張りますが、本当に困ったときはお願いしますね」

侑「ポケモンたちとの旅……! 楽しんできてね!」
 「ブイ♪」

栞子「はい! まだ、もうちょっと先にはなってしまいますが……。……それでも、今から旅立つ日のことを考えるだけでワクワクしています。……素敵な旅が出来そうな予感でいっぱいです」

かすみ「あ、それじゃ、かすみんオトノキ地方のおいしいものの情報いっぱい送ってあげるね!」

栞子「ふふっ、それは楽しみです♪ 是非、お願いしますね♪」

リナ『帰って来るときは言ってね! みんなのスケジュール調整、私がするから♪』 || > ◡ < ||

栞子「はい! よろしくお願いしますね、リナさん♪」


一人一人と言葉を交わして──最後に、


栞子「歩夢さん」


歩夢の手を取る。
264 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:31:07.29 ID:WJlAx85d0

栞子「あのとき……朧月の洞で、歩夢さんに会うことが出来てよかった……。……今は、心の底から、そう思っています」

歩夢「栞子ちゃん……。……うん、私も……あのとき、栞子ちゃんに出会えて、本当によかった」

栞子「歩夢さんは……私の人生を変える転機をくれました。……これからは、その機会をくれた歩夢さんに恥じないよう……自分の人生を精一杯生きてみます」

歩夢「ふふっ、大袈裟だよ♪ 栞子ちゃんが栞子ちゃんの好きなように生きてくれれば、私はそれで嬉しいよ」


そう言って、歩夢は栞子ちゃんの頭を優しく撫でる。


栞子「……はい!」


歩夢の言葉に、栞子ちゃんは屈託のない笑顔で頷くのだった。


栞子「……それでは皆さん……短い間でしたが、本当にありがとうございました」


最後にペコリと頭を下げて──栞子ちゃんは私たちのもとから、去って行ったのだった。


かすみ「……しお子……行っちゃった……」

リナ『かすみちゃん、寂しい……?』 || ╹ᇫ╹ ||

かすみ「さ、寂しくなんて……ないもん……」

しずく「ふふ……素直じゃないんだから」


そう言って、しずくちゃんがかすみちゃんの頭をナデナデする。


せつ菜「大丈夫ですよ。旅をしていれば、どこかでばったり会いますから」

かすみ「だ、だから、かすみん寂しくないですって!」


ぷくーっと頬を膨らませるかすみちゃんを見て、みんなでクスクスと笑ってしまう。


侑「あー……私も早く旅に出たいなー……」

歩夢「侑ちゃんは怪我の治療が最優先です」


歩夢がむーっとした顔で見つめてくる。


侑「あはは、わかってるって」

歩夢「ホントにわかってるのかな……」
 「ブイ」

歩夢「イーブイ、ちゃんと見張っててね?」
 「ブイ♪」

侑「あ、それじゃさ……歩夢」

歩夢「?」


私はお父さんとお母さんがお見舞いで持ってきてくれた果物籠の中からリンゴを手に取り、
265 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:31:39.90 ID:WJlAx85d0

侑「剥いて……欲しいな」

歩夢「う、うん」

侑「それで、その……あーんって、して欲しいんだけど……」

歩夢「え!? ……い、いいけど……/// 急にどうしたの……?」

侑「……ん、その……さ……」

歩夢「うん」

侑「歩夢……最近ずっと、栞子ちゃんに構ってばっかりだったから……たまには……私にも構ってくれないと、嫌って言うか……」

歩夢「へ……///」

侑「どうしたの……? 顔赤いよ……?」

歩夢「な、なんでもないよ……/// えっと、皮剥く前に、手洗ってくるね……!!」


歩夢がパタパタと病室を出て行く。


侑「あ……ヒバニーリンゴにしてって言うの忘れてた……」


そんなことを言っていると、突然しずくちゃんが近寄ってきて、


しずく「侑先輩…………ありがとうございます」


何故か、お礼と共に深々と頭を下げられた。


侑「へ? ど、どういたしまして……?」

リナ『侑さん、成長した』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

かすみ「それにしても歩夢先輩……めっちゃ顔がニヤけてましたねぇ……」

侑「……? ……??」

せつ菜「侑さん侑さん! 私もヒバニーさんリンゴ食べたいです!」

侑「あ、うん! せつ菜ちゃんの分も剥いてもらおっか!」

リナ『……』 ||;◐ ◡ ◐ ||

かすみ「侑先輩は侑先輩かもですね……」

 「ブイ…」

しずく「……歩夢さんとせつ菜さん……それもありですね……」

侑「……?? ……???」


なんだかよくわからないけど……今日も私たちツシマ研究所の図鑑所有者は仲良しです。





    🎹    🎹    🎹





──さて、退院もして、すっかり元気になった頃……私は歩夢、せつ菜ちゃんと一緒にある人に会いに来ていました。


侑「ここで待ってればいいって、メールには書いてあったんだけど……」
 「ブイ?」

リナ『うん、間違いないよ』 || ╹ᇫ╹ ||


私たちが訪れているここは──音ノ木の麓だ。

しばらく、待っていると──
266 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:32:49.86 ID:WJlAx85d0

薫子「──っと……遅くなってごめんね!」


軽く手を上げて謝りながら、薫子さんが現れた。


歩夢「あなたが……栞子ちゃんのお姉さんの、薫子さん……」

薫子「こうして顔を合わせて会うのは初めてだね。話は聞いてるよ、歩夢。妹が世話になったみたいで……ありがとね」

歩夢「いえそんな……私は一緒にいただけなので……」

薫子「それだけで、栞子はすごく心強かったと思うよ。だから、感謝してる」


そう言って、薫子さんは歩夢に頭を下げる。

薫子さんが頭を上げたところで──


せつ菜「それで、お話とは一体何なんでしょうか?」


と、せつ菜ちゃんが訊ねる。


薫子「ああ。まあ、あの後どうなったかって話かな。君たちには聞く権利があると思うからさ」

侑「あの後って言うのは……翡翠の民やリーグのことですか?」

薫子「うん、そんなとこ。まあ、翡翠の民もリーグ側もどっちも大慌てだったみたいだけどね。何百年以上も続いていたレックウザの問題が、まさかこんな形で解決するとは思ってなかったからさ。……もちろん、それはアタシもだけどね」


薫子さんは肩を竦めながら苦笑する。


薫子「翡翠の民は龍神様がいなくなったことで、役割がなくなってかなり困惑してたみたいだけど……栞子がちゃんと事情を説明したら、ひとまず納得はしたって聞いたよ」

歩夢「栞子ちゃんに直接聞いたんじゃないんですか……?」

薫子「まあ、アタシがリーグにいるってボロ出してバレそうってのもあったけど……アタシは翡翠の里を抜けて、外に出ちゃったからね。翡翠の民は基本隠れ里の人たちだから、外界とは関わらないのが通例なんだよ。だから、帰っても肩身が狭い思いをしなくちゃいけないからね。それは御免蒙りたいってこと」

歩夢「そう……なんですか……」


歩夢はそれを聞いて少し複雑そうな顔をする。


薫子「とりあえず、翡翠の民のほとんどはこれからも里で暮らすみたいだけどね。なんだかんだ、自分たちの生活は気に入ってたみたいだし。ただ、翡翠の巫女みたいな風習はなくなっていくはずだよ。なんせ、必要がなくなったわけだからね」


薫子さんはそう言いながら、背後にある大樹を見上げる。


薫子「もう、龍の止まり木から……本当の意味での、龍の咆哮が聞こえることは、ないのかもしれないね……」

侑「きっと……それでいいんだと思います。誰かが見張っていなくても、私たち……この地方に住む、人とポケモンが力を合わせて、平和を守っていかないと」

せつ菜「ですね。いつまでも守られていては、私たちも成長出来ませんし!」

薫子「あはは、違いないね」


薫子さんは軽く笑ってから一呼吸。


薫子「んで、リーグ側なんだけど……翡翠の民から、レックウザがこの地を去った報告は受けたものの……上層部は今でも懐疑的みたいだね」

リナ『まあ、確認する術もないもんね』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「だから、これからも引き続き監視はするのかもしれないけど……ま、いないもんはいないから取り越し苦労なんだけどね。ただ、ミナミ相談役は信じてくれてるみたい。もしかしたら、ずっと続いた翡翠の民との軋轢も少しずつ解消されていくのかもね」


そしたら、アタシもお役御免だ、と付け足しながら、薫子さんは笑う。
267 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:34:35.02 ID:WJlAx85d0

歩夢「あの……」

薫子「ん?」

歩夢「栞子ちゃんには……会わないんですか……? きっと、実のお姉さんとなら……会いたがっていると思います……」

薫子「……ふふ、歩夢。君は優しい子だね」

歩夢「……」

薫子「……ちゃんと、アタシの役目を全うしきったら、そのときには会うのも悪くないかもね。その頃には栞子も……いろんな世界を見て、大人になってるだろうしさ」

歩夢「そのときはちゃんと……会ってあげてください……。……家族がずっと会えないなんて……寂しすぎるから……」


やや誤魔化すように言っていた薫子さんも、歩夢の物言いに思うことがあったのか──


薫子「……わかった。全てにケリがついたときは、ちゃんと妹に──栞子に会いに行くよ。……約束する」


真剣な顔で、歩夢に言葉に答えるのだった。


歩夢「はい……お願いします。栞子ちゃんのためにも……薫子さんのためにも」

薫子「……改めて、君が栞子に出会ってくれたこと……本当に感謝するよ」


薫子さんはもう一度、歩夢に頭を下げた。


薫子「……ってわけで、アタシからの話はこんなもんかな。ランジュのこと含めて……今回は本当にありがとう。お陰で、誰も責任を負ったりする必要もなく、解決出来たよ」

せつ菜「万事解決したのなら、何よりです!」

薫子「ホント、迷惑ばっか掛けちゃったから……もし何かあったときは言ってくれたら、いろいろ手を貸すからさ。リーグ側にコネがあると何かと便利だろうし」

リナ『職権濫用』 ||  ̄ ᇫ  ̄ ||

薫子「お、いいのかな〜? 一番リーグから力を借りたいのは、リナちゃん、君じゃないのかな〜?」

リナ『私のこと、知ってたんだ』 || ╹ᇫ╹ ||

薫子「アタシこれでも、結構リーグでいい位置にいるからね」


確かにリナちゃんはプリズムステイツのこともあるし……リーグと繋がりが出来るのは悪い話じゃないのかもしれない。


侑「じゃあ、もし何か協力して欲しいことがあったら……連絡するかもしれません」

薫子「ん、いつでも待ってるよ♪ アタシに出来ることだったら、なんでも協力してあげるからさ♪ そんじゃ、この辺でアタシはお暇するね。仕事も残ってるから!」


そう残して、薫子さんは去っていったのだった。



268 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:35:06.03 ID:WJlAx85d0

    👑    👑    👑





さて……全てに決着がついたあと──かすみんはしず子と一緒に、また二人で旅をしています。


かすみ「はふぅ〜……温泉気持ちいいし、ご飯もおいしいし……ウラノホシタウン最高〜……」

しずく「ふふ♪ よかったね♪」



オトノキ地方の端の端にある町ですけど、温泉旅館で有名って話を聞いてから、ずっと来てみたいって思ってたんですよね!

かすみんの睨んでいたとおり、最高の時間を過ごさせてもらってます。


 「ゾロアーーク♪」「リムオン♪」「グマァ♪」「ニゴー…」「ダストダァ♪」「…カイン」

 「ロズレイ」「ベァァ♪」「ガァァ♪」「サナ」「インテ…」「……♪」


旅館のお部屋でおいしいご飯を食べて元気に鳴くポケモンたち。

サニゴーンやジュカイン、インテレオンなんかは反応こそ淡泊なものの、表情は満足気です。

バリコオルはもともと無口なポケモンですけど、無言で小躍りしてるくらい。

どうやらポケモンたちにも大好評みたいです!


かすみ「ここに住みた〜い……」

しずく「それじゃ、何泊かしていく?」

かすみ「でもでも、明日はローズで新しいスイーツが出るんだよね……それも買いに行きたいし……。あ! いい加減ダリアで、にこ先輩にリベンジもしなくちゃ……!!」

しずく「ふふ♪ 大忙しだね♪」


しず子はかすみんの話を聞いて、嬉しそうに笑う。

確かに、行きたい場所は山ほどあります。

いろいろ見てきたけど……それでも、まだまだかすみんは旅をし足りないくらいです。

ただ……。


かすみ「しず子は、どこか行きたい場所とかないの?」

しずく「え?」

かすみ「なんか、かすみんが行きたい場所にばっかり付き合わせちゃってるから……」


行き先はほぼ全てかすみんが決めていて……それなのに移動はしず子のアーマーガアにお願いしちゃうことも多いから、ちょっと申し訳ない気持ちもあります。


かすみ「次はさ、しず子の行きたい場所に行こうよ! かすみん、どこでも付き合うからさ!」


そう提案する。だけど、しず子は──


しずく「うぅん、大丈夫」


首を振る。


かすみ「え、えぇ……? 遠慮しなくていいんだよ? 私としず子の仲でしょ?」

しずく「うぅん、そうじゃなくてね」

かすみ「?」

しずく「……私──行きたい場所には、ちゃんと行けてるから、大丈夫なの」

かすみ「へ?」
269 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:35:45.31 ID:WJlAx85d0

そんな場所……行ったっけ……?

かすみんが小首を傾げていると……しず子は小さな声で──


しずく「──私の行きたい場所は……かすみさんの居るところだから──」


──何かを呟いた。


かすみ「え? ご、ごめん……聞こえなかったんだけど……」

しずく「ふふ♪ 聞こえないように言ったからね♪」

かすみ「えぇー!? なにそれ!? 気になるじゃん! 何言ったのしず子!!」

しずく「ふふ♪ 教えてあげない♪」


しず子はイタズラっぽく笑いながら、


しずく「ん〜♪ お腹もいっぱいになったし、もう一度温泉にでも入って来ようかな〜♪ 行こっか、みんな♪」
 「ロズレ♪」「サナ♪」「ガァァ〜♪」「ベァァ」「……♪」


ポケモンたちを引き連れて、温泉の方へと行ってしまう。


かすみ「え、ち、ちょっとぉ!! 教えてよ!! 気になって、今日寝れなくなっちゃうじゃん!」

しずく「ダーメ♪ 自分で気付いてくれないと♪」

かすみ「え〜!? も、もう、なんなの〜!?」
 「ゾロアーク♪」「グマァ〜♪」「ダストダァ♪」「リムオン♪」「ニゴーン…」


しず子の後をぱたぱたと追いかけると、ポケモンたちもニコニコしながら付いてくる。


かすみ「ちょっとぉ! みんなも笑ってないで! こうなったら、力尽くでしず子から聞き出すよ!」

しずく「ふふ、こわ〜い♪」


クスクス笑って逃げるしず子、それを追うかすみん、そんな私たちを見ながら──


 「…インテ」「…カイン」


クールな相棒たちが、肩を竦めながら、かすみんとしず子のことを、見守っているのでした。

270 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:36:23.49 ID:WJlAx85d0

 主人公 かすみ
 手持ち ジュカイン♂ Lv.85 特性:かるわざ 性格:ゆうかん 個性:まけんきがつよい
      ゾロアーク♀ Lv.80 特性:イリュージョン 性格:ようき 個性:イタズラがすき
      マッスグマ♀ Lv.76 特性:ものひろい 性格:なまいき 個性:たべるのがだいすき
      サニゴーン♀ Lv.76 特性:ほろびのボディ 性格:のうてんき 個性:のんびりするのがすき
      ダストダス♀✨ Lv.78 特性:あくしゅう 性格:がんばりや 個性:たべるのがだいすき
      ブリムオン♀ Lv.77 特性:きけんよち 性格:ゆうかん 個性:ちょっとおこりっぽい
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:314匹 捕まえた数:15匹

 主人公 しずく
 手持ち インテレオン♂ Lv.70 特性:スナイパー 性格:おくびょう 個性:にげるのがはやい
      バリコオル♂ Lv.70 特性:バリアフリー 性格:わんぱく 個性:こうきしんがつよい
      アーマーガア♀ Lv.70 特性:ミラーアーマー 性格:ようき 個性:ちょっぴりみえっぱり
      ロズレイド♂ Lv.70 特性:どくのトゲ 性格:いじっぱり 個性:ちょっとおこりっぽい
      サーナイト♀ Lv.70 特性:シンクロ 性格:ひかえめ 個性:ものおとにびんかん
      ツンベアー♂ Lv.70 特性:すいすい 性格:おくびょう 個性:ものをよくちらかす
 バッジ 0個 図鑑 見つけた数:295匹 捕まえた数:23匹



271 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:36:55.10 ID:WJlAx85d0

    🎙    🎙    🎙





──ツシマ研究所。


せつ菜「みんな〜! ご飯の時間だよ〜!」
 「ププリ〜」「ピチュピチュ♪」「ピィ〜♪」

せつ菜「わっ!? じ、順番にあげるからね〜!」
 「プププリン」「ピッチュ♪」「ピィ♪」


元気なベイビィポケモンたちに群がられながらも、どうにか1匹1匹に餌を配っていく。

そんな私の様子を見て、


善子「菜々……別に無理に手伝いに来なくてもいいのよ? 忙しいでしょ?」


ヨハネ博士が肩を竦めながら言う。


せつ菜「いえ! 私は、こうして博士のお手伝いを出来るのが嬉しいんです!」

善子「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」

せつ菜「それに……来たる千歌さんとの戦いに備えて、聞きたいこともたくさんありますし!」


最近、私はよくヨハネ博士と一緒に、対千歌さんのための対策と研究を頻繁に行っている。


善子「ふふっ、気合い入ってるわね」

せつ菜「次挑むときは──絶対に勝つつもりですから!」


オトノキ地方の、チャンピオンになるために──

──ヨハネ博士に、チャンピオンマントを羽織った私の姿を、見せるために……。

ひととおり、餌やりを終え、


せつ菜「ですので……今日もよろしくお願いします!」

善子「……わかった。可愛いリトルデーモンの頼みだものね」


そう言いながら、ヨハネ博士がプロジェクターの準備を始める。

これから二人で、千歌さんの試合映像を見ながら研究の時間です!


せつ菜「みんなも! しっかり対策練って、次こそは千歌さんに勝つよ!!」
 「ラオスッ!!!!」「ゲンガァーー!!!」「ドサイッ!!!」「ムドーーー!!!!」「フゥ」「…ワォォォーン!!!」

善子「ふふ、期待してるわよ──菜々」

せつ菜「はいっ!!」


私、菜々は──ポケモントレーナーせつ菜として、前に進んでいます……!

最強のトレーナーを目指して、今日も、これからも────!!

272 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:37:25.62 ID:WJlAx85d0

 主人公 せつ菜
 手持ち ウーラオス♂ Lv.86 特性:ふかしのこぶし 性格:ようき 個性:こうきしんがつよい
      ウインディ♂ Lv.89 特性:せいぎのこころ 性格:いじっぱり 個性:たべるのがだいすき
      スターミー Lv.85 特性:しぜんかいふく 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
      ゲンガー♀ Lv.87 特性:のろわれボディ 性格:むじゃき 個性:イタズラがすき
      エアームド♀ Lv.83 特性:くだけるよろい 性格:しんちょう 個性:うたれづよい
      ドサイドン♀ Lv.85 特性:ハードロック 性格:ゆうかん 個性:あばれることがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:218匹 捕まえた数:51匹



273 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:38:08.89 ID:WJlAx85d0

    🎹    🎹    🎹





ウルトラビーストたちとの戦い、そして龍神様──レックウザとの死闘を終え……全てに決着がついたあと、私もみんなと同じように、また歩夢と旅に出た。

今は──


侑「うわぁ……! 雲海が太陽の光で輝いてるよ!」
 「ブィィ♪」

歩夢「前に来たときは星空が綺麗だったけど……日中は日中で、この雲海に圧倒されちゃうね」
 「シャボ」

リナ『これだけの雲海が見られるのは、この地方でもここくらいしかないからね!』 ||,,> ◡ <,,||


私たちは太陽と月の信仰の地である──“暁の階”を訪れていた。

あ、えっと……今の時間だと正午を過ぎてるから、“黄昏の階”になるんだっけ……?


歩夢「この雲の海の下に……私たちの住んでるオトノキ地方が広がってるんだよね……」

侑「うん。私たちみんなで守った、オトノキ地方が広がってる」

歩夢「ふふ♪ 最初はセキレイの街で、ただ普通に暮らしてただけだったのにね♪」
 「シャボ」

侑「今では……こんなに自由に世界を回って見られる」
 「ブイ」


これも全て、あの日、あのとき──ポケモンたちと一緒に、こうして冒険の旅に出たお陰なんだ。

そんなに前のことではないはずなのに、もう随分昔のことのように思っちゃうなぁ……。


歩夢「なんだか、今更だけど……すごいところまで来られるようになっちゃったね、私たち」

侑「ふふ、ホントにね」


二人で“黄昏の階”に腰掛けて、陽光を照り返して輝く雲海を見つめながら、身を寄せ合う。


歩夢「侑ちゃん」

侑「ん?」

歩夢「私と一緒に……冒険してくれて、ありがとう」

侑「……こちらこそ、一緒に冒険してくれて、いつも一緒にいてくれて……ありがとう、歩夢」

歩夢「うん♪」

リナ『二人だけずるい……私も』 || > _ < ||

侑「ふふ♪ もちろん、リナちゃんも♪ いつもありがとう♪」

歩夢「私たちのこと、ずっと支えてくれてありがとう♪ リナちゃん」

リナ『どういたしまして! 私も二人にはすっごく感謝してる! いつもありがとう!』 ||,,> ◡ <,,||


歩夢とリナちゃんに感謝を伝え──

そして、感謝をしてもし足りない、仲間たちにも──


侑「みんな、出てきて!」

歩夢「一緒に見よ♪」

 「ウォー!!!」「フィ〜♪」「ウニャァ〜」「パルト♪」「…ライボ」

 「バーース♪」「マホイップ♪」「ゼルガァ…」「ラージェス」「──ジェルルップ…」


ここまで旅を支えてくれた、かけがえのない仲間たち。
274 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:38:39.28 ID:WJlAx85d0

侑「みんながいたから……今の私があるんだ」
 「イブィ♪」「フィー♪」「ウォーーグ♪」「パルト〜♪」「ウニャニャ」「…ライボ」

歩夢「うん。みんながいてくれたから……ここまで歩いてこられた」
 「シャーボ」「バース♪」「マホマホ♪」「ゼルガ…♪」「ラージェス」「ジェルップ…」


私にはイーブイが、ウォーグルが、ライボルトが、ニャスパーが、ドラパルトが、フィオネが。

歩夢にはサスケが、エースバーンが、マホイップが、トドゼルガが、フラージェスが、ウツロイドが。

仲間たちが──大切なポケモンたちが、支えてくれたから、今の私たちはここにいる。


侑「だから、ありがとう」
 「ブイ♪」


そして──


侑「これからもよろしくね!」
 「イブィ♪」「ウォーグ♪」「…ライボ」「ウニャァ〜」「パルト♪」「フィ〜」


頼もしい仲間たちの声を聞きながら──美しい雲海を見つめる。


リナ『次はどこへ行く?』 || ╹ ◡ ╹ ||

歩夢「どこに行こっか?」

侑「……そうだなぁ……まだ決めてないけど……。みんなと一緒なら、きっとどこに行っても、嬉しい気持ちで旅が出来ると思う」

歩夢「……ふふ♪ そうだね♪」

リナ『間違いない!』 ||,,> ◡ <,,||


──きっと、この世界にはまだ見ぬ感動が、冒険が、出会いが、私たちを待ってくれていると思う。

これからの私たちが、どこへ向かうかはまだわからないけど──きっと、その先には面白そうな未来が待っているに違いないから。

だから──まだまだ、これからも──新しい冒険の夢を見よう……!

この──ポケットモンスターの世界で……!!

275 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:39:22.12 ID:WJlAx85d0

 主人公 侑
 手持ち イーブイ♀ Lv.85 特性:てきおうりょく 性格:おくびょう 個性:とてもきちょうめん
      ウォーグル♂ Lv.81 特性:まけんき 性格:やんちゃ 個性:あばれるのがすき
      ライボルト♂ Lv.82 特性:ひらいしん 性格:ゆうかん 個性:ものおとにびんかん
      ニャスパー♀ Lv.78 特性:マイペース 性格:きまぐれ 個性:しんぼうづよい
      ドラパルト♂ Lv.80 特性:クリアボディ 性格:のんき 個性:ぬけめがない
      フィオネ Lv.75 特性:うるおいボディ 性格:おとなしい 個性:のんびりするのがすき
 バッジ 8個 図鑑 見つけた数:293匹 捕まえた数:12匹

 主人公 歩夢
 手持ち エースバーン♂ Lv.70 特性:リベロ 性格:わんぱく 個性:かけっこがすき
      アーボ♂ Lv.70 特性:だっぴ 性格:おとなしい 個性:たべるのがだいすき
      マホイップ♀ Lv.65 特性:スイートベール 性格:むじゃき 個性:こうきしんがつよい
      トドゼルガ♀ Lv.65 特性:あついしぼう 性格:さみしがり 個性:ものおとにびんかん
      フラージェス♀ Lv.65 特性:フラワーベール 性格:おっとり 個性:すこしおちょうしもの
      ウツロイド Lv.74 特性:ビーストブースト 性格:おくびょう 個性:ものおとにびんかん
 バッジ 3個 図鑑 見つけた数:273匹 捕まえた数:24匹



276 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:39:53.82 ID:WJlAx85d0

    🎹    🎹    🎹





歩夢と二人で雲海を眺めていたら──

──pipipipipipipi!!!!!! と、歩夢の図鑑が鳴り始める。


侑「この音……」
 「ブイ?」

歩夢「もしかして……」
 「シャボ…」


二人で、階段の下の方へ目を向けると──


かすみ「侑せんぱーい!! 歩夢せんぱーい!!」

しずく「お二人とも……こちらにいらっしゃったんですね!!」

せつ菜「まさか、こんなところで全員集合するなんて……!!」


3人の仲間たちが、階を上ってきているところだった。


侑「かすみちゃん! しずくちゃん! せつ菜ちゃん! どうしたの!?」
 「イブィ♪」

せつ菜「チャンピオン戦前の修行で訪れたんですが……偶然、下でかすみさんとしずくさんにお会いしまして……!」

しずく「まさか、侑先輩たちもいるなんて思いませんでした!」

かすみ「やっぱり、かすみんたち図鑑所有者5人……気が合いますね〜♪」

歩夢「ふふ♪ そうだね♪ 気付いたら、みんな集まっちゃう♪」


思わず、みんなで顔を見合わせて笑ってしまう。


かすみ「それにしても、絶景ですぅ〜♪」

しずく「こんな雲海を……私たちだけで独占しているなんて……とても、贅沢ですね」

せつ菜「本当に……! 今日このタイミングで、ここに来られてよかったです!!」

リナ『それだけじゃないよ』 || ╹ ◡ ╹ ||

侑「それだけじゃない?」

歩夢「どういうこと?」

リナ『東の空を見て!』 || > ◡ < ||

侑「東……?」


そろそろ黄昏時の近付くこの“黄昏の階”で、東を見るということはつまり……私たちが太陽を背に受けながら、東の雲海に目を向けると──


侑「わぁ……!!」
 「ブィィ…!!!」

歩夢「……すごい」
 「シャーボ…」

せつ菜「これは……!」

かすみ「はわぁ〜〜♪」

しずく「綺麗……」


そこには──雲海の上に、大きなアーチを描くように────虹が咲いていた。

今まで見たことのないような大きな大きな虹が──私たちの目の前で、まるで私たちがここに集まったことを祝うかのように、咲き誇っていた。
277 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:40:30.58 ID:WJlAx85d0

歩夢「侑ちゃん……すごいね」

侑「うん……」

しずく「私……こんなに綺麗な虹、初めて見ました……」

かすみ「なんだか……かすみんたちみんなが揃うと、奇跡が起こっちゃうみたいですね!!」

リナ『そうかもしれない♪』 ||,,> ◡ <,,||


そして、この綺麗な虹を見て、


せつ菜「なんだか、この虹を見ていたら、テンションが上がってきてしまいました!! 今にも、走り出したい気分です!!」


せつ菜ちゃんが、嬉しそうに飛び跳ねる。


かすみ「奇遇ですねぇ〜、かすみんもちょっとうずうずしてきちゃいましたよ!」

侑「私も私も!」
 「ブイブイ♪」

しずく「ふふ♪ 皆さん、相変わらず元気なんですから♪ でも、今回ばかりは私も同じ気持ちです!」

歩夢「わ、私も……なんだか、じっとしてられない気持ちになってきちゃった……!」


5人みんなで目を合わせて──


かすみ「ふっふっふ……かすみんたちはなんですか……? ポケモントレーナーですよね!!」

侑「ポケモントレーナー同士……!!」

せつ菜「目が合ったときに、やることと言えば……!!」

しずく「ふふっ、今回は私も参戦させてもらいますよ!」

歩夢「でも……5人同時にバトルは出来ないよね……」

せつ菜「なら──今から5人全員総当たりでポケモンバトルをしましょう!!」

侑「それいいっ!! 考えただけで、最っ高にときめいちゃう!!」
 「ブィブィ♪」

歩夢「ええ!? 5人全員で!?」

しずく「す、すごい長丁場になりそうですね……。……ですが、面白そうです♪」

リナ『それじゃあ、私は審判をするね♪』 ||,,> ◡ <,,||

かすみ「順番はどうするんですか?」

せつ菜「もちろん──」

侑「早い物順で!!」
 「イブィ!!」


私とせつ菜ちゃんが同時に駆け出す。


かすみ「あ!? ふ、二人ともずるいです〜!!」


だって、いても立ってもいられないんだもん!

せつ菜ちゃんと二人──相対する。


せつ菜「考えてみれば……侑さんとバトルをするのは、侑さんが旅立った直後に、カーテンクリフの麓で戦って以来ですね……!」

侑「言われてみれば……。……あのときは負けちゃったけど、今の私は──私たちは、あのときとは比べ物にならないくらい強いよ!!」
 「ブイッ!!!」

せつ菜「ええ! よく知っていますよ!!」
278 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:41:12.22 ID:WJlAx85d0

せつ菜ちゃんがボールを構える。

あのとき、憧れだったせつ菜ちゃんと、今こうして強くなって戦えることが嬉しくて堪らない。


歩夢「侑ちゃーーん!! 頑張ってねーー♪」

しずく「せつ菜さんもーーー!! 頑張ってくださーーい!!」

かすみ「お二人とも頑張ってくださーーーいっ!! あ、でも、かすみんと戦う力は残しておいてくださいね〜〜!?」


仲間たちの声援を受けながら──


リナ『バトル──スタート!!』 ||,,> ◡ <,,||

せつ菜「行きますよ!! ウインディ!!」
 「──ワォォォォンッ!!!!!」

侑「行くよ!! イーブイ!!」
 「ブイッ!!!!」


イーブイが飛び出した──

279 : ◆tdNJrUZxQg [saga]:2023/01/22(日) 22:41:45.46 ID:WJlAx85d0


──ポケットモンスター、縮めてポケモン。

動物図鑑には載っていない……不思議な不思議な生き物。

その姿は、山に、森に、川に、海に、草原に、街に……うぅん、それどころか宇宙にも、異世界にも……!!

ありとあらゆる場所に生息し、その数は100...200...300...400...うぅん、1000種類以上のポケモンが、今もどこかで出会いを待っている。

ポケモンの種類だけ出会いがあって、それを求めて私たちポケモントレーナーは、今日もこの──ポケットモンスターの世界を生きていく。

そんな素敵なポケットモンスターの世界で──新しい出会いと、夢のような物語は──ときめきは──どんどん広がっていく。


人の数だけ、ポケモンの数だけ紡がれる、出会いと絆の物語──次に物語を紡ぐのは、きっと──あなたの番!





<THE END>
280 : ◆tdNJrUZxQg [sage saga]:2023/01/22(日) 22:47:39.15 ID:WJlAx85d0

終わりです。お目汚し失礼しました。


長い作品でしたが、少しでもポケモンの世界で侑たちと一緒に旅をしている気分を感じて頂けていればと想います。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

また書きたくなったら来ます。

よしなに。


過去作

善子「一週間の命」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495318007/

ダイヤ「吸血鬼の噂」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1562365941/

曜「神隠しの噂」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573103874/

梨子「人魚姫の噂」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1598136029/
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2023/01/22(日) 23:39:24.80 ID:MnlIm+xM0
お疲れ様です
前作も読んでましたけど、相変わらず面白くて数か月間、ほんとに楽しかったです
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/22(日) 23:58:00.47 ID:SLpI6ztK0


次回作はパルデア組追加+リエラになるのかな
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