【まどマギ】小巻「見滝原中に転入したわ」【安価あり】

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719 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/28(日) 20:03:58.43 ID:oKmfZ5NY0
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30日目からやりなおし
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小巻「アンタ……まさかとは思うけど、この前のこと忘れたとか言わないわよね」

織莉子「ええ、覚えてるわよ」


 怒気をにじませる。

 何も知らなかったときからすればあたしの思い通りになったはずだけど、こんなんじゃ納得がいかない。


織莉子「……でも今ここで戦うわけにはいかないでしょう? 教室へお行きになったら?」


 美国はあたしの怒りを手慣れたようにふわりと躱す。しかしもう怒りの気配すら隠さなくなっていた。


 何考えてるんだかわからないけど、どうやら心の準備をする暇すらくれなかったらしい。

 コイツとは今度こそ、殺してでも正面から向き合って決着つけてやるって決めてた。


 ……それをこんなわけのわからない鉢合わせ方して、普段どおりに教室に行けって?



1逃げる気なの?
2放課後は待ってなさい
3アンタの考えてたことはもう知ってるのよ
4自由安価

 下2レス
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/28(日) 21:02:43.14 ID:UpcB9wIn0
お!スレ主さん、お久しぶり!

30日から再スタートですか。
ここは違う結末を目指して4、急いで暁美の教室に行って暁美が登校してるかどうかを確認する。
来てなかったら暁美が親しくしていたのは誰かを確認して、彼女たちを屋上に連れ出してキュウベェを呼んで素質持ちがいるか確認する。
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/28(日) 21:09:38.60 ID:8qqcDi9X0
↑で
722 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/28(日) 22:25:21.02 ID:oKmfZ5NY0
行動指定するのはいいんですが、一応会話中なのでセリフとして使えるものがないと無視したことになります。
あと小巻自身が認識してないことは目的を考えるのに時間がかかります。これも会話の後の行動になるので…。
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小巻(意味わかんない)


 キッと睨む。美国もそんなことじゃ怯まない。何考えてるのか。

 いつもだったら嫌味の一つくらい返してるとこだけど、あたしが何も言わないのを見ると美国は立ち去ろうとする。


織莉子「無視するつもりならそれでも構わないわよ。いつまでもそこにいなさい」


 去り際、すれ違いざまに鋭い視線を感じた。


織莉子「それと、マミに余計なことを吹き込んで惑わせないで。マミは私の友達よ」


 怯むどころか睨み返してきていた。本当、思ったより図太いっていうかひねくれてるっていうか。

 ……どっちのセリフだ。


小巻「アンタはどこへ行くのよ」

織莉子「貴女に関係があるの?」

小巻「……そうね。転入初日にやることならあたしももう知ってるわよ」


 モヤモヤとした気持ちのまま美国の姿を見送る。

 何してるんだろう。朝から調子を狂わされる。

723 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/28(日) 22:41:12.73 ID:oKmfZ5NY0


 なんで美国は今更。内心煮えたぎってるくせに余裕ぶった態度してるし。

 ……昨日言ってた人たちを狙って?


 マミの話を聞いてから“少女”と“守る存在”とやらのことは考えたなかったわけじゃない。

 あたしたち以外の魔法少女っていったら一人しか浮かばない。



 急いで暁美の教室に向かった。



小巻(いない!)


 そこには暁美の姿はなかった。

 たしか、前にここに来た時、暁美はクラスメイトとだけは楽しそうにしていた。

 あの時一緒にいたのはどんなヤツだったかを思い出そうとしながら、教室の中を見ていると、空色の髪の女子生徒がこっちに来た。


 ……見覚えがある気がする。


「何か用ですか?」

小巻「このクラスの暁美ほむらって知ってるわよね。アンタ、そいつと仲いい?」

「まあ、あたしはよく一緒にいますけど」


 コイツが暁美の守りたかった人?


小巻「他には? 仲いい人っていないの?」

「……失礼かもしれませんけど、なんでそんなことを?」


 少し怪訝に思われてるのが伝わってくる。どうしよう。

 コイツだけでもなんとかしようか?



1この女性生徒をつれて屋上に行く
2暁美と仲の良い人が危ないかもしれない、と話す
3自由安価
4一つ前の選択肢に戻る

 下2レス
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/28(日) 22:59:19.15 ID:UpcB9wIn0
おや、選択肢に戻るは珍しいですね。
せっかくなので4に>>720の選択肢に1を追加で。
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/28(日) 23:00:43.70 ID:EaW+0SQ1O

追加でキリカも連れて行く
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/28(日) 23:12:08.23 ID:UpcB9wIn0
あ、そうか。
キリカは手芸部のことでキリカの事を知ってるから、キリカがいれば自分から話に加わってきてくれるかも?
小巻編でも手芸部の先輩後輩ならですけど。
727 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/28(日) 23:59:18.64 ID:oKmfZ5NY0
【一つ前の選択肢に戻る】
一度エンドは見てるので、快適性重視でいきたいと思ってます
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織莉子「……でも今ここで戦うわけにはいかないでしょう? 教室へお行きになったら?」


 美国はあたしの怒りを手慣れたようにふわりと躱す。しかしもう怒りの気配すら隠さなくなっていた。


 何考えてるんだかわからないけど、どうやら心の準備をする暇すらくれなかったらしい。

 コイツとは今度こそ、殺してでも正面から向き合って決着つけてやるって決めてた。


 ……それをこんなわけのわからない鉢合わせ方して、普段どおりに教室に行けって?


小巻「逃げる気なの?」

織莉子「どうしても私の前に立ちふさがりたいの?」

小巻「……」


 相手の思惑がわからないから、睨みだけを向ける。それで怯むようなヤツでもないことはもうわかってる。

 すると、美国はイラついたようにため息を吐き捨てる。まだ静かではあるが美国の語調が怒気を孕んでいくのを感じた。


織莉子「そうやって、いつも貴女は私の邪魔をする……」


 美国が漏らした言葉の意味を考える。ろくでもないことを実行しようとしてたのはわかった。

 尚更ここでコイツを逃しちゃいけない。今、あたしの前に居る間に押さえなきゃ手遅れになる。


小巻「何か企んでるんでしょ? いえ、目的はもうわかるわ。“世界を滅ぼす存在”ってやつがこの学校にいるの?」

小巻「そこに行く気なら、行かせるわけにはいかない」

織莉子「貴女は何故全てをわかっておきながら“魔女”の味方をするの。それに、マミに余計なことを吹き込んで惑わせないで。マミは私の友達よ」

小巻「どっちのセリフよ!」


 カッときて、人目も憚らず怒鳴った。

 何が正しいかじゃない。美国のやったことのせいでマミは苦しんでる。やりたくもないことをやらなきゃいけないって思いつめて、そのせいで他の選択肢すら考えられなくなってる。

 魔女のことも世界滅亡のことも何も知らなければあんなふうに苦しむことはなかったのに。


 誰かは全部を知って考えなくちゃいけない。でも美国だけがそれを背負うべきとも思わないから、余計にこうなったのが悔しくなった。

728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/29(月) 00:23:50.61 ID:3za6TfKz0
あ、織莉子が「マミは私の友達よ」ってセリフがあったのだから、ここで>>695の小巻のセリフを入れてみたかったかも・・・
729 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 00:39:44.38 ID:6UhIlK0g0


小巻「場所を変えましょう。嫌だと言ってもついてきてもらうわ」

小巻「どのみちアンタとは戦わなきゃいけないって決まってたもの。アンタと決着をつけられて“殺人”も防げるなら一石二鳥だわ」

織莉子「でも本当にいいの? 今私を逃さないと後悔することになるでしょうね」

小巻「……いまさら命乞いでもする気?」

織莉子「まさか」


 美国はあたしの言葉を一笑に付す。

 それから、関係なさそうな調子で話し始めた。


織莉子「ところで、魔女の素体がこの学校にいるって推測は正解よ。当然近くに居るほうが狙いやすいわ。でも私がこの学校への転校を渋っていた理由は、守護者の事だけじゃないの」

織莉子「この学校にはすでに魔法少女がいる。守護者を排除できる目処が立つまでは、ギリギリまでインキュベーターの注目を集めるのは避けたかったから」

小巻「……そんなことあの時は考えもしなかったわ」

織莉子「そして、守護者は今いないわ。マミに足止めをしてもらっているの。この意味がわかる?」

織莉子「守護者は私からだけじゃなく契約からも守ってくれる存在だった。そのガードが外れている今、放っていればじきに契約してしまう」

織莉子「だからその前に今すぐ、私が除かなければならないの」

小巻「自分たちでやっといて、随分勝手な理由じゃない」

織莉子「ええ、そうだとしてもね。変わらないわ。戦ってあげる時間など無いの。わかったら、大人しく私に道を開けなさい」




1じゃあその前にとっとと決着をつけるしかないわね!
2契約されたら何かまずいわけ?
3自由安価

 下2レス
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/29(月) 01:06:16.45 ID:3za6TfKz0
1+いないけどあすみみたいに織莉子を煽る。
あと最後に>>695の友達、怒りを見せる云々のせりふも。

ふん、世界を救うためとか言って余裕ぶってベラベラ喋ってるけど、焦って余裕がなさそうに見えるわね。
自分の計画が上手く行きそうだから口が軽くなってるみたいだけどそれって小悪党そのものよね?
あれね、選挙の結果が出る前に当選確実とか確信して実際は落選するってやつかしら?
そんなところまで政治家染みてて『美国』って家に囚われてるのね・・・ここまでくるともう道化ね。
ま、あんたの場合は道化になろうとしていても、端から見たら必死すぎて道化になりきれていない三流だけどね。
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/29(月) 01:14:07.89 ID:IHKTIO6P0
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 01:15:56.64 ID:QluEkn/3O

一応2も追加
733 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 01:27:43.52 ID:6UhIlK0g0
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今回更新はここまで
次回は29日(月)20時くらいからの予定
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 01:37:19.76 ID:QluEkn/3O

735 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 21:28:16.68 ID:6UhIlK0g0


 ここまで言われて引き下がれるか!


小巻「じゃあその前にとっとと決着をつければいい話よ!」

織莉子「貴女、正気なの? それとも世界を滅ぼしたいの?」

小巻「アンタとは考え方が違うってだけ」

織莉子「ここまで言ってもわかってくれないなんて。やはり私達は何処まで行こうとも相容れない定めのようね」

小巻「……そうよ。アンタがそうする限り、相容れないわ」

織莉子「それなら、先に排除するしか無いわ。この世界の為に」


 ようやく場所を移す。最低限人目のつかない場所に。

 時間がないってのはあたしだってわかってる。



 長引かせずに倒す。――――いや、『殺す』。

 光が散る。ほぼ同時に衣装を身に纏った。そして、両手でしっかりと斧を構えて踏み込んだ。


小巻「覚悟しなさいッ!」


 前方からは珠が飛んでくる。今更互いに遠慮なんて必要ない。全力がぶつかり合った。

736 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 22:17:08.59 ID:6UhIlK0g0


織莉子「私の邪魔をして貴女には何が出来るというの? どうせ何も出来ないのなら、安い正義を振りかざすな!」

小巻「『安い正義』?」


 この前からコイツが言ってることは一つだ。世界のため。正義のため。


小巻「それってアンタのことでしょ? 世界のためとか言って正当化してるけど、アンタのやってることは小悪党そのものよ」

織莉子「何とでも言えばいい。悪逆の道に居る事なんて理解ってる。それで世を救えるのなら安いものでしょう?」

小巻「それも例の父親に誇りたいからやってるの?」


 『父親』――その言葉を出した瞬間に、美国は更に怒りの形相を鋭くした。


小巻「この前も言ったけどね、ソイツはもう居ないのよ! 死んだヤツのこと勝手に決めつけて、生きてる人殺していい理由になんてなるか!」

織莉子「お前がお父様のことを口に出すなぁッ!!!」

小巻「っ!」


 ひときわに殺意と威力の籠もった珠が飛んでくる。そこからさらに、レーザーが四方八方に弾けて展開された。

 盾で受けるにもキツい猛攻だ。一歩引き下がらせられ、防御の間に合わなかった手足にレーザーに焼き切られた傷がつく。


 そうでなくともさっきから、相手は魔力を出し惜しみなしに使ってる。


小巻「やっぱずっと、内心じゃ怒ってたんじゃない。本当は人助けなんてしたくないんでしょ?」

小巻「そうやって、最初から怒ってればよかったのよ」

織莉子「何が言いたい!」


 なんとか体勢を直して、力強く斧を振り上げる。


小巻「ムカつくこと散々言われてたんだから、怒るのは当然よ。そこで発散してりゃよかったの!」

小巻「アンタだってあたしと同じで大人なんかじゃなかったってことよ!」

織莉子「一緒にしないで! 誰が貴女なんかと!」

小巻「そうね、じゃあまともな怒り方も知らないで育った厄介な子供ね! それで無関係な人殺すのまで正当化するんだから、本当に厄介よ!」

737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/29(月) 22:45:19.78 ID:3za6TfKz0
派手な喧嘩どころか殺し合いをやってるなぁ
人気がないとこってまさか学校の敷地内、屋上とかじゃないよね・・・?
738 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 23:06:33.84 ID:6UhIlK0g0


 美国は弾かれたように叫んだ。

 目的の根幹だ。美国からすれば過剰に反応してでも認めるわけにはいかないんだろう。認めたらここまでやってきた全てが崩れてしまう。


織莉子「黙りなさいッ! ……黙れッ! 撤回しろ!」

小巻「怒り慣れてないからかしらね? そういうの図星突かれた反応って言うのよ」


 美国は今まで抱いてきた怒りすら正当化して消してきたんだ。あたしの心配はたしかに見当違いだった。

 でも、あの日上の空になるほど悩んでたことは変えようもない事実だった。


 その根本的な理由は他にあって、完璧に理解することはあたしにはできない。どうしてこうなったかも、コイツのこと全部は知らないから。


小巻「……さぞ迷惑だったんでしょうね。あたしのやってきたことはアンタからすれば邪魔なことばかりだったでしょうね」

織莉子「わかったのなら退いて。こうしている時間なんて無いの」

小巻「これがアンタのやりたかったことなのよね? そのためにずっと悩んで、殺して……!」


 避けられては、すかさず踏み込む。飛んでくる水晶は見極めて防ぐ。

 魔力と魔力がぶつかり合って火花を散らす。


 でも、コイツがこうまでして守りたいものって、ただの意地? プライド? そう思うと、悔しさがこみ上げた。


 その悔しさは、自分に対してもだった。

 美国のこと気にしておきながら、あたしも意地を張っていた。


 理由を理解できていたのなら、『何か』は変わったかもしれない。


小巻「アンタの気持ちなんかあたしが知るはずもなかったけど!」

織莉子「どうせわからないわよ。貴女には。私達は相容れないのだから」


 冷たく、諦めたような口調で突き放される。

 少し前までのあたしじゃ聞いたところで理解しようとすることもできなかったかもしれない。


 それでも。

739 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 23:11:42.75 ID:6UhIlK0g0


 感情のせいか、水晶の威力は変わらないものの次第に狙いは単調なものになっている。

 あたしのほうもそろそろ万全の動きじゃない。



 決着は近づいている。



 知ってたって避け続けられるわけじゃないし、逃げ続けられる場所も無限にあるわけじゃない。

 迫り続け、少しずつ後退していった先のその背には壁が近づいている。


 もう迷わない。最後まで全力で斧を振り抜いた。


小巻「『アンタがそうする限り』って、言ったでしょ?」

織莉子「は……」

小巻「……今になって思うのよ」

小巻「マミじゃなくてあたしがアンタと友達になってやるって言ってれば、こうはならなかったんじゃないかって」


 ――――血が滴り落ちていく。両手に持った斧の先から。『斬りつけたもの』から。

 今まで魔女を両断してきた斧が、はじめて違うものを裂いた。

 それでもあたしたちはまだ死なない。だからまだ握りしめて、もう一度振るう。


 あたしがつけたかった決着ってのは、殺すことだけじゃない。ごまかしてばっかだったコイツと今度こそちゃんと話すため。

 最後に言っておきたかった、あたしの後悔の言葉とともに。


織莉子「そんなの……」

小巻「変わらないかしら? 案外友達になれたかもしれないわよ」

小巻「どうせアンタのことだから、誰かにこんなに全力で怒りをぶつけたのだって、あたしがはじめてなんでしょ?」


小巻「織莉子」


 今度こそ、胸についた宝石を砕いてやった。
740 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 23:29:57.44 ID:6UhIlK0g0


小巻「はぁ……っ」


 思わず気が抜けてその場にへたりこんだ。今まで気にならなかった疲労や痛みが一気に押し寄せてくる。

 戻ったときに心配されるだろうから治療だけはしておこう。


 ここは学校からそう離れてもない場所だ。今は人気がないけど、覗こうと思えばすぐに覗ける。


小巻「違う、まだ気を抜いてる場合じゃない……!」


 傷を直し終えると、もう一度気合を入れて立ち上がる。

 一人この場所を抜けていく。

 織莉子に最後に別れを告げて、もう見ないようにした。ここならきっと、誰かは見つけてくれるはず。



1暁美のクラスに行こう
2マミが暁美を足止めしてるって言ってたな
3自由安価

 下2レス
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/29(月) 23:37:43.79 ID:3za6TfKz0
織莉子戦、安価がないのって良いですねぇ・・・

1+2
暁美のクラスに急いで向かいながら2の事でマミに電話する。

マミ、今あんたが何をしてるのかわかってるから!
今すぐ馬鹿な事はやめて暁美を解放しなさい、そうすればあんたはまだ手遅れにならない!
名前をだすのは尺だけど、佐倉が誇れるマミ先輩でいるべきなのよ、あんたは!
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 23:41:11.30 ID:i/GpZkMUO

追加でキリカにも連絡して暁美のクラスに先に行くように頼む。
きゅうべぇがいたら契約させないように頼む
743 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/11/29(月) 23:49:40.59 ID:6UhIlK0g0
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今回更新はここまで
次回は1日(水)20時くらいからの予定
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/29(月) 23:54:22.81 ID:3za6TfKz0
乙です。

とりあえず1回目とは違う展開になりそうですね。
マミがクーほむを倒してなければ良いんですけどねぇ・・・
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 23:54:56.61 ID:i/GpZkMUO

746 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/01(水) 21:46:44.28 ID:2xHtwyZa0


 携帯を取り出してキリカにコールする。

 あたしがここから学校に戻るまでには少し時間がかかる。事情を話してる暇はないけど、見てもらうだけでも。


キリカ『どこにいるの! もうホームルーム始まるよ? 今日休み?』

小巻「今はそれどころじゃないのよ! それより、すぐに今から言う教室を見てきてくれない!?」

キリカ『えー、なんでそんな……』

小巻「あたしも向かってるし、事情は後で話すから! 悪いんだけど今は何も聞かずに頼まれて!」


 ここまで言うと、キリカも腑に落ちない様子ではあったものの了承してくれた。


 これまで暁美に会いにいったときはあたしとマミだけだった。キリカはまだ暁美とも会ったことがないかもしれないし、教室も知らないはず。

 学年と組を伝えて、ひとまず電話を切る。


 ……気にしなきゃいけないのはそっちだけじゃない。マミが暁美を足止めしてるって言ってた。次はマミだ。


小巻(お願い、出て……!)


 学校に来る前に足止めしてるんだから暁美の通学路にいるんだろうけど、見当もつけられなきゃそんなの闇雲に探すなんてできない。

747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/01(水) 22:05:30.32 ID:f2pzoUuk0
さて、どうなるか……間に合ってほしいけど。
748 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/01(水) 23:08:49.14 ID:2xHtwyZa0
――――――
――――――



 リボンで括られた手の先に掴む銃は弾切れ。その身体にはいくつも糸とリボンがつなげられていた。

 マミが空中に浮かばせられたそれを無感情に眺める。


マミ「……」

ほむら「……」


 戦いの終わったこの場からは戦いの音も消え、沈黙が流れていた。

 それでも、暁美ほむらのその瞳に湛える鋭さだけは衰えることはなかった。


マミ(私には……やっぱりこうするしかない)

マミ(これが私にできることだから。協力すると言ったもの。美国さんが行動を起こすというのなら、今更断るのは世界を滅ぼすことにつながる)


マミ(そうしたら、私のせいだもの)


 のしかかる重さを感じながら、与えられた役割をこなす。責任感の強い性格もそれを手伝っていた。

 しかし捕らえられたままのほむらは、それ以上がないことを訝しみはじめる。


ほむら「……一体いつまでこうしているの」


 ほむらも元々口数が少ないほうではあるが、不自然な沈黙に痺れを切らしようやく口を開いた。

 しかし、マミのほうがまだ頑なに口を閉ざしていた。


 織莉子からの連絡を待つ。そして、携帯をとった。



マミ「……!」



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749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/01(水) 23:19:57.37 ID:3tzGj5OeO
縛りプレイに放置プレイとかマミってなかなかマニアックな嗜好してるのな
750 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/02(木) 00:00:04.00 ID:D2o4LAJ70


小巻「マミ、今暁美のとこにいるんでしょ!? アンタが何をしてるかわかってるから!」

マミ『浅古さん……!? どうしてあなたが』

小巻「織莉子を倒したの」


 電話越しに短く息をのんだのが伝わってきた。


小巻「殺したのよ。あたしが」


 あたしのやったことについて、自分にも誰にもごまかすことはしない。

 アイツは魔女とは違う。


小巻「だからアンタも今すぐ学校にきなさい! 暁美も解放してやって」

マミ『そんなこと、今更……! きっとただで許してはくれないわ』

小巻「今更も何も、アンタとアイツの考えてた計画はもう潰えたのよ。あたしは殺しはしない」

小巻「そしたらこれから守ってくれる暁美がいないと困るのはあたしたちでしょ? そうする以外の選択肢があるっていうの?」

マミ『そうじゃなくて、私のことよ』


 電話の向こうから戦いの音は聞こえない。

 もう戦いは終わっているんだろう。


 何を迷ってるんだと思ったらそんなこと。そりゃ暁美が許すかどうかは知らないけど。


小巻「暁美がどうするかは知らないわ。でも、アンタはまだ戻れるわよ。きっと」

小巻「今は疲れてるだろうけど、生きてる限りはいつかは回復するんだから」


 マミをなんとか元気づけるために言葉を選ぶ。

 言おうかどうか迷ったけど、これも言うことにした。マミの中じゃその存在も大きいみたいだから。


小巻「名前を出すのは癪だけど、佐倉が誇れるマミ先輩でいるべきなのよ。アンタは」


 マミからの返事はまだなかったけど、こっちはこっちでやることがある。

 校舎には入った。織莉子のやり方を否定したんだから、アイツとは違うやり方で、今は暁美の代わりにあたしが守りきってみせる。


小巻「こっちも時間ないんだからこれで切るわよ? 言いたいことは全部言ったからね!」

マミ『……ええ。わかったわ』


 やっと返事が聞けたことに安心して通話を切った。

 教室が見えてくる。


小巻(今はキリカが来てくれてるはず……! 間に合ってるわよね?)



 踏み込む前に、まずは外から目で探す。しかしそこには、探していた姿はなかった。



――――――
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/02(木) 00:05:00.64 ID:9ACUR6Rt0
ほむらの方はなんとかなったけど、キリカがいないだと?
752 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/02(木) 00:05:50.42 ID:D2o4LAJ70
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今回更新はここまで
次回は3日(金)20時くらいからの予定
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/02(木) 00:10:43.49 ID:9ACUR6Rt0
乙です。

とりあえずマミとほむらの方は何とかなったけど、まどかの方はどうなるか微妙だなぁ……


754 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/03(金) 22:05:00.26 ID:NClVhbmG0
――――――



 ほとんどの人が教室内に揃っている。

 もうホームルームもはじまるという時になってから、キリカは教室を抜け出していた。



 ――正直、何やってんだって気はする。何がしたいのかもわからない。



 他の人の頼みだったら聞いてない。けど、小巻から頼みなんて珍しいことだった。

 自分で出来ることは自分でなんとかする。いつもそういう人だから。


キリカ(ていうか、見てきてとしか言われてないけど)


 見たらどうにかなるのか。行ったら何かがわかるのかもしれない。

 言われたとおりのクラスを見てみると、知らない人しかいないと思ってた教室には、たしかに知ってる姿があった。


 知ってる姿と知らない姿。


キリカ「……キュゥべえ?」


 そこにはキュゥべえがいて、その視線の先には誰かがいた。

755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/03(金) 22:47:05.67 ID:w4TLv7JV0
やはり来てたか営業マン。
一応>>742の安価があるから契約させない事は出来るのかな?
756 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/03(金) 23:37:53.55 ID:NClVhbmG0


QB「やあ、キリカじゃないか。どうしてキミがここに?」

キリカ「……さあ。なんとなくかな?」


 そう答えたのは直感だった。素直に言ったらまずい気がした。

 少なくともコイツのこと信用はしてない。


「この人は?」

QB「魔法少女だよ」


 キュゥべえが誰かを見てると思ったのは偶然じゃなかった。

 やっぱりなにか話してたんだ。


キリカ「また新しい人なんて増えてたの? それとも候補?」

QB「二人はこれから魔法少女になってくれるかもしれないんだ。前向きに考えてくれているみたいだよ」

キリカ「あぁ、そーですか……」


 呆れたような声を出す。実際呆れてた。

 席についてって先生の声が響き渡る。そろそろ出なくちゃまずいかもしれない。


 わざわざ来させたとこにキュゥべえがいたんだから、契約されるのは快く思ってないんだろう。

 それはわかる。私からできるのは忠告くらいだ。


キリカ「ねぇ、きみたち本当に後悔しない? 何も知らずに契約して」

QB「何も知らないわけじゃないよ。僕からも話してるし」

キリカ「どうせ詳しいことなんてろくに話さないでしょ! 契約した人がそのあとどうなるか、とか……!」

757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/03(金) 23:41:43.97 ID:7m0wV3ZUO
キリカは真実は知らないけど不信感はあるからな
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/03(金) 23:48:00.48 ID:w4TLv7JV0
2人ということはまどかとさやかか、早まらないでほしいなぁ……
759 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/04(土) 00:13:35.87 ID:9Q6rQirQ0


 一瞬だけど、空気が凍りついた気がした。


 自分のことを考えれば不満はいくらでもでてくる。

 私は契約した時のことは覚えてない。でも、聞いてたらさすがにやめてると思った。


「……キリカさんは後悔してるんですか?」

キリカ「うん。今は全部じゃないけど、後悔してることはあるよ。……まあ、契約するならよく考えてよ」

「でも早くしないと…………」


 一人の子は何かに焦っているようだった。

 せめてもっと話す時間があればよかった。教室で契約はしないだろうけど、キュゥべえならずっとここにいても怪しく思われないし。


 すると、もう一人の子が叫び始めた。


「あああぁっ! いたいいたいいたい、お腹がいたーい! まどか、保健室につれてって!」


 視線を送られた子は少しの間ぽかんとしてたけど、すぐに意図を汲み取って言った。


「先生、さやかちゃんが具合悪いみたいなので保健室につれていきます」


760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/04(土) 00:16:37.56 ID:mvtnRZ7U0
そう来たか、さやかナイスw
とにかく時間が稼げればキリカの話は聞いてくれそうだけど。
761 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/04(土) 00:45:36.59 ID:9Q6rQirQ0
――――
――――


さやか「ここなら契約も会話の続きもできるって思ってさ。どうなるかって話は現役の人に聞くのが一番でしょ?」

まどか「巻き込んじゃってごめんなさい……」

キリカ「べつに私ならいいよ。サボりっていうのは、まぁいまさらだし」


 最近はなかったんだけど。


QB「キリカの場合はレアなケースだよ。君たちの場合には当てはまることはないんじゃないかな」

さやか「レアってことは、たまにはあるってこと?」

QB「願い事の結果だよ。キリカの場合は『違う自分になりたい』って願ったんだ」

キリカ「なんであんたが先に言うわけ? ほんっとにデリカシーがないな!」

QB「どうせこれから話そうとしてたなら誰が話してもいいじゃないか」


 そう言われたら同じなのかもしれないけど、気持ちとしては何か違う。

 やっぱこいつはそういうとこを察しない。


まどか「それでどうなったかっていうのも気になるけど、わたしのことから聞いてもらってもいいですか」

キリカ「……どーぞ? ムカつくことになったのはわかったと思うけど、個人的な話にはなるからね」

まどか「わたしの友達が今日学校に来てないんです」

まどか「最初はお休みかなって思ってたけど……キュゥべえからその子が魔法少女だって教えてもらって、よくないことがあったのかもって……」

キリカ「まどかはその子を助けたいの?」

まどか「わたしがそう願えば助けられるから」

762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/04(土) 00:47:28.80 ID:RRoEUz7ZO
保健室に行ったから入れ違いなのか
763 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/04(土) 00:49:02.89 ID:9Q6rQirQ0
------------------------
今回更新はここまで
次回は4日(土)18時くらいからの予定
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/04(土) 00:50:19.26 ID:RRoEUz7ZO

このまま小巻達が来るまで契約なしでいきたいな
765 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/04(土) 19:03:59.03 ID:9Q6rQirQ0


キリカ「……ふーん」


 上の空な相槌を返すさまは、真剣に悩むまどかにとっては失礼に映ったかもしれない。

 でもなんかしっくりこない。


キリカ「たぶん聞いたことあるんだよね、その子のこと」

まどか「ほむらちゃんのこと知ってるんですか?」

キリカ「会ったことないけど。……なんか、私達には『助けなんていらない』とでも言いそうなイメージ?」


 聞いた条件で浮かぶ人は一人しかいない。

 べつに、だから気にしなくていいとか、助けなくていいとか言いたいわけじゃなくて。

 大した意味もない素直な感想として。


 言ってから、こんなこと言ってる場合じゃないと思う。


キリカ「どうしようか考えようか! もうちょっと何があったのか手がかりとかわかれば、何かできるかも――――」


 慌てて言葉を考え直す。


 すると、扉が開け放たれた。



――――――
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/04(土) 19:09:45.50 ID:mvtnRZ7U0
小巻かな?間に合った?
767 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/04(土) 20:42:50.14 ID:9Q6rQirQ0
――――――


小巻「ホームルームまでには間に合わなかったわね」


 後ろ手で扉を閉める。

 一瞬焦ったけど、この時間なら教室にいなくて当然だった。


キリカ「ここのことまだ伝えてなかったと思うけど……」

小巻「うちのクラスに戻ってもいなかったし、今更意味もなくサボったりはしないと思ってね。どこにいるかはしらみつぶしよ」


 でも、わからないのはキリカと一緒に知らないのが『二人』いることだった。



小巻「で? 今どんな状況よ?」



――――
――――


 ……――――互いの簡単な自己紹介と状況の確認が終わる。

 そうしてる間に、しばらくして暁美とマミもこの場に揃った。


 暁美は一番にこの光景を見て驚愕していた。

 契約はまだしていなかった。でも、暁美は知ってしまうこと自体防ごうとしてた。だからあんなにあたしたちのことまで遠ざけてまで。



小巻「契約すれば世界を滅ぼすほどの素質を持つ存在がいるんですって」


 みんなの視線が向いた。

 あたしから切り出す。さっきまでは暁美の無事を喜んで一見落着って雰囲気が流れてただけに、突然こんな話をされるなんて予想できてた人は限られていた。


小巻「だからあたしの知り合いはその人を殺そうとして、マミは暁美に邪魔されないように足止めしてた」

小巻「……そうよね? マミ」

マミ「……ええ。そうよ」


 マミはここに来たときから、居心地悪そうにうつむいている。

768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/04(土) 20:57:51.82 ID:mvtnRZ7U0
よかった、何とか間に合ったか。
でもここからが本番なんだよなぁ…
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/04(土) 21:11:30.45 ID:leJzMYD3O
ここで魔女化のこと話さないとどうにもならないか
キリカは知らなかったよな
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/04(土) 23:38:28.57 ID:mvtnRZ7U0
スレ主、根落ちかな?
771 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/04(土) 23:41:22.53 ID:9Q6rQirQ0

小巻「こっちでも戦ってたのよ。その知り合いのやろうとしてること知っちゃったし、どうしても許せないことがあって」

小巻「アンタたちも危ないとこだったんだからね!? そのせいでよりによって自分のために契約されるなんて、暁美だって嬉しくないだろうし!」

ほむら「……その通りね」

さやか「は? マジ!?」

まどか「ま、まだちょっと話が大きすぎてついていけてないけど……」

小巻「ねえ、キュゥべえ。もうアンタはわかってるんじゃないの? ここにもう一人いると思ってなかったけど、どっちかが契約したらヤバいって」


 知らんぷりしてるキュゥべえに話をふってみる。

 あたしたちのことなんて、どうせどうでもいいとでも思ってるんだろう。でもわからないことがあった。


 そう思ってたのは、マミも同じようだった。


QB「たしかに大きい素質は感じるよ。ほむらのことは杞憂だったけど、まどかなら他にもどんな願い事でも叶えられるだろうね」

マミ「よくまだそんなことが言えるわね。世界が滅んだらあなただって生きてはいられないのよ」

QB「でも、それは誤解を招く言い方だと思うよ」

マミ「……どういう意味?」

QB「君たちにとっては今いる場所が『世界』の全てかもしれないけど、宇宙は広いってことさ。広い視野で見れば世界滅亡と言えるような問題にはならないだろう」

小巻「そんなの屁理屈じゃない! じゃあなに? 自分は地球外にでも逃げるから大丈夫だって言いたいの!?」


 キュゥべえの落ち着きようを見れば、そんな冗談みたいなことも本当なんじゃないかと思えてしまった。

 だって、じゃなきゃ自分の寿命まで縮めるようなことを進んでやるか。


小巻「でもまあ、ここまで言われればまどかは契約なんかしないでしょ」


 まどかは何も言わないで頷いた。

 ……二人の様子は混乱から怯えに変わってた。そりゃ、多少は信用しようとしてた相手からいきなりこんなことを言われれば。

772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/04(土) 23:45:01.91 ID:mvtnRZ7U0
これで絶対に契約しないと思えないのがまどかなんだよなぁ……
773 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/04(土) 23:58:06.17 ID:9Q6rQirQ0
-----------------------
今回更新はここまで
次回は5日(日)18時くらいからの予定
774 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/05(日) 18:00:30.15 ID:tK9zflXK0


 やっぱり話してよかったと思う。

 あたしたちもまどかもみんな無事。でも、マミはまだ不安そうな顔をしていた。


マミ「……本当にこれで大丈夫なの? 世界は救えたの?」


 今はまどかを信じるしかない。でも、『信頼』という言葉に世界の命運すら託せと言うのはひどく不安定な響きに思えた。

 織莉子のやろうとしてたこと以上に確実な状況にはまだなっていない。

 やっぱり、これからもそんな時はこないのかもしれない。生きてる限り絶対はないんだから。


小巻(違う。まだだ)


 でも、考えてみればどうだろう?

 この世界には奇跡だって魔法だってあるんだから、死んだからって絶対にもならない。


 一度死んだと思われたあたしだってこうして生き返ったように。


 これからもずっと、守り続けなくちゃならない。


 今までそうしてきた暁美みたいに。


マミ「一つ聞くわ。暁美さん、あなたは鹿目さんの友達なのよね」

ほむら「ええ、もちろんそうよ」

マミ「あなたは鹿目さんの素質にも気づいていたんでしょう?」

ほむら「……」

マミ「キュゥべえからも私たちからも徹底的に遠ざけて、鹿目さんを護っていた理由は本当にそれだけ?」

マミ「……一体どうしてこうなったの」

ほむら「私は…… それだけよ!」

775 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/05(日) 19:14:17.18 ID:tK9zflXK0


 問い詰められた暁美は言葉を強める。

 それから、観念したように静かに話し始めた。


ほむら「……もう隠し通せないでしょうね。私はまどかを助けるために魔法少女になったのよ」

まどか「え?」

ほむら「私、未来からきたの」

ほむら「今となってはもう誰も覚えていないけれど、まどかは魔法少女で、私を助けてくれたのよ。それから友達になったの」

ほむら「でも、死んでしまった。『ワルプルギスの夜』にやられて」

マミ「ワルプルギスの夜……!?」


 暁美が語ったのは思いもよらなかったような話だった。みんな驚いてる。けど、マミだけは別の“特定のもの”に反応していた。

 ――“ワルプルギスの夜”。


 キュゥべえは見定めるような赤い目を光らせて、ただそこにいる。


ほむら「こんなことになるとは思ってなかった」

ほむら「はじめは魔女に負けて、でも次からは…… 私は今度こそまどかを守りたいの。人のまま、魔法少女にもせずに」

ほむら「巴マミ、私は貴女のことを許したわけじゃない。ただあの時はそうするしかなかっただけ」

ほむら「お願いだから私の邪魔をしないで!」


 これまで見たこともない必死な様子。……マミは何とも答えなかった。

 その代わりに、キュゥべえだけが平坦な声で納得したようにつぶやいていた。


QB「なるほどね。そういうことだったのか」

776 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/05(日) 20:07:09.87 ID:tK9zflXK0

 『そういうこと』って。

 暁美がどこからきたかとか、最初は気になってたけどもう今となってはどうでもよくなってた。

 危害を加えないってことはわかったし。突き放したような態度は気に食わなかったけど、こんな理由があったら尚更簡単には言えない。


小巻「とりあえず、まどかは契約したらダメってことはわかったと思うけど、さやかのほうは願い事とか考えてたの?」

さやか「あたしは……」

ほむら「やめておきなさい」

さやか「まだなにも言ってないんだけど……」

ほむら「もし貴女に何かあればまどかが悲しむ。それに、私は貴女の未来も知っている」


 未来からきたっていう暁美の忠告。

 さやかもその意味は理解したらしく、自嘲気味に笑った。


さやか「……あはは、んー。ろくなことにならない感じかー……」

まどか「そういえば、どうなったんですか?」

さやか「え?」

まどか「キリカさんのこと。よかったらですけど、後でもいいのであの話の続きが気になったので」

キリカ「あぁー、うん。もう相談も終わったしね。個人的になら」


 もうこの場で話したいことは話せたかな。


小巻「……じゃあ、いつまでもここに集まってても怪しまれそうだし」


 ……本当は言ってないことがあった。暁美も知ってるだろうにそこには触れなかった。

 魔女の事。本当は契約しただけじゃ世界は滅ばない。



1言わないほうが契約する気がなくなる
2後であの子だちだけには言おう
3ここで打ち明ける
4自由安価

 下2レス
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/05(日) 20:37:26.03 ID:lji0SCHf0
とりあえずほむらに協力を要請+放課後に今ここにいるメンバーで集まる事を提案。
あと杏子も呼んでマミと腹を割って話し合うように提案。

暁美、こうなった以上もう以前みたいな非協力的な態度は止めてもらうわよ。
今回の件であたしも背負ったものがあるけど、最初から協力してくれてれば別の可能性もあったかもしれないんだから。
私は『魔法少女』である以上後悔はしてないけど、あなたたちに背負わせるものを減らしていくためにもね。
まどかとさやかも話しに加わってもらうわ。
巻き込まれたとはいえもう当事者であるし、中途半端な知識のままだとそいつの詐欺同然の勧誘で契約させられるかもしれないから。

まぁ、詳しくは放課後まどかとさやかも含めて集まって話し合いましょう。
私も小糸に連絡するけどきゅうべぇ、佐倉とゆまちゃんにそういうことだと伝言をお願い。
マミ、今回の件で佐倉に怒られたり失望されるかもしれないけど仲直りしたいなら隠さずにしっかり話し合いなさい。
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/05(日) 20:44:53.83 ID:p9bTjFpFO

追加でキリカに自分が来るまでに何があったかを詳しく聞く
頼みを聞いてくれた礼を言ってお昼に好きなものを奢る
779 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/05(日) 22:15:27.95 ID:tK9zflXK0

小巻「とりあえず、アンタもこれからは協力してくれるってことでいいのよね? 暁美」

ほむら「物事によるわ。私は常にまどかのことを優先させてもらう」

小巻「……まあ、アンタはそれでもいいわ。そこが崩れたらみんなが困るんだし、任せるわ。ただ任せきりにはしない」

小巻「アンタだけの問題じゃないんだからね。あたしだって、最初からわかってたらもっと別の可能性があったかもしれないのに」


 あたしの後悔。暁美を責めるべきか、織莉子を責めるべきか。

 いや、考えたってどうにもならない。


 暁美はそれきり黙っていたが、解散の雰囲気になってから小さく言った。


ほむら「……放課後、少しいいかしら」

小巻「いいけど、何?」

ほむら「『ワルプルギスの夜』という魔女のことについて」


 さっきの暁美の話にも出てきた魔女。

 たぶんこれが暁美にとっての最大にあたしたちを『頼ろう』とした結果だったんろう。


マミ「この街に来るのね……?」

ほむら「ええ」

小巻「ちょっと待ってみんな! それってみんなを集めたほうがいいでしょ?」


 呼びかけると、聞こえずに戻ろうとしてた人たちも振り向いた。


小巻「……それに、あたしもまどかたちにホントは言うべきこと、足りてなかったから」
780 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/05(日) 23:22:41.05 ID:tK9zflXK0


小巻「暁美が放課後にあたしたちに話があるんだって。アンタたちも来られる?」

まどか「は、はい、予定空けておきます。……さやかちゃんも、大丈夫だよね?」

さやか「うん。あたしも平気」

小巻「あたしのほうでも知ってる魔法少女は誘っておくからさ。ていうか、身内にいるし」

小巻「あとキュゥべえ、一応佐倉たちも呼んどいてくれない?」


 小糸には後で連絡するとして、佐倉はこの前あんなこと言ってたのを聞いたばっかりだ。

 呼んだところで来てくれるかはわからない。


 暁美はまた小声で言った。


ほむら「……二人にはあまり魔法少女に関わってほしくはないのだけど。それに何を話す気?」

小巻「魔女のこと。中途半端にしか知らなかったら、キュゥべえにそこを突かれるかもしれないでしょ」

ほむら「そのこと、あなたたちも全員は知らないんじゃないの?」

小巻「……そうね。だから言い渋ったの。でもいつかはちゃんと知らなきゃいけないことだと思うわよ。自分のことなんだから」


 知らないほうがよかった、と思うか、知ってよかったと思うかはわからない。

 マミは今でも『知らないほうがよかった』と思っているんだろう。


 それから、あたしもキリカたちと一緒に教室に向かった。

781 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/05(日) 23:25:48.64 ID:tK9zflXK0
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今回更新はここまで
8日(水)20時くらいからの予定
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/05(日) 23:33:36.09 ID:lji0SCHf0
乙です。

さて、織莉子はなんとかなったけど次はワルプル戦か……
杏子が仲間に加わってくれるかどうかはマミ次第かな?
783 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/08(水) 22:52:44.35 ID:+Z1r8W210


 授業中の教室を脇目に廊下を歩いていく。

 もう一段落ついたんだから、あたしたちも早く戻らないと。


小巻「ありがとうね」

キリカ「え?」

小巻「朝は焦ってたし、あれだけしか言わなかったのによく頼み聞いてくれたじゃない。じゃなかったら今頃……」

キリカ「逆に、焦ってたからだよ。珍しいし変な理由じゃないんだろうなって思った」

小巻「あたしって信頼されてるのね。よし、気分良くなったし昼は何かおごってあげようか?」

キリカ「えっホント? そういえばキミってお金持ちだったんだっけ。……あ、関係ないよ! いやホントに!」


 ……一瞬だけ現金さが見えた気がしたけど、スルーしておこう。

 購買で一番高いのくらいなら全然大丈夫だけど。


小巻「信頼、まどかたちともいつかはお互いにできるようになるといいわね。まだ出会ったばかりだけど」

キリカ「そうだね。まだお互い信じられてないよね。問題が大きすぎるってのもあるけど……」

小巻「キリカは少しは仲良くなれたの? あたしたちよりも早く会って相談乗ってたんだし、そのときは世界がどうとかも知らずに話してたでしょ」

キリカ「そうだけど、まだこれからじゃないかな?」

小巻「まあそうか。ちょっと見方変わるのかなって思ってさ。……暁美は本当に友達を助けたいだけなんでしょうね、きっと」



 あたしたちの前じゃあんなだったけど、前に見た友達といる時の顔も嘘ではないはずだから。



――――――
784 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/08(水) 23:34:04.73 ID:+Z1r8W210
――――――
昼休み



 後でって言ってた話。

 一度しか人に話したことのないすべての顛末を聞かせて、その反応を待つ。

 この場にはまどかだけ。興味を持ったのもまどかだけだった。



キリカ「……でも、なんで今更こんなことに興味持ったの? もう関係ない話でしょ」

まどか「キリカさんの願い、わたしの考えてたことと同じだと思って」

キリカ「同じ?」

まどか「あのときはほむらちゃんを助けることが最優先だったけど、『その先』で叶えたかったことが」

まどか「魔法少女になったら……街のために戦える。ほむらちゃんや他の人を助けることができる。それって今のわたしにはできないし、すごく誇らしいことじゃないですか」

まどか「そしたら、どんくさくて平凡でぱっとしない自分も、自信が持てるように変われるんじゃないかと思って」

キリカ「……そんな風に私は思えないよ」

まどか「結局わたしにはできないけど、キリカさんはもっと誇らしく思ってください。わたしから見たらすごい人なんだから!」


 そのあまりにも純粋な視線に、思わずたじろぐ。


キリカ「きっと今のままでもできないってことはないよ。魔女と戦えなくてもできることはあるさ」

キリカ「探して自分を好きになろうよ。あんなヤツに頼る必要ないって!」


 過去の自分ができなかった――しなかったことを託してみる。

 今の私からは自分でも驚くくらい前向きな言葉が出てきた。


まどか「そうですね。むずかしいけど、がんばってみます!」



――――――


――――
――――
785 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/08(水) 23:55:18.00 ID:+Z1r8W210
――――――
放課後



 まずは校内で集まれる人たちだけで合流すると暁美が先導していった。


 向かった先は暁美の家だ。ずいぶんと小さな家だと思ったけど、入ってみればそうでもなかった。

 異常に物がないせいでそう思えるのかもしれないが、内装はよくわからない。



 小糸は駅まで来たら連絡をくれるらしい。複雑な道でもないから案内はできるだろう。遅れて来る人たちを待ちつつ、本題について触れる。



小巻「……で? そのナントカとかいう魔女?」

ほむら「『ワルプルギスの夜』」

小巻「覚えにくいからもう『ワルい奴』でいい? 間違ってないでしょ」

キリカ「間違ってはいないだろーけど…… ダジャレじゃん」

さやか「まあセンスはあると思いますよ? で、なんだっけ?」

マミ「『ワルプルギスの夜』……」



 元から知ってた二人が訂正した。

 これからあたしも嫌でも忘れられない名前になるのかもしれないけど。



待ち時間
1マミはなんで知ってるの?
2さやかは余裕そうね?
3自由安価

 下2レス
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/08(水) 23:59:48.75 ID:ZucbfPJTO
1
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/09(木) 00:08:08.15 ID:BxCdJxP00
1+キリカとまどかに2人は顔見知りだったのかと質問。

2人とも今日が初対面にしては打ち解けてるように見えるけど顔見知りだったの?
それとも契約の際の願いが似ててシンパシーとか感じてるの?
788 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/09(木) 00:18:02.84 ID:Br0fYCun0
-------------------------
今回更新はここまで
師走が師走しててちょっと間が空くのですが、次回は14日(火)の予定です
789 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/14(火) 23:17:03.28 ID:CEgHErto0


小巻「マミはなんで知ってるの?」

マミ「古くから魔法少女の間に言い伝えられているらしいのよ。長くやってる人ならみんな聞いたことくらいはあると思うわ」

マミ「結界に隠れることすらなく突然表れては街ごと滅ぼし、一般人には災害と認識されるような超弩級の魔女だって」


 少なくともあたしは聞いたことなかった。

 魔女が結界に隠れ潜むのを卑怯だと罵ってやったこともあった。もちろん言葉なんてわかってなかっただろうけど。

 けど、閉じこもってるからあたしたちも思う存分暴れられるし、魔女の被害も抑えられてる。それがなければ…… あたしたちも人前で戦わなきゃいけなくなる?


小巻「マジ? そんなのが?」

ほむら「……ええ。そうよ」

マミ「そう。やっぱり、その伝説のままなのね」


 暁美のほうに視線を投げれば、あっさりと肯定される。

 知っていたマミですら、簡単には信じられないというように驚いたような反応をしていた。


小巻「マジかぁ……」

さやか「へぇー! そんなのがいるんだ。っていっても、あたしたちはまだ普通の魔女も見たことないんだけど」

まどか「そうだね……」

キリカ「どうしたの、小巻。キミにしては珍しく弱気な反応じゃん。そりゃあ楽に勝てはしないんだろうけどさ」

小巻「いや、それもそうだけど! ……結界を持たないってことは人前で戦うことになるのよね? 当日はどうすればいいわけ? もうくる日もわかってんでしょ」

ほむら「それはこれから話すわ。もう少し待ってからね」


 そういえば今は小糸たちを待ってるんだった。

 佐倉は来るかどうかわかんないけど。


 ちょうど、携帯の着信が鳴った。


小巻「小糸から。ちょっと案内に出てくるわね」


 駅まで迎えに席を立った。

790 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/15(水) 00:00:12.41 ID:BsWAKs790




小糸「みんなよろしく」

ほむら「……ええ」

まどか「よろしくね、小糸ちゃん」

さやか「よろしくー、どこの学校だっけ?」

小糸「白羽女学院ってところ」

さやか「あ、たぶん私立だよね? 頭いいんだ!」

キリカ「頭もそうだけど、多分おカネもちしか通えないとこだよ。小巻も前はそこにいたって」


 小糸もみんなと軽く自己紹介を済ませる。

 これで一応は揃った。来るかわからない人はこれ以上待ってても時間のムダか。


さやか「前は?」

小巻「それは今はいいでしょ? 隠しはしないけど、だからって本題とは何も関係ないんだし」

小巻「暁美、すごいつまらなそうにしてるけどそろそろ主導権返してやってもいいわよ。あたしも気になってるもの」

ほむら「ええ」


 話が逸れて膨らみすぎないうちに切り出した。

 暁美はあたしや小糸に注意が向いてる間中、とにかく退屈そうにしていた。

791 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/15(水) 00:32:36.90 ID:BsWAKs790


ほむら「ワルプルギスの夜が来るのは五日後。この日は朝から警報が出て、街の人は避難所に集まるわ」

ほむら「ワルプルギスの夜が姿を現す前からその周囲には暴風が吹き荒れているから、よほど無謀な人でない限り近寄ろうとは思えないでしょうね」

小巻「……なんだ、そういうわけね」

ほむら「ただ、敵は大きいし、移動する速度もシャレにならないから広範囲を駆け回ることになるのは覚悟しておいたほうがいいわ」


 結界を持たなくてもそこまで“人前”で戦うってわけではないらしい。

 みんな避難していて、守りながら戦うってこともしなくていいなら考えたよりはマシで安心した。


キリカ「大きくて速い魔女かー。みんなで囲めばなんとかなるかな」

マミ「私の拘束は効くかしら?」

ほむら「拘束もあまり持たないでしょう。ワルプルギスの夜の攻撃は凄まじく、そして気まぐれ」

ほむら「大空に浮かびながら炎や風を起こし、私達を煙に巻く。時間が経つにつれて街並みも見る影もないほどに破壊されていくわ」


 人はいなくても街は壊れる。さすがにそこまでは守りようもない。

 さっきまで直接関係はないからかそこそこ余裕そうにしてたさやかたちも、さすがにそろそろ緊迫した面持ちで聞いていた。


ほむら「……これは本当は誰にも相談するつもりはなかったのだけど」

小巻「話を聞く限りなんだかすごそうなんだけど、頑張ればアンタ一人で勝てるくらいの相手と考えてもいいわけ?」

ほむら「わからない。あなた達も生きていれば一緒に戦うことになるだろうとは思っていた」

小巻「生きてればって、アンタね」


 大げさだって考えて、本当に今ここにいる生きてること自体あたりまえじゃないことに気づいた。

 今日だって命を懸けて戦った。命のやりとりをして、なんとか自分と大切なものを守りきった。


 これまでだって、これからだって。まだまだ全然安心なんてできなかった。

792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/12/24(金) 01:14:36.16 ID:n47gzjn4O
途切れた?
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/12/25(土) 19:50:48.28 ID:AWQnXXZ40
スレ主さん、お忙しいみたいだから気長に待ちます。
794 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/31(金) 22:58:31.37 ID:mmv2kB/x0


まどか「みんな、大丈夫なんだよね? ワルプルギスの夜と戦って……」


 まどかが心配そうにおずおずとあたしたちに問いかけてきた。

 すると、ほむらは安心させるようにまどかに向かい合う。


ほむら「大丈夫」


、そして、手を握って言った。


ほむら「私がまどかを守るわ。……他の人の事も」


 まどかがゆっくりと頷く。

 これだけで心から安心できたのかはわからないけど、少なくとも暁美は本気で言ってるように見えた。


キリカ「他はともかく、私も守られるだけじゃないから! 心配なら、そのぶんまどかの分まで戦ってきてあげるよ」

小巻「ええ、あたしもよ」

マミ「私も、出来る限りのことはするわ」


 続いて、他のみんなも励ましの言葉をかけていった。

 でもそのきっかけを作ったのがキリカなのはちょっと意外だった。


小巻「にしても、キリカがそこまで言うなんて。暁美が仲いいのはわかるけど、そっちも結構打ち解けてそうね?」

キリカ「えっそうかな?」

小巻「なんかあったわけ?」

まどか「え、えっと……」

キリカ「……さあ、どうだろうね」

まどか「はい、秘密ですっ」


 キリカがすっとぼけると、まどかも合わせたようにそう言った。

 あのあと本当に何かあったのか。それとも失われた記憶に関わることで、実は最初から顔見知りかなにかだったのか。

 これまでそんな話は聞いてないけど。

795 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/12/31(金) 23:59:35.11 ID:mmv2kB/x0


ほむら「……他に質問がないなら、私からの話は終わりにするわ」


 暁美が少し居心地悪そうにしながら言った。

 ……仲いい人と他の人が話し始めると入っていけなくなるタイプ。


 この雰囲気で切り出すのは少し勇気がいるけど、話をするなら今だ。


小巻「じゃあ、あたしからは、朝話せなかったことをこれから話すから」

キリカ「え?」


 キリカや小糸は予想もつかないようだった。

 今更あたしがみんなに話したいことなんて。


マミ「待って!」


 あたしが何を言おうとしてるか気づいたのか、マミが制止に入る。


マミ「言う必要があるの? ……知らないほうが幸せよ。せめてワルプルギスの夜を倒すまでは」

小巻「まだ契約してないまどかたちには全部知ってもらってたほうがいいと思う。それにそんなこと聞いたら何か隠されてることなんてもうバレバレでしょ!」

マミ「……」


 とはいえ、そう言われると迷った。

 ワルプルギスの夜がくるまであと5日。それを間近に控えた今、無用に悩み事を増やす必要はないのかもしれない。


 そんな時、小糸が言う。


小糸「甘く見ないでよ」

796 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/01(土) 00:59:50.51 ID:tysoX0Ka0


小糸「私は最初、お姉ちゃんがなにしてるか何も知らなかった。魔法少女なんてやってることも、魔女や魔法少女と戦ってることも」

小糸「結局教えてもらったけど、お姉ちゃんずっと隠そうとしてたよね?」


 何もなければずっと隠してたままだっただろう。

 そしたらどうなってたかはわからない。契約しなかったかもしれない。でも、そしたらあたしは。


小糸「もし何も知らないまま何かあったりしたらすごい後悔してた! たとえ良くないことでももう隠されたくないよ!」

小糸「とにかく私には教えて。お姉ちゃんと巴さんがもう知ってて何かを抱えてるなら私も背負うから」

小巻「……小糸、アンタにそうまで言われるとはね」


 ちょっとだけじんときた。

 さすが、我が妹ながらこう見えて気が強いというか。生意気なこと言うものだと思った。


キリカ「なんかわかんないけど、みんなが知ってるなら仲間はずれにはされたくないかな?」

小巻「言っとくけど、そんな軽い気持ちだったら後悔するかもしれないわね」

キリカ「えー……?」


 キリカはいつもどおりへらへらとしてる。そんな様子を見ると不安になった。

 けど、結局遠くないうちには話すつもりだ。今にするかワルプルギスの後にするか――。


小巻「アンタがそんな調子だから迷ってるのよ! せっかく悩んでることが解決してちょっと前向きになれたんでしょ。そんなときにさ」


 とはいえまあ、仲間はずれにされるのもそれはそれで確かに悩みになるのかもしれない。

 なにかあった時、一人だけ話が通じなくて困るかもしれないし。


さやか「そ、そんな深刻な隠し事がまだあるんですか? キュゥべえが話してなかったことで?」

まどか「ほむらちゃんは知ってるの?」

ほむら「ええ、私はもう知っているわ。けど、一部の魔法少女しか知らないことよ」

小巻「……ええ、そうね。困ったことに、あたしやマミが知ったのもついこの前だったんだもの」

797 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/01(土) 01:02:24.24 ID:tysoX0Ka0
-----------------------------
今回更新はここまで。…あけましておめでとうございます。
なんか図ってたわけじゃないけど書きながら年越ししてしまった。
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/01/01(土) 10:35:55.48 ID:VWyThNry0
お、年越しの投稿でしたか!
全然気づいてませんでしたが、明けましておめでとうございます!
799 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/02(日) 23:19:43.16 ID:wzTJ43Y00


 ――――ソウルジェムのことはあたしの口から話した。


さやか「そんなことが……」


 まどかたちは一歩間違えたら自分の身に訪れていたかもしれない変化に、純粋な驚きの反応を。

 すでに知っていたマミと暁美は視線を落としてどこか重苦しい表情をしているように見えた。


 暁美も朝にした説明を補足する。


ほむら「つまり、まどかが契約したら世界を滅ぼすっていうのは、魔女になった時のことだと思うの」

ほむら「魔法少女は魔女になる。私が見たあなたたちも……。そんな運命を背負うことなんて望まないはずよ」

さやか「あ、あたしも? 魔女になった!?」

ほむら「ええ、そうね」


 暁美は涼しく言ってのけたが、それを聞いたさやかは露骨に顔を青ざめさせた。

 うげーって感じだ。


まどか「……ほむらちゃんたちも、みんないつかはそうなるの?」

ほむら「……」


 暁美は返事をためらった。

 たった今知った二人までさっきに増してその重さを実感したのか、重苦しい表情をした。

 たしかに真実なら曲げようがないし、暁美の話し方じゃ変えられない運命だって言い方に聞こえたけど、本当はそうじゃない。


 思わず立ち上がる。


小巻「絶対なんかじゃないわ! 話聞いてた? 魔女になるのは『魔力がなくなるか絶望しきった時』なのよ」

小巻「その魔力を回復するのも“成れの果て”を倒さなくちゃならないなんてサイッアクに悪趣味だけど、だからって死にたくもないし野放しにしとくわけにもいかないでしょ?」

小巻「あたしは魔女になんてなってやるもんか! やることだって変わらない! 決めつけんな! 自分の運命くらい自分で切り開くっての!」

800 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/03(月) 00:30:37.93 ID:siov/QX40


 それを聞いたみんなは少しの間唖然としてて、張り切って言い切ったのが一人だけカッコつけたみたいで少し後悔しはじめた。

 正直、自分に言い聞かせるためって意味もあったから。

 でも、少しずつ口を開く人もあらわれた。


小糸「……うん、そうだよ! もう同じような人は増えてほしくないけど、私達は今までと変わらないから」

キリカ「そ、そうだよね。正直、聞かないほうがよかったかもとは思ったけどさ」

キリカ「聞かなかったらそうならないってわけじゃないし、契約したこと後悔してるのは今更」

キリカ「……きっと、マミがずっと上の空だった原因や自分のことすら一人だけ知らなかったら、それはそれできっと後悔してるよ」


 他のあたしに賛同した人も、同じように自分に言い聞かせてたのもあるんだろう。でも、みんなで覚悟したら勇気が沸いてきた。

 マミも考え込んだように沈黙してるけど、さっきよりはその表情から重苦しさは消えていた。


マミ「…………」


 あたしたちは今生きてる。それが当たり前の結果じゃなくとも、それだけは事実なんだから。

 どんなに難しくてもこれからも生きてくってだけだ。


 まどかも少し安心したようだった。


801 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/09(日) 23:31:24.87 ID:/AALJHOQ0


小巻「とりあえず、あと5日をどう過ごすかってのは考えといたほうがいいわよね」

ほむら「出来るだけグリーフシードは蓄えておきましょう。そのために争われても困るけど、あればあるだけ嬉しいわ」

ほむら「戦闘中に魔力が尽きてしまえば……さっき話した通り、なのだし」


 とにかく今はグリーフシードが少ない。その現状を重く受け止めた。

 自分すら生きる余裕がないようじゃ、みんなを守るなんて言ったところで説得力がない。


小巻「そうね。まずあたしたちは、これから魔女を探しにいくわ」

小糸「うん!」


 小糸に視線を送ると、元気よく頷いてくれた。


キリカ「私はどうしようかなぁ。そんなに少ないってわけじゃないけど」

ほむら「余裕があるなら自己鍛錬でもしていたら?」

キリカ「えぇ……」


 時刻は夕方。これから夜がやってくる時間帯だ。

 帰る前に活動する暇は作れる。


 この時間になっても結局、佐倉は来なかった。


小巻「じゃあもう行くけど。マミはこれからどうする?」

マミ「私は…… 今日は休ませてもらうわ」

マミ「まさかそんな大きな敵が待ってるなんて思わなくて、少し疲れたの。もちろんワルプルギスの夜は倒さなくちゃいけないし協力はするから」

ほむら「……そう。私としては邪魔さえしなければ構わないから」


 暁美は冷たく言い放った。朝のことだけじゃなく、暁美だけが知る過去にもまだ何かあったのだろうか。

 昔からこの街で活動してるマミとはこれまでにも関わったことくらいあるかもしれない。


小巻「休むのだって立派な準備よ! 無理してこんなところで死んだら元も子もないわ」

小巻「今は疲れてたって生きてさえいればいつかは回復するんだから、まずは生きることを目標にしましょう」

小巻「まどかたちもね。今日はいきなり変なこといっぱい聞かされて混乱したと思うけど、もう帰ったらゆっくり休みなさい。そんで精一杯、今までもこれからもいつも通りの生活を送んなさい!」

まどか「は……はい」

さやか「わかりました。じゃ帰ろ? まどか」



 小糸と二人で暁美の家を後にする。他の人たちも各々の行く場所へと帰っていったようだ。




 家の中に残ったのはその主である一人と、もうひとつ。

 ――――物陰からはいつもの赤い目が覗いていた。


802 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/10(月) 22:29:06.43 ID:dEytkm0P0
---------------------------------------------------
毎度ちまっちまの投稿になってるのは本当反省してる!
次回12日(水)20時くらいの予定で少しまとまってやります

…ちょっと休んでた間に書き方の感覚飛んでるわ、結局書かないと戻らないんだよね
803 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/12(水) 20:23:24.39 ID:8yjF9Cq90


小糸「ついに私も夜道を出歩く側になるのかぁ……」

小巻「今日は放課後にも予定が出来て忙しかったし。そんなに遅くならないようにはするつもりだけど」


 並んで街を歩き出す。

 グリーフシードは手に入れなきゃとは思ってたけど、こんな切羽詰まって備える必要があるとはあたしだって予想してなかった。


小糸「……学校のことだけどさ、明日からは行っていいんだよね? 美国さんとはもう」


 小糸はそこで言葉を区切る。朝のことは小糸にもメールでざっくりとだけ伝えていた。

 もう会うことはない。小糸にはもう隠したりごまかしたりするのはやめようと思った。


小巻「ええ。アイツはもういないわ。あたしたちもまどかももう命を狙われることはなくなった」

小巻「だからこそ、織莉子のやろうとしてたことは必要なかったって鼻で笑って証明してやるのよ。あたしが殺したんだもの」


 守るためでも、自分のしたことからは目はそらせない。実感してなきゃいけない。

 後ろめたいほど間違ったことをしてないんだから尚更だ。

 小糸は何も言わなかったが、しばらくしてこれだけ言った。


小糸「そのためにもこれから来る魔女には絶対勝たなくちゃいけないね」


 本当にいろんなことがありすぎて、イヤなことも知って、正直今も動揺してないといえば嘘になるけど新しい目標ができた。

 またみんなで力を合わせて倒さなくちゃいけない目標が。それがなければ今頃燃え尽きて感傷に浸ってたかもしれない。


小巻「そうね」


 でもそんなのは後でいい。もう一踏ん張りしようと決めて、力強く頷いた。


――――――
――――――
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/01/12(水) 21:05:05.82 ID:bBybgMaj0
小巻はタフですねぇ・・・
杏子結局来なかったけど、マミのマンションの方に直接来るかな?
805 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/12(水) 21:26:05.42 ID:8yjF9Cq90



 『休む』と言ったとおり、マミはこの日はもうどこにも寄らないことに決めて早々に帰路についていた。

 そして、自宅のあるマンションも見えたところで、その足を止める。


マミ「……!」


 いつもの帰路の片隅に、二つの姿を見つけてしまった。

 一見したらたむろする不良のように態度悪そうに片手をポケットに入れて気まぐれにその中身を食い漁る杏子と、その傍に寄り添うゆまの姿。


杏子「よう。……久しぶりだな」


 二人だけで会うのはどのくらいぶりだろう。単なる挨拶だがどこかぎこちない空気を感じていた。

 杏子はまだ目線を合わせようともしていない。


マミ「どうしてここに……。こっちに来るなら、集まりのほうに顔を出せばよかったのに。呼ばれてたのは知ってたでしょう?」

杏子「それより前に、なんか変なコト言ったろ。キュゥべえづてに」

杏子「ホントはもうこねーって決めてたんだよ。アンタたちが何してようがどうでもいいし」


 杏子は『なのに』というように続ける。


杏子「……あれはなんなんだよ。あんなこと。今更」


 ゆまが前に出て、その小さい身体で精一杯に呼びかけた。


ゆま「キョーコずっと迷ってたんだよ! きになるなら会いにいこうよってゆまがゆったの!」

ゆま「ここにきてからもどうしようかってうろうろしててね、ちょうどマミがきたところなの」

ゆま「だって、マミはキョーコと『なかなおり』したいんでしょ?」

マミ「あれは……」


 あれはそういうつもりじゃなかった。

 むしろ、その先のことなんて考えてない。言うだけ言って、最後の『別れ』を告げるつもりの言葉だった。

806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/01/12(水) 21:35:13.02 ID:bBybgMaj0
予想が当たったか。
BADの時は先に小巻の方に着たけど今度は直接マミの方に来たか。
これが吉と出れば良いんだけど・・・
807 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/12(水) 22:47:05.51 ID:8yjF9Cq90


 しかし、マミは言いよどむ。ゆまの純粋な目を見てそんなことは言えない。

 実際にこうして会ってしまったから。『別れ』をするならせめてワルプルギスの夜までは先延ばしだ。それまでは死ねない。


 考えていなかった展開にマミは動けなくなった。ようやく杏子はマミを見据えて睨んだ。


杏子「なんで今になっていきなり! あたしに謝るって!」

杏子「アンタは今も正義だなんだってヒーロー気取ってんだろ? 使い魔見逃すのも許さないし、こうして“ズル”するのも許さないんだろ?」


 杏子は空になったスナック菓子の袋を傾けて呷ると、地面に捨てて足で踏みつけた。

 見せつけるためだ。盗んだものを貪って、その残骸すら身勝手に捨てていくさまを。


杏子「変わったってのか? あたしのが正しかったって認めんの?」

マミ「変わらないわよ。……変わりたくなんてないの。でもね、あなたの気持ちはわかったから」

杏子「気持ちがわかるとかハンパな同情が一番ムカつ……――」


 杏子は怒りにまかせて吐き出そうとした言葉を一旦止めた。

 マミの纏う空気が思っていたよりもあまりに重かったからだった。


杏子「……」


 その分はすぐに気まずい沈黙へと変わった。


マミ「確かに私は今までわかってあげてると思っていながら何もわかっていなかったの。それでずっと傷つけてしまった」

マミ「私はただ何も知らずに威張ってただけ。あなたを正しいとは言えないけれど、私も正しいとはいえなかった」

杏子「……別にあたしはそんなこと言ってほしいわけじゃないけど」

マミ「そうね。これも私が言いたいから言ってるだけよ」

杏子「もうわかったよそれは。それより何があったわけ? まさか本当に……」


 杏子の攻撃的な雰囲気もすっかりとしぼんでしまった。

 マミは床に落ちたゴミを拾い上げて、マンションの中へと歩いていく。


 これ以上なんて考える気はなかった。謝って、それで終わりにするつもりだったのに。


杏子「おい!」

ゆま「マミ! なかなおりできたんだよね? なんでまだ悲しそうなの?」

マミ「……ついてきて。あなたが知りたがっていることについて、知っていることは話すから」



――――――
――――――
808 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/12(水) 23:19:18.39 ID:8yjF9Cq90



小糸「すっかり遅くなっちゃったね。魔女を探すのって本当に大変……」

小巻「そうなのよ。でも戦い自体はそんなに長引かなかったわね。結界も変なトコだったし疲れたし、早く帰ってシャワーを浴びたいとこ」

小糸「そのとーりー……」


 パトロールが終わると、もうすぐに帰路につこうとする。

 しかしそこで、気にかかった場所があって一旦思いとどまった。


小巻「……やっぱりちょっと先に帰っててくれる? 最後にひとつ寄りたい場所があるの」

小糸「え?」

小巻「野暮用! お風呂はすぐ入れるように沸かして待っててよ! そんなに時間かかんないから」

小糸「なにそれ!? やっぱり妹使いが荒いんだから!」



 帰路に着く前に寄り道して、一人で足を進めていった。学校へ向かう道の近く。



 立ち寄った先、立入禁止のテープが貼られていた。その奥、朝に『あたしたち』が居た場所にはブルーシートが見える。

 ――……あぁ、見つけてもらえたんだ。心にひやりとしたものが通った感覚がしながらも、安堵した気持ちも覚える。

 汚職議員の娘の不審死なんてまたどんな風に報道されるかわかったもんじゃないけど。

 それでも、最後まで、醜くなって孤独に放置されることはなかった。……それだけを思った。


小巻(今度こそ本当に帰りましょう。……お風呂が冷めちゃうわ。温め直しはできるけど)



 今日確保できたグリーフシードは、まずはあたしと小糸と一つずつ。

 決して余裕があるとはいえない。でも手に入っただけマシだ。


 戦いに向けて残りの日々をどう過ごそうか……。



―30日目終了―


小巻 魔力[100/100]  状態:正常
GS:2個
・落書き[10/100]
・[100/100]

◆ステータス
[魔力コントロールLv3] [格闘Lv3]
809 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/12(水) 23:22:51.14 ID:8yjF9Cq90
------------------------------
今回更新はここまで
次回は17日(月)20時くらいからの予定
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/01/12(水) 23:28:57.18 ID:bBybgMaj0
乙です。

小巻、やはり織莉子のことがどうなったのかは気になってたのか・・・
マミの方はどうなるかな?
811 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/17(月) 20:50:06.82 ID:jp3QNqNR0
――――――
31日目



 朝、家族を見送ってあたしも家を出る。


 織莉子のことはニュースになっていた。校内でもみんなの目を引く話題になっているようだった。

 多くの媒体で見知った場所の名前が、景色が掲載され、さらには同じ学校に転入して関わっていたかもしれないんだから。


 そんな話が耳に入ると落ち着かない心地だった。

 それでも、あたしの周りにいる人たちは以前と変わらない。他愛のない話をして、授業を受ける。


小巻(そういえば、昨日は塾サボっちゃったわね……ま、いいか。そんな場合でもなかったし)


 学校生活の中にいれば何事もない日常に戻ったかのようだった。これが突然壊されるなんて嘘なんじゃないかって思えてくる。

 ――もちろん放課後になればそんな気じゃいられない。

 実感がわかなくとも、残り少ない日にちは迫っている。



 ワルプルギスの夜との戦いまで、あと4日。



*今日の予定
1小糸とパトロール
2まどかたちの様子を気にかけにいく
3マミち一緒に行動
4キリカと一緒に行動
5ほむらと一緒に行動
6一人で行動

 下2レス
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/01/17(月) 20:58:58.97 ID:rXnTr9Ip0
>>3マミち一緒に行動

マミち…マミっち?
何か可愛いぞw

ここは5で。
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 21:09:47.26 ID:Vsh8AHFpO
1+4
ダメなら4
814 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/17(月) 22:21:59.50 ID:jp3QNqNR0
マミっち!
1以外の行動は相手が主体になります
--------------------------------



 学校が終わって、外に繰り出す。

 今日は教室を出るときから隣にはキリカがいる。このまま帰るわけにはいかないけど、何をするとも言っていない。

 ……とりあえず、このままならパトロールって流れになるかしら。


小巻「昨日は結局、自主鍛錬したの?」

キリカ「いや。……鍛錬のやり方とかしらないし。今になってからちょっとやそっと鍛えたところでどうにもならないでしょ」

キリカ「そう思ったらパトロールしてたほうがマシだなって」

小巻「それはそうね。焼け石に水?」


 あたしもマミの隣で素振りしたことはあったけど、その程度で実感できるほどは変わらない。

 継続したら力になるとしても、あたしたちにはそれだけの日数は残されていない。

 余裕がある時だとしてもそれより魔女を倒しにいったほうがいいんじゃないかって思う。


キリカ「……はっきり言いすぎじゃない?」

小巻「そもそも大したことするには変身しなきゃだし、あの格好を外でするのも絶対にお断りよ!」

キリカ「たしかにね」


 キリカは軽く笑ってこの話題を流そうとした。


 でも、あのときのことを思い出して少し考えてみる。

 あたしたちが適当に素振りとかしたところで大した訓練にはならないかもしれないけど、教われる人がいたらどうだろう。

 今のマミは頼るにはまだ負担になりすぎるか。



 下1レスコンマ判定 1/3
0~20 使い魔
21~40 魔女
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/01/17(月) 22:29:07.55 ID:rXnTr9Ip0
ほいさ!
816 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2022/01/17(月) 23:02:36.35 ID:jp3QNqNR0


小巻「……鍛錬のやり方ってさ、それがわかったらやってみてもいいかもとは思う?」


 キリカにとっては唐突な質問に感じたかもしれない。

 答えが返ってくるまでに少し時間が空いた。


キリカ「うーん、誰かに弟子入りするかってこと?」


 誰かの下につくって考えたら面倒臭くも思えてきた。マミが話してた、昔のマミと佐倉の関係みたいな。

 あたしはこれまで完全に我流だったし、それで困ったこともなかったから習おうと思ったこともなかった。


キリカ「それだったらどうだろ。まあ、やってみてもいいかもね」

小巻「そう?」

キリカ「前はそう言われてもどうでもよかったけどさ、強くなるってのは悪い気がしないし」


 意外な答えが返ってきた。

 なんだかんだ、あれからキリカは変わっている。それはもちろん願い事のせいじゃない。

 むしろ多分、ちゃんと願い【悩み】と向き合って先に進んだから。



 下1レスコンマ判定 2/3
0~20 使い魔
21~40 魔女
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/17(月) 23:06:37.67 ID:Vsh8AHFpO
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2022/01/17(月) 23:07:25.52 ID:rXnTr9Ip0
今度こそ。
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