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【ミリマス】帰省できなかったシアター上京組の年末年始
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帰省できなかった年末年始 3/9
[sage saga]:2021/01/05(火) 22:31:34.87 ID:1nFF4fw90
そのまま歩き続けるひなたに、自然とジュリアはついてきた。寂しさに負けて大人に縋り付こうとしている自分に仲間ができたようで、ひなたは安心感を覚えていた。北海道に帰るのをやめた自分と同じで、ジュリアも福岡に帰るのは控えたのだと、道中で話してくれた。
「一度ぐらいは家族に会わない正月があってもいいかな、って思ってさ。それに、西日本の雪が酷いみたいで、飛行機が欠航になっちゃってるらしいから、どっちみちあたしは帰れなかったな」
明るい調子で話すジュリアの声を聞きながら歩いていると、もう事務所の入り口へ続く階段の前だった。狭い雑居ビルに二人分の足音を響かせながら階段を上った先に、さらに一人、お仲間が立っていた。
「木下さんに、ジュリアさん……どうしてここに?」
「いや、まぁ……なんていうか、暇だったから。ムギは実家に帰るんじゃなかったのか?」
「その予定だったのですが、大雪で北陸新幹線が動かなくなってしまい、急遽取りやめたのです」
「あっ、そういえば、新幹線も運休になってるって、朝のニュースでやってたわぁ」
「それで、仕方無く家に戻ることにしたのですが……」
紬がキャリーケースに視線を落とした。
「……『また』逆向きの電車に乗ったのか?」
「ちっ、違います! 降りる駅を間違えただけです! 気が付いたのが、改札を出た後だったもので」
「しかたないよぉ。東京の電車、なまらややこしくて、わけわからんからねぇ」
「いや、東京来て結構経つんだし、そろそろ慣れろって。……ほら、こんな所で立ち話してないで、入ろうぜ」
先に扉を開いたジュリアに促され、紬の後に続いてひなたがドアをくぐった。一枚の壁を隔てた先は暖房が効いていて暖かかったが、時々隙間風のように冷たい空気が通り過ぎていく。視界の奥で、窓が半開きになっていた。
「お、三人揃って来たのか。お疲れさん」
応接スペースのソファに腰掛けながら、プロデューサーが蜜柑の皮を剥いていた。テーブルの上には残骸が二つ三つと転がっている。
「歩の実家から愛媛ミカンが箱で送られてきてさ。わざわざ農家から買ってくれたらしいんだ。いっぱいあるから摘まんでいいぞ」
「開口一番におっしゃることがそれとは……私達が、食い意地の張った娘達だとでも、お思いなのですか?」
「ちょうど甘いものが欲しかったんだわぁ。実が詰まってて美味しそうだねぇ」
「お、これでかくて美味そうだな。これにしよう」
「……」
「紬も食べたそうな顔してるじゃないか。遠慮するなって」
「……もう」
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