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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」吹雪「その4です!」
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104 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:38:33.41 ID:zdm+Pb74o
榛名「あの、提督? 伏せておく話ではなかったんですか?」アセアセ
提督「大和が知ってる話から、差し支えなさそうな範囲で話したつもりだったんだが……まずかったかな」
陸奥「……」ニコニコ
隼鷹「めっちゃ穏やかだねえ……」
榛名「問題ないとみていいんでしょうか」
提督「さっきから一言も喋ってねえのは問題じゃねえのか。おい、陸奥、大丈夫か? 眠い時はちゃんと部屋で寝ろよ?」
陸奥「……」コクン
大和「頷いてる……一応、聞こえてるみたいですね?」
如月「……」ウトウト…
提督「如月も眠そうだな。このまま部屋に連れてくか……」スクッ
陸奥「……」スクッ
隼鷹「うおっ、びっくりしたぁ!」
提督「陸奥も寝るのか?」
陸奥「……」コクン
提督「そういうことなら送るか……一緒に行くか?」
陸奥「……」ニコ…
提督「そうか。んじゃ、ふたりを部屋に連れてくぞ」
榛名(……陸奥さん、さり気なく提督の服の裾を掴んでる……)
105 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:39:16.86 ID:zdm+Pb74o
隼鷹「はぁ〜、ここの提督も大変だねえ。これだけ大勢に頼りにされてちゃ、おちおち送り狼もできたもんじゃないね、いひひっ」
榛名「送り……狼、ですか?」クビカシゲ
隼鷹「ありゃ。もしかして、送り狼って言葉自体知らない?」
榛名「はい、恥ずかしながら……」
隼鷹「別に恥ずかしくもないよ〜、言葉自体がちょっとアレなんだから」
榛名「と、言いますと?」キョトン
隼鷹「送り狼ってのはさ、酔っ払った子をお見送りするだけじゃなくて、その先で食べちゃうってことだよ、性的にさ」ガオー
榛名「……」クビカシゲ
榛名「……!!」ボフッ!
隼鷹「ひひっ、反応がお子様だねえ」
106 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:40:01.98 ID:zdm+Pb74o
榛名「そ、そそ、そういう意味だったんですねっ」アセアセ
大和「……」ズーン
隼鷹「あれ? 大和はなんで落ち込んでんだい」
榛名「いえ、わかります。大和さんがなぜ落ち込んでいるのか……」
榛名「提督は……性行為を嫌悪してらっしゃるので……そのような事態は起こってほしくても起こりえません」ズーン
隼鷹「え、なにそれ」
大和「提督は、過去のトラウマで……そういうことが全部駄目なんです」グスッ
榛名「聞いた話では、そういう漫画を読んだだけで嘔吐したとも……!」プルプル
大和「なんで提督のような方がそのような目に!!」ナミダジョバーー
榛名「榛名も大丈夫じゃありませぇぇん!!」ナミダジョバーー
隼鷹(思わぬところで地雷踏んじゃったよ……)
107 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:41:01.68 ID:zdm+Pb74o
*
川内「ふわぁ〜、おはよー……ってなにここお酒臭い!!」
加古「なんだ、もうみんな出来上がっちゃってるねえ」
那智「お前たちは寝すぎだ。川内は夜戦ばかりで昼夜逆転しているから仕方ないかもしれないが……」
加古「酒盛りするんだったら、もうちょっと早く起きてりゃ良かったねえ」
那智「無理だろう。爆睡してたじゃないか」ジトメ
川内「あたしは夜戦できなくなるからお酒はパスだね。食べ物だけ貰ってこようっと」
加古「あたしも残ってるお酒、もらってこようかね〜」
那智「それでは私は……」
武蔵「悪いが、シラフなら手伝ってもらえないか」
那智「ん?」
武蔵「ここのテーブルの酔った艦娘を、部屋に連れていきたいんだ」
千歳「んふふ……」ウトウト
最上「えへへへ……」ムニャー
筑摩「すー……」
足柄「ぐー……」
古鷹「スヤァ……」
那智「これはこれは……惨憺たる光景だな」
108 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:41:46.86 ID:zdm+Pb74o
三隈「最上さん、こんなところで寝るなんて無防備が過ぎますわ……!」
五十鈴「筑摩さんのお部屋ってどこだったかしら……」
武蔵「筑摩は私が運ぼう、五十鈴には自分で歩けそうな千歳を任せたい。那智には足柄を頼みたいんだが」
那智「構わないが……どれだけ飲んだんだ? 一升瓶やら四合瓶やらの空瓶がずらりと並んでいるんだが」
伊8「あ、それは、私と明石さんとで飲んだお酒です」
那智「……」
明石「いやあ、久々にがっつり飲んだなあ〜」ノビー
武蔵「足柄も一緒に飲んでいたんだが、早々に脱落してな。私も見ていたが、顔色も変えずに飲むわ飲むわ……」
伊8「武蔵さんも飲んでたでしょ?」
武蔵「お前たちほどではない。私も酒は好きな方だが、この二人の前に並んだ瓶を見るとな……」
那智「それにしても……汚い話で悪いが、これだけ酔い潰れてて誰も気分を悪くしていないというのもすごいな?」
明石「ああ、それに関しては提督から釘を刺されてて」
伊8「酔って吐くようなことがあったら、顔を掴んでジャイアントスイングする、ってお達しがありました」
那智「は?」
明石「うちの提督、握力がとんでもないんですよ」
伊8「本気出したら、頭骨も砕いちゃうかもってくらい」
那智「なんだそれは……」
明石「なのでみんな、セーブして飲んでましたねえ」
伊8「すごく健全な酒飲みでしたね」
那智「……」
109 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:42:31.64 ID:zdm+Pb74o
*
隼鷹「ああもう、どうすりゃいいのさー!」
加古「なんかここだけ騒々しいね……なにがあったの?」
隼鷹「あ、加古……」
榛名「提督がもう不憫で不憫で……」グスグス
大和「いったいどれだけ不幸を背負えばいいのかと!」グスグス
加古「この二人はなんで泣きまくってんの?」
隼鷹「いやあ、ここの提督、性欲ってものがないとかって話になってねー」
大和「そうなんです!!」
加古「うおっ」
榛名「愛情も良くわからないと仰るんですよ!? あんなにお優しいのに!!」
加古「……そんなに泣くほど優しいの?」
大和「優しいですよ!? ちょっと口が悪いですけど!」プンスカ
隼鷹「そこは否定しないんだ」
大和「不器用なだけなんです!!」
110 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:43:17.08 ID:zdm+Pb74o
榛名「提督は、幼少のころから妖精さんとお話しできていたために、ご家族からすらも疎み蔑まれ……」
榛名「まともな愛情を受けることなく大人になったと聞いています。提督はそのためにあのような性格になったと……」
加古「うへえ……よくグレなかったねえ?」
大和「それは、提督と一緒にいた妖精さんが見守ってくれていたおかげだと思います……」
大和「ですが、人を好きになるという感覚を一度も理解することなく、提督は今日(こんにち)まで……」ウルッ
加古「そんじゃあ、なに? あの人は、あたしたちに愛情を持ってるわけじゃーなくて、憐れに思って助けてるってこと?」
大和「」
榛名「」
隼鷹「あー、そういうふうにもとれるねえ」
大和「け、決してそんなことはありません!!」
榛名「ないと思います!!」ブンブン
加古「そうは言うけどさ、来たばっかりの部外者って立場から見てみると……ねえ?」
隼鷹「ってーかさ? 提督がそういうコトに興味ないのを嘆いてるってことは、二人とも提督とそういうコトをしたいってことだよねえ?」ニチャア
大和「……それは、まあ、その、はい……」カオマッカ
榛名「……否定は、しません、けど……」カオマッカ
111 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:44:01.97 ID:zdm+Pb74o
隼鷹「二人とも、なんでそんなに提督が好きなのさ? 教えてちょうだいよ〜」ニヒヒ
大和「私は、その……一目惚れと言うか……最初はお写真だったんだけど、見た瞬間に、こう、昂ったというか……」モジモジ
隼鷹「ほうほう?」ニヤニヤ
大和「この離島の鎮守府で、提督の階級も准尉ということで、最初はものすごく落ち込んだのだけれど……」
大和「提督のお顔を見たときに、それを忘れるほどの衝動というか……この人のために、という思いが沸き上がってきまして……」ポ
大和「これまで提督とご一緒して参りましたが、提督はいつも艦娘が抱えた問題をすべて取り払おうとしてくださってて……」
大和「提督ほど私たちの身を案じ、そして我儘を聞いてくださる素敵な方は、ほかにいないと思います!」キラキラッ
隼鷹「それでアタックしてるんだねえ!」
大和「ええ、一度はこの身を捧げようとしたんですけれど、お断りされまして……後から話を聞いたら、そういう話だった、と……」ションボリ
隼鷹「えっ、提督に迫ったことあるの!?」ガタッ
加古(隼鷹の目が輝いてる……)
大和「はい……提督が、『俺の大和』と仰ってくださって……」ポ
隼鷹「マジで!?」
榛名「」ハイライトオフ
加古(こっちは目から光が消えた……!)タラリ
112 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:44:48.78 ID:zdm+Pb74o
大和「はい、あの時、提督があの男に向かって……あの男に……」ビク
大和「……あのおとこ……」アオザメトリハダ
隼鷹「ちょっ、どうしたの!? 顔色悪くない!?」
大和「ご、ごめんなさ……う゛っ」ガタッ
タタタタッ…
隼鷹「な、なんだあ? 大和ってば、どうしたの?」
榛名「」ハイライトオフ
加古「こっちは目から光が消えたままになってるし……」
明石「あらら、大和さんたらトイレに行っちゃいましたか。提督のアイアンクローの犠牲者第一号かな?」
隼鷹「あっ、明石! 今、大和から聞いたんだけどさぁ、提督が大和のことを、俺のだー、って言ったのって本当?」
明石「え、そうなんですか?」
隼鷹「ありゃ? 明石も知らないんだ」
伊8「……それって、もしかして」
隼鷹「お、何か知ってる?」
伊8「多分なんですけど……」
113 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:45:32.82 ID:zdm+Pb74o
* 中佐のことを説明中 *
隼鷹「ははぁ……そいつを思い出して大和がトイレに駆け込んだってことかあ」
明石「朝潮ちゃんも、中佐の見た目やらなにやらが気持ち悪かったって言ってたっけなあ」
伊8「あのあとですよね、大和さんを利用したみたいな気分になって、それで提督が落ち込んでたの」
明石「あぁ、あったあった、大和さんやら如月ちゃんやらが工廠の隅っこで体育座りしてたあの事件!」
加古「んーと……つまり、提督は中佐って奴を追っ払うために『俺の大和だ』って言ったんだね?」
伊8「結果的にはそうですね」
榛名「……!」ハイライトオン
加古(あ、戻って来た)
明石「まあ、たとえ提督の都合のいいように利用されたとしても、大和さんは提督のことを好きでい続けるんでしょうねえ……」
隼鷹「お、そこまで言う? なんでなんで? 教えてよ〜」
明石「……この島には、轟沈した艦娘が漂着してくるって言いましたよね」
明石「提督は昔、着任以前に漂着して長らく放置されてきた艦娘たちを、全員丘の上に埋葬してあげたんだそうです」
明石「その埋葬した艦娘の艤装の一部を妖精さんが集めて資材にして、その資材から建造されたのが大和さんなんですよ」
隼鷹「へええ!?」
114 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:46:18.02 ID:zdm+Pb74o
明石「しかも、その建造は提督じゃなくて、この島の妖精さんたちが建造ボタンを押したって言うんですから」
明石「それで建造された大和さんが最初から提督に好意を持っていても、まあ当然かなあ、って思うわけですよ」
加古「うわあ……」
隼鷹「榛名もそうなの?」
榛名「あ、いえ、私は違いまして……ここではない、別の場所の出身です……」
隼鷹「うん? なんでまた言い淀んでんの」
明石「なんか、鎮守府とはまた違う施設らしいんですけどね。胡散臭い施設なんで、あまり他言するなと提督から言われてまして」
加古「……」
明石「そこで、死ぬまで戦えみたいな指示が出てたらしいんですよ」
隼鷹「は? マジ?」
榛名「……本当です。その施設の人たちは、榛名たち艦娘を道具としてしか見ていませんでした……」
榛名「でも、この鎮守府の提督は、艦娘たちのことを……私のことを、ちゃんと『榛名』として見てくださいました……!」
榛名「榛名は、提督のお傍にいたい、少しでもお役に立ちたいと思って、この鎮守府にお世話になることに決めたんです」
加古「思ってた以上にハードな昔話ばかりで、ちょっと引くんだけど……」
隼鷹「はぁぁ……なんか、あたしがこの島に辿り着いた理由が、ちっぽけに思えて情けなくなってきたよ」
115 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:47:16.73 ID:zdm+Pb74o
隼鷹「もっと軽い理由でこの島に来た子とかいないの? 駆逐艦とかでさあ、そこまで重たい理由背負ってない子。いない?」
明石「うーん……セクハラから逃げてきたとか?」
隼鷹「それも十分重いよ〜。逃げなきゃいけない上官とかないよ〜」
伊8「じゃあ、訓練中に勝手に除名処分とか」
隼鷹「なにそれ!?」
伊8「沈んだ僚艦の捜索中に除名されちゃった子もいるんでしたっけ? 轟沈扱いにされちゃったって」
隼鷹「だからなにそれ!? 聞いたことないよ!? ひどくない!?」
榛名「捨て艦にされた子も何人かいましたよね?」
隼鷹「最悪なの来たよ!? しかも一人じゃないの!?」
加古「一応訊くけど、あくまで軽い方から言ってんだよね?」
明石「んー、まあ、悲惨じゃないほうから、かなあ。加古さんと同じで、大破進軍の子もいるし……」
加古「いるんだ……」
明石「あ、あと他に喋っても良さそうなのは大淀かな?」
明石「大淀は、日々の任務の中で解体任務がありますけど、あれをどうしてやらなきゃいけないのか、って、不思議に思っちゃったんですよ」
隼鷹「あー……」
116 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:48:02.69 ID:zdm+Pb74o
明石「だったら最初から艦娘を建造も解体もすることのない鎮守府へ行け、ということになりまして」
加古「それでここに来たってかあ」
伊8「それ、私も初めて知りました」
明石「あれっ、そうだった?」
伊8「はい。それが理由で、この鎮守府では建造任務も解体任務もないんですね」
明石「そうそう。それでこの鎮守府で建造された艦娘も、大和さんと武蔵さんだけ、っていう」
隼鷹「引き運、強すぎない?」
明石「さっきも言いましたけど、妖精さんが建造ボタンを押してますからね」
加古「ある意味、チートしてるってこと?」
明石「かもしれませんねえ」
伊8「あ、大和さん戻って来た」
大和「……はぁ、せっかくおいしくいただいていたのに」トボトボ
大和「あの男のことを思い出したら台無しになりました……」ガックリ
隼鷹「まあまあ、そういうのは飲んでパーッと忘れちゃおう!」
大和「……はい、そのように努めます」
117 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:50:17.02 ID:zdm+Pb74o
提督「やっと戻って来たぜ……ん? 加古も起きてきたのか」
加古「うん、ついさっきね〜」
提督「そうか……うん? 誰だ? 胃液臭えな」スン
大和「う……わ、私です。ここでお話ししていて、中佐のことを思い出してしまいまして……」シュン
提督「中佐? あー、そりゃお前にはどうしようもねえな……」
隼鷹「おや、明石の言った通りだ。理解あるねえ?」
提督「俺だとしても吐きたくなる相手だ。あれだけは悪い意味で特別扱いしねえとな……」
大和「うう……申し訳ありません」
提督「その辺を汚したりしたわけじゃねえなら、そこまで咎めねえよ。次から気ぃつけな」
提督「さてと……だいぶまばらになって来たな、そろそろお開きか。大和が戻ったのはついさっきか?」
大和「は、はい」
提督「てことは、腹が空っぽになったんだろ? 厨房行って、そばかうどんでも茹でてくるから、好きなの言いな」
大和「提督……!!」パァァッ
提督「酒飲みたちの締めにもなるだろ。どっちをどのくらい食べるか、紙に書いて誰か厨房まで持ってきてくれ」
明石「それなら、かけそば1人前お願いします!」ワーイ!
伊8「はっちゃんは、ざるうどん半玉で」
大和「私はおうどん二玉でお願いします!!」キャー!
提督「紙に書けっつったろ! 紙に! 覚えてらんねーよ!」
隼鷹「……なるほどねえ。こんだけ面倒見がいいんじゃ好かれるわ」
加古「そうかもしんないねー……」
118 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/19(日) 22:51:49.34 ID:zdm+Pb74o
今回はここまで。
遅くなりましたが大和改二おめでとう! アーケードにも早く来てください!
119 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:03:04.77 ID:wYAXYJaXo
それでは続きです。
120 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:04:01.92 ID:wYAXYJaXo
* 執務室 *
提督「やれやれ……やっと解放されたか」
扉<コンコン
提督「うん? 誰だ」
那智「那智だ。加古も一緒だが、いいだろうか」
提督「おう」
那智「失礼する。大変だったな」ガチャ
加古「お邪魔〜」
提督「……なんだその酒瓶」
加古「いやあ、提督が飲んでないっていうからさ。ちょっと付き合ってくんない?」
提督「俺か?」
那智「私は禁酒中なのでな。話に付き合うのは構わないが、酒は無理だぞ、と言ったところ、貴様はどうかという話になったんだ」
加古「日本酒とウヰスキーとどっちがいいかなあ?」
提督「……」
121 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:04:47.27 ID:wYAXYJaXo
加古「前の鎮守府の話を愚痴りたくなってさあ。聞いて欲しいんだよねえ」
提督「俺はそんなに飲めないぞ?」
加古「いいよいいよ、グラス置いとくだけでいいから。雰囲気でさ!」コトッ
提督「そういうもんか?」
加古「とりあえずウヰスキーでいい?」トクトクッ
提督「注いでから訊くなよ……ま、いいけどよ」
那智「おっと、私の分はいらないぞ。飲まないのに酒を開けてはもったいない」
加古「そう?」
那智「ああ。それに私は麦茶を持ってきている」
加古「んー、まあいいか。そんじゃあ、乾杯!」
提督「ん……」チン
那智「うむ、乾杯」チン
122 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:05:31.71 ID:wYAXYJaXo
提督「……」ペロッ
提督「くあっ!! ……やっぱ舐めただけでもきついな」
那智「水割りにするか? 氷と水を持ってくるが」
提督「いや、いい。水割りなんざ、もっとうまいと思った記憶がねえ……あんなもん水で薄めたコーヒーと一緒だ」
那智「ほう……!」
加古「提督ってば辛党?」
提督「いいや、好みは薄味だが」
加古「ってことは、作り方がまずかったんだろうねえ……」
提督「そういうもんなのか?」
123 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:06:31.64 ID:wYAXYJaXo
*
加古「はー……今だから言うけどさ。遠大佐の変貌は本っ当ショックだったね、改めて考えても」
提督「そいつはまったくだ。ありゃあ、あんな奴の下で働いてたのが運の尽きだとしか言えねえな」
加古「今思うと、あんな連中のために轟沈したのも馬鹿みたいだねえ……」
提督「しょうがねえよ。誰だって追い込まれりゃあ正常な判断なんてできなくなるもんだ。まして歯向かえる立場でもねえしな」
加古「……そりゃあねえ」
提督「あいつ、もともとは留提督が加古や鳥海を轟沈させた尻拭いのために、この島に来たんだよな?」
加古「うん。ぶっちゃけ、雷の話で頭からぶっ飛んでたけど……」
提督「もし、あいつがお前たちを轟沈させてなかったら、そのまま提督の交代劇が始まってたってことだよな?」
加古「あーそっか、あいつがずっと提督になってたのかぁ……うあぁ、絶対やだなあそれ。鹿島が可哀想なことになってるよ」
提督「とはいえ、遠大佐のままでもまずかったんじゃねえの?」
加古「うーん……それもそうだね。遠大佐のままでも、ストレスたまってただろうねえ」
提督「ついでに足柄と千歳も、L大尉と一緒に神戸に行ってた可能性があるわけだな」
加古「うん? そりゃまたなんで?」
提督「留提督たちがこの島の案内役としてあの二人を連れてきたんだ。どういう経緯で声をかけたのかはわかんねえが……」
124 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:07:16.62 ID:wYAXYJaXo
那智「加古たちが轟沈していなければ、いろいろと結果が変わっていた、ということか……」
提督「沈んだのが加古だけとか、鳥海だけとかでも、少し変わっていたかもな」
那智「……しかし、面識がないから訊くが、遠大佐とはどんな人物なんだ?」
提督「駆逐艦にうつつを抜かした挙句、童子返りを起こしたおっさん」
那智「……」
加古「人柄ってだけで言えば、面白みの少ない真面目なおじさんだね。ちょっと意固地で融通の利かない、小難しいところもあるかな」
那智「真面目なのに駆逐艦にべったりになったのか?」
加古「駆逐艦って言うより、過度に甘やかしてくれた相手にべったりになっちゃったんだろねえ、遠大佐は」
那智「むう……甘えて欲しいなどと言う駆逐艦の方が希少ではあるか」
加古「それでさあ、あたし、実は二、三度、駆逐艦の言うこと聞き過ぎじゃないか、って感じに、軽ーく窘めたことあるんだけどさ」
加古「その時に、親の仇かってくらいの目で睨まれたんだよね」
那智「その駆逐艦に、すっかり丸め込まれてたと?」
加古「丸め込まれたっていうか、望んで依存してたんじゃない?」
加古「睨んできたときの顔を見て『あー、こりゃ何を言っても駄目だ』って思っちゃったのは確かだね」
125 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:08:01.68 ID:wYAXYJaXo
提督「それで早々に見切りをつけたと。お前は遠大佐のところに着任してどのくらいだ? 雷は長いのか?」
加古「あたしは半年よりちょっと長いくらいかな。雷はほぼ最初からいた最古参の一人らしいよ」
提督「実力的に、あの艦隊じゃあ五指に入るとかって聞いたが?」
加古「そりゃ重巡があたししかいなかったからだよ。それで出番が多くなって、その結果、練度も高くなったんだよね」
加古「重巡2人目の鳥海が来たのもあたしの2か月後くらいだったから、一応、重巡のなかじゃああたしが一番古株になるかな?」
那智「少なかったのは重巡だけか?」
加古「そうだねー。他の艦種は満遍なく……あ、でも、空母は意外と多かったかな? 駆逐艦も多いけどそれはそれである意味普通だし」
加古「主力が駆逐艦と軽巡洋艦、航空母艦だったんだ。だからボーキサイトも不足してて、後から来た空母の人たちも暇してたっけなあ」
那智「私がそちらに着任していれば、出撃できていたということか……」
加古「そうだったらあたしも助かってたねえ」
提督「そういう話だと、ガンビアベイも暇してたってことか。鹿島たちの着任時期はいつごろだった?」
加古「あの3人の着任は割と最近かな、来て2か月経ってないはずだよ。鹿島は来た当初はすっごい張り切ってたっけなあ」
加古「それがいつごろからか顔つきが険しくなってて、笑ってるところを見なくなっちゃったんだよねえ」
提督「鹿島が遠大佐の育成方針に危機感を抱いてたとか言う話をどっかで聞いたな……山風だったか?」
加古「ってーことは、鹿島もどこかで遠大佐と雷がべたべたしてるところを見ちゃったのかな」
提督「かもな」
126 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:08:46.70 ID:wYAXYJaXo
那智「加古、お前からは鹿島に何か助言してやれなかったのか?」
加古「うーん、それはちょっと難しいと思うよ。ぶっちゃけ助言してやれそうなことがなにもないんだから」
那智「ふむ……」
加古「それにあたし、出撃するとき以外は寝てたから」
加古「一応主力だったし、割と特別扱いしてもらってたこともあって、そもそも鹿島と接点少なすぎたんだよね」
加古「個人的に遠大佐には少し意見も言うときがあったけど、あんまり聞き入れてもらえなかったしねえ……」
那智「どんなことを進言したんだ」
加古「もうちょっと巡洋艦増やしてほしいとか、駆逐艦増えるだけ増やしてて練度が上がってないから育てて欲しいとか……」
加古「ま、あたしが忙しかったから、その負荷軽減をお願いしてたわけよ。全然聞いてもらえなかったけど」
加古「そういうわけでさあ。ぶっちゃけ遠大佐に対する信頼っていうの? それが薄れまくっちゃってねえ……」
提督「しかもあのちびっ子をママ呼ばわりだからな」
加古「うん……まあ、薄々感付いてはいたけど。あれ聞いたときは真っ白になったねえ……」
那智「ママ……とは、どういうことだ?」
提督「さっき言ったろ、童子返りって。雷って駆逐艦を、遠大佐がママ呼ばわりして抱き着いてたみたいなんだよ」
那智「……」ヒキッ
127 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:09:31.75 ID:wYAXYJaXo
加古「ん? ……みたい、って、提督ってその場に居合わせてたんじゃないの? マイク持ってったっしょ?」
提督「ああ、俺はその場に居合わせてはいた。いたんだが、その辺覚えてねえっつうか覚えていたくねえっつうか……」
加古「……あ、ああ、そういう……」
那智「ここで聞いているだけでひどいと思うのだから、目の前で見ていたのでは相当にショックだっただろうな……」
提督「俺以外であの場面見てたのは……暁と霧島だったっけか? 詳しくはあの二人に聞いてくれ。俺は見てなかったことにしたい」
提督「ま、どうせもうあいつらと顔を合わせることもねえんだ。遠大佐は降格ののち左遷されるって話だからな」
加古「そうなんだ。どこへ行くんだろうね」
提督「端っこだってんなら、南西海域ならブインかショートランド。東ならリンガ、北なら幌筵ってとこか?」
那智「……駆逐艦に甘えるような男を、激戦区へ放り込むのか? 士気に関わりそうだぞ」
提督「そう考えると、比較的安定してる地域に送られる可能性のほうが高えか。リンガは割と穏やからしいから、そっちかもな」
那智「それより、そもそもその男の暴走をどうにかして止める方法はなかったんだろうか、とも思うが」
提督「そいつはなかったんじゃねえの? それが隠れてた本性だったんだろ、早かれ遅かれ暴走してたと思うぞ」
加古「……かもねえ。その暴走を喜んで受け入れるような艦娘に出会っちゃったのも、良くなかったんだろうし」
那智「ふむ……」
128 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:10:17.05 ID:wYAXYJaXo
加古「提督は甘やかされたいタイプじゃなさそうだねえ?」
提督「ああ、俺は世話を焼かれたくねえな。っつうか、世話を焼かれたから焼き返してやったこともあったな、そういや」
那智「なんだそれは」
提督「この鎮守府に古鷹がいるだろ? あいつ、だいぶ前にその問題の雷と出会ってんだよ」
那智「なに?」
加古「あー……」
提督「その古鷹はこの前来ていたL大尉……その時はあいつ少佐だったな、あいつの部下だったんだ」
提督「で、おそらくだが、L大尉が遠大佐と演習したときに、雷から古鷹がいろいろ教えてもらったらしい」
那智「いろいろ?」
提督「ああ。いろいろ」
加古「……」アタマオサエ
提督「で、L大尉がやらかして少佐から中尉に降格して、そん時に古鷹と朝雲をこの鎮守府で引き取ることになって」
提督「それで古鷹を試しに秘書艦付きにしてみたら、俺の風呂から布団から、トイレにまで入ってきて世話を焼こうとしやがった」
那智「と、トイレ……?」
加古「……」アタマカカエ
129 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:11:01.75 ID:wYAXYJaXo
提督「だから俺は吹雪をけしかけて、古鷹をベッドに縛り付けて介護かってくらいの世話をさせて、俺が嫌がってることを理解してもらったわけだ」
提督「吹雪も吹雪で暴走したから大変だったけどな……」
加古「……」テーブルニツップシ
那智「何をしたんだ何を……」タラリ
提督「詳細は本人に訊け」
提督「ともかく、程度に差はあれ、お世話を焼くのが好きな艦娘は思ったよりも多いからな」
提督「俺としちゃあ、甘えてくる分には構わねえが、どっちにしても俺は少しドライなほうが気楽で助かる」
加古「いやあ……古鷹も人がいいっていうか……まあ、うん……」
提督「ちなみに、朝雲は前の鎮守府から古鷹をフォローしてたから、いろいろ知ってるはずだぞ」
加古「雷のことに気付いたのも朝雲だったねえ、そういえば」
提督「あいつ、とにかく気が利くんだよ……マジで頼りになる。と言っても駆逐艦だからな、あいつに頼りすぎるのも問題だ」
那智「戦艦はどうなんだ? 見る限り数は揃っているじゃないか」
提督「戦艦なら長門が一番頼りになるな。来てから一番長いから、この鎮守府の大半のことは知ってるし、面倒見もいい。何を任せても安心できる」
加古「え、長門さん最初なの」
提督「ああ、その次が比叡か。あいつには厨房を任せてるから他のことは二の次にしてるが、よく笑うもんで、いるだけで雰囲気が良くなるな」
130 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:12:03.57 ID:wYAXYJaXo
提督「次に来た大和はちょっと子供っぽいところがあるし、俺を過剰評価しすぎて盲信的になってるんで心配になる」
那智「順番が滅茶苦茶だ」タラリ
加古「そういやここの大和さん、提督のことべた誉めしてたねえ?」
那智「そうなのか?」
加古「そうそう。あ、そうだ提督、中佐って奴相手に『俺の大和だ』って言ったこともあったらしいけど、本当?」
那智「なっ!?」
提督「……ああ、言ったな。そこまで聞いたのか」アタマガリガリ
提督「そいつは『あれ』が大和に執着してたんで、一番ダメージ与えられそうな言葉を探してた時に言った俺の失言だ」ハァ…
那智「貴様は上官を『あれ』呼ばわりか……」
提督「ああ。『あれ』は俺をこの島に追いやった、俺にしてみりゃ恨み骨髄、不倶戴天の相手だ。気遣いなんざしてたまるかよ」
提督「それに、この島の艦娘の何人かは『あれ』と因縁があるんだ。そいつが俺の直の上官だぞ? 忌々しいことこの上ねえ」
提督「大和も大和で、出会ってすぐ主砲をぶっ放したくらいには毛嫌いしてるからな?」
那智「そこまでやったのか!?」
提督「やったよ。会った瞬間、嫌いとか憎いとか言う声が聞こえた、みたいなことを言ってたんだ」
131 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:13:34.17 ID:wYAXYJaXo
提督「その一方であの野郎は、大和に一目惚れしたとか抜かしてやがった」
加古「そこであのセリフってわけだね」
提督「ああ……そのせいで、大和に変に気を持たせたというか、大和の気持ちを弄んじまったんだから、そこは俺が悪いとしか言いようがない」
那智「そう思うのなら、貴様が男として責任を取るべきじゃないのか」
提督「男としての責任ね……そりゃ娶るって意味でか? そんなことしたら不幸にしかならねえぞ?」
那智「なぜだ」
提督「俺がまともな親に育てられてねえんだ、夫としても父としても、まともに務められねえと思ってる。つうかまず父親になるのが無理か」
加古「それ、性欲がないって話?」
提督「ああ。その手の漫画見ただけで気持ち悪くしたこともあったし、そもそもコレが勃たねえからな」
那智「……」
加古「じゃあ、女性の裸も駄目なの?」
提督「それだけならまあ、多少は慣れたな。裸よりひどい姿の奴もたくさん見てきたってのもあるが」
那智「……」
加古「……提督さあ? やっぱり、提督はあたしたちに憐れんでるんじゃないの? 愛情ってものがわからないって言ってんでしょ?」
132 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:15:02.49 ID:wYAXYJaXo
加古「あたしたちを可哀想だと思ってるから、あたしたちの言うことを聞いてんじゃない?」
那智「おい、加古……!」
提督「……そりゃちょっと違うな。可哀想だから助けようだなんて、俺は考えてねえぞ。そいつは傲慢が過ぎる」
提督「助けて欲しけりゃ自分の口から助けてと言え、ってのが俺のスタンスだ」
提督「俺以外の艦娘が助けようとしたとしても、その言葉を当人から聞かない限り、俺が出しゃばるようなことはしないようにしてる」
提督「ただまあさすがに、轟沈して砂浜に流れ着いて、そのまま野晒しになってた艦娘たちだけは、俺の判断で埋葬させてもらった」
提督「そいつらを可哀想だと思うくらいは、いいよな?」
加古「まあ……そりゃあ、ね」
提督「ま、あいつらに対しては、人間のために戦って死んだんだから、人間の俺がちゃんと弔わないと失礼だ、ってのもあったけどな」
提督「それとは別に、轟沈するような指揮を執る人間への怒りと……うまく言えないが、嫌悪感、って言えばいいのか?」
那智「嫌悪感?」
提督「ああ。俺は単純に、お前ら艦娘に対する、人間どもの理不尽な仕打ちを、嫌だと感じてるんだと思う」
提督「俺がそうだったからな。人間の都合に振り回されて、人間に嫌気がさして、それでもなお迂闊に信じちまったせいでこの島に追いやられて」
加古「……」
提督「俺が人間社会でうまくいかなかったのは、俺自身の問題だ。他人に反抗的なのが悪いんだろう」
133 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:16:31.97 ID:wYAXYJaXo
提督「で、俺がそうなったのは、妖精の存在を否定したくなかったからだ」
提督「だが、あいつらは妖精の存在を信じないし、嘘をつくなと言うんだよ。俺だって嘘なんかついてねえってのによ」
提督「それでお互い受け入れられなくなって、俺は人間を信じられなくなった」
提督「お前らもそうだろ? 人間を信じられなくなったから、望む望まないに関わらず、ここに来たんだろ?」ニヤッ
加古「……」
那智「……否定できないな」
提督「俺も、何言っても無駄だったことが多かった。だから、俺はお前らに同情している、と言った方が適切かもな」
加古「……同情、ねえ」
提督「他に言い方というか、他にもっと適当な言葉があるかもしれねえが……ま、所詮は自己満足のためだし、なんでもいいさ」
提督「お前らが、人間から受けてきた嫌な思いを少しでも解消できてて、いま笑えてるんなら、俺はそれでいいと思ってる」
提督「俺もこの島に来た直後なら、人間に対する憤りの方が強かったな。半ばやけくそ気味で、中佐とは刺し違える気でもいた」
提督「今は今で、艦娘たちにこれ以上なく良くしてもらってるからな……それが嬉しくて、単純にその礼を返したいつもりでいる」
提督「こうやって酒飲んで駄弁ったり、笑って話すなんて、あっちじゃあなかったからな」フフッ
加古「なるほどねえ……」
那智「……」
134 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:17:31.74 ID:wYAXYJaXo
提督「そういうわけなんで、欲しいものがあるとか、これを直してほしいとか、そういう話はできるだけかなえたいと思ってる」
加古「へーぇ……それじゃあ、ふかふかのベッドが欲しいとか、そういう話もしていいの?」
提督「おう、いいぞ。むしろそういう話なら遠慮すんな。財布と相談になるが、言うだけ言ってみな」
加古「んへへえ、いいこと聞いちゃった」
那智「それでいいのか……?」
提督「いいさ。お前らは命懸けて人間のために戦ってるんだ。そのくらいの見返り、あっても罰は当たらねえだろ」
那智「むう……」
加古「見返りかあ……そういうの、考えたことなかったねえ」
提督「……」
加古「……どしたの?」
提督「いや。俺たちは、自分たちの身や財産を守るために戦ってる、って認識は間違ってはいないよな?」
加古「うん……まあ、そうだねえ?」
提督「今、俺が見返りって言ったけど、深海の連中はどうなんだ? なんで連中はこっちに攻めてきてるんだ? って、ふと思ってなあ……」
提督「あいつらがどんな見返りが欲しいのか……あいつらの目的が、改めて考えてみてもわからねえ」
加古「……うーん、あたし、そういうことは考えたことなかったねえ。攻めてきたから追っ払う、みたいな感じだったし」
135 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:18:33.06 ID:wYAXYJaXo
那智「……恨みじゃないのか? 人間に対する……」
提督「恨みって何の恨みだ?」
那智「……むう」
提督「海を汚されたとか、そういう恨みだけとは思えねえんだよな。根っこがわかんねえ……」
提督「仕方ねえ、あまり訊きたくねえが……今度ル級に訊いてみるか」
加古「……え?」
那智「ル級? 敵方の戦艦のことか……?」
提督「ああ。深海棲艦の戦艦ル級だ」
加古「……」
那智「……」
加古「ええええええええ!!??」ガタガタッ
那智「ちょっ、ちょっと待て貴様!?」ガタガタッ
提督「んん? なんだ?」
那智「今、深海棲艦に訊くと言ったな!? どうやってだ!?」
136 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:19:17.06 ID:wYAXYJaXo
加古「すっごい気軽に言うけど知り合いでもいるの!?」
提督「いるぞ」
那智「」
加古「」
提督「たまに飯を食いに来る」
加古「うっそだぁ……あたしたち、あいつらと戦ってるんだよ? 話はできても、話が通じたことがない相手だよ?」
那智「どんな手を使ったんだ」
提督「ル級も砂浜に流れ着いてきたんだよ、加古みたいにな。向こうにもそういう不幸な奴がいるってことさ」
加古「……なんか、びっくりしすぎて酔いも眠気も覚めちゃったよ」
那智「私も、自分が素面なのか信じられなくなってきたぞ。貴様、酔っ払っての戯言じゃないだろうな?」
提督「本当だよ。今度会ったら紹介してやるよ、誤射させたくねえしな」
137 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:20:16.78 ID:wYAXYJaXo
* ブイン泊地 *
日向「そうだ。深海棲艦とは、いったい何者なんだ?」
加提督「……」
日向「私たちは、なぜあいつらと戦っている?」
加提督「……」
日向「私たちは、いったい何者なんだ?」
加提督「うるせえええええ!!」
加提督「そんなことに疑問を持ってる場合じゃねえっつーの!」
加提督「戦況を見ろ! お前がぼんやりと考え込んでる間に敵の艦載機にぼっこぼこにされて!」
加提督「全員撤退してからぶっ放しても意味ないんだよ!!」
日向「君の指示通り、旗艦は沈めたぞ」
加提督「遅すぎるんだよ!! ただでさえ鈍足艦なのに、考え事をして艦隊においていかれたりしてんじゃねえよ!!」
加提督「もう限界だ! 次が最後だ! 次でまた足を引っ張ったら、お前は左遷だ!!」
日向「……」
138 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:21:01.56 ID:wYAXYJaXo
加提督「なんだその顔は! お前の建造のためにどんだけ資材を投じたか、わかってんのか!」
加提督「それに見合う働きができないんなら、当然だろうが!」
日向「それは君の指示が悪いんだろう?」
加提督「俺の話を聞いてないやつが言っていい台詞じゃねえよ!! もういい!!」
日向「……」
* *
日向「敵を知ろうともせずに戦いに勝とうだなんて、無理難題もいいところだ」
日向「今の戦力では海域の突破は無理だな。敵航空戦力を無力化する方法がなさすぎる」
日向「こちらの航空母艦は満身創痍。まともに太刀打ちできる艦戦も少ない」
日向「根性論など以ての外……もう、潮時か」
日向「……」
日向「本当に……」
日向「深海棲艦とはいったい何者なんだろうか」
139 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/06/27(月) 23:21:49.98 ID:wYAXYJaXo
というところで今回はここまで。
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/02(土) 11:09:11.04 ID:5crQp9Zw0
哲学日向いいですなぁ瑞雲教祖もいいけど
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/07/05(火) 22:16:05.81 ID:1I/nSYiw0
暑い日が続きますが作者氏水分補給取って更新おねがいします
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/05(火) 23:05:35.55 ID:S4rgtrXh0
>>1
すら読めないアゲガイジは水分より常識と学力を身に付けて一生romって下さいウザイから
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/07/14(木) 18:48:16.04 ID:qfBfQYhm0
動画でみかけてやっと追いついた!
更新待ってます!
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/14(木) 22:13:59.50 ID:BhY/2QGX0
アゲガイジよ頼むからromって(黙ってみて)くださいそろそろうんざりなんだ
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/14(木) 23:57:50.56 ID:KtJtgrh/0
>>142
だけど他の人もアゲガイジ消えろって思ってるのね
性懲りもなく執拗にアゲるから自分が少数派だと思ってたわ
>>1
にも「感想、雑談など、書き込みの際はメールアドレス欄に「sage」と入れてください。」ってあるのにね
もしかしたら雰囲気悪くしてエタらせようと工作してんのか?
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/15(金) 07:05:58.56 ID:YADabYss0
まとめ民じゃないの
ブログとかのコメント機能と勘違いしてるんでは
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/15(金) 10:51:36.37 ID:QKKVn3L70
慣れない掲示板で一度間違えたとかと違って何度も上げてるから故意犯でしょ
頭が悪いか性格が悪いかのどちらか
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/15(金) 11:36:40.40 ID:eUC+c+6Wo
毎回そういう反応来るから面白がってるだけだぞ
反応はただの餌、黙ってNGに放り込むと良い
149 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:18:02.31 ID:NBisH+M1o
長いこと書き込みがないときは
「こいつまた書けない病を発病してんな」とでも思っててください
続きです。
150 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:19:01.69 ID:NBisH+M1o
* 墓場島鎮守府 執務室 *
提督「……眠てえ」グッタリ
加古「提督、どのくらい飲んだの? ってか、飲むって言うより舐めてるようにしか見えなかったけど」
那智「ツーフィンガー程度しか注いでなかったはずだな」
加古「もしかして提督って、お酒弱い?」
提督「……飲めないとは言った」
加古「弱いんじゃないのさ……」
提督「くそ、調子に乗って喋りすぎたし飲みすぎた」ムクッ
那智「そこまで喋りすぎという印象もなかったが?」
提督「いいや、こんだけ誰かに喋ったのはなかったぜ。長らく話し相手が妖精しかいなかったから自重してたこともあるしな」
提督「むかし安アパートで妖精相手に延々愚痴ってたこともあったが、その時に隣の部屋の奴に救急車呼ばれたこともある」
提督「何もない空間にずーっと喋り続けてたから、頭がおかしい奴だって思われて警察まで呼ばれてよ」
提督「妖精が見える警察官もいなかったし、そん時は電話だって誤魔化して逃げた」
加古「ありゃあ……」
151 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:19:47.45 ID:NBisH+M1o
提督「海軍に誘われて、これで遠慮なく妖精と話せると思ったら、海軍の人間でも声が聞こえる奴はごく少数だっつうし……」
提督「白い目で見られなくなったのはこの島に来てからだ。そもそも俺を見る人間がいなくなったんだから、当然っちゃあ当然だがな」
提督「ったく、つくづく俺は人間社会に適用できない人種らしい。いっそ、俺も人間でないほうが良かったのかもな」
加古「見えないものが見えるってのも善し悪しなんだねえ……」
提督「ああ、くそ。俺は誰かに愚痴るような奴じゃねえっつうの……やっぱ酒は駄目だ」
提督「本当、悪いな……こんな醜態、誰にも見せたくねえんだが」
加古「まあまあ、ちょっとくらい弱みがあったっていいじゃない。あたしたちだって完璧じゃないんだしさ」
提督「……まったく、艦娘ってのは本当にいい女ばかりだな。手前の不甲斐なさが恨めしいぜ」
加古「あはは、そんなお世辞言われるの、初めてだよ」
提督「そうなのか?」
加古「あたし、寝てばっかりだよ? あたしより真面目で可愛い子、たくさんいるからねえ」
提督「そういうもんか……? お前も可愛い方の部類に入るだろ」
加古「は?」
152 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:20:31.77 ID:NBisH+M1o
提督「少なくとも、俺が見てきた艦娘は、可愛いか美人かのベクトルの違いはあっても、全員美女か美少女と言って通用すると思ってんだが」
加古「……」
提督「加古もそうだし、那智もそうだろ?」
那智「……貴様、酔っているな」
提督「そんなことはねえよ……」スクッ
グラッ
提督「うお……っとぉ!?」ドシャッ
那智「おい!?」
加古「足にきてんじゃん! 大丈夫!?」
提督「マジかよ……こんなんなるまで酔ったのか」クラクラ
加古「いやいや、飲んだ量なんてほんのちょっとじゃんか!」
提督「……マジで酒に弱かったんだな、俺」ハァ…
那智「貴様、自覚がなかったのか」
提督「酒なんて一口二口しか口にしたことなかったからな……飲み会なんて一度も行ったことねえしよ」
153 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:21:16.68 ID:NBisH+M1o
加古「それであたしに付き合うって、馬鹿みたいにお人好しだねえ……」
提督「ふん、こういうのは雰囲気だっつったのはおま……っうお!?」ヨロッ ドテッ
那智「無理をするな!」ガタッ
提督「悪い……情けねえな、我ながら」ガックリ
加古「この辺でお開きにする?」
那智「そうだな。提督も部屋に戻って……と言ってもその様子では無理そうか」
提督「ああ、俺のことはいい。このままソファで寝ちまっても……」
加古「んじゃあ、あたしが連れて行こうかね」ヒョイッ
提督「お、おい!?」セオワレ
那智「ふむ、そういうことなら私が部屋を片付けておこう。酒とグラスは食堂へ持っていくといいんだな?」
加古「そだねえ、よろしくー」
提督「お、おい! そこまでしなくても」
加古「酔っ払いは大人しくしてなよ〜。どうせ立てないんだしさ?」
提督「……」
那智「ふふ、人間、ひとつくらい欠点があってもいいものだ。それをフォローするのが仲間だからな」
提督「……面目ねえ。ありがとな」セキメン
那智「礼には及ばん。加古、提督を頼むぞ」
加古「はいよー」
154 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:22:01.95 ID:NBisH+M1o
* 提督の部屋へ向かう廊下 *
加古「実はさあ、提督のベッドって特別だって聞いたんだよねえ〜」
提督「……ああ」
加古「良かったらあたしもそこで寝てみたいなー、ってさ」
提督「そういうことなら、いいぞ……いつでも」
加古「えっ、本当? いやー、楽しみぃ!」
提督「……俺がいないときでも、寝てていい……」
加古「え? いやいや、さすがに部屋の主がいないのに、勝手にベッド拝借しちゃうのはどうかと思うよ?」
提督「……控え目だな……?」
加古「それのが普通じゃない? それで感心されるって常識ないみたいに思われて、結構心外なんだけど?」
提督「……俺は……部屋に入るのは、寝るときだけだ……」
提督「いつも留守なんだから……それだと、日中、寝れないぞ……」
加古「んー、それもそっかー。あ、この部屋だね? 入るよー」
ガチャ
加古「……なにこれ」
155 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:22:46.73 ID:NBisH+M1o
提督のベッドで眠る如月「すー……」スヤァ…
同じく大和「くー……」スヤァ…
同じく榛名「ん……」スヤァ…
同じく陸奥「……」スヤァ…
加古「ちょっと、提督? ここ、提督の部屋だよね?」
提督「んむ……なんだ、また来てたのか」
加古「また!? またってどういうこと!?」
提督「……よくあるんだよ……」
加古「よくあるの!?」
提督「ああ……つうか、如月と陸奥は、部屋まで送ったはずなのに、なんでここにいるんだ……?」
加古「そんなのあたしが知りたいよ……」
提督「……加古が寝るスペースがねえな……」ムニャ…
加古「そこであたしにそういう気を遣うの?」
提督「悪いが、加古は今日は自分の部屋で寝てくれ……俺は、床でいい……」
加古「ちょっと!?」
156 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:23:31.75 ID:NBisH+M1o
提督「俺のことは……その辺に、転がしておいてくれ……」カクン
加古「提督!? おーい!?」ユサユサ
提督「……」スー…
加古「寝ちゃったよぉ……どうしよう」
加古「……」
加古「……」
* 加古の部屋 *
加古「ここまで連れてきちゃったけど……」
加古のベッドに寝かされる提督「……」スー…
加古「まあ、床で寝かせるわけにはいかないもんねえ……」
加古「ふわぁあ……あーやばい。眠い……」
加古「執務室のソファでも借りて……けど、遠いんだよなあ……」
加古「……もー無理、あたしも……寝る……」ヨロフラ
加古「……おやすみぃ……」パタリ
加古「……ぐー……」
157 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:24:16.28 ID:NBisH+M1o
* 翌日 未明 *
提督「く……う、重て……ぇ……!?」
加古「すかーー……」グッスリ
提督「なんで加古が俺の上で寝てんだ……?」
提督「……」
提督「ここ加古の部屋かもしかして」タラリ
提督「加古は良く寝てやがんな……よっと」
提督「俺の部屋のベッドが占拠されてたんだよな……それで自分の部屋に連れてきてくれた、ってとこか?」
提督「……」
提督「起きてきたら新しいベッドの手配してやんねえとな……」ベッドテナオシ
加古「むにゃあ……」
提督「これでよし。執務室のソファで寝直すか」
チャッ パタン
提督「……加古の部屋から出ていくところ、誰にも見られてないよな?」キョロキョロ
提督「って、それも今更か……行くか」スタスタ…
158 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:25:03.44 ID:NBisH+M1o
* 朝 執務室 *
ソファで眠る提督「……」スヤー…
コンコン
大淀「おはようござ……あら?」チャッ
提督「……」スヤー…
大淀「て、提督! どうして寝てるんですか!?」ユサユサ
提督「んお……お、大淀か」
大淀「も、もしかして、酔ってこんなところで寝てしまったんですか!?」
提督「……んー、まあ……いつつ」
大淀「大丈夫ですか?」
提督「……ちょっと寝足りねえが、大丈夫だ。それより、こんなところで寝るもんじゃねえな……」
大淀「当然ですよ! お昼寝ならまだしも、ご自身のベッドがあるんですから!」
提督「昨晩はその俺のベッドが占拠されててな」
大淀「え?」
159 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:25:46.88 ID:NBisH+M1o
提督「酔っ払って加古に部屋まで連れてってもらったんだが、部屋に行ったときには俺が寝るスペースがなくてなあ」
大淀「それでここで寝てたんですか!? みなさん何をしてるんですか……」
コンコン
島風「おはようございまーす!」ガチャ
提督「……よう、今日は島風か。白露はどうしてる?」
島風「白露はまだ起きてません! お酒のせいかは知らないけど、すっごい恰好して寝てるよ?」
提督「あいつもだいぶ飲んでたみたいだしな……」
島風「……提督もちょっとお酒臭くありません?」
提督「そうか? そういや昨晩、シャワーも浴びてねえな……」スンスン
島風「酔っ払った人が多いみたいですし、今日はお休みにしませんか? なーんて」
大淀「し、島風さん!?」
提督「……いや、その方がいいかもな。いつもの業務を半分くらいにして、今日は休める奴は休めるようにしよう」
島風「ほ、本当に休むの!?」
提督「食堂や食料調達とかはそうはいかねえけどな。平和だったことにしておけばいいさ……ふあぁ」
160 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:26:33.11 ID:NBisH+M1o
島風「それじゃ提督、お風呂に行ってきたら? その後ちょっとお昼寝して、お仕事はそれからにしましょーよ!」
大淀「島風さん! そのような勝手な……」
提督「ふあぁ……んん」ボリボリ
大淀「……本当に眠そうですね。島風さんの言う通りにした方がいいかもしれません」
提督「贅沢はよくねえな。良い布団に慣れちまうと、普通の布団が体に合わなくてまともに寝られなくなっちまう……」
提督「あのベッド、加古にくれてやるかな……」
大淀(それでしたら私がいただきます!!)
島風「それは良くないよー、あのベッドは提督のために、みんなで選んでもらったものでしょ?」
提督「……まあ、首謀者は如月と大和だけどな。どうせならもう少し小さいサイズで良かったんだ、洗濯が大変だしよぉ……」
提督「つっても、気を使ってもらって実際助かってるのに、ケチ付けるのは良くねえことだしな。そこは島風の言う通りだ」ナデ
島風「! えへへ……!」ニカッ
提督「大淀、後で加古にも俺の部屋のベッドと同じでシングルサイズのやつ、買う準備してくれるか? 加古に確認取れたら発注頼む」
大淀「……はい、承知しました」シューン
島風(なんで落ち込んでるんだろ?)クビカシゲ
161 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:27:17.15 ID:NBisH+M1o
提督「さてと、ついでに着替えてくるか。ああ、そうだ島風、一人で大変なときは他に誰か呼んでいいからな。俺もできるだけ早く戻る」
島風「はーい!」
大淀「いってらっしゃいませ」
パタン
大淀「……ふぅ……」
島風「ねえねえ、大淀さん? 大淀さんもなんだか目の下にクマができてるみたいなんだけど、寝不足?」
大淀「えっ、そ、そんなことはありませんよ?」
島風「そう? ゆうべは、ぐでんぐでんになってたような……あ、提督におんぶしてもらってたんでしたっけ!」
大淀「!!」
島風「提督の体ってどうでした!?」
大淀「ほえっ!?」ドキーン
島風「提督、細身で足が速そうじゃないですか? 筋肉質だったんでしょ!?」
大淀「……え、ええ、まあ」カオマッカ
島風「朝潮が『提督は短距離走が苦手だ』って言ってたけど、それはフォームの問題だと思うんですよねー!」
大淀「……」ハナヂポタポタ
島風「!? お、大淀さん大丈夫!?」
大淀「えっ」
島風「えっ、じゃなくて! 鼻血!!」ティッシュサシダシ
大淀「えっ、誰がですか」
島風「大淀さんでしょー!?」
162 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:28:31.59 ID:NBisH+M1o
* その後の提督の私室 *
如月「スヤァ……」
大和「スヤァ……」
榛名「スヤァ……」
提督「……昨夜はもう一人いたよな?」クビカシゲ
提督「まあいいや、シャワー浴びるか……」
* 一方、陸奥の部屋(長門と同室) *
長門「? 陸奥、いつの間に戻ってきてたんだ……」
陸奥「え、ええ……夜のうちにね」
潮(確か、5時ごろに入って来たような……) (←長門のベッドにお泊り中)
長門「顔が赤いぞ? 本当に大丈夫か?」
陸奥「だ、大丈夫よ……」
陸奥(いくら酔った勢いとはいえ、なんで私、提督のベッドで寝ちゃってたのかしら……)カオマッカ
163 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:29:16.64 ID:NBisH+M1o
* 再び執務室 *
大淀「お見苦しいところをお見せしました……」ティッシュツメツメ
島風「それはいいけど、本当に大丈夫? 大淀さんも休んだ方良くない?」
コンコン
大淀「はい!?」ビクッ
加古「ふわぁ……ねむ」ガチャ
大淀「あ、あら? 加古さんおはようございます」
島風「おはよーございまーす!」
加古「んあ……おはよ……ん? 大淀どうしたの? その鼻」
大淀「いえ、大したことでは……加古さんこそ、こんな朝早くに、どうしました?」
加古「んーとねえ……提督、見なかった?」
島風「提督なら、さっき自分のお部屋に向かったよー?」
加古「んん? ここにいたの?」
大淀「はい、私が来た時はこちらのソファに横になっていました」
加古「ありゃあ、そういうことかあ……」
164 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:30:02.04 ID:NBisH+M1o
島風「どうかしたんですかー?」
加古「いやあ、昨晩、提督を酔い潰しちゃってさあ」
大淀「はい? 加古さんがですか?」
加古「そうそう。で、提督の部屋に連れてったら、ベッドが満員で寝られなくて」
島風「おぅ!?」
加古「しょうがないからあたしの部屋のベッドで寝てもらったんだよねえ」
大淀「!?」
島風「えええ!? それじゃ加古さんはどこで寝たの!?」
加古「うん? そのまま提督の隣で寝たよ?」
大淀「!?!?」
加古「寝苦しいかと思ったら思いのほか快眠できちゃってさあ。目が覚めたら提督いないし、どこ行ったのかなあって思って探しに来たんだよ」
島風「いなくなっちゃったの?」
加古「そう。今の話からすると、酔いがさめたあたりであたしの部屋から出て、ここで寝てたってことかな……」ポリポリ
大淀「て、提督をお部屋に連れ込むとか、何を考えてるんですか!?」
加古「そんなこと言われても〜。提督の部屋のベッドは満員だったし、背負った提督は床でいいとか言い出して寝ちゃったんだよー?」
165 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:30:47.23 ID:NBisH+M1o
加古「ここのソファで寝かせるわけにもいかないしさあ……あたしだって悩んだんだからねー?」
島風「それでお部屋のベッドに寝かせてあげたんですか?」
加古「そーだよー。で、その後、あたしもどこで寝ようか悩んだんだけど、もう眠くて眠くて限界で……」
島風「それで一緒に寝ちゃったんだ?」
加古「そういうこと……ふわぁあ」
大淀(加古さんに先を越された……!?)
加古「んーと、それで……提督は自分の部屋に向かったんだっけ?」
島風「そうでーす!」
加古「それじゃあ、あたしも提督のお部屋のベッドを借りようかな〜」
大淀「ちょっ!? いいんですか!?」
加古「んん? 夕べ提督に訊いたら、いつ借りてもいいって言ってたよ?」
大淀「」
加古「あたしゃ部屋のあるじが在室中に借りたいんだけどねえ……あ、ついでに訊くけど、提督って、いつも誰かと一緒に寝てるの?」
大淀「はい!?」
島風「うーん……島風は提督のお部屋にお邪魔したことないけど、結構、いろんな人が提督と一緒に寝てるみたい」
島風「この前は、敷波が初めて一緒のお布団で寝た、って言ってたし!」
大淀(あの敷波さんにも先を越された!?)
166 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:31:32.52 ID:NBisH+M1o
加古「ふーん、そっかあ……ねえ、もしかして提督ってさあ、抱き着かれ慣れしてんのかなあ?」
大淀「は?」
加古「夕べ一緒に寝たときも、眠ったままあたしの邪魔にならないように体勢変えてくれてたし」
加古「なんかもう、誰かと一緒に寝るの慣れてるみたいな感じだったんだよね」
大淀「」
加古「それに細身だから、抱き着いてみたらなんか丁度手が回って具合が良くてさ。手頃な抱き枕だったっていうか?」
大淀「」
加古「あんな風にすっきり寝られたことなかったからねえ……抱き枕買ってみようかなあ」
島風「それだったら、さっき提督が加古さんの新しいベッド買おうかって話をしてましたよ?」
加古「え、マジで?」
島風「一緒にお願いしてみたらいいと思いまーす!」
加古「そうだね〜、お願いしてみよっかな〜……ふあぁ……」
加古「うん、眠い……提督のお部屋のベッド、貸してもらおっと……んじゃ、おやすみぃ〜」ヒラヒラ
島風「おやすみなさーい!」
大淀「」シロメ
島風「大淀さん? 大淀さーん!? 本当に大丈夫ー!?」ブンブン
167 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/15(金) 23:35:16.11 ID:NBisH+M1o
今回はここまで。
168 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/16(土) 09:21:33.33 ID:OXuxv8tu0
乙です。大淀ェ…
169 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/07/16(土) 20:11:34.16 ID:UcJut+Kl0
むっちゃん少しずつ警戒心溶けていってるの自覚なく困惑してるのカワユス
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/16(土) 23:49:44.20 ID:p/xvmNrb0
アゲガイジがわざと荒らしてるの確定だな
学習能力が病的に足りな過ぎる
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/17(日) 09:28:18.60 ID:WVh0gUZB0
みんなコメントしたいのわかるけどするならE-mailのところにsageって入れてくださいまじでうざい
172 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/07/29(金) 20:09:30.83 ID:+Fbg2ZLRO
准尉好き好き勢の艦娘達が提督の布団に潜り込む順番どうやって決めてるのか気になる…
潜り込みたい娘達で集まって協議してるのだろうか。
ベッドが変わってから毎晩2人で潜り込んだりはしないのだろうか
173 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:27:30.29 ID:WpzCN6QYo
>168
大淀はむっつり+へたれ+ラッキースケベのジャ○プお色気系漫画主人公路線で
行くことにしました。その方が面白そうだから。
>170-171
あくまでお願いですので。
私自身はスルーすると宣言したので、ぶっちゃけ楽です。
>172
実はその辺、あまり深く考えてなかったり……。
ただ、2人以上で潜り込むケースはありだと思ってくださって結構です。
で、肝心の本編が全然書けねえ……できたところまで投下します。
174 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:28:31.33 ID:WpzCN6QYo
* 某所 *
クルー4「買収!? うちの会社がですか!?」
クルー6「ど、どういうことっすか……!?」
部長「さっき役員会議で決定したんだ。かつてバブルの時代に、親会社の番組制作部門が分社化で別々の会社に分かれただろ?」
部長「うちもかつてはその部門の一つだったんだが、景気が悪くて採算が取れなくなったから、買収してもらうことになったんだ」
クルー4「じ、じゃあ、俺たちは……」
部長「一応希望を取るが、ほぼ全員、親会社である在京の○○テレビに移籍することになる。社長は退職するけどな」
クルー4「え!?」
部長「今回の騒動でスタッフも死んだし、表向きはその責任を取る形でな」
クルー4「……」
クルー6「……」
部長「あまり重く受け取らなくていいぞ? もともと社長も隠居したがってたんだ。むしろ一番心配なのは留父さんだ」
クルー6「ど、どういうことっすか?」
部長「留父さんが海軍のお偉いさんと大親友だってのは聞いてただろう?」
クルー6「は、はい」
175 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:29:16.69 ID:WpzCN6QYo
部長「そのお偉いさんが、海軍のイメージアップのためのアイデアを求めて留父さんに相談したのがきっかけで……」
部長「そこからうちの親会社、またそこからうちに企画書が回ってきて、じゃあ長期間のロケをやろうってことになって……」
部長「それで、臨時のスタッフを募集して君を雇ったわけだ」
クルー6「はい」
部長「で、ロケの主役として白羽の矢を立てたのが、留父さんの息子である留氏だったんだが」
部長「これが蓋を開けてみたら、とんでもない問題児だった。ここまではいいな?」
クルー6「はい、大丈夫っす」
部長「聞くところによるとあのバカ息子、婦女暴行未遂も何度かやらかしてるらしいな」
クルー4「ええ……」
クルー6「俺たちとんでもない人に付き合わされていたんすね……」
部長「でだ、留父さんが海軍の人たちと親会社の専務を引き連れて、うちの社長に土下座しに来ててなあ」
クルー6「土下座!? 留父さんがですか!?」
クルー4「それで会議室に近寄るなと」
部長「ああ。弊社としては、うちのスタッフの起こした問題だ。俺たちが頭を下げるべきなんだが、留父さんも引き下がらなくてなあ」
部長「お互いかばい合ってるというか、罪の所在を奪い合ってる、ちょっと変な空気になったんだ」
176 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:30:02.61 ID:WpzCN6QYo
クルー4「……俺たちのせいじゃない、と、言ってくれてるんですか?」
部長「ありがたいことにそういうことだ。とはいえ、責任は誰かが取らなきゃならんが、留父さんに取らせるわけにはいかんのだ」
部長「それで、うちの社長が、自分が辞職することで手打ちにして欲しいと提案したんだよ」
クルー6「俺、会ったことないんすけど、すごい社長さんなんすね……」
部長「とにかく、これから謝罪会見を開いて、留父さんと親会社の専務から、説明してもらうことになった」
部長「ま、ちゃんと責任を取る形で会見すれば、視聴者からはそこまで厳しく追及してこないだろう」
クルー4「最近じゃあ、下手に秘密にしてごまかした方が炎上しますからね……」
部長「それから、今回不祥事を起こした留氏とうちのスタッフは、更生のため、一定期間海軍で訓練や奉仕活動に参加させることも決まった」
クルー4「はー……」
クルー6「何やらされるんでしょうね……」
クルー4「軍隊だろ? 何をやらされるか知らんけど、厳しいんだろうなあ……」
部長「そのついで、と言ってはなんだが……」
部長「これまで親会社は、うちへ外注する形で番組制作を依頼していた。が、昨今の情勢を鑑みるに、その必要もないと判断した」
部長「統廃合することで余計な経費を抑え、これを機に余計な膿を出すこともできる」
クルー4「……ということは」
177 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:30:46.24 ID:WpzCN6QYo
部長「海軍居残りになったあいつらとは、これを機に社員契約を打ち切ることで決定した」
クルー4(良かった……あのとき思い留まって本当に良かった……!!)
部長「お前たちには、このまま一緒に親会社へ行って欲しいと思っているが、その辺の意思確認をしたい」
クルー4「お、俺……じゃない、私は、引き続きこの仕事を続けたいと思っています!」
部長「よし。君はどうする? バイトで入ったとはいえ、あの中で悪い連中に流されなかったのは評価できる」
部長「このまま続けてもらうのも悪くないが?」
クルー6「……俺は、当初の予定通り、契約が終わったら、また別の仕事を探そうと思います」
クルー4「お前……!?」
部長「そうか。残念だが、君がそう言うのなら仕方ない」
クルー4「いいのか……!?」
クルー6「いいっす。すごく貴重な経験をさせてもらいましたけど」
クルー6「さすがにこういうのがずっと続いたりするのは、俺にはちょっとしんどいっす……」
クルー4「そっか。残念だけど、まあ、あわないんならしょうがない」
クルー6「すいません……」
178 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:31:31.14 ID:WpzCN6QYo
部長「ああ、それから……あの島で見た話は、口外無用だそうだ」
部長「あの島に関わったこと自体がその人の不幸になる、という、御大層な物言いで釘をさしてきたから、余程の秘密があるんだろう」
部長「そういうわけなんで、あの島の話は、あとでじっくり聞かせてくれ」ニヤリ
クルー6「」ガクッ
クルー4「何こけてんだよ」
クルー6「……そ、それ、いいんすか」
部長「テレビマンが興味と好奇心を失ったら終わりだぞ?」
クルー4「ははっ、まあ、部長ならそう仰るんじゃないかと思いましたよ」
クルー6(笑い話じゃないと思うんだけどなあ……やっぱり俺には合わないな、この世界)
部長「……あとは、死んだ奴らの家族にどう説明するかなんだが」
クルー4「ああ……」
部長「あいつらがなんで死んだのかは海軍が調査中。一応、死因と調査結果を連絡してもらうことになってるんだが」
部長「お前の話だと事故死による溺死だったな? 海に落ちたんだって?」
クルー4「は、はい。夜中、外に出て行って、喧嘩して海に落ちた、っていうのが、その場の見解でした」
179 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:33:00.90 ID:WpzCN6QYo
部長「謀殺された線はないのか?」
クルー4「どうですかね……あのときは留さんや俺たちがマークされてて見事に嵌められたんですけど、殺されるって感じじゃなかったし」
クルー4「6は最初からなにもなかったんだっけか?」
クルー6「そ、そうっすね。5さんと一緒に館内を歩いてた時も、誰もいなくてびっくりしましたし。見張られてた感じなんかも全然なかったっす」
クルー6「つうか、3さんと5さんが殺されたとしたら、どんな理由で殺されたんですかね?」
クルー6「最初から全員口封じする気なら、俺たちだけになった時点で始末したっていいじゃないすか」
クルー6「なんだかんだで風呂入れてもらったり、晩酌のおつまみまで作ってもらったりして、悪くはない思いさせられてますよね」
クルー4「そういやそうだな……?」
クルー6「留さんや1さんたちもあれだけのことをしてても殺さないで、大した怪我もさせずに捕まえてますし」
クルー6「それに俺、あの島にいたときも言いましたけど、准尉が一人で管理させられてたわけっすよね?」
クルー6「あの島、マジでなにかあるんじゃないっすか? 俺、艦娘死んでたのもびっくりしましたもん」
クルー4「そうだよな……俺もあの島の艦娘が、人間の言うことに逆らったって言う話を聞いて愕然としたし。普通じゃないよな?」
部長「ありがちな話だと、化け物を飼ってる、とかか」
クルー4「え!?」
クルー6「化け物!?」
180 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:35:15.96 ID:WpzCN6QYo
部長「海軍があの島に近づくなと言うのが、何かしらの秘密を抱えているからだとしたら……」
部長「その口封じのために事故死に見せかけて殺された線は考えても良いだろう」
クルー6「外でその化け物を見た、ってことっすか?」
部長「俺は最初からそうじゃないかと思ってたんだが。化け物じゃなくても、海軍としてどうしても隠しておきたい何かがあるとしか……」
部長「あの島にいる人間も、若い下っ端提督が一人だけだったんだろ? 普通だったらもっと上の階級の将校がいてもいいはずだ」
部長「そうじゃないんなら、危険すぎて誰も近寄れないような化け物の見張り番をやらされている、とか思ったんだが」
クルー4「うわ……」
部長「不祥事を起こして左遷されて、問題があったら日本に帰るのが遅れるから、お前たちに帰れと必死に訴えた、とかじゃあないのか?」
クルー4「そう考えると、辻褄あいますね……」
クルー6「……マジでやばかったんすね、俺たち」
部長「ともかくだ、海軍からは二人の死因についてあとから連絡を貰うことになってるんだが……」
部長「実は二人とも一人暮らしで、身内の連絡先をこれから調べなきゃならないんだよ」
クルー4「あー……3は両親いないんじゃないんでしたっけ? で、5は家出してきたって言ってたような」
部長「誰かその辺詳しい奴はいないのか?」
クルー4「1さんは知ってると思いますけど……」
181 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:36:16.03 ID:WpzCN6QYo
部長「じゃあ、あいつに届け物もあるし、訊きに行くか。4も横須賀まで付き合ってくれ」
クルー4「え……わ、わかりました、けど……」
部長「会いづらいだろうが我慢しろ。最後の義理だと思え」
クルー6「……届け物、って、差し入れでも持っていくんすか?」
クルー4「退職っつうか、馘の通知とかじゃないか? 持って行きづらいなあ」
部長「それもあるが、1の奥さんが離婚調停起こしててなあ。その内容証明が届いてるんだよ」
クルー4「」
クルー6「」
部長「裁判やりたいらしいんだが、1は当分海軍施設に軟禁だろ? だったらまず離婚届にサインさせろと言う話になってなあ」
部長「破かれてもいいようにと、弁護士から10枚ほど押し付けられてきた」
クルー4「ますます行きづらいですね……」
部長「だからこの話は一番最後……いや、クビの話が最後か」
クルー6「……あ、あの、離婚って、何が原因なんすか?」
部長「家庭内暴力だと。経済的DVも込みだそうだ」
クルー4「うっわ……」
クルー6「あの警棒、ファッションじゃなかったんすね……」
クルー4「……言うなよそういうこと! 今になって怖くなってきたぞ!? 洒落になんねーよ、会いたくねーー!!」
182 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/07/31(日) 23:40:04.98 ID:WpzCN6QYo
というわけで今回はここまで。
実は話を書いてる途中までは、4も6も全員助からないストーリーで書いていました。
どこでどう変わるかわからないですね。
183 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/01(月) 12:18:58.47 ID:bmUzSuFB0
乙です。クルー1救えねぇ屑だなホント。
184 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/17(水) 14:11:27.00 ID:9oQOxs/p0
乙です。1さんえぇ……
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/08/19(金) 01:32:55.02 ID:Pwv93iz20
やっと追いつきました。これからも更新期待してます。
186 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:15:50.87 ID:gHWMKc/ro
>183-184
前スレの、牢屋で古鷹に諭されているシーンを見直してからだと、なお味わい深いですよね。
今回はムナクソ回ということで、
不愉快な表現が多々ありますので【閲覧注意】とさせていただきます。
続きです。
187 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:17:01.85 ID:gHWMKc/ro
* ??? *
ブロロロ…
クルー7「窓のない護送車で運ばれるなんて初めてですよ」
クルー1「ここ、どの辺なんだろうな……」
留提督「スマホも取り上げられたせいで、退屈すぎてしょうがないよ……」
クルー2「スマホどころじゃないっすよ。服も下着まで着替えさせられてますからね、まるで……」
クルー7「まるで?」
クルー2「言わせんな、バカ」ペシッ
クルー7「いてっ! じょ、冗談っすよ! つうか、海軍は俺たちをどうする気なんですかね」
クルー2「そんなの、俺が知りてえよ……」
ガクン ゴウゥゥン…
クルー1「……? 停まった……のか?」
留提督「……エレベーターかな、これ。下に降りてる」
クルー1「下ですか……?」
ガシャン! ギィ…
クルー2「ドアが開いた……!」
188 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:17:46.80 ID:gHWMKc/ro
クルー7「ここで降りろってことか……あ、見てください、あそこ! 誰かいますよ!」
クルー2「行くしか、ないですよね?」
クルー1「そうだな……」
留提督「……」
*
眼鏡の男「ようこそ。お待ちしていましたよ」
クルー7「ち、ちわっす……!」
クルー2「なにのんきに挨拶してんだよ」
クルー7「や、つ、つい……」
クルー1「あなたは……?」
眼鏡の男「私はここで艦娘の研究をしております」
クルー2「研究?」
眼鏡の男「ええ。実はこちらに、新たに発見された艦娘がにおりまして」
眼鏡の男「その艦娘が人と触れ合ってどうなるかを、モニターさせていただきたいんですよ」
クルー7「新しい、艦娘……?」
189 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:19:02.47 ID:gHWMKc/ro
眼鏡の男「これまでどこの鎮守府にも着任していない艦娘が4体……ちょうどあなた方と同じ人数おりまして」
眼鏡の男「お好みの艦娘をひとりずつ選んでいただいて、しばらく一緒に生活して問題ないかを検証したいのです」
クルー1「……」
眼鏡の男「御存知の通り艦娘は女性ですので……合意の下であれば、まあ、『そういうこと』があっても、我々は関与致しません」
眼鏡の男「ただ、あくまでモニタリングが目的ですので、あなた方の行動のすべてを記録させていただくことになります」
眼鏡の男「それだけはご承知おきください」
留提督「そういう気分じゃないんだけどな……」ボソッ
眼鏡の男「勿論、この建物のなかで起こった出来事の一切は、外部に漏らしません。我々の秘密も多々ありますのでね」
眼鏡の男「今回、一緒に生活していただく艦娘はこちらの部屋におります。どうぞお入りください」
クルー1「……入らないって選択肢もあるのか?」
眼鏡の男「ええ、それも結構です。断るというのであれば、北極圏での活動を想定した戦闘訓練に参加していただくことになっておりますが」
クルー7「うげっ!? や、やめときましょうよ!? お、俺は行きますよ!」
留提督「どんな娘かは知らないけど……まあ、いいよ」スッ
クルー2「1さん……」
クルー1「行くだけ行ってみるか……」
扉<ガチャッ バタン
眼鏡の男「……」
190 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:19:46.92 ID:gHWMKc/ro
*
クルー2「なんだこの部屋? 入ったらまたドアだけしかないぞ?」
クルー7「見てくださいよ、さっき入ったドアのノブ、こっち側はついてないですよ!?」
クルー1「一方通行ってことか」
クルー2「行くしかないですね……って、なんだこりゃ。次の部屋もドアしかないぞ?」
クルー1「こっちのドアもノブはこちらだけか……」
クルー7「……ありゃ? 奥の部屋のドアノブが回らないっすよ!?」
クルー1「もしかして、こっちのドアを閉めないと開かない仕組みになってるんじゃないか?」パタン
留提督「ああ、本当だ。すごい厳重体制だね……」ガチャー
クルー7「どんだけいかつい艦娘がいるん……お、おおぉお!!」
クルー2「っ!!」
黒髪艦娘「ああ、やっと来てくださいましたね」
幼女艦娘「お待ちしていました……ふふふ」
青髪艦娘「ほーんと、待ってたんだから!」
金髪艦娘「ふぅん、この人たちが……」
191 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:20:32.38 ID:gHWMKc/ro
クルー1「……あ、こいつら……」
クルー2「やっべえ……あの金髪、モロ好みだ……!」
クルー7「あ、あの! こっちの小さい子は俺が受け持ちますから! いいっすよね!?」
クルー1「いいよいいよ、俺たちはそこまでロリ好みじゃねえし」
留提督「こっちの二人は決まりだね……」
クルー1「じゃあ、残りの二人は……どうします」
留提督「僕はどっちでもいいよ、好きな方を選びなよ」
黒髪艦娘「好き……?」キラッ
黒髪艦娘「いま、好きって言いました?」ズイッ!
留提督「え、あ……」
黒髪艦娘「私、あなたと一緒に行きます! いいですよね?」
留提督「え……まあ」
黒髪艦娘→迅鯨「良かった! 私、迅鯨って言います! これから末永くよろしくお願いしますね!」
留提督「え、あ、んん……」
192 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:21:16.82 ID:gHWMKc/ro
迅鯨「さっそく執務に取り掛かりましょう! さあ、こちらへ!」グイッ
留提督「ちょっ、ちょっと待っ……!」
クルー1「留さん!?」
金髪艦娘「それじゃ、私たちも行きましょうか?」
クルー2「!」
金髪艦娘→ホーネット「ああ、自己紹介、まだだったわね。私は、USS CV8 Hornet. 覚えておいて」
クルー2「は、はいっ!」
幼女艦娘→対馬「海防艦、対馬です。こちらへどうぞ……」ニィッ
クルー7「はーい!」
クルー1「お、おい!?」
青髪艦娘「ふふっ、やっぱり、こうなるのね」ニコッ
クルー1「え?」
青髪艦娘「大丈夫よ、心配しなくても。それより、私たちも行きましょ? ほら、そんな他人行儀にしなくたっていいんだから!」
クルー1「い、いや、君は一体……」
193 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:22:02.03 ID:gHWMKc/ro
青髪艦娘→ゴトランド「……え? もしかして……ゴトのこと、忘れちゃったの?」
クルー1「わ、忘れた!?」
ゴトランド「あなたは覚えてないの!? 私はあなたのこと、何でも知ってるのに……」
クルー1「お、覚えても何も初対面……」
ゴトランド「19XX年X月XX日、XXX市の出身で」
クルー1「!?」
ゴトランド「小学校はXX小でしょ? 中学はXXX中、陸上部だったんだよね?」
クルー1「!?!?」
ゴトランド「それからXXX高校からXX大学に行って、XXサークルでパフォーマーになって」
ゴトランド「そこからメディアに入って、いろんな企画に携わって……」
クルー1「な、何で知ってるんだ!?」
ゴトランド「もう、だからさっきから、ゴトはずっとあなたと一緒だったって言ってるじゃない!」
194 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:22:46.62 ID:gHWMKc/ro
ゴトランド「忘れたの? 幼稚園に入る前に、ゴトと遊んだこととか」
クルー1「!?」
ゴトランド「ほら、XX小学校のそばの公園で、私が転んだところに手を差し伸べてくれたでしょう?」
クルー1「!?!?」
クルー1(なんだ? 確かにそんなことがあったような……でも、あれはこいつだったか!?)
ゴトランド「忘れちゃってるなんて、寂しいな……でも、いいわ。これからたくさん思い出を作っていけばいいんだから!」
クルー1「い、いや、おかしいだろう!? 30年前のことをどうしてお前が……」
ゴトランド「だから、さっきから言ってるじゃない。ゴトはずーっと、あなたと一緒だった、って」
クルー1「!?!?」
ゴトランド「ほら、あなたがくれた指輪。ちゃあんと持ってるんだから」
クルー1「……え?」
ゴトランド「ほら、行きましょう? 私たちの愛の巣、執務室へ!」
クルー1「…………え?」
195 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:23:32.28 ID:gHWMKc/ro
*
迅鯨「ふんふん〜♪」
留提督(……半ば強引に連れ去られてきたけど)キョロキョロ
留提督(通路の扉が全部、鉄でできてる。この施設、どう考えても怪しいよなあ……)
留提督「この建物、窓はないの?」
迅鯨「……ええ、ありません。ここは、新任の提督が訓練するための施設……」
迅鯨「私たち、艦娘の存在は、一般の人たちには知られてはいけないって言われてるんです」
迅鯨「だから窓もないし、海へ出ることもまだできないんです」
留提督(それはおかしいな……この前から艦娘もテレビに出るようになったのに。施設の中にいるせいで情報が古いのか?)
迅鯨「あ、ここです! ここが私たちのお部屋です!」
留提督(なんだろう……すげえ嫌な感じがする……部屋に入ったら、二度と出られない気が……!)
迅鯨「も、もう、このお部屋の鍵、硬いんだから……っ」ガキガキッ
留提督「……」キョロ
留提督(逃げるなら……)
ガチャッ
迅鯨「開いた!」
留提督(今しかねえ!!)
ダッ!
迅鯨「……え?」
迅鯨「……」
迅鯨「……」
迅鯨「……え?」ハイライトオフ
196 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:24:16.82 ID:gHWMKc/ro
*
タタタタッ…
留提督(あの女はヤバい! 勘でわかる! どこか……隠れる場所か、匿ってくれる人を探さないと!)
留提督(もと来た道を辿れば……って、誰かいる!?)
鹿島「……! だ、誰ですか!?」
留提督「うわっ!? し、静かにしろ!!」ガッ
鹿島「もがっ!?」
留提督「……ふう、見つかってないよな?」キョロキョロ
鹿島「……」プルプル
留提督「……あ、ご、ごめん! 俺、ちょっと追われてて! ……大声、出さないでくれる? この通り! お願いだから!」ペコペコ
鹿島「も……もう、今回だけですよ……!」ウルッ
留提督「あ、ありがとう……あの、きみ、鹿島だよね? 練習巡洋艦の」
鹿島「わ、私を知ってるんですか? 光栄です……!」
留提督(良かった……素直そうな艦娘だ。この子になら頼めるかも……)
197 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:25:03.74 ID:gHWMKc/ro
留提督「あの……いきなりで悪いんだけど、俺、この建物から出たいんだ。君は出口を知らないかな?」
鹿島「出口……ですか? え、ええと……一応、知ってます」
留提督「マジで!? 良かった……! ごめん、案内してもらえないかな? お願い、頼むよ!」ペコペコペコ
鹿島「え、ええ、わかりました」コクン
鹿島「それじゃ、ついてきてください」
留提督「ありがとう……!」
スタスタ…
留提督(良かった……これで一安心かな)
留提督(それにしても)
鹿島「……」スタスタ…
留提督(改めて見ても、短いスカートだよなあ。お尻がチラチラ見えてんだけど)
留提督(さっきのか細い声も可愛かったなあ。あっちの鹿島みたいに気を張ってる感じじゃないし、細くて素直そうで……)ムラッ
留提督(ヤベ、ちょっと襲いたくなってきた。あーダメだダメだ、今はそれどころじゃない。早くこの変な建物から逃げなきゃ……)
鹿島「あの……」
留提督「な、なにかな!?」ギクッ
198 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:25:46.70 ID:gHWMKc/ro
鹿島「私、出口を知っているんですが、ちょっと出るのが大変なんです……それでも、大丈夫でしょうか」
留提督「え? ああ、ちょっとくらいなら大丈夫! 出られるんだよね?」
鹿島「はい……あ、ここです、このお部屋です。ついてきてください」チャッ
留提督(ここは木の扉なんだ……厳重な感じじゃないんだな)
ガジャン!
留提督「え」フリムキ
留提督(……う、裏側が鉄の扉……? カモフラージュされてた!?)
ガシッ
留提督「ぐえっ」エリクビツカマレ
鹿島「さあ、こっちですよ」ニタァ
留提督「!?」グイッ
留提督(さ、さっきまでと雰囲気が違う! こいつ……ネコ被ってやがった!?)ヨタヨタ
留提督(くそ、すげえ力で引っ張られる! どこに連れていかれるんだ!)
鉄扉<ガチャ ギィィ…
留提督(う……なんだここ)
199 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:26:33.64 ID:gHWMKc/ro
部屋の隅に拘束されている男「う……うう……」
ベッド上の全裸の男「……た、たすけて……」
留提督「こ、ここは一体……?」
鹿島「あなたの望んだ出口ですよ? ここは、この施設で提督業を続けられなくなった人が最後に来るお部屋です」
鹿島「ここで私から最後の研修を受けていただいて、それが終わったらここから出られるようになっています」
留提督「け、研修……?」
鹿島「はい。こうやって……」ゴムテブクロソウチャク
ベッド上の全裸の男「や、やめ……ぎゃひいいい!」
留提督「……」
鹿島「あはははっ! もう一滴も出ないみたいですね! こんなに苦しそうにびくびくしてるのに!!」
留提督「……」
鹿島「おわかりいただけます? こんな風に、ア〇ルに指を突っ込まれただけで無様に果てられるよう、『教育』させていただいているんです」
留提督「……うそ、だろ……鹿島は、そんなこと、しないはずだ……!」
鹿島「信じる信じないはあなたの自由ですが、あなたがいま目の当たりにしている現実を否定しても、何も変わることはありませんよ?」
200 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:27:17.03 ID:gHWMKc/ro
留提督「っ……そ、そうだけど、なんで鹿島がこんなことを……!!」
鹿島「任務ですから」
留提督「……にん、む……!?」
鹿島「はい。善良な国民を守るために必要な、重要な任務を、私は仰せつかっているんです」
留提督「……な、何を言ってるんだ」
鹿島「そうですねえ……例えば果物を育てるとき、たくさん実がついていれば、その分だけ供給される栄養は分散されますよね?」
鹿島「栄養が分散すると、各々に十分な栄養が行き渡らず、実が大きく育たなかったり、弱って病気になりがちになったり……」
鹿島「結果的に量はたくさん採れても、質として立派なものが育つ確率は少なくなるでしょう?」
鹿島「逆に実がひとつしかついていなければ、栄養はそのひとつの実に集中することで、病気にもならない丈夫で立派な果実が期待できます」
鹿島「私は社会のために、その立派な果実が育つよう、余分な実を間引いて環境を整えるお手伝いをしているんです」
留提督「……間引く、って、人間相手にか!? なんだよそれ……!」
鹿島「なんだと言われましても……あなたがたがこの施設に連れてこられた原因を顧みれば、適切なのでは?」
留提督「……」
鹿島「あなた方は、自身を選ばれた人間だと勘違いし、同じ人間を自らの欲望のまま、穢し、貪り、辱め、食い散らかしてきたでしょう?」
鹿島「そんな個体が上位種として蔓延れば、人はじきに獣以下の存在になり下がり……やがて文明も腐って、種の存続すら危うくなる」
201 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:28:01.66 ID:gHWMKc/ro
鹿島「故に、私の『提督』さんは、人間の未来を案じた結果、こう判断しました」
鹿島「人間の社会を崩壊へ導く異物がこれ以上繁殖できないよう、野に放逐する前に生殖機能を奪う必要がある、と」
鹿島「私たち艦娘が守るのに相応しい人間だけが、子孫を残せば良い、と」
留提督「……っ」
鹿島「だから……」グリグリグリッ
ベッド上の全裸の男「ぎゃああああああ……!!!」
ガクッ
鹿島「私がこうやって、摘果してあげているんです」ニコッ
留提督「……っ!」ジリッ
鹿島「うふふっ、屈辱ですよね? こんな小娘に、イきたくもないのにさんざんイかされて、性への恐怖を植え付けられるなんて」
鹿島「でも、この人に同情なんかしなくていいですよ。この人がここへ来る前にしてきたことを考えれば、当然の報いです」
鹿島「国会議員の息子という地位を傘に、何の罪もない善良な国民の平穏を脅かし、挙げ句、艦娘にも手を出そうとしたんですから」
留提督「な……?」
鹿島「知ってますよね? この人。あなたの、おともだち……で・す・よ?」ニタァ…
留提督「あ……っ!」ゾワワワッ!
202 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:28:46.59 ID:gHWMKc/ro
鹿島「ちなみに、私の研修が終わり次第、病院での検査、一般教養の座学などを経て、社会へ復帰することになっています」
鹿島「罪を犯した皆さんが心を入れ替え、いち国民としてこれ以上他者に迷惑をかけないように教育してあげるのが、私の務めです」
鹿島「そういうわけで、次の研修生の皆さんをこちらに控えてさせていたんですが……」チラッ
拘束されている男「ひ……!」
鹿島「そうですね、一刻も早くここから出たいというのであれば、予定を変更して、あなたから教育しても良さそうですね……!」
留提督「う……!!」
鹿島「さあ、怖がらないで。しっかり教育しなおして差し上げますから……うふふっ」
留提督「く、来るな! 来るなあああ!!」
<ガゴォン!
留提督「!?」ビクッ
鹿島「……あら。見つかっちゃいましたね?」
留提督「み、見つかっ……?」
鹿島「あれは表の扉の音ですね」
鉄扉<ガチャ ギィィ…
迅鯨「……見つけたぁ」
留提督「う、うわああああ!?」
203 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/08/27(土) 11:29:31.60 ID:gHWMKc/ro
鹿島「うふふっ。見つかっちゃいましたね」
迅鯨「……あなたが、彼を誑かしたの?」ジロッ
鹿島「いいえ、誑かすなんて、そんなことは。私は、彼が出口を探していたので、私が知っている出口へ案内しただけですよ」
迅鯨「そう……『手』を出してはいないのね?」
鹿島「はい。もう少し遅ければ、その限りではありませんでしたけれど」
迅鯨「……」ギロリ
鹿島「うふふっ、怖い怖い」
留提督「……」
迅鯨「……」クルリ
留提督「ひっ」
迅鯨「……どうして、逃げるんですか?」
留提督「……」ガタガタ
迅鯨「好きって言ってくれたじゃないですか」
留提督「……っ」ゾワワッ
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