【コンマ】ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くだけのスレ

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481 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/03(日) 15:16:46.11 ID:zQMZB3APO


「よう」

指定時間に待ち合わせのGINZA SIXに着くと、ホットパンツに暗色系のジャケットを着たシリウスシンボリがいた。遠巻きに若い女性が彼女を見ている。
学園でもそうだが、彼女はやけに同性からモテる。彼女にそういう気があるのかは知らないが、その事実を上手く悪用……いや利用しているらしい噂は聞いていた。

「随分目立ってるな」

「あんたもな。その図体にピチピチの背広は、何とかならないか」

「生憎私に君のようなファッションセンスはなくてね」

「ハッ!違いないね。じゃあ、まず腹ごしらえと行こうか。この近くで軽く食う所はあるだろう?」

「まあ、な。何がご所望だ?」

「分かってて聞いてないか?もちろん、ラーメンだよ。芹沢達也同様、あんたもラーメンには詳しいと聞いててね。噂が本当か、まず確認したい」

私を試しているのか?何のために?
まあ、依頼料代わりに奢ることは何の問題もないが。

「……まあ、いいだろう。すぐ近くだ」

GINZA SIXを出てすぐ、目当ての店は見つかった。

「『むぎとオリーブ』……変わった店名だな」

「オリーブは使ってないが、独特の一杯を出す店だ」

店内にはジャズが流れている。清潔で洒落たカウンターには、女性客が目立っていた。

「看板メニューは『鶏・煮干・蛤のトリプルSOBA』か。ミシュランにも載ったみたいだな……権威とかは全く気に食わねえが」

「権威で選んだわけじゃない。銀座で選ぶなら、ここか『八五』だ。八五は恐ろしく並ぶから、こっちにしたまでだ」

「私も並ぶのは嫌でね。お気遣いどうも、だ。
しかしトリプルスープか。何でも混ぜればいいってものでもないだろうに」

「その通りだ。スープを混ぜるほど個性はぼやけ、ハッキリしない味のラーメンになる。
だから大体はダブルスープまでだ。クアドラプルスープの店もあることはあるし、そこもかなりハイレベルだが、職人が凄腕じゃないと話にならない」

席に着くと、貝系の香りがほんのり漂ってきた。そう、スープを足し合わせるには微妙なバランス感覚が要る。そして、軸となるスープも。

待つこと数分。丼と小皿がカウンターに置かれた。

「……何だこれは」

「見た目から珍しいだろう?これがここのラーメンだ」

丼には蛤が数個に春菊。そしてねじり蒲鉾に焼いた山芋が配されている。
支店も日本橋やさいたまにあるが、これほど個性的なビジュアルは、本店だけだ。
482 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/03(日) 16:08:25.74 ID:zQMZB3APO

「見た目を妙にすりゃいいってもんじゃねえだろ」

「だが、型に囚われない料理こそラーメンだ。無限の自由が許されているからこそ、私はこの料理が好きなのだよ」

シリウスシンボリは軽く目を見開き、ニヤリと笑った。

「……なるほど、そう来たか」

彼女が私を試しているのは何となく分かった。要は、信頼に足る人物かの最終チェックなのだ。
高級フレンチやイタリアンなど、彼女が恐らく最も嫌う類いのものだろう。
権威に寄りかからず、自由を誰よりも好む。そんな彼女の性格を鑑みれば、ここは最適のチョイスと言えた。

「とにかく食おう。麺が伸びる」

レンゲでスープをすくい、一口飲む。最初に感じたのは、蛤から来る貝の濃密な風味。それを煮干しの香りが追いかけ、鶏のコクが後に残る。
複雑だが、ボヤケてはいない。素晴らしいバランスだ。

そして麺を啜る。細麺ストレートで、パツパツとした噛みごたえ。スープとしっかり絡んでいる。


うむ、旨い。


パシーンッ!!


「うおっ!?ボタンが取れたぜ!?」

「気にするな、いつものことだ」

「いつもなのかよ……しかし、なかなか面白いな。幾つもの『香り』がここには封じ込められてる。いや、食感もか。
味の薄い山芋と蒲鉾が、いい箸休めになってやがる」

さすがに味には敏感であるらしい。私は小さく頷いた。
良いラーメンは、往々にして幾つもの要素が組み込まれているものだ。最初から最後まで同じ味で通すなら、余程の強い味が要る。
それを実現しているのは「伊吹」をはじめとした極一握りだ。ならば、複数の香りと味、そして食感を詰め込んだ方が近い。
とはいえ、それには高い技術が要る。この道もやはり険しいのだ。

低温調理の鶏チャーシューを口にする。これもしっかり味が乗っていて美味い。
そして蛤。やや小振りだが身がしっかりしていて、貝の風味をちゃんと味わえる。決して添え物ではなく、複数個乗っているのも良い。


気が付くと、一気呵成に丼は空になっていた。

483 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/03(日) 16:08:53.34 ID:zQMZB3APO
少し休憩。ストーリーパートは後ほど。
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/03(日) 16:20:43.35 ID:r/Uh06U4o
おつー
485 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/04(月) 00:01:07.52 ID:cFAEt57wO


店の外に出ると、シリウスシンボリが私の背中を軽く叩いた。

「美味かったぜ、天王寺トレーナー。なるほど、舌は確かみたいだ」

「テストには合格したようだな」

「アンタの評判は聞いてるが、信頼に足るかどうかは目で見ないとな。これから話す内容は他言無用だぜ。その前に、場所を変えるか」

「むぎとオリーブ」近くの雑居ビルに、シリウスシンボリは入った。6階で降りると、分厚いオークの扉に「Seraphim」と刻まれているのが見えた。

「……オーセンティックバーか。未成年が入れる所じゃないが」

「酒は飲まねえよ。そもそも下戸でね。飲みたきゃどうぞご自由に」

バーに入ると、一枚板のカウンターの向こうで初老の紳士がグラスを磨いていた。
薄暗い明かりが重厚な空気をさらに際立たせている。

「お嬢様、お久し振りです」

「縦山、話は聞いているな」

「無論でございます。その前に、何か飲み物は。お嬢様は『いつもの』でよろしいでしょうか」

「ああ。トレーナーは」

「ギムレットを頼む」

マスターは無言で会釈すると、ギムレットの準備に入った。氷を削るシャクシャクとした音が響く。

「お嬢様、か。実家は『セキュリティーサービス』と言ってたが」

「ごく表向きの表現では、な。実際はシンボリ家の『影』だよ」

「影?」

シリウスシンボリが頷く。マスターがシェイカーを振り始めた。

「知っての通り、ルナ……シンボリルドルフはシンボリ家の次代頭首だ。そしてシンボリ家本家は、ウマ娘界では最大の家の一つ。
メジロ家は実業の世界で強いが、政界ではシンボリ家の方が強大だ。URAにも数多く人を送り込んでいる」

「そこまでは知っている。君の実家もそうなんじゃないか」

「うちは分家でね。一応親父もURAの幹部だが、その役割は普通とは違う。
URAのトップにいるシンボリ家に仇なす者を、陽に陰に葬る。まさに『裏稼業』ってわけだ」

自嘲気味にシリウスシンボリが嘲笑った。

私の目の前に、ギムレットのグラスが置かれる。
そして、マスターはオレンジ色の液体が入った瓶を取り出し、シリウスシンボリのグラスに注いだ。

「これは?」

「『野菜ジュース』、だよ」

どこか含みがある言い方だが、私はそれを追及しないことにした。
486 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/04(月) 00:24:01.43 ID:cFAEt57wO

「今回の件も、それと関係が?」

「まあ、な。実のところ、10年前までは一時的にシンボリ家がURAから遠ざけられててな。
一部のウマ娘の一家が、シンボリ家の支配に反発し、思うままにウマ娘界を牛耳ろうとした結果だ。トレセン学園の運営もその一派に乗っ取られていたらしい」

「……!?そんなことが」

「私もガキだったからな。親父に入学後に言われて知った話さ。……ルナがやけに秩序を重んじるようになったのも、そのためらしい。
それはさておき、だ。それに反旗を翻したのが、一トレーナーに過ぎなかった芹沢達也というわけだ」

私はギムレットのグラスから口を離した。そんな話は、聞いたことがない。

「芹沢さんは、何も」

「アンタには知られたくなかったんだろうな。だが、一人で戦うにはあまりに相手は狡猾で、強大に過ぎた。
で、結局ハメられたってわけだ。そうだな、縦山」

「左様にございます」

マスターはそっと書類を彼女に差し出した。

「これは?」

「当時のトレセン学園を支配していた連中の残党リストさ。今は理事長とシンボリ家の目が光ってるから大人しくしてるがな。
いつまた暴れ出すか分かったもんじゃない。実際、その動きはある」

「……!芹沢さんが戻ってきたのも、そのためか」

「半分当たりだ。芹沢達也の乱は上手く行かなかったが、奴が動いたことでシンボリ家は反転攻勢に出られた。まあ、言ってみれば『強請った』んだがな。
そして今また芹沢達也が戻ってきたってのは、連中に対する睨みを強めることになる……はずなんだが」

「……芹沢さんは、改めて自分をハメた奴を叩こうとしている。過去のスキャンダルも表に出して」

シリウスシンボリが真顔で頷いた。

「そういうことさ。それは逆に、連中に付け入る隙を与えかねない。
何せ現体制は、アレを隠したがってるからなあ。過去の八百長疑惑なんて表に出たら、首脳部総辞職待ったなしだ」

「それは君にとっても都合が悪い、そうだな」

「……ああ。ルナの今のやり方は、正直気に食わねえ。だが、私が自由にやれてるのは、癪だがルナのおかげでもある。
だからそれが崩されるのは勘弁してほしいわけさ」

※80以上でイベント発生
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/04(月) 00:30:25.43 ID:tSLowhb90
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/05(火) 18:28:23.87 ID:XPw6eOU10
乙?
489 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/05(火) 20:18:09.99 ID:2rryd72GO
平日に更新できるかはやや怪しいです……
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/05(火) 21:03:37.92 ID:ZUPG4Ypno
お疲れ様です
491 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/09(土) 22:44:26.83 ID:/Fy4hiKoO
更新は明日です。
村田ゴロフキンで疲れました……
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/09(土) 22:47:53.81 ID:Y35jLN4Go
おーけー
493 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/10(日) 15:29:43.11 ID:S6/NsC3ZO

シリウスシンボリは、オレンジ色の液体を一気に流し込んだ。

「私に何をしてもらいたいんだ」

「芹沢達也のコントロール、さ。彼がトレセン学園に戻ることは悪いことじゃあない。さっきも言ったが、反現体制の連中に対しての睨みにはなるからな。
ただ、暴走は勘弁ってことだ。何せ我の強い男らしいからな」

「……秋川理事長も、同じ考えか」

「……さあね」

シリウスシンボリは肩を竦める。……なるほど。

しかし、コントロールというが芹沢さんほど御しにくい人物はいない。
私が知る彼は、プライドが高く自分に指図されるのをこの上なく嫌う人だ。
あるいは、過去のスキャンダルを「なかったこと」にしようとしている秋川体制に対しても、牙を剥くかもしれない。


私はギムレットを飲み干した。これはまた、随分な厄介ごとにはなりそうだ。





そして、新学期が始まった。


第10話 完


494 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/10(日) 15:30:58.70 ID:S6/NsC3ZO
このまま第11話に進みます。

メインのウマ娘を1人決めます。安価下1〜5より、コンマが最も大きいものです。
題材はストーリーを進めてから決めます。
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 15:35:03.12 ID:HyamxMdDo
シンボリルドルフ
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 15:39:42.81 ID:nSl02/01O
サトノダイヤモンド
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 15:42:11.27 ID:/uySsvpTO
カレンチャン
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 15:51:14.09 ID:1BQVVQgUO
リトルココン
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 16:05:21.42 ID:deO+k9nK0
ゼンノロブロイ
500 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/10(日) 16:14:17.98 ID:S6/NsC3ZO
サトノダイヤモンドとします。
少々お待ち下さい。
501 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/10(日) 21:23:56.92 ID:XKG7bTshO

4月1日は毎年緊張する。新年度の始まりは、新たなウマ娘とトレーナーとの出会いの時でもあるからだ。


「静粛っ!!」


ホールに秋川理事長の声が響く。ざわついていた空気が、一気に引き締まった。

普通の中学校に先駆けて行われる入学式には、約30人のウマ娘が顔を揃えた。この中で最後まで残るのは、どれほどだろう。
できるだけ多くのウマ娘を、挫折させることなく残す。それが我々の使命だ。
その中には、キタサンブラックの姿も見える。入学式が終わった後に、彼女が私の所に挨拶に来るとバクシンオーは言っていた。

ふと、私の席の隣を見る。そこは空席になっていた。


芹沢達也は、まだ私の前に姿を現していない。


「どうしたんですか」

後ろから三田村嬢が小声で訊いた。

「いや……気にするほどのことじゃない」

落ち着きのなさを悟られたのだろうか。そう、今年の入学式の緊張感は、例年の比ではない。芹沢さんが着任の際に何を言うか、それが気掛かりで仕方なかったのだ。

視線を舞台の上に移す。秋川理事長がウマ娘としての心構えを小柄な身体を一杯に使って熱心に説いていた。
そのユーモラスな姿に、新入生から少し笑いも漏れる。張り詰めた空気が、やや和らいだその時だ。

「ではこれより、新任のトレーナーを紹介するっ!!」

秋川理事長が扇子を閉じ、舞台袖を指す。そして、10年前と同じスキンヘッドの芹沢さんが静かに壇上に現れた。

※70以上で追加キャラ登場
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 21:26:42.85 ID:DZLvdEUt0
ダイスロール
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [ saga]:2022/04/10(日) 21:43:41.02 ID:KPjQZcHS0
71
イクノディクタス
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 21:46:09.83 ID:FMjk2a4HO
だから作者以外がスレ上げんなっつってんだろハゲ
505 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/10(日) 21:56:37.49 ID:XKG7bTshO

芹沢さんの後ろから、小柄な褐色の肌をした少女がついてきた。……ウマ娘?

場内がざわついた。誰だ、あれは。


「静粛っ!!」


秋川理事長の声と共に、芹沢さんがマイクを持つ。

「新任の……芹沢達也です。君ら新入生を中心に受け持つことになった。よろしく頼む。
俺にはトレセン学園を、世界で最も優れたウマ娘養成学校とする義務がある。そのためには一切の妥協を許さないから、そのつもりでいてほしい」

一度緩んだ空気が一気に張り詰めた。芹沢さんが、傍らの少女に目をやる。

「初めから脅しをかけるつもりはない。だが、世界は広い。ウマ娘として頂点に立とうとするのは、生半可なことじゃない。
それを体現するのが彼女だ。ブリュスクマン、挨拶を」

「イエス、サー」

芹沢さんに代わってブリュスクマンと呼ばれた少女が壇上に立った。

「私が紹介に預かったブリュスクマンだ。海外に留学していたので、言葉が堅いのはすまない。
芹沢さんとは、遠征していた香港で出会ってからの付き合いだ。世界最強の名を確たるものにするためにここに来た。よろしく」

鋭い眼光は、彼女が只者ではないことを教えていた。秋川理事長は渋い顔をしている。

再び芹沢さんがマイクを取った。

「彼女が、恐らく現時点での世界最強だ。君たちは彼女を越えていかねばならん。……もちろん、越えさせるつもりもないがな」

ニヤリ、と芹沢さんが笑った。

「圧倒的強者の存在に絶望するか奮起するか、それがウマ娘の運命を左右する。ここに来たからには覚悟を決めろ。俺からは、それだけだ」

彼の視線が、私に向いた。……これは、どういう意味だ?

「……感じ悪い人ですね」

三田村嬢が呟いた。芹沢さんは前々からああいう物言いをする人だったが、なぜ最初からヘイトを集めるような真似をする?

壇上から降りた彼が、私の隣の空いた席に座った。

「久し振りだな、天王寺」

「……どういうつもりです」

「言った通りの意味だ。今は式の最中だ、積もる話は後で聞く」
506 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/10(日) 22:13:11.44 ID:XKG7bTshO


「バクちゃんいますか?」

重い空気の中終わった式の1時間後。一通り手続きを済ませたキタサンブラックが、トレーナー室にやってきた。その後ろには、栗色の長い髪の少女がいる。

「おおっ!!キタちゃんではないですか!!どうでしたか入学式はっ!!」

「あはは……何か、トレセン学園って怖いなってちょっと思っちゃいました。上手くやっていけるかなあ……」

「大丈夫ですっ!悩みがあったら夕日に向かって走れば大体の悩みは解決するのですっ!!
ところで、その子は誰ですか??私と一緒にバクシンするなら大歓迎ですっ!!」

「ああ、この子は……」

ペコリ、と栗色の髪の少女が頭を下げた。

「サトノダイヤモンドといいます。キタちゃんとは、昔からのお友達なんです」

彼女が私を見た。

「天王寺トレーナー、ですよね?少し、お話が」

「……私に、か?」

「はい。シリウスシンボリさんと私の父から、お話を聞きまして」

「……シリウスシンボリから?」

コクリ、とサトノダイヤモンドが頷いた。

「ここではなんですから、場所を変えて話しませんか。芹沢トレーナーについて、です」

「新入生の君が、何故それを」

体温が急に下がった気がした。彼女の目は、真っ直ぐにこちらを見つめている。

「それも含めて、です」

「……分かった。会議室を取ろう」

「助かります」

※会議室には……

01〜30 サトノダイヤモンドだけ
31〜90 サトノダイヤモンドとシンボリルドルフ
91〜00 楽しそうじゃないか天王寺
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 22:13:38.38 ID:deO+k9nK0
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 22:13:44.70 ID:cH/uE9EQo
509 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/10(日) 22:28:14.25 ID:XKG7bTshO
今日はここまで。更新ペースが落ちて申し訳ございません。
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 22:37:23.02 ID:SHicHYTXo
おつでした
えげつねえの出してきたなハゲェ……
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 23:02:54.99 ID:DZLvdEUt0
一体何メンテなんだ……
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/04/10(日) 23:41:58.36 ID:KPjQZcHS0
89
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/10(日) 23:53:00.71 ID:deO+k9nK0
乙乙
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/11(月) 00:37:05.24 ID:dzyYCH8m0
ネトウヨ・保守(笑)・右翼(笑)・老害右派の大嘘

「太平洋戦争は白人に対するアジア解放の戦いだった」
↑これ大嘘です
news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20200815-00193356
すべての侵略戦争にあった「大義名分」

「アメリカの経済制裁が気にくわないから」という理由だけでは対米開戦としての大義は弱いので、 日本は対米開戦にあたり「アジア解放(大東亜戦争)」をスローガンに掲げたのである。

当時アメリカの自治国であったフィリピンは アメリカ議会からすでに1945年の独立を約束されており、 日本軍の侵攻による「アジア解放」というスローガンは全く無意味として映った。 よって南方作戦で日本軍に占領されたフィリピンでは、そもそも日本の戦争大義が受け入れられず、 またアメリカの庇護下のもと自由と民主主義、そして部分的には日本より高い国民所得を謳歌していたフィリピン人は、 日本の占領統治に懐疑的で、すぐさまゲリラ的抵抗や抗日活動が起こった。
日本は、アメリカとの戦争の際「アジア解放」を掲げていたが、それよりさらに前の段階で、 同じアジア人に対し攻撃を加えていたのであった。よって多くのアジア地域では日本の戦争大義「アジア解放」は、美辞麗句で空疎なものと映った。 「アジア解放」を謳いながら、片方で同じアジア人である中国を侵略するのは完全な矛盾である。

「日本のおかげでアジア諸国は戦後独立した」
↑これも大嘘です。大日本帝国と関わりない中東やアフリカも独立してます。

「人種的差別撤廃提案で日本は唯一差別と戦った。白人は人種差別を支持した」
↑これも大嘘です。フランスやイタリアも日本に賛成してます。
https://w.wiki/4i4Q
日本国民自らが中国人を差別していることを思い起こすべきと主張し、吉野作造も日本が中国人移民を認めるだろうかという問いかけを行った。 事実、賛成しているのはどちらかと言うと移民を送り出す側の国であり、反対しているのが移民を受け入れる側の国である(イギリスも本国としては賛成だったが、オーストラリアの意向をくんで反対に回っている)。

「アメリカはドイツは人間として扱い、日本人を人種差別で猿や化け物扱いし、それが理由で原爆投下をした」
↑これも大嘘です。ドイツはアメリカに騙し討ちをしてませんから当然です。 開戦前に真珠湾騙し討ちで多くのアメリカ人を無差別攻撃した日本のイメージが最悪だっただけです。

https://w.wiki/4i4Z
原爆投下前に日本の風船爆弾でアメリカの民間人妊婦が殺害されています。ドイツより日本を恨むのは当然です。
「1945年5月5日、オレゴン州ブライで木に引っかかっていた風船爆弾の不発弾に触れたピクニック中の民間人6人(妊娠中の女性教師1人と生徒5人)が爆死した」

原爆投下は、本土決戦のアメリカ側の死者数(日本兵が降伏しないから)やソ連との日本占領競争が主な原因です。人種差別が理由ではありません。 アメリカは投下前に、原爆という新兵器の危険性のビラを撒き日本に降伏を勧めています(日本側は無視)。投下後の人体実験はしないよりする方が良いからついでに検査をしただけでしょう。

そもそも日本側も、アメリカ人やイギリス人だけを鬼のように扱っていました(鬼畜米英)。日本と開戦した連合国国家(オランダ等)は他にもあります。(自分らの差別は棚に上げる)

日本の戦争犯罪は戦場経験者でもある水木しげるさんが証言して漫画にしてます。 詳しくは「水木しげる 姑娘」「水木しげる 従軍慰安婦」で検索してください。 他には「スマラン慰安所事件」「バンカ島事件」で検索。
515 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/16(土) 16:59:07.84 ID:2e26EyNmO


「お待ちしておりました」

「……君か」

サトノダイヤモンドと共に会議室に入ると、シンボリルドルフが軽く一礼した。

「芹沢トレーナーのこととは聞いている。やはり君も噛んでいたか」

「ええ。どうぞ」

シンボリルドルフと向かい合って座る。いつもの温和な表情は、そこにはない。

「あの人がここに来た経緯は、シリウスシンボリから聞いている。私に彼のコントロールを頼みたいとも言ってきたが」

「ええ。彼の目的は10年前の復讐にあるのは、こちらも把握しています。無論、秋川理事長も。
それでも彼を呼び寄せたのは、反主流派への威嚇が一つ。それと……このトレセン学園の競争力強化に繋がると踏んだからです。そして、それを芹沢トレーナーも認識している」

「??どういうことだ」

サトノダイヤモンドが私を見た。

「私がこの件についてシンボリルドルフ会長やシリウスシンボリさんと協力しているのには、2つ理由があります。
まず、里見家……私の実家にとって、反主流派は商売敵のようなものであること。
そしてもう一つは、芹沢トレーナーが連れてきたブリュスクマンというウマ娘について、情報を持っているからです」

「……話が見えないな。そもそも、あのウマ娘は何者なんだ。香港にいたとは言ってたが」

「クラちゃん……私の親戚で、やはり香港に留学していた新入生がいます。彼女が一度も勝てなかったのがブリュスクマンさんです。
その後イギリスでもジュニアレースのタイトルを総ナメにしたと聞いてます。芹沢トレーナーの言う通り、世界最強のウマ娘の一人でしょうね」

シンボリルドルフが頷く。

「そう、芹沢トレーナーは私達に条件を突き付けてきたのです。『半年以内にブリュスクマンに勝てなければ、10年前の真相を全てばらまく』と。
要は、私達を、トレセン学園を試しているのです。『この10年間、進歩がないなら潰れてしまった方がマシだ』と」

私は腕を組んだ。なるほど、実力主義の芹沢さんらしいといえばらしい。

「コントロールを頼みたい、というのは芹沢さんの暴走を抑えるというだけでなく、『芹沢さんに勝てるウマ娘を育てろ』ということでもあるわけか」

「シリウスはブリュスクマンのことまで知らなかったとは思いますが。まあ、そういうことです」

「しかし、私の専門は短距離とマイルだ。速筋線維を鍛えるならいいが、ブリュスクマンの得意距離は」

サトノダイヤモンドが目を閉じる。

「中距離、ですね。長距離も走れるとは聞いてますが、強いのは2000〜2400」

「……なるほど。それでも私に頼むのは、私が芹沢さんのことをある程度知っている人間だからか」

「そういうことです」

「だが、ブリュスクマンを誰が倒す?新入生から候補を探すことにはなりそうだが」

・3の倍数「それには及びません」
・3の倍数以外「新入生でなくてもいいですが……」
・9の倍数かゾロ目「そう言うだろうと思いまして……」
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 16:59:41.80 ID:fbQtH9F30
517 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/16(土) 17:17:46.52 ID:2e26EyNmO

「新入生でなくても構いませんが、中等部までの誰かを条件には挙げてました。私でもいいのですが、あいにくチームシリウスに入るのが決まってまして……」

「今の時期で野良でやってる生徒は厳しいだろうな……」

私は天井を仰いだ。これはいよいよ難題だ。誰かと協力して育成に当たるか、自分で発掘するか……どちらにせよ簡単ではない。

「ブリュスクマンについて、他に情報は?」

「副会長のエアグルーヴがある程度は。彼女の母親が幼少期のブリュスクマンの面倒を見ていたとは聞いてます」

「ダイナカールさんか」

偉大なるウマ娘にしてトレーナー。そのダイナカールが基礎を固め、芹沢さんがそれを完成させたのがブリュスクマンか。どう考えても弱いはずはない。

「エアグルーヴ君はどこに」

「桜花賞の応援で阪神に。連絡取りますか?」

「……いや、戻ってきてから話そう」

さて、どうしたものか。芹沢さんはこうと決めたことは曲げない。ブリュスクマンに勝てるウマ娘をどう見つけ、育て上げるか……

※会議室を出た後……

01〜30 誰とも会わない
31〜70 誰かと会う(除く芹沢)
71〜95 誰かと会う(???)
96〜00 ここにいたか
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 17:18:49.97 ID:mLeMQh1DO
えんや
519 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/16(土) 17:39:10.74 ID:2e26EyNmO


「ここにいたか」

サトノダイヤモンドと会議室を出た、その時だ。まるで待ち構えていたかのように、そのスキンヘッドの眼鏡の男がいた。

「……芹沢さん!?」

「大方シンボリルドルフから俺についてのブリーフィングを受けてたってとこだな。生徒会長室かここかと思ってたが」

「何もかもお見通し、ってわけですか」

「一応言うが、俺に他意はない。実力のない連中がのさばるのはゴメンというだけだ。今も昔も。
10年前も実力がない奴がでかい顔をしようとしていたから動いただけだ。ハメられたのは俺の未熟さからだが」

芹沢さんの目がサトノダイヤモンドに向いた。彼女はビクッと震え、私の後ろに隠れる。

「サトノダイヤモンドか。話は聞いてる。里見家御令嬢にして、新入生屈指の実力らしいな。……なぜシリウスに入った」

「……あなたには関係がないことです」

「確かに沖野は優秀だ。が、俺に勝つには足りない」

フッ、と見下したような笑みが浮かび、すぐ消えた。

「私なら、とでも言いたげですね」

「事故がなければカレンチャンは香港スプリントを圧勝していたはずだ。うちのゴールデンシックスティーともいい勝負ができただろう。
お前はまだ俺には及ばないが、近付いてはきている」

「買い被りすぎですよ」

「まあいずれは分かる。せっかくだから、これから飯を食いに行くか?俺の奢りだ」

「……ラーメン、ですか」

ニヤリと芹沢さんが笑った。

「話が早いな」
520 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/16(土) 17:40:45.99 ID:2e26EyNmO
※芹沢が連れて行くラーメンのジャンルか店を決定します。
安価下1〜5、コンマが最も大きいものとします。
店の指定の場合、実食していない場合は断ることがありますがご了承ください。
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 17:57:45.62 ID:fbQtH9F30
鶏白湯
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 18:09:07.85 ID:pbK1NigcO
えんやカレー要素のあるラーメン
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 18:10:31.99 ID:pbK1NigcO
ID変わっとる、「えんや」はミスって消し忘れた安価下
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 18:28:15.00 ID:b0cB+38P0
すみれ
525 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/16(土) 18:30:26.11 ID:qD0HS0+AO
>>524
すみれはさすがに本店まで行けないので、再指定します。申し訳ありません。
店指定は基本本店が都内にあるものとさせて下さい。
(あと実食経験がある場合、独断と偏見で弾く可能性があります)
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 18:33:28.43 ID:VqkHXhMeo
銀笹
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 18:37:04.16 ID:b0cB+38P0
山頭火
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 18:38:05.04 ID:5XtRkIY0o

(鮎まるごとラーメン)
529 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/16(土) 18:52:25.51 ID:qD0HS0+AO
>>522で決定します。
有力候補がありますが、さて果たして行けるかどうか……
いかにもラーメンハゲが推しそうな店です。
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 18:56:16.48 ID:m203BpP3o
ええね
531 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/16(土) 19:00:43.95 ID:qD0HS0+AO
少し考えましたが、改めての実食は難しいかもです。昼しかやってない上に、結構な遠方なので……
ただ、実食経験はあるので書けます。明日か来週土曜には更新します。
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 19:06:54.31 ID:pbK1NigcO
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/16(土) 19:17:10.06 ID:5XtRkIY0o
おつー
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/04/17(日) 13:41:45.41 ID:6Kl0jMqGo
『競馬予想・410万円回収放送in皐月賞編』
(12:31〜放送開始)

ttps://youtu.be/jOJLODnxxl0
535 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 18:03:55.33 ID:GkaU9sIrO



第11R「インディアン」



536 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 18:09:28.83 ID:GkaU9sIrO


「私たちだけでいいんですか」

駐車場に向けて歩く芹沢さんに言う。彼は不思議そうにこちらを振り返った。

「あ?担当のウマ娘も連れて行きたいのか?」

「いや、ブリュスクマン……あの娘に声はかけなくても」

「ああ、あいつはあまりラーメンが好きじゃなくてな。食事は徹底して管理しないと気が済まんらしい。
チートデイにしても、バランスをやけに重視したがる。困ったもんだ」

芹沢さんは肩をすくめた。

※70以上で誰かと遭遇
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 18:16:03.52 ID:6sGVCI0Ro
誰か
538 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 18:35:44.31 ID:GkaU9sIrO
※特になし

「で、どこに?」

「お前、カレーは好きか」

「あ、まあ人並みには。カレーラーメン、ですか」

はあ、と芹沢さんはわざとらしい溜め息をついた。

「相変わらず考えが堅いな。そもそも俺がカレーラーメン屋に連れて行くと思ったか?」

「……まあ、確かに」

カレーラーメンを出す店は、最近それなりには増えてきた。「豚星。」のように本格的なエスニックと二郎系を融合させた斬新な一杯を出す店もある。
ただ、カレーラーメンには大きな弱点がある。それは……

「天王寺トレーナー、どういうことなんですか?」

「カレーにラーメンを合わせる必然性……ですね?」

芹沢さんが頷いた。

「そう。麺を中華麺にする意味がない。うどんは分かる。より厚みがあり、小麦の味も強く出るからな。
だから、巣鴨の『古奈屋』のようなベクトルでの進化があり得た。だが、ラーメンでやると『1+1=2』にしかならない。それ以上にできる店は、極々限られてる」

「二郎系と絡める店は出てきましたよ」

「だが、少ない。相当な技量が要るからな。
そもそも俺が連れて行くのはカレーラーメンの店じゃない。『カレーとラーメン』の店だ。『インディアン』は知ってるか?」

私は首を振った。芹沢さんが「使えない」と言わんばかりにまた溜め息をつく。

「ラーメンばかり詳しくなって視野が狭まってるな、お前。俺はガッカリだ」

「……」

別にラーメンばかり食べているわけではない、と反論しようとしてやめた。視野が狭いという言葉に、いささか思い当たるフシがあったからだ。

芹沢さんが嘲り笑うようにして続ける。

「そもそも『旨いもの』じゃなきゃ意味がないと思い込んでないか?違う、違うね。
行く前に言っておく。これから行く店は『マズい店』だ。ラーメンもカレーも、正直旨くない。だが、食う価値が大いにある」

「どういう……?」

「食えば分かる。そして、お前に何が欠けてるかも分かるはずだ」
539 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 19:00:41.94 ID:GkaU9sIrO
一時中断します。
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 20:16:15.08 ID:xB17fq9zo
たんおつ
541 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 20:36:53.03 ID:OOeTViQHO


芹沢さんのヤリスクロスは首都高に入った。どうにも空気が重い。それを察したか、サトノダイヤモンドが切り出した。

「芹沢トレーナーって、香港にいたんですよね。クラちゃん……サトノクラウンとも面識が?」

「ああ。里見家の分家の娘か。あれはなかなかだったな。ブリュスクマンがいなければ、香港でも名を馳せてただろう」

「ブリュスクマンさんって、どんな人なんですか」

芹沢さんが少し顔をしかめた。

「それを聞いてどうする」

「これからトレセン学園で過ごす仲間ですから。少しでも知りたいなと」

「ハハハハハ!!!面白いな、『仲間』と来たか!里見家の御令嬢、随分能天気だな。札束で殴るのを好むあの親父にしては平和主義な娘だ。
それとも何か、情報を聞き出すことで弱点でも探ろうと?そんなに俺は甘くない」

「……そういうわけでは」

「冗談だ。まあ堅物だよ。勝利こそ至高というのは俺の教えでもあるが、あの女の影響が大きいようだな」

「ダイナカールさん、ですか」

ニヤリ、と芹沢さんが笑う。

「本格デビュー前の、小学校低学年専門に指導している理由は俺にも分からんがね。
俺はまだ会ったことがないが、あいつの娘もあんなキャラクターなんだろ。どこか飄々としていて、掴み所がない奴だ」

エアグルーヴの性格とは随分離れているようだが、それは言わないことにしておいた。



車は蓮沼駅前のパーキングに停められた。すぐに何人かの列が店の前にできているのが見えた。

「『武田流古式カレーライス 支那そば』……武田流とは」

「ここの創業者の名字だよ。資生堂パーラーの出身だったらしいが、故人でもう今はいない。何せ創業70年近いからな」

70年……一線級のラーメン店としては最古の部類に入る。なぜ知らなかった?

「セットメニューは食べ方があるんですね。『最初に支那そばを出して、頃合いを見てカレーをお出しします』……同時に出るわけじゃないんですね」

「そこが肝だ」

支那そばとカレーのセットを注文する。客はほぼ全員がこれか、半カレーのセットを頼んでいるようだった。
542 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 20:55:41.74 ID:OOeTViQHO

しばらくすると、透明に近いスープのラーメンの丼が、私たちの前に置かれた。見た目はクラシカルな塩ラーメンだ。
具もほうれん草にバラ肉のチャーシュー、ネギにメンマ、ゆで卵と珍しいものはない。

サトノダイヤモンドも少し拍子抜けしたようだった。

「……塩、ですか」

「まあ食え、俺たちは情報を食いに来たわけじゃない」

芹沢さんに促され、レンゲでスープを口にする。
塩ベースで鰹節の旨味がじんわりと口内に広がった。焦がしネギの風味がアクセントにもなっている。なるほど、丁寧な味だ。


だが、これは……


「味、薄いですね」

サトノダイヤモンドが呟いた。そう、薄い。淡いと言ってもいい。
芹沢さんの「清流房」の「淡口らあめん」も、旨味が玄妙で食べ手の舌を問うような繊細な味だった。

だが、これは……それにしても薄い。麺と食べれば味の骨格は少しはっきりするが、物足りなさは否めない。

「……店内で批判はご法度だぞ」

「すみません!つい……」

私とサトノダイヤモンドのやり取りを見た芹沢さんがニタリと口の端を上げた。

「いや、その反応は正しい。まさか天王寺、お前は味がしっかりしているとか言わないよな?」

「……!!いや、その……」

「まあいい。で、カレーが来たぞ」

皿に盛られたカレールーは、かなり黒っぽい。本格的な欧風カレーのようだが……

スプーンで一匙食べる。……今度は濃い。というより少し苦い。
スパイスや果物の複雑な味わいはある。だが、それを苦味が覆い隠してしまっていて、どこかぼんやりとしている。
まずくはないし、手間のかかったものだというのは分かる。だが、メニューにある「このカレーより美味しいカレーがあったら教えて下さい」という店主の自負は、明らかに言い過ぎだ。

芹沢さんはというと、ニヤニヤしながらこちらを見ている。これを食べさせることの意図は、どこかにあるはずだ。

そう思い、スプーンを箸に持ち替えて、ラーメンの麺を啜る。


……



…………



パシーンッッッ!!!



543 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 21:09:01.67 ID:OOeTViQHO


「うおっっ!!?」


「えっ!!?」


これは……何だ!?まるで、全く違うラーメンではないかっ!!


口の中の苦味が、淡いラーメンのスープで洗い流され、複雑なスパイスと野菜、果物の旨味が顔を出す。
それだけではない。スープの魚介系の旨味がそれを補強し、数段グレードアップした味へと変化している……!?

芹沢さんは麺を啜りながら、なおもニヤニヤ笑っている。

「どうだ?『不味いラーメンとカレー』の味は」

私はもう一度カレーを口にする。確かに苦く、癖がある。
しかしその後にラーメンを食べることで、その真価は発揮される。そういう設計のセットなのだ。
ラーメンの薄い味に舌を慣らさせておいて、その後で苦いカレー。そしてもう一度ラーメンに戻ることで、「1+1」は5にも10にもなる。


カレーラーメンの多くが実現し得ないシナジーが、ここでは実現していると言えた。


……シナジー……そういうことか!!


芹沢さんに視線を戻す。皮肉めいた笑みが、普通の微笑みに変わった。


「気付いたな」


私は頷く。芹沢さんは立ち上がった。

「俺が塩を送るのはここまでだ。あとは自力で俺の域まで上がってこい、天王寺。
車はお前がトレセン学園まで運転して帰れ。俺には寄る所がある」

「え」

「じゃあ、また学園で、だ」

544 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 21:29:28.35 ID:OOeTViQHO


「さっきの芹沢トレーナーの台詞、どういうことだったんでしょうか」

助手席のサトノダイヤモンドが呟く。

「思い込みに囚われるなということ、そして勝ちパターンは一つじゃないってことだな」

「……というと?」

「マズいと思っているものでも、組み合わせ次第で一線級の味になる。正面突破だけが、勝ち筋じゃないってわけだ」

「でも、それをどうやって」

私は彼女の顔を見た。確か、彼女はステイヤー寄りと聞いている。キタサンブラックもそうだ。
どちらも、マイルや短距離中心の私の育成方針とは噛み合わない。


……だが、協力すれば?彼女たちに恐らくは足りない、勝負所でのスパート力を身に着けさせることはできるのでは?
その逆もしかりだ。バクシンオーやカレンに持久力を付けさせる可能性を、私は排除していなかったか。


そうなると、手としては……


※90以上で次回登場キャラが1人固定
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 21:34:26.50 ID:ZHcqOQgNo
546 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 21:43:37.15 ID:OOeTViQHO
※通常ルート

今後の展開を以下のうちから決めます。

1 三田村トレーナーと協力してキタサンブラックを育てる
2 沖野トレーナーと協力してサトノダイヤモンドを育てる
3 誰かと協力してカレンチャンを育てる
4 その他

3票先取多数決です。
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 21:59:31.20 ID:U2EMtp3O0
3
カレンチャンカワイイ
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 22:12:49.15 ID:xB17fq9zo
香港のリベンジといこうぜ3
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 22:16:40.45 ID:I4EGpbRjO
2
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 22:26:21.13 ID:I4EGpbRjO
埋まらなそうだし3に変更で
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 22:32:19.77 ID:E3Bux2Vfo
3
552 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/17(日) 23:13:26.78 ID:OOeTViQHO
では3で決定します。

次回更新は週末予定です。
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/17(日) 23:21:15.21 ID:xB17fq9zo
おつー
554 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/23(土) 19:52:22.10 ID:E72VjbcHO



第12R



555 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/23(土) 20:16:50.21 ID:E72VjbcHO


「えっ?カレンが中距離を?冗談でしょ、お兄ちゃん」

翌日、カレンにブリュスクマンの話をすると引きつった顔で返された。

「冗談じゃない。私も考えに考えた結果だ」

「でも、カレンは1400までしか走れないよ?マイルだとすぐバテちゃうし。
そもそも、キタちゃんとかじゃダメなの?同じ中等部1年だし」

「ブリュスクマンという子は、相当な猛者らしい。今年のダービーはもう決まりだと言われてる。何なら凱旋門賞も。
だから、一芸に秀でたタイプのウマ娘が、奇襲をかけて勝つしかない。瞬間の加速力ならお前は誰にも負けない。
中等部1年の時、去年卒業したあの『史上最強スプリンター』にも勝ってみせたじゃないか」

「あれはたまたまだし……それに、2400を走るなんて絶対に無理だよ」

カレンは困惑を隠せない様子だ。それはとてもよく分かる。だが、これが最適解である予感はあった。
私の速筋中心の瞬発力トレーニングに、誰かの持久力トレーニングを組み合わせれば……スプリンターも2000程度なら走れる可能性がある。

前例はある。かつて、私は一人のウマ娘を育て上げたことがある。私がトレーナーになりたての頃に担当した娘だ。
今は主婦となって一般人として生きていると聞くが、その栄光はいまだ色褪せない。


史上唯一、天皇賞春とスプリンターズステークスの両方を制したウマ娘。その名は……


01〜85 何もなし
86〜95 あっ、知ってます!
96〜00 電話がかかってくる(オリキャラ登場注意)
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/23(土) 20:27:44.32 ID:SAVD8Fuo0
せいや
557 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/23(土) 20:36:05.14 ID:E72VjbcHO
※特になし

「そもそもどうやって2400を走らせるの?そんな無茶なこと言ってると、お兄ちゃんのことキライになっちゃうよ?」

私は腕を組んだ。かつて担当していた「彼女」は天才だった。そして、元がステイヤー寄りだったから速筋トレーニングが機能した。
カレンは違う。瞬発力は身内ながら目を見張るものがある。だが、「彼女」ほどの天賦の才はない。どちらかといえば、努力型なのだ。

だから、誰かに力を借りる必要がある。心当たりはもちろんあるが、さて……

1 三田村トレーナーを呼ぶ
2 塩田トレーナーを呼ぶ
3 アリームトレーナーを呼ぶ
4 その他(自由に書いてください)

※3票先取
※なお「彼女」の連絡先は知らないものとします
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/23(土) 20:38:28.53 ID:bkYi74Xyo
上から
ライス
パーマー
マックイーン
の友情トレ相手選択か……
3で
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/23(土) 20:47:46.05 ID:XxHr+Rm1o
1
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/23(土) 20:47:50.97 ID:f6kAoegkO
3
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/23(土) 20:49:05.02 ID:O3Kdw2Suo
1
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/23(土) 20:58:01.97 ID:GATcEozY0
コンマ奇数なら1偶数なら3
563 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/23(土) 21:03:28.00 ID:E72VjbcHO
では1とします。少々お待ち下さい。

というか、八五潰れたのはショック……
564 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/04/24(日) 17:45:00.41 ID:o+bRoEjwO
家元も引退のようです……寂しくなりますね。
今日は急遽仕事のため多分お休みです。
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/24(日) 20:36:36.76 ID:N7fUDhvWo
お疲れ様です
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2022/05/01(日) 11:34:01.49 ID:Dxofc2f6o
『逆神加藤純一の競馬配信
絶対に勝つ。4戦目・天皇賞(春)編』
(3連敗中/収支−460万)
(13:00〜放送開始)

https://youtube.com/watch?v=MwGUJiaY3OQ
567 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/05/01(日) 21:56:18.67 ID:n1nbGtiAO


「えっ?私にカレンチャンのトレーニングを?」

三田村嬢は目を丸くした。後ろでストレッチをしていたライスシャワーやキタサンブラックも、驚きを隠せない様子だ。

「はい。無茶な話とは思ってます。ですが、あなたしか私には思いつかなかった」

私は芹沢さんとの約束と、ビュルスクマンに勝つためにカレンを鍛え直す話をした。
半年という短い期間で1から正攻法でやっても勝てる望みは薄いこと、
そのためには瞬発力という一芸で既に彼女を明らかに上回っているカレンを中距離仕様にすることが必要なことも話した。

一通り説明が終わると、「うーん……」と三田村嬢が唸った。

「……事情は分かりました。でも、何故私に?塩田さんの方が経験はあるでしょう」

「ライスを育て上げた実績を買いました。あなたのトレーナー歴で長距離G1を複数勝つのは並大抵じゃない。
無論、ライスにそれだけの才能があったのは知ってます。ただ、決してトッププロスペクトじゃなかった彼女の才能を開花させたのは、間違いなくあなたの手腕だ」

「……カレンチャンは何と?」

「正直、渋ってます。気持ちは分かるし、私の中にも迷いはある。……行けそうですか?」

※三田村トレーナーの反応
01〜40 考えさせて下さい
41〜80 手はあります
81〜95 ライス、いい考えがあるよ
96〜00 ……実は
568 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/05/01(日) 21:56:46.17 ID:n1nbGtiAO
コンマ下です。
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/01(日) 21:56:46.57 ID:78PruUIj0
570 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/05/01(日) 22:11:39.33 ID:n1nbGtiAO

「……手はあります。ただ、自信があるわけじゃないですが」

「手、ですか」

「ええ。持久系のトレーニングは、天王寺トレーナーの速筋中心のトレーニングとは違います。重要なのは、リカバリーなんです。
地道な走り込みに酸素カプセルによる休養を組み合わせ、超回復を促す。野球選手がよく使っている手法を、私も採用してます」

後ろのライスシャワーが頷いた。

「うん、ライス、三田村さんのおかげで強くなったよ。息切れもしなくなったし」

「なるほど。ただ、自信がないとは」

「スプリンターの娘に同じ手法が通用するか分からないというのが一つです。私にとっても、初めての取り組みですから……。
もう一つは、ブリュスクマンという子が突き抜けた化け物かもしれないということ。それでもやるなら、是非とも協力させて下さい」

眼鏡の奥から、強い意志が見えた。私も首を縦に振る。

「ありがとうございます。後はカレンの意思ですね」

※カレンチャンの反応
01〜35 ……三田村さん、かあ……別の人いないの?
36〜70 うーん、やってみるかなあ
71〜90 うん、分かった。いいよ
91〜00 ふふふ〜ん♪
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/01(日) 22:16:30.20 ID:8Htbn4vPo
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/01(日) 22:18:36.75 ID:tTDJ3KZXo
ほい
573 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/05/01(日) 22:30:03.48 ID:n1nbGtiAO


三田村嬢と部屋に入ると、カレンの表情が曇った。

「何お兄ちゃん?三田村さんと一緒に」

「いや、例の中距離を走るって話だが……」

「だからカレンには無理!というかなんで三田村さんなの?別の人はいないの?」

私は三田村嬢と顔を見合わせた。こんな刺々しい対応をされるとは、予想外だ。

「……私なりに考えた結果なんだが」

「嫌なものは嫌なの!この話はおしまいっ!」

カレンはプイと立ち去ろうとする。……これは参った。


そこに、甲高い声が響いた。

「待つのです!」

「……バクちゃん?」

「学級委員長として、ちゃんと話は最後まで聞くべきだと思います!トレーナーさんにも考えがあるはずです!」

珍しく厳しい表情で言うバクシンオーの気迫に圧されたのか、カレンが席に戻った。

「……分かった。で、どういうことなの」

私は三田村嬢との共同トレーニングを説明し始めた。カレンは一応聞いているが、不満そうな気配は消えていない。

「……というわけだが」

「話は分かったよ、お兄ちゃん。でも、嫌なものは嫌。せめて、三田村さん以外に……」

※3人の反応
01〜30 特になし
31〜75 三田村トレーナー、何かに気付く
76〜95 天王寺も何かに気付く
96〜00 ややっ、そういうことでしたか!
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/01(日) 22:35:06.93 ID:78PruUIj0
えい
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/01(日) 22:45:13.37 ID:aBrYUwQHo
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
576 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/05/01(日) 22:51:18.96 ID:n1nbGtiAO

「あっ」

三田村嬢が声を上げた。一瞬ちらりと私を見る。それでようやく私も理解した。


……なるほど、そういうことか。


「少し、席を外していいか?三田村トレーナーと相談したい」

「……!?いいけど」

トレーナー室を出て、空いていた実習室に入った。ここなら、誰にも聞かれない。

「カレンの件ですが」

「ええ。嫉妬、ですよね。彼女、天王寺トレーナーを『お兄ちゃん』と呼ぶほど慕ってますし……」

「いや、実は……実妹なんです。母を早いうちに亡くして、私が育てたという事情が」

「……!!そういうことでしたか、なおさら納得が行きました。……なるほど」

基本人には猫を被るカレンが、いきなり敵意剥き出しにするというのはとても珍しい。その時点で、私も気付くべきだった。
つまり、私を取られると思っているのだ。それは考えすぎなのだが。

「ええ。だからちゃんと説明すれば……」

三田村嬢は難しい顔をしている。何を考えているのだろう。

※天王寺と三田村トレーナーの反応
01〜75 何も起きない
76〜95 ……あ
96〜00 天王寺トレーナー、大事なお話が
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/01(日) 22:53:22.85 ID:0Ii85YRsO
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/05/01(日) 22:57:09.41 ID:tTDJ3KZXo
コンマいい流れきてる!
579 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/05/01(日) 23:24:39.33 ID:n1nbGtiAO

一瞬、またちらりと三田村嬢が私を見た。眼鏡の奥に見えるその瞳が、わずかに熱を帯びているように見える。


……あ。


いや、そんなはずはない。この34年、女性とはほぼ無縁で生きてきたからだ。
だが、この向けられている感情は……覚えがないわけじゃない。


これは、恋愛感情だ。


大学時代に、一度だけだが交際経験はある。一応それなりのこともしたが、「堅物で面白くない」と半年で別れた。
だから、私に恋愛は向いていないと思っていたし、実際それっきりだった。そして、そういうものだろうとも思っていた。

ウマ娘のトレーナーになってからもそうだ。担当のウマ娘とは、常に一線を引くよう心掛けてきた。
トレーナーと結ばれるウマ娘は決して少なくはないが、私にはそういうのは合わない。あくまで一指導者として在るべきだと思うようにしていたし、それは正しかった。
公平に、そして的確に。それが今の私の地位を作り上げたのは、疑いない。


だから、きっとこのまま独りで生きていくのだろうと思っていた。それが嫌だというわけじゃないし、寂しいわけでもない。
だが、人に異性として好意を向けられることはあるとは……正直、想定の外にあった。


そして、三田村嬢の感情を理解した瞬間、カレンの心情も推察できた。


……カレンは、三田村嬢の私への感情を理解しているのではないか?
思えば、そういうフシはあった。豚星。に行った時も、牽制するようなことを確か言っていた気がする。


「……三田村トレーナー」

「えっ!?はいっ、な、何でしょう?」

自分の彼女に対する感情は、決して悪いものではない。ただ、恋愛感情かと言えばまだそうでもない。
そうである以上は、ここでカレンの感情を伝えることは、あまり望ましくないように思えた。


とすると……


「……一度、三田村トレーナーからカレンをご飯に誘ってみてくれませんか?」

「え?」

「私は抜きです。こういうのは、女性同士の方が上手くいく。あと、もちろんお礼もします」

「でも、どこに連れていけばいいか……」

私はニコリと笑った。


「もちろん、心当たりはあります」


580 : ◆/4adlfiarI [saga]:2022/05/01(日) 23:33:41.29 ID:n1nbGtiAO
※今回のテーマを決めますが、今回は自由安価ではなく選択式です。
店の特徴だけ書いておきます。

1 じっくり話せる、夜は居酒屋バーのラーメン
2 六本木にある最先端スープのラーメン
3 ミシュラン掲載の都内トップレベルの名店

3票先取です。
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