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【シャニマス】P「よし、楽しく……」-L'Antica編-【分岐有】
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19 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 01:59:04.47 ID:S2x3nOyB0
P「……」
P(白瀬咲耶――――彼女なら、W.I.N.G.に出てもおかしくない)
P(この学園自体、高等部がマンモス校だからライバルも少なくないだろうが……)
P(……それにしても抜きん出た存在であるように感じられた)
P(格好良い王子様として少なくない数のファンが既にいるようだが、果たして彼女の――咲耶の魅力はそれだけだろうか?)
P(そう、例えば可愛――……)
結華「……――たん。……Pたんってば!」
P「え」
結華「問題、前で解けって先生に言われてるよ?」
P「あ……そうか。すまん、ボーっとしてた」
結華「もー、しょうがないなー」
P「すみません、今やります」スタスタ
P(何を考えているんだ、俺は)
P(魅力の引き出し方……なんて)
P(これじゃあ、まるでアイドルのプロデュースじゃないか)
帰りのホームルーム。
〜教室〜
はづき「はい、席についてくださいね〜」
はづき「では、まずは明日の授業に関する連絡から――……」
はづき「……――授業については以上になります。委員会や部活動の情報共有はありますか〜?」
シーン
はづき「大丈夫みたいですね〜」
はづき「最後に、私から1つお話があります」
はづき「先日、たまたま用事があって夜にセンター街を通ることがあったのですが」
はづき「どう見ても高校生……という子たちが攻めた格好でうろついているのを見ました」
はづき「中には、かなりパンキッシュな格好で、しかも1人でいる女の子も……その時は急いでいて、私から注意をするということはなかったんですけど」
はづき「皆さんも高校生で、怖いものもまだまだ知らないでしょうから、危ないことにならないようくれぐれも気をつけてくださいね〜」
はづき「この学園は特に校則も無く自由な環境……だからこそ、善悪の判断をきちんとできるようにしてください」
はづき「私からは以上です〜」
キリツ、キヲツケ、レイ
サヨウナラー
P「結華はこれからどうするんだ?」
結華「お、Pたん、三峰と一緒に帰りたい感じかな?」
P「え、それは……」
結華「できるなら……Pたんの愛に応えてあげたい……! けど、今日はちょっとね」
結華「まあ? 三峰、もともと今日の放課後は図書館で勉強していこうって思ってたからさ」
結華「心苦しいですが、今回は三峰のことが大好きなPたんのお誘いを断らなければならないのです……!」
P「いいんだ。気にしないでくれ」
結華「……気にしないでくれ、って何さ」ボソッ
P「こっちこそ予定があったのにすまなかったな。じゃあ、また明日」
結華「うん……じゃあね、Pたん」
20 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 02:01:23.20 ID:S2x3nOyB0
>>18
括弧について、
』(2重カギ括弧)
とすべきところを
」(カギ括弧)
としてしまっていたので直しました。
21 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 02:15:53.61 ID:S2x3nOyB0
〜校内掲示板前〜
P「……」
P(1人ぼっちで暇だと、こういうのを特に意味もなく眺めてしまうな)
P「……あ」
P(中等部の実力テストの順位が掲載されているな)
P(まあ、中等部の知り合いなんていないけど)
結華『そういえば、過去には中等部の子が出たって話もあるんだよね』
P(まだ名前を知らないな……)
P(まあ、きっと、この順位表のどこかにいるんだろう)
P「……」
P(例によって、特に意味もなく順位表の名前を眺める)
P(上位から順に)
P「……」
P「……ゆう、こく?」
P(珍しい名字の生徒がいて、目に留まる)
P(幽谷霧子――ゆうこくきりこ、と読むんだろうか)
P(かなり上位にいるな……トップクラスじゃないか)
P(中等部は少人数とはいえ、そもそもうちの学園の中学入試の難易度が非常に高い)
P(高等部とは違うのだ)
P(だから、その中でこれなら、結構すごいんだろう)
P「って、どこの誰かもわからない生徒のことだけど」
P(帰るか……)
P スタスタ
〜校門前〜
P「……」スタスタ
P「……ん?」
P(前方に女子の集団――)
P(――それは、恋鐘を囲んでいた)
P(転校生に興味を示した女子生徒たちが群がっているんだろう)
P(恋鐘も、たぶん楽しそうに話している)
P「……」スタスタ
P(ふと)
恋鐘「……!」
P(目が合う)
恋鐘 オロオロ
P(こんなとき、どうしていいのか、わからない)
P「……」
P(すぐに女子集団に流され、恋鐘の視線もこちらを向かなくなった)
P「……なんなんだろうな、これ」
P(今日は疲れる1日だ)
ポツ・・・ポツ・・・
P「雨、か……」
22 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 02:47:50.31 ID:S2x3nOyB0
翌日。
2時間目。
〜渡り廊下〜
P「……痛」
P(体育のソフトボール中にスライディングしたら結構擦りむいてしまった……)
P(そのまま気にせず続行するにしては派手な傷口だということで、今は保健室に向かっている)
P「保健室……」
結華『その子に会いたかったら、保健室に行くといいかもしれないよ?』
P(結華曰く、W.I.N.G.に出てもおかしくないレベルの子にエンカウントできるかもしれないのだとか)
〜保健室前〜
P(ここ……だよな)
P(よく考えたら、今までほとんど来たことがなかったな)
P(まあ、その方が良いのかもしれないが)
P(扉を開けようとすると――)
「ん……と」
「……できました……! ……ふふ、包帯、いつもより上手く巻けたかも……♪」
P(――先客がいるようだった)
P(保健室の養護教諭……にしては雰囲気がそぐわないような)
P ガララ
〜保健室〜
P「失礼します」
「……あっ……」
P(保健室の中には、女子生徒が1人いるだけだった)
P(そして、目が合う)
P「……」
「……」
P(……あ、いかん。つい見惚れてしまった……)
P「いや、急にすまない。軽く怪我を――傷ができたもので、処置したいんだが」
「……っ! 血が出ちゃってます……!」
「早くなんとかしないと……わたし、消毒とか応急処置とかできるので、そこに座ってください」
P「あ、ありがとう……」
P(そういうのは養護教諭の仕事じゃないのか……? 保健室にいる女子生徒ということは、保健委員とかなんだろうか)
P(でも、今は授業中だしな……)
「これで……、とん……とん……」
P「っ……」
P(消毒液がしみる)
「ご、ごめんなさい。必要なことだから……」
P「いいんだ。気にしないでくれ」
「あとは……包帯、です」
P(ん? 絆創膏とかじゃないのか?)
「まき……まき……♪ ……ふふ」
P「包帯を巻くの、上手なんだな」
23 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 03:13:35.63 ID:sAzrDOGpO
「はい……!」
P「絆創膏じゃなくて、包帯なのか」
「この包帯は……特別なんです」
P「お、おう……」
P(医療関係の最新の商品とかなのかな)
「……っしょっと。これで大丈夫です」
P「ありがとう。助かる」
「いえ……そんな」
P(目の前の女子生徒のことを見ていると、あることに気づく。名札をつけていたのだ。すると、そこに書かれた文字が顔を覗かせた――漢字とふりがなのセットで)
P「ゆうこく、きりこ……?」
「あっ……はい。わたしの名前……あ、もしかして、これ……ですか?」
P「ああ、その名札を見てた」
霧子「こうすれば、迷わずわたしの名前が読めるかな……って」
P「確かに、珍しい名字だもんな」
P(珍しいという感想は、今に始まったことではなくて、昨日に掲示板で名前を見かけたときからのものだが)
P「……それじゃあ、授業中だし、戻るとするよ」
霧子「そ、そうですか……。……お大事に」
P「ありがとう」
ガララ
バタン
〜渡り廊下〜
P スタスタ
P(ミステリアスな雰囲気を醸し出している子だったな。つい、魅了されてしまった。結華が言ってた子は、あの子なんだろうか)
P(なんとなく、照れというか、気恥ずかしさというか、そういう感情でさっさと保健室を後にしてしまったが)
P「……」
P(人生で初めて、保健室のリピーターになりたいと思った……なんて)
P「あ」
P(結局、あの子が授業中なのにあそこにいた理由はわからなかったな)
P「まあ、いいか」
P(とりあえず、自習時間という名の自由時間に行きたいと思う場所が増えた)
放課後。
〜教室〜
結華「Pたん〜、三峰のお願い……聞いて欲しいなっ」
P(今日はテンション高いな)
P「どうしたんだ?」
結華「今日、センター街の方で並びたいグッズの列があるんだけど、それと同時にもう1件行かねばならない戦地があってだね」
結華「ご存知の通り、三峰は分身の能力は有しておりません! なので――」
結華「――Pたんには、お使いをお願いしたいと思います……! もちろん、これは三峰の借りだから! とりあえず、どうかな?」
P「まあ、別に大丈夫だ。承ろう」
結華「やったやったー! ありがとうPたん!!」
P(センター街……か。昨日のはづき先生の話を思い出すな)
24 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 03:17:56.10 ID:sAzrDOGpO
とりあえずここまで。依然として共通ルートの途中です。
Pがキャラクターたちと出会うところからなので、もうしばらくは1本道です。いきなり舞台が学園になっているのは……まあ、そのうち……。
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/11(日) 03:22:04.92 ID:TjUYDvySo
おつおつー
26 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 23:05:43.72 ID:S2x3nOyB0
〜センター街〜
P(すごい数の人だな……)
P「っと、どれどれ……」
P(結華のお使いの行き先をスマホで確認する)
P「……あ、そろそろだな」
1時間後。
P「はぁ」
P(長蛇の列に並んで、ようやく結華が欲しいと言っていたものが手に入った)
P(疲れたし、早く帰ろう……)
P「……」
P(行きと違って、疲れはあるものの心には余裕がある)
P(辺りを見回すと、はづき先生の言っていたこともわかるような気がする)
はづき『どう見ても高校生……という子たちが攻めた格好でうろついているのを見ました』
はづき『中には、かなりパンキッシュな格好で、しかも1人でいる女の子も……その時は急いでいて、私から注意をするということはなかったんですけど』
はづき『皆さんも高校生で、怖いものもまだまだ知らないでしょうから、危ないことにならないようくれぐれも気をつけてくださいね〜』
P(まさに、そういう感じの子たちが多くいた)
P(中には明らかに不健全な感じを漂わせている人物もちらほら……)
P「……帰るか」
P(俺に何かできることがあるわけでもないだろう)
P(無関心を装うのが一番楽だし安全だ)
コロコロ・・・
P「ん?」
P(ふと、何かが転がる音)
P クルッ
P(何気なく音のした方を見ると、そこには――)
P「!」
P(――結華から頼まれていたグッズの1つが転がっていた)
P(紙袋いっぱいに詰めていたから、小さいキーホルダーが落ちてしまったみたいだ)
P「っと、待て待て……!」
P(丸みを帯びているものだから、どんどん転がっていってしまう)
カラン・・・
P「……」
「?」
P(人の足に当たって、キーホルダーは動きを止めた)
「何これ……」
「キーホルダー……?」
P「あ、それは俺が落とした物なんだ」
P「ありがとう、拾ってくれて」
P(返してもらおうと、手を広げて差し出した)
「……」
P(差し出して……いるのだが)
「……ふふー」ニッ
27 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/11(日) 23:34:56.91 ID:S2x3nOyB0
P「あの……返してくれないか?」
「えー……どうしようかなー」サッ
P(キーホルダーを持ったまま後ろ手を組まれてしまう)
P「おいおい……勘弁してくれよ」
「お兄さんはー、これを返して欲しいって言ってるんですかぁ?」グッ
P(何かを握ったような手をこちらに差し出してきた)
P「ああ、そうだ」
「ふふー……わかりましたぁ。どうぞー」パッ
P「ちょっ、そのまま話したら落ち――……」バッ
P(……――何とかキャッチ――)パシッ
P(――とはならなかった)
P「え」
P(そこには、“何もなかった”)
P(そもそも、“何も落ちてなどいなかった”)
P(俺が掴んだのは――無だ)
「そうですかー、お兄さんは私の握った空気が欲しかったんだぁ」
「変わってますねー」
P「なっ……!」
P(……なんてやつだ)
P(差し出された方とは逆の手が出され、その中にキーホルダーがあるのがわかった)
「ふふー」
P「……」
P「……大切なものなんだ」
「あらら……そうでしたかぁ」
P「ああ。俺にとって、じゃないけどな」
「?」
P「俺はそれを託されただけだ」
P「それを待ってる人がいるから、ちゃんと届けないといけない」
「……」
P「信頼と期待で、任されているから」
P「それに応えたいんだ」
P「たとえ小さいことであっても、な」
「……期待」ボソッ
P「……」
「……わかりましたぁ。しょうがないんで、返しますー」ポイッ
P「わっ……! とと……っよし」パシッ
P(今度こそキャッチすることができた)
P「俺はいいけど、もうこういうイタズラはするんじゃないぞ? タチの悪い奴が相手だったらどうするんだ」
「別にー……、悪い子だし普通ですケドー」
P「悪い子だからって、危ない目に遭っていいわけじゃないんだ」
P(なぜだろう、いつになくお節介だ。まるで、俺じゃないみたいに)
「話は終わりでいいですかぁ? 私、もう行きますねー」
P「あっ、ちょっと待って!」
28 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/12(月) 01:07:48.95 ID:RKrSMy7s0
「……まだ、何か用があるんですかぁ?」
P「もういい時間だし、こんなところに1人で居続けちゃ危ないんだ」
「それ、さっきも似たようなこと言ってましたよねー」
P「ああ。危なくて放っておけないよ」
「……」
「……お兄さん、変わってますねー」
P「普通は心配するよ」
P(これが俺の普通なのだろうか)
「……初めて会った相手に、こんなしつこく叱る人、フツーとは言いませんよー?」
「……」
P「……」
「まぁ、そんなに言うなら、お兄さんに免じて今日は帰ってあげますねー」
P「そ、そうか。それは良かった」
「それではぁ、さよーならぁ」スタスタ
P「……」
P(……駅の方に向かって行ったな。ちゃんと帰宅してくれるといいんだが……)
P「あ、俺も帰らないと」
P(彼女が行った方向に、俺も歩いていく)
P(他人とこれだけ話したのは、いつぶりだろうか)
P(不思議と、彼女とのやり取りで疲れを感じることはなかった)
P(むしろ、それまでの疲れが取れたとすら……)
P「……ははっ」
P(俺は――楽しかった、のか?)
翌日。
〜学校 教室〜
P「結華。頼まれていたやつだ」
結華「ありがとうPたん〜! これで三峰は一片の悔いもありませんよ〜〜」
P「ははっ……そんな大げさな」
結華「それに……ちょっとオシャレな紙袋だね?」
結華「まるで中身の想像がつかないくらいには、ね」ミミウチ
P「あ、ああ……まあな」
P「そのほうがいいだろ?」
結華「……! うん、そう……だね」
結華「ありがとう、Pたん」
P「どういたしまして」
結華「このお礼は必ずするから……! 三峰、恩を忘れるような人間ではありませんし」
P「わかってるって。まあ、見返りを求めてやったわけじゃないけどさ」
結華「またまた〜? お礼されたらPたんだって嬉しいでしょ?」
P「それは……まあ」
P「でも、さ。なんていうか」
P「結華のためにやったってだけなんだ」
P「結華が喜んでくれたし、俺はそれだけでいい」
29 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/12(月) 01:40:41.01 ID:RKrSMy7s0
結華「……!」
結華「Pたん……今のはさぁ……ちょっとさぁ……」
P「えっ、なんだ?」
P(何かまずいこと言ったか……?)
結華「は〜……自覚ナシとか……これだから……」
P「す、すまん……?」
結華「そこで謝っちゃうとことかも、ぜーんぜんわかってない……」
結華「Pたんってば、存外タチ悪いよね〜」
結華「……これは苦労しそうだなぁ」
2時間目終わり頃。
〜廊下〜
P スタスタ
P(今日の体育は思ったよりも早く終わったな……どこか適当な場所で休むとしよう)
P スタスタ
「あ、フフ……P」
P「……っとと」
P(誰かに呼び止められた)
「おや、こんなところで、どうしたんだい?」
P「え? いや、その……」
「おっと、いきなりで驚かせてしまったかな。私は――」
咲耶「――白瀬咲耶だ」
P「いや、それはわかる」
P(間違えようがない)
咲耶「覚えてくれていたようで嬉しいよ。なにしろ、まだ一度しか話していなかったからね」
P(むしろ、一度でも話せば忘れなさそうだが)
P「ははっ……そっちこそ、俺なんかのことをよく覚えてたな」
咲耶「俺なんか――などと卑下するものではないよ。アナタはもっと胸を張っていいんだ」
咲耶「それに、“そっち”……ではないだろう? ちゃんと、名前で呼んで欲しい」
P「す、すまん。……咲耶」
咲耶「フフ……なんだい?」
P「あ、その……呼んだだけだ」
咲耶「構わないよ。口実が無くても一緒にいられる関係というのは、心地よいものだからね」
咲耶「あるいは……、一緒にいるために口実を作りたい――そう思える関係性もいい」
P「ああ……」
咲耶「……と、私としたことが配慮に欠けていた」
咲耶「もし先を急いでいたというなら、遠慮なく行くといい。アナタに迷惑をかけて印象を悪くしたくないからね」
P「別に気にしてないよ。単に、体育が早く終わったから、どこで休もうか考えていたところなんだ」
咲耶「良かった。それなら――……」
「おーい!!!」タタタタタ
P「ん? ……って、おいおい……!」
P(ぶつかる……避けられn……)
恋鐘「いぇ〜い!」ドンッ
30 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/12(月) 02:12:22.27 ID:RKrSMy7s0
P「うわぁっ!?」ヨロッ
P「……っとと」
P(なんとかバランスを取ることができた)
P「ど、どうしたんだ……恋鐘」
恋鐘「どがんしたっていうか、Pの背中が見えたけん! 挨拶しようと思っただけばい!」
恋鐘「あ、お取り込み中やった? うち、邪魔してしもうたかな?」
咲耶「……いや、気にすることはないさ」
P「悪いな咲耶。いきなり知らないやつが飛び出てきて、驚くのも無理ないよ」
恋鐘「ちょっと〜、うちをゲテモノ扱いせんといて! ただ挨拶しただけやろ?」
P「あれは挨拶じゃない。突撃と言うんだ」
恋鐘「Pが相手なら遠慮はいらんばい!」
恋鐘「うちにはわかる! Pははらかいとらん――怒ってないもん!」
P「そりゃ怒ってはいないけど……」
恋鐘「えっへへー、それならよか!」
咲耶「P、2人の世界に浸っているところ悪いが……こちらは?」
P「あ、そうだな。紹介するよ。俺と同じ学年・クラスの月岡恋鐘だ。この前、九州からここに引っ越してきたんだと」
P「恋鐘、1年生の白瀬咲耶だ。もしかしたらもう知っt――」
恋鐘「――ばりかっこよか……」
恋鐘「実際に見ると圧倒されるばい……やっぱり、噂どおりやった」
P「転校生でも知ってるとは……さすがだな、咲耶」
咲耶「フフ、それほどでもないさ」
P(いや、それほどでもあるよ)
恋鐘「W.I.N.G.に出られたら絶対に手ごわかライバルになるって踏んでたんよ」
P(そ、そういうことか……)
咲耶「私は、別にまだエントリーすると決めたわけじゃ……」
恋鐘「あ、うと? それなら安心やね」
恋鐘「Pに無事優勝するうちん姿ば見せられるばい」
咲耶「……今、Pに、と言ったかな?」
恋鐘「そうよ? Pはうちの大事なファン1号やし、Pのために頑張る言うても過言やなかばい!」
恋鐘「それに……頑張るうちば見て、きっと……」
恋鐘「……えへへ」
咲耶「……。……P」
P「どうした?」
咲耶「W.I.N.G.優勝……目指そうと思う」
恋鐘「えぇぇ〜〜!?」
P「突然だな……なんでまた」
咲耶「それをアナタが聞くのかい? いや、私がW.I.N.G.優勝を志す意味を気づかせてこそ、か……」
咲耶「挨拶が遅れたね。Pとは固い絆で結ばれている、白瀬咲耶だ。よろしく」
P(初めて聞いたぞ。というか、どんな自己紹介だよ)
恋鐘「何を〜〜!? Pが惚れ込んだアイドル、月岡恋鐘ばい!」
P(なんか、勝手にかなり入れ込んでることにさせられてるんだが)
P(この2人ってこんな感じになるのか……。なんだか、もっと仲良くできる気がするんだけどなぁ)
P(……いや、なんでそんなことわかるんだって話、か)
31 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/12(月) 02:13:38.87 ID:RKrSMy7s0
とりあえずここまで。
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/12(月) 07:14:39.86 ID:ifzbj8Bjo
おつー
33 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/18(日) 01:05:20.27 ID:57JGyBZa0
>>30
誤植訂正:
恋鐘「あ、うと? それなら安心やね」
→恋鐘「あ、そうと? それなら安心やね」
34 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/18(日) 01:37:17.90 ID:57JGyBZa0
昼休み。
〜教室〜
P(昼食後、タイミングを見計らって、結華にノートを返すことにした)
P「結華。これ、借りてたノートだ。ありがとう、助かったよ」
結華「いえいえ、どういたしまして〜」
P「ああ」
P(結華にノートを返して、自分の席に座る)
結華「……」
P「……」
結華「…………」
P「…………」
結華「……っはは」
P「ど、どうしたんだ?」
結華「いや、別にー?」
結華「何もすることないならさ、なんかお話しようよ、Pたん」
P「何か……か。そうだな……」
P「W.I.N.G.についてもう少し教えてくれ」
結華「おっ! Pたんもついに“こっち側”かな?」
P「ははっ……そうなれるように頑張るよ」
P「W.I.N.G.のことを知るために、まずは出場する側の視点に立ってみようと思ったんだ」
P「過程を知っているほうがより応援できるんじゃないかって」
結華「いいねいいねー、そうこなくっちゃ」
結華「正確にはね、W.I.N.G.っていうのは最終決戦場みたいなものなんだよ」
P「まずはそこにたどり着く必要があるってことか」
結華「そういうこと」
結華「だから、出場資格を手に入れないといけないのです」
結華「エントリーしてから開催までに4回審査があって、学校生活の中でどれだけアピールできるかが重要なんだけど」
結華「審査までに一定のランクに達してないと……」
P ゴクリ
結華「……なんと! 出場資格を失っちゃう!」
P「厳しい戦いだな……」
P「エントリーした子が1人で乗り越えるのはかなり大変なんじゃないのか?」
結華「そうそう。自分の周りに協力してくれる人がいないとねー」
結華「W.I.N.G.を目指す子だって自分だけじゃ自分をどうアピールしたらいいかなんてわからないかもしれないし」
結華「信頼できる人たちと一緒にゴールを目指すのが王道ってわけ。まさに、プロデュース、プロダクション、ってやつ?」
P「なるほど」
P(恋鐘は転校してきたばかりだけど、その辺は大丈夫なんだろうか)
P(転校生だから周りに人はたくさんいるかもしれないが……)
P(結華の言う通り、信頼できるかどうかは重要だろう)
P(まだここに来て日の浅い恋鐘にそういう人はいるのか……?)
P「……」
P(咲耶は既に人気を確実なものにしているし、おそらく自分の魅せ方もわかっている……W.I.N.G.を目指すのは難しくないのかもしれない)
P(ただ、咲耶のことを応援するだけでなく、見守ることのできる人の存在が必要な気がするな。あの感じだと)
35 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/18(日) 02:05:59.93 ID:57JGyBZa0
結華「三峰はそんな“アイドル”たちに踏み込んだ所までは行けないけど、推しがいれば精一杯応援しちゃうよ……!」
P(結華はお客さん目線って感じだな)
P「結華のアイドルに対するエネルギーはすごいからな」
P(ふと、結華に出会ったときのことを思い出す)
P《予備校から出たタイミングで降ってくるとは……ツイてないな》
P《どこか雨宿りできそうなところは……あ。あった》
P《よし、ここなら濡れないか……ずいぶん大降りになってきたな》
パシャパシャ
『ひゃーっ、雨とか聞いてないってー!』
『グッズ濡れてないよね? 大丈夫だよね? えっと……』
P《あの子も雨宿りか……》
P《……ん? おおっ、すごいなあのカバン。何かのグッズがぎっしりと詰まっている……アイドルのイベント、だろうか?》
『こっちは平気だし、これも……!』
『……ん、全部おっけー! 良かったぁ』
P『……』
『あ、すみません騒がしくしちゃって! うるさかったです……よね?』
P『え? ああ、いえ。大丈夫ですよ』
『それなら良かったです……』
P『……』
『……』
『……あの。その制服って』
P『これですか? 予備校の帰りで、制服で行ってたので』
『なるほどです! っていうか、あの』
『同じクラス……だよね?』
P『え?』
『……三峰、結華です。聞いたことない?』
P『ああ……』
P《聞いたことはあった。まだ入学してそんなに経ってないっていうのに、もう同じクラスの奴を把握してるのか》
P『俺のこと、知ってたんだな』
結華『そりゃあ、まあ? クラスメイトですし? なんなら席も近いし』
P『そうだったか……』
結華『そうなのですよ』
P『三峰さんはアイドルが好きなのか?』
結華『……! うん! あ、気になりますかー?』
P『すごく大切にしてるみたいだったし、アイドルの印刷が見えたから』
結華『そうそう! 無事手に入れることのできたかけがえのないグッズたちなんだよねー』ガサゴソ
カラン
P『……あ。缶バッジ、落としたぞ』
結華『えっ? あ、ほんとだ! ありがとう……!』
結華『これ限定のやつなんだよね、おかげで助かりました!』
P『ははっ、どういたしまして』
P《――……いい笑顔だなぁ……》
36 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/18(日) 02:40:38.29 ID:57JGyBZa0
P(今、W.I.N.G.を目指す子たちの話をしている結華もまた、そのときと同じ笑顔だった)
P(本人はファンとして陰ながら応援するつもりなんだろうけど……)
P(……綺麗だ、と――その笑顔を見て思った俺がいる)
結華「どしたの? Pたん」
P「……え、い、いや。なんでもない」
P(ここで「結華も出てみたらどうだ?」と言う勇気や器量は、さすがになかった)
放課後。
P「保健室は……確か、こっち……」
P(同じクラスの保健委員が欠席しているらしく、偶然はづき先生の近くにいた俺は、保健室に運ぶ提出書類の山を運んでいた)
P「……」
P(つい先日に保健室に行ったときの記憶を呼び起こしながら、歩を進める)
〜保健室〜
P「失礼します……」ガララ
P「……あれ」
P(養護教諭の姿はなかった。代わりにいたのは――)
霧子「……きゅっきゅ♪」
P(――幽谷霧子だった)
霧子「……ごし、ごし♪」
P「……」
霧子「……ふき、ふき――あ」
P「あ」
P(目が合う)
P「……」
P(つい見惚れてしまった……)
P「……えっと、幽谷霧子さん、だよな」
霧子「……! わたしの名前、覚えていてくれたんですね……」
P「ま、まあ……な」
P(運んできた書類を養護教諭のデスクに置いて、一息つく)
P「掃除、してるのか?」
霧子「は、はい……」
霧子「ここに来る人がみんな気持ちよく使えたら、いいなって……」
P「そうだったのか……霧子は優しいな」
P(場所が保健室……なのは気にしないでおこう。清潔なのは良いことだし)
P「あ、すまん。つい、下の名前で呼んでしまった」
霧子「いえ……大丈夫、です」
P「そ、そうか」
霧子「は、はいっ……!」
P(そういえば、さっきから腕を押さえているな)
P「その傷……痛むのか?」
霧子「これは……ケガをしてるわけじゃ……ないんです……」
P「そうなのか……?」
37 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/18(日) 03:06:08.88 ID:57JGyBZa0
霧子「お、お守りみたいなものなんです……」
霧子「こうしていると、落ち着く……ので……」
P「そ、そうか……」
霧子「はい……自分の良くないところが……隠れるような気がして……」
P「なるほどな……」
P(不思議……というか、自分の世界がある子なのかもしれないな)
P(まだ知り合って間もないし、霧子のことをよく理解しているわけじゃないけど、なんというか、この子を気にかけたい、と感じるな)
P「俺、さ……保健室なんて、ほとんど来たことがなかったんだ。来る理由もなかったし、行きたいと思ったことなんてなかった」
P「でも、霧子がいる保健室なら、なんだか行きたいとすら思えるよ」
霧子「わあ……! 本当、ですか……?」
P「ああ。……って、何言ってるんだろうな、俺は」
P「まあ、霧子にとって迷惑じゃなければ、だけど」
霧子「迷惑だなんて、そんな……。お話できる人がいるのは……わたしも、嬉しい……です♪」
P(それから、下校時刻になるまで霧子と話した。他愛もない会話が繰り広げられただけだったが、保健室という馴染みのない場所にしては悪くない時間を過ごせたと思う)
土日明け。
〜通学路 学校前〜
P(いつも通りに通学路を歩いて学校に向かう。ただ、今日は少し足取りが重かった)
P「再発行……手続きしないとなぁ」
P(生徒証を無くしたのだ。たまたま使う機会がなかったから、土日になるまで気がつかなかった)
P(どこで落としたのか……それが思い出せない。今日学校で探してなかったら、諦めて再発行手続きをしないといけないな)
P「はぁ……」
バッ
P(突然――)
「ふふー」
P(――暗転。目の前が真っ暗になる)
「私は誰でしょー」
P「誰って……」
P(どこか聞き覚えのある声な気はするが……わからない。結華か恋鐘ならやってきそうだが、明らかに声が違う)
「えー……私のこと、忘れちゃったんですかぁ?」
P(いや、この話し方と声は――)
P「――この前のセンター街の……」
「あたりですー」パッ
P(視界が元に戻る)
P「なんでここに……?」
「なんでって……あの学校に通うために決まってるじゃないですかぁ」
P「いや、制服がうちのじゃ――うちのだな……」
「ふふー。いきなり転校生ですー」
P「な、なんだって……!」
「これのおかげでお兄さんの通う学校がわかりましたぁ。ついでにお兄さんのプライバシーもゲットー……」つ学生証
P「あ! 俺の学生証……! センター街で落としてたのか……」
「そういえばー、まだ名前を言ってませんでしたぁ」
摩美々「私、田中摩美々っていいますー。悪い子なんでー、たくさん迷惑かけてあげますねー」
38 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/18(日) 03:07:33.63 ID:57JGyBZa0
とりあえずここまで。
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/18(日) 08:31:52.41 ID:sqo9qWwHo
おつー
40 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/21(水) 23:28:05.58 ID:1O0FzyvHO
P「はぁ……返してくれないか?」
摩美々「えー……どうしようかなー」サッ
P「おいおい……勘弁してk――って、このやり取り、前にもしたな」
摩美々「ふふー、そうかもしれませんねー」
P「学生証は手のひらに握って隠せるようなものじゃない……この前のトリックは通用しないからな!」
P(この前みたいにイタズラをするつもりだろうが、そうはいかないからな)
摩美々「トリックっていうかー……別に、返さないとは言ってないじゃないですかぁ」
摩美々「はい、どうぞー」ポイッ
P「わっ……! とと……っよし」パシッ
P(また投げたな……)
摩美々「お兄さんの困った顔が見れたのでー、もういいですよー」
P「そんなこと言って……前にも言ったが、妙な奴に絡まれてからじゃ遅いだろ?」
P(我ながら――)
P「危ない目に遭ってからじゃ遅いんだって。わからないかなぁ……」
P(――おせっかい、だ)
P(俺はこういう人間だっただろうか……?)
P(少なくとも、この子を前にすると……注意せずにはいられない)
摩美々「私が危ない目に遭ったら、お兄さんは困るんですかぁ?」
摩美々「迷惑かけるわけじゃないと思いますケドー」
P「それは……」
摩美々「お兄さんは、摩美々の親でも兄弟でもないですしー……ふふー、どうしてそこまで気にしてくれるんですかぁ?」
P「どうして……なんだろうな」
P(本当、どうしてだろう)
P「と、とにかく……! 倫理的にアウトだよ。他人にイタズラするのもそうだし、不健全な場所や時間にふらふらするのもな」
摩美々「倫理ですかー?」
摩美々「お兄さんじゃなくてー?」
摩美々「お兄さんが怒ってくれてるわけじゃないなら、別にどうでもいいっていうかぁ」
P「……」
P(わかった――)
P「――俺が怒ってるよ」
P「摩美々、こういうことはやめなさい」
摩美々「!」
P(やけに大人ぶった口調で言ってしまった……引かれただろうか)
P(いや、ここまでくればヤケだ)
P「いいな。約束は守ってもらうぞ」
摩美々「……」
摩美々「……ふふー」
摩美々「どうですかねー。お兄さん次第かもしれませんねー?」
P(そういえば、転校生って言ってたな)
P「じゃあ、俺が先輩としてしっかりしないとな」
P「よろしく」
摩美々「お兄さんに摩美々がコントロールできますかねー?」
摩美々「まあ、頑張ってくださいー」
41 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/22(木) 00:50:29.77 ID:Zx9QJdlfO
P「……ん、いや待て」
P(そういえば、自分の学生証のことに気を取られて忘れていたけど……)
P「転校、と言ったか?」
摩美々「はいー。そうですよー」
摩美々「お兄さんが学生証を落としてくれたのでー、学校を探さずに済みましたぁ」
P「いや、だからってそんな簡単に転校なんて……」
摩美々「それが、まみみにはできるんですよー」
P「なんでだ?」
摩美々「ふふー、知りたいですかぁ?」
P「……いいや」
摩美々「えー、つまんないのー」
P「今は聞かなくていいかなって思ったから」
摩美々「……」
P「……って、話してるうちに下駄箱にまで着いちゃったな」
摩美々「そうですねー……じゃあ、私はこっちなんでー」
P「おう」
摩美々「……あ、そうだ」
摩美々「名前、教えてくださいー」
P(名乗る)
摩美々「ふーん、……P」
P「おいおい先輩に対して呼び捨てかよ、良くないんじゃないのか?」
摩美々「そうやって怒ってもらえるんでいいんですよー」
P「? そ、そうか?」
P(よくわからないやつだ)
摩美々「じゃあ、今度こそ、私行くんでー」
P「ああ、じゃあな」
P「……」
P(まだ授業どころかホームルームの前だっていうのに、えらく長い時間を過ごした感じがするな……)
P(でも、やはり――)
P(――不思議と疲れてはいなかった)
P(どうも、あの後輩――転校生――不良――摩美々を相手にしていると、いつになく気にかけてしまう)
P「はぁ……」
P(教室行くか)
2時間目終わり。
〜校舎裏付近〜
P(今日はいつもと違う場所での移動教室だったな……)
P(皆が行き来する道をすると教室まで割とかかってしまうが――)
P(――ここから行くと近いんだ)
P タッタッタッ
P(この角を曲がって……――)
霧子「〜♪」
P「――っと!?」キキィッ
42 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/22(木) 01:25:41.84 ID:Zx9QJdlfO
P(危ない……! 何とか止まれたけど……)
P(……人がいたんだな)
P「って、霧子じゃないか」
霧子「あ、はい……わたしです……」
P「何してるんだ?」
霧子「ナスタチウムさんにお水をあげてるんです……♪」
P「ナスタチウムさん……あ、そこにある花のことか」
P(見覚えがあるような、ないような、そんな黄色とオレンジの花だ)
霧子「暑いところが好きじゃないから……ここはちょうど良くて……」
P「ははっ、花のことをよく考えてあげてるんだな」
霧子「は、はい……!」
霧子「こんど、そこにも別にお花さんを置こうと思ってるんです……」
P(霧子の指差す先を見る)
P「あ……ここ、保健室の目の前だったのか」
P(そういえば、外から保健室を見たことはなかったな)
P(そもそも、普段来るような場所ではなかったし)
P(最近は――霧子と出会ってからは、そうでもないが)
P「花、置くんだな」
P「じゃあ、見に行こうかな」
霧子「ふふ……待って……ますね……」
霧子「……Pさん」
昼休み、昼食後。
〜教室〜
P(最近、後輩と話してばかりいるな)
P(まあ、だからなんだという話だが)
P(今日は……結華はどこかに出ているみたいだ)
P(恋鐘も……今はここにいない)
P「……」
P(コーヒーでも買いに行くか……)
〜旧校舎付近〜
P「はぁ……やっと着いた」
P(いつも使ってる自販機の前にはわいわいやってる面倒な連中がいたので、遠いがこっちにある自販機に来た次第だ)
P「今日のこのタイミングに限ってなんでいるかなぁ……」
P「……まあ、気にしても仕方ないけど」
「あれぇー? また会いましたねー」
P「?」クルッ
P「……摩美々か」
摩美々「そうですよー」
P「なんでこんなところにいるんだ……」
摩美々「転校初日だしー、気になるじゃないですかぁ?」
P「ま、まあ……そうなのかな?」
43 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/22(木) 02:19:29.20 ID:Zx9QJdlfO
摩美々「Pは何しにこんな遠くに来てるんですかぁ?」
P「ああ……自販機でコーヒーを買いたくてな」
摩美々「? 自販機ならもっと近い中庭のがあった気がしますケドー」
P「ま、まあ、な。気分転換ってやつだよ」
摩美々「ふーん……」
P「摩美々はまだこの辺を探検するのか?」
摩美々「どうですかねー、何でもいいですー」
P「俺はもう戻ろうと思う」
摩美々「じゃあ、まみみもついていきますー……」
摩美々「……あれ?」
P「どうしたんだ? 行かないのか?」
摩美々「いや……あそこに、なんか立ってませんかぁ?」
P(摩美々が指す方向を見て目を凝らす)
P「ああ、なんだろうな」
P(人――に見えるが、あれは……)
P「……像、じゃないか?」
摩美々「私、ちょっと見に行ってきますー」タタタ
P「え、あ……ちょっと待てって」
P(摩美々が足を止めたところまでついてきたが……)
P「……旧校舎のエリアの中なんて歩いたことすらなかったな」
摩美々「これ、女の人みたいですね」
P「ああ……さっき言ってたやつか」
P(やはり、というか……銅像だった)
P(長い髪で上部は左右をリボンでくくっている背の高い女性の姿――その姿勢は、どこか苦しそうにも見える)
摩美々「誰なんですかねー……有名な人?」
P「こういうのは銅像の足元にプレートとかがあるんじゃないのか? どれどれ……」
P(実際、プレートはあった。アルファベットで名前らしきものが刻印されている)
P「……M、A、Y、U、Z、U、M、I?」
P(黛?)
P「人の名前……いや、名字か?」
P(と、考えていたそのとき)
ゴチン
P(俺の頭頂部に鈍い痛みが走る)
摩美々「あ……」
P「……っっってぇ!!」
摩美々「リボンのところいじってたら、とれちゃいましたぁ」
P「取れちゃいましたって……」
P(落下したものを見てみると、どうやら銅像の女性の髪形で左右に出ている房のような部分――その片方だった)
P「というか、こんなところ先生に見られたらヤb――」
「あーっ! 何してるんですか〜」
P「――……」
P(ヤバい)
44 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/22(木) 02:22:43.18 ID:Zx9QJdlfO
とりあえずここまで。
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/22(木) 02:35:53.84 ID:NF1KA9eao
おつおつ
うぅ…冬優子…
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/22(木) 05:11:14.19 ID:s71fn6wDO
ヒッポリト星人に遭遇したのか……(まってちがう)
47 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/28(水) 02:03:49.64 ID:1A0P4jYT0
はづき「これは……壊れちゃってますね〜……」
P「……」
P(壊したのは摩美々だ。でも、一緒にいた俺も共犯にならざるを得ない、か……)
P(俺だけがやっていない証拠があれば別だけど、この旧校舎エリアじゃ監視カメラもろくに設置されていないだろうし)
はづき「1人でこんなところで何やってるんですか〜もう……」
P「……え」
P(今、「1人で」と言ったか?)
P「いや、別に1人で来たわけじゃ……」クルッ
P「……」
P(振り返ると、そこにいるべき人影がなかった)
P「……逃げられた」ハァ
P(深いため息をついた)
P(銅像の一部によって叩かれた頭をさすりながら、ただただ自分の不運っぷりに呆れるばかりだ)
P「あの、この像って……」
はづき「うーんと……これは、校長面談ですね〜」
P「こ、校長面談!?」
P(そんなに重要な銅像だったのか……)
P(まあ、学校のものを破壊したってだけでも問題だし、それが銅像という値段の計り知れないものであれば尚更、か)
摩美々『私、田中摩美々っていいますー。悪い子なんでー、たくさん迷惑かけてあげますねー』
P(ま、摩美々……! そんなこと有言実行しなくていいんだぞ……!)
はづき「この落ちてるのがそうですか」ヒョイ
P(はづき先生は、銅像から落下した一部分を拾い上げた。持ち帰るようだ)
P「先生、俺はこれからどうすれば……」
はづき「後で改めて呼び出しますから」
P「……はい」
P(今日から問題児、か……)
帰りのホームルーム。
〜教室〜
結華「PたんPたん」
P「なんだ……?」
結華「わお、一目見てわかるほどの落ち込み様。なんかあった?」
P「ああ……ありまくりだ」
結華「まさかPたんが先生に呼び出されるなんてねー。三峰、Pたんはそういうのとは無縁だと思ってたんだけどなー」
P「まったくだ。俺もそう思っていたよ」
結華「ちなみに、なんだけど……結構まずい感じなの?」
P「いや、それもわからないんだ。でも、たぶんまずいんだと思う」
結華「退学……なんてことには――」
P「――ならない、と言いたいんだけどなぁ」
P(あの銅像が学園にとってどれだけ大切なものなのかわからないし)
P(それに、退学か……考えたこともないな)
結華「私、今日はPのこと待ってるよ。一緒に帰ろう?」
P「いいのか? いつ帰れるのかもわからないんだぞ」
48 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/28(水) 02:26:17.41 ID:1A0P4jYT0
結華「うん、いい。待ってるから」
P「そうか……悪いな」
結華「いえいえ、落ち込んでるPたんを励ますくらいのことはできると思うので!」
P「結華……」
結華「なんて……どう? ときめいた?」
P「ああ、そうだな。ありがとう」
結華「ってちょっとちょっと! そこはボケるなりツッコむなり否定するなりしてくれないと!」
結華「ましてや感謝されちゃうなんてさ!」
P「? そうなのか?」
結華「そうですとも」
P「結華が待っててくれて、一緒に帰れる。それなら、これから呼び出されるとしても億劫さは軽減される気がするけどな」
結華「……ずるいなぁ、もう」ボソッ
放課後。
〜廊下〜
はづき カツッカツッ
P スタスタ
はづき カツッカツッ
P スタスタ
P(校長室なんて入学して初めてだ……そもそも、近くに向かったことすらない)
P スタスタ
P(廊下の窓から外を見る。咲耶が複数人のファンらしき女子生徒たちを相手に談笑していた)
P(こちらには、気づいていない。気づかれたいとは思わないな……)
P スタスタ
P(さらに、歩を進める)
P(廊下の窓から見える景色の中に恋鐘の姿を見た。目立たない体育館の裏の日陰にいる)
P(ダンス……だろうか。踊りの練習をしているように見えた)
P スタスタ
〜校長室前〜
はづき「着きましたよ〜」
P「……はい」
P(ついに、この時が来てしまった)
P(何を言われるんだろうか……)
はづき コンコンコン
「……入りたまえ」
はづき「失礼します」
はづき ガチャ
はづき「では、どうぞ〜……」
P(校長室へと進んでいく)
P(足取りは……重い)
P(怒られるかもしれないから……というのとは少し違う)
P(うまく表現できないような――それよりももっと大きな、そういうものが待っているような感じがしていた)
49 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/28(水) 02:52:34.06 ID:1A0P4jYT0
〜校長室〜
P「失礼します」
P(お決まりの文句を口にして校長室に入った)
P「……」
「お前を待っていたぞ」
はづき「校長室で2人きりだと流石に可哀想なので、私もいますよ〜」
P「そ、そうですか……」
P(はづき先生が同席してくれるのは、まあ、ありがたいことだな……)
P「……」
P(校長の方を見る)
校長「……」
P(この学園を束ねる校長……あいかわらずダンディな雰囲気だ)
校長「よく来たな。早速だが、本題に入るとしよう」
P「はい」
校長「旧校舎エリアにある銅像を破壊したとの報告が来ているが、それは本当か?」
P「本当、です……」
校長「……」
P(校長のオーラ――もとい圧で押しつぶされそうだ)
校長「他に関与している者はいるか?」
P「それは……」
P(摩美々のことを言えば多少は俺の罪も軽くなるかもしれない)
P(そのことを自分のためにも言うべきなんだろうけど、何故かその気になれない)
P(摩美々を守ろうという本能のようなものを自分の中に感じる――これはなんだ?)
P(すべてを俺が背負う必要なんてないんだ。そもそも、俺はあの場にいただけで、咎められるようなことは何もしていない)
P(弁明すべき……なのに、どうしてか身体が言うことを聞かないみたいだ)
P(なんだ、これは)
校長「……まあいい。この件で犯人探しなど、どうでもいいことだ」
P「?」
P(犯人はどうでもいい……だって?)
校長「だが、だからと言って無罪放免……というわけにもいかなくてな。あの像自体は重要なものなのでね」
校長「それに、この件はある種の口実でもある」
P「口実……ですか?」
校長「そうだ。言っただろう、お前を待っていたぞ、と」
校長「私はもとよりとある目的のためにお前を呼び出したかったのだ」
校長「銅像の件はそのきっかけとなった。おかげで事がうまく運ぶというものだ」
P(校長の言っていることが、いまいちわからないでいる)
校長「W.I.N.G.については知っているかね」
P「……W.I.N.G.、ですか」
校長「そうだ」
はづき「この学園で最も大きな祭典……」
P「は、はい! 一応、は」
P(俺がW.I.N.G.について知っているすべてのことを話した)
校長「よろしい。知識に不足はないようだな。確認できて良かった」
50 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/28(水) 03:21:07.10 ID:1A0P4jYT0
校長「そこで、だ。まあ、名目としては銅像を破壊したことに対する贖罪ということになるが……」
校長「……まあいい、既に言ったように、それは単なる口実だ。それはさておき」
校長「お前には、そのW.I.N.G.で結果を残してもらう」
はづき「出場する女子生徒たちは、各々自分のサポートをしてくれる味方と一緒に、スケジュールや作戦を立ててるみたいですね〜」
校長「有り体に言えば、そう――」
校長「――プロデュースだ」
校長「今はづきが言ったように、W.I.N.G.を目指す女子生徒には味方が必要になる。特に、パートナーとして支える存在が重要になるだろう」
校長「お前の目標はこの学園から1人の女子生徒を選んで、W.I.N.G.優勝に導くことだ」
P「ま、待ってください……! 話が唐突で追いつけていません!」
校長「何か難しいことがあるかね? 銅像の件はこれで目をつむろうと言っているんだが」
P「それがプロデュース……。はい、そのことは理解できているのですが……」
P(もちろん、理屈――原理はわかる。でも、なんでプロデュースなのかがわからない)
校長「まあ、結果次第では内申や進路についても考慮してやろう」
校長「とにかく、輝ける“アイドル”たる存在を見出し、W.I.N.G.を目指すんだ」
P「……」
はづき「精一杯頑張っていきましょ〜! 大丈夫です、私もたくさんサポートさせていただきますよ〜」
P「……わかりました」
校長「素晴らしい結果を期待させてもらう」
校長「お前とお前の選ぶ“アイドル”がこの学園に名を刻むことになるかもしれない。そんな結果を、な」
校長「まあ、まずは思うようにやってみるといい」
十分後。
〜下駄箱付近〜
P スタスタ
P(プロデュース……か。俺にそんなことができるんだろうか)
P(それに、そんなことをするからには、校長が言っていたように、俺が女子生徒を1人選ばないといけない)
P「俺が……担当を――」
P「――選ぶ」
〜下駄箱エリア〜
P ガチャガチャ
P(一体どうすれば……)
結華「あ、Pたんやっと来た〜!」タタタ
P「結華……」
結華「もう、待ちくたびれたんだぞ〜? ほら、早く帰ろうよ」
P「ああ、待っててくれてありがとうな。すぐに準備するから」
P(結華……か。俺にとっては、今のところ、この学園の中でもっとも距離の近い存在……ということになるけど)
P(正直、結華はW.I.N.G.を目指せると思う。美人だし、ノリも良いし、歌だって上手い。まあ、本人がその気になってくれるかは別問題だけど)
P(結華以外で俺とかかわりがあるのは……――)
P(――恋鐘、咲耶、霧子、そして摩美々)
P(これまでに彼女らと過ごしてきた時間を振り返ってみても……うん、アイドルとしては申し分ない人たちばかりだな……)
P(結華も入れれば5人。この中から、プロデュースする相手を選ぶ……か)
P(俺は……)
51 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/28(水) 03:24:11.89 ID:1A0P4jYT0
1. 恋鐘を選ぶ。
2. 摩美々を選ぶ。
3. 結華を選ぶ。
4. 咲耶を選ぶ。
5. 霧子を選ぶ。
6. ――この選択肢はロックされています――
(とりあえずここまで)
52 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/28(水) 03:28:48.51 ID:1A0P4jYT0
安価指定し忘れてました。
↓1で
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/28(水) 06:48:40.05 ID:Y40nmY+DO
上から順にいくか
月岡恋鐘
54 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/31(土) 23:24:20.57 ID:lzMQS9iN0
P(恋鐘にしよう)
P(元気で、自信満々で……まさにアイドルという感じだ)
恋鐘『うち、決めたばい』
恋鐘『W.I.N.G.に出る!』
P(本人もW.I.N.G.を目指すと言っていたし、その反面転校してきたばかりで頼れる相手も多くはないかもしれない)
P(俺にも、何かできるのなら――)
P「……よし」
P(――やってみよう、プロデュースとやらを)
P(もとより、やらないという選択肢はないんだ)
P(だったら、やれることはやらないとな)
結華「? どしたの? Pたん」
P「いや、何でもないよ」
結華「えー? なんでもなくない気がするけどなー?」
P「な、何でもないんだって……!」
結華「ふーん、まあ、いいけどさー」
結華「……」ジーッ
P「……なんだよ」
結華「今日のPたん、なんだかいつもと違うね」
P「そうか?」
結華「うん。こう、いつもより活き活きとしてるっていうか……」
結華「あ、別に悪く言おうってんじゃないからね? 三峰は良いと思いますよ、ええ」
P「何目線なんだ……」
P(まあ、でも、そうなのか)
P(活き活きとしてるのか、俺)
P「さ、帰ろう。もう遅いからな」
結華「そだね。レッツ帰宅!」
P(さて、明日からどうするかな……)
55 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/07/31(土) 23:49:29.08 ID:lzMQS9iN0
翌日、2時間目と3時間目の間。
〜教室〜
P「恋鐘」
恋鐘「わっ! って、Pか〜。急やったけん、びっくりしたばい」
P「はは……驚かせてすまない」
P「W.I.N.G.に向けて……その、なんだ」
P「順調か?」
恋鐘「うーん、どうやろ……」
恋鐘「あれからいろいろと噂話ば聞いとるんやけど、1人だけじゃやっぱり厳しゅうて」
恋鐘「友だちん力ば借りて臨むもんなんやって」
P「それで今、力を借りられる相手は……?」
恋鐘「そうやねー……転校して気にかけてくれる人はよういると」
恋鐘「ばってん、W.I.N.G.のことで相談できるのは……」
P「……そうか」
恋鐘「でもね、うち、絶対にアイドルになりたかとよ」
恋鐘「うちはアイドルになるために生まれてきたけん!」
恋鐘「そんためにも、まずはこん大会で自分がアイドルにふさわしかこと……証明したいんよ!」
P「ははっ、そうか。俺も恋鐘はアイドルになれると思うよ」
P(俺はそう信じたい――)
P「この学園の“アイドル”ってだけじゃなくて、皆を笑顔にできるような、そんなアイドルに」
P(――信じてみたいと思ったから)
恋鐘「えへへ……ありがとうね」
恋鐘「地元でうちん夢ば応援してくれとった人はいたばってん、こっちではPがはじめてばい!」
恋鐘「あ、もしかして、PはうちがW.I.N.G.に出とらんでん、もううちに釘付けになっとーと?」
P「え――」
恋鐘『で、Pがよそ見できんくらい釘付けにしちゃるばい!』
恋鐘『よーく見とってね!』
P「――ははっ」
56 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/01(日) 00:02:57.34 ID:HoZAWXb80
P「そうだ……と言いたいところだが、まだだ」
恋鐘「えぇ!? Pはうちにまだ魅力ば感じとらん!?」
P「いや、そうじゃないんだ」
P「俺は、恋鐘にはまだまだ先を――上を目指して欲しい」
P「この学園のW.I.N.G.だってそうだし、本当にアイドルとしてデビューすることも」
P「そして、いつかはトップに……」
P(トップ)
P(トップって……何だ)
P「だから、俺はまだ満足してないよ」
恋鐘「P……」
恋鐘「そこまで言ってくれるとは思っとらんかった……ばってん――」
恋鐘「――嬉しかばい」
恋鐘「さすがはうちのファン1号!」
P「ははっ、光栄だよ」
P(ファン、か)
P(もちろん、そうだけど――)
P「……恋鐘、よかったら俺に――」
P(――俺は、もっと君を応援したい――)
P「――プロデュースを、させてくれ!」
P(――まるで、俺の知らない俺が心からそう望んでいるような気がしたんだ)
恋鐘「ぷ、ぷろでゅー……す?」
P「あ、いや、その……W.I.N.G.のことで相談できる相手がいないってことだったから」
P「俺なんかでよければ、力になりたいって思ったんだけど」
P「どう……かな?」
恋鐘「……!!!」
P「……」
恋鐘「うん、うん……!」
恋鐘「うち、ばりばり頑張るけん!」
恋鐘「よろしゅう頼むばい! P!」
57 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/01(日) 00:23:22.85 ID:HoZAWXb80
3時間目、授業中。
〜教室〜
P(プロデュース、か……)
P(あの後、休み時間が終わるまで、恋鐘と話をしていた)
恋鐘『いや〜助かったばい!』
恋鐘『Pがいればうちも安心よ!』
P『自分で言うのもなんだけど、恋鐘は俺を信用しすぎじゃないか?』
P《まだ知り合って間もないのに》
恋鐘『? それ、どがんこと〜?』
P『俺のおかげで恋鐘をW.I.N.G.優勝にたどり着けるわけじゃないのにさ』
恋鐘『そがんこと気にせんでよか! うち、見る目はあるんよ!』
恋鐘『Pは信用に値するプロデューサーばい!』
恋鐘『うちん本能がそう言いよーったい。安心してよ』
P『そ、そうか……』
P《これは、俺も頑張んないとな……》
P《ここまで期待されているんだし》
P《期待、あるいは信用、か》
恋鐘『それに……ね』
恋鐘『うちが個人的に……Pにお願いしたかって気持ちもあるんよ』ボソッ
P『え?』
恋鐘『な、なんでもなかばい! 気にせんでおいて!』
P『お、おう……』
P(恋鐘があそこまで頼ってくれているんだ。俺も頑張らないとな)
P「……」
P(正直、心躍る気持ちがどこかにある。この感情は、なんだろう)
P(俺の知らない、俺の気持ち……とでも言えば良いのだろうか)
P(何はともあれ、恋鐘をプロデュースすることに変わりはない)
P(それに、校長との一件もある。頑張らない理由なんてないんだ)
P「はぁ……」
P(ただ、現実問題、俺には知識も経験もない)
P(アイドルについては……圧倒的に結華が詳しいだろうな。俺なんかでは到底敵わない)
P(もちろん、俺が自分で勉強するという手もあるが……)
P「あ……」
はづき『精一杯頑張っていきましょ〜! 大丈夫です、私もたくさんサポートさせていただきますよ〜』
P(そういえば、そんなこと言ってたな)
P(どうするか)
1. 結華に協力を仰ぐ。
2. はづきのサポートを活用する。
3. 自分でどうにかする。
選択肢↓2
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/01(日) 00:29:55.60 ID:TYvH662ao
1
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/01(日) 02:09:24.20 ID:JRssmuOfo
2
60 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/02(月) 01:28:17.93 ID:RuSGe5yw0
>>1
です。
選択肢にご協力くださりありがとうございます。「↓2」を拾うまでに時間がかかったので、特に断りもなく更新を区切っていました。
いますぐには更新できないのですが、
>>59
の結果を元に話を進めていきます(なお、このSSは、安価の結果で話を作っていくものではなく、既に作って分岐有のシナリオを安価による選択を元にたどる形式です)。
テンポが悪くてすみませんが、一旦ここまで。
61 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/03(火) 00:32:31.31 ID:hou+lpKfO
P(冷静に考えて、先生のサポートを受けられるというのはデカいんじゃないか……?!)
P(まあ、公平のために限度があるのかもしれないけど、それでも……)
P(俺がプロデュースをすることになったのは校長の指示で、まさにそれを言い渡された場面ではづき先生は俺をサポートすると言ったんだ)
P(期待は……していいはずだ)
P(よし、はづき先生のサポートを活用しよう)
P「……」
英語教師「それじゃあこの部分の英訳を――」
P(――俺の名前が呼ばれた)
P「っ?! あ、はい……」
P(そうだ、今は授業中だった……)スタスタ
昼休み。
〜職員室付近、面談スペース〜
P「……と、言うわけで、はづき先生にもサポートをお願いしたいと思いまして」
はづき「なるほど〜、恋鐘さんを選んだんですね〜」
P「え? は、はい」
はづき「ふふっ」
はづき「いえ、プロデュースしろだなんて急な無茶ぶりなのに、前向きになってくれて、むしろ感心しているんですよ〜」
P「それは……ありがとうございます」
はづき「わかりました。サポートさせていただきますから、頑張ってください!」
P「心強いです。助かります」
はづき「まあ、教員という立場上、限度もありますけどね〜」
P「あ……やっぱりそうですよね……」
はづき「表向きはそうですよ。でも――」スッ
P(え、急に近……っ?!)
はづき「――贔屓したい気持ちはありますから」ボソッ
P(……からの耳打ち!)
はづき「なので、遠慮なく相談してください!」
P「あ、ありがとうございます……!」ドキドキ
62 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/03(火) 00:58:55.80 ID:hou+lpKfO
放課後。
〜ファミレス〜
P「よし、恋鐘。作戦会議だ。今後のことを考えよう」
恋鐘「う、うん……! よーし、頑張るばい!」
P「まず今後の行事予定表を見て欲しいんだが……」
恋鐘「……えっと、そん前に1つ聞いてもよかね?」
P「どうした? 何か気になることでもあるのか?」
恋鐘「気になることっていうか――」
はづき「……」
恋鐘「――なんではづき……先生がここにおると?」
P「なんでって、そりゃあアドバイザーみたいなところあるし」
恋鐘「学校の先生って忙しかやなかと? 授業の準備とか部活動とか……」
はづき「あ、ご心配なく〜」
はづき「校長がOKって言ってるんで大丈夫ですよー。この食事も経費で落ちますし」
恋鐘「落ちてしまうんか……」
P「まあ、そういうことだ。ツッコんだら負けだと思うぞ」
P(俺も気づいたら校長に呼び出されてプロデュースしろ素晴らしい結果を期待させてもらうとか言われたし)
P(状況にツッコんでいたらキリがない)
P「既に説明したように、はづき先生は俺たちをサポートしてくれる心強い味方だ」
恋鐘「そりゃあそうかもしれん……ばってん、うちはPと2人でも……」
はづき「男子生徒と女子生徒が2人きりで放課後を過ごしていると――」
P「――今後、恋鐘に男子のファンができたときに面倒になりそうだからな」
P(実際、恋鐘のスタイルに興味を持つ男子生徒だって多いはずだ)
P(ファンを獲得するのはそんなに難しいことじゃないと思うが、問題はその後だ)
P(生徒同士、学校という狭い社会……噂の影響は警戒しないといけない)
P「だから、こうして複数人にしているわけだ」
P「現状、俺たち2人以外に生徒の味方はいないしな……」
P(とりあえず、結華を頼るよりもはづき先生のサポートを選んだわけだし)
恋鐘「そ、そうよね。アイドルに恋愛はご法度やし……」
恋鐘「うぅ〜〜、ばってんそれやとPとの時間が〜〜」ボソボソ
はづき「さ、気持ちを切り替えて作戦を練りましょう〜」
P「はは……」
63 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/03(火) 01:33:12.86 ID:hou+lpKfO
P「エントリーは済ませてあるから、その先を考えよう」
P「えっと、W.I.N.G.に向けてアピールできそうな大きめの行事は……」
はづき「6月の球技大会、7月の終業式後のミニステージ、9月の体育祭、11月の文化祭、ですね〜」
はづき「いま言った4つのイベントの後にそれぞれ1回ずつ審査がありますよ〜」
P「あっ、ありがとうございます」
P「恋鐘、今、はづき先生が言った通りだ。アピールできる大きなイベントは4つ。審査もそれらとほぼ同タイミングだ」
恋鐘「おっけー! ばっちり理解したばい!」
P「球技大会は、素直に競技で活躍してもいいし、間にある長い休憩時間中のエントリー者によるゲリラライブ的なのがあるからそこでアピールしてもいい」
P「終業式の後のミニステージは……これは完全にW.I.N.G.を目指す女子生徒たちを意識した時間だな。短い時間でいかにアピールするかが問われそうだ」
P「体育祭は球技大会と似ているな。球技大会とは違った種目で、別のアプローチができるかもしれない」
P「文化祭にはW.I.N.G.出場をかけた大きなステージがある。エントリーしていて、かつその段階で審査を通過できている女性生徒たちが、各々自由にパフォーマンスをする時間だな。1人あたりのアピールできる時間も一番長い」
恋鐘「か〜〜っ、どれもばり注目されそうなイベントやね!」
P「ああ。一応、他にもアピールする機会は、小さいながらもあるぞ」
P「W.I.N.G.を目指すにあたって、エントリーした生徒には関係者限定の配信サイトにチャンネルが割り当てられている」
P「PVを作ってもいいし、生配信をしてもいい」
P「日常的なアピールも重要だ」
恋鐘「す、すごかね! 都会の学校にはこんなシステムがあると!?」
P「いや、うちの学園がやたらとこのイベントに力を入れているだけだと思う……」
P(マンモス校だし、学費も安くはないし、お金があるのかもな)
はづき「この学園最大の祭典ですから!」
P「は、はぁ……」
P(まあ、関係者限定のイベントとは言っても、芸能関係の人間の目にも触れているという噂があるし――)
P(――これをきっかけに声がかかったなんて話も聞く)
P(だからこそ……)
恋鐘「うち、ますます燃えてきたばい! えへへ」
P(……将来的にアイドルになりたいという夢を持った恋鐘を、W.I.N.G.の舞台に連れて行ってやりたい)
P「じゃあまず、6月の球技大会をどう過ごすか決めよう――……」
64 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/03(火) 01:43:27.06 ID:hou+lpKfO
2時間後。
〜帰り道〜
P「すっかり遅くなっちゃいましたね……」
はづき「確かに……ふふっ」
P「どうかしたんですか?」
はづき「いえ。なんというか、恋鐘さんに悪いな〜と思いまして」
P「恋鐘に……?」
はづき「さっき、途中の分かれ道で恋鐘さんだけが別の方向に行かないといけなかったじゃないですか」
はづき「その時の恋鐘さんがとても不満げだったので」
P「あ、ああ……そういうことですか」
はづき「信頼、されてるんですね」
P「ははっ……だと、良いんですが」
はづき「転校して間もない恋鐘さんと、突然プロデュースを命じられた立場で……」
はづき「よくこんな短時間でここまでやろうとしてくれたなって、そう思います」
P「……」
P「不思議なんです」
P「いきなりプロデュースとか言われてわけわかんないはずなのに、次から次へと考えが及んで、行動に移してて」
P「俺の知らない俺が背中を押しているような、そんな感じがするんですよ」
P「って、お前は何を言ってるんだって話ですよね。はは……」
はづき「……いいえ」
はづき「私は良いと思いますよ」
はづき「だって、いま、すごく活き活きしてますから!」
P「!」
P(そういえば、結華にも似たようなことを言われていた)
結華『今日のPたん、なんだかいつもと違うね』
P『そうか?』
結華『うん。こう、いつもより活き活きとしてるっていうか……』
P「……」
65 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/03(火) 01:56:22.11 ID:hou+lpKfO
1週間後の放課後。
〜グラウンド脇〜
P スタスタ
P(球技大会では、恋鐘は、競技でとにかく全力を出して、休憩時間中のゲリラで歌を披露することになった)
P(というのも、恋鐘の中で、今一番完成されているのが歌だからだ)
P(あの歌なら、最初の審査も通過できるはず……)
P(さらに磨きをかけるため、放課後ははづき先生によるサポートとともに、歌の練習に励んでもらうことにしている)
P(一方の俺はというと、恋鐘のチャンネルにアップロードするPVの制作に取り組んでいた――)
P(――と、過去形なのは、それが既に完了したタスクだからだ)
P(恋鐘は練習を頑張っているが、俺はどうしたもんかな……)
P(今、俺は自分の出る球技大会の種目のチーム練習を終えて、着替えの後で教室に戻るところだ)
P「真っ直ぐ帰ってもいいけど、時間はあるし、どこか寄り道してもいいな……」
P(恋鐘の出る種目の練習はさっき遠目に見たが、まだ時間がかかりそうだった)
P(どのみち、今は恋鐘と会うことはできない)
P「自分にやれることをやるだけ、なんだがなぁ」
P(さて、どうしようかな)
1. 真っ直ぐ教室に戻る。
2. 中庭で一服する。
3. 旧校舎エリアに行く。
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/03(火) 02:36:49.61 ID:OpgWuxEEo
2
67 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/08(日) 00:45:15.70 ID:QlDIeBcf0
〜中庭〜
ガコン
P「っしょ、っと……」
P(いつもの自販機で缶コーヒーを買い――)
プシュ
P(――それを飲んで一服する)
P「……ぷはぁ」
P(何気なく選んだけど、これ、咲耶と初めて会ったときに買ったのと同じものだな)
P「……」
P(人伝に聞いた話だが、咲耶もエントリーしたようだった)
P(きっと、多くの女子ファンに支えられているんだろう)
P(サポーターが多いのは良いよなぁ……恋鐘の陣営はそういう意味じゃ弱小だ)
P(メンバーは、俺と、強いて言えばはづき先生だからだ)
P「はぁ……」
「おや、ため息だなんて。何かあったのかい?」
P「ははっ、何かあったのか、か……。別に、特別何かあったというわけではないんだ」
P「咲耶こそ、ここで何してるんだ?」
咲耶「アナタを見かけたからね。声をかけてみたんだ」
咲耶「迷惑だったらすまない」
P「迷惑だなんてことないよ。ちょうど、1人ぼっちだったところだ」
P「そういえば、咲耶もエントリーしたそうじゃないか。調子はどうだ?」
咲耶「ああ、順調だよ。おかげさまでね」
咲耶「天使たちのサポートは実に頼もしいものさ」
P「はは……それはいいな」
咲耶「……浮かない顔だね」
P「いや、なんていうかさ」
P「俺は恋鐘――同じクラスの月岡恋鐘をサポートしてるんだ。もっと言うと、プロデュースってやつを」
P「恋鐘はわかるよな。この前会っただろ?」
咲耶「ああ、あの時の子だね」
咲耶「そうか……アナタは彼女の側につくというわけか」
P「あ、ああ……」
68 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/08(日) 01:09:22.91 ID:QlDIeBcf0
P「い、いやぁ、でも咲耶はいいじゃないか」
P「俺たちの陣営は弱小もいいところだし」
P「ははっ、その分、俺が頑張んないといけないんだけどな」
咲耶「アナタという人が、一途に応援してくれているだなんて、私からすれば少し羨ましくもあるよ」
P「? そうか?」
咲耶「ああ、そうだとも。アナタはもう少し自分の価値に気づくべきだ」
咲耶「……私はその価値に気づいていたのに」ボソッ
P「咲耶?」
咲耶「なんでもないさ」
咲耶「まあ、これで、私たちは晴れて敵同士、というわけか」
P「お手柔らかに頼むよ」
咲耶「それはどうかな? 手加減はできないかもしれないよ」
P「はは……これは強力なライバルの登場だ」
P(それは、もとよりわかっていたことでもある)
P(咲耶の人気はすごい。はじめからファンが大勢いるなんて、ゲームでいえばチートみたいなものだ)
咲耶「おっと、そろそろ行かないといけないな」
P「わっ、もうこんな時間か。俺もそろそろ戻らないとな」
咲耶「フフ、素敵な時間というものは、あっという間に過ぎ去ってしまう」
P「そうかもしれないな」
咲耶「……」
咲耶「P、断言しようじゃないか」
咲耶「アナタは恋鐘を必ずW.I.N.G.に導く」
咲耶「私もW.I.N.G.に出る」
咲耶「それまで、お互いに健闘しよう」
P「ああ、そうだな」
P「ありがとう、咲耶」
咲耶「どういたしまして」
咲耶「それでは、またの機会に」クルッ
P「ああ、じゃあな」
咲耶 カツカツ
P スタスタ
咲耶 ピタッ
咲耶 クルッ
咲耶「P……確かに私たちは敵同士かもしれないけれど」
咲耶「私という1人の人間は、アナタのことを……」
69 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/08(日) 02:43:35.06 ID:QlDIeBcf0
〜校舎裏付近〜
P(例によって教室までの近道を行く)
P(そういえば、この前はショートカットしようとして霧子に会ったな)
P(今日もいるのだろうか)
P タッタッタッ
P(この角を曲がって……――)
霧子「〜♪」
P「っとと」
P(――聞き覚えある鼻歌が耳に届く)
P「霧子」
霧子「わ……あ、Pさん……ふふっ」
霧子「こんにちは」
霧子「でも……放課後だから……なんて言えばいいんでしょうか」
P「ははっ、まあなんでもいいよ」
P「霧子は、球技大会の練習はいいのか?」
霧子「?」
P(イベントに興味がないのだろうか)
P「あ、えーっと……」
P「……今も、花の世話をしているのか?」
P(この前はそうだったよな)
霧子「それは、ちょうどいま終わったところ……です♪」
P「ナスタチウムって言うんだよな」
霧子「覚えててくれたんですね」
P「まあな」
霧子「そうだ……保健室の中にも、花を生けてみたんです」
霧子「よかったら、見ていきませんか……?」
P(教室に戻るところだけど……)
1.「ああ、見ていくよ」
2.「今は急いでいるんだ(見ていかない)」
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/08(日) 02:46:24.04 ID:0riEbbs9o
1
71 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 01:13:01.80 ID:ri3q6dzZ0
P「ああ、見ていくよ」
霧子「ふふっ……じゃあ、一緒に行きましょう……♪」
〜保健室〜
P「静かだな」
霧子「えと……はい。……保健室、ですから」
P「それもそうか」
P(なんだか薄暗い――ここはいつもそんな気がする)
P(そして、例によって人はいないみたいだ。今いるのは、俺と霧子だけ……)
P「お、生けた花っていうのは、これのことか」
P(ピンク色の花が一輪ある)
霧子「はいっ……オキザリスさんです」
P「そういう名前なのか」
P(花言葉とか、あるんだろうな。俺は知らないけど)
P「なんだか、いいよな。こういうのって」
P「うまく言えないんだけど、癒されるっていうかさ」
霧子「ふふ……はい♪」
P「ありがとう、霧子。見せてくれて」
霧子「そんな……」
霧子「私も……嬉しいです」
霧子「Pさんとお話ができて……」
P「ははっ……それは照れるな」
P「あ、そうだ」
P「霧子はW.I.N.G.って興味あるか?」
霧子「?」
P「この学園で一番大きいイベントなんだ。学園一のアイドルを目指す大会だよ」
霧子「わあ、アイドル……ですか」
P「俺は月岡恋鐘って子のサポート……いや、プロデュースをすることにしたんだ」
P「よかったら、チェックしてみてくれ。生徒用のサイトからいろいろと情報を見れるからさ」
霧子「わかりました」
P(まあ、これも営業活動の一環……かな?)
72 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 01:25:36.21 ID:ri3q6dzZ0
〜小型スタジオ(兼練習室)〜
ガチャッ
P「……っ、はぁっ、はぁっ」ゼェゼェ
P「す、すみません……! 遅くなりました!」
P(のんびり過ごしすぎた……!)
はづき「あ、お疲れ様です〜」
P(ガラスの向こうには、マイクの前で歌っている恋鐘の姿が見えた)
P「今やってるのって……」
はづき「実際に収録された自分の声を聞いてもらうために、本格的な機材で録音してるところですよ〜」
はづき「恋鐘さんの歌のクオリティは元々高いので、後はいかに磨き上げていくかということを念頭においています」
P「な、なるほど」
P(さすがはづき先生、的確だな……)
P「何から何まですみません……他のお仕事もあるでしょうに」
はづき「いいえ〜、私がやりたくてやってるんですから」
はづき「謝る必要なんてないんですよ〜」
P「は、はい」
P「じゃあ……こう言わせてください――ありがとうございます」
はづき ニコッ
恋鐘 ムムム・・・
P(恋鐘は今、収録した自分の歌っている音源を聞いているところだ)
恋鐘「……」
恋鐘 パカッ
P(恋鐘がヘッドホンを外す)
恋鐘「こう……自分の声ばこがん近くで聞くとは、なんか変な感じがするばい」
P「どうだったんだ? 聞いてみた感想は」
恋鐘「やっぱうちの歌は日本一やね!」
P「ははっ、そうか。それは良かった」
P「俺にも聴かせてくれないか?」
恋鐘「うん!」
73 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 01:41:43.32 ID:ri3q6dzZ0
P「……」
P パカッ
P(……プロの音源を聞いてるみたいだった)
P「恋鐘……」
恋鐘「? 何?」
P「お前……」
恋鐘「え、な、何!? うち何かやってしもうた!?」
P「ああ、とんでもないよ」
恋鐘「うぅ〜、一体どがん失敗ばしてしもうたんやろ……」
P「いや、失敗だなんてとんでもないよ」
P「すごすぎて言葉を失っていたんだ」
P「恋鐘の歌は既に素人の域をはるかに超えてると思った」
P「はづき先生も、そう思いませんか?」
はづき「はいっ、素敵な歌声だと思います!」
恋鐘「P……はづき……!」
恋鐘「えへへ、ばり嬉しかー……」
P「って、おいおい先生を呼び捨てかよ」
はづき「いいんですよ〜」
はづき「呼び捨て、しちゃいます?」
P「い、いえ……俺は」
はづき「え〜、そうですか〜?」
P「じゃ、じゃあ……はづきさん」
P「それから恋鐘」
恋鐘「?」
P「恋鐘の歌声を、まずは皆に知ってもらう必要がある」
恋鐘「あ、そうやね!」
P「はづきさん、今の音源でいけそうですかね?」
はづき「大丈夫だと思います。一発撮りなのにまったくミスがないですし」
P「じゃあ、一発撮りの音源だということも概要欄に書いておきます!」
P「恋鐘、チャンネルにさっきの歌声を載せるぞ。いいよな?」
恋鐘「もちろんばい! ……〜〜っ、ついにこん時が来た〜〜!!」
74 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 02:03:08.67 ID:ri3q6dzZ0
球技大会一週間前、昼休み。
〜教室〜
P(あれから――つまり恋鐘の歌声をアップロードしてから、その反響はというと、それはもう大きかった)
P(エントリーしていた女子生徒の中でも、恋鐘の歌のクオリティは群を抜いていたし、そもそも歌で攻めようという人はあまり多くなかったようだ)
P(間違いなく注目を浴びている……勢いのある“アイドル”と言えよう)
P(その後にも何本か映像付きで恋鐘の歌をアップしたが、どれもすごい伸び様だ)
ガヤガヤ
P(恋鐘の周りには多くの生徒が集まっている)
P(恋鐘と比較的仲の良い女子生徒たちが周りにいて、うまくガードの役割を果たしているようだ)
P(実際、下世話な感情から興味を持って近づいてくる生徒だって少なくない。治安維持という意味ではこれを利用しない手はないだろう)
P「……」
P(人が集まっていて、自分の席は居心地が悪いな……恋鐘のちょうど1つ前だし)
P(“プロデューサー”である俺が目立つ必要はないんだ。今はここにいる必要もないだろう)
P(少し外に出るか)
P スタスタ
恋鐘「あ、うちの歌聞いてくれたと? ありがと〜!」
恋鐘「W.I.N.G.で優勝ば目指すけん、よろしゅう……ね……」
P スタスタ
ガララ
ピシャリ
恋鐘「……」
恋鐘「……え? なっ、何でもなか!」
〜旧校舎エリア〜
P「……」スタスタ
P(何気なくこの辺に来てしまったな……)
P(思えば、この先にある銅像を破壊したことがきっかけで――)
P「――いやいや、俺が壊したわけじゃないけど……」
P(それまでは縁のない場所だったのに、急に因縁が……)
P「そういえば、あいつ、どうしてんだろうな」
P(あれ以来、会っていない)
摩美々「ふふー、まみみが気になりますかぁー?」
75 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 02:17:40.38 ID:ri3q6dzZ0
P「?!」クルッ
P(振り返ると、そこには摩美々がいた)
P「な、なんだよ……びっくりさせるなって」
摩美々「別に驚かせようとしたわけじゃないですしー」
摩美々「Pが勝手にびっくりしたんじゃないですかぁ」
P「それは……って、なんで俺が悪いみたいになってるんだ……」
摩美々「ふふー……たしかにー」
摩美々「悪い子といえば、このまみみなのにー」
P「あっ、そうだよ」
P「結局、あの後、銅像破壊の疑いで大変だったんだからな……!」
摩美々「それはどうもー」
P「気にしてないな……まったく」
P(逃げ足が速いんだもんなぁ)
P「もう、こういうことはするなよ」
摩美々「どうでしょうねー、悪い子なのは変わりないですしー……」
P「摩美々」
摩美々「……っ、な、何急に見つめてるんですかぁ? そういうの、ハラスメントって言うんじゃないですかねー?」
P「摩美々」
摩美々「……」
P「やっていいことと、悪いこと、わからないか?」
摩美々「……」
摩美々「ごめんなさい」
P「ああ、まったくだ」
P「でも、まあ、摩美々には何もないようで良かったよ」
摩美々「?」
P「俺が1回呼び出されただけで済んだんだしさ」
P(それ以外にもあるけど……黙っておこう)
摩美々「Pは、私が先生たちに罪に問われてなくて、安心してるんですかぁ?」
P「まあ、転校してすぐ罪人っていうのもなぁ……ははっ」
P「これからこういうことをしなきゃいいよ」
P「そういう意味では、迷惑かけて、心配もさせて、でも安心してる」
摩美々「っ……そ、そうですかぁ」
76 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 02:36:04.49 ID:ri3q6dzZ0
P「さて、と」スタスタ
摩美々「え、歩くの早……」
P「あ、早かったか?」
摩美々「あ、いや、別に一緒に歩こうとか思ってないですしー……」ワサワサ
P(摩美々は目を逸らしながら自分の頭の両側にぶらさがった髪をいじっている)
P「ははっ、いいよ、一緒に行こう」
摩美々「だから、そういうつもりじゃないのでー」
P「例の銅像を見ようと思ってさ」
摩美々「?」
P「もう直ってるのかな、とか」
摩美々「興味あるんですかぁ?」
P「まあ、暇だしさ」
摩美々「私も暇ですケドー」
P「直って…………ないな」
摩美々「ですねー」
P(俺らが壊した――いや俺は壊してないが――あの時から恐らくまったく変わっていない)
P(MAYUZUMIと彫られたネームプレートを持つ女性の姿をした銅像は、頭の左右につけた房のうち、片方を失った状態でそこにいた)
P「欠けちゃってるのは……この銅像から見て右か」
P「あれ、そういえばあの時に落ちた部分ってどこにあるんだ?」
摩美々「んー、無いみたいですねー」
P(先生が回収したのか……?)
摩美々 ナデナデ
P「何してるんだ?」
摩美々「頭を撫でてみましたぁ。特に理由はないですけどー」
P「……」
P(なぜだろう、銅像から“覇気”を感じる。気のせいだろうか)
摩美々「ふふー」
P「そろそろ昼休みも終わるし、戻るか」
摩美々「Pが戻るなら戻りますー」
P「ははっ、なんだそりゃ」スタスタ
摩美々 スタスタ
P「……」クルッ
P(銅像の方を一瞥する。あの時と同じで――それは当たり前ではあるけど――苦しそうな姿勢でそこにいた)
77 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 02:44:14.06 ID:ri3q6dzZ0
摩美々「じゃあ、私はこっちなんでー」
P「ああ、またな」
摩美々 スタスタ
P「……あ、ちょっと待ってくれ!」
摩美々「なんですかぁ?」
P「摩美々はW.I.N.G.って知ってるか?」
摩美々「なんとなくー……聞いたことなら」
P「そうか。それなら、月岡恋鐘をよろしく頼む!」
摩美々「……Pって、アイドルみたいな、そういうのって興味あるんですねー」
P「というか、俺はファンでもあるんだけど、プロデュース的なことをしているんだ」
摩美々「プロデュース……」
P「ああ、だから、恋鐘をW.I.N.G.の舞台に連れて行って、優勝させてやりたいと思ってる」
P「もし、摩美々さえ良ければ……一緒に応援してくれないかなって思ったんだ」
摩美々「……私、そういうのは別にいいんでー」
P「興味……ないか」
摩美々「その恋鐘って人を応援してもなぁって感じですー」
P「そ、そうか……すまない、引きとめて」
摩美々「ふふー、でも――」
摩美々「――Pが何かしてるなら、摩美々は興味あるかもしれませんねー」
P「え、それってどういう……」
摩美々「覚えておきますよー」
摩美々「ではー……」スタスタ
P「っ……俺は本気なんだ!」
摩美々「っ!?」
摩美々 クルッ
P「ははっ、まあ、協力してくれたら俺は嬉しいよ」
P「覚えてもらえているだけでもいい」
P「じゃあ、またな」
P タッタッタッ
摩美々「……」
78 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/16(月) 02:45:25.38 ID:ri3q6dzZ0
(選択肢は少し先ですが、とりあえずここまで)
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/29(日) 20:27:09.79 ID:MzgazQAKo
みてるや
80 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/08/31(火) 00:13:30.07 ID:RosepUzEO
>>1
です。
>>79
ありがとうございます。
ここ最近忙しすぎて全く更新できていない状況です。すみません。
遠くないうちにタイミングを見計らって続きを投下したいと思いますので、今後も見てくださる方がいましたら、そのときはよろしくです。
81 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/09/08(水) 23:39:28.34 ID:MDP1/vAO0
球技大会当日、午前。
P(球技大会の日がやってきた)
P(恋鐘には、ここで目立ってもらう必要がある)
P(あの歌があれば最初の審査は問題なく通るだろうけど、その後のことも考えないといけないからな)
P(競技に全力を注いでもらいつつ、休憩中のゲリラライブで学校関係者たちを魅了する――)
P(――それが今日の恋鐘の動きだ。まあ、予定だが)
恋鐘「P!」
P「うおっ……って、恋鐘か。どうした?」
恋鐘「え〜? 別にどうということもなかよ?」
恋鐘「特に用はない!」
P「そ、そうか……」
恋鐘「えへへ」
恋鐘「……ほんとは、ちょーっぴり緊張しとったい」
恋鐘「やけん、Pに話しかければなんとかなるかなって」
P「ははっ、そういうことか」
P「大丈夫、恋鐘ならやれるさ」
P「競技は普通に楽しめばいいんだ。その代わり、できるだけ全力で、な」
P「ゲリラライブのことは……まあ、緊張はするだろうけど――」
P「――恋鐘の歌があればきっとうまくいく、俺はそう信じてるよ」
恋鐘「P……」
P「自信を持ってくれ」
恋鐘「誰に言いよーっと? うちはアイドルになるために生まれてきた女やけん、自信ありまくりばい!」
P(胸を張って――慣用句的にも物理的にも――得意げに言う恋鐘)
P「ああ、それでこそだ」
P(今日は、恋鐘の、学園の“アイドル”としての初イベントの日と言っても良いだろう)
P(しかし、不安はない。恋鐘なら、きっと……)
P「……っと、そろそろ始まる時間か」
P(最初の競技は恋鐘が出るやつだったな)
P(俺のはだいぶ後だ)
恋鐘「そうやね。じゃあ、行ってくるばい」
P「ああ、いってらっしゃい」
82 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/09/09(木) 00:14:58.30 ID:ZSwhyTAo0
数十分後。
P(あれから、しばらくの間は恋鐘が競技に出ているのを見ていた)
P(結論から言えば、恋鐘の一挙手一投足が“パフォーマンス”だ)
P(それも、全力で参加しているからだと思うが)
P(あのスタイルで激しい動きをする恋鐘には注目せざるを得ない)
P(さらに、時々転ぶドジな一面も見せている。そこにあざとさはない。……本物だ)
P(期待通り、恋鐘は注目の的となっていた)
P(しかし、この競技というのが、1つあたりの時間が長く、流石に誰が見ても飽きてくるのだ)
P(というわけで、実は今の俺は校内を適当にブラついている)
P(恋鐘を信頼しているからこそ、後はまかせた、という気持ちでいる)
結華「あ、Pたんだ!」
P(この声、この呼び方は――)
P「――結華」
結華「さっきのこがたんはすごかったね〜。最初から最後まで目が話せなかったよ〜!」
P(そうか、今終わったところか)
P「ははっ、だろ?」
結華「なんでPたんが得意げなのさ〜」
P「まあ、これでも、一応あいつをプロデュースしているからな」
結華「っ、そっか。そういえばそうだった」
P「こがたん、って、そうやって呼ぶ仲なのか?」
結華「三峰としてはもっとお近づきになって仲良くなろうかなーってところかな」
P「なるほど」
結華「こがたんとの今後に期待って感じ!」
結華「というか、Pたんは何か重要なことを忘れてはいませんかな?」
P「重要なこと……?」
結華「ドルオタだってことをだよ!」
P「ああ……」
結華「学園のアイドルも三峰の守備範囲だからね〜」
結華「気になってるアイドルはあだ名で呼びたいなって思ったり」
83 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/09/09(木) 00:35:59.39 ID:ZSwhyTAo0
P「おお、応援してくれるのか」
結華「今後も注目し続けるかどうかは、Pにかかってるかもね?」
P「ははっ……それは良いプレッシャーだ」
結華「もちろん、Pのことも応援してるからさ」
結華「頑張ってよ」
P「ありがとう、結華」
P「期待に応えられるように努めるつもりだ」
結華「うん……」
結華「あ、私、次の競技に出ないとだった!」
結華「……じゃあ、行くね?」
P「頑張ってな」
結華 タッタッタッ
P「……」
P(もしかして、結華と話すのは久しぶりだったんじゃないか?)
P(恋鐘が転校してきてから、結華と接する時間は短くなったような気がする)
P(気のせい……だろうか)
結華『……じゃあ、行くね?』
P(哀愁漂う表情というのは、ああいう顔のことを言うのだろうか)
P「……移動するか」
P「あれ」
ガヤガヤ
P(人だかりができているな)
P ピョンピョン
P「あ、見えた……」
P(人だかりの中心にいたのは、咲耶だった)
P(恐らく、先ほどの競技――2つめ――も終わったんだろう)
P「きっと、すごく活躍したんだろうな」
P(そういえば、恋鐘も同じ競技に出ていたな)
P(どうやら、欠員が出た分を引き受けて、最初の2つに連続で出場しないといけなくなったらしいのだ)
P(俺はそれを当日、つまり今日に知らされたわけだが)
P「恋鐘はクラスの場所に戻っているかな」
P(俺もそこに戻ることにした)
84 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/09/09(木) 01:13:32.51 ID:ZSwhyTAo0
ガヤガヤ
P(恋鐘のまわりには、咲耶のそれと同じか、あるいはそれ以上の人だかりができていた)
P「こ、これはすごいな……!」
P(全然近づけそうにないぞ)
P(ゲリラライブのことについて最後の打ち合わせをしようと思ったんだがなぁ……)
P(まあ、実のところ、打ち合わせは何度もしているから、今から本番とかでも大丈夫なのかもしれないが)
P(ライブという形式でのアピールは初めてだから、流石に神経質になるというものだ)
P(球技に参加するのとはワケが違う)
P「はぁ……」
P(あの人だかりを崩すのも違うよなぁ)
P(そもそも、俺は裏方として、目立たずに恋鐘を支えるのがベストなんだ)
P「……」
P(恋鐘は次の協議の間休んでいるし、その時でも大丈夫か……)
P スタスタ
P(俺は再び、校内を徘徊することにした)
P(球技大会の喧騒の中、俺は校内をうろついている)
P(自分以外の人間が団結しているのに、こうして勝手なことをするのは、なかなかどうして背徳感があるな……)
P(悪いことをしているわけじゃないんだが)
P(まあ、恋鐘を取り巻く生徒たちがはけるまでの間だけだ)
P「しかし……」
P(恋鐘にとって大事なイベントがある日だと思って、昨日までは落ち着けない自分がいたが)
P(いざ当日になってみれば、思ったよりもすることはないし、気持ちは不思議と平然としている)
P(そう思ってブラブラしていると、死角から出てきたある人と目が合った)
P「はづきさん」
はづき「あ、こんなところで何してるんですか〜?」
P「いえ、何、ということもないのですが」
はづき「始まりましたね、本格的に」
P「そうですね。出だしは好調という感じです」
85 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/09/09(木) 01:15:21.91 ID:ZSwhyTAo0
キリが悪いですが、とりあえずここまで。
86 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/09(木) 07:01:44.69 ID:yQvIDItDO
乙
大丈夫。いっぱい待つから
87 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/28(火) 08:47:02.53 ID:v1Q131Weo
まだ
88 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/02(土) 23:12:51.15 ID:UuSmQKj+0
>>84
誤植訂正:
P(恋鐘は次の協議の間休んでいるし、その時でも大丈夫か……)
→P(恋鐘は、次の競技の間は休んでいるし、その時でも大丈夫か……)
89 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/02(土) 23:22:03.14 ID:UuSmQKj+0
はづき「ふふっ」
P「え?」
はづき「ごめんなさい、つい……」
P「お、俺の顔に何かついてますかね?」
はづき「そうじゃないですよ〜」
はづき「なんだかんだ、楽しんでるなと思いまして」
P「そう……なんですかね」
P「やるからにはちゃんとやろうと思っていますけど」
P(でも、確かに――)
P「――想像以上かもしれません。やらされている感じとかはなくて」
P「不思議と、性に合っているように思えるんです」
P(最近はそうだ)
P(自分の知らない自分に出会えているような感覚の連続で)
P(何の面白みもない普通の高校生活には別れを告げたようなものだ)
はづき「はい。私からもそう見えますよ〜」
はづき「校長にも、楽しんでる、って伝えておきますね〜」
P「そ、それは、なんというか……まあ、はい」
はづき ニコニコ
P(否定はできなかった)
P(それはそうと……)
P ソワソワ
はづき「恋鐘さん、ですか?」
P「えっ?! あ、ええ……」
P「ゲリラライブをする予定じゃないですか。だから、その前にもう一度話しておけたらな、と」
はづき「それなら、ほら――」
P(はづきさんの指差す方向を見ると……)
P「――あ」
P(……こちらに手を振っている恋鐘の姿が見えた)
90 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/02(土) 23:34:23.35 ID:UuSmQKj+0
P「……という感じだ。再生数が一番伸びている歌で勝負、今日はなんと言ってもこれだ」
恋鐘「わかっとーよ。何度も同じ話されたら流石に覚えるばい」
P「まあ、そうなんだが……」
P「すまん。これじゃあ、恋鐘のことを信用し切れてないみたいだよな」
恋鐘「あ、別に全然よかよ? うち、嫌やとは一度も言うとらんけんね」
恋鐘「むしろ、Pとこうして話す時間は……す――」
P「恋鐘?」
恋鐘「――……っ!!」
恋鐘「な、なんでもなか!」
P「そ、そうか」
P「まあ、人前でパフォーマンスをするのはこれが初めてだけど」
P「大きなチャンスでもある。アイドルとしての初ステージと言ってもいい」
P「俺から指示することはほとんどない。ただ、楽しんできてくれ」
P「アイドル月岡恋鐘を、皆に見せてやってくれ」
恋鐘「うん! Pがいるし、うちが怖がるもんはなんもなかよ!」
恋鐘「これもアイドルになるための一歩やけん。大事にしたか」
P「ああ、そうだな」
P「俺からは特にないんだが、恋鐘はどうだ?」
恋鐘「……見てて」
P「?」
恋鐘「うちのこと、見とってね!」
恋鐘「で、よそ見できんくらい釘付けにしちゃるばい!」
P(それは――)
恋鐘『……』
P『月岡さん?』
恋鐘『うち、決めたばい』
恋鐘『W.I.N.G.に出る!』
恋鐘『で、Pがよそ見できんくらい釘付けにしちゃるばい!』
恋鐘『よーく見とってね!』
P『ああ、うん――』
P『――応援するよ』
P(――ついこの間なのに既に懐かしいような、そんな記憶に重なる言葉だった)
91 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 00:07:43.03 ID:dAXGKB/G0
〜運営側テント前〜
P(事前にマイクと音響設備を貸してもらえるように手はずは整えてある……)
P(あとは恋鐘に任せるだけだ)
恋鐘「み〜ん〜な〜〜〜〜〜!!!」
フォオォオォオオン
P(やばい、ハウリング……!)
P「す、すみません! 音響の調整お願いします!」
フォン、フォン、フォン・・・
・・・
P(び、びっくりした――きっと、誰もがそう思っていることだろう)
恋鐘「びっくりした〜!!」
P(それは恋鐘も例外ではなかった、と)
恋鐘「と、とにかく〜」
恋鐘「もううちが歌ってる動画は見てくれた?」
オ、オー!
ミタヨー
スゴカッタ!
恋鐘「えへへ……ありがと!」
恋鐘「でも、今日は一味違うばい!」
恋鐘「画面の向こうの動画じゃなく、うちが目の前で歌うとやけん!!」
オォォォォォ!!!
恋鐘「みんなも応援してよ!」
ワァァァァァ!!!!!
P(イントロが始まる)
P(いや、始まったのは曲のイントロだけではない)
P(恋鐘のアイドル人生も、だ)
P(恋鐘が歌って、踊って、ファンたちを魅了して)
P(俺はそんな恋鐘をトップに連れて行く――)
P(――アイドルマスターだ)
92 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 01:19:43.72 ID:dAXGKB/G0
球技大会終了後。
〜中庭〜
P「……お、また伸びてる」
P(恋鐘のゲリラライブは無事終了し大成功を収めた)
P(サビの直前でコケかけた時には肝を冷やしたが……)
P(一番乗りでゲリラを仕掛けたせいか、チャンネルの登録者数も再生数もうなぎのぼりという感じだ)
P(ライブ後は、個人的には恋鐘の周りに人だかりができることを気にしていたんだけど)
P(周りの生徒たちは圧倒されていて、群がることすら忘れているようだった)
P(正気を取り戻す前に恋鐘には隠れてもらったが、あれは正解だったな)
P(はづきさんが用意してくれた小会議室にしばらくの間こもって、ライブの振り返りなどをした)
P(振り返りと言っても、感極まった恋鐘の紡ぐ言葉の数々に耳を傾けていた時間がほとんどだったけど)
P「まあ、それでいいんだろうな」
P(それで、俺はというと、その後に自分の出る種目で適当に過ごして、今はこうして中庭で恋鐘のチャンネルの動向を観察している)
P(裏方であることを実感するな、これは)
P「ははっ……性に合ってる、か」
P(そうなのかもしれない)
咲耶「やあ」
P「お、咲耶か」
咲耶「こんなところでどうしたんだい?」
P「恋鐘のチャンネルの様子をちょっと……な」
咲耶「なるほど……フフ」
P「どうした?」
咲耶「いや、こういう言い方もなんだけど、見るまでもないんじゃないかと思ってね」
咲耶「彼女のあのパフォーマンスを見たら、誰だってまた見たくなる。自ずとチャンネルも伸びるというものさ」
P「ま、まあ、そうなのかもしれないが」
P(そういえば、咲耶は競技中に仕込みの生徒たち――おそらく親衛隊だ――と一緒にダンスをしていたらしいな)
P(していた“らしい”というのは、それが恋鐘とはづきさんとの3人で小会議室にいる間に行われたようだからだ)
P「その、すまん。実は、咲耶のパフォーマンスを見れていないんだ」
咲耶「そうなのかい? それは残念だ……自分で言うのもなんだけど、かなりうまくいったんじゃないかと思うよ」
P「ああ、それは評判を聞く限り、間違いないんだろう」
93 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 02:08:07.77 ID:dAXGKB/G0
咲耶「周りの評判はそうだね。あなたからの評価も聞きたかったが」
P「申し訳ない。アーカイブでは見させてもらうから、勘弁してもらえないだろうか……」
咲耶「ああ、アナタはアナタで、自分の担当する子が大事なんだ。それは私もわかっているつもりだよ」
咲耶「無理強いしたみたいになってすまないね」
P「いや、気にしないでくれ」
咲耶「しかし、アナタの担当する子――月岡恋鐘のすごさは、私も身をもって実感したよ」
咲耶「確かに私のダンスパフォーマンスは成功した」
咲耶「けれど、それは想定を下回る盛り上がりを見せたんだ」
P「そうなのか?」
咲耶「前に彼女の歌があれば、ジャンルは違えど比較されてしまうものだろう?」
P「あ、それは……」
咲耶「いいんだ。それ自体にどうこう言うつもりはないさ」
咲耶「あなたのアイドルがすごいんだと、そういうことが言いたかったんだよ」
P「ありがとう。咲耶にそう言ってもらえると、俺としても自信がつくよ」
咲耶「フフ、それはなによりだ」
咲耶「ただ、私としても、このままでいるつもりはないよ」
咲耶「今日みたいなことがあって、今の私は燃えているんだ」
咲耶「今度は、たとえ彼女の後の出番だったとしても、絶対的な輝きをもって、皆を魅了してみせる――とね」
咲耶「もちろん、アナタも、だよ」ズイッ
P「お、おう、楽しみにしてる」
咲耶「ああ、きっと、楽しませてあげるよ……」
P(近い近い! 近いぞ、咲耶)
咲耶「……っと、名残惜しいがここまでか」
P「?」
咲耶「これから、私を応援してくれている子たちと話し合う時間があってね」
咲耶「まあ、所謂陣営というやつだよ」
P「俺たちと同じだな」
P(規模は段違いだけど)
咲耶「それじゃあ、また」
咲耶 スタスタ
P「……」
P「…………ふぅぅぅ」
P(軽く緊張してしまった)
94 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 02:23:14.10 ID:dAXGKB/G0
最終下校時刻。
〜図書館〜
P「……」zzzZZZ
P「すぅ……」zzzZZZ
P「……」zzzZZZ
P「……んあっ?!」
P「はっ、あ、あれ?」
P(やばい、誰もいないし人気(ひとけ)もない!)
P(時刻は――ってもうこんなに経ったのか)
P(恋鐘がはづきさんとみっちり練習をすると聞いて、俺の出番は今日はないだろうからと図書館でなんとなく過ごしていたが……)
P(いつの間にか眠ってしまっていたようだ)
P「帰らないと……」ガサゴソ
P スタスタ
〜校門前〜
P「はぁ……」
P(どうして、こう、やってしまった感がすごい寝起きというのは、こんなにも重く苦しいんだろうか)
P トボトボ
トントン
P(肩を叩かれた?)
P クルッ
ツンッ
P(あ、指で頬を突かれるありがちなやつだ)
P(そして、それをやった犯人は――)
P「――恋鐘か」
恋鐘「えっへへー。うちよ?」
P「練習は終わったのか?」
恋鐘「うん! ……って言うても、実はもうちょっと前に終わっとって」
恋鐘「Pを待っとったばい」
95 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 02:45:14.37 ID:dAXGKB/G0
P「あんまり2人でいるとよくないぞ……」
恋鐘「もう、わかっとーよ。うちもそこまで頭弱くなか」
恋鐘「人気が出るほど、Pと一緒にいるのは良く思われないんやろ?」
P「あ、ああ……」
恋鐘「やけん、今日はうちもPも遅か、チャンスやと思ったんよ」
恋鐘「はづきにも聞いたばい。もううちら以外ん生徒はとーっくに全員帰ってしもうたって」
恋鐘「今日は部活もなか日やし」
P「そうなのか」
P(それなら大丈夫……なのか?)
恋鐘「一緒に帰るくらい……よかやろ?」
P「まあ、それもそうだな」
P「ずっとここにいても変だし、帰ろうか」
恋鐘「うん!」
恋鐘「また分かれ道ばい……」
P(恋鐘はここで俺とは別方向に行かないといけないんだよな)
P(前にも似たようなことがあった)
P(あの時は、はづきさんも一緒だったけど)
恋鐘「Pと話しとったらあっという間についてしもうたばい」
P「ははっ、そうだな」
恋鐘「……」
P「恋鐘?」
P(恋鐘は名残惜しそうにこちらを見ている)
恋鐘「……家まで送らんね」ボソッ
〜恋鐘の自宅(一人暮らし)の前〜
恋鐘「またあっという間〜!」ジタンダ
P「こらこら……まあ、それだけ、楽しいってことだろ?」
恋鐘「! そ、そうやね……! えへへ」
P「もう大丈夫そうか?」
恋鐘「う、うん。ごめんね、付き合わせてしもうて」
P「いいよ。俺も楽しいんだから」
恋鐘「……じゃ、また、ね」
P「おう」
恋鐘「……」スタスタ
恋鐘 クルッ
恋鐘「うちはアイドルになるために生まれてきた女ばい!」
恋鐘「ばってん、うちにとってアイドルになるっていうとは、Pに会うってことで――」
恋鐘「――やけん、うちはPに会うために生まれてきたと思う!!!」
P「!」
恋鐘「じゃ、じゃあ、今度こそおやすみ!!!」ダダダ
P(そうだ。そうだった)
P(俺は――とっくの昔に、月岡恋鐘に魅了されていたのだ)
96 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/03(日) 02:47:44.13 ID:dAXGKB/G0
とりあえずここまで(遅くなりましたが、更新できました)。
97 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/03(日) 06:22:49.61 ID:ATeqqluDO
乙
一人ぐらし……ゴクリ
98 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 01:14:11.20 ID:AhTv4rKH0
7月上旬某日。
〜教室〜
結華「はぁ、なんかあっという間だねー」
P「急にどうしたんだ?」
結華「いや、ほら、新年度だー新学期だーって思ってたら、もう期末試験が近づいてきてるんだよ?」
結華「このままでは気づけば2学期に……ハロウィンに……はたまたクリスマスになって大晦日が来て年を越しちゃうってもんですよ」
P「それは言いすぎ――」
P(――……どうだろう)
P(確かに、今日まではあっという間だったかもしれない)
P(日常が新鮮さで満ち溢れていても、日常から新鮮さが失われていても……)
P「……気づけば長い時間が過ぎている、か」
結華「だからこそ、1日1日を大切にしなければならないのです」
P「ははっ、なんだよ、それっぽいな」
結華「それっぽいとは失敬な! 大事なことだよ?」
P「まあな」
P(恋鐘のアイドル活動も、俺のプロデュースも、どんどん先へ先へと進んでいる)
P(恋鐘は1つ目の審査を無事乗り越えた)
P(次の舞台は、7月の終業式後にあるミニステージだ)
P(それが2つ目の審査における判断基準とされる)
P(今のところ特に目立った問題もないどころか順調とさえ言えるが……)
P(油断大敵。現状維持もまた敵だ)
P(新しいことを考えるのは……まあ、そう簡単ではないんだけど)
結華「Pたん、今何考えてるのか当ててあげよっか」
P「え? どういうことだよ……」
結華「どういうことも何も、そのままの意味ですよーだ」
結華「こがたんのことなんでしょ?」
P「……そうとも言える」
結華「ふうん? なんだか煮え切らないみたいですが」
P(結華は呆れたような笑顔で俺に言う)
99 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 01:58:43.15 ID:AhTv4rKH0
結華「Pたんはさ」
P「?」
結華「どうしてプロデュースをしてるの?」
結華「純粋にそういうことがしてみたかったとか?」
結華「それとも、こたがんだから……?」
P「ゆ、結華……」
P(……校長に言われたから)
P(しかし、果たしてそうだろうか?)
P(きっかけはどうあれ、俺は今の状況を楽しんでいるのではないか?)
P(それは、こういう裏方稼業が好きだからなのだろうか)
P(それとも、結華が最後に言ったように、恋鐘だから……?)
結華「ごめん、いまのナシ。ほんとナシで!」
結華「私ったら何聞いてるんだろうね」
結華「忘れて」
P「結華……」
P(煮え切らないのはお互い様、か)
〜保健室〜
P(昼休みになったが、あんな会話の後で、なんとなく結華のいる教室には居づらかった)
P(そういうわけで、ここに来ている)
P(相変わらず養護教諭のいない保健室だ)
P(そして、いつも決まって霧子がいる)
霧子「ふふ……オキザリスさん、今日も元気です……♪」
P「それは……この前の時の花か」
霧子「は、はい……そうです」
霧子「……」
P「どうかしたか?」
霧子「あっ、そ、その……」
霧子「……Pさんも、元気そうだな、って……」
P「ははっ、そう見えるか?」
100 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 02:33:53.16 ID:AhTv4rKH0
霧子「はい……!」
霧子「お花さんもプロデューサーさんも元気です……」
P「霧子には花の気持ちがわかるのか?」
霧子「どう、でしょうか……でも」
霧子「このオキザリスさん、Pさんに会えて喜んでるみたいです……♪」
霧子「あ、えっと……そんな気がします……」
P「そうか」
P(元気そう……ね)
P(楽しそうとか元気そうとか)
P(最近はそういうのばかりだな、俺)
霧子「……何かいいことでも、あったんですか……?」
P「いいこと……そうだな」
P「アイドルのプロデュースが順調なんだ」
P「ははっ……なんてな」
霧子「アイドル……? プロデュース……」
P「ほら、前に話しただろう?」
P「学園一のアイドルを目指す大会で、この学園で一番大きいイベントなんだ」
P「W.I.N.G.だよ」
霧子「……あ、Pさん、前に言ってました」
P(あんまり興味ないのかな)
P(霧子のビジュアルなら出場も夢じゃないような気もするが)
P(もちろん、歌とかダンスを見ていないから、なんとも言えないとはいえ……)
P「……十分に可能性はある」
霧子「?」
P「あ、すまない。気にしないでくれ」
霧子「はい……」
P「……」
霧子「……あの」
霧子「また、ここに来てください……♪」
101 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 02:44:53.64 ID:AhTv4rKH0
〜学校前の通り〜
P(放課後になった)
P(今日も恋鐘ははづきさんと一緒に練習だ)
P(いや、練習だけではない)
P(今日は収録も行うからだ)
P(そして、まだ披露していない歌の音源を、事前に取っておいた恋鐘の写真や映像とともに……)
P「……家に帰って編集の準備をしないと」
P(帰路についているとはいえ、これから休んでいられるわけでもないんだ)
「ふふー、忙しそうですねー」
P「その声は――摩美々」
摩美々「はいー、摩美々ですー」
摩美々「恋鐘って人のプロデュースですかぁ?」
P「ああ、そうだよ」
摩美々「ふうん……」
摩美々「一生懸命なんですねー……」
P「まあな」
P「やるからにはちゃんとやりたいんだよ」
摩美々「とか言ってー……ちゃんと楽しんでるじゃないですかー」
P「そ、そうだな」
P(俺も変なところで素直じゃないな)
摩美々「Pにプロデュースされるって、どんな感じなんだろー」
P「それを俺に聞いてもな……」
摩美々「えー」
P「……恋鐘に聞いてみればわかるのかもしれないな」
摩美々「そういうことじゃないんですケドー」ボソッ
P「何か言ったか?」
摩美々「別にー……なんでもないですよー」
摩美々「……」
102 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/10/17(日) 02:52:40.19 ID:AhTv4rKH0
摩美々「もしも」
摩美々「Pがまみみをプロデュースするとしたら」
摩美々「おんなじくらい一生懸命になるんですかぁ?」
P「……」
P(またこの話題だ)
P(俺は何のためにこんなことをしているのか、という)
P(別にいいじゃないか、成り行きでも何でも)
P(そんなに答えが必要なのだろうか)
摩美々「どうなんですかぁ」
P(いや、摩美々は純粋な疑問で聞いているのかもしれない)
P(そうに違いない)
P(今日はたまたま、そういうのが気になる日ってだけなんだ)
P「そうだな……」
1.「もちろん、同じくらい頑張るさ」
2.「……恋鐘だからかもしれない」
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/17(日) 03:54:25.53 ID:cwVK36ZWo
1
おつ
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/17(日) 04:55:29.06 ID:pVhy8TMDO
三峰は雪歩二号になるのかなぁ
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/10/31(日) 05:24:02.43 ID:WQ1b2RPL0
キャラのためにもなるべく早く交代してほしいわね
106 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/14(日) 23:17:32.62 ID:ijBjeQmv0
お久しぶりです。
>>1
です。
例によって多忙ゆえ更新できない状況が続いていますが、とりあえずこのスレを忘れたわけではないという報告まで。
(ストレイライトのときよりも更新頻度が低くなってしまっていますが、続けていきます。)
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/14(日) 23:48:01.32 ID:2o1k6WOso
報告おつ
待ってます
108 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:06:44.44 ID:sT3OeCku0
P「もちろん、同じくらい頑張るさ」
摩美々「へぇー……」
P「な、なんだよ」
摩美々「……んふー、別にー?」
摩美々「まあ、いいこと聞いちゃったかなーとは思いましたケドー」
P「いいことって……」
摩美々 ニィッ
P(何を考えているのか、相変わらずわからないな)
P(ただ、何かを企んでいそうな笑みとともに肩を上下させている)
摩美々「じゃあ、プロデュースするのは私でも良かったんですねー」
P「?」
摩美々「だからぁ、その恋鐘って人である必要はなかったってことですよねー?」
P「そ、そんなわけ――」
摩美々「だって、まみみをプロデュースするとしても同じくらい頑張るって、そういうことじゃないんですかぁ?」
P「――だから、違うって。俺は恋鐘のこと……」
P(……いや、駄目だ。それを言うのは、プロデューサーである以上、いけない)
摩美々「質問には答えてもらわないとー」ケタケタ
P「……」
摩美々「……それなら」
摩美々 グイッ
P「うおっ?!」
P(ね、ネクタイを引っ張られた……?!)
P(摩美々の顔が文字通り目と鼻の先に迫る)
P(互いの息遣いがわかる距離――仕掛けた本人の緊張も伝わってくる)
摩美々「この距離……誤解されそうな感じー」
P「だ、だから止めたほうがいいぞ……」
摩美々「Pは彼女とかいるんですかぁ?」
P「……いない」
摩美々「誤解されても問題なさそー」
P「そ、それはだな」
109 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:24:13.84 ID:sT3OeCku0
P「もういいだろ、止めよう、摩美々」
摩美々「止めて欲しかったらー……ふふー、来年はまみみをプロデュースしたいって言ってくださいー」
P「え……」
摩美々「だってー、別にいいじゃないですかぁ」
摩美々「Pがそう言ったんだしー」
P「……」
摩美々「言わないとー……んふっ」
P「言わないと、なんだ?」
摩美々「さあ? ただ、いま私が背伸びをしたら、唇どうしがついちゃいそうだなーって」ニッ
P(摩美々はイタズラのつもりなんだろうが、でも、本当にやりそうでもある)
P(それくらいの距離だから)
P(俺は恋鐘を――……だったら、この状況は良くないに決まってる)
P(誰かに見られでもしたら、噂だって広まるかもしれないし)
P「わかった」
摩美々「早くしてくださいー」
P「……俺は」
P「っ、来年は摩美々をプロデュース……したい……」
摩美々「!」
摩美々「……」
摩美々 チュ
P「……え」
摩美々「ありがとうございますー、来年は期待しておきますねー」
P(何が……起きて……?)
P(目の前にいる少女を見る――摩美々だ――でも、いつもみたいな余裕は感じられない)
P(頭の両側をいじる仕草は時折見受けられるものだが、そうする指先は普段とは違って震えている)
P「まみ、み……?」
摩美々「……ふふー」
P(摩美々は、逸らしていた目を俺の方に向ける――)
P(――否、見ているのは俺ではなかった)
P(そう、俺の後ろのあたりだ)
摩美々「そういうことみたいらしいですー」
110 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:40:18.89 ID:sT3OeCku0
P(誰だ……? 摩美々は、誰に話しかけている?)
P(その答えは、俺のすぐ後ろにある。簡単なことだ。振り返ればいいだけなのだから)
P(しかし、簡単な話ではない。何故か、振り返るのが怖い)
P(何か、深刻な事態に陥っているようで……)
P(……目を逸らし続けているわけにもいかず、とうとう後ろを見た)
P(振り返って視界に映ったのは――)
P「――恋鐘……?」
恋鐘「P……こ、こがんとこでなんばしとーと?」
P(そんな……まさか、見られた?)
P(聞かれもしただろうか)
P(いや、そんなことは、恋鐘の反応を見ればわかることだった)
P「違うんだ! これはそういうんじゃなくて……」
P(そういうんじゃなくて、なんなんだろう)
P(今なんて言えば良いのかがわからない)
恋鐘「さ、流石やね〜! Pは……もう来年んことまで考えとーなんて!」
P(恋鐘は笑顔だ――同時に、目にたくさんの涙を溜めている)
P「こ、恋鐘……!」
恋鐘「うち、勘違いしてしもうてた。Pにとって、うちは特別なんやなかかと思っとった」
恋鐘「Pにとっても、そうなんやろって、勝手に……」ポロポロ
恋鐘「……そがんわけなかね」
恋鐘「うちの思い込みばい」
P「そんなことはない!」
P(俺は恋鐘のことが――その先が言えない)
P(プロデュースする立場で言っていいことじゃないと思うからだ)
P(言ったとして、見られてみろ、聞かれてみろ、恋鐘の夢を叶えることは途端に難しくなる……!)
P(今だって……ここには摩美々という第3者がいるんだ)
P「……っ」
111 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 01:56:15.35 ID:sT3OeCku0
恋鐘「か、買い物の途中やったばい! はよ用事ば済ませてはづきのとこに戻らんば!!」ダッ
P「恋鐘っ!!」
P(走っていってしまった)
P「……」
P(よりによって恋鐘に見られてしまうだなんて……!)
P「……摩美々」
摩美々「な、なんですかぁ?」
P「……」
摩美々「……そうやって無言で迫られるとー、ドキドキしちゃいますよー?」
摩美々「でも、ちょっと怖いかも」ボソッ
P「冗談を言うつもりなんてない」
P「摩美々にとってはイタズラをしてるだけなんだろうけど」
P「今回ばかりは、っ、流石に……!」
P(流石に、なんだろうか)
P(摩美々が悪いといえばそれはそうなんだが、ここで怒りをぶちまけてどうにかなるものだろうか?)
P「……クソっ」
P(感情が高ぶって荒くなった息の1つ1つが重たく感じる――ただ、それだけだ)
摩美々「……P?」
P「っ、摩美々!!」
摩美々 ビクッ
P「……」ハァッハァッ
摩美々「……」ゴクリ
P「……1人にしてくれ」
摩美々「あ、その、ごめ……」
P「来ないでくれないか……!」
摩美々「……!」
摩美々「……はい、わかりましたぁ……」
P スタスタ
112 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/11/24(水) 02:11:01.88 ID:sT3OeCku0
その晩。
P(あれから考えがまとまることもなく、嫌な汗をかきながら自宅の自室で悶々とするだけの時間を過ごした)
P(もうすぐミニステージもあるというのに、どうすればいいんだ……)
P(摩美々の真意はわからない――確実なのは、彼女を責めても何も生まれないということだけだろう)
P(スマホを見るのが怖くてしばらく電源を切っていた。ついさっき電源を入れて確認したら、はづきさんからのメッセージが届いていた)
P(恋鐘は練習に来なかったそうだ)
P(連絡しても出ないので、俺が何か知っているのではないかと思ったらしい)
P「……」
P(一体、何が正解で、何がそうでないのか)
P(まったく、わからない)
P(俺が自分の想いに正直になっていれば良かった……? ……これは考えと行動との乖離が著しい)
P(摩美々のイタズラを無理やりにでもやめさせれば良かった……? ……これはできたはずだ)
P(単に、最初に「恋鐘だからプロデュースを頑張れる」と言うべきだった……? ……)
P「……」
P(スマホをタップしては通知が来ていないことを観測するだけ)
P(時折、ロックを解除してチェインにある恋鐘とのトークを眺める)
P(つい先日まで楽しく会話をしていた相手であるはずなのに、なんだか変な感じだ)
P「……はぁ」
P「このまま何もしないのも、なぁ……」
P(別に、恋鐘のプロデューサーを降りたわけじゃない)
P「そうだ。そうじゃないか」
P(俺の中の何かが変わったわけじゃないはずなんだ、たぶん)
P(だったら……)
P「……っ」
1. 恋鐘に電話をかける。
2. 恋鐘にメッセージを送る。
3. 何もしない。
選択肢↓1
(とりあえずここまで)
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/11/24(水) 03:31:10.33 ID:BgjeZBDDO
1
114 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 01:35:11.87 ID:ubFum9dmO
P(電話だ)
P(恋鐘に電話をかけよう)
P(逃げちゃいけないんだ……これは)
P(向き合わないと――……そして、解決しなければ)
P ポチポチ
P「……」
P(あとは、このボタンを押せば電話は発信される)
P(この瞬間がとんでもなく苦手だ)
P(押すまでに動く親指がめちゃくちゃ重く感じる)
P「……っ」ポチッ
〜♪
P(呼び出し音が流れる――この待ち時間も好きじゃない)
P(特に、呼び出し音が突然に途切れて相手が話し始めるまでの間は)
P「……」
〜♪
P「……出ないな」
P(少し時間を空けてから再度試してみるか……?)
P「仕方ない、一旦切r――」
〜♪ ――……
P「――っ?!」
P(恋鐘が、出た)
P「……」
P(どうしよう。何を言えばいい?)
「……」
P「っ、こ、恋鐘……夜遅くにすまん」
「……ううん」
P「恋鐘には、ちゃんと言わないといけないことがあるんだ、だから……」
「それって放課後んことやろ? それならうちはいっちょん気にしとらんばい」
P「……い、いや、でもな?」
「うちには関係んなかことやけんね! Pとあの子が何をしとっても、別に……」
P「だから、それは違うんだ! 俺に、ちゃんと説明をさせてくれないか?」
115 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 01:50:38.65 ID:ubFum9dmO
「……ばってん、うち、どがんしたらよかかわからんばい」
P「……」
P「……いつもの分岐点」
「?」
P「一緒に帰ると恋鐘だけ別方向に行かないといけない場所があるだろ?」
P「そこで待ち合わせよう」
P「会って話したほうがいいと思うんだ」
「……」
「わかったばい」
P「じゃあ、今から向かうぞ」
「うん、うちもそうする」
ピッ
P「……」
P(電話が切れた直後のこの静寂は……案外嫌いじゃないかもだな)
P(思ったよりも早く着いてしまった)
P(恋鐘はまだ来ていない)
P(まあ、女子なら出かける前の準備が多いのだろう)
P「さて、ああは言ったものの……」
P(……具体的に何を言うのか、実はそれをちゃんと思いついていたわけではなかった)
P「誤解を……誤解を解かないとな」
P(摩美々はきっと単なるイタズラであんな行動に出ただけだろう。そうに違いない)
P(今回ばかりは、ただの冗談で済ませることのできるものではないが)
P(起きてしまったことはもう変えられない)
P(今の自分に何ができるか、そしてその結果どのような未来が待っているのか)
P(それが重要だ)
恋鐘「お、おまたせ〜」ドタドタ
P「!」
116 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 02:07:46.81 ID:ubFum9dmO
恋鐘「お、遅うなってしもうた〜!」
恋鐘「待った?」
P「大丈夫だ。さっき来たばかりだからさ」
恋鐘「そう? それならよかばってん」
P(恋鐘の顔を見る。夜なので街灯と月明かりしか照らすものがないが、それでもわかる――)
P(――薄くてもきちんと化粧をしていて、人前に出れる状態だ)
P(たかが俺1人のために、だ)
恋鐘「P?」
P「……恋鐘」
恋鐘「うん」
P「俺は陰から恋鐘を支えて、W.I.N.G.で……そしてアイドルとしてもトップに連れて行きたいと思っているんだ」
P「そのためにも、俺は目立っちゃいけない」
P「恋鐘にも必要以上に関わってはいけない、執着してはいけない、と」
P「そう、思っていた……んだ」
恋鐘「……うん」
P「今日の放課後――あの場にいた子は摩美々っていう後輩でな、イタズラ好きな奴なんだ」
P「俺はからかわれているだけなんだよ」
P「恋鐘が思っているようなことは、おそらく、何もないんだ」
P「いや、その話は今はとりあえずいらないか、すまん」
P「で、恋鐘でなくとも同じくらい頑張れるとか、来年は摩美々をプロデュースしようと思ってるとか、そういう発言なんだけどな――」
P「――あれは、方便だよ」
P「俺が恋鐘を……その、えっと、だな……」
恋鐘「?」
P(今なら、言えるか)
P「……っ、お、俺が恋鐘を好きだってことが知れたら!」
恋鐘「っ!?」
P「それは……恋鐘がアイドルをやる上で、良くないことなんだ」
P「だから、できるだけ俺が恋鐘にこだわっていないように見せるしかなかった」
P「そう思っていたんだ」
P(言ってしまった……)
117 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 02:29:55.59 ID:ubFum9dmO
P「って、なんだか言い訳じみてるかもな……」
P「格好悪いというかなんというk――」
ギュッ
P「――……」
P(目の前にいた少女が一気に距離を詰めて俺の体をホールドしている)
P(それは飾り気のない表現で、有り体に言えば抱きしめられていた――)
P(――恋鐘によって)
P「こ、恋鐘……」
恋鐘「いまは何も言わんで……」
P「……」
P(こんなところを見られたら――と言おうとしたが)
P(我ながら――そしてまさに自分が当事者でありながら――無粋だったかもしれないと思った)
恋鐘「うちも苦しかったんよ?」
恋鐘「Pとおんなじようなこと思っとった」
恋鐘「アイドルになりたいのはほんとのことやけど……」
恋鐘「……Pのこと、す、すす、好きなんもほんとで」
恋鐘「もうどがんしたらよかかわからんくなっとったばい」
恋鐘「そ、それに……! 何よりも……」
恋鐘「Pがうちんことどう思っとるのかわからなくて」
恋鐘「それで……諦めんばって、そう、思うこともあって……」
恋鐘「そがんときにPが後輩とキスばしとーとば、見てしもうたけん。もうショックでわけわからんくて」
恋鐘「でも……えへへ」
恋鐘「そがんことやったんやね、P」
P「ああ。そうなんだ」
P(もっと早く、言っても良かったのだろうか)
P「ははっ、お互いに空回りしてたのかもな」
P(運の悪さもあるが)
118 :
◆bXCm/le03U
[saga]:2021/12/18(土) 02:43:48.02 ID:ubFum9dmO
恋鐘「じゃ、じゃあ……!」
恋鐘「うちとP、好きどうしってことばいね!?」
P「そ、そうだな……改めて言われると何だか照れるけど」
恋鐘「えへへ……P」
P「どうした?」
恋鐘「好きばい」
P「お、おう」
恋鐘「え〜〜っ! もっと嬉しそうにせんね!?」
P「慣れてないんだって、こういうのは……」
恋鐘「……Pからももう1回聞きたか」
P「っ……そうだな」
P(改めて言うとなると、めちゃくちゃ恥ずかしいな)
P「好きだ」
恋鐘「! ……は、はぃ」
P「……」
恋鐘「……」
P「…………」
恋鐘「……………………」
恋鐘「P、うちんほう見て」
P(言われるがまま、下を向く)
チュゥ
P「?!」
P(例によってそれはいきなり訪れるもので……)
恋鐘「ん〜〜!」
P(唇が離れそうになると、恋鐘が逃がさないようにと必死に口を押し付けてくる)
P「……!!」
P(い、息が……!! 苦しい……!!)
P「ぷはぁっ! ちょ、ちょっと待ってくれ! それじゃあ呼吸ができないぞ……」ハァハァ
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