シンジ「君が、葛城ミサトちゃんだね」

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495 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:31:02.79 ID:bn13i2TRo
マヤ「…じゃあ、松代の第2実験場で起動試験をやるって噂も知らないの……?」

ミサト「知らないわよ。何?松代でやるの?」

マヤ「そうらしいわ。…それでなんだけど、パイロットはまだ決まってないんでしょう?」

ミサト「分からないわよ、そんな…」

マヤ「私にやらせてほしいのよ!ねぇ、葛城さん。葛城さんからも頼んでくれない?シンジさんに。乗りたいのよ、エヴァに!赤木さんの…みんなの力になりたいの!」

ミサト「ほ、ほんとに知らないのよ…そんなこと言われても」
496 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:32:03.23 ID:bn13i2TRo
マヤ「じゃあ、四号機が欠番になったって言う話も?」

ミサト「何それ?」

マヤ「……ほんとにこれも知らないのね……。第2支部ごと消滅したって、母さんのところは大騒ぎだったのに」

ミサト「消滅…?」

マヤ「…跡形も残らなかったそうよ」

ミサト「…シンジさんからは、何も聞いてない…」

マヤ「……」

マヤ「ごめんね、変なこと聞いて。…でも、羨ましかったんだ……好きな人と、支え合えるのって…」

ミサト「好きな人?」

マヤ「な!なんでもない!それじゃ…!」


ミサト「………」
497 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:33:15.73 ID:bn13i2TRo
老教師「われわれはセカンドインパクトと言うこの世の地獄から再び立ち上がったのです。今、年々子供の数も減ってきています」

日向「遅れて、すいません…」

老教師「話は聞いてる。席に着きなさい。あー、これからの時代をになう君たち若い世代が…」



日向「………」

青葉「何だよ?そんなにこってり絞られたのか?」

日向「…別に。何でもない」

青葉「………?」
498 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:34:02.54 ID:bn13i2TRo
放送「下校の時刻です。教室に残っている生徒は、早く帰りましょう」


青葉「なんだ、帰らないのか?」

日向「当番だからな」

青葉「サボっちゃえよ。十分綺麗だろ?」

日向「お前じゃないんだよ…」

青葉「マメだねぇ…」

日向「……」

日向「…葛城さん、変わったよな」

青葉「ん?ああ…明るくなった」

日向「……」

青葉「おいおい、どうしたんだよ?」

日向「いや……最近、パイロット同士の絆…みたいなものを感じることがあってさ」

日向「加持……あいつも、いけすかないけど、葛城さんを支えてるんだよな…」

青葉「……」
499 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:35:03.42 ID:bn13i2TRo
青葉「なに弱気になってるんだよ、お前はお前だろ? そりゃ、赤木や加持みたいにはいかないさ」

青葉「お前のいいところで勝負していけよ。何を選ぶかは、葛城次第だろ?」

青葉「それに、だ」

日向「それに?」

青葉「諦めろったって、無理な話だろ?それなら無理矢理にでも、前向いて行くしかないじゃないか」

日向「……それも、そうだな…」

青葉「しっかりしろよ?」

日向「はは…まさかお前に説教される日がくるとはな」

青葉「…時々思うけど、お前って俺をなめてないか?」

日向「少しな」

青葉「おいおい」

日向「ははは」
500 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:36:02.60 ID:bn13i2TRo
加持「おっ…アスカ先輩」

アスカ「加持? 今忙しいから。用があるならそこで待ってて」

加持「…相変わらず仕事、仕事か。そんな調子で、シンジさんに愛想つかされないか心配だね…」

アスカ「馬鹿。子どもが大人の問題に首突っ込んでんじゃないわよ」

加持「どれどれ…」

アスカ「こら!」

加持「…………」

加持「…これは決定事項?」

アスカ「……明日、あんたたちにも正式に通達されるわ」

加持「…この人選の根拠は?」

アスカ「…根拠かどうかは知らないけど。こいつの妹が難しい怪我してて、その優先治療が約束されたそうよ、ネルフで…」

加持「……」

アスカ「ちょっと、加持!どこ行くのよ!」
501 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:37:02.79 ID:bn13i2TRo
ミサト「見返りを求めない、か……」

ミサト「私は…加持くんとどうなりたいのかしら…」




台所で奮闘するマヤ

マヤ「……、…!」



校庭で佇む日向

日向「……」




拾七話分終わり
502 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:41:02.26 ID:bn13i2TRo
加持「…よっ。ずいぶん早いな」

日向「……」

加持「時間はあるんだ…ちょっと遠回りしてかないか?」

日向「……」

日向「俺は男だぞ…?」






ミサト「あの、加持くんは…?」

シンジ「ああ、なんか用事があったみたいでね。朝早く出てったよ」

ミサト「…用事って?」

シンジ「さぁ…ミサトちゃんも聞いてないの?」

ミサト「いえ…」

シンジ「そうか…昨日帰ってきてからも元気なかったし…どうかしたのかな…」

ミサト(……リツコのとこかしら…)
503 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:42:02.70 ID:bn13i2TRo
ミサト「あの、」
シンジ「ところで、」

ミサト「あっ…」

シンジ「あはっ。いいよ先に」

ミサト「あの…四号機が欠番っていう噂、本当ですか?何か事故があって爆発したって」

シンジ「…うん、本当だよ。四号機はネルフ第二支部と共に消滅したんだ。S2機関の実験中に…」

ミサト「……」

シンジ「ごめんね。伝えるのが遅れて…でもここは大丈夫だよ?3体ともちゃんと動いてるし、パイロットもスタッフも優秀なんだから」

ミサト「…でも、アメリカから参号機が来るって。松代でやるって聞きました、起動実験」

シンジ「うん…ここは4日ほど留守にするけど、その間のことはアスカに頼んでるし、心配ないよ」

ミサト「でも実験は…」

シンジ「大丈夫だよ、ミサトちゃん。綾波も立ち会ってくれるんだし、それに…」

ミサト「パイロットは…?パイロットはどうなるんですか?」

シンジ「……」
504 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:43:02.70 ID:bn13i2TRo
シンジ「その、パイロットなんだけど…」


チャイムの音


ミサト「あっ、私がでます」


ミサト「えっ」

マヤ「おっおはようございます!今日は、シンジさんにお願いがあって来ました……!」

シンジ「えっ、え?」

マヤ「私を……私をエヴァンゲリオン参号機の、パイロットにしてください!」

シンジ「………」
505 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:44:02.09 ID:bn13i2TRo
レイ「じゃあまだミサトちゃんは知らないの?」

シンジ「なかなか言い出すきっかけがなかったんだよ…それに、最近なんだか少し暗いんだ、ミサトちゃん」

レイ「…父親役が板についてきたと思ったら、もう弱音?まだまだ先は長いのよ」

シンジ「それはそう…なんだけど…」


シンジ「それで……いつ呼ぶの?パイロット」

レイ「そうね…明日になるわ。準備もいろいろあるし」

シンジ「…日向くんが自分で言ってくれたりは、しないかな?」

レイ「……期待しないほうがいいわ。人に自慢するほど、喜んでなかったもの。入院中の妹を本部の医学部に転院させてくれっていうのが彼の出した例の条件だったのよ」
506 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:45:01.83 ID:bn13i2TRo
加持「……妹さんが、入院してるそうだな」

日向「……」

加持「良くないのか?」

日向「……関係ないだろ」

加持「…あるさ。これからはパイロット同士だ」

日向「!」

日向「知ってるのか……葛城さんは?」

加持「葛城はまだ知らない。恐らくな」
507 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:46:05.77 ID:bn13i2TRo
日向「……それで?降りろって言いに来たのか?悪いけど俺は…!」

加持「「覚悟はできてる」?」

日向「……! そうだよ」

加持「……」

加持「……はぁっ。どうにも……駄目だな。俺は」

日向「…?」

加持「いや……すまない。嫌味のつもりはないんだ、…ただ……」

加持「仲間が死ぬのは見たくない…」

日向「……!」
508 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:47:03.16 ID:bn13i2TRo
加持「パイロットになるかどうかは…それぞれが決めることだ。決めたんなら……俺にあれこれ言う資格はない」

加持「覚悟結構。死ぬ気でやらなきゃいけないのは事実だ…。全人類とパイロット、天秤はどうあっても人類に傾く」

加持「ただ俺個人としては……仲間に死なれると後味が悪い」

加持「それに……葛城も悲しむしな…」

日向「……!」

加持「それだけ、言いに来たんだ」

日向「……」

日向「…分かった」


加持「…ま。ただでさえ少ないパイロットだ、これからよろしく頼むよ」

日向「ああ…」

加持「……」

加持「…治るといいな、妹さんの怪我…」

日向「……?ああ…」
509 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:48:01.67 ID:bn13i2TRo
マヤ「あ〜!きっと変な子だと思われたわよね?でも、居ても立ってもいられなくて……シンジさん、上に掛け合ってくれると思う??」

ミサト「どうかしらねぇ…」

マヤ「予備としてでもいいから使ってくれないかしら。やる気ならあるのになぁ…」

ミサト「……あ、」

マヤ「ちょっと葛城さん、聞いてる?」

ミサト「聞いてる聞いてる」


ミサト(加持くん…私より先に出たはずなのに…)


教室の入口、笑いあう女子と加持
510 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:49:02.85 ID:bn13i2TRo
青葉「さーて、飯メシ…あれ?マコトは?」

男子「さっき出てったよ」

青葉「ふぅん……」

青葉(……)




リツコ「…日向くん」

日向「ああ……赤木か。どうしたんだ?こんなところで」

リツコ「……」

日向「……操縦のコツでも教えに来てくれたのか?…知ってるんだろ、俺が乗るって」

リツコ「ええ…」

日向「……知らないのは葛城さんだけか」

リツコ「そうなの?」

日向「たぶんな」
511 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:50:02.14 ID:bn13i2TRo
日向「……赤木ってさ」

日向「……死にそうになったことってあるか?エヴァに乗ってて」

リツコ「……」

日向「いや……ごめん、こんなこと聞いて。赤木ってパイロットになってもう長いんだろ?」

リツコ「ええ」

日向「……」

日向「加持にさ…言われたんだ、死ぬ覚悟はしていい……でも死ぬな、って……」

日向「無茶言うよな…赤木には分かるか?」

リツコ「……」
512 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:51:01.10 ID:bn13i2TRo
リツコ「……私が、死にそうになったとき、ミサトは泣いてたわ」

リツコ「……私は、人のために死ねればいいと、思ってたけど……」

リツコ「その時は、ミサトを悲しませたくないと思った」

リツコ「だから、加持くんの言ってることは…分かるわ」

日向「……」

日向「はは…葛城さんはみんなに愛されてるんだな…」

リツコ「? あなたもでしょ…?」

日向「…!」

日向「その通りだ…」

日向「よろしく頼むよ、これから」




教室の窓から、マヤ

マヤ「………」
513 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:52:02.09 ID:bn13i2TRo
レイ「遅れること2時間。ようやく到着ね」

シンジ「いくら慎重にって言っても限度があるよ…!こんなに待たせるなんて」

レイ「デートのときは黙って待ってたんでしょ?」

シンジ「……」





老教師「でありまして、これが世に言うセカンドインパクトであります」

老教師「私はそのころ根府川に住んでいたのですが、南極大陸の溶解に伴う水位の上昇により、今では海の底になってしまいました…」


(日向「付き合ってほしい…」)

(日向「葛城さんの支えになりたいんだ」)

日向「……」
514 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:53:03.80 ID:bn13i2TRo
マヤ「ごめんね葛城さん。いつもなら加持くんと一緒に帰ってるのに…」

ミサト「い…いいのよぉあんなやつ!どうせ帰ってもいるんだから。マヤちゃんとは外でしか話せないじゃない。…それで、何?悩み事って」

マヤ「……」

ミサト「……また、エバのこと?」

マヤ「ううん、それはもういいの…」

マヤ「いいえ…よくは、ないんだけど……今日は赤木さんのことで」

ミサト「リツコのこと?」

マヤ「うん…赤木さんと、日向くんって……付き合ってるのかな…?」

ミサト「ぶっ!!」

ミサト「は!?なんて?」

マヤ「二人、付き合ってるんじゃないかって。…だって、お昼休み、とっても仲良さそうにしてたのよ?」

マヤ「…日向くん、笑ってたし…」

ミサト「……」
515 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:54:02.77 ID:bn13i2TRo
マヤ「確証はないんだけど……日向くんって、赤木さんのことが好きなんじゃないかしら…」

ミサト「…う〜ん」

ミサト(これは…リツコの赤面事件は伏せといたほうがいいわね…)

ミサト(それに……日向くんが好きなのはたぶん、まだ私だし……)

ミサト「大丈夫よ!日向くんが好きなのはリツコじゃないって!」

マヤ「……どうしてそう言えるの?」

ミサト「う……ちょっとガサツで、ほんのちょっとズボラなくらいがタイプらしいから。リツコじゃないわよ」

マヤ「なんでそんなこと知ってるの?」

ミサト「かっ加持くんに聞いたのよ!」

マヤ「そっかぁ……加持くんか…」

ミサト「……」
516 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:55:04.02 ID:bn13i2TRo
マヤ「加持くん……家で、何か赤木さんのこと言ってない?」

ミサト「なんで?」

マヤ「だって……最近よく赤木さんに声かけてるのを見るから…」

ミサト「き…気にしすぎよぉ!同じエバのパイロットなんだし…それに、あいつは女の子なら誰彼かまわずじゃない」

マヤ「そうだけど…」

マヤ「赤木さんは、綺麗だし…何でもそつなくこなすし」

ミサト「……」

マヤ「優しいから…」

マヤ「加持くんも、本気になっちゃうんじゃないかと、思って……」

ミサト「……」

ミサト「…そうね…」

ミサト「リツコは、いい子よね…」
517 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:56:02.24 ID:bn13i2TRo
ミサト「ねぇ…加持くん」

加持「なんだ?」

ミサト「………」

(マヤ「赤木さんは、綺麗だし…」)

ミサト「…さ、参号機のことって聞いてる?新しいパイロットの話とか」

加持「…さぁ、どうだかね…」

加持「なんにせよ、少ないパイロットだ。仲良くやるさ…」

ミサト「…………」

加持「……ん?」

加持「葛城…?」
518 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:57:02.71 ID:bn13i2TRo
アスカ「ふーっ!さっぱりしたっ!お風呂、空いたわよ」

加持「あ……先輩」

アスカ「なによ、あんたたち…まだくっちゃべってんの?スッとろいわねぇ」

アスカ「さっさと片付けて、さっさと風呂入って、寝る!明日も早いんだから」

ミサト「か、加持くん、先に…」

アスカ「加持!あんたは最後!レディーファーストよ」

加持「へーいへい」

アスカ「ミサト!とっとと入っちゃいなさい!」

ミサト「はっはいっ!」
519 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:58:02.13 ID:bn13i2TRo
ミサト「……アスカさん、もう寝ました?」

アスカ「…まだ起きてるわよ」

ミサト「………」

アスカ「…なによ。言いたいことがあんなら言いなさいよ」

ミサト「……加持くん、って…どんな子でした?向こうで…」

アスカ「加持?唐突ね……あんたあいつが気になるの?」

ミサト「気になるっていうか…最近」

アスカ「……」

ミサト「よく…分からなくて」

アスカ「……あいつはあいつよ。私の口から言ったって、それは私の中の加持でしかない。気になるんなら、自分で見つけなさいよ……あいつがあんたにとっての、何なのか」

ミサト「そう……ですよね…やっぱり」
520 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 14:59:02.44 ID:bn13i2TRo
アスカ「それにしても…ふぅ〜ん?あんたがねぇ…」

ミサト「…な、なんですか……」

アスカ「べつに。聞かれるんだったらあんたの父親のことだと思ってたから。拍子抜けしたのよ」

ミサト「……お父さんのことは…いつか、聞きます…副司令とかに」

アスカ「ゲッ……あのホモに関わると、ロクなことないわよ…?」

ミサト「? ホモ?」

アスカ「いや……なんでもないわ」

ミサト「……」

ミサト「…アスカさんにとってのシンジさんって、何なんですか…?」

アスカ「……それが分かりゃあ、苦労しないわよ」

ミサト「ふふっ…同じですね」

アスカ「バーカ。こっちは腐れ縁。あんたたちなんてまだペーペーよ」

アスカ「…ほら、お喋りはおしまい。もう寝なさい」

ミサト「はーい」
521 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:00:01.88 ID:bn13i2TRo
アナウンス「参号機、起動実験まで、マイナス、300分です」

アナウンス「主電源、問題なし」

アナウンス「第二アポトーシス、異常無し」

アナウンス「各部、冷却システム、順調なり」

アナウンス「左腕圧着ロック、固定終了」

レイ「了解。Bチーム作業開始」

アナウンス「エヴァ初号機とのデータリンク、問題なし」

レイ「これだと即、実戦も可能だわ」

シンジ「そう……」

レイ「…複雑そうね」
522 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:01:01.57 ID:bn13i2TRo
シンジ「…この機体が納品されたら、エヴァは全部で4機になる…」

レイ「…その気になれば世界を滅ぼせる戦力ね……」

シンジ「……」

レイ「パイロットの件…ミサトちゃんには話したの?」

シンジ「実験が終わったら……話すよ」

アナウンス「フォースチルドレン、到着。第2班は、速やかにエントリー準備に入ってください」
523 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:02:02.81 ID:bn13i2TRo
マヤ「ねぇ……赤木さん、お弁当、一緒に食べない?ちょっと作りすぎちゃって…」

リツコ「…いただくわ」

マヤ「良かった!お肉は苦手だって聞いてたから、お野菜中心にしたのよ」

ミサト「あのぉ〜…私もいい?」

マヤ「葛城さん?…でもいつもは…」

ミサト「今日、シンジさんいなくて。お弁当…失敗しちゃったのよね」マルコゲ

リツコ「あきれた…」

マヤ「……」



マヤ「…参号機って、もう日本に到着したの?」

ミサト「うん…昨日着いたみたいよ」

マヤ「いいなぁ。誰が乗るのかしら…日向くんかな?今日休んでるし」

ミサト「まさかぁ!」

リツコ「………」
524 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:03:02.52 ID:bn13i2TRo
オペレータ「エントリープラグ、固定完了。第一次、接続開始」

オペレータ「パルス送信。グラフ正常位置。リスト、1350までクリア。初期コンタクト、問題なし」

レイ「了解。作業をフェイズ2へ移行」

オペレータ「オールナーブリンク、問題なし。リスト、2550までクリア。ハーモニクス、すべて正常位置」

オペレータ「絶対境界線、突破します」


突破直後、異変。


レイ「実験中止、回路切断!」

オペレータ「だめです、体内に高エネルギー反応!」

レイ「まさか…」

レイ「使徒!?」
525 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:04:02.30 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「松代にて、爆発事故発生」

オペレータ「被害、不明!」

カヲル「救助、および第3部隊を直ちに派遣!戦自が介入する前にすべて処理するんだ」

トウジ「了解!」

ケンスケ「事故現場に未確認移動物体を発見」

トウジ「パターンオレンジ、使徒とは確認できん」

葛城「…第一種、戦闘配置」

ケンスケ「総員、第一種戦闘配置!」

トウジ「地、対地戦用意!」

ヒカリ「エヴァ全機、発進!迎撃地点へ緊急配置!」

オペレータ「空輸開始は20を予定」
526 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:05:01.54 ID:bn13i2TRo
ミサト「松代で事故?そんな、じゃあ、シンジさん達は!?」

リツコ「分からないわ。連絡が取れない」

ミサト「そんな、どうすれば…」

加持「……今俺らが心配したってしょうがない。無事を祈るしかない……まずは目先の問題だ」

ミサト「…でも…使徒相手に、私たちだけで…」

リツコ「今は葛城司令が、直接指揮を執っているわ」

ミサト「お父さんが?」
527 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:06:01.93 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「野辺山で映像を捉えました。主モニターに廻します」


職員「おおっ…」

カヲル「…やはりこれか」

葛城「活動停止信号を発信。エントリープラグを強制射出」

ヒカリ「だめです、停止信号およびプラグ排出コード、認識しません」

葛城「パイロットは?」

トウジ「呼吸・心拍の反応はありますが、おそらく…」

葛城「…エヴァンゲリオン参号機は現時刻をもって破棄。目標を第拾参使徒と識別する」


トウジ「しかし!」

葛城「予定通り野辺山で戦線を展開、目標を撃破しろ」
528 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:07:03.23 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「目標接近!」

トウジ「全機、地上戦用意!」

ミサト「えっ?まさか、使徒…?これが使徒なの?」

葛城「…そうだ。目標だ」

ミサト「目標って……これはエバじゃないの…」

加持「…乗っ取られたのか、使徒に……!」

ミサト「やっぱり、人が…子供が乗ってるんじゃ…!同い年の…」

加持「………っ」

加持「二人とも、下がれ!ここは俺がやる」

ミサト「加持くん!?」

加持「援護を頼む!」

加持(…足、動きを封じて、エントリープラグだけでも…!)

加持「だぁああっ!」

(アスカ「こいつの妹が、難しい怪我してて…」)

加持「くっ…!」

ミサト「加持くんッ!!」
529 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:08:03.53 ID:bn13i2TRo
トウジ「エヴァ弐号機完全に沈黙!」

ヒカリ「パイロットは脱出、回収班向かいます」

ケンスケ「目標移動、零号機へ」

葛城「リツコ、近接戦闘は避け、目標を足止めしろ。今初号機をまわす」

リツコ「了解」

リツコ(乗っているのは、彼…)

照準を合わせるリツコ

突如、襲いかかる参号機

リツコ「あぁ…っ!」

ヒカリ「零号機、左腕に使徒侵入!神経節が侵されて行きます!」

葛城「左腕部切断。急げ!」

ヒカリ「しかし、神経接続を解除しないと!」

葛城「切断だ!」

ヒカリ「…はい!」

リツコ「ひっ…!」
530 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:09:02.71 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「零号機中破、パイロットは負傷」

ミサト「そんな…」

葛城「目標は進行中。後20で接触する。聞こえるな?…ミサト」

ミサト「……!」


葛城「お前がやるんだ」


ミサト「……でも」

ミサト「でも、目標って言ったって…!」



ミサト「人が乗ってるんじゃないの…?」

ミサト「同い年の子供が…!」

葛城「……」

咆哮する参号機
531 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:10:03.72 ID:bn13i2TRo
ミサト「エントリープラグ…やっぱり、人が乗ってる…!」

ミサト「あっ!」

初号機を締め上げる参号機

ミサト「はっ、ぁ、う…っ!」


トウジ「生命維持に支障発生!」

ヒカリ「パイロットが危険です!」

カヲル「いけない、シンクロ率を60%にカットだ!」

葛城「待て!」

カヲル「しかし!このままではパイロットが…!」

葛城「……ミサト、なぜ戦わない」

ミサト「……!」
532 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:11:02.60 ID:bn13i2TRo
ミサト「だって、だって人が乗ってるのよ、お父さん!!」

葛城「…そいつは使徒だ。われわれの敵なんだ」

ミサト「でも…そんなの、できないわよ…!…助けなきゃ…人殺しなんてできない!!」

葛城「お前が死ぬぞ!」

ミサト「…いいわよ、人を殺すよりはいい!死んだほうがマシよ!!」

葛城「………!」

葛城「パイロットと初号機のシンクロを全面カットしろ」

ヒカリ「カットですか?」

葛城「そうだ。回路をダミープラグに切り替えろ!」

マヤ「しかし、ダミーシステムはまだ問題も多く、…綾波博士の指示もなく!」

葛城「このままではパイロットが死ぬ!急ぐんだ!」

ヒカリ「はい…!」
533 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:12:01.83 ID:bn13i2TRo
ミサト「はぁっ、は…!」

ミサト「なに…? 何をしたの、お父さん!」


トウジ「信号、受信を確認」

ヒカリ「官制システム切り替え完了」

オペレータ「全神経、ダミーシステムへ直結完了」

オペレータ「感情素子の32.8%が不鮮明、モニターできません」

葛城「構うな…システム開放、攻撃開始」
534 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:13:02.59 ID:bn13i2TRo
参号機を捩じ伏せる初号機

ヒカリ「これが、ダミープラグの力なの…?」

オペレータ「システム正常!」

オペレータ「さらにゲインがあがります!」

参号機の頭部を踏み潰し、身体を抉る

ヒカリ「ひっ!」



ミサト「やめてよ!!!!!」

ミサト「お父さん、お願い、やめてよ、こんなのやめさせて!!!!!」

ミサト「嫌…!止まってよ、止まれ、止まれ、止まれ、止まれ!止まれ!」

エントリープラグが軋む

ミサト「はっ!これは…!」


ミサト「やめて!!!!嫌っ!やめてぇっ!!!!!!!!!!!!!!」



ケンスケ「エ、エヴァ参号機、あ、いえ、目標は、完全に、沈黙しました…」
535 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:14:03.28 ID:bn13i2TRo
男「こっちにもいたぞーっ!生存者だ!息はある!急いで救護を廻してくれ!」

男「そうだ。レコーダーのプラグは、ペースト作業終了後、すべて、焼却処分にしろ!」


シンジ「生きてる……。…アスカ?」


男「いいから!…の封鎖を解除しろ!」


アスカ「……良かったわね、命があって」

シンジ「綾波は…?」

アスカ「…あんたよりは軽傷よ。まったく…心配させんじゃないわよ、バカシンジ」

シンジ「…はっ!…エヴァ参号機は!?」

アスカ「……使徒、として処理されたそうよ。初号機に」

シンジ「そんな……」


男「……は破棄だ!ベークライトを注入してくれ」

男「地下800mの…」

シンジ「……僕、まだミサ
536 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:14:52.74 ID:bn13i2TRo
男「こっちにもいたぞーっ!生存者だ!息はある!急いで救護を廻してくれ!」

男「そうだ。レコーダーのプラグは、ペースト作業終了後、すべて、焼却処分にしろ!」


シンジ「生きてる……。…アスカ?」


男「いいから!…の封鎖を解除しろ!」


アスカ「……良かったわね、命があって」

シンジ「綾波は…?」

アスカ「…あんたよりは軽傷よ。まったく…心配させんじゃないわよ、バカシンジ」

シンジ「…はっ!…エヴァ参号機は!?」

アスカ「……使徒、として処理されたそうよ。初号機に」

シンジ「そんな……」


男「……は破棄だ!ベークライトを注入してくれ」

男「地下800mの…」

シンジ「……僕、まだミサトちゃんに何も話してない…」
537 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:16:02.96 ID:bn13i2TRo
(通信)

シンジ「ミサトちゃん…?」

ミサト「シンジさん…!良かった。無事だったんですね…?」

シンジ「ごめん……ミサトちゃん、僕は……君に伝えなきゃいけなかったのに、こんなことに…」


ミサト「シンジさん…私は…私は、人を…!お父さんが、私、嫌だって、…やめてって頼んだのに…!」

シンジ「ミサトちゃん、ごめん、本当に…」

ミサト「シンジさん……?」

ヒカリ「エントリープラグ回収班より連絡。パイロットの生存を確認」


ミサト「生きてる!?」


男「了解。変形部はレーザーで切断」

男「L.C.L.の変質サンプルは最優先で…」
538 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:17:02.39 ID:bn13i2TRo
シンジ「あの参号機のパイロットは…フォースチルドレンは…」


女「付着している生体部品は破棄処分、熱処理を準備!」

ミサト「え…?」



シンジ「…ミサトちゃん?…ミサトちゃん、ミサトちゃん…!ミサトちゃん!」

ミサト「嫌、」


(絶叫)


拾八話分終わり
539 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:21:01.69 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「…初号機の連動回路、カットされました」

カヲル「射出信号は?」

ヒカリ「プラグ側からロックされています。受信しません」

トウジ「聞いとるか?…ああでもせなんだら、お前がやられとったんやぞ!」


ミサト「そんなの関係ない……」


トウジ「それでも、それが事実や」

ミサト「………」


ミサト「そんなこと言って…これ以上私を怒らせないでよ…」

ミサト「初号機に残されている後185秒、これだけあれば、本部の半分は壊せる…!」
540 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:22:02.17 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「今の彼女なら、やりかねませんね」

ヒカリ「ミサトちゃん、話を聞いて!」

ヒカリ「葛城司令の判断がなければ、みんな死んでいたかもしれないのよ!」

ミサト「関係ない、そんなの」

ヒカリ「ミサトちゃん……!」


ミサト「関係ないって言ってるでしょ……!」


ミサト「殺そうとしたのよ…!?日向くんを、初号機が……私の手が!!」




葛城「お前ではない」

ミサト「な……」

葛城「あの少年を殺そうとしたのは私だ」

ミサト「……っ」
541 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:23:02.90 ID:bn13i2TRo
葛城「お前は死を選んだ。私はダミープラグを」

葛城「初号機を動かしたのはダミープラグだ」

ミサト「……!」

ミサト「そんなの……!そんなの関係ないわよ!!乗ってたのは私でしょ!?」

葛城「お前は戦うことを放棄したんだ」

ミサト「違うわよっ!!!」

葛城「……」

葛城「L.C.L.圧縮濃度を限界まで上げろ」

ヒカリ「ええっ?」

葛城「…やってくれ。ここを破壊されては困る…」

ミサト「まだ直結回路が残っ…がはっ!」

ミサト「チクショウ…チクショウ…チクショウ…」
542 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:24:02.13 ID:bn13i2TRo
作業員「ライトブレストの溶解処理、完了しました」

作業員「体液の洗浄は予定通り、30から始めます」

作業員「第6パーツは熱処理されます。エリア内の作業員は待避してください」

レイ「…もういいの?」

シンジ「仕事ができれば、問題ないよ」

シンジ「それに、休んでられないよ。こんな非常時に…」

シンジ「ミサトちゃんは…?」


レイ「…あの後、レーザーカッターで非常ハッチを切断。強制排除されたらしいわ」

シンジ「……参ったな…、今回ばかりは」
543 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:25:02.22 ID:bn13i2TRo
加持「…立ち直れないかもしれないな」

リツコ「ミサト?」

加持「…ああ、葛城もだし」

加持「俺もだ…」

リツコ「…あなたの先行で、使徒との接近戦が危険と分かったんだから…無駄ではなかったわ」

加持「ははっ…優しいじゃないか。いつになく」

リツコ「そうかしら…普通よ」


加持「……葛城は、今ごろ夢の中かな?」

リツコ「夢?」

加持「ああ……悪夢じゃないといいが…」

リツコ「……」
544 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:26:01.76 ID:bn13i2TRo
日向(……どこだ…ここは…妹の病院か…?なぜ俺は寝てるんだ……?)

日向(何だ……葛城さんじゃないか…それに、赤木…)


リツコ「なぜあんなことをしたの?」

ミサト「許せなかったのよ、お父さんが。私の気持ちを裏切ったお父さんが…」

ミサト「せっかくいい気持ちで話ができたのに、あの人は私の気持ちなんか分かってくれないんだわ」

リツコ「あなたは分かろうとしたの?お父さんの気持ちを」

ミサト「…分かろうとした」

リツコ「なぜ分かろうとしないの?」

ミサト「分かろうとしたわよ!」

リツコ「司令はあなたに死んでほしくなかっただけよ」

ミサト「……っ」

ミサト「私は……!」


日向(…なんで喧嘩してるんだ…二人…)
545 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:27:04.88 ID:bn13i2TRo
看護師「面会は特別だから、5分だけよ」

加持「はい、ありがとうございます」

日向「なんだ……お前か」

加持「悪かったな…葛城じゃなくて」

日向「いや…良かったよ。今はまともに顔を見れそうにない」

加持「……大丈夫か?」

日向「…生きてはいるみたいだな…」

加持「……」

日向「……葛城さんと、赤木がいたような気がしたんだがな…ちょうどそこに」

加持「…葛城は昨日退院したよ。リッちゃんは…何度か顔を見せてたようだが。おたくは丸三日寝てたんだ…夢でも見たんじゃないのか?」

日向「そうか…3日も……」

日向「……」
546 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:28:01.10 ID:bn13i2TRo
日向「なぁ……ひとつ、頼んでいいか…?」

加持「何だ?」

日向「妹には…知らせないでくれ。俺は何でもないって…少し忙しいだけだからって…伝えてくれないか…?」

加持「……」

加持「分かった…」
547 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:29:02.53 ID:bn13i2TRo
ネルフ職員「出たまえ、葛城ミサト君。総司令がお会いになる」


葛城「命令違反、エヴァの私的占有、恫喝…」

葛城「これらはすべて犯罪行為だ」

葛城「…何か言いたいことはあるか」

ミサト「……」

ミサト「私はもう、エバに乗りたくありません。…ここにもいたくありません」

葛城「どうするつもりだ」

ミサト「おじさんのところへ戻ります」

葛城「…それで逃げられると思うのか」

ミサト「……!」

葛城「…お前だけは、お前自身から逃げられない」
548 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:30:04.24 ID:bn13i2TRo
葛城「お前の戦闘離脱も、同級生の怪我も、すべて事実だ。向き合わない道はない…「演じる」ことで隠すことはできても。…ミサト」

葛城「…もうここへは帰ってくるな」

ミサト「……っ!言われなくても、そうするわよ!!!」




葛城「私だ。サードチルドレンは抹消、初号機の専属パイロットはリツコをベーシックに、ダミープラグをバックアップに廻せ」




(伝言メッセージ)


マヤ「葛城さん? 大丈夫…? わたし、何て言ったらいいのか…」

マヤ「ごめんなさい。勝手なことばかり言って…乗りたいとか、羨ましいとか。私、自分が幻想を見てるんだって気づいたのよ、出ていくあなたを責められないわ……日向くんがエヴァの事故に巻き込まれたって聞いて、私…!」



オペレータ「この電話は盗聴されています。機密保持のため回線を切らせていただきました。ご協力を感謝いたします」
549 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:31:02.65 ID:bn13i2TRo
シンジ「…加持くんが、悪かったって。…ミサトちゃんに」

ミサト「……みんな私に謝ってばっかり。悪いのは私なのに」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「やめてくださいよ!!いらないですよ、同情なんて…!」

シンジ「………」


ミサト「もう聞きあきたわ……私はかわいそうなんかじゃない……!」

ミサト「………」

ミサト「エバに乗ることも、ここに残ることも…」

ミサト「自分で選んだ……だから今度も、自分で出ていくんです…」

シンジ「…ミサトちゃん…」
550 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:32:03.21 ID:bn13i2TRo
ミサト「…最後に、ひとつだけ教えてください。なぜ日向くんだったんですか?フォースチルドレンが」

シンジ「……第4次選抜候補者は、全てミサトちゃんのクラスメートだったんだよ……ごめん、こんな大事なことが、今まで言えなくて……」

ミサト「……全部、仕組まれてたってことですか?クラスのみんなが……」

ミサト「なんなんですか……?お父さんが……あの人がやろうとしてることは…!」

シンジ「……」

シンジ「ごめん……うまく言えないんだ。でも僕らが戦ってるのは、人類を救うためで…!……それだけは、嘘じゃ、ないから…」

ミサト「……もういいです。どうせ私には関係のなくなることですから」

シンジ「ミサトちゃん…」

ミサト「私のパスコードは破棄してください。部屋の荷物も…」

シンジ「……」

ミサト「すみません、最後までご迷惑をおかけして」

ミサト「それじゃあ……さようなら」
551 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:33:02.06 ID:bn13i2TRo
警報。

放送「ただいま東海地方を中心に、非常事態宣言が発令されました。住民の皆さまは、速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返します、ただいま…」



ミサト「使徒だ…」





オペレータ「総員第一種戦闘配置、地対空迎撃戦用意」

カヲル「目標は?」

ケンスケ「現在、侵攻中です。駒ケ岳防衛線、突破されました!」
552 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:34:02.37 ID:bn13i2TRo
オペレータ「第1から18番装甲まで損壊!」

トウジ「18もある特殊装甲を、一瞬で…!」

シンジ「……エヴァの地上迎撃は間に合わない!弐号機をジオフロント内に配置、本部施設の直縁に廻して!」

シンジ「加持くんには目標がジオフロント内に侵入した瞬間を狙い撃ちさせて!」

シンジ「零号機は?」

ヒカリ「A.T.フィールド中和地点に、配置されています」

レイ「左腕の再生がまだなのよ」

シンジ「戦闘は無理か…」

葛城「リツコは初号機で出せ」

シンジ「…!」

葛城「ダミープラグをバックアップとして用意」

シンジ「はい…!」
553 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:35:02.14 ID:bn13i2TRo
オペレータ「エントリースタート」

ヒカリ「L.C.L.電荷」

レイ「A10神経、接続開始」

異変。

リツコ「うっ…だめなのね、もう…」

オペレータ「パルス逆流!」

ヒカリ「初号機、神経接続を拒絶しています!」

レイ「まさか、そんな…」

カヲル「……葛城君」

葛城「ああ…私を拒絶するつもりか」

葛城「…起動中止、リツコは零号機で出撃させろ。初号機はダミープラグで再起動」

シンジ「しかし零号機は…!」

リツコ「構いません。行きます」

シンジ「リツコちゃん…!」

リツコ(私が死んでも代わりはいる…もう気づいて泣く人もいないわ)
554 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:36:02.31 ID:bn13i2TRo
火柱が立ち上る。市街地。


ミサト(……私はもう、乗らないって決めたのよ…!)

男「君、何をしている!早くシェルターに避難しなさい!」




ケンスケ「だめです!後一撃ですべての装甲が突破されます!」

シンジ「…頑張って、加持くん…!」




加持「来たな……こちとら傷心中だってのに」

加持「ま……いいさ。スパッと勝ちどきを上げて、」

加持「英雄の凱旋といこうじゃないか……!」
555 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:37:01.74 ID:bn13i2TRo
連射。

加持「このっっ!!」

加持「チッ……次!」

加持「なぜだ!? A.T.フィールドは中和しているはず…」

加持(なぜ通じない!?)

なおも撃ち込むが、通じない

加持「ははっ……笑えない冗談だ」

加持「何…っ!」


加持「がっっ」

腕を切り落とされる

加持「……っああ、あぅ……!」


加持「……でやあああっ!」


シンジ「弐号機の全神経接続カット!早く!!」
556 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:38:02.56 ID:bn13i2TRo
(加持「避難訓練?……まぁ、俺たちパイロットには関係ない話だろうな」)

揺れる避難所。

ミサト「……うわっ!」

男「第8区に直撃!」

男「第6シェルターは放棄、生きてるものは第3シェルターへ急げ!」

目前に弐号機の頭部。

ミサト「……!!」



ケンスケ「弐号機大破、戦闘不能!」

シンジ「加持くんは!?」

トウジ「無事や!生きとる!」



加持「はは…」

加持「…首、ついてるよな……?」

加持「………」
557 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:39:02.31 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「使徒、移動開始!」

シンジ「初号機の状況は?」

オペレータ「ダミープラグ、搭載完了!」

ヒカリ「探査針、打ち込み終了!」

レイ「コンタクト、スタート!」

ヒカリ「了解!」

エラー音

レイ「何っ!?」

ヒカリ「パルス消失、ダミーを拒絶、だめです!エヴァ初号機、起動しません!」

レイ「ダミーを、赤木リツコを、」

カヲル「受け入れないのか…!」

葛城「……」

葛城「渚、少し、頼む…」
558 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:40:01.46 ID:bn13i2TRo
男「怪我人は第6ブロックへ!」

男「無事なものは第3シェルターへ集合しろ!」

男「こっちだ!」

男「早く!」

男「急げ!」

男「早く!」

男「おい君!何をしている!死にたいのか!」


立ち尽くすミサト


ミサト「加持くん…」



アスカ「ミサト!」
559 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:41:02.86 ID:bn13i2TRo
ミサト「アスカさん…、どうしてここに…」

アスカ「それはこっちの台詞よ。何やってんのよ、サードチルドレン、葛城ミサト」

ミサト「もうパイロットじゃありません。…自分のために決めたんです」

アスカ「自分のため?聞いて呆れるわね…あんた逃げてるだけじゃないの」

ミサト「アスカさんこそ……何してるんですか」

アスカ「…アルバイトが公になったからね。戦闘配置に私の居場所はなくなったの。だからここで水を撒いてるってわけ」

ミサト「だからここで?意味が分かりません」

アスカ「分からない?何してたって同じってことよ。エヴァが負ければみんな死ぬんだから」

ミサト「……みんな、死ぬ…」


アスカ「そうよ。使徒がここの地下に眠るアダムと接触すれば、人は全て滅びる…サードインパクトで」

アスカ「あたしはここで水を撒くことしかできない…あんたは違うでしょ?」

アスカ「使徒を止められるのは、使徒と同じ力を持つエヴァンゲリオンだけ」


ミサト「リツコっ!?ライフルも持たずに!」
560 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:42:02.06 ID:bn13i2TRo
レイ「やめなさいっ!!」

葛城「リツコ!」


リツコ「A.T.フィールド、全開…!」

爆発。

ミサト「うっ!……!」



トウジ「零号機は…!」


爆煙の中から、使徒

零号機の頭部を切り落とす


シンジ「リツコちゃんっ!」

レイ「何てこと…!」
561 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:43:10.35 ID:bn13i2TRo
アスカ「後悔なんて誰だってするわよ。誰だって今が一番辛いの。時間は巻き戻せない、一瞬一瞬を積み重ねたものが人の歴史なのよ」

アスカ「選択できるのは「今」だけ…」

アスカ「その一瞬で何を選択するか……少なくともそれで、未来(さき)の後悔は変えられるわ」

ミサト「……」


アスカ「あんた本当に後悔しないの?こんなところに突っ立ってて」

ミサト「………!」





ケンスケ「第三基部に、直撃!」

トウジ「最終装甲版、融解!」

シンジ「まずい、メインシャフトが丸見えだ…!」

レイ「初号機はまだなの!?」

オペレータ「ダミープラグ、拒絶」

オペレータ「だめです、反応ありません!」
562 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:44:02.75 ID:bn13i2TRo
葛城「続けろ。もう一度108からやり直せ」



ミサト「乗せてください!」


ミサト「私を、私をこの……っ、初号機に乗せてください!」

葛城「……!」

ミサト「お父さん…」

葛城「…なぜ帰ってきた」

ミサト「私は…!」


ミサト「私は、エヴァンゲリオン初号機のパイロット、葛城ミサトです!」
563 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:45:10.09 ID:bn13i2TRo
ケンスケ「目標は、メインシャフトに侵入、降下中です!」

シンジ「目的地は!?」

トウジ「そのまま、セントラルドグマへ直進!」

シンジ「ここに来る…!総員待避!急いで!」

トウジ「総員待避!繰り返す、総員待避!」


目前に迫る使徒。


シンジ「……!」

突進する初号機

シンジ「エヴァ初号機!?…ミサトちゃん!?」


ミサト「ぐ…っ!」

ミサト「ああああああっ!」
564 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:46:02.48 ID:bn13i2TRo
拳を振り上げる初号機。腕を切断される

ミサト「……っ、あああああああ!」

射出リフトに使徒を追いやる。

ミサト「シンジさんっ!」

シンジ「5番射出、急いで!」

ミサト「あああああっ!」

ミサト「やあああああ!」

絶叫し使徒を撲つ。

突如、停止する

ミサト「エネルギーが切れた!?」


ヒカリ「初号機、活動限界です!予備も動きません!」

シンジ「ミサトちゃん…!」
565 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:47:03.60 ID:bn13i2TRo
刻まれ、爆撃を受ける初号機。

シンジ「ミサトちゃん!!」


ミサト「動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないのよ!」


シンジ「あれは…っ」

露呈したコア。

ミサト「動け、動け、動け!動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動け、動きなさいよ!」

ミサト「今動かなきゃ、今やらなきゃ……みんな死んじゃうのよ…!もう…もうそんなのは、嫌なの…!」

ミサト「だから……動いてよ…っ!!」



鼓動。



覚醒する初号機。攻撃を受け止める

アスカ「……!」
566 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:48:03.51 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エ、エヴァ、再起動…」

使徒の部品を押し当てる。腕を再生。

シンジ「すごい…」

ヒカリ「まさか…信じられません、初号機のシンクロ率が400%を超えています!」

レイ「目覚めたのね……彼女が」


咆哮する初号機。使徒を圧倒する


シンジ「使徒を……食べてる…」

レイ「S2機関を自ら取り込んでいるというの…?エヴァ初号機が…」

ヒカリ「……うぅっ!」


レイ「拘束具が…!」

トウジ「拘束具?」

レイ「そうよ…あれは装甲板ではないの。エヴァ本来の力を私たちが押え込むための、拘束具」

レイ「その呪縛が今、自らの力で解かれていく…私たちにはもう、エヴァを止めることはできない…」
567 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:49:02.60 ID:bn13i2TRo
アスカ「……初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ」

アスカ「これもシナリオの内?……葛城司令殿」





カヲル「始まってしまったね…どうする?」

葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」




拾九話分終わり
568 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:51:01.27 ID:bn13i2TRo
シンジ「使徒を……食べてる…」


レイ「拘束具が、今自らの力で解かれてゆく。私たちにはもう、エヴァを止める事はできない…」


アスカ「初号機の覚醒と開放。こーなりゃゼーレが黙っちゃいないわよ?」



ゼーレ「エヴァシリーズに生まれいずる筈のないS2機関」

ゼーレ「まさかかのような手段で自ら取り込むとはな」

ゼーレ「我らゼーレのシナリオとは大きく違った出来事だよ」

ゼーレ「この修正、容易ではないぞ」

ゼーレ「葛城。あの男にネルフを与えたのがそもそもの間違いではないのかね?」

キール「だがあの男でなければ、全ての計画の遂行はできなかった。葛城、何を考えている?」




カヲル「始まってしまったね…どうする?」

葛城「最善を尽くす…選ぶ道はひとつだ」
569 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:52:20.93 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エヴァ両機の損傷は、ヘイフリックの限界を超えています」

レイ「時間がかかるわね。全てが戻るには」

ヒカリ「幸い、MAGIシステムは移植可能です。明日にも作業を開始します」

レイ「でも、ここはだめね」

ケンスケ「破棄決定は、もはや時間の問題だな」

レイ「そうね…とりあえずは、予備の第2発令所を使用するしかないわね」

ヒカリ「MAGIはなくとも、ですか?」

レイ「…そうね。埃を払って、午後には仕事を始めるわ」

ヒカリ「椅子はきついし、センサーは硬いし、やりづらいのよね…ここ」

ケンスケ「見慣れた第1発令所と造りは同じなんだがな」

ヒカリ「違和感あるわよね」

レイ「使えるだけでも良しとしましょう」


レイ「使えるかどうか分からないのは、初号機ね…」
570 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:53:02.23 ID:bn13i2TRo
拘束された初号機

シンジ「…何か反応は?」

トウジ「内部に熱、電子、電磁波ほか、化学エネルギー反応無し。S2機関は完全に停止しとる」

シンジ「にもかかわらず、この初号機は3度も動いた…」

シンジ「目視できる状況だけじゃ、迂闊に触れないね」

トウジ「……」

トウジ「迂闊に手ェ出すと何されるか分からん。…まるでセンセを尻に敷いとる、あの女やな」

シンジ「…トウジも、人のこと言えるの?」

トウジ「なんやとっ!」
571 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:54:14.56 ID:bn13i2TRo
キール「だが事態はエヴァ初号機の問題だけではない」

ゼーレ「さよう、零号機と弐号機の大破、本部施設の半壊、セントラルドグマの露呈。被害は甚大だよ」

ゼーレ「われわれがどの程度の時と金を失ったか、見当も付かん」

ゼーレ「これも、葛城の首に鈴を付けておかないからだ」

ゼーレ「鈴は付いている。ただ、鳴らなかっただけだ」

キール「鳴らない鈴に意味はない。今度は鈴に動いてもらおう」
572 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:55:08.40 ID:bn13i2TRo
アスカ「…どーなってんのよ?この展開は」

アスカ「ゼーレにどう言い分けつけるつもり?」

カヲル「……初号機はわれわれの制御下ではなかった。これは不慮の事故だよ」

葛城「よって初号機は凍結。委員会の別命あるまでは、だ」

アスカ「あくまで演じ通すってわけね…。いいわ。でもどうするの?パイロットは取り込まれたままなのよ」

葛城「……」
573 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:56:01.73 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「やはりだめです、エントリープラグ排出信号、受け付けません」

レイ「予備と疑似信号は? 」

ヒカリ「拒絶されています。 直轄回路もつながりません」

トウジ「プラグの映像回線が繋がった。主モニターに廻す」


シンジ「……何だ、これ……!」


レイ「…これがシンクロ率400%の正体」

シンジ「そんな……!ミサトちゃんは一体…!?」

レイ「…エヴァ初号機に取り込まれてしまったのよ」

シンジ「……!」
574 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:57:02.80 ID:bn13i2TRo
シンジ「……何だよそれ…どういうことなの? エヴァは対使徒用の、決戦兵器なんじゃなかったの!?」


シンジ「あの時南極で拾った……それをコピーした、人が戦うために作った兵器なんじゃ…」

レイ「ただのコピーとは違うわ。人の意思が込められているもの」

シンジ「これも誰かの意思だって言うの…?」

レイ「……あるいは、エヴァの」

シンジ「!」

シンジ「…なんだよそれ…!エヴァって何なんだよ…!」


レイ「…人の作り出した、人に近いカタチをした物体、としか言いようがないわ」


シンジ「……」
575 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:58:01.92 ID:bn13i2TRo
テレビ(ラジオ)「…であり、南沙諸島の問題に対し、政府と内務省はこれを公式に否定しました」

テレビ(ラジオ)「次のニュースです。第2東京市で起きたセクトによるテロ事件から一ヶ月が過ぎた今日、新たなテロ行為に対し再発防止を第一に政府による…」


リツコ「…まだ生きてる…」



(通話)

加持「リッちゃんが無事?それは…よかった…俺は大丈夫、ああ、大したことないよ、それじゃあ」



加持「…大したことないか…」

加持「弐号機、大破…」

加持「……」

加持「…荷が重いな…」
576 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 15:59:02.23 ID:bn13i2TRo
シンジ「ミサトちゃんのサルベージ計画?」

レイ「そう。ミサトちゃんの生命と言うべき物は、まだ存在しているわ」

シンジ「言うべき物?」

ヒカリ「ミサトちゃんの肉体は、自我境界線を失って、量子状態のまま、エントリープラグ内を漂っていると推測されます」

シンジ「つまり…ミサトちゃんは僕たちの目では確認できない状態に変化している?」

ヒカリ「そう。プラグの中のL.C.L.成分は、化学変化を起こし、現在は原始地球の海水に酷似していて…」

レイ「言うなれば、生命のスープね」
577 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:00:01.13 ID:bn13i2TRo
レイ「ミサトちゃんを構成していた物質は、すべてプラグ内に保存されているし、魂と言うべき物もそこに存在している」

シンジ「……なぜそう言い切れるの?」

レイ「現に彼女の自我イメージが、プラグスーツを擬似的に実体化させているわ」

ヒカリ「つまりサルベージとは、彼の肉体を再構成して精神を定着させる作業です」

シンジ「そんな事が可能なの?僕たちの力で」

レイ「MAGIのサポートがあればね」

シンジ「……」

レイ「結果どうなるかは……やってみなくては分からないわ」
578 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:01:15.88 ID:bn13i2TRo
ミサト「…なに、これ…?どこなの…?エントリープラグ?初号機の?…でも誰もいない。私もいない…」



ミサト「なに…これは…?よく分からない…」

ミサト「この人達…そう、私の知っている人たち、私を知っている人たち」


ミサト「そうか、みんな私の世界なんだ」



ミサト「これは? 私の世界のはずなのに、よく分からない、外からのイメージ、嫌なイメージ」

ミサト「そうよ、敵!」

ミサト「敵、テキ、てき、敵!使徒と呼ばれ天使の名を冠する私たちの敵!」

ミサト「エバの…そしてネルフの目標…シンジさんの両親の仇…」

ミサト「なんで私が戦うんだろう…こんな目に遭ってまで…」

(アスカ「誰かのためってのは聞こえはいいけど、心情的には見返りを求めるものよ」)
579 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:02:04.84 ID:bn13i2TRo
ミサト「自分のため……自分のため?」

ミサト「私はこんなに傷ついているのに……」


ミサト「敵、テキ、てき、敵、みんな敵!私を…私たちを脅かすもの、つまり敵」

ミサト「そうよ、自分の命を……心を守って、何が悪いのよ!いいことじゃないの!」


リツコ「いい子でいたいの?」


ミサト「何よ!私と母さんを捨てたくせに!」

リツコ「あなたが逃げ出したんでしょう?」

ミサト「違う、違う、違う、違う!お父さんが捨てたのよ!日向くんを傷つけたのよ、お母さんを殺したのよ!」


リツコ「お母さんが、あなたを殺していたんじゃないの?」

ミサト「嫌……っ!」
580 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:03:05.16 ID:bn13i2TRo
母「ミサト……ミサトはお母さんの味方よね…?」

母「ひどい…、ひどいわ…何も分かってないのよ、あの人は」

母「家庭より仕事を取ったのよ!愛してないんだわ、私たちのことを」

ミサト「……」

母「あなただけは、お母さんの味方よね?」

母「あなたがいてくれれば……他になにもいらないの」

母「ミサト…!」
581 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:04:03.70 ID:bn13i2TRo
リツコ「だから嫌いなの?」

ミサト「そうよ……父も母も嫌い。自分だけがかわいいのよ」

リツコ「だから逃げ出したのね」

ミサト「一人になって当然よ!お父さんは私たちを愛してなかったんだから!」

リツコ「だから私を愛すの?」

ミサト「そうよ!実の子が恐いから…!他の子で誤魔化してるのよ」

リツコ「あなたは違うの?」


ミサト「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!お父さんがみんな悪いんじゃないの!あの時だって、ほんとはお父さんに嫌いだって言うつもりで…!」
582 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:05:02.40 ID:bn13i2TRo
ミサト「私に…これに乗って戦えって言うの?さっきの化け物と!」

葛城「…そうだ」

ミサト「……いやよっ!そんなの……!何?なんでそうなるのよ、今更、いまさら……私を捨てたんじゃなかったの!!?」

葛城「……捨てた覚えはない」

ミサト「なぜ、私なの?」

葛城「お前にしかできないことだからだ」

ミサト「……無理よ…っ!そんなの…見たことも、聞いたこともないのに、できるわけない!」




ミサト「そう、私は何も知らなかった」

ミサト「それなのに、飛び込んだのよ」

ミサト「エバに乗ることを選んだ」


ミサト「お父さんに近づきたかったから…」
583 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:06:01.86 ID:bn13i2TRo
アナウンス「現在、L.C.L.の温度は36を維持、酸素密度に問題なし」

アナウンス「放射電磁パルス異常無し。波形パターンはB」

アナウンス「各計測装置は正常に作動中」


ヒカリ「サルベージ計画の要綱、たった一ヶ月でできるなんて。さすが綾波さんね」

レイ「原案は私じゃないわ…先生が残したものに手を加えたの。10年前に実験済みのデータよ」

ヒカリ「そんなことがあったの?エヴァの開発中に?」

レイ「私が入ってすぐの出来事よ」

ヒカリ「…その時の結果は…?」

レイ「……失敗」
584 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:07:04.87 ID:bn13i2TRo
ミサト「冷たい…さびしい…」

ミサト「おかしいな。…前は一人でも平気だったのに」

リツコ「サビシイってなに?」

ミサト「一人が嫌ってこと。誰かといたいってことよ」

リツコ「シアワセってなに?」

ミサト「好きってこと。心が満たされることよ」

リツコ「誰かと一緒にいれば、幸せ?」

ミサト「……分からない。お母さんといるときは…息苦しかったから」


母親の遺体の前に立つミサト


ミサト「死を悲しめない自分がいるのよ」

ミサト「切り離されてほっとしている自分がいる」

ミサト「…でも、自分からは逃げられない」


(葛城「お前自身から逃げられない」)
585 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:08:03.77 ID:bn13i2TRo
ミサト「自分のために優しくしてきたわ!」

ミサト「自分のためにいい子でいた!」

ミサト「なのに……なぜなの?」


ミサト「嬉しくないのね」

ミサト「嬉しくないわよ」

ミサト「こんな……偽物の自分…」


ミサト「自分なのか分からない自分…」

ミサト「誰か…」


ミサト「汚して!」




ミサト「めちゃくちゃにしてよ!」
586 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:09:02.59 ID:bn13i2TRo
日向「意外だったな…葛城さんにこんな一面があったなんて」

シンジ「かわいいよ、ミサトちゃん」

加持「魅力的だよ」



ミサト「気持ち、いいの?」

日向「気持ちいいよ」

ミサト「気持ち、いいの?」

シンジ「気持ちいいよ」

ミサト「気持ち、いいの?」

加持「君は最高だ…」
587 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:10:02.80 ID:bn13i2TRo
日向「君が必要なんだ」

シンジ「君が必要だよ」

加持「君しかいらない…君だけでいい」


リツコ「嘘ね」

ミサト「はっ」


リツコ「一時の感情に身を任せて、刹那的に自分を傷つけているだけよ。罰を与えて、誤魔化しているだけ」

ミサト「それの何がいけないのよ!私は汚れたいの!もういい子は嫌…!私はあんたじゃないのよ!!」


リツコ「私はいい子じゃないわよ?」



(加持「涙の通り道にほくろのある人は…」)

(加持「ま、俺ならそんな思いはさせないが」)

(アスカ「あたしにとってのシンジ?…それが分かりゃあ、苦労しないわよ」)
588 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:11:02.13 ID:bn13i2TRo
シンジ「アスカは特別なんだ」


加持「笑った顔が見たい」



ミサト「やめて!!!やめてよ!!!!私だけを見て!」

ミサト「私だけを愛してよ…!」



日向「愛しているよ」

シンジ「愛してるよ」

加持「………」



葛城「お前の居場所はない」



ミサト「ひ…っ!」
589 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:12:01.55 ID:bn13i2TRo
オペレータ「全探査針、打ち込み終了」

オペレータ「電磁波形、ゼロマイナス3で固定されています」

ヒカリ「自我境界パルス、接続完了」

レイ「了解、サルベージ、スタート」

トウジ「了解、第1信号を送信」

ケンスケ「エヴァ、信号を受信。拒絶反応無し」

ヒカリ「続けて、第2、第3信号送信開始」

オペレータ「対象カテクシス異常無し」

オペレータ「デストルドー、認められません」

レイ「了解、対象をステージ2へ移行」

シンジ「…ミサトちゃん…!」
590 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:13:01.71 ID:bn13i2TRo
ミサト「はっ」

(加持「葛城!」)

ミサト「はっ!」

(シンジ「ミサトちゃん!?」)

ミサト「はっ!」

(マヤ「あら、葛城さん!」)

ミサト「はっ!」

(リツコ「ミサト!」)

ミサト「はっ!」

(日向「葛城さん」)

(青葉「葛城〜!」)

(レイ「ミサトちゃん?」)
591 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:14:01.75 ID:bn13i2TRo
(加持「お姫さま」)

(シンジ「ミサトちゃん…」)

(日向「葛城さん?」)

(リツコ「ミサト」)

(レイ「ミサトちゃん!」)

(マヤ「葛城さん?!」)

(青葉「葛城?」)

(加持「おい、葛城!」)

(日向「あっ、葛城さん!」)

(リツコ「ミサト」)

(シンジ「ミサトちゃん!」)

(加持「葛城!」)

(日向「葛城さん!」)
592 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:15:01.65 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「だめです、自我境界がループ上に固定されています!」

レイ「全波形域を全方位で照射してみて!」


レイ「だめね…発信信号がクライン空間に捕われている…」

シンジ「どういう事?」

レイ「つまり、失敗」

シンジ「えっ…」

レイ「干渉中止、タンジェントグラフを逆転、加算数値をゼロに戻して」

ヒカリ「はい!」

ケンスケ「Qエリアにデストルドー反応、パターンセピア」

トウジ「コアパルスに変化あり!プラス0.3を確認!」

レイ「現状維持を最優先、逆流を防いで!」

ヒカリ「はい!」
593 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:16:01.18 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「プラス02…0.8、変です!塞き止められません!」

レイ「これは…なぜ…帰りたくないの?ミサトちゃん…」




ミサト「分からない、分からない…私は…私は…」


シンジ「何を願うの?」

加持「何を、願う?」

日向「何を願うの?」

葛城「何を願う?」
594 : ◆gcWj88zLkc [sage saga]:2020/12/05(土) 16:17:03.32 ID:bn13i2TRo
ヒカリ「エヴァ、信号を拒絶!」

ケンスケ「L.C.L.の自己フォーメーションが分解していきます!」

ケンスケ「プラグ内、圧力上昇!」

レイ「現作業中止、電源落として!」

ヒカリ「だめです、プラグがイクジットされます!」

溢れ出るL.C.L.

シンジ「ミサトちゃん!!!」





ミサト「はっ…」

ミサト「ここは…」


ミサト「エバの中よ」

ミサト「エバの中?私はまたエバに乗ったの…?どうして…」
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