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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.5
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102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 00:23:18.61 ID:QH732L050
ですな
手帳で
103 :
流石に条件がハードすぎましたね、お疲れさまでした。
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 00:24:48.16 ID:ZSVkFOz00
【プロデュース手帳を使用しました】
【彼がアイドルたちと紡いできた日々が蘇る……】
【過去の記憶は裏切らない、確かな思い出の数々が行くべき道を指し示してくれた……!】
-------------------------------------------------
「「「「「「「「「「「「「「「これが私たちの選んだ未来だ!」」」」」」」」」」」」」」」
【BREAAAAAAAAAAAK!!!!!!!!】
ルカ「私たちの未来は、私たち自身で決める。余計な口出しは不要だ」
にちか「阻もうとしたってもう無駄ですからー! 強制シャットダウンを起こして、この世界を閉ざしちゃいますよー」
灯織「もう、終わりにしましょう。あなたの目論みも、それにまつわる悲しみの連鎖も」
努?「……勝手に終わらせるな、まだ私の宿願は……途絶えてなどいない」
美琴「ステージの終わりを決めるのはパフォーマーじゃない。あくまでそれを見ているオーディエンス」
美琴「たとえあなたがどれほど終わりじゃないと嘆こうとも、事はもう決していると思うの」
突きつけられた終了通告に、AIに過ぎない存在のそれはさも人間らしくガックリと肩を落とした。
きっとこれもたくさんの人間の記憶と人格から集積された反応に過ぎない、ただの『再現』なのだろう。
だが、練度の高い再現は私たちに勝利を実感させるには十分だった。
証言台に並び立つ16人は何度も顔を見合わせるようにして、長い裁判の行き着いた結末を確かめていた。
104 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 00:25:55.97 ID:ZSVkFOz00
愛依「これで……いーんだよね……全部、終わったんだよね……」
冬優子「裁判はこれで終わり。この後は強制シャットダウンっていう人生を賭けた大博打が待ってるわよ」
恋鐘「結果がどうなるのかは、まだ分からんとやろ……?」
果穂「大丈夫です! あたしたちなら、ぜったい負けません!」
摩美々「や、勝ちっていうか、負けっていうか……そういうんじゃ……」
摩美々「……ま、勝ちは勝ちかもねー」
透「みんな、後は任せたから」
雛菜「任された〜!」
夏葉「透、あなたの覚悟……しかと受け止めたわ」
智代子「透ちゃん……ごめんね、こんな終わり方で」
透「ノープロブレム。これが本望ってやつ」
ルカ「……さ、腹を括れ。もうこれ以上この裁判で話すことはないはずだ。散り際を惨めにするのも、堂々とした幕引きにするのも、オマエ次第だ」
105 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 00:26:57.61 ID:ZSVkFOz00
はづき?「……それでは、お手元の投票ボタンでクロだと思う人に投票をお願いします〜」
はづき?「今回は特殊な裁判のため、一番票を多く獲得した人が無条件に正しいクロとなります。くれぐれも投票先を間違わないように注意してくださいね〜」
はづき?「投票の結果クロとなるのは一体? そしてこの南国生活の行く末は?」
はづき?「……」
はづき?「もう、どっちでもいいですけどね〜……」
106 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 00:27:54.14 ID:ZSVkFOz00
-------------------------------------------------
【VOTE】
〔透〕〔透〕〔透〕
CONGRATULATIONS!!!!
パッパラー!!!
-------------------------------------------------
107 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 00:28:51.11 ID:ZSVkFOz00
【学級裁判 閉廷!】
108 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 00:35:01.63 ID:ZSVkFOz00
最後の学級裁判が終わったところでここまで。
議論スクラムも最後になるとだいぶ意地悪でしたね…
少し難易度調整をミスった気がする、お付き合いいただきありがとうございました。
そしていよいよ次回更新で最終回となります。
裁判終了パートからエピローグまで。
昨年より続いたシリーズもこれで幕引きです。
また、延期の連絡後に全編更新終了後の質問の問い合わせがありましたが、私としてもぜひ聞かせてもらえればと思っています。
そう練り込まれたお話ではないので期待にどこまでお応えできるかは分かりませんが、
作品を書いている中で色々と考えることはありましたし、質問や感想は大歓迎です。
最終回の更新は12/4(土)20:30前後予定。
安価はありませんが、最後まで見届けていただけましたら幸いです。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 00:51:59.56 ID:DN8CMUKc0
お疲れさまでした
最後のスクラムの15回中3回ぞろ目のやつ、期待値的には18%ぐらいの確率で成功するみたいですね
さすがに分が悪いけど、手帳の力で実質イベント戦闘みたいになってたのである意味演出点になった気もします
というか最終的にアイテムは全部使い果たして発言力も集中力もボロボロになってるけど、ノーコンでクリアしたわけだから
結果的に裁判前の買い物の内容がちょうどよかったのか
金の鍵ガチャで引いた灯織と愛依のスキルもめっちゃ仕事してたし、特に灯織の回復
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 00:55:09.44 ID:PmpRUrqb0
>>1
乙
学級裁判では振り回され続けましたが、とても楽しかったです。
ところで次の更新日ですが、正しいのは曜日ですか?それとも日付ですか?
111 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 01:19:31.64 ID:ZSVkFOz00
>>110
失礼しました、12/3(土)でお願いします
気が付いたら日付が変わってしまっていたのでカレンダーを読み違えました……
112 :
それでは更新していきます
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:02:10.36 ID:ZSVkFOz00
-------------------------------------------------
CHAPTER 06
絶望、あるいは逃げられぬ希望
裁判終了
-------------------------------------------------
113 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:03:51.07 ID:ZSVkFOz00
努?「こんな……こんな結末があっていいはずがない……」
最後の投票を終えた私たち。
結果は浅倉透が最多の得票数。
この裁判の最後には彼女がおしおきを受け、その死をトリガーに世界が幕を下ろすことが確定した。
彼女は、あくまで偽物だ。
私たちの仲間の姿を借りただけで、与えられた役目を果たすためだけに行動するAIでしかない。
その意味では、幾度と私たちを脅かしたモノクマやモノミとなんら変わりはない。
だのに、その存在が消え失せようとしているこの局面で何故か連中は鎮痛な表情を並べていた。
親の都合で引っ越す同級生、老衰で自我も見失った年寄り、事故に遭って片足を失った野良犬……
そういうどうしようもないものを見つめるときによく似た表情だ。
AIなんて無機質を見つめるには、あまりに多くのものを含み過ぎた有機的な視線が向けられていた。
114 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:06:07.81 ID:ZSVkFOz00
透「さんきゅ、みんな」
投票を先導したのは私。
元々の役割に回帰させただけとはいえ、この場に居合わせた全員の命とその未来をただの一人に背負わせた自覚に言葉に詰まる。
『……透、君に幕引きを託してもいいか』
最初に口を開いたのは、外の世界の彼。
空間を切り取ったような形で姿を覗かせている彼もまた、暗い表情をしていた。
それは別れを惜しむと言うよりも、罪の意識。
自分の選択への躊躇いが見てとれた。
透「やっぱり、本物のアイドルには手を汚させられない?」
『……すまない』
アイドルがアイドルなら、それを育てる方も育てる方だ。
あまりにも出来すぎた偽善に舌を巻いた。
透「いいって、誰も責めない」
外の世界の男が落としたトーンで詫びるとすぐに、浅倉透の手には一丁の拳銃が産み落とされた。
透「おー、いいじゃん。これなら簡単だ」
これ見よがしに、項垂れる“紛い物”に銃口を向けた。
努?「……」
しかし、奴が反応を返すことはなかった。
つい先ほどまで必死に生きる者を真似ていた存在は一転、無機質に立ち尽くすだけのカカシになってしまっていた。
115 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:08:04.41 ID:ZSVkFOz00
千雪「もう、抵抗する気もないのかしら……」
結華「いくら護衛を生み出そうとも、外の世界のPたんがそれをかき消す。AIなら三峰たちよりもよっぽど早く、よっぽどはっきりとその敗北を計算できそうだもんね」
愛依「は〜、そっか……スパコンとかってなんかすごいっていうもんね」
灯織「というよりも、ショートしているのではないでしょうか?」
にちか「って言うとなんです?」
灯織「私たちが選んだのは本来AIの計算にはあり得なかった選択肢です。全員生存でもない、犠牲を生まないわけでもない……合理性からはかけ離れた賭けの選択肢。そんな非合理を理解しようとしたところで、AIには到達できない境地にエラーを起こして止まってしまった」
摩美々「ちょっとそれ、自己陶酔入りすぎじゃないー? 自分たちがすごいっていう驕りが見え見えっていうかぁ」
灯織「そ、そんなつもりは……」
『……いや、俺もそう思うよ。未来を切り開こうとするみんなの勇気、そんなものはいくら計算したところで測りきれないだろうからな』
(……勇気、ねえ)
本当に最後の最後まで恥ずかしげもなくそんなことが言えるものだ。
全員が全員美談に酔いしれ、そこに宝石のように下品に輝く理想を思い描く。
私のような人間からすれば、到底直視に耐え難い光景だ。
116 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:12:40.62 ID:ZSVkFOz00
ルカ「言っとくけど、私はそんな絵空事の夢にかけたわけじゃない。ただ他人に未来を決めつけられるのが不愉快だっただけだからな」
冬優子「はいはい、いちいち表明しなくたって誰も気にしないわよー」
ルカ「てめ……」
『……本来なら、あなたも同じ考えだったんだと思うんです』
努?「……」
あさひ「プロデューサーさん、この人はあくまでAIっす。社長さんの考え方を完璧に真似ているっすけど、それは物真似の域を出ないっす」
『……信じるという行為は、真似の範疇を冒していたんだろうな』
努?「……」
まるで私たちに反応を示さなくなった管理AI。
次第に勝利の余韻も薄れ、現実が湧き上がる。
胸と喉の間に霧がかかってきたような息苦しさ。
それを一言で言うならば“不安”だ。
未確定な未来が空を埋め尽くそうとしていることを自覚した時、膝の震えは始まる。
117 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:13:50.57 ID:ZSVkFOz00
にちか「それよりも、これからのことを話しませんかー? おしおきまでの時間もそうないですし……」
夏葉「ええ、そうね。何度も確認しているけれどこの先の私たちに保証は何もない。今ある記憶や経験が残ることも、それを持ち帰る明日があることも」
果穂「この世界でしんじゃったあたしたちはもちろん……いきのこってたみなさんも、目を覚ますかどうかはいいきれないんですね……」
結華「こうやってみんなで掴み取った選択肢も、忘れてしまうのかもしれない」
美琴「この島で生活することで見つけられたもの、気づくことができたもの……その存在の否定はできないから」
美琴「……失ってしまうのは、少し寂しいね」
千雪「うん……この島での暮らしは勿論辛いことが多かったけれど、それが全て記憶からなくなってしまうのは違うわ」
千雪「そうよね、ルカちゃん」
ここで私に同意を促すか、と悪態でもついてやりたい気になったが、その言葉には賛同をする他なかった。
この島で無理やり顔を付き合わされたことで、美琴とはようやっと和解をすることができたわけだし、そういう機会は日常に転がっている物でもない。
それに、283の他の連中との交流も否定はしない。
事務所に対する憎しみの色眼鏡が常にあった私が、283に好意的な感情を抱くことなどなかったろう。
記憶を失うということは、この変化を全て無に帰すということなのだ。
118 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:14:52.90 ID:ZSVkFOz00
思えば、この島での暮らしにも色々あった。
にちか「……なんなんですか、人の顔をジロジロ見ないでもらえますー?」
美琴を奪い取った仇と思っていたこいつから頼られて、生き抜いていくことを誓い、美琴の命を背負い込むことになるとは。
千雪「ルカちゃん、あの時のお酒の味……一生忘れないわ」
私としたことが図々しくもパーソナルスペースに侵入していくことを許し、挙句そいつと交わした約束を守り続けることになるとは。
冬優子「……やめて、こっちも整理つかないんだからあんまり見ないでよ」
似た物同士の並ならぬ間柄の相手がこんなところで生まれ、最終的にはそいつに今際の際に大切なものを託されるまでになるとは。
あさひ「ルカさん? あんまり見たことない顔っすね、それ」
託されたものを几帳面にも守り続け、最後の最後まで真実を追い求めることになろうとは。
_______そして、
119 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:16:50.06 ID:ZSVkFOz00
「……ルカ」
「……んだよ」
「この島でやっと、初めて気づけた。私の横に立って一緒にステージを作ってくれる人の存在に。その存在のかけがえのなさに」
「きっと、記憶を失ってしまえば私は以前と同じ盲目になってしまうんだと思う。私は本当に視野が狭くて、スポットライトで照らされているその足元しか見ていなかったから」
「……失いたくないね、この気持ち」
一度完全に取りこぼしてしまったものを、拾い上げることが叶おうとは。
この手に掴んだものを思うと、それを手放してしまうことには恐怖を抱かずにはいられない。名残惜しさは飲み下すには大きすぎる塊だ。
120 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:17:46.61 ID:ZSVkFOz00
「らしくないこと言ってんなよ」
「……えっ」
「失うことを恐れて進めなくなるようなタマじゃないだろ、美琴は。そんなヤワな女だったら、私は切り捨てられてなんかない」
だからといって甘えるわけには行かないと思った。
世界がここで完結するのなら、この夢のような体験と記憶を一生啜っていてもよかったかもしれない。
されど、この世界は世界であって、現実ではない。
夢は必ず終わらせなければならない、浸り心地の良い夢は厳しい壁に現実でぶつかるための原動力に過ぎない。
それに依存するだけなら、飼い潰されるだけの家畜と何ら変わりない。
捨てさらねば、腐り落ちていくのは私たちなのだ。
121 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:18:56.40 ID:ZSVkFOz00
「それに、また取り零すなら何度だって拾い直せばいい。一度出来たことが、次に出来なくなるなんてことはないはずだろ」
「……」
「だー……オマエがそんな顔してると調子狂うんだよ、いつも通り仏頂面して我が道をゴーイングしとけばいいんだ、美琴は」
ただ一つ好都合なのは、この世界は再現度のあまりにも高すぎるだけの仮想現実であると言うこと。
ここで引き起こされた感情の起伏は、現実でも起こりうるだろうことの予測。
この島で砂浜に刻まれた足跡は、現実世界でコンクリート にだって刻むことのできるものだ。
この世界で掴めるものなら、現実世界でだって手にすることができるはず。
私たちは、囀るだけのカナリアじゃない。
その嘴で鳥籠をこじ開けることができる。
122 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:20:06.28 ID:ZSVkFOz00
「私が絶対、追いついてみせるから」
他の誰かに生きる世界を制限などされてたまるか。
それが私の原動力だった。
123 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:21:22.70 ID:ZSVkFOz00
千雪「ルカちゃん、いつのまにか私より大きくなっちゃったみたい」
果穂「ルカさん……千雪さんより、年下ですよね……?」
千雪「ふふっ、そうね。でも、私より今のルカちゃんはちょっとだけお姉さんなの」
冬優子「なんか同類で括るの、不適切な気がしてきたわ」
結華「ありゃりゃ、その心は?」
冬優子「ふゆはあんなくっさい説得は御免被りたいから」
結華「あはは、ふゆゆは手厳しいですなぁ」
外野がとやかく言うのは全面的に無視をした。
この時の羞恥もどうせ外の世界に持ち越せるかどうかもわからぬもの。
恥はかき捨てというやつだ。
124 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:23:30.52 ID:ZSVkFOz00
雛菜「……」
そして、恥は恥だけに留まらなかった辺り、悪手というわけでもない。
私と美琴を遠巻きに見ていた市川雛菜は、横をスッと抜けるようにして、奴の前に立った。
雛菜「透ちゃん、お別れの前にちょっと時間もらってもいい〜?」
透「あー、そこら辺、いける? どう?」
努?「……」
透「……黙ってるってことは、イエスってことだ」
私たちが挑んだ最後の事件。
それはあまりにも唐突なもので、私たちの思惑の悉くはその混迷の渦に呑み込まれ、別離にあたって餞の言葉を用意することも叶わなかった。
市川雛菜がこの浅倉透に向けた感情は並ならぬものだと全員が理解していながら、それを整理するための時間はもらうこともできず、凄惨なる末路を迎えた。
125 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:24:30.86 ID:ZSVkFOz00
透「じゃあ、市川さん。回答をどうぞー」
そんな二人が、また分たれようとしている。
前回とは次元が違う話での離別。
どれほどの奇跡が起きようとも、仮想現実の中の存在が現実にその姿を表すことはない。
データと実体が肩を並べるなど、今この時にしか起き得ない現象。
それを締め括るための言葉など、どこにもあるはずもない。
ありものの言葉で、彼女らが救われるはずもない。
雛菜「透ちゃんは今、どう感じてるのか教えて」
透「うお、一転攻勢」
雛菜「雛菜は知りたいから。透ちゃんが最後に何を考えて、何を思ったのか」
透「……」
並ならぬ様子に、軽薄そうな口ぶりも流石に控えた。
面と向かって話をしている相手の感情も察知できないほど出来の悪いAIではない。
126 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:26:54.47 ID:ZSVkFOz00
とはいえ、AIに求めるには複雑すぎる要求であることも確かだ。
以前とある学者がふんぞりかえって人間とアンドロイドの違いを『心の有無』で表現していた。
その言葉が正しいなら、市川雛菜の要求は無に有を求めるもの。
それこそエラーを起こしてショートしてしまってもおかしくないのだ。
透「あー、うん……えっとさ」
案の定、浅倉透は言葉が出てこずに苦心している様子だった。
感情という曖昧な概念を表すものを深層に探し求め、必死に悶え、喘いでやっと掬い上げたものは
透「本当に、みんなを守れるのは嬉しくて、さ」
雛菜「違う」
一瞬で切り捨てられた。
127 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:28:16.94 ID:ZSVkFOz00
雛菜「そんな用意された言葉じゃない。透ちゃんの中にある、透ちゃんだけが持っている言葉で教えてほしいって言ってるの」
透「……」
雛菜「『雛菜たちを救いにきた浅倉透』じゃなくていいの、本当の透ちゃんの言葉が知りたいから」
浅倉透は初めからずっと自分の背負った義務に準じてきたし、正体を明らかにしてからも浅倉透のコピーとして生きてきた。
そのことを隠さなくなってから、私たちの目にはしがらみを振り払っているように見えていた。
見えて『は』いた、でも実際は違った。
私たちの誰よりも近い場所で見つめてきた市川雛菜にはずっと見えていたのだ。
義務や役割という蛹の中で確かに脈打つ、存在としての核の存在が。
与えられた演算を精巧に行うだけのはずのAIがなぜか持ってしまった、たった一つの虚数解が。
128 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:29:38.44 ID:ZSVkFOz00
透「……困るって。そんなこと言われても」
とはいえ、それはひどく奥底に眠る。
AIという最適解を導き出す機構には無自覚な回答なのだ。
透「そんなの、プログラミングされてない。学習してないんだって」
技術革新が起こる時代の中で、人の役割はどんどん剥奪されていく。
単純作業から創造的な活動まで、人の行き場はドンドン追いやられてしまう。
では、人はどうやって生きていけば良いのか。
雛菜「……前例の中には透ちゃんはいないでしょ?」
透「……わかんない、わかんないって」
129 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:31:43.17 ID:ZSVkFOz00
______共生。
果穂「透さん! しんこきゅうしてみてください!」
透「……え?」
果穂「のどからむねがスゥッとして気持ちよくなりませんか! 体に、力を感じませんか!」
あさひ「透ちゃんが人間の精巧なコピーなら、生命活動だってちゃんとされてるはずっすよね。心臓が動いて、体に血液が回る」
あさひ「そしたら、なんだかポカポカしてくるんっすよ。そのポカポカが、言葉になるんっすよ」
透「いや、よくわかんないや」
人はAIよりも数千年ばかり先輩だ。
その一日の長が、わずかな経験の勝りが、ほんの僅かにだけ優位を示す場所がある。
自分たちはこうだったが、君たちの世代はどうだ。
散々口を酸っぱくして言われてきた、聞き飽きた大人の口舌。
人生の先輩である私たちが、示さなくてはならないらしい。
130 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:33:11.50 ID:ZSVkFOz00
夏葉「私も一度人間をやめた。それでも、私は感情に曇りができたとは、鈍りが生じたとはわずかにも思わなかったわ」
夏葉「心というものは実体ではないのよ。そして生命活動そのものでもない。そこから生まれる……概念的な力ともいうべきなのかしら」
千雪「コンピューターは計算や分析が得意なのよね。それなら、今の自分自身のことを解き明かしてみて。どうするべきなのか、導き出す答えは……きっとあなただけのものよ」
【透「心、って」】
愛依「うちもあんまりうまく言えないタチだから、アドバイスとか出来ないけど……雛菜ちゃんを見てる時に、いっつも何を言ってたか、考えてみるといいんかも!」
結華「自分でもわかんない気持ちに気付かれちゃうことってあってさ、それはまあちょっとムカついたりもするけど……なによりも迎える準備を向こうがしてくれてるってことだから」
【透「何、それ」】
131 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:35:16.12 ID:ZSVkFOz00
恋鐘「透は作り物なんかじゃなか、混じりっけのない透たい」
冬優子「ふゆから言えるのは……あんまり気持ちは溜め込みすぎても、隠しすぎても双方メリットなしってことぐらい」
【透「知らない、気持ちとか。わかんないって」】
美琴「……あなたが私に向けていたものは、計算の答えだけ?」
にちか「……がんばれ、私が言えたことじゃないですけど」
【透「うるさい」】
摩美々「答えが導き出せないなら導き出せないでいいんじゃないですかぁ? そのエラーでも報告すれば、多分見えるものもありますよー?」
灯織「……あなたを生み出した私たちだからこそ言えます。あなたは普通のAIじゃない、その壁を越えられる」
智代子「私たちは知ってるよ、透ちゃんには立派な心がある。気持ちがある。ぶつけられるものがあるって!」
【透「うるさいって」】
132 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:36:28.19 ID:ZSVkFOz00
【透「でてけ、私の中から」】
ルカ「さっさと吐いて楽になりな」
【透「……知らないって!」】
133 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:37:24.15 ID:ZSVkFOz00
小さい時に、近くの公園に変わった遊具があった。
四角形を積み重ねたみたいな形で、その割に中はスカスカで、夕陽の光がその合間から抜け出ていた。
オレンジの光が、その遊具を象った影を生み出して、私自身の影をその中に囲っていた。
でも、時間が経つと影は移りいく。
遊具の影は横倒しになっていき、私の影だけがその場に取り残される。
いらない皮を拭い去ったように残ったそれが、なんだか不気味なようで親しくも思えた。
そんな記憶がある。
透「あー、わかんない。わかんないってやっぱ」
ようやっと、浅倉透の影が、囲いの中から見えてきた。
お節介の奔流に飲まれてから、水面にやっと見えた右手。
それは確かに彼女自身が伸ばして、世界を繋ぎ止めようと伸ばした右手なのだ。
透「もう死んでもいいって、別れも辛くないって。そう思ってたのに」
134 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:38:31.47 ID:ZSVkFOz00
透「なんか、勿体無いかもね。ここで死ぬの」
135 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:40:14.47 ID:ZSVkFOz00
透「マジでわからん、これ」
ルカ「お、おい……」
透「いや、覆したりはしないけど。死ぬって、死ぬ死ぬ」
透「だけどさ、ちょっと寂しいかも。うちはここで完全に終わっちゃうしさ」
雛菜「……忘れないよ」
雛菜「この島での暮らしも、雛菜が一度死んだこともぜんぶぜ〜んぶ忘れても! 透ちゃんって言う友達がいたことだけは何があってもぜったいぜ〜ったい忘れないから〜!」
愛依「うん……うちも絶対忘れない。透ちゃんがうちらのことを守り続けてくれたこと、忘れないから」
結華「とおるんはオリジナルのとおるんには替われないけどさ、それは逆も然りってことで。とおるんと過ごした時間はここにしかないもん!」
美琴「あなたの存在は絶対に残してみせる。それが私の責任だから」
透「あー、ちょっ。やめてって、そういうの」
透「来るから」
人とアンドロイドの違いを「心」で説いた学者が、今ここにいたなら私は迷うことなくその左頬を引っ叩く。
目の前に立つ彼女は心と呼ばれるものは確かに持ち合わせてはいないかもしれない。
自立した思考に見えるものも、緻密な計算の集合体であることは間違いない。
されど、そこに何もないかと言われればそれは違う。
浅倉透はよく出来たアンドロイドだ。
結果を導き出せないことを結果として飲み込むことができる。
虚数解を虚数解として定義できる。
私は、本来彼女に見るはずのないものを見た。
天井の照明を反射して、一筋の流星を描いた水滴は、人間のこぼす涙とは全くの別物。
都合や利益に濁りを受けた涙なんかと同じにしてはならない、ただ混じりっけのない純粋な一雫。
「心」なんて言葉で飾ろうものなら、その輝きが曇ってしまうだろう。
136 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:41:46.87 ID:ZSVkFOz00
シンギュラリティの壁にひとしきり落書きをし終えたところで、その時がやってくる。
私たちの感情と事情を幾度となく嘲笑い踏み潰してきた凄惨なるショータイム。
その幕開けが目の前に迫っていた。
透「もうこれ以上やっても渋りたくなるだけだしさ、終わらせようよ。そろそろ」
雛菜「……透ちゃんがそう言うなら、そうかも〜」
にちか「おしおきタイム……これ次第で私たちがどうなるのか決まるんですね」
これまでの虐殺に意味はなかった。
ただルールに則って命を奪い去るだけの調停の儀式のようなもの。
黒幕連中の描いたシナリオを飾り立てるだけのアクセントに過ぎなかった。
しかしながら今回ばかりはそうではない。
このおしおきは私たち自身にとっていちばん大きな意味を持つ賭けなのだ。
ベットにかけられているのは命と、それよりも大切な存在理由。
私たちが私たちのまま生きると言う権利を掴み取るために、自分達の命を危険に晒す。
流石に肌がひりついて仕方がない。
137 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:43:12.89 ID:ZSVkFOz00
愛依「……これ、失敗したらどーなんだろ」
冬優子「ちょっと……ここに来てそんな震えてんじゃないわよ、不安がりすぎ」
あさひ「なるようにしかならないっすよ、愛依ちゃん」
愛依「で、でも……」
一度は覚悟で蓋をしたはずの悪魔が、わずかに顔を覗かせる。
人の判断を鈍らせて、メデューサの呪いのように足を硬直させてしまう、その悪魔の名は恐怖。
悪魔の存在を智覚したとき、既にその悪魔には魅入られている。
努?「……待て」
しかし、躙り寄る終わりを制したのは、悪魔に魅入られた人間ではなかった。
その悪魔を飼い慣らして、恣にしてきたはずの存在が、掌を私たちに向けていた。
138 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:46:51.98 ID:ZSVkFOz00
真乃?「本当に、こんなところで終わりにするつもりなんですか……? こんな、中途半端なところで……」
甘奈?「方舟計画がこんな半ばで頓挫しちゃうなんて……そんなの、甘奈は嫌だよ……」
摩美々「ちょっと、ここに来てゴネ出すとか往生際悪すぎじゃないですかぁ?」
咲耶?「好きに言ってくれればいいさ。夢は全ての原動力、それを奪い取ろうとする者がいるなら私は再び武器をとろう」
何人もの姿を借りて私たちの説得にかかるAI。
私たちが生存理由を浅倉透に託したのと同様に、こいつも方舟計画に全てを託しているのだ。
ここで再び立ち塞がるのは納得はいく。
ただその説得は、これまでの強敵のイメージとは遠くかけ離れていて、精巧なコピーというよりは粗悪な模造品といったイメージを抱かせた。
139 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:48:50.82 ID:ZSVkFOz00
霧子?「透ちゃんもこんなところで死にたくないよね……命が、もったいないもんね……」
小糸?「し、死んじゃうのってすごく辛いんですよ……そ、そんなの嫌ですよね……!」
透「……」
私たちの覚悟が並のものでないと悟ったからなのだろうか。
浅倉透に縋り付くようにして、必死に死の恐ろしさを説いた。
誰もそんなものに耳を貸すはずもないのに。
凛世?「死ねば、空虚な時に呑まれるばかり……孤独に耐えながら、無数の時を送る……その覚悟はおありですか……?」
何度も命を奪い去ってきた存在が、生きろ、生き残れとあれこれ手を尽くす。
それに耳をかさずに死に向かってまっすぐ進んでいく浅倉透。
生と死が入れ替わったような倒錯状態に、いよいよAiは目に見えてふらつき出す。
140 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:49:47.72 ID:ZSVkFOz00
めぐる?「死なないで! 死んじゃダメだよー!」
透「……死ぬとか、そういうのじゃない」
めぐる?「人間でも機械でも死は死だよ! 救済なんかない、ただ周りの人間にいいように使われて終わるだけの、見せ物になっちゃうのが死なんだよ!」
透「だから、そういうんじゃないって」
透「私はみんなのためにバトンを繋ぐだけ。生きるためのバトンを、みんなに渡すって」
エゴイズムに偏るたびに、私たちのイメージから乖離していく。
もはや粘土細工の方がマシとすら思えるほどの、騙りに堕ちていくAIを、浅倉透は悠然と突っ撥ねた。
円香?「……は?」
それがよほど癇に障ったのか、AIは真似る体裁すらも捨て去り始めた。
ただ悪態をつくだけ、不平不満を吐きつけるだけ。
そこにアイドルの面影などどこにもない、醜く膨らんだ不出来な人形に、もはや情など寄せられない。
141 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:51:12.55 ID:ZSVkFOz00
甜花?「え、えっと……人がこんなにお願いしてるのに……それ、無視しちゃうんだ……」
樹里?「じゃあもう知らねーよ、ぜってー許さねえから」
結華「別にあなたに許されなくたっていいよ。誰も求めてないから」
めぐる?「そもそもダンガンロンパ の人格を入れ込むには元の出来が悪かったんだよ! 友情とか絆とか、そんなものを連呼するような弱者は器に似合わないもん!」
甘奈?「もうみんなの方が用済み☆ 失敗しちゃえ☆ 世界に裏切られちゃえ☆ 消滅しちゃえ☆」
夏葉「……酷いものね、直視に耐えないわ」
愛依「こんなの、みんなが言うはずないのに……」
小糸?「何をわかった気になってるんですか? ぴぇっ……」
透「もう、これ以上はダメ。これ以上姿を真似させて、穢させるわけにいかないから」
場を荒らすだけに堕ちてしまったそれに剛を煮やした浅倉透は、ついにそのスイッチを手に取った。
押した瞬間に舞台の幕が開け、ギロチンが持ち上がる処刑台の電源ボタン。
その時が、来る。
142 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:52:15.64 ID:ZSVkFOz00
透「はじめるよ、そして……終わりにするよ」
この島の生活の全てを終わらせる時が。
透「今回も、超高校級のAIである浅倉透さんのためにすぺしゃるなおしおきを用意しました」
かつての私の思惑を粉々に砕く時が。
透「それでは張り切っていきましょう」
この記憶と感情を、無に帰す時が。
143 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:53:27.72 ID:ZSVkFOz00
透「おしおきターイム」
友にすべてを託して、祈る時が。
プロデューサー?「やめろ、やめてくれええええええ!!!!!」
144 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:56:19.54 ID:ZSVkFOz00
-----------------------------------------------
CONGRATULATIONS!!
アサクラさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。
-----------------------------------------------
145 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:57:37.86 ID:ZSVkFOz00
元々、彼女は彼女ですらありませんでした。
0と1の組み合わせによって定義される、仮想現実の中にしか存在し得ない、実態を持たない存在。
あったのは、目的だけ。
283プロの人間を守るという目的のためだけに生み出されたそれが、名を持つようになったのは擬態という手段が付け加えられたから。
それでも彼女は目的を入れ込むだけの箱に過ぎず、ずっと空虚な存在であり続けました。
プログラムされた行動を、忠実に再現するだけのカラクリ。
そんな透明で偽りだらけの存在が、群青の月夜に溶け込んで……いよいよここまで来ました。
さあ、始めましょう。
そして、終わりにしましょう。
この透明な世界を_______
-----------------------------------------------
さよなら 透明だった僕たち
超高校級のAI 浅倉透処刑執行
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146 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 21:59:23.44 ID:ZSVkFOz00
裁判上の床が抜け、浅倉さんは真っ逆さま。
地下の奥底の裁判場、さらにその床下に眠っていたのは見渡せないほどの広大で終わりのない空。
パラシュートも何もないスカイダイビングに、体はどんどん加速しながら降下していきます。
そんな彼女を待ち受けていたのは、大きな大きな虹のアーチ。
七層に分かれた光の海、浅倉さんは頭から突っ込んでいきました。
最初の層は赤の層。
人々に情熱を抱かせるような猛り燃え盛る光は、マグマに由来していたもの。
光を突き抜けたかと思うと、浅倉さんはマグマに真っ逆さま。
美しいその白肌は灼熱に焼かれて爛れていきます。
2つ目の層は橙の層。
人々を元気づけてくれるポカポカと温かい光は、太陽のコロナ、その残像。
ただでさえ爛れていた肌は、丸焦げになってしまい血が流れることもありません。
147 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:00:39.63 ID:ZSVkFOz00
3つ目の層は黄色の層。
幸せを象徴するようなその光は、雷が走らせた閃光。
浅倉さんの頭から足先にまで、超強力な電流が走り、その筋繊維を破壊しました。
4つ目の層は緑の層。
目に優しく、心にも安らぎを与えてくれる光はレーザーライトから。
鋭利な光は、肌に明確な傷をつけながらその体を通過していきます。
5つ目の層は青色の層。
澄んだ心を取り戻させるその色は彼女にとってもホームグラウンド。
極寒の大気に飲み込まれた指先は裂傷を引き起こし、いつもなら飄々としている表情を苦痛に歪めました。
6つ目の層は藍色の層。
冷静さの象徴とも言うべき、深い海のような色はプロジェクターのスクリーン。
浅倉さんの影が藍に落ちると、すぐにその影を槍の影が貫きました。
ポタポタと滴り落ちる液体まで、しっかりと投影されて臨場感も抜群です。
148 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:01:21.68 ID:ZSVkFOz00
長いレインボークルーズもいよいよ終着点。
最後の深層に待ち受けていたのは紫の層。
赤と青が入り混じる混沌とも言うべきその色は、ぐつぐつと煮えたぎる毒沼が発していた異常光。
これまで6つの層を通過して、その体に鮮やかな色を受けてきた浅倉さんでもここに堕ちてしまうのは不本意でしょう。
だってここまで強い色なら、他の全てを飲み込んでしまうのだから。
浅倉さんは決して透明ではなかった。
繊細で淡い色を、確かにそこに宿していた。
その微かな色合いが人々を惹きつけてならないのです。
……だから
彼の精巧なコピーであったもう一つのAIが、その本懐に目覚めて、再び穴を覗き込んだとしても何らおかしなことではないのです。
「バーン」
天井努の幻影が顔を覗かせたその瞬間を浅倉さんは逃しませんでした。
弾丸は深層から表層に向かって一直線に突き抜けて、その額を貫通。
眉間に穴が開くとすぐに天井努の幻影は目ん玉をぐるんとひん剥いて、力なく穴から落下。
すぐに浅倉さんと共に毒沼の底へと沈んで行きました。
透明な存在であり続けようとした浅倉透のコピー。
その最後に手にした色は、あまりにも毒々しく、そして野暮ったい色合いだったとさ。
149 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:09:07.75 ID:ZSVkFOz00
「……終わった、な」
浅倉透と天井努の末路を見届けた私たちの胸中は自分達でも意外な心持ちだった。
別離に悲観するでもなく、天井努の亡霊を葬り去ることができた達成感でもなく、まるで他人事のようにフワフワと実感がない。
「透ちゃん、ちゃんと決めてくれたね」
「AIの眉間に一発、すごいコントロールじゃーん」
「透さん……すっごくかっこよかったです!」
どちらかといえば晴れやかな感情なのだろうが、プラスに振り切れているかと言われればそうでもない。
「……本当に、これで透ちゃんとお別れなんだ」
長い時間を共に過ごした相手の消滅に、少しも消沈がないのでは見合わないだろう。
150 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:10:43.91 ID:ZSVkFOz00
『……みんな、彼女のことを大切に思ってくれてありがとう。俺が言うのもおかしな話だが、透は最後の最後まで幸せだったと思う』
事の顛末、それに伴う私たちの反応を観客席で眺めていた男はそう投げかけた。
奴からすれば、浅倉透がここまでの存在に化けたのはさぞ意外だったろう。
私たちを掬い上げる救世主は、いつしか世界の命運をも背負い込み、見事その期待に応えてみせたのだから。
「……しかし、こうなるといよいよ猶予は無くなりましたね」
風野灯織の指摘通り、奴ら二人の消滅からすぐに、世界のあちこちに綻びのようなものが見え始めた。
描画されている背景の一部が切り取られたように剥がれ落ちたり、動いていたものが慣性を無視して急速に止まってみせたり。
私たちの知る秩序というものに悉く反し始めた世界は、その終焉が近づいていることを声高に主張してくれた。
「うわっ! すごいっすよ、手! わたしたちも、世界と一緒に消えちゃうんっすね!」
ふと視線を手元に移せば、手の甲に浮かび上がる0と1の数列の鎖。筋繊維が本来あるところには複雑なプログラムコード。
そう、あくまで私たちはこの世界におけるアバターにすぎない。
待ち受けているのは、この世界の末路と同じ。
違うのは、ここで書き換えられたプログラムコードは現実でも復旧ができるかもしれないということ。
その保証はないので、あってないような差異ではあるのだが。
151 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:12:11.06 ID:ZSVkFOz00
「……いよいよ、腹を括らなきゃいけないんだね」
「……おう」
隣に立つ美琴が私に話しかけた。
流石にこの局面には美琴も思うところがあるらしい、いつもの感情を悟らせない表情とは違ったものを浮かべている。
「まあ、大丈夫だ。美琴は結果がどうあれ変わりゃしないって」
「……でも、ルカは」
「……まあ、それは、な」
それは名残惜しさに近かった。
人の縁というのは、最初に結ぶ時よりも、改めて結び直す時の方が難しいとはよく言うもので、私と美琴の仲を補修する機会は現実では永い間無かった。
それがこの島で漸く叶った。
一度解けたものを結び直すのに手こずるなら、二度解けたものを結び直す手間は言うまでもないだろう。
152 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:13:31.56 ID:ZSVkFOz00
「オマエが一番よく知ってるだろ」
それでももう私たちはその手間を厭わない。
手間は時間の浪費ではなく、余白のある長旅だ。
何度も結び直すのは追体験であり、やり直しではない。
「何度も何度も繰り返して練習するうちに、脳で考えるよりも体が覚えてくる。体のメモリーは何があってもなくならないんだからな」
「……そうだね、振りは覚えるんじゃなくて、体に憶えさせるものだから」
「それと同じだ。何度だってやり直せばいい」
それに、同じ出来事は繰り返せば繰り返すほど、身に染みて馴染んでいく。
さもそれが自然であるかのように、無自覚に体は学習していく。二人が並んだその場所こそが安息地なのだと本能が学習する。
考えるまでもなくその場所にたどり着けるまで繰り返せばいい。
私たちの葛藤を徒労だなんて誰にも言わせない。
153 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:18:45.25 ID:ZSVkFOz00
「ま、最悪の場合でも美琴さんは私がいただいていっちゃうのでご心配なさらずにー」
「……ハッ、言ってろ」
それにモチベーションの点は心配いらない。
私を無駄に煽り、焚きつける存在がいる。
この島に来る前の苛立ちを思えば、衝突は嫌でも起こる必然なのだろう。
「……さあ、いよいよだ」
世界の崩落がいよいよ目の前にまで波及し出した。
私の今立っている証言台も端から光の粒子になって周りと混ざり始め、私の体も徐々にコントロールできなくなってきた。
きっとこのまま、ドロドロに蕩けて全ては一つになる。膨大な情報の渦は全てを巻き込んで一点に固まって終わるのだ。
154 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:20:25.66 ID:ZSVkFOz00
「次に目覚めた時の挨拶、考えておいた方がいいかもね」
「……んだそれ、何か変わんのか?」
「察し悪いですねー、戻った後で私たちの関係性はどうなってるかわからないんですよ?」
私たちは前に進む。
その手に未来を掴み取るために。
自分たちで選んだ未来を掴み取るためには、その未来に近づくための一歩が必要だから。
「んなことは分かってる。でも、だからって……何も変わりゃしねえよ」
私たちは前に進む。
そうじゃなきゃ前に進むと決めた以前の自分に嘘をつくことになる。
一度決めたからには貫き通さなければ不義理だから。
「私たちは仲良しこよしのお友達じゃない。同じステージに立つ仲間でもない。ただ同じ時代を生きて、たまたま巡り合っただけの仲なんだから」
「記憶の有無なんかで左右されるほどしっかりした結びつきなんかじゃねえだろ」
「……ふふ、そうだね」
「まあ、確かにそうですね。ルカさんの口が悪いうちは変わらないですねー」
155 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:22:05.46 ID:ZSVkFOz00
私たちは前に進む。
他の誰かに、追い越されないように。
進んだ先で、待っている奴がいるから。
「それじゃあ、また後で。ルカ、にちかちゃん」
「おう、寝坊すんなよ」
「はい! 待ってます!」
156 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:23:09.39 ID:ZSVkFOz00
予期せぬエラーが発生しました
強制的にシャットダウンします
エラーコードA-0000000000000045
「新世界プログラム」の継続に負荷がかかっています
Code:reproduce…………interrupt.
user>command>shutdown
1291021483471834819483742157356
1910431048934819473195748190533
8882147936493271042894613912213
4241542656434213214254346578462
71309148031214039584102153201032
シャイニーダンガンロンパ2 ゼツボウノアイドルトキボウノシマ…………end
157 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:25:25.49 ID:ZSVkFOz00
-------------------------------------------------
CHAPTER 06
絶望、あるいは逃げられぬ希望
END
残り生存者数 ???人
-------------------------------------------------
158 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:27:18.17 ID:ZSVkFOz00
【CHAPTER 06をクリアしました!】
【クリア報酬としてモノクマメダル160枚を手に入れました!】
【アイテム:データの残滓を手に入れた!】
〔283の人間を騙っていたプログラムの残滓。エラーを吞み込んだコードには異物が混じり、再現することは適わない。そこに眠る想いも、在ったはずの野望も区別はつかない〕
159 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:28:29.67 ID:ZSVkFOz00
------------------------------------------------
EPILOGUE
神様は死んだ、って
------------------------------------------------
160 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:30:41.39 ID:ZSVkFOz00
コンクリートと鉄板で打ちっぱなしになった空間に張り巡らされるケーブルは、部屋の中央に鎮座する巨大な装置に集うようにして点滅する。
部屋には常に排気の轟音がしており、部屋の室温も他の部屋に比べると少しだけ高くなる。
優れた装置を扱うことの代償は、目に見えて大きい。
「……やはり、全員がすぐには……難しい、みたいだな」
男は透明な強化プラスチックで蓋をされたポッドを撫でながらそう呟いた。
視線の先には、呼吸器をつけられた少女が横たわり、瞳を閉じている。
規則的に鳴る電子音だけが、彼女の生を語る。
「すぐには……ですか」
その副詞には、これから先には必ず、という意味が見え隠れしていた。
彼女たち自身が選んだ未来を信じて疑わない、彼の職責とその自負が見て取れる。
横に立った女性はそんな彼の心構えに微笑みを添えた。
161 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:32:00.30 ID:ZSVkFOz00
「……これもあの人から見て学んだ、プロデューサーとしての気構えですよ」
彼は、憎き仇に思いを馳せていた。
自分の目の前で昏睡する少女たち、彼女らを追い込んだのは間違いなくその男なのだが、彼は男を恨みきれずにいた。
師事を仰ぎ、背中を追い、横に立とうと努力をしてきた。
そのために注いだ己の心血は間違いなく本物であり、それを否定することは彼女たちへ捧げてきたものの否定にもなるからだ。
「ご立派です、プロデューサーさん」
「いや、何も……俺は結局、あの人のことも守れなかったんですから」
「……肩を落とさないでください、確かに私たちはプロデューサーに救われたんです」
謙遜が自虐に変りかけたところで、別な少女が背後から声をかけてきた。
振り返るとそこには、口元に魅力的なほくろを携える黒髪の少女。
彼女は、彼がプロデュースしてきたアイドル、その張本人だ。
162 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:33:01.33 ID:ZSVkFOz00
「1回目のコロシアイも、今回のコロシアイも、すんでのところでプロデューサーは掬い上げてくれました。プロデューサーが確かに守ったものがあるんです」
「ありがとう、灯織たちの方がもっと不安なのに心配かけちゃ悪いよな」
「いえ、お気になさらないでください……」
彼女は完全に一度死んだ。
仮想空間の中での死亡とはいえ、脳自体も己の死を自覚し、完全な脳死にまで陥った。
それでも今こうして立つことができているのは、装置に備え付けられた生体保存の機能、そして彼女が命を落とした世界そのものが消滅したことに由来する。
肉体と死の間の紐付けがなくなった、と表現するのがいいだろうか。
「他の方々は、まだ……」
「これであの裁判からもう1週間になる……まだ意識を取り戻している方が少ないな」
「……」
大きな災害があった直後や戦争の最中、夥しいほどの犠牲に収容できる場所が間に合わず、
ブルーシートで覆うだけした蛹が並べ立てられているのを見たことがある。
それと現状は大差ない。
目を覚ますこともなく、反応も示さない。希望も絶望も在るのか分からない棺が並んでいるだけだ。
163 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:34:27.82 ID:ZSVkFOz00
「新世界プログラムの方はどうなっているんですか?」
「ああ、はづきさんと一緒に解析を進めているけど……プログラムを書き換えたのは相当な手練れらしい、難儀しているよ」
「それに加えて強制シャットダウンで予期せぬダウンが起きてますから、エラーにエラーが重なってるイメージですね〜」
「……そうですか」
はじめに彼らがこの島に上陸した時には、こんな展開が待っているとは思いもしなかった。
コロシアイの最中、消息を絶った仲間たち。
その所在がわかってすぐに飛びつけば、そこにいたのは意識を失い仮想空間でのコロシアイに挑まされている非常事態。
冷静な判断など下せるはずもなく、今に至る。
まして、その参加者の中に首謀者がいるなんて思いもしなかった。
「灯織、記憶はどうなってるんだ」
「この島に来る以前の記憶も、今ははっきりとしています。対照的に、新世界プログラムの中で起きた出来事はどこか朧げというか……」
「やっぱり、強制シャットダウンの影響は出てしまうんだな……」
あのシャットダウンから、何人か目を覚ました人間はいる。
こうして今立って会話をしている風野灯織はその中でも最も良い形での復帰をした例。
自立した思考に、ちゃんとした受け答え、記憶にこそ障害は残っているが、基本的には元通りだ。
164 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:35:32.79 ID:ZSVkFOz00
「仮想空間で体験した出来事は全部、脳は本当に起きたこととして認識しています。そこを強制的に切り離すと起きるのは、風野さんのように脳がすべて錯覚だと判断して記憶も体験も手放してしまうか、もしくは_____」
「完全に脳と肉体が同期してしまう……ということですか」
目を覚ましたものの中には、あの島での生活で負ったダメージをそのままに残す者もいた。
大半の人間は島の暮らしの中で命を落とし、肉体や臓器に損傷を受けていた。実際にその傷はなくとも、脳はすでにその部位は死んだものとして認識してしまう。
「こうして眠っている方々の中には……それこそ脳が死を誤認したままの方もいるんですよね……」
「未来機関の協力でなんとか生きている……そういう状況の中堪えている人もいるな」
「……」
頑張れ、と安易に応援の言葉を投げることができればよかった。
それが出来ないのは、目を覚ましたところで待つ未来がどんなものなのか誰にも分からないから。
本当に目を覚ますべきなのか、という議論から始めなくてはならないから。
____斑鳩ルカという少女も、棺の中には眠っているから。
165 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:37:20.26 ID:ZSVkFOz00
目覚めてほしくない、なんて思うわけはない。
命に貴賎はない、どんな人間であれど目を覚まして自分の人生を生き抜いて、向き合うべきものに向き合うべきだと言う信条もある。
これは不幸を願っているのではない。
来るやもしれぬ混沌に怯え、二の足を踏んでいるのだ。
少女は自分の胸に寄せた手のひらをぎゅっと握り込んだ。
「警察の捜査が進んでな、社長の企てもだいぶ明るみに出たんだ。事務所の資金を一部流用して溜め込んでいた口座も、その足取りも。足がかりにして共犯者の身元もだいぶん掴めてきた」
そんな少女の様子を見兼ねてか、彼は語った。
少女が眠りこけている間に起きた、世間の変化。
自分達の身に纏わる変化は、良し悪しの判断をしかねるものだった。
「そして、このコロシアイ以前の余罪も……山のように」
「チーム・ダンガンロンパ……ですか」
こうして改めてその実情を知らされると自分達の節穴さには落胆する。
あれほど近くにいたのに狂気に気づくことができなかったこと、自分達の日常が数多の犠牲の上に成り立っていたことを自覚していなかったこと。
少し気を抜けば発狂をしてしまいそうだ。
166 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:38:23.07 ID:ZSVkFOz00
「ああ、その結果……彼女が社長の協力者であったことは裏付けも取れたらしくてな。……目を覚ませば追求は免れないだろう」
そして当然話題は彼女の元にたどり着く。
一ヶ月に及ぶ惨劇、いつもその中心にいた少女。
その惨劇を引き起こした火種に立つ少女。
そして、誰よりも……生き抜こうともがいていた少女。
「斑鳩さんは目を覚ますでしょうか」
斑鳩ルカという存在は、奇異というほかなかった。
「もし仮に目を覚ましたとして、記憶は、その人格は……どんな状態で? コロシアイを強いる前の完全に真っ黒な状態になるのか、それともあの島の暮らしの中で育まれた漂白されたような状態になるのか……」
未確定な未来への推定を口にした。
流れるように言葉が連なったのは、不安や怯えから。
不用意なまでに舌が回って吐き出された言葉は年相応の畏れを抱いていた。
当然、咎められる謂れはないものだ。
167 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:39:20.18 ID:ZSVkFOz00
「……いや、それは違うな」
でも、咎めは別として……言葉の一部が彼の耳には看過できない表現を孕んでいた。
168 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:40:38.17 ID:ZSVkFOz00
「俺は外から見守っていただけだけど、斑鳩さんは何も漂白なんかされていない。元から彼女に落とすような汚れはついていない、いつだって彼女は清い、ありのままでいたんだ」
数年のキャリアの中で、多くの人間と関わり、そして彼自身が少女たちを育ててきたからこそ備わった知見。
人々の言動には常にその源点となる核がある。
そこから逸脱しようとすれば、核の持つ引力が軌道を歪めるし、逆に核に近い行動であればあるほど、それは大胆なものとなる。
知らず知らずのうちに、その本質を覗き込む力を、核を見極める力を彼は手にしていた。
「彼女は変わったんじゃない、かつての自分を、本当の自分を見つけ出すことができたんだ。島の暮らしの中でみんなと過ごすことで、失ってしまったものを取り返したことで。それを道標にして見つけ出したんだ」
彼の目には、彼女もまた無垢に映った。
世間から距離を取ろうと悪態をつき、自分の装いも黒く染め上げて感情を覆い隠そうとして、
自分自身に何度も刃を向けてズタズタにしてしまおうとした倒錯と暴走の権化。
169 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:42:52.33 ID:ZSVkFOz00
そんな言動の奥底に見えた、透き通った真珠のようなもの。
彼には、少女の変化は回帰として映った。
羽に虹が生まれていくのではなく、虹を取り戻していく。
雨雲の下に潜り込んでいた小鳥が、気がつけば雲の上に突き抜けようとしている。
「だから、きっと」
それを成長という言葉で括るのは、少しばかり横暴だろう。
「斑鳩さんは目を覚ましてくれる。本当の、彼女自身の姿で」
自分の担当アイドルでもない、そもそも同じ事務所のアイドルでもない、そんな相手に向けた言葉にしては力強すぎたかもしれない。
そんな言葉が出たことに、周りはもちろん彼自身が目を丸くした。
「なんて、彼女をプロデュースもしれない俺が言ったところでしょうがないか……ははっ」
「ふふ、プロデューサーさん……風格が備わってきましたね〜」
「茶化さないでくださいよ……」
「いえいえ、これからの事務所を引っ張っていくだけあって立派な観察眼だと思いましたよ〜?」
「……お褒めに預かり光栄です」
横に立つ事務員は、かつての上司をその陰に重ねた。
裏に秘めた本性こそ災厄というほかなかったが、表向きの姿勢は文字通り尊敬に値する人間だった。
敏腕、されど驕ることもなく、常に所属アイドルの輝ける場所を追い求めて思考を止めることがなかった。
彼もまた、優れた観察眼を持っていた。
170 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:44:29.20 ID:ZSVkFOz00
______ピッ
そんな時だった。
「……プロデューサー、あれって」
少女が指差した先には心拍を示すモニター。
緑がかった黒には定期的に波が押し寄せ、繋がれた者の命を指し示す。
その命が突然に暴れ出した。
押し寄せる波は細かく、急速なものとなり、その間隔もどんどん狭くなる。
171 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:46:20.45 ID:ZSVkFOz00
「……まずい!」
男たちは慌ててその棺に駆け寄った。
いたずらな運命か、そこに横たわっているのはつい先ほどまで話をしていた斑鳩ルカそのもの。
ただでさえ血色の悪い肌は更に青ざめ、呼吸器にはどんどん水滴が付着していった。
「どうしてこんな急に容態が……」
「まずい……どんどん血液中の酸素濃度が下がってる……」
人の命はいつも薄氷の上にある。
何がきっかけで、生に転ぶか死に転ぶかもわからないほど危うい存在。
別れなど告げる間も無く訪れてしまうことを、居合わせた人間は誰しもが知っていた。
172 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:48:11.58 ID:ZSVkFOz00
それゆえに、焦る。
目の前に漂う死の香りを、確かな死臭として嗅ぎ紛う。
死を何よりも恐るがゆえに、決断を急いた。
「はづきさん、AEDの用意をお願いします……急いでください」
「はい……!」
「悪い、灯織……手伝ってもらうことになりそうだ」
「いえ……当然です、私でお力になれることであれば」
右に左に駆けずり回り、救命のための道具をかき集める。
「呼吸がどんどん浅くなってます……!」
「クソ……ダメだ……こんなところで……まだ……!」
自分達の目の前で命の火はどんどん小さくなる。
熱も感じられぬほどにか細く、小さく、今にも消え失せそうな光。
必死に蝋を足し、風を送り、燃え上がらせようとした。
ただ、その努力でも消し飛びそうなほどに淡く、脆いそれは、彼等の目の前で……
完全に失せた。
173 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:49:19.03 ID:ZSVkFOz00
「そん、な……」
「……クソ」
斑鳩ルカという少女は瞼を下ろしたまま、身一つ動かそうとはしなかった。
つい先ほどまでと何が変わったのだろうか、きっとこれから彼女はどんどん朽ちていく。
心臓というポンプが止まった今、皮膚の下を走る血管は鎮まりかえり、筋肉という筋肉は解きほぐされることもなくなり、ただの肉塊に変わる。
それが死というもの、それが骸というものなのだ。
「……元々、彼女たちは死んでいるようなものなんです。生き返るかどうかは賭けのようなもの。ここまで耐え抜いてくれたこと、必死に生きようとしてくれたこと。それに感謝するほかない……悔しいですが」
男は自分の拳を震わせながら、振り絞るようにして呟いた。
零れ落ちそうな涙を噛み潰してまで自己弁護の言葉を吐いたのは、隣の立つ少女のため。
少女は時間が止まってしまったかのように目の前で起きた悲劇に金魚のように口をぱくつかせるほかなく、それが痛ましくてたまらなかったのだ。
「……斑鳩さん、最後までわからないままでしたね。彼女が社長の意思にどこまで賛同していたのか、このコロシアイを仕組んだのは本当に彼女だったのか」
「……ええ、もっと多くのことを彼女から聞き出しておきたかったです」
いくら死を嘆いても意味がない。
後悔とは元来無意味なものなのだ。悔いたところで、完全に同じ状況など出会うはずもない。
まして、この惨劇の首謀者など世界に二人といないのだから。
「……ひとまず、救護班と、彼女たちに連絡をしましょう。助からなかったことを、別れの時が来てしまったことを」
緊急事態に此方に向かっている部隊がある。
事の終わった骸に施すには慈愛に満ちすぎた装備を置いてきてもらうように促すよう指示を出した。
174 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:50:17.93 ID:ZSVkFOz00
暫くして、部屋に彼女らがたどり着いた。
合流した少女たちも無事とは言い難い。
仮想空間の中では押し潰されて生涯を閉ざしたもの、肉体ごと吹き飛ばされて刹那の存在になったもの。その影響は色濃く肉体に残っていた。
「あ、大丈夫です。ここからは自分で押していきますー」
「うん、私もここからなら松葉杖で歩けるから」
つい宣告命を落としたばかりの少女にとって因縁深い二人は、ようやっとのことでその棺にたどり着く。
肉体が痛まないように適温に自動調整されるポッドの中で、斑鳩ルカは何も変わらぬ様子で目を閉ざしている。
175 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:51:41.85 ID:ZSVkFOz00
「まるで、眠ってるみたいですね」
まるで、という言葉は正しくない。
彼女は実際に眠っているのだ、長く、永い、眠りの中にいる。
「失礼な言い方になりますけど、こんな終わり方って無責任じゃないですか……美琴さんに、こんな想いをさせたまま、遺したままなんて」
痩身の女性は目を潤ませることもなく静かに亡骸を見つめていた。
二人には、確かに肩を並べた時間があった。
共に汗を流し、労いあった時間があった。
それがどれほどか細く、どれほど微かだとしても、二人の間をつなぐ糸が確かにあった。
「せめて、自分の言葉で、本当の自分で想いを伝えてからですよ……新世界プログラムなんかじゃなくて」
その糸を、横に立つ少女が指で弾いた。
ピンと張られた糸はその力で小刻みに震え、高く透き通った音を立てる。
176 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:53:28.81 ID:ZSVkFOz00
「……ルカ」
その音色が、響いた。
凪いでいた海面を音が震わせ、漣が起きる。
漣は募り、押し寄せ、砂の城も崩す。
根本から崩れゆく城、その果てにはずっとずっと昔に埋め込んだ真珠が顔を覗かせる。
177 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:55:34.94 ID:ZSVkFOz00
「ごめんね、もっと早くに……あの時に、ルカに気持ちを伝えてあげられればこんなことにはならなかったのかもしれない」
その真珠は自分でも埋め込んだ記憶を失っていたもの。
はるか昔に埋没させた、あの日の宝物。
「アイドルとしてじゃない、パフォーマーとしてじゃない、緋田美琴としてルカのことを見ていたのは……いつまでだったんだろうね」
「美琴さんは……悪くないですよ」
それは空虚な励ましだと少女自身も自覚していた。
だって、それはあの島で自分に向けられたものと同じだったから。
この相方が、同じ間違いを繰り返そうとしていたのを正してくれたのが目の前の骸だと知っていたから。
178 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:56:25.87 ID:ZSVkFOz00
それでも、声をかけずにはいられなかった。
それほどまでに痩身の女性の言葉は悲壮感に満ちていたのだった。
「もう、時間は帰ってこない。あのステージでルカと共演することもない……私は、ルカからスポットライトも、ダンスシューズも、センターマイクも、全部全部奪ってしまった」
少女の言葉はもう届かなかった。
自分に向けた刃は、どんどんと奥深くに突き刺さり、心の臓へ。
拍動と共に噴き上がる血液が、両手を汚す。
「だからもう、私に立つ資格はないの」
「美琴さん……」
血液をいくら掬い上げても、体内に戻すことなど出来ない。
179 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:57:23.58 ID:ZSVkFOz00
それでも
滴り落ちた血の雫が水面に波紋を生んだ
180 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:58:14.28 ID:ZSVkFOz00
「……るせー」
生まれた波紋が、パルスを動かした。
181 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 22:59:09.64 ID:ZSVkFOz00
「え、え……?」
水滴で曇った呼吸器の向こうで、微かに動いた口元。
見間違い、聞き間違いかと思って注目してみると、次に動いたのは目元だった。
目元に皺を寄せ、目を細めて、確かに睨みつけた。
「人が眠ってる上でギャーギャー騒いでんじゃねえ……頭痛ェ……」
止まらない悪態。
溜息混じりの憎まれ口。
182 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 23:00:08.26 ID:ZSVkFOz00
「言ったろ、私は死なない。生き抜くって決めたんだ」
心拍を示す電子音は、力強く、落ち着いた調子で、規則的なリズムを奏でた。
「たとえ……神様は死んだ、って私は生きてるさ」
常識で説明のつかない出来事が起きた時、人間は奇跡だと評して神や天使の功績に結びつけることがある。
それが進行を形作り、歴史を紡いできた。
でも、此度はそんな奇跡なんかではない。
泥臭く、惨たらしく、醜くも這いつくばってでも掴もうとして、足掻き回った結果。
生き残るという意志ただ一つに引かれた末の行動。
そこに神格化されるような気品などどこにもない。
神などいないのだ、神はとうの昔に死んでいる。
だからもう、自分で生き残るほかなかった。
神の名を捨ててでも、少女は生を勝ち取った。
183 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 23:00:38.22 ID:ZSVkFOz00
「それが、斑鳩ルカの生き様だ」
不恰好な笑顔に、中指を添えた。
184 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 23:01:24.44 ID:ZSVkFOz00
------------------------------------------------
EPILOGUE
神様は死んだ、って
斑鳩ルカは生きている
END
------------------------------------------------
185 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 23:03:43.97 ID:ZSVkFOz00
-------------------------------------------------
【コロシアイ南国生活をクリアしました!】
【全編クリア報酬としてアイテム『イースターエッグ』を手に入れました!】
〔コロシアイ南国生活を生き抜いた証。私たちは私たちで行く道を決める。希望も絶望も、その道すがらにたいらげてやれ〕
-------------------------------------------------
186 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/03(土) 23:14:18.39 ID:ZSVkFOz00
以上、これにて2021年の2月より開始したシャニマス×ダンガンロンパのシリーズは完結となります。
シリーズ当初から読み続けてくださった方、途中から興味を持ってくださった方、本当にありがとうございました。
スレの進行も拙いものでご迷惑をおかけしながらでしたが、ここまでの長編を無事完走し終えたのはスレに参加してくださった皆様のおかげです。
感想や応援の言葉をいただけたので、ずっと楽しい気持ちのままやってくることができました。
改めて感謝の言葉を述べさせてください。
少しだけ語らせていただくと、このシャニロンパ2は開始当初からエピローグがどうなるかはある程度決めていました。
エピローグのタイトル回収はクリスマスパーティで『神様は死んだ、って』の楽曲披露があった時から温め続けたネタで、ようやっと陽の目を浴びせることができて万感の思いです。
本当にこれが書きたくてここまでやってきたんです……!
さて、これにて本当にお話の更新は終わりになります。
また公開していなかった親愛度マックス報酬やスキルなどの設定の公開はする予定ですが、それ以外に何か明らかにしてほしいことなどありましたらお気軽にお尋ねください。
すべてがすべてバッチリの回答を用意できるわけではないとは思いますが、何かしらの返答は出来る限りしたいと思っています。
そのほか感想や本編に関係のない質問なんかでもお聞かせていただけたら幸いです。
それではいったん締めさせていただきます。
長らくお付き合いいただきありがとうございました。
187 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 23:18:05.51 ID:QH732L050
>>1
乙!!
長い間本当にお疲れさまでした!!
188 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/03(土) 23:50:42.93 ID:k/047f4Y0
2年弱に渡る連載、お疲れさまでした。
シャニマスとダンガンロンパと言う魅力的な2作品のクロス作品ということもあり、とても楽しみに読ませていただきました。
原作の要素を取り入れて展開を想起させつつ、随所でずらしを入れることで先の展開予測を困難になっていたため、
大まかな流れは読み切れるものの細かい部分での驚きが溢れていました。
特に興味深いと思ったのがルカを主人公にするにあたって最初に交流を深めるのが千雪だった点です。
動いているのを見れば、確かにルカには283プロと交流する必要がなくその関係性をこじ開けなければ話に関わらなかったので
その点では包容力と積極性と強引さを兼ね備えた千雪はとても適任だったと思いました。
また、冬優子との奇妙な関係性や殺伐した空間だからこその美琴との確執とその結末も原作にはないからこそ面白かったです。
全部書いていると長文になるので細かい好きポイントを1つ挙げるのですが、このスレの最初の生存者名簿の過去の犠牲者が
【DEAD】から【UNDEAD】になっているのが、あくまで今この裁判中は死んでないだけって表現してるようで好きです。
長文失礼しました。
質問等も受け付けてくださるとのことなので、思いついたら質問させていただきます。
長い間本当にお疲れさまでした。
189 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/04(日) 02:46:21.35 ID:D05q2mqq0
このSSがきっかけでダンガンロンパにハマって、原作1、2をプレイしたり色々なSSを読み漁るようになりました。
自分的にはこのシャニロンパ、俺新訳ダンガンロンパ、嫌われスイッチ、ドクターKクロス、[
たぬき
]クロス、キーボ粉あたりが特にお気に入りですね。
タイプ:ワイルド、ズガドーン、究極奥義正義の鉄拳など所々にクスっとくるネタが入っていて面白かったです。
個人的に気になってるのは、前作ラストでにちかがダンロンのストーリーやモノクマを酷評しまくってる謎のシーンですね。
長い間お疲れ様でした!
このような名作に出会えてよかったです。
190 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2022/12/04(日) 02:52:34.92 ID:mgqN8qMa0
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191 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/04(日) 17:06:03.14 ID:kLsYh4cD0
感想どれも隅々まで読ませていただきました…本当にありがとうございます
>>188
被害者犯人を先に考えてからストーリーを肉付けしていくやり方でやっていた中で、
2章で退場が決まっていた千雪にルカの心を開かせる役割を担ってもらったのですが結果的にこれ以上ないハマり方をしたように思います。
個人的に章の最初と最後の飲み交わしはお気に入りですね……
冬優子はルカと親密になる展開は最初期から決めていました。
芸能界の中でしたたかに立ち回る姿をルカがどう見るのか、ずっと原作で見てみたいと思っている展開なので本シリーズに落とし込んだ形です。
双方の持つ刺々しさの共通点と相違点を自分なりに描けたかなと思っています
>>189
オタクとしての深度は浅めなので、自分に馴染みある他作品ネタをちょくちょく入れました。
多分同じ世代の方の幼少期にピンとくるネタが多めですね…
ちなみに前作ラストのにちかですが、具体的な場面の想定があるものではないです
原作ダンガンロンパのラストのように、続編をにおわせるための演出……というよりスマブラの参戦PVみたいなテンション感です
次はこいつで書くぜ!の意思表示ですね
192 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/04(日) 17:08:28.36 ID:kLsYh4cD0
【好感度マックス到達報酬のアイテムとスキルの設定】
※交流イベント自体はその場で即興だったので親愛度マックス時のセリフなどは無いです
・風野灯織
【アンケート用紙】
〔その質問はあなたを知るために。ファンからの気持ちにこたえるため、彼女はペンを執った〕
スキル【星掬い藍仰ぐ】
〔学級裁判中集中力ゲージを使用するたびに発言力を回復する〕
・月岡恋鐘
【実家のエプロン】
〔長崎の実家を手伝っていた時から愛用しているエプロン。料理から飛び散った出汁のしみ込んだ記事からはなんだか懐かしい香りがする〕
スキル【ばりうまかブルース】
〔体力回復を行った際効果が増幅する(自動回復は除く)〕
・田中摩美々
【お手製スパイス】
〔袖の下に忍ばせているいたずら七つ道具が一。七味と胡椒をブレンドしたスパイスに、くしゃみは必至。間抜け面を眺めて今日も彼女は微笑むのだ〕
スキル【フィドル・ファドル】
〔偽証を行う際の失敗ペナルティを軽減する〕
・三峰結華
【プラスチックの傘】
〔外からでも持ち主が透けて見える。そのビニールは雨を弾く、まるで持ち主を喧騒から覆い隠すようにして〕
スキル【NOT≠EQUAL】
〔学級裁判中発言力が減るたびに集中力を回復する〕
193 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/04(日) 17:09:18.59 ID:kLsYh4cD0
・小宮果穂
【ジャスティスレアカード】
〔ウエハースを買うとカードが一枚付いてくる食玩の最高レアリティ。ホログラムレアの光沢に少年少女は夢を見る〕
スキル【エクストリーム・ブレイク!】
〔学級裁判中コンマ判定の際、一度でもぞろ目が出ればミニゲームが無条件クリアとなる〕
・有栖川夏葉
【極上の赤ワイン】
〔彼女の生まれ年に醸造させられた上質な赤葡萄のワイン。突き抜けるような爽やかな酸味が、20年と言う時の蓄積を感じさせる〕
スキル【chreer+】
〔発言力ゲージを+5する〕
・園田智代子
【限定パッケージチョコレート】
〔国内大手チョコメーカーとコラボした際に特別に作ってもらえた記念品。パッケージには夢を叶えた少女が満面にの笑みを浮かべる〕
スキル【砂糖づけ・ビターエンド】
〔集中力ゲージが+5される〕
・桑山千雪
【パッチワークの針山】
〔長年愛用していた服を再利用して仕立てた針山。山の中には忘れられない思い出と記憶が眠る〕
スキル【マイ・ピュア・ロマンス】
〔発言力が満タンの時、集中力の自動回復量が倍になる〕
194 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/04(日) 17:10:05.81 ID:kLsYh4cD0
・芹沢あさひ
【遊園地のぬいぐるみ】
〔いつか遊園地に行ったときに持ち帰ったぬいぐるみ。ウサギとネコとクマ、三体のぬいぐるみに愛を注いでいたら、不思議なことに一瞬だけ一人でに彼女たちが動いたとあさひは語る〕
スキル【ジャンプ!スタッグ!!!】
〔集中力を使用した際の効果が増幅する〕
・黛冬優子
【魔法のステッキ】
〔幼少期に冬優子が見ていたアニメのヒロイングッズ。可愛らしい効果音とともに夢と希望を振りまいたステッキは、誰にも愛される彼女自身のルーツ〕
スキル【アンシーン・ダブルキャスト】
〔学級裁判中誤答するたびにコトダマの数が減少する〕
・和泉愛依
【鼬毛の小筆】
〔幼い頃から修めている書道で愛用の小筆。手入れの行き届いた毛先は何年経とうともその運筆を滞らせることはない〕
スキル【メイ・ビー】
〔学級裁判中誤答するたびに選択肢が絞られてわかりやすくなる〕
195 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/04(日) 17:11:19.41 ID:kLsYh4cD0
・浅倉透
【10年後のカセットテープ】
〔時を超えて音声とともに大事なものを結ぶ方舟。彼女がそこに吹き込んだ言葉は10年の時を待っている〕
スキル【つづく、】
〔学級裁判中発言力がゼロになった時、一度だけ失敗をなかったことにしてやり直すことができる(発言力は1で復活する)〕
・市川雛菜
【オレンジドットのTシャツ】
〔雛菜の大好きなキャラクターが有名ブランドとコラボしたTシャツ。着用モデルとしてのオファーを受けた際、彼女のしあわせは一つの到達点を得た〕
スキル【Makeup♡Box】
〔学級裁判のクリア報酬が増加する(正答が連続した回数×2枚。途絶える度にカウントはやり直し)〕
・緋田美琴
【音の飛んだROM】
〔研究生として最初に挑んだ楽曲のデータが入っていたROM。もはや曲は流れないが、擦り切れるほど聞いた記憶が澱みなく脳内で再現してくれる〕
スキル【RESONANCE】
〔ロジカルダイブで誤答時、どの問題の選択肢を間違えたのかわかるようになる〕
・七草にちか
【タッパー】
〔はちみつレモン専用タッパー。大事に持っていれば別の人間への差し入れのおこぼれをくれると約束してくれた〕
スキル【♡まっクろはムウサぎ♡】
〔反論ショーダウン・議論スクラムのコンマ判定の時コンマの基本値が+20される〕
※斑鳩ルカは設定なし
196 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/04(日) 17:12:56.08 ID:kLsYh4cD0
【自動販売機で販売される前シリーズキャラにまつわる品〕
≪贈答品≫
〇メダル10枚均一
【オートミール】
〔燕麦を脱穀して作った加工食。鳥さんも同じものを食べられるので、一緒に日向ぼっこもできちゃう夢の食事〕
【エアメール】
〔海を越えて空を超えて思いを届けるレターセット。たとえばらばらに離れてしまっても思いは一つ〕
【魔法のビデオ】
〔モデルから華麗な転身を遂げた少女が披露した、小学校でのサプライズライブの映像。新たな道を歩みはじめた彼女は、少女たちに醒めぬ魔法をかける〕
【新品の包帯】
〔怪我をした時にサッと負ける応急処置。常に清潔であるために一度使ったものはもう使ってはならない〕
【観戦チケット】
〔とある球団のホーム球場の観戦チケット。なかなか予約が取れないらしく、ファンからすれば垂涎物〕
【プロデューサーさま人形】
〔和服のアイドルが常に携帯している藁人形を模して作られたぬいぐるみ。もたれかかれるぐらいのサイズ感〕
【アプリコット】
〔ティーンエイジャー向けのファッション誌。女の子の興味関心に合わせた多種多様なテーマを取り扱う〕
【バトルパス】
〔某ガンシューティングアーケードゲームのユーザーカード。名前とともに戦績を刻むことができるが、残念ながらこの島に筐体はない〕
【髪留め】
〔ごくシンプルなデザインで機能性を重視した髪留め。どんなファッションにも合わせやすい反面本人の素材力が試される〕
【マクサ・ドロップス】
〔からんと缶を振ればいろんなフレーバーの飴玉が転がり出る。ハッカ味が残りやすいのはもはやお約束〕
〇メダル20枚
【親愛のお守り】
〔白兎は歩みを止めぬものに幸運を運ぶ。どんなアイドルに渡しても大喜びしてもらえる不思議なお守り〕
197 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/12/04(日) 17:14:41.09 ID:kLsYh4cD0
日の目を見なかった設定はこのぐらいでしょうか。
スキルは初期から考えていたので若干コミュが古めですね。
アイテムは途中で考えたものもあります。
198 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/04(日) 21:15:37.67 ID:YYcbtoGkO
乙でした
なんでこれだけ高いクオリティの話をこれだけの速度であげ続けることが出来るんだ。。
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/04(日) 22:20:10.89 ID:/le23+yZ0
個人的には「1週目のコロシアイ」のメンツはこがたん以外は誰だったのかが気になる・・・
安価無しでもいいからそれの詳細も見てみたい気がする
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/05(月) 01:41:52.81 ID:IpJhgrAr0
スキル一覧公開されると、灯織三峰のコンボがお手軽永久機関が完成してて最強じゃーんって思ってしまうな
質問リストを作ってきたので作者の人に質問させていただきます。
Q1. 1作目2作目、それぞれどのような順番で誰が生き残って誰がどこで死ぬ、
物語上でどのような役割を果たすなどが決まりましたか?
Q2. 1作目2作目、それぞれ会心の出来だと思った描写やトリックなどはありますか?
Q3. 書いている中で筆が乗って当初のプロットと異なる方向に書きあがっていった部分などありますか?
Q4. 1作目2作目それぞれ一番好きなシーン、気に入っているシーンなどはどこですか?
Q5. 書いている中でより魅力に気づいたキャラクターなどはいますか?
Q6. 完結後に振り返って、あそこはもう少しああしてればよかった、こうしてればもっと良くなったかもしれない、
といった反省点などはありますか?
Q7. 原作であれば無印は「希望」、2は「未来」が象徴する単語だと思いますが、
この作品の1作目は「絆」として、2作目を象徴する単語は何だと思いますか?
Q8. ゲームシステム的な質問ですが、2作目最後のスクラムのようなクリアにぞろ目を要求してくるタイミングで、
仮に果穂のぞろ目で強制成功のスキルを持っていた場合どのような挙動になっていましたか?
Q9. 摩美々のスキルが〔偽証を行う際の失敗ペナルティを軽減する〕との効果ですが、
偽証は1章と2章で1回ずつしか行われていなかったような気がします。
これは仮にスキルを習得していたら3章以後でも偽証は発生したのでしょうか?
Q10. 何となくですが、ストレイライトの3人のスキルは、
あさひ:集中力を消費してコトダマを削る
冬優子:発言力を消費してコトダマを削る
愛依:発言力を消費して論破候補を削る
と、コストを払って選択肢を減らすような効果で共通してるように感じたのですが、
スキル効果を決めるときにアイドルやユニットなどを意識していたことはありますか?
Q11. 2作目のプレゼント【クマの髪飾りの少女】について、part3の257で、
>>誰にとってもトラウマになりうる品として作用します。
とのことでしたが、これは黒幕だった恋鐘に対して渡しても好感度マイナス効果が発生しましたか?
また、絵を見た雛菜が即座に寒気を感じてたのに対してルカは特にマイナス的なものを感じていないようでしたが、
これはルカが黒幕だったからですか?
Q12. 1作目part2 597
4章開始前のあさひと冬優子の会話で、
>>冬優子「ていうかなんか愛依遅くない?あいつ何してるわけ?」
>>あさひ「愛依ちゃんなら今日は■■■■■っすよ?」
>>冬優子「え?あー……そういえばもうそんな時期だったのね」
>>あさひ「わたしも早く行ってみたいっす、■■■■!」
>>冬優子「はいはい、いい子にしてたらプロデューサーが連れてってくれるわよ」
という内容がありましたが、この伏字の中には何が入りますか?
1の不参加組はいわゆる絶望の残党状態とか人格の移植後状態とかだと思っていたので、
文字数的に「コロシアイ」と「希望ヶ峰」だと考えていたのですが、希望ヶ峰学園が存在しなかったり、
2作目の終盤で人格移植もされてなかったりでわからなくなりました。
Q13. 2作目のエピローグで、
>>目を覚ましたものの中には、あの島での生活で負ったダメージをそのままに残す者もいた。
とのことですが、誰がどのような後遺症を残しているのかについては考えていますか?
Q14. 2作目組は1作目のコロシアイ生活の顛末についてちゃんと現実のものとは認識できていなかったと思うのですが、
本編終了後に改めて知るとどのようなことを思うのでしょうか?
Q15. 本編終了後のアイドル同士の関係性で原作と違って特筆するようなところはありますか?
Q16. ざっくりでいいので改めて本編開始前から含めた全体的なシナリオの流れのまとめが欲しいです。
Q17. この世界で今後の283プロやルカはどうなると思いますか?
長文、たくさんの質問失礼しました。
よろしければお答えいただけると幸いです。
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/05(月) 19:25:20.89 ID:K7tJBf5r0
そういえば作品とか作るときってイメソンも考えるって人、結構いる気がするんですけど、
これの1作目と2作目にイメソンとかテーマソング的なのってあったりするんですかね?
作品全体じゃなくて章ごととかキャラごととかでもいいんですけどそういうイメソンみたいなのありますか?
ないならいきなり考えるのはさすがに無茶ぶりなのでないでいいです
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