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【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」【安価】

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485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 02:56:28.56 ID:OPVWHFlg0
原作のそれと違うのは承知の上だけど、東京優駿まで半年近くあるのに既にパワー600超えとかとんだ怪力娘さんで…
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 02:57:06.15 ID:397hAb7yo
(絶対に湿らせてはいけない)
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 03:17:26.46 ID:S6zPQgAl0
ここのマヤノはすっかりレディになって…ちょっとパワフルだけど…
488 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/27(日) 05:21:16.36 ID:dv+FPjD+0
全ては夏合宿の悪魔めいた増加が招いた出来事でしたね……

裏を返せば、あの400近い上昇が無ければ勝てないレースであったとも言えます。
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 05:43:06.52 ID:397hAb7yo
厳しいなぁ……ん、そういえば
>>269
>たずな「難易度はそこそこですが、安定した成長と実績の積み重ねが見込めるGVレース【京都ジュニアステークス】への出走」
>難易度はそこそこ
たづなさん……?
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 07:57:59.22 ID:1NBzr1m60
ほら、たづなさんは「幻の馬」疑惑あるから……ww
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 10:43:47.54 ID:fGlRpvlw0
計算は細かく見てこなかったからルールを見落としたりしてるかもだけど、
最終達成値って2208-(0-179)=2387じゃないの?
492 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/27(日) 13:08:01.98 ID:dv+FPjD+0
>>491

賢さのステータスについてですね。

最終達成値の計算について、ルールがひとつ存在します。
[レース中全てのマイナス補正-賢さ]
※ただし賢さによる補正はマイナス補正値を超えない。

細かな言葉の違いはあると思いますが、確かスペシャルウィークのレースの時に細かなルールを記載していたかと思います。
今となってはかなり前になってしまったので、近々ルールを再掲載したいと思います。

簡単に言うと、賢さが高ければ高いほどレース中に発生したマイナス補正を打ち消すことが出来ますが、マイナス要素がなければ特に意味の無いステータスである。ということです。
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 13:15:17.60 ID:OPVWHFlg0
あぁ、賢いほど出遅れやかかりが発生しにくくなるっていうのをマイナスの打ち消しって形で再現してるのね
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 13:26:23.83 ID:fGlRpvlw0
なるほど、やっぱマイナスにはならないのね
解説ありがとう
495 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/27(日) 13:55:07.94 ID:dv+FPjD+0
―――

「一着はマヤノトップガン! 他のウマ娘を寄せ付けない走りッ! このウマ娘に敵うウマ娘は果たして存在するのか?!」


 実況の声がどこまでも高らかに響き、観客の歓声が耳朶を打つ。

 そんな中俺は、マヤノの姿に釘付けになっていた。

 何処までも美しく、それでいて強健な走りだった。とてもじゃないが、メイクデビューの時の彼女とは比較できないほどに成長している。

 一番間近で見ていたのに、どうしてだか気付いていなかった彼女の成長。自分の不出来に、諸手を上げて喜ぶことはできなかった。――でも、マヤノトップガンはきっとこれを望む。

 裏バ場に入ったタイミングで、マヤノを探す。あちらも俺のことを探していたようで、直ぐに目が合った。


「マヤノ――! よく頑張った!」
「トレーナーちゃん! マヤの走り、ちゃーんとみてくれた?」
「ああ、ああ――!」
「えへへ、トレーナーちゃんってば……そんなに嬉しかったんだ?」


 興奮して、マヤノの手を握りながら熱弁してしまったことに今更気付く。

 慌てて離すがもう遅い。マヤノは嬉しそうにほほ笑んで――抱き着いてきた。

 冬場だというのに高い体温、高揚の為か抱き着く力がいつもより強い。……普段通りを取り繕ってはいるが、マヤノも大概嬉しいんだろうな、と察知する。

 だから、そっと俺は彼女の頭に手を置いた。レースで少し乱れてしまった髪を元に戻すように、優しく。

 目を細め、ぐりぐりと胸元に頭をこすりつけるマヤノ。普段はあんなにオトナの女性を目指しているのに、こういうところは本当に子供と変わらない――。そこが可愛らしく、放っておけないところでもあるのだけれども。


「……まーたやってますなぁ」
「――! ナイスネイチャか……」
「はーい、ナイスネイチャですよ〜。あ、なんでここに来たのかって思ってます?」
「……ああ、なんだか突然だな、と思って」


 マヤノが膨れている。ちょうどいい所を邪魔されたからだろうか。

 ただ、彼女がこのタイミングで近寄ってくるのには理由がある。特にこの子――ナイスネイチャの性格ならば、本当に。


「……おアツいですな、お二方。でもここであんまりイチャイチャしてると……ほら、あっちの子なんか凄い目で見てる……」
「……。前にもこんなことあったな」
「たはは〜。気を付けたほうがいいと思うんですけどね、アタシは」
「……忠告、感謝する。とりあえず場所を移そうかな。――それに、話はそれだけじゃないんだろう?」


 そういうと、ナイスネイチャは驚いたように目を見開く。


「……なんでも"わかっちゃう"子には、"わかっちゃう"トレーナーさんがついてる、って訳かー」
「……やっぱり用があったんだな」
「まったく、困っちゃいますよ。――はい、用事、あります」
「じゃあ、後の話は控室で」


 俺たちはそのまま、ウマ娘控室に向かった――。
496 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/27(日) 14:26:45.90 ID:dv+FPjD+0
ネイチャ「さて、移動したわけですけど」

トレーナー「なんだかレポーターみたいな話し方になったな」

ネイチャ「そうすべきかなーって、ネイチャさん思ったんですよね」

トレーナー「……? まぁ、それに関しては一定の理解を示しておこう――」

トレーナー「で、用事ってなんだ?」

ネイチャ「……その前に。おーい娘さんやーい、わたしゃトレーナーさんを取ったりはしませんよー。話の輪に入ってくれないと、困りますよー……」

マヤノ「……むぅ」

トレーナー「ナイスネイチャがいなければ、またたづなさんにお小言を言われる可能性があったんだ。ここはその例もかねて彼女の話を聞こうじゃないか」

ネイチャ「……いや、たづなさんに注意されてるなら聞きなさいな……」

トレーナー「すまないな。用事を話してくれ」

ネイチャ「……はいはーい」

ネイチャ「ズバっと言えば、そこの爆速娘と、ネイチャさん戦ってみたくてですねー」

ネイチャ「……最近、ようやく"三番手じゃなくてもいいんだ"って思えるようになって」

ネイチャ「凡人が一番最初に打ち勝つべき敵って――"天才"じゃないですか」

トレーナー「だから、力比べをさせろ、と。そう言いたいわけだ」

ネイチャ「正解です。もちろんこちらのトレーナーさんにも許可はもらってますよ?」

トレーナー「……。マヤノは、どうしたい?」

マヤノ「……そういわれて、引き下がるほどマヤはふぬけてないもーんだ」

マヤノ「ネイチャちゃんだって、本当は"凡人は天才に勝つべき"なんて思ってないくせに、わざとそう言ってるんでしょー?」

ネイチャ「あちゃー、やっぱりわかっちゃいますか」

ネイチャ「ま、そゆこと。で――そっちのトレーナーさんは乗り気みたいだけど、マヤノはどうする?」

マヤノ「マヤもターフでネイチャちゃんと戦ってみたい、かな」

ネイチャ「じゃ、決定かな? あ、どこで戦うかはそっちが指定していいですよっと」

トレーナー(……ナイスネイチャ。彼女もトレセン学園の中では指折りの実力者だ。名脇役だのなんだのと言われているが、ここ最近の活躍は目覚ましい。マヤノトップガンにとってもいい競争相手となることは間違いなしだ)

トレーナー(問題はどこで戦うか、だな。公平な勝負のためにお互いの脚質を鑑みて提案をしなきゃいけない)

トレーナー(となると、ここ辺りか――)

―――
下1 次点目標
GTレース【宝塚記念】   難易度:中  報酬:中
GTレース【皐月賞】    難易度:高  報酬:大
GTレース【日本ダービー】 難易度:特高 報酬:特大
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 14:35:31.82 ID:FeERFnit0
皐月賞
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 15:01:07.48 ID:397hAb7yo
ネイチャー!
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 15:19:59.97 ID:cAH5FQXZO
ここのネイチャは目燃えてそう
500 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/27(日) 15:45:58.38 ID:dv+FPjD+0
トレーナー「……皐月賞」

トレーナー「皐月賞はどうだ」

ナイスネイチャ「おー。クラシック路線のことを考えるなら妥当な采配ですなー」

ナイスネイチャ「特に異論在りませんよ、っと」

マヤノ「うん、トレーナーちゃんが考えてくれたなら、それが一番だから――!」

トレーナー「……じゃあ決まりだ。ナイスネイチャ、そちらのトレーナーにもよろしく伝えておいてくれ」

ナイスネイチャ「はいはいー。じゃあ、またね、マヤノ」

マヤノ「うん、またね、ネイチャちゃん」

―――

トレーナー「……本当に乗ってよかったのか?」

マヤノ「うん。それに、ネイチャちゃん――凄く強そうに見えた。前までは"私は三番手ですからねー。キラキラしたマヤノとかテイオーには敵わないんですって"なーんて言ってたけど……」

マヤノ「――今は違う」

マヤノ「アレは、絶対に脇役になんかならないぞ、って目だった」

トレーナー「……実力はあったんだ、それが花開いたに違いない。敏腕トレーナーだったんだろうな、ナイスネイチャのトレーナーは」

マヤノ「うん。……でも、マヤにとっての一番のトレーナーは、トレーナーちゃんしかいないからね?」

トレーナー「あはは、わかってるよ。いつもありがとうな」

マヤノ「えへへ……。あ、そろそろシャワー浴びてこなきゃ……いつまでも汗臭いとトレーナーちゃんに嫌われちゃう!」

トレーナー「その程度では嫌わんさ。まぁシャワーを浴びてきた方がいいのは事実だし、行ってくるといい。今日はこのまま解散にするからな」

マヤノ「はーい」

―――

トレーナー「……トレーナー、か。ナイスネイチャは実力は十分だったが、何というか自身のあるべき順位を低く定めていたきらいがあった。そんな彼女をあそこまで立ち直らせるという事は、それなりの腕を持ったトレーナーなのだろう」

トレーナー「やはりと言うべきか、トレーナーの才覚では勝てない。俺には彼女たちの気持ちが一から十までわかるわけではないし、見合った言葉を送る力や最も適切なトレーニングをする力はない」

トレーナー「……だから、俺は人一倍努力しなきゃならない。そうだろう?」

トレーナー「皐月賞は大舞台だ。それまでに俺が出来ることはすべてやらなくちゃな」

トレーナー「さて、まだ少し時間があるな。何をしようか――」

―――

下1 トレーナーは夜どうする?
※自由にどうぞ。
※モノによっては何か新しいスキルやスキルヒントを得ることができるかもしれません。

501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 15:55:24.57 ID:99V/ZEkMO
ここ最近のナイスネイチャのレースを確認する
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 16:13:03.14 ID:vbsWgLjc0
負けてらんないのはネイチャさんだけじゃないんですよねー
503 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/27(日) 17:46:09.78 ID:dv+FPjD+0
―――

トレーナー「将を射んとする者はまず馬を射よ」

トレーナー「地道な情報収集や対策こそが今の俺たちには必要だ。今日の勝負だって、そもそもマヤノトップガンの持ち味だけで勝っている。――それは俺でなくとも出来たことだ」

トレーナー「勝ち方に持ち味を求めるのはナンセンスだが、しかし何も寄与してないことに対しては少しばかりの申し訳なさを感じる」

トレーナー「今回はさすがに、ライバルがいるし研究しなければまずいだろうな――」

―――

 ナイスネイチャの持ち味と言えば、その強靭なまでの脚を以て行われる鋭い差しと、その知性からくる周辺へのけん制だ。

 ナリタブライアンが力のウマ娘だとすれば、ナイスネイチャは知のウマ娘と言えるだろう。彼女はターフ上で、さながら魔術師のような辣腕を振るっている――。

 そんな彼女の見習うべきところは――相手の心理に働きかける……いうなればデバフのような行為だ。

 マヤノも成績がいいことから読み取れるように、高い知性を有している。だからこそ彼女は"わかる"のだろうが――。だからこそ、知からくる行動を取っているナイスネイチャは絶好の研究資料ともいえる。

 左右の僅かな動きで距離感を惑わせる幻惑のステップ。歩調を乱すことで相手の心理に隙を作る走法。自身をブロックさせないための立ち回り。

 それらすべては小さな技術だが、全ての効果が十全に発揮されれば、もはや誰も彼女の術中からは逃れられない。一人、また一人と抜き去り、最終的には3バ身もの差をつけてナイスネイチャがゴールした。


「……これは、真似できるレベルのものだが、だがあまりにも膨大な分析データが必要だな」


 とはいえ、真似ができるレベルのものではあるのだ。それを要領よくまとめ、マヤノのトレーニングに活かすのは――他でもない俺の仕事。

 マヤノが一目通せば理解することができるように。なによりも、ナイスネイチャの弱点を見つけるためにも、膨大なデータの累積は必要だと思う。


「……さて、頑張るか」


―――
▼ライバルウマ娘[ナイスネイチャ]の研究度が1進みました。

・ライバルウマ娘とは?
 ライバルウマ娘は強力な能力を持ったウマ娘です。
 その為、普通に立ち向かっていては打ち勝つことは難しく、研究が必要になります。
 研究の進み具合によって、ナイスネイチャとの対戦の際、難易度が緩和されます。
 現在の進捗度は1/5です。
504 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/27(日) 17:51:30.56 ID:dv+FPjD+0
トレーナー「アレから一週間が経過した。ナイスネイチャとマヤノの仲は好調。お互いがお互いを高めあういいスパイスになっているようだ。なにより………とも一概には言えないのが悲しい所だけど」

トレーナー「そういえば、あの後たづなさんに呼び出しを喰らった。担当ウマ娘とのスキンシップは良いことですが、過度なものは控えてください、まして大衆の面前で――。ああいうことをするなら見えないところでやれ、ということらしい。それでいいのか、トレセン学園……」

トレーナー「最近俺はトレセン学園のことがわからなくなってきたよ……」

トレーナー「……」

トレーナー「……解らないことを考え続けても仕方がない。とにかくできることをやろう」

トレーナー「さて、今日は何をしようか」

―――

下1
トレーニング/お出かけ/休憩/スキル習得/脚質上昇/ライバル研究/その他(良識の範囲内で自由に)
※皐月賞まであと10ターン
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 17:57:36.17 ID:fGlRpvlw0
ライバル研究
進捗度に応じて「真似が出来る」スキルとか開放されたりするのかな?
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/27(日) 18:03:43.68 ID:cAH5FQXZO
カウンターデバフとかあったら面白そうだな
507 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 10:47:56.02 ID:7nVrBzQPO

―――

トレーナー「という訳で今日はナイスネイチャの研究をしようと思う」

マヤノ「アイ・コピー!」

トレーナー「マヤノはナイスネイチャの強みってなんだと思う?」

マヤノ「んー……。賢い?」

トレーナー「そう、彼女はとても賢い。他には?」

マヤノ「え? えーっと……可愛い?」

トレーナー「レースに関係あるか、それ? たしかに可愛いけど」

マヤノ「もー、トレーナーちゃんってば浮気〜?」

トレーナー「浮気も何もそもそも付き合っちゃいないだろ……って泣くな泣くな、俺はマヤノのトレーナーだから目移りはしないぞ!」

マヤノ「ふーんだ……」

トレーナー「こりゃ時間がかかりそうだ……。さて、VTRでも見るか」

―――

下1 ナイスネイチャの研究解析
50以上で研究度上昇・スキルヒント
50以下で研究度上昇
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 10:50:48.02 ID:W+Z4tfzVo
いけ
509 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 11:02:18.93 ID:7nVrBzQPO

―――

トレーナー「ふむ……」

マヤノ「……前と走りが違う」

トレーナー「今しがた俺も同じこと思っていたところだ。これは――凄まじい走りだな」

トレーナー「特に末脚。前々から光るものがあったが、それが磨きあげられている。トレーナーの指導や彼女自身の才覚――なにより、彼女の精神がそうさせている……気がする」

マヤノ「うん……。ネイチャちゃん、昔はこんな強気な走りじゃなかった。もっと、自分をどこかに置いてるみたいな……そんな走り方だった」

マヤノ「でも、今は違う。――マヤと同じ、限界を……壁を越えようとする走りになってる」

トレーナー「俺よりも近くでナイスネイチャを見てきたマヤノがそういうんなら間違いはないな。だが――」

トレーナー(――果たして、それだけでこうも変わるか?)

トレーナー(やはりさらなる研究が必要だな……)

―――

▼ライバルウマ娘[ナイスネイチャ]の研究度が1進みました。進捗は2/5です。
510 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 11:21:17.87 ID:7nVrBzQPO
―――

トレーナー「最近ナイスネイチャを褒めたからだろうか、マヤノのトレーニング効率が目に見えて上がっている」

トレーナー「なんというか、ありがたい事ではあるのだが……原因が原因だけに喜びにくさも感じる」

トレーナー「さて、これが今年最後のターンだ。けっぱるべー!」

―――

下1
トレーニング/お出かけ/休憩/スキル習得/脚質上昇/ライバル研究/その他(良識の範囲内で自由に)
※皐月賞まであと9ターン(当ターンを含む)
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 11:36:59.67 ID:mdEXMkfTO
休憩という名のクリスマス会
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 11:37:50.33 ID:wUJGfb01o
トレーニング
513 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 13:07:15.93 ID:7nVrBzQPO


クリスマスは別口でイベント用意してるので、すみませんが休憩という安価のみ取らせていただきます。

―――

トレーナー「年の瀬も迫ってきたし、やらなきゃ行けないことが増えてきた。――例えば、来年のレースの予定を立てたり、トレーニングの予定を立てたり」

トレーナー「つまり――今日は休みなんだよ、マヤノ」

マヤノ「休みってことは自由ってことでしょー? だったらマヤが何しててもいいってことだと思ったんだけど……」

トレーナー「何してもいいけど、じゃあなぜマヤノはここにいるんだ?」

マヤノ「……? ここにいたいから、だよ」

トレーナー「年の瀬も近い、あとそろそろクリスマスだし、友達同士で計画とか立てあってる頃じゃないのか?」

マヤノ「ウマスタとか見るとそうっぽいね。でも、マヤの今年のクリスマスはもう予定が決まってるんだー」

トレーナー「ほう。ほう?」

マヤノ「知りたいって顔してるー。でもダメ、ヒ・ミ・ツ☆」

トレーナー「いや、マヤノにもWそういう相手Wがいたんだなぁと思って驚いただけだ。君が幸せなら何でも構わないよ」

マヤノ「……? うん、マヤは幸せだよ?」

トレーナー(なんか話題が噛み合っていない気がするが――まぁいいか)

―――

▼次回のトレーニングの効果量が2倍になった。
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 14:33:59.93 ID:pJwnzC+O0
今更だけど、ステータスってレースの時に賢さ以外は全部足しちゃうからどれ上げてもレース結果は変わらなかったりする?
515 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 14:37:14.80 ID:7nVrBzQPO
undefined
516 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 14:39:07.74 ID:7nVrBzQPO
>>514
作戦ごとに能力値の補正があるので、一概にどの能力値を上げても勝てるとは言い難い――と思います。特に作戦による補正は固定値ではなく倍数なので……。
517 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 14:40:03.23 ID:7nVrBzQPO

―――

――12月25日。それはトレセン学園が最も騒がしくなる日の一つだ。


 生徒会主催で行われるクリスマスイベントを始め、学内の生徒がそれぞれクリスマスにちなんだ物を持ち込んでパーティーが開かれるためだ。

 無論トレーナーもそれらのイベントに参加することはあるが――俺にとっては無縁な話だ。

 ナイスネイチャとの皐月賞でのバトルが決まってからというもの、通常業務と研究という大きなふたつのタスクが重なり、まさしく火の車。

 ただでさえ遅れがちな通常業務を今のうちにこなしておかなければ、担当ウマ娘の成績不振以前に業務不適当で解雇されかねない。

 という訳で、今日は業務デーである。マヤノもクリスマスパーティーに出席しているのか、今日はトレーナー室に来てないし。

 マヤノがいないとトレーナー室は静かで、仕事にとても集中することが出来そうだ。

 眠気覚ましのコーヒー、糖分補給用のマシュマロを用意するともっと完璧になってしまった。

 よし、仕事を片付けるぞ――! ……と意気込んだのはいいのだが。

 なんだか落ち着かない。気がソワソワして、仕事が手につかないのだ。1体どうしてしまったんだろう。

 そうだ、音が足りないのであれば、何かの動画を見ながら作業をやればいい話ではないか。早速動画サイトを開き、雨音を垂れ流す動画を流して作業に戻る。

 ……。やはり何故か集中できない。どう足掻いても集中できない。一体何が俺をそうさせたのだろう――。
518 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 14:41:01.36 ID:7nVrBzQPO
 ふと聞こえてくるクリスマスパーティーの喧騒。まだまだ昼だと言うのに盛り上がっているようだ。

 マヤノもあの輪の中に入って、存分に楽しんでいることだろう。はしゃぎすぎて年明けのトレーニングに影響が出なければいいが――。

 ふとそう考えた時に、仕事が手につかない理由が理解出来た。


――マヤノの騒がしさが足りないのだ。


 あの騒がしさに慣れてしまったのでは、こんな静かな環境でまともな仕事などできやしない。

 いつの間にか近くにマヤノが居る生活に慣れてしまっていた。気付いてしまえば、ずきりと胸が痛む。

 この先も戦いは続く。URAファイナルズに進むまでにも、日本ダービーや天皇賞なども達成目標に必ず入ってくる。

 運命という言葉が脳裏に響く。――それもただの運命ではない。離別の運命だ。

 年が開ければ、戦いはまた幕を開ける。それも苛烈な。

 共にいる年月を重ねる度に失う苦しみは増していく。俺も、そしてマヤノも。今感じている物足りなさも、俺が無意識にマヤノとの時間をもっと過ごしたいと思っているから――そう考えれば納得出来る。

 苦しい。この苦しみから逃げることが出来ればどれだけ楽だろうか。……俺は頑張ったんじゃないか?

 そう考えると、途端に自分のやってきたことが全て妥協のターニングポイントとして収束した。

 4着とはいえマヤノのメイクデビューを華々しく飾った、京都ジュニアステークスでは1着を取らせた。

 俺より才覚に優るトレーナーとの対戦についても、しっかりとした作戦を練って、マヤノへ伝えた。


――そうだ、俺は頑張った。


 だから少しくらい……休みたくなった。誰もいないところで、誰にも触れられず、深い闇の底で。


――そして俺は、トレセン学園を後にした。
519 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 15:18:30.17 ID:7nVrBzQPO
undefined
520 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 15:19:08.99 ID:7nVrBzQPO

―――

「――できた!」


 トレーナーが執務に励んでいるころ、マヤノトップガンの姿はトレセン学園の厨房にあった。

 周囲では生徒会主催のクリスマスパーティーの準備が慌ただしく行われているが、その喧騒とマヤノトップガンは切り離されていた。

 マヤノトップガンは、そもそも生徒会のクリスマスパーティーに参加するつもりはなかった。

 今年1年の感謝をトレーナーに伝えるべく、同じ志を持った同志――ナイスネイチャと共にケーキを作っていた。

 時刻は昼。スポンジの焼き上がりは上場で、厨房には仄かに香ばしい香りが漂う。周辺のウマ娘たちは、彼女たちが焼き上げるケーキに興味津々だ。


「あっ、このケーキはトレーナーちゃんに渡すのだからあげないよ……!」
「そゆこと。あっちで料理班がケーキ作ってるから、欲しかったらあっちにたかりに行きなさいな〜」


 マヤノトップガンが固辞し、ナイスネイチャが扇動する。トレーナー用クリスマスケーキの防備は完璧だと言える。

 ライバル関係の2人ではあるが、トレーナーに対しての感謝の念はウマ娘共通。お互いがお互いの作戦遂行のため、総力を上げて事態の完遂へ動いていた。
521 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 15:19:53.17 ID:7nVrBzQPO


「あとはクリームを塗って冷蔵庫に保管しておくだけだね〜」
「うん! マヤの特性クリスマスケーキ、トレーナーちゃんは喜んでくれるかなぁ」
「そりゃぁあれだけおアツいトレーナーさんなら喜んでくれますって。そう心配なされまするな〜」
「そうだよね!」


 マヤノトップガンは信じて疑わなかった。今まであれだけ自分を助けてくれたのはトレーナーで、あれだけ望む言葉を言ってくれたのもトレーナーだ。

 きっと今回も、かけて欲しい言葉を言い当ててくれるに違いない――。重ねるが、マヤノトップガンはそのことを信じて疑わなかった。


「そういえば、マヤノはトレーナーさんに今日の夜のこと伝えてる?」
「ううん。今日の夜のイベントはサプライズなんだー」
「あー。なんだ、その――伝えておいた方がいいかもよ。トレーナーさんたちって大人だから、この時期に飲み会とかあったりするかもだし」
「――! マヤ・ランディーング!!」


 颯爽とかけ出すマヤノトップガン。それを見送るナイスネイチャ。ウマ娘の間では微笑ましく彼女らを見守る空気が生まれつつあった――。

 だが。


「トレーナーちゃーん、いる?」


 その日、ウマ娘たちの微笑ましげな表情は全て。


「……トレーナー、ちゃん?」


 冬の寒さに、凍り付いた――。
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 15:43:19.94 ID:tIZBJfY0o
こんな時にどこ行ってるんですかね(怒)
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 16:09:16.23 ID:xSyDNwBE0
いくら梅雨だからって湿気強くない?靄か霧だよ
524 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 16:09:40.88 ID:XuW6VRWq0
チラ裏案件かもしれませんが、少し長めに続きます。
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 16:15:35.96 ID:pJwnzC+O0
バッチこーいよ!(マルゼン感)
526 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 16:32:05.14 ID:XuW6VRWq0

 息が切れて、視界が少しぼやける。

 霞む視界に僅かに映るコンクリートの無機質さが、余計に孤独を誇張してくる。

 どれだけ走っても俺の孤独は緩解せず、遅効性の毒のように体に回っていく。――それは思考が鈍り、心が凍る致死性の猛毒だと、思う。

 思えば二度目のループからそうだった。俺は落ち込みやすいし、元気になりやすい人間だ。そう思い込んでいるだけだった。

 本当は、もっと気丈な人間だった。簡単に落ち込むことはないし、落ち込んだら落ち込んだでそれなりの期間を経たのちに元気になる――普通の大人だったはずだ。

 だが、こんな人間になってしまった。その理由は、今となっては明白だった。
527 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 16:32:35.57 ID:XuW6VRWq0
――どこまで行っても、俺は孤独だった。


 スペシャルウィークは気丈なウマ娘だった。どれだけ絶望しても這い上がるほどの根性を持っていた。それは俺にとって、あまりにも眩しい星の光だった。

 ツインターボは溌溂としたウマ娘だった。どんな困難にもめげずに突撃していく様は、まさしく天性の努力家だと思えた。それは俺にとって、手の届かない風だった。

 マヤノトップガンは天才肌のウマ娘だった。どんな些細な兆候も見逃さず、自分の力に変えていく様は、まさしく天性の才能を感じさせた、それは俺にとって、追いつくことのできない夕陽だった。

 それぞれがそれぞれ、俺を上回る存在だった。だから俺は彼女たちを支えようと努力した。――だから俺は孤独だった。

 彼女らは、確かに俺のことを慕ってくれていたのかもしれない。俺のことを理解しようとしてくれていたかもしれない。でも、それは絶対に出来ない。胸中で管を巻く諦念が、絶望が、真の意味で彼女たちには理解が出来ない。

 むしろ今まで考えてこなかった方が異常なのだ。何度繰り返されるかもわからないループ。才に勝る桐生院ならまだしも、俺のような木端がループしたところで――本当に結果が出るなんて思えなかった。

 自信なんて最初からなかった。トレセン学園に入ってからだって、俺はずっとずっと劣等感を覚えていた。ハッピーミークを確立された理論で育成する桐生院トレーナーのような知識も、控えめな目標を持っていたナイスネイチャをあそこまで育て上げた手腕も。

 この不安がわかる人間などどこにもいない。この焦りがわかる人間などどこにもいない。この絶望がわかる人間などどこにもいない。この停滞がわかる人間などどこにもいない。――酩酊できるのであれば、もうこの世界を認識できないほどの酔いで好みを満たしたいくらいに。
528 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 16:34:33.99 ID:XuW6VRWq0
 闇は濃い。夜よりも。影よりも。まして海の底よりも。俺は孤独だった。

 暖かさに触れるたび、その温かさを無意識に遠ざけたがっていたのも、温かさに触れることで孤独感を余計に助長されたからだ。胸が痛むたび、俺と彼女たちは乖離した存在なのだと思い知った。

 きっとこの思いも、この夜が降りやむ頃には胸の奥にしまわれるんだろう。そしてまた始まる。彼女たちの所作に、言動に一喜一憂して。彼女たちを無意識に遠ざけて。苦しんで悩んで落ち込んで悔やんで――打ちひしがれるのを首を差し出すように待つ日々が。

 俺は人間。

 人間だ。

 誰しもが思うような、主人公じゃない。

 いいとこ脇役で、下手すればモブ――。

 いっそ、この体が操り糸によって操作されるマリオネットであればいい。

 そうしたら、きっと。俺はもっと楽になれるはずだ。全知全能の神が、このクソったれな物語を終わらせてくれるはずだ。

 なんだか、目を閉じるだけでそうなりそうな気がして。俺は目を閉じようと思った。
529 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 16:35:43.84 ID:XuW6VRWq0



「こんな思いをするなら、トレーナーになんか――」



530 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 16:38:32.32 ID:XuW6VRWq0



「――厳禁ッ! それ以上の言葉は言わせない!」


531 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 16:39:10.67 ID:XuW6VRWq0
 目を閉じる前、俺の肩を掴んだのは――小さな影だった。
532 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 17:08:20.36 ID:XuW6VRWq0
「――秋川理事長」

 こちらを睨むように見上げていたのは、秋川やよいさん――トレセン学園の理事長だった。
 
「悲歎、悲歎悲歎悲歎――ッ! 何故君がそんなことを言うのか、私にはわからないっ」
「……理解できるはずないじゃないですか、そもそもなんですかいきなり」
「解答っ。君がなんだかただならぬ様子で走り去っていく様を、たづなが目撃していた!」


 確かに、あの時は脇目も振らずに走り出していた。誰かに見られていてもおかしくはないだろう。

 それを聞いてわざわざ追い掛けてくれるとは、ずいぶんと理事長はお暇なのだろう。


「……で、用件はなんですか」
「愚問っ! 君の様子が心配だった!」
「俺の心配なんてせずに、ウマ娘たちの心配をするべきでは?」


 俺の言葉に、理事長は目を吊り上げて反応する。普段はウマ娘たちに対する愛情が深く、このような表情は見ないものだから――少し驚いた。

 やがて理事長は、懐から扇子を取り出すと、俺の方へと向けた。


「……不明っ。君はウマ娘にとってのトレーナーが何なのかをわかっていないのか……?」
「ウマ娘にとってトレーナーとは一蓮托生の存在。それがお忙しい理事長が俺みたいな木端に構ってる理由ですか?」
「肯定ッ! それがわかっているのであれば、何故――」
533 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 17:16:56.75 ID:XuW6VRWq0



 何故? そんなの、そんなの――。


534 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 17:17:48.53 ID:XuW6VRWq0



「――んなこと決まり切ってんだろうが! 相応しくないんだ、俺はッ! あの子たちにッ!」


535 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 17:18:30.75 ID:XuW6VRWq0
 堰が壊れて、もう止まらない。とめどない激情は、臓腑から胃に登って、口から吐き出される。


「俺はあの子たちにふさわしくない! それはどこの誰が否定しようと絶対の真実だ! ほかの才能あふれるトレーナーが面倒を見ていれば、今頃もっと大きな舞台に立っていた! そもそもメイクデビューから最後尾なんてことにはならなかったッ!」

「何を、君の担当ウマ娘は――」

「四着だ、だから何だ――! マヤノの潜在的ポテンシャルは四着で終わるものじゃなかった! それを台無しにしたのはほかでもない俺だ! スペシャルウィークだって、ツインターボだって――俺がいなきゃあんなに可哀そうなことにはなってなかった! 輝かしい未来が待っていた、GTレースなんて簡単に優勝して、優駿の頂点に立つべき子たちだった――ッ!」
536 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 17:22:59.50 ID:XuW6VRWq0
「……」

「なのに俺は、俺は――彼女たちの未来を踏みにじった! ウマ娘のためのトレーナーなのに、いつしか俺は自分のことばかり考えていた。ループしなければいいとか、もう負けたくないとか……ッ!」

「……? 疑問ッ。ループとは――」

「もう……もう嫌なんだ……。俺はウマ娘のことが好きで、ウマ娘たちが輝けるようにサポートしたくてトレーナーになったはずなのに、自分のせいでウマ娘のことを道具のようにしか思えなくなってくるのが……! ループだのなんだのと理由を付けて、そんな自分を正当化するのが――」

「……トレーナー君」

「――なぁ理事長……教えてくれよ。どうしたらいい? 俺は本当に……本当にトレーナーでいていいのか……?」


 この一言を絞り出すために、俺はどれだけの鬱屈とした感情を吐き出さなければならなかったのだろう。

 この感情を、今でさえ言葉に出来ない暗澹たる感情を、どのように言葉にしたらいいのだろう。

 何もわからない、何も――。

 俺の総ては理解されない。――なんか、もう理解もされたくない。
537 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 17:43:03.92 ID:XuW6VRWq0

――で、あるならば。回答は彼女にとって容易だった。


「笑止ッ!! 己を――君を信じたウマ娘たちを愚弄するなァぁぁああああッ!」


 怒髪冠を衝く。その叫びが、心からの願いが、篠突く雨を震わせた。


「否定ッ、否定否定否定ッ――! 限界を決めつけるなッ! 君を否定するなッ! トレーナーの意義を否定するなッ! 何より――」


――ウマ娘たちの思いを決めつけるな――ッ!


 咆哮は轟き、周囲の視線を集める。だが、それでも秋川やよいは止まらない。止まるはずもない。――トレーナーのその言葉は、最上の侮辱だ。

 トレーナーを信じて戦う全てのウマ娘たちへの、最低最悪の侮辱だから。
538 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 17:45:49.48 ID:XuW6VRWq0
「何故君はウマ娘たちが走ると思う?! 答えろ、トレーナー!」
「…………。彼女たちの夢の為?」
「ああそうだ、彼女たちの夢のために走っているッ! 決して君たちトレーナーの為なんかではないッ! それは要素の一つでしかなく、本質は――夢への遁走にこそあるッ! だが同時に信じてもいるッ! 夢の共犯者が、常に自らの傍で支えてくれているのだと……」
「君は見誤っている、ウマ娘という存在を……いや、人の決意という気高い意思を――ッ!」


 ウマ娘がトレーナーのために走りたいと思うのは、彼らが夢を駆ける仲間になるからだ。むろん夢は必ずかなうわけではない。どこかで挫折し、時には敗北し、あるいは絶望を覚えることだってあるだろう。

 このトレーナーはそれらの総てを否定した。挫折を繰り返し強くなったウマ娘を、己の可能性を見限り諦め、しかし絶対に見返してやると意気込んで実際に見返したウマ娘を。

 ただならぬ事情があるのは秋川にも理解できた。先ほど出てきたループという言葉もそうだが、彼が、先ほどの慟哭以上の感情を胸中に抱えているのは察するに余りある。――そして、彼がどれだけ、ウマ娘を愛しているのかも。……だから本質的に、彼がウマ娘をモノ扱いすることは、まずないようにも思えた。
539 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 18:00:23.02 ID:XuW6VRWq0

「理解ッ……。君が抱えているものは、恐らく誰にも理解されない」
「だったら……」
「因果、故に君は――"理解されないから"と、君の抱えるものを"決めつけ"、それは明かしてはならないものだと"決めつけ"、ウマ娘もそんな思いを乗せて走ることはできまいと――"決めつけている"」
「……」
「……それらが変化することを君は恐れている。それが、君のいうところの"孤独"だ。未知からくる恐怖だよ、それは」


 彼が恐れているものは、恐らく"孤独"ではない。その先にあるものだ。……秋川はなんとなく、そう思った。

 変化だ。――彼が恐れているのは、全てにおいて変化だ。

 自分がウマ娘をモノ扱いするかもしれないという、忌避すべき価値観への、変化。

 ループという現象が発生して、それがウマ娘を壊してしまわないかという、変化。

 それに――自分を慕ってくれているウマ娘が苦しむという、変化。

 変わっていくことに、変遷することに、彼は恐怖している。

 ……彼は、変わっていくものの中に、変わらないものが残ることを知らない。

 秋川は、彼が酷く――哀れな存在に見えた。

 そして、同時に理解する。秋川の言葉では、彼はきっと納得しきれない、という事を。


「――肯定。トレーナーをやめるというのであれば、それもいいだろう。しかしッ、その前にトレーナー室に向かってから決めろッ!」
「……トレーナー室?」
「称賛っ。君は君が思うよりも――素晴らしいトレーナーだ。だから見誤るな。迷ってもいい。だから……変化を恐れないでほしい。同時に、変わらないものを見つけてほしい」


「――安寧。君の悩みの答えは、いつだって君の傍にある」
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 18:08:01.72 ID:W+Z4tfzVo
理事長熱い
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 18:16:20.86 ID:tIZBJfY0o
さすがの大種牡馬さん(未確定情報)やで
542 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 18:17:47.45 ID:XuW6VRWq0
「……とは言われたが」


 変化を恐れるな、と言われたところで、怖いものは怖い。

 変わってしまえば、連鎖的にすべてが変わっていく。それは恐ろしいことだ。

 俺がループすること、そしてその時マヤノ以外から記憶がなくなってしまうのを知ってしまえば、マヤノはきっと走れない。

 ……ああ、これが決めつけなのかもしれないな。

―――

 まだまだ発展途上、だな。誰かに併走してもらえれば、実力も上がるのかもしれないが……。

 彼女の適正はマイルや中距離。長距離では彼女自慢のスピードも、異次元のノビもどこまで通用するかわからない。もしかすると通用しないかもしれない。

 全力で走っているように見えるけど、案外繊細なスピードトレーニングだ……。そのあり方が常にターボを全力に見せているのかもしれないが、その実、内面はあまり強くないのかもしれない――。

 ……純粋に、彼女のコンディションの面倒を見るトレーナーがいなかっただけ、なのかもしれないな。

 それに――こうしてマヤノと触れ合える時間もこれが最後となるかもしれない。

―――

 思えば、たくさんの決めつけをしてきた。中には良い考え方もあっただろう。だが――それらすべてが変遷することを恐れていた、と言われれば、耳を塞ぎたくなる。

 図星、という事なのだろうか。


「……? トレーナー室に光が?」


 夜も10時を越している。おそらくは寮の門限もとっくに過ぎている――という事は、ウマ娘ではないはず。……これも決めつけか。

 とにかく誰かがいる。誰なのかはわからないが――その中に居る人物こそ、恐らく秋川理事長が言っていた言葉の理由となる。


「……でも、なんでだろうな、扉を開けるとなると――少し緊張するな」


 手が震える。でも、踏み出さなければ――始まることはない。


「……そうだ、こういう時こそ、神頼み……ってね。自分の意思で空けるのが難しいなら――使えるものは何でも使おう。どうせ、これが俺のトレーナーとしての最後だ」


 祈りは形となり、願いは力となる。

―――

下1 扉を開きますか?
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 18:25:42.49 ID:tIZBJfY0o
開けない理由がない!
開ける!
544 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/28(月) 21:02:42.29 ID:XuW6VRWq0
自慰行為ともとれる物語展開にお付き合いいただき、切に感謝いたします――。
更新は少々お待ちください。
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/28(月) 21:06:13.13 ID:NAMgj3T2o
トレーナー曇らせまで頂けるこっちが感謝感謝です
理事長プレイアブル化はよはよ
546 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 01:38:01.38 ID:N44xGpXe0
所要で更新できずすみません……! ゆっくりと更新していきます
―――

――扉を開け、と頭の中で誰かが囁く。


 この声にそのまま従うのは癪だが、しかし俺もトレーナー室に誰がいるのか気になる。

 予測は出来ているが――だが、見ないわけにもいかない。

 何が起こるかわからない。でも仮に何か起こったら、脳裏に響く声のせいにしてしまおう――。

 まるでリビングの扉を開くような軽さで、少し湿った手でドアノブをひねる。


「……マヤノ?」
「……ん……すぅ……」


 机に突っ伏して眠っているのは、担当ウマ娘――マヤノトップガンだった。エプロンを着ており、その下は制服だ。……あんな格好で眠ってしまっては、制服がしわになってしまう。

 直してあげなければ、と一瞬思う。でも、もう彼女のトレーナーをやめようとしている俺に、触れる権利などあるのだろうか? いや、きっとない。

 そもそもマヤノと話す権利すらなく、マヤノと同じ部屋にいることすら本来はあってはならないことだ。それが許されている理由は一つとしてなく、俺をこの部屋に留めている理由は"かつてのトレーナーだったから"という矜持だけだった。

 トレーナー室に答えがあるといっていた理事長の言葉は恐らく真実だ。正直、この展開は透けて見えていた。なぜなら、そもそもトレーナー室に入る関係者などマヤノ以外にいなかった。

 ……じゃあ、なんでマヤノと関わる権利などないと思っているのに、俺は彼女がいることが見え透いている部屋に入ったのだろうか。

 答えは簡単だ。事ここに至って俺は――マヤノが引き留めてくれるかもしれないと期待していたんだ。

 マヤノが俺を許してくれれば、きっと俺はまだトレーナーを続けざるを得なくなる。いやいやながら……いや、本当はそれこそが望んでいる展開だった。

 悪魔のような浅はかさだった。俺は他者肯定にしか存在できない、とても愚かな存在だったのだ。

 そうだ、俺はもうここにいてはいけない。俺の勝手な妄想の中で済ませるのは誰にも迷惑をかけないが、それを外に出したり、妄想の影響を他者に与えてしまうのは明確な干渉だ。

 踵を返して、扉へと手をかける。呼吸が早まり、足が鉛のように重い。自意識などこんなに弱くて、逃げることすらできないほどに脆弱だ。マヤノから――ウマ娘へ背を向けることが、本当に恐ろしい。

 ふと、そんな俺の袖が――掴まれた。
547 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 02:14:13.69 ID:N44xGpXe0
「トレーナー、ちゃん?」
「……マヤ、ノ」
「……えへへ、帰ってくるの遅いよぉ。マヤ、ずーっと、トレーナーちゃんのこと待ってたんだよ?」


 眠気にふやける瞳で、マヤノは俺に笑いかけてくる。その笑顔がとても眩しくて、俺は思わず目を背けた。そんな目で俺を見ないでくれ、そんな声を俺にかけないでくれ――と。

 だが、マヤノがその程度で止まるウマ娘ではないことも同時に理解していた。――理解していたが、何故だか俺はそれを無視していた。だから、もっと強い言葉を使うべきだという理性故の思考は切って捨てられた。


「……すまんマヤノ、俺は――」
「――トレーナー、やめちゃうの?」


 言葉より早く、俺は視線を跳ね上げる。その先には、今にも泣きそうな表情を浮かべているマヤノの姿があった。


「どうして? マヤ、何か悪いことしちゃった……?」
「……そうじゃない」
「ひょっとしてベタベタするのが嫌だった……? それとも、マヤがお仕事中にもずっと近くにいたから疲れちゃった……?」
「……違う」
「……。じゃあ……マヤが、マヤが弱かったから……?」
「――違う! 違うんだ、マヤノ……君のせいじゃないんだよ……」
548 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 02:18:19.70 ID:N44xGpXe0
 君のせいじゃない。

 悪いのは、俺だ。本当はこんなところにいるべきではなくて、もっと早く立ち去るべきだったのに立ち去らなかった俺のせいなんだ。

 君がメイクデビューで一着を取れなかったのも、もっと高いところを目指せなかったのも、全部全部――俺のせいなんだ。

 本当はそんなことを言いたかった。でも、どうしても言葉が詰まって出てこない。まるで俺が、その発言を拒んでしまっているかのように。


「……じゃあ、なんでトレーナーちゃんはそんなこと言っちゃうの……? マヤ、トレーナーちゃんと一緒にたくさんレース走りたいよ……!」
「……俺が、俺が悪いんだ」
「……トレーナーちゃん」


 マヤノがそう言った。こちらへ近づいてくる。一歩下がる。一歩近づく――。

 繰り返しの後、背後にもう退路がないことに気が付いた。トレーナー室の壁の冷たさが、背中に染みる。

 マヤノがどんどんと近づいてきて、俺はその場から少しでも逃げ出したくてへたり落ちる。でも下がれなくて――俺はマヤノを見上げる形になった。

 何処までも透き通る黄金の瞳が、俺のことを見た。たったそれだけで、金縛りみたいに動けなくなる。


「トレーナーちゃん、なんで何も言ってくれないの……? 俺が悪いって――話してくれなきゃわかんないよ! なんでトレーナーちゃんがそんなに思い詰めてるのか、マヤにはわかんないよ……」
「……」
「……レースの前、ずっと不安そうだったのが理由? ずーっと、何かに怯えてた……。それが、トレーナーちゃんをこうしちゃった理由? マヤがどれだけ"勝つよ!"っていっても、それでも震えてたのが……トレーナーちゃんをこうしちゃったの……?」
「それは……」
「マヤはね、トレーナーちゃんがいつか話してくれるって思ってたんだ。なんでそんなに怖がってるのかって。……マヤが勝ち続ければ、もう負けないぞって証明できれば、いつか、いつか話してくれるって思ってた」


 ……無理だ。マヤノが勝ち続ければ勝ち続けるほど、俺はきっと言い出しにくくなる。マヤノの走りが鈍ってしまうと思い込んで、何も言えなくなってしまう。

 そもそも、話したところで嘘だと思われる。この世界の何処に「僕はループしていて、目標を達成できないと無限に繰り返してしまうんです」と言って信じる人間がいるんだろうか。

 SF世界の住民ではない。この世界の人たちは、地に足をつけて生きている。何を話しても無駄で、だからこそ俺は真の意味で孤独を感じていた。

 そして仮に話した結果それが信じられても、俺に対する当たり方が違ってくるかもしれないと思うと、なかなか言い出せなかった。――今なら認めてやってもいい。秋川理事長のいう事は悉く正解だったさ。
549 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 02:50:48.25 ID:N44xGpXe0
 だから、俺はマヤノには事情を話すことができない。


「……でも、話してくれなかった。そして今も、話してはくれないんだよね……?」

「……。マヤノになら話してもいいかなって思った時はあった。本当に、ちょっとだけ。でも話してどんなことが起こるかわからなかったから話せなかった。マヤノの走りが鈍ったり、走れなくなったりするのが怖かった。――そうなると、いよいよ本当に言い逃れできなくなるから」

「言い逃れ?」

「ああ、言い逃れだ。俺という存在がマヤノを翳らせているという事を理解したくなかった。逃げ道が欲しくて――おあつらえ向きの逃げ道があった、それだけの話だ」

「……それって、トレーナーちゃんは……マヤのことを信じられなかった、ってこと……?」


 そう言われて、俺は即座に違うと返すべきだった。……だが返せなかった。

 事実だ。何処までも真実だった。俺はマヤノのことを――ひいてはツインターボやスペシャルウィークのことを真に信用していなかった。

 信用しているならばこの不安についても話せたかもしれない。信頼しているならば、この絶望を分け合えたかもしれない。でも、それが出来ないほどに俺の心は弱っていて、そしてループの条件は凡百のトレーナーである俺には難しいと呼べるものだった。

 ふさぎこんだ理由は、それだけで十分だった。
550 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 02:51:57.22 ID:N44xGpXe0

「……だったら、トレーナーちゃんはどうしたらマヤのことを信用してくれる……?」

「難しい……と思う」

「……。どうして?」

「それは言えない」

「どうして言えないの?」

「それは……」

「――答えてよ、トレーナーちゃん! マヤは、マヤはトレーナーちゃんのことを信じて走り続けてきた! でも、急に信じられないって、そんなのあんまりだよ……。マヤは、マヤは、トレーナーちゃんが一緒に走り続けてくれるから走れたのに………。最初から全部嘘だったのなら、嘘だって早く言ってほしかったよ、トレーナーちゃん……」

「……っ! 嘘なんかじゃ――」

「もう、マヤ疲れちゃった。ね、トレーナーちゃん……。マヤはトレーナーちゃんにあんまりめーわくをかけないようにいい子にしてた。でもね、本当はもっともっとトレーナーちゃんとやりたいことがあったんだよ。一緒にお菓子作ったりとか、一緒に遊びに行ったりとか――」

「今ある思い出だけじゃ足りなかったんだよ。ブライアンさんのレースを見に行っていっぱいお話したことも、レースの後に興奮しちゃって抱き着いてたづなさんに怒られちゃったことも、海岸デートしていっぱいお話したことも、京都で他の子たちよりも頑張って一着を取って、トレーナーちゃんと一緒に喜んだこと、ネイチャちゃんがライバルになるからって無理して研究してそれを心配してたことも――。本当に大好きな思い出たちだったんだよ。もっともっとたくさんの大好きを作って――変なことがあったら笑いあって、悲しいことがあったら一緒に泣いて、一緒に喜んで、楽しんで、歩きたかったんだよ」

「我慢してた。だって、トレーナーちゃんは、マヤのために働いてくれてるんだって思ったら、これ以上望むのはめーわくになるから」


 気付けば、俺のズボンに大きなシミが出来ていた。それが、俺の脚を掴むマヤノの涙でできていたことは、確認しなくてもわかった。


「――ねぇトレーナーちゃん。嘘じゃないんだったら、トレーナーちゃんにとって、マヤとの思い出ってなんだったの……? マヤは思い出があるからトレーナーちゃんのことを信じれたし、頑張れた。でもトレーナーちゃんは……これでも信じられないって、マヤには話せないって言ってて……」

「それって、すごく悲しいよ……。なんか、マヤが一人ぼっちになっちゃったみたいで、寂しいよ、
トレーナーちゃん……」
551 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 03:36:41.75 ID:N44xGpXe0
―――

 寂しい。その言葉を聞いた時、まるで頭を殴られたような衝撃を覚えた。

 俺は孤独だ。正しく孤独だった。俺は凡人だ。正しく凡人だった。だから人に関わることは得意ではないし、関わってはならないとすら思っていた。――人に干渉して、その結果変わってしまったらと思うと恐ろしかったから。

 だから、何も話さないことが正解だと思った。職業が職業だから、ウマ娘とは仲を紡ぐことが大事だし、そこだけはきちんとこなすべきだとは思ったが、それ以上についてはやるつもりがなかった。

 それこそが最良だと思っていた。それこそが――彼女たちが望む道だと思っていた。

 でも、でも――目の前の光景を見て、それが確かだと言えなくなった。

 顔を覆って泣きじゃくるマヤノの姿はとても痛々しくて。とても――孤独だった。

 理解した。確かに俺は孤独だったけど、マヤノも独りぼっちだった。

 真に心を開かない俺のことをずっと心配している間、マヤノは独りぼっちだった。ずっと一緒にいる、ともに走ると誓っていたのに頑なに口を開かない俺を待っている間、ずっと独りぼっちだった。

 性質は確かに異なる。俺は環境が生んだ孤独で、マヤノは状況が生んだ孤独。でも、そこに何の差があるというのだろうか。寂しいという気持ちは、誰であっても変わらないものだというのに。

 ただ。ただたった一つ違うことがあるとするならば――マヤノは俺のことを信じていた。俺はマヤノのことを信じ切れていなかったのに。

 そのことが、ただただ痛い。でも、こんな痛みはマヤノの抱えていた痛みに比べればまだ優しい痛みだ。俺は――自分の状況を誰も理解してくれないと管を巻いて、絶えず発生する傷口を舐めていたが、マヤノは"待つ”――発生する傷口を真っ向から受け止め、それでも前を向いていた。


「……トレーナーちゃん?」


 そう考えると、心底嫌になった。こうして管を巻いている自分のことが。そして――今もなお傷付いているマヤノを、それでも放っておこうとした自分のことが――!

 こぶしを握って、それを強かに頬に打ち付ける。口の中が切れて、血の味が口いっぱいに広がる。目が覚めるような衝撃だった。裂傷が痛むが、そんなの関係ない。

 驚き目を見開くマヤノを――そんな資格はないけど、それでも俺は抱きしめた。細い体が冷え切っていて、触れる肌がとても冷たかった。暖房もつけずにこんな部屋にいたら当然だ。


「ごめん、マヤノ――!」
「え、え……?」
「俺は、自分の孤独にばっかり目を向けていて――結果的にマヤノのことを独りぼっちにしてしまった!」


 力強く、どこまでも力強くマヤノを抱きしめる。


「話しても信じてくれないと思ってた! 話したらマヤノがもっとつらい目に合うと思ってた! でも、でも……それがマヤノをもっと悲しませてたってことに、俺は気付いてなかった……」
「トレーナーちゃん……」
「マヤノ。やっぱり俺はお前のトレーナー失格だ」
「……そんなことない! だって、だってトレーナーちゃんは、マヤのことを頑張って育ててくれてた! 俺には何もない、って言いながらも、必死にあがいて、マヤのことを凄く考えてくれてた! だから、だから――」


 マヤノが、顔を胸にうずめて、小さく声を震わせる。煙のように消えそうな言葉で、たった一言呟いた。


「――だから、マヤのトレーナーは、トレーナーちゃん以外にありえないんだよ……!」


 マヤノはぎゅっと、服を掴んだ。……声だけじゃなくて、手も震えていた。いつもは元気に動いている耳も、尻尾もへたりこんでいた。その様子は、まるで捨てられてしまった子犬のようで。

 今更ながらに、自分が何をしてしまったのかを自覚する。これほど信じてくれた相手を切り捨てるような真似をした上に、あまつさえ泣かせてしまっている。

 真実を話しても許されることではないと思った。でも、それでもマヤノが認めてくれるのであれば、俺は彼女の隣にあり続けたいとも思う。見合わなくても、相応しくなくても。

 マヤノの信頼に応えたい。欠けてしまった信頼を取り戻したい。――そして何より、マヤノトップガンというウマ娘が駆ける夢を共に見ていたい。

 だから。


「俺は、マヤノのトレーナーになっていいのか……?」
「……マヤのトレーナーは、トレーナーちゃんしかいないんだから……! もう、もうぜったいに! 失格なんて言っちゃダメなんだから!」
「……ああ、ああ」
「だから、マヤから離れていかないで、嘘でも辞めるなんて言わないで……! ――ユー・コピー?」
「……。――アイ・コピー!」


 もう少し、もう少し秘密を話すのには時間が必要だと思う。でも、それでも――彼女が俺を信用してくれているように、俺もマヤノのことを信用したい。

 変化を恐れていては前に進めない。もう前には戻れないかもしれないけど――この先の道も、きっと悪くないって、なんとなくそう思えてきた。

 マヤノとともに歩くことで、俺はもっと、変化を恐れずに進むことができるようになる。

 ふと窓の外を見れば、雪が降り始めていた。――冷え冷えとした空気が満ちるが、不思議と寒くはなかった。……むしろ、少し暖かい。泣きたくなるほどに、暖かい空気が、瞳に満ちた――。
552 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 03:50:13.44 ID:N44xGpXe0
トレーナー「そういえば、マヤノはどうしてトレーナー室に居たんだ?」

マヤノ「……トレーナーちゃんに、クリスマスプレゼントを渡そうと思って」

トレーナー「……俺に?」

マヤノ「もう、ちょっと時間が過ぎちゃったかもしれないけど……クリスマスケーキをね、ネイチャちゃんと一緒に作ったんだ」

トレーナー「それで、俺に渡そうとトレーナー室に……」

マヤノ「うん。でも、時間が経ってぱさぱさに――」

トレーナー「これか?」

マヤノ「うん――って、トレーナーちゃん?! そんなに一気に食べたら喉がつまっちゃうよ〜!」

トレーナー「んぐ、あぐ……。うん、旨い――!」

マヤノ「ほんと……?」

トレーナー「マヤノが俺のことを想って作ってくれたものがまずい訳ないだろ? それに出来も丁寧で――何というか、愛情を感じる」

マヤノ「………いつもありがとうって、そう思って作ったケーキだったから、いまとっても嬉しい――!」

トレーナー「こちらこそ、いつもありがとうな」

マヤノ「えへへ、どういたしまして?」

トレーナー「……あのな、マヤノ。もしマヤノがよければだけど――年明け、どこかで一緒に過ごさないか?」

マヤノ「……え? ええ〜っ!?」

トレーナー「何というか、罪滅ぼしと言うか――。思い出作りたいって言ってただろ? だから、今まで作れなかった分、もっと作りたいな、と思ってだな。……いやだったか?」

マヤノ「いく、いく! いきます! はい! テイクオフはいつ?!」

トレーナー「……追って連絡するから、今日は帰って休めよ?」

マヤノ「アイ・コピー!」

トレーナー「……さて、ウマ娘と外泊するのは例がない訳ではないが難しい気もする――。まぁ、そこは、焚きつけてくれた人にお世話かけたついでに面倒見てもらうか。申し訳ないけど」

トレーナー「……あとで何か、お礼もっていかないとな」

―――

▼トレーナーの抱えるモノが消え去った。

▼トレーナースキル「共感覚」のヒントレベルが1上がった。

[共感覚]
真の意味でウマ娘と通じ合い、自身の持つ知識や経験などを余すことなく伝えることができる。
ウマ娘の所有する脚質、距離適性、スキルのヒントレベルを常に1上昇させる。
553 :いぬ ◆FaqptSLluw [saga]:2021/06/30(水) 03:51:03.20 ID:N44xGpXe0
―――

少しばかりお待たせしました。しばらくぶりの安価です。
何卒宜しくお願い致します。

下1 年明けをどこで過ごす?

―――
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/30(水) 04:46:10.18 ID:kG7VsLBs0
初詣行っておせち食って散歩しながらいっぱい話す
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/30(水) 04:51:31.17 ID:kG7VsLBs0
多かったら削ってくだち
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/30(水) 08:16:05.38 ID:94hhJT60o
おつおつ
マヤとの関係性も一歩前進…?
これ本当にループ辛くなってきたな……でもそれも楽しみにしてしまう自分もいる
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/30(水) 08:31:28.35 ID:UqDceANXO
皐月賞何がなんでも負けられなくなったな
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/30(水) 11:04:57.90 ID:Joj/Khpxo
難易度高はどのくらいなのか(恐々)
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/30(水) 11:28:50.31 ID:UqDceANXO
難易度中で2000が目標だったことを考えると難易度高の皐月賞は2500以上を要求されそう
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/06/30(水) 12:02:09.21 ID:WHz6hhVm0
原作でもそうだけど当然周りも時が経つと同じに成長するわけだから2500どころか3000くらい要求されるのでは
561 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/06/30(水) 14:29:27.52 ID:4yuz06gvO
難易度についてはある程度の基準があります。ただし、難易度の高い低いについては実数値で表している訳では無いので、多少差が発生します。

ここ数日はTRPGの予定が立て込んでいるので更新が遅くなるかもしれません。ご容赦を……。
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/01(木) 21:13:04.50 ID:iDWM8qKkO
このスレ、ゲーム以上に運が絡んでくるから余計に負けられないし、勝ったときの喜びが半端ないな
563 :いぬ ◆FaqptSLluw [saga]:2021/07/01(木) 21:39:13.68 ID:6xxdwZzC0
 あれから時間が過ぎて、12月は31日となっていた。
 
 例年は静かな年明けを過ごしていたのだが、今日は違う――。

 こたつに入って紅白を見ていると、ごそごそと何かが動いた。何度も試みられている以上、何をしたいのかはすでに理解していた。

 股を少し大きく、余裕を持って開けば、もぞもぞとしたそれは脚と足の間から顔を出す。


「トレーナーちゃん〜みかん〜」
「それくらい自分でむきなさい」
「え〜。でも、トレーナーちゃん今むいてるから……」
「なんで分かったんだ……?」


 ドヤ顔を浮かべ、マヤノはぴこぴこと耳を揺らした。……そういえば、ウマ娘の身体能力は人間の比ではなかった。みかんをむく僅かな音を聞き届けていたのだろう。
564 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/01(木) 21:41:35.92 ID:6xxdwZzC0
 あれから時間が過ぎて、12月は31日となっていた。
 
 例年は静かな年明けを過ごしていたのだが、今日は違う――。

 こたつに入って紅白を見ていると、ごそごそと何かが動いた。何度も試みられている以上、何をしたいのかはすでに理解していた。

 股を少し大きく、余裕を持って開けば、もぞもぞとしたそれは脚と足の間から顔を出す。


「トレーナーちゃん〜みかん〜」
「それくらい自分でむきなさい」
「え〜。でも、トレーナーちゃん今むいてるから……」
「なんで分かったんだ……?」


 ドヤ顔を浮かべ、マヤノはぴこぴこと耳を揺らした。……そういえば、ウマ娘の身体能力は人間の比ではなかった。みかんをむく僅かな音を聞き届けていたのだろう。
565 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/01(木) 21:43:20.48 ID:6xxdwZzC0
 切り取ったみかんの一切れをマヤノの口に持っていくと、ぱくり、と小さく口を開いて食べる。なんだか雛鳥の餌付けを思い出す光景だ。今の体勢からすると、どちらかというとマヤノは亀っぽく見えるが、それは置いといて。

 みかんを食べ終えたマヤノは、そのまま俺の体を掴んで、よじ登るように足の間にすっぽりと収まった。もぞもぞと僅かに動いて、最も収まりが良い場所に来ると尻尾をぱたり、と俺の太腿にかける。

 マヤノがそうなったら、彼女の頭を撫でる。それがなんとなく、直近のルーティーンになっていた。


「トレーナーちゃん、トレーナーちゃんって紅白派なんだ」
「……ん? ああ、いや。年末は特にテレビとか見てなかったし、どの番組を見なきゃいけない、ってわけじゃないよ。何というか、歌が一番無難かなって思っただけ」
「そっかー。マヤもあんまりテレビって見ないし……」
「今はスマホがあるもんな」
「ねー」


 マヤノの神を撫でるついでに、髪に指を通す。するりと指と指の間をすり抜ける髪の毛。いつだってマヤノの髪の毛は整えられていて、撫で心地が良い。かなり手入れされているのだろう。

 ふと、クリスマスプレゼントを渡していないことを思い出す。これだけ髪の毛が長ければ手入れも大変だろうし、少しでも楽になるものを選んで送ってあげようかな。


「トレーナーちゃんの撫で方って、あんまり上手くないよね」
「……。そう、なのか……?」
「マヤは好き! それに……上手かったらそれはそれでなんかヤだし……」
「……? よくわからんな……」
「あ、トレーナーちゃん! この人トレセン学園の先輩だよ!」


 そんな他愛ない会話を繰り返す。クリスマスの日の出来事なんて、もう影もないくらいにお互いの距離は近かった。
566 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/01(木) 22:03:09.32 ID:6xxdwZzC0
「マヤノ」
「ん〜?」
「俺、いつかマヤノとお別れしなきゃいけないかも」
「……。そっか、やっぱりそうなんだね」


 何となく想像がついていた、とマヤノは小さく笑った。でも、この話を切り出した瞬間、マヤノの体が少し震えたのを俺は見逃さない。――想像は付いていても、実際に聞いてしまうとショックなんだろう。

 マヤノのことを安心させるように頭を撫でると、強張った体から力が抜けていった。こちらのことを見上げる瞳は――少し潤んでいた。

 大丈夫だよ、と小さく笑う。マヤノが落ち着くまで、ゆっくりと、彼女の絹のような髪の毛に手を通していく。撫で方はうまくないが、これが俺らしさだ。これが好きで、安心するといってくれたマヤノのことを想うなら、これが正解だ。
567 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/01(木) 22:19:58.42 ID:6xxdwZzC0
「……落ち着いたか」
「うん」
「俺が抱えてたものは、簡単に言えば――"目標を達成しないとループする"という現象だ」
「……そっか。だからトレーナーちゃんは、最初からつらそうな顔をしてたんだね」
「わかってたか」
「マヤは何でも"わかっちゃう"んだから……。じゃあ、マヤは何人目のウマ娘なの?」
「――1回目がスペシャルウィーク、2回目がツインターボ、そして君が3回目だ」


 俺の脚の間に座るマヤノの表情は、よく見えない。ただ、声の調子でよくわかる。――これは、悔しそうなときの声だ。

 でも、それを発さないという事は――その感情は俺に隠したいものなのだろう。だったら、俺はつっつかない。伊達ではないが、もう10か月近く彼女と話してきた。……理由もなくマヤノが黙るはずがない。

 だから、静かに、静かに、俺はマヤノの言葉を待つ。
568 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/01(木) 22:27:52.17 ID:6xxdwZzC0
「トレーナーちゃんは、さ。ずっと後悔してたんだよね。トレーナーちゃんがウマ娘の未来を潰しちゃったって」
「……その通りだ」
「でも、本当にそうなのかな――?」
「……と、言うと?」


 そういうと、マヤノが俺の手に手を重ねてきた。心細そうに、マヤノの小さくて暖かい手が俺の指に伸びてくる。こちらからくるむようにマヤノの手を握ると、マヤノの尻尾が僅かに揺れる。リラックスしているときのサインだ。


「トレーナーって、ウマ娘にとって……その、すごーく大切な存在なんだよ。ウマ娘のことを第一に考えてくれて、いつでもそばにいてくれて、どんな時でも味方でいてくれる。どんなに敵が居たって、トレーナーさえいてくれれば、なんかがんばれちゃう気がする――。ウマ娘にとっては大事な人なんだよ、トレーナーは」
「……わかる気がする。そんな人が近くにいたら、確かに安心だろうな」
「だから、どんな結果であっても、トレーナーちゃんが近くに居たんだったら、その子たちはすごくうれしかったんじゃないかなぁ。すごくひどい負け方をしたって、足を折りかけたって、隣に――一番の味方がいるんだよ。マヤだったら嬉しいって思う」
「マヤノは――マヤノは、俺が傍にいてよかったと思うか?」
「とーぜん。じゃなかったら、大みそかまで一緒に過ごさないよ〜」


 いつもの声で笑うマヤノ。緊張がほぐれてきたようで、心拍も元のバイタルに戻っていた。
569 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/01(木) 22:30:31.05 ID:6xxdwZzC0
「だから、その子たちは――がんばろー、って思ったんじゃないかな」
「――。見捨てられた、とは思わないのか?」
「ううん。だって、一番の味方だよ……? 何か理由があっていなくなったんだ、って思う」


――そしてそれが多分、自分のせいなんだろうなって思う。

 マヤノの言葉を聞いているとき、俺の脳裏に浮かんだのはスペシャルウィークの姿だった。彼女は努力に努力を重ね、有馬記念の舞台に立った。もしかすると、その陰に"俺に対する後悔"があったとしたら――。

 とてもやるせない話だ。もう二度と会えないかもしれない相手を待ち続けるのは、とても辛いことだ。それが例え、数か月ほどの付き合いだったとしても。まして、世界で無二の味方だとしたら……。


「マヤは。マヤノは――もしそうなったら、耐えきれるか?」
「……わからない。でも、とってもつらいことだってことはわかる」
「そうか……」


 わかり切った話だ。仮にマヤノの言葉がすべて正しいことだと仮定して、スペシャルウィークもツインターボもあれだけの反応を示したのだ。二人よりも長い期間共にいるマヤノがどうなるか――俺にも想像できない。

 以前の俺ならば、ここで恐れおののいて焦りを強くしたかもしれない。だが、今の俺の中にあるのはたった一つの意思だけだ。

――勝たなければ。

 もうその炎が消えることはない。たとえ水を被ろうと、泥を啜ろうと。身を焦がすほどの熱は、いずれ歩む足が、心が折れるまで、消えることはもうない。

 人はそれを――決意と呼ぶのだろう。
570 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/01(木) 22:35:10.79 ID:6xxdwZzC0
「マヤノ」
「どーしたの、トレーナーちゃん」
「どうしような、俺もう負けたくないんだ」
「……。だったら、答えは簡単だよ」


――勝って勝って勝ちまくる!


 マヤノの掲げたそれは、酷くシンプルで――でも、だからこそ分かりやすい目標だった。


「はは、ははは! そうだな、それしかないな!」
「うん! 勝てばよかろうなのだ〜!」
「だったら、頑張ってトレーニングしないとな」
「うん、今だったら、マヤ、空の果てまで走れそう!」


 ぐ、とこぶしを握るマヤノの頭を空いた手で撫でる。もう慣れたものだ。

 ふと視線をテレビに戻すと、カウントダウンが始まっていた。もうそろそろ新年が始まりそうだ。

 最初にかける言葉は何にしようか――。

 そうして、新年は訪れた――。
571 :いぬ ◆FaqptSLluw [saga]:2021/07/01(木) 22:46:20.70 ID:6xxdwZzC0
トレーナー「年明け早々掛けた言葉、そりゃそうだろうなと思うかもしれないが"あけましておめでとうございます"なんだよな」

トレーナー「考える余地すらなかった。いや、そもそも人付き合いに何か考えを持ち込む方がおかしいのかもしれないが――」

トレーナー「ま、いっか。とにかく正月の過ごし方は……何というか豪華だった」

トレーナー「将来の展望について話したり、好きなものについての話をしたりした」

トレーナー「……ただ、ループした結果についてはまだ話せていない。でも、マヤノも俺がまだ何か話せていないことがあることに気付いている。……いつか、いつか話せる時が来るといいんだけどな」

トレーナー「あと、おせちを一緒に作って食べたりしたな。俺の料理の腕はお察しだが、マヤノの腕前はなかなかだった。結構頑張ったんだろうな――」

トレーナー「かなり充実したお正月だったが――正月太りだけが心配だ。ああ、心配だ――」


―――
下1 スキル習得コンマ
50以上で習得
50以下でスキルヒント
※ゾロ目の場合は追加ロール

下2 バッドステータス[太り気味]獲得コンマ
50以上で回避
50以下でバッドステータス[太り気味]付与
※ゾロ目は何かあります。
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/01(木) 22:48:16.53 ID:CxU5Ky24o
ほい
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/01(木) 22:49:22.21 ID:kpAB7jBfo
ボテ腹はNO!
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/01(木) 22:55:48.96 ID:0xTK3Bwqo
スピード練習できねえ!
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/01(木) 22:59:00.18 ID:CxU5Ky24o
まぁまずはライバル研究でしょ
難易度を少しでも下げておきたい
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/02(金) 09:47:18.70 ID:l1ZNeeOko
3人目って所に引っかかって曇るマヤノトップガンかな?
それにしても距離近くない……?はっこいつらうまぴょいしたんや!!
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/02(金) 10:55:23.98 ID:NwCxFll2O
この距離感はトレーナーとウマ娘じゃなくてもはや親子なんよ
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/02(金) 11:06:00.29 ID:rjh4ViLNO
俺このスレで曇らせの良さわかっちゃった!
579 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/02(金) 12:27:47.17 ID:EI55DdGNO
曇らせってどういうものなのか、今の僕には理解できない……(アンインストール)

挫折も成長への1歩ですからね、曇らせるつもりで書いている訳では無いのですが……それが皆様のご嗜好に合致したのであれば何よりです。
580 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/02(金) 18:48:21.67 ID:1Pw9Dhcg0
マヤノ「トレーナーちゃん、なんか体が重いよ〜……」

トレーナー「……見事に正月太りしちゃったな」

マヤノ「このままじゃ子豚になっちゃうよ〜!」

トレーナー(子豚になったマヤノ……それはそれでありかもしれんな……)

マヤノ「トレーナーちゃん、なんか今変なこと考えたでしょ!」

トレーナー「……そんなことはない」

マヤノ「見えた――嘘の糸!」

トレーナー「俺たちの世代だと"嘘をついている味"だったんだけどな」

マヤノ「じぇねれーしょんぎゃっぷ……」

トレーナー「年齢は重ねるもんじゃねーな―……」

―――

▼バッドステータス[太り気味]を獲得した

▼スキル[栄養補給]を獲得した

▼スキルヒント[食いしん坊]Lv1を獲得した
581 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/02(金) 18:58:26.24 ID:1Pw9Dhcg0
トレーナー「新年早々だが、マヤノとの関係性を疑われる声が増えてしまった」

トレーナー「どうやらナイスネイチャの態度から、俺とマヤノに何かがあったことがウマ娘たちにバレてしまったらしい。さすがにお泊りしたことはバレてないらしいが……」

トレーナー「そこはあれだ、上位者――理事長の権限が効いているんだろう。さすがだな、という気持ち」

トレーナー「ただ、視線が痛い……。あとマヤノのスキンシップが激しくなりつつあるのも問題かもしれない……が、今此処に至ってそれを指摘するのはすこし悪い気もする……」

トレーナー「どうしたものか。いや、どうする必要もないな」

トレーナー「俺たちは俺たちだ!! 第一スーパークリークのトレーナーはスーパークリークにお世話されてるっていうじゃないか」

トレーナー「時代は多様性の許容!!!」

トレーナー「……ふぅ。さて、今日は何をしようか」

―――
下1
トレーニング/お出かけ/休憩/保健室/スキル習得(ウマ娘)/スキル習得(トレーナー)/脚質上昇/ライバル研究/その他(良識の範囲内で自由に)
※皐月賞まであと9ターン(当ターン含む)
※休憩効果:次回トレーニング効果2倍
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/02(金) 18:59:51.87 ID:e0gAnNyRo
トレーニング二倍が次トレーニングするまで継続ならライバル研究
今回だけならトレーニングって良い?
583 :いぬ ◆FaqptSLluw [sage saga]:2021/07/02(金) 19:16:59.41 ID:1Pw9Dhcg0
休憩効果はトレーニングするまで継続します!
ので今回は研究ですね――。
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/02(金) 19:25:27.61 ID:e0gAnNyRo
ありがとうございます!
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