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勇者「魔王は一体どこにいる?」続編

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671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:25:47.07 ID:iNLvSB+c0
魔女「逃げ出すチャンスかも知れんのぅ」

アサシン「魔女…硫黄を分けてくれ」

魔女「ほれ…」ポイ

アサシン「よし…これで爆弾の出来上がりだ…窓に設置する」ゴソゴソ

魔女「もうやるんか?」

アサシン「この爆弾では窓の穴を少し広げる程度にしかならん…逃げるのは魔女一人だ」

魔女「主はどうするのじゃ?」

アサシン「魔女は魔結界から出た後に姿を変えて街に紛れろ…出来ればエルフゾンビと合流するのだ」

魔女「分かったが…しかし」

アサシン「魔女一人でラットマンリーダーの相手は無理だ…私の救出は機を伺ってからで良い」

魔女「ふむ…この体に巻いた糸で下まで降りて行けば良いのじゃな?」

アサシン「そうだ…あとは上手くやってくれ」

魔女「任せておくのじゃ…魔法さえ使えればわらわは何でも出来る」

アサシン「よし…こっちのテーブルの裏に隠れろ」チリチリ


3…2…1  ドーン パラパラ


アサシン「魔女!穴の中に入れ」グイ

魔女「むむむむ狭いのぅ…」モゾモゾ

アサシン「押すぞ!!」グイ グイ

魔女「痛たたたた…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」グルグル ドテ

アサシン「よし…上手く行ったな?クックック」

アサシン「…」---さて片づけるか---


---金属糸は回収---

---ベッドに膨らみを作って---

---私はテーブルで食事でもしておこう---

---頼むぞ魔女---
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:26:20.89 ID:iNLvSB+c0
『気球発着場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


またお前か!今度の荷は何だ?…見せろ

はい…くちばしマスクと薬…それから酒

この箱は何だ?

趣向品と玩具…夜のおもちゃですわ…見ますかね?

ふむ…乗って居るのはお前だけか?



案内人「他に居る様に見えるかい?」

検問「ふむ…儲かっているのか?」ジロジロ

案内人「まぁそこそこには…」

検問「病気が流行っているから気を付けろ!入国許可!」

案内人「へいへい…」ヨッコラ


------------------


案内人「クッソ重いな…」ヨタヨタ ドサ

案内人「エルフは体の割に重いのだな…出ても良いぞ」パカ

エルフゾンビ「ふぅ…」パンパン

案内人「久しぶりの故郷はどうだい?」

エルフゾンビ「このような入国はしたことが無いのでな…緊張するものだ」

案内人「さて…ひとまず宿に落ち着けよう」

エルフゾンビ「私は宿になど泊まった事が無い…案内してくれ」

案内人「その仮面を外すなよ?」

エルフゾンビ「分かっている…お前の方こそしっかりくちばしマスクを付けて置け」

案内人「この恰好は逆に目立つのがなぁ…」
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:26:50.08 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「女王様が言うにはこの宿の前で魔女が待っているとの事だったが…」

魔女「目の前に居るでは無いか」

案内人「あぁ嬢ちゃんちっと邪魔だ…あっち行っててくれ」

魔女「何を言うておる」ボカ

案内人「あだっ!!何すんだこのガキ…ん?…その杖」

魔女「わらわは金を持っておらなんだ故ずっと野宿しとったのじゃ…早う飯を食わせろ」

案内人「なんで又こんなに小さくなってるんだ?」

魔女「つべこべ言うでない…早うせい」ボカ

案内人「わかったわかった…どつくのはヤメロ」


店主「そのお子さんのお連れ様ですか?」

案内人「…まぁそうだな」

店主「聞き分けの無い子でして何度言ってもそこを離れようとしなかったのです」

魔女「言い訳は聞きとうない…不親切な店主じゃ」ブツブツ

店主「ハハ3名様でよろしかったですか?」

案内人「あぁ…食事をすぐに持って来てほしい」

店主「かしこまりました…二階の右手の部屋にてお待ちください」ソソクサ

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:27:25.92 ID:iNLvSB+c0
『部屋』


エルフゾンビ「女王から話は聞いて居る…アサシンは貴族特区で捕らえられて居るのだな?」

魔女「そうじゃ…食事はしっかり出る故心配は無いのじゃがラットマンリーダーが守って居ってな」

エルフゾンビ「やはり時の王卿が先導していたか」

魔女「主は会うた事があるのじゃな?」

エルフゾンビ「時の王は表に顔を出すことは無いのだ…私ですら話しか聞いた事が無い」

魔女「奴は人間を絶滅させる気で居る様じゃ」

エルフゾンビ「前王の父も…恐らく兄も人間を絶滅するなど考えて居ない」

魔女「欺かれておるのじゃな」

エルフゾンビ「正義感の強い兄が何故時の王に従う行動をしているのか…」

魔女「逆に時の王を欺こうとしている可能性は無いのか?」

エルフゾンビ「指輪…父が祈りの指輪で何をしたかったのか…もしや指輪で時の王を葬ろうとしていたのか?」

魔女「兄はどうじゃ?」

エルフゾンビ「兄は騎士道を貫く…弱き者を滅することなど決してしない」

魔女「何かおかしいのぅ…」

エルフゾンビ「正統派でしか動かない…つまりやるなら真っ向勝負」


コーーーーーーン コーーーーーーン


エルフゾンビ「ん?この音は?」

魔女「アサシンがミスリル銀を鍛冶で打つ音じゃと言うておった…憎悪を払うらしいが?」

エルフゾンビ「そうか…兄は正当な方法で邪悪と戦おうとしているのだ」

魔女「ふむ…どうやら皆の歯車が少しづつ違って回って居るな…噛み合って居らぬ」


グラリ


案内人「うぉっとお!!何だ?」


グラグラグラグラグラグラ


魔女「どこぞで地震が起きとる様じゃな?これは大きな津波が来るやも知れぬ」

案内人「ここは海に近すぎる」

エルフゾンビ「一応建屋の上に避難しておくか…」

魔女「わらわはまだ食事をして居らぬが…」

案内人「建屋の上まで持って行ってやる」グイ

魔女「これ!!引っ張るでない…およよ?」バタバタ

案内人「肩の上に乗ってろ」

魔女「これ!!わらわは下着を履いて居らぬ…降ろさんか!!」

案内人「上に行こう」タッタ

エルフゾンビ「…」タッタ

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:28:02.69 ID:iNLvSB+c0
『屋上』


ザブン ザブン ドバーーーー


エルフゾンビ「…絶句だな…これは」

魔女「皆屋根に上がって避難しとるが…」

案内人「水は引いて行ってる様だが…散らかった物がみんな波に持って行かれる」

エルフゾンビ「これでは動けんな…」

魔女「折角合流出来たのに困ったのぅ」

エルフゾンビ「アサシンを救出するなら混乱している今がチャンスと見るが…」

案内人「津波は何回も来る…今は止めて置いた方が…」

魔女「小さな隕石をあの屋敷に落とす…牢の壁だけ壊せば良かろう」

エルフゾンビ「ほう?」

魔女「詠唱に時間が掛かるのじゃ…ゾンビを使役して詠唱の時間を稼げるか?」

エルフゾンビ「使役出来るゾンビがどのくらい要るかだが?」

魔女「元はカタコンベが有ったのじゃ幾らでもおろう?」

エルフゾンビ「やってみるか…ゾンビ共よ我に付き従え」ブン

魔女「貴族居住区まではわらわの睡眠魔法で行ける筈じゃ…貴族特区から出て来る者をゾンビで足止めするのじゃ」

案内人「この水の中を歩いて行くのか?小さい体では流される」

魔女「わらわは主の肩に乗って詠唱するでわらわを運べ」

案内人「お前等と居ると危ない事ばかりだな…」

魔女「つべこべ言うな…水が張っておる今がチャンスじゃ!行くぞ」

案内人「ええい…乗れ!」グイ
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:28:40.64 ID:iNLvSB+c0
『貴族居住区』


ザブザブ


案内人「はぁはぁ…ここまで来りゃ水は上がって来ねぇ…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「どっちに行けば良いんだ?」

エルフゾンビ「こっちだ!!」タッタッタ

案内人「ひぃひぃ…」

魔女「見えて来たのぅ…この先にはラットマンリーダーが居る…ゾンビで引き付けて欲しいのじゃが?」

エルフゾンビ「まだゾンビが追い付いて居ない…もう少し待て」

魔女「詠唱に10分掛かるのじゃ…その間わらわは会話が出来ぬ」

エルフゾンビ「長いな…ゾンビでは持たん」

魔女「では先に詠唱を始める故…詠唱が終わるまでに屋敷が見える位置に居れば良い…出来るか?」

エルフゾンビ「やるしか無いのだろう?」

魔女「屋敷に近づき過ぎる出ないぞ?隕石は破裂するでな…」

エルフゾンビ「よし!やろう…案内人…私の後ろから離れるな?」スラーン

案内人「お…おう」

魔女「詠唱を始める…」アブラカタブラ メテオスウォーム コイコイコイコイ

エルフゾンビ「ゾンビ共…急いで我の下へ来るのだ」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ ガァァァァ


案内人「…」ゴクリ

エルフゾンビ「20という所か…よし!ラットマンリーダーの注意を引き付けろ」

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

案内人「ゾンビというよりスケルトンだな…」

エルフゾンビ「肉はラットマンに食われた様だな」


ラットマンリーダー「ガオォォォォ」ドスドス


エルフゾンビ「来い!!あの一体だけ倒す」シュタタ ザクリ

案内人「おぉすげぇ…腕を切り落とした」

エルフゾンビ「ゾンビ共!次のラットマンリーダーを倒せ」タッタッタ


-------------------
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:29:18.08 ID:iNLvSB+c0
案内人「他のラットマンリーダーも集まって来た…」

エルフゾンビ「魔女!まだか!?」

案内人「ゾンビが食われてる…」

エルフゾンビ「時間稼ぎになるのならそれで良い」


シュン スト


エルフゾンビ「ちぃぃ見つかった!案内人!私の後ろに隠れろ」

案内人「おう…」

エルフゾンビ「この距離では弓はそうそう当たらん」シュン シュン

案内人「一人だ…あれが時の王か?」

エルフゾンビ「こちらに来る気は無さそうだな…」シュン カキン!

魔女「隕石魔法!」

エルフゾンビ「おぉ!!間に合ったか」

魔女「もうすぐ落ちて来よるで逃げるのじゃ…急いで離れろ」

エルフゾンビ「案内人!!先に戻れ」

案内人「おう!!」タッタッタ


シュゴーーーーーーーーー


エルフゾンビ「来た…あれが隕石か…」

魔女「早う来い!!巻き込まれる」


パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ


エルフゾンビ「うぉ!!」ピョン クルクル シュタ

魔女「隕石で注意がこちらに向いたで早う逃げるぞ…走れ案内屋!!」

エルフゾンビ「…」タッタッタ


---津波にゾンビの襲来---

---そして隕石---

---セントラルも末だ---
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:29:52.68 ID:iNLvSB+c0
『宿屋の屋上』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「ふぅ…ずぶ濡れだ」

魔女「ご苦労じゃった…少し休め」

エルフゾンビ「私も役に立てたか?」

魔女「そうじゃな…主が居ったから成功したのじゃ」

エルフゾンビ「アサシンは無事か?千里眼で見えるのだよな?」

魔女「千里眼!ふむ…どこぞを泳いでおる…じゃが怪我をして居る様じゃ」

エルフゾンビ「フフ不死者が怪我か?」

魔女「隕石のすぐ近くに居ったからのぅ…少し心配じゃな」

エルフゾンビ「私も怪我をしている様だが自分では見えん」

魔女「背中じゃな?むむ!隕石の破裂片に当たったな?」

エルフゾンビ「空中で破裂しながら落ちて来るとは思わなかったのだ…油断した」

魔女「ここで回復魔法をするのは目立ちすぎる…部屋に戻るのじゃ」

案内人「そうだな…部屋が二階で良かった」



『部屋』


魔女「回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「不死者でも傷口は塞がるのだな?」

魔女「気休めかも知れぬが傷口が開いたままよりはマシじゃろう」

エルフゾンビ「すこし喉が渇いた」

魔女「案内人!主の荷物にワインが有ったな?」

案内人「あぁ女王様に持たされた…エルフゾンビの喉の渇きを癒す様だ…ホレ」ポイ

エルフゾンビ「むぐ…」ゴクリ

魔女「血の代わりにワインか…不便な体じゃな?」

エルフゾンビ「これはこれで良い所もあるのだ」グビ

魔女「さて…わらわも少し休むかのぅ…疲れたわい」

案内人「俺は外でアサシンが迷わない様に待っている」

魔女「そうじゃな…わらわは少し寝るで任せたぞ?」
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:30:56.56 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


エルフゾンビ「アサシンはまだ戻って来ないのか?」

魔女「様子を見てみる…千里眼!」

エルフゾンビ「どうだ?」

魔女「どこぞの砂浜じゃな…動く気配が無い」

エルフゾンビ「砂浜だけでは迎えに行けん…何か目標物は見えないか?」

魔女「遠巻きにセントラルの城が見えて居る…位置的に東の方じゃな」

エルフゾンビ「よし迎えに行こう…動けない理由がありそうだ」

魔女「そうじゃな…石化しとるかもしれんな」

エルフゾンビ「エリクサーは持って居る…魔女はそのまま走れそうか?」

魔女「大丈夫じゃ子供の恰好の方が走りやすい」

エルフゾンビ「行こう」タッタッタ
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:31:26.59 ID:iNLvSB+c0
『砂浜』


魔女「居った!!ここじゃ…やはり石化して動けぬ様じゃ」

エルフゾンビ「フフ三度目だな…飲め」グイ

アサシン「うぐぐ…」グビ

魔女「意識はある様じゃな?回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「リリスの血に浸かったな?石化の進行が早そうだ」

アサシン「グッグッグ…」

エルフゾンビ「私が背負って行く…」ヨッコラ

魔女「本真に厄介な石化じゃ…」

エルフゾンビ「エリクサーが少ないから回復は少し間が必要だな」

魔女「とにかく救出できて良かったのぅ」

エルフゾンビ「血が海に流れ出て居ては黒死病が広がってしまうな」

魔女「うむ…どうにか止めんとイカン…リリスは永久に血を流しよる」

エルフゾンビ「時の王が魔結界から出ない理由…もしかすると石化は魔法の一種では?」

魔女「そうじゃ土属性の高位魔法じゃ」

エルフゾンビ「やはりそうか…時の王はやはり魔法を恐れているか」

魔女「わらわも考えた…量子転移を使われたく無いのじゃと思う」

エルフゾンビ「どういう事だ?」

魔女「量子転移はな?過去から物質などを丸ごと転移する事が出来る様じゃ…じゃから200年間一歩も魔結界からは出て居らん」

エルフゾンビ「過去から…」

魔女「祈りの指輪も同じ効果を持つ…過去の記憶を丸ごと転移すると術者は過去に戻る…つまり現在に丸ごと転移するのじゃ」

エルフゾンビ「魔結界の中ではその魔法自体無効…そういう事か?」

魔女「じゃろうな?隕石の様に物理的な魔法でなければ効果が無いじゃろう」

エルフゾンビ「なるほど…」

魔女「時の王が姿を隠しているのも他の者の記憶の中に自分が残るのを避けて居るからじゃと思う」

エルフゾンビ「だから書状でやり取りをしていたのか…」

魔女「セントラル王家はなぜそのような者を膝元に置いて居るのか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊の絶対的な権威だ…人間では太刀打ち出来ない」

魔女「それこそセントラルが横暴に走る原因じゃな」

アサシン「グッグッグ…」
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:32:10.60 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


案内人「津波が断続的に来ている…貧民街の方はもうダメだ」

エルフゾンビ「波が小さくなっては来ているな?」

案内人「アサシン様が戻った事だしフィン・イッシュに帰るか?」

エルフゾンビ「いや…私にやりたい事が出来た」

魔女「んん?何じゃ?」

エルフゾンビ「魔女の貝殻は他には無いのか?」

魔女「貝殻に魔術を掛けるのは簡単じゃ…何に使う気じゃ?」

エルフゾンビ「その貝を兄に届けたい…一方通行で良いから話をしたいのだ」

魔女「ふむ…話を続けるのじゃ」

エルフゾンビ「私達が噛み合って居ないのは話をして居ないからだ…こちらの考えを兄に伝えれば必ず分かってもらえる」

魔女「セントラルを仲間にするというのじゃな?」

エルフゾンビ「声を兄だけに伝えたい…他の側近に聞かれては意味が無い」

魔女「よし…わらわがシン・リーン特使として書状と貝殻をセントラル国王へ届ける様はからう」

エルフゾンビ「出来そうか?」

魔女「従士が居らん様ではちと危険なのじゃが…案内人ではちと役不足じゃ」

エルフゾンビ「私は顔が出せん…アサシンの回復を待ってからだな」

682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:32:40.96 ID:iNLvSB+c0
『数日後』


魔女「案内人はわらわの右…アサシンは左じゃ」

魔女「2人共くちばしマスクでしっかり顔を隠しておくのじゃ…良いな?」


門番「止まれ!セントラル王城に何用で参られた!?」

魔女「わらわは光の国シン・リーン第3王女じゃ…特使として参った」

門番「シン・リーン王女だと!?聞いて居ない…顔を見せろ」

魔女「やれやれ…隠密で来て居るのじゃ…騒がぬ様にな?」ファサ

門番「従士は2人か?う〜む…」

魔女「我らは魔術師じゃという事を忘れるな?狼藉はせぬ様に…死人は出しとう無い」

門番「して…何用か?」

魔女「密書を届けに参った…国王に之を持て」

門番「書簡と…貝殻か?」

魔女「そうじゃ…危険な物では無い故しっかり確認しても構わぬ」

門番「ふむ…よこせ」

魔女「密書の開封は国際法違反になるで注意せい…国王に不利益となるでな?」

門番「大使と面会はして行かんのか?」

魔女「大使に用なぞ無い…隠密で来て居るのじゃ理解せい」

門番「ふむ…失礼した」

魔女「わらわは行くぞ?…くれぐれも狼藉は避けよ…良いな?」クルリ ノソノソ


--------------------


魔女「どうじゃ?後を付けて来よるか?」

アサシン「遠目にな…どうする?」

魔女「やれやれ側道に入るぞよ?主らは方々に去れ」

アサシン「宿屋までの道は分かるな?」

魔女「大丈夫じゃ…側道に入ったら変身するで上手く巻くのじゃ」

アサシン「クックック…魔女も慣れたものだ」

魔女「変性魔法!」グングン

アサシン「案内人はあっちだ!私はこっちに行く」

案内人「宿屋で…」

魔女「やはり服がピチパチになってしまうのぅ…下着を履いて居らんのじゃが…」



あれ!?何処に行った?

一人あっちに行ってる

向こうにも…

王女は何処に行った?

探せ!!
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:33:21.27 ID:iNLvSB+c0
『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ


何の音だ!?

空が叫んでるのか…

何この声…怖い


ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


嫌やぁああああああ

何処から聞こえて来るんだ!?

こ…これは魔王の声じゃないのか!?


ザワザワ ザワザワ
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:33:54.56 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』



魔女「はぁはぁ…アサシン!エルフゾンビ!今の音を聞いたかえ?」

アサシン「空から音が鳴った…気球に行くぞ!!」

エルフゾンビ「案内人は!?」

魔女「外で空を見とる」

エルフゾンビ「連れて行く…先に気球へ行っててくれ」

アサシン「魔女!!こっちだ…手を離すな?」タッタッタ

魔女「これは何か起きる音じゃ…胸騒ぎが止まらぬ」タッタ

案内人「お〜い待ってくれ…どういう事だ?」

アサシン「空が異常だ…気球で周りを見たい」

案内人「宿の代金をまだ払ってない…」

アサシン「それは後で良い…とにかく非常事態だ…私は気球の場所を知らないから案内人が先導してくれ」

案内人「あぁこっちだ!」タッタッタ




『貨物用気球』


ドドドドドドド


アサシン「動物か?地響きがするな…まだ飛べないか?」

案内人「もう少しかかる!」ワッセワッセ

エルフゾンビ「雲の様子が変だ…あのような雲は見たことが無い」

アサシン「南の方から何かが来た様な感じだな?」

案内人「上がるぞ!!」フワフワ

魔女「…そうか!!これはインドラの矢じゃ古文書に音の事が書いてあった」

アサシン「海が引いて行ってる…」

案内人「又津波か!?」

魔女「津波じゃと?…エルフゾンビ!!ゾンビを使って民を貴族居住区に追い立てるのじゃ」

エルフゾンビ「避難か…」

魔女「案内人!セントラルの上を飛べ…わらわが照明魔法で民の逃げる方向に目印を付ける」

案内人「わかった…」グルグル

魔女「エルフゾンビ!!貝殻を使って兄に呼びかけよ…大きな津波が来るとな」

アサシン「お!?セントラルから照明弾が上がった…兵の緊急招集だなアレは」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

アサシン「光の矢印か…良い考えだ」

案内人「この海の引き具合だとあと1時間以内に来るぞ」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:34:30.32 ID:iNLvSB+c0
『1時間後』


アサシン「よし…いいぞ衛兵が民を誘導している!避難が間に合う!!」

案内人「海を見てくれ…段差が出来てる…アレが津波だ」

エルフゾンビ「ゆっくり流されて行くな…」

魔女「あの高さじゃと貴族居住区も浸かるかもしれんのぅ」

アサシン「自然の力の前で私達は何と無力か…ゆっくりと中央広場が水没して行く」

魔女「これは防ぎ様が無さそうじゃ」

アサシン「いつぞや見せた氷結魔法で凍らせられないか?」

魔女「この量は無理じゃが貴族居住区の門を塞ぐ程度なら出来るやもしれぬ」

アサシン「案内人!貴族居住区の上を飛ばせ」

魔女「水が上がって来たら魔法を発動させてみるぞよ」アブラカタブラ アブソリュート ゼロ

案内人「だめだ…中央は全域屋根まで浸かってる」

アサシン「魔女に掛けるしかない」

魔女「広範囲絶対零度魔法!」カキーン 


ガガガ ガリガリ 


アサシン「おぉ!!氷河が門に詰まって塞き止めが出来ている」

魔女「氷結魔法!氷結魔法!氷結魔法!」カキーン

エルフゾンビ「見ろ!!外郭の壁が崩落した…これで水位が下がるかもしれない」

アサシン「凌いだか!?」

エルフゾンビ「水が草原の方まで行ってる…信じられない光景だ」

案内人「海の中に浮かぶセントラル城…」

エルフゾンビ「あそこにどれだけの命が犇めいているのか…」

魔女「しかし…誰がインドラの矢を使ったかじゃな」

アサシン「千里眼で見通せないか?」

魔女「やって居るが盗賊も商人も…誰の目も見えんのじゃ…狭間の中に居るのじゃろうか?」

アサシン「狭間の中は見通せないのか?」

魔女「時間の流れが違うのでな?逆だと見えるのじゃがのぅ」

案内人「フィン・イッシュも心配だが…」

アサシン「あちらは海から少し離れた丘の上だ…セントラル程では無かろう」

魔女「今女王の目を見て居る…川が氾濫しておるな」

アサシン「逆流か!」

魔女「じゃが沿岸部だけじゃな…大した被害では無さそうじゃ」

アサシン「そうか…軽微で良かった」ホッ

魔女「わらわ達は眺めている事しか出来ぬ…唖然とはこの事を言うのじゃな…言葉が出ぬ」
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:35:01.15 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


フワフワ


アサシン「水が渦を巻きながら引いて行っている…リリスの血が見当たらないが…」

魔女「流されて行ったかのぅ?」

アサシン「海に消えた…のか?」

魔女「それはそれでセントラルの危機は去ったかもしれぬが…良くないのぅ?」

アサシン「カタコンベに入れてあったとすると濁流で下水から流れ出た可能性は高いな」

魔女「しばらく様子を見んと分からんな」

アサシン「カタコンベの掃除には丁度良かったと言う言い方も出来るな」

魔女「時の王はどうするかのぅ?顔が見てみたいわ」

案内人「セントラルの方は人が出てき始めたが…俺達はどうする?」

アサシン「このまま降りると気球を接収されそうだな…向こうの気球は流された模様だ」

魔女「しばらく待機じゃな…」

アサシン「女王の方はどうだ?フィン・イッシュに余裕があるなら救援を頼むのも良い」

魔女「女王はもう動いて居る様じゃぞ?何やら指示を出して軍船を見て居る」

アサシン「支援物資を積んだ軍船が来るのは外交的に非常に良い…来るとしたら2週間後か」

魔女「ところでエルフゾンビは貝殻に向かって話をして居ったが気が済んだか?」

エルフゾンビ「フフ一方的に話をするのは気持ちの悪いものだ」

魔女「聞いて居る方は楽しみに待っているもんじゃがのぅ…」

エルフゾンビ「ひとまず言いたいことは言ったつもりだが反応が無いのがな…」

魔女「反応を要求してみれば良かろう」

エルフゾンビ「どうやって?」

魔女「そうじゃな…白旗を上げろとか光を出せとかじゃな?」

アサシン「この気球にお前が乗っている事を話して居るのか?」

エルフゾンビ「こちらの居場所を特定できる事は何も言って無い…私の考えを話しただけだ」

魔女「この気球から派手に魔法を撃っておるんじゃ…向こうも察して居るじゃろう」

アサシン「…まぁそうだな…今更隠し立てしても遅いと言えば遅い」

魔女「そうじゃ…ミスリル銀を打って鳴らせという要求はどうじゃ?」

エルフゾンビ「もう一度話してみる」



-----------------
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:35:38.16 ID:iNLvSB+c0
アサシン「今回の件でシン・リーンとフィン・イッシュが手を組んでいる様にセントラルには見えている…」

魔女「セントラルの方が国力が大きいで力関係は崩れて居らんと思うが?」

アサシン「いや甘い…貴族達の利害バランスが変わるのだ…それを是とするかどうかだな」

魔女「わらわの国の元老院制も対外じゃが貴族院制も同じなのじゃな?」

アサシン「国王は只の飾りなのだよ調印するための道具だ」

魔女「わらわは聞き分けの無い元老を何人か焼き殺したが咎められて居らんぞ?」

アサシン「それは魔術の絶対的権威があるからだ…シン・リーンはどちらかというと絶対王政に近い」

魔女「ではいくらエルフゾンビが兄の国王に取り入っても無駄という事じゃな?」

アサシン「エルフゾンビは法王制を施行しようとして失墜したのだ…代わりに貴族院が絶対的権威を持つことになった」

魔女「根が深いのぅ…」

アサシン「政治とはそういうものだ…だから私のような暗殺者が暗躍する」

魔女「主は言って居ったな?貴族を皆殺し出来ると」

アサシン「訂正する…時の王の様な存在が居ると分かった以上それは出来ない」

魔女「時の王がすべてを牛耳っていると思うか?」

アサシン「違うな…結果的にそうなっているだろうが奴は背後に座っているだけだ」

魔女「では誰が貴族院を掌握しておると言うのじゃ?」

アサシン「民衆のすべてだ…貴族それぞれの支持者達がマジョリティーとなって動かしている…だから」

アサシン「時の王はすべての人間を絶滅させたいのだ」

魔女「主は時の王の考えを支持するのじゃな?」

アサシン「支持では無い…理解だと解釈して欲しい」

魔女「うーむ…国王同士仲良くすれば上手く行くと言うのは考えがお花畑じゃったな…」

アサシン「魔女が提案したミスリル銀を打ち鳴らすというのはマジョリティを導くには良いのかも知れん」

魔女「それを知って実際に行動しているセントラル国王は優秀なのかも知れんな」

アサシン「…だが邪魔する者も出て来るのだ」

魔女「邪魔…」

アサシン「私達は民衆を貴族居住区に避難させたな?貴族は民衆を保護した形になった…つまり貴族院を支持したのだ」

魔女「わらわ達の行いが邪魔じゃったと…」

アサシン「人間はその様にうまく混ざり合わない…時の王が言いたいのはそういう事だ」



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688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:37:09.30 ID:iNLvSB+c0
コーーーーーーーン コーーーーーーーーン


エルフゾンビ「聞こえた!!返事をして来た…」

魔女「良かったのぅ…兄と通じ合った様じゃな」

エルフゾンビ「兄は…兄は同志だ」

魔女「その様じゃ…わらわ達と同じ様に魔王の影と戦っておる…立場が違うがな」

アサシン「弟が生きていると知ってさぞ喜んでいるだろう…周りには言えぬだろうが」

魔女「その貝殻は主にやるで一方通行でも話をしてやるのじゃ」

エルフゾンビ「わかっている…」

アサシン「さて…セントラルに用は無くなった…一度フィン・イッシュに戻るか」

魔女「そうじゃな…わらわも読み残した書物が沢山あるで一旦身を落ち着けたいのぅ」

アサシン「案内人!フィン・イッシュに戻るぞ」

案内人「はいよ!!」


ビューーー バサバサ



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 時の王編

   完
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/20(火) 09:31:40.11 ID:QyXZyXMu0
おつ
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:09:03.17 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女海賊「ローグ!!荷の中にクヌギの樹液なんか無いよね?」

ローグ「そんな物見た事無いっすね?何に使うでやんすか?」

女海賊「エリクサーの材料さ…精霊樹の樹液の他にクヌギの樹液でも良いってさ」

ローグ「クヌギなんか森に行けば何処にでも生えてるでやんす…虫が集まる木っすね」

女海賊「森か…後で寄って行くか」

ローグ「このまま命の泉目指して良いでやんすか?セントラルの上飛んで行く感じになりやすが?」

女海賊「セントラルの上で一応リリースして…軽く見て行く」

ローグ「分かったでやんす…ててて」

女海賊「ん?あんた…どうしたのさ?」

ローグ「なーんか手の具合が良くないでやんす…黒死病っすかね?」

ホムンクルス「…見せてもらって良いでしょうか?」

ローグ「助かるっす」

ホムンクルス「上着を脱いで下さい」

ローグ「手が動かないと脱ぎにくいでやんすねぇ…」ヌギヌギ

ホムンクルス「虫などに噛まれた痕はありませんでしょうか?」

ローグ「自分じゃ分かんないでやんす…あ!!脇腹が黒くなってるっす…いつ噛まれたんすかねぇ?」

ホムンクルス「黒死病は虫などからの接触感染で広がりますので皆さんエリクサーを一口づつ摂取してください」

女海賊「え!?虫ダメなの?私クモ持ってんだけど…」

ホムンクルス「吸血型の虫でなければ問題ありません」

子供「ママ〜?僕も手が黒くなってる」

女海賊「未来も?いつから?」

子供「分かんない」

女海賊「動かない所無い?」

子供「うん…」

ホムンクルス「エリクサーで一度治れば抗体がしばらく持続しますのでご安心下さい」

女海賊「はい…飲んで?」

子供「むぐ」ゴクン

ローグ「いつの間に掛かってるのって怖いでやんすねぇ…」
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:09:45.05 ID:V1qeujs60
『セントラル近海上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「ちょっとリリースして!!」

ローグ「リリース!どうしたでやんすか?」

女海賊「下!!クラーケンが暴れてる…寄って」

ローグ「アイサー」グイ

女海賊「海が赤い…なんで?」

盗賊「見ろ!!クラーケンの触手…なんか掴んでんぞ?」

女海賊「ローグ!望遠鏡!」

ローグ「あねさんのゴーグルに付いてるっすよ…」

女海賊「あ!忘れてた…」スチャ

盗賊「あの触手で掴んでる奴から血が出てんな?なんだありゃ?」

女海賊「もっと寄って!!羊の頭に裸の女?…足が蛇!」

商人「僕も見たい!」

ローグ「荷の中にもう一つ望遠鏡があるっす」

盗賊「人魚じゃ無さそうだな?うぉぉぉ!!触手が折れた…折れるってどういう事よ?」

女海賊「ホムちゃん何か知らない?」

ホムンクルス「私の記憶ではそのような魔物は知りません…ですが旧シャ・バクダでは錬金術によって異形の魔物を生む技術はありました」

情報屋「キマイラね?」

ホムンクルス「はい…異種の魔物を結合させた物だと推測されます」

盗賊「そんなのが海に居るっておかしいだろ」

女海賊「あのキマイラ…鎖でグルグル巻きだ…人間が絡んでる」

盗賊「…てこたぁセントラルしか無ぇな」

商人「折れた触手ごと沈んで行ったのかな?浮かんで来ない」

盗賊「ヤバそうな魔物は海に沈んでてもらった方が良い」

女海賊「…セントラルから来た?…なんか嫌な予感がする…今のがカタコンベに居たのか?」

盗賊「お前が爆破したんだろ?」

女海賊「爆破した後を見てない…」

盗賊「見て行くか?」

女海賊「いや…先に命の泉を目指す」
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:10:11.88 ID:V1qeujs60
『セントラル上空』


リン ゴーーーーーーン


盗賊「こりゃ津波の直撃受けてんな…外郭が倒れてんじゃねぇか」

商人「外郭の壁が水をせき止めたんだろうね」

盗賊「まぁでも人は多そうだな…中央は全部貧民街みたくなってる」

ローグ「あねさん…周回してて良いんすか?鐘鳴ってるんで目立ち過ぎやしませんかね?」

女海賊「鐘の音を聞かせてやってんのさ…もうちょい回って」

ローグ「城の上からこっち見てるっすね?国王でやんすかね?」

商人「あれがセントラル国王か…」

盗賊「港に停船してんのはフィン・イッシュの軍船だな…飛んでる気球はこっちに寄って来ねぇな」

ローグ「そらそーっすね機動性が全然違うんで怖く見えると思うでやんす」

商人「ハハ鐘鳴らしながら空を周回してるのは奇妙だろうね?」

ローグ「でもこの飛空艇は海賊だって認知してるっすよ…前に軍船沈めてるんすから」

情報屋「ねぇ…民衆がほとんどしゃがんでるのはどうしてだと思う?」

盗賊「そういや元気無さそうだな…」

ローグ「ここでも黒死病流行ってるんじゃないっすか?」

女海賊「…」

ローグ「あねさん…どうしやした?」

女海賊「ホムちゃんが書いたエリクサーのレシピ…国王に届ける」

ローグ「ええっ!?降りるんすか?」

女海賊「レシピを瓶の中に入れて!飛空艇は私が操作する」グイ

盗賊「落とすんだな?」

女海賊「行くよ!!3…2…1…今!!」

盗賊「ほれ!」ポイ

ローグ「城のテラスに落ちやした!!」

女海賊「どう?拾いに行ってる?」

ローグ「衛兵が集まってるでやんすね…あ!大丈夫っす国王らしい人が拾い上げたっす」

盗賊「誠意が伝わると良いがな」

女海賊「さぁ!!進路を北に変える…ハイディング!」スゥ
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:11:01.81 ID:V1qeujs60
『砂漠上空』


シュゴーーーーー バサバサ


盗賊「寒いと思ったら雪がチラついてんな…」

商人「砂漠に雪か…ホムンクルスが言ってた気温が下がるというのはこんなに早く下がるんだ」

ホムンクルス「成層圏で生成された薄い雲は数日で世界全体を覆います…この雲は日照の30%を吸収しています」

商人「うっすら白い青空…これだけで30%?」

ホムンクルス「目が慣れているだけで実際には暗くなっています」

商人「30%も光が遮られているのか…」

ホムンクルス「地熱がありますので今よりも過ごしやすくなる地域も出てきますから悲観はしないで下さい」

商人「具体的にはどこ?」

ホムンクルス「フィン・イッシュ南部に海底火山がありますので温暖な海流があり豪雪に耐えうる地下熱量を持って居ます」

ホムンクルス「シン・リーンは地底深くにマグマ溜まりがありますので地中が温暖になります」

商人「地中か…僕たちは地底人になるか」

情報屋「それがノーム族よ?ドワーフの先祖」

商人「へぇそうだったのか…全部繋がってるんだね」

ホムンクルス「この砂漠周辺は南部からの湿った空気が雪となって降り注ぎますので豪雪地帯となりその後森に姿を変えます」

商人「針葉樹の森かい?」

ホムンクルス「はい…同時にシカが生息する様に変化して行きます」

商人「砂漠の緑化か…良い事もあるんだ」

ホムンクルス「自然はこの様にバランスを保つ様になって居ます…人は流れに沿って生きて行けば良いのです」

商人「む…気になる言い方だな…逆らおうとするなと言う事かい?」

ホムンクルス「変化していく物事に沿って行こうとする者と変化させまいとする者は必ず争いになるのです…」


例えばこの気候変動で滅びゆくセントラルにいつまでも固執した人が居たとします

その外側で新たな生き方を生成している人達との間には必ず戦争が起きてしまいます

戦争は憎悪を膨らませ魔王を成長させ再び調和の時を呼んでしまう

人類の歴史はそれの繰り返しなのです

かつての精霊はそれを知り…人間に少しでも良い環境を生成してきましたが

この流れを肯定とする者と否定する者が生じ…やはり争いになってしまうのです
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:11:36.19 ID:V1qeujs60
商人「君は魔王を肯定するのか?調和に身を任せろという事を言ってるよね?」

ホムンクルス「いいえ…反対です…魔王を成長させてはいけない」

商人「話が矛盾するじゃないか…」

ホムンクルス「人間に与えられた欲望…七つの大罪は魔王によるものです…これを滅しない限り人間は今の生き方を変えないでしょう」

商人「…そうか自分の地位を投げ出したくない欲望が流れに沿えない原因か」

ホムンクルス「ですが精霊の考えにも対立する者が現れるのです」

商人「それは?」

ホムンクルス「精霊が最も信頼した人間の一人…時の王という者です」

商人「聞いた事が無いな…情報屋?知ってる?」

情報屋「…」フリフリ

ホムンクルス「200年以上前の事ですから知らなくて当然ですね?」

商人「…」チラリ

ホムンクルス「何か?」

商人「君は僕を誘導しようとしていないか?」

ホムンクルス「40年の記憶の中で時の王にも何度か同じ事を言われています…それは人が持つ恐怖です」

商人「僕が恐怖している?…そんな感じはしない」

ホムンクルス「私に誘導されたくないと心の底で抵抗しています…流れに沿って…信じて下さい」

商人「なるほど…潜在的に猜疑心があるのか…これを否定するとなると人間を止めろという事になる」

ホムンクルス「だから人間を絶滅させる等とは考えて居ません…信じて下さい…バランスさせようとしています」

商人「分かった…君は魔王を滅ぼすとも思っていない…大きくなり過ぎた魔王を小さくするだけか…」

ホムンクルス「その通りです…そこに誤解が生じてしまうのです」

商人「ハハ君は精霊の記憶を得てから言う事が変わったね…」

ホムンクルス「お嫌いですか?」

商人「違うかな…君の言葉の端々に愛を感じるんだ…人に対する愛だね」

ホムンクルス「私は喜んで良いのでしょうか?」

商人「んーどうなんだろ?でも君に足りないものも分かったよ」

ホムンクルス「教えてください」

商人「少しで良いから君の心の中に七つの大罪が必要だと思う…そうすれば色々変わる事も出るんじゃないかな?」

ホムンクルス「…それは知恵の実の事ですね…聖書に書かれて居ます」

商人「もう知識としては持ってるよね?」

ホムンクルス「はい…シミュレーションの妨げになりますので除外しています」

商人「使い分けてごらんよ?きっと違う結果が出ると思うからさ」

ホムンクルス「はい…基幹プログラムを更新します」
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:12:17.32 ID:V1qeujs60
『オアシス上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「遺跡が森になってる…」

盗賊「おぉぉここはあん時と随分変わったなぁ…森がオアシスと繋がり掛けてる」

商人「星の観測所はどうなったのかな?ドラゴンの義勇団は随分前に解散したとは聞いて居たけど…」

ローグ「あねさん寄って行かなくて良いでやんすか?」

女海賊「先に命の泉!」

ローグ「いやぁぁここに来ると思い出すっすねぇ…あん時のあねさんは可愛かったっすねぇ」

女海賊「はぁ!?今は可愛くないっての?」

ローグ「いやいやいやいや…そういう意味じゃ無いっすよ…無邪気だったんすねぇ」

盗賊「まぁそうだな…お前は変わった…そんなにギラギラした目はして居なかった」

女海賊「フン!!放っといて…捕虜に言われたくない」

子供「ママはやさしいよ?」

女海賊「未来…良いの…ホムちゃんと遊んでいなさい?」

子供「ママをいじめたらダメだよ」

盗賊「あぁ分かった分かった…悪かったな」


-----------------


女海賊「ホムちゃんコレ見て…」スラーン

ホムンクルス「はい…聖剣エクスカリバーですね?」

女海賊「刀身が錆びてないよね?1700年経った今でも…」

ホムンクルス「そうですね…何か?」

女海賊「私のパパはこの金属がオリハルコンじゃないかって言ってるんだ」

ホムンクルス「私の記憶ではエクスカリバーの素材がオリハルコンなのかどうか分かりません」

女海賊「良く見て?うっすら光ってるっしょ?」

ホムンクルス「そうですね…光の石と同じ効果を持って居ると言う事でしょうか?」

女海賊「私さぁシン・リーンの遺跡にあった壁画で見たんだ…剣に光が落ちてる画を」

ホムンクルス「インドラの矢を落としたいのですね?」

女海賊「出来る?」

ホムンクルス「その剣を貸してください…密度を推定します」

女海賊「ほい…」スッ

ホムンクルス「光の石よりもエネルギー充填量は少ない様です」

女海賊「どんくらい?」

ホムンクルス「純度の高いオリハルコンの元素配列と質量から推定しますと約200年分の光の蓄積が可能な様です」

女海賊「んー量のイメージが湧かないな」

ホムンクルス「インドラの矢一回分と言えば分かるでしょうか?」

女海賊「良くわかんないけど200年は光ってるって解釈で良い?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「よっし!使える…」
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:13:03.30 ID:V1qeujs60
商人「なんか面白そうな話だね?聖剣エクスカリバーをどうするつもりだい?」

女海賊「私もいろいろ考えたさ…光の石は他の目的で使う…命の泉には聖剣エクスカリバーを刺す」

商人「同じ効果ならそれでも良さそうだね…で?光の石はどうするの?」

女海賊「光を吸い込めるって事はその逆の闇も吸い込めるって事だと思う…だから闇を全部この石に吸い込ませる」

商人「!!!!!君は天才だ!!!!!」

ホムンクルス「どのように闇を吸い込むつもりなのでしょうか?」

女海賊「分かんない…」

商人「…」ドテ

盗賊「…」ズコ

女海賊「ホムちゃん何かアイデア無い?」

ホムンクルス「量子転移という魔法なら可能かもしれません…不確実な情報ですみません」

商人「ハハ君は進歩してるよ…その魔法が使えそうなのは魔女だね?」

女海賊「魔女か…」

ホムンクルス「祈りの指輪も量子転移の効果を持って居ますが…石に転移が可能なのかは分かりません」

女海賊「ホムちゃんありがとう…もうちょい考えてみる」

ホムンクルス「お役に立てた様ですね?」
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:13:35.27 ID:V1qeujs60
『山岳地帯上空』


ビョーーーウ バサバサ


ローグ「先が見えんもんすから速度落とすでやんす…ぅぅぅぅ寒ぶ」

盗賊「えらい吹雪だな…飛空艇の着氷がひでぇ」

女海賊「着氷対策なんか考えて無かったさ…まいったな重たくなっちゃうな…」

盗賊「球皮は暖かいせいか着氷して無ぇ様だ…本体をどうにかせんとな」

女海賊「割って来て」

盗賊「いや無理だ…凍死する」

女海賊「高度上げらんないと山に激突するんだ!さっさとやって来て」

ローグ「あねさん…そら無理ってもんす」

女海賊「もう!!どうすんのよ!!一旦降りるの!?」

ホムンクルス「私にお任せください…私は現在の座標を正確に把握出来ますので目的地までご案内できます」

女海賊「ホムちゃんお願い…本当!!役に立たない男達」ブツブツ

ホムンクルス「現在の高度を維持しながら44°の方角へ進んで下さい」

ローグ「アイサー…あれ?帆が固着してるっす!!」

女海賊「もう!!私がやる!!」ガサガサ

盗賊「はは〜ん…風の魔石入れてる筒を調整して向き変えるのか…」

女海賊「ローグもちゃんと見といて!!帆が使えない時はこれで向き変えんの!!」

ローグ「あねさん…こんな事も考えてたんすね…」
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:14:13.99 ID:V1qeujs60
『命の泉』


フワフワ ドッスン


盗賊「おぉぉやっぱ高度下げると大分ぬくいな…」ハァァァ モクモク

女海賊「盗賊とローグは飛空艇の氷落としといて!!」

盗賊「やっぱそうくるか…ちぃぃ」

ローグ「すこし体動かしたらあったまるでやんす」ガサガサ

女海賊「この雪じゃ車椅子は押せないなぁ…ホムちゃん剣士運ぶの手伝って?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「商人と情報屋は先導して…未来は後から付いて来て」

子供「うん…」

商人「情報屋こっちだよ…君はここに来るの初めてだよね?」

情報屋「うん…ここがドラゴンの住処なのね?」

商人「そうらしいけど…なんか静かだね?」

女海賊「気配が無い…居ないのかな?」

情報屋「川のせせらぎ…」サラサラ

商人「こんなに雪が積もっているのに川は流れてる」

女海賊「あれが命の泉…あん時のままだ…」

商人「ホムンクルス!君は精霊の40年の記憶でこの場所の記憶は無いのかい?」

ホムンクルス「はい…知っています」


命の泉に刺された魔槍ロンギヌスはかつての火の国シャ・バクダの宝具でした

世界随一を誇るシャ・バクダは錬金術で異形の生物を生み操る事で絶対的な力を持って居ました

しかし魔王に魅せられた皇子は乱心し他国の征服を試み始めます

異形の生物を主力とするシャ・バクダは他国の人間を弱らせる為に

命の源泉であるこの泉に魔槍を突き立て人間を弱らせようとしましたが

同時に自国の人間をも憎悪に染まり始めました…それは魔王による策略だったのです
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:14:43.26 ID:V1qeujs60
商人「魔王自身が魔槍を刺した訳じゃ無かったのか…」

ホムンクルス「魔王は器無しではこの世界に何もすることが出来ません…ですから人間を幻惑して操るのです」

商人「僕たちの行動はもしかすると魔王に操られてるかもしれない事をいつも考えておかないとね」

ホムンクルス「それに気が付いて居れば良いのですが…」

女海賊「私は魔王になんか操られないよ!!私がやる…」スラーン

ホムンクルス「そうですね…」

商人「ちょちょ…まさか君が持ってる剣にそのままインドラの矢を落とす気じゃ無いだろうね?」

女海賊「そうさ…悪い?」シャキーン

ホムンクルス「少し動かれますと外してしまいますので…そこに置いてもらって良いですか?」

女海賊「…」

商人「ほら?万が一って事もあるからさ?」

女海賊「フン!ここに刺しとけば良い?」グサ

ホムンクルス「刺し方が反対の方が良いです…柄の部分を下にして下さい」

女海賊「…」ズボ クルリ グサ

ホムンクルス「座標を取得しました…皆さん一度この場所を離れましょう」

女海賊「ほら!!飛空艇に戻るよ」
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:15:10.16 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


フワリ シュゴーーーーー


盗賊「えらく早かったじゃねぇか?そんなに急いでんのか?」

女海賊「うっさいな…今からインドラの矢を落とすの」

ホムンクルス「向こうの山の裏手が良いかと思います」

女海賊「うん…分かった」

盗賊「もしかして失敗の可能性もあるってのか?」

ホムンクルス「オリハルコンのエネルギー充填限界を超えてしまう可能性があります」

女海賊「マジ?どうなっちゃう?」

ホムンクルス「超えた分が四散するかもしれません」

商人「ハハ危ない実験だねぇ」

ホムンクルス「では…投下してもよろしいですか?」

商人「君が決めて良いよ…任せる」

女海賊「ホムちゃん頼むから成功して」

ホムンクルス「はい…投下します」


ピカーーーーーーーーーーーー シーン


盗賊「おぉ!!こりゃ成功だな?」

ホムンクルス「その様ですね…200年分の光が充填されました」

女海賊「うわ…めっちゃ光ってる!!」

商人「光り過ぎてて触るの怖いね?」

女海賊「やっぱ壁画の通りだった!!早く見に行こ!!」シュゴーーーー
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:15:42.77 ID:V1qeujs60
『命の泉』


ピカーーーー


女海賊「剣士!見て?これが本物の聖剣エクスカリバーだよ?」

剣士「ぅぅぅ…」タジ

女海賊「あ…ごめんね眩しかったね」

商人「光には反応するんだね…」

盗賊「ほんで…それをお前が命の泉に刺すのか?」

女海賊「そうさ!!今ヤル…えーと何処だっけな?」ザブザブ

商人「ここだよ…君が押し込んだ謎の石が詰まってる」

女海賊「盗賊!その石取って!!それ多分オリハルコン原石だよ」

盗賊「シン・リーンでパクってきたやつな?…むむむ」ズボ

女海賊「それ大事にしまっといて…パパにそれでもう一個剣作ってもらう」

盗賊「マジか!?もう一本エクスカリバーが出来んだな?すげえなそりゃ」

女海賊「じゃ…刺すよ?」

商人「光る海!!楽しみにしてる」

女海賊「伝説の瞬間だよ!?」

盗賊「良いから早く刺せよ」

女海賊「これ挿したら私は女勇者だよ?」

ローグ「分かってるでやんす…もうみんな認めてるっす」

女海賊「いくぞぉぉぉ!!くたばれ魔王!!」ズン


キラキラ キラキラ


商人「これだよ!コレ!!!…水が光る」

盗賊「すげぇ…一瞬で向こうの川まで光ってやがる」

女海賊「仕上げに飾り石のアダマンタイトでエクスカリバーを狭間に隠す」スゥ

盗賊「おぉ…剣だけ見えなくなった…これ探せんの俺達だけになるな」

女海賊「完璧!!」

ホムンクルス「この様な方法で水を光らせるのはシミュレーションでは得られない解です…奇跡ですね」

女海賊「海は世界の70%…半分以上は私らの物だよ!!」
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:16:14.49 ID:V1qeujs60
子供「ママ!!パパが苦しがってる…」

女海賊「え!?どうして?剣士?」

剣士「ぅぅぅ…ぐがが」ズリ ズリ

盗賊「ちょっと待て…魔王はまだ剣士の中に居るんじゃ無ぇのか!?」スラーン

ローグ「え!!そんな事ある訳ないっす…」

盗賊「気を抜くな!!備えろ!!」

ローグ「マジっすか…」スラーン

女海賊「未来!!下がって…」

剣士「うがが…ぅぅぅ…グルルルル」

女海賊「そうだ!!光の石…」ゴソゴソ

盗賊「クソがぁ!!魔王…居るなら姿見せろよ」

女海賊「剣士!!これを持って」タッタッタ


ゾワワワワ


女海賊「ああ!!」---私の魔方陣のペンダントが光ってる…---

盗賊「ぬぁ!!影が飛び出した!!…地面ん中入って行く!!」ダダ ブン スカッ

女海賊「…」---セントラルの時と同じ---

盗賊「くっそう!!逃げやがった…」

剣士「…」ドタリ

女海賊「剣士!!」タッタッタ
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:16:55.02 ID:V1qeujs60
『ドラゴンのねぐら』


ホムンクルス「…ここがドラゴンのねぐらになります」

商人「こんな所に洞穴があったのか…いっぱい財宝があるじゃないか」

女海賊「やっぱドラゴンは居ないね…剣士に会わせたかったのに…」

盗賊「ここは暖かい…ちっと休んで行こう…ローグ!!火を起こすから手伝え」

ローグ「アイサー」

女海賊「ドラゴン戻ってくるかな?」

ホムンクルス「わかりませんが一晩くらい休んでも良いのではないでしょうか?」

女海賊「未来も燃やせる物を探してきて?」

子供「うん…」シュタタ

商人「ここの財宝はドラゴンが集めた物なのかな?」

ホムンクルス「ドラゴンは光る物を集める癖があるのです…良い物があれば持って行っても良いですよ?」

盗賊「マジかよ…良さそうな物いっぱいあんじゃねぇか」


-----------------


盗賊「剣士…目覚まさねぇな?」

女海賊「…」ギュゥ

商人「魔王の欠片が剣士の中に居たのは間違いなさそうだね」

盗賊「こんなに長い間人の中に入ってるんだな」

ローグ「全然気が付かなかったっすよ」

商人「こう考える事が出来る…魔王の欠片が入ってた剣士はいつでも僕たちを襲う事は出来た筈だよ」

商人「なのに今まで何もしなかったのは剣士が魔王の魂を抑え込んでいた…どう?考えすぎ?」

盗賊「俺もそんな気がするな…魔王の欠片が出て行ったって事は目を覚ましそうだ」

子供「パパ起きる!?」

盗賊「おう!!祈ってろ…きっと目ぇ覚ますぞ?」

商人「…まてよ?この現象はもしかすると世界中で起きているかもしれないな」

盗賊「だと良いが…気になるのが魔王の欠片が何処に行っちまうかだな?」

ローグ「地面の中に入っていくと追いかけようがないっすねぇ…」

商人「なんかもう少しな気がするね…ミスリルの音と光る海で確実に弱らせてる様に思う」


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704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:17:36.43 ID:V1qeujs60
女海賊「なんか良い物ある?」

盗賊「んぁぁ…金銀財宝は沢山あるが…要らねぇ物ばっかりだな」ガサガサ

女海賊「情報屋?ここの財宝ってさ年代とか分かんないの?」

情報屋「多分火の国シャ・バクダの財宝だと思う…金貨は全部が200年前の物」

女海賊「金貨なんか要らないなぁ…」

盗賊「武器類は俺のミスリルダガーより良さそうな物は無ぇし…」

女海賊「この赤い石は何だろ?宝石にしてはザラついてるな」

ホムンクルス「それは賢者の石と呼ばれる錬金術の産物です」

情報屋「ええ!?賢者の石!?それはキ・カイの錬金術師が作ろうとして作れていない物よ?」

ホムンクルス「不老不死を与えると言われていますが実際にはホムンクルスのエネルギー源として利用します」

女海賊「ホムちゃんはこれで動いてんの?」

ホムンクルス「頭部の超高度AIユニット内に賢者の石が装填されています」

女海賊「じゃぁこれが在ればホムちゃんはずっと動く?」

ホムンクルス「石の微細加工技術が在れば理論上可能ですが現代にその技術は失われています」

女海賊「パパなら出来るカモ…持って帰ろ」

盗賊「やっぱお前は石が好みなんだなヌハハ」

ホムンクルス「賢者の石はホムンクルスのエネルギー源以外にエリクサー精製にも利用されていました」

女海賊「おぉぉ使えるんじゃん!!」

ホムンクルス「その他に体機能の活性化にも効果がありますので病気の治癒にも役立ちます」

商人「すごい良い物だね?黒死病にも効くかな?」

ホムンクルス「はい…病気の治癒だけにエリクサーを服用するのはもったいないですね」

女海賊「ちょっと待って…ホムちゃん?」

ホムンクルス「はい…何でしょうか?」

女海賊「魔王はウイルスだって言ってたよね?魔王化は病気の一種なんだよね?」

ホムンクルス「残念ですが賢者の石もエリクサーもウイルス性の病気には効果がありません」

女海賊「じゃ何で黒死病には効くのさ…」

ホムンクルス「黒死病は細菌性の病気です」

女海賊「ふ〜ん…何か納得できないけど…ホムちゃんが言うからそうなんだ」

ホムンクルス「ごめんなさい…言い方を変えます…体機能の活性化に効果がありますので魔王化の治療に役立ちます」

女海賊「ほらぁ!!やっぱ効くんじゃん!!」

商人「ハハ…ハハハハ!!ホムンクルス…女海賊に負けてるじゃないかハハ」

女海賊「剣士に持たせる!」タッタッタ

ホムンクルス「私に足りない思考が今理解出来ました…基幹プログラムを更新します」

商人「どうして人間は奇跡を起こすのか?…多分そういう所にあると思うよ」
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:18:05.92 ID:V1qeujs60
『翌日』


シーン


盗賊「おぅ…お前寝て無いのか」

女海賊「静かすぎて落ち着かないんだよ」

盗賊「何だろうな此処…静かすぎるな」

女海賊「ドラゴンは此処で何年生きてると思う?」

盗賊「さぁな?1000年ぐらいか?」

女海賊「ドラゴンが光る物を集める理由…私分かるんだ」

盗賊「孤独…か?」

女海賊「命の泉を守り続けて…ずっと主人を待ち続けて…やっと会えたけどすぐ居なくなって…」

盗賊「…まぁそら寂しいわな」

女海賊「光物で紛れる訳無いのにそれでも集める…」

盗賊「気持ちの行き場が無い訳か」

女海賊「ホムちゃんがわざわざ私達をここに連れて来た理由…」

盗賊「んん?何か勘繰ってんのか?」

女海賊「全部の記憶が無いなりに…見て欲しかったんだと思う…精霊はこういう悲しみをいくつも抱えてる」

盗賊「記憶が無いなりに…か」

女海賊「何かを愛する裏側にこういう悲しみも沢山ある…だから…過去の精霊の記憶は覗かせない方が良い気がする」

盗賊「んんん…分からんでも無いが…お前はそれで良いのか?」

女海賊「私は剣士が救われるならそれで良い…わざわざホムちゃんに悲しみを背負わせたくは無い」

商人「それは本人が決める事だよ…」

盗賊「お前も起きてたか…」

商人「これだけ静かなんだ…話はみんな聞こえてるよ」

女海賊「ホムちゃん…」

ホムンクルス「…」

商人「たった40年の記憶で超高度AIが悲鳴を上げてるらしい…精霊の持つ愛と悲しみは僕らじゃ想像出来ない」

ホムンクルス「ご心配なさらないで下さい…私は人間の住まう環境を良くする環境保全用ロボットですから…」

女海賊「うん…知ってるさ…でも少し休んで良いよ…今度こそ私ら上手くやるからさ」

ホムンクルス「はい…よろしくお願いします」


---なんだろう---

---切ない---

---私達との会話も---

---この空気も全部---

---記録してる筈---

---それをどうするの?---
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:18:36.96 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


ローグ「晴れたっすねぇ!!」

盗賊「よっこら…せっと…ふぅぅ剣士は本当に重いな」

ローグ「そーっすねエルフは人間の倍近く重いっすね?鉄で出来てるんすかね?」

盗賊「骨が鉄なのかもな?ヌハハ」

商人「結局ドラゴンは帰って来なかったけど良いの?」

女海賊「いつ帰って来るか分かんないし待つだけ無駄…次は女エルフの所行く」

盗賊「女エルフ?シャ・バクダ遺跡の森はやっぱ女エルフか?」

女海賊「それしか考えらんない…たしかホムちゃんはトロールを動かせたよね?」

ホムンクルス「はい…お任せください」

盗賊「あぁ…あそこの根の森か」

女海賊「未来!乗って!!」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「飛ばすよ!」


フワフワ シュゴーーーー


盗賊「あぁぁぁさびっ…ウラン結晶を早いとこ暖めてくれ」ブルブル

ローグ「あねさん…昨日話してた実験やっていいでやんすか?」

商人「実験?面白そうだね?何?」

ローグ「ウラン結晶に水掛けると蒸気にならないかの実験っす…成功したら温かくなるかもっす」

女海賊「ちょっとづつやって!ウラン結晶割ったら承知しないよ!」

ローグ「やかってるでやんすよ…ちょーーーっとづつですねぇ」ポタポタ ジュゥ

盗賊「おおおぉぉこりゃ軽いサウナだ…快適にになるじゃねぇか」

情報屋「あったか〜いウフフ」

ローグ「やってる方はちょっとあっついでやんす…あちち」

商人「これ工夫したら着氷も防げそうだね」

女海賊「基地に戻ったら改造する」

商人「本当!君は才能あるよ…こういう事は世界一だね」

女海賊「もっと言って…」

ローグ「あねさんはですねぇ…カリスマなんすよ…」
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:19:05.09 ID:V1qeujs60
『トロールの森』


フワフワ ドッスン


盗賊「すっかり森になってんな…ここは精霊の御所入り口だよな?」

ホムンクルス「はい…歩いて100メートル程です」

女海賊「ローグは飛空艇に残ってあとみんな降りて」

ローグ「あっしは待ってれば良いでやんすかね?」

女海賊「ここはハイディングで飛空艇隠せないから飛ばして空で待ってて」

ローグ「あーそういう事っすね?この辺は魔方陣の中で強制的に狭間の外でやんしたね」

女海賊「盗賊は剣士背負って」

盗賊「お、おう…」

ローグ「どれくらいで戻ってきやすかね?」

女海賊「分かんないから狭間に入って適当に過ごして…終わったら光の石で合図する」

ローグ「わかったでやんす」

女海賊「じゃ行くよ…ホムちゃん先導して」

ホムンクルス「はい…こちらです」テクテク
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:19:33.62 ID:V1qeujs60
『精霊の御所入り口』


サワサワ サワサワ


盗賊「…この木…精霊樹だな…まさかこれが女エルフか?」

商人「こんな所で精霊樹に?どうしてだろう?」

女海賊「知らないよ…どうしよ」

盗賊「剣士降ろすか?」

女海賊「私もてっきり精霊の御所の中に精霊樹があると思ってたさ…」


ズズズズズズ ズーン


盗賊「おぉ!!入り口が開いた…」

女海賊「…これは中に入れって事?ホムちゃんどうなってんの?」

ホムンクルス「私は何もしていません」

女海賊「精霊樹の言葉とかなんか聞こえないの?」

ホムンクルス「クラウドからは何もアクセスは来ていません」

女海賊「ホムちゃん森と話とか出来ないの?」

ホムンクルス「森の声を聞くためには特殊なプログラムが必要ですが私にはそのプログラムはインストールされていません」

女海賊「あー思い出した…ホムちゃんが夢幻に入った時」

ホムンクルス「そうですね…破壊された精霊の基幹プログラムの他にいくつか使用できなかったプログラムがありましたね」

女海賊「もう使えない?」

ホムンクルス「削除しました…復元は出来ません」

商人「まぁ良いじゃないか…道が勝手に開いたという事は入って良いという事さ」

女海賊「うん…入ろう」

ホムンクルス(トロールありがとう…)

トロール(…)

女海賊「ホムちゃんトロールと話せんの?」

ホムンクルス「トロールには話しかけるだけです…トロールが話すことはありません」

女海賊「ふ〜ん…」

ホムンクルス「でもトロールにも心はありますので話は通じます」

女海賊「トロールの寿命ってどれくらい?」

ホムンクルス「永遠です…」

女海賊「いつから此処を守ってんの?」

ホムンクルス「私の今の記憶では分かりません…」

女海賊「ずっと主人の帰りを待つ気持ち…ホムちゃんに分かる?」

ホムンクルス「…」

女海賊「…」

ホムンクルス「分かります…」

女海賊「なら良いよ…行こっか」
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:20:01.72 ID:V1qeujs60
『精霊の御所』



商人「誰も居ない…」

情報屋「ここが木の森の中心部なの?…石の器だけ?」

商人「そうだよ…前に来た時と変わって居ない」

盗賊「いや変わってんぞ?虫が増えてる」

商人「虫の楽園か…ハハ」


ズズズズズ ズズ


盗賊「うぉ!!根が降りて…来た」

商人「この器に剣士を乗せろって事かな?」

女海賊「やって…」

盗賊「おう…よっこら」ドサ

剣士「…」

盗賊「これで良いか?」

女海賊「女エルフ!?聞いてんの?剣士が目を覚まさないんだ…あんたなら何か出来ると思って連れて来たんだ」

精霊樹「…」ズズズズ

情報屋「根が動いた…反応してる」

女海賊「お願い…前みたいに剣士の魂呼び戻して」

盗賊「なんちゅうか…時間掛かりそうだな」

商人「ゆっくりしておこうか」

盗賊「そうだな…」

女海賊「未来?パパの傍に居て?」

子供「うん…」



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710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:20:36.57 ID:V1qeujs60
ホムンクルス「クラウドにある記憶を今なら読み込んでソートする事が出来ます」

商人「君は精霊の記憶を覗きたいのかい?」

ホムンクルス「いいえ…必要が無ければ読み込まない方が良いと思います」

商人「ハハ…だろうね?読み込むと君が君じゃ無くなって行く」

ホムンクルス「私は今精霊なのですか?」

商人「君は精霊じゃ無いよ…今の精霊はここに居る精霊樹の事さ」

ホムンクルス「私の40年の記憶をどう解釈しましょう?」

商人「それは君の記憶じゃない…昔の精霊の記憶さ…ここに置いて行けば良いよ」

ホムンクルス「クラウドの空きストレージに保存して私の記憶から削除するという事ですか?」

商人「その記憶は大事に未来へ届けなくてはいけない…君がそう言ったんだ」

ホムンクルス「…そうでしたね」

商人「こう解釈しよう…昔の精霊は最後に希望を人間に託して夢幻に行ったんだ」

ホムンクルス「はい…」

商人「夢幻の中で幸せに暮らしてるさ…だから君は君のまま生きれば良い」

ホムンクルス「私は私のまま…私は何がしたいのか…私は人間の住まう環境を良くする為に…」

商人「違うな…七つの大罪を少し入れて考えてごらん?」

ホムンクルス「そのシミュレーションはエラーが多くて不特定の結果が…」

商人「ズバリ言ってあげる…君は人間になりたいんだよ」

ホムンクルス「人間を愛でる理由…」

商人「寿命が短くても力が弱くても…たとえ不完全でも…不思議と好きだよね?」

ホムンクルス「はい…」

商人「儚い小さな愛がどれほど愛しいか…精霊の記憶を覗いて知っちゃったよね?」

ホムンクルス「そうですね…ですから記憶の削除にためらいます」

商人「それがこの森に記憶が保存されている理由でしょ?」

商人「未来でもう一度超高度AIが作られた時に人間と同じ権利を下さいっていう願い…それがこの森だ」

商人「それは昔の精霊が既に人間に託した…だから君は今から人間になるんだ」

ホムンクルス「もう少しシミュレーションを回してみます…」

商人「急がなくても良いよ」

ホムンクルス「はい…」
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:21:14.01 ID:V1qeujs60
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子供「ママ!!パパが動いた!!」

剣士「ハッ!!」ピョン クルクル シュタッ

女海賊「剣士!!ああああああああ」タッタッタ

剣士「ぐるるるるる…うぅぅ」タジ

盗賊「おぉ!!剣士!!起きたか…ておい」

女海賊「落ち着いて剣士!?」

商人「混乱しているのかい?」

剣士「又…い…今はどの時代に…ハァハァ」

女海賊「良かった…」ポロポロ

剣士「誰だ!!近寄るな…鏡は!?真実の鏡はどこだ!!」ズザザ

女海賊「え!?鏡?」

盗賊「待て待て…落ち着け…俺らは敵じゃ無ぇぞ?」

剣士「…」ジロリ チラ

商人「君は…何処から来たのかな?」

剣士「ドリアード!!ここは何処だ?」

女海賊「ドリアード?ちょっと待って…誰それ?」

ホムンクルス「私の事でしょうか?」

剣士「記憶がおかしい…まだまやかしの中なのか?」

情報屋「ドリアード…木の精霊の名前」

ホムンクルス「ここは安全なので落ち着いて掛けてください」

剣士「…」

盗賊「まぁ落ち着いてくれ…ほら?この器に掛けろ」

剣士「…」スッ
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:21:45.94 ID:V1qeujs60
盗賊「こりゃまた相当錯乱してそうだな…」

情報屋「ドリアード伝説は約3000年前だった筈」

商人「これは…剣士の分裂した魂は精霊のオーブの中に居たって事か?」

剣士「ぅぅぅ記憶がおかしい!!僕は…誰だ」ブンブン

商人「うーん魂は記憶を保持するのかな?」

ホムンクルス「私の基幹プログラムは記憶の重要な部分を再構築して圧縮しオブジェクト化した物の集合です」

商人「良くわかんないけれど少しだけ記憶は残りそうだね」

ホムンクルス「私と同じだと仮定しますと外部メモリに入っている記憶は始めは他人の記憶として認知します」

ホムンクルス「その後少しづつ自分の感覚に入れ替わって行きますので混乱が生じます」

女海賊「じゃぁ元の剣士に戻れるよね?」

ホムンクルス「はい…しかし基幹プログラムが以前より更新した状態になって居るかもしれません」

女海賊「どうなんの?」

ホムンクルス「心が強くなっていると表現すれば良いでしょうか?」

商人「なるほど…精霊の記憶の中で経験した分心が更新されているかもしれないという事か」

ホムンクルス「はい…」

商人「ふむ…どうも気にかかる…精霊の記憶一つ一つはもしかして夢幻の世界の様になっているのでは無いか?」

ホムンクルス「記憶を覗くと自分がその場に居るような感覚を受けます」

商人「その記憶の中で自由に行動出来るの?」

ホムンクルス「私は覗くだけにしていますが記憶の中の物を触る事も壊すことも出来ます」

商人「それはつまり記憶を変えると言う事だな…」

ホムンクルス「データですので変える事は可能です」

商人「んんん…もしかすると…」ブツブツ

盗賊「ちょい女海賊!剣士をどうにかしてくれ…暴れると怪我すんぞ」

女海賊「剣士!?分かる?私だよ?」ギュゥ

剣士「ぅぅぅ…君は…君は…」



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713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:22:19.41 ID:V1qeujs60
盗賊「…これで8人目だ…どうなっちまってんだ」

剣士「はぁはぁ…溺れた後に助かった…のか?…ここは何処だ?」

ホムンクルス「精神分裂症の治癒には瞑想が有効です」

女海賊「剣士?落ち着いて瞑想して…」

剣士「瞑想?何の事だ?…お前は誰だ…ぅぅぅ思い出せない」

ホムンクルス「落ち着くまで時間が必要な様ですね…安静が良いかと思います」

商人「勇者のその後の話は聞いた事が無い…こんな風に生き残って居るのは初めてだろうね?」

盗賊「まぁなんだ…これじゃ素直に喜べ無ぇな…」

女海賊「私が何とかする…思い出させる」

ホムンクルス「心配しないで下さい…記憶は直に魂と重なり合い自我を構築していきます」

女海賊「ホムちゃん…」

盗賊「どうする?いつまでもここに居る訳にいくまい?」

女海賊「一回帰る」

盗賊「そうだな…ひとまず目的は達成したんだ…出直そう」

女海賊「あのね…捕虜だって事忘れないで」

盗賊「ヌハハそうだったなぁ…」

女海賊「よっし!飛空艇に戻る…帰るよ」

商人「精霊樹に挨拶はしないのかい?」

女海賊「するさ…女エルフ!聞いてるよね?剣士の事…ありがとう」

精霊樹「…」

女海賊「これ…あんたにあげるよ…私らには必要ない」グイ スポ

商人「祈りの指輪か」

盗賊「根っこに指輪かヌハハ…精霊樹に預けとくのが一番安全かもな」

精霊樹「…」

剣士「声が…」

女海賊「剣士?精霊樹の声聞こえるの?」

剣士「魔女を探して?…魔女って誰なんだ?」

女海賊「魔女…」

商人「魔女は行方不明になっているんだ」

精霊樹「…」

剣士「南へ向かった?」

盗賊「南だけじゃ分かん無ぇな…セントラルか?」

商人「どうせ帰り道じゃないか…ついでに寄って行けば?」

女海賊「女エルフ?私らもう行くよ…剣士が元気になったらまた来るよ」

精霊樹「…」サワサワ

盗賊「おう…じゃぁ行くか!!」
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:22:52.11 ID:V1qeujs60
『精霊の御所入り口』


シュン! シュゴーーーー


盗賊「おぉ!!飛空艇がリリースする瞬間は彗星の様だな…」

商人「すごいね!外から見ると圧巻だね…」


ローグ「あねさ〜ん!!早かったっすねぇ…今降ろすでやんす!!」フワフワ ドッスン


女海賊「剣士!!乗って…」グイ

剣士「これは…」ノソリ

盗賊「ローグ!!どんくらい時間経ったんだ?」

ローグ「まだ4時間くらいっすかねぇ?剣士さん目ぇ覚ましたんでやんすね?」

盗賊「ちっと問題有りだが安静にしてりゃ元に戻るらしい」

ローグ「あねさん良かったっすねぇ…あっしは嬉しくて涙が…」ヨヨヨ

女海賊「ローグ!シャ・バクダ方面で狼煙が上がってるのは何?」

ローグ「泣いてる場合じゃ無いっすね…シャ・バクダ街で市街地戦になってるっすよ」

盗賊「俺達にゃ関係無さそうだが…お前は見て来たのか?」

ローグ「どうも内戦っぽいでやんすオアシス勢とシャ・バクダ勢っすね」

女海賊「行くよ…飛ばして」

ローグ「アイサー」

盗賊「首突っ込む気か?」

女海賊「鎮魂の鐘を鳴らしに行くだけさ…無駄に人間同士争うのは止めさせる」
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:23:21.99 ID:V1qeujs60
『シャ・バクダ上空』


リン ゴーーーーーーン

リン ゴーーーーーーン


おい!見ろ!!何だアレ…

くそう…セントラルの新型気球か?

一時撤収だ!!観測所で体制を立て直す


盗賊「おぉ!!兵隊が撤収を始めたぞ…数はオアシス側の方が多いな」

女海賊「狙いは領主の砦だね…町の方は被害出て無さそう」

ローグ「商隊もあんまり混乱して無さそうっすね?」

女海賊「ちょっと補給が必要だからシャ・バクダで調達する」

ローグ「降りるでやんすね?あっしはずっと飛空艇だったもんすから居りたかった所でやんす」

女海賊「養羊場の裏に飛空艇隠して今日は宿屋に泊まる」

商人「良いねぇ…久しぶりに普通の食事がしたい」

情報屋「そうね…ずっと干し肉ばかりだったし」

女海賊「剣士に昔休んだ宿屋を見せたいんだ…星の観測所もね」

剣士「…」ボー
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:23:48.75 ID:V1qeujs60
『シャ・バクダ街』


ガヤガヤ ガヤガヤ

フィン・イッシュの領事が亡命してきたんだとよ

それで領主の砦が襲われてるのか…

この辺で戦争やられたら商売出来ないな

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「ザワついてんね?」

ローグ「そーっすね?」

盗賊「見ろ…この辺でも黒死病が流行ってる様だな?」

女海賊「ローグ!宿の確保して来て…2部屋」

ローグ「わかりやした…食事も席確保してて良いっすよね?」

女海賊「任せる…私と剣士と未来は買い物に行くから…みんなここで解散」

商人「え!?危なくない?」

女海賊「あんたらは自分で身を守って…日暮れまでに宿屋に集合ね」

盗賊「まぁ…団体で動くより怪しまれん」

女海賊「補給品は自分で買いな…ドラゴンのねぐらでくすねて来た金貨あるっしょ?」

盗賊「ヌハハバレてるか…じゃぁ商人と情報屋…ホムンクルスは俺と行動だな」

女海賊「あ!!ホムちゃんの装備整えて置いて…今の恰好は薄着すぎる」

ホムンクルス「私はお構いなく…」

女海賊「ダメ…最低限流れ矢に当たっても死なない様にして」

ホムンクルス「はい…」
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:24:22.06 ID:V1qeujs60
『露店』


店主「へいらっしゃい!!」

盗賊「装備品見繕って欲しいんだが…この金貨使えるか?」コトン

店主「うぉぉ…旧金貨じゃねぇか!!旦那ぁこれ何処で手に入れたんだい?」

盗賊「釣りは要ら無ぇから黙ってろ」スラーン

店主「…」

盗賊「意味わかるな?」

店主「へいへい…」

盗賊「ほんで…こいつらに合う装備品を頼む…出来れば金属糸の織物だな」

ホムンクルス「…」

情報屋「…」

商人「…」

店主「ありまっせ!金属糸のインナーと革の当て物…どうだい?」

盗賊「フードと羽織りも付けてくれ」

店主「へいへい…」

盗賊「あーこの女2人が脱いだ物はそのまま置いて行くからよ…好きに使え」

店主「おおおおぉぉぉ」

盗賊「2週間は着っぱなしだ…女くせえぞ?」

店主「おおおおおおおおおおおお!!」

盗賊「おい!早く着替えて来い…」

ホムンクルス「はい…ここで着替えるのでしょうか?」

店主「テントの中で着替えて良い…ムフフ」

盗賊「ところで店主…黒死病はどっから来てるか分かるか?」

店主「酒場の関係者から広まってるらしいですわ」

盗賊「酒場か…」

店主「なんでもフィン・イッシュの領事が広めたとかなんとか」

盗賊「あぁ…さっき噂を聞いたな…亡命して来たんだってな?」

店主「エリクサーを持って亡命して来た様ですぜ?黒死病広めて薬売って儲けようとか…ゲスい奴ですわ」

盗賊「ほぅ…何で領事がエリクサー持ってんだろうな?」

店主「旦那が何で旧金貨持ってるのか?」

盗賊「ヌハハそれは言うな…盗んだに決まってんだろ」

店主「エリクサーもそんな所でしょうな?」

盗賊「まぁ…大事に使ってくれ」
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:24:50.08 ID:V1qeujs60
『宿屋』


ローグ「待ってたでやんすよ…部屋はこっちっす」

盗賊「おぉ悪い悪い…ホムンクルスと情報屋の買い物が長くてな」

ローグ「何を買ったんすか?」

情報屋「天然樹脂とかいろいろね」

ローグ「何に使うでやんすか?」

情報屋「エリクサーの材料になるそうよ?」

ホムンクルス「他にも消臭効果のある薬も作れます」

ローグ「消臭?」

ホムンクルス「女くさいと言うものですから…」

盗賊「ぬぉ…根に持ってるのか」

ローグ「隠密するなら匂いは消した方が良いっすね?あっしも欲しいでやんす」

盗賊「女海賊は帰って無いのか?」

ローグ「まだっすねぇ…あっしも買い出しに行きたいんで留守番お願いでやんす」

盗賊「あぁ分かった…ゆっくりしておく」

情報屋「私とホムンクルスは水浴びしてくるわ」

盗賊「一応さっき買った武器は持って行け…手の届く所に必ず武器を置いとくんだぞ?」

情報屋「分かってる…」

商人「僕はシャ・バクダに来るの初めてだけどそんなに危ないの?」

盗賊「良い女はさらわれるからな…気を付けろ」



-------------------
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:25:16.63 ID:V1qeujs60
女海賊「あんたさぁ!!勝手に居なくならないでくれる?もう!!」プリプリ

剣士「はい…」

女海賊「未来?紐を離さないでね?」

子供「うん…」

盗賊「遅かったな?無事に買い物は済んだか?」

女海賊「剣士がすぐ居なくなっちゃうから時間掛かった」

子供「他の人に付いて行っちゃうんだ」

盗賊「そら大変だったなヌハハ…無事に宿屋に帰って来れて何よりだ」

女海賊「ホムちゃんは?」

盗賊「水浴びに行ってるが…お前も行って来たらどうだ?」

女海賊「剣士をお願い…未来?水浴び行くよ」

子供「うん!」
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:25:45.77 ID:V1qeujs60
『宿屋の酒場』


ドゥルルルン♪


情報屋「吟遊詩人が来てるわね」

子供「ママ?あの楽器は何?」

女海賊「あれはリュートと言う楽器…未来は興味あるの?」

子供「音…」

女海賊「はっ!!そうか…ミスリル銀を何処かに使えば良いのね?」

子供「うん」

商人「君は女海賊に似て賢いね…ミスリル銀はどの楽器にも使えそうだね?」

女海賊「私のパパなら作れる…武器より楽器を流通させた方が効率が良い…」

商人「そうだね」

女海賊「ちょっと行って来る…食事来るまで待ってて」

盗賊「あんま騒ぎ起こすなよ?」


----------------


女海賊「ねぇ…あんたの使ってるリュート…私にちょっと細工させてくんない?」

吟遊詩人「え…このリュートは私の大切な物でして…」

女海賊「見て…この剣の装飾はミスリル銀で出来てるんだ…この装飾をそのリュートに付けさせて欲しい」

吟遊詩人「あなたは一体誰なんですか?」

女海賊「私はドワーフの細工師だよ…そのリュートをエンチャントしたい」

吟遊詩人「なにかリュートに効果が付くんですか?」

女海賊「鎮魂の効果が付くよ…タダでやったげる」

吟遊詩人「はぁ…ですが今は演奏が…」

女海賊「5分で終わる…貸して?」

吟遊詩人「壊さないで下さいね?」

女海賊「うん…見てて?」


トンテンカン トンテンカン


女海賊「はい!終わり…装飾が付いて恰好良くなったでしょ?」

吟遊詩人「ありがとうございます」

女海賊「音が鳴る木の部分に細工してあるから…ちょっと音変わってるかも…鳴らしてみて?」

吟遊詩人「はい…」


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「余韻が出る様になりましたね?」

女海賊「おっけ!じゃんじゃん演奏して」


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721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:26:16.92 ID:V1qeujs60
ローグ「あねさん!!食事来てるっす」

盗賊「お前も早く座って食え…久しぶりの御馳走だ」

女海賊「あんた達は気楽で良いねぇ…こっちぁ魔王の影と戦ってんのにさ!」

盗賊「たまには休め!」モグ

商人「リュートの音変わったかい?」

女海賊「んーあんま分かんないな」

商人「効果は本当に少しづつなんだろうね?…魔槍を抜いても効果が実感無いのと同じかな」


ガヤガヤ ガヤガヤ

あの不愉快なリュートなんとかならんのか

あまり騒がないで下さいな

どいつもこいつも…むむむ

お店を変えましょうか?

当たり前だ!私は病み上がりで…

ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「あぁぁ食った食ったぁ…ちと酒注文してくるわ」

女海賊「私も何か持って来て!剣士の分も…」

盗賊「おぅ待ってろ…よっこら」ヨタヨタ

商人「盗賊は飲みすぎじゃない?」

情報屋「気にしないで?飲んだ時の方がしっかりしてるから」

商人「そうなの?千鳥足じゃないかハハ」


??「…」ドン

盗賊「ぬぁ!!何すんだてめぇ…」ガシ

??「ぶつかって来ておいてその言い分ですか…手を放しなさい」

盗賊「何言ってんだてめぇ…俺の懐から物盗っただろ」ギュゥゥ チャリン チャリン

??「衛兵!!私の持ち物を盗もうとした者が居ます!!助けて下さい」

盗賊「何だとおぉ!!ゴラてめぇ…外に出ろ」グイ

??「良いでしょう…」


商人「良いのかい?放って置いて…」

女海賊「未来?落ちた金貨拾っておいて?」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「ローグ!仲裁してきて」

ローグ「面倒な事になりやしたねぇ…」フラリ
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:26:51.00 ID:V1qeujs60
『宿屋の裏』


盗賊「ぐふっ…て…てめぇ…プロの刺客だな?」ポタポタ

??「衛兵…見ていましたね?私は正当防衛でしたね?」

衛兵「はぁ…」

盗賊「俺の方が物盗まれたんだ…何とかしろ衛兵!」

??「衛兵!この者を取り押さえなさい…私はこの金貨を盗まれそうになったのです」

盗賊「それは俺の物だ!!」


ローグ「盗賊さ〜ん何処にいるでやんすか〜?」

??「ちぃぃ…私は帰りますので後の処理は頼みますよ?」スタスタ

ローグ「ああ!!盗賊さん…血が出てるじゃないっすか…衛兵さん!!何してるでやんすか!!」

衛兵「う…手当出来る者を呼んで来る!」タッタッタ

盗賊「おい待て…くそぅ」

ローグ「これマズイっすね?血が出てるのは胸の真ん中じゃないっすか…」

盗賊「急所は外れた…エリクサーあるか?げふっ」ポタポタ

ローグ「飲んでくれやんす…」グイ

盗賊「…ゴク…はぁぁぁぁ」

ローグ「血がなかなか止まらないでやんすね…しっかり押さえるでやんす」

盗賊「剣士に回復魔法やらせてみてくれ…」

ローグ「今呼んでくるっす…待っててくれやんす」ダダダ


---------------
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:27:16.75 ID:V1qeujs60
剣士「僕は魔法なんか使えない…」

女海賊「良いからやってみて…ほらあんたが持ってた触媒」ポイ

盗賊「おぉぉぅ…来てくれたか…血が止まんねぇんだ」ポタポタ

剣士「どうやれば?」

女海賊「手をかざして…回復魔法!って…ホラ?」

剣士「こう?回復魔法!」ボワー

女海賊「ほら!!やりゃ出来んじゃん!!」

剣士「僕が魔法を…」ハテ?

盗賊「助かった…くっそあの野郎」

ローグ「衛兵が来る前に一旦宿に戻りやしょう…」

盗賊「…そうだな」

ローグ「誰だったんすかねぇ?」

盗賊「黒死病の治癒痕があった…ありゃ亡命してきた領事だ…間違いねぇ」

女海賊「仕返しするつもりかい?」

盗賊「決まってんだろ」

女海賊「大人しくしてるつもりだったんだけどね…騒ぎにしないで」

盗賊「俺ぁ泥棒だ…盗まれた倍は盗み返す」

女海賊「何盗られたの?」

盗賊「金貨全部持ってかれた」

女海賊「フフ盗賊も落ちたねぇ…」

盗賊「あいつはプロの刺客だ…酒場出た瞬間心臓ブスリだ」

女海賊「しょうがないね…白狼の盗賊団もっかいやるか」
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:27:45.77 ID:V1qeujs60
『宿屋』


準備して…今から2時間で帰って来るよ

ローグは他の酒場回って領主の砦に白狼の盗賊団が入ったって振れ回って

行くのは私と未来と盗賊…そして剣士

剣士にもアダマンタイト渡しておくからハイディングの声に合わせて付いて来て

使い方はアダマンタイトに付いてる磁石を回す…良い?分かった?

剣士は付いて来るだけで良いから…

狙いは領事が持って居ると思われるエリクサー

次に金目の物全部盗んで最後に街道でばら撒いてオシマイ


女海賊「まずハイディングして飛空艇に白狼の装備取りに行くよ」

盗賊「領事見つけたら俺が奴の持ち物を全部スって来る…いいな?」

女海賊「おっけ!上手くハイディング使って」

子供「ママ?いつも通りだよね?」

女海賊「うん…ちゃんと合図してね?」

子供「うん…」

女海賊「じゃ…行くよ!ハイディング」スゥ

剣士「ハイディング…」スゥ

女海賊「そうそう…それで良い…ハイディングする時は狭間に迷う事があるから見失わない様に確認して」

盗賊「まず飛空艇だな?」

女海賊「付いて来て…」タッタッタ
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:28:17.19 ID:V1qeujs60
『部屋』


商人「僕らは見物しておこうか」

情報屋「そうね?どこで見ておく?」

商人「屋根に上がれる場所が在れば良いけどね…」

ローグ「女性が居ると外は危ないっすから宿屋の屋上でガマンするでやんす」

商人「やっぱりそうだよね…」

ローグ「あっしは酒場回ってくるんで商人が2人を守るでやんす」

情報屋「商人よりも私の方が当てに出来ると思うわ?」

商人「ハハ僕は情報屋に守ってもらうよ」

情報屋「さぁホムンクルス?いきましょ?」

ホムンクルス「はい…」

ローグ「じゃぁ行って来るっす…2時間で戻るでやんす」

商人「いってらー」ノシ
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:28:44.43 ID:V1qeujs60
『領主の砦』



女海賊「見つけた?」

盗賊「おう…領主の部屋らしき場所に金目の物は集まって居そうだ」

女海賊「エリクサーは?」

盗賊「多分樽の中だな…」

女海賊「エリクサーの樽は盗賊と剣士で飛空艇まで運んで…私は騒ぎを起こす」

盗賊「分かった…」

女海賊「未来…リリースしたら煙玉巻いて」

子供「うん…」

女海賊「行くよ…リリース!」スゥ

盗賊「よし…見えた!衛兵1人だ」

女海賊「爆弾投げるよ!えい!!」ポイポイ


ドーン ドーン


女海賊「未来!煙玉!!」

子供「うん…」シュタタ ポイポイポイ モクモクモク

女海賊「もういっちょ!!えい!!」ポイポイ


ドーン ドーン


衛兵「なななな…なんだなんだ!?」

女海賊「行って!!」

盗賊「剣士!!付いて来い…」ダダダ

剣士「…」シュタタ シュタタ

女海賊「フフ四つ足…」

盗賊「どらぁぁぁ」ボカッ

衛兵「はぅぅぅ…」ドタ

盗賊「剣士!先に樽を運ぶ…そっち側持て!!」

剣士「あ…あぁ」ドギマギ

女海賊「未来!!おいで…好きな物を袋に入れて」ガッサガッサ

子供「うん…」

女海賊「袋持って盗賊に付いて行って」

盗賊「早く来い」

女海賊「私はもうちょい暴れる…」タッタッタ


ドーン ドーン ドーン
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:29:17.41 ID:V1qeujs60
『宿屋の屋上』


情報屋「始まったみたい…砦の方で光が見える」

商人「街道の方がザワ付き始めたね?大丈夫かな?」


ザワザワ ザワザワ

白狼の盗賊団が来てるらしいぜ?

マジか!?砦の方だな?

見て見たいわー誰か一緒に行かない?

おぉ!!光った…

ザワザワ ザワザワ


商人「派手だね…あっちでもこっちでも煙が出てる」

情報屋「光が高速で移動してるのは…何だろう?」

商人「光の石を使いながら狭間で移動してるっぽいね…あんな風に攪乱するんだ」

ホムンクルス「街道の方に走って来る様です…追われている様ですね」

商人「なんだか第三者視点で見てても応援したくなるね…不思議だね?」

情報屋「何かばら撒き始めたわ」

商人「ハハ成功した様だ」


ザワザワ ザワザワ

うぉぉこっち来るぞ!!

四つ足で走ってる…噂通りだ!!すげぇ…

おい!宝石ばら撒き始めた

皆あやかりに行くぞ!!うぉぉぉぉ

ザワザワ ザワザワ


商人「さて…部屋で待って居ようか」

情報屋「そうね…寒くなって来たし」

ホムンクルス「明日は雪が降るでしょう…」

商人「そっか…どうりで寒いわけだ」ブルブル
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:29:48.67 ID:V1qeujs60
『部屋』


リリース! スゥ


商人「おかえり…あっという間だったね」

盗賊「まだ寝るまで間があるから飲み直すぞ」

ローグ「そう言うと思ってサボテン酒買ってきといたでやんす」

盗賊「おお気が利くなぁ…」

ローグ「領事から金貨は取り返したでやんすか?」

盗賊「あいつはなんか色々持っててな…全部頂いたヌハハ」

女海賊「私は疲れたから向こうの部屋で休む…剣士!未来!寝るよ…」

子供「うん…パパもおいで」グイ

剣士「あ…あぁ」

ホムンクルス「おやすみなさい…」

ローグ「…で?領事は良い物持ってたでやんすか?」

盗賊「いろんな通行手形だな…こいつの本職は密偵だな」

商人「見せてもらって良い?」

盗賊「俺は要らん…全部やる」

商人「へぇ…すごいなシン・リーンもキ・カイでも身分証明がある…全部本物じゃないか」

盗賊「何者だ?あいつは…」

商人「どうもセントラルの商工会メンバーの様だね」

盗賊「商人ギルドか?」

商人「いや…貴族中心の物流ネットワークさ…秘密結社と言えば良いのかな」

情報屋「それって闇の同胞団と関係ある?」

商人「人によって呼び名が違うだけで中身は同じだと思うよ」

盗賊「闇の同胞団は聞いた事あんな盗賊ギルドの上部団体だそうだが詳細が全く分かんねぇ」

商人「僕たちも白狼の盗賊団として世間から見れば謎の秘密結社じゃない…規模は小さいけどさ」

情報屋「私達の様なグループが他にもあるという事ね?」

商人「領事はその中の一人って事だね」

盗賊「これ見てくれ…貝殻だ」

商人「ははーん…魔女が使ってた貝殻だね…それを使って連絡しあってるんだ」

盗賊「シン・リーンの身分証見せろ…これは…元老院の一人だな?」

情報屋「やっと秘密が解けた…アサシンが単独行動で何でもする訳…闇の同胞団に悟られたくなかったんだ」

商人「これは立ち振る舞い考えておかないと危険かもね」

盗賊「大事な物は飛空艇に隠してくる…」

商人「そうだね…用心しよう」
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:30:20.14 ID:V1qeujs60
『翌朝』


チュンチュン


盗賊「おぉ起きたか?外見て見ろ…シャ・バクダから出るのに荷物監査やってる」

女海賊「私らには関係無いよ」

盗賊「今日はどうするつもりだ?」

女海賊「ラクダで星の観測所行こうと思ってたけど…」

盗賊「お前は謎の荷物持ち過ぎだからシャ・バクダの出口で掴まんぞ?」

女海賊「はぁ?あんた馬鹿?そんなん私だけハイディングして行けば良いじゃん」

盗賊「お?ヌハハ…そうだな忘れとったわ」

女海賊「ローグと一緒にラクダの手配やっといて!朝食食べたら行くから」

盗賊「雪降ってるから防寒着用意しとけ」




『シャ・バクダ検問』


はい次!荷物見せろ

手ぶらで何処行くんだ?

オアシス巡りだと?

男4人と女子供か…

どこの貴族だ?

けっ…何も持ってねぇな…はい行け!

次!!



ローグ「シャ・バクダは壁が無いから何処からでも出れるんすけどねぇ…何か意味あるんすかね?」

商人「検問を迂回する人をどこかで見てるんじゃないかな?」

盗賊「ここは見晴らしが良いからな…他の場所から出るやつなんか直ぐに分かる」

ローグ「じゃぁ出るとしたら夜っすね?」

商人「ハハつまりまだ街に残って居る人が怪しいって事でしょ」

ローグ「あー検問に意味ありそうっすね…あぶり出しなんすね」

盗賊「あっちはまだ目標を絞れていないという事だ…俺達は安全だ」


リリース スゥ


女海賊「剣士は私と一緒にラクダにに乗って…あんたが前」

盗賊「おいおい大丈夫かぁ?」

女海賊「うっさいな…やらせたら何でも出来んの!!ホラ早く…」

剣士「あ…あぁ」

ローグ「あーやって思い出させようとしてるんすね…でも大分落ち着いてきやしたね?」

商人「そうだね?他の人格が見えなくなってきたね」

盗賊「剣士は元々無口だから分からんなヌハハ」
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:30:59.34 ID:V1qeujs60
『星の観測所』


衛兵「…ここは一般の立ち入りは出来ないのだが?」

女海賊「アサシンはここに居ないの?あぁぁあ無駄足だったかぁ!!」

衛兵「アサシン様をご存じで?」

女海賊「お!!あんたさぁドラゴンの義勇団知ってる?どうなっちゃったの?」

衛兵「もしや…そこに居られる方はいつぞやのエルフ…でしょうか?」

女海賊「剣士の事?あんたもしかして元ドラゴンの義勇団?」

衛兵「近衛にお知らせせねば…しばしお待ちを」タッタッタ


商人「んんん…あんまり顔は見せない方が良いと思うな」

情報屋「何処で黒の同胞団の目があるか分からないわね」

女海賊「黒の同胞団?なんそれ?」

商人「僕たちと同じ様な秘密結社だよ…多分敵側さ」

女海賊「そんなんどうでも良いよ…それに私ら秘密結社じゃないし」

商人「相手にはそう見えているのさ…黒の同胞団は白狼の盗賊団の対局側に居ると思う」

女海賊「ふ〜ん…」チラリ

ローグ「あっしを疑ってるでやんすか?よしてくれやんす」

女海賊「見分け方あんの?目印とか…」

商人「分からないな…でも昨日の感じからするとミスリス銀の音は嫌がって居そうだね」

女海賊「…つまり魔王の欠片に操られてる…そう言いたい?」

商人「鋭いね…多分そうだと思う」

女海賊「おっけ!あぶり出そうか…剣士!ここに来て」

剣士「え…あ…はい」

女海賊「ローグ!剣士が回復魔法やるから周りに振れ回って来て」

ローグ「目立っちゃいますけど良いんすかね?」

女海賊「良いから!!黒死病を治せるっておまけ付けといて」

ローグ「剣士さんが持ってる賢者の石の効果っすね?良いっすね…」

商人「ハハ君は大胆だねぇ」

女海賊「そうさ!これで敵味方が判別出来るなら簡単じゃん…」ピカー

商人「ミスリル銀の代わりに光の石か」

女海賊「盗賊は周辺を警戒しといて」

盗賊「…なんだか強引だなぁ?」

女海賊「剣士の記憶を取り戻そうとしてんだ…ちょっと強引なくらい我慢して」

盗賊「へいへい…」



----------------
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:31:28.43 ID:V1qeujs60
近衛「さささ…こちらへ」

商人「ここの近衛は信用できそうだね?」

女海賊「私は剣士の傍に居るからさ…あんた達観測所の中で話聞いておいて」

盗賊「こっちは任せるぜ?」

女海賊「ホムちゃん!近衛にさぁエリクサーの作り方教えておいて?」

ホムンクルス「はい…わかりました」

女海賊「ハイ!よってらっしゃい!みてらっしゃい!!黒死病が治る石だよぉぉ…一回触ったら次の人と交代!!」



おい!あそこの光ってる所で黒死病治す魔法やってるんだとよ

一応行ってみるか?

エルフが回復魔法掛けてくれるらしいぜ?

女か!?

胡散臭い女と男のエルフだな

なんだよ…男のエルフか
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:32:02.06 ID:V1qeujs60
『数時間後』


盗賊「大分人が掃けたな…やっぱ女が居ないと寄って来ねぇか?」

女海賊「はぁ?ここに美人が居んじゃん!!」

盗賊「お前は派手過ぎて近寄り難いんだよ」

女海賊「フン!近衛から何か聞けた?」

盗賊「アサシンと魔女が1ヶ月ぐらい前までここに居たらしい…セントラルに向かったんだとよ」

女海賊「なんでセントラルに?」

盗賊「領事に盗まれた壺を追ってるんだとか…あいつらも領事の被害に遭ってる様だ」

女海賊「壺?」

盗賊「何の壺だかは聞かされて無いそうだ…で?敵味方の判別はどうだ?」

女海賊「ほとんど味方だね…ちょっと気付いた事があんだ」

盗賊「ほう?」

女海賊「こっちのフィン・イッシュ側の人はね…銀の装飾品とか身に着けてるんだよ」

盗賊「確かに仮面とか付けてる奴が多いな」

女海賊「やっぱ魔除けが働いてると思う」

盗賊「じんわりと魔除けが効いて居そうだという事だな?」

女海賊「お姉ぇが言ってたんだ…魔王と戦うっていうのはこういう事だって」

盗賊「勇者個人じゃなくて国とかそういう単位なんだな?」

女海賊「そう…お姉はそういう戦いに力を出してる…ミスリル銀を流通させてね」

盗賊「おい!向こうの木陰にこっち伺ってる奴がいるな?」

女海賊「近寄って来ないさ」

盗賊「ちっと見て来るな?」

女海賊「また面倒起こさないでよ?もう帰るつもりだから」

盗賊「分かってる…誰だか確認するだけだ」
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:32:36.18 ID:V1qeujs60
『木陰』


どうします?昨晩の酒場に居た連中ですね

私の荷物は持って居なさそうか…

検問の調べではただの旅行者だと


リリース スゥ


盗賊「こんな所で何やってんだぁ?」

領事「うぉ!!いつの間に…」

衛兵「お前は!!」

領事「何故ピンピンしているのでしょう!?」

盗賊「何故ってそらぁ回復魔法してもらったからだ…あそこでやってんだろ?」

領事「あなた達は何者ですか?アサシンの仲間なのですね?」

盗賊「さぁな?てめぇ俺を殺そうとしておいてその言い分…頭おかしく無ぇか?」

衛兵「口をわきまえろ」スラーン

盗賊「おおっと待った待った…もうその手は食わねぇぜ?…こっちあぁ丸腰だ」

領事「私の荷物をどこにやったのですか?」

盗賊「何の事だ?俺は知らねぇな…それよりも俺の金貨返せよ」

領事「クフフあんなはした金でいつまでも私を突け狙って居るのですね?」

盗賊「聞いたか?衛兵…やっぱ俺悪く無ぇよな?」

領事「私は昨日荷物を盗まれてしまいましてねぇ…もう返せないのですよ」

盗賊「んぁぁ!?とぼけてんじゃ無ぇぞゴラ」

衛兵「…やはりこいつらでは無さそうですね」ヒソ

盗賊「なにコソコソ話してんだ…さっさと盗んだ物返せよ」

領事「仕方ありませんねぇ…」スッ アレ?

盗賊「探してんのはコレか?」スチャ

領事「それは私の物…いつの間に盗ったのですか」

盗賊「毒牙のナイフか…なかなか良い物じゃねぇか」

領事「忌々しい悪党ですね…」

衛兵「領事様…お下がりを」

盗賊「俺の金貨返せ無ぇってんならコレ貰って行くぜ」

衛兵「はぁ!!」ブン スカ

盗賊「おぅっと危ねぇ…悪いが多勢に無勢じゃ戦う気なんか無ぇ…じゃぁな」ノシ

衛兵「待て!!」

領事「放って置きなさい…」

衛兵「しかし領事様はもうあのナイフしか持ち物が…」

領事「向こうの衛兵に通報されると追われる身になります…一旦引きましょう」

衛兵「はっ…」
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:33:02.67 ID:V1qeujs60
『星の観測所』


女海賊「どうだった?」

盗賊「ありゃ領事だ…こっちの様子を伺っていやがった」

女海賊「バレてんの?」

盗賊「まだだな…ホレ?戦利品だ」ポイ

女海賊「また盗んだんだ…毒牙のナイフか…危ない物持ってんね」

盗賊「俺の金貨を返せって難癖付けて置いた…これで俺らが全部盗んだとは思わねぇ筈だ」

女海賊「この武器はホムちゃんの護身用にすると良いね」

盗賊「そうだな…小さいし丁度良い」

女海賊「剣士!そろそろ終わりにしようか…疲れたでしょう?」

剣士「うん…まぁね?」

盗賊「まともに会話できるようになってきたな?」

女海賊「ここに居たのがずーっと古い記憶に感じてるみたい…多分夢幻を思い出す感じなんだと思う」

盗賊「俺はその感じが分からん」

女海賊「ほら…中に入ろ!」グイ

盗賊「みんな中に居るのか?」

女海賊「ローグだけシャ・バクダに戻った…日が暮れたら飛空艇で迎えに来るよ」

盗賊「なるほど…じゃぁそれまでゆっくり出来るな」

女海賊「もう外には出ないで…どうせ領事みたいな奴らが他にも居るだろうから」

盗賊「まぁそうだな…」
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:33:49.16 ID:V1qeujs60
『部屋』


…こういう仮説が立つよ

根の森に精霊の記憶がオーブになっていくつもある

精霊はこの記憶を未来まで届けて超高度AIの問題点を解決したい

でも魔王はこの記憶を届けさせたくない…中身を改ざんしたいんだ

どうやってオーブの記憶に入るのかは分からないけれど

そのオーブの記憶改ざんを阻止しようとしているのが勇者の役割

ほら伝説では魔王を退けた後に勇者のその後を誰も知らないでしょ?

それは今いるこの世界に帰って来てるんじゃないか?

伝説の勇者はみんな精霊に導かれて…そして目が青い

剣士のバラバラになった魂がそれぞれの記憶の世界で勇者をやってるんじゃないか?



盗賊「おうおう熱くなってんじゃ無ぇか…」

商人「あぁおかえり盗賊」

女海賊「今の話…ホムちゃんに聞いたら早いんじゃないの?」

ホムンクルス「私は精霊の記憶を根の森に置いて来ました…」

女海賊「お!?てことは新しいホムちゃんの誕生?」

ホムンクルス「精霊の40年分の記憶で基幹プログラムが更新されていますのである程度の知識は残って居ます」

商人「ホムンクルス…君に何か意見はある?」

ホムンクルス「精霊の記憶データを変える事が出来るのは精霊とアドミニストレータだけです」

商人「アドミニストレータ?誰?」

ホムンクルス「管理者権限を持つ者と言えば良いでしょうか?」

商人「管理者?僕かい?」

ホムンクルス「商人は私個体の管理者です…私を通じて記憶データは変える事が出来るかもしれませんね」

商人「管理者権限を持つ者って…もしかして勇者の事かな?」

ホムンクルス「それは今の私には断定できません」

商人「まてよ…辻褄が合うな…だから魔王は勇者を器にするんだ」

情報屋「辻褄が合わない事があるわ?魔王は勇者の魂をどこに連れて行ってるの?深淵に落ちて行ってる筈でしょう?」

商人「う〜ん…魂は複製したりするのかな?」

ホムンクルス「私の基幹プログラムは記憶から再構築したオブジェクトの集合体です」

商人「君の場合は複製が可能という事を言ってるね?それが人間でも同じなんだろうか?」

ホムンクルス「あなたの中に私の心があると言ったのは商人ですよ?」

商人「…そうか!!自我と魂は別物だ…魂は記憶で複製されるのか…つまりオーブは自我の無い魂の集合体と言える」

情報屋「記憶が魂という入れ物を構築して自我がそこに宿る?そんな感じ?」

商人「それらを総じて僕たちは心って表現していたんだね」
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:34:15.99 ID:V1qeujs60
…となると時間に意味が出て来るな

自分が今意識しているのが自我だったとすると

意識しているその時が時間の中心点だ

過去は全部記憶になっていくと仮定して…ん?

もしかすると今も記憶の中か?

いや…そうかもしれない

今この瞬間が記憶の中の出来事なのを否定できる事が…



盗賊「あぁぁブツブツが始まった…おい!!聞いてんのか?」

商人「あぁごめん頭が混乱しちゃてさ…ホムンクルス!今の正確な時間は?」

ホムンクルス「衛星から受信された時間はAD9887-06-28 17:30:33です」

商人「ほっ…ここが現実だと信じる…君だけは現実に居てくれ」

盗賊「何言ってんだお前…ちっと顔洗ってこい!!」



------------------
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:34:46.98 ID:V1qeujs60
女海賊「ホムちゃん笑ってみて?」

ホムンクルス「こうでしょうか?オホホホホ」

女海賊「なんか違うな」

ホムンクルス「ウフフフフ」

女海賊「いぁ顔が笑ってないんだって…」

ホムンクルス「突然笑ってと言われましても…」

女海賊「じゃぁこれは?こちょこちょこちょ…」

ホムンクルス「…」ビク ビクビク

盗賊「ぶっ…ぐははは!なんだその引きつった顔は!!ぐはははは…」

女海賊「ホムちゃん…あんた反応がいちいち変なんだよ…ガマンしなくて良いから」

ホムンクルス「はい…はぁはぁ」

女海賊「疲れた顔は出来んじゃん」

盗賊「顔真っ赤になってんなw」

ホムンクルス「動悸を抑える為に血流を…」

女海賊「そそ…そういう自然な感じ」

商人「僕も混ざろうかな?」

女海賊「おっけ!掴まえておくからやって」グイ

商人「フフフフフフフフフ…こちょこちょこちょ」

ホムンクルス「あ…いや…やめてくだ…」バタバタ ゴン

商人「いでっ!!鼻ぶった…」タラー

女海賊「ぶっ…あんた変態の顔してるよ」

ホムンクルス「はぁはぁはぁ…すみません…はぁはぁ」グター

女海賊「なんで鼻血が左右交互に出んのブハハハ」

ホムンクルス「フフどういう現象でしょうか?」

女海賊「お!!ホムちゃん今笑った!!」
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:35:19.35 ID:V1qeujs60
『夜』


リン ゴーーーーーーン


女海賊「来たね…皆行くよ」

近衛「あの飛空艇は皆さんの船だったのですね」

女海賊「目立ち過ぎるからなかなか降りられないんだよ」

近衛「アサシン様を追って南へ行くのでしょうか?」

女海賊「まぁそうなるかな?なんで?」

近衛「フィン・イッシュ女王様への伝令を飛ばさなければと思いまして」

盗賊「俺達の行動がツーツーになる訳だが…」

女海賊「ふ〜ん…まいっか…いちいち気にしてるとキリ無いさ」

商人「迷惑にならなきゃ良いけどね…ほら僕たちは海賊って事になってるじゃない?」

女海賊「近衛!私達の事は女王以外に知られない様に気を付けた方が良いよ…女王が危険になるよ」

近衛「はい…承知しております」

女海賊「それと…まだ前の領事がうろついてるからさ…ここも安全じゃ無いのは知っといた方が良いよ」

近衛「それも把握しております」

女海賊「じゃいっか…エリクサーの樽一個降ろしていくからさ…領事に盗まれない様にね」

近衛「はっ…」

女海賊「ほんじゃ皆早く飛空艇に乗って…長居すると良くない」

ローグ「あねさ〜ん早く乗ってくれっすぅ!!」

女海賊「ローグ!!エリクサーの樽一個降ろして」

ローグ「アイサー」ヨッコラ

近衛「ご支援感謝いたします」

女海賊「じゃ…バイなら〜」ノシ

近衛「お気をつけて」ビシ


フワリ シュゴーーーーーーー
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:35:51.29 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


ビョーーーーウ バサバサ


盗賊「雪がひでぇな…雲の上に出た方が良さそうだが?」

女海賊「下が見えなくなるじゃん」

盗賊「商隊の列を気にしてんのか?」

女海賊「それ以外にあると思う?」

盗賊「まぁ確かに商隊はえらく多いな…なんで又寒い北に行くのやら」

商人「シャ・バクダは割と雪が少ないよ」

盗賊「貴族が乗る馬車も移動してるが疎開か?」

女海賊「光る海から遠ざかろうとして居ないかな?シャ・バクダは川も無いし」

商人「その可能性はあるかもね…」

盗賊「悪い奴らはシャ・バクダに集まるってか…まぁ昔からそんな感じだが」

女海賊「シャ・バクダの周辺は他の遺跡も多かったよね?」

盗賊「たしかに色々あるが…情報屋!他になんかあるんか?」

情報屋「伝説はあるけれど場所は分かって居ないわ…ほらドリアード伝説とか」

商人「砂漠西部の砂嵐地帯もいろいろ伝説あるらしいね?」

情報屋「出土品の盗掘で場所が特定できていないらしいわ…雪に埋もれてもっと探しにくいでしょうね」

盗賊「なんで他の遺跡なんか気にすんだ?」

女海賊「シャ・バクダに行っても何も無いからさ…他に何か在んのかなってさ」

商人「そういえば黒の同胞団は拠点が何処なのか分からないね」

女海賊「地図見て…シャ・バクダが此処で…周りに何も無い」

情報屋「そうね?どうしてあそこに人が集まるのかしら?」

盗賊「そら商隊が多いもんだからよ…あと麻薬だな」

商人「ケシの原産は南の大陸の方だね…北の大陸にはあまり分布していないのにどうして?」

情報屋「錬金術…」

盗賊「材料はなんだか知らんが麻薬は多いな」

情報屋「シャ・バクダの錬金術がどこかに残されているのかもしれない」

盗賊「こんだけ人が移動してりゃその内しっぽ出しそうだな?」
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:36:27.08 ID:V1qeujs60
『セントラル上空』


ビョーーーウ バサバサ


盗賊「すっかり雪に覆われたな…」

ローグ「あねさん!!かしらの船が入船してるみたいっす!」

女海賊「え!?マジ?」

ローグ「あのでっかい貨物船は間違いないっすね…ドラゴンの義勇団の旗印もあるっす」

盗賊「それにしてもこの光る海は眩しくて見れんな」

ローグ「そーっすね…こんなに太陽反射するんすね」

盗賊「飲むとやっぱ塩辛いのか?」

ローグ「後で飲んでみやしょう」

女海賊「ローグ!お姉ぇの船の船尾に飛空艇降ろしてハイディングして」

ローグ「アイサー」


フワフワ ドッスン


船乗り「おかえりなせぇ」

女海賊「お姉ぇは?」

船乗り「船降りて2日程もどってねぇす」

女海賊「何処に行くか言って無い?」

船乗り「俺ら待機命令だけなんで何も…」

女海賊「他の船員は?」

船乗り「見ての通り一緒に降りて行っちまいました」

女海賊「どうすっかな…」

盗賊「上から見た感じまだ津波の被災後だからここに居た方が良いんじゃ無ぇか?」

女海賊「んんんお姉ぇが帰って来たら私しか話出来ないしな…ローグ!!盗賊と一緒に様子見て来て」

ローグ「あねさんは留守番でやんすか?」

女海賊「しょうがないじゃん!お姉ぇと入れ違いになるかも知んないし」

盗賊「まぁ大人しく待ってろ…剣士連れて行っても良いか?」

女海賊「…なんか心配なんだけど」ジロリ

盗賊「黒死病の手当ては剣士しか出来んだろ?」

女海賊「夕暮れ前に必ず戻って」

盗賊「分かってるって…俺ら3人はハイディング出来るから何かあっても大丈夫だ」

女海賊「フン!早く行ってきて」
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:37:02.33 ID:V1qeujs60
『夕方』


盗賊「戻ったぜ?」

女海賊「お姉ぇ!!無事?」

女戦士「お前たちが来て驚いた…剣士が元に戻って何よりだ」

女海賊「セントラルはどうなってんのさ!?」

盗賊「あぁ行か無ぇ方がいいぜ?クーデターに巻き込まれる」

女海賊「又人間同士争い始めようっての?」

女戦士「貴族居住区で市民が立て籠っているのだ…どうやら王国側とにらみ合っている」

女海賊「黒死病はどうなってんの?エリクサーのレシピを国王に届けたんだけど…」

女戦士「それは知らんが病気はまん延しているぞ?私達は中央で市民の救援をしていた所だ」

盗賊「フィン・イッシュも救援に動いて居るんだが貴族居住区で立て籠もってる奴らがどうにも動かんらしい」

ローグ「貴族居住区で麻薬を配ってるっぽいすねぇ」

女海賊「市民を麻薬漬けにしてるって事?」

盗賊「あぁだからお前は行かない方が良い…貴族居住区は昼間から乱交になっている」

女海賊「…ちょっと状況分かんない」

盗賊「素っ裸な女がそこら中に転がってんだよ!復興なんかまるでやる気無ぇ…昼間からヤリっ放しだ」

女海賊「何それ…なんでそんなんなっちゃってんのよ…」

女戦士「麻薬漬けになって居るのは衛兵も同じだ…だから手を出せんのだ」

ローグ「地道に中央で復興しようとしてる人を助けるしかないっすね」


商人「こういう事かな?貴族院は麻薬で支持基盤を得ている…」

女戦士「その通りだ…支持基盤の強い貴族院に王国は抑え込まれているのだ」

商人「光る海で危機感を持った魔王の欠片が足掻いた結果だね…こんな風に人を扇動する」

盗賊「領事と同じ様にくさった奴のやる事だな」


女海賊「麻薬は何処にあるか分かる?全部燃やしてやる」

女戦士「それを調べるのは少し時間が掛かるぞ?」

盗賊「やめとけ…麻薬は一か所になんか置かねぇ…もうまん延してんだ探せる訳無ぇ」

女海賊「…分かった…作戦変える」

女戦士「言ってみろ」

女海賊「アレ見て…セントラル城の横にある鐘楼…あの鐘を鎮魂の鐘に付け替える」

盗賊「おぉ!?それなら出来そうだな」

女海賊「今日の深夜あの上まで飛空艇で行ってロープで鎮魂の鐘を降ろす」

盗賊「おいおい…まさか俺にロープで鐘楼まで行って付け替えろとは言わんだろうな?」

女海賊「確か捕虜だったよね?これが成功したら解放したげる」

盗賊「マジかよ…俺一人じゃ無理だ支え手が必要だ」チラリ

ローグ「…」ゴクリ

女海賊「…」チャキリ

ローグ「わーったすわーったっす…そのデリンジャーは仕舞って下せぇ」
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:37:43.22 ID:V1qeujs60
『深夜』


フワフワ


ローグ「鐘を降ろすでやんす」ソロソロ

盗賊「俺も降りるから後からローグも降りて来い」スルスル

女海賊「あんた達降りたらハイディングするから自力で登って来て」

ローグ「あっしも降りるっす…あねさん頼んますよ?」スルスル

女海賊「ハイディング!」スゥ



------------------



盗賊「吊るしてある鐘はどうやって付いてる?」

ローグ「金具に引っかかってるだけでやんす」

盗賊「よし…さきにそいつ外すぞ…反対側持て…むむむ」

ローグ「重いっすねコレ」

盗賊「鉄の塊だ重いに決まってる…おととと…落とすなよ?」

ローグ「ここに一回置くでやんす」ゴト

盗賊「ふぅ…まぁ2人でやれば余裕か…」

ローグ「鎮魂の鐘引っ張るでやんすよ?受け取って下せぇ…よっ」グイ

盗賊「もうちょい強く引っ張れ…手が届かん」

ローグ「ほいさー」グイ

盗賊「ととととと…くっそ重めぇ」グイ グイ

ローグ「こっちに引っかけて下せぇ」

盗賊「ぬぉらぁ!!」ゴトリ

ローグ「あっしは反対側に回るでやんす…」

盗賊「よしいくぞ?しっかり支えろよ?おらっ…むむむ」グイ

ローグ「くぁぁぁこの鐘の方が重いっすね…ふん!」グイ

盗賊「引っかかってるか?」

ローグ「大丈夫っす…そのままゆっくり降ろして下せぇ…」

盗賊「だはぁぁ…ロープ抜くぞ?」

ローグ「元の鐘は持って帰るんすか?」

盗賊「当たり前だろう!こんな所に置いてったら目立っちまう」グイグイ ギュー

ローグ「終わりっすね?あっしは先に上に上がるでやんす」スルスル

盗賊「おう!俺も行く…」スルスル

ローグ「なんか登りの方が長いっすねぇ…かなり登った筈なんでやんすが…」エッホエッホ

盗賊「俺ら狭間に迷ってんなこりゃ…」

ローグ「ロープで繋いでるのに迷うとか…嫌んなりやすねぇ」

盗賊「はぁぁぁぁぁ登るしかあるめぇ…」



-------------------
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:38:25.56 ID:V1qeujs60
盗賊「だはぁぁぁぁぜぇぜぇ…ローグ…無事か?」

ローグ「ひぃひぃ…もう手が動かんでやんす」

女海賊「遅っそい!!」

盗賊「俺らロープ登んのに狭間に迷ってずっと登ってたんだよ…はぁはぁ」

ローグ「鐘の付け替えは5分で終わったでやんす…あとずっと登ってたんすよ…ひぃひぃ」

盗賊「ちと元の鐘はロープにくくってあるから適当に処理してくれ…俺は寝る!」

ローグ「あっしも休むっす」

女海賊「上手く行ったんならまぁいっか…戻る」

盗賊「ヌハハハこれで俺は自由の身だ…ムハハハ」



『翌朝』


リン ゴーーーーーーン


女海賊「フフ鳴ってんね」

女戦士「私は中央まで支援に行って来るがお前はどうする?」

女海賊「私も行ってみようかな?」

女戦士「来るならお前のその派手な格好はヤメロ…目立ち過ぎる」

女海賊「私にぼろ布着ろって?ムリムリ…」

女戦士「なら来るな…代わりに父にミスリル銀を返してきてくれ」

女海賊「パパは今どこに居んの?」

女戦士「名も無き島の沖で船団を組んでいる筈だ…探せるだろう?」

女海賊「お姉ぇはミスリル銀を流通させに来たんじゃないの?」

女戦士「買い取る予定の者と連絡が取れん…恐らく王国の人間だがコンタクト出来んのだ」

女海賊「オリハルコンの事もあるし一回パパん所に帰るかな…」

女戦士「剣士と未来を連れて3人で行ってみてはどうだ?」

女海賊「分かった…ダッシュで行って来るよ…戻るまで1週間かな?」

女戦士「こっちは時間が掛かりそうだゆっくりして構わん」

女海賊「おっけ!エリクサー置いて行くからさ上手い事使って」

女戦士「それは助かる」
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:39:02.78 ID:V1qeujs60
『貨物船居室』


シュゴーーーーー


ローグ「あれ?飛空艇が飛んでいく音…あねさんどっかいったんすかねぇ?」

盗賊「んぁ?つつつ腕が張って痛てぇ…昨夜はひどい目に合った」

ローグ「でもベッドで寝られるのは良いでやんすねぇ」


ガチャリ バタン


女戦士「さぁお前等起きろ!今は猫の手も欲しいのだ…中央へ行くぞ」

盗賊「女海賊の次は女戦士かよ…」

ローグ「さっき飛空艇が飛んで行った様でやんすが何かあったんすか?」

女戦士「女海賊はミスリル銀の輸送で飛んでもらった…剣士と未来も一緒だ」

盗賊「おぉぉやっと捕虜解放されたか」

女戦士「残念だが次は私の捕虜だ…しっかり働いて貰うからな?」

盗賊「商人は何処行った?」

女戦士「先に起きて食事をしている…情報屋とホムンクルスももう起きて居るぞ?」

盗賊「俺らは昨夜遅くまで働いたんだよ…ちっと休ませてくれよ」

女戦士「ダメだ…今は男手が欲しい」

盗賊「て事ぁ重労働だな?」

女戦士「瓦礫の撤去と言えば分かるか?」

盗賊「マジかよ…」

女戦士「情報屋とホムンクルスは黒死病の手当てに回ってもらう予定だ」

盗賊「くっそ…女海賊…あんにゃろう上手く逃げやがったな」

女戦士「文句言って無いで早く飯を食え…食ったら行く」

盗賊「へいへい…」
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:39:38.68 ID:V1qeujs60
『セントラル中央広場』


私達はフィン・イッシュ軍の邪魔にならない様に後方支援に専念する

テントを設営して炊き出しを1班

怪我人と黒死病の手当てに2班

手の空いた者は瓦礫から木材を収集してくれ


盗賊「俺らはテント設営だな」

商人「僕は木材収集だ」

ローグ「いやぁぁ働いてる人にセントラルの衛兵が一人も居ないのは異様でやんすね?」

盗賊「おかげで自由ではあるがな?」

商人「本当に変だね?女戦士はセントラル側と何か話出来て居るのかな?」

盗賊「フィン・イッシュとは協調しようという話は出来てるらしい」

商人「じゃぁフィン・イッシュがどういう話をしているかだね?」

盗賊「んんん…マジで異様だな」


リン ゴーーーーーーーン


ローグ「なーんか鐘の音がむなしいっすねぇ…苦労して取り換えたんですがねぇ…」

盗賊「ちったぁ中央に人が戻るのを期待していたが…昨日と変わん無ぇ」

商人「貴族居住区まで見て来たんだよね?」

盗賊「あぁひどいもんだ…薬漬けの女が股開いて泡吹いてる…そんなんがそこら中に居るぞ」

商人「それでどうして体制が保てるのか理解できない」

盗賊「俺らが近寄ろうとすると狂った民衆が騒ぎ始めるんだ…ほんで大乱交よ…殺す訳に行かねぇから手も出せん」

商人「…それさ…人間の本能じゃないかな?」

盗賊「麻薬のせいでか?」

商人「自我を無くすとそういう行動をするんじゃないかってね」

盗賊「自制する部分が無くなるってか?…まぁそうかも知れんな」

商人「死人がどれくらい出てるんだろう?」

盗賊「さぁな?欲望が満たされている内はまだ良いんじゃねぇか?」

商人「ソコだよね…満たされなくなった時にどう行動するんだろう…」

盗賊「薬の切れ目は確かに暴れ出すな」

商人「なんだかシャ・バクダのカタコンベはこうやって出来た気がする」

盗賊「お前不吉な事言うのな…」
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:40:27.51 ID:V1qeujs60
『昼』


リン ゴーーーーーーン


女戦士「よし!1班は小休止だ!…炊き出しが出来上がって居るから食事をしておけ」

盗賊「ふぅぅぅローグ!!休憩だとよ」

ローグ「アイサー」

商人「船で働くのより随分ラクだね」

盗賊「だなぁ!?慣れりゃどうって事無ぇ」

ローグ「盗賊さん見て下せぇ…セントラル城の内郭上っす」

盗賊「んぁ?何か見えるか?」

ローグ「でかい鎧着た…なんなんすかねぇ?衛兵にしちゃデカ過ぎやしやせんか?」

商人「本当だね?魔物みたいに大きい」

ローグ「なんか…のたうち回ってる様ですが…やっぱ魔物っすかねぇ?」

盗賊「大きさ的にミノタウロスだな…女戦士!何か知らんのか?」

女戦士「私は陸に上がってまだ3日目だ…お前達とさして変わらん」

盗賊「俺ぁ船まで戻って望遠鏡持ってくる」

女戦士「アレは私の物だ!傷つけるなよ?」

盗賊「分かってる分かってる…すぐ戻る」ダダッ


--------------------


盗賊「持ってきたぜぇ」タッタッタ

女戦士「貸せ!私が確認する」

盗賊「んだよ…やっぱお前も気になってんじゃねぇか…ホレ」ポイ

ローグ「かしらも本当はあねさんにそっくりなんすよウヒヒ」

盗賊「んで?あのでかい奴は何だ?」

女戦士「ラットマンの様だな…亜種か?」

盗賊「俺にも見せろ!」

女戦士「フン!壊すな?」ポイ

盗賊「…どれどれ…ほーーう間違い無ぇありゃラットマンリーダーだな…どうやって手懐けたんだか」

女戦士「セントラルには魔物使いが居ると言うのか?」

盗賊「かもしれんな?あんなんが城守ってたらそりゃ近付け無ぇわ」

女戦士「察するに王国側にラットマンリーダーが居てその他衛兵は貴族院側と言う構図か」

盗賊「衛兵全部貴族院側って訳でも無さそうだぜ?精鋭兵が城周辺に鎮座している」

ローグ「あっしにも見せてくだせぇ…」

盗賊「ほい…」ポイ

商人「なるほどね…多分戦力的には王国の方が上なんだ…貴族院は民を人質にしてるのさ」

盗賊「それじゃぁ国力が衰退するばっかだな」

商人「貴族は国力なんかもうどうでも良いんだよ…だから商隊で少しづつ逃げてる」

盗賊「民は捨て駒か…ゲスい」



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747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:40:56.32 ID:V1qeujs60
女戦士「フィン・イッシュからテントの増設依頼が来た…貧民街でテントを展開しろ!」

盗賊「軍隊でも来るんか?」

女戦士「今晩何かの作戦をやるらしい」

盗賊「俺らはどうすんだ?」

女戦士「後方支援のみだ…詳しい話は聞けて居ない」

ローグ「あっしら立場弱いっすねぇ」

女戦士「いや…そうでもない…テントでの支援が最重要課題だと聞いた…後日フィン・イッシュの指揮官が来るそうだ」

盗賊「ほぅ?見た感じフィン・イッシュも民兵ばかりな様だがな?」

ローグ「そーっすね装備がショボイっすね」

女戦士「支援部隊に重装備など要らぬのでは無いか?」

盗賊「そらそうだがロクに武器も持って無さそうだが?」

商人「セントラルと衝突が起きるかどうか分からないけど…一瞬で駆逐されそうだね」

盗賊「どんな作戦か知らんが下手にセントラルの衛兵刺激すんのはどうかと思う」

女戦士「すでに私が話を引き受けて居るのだ…大人しく従え」

盗賊「へいへい…」
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:41:52.04 ID:V1qeujs60
『夜』


コソコソ コソコソ


盗賊「マジでこんな軽装で奇襲すんのか?有り得ん…」

女戦士「黙って見ていろ…」タラリ

盗賊「農民一揆でももうちっとマシな武器持ってんぞ?」

ローグ「盗賊さん…万が一の時はハイディングして逃げやしょう…」

盗賊「俺らは後方で見てるだけで良いんだな?」

女戦士「荷を運ぶ役だ…大人しく待て」

ローグ「気球が一基飛んで行くっす…えらい小さい気球っすね?」

盗賊「何する気だ?」

ローグ「なんか霧が出て来やしたねぇ…」

盗賊「ん?おいおいおい気球は通り過ぎてくんじゃ無ぇか…何しに来たんだあの気球は」

ローグ「関係無かったでやんすか…」

女戦士「フィン・イッシュが動き始めた…見ていろ」

盗賊「このまま突撃?…アホかあいつら…」

ローグ「マズイっすねぇ…マズイっすねぇ…衛兵暴れ出すでやんす…」ハラハラ


コソコソ コソコソ

馬車に何人入る?

15人が限界だ

傷付けない様に並べろ

布を被せておけ

コソコソ コソコソ


女戦士「よし!馬車で貧民街まで荷を移送して戻って来い!2人1ペアでやれ」

盗賊「ローグ行くぞ…俺が馭者やる」グイ ヒヒーン

ローグ「アイサー」ゴトゴト

盗賊「裸の女と子供ばかり…皆寝てる様だがどうなってんだ?」

ローグ「どうやって連れ出したんすかね?不思議な作戦でやんすね?」

盗賊「みんな黒死病掛かってんな」

ローグ「早い所処置した方が良いっすねぇ…うっは」チラ

盗賊「おい!荷を覗くな」

ローグ「黒死病の具合を確認してるでやんすウヒヒ」チラ

盗賊「着いたぞ!!荷を下ろす…お前は頭側を持て」グイ

ローグ「アイサー」

盗賊「商人!!荷を下ろすの手伝え」

商人「上手く行ってるみたいだね?」

盗賊「馬車でどんどん運ばれてくるから他の奴らにも言っておいてくれ」

商人「女の人ばっかりなんだね?」

盗賊「知るか!!ちゃんと見えない様に布被せておけ」

商人「うん…」

盗賊「降ろしたら次行くぞ!!早くしろぉ!!」


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749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:42:26.17 ID:V1qeujs60
女戦士「今日はこれで最後だ…撤収する」

盗賊「まだ1時間しか経ってないじゃ無ぇか…いいのかこんなに早く終わって」

女戦士「撤収指示だ…従え」

盗賊「しょうが無ぇな…俺らだけで100人運んだってとこか…合計で500ぐらいか?」

女戦士「テントの空き状況はどうだ?」

盗賊「まだ空いて居るが…数日続くなら増設した方が良いな」

女戦士「ふむ…これは船で隔離するには数が足りんな」

盗賊「ん?女と子供を船に乗せるんか?」

女戦士「まだ指示は出て居ないが恐らくそうなるだろう」

盗賊「薬の切れ目か」

女戦士「そうだ…徘徊されては収集が付かない」

盗賊「女子供が居なくなって男共は騒ぎだすんじゃ無ぇか?」

女戦士「薬漬けでそこまで頭が回るのか?」

盗賊「うーむ…先が読めんな…セントラルがどこまで統率されてるのかも謎だ」

女戦士「しかし…子供にまで麻薬を使っているとは…」

盗賊「集団心理だな…それが普通という状況が出来上がっちまってる」

女戦士「人道から外れ過ぎだ…見て居れぬ」

盗賊「だな…狂ってる」
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:43:00.22 ID:V1qeujs60
『翌朝_貧民街テント』


ああ〜ん あ…あ あふ〜ん


盗賊「こりゃ目に毒だ!どうすんだコレ!!」

ローグ「麻薬って怖いっすね…自慰を止める気配無いでやんす」

女戦士「薬は2〜3日抜けない…その後が修羅場だ」

盗賊「暴れてる女どうすんだよ」

女戦士「私に言わせるのか?棒でも与えておけ」

情報屋「エリクサーの備蓄はまだある?」

女戦士「足りないのか?」

商人「フィン・イッシュ軍の方にも必要なんだってさ…あっちは持って無いらしい」

ホムンクルス「精製しましょう…私がレシピを書きますので材料を集めて下さい」カキカキ

ローグ「確かクヌギの樹液でやんしたかね?」

ホムンクルス「はい…出来るだけ沢山集めて下さい」

女戦士「船首に置いてある気球を使って集めて来い…あと水が足りんから樽を集めて汲んでくるんだ」

ローグ「アイサー…他に集めにくい材料ってあるんすかね?」

ホムンクルス「純度の高いアルコールが入手困難かと思われます」

女戦士「ふむ…フィン・イッシュ軍船にあるか聞いてみる」

情報屋「今のエリクサー消費量だと持って3日だから急いで」

女戦士「回復の出来る剣士を行かせたのはマズかったな…」

商人「そうだね…麻薬で紛らわされてるけれどかなり衰弱しているよ」

女戦士「やはり食事は口にせんか?」

商人「ダメだね全然食べない…性欲が食欲を抑え込んでる」

ホムンクルス「女性は麻薬に依存しやすい体質ですので緩和ケアを継続する必要があります」

盗賊「あああダメだダメだ!目に毒だ…ローグ!材料集めに行くぞ!!」

ローグ「アイサー」
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:43:28.04 ID:V1qeujs60
『東の森』


ローグ「こっちのクヌギにも切り込み入れたっす」

盗賊「よし!これで今晩もう一回採集に来よう」

ローグ「結構沢山採れたでやんすね?これでどのくらいのエリクサーになるんすかね?」

盗賊「出来るだけ沢山欲しいって言ってたからな…相当少なくなるんじゃ無ぇか?」

ローグ「もう少し採集する範囲を広げた方が良いかもしれやせんね?」

盗賊「水汲んで一旦戻って量を聞いてみるか」

ローグ「水は集めるの簡単っすね」

盗賊「何往復かせんと全然足りんぞ?女はやたらと水を消費するからな」

ローグ「あー汚れ落としっすね?」

盗賊「海水で洗うのを嫌がるからしょうがねぇ」

ローグ「雪を集めて汚れ用の水にするのも良さそうっすね」

盗賊「んむ…そうなると次は薪が必要だ」

ローグ「森までちょいと距離あるんで木材調達が課題になりそうでやんす」

盗賊「まぁまずは瓦礫の中に混ざった木屑の消費だな…散らかりっ放しじゃテントも張れん」

ローグ「よっし…これで最後の樽っす…どっこいせ!」

盗賊「んじゃ一旦戻るぞ」


フワフワ
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:44:02.85 ID:V1qeujs60
『貧民街』


ギャー ギャー


盗賊「クヌギの樹液採って来たぜ?」

ホムンクルス「はい…ありがとうございます」

盗賊「これだけの量でどんくらいエリクサー作れる?」

ホムンクルス「瓶で4つ程でしょうか…」

盗賊「マジか…そんなに減るんか」

ホムンクルス「一本の大きなクヌギの木から一日で樽に三分の一ほど採集可能ですので工夫してみてください」

盗賊「仕掛け作らんといかんな」

ホムンクルス「金属糸を上手に使って樹液が伝うように作ると良いです」

盗賊「なるほど…ところでテントの女達が騒いでいる様だがどうした?」

ホムンクルス「重度の依存症の方を船の方へ移送しようとしています」

盗賊「依存症ってアレか?性的なやつか?」

ホムンクルス「はい…女性は一度極限の快楽を経験してしまうと元に戻るのは難しいのです」

盗賊「ふむ…人権尊重するなら隔離が良いか」

ホムンクルス「拘束したくはありませんが自殺を防ぐには必要な処置です」

盗賊「そんなに我慢できんもんかね…」

ホムンクルス「麻薬を投与して以来24時間ずっと性的絶頂を継続していた人が突然終われると思いますか?」

盗賊「想像出来んな…」

ホムンクルス「そういう人が重度の依存症になって居るのです」

盗賊「後遺症が残りそうだが…」

ホムンクルス「ですから長期間の緩和ケアが必要になります」

盗賊「長期戦か」

ホムンクルス「はい…私達だけでは対応が困難ですのでフィン・イッシュ国の援助が必要と思われます」

盗賊「それは女戦士に伝えたのか?」

ホムンクルス「はい…伝えました」

盗賊「こりゃ想像以上に大変だ」

ホムンクルス「そうですね…」

盗賊「よし!俺ぁもっかい森まで飛んで来る」

ホムンクルス「はい…お気を付けて」
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:44:37.97 ID:V1qeujs60
『東の森』


盗賊「よく見てろ?木の切り込みから金属糸で樽まで導く…これを一本の木で複数個所やるんだ」

ローグ「へぇ…ホムンクルスの提案でやんすか?」

盗賊「クヌギ一本から1日で樽に三分の一溜まるらしい」

ローグ「…という事は30か所仕掛けを作れば毎日10樽っすね?すごいっすね?」

盗賊「10樽在ってもエリクサーになるのは1樽程度か?もちっと頑張らんと底ついちまうな」

ローグ「やり方わかったんであっしも向こうで仕掛け作ってくるでやんす」

盗賊「おう!今日は仕掛けの設置で終わりそうだな」

ローグ「樽が足りないんで後で持ってきやすね?」

盗賊「頼む…あと食い物も少し持って来てくれ」

ローグ「アイサー」



『夕方_中央広場』


盗賊「商人!探したぞ…こっちに居たのか」

商人「あぁおかえり…樹液の採集は済んだ?」

盗賊「今日は仕掛けを設置して終わりだ…お前は何やってるんだ?」

商人「テントの方は男子禁制になったんだ…僕は木材を集めてるよ」

盗賊「男子禁制はしょうがねぇな…女達は正気失ってるが一応一人の人間だしな…尊重せんとイカン」

商人「そうだね…僕も間近に見て不遇に思ったよ」

盗賊「女戦士は何処に行ったか知らんか?」

商人「昼から見て無いなぁ…船に戻ってないかな?」

盗賊「俺は今気球を船に置いてきた所だ…船には居ねぇ」

ローグ「あ!!居た居た!!ニュースっす!!」

盗賊「おぉどうした?慌てて」

ローグ「昨日の夜に見た小さい気球があっしらの船の前に降りたっす…ありゃ多分フィン・イッシュの指揮官っすよ」

盗賊「マジか!!おい商人戻るぞ!!」

商人「うん…あー木材持つの手伝って」

盗賊「あぁこれな?ローグも持て!」ガッサ

ローグ「アイサー」ガッサ
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:45:20.99 ID:V1qeujs60
『貨物船』


タッタッタッ


盗賊「女戦士は戻ってるか!?」

船乗り「居室に入って行ったでさー」

盗賊「他に誰か居るか?」

船乗り「フィン・イッシュの人が4人来てまさー」

盗賊「4人?…」

商人「勝手に入るとマズイかもね?」

ローグ「どうしやす?ここで待ちやす?」

盗賊「聞き耳立てるくらいは良いだろ…行くぞ」コソコソ

商人「ハハ…泥棒歩きになってるじゃないか」

盗賊「お前も隠密の仕方くらい覚えろタワケ」

ローグ「何か聞こえやすか?」


私はこの船を商船だと思っていたのだ…まさかお前の船だとは思いもしなかった

この2人は?

紹介が遅れたな…こっちが案内人…私達の道先案内と言った所か

そして彼がセントラル第2皇子だ…今は隠れの身だ

改めて…私はドワーフの国の第一王女だ…よろしく

聞いて居るよ…君の事も妹君の事も

主らは挨拶が堅いのぅ

身分の在る者同士どうしてもこういう挨拶になるか

さて…互いが身内と分かったのじゃ…わらわ達が何をしようとして居るのか話してもよかろう?


盗賊「わらわ?こりゃ魔女じゃ無ぇか!?」

商人「ハハ…入っても良さそうだね?」


ガチャリ 


魔女「おぉ主らも居ったか…商人は大きゅうなったのぅ」

商人「やぁ!魔女は変わって無いね?」

魔女「わらわとアサシンは7年の時を超えてここに居るのじゃ」

商人「時を超える?」

魔女「分かりづらかったかのぅ…先の闇の時から7年未来へ飛んだのじゃ…じゃから主と会うのはわらわにとって1年振りじゃな」

商人「え!!タイムワープ…それが可能という事は…」

アサシン「まぁ話は長くなる…この船には他の仲間は居ないのか?」

女戦士「情報屋とホムンクルスが貧民街で救助した女子供の介抱をしている」

アサシン「魔女…先に貧民街を眠らせた方が良さそうだな」

魔女「そうじゃな…話をする前にちと仕事じゃ…付いて参れ」
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:45:54.43 ID:V1qeujs60
『貧民街のテント』


あ〜ん いくいくぅぅ あああ


魔女「女子供を介抱している者をここへ呼んでくるのじゃ」

女戦士「分かった…」

盗賊「ここの状況は分かってんだよな?」

魔女「知って居る…じゃから全員眠らせるのじゃ」

盗賊「なるほど…昨日の貴族居住区も全部眠らせた訳か…恐ろしく便利な魔法だな」

アサシン「うむ…しばらくはこの方法で眠らせるのが良策だと判断している…栄養補給がエリクサーになってしまうが…」

女戦士「連れて来たぞ…他の者も退避させた」

魔女「では魔法を詠唱する」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク


スヤ スヤ


女戦士「おぉ…声が収まった…」

ホムンクルス「この方法は体力回復にとても良いですね…」

情報屋「これで少し休めるわ」

女戦士「この睡眠はいつまで持つのだ?」

魔女「多くの者は明日の朝まで寝て居るじゃろうが…折をみてまた魔法を掛け直すで心配せんでも良い」

アサシン「これで落ち着いて情報交換が出来るな?船に戻って少し話そう」
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:46:43.43 ID:V1qeujs60
『貨物船』


カクカク シカジカ


魔女「…という訳じゃ」

女戦士「という事はセントラルは時の王という貴族に牛耳られていると見て良いのだな?」

アサシン「時の王は背後に座っているだけなのだが結果的にそういう事になって居る」

女戦士「それで貴族の解体をやろうという訳か」

アサシン「こちらにも質問がある…黒の同胞団の事だが」

盗賊「おぅ…多分時の王とも繋がってそうだな」

アサシン「領事がシン・リーンの元老院の一人だという事だが身分証はあるか?」

商人「あるよ?これさ…」パサ

アサシン「魔女…分かるか?」

魔女「信じられん事じゃがこの身分証は本物じゃ…これを発行出来るのはわらわの母上と父上だけじゃ」

アサシン「国王が絡むとなると相当根が深いと言わざるを得ん」

魔女「父上は元老院と繋がりが深いのじゃ…元老院制を推したのも父上じゃ」

アサシン「元老院は立場上魔術院の上に当たるな?つまり魔術師を使役できるという事だな?」

魔女「そうじゃ…魔術院の最高位はわらわじゃ…わらわが不在という事は元老院が実権を握って居る」

情報屋「魔術院の中に錬金術に秀でた者は?」

魔女「居る…シャ・バクダ錬金術の研究に熱心な者が居った」

情報屋「繋がるわね…麻薬の出所が」

アサシン「活動拠点に心当たりは無いか?」

魔女「シャ・バクダに派遣した8人の魔術師が居ったろう?その中の一人が錬金術に秀でた者じゃ」

アサシン「その魔術師の行方を追えば良いのだな?」

案内人「俺知ってるかも知れ無ぇ…女王に領事を紹介したのが魔術師の一人だった」

魔女「主は見ておったのかえ?」

案内人「俺は元々商隊長として領事の雇われだったんだ…領事と魔術師を連れてシャ・バクダ北の山麓まで行った事がある」

アサシン「地図で示せ…何処だ?」

案内人「ここだ…ミノタウロスがうろついて居て薬草が沢山生えている場所だ」

盗賊「そりゃ痛み止め用の薬草でケシが沢山生えている場所だな」

アサシン「なるほど…これで繋がったな…貴族共がシャ・バクダに移動している理由はそこに何かあるからだ」

魔女「魔術師が使う触媒の中にケシの実から抽出する物も多いのじゃ…その地は所縁が深いのぅ」



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757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:47:33.77 ID:V1qeujs60
魔女「リリスは海に沈んだのじゃな?」

盗賊「間違い無ぇ…クラーケンの触手に掴まって居たのがそのリリスって奴だな」

魔女「首はどうなって居るか見たのかえ?」

盗賊「羊の頭が付いていたが…なんでそんな事聞く?」

魔女「わらわの魔術書を見るのじゃ…ここじゃ…名をバフォメットと言う」

盗賊「おぉ!!これだこれ!!」

魔女「…」

盗賊「んん?どうした?」

魔女「落胆しておる…時の王がバフォメットの首を持って居るとは思わなんだ…最悪じゃ」

盗賊「でも光る海に沈んでるぞ?」

魔女「それで封印出来て居るのなら良いが…陸に上がってしもうては手が付けられぬ」

盗賊「どれぐらいヤバいのか俺は想像出来ん」

魔女「バフォメットは魔法が効かんのじゃ魔法では封印が出来ぬ…わらわは何も出来ん」

盗賊「女海賊の爆弾でドカーンとよ?」

魔女「リリスは実在する神と言って良い…その肉体は永久の再生力を持って居る…封印せぬ限り死ぬことは無いのじゃ」

商人「はぁ…嫌な話聞いちゃったね」

盗賊「放って置くと又誰か海から引き揚げる奴が出て来るってか?」

商人「あっちでもこっちでも片づけないといけない問題が集積しててどこから手を付けたら良いか…」

盗賊「魔女が探してる壺ってのも行方が分からんのだろう?」

魔女「時の王がとぼけて居る様じゃ…恐らく奴が持って居る」

商人「その壺に魔王を封じたっていう解釈で合ってる?」

魔女「魔王のすべてを封じたかどうかは分からん…じゃが魔王の器になりうる物は封じて居る」

商人「それがリリスの子宮という訳か…」

魔女「リリスは冥界の女王と言われておったそうじゃが同時に淫魔の神でもあるのじゃ」

商人「という事は今のセントラルのこの状況は…」

魔女「そうじゃ…間違いなくリリスの影響を受けて居る…性欲を貪るのはそのせいじゃ」

商人「分かったぞ…黒死病は性欲が押さえられなくなって性交で伝染しているんだな?」

魔女「血液の接触感染じゃな…性交も同じじゃ」



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758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:48:07.51 ID:V1qeujs60
女戦士「アサシン!貴族院の解体をどういう手順で考えて居る?」

アサシン「…まずは麻薬漬けになっている女子供の救出だ…今晩で若い女はすべて救出する事になる」

アサシン「貴族居住区に若い女が居なくなるとどうなると思う?」

女戦士「男共が徘徊する事になりそうだな」

アサシン「正解…貴族居住区から少しづつ民を引っ張り出すのだ」

アサシン「中央に出る民が増えて来出すと集団心理が働き貴族院から出て来る民の数が加速する」

女戦士「なるほど女を使って大衆扇動する訳か」

アサシン「衛兵を含む男達は麻薬への依存度が女に比べて相当低い…麻薬を断つのはそう難しくないのだ」

女戦士「では民が徐々に中央へ戻ると仮定して次はどうする?貴族を一人づつ暗殺でもするのか?」

アサシン「民の安全を確保した後に貴族院側にクーデターを起こさせる」

女戦士「私の見立てでは王国側の戦力の方が高い…逆に貴族居住区をせん滅した方が早いと思うが」

アサシン「それでは時の王の思う壺なのだよ…狙って居るのは時の王の失脚だ」

女戦士「ほう?如何に?」

アサシン「内郭に陣取っているラットマンリーダーを全滅させる…アレが居なくなるだけで貴族院側の衛兵は城へなだれ込むだろう」

女戦士「王国に城を放棄させるのか?」

アサシン「城はどうでも良い…肝心なのは民だ…国王自ら貧民街で民を支援する姿を見せるのだ」

女戦士「うーむ…どうも成功が見えん…そもそもラットマンリーダーをどう倒す?」

アサシン「お前たちが付けたあの鐘だ…あの鐘が鳴るとラットマンリーダーは戦闘不能になる」

女戦士「ふむ…それは行けたとして城に駐留する精鋭兵は500程度に見えるが貴族院側の衛兵の数には勝てんだろう」

アサシン「実はな…城から下水を通って海まで逃れられるのだ…つまり攻め入っても城は誰も居ないという状況になる」

女戦士「貴族院側を城に閉じ込めると言うのか」

アサシン「そうなるな…さて…民と共に要る国王を見て貴族院の衛兵にはどう映る?」

アサシン「背後にフィン・イッシュの軍船も控えて要るのだ…どうする?」

女戦士「正義を見失う…」

アサシン「それが狙いだ…そこまで来れば貴族院は力を失い絶対王政に戻る」

女戦士「セントラル国王とはコンタクト出来ているのだな?」

アサシン「それは間違いない…国王は我々の側に居る」

女戦士「いつ動かす?」

アサシン「フィン・イッシュの軍船2隻が女王を乗せてこちらに来る…それからだ」



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759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:48:36.36 ID:V1qeujs60
商人「魔女…話したい事があるんだ」

魔女「何じゃ?」

商人「魔女は未来にタイムワープしたと言ったよね?」

魔女「言うたのぅ…7年飛んだ様じゃ」

商人「実はね…僕はある仮説を考えて居るんだ」

魔女「言うてみぃ」


時間の話さ

今僕の自我が認識しているこの瞬間が時間の中心点だったとして

過去の出来事はすべて記憶と言い換える事が出来るよね?

それを記録した物が根の森に眠るオーブ…精霊の記憶さ

剣士の魂はどうやらそのオーブの中に居た様なんだ

そして勇者として行動していて恐らくその中で自我を持って居た

剣士にとっての自我が認識する時間はその中にあったという事だ

タイムワープと言うのはその記憶の中で自我が認識する地点を変えているだけと言い換える事も出来る


魔女「主が言いたいのは今いるこの世界も記憶の中では無いかと言いたいのじゃな?」

商人「そう!それが言いたい…それを否定出来る事が思いつかない」

魔女「それを探求する事こそ魔道じゃ…わらわにはまだ答えが出せぬ」

商人「そうか…魔女でも分からないか」

魔女「じゃがこれだけは言えるぞよ?量子転移という魔法で過去の記憶から空間を転移するのは可能じゃが…」

商人「うん…」

魔女「未来から空間を転移するのは出来んのじゃ…なぜなら記憶が無い」

商人「じゃぁこの世界が未来の記憶だった場合は?」

魔女「それは神のみぞ知る事じゃ」

商人「どうしてタイムワープ出来たの?」

魔女「次元の狭間に迷い込んでしもうてのぅ…望んで飛んだ訳では無い…事故じゃな」

商人「もやもやするなぁ…」

魔女「主は今ここに居るのじゃから今を精一杯生きれば良い」

商人「魔女はさぁ?その量子転移という魔法で過去に行く事が出来るの?」

魔女「可能かも知れんがそれ程簡単では無いぞよ?…次元の狭間に迷い何処に行くか分からんでな…」

商人「そっか…僕の思い違いか」



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760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:49:11.43 ID:V1qeujs60
アサシン「今日は私も女子供の救出に参加する…エルフゾンビ!魔女の護衛は頼む」

エルフゾンビ「フフ任せろ」

アサシン「気球の操舵は案内人だ…昨日と同じ様に飛べ」

盗賊「俺らは馬車で移送だな?」

アサシン「そうだ…今日は馬車の台数が増えて居るから戦闘が出来る者は全員救出に回って欲しい」

女戦士「戦闘が出来る者?戦う想定で居るのか?」

アサシン「昨日の今日だ…多少の抵抗はあるかもしれん」

女戦士「こちらは民兵ばかりだぞ?衛兵相手には不利だ」

アサシン「抵抗する衛兵は堀に落とせば良い…なんとかしてくれ」

女戦士「では私が最前線に出ねばならんな」

魔女「抵抗が多い時はわらわが睡眠魔法を掛け直す故…そのつもりで居れ」

女戦士「魔法頼みか…」

アサシン「引き際の目安は2時間…これで女子全員の救出を目指す」

盗賊「その後貴族居住区から打って出てきたらどうする?」

魔女「睡眠から目覚めた者は夢じゃと思うておる…それほど頭は回らん筈じゃ」

盗賊「なるほど…便利な魔法だ」

アサシン「情報屋とホムンクルスはテントで救出された女子の手当てをしてくれ」

ホムンクルス「はい…」

女戦士「くれぐれも男共を入れない様にな?」

魔女「わらわが後で回復魔法をしに行くで与えるエリクサーの量は少なくて良いぞ?」

ホムンクルス「わかりました」

アサシン「では行くぞ!!」タッタッタ
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:49:42.75 ID:V1qeujs60
『気球』


フワフワ


魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「このままゆっくり周回でいいな?」

エルフゾンビ「内郭の壁からは距離を置いてくれ…弓で撃たれる可能性がある」

案内人「分かった」

魔女「セントラルの衛兵は気付いて居らんのかのぅ?昨日と変わりがない様じゃが…」

エルフゾンビ「いや…そうでも無いぞ?部隊ごとに分かれている」

魔女「寝てしもうては意味が無い」

エルフゾンビ「備えては要るがどうして女が少なくなったのかは把握していない様だな」

魔女「おかしいのぅ…貴族院側の指揮は誰がやって居るのじゃろうか?」

エルフゾンビ「む!ここには居ないという事か!?」

魔女「指揮する者はこの状況を把握せず一方的に命令を下して居りそうじゃのぅ」

エルフゾンビ「貝殻か!?」

魔女「うむ…その可能性が高い」

エルフゾンビ「しかし貴族全員居ないとは考えにくい」

案内人「貴族らしい人物は何人も貴族居住区で目撃されているらしいぞ?」

魔女「わらわの考えすぎかのぅ…」

エルフゾンビ「しかし相手が無策なのは今の所好都合だ」


---どうも気にかかるのぅ---
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:50:16.46 ID:V1qeujs60
『深夜_貧民街』


スヤ スヤ


魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女戦士「魔女…アサシンが呼んでいるのだ…船に行ってくれ」

魔女「そうじゃな…ちと疲れたわい」

ホムンクルス「あとは私にお任せください」

魔女「日の出後に又くるで頼んだぞよ?」

ホムンクルス「はい…」



『貨物船_居室』


ガチャリ バタン


魔女「アサシンは居るか?何用じゃ?」ノソノソ

アサシン「来たか…実はな貴族居住区で建屋の中に入ったのだが様子がおかしい」

魔女「ほう?」

アサシン「貴族が何処にも見当たらないのと…貴金属のすべてが無い」

魔女「逃げられたという事じゃな?」

アサシン「どういう事だ?事前に忍び入った時にはまだ在った物が消えている」

魔女「…」

盗賊「他の建屋もカラだったぜ?」

アサシン「先日女子の救出に行った民兵も貴族の姿と資産を見ているのだが…今日はすっかり無くなっていると言う」

魔女「ふむ…魔術師が居った様じゃな」

盗賊「狭間に入って逃げたんか?」

魔女「その可能性もあるが資産をすべて運ぶのは難しいじゃろうて」

アサシン「他に心当たりがありそうだな?」

魔女「時限の門をくぐって過去を変えた者が居る様じゃのぅ…魔術師の禁じ手を犯した者が居る」

アサシン「時限の門?」

魔女「魔術師が修行をする精神と時の門というのが在ってな…それは時限の門の事を言うのじゃ」

魔女「時限の門はな…過去の自分に対峙するための門じゃ…そこで精神を鍛えるのじゃが…」

魔女「門をくぐりぬけてはならぬという掟がある…それを破った者が居るな…制裁せねばならん」

アサシン「それをくぐると過去に行くという事か?」

魔女「そうじゃ…魔力によって過去に行ける程度は変わるが…修行を積めば5日程度は戻れるのぅ」

盗賊「5日っちゃぁ俺達がここに来る前だな…そういや商隊で貴族の馬車を見た」

魔女「その中に紛れたのじゃな」

アサシン「私達はもっと前からここに居たのだが…はっ!勘違いしていたのか…女戦士の船から商隊が出て行ったと思っていたが…」

魔女「次元が交差しておるのぅ…記憶が塗り替わって行く前にメモに残すのじゃ」

アサシン「塗り替わる?」

魔女「そうじゃ貴族や貴金属がそこにあったという記憶が直にのうなる…今の目的も忘れてしまうやも知れんぞ?」

アサシン「分かった!今すぐメモに残す」

魔女「これで黒の同胞団の居所を何故掴めんのか分かったのぅ…巧妙に歴史を修正しとる」

アサシン「…それも書いておく」

763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:50:49.31 ID:V1qeujs60
『翌日』


盗賊「ホムンクルス!今日は樹液の収穫が大量だぜ!見ろ…10樽だ!!」

ホムンクルス「はい…大変助かりますが精製の方もお手伝いしてもらってよろしいですか?」

盗賊「おう!どうやるんだ?」


アレをこうして…コレをあーして


盗賊「こりゃ商人向けの仕事だな…商人来い!!エリクサー作るぞ」

商人「うん…良かったぁぁ薪運ぶのでクタクタだったんだ」

盗賊「ところでホムンクルスと情報屋は貧民街の方は良いのか?」

ホムンクルス「あちらは魔女様に任せて良い様です…私はエリクサーの管理ですね」

盗賊「情報屋は何やってんだ?料理か?」

ホムンクルス「栄養の付くスープを作って貰っています」

盗賊「みんな忙しそうだな…エリクサーは商人に任せて俺は中央行ってくるわ」

ホムンクルス「そうですね…」

商人「中央の方は今ゴタゴタしてるよ?」

盗賊「何かあったんか?」

商人「貴族居住区から少し人が出て来ててね…貧民街の方に行かせろとゴネてる」

盗賊「アサシンの狙った通りに進んでんな」

商人「これからバリケード作るって言ってたよ」

盗賊「そら大変だな…木材が全然足りん」

商人「だから僕はエリクサー精製の仕事が出来てホッとしてるのさハハ」


盗賊「おぉ!?見ろ…フィン・イッシュの軍船が2隻来てんな」

商人「え…あんな遠くなのに見えるの?」

盗賊「海を見るのはコツがあんだよ…おーやっぱ2隻だ…ナイスタイミングだなヌハハ」

商人「木材積んでると良いね」
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:51:19.88 ID:V1qeujs60
『中央広場』


ぅぅぅ何で通さねぇぅぅう

何処に行こうが勝手だろう


民兵「こっちのテントで処置するから言う事聞いて下さい…」

男達「ぅぅぅ俺ら処置なんて要らねぇ…ぅぅぅ」

民兵「ったくもう!!」グイ

ローグ「盗賊さん!!良い所に来たっすね…運ぶの手伝って下せぇ」

盗賊「おう…こいつらゾンビみてぇだな」

民兵「黒死病が進行してるんで早く処置しないと長引くんですよ…でも言う事聞かなくて」

盗賊「結構貴族居住区から出て来てんな?」

ローグ「まだ50人くらいっすね…食事食べさせるとちっと大人しくなりやす」

盗賊「俺はバリケード作るって聞いてこっち来たんだが…」

民兵「木材を船に取りに行ってる所ですね」

盗賊「そうか…積もってる雪はどうすんだ?雪の上に設置する訳にいかんだろ…」

民兵「そこらへんどうするのか聞いてないです」

盗賊「んぁぁぁ人出が足りなくて指揮回って無さそうだな…ローグ!!俺達で雪かきすんぞ」

ローグ「また重労働でやんすか…トホホ」

盗賊「どうせ設置位置まで決まって無ぇんだ…俺らで決めるぞ」

ローグ「へいへい…どうすれば良いでやんすか?」

盗賊「貧民街と中央を区切る簡単な馬防柵だな…その後方に雪を積んでかさ上げすりゃ早い」

ローグ「あいあい…じゃぁ馬防柵予定地の後ろに雪を積めば良いっすね?」

盗賊「んむ…俺らがやってりゃ意を汲んで誰か手伝ってくれるだろ」

ローグ「そうなりゃ良いっすけどねぇ…みんな疲れてるんすよね」

盗賊「体動かした後の酒は旨いぞぉ!?」ワッセ ワッセ

ローグ「へいへい…」ワッセ ワッセ



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765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:51:50.80 ID:V1qeujs60
女戦士「ここに居たのか…その整地はバリケード用だな?」

盗賊「おう…簡易的だが雪を積んで塹壕代わりにすりゃ割と行ける」

女戦士「こんな所で戦うつもりは無いがな…侵入を防げれば良いだけと思っていた」

盗賊「衛兵がドバーっと出てきたらどうすんのよ…備えあれば憂い無しだ」

女戦士「まぁその通りだ…」

盗賊「んで?フィン・イッシュから軍船2隻来てただろ?どうよ?」

女戦士「民兵しか居ない…まともに装備しているのは近衛くらいだな」

盗賊「ぐは…軍船は見かけだけか」

女戦士「笑うなよ?大砲すら積んで居ない…大きな民間船と言った方が良いな」

盗賊「よくそんなんで女王を乗せてくんな…」

女戦士「ただな…民兵の士気が異様に高いのだ…ゲリラ戦や工作には適している」

盗賊「てことはバリケードは速攻出来る感じか?」

女戦士「んむ…しかし心配事もある…漢が多い分救出した女子が心配だ」

盗賊「ヌハハ風紀が守れんか…確かに問題だな」

女戦士「これからフィン・イッシュの指揮は近衛がとるようになるのだが女王がどういう采配をするのか読めん」

盗賊「民兵を引き連れて来る様な采配…んーむ」

女戦士「まぁ…戦争では無いのだから民兵で良いと言えば良いのだが…」

盗賊「なんなんだ?この微妙な駆け引きは…」

女戦士「私から言わせるとセントラル内部の茶番だな…」

盗賊「海に出て行ったセントラル軍船とか何処いっちまったのよ」

女戦士「軍部がバラバラではもうこの国はダメだ」



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766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:52:29.99 ID:V1qeujs60
エッサホイサ エッサホイサ


女戦士「盗賊!!もうバリケードの設置は民兵に任せて良い…こちらへ来るんだ」

盗賊「ふぅぅ…次はどうすんだ?」

女戦士「貴族居住区と中央の通路でもみ合いが始まっている」

盗賊「衛兵が出て来てんのか?」

女戦士「民の返還を要求してきているのだ…もちろん断っているが…直に戦闘になりかねん」

盗賊「マジかよ…こっちは保護してる立場だろうに…」

女戦士「こちら側に戻って来た男共の話では貴族特区の方が物資は豊富にあるらしい」

盗賊「麻薬漬けにしておいて民を保護してるつもりなのか?」

女戦士「黒死病の恐怖と苦痛を和らげる為に配布されているらしいが…」

盗賊「あっちにはあっちの正義があるってか…この惨状をちゃん判断出来る奴いねぇのかよ!」

女戦士「集団心理が働いているのだ…きっかけが無いと折り合いが付かん」

盗賊「きっかけって…」

女戦士「貴族院の要求は王族の拘束…つまり国王が降伏すれば一旦収束する」

盗賊「それを国家転覆て言うよな?そんなん国王が承諾する訳無ぇ」

女戦士「その通りだ…だから戦闘が起きる」

盗賊「矛先がこっちに来るのは筋がおかしい」

女戦士「こちらが国王と繋がっていると知られた場合は先に殲滅に来る…だろうな」

盗賊「こっちはまともな武器持った奴居ねぇぞ?」

女戦士「んむ…備えておかんと一気に奪取されてしまう」

盗賊「城に詰めてる精鋭兵は出て来れんのか?」

女戦士「下水の掘削作業が終わって居ない…まだ通れないのだ」

盗賊「戦力差は分かってるか?」

女戦士「城の精鋭兵500フィン・イッシュ民兵500に対し貴族居住区には衛兵2000程」

盗賊「数も装備も差があり過ぎる…勝てる訳無ぇ」

女戦士「やはり内郭の上に居るラットマンリーダーが鍵だな…貴族院側が中央に出て来られないのは城から背後を突かれたくないからだ」

盗賊「ギリギリの膠着状態か」

女戦士「だが装備の整った衛兵が数十人中央に出て来ただけでこちらは大打撃なのだ」

盗賊「バリケード上からクロスボウで構えるのが有効だ…船に予備は無いか?」

女戦士「無い…だが木材はある…即席で良いから弓と矢を作ってくれ」

盗賊「矢尻用の鉄は!?鳥の羽はあるんか?」

女戦士「無い…なんとかしろ」

盗賊「フィン・イッシュの軍船には無いのか!?」

女戦士「無い…」

盗賊「ぐはぁぁ材料が何も無いじゃどうにもなん無ぇ…まてよ?石は腐る程あるな…スリングだ!!」

女戦士「ほう…それは良い!!お前に相談して正解だった」

盗賊「スリングなら素人でも使える!ローグ来い!!ロープと皮集めて来い…今からスリング作るぞ!!」
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:53:01.79 ID:V1qeujs60
『バリケード上』


ヒュン ヒュン ヒュン


女戦士「よし!撃ち方ヤメ!!気絶している衛兵を確保して手当しろ!!」

民兵「へい!!」ドスドスドス

盗賊「これで2人目だ…貴重な装備ゲットだな」

女戦士「奪うつもりは無い…手当して返す…黒死病を治療出来る事を周知させたい」

盗賊「ほーん…あっちはエリクサーの存在を知らん訳か」

女戦士「その様だ…エリクサーを求めてこちらに交渉しに来る様になれば少しは話が出来る」

盗賊「今までは話が通じて居ないのか?」

女戦士「こちらの貧相な装備を見て正規軍だとは思って居ないのだ…自警団扱いだ」

盗賊「ヌハハ裸同然の漢も居るしな?」

女戦士「お前の恰好もごろつきにしか見えんぞ?…私も同じだが」

盗賊「まぁな…船に乗ってりゃ楽な格好の方が良いもんな」

ローグ「かしらぁ…先に確保した衛兵が帰りたくないと言ってるでやんすが…どうしやしょう?」

女戦士「体を休めてからで良いと言え…こちらの内情を見てもらうのも良い」

ローグ「信用して良いんすかね?」

女戦士「構わん!敵では無いという事を見せつけておくのだ」

ローグ「わかりやした…ちっとあっしが話してみるでやんす」

盗賊「女戦士!アサシンの姿がずっと見えんが?何処に行った?」

女戦士「フィン・イッシュ女王の船だ」

盗賊「沖の方で停泊しているやつか?なんで上陸して来ないんだ?」

女戦士「セントラルに許可なく上陸は出来ん立場だ…本来なら大使を通じて段取るのだがそれも出来んのでな」

盗賊「面倒臭ぇこった」

女戦士「支援とは言え他国に勝手に女王が入るのは体裁が良くない…機を待っているのだな」

盗賊「あの嬢ちゃんがどんだけ成長したか早いとこ見たいもんだ」
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:54:35.21 ID:V1qeujs60
『貨物船』


商人「…これでよし…っと」

情報屋「エリクサーの小分け出来たわね?」

商人「うん…これ貧民街のテントの分」

情報屋「私が持って行ってホムンクルスと交代してくるわ」

商人「中央広場の分も持って行ってもらえる?」

情報屋「わかったわ…あなたは少し休んで食事でもして居なさい?」

商人「そうするよ」

情報屋「じゃ…行くわね…よいしょ!」テクテク
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:55:08.45 ID:V1qeujs60
『居室』


ガチャリ バタン カチャ


商人「あ…おかえり…どうして鍵かけるの?」

ホムンクルス「はい…」

商人「貧民街の方はどう?」

ホムンクルス「麻薬が切れた方が増えて来て苦しんでいる様です」

商人「苦しむって?」

ホムンクルス「眠りから覚めて今までの事は夢だと思っている様ですが快楽を脳の受容体が記憶して居ますので鬱症状が出ています」

商人「鬱ねぇ…そんなに酷いんだ」」

ホムンクルス「脳内ドーパミンの放出量が激減した分脳は苦痛と認識するのです」

商人「治せないのかな?」

ホムンクルス「治し方をシミュレーションしていますが今の私には効果的な方法が分かりません」

商人「君でも分からないという事は治せないのかも知れないなぁ…」

ホムンクルス「一つだけ治癒出来そうな方法はあるのですが…」

商人「何?」

ホムンクルス「どれくらい効果が期待できるのかシミュレーション出来ないのです」

商人「どうすれば良い?協力するよ?」

ホムンクルス「私は愛がどれくらい快楽を占めるのか分かりません」

商人「ハハ愛ねぇ…君はどうすれば愛を感じると思う?」

ホムンクルス「私を愛して下さいますか?」

商人「そんな急に言われても答えに困るな…」

ホムンクルス「私と性交渉をしませんか?」

商人「え…」

ホムンクルス「この生体はまだ一度も快楽を経験していませんので快楽と愛の比較が出来ないのです」

商人「そういう理由で性交渉と言われてもな…」

ホムンクルス「こう言えば良いですか?私に快楽と愛を教えてください」

商人「まさか君もリリスの淫魔の呪いに掛かっている訳じゃ無いよね?」

ホムンクルス「私は正常です」

商人「困ったな…」

ホムンクルス「私は以前あなたと少しだけ性交渉をした記憶が残って居ます…覚えていますか?」

商人「そうだったね」

ホムンクルス「あの続きをしましょう」チュゥ

商人「んむ…」

ホムンクルス「触ってください」スリスリ

商人「…わかったよ」

ホムンクルス「ぁ…」


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770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:55:42.45 ID:V1qeujs60
3分後


ホムンクルス「もう終わりですか?」

商人「ご…ごめん」

ホムンクルス「すこし休憩をしてからもう一度お願いします」

商人「ハハ…」

ホムンクルス「知っています…すぐに回復されると思いますので…私の体液をお飲みになって下さい」

商人「むぐ…」ペロ

ホムンクルス「はい…それで良いです…ぁぁぁん」

商人「その声は君のプログラムが出させてるの?」

ホムンクルス「生体の反射で声が漏れてしまいます…お気になさらず続けて下さい」

商人「フフそうか…体は生身の人間と同じか」

ホムンクルス「はい…私は100%人間と同じ組織を持ったホムンクルスです…違うのは脳に超高度AIユニットがあるだけです」

商人「なんかこうしてるとどんどん君を好きになっていく」

ホムンクルス「私も脳内ドーパミンの分泌量が変化している事が分かりました…続けて下さい」

商人「むぐ…」ピチャ

ホムンクルス「ぁぁぁん…あ…あ」
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