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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

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665 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:41:53.37 ID:kJ67nvvf0

俗な言い方をすれば、愛情なんて言えてしまうんだろうが……私にはその二文字に収まるものではないと思う。
冬優子が芹沢あさひに向けているものはそんな単純なものじゃない。
本気で煩わしい存在だと思っているし、本気でいない方が楽だと感じているときもある。
その一方で、本気で自分には欠かせない存在だと思っているし、本気でずっと笑っていてほしいと思っている。
そんなちぐはぐな二律背反を積み重ねた感情を、たった二文字で表現しきれるはずがない。


____ましてや、その果てに自分の命を懸けた証明があるのだから。


冬優子「……モノクマ、とりあえず投票タイム。お願い」

あさひ「……冬優子ちゃん!」

冬優子「このガキがごねだす前に、早く」

モノクマ「わかりました! それでは急いでまいりましょう!」

モノクマ「投票ターイム! オマエラはお手元のスイッチでクロだと思う人物に投票してくださーい!」

モノクマ「議論の結果導き出されたクロは正解なのか、不正解なのかー!」

モノクマ「さあ、どっちなんでしょうかね?」

666 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:42:52.95 ID:kJ67nvvf0

-------------------------------------------------


      【VOTE】
〔冬優子〕〔冬優子〕〔冬優子〕

   CONGRATULATIONS!!!!

     パッパラー!!!


-------------------------------------------------
667 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:43:36.31 ID:kJ67nvvf0





【学級裁判 閉廷!】





668 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/19(木) 23:47:00.94 ID:kJ67nvvf0

というわけで4章の学級裁判が終わったところで本日はここまで。
ちょっとコンマ参照のゲームが多すぎましたね……
ピトス獲得してなかったらもっと泥沼になってたな……

次回裁判終了を投稿して、長かった4章もようやく終わりとなります。
金土は予定が入っているので、更新できるとすれば日曜になるかと思います。
また21時ごろより、安価はございませんがどうか本章も最後まで見守ってやってください。

それではお疲れさまでした。
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 00:06:49.07 ID:aOfenW/40
お疲れさまでした
冬優子……
正直キャラ的に4章クロ枠っぽいよなあ……ってずっと思ってたから解釈一致ではあるけど悲しい……
冬優子の反論をピトス込みでギリギリ上回ってるところとか、あさひの反論に復活からのピトス抜きでの突破とか、
冬優子の反論の盾の耐久が最後の1枚の1だけ残るところとか、最後の発掘でやたら同じコンマが出てたりとか、
よく見ると全体的にコンマがめちゃくちゃ頑張ってる裁判だった
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 01:49:24.02 ID:2nqnjoEX0
>>1

最後に衝撃の事実・・・
果たしてその狸は誰でそいつは次の章で散るのか?
それとも最後の章で姿を表すのか?
どちらにしろ美琴は透をその狸って疑う事になるんだろうなぁ
671 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/05/20(金) 02:43:20.21 ID:z4U57Ial0
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672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 03:19:18.50 ID:p5cuD51Y0
>>670
展開潰しする奴嫌い
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 07:00:39.37 ID:2nqnjoEX0
誰にでも予想できることを言っただけで
展開潰しと申されましてもな・・・

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 16:48:05.68 ID:5CiVek0YO
お疲れさまでした
検討プロセッシングすき
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 17:18:20.98 ID:p5cuD51Y0
>>673
言い方が悪かったゴメン

お前そのものが嫌い
いつだか作中のトリックが理解出来なくてゴネてた奴を連想する
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/20(金) 22:15:14.35 ID:czaNATSK0
なんやこのちゃおラジみたいに性格の悪いやつ(困惑)
677 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:38:00.76 ID:6yJfGnKD0
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CHAPTER 04

アタシザンサツアンドロイド

裁判終了



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678 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:39:22.66 ID:6yJfGnKD0

モノクマ「ピンポンピンポン! 大当たり〜! 超大学生級のアンドロイド、現代叡智の結晶とも言うべき美しき有栖川夏葉さんをメッタメタのガッチャガチャにぶっ壊して殺害したのは……」

モノクマ「綺麗なバラにはトゲがある! 超専門学校生級の広報委員・黛冬優子さんなのでした〜!」


犯人として指摘された。
それはものの数十分と経たないうちに蹂躙されて、命を奪われることを意味する。

それを前にして、冬優子はなおも態度を変えなかった。
それは、これまでに私の見てきた冬優子のあり方と相違しなかった。

人並みに悩んで、人並みに苦しむ彼女……
それでも、自分自身の決断には人一倍の責任感を持ち、そしてその評価には正面から向き合う強さがある。
元々備わっていたものなのか、それともアイドルとして活動する中で身につけた素養なのか、
283の人間じゃない私からすれば分からないが、この点において彼女が私より遥かに『大人』であることは間違いない事実だ。

679 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:40:23.18 ID:6yJfGnKD0

智代子「……ふゆちゃん、もう聞かせてもらえるよね?」

冬優子「……ああ、話さないといけないわね」


園田智代子はただの遺された者ではない。
一度黄泉より舞い戻ったと思った有栖川夏葉、その期待と喜びを踏み躙られるような形で奪われてしまった。
冬優子の犯行によって生じた精神的ダメージはそれだけ大きい。
それを裁判の最中、進行のためにと不意にされたことを芳しく思っていないのが見てとれた。


智代子「さっき……学級裁判中、ふゆちゃんは言ってた。この殺人は夏葉ちゃんも望むところだったって」

冬優子「ええ、言ったわ」

智代子「本当に……そうなの? 夏葉ちゃんは自分から、ふゆちゃんに殺されにいったの?」


だが、冬優子は園田智代子の言葉を前にして少しためらうような素振りを見せた。
その言葉は間違ってはいないが、中央を正面から射止めたわけではない……そんな表情だ。


冬優子「いや、そうじゃないわ……死はあいつも望むところだったけど……ふゆもそうだったの」

智代子「えっ……?」


そして実際冬優子が口にしたのは、これまでの想定とはまた異なった事実だった。
680 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:41:08.85 ID:6yJfGnKD0





冬優子「ふゆもあいつも、本気で殺し合った。どっちが死んでも、おかしくなかったのよ」



ルカ「お、おい……どういうことだよ、それ!」





681 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:42:29.34 ID:6yJfGnKD0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆


真夜中だと言うのに電飾は灯ったまま。
誰を載せるでもない観覧車はなおも動き続け、真っ黒な波にポツリポツリと丸い明かりを落とし続けている。
夜の本来あるべき静けさを嘲笑うような場内BGMを耳にしながら、その時を待っていた。

組んだ腕にはロケット花火を隠し持っている。
数日前の絶望病の一件で隔離生活を強いられた時、あさひが悪用しないようにふゆが一通り押収したものだ。

……ふゆはこれで、命を奪う。
正確にはロケット花火で視界を奪ってからいくつかの工程はあるけれど、直接的か間接的かくらいのもので、これが凶器の一部であることには相違ない。
そして、これが凶器として作用しうる相手は限られている。


「……あなただったのね、冬優子」

682 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:44:25.32 ID:6yJfGnKD0

標的は姿を表した。
これから生死をかけたやりとりをしようと言うタイミングで、その標的は不気味なほどに物怖じをしていなかった。

いや、彼女らしいと言えば彼女らしい。
自信に満ちた表情を努めてみせようとしている彼女なら、命を落とす直前、そのコンマの一秒まで表情を崩すことはないだろうと思った。


「悪いわね、こんなことに付き合わせちゃって」
「何も謝ることはないわ、あなたも大きな決断を下した末の今なのでしょう?」


有栖川夏葉の推測した通りだ。
実際行動に移すには大きな障害があった。
人を殺めるなんてことはこれまでに経験もないし、きっとその一線を超えてしまえばふゆはこれまでのふゆではいられなくなる。
これまでのどれでもない、新しい自分を作り出さなければ到底耐えられない。
でも、そんなことに耐えられる器などふゆに作り出すことができるのだろうか?
ふゆはそこまで傲慢でも、図々しくもない。

そして、自分が手を下した瞬間に生じるリスク。
目の前に吊り下がる天秤を、正しき方向に傾けることができるのか。
みっともなく生に縋り付くような真似をしてはしまわないか。
絶対に完璧な黛冬優子を、最後の最後で自分の手で台無しにすることがあってはならないのに。
683 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:45:49.11 ID:6yJfGnKD0

そんなしがらみの一切を、ふゆはねじ伏せた。
正確には目を瞑っただけかもしれない。
それでも、いい。
この一歩を踏み出すことには大きな意味があった、誰かが踏み出さなくちゃいけなかった。


「あんたこそ、別に来なくてもよかったのに。一眼見れば分かったでしょ、この手紙の送り主は殺すつもりで送ってるって」
「あなたと同じ気持ちなのよ。私も……あなたと同じで守りたいものがある。その志を同じくするものとなら、命をかけてもいいと思った」


今更この場に置いて有栖川夏葉の見立てを否定する気もなかった。
ふゆが犯行に及んだ理由は、誰の目に見ても明らかだったから。
この島に来る前から、ずっとずっと口では否定して、心の中でも自分に言い訳をし尽くしてきたが……この局面になればそれは意味をなさないと思う。

684 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:47:08.71 ID:6yJfGnKD0



____ふゆは、今。



あさひを守る為にこの場に立っている。
別に自分だけなら飢えて死んだって構いやしない。

でも、あいつはただでさえ他の連中に不審な目を向けられているのに、それに加えてひもじい思いまでさせて、どんどん衰弱していっている。
それを目の前で見せられて黙っているほど、ふゆはいい子ちゃんじゃない。
きっと、愛依ならこの状況でも誰かを手にかけることなんて頭に浮かびもしないと思う。

だとしても、ふゆはふゆだから。
685 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:48:20.72 ID:6yJfGnKD0


「だから……全力で行くわ。全力であなたの命を奪いに行く、全身全霊を持って殺させてもらう」


有栖川夏葉はふゆを見据えて、低く腰を落とした。
名家の生まれなのだ、武の心得だってあるんだろう。
素人目にも感じる気迫が、ふゆの肌をチクチクと刺した。


「上等、あんたこそ……殺されても文句言うんじゃないわよ」


だからといってそれに臆するようなふゆでもない。
こちらには対抗策だって用意してあるんだ、あとは一か八かの博打に挑むだけ。
ギャンブルなら、弱みを見せた方が負ける。
ふゆはこんなところで、負けてらんない。


「それじゃあ、行くわよ。次に合図した時が、始まり」
「ええ、いつでもどうぞ」
「……それじゃ」
686 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:49:15.19 ID:6yJfGnKD0





「死んでもらうわ」





687 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:50:18.98 ID:6yJfGnKD0
◆◇◆◇◆◇◆◇


智代子「夏葉ちゃんとふゆちゃんで……殺し合った……?!」

冬優子「……何も正面から殴り合いをしたわけじゃない。ルカの言った通りふゆがロケット花火で不意打ちをしたんだから激しい接触はなかったわ。でも、有栖川夏葉はふゆにスイッチを押されるその瞬間まで本気でふゆを殺そうとしていたわ」

智代子「そ、そんなの……本気かどうか……」

冬優子「わかるわよ、殺意をふゆは真っ正面から浴びたんだから」


きっと、冬優子の言うことは嘘ではない。
冬優子の口から語られたやりとりも、そこに込められている他の誰かを守りたいと言う想いも、これまでに見てきた二人と相違なかった。
有栖川夏葉と黛冬優子、お互い一度は大切なものをその手から失ってしまった身……
今回の動機で衰弱し、失われていく、最後の大切なものを前にして、黙っていることはできなかったのだろう。

688 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:51:48.01 ID:6yJfGnKD0

冬優子「だからといって責任逃れをするつもりもない。あんたから大切な存在を奪った事実は変わらないんだから、ふゆはその咎めと謗りとを受け入れる義務はある」

冬優子「……存分に、詰ってくれていいわ」

智代子「……」


冬優子はそう言うと、黙って園田智代子を見据えた。
相変わらず、憎たらしい女だ。
そこまで堂々と語られたら、こちらの方が言葉に詰まる。
実際……園田智代子は口を開かなかった。






パンッ


そして、その代わりに乾いた音が響いた。
689 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:53:20.34 ID:6yJfGnKD0

智代子「きっと、夏葉ちゃんが生きてたら『私と冬優子は真っ向勝負で雌雄を決したの。結果が不服であっても、それに茶々は入れないでほしいわ』って言うと思う」

智代子「……だからこれは、果穂の時……ふゆちゃんが夏葉ちゃんの顔を叩いた分だよ」


園田智代子の中にはやるせない思いが渦巻いていた。
冬優子の言うことには信憑性もある。
有栖川夏葉の死はきっと本人にとっては不本意なことでもない。
その敗北を受け入れるだけの覚悟をして、事切れたと思う。

でも、それとは別に感情は湧くのだ。
かけがえのない存在を失った相手を、本人がそうだったからとすぐに許せるほど甘口の人間でもない。
かといって自分の感情の赴くままの行動をとれば、それは仲間の決意と死とを踏みにじる行為になる。
その思慮の果ての平手打ちだった。
あくまで仇討ちではなく、いつかのやり返し。
そういう体をとって、想いをぶつけた。


冬優子「……優しいのね、あんた」


赤く染まった頬をさすりながら、つぶやいた。


智代子「武士の情けだよ、ふゆちゃん」
690 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:54:44.86 ID:6yJfGnKD0

そして、順番は回る。次に冬優子が向き合うべきなのは他でもない自分の仲間。
冬優子自身が、遺して逝く相手だ。


あさひ「冬優子ちゃん、本当にわたしの為に……夏葉さんを殺したっすか?」

冬優子「……」


投票が終わった今、その回答を拒む理由が見つからない。
冬優子は大きなため息をついてから、中学生の方に向き合った。


冬優子「……あのね、目障りだったのよ」

あさひ「……え?」

冬優子「こっちのことなんか一切考えないで、自分の興味関心の赴くまま、それで散々振り回したかと思えば何故だか収まり良く事態がまとまっている。そういうあんたの持ってるところが、すごく目障りだった」

あさひ「……冬優子ちゃん、わたしのことそんな風に」

691 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:56:10.71 ID:6yJfGnKD0

冬優子「でも、この島に来て、どんどん弱っていくあんたの方がよっぽど目障りだった」

冬優子「他の人間に疑いの眼差しを向けられるわ、制約のある生活を強いられて自由を失うわ、果てには食事も取りあげられてどんどん弱っていくわ」

冬優子「……あんたの、そんなところ見たくなかったのよ」

冬優子「……鬱陶しくてしょうがないから。あんたを取り巻くあれこれを一気に解消したの、ただそれだけ。他意はないわ」


あくまで字面上は、自分のためという体を装ってはいた。
でもその文脈が、『ある特定の人物のため』であることは明白で、本人もそれを流石に解したらしい。
初めこそ拒絶の言葉に面食らっていたが、すぐに前のように『ユニットのお姉さん』に向ける顔色に変わっていた。


冬優子「まあ、でもよかったでしょ? これであんたにかかってた嫌疑は晴れた。ルカにかけられてた言いがかりも全部払拭して、自由の身よ」

あさひ「……」


ただ……それでも中学生には不服だったらしい。
頬を少しだけ膨らませて、抗議の意思を込めた凝視。
らしからぬ雰囲気に、冬優子も少しばかりたじろぐ。

692 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:57:40.10 ID:6yJfGnKD0

冬優子「……なによ、黙ってふゆの目なんか見て。あんたらしくもない」

あさひ「冬優子ちゃんは、本気でそう思ってるっすか?」

冬優子「……はぁ?」

あさひ「わたしは、嫌っす。絶対絶対……冬優子ちゃんとお別れなんかしたくない。それなのに、冬優子ちゃんはやっぱり自分のことばっかり」

冬優子「あんた聞いてた? ふゆが犯行に及んだのは、あんたを守るためで……」

あさひ「違う、それはただの目的と理由で……冬優子ちゃんはその過程をわかってないっす」

冬優子「何を言ってんの! ふゆがあんたのためにどんな決断をしたのか……」

あさひ「もう今、8人しかいないんっすよ? それに、冬優子ちゃんが死んじゃったら7人になる。それに愛依ちゃんも、果穂ちゃんもいない……」

あさひ「なんで、なんでそんなことをしたっすか? なんでみんな、わたしを一人にするっすか……?」

冬優子「……あんた」


あさひ「わたしの気持ちを考えないで、そんなことをするなんて……冬優子ちゃんらしくないっすよ」


芹沢あさひの言う通りだ。
冬優子が犯行に及んだ理由、それは独りよがりで押し付けがましい善意とも取ることができた。
たとえ容疑が晴れようとも、空腹が解決しようとも、黛冬優子という存在を失うことが芹沢あさひにどれだけ大きな衝撃を与えるのかを無視した動機。
自己正当化の出汁に使われていることに気づいた芹沢あさひは、その疑問を口にしたのである。

693 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:58:45.93 ID:6yJfGnKD0

冬優子「……それは、その」

あさひ「わたしは他のみんなに疑われても、冬優子ちゃんが生きてる方がいいっす!」

冬優子「そんなこと、言ったって……」

あさひ「ねえ、冬優子ちゃん!!」


それは、冬優子自身に教えられたこと。
小宮果穂との死別を一度経験した彼女は、その死の間際に感情のありのままをぶつけ合うことで、そこに通わせたものを強く実感することができた。
だから、今回も彼女は歳のままの等身大の子供として、冬優子の元に縋りついた。
ごねたところで何が変わるでもないと知っていながら、その我儘を押し通そうとした。
声の限り、自分の感情を吐き出し続けた。

現実は当然、変わらなかった。
この状況においても、モノクマはただ無表情に動くこともなく、時間が経つのを待ち侘びている。
冬優子の死は、逃れられない運命。


……でも、冬優子自身の在り方には揺らぎの色が見えた。
694 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 20:59:40.13 ID:6yJfGnKD0





冬優子「ふゆを、これ以上……困らせないで……」





695 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:01:19.55 ID:6yJfGnKD0

ずっと、奥底に押し殺していたものが顔を出した。
冬優子にも芹沢あさひだけが遺されるという事実はきっと理解していた。

でも、自分が動かなければ結局彼女は救われない。
自分の命と引き換えでしか掬い上げることはできない。
そう考えた時から必死にその事実には目を瞑っていた。
ただ、ありのままの感情を改めて自分の目で、耳で、受け止めれば話は違う。
嫌だろうとなんだろうと、直視せざるを得ない。
冬優子の心中に埋め込まれた支柱は、少しずつ、その根本から突き崩されつつあった。


冬優子「何よ、どうすればいいわけ……? もう、取り返しは効かないのよ……? ふゆがあいつを殺したって言う事実はどうやったって覆らないの……!」


やがて、冬優子の声にもすすり上げるような息が混ざり込む。
後悔とも違う、自分の犯した行いとそれに生じた責任とに向けた半ば狂乱に近い感情の発露。
壁や証言台が、彼女の声に応えるようにピシピシと軋んだ。
696 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:02:25.61 ID:6yJfGnKD0



冬優子「ふゆはあさひのために、何をしてやればいいの……?」



そして、冬優子はその疑問を口にした。
その疑問は過去なのか、現在なのか。
我道を行く冬優子らしからぬ言葉だった。

ただ、それは彼女自身の純粋な母性の表れ。
共に長い時間を過ごし続けた仲間に対して、何かをしてやりたいというだけのこと。
でも、冬優子自身からすれば、この好意というのは照れ臭さの裏に隠して、ずっと避けてきた道の一つでもあった。
歩き慣れない道は、とかく迷いやすい。
愛情表現を真っ向からはしてこなかった冬優子は、この局面で困り果ててしまっていた。
697 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:03:18.76 ID:6yJfGnKD0





ルカ「……頭の一つでも、撫でてやればいいんじゃねーのか」





698 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:05:03.76 ID:6yJfGnKD0

それならば、この島で共に生きてきた仲間として、そして何より……冬優子の理解者として。
彼女が道に迷ったときには、その道標を示してやりたいと思った。
私も愛情表現なんてものに親しみはないし、美琴とは実際今もうまくいってないわけで講釈を垂れるような権利はない。
客観的な立場から、俗的な一意見を述べただけだ。


ルカ「冬優子……悪いけど、オマエが死ぬことはもう私たちにもどうしようもできない。だけどよ、散り際をどうするかってのはオマエ次第……それって、オマエがいつも気にかけてることだろ?」

ルカ「徹底したセルフプロデュース、それがオマエの持つ強みだと私は思ってる。それなら……最後の最後、その散り際を……綺麗事で飾り立ててやったって、バチは当たらねえさ」

冬優子「ルカ……」

ルカ「バチを与える側の、カミサマからの進言だ」


最後にカミサマを出汁にしたのは、今から死にいくものへの餞には少しでも気休めになる言葉をかけたかったから。
別に信心深いわけでもないし、死後の世界なんてものを論じる気もないが、神という存在を借りてでも安心させられる言葉を使いたかった。
私を前にしたこんな時でも気負わないように、その荷を下ろしてやろうとした。
699 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:06:19.41 ID:6yJfGnKD0

その目論見は、実際成功したらしい。
冬優子はどこか吹っ切れた様子で、腹を抱えて笑い出す。


冬優子「……ぷっ、あはは! 何言ってんのよルカ、あんたクサすぎ!」

ルカ「なっ……オマエが聞いたから答えたんだろうが!」

冬優子「でもまあいいわ、そのクサさに乗じてあげる。あんたはふゆと同族なんだからね」


同族という言葉が孕んでいるものを私はもう理解している。
冬優子の軽口にはそれ以上水を挟まない。

改めて芹沢あさひに向き合う、その姿は不器用という他ない。
ぎこちなく手を伸ばし、これまたぎこちなく抱き抱えるようにして、極めつけにぎこちなく声をかけた。
700 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:07:26.94 ID:6yJfGnKD0


冬優子「……ほら、よしよし」

あさひ「冬優子ちゃん、あんまり撫でるの上手くないっすね」

冬優子「空気読みなさいよあんた……」

あさひ「愛依ちゃんの方が上手だったっす」

冬優子「それは……敵わないわ、悪いけど」


ぎこちなさと満足感とは両立するらしい。
お世辞にもうまいとは言えない甘やかしに、芹沢あさひは自ら首を伸ばすようにして、嬉しそうにしている。
あくまで切なさに裏打ちされた嬉しさではあるが、冬優子の愛情を初めて正面から受け止めることができ、これまでに見せたことのない表情を作っていた。


冬優子「……もっとこういうの、やってあげてればよかったわね」

あさひ「いいっす、そんな頻繁にやられたら……それはそれで冬優子ちゃんじゃないみたいっすから」

冬優子「どういう意味よそれ……ったく」


701 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:08:52.66 ID:6yJfGnKD0



そして、そういうタイミングを狙いすましたかのように……その時はやってくる。



モノクマ「前菜はこの辺りにしておいて……そろそろ主菜に参りましょうか! 学級裁判というコース料理の花形も花形……血湧き肉躍るおしおきタイムの時間ですよ!」


あさひ「……!! ダメっす、まだ……まだっすよ!」

モノクマ「欲張りさんだなぁ、お別れの挨拶も済んだし愛情表現までしたってのにこれ以上を求めますか」

あさひ「満足なんかまだまだしないっすよ……冬優子ちゃんは、だってだって……これが終わったらいなくなっちゃうんっすよ!?」

モノクマ「そりゃそうでしょ、それが学級裁判なんだから」


モノクマはなんとも思っていない様子で淡々と言い放つ。
ただ裁判を進行する、ただおしおきを遂行する。
人が一人、完全に死んでしまうと言うのに、それは大したことではないと断言しているよう。
もう4度目にもなるが、胸の底から黒いものが渦巻いて澱む感覚には慣れそうもない。
702 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:10:24.12 ID:6yJfGnKD0


あさひ「嫌だ……冬優子ちゃん、冬優子ちゃん……!!」

冬優子「……やめて、それ以上騒がれると覚悟が揺らぎそうだから」

あさひ「……!!」


だが、今回は今までの3回とは違った。
これから処刑台に乗せられる張本人の冬優子は、その覚悟を決めていた。
勿論それは体裁としての話で、心中が穏やかではないのは明らか。
目に見えて体は強ばり、口元も妙に硬く結ばれているのがかえって不安を滲ませる。

それでも……彼女は『怖がっていない』、死を前にして堂々と『黛冬優子』でい続けようとしている。
そのことを、我々は尊重せねばならない。

703 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:11:36.13 ID:6yJfGnKD0

冬優子「あさひ、最後に年長者っぽいことできてよかったわ。そのやってやった感のまま、終わらせてちょうだい」

あさひ「……うぅ」

冬優子「それと、ルカ……あさひのこと、頼んだわ。今やもう、頼れるのはあんただけだし」


初めの頃とは随分と扱いが変わったものだ。
かけがえのない存在を預からせていただく立場にさえ就かせてもらえるなんて、光栄すぎるな。


冬優子「……それと、パートナーともうまくやりなさいよ」

ルカ「……おう」


……それはお節介だ。
私はぶっきらぼうな返事をせざるを得なかった。
704 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:12:24.86 ID:6yJfGnKD0



モノクマ「今回も超専門学校生級の広報委員である黛冬優子さんのためだけに、スペシャルなおしおきを用意しました!」



冬優子「ふゆはこの選択を間違っているとは思わない、ただ停滞して全員で共倒れなんて……そんなの意味がないじゃない」

冬優子「……だから、ふゆと有栖川夏葉の想いを汲み取ってちょうだい」



モノクマ「それでは張り切っていきましょう!」



冬優子「ふゆたちは、あんたたちを生かすと決めたんだから。その命、雑に扱うような真似すれば……地獄の底からでも蘇って、ぶん殴るわ」

冬優子「ふゆの死、無駄にしたら承知しないんだからね」


705 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:13:02.96 ID:6yJfGnKD0






モノクマ「おしおきターイム!」


冬優子「ふゆの屍を超えていきなさい!」





706 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:14:03.07 ID:6yJfGnKD0
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GAME OVER 


マユズミさんがクロにきまりました。 

おしおきをかいしします。



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707 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:15:35.02 ID:6yJfGnKD0

世界でいちばんおひめさまな黛さん。
キュートな衣装をバッチリ着こなしてますよね!

普段から自分の魅せ方をよく研究しているんですから当然のこと。
それだけ可愛いお姫様の元には当然おうじさまもやってきます!

おひめさまを迎えにやってくるおうじさまと言えば当然『白馬の王子様』!
ほら、今にやってきましたよ!
筋骨隆々、目も血走って、すさまじい馬力で走り続ける白いチャリオットに乗った王子様が!

……あれ?

どうしたんですか、黛さん?
そんな、おうじさまを前にして逃げ出すなんてナシですよ!?

散々人を惹きつけておいて、自分が轢かれるのはそんなに嫌ですか!?

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        SOS

超専門学校生級の広報委員 黛冬優子処刑執行




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708 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:16:44.45 ID:6yJfGnKD0

おうじさまの熱烈アピール!
恋の書状が結びつけられた矢が黛さんに向かって次々に飛んできます!

チャリオットの猛追から逃げながらもなんとか体を捻って済んでのところで矢を回避!

黛さんの元に本来届くはずだった恋文は岩石を砕き、地を穿ちます。

次のアピールはプレゼント作戦!
男女の駆け引きに、プレゼントのセンスは欠かせませんよね。
ダイヤの飾り付けられた綺麗な円形の……チャクラム!
あれれ、これもおひめさまのお気には召さないみたいです。
黛さんがダンスで培った体幹を生かして華麗に回避!
チャクラムに両断されて隣の巨木は根元からボッキリと折れちゃいました!

最後のアピールは100万ドルの夜景で!
それを飾り付ける最高の花火をプレゼント!
あれ? そういえばどこぞの誰かが花火を利用して人を殺したんでしたっけ?
まあいいや、それいけどっかーん!

黛さんも流石にこれには目を奪われてしまった様子、少しばかり火傷を負いながらもなんとか回避。

そしていよいよ目の前に見えてきたのは結婚式場の教会!
なんだ、嫌よ嫌よも好きのうちというわけですか!
白馬のおうじさまに迎えられて、今こそ一つになる時です!
もう黛さんもボロボロで、外堀から埋められていよいよ腹を括る時ですよ!
709 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:17:36.38 ID:6yJfGnKD0





「ざけんじゃないわよ、バーカ」




……え?

ちょ、ちょっと……!?
そっちは、そっちはルート外ですよ!

おひめさまはモノクマの用意した道から自ら外れ、真っ逆さま。
本来おしおきから逃げ出せないように用意していたはずの保険であった巨大シュレッダーに自分から落ちていきました。

刃が彼女を細切れにする直前、その一瞬に。
黛さんはニッと笑って中指を立てていたとかいないとか……

710 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:19:17.35 ID:6yJfGnKD0
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モノクマ「な、なんだよ……消化不良だな……」

あさひ「……冬優子ちゃん、自分から……?」


黛冬優子のおしおきのクライマックス直前での自死、私たちではなくモノクマが一番困惑し、釈然としない表情をしていた。
モノクマからすれば一番盛り上がるところに水を刺されたような思いなんだろう。


モノクマ「フンっ、いっぱい食わせたつもりなのか何だか知らないけどさ。死んだのは死んだんだから、ボクの計画は何も崩れてないよ」

モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃ! どれだけ可愛く飾り立てても、死ぬ時は結局みんなブッサイクな骸に成り果てるんだよね!」

ルカ「……ハッ、それで勝ったつもりかよ」

モノクマ「……うん?」
711 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:20:11.54 ID:6yJfGnKD0


ルカ「てめェがいくら冬優子の死ではしゃいだところで、あいつも私たちも、その死で塞ぎ込んだりしねえ」


ルカ「あいつの死で、私たちは想いを引き継いだんだ。その想いとともに、私たちは生きていくんだ!」


壮絶な裁判の果て、おしおきによる幕引き。
何度経験しても慣れない絶望の波が押し寄せる感覚。
今にも気を抜けば膝からその場に崩れ落ちてしまいそうな無力感を感じつつも、今回ばかりはそう簡単には折れない芯が自分の中に通る感覚があった。

冬優子が最後の最後まで見せつけた姿、それは他でもない【希望】の姿だった。
他の誰かを犠牲にして生き永らえる。
そのことに負い目を感じ続けてここまできたが、冬優子は『自分の死を有効に使え』と言い残してくれた。

それならば、今ここで悔いてはならない。
悲しんではならない。



今の私たちにすべきことは、明日のために……今何ができるか考えることだ。


712 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:21:43.68 ID:6yJfGnKD0

ルカ「そうだろ、あさひ」

あさひ「ルカさん……はいっす!」


それに、私はこいつを冬優子から託された。
ガキのお守りなんざ、ガラじゃねえが……
ダチと交わした約束を不意にするほど私も人でなしじゃない。


智代子「うん……夏葉ちゃんが身を賭して私たちを生き残らせてくれたんだもの、こんなところでへこたれていられないよ!」

透「うん、がんばろ」

雛菜「やは〜! 雛菜も頑張る〜!」

恋鐘「ここまで生き残ってきたうちらならもう大丈夫たい! もうこれ以上コロシアイなんか誰も起こさんよ!」

美琴「……そうだね」


これまでのどの裁判とも違う、誰一人として表情を曇らせない様子に明らかにモノクマはイラついている様子だった。
私たちに何か言葉を投げつけてやろうとして、的確な嫌味が見つからず地団駄を踏む。

713 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:22:40.90 ID:6yJfGnKD0

モノミ「うぅ……あちし、感涙の極みでちゅよ! 黛さんの死でまた一つミナサンは強くなりまちた!」

モノミ「すごい一体感を感じまちゅ。今までにない何か熱い一体感でちゅ! 風……なんだろう吹いてきてまちゅよ確実に、着実に、ミナサンの方に!」

モノミ「絶望なんかに負けない、希望の風を感じまちゅ!」


手のひらの中で熱く鼓動しているものが希望なんだろうか。
それを胸に当てて私は一つ、深く呼吸をした。
肺に通っていく風が、なんだかとても心地よく、私の視線はぶれずに前を見据えた。


モノクマ「ぐぬぬぬ……ぐぬぬぬ……」

ルカ「悪いなモノクマ、お前の目論み通りにならなくて。……それじゃ、私たちは帰るから」

智代子「うん、夏葉ちゃんが取り戻してくれた分ちゃんとお腹いっぱいにしないとね!」

あさひ「あ! 恋鐘ちゃんの朝ごはんがまた食べられるんだ!」

恋鐘「ど〜んと任せるばい! 今まで食べさせてあげられんかった分、特盛サービスで食べさせちゃるけん!」

美琴「楽しみだね」

あさひ「やったー!」
714 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:24:14.37 ID:6yJfGnKD0




モノクマ「そんなお祭りムードのとこ悪いけどさ、オマエラ……それでいいの?」



715 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:25:36.93 ID:6yJfGnKD0

ルカ「……あ?」

モノクマ「黛さんは命をかけて芹沢さんの無実を証明したけどさ……それって同時に、他の人間がぽんぽこ狸さんだって謎を提示したのと同義でしょ?」

あさひ「……!」


それは確かにモノクマの言う通りだ。
私たちを学級裁判で殺そうと画策していた狸はまだ、私たちの中に紛れている。
身長160cm以上という条件はあさひと甘党女以外の5人に当てはまるほか特定に至る証拠もない。




____だとしても。



716 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:26:24.84 ID:6yJfGnKD0

ルカ「言っただろ、お前の目論み通りにはならねえって」

モノクマ「なぬ?」

ルカ「例えこの中にまだ殺しを企んでる奴がいようとも、他の6人でそれを封殺する。私たちはもう誰も死なさない、事件なんて起こさせない」

美琴「……ルカ」


不振の波紋が広がる前に防波堤をつくった。
お互いを疑い合う状況に落とし込まれるなんて、冬優子からすればこれ以上なく癪だろう。
あいつが私たちを生きながらえさせたことの意味を考えれば、今ここでどう受け答えすればいいのかなんてことは考えるよりも先に言葉が出た。


モノクマ「むむむむ……むむむむむ……」

ルカ「用は済んだか? それじゃ、今度こそ行くぞ」

モノクマ「むむむむむむむむむ……」

美琴「それじゃあ、失礼するね」

あさひ「バイバイ!」

透「アデュオス」

モノクマ「く、くそぉ〜……」


背後にモノクマの弱々しい声が聞こえてくるのが、気分良かった。
717 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:27:25.52 ID:6yJfGnKD0

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裁判場を出て、私たちはそれぞれの個室へ戻っていった。
何人かはこれまで禁止されていた分を取り戻さんとばかりにスーパーマーケットでお菓子なんかを大量に持ち帰っていた。
きっと気分を切り替える意味合いもあったんだろう。
私はというと、なんとなくあさひの元を離れがたくて、個室まで付き添って送り届けていた。

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718 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:29:19.97 ID:6yJfGnKD0
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【あさひのコテージ】

あさひ「別に一人で自分の部屋ぐらい戻れるっすよ?」

ルカ「……まあ、そうだよな。オマエもガキじゃねえんだし」

あさひ「……? ルカさん?」


気がついたら、あさひのことをじっと見つめていた。
小柄な体躯に、済んだ目の色、生まれながらだろう髪色は鮮やかな色合いをしている。
冬優子が最後の最後まで守ろうとした存在、改めてそう考えると、込み上げてくるものがあった。


ルカ「さっさと寝ろよ、オマエも疲れてんだろうし」


悟られないように、あえて突っ放すような口調で話した。


あさひ「はいっす!」


返事だけはいいのよね、と時々愚痴をこぼしていたことを思い出す。


ルカ「……ちゃんと、寝るんだぞ」

あさひ「あはは、それなんだか冬優子ちゃんみたいっす」

ルカ「……るせえ」
719 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:31:00.35 ID:6yJfGnKD0
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【ルカのコテージ】

あさひを送り届けてから自分の部屋へ。
私も人のことを言えない、かなり疲労は蓄積している。
瞼が重たくなるのを感じながら、ドアノブを握る。
その時、部屋の前のポストがふと目に止まった。
手前に引いて開ける扉は、何かにつっかえて半開きになっていた。
そこに見えているのは茶封筒。
縦長のシルエットを掴み上げて、部屋へと持ち込んだ。


「……一体、誰からだ?」


ベッドの上に腰掛けて、目の前で広げた。
中には一枚の便箋と写真が一枚。
先に便箋の方を確認することにした。

720 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:31:51.41 ID:6yJfGnKD0

『この手紙をあんたが読んでいるということはふゆはきっと裁判でおしおきを受けた後だと思う。別にそのことを悔いる必要はないし、負い目に感じなくてもいいから。

……まあ、どうせ杞憂だろうけど』


流石は冬優子と言ったところか、気が行き届いているし、私たちのことをよく理解している。


『事件の内容からして、もう知ってのことだと思うけどふゆはファイナルデッドルームをクリアした。どうやらふゆが最初の攻略者だったみたいでその時にモノクマから情報をもらった』


そういえば裁判中美琴もそんなことを言っていた。
美琴は二番目以降の攻略者で、最初にクリアした人間がもらう特典はもらえなかったんだったか。


『その情報をルカに託します。ルカなら、ここに収められている情報を見極めて、有効に使ってもらえると思ったから。ちなみに拒否権はないので、諦めるように』

「……マジか」


手紙はここまでだった。
相変わらず勝手な女だ。冬優子のやつ、一方的に情報を渡してきやがって。

最後の最後まで冬優子らしいその様子に、少し可笑しく思いつつも、襟をただした。
この封筒の持つ意味を改めて確かめる。
私たちの未来さえも左右し得るほどに重要な代物だ。
まだめくっていない写真に、一体何が収められているのか。
生唾を一つ飲み込んだ。


「……いくか」

721 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:33:07.76 ID:6yJfGnKD0
-------------------------------------------------

【あさひのコテージ】


「……もう、わたしだけになっちゃったんだ」

「愛依ちゃんも冬優子ちゃんも、他のみんなももういない」

「みんなを……学級裁判で殺そうとした狸は生きてるのに」

「……」

「……冬優子ちゃんは怒るかな」

「せっかく生かしてやったのに、なんでそんなことすんのよって」

「でも、わたしは知りたい」

「学級裁判で何度も暴れた狸が誰なのか、どうしてそんなことをしてるのか、知りたい」

「……例え冬優子ちゃんでも、わたしがわたしの命をどう使うのかは指図されたくない」

「この身体が、命がある限り……わたしはわたしのために使いたい」
722 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:33:56.33 ID:6yJfGnKD0





「真実を知るために、使いたい」




723 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:35:05.87 ID:6yJfGnKD0
-------------------------------------------------

「んだよこれ……!?」


そこに写っていたのは私たち。
この島にやってきた連中が全員横並びになって……目を瞑っている。
目を瞑ってコールドスリープ用の機械に横たわっている姿が写っていた。

だが、それで終わらない。
この情報の持つ意味、その一番大きなところは……その上。


「なんで、なんでこいつら……」


風野灯織、田中摩美々、和泉愛依、園田智代子、市川雛菜。
前回のコロシアイの生き残りだと名前が上がっていた連中は……白衣を着て、私たちを見下ろしていた。
724 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:35:58.36 ID:6yJfGnKD0





____その機械でまるで、人体実験でもしているかのように。




725 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:36:57.44 ID:6yJfGnKD0
-------------------------------------------------



CHAPTER 04

アタシザンサツアンドロイド

END

残り生存者数 7人

To be continued…



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726 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:37:55.63 ID:6yJfGnKD0


【CHAPTER04をクリアしました!】


【クリア報酬としてモノクマメダル60枚を獲得しました!】


【アイテム:くたびれたショッパーを手に入れました!】
〔出かける際愛用していた買い物袋。自身の所属するユニットの缶バッジを隠れたところに着けていたこの袋も、今となっては血に汚れた〕

727 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/05/22(日) 21:43:49.73 ID:6yJfGnKD0

というわけで4thやバンフェスを挟んで一か月以上に及んだ4章もようやく終了です。
冬優子をクロにするのは中々悩んだところではあるのですが、お別れの直前のあさひとのやり取りは書きたいものが書けた感じがあったのでだいぶ満足しています。

次はついに第五章。物語もここまで来ると、いよいよ大きく動きますね。
また更新までにはしばらくお時間をいただきます、気長にお待ちください。

それではお疲れさまでした、またよろしくお願いします。
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/22(日) 21:48:17.99 ID:QY0ikWxo0
>>1
次回もとてもたのしみにしてます
>>1が描きたいものが描けたって言うだけあって
ふゆのあさひとの最期の別れは本当に胸がえぐられたよ・・・
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/22(日) 23:37:51.79 ID:CvIGFVFz0
お疲れさまでした
冬優子……不器用で揺らぐこともあるけど誇り高く堂々たるその姿は最期まで綺麗だった……
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 09:55:45.77 ID:mbg96msT0
なんとなく気になって数えたりしてたんだけど、
残り生存者全員のコミュを終わらせることは多分不可能なんですよね

現状のモノクマメダルが多分96枚?だから、次の探索パートで多分100枚は超える
これは283プロのシャツ換算で2枚分
んで次が5章だから自由行動は最後で、前作を見る限り多分3回×2日の6回行動?
残りのメンバーの親愛度が、恋鐘:5.5、ちょこ:6.0、あさひ:8.0、浅倉:MAX、雛菜:5.5、美琴:4.0
コミュを終わらせてスキルもらおうと思ったら親愛度MAX+交流が必要だからその辺を考えると、
仮にシャツ2枚買ったとして、親愛度は左から、9.5、10.0、12.0(MAX)、MAX、9.5、8.0になる
ここで前にシャツを使ったときの挙動的に残り人数分の希望の欠片も手に入るので15+6×2=27個になると考えられる
親愛度獲得の補助になる幸福のリズムの値段は30個なので購入は無理
つまり1回の交流で上がる親愛度は1.0から2.0の範囲で確定
こうなるとコミュを終わらせてスキル獲得に必要な最低回数の交流は左から、2回、1回、1回、2回、2回で合計8回 > 自由行動6回
これって要はどれだけ最善手選べても全員のコミュを終わらせるのって不可能では?って結論
あれだけぶっ壊れなシャツの暴力をもってしても足りないのか……
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 10:57:58.03 ID:KnUE2cJ50
Tシャツがだめならジャンパーを使えばいいじゃない(ソラミミスト的発想)
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 19:01:34.11 ID:6bs6nxIu0
>> 730
原作のロンパだって生存者が最初からわかっていたらともかく
初見じゃ絶対生存者全員好感度マックスとか無理だしそう言うもんだと諦めよう
それにコミュで好感度上げたり安価次第で生存者が変わるスレでもあるまいし別に・・・って感じ
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 19:28:35.94 ID:DGeFo0JpO
何なら展開されるシナリオの関係で「この人とは交流出来ません」とかも起こり得るでよ
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 19:52:59.45 ID:mbg96msT0
せっかくめちゃくちゃ強い効果のシャツがあるからもしかして全員いけるんじゃね?
って思ったから本当にできるか計算してみたら無理だったってだけの話なんですよね
実際732の人の言う通り本来なら無理だしそういうものだとは認識はしてるんですけど、
それはそれとしてもし現実的に可能だったら実現したらスキルがたくさん並ぶから気持ちいいなあって思っただけなので
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/26(木) 10:04:19.58 ID:ljHSiLK50
1回気になりだしたらモノクマが想定してた冬優子の本来のおしおきの結末が気になってきた
教会に逃げ込む前に靴が脱げてチャリオットで轢殺?逃げ込めるもののそのままチャリオットが突っ込んできて轢殺?
チャリオットが突っ込んだ衝撃で教会が崩落して圧殺?夏葉の死因と合わせて逃げ込んだ瞬間に爆発して爆死?
偽装工作に合わせて逃げ込んだ瞬間にどこかに吹き飛ばされて転落死?それともSOSが何かの略でそれに合わせた結末?
考えても候補が多すぎるし突拍子のない結末もあり得るから考え出すと気になって仕方がないわ
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/26(木) 12:17:25.84 ID:/uLg3LVT0
>>1がまた補完で書いてくれると思う
737 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:17:24.45 ID:QNk4OO930

市民たちの喧騒止まぬ中、ギロチンはゆっくりと持ち上げられていきます。
太陽の光を反射してギラつく、その下には鮮やかなオレンジ色の髪。
色気あるうなじが、木の枷に嵌められて剥き出しになっています。

彼女こそが、悪政を布く傾国の悪女!
国を筋肉によって傾けようとするパワー系悪役令嬢、有栖川さんは断頭台の上に……!


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パンがなければプロテインを飲めばいいじゃない

超高校級の令嬢 有栖川夏葉処刑執行



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738 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:18:13.10 ID:QNk4OO930

市民たちの怒りはどんどんヒートアップ!
それもそのはず、こちとら炭水化物で腹を満たしたいのに、あんなザラついた液体で飢えを凌げだなんて納得できるはずもありません!
ギロチンが最高地点に到達した時、市民から聞こえてくるのも別れを惜しむものではなく、むしろ歓声すら上がります。

ええい、ままよ!処刑人のモノクマが紐を手放した、その瞬間!


____その瞬間でさえも、有栖川さんは諦めてなどいませんでした。


やはり筋肉、筋肉はすべてを解決する!

有栖川さんの火事場の馬鹿力、筋肉が全身で隆起したかと思うと、バキバキと音を立てて枷の一切が破壊されてしまったではありませんか!
ギロチンは宙を掠め、首を切り落とすことなく断頭台に突き刺さる!

739 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:19:05.66 ID:QNk4OO930



☆有栖川夏葉、奇跡の生還……!?



暴徒たちもさすがにこれには大歓声! 筋肉をほめたたえ、手を叩いて大喜び!



…パンッ!



ですが、拍手に交じって乾いた音が響きました。
有栖川さんは生存を誇ったポーズのまま、何が起きたのかもわからずその場に倒れ込みます。
群衆に交じっていたスナイパー、凶弾には流石の筋肉も無力だったのです。
拿捕の網も被せられ、有栖川案の死体をずるずると退場。

悪嬢の処刑、もとい鬼退治は呆気ない幕引きとなりましたとさ。
740 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/09(木) 22:26:43.07 ID:QNk4OO930

というわけで二週間と少しぶりでしょうか、お久しぶりです。
いつもより少し早めですが5章更新の準備が出来てきましたので報告にやって参りました。


>>737
久しぶりに早速ガバ、「超高校級」ではなくて「超大学生級」ですね……

>>735
冬優子のおしおきは「冬優子が途中で台無しにする」前提で考えていたので、最後まで細かなことは特に考えてませんでしたかね……
ロンパらしい終わり方となると逃げこもうとする教会はハリボテで、チャリオットと板挟みになって圧死がそれらしいような気もします
「SOS」はソロ曲からとったタイトルですが、歌詞の恋の苦しみのサインが物理的な苦しみのサインに代わる意味合いでつけてます
何かの略にするのもありですね……また考えてみます。


さて、5章は特に問題がなければ6/11(土)の21:00あたりからの更新を考えています。
ストーリーも佳境、どうかお付き合いください。
それではまたよろしくお願いします。
741 :一時間も遅刻してしまいましたが始めます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:02:50.96 ID:LUS5eqqE0

〇保護観察対象者:風野灯織

保護観察を開始してから二週間余りが経過。
フラッシュバックなど精神衛生に支障をきたす症状は期間中確認されず。
観察者との対話も特に問題なし。
事態認識も正常。事件で命を落とした友人らも正確に把握しており、記憶の自主改竄など自己防衛に走る様子もない。
日常生活の復帰に十分な回復を認めるものとし、保護観察を本日打ち切ると決定。

742 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:04:09.61 ID:LUS5eqqE0

〇283プロダクション連続殺人事件の捜査状況について

主犯格とみられる天井努の経営していた芸能プロダクション『283プロダクション』から社用PCならびに私用PCを押収。
情報捜査担当者に回し、解析結果が本日到着したため、報告に挙がっていた情報をここに記す。

・本連続殺人事件を『コロシアイ合宿生活』と題して外部に公開していた確定的な証拠は発見されなかった。
海外サーバーを経由していたものと思われ、その履歴も消去されてしまっているため復元はほぼ不可能。
保護観察対象者から得られた証言の裏付けとなる根拠には欠ける。
『チーム:ダンガンロンパ』と呼ばれる組織の特定を急ぐ。

・芸能事業とは別の帳簿データを確認。
巨額が闇口座に注ぎ込まれている不正な流れがあり、当事務所の従業員・七草はづきに確認をしたところ、完全に知覚していないものだとの証言が取れる。
天井努が事務所の経営資金と別に蓄えていた金についても、その入手手段、流用先を調査するものとする。

・外部との通信履歴に不審な送信先を確認。
連絡は数度に渡り、一定の頻度で行われている様子。
主要通信業大手に照会するも該当はなし。
位置情報を解析し、送信先の人物と事件との関連性について追求していくことが目下の捜査方針となる。

743 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:05:12.23 ID:LUS5eqqE0





・本件が発生してより行方不明となっている10名との関連も併せて調査する。




744 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:05:48.95 ID:LUS5eqqE0
------------------------------------------------



CHAPTER 05

Killer×Miss-aiōn

(非)日常編



------------------------------------------------
745 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:07:06.57 ID:LUS5eqqE0
____
______
________

=========
≪island life:day 22≫
=========

【ルカのコテージ】

「……朝か」

冬優子の裁判の翌朝。
私の肩は妙に重たくて、少しだけベッドから身を起こすのに時間がかかった。
肩にのしかかっているのは、いくつもの責任、タスクともいうべきか。
ガキのお守りに美琴との和解、そして私たちの前に横たわる展望の見えない大きく、深い謎。
一方的に押しつけて自分は早々に退場だなんて、最後の最後まで自分勝手な女だったと思う。
私がそういうのを拒絶できない人間だとわかってやっているのが余計に癪だ。

「……」

まあ、それは私も同じなのだが。
私が美琴に無理やり背負わせたものもそれなりにあるし、その背負わせ合いが人と人との繋がりというものなんだろう。
つくづく煩わしいな、と思う。

「行くか」

とりあえずはすぐ手につくところから、ガキのお守りという一番身近なタスクからやっていくことにした。

746 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:08:22.86 ID:LUS5eqqE0
------------------------------------------------

【あさひのコテージ】

あさひ「あれ、ルカさん。どうしたっすか?」

ルカ「メシだメシ。ついてこい」


未だ冬優子の代わりを私が務めることに慣れていないのか、あさひは私の顔を見て目をパチクリさせた。
ガラス玉のように綺麗な瞳に見つめられると、なんだかたじろいでしまう。


ルカ「冬優子の代わりだよ、私が面倒みなきゃだろ」

あさひ「ふーん……でも、冬優子ちゃんそんなお迎えなんかしてなかったっすよ?」

ルカ「……それは、知らん」

あさひ「そういうのは愛依ちゃんがやってたっす」


聞いているだけで切なくなるようなことを、本人はこともなげに言う。


あさひ「とりあえず準備するっすね。ちょっと待ってて欲しいっす!」


その小さな背中が部屋の奥に消えていくのを見つめていた。


ルカ「……」


本当に、この島に来る前とは大違いだ。
283プロと馴れ合うどころか、こんな風に故人との約束を律儀に守ろうとしているだなんて。
自分の変貌ぶりにウッとなるのを堪えていた。


あさひ「お待たせっす! さ、行くっすよ! 今日は恋鐘ちゃん、どんなご飯を作ってくれてるっすかね!」

ルカ「……うるせえ、朝からキャンキャン騒ぐな。頭が痛くなる」

747 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:11:06.90 ID:LUS5eqqE0
------------------------------------------------

【ホテル レストラン】

透「おはよう、二人仲良しだね」

あさひ「透ちゃんおはようっす!」

ルカ「……よう」


冬優子の死に際に見せたあの姿には一定の効用があったらしい。
これまでの裁判の翌日は、どこか取り繕ったような重たい空気が朝食会にも漂っているものだったが、今回はそんなことはない。
全員が全員吹っ切れたような様子で、変わらぬ日常を過ごしている。

……ただ、そこに美琴の姿がないだけだ。


ルカ「……」

あさひ「……? どうしたっすか?」


あさひの顔を見つめてつい考え込む。
……私はどこに座るべきなのだろう。
別に真隣に座る必要もないんだろうが、かと言って美琴の隣(だった)席に座るのもなんとなくバツが悪い。


智代子「ねえ、もう人数もだいぶ減っちゃったし、今日からはこっち側の机でみんなで食べない?」

恋鐘「8人掛け……うちも賛成たい、どうしても空席があると寂しくなっちゃうけん」

(……助かったな)
748 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:14:08.10 ID:LUS5eqqE0

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


あさひ「恋鐘ちゃん、今日の朝ごはんも美味しいっすね! これ、なんて料理っすか?」

恋鐘「ふふーん、今日のはタプシログばい! この前一緒に図書館に行ったとやろ? その時に読んだ本に書いてあったフィリピンの朝ごはんを作ってみたとよ!」

智代子「このお肉、醤油の風味ですごく美味しいよ!」

あさひ「ほうっふね!」

(……口周りすげえソースで汚れてるんだけど、これを拭き取るのは流石に過保護か……?)

(ああクソ……冬優子はどうしてたっけ……!?)

恋鐘「ふふ! あさひ、口周り汚れとるよ!」

あさひ「……? あ、恋鐘ちゃんありがとうっす!」

(どれぐらい世話を焼いていいのかわかんねえ……)

(283の連中、元々距離感が近いから余計に……)


長崎女の作った朝食を口に運びながら今後の相談。
4回目の事件をくぐり抜け、私たちの状況はまた変わった。
そしてそれは、島の状況も同じはずだ。

749 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:15:14.69 ID:LUS5eqqE0

ルカ「今回はモノミのやつ、ちゃんと働いてくれるといいんだが……」

あさひ「この前は夏葉さんのおかげで助かったっすけど、どうっすかね?」

智代子「島も残すところあと一つ、だもんね」

雛菜「でもそこに手がかりがなかったらしんどいですね〜」

恋鐘「そんなことなか! 絶対にこの島を出るためのヒントは眠っとるばい!」

透「……第5の島、か」


新エリアの解放を待ち侘びて、手をこまねくばかりの私たち。
そんな雑談ばかりの時間を数十分過ごしたところで、やつはようやっと姿を表した。


バビューン!!

モノミ「ミナサン! お待たせしました! いや、お待たせしすぎたのかもしれまちぇん……」

ルカ「お、来たな……どうだった」

モノミ「話が早いでちゅ……そうでちゅよね、あたちとミナサンの間にもう言葉なんて要らない……それが信頼ってやつでちゅ」

透「あー……うん、そうだね」

モノミ「適当に流されまちた……」
750 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:18:13.63 ID:LUS5eqqE0

あさひ「そんなことより新しい島に行けるようになったのかどうなのか聞かせて欲しいっす!」

恋鐘「そうばい! どがんね、モノミ!」

モノミ「結論からいいまちゅ……」

モノミ「あちしはモノケモノに…………」

モノミ「勝てま…………」

モノミ「…………………………………」

モノミ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」






ガチャ

美琴「新しい島、行けるようになってるよ」

ルカ「み、美琴……!?」


モノミのクソみたいな溜めをぶった斬って登場したのは美琴。
レストランの入り口の扉にもたれ掛かるようにして、私たちに話しかける。

751 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:19:21.63 ID:LUS5eqqE0

美琴「……その様子だと、やっぱり知らなかったんだね」

ルカ「いや、それはそうだけど……お前……」

美琴「勘違いしないで、ただ伝達に来ただけ。私は今もその子と一緒に行動する気はないよ」

透「……」

美琴「それじゃあ、また」


私たちが言葉を返す暇も与えずに、美琴はすぐに姿を消した。


智代子「……まだ、一緒に行動はしてくれないんだね」

ルカ「……悪い」

恋鐘「ルカはなんも悪くなかよ!」

透「……私、だもんね」

ルカ「……」
752 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:20:52.31 ID:LUS5eqqE0

雛菜「でも、なんでわざわざレストランに顔を見せたんですかね〜? 透ちゃんがいるのなんてわかりきってるのに〜」

あさひ「だからこそ、じゃないっすか? 美琴さんは透ちゃんを殺そうとした過去もある、そんな相手が何度も目の前に現れたら普通嫌っすよね?」

ルカ「嫌がらせ、ってか……」

あさひ「んー……というよりは、透ちゃんが弱るのを待ってるとかっすかね」


精神的に衰弱するのを待っている、なんてまるで狩りみたいだ。
今か今かとその隙を狙いすまして、弱った瞬間を討つ。
サバンナに潜むライオンのように、その牙を研ぎ澄まして目を凝らしているのが今の美琴。
アイドルとしてパフォーマンスを磨き上げていた時と同じ集中が、あらゆる干渉を拒んでしまっている。


雛菜「透ちゃん、大丈夫だよ! 雛菜がず〜っと一緒にいて、守ってあげるから〜!」

透「……ごめん、雛菜」

(……)

753 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:21:30.43 ID:LUS5eqqE0

モノミ「あ、あの〜……ミナサン、あちしのことお忘れじゃないでちゅかね……?」

あさひ「あ、まだいたんだ」

モノミ「ぐすん……決死の思い出モノケモノにリベンジしたのに……完全にいいところを持っていかれちゃったでちゅ……」

智代子「そんなことないよ! 私たち、自力じゃ島の解放なんて出来ないんだから……モノミにはすごく助けられてるよ!」

雛菜「モノミちゃん、ありがとね〜〜〜〜〜!!」

モノミ「ミナサンの優しさがフェルトの五臓六腑に染み渡りまちゅ……」

ルカ「……まあ、とりあえず新しい島には行けるようになったんだ。とりあえず行ってみようぜ」

あさひ「はいっす!」


美琴のことで少し不穏な空気は流れたが、それよりも今は目の前の新しい手がかり。
美琴に対する何か対抗策もあるかもしれない、今はとにかく新しい一歩。
私たちはすぐにレストランを後にした。

754 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:22:34.31 ID:LUS5eqqE0
------------------------------------------------

【第5の島】

「これが第5の島……なんていうか、ラスボスって感じだな……」


新しく踏み入れた島は、比較的私たちの日常に近しい形をしていた。
コンクリートで整えられた地面、並ぶ高層の建造物。
だが、それがかえってこの南国の諸島では不気味な雰囲気を漂わせる。
あれほど照り付けていた太陽も、工場から噴き出す排気が光を遮り、目にやさしかった緑を上塗りするような灰色が気分を僅かばかりに沈めてくる。
何とはなしに騒つく胸に、思わず手を当ててしまうような光景だ。


「……美琴は、既にここにいるんだろうか」


レストランで私たちに情報を与えてきた辺り、美琴は私たちより先に立とうとしている。
もしかすると、この島にある何かで害をなそうとしている可能性もある。
七草にちかの遺志に、殉じるために。


(そんなものが、本当にあいつの遺志だって……本気で思ってるのかよ)

755 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:25:14.30 ID:LUS5eqqE0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆

電子生徒手帳のマップに目を通す。
この島はやはり他の島とは異なった文明レベルのようだ。
自然や海といったものは全く存在していない隔絶された空間。
【軍事施設】なんてものがあるのがその象徴だろう。
暴と知を体現する施設、これまでになかった情報が眠っているかもしれないな。

【ワダツミインダストリアル】は工場のようなものらしい。マップ上ではその全貌は全く見えない、調査の必要があるだろう。
それとは別に【モノクマ工場】もある。
モノクマ管轄の工場といったところなんだろうが、流石にこの文字列は私でも不安になるな。
比較的平穏なのは【屋台村】か?
とはいえこんな島に設けられた施設、まともなもんは期待できそうにないか……


ルカ「今回は一緒に来てもらうぞ、あさひ」

あさひ「ルカさんと一緒に調べるっすか? 別にいいっすけど」

ルカ「お前一人にしたらどこで怪我するかもわからねーからな、私の目の届くところに居てくれ」

あさひ「……? そうっすか」

(……やっぱ、過保護なのか?)


さて、どこから調べるか。

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.軍事施設
2.ワダツミインダストリアル
3.モノクマ工場
4.屋台村

↓1
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/06/11(土) 22:27:13.39 ID:JBBrDmjn0
1
757 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:33:18.95 ID:LUS5eqqE0
1 選択

【コンマ判定39】

【モノクマメダル9枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数……94枚】

------------------------------------------------

【軍事施設】

この国にも一応軍隊はある。
名義を違えているので、あくまで国防のためであり、原義での暴力的な意味合いには薄いが……

でも、多分この島にあるこれは原義寄りの方だろう。
必要以上に大きな砲台を携えたヘリコプター、家ごと押し潰してしまいそうなほどに大きなキャタピラの戦車、宝石箱のように手榴弾の詰め込まれたクランク……
『制圧』という言葉が目的にふさわしいであろうだけのものがその場には並んでいた。


あさひ「すごいっす! これ、全部動かせるっすかね〜?!」

ルカ「おい、むやみに触んな……危ねえだろ」


肩にランチャーを抱え込んだあさひから慌ててひったくる。
なるほど冬優子の生前の気苦労がよく知れる。
こいつの手綱を握るのはなかなかハードなことだろう。
……いや、あいつもしっかりと握れていたのかと言われると疑問符が浮かぶのだが。

758 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:35:51.81 ID:LUS5eqqE0

透「よっす」

ルカ「浅倉透、お前らもここの調査中か?」

透「まあね、あれ……見てよ」


浅倉透が親指で後方を指差す。
促されるままに視線をやると、そこにあったのは巨大な送風機。
船のプロペラと言われても信じるような、あれほど大きな物は_______



______以前にも見たことがある。



小宮果穂の命を奪ったあの悪趣味なおしおき。
命の灯火を掻き消そうとしたあの送風機にどう見ても相違なかった。
759 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:37:04.66 ID:LUS5eqqE0

ルカ「な、なんでこれが……こんなところに……?!」

透「……ここにある兵器っていうのは人の命を奪うためにあるんだろうね」

雛菜「もしかして、この戦車とかもおしおきに使うようなの〜?」

透「かもね」


あんな砲身から放たれた弾に当たればひとたまりもないだろう。
それこそ一瞬で消し炭に、生命というものを軽んじて弄ぶ、モノクマらしい趣向だ。


あさひ「……? これ、なんっすかね?」


並んでいる残虐な兵器に目を奪われていると、あさひが奥から何か手のひら大の大きさのものを引っ張り出してきた。
先ほどの手榴弾の入っていたものとはまた別の収納からの様子。実際、その武器の色合いや形状も異なっている。


ルカ「……あ?」


手に取ってみると、ふざけた塗装。
ネズミをモチーフにしただろうマスコットが下品な笑顔を浮かべていた。
ジョークグッズか何かの類いだろう。

そう思って放ろうとした、その時。

760 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:37:54.07 ID:LUS5eqqE0



透「_____待って」


浅倉透がそれを制した。




ルカ「なんだよ」

透「それ……私のだ」

ルカ「は? これが?」

透「私の……黒幕への対抗策。ほら、前に話したでしょ、電波を断絶する、黒幕の干渉を拒むアイテム。それが、これ」


≪透「……そもそも、私が連絡取れてたのはモノクマからの干渉を拒める手段があったからなんだよね」

透「この島にいる限り、モノクマには全部知られちゃうんだよね。何をしてるか、何を話してるのかも。全部」

透「だから、そこら辺をクリアにする機能を持ったのがあったんだけど……今はもう使えない、取り上げられちゃったから」≫


761 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:38:57.02 ID:LUS5eqqE0

透「それは『エレクトボム』って言って、炸裂すると辺り一体に妨害電波を発生させてさ。電子機器の類は使えなくなるし、特定の電波以外は通さなくなっちゃう」

ルカ「マジか……んなもんあったら、モノクマの監視カメラも」

透「そういうこと。島の中に安息地が作れちゃう」

透「大体半径百メートル? しかも球でね」

ルカ「ドローンなんかが飛んでても、落ちちまうのか……」

雛菜「でも、それモノクマに奪われてたんだよね〜? なんでこんなところにあるの〜?」

あさひ「黒幕が研究し尽くした後、とかなんすかね?」

ルカ「もう対処法を見つけて用済みだってことか?」

あさひ「かもしれないっすね、わたしたちに返す理由が特にないっすから」

ルカ「じゃあこれは無用の長物ってやつか……」

透「……」

雛菜「透ちゃん〜?」

透「これ、とりあえず預かってていい?」

ルカ「ん? まあ、元々お前のやつだしな……でも、むやみに使うなよ、さっきあさひが言った通り手の内は知られてるんだ」

透「ん、オッケー」

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ワダツミインダストリアル
2.モノクマ工場
3.屋台村

↓1
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/06/11(土) 22:47:20.52 ID:G6swC7Fw0
1
763 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:49:11.66 ID:LUS5eqqE0
1 選択

【コンマ判定52】

【モノクマメダル2枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数……96枚】

------------------------------------------------

【ワダツミインダストリアル】

ルカ「ここは、なんだ……?」


外観は昔見た洋画に出てくる敵組織のアジトのようだった。
蜂の巣のようにくっついた立方体の装飾が前衛的で、まるで内装を窺わせない。
恐る恐る壁に取り付けられたボタンを押すと、仰々しい音と共にシャッターが持ち上がった。


あさひ「中、入ってみるっすよ! ルカさん!」

ルカ「あっ、コラ、走んな!」


あさひが我先にと潜って駆けていくので慌てて跡を追う。
金網と鉄板で作られた足場を勢いに任せて登っていく。
天井の中央に取り付けられた大きな電灯に近づくにつれて、やがて視界は開け……ついに建物の中の全貌が私の視界に飛び込んできた。

764 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/06/11(土) 22:49:47.60 ID:LUS5eqqE0

天井から垂れ下がる巨大なロボットアームは忙しなくその巨体に何か機械をあてがい火花を散らす。
足元のケーブルは極太の静脈のように複雑に絡み合い、ネオン色の発光をしている。
そうやって壮大で丁重な世話を受けているのは、私たちの背丈の何倍はあろうかというような人柄の機械。


ルカ「なんだよ、これ……」

モノケモノとはまた別の機体がそこに6体も並んでいたのである。

あさひ「なんなんすかね、このロボット」

ルカ「……碌なもんじゃねーのは確かだ」


災害救助用なんかでは間違ってもない。
人間で言う手と思しき部分にはガトリング銃のようなものが備わっており、足の部分はスプリンターのように異常な形状をしている。
血に飢えた悪魔がこんな姿だと言われたら、すぐに飲み込めそうな悍ましき造形だ。


智代子「このロボット……『エグイサル』って言うんだって」

ルカ「なんだ、その……どこぞの男性グループを敵に回したようなネーミングは」

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