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【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】

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641 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 22:22:22.45 ID:Gmun8+E70

ルカ「……美琴」


思わず言葉が口を継いで出た。


美琴「……何?」


美琴と最後にちゃんとした言葉を交わしたのはあの裁判きり。今朝の朝食会で隣に座ったものの、会話という会話はしていない。


ルカ「……」


私が美琴に言うべき言葉とは何なのだろうか。解散した時からずっとそれを悩んでいた。
美琴という存在が私のそばを離れてから、ずっと私の人生は無価値だった。
何をしたって、感じるものはない。誰に応援の言葉をかけられても胸に響かない。
名前が売れて、アイドルとして成功を重ねても達成感も何もない。

今の私は、がらんどうだ。
斑鳩ルカ、カミサマという器でしかなくて、その中には何も入っていない。
これを満たすことができるのは、美琴だけだ。


ルカ「……あ、あのさ」


だから、私が言うべき言葉は本当は、分かり切っている。
七草にちかが死の間際にぶちまけたように、惨めに、図々しく、泣き縋って、自分の存在を無理やりにでも美琴に刻み付けるべきなんだ。
言葉らしい言葉なんて本当は必要じゃない。


____七草にちかに、ならなきゃいけない。

642 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 22:24:09.56 ID:Gmun8+E70

美琴「……」

ルカ「……ッ」


わかっているのに、何も出てこなかった。
必死に水面にそれを持ち出そうとしても、上から強い力で押し込められる。
顔を出して呼吸することもできない息苦しさに悶えるだけ。
肩で呼吸をすることが抑えられない。

私はまだ、七草にちかにはなれない。


ルカ「……」

千雪「ルカちゃん……」

美琴「……ごめん、夏葉ちゃん。もう大丈夫、行こうか」

夏葉「美琴……あなたはそれでいいの?」

美琴「……今はまだ、私も前に進めそうにないから」

夏葉「……ええ」


砕けそうな膝を抑えながら、二人の背中を見送ることしかできなかった。

643 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 22:25:20.71 ID:Gmun8+E70

千雪「……一回、深呼吸しよっか」

ルカ「……あ? お、おう……」


手芸女が私の背中をさする。それに合わせてゆっくりと息を吸い込み、吐いた。


千雪「……ルカちゃん、ゆっくりでいいの。私たちはまだそれだけの時間がある」

千雪「……そばにいるからね」


うざったい。鬱陶しい。
そういう言葉が沸き上がってきたけど、それは口には出さなかった。

ただ黙って立ち上がって、シャワールームを出た。
手芸女もまた、それに黙ってついてきた。


____本当に283プロの連中ってのはおせっかいなもんだ。


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【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.遺跡
2.ドラッグストア
3.図書館

↓1
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/12(水) 22:57:14.31 ID:UB6NHFZE0
1
645 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 23:14:25.50 ID:Gmun8+E70
1 選択

【コンマ31】

【モノクマメダル 1枚を手に入れました!】

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【遺跡】


島に入った時から嫌でも目に付くのがこれだ。数千年という時が流れでもしない限り、こんな風に木の根っこが建造物に絡みついたりはしないだろう。
天高く聳え立つそれは麓からでは全貌が見えない。


ルカ「とりあえず近づいてみるぞ」

千雪「あっ……待って!」


近づいてみたが、あるのは私の身長を優に超す大きさの扉。
しかもドアノブがあってそれをひねって開けるような単純な扉ではなく、もっと電子的で近未来的な……全く見なれない扉だ。


ルカ「……これ、なんなんだ?」


しかもその扉の表面にはデカデカと『未来』の二文字。
私たちの良く知る漢字で掘られている……ということは、この遺跡は私たちと同じ文化圏のものだということになる。それもまた妙な話だ。


千雪「扉を開けるには、そっちのパネルでパスワードを入力するみたいね」

ルカ「……なるほど、なんか適当に入力してみるか?」

千雪「ま、待って! それはやめた方がいいと思う……ほら」


手芸女が指さした先、そこには洋画に出てくる武装組織が振り回しているようなマシンガン銃、その銃口が私へと向けられていた。


ルカ「おいおい……マジかよ」

千雪「下手に失敗しちゃうと、その後がわからないから……皆にも近づかないように言った方がいいかなぁ……」

ルカ「遺跡だっつーのに電子盤だのマシンガン銃だの近未来なのか古代なのかどっちなんだよ……」


少なくともこの扉は今は開けられそうにない、立ち去るほかないか……。
そう思って振り返った直後。
646 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 23:15:24.43 ID:Gmun8+E70

透「えっ」

ルカ「……て、てめェ……!」


浅倉透とそのお仲間の登場だ。
ここにまさかいるとは思っていなかったのか、虚を突かれた様子で間抜けに口をポカンと開けている。
掴みかかって詰問の一つや二つやってやろうかと思ったが、反応が早かったのは向こう側。
能天気女が浅倉透の服の裾を強引につかみ、そのまま引っ張り去ろうとした。


雛菜「透先輩、別のところ行こ〜?」

千雪「ま、待って……! 二人とも!」

雛菜「え〜、雛菜たちは何の用もないし、話したくもないんですけど〜」

ルカ「待てよ、何もこっちだってただ疑おうってんじゃねー。話せる範囲でいいからそいつから話を聞きたいだけなんだっての」

透「……」

雛菜「何も透先輩から話すことなんてありませ〜ん!」

千雪「雛菜ちゃん……」

雛菜「別に雛菜たちも他の人の邪魔するつもりはないから、もう放っておいてください」

雛菜「雛菜たちは雛菜たちで何か別の道を探しますから〜」
647 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 23:16:14.26 ID:Gmun8+E70






雛菜「もし邪魔してきたら、こっちだって手段は考えますけど」





648 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 23:17:44.93 ID:Gmun8+E70

ルカ「……ッ!」

(こ、こいつ……今何考えてやがった……!?)


能天気女のこちらに向けた視線は、この島に来てから何度か私たちの間に存在したそれだ。
かつて私が七草にちかに向けたもの、そして死の間際七草にちかが浅倉透に向けたもの。
研ぎ澄まされた、冷たくて鋭利で、淡々としたもの。


____【殺意】だ。


雛菜「じゃ、雛菜たちはまだ調査の途中なので〜」

千雪「行っちゃった……」

ルカ「……チッ」


私からすれば傍目に見る仲たがいというだけで、この状況には少しばかりの居心地の悪さで済む話だが、283プロの連中は違う。
仲良しごっこが生き甲斐みたいな連中の間で起きた裏切り行為について、こいつらの受けている衝撃は私が思うよりも大きいみたいだ。
手芸女は何か大切なものを失ってしまったといった表情で、俯いて言葉を発さない。

649 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 23:18:23.11 ID:Gmun8+E70

ルカ「……」

かといって私も励ましの言葉なんてかけたりはしない。
別にこっちからすれば本当にどうでもいい話だ。
ただ重要なのは浅倉透という人間が敵なのか味方なのかがわからないという一点のみ。
私はこの島で生き残ると決めた、その障害となるかどうかだけは見定める必要がある。


……それにはこいつらの力が必要だというのも確かだろう。


ルカ「……行くぞ」

千雪「え、う、うん……」

ルカ「……止まっててもしょうがない、違うか?」

千雪「……ふふ、ありがとう。ルカちゃん」

ルカ「……チッ」


しかし課題は山積だ。浅倉透に話を聞こうにも、あの能天気女が遮ってくるんじゃどうしようもない。
梃子でも動きそうにないあいつをどうにかする必要があるな……
650 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/12(水) 23:20:00.96 ID:Gmun8+E70

申し訳ない、今日の所はこれでいったん終了です。
また明日、探索パートの途中から再開します。
安価だけ出しておくので、どなたか書き込んでくださると幸いです。
それではお疲れさまでした。

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【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.ドラッグストア
2.図書館

↓1
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/13(木) 00:27:05.19 ID:WuUBTWhl0
1
652 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:07:14.16 ID:IfDtM3Tz0
1 選択

【コンマ判定19】

【モノクマメダル9枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…81枚】

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【ドラッグストア】

ドラッグストアなんて最近だといろんな物を取り扱っているイメージだが、ここは文字通り【ドラッグ】の【ストア】らしい。
目に入るのは薬品類のみ。鼻を突くのはツンとした化学系の香り。思っていたよりディープな意味でのドラッグストアのようだ。


ルカ「……おい、これって毒薬じゃねーのか?」

千雪「う、嘘……毒薬……?」

ルカ「コトキレルX……これなんかモロだな。飲んだら遅効性の毒で呼吸困難だってよ」

千雪「そ、そんな……本当に?」

ルカ「本当も何も、今の私たちの状況はそういうもんだろうがよ」

千雪「……」

(……警戒はしておいた方がいいだろうな)

摩美々「霧子がいれば、色々聞けたかもねー。正直こんな薬だけ見せられても何が何だかサッパリじゃない―?」

結華「あはは、確かに……風邪薬とかの見慣れたやつ以外は何が何だか……」

恋鐘「なんね、このラムネみたいな薬……?」

摩美々「えっ、ちょっ……それって……法的にまずいやつじゃないのー……?」

恋鐘「ふぇ、ふぇ〜〜〜〜〜〜?! こ、これってそげんまずかもん〜〜〜〜〜?!」

ルカ「学校で習うだろ……間違っても服用なんかすんじゃねーぞ」

(……まあ、この島で司法なんか機能していないような気もするけど)

(ていうか、そもそもどこの国なんだ? ここ……)

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【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】

【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】

↓1
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/13(木) 21:21:14.43 ID:ZoTUtcTX0
ほわっ……
654 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:25:59.85 ID:IfDtM3Tz0

【コンマ判定 43】

【モノクマメダル3枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…84枚】

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【図書館】

これまたとんでもない図書館があったもんだ。
四方八方を本棚という本棚が埋め尽くし、空間には本特有のどこかかびたような匂いが立ち込めている。
その脇には悪趣味なモノクマの銅像も添えて。
まあ……私がここに世話になることはそうそうないだろう。


あさひ「すごいっす! 見たことない国の言葉の本もあるっす!」

愛依「あさひちゃん、それ読めるの?」

あさひ「読めない!」

愛依「アハハ、それでも楽しめちゃうんだからやっぱあさひちゃんすごいわ〜!」

ルカ「……図書館にはおおよそ似つかわしくないやかましい連中だな」

千雪「そうかなぁ? あさひちゃんにはこの図書館はうってつけだと思うけど」

あさひ「わっ! 世界殺人鬼名鑑!? 変わった本がいっぱいっす!」

冬優子「あさひちゃん、本を持ち出すときにはこのカウンターに書いておかないとダメみたいだよー?」

あさひ「了解っす! ……ありゃ、本によっては持ち出せない本とかもあるっすね」

愛依「キンオビ……デ?」

千雪「禁帯出じゃないかな、持ち出しちゃいけない本にはこのマークがついているみたいよ」

冬優子「あさひちゃん、本を借りるときは注意してみるようにしようね」

あさひ「……」

(……おいおい、あいつの集中力どうなってんだ……? さっきの今でまるで聞いてないぞ……?)


まあここに来ることはそうそうないだろうけど、本の貸し借りにはカウンターを経由する必要があること、
なかには禁帯出の本もあるってことぐらいは覚えておいた方がいいだろうな。
655 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:26:53.90 ID:IfDtM3Tz0
◇◆◇◆◇◆

ルカ「大体調査はこんなところか……」

千雪「脱出の方法は見つからなかったね……」

ルカ「そんなもん期待するだけ無駄だってことだよ。わかり切ってたことだろ」

千雪「うん……」

ルカ「……」

ルカ「じゃあな、お疲れさん」

千雪「えっ、ル、ルカちゃん?! どこ行くの?」

ルカ「あ? 調査は終わっただろ、帰るんだよ。自分の部屋に」

千雪「ダメよ、この後はみんなでまた調査結果の報告をしなくちゃ」

ルカ「おいおい……まさかそれにまで付き合えって言うんじゃねーだろうな」

千雪「人と一度交わした約束を破っちゃダメなんだぞー」

ルカ「そんな約束なんかした覚えもないんだけど……」

千雪「……」

(……すごい圧を感じる)

ルカ「はぁ……わかった、わかったよ。いけばいいんだろ」

千雪「やったぁ!」

(……やれやれ)
656 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:28:44.69 ID:IfDtM3Tz0
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【第1の島:ホテル レストラン】


夏葉「皆、とりあえず調査お疲れさま。さっそく情報の共有と行きましょう!」

結華「う、うん……そうしよっか」

(……ほかの連中の反応も芳しくはない、どこも同じようなもんか)

あさひ「図書館にはすごいたくさんの本があったっす! 気になったんで、ちょっと持ってきてみたっす!」

冬優子「本を持ち出すときには、ちゃんとカウンターで手続きをしなくちゃいけないみたいで……一部本は持ち出し出来ないものもあるみたいです」

果穂「あさひさん! どんな本を借りたんですか!?」

あさひ「これ! 世界殺人鬼名鑑!」

智代子「えっ、ええっ!? あ、あさひちゃん!?」

(……おいおい、この状況じゃ洒落になんねーぞ)

あさひ「世界のいろんな殺人事件について書いてあるんだけど……これとか面白いよ! ライスボール・ダイナソー!」

愛依「ら、ライスボール……? ダイナソー……?」

摩美々「直訳すればおむすび……恐竜……?」

千雪「え……?」

あさひ「なんか殺した相手の口におにぎりを詰め込んだことからついた名前らしいっす、事件自体は未解決みたいっすね」

果穂「そんな……ゆるせません! そんな悪がのさばってるなんて、ゆるせません!」

夏葉「あさひ……その本が興味深いのは理解したわ、ただ今この場で共有するコトは控えてちょうだい。私たちは人の生き死にの少し敏感になっているの、人によっては刺激に感じてしまうわ」

あさひ「え……ごめんなさいっす」

愛依「あさひちゃん、今じゃなくて後でうちと一緒に読も〜!」

657 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:30:14.36 ID:IfDtM3Tz0

◆◇◆◇◆◇◆◇

摩美々「第2の島ではドラッグストアもあったケド、どっちかと言えば薬品保管庫っていう方が正しいかもー」

恋鐘「薬の中には人の体によくない毒もあったばい……持ち出されないように警戒したほうがよか!」

結華「うん……図書館と違ってこっちには持ち出しに制限とかもなさそうだから、目を光らせておいた方がいいかもね」

美琴「ただちゃんと有用な薬も入ってはいたよね」

摩美々「それはそうー、ちゃんと風邪薬とか解熱剤はあったからぁ、病気しても大丈夫にはなったねー」

冬優子「いくらか使えそうなものはまとめてこの救急箱に入れておいたので……千雪さん、預かってもらっていてもいいですか?」

千雪「まぁ、ありがとう。うん、責任をもって預かっておこうかな」

果穂「千雪さんなら安心です!」

(……まあ、おせっかいなこいつが持っているのが一番だろうな)

◆◇◆◇◆◇◆◇

果穂「第1の島より大きな海水浴場がありました!」

夏葉「ダイナーとシャワールームが備え付けられていた、本格的なレジャー施設といった様相だったわ」

美琴「倉庫にはウエットスーツやカヤックも入っていたから、興味があれば覗いてみるといいと思う」

智代子「なんだか色々できそうだよね! せっかくだし何かイベントでもやってみるといいかなー!」

愛依「ダイナーもだし、このレストランも出し、食材はマジでどっから補充されてんだろうね?」

あさひ「モノミが補充してるって最初は言ってたっすけど、やっぱり魔法なんっすかね?」

(得体も知れねー方法だけど、とりあえずはそれに肖るしかねーんだよな……)

658 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:31:42.74 ID:IfDtM3Tz0

◆◇◆◇◆◇◆◇

ルカ「……島の一角にあった遺跡は見たか? あの建物自体は謎だが……立ち寄らないほうがよさそうだ」

千雪「扉にはパスワード式の認証モニターがついていたけど、その脇にマシンガンがついていたから……下手に刺激してほしくはないかな」

智代子「ま、マシンガン?!」

夏葉「ブローニングM2式機関銃……今もアメリカをはじめとした世界中で量産されていているごく一般的なマシンガンだったわ」

(マシンガンにごく一般的も何もないだろ……)

あさひ「やっぱりパスワードを間違えて入力したらそれで撃たれちゃうんすかね?」

果穂「そ、そんな……マシンガンでうたれちゃったら、しんじゃいます!」

摩美々「基本的には無視するしかなさそーだねー……」

結華「パスワードがこれだ!って分かるものとかあれば使えるけど……流石に確証もない状態で使う訳にはいかないなぁ……」

659 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:33:09.75 ID:IfDtM3Tz0

全員が全員同じような報告をし終えて、進展は当然何もなし。
こうなると改めて八方ふさがりだという現実に直面せざるを得ない。
息の詰まるような閉塞感がまたやってきた。


結華「……とりあえずは、それぞれ警戒しながらまたここで過ごすしかないってこと……なんだよね」

摩美々「来るかもわからない助けを待って、ね……」

冬優子「大丈夫です、きっと誰かが来てくれますよ……ふゆたちのことを心配して皆動いてくれているはずです!」

智代子「そう思うしかない……いや、そう信じるしかないもんね……!」

(……どこまで行っても空元気、か)


椅子を引いて立ち上がった。
報告会も終わり、これで手芸女からの要求もすべて満たしてやった。
ここまでするつもりもはじめはなかったのに、我ながら人が良いことで。

660 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:34:31.73 ID:IfDtM3Tz0

ルカ「……じゃ、とりあえず私は行くぞ。もう今日は何もないだろ?」

結華「あっ……え、うん! ルカルカ……今日はありがとう!」

冬優子「うん! ルカちゃんと一緒に行動できて、今日はすごくうれしかったな!」

ルカ「……チッ」

果穂「ルカさん! またいっしょに調べましょう!」

あさひ「ルカさん、明日の朝ごはんも待ってるっすよ!」


ただ退出する、それだけのことなのに283プロの連中はいつまでも声を張って私の背中に呼びかけ続けていた。
言葉を返しもしない、振り返りもしない、悪態をつくだけの存在に、だ。

本当に、理解しがたい。
でも、その理解できなさは不思議と不快じゃなかった。



……いや、こういうと情にほだされたみたいで気持ちが悪いな。

訂正する。正確には、『もっと気になるものがあって283プロの連中どころではなかった』、だ。

661 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:35:21.11 ID:IfDtM3Tz0
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【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


一日ぶりに自分の部屋に戻った私はすぐにシャワーを浴びて、楽な格好でベッドに横になった。
酒に呑まれるままの睡眠では精神の疲弊を解消しても、体の疲れはとれちゃいない。
やっと得られた休息に歓喜するように足はすぐにどろっと蕩けていき、マットレスから離れられなくなってしまった。
手足をそこに投げ出して、頭だけを働かせる。

今日は手芸女のせいで散々な目にあった。
出たくもない朝食会に顔を出して、したくもない共同調査をして、最終的には報告会までも参加してしまった。
……この島に来てから久しぶりの交流、完全に嫌だったとは言わない。
言わない……が、ずっと脳裏にあるもののせいで満足に楽しめない節はあった。
662 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:37:36.32 ID:IfDtM3Tz0

浅倉透の存在、それが気がかりなのは間違いないが、あいつよりもよっぽどの危険分子が私たちの中には存在している。
七草にちかと風野灯織の事件、その裏で動いていた何者かの存在。
平気な顔して私たちの中に潜んで仲間面して、二人の死に涙を流して見せた【狸】。


≪「私たちの中に潜む【狸】は何を考えてやがる……?」

「あはは、やっぱり気づいてたんっすね」

思わず振り返った。
今のは、幻聴じゃない。
確実に私の後ろにいた、【何者か】の声だ。≫


……あの時私が聞いた声は、確かに【超中学生級の総合の時間 芹沢あさひ】だった。
あいつが、本当に【狸】なのか……?
だとすれば、あいつと一緒に行動しているストレイライトの連中は……?


食事会では口にしなかったが、このまま私たちが何かの進展を見いだせない限りは【狸】は必ず仕掛けてくる。
コロシアイの連鎖を絶やさないために、事件を起こしに来るはずだ。
【狸】自身が手を汚すにしろ、汚さないにしろ。
663 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:38:59.98 ID:IfDtM3Tz0

私は、あいつらが仲間割れをする分には別に問題ない。
むしろ今の仲良しムードには反吐が出るくらいだ。
ただ、その仲間割れの結果私の命まで脅かされるというのなら、それは阻止しなくちゃいけない。


「……チッ」


【狸】を見極めるために、やらなくちゃなんねーか……


【斑鳩ルカの自由行動において交流が解禁されました!】


□■□■□■□■□■□■□■□■
☆斑鳩ルカの交流について

新主人公におきましても自由行動で他のアイドルの皆さんと交流をすることができます。
前章で惨たらしい死を遂げた前主人公から受け継ぐものは、アイテムと希望のカケラ、そしてモノクマメダルの三つになります。
わずかばかりに上がっていた親愛度は引き継がれてはおりませんが、ご了承くださいませ。

なお、現在のシナリオの状況として【浅倉透】【市川雛菜】【緋田美琴】の三人とは親愛度を上げる交流ができないことをあらかじめご了承ください。
シナリオの進展によって彼女たちとの交流が解禁されるかも、一生そのまま解禁されないかも……?
□■□■□■□■□■□■□■□■

664 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:40:37.70 ID:IfDtM3Tz0
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______
________

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≪island life:day 7≫
=========

【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


耳障りなアナウンスとともに目を覚ます。今日は、傍らに手芸女の姿はない。一晩ぶりの穏やかな夜に、疲れは十分とれたみたいだ。
ただ、気分は晴れない。ずっと【狸】の影が頭をチラついて、吐く息はどっしりと重たい。

今日から私がするべきなのは、この【狸】の動きを封じるための監視。
万が一にも私が巻き込まれて死なないように、学級裁判なんて博打に挑まされないように、そのための安全確保。


「……気は進まないな」


手っ取り早いのは毎朝の朝食会への参加。そこに顔を出せば嫌でも他の連中と顔を突き合わせる。
……行くしかないだろうな。


そう思って扉を開けた途端。


千雪「おはよう、ルカちゃん」

ルカ「……うわ」


……手芸女が満面の笑みで待ち受けていた。
665 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:41:25.53 ID:IfDtM3Tz0

千雪「ルカちゃん、生活習慣はしっかりしているのね。えらいえらい」

ルカ「……っせえ」

千雪「ルカちゃん、これからどうするの?」

ルカ「どうするこうするも……朝食会だろ、わざわざ迎えに来なくても行くから」

千雪「えっ!?」


よほど私の口から参加の意志が出たことが意外だったらしい。
わざとらしいほどに口を開けて、それを手のひらで覆い隠す。


ルカ「……5分だ。5分経ってからレストランに来い。私と同じタイミングで来たら殺す」

千雪「もう、冗談でもそんな言葉使っちゃダメよ」

ルカ「……じゃあ、殴る」

千雪「及第点かな」

ルカ「……ハッ!」

(……あ?)

(……私、何笑ってんだ? いや、嘘だろ……気持ち悪い)


私は自分の気色の悪い笑い声に戸惑いながら、足早にレストランへと向かった。
666 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:43:04.00 ID:IfDtM3Tz0
-------------------------------------------------
【レストラン】

ルカ「……」

結華「る、ルカルカ……おはよう! 今日も来てくれたんだ!」


流石にまだ私の存在には全員慣れていないらしく、入室と同時にどよめきが起きる。
そんなこと気にしていても仕方ないので、目も向けず、耳もくれずに美琴の隣に腰かける。


美琴「……」

ルカ「……」


……相変わらず、私たちは無言だ。

667 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:44:22.42 ID:IfDtM3Tz0

結華「今日でこの島に来て一週間かぁ……」

恋鐘「もうそがん経つと? ……はぁ、助けも全く来んねぇ……」

夏葉「ダメよ、気を落としては。ここはジャバウォック島……日本から遠く離れた異国の地。助けが来るまでにはそう……時間がかかるのよ」

あさひ「そういえばジャバウォック島ってどこにあるっすか? これだけ温かいし、南半球っすか?」

夏葉「ええ……確かそうだったような……」

夏葉「……あれ、おかしいわね。正確な情報が思い出せないわ……」

あさひ「……?」

ルカ「……ったく」


毎日毎日同じような会話をして気を紛らわして、生産性なんかなにも無い。
得るものも何もないし、監視という役目がない限りは御免こうむりたい空気感だ。
私は誰とも会話をすることなく、淡々と食事を口に運びながら他の連中の様子を伺っていた。


___そんな中、突然。


果穂「ルカさん、ルカさん! お話、きいてみてもいいですか?!」

ルカ「……あ?」

果穂「この島に来てから、ルカさんとお話したことまだあんまりなくて……ルカさんのこと、もっと知りたいと思ったんです!」


私の返答も確かめぬまま、小学生は近くの椅子を引いてきたかと思うとそこにチョコンと腰かけた。
背丈こそ成人女性並みのこいつだが、その表情と素振りと内面は幼いらしい。
私の苛立ちには鈍感な様子で、首を傾げて返答を待つ。
一言激烈なものをぶつけて退けようとも思ったが、ここは283プロの連中の目がある。
下手なことはできやしない、観念して小学生と会話してやることにした。


千雪「……ふふっ」


……遠くに手芸女の影が見えたのが、ひどく目ざわりだった。

668 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 21:46:56.39 ID:IfDtM3Tz0
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【ルカのコテージ】

ひどいパッションのごり押しを受けた。
質問にどれだけ適当に返してもやたら食いついてきやがって、無理やりに話を引き延ばされた。
逃げよう逃げようとしても食いつかれて、いい迷惑だ。
あの小学生がテンションを上げれば、周りの連中もそれに呼応して盛り上がって、いつの間にか私もその輪の中に入れこまれたかたち。
手芸女はそこまで見越して、あのガキを差し向けてきやがったんだろう。

本当におせっかいで鬱陶しい女だ、次あったら文句の一つや二つ言ってやらねえと気が済まない。
それで……また迷惑料を取り立ててやるのも悪くないかもしれない。


「……は?」


前言撤回、流石に今のはない。
違う、違うんだって。


【自由行動開始】


気を取り直して、監視の再開だ。
怪しい行動をしている人間、変な腹積もりを抱えた人間がいないかどうかのチェックの時間だ。

……気は進まないけど、やるしかない。


1.交流する【人物指定安価】
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1

669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/13(木) 21:54:06.68 ID:WuUBTWhl0
1 果穂
670 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 22:03:59.71 ID:IfDtM3Tz0
1 果穂選択

【第2の島 図書館】


最初の監視の対象には、小学生を選んだ。
さっきの今で話をしたばかりだし、こいつなら他の連中のように色眼鏡をかけてくることもない。
取っ掛かりとしては一番気楽だ。
……まあただ、こいつと絡んでいるのを他の連中に見られるのはどことなく気恥ずかしい。


ルカ「……こんなとこで何してんだ」

果穂「あっ、ルカさん!」

果穂「……あ、大きな声出しちゃいました……えっと……ジャスティスファイブの本をさがしてるんですけど……」

ルカ「ジャス……なんだ?」

果穂「ジャスティスファイブ、すっごくかっこよくてつよい、正義のヒーローです!」

ルカ「……はぁ」


正義だのなんだの、やっぱり中身はただのガキだな。
でも、この年頃の女って、もっと普通……ヒロイン物とかを見るんじゃねえのか……?

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【キルリアンカメラ】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【トイカメラ】
【表裏ウクレレ】
【バール】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/13(木) 22:14:06.93 ID:Yd+mBBEn0
2
672 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 22:16:29.90 ID:IfDtM3Tz0
2 選択

【プレゼントを渡しませんでした】

-------------------------------------------------

……しかし、全く持って謎だ。
私は芸能界に飛び込んでから、組んだのは美琴ぐらいのもので解散して以来はずっと孤独の身。
ただ一人での立ち回りばかりだった私からすれば、この小学生の活動は完全に理解の外だ。
5人もの大人数のユニットで、更には年齢もバラバラ。
そしてそれを率いているのがこの最年少の小学生だという。


果穂「……ルカさん? あたしの顔に、なにかついてますか?」

ルカ「いや、別に……よくわかんねーと思ってよ」

果穂「え?」

ルカ「いや、お前は確か……ユニットのセンターなんだろ? あんな年上ばっかりのユニットで、やりづらかったりしねーのか?」

果穂「しません!」

ルカ「即答だな……」

果穂「夏葉さんも樹里ちゃんも凛世さんもちょこ先輩も、みんなみんなすっごくすっごくたよりになるんです! あたしがちょっとこまることがあったら、すぐに気付いて声をかけてくれますし……」

果穂「何かできてないことがあったら、ちゃんと教えてくれて、あたしも勉強になります!」

(……こいつはよく懐いてるみたいだが、まあそんなものか)

(ユニットのセンターなんて所詮はお飾り、別にだれがなろうと変わんねえんだろ)

果穂「それに、そんなみなさんが、あたしにセンターをまかせてくれているから……あたしも、みなさんに恥じないような最高のリーダーになろうってがんばってます!」

ルカ「あ……?」

果穂「放クラのみなさんが、センターは小宮果穂ってどうどうと言えるように、夏葉さんみたいにかっこよくて、凛世さんみたいにやまとなでしこで、樹里ちゃんみたいにやさしくて、ちょこ先輩みたいに明るいセンターになるのをめざしてるんです!」

(……ハッ、殊勝なこった)

(まだ、こいつは芸能界って言うのがどんな世界か知らねえ。この世界が救いもない非情な世界だってことを知らねーから、目を輝かせていられる)

(……こんなやつも、いつかはこの世界の澱みと汚れを知る時も来るんだ)


1.……まあ、せいぜい頑張りな
2.あんまり夢見んじゃねーぞ
3.自由安価

↓1
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/13(木) 22:25:35.63 ID:WuUBTWhl0
1
674 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 22:37:53.75 ID:IfDtM3Tz0
1 選択

283の連中はいけ好かねえが、わざわざ小学生を泣かすような真似はすることもない。
この場は適当に流しておくとするか。


ルカ「……まあ、せいぜい頑張りな。お前の周りにいる年上連中も、それなりに期待してるからこそ託してるんだろうしな」

(ユニットの中がどうあれ、結果を決めるのはその外側の人間社会だ)

(……じきに思い知るだろ、そう甘い世界じゃないってのは)

果穂「はい、ありがとうございます!」

果穂「放課後クライマックスガールズが最強最上、銀河一のアイドルになる日までがんばります!」

(……ここまで来たらもういっそお笑いだな)

果穂「ルカさんにも負けない、かっこいいセンターになって見せます!」

ルカ「……私? かっこいいって、そんな風に見えてんのか」

果穂「……? ルカさんって、カミサマって言われててすごくたくさんの人に応えんされてますよね?」

果穂「それって、ルカさんがすごくかっこいいからですよね……?」

ルカ「……お前は銀河一になるんだろ、私なんかに目くれてる暇があったら、もっと別のやつをライバル視しとけ」

果穂「どういう意味ですか……?」

ルカ「……悪い、邪魔したな。私はもう行く」

果穂「あ、ルカさん……!」


私があいつらに応援されてる……?
流石は小学生、なんにもわかってねーんだな。
あいつらはただ無責任に、思考停止に、私に自己を投影して悦に浸ってるだけの存在でしかない。


……【応援】なんて、今までもらったこともねーのに。

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【小宮果穂の親愛度レベル…1.0】
675 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 22:43:38.07 ID:IfDtM3Tz0
【ルカのコテージ】

なんというか、事務所の気風を体現しているような奴だったな。
自分たちの未来が明るいものだと信じて、仲間とともに突き進む。

今の私からしてみれば対極ともいえるような存在だ。

……私にもかつて、あんな時があったのだろうか。

自分の幼少期の思い出を掘り起こそうとしたが、やっぱりやめた。
記憶の奥底に潜ろうとしても、その手前で躓いてしまうのだ。

きっと、私がそうだったであろう……あいつと組んだ当初の記憶を見るのが怖くなる。

【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…84枚】
【現在の希望のカケラ…18個】

1.交流する【人物指定安価】※美琴、透、雛菜を除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/13(木) 22:44:42.17 ID:ZoTUtcTX0
1 千雪さん
677 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 22:51:44.53 ID:IfDtM3Tz0
1 千雪選択

【第1の島 牧場】


(……うわ)

千雪「あら、ルカちゃん……お散歩?」

ルカ「お前と一緒にすんな、これは……その、偵察だ」


誰でもいいから適当に監視しようと思ったら蛇が出た。
よりにもよっての相手は、私と出会えたことがよっぽど嬉しいらしく、今朝も見たあの胸やけがしそうな程の笑顔を浮かべている。


千雪「今朝は果穂ちゃんとお話してたみたいだけど、どう?」

ルカ「どう……って言われてもな」

千雪「……」ニコニコ

ルカ「……ンだよ」

千雪「……」ニコニコ

ルカ「そ、それやめろ……マジで!」

千雪「はーい、ごめんなさーい」

(こいつ……ホントに年上かよ……)

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【キルリアンカメラ】
【家庭用ゲーム機】
【携帯ゲーム機】
【トイカメラ】
【表裏ウクレレ】
【バール】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/13(木) 23:05:49.45 ID:ZoTUtcTX0
連投ですが
1 家庭用ゲーム機
679 :人も多くないですし連投大丈夫です ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:13:56.78 ID:IfDtM3Tz0

【家庭用ゲーム機を渡した……】

ルカ「これ、使わねーから貰っとけ」

千雪「あら、プレゼント……?」

ルカ「廃品回収だ。……なんか、てめェはガキ連中の面倒を見る機会も多いみたいだからな、それでも使えば時間つぶしにはなるんじゃねーのか」

千雪「あら、ゲーム? ……ふふ、こうみえて、私甜花ちゃんに鍛えられてるから結構強いんだぁ」

ルカ「あっそ」

千雪「ルカちゃんも今度やってみましょう! 負けないんだから!」

ルカ「……やらねーよ」

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより親愛度が多めに上昇します】

-------------------------------------------------

千雪「ルカちゃんが朝食会に出席してくれるようになって、私すごく嬉しいなあ」

ルカ「お前が無理やりに出席させてんだろうが……」

千雪「一人で食べるご飯より、みんなで食べるご飯の方がちょっとだけ美味しかったりしない?」

ルカ「別に、味は何も変わんねーよ」

千雪「……でも、食べるものの栄養価もずっと良くなってるのよ?」

ルカ「……は?」

千雪「ずっと、レトルトしか食べてなかったでしょ。ダメなんだぞー、若いうちからそんな食事してちゃ」


手芸女はむすっと頬膨らませて私の食生活を非難した。
実際、手芸女の言うとおりだ。283プロの連中を避ける目的から、食事はもっぱらスーパーのレトルト食品。
でも、別に我慢してまでやっていたわけではなく、この島にくる以前から私の食事はそういう傾向にあったのだ。
ライブパフォーマンスをすればするほどすり減る精神とともに食欲も減るようで、旨いまずいも気にしなくなっていた。
時間のかからない食事を、適当に済ませれられればそれでいいと思っていた。


千雪「ちゃんとお野菜を取らないと、美容にも悪いわ。せっかくのすべすべのお肌も荒れちゃったら勿体ないでしょう?」

ルカ「私はそういうのは別にどうでもいいんだよ」

千雪「どうでもよくない、お姉さんが許しません」

ルカ「お前一体いつから私の姉貴になったんだよ……」


別に私は一人でいいってのに、こいつは何かにつけて付きまとおうとしてくる。
そこまでして283プロの気色の悪い仲良しの輪に取り込みたいのか。

……ここで一発、ガツンと言ってやるか。
私は馴れ合いはしねえ。ただ自分が生き残ることしか頭にないってことを分からせてやる。


1.うるせえ、ほっとけよ
2.そういうの迷惑なんだよ
3.自由安価

↓1
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/13(木) 23:31:43.41 ID:Yd+mBBEn0
1
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/13(木) 23:33:01.26 ID:Yd+mBBEn0
1
682 :今日は7日目までにしておきますね ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:40:26.23 ID:IfDtM3Tz0
1 選択

ルカ「うるせえ、ほっとけよ……てめェは善意でやってるのかもしれねーが、それが相手にとって迷惑になるとか考えたことはないのかっての」

千雪「えっ……」

かましてやった。
実際これは自分の本意。
裁判の後、確かに一時の疲労から心を許してしまった瞬間こそあったが、別に私はこいつに信頼も何も抱いているわけじゃない。
むしろそれで調子づいて面倒役を買って出ているこの状況は鬱陶しくて仕方がない。

それに、私と一緒に行動すればこいつが283プロの連中と過ごす時間も減る。
それは私以外の連中からしても望ましいことじゃないだろう。

残念なことだが、水と油という言葉は覆せないのだ。
私と連中とでは、どうやっても入り混じることなどできやしない。

私の強い拒絶を前に、流石に手芸女も口をポカンと開けてショックに打ちひしがれていた。
あんな生ぬるい環境にいれば、衝突らしい衝突も今までまともになかったんだろう。
だが、そんなことは私の知るところではない。


ルカ「じゃあな、二度と顔見せんなよ」


これで終わり、そう思った。


千雪「確かにあなたからすれば迷惑かもしれない……けどね、だとしても引いちゃいけない局面があるって思うの」

ルカ「はぁ?! お、お前……」

千雪「ルカちゃん、あなたをこのまま一人にして……後悔だけはしたくないの」


手芸女はなおのこと食い下がる。
そして、それは……無性に私の癇に障った。


ルカ「……ざけんな」


一気に手芸女に詰め寄って、どすの利いた声を放つ。
これ以上寄り付くな、そういうメッセージを込めて、睨みつけた。



……それでも。


千雪「私は真剣です」


手芸女は私の目を見て、少しも億す様子すら見せなかった。


ルカ「……チッ」


気が付けば私は背を向けて走り出していた。
手芸女の据わった肝を前にして、敗北を認めたのか、こちらが恐怖したのか。
その答えは知らない、知りたくもない。
ただ、私は『二度と顔を見せるな』という言葉の効力を失う形でその場を離れてしまったことだけは事実だった。


千雪「……私、あきらめは悪い方なんだから」

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【桑山千雪の親愛度レベル…2.0】

【絆のカケラを手に入れました!】

【現在の絆のカケラの数…19個】
683 :今日は7日目までにしておきますね ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:41:48.60 ID:IfDtM3Tz0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


当然と言えば当然だが、目立って怪しい人間はいなかった。
まあここでボロを出すようじゃこっちも苦労していない。
前回の事件では私たちも気づかぬうちに工作をし終えていて、その暗躍に気づいている人間すら、そう多くはない。
私の関知しないところで、【狸】の化かしは既に始まっているのかもしれない。

……ダメだ、手掛かりも確証も何もない。


「……チッ」


そう思うとなんだか気が立って、眠る気にはならなかった。


684 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:42:54.41 ID:IfDtM3Tz0
-------------------------------------------------
【第1の島:ビーチ】


眠れないままに身を任せて、島を歩いていた。
相変わらず空には全く様相の変わらぬ満月が照り付けており、肌に張り付くような嫌悪感を抱かせた。
夜風に当たれば気分がよくなるなんて、まやかしだと思う。
そうして歩くうちに、自然と足は私をまたあの海岸へと運んでいた。

いつだか、美琴と七草にちかがレッスンをしていた……あの海岸。

もう時計はとっくに十時を回っている。
流石の美琴もレッスンを切り上げて自分のコテージに戻っていることだろう。
そう思っていた。


美琴「……はぁっ……はぁっ……」

(み、美琴……?!)


満月の月光しか明かりのない、暗闇の中で美琴はそのすらりとした手足を相も変わらず振り回していた。
それはダンスの練習というにはあまりにも余裕がなく、自傷行為というにはあまりにも美しいものだった。
シャツは汗で全身にぺたりと貼りつき、息をするたびに全身が浮き沈みを繰り返す。


____はっきり言って、異常だった。

685 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:44:48.58 ID:IfDtM3Tz0

ルカ「……バカ野郎!」


気づけば私の体は美琴を無理やりにその場に突き崩していた。
美琴の体はまるで紙のように軽く、無抵抗なままに砂浜に倒れ込んだ。
たった一瞬の接触だったのに、私の手には美琴の汗がべたりと付着した。


ルカ「お、お前……いったい、いったいいつからやってんだよ……!」

美琴「……はぁ……はぁ……」


私の問いかけに美琴は答えない。というよりも、答えることができない。
さっきの今で呼吸が収まっちゃいないのだ。


ルカ「なんで……こんな真似を……お前……」


島に来た時から毎晩のようにレッスンをしていたことは知っていた。
それでも、ここまでのことはしていなかったはずだ。
地に付す美琴の体は引きつり痙攣すらも引き起こしており、水分をまともにとっていないことが一目に見て取れた。
すぐに美琴の口にミネラルウォーターを当てて無理やりにでも流し込む。


美琴「……げふっ!」


呼吸が上がったままの美琴は苦しそうにそれを吐き出した。

686 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:46:59.11 ID:IfDtM3Tz0

ルカ「……おい、美琴……? 何やってんだよ……」

美琴「……はぁ……ルカ、離して……私は、やらなくちゃいけないの……」

ルカ「は、はぁ?! バカ言うなよ……そんな体でこれ以上やったら、お前が死んじまうって!」

美琴「……それでも、やらなくちゃ」


介抱する私の腕を跳ね除ける美琴の力は、異常なまでに強かった。
その細腕のどこにそんな力があるのか、私をそのまま突き飛ばすようにしたかと思うと、すぐに立ち上がってその身を乱暴に捩り始めた。


美琴「……はぁ……はぁ……」

ルカ「美琴……お前、何やってんだよ……!」


その時の光景は、あの日によく似ていた。

私の手から美琴が離れてしまった『あの日』。
あの日も確か、月が嫌味なほどに綺麗に照りついていた。
私の言葉に無機質に返事をして、そのままレッスンを再開した時の美琴の姿。
私がいくら言葉を投げかけても美琴は聞こうとせず、一心不乱に自分の体を無理に動かしていた。

687 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:48:30.41 ID:IfDtM3Tz0

いつか美琴は言っていた。

どれだけ辛い時があろうとも、どれだけ悲しい時があろうとも、レッスンに打ち込んでいる時間はそれを忘れられる。
無理やりにでも未来に目を向けて、体を動かしていれば零れ落ちる涙もない。涙に割く水分は、すべて汗に変わる。

今の美琴は、【泣いている】。
全身に涙が伝い、シャツがその身に張り付くほどに、泣いている。

____その理由は、分かり切っていた。


ルカ「お前……【七草にちか】がそんなことを望むと思ってるのかよ……!!」

美琴「……!」


嗚呼、本当に病みそうだ。
どこまでいっても、『七草にちか』という存在が美琴にとって大きいものになっていたということを実感させられる。
無理やり突き飛ばしても止まらなかった美琴の動きは、その名前一つで止まってしまうのだから。

七草にちかという名前を前にした美琴は途端冷静になり、次の瞬間には敵意を私に向けてきた。

688 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:50:27.81 ID:IfDtM3Tz0

美琴「……勝手なことを言わないで。私はにちかちゃんと約束した、必ずSHHisの緋田美琴としてアイドルの頂点に立つ。そのために一分一秒だって無駄にできない」

ルカ「お前とあいつとの約束はわかる。でも……それが自分の命を削ってまで練習することと同じじゃないだろ……?! お前の今のダンスで感動する人間なんかいないって……!!」

美琴「ふざけないで」

ルカ「ふざけてんのはお前だよ、美琴……!!」


私の絶叫を境に、やり取りは途絶えた。
美琴は肩で呼吸をしながら押し黙り、ただ私のことを見据えている。その傍らには敵意を添えて。
きっと美琴は私のことを見ていない。


美琴が見ているのは、『七草にちか』の影だ。

689 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:51:10.27 ID:IfDtM3Tz0


美琴「……帰るから」


静寂は四、五分と経たなかった。私たちの間ではそれほどの時間ですら耐えづらい。
同じ空間にいるというだけで、お互いがお互いの胸を刺す。
先に耐えかねたのは美琴の方だった。
適当に荷物をその手に抱えると、私の隣をすり抜けて早足に逃げていった。

流石に、今の様子を見ても練習を再開することはないだろう。だが……


ルカ「……七草にちか、私は……」


あの時七草にちかが死に際に見せたお手本、私がなるべき『私』の姿……私が私自身に向き合って、美琴にも向き合う。
本当の自分自身で、美琴と正面からぶつかり合う。
そのために残された時間は……そう長くはないらしい。



_____美琴が、自分自身を壊してしまう前に。




690 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/13(木) 23:53:15.54 ID:IfDtM3Tz0

というわけで本日はここまで。
途中でもありましたが、安価の回りもそう早くは無いので連投でも全然OKです。
人が多くなることがあればその時はその時で調整します。

それではお疲れさまでした。
明日も21:00より更新予定です。
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/14(金) 00:05:18.88 ID:DMPUMGfR0
お疲れ様でした!
692 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:04:32.22 ID:EbFPAfXe0
____
______
________

=========
≪island life:day 8≫
=========

【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


美琴を突き飛ばした時の感触が、妙に手に残っていた。それは一晩明かした後でも同じこと。
無論汗が付着した手は洗ったし、そのじっとりした感じこそ残ってはいないのだが、この手に残っているのは美琴の体の【軽さ】だった。
美琴という存在を失って空っぽになった斑鳩ルカの器と同様に、中身を失って空虚な器と化した緋田美琴のその体は、見かけ以上に軽かった。

あいつは、その器にそそぐものを求めて、自分の命を削っているんだ。

窓から太陽を見上げた。こちらの事情を何ら知らない太陽は、今日も我が物顔で空を陣取り、鬱陶しい日差しで照り付ける。
その明るさは、何も秘密を許さない。
腹に抱えたものを引きずり出して、曝け出させようとしてくる。

うるさい、うるさい、うるさい……!
言われなくても、私が一番わかっているんだ。

……わかっては、いるんだ。
693 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:05:42.10 ID:EbFPAfXe0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】

これで参加するのも三回目。
どよめきは一日ごとに小さくなり、わざわざ視線を向けてくる人間の数も減った。

しかし、これで過ごしやすくなるとはいかないのが昨日の事情。
美琴は私に対して一切の反応を見せず、顔を背けるようにして外を見つめている。


(……チッ)


その隣に座る勇気は持ち合わせていなかった。


ルカ「……おい、手芸女」

千雪「ん……? ルカちゃん……?」

ルカ「その……一緒に食べていいか」


手芸女は私からのお願いに一瞬表情をぱぁっと明るくしたが、すぐに美琴に視線を向けて、その表情を押し戻した。
私と美琴との間に横たわる事情、その一端を知る数少ない人間は、致し方がないことといった様子でしずしずと席を空けた。

694 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:06:53.93 ID:EbFPAfXe0

千雪「うまく……いかなかったのね」

ルカ「……おう」

千雪「ルカちゃん、前にも言ったけど……焦る必要はないの。私たちには時間があるんだから」

千雪「生き残った私たちには悩んで、ぶつかって、解決するまでの時間が残されているの」

ルカ「……」


本当にそうだろうか。生きながらえたからと言って、時間が残されていると言えるのだろうか。
少なくとも、私たちの間に横たわる問題は時間で解決されるようなものじゃないし、緋田美琴という人間はその時間の間に壊れてしまう恐れさえある。


(お前に、何が分かるんだよ)


心の中で悪態をついた。
目の前で穏やかな微笑みを見せているこの女に、手元のフォークを突き立ててやりたいほどの衝動が沸き上がり、それを無理やり押さえつけた。


(自己嫌悪、どころじゃない)

695 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:09:20.55 ID:EbFPAfXe0

千雪「……ルカちゃん?」

ルカ「……悪い、私と美琴のことは……もう、触れないでくれ」

千雪「……」

ルカ「……」


手芸女は何も言葉を発さずに、ゆっくりと頷くようなそぶりを見せた。
頷いたと断定しないのは、それが不完全な所作だったから。
首を完全に縦に振るのではなく、少しだけ下に落とすだけのような行動。
きっと私の要求をそのまま飲み込む気にはならなかったからだろう。本当にお節介な女だ。


千雪「……」


必死に何か言葉を探しては、これじゃない、それじゃないと落胆するような息をつく。
そんな真似をされると、こちらに非がなくとも罪悪感が湧いてくるというものだ。
今回ばかりは、別の話題を自分から持ち出す。


ルカ「な、なあ……昨日話した小学生、あいつってさ。確かセンターやってんだろ……? す、すげえよなぁ……」

(あー……くそ、死にたい)


普段から人づきあいが広い方じゃない。
自分が行けると思った人間とだけしか深い交流はしてきていない、自分自身の会話下手を呪った。
696 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:11:15.28 ID:EbFPAfXe0

私の素っ頓狂な話の持ち出し方に、手芸女は少し苦笑する。
ただ、この話題自体はそう悪いものでもなかったのか、それを発端として話題を切り返してきた。


千雪「……ねえ、ルカちゃん、今日ね。何人かで海水浴をすることになっているの。もしよかったら、来てくれないかな」

ルカ「……は?」

千雪「さっきルカちゃんも気にしてた、果穂ちゃんも来るの」

ルカ「……嫌だ。泳ぐのとか、趣味じゃない」


せっかく気を回してくれたのに、勝手に口から拒絶の言葉が出た。
でも実際、考えたくもない。こいつらと一緒に海水浴だなんて。


千雪「ううん……大丈夫。私も今日は泳ぐつもりはないから、今日は保護者係。水分補給とか、パラソルとかで面倒を見てあげるの、手伝ってもらえないかな?」

ルカ「……」


美琴の方を見やった。私への拒絶から始まったぴりつきが、ほかの人間にも広がりを見せているのか、今日の美琴は一人で黙々と食事をしている。


ルカ「……」


あの細身に、食事はどれほど届いているんだろうか。
私の目には美琴の食事がアンドロイドがオイルを充填しているような、動力源を確保するためだけの無機質な光景に映った。


ルカ「……わかったよ、お前の手伝いをすればいいんだろ」

千雪「ありがとう、ルカちゃん。お昼、第2の島のビーチに集合ね」


手芸女の誘いを私は受けることにした。
697 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:12:38.29 ID:EbFPAfXe0
-------------------------------------------------

【ルカのコテージ】

(……)

(……まだ、あいつの誘った海水浴までは時間があるな)

【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…84枚】
【現在の希望のカケラ…19個】

1.交流する【人物指定安価】※美琴、透、雛菜を除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/14(金) 21:17:28.28 ID:7mlQnUTA0
1 千雪さん
699 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:23:41.89 ID:EbFPAfXe0
1 千雪選択

【ホテル レストラン】

さっきの今だが、妙に美琴の姿が頭にこびりついてしまっていた。
元からそんな表情豊かに食事をしたり、味の感想をしゃべったりする性質ではない奴だが、
あそこまで無機質に食事を摂っている姿は流石に見ていて胸が苦しい。

あれは食事なんかじゃなくて、がらんどうになった体の中に押し込むためだけの動作でしかない。

……そんなやつが、何がパフォーマンスだよ。


千雪「あら、ルカちゃん……もしかして、朝ごはん足りなかった?」

ルカ「ちげーよ……お前は何してんだ」

千雪「海水浴の準備、ジュースとかはここの冷蔵庫のものを持って行こうかと思って」

ルカ「……ふーん、まあガキどもにはジュースぐらいがちょうどいいだろうな」

千雪「……大体の物は見繕ったから、そろそろ休憩にしようかな」

ルカ「やかんなんか取り出して、コーヒーでも淹れんのか」

千雪「インスタントだけどね。ルカちゃんも飲む?」

ルカ「……一杯だけな」

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【キルリアンカメラ】
【携帯ゲーム機】
【トイカメラ】
【表裏ウクレレ】
【バール】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/14(金) 21:28:23.22 ID:wzFqNtRW0
1 携帯ゲーム機
701 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 21:42:47.06 ID:EbFPAfXe0

【携帯ゲーム機を渡した……】

ルカ「……いらねえからやる」

千雪「また廃品回収?」

ルカ「そうだ、他意はねーから要らなかったらそっちで捨てろ」

千雪「はーい。……それにしても、またゲーム?」

ルカ「この前のはガキと遊ぶ用、そっちはてめェで遊ぶ用だ」

千雪「……このゲーム機、甜花ちゃんも持ってたものかしら」

ルカ「……その辺の事情は知らねーけどよ」

千雪「……うん、ありがとう。ルカちゃん」

(……まあ、普通には喜んだか)

-------------------------------------------------

ルカ「……」

千雪「……」


さっきの今、私は拒絶したばかり。
流石に美琴のことについて踏み込んでくるつもりはないらしい。
多分、そういうのは……【後】でやるんだろう。

それに私も、まだ話す整理がついていない。
お互いが押し黙るこの空間も嫌なので、海水浴という分かりやすい話題に飛びついた。


ルカ「海水浴って誰が来るんだ?」

千雪「えっ……えっと、あさひちゃんと果穂ちゃんと、それに愛依ちゃんと夏葉ちゃんが一緒に遊んであげるんだって」

ルカ「なるほど、ガキ連中とその世話役か……」

千雪「ふふっ、あさひちゃんも果穂ちゃんも第2の島に渡れるようになってからずっと泳ぎたがってたから念願適ったって感じかな」

ルカ「そういやモノクマが出てくる前も、真っ先にモノミに水着貰いに行ってたな……」

千雪「こんなに美しい海なんだもの、きっと楽しいと思うわ」

ルカ「……海は確かに綺麗かも知んねーけどよ、状況が状況だろ」

千雪「え?」

ルカ「コロシアイなんて強いられて、実際死人も出てるのに……ガキってのは気楽なもんだな」


しまった。別に空気を壊したかったわけでもないのに、昨晩のことを引きずって沈んだ心が勝手にネガティブな言葉を吐き出した。
海だの南国だの、そういう眩しい言葉が出てくるたびに、私には影が落ちる。
明るい話題になると、マイナスな考えばかりが浮かんでくるのはもはや病気のようですらある。

流石にこればっかりには少しばかり手芸女も不愉快な思いをしたようで、一瞬眉を顰めるようにした。


千雪「ルカちゃん……私にはいいけど、そういうことはあの子たちの前では言わないでほしいかな」

ルカ「……悪い」

千雪「できる限り、不安とか恐怖とか、そういうものは私たちで遠ざけてあげたいの。少しの間でも忘れられるように、楽しい、嬉しいの時間をあの子たちのために作ってあげたいと思っているの」

ルカ「……」


1.だったら、私なんか呼ばない方がよかったんじゃねーのか
2.でもいつかは向き合わねーといけないだろ
3.自由安価

↓1


702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/14(金) 21:46:14.15 ID:BS8zbjxGO
?
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/14(金) 21:47:05.56 ID:BS8zbjxGO
1
704 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:02:15.90 ID:EbFPAfXe0
1 選択


ルカ「だったら私なんか呼ばない方がよかったんじゃねーのか」

千雪「……ルカちゃん」

ルカ「私はお前らとは違う、別に前を向こうとか仲間と協力しようとかそういうベクトルで物事を考えてない」

ルカ「生き残るために割り切ってるだけだ。だから仲良しムードとかそういうのとも無縁だ」

ルカ「今みたいに、口を開けばお前らの指揮を下げるようなことだって言う」

ルカ「なんでそんなに私に構うんだよ」

千雪「……」


自分の意志とは別に言葉が出た。
私の舌は手芸女に対してやたら刺々しい疑問をつらつらと並べ、必死に距離を取ろうとしている。
違う、こんなことが言いたいんじゃない。
こんなの……美琴とおんなじだ。
自分の思ってることを言うのが怖くて、関係をぶち壊してなんとか退路を作り出そうとする。
戻って戻って、取り返しのつかないところまで行ってしまった前例だってあるのにこの舌に定着した癖は直せそうもない。

(ああ、最悪だ)

自分自身の悪癖を恨んだ。



千雪「……信じてるから」


でも、それに対する手芸女の回答は明瞭かつ単純だった。


千雪「ルカちゃんは確かにちょっと口が悪いかもしれません」

ルカ「なっ……」

千雪「でも、ルカちゃんが本当にただ割り切ってるだけじゃ、私とこんな風に話してもくれないと思うの」

ルカ「それはお前が強引に距離を詰めてきたからだろうが……!」

千雪「それに、今ルカちゃんは美琴ちゃんと頑張って向き合おうとしているでしょ?」

ルカ「……あ?」

千雪「それって、ルカちゃんは一生懸命一歩を踏み出そうとしているってことじゃないのかな。自分のこれまでの殻を破って、変わろうとしている。そのことってすごく大変で苦しいのに……」

千雪「それでも頑張ってるルカちゃんが、前に進もうとしていないって言うのは……ちょっとおかしいかも?」

千雪「だからね、ルカちゃんがいても私たちは盛り下がったりなんかしない。むしろ、その背中を見て、自分たちも頑張ろうって思えるんだ」

ルカ「……」


敵意に満ちた言葉をこうも丸め込まれてしまうと、こちらも形無しだ。
カップ半分ほどに残ったコーヒーを一気に飲み干して、乱暴に机に置いた。


ルカ「……ごちそうさま」

千雪「お粗末さまでした♪」


……本当に食えない女だよ、こいつは。


-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【桑山千雪の親愛度レベル…3.5】

705 :自由行動は手癖で書いてるので多少書き溜めと齟齬があるかもしれませんがご容赦を ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:04:29.24 ID:EbFPAfXe0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


そろそろ時間だ。太陽も頂点に上る少し手前、予定していた集合時刻も近い。


(……)


別にそこに前向きなスタンスはない。昨日話したからといって、小学生にそれほど愛着があるわけでもない。
ただ、見たくないものを見ないで済むように、その穴を埋めるための何かを求めていただけ。


何も持たず、何も考えず。ゆっくりと部屋を後にした。
706 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:05:42.48 ID:EbFPAfXe0
-------------------------------------------------
【第2の島:海水浴場】


特に着替えも何も必要ない。
準備は手芸女が自分でやると言っていた、私はアイツと一緒に日陰に備えて泳いでいる連中の面倒を少し見てやるだけ。


砂浜につくと、丁度手芸女がパラソルを立てている途中だった。
手先が器用な割に、こういう設営のようなことは苦手なのか、
柱を砂にうずめるのに随分と苦労していた様子だったので、ひったくるようにして代わりに挿してやる。

手芸女は過剰な動作で私に感謝を示した。
そのままビニールシートを引いて、そこに二人並んで座る。
潮風が頬を撫でる中、ただぼんやりと海を見つめていた。
海で泳いでいるのは小学生と中学生、そしてその連れ。
数人のやかましい連中が、大声を上げて水をかけあっている。


千雪「ふふ……楽しそうね」

ルカ「……おう」


707 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:07:24.02 ID:EbFPAfXe0

あんな光景、ずっと無縁だった。
私も美琴も学生の早いうちから芸能界に飛び込んで、空き時間はすべてレッスンに充てていたから。
きっと二人で華々しいステージに立てる、その瞬間を信じて、これまでの人生の大半をなげうってきた。
それが無駄だったなんてことは言わない、実際今の私はそれなりに成功して、それなりにファンがいて、カミサマなんて言われてそれなりに崇められている。

……でも、こんなのを求めてやってきたわけじゃない。
こんな空虚な栄光で終わるんだったら、空き時間をレッスンなんかに充てるんじゃなかった。
同じユニットの仲間として、肩を並べて雑談するでもいい、時には事務所を抜け出して近くの喫茶店でケーキをつつきあうでもいい。
ただ笑いあって、顔を見つめあえたらよかった。


ルカ「……」

千雪「ルカちゃん、聞いても……いいかな?」

ルカ「ホント、お節介だな」

千雪「ごめんね……つい、気になっちゃって」

ルカ「まあ、いいよ……わかってて来たし」

千雪「……美琴ちゃんは、なんて?」

ルカ「……何も。私なんか眼中にない」


裁判の終わり、エレベーターに乗り込む直前。
あの時には一瞬だけ美琴と何かを通わせることができたとは思う。
それも、七草にちかの言葉を借りた不十分なものではあったけど。

でも、それが最後。
美琴は一度たりとも、『斑鳩ルカ』のことを見ちゃいない。

708 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:09:25.51 ID:EbFPAfXe0

千雪「……ルカちゃんは、美琴ちゃんのことをどう見てるの?」

ルカ「……どうって、言われても」

千雪「今の美琴ちゃんは、ルカちゃんと一緒だった時の美琴ちゃんと……違う?」

ルカ「……」


私と一緒だった時の美琴_____

私の中の美琴の記憶はもう、鮮明ではない。
ほんの少し前の出来事でも、緋田美琴という人間は私の中で都合のいいように作り替えられてしまっている。
ずっと、美琴だって私のことを思い続けてくれていると思っていた。
でも、この島に来て七草にちかとのそれをまざまざと見せつけられて。
現実と虚構とが私はわからなくなってしまっていた。
いつか、美琴は戻ってきてくれるって。
美琴は、こっちを見てくれるって。そう思っていたのに。

私はいつからか美琴を見ることをやめた。
美琴の中にある、私の隣に立っていた人間を必死に美琴から見出そうとしていた。

要は、自分自身が変わる気力もない臆病者だ。


ルカ「……わかんねえ」

千雪「……そっか」

709 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:10:49.68 ID:EbFPAfXe0

千雪「……あっ」


突然素っ頓狂な声を上げた。つられて顔を持ち上げると、海から続々と連中が砂浜に上がり始めていた。
満面の笑みで手を振る小学生たちに、手芸女はあわてて笑顔を取り繕い、手を振ってこたえた。
私はそこまで愛想よくするつもりはない、無言で近くのクーラーボックスからジュースを取り出して脇に置いた。


ルカ「好きなの取りな」

果穂「はいっ! ありがとうございます!」

あさひ「果穂ちゃん果穂ちゃん、次はどっちが深く潜れるか勝負しようよ!」

愛依「アハハ、潜るんだったらゴーグルつけよっか! 持ってきてたはずだからさ〜!」


本当に能天気な連中だ。
心の底から海水浴を楽しんでいるこいつらの心中には曇り空のカケラほどもないんだろう。
でも、私の心はこんなにも鈍く重たい、海に入ろうものなら何もせずとも海底に沈んでしまう。

710 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:12:11.46 ID:EbFPAfXe0

千雪「休憩するなら日陰どうぞ、私は帽子があるから」

夏葉「果穂、お言葉に甘えましょう。休憩するときはしっかりと身を休める。徹底したほうがいいわ」

果穂「は、はい! ありがとうございます!」

千雪「いえいえ」


私と美琴がユニットを組んでいたころ、毎日切迫した空気に身を置いていた。
というよりも事務所がそういう方針だったのだ。すぐ隣にいる人間は、同じ席を狙うライバル。
交わす言葉は啖呵ぐらいのもの。
見せる表情は殴り合いの前の硬直したもののみ。
こんな小学生連中みたいな笑顔なんか、何年も親にも見せちゃいない。


あさひ「ルカさん、この海すごいんっすよ! 地平線までなんにも見えないっす!」

ルカ「お、おう……そうだな」

果穂「海が透明で、お魚が泳いでるのも見えるんです!」

ルカ「そ、そうなのか……?」

あさひ「すごかったね! エンゼルフィッシュもいたよ!」

果穂「イソギンチャクもカラフルできれいでしたー!」

あさひ「ねえ、果穂ちゃん! ルカさんのために何か海から持ってこれないかな!」

ルカ「あ? い、いいよそんなの……」

果穂「そうですね! うーんでも、どんなのがいいですか……? 魚は……もってこれません……」

愛依「お、いいじゃんいいじゃん! ヤドカリとかさっき見たよ〜?」

あさひ「ヤドカリ! 面白そう!」

ルカ「……聞いてねーし」

千雪「……ふふっ」
711 :×地平線 〇水平線 ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:14:55.59 ID:EbFPAfXe0

____
_______
_________


千雪「本当に元気だよね、圧倒されちゃうくらい」

ルカ「……ホントな、こっちの反応なんかお構いなしじゃねーか」

千雪「ふふっ、たじたじだったね。ルカちゃん」

ルカ「るせー」

千雪「でも、ルカちゃんも嫌じゃなかったでしょ?」

ルカ「……」

千雪「黙ってても、口元が緩んでる」

ルカ「……! う、うるせー……見んじゃねー……!」

千雪「果穂ちゃんもあさひちゃんも……純粋で素直な子でね、誰とでもあんな風に気軽にお話しできるんだ」

ルカ「……ガキってのはそういうもんだろ」

千雪「子供って無敵だもん。……大人になるにつれて、そんな純粋さはどうしてもなくなっちゃう……大人になんか、なりたくないなぁ」


随分と妙なことを言う。私よりよっぽど大人なはずの、お前がそれを言うか。
でも、手芸女の表情は冗談めかして茶化すようなものではない。
遠くを穏やかに見つめて、その視線は何かを帯びている。

712 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:15:59.62 ID:EbFPAfXe0

千雪「素直な気持ちを言うのって難しいよね。だって、素直な気持ちなんて、自分にもわからないもん」

ルカ「……」

千雪「大人って、なんでも隠しちゃうの。周りの人が、自分自身が傷ついちゃうって、理解するより先に感じ取って隠しちゃう。大人になるまでの道のりで、経験を積んでそれがわかっていくから」

千雪「でも、そのせいで出さなきゃいけないものも奥深くにしまい込んじゃって。そうなるとなかなか引っ張り出せない。衣替えとおんなじ」

千雪「これから着たいなって服に限って奥にしまい込んじゃってること、ない?」

ルカ「……ハッ、確かにな」

(……今の私が、まんまその通りだな)


自嘲気味な笑いを含ませた返答に、手芸女は私の顔を覗き込むようにした。
これまでにないほど真剣な表情で、眉にも力がこもっている。


千雪「……ねえ、ルカちゃん」

ルカ「……なんだよ」



千雪「まだ、私たちは大人にならなくていいんじゃないかな」


713 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:17:05.74 ID:EbFPAfXe0

ルカ「……お前」

千雪「大人ぶるには、経験が足りてない。まだまだ半人前ですぞー……なーんて」

ルカ「……」


最後の言葉は柔和な表情だった。
それこそこいつ自身が言うように、大人のイメージとは縁遠い、にへらとしたあどけない笑顔。
締まりのないその口元が、妙におかしかった。
思わず吹き出すようにして、私は顔を少しだけ伏せた。


ルカ「ぷっ……くっだらねえ」

千雪「あっ、ひどいー!」

ルカ「……お前だって、人のこと言えないだろ。【千雪】」

千雪「……えっ、ルカちゃん、今……?」


手芸女の反応よりも先に、自分自身がそれに驚いた。


ルカ「なんでもない」

千雪「えー、ちゃんと聞いたもの! もう一回!」

ルカ「言わない」


手芸女が肩をガクガクと揺さぶるのが、妙に心地よかった。
ずっと前から知っている旧友のように緊張がほぐれていくような感覚、ついつい意地悪したくなってしまうような感覚とも言うべきか。
そんな知己の間柄でもない限りは抱かないような感慨を、ここで持つこととなったのだ。
714 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:18:59.38 ID:EbFPAfXe0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】


「……これでよし、と」


海水浴終わり、私たちはスーパーに寄って帰った。
持ち帰ったのは水槽とその他飼育用の設備、そして餌となる野菜類。
飼育するつもりなんて元々なかったが、283プロらしいごり押しを受けて譲り受けることとなった。
私だって人の心がある。子供からのプレゼントをそうそう無碍にはしない。


≪千雪「まだ、私たちは大人にならなくていいんじゃないかな」≫


いや、まだ私も子供なんだったな。


「ぷっ……アハハッ!」


アイツの言葉の何をそんなに真に受けてるんだか。
自分が滑稽でたまらなくて、つい吹き出してしまった。


「……さて、時間はまだあるな」


【自由行動開始】


-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…84枚】
【現在の希望のカケラ…19個】

1.交流する【人物指定安価】※美琴、透、雛菜を除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/14(金) 22:42:23.48 ID:7mlQnUTA0
1 あさひ
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/14(金) 22:42:29.97 ID:c9ymRv1R0
小学生
717 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 22:51:40.54 ID:EbFPAfXe0
1 あさひ選択

【第2の島 図書館】


……いた。
ようやっと見つけたのは監視の大本命、芹沢あさひだ。

さっきの今で海水浴終わりだというのに、まるで疲労の色も見せずに熱心に読書に励んでいる。
私だったら泳いだ後なんて疲れて活字の一つも読めやしないだろうな。

怪しまれないように、適当に口実をつけて近くに座る。
あいつの海水浴の招待は受けて正解だったかもしれない。
理由としてはうってつけだ。


ルカ「お前たちにもらったヤドカリ、一応は世話見てやることにしたから」

あさひ「……」

ルカ「……おい、聞いてんのか」

あさひ「……」


だが、真隣に座って話しかけてもまるで反応がない。


ルカ「おい、シカトこいてんじゃねえぞ!」

あさひ「わっ!? ……あれ、ルカさん、いつからいたっすか?」

ルカ「……ずっと隣に座ってたんだがな」

あさひ「ルカさん、図書館で大きな声出しちゃダメっすよ」

(……こいつめ)

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【キルリアンカメラ】
【トイカメラ】
【表裏ウクレレ】
【バール】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/14(金) 22:55:35.64 ID:DMPUMGfR0
1 キルリアンカメラ
719 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:07:33.05 ID:EbFPAfXe0

【キルリアンカメラを渡した……】

あさひ「ルカさんルカさん、そのカメラなんっすか?!」

ルカ「ま、待て飛びつくなって……渡してやるから落ち着け」

あさひ「なんか普通のデジカメと違うっすね。これ、どういうカメラなんだろう」

ルカ「キルリアン写真?ってのがとれるって言ってたけど、お前分かるか?」

あさひ「キルリアン写真……なんなんだろう、ちょっと調べてくるっす!」

ルカ「あっ、ちょっと待て! おい!」

ルカ「待てって! おい!!!!!!」

【PERFECT COMMUNICATION】

【いつもより多めに親愛度が上昇します!】

-------------------------------------------------

つくづくこいつという奴が読めない。
七草にちかの裁判の時、いくつか残された疑問。それを旧館前で口にした時、確かにこいつの声がした。
だが、それ以降のこいつはどうだ?
アホ面引っ提げてそこら中を走り回り、小学生やギャル女と遊んでは騒ぎ倒している。
さっきの海水浴だって、ゴーグルをつけずに海中で目を開けて痛い痛いと喚いていた。
裁判の時にやたら冴えた推理で議論をリードしていたくせに、そんな様子はほとんど見えない。
本当に、こんな奴が【狸】なのか……少しばかり不安になる。


ルカ「……お前、何読んでるんだよ」

あさひ「これっすか? これ、野草の図鑑っす」

あさひ「この島ってすごくいろんな植物があるじゃないっすか。元の世界にいた時じゃ見たことのないやつもいっぱいあって、それで気になって調べてるっす」

(……まさか、それで毒でも作ろうってんじゃ)

あさひ「このアザミとかって海岸沿いに生えてるらしいっすけど、食べられるらしいっすよ!」

(……なんなんだこいつは、本当に)

あさひ「でもこれって日本でも見られる野草らしいっすね、もっとこの島だけの野草とかってないのかな……」

あさひ「……」

ルカ「あー、おいおい。自分だけの世界に入るな」

あさひ「あだっ!? なんっすかルカさん」

(こいつのペースに付き合ってるとまるで話が進まない)

(まずはそれとなく探りでも入れてみるか……?)


1.お前、七草にちかの事件をどう思ってる?
2.このコロシアイ南国生活、怖くないのか?
3.自由安価

↓1
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/14(金) 23:10:53.18 ID:DMPUMGfR0
1
721 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:20:10.19 ID:EbFPAfXe0
1 選択


ルカ「……お前、ちょっと話に付き合え」

あさひ「……? なんっすか?」

ルカ「……お前、七草にちかの事件をどう思ってる?」

あさひ「『どう』って……どういう意味っすか?」

ルカ「あの事件は、本当に終わったと思ってるのか聞いてんだ」

あさひ「言ってる意味が分からないっす。あの事件はにちかちゃんが犯人でおしおきもされたっす。にちかちゃん以外のクロはいないっすよ」

(クロは確かにいねえが……すっとぼけてんのか?)

あさひ「でも、不思議なところならあるっすよね」

ルカ「……! や、やっぱお前……」

あさひ「透ちゃん、本当にこの島の外の人と通じてるのかな……」

ルカ「そ、それもそうだけど……そっちじゃなくて」

あさひ「……? なんかルカさん、変な感じっす」

ルカ「……あ?」

あさひ「……そんなんじゃ、捕まえられないっすよ」

ルカ「……てめェ」

あさひ「あの事件に関与してるのはもう一人いるはずっす。でも、それは今のルカさんじゃきっと捕まえられないっす」


それは、中学生から私に正面からたたきつけられた挑戦状だ。
捕まえられるものなら捕まえてみせろ、その言葉のニュアンス通り、中学生は生意気な笑みを浮かべていた。

……上等だ。


ルカ「……ああ、ちゃんと証拠を掴まねーとダメだもんな」

あさひ「そっすね。可能性だけじゃ、結論にはできないっすもん」

(……よく言うぜ)

あさひ「じゃ、とりあえず私は行くっすよ。愛依ちゃんとこれから、ヤシの実でジュース作る約束なんで!」

ルカ「え? お、おう……」

(……しかし、本当、こいつはどっちの顔が本当なんだ)

-------------------------------------------------

【親愛度が上昇しました!】

【現在の芹沢あさひの親愛度レベル…2.0】

【希望のカケラを入手しました!】

【現在の希望のカケラの数…20個】
722 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:21:38.55 ID:EbFPAfXe0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


……さて、いよいよこの時が来た。

昨日の今日で、今朝にも感じたあの美琴の身体の軽さは抜けきっていない。
吹けば飛んで行ってしまいそうな、押せば破れてしまいそうな、そんな淡く薄い、軽い感触。
でも、この感触を忘れてしまう頃に、また顔を突き合わせるんじゃ遅いはずだ。
不格好な形でも、【触れようとした】、【掴もうとした】。その事実が生きているうちに、今度こそ美琴を捕まえてやらないと、意味がない。

まだ緋田美琴という人間が、斑鳩ルカという存在を覚えているうちに。
723 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:22:35.89 ID:EbFPAfXe0

部屋の隅を見やった。
豆粒みたいな大きさのヤドカリは、何をするでもなく水槽の中をいそいそと動きまわっている。

あれは、私がまだ子供であることの証拠。
わがままに、取り繕いもせずに、自分の感情を吐き出す権利があることの証拠。
それを私はあいつらから譲り受けたんだ。

____なら、その権利を行使するしかないだろう。


「……よし、行くぞ」


見てろ、七草にちか。
お前が見せてきやがったブサイクな手本とは大違いの、一世一代の仲直りってやつを見せてやる。
せいぜい地獄で腰を抜かして、獄卒に咎められてろ。



緋田美琴の隣に立つのは、私だ。



724 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:24:53.04 ID:EbFPAfXe0
-------------------------------------------------
【第1の島:ビーチ】


「……はぁっ……はぁっ……」


美琴は昨日と同じように、月明かりの下で自分の体を痛めつけていた。
狂ってしまったマリオネットのように、手足は可動域のギリギリで振り回し、それに伴って瞳の中では何か赤黒いものが燃え滾っている。
狂気を孕んだその光景に、思わず言葉を失いかける。
決意を僅かに鈍らせるほどの威圧感が、そこにはあった。

でも、もう引かない。逃げない。
どれだけ苦しい現実でも目を背けない。目を背けてしまえば、形のない黒いものがまた私たちの目を覆ってしまうから。
正面からぶつかって、ぶつかって、ぶつかって。
それでやっと光がさす。


「すぅ……」


大きく息を吸った。
今の美琴は何をしようが、きっとその意図を解そうとしない。
自分の中にある七草にちかの虚像を追うための、都合のいい理屈を並べ立てて、それに文句をつける外野を悪と見なすだろう。
いつかの私と、同じだ。



____だから、【そんな思考も吹き飛ばすぐらいのもの】をくれてやる。



725 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:25:36.56 ID:EbFPAfXe0






「美琴―――――――――――――――!!!!」





726 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:27:11.49 ID:EbFPAfXe0

私にできるのは、この咽喉をつぶすぐらいの声量で叫び続けること。
島中に響き渡るぐらいの大声で、美琴に向かって呼び掛ける。


「美琴―――――――――――――――!!!!」


何度でも、何度でも。


「こっち向け―――――――――――――――!!!!!」


波音、潮風、虫の声。そのいずれも聞こえなくなるぐらいに上書きしてやる。


「私はここだ―――――――――――――――!!!!!」


間違いなく私の声は聞こえているはずだ。


「……チッ」


でも、どれだけ叫んでも美琴は無視を決め込んだ。背を向けたまま、自分の体を破壊することに勤しんでいる。
上等だ、それなら……認めさせてやる。

生意気なんだよ、緋田美琴_____!




「……負けてられるか!」


727 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:28:29.06 ID:EbFPAfXe0

私は美琴の隣に立ち、次の作戦に出た。
私の声をどうしても聞かないというのなら、次にするべきは無理やりにその視界を奪ってやること。
美琴が目指してやまない、人を魅了する最高のパフォーマンスというものを魅せつけてやればいい。


「美琴!」


美琴のそれは、私の意志とは無関係に網膜にしみついていた。
自分の体を痛めつけることも厭わずに、限界を超えて動かしていた体。
その苦痛と葛藤とが、私の胸に深く突き刺さり、瞼を下ろしても、空を眺めても、勝手に再生されてしまっていた。
だから、嫌でもその振付は覚えてしまっている。


「お前がしたいのは、こんなことなのかよ」


美琴に合わせて振りを完全に模倣する。
四肢をふるうたびに、関節や筋組織が悲鳴を上げる。
鈍い痛みが徐々に体を締め付ける中、舌を噛んで無理やりにその痛みを忘れさせた。


「お前は、何を見ているんだよ」


私は美琴の域には達していない。
美琴の目指すパフォーマンスに、同じ水準で立つことは適わない。
でも、だからといって、横に立つことを諦めたくはない。
自分の体が壊れようとも、美琴の【耀き】を前に、背を向けるようなことはもうしたくない。


「お前が見るべきものは、そんな虚像なんかじゃないだろ……!」


_____美琴にも、私の【耀き】を見てほしい。





「……ッ!」


ドサッ
728 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:30:11.48 ID:EbFPAfXe0

今度、砂浜に突き飛ばされたのは私の身体だった。
私のダンスがよほど目障りだったのか、それとも説得の声が耳障りだったのか。
それはわからないが、私を突き飛ばした美琴の顔はぐしゃぐしゃで、燃え盛るその瞳は、ほかでもない私自身をしっかりと捉えて睨みつけていた。


「ルカには……ルカには関係ないでしょ……!!」


譫言のようにその一文を繰り返す美琴。
かつて強い語気で私を拒絶したのと全く同じ文面、だが今の美琴はそこに却って脆弱さを晒け出している。
突き崩すなら、今しかない。


「関係ないワケねーだろ! 美琴は、なんでいっつも自分のことばっかり……!」
「知らない、知らない……! ルカなんか、ルカなんか……!」
「違うんだよ……美琴……! 私が美琴に見てほしいのは……【美琴を見てる、私】なんだよ……!」
「……ッ!」


私は、気づいてほしかった。
美琴のことを信頼して、美琴のことを愛して、美琴のことを応援している人間がそばにいることに。
美琴に必死についていって、横にどうにか並び立つことで私のその想いに、気づいてほしかった。
別に友情だの恋愛だの、そんな俗的な話にしたいわけじゃない。
ただ、横に立とうとする人間の感情の重さを、美琴にも知ってほしかった。





「どうして、一人だって思いこんじまうんだよ……美琴……!」




729 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:31:29.06 ID:EbFPAfXe0

七草にちかの想いを汲むことができた、今の美琴ならわかってくれると信じた。


斑鳩ルカという人間が、カミサマなんて称号を必要としていないこと。
斑鳩ルカという人間が、かつてその横に立っていたこと。
斑鳩ルカという人間が、七草にちかと同じように美琴のことを想っていたこと。


____斑鳩ルカという人間が、美琴と過ごした時間を何よりも大切に思っていること。




「私じゃ、ダメなのかよ……!」
「……」
「美琴……お前の夢を、また一緒に追わせてくれよ……!」


730 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:32:24.20 ID:EbFPAfXe0

それでも、美琴は涙一つ流すことはなかった。
それは私もだった。感情の波は既にその決壊地点を超えているが、目元は砂漠のように乾いている。
涙のための水分が、もう体には残されていないのである。
土砂降りの雨にあったかのような両者の身体はただ小刻みに震え、嗚咽を漏らすだけ。
震える口元で、美琴は小さく息を一つついた。


「美琴……」


その瞳にかつて盛っていた豪炎は、焚火のように穏やかな揺らぎになっていた。
敵意という感情の抜け落ちたそれを、私に静かに向けたかと思うと、美琴は数瞬の躊躇いののちにそれを差し出した。


「ルカ……立てる?」


私の目の前には、美琴の右手があった。


「ハッ……!」


不格好な笑顔でそれに答えて、震える手でそれを掴んだ。

731 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:35:18.85 ID:EbFPAfXe0
____
______
________


「いい年して……お互い随分と意地張ってたもんだな」
「ふふ……そうかもね」


一度は立ち上がったものの、お互い体はボロボロで、立っているとふらっと倒れてしまいそう。
海岸沿いに並んで生えているヤシの木の一つにもたれかかるようにして、並んだ夜空を見上げる私たち。


「でも、驚いちゃったな。ルカが折れるとは思わなかったから」
「……ハッ、世話焼きな連中がいたからな」
「え?」


認めたくはないが、もし【あいつ】がいなかったら美琴とこうやってまた肩を並べて話をするなんてことはなかっただろう。
強引に私を連れだして、勝手にいろんなことを体験させて、無理やり交友の幅を広げて。
年上のお姉さん、なんて本人が言っていてもやっていることは母親といった様相の方が正しい。
やられている最中では疎ましくも、後に思うとその意味が重大であったことを知れるという点でも、母親然した振る舞いに感じる。

732 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:36:15.28 ID:EbFPAfXe0

「……いい事務所に入ったな、美琴」
「……うん」
「正直羨ましいよ、私はいまだに事務所にそんな関係の人間は一人だっていない。そんなものを必要とすれば、付け込まれちまうからな」


私も美琴の後を追って、同じ事務所に入っていれば、こんな回り道をしなくても済んだのかもしれない。
いや、そんなのはいくら考えても後の祭りという奴だろう。


「だからこの島にいる間ぐらいは……いいかもな」
「ルカも、変わったね」
「……うるせー」


美琴の柔和な表情に思わず頬が綻ぶ。こんな表情は、前にユニットをやっていた時にも見ることはなかった。

美琴の奴、随分と笑顔は幼いんだな。
普段がクールな面してやがる分、その笑顔の破壊力はなかなかのものだ。


そんな笑顔が見れる自分の幸運には、感謝してならなかった。

733 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:37:23.96 ID:EbFPAfXe0

「……さて、と。とりあえず寝るか」
「え? ……ああ、もう夜時間なんだっけ」
「それどころかテッペン回るっての。明日も朝食会はあるんだ、今から寝とかないと身が持たないぞ」
「うん……そうだね」


近くにあった荷物を適当にまとめて美琴は私の隣に立つ。
こうしてみると、相変わらず美琴の奴のスタイルは化け物じみている。
その横顔も端正な顔立ちで、これだけで月光に映えているのがなんともにくい。
でも、これからはまたこの姿を何度でも見ることができる。そう思うと拳を天にも掲げたい心地だった。


「……じゃ、行くぞ」
「うん」


そして私たちは歩き出す。
自分たちのコテージ、戻るべき場所へ。


……絆が紡ぎ出す、【明日】に向けて。

734 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/14(金) 23:39:02.68 ID:EbFPAfXe0

というわけで本日はここまで。
明日は少し時間通りにできるか怪しいですが、21:00〜の予定でお願いします。
厳しそうならその前にできるだけ早く書き込むつもりです。
もう少し(非)日常編の交流パートは続きます。

それではお疲れさまでした。
735 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/15(土) 19:42:04.41 ID:Zo+FffjL0

申し訳ありません、本日は更新厳しそうです。
勝手ながら明日21:00〜更新に替えさせていただきます。
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/15(土) 22:23:20.61 ID:S/nOegCM0
了解です
737 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/16(日) 21:03:14.52 ID:22Mip92F0
____
______
________

=========
≪island life:day 8≫
=========

【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


この島に来て以来の晴れやかな目覚めだ。
ずっと心に重く沈んでいた鉛を引き上げて放り出してやったんだから当然のこと。
うんと一つ伸びをして、柄でもない溌溂とした声を上げる。


「よし、行くか!」


嫌々参加していたはずの朝食会も、今日ばかりは楽しみで仕方ない。
また美琴と並んで食事ができる、しかもかつてのように気兼ねすることもなく。

待ち望んでいた理想の景色を思うようにそこに実現することができるのだ。
私は準備もそこそこに、急ぎ足でレストランへと向かった。
738 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/16(日) 21:05:06.33 ID:22Mip92F0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】


結華「あっ、ルカルカ。おはよう、今日も来てくれたんだ」

ルカ「おう、おはよう」

結華「……え? ル、ルカルカがあいさつした……? え、え、え……?」


なぜだか勝手にバグりだしたメガネ女を他所に、私は足早で美琴の隣についた。


美琴「ルカ、おはよう」

ルカ「おう! おはよう美琴!」


まさか美琴とこうやってまた、挨拶をかわせる時が来るなんて思いもよらなかった。
美琴は晴れやかな表情で食事を口に運ぶ。
私はそれを頬杖をつきながら、我が子を見守るような生暖かい視線のもとに見つめるのだった。


千雪「あら、ルカちゃん……うまくいったの?」

ルカ「おう……ま、まあな」

美琴「千雪さん……なんだか、お世話になっちゃったみたいで」

千雪「ううん、いいの。一歩を踏み出したのはルカちゃん、私は何も」

美琴「こんな状況じゃなければ何かお礼でもしたのだけど」

千雪「二人の笑顔が見れただけで私は嬉しいから大丈夫。気にしないで」


千雪はその言葉通りに上機嫌になり、鼻歌交じりに朝食をつついた。
それを周りに言いふらすでも、自慢するでもなく、自分の功績を一人で確かめて喜んでいる。


ルカ「……いい奴だな」

美琴「……でしょ?」
739 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2022/01/16(日) 21:09:07.49 ID:22Mip92F0
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【ルカのコテージ】


自分の部屋に戻ってからも、なんだか現実であることに自信が持てなかった。
ここ数年燻ぶり続けていた思いが晴れて昇華されて、背負っていた荷物もなくなった。
こうなってくると、逆に違和感を覚えるものだ。


「……へへっ」


指で水槽のヤドカリをつついた。ヤドカリは外敵を察知したのか、逃げまどい岩陰にその身を隠す。


「……お前のおかげでもあるんだぞ」


このヤドカリを渡してきた小学生と中学生。あいつらの存在もわずかながらも影響している。
人と人との交流というのは、本当に度し難いものがある。


「……会えたら、言っとくか。お礼」


まだ今日は始まったばかりだ。
私がやるべきなのは【監視】、それだけじゃない。

____同じ島で暮らす者同士の【交流】だ。


【自由行動開始】


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
☆斑鳩ルカの交流について

おめでとうございます!
積年の想いを打ち明けたことにより、緋田美琴様との交流が解禁されました!
以後交流相手として選択することが可能です。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…84枚】
【現在の希望のカケラ…20個】

1.交流する【人物指定安価】※透、雛菜を除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/16(日) 21:12:49.91 ID:VY6fadzu0
1 千雪
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