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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

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76 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:35:56.79 ID:HvMz0mwZ0

私ですら、目で追っているうちにその謎の前に思わず声を漏らしてしまった。
今私たちの目の前にいる、【浅倉透】という人間は既に死んでいた。

何度もファイルの写真と本人とを見比べた。
儚げな雰囲気の割にくりくりとした瞳、肩にかからないほどの長さでまとまった少し青みがかった黒髪。そのいずれも写真と相違ない。
だのに、途端にこの浅倉透という人物に薄靄が罹ったように錯覚する。
それほどまでにこの矛盾は異常、そして看過できないほどに大きい。


ルカ「……前にも一度、聞いたことがあったよな。ちょうど千雪の事件の裁判の後だ。あの時にもお前はコロシアイが以前にも一度あったのか聞かれて、知らないと答えた」

透「……」

ルカ「でも、それって……おかしいよな」


一度、この矛盾には手を触れかけた。
千雪の事件の時には、まだその確証がなかったので、私もその矛盾を前にしても感じたのはせいぜい違和感どまりだったが、
今こうして浅倉透のコロシアイの経験が確定して、それは明らかなものとなった。

こいつは、外の世界の人間との接触を認めている。
七草にちかの糾弾を全面的に認めつつも、あくまで敵ではないと主張した。

そして、千雪の事件の時にはこいつはコロシアイのことなど何も知らないと言った。
こいつが本当に一回目のコロシアイに関与していないのならばまだよかった。
77 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:37:15.39 ID:HvMz0mwZ0



だが、コロシアイの参加が明らかになった以上、『外の世界と通じていながらも記憶を有していない』なんてことは成立しえない明らかな矛盾だ。



ルカ「お前、全部知ってるんじゃないのか……?」



一度は信用しようと、歩み寄った一歩。
それはたった一日のうちに、取り消さざるを得なくなった。
78 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:38:11.59 ID:HvMz0mwZ0





透「そっか……私、死んでたんだ」





79 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:39:51.65 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……は?」

透「……ううん、知らない。私は、何も知らない。聞かされてもいなかったからさ、死んでたってのも」

美琴「ふざけるのもいい加減にしてもらえるかな」

ルカ「お、おい……美琴……」


美琴はどんどんと浅倉透に詰め寄っていき、やがて浅倉透からは見上げねば視界に顔が収まらなくなるほどの距離に。
美琴の頭には完全に血が上っているようだ。


美琴「あなたはにちかちゃんの命をかけた糾弾をどこまで時踏み躙りたいの。答えをいつまでも出さずに、バカにしているとしか思えない」

透「……ごめんなさい」

透「もう、言わざるを得ない……か」


その謝罪は美琴に宛てたものだったのか、別の誰かに宛てたものだったのか。

浅倉透は真上を見上げ、ひとつ息をつく。
宙に吐き出されたその息をしばらく見つめるようにしてから、あらためて美琴の顔を見た。
80 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:41:22.02 ID:HvMz0mwZ0





透「……わかりました、話します。私が何者で、みんながどうしてここにいるのか」





81 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:42:50.66 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……ま、マジか?!」

透「もう、言わないと……私が殺されちゃうしさ」

ルカ「……え?」


浅倉透は少し後退り、指で斜め下をさした。
その指先、さっきまで美琴の影と重なっていた部分に私たちも視線を落とす。


ルカ「……美琴!?」


そこには、刃渡り三十センチほどのサバイバルナイフがあった。
美琴は問い詰めるために詰め寄ったんじゃない、あのナイフを腹に当てて脅していたんだ。
逃げ場はない、話さないとここで殺す……と。


美琴「……」

(み、美琴……)


そして、浅倉透は語り出した。
静かに、ゆっくりと、瞳を閉じて。
自分自身のことだというのに、まるで昔話を語るような不思議なほどに穏やかな語り口だった。

82 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:43:48.05 ID:HvMz0mwZ0


透「私は、みんなの知ってる浅倉透とおんなじだけど違うんだ」


透「みんなが覚えてる浅倉透が今の『私』」


透「みんなの知らない浅倉透が写真の『私』」


透「……写真の『私』の過去の私が、今の『私』」



『私』という言葉を何度も繰り返す。
ただの一人称だったはずのその言葉はブランコのように理解と非理解との間を往復し、
言葉が本来持っていたはずの意味合いはやがて脱色していき不透明な物体へと移り変わる。


そして、そのモヤモヤしただけの物質をかき集めて浅倉透は、それを口にした。

83 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:45:13.34 ID:HvMz0mwZ0





透「『浅倉透』のある部分までの記憶と人格とをコピーして作られたのが、『私』なんだよ」





84 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:46:15.22 ID:HvMz0mwZ0



ルカ「…………………………………………………………は?」




一体いつから私はSF映画を見ていたんだ?
つい昨日まで言葉を交わしていた相手は一晩のうちにアンドロイドに作り替えられ、更に別の相手は自分の正体はコピーだと自白。
もうこれは小説や漫画の中の世界じゃないと説明がつかない。
浅倉透の口にした言葉は右から左へ私の中を通過して、通り掛けに脳の神経回路の隅々までをショートさせてしまった。

85 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:47:25.44 ID:HvMz0mwZ0

透「だから、みんながこれまで接してきた『浅倉透』とはちょっとだけ違うんだ」

透「その記憶も感触も、覚えてるんだ。でも、私の身体はそれを知らない」

透「……この体で経験してないことばっかり、覚えてる」


何もわからない。
こいつの口から出る言葉も、私の前に立っているこいつの正体も。
私の視界の中にいる『浅倉透』という人間に黒塗りがされてしまったように、もはやこいつの姿すらも視認できなくなった。


雛菜「意味、わかんない……意味わかんない……」

雛菜「透先輩が、何言ってるのか……わかんないよ……」


幼馴染でさえも、それを受け止めきれなかった。
わなわなと震えながら、両腕で自分の体を抱きとめてなんとか立っている。


86 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:48:43.62 ID:HvMz0mwZ0

美琴「……あなたがこのコロシアイのことを何も知らないって言うのは」

透「……私はきっと、このコロシアイより前の記憶で作られたコピー。なんじゃないかな」

美琴「……」

透「……『私』がもう既に死んでたなんて、今の今まで知らなかったんだ。ごめん」


ちょっと前、いやかなり前だったかもしれない。
晩飯を一人で食べながら、BGM代わりにつけた番組で生命だの倫理だので議論を交わす、おおよそ正気とは思い難い番組をちらりと見たことがあった。
そこで議題に上がっていたのはクローンという存在。
全く持って同じ遺伝子情報の持つ生命体を人間の手で生み出すことは許されるのか、否か。
私はくだらないとぶった切ってカップ麺を啜り上げていたはずだ。
自分と全く同じ存在がもう一つあったからと言ってなんになるんだ。今自分の持っている記憶がある限り、その生命体が同一であると見なされることはない。
例え遺伝子の一つまで同一だとしても、人を人たらしめるのはそういう条理の世界だと思っていた。

……なら、今私の目の前に立っている『これ』はなんだ?
『浅倉透』と全く同じ見た目、声、思考、そして記憶。
更に、こいつのオリジナルであった本物の『浅倉透』はおそらく……死んでいる。



『これ』はそんな状況下では……何に当たるのだろうか。



87 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:49:56.88 ID:HvMz0mwZ0

あさひ「……全然、気づかなかったっすよ。事務所で過ごしてきたときと、透ちゃんおんなじ喋り方だったし、雰囲気も変わんなかったっす」

透「人格も同じ、だから」

恋鐘「そがんことが……あり得るばい?」

冬優子「コピー……そんなの、信じられるわけないじゃないの……!」

智代子「でも、夏葉ちゃんのこともあるし……」

夏葉「……ええ、記憶・人格の移植自体は可能だと思うわ。私も実際アンドロイドの体に挿げ変わっているわけなのだし」

あさひ「わたしたちの時代の技術を、はるかに超えてるっすよ……」

透「うちらが知らないだけでさ、あったんだよ。そういう技術。国とかが、隠してたりで」

雛菜「……」


浅倉透の説明に当惑するばかりの私たちは、何度も何度も言葉をなぞって咀嚼しようと試みた。
でも、どれだけ繰り返そうとも一向に先には進まない。
呆然とその言葉を眺めることしかできない中、あいつだけは一歩先に立ち、吐き捨てるようにして言った。
88 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:51:18.15 ID:HvMz0mwZ0





美琴「……くだらない」





89 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:52:35.32 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「み、美琴……?」

美琴「言い訳にしても酷すぎる。……そんな世迷言、私は信じられないな」

透「全部、本当だよ。私のこと、全部話したから」

美琴「あなたは浅倉透。それ以外の何者でもない……この目で、この肌で感じてきたものに間違いはないと思うの」

雛菜「……!」

美琴「黒幕と通じているあなたは、死んだと見せかけて生かされていたんだよね。今の今まで。それで平然と何もなかったように装って、記憶がないとかコピーだとか適当な言い訳を並べて」



美琴「……許せないかな」


ギリリと奥歯を噛んだ。口角はいやに吊り上がり、眉もそれに連動して動いた。
虫唾が走る、というのは今の美琴のような表情のことを指すのだろう。
きっと美琴にはもう浅倉透の言葉は届かないんだろうと思った。
整合性だとか論理性だとか、そういうものは感情の前では無力だ。
迷い戸惑う私たちとは別に、美琴はより一層その僧念の炎を猛らせる。


ルカ「……美琴!」



____凶刃が、舞う。



90 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:54:51.93 ID:HvMz0mwZ0



キィィィィィィン……!!



91 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:55:45.68 ID:HvMz0mwZ0



美琴「……なんで、あなたが」



それを制したのは、鋼鉄の体をもつ有栖川夏葉だった。


夏葉「間一髪、ね。体に改造を受けていて助かったわ。いくら鍛えていても、本来の肉体ならナイフの前には無力だったもの」


浅倉透の首元を狙った一振りはメカ女の掌底にぶつかり甲高い衝突音を立ててから地面に落下した。
その衝撃に美琴の肘がビリビリと痺れる。


夏葉「美琴……少し冷静になりましょう。透の今の話……たしかに鵜呑みにできるものではないけれど、はなから否定して殺意衝動に変えてしまうのは早まった決断よ」

夏葉「にちかの遺志を尊重したい。あなたのその気持ちは痛いほどに理解できる。ただ……あなたの中でその形は少し歪んでいないかしら。にちかはあなたに手を汚させることを良しとしないと思うの」

美琴「……ッ!」

ルカ「あっ! おい、美琴……!」


メカ女の説得にも耳を貸さず、美琴はそのままよろけながらその場を後にしてしまった。

92 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:58:09.82 ID:HvMz0mwZ0

残された私たちの元に、再び『コピー』というおおよそ許容し難い現実が戻ってくる。


透「……あのさ」

透「今、言ってもしゃーないかもだけど。コピーだとしても、浅倉透の偽物だとしても、味方だってのは変わんない」

透「モノクマの仲間なんかじゃない。信じて欲しいんだ」

ルカ「……」


きっと、嘘はついていないんだろうと思った。
あの病院で話した時と同じ、自分のことを分かってもらおうと真正面から向き合う態度、眼差し。
ただ、手放しで受け入れるにはあまりに情報量が多くて、酷な内容だったのだ。

私ですら突然突きつけられた現実にたじろいでいる。
『こいつ』のそれは、私の想像を絶する。

93 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:00:16.38 ID:HvMz0mwZ0

雛菜「……あなたは、雛菜の知ってる『透先輩』ではないんですよね〜」

透「雛菜」


市川雛菜と浅倉透は幼なじみだ。283プロ内でも勿論、芸能界でもそうそうそこまで長い時間を共に過ごしてきたアイドルはいない。
もはや心の根幹にも等しい人間が本当は別人だった、なんて世界そのものが揺らいでしまうほどの衝撃だろう。


雛菜「薄々、感じてたんだ〜……透先輩、嘘とか隠し事とかすっごく下手な癖に……雛菜に全然何も喋ってくれないんだもん〜……」

透「……!」


そんな揺らぎの最中、市川雛菜の表情はある種達観したものがあった。


雛菜「雛菜の大好きな透先輩と、なんだか違うなって場面が時々あって……」

雛菜「今、話を聞いて……意外とすっきりしてるんですよね〜」

智代子「雛菜ちゃん……」

雛菜「……そっか〜」


目を瞑って、今一度噛み締める。
次に瞼を上げた時、その瞳には先程まではなかった光が宿っていた。
94 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:01:45.63 ID:HvMz0mwZ0





雛菜「じゃ、今度から『透ちゃん』って呼ぶね〜!」





95 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:03:00.16 ID:HvMz0mwZ0

透「えっ」

雛菜「あなたは雛菜がずっと同じ時間を過ごしてきた透先輩ではないけど、この島で一緒に過ごしてきたのは変わらないでしょ〜?」

雛菜「雛菜は透ちゃんと変わらず仲良くしたいから! それでいいよね〜?」


「自分がどうしたいか」を優先した答え。
感情を整合性よりも先にして殺意に呑まれた美琴と、その文脈は似通っていた。

しかし至る所は全くもって違う。奔流に飲まれて自分すら見失った美琴と対照的に、そこには確固たる自我がある。
どんな状況でも、自分を見失わないこいつだからこそ出来た清々しいまでの答え。

どこか子供っぽさすら感じさせるその言葉は、私たちの胸に心地よい風を走らせた。
96 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:04:39.56 ID:HvMz0mwZ0


恋鐘「雛菜の言う通りばい! うちの知ってる透じゃなくとも、こん透だって島に来てからうち達と過ごしてきた時間は嘘じゃなかもん!」


冬優子「……そうね、これまで過ごしてきた時間は確かなんだし、その上でどう接するべきかは決めていけばいいのかもしれないわね」


あさひ「よくわかんないっすけど、透ちゃんが何か変わるわけじゃないんっすよね? それなら別にいいっす」


夏葉「透、よく話してくれたわね。あなたの抱え込んでいた秘密は、まだ飲み込み切れないけれど……あなたがそれを話してくれた、その勇気は信じてみたいと思うわ」


透「……ありがと。嬉しい、めっちゃ」


97 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:06:50.45 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……まあ、浅倉透のことに関してはそれで一旦受け入れるとしてもだ。実際……お前らはどうすんだよ、このファイルに書いてある出来事」

智代子「そうだよね……向き合わなくちゃ、いけないんだよね」

夏葉「……正直なところ、これまでにも何度も検討してきた可能性ではあったの。それがこうして具体的な形となって目の前に現れたけど……まだ飲み込めてはいないわね」

冬優子「……これが事実なら、283プロダクションのアイドルはここにいるメンバーしか残っていないことになるわ」

雛菜「……雛菜たちも、もう雛菜しかいないんだよね〜」

透「……ごめんね、雛菜」

雛菜「透ちゃんが謝ることは何もないよ〜?」

恋鐘「でも、まだこれが本当だって決まったわけでもなかよ! モノクマが提示したファイル、偽造の可能性だって全然あるばい!」

あさひ「これが本当かどうか、確かめてみる必要があるっす」

智代子「で、でも……どうやって?」

あさひ「生きてこの島を出て、確かめるっす。みんなで生き残って、それで自分の目で確かめるほか無いっすよ」

(……お前がそれを言うのか)

98 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:08:59.21 ID:HvMz0mwZ0

夏葉「……ひとまずは解散しましょうか。今日は色々とありすぎたわ」

智代子「夏葉ちゃんがアンドロイドになっちゃったことが半分くらい霞んじゃってるもんね……今日は濃すぎだよ……」

ルカ「……美琴のこと、私もどうにか出来ないか考えてみる。浅倉透、てめェにも協力してもらう場面があるかもしれない。覚悟しとけ」

透「うん、もちろん」

雛菜「雛菜もお手伝いしてもいいよ〜?」

恋鐘「それじゃあ今日は一旦かいさ〜ん!!」


私たちはジェットコースターをようやく後にした。
ファイルを開いてから、かなり長い時間を……いや、一瞬だったのかもしれない。
ともかく時間の感覚を失うほどの衝撃を受けてしまったのはたしかだ。

それぞれが胸にモヤモヤとしたものを抱えながら、目を向けたく無い答えを半目半目で見つめながら、自分たちのコテージへと帰っていった。
99 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:10:59.86 ID:HvMz0mwZ0
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【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


「ああクソ、うぜェ……」


その罵倒の先にあるのは、自分だ。
ちょっとばかし交流していたからといって、連中のお仲間が死んでいたことに少なからずショックを受けている自分。
仕事先でたまに見かける程度の繋がりしかない相手が死んでいたから、なんだ。
私はそんな感傷的な人間だったか?
カミサマはもっと傲慢不遜で、独善的な……ぶくぶくと膨れ上がった自尊心の塊みたいな存在だったはずだ。
千雪をはじめとした283の連中にすっかり絆されてしまって、見る影もない。


「マジで、意味わかんねえっての……」


そうなると、自分の中に湧き上がる不安に目を向けざるを得なかった。
過去にあったコロシアイ、それと同じ状況にある自分。
そして、私を取り囲む人間たちの諸々。


「……はぁ」


記憶を失った生存者、浅倉透のコピー、そして美琴の暴走。


「病むっての、こんなの」


私も動かないといけない、解決しないといけないことが山積だ。
それは頭ではわかっていたが、今夜ばかりは体が言うことを聞かなかった。
ベッドに乱暴に自分の身体を叩きつけるようにして、そのまま目をつむった。



……何も、考えたくはなかった。

100 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:12:31.96 ID:HvMz0mwZ0
____
______
________

=========
≪island life:day 17≫
=========
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【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


「……あ」


目を覚まして、まず最初に自分の右手を見た。
指の長さ、皺、関節……どれも私自身、斑鳩ルカのものだ。
どうしてこんなことをしたかというと、それは眠っているときに見た夢に起因する。

私の隣に立っていた人間が突然自分の皮をはいで、そのグロテスクな正体を曝け出すという胸糞悪い夢。
その原因が分かり切っている。

私たちは、あいつを『浅倉透』のコピーであるということを理解したうえで受け入れると決めた。
本人ではないことを踏まえたうえでの承認。少々歪な体制ではある。
それは、倫理だとか論理だとか、諸々の面倒な思考に蓋をするためのその場しのぎの対策法だともいえる。
……それに、今更口出ししたとて仕方ないが。


「……ざけんなよ」


考えたって時間の無駄だ。
私は適当に支度を終えて、早足でレストランへと向かった。
101 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:14:45.67 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】

雛菜「あ、おはようございます〜」

ルカ「……なんかすげえ変な感じだな」

夏葉「今朝は珍しく雛菜が一番乗りだったのよ」


つい昨日の出来事がどう作用したのかは分からない。
だが、やけに素直な笑顔を浮かべている様子からして『吹っ切れた』という言葉を使うのが適切なんだろうと思った。


智代子「なんだか、今日はちょっと食欲が……」

恋鐘「あ、あれ……なんか変な味がせんね……塩とお味噌、間違えてしもうとる……?」


他の連中はどうにも調子が悪そうで、対照的だ。
私も例に漏れずそっち側、特に言葉を交わすこともせず、美琴の隣……本来七草にちかが座っていた席に腰掛けた。


冬優子「……緋田美琴は、やっぱり来ないのね」

ルカ「……ああ、悪い。あの後私もすぐに寝ちまった」

冬優子「まあ……昨日は仕方ないわよ。ふゆだってそう。あさひなんか考え込んじゃって動かないんだから、ふゆが引きずってここまで連れてきたわ」

あさひ「……」

ルカ「まあ……あいつはそうなるだろうな」

(……あいつもあいつで、目をつけてなきゃいけないんだけどな)
102 :申し訳ない……眠気がすさまじいのでやっぱり今夜は安価を出すところまでで…… ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:16:17.95 ID:HvMz0mwZ0
◆◇◆◇◆◇◆◇


冬優子「……まだ色々と飲み込めてないだろうけど、ふゆたちがやるべきことは変わらない。むしろ出ていく理由が明確にできた今、脱出の方法を見つけ出すことに全力を尽くさないといけないわ」

夏葉「ええ、冬優子の言う通りね。真実を自分たちの目で確かめるためにも、全員が生きてこの島を出ていく術を見出す必要があるわ」

智代子「うん……私たちの前に現れた謎、その答えを知るまでは死ぬに死ねないよね……!」

恋鐘「摩美々に咲耶に霧子……うちらん前のコロシアイでは何があったとやろ……」

ルカ「情報の一端だけ毎度毎度小出しにしてきやがって、黒幕ってやつはよっぽど性格が悪いよな」

冬優子「まあ、今更よ」

あさひ「夏葉さん、最後のモノケモノはいつ倒せそうっすか?」

夏葉「ロケットパンチね。そうね、エネルギーの充填はまだしも燃料の確保が厳しいの……スーパーにあるオイルを借りているけれど必要量の半分と少ししかないわ」

夏葉「パンチを打つこと自体はできてもモノケモノを吹き飛ばすほどの火力には、少し足りていないわ」

雛菜「空港のジェット機に積まれてたりしないですか〜?」

智代子「雛菜ちゃん、あのジェット機はハリボテなんだ……」

103 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:17:18.84 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「チッ……せっかくの機能も使えなきゃかたなしだな」

夏葉「あら、失礼ね。まるで私が木偶の坊みたいな言い回しではないかしら」

ルカ「いや、そこまで言ってねえけど……」

夏葉「ふふっ……そんなルカの鼻を明かしてみせようかしら」

智代子「夏葉ちゃん?」

あさひ「もしかして……何か他の機能があるっすか?!」

夏葉「ええ、あれからまた自分の体を少し研究してみたのだけど……また新しい機能を発見したわ!」

ルカ「マジか……脱出に使えんのか?!」

夏葉「刮目なさい! これが私の体に隠された新機能よ!」


そう高らかに宣言すると、メカ女は自分の両方の耳たぶを同時に捻った。
それがトリガーになって……次の瞬間。

104 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:18:46.91 ID:HvMz0mwZ0



ドバババババババババ!!!!




智代子「わ、わあああああ?!?!」

あさひ「すごい量の涙っすー!」

透「あれ……ただの涙じゃない、よね」

夏葉「よくわかったわね、透。これは右目からプロテインゼリー、左目からスポーツドリンクが溢れ出しているの!」

ルカ「お、おい……大丈夫なのかこの絵面」

夏葉「さあ、みんな遠慮せずにコップを持ってきてちょうだい! 好きな方を注いであげるわ!」

冬優子「……ふゆはパス」

ルカ「……私もいいわ」

透「あー、じゃあプロテインの方で」

ルカ「お前マジで勇者だな……」

105 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:20:41.22 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

衝撃的な光景を目撃して、なんだか食欲を削がれてしまった。
朝飯もそこそこにレストランを抜け出し、自分の部屋に戻る。

「……あいつ、どこまでも人間離れしていくな」

そんな風に独り言ちたが、よくよく考えれば当然のこと。
あいつはもう、人間ではない。

「……」

いや、これは言及すべきことではないか……

……余計なことを考えてしまう前に、行動するか。

【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
【現在の希望のカケラ…24個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/15(金) 22:22:42.54 ID:b12LUKDN0
2
107 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 21:23:07.07 ID:iZvNZh3u0

昨日は寝てしまって申し訳ない……

-------------------------------------------------
【第1の島 ビーチ】


「……」

気が付けばまたこの場所にいた……
別に島に来る前にもこんなにガチャガチャなんかやってたわけじゃねえんだけどな……

射幸心と言うか、人の欲と言うものは恐ろしいなとつくづく思う。

……何かと物入りだし、ちょっとぐらいならまあいいか。


-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
【現在の希望のカケラ…24個】

1.モノモノヤシーンを回してみる【枚数指定安価】
2.やっぱりやめる

↓1
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:13:40.45 ID:iH7KFdLB0
1
10枚
109 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 22:27:12.73 ID:iZvNZh3u0
1 選択

「たまには使えるもんだせよ……?」

もう何度目の正直かはわからないが……ちょっとぐらいは期待してるんだからな

【コンマ判定を行います】
【このレスより直下10回連続でコンマ判定を行い数値に応じたアイテムを獲得します】

↓1〜10
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:27:58.23 ID:iH7KFdLB0
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:39:27.16 ID:TwIRrhr/O
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:39:52.33 ID:iH7KFdLB0
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:40:21.82 ID:0otp1IWTO
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:40:55.48 ID:iH7KFdLB0
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:41:26.82 ID:0otp1IWTO
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:41:41.00 ID:iH7KFdLB0
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:44:03.59 ID:0otp1IWTO
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:44:21.40 ID:iH7KFdLB0
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/16(土) 22:45:01.58 ID:tliTlCHwO
120 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 22:51:18.94 ID:iZvNZh3u0

【ジャバの天然塩】
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ミレニアム懸賞問題】
【オスシリンダー】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【オカルトフォトフレーム】を手に入れた!

「まあ……そうだよな」

「何を期待してたんだ、私は……」

いつも通りの使い方も思いつかないようなガラクタの数々。
まあ……これはどれもあいつらに押し付けるとするか……

「……ハッ」

あいつら、意外なもんで喜んだりするからな。

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…24個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:53:09.56 ID:tliTlCHwO
122 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 22:57:57.74 ID:iZvNZh3u0
1 透選択

【第4の島 ネズミ―城前】

……流石に昨日の今日。
私と言えど、事態をそのままそっくりはいそうですかと飲み込めるわけもなく。
朝の集まりでは口にできなかった思いのはけ口を探して歩いていると、自然とここに辿り着いた。

ここは、唯一モノクマにもモノミにも干渉されない安息地。
それをどこまで信じていいのかは知らないが、そのとりあえずの知識と情報は、私にとってはこの上なく都合がよかった。


そして、それは当事者もその限りではなく。


ルカ「……お前」

透「……ども」

ルカ「……」

話をする、チャンスだ。


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【ミレニアム懸賞問題】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/16(土) 23:01:00.86 ID:tliTlCHwO
1 ミレニアム懸賞問題
124 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:08:18.92 ID:iZvNZh3u0
【ミレニアム懸賞問題を渡した……】

透「げー……なにこれ、数学? 宿題はちゃんと自分でやりなって」

ルカ「ちげーよ、大体こっちはもう成人だ。宿題も何もねえって」

透「え、じゃあなにこれ」

ルカ「世界中の数学者を悩ませてる難問だとよ。これが解けたら滅茶苦茶なお金が振り込まれるんだとか」

透「……マジ?」

ルカ「らしいぞ、噂だけどな」

透「……これ、いつまで?」

ルカ「やるのかよ……」

(妙に食いついてきたな……こういうの、好きなのか……?)

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します!】


------------------------------------------------

これまでとは大きく状況が違っていた。
目の前にいる人間をどこまで信じればいいのかもわからず、かといって信じなければ前に進むこともできず。
そういう置かれた状況故の妥協が、つなぎとめている関係だった。

そこに投げ込まれたのは、あまりにも大きく、そして異常な真実。

目の前の人間は、自分を自分じゃないと言い放った。

私がこれまで観測していた事実を、その根底を、概念を、全部全部、ひっくり返した。


ルカ「……気分はどうだよ」


自分自身の気分も分からないままに、相手にゆだねた。


透「……清々しく、はないかな。言いたくなかったことではあるし」

透「でも、雛菜が……みんなが、受け入れてくれた。それは本当に良かった」


ルカ「……」

浅倉透はコピーである。
本物の浅倉透はとうに死んでいる。

本当に、他の連中はそれを受け入れたと言えるのか?
市川雛菜のあの言葉に追随しただけで、そこに思考はあるのか?
葛藤を無視しちゃいないか?

私にはずっとそんな脳内の声がうるさかった。


透「……ごめん、それも私の感想だから」

透「そっちのが、それどころじゃないよね」

ルカ「……そりゃな、頭がこんがらがったままだよ」


この島に来た時から混乱なら、しっぱなしだけどな。


1.オリジナルの浅倉透の事はどこまで知ってるんだ?
2.本当に、前回のコロシアイとやらのことは知らないんだな?

↓1
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:10:20.48 ID:tliTlCHwO
1
126 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:22:25.39 ID:iZvNZh3u0
1 選択

こいつがコピーであるという話を、一応は信じるとして。
私には聞いておきたいことが一つあった。


ルカ「お前は、オリジナルの記憶と人格とを引き継いでるんだよな?」

透「……うん」

ルカ「なら、お前はオリジナルの浅倉透のことをどこまで知ってるんだ? 生まれてから、お前のコピーが作られる、その瞬間まで……全部を知り尽くしてるのか?」

透「……」


表情を変えることなく、視線もそらさずに十数秒。


透「……多分、全部知ってる」

透「小さい時のノクチルの四人の姿も思い出せるし、小学校の時にみんなで豚の貯金箱にお金を入れた映像も頭の中にある」

透「……人一人分の記憶と言えるだけのものは、揃ってるよ」


精巧で比類のないコピー。
きっとこいつが言っていることに偽りはない。
その時の記憶を語れと言えば隅々まで語るだろうし、絵に書けと言えば当時の色彩でキャンバスに描くはずだ。


透「でも、あくまで私はコピーだから」


だからこそ……本人はそのことを私たち以上に重くとらえている節があった。
コピーとして接する事、生きること。そのこと自体に対する負い目のようなものを言葉尻ににじませる。



しかし、次に紡ぐ言葉はそれでは終わっていなかった。


透「……私のことを、無理に浅倉透だと思わなくていいからさ」

透「雛菜と同じで、別の『浅倉透』だと思ってほしい」


幼馴染と定義されていた人間の言葉を、臆面もなく借りてみせた。


透「私はコピーだけど……それは作り出された瞬間までの話。そこから一緒に過ごした時間は……オリジナルだって。そう雛菜が言ってくれたから」


それは私の良く知る、この島での『浅倉透』の姿だった。
あのどこか抜けていて、それでいて目の離しづらい厄介な微笑み。
誰を真似たでもない微笑みが、その場所に転がる。


ルカ「……ハッ」

ルカ「……そんじゃ、とりあえずのところはそういうことで」

透「ん、よろしく」


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【浅倉透の親愛度レベル…8.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…25個】
127 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:27:08.02 ID:iZvNZh3u0
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

本人と話したら不思議と気持ちは軽くなった。
別にコピーの話が飲み込めたわけではないが、疑問を疑問のまま受け入れる体制ができたとでも言えばいいだろうか。
『浅倉透』という人間を私の中でどう置くべきかの考えは固まったんだと思う。

……ま、元から理屈っぽいのは好きじゃないんだ。

大事なのは自分がどう思ってるか、そういう生き方しか知らない私が悩んだところで馬鹿らしい。


「ま、美琴はそう思っちゃくれないんだけどな……」


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…25個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:28:58.13 ID:UBiVJwOR0
1 ふゆ
129 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:35:13.21 ID:iZvNZh3u0
1 冬優子選択

【第4の島 観覧車】

ルカ「……何やってんだ、冬優子」

冬優子「何やってるも何も、手持ち無沙汰でうろついてんのよ。散歩ってやつ?」

ルカ「ふーん……」

返事に少しだけ違和感を感じた。
冬優子にしては、受け答えが何だかおざなりな感じがするというか、覇気をあまり感じない。
目線もあまり合わないし、らしくないという印象を受けた。


ルカ「……」


……だけど、それを口にするのはなんだか気が引けた。

別に、友達ってことなら普通の事なんだろうが……
私たちは数日前まで気遣いなんてしあう仲でもなかったわけで、私の感じる照れは他の人間のそれとはレベルが違って……

なんて頭で言い訳をしているうちに、時間は過ぎていく。


ルカ「お、おい……!」


やるだけ、やってみるか。

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:39:16.26 ID:UBiVJwOR0
アンティークドール
131 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:53:27.54 ID:iZvNZh3u0
【アンティークドールを渡した……】

冬優子「えっ、嘘。普通に滅茶苦茶かわいいじゃない、どうしたのあんた。何か悪いもんでも食べた?」

ルカ「ひどい言われようだな……要らねえなら返せよ」

冬優子「バカ、褒めてやってんのよ。あんたもそういう女の子らしいこと少しは出来たのね」

ルカ「そういうの今の時代叩かれるぞ、ご自慢のセルフプロデュースはどうしたんだよ」

冬優子「おっと、確かに失言ね。訂正するわ、ルカもそういう心配りできたのね」

ルカ「……余計悪化してないか?」

冬優子「〜〜〜♪」

(ま、喜んでるならいいか……)

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより多めに親愛度が上昇します!】

-------------------------------------------------

ルカ「お、おい……!」

何を言うかも決めずに呼び止めた。
とはいえ、別に冬優子は立ち去ろうともしておらず。要は私が突然に声を上げた形になったのだ。
冬優子は私の並みならぬ様子にしばらくキョトンとしていた。

それでも多分あいつのことだ。
私の中の葛藤と、私が冬優子に何を見たのかすぐに悟ってしまったのだろう。
先手を取ったのは、冬優子。

冬優子「ルカ、付き合いなさい」

ルカ「……え?」

冬優子「そんなアホ面しない、あんたが今いるここはどこ? 付き合ってもらうわよ」

ルカ「お、おい……ちょっと待てって……!」

冬優子は私の手をグイグイと引いてゴンドラへと乗り込んだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

冬優子「ま、二人きりで話すなら個室はちょうどいいわね」


観覧車なんて乗るのはいつ振りか。
家族で乗った記憶すら朧気、久々の高所に少しだけ胸がざわつく。


冬優子「……話、付き合ってくれんでしょ」

ルカ「……おう」


ただ、冬優子の胸の内は私のそんなざわつきとはまた別に揺れていた。
私がさざ波なら冬優子は大時化。
彼女があまり口にしない、弱みのようなものが密室の中で吐き出される。


冬優子「……前回のコロシアイってやつ、血の気が引いたわ。283の人間があれだけ死んでたこと、それを手引きしたのが自分とこの社長だってこと」

冬優子「……ホント、頭が痛いわよ」

ルカ「……冬優子」

冬優子「……でも、もっと最悪なのがそのコロシアイに、愛依も参加してたってこと……ふゆはあいつを守ってやれずに命の危険に二度もさらして……」

冬優子「そして今回のコロシアイで、いよいよその命を落としてしまった……」

ルカ「……」

このシェルターは優秀すぎる。
外と中との空間を完全に断絶するせいで、中の空気もまるで外に流れて行かない。
この重苦しく手足を動かすのも躊躇われるような空気も、変わらない。

中の私が、何かしない限りは変わらないのだ。


1.今からでも守れるものを守るしかないだろ
2.和泉愛依がお前のことを恨んでると思うか?

↓1
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:56:57.65 ID:iH7KFdLB0
あえての2
133 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/17(日) 00:06:50.77 ID:7vcYdGG+0
2 選択

本当に、自分のことが嫌いだ。
こんな時に気の利いたこと一つ言えないし、右手を相手のために伸ばしてやることもできない。
つまらないプライド、くだらない言い訳ばかりが目に付く自分が嫌い。

それでも、なんとか励まそうとした。

私の口から出てくるのは、本心とは無関係な……月並みな言葉だ。


ルカ「和泉愛依が、お前のことを恨んでると思うか?」

ルカ「たとえコロシアイにあいつが二回巻き込まれてたからって……お前が救えなかったからって……お前を恨むような人間だって思うのかよ」

冬優子「……」

でも、相手が弱っているときは、月並みで足ることがある。
使い古されたような何気ないエピソードが、急に琴線に触れることがある。


冬優子「……よくわかったわ」

ルカ「……!」

冬優子「あんたが、こういう状況向いてないってことが」


そして、そういうのは私たちのような人間にはそうそうないことも知っている。
私たちのようなひねくれものは、弱っている時だからこそ綺麗な言葉を斜めから見つめ直したりする。
周りが熱狂しているときこそ醒めたりするような、そういうめんどくさい人間なのだ。


冬優子「別に責任に感じなくていい。ただ愚痴が言える相手が欲しかっただけだから。その分では十分役目は果たしてくれたわよ、ルカ」

ルカ「悪い……ホント、こういうの下手だから」

冬優子「そりゃね、上手だったら緋田美琴とあんなことにもなんないでしょ」

ルカ「……」

冬優子「他人よりもまずは自分の事。……ま、お互い様なんでしょうけど」


観覧車が一周するまでの間、私たちは言葉も交わさずに外の景色をただずっと眺めていた。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【黛冬優子の親愛度レベル…8.5】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…26個】
134 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/17(日) 00:08:30.13 ID:7vcYdGG+0

というわけで本日はここまで。
次回自由行動の三回目からの再開となります。
次回更新は4/17の21:30ごろを予定しています。
それではお疲れさまでした。
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 00:12:19.10 ID:uJqK7/Ol0
>>1乙!
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 00:16:43.12 ID:ppJR+g6bO
乙ですー
137 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/17(日) 19:29:45.56 ID:7vcYdGG+0
申し訳ない…
本日の更新は厳しそうです

シャニ4thの準備もあって今週はいつなら更新できるか前もって伝えづらく、不定期になりそうです……
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/19(火) 00:13:36.68 ID:ZtOR69K7O
現地行かれるんですかね、楽しんできてください
更新はいつまでもお待ちしております
139 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/26(火) 22:14:09.95 ID:l9Y4+02f0
すっかりライブで惚けておりましたが更新を再開いたします。
明日4/27(水)は21:30分ごろから再開予定、ゴールデンウィークで頑張りたいですね。
またよろしくお願いします。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/26(火) 22:35:16.61 ID:vzbdo6AYo
了解です!
141 :少し早いですが再開します ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 21:12:38.45 ID:zxi6pPCO0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

私が口にした言葉は、きっと間違いじゃなかったんだと思う。
言葉に載せていた気持ちも、そこにある事実も、なにも間違っちゃいない。

ただ、タイミングとその間が少しだけ掛け違えていただけ。
相手が自分と同族であるということを見落としていただけ。

そしてそれはつまり、あの言葉は自分にとっても的を外れた言葉であるということ。

「……」

私にとって、それは_____


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…26個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 21:35:21.44 ID:4cXG/IBv0
1 透
143 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 21:44:19.51 ID:zxi6pPCO0
1 透選択

【第4の島 ジェットコースター】


動きもしないコースターとレールを茫然と見つめ立ち尽くす姿。
その影がこの場所で揺らいでから、まだ一日。
つい先ほども言葉を交わしたばかりだというのに、まるで陽炎のように映るのは人としての性質か。


ルカ「なんか、お互い忘れられない場所になっちまったよな」

透「……かも」


だが、こいつはあくまで『浅倉透』なんだ。
それは肯定的な意味合いでも、それでなくとも。

だから、こいつの姿をとらえられない……この虹彩が悪い。


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/27(水) 21:48:27.99 ID:jG4XawVu0
戦いなき仁義
145 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 21:54:17.99 ID:zxi6pPCO0

【戦いなき仁義を渡した……】


透「おー、映画のDVD。やるね」

ルカ「お前、映画とか好きなのか?」

透「うん。映画館とか結構行ってた」

ルカ「……過去形?」

透「吹き飛んじゃったんだよね、映画館。爆弾で」

ルカ「はぁ……?」

透「冗談」

ルカ「……わけわかんねー」

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します!】

-------------------------------------------------

こいつの存在を許容するとして、そのうえでどうしても気になることがある。


ルカ「なあ、コピーってのは……その、どういうことなんだ?」

ルカ「本物と全く同じ記憶と人格を持った存在ってのは……お前は、人では……あるんだよな?」


そんな言葉が出てきたのは、きっと変わり果ててしまったメカ女と言う存在があるからだろう。
目の前の人間も薄皮一枚剥けば金属製の骨格が姿を現さないとも限らない。
こいつが、そうでないという確証もないのだ。


透「えー、人じゃん。どうみても」

透「手も足も、二本ずつ。目玉だってほら、丸いし」

ルカ「そういう意味じゃなくてだな……」

透「……私が、『浅倉透』になる前……の話?」

ルカ「……!」


どんな電子機器でも、それを制御するOSを入れる前には、入れるための器となる素体があるわけで。
人間と言う存在が、人格を何かに埋め込んで成立するのなら……『浅倉透』にそれを明け渡した前任がいることになる。
私たちはその考えから自然と意識を背けていた。


透「……私が人だって証明するなら、それがいるか」

ルカ「よくもまあ平然とそんなことが言えるよな」

透「まあ、もう今更じゃん?」


屈託のない笑顔を浮かべるその顔が、なんだか妙に無機質に感じた。


透「……でもね、言ったじゃん。記憶は浅倉透本人と全く同じ。もともとあった記憶に上書きされる形で私はこうなった」

透「……前が何かなんて、知らないんだ」

ルカ「……!」


1.後悔はしてねーのか?
2.もともと前の人格なんてなかった、とか?

↓1
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 21:58:28.38 ID:jG4XawVu0
1
147 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:07:05.51 ID:zxi6pPCO0
1 選択

ルカ「記憶がないとしてもだ。その……自分の記憶を手放したことに後悔はねーのか?」

透「……どうなんだろ」


彼女は、自分のあごに手を当てて考え込むようなそぶりを見せた。
自分の記憶の中に飛び込んで、その奥底に眠る何かを引っ張り出すような……そんな試行錯誤。
呼吸は停止と再生を繰り返し、一つの場所に行きつく。


透「……それもわかんない」

ルカ「そればっかだな」

透「しょうがないじゃん、今の私は『浅倉透』。それには変わりないから」


自分のことでよくもここまで冷淡に言えるな、と思った。

でも、それは冷淡に見えるだけで、その実は対極であった。


透「……『浅倉透』は言ってるよ。後悔は知らないけど……満足はしてる」

透「自分の選択だしさ、やっぱそれはポジティブで行かないと損だと思う」

透「浅倉透として、この場所に立ってること。雛菜と、みんなと一緒にいること……それは私が私になるだけの価値があったと思うよ」


ルカ「……くっせえセリフだな」

透「んー、元の人格?」

ルカ「照れ隠しがお粗末だ」

透「はは、言えてる」


暖簾に腕押しってのはこいつみたいなやつに使う言葉なんだろうか。
どれだけ不安と疑念を押し付けられても、のらりくらりとかわして、平気な顔をしてきやがる。

こんなやつだからこそ……ある種の諦めがつくのかもな。

こいつは、これでいい。

これで、受け入れたっていい。


たとえ、何者だろうと。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【浅倉透の親愛度レベル…10.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…27個】
148 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:09:30.90 ID:zxi6pPCO0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


一日経ってもまだ私の頭はまるで整理がついていない。
次から次へと押し寄せる謎の数々に頭が焼き切れそうなほどの情報量。
変に昂ったような脳髄は、なかなか冷め切らない。

……今、あいつはどうなのだろうか。

感情が情報をシャットアウトし、獣のように直情的な反応を示していた美琴。
その熱はこの夜風の中でも冷めていないだろうか。

……近づくことが怖い。

その熱に、肌が灼き切られてしまいそうだから。
その刃に、皮膚から肉まで貫かれてしまいそうだから。
その憎悪が、再び私に向けられてしまいそうだから。

……でも、向き合うことが出来るのは私だけ。

纏わりつく責任が、鉛のように重たい。

「……クソが」

手に持ったドアノブは、もっと重たい。
149 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:10:53.86 ID:zxi6pPCO0
-------------------------------------------------
【第2の島 ドラッグストア】


「なんでこんなとこにいんだよ……」


今まで通り、自分の体を痛めつけるような特訓に打ち込んでいればまだ良かった。
鬱憤やストレスを感じる時間が勿体ない。
気を沈めている余裕があるなら、それも全部練習に注ぎ込む。
緋田美琴とは、そういう人間だったはずだ。
なぜ、こんなところで薬品の吟味などしているのだろうか。


「……手ェ離せ!」
「ルカ……!?」


不意をついてその手から薬品をひっぺがした。
プラスチックの瓶は手を離れて落下しても割れることはなく、コロコロと転がってラベルが目に入る。



「コトキレルX……劇薬じゃねえか」



150 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:11:36.08 ID:zxi6pPCO0

「……ルカには、見られたくなかった」
「私だって、見たくねえよこんな美琴」


顔を背ける美琴を、下から無理やり覗き込む。
その表情は、これまで見てきたどれとも違う切迫したもの。


「お前……本気で浅倉透を殺す気なのか……?」
「……」
「お前も聞いただろ? あいつはコピーだ、それにこっちに敵意はない」
「そんな話、ルカは信じるの?」
「だから本当のことかどうかは確かめてみないことにはって何回言わせんだよ!」


七草にちかの亡霊は、なおもしぶとい。
美琴の瞳はあの時と同じくワインレッドに揺れていて、私の言葉にも耳を貸していない状態だった。


「……退いて!」


私の体は強引に右手で突き飛ばされた。
背丈は私よりも10cm以上高い美琴、その体格差の前に私話す術もなく尻もちをつく。


「あ、おい! 美琴!」


冷たい床の上、走り去っていく美琴の背中を見送ることしかできなかった。

151 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:12:25.54 ID:zxi6pPCO0
____
______
________

=========
≪island life:day 18≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


あの後、棚を確かめたが薬品が持ち出された形跡はなかった。
私がすんでのところで止めたコトキレルX、あれ以外には手もつけていなかったらしい。
危ない淵だったのだとホッと胸を撫で下ろす。

だがきっと、この危ない淵は終わってなどいない。
美琴は何度も何度もその際に立ち、少しでも風が吹けばそこから落ちてしまう。
その手を掴んで、こっち側に引き戻さねばならないのに美琴は何度もその手を振り解く。

「クソ……病みそうだ」

……まるで、以前までの私だ。
美琴との解散を皮切りに勝手に自分の中で歪んだ感情を募らせて、接触という接触を拒んで認知も歪ませた。
他の誰の言葉にも耳を貸さず、自分だけが正しいんだと自己暗示をかけた。

要は、終わっていた。

私は美琴にそんな風になって欲しくない。
美琴は誰よりも華々しいステージが似合う女だ。
眩いばかりのライトの中で汗を散らし、声を枯らし、踊る姿に目を奪われる。

あいつが着るのは血に塗れた真紅のドレスなんかじゃなくて、スパンコールを散らしたステージ衣装だ。

「……チッ」

面倒、見てやらねーと。

152 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:13:57.61 ID:zxi6pPCO0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】

透「おはよ」

ルカ「……ん」

透「元気ないね」


お前のせいだ、と言ってやりたいがグッと飲み込んだ。
こいつはこいつなりに大変な時期、下手に背負わせたくない。
適当に誤魔化して、すぐに自分の席に逃れる。


智代子「あれから一生懸命思い出そうとはしてみてるんだけどね、全然思い出せないんだ……樹里ちゃんと凛世ちゃん……二人に何があったのか」

雛菜「雛菜もサッパリです〜、もう幼なじみでは雛菜しか残ってないって言われても実感もないですし〜」

透「ごめん、私もそれは聞かされてなかったから」

(そういえば浅倉透は、私たちの失った記憶に関して『忘れたままの方がいい』とか言ってたが……)

(その割に、前回のコロシアイが明らかになってなお焦る様子はない)

(あいつが言っていた失った記憶ってのは、これのことじゃねえのか……?)

(それなら他に何を忘れてるってんだ……?)


そのまま私たちは例のコロシアイについて話し合いながら食事を口に運んだ。
実感のない喪失、食事との噛み合わせはあまりいいもんじゃないな。
ここ最近、食うメシがあまり美味しくないのは気持ちの持ちようなんだろう。
少なくとも、隣の空席が埋まらない限りは私も食事を楽しむ余裕はない。


153 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:16:13.00 ID:zxi6pPCO0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

美琴と一緒に飯を食うようになったのも、そんなに前の話じゃない。
千雪に強引に連れられての会食を発端に、以降は一緒に食事をするようになって数日。
たったそれだけの期間、島に来る前の孤独な食事の方が圧倒的に回数も時間も上なのに、もうそれでは落ち着かない体になってしまった。

水槽の中のヤドカリをつつく。
海水浴場から連れてきたこいつは、ずっと一人。
この狭い空間の中に押し込められて、仲間とも切り離されて、孤独の中で生き、そして死んでいく。

「……悪いな」

それでも逃してやれないのが、人間のエゴだ。
孤独から引き戻された時の執着が、この水槽の蓋を外させない。
こいつを逃してしまうと、また孤独になるような気がしてしまう。

「……美琴」


【自由行動開始】


-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…27個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 22:29:21.83 ID:jG4XawVu0
ちょこ
155 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:34:55.86 ID:zxi6pPCO0
1 智代子選択

【第4の島 バイキング】


智代子「あれ、ルカちゃん? どうしたの、観覧車を満喫中?!」

ルカ「この面がそんな様子に見えるかよ」

智代子「あはは……どうやら違いそうだね……」

ルカ「それよりお前こそどうしてここに居んだよ」

智代子「いや……このアトラクションの身長制限を聞きつけまして、検証のために訪れたんですが……」

智代子「ホントに私じゃ乗ることができませんでした……ガックシ」

(……確かにこいつちっせえよな)

中学生と大差ない身長のくせして、やたら気丈にふるまう甘党女。
あまりこうして二人で話をするような機械には恵まれなかったが……せっかくだ。
今回はちょっと付き合ってやるか。


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 22:35:38.75 ID:jG4XawVu0
新品のサラシ
157 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:45:52.75 ID:zxi6pPCO0

【新品のサラシを渡した……】

智代子「こ、これは……サラシ……」

ルカ「……」

智代子「ジャパニーズ・切腹に使う奴だよね……?」

ルカ「いや、それだけじゃねえと思うけど……」

智代子「……凛世ちゃんなら、使い方も詳しいんだろうな」

ルカ「……」

(まあ、普通の反応か……)

-------------------------------------------------

智代子「ルカちゃんってすごくかっこいいよね! なんだかうちの事務所にはいない、クールさ……とも違ったかっこよさ!」

ルカ「……」

智代子「……ル、ルカちゃん? どうしたの、そんな睨みつけるような……わ、私何かまずいこと言っちゃった……?」


……こいつだって、内心それどころじゃねーはずだ。
ユニットの最年少、核ともいえる存在を失って間もないのに、そのうえ頼りにしていた年上はあんなことになっちまって。
それでいて、他の仲間は……


ルカ「……いい、変に取り繕うな」

智代子「……!」


____とっくに死んでいた。



ルカ「……痛々しいんだよ、そういう素振り。今ここで生き残ってるやつに、そんな明るさなんてあるはずない」

ルカ「心に突き刺さったモンの裏返しだって言うことが、いやでも分かっちまうのが……こっちだってつらいんだよ」

智代子「……」

智代子「ごめんね、ルカちゃん。……あはは、私ったら弱いなあ……どれもこれも、辛くて、頭の整理がつかなくて……」

智代子「頑張らなきゃ、頑張らなきゃ……それだけで頭がいっぱいになっちゃってるのかも」

ルカ「……」

智代子「……本当は、今すぐにでも叫び出したいし逃げ出したいよ。でも、果穂は最後まで逃げなかったから」


1.お得意の甘いもんはどうしたんだよ
2.……乗るか、なんかアトラクション

↓1
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 22:48:42.34 ID:4cXG/IBv0
2
159 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:56:32.10 ID:zxi6pPCO0
2 選択

甘党女の言葉が、耳にも辛くて私は気が付けば背を向けていた。
反対に昇った太陽がまぶしくて思わず手で瞼の上を覆う。


ルカ「……とりあえず、出るぞ」

智代子「え、ルカちゃん……?」


ここから立ち去りたいと思った。
この太陽が照り付ける子の地面は妙に熱くて、立っていられない。
身体と本能は、涼しさを求めた。

焼ききれそうな脳を、覚ますための涼しさを。


ルカ「このアトラクションじゃ身長制限、かかっちまうんだろ?」

智代子「……!?」

ルカ「……小学生も、小金持ちも……どっちも守りたいもののために最後まであいつらはあいつらを貫いたんだ」

ルカ「だとしたら……それにお前が報いるんだったら、笑顔を振りまくアイドルってのを貫くのも生き方の一つだと思う」

ルカ「……それが、自分自身の力で難しいなら……環境を借りろ」

ルカ「私が言いたいのはそれだけだ」

智代子「……ル、ルカちゃんらしからぬ甘いチョコのようなお言葉……!!」

ルカ「……るせー、あんま言うと私は帰るからな」

智代子「ああ、ごめん! ごめんねルカちゃん!」


そこからは甘党女とアトラクションをいくつか梯子。
コーヒーカップにメリーゴーランド、どれも私の趣味じゃあねえが……まあ、悪くはなかった……かもな。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【浅倉透の親愛度レベル…6.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…28個】
160 :おそらくこの安価でおしまいです ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 23:00:56.02 ID:zxi6pPCO0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

部屋に戻ってもあの間の抜けたメロディが頭から抜けなかった。
とぼけた世界に無理やり引き込もうとする、あの押しつけがましい夢の世界。
そこに浸るなんてこと、生まれてこの方避けてきた節すらある。

あんなので元気を取り戻す、なんてそれこそ夢物語じゃないのか。

そう思っていた。

いや、もちろんそれにほだされたわけではないし、私が得たのは疲労感だけだ。
慣れないことはするべきじゃない、それは間違いない。

ただ……


『ありがとう、ルカちゃん!』

「……ハッ」


元気を得られる人間は、確かに存在することは、学ぶことができた。

経済とは、マネージメントとは、どうやらそういうことらしい。

【自由行動開始】


-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…28個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 23:03:38.58 ID:jG4XawVu0
夏葉
162 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 23:11:02.75 ID:zxi6pPCO0
夏葉選択となったところで本日はここまで。
次回は4/28(木)21:00〜再開予定です。
それはお疲れさまでした。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 23:15:00.98 ID:jG4XawVu0
乙です!
164 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/04/28(木) 02:43:33.22 ID:xhThQAmo0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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165 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/28(木) 20:59:10.70 ID:7IvLQWSG0
【第1の島 空港】

夏葉「……あら? ルカ、どうしたの、こんなところで」

ルカ「……流石に遠目でもお前がいるかどうかはすぐ分かるな。金属光沢が眩しいぞ」

夏葉「ふふっ、ありがとう。毎朝磨いて手入れをしている甲斐があるわね」

ルカ「……それよりお前こそ何の用だよ」

夏葉「ロケットパンチはもう一度見せたでしょ? あれを再度装填するために使える燃料があればいいと思ったのだけど……どうやらあては外れたみたいね」

ルカ「まあ、ここのは全部ハリボテだからな」


……そんなこと、こいつ自身もわかっていただろうに。
アンドロイドに作り替えられて、うまいこと機能していない……わけじゃあるまいし。

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 21:07:50.56 ID:jq56BIj90
1 【壊れたミサイル】
167 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/28(木) 21:16:58.86 ID:7IvLQWSG0
1 選択

【壊れたロケットを渡した……】


夏葉「こ、これは……本物の、ロケットなの……?」

ルカ「みたいだな、見ての通り錆びついちまってるから使えたもんじゃねえけど」

夏葉「物騒ね……ひとまず預かっておくわよ」

ルカ「え? お、おう……」

夏葉「なるほど、オーパーツのようなものなのかしら……」

ルカ「……何をそんなに見てんだよ」

夏葉「……調べてみる価値はあると思うの、ここに記された歴史、そして干からびた時間」

夏葉「もしかすると、私たちにとって何かプラスなものになるやもしれないじゃない?」

(まあ、普通に喜びはしたか)

-------------------------------------------------

こんな言葉をかけるべきじゃない。
それは流石に私でもわかっている。
こいつはこいつの選んだ道に後悔などしていない、むしろそれを誇りに思ってすらいるだろう。
でも、その妙に金属光する体を見ると、こう呟かずにはいられない。


ルカ「……お前、人間に戻りたくないのか」

夏葉「ルカ、よしてちょうだい。そんな現実離れした夢を口にするなんてあなたらしくないわ」

ルカ「……でもよ、今のお前の体に元々のお前だったパーツなんて何一つ残ってない……そんなの、お前_______」

夏葉「今の言葉、透の前で口にするのは控えてちょうだいね」

ルカ「……!」

夏葉「私は選択を後悔しない。あの時動いていなかった方が後悔をしていたし、それに今はみんなを守るだけの力を手に入れた」

夏葉「断言できるわ、私がこの姿になったのは正解だと」


流石はアンドロイドと言ったところだろうか。
覚悟を示すその仁王立ちは、人間のそれ以上に全くと言っていいほどに微動だにしない。
体に通うものの違いが、その両脚に確かな根を張らせていた。

でも、その芯は私たちのよく知るものと同一だ。
信念という言葉が、称するにはふさわしい。


夏葉「でもね、やっぱり人間の体のほうがよかったことだってあるの」

ルカ「……」

夏葉「人間の時には当たり前だったことでも、今の私ではそうじゃない」

夏葉「そのことに切なさを感じなくはないわ」


1.飯が食えねえのは辛いよな
2.飲み物が飲めねえのは辛いよな

↓1
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 21:19:44.45 ID:5OeIe0Kt0
1
169 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/28(木) 21:29:11.55 ID:7IvLQWSG0
1 選択

ルカ「そりゃそうだよな……飯が食えねえなんて、人生の楽しみも何割減だっつー___」

夏葉「いえ、そうじゃないわ。この体には味覚もあるのよ?」

ルカ「えっ……?」

夏葉「エネルギー炉で燃焼して自家発電をおこなっているの、体外充電以外にも動力源として確保できるのよ!」

ルカ「すげーテクノロジーだな……」

夏葉「私が困っているのは、汗をかけないことよ」

ルカ「汗……? んなもん、かかないほうがいいだろ」

夏葉「何を言っているのルカ! 汗は代謝の証明のようなものよ。あれがあるからこそ運動をしている意味がある、汗がなきゃそれは運動といえないの!」

ルカ「はぁ……?」

夏葉「同じ文脈で筋肉痛も欲しいところよね、あなたも覚えがあるでしょう? 激しいトレーニングをしたはずなのに翌日に筋肉痛が来ないとかえって不安になる現象」

ルカ「あー、それはちょっとわかるかもな……」

夏葉「私は常にそれなの……その意味では生きている実感に乏しい、と言えるかもしれないわね」

ルカ「そこまでいうか?!」

夏葉「人間は運動あってこそ、そうでしょう?」

ルカ「言わんとすることはわかるけど……」


汗をかくだのなんだの、熱血っぽいことからは無縁な私には理解に苦しむ話だった。
でも、それを語るこいつは真剣に悩んでいる様子で……それだけに胸が痛む部分もあった。

……汗、筋肉痛か。

あって当然と思えるものが突然なくなるのは確かに怖い……かもな。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【有栖川夏葉の親愛度レベル……9.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…29個】
170 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/28(木) 21:33:27.42 ID:7IvLQWSG0
【ルカのコテージ】

身体を動かして、それに起きる反応で初めて確かな実感を得るってのはなんというか、あいつらしいというか……
どっかで聞いたような話なんだよな……

それにしても、汗や筋肉痛がないと落ち着かないってのはなんか言い方は悪いがマゾヒストじみてるような……?


ルカ「……くッ、ハハッ」


やっぱり283の連中はおかしなやつしかいねーのな。


【自由行動開始】


-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…29個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 21:36:21.23 ID:iDW/96Zv0
1.冬優子
172 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/28(木) 21:47:30.73 ID:7IvLQWSG0
1 冬優子選択

【第3の島 病院】

ルカ「……冬優子」

冬優子「……あんたってなんでこういっつもタイミングが悪いワケ?」


私の姿を見るなり冬優子は露骨にその顔をしかめた。
来てほしくないタイミングだったんだろう、すぐに不機嫌な表情は向こうを向いた。
でも、拒絶の言葉は吐かない。
ただ無言のまま廊下を眺めて、立ち尽くしている。

私はそれを合図と受け止め、冬優子の近くの椅子に腰かけた。

私の隣に彼女が座り込んだのは、そこから数分後の事だった。


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 21:51:50.62 ID:iDW/96Zv0
1.【ユビキタス手帳】
174 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/28(木) 22:05:06.31 ID:7IvLQWSG0
1 選択

【ユビキタス手帳を渡した……】


冬優子「……あんたってどんな教育受けてきたの?」

ルカ「開口一番に失礼すぎんだろ……」

冬優子「いや、褒めてんのよ……そんななりしてプレゼントのセンスが結構いいのが謎すぎて」

冬優子「変にフリフリのもん渡されるよりこういう実用的なもん渡されるほうがこっちとしても助かんのよ。立場上悩みも多いし、整理つけたいことも多いから」

ルカ「……苦労人だな」

冬優子「そんな任務背負うつもり全くなかったのにね、ほんといい迷惑だわ」

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します】

-------------------------------------------------

冬優子「……この前は、悪かったわ。ふゆも虫の居所が悪くて、あんたに当たっちゃった」

ルカ「……え? おう」

冬優子「……なによその生返事」

ルカ「いや、冬優子に謝られるのはなんかしっくりこねーっていうか……悪いのは私だろ?」

冬優子「あんたは口下手なりにふゆを励まそうとしてたじゃない、何が悪いってのよ」

ルカ「……」

冬優子「……ふゆはね、ずっと苛ついてんのよ。口ばっかで偉そうに、ふんぞり返るしかできない挙句……誰も守れない」

冬優子「そんなふゆ自身に」

冬優子「……あんたの言葉は、その事実を改めて突き付けて来たわ。ふゆが愛依を殺したって」

ルカ「そんなつもり……」

冬優子「分かってる。ふゆの曲解だって」

冬優子「でも……無理なのよ、あいつが恨むとか恨んでないとか、そういうんじゃないの……」

冬優子「ふゆが、ふゆ自身が何よりも自分のことを恨んでるんだから……!」


この姿は、前にも見たことがある。
明かりの落ちた部屋の中、シンクの前で髪を乱雑に掻き揚げて目元を力強く抑え込んで、奥歯を食いしばっていたあの姿。

美琴とユニットを解散した時の、あの夜の_____鏡に映っていた私の顔だ。

他に責め立てるものが見つからず、自らののど元にナイフを突き立ててている。
そんなかつての私が再び目の前に姿を現した。


(どうすれば……どうすればいい……)

(今の私が……冬優子のために、何を……)


1.冬優子を突き飛ばす
2.自らの手首をカッターで切る

↓1
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 22:13:56.38 ID:jq56BIj90
1
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