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【マギレコ】 最後の世代の魔法少女たち
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222 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/21(水) 23:44:57.89 ID:WCbA+PmGO
そこへ、桜子がいろはに意見し、織莉子、キリカが続いた。
「|神浜と他陣営の魔法少女、全員を確認するのは現実的じゃないかもしれない。だけど、
今ここにいるみんななら話は別。この中にコピーが紛れているか確認するくらいなら、
手間ではないはず|」
「私も桜子さんに賛成です。この場にいる全員だけでも、疑いを晴らすべきでしょう。
知っている人が偽物と入れ替わっているなんて、恐ろしいと思いましたので」
「主催者さん。私たちが本物かコピーか、あんたが見分けてくれないか?
お互いでお互いを確認し合っても、却って収拾がつかなくなると思うよ」
「分かりました。とりあえず、私の前に皆さん、並んでもらっていいですか?」
桜子の提案で始まった、会合出席者がコピーか否かの確認は、いろはが確認役となり、
いろはを確認する役はキリカが引き受けた。見分ける方法として用いられた方法は、
魔翌力パターンの検知と記憶の整合性、喋り方の確認で、ミラーズ探索時に行っている
方法と同じだった。結論から言えば、出席者全員が本物であることの確認が取れた。
しかし、アリナのスーパーコピーの存在が前提となったことにより、この場にいない
他の魔法少女に対する疑念が沸いてしまった。
「誰がコピーかを疑い続ける生活は、疲れるだけなんだにゃー」
「マシンもすでに組み上げているところなんだけど、今後を見据えて、本物とコピーを簡単に
見分けるために、専用アイテムの開発も、考えた方がいいかもね、一時的に 優先順位を
入れ替えたほうがいいもしれない。浄化システムの効果範囲を、可視化する方法も含めて」
「ミラーズへの懸念については、一先ずはこんなところかにゃー。他にも懸念はあるんだけど、
それはそれで、日を改めて、一日使ってでもいいから話し合いたいんだよ。だからお姉さま、
議題を次に進めて」
「では、本議題は以上を以って方針決定とします」
灯花とねむが方針を発表すると、いろはは議題を次に移した。
「クリミナルズと仮称している犯罪組織と、その組織によるテロ計画についてですが……」
いろはが語ったのは、キリカと太助、ラビから齎された情報を取りまとめたものだったが、
インキュベーター撤退後に増加した組織犯罪の報道と、身辺で最近起きた不審な出来事も
出席者に伝え、対策を考えつつ情報を募る方向で話が進む。
いろはの説明の後、最初に発言したのはキリカだった。
「私の調査は無駄じゃなかったみたいだね。湯国って街が、そこまで酷いことになってるなんて。
他の街のことを普段は知らないから、ちょっと驚いたよ」
223 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/21(水) 23:48:50.87 ID:WCbA+PmGO
その後、織莉子、ももこ、みふゆが続く。
「私たちの周囲では不穏な動きはありませんが、これでは時間の問題ですね」
「寧ろ、その頃には手遅れかもしれないな。湯国は実効支配されてるんだっけ。
こっちから向こうに乗り込んで、叩いてもいいんじゃないか?」
「湯国は氷山の一角でしかないでしょう。大事には違いないですが、クリミナルズは
世界中でテロを起こそうとしています。こちらから打って出れば、却って向こうが
状況を利用するでしょう」
「下手に手を出せば、その瞬間にテロを実行に移される可能性が高い。次善の策は防御ですね。
魔法少女の家族や友人、知人を大規模シェルターへ避難させ、国内、海外の魔法少女と連携し、
クリミナルズの構成員を割り出す」
織莉子がそこまで言うと、いろは、灯花、ねむ、ういが続いた。
「W−1、W−2の実行中に出会う魔法少女と、情報を交換して連携を持ち掛けましょう。
相手が集団である以上、私たちも集団で臨むべきです」
「わたくしも、お姉さまの意見に賛成するよ。何も分からないということは、何もかもが
あり得るということでもあるからね」
「大規模なシェルターの件だけど、情報があるんだ」
「何か心当たりがあるの?」
「街をワルプルギスの夜が襲う前から、神浜の東西にシェルターの建造が計画されていたんだ。
これも、宇宙の意思の存在を確認する過程で、神浜のことも調べていて分かったんだ」
「調べていた当時は、ごたごたしていたから詳しく調べてなかったんだけど、この前の報告で、
シェルターの話が出たからね」
「調査を再開したところ、建造が進められてることが分かったんだ」
シェルターの話を聞いて織莉子が続きを話すと、やちよが疑問を尋ね、みふゆが続いた。
「私も都合のいいシェルターがないか、調査をしていたのですが、調査の過程で
神浜のシェルター建造計画に行きつきました。神浜が近代化を迎えたころから、
建造は始まっていたようです。街が海に接していることから、地震や津波などの
災害に備える目的で進んでいましたが、一時期工事が中止になっていました」
「中止?資金不足かしら?」
「そのようです。十数年は止まっていたようですが、資金が集まって工事が再開され、 完成が近いようです」
「そんな話は街で流れてなかったし、今初めて聞いたわ」
「下手に明らかにするようなものではないですよ、やっちゃん。用途が用途ですからね。
近頃の情勢下では、どのようなことであれ、大きなお金が動くと騒ぐ人が一定数いる。
神浜の住人に向けて建造されたシェルターなら、完成した暁には周知されるはずです」
224 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/21(水) 23:51:08.37 ID:WCbA+PmGO
みふゆの発言に、ねむが挙手する。
「そのシェルターが、家族を退避させるために使えると見込んでる。やり方次第では、
僕たちが避難の優先度をコントロールできるかもしれない」
「それは……魔法少女の能力を使う、という意味でしょうか」
「いざという時はそうなる。だが、僕たちには政界に繋がる人脈がある。出来る限り、
魔法少女の能力に頼らない方法で、僕たちに有利になるよう動くつもりだよ」
「わたくしたちからは、これくらいかなにゃー。お姉さまからは何かある?」
「私からはもうないよ。シェルターの件は…これも、灯花ちゃんたちが頼りだね。
クリミナルズについては、さっきも話した通り。皆さんからはなにかありますか?」
全員が特にないことから、議題は次に移った。
「最後は、常盤ななかさんたちと接触後の方針です。常盤さんたちが私たちに
接触してくる時期は不明です、現状を顧みるに、W−1、W−2の進行中の
可能性が高いと思います。それまでに私たちは、国内の魔法少女だけでなく、
海外の魔法少女とも連携をとり、常盤さんたちと情報交換できるようにする。
その後、クリミナルズへの対応方法を改めて策定する。以上が私の意見です。
皆さんからは何かありますか?」
それを聞いて、ももこが挙手して難しい顔をする。
「現状、出来ることって本当に限られてるし、いろはちゃんが今言った内容が全部じゃないかな」
「レナも同じ意見。あらゆる状況に対する備えなんて無理だし」
レナの発言に、やちよが挙手する。
「織莉子さんの予知能力がもう少し安定すれば、もっと具体的なことが出来ると思うのだけど。今はどんな感じかしら?」
やちよの疑問に、織莉子が答える。
「クリミナルズのテロは、対象となる範囲が広すぎるため、予知が難しいです。
ですが、常盤さんたちとの接触時期なら、ある程度は予知できると思います」
「それじゃ、この場で予知してもらうことはできる?」
「やってみます……」
織莉子の予知能力はさらに安定し、対象の規模・範囲が絞られ、時期が近いほど、
視える未来と内容が鮮明になるようになっていた。織莉子が予知に集中して数分後、
目を開けた織莉子は、常盤ななか一派との接触時期を告げた。
「……新年を迎えた二ヵ月後、最初の週です」
225 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/21(水) 23:54:14.83 ID:WCbA+PmGO
織莉子が内容を告げると、いろはが尋ねる。
「その頃、私たちを取り巻く状況は、どうなっていますか?」
「……余り状況はよくありませんね。クルミナルズによって、海外の都市の一つで
テロが起きています。世界は国際緊張が高まり、日本の情勢も不安定に陥って、
クリミナルズを武装勢力と認定して、自衛隊も動いている」
それを聞いたももこは驚きのあまり声を上げ、レナ、かえでが続く。
「あと数ヵ月でそんなことになるのかよ!」
「テロが起こされた海外の都市って、どこのことなんだろう?」
「国内でも、テロが起こされちゃうのかな……」
「自由の国で知られるかの国の首都のようです。事件には軍が出動して事にあたり、
日本はそれに続くように自衛隊を動かすのでしょう。ただ、そのせいでしょうか、
魔法少女の存在を広めるはずの、マギアレコードの出版は遅れるようです」
その事実を聞いて、かごめが肩を落として呟き、いろは、みふゆが続いた。
「……せっかく取材した、みなさんの記録が……。これも宇宙の意思が 邪魔しようとしているのでしょうか……」
「キュウべぇが撤退して、浄化システムが広がったことも影響しているのかもしれない。
太助さんが言ってたけど、用済みになった人類を、宇宙が排除しようとしているとか」
「それは、今まで散々利用してきた人類を見限ったと?」
「ワタシたちの本当の敵とは、この宇宙そのものなのかもしれませんね。だからと言って、
ワタシたちに宇宙そのものを、どうかするような力はありませんが……」
「織莉子さん、魔法少女はどうなっていますか?」
「神浜でもクリミナルズ絡みの事件が多発し、一部の魔法少女は遠方に引っ越しています。
蒼海幇という組織と常盤さんたちが手を組み、事件の対処にあたっていますね。恐らく、
いろはさんたちとの接触は、常盤さんたちだけでは、手に負えなくなったためでしょう」
「……何にせよ、これで方針は固まりましたね」
いろはがそういうと、最後の議題に移った。
「先日、霧峰村から静香ちゃんが来て、水徳寺の分寺が完成したら、慰霊碑を立てて、
歴代巫……いえ、霧峰村で誕生した、歴代の魔法少女の亡骸を埋葬するそうです」
埋葬という言葉に、さなが挙手して疑問を口にする。
「いろはさん。埋葬ということは、今まで亡骸はどうなっていたんですか?」
「それがね……」
226 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/21(水) 23:56:59.05 ID:WCbA+PmGO
いろはは、静香が語った霧峰村の負の歴史を伝えた。
出席者全員が表情を曇らせ、いろはの話を最後まで聞いた後、ももこが意見を述べ、やちよとみふゆ、いろはが続いた。
「魔法少女を弔って浄化システムが広がったならさ、アタシらも慰霊に参加しないか?
これも何かの縁だと思うし、顔を直接合わせる最後の機会になっちまうかもしれないし……」
「私も、慰霊法要への参加を表明するわ。今日、ここで知り得た情報は、時女一族にも共有しておきたい」
「ワタシも参加を表明します。いろはさん、お手数ですが静香さんへ、明日以降でも構わないので、伝言してもらえますか?」
「分かりました。静香ちゃんと相談して、問題なければ私も参加します。他の皆さんはいかがでしょうか?」
出席者は全員、時女一族さえよければ、慰霊法要への参加を表明した。
そこまで話し終えた時、時間は既に夕方になっており、窓の外には夕焼けの空が見えた。
時間いっぱいとなったこともあり、会合は散会。
明日の予定がある出席者は、一足先に帰路に着き、みかづき荘メンバーの六人とみふゆが残った。
いろははみふゆと、結菜との話し合いのために部屋を移ろうとしたが、その際、やちよに声をかけられて振り向いた。
「二人とも悪いんだけど、私と鶴乃は、みたまのところへ顔を出してくるわ」
「そういえば、みたまさん、全然あってませんでしたね。調整屋は再開してましたっけ?」
「不定期だけど再開しているそうよ。今日は調整屋にいるはずだから、話してくる」
「オレはさなと少し話てーから残るぜ。適当なタイミングで帰るつもりだ」
「分かった。私はみふゆさんと、明後日の件を煮詰めるので、遅くなると思います。
もしかしたら、今日はここで一晩、泊めてもらおうかと」
「私は大丈夫ですよ。ねむさんも、みかづき荘の皆さんや、魔法少女の知り合いなら、
ここに招いてもいいと言われているので。フェリシアさんもよければ」
「そうしたいんだけどよ、やちよを一人にするのは心配だから、今日は帰るぜ」
「それなら、みたまと話した帰りに迎えに来るわ。その帰りに鶴乃を送って、一緒に帰りましょう」
「おう、待ってるぜ!」
「それじゃあ、私と鶴乃は、みたまのところへ行ってくるわ」
「分かりました。いってらっしゃい」
やちよと鶴乃を見送った後、さなとフェリシアは居間に残り、いろはとみふゆは部屋を移動した。
227 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/22(木) 00:16:47.84 ID:l3Wpp4NBO
連休二日目は各々が思い思いに休日を過ごし、連休三日目。
いろはは、みふゆと共に二木市へ入り、結菜の家の居間にいた。
結菜は、二人の来訪前日に概要を聞いて、事前に人払いを済ませていた。
エミリー休憩所での会合と同じく、いろはが主催、みふゆが副主催となり、
公営霊園増設の理由を伝えた。
元・みかづき荘メンバーの墓参り、事前に許可を得た”霧峰村の負の歴史”の
話も伝えると、結菜は顔を俯かせて沈黙を保ち、やがて顔を上げた。
「……カタコンペは、いずれ何とかしなければならなかった。これを契機に着手し、あなたたちに協力するわ」
「結菜さん…!」
「でも、私一人で何とかするのは無理。今のところ、霊園を増設する計画は街にないのよ。霊園増設には
相応の理由が必要。それがないことには、街を動かせないし、お父様にも話せないわぁ」
「二木市にも水徳寺があれば、何とかなりそうですけどね」
「そう簡単にいかないわぁ。この街にはこの街の寺がある。時女一族みたいに、地域全体で魔法少女の
存在を知っていて、協力的なところがあれば……」
「魔法少女の存在を知っている一般の方って、二木市ではどれくらいいますか?」
「皆無ねぇ。そう言い切れるのは、現状を踏まえてのことよぉ」
「どういことですか?」
「……今更、あまり言いたくないけど、二木市では以前、魔女枯渇問題から、
魔法少女同士で殺し合いがあったの。相手の魔女化を誘発させて魔女にし、
討伐してグリーフシードを奪っていたことがある。……大勢を殺し、殺された」
「…………」
「…………」
「それによって、十代の女性の失踪事件が、どれだけ多かったかは想像がつくでしょう。
大事件もいいところなのに、大事に至る前に事件は、あっという間に沈静化してしまったわぁ。
憤ったものだけど、これも宇宙の意思の介入でしょうね」
「……宇宙の意思は、どこにいっても付き纏いますね」
「私たちは、神浜ほど理性的ではなかった。武力とその場しのぎで血を流してきた。
精神を日々すり減らし、神浜を敵とみなすことでようやく一つになったの。それくらい、
この街は抗争の歴史が長いのよ。その間に死んだ魔法少女の総数は……」
「そのことは本当に」
「……ごめんなさい。話し出すと、止まらなくなってしまう。ともかく、折り合いはもうつけた。
……それで、何の話をしてたっけ……あぁ、そうだ、魔法少女を知る一般人よね」
「…………」
「…………」
228 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/22(木) 00:26:32.16 ID:l3Wpp4NBO
「死んだ魔法少女は行方不明扱いで、神隠しや失踪、はたまた集団自殺やら、そういうことは騒がれた。
他にも憶測が色々と立てられてはいるけど、魔法少女の存在が暴かれることには繋がっていない。
色々話したけど、二木市に魔法少女の存在を知る一般人はいないと思うわ」
「そうでしたか……」
「それはそうと……今回の話、難易度は高いけど、今は時期が時期だから、ある意味好機かもしれない」
「……もしかして、市長選挙ですか?」
「えぇ。父も立候補していて、次も市長を継続するつもりよ。案はこれから考えるけど、街の住人の少子高翌齢化と、
墓地枯渇が近いことが、二木市が抱えている問題として取り上げられてはいる。ただ、それが公営霊園増設の
必要性に繋がっていない。墓地枯渇と言っても、まだ先の話だから。だけど、街全体の問題として、街も住人も
認識すれば、公営霊園増設が可能かもしれない」
「もし、公営霊園が増設されたとして、地下墓地はどうしますか?」
「そうね、危ない橋を渡ることになると思うわぁ。墓を移すことはもちろん、地下墓地も後始末が必要になるわねぇ。
ただ、それは私たちの問題だから、あなたたちが気にしなくてもいい。これは私たちがケリをつけないとね」
「分かりました」
「それにしても」
「なんでしょう?」
「里見灯花、柊ねむ、考えたものねぇ」
「え?」
「魔法少女の弔いが浄化システムを広げる鍵なら、地下墓地のみんなを弔うことでも、おそらくは条件を満たした。
だけど、公営霊園の増設と言ったのでしょう?」
「……あっ」
「あの子たちは、二木市の事情をよく調べてるわねぇ。帰ったら聞いてみるといいわぁ」
「ゆ、結菜さん、本日はどうもありがとうございました」
「本日は、お時間をいただき、ありがとうございました」
「梓みふゆ」
「なんでしょう?」
「いつか、事態が落ち着いたら、直接伝えようと思ってた。あの時の平手打ちは効いたわ。
それと……観鳥令のカメラ、破壊して悪かったわ」
「確かにカメラは破壊されましたが……データは別の方法で手に入りましたし、
観鳥さんの意思は受け取りました。……ワタシは許します」
「私ももう、あの時のことは恨んでません。許します」
「……ありがとう。本日は二木市まで足を運んでもらって、感謝よぉ」
「それと、もう一つよろしいでしょうか」
「何かしら?」
いろはが話したのは、時女一族が進めている、歴代巫の埋葬計画のことだった。
話を聞いた結菜は、参加を表明し、静かに後日伝えることを約束した。
その後、いろはとみふゆは結菜の家を出て、二木市を後にした。
神浜市に戻った二人は、その足で電波望遠鏡を訪ねると、灯花とねむに結果を報告。
結菜から言われた内容を尋ねた。
「事前に相手の調査をするのは当然だよー?二木市のことは前から調べてたからね」
「宇宙の意思の存在を確認するために、十代少女の失踪事件の顛末を確認していたんだ」
「二木市の情勢も、犯罪発生率や警察の動きと一緒に、確認してたんだよ」
「やっぱり知ってたんだね……」
「ですが、ある意味、結果オーライなのかもしれません」
229 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/22(木) 00:29:53.66 ID:l3Wpp4NBO
そして……月日は流れ……
新年を迎えるまで数日を残した頃。
鶴乃、さな、桜子を未来へ送り出すための、すべての準備が整った。
準備が整うまでの期間は、激動ともいえる毎日の連続だった。
みかづき荘の当主交代、ユニオンをはじめとする各陣営のリーダー交代……
霧峰村は水徳寺の分寺完成後、川底から引き揚げた魔法少女の遺体を、寺の墓地に埋葬。
いろはから連絡を受けた静香は、意を汲んで慰霊法要への参加を快く了承。
後日、いろはたちは、会合出席者だけでなく、時女一族以外の他陣営にも情報を周知。
当初予定していた人数よりも、大勢の魔法少女が慰霊法要に参加した。
二木市は公営霊園が大規模増設され、地下墓地に埋葬された魔法少女は無事に霊園に移された。
結菜が言っていた”危ない橋”は、無事に渡れたらしく、地下墓地跡地も後始末が完了したという。
それにより浄化システムはさらに広がり、ついに惑星全土を覆った。
同時に世界各地の穢れも浄化されたことで、穢れの影響で発生した争いが消えるという副次効果を齎した。
これにより湯国市を覆っていた穢れも浄化され、織莉子が予知していたテロは、いくつかが回避されたが、
灯花によれば、これらの副次効果は一時的なものでしかないという。
湯国市に限らず、魔法少女へ敵意を向ける人々から考えを変えない限り、再び世界は穢れに覆われる。
世界各地の争いも再発し、回避したはずのテロが、ただの先延ばしでしかなくなるとのこと。
230 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/22(木) 00:33:21.85 ID:l3Wpp4NBO
その後、W−1は順調に進み、時期を見計らってW−2も開始。
用意が整う今日までの間、世界各地の魔女殲滅は完了に向かいつつあった。
今この瞬間も、他の魔法少女たちは国内、海外で戦いを続け、クリミナルズとの決戦に向けて連携も取っている。
鏡の魔女が最後の魔女となり、殲滅する日も近づいていた。
「僕たちにできる精一杯として、三人の願いは全て叶えた。けれど、本当に願いはもうないのかな?」
「これで私たち、本当にお別れになっちゃうんだよ。もう……会えないんだよ?」
「僕たちにできることなら、他にも願ってくれていいんだよ?」
鶴乃は情勢を考慮して店の再建を諦めた代わりに、自身の技術と知識を跡継ぎを迎えて伝えた。
さなは自身が描き残したかった絵本をすべて描き終え、その管理と出版をねむとレナに委ねた。
桜子は魔翌力に還元されたウワサたちの力を取り込み、さなと入れ替わりにみかづき莊で過ごした。
「|私は、いろはたちから、たくさんの思い出をもらった。私の中に深く刻まれた多くの記憶。
これ以上ない大切なものをもらった。だから、もう大丈夫|」
「私は自分の跡を継いでくれる人が見つかった。それだけで十分。これ以上求めたら未練が出来ちゃうよ」
「私は私の残したいものを、すべて出し切りました。……時間をかけて固めた決心です。どうか鈍らないうちに送り出して下さい」
「そうか……分かった。君たちの意思を尊重し、未来へ送り出そう」
「ごめんね。わたくしたち、丸投げするようなことしかできなくて……」
一行は、存在を秘匿された地下施設へ移動し、収容室と呼ばれる一室に入る。
いろはとやちよが一歩歩み出ると、部屋の中央に視線を走らせた。
そこには人数分のコールドスリープマシンが用意され、取り囲むように多くの機械が並ぶ。
これが未来への希望として、三人を送り出すことになる。
「これが、魔法少女の能力と、現代の科学技術の粋を結集して完成したマシンなのね……」
「ヒヒイロカネで作られた特別製だよ。絶対錆びない金属と魔法少女の能力、現代技術の集大成だよ」
「これなら、必ず未来に渡れるね……」
「やちよさん。織莉子さんとキリカさんは?」
「連絡を取ったけど、所用で数日前から見滝原を離れているみたい。どうしても来れないと返事があったわ」
「何かあったみたいですね、この分だと」
「ししょー……」
「鶴乃?」
「……あ、あのね、時々でいいからさ、私の跡を継いだ人の店に、食事に行ってくれると嬉しいな。
ししょーも、きっと気に入ってくれると思う」
「……分かったわ。きっと食事に行くから、味の感想は未来で聞いてちょうだい」
「ありがとう、ししょー。……フェリシア、いい男性を見つけて幸せな家庭を作るんだよ。
いろはちゃん、ユニオンの新リーダー……ういちゃんのリーダー教育、頑張ってね」
「うん……」
231 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/22(木) 00:36:13.35 ID:l3Wpp4NBO
「鶴乃さん……」
「ごめんね。一緒にういちゃんの成長を見届けられなくって……。ういちゃんが魔法少女最後の世代の、最後のリーダーだ」
「そんなこと言われると、責任重大だな……」
「ういちゃんなら、きっとできるから大丈夫!結果は未来で聞かせてもらうよ。頑張って!!」
「鶴乃、未来のことを押し付けちまうことになって、本当にごめんな……」
「フェリシア。きっと幸せになるんだよ?」
「鶴乃、未来で目覚めるまでの間のことは、私たちが引き受けるわ」
「みなさん、今まで大変お世話になりました。私一人だったら、私は今頃、生きていなかったと思います。
特に、いろはさん……あなたが私を見つけてくれたから、私はここにいます。この御恩は一生忘れません」
「感謝するのは私たちのほうだよ。自分たちで出来ないことを、丸投げするみたいになっちゃって」
「未来で君たちがすべてを終わらせたあと、平穏に暮らせるように、僕たちは財と物資を用意しよう。
身勝手な僕たちの願いを引き受けてくれた、君たちへの最後の恩返しだよ」
「ねむさん。私の絵本のこと、よろしくお願いします。……かごめちゃんの、マギアレコードのことも。
それから皆さん、世界に残っている魔女殲滅に、参加できなくてすみません」
「さなの絵本とマギアレコードの出版は、僕が責任もって引き受けるよ。僕が倒れた後も、協力者もいるから大丈夫だ」
「二葉さん、残っている魔女の殲滅は、私たちがきっとやり遂げるから、気にしないで」
「やちよさんにそう言ってもらえると、心強いです」
「|ねむ、灯花、うい、いろは……みんな。今まで本当にありがとう。どうか私たちのことと、私のために、魔翌力に還元されたウワサたちのことも、忘れないで……|」
「約束するよ。桜子ちゃんのことも、ウワサのみんなのことも絶対に忘れない。ういも、ねむちゃんも、灯花ちゃんも…みんなも忘れないから!!」
232 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/22(木) 00:38:05.61 ID:l3Wpp4NBO
そこへ、灯花が声をかけてくる。
「みんな。こっちは用意が出来たよ。あとは……」
「分かった。……それじゃあ、みんな。私たちは……」
「|もう……行くね。みんな、きっと元気で……|」
「あの、最後にやちよさんに、一つお願いがあります」
「何、二葉さん」
「一度だけでもいい。……私を名前で呼んで欲しいです」
「……あなたのことは、ずっと苗字呼びだったものね。仲間外れにしていたみたいで、ごめんなさい。さな」
「……やっと、名前で呼んでもらえた。嬉しいです」
「さな、私たちの家族でいてくれてありがとう。未来で目覚めるまでのことは、私たちに任せて」
「はい…!」
桜子が最初に用意を整えて、鶴乃、さなが続く。
いろはたちがそれを見守り、三人がコールドスリープマシンに入るとプログラムが走り始めた。
三人は純美雨の能力である真実の偽装により、数十年後にメディカル・センターで病死した扱いになる。
三人はやがて眠りに入り、稼働を開始したマシンは時間のカウントを始めた。
カウントが百年目を迎えた時に三人は目を覚ます。
しかし、その時、いろはたちは命を全うしている。
三人が無事に未来で目覚めることができるよう、いろはたちは、今できることに精一杯取り組むしかない。
「本当に……本当にありがとう、鶴乃、さな、桜子。そして……さようなら……」
やちよの呟きを最後に、一行は静かに収容室を後にした。
そして、いろはたちの新たな戦いが、幕を開けることになる……
233 :
◆3U.uIqIZZE
[sage]:2022/09/22(木) 00:40:50.54 ID:l3Wpp4NBO
書き溜めた分は以上です。
現代編はここで区切りとなり、次回再開時は未来編を投下予定。
現代に残ったいろはたちの戦いは、アナザーストーリー的に合間を見て投下予定。
書き溜めるため、再開は当分先となります。
これまでご清聴いただき、ありがとうございました。
234 :
保守
[保守]:2022/09/28(水) 23:51:33.53 ID:cUhcNifHO
保守
235 :
以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします
[sage]:2022/09/29(木) 02:37:53.56 ID:dC+9jhan0
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