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勇者「魔王は一体どこにいる?」続編

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622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:54:10.08 ID:6+J6cz5f0
ピョン クルクル シュタッ


ハイエルフ「…」グイ

アサシン「おぉぉハイエルフか…まさか助けに来るとは」

エルフゾンビ「フフフハハハまだまだ私たちは生かされるのか…ハハハ」

ハイエルフ「…」シュタタ シュタタ
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:55:08.54 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:55:44.11 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:57:53.64 ID:6+J6cz5f0
『亡国フィン・イッシュ_王の間』


バン! ガチャリ


王女「魔女…どうされましたか?」

魔女「ふぅ…ふぅ…」

王女「粗ぶっておられますね?」

魔女「王女…世界中から書物を集めるのじゃ」

王女「はい」

魔女「シン・リーンへの書状をわらわが書く故…気球をすぐに飛ばすのじゃ」

王女「どうしたのですか?」

魔女「リリスは既に目覚めておる…わらわ達はまんまと魔王に乗せられシャ・バクダにて闇を祓った」

王女「乗せられ?どういう事でしょう?」

魔女「封印されておるリリスに注意を向けさせる為じゃ…今まで誰もあの地に足を踏み入れておらん」

王女「人間を使い掘り起こさせて居ると…」

魔女「そうじゃ…でなければわざわざあの地にゾンビを集めたりはせんじゃろう」


わらわが浅はかじゃった

師匠が森を焼いてでも封印した理由をもう少し考えるべきじゃった

魔王は初めから自ら蘇る気なぞ無いのじゃ

人間を勇者を利用してリリスを呼び覚ますのが目的じゃ


魔女「ややもすると既にリリスの腹の中に魔王が息づいているやもしれぬ…子宮は魔王の器になりうるでな」

王女「魔王は深淵に落ちたのでは無いと?」

魔女「そうじゃ…闇と一緒に子宮という器に収まった可能性があるのじゃ」

王女「いつごろ生まれて来るのでしょう?」

魔女「あれから半年は経っておる…あと3ヶ月も経てば生まれてしまうやもしれぬ」

王女「今動き出さないと間に合いませんね」

魔女「もうわらわが禁呪を用いるより他に無いやもしれん」

王女「書物の収集を急ぎます…」
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:58:37.65 ID:6+J6cz5f0
『書庫』


ブツブツ ブツブツ


アサシン「魔女!!王女から話は聞いたぞ…」

魔女「おぉ無事に戻ったか」

アサシン「何か手はありそうか?」

魔女「調べておる…王女は一緒に来ておらぬのか?」

王女「はい…御用でしょうか?」

魔女「この地にクサナギという剣は伝わっておらぬか?」

王女「神事用の剣がクサナギという名を持っていますが劣化して剣としては使えないかと」

魔女「良い…之に持て」

王女「持って参ります」スタスタ

アサシン「その武器で倒すという事か?」

魔女「出来るかどうか分からぬ…じゃが伝説ではその武器で蘇生されたリリスを倒しておる様じゃ」

王女「お持ちしました…どうぞ」

アサシン「クックックどんな剣かと思えばダガーより少し長い程度か」

魔女「随分古そうじゃのぅ…」

アサシン「これはもう刃が付いて居ない…武器にはならんな」

魔女「そうか残念じゃ…やはりわらわが量子転移で穴を開けるしか無さそうじゃのぅ」

アサシン「穴だと?」

魔女「主のミスリルダガーではリリスを包んでおる肉壁に穴を開けられんであろう?」

アサシン「開けた後どうする?」

魔女「主がリリスの腹を裂き子宮を取り出せ」

アサシン「クックック出来ると思って居るのか?」

魔女「無理じゃろうのぅ…」

アサシン「量子転移という魔法は離れた場所からは使えないのか?」

魔女「手で触れる距離で無いと転移出来ぬ…わらわが量子転移で子宮を取り出すならリリスに触る必要があるのぅ」

アサシン「危険過ぎるな…1分弱で石化もある」

魔女「隕石を落としてもあの深さまで到達するか分からん上に被害が大きい」

アサシン「石化はエリクサーで凌ぐとして…どうする?」

魔女「主が魔王を屠った技は使えんのか?」

アサシン「ハートブレイクか…仮死状態に出来るのは数分だが…それで行けるか?」

魔女「危険じゃが…わらわが量子転移で肉壁に穴を開け…主がリリスを仮死状態にする…次にわらわが量子転移で子宮を奪う」

王女「本当に危険な作戦ですね…」

魔女「わらわの師匠が封印した魔物が目覚めていると知った以上もう放ってはおけぬ」

王女「そうですか…私はとても心配です」
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:59:32.60 ID:6+J6cz5f0
『1週間後』


王女「シン・リーンから気球が帰ってきました」

魔女「やっと来たか…壺は在るか?」

王女「こちらです…書物は後ほど運びます」

魔女「シャ・バクダに行くとアサシンに伝えてくれぬか?わらわは準備する」

王女「わかりました…いつ出立されますか?」

魔女「次の定期便じゃな」

王女「私は行く事が出来ませんので…」

魔女「分かっておる…主は王の務めを果たせば良い」

王女「後ほどアサシン様を連れて気球の方へ行きます」




『気球』


伝令「あと10分ほどで出発します…」

アサシン「魔女!待たせたな」

魔女「間に合えば良い」

アサシン「気合が入っているな?子供の身なりとは…」

魔女「今回は失敗出来ぬ故…万全で挑むのじゃ」

アサシン「私もミスリルダガー2本を打ち直してミスリルショートソードにしてきた」

魔女「ほぅ…多少長くなったかの?」

アサシン「これが今の私の最強武器だ…心材に例のクサナギを使っている」

魔女「それは良いのぅ」

王女「少しでもお役に立てればと思いまして」

魔女「伝説の武器じゃ…心して使うのじゃ」

伝令「そろそろ出発します…」

王女「お気をつけて…ご武運をお祈りしています」


フワフワ
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:00:00.80 ID:6+J6cz5f0
魔女「さてアサシン…主に言っておかねばならぬ事がある」

アサシン「何だ?」

魔女「わらわの魔法…量子転移の事じゃ…これは禁呪でのぅ…非常に危険なのじゃ」

アサシン「危険というと?」


この壺はな?封印の壺という物じゃ…この中に子宮を封じるつもりなのじゃが…

量子転移で中に封じる際に転移量が制御できない上…

わらわが次元の狭間に迷い込む可能性があるのじゃ…つまり主とはぐれる

わらわが消えてしもうたらこの壺を持って逃げるのじゃ…よいな?


アサシン「次元の狭間とはどこの事だ?」

魔女「制御出来ぬ…じゃが可能性があると言う話じゃ…迷わんで帰れる可能性もある」

アサシン「ふむ…魔女と逸れない為にはどうすれば良い?」

魔女「余裕があるならわらわの傍に居れば良い…じゃが同時に次元の狭間に迷うのは良いとは思わんな」

アサシン「壺が残されてしまうと言う事か?」

魔女「それも分からんのじゃ…故に禁呪となっておる」

アサシン「賭けだな…」

魔女「勇者は命を張ったのじゃ…わらわも命を張らぬとフェアでは無いじゃろう?」

アサシン「クックック気にしているのか」

魔女「そうじゃ…わらわは唯一女海賊に頭が上がらん…それほど純粋な愛を見せつけられたのじゃ」

アサシン「よし…私も気合が入って来た」

魔女「しばらくはゆるりとワインでも楽しもうぞ」


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629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:00:34.64 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


魔女「随分セントラルの兵がうろついて居るのぅ」

アサシン「そうだな…ゾンビが出るから増援しているのだろう」

魔女「エルフゾンビは上手くやっている様じゃな…木が増えて居る」

アサシン「うむ…私は精霊の御所に行ってエリクサーを仕入れて来る…日暮れ前には戻るからここに居てくれ」

魔女「では望遠鏡でも覗いておこうかの…」



『日暮れ』


アサシン「戻った…暗くなる前に移動しよう」

魔女「エルフゾンビはどうするのじゃ?」

アサシン「今回は危険だから遠くで見ていろと言っておいた」

魔女「賢明じゃ…して?エリクサーは持って来たろうな?」

アサシン「2瓶づつだ」

魔女「十分じゃな…では行くぞよ?」

アサシン「衛兵達はどうする?強行突破する気か?」

魔女「考えておる…わらわが睡眠魔法で眠らせる故…心配するでない」

アサシン「全員眠らせられるのか?」

魔女「勿論じゃ」

アサシン「クックックそんな便利な魔法があるなら初めから使えると言って欲しかったものだ」

魔女「この魔法は魔王がつかうまやかしと似た作用じゃ…味方にも掛かってしまうでのぅ」

アサシン「私も寝てしまうというのか?」

魔女「幻惑魔法は知っている者には掛からぬ…故に主には効果が無い」
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:01:08.66 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


魔女「ちと詠唱に時間が掛かるで待っておれ」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

アサシン「…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「効果時間は?」

魔女「30分で切れるが明日の朝まで寝る者も居るじゃろうな」

アサシン「急ごう」グイ

魔女「これ引っ張るな」


衛兵「ぅぅぅ」スヤ

アサシン「…立ったまま寝てるのか?」

魔女「幻惑じゃ…寝て居るのと変わらぬ」

アサシン「これほど簡単に潜入できるとは…」

魔女「いくぞよ」ノソノソ
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:01:51.21 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ_深層』


アサシン「肉壁を鎖で拘束しているな」

魔女「構わぬ…量子転移では関係ない…空間ごと切り取るでな」

アサシン「エリクサーを一口飲んでおく」ゴク

魔女「そうじゃな…」ゴク

アサシン「準備は?」スラーン チャキ

魔女「いくぞよ?量子転移!」シュン


ザバァァァァァァ


アサシン「中から液体が…」

魔女「まだリリスも動いて居らんな…液体が出切ってから中に入れ」

アサシン「やはり首から上が無い…こいつは脳が無いという事か?」

魔女「そうじゃな1700年前に切り取られたままなのじゃろう」

アサシン「体だけ蘇生しようとしていたのか」

魔女「リリスの子宮が狙いじゃな…アサシン!リリスが暴れる前に心臓を止めよ!」

アサシン「分かった!!ハートブレイク!!」ズン!!ズブズブ

リリス「!!?」ニョロニョロ

魔女「のたうち回っておるな…」タジ

アサシン「もう少しだ…」ズブズブ

リリス「…」ピク ピク

アサシン「今だ!!」

魔女「子宮は何処じゃ?透視魔法!」

アサシン「あと30秒」

魔女「見つけた…いくぞよ?量子転移!」シュン


ドクドクドクドク


アサシン「壺から血があふれて…」

魔女「量の制御が出来ぬ…こぼれた肉片を切り刻め!!」


ドクドクドクドク ボトン


アサシン「はぁ!!」ザクン ザクン スパ

魔女「よし…はぐれて居らぬな?」

アサシン「その様だ…壺はフタが出来ないのか!?」

魔女「やろうとしておる…むむむむ」ドクドク

アサシン「まずい…リリスの心臓が動き出した」

魔女「逃げるぞよ…」ノソノソ
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:02:25.36 ID:6+J6cz5f0
アサシン「先に上がれ」ザブザブ

魔女「血が多いのぅ…むむむむ」


ニョロニョロ ドタ バタ


アサシン「リリスがのたうち回っている…」

魔女「なんと禍々しい姿か…」

アサシン「早く上に上がれ!!」

魔女「出口は何処じゃ?」

アサシン「来た道を…無い!!どういう事だ!?」

魔女「まずいのぅ…ここは次元の狭間じゃ…空間が歪んでおる」

アサシン「2人揃って次元の狭間に来たのか…ちぃぃぃ出る方法は?」

魔女「透視魔法!…見えぬ」

アサシン「ちょっと待ってくれ…石化が始まってる」

魔女「あぅぅ…」

アサシン「おい!!魔女!!エリクサーを!!」グビ

魔女「…」

アサシン「体が小さい分石化も早いのか…魔女!!飲め!!」クイ

魔女「…」

アサシン「ええい!!壺だけでも私が持ち帰る」グイ

魔女「…」

アサシン「フタを…ふん!!」ギュゥ

魔女「…」

アサシン「はぁ…はぁ…」


---どっちに行けば良い---

---出口はどこだ!?---

---私はどこを走っている?---

633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:02:56.54 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


衛兵1「隊長!!しっかりしてください…」

隊長「ん…ぁぁぁ居眠りしていたか」ゴシゴシ

衛兵1「様子がおかしいです!」

隊長「又ゾンビが来たか!?」

衛兵1「いえ…みんな寝ている様です」

隊長「起こして回れ!!」

衛兵1「おい!!起きろ!!」パンパン

衛兵2「んぁぁ…」パチ

隊長「これは緊急事態だ!!全員起こして武器を持て!!」


突っ立って無いで動け!!

目を覚ませ!!

おい!!しっかりしろぉ

武器携帯指示だ…武器を持て!!


衛兵1「隊長!!カタコンベで何か起きている様です」

隊長「例の奴が動き出したのか?」

衛兵1「分かりません…行ってみましょう!」

隊長「分隊A班!!カタコンベ入り口に集合!!B班は後方で待て!!」

634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:03:45.29 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ』


隊長「下はどうなって居る?」

衛兵1「例の奴が鎖の中で暴れまわっています」

隊長「見られるか?」

衛兵1「はい…少し降りたら遠目に見えます」

隊長「なぜ血まみれなのか…だれか見て居ないのか?」

衛兵1「気が付いたらあの様な状態だったそうです」

隊長「急いで特殊生物兵器部隊に連絡しろ」

衛兵1「はっ!!」ダダ

隊長「見た所首が無いな…どういう事だ?何の魔物だ?」

衛兵2「鎖の一部が切れている様です…出て来るかもしれません」

隊長「退避した方が良いな…全体!!カタコンベ入り口まで退避!!」



その日カタコンベから這い出て来たリリスは

砂漠を宛てもなく這いずり回り流した血で砂漠を赤く染めた

軍隊は成すすべも無く見守るだけだったが

のちに到着した特殊生物兵器部隊により捕獲され

研究材料としてセントラルまで移送された



数年後
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:04:31.24 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


調査員「先日出土した石造を見に来たのだが…」

作業員「はい…遺跡の1層目に3体並べてあります」

調査員「案内して欲しい」

作業員「入り口から入ってすぐ左ですよ」

調査員「すこし説明も聞きたい」

作業員「はぁぁしょうがないなぁ…何人目だ?」ブツブツ

調査員「すまないね」テクテク

作業員「…これですよ」

調査員「ふむ…どこら辺で出土したのかね?」

作業員「大きい方がこのフロアの側壁で小さい方が下層の側壁ですわ」ハァ

調査員「側壁…うーん」

作業員「もういいっすかね?」

調査員「他の調査員は年代とか何か話して居なかったかね?」

作業員「そこのでかい石造と明らかに年代が違うって…あんたまで俺を疑うんすかね?」

調査員「疑う?」

作業員「俺が出土したって嘘付いてる様な言い方…」

調査員「あぁそういう事か…疑う気は無い」

作業員「はいはい…じゃあ作業に戻りますんで」スタスタ

調査員「ありがとう…」---見るからに昨日作ったような石造だ---

調査員「…」---格好も古代の物には思えない---
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:05:17.85 ID:6+J6cz5f0
『日暮れ』


作業員「そろそろ戻らないとオアシスまで帰れなくなりまっせ?」

調査員「あぁ…もうそんな時間か」

作業員「何か分かった事あんすか?」

調査員「うーん…この大きな方の石造は何か抱えていたような形をしているけれど…他になにか無かったかね?」

作業員「あぁ…同時に壺が出土してますわ」

調査員「その壺は?」

作業員「考古学者と名乗る人が昨日持って行ったんすよ」

調査員「ふむ…私が知らないという事はフィン・イッシュ国の調査員か…」

作業員「俺も早く帰りたいんでもう出て貰っていいっすか?」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ


調査員「ん?何の音だ?」

作業員「うわ!!まずい…」

調査員「誰か来る…」

作業員「ゾンビだよゾンビ!!早く外に逃げて!!」グイ

調査員「ゾンビはもう出ないと聞いて居たが…」タッタッタ

作業員「知るかよ…たまに出るんだ」

調査員「衛兵は?」

作業員「もう帰ってるよ…はやくラクダに乗ってオアシスまで戻ってくれ」

調査員「誰か遺跡の中に入って行くが…」

作業員「え!?…もう日が落ちてるって言うのに」

調査員「君!!一人で戻るのか?」

作業員「しょうがないだろう…今の人も帰れなく…あ!!!」

調査員「石造を担いでる?」

作業員「あいつは盗掘だ!!…にゃろう!!」ダダ

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ズリズリ

作業員「うわぁ…」

調査員「君!!だめだ…衛兵に連絡するのが先だ」

作業員「ちくしょう…又俺が嘘つきって言われる…」

調査員「私が証人になる…早くラクダに」

作業員「くそう!!」ダダ
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:06:10.74 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


魔女「ぅぅぅ」

エルフゾンビ「気が付いたな?」

魔女「わらわはどうなっておるのじゃ?」

エルフゾンビ「エリクサーで石化の治癒待ちだ」

魔女「封印の壺はどうなった?」

エルフゾンビ「壺?何の事だ?」

魔女「わらわは壺を持って居らなかったか?」

エルフゾンビ「さぁ?」

魔女「アサシンが持って行ったな?…アサシンはどこじゃ」

エルフゾンビ「まだ目を覚まして居ない…アサシンも壺は持っていなかったぞ?」

魔女「どこぞに隠したか…わらわはまだ目が見えぬ」

エルフゾンビ「慌てないで治癒を待て」

魔女「頭が混乱しておる…どの様に次元の狭間より出たのじゃろう?」

エルフゾンビ「次元の狭間だと?お前たちは7年もの間行方不明だったのだぞ?」

魔女「何!?7年も石化して居ったのか?」

エルフゾンビ「ふむ…精霊樹が昨日突然お前たちを発見したのだ…7年間何処を探しても居なかった」

魔女「次元を超えたのじゃな…未来に来た様じゃ」

アサシン「げふっ…げほげほっ」

エルフゾンビ「おお!!目を覚ましたか!」

アサシン「俺は…何処を走ってる…げほっ」

魔女「アサシン!!壺は何処じゃ?」

アサシン「その声は魔女か…壺は俺が持ってる…目が見えない…俺はどうなってる!?」

エルフゾンビ「2人共落ち着け…ここは精霊の御所だ」

アサシン「又石化から救われた…のか?」

エルフゾンビ「そうだ…まだ石化の治癒が終わっていない」

魔女「待てぬ…わらわは壺を封印して居らぬ…壺のフタを…」

アサシン「フタは俺が閉じた…それで良かったか?」

魔女「ほっ…良い…良くやった」

アサシン「クックック兎に角…作戦は成功か?」

魔女「そうじゃ…壺に封印さえしてしまえば出る事は出来ぬ」

エルフゾンビ「壺は持っていなかった様だぞ?」

アサシン「私が抱えて…手が動かん…私は壺を持っていなかったのか?」

魔女「良くないのぅ…次元の狭間に置いて来てしもうたか…」

エルフゾンビ「お前たちはしばらくエリクサーに浸かっていろ…私が探してくる」
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:07:05.52 ID:6+J6cz5f0
『数時間後』


アサシン「7年も未来に来てしまったのか…王女が心配だな」

魔女「千里眼で確認した…大丈夫じゃ…それよりも壺の行方じゃな」

アサシン「あの壺のフタを開けるとどうなる?中身が溢れ出すか?」

魔女「簡単には開かんが開けてしまうと出て来るじゃろうのぅ」

アサシン「簡単には開かないというと?」

魔女「封印の力を上回る力じゃな…わらわでは測れぬ」

アサシン「とりあえずは安心か…」

魔女「そうじゃが…誰も触れぬ場所に置くべきじゃ…何が起こるか分からんでの?」

アサシン「なるほど…そういう事か」

魔女「ん?」

アサシン「リリスの首が無いのはそうやって何処かに封印されたのだな?」

魔女「もう誰も封印された場所を知る者は居らぬ…古文書を見ても分からんじゃろうのぅ」

アサシン「クックック…アーッハッハ結局最後に魔王を屠ったのは私という訳か」

魔女「そういう言い方もあるが…格好良くは無いのぅ」

アサシン「これがクサナギの剣の効果か…クックック」

魔女「壺を隠すまでは仕事が残っておる」

エルフゾンビ「戻ったぞ…石化は解けた様だな?」

魔女「壺は無かったか?」

エルフゾンビ「何処を探しても見つからない…それよりも遺跡周辺で騒ぎになって居てこれ以上探せない」

アサシン「騒ぎ?どういう事だ?」

エルフゾンビ「お前達を運び出す所を人に見られたのだ」

魔女「わらわ達はカタコンベで石化しとったのじゃな?」

エルフゾンビ「そうだ…そこから運び出した」

魔女「ふむふむ…次元の狭間は時間だけを超える様じゃな…つまり過去の物を量子転移出来ると言う事か…」ブツブツ

魔女「ではどうやって触る?…待てよ過去とは記憶の事では無いのか?空間は過去に記憶として繋がっていると仮定して」ブツブツ

魔女「記憶を手で触るとはどういう事じゃ?もし記憶から量子転移出来るなら過去は丸ごと現在に繋がる…時間とは何じゃ」ブツブツ

アサシン「おい…」

エルフゾンビ「…」

アサシン「魔女はまだ混乱している様だ」

エルフゾンビ「夜明けまでまだ間がある…ゆっくりして行け」


ブツブツブツブツ…

ブツブツブツブツ…
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:08:00.32 ID:6+J6cz5f0
『日の出』


アサシン「私は星の観測所まで行って来るが…魔女はどうする?」

魔女「わらわも行くぞよ?」

エルフゾンビ「あの場所はもう接収されて私は近づけない」

アサシン「何!?私の資産なのだが…」

エルフゾンビ「7年も経って居るのだ…状況は昔と違う」

アサシン「うーむ…まず情報収集だな」

エルフゾンビ「今は衛兵が出回って居るぞ?魔女の恰好は石造と同じではマズイと思うが?」

魔女「ほう?これで良いか?変性魔法!」グングングン

エルフゾンビ「はっ…大人に…」

アサシン「お前は知らなかったのか…魔女は変身するのだ」

エルフゾンビ「赤い目の魔女…まさか君が…」

魔女「少し法衣が小さいが動けん事も無い…これで良いか?」

エルフゾンビ「…」

魔女「変な目で見るでない…主は何を驚いておる」

アサシン「目の当たりにすると普通は驚く」

エルフゾンビ「私はセントラルの第2皇子だ」

魔女「じゃから何じゃ?」

エルフゾンビ「何も聞いて居ないのか?」

魔女「はて?知らんのぅ…何か有ったかのぅ?」

エルフゾンビ「婚約の話を…」

魔女「求婚が何度も来て居ったが…主だったのかえ?…わらわはその様な話に興味なぞ無い」

アサシン「クックック相棒!!見事に振られたぞクックック」

エルフゾンビ「フフ…第2皇子だったのは昔の話か…今は精霊樹を守るエルフゾンビだ」

魔女「エルフには興味あるがゾンビには興味が無い…アサシン行くぞよ?」

アサシン「酷い事を言うのだなクックック」



『オアシスへ続く林』


魔女「随分と風景が変わったのぅ…遺跡周辺はもう森になっておる」

アサシン「現在地が分からなくなるな…どこがどのオアシスだったのか…」

魔女「主はどうするつもりじゃ?」

アサシン「王女に私たちの無事を伝えなくてはな」

魔女「そうじゃな…壺を探すのは王女の手を借りた方が良いかもしれん」

アサシン「南西のオアシスまで歩くのは遠い…どこかでラクダを手に入れないとな」

魔女「一番近いのは星の観測所じゃが…先に行ってみるかえ?」

アサシン「一応様子を見て行こう…知った顔が居るかもしれん」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:05:42.65 ID:iNLvSB+c0
『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


男「待て待て…お前たちは誰だ?」

アサシン「私はこの建屋の持ち主だったのだがドラゴンの義勇団は何処に行った?」

男「ドラゴンの義勇団?わーっはっは…いつの話をしているのか」

アサシン「私の気球はどうなった?」

男「知らんなぁ…お前は義勇団の関係者なのか?」

アサシン「どう答えて良いか分からんが…」

男「う〜ん…女連れかぁ」

アサシン「この建屋の今の持ち主は誰だ?」

男「フィン・イッシュ領事が使われている」

アサシン「ほう…それは都合が良い…領事に目通り出来るか?」

男「今は不在だ」

アサシン「そうか…中で待たせてもらう」ツカツカ

男「おとととと…待て待て…勝手に入って貰っては困る」

アサシン「こういえば伝わるか?ドラゴンの義勇団のアサシンが帰って来た」

男「んん?うーん…女連れ…もしかして女王様が探してる2人か?」

アサシン「多分そうだな…通って良いか?」

男「何か証拠になるような物は持って無いのか?」

アサシン「…」スラーン

男「おっとぉ…いきなり武器を抜くたぁどういう事よ」

アサシン「クサナギの剣だ…柄の銘を見ろ」

男「おぉ…龍神の文様と刻印」

アサシン「入って良いな?」

男「こりゃぁ大ごとだ…領事が帰って来るまで中で待っててくれ」

アサシン「そうさせてもらう」

男「俺ぁ伝令の所まで走って来るからよぅ…勝手に居なくならないでくれな?」
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:06:58.50 ID:iNLvSB+c0
『部屋』


魔女「荷物は昔のままじゃな?王女が確保しておいてくれた様じゃ」

アサシン「さきほどの話では女王になった様だな」

魔女「7年も経っておればもう少女では無いであろうな」

アサシン「しかし…随分平和そうだ」

魔女「そうじゃな」

アサシン「見た所セントラルと摩擦が起きている様子も無い」

魔女「んむ…拍子抜けじゃな」

アサシン「壺ごと未来に飛んだからなのか?」

魔女「その可能性もあるのぅ…」


ドタドタ


男「おぉぉ良かった…見張ってろと叱られて来た所だ」

アサシン「領事の行先は?」

男「遺跡の方で何かあったらしいんだ…軍が集まって大ごとになってる」

魔女「わらわ達のせいじゃな」

男「どういう事だ?」

アサシン「話すとややこしい…とにかく私たちが帰って来た事に起因するな」

男「領事を探しに遺跡の方に行ってみるか?」

魔女「わらわは歩き疲れておる…気球は無いのかえ?」

アサシン「厄介ごとに首を突っ込むのはよそう…大人しく待っていよう」

男「そうか…」
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:07:32.18 ID:iNLvSB+c0
アサシン「ところで…セントラルの兵が見えん様だが?どうなって居る?」

男「シャ・バクダ街の方だ…オアシスの方にはほとんど来ない」

アサシン「遺跡の調査を主導していた筈だったが?」

男「あんた知らないのか?もしかして記憶が無いとかそういうやつか?」

アサシン「話せば長くなるのだが…まぁ記憶が無いのと等しいか…」

男「7年くらい前だったか…遺跡から蛇の様な魔物が出て来てこの一帯は大混乱したんだ」

魔女「リリスじゃな…どうなったのじゃ?」

男「その魔物の血を浴びると石化するもんだから軍隊でも手を焼いてな…」

アサシン「なるほど…それで石化したのだな」

男「何か月も掛けてセントラルの大部隊がやっと捕獲したんだ」

魔女「討伐ではなく捕獲じゃと?」

男「鎖でグルグル巻きにしてどっか持って行った…その後セントラルは遺跡の調査を中止したんだ」

アサシン「今は遺跡の調査をフィン・イッシュが主導しているのか?」

男「女王様があんた達を探すのにオアシス全域の領有を主張したんだ…だから今はオアシス全域フィン・イッシュ領だ」

アサシン「それでセントラルの兵はこちらに来ないのか…」

男「それもあるが…エルフといざこざが起きて忙しいらしい」

魔女「懲りん奴らじゃ…それにしてもアサシン…」

アサシン「あぁ…リリスは特殊生物兵器部隊に持って行かれた様だ」

魔女「んん?始めて聞く名じゃが…セントラルはその様な部隊を持って居るのじゃな?」

アサシン「エルフゾンビ曰くセントラルの主力だ…生物兵器としてリリスの血を使うつもりで捕獲したのだろう」

魔女「…という事は…行先はセントラルか」

アサシン「今は壺の方が先決だ」
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:08:02.10 ID:iNLvSB+c0
『数時間後』


なぜもっと早く知らせに来んのだ

探したんですがなかなか見つからなかったもので…

伝令は飛ばしたのか?

はい…定期便に乗せました


ドタドタ


魔女「来たようじゃのぅ?」

アサシン「…」

領事「これはこれはアサシン様と魔女様に御座いますね?」

アサシン「単刀直入に聞く…遺跡で壺を見ていないか?これくらいの大きさの壺だ」ゴソゴソ

領事「え…あ…あのですね」

魔女「知って居る様じゃな?話せ」

領事「紛失してしまったのです…」

アサシン「どこに行ったか分からないと言うのか?」

領事「先先日に我が国の考古学者と名乗った者が壺を持ち出したのですが…そのような者は我が国に居ませんでして…」

アサシン「なるほど…セントラル側に忍び込まれているという事か」

領事「恐らく…」

アサシン「シャ・バクダ街の方へは捜索に人を出しているか?」

領事「数名出していますが未だ行方知れずです」

アサシン「うーむ…的が絞れん」

領主「実は石造2体も紛失してしまって捜索中なのですが…もしかするとお二人の事ですかね?」

アサシン「石造の捜索はもうしなくて良い…壺に絞って欲しい」

領主「はぁぁぁ良かった…女王様に何と申し開きしようかと困って居たのです」ホッ

魔女「女王に石造の件は連絡しておるのか?」

領主「はい…出土したその日に伝令を飛ばしております」

魔女「こちらに来るかのぅ?」

領主「アサシン様と魔女様の関係でしたら直々に参られると思います」

魔女「では女王が来るまでは動けんのぅ…来るのは早くて1週間程か?」

領主「はい…大体それくらい掛かると思います」

アサシン「私は落ち着けんな…一人でシャ・バクダ街まで見に行って来る」

魔女「わらわは主の邪魔になりそうじゃな?」

アサシン「そうだな…一人の方が何かと融通が利く…魔女はこの辺で情報収集していてくれないか?」

魔女「おい男!!ラクダを用意せい…オアシスを回るぞ」

男「ええ!?俺!?俺はこの場所の管理を任されて…」

魔女「そんな仕事は領事にやらせておけ…早う準備せい!行くぞよ」

領事「オアシスのご案内は私めが…」

魔女「主は嘘付きの顔をしとるで信用できぬ…わらわは頭の回らん男の方が好きじゃ」

男「んん?俺のことか?」

領事「…」

魔女「何をしとるんじゃ早う行くぞ」ゴツン

男「あだっ…杖でどつくな…痛てぇな…」
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:08:41.54 ID:iNLvSB+c0
『数日後』


わらわは下着を履いておらんと言うたじゃろう!!何故買って来なかったのじゃ

女物の下着なんか俺が分かる訳無いだろ

またどつかれたい様じゃな…もう一度行って買って来い

なんで俺がお使い役なんか…あだっ!!わかったわかった…


魔女「おぉアサシン帰って来たか…んん?誰じゃ祖奴は?」

アサシン「骨董品屋だ…この男の手を見てやってくれ」

魔女「どうしたのじゃ?」

骨董品屋「手が黒くなって動かなくなっちまってなぁ…医者に見せても分からんと言うもんでなぁ」

アサシン「回復魔法で治せないか?」

魔女「やってみても良いがこれは怪我なぞでは無いようじゃな?回復魔法!」ボワー

魔女「どうじゃ?動かせるか?」

骨董品屋「動かんなぁ…これじゃ仕事にならんなぁ」

魔女「消毒魔法!」ボワ

骨董品屋「動かんなぁ…」

魔女「何じゃろうな?動かぬという事は石化かも知れん…わらわの魔法では治せぬ」

アサシン「石化か…魔女はまだエリクサーが余っていたな?」

魔女「おぉ!!忘れておった…これを一口飲んでみぃ」スチャ

骨董品屋「…」ゴク

魔女「直ぐには治らんよって…まてよ?黒色化に石化…もしやこれは黒死病では無いか?」

骨董品屋「それは悪い病気なんかなぁ?」

魔女「体の一部が石になる伝染病じゃ…他にこの様な症状の者は居らんのか?」

アサシン「私が見る限り一人しか見ていないが…彼は壺の鑑定を露店でやって居るのだ」

魔女「壺を見つけたのかえ?」

アサシン「いや…沢山鑑定している様だから封印の壺が有ったのかは分からん…だが触った可能性はある」

魔女「急に石化する病気が出て来るのはあきらかにおかしいのぅ…壺の影響と考えた方が良いな」

アサシン「…となると商隊でどこかに運ばれた可能性も出て来るな」

魔女「おい骨董品屋!主が鑑定した壺はどうなるのじゃ?」

骨董品屋「良い物は商隊に回してよその町で買い取ってもらうんだなぁ…」

魔女「これくらいの黒い壺じゃ…覚えて居らんのか?」

骨董品屋「いっぱいあるんだなぁ…どれがどれだかなぁ…」

アサシン「この調子なのだ聞いても意味が無い…探し物の魔法とか無いのか?」

魔女「あればとっくに使っておるわい…んーむどうしたもんか…」



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645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:09:24.12 ID:iNLvSB+c0
女王「近衛2人だけ私に同行してください…他の者は見張りをお願いします」

衛兵「はっ!!」

女王「二人は中にいらしていますか?」

領事「はいお待ちしております」

女王「案内してください」

領事「こちらです…どうぞ」ササッ


ガチャリ バタン


女王「あぁぁぁアサシン様…魔女様…よくご無事で」

魔女「おぉぉ女王らしくなったのぅ」

女王「今までどうされて居たのですか?何の音沙汰も無く本当に心配していました」

魔女「わらわ達には主と別れてまだ10日程しか経って居らん」

女王「え!?どういう事なのでしょう?」

魔女「立って話すのも何じゃ…座ってゆるりと話そうでは無いか」

女王「はい…」

魔女「わらわ達はあれから…」


カクカク シカジカ

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646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:09:53.14 ID:iNLvSB+c0
魔女「…禁呪を使った影響で次元の狭間に迷い未来に飛んでしもうたのじゃ」

女王「そうだったのですね…では壺にリリスの子宮を封じるのは成功したのですね」

魔女「7年間この世界で何事も無く平和が続いたのは壺ごと未来に飛んだからかも知れぬ」

女王「でも無事に戻られて本当にほっとしています」

アサシン「そう安心しても居られない様なのだ」

魔女「そうじゃ…封印の壺を紛失してしもうた」

女王「それは先ほど領事に聞きました…盗掘に遭ってしまったと」

アサシン「シャ・バクダでは盗掘で生計を立てている者も多いから仕方の無い事ではある…特に壺となれば値も張る」

魔女「今探しておるが他にも沢山壺がある様でのぅ…見つからんのじゃ」

女王「黒死病の話も聞きましたが?関係しているのでしょうか?」

アサシン「その話だが…恐らく封印の壺が感染源になって居そうだ」

魔女「伝染病じゃからこれから感染者が増えてしまうよって手を打って置かんと拡大するぞよ?」

アサシン「エリクサーは量に限りがあるが少しなら入手が出来る」

女王「まずは感染の拡大を防ぐのが先ですね…どうすれば防げると思いますか?」

魔女「防げるかどうか分からんがくちばし付きの被り物で病を予防したと言うのは何かで読んだ事がある」

女王「被り物…マスクの事でしょうか?くちばしマスクでしたら趣向品で入手する事が出来ます」

アサシン「趣向品で良いのか?」

魔女「目と鼻と口が覆えれば良いのでは無かろうか?病気の専門家に聞いた方が良いな」

女王「分かりました…医者に聞いて手配を急がせます」

アサシン「壺はどう探す?」

女王「商隊の行先は陸路のセントラルか空路のフィン・イッシュどちらかです」

アサシン「壺の買い入れが多いのは?」

王女「税金の安いフィン・イッシュの方が儲かる筈ですが貴族は圧倒的にセントラルの方が多い」

魔女「どっちか分からんという事か…」

女王「はい…」

アサシン「やはり二手に分かれるか…女王は王都に戻る必要があるのだろう?」

女王「そうですね…私は公の会談以外でセントラルに行く事は出来ません」

アサシン「分かった…私と魔女でセントラルへ向かう…女王はエルフゾンビにエリクサーを融通してもらって王都に戻れ」

女王「エルフゾンビ…第2皇子はお元気ですか?」

アサシン「後で会わせてあげよう…見違えるほど元気にしている」

女王「そうですか…良かった」



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647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:10:19.45 ID:iNLvSB+c0
女王「なんだかタイムスリップした様な錯覚をします」

アサシン「んん?私たちが昔のままだからか?」

女王「はい…あの時のまま…何も変わらず魔王の影を追っている姿が…とても不思議です」

アサシン「7年の月日か…君は随分変わったな…大人になった」

女王「私は私の顔が見えませんから…お二人を見て変に錯覚してしまいます」

アサシン「私は正直7年も経った実感が無い…ただ混乱している」

女王「あれから随分お二人を探したのですよ?近衛には迷惑をかけっぱなしでした」

アサシン「砂漠をか?」

女王「おかげでホラ?筋肉ムキムキ」

アサシン「クックック砂漠で足腰を鍛えたか…女王の足では無いな」

女王「畑仕事も沢山やりました」

アサシン「それで一回り大きく見えたのだな」

女王「今日お二人に会えてとても報われた気持ちになりました…信じて良かったって」

アサシン「君は君のまま女王をやれば良い」

女王「はい…その言葉を信じて今までやって来ました」

アサシン「良い国になって居る様では無いか」

女王「落ち着いたらフィン・イッシュにいらして下さい」

アサシン「ほう?自信がある様だな?」

女王「不思議とみんな筋肉ムキムキなのです…軍国はやめたのですけれどね」

アサシン「歓楽の国になったのか?」

女王「民がおしゃれ祭りや筋肉祭りをやる様になって色んな歓楽が楽しめます」

アサシン「クックック変な国だな…筋肉祭りとは…一体何を祭るのかクックック」
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:10:46.54 ID:iNLvSB+c0
『遺跡の外れ』


女王「近衛は気球で待機していて下さい」

近衛「はっ!!アサシン殿…魔女殿…女王の安全をお願いします」

魔女「わらわが居れば大丈夫じゃ…安心して待たれよ」

女王「ここから歩くのですか?暗くなって来ましたが…」

アサシン「エルフゾンビは暗くならないと出て来んのだ」

女王「そうでしたか…この周辺も私は良く歩きましたが夜にならないとお会い出来なかったのですね」

アサシン「この先に精霊の御所への入り口がある」

女王「はい…閉ざされた遺跡があるのは存じております」

アサシン「トロールが守って居るのだ…閉ざしているのはトロールなのだよ」

女王「そうだったのですか」

アサシン「エルフゾンビの隠れ家になっている…他言しない様にな?」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン


女王「今の音は?」

魔女「トロールが道を開けた音じゃな…入っても良いという事じゃろう」

女王「この様な仕掛けがあったのですね…何処で見ているのでしょう?」

魔女「わらわ達も仕掛けは良く分からんが森のどこかで見て居るのじゃろうな?」

アサシン「さぁ…早く入るのだ」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:11:17.77 ID:iNLvSB+c0
『精霊の御所』


魔女「これエルフゾンビ!客が来たぞ?」

エルフゾンビ「…」

魔女「瞑想しておるのか?これ…起きんか!」ユサユサ

エルフゾンビ「…」

魔女「待つしか無い様じゃ…折角女王を連れて来たのにのぅ…」

アサシン「まさか誰かが入って来るとは思って居なかった様だな」

女王「ここがかつての精霊の御所なのですか?」

アサシン「…そうらしい…私は詳しい事は知らん」

女王「木の根で作った城なのですね…とても神秘的です」

魔女「どれくらいトロールが居るのか分からんがトロールがこの根の森を守っておる」

女王「私が小さい頃トロールに乗るのが夢でした」

魔女「何故にトロールなのじゃ?」

女王「童話では森に住むトロールは小鳥を肩に乗せて居たのです…私はその小鳥の様に肩に乗りたかった」

エルフゾンビ「…来ていたのか」スゥ

女王「エルフゾンビ様…お久しぶりです」

エルフゾンビ「姫か…元気そうで何より」

魔女「もう姫ではないぞよ?女王じゃ」

女王「どちらでも良いです」

エルフゾンビ「今日は揃ってどうした?用が有って来たのだろう?」

アサシン「エリクサーを持って女王と一緒にフィン・イッシュに行かないか?」

エルフゾンビ「私は精霊樹を守る役目がある…行けんな」

アサシン「実はなリリスの子宮を封じた壺が黒死病という石化する病気を発生させている様なのだ」

エルフゾンビ「石化する病気…それでエリクサーが入用という訳か」

アサシン「私は魔女と共にセントラルまで壺を探しに行こうと思う」

エルフゾンビ「なぜそれほど遠方まで探しに行く?」

アサシン「壺が商隊で運ばれているのだ…行先はセントラルかフィン・イッシュのどちらかだ」

エルフゾンビ「なるほど女王と共に壺を探してくれという事か」

アサシン「女王の立場上自由に動けないのは分かるな?」

エルフゾンビ「しかし遺跡へ立ち入る人間がこうも多くてはな…エルフがこちらへ来られないのだよ」

女王「遺跡への立ち入りを国として禁止する事が出来ます」

魔女「その方が良いじゃろうのぅ…もう遺跡の調査は必要無かろう?」

エルフゾンビ「私の顔を見て見ろ…既に人前に出られる顔では無い」

魔女「それ程変では無いがな?エルフにしては肌色が悪い程度じゃ」

アサシン「クックック気にし過ぎだ…プライドが許さんか?」

女王「気になる様でしたら仮面を用意致します…フィン・イッシュでは流行って居るのです」

エルフゾンビ「ふむ…」

魔女「精霊樹は何か言うておらんのか?」

エルフゾンビ「何も言って居ないがお前たちが此処に入って来られたという事は協力しろという意味だ」

魔女「では決まりじゃな?」
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:11:49.22 ID:iNLvSB+c0
『女王の気球』


近衛「エリクサーの樽は1つで良いのでしょうか?」

女王「はい…もう一つは星の観測所に残して行きます」

領事「お預かりいたします…」

女王「観測所の警備を増やして盗まれないようにして下さいね」

領事「承知致しました」

女王「領事…くれぐれも遺跡の方へ人を近づけてはいけません…分かりましたね?」

領事「警備の衛兵も撤収でしょうか?」

女王「そうしてください…何人も立ち入り禁止と致します」

近衛「領事…次はヘマをしない様にな?女王様は何も言わないが私たちは見ているぞ?」

女王「近衛!もう良いのです…領事…お願いしますね?」

領事「御意…」

魔女「アサシン…わらわが主に渡した貝殻を女王に持たせよ」

アサシン「あぁ…」ゴソゴソ

女王「これは?魔女様の声を聞く貝殻ですね?」

魔女「そうじゃ…こちらの様子をその貝殻で知らせる故…常に持っておくのじゃ」

女王「わかりました…これが在れば安心ですね」

アサシン「私達が使って良い気球は…」

女王「貨物用の気球を用意しました…セントラルへの入国が許可されている気球です」

アサシン「おぉそれは良い」

女王「案内人を一人付けますので気球の操作と入国は彼にお任せください」

魔女「何から何まで済まんのぅ」

女王「セントラルは武器の携帯が制限されていますので貨物の中に入れて入国してください」

アサシン「その辺は上手くやる」

女王「はい…今度は行方不明にならないで下さいね」

魔女「毎日貝殻で報告するで心配するでない」

女王「わかりました…それではご無事で」


フワフワ
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:12:21.58 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』



魔女「こりゃまたヘンテコな気球じゃな…3人乗りかえ?」

案内人「そうだ…」

魔女「おろ!?主は男では無いか…観測所の警備はクビになったんかえ?」

案内人「女王様の命令だ…」

魔女「何故それほど暗い顔をしておる…わらわは主が案内人で嬉しいぞよ?」

アサシン「魔女に気に入られた様だなクックック」

案内人「もう出発して良いのか?」

アサシン「そうだな…」

案内人「行先はセントラル直行かい?」

アサシン「ハズレ町〜シケタ町〜トアル町経由でセントラルに入る」

案内人「商隊の陸路を追うんだな?…途中のキャンプは無視して良いのか?」

アサシン「君は詳しい様だな…キャンプでは荷の確認が出来ないだろうから無視しても良いと思うが?」

案内人「密売品の場合は荷の検閲回避の為にキャンプで積み替えをやるポイントがあるんだ」

魔女「密売品とはどういう物じゃ?」

案内人「麻薬やエルフ…それから美術品…骨董品とか取引価格の高い奴だ」

魔女「骨董品か…アサシンどう思う?」

アサシン「ふむ…確認しなければならない場所が多いな…虱潰しか」

魔女「そうじゃなぁ…」

案内人「…」
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:12:58.19 ID:iNLvSB+c0
『数日後_キャンプ』


魔女「戻ったな?どうじゃ…手がかりは見つかったかの?商隊は随分こちらを警戒しておる様じゃが…」

アサシン「一通り荷は見て回ったが手がかりは無い」

魔女「残念じゃのぅ…」

アサシン「次はシケタ町か…う〜む…」

魔女「何か気に掛かる事でもあるのか?」

アサシン「私はこれほど的を絞れず探し物をする事はしないのだ…どうも調子が狂う」

魔女「手がかりの一つでもあればのぅ…」

アサシン「女王の方はどうなって居る?フィン・イッシュでは手掛かり無いのか?」

魔女「千里眼で見る限り未だ見つかって居らぬ様じゃ」

アサシン「何か変だ…」

案内人「…」

魔女「む?案内人…お主落ち着きが無さそうじゃのぅ」

案内人「俺は関係ねぇ」

アサシン「…」ジロリ

案内人「…」

アサシン「そういえば女王は私達に会いに来た時…近衛を傍に付けていたな?」

魔女「む…主も気になって居ったか…わらわ達に会うのに近衛を付けるのは今まで無かった事じゃ」

アサシン「精霊の御所では単独で付いてきた…つまり私達は信用されている」

魔女「星の観測所で同席して居ったのは領事と案内人じゃな」

アサシン「…」スラーン ピタ

案内人「お…おい!俺は関係無ぇ!!」

アサシン「なに?…俺は関係無いだと?…領事は関係あると言うのだな?」

案内人「俺は指示された通り商隊の裏行動まで案内しろと…」

アサシン「魔女…千里眼で領事の目を覗け」

魔女「千里眼!」

アサシン「領事は何をしている?」

魔女「酒を飲んでおるな…女が居る…どこぞの酒場じゃ」

アサシン「酒場だと?オアシスにろくな酒場など無い…シャ・バクダ街だな?」

魔女「建物の中という事しか分からんが…ぬ!骨董品屋が一緒では無いか」

アサシン「謀られたな…」ブスリ

案内人「ぐあぁぁぁ…待て!!俺は本当に関係ない!!」

アサシン「私を誰だと思っている…生きて帰れると思うな」グイ

案内人「本当だ!!俺は何も知らない…たたた助けてくれぇ」

アサシン「…」ギロ

案内人「りょ…領事は…元諜報員という事しか…知らん…ぐふっ」

アサシン「魔女…回復してやれ」

魔女「主は手加減を知らんのか?回復魔法!」ボワー

案内人「げふっ…げふ…」

アサシン「星の観測所に戻る…急いで用意しろ」
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:13:37.25 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』


ビョーーーウ バサバサ


アサシン「女王が案内人を私達に同行させたのは偶然か?」

案内人「俺が昔商隊長やってたのを領事が女王に進言したんだ」

アサシン「なかなかあの領事はヤリ手だな」

魔女「領事がセントラル側の人間じゃったとすると色々とマズイのぅ…」

アサシン「そうだな…フィン・イッシュ軍が遺跡から引き揚げた現状セントラル軍が遺跡に入る…エリクサーが欲しい筈だ」

魔女「森が燃やされるかもしれぬ…それでもフィン・イッシュ軍は遺跡に入れんでは無いか」

アサシン「領事は壺の中身も知ってしまっている…始末せねばなるまい」

魔女「案内人!!主はこうなると思わんかったんか!!」

案内人「俺は本当に領事のやっている事は何も知らない…ただ信用出来なかった」

魔女「ぐぬぬぬぬ何でも良いから領事の事を話せ」

案内人「良く行く酒場は確かにシャ・バクダ街の店だ…それ以外は本当に知らない」

アサシン「フィン・イッシュ領事がシャ・バクダ街で豪遊かクックックそれがおかしいと思わないお前は無能だ」

案内人「くっ…領事には逆らえなかった」

魔女「女王に知らせておくかえ?」

アサシン「話は一方通行だな?」

魔女「そうじゃ」

アサシン「う〜む…あの領事が居たから摩擦が回避出来ていたとも考えられるな」

魔女「主はあの領事を泳がす気か?」

アサシン「女王はそれを承知で使っていたのでは無いか?」

魔女「むぅ…そういえば近衛の指摘を諫めておったな…」

アサシン「エリクサーの樽を1つ置いて行ったのは領事に対して上手く使えという事では無いか?」

魔女「女王はセントラルの民も案じておるのじゃな?」

アサシン「そうだ…つまり勝手に領事を始末するのは女王の意に反する可能性がある」

魔女「わらわ達は壺さえ戻れば良いが…」

アサシン「クックック…」ニヤリ

魔女「考えがあるなら話せ…」

アサシン「まぁ待て…もう少しで分かる」
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:14:16.25 ID:iNLvSB+c0
『数時間後』


案内人「うっ…ぅぅぅ」

魔女「これ!!さぼるでない」

案内人「悪い…体の調子がおかしい…ぅぅぅ」

アサシン「クックック…これを見ろ」スラーン

魔女「クサナギの剣か?…ん?刀身が錆びておるのか?」

アサシン「血だ…拭いても落ちん」

魔女「何と!!リリスの呪いか?」

アサシン「どうやらそうらしい…クックック」

案内人「お…おい…俺はその剣で刺されている…どうなるんだ?」

アサシン「刺された場所を見て見ろ」

案内人「なにぃ!!…うぉ!!黒い…」

魔女「黒死病じゃな」

案内人「助けてくれよ…俺はまだ死にたくねぇ」

魔女「わらわのエリクサーを一口飲め…少しだけじゃぞ?」

案内人「…」グビ

アサシン「決まりだな…これで領事を脅す」

魔女「主はえげつない男じゃな…エリクサーを取り上げて黒死病にするんじゃな?」

アサシン「案内人の10倍は痛い目を見てもらう…蘇生は任せる」

魔女「切断してしもうたら治せんよって手加減せいよ?」

アサシン「私は正直あの領事を許せんのだ…身内を騙すような奴をな」

案内人「…」ゴクリ

アサシン「案内人…私がやる事を良く見て立ち振る舞いを考える事だ…」

魔女「恐ろしい男よのぅ…」
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:14:46.35 ID:iNLvSB+c0
『シャ・バクダ遺跡上空』


フワフワ


アサシン「やはりセントラルの兵が遺跡を探索しているな」

魔女「気球が4つ飛んでおるな」

アサシン「案内人!上から近付け」

案内人「はい…」

アサシン「魔女…魔法で気球の球皮を焼いて落とせるか?」

魔女「4ついっぺんに落とすなら竜巻魔法の方が良いのぅ…火は森を焼いてしまうで」

アサシン「任せる」

魔女「竜巻魔法!竜巻魔法!竜巻魔法!」ゴゴゴゴゴゴ

案内人「うぉ!…」バサバサ

魔女「風が巻くで気を付けい!!」

アサシン「勝手にフィン・イッシュ領に入るとどうなるか教えておかないとな」

魔女「高位魔法を詠唱するで敵の兵に近寄るのじゃ…」アブラカタブラ クラウドコントロール アッシドレイン

魔女「広範囲毒霧魔法!!」モクモク

案内人「霧?」

魔女「吸い込むでないぞ?調子が悪うなるで…」

アサシン「よし…風上から迂回して星の観測所に戻る」

案内人「観測所に直接降ろして良いのか?」

アサシン「構わん…後は私に任せろ」

656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:15:16.26 ID:iNLvSB+c0
『星の観測所』


フワフワ ドッスン


衛兵「これはアサシン殿…セントラルに向かったのでは?」

アサシン「ちと忘れ物が在ってな…領事は何処にいる?」

衛兵「今は外に出ておりますが直に戻って来るかと思います」

アサシン「中で待たせてもらう」

衛兵「はっ…ところで遺跡の方で何か起きている様ですが気球からは見えて居ないですか?」

アサシン「竜巻が起きていたな…気にしなくて良い」

衛兵「そうですか…」

アサシン「案内人!ワインの樽を持ってエリクサーの樽と交換しておけ」

案内人「あぁ…分かった」ヨッコラ

アサシン「魔女…領事が来たら周辺の衛兵を例の睡眠魔法で眠らせてくれないか?」

魔女「ふむ…他の者を巻き込まん様にするのじゃな?」

アサシン「あまり身内を殺めたく無いのでな…騒ぎにはしたくない」

魔女「中で待つとするか…」ノソノソ
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:15:57.10 ID:iNLvSB+c0
『1時間後』


ドタドタ


領事「これはこれはアサシン殿ご一行…何故お戻りに?」

アサシン「人を払ってはくれんか?」

領事「さて?なぜにその様な事を言うのですやら?」

アサシン「まぁ良い…遺跡にセントラル兵が入っている様だが?放って置いて良いのか?」

領事「女王様から侵入を禁止されておりまして…その」

アサシン「何人も入れるなという命令では無かったか?」

領事「我が国の者は何人も入れておりませぬ」

アサシン「あぁ…もう良い」

領事「女王様にご報告されるおつもりでしょうか?」

アサシン「領事…お前に質問をする」

領事「私が先に質問をしているのですがお答えにならない様でしたら…」

アサシン「シャ・バクダ街の酒場で豪遊とは大した身分だな」

領事「はて?何の事でしょう?何か証拠でもあるのでしょうか?」タラリ

アサシン「どうやら話しても無駄な様だ…」スラーン

領事「抜刀とは頂けませんな…女王様の従士とはいえ捨て置けませんぞ?衛兵!!取り押さえよ!!」

衛兵「…」スヤ

領事「何をしておる!!」

衛兵「…」スヤ

領事「ええぃ役立たずめ!!」スラーン ダダダ ズン

アサシン「…」

領事「フフフフ心の臓に当たってしまいましたな?」

アサシン「終わりか?」

領事「なに!!」ズン ズン

アサシン「そうか刺客の技も持って居たか…どうりで女王は近衛を払わん訳だ」

領事「このぉ化け物が!!」ザクザク
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:16:30.23 ID:iNLvSB+c0
アサシン「剣はこうやって使うのだ」ブン スパー

領事「ぎゃぁぁぁ手が…手がぁぁ」

アサシン「さて…壺はどうした?」

領事「はぁ…はぁ…何の事か…こんな事をしてお前!!許されると思うな!!」

アサシン「指は10本あるな?」ボキ ボキ ボキ ボキ

領事「ぐぁ…やべて…ぎゃぁぁ」ボキ ボキ ボキ ボキ

アサシン「神経をな…直接触るとどんな感じするか知っているか?」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃあああああああああああああああああああああああああ…あひあひ」

アサシン「もう一度聞くぞ?壺をどうした?」

領事「ひょひょ…あへ」

アサシン「聞こえんな…背骨の神経はもっと効くらしいな」ズン ギュゥゥゥ

領事「ぐぇぇぇぇががあがが」ピクピク

アサシン「魔女…少し休憩しよう」

魔女「回復魔法!」ボワー

領事「ブクブク…うげぁ」ゲロゲロ

アサシン「もう一回始めからだ」グサ

領事「やべて…くだじゃい」

アサシン「聞こえんなぁ」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃああああああああああああああああああ」ピク

アサシン「壺をどうした?」

領事「ききき…きゅうで…」

アサシン「気球で何だ…聞こえんな」

領事「ぜんどらりゅ…うぉぇっ」ゲロ

アサシン「ほう?誰だ…」

領事「きぞ…くとっくに…はぁはぁ…おくった」

魔女「そろそろ良いじゃろう…見ているわらわが吐きそうじゃ」

アサシン「もう一度教えてやる…女王に逆らうとどうなるかな…」

領事「やべ…やべて」プルプル

アサシン「ハートブレイク!」ズン ズブズブ

領事「ぐはぁぁぁあ…」

アサシン「案内人…しっかり見たな?」

案内人「お…おい…始めから生かす気なんか無いのか?」

アサシン「さぁな?」
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:17:09.93 ID:iNLvSB+c0
『数分後』


魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

案内人「血は止まったな…」

領事「…ぁぅぁぅ」グッタリ

魔女「神経を触られておるでな…しばらくショックが抜けんじゃろう…体も強張っておる」

アサシン「案内人…汚れた床を掃除しろ…反吐が出る」

案内人「お…おう…」イソイソ

アサシン「さて領事…盗賊ギルドのマスターは聞いた事があるだろう…私の事だ」

アサシン「セントラルの諜報員となれば知らぬ訳は無いな?我らの秘密を知ったからにはどうなるか想像つくな?」

領事「ぁひ…」ブルブル

アサシン「お前は女王に生かされて居るのだ…どう立ち回るのだ?」

魔女「こ奴はまだ話せぬ…質問は無駄じゃ」

アサシン「まぁ良い…見ている事だ…貴族は一人残らず居なくなるぞ?何故だか分かるか?」

アサシン「私は心臓を突かれても死なんな?不死者の王だからだ…私は貴族を一人残らず葬る力が在ると知れ」

領事「…」ゴクリ

アサシン「もう一つ教えてやる…お前は既に黒死病に感染している…だがお前にエリクサーをやる気は無い」

アサシン「ゆっくり死ぬか女王の慈悲にすがるかは自分で選べ」

魔女「もう良い…アサシン…行こうぞ」

アサシン「壺の行先が分かったのだ…慌てる事もあるまい」

魔女「領事の怯えた姿を見ていてわらわは落ち着かぬ…居心地が悪いのじゃ」

アサシン「心底腐った奴にはな…これでも足りんのだ」

魔女「主はまだやる気かえ?」

アサシン「口は封じておかねばならん…領事!答えろ…壺の秘密を洩らした者は誰だ?」

領事「いいいいい居ません…ぅぅっぅ」フリフリ

アサシン「案内人!領事の部屋に行って関係者の名前をすべて調べろ…家族もだ…皆殺しにする」

案内人「ええぇ!!?」

魔女「アサシン!やり過ぎじゃ…自国の者も居るじゃろうて」

アサシン「良いから調べて来い」スラーン

案内人「いいいいい今行って来る…」ダダダ

領事「だだ誰に…も教えて…居ない!本当だ…」ブルブル

アサシン「こういうのはな…生首を並べられて初めて本音が出るのだクックック」

魔女「アサシンこうするのはどうじゃ?わらわが領事に服従の呪いを掛ける故…それで許してくれぬか?」

アサシン「どんな効果なのだ?」

魔女「服従に背くと血が凍るのじゃ…こ奴の血が必要じゃが血の繋がった者はすべて凍る」

アサシン「ほう?人質が取れると言うのだな?」

魔女「わらわに免じて関係の無い者まで手に掛けるのは止めよ」

アサシン「領事!…そういう事らしい…救われたな?」

領事「あぅあぅ…」ブルブル
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:17:45.19 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』


フワフワ


アサシン「クックック魔女も大した演技力では無いか…呪いなんて本当にあるのか?」

魔女「無い…主も悪い男よのぅ皆殺しにするなど始めから考えて居らんのじゃろう?」

案内人「ええ!?そうだったのか…」

アサシン「皆殺しなど出来ん事は無いが面倒くさい上にリスクも大きい」

魔女「エリクサーはどうしたのじゃ?置いてきたのじゃろう?」

アサシン「衛兵隊長に事情を話して渡してきた…どうしても必要な時に使えとな」

魔女「これで領事は大人しくなるかのぅ?」

アサシン「しばらくは黒死病で苦しむだろうが…改心してもらわんとな」

魔女「主は人間の神経を痛め付けるのは普段からやっておるのか?」

アサシン「クックック相手によってはな?普通は騒がない様に急所を狙うのだ」

魔女「あれはやってはイカン…筋肉が強張って回復出来ん様になる…魔法では治せぬ」

アサシン「魔法が効かないのか…それは知らなかったな」

魔女「とてつもない激痛じゃぞ?精神が分裂する寸前じゃ…もう2度とやってはイカン」

アサシン「分かった…やっている私も虫唾が走る」

魔女「本真に主は恐ろしい奴じゃ…鬼じゃな」

アサシン「気付いたのだが私は不死者になってから高揚感を感じなくなった様だ」

魔女「わらわから見ても分かるのぅ…淡々と作業をこなす姿が逆に恐ろしいのじゃ…人では無い」

アサシン「人では無いか…どうも心が寒いな」

魔女「ほれ…ワインじゃ」ポイ

アサシン「心を満たす物は…ワインぐらいか…」グビ
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:18:12.88 ID:iNLvSB+c0
『セントラル』


ガヤガヤ ガヤガヤ


荷の確認をする…見せろ

はい…羊毛と織物…それから酒

この箱は何だ?

中古の武器と防具…素材用ですわ

ふむ…乗って居るのは3人だな?顔を見せろ



アサシン「…」

検問「顔色が悪いな?病気か?」

アサシン「フフまぁそんな感じだ」

検問「お前は?」グイ

魔女「わらわに触るでない」

検問「ふむ…人相書きの女ではない様だな…赤い目…娼婦か?」

魔女「…」ギロ

検問「おぉぉ怖い怖い」

案内人「しばらく滞在するんで気球は置いて行く」

検問「邪魔になるから荷出しは手短にヤレ…入国許可!」
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:18:45.94 ID:iNLvSB+c0
『中央広場』


ザワザワ ザワザワ


魔女「城から煙が出て居るのぅ?何かあった様じゃな?」

アサシン「うむ…ざわついて要るな?」

案内人「とりあえず宿を取って来るが…注文はあるか?」

アサシン「酒場が付いて居れば何処でも良い」

案内人「なら商隊御用達の宿屋だな…情報が集まりやすい」

アサシン「場所だけ教えてくれ…私は少し周りを見てから行く」

案内人「商人ギルドの横の建屋だが…分かるか?」

アサシン「あぁ…大丈夫だ」

魔女「わらわは宿屋に行って先に休むぞよ?ちと水浴びがしたいでな」

アサシン「夕刻までには戻る」


おぉぉ倒れる倒れる!! ガラガラ ドーン


アサシン「内郭の観測塔が崩れたな…何が起こっているのだ?」

魔女「こりゃ只事では無さそうじゃな?」

アサシン「まさかリリスが暴れている訳ではあるまいな?…急いで見て来る」タッタッタ

魔女「案内人!ボケっとしとらんで早う宿屋まで連れて行くのじゃ」

案内人「それどころじゃ無さそうだが…」

魔女「わらわはもう何日も水浴びをしとらんのじゃ…気持ちが悪い」

案内人「んあぁぁ分かった分かった…」
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:19:27.02 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


魔女「ふぅ…髪の毛から砂が取れただけで大分スッキリしたわい」

案内人「着替えを買ってきて置いたぞ…ベットの上だ」

魔女「おぉ気が利く様になったのう…部屋から出ておれ…およ?下着も買って来たのか…要らんかったのにのぅ」

案内人「要らんだと?前はえらく怒ってたじゃねぇか」

魔女「砂漠では砂が下に入って痛いのじゃ…ここでは不要じゃ」

案内人「俺は女の事は分かんねぇ…勝手にしてくれ」ガチャリ バタン


-----------------


魔女「もう入って良いぞ?」

案内人「…」ガチャリ バタン

魔女「アサシンは遅いのぅ…城で何があったんじゃろう?」

案内人「さっき外で聞いたんだが城の方で爆発事故があったらしい」

魔女「いつの話じゃ?」

案内人「一昨日だそうだ」

魔女「2日も経っておるのにまだ鎮火して居らんのか…何が燃えて居るんじゃろうか?」

案内人「下水が破壊されて城まで水が運べないそうだ」

魔女「高台に城が在る故に消火出来ぬか…不便じゃな」

アサシン「戻った…」ガチャリ バタン

魔女「おぉ…どうじゃった?何が爆発したのじゃ?」

アサシン「城の真下だな…下水が立ち入り禁止になっていて詳細は不明だ」

魔女「やはりリリスかのぅ?」

アサシン「魔女…エリクサーはどれくらい残って居る?」

魔女「1瓶と少しじゃな…なぜそのような事を聞くのじゃ?」

アサシン「下水から海へ赤い液体が流れて行って居る…リリスの血では無いかと思う」

魔女「それは良くないのぅ」

アサシン「私はもうエリクサーを持って居ないのだ…黒死病に掛かってしまう様であれば一度フィン・イッシュに戻らねばならんな」

魔女「症状が出てから少しづつ飲めば10回は持ちそうじゃが?」

アサシン「あまりリスクを抱えたく無いな…今晩貴族特区に向かい壺を頂いて早めに引き返そう」

魔女「主はその場所を知っているのかえ?」

アサシン「貴族特区は屋敷が4棟しか無い…魔女の睡眠魔法を使って行けば探索は直ぐに終わる」

案内人「貴族特区に行くまで貴族居住区を抜けなければならないぞ?」

魔女「魔法は何度でも使える寄って気にせんでも良いが?」

アサシン「行くのはもう少し夜が更けてからだ…まだ間がある故酒場で食事を済ませておこう」
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:20:17.31 ID:iNLvSB+c0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


マスター「いらっしゃいませ…3人様ですね?」

アサシン「あぁ…食事も用意できるか?」

マスター「お任せ下さい席にお持ち致します…こちらです」スタスタ


白狼の盗賊団が出たんだってよ?

へぇ〜?お金ばら撒いてたのかな?わたしも見たかったな〜

正体がお面を被った子供だったらしい

子供が?それ本当?


アサシン「クックック…子供のごっこ遊びか」

魔女「白狼の盗賊団は主らの事じゃよな?」

アサシン「私は後方支援だ…主役は盗賊と剣士だな…風体は女海賊か」

魔女「子供らが真似をしておるのか…良いのか悪いのか…」

アサシン「魔女は千里眼で彼らが何処に行ったのか見ていないのか?」

魔女「皆バラバラじゃ」

アサシン「女海賊と剣士は?」

魔女「心苦しゅうて見て居らん…と言うよりどういう対策をして居るのか知らんが見えんのじゃ」

アサシン「そうか…魔女でも分からない事があるか」

魔女「女戦士は船に乗っておるな…ドラゴンの義勇団の旗印を使って居る」

アサシン「あの旗印は元々女戦士が使っていた旗印なのだ…たまたま星の観測所に掛けてあっただけだ」

魔女「魔王の影を追っておるのはわらわ達だけじゃのぅ…」


マスター「お食事をお持ち致しました…どうぞ」


アサシン「マスター…何か面白い話は聞けて居ないか?」

アスター「面白くない話ばかりですねぇ…」

アサシン「ほう?景気が悪いか?」

マスター「下水爆発事故の後処理が全然出来ていないそうですよ」

アサシン「ラットマンが出て来ていると聞いたが?それでは無いのか?」

マスター「下水から血のような汚染水が流れ出して手が付けられないのだとか」

アサシン「あぁ…海に流れ出ているやつだな」

マスター「大量の死体と言い…何なんですかねぇ?」

アサシン「死体…」---爆発はカタコンベだったのか---


---いよいよリリスが怪しいな---
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:20:57.24 ID:iNLvSB+c0
『貴族居住区』


魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「案内人は宿屋に戻って待機しろ…ここからは私達だけで行く」

案内人「分かった…」

アサシン「もし戻らない場合は状況を説明しに女王の所に行くのだ」

案内人「戻らない場合なんてあるのか?」

アサシン「私は割と勘が働くのだ…状況はひどいと言わざる終えん…城がまだ燃えているのが証拠だ」

魔女「案内人…これを持って行け…エリクサーじゃ…まだ一口あるでな?」

案内人「お…おう」

アサシン「魔女…急ぐぞ」タッタッタ



『貴族特区』


アサシン「待て…ここは衛兵が守っているのでは無いな」

魔女「何じゃ…あの大きな鎧を着た魔物は」

アサシン「あれが成長したラットマンか…まるでミノタウロスでは無いか」

魔女「立ちんぼになっておるから睡眠魔法は効いておりそうじゃ」

アサシン「魔女はここで待っていろ…私が忍び込んで壺を探してくる」

魔女「いいや…離れぬ方が良かろう…方陣が敷いてあるで仕掛けがあるやも知れぬ」

アサシン「魔方陣?ここの貴族はそういう技を持った者が居るのだな?」

魔女「あの方陣はシン・リーンの光の方陣じゃ…魔術師が居るのであればあの方陣は避けて通らんと見つかるぞよ?」

アサシン「なぜ魔術師が居る…」

魔女「それはわらわの方が知りたいのぅ…念のためもう一度睡眠魔法を掛けて置く」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「魔女…私の背後から離れるな?」

魔女「分かっておる」ノソノソ

アサシン「ここの屋敷が一番大きい…ここから入るぞ」

魔女「正面から入るのかえ?」

アサシン「それが一番早い」ガチャリ ギー

魔女「誰も居らん様じゃな?」ノソ

アサシン「…骨董品ばかりでは無いか」

魔女「これはシン・リーンの宝物庫よりも良い物がありそうじゃ…」

アサシン「シャ・バクダの宝飾品もある…ここの持ち主は一体…」

魔女「見て見よ…伝説の絵画じゃ…あれはシン・リーンの古代遺跡の壁画と同じじゃ」

アサシン「どうやら壺はここに間違いなさそうだな…セントラルにこの様な収集家が居たとは…」

魔女「驚いたな…精霊の石造がここにもある」


シュン グサ

666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:21:35.21 ID:iNLvSB+c0
魔女「はぅぅ…」

アサシン「魔女!!」

魔女「回復魔法!…しもうた!!ここは魔結界の中じゃ…魔法が発動せぬ」

アサシン「なにぃ!!」


??「捕らえろ」


ラットマンリーダー「がおおおぉぉ」ドシドシ

魔女「くぅぅ放せ…触るでない」ジタバタ

アサシン「しまった…」タジ


??「又泥棒かと思えば…シン・リーンの魔術師か」


魔女「何じゃと?主は誰じゃ!!」

アサシン「スキ有り!!」シュン ザクリ

??「ほう?良い腕を持って居るな…しかし神秘の体を持つ私には無意味」

魔女「神秘の体じゃと?」

アサシン「お前は誰だ?」

??「ヌハハハハハハ…答える必要があると思うか?小物よ」

魔女「分かったぞよ…主は師匠が探して居った時の王じゃな?」

??「…そうか」

アサシン「時の王だと?」

??「お前は私の子孫だったか…目を見せてみろ」

魔女「理解したぞ…すべてを仕組んだのは主じゃな?200年前に精霊と勇者を屠ったのも主じゃな?」

時の王「ヌハハハハ流石は私の子孫…察しが早い…しかしこうして見ると感慨深い」

アサシン「赤い目…どういう事だ?」

魔女「こ奴は1700年前のシン・リーン古代文明をも屠った赤き瞳の王じゃ…リリスの血を飲み不老不死となっておる」

時の王「正確にはリリスの生き血だよ…死に血を飲んでも不老不死にはならん」

魔女「どうでも良い…それよりも主は何をする気じゃ?」

時の王「人間の絶滅以外に考えられると思うか?」

魔女「何故じゃ…主は時の勇者を支えた英雄だった筈じゃ…それが何故魔王に汲みする立場に居る!」

時の王「私の子孫か…特別に教えてやろう」
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:22:41.09 ID:iNLvSB+c0
確かに私は勇者と共に魔王を退けリリスを討ち取り時の英雄となった

後に精霊シルフと共に憎悪に満たされたこの世界を光に導く為に尽力した

だが悟ったのだ…人間こそが魔王そのものだと

私は精霊シルフに過去の伝説のすべてを聞いた

悪魔とリリスの子リリン…悪魔の子と呼ばれたリリンは人間だ

そして神と位置付けられるアダムとイヴ

神が生み育てた英雄はことごとく人間に屠られた

後に志のある人間が最初の人工知能を作り出し名付けたのが神の名に因んでアダム

アダムの知能を元にして作られた超高度AIをイブとして神を復活させた

しかしやはり悪意のある人間はまたもやアダムを破壊しついにはイブをも手に掛けようとしている

イヴとはお前たちが良く知っている精霊シルフの事だ

精霊はどうやって悪魔の心を持つ人間と戦おうとしているか分かるか?

人間以外の生物…エルフやドワーフ…ドラゴン…クラーケンにトロールを生み

世界の秩序を保とうとした

だがやはり人間は抵抗を重ね殺戮を繰り返す

私と勇者はその根源にあるのが魔王だと思い込み退けて来たがそれは一過性の事だった

根源は人間の憎悪なのだ…これを滅しない限り殺戮は終わらない

しかし…精霊にはそれが出来ない…故に私がやるのだ
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:23:22.47 ID:iNLvSB+c0
魔女「それでは200年前に精霊と勇者を屠った説明になって居らぬ…精霊は主の味方であったであろう?」

時の王「あれは事故だ…精霊が止まるとは考えていなかった」

魔女「結局最後に精霊を裏切ったのも人間という訳か…」

時の王「人間の罪は人間が贖う…私一人でそれを背負っているのだ」

魔女「その罪を許したのが神では無かったのか?精霊は人間の罪をゆるしておるのでは無いか?」

時の王「ゴルゴダの丘…」

魔女「じゃから人間は生きて行くしか無いのじゃろう?未来へ繋ぐ為に…」

時の王「ええい!!お前まであの女と同じ事を言うか!!」

魔女「師匠じゃな?師匠は狭間で1200年生き尚…主の事を案じておった」

時の王「フフあの女は精霊が止まって逆鱗してな?私の計画をすべて封じたのだ…お陰でリリスの首は何処にあるか分からぬ」

魔女「リリスの子宮はわらわが封じた…どこにあるのじゃ?」

時の王「ヌハハハハハ探し求めて来たという訳か…遅かったな」

魔女「遅いじゃと?」

時の王「盗まれたのだ…もう何処に行ったか分からぬ…しかしそれでも良い…リリスは復活する」

魔女「首が無いのにどうやって復活すると言うのじゃ」

時の王「他の首で補えば良い…錬金術で縫合など容易いものだ」

アサシン「キマイラだな?」

時の王「その名を良く知っているな?さてはシャ・バクダの末裔か」

アサシン「ふん!だからどうした?」

時の王「キマイラを諫める歌は伝わって居ないのか?私ではキマイラを制御出来ないのでな」

アサシン「歌…だと?」

時の王「その様子では知らぬ様だな…子守歌なのだが女にしか伝わらん歌かも知れんな」

魔女「…よいな?歌じゃ…歌を探すのじゃ」

時の王「貝を使って念話をしているのか…フフフあの女と同じだな」

魔女「わらわ達を捕らえてどうする気じゃ?」

時の王「子孫をわざわざ殺めたくは無いのでな…大人しく牢に入っていてもらおう」

アサシン「余裕そうだな?」

時の王「ラットマンリーダーに人質を取られて勝てると思うか?」

アサシン「くっ…」---ここは掴まっておいた方が良さそうだ---

魔女「くそう…魔法さえ封じておられなければ」ジタバタ

時の王「私の邪魔建てはもうされたくは無いのでな…食事の心配はするな大切な捕虜だからなフハハハ」

魔女「母上と取引するつもりじゃな?」

時の王「フハハハハハハハ…」
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:24:12.67 ID:iNLvSB+c0
『牢』


アサシン「この牢は脱出できそうに無いな」

魔女「しかし2人揃って牢に入れて持ち物も全部持たされたままじゃ…よほど自信がある様じゃな」

アサシン「窓付きで外が見えるのは良いが…」

魔女「見通せるかえ?」

アサシン「見える範囲が限られてて一部しか見えんな…奥行きが1メートルもある石造りの牢だ」

魔女「ふむ…魔法もここでは使えんのぅ…こまったもんじゃ」

アサシン「使えるのは貝殻だけか…」

魔女「仲間のあぶり出しを狙っておるんじゃろうな?女王にはここに来るなと言っておいた」

アサシン「頼みの綱はエルフゾンビだな…奴なら地理が分かっている」

魔女「しかし…時の王がセントラルに居ったとは…師匠がずっと探して居ったんじゃが魔結界の中では見つからん筈じゃ…」

アサシン「時の王も魔術師なのか?」

魔女「少しは使えるじゃろうが伝説では戦士じゃな…リリスの血を飲んで目が赤くなっておるだけじゃ」

アサシン「道理で…切り込んだ際に間合いがズラされた」

魔女「そういえば時の王はシャ・バクダの歌の事を言っておったが主は知らんのか?」

アサシン「私は覚えていない…もしかしたら妹が覚えていたのかもしれん」

魔女「盗賊が歌っておった歌かのぅ?わらわも聞いたぞよ?ルル〜ルラ〜♪ルル〜ルラ〜♪」

アサシン「その歌は違う…子守歌では無い」

魔女「フィン・イッシュに各国の書物が集まっておるから女王が探せると良いがな」
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:25:19.22 ID:iNLvSB+c0
『1週間後』


ガリガリ ガリガリ


魔女「何を作っておる?」

アサシン「魔女は魔法の触媒で硫黄を持ち歩いていたな?」

魔女「あるが?爆弾でも作るのかえ?」

アサシン「石を削って砂にしている」

魔女「砂鉄はどうするんじゃ?」

アサシン「私の着ている服は金属糸で結った物だ…これをロープ代わりにして残りは砂鉄にする」

魔女「ほう…考えたのぅ?」

アサシン「私はこういう時に大人しく出来ない性分でな…よし…金属糸を解くのを手伝ってくれ」

魔女「わらわは巻けば良いか?」

アサシン「体に巻き付けて行ってくれ」ゴソゴソ


コーーーーーン コーーーーーーン


アサシン「んん?この音は…ミスリル銀を叩く音だ」

魔女「良い音がするのぅ」


ラットマンリーダー「ガオオオォォ」ドタバタ


アサシン「外のラットマンリーダーが騒いでいるな…ミスリル銀の音が嫌なのか?」
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:25:47.07 ID:iNLvSB+c0
魔女「逃げ出すチャンスかも知れんのぅ」

アサシン「魔女…硫黄を分けてくれ」

魔女「ほれ…」ポイ

アサシン「よし…これで爆弾の出来上がりだ…窓に設置する」ゴソゴソ

魔女「もうやるんか?」

アサシン「この爆弾では窓の穴を少し広げる程度にしかならん…逃げるのは魔女一人だ」

魔女「主はどうするのじゃ?」

アサシン「魔女は魔結界から出た後に姿を変えて街に紛れろ…出来ればエルフゾンビと合流するのだ」

魔女「分かったが…しかし」

アサシン「魔女一人でラットマンリーダーの相手は無理だ…私の救出は機を伺ってからで良い」

魔女「ふむ…この体に巻いた糸で下まで降りて行けば良いのじゃな?」

アサシン「そうだ…あとは上手くやってくれ」

魔女「任せておくのじゃ…魔法さえ使えればわらわは何でも出来る」

アサシン「よし…こっちのテーブルの裏に隠れろ」チリチリ


3…2…1  ドーン パラパラ


アサシン「魔女!穴の中に入れ」グイ

魔女「むむむむ狭いのぅ…」モゾモゾ

アサシン「押すぞ!!」グイ グイ

魔女「痛たたたた…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」グルグル ドテ

アサシン「よし…上手く行ったな?クックック」

アサシン「…」---さて片づけるか---


---金属糸は回収---

---ベッドに膨らみを作って---

---私はテーブルで食事でもしておこう---

---頼むぞ魔女---
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:26:20.89 ID:iNLvSB+c0
『気球発着場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


またお前か!今度の荷は何だ?…見せろ

はい…くちばしマスクと薬…それから酒

この箱は何だ?

趣向品と玩具…夜のおもちゃですわ…見ますかね?

ふむ…乗って居るのはお前だけか?



案内人「他に居る様に見えるかい?」

検問「ふむ…儲かっているのか?」ジロジロ

案内人「まぁそこそこには…」

検問「病気が流行っているから気を付けろ!入国許可!」

案内人「へいへい…」ヨッコラ


------------------


案内人「クッソ重いな…」ヨタヨタ ドサ

案内人「エルフは体の割に重いのだな…出ても良いぞ」パカ

エルフゾンビ「ふぅ…」パンパン

案内人「久しぶりの故郷はどうだい?」

エルフゾンビ「このような入国はしたことが無いのでな…緊張するものだ」

案内人「さて…ひとまず宿に落ち着けよう」

エルフゾンビ「私は宿になど泊まった事が無い…案内してくれ」

案内人「その仮面を外すなよ?」

エルフゾンビ「分かっている…お前の方こそしっかりくちばしマスクを付けて置け」

案内人「この恰好は逆に目立つのがなぁ…」
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:26:50.08 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「女王様が言うにはこの宿の前で魔女が待っているとの事だったが…」

魔女「目の前に居るでは無いか」

案内人「あぁ嬢ちゃんちっと邪魔だ…あっち行っててくれ」

魔女「何を言うておる」ボカ

案内人「あだっ!!何すんだこのガキ…ん?…その杖」

魔女「わらわは金を持っておらなんだ故ずっと野宿しとったのじゃ…早う飯を食わせろ」

案内人「なんで又こんなに小さくなってるんだ?」

魔女「つべこべ言うでない…早うせい」ボカ

案内人「わかったわかった…どつくのはヤメロ」


店主「そのお子さんのお連れ様ですか?」

案内人「…まぁそうだな」

店主「聞き分けの無い子でして何度言ってもそこを離れようとしなかったのです」

魔女「言い訳は聞きとうない…不親切な店主じゃ」ブツブツ

店主「ハハ3名様でよろしかったですか?」

案内人「あぁ…食事をすぐに持って来てほしい」

店主「かしこまりました…二階の右手の部屋にてお待ちください」ソソクサ

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:27:25.92 ID:iNLvSB+c0
『部屋』


エルフゾンビ「女王から話は聞いて居る…アサシンは貴族特区で捕らえられて居るのだな?」

魔女「そうじゃ…食事はしっかり出る故心配は無いのじゃがラットマンリーダーが守って居ってな」

エルフゾンビ「やはり時の王卿が先導していたか」

魔女「主は会うた事があるのじゃな?」

エルフゾンビ「時の王は表に顔を出すことは無いのだ…私ですら話しか聞いた事が無い」

魔女「奴は人間を絶滅させる気で居る様じゃ」

エルフゾンビ「前王の父も…恐らく兄も人間を絶滅するなど考えて居ない」

魔女「欺かれておるのじゃな」

エルフゾンビ「正義感の強い兄が何故時の王に従う行動をしているのか…」

魔女「逆に時の王を欺こうとしている可能性は無いのか?」

エルフゾンビ「指輪…父が祈りの指輪で何をしたかったのか…もしや指輪で時の王を葬ろうとしていたのか?」

魔女「兄はどうじゃ?」

エルフゾンビ「兄は騎士道を貫く…弱き者を滅することなど決してしない」

魔女「何かおかしいのぅ…」

エルフゾンビ「正統派でしか動かない…つまりやるなら真っ向勝負」


コーーーーーーン コーーーーーーン


エルフゾンビ「ん?この音は?」

魔女「アサシンがミスリル銀を鍛冶で打つ音じゃと言うておった…憎悪を払うらしいが?」

エルフゾンビ「そうか…兄は正当な方法で邪悪と戦おうとしているのだ」

魔女「ふむ…どうやら皆の歯車が少しづつ違って回って居るな…噛み合って居らぬ」


グラリ


案内人「うぉっとお!!何だ?」


グラグラグラグラグラグラ


魔女「どこぞで地震が起きとる様じゃな?これは大きな津波が来るやも知れぬ」

案内人「ここは海に近すぎる」

エルフゾンビ「一応建屋の上に避難しておくか…」

魔女「わらわはまだ食事をして居らぬが…」

案内人「建屋の上まで持って行ってやる」グイ

魔女「これ!!引っ張るでない…およよ?」バタバタ

案内人「肩の上に乗ってろ」

魔女「これ!!わらわは下着を履いて居らぬ…降ろさんか!!」

案内人「上に行こう」タッタ

エルフゾンビ「…」タッタ

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:28:02.69 ID:iNLvSB+c0
『屋上』


ザブン ザブン ドバーーーー


エルフゾンビ「…絶句だな…これは」

魔女「皆屋根に上がって避難しとるが…」

案内人「水は引いて行ってる様だが…散らかった物がみんな波に持って行かれる」

エルフゾンビ「これでは動けんな…」

魔女「折角合流出来たのに困ったのぅ」

エルフゾンビ「アサシンを救出するなら混乱している今がチャンスと見るが…」

案内人「津波は何回も来る…今は止めて置いた方が…」

魔女「小さな隕石をあの屋敷に落とす…牢の壁だけ壊せば良かろう」

エルフゾンビ「ほう?」

魔女「詠唱に時間が掛かるのじゃ…ゾンビを使役して詠唱の時間を稼げるか?」

エルフゾンビ「使役出来るゾンビがどのくらい要るかだが?」

魔女「元はカタコンベが有ったのじゃ幾らでもおろう?」

エルフゾンビ「やってみるか…ゾンビ共よ我に付き従え」ブン

魔女「貴族居住区まではわらわの睡眠魔法で行ける筈じゃ…貴族特区から出て来る者をゾンビで足止めするのじゃ」

案内人「この水の中を歩いて行くのか?小さい体では流される」

魔女「わらわは主の肩に乗って詠唱するでわらわを運べ」

案内人「お前等と居ると危ない事ばかりだな…」

魔女「つべこべ言うな…水が張っておる今がチャンスじゃ!行くぞ」

案内人「ええい…乗れ!」グイ
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:28:40.64 ID:iNLvSB+c0
『貴族居住区』


ザブザブ


案内人「はぁはぁ…ここまで来りゃ水は上がって来ねぇ…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「どっちに行けば良いんだ?」

エルフゾンビ「こっちだ!!」タッタッタ

案内人「ひぃひぃ…」

魔女「見えて来たのぅ…この先にはラットマンリーダーが居る…ゾンビで引き付けて欲しいのじゃが?」

エルフゾンビ「まだゾンビが追い付いて居ない…もう少し待て」

魔女「詠唱に10分掛かるのじゃ…その間わらわは会話が出来ぬ」

エルフゾンビ「長いな…ゾンビでは持たん」

魔女「では先に詠唱を始める故…詠唱が終わるまでに屋敷が見える位置に居れば良い…出来るか?」

エルフゾンビ「やるしか無いのだろう?」

魔女「屋敷に近づき過ぎる出ないぞ?隕石は破裂するでな…」

エルフゾンビ「よし!やろう…案内人…私の後ろから離れるな?」スラーン

案内人「お…おう」

魔女「詠唱を始める…」アブラカタブラ メテオスウォーム コイコイコイコイ

エルフゾンビ「ゾンビ共…急いで我の下へ来るのだ」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ ガァァァァ


案内人「…」ゴクリ

エルフゾンビ「20という所か…よし!ラットマンリーダーの注意を引き付けろ」

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

案内人「ゾンビというよりスケルトンだな…」

エルフゾンビ「肉はラットマンに食われた様だな」


ラットマンリーダー「ガオォォォォ」ドスドス


エルフゾンビ「来い!!あの一体だけ倒す」シュタタ ザクリ

案内人「おぉすげぇ…腕を切り落とした」

エルフゾンビ「ゾンビ共!次のラットマンリーダーを倒せ」タッタッタ


-------------------
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:29:18.08 ID:iNLvSB+c0
案内人「他のラットマンリーダーも集まって来た…」

エルフゾンビ「魔女!まだか!?」

案内人「ゾンビが食われてる…」

エルフゾンビ「時間稼ぎになるのならそれで良い」


シュン スト


エルフゾンビ「ちぃぃ見つかった!案内人!私の後ろに隠れろ」

案内人「おう…」

エルフゾンビ「この距離では弓はそうそう当たらん」シュン シュン

案内人「一人だ…あれが時の王か?」

エルフゾンビ「こちらに来る気は無さそうだな…」シュン カキン!

魔女「隕石魔法!」

エルフゾンビ「おぉ!!間に合ったか」

魔女「もうすぐ落ちて来よるで逃げるのじゃ…急いで離れろ」

エルフゾンビ「案内人!!先に戻れ」

案内人「おう!!」タッタッタ


シュゴーーーーーーーーー


エルフゾンビ「来た…あれが隕石か…」

魔女「早う来い!!巻き込まれる」


パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ


エルフゾンビ「うぉ!!」ピョン クルクル シュタ

魔女「隕石で注意がこちらに向いたで早う逃げるぞ…走れ案内屋!!」

エルフゾンビ「…」タッタッタ


---津波にゾンビの襲来---

---そして隕石---

---セントラルも末だ---
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:29:52.68 ID:iNLvSB+c0
『宿屋の屋上』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「ふぅ…ずぶ濡れだ」

魔女「ご苦労じゃった…少し休め」

エルフゾンビ「私も役に立てたか?」

魔女「そうじゃな…主が居ったから成功したのじゃ」

エルフゾンビ「アサシンは無事か?千里眼で見えるのだよな?」

魔女「千里眼!ふむ…どこぞを泳いでおる…じゃが怪我をして居る様じゃ」

エルフゾンビ「フフ不死者が怪我か?」

魔女「隕石のすぐ近くに居ったからのぅ…少し心配じゃな」

エルフゾンビ「私も怪我をしている様だが自分では見えん」

魔女「背中じゃな?むむ!隕石の破裂片に当たったな?」

エルフゾンビ「空中で破裂しながら落ちて来るとは思わなかったのだ…油断した」

魔女「ここで回復魔法をするのは目立ちすぎる…部屋に戻るのじゃ」

案内人「そうだな…部屋が二階で良かった」



『部屋』


魔女「回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「不死者でも傷口は塞がるのだな?」

魔女「気休めかも知れぬが傷口が開いたままよりはマシじゃろう」

エルフゾンビ「すこし喉が渇いた」

魔女「案内人!主の荷物にワインが有ったな?」

案内人「あぁ女王様に持たされた…エルフゾンビの喉の渇きを癒す様だ…ホレ」ポイ

エルフゾンビ「むぐ…」ゴクリ

魔女「血の代わりにワインか…不便な体じゃな?」

エルフゾンビ「これはこれで良い所もあるのだ」グビ

魔女「さて…わらわも少し休むかのぅ…疲れたわい」

案内人「俺は外でアサシンが迷わない様に待っている」

魔女「そうじゃな…わらわは少し寝るで任せたぞ?」
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:30:56.56 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


エルフゾンビ「アサシンはまだ戻って来ないのか?」

魔女「様子を見てみる…千里眼!」

エルフゾンビ「どうだ?」

魔女「どこぞの砂浜じゃな…動く気配が無い」

エルフゾンビ「砂浜だけでは迎えに行けん…何か目標物は見えないか?」

魔女「遠巻きにセントラルの城が見えて居る…位置的に東の方じゃな」

エルフゾンビ「よし迎えに行こう…動けない理由がありそうだ」

魔女「そうじゃな…石化しとるかもしれんな」

エルフゾンビ「エリクサーは持って居る…魔女はそのまま走れそうか?」

魔女「大丈夫じゃ子供の恰好の方が走りやすい」

エルフゾンビ「行こう」タッタッタ
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:31:26.59 ID:iNLvSB+c0
『砂浜』


魔女「居った!!ここじゃ…やはり石化して動けぬ様じゃ」

エルフゾンビ「フフ三度目だな…飲め」グイ

アサシン「うぐぐ…」グビ

魔女「意識はある様じゃな?回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「リリスの血に浸かったな?石化の進行が早そうだ」

アサシン「グッグッグ…」

エルフゾンビ「私が背負って行く…」ヨッコラ

魔女「本真に厄介な石化じゃ…」

エルフゾンビ「エリクサーが少ないから回復は少し間が必要だな」

魔女「とにかく救出できて良かったのぅ」

エルフゾンビ「血が海に流れ出て居ては黒死病が広がってしまうな」

魔女「うむ…どうにか止めんとイカン…リリスは永久に血を流しよる」

エルフゾンビ「時の王が魔結界から出ない理由…もしかすると石化は魔法の一種では?」

魔女「そうじゃ土属性の高位魔法じゃ」

エルフゾンビ「やはりそうか…時の王はやはり魔法を恐れているか」

魔女「わらわも考えた…量子転移を使われたく無いのじゃと思う」

エルフゾンビ「どういう事だ?」

魔女「量子転移はな?過去から物質などを丸ごと転移する事が出来る様じゃ…じゃから200年間一歩も魔結界からは出て居らん」

エルフゾンビ「過去から…」

魔女「祈りの指輪も同じ効果を持つ…過去の記憶を丸ごと転移すると術者は過去に戻る…つまり現在に丸ごと転移するのじゃ」

エルフゾンビ「魔結界の中ではその魔法自体無効…そういう事か?」

魔女「じゃろうな?隕石の様に物理的な魔法でなければ効果が無いじゃろう」

エルフゾンビ「なるほど…」

魔女「時の王が姿を隠しているのも他の者の記憶の中に自分が残るのを避けて居るからじゃと思う」

エルフゾンビ「だから書状でやり取りをしていたのか…」

魔女「セントラル王家はなぜそのような者を膝元に置いて居るのか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊の絶対的な権威だ…人間では太刀打ち出来ない」

魔女「それこそセントラルが横暴に走る原因じゃな」

アサシン「グッグッグ…」
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:32:10.60 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


案内人「津波が断続的に来ている…貧民街の方はもうダメだ」

エルフゾンビ「波が小さくなっては来ているな?」

案内人「アサシン様が戻った事だしフィン・イッシュに帰るか?」

エルフゾンビ「いや…私にやりたい事が出来た」

魔女「んん?何じゃ?」

エルフゾンビ「魔女の貝殻は他には無いのか?」

魔女「貝殻に魔術を掛けるのは簡単じゃ…何に使う気じゃ?」

エルフゾンビ「その貝を兄に届けたい…一方通行で良いから話をしたいのだ」

魔女「ふむ…話を続けるのじゃ」

エルフゾンビ「私達が噛み合って居ないのは話をして居ないからだ…こちらの考えを兄に伝えれば必ず分かってもらえる」

魔女「セントラルを仲間にするというのじゃな?」

エルフゾンビ「声を兄だけに伝えたい…他の側近に聞かれては意味が無い」

魔女「よし…わらわがシン・リーン特使として書状と貝殻をセントラル国王へ届ける様はからう」

エルフゾンビ「出来そうか?」

魔女「従士が居らん様ではちと危険なのじゃが…案内人ではちと役不足じゃ」

エルフゾンビ「私は顔が出せん…アサシンの回復を待ってからだな」

682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:32:40.96 ID:iNLvSB+c0
『数日後』


魔女「案内人はわらわの右…アサシンは左じゃ」

魔女「2人共くちばしマスクでしっかり顔を隠しておくのじゃ…良いな?」


門番「止まれ!セントラル王城に何用で参られた!?」

魔女「わらわは光の国シン・リーン第3王女じゃ…特使として参った」

門番「シン・リーン王女だと!?聞いて居ない…顔を見せろ」

魔女「やれやれ…隠密で来て居るのじゃ…騒がぬ様にな?」ファサ

門番「従士は2人か?う〜む…」

魔女「我らは魔術師じゃという事を忘れるな?狼藉はせぬ様に…死人は出しとう無い」

門番「して…何用か?」

魔女「密書を届けに参った…国王に之を持て」

門番「書簡と…貝殻か?」

魔女「そうじゃ…危険な物では無い故しっかり確認しても構わぬ」

門番「ふむ…よこせ」

魔女「密書の開封は国際法違反になるで注意せい…国王に不利益となるでな?」

門番「大使と面会はして行かんのか?」

魔女「大使に用なぞ無い…隠密で来て居るのじゃ理解せい」

門番「ふむ…失礼した」

魔女「わらわは行くぞ?…くれぐれも狼藉は避けよ…良いな?」クルリ ノソノソ


--------------------


魔女「どうじゃ?後を付けて来よるか?」

アサシン「遠目にな…どうする?」

魔女「やれやれ側道に入るぞよ?主らは方々に去れ」

アサシン「宿屋までの道は分かるな?」

魔女「大丈夫じゃ…側道に入ったら変身するで上手く巻くのじゃ」

アサシン「クックック…魔女も慣れたものだ」

魔女「変性魔法!」グングン

アサシン「案内人はあっちだ!私はこっちに行く」

案内人「宿屋で…」

魔女「やはり服がピチパチになってしまうのぅ…下着を履いて居らんのじゃが…」



あれ!?何処に行った?

一人あっちに行ってる

向こうにも…

王女は何処に行った?

探せ!!
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:33:21.27 ID:iNLvSB+c0
『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ


何の音だ!?

空が叫んでるのか…

何この声…怖い


ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


嫌やぁああああああ

何処から聞こえて来るんだ!?

こ…これは魔王の声じゃないのか!?


ザワザワ ザワザワ
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:33:54.56 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』



魔女「はぁはぁ…アサシン!エルフゾンビ!今の音を聞いたかえ?」

アサシン「空から音が鳴った…気球に行くぞ!!」

エルフゾンビ「案内人は!?」

魔女「外で空を見とる」

エルフゾンビ「連れて行く…先に気球へ行っててくれ」

アサシン「魔女!!こっちだ…手を離すな?」タッタッタ

魔女「これは何か起きる音じゃ…胸騒ぎが止まらぬ」タッタ

案内人「お〜い待ってくれ…どういう事だ?」

アサシン「空が異常だ…気球で周りを見たい」

案内人「宿の代金をまだ払ってない…」

アサシン「それは後で良い…とにかく非常事態だ…私は気球の場所を知らないから案内人が先導してくれ」

案内人「あぁこっちだ!」タッタッタ




『貨物用気球』


ドドドドドドド


アサシン「動物か?地響きがするな…まだ飛べないか?」

案内人「もう少しかかる!」ワッセワッセ

エルフゾンビ「雲の様子が変だ…あのような雲は見たことが無い」

アサシン「南の方から何かが来た様な感じだな?」

案内人「上がるぞ!!」フワフワ

魔女「…そうか!!これはインドラの矢じゃ古文書に音の事が書いてあった」

アサシン「海が引いて行ってる…」

案内人「又津波か!?」

魔女「津波じゃと?…エルフゾンビ!!ゾンビを使って民を貴族居住区に追い立てるのじゃ」

エルフゾンビ「避難か…」

魔女「案内人!セントラルの上を飛べ…わらわが照明魔法で民の逃げる方向に目印を付ける」

案内人「わかった…」グルグル

魔女「エルフゾンビ!!貝殻を使って兄に呼びかけよ…大きな津波が来るとな」

アサシン「お!?セントラルから照明弾が上がった…兵の緊急招集だなアレは」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

アサシン「光の矢印か…良い考えだ」

案内人「この海の引き具合だとあと1時間以内に来るぞ」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:34:30.32 ID:iNLvSB+c0
『1時間後』


アサシン「よし…いいぞ衛兵が民を誘導している!避難が間に合う!!」

案内人「海を見てくれ…段差が出来てる…アレが津波だ」

エルフゾンビ「ゆっくり流されて行くな…」

魔女「あの高さじゃと貴族居住区も浸かるかもしれんのぅ」

アサシン「自然の力の前で私達は何と無力か…ゆっくりと中央広場が水没して行く」

魔女「これは防ぎ様が無さそうじゃ」

アサシン「いつぞや見せた氷結魔法で凍らせられないか?」

魔女「この量は無理じゃが貴族居住区の門を塞ぐ程度なら出来るやもしれぬ」

アサシン「案内人!貴族居住区の上を飛ばせ」

魔女「水が上がって来たら魔法を発動させてみるぞよ」アブラカタブラ アブソリュート ゼロ

案内人「だめだ…中央は全域屋根まで浸かってる」

アサシン「魔女に掛けるしかない」

魔女「広範囲絶対零度魔法!」カキーン 


ガガガ ガリガリ 


アサシン「おぉ!!氷河が門に詰まって塞き止めが出来ている」

魔女「氷結魔法!氷結魔法!氷結魔法!」カキーン

エルフゾンビ「見ろ!!外郭の壁が崩落した…これで水位が下がるかもしれない」

アサシン「凌いだか!?」

エルフゾンビ「水が草原の方まで行ってる…信じられない光景だ」

案内人「海の中に浮かぶセントラル城…」

エルフゾンビ「あそこにどれだけの命が犇めいているのか…」

魔女「しかし…誰がインドラの矢を使ったかじゃな」

アサシン「千里眼で見通せないか?」

魔女「やって居るが盗賊も商人も…誰の目も見えんのじゃ…狭間の中に居るのじゃろうか?」

アサシン「狭間の中は見通せないのか?」

魔女「時間の流れが違うのでな?逆だと見えるのじゃがのぅ」

案内人「フィン・イッシュも心配だが…」

アサシン「あちらは海から少し離れた丘の上だ…セントラル程では無かろう」

魔女「今女王の目を見て居る…川が氾濫しておるな」

アサシン「逆流か!」

魔女「じゃが沿岸部だけじゃな…大した被害では無さそうじゃ」

アサシン「そうか…軽微で良かった」ホッ

魔女「わらわ達は眺めている事しか出来ぬ…唖然とはこの事を言うのじゃな…言葉が出ぬ」
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:35:01.15 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


フワフワ


アサシン「水が渦を巻きながら引いて行っている…リリスの血が見当たらないが…」

魔女「流されて行ったかのぅ?」

アサシン「海に消えた…のか?」

魔女「それはそれでセントラルの危機は去ったかもしれぬが…良くないのぅ?」

アサシン「カタコンベに入れてあったとすると濁流で下水から流れ出た可能性は高いな」

魔女「しばらく様子を見んと分からんな」

アサシン「カタコンベの掃除には丁度良かったと言う言い方も出来るな」

魔女「時の王はどうするかのぅ?顔が見てみたいわ」

案内人「セントラルの方は人が出てき始めたが…俺達はどうする?」

アサシン「このまま降りると気球を接収されそうだな…向こうの気球は流された模様だ」

魔女「しばらく待機じゃな…」

アサシン「女王の方はどうだ?フィン・イッシュに余裕があるなら救援を頼むのも良い」

魔女「女王はもう動いて居る様じゃぞ?何やら指示を出して軍船を見て居る」

アサシン「支援物資を積んだ軍船が来るのは外交的に非常に良い…来るとしたら2週間後か」

魔女「ところでエルフゾンビは貝殻に向かって話をして居ったが気が済んだか?」

エルフゾンビ「フフ一方的に話をするのは気持ちの悪いものだ」

魔女「聞いて居る方は楽しみに待っているもんじゃがのぅ…」

エルフゾンビ「ひとまず言いたいことは言ったつもりだが反応が無いのがな…」

魔女「反応を要求してみれば良かろう」

エルフゾンビ「どうやって?」

魔女「そうじゃな…白旗を上げろとか光を出せとかじゃな?」

アサシン「この気球にお前が乗っている事を話して居るのか?」

エルフゾンビ「こちらの居場所を特定できる事は何も言って無い…私の考えを話しただけだ」

魔女「この気球から派手に魔法を撃っておるんじゃ…向こうも察して居るじゃろう」

アサシン「…まぁそうだな…今更隠し立てしても遅いと言えば遅い」

魔女「そうじゃ…ミスリル銀を打って鳴らせという要求はどうじゃ?」

エルフゾンビ「もう一度話してみる」



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687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:35:38.16 ID:iNLvSB+c0
アサシン「今回の件でシン・リーンとフィン・イッシュが手を組んでいる様にセントラルには見えている…」

魔女「セントラルの方が国力が大きいで力関係は崩れて居らんと思うが?」

アサシン「いや甘い…貴族達の利害バランスが変わるのだ…それを是とするかどうかだな」

魔女「わらわの国の元老院制も対外じゃが貴族院制も同じなのじゃな?」

アサシン「国王は只の飾りなのだよ調印するための道具だ」

魔女「わらわは聞き分けの無い元老を何人か焼き殺したが咎められて居らんぞ?」

アサシン「それは魔術の絶対的権威があるからだ…シン・リーンはどちらかというと絶対王政に近い」

魔女「ではいくらエルフゾンビが兄の国王に取り入っても無駄という事じゃな?」

アサシン「エルフゾンビは法王制を施行しようとして失墜したのだ…代わりに貴族院が絶対的権威を持つことになった」

魔女「根が深いのぅ…」

アサシン「政治とはそういうものだ…だから私のような暗殺者が暗躍する」

魔女「主は言って居ったな?貴族を皆殺し出来ると」

アサシン「訂正する…時の王の様な存在が居ると分かった以上それは出来ない」

魔女「時の王がすべてを牛耳っていると思うか?」

アサシン「違うな…結果的にそうなっているだろうが奴は背後に座っているだけだ」

魔女「では誰が貴族院を掌握しておると言うのじゃ?」

アサシン「民衆のすべてだ…貴族それぞれの支持者達がマジョリティーとなって動かしている…だから」

アサシン「時の王はすべての人間を絶滅させたいのだ」

魔女「主は時の王の考えを支持するのじゃな?」

アサシン「支持では無い…理解だと解釈して欲しい」

魔女「うーむ…国王同士仲良くすれば上手く行くと言うのは考えがお花畑じゃったな…」

アサシン「魔女が提案したミスリル銀を打ち鳴らすというのはマジョリティを導くには良いのかも知れん」

魔女「それを知って実際に行動しているセントラル国王は優秀なのかも知れんな」

アサシン「…だが邪魔する者も出て来るのだ」

魔女「邪魔…」

アサシン「私達は民衆を貴族居住区に避難させたな?貴族は民衆を保護した形になった…つまり貴族院を支持したのだ」

魔女「わらわ達の行いが邪魔じゃったと…」

アサシン「人間はその様にうまく混ざり合わない…時の王が言いたいのはそういう事だ」



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688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:37:09.30 ID:iNLvSB+c0
コーーーーーーーン コーーーーーーーーン


エルフゾンビ「聞こえた!!返事をして来た…」

魔女「良かったのぅ…兄と通じ合った様じゃな」

エルフゾンビ「兄は…兄は同志だ」

魔女「その様じゃ…わらわ達と同じ様に魔王の影と戦っておる…立場が違うがな」

アサシン「弟が生きていると知ってさぞ喜んでいるだろう…周りには言えぬだろうが」

魔女「その貝殻は主にやるで一方通行でも話をしてやるのじゃ」

エルフゾンビ「わかっている…」

アサシン「さて…セントラルに用は無くなった…一度フィン・イッシュに戻るか」

魔女「そうじゃな…わらわも読み残した書物が沢山あるで一旦身を落ち着けたいのぅ」

アサシン「案内人!フィン・イッシュに戻るぞ」

案内人「はいよ!!」


ビューーー バサバサ



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 時の王編

   完
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/20(火) 09:31:40.11 ID:QyXZyXMu0
おつ
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:09:03.17 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女海賊「ローグ!!荷の中にクヌギの樹液なんか無いよね?」

ローグ「そんな物見た事無いっすね?何に使うでやんすか?」

女海賊「エリクサーの材料さ…精霊樹の樹液の他にクヌギの樹液でも良いってさ」

ローグ「クヌギなんか森に行けば何処にでも生えてるでやんす…虫が集まる木っすね」

女海賊「森か…後で寄って行くか」

ローグ「このまま命の泉目指して良いでやんすか?セントラルの上飛んで行く感じになりやすが?」

女海賊「セントラルの上で一応リリースして…軽く見て行く」

ローグ「分かったでやんす…ててて」

女海賊「ん?あんた…どうしたのさ?」

ローグ「なーんか手の具合が良くないでやんす…黒死病っすかね?」

ホムンクルス「…見せてもらって良いでしょうか?」

ローグ「助かるっす」

ホムンクルス「上着を脱いで下さい」

ローグ「手が動かないと脱ぎにくいでやんすねぇ…」ヌギヌギ

ホムンクルス「虫などに噛まれた痕はありませんでしょうか?」

ローグ「自分じゃ分かんないでやんす…あ!!脇腹が黒くなってるっす…いつ噛まれたんすかねぇ?」

ホムンクルス「黒死病は虫などからの接触感染で広がりますので皆さんエリクサーを一口づつ摂取してください」

女海賊「え!?虫ダメなの?私クモ持ってんだけど…」

ホムンクルス「吸血型の虫でなければ問題ありません」

子供「ママ〜?僕も手が黒くなってる」

女海賊「未来も?いつから?」

子供「分かんない」

女海賊「動かない所無い?」

子供「うん…」

ホムンクルス「エリクサーで一度治れば抗体がしばらく持続しますのでご安心下さい」

女海賊「はい…飲んで?」

子供「むぐ」ゴクン

ローグ「いつの間に掛かってるのって怖いでやんすねぇ…」
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:09:45.05 ID:V1qeujs60
『セントラル近海上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「ちょっとリリースして!!」

ローグ「リリース!どうしたでやんすか?」

女海賊「下!!クラーケンが暴れてる…寄って」

ローグ「アイサー」グイ

女海賊「海が赤い…なんで?」

盗賊「見ろ!!クラーケンの触手…なんか掴んでんぞ?」

女海賊「ローグ!望遠鏡!」

ローグ「あねさんのゴーグルに付いてるっすよ…」

女海賊「あ!忘れてた…」スチャ

盗賊「あの触手で掴んでる奴から血が出てんな?なんだありゃ?」

女海賊「もっと寄って!!羊の頭に裸の女?…足が蛇!」

商人「僕も見たい!」

ローグ「荷の中にもう一つ望遠鏡があるっす」

盗賊「人魚じゃ無さそうだな?うぉぉぉ!!触手が折れた…折れるってどういう事よ?」

女海賊「ホムちゃん何か知らない?」

ホムンクルス「私の記憶ではそのような魔物は知りません…ですが旧シャ・バクダでは錬金術によって異形の魔物を生む技術はありました」

情報屋「キマイラね?」

ホムンクルス「はい…異種の魔物を結合させた物だと推測されます」

盗賊「そんなのが海に居るっておかしいだろ」

女海賊「あのキマイラ…鎖でグルグル巻きだ…人間が絡んでる」

盗賊「…てこたぁセントラルしか無ぇな」

商人「折れた触手ごと沈んで行ったのかな?浮かんで来ない」

盗賊「ヤバそうな魔物は海に沈んでてもらった方が良い」

女海賊「…セントラルから来た?…なんか嫌な予感がする…今のがカタコンベに居たのか?」

盗賊「お前が爆破したんだろ?」

女海賊「爆破した後を見てない…」

盗賊「見て行くか?」

女海賊「いや…先に命の泉を目指す」
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:10:11.88 ID:V1qeujs60
『セントラル上空』


リン ゴーーーーーーン


盗賊「こりゃ津波の直撃受けてんな…外郭が倒れてんじゃねぇか」

商人「外郭の壁が水をせき止めたんだろうね」

盗賊「まぁでも人は多そうだな…中央は全部貧民街みたくなってる」

ローグ「あねさん…周回してて良いんすか?鐘鳴ってるんで目立ち過ぎやしませんかね?」

女海賊「鐘の音を聞かせてやってんのさ…もうちょい回って」

ローグ「城の上からこっち見てるっすね?国王でやんすかね?」

商人「あれがセントラル国王か…」

盗賊「港に停船してんのはフィン・イッシュの軍船だな…飛んでる気球はこっちに寄って来ねぇな」

ローグ「そらそーっすね機動性が全然違うんで怖く見えると思うでやんす」

商人「ハハ鐘鳴らしながら空を周回してるのは奇妙だろうね?」

ローグ「でもこの飛空艇は海賊だって認知してるっすよ…前に軍船沈めてるんすから」

情報屋「ねぇ…民衆がほとんどしゃがんでるのはどうしてだと思う?」

盗賊「そういや元気無さそうだな…」

ローグ「ここでも黒死病流行ってるんじゃないっすか?」

女海賊「…」

ローグ「あねさん…どうしやした?」

女海賊「ホムちゃんが書いたエリクサーのレシピ…国王に届ける」

ローグ「ええっ!?降りるんすか?」

女海賊「レシピを瓶の中に入れて!飛空艇は私が操作する」グイ

盗賊「落とすんだな?」

女海賊「行くよ!!3…2…1…今!!」

盗賊「ほれ!」ポイ

ローグ「城のテラスに落ちやした!!」

女海賊「どう?拾いに行ってる?」

ローグ「衛兵が集まってるでやんすね…あ!大丈夫っす国王らしい人が拾い上げたっす」

盗賊「誠意が伝わると良いがな」

女海賊「さぁ!!進路を北に変える…ハイディング!」スゥ
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:11:01.81 ID:V1qeujs60
『砂漠上空』


シュゴーーーーー バサバサ


盗賊「寒いと思ったら雪がチラついてんな…」

商人「砂漠に雪か…ホムンクルスが言ってた気温が下がるというのはこんなに早く下がるんだ」

ホムンクルス「成層圏で生成された薄い雲は数日で世界全体を覆います…この雲は日照の30%を吸収しています」

商人「うっすら白い青空…これだけで30%?」

ホムンクルス「目が慣れているだけで実際には暗くなっています」

商人「30%も光が遮られているのか…」

ホムンクルス「地熱がありますので今よりも過ごしやすくなる地域も出てきますから悲観はしないで下さい」

商人「具体的にはどこ?」

ホムンクルス「フィン・イッシュ南部に海底火山がありますので温暖な海流があり豪雪に耐えうる地下熱量を持って居ます」

ホムンクルス「シン・リーンは地底深くにマグマ溜まりがありますので地中が温暖になります」

商人「地中か…僕たちは地底人になるか」

情報屋「それがノーム族よ?ドワーフの先祖」

商人「へぇそうだったのか…全部繋がってるんだね」

ホムンクルス「この砂漠周辺は南部からの湿った空気が雪となって降り注ぎますので豪雪地帯となりその後森に姿を変えます」

商人「針葉樹の森かい?」

ホムンクルス「はい…同時にシカが生息する様に変化して行きます」

商人「砂漠の緑化か…良い事もあるんだ」

ホムンクルス「自然はこの様にバランスを保つ様になって居ます…人は流れに沿って生きて行けば良いのです」

商人「む…気になる言い方だな…逆らおうとするなと言う事かい?」

ホムンクルス「変化していく物事に沿って行こうとする者と変化させまいとする者は必ず争いになるのです…」


例えばこの気候変動で滅びゆくセントラルにいつまでも固執した人が居たとします

その外側で新たな生き方を生成している人達との間には必ず戦争が起きてしまいます

戦争は憎悪を膨らませ魔王を成長させ再び調和の時を呼んでしまう

人類の歴史はそれの繰り返しなのです

かつての精霊はそれを知り…人間に少しでも良い環境を生成してきましたが

この流れを肯定とする者と否定する者が生じ…やはり争いになってしまうのです
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:11:36.19 ID:V1qeujs60
商人「君は魔王を肯定するのか?調和に身を任せろという事を言ってるよね?」

ホムンクルス「いいえ…反対です…魔王を成長させてはいけない」

商人「話が矛盾するじゃないか…」

ホムンクルス「人間に与えられた欲望…七つの大罪は魔王によるものです…これを滅しない限り人間は今の生き方を変えないでしょう」

商人「…そうか自分の地位を投げ出したくない欲望が流れに沿えない原因か」

ホムンクルス「ですが精霊の考えにも対立する者が現れるのです」

商人「それは?」

ホムンクルス「精霊が最も信頼した人間の一人…時の王という者です」

商人「聞いた事が無いな…情報屋?知ってる?」

情報屋「…」フリフリ

ホムンクルス「200年以上前の事ですから知らなくて当然ですね?」

商人「…」チラリ

ホムンクルス「何か?」

商人「君は僕を誘導しようとしていないか?」

ホムンクルス「40年の記憶の中で時の王にも何度か同じ事を言われています…それは人が持つ恐怖です」

商人「僕が恐怖している?…そんな感じはしない」

ホムンクルス「私に誘導されたくないと心の底で抵抗しています…流れに沿って…信じて下さい」

商人「なるほど…潜在的に猜疑心があるのか…これを否定するとなると人間を止めろという事になる」

ホムンクルス「だから人間を絶滅させる等とは考えて居ません…信じて下さい…バランスさせようとしています」

商人「分かった…君は魔王を滅ぼすとも思っていない…大きくなり過ぎた魔王を小さくするだけか…」

ホムンクルス「その通りです…そこに誤解が生じてしまうのです」

商人「ハハ君は精霊の記憶を得てから言う事が変わったね…」

ホムンクルス「お嫌いですか?」

商人「違うかな…君の言葉の端々に愛を感じるんだ…人に対する愛だね」

ホムンクルス「私は喜んで良いのでしょうか?」

商人「んーどうなんだろ?でも君に足りないものも分かったよ」

ホムンクルス「教えてください」

商人「少しで良いから君の心の中に七つの大罪が必要だと思う…そうすれば色々変わる事も出るんじゃないかな?」

ホムンクルス「…それは知恵の実の事ですね…聖書に書かれて居ます」

商人「もう知識としては持ってるよね?」

ホムンクルス「はい…シミュレーションの妨げになりますので除外しています」

商人「使い分けてごらんよ?きっと違う結果が出ると思うからさ」

ホムンクルス「はい…基幹プログラムを更新します」
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:12:17.32 ID:V1qeujs60
『オアシス上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「遺跡が森になってる…」

盗賊「おぉぉここはあん時と随分変わったなぁ…森がオアシスと繋がり掛けてる」

商人「星の観測所はどうなったのかな?ドラゴンの義勇団は随分前に解散したとは聞いて居たけど…」

ローグ「あねさん寄って行かなくて良いでやんすか?」

女海賊「先に命の泉!」

ローグ「いやぁぁここに来ると思い出すっすねぇ…あん時のあねさんは可愛かったっすねぇ」

女海賊「はぁ!?今は可愛くないっての?」

ローグ「いやいやいやいや…そういう意味じゃ無いっすよ…無邪気だったんすねぇ」

盗賊「まぁそうだな…お前は変わった…そんなにギラギラした目はして居なかった」

女海賊「フン!!放っといて…捕虜に言われたくない」

子供「ママはやさしいよ?」

女海賊「未来…良いの…ホムちゃんと遊んでいなさい?」

子供「ママをいじめたらダメだよ」

盗賊「あぁ分かった分かった…悪かったな」


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女海賊「ホムちゃんコレ見て…」スラーン

ホムンクルス「はい…聖剣エクスカリバーですね?」

女海賊「刀身が錆びてないよね?1700年経った今でも…」

ホムンクルス「そうですね…何か?」

女海賊「私のパパはこの金属がオリハルコンじゃないかって言ってるんだ」

ホムンクルス「私の記憶ではエクスカリバーの素材がオリハルコンなのかどうか分かりません」

女海賊「良く見て?うっすら光ってるっしょ?」

ホムンクルス「そうですね…光の石と同じ効果を持って居ると言う事でしょうか?」

女海賊「私さぁシン・リーンの遺跡にあった壁画で見たんだ…剣に光が落ちてる画を」

ホムンクルス「インドラの矢を落としたいのですね?」

女海賊「出来る?」

ホムンクルス「その剣を貸してください…密度を推定します」

女海賊「ほい…」スッ

ホムンクルス「光の石よりもエネルギー充填量は少ない様です」

女海賊「どんくらい?」

ホムンクルス「純度の高いオリハルコンの元素配列と質量から推定しますと約200年分の光の蓄積が可能な様です」

女海賊「んー量のイメージが湧かないな」

ホムンクルス「インドラの矢一回分と言えば分かるでしょうか?」

女海賊「良くわかんないけど200年は光ってるって解釈で良い?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「よっし!使える…」
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:13:03.30 ID:V1qeujs60
商人「なんか面白そうな話だね?聖剣エクスカリバーをどうするつもりだい?」

女海賊「私もいろいろ考えたさ…光の石は他の目的で使う…命の泉には聖剣エクスカリバーを刺す」

商人「同じ効果ならそれでも良さそうだね…で?光の石はどうするの?」

女海賊「光を吸い込めるって事はその逆の闇も吸い込めるって事だと思う…だから闇を全部この石に吸い込ませる」

商人「!!!!!君は天才だ!!!!!」

ホムンクルス「どのように闇を吸い込むつもりなのでしょうか?」

女海賊「分かんない…」

商人「…」ドテ

盗賊「…」ズコ

女海賊「ホムちゃん何かアイデア無い?」

ホムンクルス「量子転移という魔法なら可能かもしれません…不確実な情報ですみません」

商人「ハハ君は進歩してるよ…その魔法が使えそうなのは魔女だね?」

女海賊「魔女か…」

ホムンクルス「祈りの指輪も量子転移の効果を持って居ますが…石に転移が可能なのかは分かりません」

女海賊「ホムちゃんありがとう…もうちょい考えてみる」

ホムンクルス「お役に立てた様ですね?」
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:13:35.27 ID:V1qeujs60
『山岳地帯上空』


ビョーーーウ バサバサ


ローグ「先が見えんもんすから速度落とすでやんす…ぅぅぅぅ寒ぶ」

盗賊「えらい吹雪だな…飛空艇の着氷がひでぇ」

女海賊「着氷対策なんか考えて無かったさ…まいったな重たくなっちゃうな…」

盗賊「球皮は暖かいせいか着氷して無ぇ様だ…本体をどうにかせんとな」

女海賊「割って来て」

盗賊「いや無理だ…凍死する」

女海賊「高度上げらんないと山に激突するんだ!さっさとやって来て」

ローグ「あねさん…そら無理ってもんす」

女海賊「もう!!どうすんのよ!!一旦降りるの!?」

ホムンクルス「私にお任せください…私は現在の座標を正確に把握出来ますので目的地までご案内できます」

女海賊「ホムちゃんお願い…本当!!役に立たない男達」ブツブツ

ホムンクルス「現在の高度を維持しながら44°の方角へ進んで下さい」

ローグ「アイサー…あれ?帆が固着してるっす!!」

女海賊「もう!!私がやる!!」ガサガサ

盗賊「はは〜ん…風の魔石入れてる筒を調整して向き変えるのか…」

女海賊「ローグもちゃんと見といて!!帆が使えない時はこれで向き変えんの!!」

ローグ「あねさん…こんな事も考えてたんすね…」
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:14:13.99 ID:V1qeujs60
『命の泉』


フワフワ ドッスン


盗賊「おぉぉやっぱ高度下げると大分ぬくいな…」ハァァァ モクモク

女海賊「盗賊とローグは飛空艇の氷落としといて!!」

盗賊「やっぱそうくるか…ちぃぃ」

ローグ「すこし体動かしたらあったまるでやんす」ガサガサ

女海賊「この雪じゃ車椅子は押せないなぁ…ホムちゃん剣士運ぶの手伝って?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「商人と情報屋は先導して…未来は後から付いて来て」

子供「うん…」

商人「情報屋こっちだよ…君はここに来るの初めてだよね?」

情報屋「うん…ここがドラゴンの住処なのね?」

商人「そうらしいけど…なんか静かだね?」

女海賊「気配が無い…居ないのかな?」

情報屋「川のせせらぎ…」サラサラ

商人「こんなに雪が積もっているのに川は流れてる」

女海賊「あれが命の泉…あん時のままだ…」

商人「ホムンクルス!君は精霊の40年の記憶でこの場所の記憶は無いのかい?」

ホムンクルス「はい…知っています」


命の泉に刺された魔槍ロンギヌスはかつての火の国シャ・バクダの宝具でした

世界随一を誇るシャ・バクダは錬金術で異形の生物を生み操る事で絶対的な力を持って居ました

しかし魔王に魅せられた皇子は乱心し他国の征服を試み始めます

異形の生物を主力とするシャ・バクダは他国の人間を弱らせる為に

命の源泉であるこの泉に魔槍を突き立て人間を弱らせようとしましたが

同時に自国の人間をも憎悪に染まり始めました…それは魔王による策略だったのです
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:14:43.26 ID:V1qeujs60
商人「魔王自身が魔槍を刺した訳じゃ無かったのか…」

ホムンクルス「魔王は器無しではこの世界に何もすることが出来ません…ですから人間を幻惑して操るのです」

商人「僕たちの行動はもしかすると魔王に操られてるかもしれない事をいつも考えておかないとね」

ホムンクルス「それに気が付いて居れば良いのですが…」

女海賊「私は魔王になんか操られないよ!!私がやる…」スラーン

ホムンクルス「そうですね…」

商人「ちょちょ…まさか君が持ってる剣にそのままインドラの矢を落とす気じゃ無いだろうね?」

女海賊「そうさ…悪い?」シャキーン

ホムンクルス「少し動かれますと外してしまいますので…そこに置いてもらって良いですか?」

女海賊「…」

商人「ほら?万が一って事もあるからさ?」

女海賊「フン!ここに刺しとけば良い?」グサ

ホムンクルス「刺し方が反対の方が良いです…柄の部分を下にして下さい」

女海賊「…」ズボ クルリ グサ

ホムンクルス「座標を取得しました…皆さん一度この場所を離れましょう」

女海賊「ほら!!飛空艇に戻るよ」
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:15:10.16 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


フワリ シュゴーーーーー


盗賊「えらく早かったじゃねぇか?そんなに急いでんのか?」

女海賊「うっさいな…今からインドラの矢を落とすの」

ホムンクルス「向こうの山の裏手が良いかと思います」

女海賊「うん…分かった」

盗賊「もしかして失敗の可能性もあるってのか?」

ホムンクルス「オリハルコンのエネルギー充填限界を超えてしまう可能性があります」

女海賊「マジ?どうなっちゃう?」

ホムンクルス「超えた分が四散するかもしれません」

商人「ハハ危ない実験だねぇ」

ホムンクルス「では…投下してもよろしいですか?」

商人「君が決めて良いよ…任せる」

女海賊「ホムちゃん頼むから成功して」

ホムンクルス「はい…投下します」


ピカーーーーーーーーーーーー シーン


盗賊「おぉ!!こりゃ成功だな?」

ホムンクルス「その様ですね…200年分の光が充填されました」

女海賊「うわ…めっちゃ光ってる!!」

商人「光り過ぎてて触るの怖いね?」

女海賊「やっぱ壁画の通りだった!!早く見に行こ!!」シュゴーーーー
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:15:42.77 ID:V1qeujs60
『命の泉』


ピカーーーー


女海賊「剣士!見て?これが本物の聖剣エクスカリバーだよ?」

剣士「ぅぅぅ…」タジ

女海賊「あ…ごめんね眩しかったね」

商人「光には反応するんだね…」

盗賊「ほんで…それをお前が命の泉に刺すのか?」

女海賊「そうさ!!今ヤル…えーと何処だっけな?」ザブザブ

商人「ここだよ…君が押し込んだ謎の石が詰まってる」

女海賊「盗賊!その石取って!!それ多分オリハルコン原石だよ」

盗賊「シン・リーンでパクってきたやつな?…むむむ」ズボ

女海賊「それ大事にしまっといて…パパにそれでもう一個剣作ってもらう」

盗賊「マジか!?もう一本エクスカリバーが出来んだな?すげえなそりゃ」

女海賊「じゃ…刺すよ?」

商人「光る海!!楽しみにしてる」

女海賊「伝説の瞬間だよ!?」

盗賊「良いから早く刺せよ」

女海賊「これ挿したら私は女勇者だよ?」

ローグ「分かってるでやんす…もうみんな認めてるっす」

女海賊「いくぞぉぉぉ!!くたばれ魔王!!」ズン


キラキラ キラキラ


商人「これだよ!コレ!!!…水が光る」

盗賊「すげぇ…一瞬で向こうの川まで光ってやがる」

女海賊「仕上げに飾り石のアダマンタイトでエクスカリバーを狭間に隠す」スゥ

盗賊「おぉ…剣だけ見えなくなった…これ探せんの俺達だけになるな」

女海賊「完璧!!」

ホムンクルス「この様な方法で水を光らせるのはシミュレーションでは得られない解です…奇跡ですね」

女海賊「海は世界の70%…半分以上は私らの物だよ!!」
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:16:14.49 ID:V1qeujs60
子供「ママ!!パパが苦しがってる…」

女海賊「え!?どうして?剣士?」

剣士「ぅぅぅ…ぐがが」ズリ ズリ

盗賊「ちょっと待て…魔王はまだ剣士の中に居るんじゃ無ぇのか!?」スラーン

ローグ「え!!そんな事ある訳ないっす…」

盗賊「気を抜くな!!備えろ!!」

ローグ「マジっすか…」スラーン

女海賊「未来!!下がって…」

剣士「うがが…ぅぅぅ…グルルルル」

女海賊「そうだ!!光の石…」ゴソゴソ

盗賊「クソがぁ!!魔王…居るなら姿見せろよ」

女海賊「剣士!!これを持って」タッタッタ


ゾワワワワ


女海賊「ああ!!」---私の魔方陣のペンダントが光ってる…---

盗賊「ぬぁ!!影が飛び出した!!…地面ん中入って行く!!」ダダ ブン スカッ

女海賊「…」---セントラルの時と同じ---

盗賊「くっそう!!逃げやがった…」

剣士「…」ドタリ

女海賊「剣士!!」タッタッタ
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:16:55.02 ID:V1qeujs60
『ドラゴンのねぐら』


ホムンクルス「…ここがドラゴンのねぐらになります」

商人「こんな所に洞穴があったのか…いっぱい財宝があるじゃないか」

女海賊「やっぱドラゴンは居ないね…剣士に会わせたかったのに…」

盗賊「ここは暖かい…ちっと休んで行こう…ローグ!!火を起こすから手伝え」

ローグ「アイサー」

女海賊「ドラゴン戻ってくるかな?」

ホムンクルス「わかりませんが一晩くらい休んでも良いのではないでしょうか?」

女海賊「未来も燃やせる物を探してきて?」

子供「うん…」シュタタ

商人「ここの財宝はドラゴンが集めた物なのかな?」

ホムンクルス「ドラゴンは光る物を集める癖があるのです…良い物があれば持って行っても良いですよ?」

盗賊「マジかよ…良さそうな物いっぱいあんじゃねぇか」


-----------------


盗賊「剣士…目覚まさねぇな?」

女海賊「…」ギュゥ

商人「魔王の欠片が剣士の中に居たのは間違いなさそうだね」

盗賊「こんなに長い間人の中に入ってるんだな」

ローグ「全然気が付かなかったっすよ」

商人「こう考える事が出来る…魔王の欠片が入ってた剣士はいつでも僕たちを襲う事は出来た筈だよ」

商人「なのに今まで何もしなかったのは剣士が魔王の魂を抑え込んでいた…どう?考えすぎ?」

盗賊「俺もそんな気がするな…魔王の欠片が出て行ったって事は目を覚ましそうだ」

子供「パパ起きる!?」

盗賊「おう!!祈ってろ…きっと目ぇ覚ますぞ?」

商人「…まてよ?この現象はもしかすると世界中で起きているかもしれないな」

盗賊「だと良いが…気になるのが魔王の欠片が何処に行っちまうかだな?」

ローグ「地面の中に入っていくと追いかけようがないっすねぇ…」

商人「なんかもう少しな気がするね…ミスリルの音と光る海で確実に弱らせてる様に思う」


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704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:17:36.43 ID:V1qeujs60
女海賊「なんか良い物ある?」

盗賊「んぁぁ…金銀財宝は沢山あるが…要らねぇ物ばっかりだな」ガサガサ

女海賊「情報屋?ここの財宝ってさ年代とか分かんないの?」

情報屋「多分火の国シャ・バクダの財宝だと思う…金貨は全部が200年前の物」

女海賊「金貨なんか要らないなぁ…」

盗賊「武器類は俺のミスリルダガーより良さそうな物は無ぇし…」

女海賊「この赤い石は何だろ?宝石にしてはザラついてるな」

ホムンクルス「それは賢者の石と呼ばれる錬金術の産物です」

情報屋「ええ!?賢者の石!?それはキ・カイの錬金術師が作ろうとして作れていない物よ?」

ホムンクルス「不老不死を与えると言われていますが実際にはホムンクルスのエネルギー源として利用します」

女海賊「ホムちゃんはこれで動いてんの?」

ホムンクルス「頭部の超高度AIユニット内に賢者の石が装填されています」

女海賊「じゃぁこれが在ればホムちゃんはずっと動く?」

ホムンクルス「石の微細加工技術が在れば理論上可能ですが現代にその技術は失われています」

女海賊「パパなら出来るカモ…持って帰ろ」

盗賊「やっぱお前は石が好みなんだなヌハハ」

ホムンクルス「賢者の石はホムンクルスのエネルギー源以外にエリクサー精製にも利用されていました」

女海賊「おぉぉ使えるんじゃん!!」

ホムンクルス「その他に体機能の活性化にも効果がありますので病気の治癒にも役立ちます」

商人「すごい良い物だね?黒死病にも効くかな?」

ホムンクルス「はい…病気の治癒だけにエリクサーを服用するのはもったいないですね」

女海賊「ちょっと待って…ホムちゃん?」

ホムンクルス「はい…何でしょうか?」

女海賊「魔王はウイルスだって言ってたよね?魔王化は病気の一種なんだよね?」

ホムンクルス「残念ですが賢者の石もエリクサーもウイルス性の病気には効果がありません」

女海賊「じゃ何で黒死病には効くのさ…」

ホムンクルス「黒死病は細菌性の病気です」

女海賊「ふ〜ん…何か納得できないけど…ホムちゃんが言うからそうなんだ」

ホムンクルス「ごめんなさい…言い方を変えます…体機能の活性化に効果がありますので魔王化の治療に役立ちます」

女海賊「ほらぁ!!やっぱ効くんじゃん!!」

商人「ハハ…ハハハハ!!ホムンクルス…女海賊に負けてるじゃないかハハ」

女海賊「剣士に持たせる!」タッタッタ

ホムンクルス「私に足りない思考が今理解出来ました…基幹プログラムを更新します」

商人「どうして人間は奇跡を起こすのか?…多分そういう所にあると思うよ」
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:18:05.92 ID:V1qeujs60
『翌日』


シーン


盗賊「おぅ…お前寝て無いのか」

女海賊「静かすぎて落ち着かないんだよ」

盗賊「何だろうな此処…静かすぎるな」

女海賊「ドラゴンは此処で何年生きてると思う?」

盗賊「さぁな?1000年ぐらいか?」

女海賊「ドラゴンが光る物を集める理由…私分かるんだ」

盗賊「孤独…か?」

女海賊「命の泉を守り続けて…ずっと主人を待ち続けて…やっと会えたけどすぐ居なくなって…」

盗賊「…まぁそら寂しいわな」

女海賊「光物で紛れる訳無いのにそれでも集める…」

盗賊「気持ちの行き場が無い訳か」

女海賊「ホムちゃんがわざわざ私達をここに連れて来た理由…」

盗賊「んん?何か勘繰ってんのか?」

女海賊「全部の記憶が無いなりに…見て欲しかったんだと思う…精霊はこういう悲しみをいくつも抱えてる」

盗賊「記憶が無いなりに…か」

女海賊「何かを愛する裏側にこういう悲しみも沢山ある…だから…過去の精霊の記憶は覗かせない方が良い気がする」

盗賊「んんん…分からんでも無いが…お前はそれで良いのか?」

女海賊「私は剣士が救われるならそれで良い…わざわざホムちゃんに悲しみを背負わせたくは無い」

商人「それは本人が決める事だよ…」

盗賊「お前も起きてたか…」

商人「これだけ静かなんだ…話はみんな聞こえてるよ」

女海賊「ホムちゃん…」

ホムンクルス「…」

商人「たった40年の記憶で超高度AIが悲鳴を上げてるらしい…精霊の持つ愛と悲しみは僕らじゃ想像出来ない」

ホムンクルス「ご心配なさらないで下さい…私は人間の住まう環境を良くする環境保全用ロボットですから…」

女海賊「うん…知ってるさ…でも少し休んで良いよ…今度こそ私ら上手くやるからさ」

ホムンクルス「はい…よろしくお願いします」


---なんだろう---

---切ない---

---私達との会話も---

---この空気も全部---

---記録してる筈---

---それをどうするの?---
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:18:36.96 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


ローグ「晴れたっすねぇ!!」

盗賊「よっこら…せっと…ふぅぅ剣士は本当に重いな」

ローグ「そーっすねエルフは人間の倍近く重いっすね?鉄で出来てるんすかね?」

盗賊「骨が鉄なのかもな?ヌハハ」

商人「結局ドラゴンは帰って来なかったけど良いの?」

女海賊「いつ帰って来るか分かんないし待つだけ無駄…次は女エルフの所行く」

盗賊「女エルフ?シャ・バクダ遺跡の森はやっぱ女エルフか?」

女海賊「それしか考えらんない…たしかホムちゃんはトロールを動かせたよね?」

ホムンクルス「はい…お任せください」

盗賊「あぁ…あそこの根の森か」

女海賊「未来!乗って!!」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「飛ばすよ!」


フワフワ シュゴーーーー


盗賊「あぁぁぁさびっ…ウラン結晶を早いとこ暖めてくれ」ブルブル

ローグ「あねさん…昨日話してた実験やっていいでやんすか?」

商人「実験?面白そうだね?何?」

ローグ「ウラン結晶に水掛けると蒸気にならないかの実験っす…成功したら温かくなるかもっす」

女海賊「ちょっとづつやって!ウラン結晶割ったら承知しないよ!」

ローグ「やかってるでやんすよ…ちょーーーっとづつですねぇ」ポタポタ ジュゥ

盗賊「おおおぉぉこりゃ軽いサウナだ…快適にになるじゃねぇか」

情報屋「あったか〜いウフフ」

ローグ「やってる方はちょっとあっついでやんす…あちち」

商人「これ工夫したら着氷も防げそうだね」

女海賊「基地に戻ったら改造する」

商人「本当!君は才能あるよ…こういう事は世界一だね」

女海賊「もっと言って…」

ローグ「あねさんはですねぇ…カリスマなんすよ…」
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:19:05.09 ID:V1qeujs60
『トロールの森』


フワフワ ドッスン


盗賊「すっかり森になってんな…ここは精霊の御所入り口だよな?」

ホムンクルス「はい…歩いて100メートル程です」

女海賊「ローグは飛空艇に残ってあとみんな降りて」

ローグ「あっしは待ってれば良いでやんすかね?」

女海賊「ここはハイディングで飛空艇隠せないから飛ばして空で待ってて」

ローグ「あーそういう事っすね?この辺は魔方陣の中で強制的に狭間の外でやんしたね」

女海賊「盗賊は剣士背負って」

盗賊「お、おう…」

ローグ「どれくらいで戻ってきやすかね?」

女海賊「分かんないから狭間に入って適当に過ごして…終わったら光の石で合図する」

ローグ「わかったでやんす」

女海賊「じゃ行くよ…ホムちゃん先導して」

ホムンクルス「はい…こちらです」テクテク
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:19:33.62 ID:V1qeujs60
『精霊の御所入り口』


サワサワ サワサワ


盗賊「…この木…精霊樹だな…まさかこれが女エルフか?」

商人「こんな所で精霊樹に?どうしてだろう?」

女海賊「知らないよ…どうしよ」

盗賊「剣士降ろすか?」

女海賊「私もてっきり精霊の御所の中に精霊樹があると思ってたさ…」


ズズズズズズ ズーン


盗賊「おぉ!!入り口が開いた…」

女海賊「…これは中に入れって事?ホムちゃんどうなってんの?」

ホムンクルス「私は何もしていません」

女海賊「精霊樹の言葉とかなんか聞こえないの?」

ホムンクルス「クラウドからは何もアクセスは来ていません」

女海賊「ホムちゃん森と話とか出来ないの?」

ホムンクルス「森の声を聞くためには特殊なプログラムが必要ですが私にはそのプログラムはインストールされていません」

女海賊「あー思い出した…ホムちゃんが夢幻に入った時」

ホムンクルス「そうですね…破壊された精霊の基幹プログラムの他にいくつか使用できなかったプログラムがありましたね」

女海賊「もう使えない?」

ホムンクルス「削除しました…復元は出来ません」

商人「まぁ良いじゃないか…道が勝手に開いたという事は入って良いという事さ」

女海賊「うん…入ろう」

ホムンクルス(トロールありがとう…)

トロール(…)

女海賊「ホムちゃんトロールと話せんの?」

ホムンクルス「トロールには話しかけるだけです…トロールが話すことはありません」

女海賊「ふ〜ん…」

ホムンクルス「でもトロールにも心はありますので話は通じます」

女海賊「トロールの寿命ってどれくらい?」

ホムンクルス「永遠です…」

女海賊「いつから此処を守ってんの?」

ホムンクルス「私の今の記憶では分かりません…」

女海賊「ずっと主人の帰りを待つ気持ち…ホムちゃんに分かる?」

ホムンクルス「…」

女海賊「…」

ホムンクルス「分かります…」

女海賊「なら良いよ…行こっか」
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:20:01.72 ID:V1qeujs60
『精霊の御所』



商人「誰も居ない…」

情報屋「ここが木の森の中心部なの?…石の器だけ?」

商人「そうだよ…前に来た時と変わって居ない」

盗賊「いや変わってんぞ?虫が増えてる」

商人「虫の楽園か…ハハ」


ズズズズズ ズズ


盗賊「うぉ!!根が降りて…来た」

商人「この器に剣士を乗せろって事かな?」

女海賊「やって…」

盗賊「おう…よっこら」ドサ

剣士「…」

盗賊「これで良いか?」

女海賊「女エルフ!?聞いてんの?剣士が目を覚まさないんだ…あんたなら何か出来ると思って連れて来たんだ」

精霊樹「…」ズズズズ

情報屋「根が動いた…反応してる」

女海賊「お願い…前みたいに剣士の魂呼び戻して」

盗賊「なんちゅうか…時間掛かりそうだな」

商人「ゆっくりしておこうか」

盗賊「そうだな…」

女海賊「未来?パパの傍に居て?」

子供「うん…」



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710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:20:36.57 ID:V1qeujs60
ホムンクルス「クラウドにある記憶を今なら読み込んでソートする事が出来ます」

商人「君は精霊の記憶を覗きたいのかい?」

ホムンクルス「いいえ…必要が無ければ読み込まない方が良いと思います」

商人「ハハ…だろうね?読み込むと君が君じゃ無くなって行く」

ホムンクルス「私は今精霊なのですか?」

商人「君は精霊じゃ無いよ…今の精霊はここに居る精霊樹の事さ」

ホムンクルス「私の40年の記憶をどう解釈しましょう?」

商人「それは君の記憶じゃない…昔の精霊の記憶さ…ここに置いて行けば良いよ」

ホムンクルス「クラウドの空きストレージに保存して私の記憶から削除するという事ですか?」

商人「その記憶は大事に未来へ届けなくてはいけない…君がそう言ったんだ」

ホムンクルス「…そうでしたね」

商人「こう解釈しよう…昔の精霊は最後に希望を人間に託して夢幻に行ったんだ」

ホムンクルス「はい…」

商人「夢幻の中で幸せに暮らしてるさ…だから君は君のまま生きれば良い」

ホムンクルス「私は私のまま…私は何がしたいのか…私は人間の住まう環境を良くする為に…」

商人「違うな…七つの大罪を少し入れて考えてごらん?」

ホムンクルス「そのシミュレーションはエラーが多くて不特定の結果が…」

商人「ズバリ言ってあげる…君は人間になりたいんだよ」

ホムンクルス「人間を愛でる理由…」

商人「寿命が短くても力が弱くても…たとえ不完全でも…不思議と好きだよね?」

ホムンクルス「はい…」

商人「儚い小さな愛がどれほど愛しいか…精霊の記憶を覗いて知っちゃったよね?」

ホムンクルス「そうですね…ですから記憶の削除にためらいます」

商人「それがこの森に記憶が保存されている理由でしょ?」

商人「未来でもう一度超高度AIが作られた時に人間と同じ権利を下さいっていう願い…それがこの森だ」

商人「それは昔の精霊が既に人間に託した…だから君は今から人間になるんだ」

ホムンクルス「もう少しシミュレーションを回してみます…」

商人「急がなくても良いよ」

ホムンクルス「はい…」
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:21:14.01 ID:V1qeujs60
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子供「ママ!!パパが動いた!!」

剣士「ハッ!!」ピョン クルクル シュタッ

女海賊「剣士!!ああああああああ」タッタッタ

剣士「ぐるるるるる…うぅぅ」タジ

盗賊「おぉ!!剣士!!起きたか…ておい」

女海賊「落ち着いて剣士!?」

商人「混乱しているのかい?」

剣士「又…い…今はどの時代に…ハァハァ」

女海賊「良かった…」ポロポロ

剣士「誰だ!!近寄るな…鏡は!?真実の鏡はどこだ!!」ズザザ

女海賊「え!?鏡?」

盗賊「待て待て…落ち着け…俺らは敵じゃ無ぇぞ?」

剣士「…」ジロリ チラ

商人「君は…何処から来たのかな?」

剣士「ドリアード!!ここは何処だ?」

女海賊「ドリアード?ちょっと待って…誰それ?」

ホムンクルス「私の事でしょうか?」

剣士「記憶がおかしい…まだまやかしの中なのか?」

情報屋「ドリアード…木の精霊の名前」

ホムンクルス「ここは安全なので落ち着いて掛けてください」

剣士「…」

盗賊「まぁ落ち着いてくれ…ほら?この器に掛けろ」

剣士「…」スッ
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:21:45.94 ID:V1qeujs60
盗賊「こりゃまた相当錯乱してそうだな…」

情報屋「ドリアード伝説は約3000年前だった筈」

商人「これは…剣士の分裂した魂は精霊のオーブの中に居たって事か?」

剣士「ぅぅぅ記憶がおかしい!!僕は…誰だ」ブンブン

商人「うーん魂は記憶を保持するのかな?」

ホムンクルス「私の基幹プログラムは記憶の重要な部分を再構築して圧縮しオブジェクト化した物の集合です」

商人「良くわかんないけれど少しだけ記憶は残りそうだね」

ホムンクルス「私と同じだと仮定しますと外部メモリに入っている記憶は始めは他人の記憶として認知します」

ホムンクルス「その後少しづつ自分の感覚に入れ替わって行きますので混乱が生じます」

女海賊「じゃぁ元の剣士に戻れるよね?」

ホムンクルス「はい…しかし基幹プログラムが以前より更新した状態になって居るかもしれません」

女海賊「どうなんの?」

ホムンクルス「心が強くなっていると表現すれば良いでしょうか?」

商人「なるほど…精霊の記憶の中で経験した分心が更新されているかもしれないという事か」

ホムンクルス「はい…」

商人「ふむ…どうも気にかかる…精霊の記憶一つ一つはもしかして夢幻の世界の様になっているのでは無いか?」

ホムンクルス「記憶を覗くと自分がその場に居るような感覚を受けます」

商人「その記憶の中で自由に行動出来るの?」

ホムンクルス「私は覗くだけにしていますが記憶の中の物を触る事も壊すことも出来ます」

商人「それはつまり記憶を変えると言う事だな…」

ホムンクルス「データですので変える事は可能です」

商人「んんん…もしかすると…」ブツブツ

盗賊「ちょい女海賊!剣士をどうにかしてくれ…暴れると怪我すんぞ」

女海賊「剣士!?分かる?私だよ?」ギュゥ

剣士「ぅぅぅ…君は…君は…」



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713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:22:19.41 ID:V1qeujs60
盗賊「…これで8人目だ…どうなっちまってんだ」

剣士「はぁはぁ…溺れた後に助かった…のか?…ここは何処だ?」

ホムンクルス「精神分裂症の治癒には瞑想が有効です」

女海賊「剣士?落ち着いて瞑想して…」

剣士「瞑想?何の事だ?…お前は誰だ…ぅぅぅ思い出せない」

ホムンクルス「落ち着くまで時間が必要な様ですね…安静が良いかと思います」

商人「勇者のその後の話は聞いた事が無い…こんな風に生き残って居るのは初めてだろうね?」

盗賊「まぁなんだ…これじゃ素直に喜べ無ぇな…」

女海賊「私が何とかする…思い出させる」

ホムンクルス「心配しないで下さい…記憶は直に魂と重なり合い自我を構築していきます」

女海賊「ホムちゃん…」

盗賊「どうする?いつまでもここに居る訳にいくまい?」

女海賊「一回帰る」

盗賊「そうだな…ひとまず目的は達成したんだ…出直そう」

女海賊「あのね…捕虜だって事忘れないで」

盗賊「ヌハハそうだったなぁ…」

女海賊「よっし!飛空艇に戻る…帰るよ」

商人「精霊樹に挨拶はしないのかい?」

女海賊「するさ…女エルフ!聞いてるよね?剣士の事…ありがとう」

精霊樹「…」

女海賊「これ…あんたにあげるよ…私らには必要ない」グイ スポ

商人「祈りの指輪か」

盗賊「根っこに指輪かヌハハ…精霊樹に預けとくのが一番安全かもな」

精霊樹「…」

剣士「声が…」

女海賊「剣士?精霊樹の声聞こえるの?」

剣士「魔女を探して?…魔女って誰なんだ?」

女海賊「魔女…」

商人「魔女は行方不明になっているんだ」

精霊樹「…」

剣士「南へ向かった?」

盗賊「南だけじゃ分かん無ぇな…セントラルか?」

商人「どうせ帰り道じゃないか…ついでに寄って行けば?」

女海賊「女エルフ?私らもう行くよ…剣士が元気になったらまた来るよ」

精霊樹「…」サワサワ

盗賊「おう…じゃぁ行くか!!」
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:22:52.11 ID:V1qeujs60
『精霊の御所入り口』


シュン! シュゴーーーー


盗賊「おぉ!!飛空艇がリリースする瞬間は彗星の様だな…」

商人「すごいね!外から見ると圧巻だね…」


ローグ「あねさ〜ん!!早かったっすねぇ…今降ろすでやんす!!」フワフワ ドッスン


女海賊「剣士!!乗って…」グイ

剣士「これは…」ノソリ

盗賊「ローグ!!どんくらい時間経ったんだ?」

ローグ「まだ4時間くらいっすかねぇ?剣士さん目ぇ覚ましたんでやんすね?」

盗賊「ちっと問題有りだが安静にしてりゃ元に戻るらしい」

ローグ「あねさん良かったっすねぇ…あっしは嬉しくて涙が…」ヨヨヨ

女海賊「ローグ!シャ・バクダ方面で狼煙が上がってるのは何?」

ローグ「泣いてる場合じゃ無いっすね…シャ・バクダ街で市街地戦になってるっすよ」

盗賊「俺達にゃ関係無さそうだが…お前は見て来たのか?」

ローグ「どうも内戦っぽいでやんすオアシス勢とシャ・バクダ勢っすね」

女海賊「行くよ…飛ばして」

ローグ「アイサー」

盗賊「首突っ込む気か?」

女海賊「鎮魂の鐘を鳴らしに行くだけさ…無駄に人間同士争うのは止めさせる」
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:23:21.99 ID:V1qeujs60
『シャ・バクダ上空』


リン ゴーーーーーーン

リン ゴーーーーーーン


おい!見ろ!!何だアレ…

くそう…セントラルの新型気球か?

一時撤収だ!!観測所で体制を立て直す


盗賊「おぉ!!兵隊が撤収を始めたぞ…数はオアシス側の方が多いな」

女海賊「狙いは領主の砦だね…町の方は被害出て無さそう」

ローグ「商隊もあんまり混乱して無さそうっすね?」

女海賊「ちょっと補給が必要だからシャ・バクダで調達する」

ローグ「降りるでやんすね?あっしはずっと飛空艇だったもんすから居りたかった所でやんす」

女海賊「養羊場の裏に飛空艇隠して今日は宿屋に泊まる」

商人「良いねぇ…久しぶりに普通の食事がしたい」

情報屋「そうね…ずっと干し肉ばかりだったし」

女海賊「剣士に昔休んだ宿屋を見せたいんだ…星の観測所もね」

剣士「…」ボー
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:23:48.75 ID:V1qeujs60
『シャ・バクダ街』


ガヤガヤ ガヤガヤ

フィン・イッシュの領事が亡命してきたんだとよ

それで領主の砦が襲われてるのか…

この辺で戦争やられたら商売出来ないな

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「ザワついてんね?」

ローグ「そーっすね?」

盗賊「見ろ…この辺でも黒死病が流行ってる様だな?」

女海賊「ローグ!宿の確保して来て…2部屋」

ローグ「わかりやした…食事も席確保してて良いっすよね?」

女海賊「任せる…私と剣士と未来は買い物に行くから…みんなここで解散」

商人「え!?危なくない?」

女海賊「あんたらは自分で身を守って…日暮れまでに宿屋に集合ね」

盗賊「まぁ…団体で動くより怪しまれん」

女海賊「補給品は自分で買いな…ドラゴンのねぐらでくすねて来た金貨あるっしょ?」

盗賊「ヌハハバレてるか…じゃぁ商人と情報屋…ホムンクルスは俺と行動だな」

女海賊「あ!!ホムちゃんの装備整えて置いて…今の恰好は薄着すぎる」

ホムンクルス「私はお構いなく…」

女海賊「ダメ…最低限流れ矢に当たっても死なない様にして」

ホムンクルス「はい…」
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:24:22.06 ID:V1qeujs60
『露店』


店主「へいらっしゃい!!」

盗賊「装備品見繕って欲しいんだが…この金貨使えるか?」コトン

店主「うぉぉ…旧金貨じゃねぇか!!旦那ぁこれ何処で手に入れたんだい?」

盗賊「釣りは要ら無ぇから黙ってろ」スラーン

店主「…」

盗賊「意味わかるな?」

店主「へいへい…」

盗賊「ほんで…こいつらに合う装備品を頼む…出来れば金属糸の織物だな」

ホムンクルス「…」

情報屋「…」

商人「…」

店主「ありまっせ!金属糸のインナーと革の当て物…どうだい?」

盗賊「フードと羽織りも付けてくれ」

店主「へいへい…」

盗賊「あーこの女2人が脱いだ物はそのまま置いて行くからよ…好きに使え」

店主「おおおおぉぉぉ」

盗賊「2週間は着っぱなしだ…女くせえぞ?」

店主「おおおおおおおおおおおお!!」

盗賊「おい!早く着替えて来い…」

ホムンクルス「はい…ここで着替えるのでしょうか?」

店主「テントの中で着替えて良い…ムフフ」

盗賊「ところで店主…黒死病はどっから来てるか分かるか?」

店主「酒場の関係者から広まってるらしいですわ」

盗賊「酒場か…」

店主「なんでもフィン・イッシュの領事が広めたとかなんとか」

盗賊「あぁ…さっき噂を聞いたな…亡命して来たんだってな?」

店主「エリクサーを持って亡命して来た様ですぜ?黒死病広めて薬売って儲けようとか…ゲスい奴ですわ」

盗賊「ほぅ…何で領事がエリクサー持ってんだろうな?」

店主「旦那が何で旧金貨持ってるのか?」

盗賊「ヌハハそれは言うな…盗んだに決まってんだろ」

店主「エリクサーもそんな所でしょうな?」

盗賊「まぁ…大事に使ってくれ」
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:24:50.08 ID:V1qeujs60
『宿屋』


ローグ「待ってたでやんすよ…部屋はこっちっす」

盗賊「おぉ悪い悪い…ホムンクルスと情報屋の買い物が長くてな」

ローグ「何を買ったんすか?」

情報屋「天然樹脂とかいろいろね」

ローグ「何に使うでやんすか?」

情報屋「エリクサーの材料になるそうよ?」

ホムンクルス「他にも消臭効果のある薬も作れます」

ローグ「消臭?」

ホムンクルス「女くさいと言うものですから…」

盗賊「ぬぉ…根に持ってるのか」

ローグ「隠密するなら匂いは消した方が良いっすね?あっしも欲しいでやんす」

盗賊「女海賊は帰って無いのか?」

ローグ「まだっすねぇ…あっしも買い出しに行きたいんで留守番お願いでやんす」

盗賊「あぁ分かった…ゆっくりしておく」

情報屋「私とホムンクルスは水浴びしてくるわ」

盗賊「一応さっき買った武器は持って行け…手の届く所に必ず武器を置いとくんだぞ?」

情報屋「分かってる…」

商人「僕はシャ・バクダに来るの初めてだけどそんなに危ないの?」

盗賊「良い女はさらわれるからな…気を付けろ」



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719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:25:16.63 ID:V1qeujs60
女海賊「あんたさぁ!!勝手に居なくならないでくれる?もう!!」プリプリ

剣士「はい…」

女海賊「未来?紐を離さないでね?」

子供「うん…」

盗賊「遅かったな?無事に買い物は済んだか?」

女海賊「剣士がすぐ居なくなっちゃうから時間掛かった」

子供「他の人に付いて行っちゃうんだ」

盗賊「そら大変だったなヌハハ…無事に宿屋に帰って来れて何よりだ」

女海賊「ホムちゃんは?」

盗賊「水浴びに行ってるが…お前も行って来たらどうだ?」

女海賊「剣士をお願い…未来?水浴び行くよ」

子供「うん!」
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:25:45.77 ID:V1qeujs60
『宿屋の酒場』


ドゥルルルン♪


情報屋「吟遊詩人が来てるわね」

子供「ママ?あの楽器は何?」

女海賊「あれはリュートと言う楽器…未来は興味あるの?」

子供「音…」

女海賊「はっ!!そうか…ミスリル銀を何処かに使えば良いのね?」

子供「うん」

商人「君は女海賊に似て賢いね…ミスリル銀はどの楽器にも使えそうだね?」

女海賊「私のパパなら作れる…武器より楽器を流通させた方が効率が良い…」

商人「そうだね」

女海賊「ちょっと行って来る…食事来るまで待ってて」

盗賊「あんま騒ぎ起こすなよ?」


----------------


女海賊「ねぇ…あんたの使ってるリュート…私にちょっと細工させてくんない?」

吟遊詩人「え…このリュートは私の大切な物でして…」

女海賊「見て…この剣の装飾はミスリル銀で出来てるんだ…この装飾をそのリュートに付けさせて欲しい」

吟遊詩人「あなたは一体誰なんですか?」

女海賊「私はドワーフの細工師だよ…そのリュートをエンチャントしたい」

吟遊詩人「なにかリュートに効果が付くんですか?」

女海賊「鎮魂の効果が付くよ…タダでやったげる」

吟遊詩人「はぁ…ですが今は演奏が…」

女海賊「5分で終わる…貸して?」

吟遊詩人「壊さないで下さいね?」

女海賊「うん…見てて?」


トンテンカン トンテンカン


女海賊「はい!終わり…装飾が付いて恰好良くなったでしょ?」

吟遊詩人「ありがとうございます」

女海賊「音が鳴る木の部分に細工してあるから…ちょっと音変わってるかも…鳴らしてみて?」

吟遊詩人「はい…」


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「余韻が出る様になりましたね?」

女海賊「おっけ!じゃんじゃん演奏して」


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721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:26:16.92 ID:V1qeujs60
ローグ「あねさん!!食事来てるっす」

盗賊「お前も早く座って食え…久しぶりの御馳走だ」

女海賊「あんた達は気楽で良いねぇ…こっちぁ魔王の影と戦ってんのにさ!」

盗賊「たまには休め!」モグ

商人「リュートの音変わったかい?」

女海賊「んーあんま分かんないな」

商人「効果は本当に少しづつなんだろうね?…魔槍を抜いても効果が実感無いのと同じかな」


ガヤガヤ ガヤガヤ

あの不愉快なリュートなんとかならんのか

あまり騒がないで下さいな

どいつもこいつも…むむむ

お店を変えましょうか?

当たり前だ!私は病み上がりで…

ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「あぁぁ食った食ったぁ…ちと酒注文してくるわ」

女海賊「私も何か持って来て!剣士の分も…」

盗賊「おぅ待ってろ…よっこら」ヨタヨタ

商人「盗賊は飲みすぎじゃない?」

情報屋「気にしないで?飲んだ時の方がしっかりしてるから」

商人「そうなの?千鳥足じゃないかハハ」


??「…」ドン

盗賊「ぬぁ!!何すんだてめぇ…」ガシ

??「ぶつかって来ておいてその言い分ですか…手を放しなさい」

盗賊「何言ってんだてめぇ…俺の懐から物盗っただろ」ギュゥゥ チャリン チャリン

??「衛兵!!私の持ち物を盗もうとした者が居ます!!助けて下さい」

盗賊「何だとおぉ!!ゴラてめぇ…外に出ろ」グイ

??「良いでしょう…」


商人「良いのかい?放って置いて…」

女海賊「未来?落ちた金貨拾っておいて?」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「ローグ!仲裁してきて」

ローグ「面倒な事になりやしたねぇ…」フラリ
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