私「2度と月に帰れなくなってしまったんだね」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:19:32.82 ID:guKA3R0i0

オリジナルのSSです

よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1647339572
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:20:14.06 ID:guKA3R0i0

──

私(バスの窓から雪原を眺めていると)

私(野生の兎に混じって、背の低い女の子が一緒に座り込んでいた)

私(頭にうさ耳をつけている)

私「……」ポカーン

友達「大きな口を開けてどうかしたのですか。もうすぐ博物館に着きますわよ」

私「あ、うん」

私(やがてバスは停まり、前から順番に降りていった)

私(毛利なんとかって宇宙飛行士にちなんだ建物らしい)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:21:44.28 ID:guKA3R0i0

──博物館──

館長「館内には宇宙にまつわる色々な展示物がございます」

館長「星座の解説コーナーにスペースシャトルの見取り図……」

館長「右手にある月の石のブースは、館内きっての人気展示物です」

ザワザワ ツキノイシ! ミニイコウヨ!

私「月の石だって。私たちも見にいく?」

友達「あそこの説明書きにこうありますわ。『展示物はレプリカです』と」

私「そうなんだ。……で、どうする?」

友達「冗談はよしてください。偽物に価値なんてありませんわ」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:22:34.58 ID:guKA3R0i0

ドンッ

お年寄「おい。横に広がるな。他の来館客もいるんだぞ」

私「あ、すみません」ヨロッ

友達「だ、大丈夫ですか? ……あちらの空いてる所に行きましょう」

──

私(スペースシャトルの見取り図ブースにはひとっこひとりいなかった)

私「月の石と比べると雲泥の差だねぇ」

友達「誰も理解もできないし、そもそも興味もありませんもの」

私「バッサリ言うね」アハハ…
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:23:24.75 ID:guKA3R0i0

友達「私は野暮用がありますので、あなたはここで少し休んでいてください」

私「ん。野暮用って?」

友達「簡単なことです。私の友人をどついたあの耄碌ジジイに、後ろから蹴り入れて来ますの」ニコ

私「えっ?」

友達「すぐ戻って来ますから。ここでお休みになっていてください」

タタタタ…

私「い、行っちゃった……」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:24:09.61 ID:guKA3R0i0

私(前を向いて見取り図を眺めてみる)

私(難しいカタカナを使ったよくわからない用語が並んでいた)

私「……頭のいい人はこれを見てロケットを作れるんだよね。すごいなぁ」

???「それはちょっと違ううさよ」

私(ぽけーっと感心していると、いつの間にか私の真隣に女の子が立っていた)

私(彼女の頭にはうさぎのつけ耳があって──バスの窓から見たあの女の子だった)
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:25:08.63 ID:guKA3R0i0

???「見取り図だけではそこまでできないうさ。設計図とは違うから」

???「もっと言うならロケットとスペースシャトルも全然違うものうさ」

???「そんなことも知らないで、一体何しにここに来たんだか」ハァ

私「え、えっと」

???「邪魔だよ。本気で勉強しに来た私のような正当な客にもっとよく見せるうさ」

私「……あなたは?」

うさぎ「私はうさぎ」

私「うさぎ?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:25:57.04 ID:guKA3R0i0

私「うさ耳をつけていることは見ればわかるけど」

うさぎ「そうじゃなくて、私は本物のうさぎ」

うさぎ「と言っても丸っこい地球の兎じゃなくて、宇宙から来た月のうさぎなの」

私「……」ポカーン

私(返答に困っていると、月の石のブースの方から破砕音が聞こえてきた)

ガシャーン!

同級生A「きゃーっ! おじいさんが急に倒れて込んで来た!」

同級生B「頭から月の石の展示に突っ込みました! 血がたくさん出てますわ!」

友達「これはきっと貧血の症状ですわ! 誰か救急車を!」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:26:57.07 ID:guKA3R0i0

──

私(館内は騒然となり、来館客は全員博物館の外に出された)

私「まさか本当にやるとは……」

友達「私は彼があなたにぶつかったのと同じ力で、背中を押してやっただけですよ」クスクス

私「……」

友達「? あたりを見渡して……何かお探しですか?」

私「うさ耳をつけた女の子を見なかったかな」

友達「まぁ驚きました。バニーガールが趣味だとは」

私「そういうんじゃないよ」

友達「なんなら宿泊先の旅館に呼びましょうか?」

私「だから違うって。携帯取り出さないで!」

私(この友人が監視カメラや他人の目を考慮していないはずがなく)

私(お爺さんの件はまぁ貧血による事故だろうということで処理された)
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:27:54.85 ID:guKA3R0i0

──旅館──

アハハ クスクス

私「2人揃ってスマホで何見てるの?」ヒョコ

同級生A「YouTubeだよ。推してる配信者の生放送があってさ〜」

同級生B「私たちリアタイ勢だから。修学旅行中であろうとも推し君の放送を見逃すわけにはいかないよね」

私「配信者?」

同級生A「そう。あなただって推してるストリーマーの1人ぐらいいるでしょう?」

私「いや……ネットはあんまりしないんだ。家だとドキュメンタリー番組ばかり見てるから」

同級生A「はぇ〜。お上品だこと」

同級生B「やっぱモノホンのお嬢様は違うなぁ」

私「そ、そう言う意味で言ったんじゃないよ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:28:50.60 ID:guKA3R0i0

同級生B「いいなぁ配信者。私も将来は配信者になりたいよ」

同級生A「わかる〜。ゲームとか雑談してるだけで簡単にお金稼げるんだもんね」

私「簡単なの?」

同級生A「うん。よく知らないけど、多分ね」

私「ふーん」

ガチャ

友達「大浴場。私たちの班の番ですよー」

同級生A「私たち遅れて入るよ。今いいところだから」

同級生B「うんうん。それに私たちがいたら、2人の親密な仲の邪魔になっちゃうでしょ?」クス

私「私たちは別にそう言うのじゃ……」

友達「お気遣いどうもありがとう。ばっちり仲を深めて参りますわ」

私「え、えぇっ!?」

アハハハハ…
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:29:49.53 ID:guKA3R0i0

──大浴場──

カポーン

友達「いいお湯ですこと」

私「そうだね〜」ウットリ

友達「……あなたと同じ班になれて、私は幸せ者ですね」

私「へっ? ど、どうしたの急に」ドキッ

友達「思ったことをそのまま口に出しただけですわ。私は性格に難ありですから、人を選び人を選ぶのです」

私「そ、それ自分で言うんだ」

友達「理解者が隣にいてくれて嬉しい。これは性悪の私が話す、心の底からの本音ですわ」ニコ

私「……」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:30:44.68 ID:guKA3R0i0

友達「どうかしまして?」

私「ううん。なんか熱くなってきたなぁって」パタパタ

友達「大変。のぼせてしまったのかしら。お風呂から上がったらまず水を飲んで……それからアイスを食べに行きましょう」

私「アイス? 1階に売店はあったけど、確かお土産しか置いてなかったはずだよ」

友達「近くにコンビニが建っていました。一緒に買いに出かけましょう」

私「えー? 先生にバレちゃわないかなぁ」

友達「平気ですよ。バレたところで、適当な理由を繕って誤魔化せば良いだけです」

私「……あなたは性格が悪いんじゃなくて、単に不良なんだと思うよ」

友達「あら。それは同じ意味ではなくて?」

アハハハ…
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:31:44.45 ID:guKA3R0i0

──夜道──

私(ホテルを抜け出し外の道に出た。北海道の夜は秋でも結構寒い)

私(温泉であったまった身体は道中で冷めていたのだけど、せっかく来たのでアイスは買うことにした)

──コンビニ──

うさぎ「いらっしゃいませうさ〜」

私「!?」

友達「これ2つお願いします」スッ

うさぎ「かしこまりました。2点で400円になりますうさ」

友達「う、うさ?」

私(レジの奥から店長らしき男が走ってやってくる)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:32:31.55 ID:guKA3R0i0

タタタ… ベシッ

うさぎ「痛いうさ!」

店長「何度も言ってるだろ。せめて業務時間中は変な語尾をつけるなって!」

店長「すみませんお客様。このバイトは……そう、外国人でして」ペコペコ

友達「い、いえ」

うさぎ「語尾をつけるなと言われても、この語尾は外せないものうさで」

店長「お前それ次やったらクビだからな?」

うさぎ「はいうさ……あっ」

ビキビキビキ…

友達「あの、本当にお気になさらず。もう帰りますので。行こう」グイ

私(ドアの前で振り返ると、うさ耳の女の子は店長に鬼の形相で怒鳴られていた)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:33:38.17 ID:guKA3R0i0

──翌日──

私「……ふぁーあ」

私(目を覚ますと起床時間の1時間も前だった。周りのみんなはまだ眠っている)

私(広縁で身体を伸ばしていると、窓から見える砂浜に女の子の人影があった)

私(頭には見覚えのある特徴的な2つの突起がついている)

──砂浜──

うさぎ「はぁ。またクビになった……」

私「おはよう」ザッ

うさぎ「きゃあっ!?」ビクッ
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:34:36.20 ID:guKA3R0i0

私「ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど……」

うさぎ「うさぎはストレスに弱いうさよ! あんた誰うさ!」

私「誰って、昨日博物館で会ったでしょ。コンビニでアイスも買ったし」

うさぎ「いちいち人間の顔なんて覚えてないうさよ」

私「そうなの?」

うさぎ「そうなの。逆に人間のあんたらはうさぎの顔の区別がつくかって話」

私「そういう話なのかな」

うさぎ「そういう話なの」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:35:34.89 ID:guKA3R0i0

うさぎ「で、何の用うさか?」

私「私、東京から修学旅行で来た高校生なんだけど、集合時間までまだ時間があって」

うさぎ「東京なのに北海道が修学旅行先?」

私「都内の高校の全てが京都に行くわけじゃないよ」

うさぎ「ふーん。まぁいいや。要するに暇つぶしに私のところに来たってことね」

うさぎ「なら似たもの同士うさ。私もバイトをクビになって、散歩で気晴らししていたところうさから」

私(”うさぎ”は海を見つめる)

ザザーン…

私「……冷たそうな海。もしかして泳ぐつもり?」

うさぎ「まさか。波の音を聞きにきただけうさ」

私「波の音?」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:36:38.20 ID:guKA3R0i0

うさぎ「……ねぇ。潮の満ち引きがどうやって起こるか、あんたはその仕組みを知ってる?」

私(カラーコンタクトだろうか。彼女の赤い瞳が私をじっと捉えた)

私「知らない」

うさぎ「月に引力があるからうさ。つまり、月が地球の海を引っ張っているわけうさね」

私「そうなんだ。博識だね」

うさぎ「……”本物”とは得てしてそういうものうさ。本物だけが他者を引きつける引力を持つものだから」

私「は、はぁ」

うさぎ「昨日行った博物館は、見取り図の説明書きは丁寧だったけど、そういう意味じゃ最悪」

うさぎ「月の石の偽物なんて飾って。月に対する冒涜も良いところうさよ」

私「……。あなたは月のことが好きなんだね」

うさぎ「もちろん。故郷だから。はぁ、早く月に帰りたい」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:37:32.04 ID:guKA3R0i0

私「故郷? あそっか、宇宙から来た月のうさぎだから」

うさぎ「思い出した。あんた昨日のスペースシャトルの展示を見るのを邪魔してきた奴うさね」

私「邪魔するつもりはなかったんだけど」

うさぎ「月に帰るためには月まで行く乗り物が必要。私はスペースシャトルを作るための勉強をしていたうさよ」

私「そっか」

うさぎ「バイトをしていたのもそれが理由。スペースシャトルの開発には膨大なお金が必要だから」

うさぎ「なのにクビになって……地球は嫌なところうさ。私はいつになったら月に帰れるんだろう」

私「……よかったら、詳しく話を聞かせてよ」

うさぎ「え?」

私「月ってどんなところ? どうして月のうさぎのあなたが地球にいるの?」

うさぎ「……!」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:38:27.67 ID:guKA3R0i0

私(うさぎは嬉しそうに身の上話を語った)

私(月の一般家庭で育ったこと。4人兄妹で自分は末っ子だということ)

私(ある日かくれんぼをしていたとき、脱出用ポットの緊急作動ボタンを誤って押してしまい)

私(地球に着陸してしまったのだということ……)

ザザーン

うさぎ「ふぅ。久しぶりに自分の話をしたからつい饒舌になっちゃったよ」

私「ふふ。色々話してくれてありがとう」

うさぎ「……初めてうさ。話を中断せずに最後まで聞いてくれた人間は」

うさぎ「今まで出会ってきた人間は、みんな私を偽物だと決めつけてきたうさから」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:39:22.76 ID:guKA3R0i0

うさぎ「あんた、良いやつだね」ニコ

私「……」

うさぎ「それか単なるおバカさんかのどっちかうさ」

私「褒められてるんだか、貶されてるんだか」

アハハハ…

私「……さてと。そろそろ戻らないと」

うさぎ「いい暇つぶしになった。楽しかったうさ」

私「ふふふ。こちらこそ」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:40:21.06 ID:guKA3R0i0

私(去り際に、ふと頭をよぎったことがあった)

 同級生B『私も将来は配信者になりたいよ』

 同級生A『ゲームとか雑談してるだけで簡単にお金稼げるんだもんね』

 うさぎ『私はいつになったら月に帰れるんだろう』

私「……あなたは」

うさぎ「?」

私「もしかしたらコンビニのレジ打ちよりも、配信者に向いているのかもしれないね」

ザザーン…

うさぎ「配信者?」

私「親しみやすい感じとか、お喋りだってすごく上手だし」

私「配信なら話を中断されることもない。あなたならきっと人気者になれるよ」

うさぎ「……」ポカーン
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:41:23.31 ID:guKA3R0i0

私(手を振ってうさぎと別れる。もちろん本音を言ったのだけど、特別深い意味はなかった)

私(去り際に見た彼女の瞳が、炎のようにより赤く冴えていたことをよく覚えている)

──

私「……」ボーッ

友達「あなたはバスから窓の外を眺めるのがお好きですね」

私「え。あぁ、うん。ぼーっとするのが好きだから」

友達「遠回しに構って欲しいとお伝えしたつもりなのですが」ツン

私「わっ。ふふ、ごめんごめん」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:42:15.04 ID:guKA3R0i0

ブロロロロ…

私(窓から雪原が見える。うさぎの姿はどこにもない)

私(彼女は言っていた。『本物だけが他者を引きつける引力を持つ』と)

私(しかし、それは本当のことだろうか)

私(レプリカの月の石の周りにも、たくさんの人だかりができていたように見えたけれど)

私(視線を上げるとまだ青白い空に、うっすらと丸い月が浮かんでいる)

私(うさぎの姿はどこにもない)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:43:22.09 ID:guKA3R0i0

──東京・自宅──

私「ただいまー」ガチャ

父親「おかえりなさい! マイ・スイート・エンジェル!!」バッ

私「テンションたか」

父親「高くもなるさ。最愛の娘が無事に帰ってきてくれたんだから!」

私「心配性がすぎるよお父さん」

父親「大丈夫だったか。街でへんな輩にナンパとかされなかったか?」

私「あはは、何言ってるのお父さん。私まだ高校生だよ? 子供をナンパする大人なんてこの地球に存在しないでしょ」

父親「あぁ……お前のそういうところがとてつもなく可愛くて、とてつもなく心配なんだよなぁ」

私「?」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:44:19.79 ID:guKA3R0i0

父親「お前が修学旅行に行っている間、NHKで面白いドキュメンタリー番組をやってたんだ。よかったら一緒に録画を見ないか?」

私「ありがとう。後で観ようかな。今は別の予定があるから」

父親「帰ってきて早々どんな予定だい?」

私「先輩のところにお土産を届けに行くの。それじゃ」

──

先輩「はい。提示いただいた納期で構いません。楽曲のサンプルを添付しましたのでご確認ください」

先輩「それと1度対面でお話させて欲しいのですが、平日は学校がありまして……今月の土日のどこかでお時間いただけますでしょうか」

先輩「ありがとうございます、承知しました。当日はよろしくお願いいたします。失礼します」ピッ

トントン

先輩「?」

私「先輩。お久しぶりです」ガチャ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:45:09.50 ID:guKA3R0i0

先輩「これは驚いた。しばらく見ないうちに君は空き巣に転向したんだね」

私「ご冗談を。先輩のお母さんに聞いたら入って良いって言われたんです」

先輩「ふふふ。おや、その包み袋は?」

私「お土産です。先輩甘いもの好きでしたよね。色々買ってきたのでどうぞ食べてください」ガサッ

先輩「ありがとう姫。これで作曲活動も捗るってものだよ」

私「……さっきの、仕事のお電話だったんですか?」

先輩「うん。Vtuberの中の人が私の作ったMADを気に入ってくれたようで……おっと、中の人なんて言っちゃいけないな」

私「うふふ。聞かなかったことにします」

先輩「助かるよ。これでおまんまを食っていく予定なんでね」クスクス
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:46:09.93 ID:guKA3R0i0

ギィ

私(先輩は椅子を半回転させて私に向き合った)

先輩「君は優しいね」

私「え?」

先輩「私は音楽部の後輩に嫌われているから、誰も私にお土産を届けに来ないだろう」

先輩「そのことを見越して、演劇部である君が、いの一番に駆けつけてきてくれたんだから」

私「……」

先輩「これは嫌味じゃないよ。本当に感謝しているんだ。君は心優しい性格の良い子だ」

私「みんな、先輩のことを誤解しているんだと思います」

先輩「どうかな。別にどちらでも良いことだけど。私も私のことが嫌いだから……」ペリペリ

モグモグモグ

先輩「んー懐かしい味。去年食べたぶりだ。名前はなんと言ったかな」

私「月寒あんぱんです」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:46:55.52 ID:guKA3R0i0

──

私(その夜。お父さんと一緒にドキュメンタリー番組を見た)

私(特集されていたのは日本のとある高名な画家で、彼のプロフィールはまさに画家としての王道を往くものだった)

私(国立の芸術大学を出て、100年も前からある由緒正しい賞を受賞し、現在は大学の講師を務めながら芸術活動に勤しんでいる……)

私(番組の最後は、ネット上で活動するイラストレーターに対する彼の批評で締め括られていた)

画家『SNS上に蔓延る似非イラストレーターは、近年増加の一途をたどっています』

画家『私は彼らを芸術家だとは認めていません。彼らが人気を得るために使う手段は、決して美しいと言えるものではないからです』

画家『人気作品のタグを利用した二次創作。センティブ要素で閲覧数を稼ぐ漫画家。実写もろくに描けない作者によるブサイクなデフォルメエッセイ』

画家『どれも単純な画力に則った評価ではありません。そんな奴らがアコギな手段で人気を集め大金を稼いでいる』

画家『美術の本懐を著しく損なっていると言わざるを得ません』

画家『偽物の跋扈により、本物が肩身を狭くする今の世の中を、私は嘆き憂いているのです』
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:48:18.13 ID:guKA3R0i0

キンコンカンコーン

担任「悪いな。こんな時間に呼び出してしまって」

私「いいえ。私に何か用でしょうか?」

担任「簡単な確認だよ。修学旅行前に出してもらった進路調査表に変更の意志はないかってだけの」

私「なるほど。それならば変更の意思はありませんよ」

担任「そう。聞きたかったのはその一言だけ。ありがとう。わざわざ呼び出すほどのことでもなかったな」

私「うふふ、いえいえ」

担任「……舞台役者、声優、モデル。お前ならきっと、どの夢も叶えることは容易いだろう。親が女優なんだから」

私「?」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:49:23.74 ID:guKA3R0i0

先生「あぁ、ごめん。なんだか嫌味な言い方になっちゃったな」

先生「苦学生だった自分の境遇を思い出して、お前にに嫉妬しているのかもしれない」

先生「貧乏人だから。”本物のお嬢様”を目の前にすると緊張で口が滑ってしまうんだよ」

私「……。失礼します」

ガララララ バタン

担任「……」

副担任「隣で聞いていましたよ。先生ったら相変わらずあの子のことが嫌いなんだから」ケラケラ

担任「嫌いは嫌いだけど……それ以上に現状のおかしさについて嫌気が差ているだけさ」

副担任「ん。おかしさって?」

担任「だってそうだろう。お嬢様の多いこの女子校の中でも、あいつの家が1番お金持ちなのに」

担任「俺みたいなのが彼女の進路を指導する立場にあるだなんて。こんなの矛盾しているよ」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:50:16.64 ID:guKA3R0i0

私(教室に戻ると、いつもの2人組が肩を並べてスマホを見ている)

私「何見てるの?」

同級生A「YouTube。といっても今日は推し君の配信じゃないんだけど」

同級生B「面白い新人さんが現れたんだ。見てよ、可愛いよ」

私「新人さん?」

うさぎ『こんうさ〜』フリフリ

私「!?」

うさぎ『この間の初配信がバズった(?)らしくてものすごく大勢の人に見てもらえてるみたいうさ』

うさぎ『私はただ実話を話しただけなんだけど……キャラ設定が固まってて偉いってコメントをよくいただいているうさね』

うさぎ『これからも配信を頑張っていくうさ。スペースシャトルで月に帰るのが夢なので、応援よろしく!』
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:51:14.11 ID:guKA3R0i0

同級生A「あはは。おもしろーい。不思議ちゃんだよねぇ」

同級生B「なのに宇宙トークはガチなんだもんね。そのギャップも好感度上がるわぁ」

私「……」ポカーン

同級生A「どうかした?」

私「ううん。ちょっと驚いただけ」

同級生B「その割には……なんだか嬉しそうな顔をしてるけど」

私「えっ。そうかな。えへへへ……」

同級生A「こんな清楚な性格して、バニーガールが性癖なのかな?」コソ

同級生B「この子はこの子で不思議ちゃんだからね……」コソ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:52:06.53 ID:guKA3R0i0

──帰り道──

友達「今週の土曜日は十五夜ですわね」

私「十五夜。へぇ、今年まだだったんだ」

友達「一緒にお月見しませんこと? 私の庭でお餅でも食べながら夜涼みと洒落込みましょう」

私「うん、いいよ」

友達「そうですか……うふふ」

私「? どうかしたの?」

友達「楽しみだなぁと。それに、あなたと初めに出会ったのも、去年の今頃だったなと思い出しまして」

私「あー。そういえば秋の出来事だったねぇ」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:53:04.56 ID:guKA3R0i0

──回想・音楽室──

私『失礼します』ガチャ

先輩『おや。また君か』

私『えへへ。演劇用の小道具をお借りしたくて……』

先輩『もちろんだよ美しい嬢さん。君のためなら私は喜んで小道具貸出部に転部しようとも』

私『もう。先輩ったら』

アハハハ…
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:54:06.62 ID:guKA3R0i0

先輩『それで、今日は何をお貸しすればよろしいのかな?』

私『良ければタンバリンを1つ。竹取物語の演目で使いたいんです』

先輩『かぐや姫でタンバリン?』

私『はい。月に見立てるんですよ』

先輩『えぇ……まぁいいや。それなら音楽室Bの方にあったと思うよ。今別チームがそっちで活動している』

私『? 同じ部活なのに別々の部屋で活動を?』

先輩『色々あるのさ。派閥みたいなのがさ』
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:55:10.93 ID:guKA3R0i0

ガチャ

私『失礼します……わっ』

友達『……演奏中に入ってくるとは不躾な方ですね。どなたかしら?』

私『あ、演劇部の1年です。タンバリンをお借りしにきました』

友達『私も1年よ。タンバリンなら隅の段ボールに入っていたと思いますわ。勝手に取っていってください』

私『ありがとう。……ええと』

友達『? まだ何か?』

私『いえ、その……綺麗な曲ですね』

友達「え?」

私『こんなに美しいピアノを、私は初めて聞きました』
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:56:09.72 ID:guKA3R0i0

友達『!!』

私(彼女の青い瞳が、宝石のようにまたたいた)

友達『……お世辞なんて良いのに。クラシックなんて若い方に魅力がわかるものではありませんわ』

私『若いって、私たち同級生でしょ?』クスクス

友達『……』

私『それじゃあ借りします。明日にはお返しできると思うので』

友達『つまり……明日もここに来るってことですね』

私『? はい』

友達『そう。他に借りたいものがあったら、次からは部長を通さなくて良いですわ』

友達『直接私に聞きに来てください』

──
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:57:11.94 ID:guKA3R0i0

──自宅──

私(自宅に戻ると、リビングには誰もいなかった)

私(リモコンでテレビをつける。民放のクイズバラエティ番組がやっていた)

私(確か、お父さんがプロデューサーをしている番組だ)

ブチッ

私(間も無くテレビが消える。音がした方を振り向くと、お父さんがコンセントを握りしめていた)

父親「……」ハァハァ

私「お父さん。帰ってきてたんだ」

父親「お願いだから、こんな低俗な番組なんて見ないでくれ……」

私(お父さんは真っ青な顔で脂汗をかいている)
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:58:03.91 ID:guKA3R0i0

──十五夜の日──

私(土曜日。友達の家に招かれ、大きな庭にある白い椅子に腰掛けた)

私(夏用のものらしく、側には畳まれたパラソルが置かれている)

私(あいにく雲が多くて、満月はまだ顔を出していない)

友達「お汁粉を作ってきましたわ。どうぞ召し上がれ」

私「わぁ。ありがとう。いただくね」

モチモチ

友達「それにしても知りませんでした。あなたの好物が甘いものだったなんて」

私「? 甘いものは普通に好きだけど、どうして?」

友達「旅館の売店で目に入ったお菓子を片っ端からカゴに詰めていたじゃないですか」

私「あぁ……あれはお土産用だから」

友達「お土産? あんなにたくさん?」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:58:56.57 ID:guKA3R0i0

私「うん。どれも美味しそうだったから全部買って渡してきちゃった」

友達「……」ジト

私「ど、どうしたの」

友達「いいえ。私には1つもくれなかったなぁと思いまして」ツン

私「えぇ……そりゃあだって同じ場所に旅行しに行ったわけだし」

友達「それで、あなたからお土産をもらったその幸運な人物とは誰ですの?」

私「お互いによく知ってる人だよ。音楽部の元部長さん」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 19:59:48.31 ID:guKA3R0i0

私(友達の表情が曇る)

友達「……まだ彼女なんかとつるんでいましたの?」

私「ねぇ。先輩はみんなに思われてるような悪い人じゃないよ」

友達「善人悪人の話をしているのではありません。品を欠いていると申し上げているんです」

私「品?」

友達「彼女は流行のVtuberの声素材でMADを作って売名をしたような人物ですよ」

私「ネットには詳しくないんだけど……それって悪いことなの?」

友達「ですから良い悪いの話ではないのです。強いて言えば邪(よこしま)。彼女は邪道を往っています」

私(彼女の口調は、この間見たドキュメンタリー番組の画家とそっくりだった)
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:00:47.04 ID:guKA3R0i0

友達「彼女の行いは由緒ある音楽部の看板に泥を塗る行為です。実家から早く出たいのか、自分の力でお金を稼ぎたいのか知りませんけど」

友達「本物の音楽家が取っていい手法ではありません。加えて彼女はVtuberにこれっぽっちの興味もないのです。ジャンルは違えど、同じ作曲家を目指す者として心底軽蔑しますわ」

友達「目先の利益に囚われて……あの人は”何か大切なものを失っています”」

私「部長に対してそんなふうに言わなくても」

友達「彼女はもう部長じゃありません。今の音楽部部長は私です」

私「……」

友達「こほん。ごめんなさい」

私「いや……私の方こそごめん」

私「音楽に真剣に取り組む2人の、音楽に対するスタンスのぶつかり合いなんだから、私が口を出す話じゃないよね」

友達「……!」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:01:53.54 ID:guKA3R0i0

私「? どうしたの?」

友達「……ふふふ。私はきっと、あなたのそういうところに惹かれたんでしょうね」

私「ひ、惹かれたって……」

友達「友達として、これからもお慕い続けますわ」ニコ

私「う、うん」ドキドキ

ビュオオオ

私(風で雲が動いて丸い月が顔を出した)

私(昔の人は満月を見て、兎が餅をついている姿が見えたという)

私(私の視力が悪いせいだろうか)

私(月のうさぎはどこにも見当たらない)
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:03:03.43 ID:guKA3R0i0

──数日後──

父親「次の連休なんだけど映画でも見に行かないか? おすすめのドキュメンタリー映画があって」

私「うん。良いよ」

父親「そうか! 今からママも誘ってくるよ」タタタ…

私「映画か……そういえば学生証ってどこにあったっけ」

私(制服の胸ポケットを探ってみる。次にカバンのサイドポケット。机の引き出し……)

私「おかしいなぁ。どこにもない。修学旅行に持って行ったところまでは覚えてるんだけど」

私「……あっ」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:04:03.84 ID:guKA3R0i0

父親「おまたせ。お母さんは風邪気味だからパスだって。……どうかしたの?」

私「学生証、修学旅行の時に行った博物館で、人とぶつかった時に落としたかもしれない」

父親「え。そうなの?」

私「うん。他で無くすタイミングなかったと思うし。明日担任の先生に相談しないと」

父親「ふむ。……良い機会だ、北海道に旅行しに行こうか」

私「へ?」

父親「そうと決まれば新幹線と船の予約を取って。いや飛行機の方がいいか……」ポチポチ

私「え、いやでも、私この間行ってきたばっかりだよ?」

父親「別に良いじゃないか。楽しかったんだろ? それに娘がどんなところを旅行したのか、親としてもすごく気になるし」

私「全く。そっちが本音でしょ」

父親「バレたか」

アハハハ…
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:05:07.43 ID:guKA3R0i0

──

私(再び北海道にやってきた。季節は若干冬に近づいて羽織る上着も1枚増えた)

父親「北海道はでっかいどう!」バッ

私「うわぁ」

父親「これ昔からやってみたかったんだよぉ。……おや?」

プルルルル

父親「もしもし、ママ。どうしたの」

父親「どこって北海道だけど……え、だって風邪気味だからやめとくって」

父親「映画と旅行じゃ話が違う? 娘を独り占めするな? いや別にそんなつもりじゃ……」

私(電話は長引きそうだったので、私は1人博物館へと入って行った)
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:06:11.64 ID:guKA3R0i0

──博物館──

館長「ご来館ありがとうございます。館内には宇宙にまつわる色々な展示物が……」

私「すみません。学生証の落とし物ありませんでした?」

館長「え? もしかして……この前修学旅行で来てくれた学校の生徒さん?」

私「はい」

館長「そうか。学生証なら落とし物ボックスに置いてあるよ。少し待っていてね」

ガサゴソ

館長「もう数日したら学校に電話しようと思っていたところだったんだ。忙しくて手が回らなくて。悪かったね」スッ

私「いえ。ありがとうございます」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:07:05.92 ID:guKA3R0i0

私(横目で月の石ブースを見ると、透明のケースの代わりにテープが石の四方を囲っている)

館長「あれね。まだケースが届かなくて、不恰好だけどああいう形で展示しているんだ」

私「ごめんなさい……」

館長「? 何が?」

私「いえ……でもテープだけだと、盗難とかが少し心配ですね」

館長「館内には監視カメラもあるから。それに正直言って、盗られたところで大した損害にはならないし」

私「レプリカなんでしたっけ」

館長「うん。あの石が本物だった頃に同じ事故が起きていたら、今のような飾り方はできなかっただろうね」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:07:58.41 ID:guKA3R0i0

私「本物だった頃?」

館長「そうだよ。この博物館は当初、本物の月の石を飾っていたんだ」

私「へぇ……」

館長「かなり昔の話だけど。でもその本物を飾っていた時代のお陰で、今でもこの博物館は賑わいを見せているわけだ」

私「本物の月の石はどうしたんですか」

館長「もちろん、売ったんだよ」

私「どうして?」

館長「どうしてってそりゃあ、お金が欲しかったから。あはは、それ以外に何があるんだい?」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:08:50.69 ID:guKA3R0i0

──旅館──

父親「おー、ここがお前の泊まった旅館か〜」

私「お父さん。恥ずかしいからあんまり騒がないでよ」

父親「ひっく。いいところじゃないか〜」グビ

私「手に持ってるそれ……ビールなんて頼んだの? お父さんお酒弱いのに」

父親「ちょっとぐらい平気平気!」

私「もう。水買ってくるから、もうそれ以上飲まないでね」

私(ドアを開けて廊下に出る。1階に自動販売機があったはずなので、コンビニまで行く必要なないだろう)
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:09:35.34 ID:guKA3R0i0

──1階──

ガコンッ

私「3本ぐらいあれば大丈夫かな」

私「……ん。あれは」

──ラウンジ──

うさぎ「収益化も通ったしメンバーシップ数も順調。あとは各種カードを作って……」カタカタ

私「久しぶり」ヌッ

うさぎ「きゃあっ!?」ビクッ
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:10:28.09 ID:guKA3R0i0

私「ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど」

うさぎ「嘘つけ! 今回ばかりは確信犯うさ!」

私「えへへ。バレたか」

うさぎ「ってそんなことより、どうしてあんたがここに!?」

私「忘れ物を取りに来たんだ」

うさぎ「わ、忘れ物1つで東京-北海道間を移動するなんて……察してはいたけどやっぱとんでもない金持ちうさ」

私「あなたこそどうしてこの旅館に?」

うさぎ「それは、ここが私の配信拠点だからうさ!」

私「配信拠点……そうだ、あなた配信者になったんだよね」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:11:23.78 ID:guKA3R0i0

私「クラスメイトにも大好評だったよ。私もちょっとだけ配信を見せてもらったんだ」

うさぎ「な、なんだか照れるうさね」テレテレ

私「拠点ってことは、ここに住んでるってこと?」

うさぎ「そんな感じ。旅館の310号室を借り続けているうさ。昔の文豪がよく使った手だね」

私「よく知らないけど、それこそすごくお金がかかるんじゃないの?」

うさぎ「まぁかかるけど……あの海岸は私が落ちてきたところだし、そこを望める場所に住みたかったから」

私「ふーん?」

うさぎ「それに、綺麗な部屋にいるとやる気も上がるしね」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/15(火) 20:12:27.55 ID:guKA3R0i0

私「とにかく配信は順調ってことだね」

うさぎ「順調も順調。スパチャって知ってるうさ? あれって頭おかしいぐらい儲かるうさ」

うさぎ「一瞬でコンビニで丸1日働いた時と同じ金額が舞い込んでくるんだから」

私「へぇ。今ってそんなのがあるんだ」

うさぎ「聞いてほしいうさ。あれから色んなことがあって……」

私(うさぎは近況について様々なこと話してくれた)

私(機材への投資のこと、毎日配信する精神的な疲労のこと)

私(同業間のギスギスした話。トレンドに乗っかることの重要性)

私(そして何より、配信が楽しいということ──)
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