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【シャニマス】P「よし、楽しく……」-L'Antica編-【分岐有】
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94 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 02:23:14.10 ID:dAXGKB/G0
最終下校時刻。
〜図書館〜
P「……」zzzZZZ
P「すぅ……」zzzZZZ
P「……」zzzZZZ
P「……んあっ?!」
P「はっ、あ、あれ?」
P(やばい、誰もいないし人気(ひとけ)もない!)
P(時刻は――ってもうこんなに経ったのか)
P(恋鐘がはづきさんとみっちり練習をすると聞いて、俺の出番は今日はないだろうからと図書館でなんとなく過ごしていたが……)
P(いつの間にか眠ってしまっていたようだ)
P「帰らないと……」ガサゴソ
P スタスタ
〜校門前〜
P「はぁ……」
P(どうして、こう、やってしまった感がすごい寝起きというのは、こんなにも重く苦しいんだろうか)
P トボトボ
トントン
P(肩を叩かれた?)
P クルッ
ツンッ
P(あ、指で頬を突かれるありがちなやつだ)
P(そして、それをやった犯人は――)
P「――恋鐘か」
恋鐘「えっへへー。うちよ?」
P「練習は終わったのか?」
恋鐘「うん! ……って言うても、実はもうちょっと前に終わっとって」
恋鐘「Pを待っとったばい」
95 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 02:45:14.37 ID:dAXGKB/G0
P「あんまり2人でいるとよくないぞ……」
恋鐘「もう、わかっとーよ。うちもそこまで頭弱くなか」
恋鐘「人気が出るほど、Pと一緒にいるのは良く思われないんやろ?」
P「あ、ああ……」
恋鐘「やけん、今日はうちもPも遅か、チャンスやと思ったんよ」
恋鐘「はづきにも聞いたばい。もううちら以外ん生徒はとーっくに全員帰ってしもうたって」
恋鐘「今日は部活もなか日やし」
P「そうなのか」
P(それなら大丈夫……なのか?)
恋鐘「一緒に帰るくらい……よかやろ?」
P「まあ、それもそうだな」
P「ずっとここにいても変だし、帰ろうか」
恋鐘「うん!」
恋鐘「また分かれ道ばい……」
P(恋鐘はここで俺とは別方向に行かないといけないんだよな)
P(前にも似たようなことがあった)
P(あの時は、はづきさんも一緒だったけど)
恋鐘「Pと話しとったらあっという間についてしもうたばい」
P「ははっ、そうだな」
恋鐘「……」
P「恋鐘?」
P(恋鐘は名残惜しそうにこちらを見ている)
恋鐘「……家まで送らんね」ボソッ
〜恋鐘の自宅(一人暮らし)の前〜
恋鐘「またあっという間〜!」ジタンダ
P「こらこら……まあ、それだけ、楽しいってことだろ?」
恋鐘「! そ、そうやね……! えへへ」
P「もう大丈夫そうか?」
恋鐘「う、うん。ごめんね、付き合わせてしもうて」
P「いいよ。俺も楽しいんだから」
恋鐘「……じゃ、また、ね」
P「おう」
恋鐘「……」スタスタ
恋鐘 クルッ
恋鐘「うちはアイドルになるために生まれてきた女ばい!」
恋鐘「ばってん、うちにとってアイドルになるっていうとは、Pに会うってことで――」
恋鐘「――やけん、うちはPに会うために生まれてきたと思う!!!」
P「!」
恋鐘「じゃ、じゃあ、今度こそおやすみ!!!」ダダダ
P(そうだ。そうだった)
P(俺は――とっくの昔に、月岡恋鐘に魅了されていたのだ)
96 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 02:47:44.13 ID:dAXGKB/G0
とりあえずここまで(遅くなりましたが、更新できました)。
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/03(日) 06:22:49.61 ID:ATeqqluDO
乙
一人ぐらし……ゴクリ
98 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 01:14:11.20 ID:AhTv4rKH0
7月上旬某日。
〜教室〜
結華「はぁ、なんかあっという間だねー」
P「急にどうしたんだ?」
結華「いや、ほら、新年度だー新学期だーって思ってたら、もう期末試験が近づいてきてるんだよ?」
結華「このままでは気づけば2学期に……ハロウィンに……はたまたクリスマスになって大晦日が来て年を越しちゃうってもんですよ」
P「それは言いすぎ――」
P(――……どうだろう)
P(確かに、今日まではあっという間だったかもしれない)
P(日常が新鮮さで満ち溢れていても、日常から新鮮さが失われていても……)
P「……気づけば長い時間が過ぎている、か」
結華「だからこそ、1日1日を大切にしなければならないのです」
P「ははっ、なんだよ、それっぽいな」
結華「それっぽいとは失敬な! 大事なことだよ?」
P「まあな」
P(恋鐘のアイドル活動も、俺のプロデュースも、どんどん先へ先へと進んでいる)
P(恋鐘は1つ目の審査を無事乗り越えた)
P(次の舞台は、7月の終業式後にあるミニステージだ)
P(それが2つ目の審査における判断基準とされる)
P(今のところ特に目立った問題もないどころか順調とさえ言えるが……)
P(油断大敵。現状維持もまた敵だ)
P(新しいことを考えるのは……まあ、そう簡単ではないんだけど)
結華「Pたん、今何考えてるのか当ててあげよっか」
P「え? どういうことだよ……」
結華「どういうことも何も、そのままの意味ですよーだ」
結華「こがたんのことなんでしょ?」
P「……そうとも言える」
結華「ふうん? なんだか煮え切らないみたいですが」
P(結華は呆れたような笑顔で俺に言う)
99 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 01:58:43.15 ID:AhTv4rKH0
結華「Pたんはさ」
P「?」
結華「どうしてプロデュースをしてるの?」
結華「純粋にそういうことがしてみたかったとか?」
結華「それとも、こたがんだから……?」
P「ゆ、結華……」
P(……校長に言われたから)
P(しかし、果たしてそうだろうか?)
P(きっかけはどうあれ、俺は今の状況を楽しんでいるのではないか?)
P(それは、こういう裏方稼業が好きだからなのだろうか)
P(それとも、結華が最後に言ったように、恋鐘だから……?)
結華「ごめん、いまのナシ。ほんとナシで!」
結華「私ったら何聞いてるんだろうね」
結華「忘れて」
P「結華……」
P(煮え切らないのはお互い様、か)
〜保健室〜
P(昼休みになったが、あんな会話の後で、なんとなく結華のいる教室には居づらかった)
P(そういうわけで、ここに来ている)
P(相変わらず養護教諭のいない保健室だ)
P(そして、いつも決まって霧子がいる)
霧子「ふふ……オキザリスさん、今日も元気です……♪」
P「それは……この前の時の花か」
霧子「は、はい……そうです」
霧子「……」
P「どうかしたか?」
霧子「あっ、そ、その……」
霧子「……Pさんも、元気そうだな、って……」
P「ははっ、そう見えるか?」
100 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 02:33:53.16 ID:AhTv4rKH0
霧子「はい……!」
霧子「お花さんもプロデューサーさんも元気です……」
P「霧子には花の気持ちがわかるのか?」
霧子「どう、でしょうか……でも」
霧子「このオキザリスさん、Pさんに会えて喜んでるみたいです……♪」
霧子「あ、えっと……そんな気がします……」
P「そうか」
P(元気そう……ね)
P(楽しそうとか元気そうとか)
P(最近はそういうのばかりだな、俺)
霧子「……何かいいことでも、あったんですか……?」
P「いいこと……そうだな」
P「アイドルのプロデュースが順調なんだ」
P「ははっ……なんてな」
霧子「アイドル……? プロデュース……」
P「ほら、前に話しただろう?」
P「学園一のアイドルを目指す大会で、この学園で一番大きいイベントなんだ」
P「W.I.N.G.だよ」
霧子「……あ、Pさん、前に言ってました」
P(あんまり興味ないのかな)
P(霧子のビジュアルなら出場も夢じゃないような気もするが)
P(もちろん、歌とかダンスを見ていないから、なんとも言えないとはいえ……)
P「……十分に可能性はある」
霧子「?」
P「あ、すまない。気にしないでくれ」
霧子「はい……」
P「……」
霧子「……あの」
霧子「また、ここに来てください……♪」
101 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 02:44:53.64 ID:AhTv4rKH0
〜学校前の通り〜
P(放課後になった)
P(今日も恋鐘ははづきさんと一緒に練習だ)
P(いや、練習だけではない)
P(今日は収録も行うからだ)
P(そして、まだ披露していない歌の音源を、事前に取っておいた恋鐘の写真や映像とともに……)
P「……家に帰って編集の準備をしないと」
P(帰路についているとはいえ、これから休んでいられるわけでもないんだ)
「ふふー、忙しそうですねー」
P「その声は――摩美々」
摩美々「はいー、摩美々ですー」
摩美々「恋鐘って人のプロデュースですかぁ?」
P「ああ、そうだよ」
摩美々「ふうん……」
摩美々「一生懸命なんですねー……」
P「まあな」
P「やるからにはちゃんとやりたいんだよ」
摩美々「とか言ってー……ちゃんと楽しんでるじゃないですかー」
P「そ、そうだな」
P(俺も変なところで素直じゃないな)
摩美々「Pにプロデュースされるって、どんな感じなんだろー」
P「それを俺に聞いてもな……」
摩美々「えー」
P「……恋鐘に聞いてみればわかるのかもしれないな」
摩美々「そういうことじゃないんですケドー」ボソッ
P「何か言ったか?」
摩美々「別にー……なんでもないですよー」
摩美々「……」
102 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 02:52:40.19 ID:AhTv4rKH0
摩美々「もしも」
摩美々「Pがまみみをプロデュースするとしたら」
摩美々「おんなじくらい一生懸命になるんですかぁ?」
P「……」
P(またこの話題だ)
P(俺は何のためにこんなことをしているのか、という)
P(別にいいじゃないか、成り行きでも何でも)
P(そんなに答えが必要なのだろうか)
摩美々「どうなんですかぁ」
P(いや、摩美々は純粋な疑問で聞いているのかもしれない)
P(そうに違いない)
P(今日はたまたま、そういうのが気になる日ってだけなんだ)
P「そうだな……」
1.「もちろん、同じくらい頑張るさ」
2.「……恋鐘だからかもしれない」
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/17(日) 03:54:25.53 ID:cwVK36ZWo
1
おつ
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/17(日) 04:55:29.06 ID:pVhy8TMDO
三峰は雪歩二号になるのかなぁ
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/31(日) 05:24:02.43 ID:WQ1b2RPL0
キャラのためにもなるべく早く交代してほしいわね
106 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/14(日) 23:17:32.62 ID:ijBjeQmv0
お久しぶりです。
>>1
です。
例によって多忙ゆえ更新できない状況が続いていますが、とりあえずこのスレを忘れたわけではないという報告まで。
(ストレイライトのときよりも更新頻度が低くなってしまっていますが、続けていきます。)
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/14(日) 23:48:01.32 ID:2o1k6WOso
報告おつ
待ってます
108 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:06:44.44 ID:sT3OeCku0
P「もちろん、同じくらい頑張るさ」
摩美々「へぇー……」
P「な、なんだよ」
摩美々「……んふー、別にー?」
摩美々「まあ、いいこと聞いちゃったかなーとは思いましたケドー」
P「いいことって……」
摩美々 ニィッ
P(何を考えているのか、相変わらずわからないな)
P(ただ、何かを企んでいそうな笑みとともに肩を上下させている)
摩美々「じゃあ、プロデュースするのは私でも良かったんですねー」
P「?」
摩美々「だからぁ、その恋鐘って人である必要はなかったってことですよねー?」
P「そ、そんなわけ――」
摩美々「だって、まみみをプロデュースするとしても同じくらい頑張るって、そういうことじゃないんですかぁ?」
P「――だから、違うって。俺は恋鐘のこと……」
P(……いや、駄目だ。それを言うのは、プロデューサーである以上、いけない)
摩美々「質問には答えてもらわないとー」ケタケタ
P「……」
摩美々「……それなら」
摩美々 グイッ
P「うおっ?!」
P(ね、ネクタイを引っ張られた……?!)
P(摩美々の顔が文字通り目と鼻の先に迫る)
P(互いの息遣いがわかる距離――仕掛けた本人の緊張も伝わってくる)
摩美々「この距離……誤解されそうな感じー」
P「だ、だから止めたほうがいいぞ……」
摩美々「Pは彼女とかいるんですかぁ?」
P「……いない」
摩美々「誤解されても問題なさそー」
P「そ、それはだな」
109 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:24:13.84 ID:sT3OeCku0
P「もういいだろ、止めよう、摩美々」
摩美々「止めて欲しかったらー……ふふー、来年はまみみをプロデュースしたいって言ってくださいー」
P「え……」
摩美々「だってー、別にいいじゃないですかぁ」
摩美々「Pがそう言ったんだしー」
P「……」
摩美々「言わないとー……んふっ」
P「言わないと、なんだ?」
摩美々「さあ? ただ、いま私が背伸びをしたら、唇どうしがついちゃいそうだなーって」ニッ
P(摩美々はイタズラのつもりなんだろうが、でも、本当にやりそうでもある)
P(それくらいの距離だから)
P(俺は恋鐘を――……だったら、この状況は良くないに決まってる)
P(誰かに見られでもしたら、噂だって広まるかもしれないし)
P「わかった」
摩美々「早くしてくださいー」
P「……俺は」
P「っ、来年は摩美々をプロデュース……したい……」
摩美々「!」
摩美々「……」
摩美々 チュ
P「……え」
摩美々「ありがとうございますー、来年は期待しておきますねー」
P(何が……起きて……?)
P(目の前にいる少女を見る――摩美々だ――でも、いつもみたいな余裕は感じられない)
P(頭の両側をいじる仕草は時折見受けられるものだが、そうする指先は普段とは違って震えている)
P「まみ、み……?」
摩美々「……ふふー」
P(摩美々は、逸らしていた目を俺の方に向ける――)
P(――否、見ているのは俺ではなかった)
P(そう、俺の後ろのあたりだ)
摩美々「そういうことみたいらしいですー」
110 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:40:18.89 ID:sT3OeCku0
P(誰だ……? 摩美々は、誰に話しかけている?)
P(その答えは、俺のすぐ後ろにある。簡単なことだ。振り返ればいいだけなのだから)
P(しかし、簡単な話ではない。何故か、振り返るのが怖い)
P(何か、深刻な事態に陥っているようで……)
P(……目を逸らし続けているわけにもいかず、とうとう後ろを見た)
P(振り返って視界に映ったのは――)
P「――恋鐘……?」
恋鐘「P……こ、こがんとこでなんばしとーと?」
P(そんな……まさか、見られた?)
P(聞かれもしただろうか)
P(いや、そんなことは、恋鐘の反応を見ればわかることだった)
P「違うんだ! これはそういうんじゃなくて……」
P(そういうんじゃなくて、なんなんだろう)
P(今なんて言えば良いのかがわからない)
恋鐘「さ、流石やね〜! Pは……もう来年んことまで考えとーなんて!」
P(恋鐘は笑顔だ――同時に、目にたくさんの涙を溜めている)
P「こ、恋鐘……!」
恋鐘「うち、勘違いしてしもうてた。Pにとって、うちは特別なんやなかかと思っとった」
恋鐘「Pにとっても、そうなんやろって、勝手に……」ポロポロ
恋鐘「……そがんわけなかね」
恋鐘「うちの思い込みばい」
P「そんなことはない!」
P(俺は恋鐘のことが――その先が言えない)
P(プロデュースする立場で言っていいことじゃないと思うからだ)
P(言ったとして、見られてみろ、聞かれてみろ、恋鐘の夢を叶えることは途端に難しくなる……!)
P(今だって……ここには摩美々という第3者がいるんだ)
P「……っ」
111 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:56:15.35 ID:sT3OeCku0
恋鐘「か、買い物の途中やったばい! はよ用事ば済ませてはづきのとこに戻らんば!!」ダッ
P「恋鐘っ!!」
P(走っていってしまった)
P「……」
P(よりによって恋鐘に見られてしまうだなんて……!)
P「……摩美々」
摩美々「な、なんですかぁ?」
P「……」
摩美々「……そうやって無言で迫られるとー、ドキドキしちゃいますよー?」
摩美々「でも、ちょっと怖いかも」ボソッ
P「冗談を言うつもりなんてない」
P「摩美々にとってはイタズラをしてるだけなんだろうけど」
P「今回ばかりは、っ、流石に……!」
P(流石に、なんだろうか)
P(摩美々が悪いといえばそれはそうなんだが、ここで怒りをぶちまけてどうにかなるものだろうか?)
P「……クソっ」
P(感情が高ぶって荒くなった息の1つ1つが重たく感じる――ただ、それだけだ)
摩美々「……P?」
P「っ、摩美々!!」
摩美々 ビクッ
P「……」ハァッハァッ
摩美々「……」ゴクリ
P「……1人にしてくれ」
摩美々「あ、その、ごめ……」
P「来ないでくれないか……!」
摩美々「……!」
摩美々「……はい、わかりましたぁ……」
P スタスタ
112 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 02:11:01.88 ID:sT3OeCku0
その晩。
P(あれから考えがまとまることもなく、嫌な汗をかきながら自宅の自室で悶々とするだけの時間を過ごした)
P(もうすぐミニステージもあるというのに、どうすればいいんだ……)
P(摩美々の真意はわからない――確実なのは、彼女を責めても何も生まれないということだけだろう)
P(スマホを見るのが怖くてしばらく電源を切っていた。ついさっき電源を入れて確認したら、はづきさんからのメッセージが届いていた)
P(恋鐘は練習に来なかったそうだ)
P(連絡しても出ないので、俺が何か知っているのではないかと思ったらしい)
P「……」
P(一体、何が正解で、何がそうでないのか)
P(まったく、わからない)
P(俺が自分の想いに正直になっていれば良かった……? ……これは考えと行動との乖離が著しい)
P(摩美々のイタズラを無理やりにでもやめさせれば良かった……? ……これはできたはずだ)
P(単に、最初に「恋鐘だからプロデュースを頑張れる」と言うべきだった……? ……)
P「……」
P(スマホをタップしては通知が来ていないことを観測するだけ)
P(時折、ロックを解除してチェインにある恋鐘とのトークを眺める)
P(つい先日まで楽しく会話をしていた相手であるはずなのに、なんだか変な感じだ)
P「……はぁ」
P「このまま何もしないのも、なぁ……」
P(別に、恋鐘のプロデューサーを降りたわけじゃない)
P「そうだ。そうじゃないか」
P(俺の中の何かが変わったわけじゃないはずなんだ、たぶん)
P(だったら……)
P「……っ」
1. 恋鐘に電話をかける。
2. 恋鐘にメッセージを送る。
3. 何もしない。
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/24(水) 03:31:10.33 ID:BgjeZBDDO
1
114 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 01:35:11.87 ID:ubFum9dmO
P(電話だ)
P(恋鐘に電話をかけよう)
P(逃げちゃいけないんだ……これは)
P(向き合わないと――……そして、解決しなければ)
P ポチポチ
P「……」
P(あとは、このボタンを押せば電話は発信される)
P(この瞬間がとんでもなく苦手だ)
P(押すまでに動く親指がめちゃくちゃ重く感じる)
P「……っ」ポチッ
〜♪
P(呼び出し音が流れる――この待ち時間も好きじゃない)
P(特に、呼び出し音が突然に途切れて相手が話し始めるまでの間は)
P「……」
〜♪
P「……出ないな」
P(少し時間を空けてから再度試してみるか……?)
P「仕方ない、一旦切r――」
〜♪ ――……
P「――っ?!」
P(恋鐘が、出た)
P「……」
P(どうしよう。何を言えばいい?)
「……」
P「っ、こ、恋鐘……夜遅くにすまん」
「……ううん」
P「恋鐘には、ちゃんと言わないといけないことがあるんだ、だから……」
「それって放課後んことやろ? それならうちはいっちょん気にしとらんばい」
P「……い、いや、でもな?」
「うちには関係んなかことやけんね! Pとあの子が何をしとっても、別に……」
P「だから、それは違うんだ! 俺に、ちゃんと説明をさせてくれないか?」
115 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 01:50:38.65 ID:ubFum9dmO
「……ばってん、うち、どがんしたらよかかわからんばい」
P「……」
P「……いつもの分岐点」
「?」
P「一緒に帰ると恋鐘だけ別方向に行かないといけない場所があるだろ?」
P「そこで待ち合わせよう」
P「会って話したほうがいいと思うんだ」
「……」
「わかったばい」
P「じゃあ、今から向かうぞ」
「うん、うちもそうする」
ピッ
P「……」
P(電話が切れた直後のこの静寂は……案外嫌いじゃないかもだな)
P(思ったよりも早く着いてしまった)
P(恋鐘はまだ来ていない)
P(まあ、女子なら出かける前の準備が多いのだろう)
P「さて、ああは言ったものの……」
P(……具体的に何を言うのか、実はそれをちゃんと思いついていたわけではなかった)
P「誤解を……誤解を解かないとな」
P(摩美々はきっと単なるイタズラであんな行動に出ただけだろう。そうに違いない)
P(今回ばかりは、ただの冗談で済ませることのできるものではないが)
P(起きてしまったことはもう変えられない)
P(今の自分に何ができるか、そしてその結果どのような未来が待っているのか)
P(それが重要だ)
恋鐘「お、おまたせ〜」ドタドタ
P「!」
116 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 02:07:46.81 ID:ubFum9dmO
恋鐘「お、遅うなってしもうた〜!」
恋鐘「待った?」
P「大丈夫だ。さっき来たばかりだからさ」
恋鐘「そう? それならよかばってん」
P(恋鐘の顔を見る。夜なので街灯と月明かりしか照らすものがないが、それでもわかる――)
P(――薄くてもきちんと化粧をしていて、人前に出れる状態だ)
P(たかが俺1人のために、だ)
恋鐘「P?」
P「……恋鐘」
恋鐘「うん」
P「俺は陰から恋鐘を支えて、W.I.N.G.で……そしてアイドルとしてもトップに連れて行きたいと思っているんだ」
P「そのためにも、俺は目立っちゃいけない」
P「恋鐘にも必要以上に関わってはいけない、執着してはいけない、と」
P「そう、思っていた……んだ」
恋鐘「……うん」
P「今日の放課後――あの場にいた子は摩美々っていう後輩でな、イタズラ好きな奴なんだ」
P「俺はからかわれているだけなんだよ」
P「恋鐘が思っているようなことは、おそらく、何もないんだ」
P「いや、その話は今はとりあえずいらないか、すまん」
P「で、恋鐘でなくとも同じくらい頑張れるとか、来年は摩美々をプロデュースしようと思ってるとか、そういう発言なんだけどな――」
P「――あれは、方便だよ」
P「俺が恋鐘を……その、えっと、だな……」
恋鐘「?」
P(今なら、言えるか)
P「……っ、お、俺が恋鐘を好きだってことが知れたら!」
恋鐘「っ!?」
P「それは……恋鐘がアイドルをやる上で、良くないことなんだ」
P「だから、できるだけ俺が恋鐘にこだわっていないように見せるしかなかった」
P「そう思っていたんだ」
P(言ってしまった……)
117 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 02:29:55.59 ID:ubFum9dmO
P「って、なんだか言い訳じみてるかもな……」
P「格好悪いというかなんというk――」
ギュッ
P「――……」
P(目の前にいた少女が一気に距離を詰めて俺の体をホールドしている)
P(それは飾り気のない表現で、有り体に言えば抱きしめられていた――)
P(――恋鐘によって)
P「こ、恋鐘……」
恋鐘「いまは何も言わんで……」
P「……」
P(こんなところを見られたら――と言おうとしたが)
P(我ながら――そしてまさに自分が当事者でありながら――無粋だったかもしれないと思った)
恋鐘「うちも苦しかったんよ?」
恋鐘「Pとおんなじようなこと思っとった」
恋鐘「アイドルになりたいのはほんとのことやけど……」
恋鐘「……Pのこと、す、すす、好きなんもほんとで」
恋鐘「もうどがんしたらよかかわからんくなっとったばい」
恋鐘「そ、それに……! 何よりも……」
恋鐘「Pがうちんことどう思っとるのかわからなくて」
恋鐘「それで……諦めんばって、そう、思うこともあって……」
恋鐘「そがんときにPが後輩とキスばしとーとば、見てしもうたけん。もうショックでわけわからんくて」
恋鐘「でも……えへへ」
恋鐘「そがんことやったんやね、P」
P「ああ。そうなんだ」
P(もっと早く、言っても良かったのだろうか)
P「ははっ、お互いに空回りしてたのかもな」
P(運の悪さもあるが)
118 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 02:43:48.02 ID:ubFum9dmO
恋鐘「じゃ、じゃあ……!」
恋鐘「うちとP、好きどうしってことばいね!?」
P「そ、そうだな……改めて言われると何だか照れるけど」
恋鐘「えへへ……P」
P「どうした?」
恋鐘「好きばい」
P「お、おう」
恋鐘「え〜〜っ! もっと嬉しそうにせんね!?」
P「慣れてないんだって、こういうのは……」
恋鐘「……Pからももう1回聞きたか」
P「っ……そうだな」
P(改めて言うとなると、めちゃくちゃ恥ずかしいな)
P「好きだ」
恋鐘「! ……は、はぃ」
P「……」
恋鐘「……」
P「…………」
恋鐘「……………………」
恋鐘「P、うちんほう見て」
P(言われるがまま、下を向く)
チュゥ
P「?!」
P(例によってそれはいきなり訪れるもので……)
恋鐘「ん〜〜!」
P(唇が離れそうになると、恋鐘が逃がさないようにと必死に口を押し付けてくる)
P「……!!」
P(い、息が……!! 苦しい……!!)
P「ぷはぁっ! ちょ、ちょっと待ってくれ! それじゃあ呼吸ができないぞ……」ハァハァ
119 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 02:57:36.82 ID:ubFum9dmO
恋鐘「ご、ごめん……!」
P「い、いや、別に謝ることじゃない……」
P(突然のことで照れる間もなかったな……)
恋鐘「いくらうちとPが好き合うとったとしても、あん後輩とキスしとったってことは変わらんもん」
恋鐘「やけん……もっとすごかことばしたかねって思って、それで」
恋鐘「……〜〜〜っ」
P(どうやら恋鐘には今更恥ずかしいという感情が襲いかかってきているようだ)
P(思わず頭を撫でてしまう)
恋鐘「ふぇ?」
P「焦る必要はないぞ」
P「これから、まだまだ時間はたくさんあるんだ」
P「今はやるべきこと……目指すべきものもある」
P「その中にやりたいことが加わっただけで」
P「それから、好きという感情もか」
P「これからも、一緒に歩んでいこう」
P「それでいいんじゃないか?」
恋鐘「うん……うち、まだパニックなんかもしれんばい」
恋鐘「Pの言う通りやと思う」
P「大丈夫。恋鐘自身にも、俺たちの未来にも、時間や可能性はいくらでもあるからさ」
P「1つ1つこなしていけばいいよ」
恋鐘「えへへ、ありがとう! P」ニコ
P「今日はもう遅いからな。お互いに早く帰ったほうが良さそうだ」
恋鐘「うちはもう少し一緒におりたかとやけど……」ボソッ
P「どうかしたか?」
恋鐘「う、ううん! なんでもなか!」
P「……そうだなぁ。よし、とりあえず、恋鐘の家まで送ってくよ」
恋鐘「そのまま上がってくれてんよかとに……」ボソッ
P スタスタ
恋鐘 テクテク
P「……いつか」
恋鐘「?」
P「そのうち、迷惑じゃなきゃお邪魔させてもらおうかな」
恋鐘「! うんっ!!」
恋鐘「楽しみにしとーね!」
一旦ここまで(なんかこのままエンディング……っぽい切り方にも見えますが、まだ終わりません)。
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/18(土) 10:40:32.62 ID:zDBIXBqDO
乙
翌朝、股をひょこひょこさせたこがたんが見られるわけですな
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/18(土) 16:20:56.92 ID:yXh7GJ3Xo
おつおつ
しましたね???
122 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 22:26:49.32 ID:KUPmnQDXO
夏休みのある日。
恋鐘「うっ……うっ……」
はづき「辛いですよね。よしよし」
恋鐘「ずびっ……、う、うちっ……Pと……Pとぉ……!」
はづき「恋鐘さんの気持ちはわかります。楽しみにしていればしているほど、それが叶わなかったときの悲しみは堪えますよね」
恋鐘「う〜〜〜〜…………」
はづき「はいはい」トントン
恋鐘「はづき……」
恋鐘「宿 題 が 終 わ ら ん !」
恋鐘「地元におったときん高校はもっとぬるかったとよ……」
はづき「まあ、うちは大学進学率もそこそこありますからね〜」
恋鐘「うう……うちはそこまで望んどらんのに……」
恋鐘「宿題――こんなもん燃やしちゃる〜〜! 成績なんて知らんばい!!」
はづき「そんなことしたらあの人とのお出かけどころか校内アイドル活動もできなくなっちゃいますよ〜」
はづき「学校ですからね〜成績はしっかり見られちゃってます」
恋鐘「そ、そがんこと言うても〜〜……」
恋鐘「Pもなんか反論せんね!」
P「無茶言わないでくれ……」
夏休み開始直後。
P「夏休み……か」
P(夏休み期間中の校内アイドル活動はオンラインに限定される)
P(補習や部活動といった学校本来のあり方を乱さないためだそうだ)
P(9月以降のアピールのための準備期間という話も聞く)
P(当然、俺たちも夏休みが終わった後に備えて、いろいろと考えていかないといけない――)
P「――んだけど、うーん」
P(そうなると、恋鐘には無理のない範囲でコンスタントに練習を継続してもらう他ない)
P(俺が直接口出しするような機会は、今までに比べて、一時的ではあるがかなり減るだろうな……)
123 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 22:45:38.61 ID:KUPmnQDXO
P「宿題でもやるか……」
P(俺の学年を担当する教員勢は、今年は当たりだと思ったのだが、夏休みの宿題に関しては想像をはるかに上回る量を課してきた)
P(普段の課題が少なめだっただけに、これはキツい――と思っていた)
P「はぁ……思ったよりも暇なんだよな」
P(手持ち無沙汰な感じに耐え切れなくなった俺は、恋鐘のチャンネルの整備を適当に済ませてから、宿題に取り組み始めた)
P「……んんーっ、割と進んだな」
P(古典の品詞分解の課題をネットの情報を見ながらこなし、気づけばかなりの割合を片付けられていた)
P「……」
P(そこそこ頑張った自分へのご褒美という気持ちでスマホをいじる)
P「あれ、メッセージ来てるな」
P(恋鐘からだ。ほんの数分前に届いたものらしい)
恋鐘<やっほー!
恋鐘<Pの夏休みん予定ばどうなっと?
恋鐘<いきなりごめん!
P<チャンネルの管理と9月以降の方針を考える以外には特にないかな
恋鐘<既読早!笑
P<笑
P<まあ、どちらかと言えば暇だよ
P(自分のメッセージを送って、直後にはスマホをスリープにしてその辺に放る)
P(既読が付いて返信が来るまでの間を眺めるのって、なんだか苦手なんだよな……)
P「あ」
P(すぐにスマホのロック画面が明るくなった)
P(チェインの通知が表示されたからだ)
P「まあ、仕方ないか」
P(ロックを解除して再び恋鐘との個人チャットを開く)
恋鐘<暇なんや!
恋鐘<Pは長崎に行ったことある?
恋鐘<よかったら案内しちゃろうかなって思って
恋鐘<うちとしては帰省もできるし……どがんね?
124 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 23:03:44.60 ID:KUPmnQDXO
P「長崎か……」
P(なかなか行く機会がないのは確かだ)
P(それに、恋鐘と出かけられる機会だし)
P「……」
P(今はまだ、恋鐘も、あくまでも学校の中のアイドルなわけで)
P(ましてや俺は何の変哲もない一般人だ)
P(長崎まで行ってしまえば、一時的であるとはいえ、2人で過ごすことができるだろう)
P「……」
P<いいのか?
P<恋鐘さえよければ是非
P(アイドルの息抜きに付き合うのもプロデューサーの仕事……だろうか)
P(よこしまな気持ちは……いやいや)
恋鐘<やったー!!!
恋鐘<じゃあ決定ね!!!!!
P<よろしくな
P<それなら行く時期を決めないとだ
P<泊まる所を探さないといけないし
恋鐘<うん!
恋鐘<うちん実家に泊まってく?笑
P<いやいや、そんな悪いよ
恋鐘<うちは構わんのに〜
P「……」
P(なんて返信を続ければいいんだ……?)
P(そう思って入力しては消してを繰り返していたら、数分が過ぎていた)
恋鐘<無理にとは言わんけんね!
恋鐘<ごめん忘れて
P<全然大丈夫
恋鐘<Pはいまなんしよーと?
P「何って――そりゃ」
P<夏休みの宿題
125 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 23:04:55.64 ID:KUPmnQDXO
P「長崎か……」
P(なかなか行く機会がないのは確かだ)
P(それに、恋鐘と出かけられる機会だし)
P「……」
P(今はまだ、恋鐘も、あくまでも学校の中のアイドルなわけで)
P(ましてや俺は何の変哲もない一般人だ)
P(長崎まで行ってしまえば、一時的であるとはいえ、2人で過ごすことができるだろう)
P「……」
P<いいのか?
P<恋鐘さえよければ是非
P(アイドルの息抜きに付き合うのもプロデューサーの仕事……だろうか)
P(よこしまな気持ちは……いやいや)
恋鐘<やったー!!!
恋鐘<じゃあ決定ね!!!!!
P<よろしくな
P<それなら行く時期を決めないとだ
P<泊まる所を探さないといけないし
恋鐘<うん!
恋鐘<うちん実家に泊まってく?笑
P<いやいや、そんな悪いよ
恋鐘<うちは構わんのに〜
P「……」
P(なんて返信を続ければいいんだ……?)
P(そう思って入力しては消してを繰り返していたら、数分が過ぎていた)
恋鐘<無理にとは言わんけんね!
恋鐘<ごめん忘れて
P<全然大丈夫
恋鐘<Pはいまなんしよーと?
P「何って――そりゃ」
P<夏休みの宿題だよ
126 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 23:06:36.03 ID:KUPmnQDXO
すみません、
>>124
は最後が書きかけでした。
>>125
を採用します。
127 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 23:19:23.68 ID:KUPmnQDXO
現在に戻る(「夏休みのある日。」)。
恋鐘「うっ……うっ……」
P「こうしてはづきさんが応援に来てくれてるわけだし、頑張ろう、恋鐘」
はづき「ファイトですよ〜」
P(教員側だから本当に応援してくれるだけなんだな……)
P「俺も手伝うからさ」
恋鐘「ごめん……ありがとう」
P「いいよ。恋鐘がアイドルやれなくなるのは俺も嫌だからな」
P カキカキ
恋鐘 カキカキ
P「……」カキカキ
恋鐘「うー……」
P「……」カキカキ
恋鐘「ふわぁぁぁ」
P「恋鐘」
恋鐘「うわぁっ!? さ、サボろうとしてなんかなかばい!!」
P「あ、いや、そういうつもりじゃなくてだな」
P「いつか行こうな、長崎」
P「楽しみにしてるよ」
恋鐘「……!」
P(2人の時間はお預けになったが)
P(一緒に過ごせていることには違いない)
P(今はこれでもいいのかもしれない)
P(今はこういうのも悪くないと思う)
P(大切なのは、「どこで」ではなく、「どのように」なのだから)
P(こうして、俺たちの夏休みは終わった)
P(明日からは、いよいよ後半戦だ)
P(頑張ろうな、恋鐘)
128 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 23:56:48.49 ID:KUPmnQDXO
9月、体育祭前日。放課後。
〜???〜
P(夏休みは宿題も無事に終わり、始業式が終わってからは専ら体育祭でのアピールのための準備に励んでいた)
P(とはいえ、頑張っているのは恋鐘――とはづきさん――であり、俺は相変わらず裏方で細々とやっている)
P(今も2人は小型スタジオで準備中で……)
P(……俺は――)
P「――っと、忘れないうちにやっておかないと」
P「明日披露する歌の動画の一部をチャンネルで限定公開……これで注目度のアップを図る……」
P(放送委員の無線をジャック――といっても許可は取ってあるから演出だが――しての歌披露だ)
P(このくらい刺激的なほうが見る側も楽しめるというものだろう)
P「これで、よし……っと」
「ひと段落……ですか?」
P「あ、ああ。独り言が多かったかもな。すまん」
「いえ……」
P「体育祭直前で盛り上がってる連中がいて落ち着かないからさ」
P「こうして保健室の居させてくれるのは助かるよ、霧子」
霧子「前に言ってた……アイドルのプロデュース……やってるんですね」
P「そうなんだ。明日の体育祭はW.I.N.G.優勝を目指す子たちにとって大きなイベントの1つになるからな」
P「霧子は見てくれたか? 恋鐘の動画とか、もう結構アップしてきたんだけどさ」
霧子「あ、ごめんなさい……どうやって見ればいいのか……わかりませんでした」
P「そ、そうか」
P(パソコンやスマホを持っていないとかだろうか)
P(学校には情報教室があって開放時間もあるが……あそこで見るのは勇気がいるかもな)
P「よかったら今一緒に見るか?」
霧子「わあ……いいんですか?」
P「ああ、もちろんだ」
P(自分のパソコンに恋鐘の歌っている動画の1つを表示して、霧子のほうに画面を向け、再生ボタンを押した)
霧子「……」
P「……」
霧子「この人が……恋鐘ちゃん……」
P「俺のプロデュースするアイドルなんだ」
P「よかったら応援して欲しい」
P「月岡恋鐘をよろしくな」
霧子「はい……♪」
129 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/01/20(木) 23:58:09.07 ID:KUPmnQDXO
とりあえずここまで。
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/21(金) 00:34:21.25 ID:8BBAl0yCo
おつあつ
131 :
◆bXCm/le03U
:2022/03/17(木) 23:43:28.29 ID:cTj2hUrs0
>>1
です。ただ忙殺されているだけであると(一応)記しておきます。ご了承ください。
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/03/18(金) 00:46:03.64 ID:vfnOf3uqo
報告ありがとう
御自愛下さい
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/08/23(火) 00:09:22.81 ID:sAUHrTRu0
いつまでも待ってる…!
134 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/09/08(木) 12:11:14.48 ID:Yg2hFwDF0
>>133
>>1
です。ありがとうございます。このスレを捨てたわけではないのでご安心ください。
忙しさに難儀しています。
135 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/06(木) 00:01:19.41 ID:oZAoSis40
霧子「Pさんは……恋鐘ちゃんの、プロデューサーさん……」
P「え? ああ、そうだな」
P(「プロデューサーさん」と呼ばれることに対して、どこか懐かしさのようなものを覚える)
P(あるいはそれはデジャヴであるような感覚)
P「どうしたんだ、改まって」
霧子「プロデューサーさんとアイドルって、どんな関係なんだろうって……思ったんです」
P「?」
霧子「この場合は、普通のアイドルのことじゃなくて――」
霧子「――Pさんと恋鐘ちゃん、みたいな」
霧子「わたしの知ってる“アイドルのプロデューサーさん”って、もっとアイドルからは遠くて、ひょっとしたら別のことをしていそうな」
P「ま、まあ、俺たちは弱小だし、プロデューサーとアイドルとは言っても、高校生が青春の一環でやってるようなものでもあるからなぁ」
P(その割には結構本格的なところも多いが)
P「どうしてそんなことが気になったんだ?」
霧子「えっと……どうしてでしょう……?」
P「ははっ、なんだそれ」
霧子「ふふっ、ごめんなさい」
P「いや、謝るようなことじゃないけどさ」
霧子「でも――」
霧子「――Pさんがわたしを選んだらどうなるんだろう……とは、ちょっと思ったかも」ボソッ
P「えっ?」
霧子「あっ、違うんです!」
霧子「ごめんなさい……」
P「だから謝ることじゃないって」
P(そもそもボソボソ言ってたからよく聞こえなかったし)
霧子「大変なんですか? プロデュース、って」
P「うーん、難しい質問だな。簡単じゃないけど、本当に大変なのは、俺じゃなくて恋鐘だからさ」
P(あとははづきさんの助力もある)
P「大事なのは、大変かどうかよりも、やってて自分が満足できるかどうかだと思う」
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/10/06(木) 00:57:09.72 ID:lOVtW5c70
きりこかわい
137 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/06(木) 01:29:21.92 ID:oZAoSis40
霧子「いいな……」
P「いい?」
霧子「はいっ。そこまで考えてもらえてる恋鐘ちゃんも、自分を自分で振り返れてるPさんも」
霧子「いいな、って」
P「ははっ、そうか?」
霧子「いい感じ……♪」
P(なんだろう、この子に見惚れてしまった時の気持ちと純粋な可愛らしさが合わさって――)
P(――霧子に惹かれて、その瞳に吸い込まれそうで……)
P「……って、いかんいかん。俺には恋鐘がいるんだ」
霧子「恋鐘ちゃんが……いる?」
P「あっ、いや、違うんだ」
霧子「恋鐘ちゃんはここにはいません……」
P「は、はは、そうだよな。おかしなことを言ったよ」
霧子「おかしなPさん……ふふっ」
P(危ない危ない。俺と恋鐘が好き合ってるなんてスキャンダルは、W.I.N.G.優勝を目指している以上、致命傷になる)
P(情報源によって被害にも差が出るだろうし、霧子なら口止めもできそうだが)
P(用心するに越したことはない)
P「もうこんな時刻か」
霧子「あ、Pさん……」
霧子「お帰り……ですか?」
P(霧子は眉をひそめて言う。その表情には、どこか寂しさを感じさせるようなものもあって――)
P(――その表情は反則だろう、と思った。が、しかし)
P「そうだな。明日が大切だし、備えるためにも、今日は帰って――できることをやって十分に休むよ」
霧子「こころとからだのおやすみのじかん……ですね♪」
P「そんなところだ」
霧子「切っても切れない、心と身体も、アイドルとプロデューサーさんも、それに……」ボソボソ
P「じゃあな、霧子」
霧子「は、はいっ……」
霧子「……また、いらしてくださいね」
138 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/06(木) 01:43:28.49 ID:oZAoSis40
体育祭当日、昼休み直前。
P(午前中の恋鐘はいろいろと凄かった)
P(あのスタイルでドジっ子属性をこれでもかというくらいに発揮してくれていた)
P(当然のことながら、大変注目を浴びていた。人気にも火が……というか火に油を注ぐくらいにはなるかもしれないな……)
P(恋鐘のことが好きだと認めてしまっている今となっては、少しもどかしいというか、なんだか面白くない気分がないとは言い切れないが)
P(今の俺はプロデューサーだ――恋鐘をアイドルとして輝かせるための……)
P「……いや、うん。いいんだ」
P「プロデューサーは裏方。これからが、俺にとっての本番だ」
P(昼休みになったら、放送委員の無線をジャック――する演出で恋鐘に歌を披露してもらう)
P(その歌の一部は、昨日のうちにチャンネルで期間限定公開にして、今は見れなくなっている――)
P(――要するに“伏線”というやつだ)
P「ドジっ子による刺激」
P「楽しみにしてろよ、“お前ら”」
P「ははっ、なんてな」
139 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/06(木) 02:08:48.75 ID:oZAoSis40
体育祭当日、昼休み。
放送委員「午前の競技が終わりましたので、現時点での各クラスのスコアについて報告します――」
P(このアナウンスにはもれなく流れてもらう。俺たちのステージは、その後だ)
P(今話してる放送委員と俺たちは“つながってる”)
P(俺の連絡・合図で音楽収録室にいる恋鐘のマイクに回線が切り替わることを、はづきさんとのチェインで確認済みだ)
P(ははっ、学校生活にしては非日常というか……どこか背徳感のある高揚感を覚えるところがあるな)
放送委員「――以上が、クラス対抗スコア合戦の途中経過の報告になります。続きまして、校長先s……の……ント……ジジジッ、ブツッ」
ザワザワ
アレー?
ナンカオカシクネ?
P「よし、ざわめきだしたな――今だ!」ポチッ
P<GOです。
恋鐘「絶対に……W.I.N.G.で優勝する」
ナンダナンダ?
恋鐘「それもそのはずよ、だって――」
恋鐘「――うちは、アイドルになるために生まれてきた女やけん!」
コノコエッテサー
アーモシカシテ!
P(曲のイントロが流れ始めた。このあたりは、チャンネルを見てる人は知ってるような箇所だ)
P(まあ、実は少し構成が違っていたり長くなっていたりしてるんだけどな! ははっ)
恋鐘「み〜ん〜な〜〜〜〜〜!!!」
オォォォォォ!!!
P(今日の歌はカッコいい系だ。このジャックもどきの演出にも合ってるだろう)
P(恋鐘がこういう歌を歌うのに、一切の違和感を抱かない自分に、謎の――違和感ではないが既視感のような気持ち――を覚える)
P(ま、まあ、それはいい)
P(しかし、これは――)
ワァァァァァ!!!!!
P(――成功、なんじゃないだろうか)
140 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/06(木) 02:29:02.53 ID:oZAoSis40
P(いや、まだ終わりじゃない)
P(この後の流れは、間奏の間に恋鐘が朝礼台にこっそりやってきて、大サビからは皆の前で歌うというものだ)
P(それが全部終わらないと、成功とは言い切れない)
P(来る途中とか壇上に上がる時とかにコケないといいけど……)
P(俺は既に朝礼台の近くに移動して待機をしている)
オー!
スゴカッター!
P(よし、間奏に入った!)
アイカラズスゴイネー
イヤイヤコノキョクハマダオワッテナインダッテ
マジカヨ!?
コガタンマッテルヨー!!!
P(お、見えてきた見えてきた)
P「ここまでは順調、だな」ボソ
P(恋鐘が朝礼台のすぐ近くまで来てる――って、あれは?)
P(俺は、一瞬――いや、本当に一瞬と呼べるくらいしか時間がなかったのだが――目の前の光景を理解できなかった)
P(霧子が、通り過ぎる恋鐘を呼び止めて何やら耳打ちをしたのだ)
P(言伝はすぐに終わり、恋鐘は予定通りにのぼるべき壇上の前にたどり着く)
P(霧子の伝えた内容が気になったが、それを気にしている余裕はなかった)
P(恋鐘が、無線マイクを受け取り、そのまま……って!)
P「こ、恋鐘っ、接続されてるのは有線のマイクのほうだ――」
P(駄目だ、間に合わない……! しかし、裏方の俺が目立ってしまっては……どうしようどうすれば)
P(こんなとき、プロデューサーならどうする!?)
恋鐘「〜♪」
P(あ、あれ?)
P(普通に、流れて……る?)
P(同時に、俺は目を見張る光景を前にする)
P(有線マイクの長いケーブルに脚を引っ掛けて転んでいる生徒がいたのだ)
P(自分のことでまったく気づけないでいたのだ)
141 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/06(木) 02:45:19.63 ID:oZAoSis40
P(もし無線マイクを受け取っていなかったら……)
P(しかし、恋鐘は何故それを知っていた……?)
恋鐘「えへへ……ありがと!」
恋鐘「みんな〜〜! ほんなこてありがとう〜〜〜〜〜!!!」
P(大成功だ)
P(それは間違いないのに)
P(俺は1人……、それは朝礼台の後ろなのかどこなのか、とにかく置いてけぼりになっていた)
P(恋鐘の周りにはギャラリーやファンが押し寄せて近づけそうにない)
P(はづきさんをはじめとする教員の人たちが迫り来る生徒たちを抑えて恋鐘に危険がないよう配慮してくれている)
P(それもそのはずだ。はづきさんに頼んで、そうなるように手配してもらっていたから)
P(でも、俺にとってはそんなこと……“そんなこと”と思えてしまうほど)
P(この成功の裏が気になって仕方なかった)
P「どうせ、しばらく恋鐘には近づけないんだよな」
P(今日は体育祭だ。まだ午後の競技が残っているし、恋鐘ははづきさんと一緒に化粧直しがある)
P(俺は1人、適当に目的もなく校内をぶらついた)
〜保健室〜
P「ここにたどり着いてしまった……」
P(それは、偶然か、必然か)
P(恋鐘に耳打ちをした霧子の姿があったから、どちらかといえば必然なのかもしれない――)
P(――そんなことを思いながら戸を開ける)
ガラガラ
P「失礼します」
P(相変わらず、どういうわけなのか――いや、今日は体育祭だから本当に別の場所に用があっていないのか――わからないけど)
P(養護教諭はいない。代わりにいたのは……)
P「……霧子」
霧子「あっ、Pさん」
霧子「恋鐘ちゃんのお歌、ちゃんとうまくいきました……♪」
142 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/06(木) 02:46:14.90 ID:oZAoSis40
とりあえずここまで。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/06(木) 09:59:47.83 ID:cHcvvb3So
おつおつ
霧子……
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2022/10/06(木) 18:58:45.28 ID:qJdujydDO
今回の裏は誰が握っているんだ……
万が一にも声優ネタはやめて欲しいけど
145 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 00:24:42.87 ID:1IRGnGGk0
>>143
>>144
8ヶ月を超える期間更新できていなかったのに読んでくださってありがとうございます。
>>144
このSSを思いついたのは、例の事件の3〜4ヶ月以上は前なので、心配されているようなネタが使われることはないです(事件後でも使いませんが……)。
146 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 00:39:50.86 ID:1IRGnGGk0
P「あ、ああ……そうだな。おかげさまでうまくいったよ」
P(一体、“何のおかげさま”なんだろうか)
アナウンス「午後の開始まで、残り5分となりました。午後の最初の競技に出られる方は直ちに……」
P(校内放送が頭に入ってこない)
P(恋鐘が壇上で歌った時からずっとそうだ)
P(別に、このアナウンスが空虚に感じるからじゃない)
霧子「Pさんは、行かなくても……いいんですか?」
P「俺が出る競技まではまだ割りと時間があるからな。大丈夫だ」
P「霧子はどうなんだ?」
P(そうだ。霧子だ)
P(恋鐘に耳打ちをして、トラブルを回避させた――かもしれない――霧子だ)
霧子「わたしは……行かないんです……」
P「午前中で出る競技は全部終わったのか?」
霧子「すみません、何て言えばいいのか……」
P「?」
P「午後は?」
霧子「午後もです」
P「そうか」
P(どういうことなんだろう)
P(どうにも要領を得ないな)
P(単刀直入に聞いてしまおうか)
P「霧子……さ、恋鐘が朝礼台に上がる前に、あいつに何か言ってたよな?」
P「こう、耳打ちする感じで」
霧子「えっ、あっ、は、はい……」
P(それは認めるんだな。いや、認めてまずい事情がなきゃ、そりゃそうなんだろうけど)
P「そ、その――」
P「――恋鐘には、なんて伝えたんだ?」
P(そう、それが俺の知りたいことだ)
147 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 01:02:21.12 ID:1IRGnGGk0
霧子「えっと、あのあの……!」
P「うん」
霧子「が、がんばってくださいっ、って……言いました……」
P「へ?」
霧子「Pさんのアイドルさんだから、わたしも応援したいなって思って、それで――」
霧子「――とっさに思いついたのが、あの方法だったんです」
霧子「ご迷惑……でしたか?」
P「い、いや、いやいや! そんなわけないぞ!」
P「そっか……そう、だよ、な……」
P(俺は一体何を気にしていたんだろう――霧子からの、予想だにしない、けれども常識的な回答に、俺は戸惑ってしまっていた)
P(霧子は純粋に応援してくれていただけで、あのマイクの件は単なる偶然で――)
P(――そういう可能性だって、十分にあるじゃないか)
P(というか、普通はそうなんじゃないか?)
P「……」
P(考えすぎというか、俺はどうにかしていたのだろうか)
P(どうして、妙な因果を考えてしまったんだろう)
P(霧子が事前にマイクのことを知っていて、それでトラブルを回避できるように進言していた、だなんて)
P(心のざわめき……この感覚はなんだ)
P(不思議なのは、そんなミステリーじみた体験を記憶のどこかで体験していたような、そんな気もしていることだ)
P(俺は……一体……)
P「……」
霧子「あの」
P「わっ!?」
霧子「ご、ごめんなさい……! なんだか、落ち着かない様子のようなので、それで」
P「あっ、ああ、心配かけたか?」
霧子「ちょっぴり……」
P「ちょっぴりか」
霧子「……実は結構心配してます、ふふっ」
P「ははっ、なんだよ、それ」
148 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 01:13:28.17 ID:1IRGnGGk0
P「少し疲れてるのかもしれない」
霧子「体育祭の競技……大変でしたか?」
P「あ、そうじゃなくて、プロデュースのこととか、いろいろ」
P「俺がこんなこと言ってちゃ駄目なのかもしれないけどさ」
霧子「……そんなこと、ありません」
P「霧子?」
霧子「Pさんが無理をしないといけないなんて、そんなこと、ないです」
霧子「だって、だって……! 十分に頑張って、頑張って、……頑張ってるから」
霧子「だから――」
P「――ありがとう、霧子。そこまで言ってくれるだけでも励みになるよ」
霧子「Pさん……」
霧子「救われ……ないのかな」
霧子「大変な人」ボソッ
P「なんだって?」
霧子「なんでも……ありません」
P「俺は大丈夫だよ」
P「まだ、やれると思うんだ」
P「ベストというか、全力というか」
P「全力を尽くしてこそ、俺は心からこう言えるんじゃないかって思う――」
P「――よし、楽しく話せたな」
P ズキッ
P(頭痛!? ……あれ、一瞬でおさまったな)
P「ってさ、ははっ」
霧子「!」
霧子「それは……ううん」
霧子「そう、ですね」
霧子「Pさんなら……できます♪」
P「ああ、やってやるさ!」
149 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 01:31:26.98 ID:1IRGnGGk0
体育祭終了後。
〜小会議室〜
P(体育祭が完全に終了した後、俺と恋鐘と、それからはづきさんの3人で、反省会をしていた)
P(体育祭というイベントを通じてアピールをしたW.I.N.G.エントリー者は恋鐘以外にもいる)
P(特に、やはりというか、白瀬咲耶が強力なライバルだ)
P(俺たちは陣営が弱小な以上、どうしても奇襲のようなやり方に頼ってしまう)
P(技術と演出力でカバーしているつもりだが、それに限界がないわけじゃない)
P(咲耶たちは陣営の大きさを活かして、各競技での振舞いそのものをアピールにしてしまうというやり方をとっていた――)
P(――集団競技では競技そのものを半ば放置して咲耶を中心とする騎馬や隊列を魅せるといった具合に、だ)
P(パフォーマンス後はきちんと競技に戻っているとはいえ、咲耶陣営はその後で生徒部に叱られている)
P(しかし、その叱咤など些事だ。この学校のアイドルイベント・大会は、その程度のことで揺るぐほどお遊びではない)
P(マンモス校で、しかもマジョリティである生徒が主体・味方となって推し進められるものなのだ)
P(むしろ炎上商法としては成功していると言っていい)
P(規模と回数――この2点において、俺たちは負けた。これは事実だ)
P(もちろん、ファンの反応が重要だから、その負けが決定打とはならない――と信じたい――が)
P「ひとまず、今回も審査を通過できるくらいの位置にはいると思いますが……」
はづき「絶対的にはそうなんですけど、相対的にはどうしても咲耶さんが手ごわいですね〜」
恋鐘「うう〜、やっぱうちん予想は的中しとったばい」
P「……」
P(俺は、咲耶がW.I.N.G.エントリーを決めたその時の出来事を思い出す)
P『あ、そうだな。紹介するよ。俺と同じ学年・クラスの月岡恋鐘だ。この前、九州からここに引っ越してきたんだと』
P『恋鐘、1年生の白瀬咲耶だ。もしかしたらもう知っt――』
恋鐘『――ばりかっこよか……』
恋鐘『実際に見ると圧倒されるばい……やっぱり、噂どおりやった』
P『転校生でも知ってるとは……さすがだな、咲耶』
咲耶『フフ、それほどでもないさ』
恋鐘『W.I.N.G.に出られたら絶対に手ごわかライバルになるって踏んでたんよ』
咲耶『私は、別にまだエントリーすると決めたわけじゃ……』
恋鐘『あ、そうと? それなら安心やね』
恋鐘『Pに無事優勝するうちん姿ば見せられるばい』
咲耶『……今、Pに、と言ったかな?』
恋鐘『そうよ? Pはうちの大事なファン1号やし、Pのために頑張る言うても過言やなかばい!』
恋鐘『それに……頑張るうちば見て、きっと……』
恋鐘『……えへへ』
咲耶『……。……P』
P『どうした?』
咲耶『W.I.N.G.優勝……目指そうと思う』
恋鐘『えぇぇ〜〜!?』
P『突然だな……なんでまた』
咲耶『それをアナタが聞くのかい? いや、私がW.I.N.G.優勝を志す意味を気づかせてこそ、か……』
150 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 01:48:14.64 ID:1IRGnGGk0
P(咲耶は何のためにW.I.N.G.優勝を目指すのか――それが俺にはよくわからなかったが)
P(わかれば咲耶対策というか、恋鐘が優勝できる可能性を少しでも高める良い案が思いつくとかはないだろうか)
はづき「とりあえず、次に第一に考えるべきなのは――」
P「――文化祭の大ステージ、ですね」
はづき「はいっ、その通りです」
P(文化祭であれば、専用のステージが用意されている。言うなれば“合法的”ってことになる)
P(アピール時間だって長い。ただ歌って踊るだけじゃなくて、トークを入れたり寸劇をやったりなんでもありだ)
P(だからこそ……)
P「……恋鐘がどうありたいか、つまりどういうアイドルでいたいかが重要なんだ」
恋鐘「うちが……」
P「俺たち裏方はサポートするだけだからさ」
P「ここからは――いや最初から実際にはそうなんだけど――恋鐘が本当に主役なんだ」
P「もちろん、レールの上を行く台本の上の主役じゃなくて、自分からレールを走る物語の書き手としてな」
恋鐘「どんなアイドルでもうちの右に出るもんはおらん!」
恋鐘「そんなアイドルになってみせるばい!」
P「ああ、そうだ」
P「そのためには、恋鐘はどうしたい?」
P「どうすれば、いい?」
恋鐘「うう〜、難しか〜。ばってん、大事なことやって、うちもわかってるんよ?」
恋鐘「言葉にするとが難しかっさね」
はづき「そうですね〜」
P「……」
はづき「いいんじゃないでしょうか、恋鐘さんは、恋鐘さんで」
恋鐘「?」
P「……ああ」
はづき「ふふ〜」
恋鐘「P?」
P「恋鐘は今までにないまったく新しい恋鐘というジャンルのアイドルを目指すんだ」
151 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 02:05:30.85 ID:1IRGnGGk0
恋鐘「うちっちゅうアイドル……」
恋鐘「……うん、うん!」
恋鐘「Pがうちならなれる言うんなら、絶対なれるはずばい!」
P「ああ、恋鐘なら誰にも真似できないアイドルになれる!」
P「恋鐘らしさ、一緒に考えていこう……いきましょう!」
はづき「なんですか〜、恋鐘さんに席を外してもらってまでしたい話って」
はづき「恋鐘さん、すごく不満そうにしてましたよ」
P「いや、それはそうなんですけど、本人を前にしては言いづらいことでして……」
P(ましてやあの流れならなおさらだ)
P(恋鐘本人にも、あまり聞かせたくはないような類の話だからな)
P(けれども、重要なことだ)
P「恋鐘らしさ、大切ですよね」
はづき「はい、もちろんです」
P「恋鐘が自然に魅力を出せる方法……もちろんいくつかはあるんでしょうけど」
P「やはり自明なのが――露出です」
はづき「不健全ですね〜」
P「し、しょうがないじゃないですか! 男子ファンの獲得を意識して、これまでにもこっそりちょっとだけそういう要素がアピールに混ざるようにしてたんですよ」
はづき「それは私も気づいてましたけど〜」
P「え、あ、そうなんですか」
はづき「男性の下心に対しては、女性は敏感なものですから」
P「次はせっかくの文化祭における大舞台ですし、これでもかってくらい恋鐘を前面に押し出す良い機会なんです」
P「W.I.N.G.のステージのための練習にもなりますし」
はづき「さっきから、なんだか言い訳をしているように聞こえてしまいますね〜」
P「そ、そんなこと……!」
はづき「大丈夫ですよ、わかってますから」
はづき「頑張ってくださいね、“プロデューサーさん”♪」
P「こういう衣装なんてどうだ?」
恋鐘「P、その……露出が多いというか……」
はづき「ちょっと派手ではありますね」
P「そ、そう! 派手なんだ! こうすると、恋鐘の良さは存分に発揮できるぞ!!」
恋鐘「Pがそう言うなら……。あと、振り付けなんやけど――」
P「――こういうのは妖艶さって言って、恋鐘の中でも大人な魅力が伝わるんだ!」
恋鐘「大人なうち……それは良かね!」
P「お、おうよ」
はづき「ふふっ」
152 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/11(火) 02:07:18.78 ID:1IRGnGGk0
とりあえずここまで。
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2022/10/11(火) 05:33:14.29 ID:yuo4P+ADO
乙
さくやんもきりりんも怖いよ〜
154 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 00:48:40.54 ID:cTyfLQsb0
10月。文化祭まで残り1ヶ月と少し。
放課後。
〜校舎内 某所〜
P(俺は行くあてもなく学校の中を歩いていた)
P(この学校は広い。だから、歩き続けていても同じ景色の中を何度もループするようなことはそうそうない)
P(それでもループしてしまったということに気づいたのは、放課後になって、さらに日が沈んでからのことだった)
P(そのくらいの時間を、俺は考え事をしながら彷徨っていたのだ)
P「はぁ……」
P(何度目のため息だろうか)
P(あと2ヶ月遅ければ、目の前に真っ白な湯気を作っていただろう)
P「結華が言ってたな、4月下旬くらいから約32週間でW.I.N.G.は幕を閉じる――」
P「――2ヶ月も後には、もう結果が出てるってことかよ」
P「いや、その前に最後の審査がある」
P(そう、文化祭だ)
P(今、恋鐘にはダンスのスキルを磨いてもらっている)
P(Vocal、Dance、Visual――なんでこんな発想に至ったかは自分でも不思議なのだが――の3要素に分けるとしたら……)
P「……今の恋鐘は圧倒的にDance不足だ」
P(これまでと違って、文化祭のステージではその辺のごまかしがきかない)
P(リアルタイムでもあるしな。緊張だってするだろう)
P「……」
結華「あっ、Pたんだ。おーい」
P「……」
結華「あれま、無視――とは考えにくいし、これは気づいていなさそうですかな?」
結華「やっほー、大丈夫?」ズイッ
P「わっ! び、びっくりした……」
結華「あっはは、ごめんごめん」
結華「Pたんったら、この三峰が呼んでるというのに無視するんだもん」
P「無視したわけじゃないんだ、ちょっと考え事をしてて……な。悪い」
結華「いいよ、私はわかってるから」
155 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 00:58:38.34 ID:cTyfLQsb0
結華「プロデューサーとして、頑張ってるって感じでしょ?」
P「はは……頑張ってるのは恋鐘のほうだけどな」
結華「Pたんだって頑張ってる」
P「そうか?」
結華「そーです。そうですとも」
結華「……」
P「……」
結華「なんかさ、こうやって話すのもなんだか久しぶりだよね」
P「え? 教室では他愛もない話をするじゃないか」
結華「他愛もない話だけじゃ味気ないとは思いませんかね〜」
P「っと……うん?」
結華「いーや、なんでもない。ほんと、ほっんとに、なんでもないですから!」
結華「期待しちゃだめだって、わかってるのに、なんだかなぁ」ボソボソ
結華「いつまでしてたんだろ、期待」ボソッ
P「どうしたんだ?」
P「結華のほうこそ、様子がおかしいように見えるけど」
結華「三峰のこと心配してくれるの〜? やっさしいなぁ、Pたんは」
結華「へーきへーき! 放課後は図書館で勉強してたから、それで流石にちょっと疲れたってだけですよーだ」
P「なんでちょっといじけた感じなんだよ」
結華「その理由は、今のPたんにはわからないだろうなぁ」
P「ははっ、そうか?」
結華「イエス」
結華「このままご帰宅……とはならなさそうだよね」
P「帰ってもいいんだが、気がかりなことがあってな」
結華「それは残念。不肖三峰、一緒に帰ろ♪ 的なイベントをご用意していたのですが」
P「すまん、また今度で」
結華「今度――か」ボソ
P「?」
結華「ううん、なんでもない! じゃね」
結華「頑張れよ、プロデューサー」ポンッ
156 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 01:11:24.79 ID:cTyfLQsb0
P(結華……どこか元気がなさそうだったな)
P(大丈夫だろうか)
P(気になるところではあるが……そろそろ俺は行かないといけない)
P(そろそろ、恋鐘のダンスの練習が終わる時刻だ)
P(レッスンルーム的に使わせてもらってる部屋に行って恋鐘に会いに行こう)
P(不調なときこそ、俺が対話してやらんでどうする)
P(俺は、プロデューサーだ)
〜校内アスレチックセンター 多目的ルーム〜
P(今日はダンス部が使っていてダンスレッスン場は空いてなかったんだよな)
P(まあ、俺たちは小規模だから、抑えること自体が難易度高めだが)
P「恋鐘、入るぞ。いいか?」コンコンコン
恋鐘「あ、P! よかよ〜」
P「失礼します」ガチャ
P「あ、今日ははづきさんはいないんだな」
恋鐘「Pははづきに会うためにここに来たと〜?」ムスッ
P「いやいや、そういうんじゃないって」
P(今日は自主レッスンだったというわけか)
P「恋鐘に会いに来たんだよ」
恋鐘「ほんなこて……ほんと!?」パアァッ
P(わかりやすいな。表情とかリアクションとか)
P(それが恋鐘の良いところでもあるんだ)
P(良いところ……好きなところ……)
P(いかんいかん、今はプロデューサーとして接しないと)
P「どうだ? ダンスの調子は」
恋鐘「もちろん、自分でも上達はしとーと思うばい」
恋鐘「ばってん、よう間違えてしまう箇所とか、まだできるようになっとらんステップとか――」
恋鐘「――いろいろと問題があるとよ」
157 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 01:26:25.38 ID:cTyfLQsb0
P「そうか……」
P(恋鐘の言う通り、上達はしてる。というか、それに関しては驚くほどのスピードだ)
P(しかし、だからこそ、できない部分が目立っている)
P(残すところあと1ヶ月ちょっと……時間はまだあるほうだと信じたいが、確実にできるようになるという保証もないからな……)
恋鐘「自分の至らんところはわかっとる」
恋鐘「1ヶ月もあればできるようになるかもしれんってことも」
恋鐘「ばってん、大事なのは本番」
恋鐘「これまでは、いろんなやり方で、Pとはづきの助けもあって、うまくいっとったけど」
恋鐘「次んステージで、うちは1人ばい」
恋鐘「これまでのうちん人生――」
恋鐘「――肝心なところでコケてしまうことが多かったばい」
恋鐘「そう思うと……怖くて……」
恋鐘「はづきに相談したら、みんな笑っち許してくれるって……」
恋鐘「……ばってん、ホントにそれでよかとかいなって」
P「恋鐘……」
恋鐘「実際、こん学校ん中でアイドルやってみたら……手ごわいライバルもいて……」
恋鐘「他ん人と比べたら……できんこと、ばっかりで……」
P「不安になってしまったんだな」
P(それはそうだ。なんたって、最大級の相手としてあの白瀬咲耶がいる)
P(ライバルっていうなら、他にもちらほらと)
P「はづきさんの言うこと、俺は間違ってないと思う」
P「ドジをしてしまっても、それは恋鐘の良さなんじゃないか」
P「恋鐘が頑張ろうとするから、そうなってしまうこともある、ってことだろう?」
P「周りの力量と比較する気持ちはわかる」
P「でも、恋鐘には恋鐘の良さがあるんだから、それでいいんだよ」
恋鐘「そう、なんかな……」
158 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 01:37:10.42 ID:cTyfLQsb0
P「大事なことを教えてやる」
P「恋鐘にはファンがいるんだぞ?」
恋鐘「ファン……」
P「そうだよ。恋鐘のことを応援してくれる人たちだ」
P「もちろん、俺だってそうだ!」
P(それ以上の気持ちは、今は、抑えて……抑えて……)
P「恋鐘が周りを気にして小さく丸まってしまったら、きっとファンはがっかりする」
恋鐘「Pもがっかりすると?」
P(うっ……そう返してくるか)
P「こ、恋鐘らしくないって、思ってしまうよ」
P(返答になっては……いないよな)
P(と、とにかく)
P「俺を含めたファンのみんなで、どこまでも一生懸命な恋鐘を応援してるんだ」
P「そんな恋鐘が好きだからな」
P(どさくさに紛れて「好き」という言葉を使った)
P(1人のファンとしてではない「好き」が何パーセントか混じってしまっていたかもしれない)
恋鐘「そっか……そうばい」
恋鐘「うち、自分が失敗することばっか考えて、Pもファンのみんなのことも、信じられてなかったんやね」
恋鐘「失敗とか、できんとか、そういうことやなかとよね」
恋鐘「みんなが喜んで……楽しんでくれるかが、一番大事なことやった!」
P「ははっ、気づいたか」
恋鐘「ありがとう、P!!」ギュッ
P「おっ、おい……」
P(ま、まずい、これは、非常に、その……)
P(アイドルとプロデューサーだからとかいう以前に物理的な“ショック”が身体を“包んで”くる……!)
恋鐘「やっぱ、うち、Pと一緒にW.I.N.G.優勝目指してよかったばい!!」ギュウウ
P「こ、恋鐘……」
159 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 01:52:37.32 ID:cTyfLQsb0
恋鐘「あっ、つい勢いでPにハグしてしもうた」パッ
P「く、苦しかったけど、悪くはなかったと思います」グッ
恋鐘「?」
P「い、いや、なんでもないぞ。ああ」
P「恋鐘、そういうのは勢いでやっちゃ駄目だからな」
P「恋鐘はアイドルなんだから」
恋鐘「違う違う! うち、Pが相手だから抱きついてしもたのよ!?」
恋鐘「誰にでもするわけじゃなか……」
P「それなら良い……いや良くはないが」
P(校内アイドルとはいえ、この学校の規模を考えると、スキャンダルは絶対にNGだ)
P「とにかく、気をつけるんだぞ」
恋鐘「わ、わかっとる……!」
P「次は文化祭だ! 気を引き締めていこう!!」
恋鐘「お、おー!!」
P「……」
恋鐘「はぁ」
恋鐘「もう……Pはホントにうちんこと好きなんか?」
P「えっ」
恋鐘「さっき、ファンとして〜みたいな話はあったけど」
恋鐘「長らくちゃんとPから言ってもらえてない気がするばい」
P「そ、それは――」
恋鐘「――P?」ズイッ
P「……す、好きです」ボソッ
恋鐘「え〜?」
P「言ったから! もう、言ったから! はい、今日は終了〜!!」
恋鐘「なんか釈然とせん……最近のPはプロデューサー然としててちょっと距離感感じとったんばい」
P「か、勘弁してくれ……」
恋鐘「ふふ〜、顔真っ赤やね〜! かわいか〜」
恋鐘「その反応で今日のところは許しちゃる!」
恋鐘「ん〜、こがん感じで話すのも久しぶりやなあ」
P「確かにそうかも――」
結華『なんかさ、こうやって話すのもなんだか久しぶりだよね』
P「――しれないな」
P(俺は、つい、恋鐘に会いに来る直前の出来事を重複させてしまっていた)
P(“久しぶり”の“会話”――両者の間は同音異義語のような温度差があった)
160 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 01:54:15.76 ID:cTyfLQsb0
>>159
訂正:
P(“久しぶり”の“会話”――両者の間は同音異義語のような温度差があった)]
→P(“久しぶり”の“会話”――両者の間には、同音異義語のような温度差があった)
161 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 01:55:48.70 ID:cTyfLQsb0
とりあえずここまで。
162 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga sage]:2022/10/12(水) 02:33:13.37 ID:zssBendDO
乙
163 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/12(水) 12:17:24.32 ID:M4o4AOsNo
おつー
164 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/12(水) 23:55:45.11 ID:cTyfLQsb0
11月。文化祭、アイドルステージ実施日当日。
ステージ開始まで残り数時間。
P(とうとうこの日がやってきた)
P(いや、W.I.N.G.本番とかではないんだが)
P「……」ソワソワ
P(そう、そうなのだ)
P(W.I.N.G.優勝を目指す以上、この文化祭でのステージは、単なる通過点に過ぎない)
P(これまでもどうにかやってきたし、恋鐘のアイドルとしてのスキルだって向上し続けてきた)
P(どうにかなる、まだまだこれからなんだから難しく考えすぎるな、いまできることをやるしかないじゃないか――)
P(――そう自分に言い聞かせるように頭の中で呟く)
P(俺は、難しく考えすぎなのだろうか)
P(もっと、恋鐘みたいに……)
P(……いや、“恋鐘みたいに”だって?)
P「……」
P「ふぅ……」
P「すぅ……はぁ……」
P「……よし」
P(恋鐘のところに行こう)
〜ステージ出場者控え室(大部屋)〜
P「恋鐘ー!」
恋鐘「……! あ、P!」
P「いよいよ、だな」
P(あまりプレッシャーをかけるなよ、俺)
恋鐘「う、うん! そうやね」
P(やはり緊張してる様子……なのかな)
P(いつもの自信満々の恋鐘、とはいかないみたいだ)
P(この前から、そういう様子は見せはじめていたものな)
P(それに、残り数時間――いや、今からだと3時間半くらいだが――というなんとも言えない長さの待機時間がじれったい)
P(タイムリミットまで余裕があるんだかないんだかわからない状況だと、何をしたらいいのかわからなくなって――)
P(――何ができるのか見失いそうになって、停止してしまう……そんな心理状態は人間ならあるはずだ)
165 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/13(木) 00:13:59.68 ID:MQWFQbfK0
〜ステージ出場者控え室(大部屋)付近、廊下の死角〜
P「恋鐘」
恋鐘「な、なんね?」
P「楽しめ」
恋鐘「ふぇ?」
P「お前、言ってただろ」
恋鐘『でもね、うち、絶対にアイドルになりたかとよ』
恋鐘『うちはアイドルになるために生まれてきたけん!』
恋鐘『そんためにも、まずはこん大会で自分がアイドルにふさわしかこと……証明したいんよ!』
P「自分はアイドルになりたい、アイドルになるために生まれてきたんだ、って」
P「それで、W.I.N.G.で自分がアイドルにふさわしいということを証明する――そう言ったじゃないか」
P「この学校に来て、恋鐘はアイドルとして動いてきただろ? それは間違いないんだ」
P「どうだ、アイドルは?」
恋鐘「アイドルは……」
P「やってて、どう感じた?」
恋鐘「楽しい……!」
恋鐘「いや、楽しかば超える――そんな何かやったばい!!」
P「そうだ、そうだろ? そうだっただろ?」
P「夢中に、なれてただろ」
P「いや、過去形じゃない」
P「今もなれる。そして、これからも!」
恋鐘「P!」
P「失敗がなんだ! 今できないことがあるからどうした!!」
P「そのための俺なんだ」
P「だから、俺がいる」
P「迷惑がかかるなんて気にしなくていい! むしろたくさんかけろってんだ」
恋鐘「うん、……うんっ!!」
恋鐘「ありがとー……P」
166 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/13(木) 00:37:51.87 ID:MQWFQbfK0
恋鐘「うち、やっぱりPに迷惑かけると思う」
恋鐘「ばってん、その100倍、1000倍、いや10000倍の自信とやる気と笑顔で乗り切ってみせるけん!」
P「ああ、それでこそ恋鐘だ」
P「らしくないのもいい。たまにはな」
P「でも、忘れちゃいけない。自分がどんなだったのかとかな」
P「いいぞ、その調子だ」
P「恋鐘はアイドルになるために生まれてきた――俺もそう思うよ」
P「忘れないでくれ、恋鐘は恋鐘として、今、いろんな人から憧れられているんだ」
恋鐘「そうやんね!」
恋鐘「周りば気にしたり、誰かん真似ばしようとしたり、自信ばのうなかして焦ったり止まったり――」
恋鐘「――そがんのはうちらしくないばいー!」
恋鐘「せっかく、Pと、はづきと、ファンのみんなと……この環境でアイドルになる道に乗せてもろうて」
恋鐘「やりたいようにやらんともったいなかよね!!!」
恋鐘「うち、なんかわかったような気がするばい!」
恋鐘「ホント、Pには感謝してもしきれん」
P「ははっ、じゃあ、是非そのアウトプットはステージ上で頼むぞ?」
恋鐘「まかせとって! 月岡恋鐘ちゅうアイドルば見せつけてやるばい」
恋鐘「こうしちゃおられん、直前まで練習と調整ばせんばね」
P(よし、火をつけることができたみたいだな)
P(プロデューサーとしての仕事は、とりあえずできたってところだろうか)
P(これで……いいんだよな)
P(いや、誰に聞いてるんだって話だが)
P「じゃあ、俺はステージ裏側の文化祭運営の人たちのところに行ってくるよ」
恋鐘「あ、ちょっと待って!」
P「ん?」
P「どうした?」
恋鐘「P、いま「プロデューサーとして」はこれでオーケーみたく考えとったやろ」
167 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/13(木) 00:55:53.63 ID:MQWFQbfK0
P「そ、そうだけど……」
恋鐘「「プロデューサーとして」やなかったら、Pはうちになしてくれたと?」
P「え、そんなこと急に聞かれてもな」
恋鐘「わかっとーばい。今のうちとPはアイドルとプロデューサーやってこと」
恋鐘「ばってん、そうじゃなかったらどうなんか、気になるとは変なことやろうか」
P「……」
P(ここでモチベーションの維持を図るためにも気の利いたことを言うのがプロデューサー――)
P(――だなんて考え方してるってバレたら、恋鐘は怒るかな、はは……)
P「恋鐘が一番安心できる……最も癒され慰められ安らげる……そんな方法があるなら」
P「俺は迷わずそうして、恋鐘を送り出してやりたいって、そう思うよ」
P「その方法ってやつがすぐに見つけられないのは、なんというか、情けない限りかもしれないが」
恋鐘「ううん、それが聞けただけでも、今のうちには十分たい!」
恋鐘「ステージ前やけん、しかも学校やし」ズイッ
P(恋鐘が近づいてきて――)
恋鐘「そがん、目立つようなことは、できんよね」コソッ
P「!?」
P(――耳元で囁かれた)
P(当然、というか、自明に……恋鐘の豊かな双丘が押し当てられてもいる)
P(心拍数が上がっていく――)ドキドキ
P(――しかし、それは恋鐘も一緒らしく、当てられた胸からは鼓動が伝わってくる)ドッドッ
P(まるで、恋鐘の想いが、俺をノックしているかのように)
恋鐘「えっへへ、これもPがうちの背中を押してくれたおかげやね!」
P「ははっ、か、勘弁してくれ……」
P「……まあ、それで元気になってくれるんなら何よりだけどさ」
恋鐘「Pはどうやった?」
P「俺か? ドキドキしっぱなしだよ、本当に」
P「自分の思いに気づかされた」
P「プロデューサーじゃない俺の、な」
168 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/13(木) 01:11:40.07 ID:MQWFQbfK0
恋鐘「それが聞けてよかったー……!」
恋鐘「もう、今はとりあえず満足!」
恋鐘「P、……いや、プロデューサー――」
恋鐘「――行ってくるばい!!」
P「ああ!」
P「行ってらっしゃい、恋鐘!!」
数時間後、文化祭アイドルステージ、月岡恋鐘。
P(俺は、スタッフオンリーのステージ脇のところから、恋鐘のステージを見守った)
P(安定して人気のある歌は何の問題もなく披露された)
P(やはりというか、これは大いに盛り上がって、1曲目に時点で、会場は恋鐘による流れで一気に温まった)
P(トークもあったが、恋鐘のキャラクター性が功を奏したのか、歌とは違う形で会場を沸かせてくれた)
P(与えられた尺――定められた時間内では、歌が数曲と間にいくらかのトーク……)
P(ラストは曲だった)
P(ただの曲じゃない。普通の歌とは言えない)
P(難易度が高めのダンスと一緒に行う歌だ)
P(歌による情緒とダンスによるメリハリ――)
P(――これらが融合して1つのパフォーマンスとして完成する)
P(恋鐘が気にしていた、苦手、あるいはできない振り付けやステップだったが……)
恋鐘「!?」ヨロ・・・
P「くっ、恋鐘……!」
恋鐘「っ」トッ、タタッ
P「即興のステップでミスをミスに見せなかった……だと」
P「そうか、恋鐘には、できたんだな。そういうことも」
P「ははっ、アイドルになるために、生まれてきたんだもんな)
P(……確かに、失敗はしたのかもしれない)
P(しかし、それはお手本通りに行った場合の話だ)
P(何をもって失敗と見なすかなんて、自分で決めることじゃない)
P(相手に成功だと言わせてしまえば、それは正真正銘正解なのだ)
P(文化祭での恋鐘のステージは大成功に終わった)
169 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/13(木) 01:13:28.59 ID:MQWFQbfK0
とりあえずここまで。
170 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/13(木) 12:48:05.05 ID:8VPlgVOJo
おつおつ
171 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/10/14(金) 07:05:25.16 ID:69zvSxju0
商品化まだーーー!?
172 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/17(月) 22:42:41.94 ID:TJ6cXK/80
11月のその後。
〜教室〜
P(W.I.N.G.に出場できるかどうかの連絡が来るのは11時前後――)
P(――つまり授業中だ)
P(審査・会議の都合と通達の自動送信システムの都合らしいが、何もそんな中途半端なタイミングで送ってこなくても……)
P(授業の中身は全くと言っていいほど頭に入ってこない)
P(今は恋鐘とW.I.N.G.のことで頭がいっぱいだからだ)
P(そこに学業が入る余地なんて……)
P「……」ソワソワ
P(あと1分くらい……だろうか?)
P(机の下にスマホを忍ばせてから早20分とちょっと)
P(通知を今か今かと待ち望んでいる)
P(やれることはやったんだ……恋鐘も、俺も)
P(それなら、答えはきっと――)
フォン
P(――メールアプリのポップアップ!?)
P(来た。ついに、来た)
P(通知センターの表示だけでは結果は見えない)
P(ちょうど途切れてしまっている)
P(押せ、押すんだ、俺)
P(アプリのアイコンを……押せ)
P(内容を、仔細を、結果を――)
P(――確認しろ)
P「っ……!」
P(スマホの画面に指が触れることがこれほどまでに緊張をもたらすことがあっただろうか。いや、ない)
P(反語表現。今、目の前で繰り広げられている国語の授業にはちょうどいい)
P(そんなことを考えて余裕ぶり、俺はアイコンをタップした)
ポチッ
173 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/17(月) 22:55:48.83 ID:TJ6cXK/80
P(結果は――)
ガタッ
P「W.I.N.G.出場……決定」
結華「ちょっ、どったのPたん? 急に立ち上がったりして」
国語教師「?」
P「あ、いえ、なんでも……ありま、せん」
P(な、なんでもないわけ、ないだろ!!)
P(出場決定だ! 恋鐘が、W.I.N.G.の舞台に出られるんだ!!)
結華「このタイミング……ははーん、そういうことね」
P「わ、悪い。ガラにもないよな、こんなの」
結華「ううん。いいと思うよ、三峰は」
結華「それが、今のPたんなんだよね」
結華「そういうPたんに、なったんだもんね」
結華「こがたん、W.I.N.G.出れるんでしょ?」ヒソヒソ
P「あ、ああ、そうなんだ」
P(正直、俺がじっとしていられないくらいだ)
P(そうだ、当の本人は――)クルッ
恋鐘「……」zzzZZZ
P「――って寝てる!?」
国語教師「おい、そこ騒がしいぞ。静かにしろ」
P「あっ、すみません……」
国語教師「あと、月岡は起きろよー」
恋鐘「……」zzzZZZ
国語教師「今日はあの辺が浮ついてんな、ったく……」ハァ
国語教師「そこ、月岡起こしてやれ――って言おうとしたけど、もう授業も終わりに近いし」
国語教師「はぁ、面倒だな。いいや、放っておけ。義務教育じゃないから自己責任ってことで」
P(休み時間になったら、俺が真っ先に起こしてやろう)
P(とびきりの朗報とともに)
174 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/17(月) 23:14:27.70 ID:TJ6cXK/80
授業終了後、休み時間。
P「恋鐘! 起きろって!」ユサユサ
恋鐘「ん〜? なんね〜、P〜」
P「W.I.N.G.だ!」
恋鐘「W.I.N.G.〜?」ポケー
P「W.I.N.G.への出場が決まったぞ!」
恋鐘「W.I.N.G.……出場……」
恋鐘「……えっ」
恋鐘「えええええええ!?!?」
恋鐘「ほ、ホントに!? うち、W.I.N.G.に出場できるん!?」
P「ああ、間違いない」
P「ちゃんと通知も来てる。ほら」
P(俺はスマホの画面を見せた)
恋鐘「本当だ……」
恋鐘「P、うち……うち……」
恋鐘「やっっっ……たぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!」
P(大喜びする恋鐘。周りもそれを見て賞賛の声をかけてくれている)
P「ああ、やったな!」
P「俺も、恋鐘と一緒に……いろんな人の助けを借りながら……」
P「ここまで来れて、嬉しいよ」
P「恋鐘のあらゆる面が、アイドルにふさわしいって、やっぱりそう思えるよ」
P「それに、何より諦めなかった」
P「何があっても元気で諦めなかった恋鐘だからこそ、ここまで来れたんだ」
P「おめでとう、恋鐘! 素晴らしいよ!!」
恋鐘「えへへ〜、ありがとー!」
恋鐘「けど、すごいんはうちだけじゃなかよ」
恋鐘「うちがPについていって、Pもうちについてきてくれて」
恋鐘「うちの隣でいつも応援してくれたから、ここまで来れたばい!」
175 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/17(月) 23:28:44.84 ID:TJ6cXK/80
恋鐘「うちと二人三脚で歩んでくれて、ばり感謝しとーよ!」
P「そうか」
P「俺の方こそ、曲がりなりにもプロデュースってのをしてみてるわけだけど」
P「一緒にやってくれて、感謝してる」
P(その言葉、その感情は、決して義務としてのプロデュース――義務感によるものではなかった)
P(俺の素直な気持ちだったのだ)
P「さて、恋鐘」
P「わかってると思うが、W.I.N.G.出場はゴールじゃない」
P「むしろ、ここからが新しいスタートだ」
P「より一層気を引き締めていかないとな!」
恋鐘「わかっとるよー!」
恋鐘「これからW.I.N.G.に向けて猛特訓して――」
恋鐘「――目指すはただ1つ、優勝あるのみたい!」
P「ははっ、その意気だ」
P「最後まで一緒に頑張って、優勝しような」
恋鐘「うん!」
恋鐘「待っとってよ、W.I.N.G.!」
恋鐘「うちとプロデューサーと――」
恋鐘&P(――はづき/はづきさんと――)
恋鐘「――ファンのみんなで」
恋鐘「絶対に」
恋鐘「ぜーったいに優勝しちゃるけんねー!!」
咲耶「……」
咲耶「フフ、やはりそうか」
咲耶「やはり、アナタは恋鐘をW.I.N.G.に導いた」
咲耶「私もそのステージに向かう」
咲耶「これからが楽しみだ」
176 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2022/10/17(月) 23:29:43.85 ID:TJ6cXK/80
とりあえずここまで。
177 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/10/18(火) 00:19:59.49 ID:I14ddSk3o
おつー
178 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2023/02/05(日) 00:32:46.26 ID:+BLy6Gou0
もう更新ない感じ?
179 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/15(水) 21:43:02.92 ID:tAtbXiB+0
>>1
です。
>>178
更新したいのですが、いろいろと体調を崩してしまい、ままならない状況にあります。
自分としては、続けていきたいという思いがあります(お話は考えているので)。
180 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/02/15(水) 22:07:57.98 ID:gzrS1jsLo
報告ありがとう
待ってます
181 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 16:46:23.19 ID:WeMf+2G/0
P(W.I.N.G.出場の切符――それを手にしてからが本番ではあるのだが)
P(長かった……そこに至るまでが、本当に)
P(いろいろなことがあった)
P(はたから見れば、あるいは順調にここまでの道のりを歩んできたように見えるのかもしれない)
P(しかし、俺と恋鐘の間には、確かで濃度の高いプロデュースの軌跡がある)
P(それは、誰かに知られる必要はない)
P(それでも、今を形作るには必要なものだった――)
P(――……そう思うんだ)
P(W.I.N.G.が本格始動してからは、これまでのようなこまめな活動や突拍子もないアピールなどはメインでなくなる)
P(教員や一部生徒・OBOGを含む学園関係者と、学外から特別に招いた人間を含むメンバーによって、構成された審査員たち……)
P(彼らがステージを評価することで、W.I.N.G.の準決勝と決勝は結果が決まる)
P(ある意味……というか、自明にこれまでよりもシンプルだ)
P(ただし、突破する難易度は――どうだろうか)
P(不思議と、心配していない俺がいる)
P(だって、恋鐘は、あそこまで完成されたアイドルになったのだから)
P(もちろん、まだまだ上を目指せるけど)
P(十分に成長したと言えるのではないだろか)
P(あの文化祭でのステージは、それだけのクオリティになっていたのだから)
P「……」
P(俺は、“W.I.N.G.出場”の通知を恋鐘に伝えた時のことを思い出す――)
P『恋鐘! 起きろって!』ユサユサ
恋鐘『ん〜? なんね〜、P〜』
P『W.I.N.G.だ!』
恋鐘『W.I.N.G.〜?』ポケー
P『W.I.N.G.への出場が決まったぞ!』
恋鐘『W.I.N.G.……出場……』
恋鐘『……えっ』
恋鐘『えええええええ!?!?』
恋鐘『ほ、ホントに!? うち、W.I.N.G.に出場できるん!?』
P『ああ、間違いない』
P『ちゃんと通知も来てる。ほら』
P《俺はスマホの画面を見せた》
恋鐘『本当だ……』
恋鐘『P、うち……うち……』
恋鐘『やっっっ……たぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!』
P(――今度は、あれ以上の喜びを、W.I.N.G.の優勝で分かち合いたいよな)
182 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 17:06:33.07 ID:WeMf+2G/0
W.I.N.G.準決勝当日。
本番前。
P「でかいな……」
恋鐘「ふえ?」
P「あ、いや、恋鐘に言ったんじゃないぞ」
P(恋鐘に言っても成立する台詞だったけど)
P(冗談はともかく)
P(俺が言ったのは、W.I.N.G.本番用のステージに対して、だ)
P(W.I.N.G.の準決勝と決勝は、文化祭ステージよりもさらに大きな、学園内アリーナで行われる)
P(下見もリハーサルも済んでいるが、冷静になって見てみると、息を呑んでしまう)
恋鐘「うう〜、もうすぐうちの出番やね……」
恋鐘「こげん大きか舞台で歌って踊るって考えっと、緊張するばい……!」
P「ああ、でも恋鐘はこの舞台に出られるだけのアイドルになったんだ」
P(俺が、保証する)
P(恋鐘のファンも、保証してくれるだろう)
P「いつもみたいに自信を持とう」
P(そうだ。恋鐘、お前はアイドルになるために生まれてきたんだろ?)
P「絶対やれるさ」
恋鐘「……そうやね! せっかくの大きか舞台なんやけん……」
恋鐘「緊張していつものうちば見せられんかったら、もったいなかばい!」
恋鐘「せっかくの大舞台やもん」
P「そうだ。だから……」
P・恋鐘「楽しまないと損だ!/楽しまんと損やもんね!」
P「ははっ」
恋鐘「えへへっ」
P「いつもの恋鐘の魅力を、見せつけてこい」
恋鐘「うん!」
恋鐘「うちにばっちりまかせとって!」
恋鐘「それじゃ、行ってくるばい!」
183 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 17:18:38.56 ID:WeMf+2G/0
準決勝ステージ終了後。
P「恋鐘……」
P(……やっぱり、言うことなしじゃないか)
恋鐘「P!」
恋鐘「見てくれちょった!?」
恋鐘「やっぱりうちはすごかろー!?」
P「ああ、いつも通り……いや、いつも以上のステージだったよ」
恋鐘「そうやろ、そうやろ!?」
P(文化祭の時からさらに成長していただなんてな)
P(俺は“プロデューサー”なのに、アイドルに驚かされてしまっている)
P(恋鐘のステージを見る審査員のことも、俺は見ていたが、あの反応で準決勝が通過できないわけがないというくらいだった)
P(だから……そう、だよな?)
恋鐘「うちはばりすっごいアイドルやけんね!」
恋鐘「歌も踊りも――」
恋鐘「――学校でのアピールも――」
恋鐘「――いっぱい、いーっぱい頑張ってきたけん」
恋鐘「こんくらい当たり前っちゃよー!」
P(そうだ……そうだよ)
恋鐘「この勢いで決勝も勝つたい!」
P「ああ、恋鐘ならきっとできるさ!」
P「決勝も頑張ろうな」
恋鐘「うん!」
恋鐘「うちの最高のステージ、みんなに見せつけてあげるけんね!」
P「ははっ、そうだな」
P(最高のステージを見せつけてやる、か)
P(お前のステージが最高じゃなかったことなんてないさ)
P(でも、だとしても――)
P(――もっと上を、見せてくれるんだよな?)
P(そうなんだよな? 恋鐘……)
184 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 17:50:46.66 ID:WeMf+2G/0
数日後の放課後。
〜学園内、校舎中庭〜
P「ふう……」
P(いつもの自販機でコーヒーを買い、一服する)
P(買ったのは、例の一際目立つデザインの缶のやつだ)
P「こうして少しは心を落ち着けたいと思うのも、W.I.N.G.決勝前のざわめきというやつなのかな」
P(そう)
P(言ってしまえば予想の範囲内だったが、恋鐘は準決勝を見事通過してみせたのだ)
P(だから、あとは、わずかな間を残して待ち構えている決勝という相手に備えるだけ)
P「はあ……」
「おや、何か悩み事かな?」
P「……咲耶」
P(悩み事、か)
P(その悩みの種はお前だと言ったら、咲耶はどんな反応を示すのだろう)
P「ははっ、どうだろうな」
P(俺はよくわからない返答をしてしまう)
咲耶「私でよければ相談相手に――というわけにもいかないか」
P「お見通し、か」
P(咲耶もW.I.N.G.の準決勝を通過した生徒のうちの1人だ)
P(恋鐘の準決勝通過と同じくらいに想定できたことだ)
P(今度は決勝で、完璧に、白瀬咲耶という人間に対する勝利をおさめないといけない)
P(そう考えると、心のざわめきが、収まるどころか激しくなっていく)
P(準決勝までの自信が一転して不安になってしまいそうになる)
咲耶「大丈夫かい?」
P「あ、ああ……」
P(……大丈夫、なのだろうか)
P(YesともNoとも返事できなかった)
咲耶「いま、この中庭にはアナタと私しかいない」
咲耶「それに、放課後のこの時間帯なら、ここを使って何かしようという者も少ないだろう」
咲耶「この学園の広さと設備を考えれば、集団で何かをするには、別の場所が適しているからね」
P「そうだな……」
咲耶「気分が悪いんじゃないのかい? 顔色がすぐれないよ」
咲耶「アナタの様子も気になるが……1人になりたいのなら、そうしたほうがよいのだろう」
P(……咲耶の言う通り、俺は体調が悪いのだろうか? うーん)
咲耶「私はアナタを尊重したい。席を外そうか?」
1. 「ああ、悪いが1人にしてくれ、咲耶」
2. 「いや、大丈夫だ。ここにいてくれ」
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
185 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2023/02/16(木) 17:52:26.51 ID:077zyhtZo
1
186 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 22:16:29.28 ID:WeMf+2G/0
P「ああ、悪いが1人にしてくれ、咲耶」
咲耶「わかった。アナタのことが心配な気持ちはあるが、そう言うのであれば仕方がない」
咲耶「では、私は失礼するとしよう」
咲耶「次にきちんと顔を合わせるのは……決勝で、かな」
P「……」
咲耶 クルッ
咲耶 スタスタ
P「……」
P フルフル
P(いや、これでいいんだ)
P(咲耶に甘えそうになったけど、今はそうすべきじゃない)
P(自分が誰なのかを思いだせ――)
P(――俺は、月岡恋鐘のプロデューサー、だろ?)
P(それなら、ライバルに依存なんてしてる場合じゃない)
P(咲耶であれば関係なく相談に乗ってくれるのかもしれないが、それはあくまでも友人どうしという間柄で成立するものだ)
P(あくまでも、ライバルアイドルなのだから)
P(乗りかかっていい船じゃない)
P「……よし」
P(落ち着け、俺)
P(当たり前のこと――今できることは、今できることしかない)
P(だから、それをやるんだ)
P(恋鐘のチャンネルと宣伝内容の整理でもしておこう)
P(あとは恋鐘を信じて、決勝のステージを待つのみだろうから)
P「恋鐘もそうだし、俺も、俺を信じてやらないとな」
P(月岡恋鐘という最高のアイドルを選んだ自分って奴を――)
P(――褒めてやらんでどうする)
P「お、恋鐘からチェインか」
P(自主レッスンの様子が送られてきている)
P(俺は、これでもかというくらいに褒めて励ますような返信をした)
187 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 22:31:50.35 ID:WeMf+2G/0
W.I.N.G.決勝当日。
本番前。
恋鐘「うちの出番、もうすぐやね……」
恋鐘「よし、うちの最高のパフォーマンスば見せて、完全優勝するたい!」
P「やる気充分だな、恋鐘」
P(まあ、それだけの自信につながるような軌跡を経て今の状態に至ってるわけだしな)
恋鐘「うん!」
恋鐘「見てる人みんなに最っ高のうちを届けるけん……」
恋鐘「Pも一瞬でもうちから目を離したらいかんよ!」
P「ああ、ちゃんと見てるよ」
P(目を離したことなんてないさ)
P(ずっと、心の目で、恋鐘のことを見ていたんだから)
P「ここまできた恋鐘なら、きっと決勝も勝てる」
P「俺は恋鐘の実力を信じてるよ」
恋鐘「んふふ、当たり前っちゃよ」
恋鐘「うち、出し切ってくるけんね!」
恋鐘「よぉーし、やったるばい!」
P(負ける気がしなかった)
結果発表。
優勝:月岡恋鐘
P「……あ」
P「優勝だ」
P「……」
P「そうか、そう、か。ははっ」
P(やった、やったぞ!)
P(結果が出てすぐ後には放心状態になってしまったけど)
P(少し経ってから、全身に喜びがいきわたるような、そんな感覚になった)
P(自分で言うのは照れくさいけど、恋鐘に一途なプロデューサーでいたからこそ、なのかな)
P(自分のことも、やっぱり褒めてやりたい)
P「まあ、でも、一番にはあいつを褒めてやらないとな」
188 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 22:41:55.03 ID:WeMf+2G/0
恋鐘 ダダダダダッ
恋鐘「Pー!」
恋鐘「ほら!」
恋鐘「見て!」
恋鐘「うちの優勝やって!」
P「ああ……ああ!」
P「やったな!」
P「恋鐘、本当におめでとう」
P(それ以外なんて言えばいいっていうんだ)
P(他の言葉が見つからない)
恋鐘「うん、ホンットにうれしか!」
恋鐘「うち、このおっきな学園で一番すごいアイドルやって認められたんやね……!」
P「そうだな」
P「優勝にふさわしい、最高のステージだったぞ」
恋鐘「えへへ、そうやろそうやろ!?」
恋鐘「ねえ、プロデューサー……うち、キラキラしとったよね?」
P「ああ」
P「恋鐘の右に出るアイドルはいないくらいに、な」
恋鐘「そう! そうたい!」
恋鐘「うちにアイドルをさせたら右に出るもんはおらんとよー!」
P(それが、アイドルになるために生まれてきた女、月岡恋鐘だ)
P(俺の自慢のプロデュースアイドル……!)
P(ははっ、俺がこんなことを思うようになるなんてな)
P(恋鐘が転校してくる前には想像もつかないような変化だ)
P(そうか、俺は――)
P(――これが本当の……)
恋鐘「どげんしたと? P。ボーっとして」
P「えっ? あ、いや、別に」
189 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 22:57:41.43 ID:WeMf+2G/0
表彰後、インタビュー等の時間。
〜ステージ外〜
P(1人になるとなんだか落ち着かないな)ソワソワ
P(咲耶の親衛隊に見つからないようにだけ気をつけておこう)
はづき「『W.I.N.G.』優勝、本当におめでとうございます!」ヒョコ
P「うわあっ?! びっくりした!!」
はづき「私も会場で見てたんですけど、発表の瞬間、思わず大声を出しちゃいましたよ!」
P(そ、そんなに……)
P(まあ、嬉しいんだけど)
P(はづきさんは恋鐘と2人でトレーニングやレッスンを行うことも多かったし、思うところはいろいろとあったのかもな)
はづき「今もまだ興奮しちゃってて、今日はもう眠れそうにありません!」
P「ありがとうございます、はづきさん!」
P「その気持ちは、俺にもわかります」
校長「本当によくやった」
P「って、校長先生まで?!」
校長「期待以上の結果を出してくれたな」
P「そんな……ありがとうございます」
はづき「ふふ。私と校長も一緒に見てましたけど、すごかったですよ」
はづき「Pさんのプロデュースする恋鐘さんが優勝したってわかった瞬間、校長が泣いてしまって……」
はづき「ステージをほとんど見れていませんでしたから」
校長「こ、こら! 彼の前でそういうことを言うな!」
はづき「それだけ喜んでたってことじゃないですか」
校長「そ、それはそうだが……」
校長「……とにかく」
校長「お前には、もっと祝うべき相手がいるんじゃないか」
P「……そうですね」
P「今日の主役は、他でもない恋鐘ですから」
校長「なら私たちのことは気にせず、早く行ってこい」
はづき「恋鐘さんのこと、いっぱい褒めてあげてくださいねー!」
190 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 23:12:45.00 ID:WeMf+2G/0
数十分後。
恋鐘「ふ〜、やっと解放されたばい……」
恋鐘「……ただいま〜」
P「恋鐘、おかえり」
P「ご両親への報告もできたか?」
恋鐘「……うん。ちょうどお父ちゃんとお母ちゃんに電話しとったんよ」
恋鐘「優勝したって……」
P「そうか」
恋鐘「ホントにうちが優勝したんよね……『W.I.N.G.』で……」
P「ああ……間違いないよ」
P「本当におめでとう! 恋鐘」
恋鐘「……んふ、んふふふ……! えへへ……!」
恋鐘「うち、うち……いつかこげん日が来ると思っとったばい〜!」
恋鐘「地元のみんなは間違ってなかった!」
恋鐘「うちはやっぱアイドルになるために生まれてきたとよ〜!」
P「ははっ、そうだな」
P(最後まで自分を信じ続けることができたからこそ、恋鐘はここまで来れたんだな……)
P「ああ、俺も恋鐘なら絶対優勝できると思ってたよ」
P「審査員たちだって驚かせてやった」
P「もう、恋鐘はこの学園で収まりきらないようなアイドルになったんだ」
恋鐘「そうやろそうやろ!?」
恋鐘「やっぱり見る人が見れば、うちの才能はわかるってことばい〜!」
P「だからこそ、恋鐘には、アイドルの中のアイドルになって欲しいんだ」
P「なるべくしてなれる……そう思うから」
恋鐘「P……」
P「俺、決めたよ」
P「これからも、恋鐘のプロデューサーでありたい」
P「恋鐘が学園から卒業しても、恋鐘をプロデュースする立場でいたいんだ」
P「プロデューサーとアイドルとして!」
191 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 23:28:57.77 ID:WeMf+2G/0
恋鐘「そっか、うちとPは、そういう関係……やもんね」ボソッ
恋鐘「アイドルとプロデューサー」
P「?」
恋鐘「ううん! なんでもなか!」
恋鐘「そんなことより! ほらほら、P!」
恋鐘「将来のナンバー1アイドルと握手せんでよかと?」
恋鐘「ほら手出して!」
P「あ、ああ……握手握手……」
恋鐘「うん! よっしゃ〜! 万歳もするばい!」
恋鐘「ほら、万歳〜! バンザーイ!」
P「お、おお……バンザーイ!」
P(なんだか、恋鐘……取り繕ってるというか無理に盛り上げようとしてないか?)
P(まあ、恋鐘が楽しそうなら、それでいいんだけど)
恋鐘「うん! これでPとは、改めて喜びを分かち合えたばい!」
恋鐘「あとは、地元のみんなにもうちのライブば見て欲しいんよねー」
P「そうだよな。恋鐘を正真正銘のプロのアイドルにしてみせたら、長崎への凱旋ライブだってできるさ」
恋鐘「こっちの仕事が片付いたら絶対にやりたい!」
恋鐘「どっちのみんなも大事やし!」
P「恋鐘……もうお前は立派なアイドルになれてるよ」
P(俺にとっては、アマチュアかプロかなんて些事で)
P(恋鐘が輝いて見えるんだ)
恋鐘「えへへ……褒めてもなんも出んけど」
恋鐘「もっと褒めるばい〜……」
P ドキッ
P(か、可愛い……!)
P(そうだよな、俺たち好き合って――)
P(――いや、せっかくの俺たちの夢のためには、その想いは一旦心の中にしまっておこう)
192 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 23:44:57.66 ID:WeMf+2G/0
恋鐘「Pがおらんかったら、きっと、うち、途中で迷走してどうにもならんかったと思うばい」
P(そうだ、俺は恋鐘を導く立場として、しっかりしないといけない)
恋鐘「やけん、ホントに感謝してるんよ!」
恋鐘「ホントにホントにありがとーね! P!」
P「ああ、俺もいつも自信たっぷりの恋鐘だったから、自信を持って全力でプロデュースできたんだ……」
P「そんな恋鐘のプロデューサーで本当によかったと思ってる」
P「それで、これからも、そうでありたいんだ」
恋鐘「ええ〜? もう……そんなこと面と向かって言われちゃ、うち、えへへ……照れるばい〜……」
P(可愛い)
恋鐘「Pに言ってほしい言葉は他にもあるっちゃけど、いまはそこまで欲しがるんは欲張りがすぎるけん」ボソッ
P「え?」
恋鐘「な、なんでもなかよ!」
P「そ、そうか?」
恋鐘「うん!」
P「ははっ」
恋鐘「えへへっ」
P「恋鐘のアイドル活動を支えると何かと退屈しないんだ」
恋鐘「あ! それみんな言うてくれるばい〜! うちといると楽しいって!」
恋鐘「それで、そうやってうちを見て楽しんでくれる人をこれからもっともーっと増やしたい思うんよ〜!」
P「恋鐘との時間は本当に良いものなんだよ」
P「これが、俺にとっては……仕事になったらもっと充実するんだと思う」
P「だから、そうなれるように、俺はこれから頑張ろうと思うよ」
恋鐘「P、うちのために頑張ってくれると?」
P「もちろんだ」
P「これまでも、これからも!」
恋鐘「日本中、いや世界中を、うちのファンでいっぱいにするばい!!」
P「俺たちはまだ始まったばかりだからな!!!」
193 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2023/02/16(木) 23:50:32.61 ID:WeMf+2G/0
月岡恋鐘のノーマルエンド(優勝)にたどり着きました。
共通ルート直後の選択肢に戻ります。
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>Now Loading...
----------------------------------------------------------------------------------------
(
>>50
〜
>>51
の後から)
P(結華以外で俺とかかわりがあるのは……――)
P(――恋鐘、咲耶、霧子、そして摩美々)
P(これまでに彼女らと過ごしてきた時間を振り返ってみても……うん、アイドルとしては申し分ない人たちばかりだな……)
P(結華も入れれば5人。この中から、プロデュースする相手を選ぶ……か)
P(俺は……)
1. 恋鐘を選ぶ。
2. 摩美々を選ぶ。
3. 結華を選ぶ。
4. 咲耶を選ぶ。
5. 霧子を選ぶ。
6. ――この選択肢はロックされています――
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
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