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【シャニマス×ダンガンロンパ】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】
- 483 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:10:10.55 ID:YOXWFtRz0
-
摩美々「犯人は標的を勘違いして灯織を刺しちゃったってワケー?」
- 484 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:11:22.41 ID:YOXWFtRz0
-
にちか「……!」
夏葉「……そう考えるのが妥当だわ」
夏葉「犯人を含めて千雪と果穂以外にあの塗料が花飾りに使われていたことを知っていた人間はいない。そして、灯織以外の花飾りはすべて花束にして持ち出されている」
夏葉「暗闇の中で犯人のつけた目印ともう一つ、灯織の花飾りだけが光っていた……」
透「犯人は自分の目印と勘違いしちゃったんだ」
智代子「そ、そんな……」
ルカ「そして、そんなもともとの目印を付けられるタイミングなんてそうそうあるもんじゃねえ。胸元を触るなんて不自然な行為、同性でも普通は拒否するはずだ」
ルカ「でも、それが唯一自然に行えたタイミングがあるんだよ」
愛依「そ、それって……」
あさひ「ボディチェックのタイミングっすよね」
ルカ「……参加してない私からすれば聞きかじった情報でしかないけど、なにやら相当に丁寧にやってたらしいじゃねえか」
摩美々「それはもう丁寧ってレベルじゃなかったよー」
摩美々「頭の先からつま先まで、ありとあらゆるところをまさぐられちゃいましたからー」
雛菜「どこにも隠し物ができないように、隅々まで見られちゃったよね〜!」
冬優子「確かに、このタイミングなら違和感なく塗料を塗ることができるかも……」
ルカ「そしてこのボディチェックをやってたのは、被害者の風野灯織と……七草にちか、てめェなんだよ」
【美琴「そんな推理じゃ魅せられない」】反論!
- 485 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:12:28.50 ID:YOXWFtRz0
-
美琴「……ルカ、少し黙って」
ルカ「み、美琴……!?」
美琴「犯人が夜光塗料を使って胸元に塗り付けた。そしてそれが可能なのはボディチェックのタイミングだけ?」
美琴「そんなのただの推測でしょ、ルカの妄想を押し付けないで」
ルカ「も、妄想って……違う、私は……!」
美琴「にちかちゃんが犯人なわけない……そんなの、認められない……!」
-------------------------------------------------
【反論ショーダウン開始!】
発言力:♡×2
集中力:☆×5
コトノハ
‣【モノクマファイル1】
‣【テーブルクロス】
‣【夜光塗料】
美琴「犯人が夜光塗料を胸元に塗り付けて」
美琴「それを目印にして凶器を突き刺そうとした?」
美琴「そんなのただの推測でしょ?」
美琴「ボディチェック以外にも、うっかりぶつかった体を装うとか」
美琴「塗料を塗りつけるタイミングはいくらでも生み出せる」
美琴「にちかちゃん以外にもチャンスはあったんじゃない?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
【発展!】
ルカ「そんな不自然なことをしてたらほかの連中の目にもとまるだろ……!」
ルカ「違和感なく塗料を塗れる機会なんて、ボディチェックぐらいのもんだろ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
美琴「パーティに参加もしていないルカに何が分かるの?」
美琴「大体あの大広間で刺殺なんてしようものなら」
美琴「服に【返り血が付着する】はずでしょ?」
美琴「にちかちゃんは全身綺麗なまま」
美琴「床下に犯人が潜んでいた節の方が有力に感じるけど」
美琴「もう……ルカは黙ってて」
【矛盾する発言を正しいコトノハでコンマ30以上で論破しろ!】
↓1
- 486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 22:14:36.49 ID:JRwVEyrw0
- 【返り血が付着する】←テーブルクロス
- 487 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:15:51.81 ID:YOXWFtRz0
-
ルカ「その矛盾、斬らせてもらう!」
【BREAK!】
ルカ「確かに七草にちかの服には返り血なんて付いてねえ。でも、だからといって犯行を否定する証拠にはならないと思う」
美琴「灯織ちゃんは心臓を貫かれてた。出血量も相当なものだと思うけど」
ルカ「ああ、そうだろうな。だからこそ、そいつは返り血を防ぐための道具を使ったんだ」
ルカ「パーティ会場の机の全部に敷かれていたテーブルクロスだよ。これを頭からかぶっておけば返り血も受け止めてくれるはずだ」
美琴「……」
結華「ちょ、ちょっと待って! でも、あの会場にはそんな予備のテーブルクロスなんかなかったよ?!」
摩美々「何も予備のテーブルクロスなんか用意する必要はないでしょー?」
果穂「もしかして、あのたおされてたテーブルのテーブルクロスですか?!」
智代子「え? で、でもあれって灯織ちゃんが倒したんじゃ……」
冬優子「その前提からして違ったんだね……!」
冬優子「シュラスコのお肉が鉄串から抜かれていたのも含めて不自然な細工が為された痕跡を隠すために犯人が机を倒した……」
冬優子「灯織ちゃんが暗視スコープを使おうとしてふらついたわけじゃなかったんですね!」
- 488 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:16:47.56 ID:YOXWFtRz0
-
美琴「……まだだよ。たとえそれで返り血を防ぐことができたとしても、今度はそのテーブルクロスが不自然になる」
美琴「偶然たまたま血にぬれたテーブルクロスがあったとでも言い訳するの?」
ルカ「……ぐっ!」
果穂「……あ、あの! そんな言い訳は必要ないと思います!」
ルカ「小学生……? お、お前……」
果穂「ルカさんはその時、まだきてなかったので知らないと思うんですけど……にちかさんは、あたしが死体を見ないように、近くのテーブルクロスで死体をかくしてくれたんです」
果穂「もし、そのテーブルクロスに返り血がついていたとしても……そのときについたものだとみなさん思うはずです!」
夏葉「果穂……あなたの言うとおりだわ!」
あさひ「あの時、真っ先に灯織ちゃんの死体を隠したのも……にちかちゃんだったっすよね」
≪智代子「灯織ちゃん! 灯織ちゃん?!」
あさひ「これ……!!」
果穂「……ひお、り……さん……?」
夏葉「……!! 果穂、見ちゃダメよ!」
にちか「……!! と、とりあえず、テーブルクロスでもかけて隠します!」
小学生が見るにはあまりに刺激が強すぎる。
とっさに私は【近くにあったテーブルクロスを】死体の上からかぶせた。≫
- 489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 22:16:50.04 ID:kR8WzFmv0
- 返り血 に テーブルクロス
- 490 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:18:12.46 ID:YOXWFtRz0
-
美琴「嘘……」
にちか「……」
ルカ「美琴……お前の気持ちは察して余りある」
ルカ「だけど……ここで選択を間違えたら、私と美琴だけじゃねえ……ここにいる全員の命が奪われちまうんだ……!」
ルカ「お前はそれでいいのかよ……!」
美琴「……認めない」
美琴「ルカなんかにはわからない……にちかちゃんは、誰かを殺すような人じゃない」
にちか「美琴さん……」
美琴「それ以上言うなら、許さない……絶対に」
ルカ「……わかったよ」
ルカ「たとえ美琴に一生憎まれることになろうとも……私はこの道を譲るつもりはない。絶対に正しい真実にたどりついてみせるからな!」
-------------------------------------------------
【パニックトークアクション開始!】
発言力:♡×2
美琴「ルカに何が分かるの?」【防御力20】
美琴「違うの」【防御力25】
美琴「ルカは黙ってて」【防御力30】
美琴「にちかちゃんを守れるなら」【防御力35】
美琴「……死んだっていいの」【防御力40】
【盾の防御力をコンマで削り取れ!】
↓直下より五回連続判定
- 491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 22:18:38.09 ID:kR8WzFmv0
- あ
- 492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 22:19:16.28 ID:kR8WzFmv0
- あ
- 493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 22:20:12.41 ID:kR8WzFmv0
- ありがとうございます。
- 494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 22:21:00.24 ID:kR8WzFmv0
- さ
- 495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 22:21:28.91 ID:kR8WzFmv0
- dee
- 496 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:25:05.00 ID:YOXWFtRz0
-
(チッ……! あと少し……!)
(私の進む道だ……美琴だろうと、この歩みは止めさせねえ……!)
-------------------------------------------------
【パニックトークアクション開始!】
発言力:♡×2→1
美琴「ルカに何が分かるの?」【防御力11】
美琴「違うの」【BREAK!】
美琴「ルカは黙ってて」【BREAK!】
美琴「にちかちゃんを守れるなら」【防御力11】
美琴「……死んだっていいの」【BREAK!】
【盾の防御力をコンマで削り取れ!】
↓直下より二回連続判定
- 497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 22:26:14.74 ID:Pau9SU5i0
- あ
- 498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 22:31:49.39 ID:Pau9SU5i0
- はい
- 499 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:32:37.87 ID:YOXWFtRz0
- -------------------------------------------------
【ALL BREAK!】
ルカ「美琴……!」
【美琴「にちかちゃんが犯人だという決定的な証拠でもあるの?」】
上面図/ティ/会場の/パー
【正しい順番に並び替えて、コンマ値50以上でとどめをさせ!】
↓1
- 500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 22:37:09.02 ID:JRwVEyrw0
- パーティ会場の上面図
- 501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 22:37:52.64 ID:kR8WzFmv0
- パーティー会場の上面図
- 502 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:40:16.30 ID:YOXWFtRz0
-
【発言力がゼロになりました】
(届かない……)
(まだ、まだだ……私は戦える……!)
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【美琴「にちかちゃんが犯人だという決定的な証拠でもあるの?」】
上面図/ティ/会場の/パー
【正しい順番に並び替えて、コンマ値50以上でとどめをさせ!】
↓1
- 503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 22:47:04.74 ID:kR8WzFmv0
- パーティ会場の上面図
- 504 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:49:14.81 ID:YOXWFtRz0
-
ルカ「これで終わりだ!」
【BREAK!】
ルカ「美琴……今回の事件の犯人は犯行に使った凶器も、返り血を防ぐ防御も……どっちも現場で調達している」
ルカ「パーティ会場のテーブル、あそこには凶器の鉄串を使ったシュラスコもあったし、返り血を防げるテーブルクロスも乗っている。だから、それを使うには机を倒す必要があったんだ」
美琴「……だから何?」
ルカ「メガネ女、パーティ会場で撮った写真を見せてくれ」
結華「メガネ女って……三峰のことだよね? え、えっと……はい! これ!」
結華「一応集合写真を撮った時、事件が起きた後と二枚撮って……そこから現場の見取り図的なのも作ってたんだよね」
恋鐘「さすがは結華! よう気が回っとるね!」
ルカ「これを見れば一目瞭然なんだよ。停電の中で倒されたテーブル、その向きを見てくれ」
美琴「……向き?」
ルカ「被害者の風野灯織の方に頭を向けてぶっ倒れてるんだよ、このテーブルは。もともとの推理である、被害者本人がテーブルを倒したって話ならこれは妙だろ?」
ルカ「だって、わざわざ回り込んで倒したことになるんだからな」
摩美々「反対ににちかの位置関係はというとー……」
愛依「にちかちゃん……【脚側】にいるじゃん……!」
- 505 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:52:42.63 ID:YOXWFtRz0
-
ルカ「脚側にいるのは勿論こいつだけじゃねー。でも、ボディチェックの件にテーブルクロスの件、総合して考えると……犯人の候補として最有力なのはこいつしかいねーだろ」
にちか「……」
美琴「……違う」
ルカ「美琴……お前……」
美琴「……違う、これもまだあくまで可能性でしかないから。決定的な証拠じゃない」
にちか「もうやめてください!」
美琴「……にちかちゃん」
にちか「美琴さん、これ以上は……もういいんです。風野さんを殺しちゃったの、私なんですよ」
美琴「嘘……だよ、ね」
にちか「いやー、もう嘘は吐きつかれちゃいましたよ。だってキツくないですか?! 始まってからずーーーーーーっと! 犯人はわかり切ってるのにわかってないみたいな演技して!」
冬優子「本当に、にちかちゃんなんだね……?」
にちか「あはは……ごめんなさい、私です。私が夜光塗料を使って、暗闇の中で人を殺したんです。まあ……もともとの狙いとは外れちゃったんですけどね」
果穂「あたしたちの花飾りのせいで、灯織さんは死んじゃったんですか……?」
にちか「ちがう、それは違う! 私がいなければそもそも殺しなんか起きてないんだから! 果穂ちゃんが自分を責める必要はまっったくないから!」
- 506 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:54:43.42 ID:YOXWFtRz0
-
にちか「……全部全部、私が悪いんです。誰にも相談しないで、勝手に突っ走って」
美琴「……本当にね」
にちか「美琴さんにはいくら謝っても足りないです。この裁判の中で、私のことを信じて嘘までついてくれたのに」
摩美々「やっぱりルカのアリバイは嘘だったんだー」
にちか「ああでもしないとルカさんが犯人扱いされちゃってましたから」
あさひ「……? それ、変っすよ。だってにちかちゃんが黙ってれば、にちかちゃんは裁判に勝てたんすよね?」
にちか「……最初はね、私も勝とうとしたんだ」
にちか「だから芹沢さんの推理に便乗したし、机を倒した人の時にも名乗りを挙げなかった」
にちか「でも……ほかのみんなが必死に議論をして、生き残ろうとしている中で自分だけみんなを欺こうとして……」
にちか「私が生き残るってことは、その全員を殺すことになるから……それはできないなって途中で思ったんだ」
にちか「こんなので一番になったからって……私は、うれしくない」
にちか「きっともうイヤだって! めちゃくちゃに後悔して……そんで、呆れるくらいに死にたくなるに決まってる」
にちか「だから、もう……終わらせてください。これ以上は、もう」
ルカ「……」
ルカ「……言っとくけど、これは美琴のためでも、ましてお前のためでもない」
美琴「……!」
にちか「……!」
ルカ「私が私として生き抜くため。そのために……初めから事件を振り返って真実を確かめる。その結果導き出される犯人に、投票する。それだけだ……!」
- 507 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:55:47.61 ID:YOXWFtRz0
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【クライマックス推理開始!】
【act.1】
「今回の事件の犯人が最初に行ったのは脅迫文の作成だ。風野灯織のもとに送り付けた手紙、あれはきっと……もともと狙っていた標的含めて全員を一か所にまとめたかったんだろうな。犯人がどこまでを想定していたのかはわからないけど、その集めた先で犯行を行った。全員の目の前で、堂々と、な」
「脅迫文を受けて風野灯織はすぐに全員を集めてのパーティを企画した。パーティの最中なら全員を監視下に置けるし、参加時のボディチェックということで不安材料も除去できる。なんとかこの一晩をしのぐ、その上ではこれ以上ない画期的な作戦だったと思う」
「そして会場に選んだのはホテルの旧館。これまで誰も出入りしてこなかったとこだ。閉鎖的な空間ってのは監視の上では都合がいい。だけど、これまで誰も出入りしてこなかった場所なもんで想像以上にその建物は汚かった」
「そこで風野灯織は掃除をしたわけだが……ここで私以外の全員が掃除に参加した。283プロの仲良しムード、いい子ちゃんムードからすればこれを抑止することはできなかっただろうが……結果としてそのムードのせいで犯人に仕掛けを作る隙を与えてしまった」
「掃除の最中、ほかの連中の目を盗んで犯人が行ったのは停電のための仕掛けづくり。まずはこっそりと倉庫のコンセントにアイロンを挿しておき、常に三台が稼働している状態にする。そのうえで、旧館中のエアコンにタイマーを設定。午後11時30分になると同時に電源が入り、停電が発生する仕組みだ。この停電が犯人にとっては犯行のネック。他の参加者たちの目の前で犯行を行うため、自分自身を真っ暗闇で隠してしまう必要があったんだ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
【act.2】
「そしていよいよパーティ本番。何食わぬ顔で参加者になった犯人はそこで、風野灯織にボディチェックの協力を求められた。多分これももともとの想定のうちじゃない、どこか別のタイミングで夜光塗料は使う予定だったんだろうが……むしろ犯人にとっては好都合。より違和感のない形で標的の胸部に塗料を塗りつけることができるんだからな」
「でも、ここで想定外がもう一つ。それはパーティを始めるにあたって小学生と手芸女が二人で花飾りをこさえてたってことだ。しかもそれの彩色に使ったのは犯人も用意していた蛍光塗料。まさか犯人も同じ塗料が使われてたとは思わなかったんだろうな、風野灯織に言われるがまま、その花飾りを参加者の全員に渡してしまったんだ」
「いざパーティが始まると、風野灯織は警戒をより一層強めた。料理も真っ先に自分が口にして、料理に使った調理器具も全部没収。万全には万全を期すつもりだったんだろう。……でも、見落としがあった。それは料理そのものだ。シュラスコに使われていた鉄串……まさかそれが犯行に使われるとは思わなかったんだ」
「そしてはじめの毒見で慣れない早食いをした風野灯織は一度離席、会場の外へ。他にも会場を離れた人間は二人いる。夜風にあたりながらモノクマと私が近づかないよう監視をするために出た美琴と、ほかの連中の花飾りを集めて花束を作った手芸女だ。だが、この手芸女が花束を作ったタイミングが厄介なことを引き起こしやがった。花束を作ったのはちょうど風野灯織の離席中。風野灯織が再びパーティに戻った時、唯一こいつだけが胸に花飾りをつけている状況を引き起こしちまったんだ」
- 508 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:57:07.42 ID:YOXWFtRz0
- ◇◆◇◆◇◆◇◆
【act.3】
「風野灯織が戻ってきて、メガネ女が集合写真を撮った直後。ちょうど時間が午後11時30分になったタイミングで昼に仕込んでおいた仕掛けが作動。エアコンの起動とともに旧館中が停電した。それと同時に行動を開始したのが犯人。周りのパニックに紛れて、まずはシュラスコから鉄串を抜き取った。この一本が風野灯織の命を奪った凶器……その心臓を貫いたんだ」
「そして次に必要なのが返り血を防ぐためのテーブルクロス。その調達の意味もあって犯人は堂々とその机を蹴り倒した。大きな音を立てて倒れる机に、ほかの人間の注意を引き寄せる効果もあったかもな。でも、犯人の本当の狙いはそこじゃねえ。凶器と防御策とを手に入れた犯人はいよいよ犯行の時」
「昼間につけておいた標的の塗料めがけて鉄串を振りかざす。……その予定だった。あの会場では犯人のつけた塗料のほかにもう一つ光るものがあった。それは……風野灯織の花飾りだ。同じ塗料を使われていた花飾りを、風野灯織ただ一人だけが身に着けていたせいで……犯人は殺害する相手を間違えてしまったんだ」
「そして停電がなおった時、犯人は相当に焦ったと思う。本当に殺す予定だったのはこいつじゃない、なんでこいつが死んでいるんだ? ……ってな、それでもまだ犯人は冷静だった。そりゃそうだ、こいつだって命がけなんだからな。手元に残った返り血の付着したテーブルクロス、これを見られるわけにはいかなかった。だからこいつは大胆にもそのテーブルクロスを死体にかけやがった。小学生には刺激が強いから、死体を隠さなきゃ……その名目でな」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「花飾りのことがなければ、犯行はバレなかったかもしれない。傷口から漏れ出した血液で胸元の塗料なんかは隠れてしまうだろうしな。でも、犯人は間違って花飾りの上から刺してしまった。深紅の血の色に染まった花弁が、犯人に繋がる証拠になったんだ」
「……七草にちか。お前がやったんだろ……?!」
【COMPLETE!】
- 509 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 22:59:18.36 ID:YOXWFtRz0
-
ルカ「これが事件のすべて……お前らの目の前で起きた、その全貌だよ」
にちか「ありがとうございます、ルカさん。全部言った通りですよ」
ルカ「……けっ」
夏葉「……本当に、これで間違いはないのよね」
にちか「はい、もうじゃんじゃん私に投票しちゃってくれて大丈夫ですので!」
結華「……そんな」
愛依「うち、嫌だよ……」
あさひ「……にちかちゃん、結構面白かったっすよ」
にちか「芹沢さん……?」
あさひ「まさかあの真っ暗闇でわたしの目の前で犯行に及ぶなんて、考えもしなかったっす。その発想はすっごくおもしろかったっす」
冬優子「あ、あさひちゃん……!!」
あさひ「でも……にちかちゃんと灯織ちゃんとお別れは……したくないっす」
にちか「……!!」
あさひ「なんなんすかね、これ。二人ともう会えない、もうしゃべれないって思うと……胸のあたりが重く、冷たく感じるんすよ」
美琴「……ごめんね、あさひちゃん」
あさひ「どうして美琴さんが謝るっすか……?」
美琴「……本当に、ごめんね」
- 510 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 23:00:52.58 ID:YOXWFtRz0
-
にちか「美琴さん……美琴さんも、ちゃんと私に入れてくださいね」
美琴「……」
にちか「美琴さんは私がいなくなった後も、芸能界に残ってトップを目指してもらわないと! むしろ足を引っ張る私がいなくて身軽〜!みたいな________
ルカ「くだらねえ真似はやめろ」
にちか「……!!」
ルカ「お前が言ったんだろ、自分の本当の気持ちに嘘をつくなって」
ルカ「今のお前の口から出てる言葉のどこが本当なんだよ、どこが美琴のことを思ってるんだよ」
ルカ「死に際を綺麗に飾ろうとするんじゃねえ、もっと惨めに醜く……一生の別れを悔め。そこにしかお前の本当の気持ちはないだろ」
にちか「……ホント、自分じゃできないことを人に要求して身勝手ですよね!」
ルカ「……そんで美琴、お前もだよ」
美琴「……私?」
ルカ「お前も、正面から向き合ってやらねえと……こいつだって本音が言えないだろ。いい加減見てやれよ、お前の隣に立ってくれてたやつのことぐらいな」
美琴「……」
ルカ「……私相手にはできなかったこと、こいつ相手ならできんだろ」
「「「…………」」」
- 511 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 23:02:25.52 ID:YOXWFtRz0
-
モノミ「うぅ……うぅ……緋田さんとのユニット経験がある二人同士の会話は……涙なしには見られまちぇんね……」
モノクマ「ぐー……ぐー……」
モノミ「って寝てるー!」
モノクマ「むにゃむにゃ……もうお腹いっぱい……」
モノミ「使い古されまくってこの令和の時代にもうネタとしても扱われないレベルの古典的な夢を見てるんでちゅか?!」
モノクマ「……はっ! ボクは一体……? ここはどこ……?」
モノミ「アンタはモノクマ、今は学級裁判中でちゅよー!」
モノクマ「ああ、そうだったそうだった。確か途中までは起きてたと思うんだけど、ついうっかり寝ちゃってたよ!」
モノミ「ったく……しっかりしてくだちゃいね。アンタは仮にもこの南国生活を率いる立場なんでちゅよ! どこから記憶がないんでちゅか? あちしが教えてあげまちゅ!」
モノクマ「えっと確か……緋田さんが斑鳩さんにできなかったことを七草さん相手にはできるとかどうこう」
モノミ「ついさっきじゃないでちゅか! 全部見てたんじゃないでちゅか!」
モノクマ「はい! というわけで議論も出尽くしたようですし……そろそろ行っときますか!」
モノクマ「投票ターイム! オマエラはお手元のスイッチでクロだと思う人物に投票してくださーい!」
モノクマ「議論の結果導き出されたクロは正解なのか、不正解なのかー!」
モノクマ「さあ、どっちなんでしょうかね?」
- 512 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 23:03:36.72 ID:YOXWFtRz0
- -------------------------------------------------
【VOTE】
〔にちか〕〔にちか〕〔にちか〕
CONGRATULATIONS!!!!
パッパラー!!!
-------------------------------------------------
- 513 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 23:04:26.07 ID:YOXWFtRz0
-
【学級裁判 閉廷!】
- 514 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/29(月) 23:09:33.27 ID:YOXWFtRz0
-
というわけで本日はここまで。
主人公交代、なかなか思い切ったことをやらせていただきました。
ルカのキャラに関しては自己解釈をかなり含みます、公式供給なかなか来ないから…
一応明日感謝祭で多少明かされるのかな……?
今後のシナリオ展開によって、物語の展開も変わる可能性があることをご了承ください。
最後のPTAで発言力はゼロになってしまいましたが、メダル半減ペナルティは今回はいいかな……と思ってます。
本当に最後の最後ですし、現状メダル全然足りてない感じがしますしね。
厳格にやった方がよければ報酬半減にしますが…
次回はおしおきから1章完結まで駆け抜けます。
11/30夜から、安価はありません。
それではお疲れさまでした。
- 515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/29(月) 23:15:33.64 ID:kR8WzFmv0
- お疲れ様でした。面白かったです!
- 516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/30(火) 00:10:17.74 ID:amOImD8n0
- 視点キャラが最初に殺されるのは見たことあったけど視点キャラが最初の殺人者ってのは流石に斬新だな…自由行動でルカだけ会えなかったのはそれもあってのことか
集中力も0まで使えるんであれば、発言力も0まで使える(=マイナスになった時点でペナ)仕様でいいと思うなー
- 517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/30(火) 00:25:17.15 ID:amOImD8n0
- そういえば
・にちかが集めたアイテム、好感度は引き継がれるのか
・にちかが殺そうとしてたのは誰だったのか
が気になるね
前者はchapter2入った時点でわかることだけど
- 518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/11/30(火) 00:35:45.15 ID:Iw46JQw1O
- 読み返すと、にちかもそこそこ怪しげな言動してるんだね
にちかの当初の標的が誰だったかは俺も気になる
あんま重要じゃないのかな
- 519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/30(火) 01:47:13.11 ID:cFVfej660
- 乙
メタ的にはにちかクロ確定だったけど作中視点だと自白まで込みで投票に踏み切っていいかだいぶ際どかった感じあるな
停電の瞬間に倒れたテーブルの目の前にいないと鉄串とテーブルクロスの調達難しそうだしあさひとの2択から絞れる証拠残してないように見える
- 520 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 10:53:16.21 ID:BBrd2CUc0
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更新は夜からですが、いくつかいただいている質問などに返信させていただきます。
>>516
ロンパ本編だと発言力ゼロになった瞬間ゲームオーバーではあるのですが、今回はとりあえずナシの方向で行きます
そこらへんしっかりと定義していなかった部分でもあるので、次章以降は厳格にゼロになった瞬間報酬半減で行こうと思います
まあ次章は当分先になるとは思いますが……
>>517
メダル・アイテムは引き継ぎます。
ただし、親愛度はその人同士の友好のパラメーターであるため、前の主人公がこれまでいくらか上げていたとしても続く主人公が引き継ぐことは考えていません。
シナリオ関連の話は後にシナリオ内で語られる部分もあるので、詳細はそちらをご確認ください。
- 521 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 19:58:23.68 ID:BBrd2CUc0
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再開時刻本日は少し遅くなります。
- 522 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 21:57:48.32 ID:BBrd2CUc0
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CHAPTER 01
MIDNIGHTのせいにして
裁判終了
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- 523 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 21:58:52.91 ID:BBrd2CUc0
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モノクマ「大正解! みんなを率いるリーダー、希望の象徴だった風野灯織さんを殺害した極悪非道なクロは七草にちかさんなのでしたー!」
結華「本当に、にっちゃんが……ひおりんを……?」
果穂「にちかさん……!」
にちか「……投票してくれてありがとうございます」
美琴「……」
投票結果は正解。
風野灯織を殺害したのは七草にちか。
モノクマのやたらハイトーンな声とは魔反対に押し黙っている連中はうつむいて、文字通り葬式の参列のような空気が漂っている。
七草にちかが本当に人を殺していたこと、そしてその人間を自らが殺人犯だと告発し次なる犠牲者に差し出したこと。
そのどちらに気を沈めているのかは私には測りかねる。
ただ、その悉くが絶望という言葉で表現するに足る表情を浮かべていることは事実だ。
- 524 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 21:59:58.93 ID:BBrd2CUc0
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モノクマ「みんなが楽しくパーティの準備をしていた中で一人別の人間を殺す準備をしていたなんて、なんとも殊勝な殺人犯ですね!」
千雪「さ、殺人犯だなんて……」
モノクマ「殺人犯でしょ。だって七草さんは明確な殺意を抱いていた、これは神様にだって否定できない事実だよ!」
(……その“神様”ってのは、私のことじゃないな)
摩美々「……ねえ、ルカの言ってた推理って全部正しかったのー?」
にちか「はい……何から何まで言ってた通りです」
摩美々「だとしたら……にちかは本当は誰を殺そうとしてたのー?」
美琴「え……」
摩美々「だって灯織はその誰かと勘違いされて殺されちゃったんでしょー、にちかが塗料を直接塗り付けた……本当は殺されるはずだった人物がいるはずじゃーん」
にちか「……言いたく、ないです」
愛依「にちかちゃん……?」
にちか「言いたくない、言えない……! 今この場所で、私が殺そうとした人間なんて言っちゃったら……!」
千雪「摩美々ちゃん、そっとしておこう……? にちかちゃんが可哀そうよ」
あさひ「わたしはハッキリさせておくべきだと思うっす」
- 525 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:01:26.80 ID:BBrd2CUc0
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愛依「あ、あさひちゃん……!」
あさひ「にちかちゃんだって、灯織ちゃんを殺しちゃったのは不本意だったはずっす。本当に殺したかった相手への思いを隠したまま死んじゃって、にちかちゃんはそれでいいっすか?」
にちか「違うの……私が殺したかった相手には、恨みとか妬みとかがあったわけじゃなくて……」
モノクマ「ああ、もうまどろっこしいなあ! そんなに気になるなら手っ取り早い方法があるじゃない!」
モノミ「ちょっと、今はミナサンが七草さんとお話しているんでちゅから余計な口出しをして邪魔しないでくだちゃい!」
モノクマ「だからこんなうだうだ言ってる無駄な時間を使うくらいなら、もっと一発ですっぱりとターゲットが分かる方法があるじゃない!」
モノミ「え?」
モノクマ「こういうことだよ!」
バンッ!
俄かに暗闇に包まれる裁判場。
モノクマ「七草さんは殺したい相手に夜光塗料を塗りつけてたんだよ? 裁判場ごと真っ暗にしちゃえばおのずと浮かび上がってくるじゃない!」
モノクマ「それこそ暗闇を仄照らす明かりのようにね!」
- 526 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:03:12.41 ID:BBrd2CUc0
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私は参加をしていなかったけど、きっと風野灯織が命を落としたのはこんな暗闇だったんだろうな。
手足の所在もわからなくて、すぐ近くに人がいることはわかっているはずなのに、心がざわつく。
その心のざわつきが目線を走らせる。首を振って、目を凝らし、明かりと呼べる元を探し求める。
そして、その右往左往はある一点で収束した。ちょうど人間の胸のあたりの高さに、わずかに光るものがある。
ほんの一点ほどで、言われなければなかなか気づかない。それぐらいの光量が顔をのぞかせ、私を見つめている。
ルカ「……てめェだったんだな、七草にちかの本当のターゲットってのは」
暗闇の中、私はそのターゲットに近づいていく。
まだそのターゲットは自分のことを指されているのに気づいていないのか、夜光塗料もぼんやりとして動かない。
でも、そんなことは知ったことではない。
たとえ無自覚だったとしても、他者に殺意を抱かれていたその事実は知るべきだし、知られるべき。私はそう思う。
だからそいつの肩に、手をかけた。
丁度この位置に立っていたのはアイツのはずだ。
この裁判の間、終始涼しい顔して、まるで自分は無関係ですともいわんばかりの表情を浮かべていた……【あの女】。
- 527 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:04:11.20 ID:BBrd2CUc0
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ルカ「【浅倉透】……お前の代わりに風野灯織は死んだんだよ」
- 528 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:06:13.94 ID:BBrd2CUc0
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瞬間、裁判場に明かりがともった。
私が手を乗せている肩の持ち主は案の定浅倉透で、自分が選ばれたことに戸惑っている様子だった。
口をまごつかせて、柄でもなくよろけて見せた。
透「え、私……?」
雛菜「透先輩〜〜〜?! なんで〜〜〜!?」
あさひ「にちかちゃんが夜光塗料を塗りつけることができたのはボディチェックのタイミング。誰を標的にしても夜光塗料を塗るチャンスはいくらでもあったはずっす」
雛菜「そういえば……透先輩のボディチェックをしたのって」
≪灯織「市川さん……いえ、まだ始まっていません。その前に身体検査をしてもよろしいでしょうか? ……七草さん、浅倉さんをお願いします」
にちか「は、はい!」
透「厳重じゃん、めっちゃ」
にちか「ここまでやる必要はあるんですかねー……」
とはいえ一度引き受けてしまった仕事。風野さんに言われるがままに浅倉さんの身体検査を行った。全身をパンパンと叩いていき、不審なものはないか確かめて、さらには【胸元も襟を掴ませてもらって】一応は確認。
透「えー、恥ず……」
にちか「す、すみません……」≫
透「あの時かー」
にちか「……これ以上ないチャンスだと思ったんです。浅倉さんを殺すなら今しかない、って」
冬優子「ちゃ、チャンスって……」
- 529 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:07:04.74 ID:BBrd2CUc0
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智代子「な、なんで……なんで透ちゃんを殺そうと思ったの?!」
ルカ「どういうことか、説明してもらえるよな」
にちか「……」
七草にちかはなおも俯いていた。
本当にこいつはどこまで苛立たせる。美琴の隣でいつまでもうじうじうじうじと……自分を口にすることに怯えてばかり。
ルカ「……ッ!」
その苛立ちが、私に七草にちかの胸倉をつかませた。
夏葉「ルカ……! そんな乱暴な真似は……!」
にちか「夏葉さん……いいんです」
ルカ「言えよ」
にちか「……わかりましたよ」
私の顔をその間近にとらえた七草にちかは、観念した様子でその口を動かし始めた。
にちか「……発端は、モノクマの提示したあの動機でした」
恋鐘「漫才に託けて、うちらの記憶が長い間にわたってトンどることを示した、あん動機ばい?」
- 530 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:08:57.55 ID:BBrd2CUc0
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≪モノクマ「でもな、おかんはそのマスコットはみんなの記憶を奪っとるって言うんよな」
モノミ「それは……!」
モノミ「あ、あれ……?」
モノクマ「コロシアイ南国生活に参加しているみんなの記憶を奪っちゃってるあくどいマスコットがいるんだってさ。全く、ひどいマスコットもいたものだよね!」
モノミ「あ、あはは……ほ、本当でちゅね……いったい誰のことやら……」
モノクマ「ほんでおかんが言うにはな、そのマスコットってピンク色のウサギみたいな見た目らしいんや!」
モノミ「……い、今のあちしはツートンカラーの愛らしいウサギでちゅ……人畜無害なウサギさんでちゅ……」
モノクマ「でもな、おかんが言うには最近そのウサギは色を変えられた挙句、お兄さんができたらしいねんな!」
モノミ「いやあああああああ! それ以上はやめてくだちゃい!」
モノクマ「で、オトンが言うにはな、それってモノミちゃうか?って!」
モノミ「……」
モノクマ「もうええわ! どうも、ありがとうございました〜〜〜!」≫
にちか「私の家って貧乏なんですよ。片親だし、母は入院中だし……おかげさまで安アパートにおじいちゃんおばあちゃんとお姉ちゃんとで暮らして」
にちか「お姉ちゃんは毎日バイトを掛け持ちして全部生活費にして、私もアルバイトしながらアイドルやって」
にちか「……とてもじゃないけど、何年も持つような生活じゃないんですよ」
にちか「それなのに、記憶が飛んでる? 私の知らない時間が流れてる?」
にちか「じゃあそれはどれくらい? 数時間や数日ならまだしも、もし数か月……数年なんか経っていたとしたら……」
にちか「家族は、どうなってるんですか……?」
- 531 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:11:17.12 ID:BBrd2CUc0
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冬優子「にちかちゃん……あの漫才を、本当に信じちゃったんだね……」
千雪「仕方ないわ……今私たちの身に起こってることはどれも信じがたいことばかり。どれが本当か嘘かなんて、もう誰にも分らないもの……」
にちか「だから確かめなきゃって……この島を早く出て確かめなきゃって……」
にちか「でも、それでもぎゅっと抑え込もうとしたんです。だって、不安に感じているのはみんな同じだし……私以外の人にも家族だっていますから」
美琴「じゃあ、どうして……?」
にちか「浅倉さんです」
透「……え」
にちか「殺しちゃダメ、殺すなんてもってのほか。そう思ってたのに……浅倉さんは、浅倉さんは……!」
(……っ!)
七草にちかが浅倉透を見つめるその瞳はこれまでの生活の中で見た七草にちかのどの表情よりも鋭く、尖っていて……それは、以前私が七草にちかにぶつけた視線と全く同じだった。
___敵意、そして【殺意】。
今にもその咽喉元を掻っ切って命を奪い去ろうかという剣幕がそこにはあった。
- 532 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:13:30.71 ID:BBrd2CUc0
-
夏葉「にちか……お願い、あなたに透に対する敵意と殺意を抱かせたその原因と理由を教えてもらえないかしら」
夏葉「……私たちも、何もわからないままにすべてを終えたくはないのよ」
雛菜「……」
(いつもの能天気女も今回ばかりは頭にキてるみたいだな……)
にちか「……あれは、この島に来て四日目の朝の話です。前の日に私はルカさんと喧嘩みたいになって……なんだか気も立っていて、寝れなくていつもより早く起きちゃったんです」
ルカ「……そうだったな」
美琴「……」
あさひ「四日目ってことは、あの漫才があった日の朝っすね」
果穂「それじゃあにちかさんは……動機がはっぴょうされるよりもはやくに透さんをころそうと思っていたんですか……?」
(……七草にちかは首を縦には振らなかった)
にちか「落ち着けなくて、私は本当になんとなく……なんとなくの気持ちで散歩をしに外に出たんです」
にちか「その結果、私は見てしまったんです……浅倉さんの、【裏切り】の証拠を……」
ルカ「……う、【裏切り】……だと……?」
冬優子「う、裏切りってことは……透ちゃんが……モノクマ側ってこと……?」
愛依「と、透ちゃん?! う、ウソだよね!?」
透「……」
雛菜「と、透先輩……?」
にちか「……浅倉さんが何も言わないなら私が全部言いますよ」
- 533 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:14:51.83 ID:BBrd2CUc0
-
=========
≪island life:day 4 moring time≫
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- 534 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:16:32.35 ID:BBrd2CUc0
- 【牧場】
私の中の『なんとなく』は静けさを求めていたのか、コロシアイという言葉からイメージされる人由来の脅威から身を置きたかったのか。
気が付けば私は人ではなくむしろ家畜たちがのびのびと過ごす穏やかな牧場に足を運んでいた。
獣の放つ、ありのままの臭いが鼻について煩わしい。
けれど、誰もいない、なにも無い、ただそこにあるだけの牧場の景色は存外私の気持ちを落ち着かせた。
「……はぁ」
私もあの牛みたいに何も考えずだらだらと過ごすだけの一日を送りたい。
あ、でも乳しぼりとかは嫌だな。生理的に無理。
それに家畜って最終的には食べられるんでしょ……最悪じゃん。
どうせなら食べられないし、人に触られないような動物が……
なんてとりとめもないことをひたすらに考えていた、その時だった。
私の視線の先にうっすらと人影が見えた。
その人物はあたりの様子を慎重に伺って、誰にも見つからないように姿を隠しているようだ。
まさかルカさんが何か犯行を企てているんじゃ……?
そんな危惧がふっと湧き上がり、私もスニーキングよろしく身を隠し、慎重に慎重にその人物との距離を詰めていく。
……その人物と背中合わせぐらいの距離までやってきた。
小説とかだと、こういうときでも肝心のその人物はピンとこないとかありがちだけど……
これは現実だ。非現実っぽいだけで、現実だ。
現実というのは、嘘をつかない。
- 535 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:18:52.23 ID:BBrd2CUc0
-
透「……あー、うん。大丈夫、今のところは」
- 536 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:20:48.55 ID:BBrd2CUc0
-
(……浅倉さん?)
浅倉さんは誰かと会話していた。とはいえほかの人物の気配はない。
彼女が何かしらの方法で外部と連絡を取っているのは明らかだ。
もしかして、助けを呼んでくれている?
そう思うと声が飛び出そうだったが、ぐっと堪えた。
(……信用してばかりじゃ、ダメだ。疑いながらの信用じゃないと……)
浅倉さんは悪い人じゃない。それは私だってわかってる。
でも今、ここではコロシアイ南国生活が行われている。
悪い人じゃなくたって、何か間違いは起こってしまうかもしれない。
そのリスクを検討しないと、足元をすくわれるのは私。
必死に自分を押さえつけて、息を殺した。
透「バレてない、平気だって」
透「あー……うん、多分、覚えてない。何も言ってこなかったし」
透「……計画通りだから」
(……浅倉さん?!)
- 537 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:22:55.67 ID:BBrd2CUc0
-
浅倉さんの言っている言葉はところごころが歯抜けだ。
元から多くを語る人ではないけど、この欠落は電話口の相手がそれを語っているから殊更語らないということに由来する。
ただ、その抜けた中身とやらが、私に疑念を抱かせるには十分すぎる要因であることは確かだった。
透「こっちから仕掛けるよ、黙ってたら……やられるのはこっち」
(……!!)
……『仕掛ける』?
その言葉の意図するところはわからない。ただ、彼女の通話相手が、そして何より彼女自身が何かを『仕掛ける』……その言葉に何か良からぬものを感じ取るのは当然のことだった。
透「……うん、それじゃあまた」
戸惑いと驚きで勝手に出てしまう声を抑え込んで、必死に口を押える私の背後でその通話は終わった。
浅倉さんは深く息を一つつくと、あたりをきょろきょろと見まわし始めた。どうやら今の話を聞いた人間がいないか、点検に動き出したらしい。
(……まずい!)
すぐ背後には壁を挟んで私がいる。
このまま見つかったら、私は彼女に何をされるかもわからない。
すぐに私はその場を離れて走り出した。
多分……見つかりはしなかったはず。
- 538 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:23:49.37 ID:BBrd2CUc0
-
透「……」
透「……まだ、間に合うから」
- 539 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:25:10.56 ID:BBrd2CUc0
- ◇◆◇◆◇◆◇◆
にちか「初めから、裏切ってたんですよ。浅倉さんは。私たちが外の世界と連絡が取れないことに焦っていた中で、別の誰かと連絡を取っていて……一人だけこの孤立無援の恐怖を感じていなかった」
にちか「だから私思ったんです。ああ、この人はちがう……私たちの仲間じゃない、モノクマとの内通者なんだって」
透「……」
夏葉「……透、説明してもらえるかしら。あなたの口で」
透「あー……」
透「あの時の、にちかちゃんだったんだ」
摩美々「……それは、認めたってことでいいのー?」
透「えっと……うん、大体は。にちかちゃんの言う通り」
結華「と、とおるん……? それ、本気……?」
透「え、うん」
智代子「に、にちかちゃんが聞いたっていう話も全部本当なの?!」
透「マジ」
愛依「そ、そんな……で、でも透ちゃん、別に悪い人と話してたわけじゃないんでしょ?!」
愛依「だ、誰と話してたん?! う、うちらの味方なんでしょ?!」
透「……言えないんだよね、トップシークレット」
- 540 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:26:17.61 ID:BBrd2CUc0
-
夏葉「あなた、状況を理解しているの? あなたは私たちをこのコロシアイに巻き込んだ、この企てを行った人間の一人と目されているのよ?」
透「違うよ」
(……!)
透「それは、違う。……けど、言えないから……ごめん」
摩美々「何を言えないことがあるのー? 摩美々たちにとってプラスなら、言えばいいじゃんー」
透「……」
摩美々「黙秘権を行使します……ってコト?」
雛菜「なんで……?」
雛菜「透先輩……? 雛菜には話してくれるよね……?」
透「……雛菜」
雛菜「透先輩……!」
透「……ごめん」
雛菜「……そん、な」
(……チッ)
夏葉「……透のことは一旦、後に置いておきましょう。ともかく、にちかはこの透に対する疑念を拭い去ることができなかったのね?」
冬優子「そして、その疑念から……犯行を決意しちゃったってことなんだね……」
にちか「私は……浅倉さんなら殺してしまってもいい、むしろ殺すべきだって……私たちのことをコロシアイの標的に選んだ黒幕の側の人間なら、許しておけない……死んじゃえって……!」
- 541 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:26:54.49 ID:BBrd2CUc0
-
モノクマ「何被害者ぶってんの?」
- 542 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:27:59.45 ID:BBrd2CUc0
-
ルカ「……ッ!?」
モノクマ「さっきから黙って聴いてればさぁ……七草さんの話って要は『自分が帰りたいから、比較的怪しい人間を狙って殺しました』ってだけだしさ」
モノクマ「しかもそれも黙って自分自身のうちにしまっておかずに直ぐにみんなに言えば良かったじゃん!」
モノクマ「それなのにこんな結末って……」
モノクマ「一番仲間のことを信じてなかったのは七草さんなんじゃーん!」
ルカ「……ッ!」
(こ、こいつ……塗り替えるつもりか?)
(七草にちかへの同情を、もっと別の……どす黒い感情で……!)
にちか「それ、は……」
モノクマ「それとも……もしかして、唾をつけておいたのかな? 後でこいつは私が殺す、そのための正当な名目は自分だけのものだ……ってね!」
七草にちかに向けられる視線が少しずつその色合いを変えていく。
悲哀の別れを演出する、冷たくも温かい視線から、疑いの籠った純然たる熱を帯びた視線。
肌を灼くようなその視線を前にして、七草にちかの体はまるで凍えるかのように振動を始めた。
- 543 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:29:02.13 ID:BBrd2CUc0
-
モノミ「ち、違いまちゅ! 七草さんは……疑心暗鬼を食い止めようとしただけなんでちゅ!」
モノミ「こんなみんなが不安に感じて日々を過ごしている中で、浅倉さんの不審な行動を共有すればみんながきっと暴走してしまうって……」
モノクマ「だからそれが七草さんの不信なんじゃん!」
モノクマ「お互いが仲良しで、本当に信じ合えるんだったらその疑心暗鬼だって生じない!」
モノクマ「どれだけ取り繕っても七草さんが283プロ同士の信頼と絆を信じていなかった事実は覆らないよ!」
わざとらしく仰々しく、その声を張り上げるようにして私たちに呼びかけるモノクマ。反論の言葉を返すものはいなかった。
信頼なんてもの、証明のしようが無い。
手を繋いで、隣でニコニコ笑っていても、その腹の中はその本人にしかわからない。
自分が信頼していたって、相手はそうじゃない。
私も、その信頼の脆弱さを誰よりも一番理解している。
____だから、この酷く沈んだ膠着状態で口を開いたのもまた、【脆弱さを一番理解している人間】だった。
- 544 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:29:33.32 ID:BBrd2CUc0
-
美琴「少し黙って」
- 545 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:31:16.09 ID:BBrd2CUc0
-
にちか「み、美琴さん……」
美琴「にちかちゃんは確かに私たちにその疑念を打ち明けようとはしなかった。でもそれが信頼していなかったことと同じかどうかはわからないでしょ?」
美琴「信じているからこそ、言えないことだってある。相手のことを思うからこそ、黙っていることがある」
美琴「だって、にちかちゃんが本当に私たちのことを信じていないなら……自分から罪の告白なんてしないでしょ?」
《にちか「……最初はね、私も勝とうとしたんだ」
にちか「だから芹沢さんの推理に便乗したし、机を倒した人の時にも名乗りを挙げなかった」
にちか「でも……ほかのみんなが必死に議論をして、生き残ろうとしている中で自分だけみんなを欺こうとして……」
にちか「私が生き残るってことは、その全員を殺すことになるから……それはできないなって途中で思ったんだ」
にちか「こんなので一番になったからって……私は、うれしくない」
にちか「きっともうイヤだって! めちゃくちゃに後悔して……そんで、呆れるくらいに死にたくなるに決まってる」
にちか「だから、もう……終わらせてください。これ以上は、もう」》
美琴「少なくとも、今のにちかちゃんは私たちを利用しようという気持ちじゃない。それにきっと……ずっと苦しみ続けてきたんだろうと思うから」
美琴「私たちのことを信頼していない自分と、私たちのことを信頼している自分。その鬩ぎ合いに」
- 546 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:32:57.97 ID:BBrd2CUc0
-
ルカ「……ケッ」
ルカ「おい、そろそろ腹を括るタイミングらしいぜ、七草にちか。お前が死ぬ前に私たちに、美琴に届けたい言葉……聞かせてみろよ」
ルカ「ただし、それを変に取り繕うようなことがあれば……分かってるな?」
にちか「……ルカさん」
にちか「それじゃ、見といてくださいよ。今からやるのはルカさんにとってのお手本なんですからね!」
(ハッ……)
クソ生意気に私に向かって拳を向けた七草にちか。いつの間にかその体の震えはひいていた。
ブレることないその拳を引っ込めて、意を決したように向き直る。
それに正対するのは、美琴だ。
- 547 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:33:52.15 ID:BBrd2CUc0
-
にちか「……まず第一に、私のやったことは間違いじゃないと思ってます。私が動かなくちゃ浅倉さんが何をしていたか分からない、それに家族のことだって一生わからないまま。そんなのでどうやって生きていくんですか」
にちか「でも、それとは別に。後悔をずっとしてます。どうしてそれを打ち明けられなかったのか、皆さんに……そして、美琴さんに」
にちか「ずっと、ずっっっと思ってたんです。私は美琴さんのことが大好きで、憧れで……でも、美琴さんはきっとそうじゃない」
にちか「美琴さんにとって私はきっとただのお荷物。歌もダンスも足元にも及ばない。経験だってない」
にちか「そんな年下のお守りを無理やりさせられて……私のことをよく思うはずなんかない」
にちか「……私なんかいらないんじゃないかって」
にちか「だから、話せなかった。話したくなかった。言ってしまえばきっと、美琴さんに余計なものを背負わせてしまうから」
にちか「重たすぎる荷物を、下ろされるのが怖かったんです」
美琴「……ッ!」
- 548 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:34:48.21 ID:BBrd2CUc0
-
正直言って、妬けてしまう。
私の時に、そんな表情でもして見せたかよ。
私の時に、そんな涙を流したかよ。
私の時に、そんなに優しく抱きしめたりなんかしてくれたかよ。
……嗚呼、きっと私という失敗例があるからこそお前はその一歩を踏み出せたんだよな。
一度掴み損ねた“ソレ”をお前は思ってくれてたんだよな。
【もう、二度と離したくない】……って。
- 549 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:36:33.64 ID:BBrd2CUc0
-
にちか「み、美琴さん……!?」
美琴「ごめんね……」
にちか「美琴さんが謝ることないですよ……私が、私が……」
美琴「違う……自分の気持ちを伝えていなかった私が悪いから」
美琴「にちかちゃん……さっき、エレベーターに乗っている時にした話、覚えてる?」
にちか「奈落……ですか?」
美琴「うん……ステージに出る前、いつも考えているの。この先にある、一瞬のパフォーマンスのために私の【すべて】はある。その【すべて】のために、私はある」
美琴「でもね……その【すべて】は私一人じゃ作れないの」
にちか「……!!」
- 550 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:37:49.46 ID:BBrd2CUc0
-
美琴「隣で歌ってくれる、踊ってくれる。ちょっと遅れちゃっても一生懸命についてきてくれる」
美琴「そして、私のことを気にかけて無理やりにでも笑顔を見せてくれる」
美琴「ごめんね、少しだけ嘘をついた」
美琴「私のとっての奈落はもう一つ」
美琴「奈落」
美琴「ステージの下。私は一人になる。誰の助けもない、誰も隣にいない。出番を待つその時間に、自分自身を顧みる」
美琴「……でも、ここを出れば私は孤独ではなくなる。私を待ち構えてくれる人が、ファンが、スタッフが、プロデューサーが」
美琴「……そして、隣に立ってくれるパートナーがいる。その人たちのために、【すべて】がある。私の【すべて】はそのためにある」
美琴「……なんて」
にちか「美琴さん……あはは、美琴さんは……ずっと見てくれてたんですね」
にちか「それなのに、私ってば、本当に救えないなー!」
にちか「バカ、バカ、バカ……本当に私って……」
にちか「バカすぎじゃないですか……」
- 551 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:38:52.38 ID:BBrd2CUc0
-
誰も言葉を挟み込みはしなかった。
まるで姉妹であるかのように抱きしめ合う二人の姿をただ傍観していた。
283プロでは唯一の二人ユニット、その二人の間に横たわる関係性……絆とも言い換えられるそれは、他の人間のそれとは違っていたからだ。
もともと歪な関係性だった。かたや一度解散を経験した曰く付きの物件、かたやただの一般人上がりの没個性な小娘。
……それが今や、これだ。
ここ島に来てからもずっと、私は考えていた。
どうして美琴は私ではなく、こんなガキを選んだのか。
人間というのは面倒な生き物だと思う。
感情をすべて素直に伝えられれば丸く収まるというのに、その口は、手は、足は……思うように動かないことの方が多い。
その意味では、やっとこいつは救われたんだ。
ずっとその胸に押し込んでいた感情を吐き出すことができた。
それに、その感情を相手にも返してもらえたんだから。
七草にちかはこれ以上なく幸せ者で、
- 552 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:39:41.08 ID:BBrd2CUc0
-
___________私がなれなかった“私”だ。
ルカ「ハッ……」
- 553 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:40:55.24 ID:BBrd2CUc0
-
____だけど、そんな感慨に耽る時間は唐突に終わりを告げる。
モノクマ「さて、そろそろ始めちゃいましょうか!」
- 554 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:42:11.82 ID:BBrd2CUc0
-
ルカ「……おい、始めるってまさか」
冬優子「おしおき……処刑……!?」
美琴「……!」
愛依「た、タンマタンマ! べ、別にいいじゃん! にちかちゃんも反省してるし、灯織ちゃんもにちかちゃんのことを恨んでなんか……!」
モノクマ「何か勘違いをしてるようだけど、処刑ってね。誰かの溜飲を下すわけにやるんじゃないんだよ?」
モノクマ「許されざる大罪を背負った人間に、然るべき罰を下す! ただそれだけのことなんだから!」
夏葉「大罪って……あなたがいなければにちかはこんな人を殺めたりなんかしなかったのよ?!」
モノクマ「うぷぷ……だからって罪が消えるわけじゃないよね? 他の誰かに唆されたら無罪だってんなら、戦争はなんになるの?」
モノクマ「お国のために他の国の人間を山ほど殺しても仕方ないことで終わらせるの?」
夏葉「そ、それは論点のすり替えだわ……!」
モノクマ「小宮さんの大好きなヒーロー特撮でも、悪いことをした悪役は必ずその報いを受けますよね?」
果穂「そ、そうじゃない怪人だっています……! 反省した怪人は、まちの平和のためにヒーローを助けてくれることも……」
モノクマ「……」
モノクマ「ま、どうあれおしおきを止めるなんてあり得ないので止めるだけ無駄ですよー!」
智代子「む、無視なんて酷すぎるよ!」
モノクマ「うるさいうるさい! ボクがクロといえばクロ、シロといえばシロ! それがすべてだよ!」
摩美々「モノクロツートンの存在がそれ言うー……?」
モノクマ「キッチリカッチリ、七草さんには死んでもらいますからね!」
にちか「……死ん、で……」
モノクマ「おしおきのないコロシアイなんて、お魚抜きの海鮮丼ですからね!」
(……くそッ!)
血の気が引く、とはまさにこのことを言うんだろう。
手足の力が地面に吸い取られるように抜けていき、体温が急速に冷めていく。
反対に込み上げてくるのはむせ返るような嫌悪感。嘔吐感にも近しい衝動が私の喉元を襲った。
- 555 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:43:45.21 ID:BBrd2CUc0
-
モノクマ「今回も、超高校級の幸運である七草にちかさんのためにスペシャルなおしおきを用意しました!」
にちか「美琴さん、最後に本当のことを言えて、本当のことを聞けて良かったです」
にちか「えっと……その……私はこれから死んじゃうみたいなんですけど……頑張ってください!」
にちか「美琴さんは絶対絶対ぜっったい! 一番のアイドルになれるので!」
にちか「【SHHisの緋田美琴】として……一番になってください!」
モノクマ「それでは張り切っていきましょう! おしおきターイム!」
- 556 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:44:48.55 ID:BBrd2CUc0
-
にちか「【奈落】の底からでも、応援してますから!」
- 557 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:46:46.70 ID:BBrd2CUc0
- -----------------------------------------------
GAMEOVER
ナナクサさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。
-----------------------------------------------
- 558 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:48:08.59 ID:BBrd2CUc0
-
あまり恵まれた家庭環境ではないお家に生まれた七草さん。
そんな彼女がアイドルとしてデビューして、もうそれなりの月日が流れました。
憧れの緋田さんとタッグを組んでスターダムを上り詰める彼女の姿には本当に勇気をもらえますね。
でも、そんな彼女は……今本当に輝いているのでしょうか。
今彼女の履いている靴は……
___一体誰の【靴】なんでしょう?
-----------------------------------------------
ヴぇりべりいかレたサいゴ
超高校級の幸運 七草にちか処刑執行
-----------------------------------------------
とある敏腕プロデューサーがこんな言葉を口にしたことがあります。
「足に合わせるんじゃない、靴に合わせるんだ」
そう、トップアイドルならどんな靴でも華麗に着こなして、そのレッテルに見合うだけのパフォーマンスを披露できるはず!
- 559 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:50:02.12 ID:BBrd2CUc0
-
七草さんもこれから上を目指していくなら、ありとあらゆる靴を履きこなせるはずですよね。
玉座に手や膝をベルトで固定された七草さん、そんな彼女に今回用意された靴はこちら!
編み込みの決まったお洒落なブーツ!……ただし、【鉄製】の物ですが。
でも、まだこのブーツは七草さんには少し大きいみたいです。足を入れてもまだブカブカ。
なら、キチンとサイズに合わせないとですよね!
せっかくなら、その隙間はファンからのプレゼントで埋めてしまいましょう。
ファンレターに寄せ書き、花束にプレゼント、スタミナドリンクやチョコレートまで。
ドンドンドンドンファンからの愛がブーツに詰まっていきます。
やがて七草さんの足とブーツとに空いていた隙間は無くなり、ギチギチに。
……でも、まさかファンからの想いを受け取らないなんて言いませんよね?
まだまだファンからのプレゼントはたくさんありますよ〜!
監視カメラに盗聴器、GPSなんかも貰っちゃって! 愛されてますね〜!
え? 靴にはもう入らない?
それもそうですね、これは七草さんのためだけに職人が作り上げた鉄製のブーツ!
強固な作りのブーツはそう簡単には形も変わりません。
でもでも……「足に合わせるんじゃない、靴に合わせるんだ」でしたよね!
- 560 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:51:34.75 ID:BBrd2CUc0
-
バキッ ボキッ グシャッ
七草さんの足をバキバキに押し潰しながらでもプレゼントは受け取ってもらいます。
それがファンからの愛、そしてトップアイドルになる上での痛みなのですから。
自分自身を変えずにトップになれる存在なんていません、今一度の苦しみを受け入れないで何だと言うんですか。
……あれ?
もしかして、足の骨がバキバキに砕かれた痛みで気を失ってます?
あーもう、仕方ないなぁ!
その程度の覚悟しかない「灰被り」にはシンデレラストーリーなんか似合わないってことで!
七草さんの頭上にあったカボチャのくす玉からは大きな大きなガラスの靴が落ちてきて。
……グシャァ
アイドルになる心構えもなってない只の一般人は、自分の身の丈に合わない【靴】に押しつぶされて死んでしまいましたとさ。
- 561 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:52:17.44 ID:BBrd2CUc0
-
___七草にちかが死んだ。
- 562 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:54:38.39 ID:BBrd2CUc0
-
美琴の周りをブンブン飛び交う煩わしい蝿のような女が死んだ。
そんな願ってもない事態を前にして、晴れやかな感慨を……抱けなかった。
想定外に私の膝は支柱を失ったかのように崩れ落ち、気がつけば両の掌を地面にくっつけて、体を戦慄かせるようにしていた。
一言言葉を吐き捨ててやりたかった。
されども私の喉は何かに打ち震えたようで、口から出るのはそれこそ羽虫の羽音のように聞くに耐えない弱々しい絞り出したような声だった。
私が、七草にちかの死を前にして抱いているこの感情はなんだ?
奴は憎しみ、嫉み、煩わしいだけの存在だったはずだ。
私と美琴の間に横たわる軋轢を土足で踏み荒らして、図々しくも自分の了見で食ってかかってきた余所者でしかなかった。
なら、この上体を支えている両腕を上げて万歳でもしてやればいい。
あいつの死に為るべきは歓喜じゃなかったのか。
その掌は、溶接されたように地面から離れない。
「……畜生」
私の口から出てくるのは、その一言だけだった。
- 563 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:56:41.04 ID:BBrd2CUc0
-
モノクマ「ヒャーッホウ! 久しぶりのおしおきで思わず昂っちゃうね!」
モノクマ「ビンッビンだぜ! これが……生の悦び?」
千雪「……」
恋鐘「……」
愛依「……」
モノミ「うぅ……七草さん……モノクマ、なんて酷いことをするんでちゅか……」
モノクマの品性のかけらも無い煽り文句。
本来なら激昂しそうな連中も、その拳は垂れ下がったまま。言葉一つ出てこない様子を見るに、相当キているらしい。
そして、言うまでもなく一番、そういう状態なのは……
美琴「……」
ルカ「……美琴」
美琴はまるで魂が抜けたみたいに動かなかった。
さっきまで手に抱き抱えていた相方が奪われ、その先で惨たらしい死を遂げた。
尊厳を踏み躙られて、人生そのものを嘲笑うような、そんな最悪の方法だった。
もう、今の美琴に言葉は届きそうもない。
(……何が『美琴さんは任せましたよ』だ)
(私に出来ることなんか、何にもない……お前の穴を塞ぐことなんて、お前にしかできねえだろ……)
- 564 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 22:58:33.60 ID:BBrd2CUc0
-
果穂「夏葉さん……夏葉さんの手で何にも見えないです……にちかさんは、どうなったんですか……?」
夏葉「……」
果穂「にちかさんは……しんじゃったんですか……?」
夏葉「……っ!」
夏葉「モノクマ! もういいでしょう! あなたの目論見通り、仲間同士でコロシアイが起きて、あなたの私刑でにちかも……!」
夏葉「あなたの目的は果たされたはずでしょう?! 私たちを解放しなさい!」
モノクマ「うぷぷぷ……目的が果たされた? バカを言っちゃいけないよ」
モノクマ「これはまだ第一歩、スタートラインから一歩踏み出しただけに過ぎないんだよ。まだまだゴールテープは遠く先さ」
夏葉「あ、あなたは何を目的にしているの……?!」
モノクマ「それはオマエラも知っての通りさ! これはあくまで希望ヶ峰学園歌姫計画なんだからさ」
モノクマ「このコロシアイを生き抜いて勝利する……そんな最高の希望の象徴たるアイドルを作り出すこと、それが目的なんだよ」
モノクマ「だから、まだまだ終われない。むしろここからが本番だよ! 最初のコロシアイを経たオマエラがどうするのか……目が離せないよね!」
摩美々「……モノクマの狙い通りになんかさせませんケド」
モノクマ「ぶひゃひゃひゃひゃ! この惨状を前にしてそんなこと言われても説得力ないんですけど!」
- 565 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:00:42.74 ID:BBrd2CUc0
-
恋鐘「うちらはもうこれ以上間違えんよ……今度こそ、ちゃんとお互いを信用して……全部全部共有するばい」
恋鐘「秘密も不安も、全部仲間で分かち合えば何も怖いことなんかなか……!」
モノクマ「……? やれやれ、カーカー喧しいから何かと思えば、月岡さんは人間じゃなくてカラスさんなの?」
恋鐘「な、なん……!?」
モノクマ「だって、ついさっきのことを忘れちゃって……それって丸っ切り鳥頭じゃん!」
モノクマ「秘密を共有するも何も、浅倉さんがダンマリじゃんかー!」
透「……」
(……そうだ、こいつは)
結華「ま、待ってよ……とおるんは確かに三峰たちに秘密を抱えてるけど、敵対してるわけじゃないんだしさ……」
モノクマ「そうだね、浅倉さんはそう言ってたね!」
摩美々「何ぃ? その言い方ぁ?」
モノクマ「別にー? 浅倉さんはそう言ってたなーってそれだけだよ?」
モノクマ「ま、ボクが内通者だとしても同じように言い訳するかもなーなんて思わなくもないけどさ!」
- 566 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:01:59.04 ID:BBrd2CUc0
-
透「……ちが」
モノクマ「そりゃ素直に黒幕と繋がってますなんて普通は言わないよ、そんなの針の筵になりにいくようなもんだからね!」
……やられた。
こいつがやったのは、疑念をほんの僅かに後押しするだけの一言。
でも、そのほんの一言は真っ白なシーツに一滴こぼれただけのコーヒーの染みのように気になって仕方がない。
浅倉透という人間を前にした時に、脳裏にその僅かな可能性がよぎってしまう。
私たちに、そういう呪いをかけてきやがった。
そして、タチが悪いのが最初に浅倉透への疑念を口にしたのが、今もうこの場所にはいない七草にちかだということ。
その事実を前にした時、【あいつ】はまともじゃいられなくなる。
美琴「……にちかちゃんはあなたのことを疑っていたけど、あくまで答える気はないの?」
透「……」
美琴「……そう」
(美琴……)
字面だけ言えば淡白に尋ねただけ。
ただ、私にはわかる。その瞳に仄かに灯っているワインレッドの火種、これがある時の美琴は大抵碌でもないことをしでかす。
____そして、その予感はやっぱり的中した。
- 567 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:03:35.38 ID:BBrd2CUc0
-
パンッ
透「……痛ッ」
美琴「……私はあなたを信用できない。本当のことを話さない限りはね」
ルカ「……美琴ッ!」
慌てて美琴を羽交い締めにした。
誰かを引っ叩くなんて今まで見たこともない。
美琴自身も、自分自身の感情の向け所を見失っているのだ。
私の腕に収まった美琴は抵抗するでもない、ただ静かにその肩を震わせていた。
千雪「落ち着いて……何も透ちゃんが敵だと決まったわけじゃないでしょう?」
あさひ「でも、味方とも言えないっすよ?」
智代子「だからって、手をあげたりしちゃダメだよ……!」
緊張の海に美琴が投じた一石が、水面を揺らし、波は畝り、そして決壊したように溢れ出た声が一つ。
- 568 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:05:04.91 ID:BBrd2CUc0
-
雛菜「うるさ〜〜〜〜〜〜い!」
雛菜「透先輩のことを信じられない人は好きにすればいいですけど、雛菜はどうだって透先輩のことを信じてるもん〜〜〜!!」
冬優子「ひ、雛菜ちゃん……落ち着いて……」
雛菜「もう知りませ〜ん!」
浅倉透の腕を引ったくるように掴んだかと思うとズイズイと私たちの間を通り過ぎて、二人そのままエレベーターに乗り込んでその姿は見えなくなった。
果穂「雛菜さん……」
愛依「行っちゃった、ね……」
モノミ「い、市川さん! 浅倉さん! 待ってくだちゃい!」
モノクマ「うぷぷぷ……何だっけ、信頼? 友情? それって今のオマエラに使う権利のある言葉なのかな?」
モノクマ「この、空中分解寸前のオマエラの間に絆なんかあるのかな?!」
最悪の捨て台詞を吐き捨ててモノクマはその姿を消した。
- 569 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:06:26.38 ID:BBrd2CUc0
-
「「「……」」」
また、不信の果てに大切なものをその手から溢してしまった。
残された私たちには、そういう退廃的かつ諦観的な重たい空気が漂っている。
(……知ったことかよ)
でも、私にはそれは関係ない。
私はこいつらとは違う。
自分が生きるために七草にちかという人間を切り捨てて、はなから信用なんかもしていない。
私は私、ただそれだけで生きていけばいい。
美琴をその手から離すと、踵を返して背を向け、私もエレベータへと向かう。
知ったこっちゃない。
勝手に意気消沈してればいい。
私は巻き込まれただけの部外者だ。
信じるだの信じないだの、決めるのはお前たちの仕事だろ。
- 570 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:07:52.50 ID:BBrd2CUc0
-
(……あ?)
でも、何故かその足が動かない。
エレベーターに乗り込もうとするその一歩が踏み出せない。
こいつらの状況を見かねて、後ろ髪を引かれているとでもいうのか?
そんなわけない、私は慈善主義でも博愛主義でもなんでもない。
神様なら救いの手を差し伸べるかもしれない、でも生憎私はカミサマだ。
そんな選択肢は毛頭持ち合わせちゃいない。
___私に出来るのは、その背中を見せることだけだ。
ルカ「……死にたくないんだよ」
- 571 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:09:57.21 ID:BBrd2CUc0
-
ルカ「こんなところで、283プロの連中に足を引っ張られて死ぬなんか最悪だ。勝手に内輪揉めして内部分裂しかかってる間抜けな連中、死ぬなら勝手にそっちで死んでくれ」
ルカ「でも、今は私もお前らと一蓮托生らしいからな。この学級裁判とやらで負ければ私も一緒に死ぬ……本当に、どこまで行っても最悪だよ」
夏葉「ルカ……あなたね……!」
ルカ「だから、いつまでそんなしょうもないとこにいるんだよ。一生そのまま不信を嘆いてるつもりなのか?」
恋鐘「……!」
愛依「……!」
ルカ「信じられなかったんだったら今から信じればいいんだろ? 七草にちかが、そうやって信じ直してくれたから私たちは今生きてるんじゃ無かったのか?」
美琴「……ルカ」
あいつの死に様を利用するのは癪だけど、今のこいつらにはあいつが必要だ。
283プロの間にある信頼を、絆を、証明したままに死んでいった【あいつ】の力が。
ルカ「七草にちかのことを信頼してるんなら、エレベーターに乗れよ。……こんな所にいるより、さっさと帰ったほうがいいだろ」
- 572 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:11:01.09 ID:BBrd2CUc0
-
私の言葉にも明確な返答はしてこなかった。
憎まれ口の私に対する敵対心なのか、それともまだ踏ん切りをつけられていないからなのか。
ともかく、言葉では何も返ってこなくとも、行動は正直な連中だ。
一人、一人と私の横を通って、エレベーターへと乗り込んでいく。
まあ、中には何を勘違いしたのか感謝の言葉を投げてくる奴もいたけど。
それは当然ながら無視してやった。
感謝される謂れはひとつもない、するとしても相手は私じゃないだろ。
そして、最後の一人。
美琴「……」
美琴も無言で歩き出し、私の隣へ。
表情はまだずっと暗いまま、口もギュッと結ばれていた。
それなのに、すれ違うその一瞬の間に……美琴の声を聞いた気がした。
- 573 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:11:50.03 ID:BBrd2CUc0
-
「……信じてた」
- 574 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:13:56.85 ID:BBrd2CUc0
-
それは、その言葉は……
『私は七草にちかのことを』?『283プロのみんなのことを』?
それとも________
いや、どうでもいい。
今の私に大切なのは、私自身が生き延びることだ。
間違っても、絆を改めて見定めることなんかじゃない。
それにきっと今のは幻聴だ。
私も長時間の議論で疲れていただけなんだろう。
そう思って眉間を指で押さえて、息を一つ。
何故だか、次はその一歩を踏み出せた。
- 575 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:15:07.21 ID:BBrd2CUc0
- -------------------------------------------------
【第1の島 ホテル】
裁判が終わった後の感想戦なんかに付き合ってる暇はない。
地上へと戻った私は他の連中とは行動を一緒にせず、そのままホテルへと戻ることにした。
疲れている。
ホテルに帰る道中でも手や足には倦怠感を覚えたし、頭はずっとキリキリと痛む場所がある。胸には何かがつっかえたようでどことなく息苦しい。
ゆっくりと寝でもしたら少しは回復するだろうか。
そんなことを考えながらホテルに帰った私。
だがその私の考えは他所に、体と本能とは、別の場所に私を運んだ。
-------------------------------------------------
- 576 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:22:29.63 ID:BBrd2CUc0
-
【旧館】
……ハッ。
どういうつもりだよ、自分が参加していなかったパーティで人が死んだ。
今更そのことを悔やみにきたってのか?
まさか風野灯織の死を悼みにきたってのか?
いや、そんなちゃちな感慨ならこんな所には来ない。
私がここにきたのはもっと別な理由だ。
それは言うなれば、一つの好奇心。
私には、どうしても知りたいことがあった。
その答えがここにはきっと眠っている。
「……そうだよな、この事件はまだ終わってなんかない」
「風野灯織を殺したのは七草にちかだった。ただ、それだけのことなんだよ」
「まだ、出てきてないものがある。顕在化していない悪意がある」
「七草にちかの裏に姿を隠した、【狸】が紛れ込んでるんだよ」
- 577 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:23:51.20 ID:BBrd2CUc0
-
≪にちか「死体のそばに落ちていた暗視スコープ……あれ、実は使えなかったんです」
千雪「使えなかった……?」
にちか「はい、レンズの上から【黒い絵の具か何かで塗りつぶされてて】、暗闇どころか向こう側も見えないぞって感じなんですよ。だから逆にあれをつけちゃえば見えてるものも見えなくなるぐらいで……」
にちか「暗視スコープがあったからって風野さんが辺りを見えてたとは限らないんじゃないですかね!」
千雪「たしかにそれはそうかも……でも、なんでスコープのレンズが塗りつぶされてたのかな?」
美琴「それこそ犯人の策略なんじゃないかな」
美琴「犯人が灯織ちゃんの暗視スコープの準備を知ったうえで、それに黒い絵の具を塗りつけたのだとしたら……意図的に隙を作ることができるよね」≫
「……風野灯織が停電中に仕様を試みた暗視スコープは何者かにレンズ部分が黒塗りにされる細工をされていた」
「でも、七草にちかはそんなの犯行計画には入れていなかった。それも当然だ、あいつは風野灯織を狙ってなんかいなかったんだからな」
「しかも、それだけじゃない」
≪恋鐘「こん鉄串を犯人が使ったからって大広間の人間が犯人とは限らんばい!」
ルカ「なんでだよ! 鉄串は大広間にしかないもんだろ? 料理を作った後は備品も全部ホクロ女に回収されたって……」
恋鐘「だって、この【鉄串はうちが厨房入った時には既にもう一本無くなっとった】けん!」
にちか「う、嘘……!?」
恋鐘「厨房には備品リストがあって、スプーンから鍋までなんでも数が書いてあるんよ。それに照らし合わせたら、確かに鉄串が一本足り取らんかったばい」≫
「旧館の鉄串は風野灯織殺害に使われた一本以外にももう一本、その所在が分からなくなっていた。しかもそれを持ち出した人間はいまだにわかっちゃいない」
「私たちがこの島にくる以前になくなってた……そんなことがあるってのか?」
「私たちの中に潜む【狸】は何を考えてやがる……?」
- 578 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:25:00.39 ID:BBrd2CUc0
-
「あはは、やっぱり気づいてたんっすね」
- 579 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:26:09.04 ID:BBrd2CUc0
-
思わず振り返った。
今のは、幻聴じゃない。
確実に私の後ろにいた、【何者か】の声だ。
でも、視界には何の姿も捉えることはできなかった。
人気もない物静かな夜にプールの水音がするだけ。
波ひとつない水面には、満月が綺麗にそのまま象られている。
「ハッ……あんな事件があったってのに嘘みたいだな」
月光というのは不思議なものだ。
月そのものが光っているわけでもないのに、太陽の光を我が物顔で地球に押し付けてくる。
満月ともなると虎の威を借る狐っぷりにも拍車がかかる。
闇に姿を紛れさせようとしても、その光の元に晒される。
夜だというのに、満月の元では隠れることすらままならないのだ。
- 580 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:28:15.62 ID:BBrd2CUc0
-
「……ん?」
そこで漸く、気づいた。
今私の目の前で、プールの水面に写っているのは紛れもない月だ。満月だ。
東京に居たんじゃなかなか見ることのできない、立派なまでの満月だ。
「どうなってる……?」
でも、それはおかしい。
私が満月を見れるはずがない。
「なんで、なんでだよ……」
月というのは一ヶ月の間に満ち欠けを繰り返す。
先の二週間で満ちた月は、後の二週間でその姿を欠いていく。
……じゃあ、なんでこの月はずっと変わらない……【満月のまま】なんだ?
- 581 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:29:05.18 ID:BBrd2CUc0
-
この島に来た、はじめの夜。
≪煌々と輝く【満月】の月光の元、沈黙だけが流れた。
伏目がちに猜疑の視線を送る人、仲間をかばうようにして背を向ける人、狼狽えた様子で口をパカパカさせる人……その反応はまちまちだが、恐怖と不安というマイナス感情の鎖には全員が全員縛り上げられている。≫
あの時も変わらず満月が出ていたはずだ。
途端に全身の毛が逆立つような感覚を覚えて飛び上がった。
「……気色悪い」
もう私の目の前にあるそれを、私の知るそれとは思えなかった。
……目眩がするような感覚だ。
千鳥足のようになりながら、ヨタヨタと私は自分の部屋へと戻っていった。
- 582 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/11/30(火) 23:30:24.14 ID:BBrd2CUc0
- -------------------------------------------------
【???】
「やっぱり、話してくれないの?」
「……」
「そっか〜……」
「……」
「ううん、気にしないで〜。それでも、もう信じるって決めたから」
「……でも」
「何があっても、雛菜は透先輩の味方だよ。他の全員を敵に回しても、雛菜だけは絶対に透先輩を見放さない」
「……」
「……そう約束したからね〜〜〜〜〜!」
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