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【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】

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866 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/20(木) 23:57:01.83 ID:NxZO6r4R0
>>865
>>140で一度だけアナウンスしましたが、以後触れてなかったので誤解を生みやすい形になってましたね…
親愛度の上限はシャニマスの信頼度レベルに準拠して12に設定してます!
867 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 20:57:15.56 ID:qKk8P9Px0
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CHAPTER 02

厄災薄命前夜

非日常編

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868 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 20:57:58.63 ID:qKk8P9Px0

遠くに波の音がした。
頭の後、そのずっと向こう。風に押し流された海水が何度も何度も浜に押し寄せて、潮風はそのたびに打ちあがる。
それは私の背後から図書館の中へとずかずかと入っていく。
私の頬を撫で、美琴の横を通り、そして千雪のもとへとたどり着く。
私の感じているこのこそばゆさを、彼女も感じているはずなのに……



____千雪は、ピクリとも動かなかった。


869 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 20:59:22.80 ID:qKk8P9Px0

ルカ「嘘……だろ……?」

美琴「ルカ、ストップ。近づいたところで、もう」

ルカ「そ、んなわけねぇ……あいつは、千雪は……こんなところでくたばるはずがないんだ……!」

ルカ「おい! お前、私が283の連中に馴染めるように面倒見るんじゃなかったのかよ……なんで、なんでそんなところで寝てんだよ……!」


自分でも空虚な言葉を吐いていると思った。
手で触れて確認するよりも、耳を心臓に当てて聴くよりも、もっと簡単な方法で彼女は死んでいると断定できた。
下腹部から漏れ出るその赤黒い液体。図書館のフローリングの上に水たまりを作っている。
何百ミリリットルというその液体を見れば、掬い上げたところで手遅れだということは明白だった。


ルカ「……クソッ!」


静かな図書館に私の憤りだけが響いた。


美琴「……ルカ、とりあえず他のみんなを呼んでくるね」


美琴は今の私を放っておくという選択肢を取った。
それは間違っちゃいない。私は返答になっていないようなあいまいな声を出し、美琴を見送った。

残されたのは、私と千雪のみ。

870 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:00:10.02 ID:qKk8P9Px0

「……」


千雪の艶やかな魅力ある体は無力に床に投げ出されている。
瞳も穏やかに閉じており、長いまつげが夜光に照らされている。
是だけ見れば眠っているように見えなくもないが、その体に熱はなく、腹は鮮血に染まっている。


「……こんなことなら、言っておけば良かったな」


物の数時間前の話だ。肩を並べて線香花火をした時、私と千雪は言葉を交わしていた。


≪千雪「……ルカちゃん、どう? 花火」

ルカ「どうって……綺麗、だよ」

千雪「うん、すっごく綺麗……でもね、この花火が今見れるのは、ルカちゃんが自分でその一歩を踏み出したから。ルカちゃんが私に相談してくれて、美琴ちゃんに気持ちを打ち明けられたから」

ルカ「別に、私はお前に相談なんかした覚えは……」

千雪「ふふ、そうね。ごめんなさい」

ルカ「まあ……でも、今こうやって過ごせて、良かったなとは思うよ」

千雪「ルカちゃん……」

ルカ「そ、その……さ。まあ、その……お前が貢献した部分も多少なりともあるのは……認めるしさ……」

千雪「……」

ルカ「あ、あり……ありが……」

千雪「……」

ルカ「あーっ! やっぱムリ、ナシだナシ!」

千雪「えー、聞きたかったのになぁ」

ルカ「お前がそんな風に含み笑いしながら見つめてくるから恥ずかしくて言えたもんじゃねーんだ! ハッ、もう一生言ってやんねー!」

千雪「もう……意地っ張りなんだから」≫

871 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:02:21.95 ID:qKk8P9Px0

本当に図々しいやつだった。
この島に来て初めてまともに絡んだというのに、個人の事情に踏み込んできたかと思うと、
こちらの都合はお構いなしで他の連中に無理やり巻き込んだりして、私個人の時間は滅茶苦茶に脅かされてしまっていた。

でも、その【滅茶苦茶】がなければ私は美琴と復縁することなんてできなかった。
七草にちかのように危機迫った事情もなかった私は言い訳ばかり並べたてて動きもせずに、いたずらに時間だけを過ごしていたはずだ。
本当の気持ちをさらけ出す、その一歩を踏み出させてくれたのは千雪だった。

結局、その千雪に対する素直な本当の気持ちは口に出せないままに終わってしまった。
それも、他の何者かによって、強制的に迎えさせられた終わりによって。
夜の静けさに沈んだその体にはもはやどんな言葉を投げかけても届くことはない。


「……千雪」


こうやって名前を呼んだのも、あの海水浴以来。
生きている間にもっと名前を呼んでやればよかった、はしゃがせてやればよかった。
……でも、してやれなかった。
私の勝手なプライドが阻んで、その機会を逃してしまった。

872 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:03:49.08 ID:qKk8P9Px0

「……ッ」


いくら後悔してもし足りない。
千雪から教わったことだというのに、まるで活かすことができなかった自分が嫌になる。
確か、学びは還元してこそのものだと中学の先公が講釈垂れていたことがあった。
その時はくだらないと一蹴して耳をふさいでいたが、ちゃんと聞いておけばよかった。
だって、後悔がこんなに苦しいなんて知らなかったから。

きっと千雪はここで私が泣きじゃくることを求めちゃいない。
だから、涙も零さず、声も出さずに泣いた。
肩を震わせて、荒い呼吸をした。
これが死を悼むには十分だとは思わない。
でも、千雪に私の気持ちを知ってもらいたくて、でも言えなくて、そんな中、なんとか絞り出したのがこれだった。

今の私に、嘆く時間はない。
千雪が死んだということは、次は私たちの番。
生きるか死ぬかの戦いが待ち受けていることを意味する。



____行くしか、ないんだ。


873 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:05:09.29 ID:qKk8P9Px0
____
______
________


美琴が一人にしてくれたのは正解だった。
自分の中の感情に折り合いをつけることができた。
今はただ、立ち上がらないといけない。震える自分を奮い立たせて、その武器を手に取る。
七草にちかを切り捨てたその時から私の行く道はただ一つ。
ただ生き残ること、そこからぶれるんじゃ死んでいった奴らにも顔向けできやしないんだから。


あさひ「……あっ、ルカさん。……千雪さん、だったんっすね」

ルカ「中学生……お前か」


最初にやってきたのは中学生だった。
ひょっこりと扉の後から首をのぞかせると、表情を俄かに曇らせて、私の横に立った。

ピンポンパンポーン!

『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』


すぐにあのアナウンスが鳴り響いた。
学級裁判、その言葉の重みを私たちは知っている。
隣の中学生の肩にも力が入るのが見て取れた。
874 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:06:59.82 ID:qKk8P9Px0

すぐに他の連中も図書館へと集まった。
花火大会に参加していた連中、途中で抜けていた連中、そもそもやってきてもいなかった連中。
その全員が図書館の惨状を見て、すぐにその言葉を失った。


恋鐘「ち、千雪〜〜〜〜〜!? な、な、何が起きたと?!」

愛依「ち、千雪さん……?! マジ……?!」

夏葉「そんな……どうして、千雪が……」

バビューン!!


全員が集まったタイミングを見計らったようにどこからともなくあいつがまた姿を現した。
随分と上機嫌な様子で鼻歌交じり、こいつからすれば本懐というところなんだろう。


モノクマ「ふぅ〜、やっと、やっと、やっとだよ! 待ちかねたよね、待ちかねすぎて福が来るよね!」

ルカ「……モノクマ、お前が出て来たってことはそう言うことか?」

モノクマ「うん、見ての通りだよね。オマエラには、二回目の学級裁判に挑戦してもらいます!」

冬優子「二回目の学級裁判……やっぱり、またあれをするんですね……」

摩美々「クロとシロで、命を懸けた舌戦……はぁ、憂鬱―」

モノクマ「オマエラがどう思おうと、生き残るためにできるのはただ一つ。この学級裁判に勝ち抜くことだよ!」

モノクマ「そうじゃないと、七草さんみたいにスクラップだからね!」

美琴「……ッ!」ガタッ

ルカ「待て美琴、あいつを殴ればオマエが殺される……今は抑えろ」

美琴「……ごめん、ルカ」

875 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:09:36.64 ID:qKk8P9Px0

モノクマ「ルールに関してはもうオマエラも承知のことだろうから、説明は省くよ! とにかく頭を働かせて、犠牲にすべきなのは誰なのか、しっかりと見極めることだね!」

あさひ「……」

果穂「……うぅ」

智代子「果穂、大丈夫……? やっぱり、辛いんだったら、灯織ちゃんの時と同じでわたしが一緒に外で休むよ?」

果穂「……ちょこ先輩……今回は、あたしもいっしょに調ささせてください……! つらくて、泣きそうでも……あたし、にげたくないんです……」

智代子「……わかった、果穂……一緒に頑張ろう!」

雛菜「みんな透先輩のこと疑ってたけど、結局雛菜たちと無関係なところで殺人が起きちゃったね〜」

透「……」ギュッ

雛菜「……透先輩?」

透「あー、ううん。なんでもない」


それぞれの面持ちは違っていた。
これから先に起こるさらなるコロシアイに備えて思考を張り巡らせる者、ただ怯えて沈痛に耽る者、今度こそはと奮起する者……
私の表情はどうだっただろう。
前回の事件の時、私はまだこいつらとの間に線引きをしていて、ただ足を引っ張られないように、巻き添えにならないようにと言うことしか頭になかった。
でも、今回はそうじゃない。

殺された桑山千雪という人間が、私に託したものがある。

それを踏みにじるような真似は、すべきじゃない。



____今回も、間違えるわけにはいかないんだ。




【捜査開始】
876 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:11:37.14 ID:qKk8P9Px0
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モノクマ「さて、それじゃあ今回もモノクマファイルを渡しておくからそれを足掛かりにして捜査を進めていってちょうだいね!」

ピピッ

手元の電子生徒手帳から電子音が聞こえたかと思うと、画面には前回ぶりのポップアップ。
死体の見分記録、モノクマファイルだ。 

『被害者は桑山千雪。死亡推定時刻は午後9時前後。死体は下腹部を矢で貫かれており、内臓の損傷も激しく、出血量も多量であるため、死因は失血死であると断定する』


ルカ「まあ、今回も見ての通りだな……」

美琴「それにしても、矢で貫かれているってどういうことなんだろうね。犯人は弓でも引いたってことなのかな」

ルカ「さあな……それも含めて調査しないといけねーな」


コトダマゲット!【モノクマファイル2】
〔被害者は桑山千雪。死亡推定時刻は午後9時前後。死体は下腹部を矢で貫かれており、内臓の損傷も激しく、出血量も多量であるため、死因は失血死であると断定する〕

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877 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:12:40.70 ID:qKk8P9Px0

モノクマ「じゃ、そういうわけなんで……ボクは裁判の時間までゆっくりコーヒーでも淹れてようかな!」

モノクマ「コーヒーは、一滴一滴丁寧にドリップすることでコクとうまみが生まれるんです……」

バビューン!!

果穂「初代のライダーさんが今のモノクマと同じことを言ってました……! まさか、黒まくは、藤岡___」

夏葉「コーヒー好きなんてこの世には星の数ほどいるわ、果穂」


モノクマは今回も捜査の時間は基本的に不介入なんだろう。
私たちが自分の手で、真実にたどり着かなきゃならない。

でも、決して孤独な戦いじゃない。
前回と状況は違う。


ルカ「……やるぞ、美琴」

美琴「うん……頑張ろう」


___今回は、共に戦う仲間もいる。

さて、調べるべきなのはまずはこの【図書館内】だよな。
島が開いた当初の調査でしかまともに見ちゃいねーし……
そして、千雪の【死体周辺】……ここからも逃げちゃならねー。
それと、【花火大会を途中で抜けた連中への聞き込み】だな。今回の事件はアリバイが割とつかみやすいはずだ、そこから犯人を絞ろうか。

よし、整理は出来た……後は行動だ。

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1.図書館内を調べる
2.死体周辺を調べる
3.花火大会の途中で抜けた人間への聞き込み

↓1
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/22(土) 21:15:15.25 ID:l+JXWtmi0
2
879 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:16:19.08 ID:qKk8P9Px0
2 選択
-------------------------------------------------
【死体周辺を調べる】

(……)

(…………)

美琴「ルカ、大丈夫?」

ルカ「ん、あ、お、おう……大丈夫だ、大丈夫に決まってるだろ」


そうは言ったものの、流石に少しばかり堪える。
ここ数日嫌と言うほど付きまとってきたあいつが、今私の前で事切れているという事実はことのほか大きく私を揺さぶった。

……まだ言えてない言葉も、山ほどあったのに。

その後悔ばかりが浮かんできては消え、浮かんできては消えを繰り返す。
でも、そんなことにかかづらっている暇はない。
今はただ、思考を麻痺させて、生き抜くための道を見つけなくちゃならないんだから。

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1.死体を調べる
2.凶器を調べる
3.死体を動かしてみる

↓1
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/22(土) 21:24:52.23 ID:l+JXWtmi0
2
881 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:26:25.58 ID:qKk8P9Px0
2 選択
-------------------------------------------------
【凶器を調べる】

死体の付近に転がっているのは、銀色の矢だ。
先っぽの矢じりにはべったりと血が付着しており、これが千雪の命を奪った凶器であることは容易に見て取れた。


ルカ「……チッ、見るだけでもなんだかイラついてきやがる……」

美琴「……痛ましいね」

ルカ「こんなので腹をぶち抜かれたらたまったもんじゃねー……千雪のやつ、どんな苦しみを受けながら死んだんだ……」

美琴「これを刺されただけじゃ即死……でもないだろうね。灯織ちゃんみたいに心臓を貫かれてたわけじゃないし」

ルカ「……クソッ!」


どれだけ私が憤ろうとも後の祭り。
千雪の命を奪った犯人はそんな私を見て嘲笑っているのだろうか。


(……上等だよ)

美琴「……この矢の型番は、BT-49みたいだね」

ルカ「……ああ、羽の部分に刻印されてるな」

美琴「犯人はいったい、どこでこんな凶器を見つけて来たんだろうね」

ルカ「……おおかたスーパーマーケットじゃねーのか? 風野灯織が使ってた暗視スコープもあそこで調達したんだろ」

美琴「……スーパーって便利なだけじゃないんだね」

ルカ「普通のスーパーは便利なだけだぞ」


コトダマゲット!【凶器の矢】
〔死体のそばに転がっていた銀色の矢。型番はBT-49で、先端の矢じりには千雪の血がべったりと付着している〕

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1.死体を調べる
2.死体を動かしてみる

↓1
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/22(土) 21:32:22.52 ID:l+JXWtmi0
1
883 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:35:10.25 ID:qKk8P9Px0
1 選択
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【死体を調べる】


ついさっきの出来事がフラッシュバックする。
線香花火で勝っただの負けただのしょうもない小競り合いをして、私のすぐ隣で笑っていた千雪は、潮風に中てられてすっかりその体温を失っている。

まるでそっくりに作られた蝋人形のようだ。
でも、ここにあるのは本物。私と一緒に同じ時を過ごしていた、桑山千雪というアイドルだ。

そこから目を背けちゃいけない、これも私が生き残るためなんだ。


ルカ「……モノクマファイルにあった通りの状態だな、腹をぶっ刺されたせいで大量の血が流れてて、それが原因で死んじまってる」

美琴「ほかに目立った外傷はなさそうだね」

ルカ「脛に切り傷みたいなのがついてるけど……まあこれぐらいは日常生活でつく範疇だしな」

美琴「特に外傷がないってことは、犯人と争うこともなかったのかな」

ルカ「そうだろうな、まあこいつの場合は犯人と対峙したとて抵抗しそうな性格でもないしな」

美琴「……そうかも」

ルカ「……ホント、お人よしなやつだったよ」

美琴「それにしても、すごい出血量だね」

ルカ「ああ……地面にぶちまけてる血は他のところに散らされてる様子もねえ、死体が動かされたってこともないだろうな」

美琴「そうだね、綺麗な血だまりになってる」

ルカ「あくまで千雪はこの図書館の中で殺されたんだ」


コトダマゲット!【現場の血痕】
〔千雪から漏れ出た血の痕。腹から出た血液はその場に血だまりを作っており、ほかには散らされた様子もない。あくまで図書館内で千雪は殺害されたものと思われる〕

-------------------------------------------------
【選択肢が残り一つになったので自動進行します】
884 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:37:37.83 ID:qKk8P9Px0
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【死体を動かしてみる】


千雪の死体をしゃがみこんで調べていると、千雪の下に何かが敷かれるようになっているのに気が付いた。

ルカ「……これ、なんだ?」

美琴「どうやら本の一つみたいだけど……なんだか様子がおかしいね、明らかに死体で隠すように置かれてる」

ルカ「というより千雪が覆いかぶさったみたいな感じだな……ちょっと引っ張り出してみるか」


私と美琴は二人で少しだけ千雪の身体を押してみた。
ずるずると動くにつれ、本にかかっていた体重は軽くなり、やがてするりと抜き取ることができた。
だが、本はべったりと千雪の血が付着していて、もはや中を見ることも適わない状態。


美琴「……読めないね」

ルカ「わかるのはこの本の表紙の材質が厚紙だってことぐらいか……」

美琴「でも、この本は山積みになっていたところと少しずれた位置で下敷きになっていたんだし、何か意味があると思う」

美琴「千雪さんが自分の血でこの本を隠そうとした、とか」

(千雪が死の間際に隠そうとした本、か……)


コトダマゲット!【血まみれの本】
〔千雪の死体の下敷きになっていた本。血液にまみれた本は中を読むこともできそうにない〕


死体の近くで調べられるのはこんなところか。
さて、調査は俯瞰的に、情報は足で稼がないといけないな。
労力を惜しまず、時間の許す限りは調査を続けるとするか……

-------------------------------------------------

1.図書館内を調べる
2.花火大会の途中で抜けた人間への聞き込み

↓1
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/22(土) 21:52:18.64 ID:sTkvKzjy0
1
886 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 21:54:08.56 ID:qKk8P9Px0
1 選択
-------------------------------------------------
【図書館内を調べる】


図書館の中はなんだか最初にやって来た時とはかなり雰囲気が変わっていた。
あの荘厳とした本棚の数々は横倒しになり、本があちらこちらに散乱している。


美琴「……どうしたんだろう、これ」

ルカ「人の力でどうこうってレベルじゃねーな、こりゃ」

美琴「ルカ、フラストレーションがたまったときとか物に当たってなかった?」

ルカ「……」


……とりあえず、人の手によって引き起こされた事態ではないだろうな。
何か図書館の館内がこんな滅茶苦茶に荒れていることには何か原因があるはず。
それも考えておかなくちゃいけないだろう……

さて、どこから調べる……?

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1.入口付近
2.受付
3.あさひに聞き込み
4.二階

↓1
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/22(土) 22:01:49.98 ID:hDMjMvb/0
1
888 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:05:08.89 ID:qKk8P9Px0
1 選択
-------------------------------------------------
【入り口付近】

図書館に踏み入って以来、扉は開けっぱなしだ。
観音開きの扉は押して開いて入場するタイプ。要は入る時は押して入って、出るときは引いて出る形式だ。


美琴「……なんだろう、あれ」

ルカ「どうした? 美琴」

美琴「扉の上に、何か取り付けられてるの……ちょっと待って」


美琴が指さした先には何か機械のようなもの。
そう高い位置にはないが、私からすれば台が必要な高さ。
美琴はそれに背伸びもほとんどしないまま手を届かせてみせた。

ピッ

美琴「……あ、点いた」

ルカ「んだそれ、カメラか?」

美琴「……うん、そうみたい。見て」


美琴が不慣れな手つきで私に手渡してきた。
美琴は昔からそうだ。
家電だなんだのを買って来ては私に初期設定を任せてきて、そのくせまるで使いやしない。
そもそもほとんど家に帰らないって言うのに、性懲りもせず買ってくるんだから付き合わされるこっちの身にもなってほしい。
889 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:06:22.33 ID:qKk8P9Px0

ルカ「チッ……しょうがねえなあ……」


美琴の代わりに操作する。
カメラはどうやら感応式の設定が為されており、誰かが入退室を行った際に写真を撮影する仕組みになっているようだ。
写真は一日ごとに消去されるため、今残っているのは今日の分の出入りのみ、ということになるらしい。


美琴「何枚か撮影されてるね」

ルカ「ああ、そりゃ千雪がここに入った分は間違いなく撮影されてるだろうからな……」

美琴「とりあえず、見てみようか」


美琴に促されるままに写真を開いた。
なるほど、確かに一枚目は千雪が図書館に入ってくるときのもののようだ。
表情はどこか強張っているようにも見えるが、先入観もあるだろう。


ルカ「どうやら千雪は一人でこの図書館にやってきたみたいだな」

美琴「途中で花火大会を抜けた時も一人だったよね」

ルカ「ああ、そのままここに来たと考えていいだろうな」

890 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:07:59.10 ID:qKk8P9Px0

そして、二枚目の写真に移る。


ルカ「……あ?」


だが、そこに映っていたのは意外な人物だった。


美琴「これって……【冬優子ちゃん】?」

ルカ「どっからどう見ても、あいつだな……なんでこんな図書館にわざわざ……?」


確かにぶりっ子女も花火大会を途中で抜けていたはずだ。
でも、あいつは同じユニットのギャル女のための薬を探しにドラッグストアに行ったんじゃなかったか?


ルカ「……もう一枚、あるぞ」


そして最後の三枚目。そこに映っていたのは、今度は退出するぶりっ子女の姿だった。


ルカ「……これが三枚目ってことはここから先出入りした人間はいないってことだよな」

美琴「うん、そうなるね」

ルカ「……」

美琴「あの子、図書館に何のために来ていたのかな」

ルカ「……さあな、でもあいつが私たちに嘘をついていたことだけは間違いない」

美琴「……」

ルカ「一応、この嘘について糾弾するのは裁判の時にしよう。今下手に刺激すると、現場を荒らされたりしかねないしな」

美琴「……うん、わかった」


コトダマゲット!【図書館の入退館管理カメラ】
〔図書館の入り口に設置されていたセンサー式のカメラ。利用者の入退館を感知して自動で写真を撮影する。千雪が入館する写真、冬優子が入館する写真、冬優子が退館する写真の三枚が撮影されていた〕

-------------------------------------------------
さて、他の所も調べるか……

1.受付
2.あさひに聞き込み
3.二階

↓1
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/22(土) 22:11:28.95 ID:sTkvKzjy0
2
892 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:13:32.30 ID:qKk8P9Px0
2 選択
-------------------------------------------------
【あさひに聞き込み】

前回の事件の時にも思ったが、こいつは年の割に肝が据わりすぎだろう。
千雪の死体を興味深そうにのぞき込んで、首を何度もうんうんと捻っている。


ルカ「おい、中学生」

あさひ「……」

ルカ「おい、聞いてんのか!」

あさひ「……」

美琴「ねえ、あさひちゃん」

あさひ「あっ、美琴さん! どうしたっすか?」

(なんでだよ……!)

美琴「事件の調査中にごめんね、何か話でも聞けたらなって思ったの」

あさひ「話っすか? でも、わたし、ずっと花火大会にいたんで、何も知らないっすよ?」

ルカ「私たちが聞きたいのはぶりっ子女とギャル女についてだ」

あさひ「ぶりっ子女にギャル女っすか……?」

美琴「ストレイライトの二人、途中で抜けちゃってたよね? その時に、あさひちゃんは何か聞いてないかなって思って」
893 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:14:29.86 ID:qKk8P9Px0

あさひ「ああ、そのことっすね。確か、愛依ちゃんが離脱したのはヘビ花火をやろうとしたときっす」

あさひ「火をつけようとしたところで、愛依ちゃんが体調悪くなったからってシャワールームのトイレに行ったっす。その時、冬優子ちゃんも一緒にいたっすね」

ルカ「体調が悪くなった、か」

美琴「確かに彼女、気が沈んでいるだけじゃなく、顔色も少し悪い気がするね」

あさひ「で、冬優子ちゃんはロケット花火をやろうとしたところで愛依ちゃんのために薬を取りに行くって抜けちゃったっす」

美琴「ふふ、友達想いなんだね、あの子」

ルカ「……お人よしって言うんだよ、そういうの」

あさひ「あの後結華ちゃんが一緒に遊んでくれたっすけど、冬優子ちゃんも一緒にやってほしかったっすー」


ストレイライトの二人が花火大会から離脱する際、常にこいつが居合わせていた。
こいつの証言はやつらのアリバイを語る上ではどうやら重要な意味を持ちそうだ。


美琴「ありがとう、あさひちゃん。いい話が聞けたよ」

あさひ「そうっすか? なら、良かったっす!」


……ただ、こいつを素直に信じ切っていいのか少し疑問だけどな。


コトダマゲット!【あさひの証言】
〔あさひは愛依と冬優子が花火大会を離れる際にその場に居合わせていた。愛依はあさひと冬優子に体調不良のためシャワールームのトイレに行くと告げて離脱。冬優子はあさひと結華に薬を取りにドラッグストアに行くと告げて離脱した〕

-------------------------------------------------
さて、他の所も調べるか……

1.受付
2.二階

↓1
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/22(土) 22:17:26.70 ID:Y6mzWeK+0
1
895 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:21:16.67 ID:qKk8P9Px0
1 選択
-------------------------------------------------
【受付】

図書館の一角には重厚なデスクが置かれ、その上には羽ペンと帳簿、そしてバーコードリーダーが置いてある。


美琴「借りるときはここで読み取って記録をつけてから持ち出すことになってるみたいだね」

ルカ「ふーん……美琴、お前はここ使ったことあるのか?」

美琴「いや、全然かな。時間があれば自主トレに充ててたから」

ルカ「だろうな、私も一緒だよ」


ざっと帳簿に目を通した限り、頻繁に利用しているのは中学生ぐらいのもので後はチラホラ別の人間の名前があるぐらい。
今回の事件とは特に関係もないだろう。


ルカ「特に手掛かりはなさそうだな、別の所行くぞ」

美琴「……」

ルカ「……美琴? どうした、何か気になるのか?」

美琴「ああ、うん。これなんだけど……」

ルカ「なんだそれ、【図書館利用規則】……?」

美琴「この図書館を使うときの決まりのようなものなんだけど、なんだか学校みたいだなって」

(学校、ねぇ……)


そういえばこの南国生活を取り仕切っているのも希望ヶ峰学園だって話だったか。
こんな状況になっている時点でその情報も信用できるかは怪しいが。


ルカ「まあ、ちょっと見るくらいはしておくか」

美琴「うん、ルールは破ったら怒られちゃうからね」

ルカ「ハッ……もうそんな歳じゃねーっての」


コトダマゲット!【図書館利用規則】
〔@図書館の本はみんなの共有財産です。大切に使いましょう。
A館内での飲食は禁止です。飲食物を持ち込む際はカバンに入れるようにしてください。
B館内ではお静かに。他の利用者の迷惑にならないようにしてください。
C本を借りる際は受付でバーコードを読み取り、その旨を記帳してください。
D一部の本は貸出禁止となっていますので借りる前に確かめるようにしてください。〕
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【選択肢が残り一つとなったので自動進行します】
896 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:23:25.29 ID:qKk8P9Px0
-------------------------------------------------
【図書館二階】

図書館の一階も滅茶苦茶だが、二階も相当だ。
この図書館は中央が吹き抜けな構造で、その手すりに覆いかぶさるように倒れている本棚がいくつもある。


ルカ「こりゃ、アホほど本も下に落下してるな」

美琴「千雪さんの死体のそばの本棚の山はここから落ちたものが積みあがったんだろうね」

ルカ「ハハ……後から直すったってキリがねーな、これじゃ」


足の踏み場もないような二階を慎重に進んでいくと、奥まったところに見なれない物体を見つけた。


ルカ「……あ? なんだ、これ」

美琴「弓……にしては形状が特殊だね」


弓を横に倒したようなものが、金属製の持ち手に取り付けられている。
よく見ると持ち手の部分には指をかけるトリガーのようなものがあり、右手で握るのにはうってつけの形状をしている。


ルカ「……これ、ボウガンってのじゃないのか?」

美琴「ボウガン?」

ルカ「弓矢が撃てる銃ってやつだよ、本物を見るのは初めてだ」


基本は普通の銃と変わらない。弾を自分でセットして、照準を合わせて撃つだけ。
その撃つだけ、をしたこともないから難易度はどれくらいの物かはわからないが。

897 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:24:14.19 ID:qKk8P9Px0

美琴「ちょっと私も触ってみてもいい?」

ルカ「おう、気をつけろよ」

美琴「……『BT-38』、これがこのボウガンの型番なんだね」

ルカ「あ? そんなの書いてたのか……細けぇとこまでよく見んな……」

美琴「どうやらこの型番と同じ型番の矢を使わないと撃てないみたいだよ」

ルカ「そりゃそうだろ、銃だって違う口径の弾を打つことはできないからな」

美琴「そうなんだ」

ルカ「そうなんだ、って……」


時々美琴は真顔で知れっと素っ頓狂なことを言う時がある。
中学生ぐらいの年齢で東京で一人過ごしてきたということもあって多少なり世間知らずな面もあるとは思うが、こちらからすれば少し不安になるものだ。


ルカ「……もしかして、気に入ったのか?」

美琴「銃を気に入るって何……おかしなこと言うね、ルカ」

ルカ「えらく長いこと触ってるからよ……特に何もないなら行くぞ、時間もそう余裕があるわけじゃない」

美琴「うん、わかった」


コトダマゲット!【ボウガン】
〔図書館の二階に落ちていたボウガン。型番は『BT-38』で、同じ型番の矢でないと撃つことはできない〕
-------------------------------------------------
【選択肢が残り一つとなったので自動進行します】
898 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:26:03.58 ID:qKk8P9Px0
-------------------------------------------------
【花火大会途中で抜けた人間への聞き込み】

今回の事件については、怪しいと思われる人間がかなり絞られている。
前回の事件で言う私……要は、事件中のアリバイがない人間だ。

花火大会から途中で抜けた人間、ギャル女とぶりっこ女。
そしてそもそも参加をしていない適当女と能天気女。
この計四人には、全員アリバイがない。
それぞれアリバイを検証すれば、おのずと真実は見えてくるはずだ。


ルカ「……おい、ギャル女」

愛依「……ルカちゃん、な、なに……? うちに……話……?」

ルカ「お、おう……おい、大丈夫なのかよ」

愛依「だ、だいじょぶ……ヤマは越えたから……」

(……ヤマ?)

美琴「愛依ちゃんが花火大会を途中で抜けたことについて、聞いておきたいの。いいかな?」

愛依「う、うん……でもうち、何も知んないよ?」

愛依「花火大会やってたら、途中で急にタイチョー悪くなっちゃってさ……そこからはずっとトイレにコモりっぱなし」

ルカ「終わるまで、ずっとか?」

愛依「ずっと……ホント、マジつらかったんだから……」

(この表情……嘘はついてねェか……)

美琴「ごめんね、しんどいところ無理やり話を聞いちゃって」

愛依「ううん、気にしないで……」

ルカ「……無茶はすんなよ」
899 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:26:56.31 ID:qKk8P9Px0

◆◇◆◇◆◇◆◇


ルカ「おい、話聞かせろ」

冬優子「ルカちゃん? どうしたのかな、そんな怖い顔して……」

ルカ「これは生まれつきだよ、悪かったな」

美琴「いま、皆のアリバイを聞いて回ってるんだけど冬優子ちゃんの話も聞かせてもらえないかな。冬優子ちゃんは途中で花火大会を抜けてたでしょ?」

冬優子「は、はい……でも、それは愛依ちゃんのための薬を取りに行ってたからで……」

冬優子「ふゆはずっとドラッグストアにいました、それだけですよ」

(……表情は崩れない、か)

ルカ「……」

冬優子「ルカちゃん、これでよかったかな?」

ルカ「……今のところはな」
900 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:28:56.53 ID:qKk8P9Px0

◆◇◆◇◆◇◆◇


(……と、あの二人の聞き込みに美琴を連れて行くのは危険か)

ルカ「おい、美琴。悪いんだけど、花火大会の会場に忘れ物しちまったみたいだからとってきてくれねーか」

美琴「え、何?」

ルカ「あー……ドリンク、ドリンクだよ。千雪のことで頭がいっぱいになっちまってたけど、急に喉が渇いてきやがった。私は今は千雪のそばにいてやりたいから、頼むよ」

美琴「……うん、わかった」


強引な言い分ではあったが、美琴は承諾してくれた。
図書館を出ていく背中を見送ると、私は二人のもとへ駆け寄った。


ルカ「おい、てめェら、話聞かせてもらうぞ」

雛菜「え〜、なんですか〜? 雛菜たちに何か用事〜?」

透「……え」

ルカ「事件の直前、何してたか話せ」

雛菜「そんな風に凄まれなくてもそれぐらい話しますけど〜」

透「……うちらはずっと一緒にいたよ。私の部屋で」

ルカ「……それは実質アリバイがないってことだな?」

雛菜「え〜! ひどい〜〜〜〜! 一緒にいたって言うのもちゃんとしたアリバイでしょ〜!」

ルカ「テメェらが大して仲良くもない他人同士なら、な。幼馴染同士という関係性がある以上庇い立てが生じる可能性もある、その証言じゃ信用できないな」

901 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:30:19.41 ID:qKk8P9Px0

透「あ、じゃあさ。立てる立てる、証人」

ルカ「証人?」

透「おーい、モノミ―」


適当女が宙に向かってそう叫ぶと、どこからともなく子供用靴を鳴らした時のような間の抜けた足音が聞こえてきて、やがてそいつは私たちの前に姿を現した。
……ぜえぜえと肩で息をしながら。


モノミ「はぁ……お呼び……はぁ……でちゅか……?」

ルカ「お前、モノクマみたいに瞬間移動とかできねえのか?」

モノミ「はぁ……本来は……はぁ……できたんでちゅけど……」

透「権限は奪われちゃったんだって、モノクマに」

ルカ「はぁ……」

ルカ「で、テメェらの証人ってのは、こいつなのか?」

雛菜「うん〜! ね、モノミは事件が起こる前、どこで何してた〜?」

902 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:31:52.93 ID:qKk8P9Px0

モノミ「はぁ……どこで……はぁ……何してた……はぁ……といいまちゅか……」

モノミ「はぁ……されてた……はぁ……っていうか……」

ルカ「……あ?」

透「こいつがさ、うちらを呼びに来たの。でも、行けないし、断ったんだ。そしたら無理やりにでも連れて行こうとするし」

雛菜「せっかくなら、この際モノミのこと調べちゃお〜って!」

モノミ「はぁ……おむつの中まで……はぁ……まさぐられまちた……」

ルカ「……」

ルカ「……まあ、わかった。お前らのアリバイには証人がちゃんといるってことだな」

雛菜「そうです〜、だから事件とは完全に無関係なんですよね〜」


疑わしさで言えばピカイチな連中だが、今回の状況を見るに無関係だということは覆しようもないだろう。
こいつらにかける容疑はない、他を当たるか。


コトダマゲット!【モノミの証言】
〔花火大会の最中、透と雛菜の説得に向かったところ逆に部屋で二人立ち合いの下監禁状態となってしまったので、透と雛菜は事件に関与することができない〕
903 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:33:13.67 ID:qKk8P9Px0
-------------------------------------------------

適当女と能天気女に聞き込みを終えたタイミングで、丁度美琴が帰ってきた。
手には新品のボトル、そして何か怪しいアルミ製の紙。


ルカ「サンキュー美琴……ところで、そっちの手に持ってるのは何だ?」

美琴「ああ、うん。ドリンクがもうなさそうだったから、シャワールームの冷蔵庫からボトルを拝借したんだけどね、その脇のゴミ箱にこれが捨てられてたの」

ルカ「ちょっと貸してみ」


アルミ製のそれは、紙というよりは袋といった形状をしている。よくカップ焼きそばなんかにある、マジックカットで開封して中の粉を取り出すそれだ。
でも、袋の外側に書いてある文字は『ふりかけ』なんかじゃない。


ルカ「……『ヨクデール』、これ、下剤みたいだな」

美琴「下剤……?」

ルカ「ああ、平たく言えば便秘薬だ。出すもんが出ないときに使う奴だな、健康な状態で使えば腹を壊すもとになる」

美琴「誰か、便秘だったのかな」

ルカ「さあな、もし仮にそんな奴がいたとしても聞くのはデリカシー的に問題ありだな」


コトダマゲット!【下剤の残りかす】
〔シャワールームのごみ箱に捨てられていた袋。中には粉末の下剤が入っていたものと思われる〕

904 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:34:06.91 ID:qKk8P9Px0
-------------------------------------------------

ルカ「大体の調査は終わったな……今回の事件の輪郭も、少しずつだけど見えてきた気がする」

美琴「……ねえ、ルカ」

ルカ「あ? どうした、何か気になることでもあるのか?」

美琴「気になる、というか……私たちはこの事件について大事なことをまだ知らないんじゃないかな」

ルカ「大事なこと……?」

美琴「【動機】、モノクマの用意していたあのゲーム、全く触れていないでしょ?」

(……!)


美琴が口にしたのは、つい数日前にモノクマの持ち込んだゲームの筐体。
あの時、全員で口約束だがプレイはしないという方針で固まったはずだ。
だが、こうして事件が起きてしまった以上、それは守られなかったことを意味するだろう。
成程確かに、この事件を追う上で無視することはできない要素ではある。


ルカ「やってみるか、【かまいたちの真夜中】」

美琴「うん、それがいいと思う」


犯人が千雪の命を奪ったその瞬間、何を考えていたのか。
それを私たちは知る必要がある。

私たちは足早に中央の島のジャバウォック公園へと向かった。

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905 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:35:17.37 ID:qKk8P9Px0
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【中央の島:ジャバウォック公園】

公園の広場の中央にぽつんと置かれた筐体。
特にコードを引いている様子もないのに、どうやって動いているというのだろう。


美琴「ルカもプレイはしたことないんだよね?」

ルカ「おう、あの約束は一応守ってたからな。というかあんまり興味もなかったからなんだけど」

美琴「そうなんだね……特にお金とかも必要じゃないみたい。早速プレイしてみようか」


適当に手元のボタンを押すと、ゲームはすぐに起動した。
真っ暗な画面にプロダクトメッセージがポップアップする。


『MONOKUMA SOFT
Licensed by Monokuma Inc.
DANGANRONPA』

『注意
 この作品はノンフィクションであり、実在の人物団体とは一切関係あります』


ルカ「……あ?」

美琴「なんだか妙なメッセージだね……」

906 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:36:38.56 ID:qKk8P9Px0

『かまいたちの真夜中
 Press any button』

ルカ「これがタイトル画面か……なんだかおどろおどろしいな」


薄っすらと暗い背景に赤いドロドロと気味悪いフォント、いかにもな雰囲気が漂っている。
どこかで聞いたようなタイトルだとは思ったが、BGMまで妙なデジャブを感じる調子と来た。


美琴「尻込みしてる時間はないんじゃない?」

ルカ「誰が尻込みなんか……とりあえずやってみるぞ」


美琴にせかされるままボタンを押した。
確かに今の私たちに時間はない。どんなゲームなのかはわからないが、この中にヒントがあるというのなら、早急にクリアしなければならないのだ。

しばらくのロード画面を挟むと、シナリオが始まった。
どうやらこのゲームは学校に監禁された女子高生たち数人を登場人物としたホラーサウンドノベルゲームらしい。
ボイスはついてはいないが、状況に応じたSEやBGMがついており、それを読み進めていくことで物語が展開していく。
画面上には実際の学校を撮影したかのようなリアルな写真が映り、人を象ったであろう薄紫の影がその中に現れる。
907 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:38:06.62 ID:qKk8P9Px0

『この学園で過ごして、既に何日もの時間が過ぎた。外からの助けも来ない毎日、衰弱していく肉体、すり減らす精神。E子が体調を崩すのも無理がないことで、私たちは今日の朝食会でも彼女を心配する話題で持ちきりだった。

A子:D子? ど、どうしたの……?
D子:A子ちゃん……あのね、E子ちゃんの病気がまた悪化しちゃったんだ……
G子:つい先ほどD子がまた、朝食を持って行ってくれたんだ。しかし、どうやらE子の病状が芳しく無いようでね……
A子:そうなんですか……
D子:うん、E子ちゃん咳が止まらないみたいで……F子ちゃんも厳戒態勢だって言ってた……
B子:昨日はだいぶ元気そうだったのにね……
A子:だいぶ良くなったと思ってたんだけど……こればっかりは仕方ない……のかな
C子:お体のこと故、C子たちに何もできないのが大変歯がゆい思いです……
D子:咳が止まらない中で絞り出した『ありがとう』の一言で涙を禁じえなかったよ……うぅ……E子ちゃん……
A子:D子……

食堂の机に突っ伏してすすり泣くD子。D子とE子は双子の姉妹なんだもん、ただでさえ現実離れしたこの状況で、心のよりどころである姉が病魔に侵されているんじゃ気が気でないはずだ。でも、私たちに医学の心得がある人間なんていない。ただ彼女に寄り添って、肩に手を乗せることしかできない、無力な自分を呪った』


美琴「……」

ルカ「どうした? なんだか考え込んで」

美琴「……この登場キャラクター達、なんだか見覚えがある気がするの」

ルカ「はぁ?」


美琴は私のプレイを後ろから覗きながら、何か訝し気に首をひねった。
心当たりがあるが、それが何だかわからない。その居心地の悪さに喘ぐようなしぐさだ。
とはいえ、私からすればその感覚もさっぱりだ。
気にせずに進めていくことにした。
908 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:39:12.45 ID:qKk8P9Px0

『数時間後、D子の部屋。
D子は自分のデスクの引き出しに忍ばせていたそれを手に取ると、部屋の照明に透かしてみた。
銀色の刀身は照明の光をギラギラと反射させ、眩い。
これから、肉にその刃先を突き立てて、鮮血に汚れようというにはあまりにも美しすぎる輝きだった。
その輝きに思わず大きな唾を一つ飲み込み、D子は独り言つ。

D子:……ごめんね、E子ちゃん
D子:D子ってばダメな妹だ、お姉ちゃんに相談もしないで勝手に突っ走って……
D子:でもね、こうするしかないんだ
D子:他のみんなを殺さないと……ダメなんだ

D子の胸にあるのは諦観、そして決意だった。
八方ふさがりと言うほかない彼女自身の状況を嘆き、喚き、苦しみつくした末での決断。
もはや彼女の心にそのストッパーはない、崖の下から転げ落ちるまで、力いっぱいにそのアクセルを踏み込むところまで彼女は進んでしまっていた』


ルカ「……おいおい、殺すとか言い出したぞ、こいつ」

美琴「……どうやら、正常な判断ができない状態にあるみたいだね」

ルカ「でも、前後の文脈がすっぽ抜けてるからまるで状況が読めねーぞ? なんで急にこいつは殺すなんて話になったんだよ」

美琴「……これがもし、彼女なのだとしら」

ルカ「あ? 美琴、また考え事か?」

美琴「ううん、気にしないで、続けて」
909 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:41:01.03 ID:qKk8P9Px0

『私は朝食会を終えてからは他の人と交流をしていた。学園脱出の糸口を探すため、脱出のための協力を強固なものにするため。ただの時間つぶしに沿う言い訳をして、動いていた。そうでもしないと気がふれそうだったから。

A子:ふぅ……いったん自分の部屋に戻って、持ち物の整理でもしようかな

その瞬間だった。

C子:どっひゃあああああああああああ……!!!!

私の背後、寄宿舎でなくその向こう側、学校の方から耳を劈くような悲鳴が聞こえてきた。
恐怖の中に絞り出したにしてはやけに澄んでいるその声の持ち主は、きっとC子の物だろうとすぐに見当はついた。
こんな声を上げるなんてただ事ではない、気が付けば私は声のした方へ走り出していた』


ルカ「もしかして、さっきのD子が動き出したのか?」

美琴「そう考えるのが自然だよね……あの子、かなり危うい状態だったみたいだから」

ルカ「……本当、随分と悪趣味なゲームだな」
910 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:42:16.27 ID:qKk8P9Px0

『C子:A子さん……
 B子:A子! C子が……C子が……!
 A子:C子、大丈夫……? な、何があったの……?

 私の問いかけにC子は言葉を詰まらせた。
説明の仕方がわからない、といった調子で口をまごつかせるC子に、B子が手元のカメラを見せることを提案する。
私は二人からカメラを受け取って、そのモニタに視線を落とした。

____なんだこれは。

全身紫がかったてるてる坊主のような奇妙な存在。
その口元は口裂け女のように吊り上がり、その割れ目からは牙のようなものをのぞかせている。
怪物と形容するにたる、恐ろしい見た目のものがそこに立っていた。
その手には刃物らしきものが握られており、廊下の明かりを反射して不気味に光っている。

A子:C子……? これは……?
C子:はい、C子はこちらの……怪物さまに襲われたのでございます……』


ルカ「もしかして、こいつが『かまいたち』なのか……?」

美琴「ゲームのタイトルがここで回収されるんだね」

ルカ「なるほど、D子が殺人鬼となった時の姿が『かまいたち』ってわけだ。このゲームはその『かまいたち』が人を襲いまわるまでを描いた作品になるんだな」

911 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:44:17.47 ID:qKk8P9Px0

『B子:こ、怖かったよねC子……
 A子:だ、大丈夫なの?! ケガとかは……?
 C子:幸い、直接的に斬られたり刺されたりなどは……ただ、もみ合いになった際に足をくじいてしまいました……

C子の足首辺りは青あざのようになっておりなんとも痛ましい。
咄嗟のことでパニックだったんだろう。

C子:転んだ状態ではとどめを刺されてしまいかねない……そこで皆さんをお呼びしたのです……
A子:それであの絶叫だったんだ……C子にしてはすごい声量だったもんね……

C子は今現在も肩を震わせ、恐怖におびえている。
命を奪われなくてよかったと安どする一方、道の存在がこの学園内をうろついているという恐怖感が私の中にもふつと湧いてきた』


『すぐにG子も、C子の声に反応して集まってきた。
説明するよりも見たほうが早い。私自身がそうされたように、G子にもすぐにその写真を見せた。

G子:な、なんなんだい……これは……
A子:どうやらC子がこの写真の人物に襲われたようなんです……ほら、見てください……刃物を握っています
G子:本当だ……これはまずいね……! この人物は、今どこに?
C子:C子が声を上げると、すぐに階段に向かい廊下を走って逃げていきました……
G子:……! 大変だ……F子は今、保健室でE子の看病中だ。犯人の逃げた方向と一致している……!
B子:そういえば、ほかにもいない人がいるよ……!
A子:急ぎましょう、C子も保健室まで一緒に来て!
C子:はい、お供いたします……

事態は緊急を極めた。
C子を襲った人間が、もし他の人間を襲うことがあれば、学園内に血が流れるどころでは済まない事態となる恐れさえある。
鼓動は自然と早まり、体は熱を帯びた。』


ルカ「E子にF子、最初の朝食会の時に出てきた名前だな」

美琴「E子は病気で倒れていて、F子がその看病をしているんだったね」

ルカ「で、不審者はその二人がいる方面に逃げていったのか」

美琴「……無事なのかな」
912 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:45:28.10 ID:qKk8P9Px0

『急いで保健室の扉を開けると、F子はキョトンとした様子で私たちを出迎えた。

F子:あれ……みんな、どうしたの? またお見舞いに来てくれたのかな……
G子:F子、無事かい?!
F子:うん……G子さん、心配してくれてありがとう……?
B子:まだ安心できないよ! 不審者を捕まえないと!
F子:あ、あの……何か、あったのかな……
A子:F子さん、先ほどC子が何者かに襲われまして……
私たちがC子の捻挫痕を見せるとC子は血相を変えて保健室の奥から救急箱を持ち出した。
F子:C子ちゃん……?! い、急いで治療しないと……!!
F子:ど、どうしよう……湿布……テーピングもした方がいいかな……
G子:F子……C子の治療も存分にしてくれて構わないが……その、不審な人物を見かけたりしなかったかい?
F子:え……?
C子:細かな説明は、こちらをご覧くださいませ……

C子のカメラに映った、あの不審者。
F子は即座に私たちと恐怖感、不安を共有したらしく、震え上がるようにした。

A子:この不審者が廊下を抜けて、階段の方に行ったらしいんだけど、何か見なかったかな?
F子:……あ!
G子:何か思い当たることでもあるのかい?
F子:うん……ついさっきなんだけど……誰かが思いっきり勢いよく階段を駆け上がるような音が、聞こえた気がするんだ……
B子:それだよ! 不審者は二階に逃げたんだ!
A子:急ぎましょう、今なら不審者を捕まえられるかも!
C子:あ……
G子:C子は無茶をしちゃだめだ。F子、頼めるかい?
F子:うん……いってらっしゃい……!

私たちは手負いのC子を保健室に預け、不審者の後を追うことにした。
Fこの証言通りなら不審者は上の階に行ったことになる。この学園にある階段は廊下の突き当りのそれだけだから、逃げ道はないはずだ。』


ルカ「なんだかきな臭い流れになってきたな」

美琴「一応二人は無事だったみたいだけど、不審者の動向がつかめないね」

ルカ「これ、どうなるんだ……? D子もずっと出てきてねーし……ここでC子とF子が離脱するの、すげー嫌な予感がするんだけど」

913 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:48:23.24 ID:qKk8P9Px0

『A子たちを見送ると、C子は改めてベッドに腰かけて、捻った足首をF子に差し出した。
F子は捻挫の痕を確かめると、落ち着いた口調で安心の言葉を持ち出した。
 
 F子:大変だったね……C子ちゃん……
 C子:はい……あまりに突然のことで、動転してしまいました……
 F子:少し捻っちゃっただけみたいだから、動かさなければすぐによくなるよ……!
 C子:はい……F子さん、ありがとうございます……
 C子:申し訳ありません……大変な苦心をされているときに……

C子が口にしたのは、F子が看病をしているE子のことだろう。
つい先ほどからもずっと病室では彼女の咳が鳴りやまない、病状は良くないんだろう。
そして、面倒を見続けているF子の顔にも少しばかりの疲労が見て取れた。
そんな状況下で足首を捻ってしまったことにC子は少しばかりの罪悪感を感じてならないのである。

 F子:ううん、気にしないでほしいな……
 F子:みんなが健康で、元気でいてくれることが一番だから……
 F子:そのために、頼ってくれることが……嬉しいんだ……
 C子:F子さん……痛み入ります……

F子はC子の恐縮した様子に、笑顔で事も無げに答えた。
きっとF子からしてもこれは本心なのだろう。彼女が超高校級の保健委員と呼ばれるにたるのは、この博愛の精神、そしてホスピタリティからなのだ。

と、その時だった。
廊下に接するドアの窓に何か影が映ったかと思うと、その向こうからガタッと大きな物音がした。

 F子:今の……?
 C子:F子さん……! もしやすると……先の不審者かもしれません……
 F子:不審者さんは、上の階に逃げたはずだよね……? 誰なのかな……

914 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:49:00.18 ID:qKk8P9Px0

俄かに走る緊張。
今この場にいるのは、夜通しの看病で疲労している人間、手負いの人間、そして病人だけ。
刃物を持った不審者相手に抵抗する術など持たない。

 C子:鍵を、閉めましょう……!
 F子:う、うん……!

出来るのは、扉の鍵を閉めて侵入を拒むことだけ。
この学園では鍵のかかった扉を破壊することは禁じられている。
鍵をかけるコトさえできれば、少なくとも時間稼ぎにはなるはず。その間に他の人間が戻ってきて助けてくれるかもしれない。
そんな淡い期待だった。

でも、忘れていた。
今この部屋に、健康な状態の人間は一人としていない。
俊敏な不審者よりも先に動けるはずなどなかったのだ。

ガラララッ

???:ミツケタ』


ルカ「……おい、これ……そういうことなのか……?」

美琴「『かまいたち』がC子とF子そしてE子を襲った、そうなるんだろうね」

ルカ「でもどうなってるんだ? 不審者の野郎は上の階に逃げたんじゃ……」

美琴「……どこからこの不審者はやってきたんだろうね」

ルカ「それにしても、これはまずいだろ……あいつは刃物を持ってる……」

美琴「……早く続きを読もう」
915 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:49:55.51 ID:qKk8P9Px0

『ピピピピピ……

G子:出た! あいつだ!

学園中に響き渡るG子の叫び声。
私たちは不審者の後を追って、二手に分かれて調査をしていた。
私はB子と一緒に学園の二階、そしてG子さんは三階だ。
G子さんが声を上げたということは、不審者は三階に潜伏していたことになる。私たちは慌てて階段の方へと向かった。

G子:急いでくれ、階段を既に下っていった!

私たちが階段についたときには既にその声が響いていた。
不審者は随分と足が速いらしい、既に追跡を逃れて階下に逃げ込んだようだ。

ここで逃がすわけにはいかない、私とB子は目くばせをして、すぐにその後を追って一階へと降りた』

916 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:50:32.04 ID:qKk8P9Px0

『ピピピピピ……

階段を駆け下りると、一つ目につくものがあった。

A子:保健室の扉が、開いている……?

さきほどF子さんと別れた時に確かに閉めたはずの扉が開いている。
不審者が校内に潜伏している以上は、F子たちが自ら危険に身をさらすはずもない。
この扉を開けたのは、“別の誰か”ということになる。

犯人の動きはある程度掴めている。
B子を襲った後三階へと逃げた犯人は、潜んでいたところをG子さんに目撃されて一階へと逃げてきた。

なら、この扉を開けたのは……

A子:まさか……!!
B子:A子!

まだ間に合う。そう思っていた。
だって事件はまだ起きている真っ最中。私たちはみんなその中心にいる。
だから頑張ればどうにでもなる、防げるはず。

____本気でそう思っていた。

だから、この鼓膜を破りそうなほどに早まる鼓動を止めたくて……
保健室を覗き込んだんだ』


ルカ「……」

美琴「……」

917 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:51:54.20 ID:qKk8P9Px0





『【保健室の中には、腹部の刺し傷から大量の出血をして息絶えるE子の姿があった】』





ルカ「……ッ!」


そのモノローグとともに、これまでの背景と同じように実写の写真が浮かび上がってくる。
ただ違うのは、今回はそこに人の姿がはっきりと映っているということ。

___モノローグの文章と同じように、腹部から大量に血を流して、息絶えている人の姿が。



しかも、その死体は……283プロダクションのアイドル・【大崎甜花】のものだった。


918 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:52:49.24 ID:qKk8P9Px0

ルカ「はぁ……!? な、なんだよ……これ……」

美琴「甜花ちゃん……?! ど、どうして……!?」


目の前に突如として現れたよく知る人物の死体写真、それに戸惑い声を上げている最中にも拘らず、ゲームは無関係に進行していく。
エンディングのスタッフロールが、物悲しいBGMとともに流れていく。
制作者・楽曲提供なんてデタラメな部分もあったが、動揺に呑まれる私たちをさらに揺さぶる文言がやがて姿を現す。
919 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:53:58.22 ID:qKk8P9Px0

『 CAST
    カザノヒオリ
          ハチミヤメグル
    シラセサクヤ
    ユウコクキリコ
    オオサキアマナ
    オオサキテンカ
    モリノリンゼ 』
920 :919のCASTが一部ズレていますが書式の問題なので特に意味はないです ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:55:51.31 ID:qKk8P9Px0

そこに在ったのは、283プロの人間の名前。
しかも、ついさっきの死体写真の大崎甜花をはじめとしたこの島にいない人間の名前ばかりだった。


美琴「やっぱり、そうだったんだ……」

ルカ「美琴?」

美琴「登場キャラクターの口調とか、関係性とかが283プロのみんなによく似ていると思ったの……それに、ゲームの開始時のメッセージ。このゲームはノンフィクションだって言葉……もしかして、この事件は本当にあったものなんじゃないかな」

ルカ「はぁ……?! お前ら、この南国生活よりも前に殺しあってたって言うのかよ!」

美琴「……わからない、私たちには記憶がないから」

ルカ「……マジかよ」


とんでもない秘密を知ってしまった。このゲームは、ただの娯楽なんかじゃない。
失われた記憶の中にある禁忌を孕んだ、パンドラの匣。


ルカ「なあ、今の被害者の大崎甜花って……千雪のユニットメンバーだったよな」

美琴「うん、そうだよ」

ルカ「そいつがE子なんだとしたら、姉妹であるD子って大崎甘奈ってことになるよな……?」

美琴「……」

ルカ「あいつら、姉妹で殺しあったってことなのか……? それだけじゃねえ、C子とE子も……大崎甘奈が手にかけて……?」

美琴「あのゲームを見る限りは、そうなるね」


俄かには信じがたい事実だった。
というか、実際今も現実である心地はまるでしていない。
ただモノクマというのはあんなにデマカセばかりであるくせに、こちらの不都合になることばかりは嘘をつかない。
その点から見るに、あの『ノンフィクション』という言葉には不吉な予感を抱いてならないのだ。

921 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:56:58.25 ID:qKk8P9Px0

美琴「アルストロメリアの二人が深くかかわる事件……千雪さんの死にも何かしら関与はしていそうだね」

ルカ「……ああ、犯人はきっとこのゲームをプレイして、それで……」


と犯人への導線が見えかけたその時だった。
目を離していた筐体から妙に高いSEが鳴り響き、慌てて視線をそちらに移す。
エンドロールもその全てが終わり、画面上には『END』の文字が出ていた。


ルカ「……あ?」


かと思うと、その左側にぼんやりと白い文字が浮かび上がってくる。

『Normal END』


ルカ「ノーマル、エンドだぁ……?」


どうやら今の展開はただの幕引きではないらしい。
他にも種類ある中のひとつにたどり着いただけ、“通常”の終わりということは“本当”の終わりも存在しているということだ。


ルカ「これで終わりじゃねえってのかよ……!?」

美琴「ルカ、もう一度やり直そう。このゲームには私たちの知るべき真実がきっと隠れてる」

ルカ「でもどうやって別のエンディングに行くんだよ、ノベルゲームで選択肢も特にない、ただの一本道だったんだぞ!」

美琴「それは……」

ルカ「クソッ、なんだってんだ……このゲームは!」

922 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:58:22.84 ID:qKk8P9Px0

キーンコーンカーンコーン……

『浦島太郎って知ってるかな。妙な正義感にかられた漁師の男が亀を助けて、そのお礼に改定の竜宮城で色ボケしちゃう話なんだけど、彼が惚けている間に地上では700年も時が過ぎちゃうんだ』


『世界に絶望した彼は、お土産に持たされた玉手箱を開けて、その煙を吸い込むことで老人になってしまう。それがみんなもよく知る終わりだよね』


『でも、このお話には続きがあって、彼はその後に鶴になっちゃうんだ。そのまま彼は千人が住むとされる蓬莱山っていう理想郷を目指す旅に出るっていう夢と希望のある終わり方なんだよね』


『じゃあなんでそれが童話ではカットされてるかって言うとね?』


『そんな理想郷、存在しないって大人たちはみんな知ってるからさ。まともな教育も受けてない低学歴の浦島太郎は分からなかったけど、この世界に救いなんて本当はないんだよ。過ぎた時間を埋めることなんてできやしない、彼がやったのはただそこからの逃避なんだ』


『オマエラは過ぎた時間、取りこぼした真実、犯した失態から逃避したりするなよ! いくら嘆いても返っては来ないんだからね!』


『それじゃあモノクマロックの前に集合! 時間の流れも忘れちゃうような壮絶なスペクタクルへとご招待だよ〜!』

923 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 22:59:25.77 ID:qKk8P9Px0

まるで私と美琴の動向を見張っているかのようなタイミングでのアナウンス。
一度でも事件前にこのゲームに触れていれば、そう思わずにはいられない悔しさがこみ上げる。
だが、悔しいがモノクマの言うとおりだ。取りこぼした真実を嘆いていても、それが戻ってくることはない。
私たちはその事実をしかと受け止めて、次にできることを探さねばならない。


ルカ「美琴、仕方ねェ……行くぞ。今手元にある武器で戦うしかねえんだ」

美琴「うん、そうだね」


私たちのコロシアイ南国生活の前にあったかもしれないコロシアイ。
ぼんやりと浮かび上がった可能性とそれに対する恐怖と好奇心。
それを必死に抑え込むようにして、私たちは公園を出た。


コトダマゲット!【かまいたちの真夜中】
〔モノクマが今回の事件の動機として用意したゲーム。ノンフィクションのゲームであると銘打ってあり、ゲーム中では283プロの人間によるコロシアイが収録されていた。ルカと美琴のプレイではノーマルエンドにしかたどり着けなかった〕

924 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:00:42.40 ID:qKk8P9Px0
-------------------------------------------------
【中央の島:モノクマロック】

相変わらずこの岩山には見慣れない。
前回の裁判で突然姿を現したかと思えば、中には巨大なエレベーターが通っていて、その先には学級裁判場が広がっている。
予算がいくつあっても間に合う代物ではない。
私たちの今おかれている非現実的な状況を体現しているのがこのモノクマロックなのだ。


夏葉「ルカ、美琴……お疲れ様、捜査はまとまった?」

ルカ「……そんな顔に見えるか?」

夏葉「ご、ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの」

ルカ「ハッ……」


小金持ちをあしらって私は近くのヤシの木にもたれかかった。
まだ思考がまとまらない、今回の事件において有力な容疑者は絞られてはいるものの、あのゲームの情報がそれを邪魔する。
どちらともつかない思考のおぼつかなさが焦りとして私を襲う。

925 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:01:45.27 ID:qKk8P9Px0

冬優子「愛依ちゃん、大丈夫? 無理はしちゃ、ダメだよ?」

愛依「うぅ……なんとか、第二のヤマも超えたから、いける……はず」

あさひ「……」

恋鐘「前回もやったとけど、なんでこう夜にばっかり裁判なんやろ……眠気もあって思考がまとまらんたい……」

摩美々「恋鐘は目が覚めてても大して変わんないでしょー」

結華「こらこら……それは犯人に文句案件だね、こがたん」

果穂「あたし、今回は自分で調さしました……あたしもいっしょに、最前線でたたかいます!」

夏葉「ええ、頼もしいわね果穂。あなたの冴えた推理、聞かせてもらうわよ!」

智代子「果穂はえらいね、こんな時なのにちゃんと正面から立ち向かうことができて。……わたしは、まだまだだなぁ」

透「二回目、やるんだね」

雛菜「透先輩、緊張してる〜?」

透「緊張てかさ、後悔」


今回の事件は、なんとしても私自身の手で決着をつけたい。
その思考が根底にあったことは否定しない。
桑山千雪という人間から受けた影響は、この中では私が一番大きいだろうから。
それに報いたいという衝動だけは、否定しちゃならないんだ。

926 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:02:53.18 ID:qKk8P9Px0

だが、時間は待っちゃくれない。
生き残った13人全員が海岸に集うと、すぐにそれは始まった。

ゴゴゴゴゴゴゴ……

内臓の内側から揺さぶるような地面の振動が合図。
顔を持ち上げると、モノクマの岩石像からちょうどエレベーターが射出されるところだった。


果穂「みなさん、行きましょう! 犯人さんとの真剣勝負、ぜったいに勝って帰らないと!」

あさひ「果穂ちゃん、やるき十分だね!」

果穂「はい! 千雪さんのためにも、負けられないです!」

(……気持ちは同じ、ってか)

透「しゃー、かますかー」

雛菜「透先輩、今回もやっちゃって〜!」

愛依「透ちゃん、前回そんなかましてたっけ……?」

摩美々「むしろにちかにかまされた方だと思うケドー」

927 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:04:11.26 ID:qKk8P9Px0

次々とエスカレーターに乗り込んでいく。
巨大なモノクマ像に飲み下されるような見た目のこれは、やっぱり不快だ。
ただ、もっと不快なのはこの期に及んで尻込みしようとする足の震え。
悟られないように表情だけは取り繕ったが、張本人の自分が一番わかる。


ルカ「……知ったことか」


だが、そんな感情は無視をする。
私は私のやりたいようにする、そのための障壁はすべて乗り越える。
たとえ、自分の感情であってもそれは同じことなのだ。
恐怖を感じてしまうなら、それ以上に奮い立たせてしまえばいい。
頬をぴしゃりと叩いて、無理やり足を動かした。

私たち全員がモノクマロックに飲み込まれると、エスカレーターは収納され、エレベーターが起動した。
928 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:05:23.03 ID:qKk8P9Px0
-------------------------------------------------
【モノクマロック内部:エレベーター】

ゴウンゴウンと音を立て下っていくエレベーター。
あちらこちらで情報共有に勤しむ声もそれに交じって聞こえてくる。
私はそれに混じることはせず、隅で壁にもたれかかっていた。

乗り込んでしまえば、不思議と恐怖は感じなかった。
もう逃げ場がない、自分がどうしようともエレベーターでその場所に運ばれてしまうと知っていたからだろうか。
ある種の諦観的な反応が、かえって私の気持ちを落ち着かせていたように思う。
それくらいに私は静かに、穏やかに、到着の時を待っていた。

自分でも、その凪は少し不思議だった。
千雪を殺されたことに対して憎悪に燃えるとか、悲嘆にくれるとか、反応はいくらでもあったのに、それをしなかった。
でも、この凪はきっと私が千雪のすぐそばにい続けたからこそなのだろうと思う。
千雪は自分が殺されたとて、遺された仲間にそんな反応をされることを良しとしないだろうことが容易に想像つく。

むしろそれで自分の胸を痛めてしまうだろう。
だから、そういうのは全部後だ。
今は私は、私にできることをする、ただそれだけだ。


美琴「ルカ……生きて帰ろうね」

ルカ「当たり前だ、勝つぞ」


長い長い降下の果てに、エレベーターはたどり着いた。
命を懸けた騙しあいの舞台、学級裁判場に。


チーン!

929 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:06:41.08 ID:qKk8P9Px0
-------------------------------------------------
【地下裁判場】

バビューン!!

モノクマ「お、来たね来たね! 首を長〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜くして待ってたよ!」

モノミ「あぁ〜〜〜〜〜! 首が長く伸びすぎて、あちしを締め付けてまちゅ! いやでちゅ! 拘束するならせめて麻縄にして! 生暖かくて気持ち悪いでちゅ!」

モノクマ「うるさい! 学級裁判に立ち会わせてもらえるだけでも幸運だと思うんだな! 世界には裁判の傍聴に行きたくてもいけない、貧困に悩む子供たちであふれてるんですよ!」

モノミ「貧困に悩む子供たちは多分裁判に興味なんかないでちゅよ! ユニセフもそこはノーマークでちゅ!」


エレベーターの扉が開いた先には、前回も踏み入れた学級裁判場。
七草にちかが命を落としたその舞台は、なんだか様変わりしていた。
ギラついた配色だった壁紙はなんだか柔和な色に差し替えられ、あちらこちらにぬいぐるみなどのファンシーなモニュメントが置かれている。
これから命のやり取りをするとは思えないほどで、余計に悪趣味だ。


930 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:07:41.18 ID:qKk8P9Px0

モノクマ「被害者の桑山さんに合わせて、キュートでハートフルな内装にしてみたんだ! あ、そこらへんのぬいぐるみは裁判が終わったら持ち帰ってくれてもかまわないよ!」

ルカ「……ふざけてんな」

愛依「モノクマがふざけてんのは前々からだけどねー……」

摩美々「まあ、裁判の進行には何も影響ないでしょー。私たちがやるべきことも変わらないんだしー」

透「見つけなきゃだね、犯人」

果穂「はい! ぜったいに見つけてみせます、しんじつはいつも一つ! ですっ!」

智代子「うんうん、今回も見つけられるはずだよ! みんなで協力すれば大丈夫!」

夏葉「ええ、犯人を除いても12人の仲間たちがいる……そのことを忘れないでちょうだい」

(12人の仲間たち……か)

(そういえば、前回の事件では七草にちかとは他に暗躍している存在、【狸】がいたが……今回はどうだ?)

(裏で事件をかき乱そうとしているあいつが、今回も関与しているのなら……12人の仲間を妄信しちまうのはまずいんじゃねーのか……?)

(……)

(……いや、ちがう。今これを言ったところで不安を煽るだけだ。私が生き抜くためにも、こいつらに余計な不安をかけるべきじゃねー)

(今は、この仲良しごっこの邪魔をしないことの方が大切だ)

ルカ「……やるぞ、なんとしても」


931 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:08:49.14 ID:qKk8P9Px0



桑山千雪、超社会人級の手芸部。




年の割に落ち着きがなくて、子どもっぽい言動も多くて、それでいてお節介だという面倒くさい女だった。
一人酒を飲んで寝ようとした夜に、あいつに出会ったせいで、私は散々に振り回されることになっちまった。
朝食会への参加、海水浴の協力、花火大会の運営……そして、美琴との復縁。
今こうして私が美琴と改めてタッグを組めたのはあいつの存在があってこそだった。
私たちはまだ大人になる必要なんかない、後先考えず感情をぶつけたっていい、子どものままでいい。
そう教えてくれなくちゃ、私は変わることなんかできなかった。

私はその恩に報いなきゃならない。
カミサマを、ただの“人”に戻してくれた、その恩に。

この裁判はあいつの弔い合戦である以上に、大きな意味を持つ。


932 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:09:48.68 ID:qKk8P9Px0

美琴「……ねえ、ルカ」

ルカ「なんだよ」

美琴「前回の裁判で、ルカが言ってくれたこと。今でも覚えてるんだ」

ルカ「はぁ? なんのことだよ」

美琴「にちかちゃんも最後に私たちを信じてくれた、だから私たちもまた信じなおせばいいっていう言葉」

ルカ「……それは、ほとんど七草にちかの言葉だろ」

美琴「でも、それに気づかせてくれたのはルカじゃない」

ルカ「……知らねー」


私は戦う。
私を救ってくれた千雪の死に報いるために。
千雪が託してくれたものをしっかりと引き継ぐために。
私の中に芽生えたそれを、枯らさないために。


美琴「信じてるよ、ルカ」


そして、もう二度と、何も失わないために。
933 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:10:49.69 ID:qKk8P9Px0





この命がけの学級裁判を、生き抜くんだ_________。




934 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:17:51.09 ID:qKk8P9Px0

という訳で本日はここまで。捜査パートを一気に進めさせてもらいました。
動機のゲームのせいで文量がかなり嵩みましたね……
現段階で犯人の特定もできるかもしれませんが、具体的な名前を出すなどは避けていただけると幸いです。

次回より裁判パートに移るにあたって、また前もって準備パートとしてモノクマメダル、希望のカケラの交換ができるように後で書き込みに参ります。
更新段階で何かしら交換する書き込みがあれば多数決、何もなければそのまま進行します。

また、既にこちらのスレッドが9割以上埋まってしまっていることもあるので裁判パートから次スレッドに移る予定です。
スレを立てたらこちらにもリンクを書き込みにまいりますので、続きはそちらでお楽しみください。
前シリーズではセリフを改変したスレタイにしていましたが、今回は主人公交代のこともあるのでナンバリングでスレは立てていきます。

明日1/23の21:00から裁判パートは開始予定です。
安価、コンマを用いるパートになりますので、是非とも気軽にご参加ください。
それではいったん、お疲れさまでした。
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/22(土) 23:22:40.43 ID:hDMjMvb/0
乙乙
936 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/22(土) 23:42:11.72 ID:qKk8P9Px0
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【裁判前準備パート】
☆裁判を有利に進めるアイテムを獲得することができます
 何か購入したいものがある場合は次回までにその旨を書き込んでください。
 指定が多ければ多数決、特に購入指定が無ければ何も購入せず裁判を開始します。

‣ルカの現在の状況
【現在のモノクマメダル枚数…69枚】
【現在の希望のカケラ…24個】


【自動販売機】
≪消耗品≫
【ヒーリングタルト】…5枚
〔誰の口にも合いやすいマイルドな口当たりの優しい甘さ。裁判中に使用すると発言力を2回復できる〕

【ヒーリングフルーツタルト】…10枚
〔フルーツをトッピングして満足感アップ。裁判中に使用すると発言力を4回復できる〕

【高級ヒーリングタルト】…15枚
〔国産フルーツを贅沢にトッピングした高級タルト。裁判中に使用すると発言力が最大まで回復する〕

【プロデュース手帳】…15枚
〔これは彼と彼女たちが過ごしてきた美しき日々の証。誰よりも理解者たる彼は、いつだってそばで戦ってくれる。裁判中に使用するとノンストップ議論・反論ショーダウンを無条件クリアする〕


≪希望のカケラ交換≫
【花風Smiley】必要な希望のカケラの数…20個
〔毎日の自由行動回数が2回から3回になる〕

【Scoop up Scrap】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時に、所持品の中で何が渡すと喜ばれるプレゼントなのか分かる〕

【霧・音・燦・燦】必要な希望のカケラの数…10個
〔発言力ゲージが+2される〕

【幸福のリズム】必要な希望のカケラの数…30個
〔他のアイドルとの交流時の親愛度上昇が+0.5される〕

【I・OWE・U】必要な希望のカケラの数…20個
〔発言力ゲージが+3される〕

【われにかへれ】必要な希望のカケラの数…20個
〔集中力ゲージが+3される〕

【ピトス・エルピス】必要な希望のカケラの数…20個
〔反論ショーダウン・パニックトークアクションの時コンマの基本値が+15される〕

【おみくじ結びますか】必要な希望のカケラの数…10個
〔集中力ゲージが+2される〕

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
937 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/23(日) 15:33:23.96 ID:cnX2/6Pb0
新規スレッドを立てました。
本日21:00〜予定の学級裁判はこちらの新スレで行います。

【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642918605/

なお、上記裁判前準備パートはまだ締めきってはいませんので何かありましたらお気軽にどうぞ。
特になにも無ければ購入することもなくそのまま裁判開始いたします。
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/29(土) 21:05:03.48 ID:dgcJBpTTO
今言うことじゃないけどオチが楽しみ
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/02/27(日) 18:25:41.94 ID:PVCV/hc10
はい
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:06:35.36 ID:4+2O+BxJ0
うめ
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:07:02.15 ID:4+2O+BxJ0
うめ
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:07:31.79 ID:4+2O+BxJ0
うめ
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:17:25.28 ID:4+2O+BxJ0
うめ
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:21:22.50 ID:4+2O+BxJ0
うめ
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:24:52.46 ID:4+2O+BxJ0
うめ
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:28:07.38 ID:4+2O+BxJ0
うめ
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:28:37.37 ID:4+2O+BxJ0
うめ
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:30:25.75 ID:4+2O+BxJ0
うめ
949 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:31:43.83 ID:4+2O+BxJ0
うめ
950 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:33:12.52 ID:4+2O+BxJ0
うめ
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:34:10.65 ID:4+2O+BxJ0
うめ
952 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:36:27.53 ID:4+2O+BxJ0
うめ
953 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:37:46.40 ID:4+2O+BxJ0
うめ
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:38:55.35 ID:4+2O+BxJ0
うめ
955 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:40:31.57 ID:4+2O+BxJ0
うめ
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:41:49.38 ID:4+2O+BxJ0
うめ
957 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:42:43.71 ID:4+2O+BxJ0
うめ
958 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:46:34.65 ID:4+2O+BxJ0
うめ
959 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:47:48.20 ID:4+2O+BxJ0
うめ
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:48:41.89 ID:4+2O+BxJ0
うめ
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:49:36.29 ID:4+2O+BxJ0
うめ
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:51:46.69 ID:4+2O+BxJ0
うめ
963 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:53:54.14 ID:4+2O+BxJ0
うめ
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:54:57.64 ID:4+2O+BxJ0
うめ
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 18:55:37.36 ID:4+2O+BxJ0
うめ
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