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【シャニマス】灯織「それは違います!」【ダンガンロンパ】

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1 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:03:28.09 ID:InZo0qy40
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※注意

・本作は「ダンガンロンパ」のコロシアイ学園生活をシャニマスのアイドルで行うSSです。
 その特性上アイドルがアイドルを殺す描写などが登場します。苦手な方はブラウザバックを推奨します。
・キャラ崩壊注意です。
・ダンガンロンパシリーズのネタバレを一部含みます。
・舞台は初代ダンガンロンパの希望ヶ峰学園となっております。マップ・校則も原則共有しております。
・越境会話の呼称などにミスが含まれる場合は指摘いただけると助かります。修正いたします。

以上のほどよろしくお願いいたします。
それでは開始します。

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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1613563407
2 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:04:29.16 ID:InZo0qy40





_____はじまりは希望で満ちた、最高の幕開け。




3 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:05:51.18 ID:InZo0qy40
澄み切った真水のような希望。
いつも通りの朝日に神々しさにも似た感動すら覚えるほどの希望。
その物語に、絶望が入り混じるなんて誰も思うはずもない、そんなすがすがしいまでの希望。

小学生が遠足に胸を弾ませるように、中学生が修学旅行にソワソワするように。
私たちはそのたびに、これまでにない期待を抱いていた。

果穂「合宿ー!合宿ー!」

あさひ「虫取り虫取りー!」

冬優子「あさひちゃーん?シートベルトはちゃんとしておこうねー?」

愛依「アッハハ!あさひちゃん、超エネルギッシュー!」

千雪「ふふっ、楽しみね」

(私たちはいま、283プロダクション所属の全ユニット合同での合宿イベントへ向かっている最中)

三峰「こがたんこがたん、こちらのお菓子はどうでしょう?」

恋鐘「油淋鶏味ポテトチップス?!こげんもんがあったと?!」

咲耶「おやおや……なにやら香ばしい香りがすると思ったら、お姫さまは一足先にブランチの時間かな?」

摩美々「ブランチにしてはがっつりすぎないー?」

霧子「ふふ……♪」
4 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:06:23.77 ID:InZo0qy40
(私はイルミネーションスターズというユニットに所属するアイドル、風野灯織。アイドルとして活動を始めてしばらく経つが、まだ慣れていないことも多い……同じユニットの仲間に助けられて何とかここまでやってきた)

めぐる「真乃!灯織!見てみて!これ!近くの山で鮎を釣って塩焼きにできるんだって!」

真乃「ほわっ……!すごいね、楽しそう!」

灯織「うん、釣った魚をその場で食べるなんてやったことがないから楽しみだね」

(合宿先はとある廃校を新たにレクリエーション施設として再建したところらしい。かつては多くの学生が通ったこの場所も、人口移動の煽りを受けたのか閉校して数十年になるとか)

めぐる「楽しみだね!希望ヶ峰キャンプ場!」

灯織「うん、今回はノクチルのみんなもいるから……前よりもさらに賑やかになるね」

雛菜「透先輩と円香先輩お菓子いる〜?」

透「……ぐが」

円香「……爆睡中。私もいらない」

小糸「と、透ちゃん……」

(私たちが283に来た時よりもメンバーも増え、合宿も賑やかになった。まだ完全に仲を深めているわけではないけど、ノクチルのみんなともやっていけるはず)
5 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:07:08.89 ID:InZo0qy40
めぐる「この合宿で、事務所のみんなともーっと仲良くなれたらいいね!」

真乃「うんっ!そうだね、めぐるちゃん!」

灯織「私も……みんなともっと親交を深められたらな」

めぐる「灯織なら心配ないよ!」

この旅も何か実りを生む、素晴らしい旅になる。
そう感じさせるような小春日和だった。

夏葉「あら?もうすぐトンネルみたいね」

____バスはトンネルに突入する。

低圧ナトリウムランプの橙色の光がバスの車内を満たす。
6 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:07:37.95 ID:InZo0qy40
それと同時だった。

(……あれ?)

歪む視界。目の前の座席はどんどんその渦へと吸い込まれていき、前後すらもわからなくなってくる。

(真乃……めぐる……?)

隣に目を向ける。

_____そこに座っていたはずの私の親友は、もうそこにいなかった。

(なん、で……?わた、し……一人……?)

思考すらままならないほどの眠気。
世界が溶けていくと同時に、私の意識もどんどん私の体を離れていき……そして……
7 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:08:03.93 ID:InZo0qy40





_____暗転。




8 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:08:48.92 ID:InZo0qy40
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PROLOGUE

わたしたちの絶望学園


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9 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:10:14.17 ID:InZo0qy40

灯織「……あれ?」

(いつのまにか眠っていた……?バスの中で真乃とめぐると話してて……うーん……思い出せない)

(…………え?)

重たいまぶたを開けると広がっていた世界。そこはバスの中じゃない、フローリングの床が広大なスペースに敷き詰められた、屋根の形は楕円に似たドームのような建物。それを一言で表すなら『体育館』。気づけば私は『体育館』に寝そべっていた。

灯織「な、なんで?!」

(授業中に居眠りなんかもしないのに、寝てしまった……?)

はじめは私が自分の学校で居眠りをしてしまったのかと思った。
だけど体を起こしてみるとそうではない。
私の通う高校とは似ても似つかない……それに、

灯織「み、みんな……?!」

辺りを見渡してみると真乃やめぐるだけでなく、事務所のみんながあちらそちらで同じように寝そべっている。

(……明らかに異常事態!)

事態が飲み込めない私はひとまず片っ端から起こしていくことにした。
10 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:12:33.05 ID:InZo0qy40
【イルミネーションスターズ】

(良かった、イルミネの2人も一緒だ)

灯織「真乃……めぐる……起きて、起きて……」

真乃「灯織ちゃん?ほわっ、ここ、どこだろう……」

灯織「ごめん、まだ私もまるで状況がわかってなくて……とりあえず2人の無事を確かめたくて……」

彼女は櫻木真乃。私の所属するユニット『イルミネーションスターズ』のセンター。
柔和な雰囲気のある彼女だけど、芯はしっかりとしていて、実直な女の子。
私がここまで来れたのも彼女のおかげ。かけがえのない友達だ。

めぐる「……んん〜?……ふわぁ…あれ、灯織?」

灯織「めぐる、おはよう。大丈夫?怪我とかは……」

めぐる「ん……?うん!特には大丈夫だよ!ありがとう!」

彼女は八宮めぐる。事務所内で一番付き合いも長く、信頼も厚い親友。
とっても社交的で、事務所のムードメーカー的な役割もこなす、太陽みたいな女の子。

めぐる「……わわっ!?どうなってるの?どこ!?」

真乃「さっきまでバスに乗ってたはずだよね……?」

灯織「うん、私も今気が付いたばかりで……何があったのかサッパリ……」

めぐる「ん〜……?ねえ、灯織……あのマーク、見覚えない?」

めぐるが指さしたのは体育館の檀上。その垂れ幕だ。
盾を模したように見えるそのエムブレムには確かに見覚えがある……

真乃「ほわぁ……バスの中で一緒に見た、希望ヶ峰学園の校章じゃないかな……?」

灯織「……あっ!」

確かにそうだ。三人で一緒に見ていたあのパンフレット。
その中心にでかでかと据えられていたマークと瓜二つ。ということは……

灯織「ここは希望ヶ峰学園……?」

めぐる「うん、多分そうなんじゃないかな?見たところ、ここも学校の体育館って感じだし!」

真乃「うん、きっとそうだよっ!……でも、なんでだろう、着いた時の記憶がないよ……」

真乃の言うとおり、なぜだか記憶がすっぽりと抜け落ちているような……
最後に見たのはあのバスの車内。なぜだか視界が揺らぎ始めて……
目が覚めたらここだ。

めぐる「誰かがみんなをここまで連れて来たってこと?」

灯織「うーん……だとしてもいったい誰が……?」
11 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:14:16.94 ID:InZo0qy40
【アンティーカ】

灯織「摩美々さん、咲耶さん、霧子さん……」

摩美々「……アレ?灯織ー……?」

咲耶「……おっとすまない、どうやら眠ってしまっていたようだね」

霧子「……あれ?ここは?」

アンティーカの3人。

摩美々さんは高校三年生。年は私よりも上なんだけど……かなり無邪気な方だ。私はよく摩美々さんの悪戯に引っかかって笑いの種になっている。今日こそは、と毎日思っているのだけど。

咲耶さんも高校三年生。スラッとした出立はモデル時代から変わらず。思わず見惚れてしまうようなそんな魅力的な方。気遣いも出来る方で、人としてあまりにも出来すぎている……すごい。

霧子さんは高校二年生。穏やかな性格で真乃や甜花と相性が良くてよく一緒にいるのを見かける。事務所の花に水やりなんかもよくしていて、霧子さんの作り出す和やかな環境はとても居心地がいい。

摩美々「灯織も床に寝っ転がってたんでしょー」

灯織「え?あ、はい……ついさっき気がついたばかりで……」

摩美々「ほっぺにフローリングの跡ついてるよー」

灯織「えっ?ほ、ホントですか?!」

咲耶「フフ、摩美々はいつでも抜け目ないね」

灯織「あ、う、嘘だったんですか?!」

霧子「ふふっ……♪」

咲耶「しかし……これは一体どういうことだろう?恋鐘と結華がいないようだけど」

灯織「はい……他のユニットもいない人がいるみたいで……」

咲耶「イルミネは揃っているのかい?」

灯織「はい……真乃もめぐるも無事で……ありがとうございます」

霧子「恋鐘ちゃん、今朝から張り切ってたから……もしかしてもうレッスンに行ってるのかな……」

摩美々「探しに行く?」

灯織「えっ、あ、どうなんでしょう……この場を離れてもいいのか……」

と、私が止めるか止めるまいか思案しているうちに摩美々さんは後方の大きな扉に手をかけていた。

摩美々「……開かない」

灯織「え?」

咲耶「おかしいな、私もやってみようか」

しかし、咲耶さんでも霧子さんでも、私でも扉はびくともしない。

霧子「外から、鍵をかけられてるのかな……」

摩美々「鍵って……なんの意味があるわけー?」

咲耶「私たちをこの部屋に閉じ込めたい……のかな」

摩美々「それってつまり監禁ってコト?」

灯織「か、監禁……」

咲耶「……あまり楽観視は出来そうにないね」
12 :各ユニット一レスに収めようかと思いましたが分量が多くなって読みづらいので分割します ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:16:36.74 ID:InZo0qy40
【アルストロメリア】

灯織「甘奈、甜花さん……!起きて!」

甘奈「んー……あ、灯織ちゃん……あれ?!ここ、どこ?!」

甜花「あれ……さっきまで、バスで寝てたのに……」

アルストロメリアの2人。
甘奈と甜花さんは双子の姉妹でとにかく仲が良くて、お互いがお互いのことが大好きって感じで。

甘奈はファッションが大好き。
事務所のアイドルともよく一緒に買い物に行ったり相談に乗ったりしている印象。

甜花さんはゲームが好きでインドアな性格ではあるけど、頑張り屋さん。
事務所の誰よりも「お休み」が好きだけど、やるときはしっかりやる人。

甜花「あれ?……千雪さんは……?」

甘奈「ホントだ!千雪さんがいない!」

灯織「えっ……?」

2人に言われてあたりを見渡す。

……ホントだ、千雪さんがいない、それに他にも283プロに所属しているアイドルでここにいる人と居ない人がいる。

甜花「千雪さん、どこ……?」

甘奈「大丈夫かな千雪さん……」

灯織「ふ、2人とも落ち着いて……!とりあえずは自分たちの状況を確かめないと、でしょ?」

甘奈「でも……甘奈もずっと眠ってたからまるでわからないし……」

13 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:17:25.10 ID:InZo0qy40
甜花「ああっ……!?」

甘奈「甜花ちゃん?!大丈夫、どうかした?!」

甜花「持ってきてたゲーム機、なくなってる……!!」

灯織「ええっ……?!ごめん……見てないや……」

甜花「うぅ……色違い、粘ってたのに……」

甘奈「甜花ちゃん、よしよーし……」

灯織「そういえば私もスマホが手元からなくなってるかも……」

甘奈「あ、ホントだ!甘奈の携帯も無い!」

灯織「どこかに落とした?にしてはこんなに全員が同時になんて……」

甜花「ハプニングイベント……?」

甘奈「ていうかそもそもカバンが無いよ?!」

灯織「……そういえば!あ、でもここが合宿先なら荷物は別で、送ってくれてるかもしれないし……」

甘奈「そっか……そうだよね!うん!」

(だとしても携帯が手元にないのはおかしい……)

(確かバスにいる時もポケットに入れていた気がするんだけど……)
14 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:19:00.46 ID:InZo0qy40
【放課後クライマックスガールズ】

灯織「樹里、チョコ、凛世……」

樹里「ん?……あれ、ここどこだ?」

智代子「むにゃむにゃ……樹里ちゃんそれはトッポだって……ポッキーじゃないよ……」

樹里「チョコ……呑気なもんだな全く」

凛世「灯織さん……ここは一体……?」

灯織「わ、わからない……私も目を覚ましたらここで……」

智代子「……はっ?!」

樹里「やっと目覚ましたかよチョコ」

智代子「あれ……?机いっぱいのチョコケーキは?!」

凛世「智代子さん……涎を拭き取ります……前へ……」

智代子「あっ?!ご、ごめんね凛世ちゃん!」

放課後クライマックスガールズの三人。

樹里は一つ上の高校二年生。言動は男勝りに取られがちだけど、面倒見のいい優しい人。
なにかとユニットを超えた交友も広く、年上だけど私も気兼ねなく話せる相手。

チョコは同級生で社交的な女の子。本人は自分のことを没個性な風に言うけれどそんなこと全然無い。
事務所のムードをいつも明るいものにしてくれる、かけがえの無い友達。

凛世も私と同じ学年だけど、大人びた雰囲気のある女の子。
ご実家が名家なのか慎ましい立ち居振る舞いは、独特なオーラがある。
15 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:19:44.75 ID:InZo0qy40
樹里「……ていうか夏葉と果穂がいねえな、どうしたんだ?」

灯織「さあ……?他にもこの場所にいない人たちはちらほらいるみたい……」

樹里「くそ、なんだってんだよ……訳わかんねえっつーか……」

(だいぶ取り乱してる……無理もない、最年少の果穂に最年長の夏葉さんが行方知れず)

(夏葉さんに次いでユニット内年長者の樹里はヤキモキしてしまうはずだ……)

智代子「果穂、大丈夫かな……」

凛世「プロデューサーさまは、いかがなされたのでしょうか……」

プロデューサーはおろか事務員のはづきさんの姿すらその場には無い。

智代子「ど、どうなってるの……?!まさか、誘拐……?!」

樹里「マジでそういう可能性も考えなきゃならねー段階にはなってんな」

灯織「だよね、どうにかして状況を把握しないと」

智代子「そ、そんな……」
16 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:20:49.29 ID:InZo0qy40
【ストレイライト】

灯織「……愛依さん、愛依さん!」

愛依「……あれ?灯織ちゃんじゃん、どしたのー?」

こちらはストレイライトの和泉愛依さん。
少々あがりやすいところがあって、アイドルと普段とでキャラクターを使い分けている。
普段は事務所のみんなを引っ張ってくれる優しいお姉さん肌の方で、私も頼りにしちゃってる。

灯織「あの、落ち着いて聞いて欲しいんですが……」

愛依「って何コレ?!どこ?!」

灯織「あ、あの……愛依さん……」

愛依「あー!ごめんごめん、灯織ちゃん!うち勝手に突っ走っちゃったね!」

灯織「い、いえ!お気になさらず!」

愛依「うーん、冬優子ちゃんがいたらこういう時頼りになるんだけど……二人ともいない系かー……」

灯織(ストレイライトでこの場にいるのは愛依さんだけ……あさひ、冬優子さん……無事、だよね)

17 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:21:36.89 ID:InZo0qy40
愛依「……てかアレ何?!」

灯織「え?……て、鉄板?!」

愛依さんが指さした先、本来なら太陽光を取り入れるための窓が付いていそうな空間には、鉄板が打ちつけになっている。

灯織「ど、どういうことなんでしょう……」

愛依「わかんないけど、なんか映画とかでこういうの無い?いっぱい人が閉じ込められて殺し合えーみたいな」

灯織「こ、殺し……?!」

愛依「あーウソウソ!!違う、違うの!」

灯織「び、びっくりしました……」

愛依「流石に現実世界なんだし、そんな事ないって!リラックスリラックス!ね?」

灯織「は、はい……」

(とは言ったものの、さすがに状況が状況……)

(窓に鉄板を打ち付けるなんて普通じゃない。一種の監禁状態……何に巻き込まれているの……?)
18 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:22:48.49 ID:InZo0qy40
【ノクチル】


灯織「あ、あの……大丈夫ですか……?」

???「え……?あ、灯織ちゃんだ……うん、大丈夫」

彼女は浅倉透さん。事務所内では一番新しいユニット『ノクチル』でセンターを務める。
『ノクチル』は幼なじみ4人組のユニットで、傍目で見ていてもかなり仲の良いユニット。
それ故に私なんかはちょっと話しかけるのに勇気が必要だったりするんだけど……

透「ここ、どこ……?あれ、バスは……?」

灯織「いえ……私にもまだ状況が飲み込めてなくて……」

透「ふーん…………」

透「…………」

透「…………おーい樋口ー、起きろー」

円香「……何?」

灯織「ひ、樋口さん……だ、大丈夫ですか……?」

円香「……何が?」

こちらは樋口円香さん。ノクチルのメンバーの1人で、センターの浅倉さんとは同級生で私の一つ年上になる。

その、なんとも近寄りがたいオーラを出している人だけど……優しい人ではあると、思う……多分。
19 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:25:05.92 ID:InZo0qy40
灯織「何、と言いますか……あの、その……フローリングの上で横になっていたので、体を痛めてたり……」

円香「…………大丈夫」

灯織「…………」

円香「大丈夫だから」

灯織「あっ、はい!すみません!」

透「んー……ここ、合宿所じゃないの?」

灯織「まだ、わかってないです……その、すみません……」

円香「…………とりあえず小糸と雛菜も起こしてくるけど?」

灯織「あっ、はい!お願いします!」

(うぅ……やっぱりまだイマイチ踏み込めない……)

小糸「え……あ……う……」

雛菜「あれ?どうしたんですか〜?」

灯織「い、今私も目を覚ましたばかりで……その……」

雛菜「そうですか〜……」

(う、うぅ……居た堪れない……)

市川雛菜さんに福丸小糸さん。この4人が揃ってノクチルになる。
市川さんはすごい独特の雰囲気を持っていて、自分の中に信念のようなものを感じる。
マイペースといえばそこまでだけど、他の人に左右されない強い芯があるってことだよね。
私も見習うべき点が沢山だ。

一方、福丸さんは少し私に似たところがあるのかな、あんまり人と話すのが得意じゃないみたい。
いつかゆっくり話してみたいと思っていたんだけど……
こんな状況下で、お互いそれどころではない……
20 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:26:01.35 ID:InZo0qy40
雛菜「あれ?雛菜が寝てる間にもう合宿先に着いてる?」

透「かな」

小糸「ぴぇっ……い、いつの間に……」

円香「……何?あれ」

灯織「……監視カメラ、でしょうか」

雛菜「え〜?防犯のためじゃないの〜?」

小糸「にしては数が多いような……」

透「いえーい、見てる〜?」

円香「ちょっと浅倉……不用意に近づかない」

(……自由!!)

(でも、あの監視カメラは実際なんのため?私たちの振り付けの確認用でもなさそうだし……)

(まさか、私たちを……?)
21 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:26:40.86 ID:InZo0qy40
灯織「とりあえず全員ここにいる人は無事だったね……」

めぐる「うん、みんな意識を失ってたから心配だったけど一安心だね!」

真乃「でも、事務所のみんなが揃ってるわけじゃないのはどうしてなんだろう……」

灯織「何が起きてるのか、とりあえずそれを把握しなくちゃ」

私たちがそのための一歩を踏み出そうとしたその瞬間。

【キィィィィィィン……】

小糸「ぴぇっ……?!」

円香「小糸」

摩美々「何ー?耳障りな音……」

愛依「これ、あっちのスピーカーから……?」

???『あー!あー!マイクテス、マイクテス!大丈夫?聞こえてるよね?』

突如流れだしたのは聞いているだけでゾワゾワした悪寒が走るような濁声。
突如押し込められた不可解な状況に困惑する私たちを嘲笑うかのように、それは突然始まった。
22 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:27:47.80 ID:InZo0qy40
???『オマエラ!おはようございます!本日は当希望ヶ峰学園の特別強化合宿プログラムにご参加いただきありがとうございます!』

(……は?)

灯織「……希望ヶ峰学園?!」

真乃「ほ、ほわっ……!この場所って希望ヶ峰学園なの……っ?!」

咲耶「特別強化合宿?聞き覚えがないね」

透「……」

???『本日よりオマエラにはこの希望ヶ峰学園で合宿生活をしてもらいます。つきましては、これより体育館にて朝礼を執り行います!』

円香「朝礼……?学校のつもり?」

雛菜「雛菜朝礼久々〜〜〜!」

小糸「雛菜ちゃんはもっとちゃんと出席しようよ……」

???『学園長直々にお話がありますので、耳の垢を前もってほじくっておくように!うぷぷぷ……学園長のお話の途中で居眠りなんかしようもんならどうなっても知りませんからね!』

甘奈「が、学園長……って」

甜花「もう、廃校になってたんじゃ、なかったっけ……?」

突然始まったアナウンスに動揺を隠せないみんな。
アナウンスの声はどこか戯けていて、私たちの不安を一層に掻き立てる。
____気づけば体は震えていた。恐怖心、不安、困惑……そんな感情が表出する。
23 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:28:55.73 ID:InZo0qy40
樹里「おい!てめーがアタシたちを監禁した犯人なのか?!舐めたことしやがって……!」

(樹里……!)

樹里「学園長だかなんだか知らねーけどさっさと姿を見せてみろ!」

???『……ちょっとちょっと!校内放送ぐらい黙って静かに聞けないの?!……はぁ、仕方ないなぁ。もういいよ、そっち行くから!せっかちだなぁ……もう、全く……』

それだけ言うとアナウンスはプッツリと切れた。

智代子「な、なんだったのかな?!今の?!」

凛世「……奇怪な、放送でございました……」

樹里「……ちっ、舐めたことしやがって」

灯織「じゅ、樹里……落ち着いて」

不可解なアナウンスに騒然としている私たち。
そんな私たちに思考の時間を与えないままに……事態は動き出す。

霧子「あ……!あっち……!」

霧子さんが指さしたのは体育館の檀上。
はじめは何を言っているのかわからず、首をかしげていた。


…………が、すぐに私たちはそんな感覚を喪失することになる。
24 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:31:50.33 ID:InZo0qy40





「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」

「オマエラお待ちかねの学園長、モノクマだよ!」




25 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:32:28.02 ID:InZo0qy40
(……え?)

思わず目を疑った。
体育館から競り上がってきて華麗に着地を決めたのは私の背丈半分ほどのぬいぐるみ。
左右で白黒に分かれたクマのぬいぐるみだった。

小糸「ぴぇっ?!?!」

甜花「く、クマの、ぬいぐるみ……」

めぐる「し、しかも喋ったー?!」

(……わ、わけがわからない!)

モノクマ「おやおや?クマが喋ることがそんなに珍しい?今時ペラッペラの板だって喋る時代じゃん?なにを今更?」

円香「どうせ何かスピーカーみたいなの埋め込んでるんでしょ」

モノクマ「むきー!ボクは自分の口で喋ってるんですけど!腹話術なんかやってないんですけど!」

透「なんかぬいぐるみの熊が喋る映画あったよね、あれみたい」

モノクマ「あんなR15のクマと一緒にするなー!」

愛依「な、なんの話してんの……?」
26 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:33:02.17 ID:InZo0qy40
モノクマ「それよりオマエラ、おはようございます!」

灯織「お、おはようございます」

樹里「丁寧に返さなくていいぞー、灯織」

モノクマ「健全な合宿生活に挨拶は欠かせません!まずは風野さんに一モノクマポイント!」

灯織「あ、ありがとうございます……?」

モノクマ「ポイントをしっかり貯めて、みんなで貰おう白い皿!」

凛世「……お皿?」

智代子「どこかのパン屋さんで聞いたみたいなキャンペーン?!」

摩美々「……いい加減本題に入って欲しいんですケド」

モノクマ「おっといけないいけない、思わず女子高生との桃色交流を堪能してしまっていたクマ……」

真乃「ほわっ……語尾もクマなんだ……」

摩美々「めっちゃ安直じゃーん」

モノクマ「むきー!人のアイデンティティを笑うんじゃなーい!」

突然現れた異様なぬいぐるみのクマは、まるで生きた人間のようなひょうきんな語り口で……
でもそれゆえに不気味で。そんなおちゃらけた様子のまま、マシンガントークを続ける。
27 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:33:45.71 ID:InZo0qy40
モノクマ「えーっと、オマエラはご存知の通り、希望ヶ峰学園主催の合宿プログラムに参加していただいております」

甘奈「甘奈身に覚えがないんだけど……」

咲耶「ちょっと待ってくれないかい?希望ヶ峰学園……私は既に数十年前に廃校になっていたと聞いているのだけど」

モノクマ「はぁ?何言ってんのさ、希望ヶ峰学園が廃校になるわけないじゃない!だってこの国の希望だぜ?未来だぜ?新時代のニューウェーブだぜ?」

モノクマ「まあそういうわけで、オマエラもここにいる限りは希望ヶ峰学園の生徒として参加してもらいます」

雛菜「雛菜転校しちゃった〜」

小糸「て、適応が早すぎるよ雛菜ちゃん!?」

モノクマ「で、肝心の合宿プログラムの内容とは!……この学校での共同生活でございます!」

甜花「共同、生活……?」

モノクマ「うんうん、要はお泊まり会ってことだね!オマエラももう慣れたもんでしょ!」

智代子「た、確かに何度か覚えがあるけど……」
28 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:34:31.50 ID:InZo0qy40
樹里「おい!」

モノクマ「はりゃ?」

樹里「合宿だっつーんならなんで果穂と夏葉、他にもいないメンバーがいるんだ?」

モノクマ「あーそれね……さっき言った通りだよ。ここが希望ヶ峰学園だから、それだけ」

甘奈「説明になってない……」

甜花「千雪さんは……?」

霧子「結華ちゃんと、恋鐘ちゃんも……」

モノクマ「希望ヶ峰学園は高等学校の教育施設!入学資格があるのは現役の高校生に限られるからね!お子さまとお姉さまに、このプログラムに参加する権利はございません!」

愛依「……?!ちょっ、あさひちゃんと冬優子ちゃんは今どこにいんの?!」

モノクマ「あーもう煩いよ!五月蝿いよ!ごかつばえい!」

凛世「モノクマさま、五月の蝿と書いて『うるさい』と……」
29 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:35:18.94 ID:InZo0qy40
モノクマ「あのねえ、なんでも聞けば答えてくれるほど世の中甘くないの!むしろそんなのレアケースだから!この世界は無関心無干渉の塊だよ!」

咲耶「あくまで教えないつもりかい?」

モノクマ「うぷぷぷ……まあとりあえずはボクの話を聞いてよ」


(……嫌な予感がする)


モノクマ「今回の合宿生活は、今までの合宿生活とは一味違います!」

モノクマ「と、いうのも……」
30 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:35:53.22 ID:InZo0qy40





モノクマ「その期限が……【一生】なのです!」




31 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:36:29.67 ID:InZo0qy40
(…………は?)

耳を疑った。何を言っているのか理解できず、呆然と立ち尽くす。
そんな私たちを他所に、モノクマは言葉を続けた。

モノクマ「おはようからおやすみまで、すべての瞬間をこの学校の中で過ごしてもらいます!オマエラのピチピチのお肌がおばあさんの皺皺肌になるまでず〜っと一生ね!」

モノクマ「大丈夫、資源も資金も潤沢にあるから生活には何一つ不自由はさせないよ!餓死なんかされてもつまんないしね!」
32 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:37:30.09 ID:InZo0qy40
円香「……くだらない」

(……樋口さん?)

円香「あなたが何者か存じ上げませんが、私たちをこんなところに監禁して、警察が動かないとでも?一生と言わずものの数時間でこんな生活破綻しますよ」

透「……あ、たしかに」

(……そうだ、間違いない。すぐにプロデューサーや両親をはじめとした、周りの人々が動き出す。私たちが今日から合宿なのも共有している情報だし……何も心配なんかいらない)

モノクマ「うぷぷ……」

モノクマ「ぷひゃひゃひゃひゃ!警察だって?2時間ドラマの開始10分でお手上げして探偵に泣きつくようなあんな組織をまだ信じてるの?」

円香「……はぁ?」
33 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:38:00.63 ID:InZo0qy40
モノクマ「悪いことは言わないから過度な期待はしないほうがいいね、ああ哀しき哉無情なる現実……」

モノクマ「外部からの助け?無い無い!ありえないよ!オマエラはここでの生活を受け入れるしか無いんだよ!」

真乃「そ、そんな……」

円香「……意味不明」

雛菜「え〜、ここで一生なんて雛菜嫌だ〜」

モノクマ「まあ、そうは言ってもこの学園で一生なんて嫌だ!私は出ていくんだ!そう思ってる子もいらっしゃるでしょう!ですので!」

モノクマ「特別にこの学園から出ていくための特別ルールを設けました!簡単な条件を一つ満たしさえすれば、その生徒は無事【卒業】!晴れてこの学園から脱出できまーす!」

灯織「そ、卒業?」

モノクマ「その条件も単純だよ?」
34 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:38:28.42 ID:InZo0qy40





モノクマ「誰か殺せばいいんだよ」

モノクマ「刺殺絞殺撲殺圧殺呪殺……殺し方はなんでもよし!フリージャンルで殺してちょーだいな!」

モノクマ「無事他の生徒の誰かを殺すことができれば脱出への道が開かれるのです!」




35 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:38:59.56 ID:InZo0qy40
(……は?)

(殺、す……?)

ダメだ、またしても許容量をあまりにも超えすぎている。耳から入ったはずの言葉がそのまま抜けていく。現実味がなさすぎる。

人を殺すだのなんだの……ドラマの中でしか聞いたことがない。

にわかに鎮まりかえる。

その場に居合わせた全員がつま先から頭まで抜けるこの寒気のような感覚に身動きが取れなくなっていた。
36 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:39:40.21 ID:InZo0qy40
モノクマ「あれあれ?反応が薄いなぁ…」

そんな中、最初に動いたのは樹里だった。

樹里「……ざけんな!いい加減にしろよ、さっきから黙って聞いてたら!」

灯織「……!」

モノクマ「なにさ、ご不満でもあるのかしら?」

樹里「大有りだ!殺すだのなんだの冗談にしても笑えねえ!」

モノクマ「ふーん……そっか、殺す度胸も無い臆病者の本性を取り繕うのに必死なんだね」

樹里「はぁ?」

モノクマ「いいよいいよ、女の子だもんね、そういう日もあるんでしょ」

樹里「なにわけのわかんねーこと言ってんだ!?」
37 : ◆zbOQ645F4s [saga]:2021/02/17(水) 21:42:11.66 ID:InZo0qy40
プッツリと樹里の中の何かが切れる音がした。
次の瞬間にはモノクマの胸ぐらを掴みあげる樹里の姿。

樹里「おい……ふざけんなよ、アタシだけじゃなくみんなまで巻き込んで……絶対に許さねえから」

モノクマ「うわー!やめろー!学園長への暴力は拘束違反だよー!」

わざとらしい悲鳴に、わざとらしい手足のじたばた。
モノクマの挑発的な態度に樹里の怒りのボルテージが上がっていく。

_____ブーッ!ブーッ!

だが、そんな素っ頓狂な動きの裏で急にけたたましいブザーの音が鳴り始める。

樹里「……ん?なんだこの音」

凛世「……っ!樹里さん……!」

樹里「……え?」

愛依「な、なんかヤバいよ!離れて!」

樹里「……は、離れろったって……!」

摩美々「早く!」

樹里「……ああもう!くそっ!」

樹里はその手に掴んだモノクマを体育館の天井めがけて投げ飛ばした!
ブザーの音は加速的に大きくなり、テンポが上がっていくと……
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