結標「私は結標淡希。記憶喪失です」

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392 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/15(金) 20:57:59.60 ID:5KotB6GBo


禁書「あっ、ごめんね。なんかちょっと話が逸れてきちゃってるかも。最初の方に戻るね。たしかどうすればいいのか、だったよね?」

一方通行「……ああ」


禁書「さっきはなんか適当に言っちゃったから、改めてきちんと答えさせてもらうんだよ」

禁書「まずはきちんと二人で向き合って話し合うべきだと思うんだよ。元々の二人の関係やその罪のことをね」


禁書「あえてそのことを打ち明けないという考え方もあるかもだけど、個人的にはおすすめしないんだよ」

一方通行「……何でだよ?」

禁書「そこから二人の関係がどうなるにせよ、罪の十字架にその男の人が一生縛られてしまうことになってしまう」

禁書「きっとね、それはとても辛いことだと思うんだよ」

一方通行「…………」

禁書「だから、そのことを告白した上で、もし女の人の気持ちが変わることなく自分に好意を向けてくれるのなら、そこから先を決めるのは……」ジー

一方通行「あァ?」



禁書「――もうわかっているよね? ねえ、あくせられーた!」ニコッ



一方通行「……オマエ、もしかして全部わかっていて」

禁書「? なんのことかな?」キョトン

一方通行「チッ、何でもねェよ」

禁書「?」

一方通行「……ところでオマエのその言葉は、オマエの信じる十字教やら神様やらの教えから来てんのか?」

禁書「ううん、違うよ。さっきの言葉は全部、素直に私、インデックスが思ったことです」

一方通行「やっぱオマエって駄目なシスターだよな?」

禁書「むむむ、何で相談に乗ってあげたのにそんなこと言われなきゃいけないのかな?」

一方通行「相談だァ? オマエは適当な創作話聞かされてそれに対してペチャクチャ戯言吐いてただけだろォが」

禁書「ぐっ、たしかに言われてみればそうかも……」

一方通行「大体よォ、仮にアレ相談たったとするのなら、普通迷える仔羊ってのに対して布教してやンのがシスター様の仕事じゃねェのかよ?」

禁書「え、えーと、えへへ、わ、私はまだ見習いのシスターだから……」

一方通行「そンなこと抜かしてるうちは一生オマエはそのままだエセシスターが」


393 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/15(金) 21:00:02.76 ID:5KotB6GBo


禁書「……あっ、そ、そういえば私屋台でチュロスとフランクフルトとワッフルとじゃがバターを買いに行く途中だったんだよ!」

一方通行「体裁悪くなって適当な理由つけて逃げるつもりだな。てか何だよその食いモンの組み合わせ」

禁書「わ、私はもとから屋台に行こうと思っていたからそういうのじゃないんだよ!」

一方通行「そォかよ」スッ

禁書「うん? どうしたの急に立ち上がって? もしかしてあなたも屋台に行く気なのかな?」

一方通行「ンなわけねェだろォが」

禁書「じゃあどうしたの?」

一方通行「別に。野暮用だ」

禁書「ふーん、そっか」

一方通行「つゥかオマエ、さっきは散々付きまとってきやがったクセに急に離れだしたな。そンなに突かれたところが痛かったか?」

禁書「そんなことないもん! だから、私は最初から屋台に――」

一方通行「ヘェヘェわかったわかった。俺が悪かったからさっさと屋台にでもなンでも行きやがれ」

禁書「もう! あっ、そうだ。あくせられーた?」

一方通行「あァ?」



禁書「今のあなたの表情、とってもいい感じだと思うんだよ!」



一方通行「は?」

禁書「それじゃ、またあとでねー!」タッタッタ


一方通行「……チッ、くっだらねェ」

一方通行「…………」



『――決断することから逃げないで』



一方通行「……ああ」



『――もうわかっているよね? ねえ、あくせられーた!』



一方通行「わかってるよ。クソッタレが」



――――――


394 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/15(金) 21:01:42.32 ID:5KotB6GBo
ロリ二人に説教される一方さん
これが書きたくて今までのインデックスさんの出番を多めにした感があるよね

次回『いつもの二人』
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/20(水) 22:59:51.10 ID:LaCf7tD+0
懐かしいなあ
読んでたの中学生の時だったな
396 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:07:45.66 ID:cHwUsclho
前スレ書き終わった頃は社会の厳しさを思い知ってたわ

投下
397 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:08:53.94 ID:cHwUsclho


17.いつもの二人


March Forth Wednesday 15:30

-スターランドパーク・喫茶店-


青ピ「――そういうわけで、一番すごかったレベル5のアトラクションはフリーフォールのヤツやったなぁ」

打ち止め「うおおすごそう!! 次それ乗ろうよ、ってミサカはミサカは提案してみる」

結標「でもフリーフォール系だと、また安全ベルト問題が出てくるわよ?」

風斬「だ、大丈夫です。また私たちは、別のアトラクションとかで楽しみますので」

吹寄「そういえば上条当麻!? 何で二人に動きやすい格好で来るように言わなかったのよ!?」

上条「へ? どういうことでせうか?」

姫神「実は。かくかくしかじか。ということがあった」

上条「あー、そうだったのか。全然気が付かんかった」

吹寄「……貴様ぁ」ギロリ

上条「ひぃ!? ごめんなさい!!」

姫神「というか。謝る相手が違うと思う」

上条「あ、ああそうだったな。風斬ほんとごめん!」バッ

風斬「い、いえそんなに謝らなくても。遊園地、って聞いた時点で気付けなかった、私も悪いです」

青ピ「風斬さんええ子やなぁ……ほんまええ子やなぁ」

吹寄「青髪ピアスが女の子褒めてるところ見ると、何かいかがわしい感じがして不愉快ね」

青ピ「ひどい言われようやなぁ」

土御門「おっ、もうこんな時間か。オレたちはそろそろ次のアトラクションの列へ並びに行くとするぜい」

青ピ「ほんまやんけ! ついついゆっくりしてもうたなぁ。次はコーヒーカップのレベル5やったっけ?」

土御門「そうそう。あのすっごい速度で回転するやつ」

風斬「うっ」

上条「どうかしたのか?」

風斬「…………いえ」

吹寄「あたしたちは六時くらいに夕食取ろうと思っているけど、あなたたちは?」

土御門「特には決めてはなかったにゃー」

青ピ「せやな。そしたら時間が合いそうなら合流するわ」

吹寄「わかったわ。どこで食べるとかは全然決めてないから、合流しようってタイミングで連絡ちょうだい」

上条「おう、了解だ」

青ピ「そういやアクセラちゃん来んかったなー結局」

結標「……うん。残念だけど」

打ち止め「…………」


398 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:10:12.64 ID:cHwUsclho


結標「ま、しょうがないわ。アイツはそういうヤツだし」

風斬「結標さん……」

上条「まあ気にすんなよ。まだ機会はあるって」

土御門「次に集まれそうなのは夕食時くらいか?」

青ピ「ほな次の集合時間伝えとかなあかんな。メッセでも送っとくか」

吹寄「ああ、大丈夫よ。こっちでやっとくわ。それにこっちはインデックス待たないといけないから、もう少しここにいるし」

青ピ「はいよー。しっかし楽しみやなー。二人が仲直りした暁にはそれはもう死ぬほどアクセラちゃんおちょくったるわ」

上条「お前、またボコボコにされんぞ?」

青ピ「何言うとんカミやん!? 隙を見せたらおちょくってやる! それが真のともだ――」



スコォン!!



青ピ「――あいたっ!? なんや!? 何か硬いもんが飛んできた!?」

姫神「これは……缶コーヒーの空き缶?」

風斬「!!」

上条「何でこんなもんが……」

打ち止め「缶コーヒー……はっ、もしかして!?」バッ




一方通行「……おォ、悪りィな。何かアホみてェな会話が聞こえてきたから、つい手が滑っちまった」ガチャリガチャリ




吹寄「あ、アクセラ!?」

姫神「あの距離で聞こえてたんだ。なんという地獄耳」

土御門「青髪ピアスの声が馬鹿みたいにデカかっただけだと思うにゃー」


399 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:11:01.53 ID:cHwUsclho


結標「一方通行……」

一方通行「よォ」

結標「あ、あの、その、えっと……」

一方通行「結標」

結標「は、はい!」


一方通行「さっきは悪か……いや、すまなかった」


結標「!!」

一方通行「……違うな。ゴメンナサイ? 申し訳ございませンでした?」

結標「いや、どれもほぼ同じ意味だから。別にいいわよ言い方なんて」

一方通行「そォか」

結標「あの、一方通行?」

一方通行「何だ?」

結標「その、私もね、さっきは言い過ぎたっていうか、えっと……ごめんなさい!!」

一方通行「……何でオマエが謝ってンだ?」

結標「だって私が怒鳴ったせいで、その、ケンカになっちゃったじゃない?」

一方通行「オマエのせいじゃねェよ。アレは俺が全面的に悪かった」

結標「……ねえ」

一方通行「あァ?」

結標「貴方、本当に一方通行?」ジトー

一方通行「何で俺がそンな疑惑の目を向けられてンだよ」

結標「いや、だって素直に自分の非を認めるなんてらしくないわよ?」

一方通行「ぶち殺すぞクソアマ」プルプル

結標「あはは、ごめんつい」

一方通行「チッ」

結標「ねえ、よかったら聞かせてよ。何であんな変な感じになっていたのか」

一方通行「……そォだな。まァ、端的に言えば俺は逃げていたンだ。オマエから」

結標「逃げていた、って私から?」


400 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:12:14.90 ID:cHwUsclho


一方通行「ああ。オマエとどォ接すればイイのか、どンな顔をすればイイのか、何もかもがわからなくなっていた」

一方通行「だから、俺はそれをずっと考えていた。今の今までずっとな」

一方通行「だがいくら考えたところで結論は俺の中から出てこなかった。俺にそれだけの能がなかったからだ」

一方通行「そして俺は逃げたンだ。それが今俺が考えうる最善の方法だと思って、その最悪な方法を実行した」


結標「ちょっと待って。貴方が何を言っているのかさっぱりわからないんだけど」

一方通行「……ああ、そォだろォな」

結標「おい」

一方通行「あー、面倒臭せェ。結標、これだけは言っておく」

結標「何よ」




一方通行「俺はもォ逃げねェ。オマエとこれからどンなことがあろうが、どンな結末になろォが、絶対に逃げねェ」




結標「…………」

一方通行「以上だ」

結標「……ねえ」

一方通行「ああ」

結標「何言っているのか全然わかんないんだけど」

一方通行「わかったら逆にすげェよ」

結標「……はぁ、そう言うってことは懇切丁寧に説明しろって言っても聞かなそうね」

一方通行「よくわかってンじゃねェか」

結標「だからね、最後に確認させて」




結標「これから接する貴方はいつもの一方通行ってことでいいのよね?」




一方通行「……ケッ、くだらねェこと聞いてンじゃねェっつゥの」

結標「ふふふ、そう。ありがとうね」ニコッ

一方通行「チッ……」



401 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:13:17.42 ID:cHwUsclho


青ピ「うおおおおおおアクセラちゃああああああああん!! 休憩所の隅っこで体育座りしながら泣き崩れてたってほんごふぁあっ!?」ドガッ


一方通行「ナァニクソみてェな寝言抜かしながらコッチに向かってきやがってンだオマエ?」カチッ

上条「……何か知らねえけどすげえ懐かしい感じがすんな。何でだろ?」

土御門「だにゃー。ま、何にしろアクセラちゃんが本調子になってくれて嬉しいぜい」

一方通行「ハァ? 俺はずっと本調子だっつゥの」

上条「ははっ、そうだな。たしかにいつもの一方通行って感じだ」

一方通行「笑ってンじゃねェよ。すり潰すぞ三下ども」

姫神「よかったね。結標さん」

吹寄「しかし、まさかアクセラのほうから先に謝るなんて意外だったわね」

結標「あー、うん。たしかに私もそれは思う」

姫神「俺は悪くねェ。っていう態度をずっと貫くと思っていた」

吹寄「そうね。まあでも、結局最後は折れて素直に悪いって認めそうよね」

結標「ああ、それわかるわ」

一方通行「何で先に謝罪しただけでこンな好き放題言われなきゃいけねェンだ?」

吹寄「あはは、ごめんなさい。冗談よ冗談」

一方通行「チッ」

姫神「でもアクセラ君。きちんと謝れることは。とても偉いことだと。私は思う」

一方通行「俺には似つかわしくねェ評価だな」

青ピ「そんなことないって。なんたって謝ったことは事実なんやからなぁ、エライエライ!」

一方通行「そンな人ォ馬鹿にしたよォなツラでンなこと言われてもよォ、一つも心に響かねェンだっつゥの」

吹寄「……そういえば謝るで思い出したわ。青髪ピアス! あなたお昼に電話したときのあの雑な謝罪は何だったのよ? もしかしてあたしをなめているのかしら?」

青ピ「ひっ!? なんかよくわからへん地雷踏んでもうたっ!?」

吹寄「きちんとした謝罪のやり方、あたしが一から叩き込んであげましょうか?」ゴキゴキ

青ピ「謝罪とは真逆の方法を振りかざしそうな気配がするんですが!? ひえええカミやん助けてええええ!!」

上条「なっ、テメェ!? だから俺を巻き込むんじゃねえッ!!」

土御門「カミやんも怒られる機会多いんだから、ついでに叩き込んでもらえばいいんじゃないかにゃー?」

吹寄「それもそうね。上条当麻はとりあえず土下座しとけば許してくれるみたいなこと考えてそうだし、ちょうどいいわ」

上条「そんなことひとかけらも思ったことねえよ!!」


402 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:14:19.09 ID:cHwUsclho



ワイワイギャーギャー!!



一方通行「……何ハシャイでンだこの馬鹿どもは?」

打ち止め「アクセラレータ!」

一方通行「……打ち止め」

打ち止め「よくできました! ってミサカはミサカは子どもを褒める親御さんのような気持ちになってみたり」ニコッ

一方通行「ガキのクセに親とか何言ってンだオマエ」

打ち止め「まあまあ別にいいじゃんそういう気分なんだから、ってミサカはミサカは軽く流してみたり」

一方通行「うっとォしいヤツ」


風斬「……ふふっ」

禁書「ただいまー」モグモグ

風斬「おかえり。……、またいろいろ買ったね」

禁書「ひょうかも食べる? おいしいよワッフル」

風斬「い、今はいいかな?」

禁書「そっか。……あっ、あくせられーた戻っていたんだ! おーい!」

一方通行「あァ? 何だよ、そンだけ食いモン抱えていてまだ俺に何かせびるつもりかァ?」

禁書「なっ、私はそんなことしないんだよ!」

一方通行「それは新しいギャグか何かか?」

禁書「ぐぬぬ、……ところであくせられーた。ここにいるってことはもう野暮用ってやつは終わったのかな?」

一方通行「ああ」

禁書「そう。それはよかったんだよ」

一方通行「よかったって何だよ」

風斬(……、なるほど。そういうこと、か)クスッ

一方通行「……あァ? 何だよ風斬」

風斬「い、いえ。なんでもないです……」

一方通行「?」


403 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:15:19.01 ID:cHwUsclho


青ピ「……ってかこんなことしとる場合やなかったわ! はよ行って列並ばなあかんやん!」

吹寄「こんなこと……?」ギロッ

青ピ「あははははそない怒らんといてえな。言葉の綾ですやん」

土御門「今から行けば一時間待ちってところかにゃー」

上条「他のやつに比べたら短く感じるな。まあ、コーヒーカップなんてそんな人気ないか」

一方通行「コーヒーカップだァ? オマエら次何に乗るつもりなンだよ?」

土御門「『爆転シュート!! カプブレード』ってヤツだにゃー」

一方通行「…………おェ」

上条「おえ?」

青ピ「どしたんやアクセラちゃん? もしかして一緒に行きたいんか?」

一方通行「ンなわけねェだろ。誰がオマエら馬鹿三人と行くかよ」

青ピ「そら残念やなぁ。絶叫マシンでギャーギャー言っとるアクセラちゃん見たかったわぁ」

一方通行「一度も言ったことねェよそンな言葉」


青ピ「ほな時間もないし、ボクらは行くとするわー。いくでえー野郎どもおおおおおおおおおおっ!!」ダダダダダ

土御門「急げ急げい! たった今一時間待ちが一時間一〇分待ちに変わったにゃー!」ダダダダダ

上条「だああっまたかテメェら!! だからこんな人通りが多いどころで全力疾走してんじゃねえ!!」ダダダダダ


一方通行「オマエもしてンじゃねェか」

吹寄「さて、みんな揃ったことだしあたしたちも行くとしましょうか?」

姫神「そうだね。休憩は十分できた」

一方通行「あン? そォいやこれからどこに行くつもりなンだ?」

結標「『エターナルフォールブリザード』っていうフリーフォールの絶叫度最高のやつ」

一方通行「」

打ち止め「ふ、ふふふ。初のレベル5のアトラクション、武者震いが止まらないぜ、ってミサカはミサカは現状報告してみる」ガタガタ

姫神「それは本当に武者震いなの?」

一方通行「……つゥか、フリーフォール系は風斬とシスターが行けねェから選択肢から外してなかったか?」

風斬「あっ、今回も私たちは残って別のアトラクションに行くので、大丈夫です」

禁書「そうだったんだ」モグモグ

一方通行「チッ、だったらしょうがねェなァ、また俺がコイツらの面倒を――」

吹寄「あっ、今回はあたしが残るから無理して残らなくていいわよ?」

一方通行「…………は?」


404 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:16:35.05 ID:cHwUsclho


吹寄「よくわからないけど今まで悩み事とかあって楽しめてなかったんでしょ? だから、今回は譲ってあげたほうがいいかなって思って」

一方通行「クソみてェな心遣いアリガトウ。だが、そンなモンする必要ねェからオマエが行け」

結標「あれあれー? そんなこと言って、やっぱり貴方って絶叫マシンダメってことなのね?」

一方通行「は?」

吹寄「あーそうなんだ。だったらしょうがないわね。代わってあげましょうか?」

一方通行「チッ、ふざけンじゃねェ。余裕なンだよレベル5のアトラクションなンざよォ」

吹寄「そう。だったら楽しんできてね」

一方通行「お、おォ」

姫神「……アクセラ君?」

一方通行「何だ」

姫神「強がるのはいいけど。気絶とかしないでね? 面倒だから」

一方通行「強がってねェよ」


打ち止め「よーし!! そうと決まったら早速いこーう!! ってミサカはミサカは隊長気分で先陣を切ってみたり」トテチテ

結標「先に行くのはいいけど、貴女場所わかっているのかしら?」

禁書「ひょうかー、私たちはどこにいくー?」

風斬「うーん、そうだね。怖くないところならどこでもいいよ」

姫神「ちなみにこっちが行くヤツは。待ち時間一時間半だから。待ち時間少ないところ狙えば。三個くらい乗れると思う」

吹寄「あえてアトラクションにこだわらなくてもいいかもしれないわね。ディスプレイとかゲームコーナーとかも選択肢としてありかも」

禁書「げーむこーなー? だったらまたぷりくら撮ろうよひょうか!」

風斬「う、うん。いいよ……、で、でも裸みたいな格好するのは、ちょっと、嫌かな?」

吹寄「裸?」

風斬「……い、いえ! なんでもないです!」

打ち止め「はい! ミサカもプリクラ撮りたい! ってミサカはミサカは挙手してみる」

結標「だったら、フリーフォール終わったあとね。ゲームコーナーだったら晩御飯までの時間潰しまでにちょうどいいでしょ」

吹寄「そうね。だったらその辺りの時間帯はゲームコーナーにいるわ」


一方通行「……結標」

結標「何?」

一方通行「あとで話がある」

結標「話? 今じゃいけないのかしら?」

一方通行「……ああ。できれば俺とオマエ、二人きりでだ」

結標「…………へ?」


―――
――



405 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:17:38.61 ID:cHwUsclho


同日 17:30

-スターランドパーク・ゲームコーナー-


-エアホッケー-


禁書「――ふふふふ、このショットで決めてあげるんだよひょうか」スッ

風斬「…………」ゴクリ

禁書「行くよ! たああああああああああああっ!!」バッ



スカッ、ガチャン!!←自分のゴールにパックが入った音



禁書「…………」

風斬「…………」

吹寄「これで7−6で風斬さんの勝ちね」

禁書「ああああ負けちゃったんだよ! ちょっと悔しいかも!」

風斬「お、惜しかったと思うよ。きちんと当たっていたらゴール取れてたよ……たぶん」ボソッ

禁書「たぶん?」ジト-


結標「あっ、三人ともいた! おーい!」ノシ


吹寄「あっ、みんな終わったのね。どう? 面白かった?」

結標「すごかったわね。何だっけ、擬似重力発生装置? ってやつのおかげで見た目は車輪状にグルグル回ってるだけなのに、乗ってみたらずっと落下してる感覚だったのよ」

吹寄「へー、たしかにそれはすごいわね。スカイダイビングを体験しているみたいなものなのかしら?」

姫神「たぶん。そんな感じ。スカイダイビングはしたことないけど」

吹寄「……で、そっちの二人はどうしたの?」


打ち止め「えへっ、えへへへっ、なんかもう、えへえへ、ってミサカはミサカはえへへへへっ」フラフラ

一方通行「がはっ、く、クソガキが。何回能力使用モード誤制限すりゃ気が済むンだコラ」ヨロヨロ


結標「ああ、絶叫マシンにやられただけよ。放っておけば回復するでしょ」

吹寄「やっぱりアクセラって絶叫マシン駄目だったのね」

一方通行「駄目じゃねェよ!」ヨロッ

吹寄「そんなボロボロの状態で凄まれても……」

結標「ほらっ、打ち止めちゃん? ゲームコーナー着いたわよ?」

打ち止め「ふへへへへってゲームコーナー!? うおおっプリクラ撮るぞ撮るぞ、ってミサカはミサカは目を輝かせてみたり」キラキラ

姫神「あっ。復活した」

吹寄「単純ね」

一方通行「オラッ、クソガキ! さっさと能力使用モード返しやがれ!」


406 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:18:37.82 ID:cHwUsclho


結標「ところで遊園地のプリクラってどんなのがあるの?」

吹寄「見た感じだと普通にゲーセンとかにあるやつとか、あと遊園地オリジナルのもあったわね」

結標「遊園地オリジナル?」

吹寄「なんだっけ? クロホシくんだっけ? パンフとかに書かれてるキャラ。あれと一緒に撮れるみたいね」

結標「ああ、この逆立ちした星みたいなやつか。正直かわいいとは思わないけど」

姫神「地方の変なゆるキャラみたい」

禁書「……むぅ」

風斬「どうかしたの?」

禁書「ここには衣装貸し出ししてくれるところがないんだよ!」

吹寄「衣装? コスプレしたいってこと?」

禁書「そう! そのこすぷれってヤツして撮りたいんだよ!」

姫神「そういえば。地下街のゲームセンターに。そういうのあったね」

打ち止め「そんなのがあの地下街にはあったんだ! ミサカ今度地下街に連れて行って欲しいなぁ、ってミサカはミサカはチラチラ目配せしてみる」チラチラ

一方通行「こっち見ンな」

風斬「ま、まあ、貸衣装がないならしょうがないよね。あはは」

結標「私たちから見たら、その修道服も十分コスプレっぽいけどね」

禁書「?」

吹寄「で、どの機種で撮るの? 遊園地オリジナルのやつ?」

結標「うーん、たしかに思い出に残すならそっちだろうけど……正直微妙よね」

姫神「うん。子供向け感がすごい」

打ち止め「ゲコ太のプリクラはないのかな? ってミサカはミサカはあたりを見回してみたり」キョロキョロ

一方通行「あンなマイナーなキャラのモンが作られるわけねェだろォが」

吹寄「ま、無難に有名所のやつでいっか」

結標「そうね」


407 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:20:56.10 ID:cHwUsclho


打ち止め「よし、では突撃ー!! プリクラで重要なのは位置取りだ!! 最高の位置を確保しなければ!! ってミサカはミサカはミサカネットワークで得た情報を遺憾なく披露してみたり」タタタ

禁書「そうなんだ! 私もいい位置を取るんだよ!」タッタッタ

風斬「ちょ、ちょっと二人とも、その、走ったら危ないよ……」


一方通行「……さて、俺は適当に缶コーヒーでも買って時間潰すか」

結標「えっ、何言っているのよ一方通行。貴方もこっちに来るのよ?」

一方通行「は? 何で俺まであンなキラッキラッしたモンやらなきゃいけねェンだ?」

吹寄「そりゃここにみんなで来たっていう記念みたいなものだし。まあ、馬鹿三人足りないけど」

一方通行「記念っつっても別にオマエらだけでも十分だろ」

姫神「……アクセラ君。もしかして女の子の中に。男の子一人混じって。プリクラ撮るのが恥ずかしいの?」ニヤリ

一方通行「ハァ? そンなわけねェだろ。逆にオマエらはイイのかよ? 野郎が一人混じってよォ」

吹寄「まあ、アクセラなら別に」

姫神「うん」

一方通行「何でだよ? オマエら頭おかしいンじゃねェのか?」

結標「そういうわけだから、早く来なさいよ」グイッ

一方通行「ッ!? クソがッ! 引っ張ンじゃねェ!」ガチャリガチャリ



-プリクラ内-



打ち止め「ふふふっ、やっぱりミサカは主役だからね。ド真ん中のセンターじゃなきゃ、ってミサカはミサカは中央で仁王立ちしてみたり」

吹寄「まあ、あなたの身長なら必然的にその位置になるわね」

禁書「ひょうかー一緒に写ろー?」

風斬「うん、じゃああなたは私の前くらいがいいかな?」

結標「……ちょっと一方通行! 何でそんな端っこにいるのよ? もうちょっとこっち寄りなさいよ」

一方通行「何で俺はこンなことしてンだ……? 俺はそンな柄じゃねェだろクソッタレが……!」ブツブツ

結標「なにぶつぶつ言ってるのよ?」

姫神「そろそろ撮影が始まる」



機械『ポーズを決めてね! 3・2・1』



パシャッ!!



―――
――



408 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:22:03.90 ID:cHwUsclho


同日 18:00

-スターランドパーク・道中-


打ち止め「いやー初めてのプリクラ楽しかったなー、待ち受け画面にしとこ、ってミサカはミサカは華麗に携帯を操作してみたり」

結標「……貴方、もうちょっといい表情はできなかったのかしら?」

姫神「仏頂面か。引きつった笑顔しかないね」

一方通行「ふざけンなッ! あンな環境で満面の笑みィ浮かべられる野郎なンざいるわけねェだろォが!」

吹寄「いや、結構いるとは思うけど」

一方通行「大体よォ、俺はそンな呑気に笑顔振り撒けるよォな環境に今までいなかったンだ。あンな状況で笑顔なンか作れるかよ」

吹寄「どんな環境よ?」

禁書「あくせられーた? 笑顔っていうのはこうやるんだよ?」ニコッ

打ち止め「なっ!? ヨミカワ家の癒やし系マスコットの名にかけてミサカも負けられない、ってミサカはミサカは元気っ子にこやかスマイルで対抗してみたり」ニカッ

一方通行「その間抜け面ァ苦痛の表情に歪めてやろォかクソガキども」

結標「ところで夕食は何にするか決めているの?」

吹寄「いろいろ調べてみたんだけど、バイキング形式の野外レストランってのがあるらしいから、そこがいいかなって」

禁書「私たちが前行ったところだね。あそこのドイツ式のソーセージが美味しかった記憶があるんだよ」

姫神「ああ。あそこか。料理の種類も豊富だったし。良いと思うよ」

結標「場所が決まったんだから上条君たちに伝えとかないとね」ピッピッ

姫神「向こうが合流するってときに。連絡が来るんじゃなかった?」

吹寄「まあいいんじゃない? 連絡待つのも面倒だし」

結標「了解。じゃ、メッセージ入れとくわね」ピッピッ

吹寄「ありがと。そしたらレストランに向かうとしましょうか」

打ち止め「なんかレストランって聞くとテンション上がるね、ってミサカはミサカはウキウキ気分でスキップしてみたり」

結標「よく行くファミレスも一応ファミリーレストランっていうレストランよ?」

打ち止め「ファミレスでもテンションは上がるよ! ってミサカはミサカは補足説明してみる」


タララ〜♪


結標「あっ、青髪君からの返事が来たわ」

姫神「なんて?」

結標「タイミングピッタリだから直でこっちに向かってくるって」

吹寄「了解。三馬鹿にしては上出来じゃない」

禁書「バイキング楽しみだねひょうか!」

風斬「……あんまり、食べ過ぎたら駄目だよ?」

禁書「それくらいわかってるかも。さーて、お腹いっぱい食べるぞー!」

風斬「本当にわかってる……?」

一方通行「それでわかるならスキー旅行ンときみてェな悲惨なことは起きねェンだよ」

風斬「あはは……」

禁書「?」


―――
――



409 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:23:29.02 ID:cHwUsclho


同日 18:30

-スターランドパーク・野外レストラン-


青ピ「――なっははははははっ!! なんやこのプリクラおもろっ!!」


吹寄「馬鹿笑いして、なにがそんなに面白いのよ?」

青ピ「だってこれ見てえや! ただでさえ真っ白なアクセラちゃんが美肌補正かかってさらに白ぉなっとるんよ!? これもう白通り越して無やん!!」

一方通行「あァ? オマエさっさと黙らねェと息の根止めて肌の色青白くさせンぞ」

上条「しかし一方通行がプリクラ撮るなんてな。そういうの嫌がると思ってたんだけど」

一方通行「クソどもに無理やり参加させられたンだよ」

結標「別にいいじゃない? 思い出になったでしょ?」

一方通行「それがいい思い出かどォかはわからねェけどなァ」

打ち止め「ミサカ的にはこっちの王子様風の目にいじったヤツとかカッコよくていいと思うなぁ、ってミサカはミサカはディスプレイにプリクラの画像を表示してみたり」

上条「ぶっ」

青ピ「あはははははっ!! ほんまかっこいいなあははあはははっはははっ!!」

一方通行「クソガキィ!! 余計なモン披露してンじゃねェ!!」

土御門「ふむ、そっちがプリクラなんて面白いイベントやっているとは思わなかったにゃー。正直こっちが回ったアトラクション二つはハズレだったから、そっちに合流しとけばよかった感あるぜい」

姫神「一つは絶叫度レベル5のコーヒーカップだろうけど。もう一つは何に乗ったの?」

青ピ「絶叫度レベル5のメリーゴーランドやで」

結標「そんなものがあったのね……」

土御門「両方とももともと絶叫マシンのジャンルじゃなかったからか、迫力とかそういうのはレベル4クラスだったからちょっと拍子抜けだったな」

上条「たしかにな。最初らへんに乗ったジェットスターとかバイキングとかほどヤバイとは感じなかった」

風斬「……なるほど。あれってそんなにすごくはなかったんですね……あれが?」

青ピ「なんや風斬ちゃん乗ったんかあれ?」

風斬「は、はい。インデックスと一方通行さんと一緒に」

禁書「私は面白かったと思うんだよ!」

一方通行「クソみてェなモン思い出させンな」

土御門「おっ、絶叫マシン大嫌いなアクセラちゃんからしたら、レベル5の絶叫マシンに乗ったらおしっこチビっちゃいそうなくらいビクビクだったのかにゃー?」

一方通行「だから嫌いじゃねェっつってンだろォが!? イイ加減にしねェとハラワタ引っこ抜くぞ!?」

結標「貴方もいい加減苦手って認めたら?」

一方通行「ンだと!?」

上条「別に絶叫マシン駄目だからって誰も笑わねえだろうし、いいと思うけどな俺は」

青ピ「ニヤニヤ」ニヤニヤ

土御門「クスクス」クスクス

一方通行「現在進行系で笑ってるクソどもが後ろにいやがンだがどォ説明してくれる気だ三下ァ?」


410 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:24:48.88 ID:cHwUsclho


姫神「ところで。夕食が終わったあとは。どうするの?」

打ち止め「また何かアトラクションとか乗るの? ってミサカはミサカはソーセージにフォークを突き刺しながら聞いてみたり」グサリ

吹寄「それもいいけど、あたしはイルミネーションとか見て回りたいわね」

結標「たしかに。もうすっかり夜だしいいわね」

青ピ「ふふん。この時間帯は帰宅した人やイルミネーションに目が奪われてる人がたくさんおるから、ここは手薄になった絶叫マシンに行くのが正解や!!」

吹寄「別に無理してこっちに合わせろとは言っていないのだから、アトラクション行きたいなら好きに行きなさいよ」

上条「俺はもういいや。正直絶叫マシン乗り過ぎてもう疲れたよ」

青ピ「なんやてカミやん!? こんなところでへこたれるなんてどういうことや!? デルタフォース失格やぞ!?」

上条「これでそんな不名誉な称号を捨てられるならいくらでもへこたれてやるよ」

土御門「夜景を見ながらの絶叫マシン。これこそ最高の楽しみ方なのににゃー」

姫神「……! それなら上条君。よかったら。私と――」


禁書「とうまー! だったら私たちと一緒にぷりくら撮りにいこうよー!」


上条「いいけど、お前どんだけプリクラハマってんだよ?」

姫神「…………」

上条「ん? そういや姫神、なんか言いかけてたけど何だったんだ?」

姫神「……なんでもない」ムスッ

上条「なんでそんなに怒っているのでせうか……?」

風斬「えっと……、なんかすみません」

姫神「別に。あなたが謝るようなことではない」

禁書「?」


一方通行「……はァ、俺はとりあえず腹ァいっぱいだからコーヒーでも片手に一服してェ」

結標「いつもやっていることと変わらないじゃない」

一方通行「こンなところに来たところで俺の行動自体が変わるわけねェだろ」

結標「少しは変わった行動してみたらどう? たとえばお土産コーナーでハシャイでみたりとか?」

一方通行「オマエはそンなことする俺が見てェのかよ?」

結標「いや、別に」

一方通行「だったらクソみてェな提案してンじゃねェ!」

結標「ごめんごめん。あっ、ちょっとトイレ行ってくるわね」ガタッ

一方通行「そォかよ」


―――
――



411 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:25:54.89 ID:cHwUsclho


同日 18:40

-スターランドパーク・野外レストラン近く女子トイレ手洗い場-



ジャバババババババババ



結標「…………はぁ」



『あとで話がある』



結標(……そういえば、アイツ二人きりで話があるって言っていたわね。あれから全然それっぽい素振りは見せてこなかったけど)

結標(一体何の話なのかしら? アイツがあんなこと言ってくるなんてたぶん初めてよね?)

結標(……駄目ね。全然思いつかない。何を喋ろうとしているのかまったくわからないわ)

結標(でも、こういう呼び出しという行為自体は漫画とかそういうのでもよく見るシチュエーションよね)

結標(そこに関連させて思いつくのは……たとえば決闘とか?)

結標(いわゆるヤンキー漫画とかで屋上や河原とかに呼び出して喧嘩する、みたいなのはよく見るわね)

結標(けど、アイツが私にそんなもの挑むなんてことしてくるとは思えないわね。第一、アイツのほうが圧倒的強いっていうのは周知の事実なんだからする必要ないわけだし)

結標(だったら、もう一つ思いつく方、ってことかしら……?)


結標(……愛の、告白?)


結標「って、そんなわけないでしょ!」

結標「はー馬鹿馬鹿し。もしアイツがそんなことしてきたらほんと大笑いよね?」

結標「……馬鹿みたいなこと考えてないで、早くみんなのところに戻ろ」



-スターランドパーク・野外レストラン近くトイレ周辺-



結標「さて、たしかあっちの方向から来たわよね?」キョロキョロ


??「――よう、結標さん」


結標「あっ、木原さんじゃないですか」

数多「ここにいるってことは晩メシでも食っていたのか?」

結標「はい。そういう木原さんもここで晩御飯を?」

数多「いいや、違う」

結標「ならなんでこんなところに……ああ、トイレですね。ごめんなさい」

数多「いや、それも違う。俺はお前に用があって来た」

結標「私に? なんですか?」

数多「……そうだな。お前にちょっと話しておきたいことがある」

結標「話?」

数多「ああ。つーわけで、ちょっと時間もらえるか? 結標淡希」

結標「…………」


―――
――


412 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:27:42.12 ID:cHwUsclho


同日 19:00

-スターランドパーク・野外レストラン-


一方通行「…………チッ、遅せェなアイツ。一体どこほっつき歩いてンだ」


ザッ


一方通行「あン?」


結標「…………」


一方通行「やっと来やがったか? 他のヤツらはもォここ出たぞ?」

結標「…………」

一方通行「各々行きたい場所がバラバラだからこっからは自由行動だとよ」

結標「…………」

一方通行「吹寄と姫神はイルミネーション見に行って、上条とシスターに風斬はゲーセン、馬鹿二人はどっかの絶叫マシンに乗りに行った」

結標「…………」

一方通行「自由時間っつゥことだから、俺は休憩所に直行して昼寝でもしてかったンだがなァ。吹寄のヤツにオマエをここで待ってろって言われちまってよォ、面倒臭せェ」

結標「…………」

一方通行「オマエを連れてイルミネーション広場に連れてこい、ってな。つゥか、連れてこいって言うくらいならオマエらも待ってろっつゥ話だよなァ? わけわかンねェよ」

結標「…………」

一方通行「……あン? どォした? 急に黙りこくっちまってよォ?」

結標「……あっ、うん。ごめんなさい。ちょっと考え事してて」

一方通行「さっきまでの俺みてェなこと言いやがって、何かあったのか?」

結標「いや、ほんと何でもないから気にしないでちょうだい! イルミネーション広場よね? じゃあ、行きましょうか?」テクテク

一方通行「……ああ」ガチャリガチャリ



一方通行(結標のヤツの雰囲気が変わった? 一体どォいうことだ……?)



――――――


413 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/22(金) 20:30:26.06 ID:cHwUsclho
次でスターランドパーク編&記憶喪失あわきん編のクライマックスやで

次回『二人の告白』

414 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:23:23.98 ID:6X2WJU4Vo
なんとか週一更新間に合ったな

投下
415 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:24:52.99 ID:6X2WJU4Vo


18.二人の告白


March Forth Wednesday 19:00

-スターランドパーク・イルミネーション広場-


吹寄「へー、すごいわねー。まるで別世界にでも来たみたい」

姫神「そうだね」

吹寄「……さて、今頃あの二人はうまいことやってるかしらね?」

姫神「やっぱり。そういう意図があって。アクセラ君を待たせたんだ」

吹寄「そうそう。ケンカして仲直りしたあとは絆が深まるなんて話よく聞くし、ここで二人きりにしてあげればもしかしたら、って思ってね?」

姫神「なるほど。そこまで考えていたんだ」

吹寄「姫神さんは残念ね。上条のやつインデックスたちに取られちゃって」

姫神「いい。別に私はここで勝負を決めよう。みたいなこと全然思ってないから」

吹寄「そっか。まあ春休みはまだあることだし、まだまだチャンスはきっとあるわよ」

姫神「チャンスはあるのだろうけど。活かせるかどうかはまた別」

吹寄「随分と弱気な発言ね」

姫神「現実主義と言って欲しい」



ピロリン♪



吹寄「ん? 土御門からメッセが来てる」スッ

姫神「なにかあったのかな?」

吹寄「さあ?」ピッピッ

姫神「なんて書いてるの?」

吹寄「ちょっと待って? ええっと……これは?」


―――
――



416 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:26:17.46 ID:6X2WJU4Vo


同日 19:10

-スターランドパーク・イルミネーション通り-



一方通行「…………」ガチャリガチャリ

結標「…………」テクテク


一方通行「……なァ?」

結標「……何かしら?」

一方通行「どォしたンだよオマエ? さっきから全然喋らねェし。俺が言うのもなンだが、らしくねェぞ?」

結標「あ、あはは、ごめんなさいね。ちょっと今日はハシャギ過ぎちゃって疲れちゃったのかも」

一方通行「そォかよ」

結標「うん……」

一方通行「…………」

結標「…………」

一方通行「疲れているところ悪りィが」

結標「何よ?」

一方通行「ちょっと前に言った、二人きりで話をしたいっつったヤツ、今やってもイイか?」

結標「ああ、あれね。今なのね……」

一方通行「あン? 嫌なら別にイインだが」

結標「いや……ううん、大丈夫よ。というか二人きりって言っても、そこら中に他のお客さんとかいるけどいいの?」

一方通行「オマエにだけ聞こえるよォ声量を調整して喋るから問題ねェ」

結標「そう。で、どんなお話を聞かせてくれるわけ?」

一方通行「この話を聞いたら、オマエは俺に対して嫌悪感や憎悪を覚えてしまうかもしれねェ」

結標「…………」


一方通行「だが、俺がこれ以上先に進むためには絶対にオマエへ話しておかないといけないことだ」

一方通行「自分勝手だとは思っている。だから、聞いてくれ。俺の『告白』ってヤツをよ」


結標「……わかったわ。話して」

一方通行「悪いな」


417 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:27:35.57 ID:6X2WJU4Vo


一方通行「まずは俺の過去のことだ」

結標「過去?」



一方通行「ああ。まず俺は、人を殺したことがある」



結標「ッ」

一方通行「それも一人や二人じゃねェ。一万人以上っつゥ馬鹿みてェな数の人間をこの手にかけた」

結標「一万……」

一方通行「その一万の数の大半を、ある実験に参加することによって殺めた」

一方通行「『絶対能力進化計画(レベル6シフト)』っつゥ最悪の実験に参加してな」

結標「絶対能力者(レベル6)。そんなものが実在するの……?」

一方通行「さァな。実際のところあの実験をあのまま続けていたら、本当にそこまで到達できたかなンて俺にもわからねェ」

結標「…………」

一方通行「話を続けンぞ? 家の近くのコンビニでバイトしてるミサカっつゥヤツ覚えてるか?」

結標「え、ええ、覚えてるも何も友達みたいなものじゃない?」

一方通行「そォ言ってもらえるとアイツも喜ぶだろォよ。で、アイツの姉のことは?」

結標「超能力者(レベル5)の第三位、常盤台の超電磁砲(レールガン)、御坂美琴って人でしょ?」

一方通行「そォだ。しかし、事実はそォじゃねェ。アイツらは本当の姉妹じゃねェンだ」

結標「……どういうこと?」

一方通行「アイツは、アイツらは妹達(シスターズ)って言って、御坂美琴のDNAマップを使って生まれた体細胞クローンだ」

結標「く、クローン……? あ、あの子が?」

一方通行「戸惑うのも無理はねェ。国際法で禁止されているよォなヤべェモンだからな」

結標「……そのクローン、ミサカさんが一体貴方と何の関係があるのかしら?」

一方通行「『絶対能力進化計画(レベル6シフト)』の内容。それを教えてやろう」



一方通行「それは二万通りの戦場で二万体の『妹達』を殺害すること。もちろン、殺すのは被験者であるこの俺、一方通行だ」



結標「ッ!?」


418 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:28:59.62 ID:6X2WJU4Vo


一方通行「アハッ、イカレてンだろ? 二万人の人間をぶっ殺す実験なンてなァ? だが研究者どもからしたらそォじゃなかった」

一方通行「ヒトの形をしているとはいえ、所詮はクローン。薬品とタンパク質で合成された人形、実験動物のモルモットと同価値の使い捨ての消耗品。その程度にしか思っていなかった」

一方通行「当然、被験者であるこの俺も同じことを考えていたっつゥわけだ。ヤツらと同じクソ野郎だったっつゥことだよ」


結標「…………」


一方通行「ま、オマエも察しているとは思うがこの実験は失敗に終わった」

一方通行「第一〇〇三二次実験。その最中にとある無能力者(レベル0)の男が実験に介入し、この俺と交戦した」

一方通行「結果、超能力者(レベル5)の第一位である一方通行は敗北した。無様にも、その無能力者(レベル0)相手にな」


結標「無能力者(レベル0)、ってもしかして……」

一方通行「ああ。オマエの思っているヤツで間違いねェよ。オマエもよく知っているアイツだ」

結標「そっか……」

一方通行「そォいうわけで、この俺が最強の能力者っつゥのを前提で行われていた実験が、最弱の無能力者に敗北したことで前提条件が崩れちまった」

一方通行「そして実験は凍結した。用済みになった妹達九九六八人は学園都市に何人か残して、残りは外にある学園都市の関連機関に移されて生命維持の為の調整を受けてるっつゥ話だ」

結標「……なるほど。それが、貴方が心の中にずっと抱え込んでいた過去、ってことなのね?」

一方通行「そォいうことだ。けど、この話にはまだ続きがある」

結標「続き?」

一方通行「ああ。実は妹達には二〇〇〇一人目の個体が存在していた」

結標「二〇〇〇一……実験では二万人しか用意しないんじゃなかったっけ?」

一方通行「そォだ。だが事実ソイツは存在していて俺の目の前に現れた」


一方通行「ソイツはオマエもよく知るヤツだ。ミサカ二〇〇〇一号。通称打ち止め(ラストオーダー)って呼ばれているヤツだ」


結標「打ち止めちゃんが……」


一方通行「アイツは妹達のいわゆる司令塔っつゥヤツで、ミサカネットワークっつゥ妹達の中で形成された電磁的情報網から妹達へ直接司令を送れる上位個体だ」

一方通行「まあ、内容は省くがその打ち止めを利用して妹達を暴走させるウイルスコードを流させ、学園都市転覆を企てるヤツが出てきた」

一方通行「なりゆきで俺はそれを阻止するために動いて、打ち止めを救い出した。その代償がコレだ」コンコン


結標「チョーカー……電極?」


419 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:29:52.04 ID:6X2WJU4Vo


一方通行「そう。俺はそンとき脳みそに銃弾をブチ込まれて言語能力、歩行能力、計算能力が奪われた」

一方通行「普通ならそンな傷受けたら一生ベッドの上から降りることができねェよォな、深刻なダメージだったわけだ」

一方通行「だが、俺はアイツら妹達のチカラを借りることによって、一時的にではあるがそれらを取り戻すことができるよォになった」

一方通行「ミサカネットワークを経由して一万近い妹達に代理演算してもらうことができる補助演算デバイス。つまり、俺はアイツらに生かされているっつゥことだ」


結標「それが、頭に電極を付けている理由、能力使用モードっていうものがある理由……?」

一方通行「ああ」

結標「…………」

一方通行「ま、こンなモンか。俺の話したかった過去については」

結標「……ねえ、一つだけ聞かせて」

一方通行「あン?」

結標「貴方はミサカさんたちを、妹達を実験動物って思っていたって言ってたけど、それは今も変わらないわけ?」

一方通行「……ああ、そォいえばこれは言ってなかったな」


一方通行「俺は、今はアイツらのこと人間として見ているつもりだ。一人ひとりが意思を持っている、今を精一杯生きている人間としてな」

一方通行「だが、そンなアイツらを実験動物として見ていて、利用しよォとしているヤツらもまだ腐る程いる」

一方通行「俺は打ち止めを、妹達をソイツらから守るためだったらどンなことだってする。それが俺の紛れもない意思だ」


結標「…………」

一方通行「さて、もォ俺の過去の話はイイだろ。次は俺とオマエの過去の話だ」

結標「貴方と私の過去?」

一方通行「そォだ。っつっても、前話したよォにオマエと俺が接触した時間は五分にも満たねェ」

結標「ええ、覚えているわ。だって、あの家に居候し始めた頃に話したことだしね」


420 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:30:59.95 ID:6X2WJU4Vo


一方通行「これはさっきの話とも繋がることだ。九月一四日ンときのオマエ、つまり記憶を失う前のオマエはとある『部品』をある機関から強奪し、逃走していた」

結標「……『部品』?」


一方通行「その『部品』っつゥのが、それが存在するだけであの馬鹿げた計画が再開される可能性がある、俺や妹達にとって最悪の代物だったわけだ」

一方通行「俺はそれを聞きつけて、それを破壊するためにオマエの前に立ちふさがった」


結標「それが、私と貴方の初対面ってわけね?」

一方通行「そォいうわけだ。そして、俺とオマエはその『部品』を巡って交戦した。まァ、交戦って言えるほどのモンかどォかはわからないがな」

一方通行「戦いは一瞬で終わった。テレポートで逃げるオマエを高速飛行で追尾して、オマエの持つ部品ごとオマエの顔面に拳を叩き付けることによってな」

結標「それが、私が鼻を怪我していた理由……?」

一方通行「ああ。そしてこれが」




一方通行「オマエが記憶を失った原因。この俺一方通行が全ての元凶だったっつゥことだ」




結標「…………」

一方通行「……あとは、オマエが知っている通りだ」

結標「……そう、だったのね」



一方通行「つまり俺は、一万人以上の人間をぶち殺したクソ野郎でありながら、オマエの記憶を奪い、今の今までそれを知っておきながら黙ってのうのうと過ごしてきた、最悪なクソ野郎でもあるっつゥことだ」

一方通行「どォだ? これを聞いてどォ思った? 幻滅したか? 悲嘆するか? 嫌悪するか? 腹わたが煮えくり返りそォか? グチャグチャの肉塊に変えてやりてェか?」



421 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:31:46.71 ID:6X2WJU4Vo


結標「…………」

一方通行「それでイイ。オマエが感じているその負の感情は、真っ当な人間なら湧いて当然のモノだ」

結標「…………」

一方通行「……以上が、俺がオマエにだけは話しておきたかったことだ。悪かったな。今まで黙っていて」

結標「……ねえ」

一方通行「何だ?」

結標「なんで突然、そんなこと私に話そうって思ったのよ? 貴方が話さなければ私には一生わかる機会なんて訪れないことだっただろうし」

結標「黙っていれば、今まで通りの変わらない日常をずっと過ごしていけたかもしれなかったのに」

一方通行「言っただろ? 俺はもォ逃げねェって。これ以上罪から目を背けておめおめと生きていくのが許せなくなった」

一方通行「つまり、完璧な自己満足だ。そンなモンに付き合わせちまってすまねェとは思っている」

結標「そう……」

一方通行「…………」

結標「……もうひとついい?」

一方通行「ああ」

結標「あれに……乗らない?」



『スターランドパーク最大の観覧車!! レボリューション!!』



一方通行「……観覧車? 何で急にそンなモンに」

結標「別にいいでしょ? ちょうど待ち時間もないみたいだし」

一方通行「いや、俺が聞きたいのはそォいうことじゃねェ――」


結標「あっ、係員さーん! 次私たち乗りまーす!」


一方通行「……わけがわからねェ」


―――
――



422 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:33:13.28 ID:6X2WJU4Vo


同日 19:20

-スターランドパーク・レボリューション個室-


結標「……うわー、すごいわね。さすが最大の観覧車。まだ中腹辺りなのに綺麗な夜景が一望できるわね」

一方通行「オイ、どォいうつもりだオマエ?」

結標「どういうつもりって?」

一方通行「あンな話聞いて、俺がどンなクソ野郎かわかっただろォに、何で俺をこンなモンに誘ったンだ?」

結標「理由、か。貴方とこの観覧車に乗りたかった、っていうのじゃ駄目かしら?」

一方通行「駄目じゃねェが、納得はできねェな」

結標「そう。……ねえ、私貴方に言っておかないといけないことがあるの」

一方通行「何だよそれは?」

結標「貴方、三つの話をしてくれたわよね? 『絶対能力進化計画(レベル6シフト)』のことと『打ち止め(ラストオーダー)』ちゃんのこと、私の『記憶喪失の原因』の話」

一方通行「ああ」



結標「実はね。その話、もうすでに知っていたのよ。私」



一方通行「…………は?」

結標「一万人以上のミサカさんを死なせてしまった話も、打ち止めちゃんを命がけで守った話も、私の記憶を奪ってしまった話も、全部知っていたのよ?」

一方通行「…………」

結標「ふふっ、聞いてるときの私のリアクション、なかなかの名演技だったでしょ?」

一方通行「どォいうことだ? いつ? どこで? 誰からだ? 一体どォやってその情報を得やがった!?」

結標「……夕食のとき、私トイレに行くために席を外していたじゃない? そこで木原さんに偶然会って、そのときに」

一方通行「あ、あの野郎ォ……! 何のつもりでそンなクソみてェな真似をしやがった……!」

結標「さあ? 私もその理由までは教えてくれなかったわ。でも話してくれてるときの木原さんの表情は、なんというか、真剣って感じはしたわ」

一方通行「真剣だろォが真剣じゃなかろォが関係ねェ。あの野郎、あとでスクラップ確定だクソ野郎がッ!」

結標「……そういえば、貴方さっき私に質問したわよね? この話を聞いてどう思ったか、って」

一方通行「ああ。そォだな」


結標「たしかに、木原さんにその話を聞いたときはいろいろな感情が頭の中を巡っていったわ。もちろん貴方の言った負の感情っていうのもね」

結標「さらには木原さんが冗談を言っているんじゃないかっていう疑念さえも出てきたりしたわ。目を背けたかったんでしょうね」

結標「その頭の中にある様々な考えや感情を整理して、まとめて、でも結局収まりがつくことはなかった」

結標「けど、改めて貴方の口から直接話を聞いたときに、なんというか、いろいろあったものが頭からすぅっと消えてく感じがしたわ。そして、ある考えだけが残った」

結標「一方通行。私はね」




結標「貴方のことを支えてあげたいと思った。守ってあげたいと思った」




423 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:35:05.35 ID:6X2WJU4Vo


一方通行「…………」

結標「それが、さっきの質問の答えよ」

一方通行「……何言ってンだオマエ? わけがわからねェよ? 支えてあげたい? 守ってあげたい? ふっざけンじゃねェ!!」

結標「ふざけてなんかいないわ」

一方通行「いィやふざけてる!! 俺は大罪人だッ!! 一万人以上の人間を殺したッ!! オマエの記憶も奪ったッ!!」

一方通行「そンな人間がかけられてイイ言葉じゃねェンだよ!! オマエの言った言葉はッ!!」

結標「たしかにそうかもしれないわ。その貴方の言う罪っていうものだけ見ればね」

一方通行「わかってンじゃねェか。だったらよォ、そンな感情は生まれねェはずなンだよ!」


結標「でも貴方は言ったじゃない? 打ち止めちゃんを、妹達のみんなを守るって」

結標「でも貴方はたくさんの思い出をくれたじゃない? 記憶を失ってどうしようもなく不安になっていた私に」


一方通行「それが、どォしたってンだ! そンなことしたからって過去が変わるわけじゃねェ!」

結標「ええ、そうよ。いくら罪を償う為に行動したところで罪自体が消えるわけじゃない。貴方の言いたいこともわかるわ」

結標「けれど、貴方はそれをわかっていてなお、その罪から逃げようとせずに向き合おうとしていたじゃない」

一方通行「何でそンなことがわかる!? 俺が本当に罪と向き合おうとしているかなンて、わかるわけねェだろォが!」

結標「さっき貴方は自分で言ったじゃない。罪から逃げないって、目を背けないって」

一方通行「そンなモン口から出任せ言っているだけかもしれねェだろォが! 何の信憑性もねェ言葉だ!」

結標「私は信じるわ」

一方通行「どォしてそンなことが言えンだ!?」 

結標「信じるに決まっているじゃない。だって貴方は」



結標「きちんと私に向かい合って、自分の罪を打ち明けてくれたじゃない」



一方通行「ッ」


結標「私がもし貴方と同じ立場だとしたら、こうやって他人に自分の忌々しい過去を打ち明けるなんてこと簡単にできるとは思えない」

結標「けど貴方はこうやって私に話してくれた。相当な覚悟を持って私の前に立っているんだってわかるわ」

結標「そんなこと、口から出任せを言うような人にはできない、本当に罪と向き合おうとしている人じゃないと、絶対にできないことだと私は思う」


一方通行「…………」

結標「だから私も向き合いたい。貴方が背負っているもの、貴方が抱え込んでいるものと」

一方通行「……やっぱり理解できねェ。何でオマエはそこまでのことが言えるンだ?」

結標「……だって、だって私は――」
















結標「私は貴方のことが好きなんだからっ! ずっと貴方の側に居たいと思っているからっ!」



424 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:36:26.01 ID:6X2WJU4Vo


一方通行「…………」

結標「…………? って、あれ? 私今なんて言った?」

一方通行「…………」

結標「も、も、もしかして、私とんでもないこと口走らなかった?」

一方通行「……ああ。おそらくオマエが思っている通りの言葉を言ったな」

結標「あ、あ、あわ、あ、あわわ」カァ

一方通行「オマエ、頭おかしいンじゃねェの?」

結標「え、えっ?」

一方通行「普通、俺みてェな人間にそンな感情が生まれることなンてねェンだよ。そンな言葉を吐くことなンてありえねェンだよ」

結標「……そうね。たしかにそうかもしれない。でも、私はおかしいとは思わない」

一方通行「ハァ?」

結標「私だって超能力者(レベル5)なんだから。貴方たち人格破綻者のお仲間なんですもの」

一方通行「…………」

結標「……あら? ひょっとしてまた私変なこと言っちゃった?」

一方通行「……アハッ」

結標「?」








一方通行「アハハッ、アハギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ!!」







425 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:38:41.39 ID:6X2WJU4Vo


結標「うわっ、急に何よ!? てか笑い方怖っ!?」

一方通行「ハァーッ、ああ。ひっさしぶりに大爆笑しちまったァ」

結標「そ、そんなに私変なこと言ったかしら?」アセッ

一方通行「……オマエ、ホント馬鹿だよな?」

結標「なっ、そこまで言われる筋合いはないと思いますけど?」

一方通行「ホンット、馬鹿みてェだよな、オマエも……俺も」

結標「一方通行?」

一方通行「…………フゥ、結標淡希」

結標「は、はい?」

一方通行「俺は決めていたことがある。こォいう状況になったときどォするべきかを、いや違う。俺自身はどォしたいのかを」

結標「?」

一方通行「だから、今からそれを実行してやるよ」

















一方通行「俺もオマエが好きだ。オマエが隣に居ない世界なンて考えられねェくれェ、オマエのことが好きだ」







426 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:39:23.09 ID:6X2WJU4Vo


結標「…………えっ? い、今なんて言った?」

一方通行「…………」

結標「ちょ、ごめん、もう一回言って!」

一方通行「……チッ、らしくねェなンて俺だってわかってンだよ。あンなセリフ二回も吐かせよォとすンなクソ野郎が」

結標「ね、ねえ? つまり、これって……?」

一方通行「ああ。オマエが思っていることで間違いねェよ」

結標「これ……もしや夢なんじゃ……?」

一方通行「かもな。ベタだが自分の頬つねってみろよ」

結標「……ふぃたい」ギュー

一方通行「そォかよ」

結標「……いだぃ」ポロッ

一方通行「あン?」

結標「いだぃよ、どっでもいだいよあぐぜられーだぁ」ポロポロッ

一方通行「何泣いてンだよオマエ? 普通笑うところじゃねェのかよこォいうのってよォ?」

結標「ご、ごめんね。わだしにもよくわがんない」ポロッポロッ

一方通行「……はァ、面倒臭せェ」


427 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:40:27.07 ID:6X2WJU4Vo


一方通行「……ああ、そろそろ頂上か。つゥか長げェよこの観覧車、どンだけデカいンだよ?」

結標「……ねえ、一方通行」

一方通行「何だよ」

結標「私たちって、その……こ、恋人同士ってことでいいのよね?」

一方通行「……ああ、まァ、そォいうことになるな」

結標「本当に?」

一方通行「何でこのタイミングで疑い出してンだよ? どこにそンな不審な点があるっつゥンだ?」

結標「だ、だってよくよく考えたら貴方があんなこと言うのに違和感が……」

一方通行「それはたしかに俺だって自覚はあるけどよォ」

結標「もしかしてどこかにドッキリの札を持った青髪君が潜んでいるんじゃ……?」

一方通行「ンなわけねェだろ! やらせるにしてもソイツじゃなくてもっとマシな人選するわ!」

結標「……怪しいわね」

一方通行「チッ、だったらどォすりゃ信用してくれるっつゥンだよ?」

結標「何って、そうね……あっ!」ピコン

一方通行「あン?」

結標「あ、あの、その、えっと、あのね? あー、えっと、えー」

一方通行「何だァ? 急にどもりやがって。一体何やらせるつもりなンだオマエ?」

結標「……き」

一方通行「き?」




結標「キスして!! この観覧車が頂上に達する瞬間に!!」




一方通行「…………」


428 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:43:00.30 ID:6X2WJU4Vo


結標「そ、そしたら信じてあげるわ! ほ、本当に恋人だって言うなら、それくらい余裕でしょ?」

一方通行「……何つゥかオマエ、ナニ発情してンだよ?」

結標「そ、そんなんじゃないわよ! 恋人同士ならそれくらい普通にするでしょ普通に!」

一方通行「知るかよ。つゥか本当かよ? 恋人っつゥモンになって即接吻なンてことが常識なンかよ。俺もそォいうのはよくわかンねェがよォ、信じらンねェ」ブツブツ

結標「何一人ブツブツ言っているのよ?」

一方通行「ちょっと頭ン中整理してンだ……あン?」チラッ

結標「ん? 突然窓の外見てどうしたのよ?」

一方通行「……アハッ。いや、イイ景色だなァって思ってよォ」

結標「そうね……ってそんなので誤魔化されないわよ!? キスするの? しないの? どっちよ?」

一方通行「何で俺がこンなに責められてンだ? まァイイ」カチッ

結標「一方通行?」


一方通行「イイだろォ。キスの一つや二つ、やってやるよ」


結標「ええっ!? ……その、ほ、本気なの?」

一方通行「オマエがやれって言ったンだろォが!」

結標「で、でも……」

一方通行「……頂上まであと二〇秒っつゥところか。拒否すンなら今のうちだぜェ?」

結標「え、えと、あっと、その……」

一方通行「あと一〇秒」

結標「ああああ、お、お願いします!」スッ

一方通行「…………」フゥ-

結標「…………」ドキドキ

一方通行「……行くぞ?」

結標「は、はいぃ!」














一方通行「あ、そォだ。言い忘れてたが、窓の外で俺らの行動を監視しているヤツらがいるぞ?」













結標「えぇっ!? う、嘘!? あっ、あれは空撮用のドローン!? なっ、ちょっ、んっ――――」


―――
――



429 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:43:59.18 ID:6X2WJU4Vo


同日 19:30

-スターランドパーク・レボリューション前-


土御門「……あちゃー、やっぱバレちまったかにゃー」

青ピ「さすがアクセラちゃんやなー。警戒心もレベル5や!」

上条「ってそんなこと言ってる場合かよ!? バレたっつーことはすなわち一方通行ブチギレ確定ってことじゃねえか!」

青ピ「何言うとんやカミやん!! ブチギレたいのはこっちやで!! 一人だけ抜け駆けしおってゆるさーん!!」

上条「そ、そう言われてみればそうだな! くっそーアイツ今日から彼女持ちかよ羨ましいぜ」



ガン!!



上条「痛てっ!? 何でだよ!?」

青ピ「いや、なんかムカついたから」

土御門「同じく」


吹寄「な、ななななななななななななななななな――」カァ

姫神「どうしたの吹寄さん? 顔真っ赤にしちゃって。もしかしてキス見ただけで。恥ずかしくなっちゃった?」

吹寄「なっ、そ、そ、そんなわけないじゃない! キスくらいなんてことないわよ! ドラマとかで何十何百回と見たことあるんだから!」アセッ

姫神(かわいい)クスッ

吹寄「……とにかく! 二人が帰ってきたら祝福してあげないとね?」

姫神「そうだね」

吹寄「この流れで姫神さんも頑張ってね?」

姫神「……まあ。ぼちぼち」


風斬「…………、…………」カァ

禁書「ひょうか?」

風斬「な、なに?」

禁書「二人ともとっても嬉しそう。なんだかこっちも嬉しくなるんだよ!」

風斬「……うん! 私も嬉しいよ!」


打ち止め「…………」テクテク


禁書「らすとおーだー?」


430 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:44:41.31 ID:6X2WJU4Vo


-離れた場所-


打ち止め「……これでよかったんだよ、ってミサカはミサカは……」ボソッ


禁書「らすとおーだー? どうかしたの?」ドタドタ

打ち止め「ッ、ううん、なんでもないよ! ちょっと人混みに酔っちゃったから避難しただけだよ!」

禁書「…………」

打ち止め「よ、よーし! あの人たちが帰ってきたら精一杯賑やかしてやるぜ、ってミサカはミサカはお祭り野郎の気持ちになってみたり」

禁書「……だめだよ、らすとおーだー」

打ち止め「えっ?」

禁書「そんな悲しそうな顔で祝福されても、二人は喜ばないよ」

打ち止め「悲しそう? あ、あははーまたまたー! 笑顔の伝道師であるミサカがそんな顔するわけないじゃん!」

禁書「…………」スッ

打ち止め「ふえっ!?」ビクッ

禁書「…………」ナデナデ

打ち止め「なっ、なんなの急にミサカの頭を撫でて、み、ミサカはそんなことされて喜ぶお子様じゃないよ、ってミサカはミサカは戸惑ってみる」


禁書「……あの観覧車乗ったことあるけど。あの位置なら二人が帰ってくるまでまだ少し時間があるよ」


打ち止め「そ、そうなんだ。へー、そんなことわかるなんてさすが完全記憶能力だね、ってミサカはミサカは」


禁書「だから、今だけは我慢しなくもいいんだよ? 強がらなくてもいいんだよ?」


打ち止め「が、が、我慢? つ、強がってる? み、ミサカはそんなことしてない、よ」


禁書「私にはよくわからないけど。たぶんずっと一人で抱え込んでいたんだよね。ずっと一人で頑張ってたんだよね」


打ち止め「み、み、み、みさ、ミサカは、ちが、ちがう」ポロッ


禁書「こんなときくらい、一人じゃなくてもいいと思うんだよ?」ニコッ


打ち止め「…………みさ、みさかは、みしゃかは――」









風斬「…………、…………」


―――
――



431 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:46:25.16 ID:6X2WJU4Vo


同日 19:40

-スターランドパーク・レボリューション前-



吹寄・姫神「「アクセラ(君)!! 結標さん!! おめでとう!!」」



結標「あ、ありがとう二人とも!」

一方通行「おォーおォーどォだった? 楽しンでもらえたかなァ覗き魔どもがァ。見物料はオマエらの命っつゥことで構わねェよなァ?」

青ピ「うるせーこの裏切り者めぇ!! 一人だけ良い思いしやがってえ!!」

土御門「そうだそうだー! 観覧車のてっぺんでキスなんて漫画みたいなことしやがってー!」

上条「つーか、土御門。よくよく考えたらお前舞夏いるんだから文句言う資格ねえんじゃねえか?」

土御門「いやー流れ的にこうするのが正解かと」

一方通行「遺言はそれでイイか? 馬鹿三人、まずはオマエらから血祭りに上げてやるよ」カチッ

青ピ「よーし! いけ、カミやん!! あの腐れ裏切り野郎に粛清を!!」

土御門「オレらの意思を持っていけカミやん!!」

上条「だから俺を勝手に身代わりにするんじゃねえ!! てか俺何も文句言ってねぎゃああああああああああああああああああああああああッ!!」



ドガ!! バガ!! ボコ!! グシャ!! メリィ!!



吹寄「まったく、こんな人通りの多い場所で暴れてんじゃないわよ」

姫神「もはや。定番の流れ」

結標「はは……」

一方通行「バッテリー無駄に使わせてンじゃねェっつゥの」ガチャリガチャリ

吹寄「おかえりアクセラ」

姫神「おつかれ」

一方通行「傍観者面してっけど、オマエらも同罪だからな違法視聴者ども」

吹寄「あはは、ごめんなさいね。どうしても気になっちゃって」

姫神「欲望には敵わなかった」

結標「もー、ひどいわよ二人とも」

一方通行「チッ、うっとォしいヤツらだ」

青ピ「ふざけんなー! 女子にもちゃんと粛清しろー!」ブーブー

土御門「差別だ差別だー! 男女平等に接しろー!」ブーブー

一方通行「…………」カチッ



ドゴォン!!



432 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:47:40.79 ID:6X2WJU4Vo



タッタッタッタッタッタッ!!



一方通行「あン?」



打ち止め「おりゃー突撃ー!! ってミサカはミサカは助走の勢いをそのままに頭から突っ込んでみたり!」バッ



ドゴッ!



一方通行「ごふっ!?」

結標「打ち止めちゃん!?」

禁書「ちょっと待ってよらすとおーだー!」ドタドタ

上条「ん? そういえばお前ら今までいなかったけど、どこに行ってたんだ?」ボロッ

風斬「い、いえ、その……」

禁書「とうまには関係ないかも。というかとうまは何でそんなにボロボロになっているのかな?」

上条「……ちょっと悪魔の逆鱗に触れちまって」

禁書「?」


一方通行「……痛ってェなァ、何しやがるクソガキ!」

打ち止め「アクセラレータ!」

一方通行「あァ?」

打ち止め「約束守ってくれてありがとう! そしておめでとっ! ってミサカはミサカは感謝の言葉とお祝いの言葉を同時に贈ってみたり」ニコッ

一方通行「……ケッ、何が約束だ。命令とか言ってな……いや違う。そォじゃねェ」

打ち止め「うん? 違うって何が? ってミサカはミサカは――」



一方通行「こっちこそありがとうだ。打ち止め」



打ち止め「ッ、…………アワキお姉ちゃん!!」

結標「はい!?」


打ち止め「この人は無愛想で、口が悪くて、短気で、面倒臭がり屋で、非常識で、ひねくれ者で、笑顔が怖くて、笑い方も怖くて――」


一方通行「オイ」


打ち止め「そんな変人だけど、アクセラレータをよろしくね、ってミサカはミサカはお願いしてみる」


結標「……うん、知ってる。任せてちょうだい」ニコッ

打ち止め「うん!」ニコッ

一方通行「……くっだらねェ」


433 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:48:53.45 ID:6X2WJU4Vo


青ピ「よっしゃー!! こうなったら二人のお祝いパーティー開催するでー!!」


上条「切り替え早っ!? さっきまで文句垂れてたヤツのセリフとは思えねえな」

吹寄「いいわねお祝いパーティー。あなたにしては珍しくいいアイディアじゃないかしら?」

姫神「いつやるの?」

青ピ「そんなの今日に決まっとるやろ! 鉄は熱いうちに打てってヤツやで!」

上条「げっ、今日はさんざん絶叫マシン乗りまくって疲れ切ってるっつーのに」

青ピ「あの程度で音を上げるなんてだらしないなーカミやん! てなわけでつっちー! パーティー会場の確保や!」

土御門「そう言うと思って、安くてうまくて夜遅くまでどんちゃん騒ぎしても怒られない店の予約を取っておいたぜい」ピッ

青ピ「さすつち!」

吹寄「……もう、勝手に次々と決めちゃって。しょうがないわね」

禁書「わーい! パーティーだー! ごはんだー!」

風斬「さっき、あんなに食べたばかりなのに……」

姫神「相変わらずの食欲で。逆に安心する」

打ち止め「宴会盛り上げ隊長のミサカがパーティーを最っ高に盛り上げてやるぜー! ってミサカはミサカは意気込んでみたり!」

上条「……だぁーもうわかりましたよ!! 日付が変わるまでだろうが朝までだろうが付き合ってやるよこんちくしょう!!」

土御門「その意気だぜいカミやん!」

青ピ「そうと決まればさっそく会場にレッツゴーや!!」

打ち止め「おおっー!! ってミサカはミサカは駆け出してみたり」タッタッタ

風斬「ああ、走ると危ないって言ってるのにまた……」オロオロ


結標「……あはは、私たちのお祝いパーティーですって」

一方通行「面倒臭せェ」

結標「言うと思ったわ。こういうときくらい素直に喜びなさいよ?」

一方通行「素直に面倒臭せェ」

結標「まったく……」


吹寄「二人とも、何してるの? 早く行きましょ?」

打ち止め「おおーい!! 早く早くー!! ってミサカはミサカは飛び跳ねながら急かしてみたり!!」ピョンピョン


結標「うん、ちょっと待っててー! すぐ行くからー! ほら、行くわよ一方通行?」

一方通行「チッ」

結標「……あっ、そうだ。一方通行?」

一方通行「あァ?」



結標「改めて、これからもよろしくね!」

一方通行「……ああ」



――――――


434 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:50:09.69 ID:6X2WJU4Vo



『結標淡希記憶喪失編』 完




435 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:51:31.91 ID:6X2WJU4Vo

くぅ疲
とりまこれで8年以上前から5スレに渡って続いた話にケリが付いたってことで
打ち止めに関しては家族愛で通してもよかったけど
公式でも恋愛感情あるっぽい描写あったし、この過去スレでもそれっぽい描写入れちゃったからやらざるを得なかった感じやね

これで1スレから見てくれてる人に対しての話は一区切りってことで
ここから先はおそらく誰も求めていないガチオナニーの蛇足編やから読まなくていいよ
具体的に何するかと言うと回収してない伏線の回収

ではおまけと予告で今日はおわり!w

436 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:53:05.63 ID:6X2WJU4Vo


〜おまけ〜


同日 21:00

-スターランドパーク・恐怖! Dr.GENSEIの館・スタッフ控室-


円周「――数多おじちゃん」テクテク

数多「あん?」

円周「アクセラお兄ちゃんと淡希お姉ちゃんがくっついたらしいよ」

数多「そうかよ」

円周「あれ? 思ったより薄い反応だね。これを期待して淡希お姉ちゃんにアクセラお兄ちゃんのこと暴露したんじゃなかったの?」

数多「別にそんなつもりはねえよ」

円周「じゃあ何を期待してそんなことをしたの? もしかして血みどろの戦いが起こるほうを期待した?」

数多「それも違うな」

円周「むー、わからないなー。そんなもったいぶらずに教えてよー」

数多「何かを期待していたってほどの話じゃねえっつってんだよ」

円周「なら質問を変えるよ。何のためにあんなことをやったの?」

数多「……そうだな。ただの生意気なクソガキに対しての嫌がらせっつーだけの話だ」

円周「えー、そんなことのために数多おじちゃん直々に出張ったっていうのー? ほんと暇なんだねおじさん」

数多「だから暇じゃねえっつってんだろうがクソガキ!」

円周「社員のみんなが汗水垂らしながら働いているっていうのに、女子高生と楽しくトークトークしてるおっさんなんて暇人以外形容する言葉がないよ」

数多「……よーし、わかった。そんなに死にてえなら新しい木原神拳奥義の実験台にテメェを使ってやるよ」ゴキゴキ

円周「うん、うんうんわかってるよ数多おじさん。おちょくって逃げるヒットアンドアウェイ戦法、それが『木原』の真骨頂なんだよね」ピーガガガ

数多「それはテメェだけだクソガキィ!!」



ゴツンッ!!



円周「ほげぇ!?」バタリ

数多「はぁ……、さーてと」




数多(わかってんだろうな一方通行。テメェは大きな壁を乗り越えたつもりでいるんだろうが、まだテメェは根本的な問題を解決できてねえんだっつーことをな)







円周「きゅー……」




――――――


437 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/10/29(金) 22:54:28.96 ID:6X2WJU4Vo

次回『S1.ファーストデートi』

書き溜め完全に尽きたので来週投下無理かもわからん
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/10/30(土) 09:02:02.83 ID:WW+4N3Se0
お疲れちゃん
439 : ◆ZS3MUpa49nlt [sage]:2021/11/04(木) 23:00:32.08 ID:FLEjRC4Ho
先に行っておくけど明日の投下はないです
進捗はどうあれ来週は絶対する
440 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:39:13.65 ID:4HZ8YDOAo


今回から蛇足編が始まりやす
読む人いないと思うけど一応注意事項追記しとく


今までの話の雰囲気とはだいぶ毛色が変わる(特にS2の終盤以降から)

描写をわかりやすくするため台本形式から台本+地の文形式に変更(本格的な変更はS3から)

やりたいストーリーに無理やりキャラを当てはめてるから今まで以上にキャラ崩壊注意

設定改変・独自解釈のオンパレード

ストーリーの進行上特定のキャラが悪者になったりキャラ下げみたいに思えるような展開あり


では投下
441 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:40:39.04 ID:4HZ8YDOAo


S1.ファーストデートi


私の名前は結標淡希。とある高校へ通う空間移動(テレポート)という超能力を持つ至って普通の女子高生。
そんな私に最近恋人ができた。
白髪赤眼で線の細い体格。ぶっきらぼうで偏食家で面倒くさがり屋でいつでもどこでも昼寝をしているような、同じ家に居候している同居人の年下の男の子。
一週間前に一緒に行った遊園地の観覧車の中で、私の方から告白をし、それを受けてくれたことによって恋人同士となった。
思春期真っ盛りの女子高生からしたら初の彼氏ができるということは、それはもうとてもとても嬉しく、毎日がウキウキワクワクみたいな感じである。
まさしく人生が薔薇色になるとはこのことなんだろうとハッキリと言える。

そんな誰にでも自慢したくなるような状況だけど、その現場にいた子以外の同居人にはこのことはまだ話してはいなかった。
なんというか、今更そんな関係になりましたと面と向かって言うのが恥ずかしくてまだ話せずにある。
いつか自分から話そうとは思っているが、果たしていつになることやら。
まあ、その同居人二人のうち一人はニヤニヤしながらこっちを見ていたりするので、気付いていそうではあるが……。

そんな人生の絶頂期にあるであろう私には一つの悩みがあった。
先程言ったように、彼と私が恋人となったのは一週間前である。七日間経っているのである。当日を除いたら六日間。
六日間もあったらやりたいことは学生レベルなら大抵何でもできると思う。たぶん。
そんな日数経っているのにも関わらず、私と彼の間には――。


442 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:41:19.17 ID:4HZ8YDOAo


April First Wednesday 15:00

-黄泉川家・リビング-



結標「……ねえ、一方通行?」



一方通行「あン?」

結標「ちょっと確認したいことがあるんだけどいいかしら?」

一方通行「何だよ?」

結標「私たちって恋人同士、ってことでいいのよね?」

一方通行「そォだな。それがどォかしたかよ?」

結標「…………」

一方通行「?」

結標「…………ないのよ」ボソッ

一方通行「あァ?」





結標「私たちあれから恋人らしいこと一度もしていないのよ!!」ドン





一方通行「……ハァ?」

結標「恋人らしいことよ恋人らしいこと! あれから一週間も経つというのになんにもないじゃない!」

一方通行「そりゃいつも通り生活してりゃ何も起こりよォがねェだろ」

結標「何でいつも通り生活しているのよ!? 恋人同士になったのよ!? なんかあるでしょやること!」

一方通行「その言葉、そっくりそのままオマエに返してやるよ」


443 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:42:17.87 ID:4HZ8YDOAo


結標「だいたい唯一やった恋人同士らしいことなんて、観覧車のときにやったその、き、キスくらいじゃない。そんな状態で恋人同士なんて言えるのかしら?」

一方通行「知るか」

結標「と、とにかく! 何か恋人同士でやるようなことをやりたいわ!」

一方通行「何かって漠然とし過ぎだろ……はァ、まァイイ。そンなにやりてェならやってやるよ」

結標「えっ、ほんと? 一体何をするつもりなのよ?」

一方通行「……よし、外出るぞ」ガチャリガチャリ

結標「外? 一体どこに行くつもり?」

一方通行「どこって、ラブホ――」




ゴッ!!




結標「ふ、ふざけんなッ!! この変態ッ!!」つ軍用懐中電灯

一方通行「痛ッ……恋人同士でやることやりてェっつったのはオマエだろォが。キスの次っつったらそォいうことになるだろ」

結標「極端過ぎるわよ! 私たちにはまだ、その、は、早いっていうか……」

一方通行「だったら何がやりてェンだよオマエは?」

結標「うーん、そうねえ……やっぱりデート、とかかしらね?」

一方通行「最初からハッキリそォ言え」

結標「……あっ」

一方通行「ンだァ? その何かを察したみてェな面はァ?」

結標「もしかして貴方、そういうキス以上のことやりたかった、ってこと?」

一方通行「は?」

結標「いやー、貴方にもそういう感情があるんだなぁって気付けて何か嬉しいなーっていうか」

一方通行「付き合い始めて五分くれェでキス求めてくるオマエほどじゃねェけどな」

結標「なっ、あれはそういうのとは違うでしょ!?」

一方通行「同じようなモンだろ」

結標「違うわよ!」


444 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:43:45.96 ID:4HZ8YDOAo


結標「と、いけないいけない話が逸れていっているわ。デートの話よデートの話」

一方通行「デートって具体的に何をやればイインだ? 悪りィが俺ァその辺疎くてよォ」

結標「そうね。たとえば一緒にショッピングしに行くとか?」

一方通行「なるほど。だったら適当にコンビニでも行くか」

結標「それショッピング違う!」

一方通行「あァ? ショッピングって買い物することだろォが」

結標「貴方の言っているのはただの買い出しよ」

一方通行「なら何を買いに行けばショッピングっつゥことになるンだよ?」

結標「うーん、たとえばかわいい洋服買いに行ったり、かわいいアクセ買いに行ったり、かわいい雑貨買いに行ったり」

一方通行「オマエが欲しいモン並べてるだけじゃねェか」

結標「でもショッピングってこういうことよ?」

一方通行「面倒臭せェ。他に何かねェのかよ? ショッピング以外にも何かあるだろ?」

結標「雑誌とかでよく特集されているのは遊園地デートとかかしらね?」

一方通行「この前行ったばかりだろォが。また行く気かよオマエ」

結標「さすがの私もそれはないわね」

一方通行「ソイツは安心した」

結標「他には動物園とか水族館とか美術館みたいなところ行ったりとか」

一方通行「面白れェのか? それ?」

結標「あっ、あとお弁当持って自然公園へピクニック、ってのもあるわね」

一方通行「そのお弁当っつゥ言葉を聞くと果てしなく不安になるから却下だな」

結標「貴方って本当に失礼よね」

一方通行「事実だからな」

結標「あとは映画を一緒に観に行くとか……そういえば、貴方と一緒に映画観に行ったことないわよね?」

一方通行「ああ」

結標「じゃあ映画観に行きましょ? 私たちの初デートは映画デートに決定!」

一方通行「映画か。去年の秋くらいにインデックスと一緒に行った以来か」

結標「……なんで私とは行ったことないのにインデックスとは行ったことがあるのよ?」ジト-

一方通行「勘違いするな。人探しに付き合っていただけだ。映画自体は観てねェ」


445 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:45:08.09 ID:4HZ8YDOAo


結標「さて、今やっている映画は、と」ピッピッ

一方通行「つまンねェ映画選ぶンじゃねェぞ」

結標「貴方ってどういうのが好きなのかしら?」

一方通行「……あー、好きかって言われたらアレだが、ド派手なアクションものの洋画とか観てた気がすンな。悪党が活躍するよォなモン」

結標「なるほど。貴方らしいって言ったら貴方らしいわね」

一方通行「オマエはどォなンだよ?」

結標「私はいろいろ観るわよ? 恋愛ものとかホラーとかファンタジーとか。この前、打ち止めちゃんと行ったときはアニメも観たし」

一方通行「多趣味なことで」

結標「どうせだから貴方も新しいジャンルを開拓してみれば? というか貴方は恋愛ものとか観て女心の一つでも学んでみたらいいと思うんだけど?」

一方通行「何で俺がそンなことしなきゃいけねェンだよ?」

結標「だって貴方デリカシーとか全然ないし。そういうのは直していったほうがいいと思うわ」

一方通行「余計なお世話だっつゥの」

結標「というわけで観るのは恋愛もので決定! ちょうど『今期最大の青春ラブストーリー』とかいうキャッチコピーの映画がやってるし、これでいいでしょ」ピッピッ

一方通行「何だよ最大のラブストーリーって。意味わかンねェ上に安っぽ過ぎンだろ」

結標「いいじゃない別に。大事なのは映画の内容よ」

一方通行「そンなクソみてェなキャッチコピー付けられている時点で、内容の方も期待できそォにねェけどな」

結標「どうして貴方はそうネガティブというか、マイナスみたいな思考しかできないのかしら?」

一方通行「変に希望を持たねェよォにしているだけだよ」

結標「あっそ。じゃあそういうわけで明日の朝一〇時前くらいのヤツ予約入れとくわね」ピッピッ

一方通行「あァ? 明日だと? 今から行くンじゃねェのかよ」

結標「そんな急に今から行くなんてことしないわよ。私だって準備とかいろいろあるし」

一方通行「それはイイとして何で朝に行こうとしてンだよ? 別に昼からでもイイだろ」

結標「決まってるでしょ? 映画観終わってランチに行って、そのあといろいろ遊びに行けるでしょ?」

一方通行「映画だけじゃなかったのかよ」

結標「当たり前じゃない。それくらい付き合いなさいよ」

一方通行「面倒臭せェ……」


―――
――



446 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:46:21.73 ID:4HZ8YDOAo


同日 19:00

-黄泉川家・食卓-


結標「――そういうわけで、明日は朝から二人で出かけてきます」

黄泉川「おう、わかったじゃんよ」

芳川「……ふーん、二人きりで、ね。随分と仲がいいのね?」クスッ

結標「あははは、別にそういうのじゃないですよ」

芳川「そういうのってどういうことかしら?」ニヤニヤ

結標「さ、さあ? どういうことでしょうか、あははははは」

黄泉川「?」

打ち止め「ねえねえ、何の映画を観に行くの? ってミサカはミサカは興味を示してみる」

一方通行「あァ? 何かよくわからねェ恋愛もののヤツ」

打ち止め「ああ、あのよくCMで見る学園恋愛ドラマのやつ? ってミサカはミサカは頭の中の記憶を引っ張り出してみたり」

一方通行「たぶンそれ」

打ち止め「いいなぁ、ミサカも映画館行きたいなぁー。今度エンシュウでも誘ってみようかな、ってミサカはミサカは現在絶賛公開中の『劇場版そげぶマン 奇蹟の歌姫編』を観るための方法を画策してみたり」

黄泉川「ところでいつ帰ってくるじゃん?」

結標「おそらく夕飯までには帰って来れるとは思います」

黄泉川「了解。明日は煮込みハンバーグ作る予定だから、たくさん遊んで腹空かせて帰ってくるとじゃん」

打ち止め「わーい!! ミサカ、ヨミカワの作ったハンバーグ大好き!! ってミサカはミサカはバンザイして喜びを表現してみたり」

一方通行「晩メシの為に腹空かせろとかガキじゃねェンだからよォ」

黄泉川「もちろん一方通行の為に大盛りのサラダも作っておくじゃん」

一方通行「ますます腹空かせる気が起きなくなってくるな」

芳川「ま、テンション上げすぎて朝帰りみたいなことはないようにね?」

結標「な、何言っているんですかきちんと夕食までには戻りますよ!」

一方通行「くっだらねェ」


―――
――



447 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:48:20.44 ID:4HZ8YDOAo


April First Thursday 09:00

-第七学区・駅前-



結標「…………あれ?」ポツーン



結標「今九時よね? 一方通行のヤツが来ないわ……」

結標「まあ、アイツのことだからちょっとくらい遅れるくらいはありえる、か……」

結標「うーん、こんなことならあんな提案しなかったらよかったかしら?」


〜回想〜


結標「ねえ一方通行? 明日のことなんだけど」

一方通行「あン?」

結標「ここから一緒に映画館に行くんじゃなくて、あえて駅前とかで待ち合わせして行かない?」

一方通行「何でそンな面倒なことしなきゃいけねェンだ?」

結標「いやー、デートで待ち合わせって定番じゃない? 『ごめん待ったー?』とか『大丈夫だよいま来たところ』みたいなやつ」

一方通行「知るかよ」

結標「そういうの何となく憧れがあってやってみたいなーって思ってたのよ」

一方通行「ンなことの為に別々に家出ンのかよ?」

結標「こういうとき同じ家に居候しているっていうのって不便よね」

一方通行「不便って言葉の使い方、それで合ってンのか?」


芳川「同じ家に居候しているって、言い方変えると同棲している、とも言えるんじゃないかしら?」


結標「!?」

一方通行「どっから湧いてきやがったクソババァ」

芳川「普通に部屋からだけど」

結標「へ、変な言い回ししないでください!」

芳川「あらそうかしら? 同じ屋根の下に男女が一緒に住んでいるのだから間違ってはいないんじゃない?」ニヤニヤ

結標「そ、それは……」

一方通行「どォでもイイが、他にクソババァ×2+クソガキが居る時点でそォいうのとは違ってくンじゃねェのか?」

芳川「あっ、バレちゃった?」

一方通行「チッ、うっとォしいヤツ。とっとと部屋に帰りやがれ」

芳川「ふふふ、お邪魔しちゃってごめんなさいね。じゃ、おやすみ」テクテク

結標「お、おやすみなさい……」

一方通行「……はァ、俺も眠くなってきたから寝るか」

結標「あっ、ちょっと。さっきの待ち合わせの件、忘れないでよね! 駅前に九時よ!」

一方通行「わかったわかった、ふァー」ガチャリガチャリ


〜回想終わり〜


448 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:49:20.00 ID:4HZ8YDOAo


結標「……ちゃんと覚えているわよね? 改めて朝のうちにもう一度確認しなかったのちょっと後悔だわ」

結標「いや、でも普通に考えて忘れるってことはないはずよ。だってデートよ? 初デートよ? そんな重要イベントの待ち合わせよ?」

結標「……まあいいや、もうちょっと待ってみるか」



〜一〇分後〜



結標「……来ない」

結標「もしかして私待ち合わせ場所か時間どっちか言い間違えた?」

結標「無意識のうちに公園に一〇時集合とか言っちゃってた? いや、まさかー」

結標「ま、まあもうちょっとだけ待ってみようかしら」



〜さらに一〇分後〜



結標「さ、さすがにこれはおかしいわね。アイツもしかして寝ているんじゃない?」

結標「……いや、さすがにそれはないか。だって一緒に朝食食べてたんだから起きているのは確実よ」

結標「うーん……そうだ。ちょっと電話してみようかしら」ピッピッ

結標「…………」プルルルル


携帯『おかけになった電話は電波の届かない場所にいるか電源が入っていないためかかりません』


結標「……あの野郎、電源切ってやがるわね」

結標「ど、どうしようかしら。今から家に戻ってたら映画の時間絶対に間に合わないし、戻ったら戻ったですれ違いとかになったら嫌だし」

結標「ぐぬぬ……」


―――
――



449 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:50:46.83 ID:4HZ8YDOAo


同日 09:30

-黄泉川家・リビング-


打ち止め「ふんふーん♪ 今日は学園都市クエスト最初からプレイして無能力縛りで遊んでみよう、ってミサカはミサカは新しい遊びを開拓してみたり」

打ち止め「そういえばゲーム機どこ置いたっけ? ゲーム機ゲーム機……あれ?」キョロキョロ


一方通行「Zzz……」


打ち止め「……うん? 今日ってアワキお姉ちゃんとデート、もとい映画館に行っているんじゃなかったっけ? ってミサカはミサカはソファに寝転んでいるアクセラレータを見ながら考え込んでみたり」

打ち止め「アワキお姉ちゃんウチにはいないみたいだから今日で間違いないと思うんだけどなぁ。ねえねえ、アクセラレータ起きてー、ってミサカはミサカは嫌な予感を感じながら揺さぶってみる」ユサユサ


一方通行「Zzz……あァ? もォ朝か?」


打ち止め「あれ? さっきまで一緒に朝ごはん食べてたよね? ん? つまりその朝っていうのは明日の朝かってこと? ってミサカはミサカは頭の中がこんがらがって思考がまとまらなくなってみたり」

一方通行「何わけのわからねェこと言ってンだ? 何か用かよ」

打ち止め「あなたって今日アワキお姉ちゃんと映画館に行くんじゃなかったっけ? なのに何でこんなところで寝ているの? ってミサカはミサカは聞いてみたり」

一方通行「映画……今何時だ?」

打ち止め「ただ今の時間は九時三二分四一秒をお知らせします、ってミサカはミサカはミサカネットワークから時刻情報をダウンロードしてみたり」

一方通行「…………」

打ち止め「…………」

一方通行「…………」ピッ←携帯の電源を入れる

一方通行「…………」プルルルルピッ

結標『……もしもし?』

一方通行「……結標」

結標『……なによ?』

一方通行「…………」



一方通行「オハヨウゴザイマス」



結標『はよこい!!』


―――
――



450 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:52:32.25 ID:4HZ8YDOAo


同日 09:40

-第七学区・駅前-



ドォウン!!



一方通行「…………」カチッ

結標「やった来た!! ちょっと貴方今まで何やってたのよ!?」

一方通行「メシ食ったあと待ち合わせ時間までまだ結構あったから、ソファに転ンでくつろいでおくか、ってなって今に至るわけだ」

結標「至るわけだ、じゃないわよ! デートの前だっていうのに普通寝る!? もう信じられない!」

一方通行「寝ちまったモンはしょうがねェだろォが」

結標「……というか貴方。まずは私に一言言っておかないといけないことがあるんじゃないかしら?」

一方通行「あァ? ……ああ。ゴメーン、待ったァー?」

結標「もうちょっとちゃんと謝れ!」

一方通行「オマエが憧れてるとか言ったンだろォが」

結標「あーそういやそうだったわ。もういいわよ……ってやばい!? もうこんな時間!?」

一方通行「あン?」

結標「予約してる映画の上映開始時間が九時五四分。電車とかのそういう移動時間考えたらこれもう間に合わないじゃない!」

一方通行「何でそンなギリギリの時間に予約入れてンだよ」

結標「貴方が待ち合わせ時間をきちんと守っていれば余裕で間に合ってたのよ!」

一方通行「わかったわかった悪かったよ。つか、映画って次の上映のヤツとかあンだろ? そっちに変えればイインじゃねェのか?」

結標「まあ、今となったらそれしかないわね。次の上映は……げっ、二時間後!? それもうお昼じゃない!」

一方通行「面倒臭せェ展開になってきやがったな」

結標「誰のせいよ誰の……あーもう最悪。いろいろ予定考えたのに台無しよ……」ブツブツ

一方通行「……チッ、しょうがねェ。九時五四分の方観るぞ? それなら問題ねェだろォが」

結標「まさか途中から入って観るつもり? そんな中途半端なの嫌よ私」

一方通行「何勘違いしてンだ? 上映時間には間に合わせる」

結標「どうやって?」

一方通行「チカラ使って映画館へ直行する。直線距離にすれば大した距離じゃねェからビルの上跳ンで行けば余裕で間に合うだろ」

結標「な、なるほど。たしかに……」

一方通行「つゥわけで、行くぞ?」カチッ

結標「……うん? 行くぞ?」


451 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:53:59.16 ID:4HZ8YDOAo


一方通行「当たり前だろォが、オマエも付いて来るンだよ。空間移動能力者(テレポーター)だろォがオマエは」

結標「えっ、も、もしかしてテレポートの連続使用でビルの上空から移動しろって言うつもり?」

一方通行「それ以外あンのかよ?」

結標「…………」

一方通行「どォかしたか?」カチッ

結標「あのー、地面に沿って移動するのはなしでしょうか?」

一方通行「何でだよ?」

結標「上から行くってことは通行人とかの頭上を移動するってことでしょ?」

一方通行「そォいうことになるな」

結標「そ、そんなの絶対嫌よ!」

一方通行「オマエって高所恐怖症だったか?」

結標「別にそういうわけじゃ……」

一方通行「じゃあ何でなンだよ? ハッキリ理由を言え」

結標「だって今日の私、……す、スカートなのよ? しかも割と短めの」

一方通行「……へー」

結標「何よその薄いリアクションは?」

一方通行「いや別に。まァオマエの言いたいことはわかった。で、仮にオマエの言う通り地面を沿いながら行くとするだろう」

結標「うん」

一方通行「オマエあの人通りや車の交通量も多い道路を連続テレポートで速く移動できンのかよ?」

結標「えっ、ええと、そ、それは頑張ればなんとか……」

一方通行「少しでもミスれば、何の関係もねェ通行人や掃除ロボとか車とかとテレポート合体ってことなンだがよォ?」

結標「わ、私はこれでも一応超能力者(レベル5)よ? そんなヘマするわけ――」

一方通行「そォいえば昔、軽い気持ちでテレポートして床に足突っ込ンだヤツが居たなァ。ソイツは今となったらそのことはもォきれいサッパリ忘れているだろォけどよォ」

結標「ぐっ……」

一方通行「なンなら俺が抱えて跳ンでやってもイインだぜェ? その場合公衆の面前で羞恥プレイっつゥ、マラソン大会のときの二の舞になるけどなァ」

結標「ふぐぅ……、あ、あんなこと思い出させないでよ、顔熱くなってきた」カァ

一方通行「さあ早く選べよ? 時間がねェンだろ?」

結標「ぐぬぬぬぬぬぬ、が、がんばって上からテレポートしますぅ……」

一方通行「そォかよ。じゃ、先行ってンぞ」カチッ



ドォン!!



結標「…………」

結標「ってちょっと待ちなさい! あーもうっ」

結標「というかそもそも遅刻したのアイツなのに、何で私がこんな目に合わなきゃいけないのよ……!」

結標「学園都市の皆様、今だけ空を見上げないでくださいお願いします」



シュン!



―――
――



452 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:55:38.19 ID:4HZ8YDOAo


同日 09:45

-第七学区・街中-


佐天「……ん? なんだあれ?」

初春「どうかしたんですか佐天さん? 空なんか見上げて」

佐天「いや、なんかビルとビルの間ピュンピュン飛び回ってる人がいたんだけど」

初春「パルクールってヤツですか?」

佐天「あれはそんなもんじゃないね。ニンジャだよニンジャ!」

黒子「大方、風力操作系の能力者がビルからビルに飛び移って遊んでいたのでしょう」

初春「明らかな危険行為なので風紀委員(ジャッジメント)として注意に行ったほうがいいでしょうか? 私たち今は非番ですけど」

黒子「まあ、その現行犯の方を実際に見たわけではないですし、そもそも佐天が鳥か何かと見間違えた可能性もありますので必要はないでしょう」

佐天「えぇー? さすがにそんなのとは見間違えないよー!」

初春「まあまあ佐天さん。想像力豊かな人はものを見間違えることなんてよくあることみたいですし」

佐天「初春めー、見間違え説が出てきた途端に信じるのやめたなー? よーし、だったらもう一回見つけて証明してやるー」

初春「いえ、最初から信じてはいませんよ?」

佐天「薄情な親友だなー、ん? あっ、出た!」

初春「ほんとですか!? ……あれ? なにもない?」チラッ

佐天「あれー初春ー? 信じてないんじゃなかったっけー?」ニヤニヤ

初春「あああああ、謀りましたね佐天さん!」

佐天「あたしのことを信じなかったバツでーす!」

黒子「……あっ、いましたわ」

佐天「またまたー、白井さん? 同じネタを二度もやったら面白さ半減しちゃうよー?」

黒子「いえ、冗談ではなく本当に」

佐天「えっ……あっ、ほんとにいた! んー? でもあたしが見た人とは違う人っぽいね」

初春「そうですね。あれは風力操作とかじゃなくて」

黒子「空間移動能力者(テレポーター)……ですわね」

佐天「さっき見た人は男ぽかったし、あの人は女の子だから間違いなく別人だね」

初春「えっ、佐天さんわかるんですか?」

佐天「うん、だってスカ……いや、なんでもないや」

初春「?」

佐天「しかし、白井さん以外のテレポーターの人初めて見たなー」

初春「私もです。あの人相当すごいですよ。移動距離の長さも連続転移のインターバルの短さも白井さん並ですよ」

黒子「……いや、違う」

初春「白井さん?」


453 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:57:35.48 ID:4HZ8YDOAo



黒子(一度に飛ぶ距離、目測でも一〇〇メートル以上はゆうに跳んでいる、のにも関わらずわたくしと同じくらいのインターバル……いえ、もしかしたら)



佐天「どうしたの白井さん? 珍しくそんな真剣な表情して」

黒子「何でもありませんわ。って珍しくは余計ですの」

佐天「というかあれも危険行為じゃないの? 現行犯だけど追わないの?」

黒子「……いえ、やめておきますわ」

佐天「えっ、何で?」

初春「あっ、わかりました! 同じテレポーターの白井さんも能力をよく変な使い方をしてますので、注意しづらいんですね?」

佐天「あー、なるほどー」

黒子「うーいーはーるー? その言葉だけ聞くとわたくしが、いつも能力を馬鹿みたいな使い方をしているように聞こえるんですがー?」

初春「ええぇー? だって事実じゃないですかぁ? 主に御坂さんへの変態行為とかで」

黒子「お黙りなさい! あれはお姉様への愛ゆえの行動。初春? 貴女には一度説教ォ! してさしあげないといけないみたいですわね?」

初春「ひえぇ、そんな説教聞きたくないですよー!」


美琴「――おっまたせー! やっとお目当ての『ゲコ太人形焼き』買えたわ! いやー写真撮らなきゃ写真……ん? どしたの?」


佐天「いえいえ何でもないですよ。いつも通り二人がじゃれ合ってただけです」

初春「そんな人を猫みたいに言わないでください!」

佐天「あれ? 今日の猫さんはそういう意図で選んだんじゃなかったの?」

初春「えっ……って佐天さん!? また!? いつの間に!?」

佐天「ふっふっふ、まだまだ修行が足りませんなー初春隊員」

黒子「…………」

美琴「あははー、……あれ? どうしたのよ黒子?」

黒子「いえ、なんでもありませんの。さ、お姉様の買い物も済みましたし行くとしましょうか」

美琴「そうね」

佐天「おっー!」

初春「ちょっと佐天さん! まだ話は終わってませんよ!」

黒子「…………」


黒子(先ほどのテレポーター。もしや……いえ、そんなまさか)


―――
――



454 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 20:59:01.09 ID:4HZ8YDOAo


同日 09:53

-第七学区・とあるショッピングモール・映画館入り口-


結標「――ぜぇ、ぜぇ、あ、あと一分! なんとか間に合いそうね!」タッタッタ

一方通行「何でそンなに疲れてンだ?」スゥー

結標「当たり前でしょ! 一刻も早く空の旅を終えるために全開で連続テレポートしたんだから!」

一方通行「地表何十メートルを飛ンでると思ってンだ? そォやすやすとスカートの中なンざ見えるかよ」

結標「そうじゃなくて見えてるかもしれないっていうのが嫌なわけで……はぁ、もういいわ。貴方に言うだけ無駄よね」

一方通行「何勝手に自己解決してンだよ。チッ、ちょっとコーヒー買ってくる」ガチャリガチャリ

結標「えっ、ちょっとあと三〇秒くらいで始まるのよ!? そんな余裕ないわ!」

一方通行「いや、よくよく考えたら本編開始前に他の映画の宣伝映像流れるだろ? だったら別にそンな急ぐ必要ねェと思ってよォ」

結標「…………あっ」

一方通行「まァ、オマエが宣伝映像まで目にしっかりと焼き付けたい映画マニアだっつゥなら先行っとけよ。何かいるモンあンなら代わりに買っといてやる」

結標「……いや、いい。私も売店いく」

一方通行「そォかよ」

結標「ポップコーンでも買おうっと」


-第七学区・とあるショッピングモール・映画館内-



<――の監督が贈る超アクション大作!!



結標「……私たちの席はKの8と9ね。えっと、K、K、K、あっ、あったあった」テクテク

一方通行「ガラガラとは言わねェがまばらな席の埋まり具合だな。まあ、満員で混雑してるよりはマシだが」ガチャリガチャリ

結標「別に公開初日とかじゃないからこんなもんでしょ?」

一方通行「もしかしなくてもクソつまらねェ映画じゃねェだろォな?」

結標「本当につまらなかったらそれこそガラガラになってるわよ。ここまで来たんだから文句言ってないでおとなしく映画観なさい」

一方通行「ヘイヘイ」


455 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:00:30.91 ID:4HZ8YDOAo


少女『あああ今日から新学期だって寝坊しちゃうなんてツイてない!』つ食パン


曲がり角でドン!!


少女『痛っ!?』ドタッ

少年『ってぇなぁ!? オマエどこ見て走ってやがるっ!?』

少女『なによぉー、それはこっちのセリフよ!』

少年『チッ、こんなことしてる場合じゃなかったな。じゃあなクソ野郎』タッタッタ

少女『誰がクソ野郎よ!? ちょ、ちょっと待ちなさい!!』



結標(おおー漫画とかでよくネタにされるラブコメテンプレ展開! ドラマとかで観るのは初めてね)

一方通行(……食パン食いながら走って口乾かねェのか?)





少女『ちょっとアンタ! ちゃんと宿題出しなさいよ! じゃないと委員長の私が怒られるんだからね!?』

少年『あぁ? んなこと知るかよ。宿題なんてくっだらねぇ。帰る』

少女『宿題がくだらないなんて何のために学校に来てるのよ……って待ちなさーい!』


場面転換 雨ザーザー


少女『まったくアイツ宿題も出さないし、口も悪いし、もう最悪よ!』

少女『ん? あそこにいるのアイツじゃない』


少年『……チッ、このままじゃ風邪引くぞ? この傘使えよ』

捨て犬『くぅーん』

少年『ったく、らしくねぇなぁ。何やってんだ俺ぁ』


少女『なっ、なにアイツ!? アイツあんな優しいところあったんだ……』トクン


結標(わっ、これも何かで見たヤツ!? ……しかし、あの少年キャラどっかで見たことある感じよね)

一方通行(捨て犬を拾いもせずに傘だけ与えるって優しい行為なのか?)





少女『あっ、アイツに遊園地誘われるなんて……一体何がどうなってるの!?』

弟『ねーちゃん! ゲームしてあそぼーよ!』

少女『お姉ちゃん忙しいからまた今度!』

弟『えぇー?』


結標(きゃあああああああ天才子役のコウくん!! やっぱり演技も上手でかわいいわ!!)ハァハァ

一方通行(……隣の馬鹿の鼻息がうるせェ)





456 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:01:21.58 ID:4HZ8YDOAo


少年『俺はオマエのことが好きだっ!! だから俺がオマエを必ず守ってやるからよぉ、俺の女になれっ!!』

少女『……はい』


なんか壮大なBGM


少女『ねえ』

少年『あん?』

少女『私の彼氏になるんだったら、ちゃんと宿題やらなきゃね?』

少年『……チッ、面倒臭せぇ』


-E N D-


結標(……うーむ、まあこんなもんか。役者さんの演技は上手だったしそのへんはよかったかな。とくにコウくん!!)


結標「そうだ一方通行? 映画どうだった?」

一方通行「…………」

結標「? 一方通行?」

一方通行「…………Zzz」

結標「…………」



ゴッ!!



―――
――



457 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:02:09.47 ID:4HZ8YDOAo


同日 12:00

-第七学区・とあるショッピングモール・通路-


一方通行「……クソッ、思い切りブン殴りやがって」

結標「せっかく映画を観ているのに隣でスヤスヤ寝ているやつが居たら、普通ぶつわよ」

一方通行「オマエだけだよそンなヤツ」

結標「ちなみにどこまで意識あったわけ?」

一方通行「あァー、何か遊園地デートしてたのは覚えてるよォな気がする」

結標「中盤くらいね。まあ、そこまで観れたなんて貴方にしては頑張ったほうじゃないかしら?」

一方通行「チッ、うっとォしいヤツ」

結標「さて、それじゃあお昼行きましょ?」

一方通行「店ェ決めてンのか?」

結標「モール内に行ってみたい店があるから、貴方がよければそこがいいかなって」

一方通行「俺にそンな気ィ使わなくもイイっつゥの。好きにしろ」

結標「その店実はサラダ専門店なんだけど……」

一方通行「殺すぞ」

結標「わかっていたけど自分の意見変えるの早すぎでしょ……」

一方通行「何でこの俺がそンな雑草畑に行かなきゃいけねェンだ」

結標「雑草畑て……まあ、さっきのは冗談よ。本当に行きたかったのはふわとろオムライスが有名なお店よ」

一方通行「チッ、だったら最初からそォ言え」

結標「ごめんごめん。それじゃお店に行きましょうか?」テクテク

一方通行「おォ」ガチャリガチャリ


―――
――



458 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:02:50.33 ID:4HZ8YDOAo


同日 12:20

-第七学区・とあるショッピングモール・某洋食屋-



店員「おまたせいたしました。デミソースのオムライスとセットのスープとサラダです」ゴトッゴトッ


結標「ありがとうございます」


店員「こちらはトマトソースのオムライスでございます」ゴトッ


一方通行「……どォも」


店員「ごゆっくりどうぞ」テクテク


結標「うーん、いい香り。すごく美味しそう!」

一方通行「……なァ?」

結標「なに?」

一方通行「ふと思ったンだが、オマエ何でデミグラスソースのヤツ頼ンだンだよ?」

結標「何で、って別に美味しそうだったから以外理由はないわよ?」

一方通行「さて、問題だ」

結標「?」

一方通行「昨日黄泉川が言っていた、今日の晩メシに作ろうとしているメニューは何でしょうか?」

結標「たしか煮込みハンバーグ……あっ」

一方通行「正解ィ! デミグラスソース二連チャンおめでとォ!」

結標「ぐっ、完全に忘れてた……」

一方通行「これだから格下は」

結標「うるさいわね。いいわよ、オムライスとハンバーグじゃ味変わるだろうし」


459 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:04:18.65 ID:4HZ8YDOAo


結標「……うーん! ふわとろでおいしいー!」モグモグ

一方通行「そォかよ。ソイツはよかったな」パクパク

結標「あら? お気に召さなかったかしら?」

一方通行「別に。普通だ」

結標「素直においしいって言えばいいのに」

一方通行「普通なモンは普通なンだよ」

結標「でもこういうの食べると、やっぱり私も自分の手でこういうオムライスとか作ってみたい! とか思っちゃうわねー」

一方通行「オマエ半年前に作ったかわいそうな卵のこともォ忘れたのかよ」

結標「あー、懐かしいわねー。貴方と一緒に作ったやつだったっけ?」

一方通行「思えばあンときからおかしかったよな。オマエの料理センス」

結標「何言っているのよ。それに関しては貴方も似たようなものだったじゃない」

一方通行「あァ? オマエみてェな料理音痴レベル5と一緒にするンじゃねェよ」

結標「ぐぬぬ、見てなさい! 絶対オムライス作れるようになって貴方の舌を唸らせてやるわよ」

一方通行「唸るっつゥか悲鳴を上げそォだからやめろ。そンな高難易度料理より先に野菜炒め作れるよォになれよ」

結標「ふむ、たしかにそうね。やっぱり基礎から学ぶほうが大事よね」

一方通行「そォだな。まず最初に『レシピ通りの材料を用意してレシピ通りに作業する』っつゥ基礎から叩き込まねェとなァ」

結標「思い立ったが吉日。帰りに材料買って帰って明日くらいに練習しようかしら?」

一方通行「よし、明日は一日外出してよォ」

結標「薄情なヤツね」

一方通行「俺ァまだ死ぬわけにはいかねェンだよ」

結標「もうっ……えっと、野菜炒めの材料ってたしか、キャベツ、にんじん、もやし、しめじ」

一方通行「あァ? 何だよ案外まともな材料じゃ――」

結標「スイカ、目薬、木炭、野菜ジュース、森林の香りの消臭剤――」

一方通行「やっぱりオマエ一生料理すンなッ!!」

結標「ええぇっ!?」ビクッ


460 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:05:38.41 ID:4HZ8YDOAo


結標「ねえねえ一方通行? ふと思ったことがあるんだけど」

一方通行「何だよ」

結標「何で貴方って私のこと名字で呼んでいるのかしら?」

一方通行「……ハァ?」

結標「だって打ち止めちゃんや黄泉川さんに芳川さんは、みんな私のこと名前で呼んでるじゃない? 貴方だけよウチの中で名字で呼んでいるの」

一方通行「あー、まァアレだ。オマエが黄泉川や芳川を名前で呼ばない理由と同じだ」

結標「なるほど。貴方は私のことを保護者だと思っているのね?」

一方通行「そンなこと一回たりとも思ったことねェよ! 何なら残りのババァ二人にすらなッ!」

結標「えー、じゃあ何でなのよ?」

一方通行「名前で呼ぶよォな間柄じゃねェってだけだ」

結標「ふーん、そう。ってことはあれよね?」

一方通行「あァ?」

結標「今は恋人っていう関係になったのだから名前で呼んでくれるってことよね?」

一方通行「…………」

結標「でしょ?」

一方通行「……いや、イイ」

結標「なんでよ?」

一方通行「今さら呼び方変えるのが面倒臭せェ」

結標「むすじめの四文字からあわきの三文字へ減るんだから、発する言葉の労力が減るわよ?」

一方通行「たかだか一文字変わったくれェでそンな変わるかよ。呼び方変えるっつゥ労力のほうがデケェから結果損すンだよ」

結標「……ははーん、わかったわ」

一方通行「ンだァ? そのクソみてェな面はよォ?」

結標「貴方面倒臭いとか労力とかうだうだ言っているけど、さては恥ずかしいのね? 名前で呼ぶのが!」

一方通行「ハァ? ナニ馬鹿みてェなこと抜かしてンだクソアマがァ。あンま適当言ってると頭蓋骨卵みてェにカチ割るぞ?」

結標「だったら名前で呼んでよ?」

一方通行「だから面倒臭せェって言ってンだろォが」


461 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:07:08.91 ID:4HZ8YDOAo


結標「呼び捨てが気恥ずかしいなら淡希お姉ちゃんでもいいわよ? ……いや、むしろそっちのほうが」

一方通行「ソッチのほうがハードル上がってンじゃねェか。性癖見えてンぞショタコン野郎が」

結標「ぶっ!? な、な、なななななにを根拠に、しょ、しょた、ショタコンだなんて!?」

一方通行「そのうろたえ方で十分な根拠になると思うがな」

結標「な、ならないわよ! だいたい根拠っていうのは……あっ、そうよ名前! 危ない危ない思わず陽動作戦に引っかかるところだったわ」

一方通行「オマエが勝手に陽動されただけだろ」

結標「いいから名前で呼びなさい! じゃないと後々困ることになるわよ?」

一方通行「困ることだと?」

結標「ええそうよ。だって将来的に結婚したら私の名字結標じゃなくなるでしょ? そんな状態で結標って呼ぶのはおかしいじゃない?」

一方通行「……オマエ付き合ってまだ一週間だっつゥのに、もォそンな先のことまで考えてンのか。気の早ェヤツだ」

結標「えっ!? えっと、や、その、か、仮にの話よ!! 仮にの!!」

一方通行「うるせェなァ、公共の場所で大声出してンじゃねェよ」

結標「あ、貴方が変なこと言うからでしょ?」

一方通行「先に言ったのはオマエだろ」

結標「ぐっ」

一方通行「……はァ。つゥかメシ食い終わったンならとっとと席空けるぞ? いつまでも居座って店の回転率下げるわけにはいかねェからな」ガタッ

結標「あ、うん、ちょ、ちょっと待ってちょうだい!」ワタワタ

一方通行「…………」

結標「ごめん、おまたせ」


一方通行「さっさと行くぞ……『淡希』」


結標「……うん!」

一方通行「チッ、面倒臭せェ」

結標「一方通行?」

一方通行「ンだよ?」

結標「一回だけでいいから『淡希お姉ちゃん』って呼んでみてくれない? 一回だけでいいから!」

一方通行「蹴り殺すぞ」


――――――


462 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/12(金) 21:09:13.30 ID:4HZ8YDOAo

次回から金曜更新を土曜更新にするわゆるして・・・

次回『S2.sラストデート』
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/11/14(日) 07:37:13.39 ID:50/FgNUf0
いいよ
464 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:48:40.16 ID:TJ4tDQ6ko
この話でファッション的なことを具体的な発言をしているけどこれのセンスの有無はファッションとかよくわからんからネットで検索したモデルとかの画像を適当に選んだワイくんのセンスであって実際の登場人物のセンスとはまったく関係ないんだからね!

投下
465 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:49:54.23 ID:TJ4tDQ6ko


S2.sラストデート


April First Thursday 13:00

-第七学区・とあるショッピングモール・通路-


一方通行「……で、次はどこへ行こうってンだ?」

結標「決まっているじゃない。洋服見にショップ行くわよ」

一方通行「ええェ……」

結標「はい、そこ露骨に嫌な顔しない!」

一方通行「何で俺がオマエの服選びを手伝わなきゃいけねェンだ……あン? 何かデジャブ感じンだが」

結標「それは私の居候生活が始まったすぐくらいのときに、一緒に買い物したからじゃないかしら」

一方通行「あー、そォいやそォだったな」

結標「忘れてたのか……」

一方通行「つまりもォこの買い物イベントはやったっつゥことか。何回も同じイベント見せられても面白くねェだろォし、このシーンはカットってことで」

結標「貴方が何を言っているのかさっぱりわからないけど、絶対に逃がさないわよ?」

一方通行「チッ」

結標「少しは彼女のために協力してあげようとか思わないわけ?」

一方通行「オマエも少しは男のために協力してあげようとは思わねェのか?」

結標「だって貴方に協力しても、朝から晩までお昼寝パーティーみたいなイベントになって面白くないじゃない」

一方通行「そンなアホみてェなことするかよ」

結標「嘘だー? この前『春眠暁を覚えず』とか言って朝八時から夜八時という一二時間睡眠した挙げ句、風呂ご飯を終えたあとすぐに次の日の朝までぐっすり寝てたじゃない」

一方通行「ああ。何か日付が一日飛ンでンなァって思ったらそンなことがあったのか」

結標「アホだ。阿呆がいる」

一方通行「あン? 誰が阿呆だコラ」

結標「ま、そういうわけだから今日ぐらい私に付き合ってよね」

一方通行「どォいうわけだよ」

結標「ほら、行きましょ?」テクテク

一方通行「……面倒臭せェ」ガチャリガチャリ


―――
――



466 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:50:59.55 ID:TJ4tDQ6ko


同日 13:10

-第七学区・とあるショッピングモール・某ショップ-


結標「ふーん、ここのはセブンスミストのに比べたらちょっと大人っぽい感じなのね」

一方通行「そォかよ」

結標「なによ。少しは興味持ったら?」

一方通行「女物しかねェのにどォ興味持てばイインだよ?」

結標「そりゃあれよ。私に似合いそうな服探したりとか、私に着て欲しい服探したりとか」

一方通行「……はァ」

結標「何でこのタイミングでため息?」

一方通行「いや、面倒だなって」

結標「貴方って人は本当に……」ハァ

一方通行「例えばだがよォ、オマエは俺にこの服着ろって言われたらハイハイって素直にソレ着るンかよ?」

結標「まあ、貴方がいいと思うものなら」

一方通行「じゃあアレを着ろっつったら?」

結標「アレ?」

一方通行「あのパリのファッションデザイナーが芸術性を重視してデザインしたよォな、胸部がメッシュ状のシャツみてェなの」

結標「うわぁ……いや、無理」

一方通行「そォだろ? そォいうリアクションを取られる可能性があるっつゥのに、服選ばなきゃいけねェなンて面倒極まりねェっつゥわけだ」

結標「あんな変なのじゃなく普通のやつ選んでくれれば、私は着てあげるわよ?」

一方通行「その変の基準が俺とオマエじゃ違うだろォが」

結標「まあたしかにそうだけど……あっ、もしかして貴方ってああいう服が好みなわけ?」

一方通行「は?」

結標「たしかに変な柄のTシャツとか愛用しているから、女物の好みもちょっと変になっててもおかしくはないわよね」

一方通行「ナニ勝手に納得してンだオマエ? 例え話っつっただろ?」

結標「あはは、そうよね」

一方通行「チッ、俺だってアレが一般的な趣味嗜好から外れてるモンだっつゥことぐれェわかるっつゥの」

結標「だったら平気ね。好きなの選んでくれればいいわよ」


467 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:52:17.67 ID:TJ4tDQ6ko


一方通行「…………」


一方通行(さて、どォすっかなァ。コイツの普段着どンなのだったっけか?)

一方通行(今着てンのは上が白パーカーにデニムのジャケット羽織って、下が紺のプリーツのミニスカートで足元がくるぶしにスニーカーか)

一方通行(あァ? コイツって普段七分丈くれェのパンツ穿いてなかったか?)

一方通行(今日は何でまた……あァ、デートだからって頑張りました、ってヤツか)

一方通行(まァ、今はそンなこたァどォでもイイ。今はコイツにどンな服を選ンでやるかだ)

一方通行(好みの服選べっつっても別にそンなモンねェし、似合う服選べっつってもなァ)

一方通行(どォしても普段着や今のコイツの服装に引っ張られて、それに似たヤツを選ンじまいそうになる)

一方通行(どォせだから、普段からあンま着なさそうなモン選ンだ方がコイツは喜ぶのか? たとえばこのロングのワンピなンざ着ねェだろコイツ)

一方通行(……いや、待て。着ないってことは、自分には似合っていないって思っているってことじゃねェのか? そンなモン提示したら確実にブーイングっつゥことにならねェか?)

一方通行(チッ、コイツァ面倒なことになってきやがったな。どっちが正解だ……?)


結標(……なんかすごく真剣に考えてくれているみたいね)

結標(私的には『これはどう?』『なかなか良さそうだから試着してみまーす!』『しました!』『いいじゃん!』みたいなのを、サクサク複数回やる感じなのを期待していたのだけど)

結標(コイツ変なところで真面目よね。まあ、それだけ熱意を持ってくれているってことだから、嬉しいのは嬉しいんだけど)


結標「……ま、いいか。一方通行が選び終えるまで私は私で見て回りますか」


??「結標さん?」


結標「あっ、吹寄さんに姫神さん!」

姫神「こんにちは」

結標「どうしたの二人とも? 今日はショッピング?」

吹寄「ええ、ちょっと暇つぶしにぶらぶらって感じかな?」

結標「なるほど」

姫神「そっちは?」


一方通行「…………」ブツブツ


姫神「って。聞くまでもなく。デートか」

結標「ええ、そうよ」

吹寄「うまくやってるみたいね」

結標「うーん、どうなんだろう?」

姫神「どうかしたの?」


468 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:53:31.39 ID:TJ4tDQ6ko


結標「いやー、実は今日のデートが初でね。付き合って一週間だっていうのに」

吹寄「別に普通じゃない? 学校が休みだから毎日放課後デート、みたいなのができないわけだし」

結標「そうなのかしら? 逆に休みだから毎日どこかに遊びに行くってのが普通なのかとてっきり」

姫神「まあ。それは人によるとしか。言えないわ」

吹寄「二人には二人のペースがあるんだから、二人が楽しめてればそれでいいわよきっと」

結標「……そうよね。ありがと二人とも」

姫神「ところで。アクセラ君は。一人で突っ立って何をしているの?」

結標「えーと、私に似合う服選んで、って言ったらこうなっちゃって」

吹寄「あー、たしかにアクセラなら考え込みそうな問題ね」

結標「気楽に選んでくれればいいのにね」

吹寄「仲が良さそうで何よりね」

姫神「吹寄さん」

吹寄「あっ、そうね。これ以上二人の時間をお邪魔してもいけないし、邪魔者は退散するとしましょうか」

結標「別にそんなこと気にしなくてもいいのに」

姫神「じゃあ。私たちはこれで」

吹寄「しっかり楽しみなさいよ」

結標「うん。またねふた――」


一方通行「オイちょっとイイか『淡希』」


結標「あっ」


姫神「わ?」

吹寄「き?」


一方通行「あン? 吹寄に姫神じゃねェか。こンなところでなに――」


結標「ちょ、ちょっといいかしら一方通行……!」ヒソッ

一方通行「ンだよ?」


469 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:54:58.18 ID:TJ4tDQ6ko


結標「(なんで貴方こんなタイミングで名前呼びしてくれちゃってるのよ!?)」

一方通行「(ハァ? オマエが名前で呼べっつったンだろォが)」

結標「(た、たしかにそうだけど、よりにもよって二人がいる前で……!)」

一方通行「(別にイイだろ。何か問題あンのか?)」

結標「(も、問題と言うかなんというか……は、恥ずかしい……)」

一方通行「(恥ずかしがるくらいなら最初から要求すンなよ)」

結標「(いや、普通こういうのって二人きりのときだけやるものでしょ?)」

一方通行「(知るかよ。そォして欲しいなら最初からそォ言え)」


結標「……え、えーと、二人とも? これは彼が言い間違えただけで別にそんな名前で呼び合ってるとか――」


吹寄「へー、そうなんだ。まあ、別にいいんじゃない? 名前で呼び合うくらい」ニヤニヤ

姫神「うん。恋人同士なんだから。なんらおかしくはない」ニヤニヤ


結標「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」カァ


吹寄「じゃ、あたしたちは行くわ。またね、アクセラに『淡希』さん?」ニヤニヤ

姫神「お幸せに。アクセラ君に。『淡希』さん」ニヤニヤ


結標「あっ、はい……」

一方通行「おォ」


結標「…………」

一方通行「で、俺は結局どォすりゃイインだ? 結標って呼べばイイのか淡希って呼べばイイのか」

結標「……もういいわよ。淡希統一でお願いします」

一方通行「わかった」


470 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:57:01.84 ID:TJ4tDQ6ko


結標「ところで私に何か用かしら」

一方通行「ああ。服選ンだから評価して欲しいンだが」

結標「……あー、そういえばそんなことお願いしてたわね」

一方通行「みぞおちに一発入れるぞコラ」

結標「あはは、ごめんなさいごめんなさい。で、貴方が選んだ服ってどれ?」

一方通行「コレだ」スッ

結標「……へー、キャミソールタイプのロングの黒ワンピか。貴方ってこういうのが好きなの?」

一方通行「別にそォいうわけじゃねェ。ただオマエが着なさそうォなヤツを選ンだ。色に関しては俺の好みだがよォ」

結標「なるほどね。たしかに私はそういうの着ないわね」

一方通行「ま、新規開拓すりゃイイだろっつゥ素人の浅知恵だ。クソみてェな思考で悪かったな」

結標「別に私だってプロのコーディネーターとかじゃないんだし、そこまで卑下しなくてもいいわよ」

一方通行「そォかよ」

結標「じゃ、ちょっと試着してみるわね」

一方通行「ああ、インナーにその着てるパーカーか適当な白系統のTシャツか何か合わせたらイイと思う。あくまで個人的な意見だが」

結標「そう。ありがとね、参考にするわ」ニコッ

一方通行「……チッ」


〜一〇分後〜


結標「――おまたせ。どう?」

一方通行「……まァ、イインじゃねェの?」

結標「相変わらずの適当な返事ね。わかってたけど」

一方通行「だったら最初から聞くなよ」

結標「でも貴方が選んでくれた服なんだから、貴方が最後まできちんと責任を持ってべた褒めするべきだと思うのよね」

一方通行「褒められるの確定かよ」

結標「まあ私から見てもいいなって思っているし」

一方通行「随分な自画自賛じゃねェか。ナルシストな淡希ちゃンよォ?」

結標「そんなこと言うってことはもしかして貴方、本当は似合っていないって思っているのかしら?」

一方通行「別にそォいうわけじゃねェよ」

結標「それならナルシストではないわね。よかったよかった」

一方通行「うっとォしいヤツ」

結標「……うん。それじゃあこれ買うとするわ。せっかく貴方が選んでくれた服だしね♪」

一方通行「好きにしろ」

結標「じゃあこの調子でドンドン服選んでいこーう!」

一方通行「ハァ? まだやンのかよ?」

結標「当たり前よ。女の子の買い物が服一着選んだくらいで終わるわけないじゃない」

一方通行「クソッタレが……!」


―――
――



471 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 22:58:55.29 ID:TJ4tDQ6ko


同日 15:00

-第七学区・とあるショッピングモール・某カフェ-



ワイワイガヤガヤ



結標「いやー、いっぱい買った買った。楽しかったわー、今までで一番充実したショッピングだったかもしれないわね」

一方通行「今までで一番疲れたショッピングだったな」

結標「だらしないわねー。そんなのじゃショッピング後半戦を戦っていけないわよ?」

一方通行「まだ何か買うつもりなのかよ? どンだけモノ買う気だよオマエ」

結標「別にいいじゃない。買ったものは全部自宅に送ってもらっているから、貴方に荷物持ちとかさせているわけじゃないんだし」

一方通行「ソイツは賢明な判断だな。俺にそンなこと頼みやがった時点でオマエを張り倒すところだったぜェ?」

結標「貴方は普段片手しか使えないからそんなに物持てないし、何なら筋力もないから重い物とか持てないわけだから、荷物持ちなんて頼んでもしょうがないわよ」

一方通行「やっぱりオマエ張り倒してイイか?」カチッ

結標「冗談よ冗談。やだなー」アハハ

一方通行「チッ」カチッ

結標「まあショッピング後半戦って言っても、適当に色々な店見て回るだけだから、なにかを買うっていうつもりはないわ。いわゆるウィンドウショッピングってヤツね」

一方通行「何だそりゃ。買わねェのに店見て回るなンて冷やかしかよ?」

結標「冷やかしとは違うとは思うけど。別にお店には迷惑はかけるつもりはないし、欲しい物があったら買うし」

一方通行「結局買うのかよ」

結標「欲しい物があったらの話よ?」

一方通行「そンなあやふやな意識で店回って楽しいのか?」

結標「楽しいわよ? へーこの店こんなの置いているんだー、みたいな発見とかあって」

一方通行「へー」

結標「発見とかなくてもこう、いろいろ商品が並んでいるのを見るとなんか高揚感があるというか」

一方通行「コーヒーうめェ」ズズズ

結標「……話聞いてる?」

一方通行「ああ。そりゃもちろン」

結標「そう。ならいいんだけど。さっきの話の続きだけど――」

一方通行「あっ、店員さン。コーヒーおかわり」

結標「ほんとに聞いてる!?」


472 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:01:09.64 ID:TJ4tDQ6ko


結標「……そうだ。貴方に一つ言っておきたいことがあったんだった」

一方通行「あン? ウィンドウショッピングのアレコレか?」

結標「それはもういいわ」

一方通行「あっそ。で、何だよ?」

結標「観覧車の中で記憶喪失の原因は貴方ってことは、すでに知っていたっていう話したじゃない?」

一方通行「ああ。木原のクソに教えてもらったっつゥヤツだろ?」

結標「そう。でもね、実はそれは違うのよね」

一方通行「どォいうことだ?」

結標「その話をされるはるか前から知っていた、いや、知っていたという表現は違うかしらね」


結標「記憶喪失の原因は貴方じゃないかなって、薄々思っていたのよ。ずっと」


一方通行「……ソイツは素敵で愉快なイカれた話だなァオイ」

結標「まあ、あくまでそうじゃないかなっていう推測でしかなかったから、確信を得たのはその日の出来事でだから知ったのは最近ってことになるのかな?」

一方通行「ほォ。いつからそンな推測が出てきていたのか、是非とも知りたいモンだ」

結標「……最初から」

一方通行「は? ナニ言ってンだオマエ」

結標「最初からよ。正確に言うなら初めて会った日から」

一方通行「……どォいうことだ?」

結標「だって貴方、私が来た初日の夕食のときに言いかけてたじゃない。その鼻を折ったのは正真正銘自分だって」

一方通行「……たしかに。そォいやそォだったな」

結標「だから何となーくコイツが記憶喪失の原因なのかな、って思ってたわけよ。表には出さなかったけど」

一方通行「そォか……いや、おかしいだろ?」

結標「何が?」

一方通行「その話が本当ならよォ、オマエは今まで記憶を奪った張本人かもしれねェヤツと生活を共にしてたっつゥことになるンだが」

結標「たしかにそうね」

一方通行「そンなクソみてェな状況で、最終的に俺のことが好きだとか抜かしやがるよォになるなンて、どォ考えたっておかしいだろ?」

結標「おかしくはないわよ」

一方通行「ハァ?」

結標「なぜなら貴方が、自分から記憶を、さらに言うなら命を奪うためにチカラを振るったりするような、残虐非道な人間じゃないってわかったからよ」

一方通行「…………」

結標「面倒臭がり屋でぶっきらぼうだけど、意外と面倒見は良くて、変なところで一生懸命で」

結標「居候生活始まって間もないくらいのときから、そんな人じゃないかってなんとなく思ってた気がするわ」

一方通行「ケッ、めでてェ頭してンなオマエ。内心ナニ思っているのかわかったモンじゃねェっつゥのに」

結標「でも間違ってはなかったでしょ?」

一方通行「チッ、……で、オマエは一体何が言いたいンだ?」

結標「何って?」


473 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:02:00.69 ID:TJ4tDQ6ko


一方通行「いきなりこンなクソみてェな話始めやがって。何か言いてェことがあンだろ? 目的やら理由やら」

結標「んー……とくにないけど」

一方通行「オチなしかよ。救いよォのねェ馬鹿だな」

結標「馬鹿にして……いいわよ、オチね? 話にオチをつければいいのね? うーん……あっ」

一方通行「今から考えたところで大したオチは付かねェよ。大体、こォいうのは話し始める前からかん――」




結標「そんな一方通行だったから、私は貴方のことが好きになったのよ」




一方通行「が……」

結標「つまり、これが言いたかったわけよ。たしかあのとき言ってなかったわよね? 好きになった理由」ニコッ

一方通行「…………」

結標「あっ、別に会ったばかりの貴方を好きになったわけじゃないわよ? 好きになったのはもっとあとの話だから。そんな軽い女じゃないわよ私は!」

一方通行「……はァ、馬鹿馬鹿しィ。あまりの馬鹿馬鹿しさに何だか頭痛くなってきた」

結標「そんな頭抱えるほど!?」


ウェイトレス「失礼します。お待たせいたしましたー。コーヒーのおかわりになります」コトッ


一方通行「どォも」


ウェイトレス「そしてこちらが」



ゴトッ!



一方通行「あン?」

結標「えっ?」




ウェイトレス「カップル限定ラヴラヴミックスジュースでございまーす!」




474 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:03:19.43 ID:TJ4tDQ6ko


一方通行「……ンだこりゃ?」

結標「……こ、これは漫画とかでよく見る一つのグラスに二本のストローがハート型に交差して刺さってるアレね」

一方通行「懇切丁寧な説明アリガトウ。オマエこンなモン頼みやがったのかよ? どンだけ舞い上がってンだよクソ野郎が」

結標「ち、違うわよ! さすがの私でもこんな……は、恥ずかしい代物頼まないわよ!」

一方通行「オマエじゃなかったら誰が頼むってンだよ。もしかしてアレかァ? 無理やり変なモン押し付けて高けェ代金ふンだくってやろォっつゥ、ボッタクリ的なアレかァ?」

ウェイトレス「……え、えーと」

一方通行「吹っかける相手ェ間違えたなァ? あンま調子乗ってっと痛い目にあってもら――」


ゴッ!


一方通行「うがっ!?」

結標「店員さんにケンカ吹っかけんなっ!」

ウェイトレス「ひっ」ビクッ

一方通行「何しやがるッ!?」

結標「勝手に詐欺だと決めつけちゃダメでしょ? えっと、店員さん? これってどういう経緯でここに持ってこられたんですか?」

ウェイトレス「え、えっと、その……」

一方通行「何をそンな言いよどンでンだァ? やっぱ何かやましいことでもあンじゃねェのか?」ギロッ

結標「そんなすぐに睨まない!」

一方通行「チッ」

ウェイトレス「……その、これは内緒なんですけど」

結標「内緒?」

ウェイトレス「これは、あちらのお客様からのサプライズのプレゼントなんです。お客様には言わないでくれとは言われているのですが」

一方通行「あちらのお客様だァ?」チラッ



土御門「ニヤニヤ」ニヤニヤ

青ピ「ヤニヤニ」ニヤニヤ

上条「わたくしめは無関係ですよー」スヒュー



一方通行「…………」ピキッ

結標「あら、上条君たちじゃない。同じ店に来てたのねー」

一方通行「…………」カチッ

結標「あっ」


シュバッ!!



<ぎにゃあああああっ!! <目の位置へ的確にストローがァ!? <何で俺まで不幸だあー!!



ウェイトレス「おっ、お客様! 店内で物を投げるのは他のお客様の迷惑になりますのでおやめください!」



475 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:04:06.43 ID:TJ4tDQ6ko


青ピ「いやー、二人っきりでお茶しとるの見つけたから、ちょっとボクらぁの気持ちをサプライズしただけやで。ご祝儀みたいなもんや」

一方通行「ありがた迷惑なンだよ。ジュースの方を投げられなかっただけ感謝しろォ」

土御門「ところで二人はデートかにゃー? 姉さん、いつも遊んでいるときよりオシャレしてるし」

結標「あっ、わかる? さすが土御門君ね。コイツなんてそういうの全然気が付かないのよ?」

一方通行「ハァ? 俺だっていつもと格好が違うなァ、くれェのこと気付いてるっつゥの」

結標「だったらそれを口にしなさいよ。言葉にしないと女の子は喜ばないのよ?」

一方通行「ヘイヘイ。で、ソッチの三下トリオはこンなところで何やってンだ?」

上条「別に何もしてねえよ。暇だからショッピングモール適当にぶらぶらしてただけだ」

一方通行「悲しい人生だな」

上条「この野郎ッ!! 自分だけ勝ち組になったからって!! あークソ羨ましいィ!!」

青ピ「お前が言うなって言いたいところやけど、アクセラちゃんに関しては同感だから今日は許す!!」

結標「二人とももうちょっと声の音量下げたほうがいいわよ? ウェイトレスさんこっち見てるわ」

上条「あ、悪い」

一方通行「くっだらねェ」

青ピ「それで二人とも、そのラヴラヴジュース飲まへんのか?」

一方通行「飲むわけねェだろ」

結標「さすがにこれは、ね……」

青ピ「そら残念やなぁ。飲んどる姿写真に収めて、ボクの思い出アルバムに保存しておこう思っとったのに」つスマホ

一方通行「そのスマホへし折るぞオマエ」

土御門「でもー、恋人ならこれくらいのこと普通にやると思うけどにゃー」ニヤリ

結標「そ、そうなの?」

土御門「舞夏とやれって言われたら喜んでやってやるぜい」

上条「お前ら兄妹を普通の基準にしていいのかは果てしなく微妙だけどな」

青ピ「はいはーい! ボクもやったことあるでー! あれはカナちゃんとの初デートの日のことやった……」

一方通行「どォせゲームの話だろォが」

青ピ「なんやと!? 何決めつけてくれとんねん! キミはボクの昔のことなんて知らへんやろ!?」

一方通行「お、おォ、悪りィ」

青ピ「まあたしかに『さー☆すけ』っていうエロゲーのキャラの初デートイベントの話やったんやけど」

一方通行「俺の謝罪を返せコラ」


476 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:04:48.16 ID:TJ4tDQ6ko


結標「……えっと、一方通行?」

一方通行「あン?」

結標「こ、これ、やっぱり私たちで飲んだほうがいいと思うんだけど」つカップル限定ラヴラヴミックスジュース

一方通行「ッ!? いきなりどォした?」

結標「だって土御門君が『これを恥ずかしくて飲めないが許されるのは小学生カップルまでだよねー』って言ってたから……」

一方通行「土御門ォ!!」

土御門「にゃっははっー、オレは二人の恋路を応援しているだけだぜーい」

一方通行「どこが応援だ! おちょくって遊ンでるだけじゃねェか!」

結標「あ、あとこれが飲めないカップルは一ヶ月以上続かないって土御門君が……」

一方通行「そンな露骨なガセ情報に踊らせれてンじゃねェよ! それが本当だったら世界中破局カップルだらけだろォが!」

結標「あっ、そっか」

青ピ「でもこういう困難を乗り越えることにより、二人の絆が強まったり強まらなかったりするんやないか?」

一方通行「オマエは黙ってろよクソ髪ピアスがァ!」

上条「どうでもいいけどこれ、早く飲まないとぬるくなっちまうぞ? ぬるいミックスジュースなんて全然おいしくねえからな」

一方通行「そォ思うならテメェで飲ンでろ三下ァ!」

上条「いや、これは二人へのプレゼントなんだから二人が飲まないと意味ないだろ?」

一方通行「それはプレゼントじゃなくて嫌がらせって言うンだぜェ?」

青ピ「そんなことより面白恥ずかしラヴラヴジュース撮影会はまだですかー?」

一方通行「そンなにジュースの写真撮りてェなら勝手にグラスだけ撮ってろ!」


477 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:05:51.19 ID:TJ4tDQ6ko


一方通行「ぜェ、ぜェ、つゥか何で俺はこンなに疲れてンだ? ここに休憩しに来たンじゃなかったか?」

結標「大丈夫?」

土御門「いやー見事な連続ツッコミだったにゃー」

青ピ「こっちもボケ甲斐があるってもんやで」

上条「俺は別にボケてねえぞ?」

一方通行「うるせェよオマエら。てか、もォ消えろようっとォしい」

上条「……そうだな。あんま二人の邪魔しちゃ悪いし」

青ピ「二人にはぎょーさん楽しませてもろうたし満足やで」

土御門「外野はこれにて退散だにゃー」

結標「あ、うん。バイバイ」

一方通行「二度と顔見せンなクソ野郎ども」

青ピ「……あっ、そうだ! 二人に一つだけ聞きたいことがあったんやった!」

一方通行「あン?」

結標「何かしら?」




青ピ「エロいことはもうやっへぶううぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」



ドゴォッ、ズザザザザザザザザッ!!



一方通行「人の女の前で、堂々とセクハラ発言してンじゃねェぞ脳みそチンカス野郎が」カチッ


上条「うわっ、青髪ピアスがノーバウンドで二〇メートルくらい吹っ飛んでいった!?」

土御門「床を滑りながら吹っ飛ぶのってノーバウンドって言っていいのかにゃー?」

結標「わ、私たちにはそういうのはまだ早いっていうか……」テレッ

一方通行「ナニ普通に答えてンだオマエ」



ウェイトレス「お客様!! 他のお客様のご迷惑になることは!!」



―――
――



478 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:06:55.59 ID:TJ4tDQ6ko


カフェでの休憩?を終えた二人はそのあといろいろな店を回った。


-第七学区・とあるショッピングモール・某ペットショップ-



<キャン!! キャン!! キャン!! <にゃー <ウホッ! ウホッ!



一方通行「何でペットショップなンかに来てンだ? ウチのマンションペット禁止じゃなかったか?」

結標「別にいいじゃない。こういうの見るだけでも楽しいわよ?」

一方通行「ギャーギャーうるせェだけだろ」

結標「まあ、それはしょうがないわよ。あっ、見て一方通行!」

一方通行「あァ?」

結標「ウサギよウサギ!」



ウサギ『…………』ガサガサ



一方通行「……ああ。それがどォかしたか?」

結標「貴方にそっくりじゃない?」

一方通行「どこがだよ。その目ェちゃンと見えてンのか?」

結標「だって白いし、目が赤いし、えっと……似てるでしょ?」

一方通行「それだけかよ。それは俺に対しても失礼だし、このウサギに対しても失礼に当たるだろ」

結標「そうよね。貴方はこんなに可愛くないしねー」

一方通行「体中の関節へし折りまくってそこのケージの中に放り込ンでやろォか?」



479 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:07:58.22 ID:TJ4tDQ6ko


-第七学区・とあるショッピングモール・某ゲームショップ-


結標「円周ちゃんが学園都市クエストクリアしてくれたから、そろそろ新しいの欲しいなとは思ってたのよねー」

一方通行「学園都市クエストってアレか? 俺が無許可でラスボスとして出演してるクソゲー」

結標「そうそう。うーん、どういうゲーム買おうか。どうせならみんなでできるパーティーゲームとかがいいかしら?」

一方通行「好きなの買えよ。どォせ俺はやらねェ」

結標「なんでよ? やりましょうよきっと楽しいわよ?」

一方通行「家にいるときくれェゆっくり寝させろ」

結標「またそんなこと言って……ん? あれは」

一方通行「どォかしたか?」

結標「学園都市クエストの新作が出てるわ。学園都市クエストU」

一方通行「そンなモンが出るくらい人気あったのかよ」

結標「浜面君が当時一番流行ってるゲームって言ってたから人気はあったんじゃないかしら?」

一方通行「誰だよ浜面って」

結標「この前の焼き芋大会で一緒だったフレンダさんっていたじゃない? あの人の部下、に当たる人だったかしら?」

一方通行「フレンダだと?」

結標「ほら、雪合戦のときにも居たわよ。あっ、でもそのときは海原って人が変装してたんだっけ?」

一方通行「……まァイイ。で、その浜面クンとそのゲームに何の関連性があるってンだよ?」

結標「あのゲームを買ったときにゲーム選びを手伝ってくれたのが浜面君だったのよ。私目線で言うなら結構長い知り合いってことになるわね」

一方通行「そォかよ……」

結標「どうかした?」

一方通行「……いや」

結標「? ま、とにかく学園都市クエストUが出てるならこれ買ってもいいかもね。何かバージョンアップしてるのかしら?」

一方通行「勝手にしろ。俺には関係ねェからな」

結標「なになにー? 『学園都市の頂点に君臨した新たな最強の超能力者(レベル5)、その名も『未現物質(ダークマター)』をキミは倒せるか!?』ですって」

一方通行「あァン!? あのゴミ野郎が最強のレベル5だとォ!? ちゃンと原作読めやクソゲーム会社がッ!!」

結標「原作ってなに!?」


480 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:09:29.20 ID:TJ4tDQ6ko


-第七学区・とあるショッピングモール・某カジュアルショップ-


結標「……あっ、見て一方通行」

一方通行「今度は何だ?」

結標「あのブランドって貴方がいつも着てるTシャツのところじゃない?」

一方通行「……本当だな。こンなところに店舗があったンだな」

結標「あったんだな、って貴方はいつもどこで服買ってるのよ」

一方通行「面倒臭せェからネットで買ってる」

結標「ああ、ぽいわね。そうだ、せっかくだし見ていきましょうよ?」

一方通行「俺は別に服買おうなンて思ってねェぞ?」

結標「別に見るだけでもいいじゃない。もしかしたら欲しい物があるかもしれないわよ?」

一方通行「ヘイヘイ」


店員「しゃっせー!」


結標「うおおっ、ほんとに貴方がよく着てる感じの服がいっぱいある!」

一方通行「そりゃそォだろ」

結標「貴方に囲まれているみたいで何か気持ち悪いわね……」

一方通行「自分から店に入ってナニ抜かしンだこのアマは?」

結標「冗談冗談。へー、このブランドってレディースもあるのね」

一方通行「ああ、みてェだな」

結標「…………」

一方通行「?」


結標(こ、これを買えばペアルックなんてことができるのでは……? いや、さすがにそれは恥ずいか……)

一方通行(何かまた妙なことを考えてンなコイツ。面倒臭せェ)


―――
――



481 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:10:30.56 ID:TJ4tDQ6ko


同日 17:30

-第七学区・風紀委員活動第一七七支部-



ワイワイガヤガヤ



佐天「――ってことがあったんですよー!」

初春「もう、またまた佐天さんったら」

美琴「でもそれってあれじゃ――」


固法「ちょっとあなたたち! ここは溜まり場じゃないって何回も言っているでしょ?」


佐天「あはは、すみません。ここ居心地よくて」

黒子「まったく。佐天はともかくお姉様まで意味もなく居座るだなんて。もしかしてまた何か事件があったら首を突っ込もうなんて思っていませんよね?」

美琴「えっ、いや、そんなことはないわよ。佐天さんと同じく居心地よくてさー」

黒子「本当ですの?」

固法「とにかく、佐天さんと御坂さんはそろそろ完全下校時刻近いのだから帰りなさい。御坂さんは寮の門限とかあるでしょ?」

佐天「はーい!」

美琴「黒子たちはどうするのよ?」

黒子「わたくしたちは残った雑務を終えてから帰りますので」

佐天「大変だねー二人とも」

初春「いやー、まあお仕事ですのでしょうがないですよ」

黒子「貴女に関しては二人にかまけて仕事に手をつけてなかったからでしょう?」

初春「……返す言葉もございません」

美琴「黒子。遅くなりそうなら門限延長出しとこうか?」

黒子「いえ。すでに届け出はしていますわ。お気遣いありがとうございます」

美琴「そう。じゃあ先に帰るわね」

佐天「さよならー! またきまーす!」


ガチャ


固法「だからここは溜まり場じゃ……もう!」

初春「さーて、お仕事頑張るぞー!」フンス

黒子「まったく……」



ピピピピッ! ピピピピッ!



482 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:11:46.57 ID:TJ4tDQ6ko


固法「はい、こちら風紀委員活動第一七七支部です」


初春「うーん、七時までには終わりますかねー? 今日見たいテレビ番組があるんですけど。まあ、終わってなくてもここで観ればいっか」

黒子「そういうものがあるのなら、何で真面目に仕事に手を付けなかったのですの?」

初春「いやー、せっかく来てくれているんですから、対応しないと悪いですし」

黒子「はぁ、暇なときくらいはいいですが、こういう繁忙日には来ないように、わたくしのほうから一度二人には言ったほうが良さそうですわね」


固法「――はい、はい、わかりました。対応いたします。では」ピッ


初春「何かあったんですか? 固法先輩」

固法「ええ。上からウチへ直々にオーダーよ」

黒子「上から直々? そんなこと今まで聞いたことないですわね」

初春「そうですね」

固法「ある『荷物』を奪った強盗犯が第七学区内を逃走しているらしいわ。それの確保が上からの依頼よ」

初春「えっ? それって普通警備員(アンチスキル)の領分じゃないですか? 何でそれがウチに?」

黒子「アンチスキルへ知られてはいけない『何か』を奪われてしまったか。それか一七七支部だけへ通達が来たところからして、少数で解決しないといけないような内密な事件か」

黒子「いずれにしろ、今回の件はちょっとニオイますわね」

固法「そうね。とにかく動きましょうか。初春さん。上から一七七支部のアドレスへ概要データが入っているはずだから、それをもとに逃走者の足取りを追ってちょうだい」

初春「わかりました」

固法「私と白井さんでターゲットの確保へ向かうわ。装備の携帯の許可は下りているから忘れずに持っていってね」

黒子「了解ですの」

固法「しかし、今ここにいるのがこの三人っていうのが痛いわね。初春さん、いちおう非番の他のメンバーにも支援の要請を出しておいて」

初春「はい!」


黒子(……はぁ。門限の延長時間、もうちょっと長くとっておけばよかったかもしれないですわね)


―――
――



483 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:13:23.03 ID:TJ4tDQ6ko


同日 18:00

-第七学区・とある公園-


結標「はあー、疲れた!」

一方通行「俺はオマエの三倍は疲れた」

結標「なによそれ?」

一方通行「こンなベンチでも今なら余裕で寝られる自信がある」

結標「……寝ないでよ? 家まで私が運ばなきゃいけなくなるじゃない」

一方通行「チカラ使えば余裕だろ?」

結標「能力使うんだったら、まず貴方を一メートルくらい上から落下させて叩き起こすために使うわよ」

一方通行「チッ」

結標「しかし今日は楽しかったわねー」

一方通行「そォかよ。ソイツはよかったな」

結標「貴方は楽しくなかった?」

一方通行「退屈はしなかったな」

結標「つまり楽しかったってことよね? よかったよかった」

一方通行「退屈してねェってことしか言ってねェぞ俺ァ」

結標「同じよ。私にとってはね」

一方通行「…………」

結標「私今日あったことは絶対に忘れないと思うわ」

一方通行「随分な自信だな。ただ映画行ってメシ食って買い物行っただけだろォに」

結標「ただじゃないわよ」

一方通行「あン?」

結標「貴方と映画に行って、貴方とご飯を食べて、貴方と買い物をした」


結標「それだけで私にとってはきらびやかな思い出よ?」


一方通行「……ケッ、その程度できらびやかなンて安っぽいヤツだな。金メッキか?」

結標「嫌な言い方するわね。ふん、別にいいわよ金メッキでも銀メッキでも」


484 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:13:52.63 ID:TJ4tDQ6ko


結標「私って記憶喪失でしょ?」

一方通行「……ああ」

結標「だから、私にとって新しい思い出ができるってとても重要なことなのよ」

一方通行「…………」

結標「打ち止めちゃんたちとの思い出、クラスのみんなとの思い出、貴方との思い出、そして」


結標「これから作っていく思い出、全部私にとっては大切なものよ」


一方通行「……ふっ」

結標「ちょっと、このタイミングで鼻で笑うのは流石にひどいと思うんですけど?」

一方通行「いや、悪りィ。アホらしくてつい笑っちまった」

結標「どこがアホらしいって言うつもりなのかしら?」

一方通行「だってよォ、当たり前のこと並べていつまでもグダグダ語ってるヤツの、どこがアホじゃねェってンだ?」

結標「一方通行……」

一方通行「ンだァ? その間抜け面はァ? 憎まれ口叩かれてンだからもっと怒れよ」

結標「ふふっ、怒って欲しいならもっとちゃんと悪口言ったら?」

一方通行「チッ、うっとォしいヤツだ」

結標「さーて、たくさん思い出作るぞー! 行きたい場所はいっぱいあるのよ? 水族館や動物園や美術館や自然公園へピクニックや」

一方通行「昨日言ってた他のデートプランじゃねェか」

結標「夏になれば海も行きたいし山も行きたいし、一緒に花火大会にも行きたいし」

結標「秋になれば大覇星祭ってやつも楽しみだし、ハロウィンパーティーってのもやってみたいし」

結標「冬になれば一端覧祭ってのがあるみたいだし、クリスマスにデートもしたいし……あっ、クリスマスはみんなでまた集まってパーティーもいいわねどうしましょ?」

一方通行「……はァ、次から次へと変な予定入れやがって。面倒臭せェ」

結標「ま、いろいろ言ったけど予定なんてどうでもいいわよ」

一方通行「ハァ? 何言ってンだオマエ」


結標「だって、貴方が一緒にいればどんなことがあってもいい思い出になると思うわ。きっと、ね」ニコッ


一方通行「……そォかよ」


485 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:14:28.09 ID:TJ4tDQ6ko


結標「……って、お姉さんまた恥ずかしいこと言っちゃってた感じ? あはは、ごめんね」

一方通行「オマエの奇天烈な発言なンざいまに始まったことじゃねェ。気にすンな」

結標「あははは、ちょ、ちょっと喋りすぎて喉乾いちゃった。飲み物買ってくるけど貴方もいる?」

一方通行「ああ。缶コーヒーブラック。銘柄は今俺がハマってるヤツ」

結標「それ言われても普通の人はわからないわよ? まあ、私はわかるからいいけど」

一方通行「オマエにしか言わねェよ、そンな雑な要求」

結標「私のことを信頼してくれているって解釈すればいいってことよね?」

一方通行「勝手にしろ」

結標「ふふっ、じゃあちょっと行ってくるわね!」タッタッタ

一方通行「おォ」


一方通行「…………」



『今は恋人っていう関係になったのだから名前で呼んでくれるってことよね?』



一方通行「名前、か」


一方通行(俺には『―― ―――』っつゥ、いかにも日本人らしくて、大して珍しくもない本名がある)

一方通行(この名前を知っているヤツは腐る程いるだろォが、その名前を使うヤツは皆無だ)

一方通行(だから俺もあえてその名前を名乗ることなく、通り名の『一方通行(アクセラレータ)』を使ってきた)

一方通行(……だが)



一方通行「――アイツになら、俺の名前を教えてやってもイイのかもしれねェな」



―――
――



486 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:15:04.92 ID:TJ4tDQ6ko


同日 18:15

-第七学区・とある自販機前-


結標「……えっと、たしかこの銘柄だったわよね」ピッ



ガタン!



結標「さて、あんまり待たせてもいけないし、急ぎますか」

老婆「あのー」

結標「はい?」

老婆「ちょっと申し訳ないんですけど、この荷物を運ぶのを手伝ってほしいのですが」

結標「うわっ、大きなキャリーケースですね」

老婆「あそこのホテルまででいいですが。頼まれてはもらえませんかねー?」

結標(うーん、ホテルまで結構距離あるなー。能力使ってもいいけど、下手におばあちゃんをテレポートさせて怖がらせてもあれだしなー)

老婆「お忙しいですかね?」

結標「……うん、大丈夫ですよ。お手伝いしますよ!」

老婆「そうですか。ありがとうございます」

結標(ごめんね一方通行。もうちょっとだけ待っててちょうだいね)

老婆「それでは行きますか」ヨボヨボ

結標「……あれ? おばあちゃん、そっちはホテルまでの道じゃないですよ?」

老婆「こっちから行ったほうが信号とかの有無で早いんですよ」

結標「なるほど、そうなんですね。じゃ、このケース持ちますねー、ってあれ?」


結標(思ったより軽いわね? いや、重くないわけじゃないけどまるで――)


結標「おばあちゃん?」

老婆「なんでしょうか?」

結標「ちなみになんですけど、これの中身って何が入っているんですか? 物によっては丁寧に運ばないとですよね?」

老婆「ああ、大したものは入ってないので雑に運んでもらって結構です」

結標「そうですか。わかりました」


結標(……あっ、結局中身は何なのか聞けてない。もう一回聞くのはさすがになー、まあいっか)


―――
――



487 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:16:18.07 ID:TJ4tDQ6ko


同日 18:20

-第七学区・街頭-


美琴「――やっば、いろいろ寄り道してたらもうこんな時間じゃない!」タッタッタ

美琴「ま、まあ、この時間ならギリギリ門限は間に合うか」タッタッタ

美琴「……ん? あれは?」タッタッタ


男「…………ううっ」


美琴「ちょ、ちょっとアンタ大丈夫!? そんなボロボロの体で何があったのよ?」

男「ぐっ、あ、あんたその制服、常盤台の生徒さんかい?」

美琴「そ、そうだけど」

男「ってことは高位の能力者の人だね。……がっ」ヨロッ

美琴「ちょ、ちょっと! ど、どうしよう? とりあえず救急車呼んだほうがいいわよね?」オロオロ

男「あ、あんたに頼みがあるんだ」

美琴「頼み? ああ、救急車なら今から呼ぶから大丈夫よ?」ピッピッ

男「そうじゃないんだ」

美琴「えっ?」

男「実は、この怪我はある高位の能力者にやられたやつなんだ」

美琴「能力者に……?」

美琴(そういえば能力者による無能力者狩りっていうのがあるって聞いたことある。もしかしてこの人はそれに……?)

男「そいつは今、あそこの路地裏にいる。今でも俺の仲間が痛い目にあっているかもしれない」

美琴「…………」

男「あんた高位の能力者さんなんだろ? 仲間を助けてはもらえないだろうか?」

美琴「……わかったわ。あそこの路地裏ね? ちょっと待ってなさい」タッタッタ

男「すまない……たのむ……」


美琴(強力なチカラを使って無関係な人を傷つけるなんて許せない……! ごめんね黒子。アンタの説教はあとでいくらでも聞いてやるから……)


美琴「絶対私が止めてみせる!」



―――
――



488 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:17:15.07 ID:TJ4tDQ6ko


同日 18:25

-第七学区・路地裏-



シュン!



黒子「……初春? 目的のポイントに到達しました。ターゲットの動きは?」

初春『衛生カメラの映像から見ると、あと一分後にそちらへ接触すると思われます』

黒子「了解」

固法『こちら固法。ポイントに到達したわ』

初春『先輩もそのまま待機でお願いします。白井さんと接触して逃亡に成功した場合、そちらへ向かう可能性が高いため待ち伏せを』

黒子「大丈夫です。先輩のお手間は取らせませんの。絶対にここで拘束してみせますわ」

固法『頼もしいわね。じゃあ、私はこのまま待機しとくわ』

初春『本当はターゲット側の入り口にも人を配置できれば包囲できたんですけどね』

固法『しょうがないわ。今向かってきている子たちはいるけど、その子たちを待ってチャンスを逃すわけにいかないもの』

初春『ターゲット接触まで三〇秒……』

黒子「…………」ゴクリ


黒子(装備に不備はなし。わたくしの身体も異常はなし、むしろ絶好調ですの)


黒子「絶対に――」


初春『ターゲット接触まであと二〇……なっ!?』


黒子「!? どうかしましたか初春!?」

初春『ターゲットが急に進路を逆走しました!! この速度は……もしかして気付かれたっ!?』

黒子「くっ、もしや透視能力や感知能力を持った能力者ですの!?」

初春『顔さえ映ればこちらで能力を検索することができたんですが……すみません、私のミスです』

黒子「問題ないですの初春」

初春『白井さん!?』

黒子「こちらの存在を確認できたということはそれに関する能力者。しかし裏を返せば逃亡する速度を上げるチカラは持っていないということですの」

初春『し、白井さん。まさか……』

黒子「わたくしが直接ヤツを追いますの! 貴女は引き続きターゲットの監視・予測を! 固法先輩はそれに従って先回りをお願いしますの!」ダッ

固法『わかったわ!』


黒子(さて、鬼ごっこの時間ですの。こう見えて鬼ごっこは得意ですのよ? わたくしから逃げられると思わないことですね。強盗犯さん!)



シュン!



―――
――



489 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:17:50.39 ID:TJ4tDQ6ko


同日 18:30

-第七学区・路地裏-


結標「…………はぁ」テクテク


結標(路地裏ってあんまり来たくないのよね。一方通行が危ないから行かないほうがいいって言ってたし)

結標(というかこの道本当に近道なのかしら? 目的地のホテルからだいぶ遠ざかっているように見えるのだけど)

結標(うーん、あんまり言いたくはないけどおばあちゃんの言ったことだしなぁ。なんか勘違いしているかもしれないわよね)

結標(……一応、もう一回聞いてみようかしら?)


結標「……あのー、おばあちゃん?」



シーン



結標「……あれ? 誰も居ない」

結標「…………」キョロキョロ

結標「おばあちゃん!? ちょっとおばあちゃん!? どこにいるの!? おばあちゃん!!」

結標「……うーん、困ったわね。どこかではぐれちゃったのかしら?」

結標「でもこの開けたところに来るまでこの通路は一本道だったわよね?」

結標「…………」

結標「まあ、目的地はわかっているし、とにかくあのホテルへこれを届けに行きましょうか」

結標「よし、じゃあテレポートで――」



美琴「ちょっとアンタ!!」



結標「ん?」


490 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:19:33.46 ID:TJ4tDQ6ko


美琴「アンタね!? ここらへんで無能力者の人たちを襲っているのうりょ――ってあ、アンタは……!」


結標「……えっ? み、ミサカ、さん?」


美琴「アンタは結標淡希!? 何でこんなところにアンタがいるのよ!?」


結標(あれ? あの顔に常盤台の制服だからミサカさん、よね? でもなんだかちょっと雰囲気が違う気が――)ズキッ

結標(な、なに? 今の頭痛は……?)


美琴「……そういうことなのね」

結標「?」

美琴「アンタ、私に『残骸(レムナント)』を件を妨害されて奪取を失敗したことを未だにムカついているってことよね?」

結標「れ、むなんと……?」ズキッ

美琴「それでアンタは無能力者狩りなんてくだらないことして、関係のない他人を傷付けて鬱憤を晴らしていたってわけね!?」

結標「……ち、ちが、私はそんなこと」ズキッ

美琴「そんなことはもうさせないわ。これ以上誰かを傷付けようなんて思っているのなら、この『御坂美琴』が相手になってやるわよ!!」

結標「み、みさか……みこ、と?」




『私はムカついているわよ私利私欲で! 完璧すぎて馬鹿馬鹿しい後輩と、それを傷つけやがった目の前のクズ女と、何よりこの最悪な状況を作り上げた自分自身に!!』




結標「うっ、ぐっ……!?」ズキンッ

美琴「? ちょ、ちょっとアンタ急にどうしたのよ!? 頭なんて抱えて、それに顔色が――」



シュン!



黒子「風紀委員(ジャッジメント)ですの!! 追いつきましたのよ強盗犯ッ!! 大人しくわたくしに拘束されることを――ってお姉様!?」


美琴「く、黒子!? アンタなんでこんなところに!?」

結標「……く、ろこ?」ズキッ


黒子「お、お姉様こそなんで……って貴女は結標淡希!?」


結標「がっ、あぐっ……!」ズキン


―――
――



491 : ◆ZS3MUpa49nlt [saga]:2021/11/20(土) 23:20:26.91 ID:TJ4tDQ6ko


同日 18:35

-第七学区・とある公園-



一方通行「…………遅せェ」

一方通行「何やってンだアイツ? 自販機なンてここから近いところでも往復五分もかからねェだろ」

一方通行「まさか俺の欲しがってた銘柄だけ売ってないっつゥ上条クン顔負けの不幸が訪れて、どっか別ンとこまで買いに行ってンじゃねェだろォな」

一方通行「…………」


一方通行(……いや、待てよ。アイツがそンなことするか?)

一方通行(売ってなかったら売ってなかったらで別の銘柄買ってきて、ゴメンゴメン売り切れてたわ、って感じにヘラヘラ笑いながらブツ渡してくるに決まっている)

一方通行(何なら売ってなかったらなしで! とか言って自分だけ悠々と飲み物手に入れるっつゥことしてきてもおかしくねェ)


一方通行「…………」

一方通行「ま、イイか」

一方通行「しばらくすりゃ帰ってくンだろ。それまでちょっと仮眠でも――」



ブチッ!



一方通行「あン? 電極のケーブルを束ねてる留め具が壊れやがった」

一方通行「乱暴に使いすぎたか? まァコイツをもらって半年以上経ってるから壊れてもおかしくはねェか」

一方通行「…………」


一方通行「チッ、面倒臭せェ」


―――
――



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