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高木社長「ねぇ、キミぃ…」
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108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:42:15.08 ID:V4s4JV6AO
「高木殿は私が765ぷろに来て、初めて出演したてれび番組を覚えていますか?」
「え?」
質問したのはこちらなのだが、彼女からも質問が返ってきた。
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:43:03.61 ID:V4s4JV6AO
「えーっと…たしか…『ゲロゲロキッチン』だったかな?」
あの時は音無君と一緒にリアルタイムで見ていたからよく覚えている。
「…私にはそれで十分なのです」
「ど、どういうことかな?」
「私は皆のように自分のことを話すのが得意ではありません。ですからどうしても、秘密にしていることが多くなっています」
どういうことか、未だに見当がつかない私を他所に四条君は続ける。
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:43:46.75 ID:V4s4JV6AO
「秘密とはすなわち壁。理解できないということは打ち解けられないということ…それは今までの人生の中で何度も経験してきたことです」
なるほど、彼女の性格は有名になった今でこそ広く受け入れられているが、以前はそうではなかったのかもしれない。
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:44:38.23 ID:V4s4JV6AO
「ですから、高木殿のように理解しようとしてくださる人は、私にとって必要不可欠な存在なのです」
「四条君…」
「『類は友を呼ぶ』と言います。社長の貴方がそういう人間で居てくれるからこそ、他の皆も私に対して優しく接してくれる…そんな765ぷろが私は大好きです」
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:45:17.96 ID:V4s4JV6AO
「ははは、ありがとう。少し安心したよ」
「こちらこそ、ありがとうございます」
「そのありがとうは、何に対してのかな?」
アイドル諸君に毎度の如く言われるお礼に対して、遂に私は理由を問うことができた。けれど…
「ふふふ、それは…とっぷしーくれっと…です」
こう言われてしまっては更に問い返すことなんてできないではないか。
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:45:59.14 ID:V4s4JV6AO
10
「ただいま」
「お帰りなさい…って社長?どうしてこんなところに?」
「いや、実は社長室に戻れない理由があってね…」
「はぁ…」
事務所に戻ると、最初こそ律子君からどうしたのかを尋ねられたものの、答えにならない返事をすると、それ以上は追求してはこなかった。
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:46:47.49 ID:V4s4JV6AO
「まぁ、こんな機会でもないとどんどん現場からは離れていってしまうしね。今日はアイドルのみんなともたくさん話をすることができた。実に有意義な一日だったよ」
「そうですか…まあよくわからないですけど、それなら良かったです」
律子君はそう言いながら仕事を中断して、私のためにコーヒーを入れてくれた。思えば彼女からはお小言をもらうことも多々あるけれど、基本的には立ててもらっている。水瀬君とも似ているが、律子君の場合は体育会系的な目上を立てるという信念からの行動に思える。
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:47:55.06 ID:V4s4JV6AO
「ところで律子君、君にも少し聞きたいんだが…」
「え?何をですか?」
まあ私で答えられることならば…と謙遜まじりに返す彼女に、私は今日何度目かになるこの質問をぶつけた。
116 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:48:34.07 ID:V4s4JV6AO
「律子君、君は…他のプロダクションならばよかったと…思ったことはないかい?」
「え?」
「だからその…765プロで良かったのかな…と思ってしまってね…」
思えば彼女のことこそめちゃくちゃに振り回してしまった。最初は事務員志望だった彼女を無理やりアイドルにしたかと思えば、急遽プロデューサーにするために夢半ばで引退させてしまった。普通ならば恨まれていないはずがない。
117 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:49:15.29 ID:V4s4JV6AO
「まあそりゃあ、最初はびっくりしましたよ?事務員志望だって言ったはずなのにいつの間にかアイドルになってて、気づいたらプロデューサーになってたんですから」
「うっ…」
やはりそうか。こと彼女には刺されたとしても文句は言えないな。
118 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:49:58.42 ID:V4s4JV6AO
「でも、そんな経験ここ以外のどこでできるんですか?」
「え?」
「どこの世界にも居ないですよ。アイドルやって、プロデューサーになって、その後自分のアイドル事務所を構える人なんて…だから私は、今の環境に感謝してるんですよ?」
「律子君…」
一番振り回していたと思っていた。事務所存続のためにアイドルを引退した時には人知れず涙を流していたことも知っている。けれど、引退をさせた私が慰めることなどできなかった。そんな彼女が、今では売れっ子アイドルのプロデューサーだ。
119 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:51:11.93 ID:V4s4JV6AO
「でもどうして私に?今日はアイドルのみんなとお話してたんですよね?」
「あぁ、そうだとも。私は『アイドル』の君に話を聞いたのさ」
「え?」
「何度も振り回してしまった私が言うのはおかしいと思うけれどね…私の中では君も『アイドル』なのだよ」
「社長…」
120 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:51:49.78 ID:V4s4JV6AO
「今まで…すまなかったね…」
「…そんな言葉が聞きたいんじゃありません」
こういう時、どういうべきかなんて亜美と真美でも知ってますよ。なんて手厳しい言葉をぶつけられる。いやはや、やっぱり私はまだまだ彼女に引き締めてもらわないとダメらしい。
121 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:53:11.93 ID:V4s4JV6AO
「そうだね…律子君、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」
それでは次の仕事がありますので、と言葉少なに立ち上がり、社用車の鍵を持って外に出た彼女の耳はほんのり赤く染まっていた。
122 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:53:52.93 ID:V4s4JV6AO
11.12
「「はろはろー!」」
「双海亜美!」
「双海真美!」
「「ただいま参上!」」
「ははは、相変わらず息ぴったりだねぇ」
律子君が出て行ってからしばらくして、今度は亜美君と真美君がやってきた。いつも元気な二人には困らされることも多いが、その実、他人が本当に嫌がることはしない優しい二人だということは事務所の誰もが知っている。
123 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:54:38.07 ID:V4s4JV6AO
「ところで君たちは二人とも休みだったはずでは?」
「そうなんだYO!」
「学校がお休みの日にオフもらってもすることないっしょ?」
「だから事務所に来たんだー」
「なるほどね…」
三浦君にしてもそうだが、この子たちはそういえば休みの日でもよく事務所に来ているのを見かける気がする。
124 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:55:23.93 ID:V4s4JV6AO
「でも今日は社長さんしかいないのか…」
「りっちゃんか兄ちゃんとゲームしようと思ったのに…」
なるほど、確かに遊び相手を求めてやってきたらこんなくたびれたおじさんさんしかいなかったのでは期待外れもいいところだろう。(もっとも律子君に関しては、『仕事中!』と一括しそうな気もするが)
125 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:56:10.51 ID:V4s4JV6AO
「それでは…私と一緒にするというのはどうかね?」
「え!?社長さんが!?」
「いいの!?」
何、これもコミュニケーションの一つだ。最近のゲームはよくわからないが、インベーダーゲームはよく嗜んだものだ。
126 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:56:53.32 ID:V4s4JV6AO
「ふふふ、手加減はしないよ?」
「うあうあー!?これは…」
「激闘の予感…」
さあ、『765連射の順ちゃん』と呼ばれた私の実力を見せる時がやってきたようだ!
127 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:57:31.87 ID:V4s4JV6AO
「うぅ…」
「社長…」
「酔っちゃったね…」
甘く見ていた。最近のゲームの進歩を…グラフィックがインベーダーゲームの比ではない。リアルに近づいたあの画面でカメラが右に左に移動していく。亜美君や真美君にとっては日常でも、日頃パソコンでメールをチェックするくらいの私には非常にきついものがあった。端的に言えば酔ってしまったのだ。
128 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:58:11.45 ID:V4s4JV6AO
「うっぷ…」
「ごめんね…まさかこうなるとは思わずに…」
「い、いや、悪いのは私…うっ…」
「うあうあー!?社長、大丈夫!?」
全く情けない。孫ほどの歳の差がある子たちに介抱されることになるとは…
129 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:58:55.33 ID:V4s4JV6AO
「ちょっとゲームは休憩しよっか」
「うん、りっちゃんがいたらそろそろ『あんたたち!ゲームのやりすぎは目に毒よ!』って言う頃だもんね」
私に気を使ってかゲームの電源を切る二人。それにしても見事な物真似だ。声色だけでなく、口調、語尾の上がり下がりの癖まで完璧にコピーしている。全く器用なものだ。
130 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 21:59:35.28 ID:V4s4JV6AO
「それじゃあお話でもする?」
「そだね、社長さん!お話しよ!」
「ふむ、お話ねぇ…」
なるほど、ならばこの場で聞いてしまっても構わないだろうか。
131 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:02:34.36 ID:V4s4JV6AO
「亜美君、真美君、少し聞きたいことがあるんだが…」
「ん?聞きたいこと?」
「ゲームの裏技とか?」
「いや、そうではなくてだね…二人は…君たちは…他のプロダクションならばよかったと…思ったことはないかい?」
「へ?」
「他のプロダクション?」
132 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:04:58.24 ID:V4s4JV6AO
いまいちピンと来ていない二人に、私は続ける。
「ほら、芸能事務所は他にもたくさんあるだろう?765プロ以外の事務所に入ろうと思ったことはないかな?」
「えー、そんなの…」
「今まで…」
「「考えたことが無かった…」」
「え?」
本当に面食らったような表情に私も面食らう。可愛らしい二人はともかく、私はさぞかし滑稽な顔を晒していたことだろう。
133 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:05:33.86 ID:V4s4JV6AO
「でも、よく考えても、ここ以外の事務所はあり得ないっしょー」
「そだねー、あり得ないねー」
さっきまでぐるぐると色んな表情で思案していたというのに、本人たちはもう結論を出したようだ。
134 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:07:37.72 ID:V4s4JV6AO
「何故か…は聞いてもいいかね?」
「だって他の事務所に行ったらみんながいないじゃん」
「そうだYO!はるるんも、りっちゃんも、ひびきんもみーんないなくなっちゃやだもん!」
「なるほどね…」
実に彼女たちらしい答えだ。ムードメーカーとして集団を盛り上げようとするということは、その集団を愛しているからに他ならない。ストレートな愛情表現だ。
135 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:08:12.93 ID:V4s4JV6AO
「まあピヨちゃんも兄ちゃんも社長さんもみーんな一緒に違う事務所になるんなら悪くないけどね!」
「…それって違う事務所って言えるの?」
「あり?」
彼女たちらしい小気味良いテンポで繰り広げられる会話はとても面白い。流石我が事務所が誇るムードメーカーだ。
136 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:08:49.84 ID:V4s4JV6AO
「そこに私も入れてくれるのかい?」
「当たり前っしょ?」
「社長が居ないと始まんないじゃん!」
「亜美君…真美君…お世辞でも嬉しいよ」
「うあうあー!?お世辞なんかじゃないYO!」
「そうだYO!社長が居なくてどうすんのさ?」
「亜美たち、黒ちゃんとかより社長さんがいいもん!」
「他のどの社長さんより、社長さんがいいもん!」
どこか怒っているようにも見える二人の言葉は止まらない。
137 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:09:31.70 ID:V4s4JV6AO
「社長、真美たちがお猿の着ぐるみ着て写真撮っても怒んなかったじゃん!」
「いや、もちろん怒られないことばっかりがいいってわけじゃないけど…」
「ほら、そこは兄ちゃんとりっちゃんがパパとママ的にダメなことはダメって言ってくれるし…」
「そ、そうそう!社長さんとピヨちゃんはおじいちゃんとおば…」
「亜美!それ以上は言っちゃダメ!」
「あうあうあー!?」
「ふふふ…」
二人と話していると、どうしても楽しくなってしまう。彼女たちは天性のエンターテイナーだ。
138 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:10:09.57 ID:V4s4JV6AO
「ありがとう、亜美君、真美君。とても元気になれたよ」
「へ?」
「う、うん…でも…」
「お礼を言うのは…亜美たちだね…」
「ん?」
「社長さん!いつもありがとう!」
「真美たち!社長さんも、765プロのみーんなも…」
「「大好きだよ!」」
「う、うむ…私も、大好きだ!」
年甲斐もなく、恥ずかしい台詞を口にしてしまったような気もしたが、心の奥はポカポカと暖かくなっていった。
139 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:10:44.31 ID:V4s4JV6AO
「亜美の方が好きー!」
「なんの!真美の方がもーっと好きだもんねー!」
「はぁ!?亜美の方がもっともっともーっと好きー!」
「だから、真美の方が…」
「ちょっ!?亜美君、真美君、喧嘩はやめた方が…」
最後までしんみりとはいかないのが彼女たちらしい。
140 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:11:28.82 ID:V4s4JV6AO
13
「ふぅ、なんだか慌ただしい一日だったねぇ…」
思えばこんなに慌ただしい日々は久しぶりだ。それこそプロデューサーをしていた頃以来かもしれない。
141 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:12:06.95 ID:V4s4JV6AO
「さて、もうそろそろ仕事をしていたメンバーは戻ってくるころか…よし、差し入れの一つでも買ってこようかな…」
そう決意した私は夕方頃に近くのスーパーへと向かった。明日仕事の子たちも食べられるような…それこそみんながいつも食べているプリンでも買ってこよう。そう思っていたら…
142 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:13:24.83 ID:V4s4JV6AO
「あれ?社長?」
「おや?やよい君?」
夕飯の買い物に来ていたやよい君と出会った。
143 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:14:01.41 ID:V4s4JV6AO
「驚いたなぁ、ここは君の家の近所のスーパーなのかい?」
「いえ、でもこのスーパーの方が近くのスーパーより安いんですー!」
「なるほど、やよい君はやりくり上手だね」
仕事と学業を両立させ、その上家事までこなしているとは頭の下がる思いだ。私など、久しぶりにアイドルの皆と会話をしただけで目を回しているのだから。
144 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:16:57.04 ID:V4s4JV6AO
「今日はもやし祭りなんです!社長もどうですか?」
「ははは、優しいねやよい君。しかし、私はまだ仕事が残っていてね…またの機会にお願いするよ」
「そうですか…」
自分の食べる分が減ってしまうことも気にせずに、私を誘ってくれる優しさが彼女の魅力だと思う。けれど…
145 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:17:35.92 ID:V4s4JV6AO
「やよい君、一つ、聞いてもいいかね?」
「え?はい、なんでしょう?」
「やよい君、君は…他のプロダクションならばよかったと…思ったことはないかい?」
「え?他のプロダクション…ですか?」
146 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:18:46.76 ID:V4s4JV6AO
「ああ、そうだ。もしも、うちよりも資金力のある事務所ならば君にもっと給料を渡せたかもしれない…そうでなくてもコネクションがあれば一つの仕事の単価を上げることができるかもしれない…」
「しきんりょく…?こねくしょん…?」
「ま、まぁ、うち以外なら今と同じ仕事で、今以上のお金が手に入るかも知れないという話だよ」
「うーん…」
少し難しい言葉を使ってしまったけれど、これは彼女にとっては切実な問題だ。何せ
彼女は家計の足しにするためにアイドル活動をしているのだから。
147 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:19:29.32 ID:V4s4JV6AO
「うーん…でもやっぱり私は765プロがいいかなぁーって」
「む?そうなのかい?」
「はい!大切なのはお金だけじゃありませんから!」
「そうか、お金だけじゃない…か」
彼女が言うと言葉に重みが出る。困窮した状況にあってもその言葉が出てくるのが彼女の精神の高潔さを表している。
148 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:20:26.80 ID:V4s4JV6AO
「はい!私、社長が私がアイドルを続けることができるようにいっぱいいっぱい助けてくれてるの知ってますから!」
「私がかい?」
プロデューサーの彼でもなく、律子君でもなく、私がしていることなど微々たることのはずだが…
149 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:22:14.78 ID:V4s4JV6AO
「社長がお仕事の連絡が取れるように、社用の携帯電話を貸してくれたこと…私のCDを家族が聴けるようにデッキを買ってくれたこともありました」
「携帯電話は当然だし、CDデッキは私の家にあったお古だけれどね」
「それでも!社長のおかげで弟や妹に私の曲を聴かせてあげられたんです!」
だから私は感謝してるんです。という彼女の目は力強かった。
150 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:22:47.15 ID:V4s4JV6AO
「…ありがとう」
自然と私の口からそんな言葉が溢れてきた。
「お礼を言うのは私の方です!社長!いつもありがとうございます!」
自分でもどうしてお礼を言ったのか、上手く説明ができない。思えば、今までの子たちも同じような気持ちだったのだろうか。
151 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:23:24.37 ID:V4s4JV6AO
「ん?」
「私、家こっちなんで…」
「お、そうだね。それじゃあまた明日…」
「サヨナラの前に…いつものアレ…やりましょう!」
「…うむ」
私は実はあまりやったことは無かったのだけれど、いつも彼女と彼がしているのを思い出しながら…
152 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:23:58.26 ID:V4s4JV6AO
「「ハイ、ターッチ!」」
なるほど、みんながこぞってやりたがる理由がわかったかもしれない。
153 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:24:30.38 ID:V4s4JV6AO
00
「…おかえりなさい。どうでした?社長」
「うむ、非常に有意義な時間だったよ」
時計の針は17時を指していた。既に定時を過ぎている。一応音無君の勤務時間を考えても(残業が常になっているとはいえ)この時間までに終われて良かった。
154 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:25:07.88 ID:V4s4JV6AO
「もう、そうじゃなくて…」
「うむ、わかっているよ…音無君」
「はい?」
「…ありがとう」
「…はい」
ふふふ、と微笑む彼女がいつかの彼女と重なって見えた。
終わり
155 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:25:41.52 ID:V4s4JV6AO
14
「おっと、そう言えば君には聞けていなかったね?」
「君!そう君だよ!まぁ、こっちへ来なさい」
「君は…765プロで良かったのかな?」
本当に終わり
156 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/22(火) 22:33:30.69 ID:B41m9eaD0
乙!
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/09/23(水) 01:26:43.96 ID:vl8CKiBH0
なんか懐かしい感じがした
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