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梨子「久しぶりに音ノ木坂に来た」
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2 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:48:23.55 ID:A9598kCr0
梨子「ふふっ…あ、そう言えば。この胸像って、こんなに動いてたっけ?」
こころ「え?」
ここあ「あんなに重そうなのに…本当ですね、ズレてます」
こころ「不思議ですね」
梨子「不思議よね…」
???「……あら、うちの生徒達と…どうしたの?」
梨子・こころ・ここあ「「「理事長」」」
理事長「矢澤さん達に…桜内さん、ピアノにライブに頑張ってるみたいね」
梨子「ありがとうございます」
理事長「私の胸像の前でどんなお話してたの?」
梨子「実は、ここがズレてるようでして。こんなに重たい胸像なのに、おかしいなって」
理事長「………え?」バッ
理事長「本当だわ!? ズレてる…まさか…」ググググググ
こころ「ちょ、そんなに重たいものを一人で動かすのは……」
理事長「ふぬぬぬぬぬ!!!」ゴゴゴゴゴ
理事長「だあっ!」ズゴッ
梨子「……蓋の外れた、木箱?」
梨子(まるで、何かを封印してたように和紙で包んでた…でも和紙は剥がされ、蓋は開けられ)
理事長「なん…て…こと」サーッ
梨子「理事長、もしかしてこれは悪いモノでも封印していたのですか?」
理事長「…………ええ」
こころ「それって、まさか」
こころ「いつかの雪穂さんの…」
理事長「その、まさかよ」
梨子「矢澤さん、なにか知ってるの?」
こころ「詳しくはおねえさまたちも教えてくれませんでしたが」
理事長「…桜内さんも知るべきね。スクールアイドルをしているから」
理事長「スクールアイドルやそれに近しい女子生徒は、まさに奴の最高の好物だったのよ」
3 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:50:05.78 ID:A9598kCr0
*一週間前
イタリア・ローマ 礼拝堂
鞠莉(静かな場所だ――――――だけど、とてもきれいな場所だとも感じた)
鞠莉(私が洗礼を受けた場所、だから訪れるのは何回目かは解からない。だけれど、その記憶はさすがに古すぎたのか、曖昧)
鞠莉(それでも、ここに来た事があり、ここで愛されたという微かな何かが、私をこの場所へと更に招き寄せた)
鞠莉(奥の扉が開いて、人影が幾らか出てきた。聖職者かそれに準ずる人たちは次々と、脇によけた私に軽く会釈をしてから外へと出ていく。そして、最後に二人、人影がその扉付近で立ち話を始めた)
司教『はるばるありがとう、辛い記憶を掘り起こすような事ではあるが、必要な事でもあるのだ、許してほしい』
???『司教様、顔を上げて下さい。私の経験がお役に立てるのであれば、それで良いのです。あの時の弱い私を見返す事も、私には必要な事ですし』
鞠莉(どこか聞き覚えのある声だな、と視線を向けた)
司教『そうしてくれると助かる。もう数日、次は講義に参加してもらう事になるが…』
善子『はい。学んだ事を必ず日本に持ち帰ります』
鞠莉「…善子?」
善子「……鞠莉じゃない」
司教『おや、友人かね。おや……』
司教『昔、洗礼を施した子じゃないかね? ホテルオハラの』
鞠莉『わ、私に……ですか? はい、ホテルオハラの』
鞠莉(意外な繋がりがあるものだった。この司教様は私に洗礼を授けた人その人だったとは。そんな人が善子とローマの礼拝堂で話しているというのも、奇妙な縁だ)
鞠莉(司教さんは少しだけ話した後で後は友人同士で、と去っていった。しかし、善子がイタリア語にそこまで精通していたとは驚きだ)
鞠莉「意外ね。イタリア語、ネイティブと変わらないほどじゃない」
善子「そうでもないわ。勉強に迫られて、よ」
鞠莉「最近連絡取れない理由はイタリアにいたからなのね?」クスクス
善子「ええ…それなんだけど」
善子「変圧器、持ってない? 忘れちゃって」
鞠莉「ああー…規格が違うから充電できないものね」
4 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:51:11.65 ID:A9598kCr0
数時間後 日本
花丸「不気味な、壺ずら?」
ルビィ「うん。なんか東京の業者さんがお父さんと話した時に贈り物にって、持ってきたんだって」
ルビィ「でも、壺にしては蓋は硬くて開かないし、なによりデザインが不気味で…」
ルビィ「最初は客間に置いてたんだけど、お手伝いさん達が客間に居続けると体調を崩しちゃって…それで来たお客さんもそういうから」
ルビィ「贈り物なだけに送り返すのも変だし、もしかしたら壺以外が原因かも知れないから、少し見てもらおうと…」
花丸「マルのお寺はそういうのは苦手みたいだけど、お父さんと…そうだ、聖歌隊の牧師さんにも聞いてみるずら」
ルビィ「ありがとう、花丸ちゃん!」
花丸「それにしても善子ちゃんは今日もお休みみたいずら」
ルビィ「LINEも既読がつかな…あれ?」
鞠莉『チャオ〜☆ ちょっと用事でイタリアに来ているんだけど、アンビリバボーな出会いが会ったの!』
鞠莉『まさかローマで善子に出会うとは思わなかったわ! 善子も用事で来てるみたい、マリーは明後日には戻れそう!』
鞠莉『シャイニー☆』
果南『そう言えば善子とは連絡が取れないけど、ローマにいたんだ〜』
ダイヤ『まったく、練習もあるのに無断で出かけるとは…』
鞠莉『変圧器をプレゼントしたからもうしばらくしたら善子とも連絡取れる筈よ』
梨子『よっちゃん、変圧器忘れて充電切れたのか…』
千歌『善子ちゃんだもんね』
曜『善子ちゃんだもんね』
ルビィ「善子ちゃん…」
花丸「いつも通りずら…」
ルビィ(でも、なんでローマに?)
花丸(鞠莉さんも偶然会ったって言ってるほど)
花丸「あ、お父さんが帰ってきたら、とにかく壺について聞いてみるずら」
ルビィ「う、うん。お願い」
5 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:52:46.92 ID:A9598kCr0
*五日前
黒澤家
花丸パパ「壺…ですか」
牧師「確かに、壺にしては奇抜」
黒澤パパ「やはり、変ですか」
花丸パパ「重い空気を感じます」
牧師「……正直、触るのを躊躇いたくなる。内浦に置いておいていいものではないかも知れません」
黒澤パパ「その予感は当たっているかも知れません。実は…」
黒澤パパ「持ち込んだ業者と、連絡が取れません」
牧師「なっ…!」
花丸パパ「それは……」
黒澤パパ「……あまり置き過ぎては、災いの元になるかもしれない…申し訳ありませんが」
花丸パパ「そういうお祓いはどうにも専門外ですが…基礎的な事ならば。教会さんは?」
牧師「ある程度の悪魔祓いは習ってはいますが、実際の経験となると」
黒澤パパ「それならば、本職の方を探す他」
花丸パパ「はい」
牧師「連絡を取ってみましょう。それまでは…どこか、人が触れづらい、近づきがたい場所に」
花丸パパ「もしくは監視役を」
黒澤パパ「実は先日、家令も体調を崩してしまって……」
花丸パパ「……ひとまず、庭の蔵にでも置きますか?」
牧師「誰かが何かしら見るようにしておきましょう」
黒澤パパ「お二方、ご迷惑をおかけします」
黒澤パパ「ダイヤ、お二人を送ってくれ」
ダイヤ「はい、お父様」
ガタガタガタガタッ!!!
「「「「!?」」」」
黒澤パパ「…壺が…」
花丸パパ「動いた…?」
牧師「…こ、これは……と、とにかく。庭の蔵にこいつを移しましょう」
花丸パパ「はい」
牧師「副住職はそちらを……ダイヤお嬢様、念のため離れて下さい。何があるかもわかりません」
花丸パパ「ルビィお嬢様にも近づかないように念押しを」
ダイヤ「わかりましたわ…お気をつけて」
黒澤パパ「なんでもない筈なんだ…なんでも…」
ダイヤ「お父様…」
ルビィ「お父さん…」
黒澤パパ「二人は部屋に戻っていなさい。それと庭には近づかないように」
6 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:54:14.28 ID:A9598kCr0
*三日前
放課後 屋上
ダイヤ「三年生どころか、学校全体で、欠席者が多い?」
鞠莉「イエス! 昨日も多かったらしいけど、今日は更に増えたそうよ」
千歌「二年生も休んでる子多くて…」
曜「インフルエンザが流行る時期でもないのにね。グラウンドも放課後だというのに、ご覧の通りであります」
果南「うーん、閑古鳥」
花丸「一年生も……それどころか、普段のっぽパンを買ってるお店のおばあちゃんもお休みずら」
果南「あー…うちの近所の店も休んでるとこ増えたよ、ここ数日」
千歌「実は志満姉も寝込んでるの。ここしばらく体調悪いみたいで、私もお手伝いが増えて…」
梨子「しいたけも元気ないみたいで…」
ルビィ「善子ちゃんもいないし、千歌ちゃんお手伝いあるなら、今日はもう練習切り上げたらどうかな?」
ダイヤ「…そうですわね。皆体調を崩すなんて、無理は禁物ですわ」
ダイヤ「それと花丸さん。少しお話がありますわ」
花丸「ずら?」
果南「およ、内緒話?」
鞠莉「ルビィの事で心配なのかも?」
果南「ダイヤはルビィが大好きだからかなーん?」
ダイヤ「お黙り」
ダイヤ「さっ! 皆さん、帰りますわよ!」
梨子(…なんだろう、この嫌な予感)
梨子(忘れよう…気のせいよね、きっと)
梨子「あ、練習と言えば…明日から月曜日まで、私休みます」
梨子「東京の親戚の家に出掛けなければならなくて…」
ダイヤ「あら、お気をつけて梨子さん」
千歌「梨子ちゃん、お土産よろしくー」
果南「あ、雷おこしお願い」
梨子「大丈夫ですよ、果南さん」
梨子「ひよこ饅頭買ってきますから!」
千歌「ひよこ饅頭かぁ…果南ちやんは頭から丸かじりするから」
曜「そういう千歌ちゃんは皮を剥いで食べるのです」
梨子「普通にお尻から食べなさいよ、千歌ちゃん」
果南「いや、頭から食べようよ」
ワイワイ
ダイヤ(…どうしましょう、スカイツリーごまたまごが食べたいなんて言えませんわ」
梨子「ダイヤさん、心の声が漏れてます」
7 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:56:04.68 ID:A9598kCr0
帰り道
ダイヤ「今夜は花丸さんのお父様が来て下さるとのことですが」
花丸「うん。マルが帰ったら出掛ける予定ずら」
花丸「マルはその壺を見てないけど、ダイヤさんとルビィちゃんが危ないかもとは聞いたずら」
ルビィ「そうみたい…」
ダイヤ「…その事で、牧師様が今朝、電話をかけてきて悪魔祓いの経験ある方を連れてきてくださるとか」
花丸「おお! それなら安心ずらね!」
ダイヤ「とはいえ、何が起こるか解らないので、念には念を、とルビィを一晩、花丸さん家に泊めて下さらないかしら? 明日は土曜日で学校もありませんし」
ルビィ「お姉ちゃんは本当にいいの…? お父さんはお姉ちゃんも行った方がって…」
ダイヤ「専門の方が来て下さるのですから、心配ありませんわ」
花丸「そうずらか…?」
ルビィ「うん、そうだよ。お姉ちゃんも…」
ダイヤ「誰かが見ていなければいけませんわ」
ダイヤ「花丸さんには花丸さんのお父様や牧師様の事でご迷惑をおかけしておりますもの」
ルビィ「お姉ちゃん…」
ダイヤ「とりあえず、ルビィは荷物を取りに行くとして、申し訳ありませんが花丸さん、少し家まで…」
花丸「ダイヤさんも念のため来た方が…」
ダイヤ「花丸さん、心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。花丸さんのお父様も牧師様もいらっしゃいますし」
ダイヤ「梨子さんがスカイツリーごまたまごを買ってきてくださるのを楽しみにしましょう」
ルビィ「あ、梨子ちゃんからLINEが」
梨子『どうしよう、スカイツリーに行く予定が無いってダイヤさんに言えない…』
梨子『東京駅グランスタで美味しそうなお菓子をお土産に買ってきたら喜んで貰えるかな?』
ダイヤ「ふふっ、もちろん嬉しいですわ。期待しておりますわよ…と」
梨子『追伸。ルビィちゃんは独り占めしないように』
ルビィ「ピギィ!」
8 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:57:07.15 ID:A9598kCr0
黒澤家
ダイヤ「ただいま戻りましたわ」
ルビィ「ただいまー」
花丸「お邪魔します」
黒澤パパ「いらっしゃい」
花丸パパ「先に来ているよ」
ダイヤ「牧師様と悪魔祓いの専門の方は…?」
黒澤パパ「もうじき来る頃だよ」
花丸パパ「それでは、ダイヤお嬢さんとルビィお嬢さんは花丸と一緒に…」
ダイヤ「私は残りますわ」
黒澤パパ「ダメだ。行きなさい、ダイヤ」
ダイヤ「しかし」
黒澤パパ「黒澤の家を継ぐものとして責任があるのは判る、だが駄目だ。可愛い娘を危険にさらせない」
ルビィ「お姉ちゃん…」
ブロロロロ
黒澤パパ「来たようだ…」
牧師「お待たせ致しました」
花丸「牧師様とはだいぶ違う格好ずらなぁ…」
牧師「ええ、カソリックの神父様ですし」
ダイヤ「あれ? 確か、牧師様の所は…」
牧師「うちはプロテスタント系ですね。やはり都会ではないのもありますので、その手の悪魔祓いはカソリックさんの方が強い」
神父「こんにちは。お邪魔致します」
黒澤パパ「お忙しい中ありがとうございます」
神父「いえ、こちらこそ……庭、ですか」
黒澤パパ「ええ、庭の蔵にあります」
花丸パパ「では、見に行きましょう。花丸、ダイヤお嬢さんとルビィお嬢さんと共にもう帰りなさい」
花丸「…マル、なにか怖いずら」
牧師「大丈夫だ、神父様もその為にいる」
神父「………!」
黒澤パパ「どうし…」
9 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 09:59:40.50 ID:A9598kCr0
ガタガタガタガタガタガタッ!!!!!
花丸パパ「いっ!?」
牧師「く、蔵全体が揺れて…」
神父「まずい」
神父「お嬢さんたちはすぐに逃げなさ…」
バーンッ!
黒澤パパ「蔵の扉が!」
ちゅううううううううううううううううううううん!!!!!!!!!
花丸(なにあれ、グレーの塊? 顔? 鳥?)
花丸(恐ろしく怖い…怖い!)
おやつ…おやつにしてやるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!
いいおやつを見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
花丸「ッ…ルビィちゃん、ダイヤさんっ!」
ルビィ「ぴぎっ!?」
ダイヤ「ルビィ、危ないっ!」バンッ
ルビィ「お姉ちゃん!?」
ダイヤ「くっ…!!! ルビィ、逃げ…」
神父「お嬢さんから離れろ! 聖水を今…」
黒澤パパ「ダイヤ!? ダイヤ!? う、浮いて…」
ダイヤ?「…ふふ……そんな程度じゃ、倒せない!」
バーン!!!
神父「ぐわあああああああああああああ!」ズルズル
牧師「神父様!?」
黒澤パパ「む、娘から離れ…」
ダイヤ?「どけぇ!」バーン
黒澤パパ「ぬおおおおおおおお!!!」
ルビィ「お、お父さん!」
花丸パパ「二人とも逃げなさい! 喝ーっ!」
ダイヤ?「ちっ、結界だと!? 東洋の神秘め!」
牧師「はぁっ、はぁっ…黒澤さんと神父様はどうにか外まで出したが…」
ダイヤ?「これでも食らえぇぇぇぇ!!!」
花丸パパ「なっ…門扉が…うわあああああああああっ!!!」
牧師「ぎゃああああああああ!!!」
ガシャーン バゴーン ドサッ バタッ ガッチャーン
花丸「…ルビィちゃん、逃げるずら!」
ルビィ「で、でも、お父さんたちが…!」
花丸「マルの家まで走るずらよ!」
ダッダッダッ
ダイヤ?「……本命に逃げられたか…この娘もなかなか悪くはないけど…」
ダイヤ?「だが、最高のおやつ…逃がさない…ルビィ…」
10 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:01:36.47 ID:A9598kCr0
数時間後 花丸宅
花丸(神父様を連れてきた車の人達が救急車を呼んでくれたそうだ)
花丸(ダイヤさんとルビィちゃんのお母さんやお手伝いさん達は被害に遭わなかったものの、ダイヤさんに憑りついたなにかは相当暴れた)
花丸(マルのお父さんが結界を貼ったお陰で黒澤家からは出られないらしい)
花丸(しかし、神父様も牧師様も、マルのお父さんも、ダイヤさんとルビィちゃんのお父さんも、皆入院が必要なほどだという)
花丸(そして、今、来た牧師様の奥さんが言うには、神父様も結構な悪魔祓いの人らしく、すぐに代わりは呼べないという)
ルビィ「……」
花丸(そう、ダイヤさんはなにかに憑りつかれてしまった。ルビィちゃんを庇って)
花丸(どうすればいい。千歌ちゃん達にこんな事を相談しようにも、難しい)
花丸(そうだ、鞠莉さんなら…)
花丸「鞠莉さんに、連絡してみるずら」
ルビィ「して、どうするの」
花丸「鞠莉さんのホテルは世界中にあるずら。もしかしたら悪魔祓いに優れた人を知ってるかも…」
ルビィ「でも、神父様も相当な人だったんでしょう? 呼んだ人が同じように…」
花丸「わからない。けど、マルはすがりたい」
花丸「ダイヤさんを助けなきゃ」
ルビィ「……そう、だね。鞠莉さんに、LINEしてみる」
11 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:02:43.48 ID:A9598kCr0
花丸(それから十五分も経たないうちに)
果南「…ダイヤは!?」
鞠莉「神父様を呼んだと聞きましたが、どんな方を!?」
ルビィ「果南さん、鞠莉さ…うぅ……」
鞠莉「よしよし…ルビィ、落ち着いて」
果南「……不気味な壺、か」
鞠莉「壺を持ち込んだ業者を小原グループの総力を挙げてとっちめてやるわ!」
花丸「牧師様が連れてきたのはこんな神父さんずら」
鞠莉「……!」
果南「どしたの?」
鞠莉「…私も知ってる人よ。前に北海道のホテルで、祓ってもらった」
ルビィ「鞠莉さん家のグループも認める凄腕が…一瞬で?」
鞠莉「代わりを探すしかない…どうにかね」
ルビィ「……お願い、します。お姉ちゃんを…どうか」
果南「ルビィ…」
ルビィ「果南さん…震えて…」
鞠莉「………そうよね」
果南「……からかわないんだ?」
鞠莉「ダイヤが悪魔に憑りつかれたなんて…想像もしたくないわよ…」
果南「……でも…でも…!」
ルビィ「…はい…!」
鞠莉「残酷だけど、現実」
ピロンッ♪
善子『マリーからLINEが来たわ。やばいわね』
善子『なるべく急いで帰るけど…今日はまだ立てそうにない』
善子『自分の不幸がこの時程辛いと思う事はない』
善子『ルビィ。希望を捨てないで』
善子『黒澤ダイヤは、強い人よ』
善子『ずら丸も、ルビィの事は支えて。それと間違っても無茶はしないように』
善子『ルビィ、見てる? ずら丸が悪魔を払うなんて言い出したら止めるのよ。あなたもね』
善子『悪魔祓いは簡単じゃない』
善子『とにかく、悪魔祓いをするなんて言わないように』
善子『ちょっとなんで既読がつかないの!? ルビィ、気持ちはわかるけど…』
善子『ずら丸も一人で抱え込まないように!』
12 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:05:21.07 ID:A9598kCr0
ダイヤ?「ルビィ、いらっしゃい? お姉ちゃんとアイスを食べましょう」
ルビィ「違う…お前はお姉ちゃんじゃない! お姉ちゃんを返して!」
ダイヤ?「逃がさない…逃がさない!」
花丸「ダイヤさんから離れるずら! 真言を…」
ダイヤ?「足止めにはなっても、倒せはしない!」
花丸「く…い、息が…」
花丸「あ、あれは………卒塔婆、ずら? まるで、槍のように…」
ダイヤ?「お前を殺してこの娘の全てを奪い、ルビィをおやつにする!」
花丸「や、いやぁぁぁあああああああああああああああ!!!!」
*土曜日 二日前
花丸「ああっ!?」
花丸(一夜明けた……なんて、酷い夢…)
花丸(ダイヤさん……)むくり
花丸(あんまり寝た気がしない……身体も重いし、食欲も…)
花丸「…ルビィちゃ…いない…」
花丸「まさか!?」ガタッ
ガラっ
「おは…ぴぎぃっ!」
タタタタタッ
ルビィ「花丸ちゃん! 花丸ちゃんのおばあちゃんが…!」
花丸「る、ルビィちゃん!? ど、どうしたずら?」
ルビィ「きゅ、救急車を…!」
ルビィ「花丸ちゃんのおばあちゃんが苦しそうなの! は、はやく、救急車を!」
花丸「う、うん! ま、マルの…」
13 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:06:51.44 ID:A9598kCr0
花丸(ルビィちゃんに代わりにお留守番をしてもらい、マルのおばあちゃんも病院に運ばれた)
花丸(酷い熱も含めた風邪のようだ…だが、お医者様から聞いたことは)
花丸(ここ一週間程、体調を崩す人が増えているという。入院した人も少なくない)
花丸(おじいちゃんやお母さんにルビィちゃんが寂しくないように、と先に帰るように言われて病院の出入り口まで来た時)
花丸(駐車場で、辛そうな志満さんを支える美渡さんと千歌ちゃんがいた)
千歌「あ、花丸ちゃん!」
美渡「大声出さない、病院。こんにちは、花丸ちゃん」
花丸「こ、こんにちは…」
花丸「志満さんも、お医者さんに、ずら?」
千歌「うん…なんかね、泊まりに来た人も体調悪いとか言って…」
美渡「そう。うちの会社でもこの辺に住んでる人が病欠続出でねー」
千歌「曜ちゃんもお母さんが体調悪いみたいで…」
美渡「そう、志満姉を送ったら次は曜ちゃんとこのお母さんだね」
千歌「花丸ちゃんも?」
花丸「うん、おばあちゃんが…」
志満「インフルエンザが流行る時期でも、ないのに…」
花丸「お大事に…」
たたたたっ
千歌「そう言えば果南ちゃんが今朝、ダイヤさんとこに近づかないようにとか言ってたけどなんでだろう、花丸ちゃ…いない」
14 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:08:46.12 ID:A9598kCr0
花丸「はぁっ…はぁっ…」
花丸(千歌ちゃんの顔を見るのが辛かった)
花丸(曜ちゃんや果南さんも言ってた。学校を休む人が多い、のっぽパンを買うお店のおばちゃんも寝込んでた、内浦の街のあちこちで、皆が体調を崩してる)
ルビィ「花丸ちゃん…お、お帰りなさい…」
花丸(ルビィちゃんだって言ってた。お手伝いさん達やお客さんも客間に長居できない、千歌ちゃんの旅館に泊まりに来た人も体調を崩して、志満さんに至っては寝込んで、病院に来る程)
花丸(あいつのせいだ)
花丸(ダイヤさんに憑りついたあいつが全部悪いんだ)
ルビィ「花丸ちゃんのおばあちゃんは……」
花丸「…あ、少し…入院するみたい、ずら。風邪を、こじらせたみたいで」
ルビィ「……」
花丸(ルビィちゃんが涙を堪えているのが判る。あの壺のせいでみんなと言いたいのだろう。解ってる、そんなの解ってる。だけどそれを言うのは残酷だ)
花丸「病院で、千歌ちゃん達に会ったずら…志満さんが、相当悪いみたいで、病院に来てたずら」
ルビィ「そんな…」
花丸「……あいつの」
花丸「あいつのせいでっ!」ガンッ
ルビィ「は、花丸ちゃん! か、壁を叩いたら…」
花丸「あんなのがここに来たせいでっ! お父さんも牧師さんも、ルビィちゃん達のお父さんもっ!」ガンッガンッ
花丸「おばあちゃんもっ! 志満さんもっ! ダイヤさんもッ!」ガンッガンッ
ルビィ「花丸ちゃんやめて! 手が、花丸ちゃんの手が!」
花丸「なにが悪魔祓いの専門の人ずら! 牧師さんに相談すれば安心ずら! 被害は結局増えてくばかり!」ガッシャーン
ルビィ「ふ、ふすまが! 花丸ちゃん!」
花丸「みんな学校に来れないほど体調崩してッ!!!」バーン
ルビィ「やめて、花丸ちゃん…やめて。手が、手がもう、血だらけだから」
花丸「あいつめ、あいつめ、あいつめぇぇぇぇっ!!!」ガッガッガッガッ
ルビィ「花丸ちゃん、ごめんね…ごめんねぇぇぇぇ!」ガシッ
花丸「!?」
ルビィ「ごめんね…ルビィの家が、あんなのもらわなければ…ごめんね…」ポロポロ
花丸「……ぁ」
15 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:10:12.32 ID:A9598kCr0
花丸(手の痛みと、ルビィの涙が――――――――――――)
花丸(マルを、拾い上げる。終わりなき怒りから)
花丸(ダイヤさんが、憑りつかれたのだ。まだ、危機は、去っていない)
花丸「…ごめん、ルビィちゃん…」
ルビィ「う、ぅぅ…」
花丸「……」ひしっ
花丸「……ダイヤさんを、助ける」
花丸「そうずら……ダイヤさんを、助けないと」すっく
花丸「マルはお寺の子……悪いモノを封じなければいけないずら」
ルビィ「花丸ちゃん…」
花丸「待ってて。ダイヤさんを必ず助ける」
花丸(それは、一つの灯火だった)
花丸(マルの中で灯った、希望の灯。専門家でもなんでもない、だけどマルは寺の子)
花丸(それだけが、マルを動かした)
ルビィ「…花丸ちゃん、手当しよ?」
花丸「うん……」
土曜日夜
鞠莉「グッドイブニング……」
ルビィ「鞠莉さん!」
花丸「ルビィちゃん、塵取りで食器の欠片集める時はよそ見しちゃダメずら」
鞠莉「Oh…修理の手配は?」
花丸「土曜日なのでまだ…」
鞠莉「OK、手配しとくわね」
ルビィ「その、悪魔祓いの方は…」
鞠莉「今、全力で探してる。それと、持ち込んだ業者の事ですけど、名刺とか残ってない?」
鞠莉「黒澤家にここしばらくで出入りした人も少なくないから、ローラーオペレーションだと、ベリータイムロスになりそうなの」
16 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:11:21.05 ID:A9598kCr0
ルビィ「お父さんが場所を知ってる筈だけど…」
鞠莉「わかったわ、明日お見舞いに行く」
鞠莉「マリー達に任せて、ルビィと花丸はビッグシップに乗って安心するのよ?」
花丸「……」
ルビィ「ご迷惑をおかけします…」
鞠莉「果南じゃないけど、二人とも、おいで」
ぎゅっ
鞠莉「頼れる時は、頼るのよ。ね?」
ルビィ「うん…!」ぎゅっ
花丸「………」
花丸(鞠莉さんの優しさが、胸にしみる。だけど。ダイヤさんを何日もあのままにしてはおけない)
花丸(悪魔が憑りついたままにしてはおけない。ダイヤさんが飲み込まれてしまうから)
鞠莉「花丸…」
*日曜日 一日前
花丸「むむむ……」
花丸(お寺の蔵から古そうな本や歴史が乗ってそうな古書を引っ張り出してみたが、めぼしいものは見当たらない)
花丸(狐憑きや怪異やら幽霊…なんて辺りが役に立ちそうではあるが、それらの記録がなかなか見つからない)
花丸(それだけ内浦が平和だったか、或いは)
ルビィ「あ…お寺の建立時の記録だって」
花丸「ずら!?」
花丸(さすがルビィちゃん、マルが見つけられない歴史を見つけるなんて、流石網元黒澤家の血を引く人ずら)
ルビィ「えーと、昭和16年建立」
花丸「そりゃ記録少ない筈ずら!」
花丸「建立の時の住職、マルのひいおじいちゃんずら…」
花丸(駄目だこりゃ。こういう時は…あそこに行くに限る)
17 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:13:15.14 ID:A9598kCr0
部室
花丸「棚の裏の隠し本棚に確か善子ちゃんが持ち込んだ堕天使グッズやら黒魔術に関する本がある筈ずら」
ルビィ「確かに善子ちゃん色々持ってきてるものね…よいしょ、よいしょ」
花丸「ありがとう、ルビィちゃん」
ルビィ「ううん、花丸ちゃん手を怪我してるから…あ、隠し本棚だ!」
花丸「ここならっ!」バッ
ルビィ「うん、ここならっ!」バッ
『乙女の壁ドン〜旅館の若女将とみかんの薫り〜』
『顎クイヨーソロー!〜水兵少女と美女ピアニストの処女航海〜』
『恋する音楽家は年下少女を思うとつい堕天しちゃうのっ〜目覚めよ愛のリトルデーモン』
花丸「……」
ルビィ「……」
ルビィ「あ…お姉ちゃんが、先週、善子ちゃんに堕天使グッズ片付けなさいって言ってた…」
花丸「そして隠し本棚は梨子ちゃんに支配されたずら…」
『寺生まれはグルメに弱い〜乙女と愛の菓子パン』
『いいの、プリンにホイホイされちゃって?友達の妹を絡めるカラメル』
『百合が浮かぶ海に一緒に潜ろう?〜ダイビングは恋の始まり』
『黄金の風は乙女の恋を呼ぶ〜ローマ令嬢とピアニストの休日』
『全ての金剛石もきっと愛で出来ていた〜アンリミテッドリリィワークス〜』
花丸「そしてなんで皆にそっくりな子ばっかりずらぁ!」バァン!
ルビィ「は、花丸ちゃん! 机叩いたらまた手が!」ぼてっ
ルビィ「収穫ゼロだったね…」
花丸「うん…あれ、ルビィちゃん。すまほ落ちてるずら」
ルビィ「あ、ホントだ…通知が来てる…昨日、あんまり見てなかったから…」
ルビィ「善子ちゃんから…え?」
花丸「?」
ルビィ「『ずら丸が悪魔を払うなんて言い出したら止めるのよ』」
ルビィ「『悪魔祓いは簡単じゃない』」
花丸「…いつもの善子ちゃんずら」
ルビィ「いつもの善子ちゃんだね…」
花丸(善子ちゃんといつものやり取りをした時、途端にここで善子ちゃんの堕天使コレクションを探すのが馬鹿らしくなった。そりゃそうだ、いつもの善子ちゃんのキャラクター作り)
花丸(たとえ梨子ちゃんの薄い本の代わりに堕天使コレクションがあっても、悪魔祓いに役に立つとは思えない)
花丸「大人しく図書館で調べてみるしかないずら」
ルビィ「…だね。花丸ちゃん、善子ちゃんが帰ってきたら――――――」
花丸「それまで待てない。悪魔はきっと悪いもの」
花丸「…マルはお寺の子。だから、負けないずら。ダイヤさんの為にも」
花丸(マルが、ダイヤさんと内浦を救う)
18 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:14:45.89 ID:A9598kCr0
ピロンッ♪
善子『もう少しで立てる! だから絶対に手を出さない事、いいわね!?』
善子『マリー、無理は承知だけどダイヤとルビィの家の近くの道を封鎖できない?』
善子『下手に誰かが近づけばやばいわ。他の皆も二人の家には近づかないで!』
善子『もちろん、マリーも近づかない事』
善子『リリーは東京に出掛けてるから大丈夫だろうけど』
鞠莉『OK…と、言いたいけれど例の物を持ち込んだ業者の手がかり、ダイヤの家にあるみたいなのよ』
鞠莉『人を送るにはハイリスク、タイガーホールにインしなければタイガーチャイルドという奴デース』
善子『明日の朝には戻れる、だからヨハネが取りに行くわ』
果南『善子も危ないんじゃない?』
善子『対策立てて取りにいくわ』
善子『それに、悪魔祓いもね』
千歌『今北産業』
曜『上にヨーソロー』
鞠莉『Sorry、ちょっとTel』
千歌『ダイヤさんは大丈夫なの!?』
曜『どどどどどどどどうしよう!? 生徒会長が悪魔に憑りつかれたとか大変どころの』
善子『二人とも落ち着いて。とにかく明日戻れるから、お昼に部室で会いましょう』
果南『私は構わないよ』
千歌『梨子ちゃんにはどういうの?』
善子『リリーが帰ってくる頃にはなんとかできる筈よ、きっと』
鞠莉『不味い事になったわ』
果南『どしたの?』
鞠莉『教頭先生も体調不良で入院……休校だわ』
曜『なんてこと』
果南『集合場所はどうする?』
千歌『じゃあ、うちで』
鞠莉『了解、シャイニー☆』
善子『ずら丸もルビィも明日のお昼、千歌の家で会いましょう』
19 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 10:16:17.30 ID:A9598kCr0
図書館
ルビィ「花丸ちゃん、そろそろ閉館時間だよ…これ、借りてこう」
花丸「いや、この量だと持ち帰れないずら。今、読まないと」
ルビィ「追い出されちゃうよ…鞠莉さんにお願いして、車を」
花丸「鞠莉さんばかりに迷惑をかける訳にもいかないずら」
ルビィ「でも…」
???「手伝おうか?」
ルビィ「あ、美渡さん」
美渡「この量を手では無理だろうしね。車で来てるから、任せな」
花丸「すいません、ありとうございます」
美渡「あー…気にしなくていい。病院の帰りに気が滅入ってさ、気晴らしに漫画でもって思って」
美渡「本当に最近、病人続出過ぎてさ、大変だよ」
ルビィ「そう、ですよね…」
美渡「千歌も心なしか元気ない…のは梨子ちゃんが出掛けてるからと信じたいけどさー」アハハ
美渡「花丸ちゃん、手怪我したのか…?」
花丸「転んで、打ち所が…」
美渡「両手ともに包帯って、相当だな」
ルビィ「……」
美渡「…気晴らしには来たけど、どうにも気が滅入るんだ」
美渡「内浦全体がなんか重いみたいで」
美渡「梨子ちゃんも木曜日に会った時、最近休んでる店が増えて買い物に困るとか言ってたし」
ルビィ「ああ、やはり…」
美渡「うーん、ダイヤちゃん辺りがびしっとバカチカだけじゃなくて私にも言いそうだなぁ」アハハ
花丸(美渡さんにはそんなつもりはないのだろうけど、ルビィちゃんが息を飲んだのが判った)
ルビィ「そ、そんなこと…ない、ですよ」
ルビィ「お、お姉ちゃんも、美渡さんがしっかり、してるから。たまには、気を抜いては、いかがですか、とか言いそうですし」
美渡「そん時ゃ抹茶アイスを5クォート分ぐらいプレゼントだな!」
花丸(明るく笑う、美渡さんに。少し救われた気がした)
花丸(ああ、この人は千歌ちゃんのお姉さんなんだって、強く思う。でも、そんな強い人でも、志満さんの事で気が滅入る、と弱音も吐く)
花丸(だからこそ、絶対に……ダイヤさんを、悪魔の手から救わなければならない)
花丸(この人の為にも)
20 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:12:14.58 ID:JU0lGUMg0
そして全ては、運命の月曜日へと至る―――――――――。
善子「局所的大雨で羽田便が成田にダイバートって……」
善子「こんな所で時間を食ってる余裕はないのに!」
善子「そしてそんな時に限ってトランクが流れてこない」
善子「ロストバゲージしたんじゃないでしょうね…」
善子「ああ、早く来なさいコンベアー!」
善子(あ、やっと流れてきた。堕天使グッズで飾っといたから目立ってよかった…)
善子「よいしょっ……ってまた開いて―――――――」
善子「!?」バサバサッ
カァ カァ カァ
善子(カラス!? いや、いない…)
善子(幻覚、よね…? でも、カラス…そう、カラス…)
善子「嘘、まさか……」
善子(ダイヤを襲ったのは、あいつなの…?)
善子(それをイメージするだけで、息が詰まり、膝が震えて、足から力も抜ける)
善子(純粋な恐怖。私の居場所が、Aqoursが奴に奪われるかもしれない、ただそれをイメージするだけで)
善子「ハァッ…! ハァッ…!」
善子(させない…させない)
善子(やらせはしない。必ず、必ずだ)
21 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:13:56.02 ID:JU0lGUMg0
*音ノ木坂学院理事長室
理事長「…かつて何人ものスクールアイドルが、その悪魔に憑りつかれたわ」
理事長「だから封印していたけれど、解かれたとなると…」
梨子「ゆ、幽霊みたいなものですよね? どこに逃げたかもわからないとなると…」
理事長「箱の中で更に壺にいれられてるから…壺を開けたり壺が壊れなければ、持ち運ばない限り移動もできない」
理事長「でも、壺ごと消えてるという事は誰かが壺をどこかに持ち出したんだわ」
理事長「それに壺にいれられてる状態でも、被害が無い訳ではないわ」
理事長「周囲に瘴気を放つの。体調を崩す人も出て来るわ」
こころ「……そう言えば何年か前、真姫さんが学級閉鎖のクラスが学校の半分を超えたって」
理事長「ええ、雪穂さんの時はそうだった」
梨子(体調を崩す人が出てくる…学校の半分を超えるほど…?)
梨子(音ノ木坂は東京。流石に学校周辺までは判らなくても、内浦の場合なら…)
梨子(それが学校どころか周辺に漏れ出してもおかしくない。だから、皆寝込む)
理事長「憑りつけば、その人の精神を喰らう。精神が強い人を好む」
理事長「スクールアイドルやそれに近しい女子生徒は、まさに大好物」
ここあ「……」ゾワッ
ここあ「あっ!」つるっ
梨子「きゃっ!」ドン ガタッ
ここあ「ご、ごめんなさい!」
梨子「う、ううん。怪我はないみたいだし…スマホが落ちて…あ、LINEの通知がたくさん…」
梨子「……ん?」
梨子「…理事長、すいません。その悪魔の事、なんですけど」
梨子「……憑りつかれた人って、どんなのを…」
理事長「それこそ、人知を超えた行動もあり得る。とても科学や医学でも説明し切れない事態も」
理事長「人を吹っ飛ばしたり、壁を壊す事も…何かを操る事も」
22 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:15:22.32 ID:JU0lGUMg0
梨子「………!」スマホ開き
梨子(ダイヤさんが…悪魔に…)
梨子「……内浦に。その悪魔が、来る可能性は。Aqoursの誰が狙われやすいですか…?」
理事長「……!」
梨子(理事長先生の顔が、青ざめた)
梨子(答えを紡ぎ出すのが怖い、とばかりに)
理事長「悪魔は狡猾よ…そんな狡猾な相手なら、誰よりも繋がりが濃い人を狙う」
理事長「雪穂さんの時もね」
理事長「本当に奴が狙っていたのは―――――――穂乃果さんだった」
梨子(繋がりが濃い人――――――――そして鞠莉さんはしっかりと書いている)
梨子(ダイヤさんが、悪魔に憑りつかれた、と)
梨子「……ダイヤさんとルビィちゃんなら、どちらを?」
理事長「私が悪魔なら、黒澤ダイヤさんを狙うわ」
理事長「ダイヤさんを使って、ルビィさんを襲う。そうすれば、二人とも……それに」
理事長「好物は後で食べる」
梨子「ダイヤさんが…悪魔に……」スマホ差し出し
梨子「…すいません! すぐに帰ります!」
理事長「待って!」
梨子「けど!」
理事長「今のままでは何もできないわ」
理事長「準備が必要よ。出来る限りの対策を立てなければ、全員襲われてしまう」
理事長「Aqoursが倒れたら、あなた達の学校はどうなるの? 応援してくれる人たちはどうなるの?」
理事長「出来る限りの作戦を授ける……それしか出来ないわ、ごめんなさい」
梨子「いいえ」じわっ
梨子「充分です!」ゴシゴシ
23 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:16:36.40 ID:JU0lGUMg0
黒澤家前
花丸(準備は、出来た)
花丸(朝方、身を清めて白装束。守り刀に酒と塩と柊の枝。あとは写経した用紙の数々)
花丸「…ルビィちゃん。ここまで来てくれてありがとう。ここから先はまずいずら」
花丸「お父さんが張った結界の中に入ったら、きっと狙われるずら」
ルビィ「……花丸ちゃん」
花丸「大丈夫。次にこの門をくぐる時はダイヤさんと一緒ずら」
花丸「行ってくる」すたすた
ルビィ「……」ぎゅっ
黒服1「…やっべ。やっぱこの近くだと身体重いよ…まあ、交代しても時間分手当くれるってお嬢様は言ってたが…」
黒服1「さすがに意識飛んでたのはまずいな…誰も通ってない、よな?」キョロキョロ
黒服2「…お前も? 俺もだ…」
黒服1「マジかよ」
黒服3『やっべ、意識飛んでた。夜が明けて太陽昇ってるのに悪魔パワーっての? 全然落ちないぞ』
黒服4『同じく…おい、裏の連中は?』
黒服5『……やっべ、今目ぇ覚めた。まずいな、この状きょ…うぉっ!?』
黒服1「どうした?」
黒服5『黒服6が寝たまま吐いてる! 悪ぃ、医者まで運ぶから裏庭前の監視に交代呼んどいでくれ!』
黒服1「…俺達、全員意識飛んでたっぽい…」
黒服2「今のところは誰も通っておりません!」
24 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:18:46.90 ID:JU0lGUMg0
花丸「よっと…」ギィッ
花丸(本来はそんな家ではない筈。だが、異様に獣臭かった)
花丸(そして、恐ろしい程寒い。吐いた息が白く見えてしまう。太陽はとっくに上っている、白装束一枚とはいえこれほど寒いとは)
花丸(守り刀を握り、柊の枝を構えながら廊下を進む。それにしても、広い家だ)
花丸(ダイヤさん。ダイヤさんは、こんな恐ろしくなってしまった家の中で、一人で)
花丸(戦っていたの?)
見 ぃ つ け た
花丸「オン…」
ダイヤ?「遅いよぉ」ブンっ
花丸「額縁ぃぐっ!?」
花丸(横から飛来した額縁がマルの身体を力強く打ち、真言を中断させる。柊の枝が手から飛んでいく)
花丸「ま、まだ…」バリィン
花丸「!?」
花丸(腰につけた酒の瓶を掴もうとした時、部屋中の蛍光灯が一斉に割れた)
花丸(鋭利な刃物とかした欠片は示し合わせたかのように、マルの手足へと突き刺さる)
花丸「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
ダイヤ?「あははははは、どうしたの? 自信満々なドヤ顔で入ってきてもうわんわん泣いちゃって?」
花丸「っ…!」
花丸(痛む手で塩を投げようとした時に―――――――――振り下ろされる、無数の辞書)
花丸(ダイヤさんに知恵を与えていた道具が今、凶器としてマルをえぐる)
花丸「ぐっ、うぇっ、ぐぇっ」ガッゴっドっベキッ
花丸「お、終わっ――――――――うべぇっ!?」ゴスッ グルグルグルグルドサッ
ダイヤ?「綺麗なきりもみ四回転アクセル、着地しっぱーい♪」
ダイヤ?「続きましてぇ、まだまだダウン中の相手にはぁ」
花丸「けほっ、けほっ……ま、まだ勝負はついていない、ずら」
25 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:20:40.62 ID:JU0lGUMg0
ダイヤ?「後ろからこうで」
花丸「つ、壺?」
ダイヤ?「こう!」
花丸(視界が暗闇に覆われ、身体が何回転も回されると同時に、頭部に鈍い衝撃)
花丸(意識が奪われそうになる、だけどマルにはわかる)
花丸(悪魔の笑顔の向こうに、泣き叫ぶダイヤさんが見える)
花丸(だから、倒れる訳には…いかない。マルが一番、皆の中で)
花丸(こういう事には、強い筈なんだから)
花丸(朦朧とする意識の中で、塩を掴んだ)
花丸(廊下の隅まで這って行って、四隅に盛り塩――――――――――気休めレベルだと分かってはいたけど)
ダイヤ?「うわっ、こんな邪魔な所に結界作るなんて!」
花丸(防ぐことは出来た、少しの間は)
花丸「ぜぇっ、ぜぇっ……」
花丸(鼻血が滴り落ちて、手もボロボロで、頭も体もズキズキ痛む)
花丸(少しでも、少しでも時間を稼がなくては)
花丸「ダイヤさんっ…負けないで……」
ダイヤ?「ざんねんむねーん♪ 上から画びょう!」
花丸「ずらぁっ!?」
花丸(ど、どうにか回避できたけれど、このままじゃ…)
花丸(あった、守り刀!)
花丸(どうにか守り刀をつかんで、まだ浮翌遊しながら笑う悪魔を見据えて、狙いを、定めて…)
花丸(狙いを…どこに?)
ダイヤ?「あれーれー? それなーにー? あはははは、この娘を[
ピーーー
]の? この娘を[
ピーーー
]んだー?」
ダイヤ?「は、花丸さん…冗談、ですわよね? わ、私ごと悪魔を…」
花丸(そりゃそうだ。どこに突き刺せば悪魔だけを殺せる? ダイヤさんを傷つけるわけにはいかない)
花丸(取り憑かれてから三日間、ダイヤさんはずっと悪魔と中で戦い続けてる)
花丸(マルは…マルはなにができる?)
26 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:21:41.55 ID:JU0lGUMg0
ダイヤ?「は、花丸さんせめてルビィに会わせて! ルビィの声を聞かせてほしいの! 話させてほしいの!」
花丸(今ダイヤさんの意識があるのか? それともダイヤさんのふりをしているのか?)
ダイヤ?「どうかルビィに…せめてルビィに! ルビィを一人残したままにはできませんの、せめてルビィが寂しくないように…」
花丸「ハァーっ…フーッ……」
花丸(守り刀が、震える。どこに向けられる)
ダイヤ?「お、お願い…い、今ならまだ抑えられますの…ルビィの顔を…見せて…」
花丸(ダイヤさん…)
ダイヤ?「なーんてね♪」
花丸「ばぎゅらっ!?」
ダイヤ?「おーっほっほっほ! ほらほら、不用意に近づいていけませんわよ花丸さぁん?」ゴスっガスっ
花丸「うべぇっ、がべぇっ!?」
ダイヤ?「あらあら、前が見えねぇ状態ですわねぇ?」
花丸「ぅ…ぁ…」
27 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:22:55.79 ID:JU0lGUMg0
ちかっちROOM
果南「あれ? 二人?」
曜「鞠莉さんがもうすぐ着くって」
千歌「梨子ちゃんはまだ東京にいる筈だけど」
果南「善子は今自宅に着いたって。始発で成田出たとか言ってたけど」
千歌「花丸ちゃんとルビィちゃんは?」
鞠莉「今着いたわ…って、三人?」
果南「鞠莉、花丸とルビィはどうしてるの? 確かルビィは今、花丸の家にいるんじゃ……」
鞠莉「Hm…変ね。LINEしてみましょう」
千歌「それにしてもダイヤさん、心配だよ…」
曜「うん…」
ピロリん♪
千歌「うん? 梨子ちゃんから?」
梨子『今、そっちに向かってる! ダイヤさんの事で色々と情報と心強いものを持って帰ってくから、待ってて!』
善子『リリー、気持ちは嬉しいけど…って、皆は今どこに? 今バスに乗ってるけど…』
曜『それはともかくとして、善子ちゃん、花丸ちゃんとルビィちゃん知らない? 連絡も取れないのであります』
善子『ずら丸には悪魔払いに手を出さないようにとは何度かLINEしたけど』
果南「うーむ…あ、ルビィに既読が着いた」
Prrrrrr
千歌「およ、電話…ルビィちゃんからだ」
ルビィ『よ、よかった…つながっ……』
千歌「ルビィちゃん?」
ルビィ『は、花丸ちゃんが……zz…ないの!』
千歌「ルビィちゃん? 電波が悪いのかな?」
ルビィ『もう、2時間……家から!』
ルビィ『おねえちゃ……助けに…!』
千歌「……花丸ちゃんが、2時間って言ってるけど……」
鞠莉「花丸が……花丸が?」
果南「鞠莉、どうしたの?」
鞠莉「千歌っち、ルビィに聞いてほしいのデース。そこはダイヤの家の前ですか、と?」
28 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/29(火) 19:24:09.02 ID:JU0lGUMg0
ルビィ『――――――ゆ!』
千歌(ひどいノイズだったが、確かにルビィちゃんは肯定した。そして、そこで電話は強制的に途切れた)
千歌「鞠莉さん……」
鞠莉「No……思い詰めてた顔はしてたけど」
果南「花丸が、悪魔祓いに?」
鞠莉「恐らく。けど…ダイヤのパパや花丸のパパが呼んだっていう人はうちでも知ってる高位の人よ。そんな人が一瞬でやられたとなると……」
果南「と、とにかくルビィだけでも回収に行く?」
曜「け、けど。梨子ちゃんが何か…」
千歌「いや、でもそんな危ない悪魔を花丸ちゃんだけにしておけないし、何よりダイヤさんだってもう、何日も…」
曜「え、えーと。花丸ちゃんが悪魔祓いにいったみたい、と…」
Prrrrrrrr!!!!
曜「うわ!? 今度は善子ちゃん!?」
善子『ちょっと! なんでずら丸を止めなかったの!?』
曜「え、えーと、ルビィちゃんも今、ダイヤさんとルビィちゃんの家の前にいるとかで…」
善子『すぐに行くわ!』
『お客様、車内での通話はご遠慮ください』
善子『ごめんなさーい!』
善子『とにかくすぐ行くわ!』プツン
果南「…行こう。三人を助けに」
29 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:11:11.39 ID:idrw2zS50
善子(ここからダイヤとルビィの家までは、少し歩く)
善子(LINEでは他のメンバーも行くと告げており、リリーが「にんにくをたくさん用意して!」と送ってきた)
善子(私は成田のあの予感が、的中したんだ、と気づく)
善子(私がヨハネに堕ちた日の事)
善子(そしてあの悪魔が今、Aqoursを襲おうとしている)
善子(私がこの手で、それを止めなければならない)
善子(あの日、ヨハネに堕ちた私の、今の大切な居場所。私がもう一度、輝ける場所に戻れたのは)
善子(Aqoursがあるから。それを、もう失わせは、しない)
善子(この季節には似合わない冷たい風が吹き続ける。息が白い。太陽は熱く照り付けている筈なのに、肌寒い)
善子(足を上げて動かすことすら重い。鉛のスーツでも全身に纏ったような重さ)
カァ カァ カァ
善子「!?」
善子(カラスが鳴いている…あの時を思い出させる)
善子(喉の奥からせりあがるすっぱいものを噛み殺しながら、前へ前へと)
善子(あの日あの夜、和菓子屋の前に行った時に何かに似ていると思っていたけれど)
善子(今、思えば、映画のエクソシストのポスターだ。ルネ・マグリットの光の帝国をイメージしたという)
善子(今は夜ではないというのに、今、まさにそんなイメージが沸き上がる)
善子(冷たい風の中、黒澤家の屋敷を見上げると、今、まさに)
善子(メリン神父が、リーガンの家を訪れたその時のように)
善子(でも、私はあのエクソシストの神父たちのような最期にはなりたくない)
善子(カラス神父のような覚悟は持っても、必ず、生きてダイヤたちを救う)
善子(スクールアイドルとして、また一緒に舞台に立つんだ)
善子(エクソシスト・ステップスみたいな階段が近くになくて良かった。あったら、それこそ、カラス神父のように)
善子「!?」
善子(今、頭をよぎったのは…階段を…いや、坂を転げ落ちるイメージ…誰の?)
30 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:13:16.28 ID:idrw2zS50
善子(いいえ、今はそんな事をしている場合ではない)
ルビィ「善子ちゃん!? 善子ちゃん…花丸ちゃんが!」
善子「ルビィ! ずら丸はダイヤと中にいるのね? よいしょっと」
ルビィ「善子ちゃん、そのトランクは…?」
善子「えーと…あった。まずは、この水を飲んで」
ルビィ「う、うん。ぬ、ぬるそうだね…」
善子「我慢しなさい。それと、皆が着たらすぐにここを離れるのよ。そうね…マリーと果南と一緒に逃げなさい」
ルビィ「善子ちゃんはどうするの?」
善子「大丈夫。二人を連れてすぐ戻るわ」
善子(ロザリオを握り、本を手に、突き刺さるほどの寒さと獣のにおいが充満する中へと、足を踏み入れる)
ルビィ「んくっ…こくっ……ぬるい」
善子(ルビィは聖水を飲み干したようだ。問題は乱気流のせいで聖水の瓶もあらかた割れてしまい、2本しか生き残らなかった。その貴重な1本をまるまるルビィに使った事だが)
善子(しかし、運の良い事に結界が中に貼られていた。ルビィが中に入らなければ心配いらない。貴重な1本まるまる使ったのは失策かも知れない)
善子(だが…それより…獣臭さの中に)
???「いらっしゃい」
善子(何度か足を踏み入れた黒澤家の居間でもある和室に、奴はいた)
善子(顔中腫れあがり、手のあちこちから血を滴らせたずら丸の横に)
善子(怒りで我を忘れそうになるのを堪え、ずら丸に視線を向ける。ずら丸は私に気付いていない)
善子(息を、している。生きている。私やルビィの親友を傷つけ、そしてダイヤの身体を使ってそんな事をさせた奴を)
ダイヤ?「あれー? あれれー?」
善子(許すわけにはいかない。ロザリオをつかんで、大きく十字を切った)
ダイヤ?「お覚えがあるちゅんなぁ……ああ、そうだ」
善子(悪魔はあおり、騙し、混乱させる。耳を貸してはいけない。本を開いて、読み上げる)
善子(主への祈りを、救済を祈り、ただ一心にダイヤから目を離さずに)
ダイヤ?「いつかの泣きべそかいておもらししちゃってぇ。『おじいちゃんを食べないでぇ』とか言ってた子かなぁ?」
善子「主よ…」ピキッ
31 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:14:31.81 ID:idrw2zS50
ダイヤ?「泣きべそかかないんだぁ? じゃあ、今度はカラスのみなさーん出番ちゅんよー」
カァ カァ カァ カァ カァ
善子「やめろっ!」
ダイヤ?「ああ、やっと本を読まないんだぁ?」ニコっ
善子「笑うな」
善子「お前みたいなやつがダイヤの顔で笑うなっ! ダイヤの声で喋るな――――――Aqoarsのみんなに手を出すなっ!」
善子(そう叫んだ直後、ダイヤの顔で笑う悪魔は)
善子(呼び寄せた無数のカラスを―――――――私に向けて)
善子(再び本に視線を落として読み上げる、祈り続ける、主よ、救済を)
善子(ロザリオで大きく十字を切る。襲い掛かるカラスたちは私の腕や体につぎつぎと食らいつく)
善子(引き裂く痛み、噛まれる痛み、啄ばまれる痛み―――――生きたまま鳥葬される恐怖)
善子「主よ、主よ、つぅぅぅっ!?」
善子(顔に突っ込んできたカラスが無理やり皮膚を引きはがそうとする)
善子(体に止まり、皮膚に噛みついて肉ごと引きちぎろうとする)
善子(ロザリオで十字を切る、そうしてカラスを追い払う)
ダイヤ?「本当の力を教えてあげる〜」
善子「ときメモが好きなのは通用しないわ…時代は変わったのよ」
ダイヤ?「そーお? でも、生きてる人は操れるわ〜、こんな風に」
善子「ずら丸!?」
善子(悪魔は壁に押し付けられていたずら丸を手元に浮かせて引き寄せた。ダイヤに取り憑いてそれだけ力をふるえるのか)
善子(あの時も人を飛ばせる程だった――――――だけど同時に私の足止めもするなんて!?)
善子(足元が縫い付けられたように動けない! 動け! 動け、私の足!)
花丸「ぁ…よ…」
善子「花丸から離れろ…!」
32 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:16:31.87 ID:idrw2zS50
ダイヤ?「ここに割れた壺がありまーす。いまいましい壺ですわ。私を、閉じ込めた」
善子「黙れ…」
ダイヤ?「はい、花丸ちゃんあーんしましょうねー」
花丸「……よしこ…ちゃ…」
善子「ずら丸、口を開けちゃダメ!」
花丸「うぇっ!?」
ダイヤ?「花丸さん、ぶっぶーですわ」ガンッ!
花丸「ヴぇぁっ!?」
善子(ずら丸の口に押し込まれた壺の欠片、その上からオーバーワークの極みたるダイヤの拳)
善子(硬度10のゲンコツは私たちを思って振るわれてきた。それですら痛いのに、手加減一切なしの拳はどうなることやら)
善子(だがそこには愛も思いやりもない。その拳を振り下ろすのはダイヤですらない)
善子(花丸の口から溢れる鮮血――――――あんな事をされたら、ずら丸が大好きなのっぽパンだってしばらく食べられない)
善子「やめろ…主よ、この…」
ダイヤ?「善子さんもぶっぶーですわねぇ!」ガシッ!
ダイヤ?「止められちゃっ―――――あれぇー?」ブンっ
善子「主よ、主よ、黒澤ダイヤを救い給え―――――――」
善子(まさかCQC直投げが役に立つなんて。クラスノゴリエから投げ落とす作業を思い出す)
善子(ダイヤの拳を受け止められたのは奇跡に近いが、台所に投げ込まれたダイヤの姿をした悪魔はまだ動きそうにない)
善子「ずら丸、さあ、欠片を出すから気を付けて…それと、すぐに外に出るのよ。大丈夫、ダイヤの事は…」
花丸「ぁ……ぁ……しろ…」
善子「――――――――――!?」
33 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:17:45.63 ID:idrw2zS50
ダイヤ?「チェストぉー!」
ベギリィッ
ダイヤ?「ざんねーん♪」
善子(こっわぁ!? 牛刀を示現流一の太刀で振り下ろす奴いる!? 悪魔しかいないわよ!?)
ダイヤ?「とーうっ!」ブンっ
善子(横なぎも横なぎで怖いし! でも、まだリーチが短いだけどうにか…)がしっ
ダイヤ?「あれ? また掴まれちゃった?」
善子(今よ! 聖水をかけるチャンス!)
善子(あれ?)
善子(うそでしょ、聖水の、最後の瓶)
善子(トランクに置いてきたままだったぁー!!!)
ダイヤ?「ふんっ」
善子「あ」
ブーン
善子(失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した―――――――――)
善子(居間からガラス戸を粉砕して庭へと投げ捨てられる)
善子「ぐぇっ!」
善子(そして空を見上げた時、無数のカラスが私を見下ろしていた)
善子(雄たけびと共に襲い掛かる無数の黒い群れ―――――――――堕天使ならば大いによろしいが残念ながら私は堕天するわけにはいかない)
善子(ロザリオをしっかりと握り、祈りと救済を―――――)
34 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:19:59.60 ID:idrw2zS50
善子(無数のカラスの闇が視界と身体を覆いつくす中、あたたかな一筋の――――太陽の光が差し込んだ)
ダイヤ?「くっ!? まぶしい…」
善子(太陽の、光。サンシャイン――――――)
善子(輝く、太陽―――――――――――――)
善子(ああ、そうだ――――――私が堕天使ヨハネになったのも)
善子(小さな太陽ヨハンナになれなかったから――――だから太陽から目を背けて、堕天使ヨハネになったんだ)
善子(小さな太陽のような天使じゃない。祖父がいつも私を小さな太陽ヨハンナといっても)
善子(あの時、あの和菓子屋のお姉さんの悪魔の強さは想像以上で――――――怖がりな私は闇に落ちた、今日のように)
善子(だから私は天使になれない、太陽のように輝けない―――――ましてや、あの時必死に手助けをしようとしてくれた)
善子(μ’sのようになんかなれっこない――――――だから日陰で、堕天使ヨハネとして、夜に生き生きとして、太陽になんか照らされない―――――――)
善子(でも、違った―――――Aqoursに入ったから、千歌と曜が立ち上げて、リリーがいて)
善子(ずら丸が、ルビィがいて、果南がいて、マリーがいて)
善子(ダイヤと、私がいて9人で――――――それは、一人として欠けてはいけない。Aqoursという太陽は、皆がいてこそ!)
善子(そうだ――――――――そういう事だったんだ)
ダイヤ「…善子さん…立って…!」
善子(かすかにダイヤの声が聞こえた。ダイヤの声だ)
善子(ああ、そうだ。立たなきゃ。ダイヤは助けを求めてる。ずら丸がダイヤを助けようとしてこんなひどい目に遭った。ルビィなんて今にも泣きそうで)
善子(マリーやリリーが今も外で必死に駆けずりまわってる)
善子(もう一度、Aqoursという太陽で、輝く為に)
35 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:22:54.08 ID:idrw2zS50
善子「主よ、主よ、黒澤ダイヤを救い給え」フラッ
ダイヤ?「ぐぇっ!? よくも、おやつにダメージを与えたな!?」
善子「ダイヤから去れ…!」
善子「ダイヤから去れ!」
善子(本を拾い上げ、ページをめくる。淡々と、ダイヤから視線を離さずに)
ダイヤ?「善子さん、人とお話し中に本を広げるのはぶっぶーですわ」
善子「このっ…!」
ダイヤ?「あ」
善子「もう少し踏ん張りなさい黒澤ダイヤぁぁぁっ!」
ダイヤ?「あれー?」ずんがらがっしゃーん
善子(床に投げつけた! 今がチャンス、ロザリオを突きつけて唱える――――――)
善子(黒澤ダイヤを拾い上げるもの、救い上げるもの―――――――それは本に載っているものでもなく)
善子(救済のための祈りでもなく―――――――ましてや堕天使ヨハネの言葉でも、津島善子の呼びかけだけでもなく)
善子(仲間たちと共に言う――――――そう、Aqoursだけが知っているその言葉を!)
「Aqours…」
「…サンシャイ…ン」
???「ヴェアアアアああああああ!!!!!!!!!!」
善子(ダイヤは確かに、いつものように指を動かした! 悪魔は苦しんでる! 確実に、ダイヤは浮かび上がろうしてる!)
善子(もう一押し)
花丸「…よしこ…ちゃん…」
善子「ずら丸、もう少しだけ頑張って!」
善子「ダイヤを必ず連れて帰るわ、だから、大丈夫」
「Aqours――――――――――――――サンシャイン!」
???「ギャアアアアァァァァァァッ!!!」
善子(そこに太陽が差し込まない? いいや、太陽はここにある!)
善子(Aqoursが、小さな太陽として世界を照らし出す!)
善子「ダイヤから離れろ、悪魔!」
善子「サウスリトルバード、今日こそあなたの命日よ!」
花丸「おらも……たすける! ダイヤさんを、助けるって!」
善子「もう一回! ダイヤも!」
36 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:25:41.82 ID:idrw2zS50
ルビィ「…聞こえた」
ルビィ「お姉ちゃんが戦ってる。善子ちゃんも、花丸ちゃんも」
ルビィ「……あ」カラン
ルビィ「さっき善子ちゃんが持ってきた水、もう一本あったんだ…」
ルビィ「特別な力があるのかな…飲んでって言ってたから。よし!」
ルビィ「んっ…んんっ……くっ…」
ルビィ「よし!」
ガチャリ
ダイヤ?「ふっー…ふっー……ここまでやるとはちゅんなぁ…」
善子「もう一押し!」
善子(ロザリオで強く十字を切り、もう一度祈りを―――――――)
ダイヤ?「うん……?」
ダイヤ?「飛んで火に入る夏の虫ちゅうん!」
ルビィ「花丸ちゃん! 善子ちゃん!」
善子「ルビィ、来ては―――――!」
ちゅううううううううううううううううううん!
ルビィ「!?」
最高のおやつだちゅううううううううん!
ダイヤ「…ルビィ、来ては…」フラッ
花丸「あれが…あくま…」
善子「悪魔がダイヤから離れた…ルビィ! すぐに逃げて…」
ルビィ「善子ちゃんや花丸ちゃんだけに戦わせない! ルビィだって!」
ちゅううううううううううううううううん!!!!
ドサッ
ルビィ「入ってこないで…入ってこないでって言ってるでしょう!!!」
善子「ルビィ! 今、助ける! もう少…」
37 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:27:31.55 ID:idrw2zS50
メキメキメキメキ
???「……ふふ」
ルビィ?「なじむなじむなじむ実になじむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 最高最高最高最後の最高!」
善子「ルビィから離れなさいっての!」
ルビィ?「おおっと、効かないよ?」バッ
善子(衝撃波!?)
バシーン!!!
善子「あ……が…」
善子(頭部から強かに壁に打ち付けられ、意識が飛びそうだ。それでもロザリオを放さないでいたのは奇跡で、それをルビィに向けようと、手を伸ばし――――――――)
ルビィ?「かんたんかんたーん! こんなことだってかんたーん!」
ヒュッ ザクッ
善子「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!」
善子(ロザリオを握っていた左手の、手の平を貫通して甲から生えていたのは、先ほど悪魔が持ち出した牛刀だった)
善子(念力だけでそれを成しえた、ダイヤに取り付いていた時より遥かにやばいと認識できる。気絶しているダイヤ、手負いのずら丸を守りながらこんなルビィと戦うなんて)
善子(ダメだ、立ち上がれ、津島善子。お前が今、立たずとして、誰がAqoursという太陽を守るんだ)
善子(私があの日堕天使となったのは弱かったから。それでも、また小さな太陽として戻る為に、戦え)
ルビィ?「ぼんやりしちゃだめだってぇ、善子ちゃん? ほらほら〜」
善子「!?」
善子(窓を次々と突き破り、ミサイルのように降り注いできたカラス)
善子(本来そんな動きをする筈のない無数のカラスは、それそのものが物量弾として、鋭い嘴が矢として)
善子(花丸とダイヤの前に飛び出すと、カラスは私の体を次々と射抜いた)
善子(右肩に始まり、左の太もも、右足の甲、更には左の肘当たりは肉を引き千切られた)
善子(だが、中でも鋭い嘴の一撃が、左の脇腹に突き刺さったのだけは不味い)
善子「ああっ……!」
善子(沁み出る血、激痛、痛みが意識を飛ばしそうになる中で、どうにか立ち上がる。左腕もろくに使えない、右も肩へのダメージで稼働率が怪しい)
善子(取り落したロザリオを右手で拾い上げるも、水平に向ける事すらも難しい)
38 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:29:08.47 ID:idrw2zS50
ルビィ?「まだ、立てるんだぁ? だーけーど」
ルビィ?「ダイヤよりもこの子はすごいもんねー。はーい」
ルビィ?「善子ちゃんも好きなオールレンジ攻撃の時間でーす」
善子「…!?」
善子(周囲に浮かび上がったのは、黒澤家の台所で働いていたであろうフライパンや鍋、お玉などの調理器具。刃物だけは見当たらないのが幸いだが、それでも)
善子(その総てが物量ある鈍器だと気付いた時には、もう遅い)
善子(フライパンが後頭部を強打し、鮮血が飛び散って視界に赤が入り込んだ)
善子(フライ返しが右肩の傷口を強く抉る形で突き刺さり、肉片が飛ぶのも見えた)
善子(鍋は頬を盛大に打撃し、ふらついた所を返ってきた鍋の蓋が両サイドから襲い、鼻血が吹き出て腫れが視界を奪う)
善子(土鍋がロザリオを握っていた右腕へと何倍もの重力が上乗せされた勢いで叩きつけられ、骨にダメージが入る音まで聞こえた)
善子(最後に視界の外から顔面にまな板の一撃――――――脳が揺さぶられ、とても立っていられない)
善子「Aqours…」
善子「サンシャ…イン……」
ルビィ?「ぎゃああああああああああ!!!!! こいつ、まだ……」
ルビィ?「うん……? 中が…熱い……」
ルビィ?「こ、こいつ…聖水を…飲んでいる…!? 善子ちゃん、とんでもない仕込みを…」
善子「悪いわね……黒澤ルビィって」
善子「ダイヤの妹なのよ……だから」
善子「硬度10には及ばなくても硬度9よ」
ルビィ?「…このぉっ!?」
善子「ぶべらっ!?」
ルビィ?「……これ以上中で暴れるんなら、その手で善子ちゃんを殴るよぉ…?」
善子「……やってみろ…」
善子「やってみろ悪魔ぁ! 黒澤ルビィをなめるな!」
39 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:31:05.81 ID:idrw2zS50
べぎっ ばぎっ がっ べしっ がいん
ずんっ べごっ ごん ばりっ ごいん
善子「……もう終わり?」
ルビィ?「ここまで叩きつけて、まだ喋れるんだぁ? いつかと大違い、おじいちゃんを食べないでって泣きべそかきながら十字架握ってたのにねぇ?」
善子「あの頃とは違う」
ルビィ?「じゃあ、おじいちゃんに会いに行ってきなよぉ」にまぁ
ルビィ?「ほらほらほらぁ!!」
善子「あ……が……」
善子(心臓の鼓動が、止まった。いや、違う)
善子(この悪魔は、念力で。私の心臓を、止めやがった)
善子(あの和菓子屋のお姉さんの時よりも遥かに強い、いや、ルビィの身体がそこまでこの悪魔に合っていたのか)
善子「が…ぁ……き…が……」
善子(そして視界が白くなり、痛みも感じず)
善子(冷たくなっていく)
ドサッ
ルビィ?「うん…他にもいい餌があるちゅんなぁ。こっちの二人はあーとーでー♪」ダっ
ダイヤ「……うっ…」
ダイヤ「はぁっ…はぁっ…」フラフラ
ダイヤ「善子さん…善子さん!」ゆさゆさ
ダイヤ「……なんてこと…心臓マッサージ、心臓マッサージ…」
花丸「ダイヤ…さ……」
ダイヤ「花丸さん…届いてましたわ」グッグッ
花丸「おら、なにも……」
ダイヤ「何もできなかったのは私も同じ…善子さんが来なければ、私も花丸さんも…止血を手伝ってください! 救急箱が棚の上に!」
花丸「はい……」
花丸(あちこちの傷の止血をしていく。その間にも救命措置を続けるダイヤさん。ダイヤさん自身も三日間、悪魔と一人で戦い続けたのだ、だが、それでも溢れそうな涙をこらえながら、ダイヤさんは善子ちゃんを蘇生しようと試みる)
ダイヤ「善子さん、戻って来なさい。あなたもまた、あなたが守ろうとした太陽なんですのよ」
花丸「……お酒と、塩…まだ残ってる」グッ
ダイヤ「花丸さん、ルビィを追いかけられますか?」
花丸「大丈夫、ずら」
ダイヤ「…善子さんと、二人で追いつきますわ」グッグッ
40 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:32:59.15 ID:idrw2zS50
黒澤家前
果南「まったく、なんでこんな寒いのさ!」
曜「やっと着いたよ、いつもより息が切れそう…」
千歌「確かに…なんでだろ」
鞠莉「何かおかしくなってるんだわ、きっと」
ルビィ?「……みぃつけたぁ」
果南「!」
千歌「ルビィちゃん…?」
ルビィ?「みーんなまとめておやつに」
「させない!」
ルビィ?「あれー? 今の声は…」
梨子「ルビィちゃんが…けど!」
梨子「にっこにっこにー」
ルビィ?「ピギィ!? そ、それは…」
梨子「あなたのハートに、にっこにっこにー」にこにーポーズ中
ルビィ?「ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
梨子「今よ、皆! どうにか抑えて!」
果南「わ、わかった!」
曜「右足ロック! 左足は任せるよ、千歌ちゃん!」
千歌「左足完了なのだ!」
果南「両腕拘束っと!」
梨子「鞠莉さん、そのバックの中にあるのを!」
鞠莉「ええ、わかったわ…ってにんにく臭っ! 梨子、あなた何持って帰ってきたの!?」
梨子「しょうがないじゃないですか、だって」
梨子「大悪魔サウルリトルバードの苦手なものの一つがニンニクなんですし」
鞠莉「だからニンニクどっさり餃子を食べさせて退治って…はい、ルビィ。あーん」
ルビィ?「い、嫌だそんなものは食べないちゅん!」
ルビィ「鞠莉ちゃん、無理に押し込まないと多分悪魔は食べない!」
ルビィ?「くっ、聖水二本も飲まれていると主導権が…!」
梨子「にっこにっこにー」にこにーポーズ
梨子(まさか本当に効くとは…)
41 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:34:42.07 ID:idrw2zS50
-数時間前 音ノ木坂学院 理事長室
理事長「にんにくが苦手なのもあるけど……何よりも、魔よけの呪文で足止めするのが効果的よ」
梨子「魔よけの呪文、ですか?」
理事長「ええ。それがとあるスクールアイドルの決めポーズと発音が同一だったのよ」
こころ「どのような、ポーズですか?」
理事長「矢澤さん達は良く知ってるものよ。あなたのハートに?」
こころ・ここあ「「にっこにっこにー」」
理事長「つまりそれ」
梨子「は、はあ……」
理事長「矢澤さん達のお姉さんが所属していたμ’sのメンバー、矢澤にこさんの決めポーズよ」
梨子「え!? 確かに似てるなって思ってたけど…まさかあのμ’sのにこさんの…うわぁ、すごい」
梨子「千歌ちゃんの為にサインでももらっておこうかな…」
理事長「にんにくをたくさん使った料理を食べさせる、食べておくとかも効果的ね」
梨子「なるほど…」
理事長「後はとどめとして強力な封印術があるわね。けど、これはある程度弱らせないと使えないわ」
梨子「……スクールアイドルを好む悪魔ってのも分かります、封印術って…」
理事長「………」
梨子「…どうしたんです?」
理事長「これは教えるなと言われているけれど、どうしようもなく手に負えなかったら…」
42 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:36:25.61 ID:idrw2zS50
現在 黒澤家前
梨子(しかしμ’sの人たちも大変だったんだなぁ、偶然が重ならなきゃって事だなんて)
花丸「梨子ちゃん、気を抜いちゃ…」
梨子「! 花丸ちゃん、怪我が…」
ルビィ?「お前からおやつにしてやるぅぅぅうぅぅぅぅ!」
ルビィ?「隙あり、だちゅうぅううん!」ばっ
果南「うわっ!?」バーン
梨子(後ろを固めていた果南さんは前のめりに飛んでいって、近くの坂道に背中から叩き付けられた)
梨子(同様に曜ちゃんは黒澤家の半壊した門に、千歌ちゃんは横の土塀に当たった後、謎の力が働いたかのように電柱に吸い寄せられるように真正面から叩き付けられた)
花丸「千歌ちゃんっ…!」
梨子(ずるずると力なく崩れ落ちる千歌ちゃんを見た時、坂道を転がり落ちてぴくりとも動かない果南さんを見た時、底の知れない恐怖が私を支配し、隣で鞠莉さんも顔を引きつらせている)
ルビィ?「美味しいものはたくさんあるのがいい」ゆらり
花丸「隙ありだずら!」ジャバっ
ルビィ?「ぎゃああああああああああああ!!!! しまった、清め酒…!」
花丸「やはりずら……聖水が効くなら、こっちも効くずらよ…」
梨子「はっ…!? にっこにっこにー」
ルビィ?「ピギャアァァァァア!!!」
ルビィ?「貴様らぁ…っ!」
ブンッ
梨子「ああっ!?」
花丸「がぁっ!?」
梨子(背中から凄まじく固いもので薙ぎ払われ、地面に花丸ちゃんごと叩き付けられた。見れば、半壊した黒澤家の門が浮翌遊し、武器のようにルビィちゃんの近くに浮かんでいる)
ルビィ?「これでも食らえーっ!!!」
バギッ
鞠莉「きゃあああああ!!!!」
梨子「鞠莉さんっ……」
梨子(咄嗟に鞠莉さんが私たちの前に入らなければ、私たちは門と共に果南さんより遠くまで吹っ飛ばされていただろう。鞠莉さんは半壊した門に薙ぎ払われ、坂道を数回バウンドして転がっていった)
梨子(鞠莉さんの近くに赤いものも見える―――――――まずい)
43 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:37:51.69 ID:idrw2zS50
ルビィ?「ふん! しつこい連中!」
ガシッ
ルビィ?「!?」
曜「捕まえたよ…! 悪いけど、諦めは悪いんだ…」
梨子「…曜ちゃん、そのまま! あなたのハートに、にっこにっこにー」
ルビィ?「ぴぎぃぃぃぃぃぃぃ!」
花丸「このぉっ!」バシャっ
ルビィ?「あづいあづいあづいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」ジタバタ
ルビィ?「やめてぇ、花丸ちゃん…なんでこんな事をするのぉ…」
花丸「!?」
曜「ルビィちゃ―――――――」
梨子「待って!」
梨子(悪魔は狡猾だ。ルビィちゃんの声や口調をまねる事ぐらい造作もない、だが)
ルビィ?「残念でしたぁ」ぶんっ
曜「わわっ!?」
花丸「しまっ…!」
バターン
曜「ぐぅっ…!」
梨子(今度は曜ちゃんが電柱に叩き付けられ、千歌ちゃんと折り重なるように倒れた)
梨子(そして花丸ちゃんは空中で一回転する形で庭に叩きつけられて呻いている)
梨子(このままじゃ…!)
梨子(周囲に視線を彷徨わせ、花丸ちゃんが落とした粗塩を握る)
ルビィ?「さーてと」
梨子「このっ!」ばっ
ルビィ?「っ!?」
44 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:39:20.12 ID:idrw2zS50
黒澤家内
ダイヤ「戻って来なさい…善子さん…お願い…」
ダイヤ(心停止してしまっている、だが、諦めない。仲間を失いたくない)
ダイヤ「……あとは、前に漫画で読んだ手法ですが…」
ダイヤ(躊躇ってる暇はない、後はこれぐらいしか知らない、しかも荒っぽい)
ダイヤ「戻れっ!」
ダイヤ(心臓へ直接ショックを与える事。これは止める事も出来るが、止まっているのを動かす時にも使う)
ダイヤ(力を込めた掌底を、真っ直ぐに善子さんの心臓に)
ダイヤ(かすかに、身体がはねた。もう一度)
ダイヤ「目覚めなさい、善子さん…! あなたも、太陽なのです!」
ダイヤ(もう一度、打ち込んだ)
ドクン
ダイヤ「善子さん…!」
ドクン ドクン ドクン
善子「……ダイヤ……」
ダイヤ「善子さん…良かった…」
善子「ルビィは…」
ダイヤ「悪魔に取り付かれたまま、外に。花丸さんが追いかけました」
善子「行かないと…」
ダイヤ「肩を貸しますわ、さぁ、立って」
善子「ええ……ありがとう」
ダイヤ「こちらこそ…懸命に私たちや花丸さんを助けようとしてくれましたわ。無理はさせたくありませんが」
善子「ええ。悪魔はまだルビィに取り付いたまま。戦いは終わってない…」
善子「花丸でも、足止めになるかも分からないけど…」
ダイヤ「さあ、こっちです……!」
45 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:40:54.40 ID:idrw2zS50
善子(母屋を抜けて、庭に出ると無残な光景だった)
善子(たのみのずら丸は庭に叩き付けられてダウンしている)
善子(門近くの電柱に千歌と曜が折り重なるようにして倒れ、その脇で梨子が懸命に粗塩を蒔いて悪魔の目くらましだ)
善子(鞠莉と果南に至っては、少し離れた場所の坂道でダウンしていて、確実に戦闘不能だ)
善子「悪いけど、帰ってきたのよ!」
ルビィ?「っ!?」
梨子「善子ちゃん…、ダイヤさん…!」
梨子(善子ちゃんは満身創痍、ダイヤさんだって悪魔に取り付かれている間に消耗している)
梨子(対抗手段は限られている、動け私…!)
ルビィ?「もう一回心臓止めてあげるよ、今度こそ大好きなおじいちゃんに会ってきたらぁ?」
善子「悪いわね。おじいちゃんはまだ存命よ」
善子(存命なのは悪魔と戦った事がない方のだけど)
梨子(手を三角フラスコの形にするのが決め手で…)
梨子(太陽を背に…今、自分のありったけを放つイメージ!)
梨子「サザンクロス!」
ルビィ?「ぴぎっ…?」
ルビィ?「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ダイヤ「梨子さんから気功砲が出ましたわ?!」
善子「梨子、なんてものを持ち帰ってきたのよ…」
善子「間違っても連発しないでよ、生命力そのものを削ってイメージとして放出するって…そりゃ生命のパワーなら制圧出来るでしょうけど…」
ルビィ?「貴様ぁ〜…!」
梨子「はぁっ…はぁっ……」
梨子(なんてこと、確かにダメージは与えたけど、こっちの身も持ちそうにない…)
善子「残念、悪魔。あなたの相手はこっちよ!」
梨子「にっこにっこにー」
ルビィ?「ぴぎゃああああああああああ!!!!!」
善子「去れ、悪魔!」
ダイヤ「これでも食らいなさいっ!」
ルビィ?「おのれダイヤめ、まだ動けるとは…!」
ダイヤ(十字架を握り、善子さんがやっていたように十字を切ると、悪魔は確かに怯んだ)
46 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:42:22.98 ID:idrw2zS50
ルビィ?「……う、動かない…足が…? まさか!?」
花丸「梨子ちゃん、お見事ずら…さっき投げてくれた塩があれば……」
花丸「おらの付け焼刃でも、充分結界になるずらよ…!」
ルビィ?「このおっ!」ブンっ
花丸「ごえっ!?」
梨子「花丸ちゃん! まだ門をぶん投げるパワーはあるのか…!」
善子「Aqours―――――――」
ダイヤ「サンシャイン!」
ルビィ?「うゆ!? こいつ、中から…!」
ダイヤ「ルビィ! 頑張るのです、もう少しですよ!」
ルビィ?「これでもくらえーっ!」ばっ
ダイヤ「もう一度念力…!?」
ダイヤ「善子さん!? 手が…」
善子「人の手首って逆パカしていいもんじゃないわよ…右も使えなくなるなんて」
善子「そこら中が痛すぎるからもあんまり痛いとも思えないわね」
ダイヤ「右の手首が変な方向になってるのもそうですが、肘の部分が真ん中からも折れてますわよ…」
善子「さっき土鍋食らったところね、そこも勢いあまっての有様かしら。ダイヤは平気?」
ダイヤ「善子さんが盾になってくれたお陰で」
善子「それなら無問題ね…ところでダイヤ」
善子「よくやるゲームにライオットシールドで殴るっていうアクションがあるんだけど」
ダイヤ「嫌な予感しかしませんわね」
善子「両手がこの有様だからロザリオを使えるのがダイヤしかいないのよ」
善子「それに…ダイヤモンドも魔除けになるわ。封印術をぶちかましてやりましょう」
ダイヤ「封印術は、どうすれば?」
善子「ちょっとアレなんだけど…」
47 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:44:07.05 ID:idrw2zS50
梨子「…もう一度、手を三角フラスコの形に…」
ルビィ?「させるかぁ!?」
梨子「ごべぇっ!? まだ…」
ルビィ?「門を叩き付けてもまだ力を…なら、もう一回!」ガイン
梨子「サザンクロス!」
ルビィ?「!!!!!!!!」
梨子「悪魔め、消えてなくなれぇぇぇぇぇっ!」
ルビィ?「こ、こいつめ、もろとも心中するつもりか…!?」
梨子「いいえ、違うわ」
ダイヤ「うあああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」
ルビィ?「なにぃっ!?」
ルビィ?「門を使うには消耗しすぎてる…なら、これで!」
梨子(悪魔は念力で庭にある石たちを浮かべさせる、だがダイヤさんの前には善子ちゃんがいる)
梨子(石は善子ちゃんの肩や腕、腹などに当たったがダイヤさんは止まらず、突き出したロザリオがルビィちゃんの心臓でぴたりと止まる)
ダイヤ「善子さん!」
善子「ルビィから離れろ…!」
善子「リリー、トドメを聞いて来てるでしょ!?」
梨子「ええ…!」
ダイヤ「みんなの」
梨子「ハートを」
善子「撃ちぬくぞー」
ダイヤ・梨子・善子「「「ラブアローシュート!!!」」」
ちゅううううううううううううん!!!!!
ダイヤ(ルビィの身体から飛び出した灰色はこの前飛び出してきた時よりも遥かに小さく、悲鳴をあげながら)
ダイヤ(近くに転がっていたガラス瓶の中へと吸い込まれていった。それに対して)
千歌「取ったのだ…」きゅっ
48 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:45:08.64 ID:idrw2zS50
善子「さすが千歌…蓋しなかったらまた逃げられてたわ」
千歌「西遊記みたいに名前を言えば吸い込んでくれるもんじゃないしね…」
曜「腕痛い」
梨子「はは……」
ルビィ「……おねえちゃぁん……」ぐったり
ダイヤ「ルビィ、よく頑張りましたね」
善子「…ほんとよ…てか、ルビィの身体がよほど好物だったのね。あんなに強いとは…」
花丸「善子ちゃん…ありがとう」
善子「ううん、いいのよずら丸。リリーがいなければ私も勝てなかったわ」
曜「誰か救急車……動ける人いる?」
ルビィ「る、ルビィが呼んでくるね。えーと…八台は必要かな…」
善子「花丸…それと、写経した紙か何かあるかしら? もしくはお札でもいいわ。悪魔を封印した瓶をそれでぐるぐる巻きにしといて」
花丸「わかったずら」
善子「まあ、聖水の空き瓶だからある程度はマシだろうけど」
花丸「けど、善子ちゃん。他に聖水は…」
善子「乱気流で壊滅して二本しか残らなかったのよ。だいいち自分で作れるものでもないし…」
ダイヤ「……悪魔祓いって本当に大変ですわね…。まあ、ともかく。きちんと治療しないと」
ダイヤ「善子さんは一度心臓止まってるんですし」
千歌「悪魔って怪物過ぎる…」
曜「ホントだよ…って善子ちゃん!?」
千歌「重症ってレベルじゃないのだ…」
善子「ホント、今更痛みがやってきたわよ…ちょっと寝たいから寝ていい?」
花丸「また心臓止まるずらよ」
善子「…起きてるわ…」
49 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:46:27.16 ID:idrw2zS50
二日後 病院にて
ルビィ「……この病室、みーんなAqoursだね…あはは」
善子「なにがアハハよ。ルビィ以外全員入院って」
花丸「仕方ないずら。頭部打撲も最低安静ずら。それ以外の傷もあればもっと」
千歌「千歌と曜ちゃんも手と足の骨にヒビあるしね…」
果南「私たちや梨子はアバラもおまけでついてきたよ」
鞠莉「けど、善子に比べればマシよ。良かったわね、善子。牛刀がすぐに摘出出来て」
善子「お陰で手の平に穴が開いてるけど。両腕も動かせないし、最悪だわ」
善子「破傷風にならないかも心配よ、カラスに何回ついばまれたか…」
鞠莉「けど、善子が悪魔祓いの経験あって本当に良かった」
善子「…まあね。必要に迫られて、よ。少しイタリアに行ってたのはそれが理由」
鞠莉「あら、そうなの?」
善子「悪魔祓いの経験ある人って少ないから、その経験を聖職者たちに話したりしてたの。まあ、浦女みたいなミッション系の学校に呼ばれてそういう話するってのもあるけど…」
ルビィ「善子ちゃん、そういう話は配信ではやらないの?」
善子「洒落にならない話の方が多いから余計に面白半分でやる話じゃないの。けど」
善子「悪魔祓いに関心持ってくれる人って日本だと大抵子供しかいないのよ…」
善子「お陰で今じゃシスター・ヨハンナは天才美少女エクソシストとしてその手の子供たちのアイドルよ。全然嬉しくないわ」
鞠莉「…だからヨハネなのね。今、わかったわ」
果南「どういうことさ?」
鞠莉「ヨハネの女性形がヨハンナなのよ。だから本来は…堕天使ヨハンナが正しい形ね」
善子「洗礼名をそのまま堕天使の名前にするのは不味いでしょ」
善子「おじいちゃんが、付けてくれたのよ。小さな太陽、ヨハンナって私の事を呼んでたわ」
ダイヤ「……あの悪魔の言っていた、おじいさま、ですか」
善子「ええ。私が前にあいつと戦った時の事。その時からよ」
善子「私が堕天使ヨハネになったのは。けど…」
善子「そんな私を、また小さな太陽にしてくれたのはAqoursよ」
善子「私を輝かせてくれた、太陽が皆」
50 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:47:15.59 ID:idrw2zS50
ダイヤ「…あなたもその太陽ですわ、善子さん。お陰で」
ダイヤ「こうして皆顔を合わせる事が出来たのですから」
花丸「うん、ありがとう。善子ちゃん」
善子「この話は他の人たちにするには重すぎるわ」
善子「……ところでずら丸、例の瓶はどうしたの?」
花丸「ちゃんと、写経した紙でぐるぐる巻きにして、お札で結んだよ」
善子「それは結構。その後、どうしたの?」
ルビィ「元の場所に送ったよ?」
善子「そこで封印するのが一番よね…」
Prrrrrr
ルビィ「あれ、理亞ちゃんからだ」
理亞『もしもし?』
ルビィ「うん、どうしたの?」
理亞『色々大変だったみたいって、お姉ちゃんから聞いたけど…それと、聞きたいんだけど』
理亞『この紙に包まれてる瓶って何? なんか空っぽみたいなんだけど』
ルビィ「」
善子「今度は北海道で悪魔祓いする羽目になりそうね…」遠い目
花丸(そしてこの直後、病室内でダイヤさんの雷がルビィちゃんに落ちたずら)
終わり
51 :
◆3m7fPOKMbo
[sage]:2020/12/30(水) 11:49:48.03 ID:idrw2zS50
エクソシストのテーマは、作曲者本人はホラー映画のテーマに使われるとは思ってなかったそうな。
HTML化依頼だしとこう。
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