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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

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48 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:37:41.22 ID:s0CqhW+t0

夏葉「あ、それでも一つだけ手掛かり……というか、気になることがあるの」

透「え、何ですか」

夏葉「この城の敷地内、どうやらモノクマもモノミも足を踏み入れることができないみたいなの」

ルカ「……! それ、マジか……!?」


ここにきて重要な情報だ。
これまでコテージの個室内でもモノクマは平然と姿を現し、そこら中に張り巡らされた監視カメラによって行動はそのすべてが掌握されていた。
だが、唯一この城だけはその監視網から脱することのできる空間。
これを利用しない手はずはない。


夏葉「どうやらネズミ……が苦手みたいで、それをシンボルにしているこの城は近寄りがたい様子で」

雛菜「ネズミが苦手なマスコットってなんだかあれみたいですね〜」

ルカ「おっと……不用意に名前は出すんじゃねーぞ」

透「あ、あれか。どら焼きの」

雛菜「うんうん、ポケットのやつ〜〜〜!」

ルカ「ギリギリセーフか……?」

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車

↓1
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:39:04.76 ID:BIXDK5Id0
1
50 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:41:48.16 ID:s0CqhW+t0
1 選択

【コンマ判定 76】

【モノクマメダル6枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…25枚】

-------------------------------------------------

【ジェットコースター】

島を一周するほど長いレールが行き着く先、そして次の一週が始まるのがこの搭乗口だ。
カンカンと音を鳴らして階段を登れば、数両つなぎのコースターが安全バーを口のように開けて出迎える。
それに齧り付くようにして騒いでいるのは、案の定中学生だ。


あさひ「乗るっす乗るっす! ここまで来たなら乗らなきゃ勿体無いっすよ〜」

冬優子「あ〜もう、いい加減言うことを聞けっての! 人数揃わなきゃダメってんだから、諦めなさいよ!」

ルカ「よう、冬優子……大変そうだな」

冬優子「ルカ、あんた他人事だと思って……ったく、愛依がいればもうちょっとうまく手懐けるんだろうけど、この!」

あさひ「あ〜、引っ張らないでほしいっす〜」

透「乗りたいの、コースター」

あさひ「はいっす! せっかく遊園地なんすから、乗らなきゃ勿体ないと思うっす」

雛菜「雛菜もコースター乗りたい〜!」

透「じゃ、乗ろっか」

冬優子「は、ちょっ……」

透「あれ、動かない」

冬優子「はぁ……何、こいつらも同レベルなの」

ルカ「か、それ以下かもな。このコースター、さっきも言ってたが人数が必要なのか?」

51 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:42:54.42 ID:s0CqhW+t0

冬優子「みたいよ。さっきモノクマが来て、乗りたければ生存メンバー全員連れて来いって。あんたんとこの緋田美琴も必要ですって」

ルカ「……美琴、も」

冬優子「まあ別にただのジェットコースターなら無視すればいいんだけど……何やら特典があるらしくって」

ルカ「特典?」

冬優子「ええ、この島の暮らしの真実にグッと近づく手がかり……モノクマはそういってたわ」


思わず浅倉透の方を見やった。
あいつもこの島の暮らしの真実、その一端を掴んでいる人間だ。
もしかするとその特典とやらはあいつの秘密を解き明かす鍵になるアイテムかもしれない。
私の中にも、興味の火が急速に灯されるのを感じる。


ルカ「だとしたら、乗るっきゃねえな」

冬優子「一回試してみるだけの価値はあるわね。……そのためにも、ルカ……緋田美琴、頼んだわよ」

ルカ「……あー」

冬優子「何があったのか、詮索はしないけど。せっかく和解出来たってのにまた仲悪くしてんじゃないわよ」

ルカ「おう……悪いな」


流石に少し気が重いが、美琴をここに連れてくるのは私の役目だろう。
他の場所の探索をすべてし終えたら、美琴のもとに行ってみようか。

-------------------------------------------------
【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】

【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】

↓1
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:44:32.10 ID:BIXDK5Id0
はい!
53 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:45:56.27 ID:s0CqhW+t0
【コンマ判定 10】

【モノクマメダル10枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…35枚】

-------------------------------------------------

【観覧車】

ルカ「これまたバカでかいな……何メートルあるんだよ」

透「んー、私10人分?」

ルカ「どころじゃねーぞ、その倍いてもおかしくねえ」


麓から見上げてもその頂点が見えないほどの高さの観覧車は絶えず動き続け、外と隔絶された空間をいくつも引っ提げて回転する。
なるほど確かに見晴らし自体はいいだろうが、こんな四方を海に囲まれた空間じゃ見るべきものも特にはないだろう。


智代子「あっ、ルカちゃんにノクチルの二人も来たんだね! ちょうどよかった、観覧車乗ってかない?」

ルカ「あ? おいおい、これ……一周結構時間かかるんじゃねーか?」


見る限り、その速度は一周数十分がかりか。
観覧車の規模が大きくなればなるほどかかる時間も増す。
今乗ってしまうと、どれだけ時間を食われて探索に遅れが生じるかわかったものではない。


智代子「うぅ……そうだよね。ロマンチックな乗り物だと思ったんだけど今は我慢か……」

雛菜「観覧車って結構恋愛系のお話だとよく出てきますよね〜」

智代子「そうそう! 二人だけの誰にも邪魔されない特別な空間、そこから見える美しき夜景! その瞳に同じ景色を浮かべながら愛を語らうのです……」

ルカ「ケッ、今時そんなベタな展開流行らねーっての」

透「えー、私結構好きだよ。ベタ的なの」
54 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:46:57.40 ID:s0CqhW+t0


バビューン!!

モノクマ「さすがは園田さん! よく分かってますね! 当観覧車も恋人たちの健全なる愛の囁きを大いに応援しておりますぞ!」

ルカ「どっから湧いてきやがったこいつ……」

智代子「うんうん、観覧車と言えばやっぱりカップルだもんね!」

ルカ「この島のどこにカップルがいるんだよ、女しかいねーだろ」

智代子「愛の形は何も男女に限ったものではないんですよ、ルカちゃん……!」

ルカ「ああ……?」

モノクマ「当観覧車はカップルの時間を誰にも邪魔されないようにいろんなサポートをしております。観覧車の中ではロマンチックなBGMをオプションで流すこともできますし、飲食物の持ち込みもOK!」

智代子「いいねえいいねえ、せっかくなら間接キスもつけちゃって……!?」

モノクマ「カプセルは外からの干渉の一切を拒絶できるように、なんとナパーム弾ですら傷をつけられない最新鋭の防衛シェルター仕様!」

智代子「おお……それなら二人の時間を邪魔されない……!!」

ルカ「そんなシェルターが機能するなんてどんな状況だよ……」


そこからしばらく甘党女がひたすら妄想を膨らませ始めたので私は早々に退散。
恋愛映画だとかそういうのは私には間に合ってる。
興味のない分野のことには触れないでおこう。

55 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:48:06.45 ID:s0CqhW+t0
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

探索を一通り終えたが、今回はまだ終わらない。
ジェットコースターの特典、それがこの島での暮らしの秘密を解き明かす重要な手がかりである以上スルーはできない。
全員を搭乗口に集めて、乗ってみないといけないな。

そのためにも、まず……私はあいつの元へ行かなくちゃならない。


ルカ「悪い、てめーら二人は先にジェットコースターに行っててくれ」

透「ん。雛菜、行くよ」

雛菜「わかった〜、元相方さんとの仲直り、頑張ってくださいね〜」


まるで他人事のように言ってくれるが、その原因はもろにこの二人にある。
だが浅倉透の覚悟に向き合うと決めた以上はそれをこちらから一方的に唾棄もできはしない。
美琴の説得は私の義務、か。
とはいえ千雪に無理やりやらされた時も、聞く耳を持たない美琴には結局強硬策でなんとかと言ったところ。
今回もどうなることやら。

56 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:49:35.93 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------
【第1の島 ビーチ】

案の定美琴はここにいた。
いつかの時と同じように、感情をぶつけまくって乱暴に手足を振り回しているダンス。
とても直視に耐えられるような代物ではない。
私は悟られないように、息を殺すようにしてゆっくりと近づいていった。
まるで草食動物がライオンにバレないようにサバンナを歩くようで、なんとも情けない光景だ。


「……違う、遅れた」


そんなことを呟きながら振り付けをリアルタイムに修正。
普段ならそれも真摯な態度、真面目なやつだと評価できるポイントかもしれない。
でも、今のこいつはいつのどこを目指してこんなことをしているんだ。
肝心の相方はもう生きちゃいない、この島から帰る目処も立っていない、外の世界のことも何もわからない。
今こうして改めて距離を置いて、美琴の異常さを再認識した。
現実逃避、なんて言葉で括れるものでもない。



こいつは、取り憑かれている。


57 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:51:08.21 ID:s0CqhW+t0

浅倉透のことについてもそうだ、あいつが私たちに敵対している存在ならとっくに仕掛けてきている。
事件をかき乱す狸の方が目に見えてよっぽど凶悪なのに、美琴は未だに浅倉透への僧念を絶やすどころか、その熱量は増している。
もはやここまで来ると呪いだ。

七草にちかの亡霊に、美琴は取り憑かれている。


「……よう、美琴」
「……」


逃げられないように距離を詰めてから話しかけた。
私がずっと気配を消していたので、美琴は本当に今この瞬間まで気づいていなかったらしい。
相当驚いた様子だが、すぐに鉄の仮面のような表情を無理やり戻して私に向き直る。
浅倉透への感情が、私への怒りへと出力されているのを肌でヒリヒリと感じる。


「メカ女がよ、モノケモノをぶっ飛ばしてくれたから第4の島に行けるようになったんだ。それで、美琴にも手伝ってもらいたいことがあるんだよ」


まずはここに来た理由を明らかにした。
下手に浅倉透とのこと、七草にちかとのことを突っつけばその段階で閉ざされてしまうかもしれない。
私だけでなく連中全員にも関わる話で、コースターに連れていくことだけは何よりも優先したかった。

58 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:51:52.49 ID:s0CqhW+t0

「……手伝うって?」
「第4の島にはジェットコースターがあるんだけどさ、それに乗ると島の秘密に関わる特典がもらえるらしくて……その乗るための条件に、残ってる全員が集まる必要があるんだよ」
「……」

(……頼むぞ)

「……わかった、行く」
「……! お、おう! 助かるよ、美琴!」

浅倉透と接触するリスクと貰えるであろう特典とを天秤にかけたようだが、なんとか望ましい方に傾いてくれた。
ホッと胸を撫で下ろす。

「よ、よし……美琴まだ場所わかんねーだろ? 私が連れてくから、用意してくれよ」
「……うん」

美琴は従順な様子で荷物をすぐに片付け始めた。
私が思っていたよりも怒ってはいないのか、そんな風に思ったのも束の間。




「ルカ、昨日の続き。……話してくれる?」


「えっ」

59 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:53:49.76 ID:s0CqhW+t0

なあなあで終わらせてはくれなかった。
まるで時が止まったように私の周りからは音が立ち消えて、美琴の手元の片付けの音だけが響いた。
物を持ち上げて下ろす、それだけの生活音が私の回答を急かす声のよう。
私の首筋を嫌な汗が伝う。

(美琴に、話すべきなのか……)

浅倉透はこの島に私たちを招いた人間の一人。
だが、その目的はまだ私に打ち明けてはいないし、おそらく自分の口からもまだ言うつもりはない。
七草にちかの時の『外部の人間との関与』からはわずかに進展はあったものの、信頼を勝ち取れるほどのものではない。
七草にちかの遺した感情を引き継ぐ美琴からすれば、火に油。
でも、だからと言ってここでまた黙ってしまえば、決定的だ。


「ルカ、教えて」


正解なんてきっと無い。
この状況に追い込まれていた時点で、きっと私は詰んでいたんだ。
私は、観念するしかなかった。

60 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:54:52.68 ID:s0CqhW+t0

「あいつから何か新しいことを聞けたわけじゃない。……でも、あいつは自分の行動で他の連中から信頼を得るために協力するって言ってた。だから、私もそれで見極めようとしている。その最中なんだよ」


あくまで浅倉透の話は隠した上で、あの時の会話をできる限り赤裸々に語った。
何も嘘はついちゃいないし、今の私のスタンスとしては間違っちゃいない。


「別にあいつの肩を持つとかそういうんじゃなくて……ただ、今のままじゃ真実も何もわからねえと思って……!」


狼狽するような言い訳だった。
私の手から美琴がすり抜けていくのが怖くて、嫌われないように言葉を選んだ。


「わかった。ルカはルカなりに一歩進む決断をしたんだよね」
「お、おう……?」


でも、それがまずかった。
61 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:56:03.12 ID:s0CqhW+t0






「にちかちゃんの言葉を、信じないで」






62 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:56:46.80 ID:s0CqhW+t0

「お、おい……ちょっと待て、そうじゃなくて……」
「……ジェットコースターだっけ、早く連れて行ってよ」


もはや美琴は私に聞く耳を持たなかった。
冥府からの囁きで耳の中は既に満席、私の割り込む余地などなくなっている。
浅倉透に歩み寄るという行為自体が既に美琴からすればタブー、そういうことなのだろう。
誤解を解くとかそういう次元の話だと思っていた私の見立てが甘かったわけだ。


「早く」


この世界の全部が全部合理的に進むわけじゃ無いってのはわかっていた。
どうしても無理なものは存在していて、努力だとか理論だとかで埋めることもできない穴は迂回する他ない。
芸能界に身を置く私はそれを一番よく知っていたはずだ。
それなのに、この島で暮らして情に絆されるうちにそんな簡単なことすらも忘れてしまっていた。


「……おう」


私も、もう美琴の目を見れなかった。
63 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:59:06.17 ID:s0CqhW+t0

ここから先、少し長くなるので本日は早めに切り上げてここまで。
次回更新で自由行動パートに移ります。
次回は4/15(金)の21:30〜を予定しています。
それではお疲れさまでした。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 23:01:00.28 ID:BIXDK5Id0
お疲れ様でした!
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/14(木) 18:50:33.80 ID:WVOpkpMw0
乙です
66 :少し早いですが再開します ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:19:44.36 ID:HvMz0mwZ0
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【第4の島 ジェットコースター】


あさひ「あっ、ルカさん、美琴さん! 遅いっすよ〜! 早くジェットコースター乗るっすー!」


搭乗口には私たち以外の全員が既に集まっていた。
中学生以外の連中は、私の沈痛な表情から全て読み取ったらしく、言葉に詰まっていた。


ルカ「わ、悪い悪い。ほら、これで全員だろ、さっさとジェットコースターに乗ろうぜ!」


居心地の悪さを押して、私は連中に乗車を促した。
こんなところで浅倉透と美琴の接触も認めたくない。


バビューン!!

モノクマ「あら、全員お揃いのようですね!」

あさひ「あ、モノクマ! みんな揃ったっすよ、早くジェットコースター動かして欲しいっす」

夏葉「ジェットコースターに搭乗した特典とやら、受け取らせてもらうわよ」

モノクマ「うむ、条件は満たしておるし良いでしょう! それでは皆々様、一列二人ずつで乗り込んで安全バーを下げてお待ちください!」


モノクマに言われるがまま、私たちはジェットコースターに乗り込んだ。
全員が乗り込み、バーを下げるとすぐに動き出した。

67 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:20:57.72 ID:HvMz0mwZ0
◆◇◆◇◆◇◆◇


ルカ「う、うおおおおおおおお?!?!」

(は、速い……!!!!!)

あさひ「あはははは!! すごい!! すっごく速いっす〜〜〜!!」

雛菜「やは〜〜〜〜〜〜♡ 風が気持ちいい〜〜〜〜〜!!」

智代子「わ〜〜〜〜〜〜!? め、目が回るよ〜〜〜〜〜!!」

(ジ、ジェットコースターにしてもこれはやりすぎだろ……!?)


◆◇◆◇◆◇◆◇
68 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:23:51.50 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「や、やっと終わった……吐きそうだ……」

恋鐘「世界がひっくり返っとる……うちが下で、空が上ばい……」

夏葉「みんな、大丈夫? そんなに辛かったのかしら……」

智代子「夏葉ちゃん……今だけは機械の体になっていて正解だよ……わたしたちは足腰がもうおばあちゃんだよ……


思えばレールは島をぐるりと一周するほどあるのを自分の目で確認していた。
全身の臓器を振り回されるような早さと衝撃とからは中々解放もされず、はじめは余裕そうにしていた連中も下車する頃にはすっかりグロッキー。
這いつくばるようにしてなんとか戻ってきた私たちを見て、モノクマは腹を抱えて笑ってきた。


モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃ! 全員芋虫みたいになって出てきたじゃん、ケッサクケッサク!」

ルカ「お前、元からこのつもりで……」

モノクマ「餌さえあればオマエラ無警戒によってきてくれるんだもんなあ! いい見せ物になってくれて感謝感謝!」

美琴「……約束は守ってもらうよ。この島の秘密の手がかり、渡してもらえるんだよね」

モノクマ「散々笑わせてもらったからね、その代金はお支払いしましょう!」
69 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:25:00.94 ID:HvMz0mwZ0


モノクマ「ジャンジャジャーン! お望みのものはこちらかな!」


モノクマが持ち出したのは表紙が黒塗りのファイル。
文字らしきものも一切なく、内容はまるで窺い知れない。
この中に私たちが知りたがっている秘密へと繋がり手がかりがある。
思わず生唾をひとつ飲み込んだ。


モノクマ「ファイルはこの一冊しかないから仲良くみんなで回し読みしてね! それじゃ!」


モノクマは私にそのファイルを手渡すと、そのまま姿を消した。
内容について質問されるのを避けるためか、随分とお早い退散だ。


夏葉「とにかく中身をあらためてみましょう、見ないことには話も進まないわ」

雛菜「なんだかドキドキしますね〜」

冬優子「……ルカ、ページをめくってちょうだい」

ルカ「お、おう……行くぞ」


全員が見守る中、ゆっくりとそのページをめくっていった。

70 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:27:48.41 ID:HvMz0mwZ0
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283プロダクション連続殺人事件

本記は芸能事務所・283プロダクション所属のアイドルが多数命を落とした一連の事件についてまとめたものである。
事件に関与したとされるのは同プロダクションのアイドル全16名、同プロダクションの社長とその賛同者である。
アイドルのうち11名はなんらかの形で命を落としており、今回の事件の主犯格とその腹心も自殺に及び事件は事実上の未解決となった。

事件の大筋は、社長の天井努による殺人の強制である。
アイドル16名は学校を模して建築された専用施設に拉致監禁、その際に記憶を操作する何らかの手術も行われていたとみられている。
アイドル16名は社長たちによる恐喝・恫喝行為を受けたことにより冷静な判断能力を失い、お互いを手にかけるような一種の洗脳状態に陥っていた。
どうやら犠牲者は相互に加害者と被害者の関係に分かれているようだが、その事の次第は未だ明らかになっていない。

以下、本件における死者および検分に基づく推定死因。

【櫻木真乃】鳥獣に全身を食い荒らされ死亡
【八宮めぐる】服毒または至近距離で爆発を受けたことによる全身致死傷
【白瀬咲耶】水に濡れたところに高圧電流が通電したことによる感電死
【幽谷霧子】全身圧迫による複雑骨折および呼吸困難
【大崎甘奈】首元の裂傷による失血死
【大崎甜花】胸部の刺し傷が心臓にまで到達し死亡
【西城樹里】全身骨折および脳出血
【杜野凛世】爆破(死体の損壊が激しく一部発見できず)
【浅倉透】頭部に強い衝撃を受けたことによる脳挫傷
【樋口円香】腹部に槍のようなものが貫通し臓器を損傷
【福丸小糸】全身圧迫による内臓破裂
【天井努】高所より転落したことによる全身骨折および内臓破裂
【身元不明】事件現場において他のいずれとも違う人物の肉片が確認されている。もはや一人物と特定するのは困難な損傷であるため、身元不明として処理する。

また、事件現場からは生存者として5名の人物が保護された。
いずれも同プロダクションのアイドルであり、連続殺人の渦中に置かれていたため精神面で後遺症があるとみられ、現在では心身のケアが進められている。
彼女たちが無事立ち直ってから同プロダクションのプロデューサーの協力を受けた上で取り調べを行うこととする。

以下現場より保護された生存者
【風野灯織】【田中摩美々】【園田智代子】【和泉愛依】【市川雛菜】

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71 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:28:43.17 ID:HvMz0mwZ0






「……は?」





72 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:30:43.05 ID:HvMz0mwZ0

書いてあることの、全ての理解を拒んだ。
登場人物、出来事、内容、そのいずれにおいても現実離れしている『あってはならない』こと。
読み進めていくうちに、一人また一人と言葉を失っていき、騒がしいはずの遊園地は気が付けば音が何もしなくなっていた。
やがてめくっていくページもなくなり、固い表紙裏に行きついて、ようやっと言葉を絞り出す。


ルカ「……な、なんだよ……これ……」

あさひ「……」

恋鐘「283のみんなが……死ん、どる……?」

夏葉「天井社長が283のみんなにコロシアイを強要した……? それに、社長も死んでいる……? 樹里と、凛世も命を落としている……?」

73 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:32:04.31 ID:HvMz0mwZ0

でも、誰も『悪い冗談だ』なんて言葉でその中身を否定はしなかった。
それは、そこに書いてあることを誰もが一度想定していたからだ。

千雪が命を落とすこととなった『二つ目の動機』。
そこで一度このコロシアイの可能性は示唆されていた。
この島にいない面々が登場して描かれた凄惨なコロシアイがゲームのシナリオとして私たちの前に出た時、
あのゲームは『ノンフィクション』だと宣言されていた。
そして、画面上に浮かび上がった大崎甜花の死体。

あの写真とここに書かれている死因とは完全に一致していた。
途端に死と喪失が実感を伴って目の前に立ちふさがった。


智代子「そ、それに……これ、どういうこと……? わ、わたしと雛菜ちゃん、それに灯織ちゃんに摩美々ちゃん、愛依ちゃんも……コロシアイの生き残り……?」

雛菜「……あは〜?」

74 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:33:02.73 ID:HvMz0mwZ0

そしてもう一つ私たちの前に現れたのは、大きすぎる謎。
私たちよりも以前に行われたであろうこのコロシアイ……その中にこの島にいた人間の名前も含まれているのだ。
確かにあの『かまいたちの真夜中』でも風野灯織の名前は登場していた。
だが、あいつだけでなく五人の生き残りがそのままこのコロシアイにも参加しているとは思わなかった。
既に三人が命を落として、残るは二人のみ。
だが、園田智代子も市川雛菜も両方ともまるで心当たりがないという様子で目の前の事実に狼狽えている。


あさひ「……もしかして、一つ目の動機の話っすかね」

冬優子「モノミがふゆたちの記憶を奪ったって言うアレ……? それで、この二人もコロシアイの時の記憶を奪われてるの?」

智代子「し、知らない……わたし、こんなコロシアイなんて……知らない……」

智代子「わたしのなくなった記憶の中で……樹里ちゃんも、凛世ちゃんも……死んじゃってるの……?」


何度も頭を掻きむしった。
この脳には、確かにその時の記憶が刻まれていたはず……今もあるはずだ。
それなのに、その記憶は錠前をかけられたかのようにまるで取り出すことができず、自分にもその心当たりがない。
何よりも覚えていなくちゃならない記憶、何よりも忘れちゃいけない記憶なのに、その光景もその息吹も何もかもわからない。
数週遅れで効いてきた動機の圧に、園田智代子はその場にへたり込んだ。

75 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:34:08.19 ID:HvMz0mwZ0

美琴「……それよりも、聞かなくちゃいけないことがあるよね」


冥々たる雰囲気立ち込める中、ナイフのように鋭く冷たい言葉が差し込まれた。


雛菜「雛菜も、これは流石に無視できないですね〜……」






美琴「……【浅倉透】、このコロシアイであなたは命を落としていると書かれているけれど、どうしてここにあなたがいるのかな」




透「……」
76 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:35:56.79 ID:HvMz0mwZ0

私ですら、目で追っているうちにその謎の前に思わず声を漏らしてしまった。
今私たちの目の前にいる、【浅倉透】という人間は既に死んでいた。

何度もファイルの写真と本人とを見比べた。
儚げな雰囲気の割にくりくりとした瞳、肩にかからないほどの長さでまとまった少し青みがかった黒髪。そのいずれも写真と相違ない。
だのに、途端にこの浅倉透という人物に薄靄が罹ったように錯覚する。
それほどまでにこの矛盾は異常、そして看過できないほどに大きい。


ルカ「……前にも一度、聞いたことがあったよな。ちょうど千雪の事件の裁判の後だ。あの時にもお前はコロシアイが以前にも一度あったのか聞かれて、知らないと答えた」

透「……」

ルカ「でも、それって……おかしいよな」


一度、この矛盾には手を触れかけた。
千雪の事件の時には、まだその確証がなかったので、私もその矛盾を前にしても感じたのはせいぜい違和感どまりだったが、
今こうして浅倉透のコロシアイの経験が確定して、それは明らかなものとなった。

こいつは、外の世界の人間との接触を認めている。
七草にちかの糾弾を全面的に認めつつも、あくまで敵ではないと主張した。

そして、千雪の事件の時にはこいつはコロシアイのことなど何も知らないと言った。
こいつが本当に一回目のコロシアイに関与していないのならばまだよかった。
77 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:37:15.39 ID:HvMz0mwZ0



だが、コロシアイの参加が明らかになった以上、『外の世界と通じていながらも記憶を有していない』なんてことは成立しえない明らかな矛盾だ。



ルカ「お前、全部知ってるんじゃないのか……?」



一度は信用しようと、歩み寄った一歩。
それはたった一日のうちに、取り消さざるを得なくなった。
78 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:38:11.59 ID:HvMz0mwZ0





透「そっか……私、死んでたんだ」





79 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:39:51.65 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……は?」

透「……ううん、知らない。私は、何も知らない。聞かされてもいなかったからさ、死んでたってのも」

美琴「ふざけるのもいい加減にしてもらえるかな」

ルカ「お、おい……美琴……」


美琴はどんどんと浅倉透に詰め寄っていき、やがて浅倉透からは見上げねば視界に顔が収まらなくなるほどの距離に。
美琴の頭には完全に血が上っているようだ。


美琴「あなたはにちかちゃんの命をかけた糾弾をどこまで時踏み躙りたいの。答えをいつまでも出さずに、バカにしているとしか思えない」

透「……ごめんなさい」

透「もう、言わざるを得ない……か」


その謝罪は美琴に宛てたものだったのか、別の誰かに宛てたものだったのか。

浅倉透は真上を見上げ、ひとつ息をつく。
宙に吐き出されたその息をしばらく見つめるようにしてから、あらためて美琴の顔を見た。
80 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:41:22.02 ID:HvMz0mwZ0





透「……わかりました、話します。私が何者で、みんながどうしてここにいるのか」





81 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:42:50.66 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……ま、マジか?!」

透「もう、言わないと……私が殺されちゃうしさ」

ルカ「……え?」


浅倉透は少し後退り、指で斜め下をさした。
その指先、さっきまで美琴の影と重なっていた部分に私たちも視線を落とす。


ルカ「……美琴!?」


そこには、刃渡り三十センチほどのサバイバルナイフがあった。
美琴は問い詰めるために詰め寄ったんじゃない、あのナイフを腹に当てて脅していたんだ。
逃げ場はない、話さないとここで殺す……と。


美琴「……」

(み、美琴……)


そして、浅倉透は語り出した。
静かに、ゆっくりと、瞳を閉じて。
自分自身のことだというのに、まるで昔話を語るような不思議なほどに穏やかな語り口だった。

82 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:43:48.05 ID:HvMz0mwZ0


透「私は、みんなの知ってる浅倉透とおんなじだけど違うんだ」


透「みんなが覚えてる浅倉透が今の『私』」


透「みんなの知らない浅倉透が写真の『私』」


透「……写真の『私』の過去の私が、今の『私』」



『私』という言葉を何度も繰り返す。
ただの一人称だったはずのその言葉はブランコのように理解と非理解との間を往復し、
言葉が本来持っていたはずの意味合いはやがて脱色していき不透明な物体へと移り変わる。


そして、そのモヤモヤしただけの物質をかき集めて浅倉透は、それを口にした。

83 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:45:13.34 ID:HvMz0mwZ0





透「『浅倉透』のある部分までの記憶と人格とをコピーして作られたのが、『私』なんだよ」





84 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:46:15.22 ID:HvMz0mwZ0



ルカ「…………………………………………………………は?」




一体いつから私はSF映画を見ていたんだ?
つい昨日まで言葉を交わしていた相手は一晩のうちにアンドロイドに作り替えられ、更に別の相手は自分の正体はコピーだと自白。
もうこれは小説や漫画の中の世界じゃないと説明がつかない。
浅倉透の口にした言葉は右から左へ私の中を通過して、通り掛けに脳の神経回路の隅々までをショートさせてしまった。

85 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:47:25.44 ID:HvMz0mwZ0

透「だから、みんながこれまで接してきた『浅倉透』とはちょっとだけ違うんだ」

透「その記憶も感触も、覚えてるんだ。でも、私の身体はそれを知らない」

透「……この体で経験してないことばっかり、覚えてる」


何もわからない。
こいつの口から出る言葉も、私の前に立っているこいつの正体も。
私の視界の中にいる『浅倉透』という人間に黒塗りがされてしまったように、もはやこいつの姿すらも視認できなくなった。


雛菜「意味、わかんない……意味わかんない……」

雛菜「透先輩が、何言ってるのか……わかんないよ……」


幼馴染でさえも、それを受け止めきれなかった。
わなわなと震えながら、両腕で自分の体を抱きとめてなんとか立っている。


86 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:48:43.62 ID:HvMz0mwZ0

美琴「……あなたがこのコロシアイのことを何も知らないって言うのは」

透「……私はきっと、このコロシアイより前の記憶で作られたコピー。なんじゃないかな」

美琴「……」

透「……『私』がもう既に死んでたなんて、今の今まで知らなかったんだ。ごめん」


ちょっと前、いやかなり前だったかもしれない。
晩飯を一人で食べながら、BGM代わりにつけた番組で生命だの倫理だので議論を交わす、おおよそ正気とは思い難い番組をちらりと見たことがあった。
そこで議題に上がっていたのはクローンという存在。
全く持って同じ遺伝子情報の持つ生命体を人間の手で生み出すことは許されるのか、否か。
私はくだらないとぶった切ってカップ麺を啜り上げていたはずだ。
自分と全く同じ存在がもう一つあったからと言ってなんになるんだ。今自分の持っている記憶がある限り、その生命体が同一であると見なされることはない。
例え遺伝子の一つまで同一だとしても、人を人たらしめるのはそういう条理の世界だと思っていた。

……なら、今私の目の前に立っている『これ』はなんだ?
『浅倉透』と全く同じ見た目、声、思考、そして記憶。
更に、こいつのオリジナルであった本物の『浅倉透』はおそらく……死んでいる。



『これ』はそんな状況下では……何に当たるのだろうか。



87 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:49:56.88 ID:HvMz0mwZ0

あさひ「……全然、気づかなかったっすよ。事務所で過ごしてきたときと、透ちゃんおんなじ喋り方だったし、雰囲気も変わんなかったっす」

透「人格も同じ、だから」

恋鐘「そがんことが……あり得るばい?」

冬優子「コピー……そんなの、信じられるわけないじゃないの……!」

智代子「でも、夏葉ちゃんのこともあるし……」

夏葉「……ええ、記憶・人格の移植自体は可能だと思うわ。私も実際アンドロイドの体に挿げ変わっているわけなのだし」

あさひ「わたしたちの時代の技術を、はるかに超えてるっすよ……」

透「うちらが知らないだけでさ、あったんだよ。そういう技術。国とかが、隠してたりで」

雛菜「……」


浅倉透の説明に当惑するばかりの私たちは、何度も何度も言葉をなぞって咀嚼しようと試みた。
でも、どれだけ繰り返そうとも一向に先には進まない。
呆然とその言葉を眺めることしかできない中、あいつだけは一歩先に立ち、吐き捨てるようにして言った。
88 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:51:18.15 ID:HvMz0mwZ0





美琴「……くだらない」





89 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:52:35.32 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「み、美琴……?」

美琴「言い訳にしても酷すぎる。……そんな世迷言、私は信じられないな」

透「全部、本当だよ。私のこと、全部話したから」

美琴「あなたは浅倉透。それ以外の何者でもない……この目で、この肌で感じてきたものに間違いはないと思うの」

雛菜「……!」

美琴「黒幕と通じているあなたは、死んだと見せかけて生かされていたんだよね。今の今まで。それで平然と何もなかったように装って、記憶がないとかコピーだとか適当な言い訳を並べて」



美琴「……許せないかな」


ギリリと奥歯を噛んだ。口角はいやに吊り上がり、眉もそれに連動して動いた。
虫唾が走る、というのは今の美琴のような表情のことを指すのだろう。
きっと美琴にはもう浅倉透の言葉は届かないんだろうと思った。
整合性だとか論理性だとか、そういうものは感情の前では無力だ。
迷い戸惑う私たちとは別に、美琴はより一層その僧念の炎を猛らせる。


ルカ「……美琴!」



____凶刃が、舞う。



90 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:54:51.93 ID:HvMz0mwZ0



キィィィィィィン……!!



91 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:55:45.68 ID:HvMz0mwZ0



美琴「……なんで、あなたが」



それを制したのは、鋼鉄の体をもつ有栖川夏葉だった。


夏葉「間一髪、ね。体に改造を受けていて助かったわ。いくら鍛えていても、本来の肉体ならナイフの前には無力だったもの」


浅倉透の首元を狙った一振りはメカ女の掌底にぶつかり甲高い衝突音を立ててから地面に落下した。
その衝撃に美琴の肘がビリビリと痺れる。


夏葉「美琴……少し冷静になりましょう。透の今の話……たしかに鵜呑みにできるものではないけれど、はなから否定して殺意衝動に変えてしまうのは早まった決断よ」

夏葉「にちかの遺志を尊重したい。あなたのその気持ちは痛いほどに理解できる。ただ……あなたの中でその形は少し歪んでいないかしら。にちかはあなたに手を汚させることを良しとしないと思うの」

美琴「……ッ!」

ルカ「あっ! おい、美琴……!」


メカ女の説得にも耳を貸さず、美琴はそのままよろけながらその場を後にしてしまった。

92 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 21:58:09.82 ID:HvMz0mwZ0

残された私たちの元に、再び『コピー』というおおよそ許容し難い現実が戻ってくる。


透「……あのさ」

透「今、言ってもしゃーないかもだけど。コピーだとしても、浅倉透の偽物だとしても、味方だってのは変わんない」

透「モノクマの仲間なんかじゃない。信じて欲しいんだ」

ルカ「……」


きっと、嘘はついていないんだろうと思った。
あの病院で話した時と同じ、自分のことを分かってもらおうと真正面から向き合う態度、眼差し。
ただ、手放しで受け入れるにはあまりに情報量が多くて、酷な内容だったのだ。

私ですら突然突きつけられた現実にたじろいでいる。
『こいつ』のそれは、私の想像を絶する。

93 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:00:16.38 ID:HvMz0mwZ0

雛菜「……あなたは、雛菜の知ってる『透先輩』ではないんですよね〜」

透「雛菜」


市川雛菜と浅倉透は幼なじみだ。283プロ内でも勿論、芸能界でもそうそうそこまで長い時間を共に過ごしてきたアイドルはいない。
もはや心の根幹にも等しい人間が本当は別人だった、なんて世界そのものが揺らいでしまうほどの衝撃だろう。


雛菜「薄々、感じてたんだ〜……透先輩、嘘とか隠し事とかすっごく下手な癖に……雛菜に全然何も喋ってくれないんだもん〜……」

透「……!」


そんな揺らぎの最中、市川雛菜の表情はある種達観したものがあった。


雛菜「雛菜の大好きな透先輩と、なんだか違うなって場面が時々あって……」

雛菜「今、話を聞いて……意外とすっきりしてるんですよね〜」

智代子「雛菜ちゃん……」

雛菜「……そっか〜」


目を瞑って、今一度噛み締める。
次に瞼を上げた時、その瞳には先程まではなかった光が宿っていた。
94 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:01:45.63 ID:HvMz0mwZ0





雛菜「じゃ、今度から『透ちゃん』って呼ぶね〜!」





95 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:03:00.16 ID:HvMz0mwZ0

透「えっ」

雛菜「あなたは雛菜がずっと同じ時間を過ごしてきた透先輩ではないけど、この島で一緒に過ごしてきたのは変わらないでしょ〜?」

雛菜「雛菜は透ちゃんと変わらず仲良くしたいから! それでいいよね〜?」


「自分がどうしたいか」を優先した答え。
感情を整合性よりも先にして殺意に呑まれた美琴と、その文脈は似通っていた。

しかし至る所は全くもって違う。奔流に飲まれて自分すら見失った美琴と対照的に、そこには確固たる自我がある。
どんな状況でも、自分を見失わないこいつだからこそ出来た清々しいまでの答え。

どこか子供っぽさすら感じさせるその言葉は、私たちの胸に心地よい風を走らせた。
96 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:04:39.56 ID:HvMz0mwZ0


恋鐘「雛菜の言う通りばい! うちの知ってる透じゃなくとも、こん透だって島に来てからうち達と過ごしてきた時間は嘘じゃなかもん!」


冬優子「……そうね、これまで過ごしてきた時間は確かなんだし、その上でどう接するべきかは決めていけばいいのかもしれないわね」


あさひ「よくわかんないっすけど、透ちゃんが何か変わるわけじゃないんっすよね? それなら別にいいっす」


夏葉「透、よく話してくれたわね。あなたの抱え込んでいた秘密は、まだ飲み込み切れないけれど……あなたがそれを話してくれた、その勇気は信じてみたいと思うわ」


透「……ありがと。嬉しい、めっちゃ」


97 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:06:50.45 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「……まあ、浅倉透のことに関してはそれで一旦受け入れるとしてもだ。実際……お前らはどうすんだよ、このファイルに書いてある出来事」

智代子「そうだよね……向き合わなくちゃ、いけないんだよね」

夏葉「……正直なところ、これまでにも何度も検討してきた可能性ではあったの。それがこうして具体的な形となって目の前に現れたけど……まだ飲み込めてはいないわね」

冬優子「……これが事実なら、283プロダクションのアイドルはここにいるメンバーしか残っていないことになるわ」

雛菜「……雛菜たちも、もう雛菜しかいないんだよね〜」

透「……ごめんね、雛菜」

雛菜「透ちゃんが謝ることは何もないよ〜?」

恋鐘「でも、まだこれが本当だって決まったわけでもなかよ! モノクマが提示したファイル、偽造の可能性だって全然あるばい!」

あさひ「これが本当かどうか、確かめてみる必要があるっす」

智代子「で、でも……どうやって?」

あさひ「生きてこの島を出て、確かめるっす。みんなで生き残って、それで自分の目で確かめるほか無いっすよ」

(……お前がそれを言うのか)

98 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:08:59.21 ID:HvMz0mwZ0

夏葉「……ひとまずは解散しましょうか。今日は色々とありすぎたわ」

智代子「夏葉ちゃんがアンドロイドになっちゃったことが半分くらい霞んじゃってるもんね……今日は濃すぎだよ……」

ルカ「……美琴のこと、私もどうにか出来ないか考えてみる。浅倉透、てめェにも協力してもらう場面があるかもしれない。覚悟しとけ」

透「うん、もちろん」

雛菜「雛菜もお手伝いしてもいいよ〜?」

恋鐘「それじゃあ今日は一旦かいさ〜ん!!」


私たちはジェットコースターをようやく後にした。
ファイルを開いてから、かなり長い時間を……いや、一瞬だったのかもしれない。
ともかく時間の感覚を失うほどの衝撃を受けてしまったのはたしかだ。

それぞれが胸にモヤモヤとしたものを抱えながら、目を向けたく無い答えを半目半目で見つめながら、自分たちのコテージへと帰っていった。
99 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:10:59.86 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


「ああクソ、うぜェ……」


その罵倒の先にあるのは、自分だ。
ちょっとばかし交流していたからといって、連中のお仲間が死んでいたことに少なからずショックを受けている自分。
仕事先でたまに見かける程度の繋がりしかない相手が死んでいたから、なんだ。
私はそんな感傷的な人間だったか?
カミサマはもっと傲慢不遜で、独善的な……ぶくぶくと膨れ上がった自尊心の塊みたいな存在だったはずだ。
千雪をはじめとした283の連中にすっかり絆されてしまって、見る影もない。


「マジで、意味わかんねえっての……」


そうなると、自分の中に湧き上がる不安に目を向けざるを得なかった。
過去にあったコロシアイ、それと同じ状況にある自分。
そして、私を取り囲む人間たちの諸々。


「……はぁ」


記憶を失った生存者、浅倉透のコピー、そして美琴の暴走。


「病むっての、こんなの」


私も動かないといけない、解決しないといけないことが山積だ。
それは頭ではわかっていたが、今夜ばかりは体が言うことを聞かなかった。
ベッドに乱暴に自分の身体を叩きつけるようにして、そのまま目をつむった。



……何も、考えたくはなかった。

100 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:12:31.96 ID:HvMz0mwZ0
____
______
________

=========
≪island life:day 17≫
=========
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


「……あ」


目を覚まして、まず最初に自分の右手を見た。
指の長さ、皺、関節……どれも私自身、斑鳩ルカのものだ。
どうしてこんなことをしたかというと、それは眠っているときに見た夢に起因する。

私の隣に立っていた人間が突然自分の皮をはいで、そのグロテスクな正体を曝け出すという胸糞悪い夢。
その原因が分かり切っている。

私たちは、あいつを『浅倉透』のコピーであるということを理解したうえで受け入れると決めた。
本人ではないことを踏まえたうえでの承認。少々歪な体制ではある。
それは、倫理だとか論理だとか、諸々の面倒な思考に蓋をするためのその場しのぎの対策法だともいえる。
……それに、今更口出ししたとて仕方ないが。


「……ざけんなよ」


考えたって時間の無駄だ。
私は適当に支度を終えて、早足でレストランへと向かった。
101 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:14:45.67 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】

雛菜「あ、おはようございます〜」

ルカ「……なんかすげえ変な感じだな」

夏葉「今朝は珍しく雛菜が一番乗りだったのよ」


つい昨日の出来事がどう作用したのかは分からない。
だが、やけに素直な笑顔を浮かべている様子からして『吹っ切れた』という言葉を使うのが適切なんだろうと思った。


智代子「なんだか、今日はちょっと食欲が……」

恋鐘「あ、あれ……なんか変な味がせんね……塩とお味噌、間違えてしもうとる……?」


他の連中はどうにも調子が悪そうで、対照的だ。
私も例に漏れずそっち側、特に言葉を交わすこともせず、美琴の隣……本来七草にちかが座っていた席に腰掛けた。


冬優子「……緋田美琴は、やっぱり来ないのね」

ルカ「……ああ、悪い。あの後私もすぐに寝ちまった」

冬優子「まあ……昨日は仕方ないわよ。ふゆだってそう。あさひなんか考え込んじゃって動かないんだから、ふゆが引きずってここまで連れてきたわ」

あさひ「……」

ルカ「まあ……あいつはそうなるだろうな」

(……あいつもあいつで、目をつけてなきゃいけないんだけどな)
102 :申し訳ない……眠気がすさまじいのでやっぱり今夜は安価を出すところまでで…… ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:16:17.95 ID:HvMz0mwZ0
◆◇◆◇◆◇◆◇


冬優子「……まだ色々と飲み込めてないだろうけど、ふゆたちがやるべきことは変わらない。むしろ出ていく理由が明確にできた今、脱出の方法を見つけ出すことに全力を尽くさないといけないわ」

夏葉「ええ、冬優子の言う通りね。真実を自分たちの目で確かめるためにも、全員が生きてこの島を出ていく術を見出す必要があるわ」

智代子「うん……私たちの前に現れた謎、その答えを知るまでは死ぬに死ねないよね……!」

恋鐘「摩美々に咲耶に霧子……うちらん前のコロシアイでは何があったとやろ……」

ルカ「情報の一端だけ毎度毎度小出しにしてきやがって、黒幕ってやつはよっぽど性格が悪いよな」

冬優子「まあ、今更よ」

あさひ「夏葉さん、最後のモノケモノはいつ倒せそうっすか?」

夏葉「ロケットパンチね。そうね、エネルギーの充填はまだしも燃料の確保が厳しいの……スーパーにあるオイルを借りているけれど必要量の半分と少ししかないわ」

夏葉「パンチを打つこと自体はできてもモノケモノを吹き飛ばすほどの火力には、少し足りていないわ」

雛菜「空港のジェット機に積まれてたりしないですか〜?」

智代子「雛菜ちゃん、あのジェット機はハリボテなんだ……」

103 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:17:18.84 ID:HvMz0mwZ0

ルカ「チッ……せっかくの機能も使えなきゃかたなしだな」

夏葉「あら、失礼ね。まるで私が木偶の坊みたいな言い回しではないかしら」

ルカ「いや、そこまで言ってねえけど……」

夏葉「ふふっ……そんなルカの鼻を明かしてみせようかしら」

智代子「夏葉ちゃん?」

あさひ「もしかして……何か他の機能があるっすか?!」

夏葉「ええ、あれからまた自分の体を少し研究してみたのだけど……また新しい機能を発見したわ!」

ルカ「マジか……脱出に使えんのか?!」

夏葉「刮目なさい! これが私の体に隠された新機能よ!」


そう高らかに宣言すると、メカ女は自分の両方の耳たぶを同時に捻った。
それがトリガーになって……次の瞬間。

104 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:18:46.91 ID:HvMz0mwZ0



ドバババババババババ!!!!




智代子「わ、わあああああ?!?!」

あさひ「すごい量の涙っすー!」

透「あれ……ただの涙じゃない、よね」

夏葉「よくわかったわね、透。これは右目からプロテインゼリー、左目からスポーツドリンクが溢れ出しているの!」

ルカ「お、おい……大丈夫なのかこの絵面」

夏葉「さあ、みんな遠慮せずにコップを持ってきてちょうだい! 好きな方を注いであげるわ!」

冬優子「……ふゆはパス」

ルカ「……私もいいわ」

透「あー、じゃあプロテインの方で」

ルカ「お前マジで勇者だな……」

105 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/15(金) 22:20:41.22 ID:HvMz0mwZ0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

衝撃的な光景を目撃して、なんだか食欲を削がれてしまった。
朝飯もそこそこにレストランを抜け出し、自分の部屋に戻る。

「……あいつ、どこまでも人間離れしていくな」

そんな風に独り言ちたが、よくよく考えれば当然のこと。
あいつはもう、人間ではない。

「……」

いや、これは言及すべきことではないか……

……余計なことを考えてしまう前に、行動するか。

【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
【現在の希望のカケラ…24個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/15(金) 22:22:42.54 ID:b12LUKDN0
2
107 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 21:23:07.07 ID:iZvNZh3u0

昨日は寝てしまって申し訳ない……

-------------------------------------------------
【第1の島 ビーチ】


「……」

気が付けばまたこの場所にいた……
別に島に来る前にもこんなにガチャガチャなんかやってたわけじゃねえんだけどな……

射幸心と言うか、人の欲と言うものは恐ろしいなとつくづく思う。

……何かと物入りだし、ちょっとぐらいならまあいいか。


-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…35枚】
【現在の希望のカケラ…24個】

1.モノモノヤシーンを回してみる【枚数指定安価】
2.やっぱりやめる

↓1
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:13:40.45 ID:iH7KFdLB0
1
10枚
109 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 22:27:12.73 ID:iZvNZh3u0
1 選択

「たまには使えるもんだせよ……?」

もう何度目の正直かはわからないが……ちょっとぐらいは期待してるんだからな

【コンマ判定を行います】
【このレスより直下10回連続でコンマ判定を行い数値に応じたアイテムを獲得します】

↓1〜10
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:27:58.23 ID:iH7KFdLB0
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:39:27.16 ID:TwIRrhr/O
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:39:52.33 ID:iH7KFdLB0
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:40:21.82 ID:0otp1IWTO
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:40:55.48 ID:iH7KFdLB0
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:41:26.82 ID:0otp1IWTO
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:41:41.00 ID:iH7KFdLB0
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:44:03.59 ID:0otp1IWTO
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:44:21.40 ID:iH7KFdLB0
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/16(土) 22:45:01.58 ID:tliTlCHwO
120 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 22:51:18.94 ID:iZvNZh3u0

【ジャバの天然塩】
【ファーマフラー】
【希望ヶ峰の指輪】
【ミレニアム懸賞問題】
【オスシリンダー】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【オカルトフォトフレーム】を手に入れた!

「まあ……そうだよな」

「何を期待してたんだ、私は……」

いつも通りの使い方も思いつかないようなガラクタの数々。
まあ……これはどれもあいつらに押し付けるとするか……

「……ハッ」

あいつら、意外なもんで喜んだりするからな。

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…24個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 22:53:09.56 ID:tliTlCHwO
122 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 22:57:57.74 ID:iZvNZh3u0
1 透選択

【第4の島 ネズミ―城前】

……流石に昨日の今日。
私と言えど、事態をそのままそっくりはいそうですかと飲み込めるわけもなく。
朝の集まりでは口にできなかった思いのはけ口を探して歩いていると、自然とここに辿り着いた。

ここは、唯一モノクマにもモノミにも干渉されない安息地。
それをどこまで信じていいのかは知らないが、そのとりあえずの知識と情報は、私にとってはこの上なく都合がよかった。


そして、それは当事者もその限りではなく。


ルカ「……お前」

透「……ども」

ルカ「……」

話をする、チャンスだ。


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【ミレニアム懸賞問題】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/16(土) 23:01:00.86 ID:tliTlCHwO
1 ミレニアム懸賞問題
124 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:08:18.92 ID:iZvNZh3u0
【ミレニアム懸賞問題を渡した……】

透「げー……なにこれ、数学? 宿題はちゃんと自分でやりなって」

ルカ「ちげーよ、大体こっちはもう成人だ。宿題も何もねえって」

透「え、じゃあなにこれ」

ルカ「世界中の数学者を悩ませてる難問だとよ。これが解けたら滅茶苦茶なお金が振り込まれるんだとか」

透「……マジ?」

ルカ「らしいぞ、噂だけどな」

透「……これ、いつまで?」

ルカ「やるのかよ……」

(妙に食いついてきたな……こういうの、好きなのか……?)

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します!】


------------------------------------------------

これまでとは大きく状況が違っていた。
目の前にいる人間をどこまで信じればいいのかもわからず、かといって信じなければ前に進むこともできず。
そういう置かれた状況故の妥協が、つなぎとめている関係だった。

そこに投げ込まれたのは、あまりにも大きく、そして異常な真実。

目の前の人間は、自分を自分じゃないと言い放った。

私がこれまで観測していた事実を、その根底を、概念を、全部全部、ひっくり返した。


ルカ「……気分はどうだよ」


自分自身の気分も分からないままに、相手にゆだねた。


透「……清々しく、はないかな。言いたくなかったことではあるし」

透「でも、雛菜が……みんなが、受け入れてくれた。それは本当に良かった」


ルカ「……」

浅倉透はコピーである。
本物の浅倉透はとうに死んでいる。

本当に、他の連中はそれを受け入れたと言えるのか?
市川雛菜のあの言葉に追随しただけで、そこに思考はあるのか?
葛藤を無視しちゃいないか?

私にはずっとそんな脳内の声がうるさかった。


透「……ごめん、それも私の感想だから」

透「そっちのが、それどころじゃないよね」

ルカ「……そりゃな、頭がこんがらがったままだよ」


この島に来た時から混乱なら、しっぱなしだけどな。


1.オリジナルの浅倉透の事はどこまで知ってるんだ?
2.本当に、前回のコロシアイとやらのことは知らないんだな?

↓1
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:10:20.48 ID:tliTlCHwO
1
126 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:22:25.39 ID:iZvNZh3u0
1 選択

こいつがコピーであるという話を、一応は信じるとして。
私には聞いておきたいことが一つあった。


ルカ「お前は、オリジナルの記憶と人格とを引き継いでるんだよな?」

透「……うん」

ルカ「なら、お前はオリジナルの浅倉透のことをどこまで知ってるんだ? 生まれてから、お前のコピーが作られる、その瞬間まで……全部を知り尽くしてるのか?」

透「……」


表情を変えることなく、視線もそらさずに十数秒。


透「……多分、全部知ってる」

透「小さい時のノクチルの四人の姿も思い出せるし、小学校の時にみんなで豚の貯金箱にお金を入れた映像も頭の中にある」

透「……人一人分の記憶と言えるだけのものは、揃ってるよ」


精巧で比類のないコピー。
きっとこいつが言っていることに偽りはない。
その時の記憶を語れと言えば隅々まで語るだろうし、絵に書けと言えば当時の色彩でキャンバスに描くはずだ。


透「でも、あくまで私はコピーだから」


だからこそ……本人はそのことを私たち以上に重くとらえている節があった。
コピーとして接する事、生きること。そのこと自体に対する負い目のようなものを言葉尻ににじませる。



しかし、次に紡ぐ言葉はそれでは終わっていなかった。


透「……私のことを、無理に浅倉透だと思わなくていいからさ」

透「雛菜と同じで、別の『浅倉透』だと思ってほしい」


幼馴染と定義されていた人間の言葉を、臆面もなく借りてみせた。


透「私はコピーだけど……それは作り出された瞬間までの話。そこから一緒に過ごした時間は……オリジナルだって。そう雛菜が言ってくれたから」


それは私の良く知る、この島での『浅倉透』の姿だった。
あのどこか抜けていて、それでいて目の離しづらい厄介な微笑み。
誰を真似たでもない微笑みが、その場所に転がる。


ルカ「……ハッ」

ルカ「……そんじゃ、とりあえずのところはそういうことで」

透「ん、よろしく」


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【浅倉透の親愛度レベル…8.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…25個】
127 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:27:08.02 ID:iZvNZh3u0
------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

本人と話したら不思議と気持ちは軽くなった。
別にコピーの話が飲み込めたわけではないが、疑問を疑問のまま受け入れる体制ができたとでも言えばいいだろうか。
『浅倉透』という人間を私の中でどう置くべきかの考えは固まったんだと思う。

……ま、元から理屈っぽいのは好きじゃないんだ。

大事なのは自分がどう思ってるか、そういう生き方しか知らない私が悩んだところで馬鹿らしい。


「ま、美琴はそう思っちゃくれないんだけどな……」


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…25個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:28:58.13 ID:UBiVJwOR0
1 ふゆ
129 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:35:13.21 ID:iZvNZh3u0
1 冬優子選択

【第4の島 観覧車】

ルカ「……何やってんだ、冬優子」

冬優子「何やってるも何も、手持ち無沙汰でうろついてんのよ。散歩ってやつ?」

ルカ「ふーん……」

返事に少しだけ違和感を感じた。
冬優子にしては、受け答えが何だかおざなりな感じがするというか、覇気をあまり感じない。
目線もあまり合わないし、らしくないという印象を受けた。


ルカ「……」


……だけど、それを口にするのはなんだか気が引けた。

別に、友達ってことなら普通の事なんだろうが……
私たちは数日前まで気遣いなんてしあう仲でもなかったわけで、私の感じる照れは他の人間のそれとはレベルが違って……

なんて頭で言い訳をしているうちに、時間は過ぎていく。


ルカ「お、おい……!」


やるだけ、やってみるか。

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:39:16.26 ID:UBiVJwOR0
アンティークドール
131 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/16(土) 23:53:27.54 ID:iZvNZh3u0
【アンティークドールを渡した……】

冬優子「えっ、嘘。普通に滅茶苦茶かわいいじゃない、どうしたのあんた。何か悪いもんでも食べた?」

ルカ「ひどい言われようだな……要らねえなら返せよ」

冬優子「バカ、褒めてやってんのよ。あんたもそういう女の子らしいこと少しは出来たのね」

ルカ「そういうの今の時代叩かれるぞ、ご自慢のセルフプロデュースはどうしたんだよ」

冬優子「おっと、確かに失言ね。訂正するわ、ルカもそういう心配りできたのね」

ルカ「……余計悪化してないか?」

冬優子「〜〜〜♪」

(ま、喜んでるならいいか……)

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより多めに親愛度が上昇します!】

-------------------------------------------------

ルカ「お、おい……!」

何を言うかも決めずに呼び止めた。
とはいえ、別に冬優子は立ち去ろうともしておらず。要は私が突然に声を上げた形になったのだ。
冬優子は私の並みならぬ様子にしばらくキョトンとしていた。

それでも多分あいつのことだ。
私の中の葛藤と、私が冬優子に何を見たのかすぐに悟ってしまったのだろう。
先手を取ったのは、冬優子。

冬優子「ルカ、付き合いなさい」

ルカ「……え?」

冬優子「そんなアホ面しない、あんたが今いるここはどこ? 付き合ってもらうわよ」

ルカ「お、おい……ちょっと待てって……!」

冬優子は私の手をグイグイと引いてゴンドラへと乗り込んだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

冬優子「ま、二人きりで話すなら個室はちょうどいいわね」


観覧車なんて乗るのはいつ振りか。
家族で乗った記憶すら朧気、久々の高所に少しだけ胸がざわつく。


冬優子「……話、付き合ってくれんでしょ」

ルカ「……おう」


ただ、冬優子の胸の内は私のそんなざわつきとはまた別に揺れていた。
私がさざ波なら冬優子は大時化。
彼女があまり口にしない、弱みのようなものが密室の中で吐き出される。


冬優子「……前回のコロシアイってやつ、血の気が引いたわ。283の人間があれだけ死んでたこと、それを手引きしたのが自分とこの社長だってこと」

冬優子「……ホント、頭が痛いわよ」

ルカ「……冬優子」

冬優子「……でも、もっと最悪なのがそのコロシアイに、愛依も参加してたってこと……ふゆはあいつを守ってやれずに命の危険に二度もさらして……」

冬優子「そして今回のコロシアイで、いよいよその命を落としてしまった……」

ルカ「……」

このシェルターは優秀すぎる。
外と中との空間を完全に断絶するせいで、中の空気もまるで外に流れて行かない。
この重苦しく手足を動かすのも躊躇われるような空気も、変わらない。

中の私が、何かしない限りは変わらないのだ。


1.今からでも守れるものを守るしかないだろ
2.和泉愛依がお前のことを恨んでると思うか?

↓1
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 23:56:57.65 ID:iH7KFdLB0
あえての2
133 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/17(日) 00:06:50.77 ID:7vcYdGG+0
2 選択

本当に、自分のことが嫌いだ。
こんな時に気の利いたこと一つ言えないし、右手を相手のために伸ばしてやることもできない。
つまらないプライド、くだらない言い訳ばかりが目に付く自分が嫌い。

それでも、なんとか励まそうとした。

私の口から出てくるのは、本心とは無関係な……月並みな言葉だ。


ルカ「和泉愛依が、お前のことを恨んでると思うか?」

ルカ「たとえコロシアイにあいつが二回巻き込まれてたからって……お前が救えなかったからって……お前を恨むような人間だって思うのかよ」

冬優子「……」

でも、相手が弱っているときは、月並みで足ることがある。
使い古されたような何気ないエピソードが、急に琴線に触れることがある。


冬優子「……よくわかったわ」

ルカ「……!」

冬優子「あんたが、こういう状況向いてないってことが」


そして、そういうのは私たちのような人間にはそうそうないことも知っている。
私たちのようなひねくれものは、弱っている時だからこそ綺麗な言葉を斜めから見つめ直したりする。
周りが熱狂しているときこそ醒めたりするような、そういうめんどくさい人間なのだ。


冬優子「別に責任に感じなくていい。ただ愚痴が言える相手が欲しかっただけだから。その分では十分役目は果たしてくれたわよ、ルカ」

ルカ「悪い……ホント、こういうの下手だから」

冬優子「そりゃね、上手だったら緋田美琴とあんなことにもなんないでしょ」

ルカ「……」

冬優子「他人よりもまずは自分の事。……ま、お互い様なんでしょうけど」


観覧車が一周するまでの間、私たちは言葉も交わさずに外の景色をただずっと眺めていた。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【黛冬優子の親愛度レベル…8.5】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…26個】
134 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/17(日) 00:08:30.13 ID:7vcYdGG+0

というわけで本日はここまで。
次回自由行動の三回目からの再開となります。
次回更新は4/17の21:30ごろを予定しています。
それではお疲れさまでした。
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 00:12:19.10 ID:uJqK7/Ol0
>>1乙!
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 00:16:43.12 ID:ppJR+g6bO
乙ですー
137 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/17(日) 19:29:45.56 ID:7vcYdGG+0
申し訳ない…
本日の更新は厳しそうです

シャニ4thの準備もあって今週はいつなら更新できるか前もって伝えづらく、不定期になりそうです……
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/19(火) 00:13:36.68 ID:ZtOR69K7O
現地行かれるんですかね、楽しんできてください
更新はいつまでもお待ちしております
139 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/26(火) 22:14:09.95 ID:l9Y4+02f0
すっかりライブで惚けておりましたが更新を再開いたします。
明日4/27(水)は21:30分ごろから再開予定、ゴールデンウィークで頑張りたいですね。
またよろしくお願いします。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/26(火) 22:35:16.61 ID:vzbdo6AYo
了解です!
141 :少し早いですが再開します ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 21:12:38.45 ID:zxi6pPCO0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

私が口にした言葉は、きっと間違いじゃなかったんだと思う。
言葉に載せていた気持ちも、そこにある事実も、なにも間違っちゃいない。

ただ、タイミングとその間が少しだけ掛け違えていただけ。
相手が自分と同族であるということを見落としていただけ。

そしてそれはつまり、あの言葉は自分にとっても的を外れた言葉であるということ。

「……」

私にとって、それは_____


【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…25枚】
【現在の希望のカケラ…26個】

1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 21:35:21.44 ID:4cXG/IBv0
1 透
143 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 21:44:19.51 ID:zxi6pPCO0
1 透選択

【第4の島 ジェットコースター】


動きもしないコースターとレールを茫然と見つめ立ち尽くす姿。
その影がこの場所で揺らいでから、まだ一日。
つい先ほども言葉を交わしたばかりだというのに、まるで陽炎のように映るのは人としての性質か。


ルカ「なんか、お互い忘れられない場所になっちまったよな」

透「……かも」


だが、こいつはあくまで『浅倉透』なんだ。
それは肯定的な意味合いでも、それでなくとも。

だから、こいつの姿をとらえられない……この虹彩が悪い。


-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】×2
【ファーマフラー】
【新品のサラシ】
【希望ヶ峰の指輪】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】×2
【多面ダイスセット】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【ジャパニーズティーカップ】×2
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
【オカルトフォトフレーム】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/27(水) 21:48:27.99 ID:jG4XawVu0
戦いなき仁義
145 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 21:54:17.99 ID:zxi6pPCO0

【戦いなき仁義を渡した……】


透「おー、映画のDVD。やるね」

ルカ「お前、映画とか好きなのか?」

透「うん。映画館とか結構行ってた」

ルカ「……過去形?」

透「吹き飛んじゃったんだよね、映画館。爆弾で」

ルカ「はぁ……?」

透「冗談」

ルカ「……わけわかんねー」

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します!】

-------------------------------------------------

こいつの存在を許容するとして、そのうえでどうしても気になることがある。


ルカ「なあ、コピーってのは……その、どういうことなんだ?」

ルカ「本物と全く同じ記憶と人格を持った存在ってのは……お前は、人では……あるんだよな?」


そんな言葉が出てきたのは、きっと変わり果ててしまったメカ女と言う存在があるからだろう。
目の前の人間も薄皮一枚剥けば金属製の骨格が姿を現さないとも限らない。
こいつが、そうでないという確証もないのだ。


透「えー、人じゃん。どうみても」

透「手も足も、二本ずつ。目玉だってほら、丸いし」

ルカ「そういう意味じゃなくてだな……」

透「……私が、『浅倉透』になる前……の話?」

ルカ「……!」


どんな電子機器でも、それを制御するOSを入れる前には、入れるための器となる素体があるわけで。
人間と言う存在が、人格を何かに埋め込んで成立するのなら……『浅倉透』にそれを明け渡した前任がいることになる。
私たちはその考えから自然と意識を背けていた。


透「……私が人だって証明するなら、それがいるか」

ルカ「よくもまあ平然とそんなことが言えるよな」

透「まあ、もう今更じゃん?」


屈託のない笑顔を浮かべるその顔が、なんだか妙に無機質に感じた。


透「……でもね、言ったじゃん。記憶は浅倉透本人と全く同じ。もともとあった記憶に上書きされる形で私はこうなった」

透「……前が何かなんて、知らないんだ」

ルカ「……!」


1.後悔はしてねーのか?
2.もともと前の人格なんてなかった、とか?

↓1
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/27(水) 21:58:28.38 ID:jG4XawVu0
1
147 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/27(水) 22:07:05.51 ID:zxi6pPCO0
1 選択

ルカ「記憶がないとしてもだ。その……自分の記憶を手放したことに後悔はねーのか?」

透「……どうなんだろ」


彼女は、自分のあごに手を当てて考え込むようなそぶりを見せた。
自分の記憶の中に飛び込んで、その奥底に眠る何かを引っ張り出すような……そんな試行錯誤。
呼吸は停止と再生を繰り返し、一つの場所に行きつく。


透「……それもわかんない」

ルカ「そればっかだな」

透「しょうがないじゃん、今の私は『浅倉透』。それには変わりないから」


自分のことでよくもここまで冷淡に言えるな、と思った。

でも、それは冷淡に見えるだけで、その実は対極であった。


透「……『浅倉透』は言ってるよ。後悔は知らないけど……満足はしてる」

透「自分の選択だしさ、やっぱそれはポジティブで行かないと損だと思う」

透「浅倉透として、この場所に立ってること。雛菜と、みんなと一緒にいること……それは私が私になるだけの価値があったと思うよ」


ルカ「……くっせえセリフだな」

透「んー、元の人格?」

ルカ「照れ隠しがお粗末だ」

透「はは、言えてる」


暖簾に腕押しってのはこいつみたいなやつに使う言葉なんだろうか。
どれだけ不安と疑念を押し付けられても、のらりくらりとかわして、平気な顔をしてきやがる。

こんなやつだからこそ……ある種の諦めがつくのかもな。

こいつは、これでいい。

これで、受け入れたっていい。


たとえ、何者だろうと。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【浅倉透の親愛度レベル…10.0】

【希望のカケラを手に入れました!】

【現在の希望のカケラの数…27個】
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