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【ミリマス】矢吹可奈「思いを歌に込めて」
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1 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:17:06.74 ID:VtK7DKrfO
―可奈ちゃんはなんでもできて凄いねえ
小さいころから、ずっとそう言われ続けてきた。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1625015826
2 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:19:00.53 ID:4VJxOnZ+0
―矢吹さん、これもできるなんて凄いわね!
お絵かきや楽器の演奏、上手にできると先生や周りの大人の人はたくさん褒めてくれた。
―可奈ちゃんこれもできるの!?すごーい!
お友達に羨ましがられることもよくあった。
―可奈ちゃんは天才だなあ
3 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:19:26.83 ID:4VJxOnZ+0
それ自体はすごくうれしかった。
だけど……
だけど、その次に言われる言葉はずっと変わらなかった。
4 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:19:52.92 ID:4VJxOnZ+0
――だから矢吹さんは歌以外のことに挑戦してみない?
――可奈ちゃん、歌よりぜったいそっちの方が伸びるって!
――可奈ちゃんはこっちの道に進んだ方が絶対にいいよ!
私の一番好きなこと―歌うことを褒めてくれる人は、誰もいなかった。
5 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:20:22.43 ID:4VJxOnZ+0
〜〜♪〜〜♪〜〜
「別の世界につながる電話?」
「うん、今日友達から聞いたんだけどね―」
学校が終わるといつも通り劇場へ。レッスンまではまだ時間があるからみんなのたまり場になっている控え室で時間をつぶしていた。
学校の宿題をやったり、置いてある雑誌を読んだり、発声練習をしたり……途中で怒られちゃった。
怒られた後くらいにやってきた未来ちゃんと一緒にお話をしていると、その話題になった。
6 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:20:48.33 ID:4VJxOnZ+0
「いつの間にか手元にあって、かけると別の世界の人と電話できるんだって」
「へえ〜。どんな人とつながるんだろう」
もしかしたらお友達になれたり〜なんて。
「馬鹿ね。そんな話あるわけないでしょう」
すると、私たちの向かいで雑誌を読んでいた志保ちゃんが話に割って入ってきた。ちなみにさっき私にうるさい!って怒った張本人だったりする。
7 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:21:36.19 ID:4VJxOnZ+0
「あ、志保いたんだ」
「さっきからいたわよ」
はあ、っと一つため息をついてから志保ちゃんは話をつづけた。
「よくあるオカルトでしょ?作り話よ」
「そんなことないよう!友だちが知り合いが見たって言ってたもん」
「作り話の常套句じゃないのそれ……だいたい、電話ってどんな電話なのよ」
「えっとね……あれ?携帯だっけ、家にかかってくるんだっけ?」
8 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:22:03.50 ID:4VJxOnZ+0
「ほら、所詮噂話なんてその程度よ」
ブーブー文句を言う未来ちゃんをよそに、言いたいことは言い切ったとでもいうように志保ちゃんは意識を雑誌に戻した。
やっぱり作り話なのかなあ。でも本当にあるといいと思うなあ。別の世界ってどんな人が住んでるのかなあ、とか。別の世界の私は何をしているのかなあ、とか。
9 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:22:52.52 ID:4VJxOnZ+0
「可奈、志保、いるか?」
突然、控え室に男の人の声が響いた。プロデューサーさんだ。
「あ!プロデューサーさんだ。お疲れ様です!」
「お疲れ様ですプロデューサーさん。何か用ですか?」
「お、未来もいたのか。ほら、この前二人でゲームイベントの仕事しただろ?評判が良かったって先方から褒められたぞ」
「本当ですか!?やったあ!」
10 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:23:21.06 ID:4VJxOnZ+0
この前、私と志保ちゃんにオファーが来た。新作ゲームのお披露目イベントで、私と志保ちゃんはイベントのMC。
「大成功だったよね!」
「ええ。お客さんも盛り上がってくれてたわ。それにしても、可奈って音ゲー上手だったのね。意外だったわ」
イベントの中で、新作タイトルの一つの音ゲーを私と志保ちゃんでデモプレイさせてもらった。志保ちゃんは何とかクリア、私はなんと満点だった。
11 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:24:06.67 ID:4VJxOnZ+0
「えへへ♪クラリネットやってたからかな?リズム感には自信があるんだ〜♪」
「そういえば歩さんも可奈のリズム感がいいからリズムに合わせて踊りやすかったって言ってたわね」
歩さんと一緒にオファーを受けたときのことかな。私のカスタネットに合わせて歩さんがダンスをしたやつ。
いきなりだったけど歩さんのダンスが凄かったから私も楽しくなっちゃったな〜。
12 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:24:36.50 ID:4VJxOnZ+0
「可奈って結構なんでもできるわよね」
突然志保ちゃんがそんなことを言い出した。未来ちゃんも確かに〜って頷いている。
「え?そうかなあ」
「楽器できるし、運動神経も結構いいよね〜。この前サーカスで綱渡りやってたよね」
「絵も結構上手いのよね、この前のライブで書いてた絵、上手だったわ」
「も、も〜そんなに褒めてもなにもでないよ〜♪えっへへ〜♪」
褒められるのはうれしいけど、ストレートに褒められると恥ずかしくなっちゃうよね。
13 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 10:25:46.34 ID:4VJxOnZ+0
「まあ、歌の方はもうちょっと練習が必要みたいだけど」
「ズコー!……う、歌も少しずつ上達してるもん!」
最近はハトさんも最後まで聞いてるし上達はしてる!たぶん。……たぶん!
「さ、おしゃべりはこれくらいだ。そろそろレッスンの時間だろ?」
プロデューサーさんがパンっと手をたたいた。時計を確認するとレッスンの時間まであと10分もなかった。
「うわあ!もうこんな時間!志保、可奈、早く行こう!」
「あ!ちょっと待って、未来」
未来ちゃんが真っ先にバタバタとレッスンルームへ向かってその後を追うように志保ちゃんも控室を出ていった。
私もそのあとを追って控室を後にした。
14 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:34:09.69 ID:4VJxOnZ+0
〜〜♪〜〜♪〜〜
今日のお仕事はグラビア撮影!プロデューサーさんはこの前の制服のグラビア企画がとっても好評だったから第二弾だって言っていた。
だから今日は、またみんなとお揃いのあの制服に着替えての撮影。前回は給食の時間だったから、今回は放課後の時間だって言ってた。
「じゃあ可奈ちゃん、次の撮影行くよ」
「は〜い!」
放課後だから、部活の風景も撮ってくれるらしい。そういうわけで、次の撮影場所は音楽室。音楽室と言えば、魅裏音の撮影を思い出すなあ。あの時は夜の音楽室で思いっきり歌ったっけ。今回も歌ってるところかな?
15 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:34:57.45 ID:4VJxOnZ+0
「えーっとそれじゃあ可奈ちゃん、好きな楽器持ってくれる?」
「はーい……えーっと、マイクでいいですか?私、マイマイク持ってきてるんです!」
「あー、今日の撮影は吹奏楽部って体だから普通に楽器を持ってほしいかな?」
「ええー!合唱部じゃないんですか!?」
「この前そらさんにマイク持ってる姿取ってもらってるからねえ。それに、ちゃんとした楽器持ってた方が写真映えするし、確か可奈ちゃんクラリネットできたよね?」
「はい、そうですけど……」
「じゃあ丁度よかった!クラリネットもあるし、それでいこう!」
「はーい……」
マイクをしまって、カメラマンさんに言われたとおりクラリネットを手に取って構える。クラリネットもいいけど、やっぱり歌う方がよかったかなあ。でも、たしかにこの前マイクを持ったところは取ってもらってるし。ちょっと複雑かな〜。
16 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:35:23.42 ID:4VJxOnZ+0
「いいよ〜可奈ちゃん。そのまま何か演奏してみて」
「はあ〜い」
そのままクラリネットを口にくわえた。何を吹こうかな?せっかくだから私の歌とかでいいかな?
「〜〜〜〜♪」
「おっ!うまいうまい!そのまま続けて!」
私が演奏している間、カメラマンさんはシャッターを切り続けていた。他のスタッフさんは私の演奏に聞き入ってくれているみたいでちょっと嬉しい。
17 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:35:49.46 ID:4VJxOnZ+0
「うん。いい演奏だったよ!上手だね、可奈ちゃん」
「えへへ。ありがとうございます!」
やっぱり褒められると嬉しいなあ〜気分ウキウキ〜♪
そのあとも、美術室に図書室、いろいろな場所で写真を撮った。
可奈ちゃんほんと、なんでも似合うねとカメラマンさんは褒めてくれて、大満足で帰って行った。
18 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:36:28.19 ID:4VJxOnZ+0
〜〜♪〜〜♪〜〜
「矢吹さん。ちょっといい?」
おっひる〜おっひる〜♪今日の給食なーにっかな〜♪
と言ってウキウキになるほど待ち遠しかった給食の時間も終わたある日のお昼休み、隣のクラスの子に声をかけられた。
「うん。いいよ?」
そういうと私は二人に廊下へと連れていかれた。
「この前のことだけど……」
「あー……」
19 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:49:12.35 ID:4VJxOnZ+0
この前のこと、というのは私に吹奏楽部に入ってほしいということ。この二人は吹奏楽部の子で、一人はこのまえ代替わりした新しい部長さんで、もう一人はクラリネットのパート長さん。以前から私のことをとっても熱心に吹奏楽部に勧誘してくれている。
前に劇場のみんなでマーチングのお仕事をしたときにプロデューサーさんにこのことを自慢したこともあったけど、やっぱり私の答えは決まってるいるから―。
「ごめんね。何回も誘ってくれるのは本当に嬉しいけど……」
やっぱり、アイドルをしていると時間は足りないし、もう私は合唱部に入っているし。……合唱部の方も全然参加できていないけど。
だからいつも通りやんわりと断ろうとした。
20 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:50:17.71 ID:4VJxOnZ+0
「でも、矢吹さんがウチに入ってくれると本当に助かるの」
「この前、テレビで可奈ちゃんたち合奏してたでしょ?とっても上手だったわ」
「え、えへへ♪そうかな……ありがとう、でもやっぱり、今はアイドルで忙しいし……」
「……正直、可奈ちゃんは私よりも上手いと思った」
そう言ったのはパート長の子。
「今まで一生懸命練習して、先輩からこのパートを引き継いで、私もそれなりに上手い自信はあったけど、テレビで見た可奈ちゃんも私に負けないくらい上手だった。きっと真剣にやったら負けちゃうと思う」
いつも以上に真剣な目。その目がまっすぐに私の目を射抜く。
21 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:52:08.43 ID:4VJxOnZ+0
「可奈ちゃん、たいして練習はしてなかったんだよね?」
「え、えっと……本番までに少しは……」
「それだけでできるなら十分才能だよ。可奈ちゃん絶対に才能あるって!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」
「可奈ちゃん、絶対にこっちのほうがいいよ!絶対に歌よりも才能があるって!」
「っ!?」
パート長さんは私の両肩に手を置いて言う。その言葉に胸がズキッとした。
22 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 15:55:22.20 ID:4VJxOnZ+0
ちょ、ちょっとそれは言い過ぎよ」
私の反応で察したのか、部長さんがパート長さんをたしなめるように言う。
―キーンコーンカーンコーン。
ちょうどそこでお昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。
「……少し、考えてもいい?」
「いいよ。また聞きに来るから」
「ごめんなさい。あの子も悪気はないんだけど。でも、矢吹さん。あなたの才能を貸してほしいのは私も同じなの。だから、いい返事を待ってるわ」
そういって二人は自分のクラスへと戻った。
私も胸の奥がズキズキとしたまま、次の授業のためにクラスへ戻る。
その日、一日私の胸のズキズキが取れることはなかった。
23 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:02:42.40 ID:4VJxOnZ+0
〜〜♪〜〜♪〜〜
「はあ〜」
ため息をつきながら、とぼとぼと帰り道を歩いていく。
『可奈ちゃん絶対こっちのほうがいいよ!歌よりも絶対に才能あるって!』
お昼休みにあの子に言われたことがまだ心の中で渦巻いて残っている。
確かに、クラリネットの方がこの前のカメラマンさんが絶賛してくれたみたいに褒められることのほうが多いけど……。
そういえば、クラリネット以外でも絵とか演技とか、いろいろなことで褒められることはあったけど歌で褒められたことって……。うぅ。
褒められるのは嬉しいしいけど、私の中ではそれ以上に上も下も考えたことがなかったから、少しショックを受けた。
「はあ〜……」
夕日が私の進行方向に長い影を落とす。街灯の電気がポツリポツリと点き始めていた。見つめているとそのまま影の中からもう一人の私がでてきそうなくらい―。
24 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:03:15.84 ID:4VJxOnZ+0
「……でも、もっと練習して上手くなれば歌も褒めてくれるよね!」
そう思うとくよくよしてても仕方がないよねって気持ちになってきた。
「めげない〜♪あきらめな〜い♪いつか歌姫になるかな矢吹可奈〜♪」
やっぱりこういう時は思いっきり歌って、悲しい気持ちは吹き飛ばしちゃえ!だんだんと心が晴れてきて、明日からまた頑張ろうって気持ちになる。
とりあえず、気分転換にプチシューを食べよう。志保ちゃんに食べすぎはダメだって言われているけど、今日くらいはいいよね?
25 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:04:12.76 ID:4VJxOnZ+0
「プチシュープチシュ〜……ん?なんだろう、これ」
ガサゴソとカバンの中を漁ってると、カバンの底で何か固いものに手が当たった。そんなもの、何か入れてたっけ?
「これって、携帯?」
気になって中から取り出してみるとそれは携帯だった
26 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:04:47.47 ID:4VJxOnZ+0
「こんな携帯、誰か持ってたっけ?」
その携帯はカバーもストラップもついていない、丸裸の無機質な携帯だった。こんな携帯、誰か持ってたかなあ。もちろん私の携帯じゃない。
「とりあえず、明日みんなに聞けばいっか」
取り出した携帯をいったんカバンに押し込み、帰り道を急いだ
27 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:06:06.89 ID:4VJxOnZ+0
〜〜♪〜〜♪〜〜
「やっぱりみんな違うよねえ」
自分の机の上に置いた例の携帯を眺めながら私はそう呟いた。
次の日、劇場でみんなに聞いて回ったけど、誰もこの携帯は見覚えがないらしい。一応、プロデューサーさんや美咲さんにも聞いてみたけど、心当たりはないって言ってた。
スタッフの人の携帯が紛れ込んじゃったのかなあ。でも昨日はスタッフさんとは会ってないし……。
そういうわけで、持ち主のわからない携帯は私の手元に残ったまま、また私の家へと戻ってきた。
28 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:06:38.97 ID:4VJxOnZ+0
いうわけで、持ち主のわからない携帯は私の手元に残ったまま、また私の家へと戻ってきた。
―ブーッ!ブーッ!!
「うわっ!?」
突然机の上の携帯がブルブルと震え始めた。知らないメロディだけど、誰かがかけてきたみたい。誰からだろう。
表示された電話番号は当然、私の知らない番号だった。
「だ、誰からかな……?」
勝手に出たりしたらダメだよね?
どうしていいかわからずにただ携帯をみつめていたら、ピタッと鳴りやんだ。相手の人が切ったみたい。
もう一度携帯を手に取ると、着信メッセージが届いていた。かけ間違いかな?
やっぱり、明日プロデューサーさんに言ってスタッフさんに聞いてみたほうがいいよね……?
29 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:07:12.57 ID:4VJxOnZ+0
「……ってまた来た!?」
あれこれ考えてるとまた携帯が震えだした。また、何も表示されてないし、多分さっきと同じ人かな?かけ間違いじゃなかったら、何か急いでることでもあるのかな?
「うう〜可奈は人違いかな〜……」
今度は相手の人も諦めないようで、なかなか電話を切らない。だからいつまでも私の手の中で携帯は鳴り続けている。まるで「はやく電話にでて!」って言ってるみたい。やっぱり、とっても急いでるのかなあ……。
いつまで待っても携帯が鳴りやむ気配はなくて、どうすればいいかわからなくなってきた。
本当になんなんだろう、この携帯。そもそもいつ私のカバンの中に……
「……あ」
30 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:07:42.12 ID:4VJxOnZ+0
『―いつの間にか手元にあって、かけると別の世界の人と電話できるんだって!』
思い出した。この前劇場で未来ちゃんが言ってたんだ。
確かに昨日気が付いたらカバンの中に入っていたし、誰のかもわからないけど……。ということはこの携帯ってもしかして……
「別の世界につながる、携帯……?」
すごい!本当にあったんだ!じゃあ、今かけてきてるのは別の世界の人ってことかな?それじゃあ出ても大丈夫だよね。
なんだか心が軽くなった。ふう、と一呼吸おいて、私はずっと鳴っている携帯の音を止めて、耳に当てた。
「も、もしもし!あ、あああああの!別の世界の人ですか!?」
これで相手が普通の人だったらどうしよう。変な人って思われちゃうかな。その時はちゃんと謝って明日プロデューサーさんにこの携帯のことを言おう。
31 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:08:08.70 ID:4VJxOnZ+0
『…………』
「あれ?もしもーし、聞こえてますかー?」
予想に反して相手の人の声が聞こえない。……もしかして、いたずら電話?
「もしもーし。おっかしいなあ……」
『…………い』
ボソッと何か聞こえた。相手の人かな?
32 :
◆OtiAGlay2E
[sage]:2021/06/30(水) 16:08:40.11 ID:4VJxOnZ+0
「あ、よかったあ。ちゃんと聞こえてるみたいだね」
『…………っそい』
「え?」
『遅いって言ってるの!なんですぐに出ないのよ!?いつまで待たせるつもりだったの!?』
「え、えーっと。ごめんなさい……?」
電話の向こうの相手は、かなり怒ってるみたいだった。
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