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【安価スレ】堕ち行く光
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555 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/04(火) 22:40:09.69 ID:YxyvjnRIO
お雪に聞くことは特になしでよろしいですか?
明日の夕方〜夜に投稿しますので、それまでを安価の期限とします。
キャラについても同様です。話の都合上、お雪と紅華は仲間にならないのでご了承をお願いします。
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/04(火) 23:27:32.80 ID:XxER0uy8O
じゃあ
この近くに亜人の住む森林地帯はないか?でお願いします
557 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2022/10/05(水) 02:42:37.80 ID:a/OhZmiv0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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558 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/05(水) 12:48:41.64 ID:9VgnTbASO
【名前】静音(シズネ)
【人種】天狗
【性別】女性
【魔法】浄化魔法。物理的な汚れだけでなく殺菌や呪いをはじめとした魔術的な汚れの浄化も可能。
旅館「牡丹雪」専属の女医。
一本の三つ編みにした長い銀髪。アイスブルーの瞳。黒い翼。白い肌。優しそうな顔立ち。長身で豊かな胸やくびれた腰、安産型の美尻など悩ましい体つきだが客への接待はしない。
心優しく面倒見のよい性格で、困っている人を放っておけない世話焼きなお姉さん。
痴情のもつれから客が従業員を襲おうとしたり呪いをかけようとしたトラブルが過去にあったため、護身術程度に体術を習得しており恋愛について無意識に敬遠している。
559 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/05(水) 17:21:02.28 ID:d5lH632yo
【名前】リン
【人種】人間
【性別】女性
【魔法】障壁魔法
牡丹雪の板前をつとめる、粋で懐が深い大人の女性
いつも長い紫髪をざっくりとまとめて着物をたすき掛けにして着ている
自分は可愛げがないし接客に向いてないと思っているので裏方専門
人間同士の紛争に巻き込まれて故郷の街が襲われて家族や友人を失いながら逃げ延びて天涯孤独の身になる
せめて最期に噂に聞く緋桜郷の桜を一目見て死にたいと思いボロボロになりながらたどり着いたところをたまたま通りかかった頭領に気まぐれで拾われた
下働きをしながら料理の才能を開花させ、今では鬼以上に和食を理解していると評される
今の境遇に感謝してるし生きがいを感じているが、自分だけ生き残ったことや紛争に関して内心では未だに割り切れないところがある
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:27:36.43 ID:VgEsE8a/O
緋桜郷はイルステッド最大の歓楽街として名を馳せていたし、世界規模で見ても有数の都市だというのは有名な都市だ。
だがまさか。入郷した途端に、一番偉い人にロックオンされるとは思っていなかった。
いやね、俺も何も考えていなかったわけじゃないんだ。偽名使ったりして対策はしていた。
でもさ、正体知ってますーここにいる限りは安全ですー宿屋も手配しますーって速攻で外堀を埋められたら、ね。どうしようもないじゃんか。
それで手配されたのが緋桜郷の頭領、その恩人が経営する旅館。徹底的に囲もうとしてて笑うに笑えない。
もしかして、彼女たちは俺を美味しく頂く気なのだろうか。色々な意味で。
だとしたら勘弁願いたいものだ。俺なんか喰ってもたぶん美味くはないぞ。色々な意味で。
過去の英雄が遺した名言がある。童貞すら守れぬ者に何が守れるのか、と。
なるほど、素晴らしい言葉である。
ならば俺も守らねばなるまい。この色欲渦巻く欲望の郷で、貞操という一つしかない至宝を。
今は捨てた勇者の名に懸けて。漢には逃げてはならない時がある。今が、その時だ。
《リヒトの手記》
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:28:23.98 ID:VgEsE8a/O
緋桜郷はエッチな場所。そうハリゴーディンさんに教えられた私は、正直やばいって思いました。
そんな場所に14の子供を連れて行って何をさせるつもりなんでしょうか。
私に身を売れと?戦いで役に立たないんだからこれくらいやれと?
貧相な身体の私が一文でも稼げると思ってるんでしょうかねこの人は。
いや、戦いで何も出来ないのは本当にごめんなさい。
でも許してください。私はまだ14の子供ですし、貴方みたいに戦いと慣れ親しんでるわけでもないんです。
レムカーナでコソコソ生きていた小娘に期待なんかしないでいただけると助かります。
そういえば、お雪さんに連れてこられた牡丹雪、綺麗な旅館だったなぁ。
でも、あんな綺麗なところなのに夜にはエッチなことをするんだよね。
お出迎えしてくれた綺麗なお姉さんとかが。それを知っておきながらどんな顔して接したらいいんでしょう。
大人の街に放り込まれた私は早くも心が折れそうです。助けてチャカちゃん。ハリゴーディンさん。
リヒトさんはエッチなことしに行くかもしれないから除外します。
男の子はそういうのに興味深々だって私知ってます。本にそう書いてありました。
《ウィンディ・ヴァルマンウェの手記》
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:30:15.71 ID:8uOBEE2xO
お雪に案内されたのは、旅館『牡丹雪』の七階。客人用の客室らしく、広々とした居間が広がっている。
ちなみに、牡丹雪は全室に露天風呂が設置されているらしい。大浴場は男湯、女湯、従業員用浴場の三つに分かれているのだとか。
近辺で採れたどんぐりを食べているチャカは、満足そうにウィンディに抱き抱えられている。
旅館内で粗相をしないか心配だ。もしやらかしたら損害賠償はどれくらいになるのだろうか。身体で払うのだけはしたくないものだ。
ともかく、今は行商人の調教の手腕を信じる他ない。
「この部屋はリヒトさん、こっちの部屋はウィンディちゃんたち。緋桜郷に滞在するうちは、我が家のように扱ってくれて構わないよ」
「我が家、ね」
反射的に言葉を零した、リヒトの表情が微かに曇る。周囲の人には読み取れないほどに些細な変化だし、当の本人も気づいていない。
「食事は毎食お出しするけど、他の子と一緒に食べるかこの部屋で食べるか、それとも外食するかは先に教えてくれると助かるよ。配膳の手間があるからね」
「風呂は大浴場を好きに使っておくれ。夜は掃除でお客さん用の浴場は閉めちゃうから、その時は従業員用のを使うといいよ。お前さんたちが気にしないのなら、昼間でも従業員用浴場は使っても構わないけれど」
「立て看板を作っておくから、一人で入りたい時は入り口に立てておけば他の子は入ってこないよ。昼に入りたいけど一人がいい…って時はこれがおすすめだね。昼も夜も、浴場はお客さんで賑わってるからさ」
「あとは、リヒトさんに対しての注意が一つ。追加サービスを希望するならその子と直接、値段とかを交渉しておくれ」
「はいはい分かりました分かりました」
あーあー聞きたくないと頭を振るリヒト。お雪は微笑し、頭を下げた。
「では、ごゆるりとお寛ぎください。身体と心が癒されること、わしら牡丹雪の一同は願っております」
「…どうも」
屈託のない明るく優しい笑顔に、頬を掻きながらリヒトは答える。何故か頬を上気させていたウィンディは、ぺこぺこと頭を下げていた。
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:30:57.22 ID:8uOBEE2xO
そういえば、今はお昼時とはいえ他の客の姿を一切見なかった。風俗として利用する人はともかくとして、旅館として利用する客すらもいない。
「まっ、今週は定休週だからねー。牡丹雪は月に一度、丸々一週間お店を閉めるのさ」
「曲者!?」
荷物を降ろし、椅子に座って考えごとをしていたら、窓から声が聞こえてきた。
独り言などしていないので単純に心を読まれている。怖い。
カーテンを開けてみると、そこにはポニーテールの曲者がいた。
「曲者とは失敬なぁ!!!わたしは牡丹雪の従業員だよう!」
ぷりぷりと怒っている女性のお山がぶるんぶるん揺れる。着物を緩めているからなのか、ふとした拍子で見えそうで目のやり場に困る。
というより、何故彼女はバルコニーがあるのに窓にへばりついているのだろうか。
この高さから落ちれば常人は無事で済まないどころか間違いなくとんでもないことになるはずだが。
「女将さんが引っ掛けてきた男の人がどんなイケメンか気になってね。顔は及第点、身体つきも上々…というかやばいね!どんだけ鍛えてるのさ!勇者って皆こうなのかな?」
「引っ掛けてって…。俺は他の若い勇者を知らないから比較出来ないんだ、すまない」
「だよねー。わたしもそれなりにここで働いてるけど、勇者様のお相手をしたことは一度も無いからわかんないや」
勝手に窓を開けて転がり込んできた曲者。どうやって開けたのか、そもそも何故あんなことをしていたのかは触れないでおく。
「わたしは霧香(キリカ)。お呼びとあらば即参上!年齢はヒミツのイケイケ鬼ウーマンだよ!どうぞよろしく!」
決めポーズをバッチリ決める霧香改め曲者。
リヒトはただ、苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
「ノリが悪いぞ少年ー!」
564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:32:00.09 ID:8uOBEE2xO
「きゃー!」
「待て待てー!」
興味深そうにドアの隙間から子供たちが中を観察してきたので、取り込み中でなければ自由に出入りしていいと伝えたところ、リヒトの客室は子供たちの遊び場になってしまった。
五、六階が従業員の区画らしいのだが、そこではしゃいだら他の従業員の迷惑になるのでわざわざここに来たのだろう。
「…羨ましいな」
自分には無かった、子供の時間。自由に遊び笑うひととき。
もし自分にもあったなら。そう夢想しても叶うことはなく、所詮はたらればだと諦めた届かない夢(まやかし)。
何度求め願ったのだろうか。数えきれないほどに欲した人との繋がりは、家を出るまで手にすることは出来なかった。
家を出て聖女に出逢うまでも、地獄に等しき悪夢の中を一人、彷徨い歩いていたが。
不幸の星の下に産まれたのではないか、と自嘲げに嗤う。子供たちにはその姿が見られることはなかったし、見られたくない。
この苦しみは、自分だけが感じていればいい。他人に共有して苦しませても、辛くなるだけだから。
憂いを帯びた瞳で、バルコニーに目を移す。鮮やかな緋桜が、今の自分には眩しかった。
「あの子たちのわがままを聞いてくださってありがとうございます」
「…ん…。礼を言われるようなことじゃないよ」
コトリ、と湯呑みを置きつつ、女の子が謝辞を述べる。
リヒトは視線を女の子に向けつつ答えた。
湯呑みに注がれていたのは温かい水。即ち白湯である。
ゆっくり飲み干してみると、身体の中からぽかぽかと温まる。熱すぎず冷たすぎない、絶妙な温度だった。
ちょうど喉も乾いていたからありがたい。
「雫(シズク)ちゃん、だっけか。しばらく迷惑を掛けるだろうが、ウィンディともどもよろしく頼むよ」
「はいっ!こちらこそよろしくです!」
人懐っこい笑顔を見せる雫は、将来性を感じさせる可愛らしい少女だった。
未来では傾国の美女と呼ばれているかもしれないが、牡丹雪の人は皆同じくらい顔立ちがいいことに気がついた。顔面偏差値のインフレが激しすぎる。
565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:32:36.71 ID:8uOBEE2xO
到着して早々、特にやることが無くて暇を持て余したリヒトは、仕入れた荷物の荷運びに勤しんでいた。
子供や女性に重い荷物を持たせて、のんびりするのは気が引けるという個人的事情もある。
こんなことにハリゴーディンを使うのはもったいないにも程があるので、リヒトが荷運びを行なっている。暇つぶしを兼ねているので当たり前のことだが。
まず最初に運んだのは、鮮度が命である食材類。両腕に木箱を担ぎ、樽を背負った姿は傍目には拷問に見えるが、リヒト本人はなんとも思っていない。
床が抜けないように一応浮遊しているが、それはそれで不気味な見た目になっていることにリヒトは気づいていない。
「おかげで助かったよ。ありがとう」
せっせと食材を整理している女性が、そんなことを述べる。
リヒトとしては暇だからやっただけなのだが、感謝はとりあえず受け取っておく。
ぶっきらぼうな態度は今更どうしようもないので、放っておいてもらいたいものだ。
「素直じゃないな、君は」
「素直じゃなくてすみませんね。どうせ俺は天邪鬼なガキンチョですよ」
本当に放っておいてほしい。
「そんな天邪鬼な君にお礼を差し上げよう。他の人には内緒だよ?」
リンと名乗った女性が差し出したのは、見るからに高級そうな魚の煮付けだった。
美味そうな匂いに思わず喉が鳴り、腹の虫が鳴く。
本当にこんな上等な品を食べていいのか訊くと、リンは頷いた。
「構わないとも。本来はお雪さんに食べてもらう試食品だったんだけど。それはまた作ればいいしね。君の感想を聴かせてほしいな」
「美味すぎて美味すぎる。俺の貧弱でゴミクズな語彙力では言葉に出来ません申し訳ない」
「そ、そうかい。そこまで喜んでくれるなら料理人冥利に尽きるよ。あと味が変わるから涙は拭いてくれ」
大粒の涙を流しながら試食をするリヒトに、リンは慌てふためいた。
その後、美味しさの秘訣を訊いてみるも、企業秘密だと躱されてしまったリヒトだった。
566 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:33:42.33 ID:8uOBEE2xO
次に訪ねたのは医務室。《取扱注意》と書かれた箱を恐る恐る運び込み、机に置く。
薬品の匂いが鼻を突くが、嗅ぎ慣れない匂いはあまり気分の良いものではなかった。
「こんなにいっぱい薬品があると、どれがどれだか分からなくなりそうだな」
空の瓶を手に取り、説明文書に目を通す。専門用語の羅列に処理能力は敗北し、無言で元に戻した。
「知らない人にはそう見えるだけよ。知っていれば、ちゃんと違って見えるの」
カルテの整理をしているのは、牡丹雪唯一の女医である天狗『静音(シズネ)』。
やや短い黒い翼が種族を主張しており、グンバツなスタイルはちょっと子供にはお見せ出来ない色気を放っている。
それでいて、下品さを欠片も感じさせないのは背の高さと彼女の顔立ちの良さが関係しているからだろう。
「今はリヒトくんも、他の子と同じ大切な人だから。もし怪我でもしたらここに来なさい。完治するまで責任を持って看病するから」
「そりゃどうも。もしもの時は頼りにさせてもらうよ」
「約束よ?」
気のない返事をしつつ、リヒトは医務室を後にする。
自分が大怪我を負う時は相当に危険な事態になっている時だ。だから、彼女を頼る日が来ないことを祈った。
567 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:34:33.58 ID:8uOBEE2xO
「ここでいいのか?」
「大丈夫ですよ〜」
着物と生地が詰まった袋を置く。六階の一室に呼ばれたリヒトは、女の子の指示に従い荷物を運んでいた。
女の子の名は結衣乃(ユイノ)。本人曰く『ウィンディと同年代』らしいが、メリハリのあるボディを見る限りとてもそうには見えない。
げに恐ろしき脅威の格差社会である。同年代だからと比較されるウィンディが不憫でならない。彼女の明日はどっちだ。
純年齢が同じくらいなのか、人間に年齢換算すると同じくらいなのかは分からないが、どっちにしても今のウィンディに勝ち目は無い。
可能性に期待するしかないが、同じように結衣乃も成長する可能性を鑑みるとやはり、希望はゼロに等しいのかもしれない。
「ありがとうございます〜」
「この量…君が皆の服を担当してるのか?」
リヒトが運んだのは袋が四つ。人数にして数十人の服を賄える量だ。個人の物とは思えない。
結衣乃はリヒトの質問を肯定する。
ちょっとした所作一つで結衣乃のたゆんたゆんが揺れ、その度に目の光を失ったウィンディを幻視する。
悍ましい密度の呪詛を吐いているようにも見えたが、リヒトが見たのは幻なので本人がそうしている可能性は無いだろう。
彼女は他人想いの良い子なのだ。たとえ自分の身体が貧相だからって恵まれた子を羨み恨むなんてことがあるはずがない。
こっそりウィンディの部屋を覗いてみるとそこには、虚な目をしたウィンディが無言で大量の牛乳を飲み干していた。
優しいリヒトは何も言わずその場を後にし、今回のことを忘却した。
568 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 02:38:07.67 ID:8uOBEE2xO
亜人の居場所 判定↓1コンマ
01〜30:今はもういない
31〜99:未だに住んでいる人がいる
00:???
亜人の種族 判定↓2コンマ(上の判定成功時限定)
01〜30:獣人
31〜60:鬼、天狗
61〜90:エルフ
91〜99:自由安価
00:???
569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/06(木) 02:58:50.96 ID:PLDOyecLo
あい
570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/06(木) 07:42:42.55 ID:oc1lVK7/o
自由安価用:ドリアード
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 23:10:22.65 ID:xUF7PtilO
「本日のお昼ご飯ですっ!」
「ありがとう」
雫が配膳してくれた昼餉に手を付ける。献立は白米とオスイモノなるスープ、あとは魚の塩焼きやトンカツだった。
普通の手料理が食べたいと要望を出していたのが通ったのか、緋桜郷の食卓に並ぶようなシンプルなラインナップになっている。
かしこまった雰囲気は嫌いなのでこちらとしてもありがたい。
「おかわりはたくさんあるからね。焦らず食べておくれ」
ニコニコ顔でご飯をよそうお雪。忙しなく配膳を務める雫。目に入った物を片っ端から食べていくリヒト。
三者三様の姿がそこにあり、その中でもリヒトが圧倒的に目立っていた。
幸い、この部屋には彼ら以外はいないので、人目は気にしなくても問題ない。
三人前を食べきり、両手を合わせる。緋桜郷の風習によると、食事を終える時は手を合わせ『ごちそうさまでした』と言うのだとか。
慣れ親しんだ仲ならば省略していいらしいが、そこまで親密ではないし単純に失礼なので郷に入っては郷に従うことにする。
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 23:10:56.56 ID:fWTA6LnpO
「お雪さんに訊きたいことがあるんだが、いいか?」
「わしで良ければ」
差し出された緑茶を一杯飲み干し、息を吐く。ほっと落ち着く優しい味わいに、表情が綻んだ。
リヒトはお雪に対し、緋桜郷近辺の森林に亜人が住んでいるのか訪ねる。首肯で返されたリヒトは、小さく頷いた。
「差し支えがなければ、どんな人が住んでいるか教えてほしい」
「とは言われてもね。鬼や天狗といった先住民たちが住んでいるだけさ」
「わしら緋桜郷の民…その大半は、その森林地帯に源流を持つ。先祖が森を飛び出してここに拠点を創り、それが発展して今へと至ったのさ」
「だから…昔はとんでもなく仲が悪かったんだよ。それこそ、目と目が合ったら即決闘と言わんばかりにね。今では遺恨は綺麗さっぱり流れて友好的な関係が築けているけど、昔は本当に酷かった。ああ、思い出すだけでも頭痛がするねぇ…」
たはは、と乾いた笑いを浮かべるお雪。当事者にとってはかなり大事だったそうだが、悲しいかな。
その悲しみを共有出来る人はここにはいない。彼女からすれば、リヒトや雫など産まれたての赤ちゃんに等しいからだ。
「そういえば、お雪さんっていったい何歳なんだ?」
何気なしに発したリヒトの言葉は、女性なら誰しもが抱える地雷を踏む愚行だった。
雫はあちゃあ…といった感じで頭を抱え、皿を片付けていく。あからさまに逃げの手を打っている。
それに対してお雪は、女には秘密があるものだよ、とだけ残し口を噤む。心なしか、周囲の気温が十度ほど下がった気がした。
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/06(木) 23:11:24.97 ID:0AgUKqv7O
何をするかを↓1にどうぞ。
574 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/07(金) 03:33:08.24 ID:3UKY9xBMo
森へGo!
575 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/08(土) 23:35:08.94 ID:L2r3r2EoO
いつものようにマナをフードに迎え、牡丹雪を出る。ウィンディには緋桜郷の雰囲気に慣れてほしいので、お留守番を命じてある。
これを機に友達を作ってもらいたいものだ。牡丹雪の従業員は皆善人だから、邪険に扱われることはないはずだ。
喧騒で賑わう街中を進む。冒険者、住民問わず多種多様な人が雑踏の中に見受けられる。
緋桜郷の風習に倣っているのか、大半の人が着物に身を包んでいるため、リヒトの服装は大衆の中でかなり浮いている。
「しかし、温泉とやらの匂いはすごいな。慣れてしまえば、気にならないんだろうが」
「わたしはきらいじゃない」
「へえ」
自然由来のものだからか、マナは気にする様子を見せない。
火山地帯に暮らす妖精なら、毎日温泉に入っているのだろうか。気になるところである。
雑踏を抜け、関所を通る。目的地の森はすぐそこだ。リヒトの足ならば往復で一時間も掛からないだろう。
軽い足取りで走っていると、白狼の群れが隣を並走していた。催促するような、期待するような視線をこちらに向けながら。
追いかけっこにでも興じたいのだろうか。こちらは遊んでいる暇など無いのだが。
だがしかし、ここで彼らを無視するのも可哀想に思える。
「《天狼星(シリウス)》」
リヒトはそう呟き、光魔法を行使した。左手から溢れた光が集い、数匹の狼を形作る。
幼い頃に考案した、孤独を紛らわすための悲しい魔法。戦争では一転して、数多の命を喰らった凶悪な魔法。
それは今、同胞をもてなし戯れるためだけに行使された。あたりを駆け回って光の尾を引く白狼が、血塗られた過去を持つなど夢にも思うまい。
「アオーン!」
彼らも同胞だと認識したのか、光の白狼とじゃれあい始める。微笑したリヒトは速度を上げ、森の中へと消えていった。
576 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/08(土) 23:35:47.42 ID:L2r3r2EoO
獣道を行くこと十分。風のざわめきの中にカラスの鳴き声が混じり始め、日の光が空を覆う樹木の葉に遮られ明度が下がっていく。
殺風景だった道は石畳と木の柵で彩られ、灯籠が周囲を照らしていた。
かなり年季が入っており、汚れが付いていることからして、長年放置されているようだが、中の炎は煌々と燃えている。赤ではなく、青色に。
なんとも不思議なものだと思いながら道を進むと、集落が見えてくる。ここが目的地で間違いなさそうだ。
リヒトは箒で入り口を掃除している少年に声を掛ける。ピタリ、と動きが止まった。
「………」
じっとこちらを見つめ微動だにしない少年は、何を思ったのか茶色の変なものを取り出した。本当に何をしているのだろう。
ぷらぷらと左右に何かを揺らす少年。それを不思議そうに見るリヒト。
数秒後。どこからともなく現れたキツネが、少年の右手に握られていた何かを咥え去っていった。
「…なんだ、人間か」
人に向かってなんだとはなんだ失礼な。リヒトはささやかな抗議をするが、少年は口をへの字に曲げて反論する。
「緋桜郷ばかり有名になって、こっちは閑古鳥が鳴いてんだよ。こっちのことなんか見向きもしないくせによー!」
逆ギレもいいところだと、リヒトは苦笑した。周囲の人は、二人を生暖かい目で見守っている。
見ているなら助けてほしいと、リヒトは嘆息した。
「ここは天狗と鬼が暮らす隠れ里『竹風村(ちくふうむら)』だ!せっかく来たならゆっくりして金落としていけミーハーなバカヤロー!!!」
少年が逃走する間際に零したトドメの捨て台詞に、リヒトはまた嘆息した。
仮にも隠れ里と名乗っているなら有名にならなくても当然だろう。と納得しながら。
577 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/08(土) 23:36:53.44 ID:L2r3r2EoO
何をするかを↓1にどうぞ。
竹風村での行動数:最大3
578 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/09(日) 00:54:41.27 ID:SZgUKVjJ0
ウィンディや牡丹雪への方々へ贈るためのお土産を物色する
579 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/09(日) 01:32:00.59 ID:OSJl06I3O
年配の夫婦が営む手芸店には、二人が丹精込めて作り上げた温かみのある作品が並べられてある。
どれも細部まで作り込まれているのだが、少年が言ったように観光客が全く来ないため全然売れず、埃を被っている状態だったが。
店主も客が来るとは露ほどにも思っていないようで、姿が見えない。商品も置きっぱなしで不用心が過ぎる。
まあ、ここがのどかで平和な村だから為せることなのだろう。
仮に緋桜郷で同じことをしたら、根こそぎ悪党に盗まれているのがオチだ。
他にも軽く目を通すと、漬物屋では熟練の技が唸る素晴らしい出来の漬物が売られていた。
試供品を食べてみたのだが、独特な匂いとは裏腹にあっさりとしていて食べやすい。
外の人向けの品らしいが、なるほど。この味なら抵抗なく食べられると、一人納得した。
マナに食べさせようと試みたが、口の中に押し込まれる結果に終わった。美味かったから別にいいのだが。
他に目に付いたのは、『竹ノ湯』と呼ばれる温泉で売られている温泉饅頭くらいか。
温泉の名が入っているが、温泉の湯は使われていないらしい。味も匂いも変になるので、それはきっと正しい判断だと思われる。
こちらも一口味見してみると、ふんわりとした生地に詰め込まれた甘い餡が、優しい甘さを口いっぱいに主張した。
製作者曰く、普通の砂糖とイルステッドでは緋桜郷近辺でのみ生産される黒糖なる砂糖を独自の割合でブレンドしているらしく、この味は竹風村の密かな自慢なのだとか。
ごく少数を緋桜郷に輸出して販売しているが、決まって開始数分で完売する人気品らしい。
数が少ないのが主因だろうが、緋桜郷でも親しまれているのならその人気に嘘は無いだろう。
製作者が年なので、近々製作を辞めてしまうらしい。
そうなれば、この味は永遠に失われるのだろう。悲しいがそれが歴史というものだ。
技術を引き継いでくれる勇気ある若者が出てくることを祈っておく。
「…とっっってもくやしいけど、これだけはおいしい」
"あの"マナが太鼓判を押すほどに、温泉饅頭は美味しい。これをセールスポイントにすればさらに売れそうな気がするが、生憎リヒトは商人ではないので、そんな益体もない考えは破却された。
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/09(日) 01:34:44.83 ID:OSJl06I3O
誰に何を買うかを↓3までどうぞ。書き方は例を参考にしてください。一レスにつき二種類しか書けません。
例
ウィンディ 櫛
リン まな板と包丁
牡丹雪の子供たち 温泉饅頭を買えるだけ
581 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/09(日) 01:40:34.80 ID:rKkJ9uuCO
すみません、一レスにつき一種類に変更します。
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/09(日) 01:51:03.59 ID:ezoQtFgZo
子供たち お饅頭買えるだけ
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/09(日) 10:31:08.37 ID:yAp+bYPSO
ウィンディ 櫛
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/09(日) 14:01:30.03 ID:HIOu71EbO
リン 花
585 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/09(日) 20:01:06.37 ID:fVPTf7TQO
さて、何を土産に買うべきか。こういう普通の人らしいこととは縁が無かったので、何が喜ばれるのか皆目見当が付かない。
唯一マトモな助言をくれそうなウィンディはここにいないし、マナに期待しても無駄なのは分かりきっている。ハリゴーディンは論外だ。
結局のところ、行き詰まった時に頼りになるのは己の直感だけだ。本能が良いと言った物を選べばいい。
他人にどう受け取られるかは他人次第。フェルリティアで巡り合った旅人が残した名言はこんな時にも役立った。
そんなこんなでリヒトが購入したのは、子供たちが喜ぶであろう温泉饅頭。これは買えるだけ買ったが、たった数箱で売り切れたのを見るに、生産数も相当に絞っているのだろう。
他にもウィンディやリンに贈答する櫛や花を購入した。
女の子なのだから、髪の手入れをする際にこういう物はなにかと役立つはずだ。たぶん。
厨房に立つリンに花を贈っても邪魔になるだけな気がするが、選んだものはしょうがない。
最悪、花瓶に挿してインテリアとしてでも使ってもらおう。
オマケでもらった温泉饅頭を齧りつつ、リヒトは荷物を纏める。二、三個だけつまんだ後、残りはマナ用に残しておく。
目の前に袋を置くと、当然のようにそれはマナに盗まれ、胃袋の中に収まった。まあ、元々食べさせるつもりだったから別に良いのだが。
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/09(日) 20:02:18.99 ID:fVPTf7TQO
何をするかを↓1にどうぞ。
竹風村での行動数:2
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/09(日) 21:20:52.05 ID:H6DDiO/Do
マナ、波長の合いそうな気配感じない?
拠点に来てもらうなら相性重要だし
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/09(日) 21:33:20.90 ID:7Cbg8rphO
マナチェッカー 判定↓1コンマ
01〜30:いない
31〜80:ひとりいる
81〜99:ふたりいる
00:???
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/09(日) 21:41:54.35 ID:0nZg517Vo
マナちゃんキャラ立ってきてるねぇ!
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/09(日) 21:54:59.30 ID:XXJlXI9EO
仲間を一人募集します。テンプレートは以前のものをお使いください。
場所が場所なので種族は鬼と天狗のどちらか限定です。
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/10(月) 04:20:54.84 ID:qbLUw00Q0
【名前】蓮武(レンブ)
【種族】天狗
【性別】男
【魔法】雷魔法
水色髪短髪筋肉質の青年。大剣を背負っている。白い羽がある。性格はクールだが真面目なところがある。剣の修行の為に旅をしている。剣では一度も負けた事がないくらい強い。幼い頃に奴隷商人に捕まり奴隷になった過去がある。売られる前に脱出し今は自由になっている(脱出した時に一人の剣士に出会い剣術について色々教えてもらった)。クールだが心の奥では深い傷をおっている。
戦闘では剣術と雷の魔法を使用したり、剣に雷を纏わせて戦う事ある。
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/10(月) 20:17:21.87 ID:pyolr5kGO
のんびりと足湯に浸かるリヒトとマナ。ズボンの裾を太ももまで捲り上げ、乳白色に濁った温泉に足を浸け、温まっていた。
マナは体格の都合上、リヒトと同じように席に座っても足が温泉まで届かない悲しみを背負っている。
が、桶に温泉を汲み、木箱で即席のマナ専用足場を用意することで事なきを得た。
うぼぁー、とだらしのない声を漏らし、足湯を堪能する二人の顔は、他人には見せられないくらいに破顔していた。
拠点にこのお湯が有ればなんでも出来る、頑張れる気がする。
そんな気にさせる名湯は、緋桜郷では知名度が全く無い。その原因はもはや言うまでもない。
ここでさりげなく、リヒトはマナにアイコンタクトを取った。
意味が伝わるならそれでよし。伝わらなかったなら口で言えばよし。単なる実験という名のおふざけだ。
気の合いそうな人はいるか。リヒトの問いに、マナは逡巡ののちに指を一本だけ立てることで答える。
意図が伝わったこと、そして何より、マナが同調出来そうな人がいることに驚いた。
「すまない、見知らぬ人よ。俺も湯に浸かって構わないか?」
同時に、意識の外から声を掛けられる。振り返ってみるとそこには、筋骨隆々な男性がいた。
羽が生えていることから、種族はおそらく天狗。
「どうぞ」
リヒトが促すと、青年は頭を下げながら足湯に入る。ふう、と息を吐く音が聞こえた。
マナに視線を移してみると、一瞬だけ彼を指差す。彼が先述した同調出来そうな人で間違いない。
しかし、この偏屈な妖精がシンパシーを感じるとは。厄ネタを持っていそうな気配を感じる。
リヒトは内心冷や汗を掻きながら、努めて平静を装う。そんなリヒトを知ってか知らでか、マナは大きな欠伸をした。
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/10(月) 20:19:03.87 ID:pyolr5kGO
蓮武と何を話すかを↓1にどうぞ。
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/10(月) 20:52:45.38 ID:8nESAjNV0
ずいぶんデカい剣を背負っているんだなと背中の剣に注目する
595 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/11(火) 01:59:04.78 ID:kOc6wHl4O
竹風村の足湯に入る際のルールとして、手荷物は全てカゴに入れて保管する、というものがある。
そのため、リヒトはカバンなどの荷物一式はカゴに入れているわけだが、目の前の男性はカゴから荷物がはみ出ていた。はみ出ざるを得なかった。
刃渡り2m超の無骨な大剣が、カゴの横に放り出されている。カゴに乗せようものなら瞬く間に押し潰れるのは確実なので、その判断は正しいのだろう。
だがこう、もうちょっとどうにかならなかったのだろうか。
刀身がさらけ出されていると、どうしても気になってしまう。
だから俺は悪くない、と誰に対してでもなく自己弁護をする。
しかし、かなり大きな剣だと感心する。リヒトも膂力には自信があるが、大剣類は手に馴染まなかった。
振るえないわけではなかったが、手足のように扱うには、技量も筋力も足りていなかったのだ。
彼がわざわざそれを選んでいるということは、自身が信を置くに足る、と認めていることの証左に他ならない。
それほどまでに、研鑽を積んできたのだろう。
「俺の剣が気になるのか?」
「ん?ああ。俺も剣の腕には多少の覚えがあってな。随分と大きな得物だと感心してたところさ」
「なるほど」
目立った装飾の無い、使い込まれた大剣は、その刀身に蒼空を映す。
しっかりと手入れがされた剣は、華やかさこそ無いがとても美しい。彼の人柄を、刀身に映る鏡像に垣間見た気がした。
596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/11(火) 01:59:49.28 ID:kOc6wHl4O
蓮武と何を話すかを↓1にどうぞ。
597 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/11(火) 03:41:21.07 ID:DE/g0du4o
(荷物の雰囲気などから旅人だろうと踏んで)
どこから来てどこへ行くのか、といった話をする
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/13(木) 14:26:10.12 ID:CjE8GOePO
さて、彼はいったい何者なのだろうか。
武器を持っていること。行動を阻害しない戦闘向きの服を着ていること。荷物に保存食や水が所狭しと敷き詰められていること。
そして、戦闘を日常とする者が放つ特有の雰囲気。
以上を鑑みるに、旅人や修行者の類と見て間違いなさそうだが。
リヒトは自身を『緋桜郷に心身を癒しに来た戦士』ということにして、天狗の男性に質問をする。
「貴方は何をするために旅してるんだ?その旅はどこから始まった?」
蓮武(レンブ)と名乗った男性は少しの間考える素振りを見せ、ゆっくりと口を開く。
「…俺は、剣の道を極めるために各地を放浪している。旅の始まりについては、敢えて黙秘させてもらおう」
ふむ、とリヒトは足を組んだ。語りたがらないのは、そこに後ろめたいこと、忌まわしい過去があるからだと、相場は決まっている。
であれば、深入りは禁物だ。わざわざ藪を突いて蛇を出すこともない。
「求道者ってわけか。果てのない修羅道を征く、その心意気には恐れ入るよ」
闇に身を堕とした者には、あまりにも眩しい道。物怖じせずに突き進む勇士を、幽者は羨望の眼差しで見つめる。
が、その視線には誰も気づかない。
彼のように真っ直ぐな心が残っていれば、俺も違う未来へ進んでいたんだろうか。
そんな独白は、心の闇に溶けて消えた。
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/13(木) 14:27:15.33 ID:ub+ns018O
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。蓮武との交流を終了します。
600 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/13(木) 15:58:16.39 ID:TIycFatQO
(「各地を放浪している」と言っているので)
今までどんな国や村など訪れたことがあるか、といった話しをする。
601 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 22:54:55.47 ID:O2iSUGQ1O
竹ノ湯の従業員に振る舞われた温泉卵なる珍味。それをおっかなびっくり食べるリヒトと蓮武の姿が対照的だった。
従業員に食べるか尋ねられたマナは黙秘を貫き、刺々しい視線を向けることで答えていた。
善意で訊いた従業員が不憫でならなかったので、リヒトは謝罪し、マナの分も食べることにする。が。
「なんだぁこれ…。黄身は固まってると思ったらそうじゃないし、白身はトゥルントゥルンだし…」
リヒトは初めて食べる珍味に難色を示す。
美味い、不味いの問題ではない。味は元が卵なので問題ない。問題があるのは食感だけだ。
こんな食感は初めてだ。卵の面影を色濃く残しているというのに、卵らしさがほとんどない。
ゆで卵のように黄身も白身も固まっているのかと思ったがそんなことはなく、黄身はとろけていて、白身に至っては口で啜れるほどにトゥルントゥルンだった。
ただ不味いだけなら、それはそれだと割り切って食べるだけで良い。
だが、独特にも程があるこの食感…未知との遭遇に、リヒトの頭はフリーズする。
それから回復するまでの間、なぁにこれ、と間の抜けた声が頭の中で途切れることなく反響していた。
マナの分については、見かねた蓮武が食べてくれた。馴染みがあったのか、彼はすんなりと完食していた。
ということは、緋桜郷近辺出身なのかもしれない。
「修行の旅、だっけか。今までどこを旅してきたのか、訊いても構わないか?」
「…とは言われてもな。俺はあくまで修行のために旅をしている。面白味のある話は出来ないぞ」
「どこに行ったかくらいで構わないさ」
旅程だけでも知っておけば、今後の行動に役立つ日が来るかもしれない。
欲を言えば何があったか、その仔細まで聴いておきたいのだが、そこは彼次第と言ったところだろう。
面白味が無い。後で聴かない方が良かったと後悔しても知らない。と散々に予防線を張った後に、蓮武は修行の旅程を語った。
602 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 22:55:39.17 ID:8Pkr7wOQO
彼がまず最初に赴いたのは、嘗てリヒトが陥落させた都市『カロゥス』だった。
彼が来訪したのはリヒトが産まれるより前のこと。なので当然、戦火に包まれていたわけはない。
とても平穏な、ごくごく普通の都市だったし、今ほどレムカーナとの仲が険悪ではなかった。
今も当時も、メリちゃん最かわ教の狂信者が相当数いたことは変わらないが、まあ平和だった。
そんな狂信者の集う都市に何故蓮武が向かったのか。
先述した通り、修行のためである。断じてメリちゃん最かわ教に入信したかったわけではない。
魔王であるメリオゴストーグ。
本体はとても貧弱、軟弱、虚弱であり、新米冒険者ですらタイマン勝負であればほぼ勝ちが確実なくらいに戦闘に向いていない、見かけ通りの弱さを持つ魔王という肩書きからは想像が付かないほどに弱い女の子だ。
だが、そんな弱々しい彼女を守護(まも)るべく、その可愛さに脳を壊された強者が集いに集い、英雄級の戦士が幼女に人目を憚ることなく頭を垂れ、嬉々としてこき使われている地獄絵図が生まれていた。
メリオゴストーグさえ関わらなければ真っ当な人たちなので、蓮武は彼らの組手を観察し、カロゥス周辺の魔物を掃討しつつ実力と経験を培っていった。
この話を聴いた時、リヒトは盛大に頭を抱えていた。
当時殺し合った人たちが、とんでもない醜態を見せていたことに、なんとも言えない気持ちになっていたのだ。
それを平気で言ってのける蓮武にも物申したい気分だが、彼は大真面目に当時の旅程を説明してくれているだけだし、自分がカロゥスを陥としたことも知らなそうなので黙っておくことにした。
603 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 22:56:14.67 ID:MSlb9YkiO
カロゥスで研鑽を積んだ蓮武は、去年まで別の大陸で武者修行をしていたのだという。
今緋桜郷に留まっているのは湯治のためらしく、かなりの激戦を繰り広げてきたようだ。
彼が修行をしてきた大陸の名は『イザリア』。イルステッドとの距離はそれなり、大陸面積はイルステッドの役七割程度。
気候は全体的に熱帯で、大部分を砂漠と火山が占めている灼熱の地である。
天貫の霊峰を除けばほぼ温暖で過ごしやすいイルステッドとは大違いなので、イザリアに住むだけでもさぞ鍛えられるだろう。暑さには滅法強くなりそうだ。
とある火山の近くには龍人(ドラゴニュート)の集落が点在しているらしく、蓮武は過酷な環境に身を置いて鍛錬を積んでいたそうだ。
龍人の数は非常に少なく、リヒトは未だお目に掛かったことが無い。
そも、現時点ではイルステッド内に龍人が暮らしている情報は無いため当たり前の話ではあるのだが。
もしかしたら、奴隷の類でなら何人か流通しているのかもしれないが、市場を知らない彼には関係のないことだ。
心身共に鍛え上げた蓮武は武者修行の旅に一区切りを付け、暫しの休養を取ることにした。
傷ついた身体を癒すには緋桜郷の温泉が効果的だという話を耳にし、わざわざイルステッドに戻ってきたそうだ。
足湯を堪能しつつ旅程を語る蓮武。リヒトはそれを真面目に聴き、マナは興味が無いと言わんばかりに目を閉じていた。
シンパシーを感じるのと興味があるのはノットイコールなのだろう。
604 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 22:57:04.35 ID:6vCb68Y1O
会話を継続する場合は話題を↓1にどうぞ。
終了したい場合は、その旨を記載してください。蓮武との交流を終了します。
605 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/16(日) 22:58:39.03 ID:6vCb68Y1O
継続する場合は今回の会話が最後となります。安価下です。
606 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/17(月) 00:00:22.59 ID:K/QzLom1o
相当の腕前と見込んで手合わせを申し込む
(勝っても負けても鍛錬目的で拠点に呼べるようになるといいな)
((余談、リヒト君ここまでの描写的に強めのマップ兵器といった感じで広範囲制圧は得意そうだがタイマンはどのくらいかなと))
607 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/17(月) 00:53:27.99 ID:FkkKZhHyO
イルステッドとは全く違う環境で叩き上げてきた戦士。その実力を知るのもまた、今後の役に立つはずだ。
そう結論付けたリヒトは、武器屋で刃を潰している模擬剣を二本購入した。
もちろん、武器種は利用者に合わせている。蓮武の物は大剣、リヒトの物は直剣だ。
「相当の手練れと見込んで頼みがある。俺と手合わせしてくれないか?」
リヒトの率直な依頼に、蓮武は渋面を作る。どうやら乗り気ではないようだ。
休養に来たのに模擬戦とはいえ戦うのは控えておきたい、とでも言いたそうな顔だ。
その考え方は正しい。間違っているのは手合わせを申し込んだリヒトだということは、本人は百も承知である。
だが、だからと引き下がる気は無かった。千載一遇のこのチャンスを逃したくないのだ。
蓮武もリヒトの心情を読み取ったのか、逡巡の後に重い腰を上げた。
「…まあ。休んでばかりでは身体も太刀筋も鈍る、か。全力で身体を動かせないから、見苦しいところもあるだろうがご容赦いただきたい」
「俺のわがままに付き合ってくれて感謝するよ」
頭を下げるリヒトに、蓮武は温和な笑みで答える。
「気にするな。軽い運動だとでも思っておくさ」
模擬剣を片手に、二人は森の中に入った。
608 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/17(月) 00:54:02.74 ID:FkkKZhHyO
竹風村の子供たちの遊び場となっている、切り開かれた土地。そこに立つのは二人の剣士。
一人は嘗て勇者と謳われた直剣使い。もう一人は遠き地で修練を積んだ大剣使い。
どちらも刃を潰して安全性を確保した模擬剣を持っているが、どちらが危険かは言うまでもないだろう。
リヒトは大剣の直撃だけは避けたい、と身体を解しながらぼんやりと考えていた。
対する蓮武は何を考えているのやら。表情からは思考が読めなかったので、出たとこ勝負だと割り切ることにする。
「あくまで剣の腕を競う手合わせだ。魔法の行使は厳禁で行こうか」
純粋な腕比べに、余計なものは不要。それに、魔法を解禁したら怪我をする可能性が出てくるのだ。
休養している蓮武にたかが模擬戦で怪我を負わせるなど本末転倒にも程がある。
そういった配慮はしておくに越したことはない。
蓮武は無言で大剣を構え、臨戦体勢を取る。どうやら準備は終わったようだ。
リヒトに頼み込まれたマナが、小さな石を放り投げる。
水たまりに落ちると同時に、轟音が鳴り響いた。
609 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/17(月) 00:56:01.73 ID:FkkKZhHyO
模擬戦は2回有利を取った方が勝利となります。
模擬戦 判定↓1コンマ
01〜20:蓮武有利
21〜99:リヒト有利
00:???
610 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/17(月) 01:15:25.93 ID:UrGsiMjMo
あ
611 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/17(月) 01:16:20.49 ID:Guat35aWo
やはり天災ドラゴン共がおかしかったんやな
612 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/17(月) 01:51:30.34 ID:9jx8E+yFO
リヒトはまず、小手調べに二、三合斬り結ぶ。お互いの得物は派手な音を立てぶつかり火花を散らした。
こちらの動きに対応出来る程度の敏捷性は持ち合わせているようだ。とは言っても、まだまだ全力は出していないので追いつけなければ話にならないのだが。
光魔法を併用した最高速度と比べれば、虫が止まるほどに遅い斬撃を蓮武は難なく受け止める。
そして、お返しと言わんばかりの横薙ぎを放つ。
直剣の腹をかち当てて対処するが、剣が触れた瞬間にリヒトは失策を悟った。
この膂力を受け止めるには、力も武器の耐久性も足りない。ならば、流すしかないと。
身体を低くし、剣の角度を変える。滑るように大剣は空を切り、風切り音を出した。
刹那、蓮武の表情が変わった。力のままに振るう剣の勢いを活かし、後退しつつ切り上げた。
懐に潜り込まれては、長所である間合い(リーチ)を活かせないと判断したが故の逃げの一手だろう。
彼の判断は戦術的には大正解だ。だが、リヒト相手にするべき判断ではなかった。
切り上げより速く身体を捻り、後ろに下がる。そのまま地面に手を突き、クラウチングスタートと同じ体勢になる。
そして、地面を蹴り急速接近する。地を這う蛇のように左右に揺れながら迫る幽者に、天狗の青年は大剣を向け、突き出した。
613 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/17(月) 01:52:40.74 ID:9jx8E+yFO
模擬戦 判定↓1コンマ
01〜20:蓮武有利
21〜00:K.O
614 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/17(月) 07:46:00.91 ID:GUooIM6zO
慶応
615 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/17(月) 11:42:22.69 ID:oLsWN4C7o
つよい
616 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/19(水) 19:41:27.53 ID:mVIMh6K+O
狭間の地から抜け出せなくて申し訳ない。進めます。
617 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/19(水) 19:42:20.63 ID:mVIMh6K+O
しかし、当たらない。返す刀で回避した方向に剣を振るっても、揺れる髪先すら捉えることは出来ない。
肌が触れ合うほど近くにいるのに、幽者との距離はあまりにも遠かった。
どれだけ手を抜かれようとも、剣戟を交わせば伝わるものだ。対手の力量は、隠せないものだ。
蓮武はこの戦いで幽者を、彼岸に到達した者を知る。
それは、果てのない修羅の道を、果ての果てまで進んだ者のみが立つことを許される領域。
いったいどれほどの血を流したのだろうか。まだまだ未来のある若者がこの歳で彼岸に至るなど、尋常の道は歩んでいないはずだ。
そこまでしてでも力を得たかった理由があったのだろうか。護りたいものがあったのだろうか。
幽者を見て浮かんだ憧憬。求め続けた領域はまだ、遠い。だが、それでいい。
たとえどれほど離れていても、存在するのだと知れたから。
まだ、自分は強くなれると知れたから。
幾度となく入れ替わる攻防の中、天狗の青年は微かに、笑った。
618 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/19(水) 19:42:51.39 ID:mVIMh6K+O
「俺の勝ちだ」
蓮武は幽者に組み伏せられ、首筋に模擬剣を添えられていた。どちらが勝ったのかは明白だ。
蓮武を解放するが、リヒトは病み上がり相手にちょっとやりすぎたかもしれない、と盛大に冷や汗を流す。
やっぱり怒っているだろうか。説教はされたことが無いから勘弁してもらいたいものだと、念じながら視線を向ける。
蓮武は、曇りなき眼で空を見上げていた。
「それだけの力があれば、大切なものを護れるのか?」
ふと投げかけられた質問に、リヒトは唇を噛む。そして、暫しの回想を終え。
「…何も護れなかったよ。どれだけ強くなったとしても、喪うものだ」
邪眼竜の加護を受けた者は皆、誰もが羨む強大な力を持っていた。
しかし、誰もが悲劇に見舞われ、消えていった。
力の大きさなど関係ない。喪う時は喪う。どうしようもないことは、往々にしてあるものだ。
だが。
「…だからって、進むのを辞めたら。喪った全てが無駄になる。進み続けることが報いになると、俺は信じてる」
その苦しみを、痛みを忘れず、前に進めば。消えた命に意味を持たせることが出来る。
その生は、無駄ではなくなる。
「…そうか」
蓮武は小さく答え、口を噤んだ。リヒトは頭を掻き、一枚の紙切れを置く。
「俺は普段そこに住んでる。何か用があれば気軽に来てくれ。腕比べでもなんでも、付き合うからさ」
「…覚えておこう」
答えを受け取った幽者は、青年の元を去る。
蒼空を眺める青年は、初めての敗北に何を想う。
619 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/19(水) 19:44:09.71 ID:mVIMh6K+O
何をするかを↓1にどうぞ。この行動を終えると緋桜郷に戻ります。
620 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/19(水) 23:43:27.31 ID:HGXAwpRQO
マナと森林浴していく
621 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/20(木) 00:58:53.81 ID:Ll4B6ueXO
竹風村から離れた深い森の中。リヒトたちは、苔むした大岩の上に座っていた。
じっとりと湿った岩の冷たさが、服越しに皮膚を冷やす。肌に貼り付く感覚が不快だったが、空気は美味かった。
「−−−−」
妖精はどうやらご機嫌なようだ。人智の及ばない独自の言語が紡ぐ歌声は、大地に染み渡り、祝福を齎す。
その歌は生命への祝福であり、しかし、智慧を持ち過ぎた人類に対する警告でもある。
故に、歌は人の身に馴染まず、肉体を蝕む呪いとなる。
「………」
身体が、精神(こころ)が、声なき悲鳴を上げる。侵蝕する呪詛に苦しんでいる。
だが、やめろとは言えなかった。
ちょっとシャレにならないくらいに重大なダメージを受けているのは事実だが、彼女は心からリラックスしている。
だから、歌っているのだろう。何を言っているのか理解出来ないし、したくもないが。喜んでいるのはなんとなく分かる。
マナが嬉しいのなら、それでいい。彼女が気兼ねなく歌えるように、この苦痛を耐え忍び、自分を誤魔化せばいい。
なに、今までだって何度もしてきたことだ。躊躇うことはないだろう。
奪うことに苦しみ、喪うことに苦しんだ。
その痛みを誰とも分かち合うことなく、一人で背負うことを選んだのはお前だろう。
ならば、この程度の苦しみ、耐えてみせろ。
「…解ってるよ」
混濁した意識の中での自問自答。その答えは微かな声となり口から溢れる。
「………?どうしたの?」
マナはリヒトの独白に歌を止める。リヒトはなんでもない、と首を振り、続きを促した。
マナは首を傾げつつもすぐに前を向き、歌う。淀みない清らかな歌声が、森へと澄み渡る。
孤独な妖精の細やかな祝福が、森を成長へと導く。
今年の竹風村の収穫量は、従来の1.5倍になったという。
622 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/20(木) 00:59:56.65 ID:H79t/QchO
緋桜郷へと戻った頃にはすっかり夕方になり、郷の雰囲気も昼間とは違った様相を呈す。
飲んで。騒いで。歌って。踊って。道楽に耽り、今を楽しむその様は、幽者には眩しいものだった。
「お兄さん、暇ならうちと一杯いかが〜?」
「おい兄ちゃん!俺の店に来な!たっぷりサービスするからさっ!」
「一人で寂しいなら私と一緒にあの部屋でイチャコラしませんか!?」
と様々な勧誘を受けるが謹んで辞退し、逃げるようにその場を去る。
牡丹雪に戻るまでに片手では数えきれないほどの勧誘を受け、油断も隙もあったものじゃないな、と乾いた笑いを浮かべる。
こういう賑やかさも緋桜郷の魅力で、彼らとの駆け引きも醍醐味なのだろうが、リヒトが苦手とする領分なので困ったものだ。
用意されていた夕餉を平らげ、荷物を整理する。
お土産の温泉饅頭は子供たちに大層喜ばれ、食後のデザートだとあっという間に食べきられてしまったが、これだけ喜ばれたら買った甲斐があったというものである。
リンは花をもらっても置き場に困る。気持ちは嬉しいから、花瓶に入れて客間にでも飾っとくよ。と苦笑しつつ受け取られた。
選択を誤ったかもしれない。
ウィンディの反応だが、こちらの想像を遥かに超えて喜ばれた。それはもうめっちゃくちゃに喜ばれた。
髪の手入れが楽になるだのリヒトさんにしては素晴らしいチョイスだのマトモな感性は残ってるんですねだのと言われたが、とにかく喜ばれた。
ちょっと傷ついた。
623 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/20(木) 01:00:59.55 ID:r39z3Vy5O
何をするかを↓1にどうぞ。
624 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/20(木) 02:32:46.18 ID:KPwoR/O0o
多様な種族が暮らすという緋桜郷がなぜうまく繁栄できているかを知れば
自分が国を作るときに役立つかもしれないから調べてみよう
625 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/10/20(木) 04:24:54.29 ID:fysog/pwO
ちなみに緋桜郷のイメージBGMは『カムラ祓え歌』です。
626 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/06(日) 21:49:39.39 ID:/Uf1KQWvO
お久しぶりです。
>>1
でございます。
しばらく謎の腹痛だったり膿が出たりで大変なことになってました。申し訳ありません。
落ち着いたのでもう大丈夫とは思います。明日の夜に再開いたします。
627 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/06(日) 21:53:11.94 ID:Le2Sug4lo
大丈夫か大丈夫か
無理はなさらず
帰還ありがとう
628 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/06(日) 22:01:23.26 ID:E0ok0Syxo
待ってた
無理のないペースで続けてくれると嬉しい。報告乙です
629 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 17:27:14.67 ID:O7KWV/5MO
万物には因果がある。因果を紐解くことは即ち、真理の探究に繋がる。と、シルヴィアが言っていたような気がする。
彼女ほど理詰めで考える知性は無いが、脳死で本能に従い動けるほど理性を投げ捨ててはいない。
故に、リヒトは緋桜郷の変遷を知ろうとしていた。
多種多様な種族が争うことなく共存し繁栄する緋桜郷。
何故緋桜郷が在るのか。その因果を知れば、自身とシルヴィアの夢の実現に、また一歩近づけるかもしれない。
そんな希望を抱き、お雪の元を訪ねてみる。しかし、微笑ののちに首を横に振られた。
「わしが一から十まで全部教えるのは無粋だと思ってね。どうしても知りたいというのなら、教えるのは吝かではないけどさ」
困った時は助けるからそれまでは自力で頑張れ、と遠回しに言われてしまった。
こうなっては引き下がるしかない。夜に本屋とかが開いてるとは思えないが。
「…なんてね。こんな時間に外で調べるのは徒労というものさ。意地悪して悪かったね」
そう言って、お雪は座布団を敷き、温かいお茶を用意する。どうやら揶揄われたみたいだ。
シルヴィアといいお雪といい、歳上には弄ばれてばかりだ。何か嗜虐心でもくすぐるものがあるだろうか。
「お前さんの反応が素直なのがいけないね。あまりに可愛くてつい揶揄ってしまうよ」
「…俺が可愛いとかご冗談を。第一俺は男だ」
「可愛いか否かに性別なんて関係ないよ。わしからすれば、牡丹雪にいる子は皆可愛い子供みたいなものさ。お前さんたちも含めてね」
「…子供扱いしないでくれ」
子供っぽいところがあるのは自覚しているが、自分は大人だ。ちゃんと成人しているのだ。
だから、そういう扱いをされても困る。どう対応すればいいのか、てんで分からないのだ。
「男の子が好きな人についちょっかいを掛けてしまうのと同じさ。愛おしくてたまらないから、反応見たさに揶揄ってしまうし構ってしまうんだよ」
「…そういうのは解らないな」
630 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 17:27:51.41 ID:O7KWV/5MO
誰かを愛したり、好きになったことは一度も無い。故に、理解が出来ない。
愛とは何なのか。好きになるとはどういうことなのか。リヒトは一切知らない。
知る機会も、権利も無かった。忌み子であるリヒトを愛す者も、関わろうとする者も、誰一人いなかったから。
だからなのだろう。愛されることを望んでいながら、自身を愛することが出来ず。疎んでさえいるのは。
幽者はずっと、矛盾を抱え生きている。それは、これからも変わることはない。
変わろうと決意し、自分と向き合うその瞬間が訪れるまで、決して。
631 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 17:28:22.71 ID:O7KWV/5MO
不意に押し黙ったリヒトを細い目で見やり、お雪は布団を敷き始める。
危機感を感じたリヒトは席を立ち、退散しようと背を向ける。
小さな手が、リヒトの傷だらけの手を優しく包み込んだ。人肌の温かさと氷の冷たさを内包した、不思議な感覚だった。
「寝る準備をしているだけさね。お前さんが望むのなら床を同じくしても構わないけど、その気はないんだろう?」
リヒトはゆっくりと頷き、お雪の方へ振り向いた。視線は下に向けられ、聖銀を思わせる艶やかな髪が目に入った。
「…今宵の緋桜も、変わらず可憐に咲いてるねぇ。酒を飲みながら昔話に興じるには、風情があってちょうどいいものだよ」
障子は開かれ、緋桜の大木が存在を主張する。ひらひらと舞い散る花びらは、月の光に照らされ世界を彩る。
月を背に力強く咲く緋桜。その光景を一目見ようと、緋桜郷を訪れる人が後を絶たないのも頷ける、とても絵画などでは表せない幻想的な光景だった。
窓の縁に腰掛けたお雪は、半身を外に出して夜桜を眺めている。
そんな彼女が、頃合いを見計らったように口を開く。彼女の口から語られたのは、緋桜郷の辿った数奇な歴史だった。
632 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 17:29:17.51 ID:Dkr7FbmhO
人間にとっては遠い昔、鬼にとっても二世代ほど前の時代。
ここには緋桜郷という地名は無く、村や集落といった小規模な拠点が点在する、寂れた土地だった。
それでいて、とてつもなく閉鎖的。外界からの来訪者には石とブーイングを以って熱烈に歓迎する、凄まじいまでの排他主義だった。
そんな村に、お雪は産まれた。
そして、一人の青年と出逢った。
『…なにしてるんですか。貴方なんて誰も歓迎してないから、早くどこかに行った方が身のためですよ』
『たはは…。まさか子供に心配されるとはね』
『子供扱いしないでくださいっ!』
どれだけ罵倒され、拒絶されようとも、めげないしょげない泣きもしない、変人の旅人がやってきた。
毎日交流しようと村まで来ては、投石を浴びてすごすごと退散し。日を改めてはまたチャレンジする頭のおかしな無謀者。
何があっても笑顔を絶やさず、こちらが心配になるほど脳内お花畑のお人好し。
それが、お雪が旅人に抱いた印象だった。
633 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 17:29:52.88 ID:Dkr7FbmhO
村長の英才教育を受けたお雪もまた、その排他主義に染まりかけてはいたのだが、苛烈にも程がある大人たちの姿と、この『話せば分かる。人類皆お友達!』を地で行く旅人を見て考えを少しずつ改めていった。
たとえ、外部の人間と関わるのが重罪だと知っていても。彼と話すのは辞められなかった。
それほどまでに彼との会話は楽しく、心が躍っていたから。
『どうして、毎日村を訪ねるのか、かい?』
『はい』
どれだけ痛い目に遭おうとも、決して諦めず交流を試みる旅人に、お雪はそんな質問をした。
『孤独の辛さってのを、僕は嫌と言うほど知っているからね。今はそのままでも良いのかもしれない。でも、時が経てば、世界から取り残され、やがて独りになる。そんな時に、誰も頼れないのは悲しいから…』
『…もちろん、僕が言っていることはただのわがままさ。君たちの事情を無視して押し付けているだけ。だから、拒絶されても仕方ないことだとは思ってる。それが、諦める理由にはならないけど』
と、包帯を巻きながら旅人は笑顔で答える。微塵も後悔していない、寧ろ、この状況を楽しんでいるようにすら見えた。
外には変な人間もいるものだと、お雪は呆れる。だが、そんな変な人間を生み出す外の環境に、世界を旅する青年に、表には出さないがいつしか憧れていった。
その旅人の名は『リヒト・ローテス』。曇りなき紅い瞳が綺麗な、優しい青年だった。
634 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 17:30:20.43 ID:Dkr7FbmhO
そんな変人が村の近くに居付き、村人たちも適当にあしらうのに慣れた頃。
お雪は村長の命を受け、周辺の森を調査していた。
数日前より、無造作に捨てられた動物の死体が頻繁に目撃されるようになる。
遺体の損傷から見て人の手によるものなのは確実。しかし、あまりにも乱雑なそれは、知識人たる村人の手腕では逆に刻めないものだ。
当初は旅人が犯人ではないか、と疑っていたのだが、二日ほど監視していても不審な様子は見せることなく。
監視している最中にまた遺体が複数発見されたので、容疑者の疑いを晴らされた。
そんな疑いを向けられたことは、彼は知らないのだが。
可食部が根こそぎ削り取られ、内臓は放置された無残な遺体を埋葬する。
村に伝わるしきたりにより、狩りをする際は丁重に弔うようになっている。故に、このような遺体が放置されるのは本来あり得ないことなのだ。
事前に遺体の発見場所と村人の行動圏を把握していたお雪は、何者かがこの森に潜んでいることを推察する。
今回は、その推察を裏付けるために現地調査をしていた。
そして、部外者の痕跡はすぐに見つかることになる。
『人の足跡?それもまだ新しい…』
ぬかるんだ地面に刻まれた、人の痕跡。数と指向性を見るに、人数は三名と思われる。
また、近くの木は根本から伐採されており、切り落とされた枝がそこかしこに散らばっていた。
ルールを知らない部外者特有のやりたい放題に頭痛を覚えるが、原因を取り除かなくては延々と繰り返されるだけだ。
犯人を見つけ出し、吊るし上げるか始末すること。もしくは、この領域から追い出すか。
そのどれかを達成しなければならない。
何者かがこの森に潜んでいることが半ば確定になったが、その正体は未だ影さえ掴めていない。
故に、正体を探るべく深追いしたのだが、それが過ちだと気づく頃には、もう手遅れだった。
635 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 17:31:02.18 ID:Dkr7FbmhO
途絶えていた意識は、額に落ちた水滴によって現実に引き戻される。
重い瞼を開くと、暗闇が瞳に映る。
『………っ』
全身が、痛い。ぼやけた目で身体を見ると、直視するのも躊躇うほど痛ましい傷が付けられていた。
情けなのか最低限の手当てはされていたが、血は滲み出て包帯を汚していたし、身を苛む激痛と不快感は消えることなく心を蝕んでいる。
そしてそこで、ようやく自分の置かれている状況を理解した。
ああ、そうか。私は負けたのか。
犯人を突き止めたのはいいが、姿を晦ます前に対象しなければ、とそこで焦ってしまい、攻勢に出たのが間違いだった。
自身の浅慮を猛省するのと同時に、どれだけ気丈に振る舞おうと、自分はまだまだ子供なのだと、未熟な精神を戒める。
そんなことをしても後の祭りだと気づいているが、そうでもしないとやってられなかった。
それにしても、随分と乱暴をしてくれたものだ。
いくら鬼の肉体が頑強だとしても、痛いものは痛いし手荒に扱われては傷ついてしまうというのに。
容赦の無い暴力に蹂躙された身体には、愚行の代償たる残痕が刻まれている。これほどの深手は、一生消えない傷跡となって残るだろう。
彼らからすれば、ただ燻る情欲を満たし、悦楽に浸るための行為。
敗者である自分にとやかく言う権利は無い。それは、解っているが。
『…う…ぅ……っ!』
こんな目に遭わされるのなら、殺される方が良かった。
と、折れた小刀を抱き抱え、少女は一筋の涙を流した。
636 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 20:06:26.33 ID:b+wZhYklO
それから二日。洞窟の中に幽閉され、悪漢に弄ばれる日が続いた時。
お雪は今頃村では大騒ぎになっているだろうな、と現実逃避に勤しんでいた。
『紅玉を追ってここまで来たのに、とんだ掘り出し物だぜ。鬼の女ってだけで高値が付くのに、こんな上玉ならどれくらいになるかねえ。想像しただけで笑いが止まらねえよ』
と首魁が言っていた気がするが、もはや自身の処遇には興味が無かった。
望むのは、この苦しみが終わること。たとえそれが死という結末だろうと、一向に構わなかった。
自身の命を絶つ勇気が無い彼女は、力なく呟く。
ただ一言、助けて。と。
そんな時、一筋の閃光が、闇を切り裂いた。
『やっと、見つけた』
短剣を片手に持った、あの旅人がそこにいた。
表情はお雪の知っているものではなく、感情の抜け落ちたそれは羅刹の如く。絶対零度の視線が、悪漢を射抜いている。
紅い瞳が、光が消えて戻った暗闇の中で煌めく。その眼には、確かな決意が宿っていた。
旅人の姿を認めた悪漢は、下品な笑みを浮かべ、髭を摩る。
旅人はそれを無視して短剣を向ける。光が溢れ、長大な光刃を形作った。
『もう少し、我慢してね』
『僕が全て、終わらせるから』
そして、悪漢たちは慈悲なき審判の光により、誰一人として例外なく断罪された。
637 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/08(火) 20:11:18.57 ID:b+wZhYklO
緋桜郷の歴史というよりお雪の回想になってますがお許しくだされ。
本日の更新はこれで終わりです。
今後リヒトが獲得する(かもしれない)装備を募集します。武器種は問いません。
入手手段は鍛冶屋か譲渡か強奪、はたまたダンジョン等の探索による入手となります。
【名前】その名の通り。
【種類】その名の通り。
【付帯効果】使用者に与える効果や装備が持つ能力になります。
装備の概要になります。
638 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/09(水) 00:02:49.84 ID:6SkV0TbN0
【名前】月蝕の短剣
【種類】短剣
【付帯効果】魔翌力を込めることで、光や光魔法を遮断する闇の結界を展開することができる
光を反射しない黒い物質で作られた短剣。特殊な効果は上述の通り
強度は高いが切れ味は悪い為、武器としての性能は低い
639 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/09(水) 01:42:56.12 ID:kQRrjtfh0
【名前】癒しの守り
【種類】盾
【付帯効果】魔翌力を込めると周りの人を治すことができる治癒能力を持っている。ただし装備している本人自身は治すことができない。魔翌力をより多く込めれば込める程、毒で苦しんでいる人や切断された箇所など治すことが可能(亡くなった人を蘇生することはできない)。世界一硬い鉱物を使用し、さらに光の魔翌力が入っている為、どんな攻撃も防ぐくらい頑丈になっている。
640 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/09(水) 23:31:42.24 ID:uZvKrrKWO
【名前】身代わりの偶像
【種類】人形
【付帯効果】
一見粗末な土偶にしか見えないが、血を分け与えることでダメージや呪いなどを肩代わりしてくれる。
ダメージを受けるとその部位と同じ部分が崩れ落ち、致命傷だった場合は力を失いただの土くれと化す。
641 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/10(木) 00:47:33.69 ID:Xo++OTWOO
更新は明日か明後日かな、という感じです。
オマケとしてリヒトの装備の情報を置いておきます。
642 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/10(木) 00:48:21.69 ID:Xo++OTWOO
【名前】聖剣/魔剣『無銘』
【種類】直剣
【付帯効果】使用者の魔力の増幅、魔法及び性質付与(エンチャント)の強化。また、魔力の増幅による身体能力の向上。
リヒトが肌身離さず持ち歩いている一振りの剣。
元はどこにでもある、市販されていたただの直剣だったが、度重なる戦闘によりリヒトの魔力を帯び、ついには変質してしまい聖剣へと変貌した。
故に、この聖剣には固有の銘が存在せず、真の意味での聖剣でも無い。
というより、結果的に聖剣として扱われるようになっただけで聖剣ですらないため、伝承で語られるような偉人の装備と比べたら性能は劣っている。
リヒトが闇に触れ冥光を纏う時、聖剣も魔剣へと転じ、敵対する悉くを余さず滅する。
聖剣になった影響なのか、何故か購入した時よりも綺麗な見た目になっている。
643 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2022/11/10(木) 01:10:35.96 ID:qAZUagtOO
ちょいと情報を訂正して再掲します。
【名前】聖剣/魔剣『無銘』
【種類】直剣
【付帯効果】使用者の魔力の増幅、魔法及び性質付与(エンチャント)の強化。また、魔力の増幅による身体能力の向上。
リヒトが肌身離さず持ち歩いている一振りの剣。
元はどこにでもある、市販されていたただの直剣だったが、度重なる戦闘によりリヒトの魔力を帯び、ついには変質してしまい聖剣へと変貌した。
故に、あるべき銘は無く、真の意味での聖剣でも無い。
というより、結果的に聖剣として扱われるようになっただけで聖剣ですらないため、伝承で語られるような偉人の装備と比べたら性能は劣っている。
リヒトが闇に触れ冥光を纏う時、聖剣も魔剣へと転じ、敵対する悉くを余さず滅する。
一人の英雄が壊れゆく様を間近で見続けた唯一の生き証人。たとえ彼がどこまで堕ちようとも、決して見捨てず傍に在り続ける。
それだけが、たった一つの存在意義であるが故に。
聖剣になった影響なのか、何故か購入した時よりも綺麗な見た目になっている。
644 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/10(木) 03:33:09.95 ID:nFlAyafJ0
【名前】正義の右拳(ジャスティス・ライトナックル)
【種類】グローブ
【付帯効果】使用者の魔翌力に応じてグローブが伸縮自在に変形することができる。さらに伸ばした状態でも物などをつかめる。遠距離からの攻撃や伸ばした状態で鎖付き鉄球のように振り回して攻撃などできる。そのままでも殴って戦える。
藍色に金色の天使の羽のような模様が入っている少し大きめのごつい右手のグローブ。なぜ右手しかないのかは文献等がなくいまだに不明になっている。
645 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/10(木) 23:46:48.01 ID:oQe6tZhvO
【名前】名無しの王達の鎧
【種類】鎧
【付帯効果】着用者の身体能力を向上し、着用している間は不死になる。
歴史には残らない、かつての時代の覇者達が着用した鎧。着用者によって姿を変え、着用している間は不死の力を手にすることが出来、寿命か不死殺し以外で[
ピーーー
]なくなる。
しかし、長い時間着用し続けると正気を失って元に戻れなくなる。
646 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/11(金) 00:14:50.53 ID:TlYK30FEo
【名前】専心の杖
【種類】杖
【付帯効果】手に持った者の意識を研ぎ澄まさせ、魔翌力と集中力を高める
フェルリティアで製造・販売されている飾り気のない白い杖
一般的には魔法使いが魔法を行使する際の補助として使われているが、その集中力を高めるという特性から非魔法使いにも人気が高い。学生が勉強のお供にしたり戦士が最前線で鈍器として使ったりなど、需要は多岐に渡る。ゴーレム技術を一部流用しているため耐久性も非常に高く、鈍器扱いに拍車をかけている
647 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/11(金) 02:39:49.81 ID:+ERA4t2JO
>>639
少し追加で
特徴は真っ白で十字架が描かれており、騎士が使っているような逆三角形の盾
648 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/11/16(水) 14:01:46.47 ID:5gvuHotz0
まだ募集しているのかな?
【名前】獣王の爪
【種類】鉤爪
【付帯効果】装備した者は聴覚、嗅覚、視覚、身体能力、タフさが強化。無意識のうちに戦い方が野性的になり、長く装備していると外した後、しばらく野性的な性格が残ることがある(時間がたつと元の性格に戻る)。爪の部分は長く、手首の部分に獣の毛皮がついた2つの鉤爪。名前の通り「獣王」と呼ばれる幻のモンスターの素材を使用し、切れ味は鋭い。
649 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/07(水) 20:48:24.66 ID:GxQNJ30rO
2つ案を投げてみる
【名前】献身の魔盾(まじゅん)
【種類】盾
【付帯効果】
円みのある片手用の盾。魔翌力を通すことで味方を庇うための結界を発生させる。
結界を貫くほどの攻撃を受けた場合はダメージが使用者に集中するため、自己犠牲をも厭わない献身が求められることからこの名がつけられた。
【名前】『悪竜ころし』グラースの斧
【種類】木こりの斧
【付帯効果】
斧を用いて悪竜を討伐したグラースという英雄が使っていたという触れ込みの斧。
一見使い古された木こり用の斧だが、英雄が戦いから引退して木こりになってから使っていたため一応は本物である。
彼の魔翌力が染み込むほど使い込まれているためか木をはじめとした植物には無類の切れ味を発揮する。
それほど使い込まれながらも小まめになされた手入れの跡やグラース自ら刃に彫りこんだ自分の名前がかの英雄の生真面目さを窺わせる。
650 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/10(土) 21:47:21.22 ID:04+zMF3D0
【名前】宇宙の大鎚
【種類】ハンマー
【付帯効果】頭部の部分が赤と青の2つに別れている大きいハンマー。魔翌力を込める事でそれぞれ違う効果が発揮する。赤い方で叩くと一定の範囲で重力を発生する。青い方を叩くと一定の範囲で無重力を発生する。魔翌力込めなくても武器として使える。昔とある学者がこの重力と無重力を発生できるハンマーを見てこの名前が付けられた。
【名前】雷鳴の剣
【種類】大剣
【付帯効果】見た目普通の大剣で持ち手が黄色で刃の部分に雷のマークが彫られている。普通に大剣として使えるが魔翌力を込めると雷を纏うことができる。大剣を振ると雷が落ちたような音がなることでその名前が付けられた。雷を纏うと威力が上がる。
651 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/12/25(日) 16:53:59.75 ID:LuVmkXjxO
あげ
652 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/01/02(月) 20:31:49.41 ID:le3ny7hkO
また更新が途絶えてしまい申し訳ありません。
待っていてくれている方がいるとは思えませんがチマチマ再開します。
653 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/01/02(月) 20:32:50.77 ID:le3ny7hkO
undefined
654 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2023/01/02(月) 20:33:27.23 ID:le3ny7hkO
『ご…ごめんね…。助けに来た側なのに、手当てなんかしてもらっちゃって…』
『…別にいいですよ。私は鬼なのでこれくらいなら治ります。貴方は弱っちい人間なんだから、ちゃんと手当てしとかないと』
殴られ、蹴られ、斬られ、射抜かれ。満身創痍になりながらも悪漢集団をとっ捕まえた旅人は、助けに来たはずの少女に治療してもらっていた。
あれほど強者の風格を漂わせていた彼だが、実際は明らかに戦い慣れしていなかった。
腰は引けて、足は震えて、太刀筋は鈍って、と目も当てられない姿だったが、そんな彼が身を呈して助けに来た事実に、お雪も思うところがあった。
故に、悪態を吐きながらも旅人の手当てをしているし、あれほど凄惨な出来事があっても温和な笑みを浮かべているのだろう。
本人は、自身が笑っていることは完全に無自覚なのだが。
『…しかし、どうして助けに来たんです?私、貴方のことをかなりぞんざいに扱っていたと思うんですけど』
彼に助けられるほどの恩は無いし、愛想も悪い自分をなぜ助けたのか。疑問に思ったお雪は、素直にそれをぶつけた。
対する旅人は、数瞬の黙考の後に口を開く。
『僕が疎まれていることは見捨てる理由にならないよ。どう扱われようとも、人道に反することはしたくない。だから、君を見捨てる選択肢なんて端から存在していなかったんだ』
『戦うのも、傷つけるのも、傷つけられるのも嫌だけど。君を見捨てて無かったことにする方がもっと嫌だから』
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