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【咲-saki-】京太郎「ウルトラマンの力」咲「光よ!」
- 1 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:02:32.62 ID:21IOf5zl0
-
◆最初に
※咲-Saki-とウルトラマンシリーズのクロスオーバー
※京太郎もの
※基本平成
※地の文多め、かも
※麻雀関係あるようなないような、これウルトラファイト
※>>1以外はsageでお願いします
※“たまに”安価
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1630256552
- 2 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:04:31.91 ID:21IOf5zl0
-
◆プロローグ
須賀京太郎、15歳、高校一年生
夏、自らの在籍している清澄高校のインターハイでの団体戦優勝を見届けた
もちろん、自らが親友【宮永咲】の個人戦優勝すらも
過ぎゆく平和な日々
そして夏が過ぎ―――光と闇の混沌とした戦いが始まる
- 3 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:05:16.49 ID:21IOf5zl0
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第1話【幻影を継ぐ者】
- 4 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:07:11.71 ID:21IOf5zl0
-
―――9月7日・夜
彼、須賀京太郎は麻雀をしていた。そのはずだった
“いつも通りの敗北”だったはずだ
だがおかしい
「っ!」
麻雀卓によりかかり、そのまま椅子から転げ落ちる
対面にいた【原村和】が立ち上がり、京太郎を見下ろす
体中に激痛、それと共に薄れ行く意識
「のど、か……」
さらに両面に座っている【染谷まこ】と【南浦数絵】も意識を失っている
立ち上がった和が“メダルのようなもの”を投げると、目の錯覚かそれが二人の身体に入っていった
「な、にを……」
這うように手を伸ばすと、自らの鞄に手が届く
かといってなにかができるわけでもないが……
「外れ、ですか……ここまでの力量の差では持ちませんね」
傍によってきた原村和が口を開いているのは見えるが、それが和の言葉のようには聞こえない
「まぁ結果的には同じです。待っているものは」
頬に和の手が添えられるのを感じ、見上げる
その背後に光り輝くなにかが見えた気がした
掠れた声で、思わず呟く
「天使……?」
「ふふっ、ふふふ……もったいない。でもさよならです。すぐにみんなそちらに」
手が離れていくが、気力だけで起き上がろうと上体を起こした
固定されている椅子を背に、和を見上げる
「人類的な表現であれば……“根源的破滅”ですか、それをお贈りします」
女神のような笑顔を浮かべる和
そんな彼女を視線の先に、京太郎は“お守り”を握りしめたまま、暗闇に意識を鎮める
- 5 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:13:34.92 ID:21IOf5zl0
-
―――数日前
緑の葉も赤みがかかり始め、季節は秋へと移っていく
夕日に照らされる道も、すっかり夏と違って見える
街中を、二つの影が並んで動く
「そういえば京ちゃん」
「ん?」
彼、須賀京太郎に声をかけるのは宮永咲
同じ麻雀部、今日も今日とて麻雀をやった帰りである
「お母さん、今日からいないんだって?」
「ん、ああ……しばらく外国だって」
「相変わらずだねぇ」
「まぁ楽しそうでなによりだ。慣れたし」
ケラケラと笑う京太郎と、それを見てクスリと笑う咲
二人の様子からして別段珍しいことではないということがわかる
父は京太郎が物心ついてから一度も会ったことがない
たまに送りものが届くぐらいでほぼ母子家庭であったのだが、別段それを憂うこともなく育ってきた
「あ、そういえば親父から珍しくお土産っぽいもの送られてきたなぁ」
「へぇ〜珍しいね?」
「ん、たまに送られてくるものもそのまま親父の書斎に入れちゃうからなぁ」
「で、なにもらったの?」
「え〜っと、なんでもない……ただその、お、お守り」
少しばかり気恥ずかしさがあるのか、ほんのりと赤い顔でそっぽを向きポケットからそれを取り出す
京太郎の手にあるのはお守り、すこしばかり硬いなにかが入ったそれを手に取って咲に見せる
ニヤニヤと笑う咲、そんな顔を見て京太郎は軽く肘でつついた
「笑うなよ」
「え〜だって京ちゃん嬉しそうだし〜」
幼馴染二人、影を左右に揺らしながら帰路を行く
- 6 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:17:25.70 ID:21IOf5zl0
-
―――9月7日・夕方
茜色に染まる校門前、立っているのは二つの影
須賀京太郎と原村和の二人だ
部活が終わってから帰路につこうとしていたのだが、咲と仲間である片岡優希を待つために校門にいる
(和と二人きりとか久しぶりだなぁ……)
「須賀君と二人きりなんて、久しぶりですね」
「あっ、お、おう……」
最近はこうして彼女から話を振られることも多くなってきた
憧れの少女、彼女がいたから麻雀の道に足を踏み入れたぐらいだ。緊張もしよう
「その、和」
ぐっと拳を握りしめる
あくまでナチュラルに自然に、意識しつつうなずく
「俺は次のインターハイ、必ず清澄にふさわしい活躍をしてみせる」
「?」
「そしたら、俺と……」
「和ちゃん、京ちゃん!」
「あっ、咲さん!」
決意を決めて言おうとした“なにか”が言い終わる前に、やってきたのは宮永咲
そちらへと軽く駆けていく和を見て京太郎は少しばかり顔をしかめる
まぁ仕方のないことだとあきらめて息をつくと、京太郎もそちらへと歩いていく
「京ちゃん聞いてよ! 私今度お姉ちゃんと一緒に取材で―――」
景気の良い話である。きっと普段ならばもっと喜べたはずなのだが……
一緒だった友達、いや親友とどんどんと離れていく感覚を覚える
端から違うのだが……それでも感情ではそうもいかずに
「さすが、だな」
笑みを浮かべる京太郎、そんな彼のポケットのケータイが震えた
まだ気づかぬものの、それはそばにいた和からのメッセージ
気づくのは一人になった帰り道で、喜んですぐ肯定の返事を返すことになる提案
『夜、麻雀でもしませんか? まこ先輩のお店で』
―――そしてそれが、彼にとっての始まりの終わり
- 7 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:22:35.61 ID:21IOf5zl0
-
―――9月7日・深夜
ふと、目を覚ました
雀荘でもなんでもない、そこは―――
京太郎「俺の、家?」
自宅の自室―――ベッドの上
??「おはよう」
その声に、勢いよく上体を起こす
和に倒された後の激痛は余韻もなく、倦怠感すら感じさせない
だが俊敏に起き上がった京太郎は声のした方に視線を移した
??「危なかったね……父親に感謝しときな」
京太郎「あなた、は?」
そこには白髪の老婆―――老婆というには若いかもしれない
なにはともあれそこには女性が座っていた
知らない人間でありなぜ自分の家にいるのか、なぜ自分すらも自宅にいるのか理解が追いつかない
??「原村和がやられてるとはね、意外……でもないか、あれもまた能力を持った者」
京太郎「な、なんの話ですか?」
??「リトルスターの、もっと邪悪なものか……」
京太郎「だからなんの話かって」
??「おいで……きっとあんたの父親が鍵だ。いや、鍵はむしろ―――」
その言葉と共に、女性が立ち上がるので京太郎も立ち上がる
なぜだかその女性の言葉に説得力を感じた
??「私は熊倉トシ……通りすがりの、風来坊ってことにでもしとくかね」
京太郎「は?」
- 8 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:27:18.12 ID:21IOf5zl0
-
なぜかその熊倉トシを先導に部屋へと入る
父の部屋に入るのは久しぶりで、他の部屋とは違う匂いに違和感を感じながらも足を踏み入れた
妙な感覚を感じる
京太郎「前は、こんな感じ……」
トシ「あんたの中のそれと関係あるのか、とりあえず、ここか?」
京太郎「俺の中って……って、あ」
ポケットになにかが入っているのを感じて出してみればそれは父からのお守り
なんだか軽くなっている気がする。硬さもない
京太郎「……なんで?」
トシ「ほら、やっぱり」
京太郎「って、何勝手に開けてるんですか」
そう言って近づくと、父の机の引き出し
その一番下に金庫のようなものがはめてあった
だが鍵穴が見つからない、ダイヤルも
トシ「開けて」
京太郎「え? 別に閉まって」
トシ「閉まってるよ」
その言葉に、訝しげな表情を浮かべつつなぜか従い金庫の取っ手に手をかけて上に持ち上げるように開く
別段、光が広がるわけでも闇があふれるわけでもない
ただ純粋に、そこにはモノが在った
京太郎「なんだ、これ?」
トシ「ゼットライザー……設計図でもパクッてきたか?」
京太郎「へ? ぜ、ぜっと?」
トシ「いい、あんたのものだ……本来の使い道とはたぶん、違うけど」
そういうと、熊倉トシはその【ゼットライザー】を手に持って、京太郎に渡す
受け取った京太郎は、その重みを感じつつ手を上下させる
さらに中に入っていたものを、トシが京太郎の腰横につけた
トシ「ホルダー……“メダル”を拾ったらそこに入れときな」
京太郎「え、メダル? ゲーセンでも行くんですか? あ! これ太鼓の達人のマイ鉢的な」
トシ「……」
京太郎「あ、違いますよね、はい」
- 9 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:29:17.65 ID:21IOf5zl0
-
軽く手を返してゼットライザーを見て、触ってみる
両についたブレードのようなものがスライドし、丸い何かをはめる場所もあった
なるほど、とうなずく。メダルとゼットライザーの関係、つまりはそういうことだろう
京太郎「で、なんなんですこれ?」
トシ「運命は動き出した。もう止まらない……いや、既に動き出してたのか」
溜息をつく熊倉トシを見て、京太郎は小首をかしげた
京太郎「一体、なにが起こってるんですか?」
トシ「それは……」
瞬間―――咆哮が聞こえる
- 10 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:30:08.01 ID:21IOf5zl0
-
野犬やらの声ではない。そんなものわかる
窓が揺れるような咆哮
そんなもの聞いたこともない
京太郎「なっ、なんだよ!?」
トシ「きたか……」
カーテンを開けたトシの視線の先、蠢く影
街が燃えているのか、影に赤い光が当たっている
京太郎「か、怪獣!!?」
トシ「始まりの怪獣―――ベムラー!」
それは怪獣、黒く棘の生えた鱗
二足歩行、短い前足、長い尻尾、口から吐くのは青い炎
京太郎「な、なんだよあれっ……」
トシ「まだ本格的に市街地、ではないか」
京太郎「そ、そんなこと言ってる場合じゃ!」
トシ「行くよ」
京太郎「どこに!? なにしに!?」
トシ「……あんたにしかできないことさ」
- 11 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:32:55.97 ID:21IOf5zl0
-
数分後、京太郎とトシの二人は【ベムラー】と呼ばれた怪獣が近くに見える丘に来ていた
熊倉トシの、年齢に合わぬ体力と走力についてきた京太郎
だが、中学の頃にハンドボールをやっていたころより走力も体力も上に感じた
京太郎(むしろ、自分でブレーキをしてた気すらする……)
トシ「デビルスプリンター……やっぱり」
京太郎「?」
少し離れた場所に見えるベムラー
いつ自分たちがその炎の餌食になるかわからない
京太郎「あ、危なくないっすか?」
トシ「……京ちゃん」
京太郎「は、はい」
トシ「ごめん、すまないと思ってる……あんたに背負わせて」
意味がわからない。自分にしかできないことがあるというからついてきたが、説明がない
トシ「戦うんだ。あんたが……」
京太郎「いきなりなにを」
街を壊すベムラーが、トシの背後に見えた
人々が走っているのすら見える
ゼットライザーを握った拳に、自然と力がこもる
京太郎「……はい!」
トシ「トリガーを」
ゼットライザーのトリガーを引く
それと共に、目の前に輝く扉が現れた
別空間に通じているであろうその扉を前に、京太郎は迷うことなく走る
トシ「あ、待った」
京太郎「え?」
トシ「最後にもう一回トリガーだよ、忘れないでね」
京太郎「あ……はい」
そう返事をすると、深呼吸
仕切り直しだと言わんばかりに深く息を吐いてから、光る扉-ゲート-に飛び込んだ
- 12 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:37:17.79 ID:21IOf5zl0
-
真っ白に輝く空間
入り口は既にふさがっており、中にいるのは京太郎のみ
両の足を踏みしめて立つ京太郎の右手にはゼットライザー
京太郎「っ!」
そして左手に現れるのは、京太郎が映った赤いカード
それを見つめる京太郎の赤い瞳
『ジーッと見つめててもどうにもならないぞ』
京太郎「ッ!?」
『気に入らない感覚だ……カードを差し込め!』
京太郎「は、はい!」
威圧感のある声に押される
息をついて、右手のゼットライザーに左手のカードを差し込む
【キョウタロウ・アクセスグランテッド】
京太郎「!」
異様な力を感じる
目の前の怪獣から街を、人々を守る力
自分の内に感じる―――“チカラ”
京太郎「!」
ゼットライザーのブレードを
『叫べ! 俺の名を!』
「ウルトラマン―――」
ゼットライザーを掲げ―――トリガーを引く
「―――ベリアル!!」
- 13 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:41:06.26 ID:21IOf5zl0
-
―――【街中】
青い炎を吐く宇宙怪獣ベムラー
そんなベムラーが“蹴り飛ばされる”
ベムラー「……!!」
倒れたベムラーがハッキリと視線をそちらに向ける
そこに立つのはベムラーとほぼ同サイズの、光の巨人
白銀と赤の身体を持ち、胸に輝く星-カラータイマー-
京太郎『こ、これは?』
べリアル『ハッ! 腕慣らしには丁度良いが、こっちは素人か……』
京太郎『え、そ、そんなこと言われても』
べリアル『まぁ良い……気に入らん奴は潰す!』
爪を立てた両手で構えを取る京太郎こと、ウルトラマンべリアル
今ここに―――【最恐のウルトラマン】が復活した
- 14 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:43:22.16 ID:21IOf5zl0
-
京太郎が消えた丘の上で、熊倉トシはベムラーと対峙するべリアルを見やる
その瞳に映るのは喜びでもなんでもなかった
そんな感情は存在しない。彼女は顔をしかめる
トシ「すまないね、京ちゃん……」
謝罪は闘う運命を選ばせたこと
戦いに駆りだしたこと、頼らざるをえなかったこと
そしてその謝罪は、まだ続く
トシ「そしてべリアル……そっとしておいてやりたかったよ。私だって」
その視線の先、ウルトラマンべリアルは【始まりの怪獣-ベムラー-】を前に構えを取った
- 15 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 02:48:04.04 ID:21IOf5zl0
-
今回はここまでー
プロローグって感じでとりあえず初変身
結構前から咲とウルトラマンでやりたいなとは思ってたけどようやく
ホントはゴリゴリの安価スレの予定だってけども変更
まぁちょくちょく、ではないけど安価たまに入れてくのでよろしければ是非
明日は22時ぐらいから開始してってもしかしたら第一回目の安価までいく、かも?
そんじゃまたー
- 16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/30(月) 03:18:38.10 ID:Kwl+OOY70
- 乙!
最近京太郎スレ増えてきて楽しい
安価もあるみたいだしまさかのベリアルでこれから楽しみだ
- 17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/30(月) 13:58:43.94 ID:1v51NnELO
- 和との会話でちゃっかりベリアルしてて大草原
- 18 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 21:53:15.45 ID:cgG/lPJ50
- おっし、再開してくよん
>>17
そこに気づくとは、やはり天才か
- 19 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:10:50.41 ID:me+r5grG0
-
構えを取るベリアルを前に、ベムラーが威嚇するように咆哮をあげた
京太郎はベリアルの中で自分自身がベリアルになっているという違和感に顔をしかめる
京太郎『な、なんなんだよこれっ!』
ベリアル『チッ、妙な姿で蘇えらされたな』
その言葉に、少しばかりの違和感を感じるも、今すぐに指摘できるほど心の余裕もない
ベリアル『おい小僧、合わせろ!』
京太郎『あ、合わせろっても』
突如、ベムラーへと走り出すベリアル
引っ張られるような感覚に、京太郎は逆らわないように体を動かす
走り出したベリアルが、爪を立てた右腕を振るう
ベリアル「ハァッ!」
ベムラー「―――!!?」
振るわれた右手、それは斬撃へと変わりベムラーの強固な鱗を引き裂き攻撃を通す
その感覚に驚愕する京太郎だが、すぐ左側の動く感覚にあわせて左腕を振るった
左拳をベムラーの胴体に打ちつけて、その巨体を後退させる
ベリアル「ハッ!」
ベリアルに合わせて背後に跳ぶと、青い炎が先ほどまでいた場所を燃やす
京太郎『っぶね〜!』
ベリアル『ハ! はじめてにしちゃぁ悪くねぇ……人間と融合なんざ俺も初めてだから普通どんなもんかもわかんねぇがな』
京太郎『ゆ、融合っすか?』
ベリアル『なんも知らねぇみたいだな』
その言葉に、恐る恐る肯定で返す
ベリアルがなにかを話し出そうとするも、ベムラーが接近して尻尾を横薙ぎに振るう
再び、合わせるように跳んでそのままベムラーの背後へと回る
ベリアル「ハァッ!」
素早く手から光弾を撃ち出し、ベムラーを攻撃
倒れるベムラーがビルを破壊する
京太郎『あっ! 街がっ!!』
- 20 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:19:45.48 ID:me+r5grG0
-
立ち上がるベムラーがさらに尻尾を振るう
後ろへと下がるベリアルだが、ベムラー周囲のビルが破壊されていく
それを見て、京太郎は歯を噛みしめた
ベリアル『チッ、しぶといな……』
京太郎『え、えっと、ベリアル、さん!』
ベリアル『あぁ? なんだ?』
京太郎『なるべく街を壊さないように戦えませんか!』
ベリアルが、ベムラーを見据えたまま左手を顎に添えて首を左右に振るう
ゴキゴキと関節が鳴るような感覚を感じた
この短い間で、おそらくベリアルがどういう人物(?)かはある程度見えたつもりだ
京太郎『頼みますっ、街を守れなきゃ俺は……ここで戦う意味がない!』
素直に聞いてくれるとは、思っていない
だが自分がやれることは、それでも頼みこむのみ、だ
ベリアル『守るもの、ねぇ……ハッ! ならどうする?』
京太郎『え?』
ベリアル『街に被害が無いようにあいつを仕留めるために、だ』
試すような言葉に、京太郎は頷く
なんとなくだが戦い方も、使える技すらも感覚的に理解してきた
所謂“必殺技”の使用や威力、その他の攻撃もまた然り
京太郎『ベリアルさん! 力、お借りします!』
- 21 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:42:45.55 ID:me+r5grG0
-
ベリアルがベムラーに駆ける
口から吐き出される青い炎を、前に転がるように避けて懐に入るとそのまま爪撃を放つと同時に背後へと斬り抜ける
叫びをあげ尻尾を振るうベムラー
ベリアル「ハッ!」
ベムラー「―――!!」
前へと転がって回避するベリアルが、即座に振り返る
京太郎もまったく誤差の無い動きで着いていく
京太郎『そこぉ!』
手の平から光弾を三度放つ
ベムラーがその攻撃に火花を散らしながら下がるも、すぐに怒りに震える姿が見えた
作戦通りと、京太郎が笑みを浮かべる
ベムラー「―――!!」
走り出すベムラー
ベリアル『来るぞ、合わせてやる―――やってみせろ小僧!』
京太郎『オオォォォォ!!!』
それに合わせて走り出すベリアル
◆BGM:DREAM FIGHTER【http://www.youtube.com/watch?v=2bJEDgeuVtE】
道路を踏みしめて、ベムラーへと駆けだす
二つの巨体がぶつかりあう―――その直前
京太郎『ここだぁっ!』
即座に身体をかがめると、背を地につけた
走る勢いそのままのベムラーの腹を、受け流すように蹴り上げる
空へと勢いよく飛ぶベムラー
京太郎『ベリアルさん!』
ベリアル『ハッ! おもしろい!』
即座に立ち上がったベリアルの右手が赤い稲妻を纏う
- 22 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 22:55:33.04 ID:me+r5grG0
-
ベムラー「―――!!」
空のベムラーが自由落下を始めようとしている
その前に―――
京太郎『やる!』
腰を少し落とすと左手を水平に、その後ろの赤い稲妻を纏う右手を垂直に
数多の宇宙に広がる光の巨人の伝説
この宇宙にこそ、その伝説はない―――今までは
これから後世に続くであろう伝説、その始まり!
京太郎・ベリアル 『デスシウム光線!』
赤い稲妻を纏った光線
その一撃が空のベムラーへと放たれる
真っ直ぐに、夜を照らす輝き―――
ベムラー「―――!!?」
―――そして、爆発
- 23 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:11:38.06 ID:DoAjmxbH0
-
空中で爆散したベムラー
爆煙から輝く何かが落ちる
ベリアルは右手を払うように振るうと、首を再び鳴らす
ベリアル「……ハァッ!」
両手を上に向けて、ベリアルは空へ―――消えた
―――【丘の上】
熊倉トシは、静かに事の良く末を見守っていた
その表情に浮かぶのは混乱か安心か
トシ「……ベリアルが、京ちゃんに合わせた?」
やはり混乱だったのだろうか、熊倉トシは軽く丘の柵を飛び越える
数メートルを落下するも軽く着地して、さらに歩き出す
トシ「相性の問題? それとも―――息子に殺されれば嫌でも変わる、か?」
- 24 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:25:46.77 ID:DoAjmxbH0
-
―――【街中】
走る京太郎、その右手にはゼットライザー
燃え盛る街の中を息を切らしながら走る
体力の消耗は、初めての戦い故か―――
京太郎「ハァッ、ハァッ……」
ベリアル『戻った途端に、せわしない奴だ』
京太郎「な、なんか落ちたんだ……怪獣が、出た原因かもっ!」
その言葉に、ベリアルは興味なさげに息をつく
破壊されたビルの瓦礫を飛び越えて、京太郎は―――見つけた
京太郎「あれっ!」
ベリアル『なんだ?』
京太郎「せ、妹尾さん!?」
妹尾佳織―――鶴賀学園の麻雀部、二年生
一応、部活の繋がりで数言か交わした記憶はある
急いでそちらへと駆け寄るとすぐに抱き上げた
京太郎「妹尾さん!」
佳織「うっ……」カランッ
なにかが落ちた音がして、京太郎はそちらを見やる
京太郎「これ……メダル?」
ベリアル『ほう、こいつがこのメダルの持ち主だったわけだ』
京太郎「っ」
そのメダルに描かれているのは怪獣―――ベムラー
- 25 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:35:09.72 ID:DoAjmxbH0
-
佳織の上体を片手で支えている京太郎は、そのメダルに驚愕しながらもホルダーにしまった
レスキュー隊が近くに来ているのか声が聞こえる
すぐにそちらへ向かって佳織を預けようとも動こうとする
??「待った」
京太郎「っ……トシさん」ハァ
トシ「こっち」
そう言って歩いていくトシ
佳織を抱き上げるとそちらへと歩き出す京太郎
別に大きな怪我などがある様子はないものの、危なければトシが放っておくとも思えないと行く
ベリアル『おい小僧、あれは?』
京太郎『熊倉トシさん、よくわかんないですけど……助けてくれたっていうか、ベリアルさんと会わせてくれた、人?』
ベリアル『きな臭いな』
京太郎『ごもっとも』
瓦礫の少ない道を行き、徐々に破壊されていない街中へと入っていく
野次馬を避けて裏道を行くトシはこの街の立地にかなり詳しく見えた
トシ「さて、ここで良いだろう」
京太郎「?」
ただの道路だった
歩道で立ち止まったトシの後ろで立ち止まる京太郎
佳織をお姫様抱っこで抱えたままで、職質に怯えながら周囲を見渡す
トシ「ほら来た」
京太郎「車?」
- 26 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/30(月) 23:44:48.48 ID:DoAjmxbH0
-
◇大変! プロがきた!
1、瑞原はやり
2、野依理沙
3、三尋木咏
4、戒能良子
5、赤土晴絵(プロ?)
◇5分間で↓1からコンマが一番高い人物
- 27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/30(月) 23:46:10.34 ID:Kwl+OOY70
- 1はやりん
- 28 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:02:26.63 ID:I/gkF6ga0
- (まぁ正直1↓で良いかなって思ってた!
1、瑞原はやり
目の前に勢いよく止まる車
4WDタイプの四輪駆動車両
その窓が開くと、そこにはどこかで見た女性
???「お待たせしました〜」
トシ「いや、丁度良い到着だ……京ちゃん、あんたは後ろへ」
京太郎「あ、はい」
トシがドアを開けると、京太郎は少し高くなっている後部座席へと佳織共に乗り込む
少しばかり大きな車なだけあって、中もそこそこに広い
佳織をどうにか座らせると、支えるように京太郎も座る
???「出発しま〜す」
トシ「ん」
助手席に座ったトシの返事を機に、車が走り出す
京太郎「えっと……状況が読めないんですけど」
トシ「ああすまないね、それはこのあと……紹介するよ。あたしの協力者」
バックミラー越しに運転席の女性と眼が合う
ニコリ、と聞こえてきそうな笑みを浮かべた女性
???「こんにちは、瑞原はやりです☆」
京太郎「……はやりん!!?」
ベリアル『……誰だ?』
- 29 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:18:37.14 ID:amw9zL0U0
-
十数分走った車が、施設に入る
敷地に入り、真っ直ぐに走っていくと車庫が開く
自動なのか手動なのか、そこに入ると電気がつきハイテク機器が並ぶ車庫だとわかる
京太郎(すげぇな……なんだここ)
ベリアル『おい、この地球には“そーゆー組織”があるのか?』
京太郎『え、そうゆうって?』
その疑問に、ベリアルは応えることはなかった
小首をかしげる京太郎をよそに運転席のはやりと助手席のトシが降りる
それに続くように京太郎は佳織を支えながらドアを開け、抱えて降りた
京太郎「えっと」
はやり「こっちにきて?」
京太郎「あ、はい」
トシ「余計なとこ行ったり触ったりしないでね」
京太郎「俺は子供ですか」
トシ「子供だよ」
京太郎「……まぁ、はい」
ベリアル『情けねぇ』
京太郎『うっ』
閉まって行くシャッターを横目に、近くのドアから二人の後を追って施設に入る
白い壁、明るい蛍光
研究所とか言葉が脳裏をよぎる
京太郎『ついてきちゃって良かったんですかね?』
ベリアル『今更だ、それにいざとなれば俺がやる』
京太郎『あはは……いざって時が来なきゃいいけど……』
- 30 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:29:33.82 ID:amw9zL0U0
-
少し歩くと部屋に案内され、自動ドアが開いて二人に続いて中に入る
ベッドが置いてあり、他にも機器が設置してあった
はやりが手でそちらを差す
京太郎「妹尾さんを?」
はやり「うん」
その言葉に従うほかないと、そちらに佳織を寝かした
京太郎が言葉を発そうとした瞬間、自動ドアが再び開く
入ってきたのは、これまた見覚えのある女性
はやり「裕子ちゃん☆」
裕子「妹尾佳織さん……鶴賀の麻雀部、役満を上がっている」
はやり「はやぁ、リサーチが早いねぇ」
裕子「一応メディカルチェックをします。出て行ってください」
はやり「はいはい、いこートシさん、須賀君?」
京太郎「あ、はい!」
彼女がクルッと身体を回して出口へと向く
それと共に揺れる二つの豊満な果実
京太郎(くっ、伸びる! 鼻の下が伸びる!)
はやり「?」
なにかおかしい京太郎を覗き込むはやり
そんな風にかがまれるともちろんシャツの間から谷間が見えるわけで
京太郎『ぐおぉ! ベリアルさんここ不味いっす!』
ベリアル『鼻の下を伸ばすな、ヒッポリト星人か』
京太郎『誰か知らんけどたぶん悪口!』
- 31 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:39:25.14 ID:amw9zL0U0
-
―――【施設】
二人についていき、一つの部屋に案内された
大きなモニターと大きなテーブル、機器が沢山ある
椅子に座るトシとはやり
はやり「どーぞ☆」
京太郎「し、失礼します」
椅子に座る京太郎、あまりこういう雰囲気には慣れていない
というより、慣れている人の方が珍しいだろう
京太郎「えっと……妹尾さんは?」
トシ「とりあえず検査待ち、まぁ運がいい方だと思うよやっぱり」
京太郎「ど、どこがっすか」
トシ「さぁ、どうとらえるかは自由だけども……」
その言葉に、京太郎は小首をかしげた
はやり「えっと、どこまで説明しましたか?」
トシ「全然さ、その前に……変身してもらったから」
はやり「じゃあ須賀君が?」
トシ「ああ……さっきの“ウルトラマン”だ」
勢いよく立ち上がる
京太郎「ええ!? そういうの言っちゃうんですか!?」
トシ「まぁ、こいつにはね」
はやり「信頼されてるね〜☆」
トシ「一応ね」
はやり「はやや、一応って」
京太郎「……俺、なんなんですか?」
トシ「……父親から、いやそれ以外からでもなんかもらった?」
京太郎「え、なんかって……あ! お守り!」
トシ「それだ。それに入ってたんだろうね……ウルトラマンベリアルの力の入った、カードかカプセルか……メダル」
京太郎「メダル……」
- 32 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 00:55:25.09 ID:c6JmA97W0
-
おそらくメダルだと、謎の確信があった
父からのお守り、だがそれがなぜ
京太郎「メダルがなんだってんですか?」
トシ「それがベリアルメダルだったんだろうね。あんたが死にかけた時に、同化した」
京太郎「俺が死にかけ……あ!」
確実にあれだ。というより“彼女”が言っていた
京太郎「あのあと、俺はその……ベリアルさんのメダルと?」
トシ「ぶふっ!」
珍しいリアクションに、京太郎が疑問符を浮かべる
トシ「い、いや……ベリアルを、さん付けっ」
京太郎「なにがツボだったんです?」
はやり「さぁ?」
ベリアル『失礼な奴だな』
そんな声に軽く苦笑を返す
トシ「こほん……ともかく、そのあと外に捨てられてた京ちゃんを私が見つけて家に運んだと」
京太郎「俺、運ばれたんだ」
トシ「そういうこと、色々あってあんたの父親が鍵を握ってるんじゃないかって思ったら……」
京太郎「俺の父親知ってるんですか?」
トシ「知ってると言えば知ってる。ただ“ここの京ちゃんの父親”ではないけど」
京太郎「?」
トシ「ウルトラマン好きなんだよ。あんたの父親……なろうと思ってゼットライザーを作っちゃうくらいには」
京太郎「親父、こっち側なんだ……しかも変な感じ」
ベリアル『なにに憧れたんだかな、くだらん』
京太郎『ウルトラマンからの意見ですか?』
ベリアル『さぁな……それとオレはオレをウルトラマンなんざだと思ってねぇ』
なにか、複雑な理由があるのだろうと勝手に解釈して深く聞くのをやめた
今やるべきはそんなことでもない
自分の身の周りで起きたことの詳細、それを聞く方が先決だ
京太郎「それで、親父は一体?」
トシ「それは知らない」
京太郎「え〜」
トシ「あとは“怪獣”について、かね」
はやり「ん、それについては私からかな☆」
京太郎「お〜」
- 33 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:10:34.97 ID:c6JmA97W0
-
スーツ姿の瑞原はやり、説明を始めるために立ち上がった
コンピューターのキーボードを軽く叩くとモニターに映るのは怪獣
先ほどのベムラー
はやり「まぁ実際に怪獣が出たのは……今回が初めてだけどね」
京太郎「の割に、瑞原さん落ち着いてますね」
はやり「はやりで良いよ」
そう言うと、さらにキーボードになにかを打ちこむ
怪獣の映像が小さくなり、映るのはメダル
それは沢山の画像があるようで、怪獣が描かれたメダルが複数表示された
はやり「鍵はね、麻雀なの」
京太郎「……は?」
ベリアル『麻雀?』
はやり「ホントだよ?」
京太郎「ああいや、信じてないわけではないです。麻雀でその、殺されかけたんで」
ベリアル『ちょっとおもしろいな』
京太郎『おもしろくないっす』
自分も和と麻雀をして、死にかけたのだ
あの体を突き抜けるような激痛、遠のく意識
トシ「そもそも“この宇宙の麻雀”は……能力ってものが作用する」
京太郎「え、ああまぁ……聞いてはいます」
トシ「ここでは麻雀ってのは、異能を引き出すものでもあるわけだ。そのエネルギーに目を付ける奴がいてもおかしくないだろ?」
京太郎「麻雀の異能で発するエネルギー……ってことですか?」
トシ「そういうこと」
脳裏に浮かぶのはインターハイ
自らの仲間たちが戦った、数多の異能を持つ雀士たち
トシ「で、ちょっと話は変わるけど、どっかにこの星に害をなそうと言う奴がいた」
京太郎「この地球、に?」
トシ「まず人間を掃除するのに怪獣を使おうと思ったわけだ」
京太郎「あの、ベムラー?」
トシ「そういうこと、ただ怪獣を持ってくるよりもっと効率が良いモノがあった。怪獣の力の一部が入れられたメダル」
ベリアル『なるほどな』
京太郎『いや全然わかりませんけど』
トシ「その怪獣の力を持ったメダルと、この世界の雀士の異能を使う力を共振させれば」
はやり「……この通り」
再び大きく映し出されるベムラー
今までは水面下で凌いでいたが、とうとう怪獣が現れてしまったということだろう
- 34 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:28:12.18 ID:wVNMeWmW0
-
京太郎「じゃあ、和は?」
トシ「実際に見ていないけど、たぶんメダルを入れられたんだろう」
京太郎「メダルを?」
トシ「あんたと一緒だ」
自分と一緒、だと説明されてもハッキリとしない
京太郎自身とベリアルは、どちらかが支配している関係、では無いと思う
思いたいのだ、まだ出会ったばかりだが……
京太郎「……」
トシ「まぁメダルにも相性ってもんがあるからなんともだけどね」
京太郎「相性ですか?」
トシ「……まぁその時の感情だったり、相性だったり、状況だったり?」
京太郎「俺と、ベリアルさんは?」
トシ「さて、そこまでは知らないよ」
静かに息をつくトシを前に、京太郎は顔をしかめた
はやり「はやや、私の出番だったんじゃ?」
トシ「ん、すまないね」
京太郎「あ、それで……なんでしたっけ?」
はやり「……麻雀の話」
少し沈んでいるはやり
苦笑しながら眼を逸らす
京太郎「あ〜で、なんで今更、負けたぐらい俺は死にかけたんですか?」
はやり「たぶん、その原村和ちゃんに入っていたメダルがかなり強いんだろうね。強いメダルはそのぶん適合しないと弾かれるはずだけど」
京太郎「強い、メダル……あの天使」
はやり「まぁ強いエネルギーを持ったメダルと強い異能、それに負ければ……それも大差なんてただじゃすまないよね」
そう言いながら、そっと京太郎の傍による
はやり「でも、死までいくなんて……こわかったよね?」
やわらかな手が、頭の上に置かれる
妙に気恥ずかしくなって俯く
一方のはやりは暖かな笑みを浮かべて手を離した
はやり「うん、強い子だ……でもそんな君に、頼ることになる」
京太郎「?」
寂しげな声に、京太郎は首をかしげた
はやり「まぁなにはともあれ、メダルを入れた雀士が止まらずに勝ち進むと……エネルギーはどんどんと溜まっていく」
京太郎「……まさか、それで?」
はやり「そう、エネルギーが溜まると……メダルが覚醒する。怪獣が、現れるんだよ」
- 35 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:34:58.51 ID:wVNMeWmW0
-
京太郎「……つまり、雀士を止めれば怪獣は」
見えてきた答えを口にしようとした瞬間、扉が開く
入ってきたのは先ほどの女性
ようやくそこで京太郎は理解した
京太郎『佐藤裕子さん……』
ベリアル『誰だ』
京太郎『あ、え〜と……女子アナ?』
ベリアル『なんだそれは』
京太郎『ですよね』
なにかがわかったのか、裕子は三人を前に息をつく
裕子「身体に別状はありません……体内にメダルも、良くないエネルギーもデビルスプリンターも確認されませんでした」
京太郎「デビルスプリンター?」
トシ「ま、そこは良いよ。とりあえず別状はないんだね?」
裕子「はい、精神ダメージがあるのかまだ眠っていますが数値自体は至って正常です」
はやり「だって」
京太郎「良かったぁ」ハァ
トシ「運が良いねぇ……」
京太郎「でも、勝ち続けてしまったから……ベムラーになったんですよね?」
ベムラーメダルが入ったホルダーに手を添える
トシ「……ま、話の続きは明日でいいか」
はやり「夜も遅いですしね☆」
京太郎「あ、いや」
トシ「急いても仕方ないよ。ゆっくりしすぎてもしょうがないけど……」
京太郎「……はい」
- 36 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:42:43.27 ID:wVNMeWmW0
-
はやりに話をしていた部屋こと作戦室から少し離れた部屋に案内される
壁から伸びたテーブル、白いシーツが敷かれたベッド
椅子に小さな冷蔵庫なんかもあった
京太郎「ここは……」
はやり「一応、宿舎……で良いのかな」
京太郎「ありがとうございます」
ペコリ、と頭を下げると、はやりは笑って手を前で振る
はやり「こちらこそ、ありがとう……街と人を守ってくれて」
京太郎「いえ、俺なんてベリアルさんに」
はやり「それでも京太郎くんの、力でもあるんだよ」
京太郎「……はい」コクリ
はやり「それじゃあ、おやすみ」
京太郎「はい、おやすみなさい」
笑顔を浮かべて別れる二人
京太郎はそのまま、ドサッとベッドに倒れ込む
今日一日で色々とありすぎて、思うことが多すぎる
京太郎『ベリアルさん、俺たちどうなっちゃうんでしょう』
ベリアル『ハッ! オレは気に入らないものをぶっ潰す。それだけだ』
京太郎『できれば、それが怪獣であることを願いますよ』
それだけを言って、眼を瞑る
すぐに睡魔が襲い掛かってきた
心につっかえているのは和、彼女はどうなってしまうのだろうということ
京太郎(みんな、無事でいて欲しいけど……)
一抹の不安を抱えつつも、意識は微睡の中に沈んでいく
ゆっくり……ゆっくりと……
- 37 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 01:45:13.47 ID:wVNMeWmW0
-
第一話【幻影を継ぐ者】 END
- 38 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 02:11:53.84 ID:wVNMeWmW0
-
―――次回予告
京太郎:消える雀士! 消える怪獣! もーわけわかんないっすよ!
京太郎:なにがなんだかわかんないけど、この力で人を守れるなら、俺戦います!
京太郎:って麻雀、かと思ったら麻雀じゃないしぃ!
次回【雀士で戦士】
ベリアル:おもしろい、斬ってみるか!
京太郎:あ、おもち
- 39 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/08/31(火) 02:15:07.43 ID:wVNMeWmW0
-
これでエンドマークだ!(ここまで!)
はやりんが登場、まぁ他のプロ勢も別で出番はあるけども
ようやく一話終了、説明多かったのは反省している
次回からはサクサク話が進んでいくといいなぁ
ラブコメ風なこととかしたい
そしてなんとなく次回予告してみたけど次にするかはわからない
次は水曜とかかな?
そんじゃまたー
- 40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/31(火) 02:23:47.42 ID:m+KrL3HU0
- 乙
- 41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/31(火) 03:12:59.81 ID:RFMEHvHU0
- 乙です
まだ一話目だけど結構伏線っぽいのばら撒いた感じか?
次回予告は何出るかすぐわかるなww
- 42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/09/01(水) 07:48:51.71 ID:1PNYXinjO
- かおりんの次にモモ(?)ってことは最初の方は鶴賀編って感じか?
それと質問なんだが安価って一話に一回ぐらいのペースである?
- 43 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:28:56.41 ID:2s5yzSvb0
- よっしやってくー
>>42
安価は大体一話に一回ぐらいかなーって感じっす
多いかなとも思ったけどー
- 44 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:40:17.68 ID:2s5yzSvb0
-
―――【???】
胸を焦がす感情
熱いほどの野心と闘争心
なにかが、心を覆う、邪悪なナニか、深き闇―――
「っ……なんだよ、これ」
呟くように、言う
「ベリアルさんっ!? いないんすか!」
今、最も頼りになる相手、自らの半身
死の淵から救ってくれた“英雄-ヒーロー-”に近き者
「こんな闇っ」
その闇に戸惑いながらも
それでも
胸を焦がすその感情には、憶えがあった
つい最近も抱いた―――狂おしいほどの、憧憬を超えた感情
「嫉妬、妬み……」
- 45 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:49:01.41 ID:2s5yzSvb0
-
―――【???:京太郎の部屋】
京太郎「ッ!!」バッ
勢いよく起き上がった京太郎
純白のシーツに汗のシミを残し、荒々しい呼吸をしながら自分の手を見る
一瞬だけ、自分の手に【漆黒の爪の生えた手】が重なって見えた
京太郎「っ!」ビクッ
ベリアル『なんだ? 起きて早々』
京太郎「あっ……すみません」
肩で呼吸をしながら、ベッドから降りる
着替えもなかったので下着姿で眠っていたので、エアコンからの冷風に少しばかり寒気を感じた
まず、着替えて部屋から出ようと、立ち上がった―――その瞬間
ウィン
はやり「おはよー☆」
京太郎「あ」
はやり「……」
京太郎「……」
沈黙、ただただ沈黙
京太郎とはやり、ただ沈黙
ベリアルは興味はないのか、なにも言わない
京太郎「……あの、とりあえず閉めてもらっても?」
はやり「はやぁっ!!? ごごご、ごめんねっ!!」ボンッ
真っ赤な顔のはやりがすぐさま背を向けて、自動ドアがゆっくりと閉まる
京太郎「……さて、着替えるか」
- 46 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 21:55:45.89 ID:2s5yzSvb0
-
第2話【雀士で戦士】
- 47 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:03:04.37 ID:2s5yzSvb0
-
―――【???】
自動ドアが開いて、京太郎が出る
昨日と同じ服なので少しばかり匂いを気にしながらだ
出てすぐ横に、はやりが壁を背に立っていた
京太郎「お待たせしました」
はやり「はやっ!? ぜぜぜ、全然!!?」
京太郎(初心だなぁ
- 48 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:15:16.12 ID:UMGkm6dA0
- (間違えて途中送信しちゃった
京太郎(初心だなぁ)
はやり「と、とりあえず昨日の話の続きをしようか、とりあえず作戦室に行って」
京太郎(そもそも、ここってなんの施設なんだ? てかこの人らもなんなんだ?)
はやり「まずは」
瞬間、はやりのスーツのポケットから音が響く
着信音なのか、音の元たる端末を取り出してはやりはボタンを押す
はやり「どーしたの?」
裕子『協力な反応を検知しました。おそらくメダルを持った雀士です』
はやり「っ! すぐに行くよ!」
トシ『頼んだ。京ちゃんも……』
京太郎「え、俺もっすか!?」
トシ『頼んだよ。今の内に止めとかないと昨日みたいになる』
頭の中をよぎるのは昨日の街
火がと鉄となにかが焼けるような異臭
破壊された建物
京太郎「っ……」
はやり「私だけでも、まだ間に合うなら」
裕子『いつ“覚醒”してもおかしくありませんよ。この波形』
はやり「だからって戦いたくない子供をっ」
京太郎「行きます」
はやり「っ」
京太郎「……戦います。守りますよ俺が」
トシ『……京ちゃん、頼んだ』
京太郎「はい」
熊倉トシの言葉に、ハッキリと返事を返す
見えないだろうけれどしっかりと頷いて、だ
はやりは複雑そうな表情を浮かべる
京太郎「よくわかんないけど、戦います。街を、人々を守るために!」
ベリアル『……ふん』
おそらく、機嫌がよろしくないのは理解できた
自分の発言故なのかはわからない
しかし、ベリアルの力を借りなくてはならないのも事実だ
京太郎『ベリアルさん、お願いします!』
ベリアル『……』
京太郎『ベリアルさん?』
はやり「行こう、京太郎くん!
京太郎「あ、はい」
- 49 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:28:08.34 ID:UMGkm6dA0
-
昨日と同じ車に乗り込む
今回は運転席にはやり、助手席に京太郎と二人だけ
目的は一つ―――怪獣メダルを持った雀士を止める
京太郎「ところで、俺はなにをすれば?」
はやり「あ〜話が途中だったもんね」
その言葉に頷く京太郎
改めてスーツ姿の瑞原はやりに違和感を覚えるが、今はそこに突っ込める雰囲気でもない
はやり「私は良くわかんないんだけどね……トシさんからの情報しか」
京太郎「はぁ」
はやり「……麻雀をしてもらうんだよ。私と一緒にね」
京太郎「……」
はやり「……」
京太郎「はぁ!!?」
- 50 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:46:58.99 ID:TOJ3oX3q0
-
田舎道を走る車その車内で、なんとなく事情は説明された
未だに納得はできないが、それでも……やらざるをえないだろう
自分でも、役に立つなら、守れるなら
京太郎『ベリアルさん、俺にできますかね?』
ベリアル『さぁな、オレはまだお前のことを何も知らねぇ』
京太郎『確かに……』
ベリアル『ただこれだけはわかる』
京太郎『な、なんっすか』
おもしろそうに言うベリアルに、小首をかしげる
隣のはやりは車に装備されたカーナビを見ながら走っているようだった
京太郎『聞かせてくれないんですか?』
ベリアル『……さてな』
ケラケラ笑うベリアルに、顔をしかめる京太郎
隣のはやりが京太郎の方を横目で見て、なにかを察したのか苦笑する
―――瞬間、車に通信が入ったのか車内に声が響く
裕子『はやりさん! 雀士の真横を通り過ぎました!』
はやり「はやっ!?」
京太郎「え、今誰かいました?」
裕子『反応だけは確かなんですけどっ……近くに雀荘は!』
はやり「あるけど、と、通り過ぎるなんて」
裕子『歩いてます!』
はやり「はやっ!?」
京太郎「ど、どういう……」
ベリアル『ほぉ』
楽しそうなベリアルの声をよそに、車が止まると京太郎とはやりの二人が後ろの道を見返す
ただの道路、誰もいないように見える
京太郎とはやりは顔を合わせて、困惑に首をかしげた
- 51 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 22:59:34.30 ID:8W6qAzpz0
-
車を近くのパーキングに止めて二人で歩く
はやりはサングラスをかけていてポニーテール
おそらくバレるのを防ぐためなのだろうけれど……
京太郎(おもちがっ! おもちが凄い!)
はやり「こっちの方のはず……」
通信機にもなっている携帯端末を持って歩くはやり
そのあとをついていく京太郎だが、確かにその先には雀荘が見えた
先ほど、すれ違ったというのがいまだにわからない
京太郎「なんだろ」
はやり「そこの雀荘にいるのは間違いなし、ここまでだよ」
そう言いながら、はやりが中に入る
次いで京太郎も入るのだが、中は普通の雀荘―――と言いたいところだが、雰囲気が異様
この雰囲気を京太郎は知っている。昨日味わっている
京太郎(そういや一日しか経ってないんだよなぁ……)
はやり「いるね。でも……」
卓数は8つ、はやりが端末を左右に振るが、反応が近いためか細かくはわからないようだ
京太郎「……」
はやり「逃げただけでは、ないはずだけど……」
京太郎「あ」
はやり「ん?」
京太郎「わかったかも」
はやり「え、ほんと!?」
- 52 : ◆dBIP2XuQhg [saga]:2021/09/01(水) 23:07:01.27 ID:8W6qAzpz0
-
憶えはある。あったはずだった
話したことこそないものの、確かに彼女のことは聞いている
消える雀士、それにはあの原村和も崩されかけた
京太郎「……」キョロキョロ
はやり「京太郎くん?」
京太郎「はやりさん、あの三麻の卓」
指差した先の卓、三麻をやっているように見えるが、雀牌はしっかりと置かれていた
意識しだしてようやく違和感を感じたのかはやりも“なるほど”と頷く
京太郎「……消える雀士」
揺れる空気、倒れる牌
決着は着いてしまったのだろう
相手どっていた雀士三人が倒れた
京太郎「っ」
はやり「他の人は気にもならないよ。しばらくしないとね」
京太郎「随分、都合が良い力なようで」
ベリアル『ハッ、おもしろい力だな……』
徐々に、その姿を捉えられるようになってくる
京太郎「鶴賀学園……」
シュゥゥゥッ
京太郎「東横、桃子……」
桃子「……」ニヤッ
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