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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2
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496 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 22:55:26.35 ID:6WraeaE50
1 雛菜選択
【雛菜の病室】
コンコン ガララ……
ルカ「……うおお!?」
部屋が真っ暗になっていることはもはや触れる必要すらないとして。
入った瞬間私の鼻をくすぐる臭い。これは……葬式の時の匂い、か……?
臭いの元を探ると、能天気女が部屋の隅で何かを手に持っている。
雛菜「あは〜……この匂い……すごく落ち着く〜……」
ルカ「お、お前……それ、線香じゃねえか……」
雛菜「人って、いつかはみんな同じように焼かれて、同じように埋められて……同じように、このお線香の匂いに包まれるんだ〜」
雛菜「だから、この匂いを嗅いでると、雛菜もみんなとおんなじだって思えて……」
ルカ「……換気するぞ」
……これ以上こいつの話を聞いてるとこっちの頭が先に参りそうだ。
-------------------------------------------------
‣現在の所持品
【ジャバの天然塩】
【エプロンドレス】
【新品のサラシ】
【オスシリンダー】
【蒔絵竹刀】
【絶対音叉】
【七支刀】
【バール】
プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない
↓1
497 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/03/06(日) 23:01:23.00 ID:QLxva49a0
エプロンドレス
498 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:07:50.62 ID:6WraeaE50
【エプロンドレスを渡した……】
ルカ「……私の趣味じゃねーけど、普段のお前ならこういうの似合うんじゃねーか?」
雛菜「エプロンドレス……これってメイドさんのやつですよね〜……」
雛菜「あ、そっか……雛菜を冥途送りにしてやるっていうメッセージなんですね〜……」
ルカ「下種の癇繰りが過ぎるぞ……ただのプレゼントだ、着てみて嫌だったら捨てな」
雛菜「……」
雛菜「あは〜……かわいいかも〜……」
(……喜んだん、だよな?)
【PERFECT COMMUNICATION】
【親愛度がいつもより多めに上昇します!】
-------------------------------------------------
雛菜「雛菜のためにこんな病室一個も使っちゃって……これだけの敷地があれば、もっと愛されている誰かのお墓を建てられたはずなのにな〜……」
ルカ「不動産会社にそういう文句は言え。ほら、シーツ交換するからどいてろ」
息をするように口から綴られるネガティブな文言はもはやスルー。
部屋の隅っこにいるのをいいことに、病室の設備周りを綺麗に整えてやった。
ルカ「……あ、そうだ。昨日は、悪かったな」
雛菜「はい〜?」
ルカ「病気のとこに、無理やり問いただすような真似しちまってよ。あれで病気が悪化でもしたらこっちの責任だしな」
雛菜「……」
雛菜「いえいえ〜、むしろこんな雛菜と会話してくれたなんて……酸素の無駄遣いをさせてしまって申し訳ないです〜」
ルカ「どんなへりくだり方だよ……」
こうもいつもと違うと、やはりどうしても調子が狂う。
ネガティブになって聞き分けがよくなったというべきか、それとも言葉が余計に響かなくなったとみるべきか。
だが、私たちから距離をひたすらに置こうとするのがなくなっただけでも大分大きいのは確か。
ノクチルの二人でも、こっちの方が距離をとりたがる節はあった。
(……どうしよう、もう一度何か探ってみるか?)
1.もう一度浅倉透に対して怪しいところはないか聞いてみる
2.昨日浅倉透と話したと報告してみる
3.自由安価
↓1
499 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/06(日) 23:14:37.50 ID:carM39qF0
2
500 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:24:56.78 ID:6WraeaE50
2 選択
ルカ「……昨日よ、お前と話してから浅倉透と話してみたよ」
雛菜「……透先輩と?」
(……!!)
絶望病にかかっているというのに、私の口からその名前が出た瞬間に空気が俄かに変わる。
とはいえ、これまでの敵意や殺意に塗れたそれには完全には満たない。
やはり本調子ではない、ということなのだろう。
ルカ「お前が言っていた、あいつが何かを“なくしている”っての。本人に少しだけ訊いてみた」
雛菜「それで、透先輩はなんて言ってました〜……?」
ルカ「……その場では解答はもらえなかった。でも、この病院にいる限り、逃げ場はないって」
雛菜「それって、近いうちに話すってことですよね〜……?」
ルカ「……だと、思っていいはずだ」
雛菜「……そっか、透先輩が……」
雛菜「雛菜も、それ……何を指してるかまでは知らないんですよね〜……そっか、幼馴染の雛菜も知らないのに、そうなんだ〜……」
(うっ……)
身に纏わりつくような、嫌に粘着質な気配。
べたべたとして心地の悪い感触、この感情のことを私は良く知っている。
嫉妬と恨み……そのブレンドだ。
普段のこいつなら、こんな感情は向けてこないだろうにと思う。
この感触も、絶望病由来の物なんだ。
ルカ「……確かに、お前よりも先にわたしが聞くこともあるかもしれない」
致し方ないものと割り切って、私はそれを拒絶はしなかった。
相手が病人だからということもあるが、これは千雪の命令を遂行するためでもある。
私はこいつらの感情に向き合う義務と責任とがある。
そこから逃げ出すようじゃ、まだまだだ。
ルカ「だから、話聞けたら、お前にも共有する」
ルカ「お前も、この島で暮らす……一応、一員なんだからな」
雛菜「……あは〜」
私の返答に、能天気女は幾分かの納得はした様子で、布団の中に頭を引っ込めた。
危ないところだった。この手を間違えていれば、こいつとの間の溝はまた別のかたちで広がってしまうこともあっただろう。
……立ち振る舞いは慎重に。
人づきあいと言うのはなかなか面倒なものだ。
-------------------------------------------------
【親愛度が上昇しました!】
【市川雛菜の親愛度レベル…3.5】
【希望のカケラを入手しました!】
【現在の希望のカケラの数…28個】
501 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:26:38.75 ID:6WraeaE50
____
______
________
結華『そっか……まだみんなの病気はよくなんないか……』
ルカ「正直知識も何もないからな、全部結局はあいつら次第だ」
あさひ『風邪薬とかも、効かないっすか?』
透「風邪とかじゃないしね、ウイルスにはウイルスの薬使わなきゃダメじゃん」
結華『熱も下がってないんだよね?』
ルカ「ああ、全然変わらねえ。あいつらあんな平気な風して余裕で39度台の熱出してやがるからな……せめて熱でも下がらねえと衰弱しちまうぞ」
あさひ『……愛依ちゃんに会いたいっす』
結華『あさたん……もうちょっとの我慢だよ、きっとよくなるから』
透「そっちは何かありますか」
結華『いや、こっちは何も変化はないよ! 時々島の探索もできる範囲でやってはいるけど、新しい発見はないかな』
ルカ「チッ……いやな停滞だな」
結華『ルカルカ、完全にそっちに任せちゃってるけど、何か必要なこととかあったら気軽に言ってくれていいからね! ルカルカの力になれるコトなら、なんでも協力するから!』
ルカ「おう、わかった」
透「なにかあったらまた連絡します。それじゃ、また明日」
あさひ『また明日っす〜!』
プツッ
502 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:28:09.93 ID:6WraeaE50
今日の夜の間の看病は私とこいつの二人で引き受けることになった。
私は昨日朝まで熟睡していたし、こいつも日中はよく眠っていたらしく、体力に余裕がある。
それに、私自身こいつと今一度話したいとも思っていたからだ。
看病に行く前、通信を終えて静まり返ったロビーで私は話しかけた。
ルカ「……この前は悪かったな」
透「え、急に何」
ルカ「千雪の裁判終わり、急に胸ぐら掴んで恫喝なんかしちまってよ」
透「あー……いいよ、別に」
ルカ「……私も動転してた」
でも、その動転はこいつへの疑念からの派生だ。
私たちにひた隠しにする、外部の人間とのつながり。
そこに私たちの求める回答の一つがあるであろうことは容易に想像がつく。
その気持ちが私に焦らせた。
今は一旦その時の非礼を詫びることにした。
こいつだって、私たちと全員と一蓮托生の一人。
中学生のように悪意が表に出ていないうちから敵対を続けるのは得策ではないと気付いたのだ。
そして、何より私にとってこいつへの認識を改める要因になったのがこの絶望病だ。
あんなに血相を変えて飛び込んできて幼馴染の容体を案ずる。コロシアイに加担している人間とは思いがたい行動ではなかろうか。
だから、私はここで見極めたい。
浅倉透という人間の真意を、七草にちかがぶつけた敵意が適正だったのかを。
503 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:29:12.94 ID:6WraeaE50
ルカ「幼馴染がやっぱ心配か」
透「そりゃね、雛菜しかこの島にはいないからさ。病気してたら落ち着かないよ」
ルカ「これまでずっと別行動だったのに、助けを求めてくるぐらいだもんな」
透「……それは、ごめん」
ルカ「……別に責めようってわけじゃねーんだ。お前ら幼馴染同士の結束ってのは確かなもんなんだろうなと思ってよ」
透「ずっと一緒だからさ、うちら。小糸ちゃんは一回中学校だけ別だったけど、それ以外は変わんない」
透「……変わんない」
ルカ「……どうした?」
透「……いや、別に」
何か意味ありげにポツリと言葉を繰り返すと、浅倉透は視線を逸らした。
そこに内在するニュアンスを掴みたくて、私はさらに探りを入れた。
504 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:30:18.37 ID:6WraeaE50
ルカ「お前よ、病院に残る側になった目的って本当にそれだけなのか?」
透「え」
ルカ「お前、幼馴染のことを随分と信用してるようだけど、こいつにはもしかして話してるんじゃねーか? お前がつながってる、外の世界のやつっての」
透「……!」
ルカ「私たちが看病している間に、ついうっかり口にしやしまいかって」
透「いや、そうじゃない……違うって」
強い言葉で否定した。
こいつとしてもどうにか誤解を解きたいと言う気持ちはあるらしい。
確かに、今にして思えばこいつが私たちと距離を取ったのはあの能天気女の暴走によるところがあった。
まるで信用しない私たちに豪を煮やして単独行動を開始した。そこからも目立った動きはないし、そこを咎める必要はきっとないんだろう。
505 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:32:08.25 ID:6WraeaE50
ルカ「七草にちかが言ってたこと、お前が外の人間と繋がってるってのは……結局本当なんだよな?」
透「……うん、本当だよ」
ルカ「そいつとは、まだ連絡は取ってるのか?」
透「……ううん、取れなくなっちゃった」
ルカ「……そうなのか?」
透「あの裁判以降一度もね、モノクマがなんかしちゃったみたい」
(……もしかして、七草にちかが告発したことで明るみになっちまったからか?)
ルカ「そいつは、私たちにとって敵ではないんだよな」
透「うん、味方だよ。このコロシアイとは無関係」
ルカ「でも、誰かは言えない……」
透「……」
ルカ「……なあ、なんで言えないんだ? その理由を聞かせてくれよ、別にお前を疑ってるわけじゃねーんだ、お前を信用するために、信用に足る情報をくれよ」
透「……えっと」
ルカ「いい、ゆっくり話せ」
506 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:33:05.43 ID:6WraeaE50
今この場には私とこいつしかいない。
病院から逃げ出すことは不可能。
詰問には正に打って付け、浅倉透も観念した様子で慎重に言葉を選びながら語り始めた。
透「……そもそも、私が連絡取れてたのはモノクマからの干渉を拒める手段があったからなんだよね」
透「この島にいる限り、モノクマには全部知られちゃうんだよね。何をしてるか、何を話してるのかも。全部」
透「だから、そこら辺をクリアにする機能を持ったのがあったんだけど……今はもう使えない、取り上げられちゃったから」
透「だから、伝えられないんだ。モノクマに知られたらまずいから」
ルカ「結局、私たちに言えることは何もないってのは変わんねーのか」
透「……ごめん」
情報には何も進展はなし。
モノクマへの抵抗手段があったと言うことは知れたが、今はもうそれも手元にないと言うのだから仕方ない。
ただ、進展はなくとも、浅倉透という人間は少し見えた。
声の調子、視線、息遣い。それをすぐ間近で改めて観察することで、こいつが嘘をついていないことは分かる。
507 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:34:00.67 ID:6WraeaE50
ルカ「じゃあ具体的な話をしなくてもいい、これだけ聴かせてくれ。お前は一体、どこまで知ってるんだ?」
透「……」
ルカ「この前のゲームといい、最初の動機といい、私たちの失った記憶ってのが重要な意味をもってんのは確かだ。お前はその私たちの失った記憶を……知ってるのか?」
透「……私は、あのゲームの中のコロシアイは何にも知らないよ。それは事実」
透「でも……みんなが失った記憶は、ちょっとだけわかる」
ルカ「……!? ま、マジか……?!」
透「でも……それは言えないんだ、言っちゃうと……全部、これまでが無駄になっちゃうから」
ルカ「これまでが無駄になる……?」
透「ねえ、記憶ってどこまである? この島に来る前の一番新しい記憶って?」
(この島に来る前の、一番新しい記憶……?)
確か、私はいつも通りソロライブを終えて、マネージャーが運転する帰りの車に乗ってた。
それでついついうたた寝しちまって……目が覚めたらこれだ。
508 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:35:59.42 ID:6WraeaE50
透「……そっか、それなら大丈夫」
透「あのさ、それが本来あるべき姿なんだよね。みんなは記憶がすっぽり抜け落ちている……それで、いいんだよ」
ルカ「お前……それってどういう意味なんだ」
透「思い出しちゃ、ダメなんだよ」
透「忘れといて、そのまま」
自らの胸に手を当てて、説き伏せるようにして浅倉透はそう言った。
失った記憶はそのままでいろだなんて、正直理解はできない。
でも、道理や理論じゃなくて、こいつの言葉には信じてみようと思わせるような妙な説得力があった。
その澄んだ瞳の奥底には、どっしりとして揺るがない軸のようなものがあり、その不思議な引力に引き寄せられるのだ。
……でも、だからといって見逃しはしない。
こいつの言葉を追っていけば必然的に結ばれる結論がある。
それは、
509 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:36:52.93 ID:6WraeaE50
ルカ「……お前が私たちの記憶を奪ったのか?」
510 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:38:04.47 ID:6WraeaE50
透「……」
ルカ「いつからの記憶がないかを把握してるってことはそういうことだろ? お前はこの希望ヶ峰学園歌姫計画の参加者じゃなくて……運営する側の人間なんじゃないか?」
透「……私が奪ったって言うか」
透「私たちが、奪った」
511 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:39:18.15 ID:6WraeaE50
ルカ「……マジかよ」
透「でも、信じてほしいんだ。モノクマの言葉に載せられちゃダメ。あいつは、悪者だよ」
ルカ「んなことは分かってる、このコロシアイは希望ヶ峰学園歌姫計画をあいつが乗っ取ったからこうなってるだけ、つまりは本来の歌姫計画はそうじゃなかった」
ルカ「だから……てめェはその本来の歌姫計画の実行者……その一人ってことなんだろ?」
透「……うん」
希望ヶ峰学園歌姫計画の実行者ということは、この島に私たちを集めた張本人ということになる。
でも、どうして?
他の283プロの連中とは別に、どうしてこいつだけがそんな役目を担っている?
他の連中はどうしてこいつのように希望ヶ峰学園歌姫計画を知らない?
そして、その歌姫計画はどうして私たちの記憶を奪うような工程が含まれている?
浅倉透が口にした言葉は、謎への解放なんかじゃない、新たな謎への導線だったのだ。
512 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:40:28.18 ID:6WraeaE50
透「……多分、今めちゃくちゃだよね。頭ん中」
ルカ「当たり前だ、お前……新しいことは言えないとか言った割に、疑問ばかり言いやがって」
透「ごめんって。……でもさ、私がみんなの味方だっていうのは変わんないから」
ルカ「そればっかだな……」
そもそもの『希望ヶ峰学園歌姫計画』とやらの実体も私たちにはよくわかっていない。
それの実行者がいくら味方だ敵だと言っても、信じるか否かの議論の上に載せることすら危うい証言だ。
でも、この状況においてなお、浅倉透は私から視線をずらそうとはしなかった。
ここにきて初めて私が耳を傾けた、この状況をこいつ自身も好機だと考えたんだろう。
自分自身を知ってもらうための、好機。
誤解を解くための、好機。
____後は私がこの瞳を信用するかどうかがすべてだ。
513 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:41:57.10 ID:6WraeaE50
七草にちかの命を懸けた糾弾、そしてそれに突き動かされた美琴。
それを思えば、こいつの主張など斥けてしまうべきなのかもしれない。
……でも、それは今ある信頼に縋り続けるだけの逃避に変わりない。
現実に向き合うことから逃げ続けても、私たちは真実にはたどり着かない。
ルカ「……だけど、わかった。私はとりあえずお前のことを一度信用することにする」
透「……!」
514 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:42:56.67 ID:6WraeaE50
ルカ「だから、お前も私たちのことを信用して……お前の幼馴染を説得しろ。あいつだって283プロの連中の人の好さは知ってんだ。今はこの状況下で視野が狭窄しちまってるだけ」
ルカ「そんで、私たちからも逃げんな。信用が欲しいなら、行動で勝ち取れ。……ま、私が言えたことでもないけどな」
透「……うん、そうだね」
ルカ「こういう言い方をしちゃ悪いが、今の看病の状況はうってつけだろ。精々張り切って面倒見てやるんだな。その分私の手も空くし」
透「ふふ、なにそれ、サボりじゃん。……でも、任せてよ。うちら、ナースの衣装着たこともあるし」
ルカ「なんだそれ、関係あんのかよ」
透「アリよりのナシ」
ルカ「……ハッ」
浅倉透という人間の感情に、今私は初めて触れたような気がした。
こいつだって283プロの人間で、人並みに笑うし、人並みに苦しむ。
今こうして肩を並べて笑う姿を見て、私は自分のこれまで持っていた敵意がどれだけあやふやなものだったのかを身につままされた。
まだ完全な信用をしたわけではない、でも、信用するにしてもしないにしても、見極めずに判断を下すことは避けるべき短慮だ。
ルカ「じゃ、また様子見に行くぞ。ベッドから抜け出してないとも限らねえ」
透「しゃー、看るか―」
____これで、少しは千雪の命令をまた遂行できただろうか。
【浅倉透・市川雛菜との通常時での交流が解禁されました!】
515 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/06(日) 23:45:44.18 ID:6WraeaE50
申し訳ない、事件発生まではもう少しあるのですが時間的に厳しくなってきたので本日はここまでにさせてください。
次回更新時に事件発生パートから非日常編の捜査パートを途中まで一気に進めることにします。
次回更新は火曜日か水曜日になると思います……改めて更新できそうな日に前もって書き込みに参ります。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いします。
516 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/06(日) 23:50:13.12 ID:carM39qF0
お疲れさまでした
517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/06(日) 23:51:32.32 ID:carM39qF0
お疲れさまでした
518 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/06(日) 23:51:35.06 ID:PcuD0/db0
>>1
乙!
やはりと言うか、予想はしてたけど
この島に参加させられたみんなは「アレ」なのね
519 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/07(月) 22:44:35.26 ID:voJBumxJ0
次回更新ですが3/8(火)の22時ごろからになりそうです。
捜査パートでは安価で行動指定もあるのでご協力いただけますと幸いです。
それとこれはつい先ほど気づいたことなのですが、章題についてミスをしていました。
章題はアイマスの楽曲をもじってつけるのに統一していたのですが、何を勘違いしたのか、
前章で放課後クライマックスガールズのGW楽曲『学祭革命夜明け前』を何故か『学祭革命前夜』と間違えてつけていました。
pixivで個人的にあげているまとめの章タイトルも『パステルカラー パスアウェイカラー』に急ぎ変更をしました。
混乱させてしまっていたら申し訳ないです…
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/03/08(火) 01:07:22.47 ID:glx8cp+J0
全キャラ出すために2やったなら多分前作で生き残ったキャラは全員死んじゃうね。
前作が電脳世界だったのかな?
521 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/03/08(火) 21:56:01.70 ID:4DJpxcg+0
1のタイトルセンスいいね、パスアウェイカラーとかめっちゃ好き
522 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 21:56:32.16 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
【病院 廊下】
恋鐘「こんばんは!」
ルカ「うわああ!? お、お前何やってんだよ……ちゃんと部屋で寝とけって」
恋鐘「昼間充分寝ているので、どうも目が覚めてしまいまして……少し夜風に当たりたいのですがダメでしょうか!」
ルカ「あのな、何度も言うけど今お前は病気なんだよ。外にそうホイホイ出せるわけないだろ」
恋鐘「わかりました! 自分の部屋で待機しておきます!」
ルカ「……ったく、心臓に悪いぞ……」
透「止まったかも、心臓。マジで」
ルカ「これ以上看病対象を増やすんじゃねーよ……長崎女はまあ確認できた、後の三人、行くぞ」
523 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 21:57:53.57 ID:7xcqTvao0
◆◇◆◇◆◇◆◇
【愛依の病室】
ルカ「だからお前はどこからこんなの持ってきてんだよ!」
透「おー、なんか咲いてんじゃん。めっちゃ」
愛依「こちらのお花はゲッカビジンと言いますの、ほんの一夜のみにその花を咲かせる姿から、その花言葉は『儚い美しさ』……今こうしてお二方と見れたこと、恐悦至極に存じますわ」
ルカ「いや知らねーけど……花をいつ調達していつ育てたんだよ」
愛依「あら、セバスチャン? 乙女の秘密を詮索するのは野暮というものですのよ」
ルカ「だから誰がセバスチャンだ」
透「おーい、セバスチャン。茶淹れてよ」
ルカ「おい、お前もベッドに横になりてえか」
透「ごめんて」
524 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 21:58:42.00 ID:7xcqTvao0
◆◇◆◇◆◇◆◇
【夏葉の部屋】
夏葉「クワトロチーズLサイズに、あとバニラフロートもお願いするわね」
ルカ「うおおお!? 何お前出前頼んでんだバカ、病人がそんなもん食うんじゃねえ!」
透「ていうか電話線繋がってないじゃん」
夏葉「食べたいのよ、暴飲暴食の限りを尽くしたいのよ……机に並んだ空き箱の数々、ソースと生地の粉に塗れた指先、ベッドにもたれかかる私……そのまま意識を失い、翌朝まで眠りこける……」
夏葉「そんな怠惰なOLの金曜日を送りたいのよ!」
ルカ「なんだその具体的かつ終わりの生活は……」
透「なんかもうただの我儘みたいになってきたね」
夏葉「入院も飽きて来たし、そろそろこの部屋にもゲームとか置いてもらえないかしら。退屈なのよ」
ルカ「だからおとなしく寝てろって、病気でゲームしてもろくなことにならねーぞ」
透「昔さ、熱ある時暇だったからレベル100にしてた。テレビ見ながら」
ルカ「ろくなガキじゃねえな」
525 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 21:59:40.48 ID:7xcqTvao0
◆◇◆◇◆◇◆◇
【雛菜の部屋】
雛菜「はぁ、行くところまで行っちゃったな〜……透先輩の幻覚まで見始めちゃったし雛菜ってホント救えない〜……」
透「リアルだよ、実在」
ルカ「だから、そんな隅っこで埃いじってないで早くベッドに戻れって」
雛菜「はぁ……いいですよ、雛菜のために使う時間があるなら、資格試験の勉強とかに使ってください〜……雛菜と関わってもメリット無いですって〜……」
透「大丈夫大丈夫、勉強しても変わんないから」
ルカ「フォローになってねーぞ」
雛菜「ペン習字とかおすすめです〜……香典書くときとかに便利ですよ〜……」
ルカ「習う気はないから安心しろ、おら、さっさと動け」
透「かっこよくない、筆ペン使えたら」
ルカ「知らねーよ」
526 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:00:43.76 ID:7xcqTvao0
◆◇◆◇◆◇◆◇
ルカ「……あいつら、やっと寝たみたいだな」
透「みんなあれで熱あるんだからすごいよね、超エネルギッシュ」
ルカ「そのくせ体力は減る一方なんだけどな、無茶してんだよ」
透「でも、どうする? みんな寝たけど、うちらは」
ルカ「昨日美琴とやってた時はどうだったんだよ」
透「あー、まあ、ロビーで寝たり? 病室に入って寝てるの邪魔してもいけないし」
ルカ「それはそうだな……見るとしても廊下ぐらいにしとくか?」
透「ん、そうしよ」
ひとまずは夜の時間帯の看病もおえて、私たちも休憩の時間。
がっつり寝るわけにはいかないが、少しぐらい微睡む余裕はあるだろう。
それくらいに考えて、仮眠をとろうとしたその瞬間。
527 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:02:13.40 ID:7xcqTvao0
ビー! ビー!
突如としてロビーに響き渡るブザー音。
これまでに一度も聞いた覚えのない甲高い音とともに、受付の内線が赤く点滅している。
私たちは慌ててその内線をとった。
ルカ「……これ、小金持ちからのナースコールだぞ……!」
透「え、マジ……ヤバ」
ルカ「……クソッ、急ぐぞ!」
ついさっき病室を除いたときには平気そうな顔をしてやがったのに、容体が急変してしまったのか。
内線を乱暴にその場に放り、慌てて病室へと駆けつけた。
528 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:03:57.85 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
【夏葉の病室】
ルカ「お、おい……! 大丈夫か!?」
扉を開けるとすぐ目に入ったのは、ベッドから転げ落ちるようにして床に倒れ込んでいる小金持ちの姿。
病気にかかってきてからというもの、こいつはぐうたらな生活を送ってはいたが、どうやらそれとは雰囲気が違う。
瞳を無力に閉ざし、そしてその胸部はまるで動いていない。
ルカ「こいつ……呼吸してねえのか……!?」
胸に耳を当てた。
……そこに、本来あるはずの鼓動は聞こえてこなかった。
透「心停止……」
ルカ「畜生……なんてこった……」
ここは病院、それなりの設備があるとはいえ私たちに扱えるような代物ではない。
心停止してしまっている人間を回復させる術など、私たちは見当もつかない。
529 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:05:41.42 ID:7xcqTvao0
(……クソッ)
この状況において、頼るべき存在は一つしかない。
随分と癪なもので、出来るコトなら一生頼りにしたくはなかったが、背に腹は代えられない。
監視カメラに目を向けて、私はその名前を呼んだ。
ルカ「モノミ……お前ならなんとかしてくれんじゃねーのか!?」
モノクマは絶望病を振りまいた張本人。しかも今回の動機は病気で命を落とす前に誰かを殺せと言う指示も出ていた。
ここで心停止をして命を落とすというのなら、それは目論見の内だともいえるはずだ。
だからあいつはきっと手を貸してはくれない……でも、モノミなら。
あいつは一応口先では私たちの味方を自称している。
ここで信頼を勝ち取れるのなら、乗ってこない理由がないはずだ。
ルカ「さっさとしろよ……こいつ、死んじまうぞ!?」
コンコンッ
530 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:06:31.22 ID:7xcqTvao0
焦りをぶちまけ始めた時、背後で乾いた音がした。
病室の奥、その窓からだ。
音の正体を探ろうと近づいてみると、窓のサッシ、その下にピンク色の物体が目に入った。
ソーセージみたいな不格好な形に、しょぼい耳のついたぬいぐるみ……モノミだ。
モノミ「斑鳩さん、あちしでちゅ! 有栖川さんを助けに参りまちた!」
私たちはガラス窓をあけて、その寸胴を無理やり引き上げた。
透「モノミ……お願い、助けて。私たちじゃどうにもできない」
モノミ「了解でちゅ! 医龍の名をほしいままにするあちしにお任せあれ!」
ルカ「なあ……本当にお前にできんのか? こいつは……助かるのか?」
モノミ「はい! ちゃんと医師免許も持ってまちゅから! あちしの偏差値70の灰色の中綿を今こそ活性化させる時でちゅ!」
なんとも信頼しづらいが……今は任せるしかない。
私たちはモノミにその場を任せて、病室の外、廊下で待機した。
531 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:08:36.71 ID:7xcqTvao0
______
________
__________
モノミ「ふぅ……なんとかなりまちた……有栖川さんは無事でちゅよ」
しばらくしてから、モノミが病室の扉を開けて出てきた。手をこまねいて入室を促す。
私たちを顔を見合わせてから、静かに病室へと入っていった。
モノミ「今は寝てまちゅ……とりあえず、体外式のペースメーカーを使うことで一命はとりとめまちた。安静にしておけばきっと元気になりまちゅよ」
モノミの言う通り、小金持ちの胸部にはコードで何か機械が繋がれている。
多分そこから電気を流したりして、心臓の鼓動を確保しているんだろう。
瞳は変わらず閉じたままだが、心なしかさっきよりも血色がいい。
なんとか事なきを得た、というところなのだろう。
532 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:10:09.56 ID:7xcqTvao0
モノミ「そうだ、ペースメーカーなんでちゅが、電波の干渉を受けやすい機械でちゅ。電子生徒手帳なんかを使うときもできる限り、有栖川さんからは離れて使うようにしてくだちゃいね」
透「はーい」
ルカ「……おう」
とはいえペースメーカーが付けられた状態では安心もまだまだできそうにはない。
モノミの言う通り、機械が少しでも狂ってしまわないように細心の注意が必要だ。
ルカ「……とりあえず、助かった」
透「ありがとう、モノミ」
モノミ「いえいえ、あちしにできるのはこれくらいでちゅから。本当は病気そのものを直してあげたいんでちゅけど、あちしにもわからない未知の病気なので、対処の仕方も分からないんでちゅ……」
ルカ「まあ、そこまでは期待してねーよ」
モノミ「うぅ……面目ないでちゅ」
533 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:11:35.82 ID:7xcqTvao0
ルカ「そもそもこっちは治療できるかどうかも半信半疑だったぐらいだ。そんなことでへこまれてもこちらとしても困る」
モノミ「そうでちゅね……まずはこういう信頼の積み重ねが大事なんでちゅよね」
ルカ「……ああ、そうだな。そういうわけだから」
ポイッ
ルカ「用件は済んだ、じゃあな。おやすみ」
モノミ「え……あちしの出番これだけ? あちし、ミナサンの都合が悪い時に治療をするだけの関係なんでちゅか? 治療フレンドなんでちゅか?」
ルカ「おう、また困ったら呼ぶわ。そん時まで待ってろ」
ガチャッ
透「……ドライじゃん、めっちゃ」
ルカ「十分だろ、これくらいで」
モノミを締め出して施錠。
なんだか目を潤ませていたような気もするが、知ったことではない。
あいつだって私たちからすれば得体のしれない存在のうちの一つ。
今命を救ってくれたからと言って、ずっとそばに置いておくほど私は単純ではない。
これは引いては自分たちの命を守るためでもあるのだ。
治療をしてくれたなら、もう用済みだ。
534 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:13:25.20 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
【病院 廊下】
透「今回は焦ったね、流石に」
ルカ「ああ、心停止までいってたからな……なんとか持ち直してよかったよ」
小金持ちの病室から出た私たちは大きなため息をついて、壁にもたれかかった。
そのままずるずると壁を伝って座り込む。
ルカ「未知の病気だからな、何があるかこっちも分からねーことだらけだ」
透「うん……症状の全部もまだ把握してないもんね」
ルカ「あそこまで高熱がでるってだけでも体力を使うし、体にはよくない影響が出るからな。今回はモノミがいて何とかなったけど……」
透「……わかんないな、次同じことが起きたらどうなるか」
ルカ「……ああ」
未知の島で道の病気のパンデミック。
ここから先どうなるかなんてわからない。その漠然とした不安がまた息を吹き返す。
何もせずこのまま時間が経てば、その不安に飲み込まれてしまうかもしれない。
そう考えたのか、浅倉透はすくりと立ち上がる。
535 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:15:02.02 ID:7xcqTvao0
透「……とりあえず、休んどこうかな」
ルカ「おう、休んどけ休んどけ。また誰の容体が急変するとも限らねえんだ。寝れるうちに寝とかねーとな」
もともとさっきも一時は仮眠を取ろうとしていた時に起きたこと。
すでに私たちの瞼はかなり重たくなってきているし、さっきの対応で体力を結構使ってしまった。
透「じゃ、お言葉に甘えて。仮眠室、使ってもいい?」
ルカ「おう、大丈夫だ。私がロビーで寝とくよ」
ロビーで寝ることを申し出たのは、若干の警戒心から。
以前よりは信頼を置くようにはなったとはいえ、ここは私が死守すべきラインなような気もする。
透「それじゃあ……おやすみ」
ルカ「おう、おやすみ」
浅倉透の背中が廊下の奥へ消え、階段を上る時の靴の音が聞こえなくなるまで、私はじっとその場に座り込んでいた。
なんだかこの一夜に、いろんなことが起きて、いろんなものが変わった様な気がする。
その不思議な感覚を、時間をかけてかみしめていた。
536 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:16:00.55 ID:7xcqTvao0
____その感覚は、虫の知らせだったのかもしれない。
537 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:17:21.86 ID:7xcqTvao0
____
______
________
=========
≪island life:day 15≫
=========
【病院 ロビー】
(……ん?)
目を覚まして時計を見ると午前三時。
まだ朝のアナウンスもなっていないし、定期連絡までは4時間も時間がある。
勿論看病のために早めに起きようとは思っていたが、それにしても目を覚ますにしては早すぎる。
私の異様なまでの早い目覚めには理由がある、それはテレビ通話の送受信機の【ランプの点滅】だ。
着信があった時にはこのように緑色のランプが点滅し、画面にポップアップする応答のアイコンを押すことで私たちは電話を受けることが可能だ。
本来なら、時間も決まった通信なのでそこまでランプを気にかけることはないのだが……こんな時間に着信があるとなると話は別だ。
____それが意味しているのは疑いようもない【非常事態】。
背筋を何か冷たいものが撫でた。
538 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:18:40.18 ID:7xcqTvao0
「……もしもし! どうした、何かあったのか!?」
急ぎ応答すると、通話相手に出てきたのは冬優子と小学生だった。
『ルカ! ごめん、そっちにあさひと結華来てないかしら!?』
「え……? なんで、どうしたんだ急に」
『さっき、あたしたちの部屋のドアノブがガチャガチャってなって……それでふゆさんがあたしのことを心配してむかえに来てくれたんです……』
『でも、あさひと結華は一向に出てこなくて……行方知らずなのよ。部屋が防音って言っても流石にインターホンを鳴らしたら気づくと思うんだけど』
「……悪いけど、こっちじゃ見てねえぞ」
『どうしたんでしょうか……まさか、誰かにゆうかいを____』
突然の中学生と三峰結華の失踪。
こんな深夜にわざわざテレビ通話を繋いでまで相談しに来たのだから、その緊急性は高い。
部屋のドアノブをガチャガチャと開けようとしてきた不審者の存在も気になる。
もしかして、二人は何者かに……?
そんな不吉な考えが私の頭に浮上しかけた、その瞬間。
539 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:20:09.68 ID:7xcqTvao0
ガッチャーン!!
540 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:21:50.70 ID:7xcqTvao0
「な、なんだ!?」
『なによ今の大きな音……ガラスが割れたみたいな音だったけど!?』
「今の……【病室】の方からだぞ」
背後から聞こえてきたその音は病院一帯に響き渡るほど、通話相手にも聞こえるほど大きく、並大抵のことが起きたものではないことが直感的に分かった。
これまでに二度体験してきた、あの感覚がこみあげてくる。
何か良くないことが起きている、しかも最悪の形で。
その予感が私の足を走らせた。
『あっ、ルカ! ちょっと……!』
通話もつなぎっぱなしだが知ったことではない。
今は、何が起きているのかを見極めなければならない……たとえどんな形であろうとも。
廊下に出たが、いずれの病室も扉が開いてはいなかった。
でも、この中のいずれかで異変が起きていることは間違いない。
どれだ……どこで、何が起きているんだ……?
-------------------------------------------------
【確かめる病室を選んでください】
・恋鐘の病室
・夏葉の病室
・愛依の病室
・雛菜の病室
※死亡者が変わる選択ではありません
↓1
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/08(火) 22:22:21.10 ID:To/PBRez0
夏葉
542 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:27:06.65 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
【夏葉の病室】
さっきの今、こいつの容態は急変したばかり。
私が真っ先に飛びついたのは小金持ちの部屋だった。
あのガラスが割れるようなとても大きな音、もしやペースメーカー周りが破壊でもされたんじゃ……
そんな胸騒ぎとともに扉を勢いよく開けた。
ガララッ!!
ピッ ピッ ピッ
無機質な音とともに動くペースメーカー、その波形は変わってはいなかった。
部屋を見渡しても差し当たっての異常はなし。
肝心の小金持ちも……そのままだ。
口元に耳を当てても変わらず。
呼吸もしっかりとしている。
……よかった、ここではなかった。
だが、安堵している場合などではない。
ここでないのなら……【別のどこか】だ。
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【確かめる病室を選んでください】
・恋鐘の病室
・愛依の病室
・雛菜の病室
※死亡者が変わる選択ではありません
↓1
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/08(火) 22:29:07.22 ID:To/PBRez0
愛依
544 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:30:40.12 ID:7xcqTvao0
……そのドアノブに手をかけた瞬間に、なぜだかそれがすぐにわかった。
別に妙に冷たかったとか、変な液体がついていたとか、そんな物証的な話ではない。
これは、人間という生物が本能的に嗅ぎつけたもの。
私が、今確かめようとしているものは、この中にある。
この中で、それは起きて、そして……終わっている。
私たちには、その顛末を見届ける義務がある。
否応なしに、選ぶ権利さえも与えられないのだ。
その最悪の義務感がガラガラと音を立ててその扉を開いた。
545 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:31:26.59 ID:7xcqTvao0
【満月が煌々と照らす窓の近くで首から大量の血を流して息絶えているのは、超高校級のギャル・和泉愛依だった】
546 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:32:58.13 ID:7xcqTvao0
「……う、嘘……だろ……」
ついさっきのことだ。
私たちが看病しに来たとき、こいつはどこから持ち込んだともわからない花を嬉しそうに見せてくれた。
その花は混じりっ気のない純白の花弁を広げていて、私のように花を愛でる習慣のない者でも思わず見とれてしまうほどだった。
そんな花は、その持ち主の首から噴き出したであろう血で紅に染まっている。
「……クソッ」
____だが、事態はそれでは終わらない。
死体に完全に気を取られてしまっていたが、一度視野を広げてみてみるとこの現場の異常さに気が付いた。
お嬢様病の影響ですっかり様変わりした病室ももちろん異常ではあるのだが、この部屋には荒らされた痕跡がある。
……もっと言えば、【窓が割られている】のだ。
547 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:34:38.65 ID:7xcqTvao0
その結論に行きつくまでにはそう時間はかからない。
こんな殺人現場でわざわざ窓を割る、しかも病室の扉は閉まっていた。
それならこの割れた窓が犯人の脱出経路であることは間違いない。
破壊された窓のその隙間から首を出してみると、すぐ出たところにガラスが散乱している。
やはりこれは犯人が脱出するために内側から割ったものとみて間違いないだろう。
音が鳴ってからまだそう時間は経っていない。
ともなると、犯人はまだ近くにいることになる。
「……逃がさねえ!」
私はすぐに病室を飛び出し、ロビーへと向かった。
病院を出入りする唯一の玄関口が、ここだ。
『なにがあったの! ルカ、答えなさい!』
『ルカさん、どうしたんですか!?』
画面を横切る私の姿を目撃したのか、冬優子たちの声が聞こえてきた。
でも、それの相手をしている余裕なんかない。
犯人はすぐにでもこの場を立ち去ってしまうかもしれない。
その前に確固たる証拠を、犯人自身を捕まえてやらなくては。
それができるのは私だけなのだから。
548 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:35:31.63 ID:7xcqTvao0
ガチャ
私は観音開きのその扉の取っ手を掴んで、すぐに開け放した。
なんとしても犯人を捕まえなくちゃいけない、ただその一心で他のことは一切考えていなかった。
勿論、今更考えたってどうにかなるものではない。
でも、覚悟の一つでも決めておくべきだったかもしれないと今なら思う。
549 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:36:01.69 ID:7xcqTvao0
扉を開けた先に待っている、もう一つの絶望的な状況に直面するための、覚悟を。
550 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:36:50.63 ID:7xcqTvao0
【病院の入り口の扉を開け、駐車場で血の海に沈む三峰結華の姿を目撃した】
551 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:39:21.38 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
CHAPTER 03
Hang the IDOL!!〜弾劾絶叫チュパカブラ〜
非日常編
-------------------------------------------------
552 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:40:51.54 ID:7xcqTvao0
理解というのはいつも遅れて来る。
浅い眠りに落ちていた間に少しばかり停止していたシナプスにはこのものの数分の間に目の前に現れた現実というものが受容しがたく、私は暫く呆然と立ち尽くしていた。
悲嘆にくれるでもない、絶望に陥るでもない、困惑に喚くでもなく、ただ感情に自我がたどり着くまでに時間を要していたのだ。
「……は?」
目の前に広がる赤、その中に沈む“何か”。
その理解は、背後から聞こえてくる怒声のような叫び声とともにやってきた。
『ルカ、何があったの?! いい加減教えなさい!』
「え……あ、えっと……」
冬優子の問いかけに自分の言葉で説明をしようとして、初めて私は理解を手にした。
今のこの数分の間に二人の人間が命を落としたこと、またそれが始まってしまったこと。
本能にようやっと理性が追い付いたのだ。
私はふらつく足取りでなんとかモニタの前に辿り着き、なんとかその一言だけを絞り出した。
「……死んでる」
553 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:42:01.65 ID:7xcqTvao0
____
______
_________
ピンポンパンポーン!
『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』
病院の駐車場にはほとんど全員が揃っていた。
あの通話の後にすぐに冬優子と小学生は合流し、中学生もどこかから姿を現した。
私もなんとか二階の休憩室の二人を叩き起こし、駐車場に戻ってきた。
果穂「結華さん……!? な、なんで……」
智代子「な、なんでまた起きちゃうの……」
冬優子「嘘……結華が、どうして……!?」
一段と受けているショックが大きかったのはやはり冬優子だった。
私も冬優子と数日前に、三峰結華の説得に同伴した身。あの時にようやっとの思いで心を開かせ、
外に連れ出したというのにこんな事となってしまうなんてなんと報われないことか。
まるで力なく膝から砕け落ちる冬優子には、その心中に冷たくドロドロとした何かが広がっているのが透けて見えるようだった。
554 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:43:23.83 ID:7xcqTvao0
……だが、彼女が受けるショックはこれでは終わらない。
この事件は三峰結華の一つで終わらない、より近くにいた存在が喪われてしまったことを、私は冬優子に伝えなくてはならない。
ルカ「……今回は、一人じゃねえんだ」
美琴「一人じゃないって……まさか」
ルカ「……ああ、病院の中で……和泉愛依も死んでる」
冬優子「……は?」
あさひ「愛依、ちゃん……?」
私がその名前を口にしたとたん、冬優子は私の胸倉をつかみ上げた。
眉間には一瞬にして皺が寄り、奥歯を噛み砕きそうなほどにその口元には力がこもっている。
冬優子「ふざけんじゃないわよ……アンタ、そんな冗談言っていいと思ってんの!?」
冬優子の憤怒はもっともだ。三峰結華の死に加えて、和泉愛依も事切れたことなど到底受け入れられるものではない。
ただ、どれだけ怒ろうとも現実は変わらない。私があの病室で見た惨状を否定するに足る言葉などどこを探して見つからないのだ。
私は返す言葉が見つからず、ただ視線を逸らしてうなだれた。
555 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:44:48.43 ID:7xcqTvao0
冬優子「……チッ!」
私の反応に業を煮やしたのか冬優子はその手を離し、ツカツカと音を鳴らしながら病院の中に入っていった。
おそらく、私の言葉の真偽のほどを確かめに行ったのだろう。
あさひ「……ルカさん、本当……なんっすか?」
ルカ「……おう」
そして、ストレイライトのメンバーは冬優子だけではない。
私たちを散々かき乱してきたはずの狸も、その仲間の死をすぐには飲み込めず、私に確認をしてきた。
あさひ「……愛依ちゃんが、死んじゃった」
私の言葉を反芻して、その場にぺたりと座り込む。
冬優子の激情とは対照的に、まるで魂が抜け落ちたような反応だ。ぼうっと地面を見つめて、それ以上は動こうとはしない。
こいつには散々煮え湯を飲まされてきたが、この反応を見ていると少し胸が痛む。
14歳という未成熟な器、その容量から溢れ出たものがそこら中にまき散らされている。
智代子「そんな……二人同時に死んじゃうなんて……」
でも、私たちに悲嘆にくれる時間は与えられていない。
誰かが死んだということは、今私たちの命も生きるか死ぬかの瀬戸際にあるということ。
載せられた天秤が正しい方向に傾かないと、私たちもこの二人とともにあの世行きだ。
ルカ「とりあえず、もう一つの事件現場に行くぞ。……やらなきゃ、死ぬのは私たちなんだ」
556 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:46:13.53 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
【愛依の病室】
病室の扉は今度は開かれていた。
恐らく冬優子が先に来て、その死を確かめているのだろう。
そう思って他の連中に先行して中の様子を伺った。
ルカ「……待て」
私はそこで美琴たちを制した。
ルカ「……中学生以外は一旦ここで待機、三分だけ時間をやるぞ」
あさひ「……ルカさん」
ルカ「早く行ってこい、時間はそう残ってねえんだ」
こいつにかける情けも容赦もない、あの裁判以降そう思っていた。
だが、和泉愛依の死を聞いた瞬間のあの力の抜けようは演技のそれではなかった。
何か大事なものが崩れ去ったような、足を絶望にからめとられた時のような、そんな言い表しようもない感情を見せていた。
私は、その感情には救済を与えたいと思った。
今のこいつは分からないが、かつてのこいつが仲間とともに笑いあった時間があったのは確かだ。
なら、その時間に見合うだけの対話はあってしかるべきだと思う。
557 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:47:52.90 ID:7xcqTvao0
冬優子「……あんた、何馬鹿なことしてんのよ。あんたはふゆのライバルで……アイドルの頂点目指すんでしょ……? なんで、こんなとこで死んでんのよ……」
あさひ「愛依ちゃん……嘘っすよね……わたし、まだ愛依ちゃんとしたいことがいっぱいあるっすよ……? まだまだいっしょに行きたいところがいっぱいあるっすよ……」
骸は何の言葉も返さない。
瞳を閉じて、口元を苦痛に歪ませたその表情ばかりを月明かりが照らす。
冬優子「許さない……許さないんだから……ふゆとまともに闘いもせずに舞台から降りるなんて……不戦勝なんてふゆが喜ぶと思う……!?」
あさひ「愛依ちゃんに頭撫でてもらった時のふわふわする感じ、もう感じられないっすか……? 愛依ちゃんとギュッてしたときのあの匂い、もう嗅げないっすか……?」
死とはどこまでも非情だ。
突然舞い降りて、その人間を連れて行ってしまうがために、周りの人間にはお別れの言葉すら許さない。
遺された者たちは悔やんでも悔やみきれない思いを抱き、ただ自分の身を傷つける以外の術を持たない。
しても仕方のない後悔がこみあげることを食い止めるのは叶わず、全身から抜け落ちたものがその虚空にばかり吐き出される。
冬優子「いつもうるさいくせして、急に静かになってんじゃないわよ……愛依」
彼女たちも、その感情をただ霧散して終わってしまう。そう思われた。
冬優子「……」
558 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:50:30.05 ID:7xcqTvao0
____でも、彼女が私たちに見せた姿はそうではない。
冬優子「あさひ、立ちなさい。いつまでもこんなことやってる時間はないわ」
あさひ「……冬優子ちゃん」
黛冬優子という人間は、悲劇のヒロインなんて器ではない。
自分の身に降りかかった悲運を嘆き、身をよじり苦しむばかりで同情を買うなんて性に合わない。
そんな悲運があるというのなら、自分自身の手で切り開きたい。
彼女はそういう人間だ。
田中摩美々の裁判の時だってそうだ、あらぬ疑いをかけられ追い詰められた果てに黛冬優子という人間はその内をすべて暴露した。
彼女にとってそれはイレギュラーに他ならなかったが、そのイレギュラーさえも武器にして、彼女は大立ち回りをしてみせた。
冬優子「上等じゃないの、ふゆにこんな挑戦しかけておいて。犯人はとっくに覚悟はできてるんでしょうね」
559 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:51:27.21 ID:7xcqTvao0
なら、今だってそうだ。
他にないパートナー、ライバルとして認めていた存在、そして自分自身の内面と近しいものを感じ取り、同族としてシンパシー以上のものを感じていた存在の二つを同時に喪ったが、彼女はそれだからと言って折れたりはしない。
奪われたのなら、それに見合うだけの報いを受けさせるまで。
彼女からその二つを奪い去った人物に、自分自身の手でやり返してやらないと気が済まない。
冬優子「いいわ、ふゆがやる。ふゆがこの手で、犯人を処刑台に送ってやるわよ」
この状況で彼女に顕れたのは、そういう負けん気だった。
そんな彼女の奮起に応えるかのようなタイミングで、死体発見アナウンスが鳴り響いた。
ピンポンパンポーン!
『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』
先ほどのは三峰結華のもので、今回が和泉愛依のものということなのだろう。
月光に照らされる冬優子の後ろ姿、そのアナウンスは決戦の合図のようにも聞こえてしまった。
560 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:54:07.42 ID:7xcqTvao0
バビューン!!
モノクマ「あーらあーらやっちゃったー! ついに三回目の事件発生だね!」
モノクマが出てくるのを見て、私たちも病室に踏み入った。
冬優子と中学生、二人の様子を暫く見届けた私たちの中にも、この事件に挑むにあたっての闘志の火種のようなものが芽生えていた。
モノクマと相対するその心持は、これまでの裁判以上に前のめりだ。
ルカ「モノクマ……またしてもてめェの思い通りってか」
モノクマ「いやぁ、やっぱりオマエラを信じて正解だったよ! せっかくばらまいた病気が何の意味もナシに終わっちゃうんじゃやっぱり退屈だからね。事件を起こしてくれた犯人さんには花丸をあげましょう!」
冬優子「御託はいい、さっさとモノクマファイルをちょうだい。ふゆは今最高にイラついてんのよ」
モノクマ「おー、怖い怖い……前回までの黛さんとは大違いですね……これまでが猫をかぶってたなら今はサーベルタイガーみたいですよ」
モノクマ「でもね、モノクマファイルを共有するにしても、一気にやっちゃいたいんですよね。なので、【全員】がこの場に揃ってからでないと」
智代子「全員って……絶望病にかかってた人も?」
果穂「え!? でも、夏葉さんたちはすっごく高いねつが出てます……今回のさいばんは……あたしたちだけでどうにかなりませんか?」
美琴「確かに……病気の時にあの裁判はかなり堪えそうだよね」
モノクマ「ん? あー……そうか、そのことね。それならもう心配いらないよ!」
ルカ「あ? どういう意味だよ」
モノクマ「まあすぐに分かるって……ホラ!」
561 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:55:05.30 ID:7xcqTvao0
そう言ってモノクマたちは私たちの後の扉を指さした。
廊下に面する病室の扉、そこは私たちの視線が集まると同時にガラガラと勢いよく開かれて、彼女たちが現れた。
夏葉「みんな!? 今のアナウンスって一体!?」
恋鐘「また事件ば起きとーと!?」
透「え、嘘じゃん」
雛菜「透先輩……また事件、起きちゃったの〜……?」
そこに立っていたのは病魔に侵され、本来なら今もベッドの上で眠っているはずの連中。
彼女たちはいつもと変わらぬ様子で現れ、そして私たち同様に凄惨な現実を前に驚愕を示した。
果穂「みなさんもう病気はなおったんですか!?」
智代子「つ、つい数時間前まで39度の熱が出てたはずだよ!? そんな急に治る!?」
モノクマ「まあもう事件は起きたし、病気のお役目もおしまいだよねってことで。さっさと全員治させていただきましたぞ!」
手の打ちようもなく、ただ体力が失われてしないように右往左往して世話をしていたというのに、そんな思い付きで治してしまったというのか?
私たちの苦労を嘲笑うような発言に戸惑いを隠せない。
562 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:56:29.62 ID:7xcqTvao0
果穂「とっこう薬……ですか?」
透「マジだ。雛菜ももう熱出てない」
雛菜「透先輩? ていうか、雛菜たちまるで状況が分からないんですけど〜?」
夏葉「……私もよ、ここ数日の記憶が何だか朦朧としているの。モノクマ、少しみんなと状況を整理してもいいかしら」
モノクマ「う〜ん、ボクとしては早いとこ裁判を見たい気持ちもあるんだけど……情報の前段階で差があるとフェアじゃないもんね。なるはやで頼むよ」
夏葉「ありがとう、みんな、ここ数日のことに関して教えてもらえるかしら」
小金持ちたちは本当に状況がわかっていないらしい。
どうやら自分たちが病気にかかっていたことすらも定かではないらしく、病院とモーテルに分かれて看病をしていたことから説明は始まった。
数日に及ぶ看病、そしてそんな生活の中に突然起きた事件。
三峰結華と和泉愛依の死、それを短い時間でできる限り詳細に伝えた。
小金持ちと能天気女は説明をある程度噛み砕けたらしいが、長崎女は流石に別。
三峰結華の死という言葉でつまずき、そこから先が入ってこない。
563 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:57:39.36 ID:7xcqTvao0
恋鐘「ゆ、結華が死んだ……?! そ、そげなわけなか! だ、だってこの前摩美々が……摩美々が殺されて……結華まで死んでしもうたら、うち、うち……!」
冬優子「しっかりしなさいよ! あんたがそんなんなら、誰が結華の仇を討つの?!」
恋鐘「ふ、冬優子……?」
冬優子「泣くんなら全部終わった後、分かった?」
だが、そんな長崎女も冬優子は強引に引き戻す。
冬優子「結華があんたたちをどれだけ思って動いてたか、分からないわけじゃないでしょ? なら、今あんたがすべきなのは、そのための恩返しじゃないの」
恋鐘「……そうばい、もう今、アンティーカはうちしか残っとらん……それなら、うちがしっかりせんといかんとよ!」
冬優子「その意気よ、あんたみたいな肝っ玉なら犯人だって見つけられるわ」
仲間の心情を読み取り、抜群の鼓舞をかけるのは猫をかぶっていた時期に培ったスキルでもあるんだろう。
誰よりも人の心の機微に敏感な冬優子はそのリーダーシップをいかんなくふるった。
長崎女の戸惑いも一転、すぐにその決意は固まったようだ。
その表情の移り変わりを確認すると、冬優子は私たちに向き直り、今度はその頭を下げてみせた。
564 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 22:59:20.47 ID:7xcqTvao0
冬優子「……お願い、この事件の解決のために……あんたたちの力を貸してほしい。結華に愛依……ふゆにとって、これ以上なくかけがえのない存在だった二人を奪い去った犯人を……ふゆはなんとしても見つけ出したいの」
ルカ「冬優子、お前……」
冬優子「……今回ばかりは、負けてらんないのよ」
冬優子からは、なりふり構っていられないという切迫した雰囲気を感じた。
数日前、二人で三峰結華の部屋に踏み込んだ時。あの時と近しいものを私は感じていた。
あの時も、あいつは三峰結華を救い出すには同族である自分がやらなくてはならないという義務感を帯びていた。
でもそれは、他人に与えられるようなものではなく、ストイックな彼女だからこそ自分で自分に課す義務の意味合いが強い。
この事件もその通り。三峰結華と和泉愛依。
すぐそばで支え、そして足りないものを補い合ってきた存在を同時に喪った彼女だからこそ、この事件を解決する殿に着くのは自分でなければならない。
その義務を課していたのだろう。
彼女は、私たちの先導に立ち、その旗を振りかざしたのだった。
565 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:01:59.45 ID:7xcqTvao0
その場に居合わせた者はすぐに感じ取る。
彼女の抱く闘志、そして執念。
それに呼応するように、気が付けば私たちはその拳を振り上げていた。
共に戦地に赴く同胞として、共にその真実を追い求める迷い子として。
全員がその旗手のもとに名乗りを上げた。
ルカ「ハッ、お願いされなくてもそのつもりだ。間違えたら私も死んじまうんだからな」
美琴「うん、頑張ろう」
恋鐘「冬優子……うちも、絶対に結華の仇を取りたか! ぜったいぜ〜〜〜〜〜ったい! 今回の裁判は勝たんといかん!」
果穂「ふゆさん……ぜったい、ぜったいになぞを解き明かしましょう! 結華さんと、愛依さんの無ねんを晴らさないと!」
夏葉「冬優子、あなたの想い……受け取ったわ。ぜひ協力させてちょうだい。あなたのため、そして私たち自身のために真実を見つけ出すのよ」
智代子「もちろんだよ! 絶対犯人を見つけ出そうね!」
あさひ「冬優子ちゃん、わたしもやるっす。絶対、絶対……愛依ちゃんを殺した犯人を見つけるっす」
透「うちらも手伝う。脳細胞フル稼働さすわ」
雛菜「透先輩いつになくやる気だし、雛菜もがんばろっかな〜」
566 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:03:18.32 ID:7xcqTvao0
その奮起の声を聴いて、冬優子はその顔を上げる。
冬優子「……ありがとう、あんたたち」
私たちの心は『なんとしても犯人を見つけ出す』、それで一つになっていた。
でも、間違いなくこの中に一人、二人を殺しておきながら大ホラを吹いている人間がいる。
私たちの奮起を茶番だと嘲笑っているのかもしれない。
それならそれでせいぜい今のうちに笑っておけばいい。
今にその顔は苦悶に歪むことになる。
私たちはそれぞれの戦う理由のために、今回も真実を解き明かす。
_____絶対に。
【捜査開始】
567 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:05:33.58 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
モノクマ「さて、そちらもお話は済んだようですね、それではさっそく参りましょう!」
ピピッ
モノクマが指を鳴らすとすぐに端末が反応した。
私たちもそれに応じて懐から端末を取り出し、画面へと目を落とした。
『被害者は和泉愛依。死因は頸動脈を刃物で裂かれたことにより失血およびショック死。死因となった裂傷は背後から刃物を首筋に沿わして切りつけたような傷跡となっている。衣服にも乱れた様子はなく、目立った抵抗の痕も見られないため、即死だったものと思われる』
ルカ「背後に立たれて、そのまま首を斬られたって感じか……?」
美琴「犯人は不意打ちで殺害したってことなのかな。刃物を持っている犯人を目撃すれば、普通は抵抗するよね」
ルカ「そうなるだろうな……抵抗も何もしないなんてのは流石に考えづらい」
ルカ「それかもしくは、犯人に完全に油断しきっていたパターンか。犯人がまさか殺してくるとは思わず、背を向けたところで突然襲われたとかな」
美琴「そうか……そういう方法もあるんだ」
568 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:07:30.88 ID:7xcqTvao0
モノクマ「今回の事件は被害者がお二人なので、両方の情報を記載しています! しっかりと両方に目を通すように!」
『被害者は三峰結華。死因は正面から頭部に強い衝撃を受けたことによる脳挫傷。頭部からは出血も激しく、即死だったものと思われる。死因となった傷のほかに、全身に及ぶ打撲痕があり、一部は骨折もしている』
ルカ「……胸糞悪いな」
美琴「即死だったのに、それに更に何度も殴りつけた痕があるなんて……」
ルカ「よっぽど殺害できたかどうか不安だったんだろうな、夜中に起きた事件で、よく見えてなかっただろうし」
美琴「それにしても酷い……もしかして、犯人は結華ちゃんに恨みでもあったんじゃないかな」
(あいつに恨みだと……?)
(あいつが恨まれるようなことなんてまるで心当たりはないな……)
コトダマゲット!【モノクマファイル3】
〔被害者は和泉愛依。死因は頸動脈を刃物で裂かれたことにより失血およびショック死。死因となった裂傷は背後から刃物を首筋に沿わして切りつけたような傷跡となっている。衣服にも乱れた様子はなく、目立った抵抗の痕も見られないため、即死だったものと思われる。
被害者は三峰結華。死因は正面から頭部に強い衝撃を受けたことによる脳挫傷。頭部からは出血も激しく、即死だったものと思われる。死因となった傷のほかに、全身に及ぶ打撲痕があり、一部は骨折もしている〕
569 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:09:41.95 ID:7xcqTvao0
-------------------------------------------------
モノクマ「ほいじゃ、今回も捜査の時間はボクは高みの見物と行きますかね。精々セコセコ頑張って真実求めて駆けずり回れば〜?」
バビューン!!
モノクマもいなくなり、私たちは事件に集中。
今回の事件は二人の犠牲者が出ている、効率よく調べないと前回の事件のゲームの時のように時間オーバーにもなりかねない。
調べる現場は【和泉愛依の病室】と【病院前の駐車場】の二つだよな。
どちらもその【死体周辺】には情報が多く残されている、見落としがないように調べないとな。
そして、病室の方は【割られている窓】も気になる。犯人に繋がる手掛かりは何か残されていないだろうか?
今回は私たちは病院とモーテルに分断されている間に起きた事件だ、双方の情報・状況は整理しておく必要がある。【聞き込み】もいつもより多めにした方がいいかもな。
ルカ「美琴、今回もよろしく頼むぞ」
美琴「うん、こちらこそ」
さて、どこから動くとするか……
570 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:11:38.69 ID:7xcqTvao0
安価ミス
今回は病室と駐車場、二つの捜査場所をどちらから先に調べるか選ぶところから始まります
1.病室【愛依の死体発見現場】
2.駐車場【結華の死体発見現場】
↓1
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/08(火) 23:13:15.29 ID:To/PBRez0
病室
572 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:20:06.60 ID:7xcqTvao0
1 選択
-------------------------------------------------
【愛依の病室】
死体発見現場となった病室では、冬優子がせわしなく動いて調査を進めている。
つい先ほどの私たちの協力を仰ぐ大演説の後、彼女自身その言葉に鼓舞されているところもあるだろうが、私にはどこか焦っているようにも感じられた。
自分自身がこの事件の真実にはたどり着かなければならない。
そのモチベーションはプラスでありマイナスだ。
過ぎた義務感は時に視界を曇らせる。
……その曇りを拭い去ってやるのが、私たちの役目でもある。
可能な限り、こいつには協力してやらないとな。
さて、調べるべきところは【和泉愛依の死体周辺】、そして【割れた窓ガラス】だ。
そして、今現在この病室にいる【小学生】、【冬優子】……そして【モノミへの聞き込み】も一応やっておくか……?
-------------------------------------------------
1.死体周辺を調べる
2.割れた窓ガラスを調べる
3.果穂に聞き込みする
4.冬優子に聞き込みする
5.モノミに聞き込みする
↓1
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/08(火) 23:24:06.94 ID:To/PBRez0
1
574 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:26:28.76 ID:7xcqTvao0
1 選択
【死体周辺】
和泉愛依の死体は窓のある壁に力なくもたれかかるようにしている。
流れた血は壁を汚しながら伝い、その床にシミを作っている。
どうやら死亡現場はここで動かされた形跡などもないようだ。
冬優子「愛依のやつ、犯人に押し入られて殺されたのかしらね」
ルカ「……」
冬優子「……何? 変に気使われるとこっちもやりづらいんだけど。大体あんたそういうの苦手でしょ、ルカ」
ルカ「お、おう……」
冬優子「こいつも絶望病なんかじゃなければ犯人の入室をみすみす見逃したりなんか……いや、そうでもないか……」
冬優子「……ホント、どこまでもお人好しなやつだったのよ。このギャルは」
ルカ「……」
冬優子「自分の事なんかそっちのけで他人の事ばっか優先するようなやつで、それでいて本人も気づいてないようなところまでよく見てやがんの。生意気ったらありゃしないわ」
(……こいつ、気丈にふるまってるようでも口を開けば思い出話)
(やっぱり心の中では喪失感から脱しきれてないんだろうな)
冬優子は私たちが捜査することは別段咎める気はないらしい。
真実を追い求めるための協力なら惜しまないという体勢。
その好意には甘えさせてもらおう。
575 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:28:16.17 ID:7xcqTvao0
死因となった首元の切り傷……特に不自然な点はないな。
衣服にも目立った乱れはないし、やはり不意を突かれて切られてしまったようだ。
美琴「だいぶ油断をしてたのかな……後ろから首筋を裂かれてるようだけど」
ルカ「不意打ちか……相当に油断してた相手だったか、ってとこだろうな。それこそ気心の知れた相手とか……」
美琴「でも、彼女大体の相手には心を開いてたよね」
ルカ「正直、これじゃ絞れそうにはないな。人の好さに絶望病で判断能力もかなり低下してたと来たら、いよいよ誰でもありだ」
和泉愛依の死体には残念ながら目立った手掛かりはなさそうだ。
その命を奪った犯人の手さばきも相当なものらしい。
ルカ「ちょっと死体動かしてみるか……冬優子、大丈夫か?」
冬優子「え、ええ……いいわよ」
ルカ「……よっと」
死体そのものではなくその付近に何か手掛かりはないか、私と美琴は二人係で丁重に死体を動かして、検証してみた。
死体そのものがあった場所にダイイングメッセージなんてものはないが……死体の影になっていた部分。そこに妙な【水たまり】を見つけた。
576 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:31:51.57 ID:7xcqTvao0
ルカ「なんだ? この水……やけに冷てぇ気がするけど」
美琴「窓が開けっぱなしだから冷えちゃったのかな」
冬優子「……というか、この水は一体なんなのよ。どこから来たわけ?」
ルカ「んー……?」
部屋を見渡してその水の出元を探る。
ぐるりと見渡して、自分の記憶とも照らし合わせると、一つだけ心当たりがあった。
ルカ「……これ、もしかしてあの時の花瓶か?」
美琴「……花瓶?」
≪ルカ「だからお前はどこからこんなの持ってきてんだよ!」
透「おー、なんか咲いてんじゃん。めっちゃ」
愛依「こちらのお花はゲッカビジンと言いますの、ほんの一夜のみにその花を咲かせる姿から、その花言葉は『儚い美しさ』……今こうしてお二方と見れたこと、恐悦至極に存じますわ」
ルカ「いや知らねーけど……花をいつ調達していつ育てたんだよ」≫
577 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:33:09.90 ID:7xcqTvao0
ルカ「ああ、そうか……あの時は浅倉透との夜番だったから美琴も知らないか。こいつ、病室に何かと持ち込む癖があっただろ?」
冬優子「ちょっと待ちなさいよ、何よその癖」
美琴「癖というか、彼女の症状の一つなんだと思う。目を離したすきに病室にお嬢様っぽい何かが持ち込まれてしまっていることがよくあったの」
ルカ「ティーセットやら、天蓋付きベッドやら……その中の一つに、この花瓶があったんだ」
よく見ると、水たまりの周辺には陶器の割れた破片も散乱している。
欠片はあちらこちらに散らばっているので、復元こそ適わないがその表面の模様には見覚えがあった。
あの時、ゲッカビジンを飾っていたアンティーク調の花瓶のなれの果てがどうやらこれということらしい。
ルカ「犯人と争った時にでも落ちたのか?」
美琴「でも、愛依ちゃんの衣服には乱れはなく、争った形跡もないんだよね? だとすれば、それは落ちた理由としては不自然なんじゃないかな」
ルカ「それはそうか……なら、なんで割れてるんだ?」
冬優子「……妙な話ね、いつ割れたのかわからない花瓶なんて」
コトダマゲット!【割れた花瓶】
〔愛依の病室で割れていた花瓶。前日に愛依が病室に飾ったもので、ゲッカビジンを元々飾っていた。愛依は犯人と争った形跡もないが、一体何の拍子に割れたのだろうか……〕
578 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:34:35.95 ID:7xcqTvao0
冬優子「とりあえず、このままにしておくと誰かが踏んでしまってもいけないし片付けておくわよ」
ルカ「おう、頼んだ」
花瓶の破片という手掛かりは一応抑えておいたし、冬優子の片付けの進言をそのまま承諾。
すぐに冬優子はその場にしゃがみこんで破片を集め出した。
(やっぱり、何か行動をしていないと気がまぎれないんだろうか)
そんな下種な勘繰りをするのもつかの間、すぐに冬優子は何か気づいた様子でこちらに向き直る。
その手には何か透明な薄いものを拾い上げている。
冬優子「これ、何かしら……花瓶の破片の中に混ざってたわよ」
ルカ「あ? ……ただのゴミじゃねえのか?」
手に取ってみると、それはビニール袋の切れ端のようなものだとわかった。
花瓶の水に塗れて濡れてしまっているが、それ以上でもそれ以下でもない。
部屋を掃除していたら、どこからともなく顔を出しそうな、そんなありふれた切れ端だ。
579 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:35:37.01 ID:7xcqTvao0
冬優子「これだけじゃ特に見覚えも……ないわよね」
ルカ「まあ、な……」
冬優子「捨てちゃってもいい? 役に立ちそうもないし……」
美琴「待って。一応私が回収しておく」
ルカ「美琴……」
美琴「現場にあるものは勝手な判断で除外しない方がいいと思うから。全部集められるものは集めておこう」
そうだった、こいつは妙に慎重なところがあるんだった。
万全な準備ができているステージの前でも念には念を重ねるところがあって、それに私も少し辟易しているところがあった。
久しぶりに見た相方の慎重癖に小さなため息をつきつつ、私もその情報だけは記録しておくことにした。
コトダマゲット!【ビニール片】
〔愛依の病室で割れていた花瓶の近くに落ちていたビニール片。花瓶の中の水をかぶったのか、全体が濡れている〕
-------------------------------------------------
1.割れた窓ガラスを調べる
2.果穂に聞き込みする
3.冬優子に聞き込みする
4.モノミに聞き込みする
↓1
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/08(火) 23:38:30.41 ID:To/PBRez0
2
581 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:41:28.27 ID:7xcqTvao0
2 選択
-------------------------------------------------
【果穂に聞き込み】
今回も事件について情報は他の連中からもかき集めねーとならないな。
特に病院とモーテルの二手に分かれていたさなかに起きていた事件ということもあり、お互いの認識、知っている事実には違いも多々あるはずだ。
私の知らない情報、知っている情報。それぞれちゃんと整理しておく必要がある。
ルカ「大丈夫か、辛かったら無理すんじゃねーぞ」
果穂「ルカさん……いえ、だいじょうぶです! あたしもみなさんといっしょにたたかうので、こんなことで弱音を上げてちゃいけませんから!」
美琴「えらいね、果穂ちゃん」
果穂「え、えへへ……そうですか」
こいつとは私は事件当時、一緒にテレビ通話をしていた。
冬優子と私と一緒にアリバイが確実に存在する人間の一人ということになる。
こいつの視点から見た事件について、確認しておくか。
582 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:42:46.81 ID:7xcqTvao0
ルカ「じゃあ、協力してもらうぞ。お前、今回の事件の発生中……私と一緒にテレビ通話をしてたよな」
果穂「はい、ふゆさんといっしょにお話してました!」
ルカ「私がロビーで仮眠をとっているときにこいつらから深夜三時ごろに着信があってな、慌てて繋いだんだよ」
美琴「そんなに遅い時間に……? 何があったの?」
ルカ「確か……中学生と三峰結華が姿を消したんだったか?」
果穂「はい……えっと、ルカさんにはいちどお話したんですけど、そのまえにあたしたちのモーテルで変なことが起きたんです」
美琴「変なこと……」
果穂「寝るときはみんなそれぞれ自分の部屋で寝てたんですけど、深夜になって、だれかがあたしの部屋のドアノブをガチャガチャってひねってきたんです!」
果穂「だれかが来る用事もなかったので、もしかしてだれかがころしにきたのかなって……そう思うとこわくて動けなくて……」
果穂「しばらくじっとしてたら、インターホンが鳴って……それで出てみたらふゆさんだったんです」
ルカ「それで冬優子と合流して、ライブハウスまで来たわけか」
583 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:43:50.09 ID:7xcqTvao0
果穂「行く前にあさひさんと結華さんの部屋のインターホンも鳴らしたんですけど、まるで反応がなくて、おかしいので……病院にいるみなさんはなにか知らないかなって思って、急いで連らくしたんです」
美琴「ちょうどそのタイミングで事件が起きちゃったんだね」
ルカ「十中八九そのドアノブを捻ったやつが二人を殺した犯人だな……手掛かりとかは他にねーのか?」
果穂「す、すみません……あたし、こわくて動けなかったので……」
美琴「ううん、大丈夫。果穂ちゃんの選択は間違ってない。下手に部屋を出ていたらそれこそ危険なのは果穂ちゃんの方だから」
果穂「美琴さん……ありがとうございます!」
事件直前にモーテルを訪れていた不審者か……
三峰結華はきっとそいつに襲われてしまったんだろう……
だが、それと同時に行方をくらましていた中学生。
あいつが【狸】だと確定している以上……これが偶然の符合だとは思えないな。
コトダマゲット!【果穂の証言】
〔事件発生前、モーテルの各部屋を何者かが訪問し、ドアノブを捻っていた。恐怖を感じ動けずにいたところ、冬優子が助けに来てくれ、所在のわからないあさひと結華について尋ねるために病院にテレビ通話を繋いだ〕
-------------------------------------------------
1.割れた窓ガラスを調べる
2.冬優子に聞き込みする
3.モノミに聞き込みする
↓1
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/08(火) 23:53:48.59 ID:To/PBRez0
2
585 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/08(火) 23:55:26.84 ID:7xcqTvao0
時間が厳しくなってきたので本日はここまで。
次回冬優子の聞き込みより再開します。
事件も発生して、3章も後半戦ですね。
毎度のことながら事件について犯人を特定するようなネタバレコメントはできる限りお控えいただけますと幸いです。
次回更新は3/9(水)22時ごろから、捜査パートをやり終えたいですね。
それではお疲れさまでした、またよろしくお願いします。
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/09(水) 00:14:59.39 ID:3xxdXCM60
>>1
乙!
あさひと結華が居なくなったって聞いた時に
何となく誰が死ぬか予感はしてたけど
前作生存組がどんどん死んでいくなぁ・・・
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/09(水) 00:51:16.20 ID:zhPbB9Uu0
3
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/09(水) 00:52:52.26 ID:zhPbB9Uu0
リロードしてなかったわ
愛衣が死んでしまって悲しい
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/09(水) 02:25:12.71 ID:3xxdXCM60
>>520
むしろ逆だと思う
それだと1章ラストでルカが感じた
「月の形が変わらない」って違和感の説明がつかないのと
もしも仮に前作が仮想世界で透がそこから復活出来たとしたら
(そもそも透は前作1章の被害者)
生き残り組を含めた味方達に色々話を聞かされていないはずがないと思うし
>>507
の2章の動機であるゲーム内のコロシアイを知らないと辻褄が合わない気がするんだよね。
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/09(水) 09:35:34.02 ID:LTu2ZLeW0
自分語り乙
591 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/09(水) 21:59:40.23 ID:igcFWV240
2 選択
-------------------------------------------------
【冬優子に聞き込み】
ルカ「……なあ、冬優子。今ちょっと大丈夫か?」
冬優子「え? ……ええ、何? 何かふゆに訊きたいことでも?」
ルカ「私たちが病院にいた間、モーテル組が何をしてたのか聞きたいんだけどよ」
私たちはここ数日この病院に籠りっぱなしで看病していたため、その外で何が起きていたかについてはまるで情報を持っていない。
朝と晩の定期通信もあったが、限られた時間で話すことも絞られていてはこちらの知らないこともあるだろう。
モーテル組の動向をたずねるうえで、冬優子以上の適任はいない。
冬優子「そうね……といっても、特になにも無いわよ? ふゆと結華であさひと果穂ちゃんの面倒を見てただけで、変わったことも何も」
ルカ「そうなのか?」
冬優子「あさひがやりたいって言うことに付き合ってやるのが主だったかしら。花火とか、虫取りとか……やりたくもないけど付き合わされたわね」
美琴「事件の前日には何をしたの?」
冬優子「昨日は……そうね、四人で一緒に海に行ったわ。あさひが泳ぎたいっす〜って言いだすから、二人を泳がせてふゆと結華はビーチでパラソル広げて寛いでた」
冬優子「……あの時、もっと結華と話しとけばよかったのかしらね」
ルカ「……」
冬優子「冗談、気にしないで。ふゆから話せるのはこんなとこだから、もっと別のとこ調べなさい」
なるほど、病院の外の連中はほとんど行動らしい行動はしてなかったらしい。
私たちが戻ってくるまでの間の面倒を見ることで終始していたようだ。
あの年下二人が不安に感じないように、必死に日常というものを守り続け、その結果三峰結華は命を落とした。
……なんともやるせないものを感じるな。
コトダマゲット!【冬優子の証言】
〔隔離生活が始まってから、モーテル組はほとんどあさひと果穂の面倒を見るので手いっぱいだった。事件の前日にも、二人を連れて海で遊んでいたらしい〕
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1.割れた窓ガラスを調べる
2.モノミに聞き込みする
↓1
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/09(水) 22:02:27.44 ID:3xxdXCM60
1
593 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/09(水) 22:04:46.19 ID:igcFWV240
1 選択
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【割れた窓ガラス】
この部屋に入って死体と同じくらいに目につくのが、この窓だ。
乱暴にこじ開けられたであろう窓は、ギザギザの鋭利な断面が剥き出しになっており、指を少しでも触れようものなら鮮血が流れてしまうだろう。
美琴「大胆な犯人だよね、窓ガラスを割っちゃうなんて」
ルカ「おう……音もかなり大きかったし、だいぶ乱暴したみたいだな」
美琴「これまでの二つの事件とは少し毛色が違うね、やっぱり」
七草にちかと田中摩美々。私たちはこれまで二つの事件を経験し、彼女たちの犯行を全て解き明かしてきた。
だが、ここまでの『悪意』を感じる凶行は初めてだ。
明確に犯人がその手を汚し、己がエゴイズムのために重ねた犯行。それを象徴するのがこの割れた窓ガラスだ。
しかし事件を解き明かす上ではその『悪意』も重要な手掛かりになるはずだ。この割られた窓に隠された真実を私たちの手で突き止めねば。
美琴「ガラス窓が割られた時、ルカは冬優子ちゃんと果穂ちゃんの二人とテレビ通話を繋いでたんだっけ」
ルカ「おう、あいつらから緊急の連絡があってな。ちょうどそのタイミングで背後からこの窓が割れるでけー音がしたんだよ」
美琴「その音自体は二階にいた私たちも気づいたな、汗をかいてたからそれを拭ってから階段を下りたんだけど」
ルカ「汗をかいてた?」
594 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/09(水) 22:05:46.75 ID:igcFWV240
美琴「事件当時……深夜三時ごろだよね。私と智代子ちゃんは非番だったから、仮眠室で寝ることになってて」
ルカ「……あ? なんか変な言い方すんな」
美琴「うん、私は……寝てなかったから」
ルカ「はぁ? お前、何してたんだよ! ……まさか」
美琴「なんだか目が覚めちゃったから、会議室を使わせてもらって自主練をしてたかな」
ルカ「はぁ……練習熱心もそこまで行くと病的だな」
美琴「流石にボイスレッスンはしてないよ。他の人を起こしてもいけないから」
(それでこいつは到着が遅かったのか……)
ルカ「ただまあ、練習中だった美琴ですら気づくぐらいには音は大きかったってわけだな」
美琴「うん、病院内にいた人なら確実に聞いたはずだよ」
ルカ「……」
美琴「ルカ?」
595 :
◆vqFdMa6h2.
[saga]:2022/03/09(水) 22:06:55.41 ID:igcFWV240
ルカ「ああ、いや……犯人のやつ、連続殺人なんて結構なことをする上に……大きな音まで鳴らして豪胆な野郎だなと思ってよ」
美琴「……でも、脱出にはこの窓しかなかったんでしょ? 大きな音を鳴らしてでも逃走したかったんじゃないかな」
ルカ「……なんだかモヤモヤするんだよな」
ロビーでは私が寝ていたし、窓の他に出入りできるような場所はこの病院内には存在していない。
そうなれば音を鳴らすリスクを踏んででも窓を叩き割るしかなかった。
その理論自体はわかるんだが、この釈然としない感じはなんなんだ?
今回の事件は連続殺人、私の目の前で二人の命が奪われた。
これだけの大きな殺人なのだから、どうやっても目撃者が生まれてしまう危険性があると思うが……
今回の犯人は目撃されることをそこまでのリスクとして踏んでいないように感じる。
あんな音を鳴らすよりは、ロビーで寝静まっている私のそばを通過する方がまだマシな気もする。
……考えすぎか?
コトダマゲット!【割れたガラス窓】
〔和泉愛依の病室の窓は犯人によって割られており、脱出経路に使われたものと思われる。事件当時、ルカをはじめとした病院にいるすべての人間がその割れる音を聞いていた〕
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