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シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」
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541 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:23:02.90 ID:bn13i2TRo
葛城「お前は死を選んだ。私はダミープラグを」
葛城「初号機を動かしたのはダミープラグだ」
ミサト「……!」
ミサト「そんなの……!そんなの関係ないわよ!!乗ってたのは私でしょ!?」
葛城「お前は戦うことを放棄したんだ」
ミサト「違うわよっ!!!」
葛城「……」
葛城「L.C.L.圧縮濃度を限界まで上げろ」
ヒカリ「ええっ?」
葛城「…やってくれ。ここを破壊されては困る…」
ミサト「まだ直結回路が残っ…がはっ!」
ミサト「チクショウ…チクショウ…チクショウ…」
542 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:24:02.13 ID:bn13i2TRo
作業員「ライトブレストの溶解処理、完了しました」
作業員「体液の洗浄は予定通り、30から始めます」
作業員「第6パーツは熱処理されます。エリア内の作業員は待避してください」
レイ「…もういいの?」
シンジ「仕事ができれば、問題ないよ」
シンジ「それに、休んでられないよ。こんな非常時に…」
シンジ「ミサトちゃんは…?」
レイ「…あの後、レーザーカッターで非常ハッチを切断。強制排除されたらしいわ」
シンジ「……参ったな…、今回ばかりは」
543 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:25:02.22 ID:bn13i2TRo
加持「…立ち直れないかもしれないな」
リツコ「ミサト?」
加持「…ああ、葛城もだし」
加持「俺もだ…」
リツコ「…あなたの先行で、使徒との接近戦が危険と分かったんだから…無駄ではなかったわ」
加持「ははっ…優しいじゃないか。いつになく」
リツコ「そうかしら…普通よ」
加持「……葛城は、今ごろ夢の中かな?」
リツコ「夢?」
加持「ああ……悪夢じゃないといいが…」
リツコ「……」
544 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:26:01.76 ID:bn13i2TRo
日向(……どこだ…ここは…妹の病院か…?なぜ俺は寝てるんだ……?)
日向(何だ……葛城さんじゃないか…それに、赤木…)
リツコ「なぜあんなことをしたの?」
ミサト「許せなかったのよ、お父さんが。私の気持ちを裏切ったお父さんが…」
ミサト「せっかくいい気持ちで話ができたのに、あの人は私の気持ちなんか分かってくれないんだわ」
リツコ「あなたは分かろうとしたの?お父さんの気持ちを」
ミサト「…分かろうとした」
リツコ「なぜ分かろうとしないの?」
ミサト「分かろうとしたわよ!」
リツコ「司令はあなたに死んでほしくなかっただけよ」
ミサト「……っ」
ミサト「私は……!」
日向(…なんで喧嘩してるんだ…二人…)
545 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:27:04.88 ID:bn13i2TRo
看護師「面会は特別だから、5分だけよ」
加持「はい、ありがとうございます」
日向「なんだ……お前か」
加持「悪かったな…葛城じゃなくて」
日向「いや…良かったよ。今はまともに顔を見れそうにない」
加持「……大丈夫か?」
日向「…生きてはいるみたいだな…」
加持「……」
日向「……葛城さんと、赤木がいたような気がしたんだがな…ちょうどそこに」
加持「…葛城は昨日退院したよ。リッちゃんは…何度か顔を見せてたようだが。おたくは丸三日寝てたんだ…夢でも見たんじゃないのか?」
日向「そうか…3日も……」
日向「……」
546 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:28:01.10 ID:bn13i2TRo
日向「なぁ……ひとつ、頼んでいいか…?」
加持「何だ?」
日向「妹には…知らせないでくれ。俺は何でもないって…少し忙しいだけだからって…伝えてくれないか…?」
加持「……」
加持「分かった…」
547 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:29:02.53 ID:bn13i2TRo
ネルフ職員「出たまえ、葛城ミサト君。総司令がお会いになる」
葛城「命令違反、エヴァの私的占有、恫喝…」
葛城「これらはすべて犯罪行為だ」
葛城「…何か言いたいことはあるか」
ミサト「……」
ミサト「私はもう、エバに乗りたくありません。…ここにもいたくありません」
葛城「どうするつもりだ」
ミサト「おじさんのところへ戻ります」
葛城「…それで逃げられると思うのか」
ミサト「……!」
葛城「…お前だけは、お前自身から逃げられない」
548 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:30:04.24 ID:bn13i2TRo
葛城「お前の戦闘離脱も、同級生の怪我も、すべて事実だ。向き合わない道はない…「演じる」ことで隠すことはできても。…ミサト」
葛城「…もうここへは帰ってくるな」
ミサト「……っ!言われなくても、そうするわよ!!!」
葛城「私だ。サードチルドレンは抹消、初号機の専属パイロットはリツコをベーシックに、ダミープラグをバックアップに廻せ」
(伝言メッセージ)
マヤ「葛城さん? 大丈夫…? わたし、何て言ったらいいのか…」
マヤ「ごめんなさい。勝手なことばかり言って…乗りたいとか、羨ましいとか。私、自分が幻想を見てるんだって気づいたのよ、出ていくあなたを責められないわ……日向くんがエヴァの事故に巻き込まれたって聞いて、私…!」
オペレータ「この電話は盗聴されています。機密保持のため回線を切らせていただきました。ご協力を感謝いたします」
549 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:31:02.65 ID:bn13i2TRo
シンジ「…加持くんが、悪かったって。…ミサトちゃんに」
ミサト「……みんな私に謝ってばっかり。悪いのは私なのに」
シンジ「ミサトちゃん…」
ミサト「やめてくださいよ!!いらないですよ、同情なんて…!」
シンジ「………」
ミサト「もう聞きあきたわ……私はかわいそうなんかじゃない……!」
ミサト「………」
ミサト「エバに乗ることも、ここに残ることも…」
ミサト「自分で選んだ……だから今度も、自分で出ていくんです…」
シンジ「…ミサトちゃん…」
550 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:32:03.21 ID:bn13i2TRo
ミサト「…最後に、ひとつだけ教えてください。なぜ日向くんだったんですか?フォースチルドレンが」
シンジ「……第4次選抜候補者は、全てミサトちゃんのクラスメートだったんだよ……ごめん、こんな大事なことが、今まで言えなくて……」
ミサト「……全部、仕組まれてたってことですか?クラスのみんなが……」
ミサト「なんなんですか……?お父さんが……あの人がやろうとしてることは…!」
シンジ「……」
シンジ「ごめん……うまく言えないんだ。でも僕らが戦ってるのは、人類を救うためで…!……それだけは、嘘じゃ、ないから…」
ミサト「……もういいです。どうせ私には関係のなくなることですから」
シンジ「ミサトちゃん…」
ミサト「私のパスコードは破棄してください。部屋の荷物も…」
シンジ「……」
ミサト「すみません、最後までご迷惑をおかけして」
ミサト「それじゃあ……さようなら」
551 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:33:02.06 ID:bn13i2TRo
警報。
放送「ただいま東海地方を中心に、非常事態宣言が発令されました。住民の皆さまは、速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返します、ただいま…」
ミサト「使徒だ…」
オペレータ「総員第一種戦闘配置、地対空迎撃戦用意」
カヲル「目標は?」
ケンスケ「現在、侵攻中です。駒ケ岳防衛線、突破されました!」
552 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:34:02.37 ID:bn13i2TRo
オペレータ「第1から18番装甲まで損壊!」
トウジ「18もある特殊装甲を、一瞬で…!」
シンジ「……エヴァの地上迎撃は間に合わない!弐号機をジオフロント内に配置、本部施設の直縁に廻して!」
シンジ「加持くんには目標がジオフロント内に侵入した瞬間を狙い撃ちさせて!」
シンジ「零号機は?」
ヒカリ「A.T.フィールド中和地点に、配置されています」
レイ「左腕の再生がまだなのよ」
シンジ「戦闘は無理か…」
葛城「リツコは初号機で出せ」
シンジ「…!」
葛城「ダミープラグをバックアップとして用意」
シンジ「はい…!」
553 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:35:02.14 ID:bn13i2TRo
オペレータ「エントリースタート」
ヒカリ「L.C.L.電荷」
レイ「A10神経、接続開始」
異変。
リツコ「うっ…だめなのね、もう…」
オペレータ「パルス逆流!」
ヒカリ「初号機、神経接続を拒絶しています!」
レイ「まさか、そんな…」
カヲル「……葛城君」
葛城「ああ…私を拒絶するつもりか」
葛城「…起動中止、リツコは零号機で出撃させろ。初号機はダミープラグで再起動」
シンジ「しかし零号機は…!」
リツコ「構いません。行きます」
シンジ「リツコちゃん…!」
リツコ(私が死んでも代わりはいる…もう気づいて泣く人もいないわ)
554 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:36:02.31 ID:bn13i2TRo
火柱が立ち上る。市街地。
ミサト(……私はもう、乗らないって決めたのよ…!)
男「君、何をしている!早くシェルターに避難しなさい!」
ケンスケ「だめです!後一撃ですべての装甲が突破されます!」
シンジ「…頑張って、加持くん…!」
加持「来たな……こちとら傷心中だってのに」
加持「ま……いいさ。スパッと勝ちどきを上げて、」
加持「英雄の凱旋といこうじゃないか……!」
555 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:37:01.74 ID:bn13i2TRo
連射。
加持「このっっ!!」
加持「チッ……次!」
加持「なぜだ!? A.T.フィールドは中和しているはず…」
加持(なぜ通じない!?)
なおも撃ち込むが、通じない
加持「ははっ……笑えない冗談だ」
加持「何…っ!」
加持「がっっ」
腕を切り落とされる
加持「……っああ、あぅ……!」
加持「……でやあああっ!」
シンジ「弐号機の全神経接続カット!早く!!」
556 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:38:02.56 ID:bn13i2TRo
(加持「避難訓練?……まぁ、俺たちパイロットには関係ない話だろうな」)
揺れる避難所。
ミサト「……うわっ!」
男「第8区に直撃!」
男「第6シェルターは放棄、生きてるものは第3シェルターへ急げ!」
目前に弐号機の頭部。
ミサト「……!!」
ケンスケ「弐号機大破、戦闘不能!」
シンジ「加持くんは!?」
トウジ「無事や!生きとる!」
加持「はは…」
加持「…首、ついてるよな……?」
加持「………」
557 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:39:02.31 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「使徒、移動開始!」
シンジ「初号機の状況は?」
オペレータ「ダミープラグ、搭載完了!」
ヒカリ「探査針、打ち込み終了!」
レイ「コンタクト、スタート!」
ヒカリ「了解!」
エラー音
レイ「何っ!?」
ヒカリ「パルス消失、ダミーを拒絶、だめです!エヴァ初号機、起動しません!」
レイ「ダミーを、赤木リツコを、」
カヲル「受け入れないのか…!」
葛城「……」
葛城「渚、少し、頼む…」
558 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:40:01.46 ID:bn13i2TRo
男「怪我人は第6ブロックへ!」
男「無事なものは第3シェルターへ集合しろ!」
男「こっちだ!」
男「早く!」
男「急げ!」
男「早く!」
男「おい君!何をしている!死にたいのか!」
立ち尽くすミサト
ミサト「加持くん…」
アスカ「ミサト!」
559 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:41:02.86 ID:bn13i2TRo
ミサト「アスカさん…、どうしてここに…」
アスカ「それはこっちの台詞よ。何やってんのよ、サードチルドレン、葛城ミサト」
ミサト「もうパイロットじゃありません。…自分のために決めたんです」
アスカ「自分のため?聞いて呆れるわね…あんた逃げてるだけじゃないの」
ミサト「アスカさんこそ……何してるんですか」
アスカ「…アルバイトが公になったからね。戦闘配置に私の居場所はなくなったの。だからここで水を撒いてるってわけ」
ミサト「だからここで?意味が分かりません」
アスカ「分からない?何してたって同じってことよ。エヴァが負ければみんな死ぬんだから」
ミサト「……みんな、死ぬ…」
アスカ「そうよ。使徒がここの地下に眠るアダムと接触すれば、人は全て滅びる…サードインパクトで」
アスカ「あたしはここで水を撒くことしかできない…あんたは違うでしょ?」
アスカ「使徒を止められるのは、使徒と同じ力を持つエヴァンゲリオンだけ」
ミサト「リツコっ!?ライフルも持たずに!」
560 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:42:02.06 ID:bn13i2TRo
レイ「やめなさいっ!!」
葛城「リツコ!」
リツコ「A.T.フィールド、全開…!」
爆発。
ミサト「うっ!……!」
トウジ「零号機は…!」
爆煙の中から、使徒
零号機の頭部を切り落とす
シンジ「リツコちゃんっ!」
レイ「何てこと…!」
561 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:43:10.35 ID:bn13i2TRo
アスカ「後悔なんて誰だってするわよ。誰だって今が一番辛いの。時間は巻き戻せない、一瞬一瞬を積み重ねたものが人の歴史なのよ」
アスカ「選択できるのは「今」だけ…」
アスカ「その一瞬で何を選択するか……少なくともそれで、未来(さき)の後悔は変えられるわ」
ミサト「……」
アスカ「あんた本当に後悔しないの?こんなところに突っ立ってて」
ミサト「………!」
ケンスケ「第三基部に、直撃!」
トウジ「最終装甲版、融解!」
シンジ「まずい、メインシャフトが丸見えだ…!」
レイ「初号機はまだなの!?」
オペレータ「ダミープラグ、拒絶」
オペレータ「だめです、反応ありません!」
562 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:44:02.75 ID:bn13i2TRo
葛城「続けろ。もう一度108からやり直せ」
ミサト「乗せてください!」
ミサト「私を、私をこの……っ、初号機に乗せてください!」
葛城「……!」
ミサト「お父さん…」
葛城「…なぜ帰ってきた」
ミサト「私は…!」
ミサト「私は、エヴァンゲリオン初号機のパイロット、葛城ミサトです!」
563 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:45:10.09 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「目標は、メインシャフトに侵入、降下中です!」
シンジ「目的地は!?」
トウジ「そのまま、セントラルドグマへ直進!」
シンジ「ここに来る…!総員待避!急いで!」
トウジ「総員待避!繰り返す、総員待避!」
目前に迫る使徒。
シンジ「……!」
突進する初号機
シンジ「エヴァ初号機!?…ミサトちゃん!?」
ミサト「ぐ…っ!」
ミサト「ああああああっ!」
564 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:46:02.48 ID:bn13i2TRo
拳を振り上げる初号機。腕を切断される
ミサト「……っ、あああああああ!」
射出リフトに使徒を追いやる。
ミサト「シンジさんっ!」
シンジ「5番射出、急いで!」
ミサト「あああああっ!」
ミサト「やあああああ!」
絶叫し使徒を撲つ。
突如、停止する
ミサト「エネルギーが切れた!?」
ヒカリ「初号機、活動限界です!予備も動きません!」
シンジ「ミサトちゃん…!」
565 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:47:03.60 ID:bn13i2TRo
刻まれ、爆撃を受ける初号機。
シンジ「ミサトちゃん!!」
ミサト「動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないのよ!」
シンジ「あれは…っ」
露呈したコア。
ミサト「動け、動け、動け!動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動きなさいよ!」
ミサト「今動かなきゃ、今やらなきゃ……みんな死んじゃうのよ…!もう…もうそんなのは、嫌なの…!」
ミサト「だから……動いてよ…っ!!」
鼓動。
覚醒する初号機。攻撃を受け止める
アスカ「……!」
566 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:48:03.51 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エ、エヴァ、再起動…」
使徒の部品を押し当てる。腕を再生。
シンジ「すごい…」
ヒカリ「まさか…信じられません、初号機のシンクロ率が400%を超えています!」
レイ「目覚めたのね……彼女が」
咆哮する初号機。使徒を圧倒する
シンジ「使徒を……食べてる…」
レイ「S2機関を自ら取り込んでいるというの…?エヴァ初号機が…」
ヒカリ「……うぅっ!」
レイ「拘束具が…!」
トウジ「拘束具?」
レイ「そうよ…あれは装甲板ではないの。エヴァ本来の力を私たちが押え込むための、拘束具」
レイ「その呪縛が今、自らの力で解かれていく…私たちにはもう、エヴァを止めることはできない…」
567 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:49:02.60 ID:bn13i2TRo
アスカ「……初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ」
アスカ「これもシナリオの内?……葛城司令殿」
カヲル「始まってしまったね…どうする?」
葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」
拾九話分終わり
568 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:51:01.27 ID:bn13i2TRo
シンジ「使徒を……食べてる…」
レイ「拘束具が、今自らの力で解かれてゆく。私たちにはもう、エヴァを止める事はできない…」
アスカ「初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ?」
ゼーレ「エヴァシリーズに生まれいずる筈のないS2機関」
ゼーレ「まさかかのような手段で自ら取り込むとはな」
ゼーレ「我らゼーレのシナリオとは大きく違った出来事だよ」
ゼーレ「この修正、容易ではないぞ」
ゼーレ「葛城。あの男にネルフを与えたのがそもそもの間違いではないのかね?」
キール「だがあの男でなければ、全ての計画の遂行はできなかった。葛城、何を考えている?」
カヲル「始まってしまったね…どうする?」
葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」
569 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:52:20.93 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エヴァ両機の損傷は、ヘイフリックの限界を超えています」
レイ「時間がかかるわね。全てが戻るには」
ヒカリ「幸い、MAGIシステムは移植可能です。明日にも作業を開始します」
レイ「でも、ここはだめね」
ケンスケ「破棄決定は、もはや時間の問題だな」
レイ「そうね…とりあえずは、予備の第2発令所を使用するしかないわね」
ヒカリ「MAGIはなくとも、ですか?」
レイ「…そうね。埃を払って、午後には仕事を始めるわ」
ヒカリ「椅子はきついし、センサーは硬いし、やりづらいのよね…ここ」
ケンスケ「見慣れた第1発令所と造りは同じなんだがな」
ヒカリ「違和感あるわよね」
レイ「使えるだけでも良しとしましょう」
レイ「使えるかどうか分からないのは、初号機ね…」
570 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:53:02.23 ID:bn13i2TRo
拘束された初号機
シンジ「…何か反応は?」
トウジ「内部に熱、電子、電磁波ほか、化学エネルギー反応無し。S2機関は完全に停止しとる」
シンジ「にもかかわらず、この初号機は3度も動いた…」
シンジ「目視できる状況だけじゃ、迂闊に触れないね」
トウジ「……」
トウジ「迂闊に手ェ出すと何されるか分からん。…まるでセンセを尻に敷いとる、あの女やな」
シンジ「…トウジも、人のこと言えるの?」
トウジ「なんやとっ!」
571 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:54:14.56 ID:bn13i2TRo
キール「だが事態はエヴァ初号機の問題だけではない」
ゼーレ「さよう、零号機と弐号機の大破、本部施設の半壊、セントラルドグマの露呈。被害は甚大だよ」
ゼーレ「われわれがどの程度の時と金を失ったか、見当も付かん」
ゼーレ「これも、葛城の首に鈴を付けておかないからだ」
ゼーレ「鈴は付いている。ただ、鳴らなかっただけだ」
キール「鳴らない鈴に意味はない。今度は鈴に動いてもらおう」
572 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:55:08.40 ID:bn13i2TRo
アスカ「…どーなってんのよ?この展開は」
アスカ「ゼーレにどう言い分けつけるつもり?」
カヲル「……初号機はわれわれの制御下ではなかった。これは不慮の事故だよ」
葛城「よって初号機は凍結。委員会の別命あるまでは、だ」
アスカ「あくまで演じ通すってわけね…。いいわ。でもどうするの?パイロットは取り込まれたままなのよ」
葛城「……」
573 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:56:01.73 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「やはりだめです、エントリープラグ排出信号、受け付けません」
レイ「予備と疑似信号は? 」
ヒカリ「拒絶されています。 直轄回路もつながりません」
トウジ「プラグの映像回線が繋がった。主モニターに廻す」
シンジ「……何だ、これ……!」
レイ「…これがシンクロ率400%の正体」
シンジ「そんな……!ミサトちゃんは一体…!?」
レイ「…エヴァ初号機に取り込まれてしまったのよ」
シンジ「……!」
574 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:57:02.80 ID:bn13i2TRo
シンジ「……何だよそれ…どういうことなの? エヴァは対使徒用の、決戦兵器なんじゃなかったの!?」
シンジ「あの時南極で拾った……それをコピーした、人が戦うために作った兵器なんじゃ…」
レイ「ただのコピーとは違うわ。人の意思が込められているもの」
シンジ「これも誰かの意思だって言うの…?」
レイ「……あるいは、エヴァの」
シンジ「!」
シンジ「…なんだよそれ…!エヴァって何なんだよ…!」
レイ「…人の作り出した、人に近いカタチをした物体、としか言いようがないわ」
シンジ「……」
575 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:58:01.92 ID:bn13i2TRo
テレビ(ラジオ)「…であり、南沙諸島の問題に対し、政府と内務省はこれを公式に否定しました」
テレビ(ラジオ)「次のニュースです。第2東京市で起きたセクトによるテロ事件から一ヶ月が過ぎた今日、新たなテロ行為に対し再発防止を第一に政府による…」
リツコ「…まだ生きてる…」
(通話)
加持「リッちゃんが無事?それは…よかった…俺は大丈夫、ああ、大したことないよ、それじゃあ」
加持「…大したことないか…」
加持「弐号機、大破…」
加持「……」
加持「…荷が重いな…」
576 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 15:59:02.23 ID:bn13i2TRo
シンジ「ミサトちゃんのサルベージ計画?」
レイ「そう。ミサトちゃんの生命と言うべき物は、まだ存在しているわ」
シンジ「言うべき物?」
ヒカリ「ミサトちゃんの肉体は、自我境界線を失って、量子状態のまま、エントリープラグ内を漂っていると推測されます」
シンジ「つまり…ミサトちゃんは僕たちの目では確認できない状態に変化している?」
ヒカリ「そう。プラグの中のL.C.L.成分は、化学変化を起こし、現在は原始地球の海水に酷似していて…」
レイ「言うなれば、生命のスープね」
577 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:00:01.13 ID:bn13i2TRo
レイ「ミサトちゃんを構成していた物質は、すべてプラグ内に保存されているし、魂と言うべき物もそこに存在している」
シンジ「……なぜそう言い切れるの?」
レイ「現に彼女の自我イメージが、プラグスーツを擬似的に実体化させているわ」
ヒカリ「つまりサルベージとは、彼の肉体を再構成して精神を定着させる作業です」
シンジ「そんな事が可能なの?僕たちの力で」
レイ「MAGIのサポートがあればね」
シンジ「……」
レイ「結果どうなるかは……やってみなくては分からないわ」
578 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:01:15.88 ID:bn13i2TRo
ミサト「…なに、これ…?どこなの…?エントリープラグ?初号機の?…でも誰もいない。私もいない…」
ミサト「なに…これは…?よく分からない…」
ミサト「この人達…そう、私の知っている人たち、私を知っている人たち」
ミサト「そうか、みんな私の世界なんだ」
ミサト「これは? 私の世界のはずなのに、よく分からない、外からのイメージ、嫌なイメージ」
ミサト「そうよ、敵!」
ミサト「敵、テキ、てき、敵!使徒と呼ばれ天使の名を冠する私たちの敵!」
ミサト「エバの…そしてネルフの目標…シンジさんの両親の仇…」
ミサト「なんで私が戦うんだろう…こんな目に遭ってまで…」
(アスカ「誰かのためってのは聞こえはいいけど、心情的には見返りを求めるものよ」)
579 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:02:04.84 ID:bn13i2TRo
ミサト「自分のため……自分のため?」
ミサト「私はこんなに傷ついているのに……」
ミサト「敵、テキ、てき、敵、みんな敵!私を…私たちを脅かすもの、つまり敵」
ミサト「そうよ、自分の命を……心を守って、何が悪いのよ!いいことじゃないの!」
リツコ「いい子でいたいの?」
ミサト「何よ!私と母さんを捨てたくせに!」
リツコ「あなたが逃げ出したんでしょう?」
ミサト「違う、違う、違う、違う!お父さんが捨てたのよ!日向くんを傷つけたのよ、お母さんを殺したのよ!」
リツコ「お母さんが、あなたを殺していたんじゃないの?」
ミサト「嫌……っ!」
580 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:03:05.16 ID:bn13i2TRo
母「ミサト……ミサトはお母さんの味方よね…?」
母「ひどい…、ひどいわ…何も分かってないのよ、あの人は」
母「家庭より仕事を取ったのよ!愛してないんだわ、私たちのことを」
ミサト「……」
母「あなただけは、お母さんの味方よね?」
母「あなたがいてくれれば……他になにもいらないの」
母「ミサト…!」
581 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:04:03.70 ID:bn13i2TRo
リツコ「だから嫌いなの?」
ミサト「そうよ……父も母も嫌い。自分だけがかわいいのよ」
リツコ「だから逃げ出したのね」
ミサト「一人になって当然よ!お父さんは私たちを愛してなかったんだから!」
リツコ「だから私を愛すの?」
ミサト「そうよ!実の子が恐いから…!他の子で誤魔化してるのよ」
リツコ「あなたは違うの?」
ミサト「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!お父さんがみんな悪いんじゃないの!あの時だって、ほんとはお父さんに嫌いだって言うつもりで…!」
582 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:05:02.40 ID:bn13i2TRo
ミサト「私に…これに乗って戦えって言うの?さっきの化け物と!」
葛城「…そうだ」
ミサト「……いやよっ!そんなの……!何?なんでそうなるのよ、今更、いまさら……私を捨てたんじゃなかったの!!?」
葛城「……捨てた覚えはない」
ミサト「なぜ、私なの?」
葛城「お前にしかできないことだからだ」
ミサト「……無理よ…っ!そんなの…見たことも、聞いたこともないのに、できるわけない!」
ミサト「そう、私は何も知らなかった」
ミサト「それなのに、飛び込んだのよ」
ミサト「エバに乗ることを選んだ」
ミサト「お父さんに近づきたかったから…」
583 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:06:01.86 ID:bn13i2TRo
アナウンス「現在、L.C.L.の温度は36を維持、酸素密度に問題なし」
アナウンス「放射電磁パルス異常無し。波形パターンはB」
アナウンス「各計測装置は正常に作動中」
ヒカリ「サルベージ計画の要綱、たった一ヶ月でできるなんて。さすが綾波さんね」
レイ「原案は私じゃないわ…先生が残したものに手を加えたの。10年前に実験済みのデータよ」
ヒカリ「そんなことがあったの?エヴァの開発中に?」
レイ「私が入ってすぐの出来事よ」
ヒカリ「…その時の結果は…?」
レイ「……失敗」
584 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:07:04.87 ID:bn13i2TRo
ミサト「冷たい…さびしい…」
ミサト「おかしいな。…前は一人でも平気だったのに」
リツコ「サビシイってなに?」
ミサト「一人が嫌ってこと。誰かといたいってことよ」
リツコ「シアワセってなに?」
ミサト「好きってこと。心が満たされることよ」
リツコ「誰かと一緒にいれば、幸せ?」
ミサト「……分からない。お母さんといるときは…息苦しかったから」
母親の遺体の前に立つミサト
ミサト「死を悲しめない自分がいるのよ」
ミサト「切り離されてほっとしている自分がいる」
ミサト「…でも、自分からは逃げられない」
(葛城「お前自身から逃げられない」)
585 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:08:03.77 ID:bn13i2TRo
ミサト「自分のために優しくしてきたわ!」
ミサト「自分のためにいい子でいた!」
ミサト「なのに……なぜなの?」
ミサト「嬉しくないのね」
ミサト「嬉しくないわよ」
ミサト「こんな……偽物の自分…」
ミサト「自分なのか分からない自分…」
ミサト「誰か…」
ミサト「汚して!」
ミサト「めちゃくちゃにしてよ!」
586 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:09:02.59 ID:bn13i2TRo
日向「意外だったな…葛城さんにこんな一面があったなんて」
シンジ「かわいいよ、ミサトちゃん」
加持「魅力的だよ」
ミサト「気持ち、いいの?」
日向「気持ちいいよ」
ミサト「気持ち、いいの?」
シンジ「気持ちいいよ」
ミサト「気持ち、いいの?」
加持「君は最高だ…」
587 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:10:02.80 ID:bn13i2TRo
日向「君が必要なんだ」
シンジ「君が必要だよ」
加持「君しかいらない…君だけでいい」
リツコ「嘘ね」
ミサト「はっ」
リツコ「一時の感情に身を任せて、刹那的に自分を傷つけているだけよ。罰を与えて、誤魔化しているだけ」
ミサト「それの何がいけないのよ!私は汚れたいの!もういい子は嫌…!私はあんたじゃないのよ!!」
リツコ「私はいい子じゃないわよ?」
(加持「涙の通り道にほくろのある人は…」)
(加持「ま、俺ならそんな思いはさせないが」)
(アスカ「あたしにとってのシンジ?…それが分かりゃあ、苦労しないわよ」)
588 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:11:02.13 ID:bn13i2TRo
シンジ「アスカは特別なんだ」
加持「笑った顔が見たい」
ミサト「やめて!!!やめてよ!!!!私だけを見て!」
ミサト「私だけを愛してよ…!」
日向「愛しているよ」
シンジ「愛してるよ」
加持「………」
葛城「お前の居場所はない」
ミサト「ひ…っ!」
589 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:12:01.55 ID:bn13i2TRo
オペレータ「全探査針、打ち込み終了」
オペレータ「電磁波形、ゼロマイナス3で固定されています」
ヒカリ「自我境界パルス、接続完了」
レイ「了解、サルベージ、スタート」
トウジ「了解、第1信号を送信」
ケンスケ「エヴァ、信号を受信。拒絶反応無し」
ヒカリ「続けて、第2、第3信号送信開始」
オペレータ「対象カテクシス異常無し」
オペレータ「デストルドー、認められません」
レイ「了解、対象をステージ2へ移行」
シンジ「…ミサトちゃん…!」
590 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:13:01.71 ID:bn13i2TRo
ミサト「はっ」
(加持「葛城!」)
ミサト「はっ!」
(シンジ「ミサトちゃん!?」)
ミサト「はっ!」
(マヤ「あら、葛城さん!」)
ミサト「はっ!」
(リツコ「ミサト!」)
ミサト「はっ!」
(日向「葛城さん」)
(青葉「葛城〜!」)
(レイ「ミサトちゃん?」)
591 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:14:01.75 ID:bn13i2TRo
(加持「お姫さま」)
(シンジ「ミサトちゃん…」)
(日向「葛城さん?」)
(リツコ「ミサト」)
(レイ「ミサトちゃん!」)
(マヤ「葛城さん?!」)
(青葉「葛城?」)
(加持「おい、葛城!」)
(日向「あっ、葛城さん!」)
(リツコ「ミサト」)
(シンジ「ミサトちゃん!」)
(加持「葛城!」)
(日向「葛城さん!」)
592 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:15:01.65 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「だめです、自我境界がループ上に固定されています!」
レイ「全波形域を全方位で照射してみて!」
レイ「だめね…発信信号がクライン空間に捕われている…」
シンジ「どういう事?」
レイ「つまり、失敗」
シンジ「えっ…」
レイ「干渉中止、タンジェントグラフを逆転、加算数値をゼロに戻して」
ヒカリ「はい!」
ケンスケ「Qエリアにデストルドー反応、パターンセピア」
トウジ「コアパルスに変化あり!プラス0.3を確認!」
レイ「現状維持を最優先、逆流を防いで!」
ヒカリ「はい!」
593 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:16:01.18 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「プラス02…0.8、変です!塞き止められません!」
レイ「これは…なぜ…帰りたくないの?ミサトちゃん…」
ミサト「分からない、分からない…私は…私は…」
シンジ「何を願うの?」
加持「何を、願う?」
日向「何を願うの?」
葛城「何を願う?」
594 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:17:03.32 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エヴァ、信号を拒絶!」
ケンスケ「L.C.L.の自己フォーメーションが分解していきます!」
ケンスケ「プラグ内、圧力上昇!」
レイ「現作業中止、電源落として!」
ヒカリ「だめです、プラグがイクジットされます!」
溢れ出るL.C.L.
シンジ「ミサトちゃん!!!」
ミサト「はっ…」
ミサト「ここは…」
ミサト「エバの中よ」
ミサト「エバの中?私はまたエバに乗ったの…?どうして…」
595 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:18:01.61 ID:bn13i2TRo
シンジ「もうエヴァには乗らないの…?」
ミサト「破棄してください。パスコードも、部屋の荷物も…」
アスカ「でもあんたは乗った。エヴァンゲリオン初号機に」
ミサト「はっ!」
アスカ「一瞬一瞬の積み重ねなのよ、人の歴史は」
シンジ「僕らは人を守るのが仕事で…君もその一人なのに」
アスカ「後悔しないの?そんなとこに突っ立ってて」
シンジ「僕たち大人を……恨んでくれてかまわない」
アスカ「あんた逃げてるだけじゃないの」
シンジ「ごめんね……勝手な大人ばかりで」
アスカ「サードチルドレン!」
シンジ「この先…立ち向かえない現実があったとしても……君自身のことは、嫌いにならないでほしい」
ミサト「……シンジさん!」
596 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:19:03.01 ID:bn13i2TRo
シンジ「う…っ、う、ぅ……!」
シンジ「何が科学だよ……!…人一人、助けられなくて…!」
シンジ「返してよ…!ミサトちゃんを…!」
シンジ「返してよ…っ」
ミサト「匂い…人の匂い…」
ミサト「シンジさん…?」
ミサト「リツコ…?」
ミサト「いや、違う…」
ミサト「そうだ、お母さんの匂い…」
母「……ふふ、可愛いわね、きっと世界で一番、可愛い子よ…」
葛城「ああ…そうだな」
ミサト「お母さん…」
597 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:20:04.95 ID:bn13i2TRo
母「抱いてあげて?」
葛城「…抱き方が分からない」
母「こうするの…ほら」
母「優しく…」
母「支えてあげるのよ」
母「あなたにもできるわ」
母「ほら…」
葛城「……」
ミサト「……お父さん」
パシャッ
シンジ「…!」
シンジ「…ミサトちゃん!」
598 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:21:03.40 ID:bn13i2TRo
カーラジオ「そりゃ分かるんだけど、オーラルステージの…心理学者が…つまり、母親といつまでも一緒にいたがる… 」
レイ「初号機の修復、明後日には完了するわ」
シンジ「結局、めでたしめでたしか…。科学…人間は不滅なのかもしれないね、神様の力まで利用しちゃうんだから…」
レイ「…どうかしらね…。委員会では凍結案も出ているそうよ」
シンジ「不安要素が大きすぎるって?今さらだよ…やめるんなら初めから手を出すべきじゃなかったんだ」
レイ「……」
シンジ「人造人間、エヴァンゲリオン……ミサトちゃんが助かったのも、エヴァの意思かな?それとも、人の力?」
レイ「少なくとも……私の力じゃないわ、あなたの存在が大きかったんじゃないかしら。彼女の深層心理において」
シンジ「僕が?」
レイ「人は傍らの存在に温もりを感じるものよ。それにあなたは…愛を持って彼女に接してる。影響がなかったとは思えないわ」
シンジ「そうかな…?なんだか綾波にそう言われると、照れるな…」
レイ「素直な感想よ。感謝してるの、あなたにも…ミサトちゃんにも」
シンジ「綾波……」
599 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:22:03.83 ID:bn13i2TRo
レイ「一杯奢らせてくれない? サルベージ成功のお祝いに」
シンジ「あ…」
レイ「?」
シンジ「…ごめん!今日は、…約束があって」
レイ「そう… 」
シンジ「それじゃ…!」
レイ「……あれだけ泣いていたのに」
レイ「ミサトちゃんが無事だと分かったら、今度はアスカのところか…」
レイ「……」
レイ「忙しい人ね…」
600 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:23:01.51 ID:bn13i2TRo
アスカ「あいつは今ごろ、いやらしい女だって軽蔑してるわね。きっと…」
シンジ「誰…っ、あいつって…」
アスカ「…馬鹿ね。さすがにあいつに同情するわよ…」
シンジ「…あ、アスカ、もう…っ」
アスカ「だーめ。あんたまだ言ってないでしょ?」
シンジ「…言えないよ…!こんな、ところで…っ」
アスカ「あたしには言わせたクセに」
アスカ「人類補完計画…人を滅ぼすアダム…あんたの知らないこと、ほらぁ…聞き出しなさいよ、それが仕事でしょ?」
シンジ「アスカ…っ、言わないでよ。信じるから。僕はアスカを信じるって、決めたから…」
アスカ「……」
シンジ「……もう危険な橋を渡るのはやめてよ…アスカ」
601 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:24:02.05 ID:bn13i2TRo
シンジ「まだやめてなかったんだ…たばこ」
アスカ「だったら何?もうお小言はウンザリよ、耳にタコ」
シンジ「体に悪いのに…」
アスカ「……こういう事のあとにしか吸わないんだから、セーフよ」
アスカ「それともなぁに?シンちゃん、物足りなかったのかな?」
シンジ「あ、アスカ…!」
アスカ「……。…あんたってホンットに、昔っからこういうとこは…」
アスカ「……んっ」
602 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:25:02.63 ID:bn13i2TRo
ベッドが軋む音
シンジ「!」
シンジ「ちょっ…!アスカ…!」
アスカ「…あによ?こっちイジられんのも、好きなくせに…」
シンジ「やめてよ……変なもの入れないでよ」
シンジ「……? なに、これ」
アスカ「プレゼントよ、8年ぶりの」
シンジ「?」
アスカ「最後かもしれないから。…大事にしまっときなさいよ」
弐拾話分終わり
603 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/05(土) 16:26:07.30 ID:bn13i2TRo
続きは明日
604 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:01:02.20 ID:3d5dCKQ9o
シンジ(留守番電話)「はい、ただいま留守にしています。発信音の後にメッセージをどうぞ」
アスカ「最後の仕事か…」
アスカ「まるで血の赤ね」
シンジ「拉致された!?副指令が?」
諜報部員「今より2時間前です。西の第8管区を最後に、消息を絶っています」
シンジ「うちの署内で…!?消えようがないじゃないか」
諜報部員「身内に内報、および先導したものがいます。その人物に裏をかかれました」
シンジ「身内に内報……?…まさか!」
諜報部員「惣流・アスカ・ラングレー。この事件の首謀者と目される人物です」
シンジ「………!」
諜報部員「首謀者とあなたの過去の経歴を考えると…致し方ない処置かと思われます。作戦課長を疑うのは、同じ職場の人間として心苦しいのですが…」
シンジ「いいよ…。それが諜報部の仕事だもの…」
諜報部員「ご協力感謝します。お連れしろ!」
605 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:02:01.61 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「……お久しぶりです、キール議長。ずいぶんと手荒な歓迎ですね」
キール「非礼を詫びる必要はない。君とゆっくり話をするためには、当然の処置だ」
カヲル「相変わらずですね……僕の都合はおかまい無しですか?」
ゼーレ「議題としている問題が急務なのでね。やむなくの処置だ」
ゼーレ「分かってくれたまえ」
カヲル「やれやれ…委員会ではなく、ゼーレのお出ましとは」
ゼーレ「われわれは、新たな神を作るつもりはないのだ!」
ゼーレ「ご協力を願いますよ、渚先生」
カヲル「……」
カヲル(渚先生、か…)
606 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:03:01.87 ID:3d5dCKQ9o
学生「先生!渚先生!」
カヲル「ん?ああ、君たちか」
学生「これからどないです?鴨川でビールでも」
カヲル「またかい?学生の本分は勉学じゃなかったのかな」
学生「そない言わんと。リョウコらが先生と一緒なら行くゆうとりますんや」
学生「教授もたまには顔出せゆうてはりましたで」
カヲル「……ああ、分かったよ」
607 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:04:02.85 ID:3d5dCKQ9o
教授「たまにはこうして外で飲むのも良かろう」
カヲル「えぇ…まぁ…」
教授「…君は優秀だが、人の付き合いというものを軽く見ているのがいかんな」
カヲル「恐れ入ります」
教授「ところで渚君、生物工学部の葛城という生徒を知っているかね?」
カヲル「? いいえ、存じませんが」
教授「成績はいいのだがね…色々と悪い噂を耳にする。君のことも嗅ぎ回っているようだ」
カヲル「僕のことを?」
教授「おそらく…君の後ろにある組織にくみいろうという魂胆だろう。気を付けたまえ」
カヲル「……」
カヲル「肝に銘じておきます」
608 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:05:02.07 ID:3d5dCKQ9o
ゼーレ「S2機関を自ら搭載し、絶対的存在を手にしたエヴァンゲリオン初号機!」
ゼーレ「われわれには具象化された神は不要なのだよ」
キール「神を作ってはいかん」
ゼーレ「まして、あの男に神を手渡すわけにはいかんよ!」
ゼーレ「葛城。あの男、信用に足る人物かな?」
609 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:06:01.51 ID:3d5dCKQ9o
論文に没頭するカヲル
カヲル「……おっと」
カヲル「すっかり時間を忘れていたな…」
カヲル「……」
カヲル「…この時間なら、学食も空いてるか…」
葛城「B定を」
カヲル「B定食を」
葛城・カヲル「………」
おばさん「すみませんねぇ、B定こちらの学生さんで終わりなんですよ」
カヲル「そうですか……ではA定食を」
おばさん「すみません」
葛城「………」
610 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:07:02.08 ID:3d5dCKQ9o
葛城「あの……取り替えましょうか?」
カヲル「え?」
葛城「迷っていたんです。だから…どちらでもよくて」
カヲル「ああ……定食のことか。気にしなくていいよ、僕もそんなに拘って決めたわけではないんだ」
葛城「そうですか……それじゃあ…」
カヲル「……おや、君は…」
葛城「?」
カヲル「その資料、生物工学部の子かい?」
葛城「はい、まぁ…」
カヲル「では、僕の講義は?」
葛城「…取っています」
カヲル「ちょうどよかった。意見を聞かせてくれないかな」
葛城「…自分のですか…?」
カヲル「そう。論文で行き詰まっててね、新しい風を入れたいんだ」
カヲル「君、名前は?」
611 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:08:06.78 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「そう…彼の第一印象は、不思議な男だった…」
カヲル「影のあるようにも見えるが…どこか人を惹き付ける」
カヲル「言葉少なで、人と距離を置きたがるために…誤解されることも多いが、少なくとも僕の目には善人に見えた」
カヲル「そしてあの時はこの国に季節、四季があった」
612 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:09:02.56 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「いいことじゃないか。…パートナーの存在は人生をより良いものにしてくれるよ」
葛城「…しかし」
カヲル「何か問題が?」
葛城「彼女を……幸せにできる自信がありません」
カヲル「……」
カヲル「…ふふ、葛城君。そういうことは直接本人に聞くべきだよ」
葛城「?」
カヲル「自信があるとか、ないとかは関係ないんだ。人を変えるのはいつだって変わりたいという人自身の意思だからね」
葛城「…人自身の、意思…」
カヲル「彼女が君を愛しているならば、彼女自身が君の隣を選ぶだろう。それが幸せの道だからね」
葛城「……」
カヲル「そして君自身が選ぶ、幸せの道でもある」
613 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:10:01.62 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…彼らは籍を入れた」
カヲル「その直後だった」
カヲル「セカンドインパクト。20世紀最後の年に、あの悲劇は起こった」
カヲル「そして、21世紀最初の年は、地獄しかなかった…他に語る言葉を持たない年だ」
614 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:11:01.88 ID:3d5dCKQ9o
2年後、南極調査船内
カヲル「これがかつての氷の大陸とはね。見る影もない…」
カヲル「…君があの日、帰国していなかったらと思うと…ゾッとするよ、葛城君」
葛城「…自分は、難を逃れましたが……多くのものを失いました」
カヲル「そうだね…その通りだ」
カヲル「何も取り戻せはしないが…少しでも情報を得ないと。二の舞だけは御免だからね」
葛城「……先生」スッ
カヲル「? …なんだい?」
葛城「…これを。妻からあなたへ渡すように言われています」
カヲル「これは、奥さんと…息子さんの写真かい?」
葛城「…娘です」
カヲル「なぜ僕に?」
葛城「…妻は、よく溢しています…自分たちより渚教授が大切なのか?と」
カヲル「はは…それは…一度怒られに行かなくてはね」
615 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:12:01.78 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…最近、ゼーレについて良くない噂を耳にするよ。…力で、理事会を押さえ込んだとか」
葛城「………」
カヲル「たしかに、口利きをしたのは僕だが。情報はすべて入れるという約束じゃなかったかな?」
葛城「……すみません」
カヲル「……まぁ、いいさ…こんな時代だ。綺麗なだけの組織では生きていけないだろう」
葛城「…おっしゃる通りです。今回のセカンドインパクトの正式調査、これも…ゼーレの人間だけで調査隊を組めば、いろいろと面倒な事になります」
カヲル「僕たちはそのための間に合わせというわけか…」
葛城「…気を悪くされましたか…?」
カヲル「いいよ。……他ならぬ君の頼みだ」
葛城「…ありがとうございます」
616 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:13:02.53 ID:3d5dCKQ9o
暗闇で膝を抱えるシンジ
シンジ「暗いとこは、まだ駄目だな…いやな事ばかり思い出す…」
カヲル「……彼は?」
男「例の調査団ただ一人の生き残りです。名は、碇シンジ」
カヲル「碇?碇博士のご子息か…!」
男「はい、もう2年近くも口を開いていません」
カヲル「なんて…むごい…」
男「ええ…それだけの地獄を見たのです。体の傷は治っても、心の傷はそう簡単には治りませんよ」
カヲル「……」
カヲル「……あとは本人の生きる意思の問題か…」
カヲル「…こちらの調査結果も、簡単には出せそうにないな。この光の巨人…謎だらけだよ」
617 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:14:05.03 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「その後国連は、セカンドインパクトは大質量隕石の落下によるものと正式発表した」
カヲル「だが、僕の目から見れば、それは…あからさまに情報操作をされたものだった」
カヲル「その裏にはゼーレ、そして、キール議長の姿が見え隠れしていた」
カヲル「疑いたくなかった。葛城君を。彼の背中は、僕が押したのだから…」
カヲル「だが衝動は抑えきれず…」
カヲル「僕は、あの事件の闇の真相を探った」
618 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:15:01.37 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「なぜ巨人の存在を隠すんだい?…セカンドインパクトを知っていたんじゃないのか、君らは。その日、あれが起こる事を…!」
葛城「……」
カヲル「君は運良く事件の前日に引き揚げた……では、全ての資料を一緒に引き揚げたのも、幸運の内かい?」
葛城「……」
カヲル「…君の資産、いろいろと調べさせてもらったよ。子供の養育にお金はかかるだろうが、個人で持つには額が多すぎる」
葛城「……」
カヲル「……何か言ってくれ…!このままでは…セカンドインパクトの裏に潜む、君たちゼーレと、死海文書を公表することになる。あれを起こした人間たちを、許すわけにはいかない」
葛城「……お怒りはごもっともです。ですが…お別れの前に、お目にかけたいものがあります」
619 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:16:02.51 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「随分潜るんだね…」
葛城「心配ですか?」
カヲル「得体が知れないからね」
カヲル「これは…!」
葛城「われわれではない、誰かが残した空間です。89%は埋まっていますが…」
カヲル「もとはきれいな球状の地底空間か…」
葛城「…あれが、人類がもてる全てを費やしている施設です」
ナオコ「あら、渚先生」
カヲル「赤木君……君もなのか」
ナオコ「ええ、ここは目指すべき生体コンピュータの基礎理論を模索する、ベストな所ですのよ」
カヲル「これは…」
ナオコ「MAGIと名づけるつもりですわ」
カヲル「MAGI?東方より来たりし三賢者か…見せたいものというのは、これかい?」
ナオコ「いいえ、こちらです」
620 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:17:01.87 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「これは…まさか、あの巨人を…!?」
ナオコ「あの物体をわれわれゲヒルンではアダムと呼んでいます。が、これは違います。オリジナルのものではありません」
カヲル「では…」
ナオコ「そうです。アダムより人の造りしもの、エヴァです」
カヲル「エヴァ…!」
葛城「われわれのアダム再生計画、通称E計画の雛形たる、エヴァ零号機です」
カヲル「神のプロトタイプか…!」
葛城「…先生、力を貸していただけませんか。…人類の、新たな歴史のために」
カヲル「……」
621 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:18:02.95 ID:3d5dCKQ9o
レイ「……」
ヒカリ「綾波さん?」
レイ「あぁ、ごめんなさい、リツコちゃんの再テスト、急ぎましょう」
ヒカリ「今日……碇くん、見かけないわね」
レイ「…そうね」
レイ「碇くん?」
シンジ「うん。碇シンジっていうんだ…よろしく」
(手紙)
レイ「先生、先日碇くんと言う子と知り合いました」
レイ「他の人たちは私を遠巻きに見るだけで、その都度先生の名前の重さを思い知らされるのですが、なぜか彼だけは私に対しても屈託がありません」
レイ「彼は例の調査隊ただ一人の生き残りと聞きました。一時失語症になっていたそうです。そのせいか…今も言葉少なですが、どこか優しさを感じます。彼の一挙一動から、心の内側が暖かくなるような、何かを…。これがロジックじゃないということでしょうか?」
ナオコ「レイちゃん、あなたにもとうとう春がきたんですね。こっちは相変わらず、地下に潜りっぱなしの男日照りです。支給のお弁当にも飽きました」
ナオコ「上では第二遷都計画による第三新東京市の計画に着工したようです」
622 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:19:01.95 ID:3d5dCKQ9o
レイ「このところ碇くんが大学に来ないので、理由を問い詰めたら、呆れてしまいました。ずっと彼女とアパートで寝ていたそうです」
レイ「飽きもせず、一週間もだらだらと。彼の意外な一面を知った感じです」
レイ「今日紹介されました。可愛い子ですが、気性が荒く、私はどうも好きになれません」
ナオコ「恋に嫉妬…、順調ね。勉強以外でもあなたの成長が見られて嬉しく思います。たくさん悩んでください。大丈夫、あなたは気づいてないでしょうけど、周りの男の子はみんなあなたを気にしています。あなたがその気になれば、きっと碇くんをあなただけのものにすることもできるはず…」
ナオコ「…駄目ね、恋愛観を押し付けるのは。あなたの思う通りにやってみてください。決して後悔のないように。あなたのことを娘のように思っています。いつでも相談してください」
ナオコ「……」
ナオコ「…娘か…」
机の上、碇調査隊の写真
623 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:20:01.77 ID:3d5dCKQ9o
電話中の葛城
葛城「ああ、分かった……手続きは明日、お互いの弁護士を通してやろう」
葛城「ああ……それじゃあ」
カヲル「……」
カヲル「…これで良かったのかい」
葛城「彼女が決めたことです…自分はそばにいてやれなかった」
カヲル「しかし…」
葛城「…先生、幸せの道ですよ。彼女の道は、きっとまたどこかに続いている…」
カヲル「………」
レイ「先生、MAGIの基礎理論、完成おめでとうございます。そのお祝いと言うわけでもないのですが、私のゲヒルンへの正式入所が内定しました」
レイ「来月から、E計画勤務となります」
ナオコ「レイちゃん、おめでとう。これであなたも一人前ですね。優秀な助手を持てて嬉しく思います」
ナオコ「私もあなたに伝えたいことがあるのだけど…それは研究所で。きっと驚きますよ」
624 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:21:05.28 ID:3d5dCKQ9o
零号機、機動実験日
オペレータ「L.C.L.変化、圧力、プラス0.2」
オペレータ「送信部にデストルドー反応無し」
オペレータ「疑似回路、安定しています」
カヲル「なぜ、実験に零号機を?」
ナオコ「そのことですが、われわれは考えを改めました。初号機だけでは使徒には勝てない…」
カヲル「それは…」
ナオコ「使徒との戦闘は必ず厳しいものになります。そのためには…この子にも動いてもらわないと」
傍らの子どもを見つめるナオコ
ナオコの視線を追うカヲル
カヲル「……その子は…?」
レイ「赤木先生のお子さんです」
625 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:22:01.55 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「赤木君の…?」
ナオコ「リツコといいますのよ」
ナオコ「ほら、リッちゃん。ご挨拶して?」
リツコ「…こんにちは」
カヲル「こんにちは」
カヲル「…どういうことだい?君は独身のはずでは?」
ナオコ「あら。今時分、父親がいないことなんてそう珍しくはないでしょう?」
カヲル「それは…そうだが、今日は…」
ナオコ「大丈夫です。ちゃんと言って聞かせますから。ねっ?リッちゃん」
リツコ「はい」
カヲル「赤木君……君の実験なんだよ?」
ナオコ「だからこそですよ。この子には明るい未来を見せておきたいんです」
レイ「先生…」
626 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:23:01.90 ID:3d5dCKQ9o
ナオコ「レイちゃん…葛城所長に、渚先生も」
ナオコ「…私に、もしものことがあったときは…その時は娘を頼みます」
リツコ「ママ…」
ナオコ「大丈夫よ。…必ず帰ってくるから」
レイ「それが先生の最後の言葉でした。イレギュラーな事件は、先生をこの世から消し去ってしまった…」
レイ「先生の右腕となって、先生を支える…」
レイ「そんな願いとは裏腹に。私だけではない…いったい誰が組織の頭脳を失うことを望んだでしょうか。ゲヒルンは一時騒然としました」
レイ「ただ…葛城所長だけは、平静を保っているように見えました」
627 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:24:01.56 ID:3d5dCKQ9o
内線「所長、弁護士の方からお電話ですが。お繋ぎしますか」
葛城「繋いでくれ」
葛城「……」
葛城「…!」
レイ「何をおっしゃっているんですか…!先の事件で先生を失ったばかりなのに…、あまりに危険すぎます!」
葛城「時間がないんだ、どいてくれ…!」
レイ「あっ…!…渚教授、教授からも言ってください!」
カヲル「……」
レイ「教授!」
628 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:25:07.06 ID:3d5dCKQ9o
葛城「本当にいいんだな?」
妻「いいわ…あの子といられるなら…」
葛城「……」
妻「それに…今度は、あなたの仕事場だもの…」
妻「きっともう、寂しくない…」
葛城「…!」
葛城「すまない…」
レイ「そして…「無事に」事件を起こすことに成功した葛城所長は、姿を消した」
629 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:26:03.35 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「…ずいぶんと長かったじゃないか。赤木君もいない、所長の君もいないでは、ここは回らないよ」
葛城「…分かっている」
カヲル「…それで?話はつけてきたのかい」
葛城「ああ…今日から新たな計画を推奨する」
カヲル「始めるのか…あれを」
葛城「連中はもう止まらない。我々も止まるつもりはない…」
カヲル「…かつて誰もが為し得なかった神への道」
カヲル「人類補完計画か…」
630 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:27:01.79 ID:3d5dCKQ9o
ゲヒルン本部
レイ「おはようございます」
リツコ「おはようございます」
葛城「ああ、おはよう」
レイ「所長…今日は面会の日では?」
葛城「いいんだ…私に会う資格はない」
葛城「……リツコ。調子はどうだ?」
リツコ「…げんき、です…」
葛城「そうか…」
レイ「………」
カヲル「赤木リツコに関する全ファイルが、抹消済み?どういう事だ…」
レイ「その件については、私からお話しします」
631 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:28:09.64 ID:3d5dCKQ9o
(ナオコ「MAGI-CASPER、MAGI-BALTHASAR、MAGI-MELCHIOR。MAGIは三人の私。科学者としての私、母親としての私、女としての私」)
レイ「その3つがせめぎあっている…」
レイ「3人の先生か…。後は電源を入れるだけね」
レイ「あら…リツコちゃん、どうしたの?」
リツコ「…ママは迷子なの…?」
レイ「……!」
リツコ「どこにもいないの…ママはどこへ行ったの」
レイ「……リツコちゃん。私も、ずっと前にママがいなくなって…ママを探してたの」
リツコ「…あやなみ博士も?」
レイ「そう。ママは見つからなかったけど…赤木先生…あなたのお母さんと出会えたわ。私のママの代わりになってくれたのよ」
リツコ「ママが…?」
632 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:29:02.61 ID:3d5dCKQ9o
レイ「そうよ。リツコちゃん、あなたのママは本当に素晴らしい人だったの…姿は見えなくても、今もこの場所を支えてる。科学の礎となって、隅々にまで存在しているのよ」
リツコ「……いるのに、会えないの」
レイ「リツコちゃん…。今はまだ分からないかもしれないけど、必ずお母さんの存在を感じるときがくるわ…」
レイ「……それまで、私がママの代わりじゃ、ダメかな…?」
リツコ「……」
リツコ「…いい。……ママは、ママひとりだから」
リツコ「会えるまで…まつ」
レイ「そう……」
レイ「そうね……先生は、ひとりよね…」
リツコ「……」
633 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:30:02.63 ID:3d5dCKQ9o
リツコ「泣いてるの…?」
レイ「え……?」
リツコ「……だいじょうぶ、だいじょうぶ」
レイの手を撫でるリツコ
レイ「リツコちゃん…」
リツコ「泣いてるとき、ママがこうしてくれると、悲しくなくなるのよ」
(ナオコ「大丈夫よ、あなたなら…」)
レイ「リツコちゃん…!」
リツコ「だいじょうぶ…だいじょうぶ、」
レイ「うっ…う、う…っ」
リツコ「…だいじょうぶ」
カヲル「……」
634 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:31:03.75 ID:3d5dCKQ9o
カヲル「キールローレンツを議長とする人類補完委員会は、調査組織であるゲヒルンを即日解体。全計画の遂行組織として特務機関ネルフを結成した」
カヲル「そしてわれわれは、そのまま籍をネルフへと移した。二人の女性の魂を宿した、エヴァ零号機、初号機と共に…」
監禁を解かれるカヲル
カヲル「君か…」
アスカ「ご無沙汰ね。少し痩せたんじゃない?」
カヲル「…さすがに老体には堪えるよ」
アスカ「外の見張りには、眠ってもらってるから。逃げるんなら今よ」
カヲル「分からないな……僕を拐っておいて、また助けるのかい」
アスカ「こっちにも色々と都合があんのよ。どうやらゼーレや委員会より、ネルフのほうが真実に近いみたいだし」
アスカ「私はそれが知りたいだけよ」
カヲル「真実か…しかし、この行動は君の…」
アスカ「もとより、覚悟の上よ」
635 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:32:02.03 ID:3d5dCKQ9o
諜報部員「ご協力、ありがとうございました」
シンジ「……もういいの?」
諜報部員「はい、問題は解決しましたから」
シンジ「そう…」
シンジ「……彼女は?」
諜報部員「存じません」
636 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:33:01.23 ID:3d5dCKQ9o
諜報部員「ご協力、ありがとうございました」
シンジ「……もういいの?」
諜報部員「はい、問題は解決しましたから」
シンジ「そう…」
シンジ「……彼女は?」
諜報部員「存じません」
アスカ「遅かったじゃないの。…さっさと済ませなさいよ」
響く銃声
637 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:34:01.83 ID:3d5dCKQ9o
シンジ「ただいま…」
ミサト「……」
シンジ「……!」
留守電の再生音
アスカ「…シンジ?あたしよ。あんたがこれを聞いてるときは…ずいぶん迷惑かけた後でしょうね。まぁ、あんたのことだから、自分より私の心配してるんでしょうけど」
アスカ「大丈夫よ、後悔はしてないわ…自分のためにやったことだもの。だから…シンジ、あんたもうじうじしてんしゃないわよ?」
638 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:35:03.44 ID:3d5dCKQ9o
アスカ「あんたが胸張らないから…あたしが叱らなきゃいけないんじゃない」
アスカ「次会うときくらい、優しくさせなさいよね」
アスカ「……」
アスカ「信じてるって言ってくれて…嬉しかった。…それじゃあ」
電話「午後、0時、2分、です」
シンジ「………うっ」
シンジ「うっ、く……アスカ…!どうして…」
ミサト「……」
ミサト「その時私は、シンジさんから逃げる事しかできなかった。他には何もできない、大人になったつもりでいても…大切な人を支えることもできない、子どもなんだと…私は分かった」
弐拾壱話分終わり
639 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:41:01.80 ID:3d5dCKQ9o
「兄ちゃん!」
「任せろ…ここで待ってろ」
「言え!コソ泥め」
「……坊主。仲間の居場所を言え。そうすれば…」
「加地リョウジくん、ですね?」
「605号室の患者。あなた知らないの?」
「…お兄さんがよくお見舞いに来られてますよね。それが?」
「もう長くはないでしょう……衰弱しきってる」
「……おれのせいだ」
640 :
◆gcWj88zLkc
[sage saga]:2020/12/06(日) 15:42:01.94 ID:3d5dCKQ9o
「民間から?信用できるのかね」
「ですがコアとのシンクロ率は基準値を上回っています」
「…連中か。まったく得体の知れない…」
「気味が悪いよ」
「無理はしてないかな?君の心のケアも私の仕事の内だ」
「必要ない。必要のあるやつはみんな死んだ…」
「俺は生きるんだ 俺が殺した分も…」
「我々も誇らしいよ」
(「お前すげぇな」)
「頑張ってね」
(「頼むぞー!」)
「俺が必要なんだ…」
「………」
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