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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.3

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1 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/12(火) 21:00:18.55 ID:4+2O+BxJ0
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※注意

・本作は「ダンガンロンパ」シリーズのコロシアイをシャニマスのアイドルで行うSSです。
その特性上アイドルがアイドルを殺害する描写などが登場します。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
・キャラ崩壊・自己解釈要素が含まれます。
・ダンガンロンパシリーズのネタバレを一部含みます。
・舞台はスーパーダンガンロンパ2のジャバウォック島となっております。マップ・校則も原則共有しております。
・越境会話の呼称などにミスが含まれる場合は指摘いただけると助かります。修正いたします。

※前スレ
【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1637235296/
【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642918605/

※前作シリーズ
【シャニマス】灯織「それは違います!」【ダンガンロンパ】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1613563407/#footer
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「その矛盾、撃ち抜きます!」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1616846296/
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「私はこの絆を諦めません」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1622871300/
【シャニマス×ダンガンロンパ】灯織「これが私たちの答えです」【安価進行】
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1633427478/

以上のほどよろしくお願いいたします。

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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1649764817
2 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/12(火) 21:01:17.81 ID:4+2O+BxJ0
【4章段階での主人公の情報】

‣習得スキル

・【花風Smiley】
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕

‣現在のモノクマメダル枚数…2枚

‣現在の希望のカケラ…24個

‣現在の所持品

【ジャバの天然塩】
【新品のサラシ】
【ジャバイアンジュエリー】
【ユビキタス手帳】
【オスシリンダー】
【多面ダイスセット】
【アンティークドール】
【戦いなき仁義】
【マリンスノー】
【蒔絵竹刀】
【絶対音叉】×2
【七支刀】
【神の砂の嵐の角】
【壊れたミサイル】
【クマの髪飾りの少女】
【バール】
3 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/12(火) 21:02:26.80 ID:4+2O+BxJ0
‣通信簿および親愛度

【超高校級の占い師】風野灯織…0【DEAD】
【超社会人級の料理人】 月岡恋鐘…5.5
【超大学生級の写真部】 三峰結華…0【DEAD】
【超高校級の服飾委員】 田中摩美々…0【DEAD】
【超小学生級の道徳の時間】 小宮果穂…1.0【DEAD】
【超高校級のインフルエンサー】 園田智代子…4.5
【超大学生級の令嬢】 有栖川夏葉…7.5
【超社会人級の手芸部】 桑山千雪…10.5【DEAD】
【超中学生級の総合の時間】 芹沢あさひ…6.0
【超専門学校生級の広報委員】 黛冬優子…6.5
【超高校級のギャル】 和泉愛依…0【DEAD】
【超高校級の???】 浅倉透…6.0
【超高校級の帰宅部】 市川雛菜…7.5
【超高校級の幸運】 七草にちか…0【DEAD】
【超社会人級のダンサー】 緋田美琴…4.0
4 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/12(火) 21:03:27.14 ID:4+2O+BxJ0
‣コロシアイ南国生活のしおり

【ルール その1 この島では過度の暴力は禁止です。みんなで平和にほのぼのと暮らしてくださいね】
【ルール その2 お互いを思いやって仲良く生活し、“希望のカケラ”を集めていきましょう】
【ルール その3 ポイ捨てや自然破壊はいけませんよ。この島の豊かな自然と共存共栄しましょう】
【ルール その4 引率の先生が生徒達に直接干渉する事はありません。ただし規則違反があった場合は別です】

【ルール その5 生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます】
【ルール その6 学級裁判で正しいクロを指摘した場合はクロだけが処刑されます】
【ルール その7 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、校則違反とみなして残りの生徒は全員処刑されます】
【ルール その8 生き残ったクロは歌姫計画の成功者として罪が免除され、島から脱出してメジャーデビューが確約されます】
【ルール その9 3人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる“死体発見アナウンス”が流れます】
【ルール その10 監視カメラやモニターをはじめ、島に設置されたものを許可なく破壊することを禁じます】
【ルール その11 この島について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません】
【ルール その12 “コロシアイ南国生活”で同一のクロが殺せるのは2人までとします】

【注意 なお、修学旅行のルールは、学園長の都合により順次増えていく場合があります】
5 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/12(火) 21:04:22.69 ID:4+2O+BxJ0
以上スレ立てまで。
4章の更新はこちらのスレッドで行います。
6 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:25:33.95 ID:s0CqhW+t0
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CHAPTER 04

アタシザンサツアンドロイド

(非)日常編



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7 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:26:51.90 ID:s0CqhW+t0


有栖川夏葉。


明朗快活とした自身の性格は老若男女の支持を集め、放課後クライマックスガールズの最年長としてメンバーからの信頼も厚い。
アイドルとしてのパフォーマンスのレベルの高さはさることながら、自身のストイックさに裏打ちされた圧倒的な肉体美も評価が高い。
全身の筋肉はバランスよく鍛えられており、立つ座るの佇まいや歩く走るといった簡単な動作でも彼女の抜群のプロポーションを感じ取れる。

筋肉は全てを解決する、そう息巻く彼女の体は……今。



____カチコチの鋼に変わり果てていた。



8 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:28:16.39 ID:s0CqhW+t0

夏葉「みんな、どうしたの? そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」

ルカ「どうしたもこうしたもねーよ……お、お前……その体、どうなってんだ?!」

夏葉「体……? ああ、私の体のことね。ルカ、あなた見かけのわりに随分と細かなところを気にするのね」


そうは言うが、頭から足の先まで全てを範囲とした時、それは細かなところだと言えるだろうか。
あの艶やかな長髪はワイヤーのようなものに作り変わり、くりりとした瞳は何かLED照明のようなものに付け変わっている。
全身の何が変わったかと挙げていけば何日あっても足りやしないだろう。
そこにはもはや、人間だった頃の有栖川夏葉のパーツは何一つとして存在していない。


智代子「ぶくぶくぶくぶく……夏葉ちゃんが、夏葉ちゃんがロボットになってしまった……」

透「え、やば。気絶した」

夏葉「もう……智代子、大袈裟ね。それにロボットだなんて無粋な呼び方はやめてほしいわね。私には人間の有栖川夏葉と何一つ変わらない自我がある……それはロボットというよりも、アンドロイドと呼んだ方が適切な状態ではないかしら」

あさひ「す、すごいっす! 中に夏葉さんが入ってるっすか?!」

夏葉「いえ、そうではないわ。この機体に私が入っているのではなく、私自体がこの機体なのよ」

あさひ「じ、人格が丸ごと機械に入ってるんっすね! すごい技術……!」


恍惚として会話を続ける中学生に私たちは完全に置いてけぼりだった。
突如として現れたモノクマロック、パンデミックの急な発生と鎮静、そして小宮果穂の人格復旧。
これまでにも非現実的なことは起きていたが、その中でも今回ばかりは次元があまりにも違う。
人がそっくりそのままアンドロイドに変わってしまうなんて、SF小説の中でしか起きちゃいけないことだ。
9 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:30:14.12 ID:s0CqhW+t0

夏葉「機械の体というのも便利なものよ。今の私は視力が光学望遠鏡並みにあるもの」

あさひ「本当っすか?! それじゃ、星も見放題っすね!」

夏葉「ええ……あれは、シリウスね」

冬優子「い、いやいや……星見たとこで名前がわかるわけでもないでしょうが」

あさひ「あ、それじゃああっちは!?」

夏葉「あれは……M78星雲ね」

冬優子「え、ウソ……本当に?」

雛菜「まあこの際機械になってるのは一旦置いとくとして〜、本当にあなたは放クラの最年長さんで変わらないんですか〜?」

夏葉「雛菜? それはどういう意味かしら」

雛菜「今はさも同一人物のようにお話ししてますけど、今雛菜たちの前にいるロボットさんが本当にそうなのかなって」

ルカ「……そうプログラムされただけのロボット、ってことか」

夏葉「……難しい話ね。私からすれば、私が私であることに疑いようはないのだけど、あなたたちからすれば私が有栖川夏葉だという確証は持てない」


残酷な話ではあるが、それは実際その通りだ。
今目の前にいるのは有栖川夏葉の見た目を模倣して設計されたアンドロイド。
喋り方、思考、佇まいの随所に彼女を感じることはできるが、もしそう動くために設計されたアンドロイドだというのならそれはそれで納得がいく。
いや、むしろ本人の人格を移し替えたなんて奇想天外な話よりも筋が通った話だと言えるかもしれない。
あまりの非現実を前にして、慎重になってしまうのは致し方がない。
10 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:32:27.14 ID:s0CqhW+t0


夏葉「……わかった、それならば私が有栖川夏葉であるということを証明してみせるわ」


そう言うとアンドロイドはベッドの上から立ち上がり、気絶して倒れている甘党女を引き起こした。
証明と簡単にいうが、かなりの難題のはずだ。
一体どうするというのか、黙って見守っていると、甘党女の耳元で何かを囁いた。すると目をパチリとさせて瞬時に目を覚ますではないか。
甘党女の目は点のようになり、耳から入った情報に戸惑っている様子。


智代子「ほ、本物だ……! 本物の夏葉ちゃんだよ!!」

夏葉「どうやらわかってもらえたみたいね」

恋鐘「な、なんば言いよっと……?」

夏葉「それは、智代子の合意が必要かしらね」

智代子「い、いや……別にそんな隠すほど恥ずかしいものではないんですが……みんな、コロッケって何をかけて食べる?」

冬優子「何って言われても……ソースの種類が違うくらいの話でしょ? ウスター、中濃、BBQ……」

雛菜「あとケチャップ混ぜて特製ソース作ったりとかですかね〜?」




智代子「……うち、醤油をかけるんだ」




ルカ「……は?」

11 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:33:26.29 ID:s0CqhW+t0

ルカ「しょ、醤油……?」

智代子「ほら〜! やっぱりそういう反応だ! そんなに変わってますかね?! コロッケに醤油?!」

ルカ「いや、ねーだろ……」

あさひ「合わない気がするっす」

美琴「コロッケは揚げ物だし、炭水化物だからあまり食べないかな」

透「えー、どうだろ。案外ありなんじゃん?」

智代子「心の友は透ちゃんだけだよ……!」

夏葉「……とまあ、智代子の変わった食べ方を知っていることで証明に代えさせてもらったわ」

智代子「あのね! この食べ方は放クラの5人が寮にいるときに話した事で……この5人以外は知らない情報なんだよ!」

恋鐘「たしかに……うちもそがん食べ方は初耳やったばい」

雛菜「なるほど〜、人格を移し替えてたからこそわかる情報って事ですね〜」


もっと平たく言えば合言葉みたいなものだ。
当の本人同士しか知り得ない情報、モノクマが知る由もない情報を持ち出せたのならたしかに信憑性は高まる。
12 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:34:23.61 ID:s0CqhW+t0

夏葉「確かに私は前とは姿が変わってしまって……もはや面影もないかもしれない。でもね、果穂から受け継いだもの……この胸に燃えたぎるもののためにあなたたちと一緒に戦わせてもらいたいのよ」

智代子「夏葉ちゃん……」

あさひ「燃えてるってエネルギー炉っすか?」

冬優子「あんたはちょっと空気を読みなさい」

夏葉「……どうか改めて仲間に迎え入れてもらえないかしら」


そう言って深々と頭を下げた。
かつてつむじがあった場所も渦巻くこともない鉄板にすり替わっていて、サラサラとその髪が風に靡くこともない。

変わり果てたその姿はどう考えても人間ではない……

13 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:35:34.81 ID:s0CqhW+t0





だが、人間でなくとも『仲間』として承認する事はできるらしい。





14 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:36:46.36 ID:s0CqhW+t0

恋鐘「夏葉、そげな真似をせんでもうちらは変わらんよ! この島で生きていく……283プロの仲間ばい!」

あさひ「あはは、アンドロイドになった夏葉さんがいれば今までできなかったこともできるかもしれないっすね!」

美琴「力を貸してもらえるなら、大歓迎だよ」

夏葉「みんな……ありがとう! たとえこの身が変わろうとも……私たちの想いは一つよ!」


流石にこれまで通り、とはいかないだろうが違和感はグッと押し殺して私も迎え入れることにした。
これ以上ことを複雑にしたくもないし、今のところこちらに害をなす雰囲気はない。
それに非現実を拒むなんて……もう今更だ。


夏葉「改めて仲間として迎え入れてもらえたところで……いいかしら」

ルカ「あ? なんだよ」




夏葉「……果穂のことについて、改めてみんなと話がしたいの」



15 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:38:46.49 ID:s0CqhW+t0

俄かに静まり返る。
有栖川夏葉の生死不明という状況に理由をつけて、必死に遠ざけようとしていた話題が、その張本人から投げ込まれたのだ。
全員の表情が急速にこわばってしまう。
何を口にするのかと思うと、メカ女は冬優子と長崎女の前に歩いていき、そのまま頭をまた下げ直したではないか。


夏葉「恋鐘、それに冬優子……ごめんなさい。あなたたちにはいくら詫びても詫びたりないわ。私が果穂を抑えることができなかったばっかりに二人の命を奪うことになってしまって」


おしおきの直後、病院に運び込まれてから数時間。
誰しもが、その顛末を振り返るだけの時間があった。
小宮果穂との壮絶な別離、それぞれの感情の吐露。
その最終的な終着点だけが、今の今まで持ち越されていた。
でも、この時間がメカ女には冷静な判断を取り戻させてくれたらしい。
冷静な判断が彼女にとらせたのは謝罪という行動。
あの時の狂乱状態では浮かんでこなかった言葉が、今なら口にできる。

当の二人は慌ててその謝罪を取り下げさせようとする。

16 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:40:15.72 ID:s0CqhW+t0

恋鐘「夏葉が謝ることなかよ! 今のこがん島ん暮らしじゃ何が起こるかわからんし、恨んでもなんもならん!」

冬優子「ふゆも同意見。それにあんたは絶望病にかかってたんだから、管理責任を問えるような状態じゃなかったの」


それでもメカ女の気はすまない。
冷静になればなるほど、自分にのしかかる責任と罪の意識が膨れ上がる。
赦しを得るか否かではなく、謝罪をしないことにはその金属製の心臓がどうしようもなく痛んでしまうのだ。
彼女の謝罪は、小宮果穂の殺害行為だけでなくその後の自分自身の言動にまで及んだ。


夏葉「それに、おしおきの執行前。私は果穂のことで頭がいっぱいになって……二人の前で果穂を庇い立てるような発言をして不快な思いをさせてしまったわ。そのことについても改めて謝罪をさせて頂戴」


クロの投票を行い、裁判が終了した直後。
メカ女は私たちに食ってかかってきた。
小宮果穂がクロである事は紛れもない事実、それでも彼女からすれば愛すべき仲間であることには変わりはなく、クロとして指摘を行った私たちに感情を暴走させて当たった。
そのことも彼女は相当に気にしていたらしい。

17 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:42:04.81 ID:s0CqhW+t0

冬優子「それも謝る必要なし。別に気にしちゃいないわよ。ふゆ達はもう気がついたら二人を失ってたけど、これから二人が死にますって言われたらきっと正気じゃいられない」

恋鐘「夏葉のあん時の苦しみは多分うちらの想像以上ばい、気に病まんでほしかよ。それに、あがん熱の入った言葉が言えるのは果穂のことを本当に大好きだった証明ばい。その言葉を自分で無碍にするような発言はしない方がきっと夏葉にとってもよかね」

夏葉「……二人とも、ありがとう」

冬優子「それに、こっちとしても感謝の言葉を言わせてもらうわ。あんたの訴えでモノクマは果穂ちゃんに自我を戻したわけだし……ふゆの感情に折り合いをつける機会をくれたのはあんただわ」

恋鐘「うちも、最後の最後に本当の果穂と話ができてよかったばい!」


喪った者と喪わせた者。両者がこんな形で再び手を握り合わせるとは不思議なものだ。
子ども同士の喧嘩じゃなく、両者の間には明確な罪と罰とが横たわっているのに、それを飛び越えてしまうのだから人の感情というのは分からない。
メカ女が再び顔を上げたとき、人間だったころの笑顔をそこに見たような気がした。
18 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:44:03.31 ID:s0CqhW+t0

智代子「よし、それじゃあ夏葉ちゃんも無事だったことだし……そろそろ行きますか!」

ルカ「あー、そうだな。ド深夜に裁判やってからぶっ続けですっかり日も登ってやがる。いったんコテージでそれぞれ休憩でも取るか?」

透「眠……」

夏葉「そうね、睡眠は健康管理そして精神面においても肝要よ。取れるうちにしっかりとっておきましょう」

あさひ「夏葉さん、アンドロイドになっちゃったけど眠るっすか?」

雛菜「そういえばそうですね〜、体が機械ですけどどこまで人間と一緒なんですか〜?」

夏葉「私もこの体について完全に理解しているわけではないのだけれど……睡眠はとることができるわ。この【おやすみタイマー】機能を使えばいいのよ」

智代子「お、【おやすみタイマー】……?」

夏葉「睡眠時間をあらかじめ設定しておけば、決まった時間内スリープモードにすることが可能よ。終了時刻になれば自動で目を覚ますことができるから、寝坊もなくて安心ね!」

美琴「へぇ……便利だね」

ルカ「そ、それって睡眠って言えるのか……?」

夏葉「背中には強制的にスリープモードにする【おやすみスイッチ】もあるから、そちらでも睡眠を取ることは可能ね」

あさひ「電源ボタンみたいなものっすかね」

冬優子「とりあえず……その右手を引っ込めなさい」

夏葉「ふふっ、こう見えて人並みに夢を見ることもできるのよ。手術中まさにそのスリープモードだったのだけど、智代子が山盛りのドーナツを平らげる夢を見たんだから」

智代子「……!? な、なぜそれを……!?」

夏葉「……正夢だったみたいね」

恋鐘「そいじゃあ今日の所はみんな自分のコテージに好きに睡眠をとって休まんば! 探索再開は明日からにせんね!」

透「ん、そうしよ」


事件発生からぶっ続けで全員の疲労も溜まっている。
私たちはふらつく足取りで第1の島まで戻り、それぞれのコテージへと帰って行った。

19 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:45:32.14 ID:s0CqhW+t0
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【ルカのコテージ】


「ふぅ……」


シャワーを浴びて、大きな息をつきながらベッドに横たわった。
瞼は随分と重たい、すぐにでも意識は遠のくことだろう。

ただ、その前の少しばかりの思考の時間……私は裁判のことを考えていた。
それは、小宮果穂のおしおきでも、メカ女の蘇生の事でもない。
この事件全容について改めて振り返っての検証だ。
私が気にかけていたのはクロではなく、その裏に潜んでいたであろう【狸】のことだ。
七草にちかと田中摩美々の犯行は露骨なまでに【狸】によって荒らされた形跡があり、その正体は冬優子の秘密を知り得る女ということで芹沢あさひに断定した。

しかし小宮果穂の犯行についてはどうだろうか。
今回の事件で起きたすべての事態について、あいつ自身の行動で説明がついた。
要は【狸】による介入を感じることができなかったのだ。
もちろんこちらの見落としの可能性もあるが、今までの二件ではあえて【狸】は粗の多い工作を行いこちらに勘づかせているような節があった。
それすらも一切見当たらないというのは流石に不自然だ。

今回の事件では芹沢あさひは事件中ずっと別の島にいたという。
介入することを諦めたり、飽きてしまったりしたのだろうか?
そんな単純な結論なのだろうか。

それに……和泉愛依の亡骸を見た時のあいつの反応。
事件を荒らして、私たちの裁判中の推理を嘲笑っているという【狸】のクソッタレのイメージとはあまりにも乖離している。
小宮果穂との別れもそうだ、あいつは感情をむき出しにして、その別れを心の底から惜しんでいた。


「……あいつじゃ、ないのか……?」


私の中に沸いた一つの疑問が、だんだんと膨れ上がっていくのを感じた。

20 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:46:29.10 ID:s0CqhW+t0
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______
_________

【ルカのコテージ】

しばらくして目を覚ました。
ベッドに突っ伏してから五、六時間たっただろうか。日は徐々に沈みかけているのか、うっすらと橙色が滲み始めていた。
昼夜逆転の生活にはそれなりの経験がある、これももはや見慣れた光景だ。


「……眠くねえな」


今日はもう探索はしないというのが全体方針。
かといって今から改めて寝直すにしては寝足りている。
完全に時間を持て余してしまった状況で、後ろ手に頭を掻く。


「……あ」


そんな中、一つ思い当たることがあった。
こんな時、時間をつぶすのにうってつけの方法だ。
何年も何年も時間を食いつぶし続けた、体にもはや沁みついた方法。


自然と私の足はその場所へと体を運んでいた。
21 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:49:09.30 ID:s0CqhW+t0
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【第1の島:ビーチ】


「お、やっぱやってんな」
「……ルカ」

どうせこいつのことだ、探索を行わないと聞いて内心小躍りしていたんだろう。
休憩は最低限で済ませて、残りの時間は練習に充てていることが容易に察しがついた。
実際、既に全身に汗が噴き出していて、タオルはもう二枚目を使おうかという頃合い。
私もその隣に荷物を並べて、すぐに練習に合流した。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「……ったく、時間さえあれば練習すんのはずっと変わんねえんだな」
「うん、最高のパフォーマンスをするための努力は惜しみたくないから」
「妥協もしたくない、っつーわけな……」


そのままぶっ続けで数時間の練習。
日はすっかり沈んで夜空には星が煌めく。
途中途中で水を飲ませたり座らせたりをしたが、普段こいつは一体どうしているんだろうか。
いつか倒れはしないかと余計な気を揉む。


「……ねえ、ルカ」


海岸で隣に座る美琴が私に声をかけた。
22 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:50:46.82 ID:s0CqhW+t0

「……今朝の裁判、その捜査の事なんだけど」
「なんだよ、急に」



「……浅倉透、あの子と何かあった?」



こいつは余計なところで妙に勘が利く。
私との解散までの間、まるで私の心中には目も向けていなかったくせに、パフォーマンスに追いつけていないとか嫌な所ばかりに敏感な節があって今回もその限りだ。
私が病院であいつと交わした言葉、そこから生じた覚悟と歩み寄り、それを悟られてしまったらしい。

「……えっと」

この話は、まだ美琴には話す気はなかった。
美琴は七草にちかの死を未だにずっと引きずり続けている。
あいつが死の間際にぶち撒けた浅倉透への不信と糾弾、それが胸に楔のように打ち込まれており、私と行動する時でも何度も何度もそれが顔を出していた。
だから、あいつが真実を打ち明けない内から美琴が信頼を預けることはまずあり得ないだろうと思った。
私があいつをちゃんと見極めるまで、口にはしまいと思っていた。
23 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:51:46.64 ID:s0CqhW+t0


「……ルカ、話してもらえる? 私が非番のタイミング……事件が起きる前に、何か話したんだよね」
「……」


一体どうしたものか、話すにしたって私も何も聞かされていないのだ。
強いて言うなら、あいつは『元々のこの島での暮らし』を始めた人間の一人だという情報。
今のモノクマに乗っ取られる前の生活の運営者ということだが、これも伝え方に困る。
七草にちかとの敵対というバイアスがかかりまくっている状態の美琴なら更にだ。
コロシアイの元凶だと曲解してしまうことだってあり得るだろう。
私も実際、あいつと積極的に関わって見極めていこうと決めたばかり、胸を張って言えるような情報でもない。


「ルカ、教えてよ」


何を言えば、いいのだろう。
24 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:53:06.53 ID:s0CqhW+t0



「……あいつは敵じゃないって、そう言ってた」



結局、その言葉をなぞるしかできなかった。
今伝えられる情報のプールに、それしかないのだから仕方ない。
そう言い訳したが……美琴の表情は氷のように冷たかった。


「教えてくれないんだ」


光を失ったようなのっぺりとした瞳は、私から視線をずらす。
そしてそのまま数秒の沈黙の後、美琴は立ち上がった。


「……それじゃ」
「お、おい! か、帰んのか?」
「うん、また明日」
25 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:53:48.33 ID:s0CqhW+t0

掌に嫌な感覚があった。
私は何も触っていない、必死に必死に触らないように細心の注意を払っていた。
それなのに、宙を撫でたはずのその手はもっと別のものに触れていた。

海岸に私だけがポツンと残された。
誰も物言わぬ空間に、押し寄せる波音だけが響く。
波が砂を運んで行く度に、私の心にも後悔が募った。


「……七草にちか、面倒なものを遺してくれたよな」


その後悔を他人の責にすることでしか、感情の捌け口は見つからなかった。
26 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:55:17.21 ID:s0CqhW+t0
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≪island life:day 16≫
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【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


美琴との練習で体にはいい具合に疲労が溜まっていたので、睡眠自体は割としっかり取れた。
疲労は睡眠で解消できるが、この胸のモヤモヤは寝るだけじゃ払拭できない。

「……チッ」

昨夜のことを思い、舌打ちを一つ。
三峰結華の時は不用意に踏み込んで失敗して、今回は慎重になりすぎて失敗した。
自分のコミュニケーション力の低さがつくづく嫌になる。
解散をしてから他人と関わるのを避け、拒絶し続けた分の負債が今になってやってきたのだと思う。

……千雪の命令を、いつになったら私は守れるんだろうな。

重たい頭を無理やり持ち上げながら、部屋を後にした。

27 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:57:24.84 ID:s0CqhW+t0
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【ホテル レストラン】


夏葉「おはようルカ! 1日休んで疲労はすっかりなくなったかしら?」

ルカ「んあ……!? て、てめェか……驚かすなよ」


レストランに入るなりアンドロイドが出迎える。
だがこのアンドロイドは別に寝食の世話をしてくれるような万能コンシェルジュというわけではなく、
朝からうんざりするぐらいに張った声で私の眠気を無理やり引っぺがす動く目覚まし時計みたいなやつだ。

私は挨拶もそこそこに自分の席についた。
隣の席の美琴は、何も言わない。


恋鐘「1日休んでみんな体力は戻ったとね? 今日からまた頑張っていくばい!」

智代子「うん! 果穂のためにも……みんなで協力して脱出しないとね!」

28 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 21:59:25.62 ID:s0CqhW+t0

先の事件で大切な存在を失った連中も立ち直ったというのに、私と美琴の席だけに妙な不和が漂う。
それに気づいてか冬優子が私の元へとやってきた。


冬優子「ちょっと、なんであんたたちまた空気悪くなってんのよ」

ルカ「い、いやそのだな……」


まだ浅倉透とのやりとりはあまり公にしたくはない。
冬優子に説明しようにもまごついてしまう、ついその直後。


ギィィィィ…

透「おはよ」

夏葉「透……それに雛菜も……」


そうだ、こいつは私との会話で今後仲間からの信頼を勝ち取るために、幼馴染を説得して私たちに積極的に接触すると宣言したばかり。
当然この集まりにも参加してくることは想像できた。
本来なら私はそれを歓待するべきだ。

だが、今日ばかりは……タイミングが悪すぎる。

29 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:00:37.34 ID:s0CqhW+t0

透「来たよ。雛菜も一緒に」

雛菜「透先輩がみんなと協力してって雛菜に言うので、今日からまたよろしくお願いします〜」

ルカ「お、おう……」

美琴「……」


背中に美琴の視線を感じる。
冷たく突き刺すような視線が、私を貫いて浅倉透を刺す。


透「……あの」

夏葉「透、私たちはあなたたちを拒むつもりはないわ。ただ、あなたは外の世界の人間との関与が確定している、そのことについて疑いの目線を向けられていることは理解して頂戴」

透「うん……わかってる。でも、逃げないから。もう」

透「まだ本当のことは言えないけど……信じてもらえるように、頑張る」


浅倉透は覚悟を決めていた。
どれだけ疑いの眼差しを向けられようと、不信をもろに浴びせられようとも正面からぶつかっていく。
全てを話すことは出来ずとも、行動で信頼は勝ち取ることができる。
私が病院で話しただけの思いが、すでに固まっていた。
30 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:03:42.52 ID:s0CqhW+t0



美琴「……」


ガタッ

ルカ「え、ちょっ……美琴……?!」


それでもなお、美琴は受け入れようとはしなかった。
接触すら赦しをしない、七草にちかの遺恨が全てを拒む。
美琴は音を立てて立ち上がり、そのままレストランを後にした。


透「……うちらのせいだよね、絶対」

ルカ「悪いな、美琴のやつまだ七草にちかの死に際の言葉を気にしてるみたいだ」

透「悪いのはこっちだから。わかってもらわなきゃだよね、自分の言葉で」

雛菜「でもなんか一触即発って雰囲気じゃない〜?」


七草にちかとの絆はいつしか呪縛となり、檻となった。
美琴にとってその領域は誰の介入も許さない絶対的な聖域。
浅倉透に対する不信を取り除こうにも、硬く閉ざされたその檻をこじ開けないことにはどうしようもない。



でも、そのための鍵はもはやこの世に存在していない。


ルカ「……クソッ」

31 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:04:38.70 ID:s0CqhW+t0


美琴のことは今すぐに解決できる話でもない。
私たちは一旦話を切り上げ、これからの話へと移る。


冬優子「……ともかく、今はふゆたちに出来ることをやりましょう。まずは探索……これまで通りなら、今頃モノミがモノケモノを倒して新しい島が解禁されてるでしょ」

智代子「そうだよね、事件のたびにモノミが頑張って新しいエリアを解放してくれてたもんね!」

恋鐘「ジャバウォック諸島の島もあと二つばい、そろそろちゃんとした手がかりが欲しかね〜」

バビューン!!

モノミ「ミ、ミナサン……おはようございまちゅ……」

あさひ「あ! モノミ!」


話を聞きつけてか、どこからともなく姿を表すモノミ。
その体は前回同様に血に塗れている。
……だからといって心配などしないが。

32 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:05:50.07 ID:s0CqhW+t0

冬優子「やっと来た……新しい島ね、よくやったわね」

モノミ「あ、あの……それなんでちゅが……」

恋鐘「次の島はどげんもんがあるとやろ〜?」

モノミ「モノケモノ……なんでちゅが……」

雛菜「何か役立つものがあればいいですね〜」




モノミ「あちし……勝てませんでちた……くすん」




ルカ「……は?」

冬優子「あ、あんた……今なんて……?」

モノミ「ミナサンのために、一生懸命戦ったんでちゅが、あちし……あいつに手も足も出なくて……気がついたら目の前が真っ暗になってたんでちゅ」

透「え、それじゃあ今回は……新エリア、なし?」

モノミ「すみまちぇん……あちしが弱いからいけないんでちゅ、この柔肌細腕が非力なのが悪いんでちゅ……中がコットンじゃなくてせめてウールならなんとかなったんでちゅけど……」

(おいおいマジか……)


私たちにとって新エリア開放にモノミの勝利は不可欠。
てっきり今回もやってくれるものだとばかり思っていたが、思いもよらぬ形でその期待は裏切られることとなった。


33 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:06:53.73 ID:s0CqhW+t0



……だが、そんな期待には別の形で答えてくれるものがいた。



夏葉「ふふふ……今こそ私の出番のようね!」




智代子「な、夏葉ちゃんどうしたの?! 急に大きな声を出して!」

夏葉「人間の体では太刀打ちできなかった……でも、今の私なら! モノケモノだろうと、対抗できるのよ!」

ルカ「ま、マジか……?」

夏葉「昨日解散してから色々と試してみたのよ。せっかくのこの体、何か活かす方法ないかと思ってね。すると、ちょうど今の状況にうってつけの機能を発見することができたのよ!」

あさひ「わあ……! 夏葉さん、その機能って何っすか?!」

夏葉「ふふふ……それは実際試してみてのお楽しみね。みんな、早速第4の島に行ってみましょう!」


私たちは顔を見合わせたが、当の本人は気にせずズイズイと足を進めていってしまった。
私たちは半信半疑でその後をついていくこととなった。

34 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:07:55.96 ID:s0CqhW+t0
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【中央の島 第4の島への橋前】


透「うわー……デッカ」

冬優子「モノミのやつ、ちょっとは善戦できたのかしら……? 全くの無傷に見えるけど」

あさひ「あれ、どうやって動いてるっすかね! ちょっと近づいてみてもいいっすか?!」

恋鐘「こーら! これから夏葉が破壊するから近づいたら危なかよ!」

ルカ「一体どうやってこんなの退けんだよ……」

智代子「夏葉ちゃん……本当に大丈夫? 無茶はしちゃダメだよ?」


モノミの言っていた通り、今もなおモノケモノは堂々たる様子で橋を守っている。
全身金属装甲で私たちの数倍はあろうかと言う巨躯。
とてもじゃないが一人の力でどうにかなるような機体ではない。
しかし、メカ女は全く臆する様子もなく私たちの前に割って出た。


夏葉「さて、それではお見せするわ。私がアンドロイドになって手に入れた、新しい力よ!」

35 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:09:14.72 ID:s0CqhW+t0

メカ女は高らかにそう叫ぶと左脚をI字バランスでもするかのように天高く持ち上げた。
そのままグッと振り下ろし右手に渾身の力を込め、パッと開かずグッと握って……

ダン!
ギューン!
ドカーン!!


夏葉「邪悪を打ち破る、正義の鉄拳を喰らいなさい!」


その体は蒸気が吹き出すほどに熱を帯びていた。
辺りに響くエンジン音と共に右手は振り抜かれ、

……そして、そのまま右手は射出されていた。


夏葉「はあああああああああ!!!!」

智代子「いっけええええええええ!!!!」


まるで少年漫画のような勢いで叫ぶと、その声に応えるようにジェット射出された拳はモノケモノをそのまま宙へとぶっ飛ばしてしまった。
その直後、島を揺らすほどの大爆発。



ドッカーーーーーーン!!!!!


36 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:10:47.08 ID:s0CqhW+t0

何ということだろう、メカ女は宣言通りただの一人でモノケモノを退けてしまったではないか。


夏葉「どうかしら、これが私の手に入れた新しい力……【ロケットパンチ】よ」

あさひ「すごいっす〜〜〜!!!」


宙を舞った右手はそのまましばらく旋回すると、元の位置、腕の接合部にピッタリと収まった。
それをみて爛々と目を輝かせる中学生。
……まあ、こいつからすれば大好物だろうな。


あさひ「それ、どうやってるっすか?! 自分で腕の制御はできるっすか?!」

夏葉「射出してからは標的をオートで追尾するの。もちろんマニュアル操作は可能よ」

あさひ「わたしも撃ってみたい……モノクマに頼めばつけてもらえるのかな」

冬優子「絶対にやんじゃないわよ」

智代子「す、すごい……まだ衝撃でビリビリしてるよ」

夏葉「モノケモノ程度なら簡単に吹き飛ばせる、強力な一撃よ。でもその分連発はできないし、エネルギーの充填と燃料の補充が大事なのだけれど」


何はともあれ、これで目的は達した。
モノケモノがいなくなれば第4の島の探索も可能になる。
私たちはメカ女を褒め称えながら、そのまま島を渡っていった。
37 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:12:02.08 ID:s0CqhW+t0
-------------------------------------------------
【第4の島】


「ここが第4の島……これまた雰囲気が全く違うな……」


これまでの島とはまた打って変わって大違いの島。
生活感とは完全に切り離された、ファンシーな雰囲気が漂う……一言で言うなら、それはテーマパーク。
そこら中で風船が宙を飛び、コースターのレールが至る所で視界に入り、気の抜けるBGMが大音量でかかっているのだ。


「こんなところに手がかりがあるのか……?」


◆◇◆◇◆◇◆◇


島の探索にあたっての分担。
これまではずっとユニットごとにまとまって行動をしていたが、現段階で生き残りは9人。
もはや分担は分担としての意味を持たない。


夏葉「今回は基本それぞれ個人の調査を行いましょう。手数は多いに越したことがないもの」

智代子「そっか……そうだよね、うん! それぞれの場所で全力を尽くそう!」

夏葉「ただ、その……」

冬優子「ん、あさひはふゆが見ておくわ」

ルカ「……浅倉透、今回は私と一緒に動いてもらうぞ」

透「ん、背中は任せたよ」

雛菜「え〜〜〜! 透先輩は雛菜と一緒に行くよね〜〜〜?」

透「おーおー、千切れるって、腕」

(……これは、引っぺがせそうにないな)

38 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:13:29.20 ID:s0CqhW+t0

さて……第4の島についてもまずはマップを確かめておくか。

パッと目につく【ジェットコースター】はやっぱり大きな面積を占めてるな。もしかして乗れるのか?
だからといってどう、と言うこともないが……

そして遊園地といえばこれも外せないな、【観覧車】だ。
とはいえ、こんなコロシアイの中で悠長に景色を眺める余裕なんかねーか。

【バイキング】……まあそう珍しくもないアトラクションだが、やたらデカイな。
なんか特殊なもんだったりするのか?

この【モノミハウス】ってのはなんだ……?
このテーマパークの中でも異色だが……アトラクションの一つなのか?

【ネズミー城】……多分ここがテーマパークの中心部なんだろう。
テーマパークを象徴する存在っぽいし、手がかりがあるならここか。


透「ついてくよ、どこでも」

雛菜「透先輩、雛菜も行く〜〜〜!」

ルカ「……はぁ」

さて、どこから調べる……?

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車
3.バイキング
4.モノミハウス
5.ネズミー城

↓1
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:18:14.06 ID:BIXDK5Id0
4
40 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:20:18.10 ID:s0CqhW+t0
4 選択

【コンマ判定 06】

【モノクマメダル枚数6枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…8枚】

-------------------------------------------------

【モノミハウス】

テーマパークの一角に立っている、ピンク色した平屋づくりの一軒家。
……その屋根には巨大なミサイルが突き刺さっていた。


ルカ「……なんだこれ」

雛菜「全然ミサイルと家の色合いが似合ってないし、ナシかな〜」

透「この物件はキープもしない、と……」

ルカ「なんのロケをやってんだてめーらは」


確か電子生徒手帳の情報ではここはモノミハウスとなっていたはずだ。
その字面を追うなら、ここはモノミにとっての居住空間ということだがこんな惨状で果たして本当に住んでいるのか?
そもそもあんなぬいぐるみに家がいるのかというのは甚だ疑問だが。
私はその家に近づいて、ドアノブを捻ろうとした。
その瞬間、どこからともなく大声とともにあいつが姿を現す。

41 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:22:16.15 ID:s0CqhW+t0

モノミ「あーーーー! いけまちぇん、いけまちぇんよ斑鳩さん!」

ルカ「なんだよ、うっせえな……」

モノミ「乙女の秘密を勝手に覗き見るなんて、あんたそれでも女の子でちゅか!」

ルカ「そんな細けぇこと気にしてんな、そんなんだからモノケモノにも負けんだろうが」

モノミ「うぅ……それを突かれると弱いでちゅ……でちゅけど、ここは譲れまちぇん! あちしの目が黒いうちは、中には入れられまちぇん!」

(……チッ)


どうやらここを譲る気は一切ないらしい。
私の前に立ちふさがってまんじりとも動かない。
ここは一度引いた方がよさそうだな。


雛菜「あれ、入らないんですか〜?」

ルカ「モノミの野郎がうるせえからな、いったん引くぞ」

透「うぃー」

(……あれ、そういえば……モノミって、この島の暮らしを元々率いる立場だったんだよな?)

(だったら……浅倉透からすれば仲間、なのか……?)

(……ってことは、このモノミの拒絶って浅倉透の拒絶とイコールなのか……?)

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車
3.バイキング
4.ネズミー城

↓1
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:25:27.34 ID:BIXDK5Id0
3
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/13(水) 22:25:38.19 ID:9uVqa1cT0
4
44 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:28:20.96 ID:s0CqhW+t0
3 選択

【コンマ判定 34】

【モノクマメダル枚数4枚を手に入れました!】

【現在のモノクマメダル枚数…12枚】

-------------------------------------------------

【バイキング】

遊園地の中に突然現れる巨大な帆船は、宙に浮いていた。
太くどっしりとした芯にガッチリと固定され、前後にスイングするこのアトラクションは案外絶叫系として一定の人気を獲得している。
だが、この島のそれは普通とは明らかに違う。
やたらデカく見える船は、なにやら尋常でない勢いでスイングして……むしろ一回転すらしていた。


ルカ「おいおい……あれ大丈夫なのか?」

透「安全バーは一応あるみたいだしさ、落下はしないでしょ」

雛菜「やは〜! あれすっごく楽しそう〜〜〜!! 雛菜も乗りたい〜〜〜〜〜!」


安全面には問題はないんだろうが……入り口付近に設けられた異常な数値の身長制限が私の意欲を削いだ。
なんだ、身長制限160cmって……そんなアトラクション聞いたことないぞ。


モノクマ「うちのバイキングはかかるGもかなり大きいからね。安全バーでしっかり固定するにはそれだけの身長が必要なんだよ」

ルカ「これ、中学生と甘党女はNGなのか……」

透「あと、生きてたら灯織ちゃんと結華さんとにちかちゃんもだね」

ルカ「……七草にちか、か」

雛菜「……ま、これはやっぱり乗らなくてもいいや〜」


私もこのアトラクションに乗るようなことは今後一生なさそうだな……

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ジェットコースター
2.観覧車
3.ネズミー城

↓1
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/13(水) 22:34:40.07 ID:BIXDK5Id0
3
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/13(水) 22:35:01.96 ID:9uVqa1cT0
2
47 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/04/13(水) 22:36:28.56 ID:s0CqhW+t0
3 選択

【コンマ判定 07】

【モノクマメダル7枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…19枚】

-------------------------------------------------

【ネズミ―城】

テーマパークの中央でひときわ目を引く建造物。
まるで物語の中から切り出してきたような、西洋風の建築をされている立派な城だ。
だが、その入り口らしきものは見当たらない。
城壁を道に従って歩いて行っても、迎え入れるための扉なんかはどこにもない。
私たちより先に来ていたであろう長崎女とメカ女もすっかり困り果てていた。


恋鐘「どこにも入り口が見当たらん……こん城は一体何のための施設ばい……?」

夏葉「謎が多いわね……ただのハリボテ、というわけでもなさそうだけど」

ルカ「よう、二人ともお困りか」

恋鐘「ルカ、透、雛菜〜! こん城、入ろうとしても扉が無いからどうしようもなかよ〜!」

雛菜「ん〜? こんなにお客さんを迎え入れる雰囲気なのにですか〜?」

夏葉「ええ……端から端まで行っても真っ白な壁が延々続くだけ。裏側に回る手段もないから途方に暮れているの」

ルカ「それこそお前のロケットパンチで壁ごと吹き飛ばしゃいいんじゃねーのか?」

夏葉「生憎だけどロケットパンチの射出には燃料と電力が必要よ。モノケモノの撃退で大分消費してしまっているから、準備にも時間がかかるわ」

恋鐘「それに夏葉がしおりのルール違反になることも考慮せんといかん! 不用意に破壊はせん方が賢明たい!」

ルカ「それもそうか……」

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