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【安価・コンマ】ファンタジーな異世界に異物が紛れ込むお話
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349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/28(月) 06:19:19.83 ID:2IXtj+dB0
乙乙
350 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 21:40:50.95 ID:128U4Cd+o
>>348
どちらが正規ルートだったとかいうのはあまり意識してはいないのですが、銃を巡って他勢力といざこざがあったりする予定だったので、交渉に乗った場合は所謂その路線に乗る為の引き延ばし手段みたいなもんでした。
他勢力絡んでくるイベント結構用意してたのに悉く回避したコンマが悪い!
というわけで再開です。
351 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 21:49:49.97 ID:128U4Cd+o
エルグラッド
身体能力:74
魔法適性:97
スキル
【拳闘術】
戦闘時の−補正を2まで軽減。
奇襲されたときの−補正を2軽減。
戦闘勝利時に、捕縛に移行できるようになります。
【魔法:天才型(竜の心臓)】
魔法の使用制限を無視する。
あらゆる魔法を使った行動に対してコンマ+1の補正を得る。
【固有魔法:破壊】
奇襲時+5の補正を得る。
戦闘時常に+3の補正。
戦闘時にゾロ目を出すと特殊判定に移行し、成功すると戦闘に勝利する。
謎の男
身体能力:70
特異適性:70
スキル
【銃使い】
初回戦闘判定+5。それ以降+2。
5ターン経過で一度だけで自分の判定が4に固定。
【研ぎ澄まされた殺意】
必ず奇襲に成功する。
相手が負傷しているとき、判定差が5以上で判定に勝利すると相手を殺害。
不利な状況の時、二ターンの間+3
352 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 21:53:43.24 ID:128U4Cd+o
エルクラッド
体力:23
謎の男
体力:15
戦闘判定
エルクラッド:直下コンマ
魔法 +1
破壊 +3
負傷 −2(拳闘術により無効)
謎の男:↓2コンマ
銃 +5
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 21:54:00.76 ID:axOiM4kD0
あ
354 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 21:54:18.53 ID:UDCRuqlDO
はい
355 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 21:56:52.21 ID:128U4Cd+o
コンマ判定:(6+3+1)−(3+5)=2
エルクラッド判定勝利
謎の男
体力:15→13
1ターン経過
356 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 21:59:39.64 ID:scrDenti0
しかし拳闘術の補正が真面目に有難いな、流石戦闘向きスキル
357 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 22:04:38.34 ID:128U4Cd+o
敵の攻撃は遠距離からの超高速の射撃。
弓を引くような大きな力もいらなければ、大きな道具や予備動作も必要ない。
正に生物を殺すためだけに最適化されたその一撃。
それを初めて目にした相手であれば、その必殺の攻撃を避けることはまず不可能。
だが、一度見てしまえば問題ない。
男がそれを越しから抜き取ると同時、此方は一歩を大きく踏み込む。
男は一瞬目を見開くが、それでも標準はピタリとオレの眉間にあっている。
相手はそこから攻撃に移るのに予備動作は殆どない。
・・・・・・
しかし、全くの無動作というわけではない。
引き金を引き絞るよりも早く、男の手をその拳ではね上げる。
直鬼爆音が鳴り響き、あらぬ方向に弾けた鉄の塊が、何かに当たって砕ける音が続いてなる。
謎の男「どんな胆力だよアンタっ…!」
男は再び距離をとろうとするが――――
エルクラッド:直下コンマ
魔法 +1
破壊 +3
負傷 −2(拳闘術により無効)
謎の男:↓2コンマ
銃 +5
358 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 22:05:27.36 ID:128U4Cd+o
補正ミス!
エルクラッド:直下コンマ
魔法 +1
破壊 +3
負傷 −3(拳闘術により軽減)
謎の男:↓2コンマ
銃 +2
359 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 22:10:45.88 ID:DnhzBpH9O
あい
360 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 22:11:17.68 ID:scrDenti0
あ
361 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 22:11:29.33 ID:UDCRuqlDO
はい
362 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 22:12:20.76 ID:128U4Cd+o
エルクラッドコンマ判定:88 ゾロ目
特殊判定に移行
363 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 22:27:34.35 ID:128U4Cd+o
エルグラッド「悪いがもう小細工はさせん」
指鳴りと共に男の手首が爆ぜる。
その表現は比喩でも何でもない。
常人の眼には見えない、魔力の波紋。その破壊の魔法は音として空気を伝わり、波紋となってモノに沁み込み、エルクラッドの意のままにその魔力を爆発させる。
エルクラッドの破壊の魔力の前には、ありとあらゆる障害が無い物と同じ。
例え距離をとろうと、遮蔽に隠れようと、その目に捕らえられた時点で逃げる術は存在しない。
謎の男「ッ!?」
男は苦悶の表情を浮かべ、宙を舞い地面を転がる自らの腕だったものと銃を目で追う。
謎の男「オイオイ、アンタの方がよっぽどインチキじゃねえかっ!?」
この状況においても尚タフな台詞を吐く男に掴みかかり、即座に組み伏せる。
エルグラッド「小細工はさせんといっただろ」
男はうつぶせで組み伏せられ、その上にエルクラッドが圧し掛かる。
根本的な体格差、そしてそれ以上に絶対的な人間と竜の力の差。
まだ手首の付いている方の腕を背中で捻り上げ、エルクラッドはその男の背中に手を置く。
特殊判定
5以上で勝利
魔法 +1
直下コンマ
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 22:28:02.39 ID:axOiM4kD0
あ
365 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 22:30:16.83 ID:128U4Cd+o
コンマ判定:9+1 成功
戦闘勝利
366 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 22:41:32.37 ID:128U4Cd+o
それは、あまりにも呆気ない幕切れだった。
エルクラッド「抵抗はするな。動けば動くだけ出血が酷くなるだけだ」
エルクラッド「オレはこのまま魔法でお前の心臓を破壊することもできる。これはハッタリじゃない」
エルクラッド「僅かでも生きる意志があるなら、大人しくしていろ」
謎の男「ま、参ったよ。降参だ。今のを見てその脅しを今更ハッタリだとは思わねーよ」
抵抗をしないという意思表示か、男の全身から力が抜ける。
エルクラッド「少し前から、その武器を使って人を殺して回ってたのはお前か?」
謎の男「殺して回ってはねーよ。はぁ……結果的に殺しただけだ」
エルクラッド「…そもそもお前は何者だ?何処から来た?その武器は?」
謎の男「そう一遍に聞きなさるな……ああクソ、頭がボーっとしてきた……」
男の軽薄な声色から、どんどん気力が抜けていく。
恐らく出血が原因だろう。このまま高速を続けていれば間違いなく男は死ぬ。
生かすか殺すか、その指示は与えられていなかった。
オレはどうするべきだろうか?
1、止血をして屋敷に連れ帰る。
2、このまま男を殺し、死体を持ち帰る
安価↓から先に二票獲得した選択肢を採用
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 22:43:25.56 ID:scrDenti0
1
殺してしまっては証拠(?)にならんし
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 22:46:17.40 ID:UDCRuqlDO
1
369 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 23:02:01.26 ID:128U4Cd+o
選択:1
多少迷いながらも、オレは血を流す男の手首を紐で縛り上げ、簡易的な止血をする。
死んでしまってはコイツが何者だったのか、どういう目的だったのか分からないままだ。
生きたまま話が出来る状態でエレノア様の前に持ち帰るのが得策だろう。
血を失いぐったりとした男の体を担ぎ上げる。
……早く帰ってジョシュアに治癒魔法をかけてもらうべきだろう。
地面を転がる武器を握ったままの手首を拾い上げ、オレは屋敷に戻ることにした。
顔を上げると、強い光が目に入り思わず顔を顰めてしまう。
遠くの方で朝日が昇っている。
どうやら俺は丸一日この男を探し回っていたらしい。
すぐに戻ると言った手前、随分と遅くなってしまった。
お嬢様を心配させてしまっているかもしれない。
もしオレの帰りを待っているのだとすれば、オレの負傷と死にかけの男を見たら大層驚かれることだろうな。
お嬢様の姿を想像し、フッと自然に笑みがこぼれる。
早く屋敷に帰ろう。
疲れと負傷によって気怠い体を奮い立たせ、男を背負い直し、オレは足早に屋敷への道を駆けた。
※エンディングに移行します。
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:08:43.93 ID:DnhzBpH9O
勝ったかど終わっちゃうか
もう少し交流したかったから少し残念
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:11:21.82 ID:scrDenti0
なに、後日談があるさ
…あとジョシュアのプロフになんとなく物騒なワードがあるし完全に丸く収まってるわけでもなさそう
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:14:45.82 ID:axOiM4kD0
スピンオフでアイリスお嬢様の落ちこぼれ脱却奮闘記とか、エレノアお嬢様の領内問題解決奮闘記とか、ジョシュアや名前が出てこなかった選択肢があったメイド長の使用人奮闘記とか書いてくれませんか?(小声)
373 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 23:15:21.18 ID:128U4Cd+o
あの男を屋敷に連れ帰ってから、三日が経つ。
血を失いすぎて気を失っていた謎の男は、二日前に目を覚まし、俺とジョシュアが立会いエレノア様から詰問を受けていた。
男の名前は『ジョセフ』。姓は無く、宿無しの風来坊であったらしい。
曰くどうやら、あの男は『漂流者』と呼ばれる存在だった。
此処とは時や空間を異とする世界。
魔法すら存在せず、独自に進化を遂げた文明を持つ世界の人間だったのだ。
あの男の語る価値観や生死感というのはどうにも俺たちの持つそれと噛み合わず、エレノア様も話を纏めるのに苦労していた。
最初の被害者であった『ダニエル・ド・レッドグレイヴ』の越境術。この世界とは異なる世界を繋ぐ門を開く魔法によって、強制的にこの世界に引きずり込まれてしまったらしい。
あの男は確かにこの領地の民を無残に殺した。
とはいえ、この世界の魔法使いの好奇心によって人生を狂わされた被害者でもある。というのがエレノア様の結論だった。
一先ず処罰は追って決めるとされ、現在は屋敷の地下牢に軟禁されている。
まだ懸念することは多いが、一先ずは一連の事件は終息したと言ってもいいらしい。
374 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 23:26:01.57 ID:128U4Cd+o
その後のオレに待っていることと言えば、日常に戻ることだけだ。
「タイ良し。ハンカチ良し。手袋良し」
鏡の傍にピン止めされている古いメモ帳を見ながら、声に出してひとつづつチェックを入れていく。
そろそろいい加減このメモ無しでも身支度くらい、完璧にできるようになるべきだろうか?
まあ、身支度が出来ないよりはマシだろう。
廊下に出て、同僚たちと挨拶を交わす。
使用人の部屋とは、大きな階段を挟んで反対側の棟。
その一室の前で、一匹の猫が扉をガリガリとかいていた。
ここ数日お嬢様に構ってもらって飯でも恵んでもらっていたからか、随分と味を占めたようだ。
図々しい不届きものの太い首を掴み、端にどける。
375 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 23:37:57.56 ID:128U4Cd+o
コンコン
と、扉をノックし声をかける。
「おはようございます、お嬢様」
そうすると、扉越しからパタパタと軽い足音が聞こえ、扉が内から開かれる。
「お、おはよう。エルクラッド」
少し息を乱し、寝間着姿のままのお嬢様に出迎えられる。
取り繕うような笑顔を見せているが、櫛も通っていないぼさぼさの髪の毛から先ほど起きたばかりなのは一目瞭然だ。
「また随分と夜更かししていたようですね」
「えっ、えっと……ちょ、ちょっとだけだよ?」
「ここ数日厨房のハムの減りが早いと、コックのトールが嘆いておりましたよ」
「な、なんのことかなー?」
「引きこもって食べてばかりいると、あのような姿になりますよ」
そう言ってオレは階段の手すりにでっぷりと体をもたれ掛からせ、今にも落ちてしまいそうなネズミ捕りの姿を指さす。
お嬢様は顔を青くし、ペタペタとお腹をさすっている。
あんな騒動がつい数日前に会ったばかりだというのに、お嬢様はそんな事を引きずらない能天気さだ。
確かに、エレノア様から見れば心配なさるのも無理が無いかもしれない。
……だけど、オレにとってお嬢様のその姿こそが何よりの救いだ。
この人に仕えている間だけは、オレは『人間』で居られるのだから。
「さあ、早く着替えて来てください。朝食を用意してお待ちしています」
恭しく礼をし、オレは下階へと降りていく。
それは、何の代わり映えのしない、当たり前の日常だった。
『日常へと帰る』godEND
376 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 23:43:19.57 ID:128U4Cd+o
最後で痛恨の誤字……正しくはgoodENDです。
というわけで一先ずエンディングを迎えられましたね。
スレを立てて安価スレを回すといった試みが本当に久しぶりだったので、リハビリも兼ねて規模の小さい話をしようと思い至って今回の話を書きました。
そんな軽いつもりで始めたのに、想像以上に反応を頂いて本当に嬉しい限りです!
>>214
の判定でどの勢力が動くかの判定だったのですが、ここでどこも動かないという結果が出仕舞ったり、そのあとの捜索妨害イベントも悉く外してしまったりで、話をコンパクトにしたいという目論見は当たったのですが、小さく纏まりすぎてしまいましたね。
まあ、こればっかりはコンマだったので致し方ないです。
もっと強制イベント作ればよかったかなと反省しています。
377 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/09/29(火) 23:49:33.78 ID:128U4Cd+o
取り敢えず次回の更新では、途中だったエルクラッドの過去回想を最後まで投下する予定です。
その後の予定としましては
1、『恐怖!夜の街を彷徨う仮面男!?』アイリスお嬢様のドキドキ深夜探訪記
2、後日談『日常の続き』ストレーン家を取り巻く人々
3、第二部『人は過ぎたる力を求める』
のどれか評判の良さそうなものを書こうかなと思ってます。
一先ず、今日の更新はここまでです。
ではでは、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
378 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:53:26.86 ID:scrDenti0
乙
全部という選択肢はないのですか?(ほしがり)
379 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:54:50.43 ID:DnhzBpH9O
たしかに全部きになるってやつだ
380 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:56:25.61 ID:a6FKnHk80
おつ
謎解明が見たいから、選ぶなら3かな
381 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:57:48.09 ID:UDCRuqlDO
乙です
全部のを見たいけど1つ選ぶなら1を
382 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/29(火) 23:59:14.88 ID:axOiM4kD0
乙乙
普通に1→2→3の順番で全部見たい
383 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/09/30(水) 23:52:31.73 ID:P2tlWGyrO
まだ読んでる途中だけど早く追いついて安価に参加したいっすわ
384 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/01(木) 01:17:01.00 ID:J+nKFy9ZO
追いついたら終わってた……乙乙
可能なら三つ全部見たいけど、どれか一つってなら安価にも参加したいし3の第二部かなぁ
385 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/01(木) 07:52:38.09 ID:AnwtYXJQ0
>>382
ですけど1つ選ぶならアイリスお嬢様が好きだなキャラですので、1をお願いします
386 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/06(火) 17:19:37.10 ID:N3VMYncj0
もしや1はリアル多忙?
だとしたら多くは望めなさそうだし2かしらね
387 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/06(火) 17:34:25.14 ID:N56pVqYI0
優先順位としては1>3>2の順で
388 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/11(日) 23:38:07.52 ID:WPri8JtG0
完結してるっちゃしてるけど続きがないと寂しいな
生きてたら生存報告plz
389 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/10/14(水) 18:29:42.80 ID:DA03flOdo
このままダラダラお待たせするのも申し訳ないんで、書いた分だけ投下します。
【人と獣を隔てるものU】
「人と獣の違いは何だと思う?」
魔力を抑え込む訓練を終えた休憩中、爺さんはそんな事を聞いてきた。
この爺さんに捕まえられて3年の月日が経つ。
言葉はいくつか覚えられた。だけど、未だにこの森の外に出たことは無い。
爺さんから様々なことを教え込まれてきた。その質問もそれらの内の一つなのだろう。
「わからない」
とオレは答えた。
この森に棲む獣も、この森に足を踏み入れる人間も、然したる差がないと思っているからだ。
爺さんのいう正義だとか善行だとかいろいろ説かれたが、正直に言ってよく分からない。
この爺さんに叩きのめされ飼われている今も、この森で王として君臨していたあの頃でも、それらは同じ物だと思っていた。
どちらも生きるために殺し、喰らう為に殺す。理不尽な危険に晒され、死ぬるのは弱者。
縄張りを守る獣と生存権を広げようとする人間。言い分は違うが、結果も過程も違いはない。
だから、人と獣に違いなんてない。人は人の形をした獣だ。
オレはそう爺さんに言った。
爺さんは驚いたような顔を見せ、思案するように髭を撫でながら言う。
「何も考えていないように見えて、意外と面白いことを言えるのだな」
意外だといった表情で流れるように愚弄された。
390 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/10/14(水) 18:30:39.03 ID:DA03flOdo
「だがまあ言い得て妙だな。究極的なところ、人も獣も生きるために他を殺しているのは変わらない。そういう意味では違いはないのかもな」
「少し質問を変えるか。お前は自分を人だと思うか?獣だと思うか?」
オレは獣だと答えた。
「では、俺はどうだ?人か?獣か?」
オレは獣だと答えた。
即座に拳が脳天に突き刺さる。
「俺は人か?獣か?」
渋々と人だと答える。
相変わらず理不尽な爺だ。
「そうだ。お前に人非ざる証である竜の角が生えているように、俺にもこうして純粋な人では無い証の四つ耳がある」
爺さんはいつもは髪の毛で隠している顔の側面を露出し人の耳を見せながら、頭の上に生えている狼のような耳を動かして見せる。
「お前が今から一人で街に行けば、化け物が森からやってきたと恐れられ、町の警備をしている騎士やらが追い払いにやって来るだろう」
「だが俺もお前と同じように純粋な人では無いが、この耳を隠さずとも平然と街を歩ける。町の人々も俺を人として扱うだろう」
「何故だか分かるか?」
俺は答えに窮した。
分からないと言えばそれまでだが、理由が分からなかったからだ。
そして何より、理由は分からないのにそうなるだろうという納得があったからだ。
「それが人と獣の違いだ」
「立って歩く姿。ただそれを見ただけで人は人と獣の違いを容易に見分けられる」
「例え俺の顔が丸々犬と挿げ変えられても、立ち振る舞いだけで人だと認められるだろう」
「姿形が問題ではない。もっと根本的な部分で、人は人と獣を区別しているのだよ」
理屈は分からないが、言っていることは分かる。
今までこの森に足を踏み入れてきた人間が、オレを人として扱ったことは一度もなかった。
化け物、怪物、獣。一目見ただけで俺はそう言う生き物なのだと判断される。
だけどこの爺さんは、明らかに純粋な人間ではないにもかかわらず、人だとオレは認識してしまった。
姿形では推し量れない何かが、人という生き物には共通して備わっている。そういうことを言いたいのだろう。
391 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/10/14(水) 18:31:09.99 ID:DA03flOdo
だが、妙に納得しきれない部分もある。
「何だ不満そうな顔をして。お前にはまだ難しかったか?」
俺の顔から考えを読み取りながらも、見当違いな言葉で愚弄される。
オレが今言った爺さんの理屈に納得しきれないのは、それを言っているのがこの爺さんだという事だ。
正義は何だと人とは何ぞやコイツは口にするが、実際にやったことと言えば、この森の王たるオレを理不尽極まる暴力を持って蹂躙し、屈服させて従えている。
オレがこの森に棲んでいた獣どもを従えたやり方と違いはない。
オレがやってきた事を獣の所業だと言うならば、この爺さんも獣と大差ないのではないか?
獣にだって、自分と同じ種族の個体を見分ける力はある。そう思えば人は一目で人を見分けられるというのも、それほど不思議な話ではない。
何より解せないのが、俺すらも平然と捻り上げる力を持っていながらも、コイツは膝をつき従う側の存在なのだという。
『オジョーサマ』と『ダンナサマ』というコイツより上の存在が、爺さんを従えているのだ。
それを考えれば、尚更結論は変わらないように思う。
強い者だけが選択の権利があり、弱き者は理不尽な力に踏みつぶされないように身を屈めて生きるだけ。
それは人も獣も、オレも、この爺さんですら変わらないのだろうと思う。
あんなにも強い力をもってしても、従う側の存在なのだから。
392 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/10/14(水) 18:31:57.96 ID:DA03flOdo
そんなオレの思案をよそに、爺さんは髭を撫でながらゆったりとした口調で語りかける。
「なあに、焦ることは無い。直に分かる」
「お前もきっと驚くぞ。人とは、かくも脆く儚く……美しいモノなのかとな」
どこか遠くの方を見つめていた爺さんが、何かを見つけてそちらの方へと歩いていく。
その方向からは、ある一つの小さな足音が聞こえていた。
「じいや〜!」
それは小さな子供だった。
その森にはあまりにも不釣り合いな、無防備で弱く小さな命。
小鳥が鳴くような可愛らしい声でその存在を大いに主張し、到底獣の追跡から逃れられるとは思えない遅い駆け足でこちらに向かってくる。
・・・
「このような場所へようこそいらっしゃいました、お嬢様」
オレに語り掛ける時よりも随分と柔らかく甘い声で、爺さんはその子供を出迎え抱きしめあっている。
オレは一呼吸おいて気付く。その子供が『オジョーサマ』という名前で呼ばれていたことに。
その子供こそが、オレを更なる強大な力を持って屈服させたその爺さんの主人なのだと。
「あなたが、じいやの言ってた子?」
無防備にも、その少女は何の躊躇いもなくオレの顔を覗き込んできた。
爺さんと違い身を震わすような魔力も感じない。
どこからどう見てみ隙だらけで、指一本動かすだけで弾けて壊れてしまいそうな柔らかい身体つき。
その立ち姿からは、ほんの一欠けらの邪気も悪意も、敵意や警戒心すらも感じられない。
爺さんとは違う意味で、その子供はオレを一切恐れることなく、満面の笑みでオレに手を差し伸べてきた。
「わたしね、アイリスって言うの。じいやのおともだちなら、わたしともおともだちだね!」
それは、今まで見たことの無い存在だった。
自分の知るどんな生き物よりも弱い存在でありながらも、きらきらとした生命力に満ち溢れていた。
謂わば、オレにとってそれが初めて『人』に出会った瞬間だったとも言えるだろう。
明確に獣とは隔絶した違いを持つ、『人』という生き物を認識した瞬間だった。
393 :
◆7m3grp2dM2
[saga]:2020/10/14(水) 18:34:56.52 ID:DA03flOdo
全然纏まった時間を作れなくて、暫く安定した更新の目途は立ちそうにないので、このスレの更新は一先ずここで終わりとさせていただきます。
また、時間が出来た時にこのスレの世界観を引き継いだ次回作をスレ立てしようかなと思ってます。
もし見かけたときには、また読んでくださると嬉しいです。
ではでは、お付き合いいただきありがとうございました。
394 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/14(水) 18:51:29.63 ID:7uhh7X8L0
乙乙 更新ずっと待ってました
ここで完結なのは残念ですが、面白かったです
もし時間に余裕が出てきたら次回作だけでなく
>>377
の方もいつか見たいとも思いました
お疲れさまでした
395 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/14(水) 19:42:52.02 ID:5bKq/p8DO
乙でした
次の作品も(できればこの続編も)期待してます
396 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/14(水) 20:03:39.20 ID:B9CBFSze0
忙しい中、催促をしてしまって申し訳ない
エルクラッドの人格形成の成り立ちの描写が安価で反映したものとは思えないほど見事でした!
お疲れ様でした!
397 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/15(木) 12:12:57.24 ID:6zBFLtLI0
乙
リアルで忙しい中で更新ありがとうございました
398 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/10/17(土) 20:43:32.78 ID:kmzZC4rYO
乙ん乙ん
またいつかどこかで見える日を待っておりますぞ
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