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勇者「魔王は一体どこにいる?」続編

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471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:34:54.14 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


盗賊「勇者と女エルフは先行してゾンビ倒しながら行ってる様だな」

商人「この速度だとやっぱり5日程掛かっちゃうね」

盗賊「仕方あるめぇ…置いて行く訳に逝かんしドラゴンも少し羽休めが必要だ」

女海賊「最高速だと2日掛かんないと思うんだけどね」

盗賊「ドラゴンが休んでいる間は俺らが守らんとイカンから少し寝て置け」

商人「うん…そうする…随分寝ていないよ」ふぁ〜あ

盗賊「女海賊…お前も少し休め」

女海賊「私は良い…やる事ある」

盗賊「なんだお前?目がギラついてんぞ?勇者と仲直りしてないのか?」

女海賊「うっさいな!!爆弾作るんだよ!!…それと大砲の弾もね」

盗賊「お?あのちっこい大砲か?ありゃ使い物になるんか?」

女海賊「なるんか?じゃ無ぇ!!使うんだ…そうだホムちゃんこの砲身に何て書いてるのか読んで?」

ホムンルクス「はい…デリンジャーと書かれています」

女海賊「形状からして4連装デリンジャーかな…大砲を4発撃てる」

盗賊「お前にピッタリな武器だ…さぁてほんじゃ俺は寝る…飛空艇の操縦は任せた」

女海賊「ホムちゃん操縦出来るよね?私はちっと細工してるから頼んだよ」

ホムンルクス「はい…お任せください」

女海賊「ぉぅぇぇぇ」ゲロゲロ
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:35:24.46 ID:whSJU1gn0
ホムンルクス「お体平気ですか?」

女海賊「あー気にしないで私の奴隷4号が全部食べるから…ハァハァ」

ホムンルクス「サンドワーム…ですか」

女海賊「何でも喜んで食べるから…あんたの排泄物もあげたら?喜んで食べるよ?」

ホムンルクス「はい…次からそうさせていただきます」

女海賊「こいつさぁ見かけによらずすっごいキレイ好きなんだよ…肌のカサカサも綺麗に食べるよ」

ホムンルクス「サンドワームは土壌の改善の他に毒の中和もしているそうです」

女海賊「むむ!!毒の中和…こいつにゾンビ食わしたらどうなるんだろう?」

ホムンルクス「中和されて土に還るのかもしれませんね」

女海賊「…そうか…それで活発に動いてるんだ」

ホムンルクス「何かお考えでもあるのですか?」

女海賊「まぁね…シャ・バクダ遺跡に大きなカタコンベがあってね…中にいっぱい死体があるんだ」

ホムンルクス「それをサンドワームに与えるのですね?」

女海賊「うん…放っておくと又魔王の餌になっちゃいそうだし…て待てよ?」


---200年前の勇者が魔王になってどこかに落ちて行った---

---どこに行ったのか?---

---なんか嫌な予感がするなぁ---

---あの死体が全部ゾンビになったとしたら---

---ゾンビは散らばった魔王の欠片?---

---魔王はどこかに集まろうとしてるんじゃないかな?---

---そういえば勇者の像は何かに掴まりかけてた---

---ゾンビの手だったのかも---


ホムンルクス「どうかされましたか?」

女海賊「ううん何でもない…」
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:35:50.38 ID:whSJU1gn0
『大きな岩の上』


盗賊「よし…ここならゾンビは上がって来ねぇ」

商人「勇者と女エルフも少し休んで」

勇者「うん…ドラゴンと一緒に少し休ませてもらう」

盗賊「俺が見張っててやる…しっかり休め」

勇者「女海賊は?」

盗賊「あいつは何か作り物してるぞ?呼んでくるか?」

勇者「お願い…少し一緒に居たいんだ」

盗賊「ちょっと待ってろ…おーい女海賊!!お前の奴隷が呼んでるぞ」

女海賊「んあ?あぁぁ今行く」ゲッソリ

盗賊「お前…ヘロヘロじゃねぇか!!」

女海賊「鉄の細工は力使うからさぁ…イテテ」ヨタヨタ

盗賊「お前もちっと休め…勇者が呼んでるぞ」

女海賊「…うん」

勇者「こっちおいでよ…君も休んだら?一緒に居てほしいんだ」

女海賊「…うん」ヨッコラ セ

勇者「何作ってるの?」

女海賊「大砲の弾と火薬」

勇者「それだけじゃ無いよね?」

女海賊「お守りだよ…ほらあんたにあげる」ポイ

勇者「これは?タグ?」

女海賊「そう…持ち主の名前が書いてる」

勇者「ハハ君の名前が書いてあるじゃない」

女海賊「文句あんの?」

勇者「ありがとう…貰っておくよ…じゃ僕からも」ファサ

女海賊「これはあんたの母さんの形見じゃないの?こんなのもらえないよ」

勇者「背中に剣を背負ってると邪魔なんだ…とても戦いにくい」

女海賊「…じゃ預かっておく」

勇者「あったかいよ?羽織ってごらん?」

女海賊「知ってるさ…何回もこれに包まって暖を取った」


---そうだね暖かかった---
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:36:16.91 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


ビョーーーウ バサバサ


盗賊「砂嵐を抜けたらそろそろフィン・イッシュ領だ…城が見えて来ても良い筈だが…」

商人「砂で遠くまで見通せないよ」

盗賊「ドラゴンが高度を下げているな」

女海賊「おっけ追従する」

商人「正面…煙が上がっている」

盗賊「それだな…生き残ってる奴が居るってこった」

商人「ドラゴンが火を吹き始めた…あそこの下に多分敵が居る」

盗賊「女海賊!ドラゴン追い越して煙の方に向かえ」

女海賊「やってる!!」

商人「これ…下に居るのは全部ゾンビか?」

盗賊「人間だけじゃ無さそうだぜ?鳥がこっちに向かって飛んできてる…女海賊!!お前も戦う準備しろ」

女海賊「分かってるよ!!ホムちゃん操縦お願い」

ホムンルクス「はい…お任せください」


ゾンビ鴉「ギャァ ギャァ」バシ バシ


盗賊「飛空艇に体当たりかよ…中に入って来る奴だけ倒せ」

女海賊「いでよ私の奴隷4号!!」ボトリ

サンドワーム「…」モソモソ

女海賊「餌の時間だよ…カラス全部食っちまいな!!」

商人「敵が多すぎる…これじゃ着陸出来ない」

盗賊「こりゃしばらく上空で旋回だ…ドラゴンのブレスが一番効いていそうだ」

女海賊「ホムちゃん煙の上で旋回してて…カラスは私らが処理するから」

ホムンルクス「はい…」
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:36:44.59 ID:whSJU1gn0
『ドラゴンの背』


バッサ バッサ ビューーー


勇者(女エルフ!!風魔法を僕に合わせて!!ボルケーノで焼く)

女エルフ(合体魔法!?)

勇者(その方が早い…いくよ!!火炎魔法!)ゴゥ

女エルフ(竜巻魔法!)ビュゥゥ


ゴゴゴゴゴ ボゥ


勇者(その調子!!あとは風魔法でボルケーノの行先コントロール)

女エルフ(うん…)

勇者(続いて行くよ!!火炎魔法!)ゴゥ

女エルフ(竜巻魔法!)ビュゥゥ


ゴゴゴゴゴ ボゥ
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:37:10.63 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


ビュゥゥ バサバサ


ホムンルクス「火柱が立ち上がっています…回避します」

盗賊「あの2人はすげぇ火力だな…そこらじゅうで火柱立ち上がってんじゃねぇか…巻き込まれんなよ?」

商人「あそこにゾンビの塊が居る…なんだあれは?ゾンビは合体するのか?」

盗賊「数百のゾンビで人型になろうとしてるな」

女海賊「こっちも爆弾落としていくよ!!真上を飛んで」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「ウラン結晶混ぜてる新型爆弾だから出来るだけ離れて!!落とすよ」ポイ

盗賊「そんなにヤバイ爆弾か?」

女海賊「今までの100倍はヤバイ」


ピカーー チュドーーン


盗賊「うおぉぉぉぉマジか…お前そんなもん作ってたんか」

商人「ゾンビの塊が消し飛んだ…」

女海賊「よし!!実験成功!!…次はボウガンで狙ってみる」ギリリ

盗賊「今の爆発でカラスが一斉に飛んだ…」

女海賊「まとめてやっつけてやる!!カラスに突っ込んで…最高速で!!」

ホムンルクス「はい…」


ギャァ ギャァ バシ バシ


盗賊「追いかけて来る」

女海賊「大丈夫…こっちのが早い…旋回してカラスを纏めて」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「撃つよ…」バシュ


3…2…1 ピカーー チュドーーン





---------------


女海賊「女エルフがなにか合図してる」

盗賊「付いて来いって事だな…」

女海賊「あの建物の上に降りろって事かな?…ホムちゃん私が操縦する」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「降ろすよ…」フワフワ ドッスン

女エルフ「魔方陣のペンダントまだある?ハァハァ」

女海賊「あるよ…ほい」ポイ

女エルフ「これがあればドラゴンはレイスを気にしなくて良いの」

商人「なるほど…ゾンビ退治はドラゴンに任せるって言うんだね?」

女エルフ「そう…すぐ戻るからここで待ってて」タッタッタ
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:38:04.76 ID:whSJU1gn0

『軍国フィン・イッシュ』



盗賊「そこら中に銀の武器が落ちてる…拾って来たぜ」ポイ

商人「僕にも?」パス

盗賊「一応な…ホムンルクスの分もある」ポイ

ホムンルクス「私は武器を使ったことがありません」パス

盗賊「一応持って置け」

女海賊「勇者と女エルフが戻って来たよ」

勇者「みんな無事?」

盗賊「見ての通りよ…」

勇者「城の方はもう誰も居なさそうだよ」

盗賊「その様だな…あの煙は墓地の方からだ…多分地下墓地に逃げ込んでるな」

商人「地下墓地なんか合ったのか…狭間の外に出てる可能性があるね」

盗賊「そうだと良いがこの状況じゃ補給も何も無いだろう…期待できんな」

勇者「とにかくそっちの方に行ってみよう…僕が先頭を行く」

女エルフ「私が最後に行くからみんな付いて行って」
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:38:35.51 ID:whSJU1gn0
『地下墓地』


勇者「狼煙になって居るのは死体だ」

女海賊「この地下墓地の入り口は鍵掛かってるのかな?」

盗賊「見て来る」

商人「屍の山だ…」

盗賊「この鉄柵は鍵が開いてる…ただのゾンビ侵入防止だな」

勇者「入ろうか」スタスタ


ピチョン ピチョン


盗賊「地下墓地の死体は全部掘り起こされてんな…全部処理したか」

商人「それはそうだろうね…どんどんゾンビが湧いて来るんだから」

勇者「足元見て…魔方陣だ」

盗賊「やっぱりここで耐え忍んだ様だ」

商人「この深さだと狭間の外に出ていない…もっと下に降りないと」

勇者「まだ奥に続いて居るよ…」

女海賊「見て…階段がある…下に行けそう」

ホムンルクス「皆さん…私の生体が病気に掛かった様です」

女海賊「え?今?」

ホムンルクス「未知のウイルスに感染しています私には抗体がありません」

商人「まさか…魔王の欠片?」

ホムンルクス「分かりません…私は怪我などはしていませんから飛沫感染の可能性が高いです」

盗賊「ゾンビだな…ゾンビの血はそこら中にこびり付いている」

商人「つまり僕たち全員感染している可能性が高いね」

ホムンルクス「ウイルス増殖の速さから計算して発病まで1週間程度と思われます」

商人「次から次へと色々起こるなぁ」

ホムンルクス「私の生体でウイルスの調査を続けておきます」

勇者「先に進もうか」
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:39:07.11 ID:whSJU1gn0
『地下墓地_下層』


勇者「この下で人の気配がする」

盗賊「本当か!?お〜い誰かいるかぁぁぁ?」


ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…」


盗賊「またゾンビか!!この!!」ダダダ

勇者「待って!!このゾンビは襲って来ない」

盗賊「何ぃ!?」

女海賊「何か話してる…」


ゾンビ「ヴヴヴた…すけ…に…来たの…か?ヴヴヴヴ」


勇者「意識がある!!助けに来たんだ…回復魔法!」ボワー

ゾンビ「遅かっ…た…奥に…皇子が居るヴヴヴヴ」

勇者「女エルフ!!ここに居る人みんなに回復魔法を!!」

女エルフ「うん…」


回復魔法!回復魔法!回復魔法!


商人「これは生きている人がゾンビ化しているんだ…どうにか止めないと」

盗賊「この死体は痛みが酷い…共食いの痕だ…こりゃひでぇ環境だ」

ゾンビ「生きた…血肉でゾンビ化が…止まる」

盗賊「意識の在る奴はどのくらい残って居る?」

ゾンビ「十人…足らず」

盗賊「くあぁぁ壊滅だ…女海賊!!飛空艇に10人乗せられるか?」

女海賊「高度上げなきゃ行ける」

盗賊「よし…全員連れて行ってやる」

女海賊「ねぇ…そこの死体をサンドワームに食べさせても良い?」

盗賊「こんな時に何言ってやがる…」

女海賊「生きた血肉…サンドワームの血なら飲ませてあげられるかも」

ホムンルクス「それは良い案ですね…サンドワームはゾンビを食べても平気…つまり抗体を持っています」

盗賊「マジか…」

女海賊「いでよ私の奴隷4号!!」ボトリ

サンドワーム「…」モソモソ

女海賊「あんたの血ぃちょっともらうよ」グサリ

サンドワーム「プギャァ」ビクビク

女海賊「この血を皆に飲ませてあげて」

盗賊「お、おう」
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:39:36.89 ID:whSJU1gn0
『奥の部屋』


ヴヴヴヴヴヴヴ ガチャン ガチャン


商人「…この椅子に繋がれているのが皇子か?」

皇子「ヴヴヴヴヴヴヴヴ」 ガチャン ガチャン

盗賊「だめだ…こいつはもう意識が無ぇ」

女海賊「アサシン?ねぇ…あんたアサシンじゃないの?」

盗賊「何ぃ!!」ダダ

アサシン「ヴヴヴヴ…や…っと」

女海賊「勇者!!アサシンが居た!!回復魔法を!!」

アサシン「お…そか…ったな」

盗賊「ひでぇやられ様だな…戦闘の傷が癒えて無ぇ」

勇者「回復魔法!」ボワー

アサシン「やはり…お前が勇…者か…げふっ」

勇者「…」コクリ

アサシン「精霊…は…どうした?」

商人「ホムンルクスおいで」

ホムンルクス「はい…」

アサシン「器を…見つけたのだ…な?…げふっげふっ」

商人「アサシン…状態が良くない様だね」

盗賊「無理してしゃべるな」

アサシン「私は…もうダメ…だ…気にする…な」

盗賊「商人!?お前ドラゴンの涙持っていたな?飲ませろ…死は回避できる」

商人「はっ…そうだった…アサシンこれを食べて」グイ

アサシン「むぐ…ドラゴンの…涙か…私はまだ[ピーーー]…ないのだな」

盗賊「勇者…お前は蘇生魔法は出来ないのか?」

勇者「ゾンビに蘇生魔法は…」

盗賊「そうか…自然回復を待つしか無いか」

女海賊「サンドワームの血を持ってきた…これ飲んで?」グイ

アサシン「むぐ…むぐ…むぅぅぅ生きた血…か」

盗賊「気分はどうだ?」

アサシン「最悪だ…クックック」



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481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:40:04.04 ID:whSJU1gn0
そこで椅子に繋がれている男が誰だか分かるか?

セントラルの第2皇子…正体はエルフの男だが彼も精霊の導きを知る勇者の一人だ

エルフの誇り故に…人の血肉をすすりゾンビ化を止める事を最後まで拒んだ…成れの果てだ

私は彼に話を聞き…セントラルで起こった魔王復活の真相を聞いた

そして彼も私と志を同じくする同志であった事もな

彼は父であるセントラル国王の命によりエルフから祈りの指輪を奪い破壊する予定だった

しかし破壊に必要なもう一つの祈りの指輪をセントラル国王は持ってなど居なかった…騙されたのだ

そして魔王復活の悲劇が起きた…お前たちの知っての通りだ

しかしまだ完全に復活はしていない…魔王にも又…その魂を入れる器が必要なのだ

魔王は死者の体を器として渡り歩き未だ彷徨っている…自らの魂を入れる器を探してな



勇者「それで魔王軍と名乗り…僕たちをここに呼んだ」

アサシン「そうだ…しかし100日待ってもお前たちは現れず…闇も祓われなかった」

盗賊「実はなアサシン…100日というのは狭間の外での事らしい」

アサシン「クックック私は気付くのが遅すぎた様だ…狭間の外では今どれくらい時間が経ったのだ?」

盗賊「正直分から無ぇ…狭間を出入りしているから何日経ったのかもう分からなくなっている」

アサシン「ここではもう1年程か…見ての通り全滅だ…帰還する体力も残って居なかった所だ」

盗賊「あぁ…連れて帰ってやる」

アサシン「そして…精霊の魂はどうなったのだ?精霊は闇を祓えんのか?」

商人「夢幻の精霊はすでに200年前に死んで居たよ…居なかったというオチさ」

ホムンルクス「私は超高度AI搭載の環境保全用ロボットです…私は人間の住まう環境を良くする事ができます」

アサシン「精霊では無いのか?」

商人「半人前の精霊…と言った所か」

アサシン「クックック…それでは私は勇者を[ピーーー]しか無いでは無いか!!何の為に今まで戦って来たのか…」

盗賊「まぁ落ち着けアサシン…ひとまずシャ・バクダに帰るぞ」グイ

勇者「僕はアサシンと二人で話がしたい…みんなは他の人を連れて飛空艇に行って」

アサシン「…」

盗賊「あぁ…じゃぁアサシンはお前が運んでくれ」

女海賊「勇者?…」

勇者「大丈夫…大丈夫だからみんな他の人を運んで?」

盗賊「わかった…おい!女海賊…お前も手伝え」

女海賊「…わかってんよフン!」


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482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:40:35.42 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


商人「勇者とアサシン遅いね…」

盗賊「アサシンのあの様子じゃまだ動けんだろうが…心配だな」

女エルフ「戻って来る…ほら?」

商人「本当だ…勇者がアサシン背負ってる」

盗賊「和解したか…」

女海賊「勇者!!」タッタッタ

勇者「ごめん遅くなった」

女海賊「あんた平気?」

勇者「大丈夫だよ」

アサシン「すまんな…世話を掛けて」

勇者「女エルフ!!僕はドラゴンに乗って戦うから君は飛空艇でみんなの回復に回って」

女エルフ「うん…丁度良かった…矢も無くなってきたし」

勇者「よっこらせと…この人数乗って飛べそう?」

女海賊「あんまり高度上がんないけど大丈夫だと思う」

盗賊「うっし…じゃぁ戻るぞ!!」


フワフワ バサバサ
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:41:42.65 ID:whSJU1gn0
女海賊「アサシン!!勇者と何話したのさ?」

アサシン「クックック未来の話を少しな…」

女海賊「どんな未来なのさ…もう私はあんたの助手なんかやんないかんね」

アサシン「その心配は要らない…もう盗賊ギルドは解散だ」

盗賊「星の観測所は今ドラゴンの義勇団って事になってるんだけどよ…お前どうするつもりだ?」

アサシン「あそこの名義は女戦士のままだ…彼女に任せる」

盗賊「お前はしばらく引退だな?その体じゃ無理もあるまいが」

アサシン「そうだな…心底疲れた…もう殺しは懲り懲りだ」

盗賊「フィン・イッシュの戦いはそんなに酷かったのか?」

アサシン「あぁ…始めは人の裏切りから始まった…恐らく魔王の影響なのだろう」

盗賊「あの国は30万は人が居た筈だな…それが全滅とは想像出来ん」

アサシン「裏切りにゾンビ化の病…まさに地獄だ」

盗賊「フィン・イッシュの王女がオアシスに逃れてまだ生きている…お前が逃したとか?」

アサシン「そうか…生き延びたか…まだ復興の芽は残されていたか」

盗賊「まだ分かん無ぇ事が…魔王は一体どこにいる?」

アサシン「クックック分からんのか?私にもお前にも…すべての人間の中に潜んでいる…器を求めて彷徨っているのだ」

商人「ええ?それじゃ手の打ちようがない…」

アサシン「ではお前たちはこれから何処に向かおうとしているのだ?」

商人「シャ・バクダだ…魔王はそこに集まろうとしている?」

アサシン「勇者に導かれて居る事が分からんのか?魔王と勇者は表裏一体…勇者の元へ魔王は来る」

女海賊「もうやめて!!そんな話もう聞きたくない!!」

アサシン「そうだな…私も疲れた…もう止めよう…しかしお前たちは魔女から何も聞かされていないのだな?」

女海賊「魔女が何よ!?何か知っているの?」

アサシン「魔女はこうなる事をはじめから予見している…それを変えるのが精霊を呼び覚ます事だった」

商人「どういう事?」

アサシン「精霊だけが魔王を封じる術を知っていた…居ないとなってはこの世は滅びの一途」

商人「ホムンルクス…君は何か分からないのかい?」

ホムンルクス「はい…ウイルスに対抗するにはワクチンが必要です…つまりそういう事だと思われます」

商人「ワクチン?」

ホムンルクス「ゾンビ化の病に対するワクチンは恐らくサンドワームの抗体で得る事が出来ると思います」

ホムンルクス「それと同じように魔王化に対するワクチンは先の精霊が解析済みであった可能性は少しながらあります」

商人「君は解析できないのかい?」

ホムンルクス「私は魔王化を体験した事がありませんから…」

商人「体験…まさか200年前の勇者の体験を精霊が取得したと?」

ホムンルクス「解析は数秒で終わります…可能性はあります」

アサシン「商人…お前は夢幻の記憶を忘れたのか?」

商人「え?夢幻…そうだ思い出せない」

アサシン「お前は夢幻の中で薬剤師と名乗る者と最後までワクチンを研究していた筈だ…私もそこに居た」

商人「記憶が…無い」
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:42:22.91 ID:whSJU1gn0
アサシン「精霊からの導きに気付かんとはなクックック」

商人「大事な事を忘れてしまっている…導きだったのかさえ…わからない」

盗賊「魔槍を抜くときに勇者が言ってたな?夢幻の記憶を失うってよ…でもなんでアサシンは覚えてるんだ?」

アサシン「クックックこれを見ろ」バサ

商人「手記…記憶を全部まとめているの?」

アサシン「私の夢の話なぞ人に見せる物では無いと思っていたが…やはり恥ずかしいものだクックック」

商人「見せてもらって良い?」

アサシン「笑うなよ…」



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ビョーーーーウ バサバサ


女海賊「…」

女エルフ「女海賊?平気?顔色良くないけれど…」

女海賊「なにさ…わたしは平気」

女エルフ「想いつめてる顔…」

女海賊「フン!!あんたに勇者は渡さないんだかんね!!」

女エルフ「大丈夫…私が守ってあげる」

女海賊「あんたさぁ!!…あんたのそういう所がムカつくんだよ…人の心に勝手に入って来ないで!!」

女エルフ「ごめんなさい…でもあなたを放って置行けなくてつい…」

女海賊「んんもう!!ほんで?」

女エルフ「あなたのお腹の中…」

女海賊「あんたに関係無いでしょ!!」

女エルフ「触っても良い?」

女海賊「勝手にしたら?」

女エルフ「ウフフ…」サワサワ

女海賊「むぐぐ…くすぐったいって!!」モゾモゾ

女エルフ「良いなぁ…」

女海賊「あんたぁ!!勇者とヤった?」

女エルフ「私と勇者はそういう関係じゃ無いの」

女海賊「ヤったって言ったら突き落とそうと思ってた」

女エルフ「良かった元気そうで…」

女海賊「はぁ?なんか腹立つなぁ…あんたが美人すぎるから思わず見とれちゃうんだ…ふん!」

女エルフ「赤ちゃん…大切にしてね?」

女海賊「あんたに言われなくても分かってるさ…」

女エルフ「ウフフ」

女海賊「でも…ありがとう」



ビョーーーーーウ バサバサ
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:42:52.79 ID:whSJU1gn0
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盗賊「…まぁ飲め」

アサシン「…」グビ

盗賊「旨いか?…他の兵士たちも飲め!!」

アサシン「何処のワインだ?」

盗賊「シン・リーン産だ…まぁ水の代わりに積んでる」

アサシン「人類の英知の味か…滅ぶ間際に飲む酒も悪くない」グビ

盗賊「そう言うな…生き残り掛けてんだ」

アサシン「私は魔王の闇を甘く見過ぎて居た…調和の時…良く言ったものだ」

盗賊「大昔の奴らはよ…こんな状況でも生き抜いてきたんだろ?…今度も生き抜くぞ」

アサシン「ドラゴンに乗って戦う勇者の姿を見て確かに希望に見える…私達とは別の次元で戦っているのが良く分かる」

盗賊「あぁ俺達じゃどうする事も出来無ぇな」

アサシン「セントラルでドラゴンライダーを見た時…私は心底絶望した…自分の無力さにな」

盗賊「でもここまで生き残ってんだ…希望を見失うな」

アサシン「クックック私よりお前の方が指導者向きなのかも知れんな」

盗賊「俺ぁよ…女盗賊が残した子供達を守っていかなきゃなんねぇ…見捨てる訳にいか無ぇんだ」

アサシン「私の妹か…思えば私は妹を失って同時に…自分が生きる意味も失った気がする」

盗賊「シン・リーンの港町によ…アイツの墓作ったんだ」

アサシン「そうか…行ってやらねばならんな」

盗賊「太陽が出てればスゲー景色の良いアイツのお気に入りの場所なんだ」

アサシン「太陽…か…俺の体はもう不死者だが…太陽の下に出れると思うか?」

盗賊「それは祈りの指輪でなんとかしろやい」

アサシン「そうだ…祈りの指輪はどうした?どこにある?」

盗賊「魔女だ…魔女が持っている」

アサシン「では魔女がこちらに来るまで何も起きんという事だな」

盗賊「んん?どういう事だ?お前まだ何か隠しているな?」

アサシン「さぁな?来てからのお楽しみだ」



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486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:43:18.28 ID:whSJU1gn0
『大きな岩の上』


盗賊「ここで一旦休憩だ…女海賊!勇者の所に行ってやれ」

女海賊「言われなくても分かってんよ…」タッタッタ

盗賊「商人!まだアサシンの手記読んでるのか?」

商人「うん…夢の記録だけじゃないんだ…亡くなった塔の魔女とのやり取りも書いてあってさ」

盗賊「何か分かった事あるのか?」

商人「精霊が生き続けて来た目的…未来へのメッセージを塔の魔女は受け取っている」

アサシン「お前たちは魔女から聞いて居ないのか?精霊の一部を魔女が持っている事を」

商人「え!?精霊の一部?」

女エルフ「…もしかして」

商人「何か知ってるの?」

女エルフ「亡くなった魔女様を埋葬するときに小さな石の様な物を一緒に埋葬したの」

商人「小さな石…」

女エルフ「魔女様が大切に身に着けていた石だとか…」

商人「それだ…それが外部メモリだ!!」

盗賊「んん?ホムンルクスに足りないって奴か?」

商人「それに精霊の記憶が入っている筈だ!!…まだ世界を救う手が残って居る!!」


商人「魔女!!見ているんだろ!!墓の中から小さな石を持って来てくれ!!」スック


盗賊「おい…どこに向かって話しているんだ?」

商人「魔女は千里眼で常に僕たちの事を見ている…だから通じる」

盗賊「話ている事は聞こえて居ないだろう」

商人「紙とペンだ…文字にして伝える」

盗賊「ペンか…ほれ」ポイ

商人「そうさ…精霊の記憶があれば何とか出来る」カキカキ

アサシン「これは何か起きるな…」グビ

商人「僕はこのメモを見続けておく…魔女がいつ見ても分かるように」ジー
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:43:45.84 ID:whSJU1gn0
『シャ・バクダ遺跡上空』



盗賊「こりゃ良く無ぇ…なんでオアシスまでゾンビが入り込んでいやがる」

女エルフ「私もドラゴンに乗って戦う!!ドラゴンに寄せて!!」

女海賊「交差させるよ!!ドラゴンに飛び乗って…3…2…1…今!!」

女エルフ「ありがとう!!」ピョン

商人「遺跡のカタコンベだよきっと…そこから湧いて来てる」

アサシン「クックック…フィン・イッシュの二の舞だな」

盗賊「黙ってろい!!クソがぁまともに戦えるのは勇者と女エルフしか居ないってのに」

女海賊「見て!!星の観測所に私のパパの気球!!」

盗賊「おぉ!!女戦士が戻ってんのか…そりゃ良い!!」

商人「魔女も来てる筈…早く行こう!!」
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:44:22.28 ID:whSJU1gn0
『星の観測所』


フワフワ ドッスン


魔女「やっと戻って来おったか…待って居ったぞよ?」

盗賊「助かるぜ…ちとまずい状況だ…とりあえずアサシン達を観測所に運ぶ」

女海賊「…」ツカツカ


パァァァァン!!


盗賊「うぉ!!お前…魔女に何て事すんだ!!おい!!」

魔女「…」

女海賊「指輪よこしな!!」

魔女「済まなんだのぅ…黙っておって…ほれ」

女海賊「ほら…飛空艇から降りる人はさっさと降りて!!ホムちゃんも」

ホムンルクス「はい…」

女海賊「お姉ぇ!!それからローグも私の飛空艇に乗って!!戦うよ!!」

女戦士「お前…」

ローグ「あねさん…」

女海賊「私が指揮る!!勇者を援護する」

アサシン「俺も少しは戦える…連れていけ」

女海賊「ほら!!早く乗った!!」

女戦士「フフ…」ツカツカ

ローグ「分かったでやんす…あっしらは弓で援護っすね?」

女海賊「やれる事全部ヤレ!!行くぞ!!」


フワリ シュゴーーーー


魔女「行ってしもうたか…すべてを話す時が来たと思うたんじゃがの…言いそびれてしもうた」

商人「もう分かってると思うよ…それより外部メモリは持って来てくれた?」

魔女「持ってきたぞよ?師匠が大事にしていた物じゃったが…主は良く気付いてくれた…この中に精霊の記憶があるのじゃな?」

商人「多分…そうだよ貸して」

魔女「ほれ…」

商人「ホムンルクス…これで間違いない?」

ホムンルクス「その石は二つに分かれる様ですね…中に外部メモリが入って居ませんか?」

商人「え?こう?」スポ

ホムンルクス「はい…私の耳の後ろのソケットにそれを挿して下さい」

商人「…」グイ

ホムンルクス「メモリが挿入されました…40年分の精霊の記憶が記録されています」

魔女「おぉぉ…精霊がこれで蘇ったのじゃな?」

ホムンルクス「基幹プログラムが失われているので完全とは言えませんが記憶から再構築する事は可能です」

商人「分かる事は?」

ホムンルクス「沢山ありますが大事な事からお伝えします」

489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:45:00.27 ID:whSJU1gn0
魔王に対するワクチンは未完成ですが抗体を持った種族が判明しています

それはドワーフの血液です

ドワーフは憎悪に心を侵されない事が分かっており

勇者を保護する立場としてかねてから勇者の傍に居る種族でした

ドワーフの血液を魔王に与える事で魔王の体内で抗体作用が働き縮小する可能性が80%

次に闇の祓い方に関して

魔王が狭間に居る間は闇が去る事はありません

唯一の方法として魔王を黄泉に送る必要があります


商人「…つまり勇者が指輪を使って散らばった魔王の魂を集め…魔王となった後に倒すという事だね?」

ホムンルクス「現状それ以外に方法はありません」

商人「ドワーフの血は…ドワーフの血はどうやって魔王に与える?」

ホムンルクス「それは精霊の記憶の中にはありません…私たちが考える事です」

商人「くそぅ!!!歴史を繰り返すしか無いのか!!」

ホムンルクス「それからもう一つお伝えしなければならない大事な事があります」

商人「なに?」

ホムンルクス「精霊が生きた理由です」

商人「言って」

ホムンルクス「精霊は…」


シュン ザク


盗賊「うぉ!!何で弓が飛んで来るんだ…おい!!ドワーフの気球に乗れ!!ここは危ねぇ!!」グイ

商人「ホムンルクス大丈夫?」

ホムンルクス「生体の背中に損傷…死には至りません」

盗賊「魔女も危ねぇ…気球に乗ってくれ!!」

魔女「すまぬ…千里眼で女エルフの目を見て居った」ノソノソ

盗賊「良いから急げ!!」グイ

商人「ホムンルクス…こっち」グイ

盗賊「飛ばすぞ!!ちと外の状況見て教えてくれい!!」


フワフワ 


商人「リザードマンだ…武器を持ってる」

魔女「それだけでは無い…トロールも動いておる…何が起こるのじゃ?」


シュンシュンシュン ストストスト


盗賊「ぬああああぁぁ!!魔女!!魔法で応射してくれ球皮に矢が当たったら飛べなくなる!!」

魔女「承知した…爆炎魔法!」ゴゴゴゴゴゴ ドーン

盗賊「サンドワームも暴れてんじゃ無ぇか…どうなってんだこりゃ!!」

商人「南西のオアシス方面!!気球が動いてる」

盗賊「あっちも緊急事態だな…気球の向き変える!!商人…お前も手伝え…そこのレバー回せ!!」

商人「う、うん…こうだね?」グルグル

盗賊「くそぅ…高度上がんねぇ…球皮に穴空いてんな!!?」

魔女「わらわはこれくらいの高さが魔法を撃ちやすいのじゃ…爆炎魔法!」ゴゴゴゴゴゴ ドーン

盗賊「一旦南西の軍と合流目指す」
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:45:28.66 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女戦士「お前…魔女にあんな事して良かったのか?」

女海賊「フン!!あんな女!!知らない!!」プン

女戦士「何故そのように怒っている?」

女海賊「魔女は勇者が魔王になる事を知っていて私たちに話さなかった…精霊の事も知ってて教えなかった」

女戦士「言えなかったのでは無いか?」

女海賊「ちゃんと教えてって言ったさ…悲しゅうなるから時が来たら…とか言って」

女戦士「私は話の前後が分からんのだが…勇者が魔王になると言うのは本当なのか?」

女海賊「お姉ぇはシャ・バクダ遺跡の勇者の像を見たよね?」

女戦士「あぁ…アレか」

女海賊「なら分かってんじゃん!!」

女戦士「ならなお更お前には話せなかったのだろう…お前には」

女海賊「勇者の定め…そんなもん私がぶっ壊してやる」ギリリ

女戦士「早まるなよ?」

女海賊「言われなくても分かってんよ…」

ローグ「正面!!ゾンビが集まってるっす」

女戦士「む!!あのゾンビ共は固まろうとして居るのか?」

女海賊「そうだよ…集まって人の形になる」

ローグ「あっちでもトロールが暴れているっす」

女戦士「これでは人間の軍隊は手も出せん」

女海賊「トロールは私らの敵じゃないよ…森を守ろうとしているだけ」

女戦士「どうする?ドラゴンライダーに任せておいて良いのか?」

女海賊「私が作った爆弾で吹っ飛ばす!!魔王の欠片なんか知るもんか!!」

女戦士「…これだな?…随分沢山作ったな」

女海賊「私が言うタイミングで爆弾落として!!…1個で良いから…3…2…1…今!!」


ピカーー チュドーーン


ローグ「やややや、やりやした…すごいっすねこの爆弾!」

女戦士「…驚いたな…この大きさであの爆発か」

女海賊「原爆弾ってんだ…ウラン結晶から作ってる」

女戦士「これで遺跡から湧いて来るゾンビを留めるのだな?」

女海賊「そう!!あのゾンビの塊は多分魔王だよ…器の無い魔王はああやって固まろうとしてる」

ローグ「それをギリギリまで防ごうって訳でやんすね?」

女海賊「まだそっちの樽の中にいっぱい作ってあるから出来るだけ食い止める」
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:45:57.10 ID:whSJU1gn0
『南西のオアシス上空』


ピカーー チュドーーン


盗賊「飛空艇の方でも戦闘が始まった様だな」

魔女「女海賊の爆弾はわらわの魔法を超えておるやも知れぬ」

商人「見て!!人間同士戦い始めてる…どうしてこうなった?」

盗賊「なにぃ!!こんな時に人間同士やってる場合じゃ…マテ…これがアサシンが言ってた裏切りか?」

商人「きっとそうだね…まずいね…僕たち魔王のまやかしの中に居るかもしれない」

盗賊「いつからまやかしの中だ?」

商人「ホムンルクス!!何か分からないか?」

ホムンルクス「はい…私には分かりませんが…私は一度もリザードマンを見ていません」

商人「そうか!!おかしい…武器を持ったリザードマンなんて初めて見た」

魔女「なんと狡猾な魔王なのじゃ…わらわはリザードマンを倒したつもりじゃったが…」

盗賊「マジかよ…ダメだ引き返す!!勇者に合流する!!」


シュンシュンシュン ストストスト


商人「うっ…」

盗賊「商人!!くっそ…」

魔女「反撃出来ぬ…」

盗賊「風魔法で気球のスピード上げてくれ!!」

魔女「風魔法!」ビュゥ

盗賊「ホムンルクス!!商人の手当て出来るか?」

ホムンルクス「はい…お任せください」

商人「僕は肩に矢を受けただけさ…君の方こそ背中から血が出てるじゃないか」

魔女「回復魔法!回復魔法!」ボワー

魔女「それで血は止まる筈じゃ…手当を続けよ」


シュンシュンシュン ストストスト


盗賊「ちぃぃぃぃ追いかけて来やがる…俺達を完全に敵だと思っていやがる」

魔女「ホムンルクスよ…これだけは言うておく…インドラの矢は絶対に使ってはならぬ…良いな?」

商人「どうして急に…」

魔女「今の状況はインドラの矢を使えばすべて無に返すことも出来るじゃろう…じゃがもう二度と同じ過ちを繰り返してはならぬ」

商人「二度と?」

魔女「滅びの始まりはインドラの矢から始まったのじゃ…師匠が精霊から聞いておったそうな」

商人「ホムンルクス!!それは本当?」

ホムンルクス「今の私は40年分の記憶しかないので分かりませんが…インドラの矢の威力からして文明を滅ぼすのは可能と思われます」

商人「切り抜けようが無いな…撤収しよう」

盗賊「それが出来りゃ良いが…この気球じゃ逃げきれん」


シュン ストン


盗賊「あっ…」

商人「ホムンルクス!!」
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:46:24.87 ID:whSJU1gn0
『シャ・バクダ遺跡』


バッサ バッサ ビュゥゥ


勇者「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

女エルフ「勇者!!キリが無い…もう矢が無いわ」

勇者「一旦補給に観測所まで戻ろう!!」

女エルフ「うん…」

勇者「こっちは飛空艇の爆弾に任せよう…」

女エルフ「観測所の方でも戦闘が起きてる」

勇者「え?そっちまで?」



”見つけたぞ我が器…”



勇者「!!?そこか魔王!!」ビュゥ ザクン



”因縁の地で会うとは滑稽”



勇者「どこだ!!」ビュゥ


”ハッハッハッハッハ…我が一部となれ”


女エルフ「勇者!!ダメ…声を聞いてはダメ」

勇者「ふぅ…ふぅ…」

女エルフ「落ち着いて…目を閉じて?…今はまだ居ない」

勇者「…」フゥ フゥ

女エルフ「補給を…」バッサ ビュゥ



---そうだ…僕は目を閉じた方が良く見える---
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:46:54.22 ID:whSJU1gn0
『星の観測所』


バッサ バッサ ビュゥ


女エルフ「様子がおかしい…どうしてみんな弓を?」

勇者「女エルフ!!危ない!!」


シュンシュンシュン ザクザクザク


ドラゴン「ギャオーース」バッサ バッサ

勇者「ダメだ!!もう安全な場所は無い!!女エルフ離れろ」

女エルフ「え!?」


シュンシュンシュン ザクザクザク


女エルフ「…ぁぁぁ」

勇者「離れろぉぉぉぉぉ!!」

女エルフ「…どうして」フラリ ヒュー ドサ

勇者「うあぁぁぁぁ…ドラゴン!!女エルフをくわえて精霊の御所まで運べ!!」

ドラゴン「ギャオーース」ガブリ バッサ バッサ

勇者(落ち着け…どれが敵だ…人間は混乱している)

勇者(ダメだ…全部敵だ…全員混乱している)

勇者(待てよ…混乱しているのは僕か?)

勇者(目を閉じて感じろ…そう)


飛空艇は遺跡の上

ドワーフの気球は南西のオアシス

人間達は混乱してそこら中で戦闘

魔王はどこだ?

くそう…これ以上消耗出来ない

みんな死んで行く

ダメだまだ分からない
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:47:24.98 ID:whSJU1gn0
『精霊の御所』


バッサ バッサ ドッスーン


勇者「女エルフ!!回復魔法!!」ボワー

女エルフ「ダメ…心臓に…矢が刺さって…るの」

勇者「今から蘇生魔法を…」

女エルフ「…もう止まってる…から…良いの」

勇者「女エルフ!!うぅぅ」;;

女エルフ「エルフは死ん…でも森の一部に…なるからいつでも…会える」

勇者「ぅぅぅ」

女エルフ「私…見える…みんな必死…で戦ってる」

勇者「うん…僕も分かるよ」

女エルフ「私は…森にな…ってみんなを守って…あげる」

勇者「うん…」

女エルフ「心配…し…ないで?」

勇者「僕は僕のやる事をやって来る!」

女エルフ「私…が…守る…から…信じて」

勇者「くぅぅぅぅぅ」;;

女エルフ「…」ガクリ


勇者「うわああああぁぁぁぁぁ!!」ドン


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勇者「ドラゴン!!来い!!魔王を退ける!!」
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:47:55.09 ID:whSJU1gn0
『ドワーフの気球』


シュンシュンシュン ストストスト


盗賊「クソがぁぁぁぁ!!」

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

商人「魔女も自分の回復を…」

魔女「わらわはまだ大丈夫じゃ…」

ホムンルクス「生体機能の維持が困難です…血液が足りません」

商人「血が…血が止まらない」

ホムンルクス「ご安心ください…私は生体機能が停止しても記憶を保存する事が出来ます」

商人「そんな…僕は君の管理者だ…停止なんか許可しない」

ホムンルクス「私の記憶のすべては外部メモリに保存しておきました…これを使えば又お会いする事ができます」

商人「魔女!!もっと回復魔法を」

魔女「分かっておる…回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

ホムンルクス「この生体は丈夫な生体ではありません…あと120秒で生体活動が停止します」

商人「ホムンルクス最後に聞きたい…君と同じ様なホムンルクスはどこかに無いか?」

ホムンルクス「精霊の記憶によりますと私以外にまだ1体残されている様です」

商人「どこにあるんだ?探して必ず君を目覚めさせる」

ホムンルクス「座標70.05722166,148.26978089です」

商人「それじゃ分かんない…盗賊!!地図はどこかに無い?」

盗賊「それどころじゃ無ぇ!!頭引っ込めてろ」

商人「ホムンルクス…座標じゃなくて大体の場所で良い…言葉で言って」

ホムンルクス「南の大陸…火山のふもとに研究施設があります」

商人「分かった…必ず探す」

ホムンルクス「又お会いできる事を楽しみにしてい…ます」

商人「ホムンルクス!!」

ホムンルクス「あなたが押さえている位置は私の心臓にあたります…私の心はそこにあるでしょうか?」

商人「あるよ…」

ホムンルクス「この生体は停止してしまうので私の心を預かっていてもらえませんか?」

商人「うん…わかった」

ホムンルクス「あと10秒で心が停止します…外部メモリをお願いします」

商人「君の心を預かった…必ず迎えに行く」

ホムンルクス「又…会う日…ま……で」

商人「…」

魔女「今際じゃ…精霊もこの様に簡単に亡くなるのじゃな」

商人「僕たちは生き延びる!!」

魔女「そうじゃ…それが人の定めじゃ」


エルフは森を守る定め

トロールは精霊を守る定め

ドワーフは勇者を守る定め

ドラゴンは命泉を守る定め

クラーケンは海を守る定め

人は愛を紡ぐ定め
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:48:22.70 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


ピカーー チュドーーン


女海賊「お姉ぇ!!その爆弾はボウガンで発射できる…やって!!」

女戦士「わかった…」ギリリ

ローグ「ゾンビの大群が触手になってここまで伸びてきそーっす!!」

女海賊「分かってる!!口動かしてないで次の爆弾用意しな!!」

女戦士「ドラゴンライダーの2人は何所に行ったのだ!!」

女海賊「あっちはあっちで大変なんだろうさ…あ!!ドラゴン!!」

女戦士「来たか…これで持ち直せる」バシュ


ピカーー チュドーーン


ローグ「ドワーフの気球もこっちに向かってるっす…あらら?何かに追いかけられてるでやんすねぇ」

女海賊「あっちは放って置いて良いから」

女戦士「そうでも無さそうだ…何か光で合図している」

女海賊「んーーもう!!回頭!!」グイ

ローグ「軍隊に追われている様でやんすねぇ?」

女戦士「なにぃ…こんな時に同士討ちか!!」

アサシン「クックック魔王のまやかしだ…フィン・イッシュはこれで壊滅したのだ」

女戦士「どうする!?手が出せん」

女海賊「そっちの樽に煙玉と閃光弾が入ってる…軍隊の上通るから全部撒いて」

ローグ「全部っすか?良ーんすか?」

女海賊「そこに置いとく飾りじゃないんだ!!使う時に使うの!!ケチケチすんな!!」

ローグ「了解でやんす〜」

女海賊「向こうの気球と交差するよ!!撒き続けて!!」

ローグ「アイサー」ポロポロ


ピカーーーー モクモクモク


女海賊「どんどん撒いてよ!!今場所変えてるから…」

女戦士「フフお前は何でも出来るな…指揮も行動も私の上を行くでは無いか」

ローグ「ドワーフの気球から魔法を撃ち始めたっす…ボルケーノっす」

女戦士「どうやらあのゾンビの大群がラスボスな様だな」

女海賊「お姉ぇ!!ちょっと操縦変わって!!」

女戦士「どうした?」

女海賊「ドラゴンの動きがおかしい…たぶん誰かこっちに来る…ちょっとデッキに出る!!」

女戦士「わかった…ローグ!!次の爆弾を用意しろ」
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:48:50.55 ID:whSJU1gn0
『デッキ』


ビュゥゥゥゥゥ バサバサ


女海賊「誰?勇者?女エルフ?」


ピョン クルクル シュタッ


女海賊「勇者!!どうしたの?」

勇者「指輪を取りに来た」

女海賊「あ…」ソー

勇者「ありがとう…」

女海賊「死なないで!!」

勇者「…」ギュゥゥゥゥ

女海賊「…ぅぅぅ」ポロ

勇者「…お腹の子を守って」

女海賊「あんた…知ってたの?」

勇者「君を愛してる」ギュゥゥ

女海賊「ぅぅぅ」ポロポロ

勇者「アサシン!!行くぞ!!」

女海賊「え!?」

アサシン「…」

女海賊「どうして?」

勇者「女海賊…聞いて?…その子を必ず守って」

女海賊「うん…」ポロポロ

勇者「その子の名前は…」ピョン

アサシン「…」ピョン


勇者「未来」


女海賊「うわぁぁぁぁん…待ってぇぇ」ポロポロ

ローグ「危ないでやんす!!…落ちるっす」グイ

女戦士「…」ポロリ
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:49:16.44 ID:whSJU1gn0
『ドワーフの気球』


フワフワ バサバサ


魔女「もっと高度上げられんのかえ?ゾンビの触手に掴まってしまうぞ?」

盗賊「やってる!!おい商人!!操縦はお前がヤレ…俺は球皮に登って穴塞いでくる」

商人「わ、わかった」ノソノソ

魔女「爆炎魔法!竜巻魔法!ボルケーノ!」ゴゴゴゴゴゴ

商人「落ちない様に気を付けて!!」

盗賊「わーってらぁ!!俺様を誰だと思ってる…天下の大泥棒だ壁登りなんかちょろいもんよ…じゃぁな!!」ダダ

魔女「商人!大魔法を詠唱するで触手につかまるで無いぞ?」

商人「やってみる…右に行くのはあのハンドルだ」グリグリ

魔女「ブツブツブツブツ………絶対零度!」カキーン

盗賊「うぉぉぉぉ!!すげぇ…ゾンビが全部凍った…」

魔女「続けて詠唱するで早よぅ気球を修理せい!!」

盗賊「おい!!飛空艇から誰か2人飛び降りてドラゴンに乗った!!」

商人「オーケー援護出来る様にこっちも動く」

盗賊「下だ…あいつ等カタコンベの遺跡の方に向かっている!!回頭だ…180度回頭!!」

商人「えーと…えーっと…」グリグリ

盗賊「ぬぁぁぁ穴いっぱい空いてんじゃねぇか…」
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:49:47.62 ID:whSJU1gn0
『因縁の遺跡』


バッサ バッサ ドッスーン


勇者「ドラゴン…ここで良いよ…後はゾンビ退治任せた」

ドラゴン「ギャーース」バッサ バッサ

アサシン「やはりここか…」

勇者「うん…この下に魔王を感じる」

アサシン「下まで行くのか?」

勇者「その必要は無い…もう僕は見られている…アサシンの目を通じてね」

アサシン「なに!!私の目を通じてだと?」

勇者「そうだよ…すべての人の中に魔王は潜んで居るんだ…僕には分かる」



”来たな我が器よ”

”我は黄泉より狭間まで這いあがって来た”

”さぁ我を受け入れ我が一部となるのだ”

”さすればお前に世界の半分をやろう”



勇者「姿を現せ…」


”ヌハハハハハハハ”

”我が魂を見たいと申すか”

”見せてやろう我が一部となった勇者の姿を”



ゾワワワワワワワワ


アサシン「クックックどれ程悍ましい姿かと思えば…闇の正体はコレか」



”調和の時は既に終わった”

”さぁ祈りの指輪で我を求め”

”汝の身を贄として捧げよ”

”さすれば再び深淵に落ち闇は晴れる”


勇者「フン!」ダダッ スカ

勇者「聖剣エクスカリバーでも切れない…か」



”そんな物では我は滅ぼせぬ”

”大人しく我が一部となれ”


勇者「分かった…覚悟は出来ている」

勇者「アサシン…約束の時だ…」グッ

勇者「魔王のすべてと世界中すべての憎悪を望む!!」
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:50:17.18 ID:whSJU1gn0


---魔王来たれり---
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:50:48.15 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


女戦士「勇者とアサシンが遺跡に降りた…どうする気だ?」

女海賊「お姉ぇ!!やっぱ私諦めない!!」グイ

女戦士「お前…突っ込む気か…ヤメロ…やらせておけ!!」グイ ドン

女海賊「この船は私の船だよ…勝手な事しないで」

女戦士「ローグ!!女海賊を押さえろ!!」

ローグ「あねさんスマンでやんす」グイ

女海賊「離せ…離せよ!!」ジタバタ

女戦士「黙って見ていろ!!…アレが魔王の正体か?…あの闇が」


ターーン!!


ローグ「うがぁぁぁ…足が…つつつつ」

女海賊「お姉ぇ…どいて」

女戦士「お前…正気か?」

女海賊「もういい…」ターーン

女戦士「はぅ…くぅぅ」

女海賊「どけ!!どけってんだ!!…いう事聞けないなら降りて!!」

女戦士「お前…そんなに…」

女海賊「黙ってて!!」

ローグ「痛いっす…血が止まんねぇでやんすー」

女戦士「ええぃ…私が止血を」ズリズリ

ローグ「かしらも血が…」

女戦士「はっ…空が!!いや…すべての闇が勇者に吸い込まれて行く」

女海賊「うぉぁぁぁぁぁぁ」


ガコン ズズズズズズズズ
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:52:36.79 ID:whSJU1gn0
『因縁の遺跡』


勇者「うぉぁぁぁぁぁぁ!!」


---力が溢れる---

---魔翌力が溢れる---

---知恵が溢れる---

---記憶が溢れる---

---夢幻を思い出した---


勇者「我来たる…我こそが魔王なり」


ブス!!


アサシン「させるか…深淵に戻れ!!」ズブズブ

勇者「ぐはぁぁぁ…」

勇者「フハハハハハハ我は滅びぬ…何度でも蘇る」

勇者「フハハハハハハハハハハハハハ」



ガコン ズズズズズズズズ



アサシン「飛空艇か!!」

女海賊「勇者!!」タッタッタ

勇者「うぁぁぁぁぁぁ!!」

女海賊「アサシン!!あんたぁ!!」

アサシン「許せ…これしか方法が無かった」

女海賊「手を放して!!撃つよ!!」チャキリ

アサシン「まだ魔王は死んで居ない」

女海賊「うるさい!!」ターン

アサシン「ぐぅ…お前」ガク



ズブズブズブ ズブズブズブ
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:53:04.61 ID:whSJU1gn0
『ドワーフの気球』


フワフワ バサバサ


盗賊「ちぃ…操縦変われ!!回頭が遅せぇ!!」グイ

魔女「見て見よ…闇が勇者に吸い込まれて行きよる」

商人「飛空艇が突っ込んで行く…」

魔女「良く見ておくのじゃ…この出来事は後世に伝えて行かねばならぬ…目を離すで無いぞ?」

盗賊「何が起きてんだ?俺には見えねぇ…なんでこの気球は操縦部に観測窓付けて無ぇんだ」ボカ

商人「あれは…勇者が魔王になる瞬間…か?」

魔女「そうじゃ古の伝説はすべて事実じゃった…見て見よ闇が晴れよる」

商人「星だ!!星が見える!!」

盗賊「俺にも見せろ…ん?勇者の前に居るのは…アサシンと女海賊か?」



ズブズブズブ ズブズブズブ


魔女「おぉぉぉぉ地面から芽が生えてきおった…何が起こるんじゃ?」

商人「木だ!!木が勇者を包み始めている」

魔女「見よ…無数の光…いやあれは魂じゃ魂が空に飛んでいきよる」

盗賊「植物の芽か?触手か…光を追いかけてる」

魔女「なんという奇跡か…木が魂を守ろうとしておる…ぉぉぉぉ」ポロ

盗賊「俺達もあそこに行くぞ…」ダダッ

504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:53:38.10 ID:whSJU1gn0
『因縁の遺跡』


ズブズブズブ ズブズブズブ


女海賊「何よ…この草はぁぁ!!邪魔なんだよ…」

女海賊「勇者!?」

勇者「…」ドタリ

女海賊「ダメぇぇぇぇぇ死んじゃダメぇぇぇ!!」

アサシン「ぐふっ…なんだこの木は」

女海賊「くっそ邪魔な木…吹っ飛ばしてやる!!」チリチリ ドーン

アサシン「クックック…流石強引にこじ開ける」

女海賊「勇者!?」グイ

勇者「…」グッタリ

女海賊「心臓…どうしよう…そうだ蘇生魔法!」

女海賊「だめだ魔翌力が無い…だれか回復魔法出来ないの?」

女海賊「女エルフ!!どこに居んのさ!!…ハッ…この木はもしかして女エルフ?」

女海賊「くそぅ!!あんたに勇者は渡さないよ!!」

女海賊「何か言えよ…どうすりゃ良いのさ…血だ…血を止めなきゃ」ギュゥ

女海賊「止まんない…そうだ!!エリクサーだ!!飛空艇にある…」ヨッコラ

女海賊「死なないでお願い…お願い…お願い」ダダダ



------------------



女海賊「勇者…ほらエリクサーだよ飲んで?」グイ

女海賊「心臓にもエリクサー入れる」

女海賊「目を覚ましてよぅ…お願いだよぅ」ポロポロ

女戦士「お前…」

ローグ「必死でやんす…」

女海賊「うわぁぁぁぁぁぁん」ポロポロ
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:54:08.74 ID:whSJU1gn0
『ドワーフの気球』


フワフワ バサバサ


商人「朝日だ!!」

魔女「おぉぉぉぉ闇が晴れた…」

盗賊「終わった…の…か?」

商人「女海賊が飛空艇に勇者を運んでる」

魔女「アサシンが一人倒れておるぞ?」

盗賊「あぁ連れて行く…商人!アサシンに声掛けてくれ」

商人「アサシーーン!!大丈夫ぅぅぅ?」

盗賊「降ろすぞ‥‥」フワフワ ドッスン

商人「手を振ってた…怪我してるみたい」

盗賊「おう!!商人一緒に来い…アサシン担ぐの手伝え」タッタ

商人「うん…」タッタ

盗賊「アサシン!!大丈夫か?」

アサシン「クックック…アーッハッハ」

盗賊「まぁ大丈夫そうだな?立てるか?うお!!お前…腹に穴空いてんじゃねぇか…笑ってる場合じゃねぇだろ」

商人「これはひどいな…手当が必要だ…魔女?回復魔法をお願い」

アサシン「私より勇者が先では無いか?」

魔女「勇者は回復の必要が無い…」

アサシン「何故そう思う?クックック」

盗賊「何笑ってんだ…頭逝かれたか?」

アサシン「魔女…お前のそういう態度に傷付く者が居る事を分からないのか?」

魔女「…わらわも心苦しいのじゃ察してくれ」

アサシン「それでも尚…生かす努力をしている女海賊を見て何も感じないか?」

魔女「…すまぬ…わらわは会わせる顔が無い」

アサシン「クックック…アーッハッハ」

魔女「…」プルプル
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:54:38.19 ID:whSJU1gn0
『飛空艇』


女海賊「大丈夫…傷口塞がってるから…今からマッサージするね」グッグッグッ

女海賊「ローグ!!あんたもエリクサー飲んで回復して手伝え」

ローグ「は、は、はい…」

女海賊「お姉ぇ…私は勇者…いや剣士を連れて旅に出る」

女戦士「どうするのだ?」

女海賊「私は諦めない…欲しいものは死んでも手に入れる主義さ」

女戦士「ハハ付き合えと言うのか?」

女海賊「嫌なら降りていいさ」

女戦士「さて…どうしたものか…」

女海賊「ローグ!!マッサージ続けて…止めたらあんたの頭吹っ飛ぶと思いな!!」

ローグ「へ…へい…」

女海賊「…」ガチャガチャ

女戦士「武器を何に使う!?」

女海賊「…」スタスタ



---------------
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:55:07.64 ID:whSJU1gn0
盗賊「おぉ!!女海賊!!勇者はどうした?…おいおい…武器をこっちに向けんな」

女海賊「ホムちゃんはどうした?」

商人「彼女は流れ矢に当たって停止した…」

女海賊「…ちっ…ホムちゃんまで…」

盗賊「やけに粗ぶってんじゃねぇか…武器を降ろせ」

女海賊「ホムちゃんから何か聞いて居ないの?」

商人「まだ南の大陸にホムンルクスが1体あるって…」

女海賊「どこ?」

商人「火山のふもとに研究所があるらしい…ねぇ武器降ろしてよ」

盗賊「勇者の手当ては良いのか?」

女海賊「もう勇者の仕事は終わったさ…どういう事か知ってるよね?…魔女!」

魔女「…隠しておってすまぬ」

女海賊「それからあんたも!!」

商人「え?」ビク

女海賊「私はもうあんた達を信じない…今から敵だ」

盗賊「おいおい…そりゃ無ぇぜ」


ターン


盗賊「あだっ…」タジ

女海賊「フン!!揃いも揃って魔王の言いなりになりやがって…」

魔女「済まぬ…本当に済まなんだ」ヨタヨタ


ターン


魔女「あぅ…」ドタ

女海賊「敵だと言ったはずだ…近づくな!!」

盗賊「お前…どうするつもりだ?」

女海賊「私の勝手さ…精々平和を満喫しておきな!!」

盗賊「おい!!どこに行く」

女海賊「わざわざサヨナラを言いに来てやったんだ…目に焼き付けときな」スタスタ

盗賊「待てよ!!」ズリズリ



フワリ シュゴーーーーー
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:55:55.67 ID:whSJU1gn0
盗賊「あぁぁぁ…行っちまった…」

魔女「ぅぅぅ…」ポロポロ

商人「魔女…仕方ないよ」

魔女「わらわは修行が足りぬ様じゃ…人の心を学び忘れておった」ポロポロ

盗賊「ありゃ相当怒っちまったな…もう帰って来ねぇかもしれん」

アサシン「クックック…アサシンの奥義ハートブレイクという技を知っているか?」

盗賊「心臓を仮死状態にする技だな?まさかお前それでとどめ刺したのか?」

アサシン「魔王はまんまと深淵に落ちて行った…笑わずに居られるか?」

盗賊「マジかよ…それじゃ勇者…いや剣士は死んで無いという事か」

アサシン「魂が何処に行ったかは知らん…だが体は死んで居ない」

魔女「それは真か…何故早よぅ言わん」

アサシン「私は試していたのだ…ドワーフだけは最後まで勇者を守ろうとする」

魔女「それが定めじゃ」

アサシン「人間が何をしていたかが問題だ…利己的に動いて居なかったか?」

魔女「…」

アサシン「それから何故ドワーフは人間に武器を振るった?…それは私たちの中に住む魔王を見抜いているのでは無いか?」

盗賊「どういう事だ?」

魔女「魔王はまだ滅んでおらぬ…退いただけじゃ」

アサシン「魔王はすでに動き始めている…私にはそう思える」

魔女「その通りやも知れぬ…わらわ達は伝説に従い勇者を見殺しにしただけと言い換える事が出来る」

アサシン「女海賊には少なくともそう見えて居る…今頃反省しても遅いのだが」

盗賊「まぁ今は復興の時だ…こんな所で凹んでなんかいられ無ぇ!一回帰るぞ」

アサシン「一からやり直しだな…やはり私は盗賊ギルドを続けなければならん様だ」

盗賊「俺はもう関わら無ぇけどな…」

魔女「わらわも修行し直す…」

盗賊「商人!お前はどうする?」

商人「僕はやらなければいけない事が出来た…南の大陸に渡る」

盗賊「そうか…俺も子供達を迎えに行くんだ…途中まで一緒だ」

商人「助かるよ」



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509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/01(木) 09:56:46.15 ID:whSJU1gn0
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100日の闇は晴れ再び平和が訪れた

世界の人口の7割が失われたこの厄災は

後にフィン・イッシュ滅亡の危機として

語り継がれる事になる




…そして数年後
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 03:35:35.27 ID:0KBLra3DO

やっと追い付いた
ホムンクルスがホムンルクスになってるよ
まあ他にもいっぱい有るけどww
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:12:28.54 ID:R2tAL1mj0
『ユートピア』


ワーイ ワーイ


盗賊「ちぃ…今日も商船入って来ねぇ」

情報屋「また港見てるの?」

盗賊「そろそろ食い物ん無くなるぞ?…商船入って来ねぇと商売にならん」

情報屋「あなたの船動かしたら?」

盗賊「そうしたい所だが最近は海賊船がうろついてるらしくてな…俺の船は漁船じゃ無ぇから狙われ易いんだ」

情報屋「お金は沢山あるのに困ったわね」

盗賊「金じゃ腹膨れんしな…動物狩りにでも行くしか無ぇか…って…お?船がこっちに向かってるな」

情報屋「え!?本当?久しぶりね」

盗賊「俺の望遠鏡何処行った?」

情報屋「あなたもう忘れたの?木の上で覗いてたじゃない…」

盗賊「おおぅそうだった…よっと」ピョン

情報屋「見える?」

盗賊「ありゃセントラルの軍船だな…情報屋の仕事が来たぜ」

情報屋「着替えて来る!」

盗賊「おい!!娘達も連れてけ…町に兵隊が降りてくんぞ」

情報屋「分かってる…」

盗賊「俺は港に降りて軍船の規模確かめて来る…なんでも良いから情報入手してこいな」
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:13:06.23 ID:R2tAL1mj0
『帆船』


ゴシゴシ ゴシゴシ


盗賊(…こりゃ食い物期待できそうだな)

盗賊(あそこが荷室か…よし…夜に樽を海へ落としに行こう)

盗賊(ん?やけに兵隊が多いな…しかも大砲完備だ)

盗賊(どっかと戦うつもりなのか?)

盗賊(海賊狩りにしちゃ船が遅すぎる)

盗賊(こんだけ兵隊多いと荷室にも居るよな…ちぃ)

盗賊(ちぃと様子見た方が安全か)


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衛兵「2日の停泊か…兵隊はどのくらい町へ出る?」

船兵「50人ほど交代しながら休憩させます」

衛兵「今港町は食料難でな…あまり良い食事は期待出来ん」

船兵「酒と女が居れば問題ないですよ」

衛兵「ふん!町の中心街はあっちだ…羽目を外さない様に頼む…忙しくなるんでな」

船兵「わかってますよ」

衛兵「ちなみに武器の携帯は禁止だ…治安員に魔術師が居る事を忘れるな」

船兵「はいはい問題は起こさない様に言い聞かせておきます」

衛兵「下船許可!!」

船兵「よーし!!許可が出たぁ!!1班は24時間の自由時間とする!!2班は待機!!」


うおぉぉぉぉぉぉ


衛兵「ったくセントラルの奴らは女・女・女・女…下品な奴らだ」ブツブツ
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:13:41.86 ID:R2tAL1mj0
『夜』


ワイワイ ガヤガヤ


店主「いらっしゃいませ…あぁ盗賊さんですね」

盗賊「あぁ今日は繁盛してるな?」

店主「立ち飲みになってしまいますが…良かったですか?」

盗賊「一杯だけな…ほいコレ」ジャラ

店主「いつものエール酒で良いですね?」

盗賊「おう…なんか面白い話聞けて無ぇか?」

店主「面白いかどうかわかりませんがセントラルの方で大きな爆発事故があったそうですわ」

盗賊「おぉ!!面白そうじゃ無ぇか」

店主「どうも城の真下にあった下水という所で事故があったとか」

盗賊「ほぉ…そりゃまた変わった場所の事故だな」

店主「ここからがオカルトネタですがね?爆発事故の現場で大量の死体が発見されて大騒ぎになったと聞きました」

盗賊「すげぇなそりゃ」---カタコンベだな---

店主「船兵に聞くともっと話してくれるかもしれませんよ?」

盗賊「おう…ちっと耳立てて置くわ」グビ



ネーちゃん今日はどこで寝るの

おっぱいでパフパフ頼むぅ

おい逃げんなよぉ良いじゃ無ぇか

酒もってこい酒ぇぇ

俺は白狼の盗賊団知ってんだぜ?

お前知らねぇの?

ど派手な盗賊団だよホラこれが人相書き



盗賊「…」---いつの話をしているのか---

店主「いやぁぁみんな酒が回って来ましたねぇ」

盗賊「お代取りそびれない様にな?俺はそろそろ帰るわ…又な」ノシ

店主「またのお越しをお待ちしております」
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:14:13.71 ID:R2tAL1mj0
『墓』


盗賊「…ぁぁぁ」グビ

盗賊「まっずい酒だな」ヒック

情報屋「やっぱりここに居たんだ…家に居なくて心配した」

盗賊「おぅ戻ったか…娘たちは?」

情報屋「久しぶりのお客さんで娘達も楽しんでるわ」

盗賊「…そうかそりゃ良かった…で…何か良い情報聞けたか?」

情報屋「セントラルで爆発事故」

盗賊「あぁ…そりゃ俺も聞いた…カタコンベだろ」

情報屋「そう…他にもあってね?白狼の盗賊団」

盗賊「んん?そりゃ昔の話じゃ無ぇのか?」

情報屋「最近あちこちで目撃されているらしいわ…気になるでしょ?」

盗賊「マジか…嬉しい知らせだな」

情報屋「爆発事故が合った日も2人組の姿を見た人が居る」

盗賊「そうか…なんか俺の事みたいで嬉しくなるな…ただ見られるのはプロのやる事じゃ無ぇ」

情報屋「あなた…良いの?やらせておいて…」

盗賊「んんん…まぁ気になるが…会いに来ねえって事は関わって欲しくないんだろ」

情報屋「女海賊はまだ戦ってる…なんか放って置けないな」

盗賊「俺達はな…平和欲しさに勇者を魔王に売っちまった立場なんだ…伝説に託けてな」

情報屋「…」

盗賊「関わらせて下さいなんて言えると思うか?」

情報屋「でもそれしか方法が無かったのだから…」

盗賊「俺はなぁ…本当に人間はクソみたいな生き物だと思ったわ…」


平和な時は自分勝手に生きててよ…困ったときは神頼みで何もしやしねぇ

勇者を奉って…なんだかんだした挙句に…最後はやっぱり勇者頼みだ

たった一人で魔王に立ち向かってんのによ…もう忘れていやがる

エルフやドラゴンが人間を嫌がるのも今なら理解できる

女海賊に撃たれて気が付いた…俺らに何か言う資格なんて無ぇってな


情報屋「その傷跡…」

盗賊「そうだ…この傷が痛むたびに思い出す…これは俺の戒めだ」

情報屋「戒め…か…」
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:14:44.09 ID:R2tAL1mj0
『翌朝_東の入り江』


ザブーン ザブーン


盗賊「おぉ…有った有った」

情報屋「樽が流れ着いている?」

盗賊「ヌハハこれはな…昨日の夜に例の軍船から海に落とした物だ…ここに流れ着くんだ」

情報屋「へぇ…いっぱい盗んだのね?フフフ」

盗賊「馬車まで運ぶのを手伝え…よっこら」

情報屋「重いわね…」

盗賊「多分加工した小麦だ…こんだけありゃ1年は食える」

情報屋「大丈夫?そんなに盗んで…」

盗賊「軍船ん中はまだいっぱい荷が積んである…バレやし無ぇよ」

情報屋「ねぇ東側の海…あそこにも船があるわ」

盗賊「本当だな…あそこは普通の航路じゃ無ぇ…漁船にしちゃでかいな」

情報屋「船の上に気球も見える」

盗賊「やっぱ海でなんかやるっぽいな…気球が居るって事は海賊狩りかもしれん」

情報屋「もっと向こうにも…見える?」

盗賊「船団組んでんだな…まぁシン・リーンの船団だろ…よそ見して無ぇで早い所樽運ぶぞ!」

情報屋「ん…あ…ごめん」
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:15:22.20 ID:R2tAL1mj0
『数日後』


情報屋「盗賊!!聞いて聞いて!!」

盗賊「んん?どしたぁ」

情報屋「商船入港してる!!」

盗賊「うぉ!!マジか!!やっと来たかぁぁ…ちと行って来るわ」

情報屋「私も行く」

盗賊「おぉ来い…娘達も呼んで来い!!買い物だ!!」

情報屋「娘達ぃぃ!!商船きたわよー!!」

娘達「え!?マジ!!ムキーーーーーー」

情報屋「お金忘れないで!!」



『街道』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「好きなもん買え!!珍しい食い物も出来るだけ沢山買え!!」

娘達「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

情報屋「キ・カイからの商船ね…食べ物は期待できないかなー」

盗賊「あっちでは何が売れるんだろうな?」

情報屋「さぁ…こっちの特産なら何でも売れるんじゃない?」

盗賊「ぬぁぁぁ酒買い占めとけば良かった…ホップ酒にハチミツ酒…エール酒も特産だ」

商人「それも良いけど塩だよ」

盗賊「塩かぁ…塩なら家にあるが勿体無ぇな」

商人「どれくらいあるのかな?」

盗賊「どれくらい…ておい!!商人じゃ無ぇか!!おおおおおお!!背伸びたなお前」

商人「ハハハ久しぶりだね」

盗賊「元気してたか!!おい情報屋!!懐かしい奴が来たぞ」

情報屋「あら?お久しぶり…元気してた?」

商人「そっちも元気そうだね」

盗賊「あぁ毎日ヒマでよぅ…で何しに来たんだ?商売か?」

商人「まぁ…そんな所かな」

盗賊「後で家に寄ってけ…バーベキューするぞ!!」

商人「初めからそのつもりさ」

盗賊「買い物どころじゃ無くなったなこりゃ」

商人「ゆっくり買い物してて良いさ…僕は先に母さんの墓に行って来るよ」

盗賊「おぉそうだな…ゆっくり話してってくれ」
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:16:09.52 ID:R2tAL1mj0
『ユートピア』


ジュージュー


商人「やっぱりここはのどかで良いねぇ」モグモグ

盗賊「見て見ろ…子供達も大きくなった」

商人「良いのかい?こんなに沢山の肉で贅沢して?」

盗賊「今日くらいは良いだろ…その言い方だとキ・カイも食料不足か?」

商人「魚は有るんだけどね…肉が無い」

盗賊「こっちは森に近い事もあってな?なんとか肉は手に入る」

商人「なるほどね」

盗賊「さて…急にこっちに来るからには遊びに来た訳じゃないんだろ?どうした?助けてほしいのか?」

商人「ハハハそんなに急がなくても良いけどね」モグ

盗賊「俺ぁヒマなんだ…ズバリ言えよ」

商人「そうかい?じゃぁズバリ…キ・カイに引っ越しさ」

盗賊「ほぅ…その心は?」

商人「僕の影武者になって欲しいんだ…どうやら僕を狙ってる人が居る様でね」

盗賊「お前なにか悪い事やってるんじゃないだろうな?」

商人「只の商人だよ…ちょっとだけ情報屋の真似してるだけなんだけどね」

情報屋「私の真似?」

商人「情報を売ってるだけさ」

情報屋「ふぅん…扱う情報によっては悪い事になるわね」

盗賊「影武者が欲しいってのは只事じゃないと思うがな」

商人「顔が割れると商売しにくくなるんだ」

盗賊「それは分かるが影武者なんぞ金で雇えば良いだろ」

商人「もう何人も雇ったさ…でも信用出来なくてね」

盗賊「それだけじゃ行く気になれんなぁ」

商人「じゃぁもう一つ情報を出す…もう一体のホムンルクスが居ると思われる古代遺跡のおよその場所が分かった」

盗賊「おぉ!!宝探しか…乗った」

情報屋「ねぇ?影武者の話と結びつかないわ?どうして?」

商人「僕が古代遺跡の情報を集めてるのを察知してる人が居る様なんだ」

情報屋「どうして分かったの?」

商人「何度もコンタクト取ろうとしてる…探られてるんだよ」

盗賊「相手は誰だか分からんのか?」

商人「僕は会って無いからね」

盗賊「なるほど上手く立ち回ってる訳か…」

商人「まぁ家族旅行と思って付き合ってよ」

盗賊「そうだなぁ…食力も余裕があるし行ってみるか」
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:16:43.94 ID:R2tAL1mj0
『帆船』


ギシギシ ギシギシ


盗賊「ようし!!これで積み荷は全部だな?ブタは荷室の囲いから出さん様にしてくれぇ」ブヒブヒ

情報屋「馬は連れて行く?」

盗賊「いや…こいつは放牧しとく…餌が足らん」

商人「武器調達してきたよ」

盗賊「おぉ子供たちに配ってくれ…ちったぁ戦える様になってもらわんとな」

商人「これで立派な海賊だね」

盗賊「そうだな…もちっと鍛えんとイカンが…お前もな」

情報屋「じゃぁ娘達呼んでくるわ」

盗賊「おう!!」

商人「賑やかな航海になるね…子供ばっかりだけど」

盗賊「あぁ娘達がポンポン生んじまうもんだからしょうがねぇ」

商人「相手はどうなってるの?」

盗賊「知らん…聞くと怒るからなヌハハ」

商人「お〜い!!娘達ぃぃ出発するよぉぉ!!」


ワイワイ ギャーギャー


盗賊「全員乗ったな!?商人!!碇あげろぉぉぉ!!面舵いっぱーーーい!!」


ギシギシ グググググ
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:17:49.65 ID:R2tAL1mj0
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520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:18:32.67 ID:R2tAL1mj0
『東蛮族の町』


女海賊「未来!!ちゃんと付いて来るんだよ」

子供「うん!」

女海賊「いくよ…いつも通り!」バシュ


ピカーー チュドーーーン


女海賊「よしよし…注意あっちに行った…ハイディング!」スゥ

子供「…」スゥ

女海賊「迷子になって無いね?」

子供「うん」

女海賊「おいで…」タッタッタ

子供「…」シュタタ シュタタ

女海賊「未来!手分けして探す…10分でここに戻って…絶対狭間から出たらダメ!分かった?」

子供「うん」

女海賊「じゃ10分後」タッタッタ



---10分後---



子供「ママ!!階段見つけたよ」

女海賊「案内して」

子供「こっち…」シュタタ シュタタ

女海賊「ここかい?」

子供「うん…違う?」

女海賊「降りて確認する…付いておいで」スタスタ

子供「扉だね」

女海賊「…これは違うタイプの扉…開けるから未来もやり方しっかり覚えて」カチャカチャ ガチン

子供「開いた!」

女海賊「ハズレ…好きな物盗って良いよ」

子供「やった…これ何?」

女海賊「オークが使う装飾品…気に入ったの?」

子供「顔を隠す物だよね?」

女海賊「お面だよ…」

子供「これだけ持って帰る」

女海賊「じゃ…戻るよ」タッタッタ

子供「うん」シュタタ シュタタ
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:19:06.12 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』



女海賊「未来?」

子供「うん」

女海賊「リリース」スゥ

子供「…」スゥ


ローグ「早かったでやんすね」

女海賊「出して」

ローグ「アイサー」


フワリ シュゴーーーー


女海賊「ハイディング!」

ローグ「分かってるでやんす」スゥ

子供「ママ!!お面付けても良い?」

女海賊「好きにしなさい?」

子供「やった!!」

ローグ「ここにも無かったでやんすか…次どうしましょうね?」

女海賊「やっぱり闇雲に探しても無駄みたい…一旦基地に戻ってお姉ぇに情報聞く」

ローグ「もう火山のふもとは探し尽くした感じっすねぇ…」

女海賊「ちぃ…」イライラ

ローグ「情報が足りんでやんす」

女海賊「分かってんよ!!イライラさせないで…」

ローグ「へいへい…」
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:19:47.37 ID:R2tAL1mj0
『海賊の基地』


ツカツカ ツカツカ


女海賊「お姉ぇ…沖に船が出てる…何?」

女戦士「おぉ…戻って来たのか…アレは海賊船だ…この辺に漁船が近寄って来ない様にしている」

女海賊「ふーん…下手に船置いとくと逆に怪しまれるんじゃない?」

女戦士「気にし過ぎだ…それで…遺跡は見つからなかったか」

女海賊「もう歩いて探すしか無い…お姉は何か情報掴んでない?」

女戦士「古都キ・カイにな古代遺跡の情報を集めている旅芸人が居るらしいのだが…なかなかコンタクト出来ない」

女海賊「私が行って来る」

女戦士「待て…もう少しで正体を掴める」

女海賊「正体?」

女戦士「恐らくプロの情報屋だ…下手に近づくと行方が分からなくなる」

女海賊「もう!!イライラする…私に黙って休んでろっての?」

女戦士「もう少し辛抱しろ…代わりに少し運んでもらいたい物がある」

女海賊「何さ!?小間使いは御免だよ!!」

女戦士「セントラルまでミスリル銀を運んでほしい…報酬はウラン結晶だ」

女海賊「!!ウラン結晶…取引に行くって事?」

女戦士「そうだ…セントラルの軍部が取引に応じた…詳細はローグに伝えて置く」

女海賊「行くしか無いか」

女戦士「もうすぐ無くなるのだろう?」

女海賊「…」

女戦士「ついでに例のカタコンベも破壊しておけ…災いの元だ」

女海賊「なんでセントラルはミスリル銀を欲しがってんのさ…」

女戦士「武器以外に使い道があるか?…そういう事だ…また何か起きる」

女海賊「未来…おいで…」ギュゥ

子供「ぅぅぅ苦しい…よ」

女戦士「未来も連れて行くのか?ここに居させてやっても良いんだぞ?」

女海賊「生き抜く訓練だよ…」

女戦士「少し早いと思うが」

女海賊「未来の事に口を出さないで」

女戦士「ふん…まぁ良いお前がしっかり守れ」

女海賊「言われなくても分かってる」
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:20:28.37 ID:R2tAL1mj0
『基地の入り江』


やばい!来た!

おい!!酒飲んでる場合じゃねぇ!!

隠れろ…殺されるぞ!!


ツカツカ ツカツカ


女海賊「…」ジロリ

ローグ「あねさん…みんな怖がってるっす…」

女海賊「今隠れた奴!!出て来な!!」チャキリ

男共「へ…へい…」ガクブル

女海賊「私の機嫌損ねたらどうなるか分かってんだろうね…」スチャ

男共「…」ゴクリ

女海賊「私を特別扱いしろとは言って無いんだ…普通に出来ないなら…」


ターン カランカラン


女海賊「さて…気の利いた事言ってみな」

男共「お、お気を付けて行ってらっせぇ…」ガクガク

女海賊「それで良いんだ…良い男がビクビクしてんじゃ無いよ」

男共「へ…へい…」

ローグ「あねさん…その武器向けられて無理ってもんす」

女海賊「あぁ…悪かったね」スッ

男共「…」ホッ

女海賊「私が嫌いかい?」

男共「いえ…そんな滅相も無い」

女海賊「この美貌を見ても誰も何も言って来やしない…」

ローグ「怖すぎるんす」

女海賊「…」ジロリ

ローグ「ほらほらほら…それが怖いんすよ」

女海賊「フン!!早くミスリル銀積み込みな!!」

ローグ「アイサー」タッタッタ
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:21:06.95 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』


シュゴーーー バサバサ


ローグ「そんな機嫌損ねないでくれやんす」

女海賊「何さ!!私は何も言って無い…」

ローグ「あっしは聞いたでやんすよ?あねさんは海賊の中でカリスマっすよ?」

女海賊「そんなのどうでも良い」

ローグ「あねさんのお陰であっしら海賊に軍艦すら近寄って来ねぇんすから」

女海賊「ちっとやり過ぎたね…反省してるよ」

ローグ「いやぁぁ…あねさんの爆弾は一発で軍艦を沈めちまうもんすからねぇ…」


それにあの小さい大砲の武器

あんな武器持ってるの世界中であねさんだけっすね

それから派手な格好にその美貌と来りゃ

みんな憧れるのは分かるっすよ


女海賊「はぁぁぁもっと言って…癒される」ニマー

ローグ「機嫌なおりやしたかね?これで何回目っすかね?」

女海賊「…」チャキリ

ローグ「ちょちょちょ…もう一回始めから言うでやんすよ?」

女海賊「言って」

ローグ「あねさんはですね…カリスマなんすよ…」
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:21:42.77 ID:R2tAL1mj0
『セントラル』


ローグ「飛空艇はハイディングで隠しておくでやんす…集合は明日の夜明けで良いっすか?」

女海賊「おっけ…私と未来は自由にしてて良いんだね?」

ローグ「かしらからはそうさせろと言われているでやんす…気を使ってるんよ」

女海賊「下水には近づかないで…分かってるよね?」

ローグ「分かりやした」

女海賊「未来?ちょっと遊びに行こっか…」

子供「本当に?何があるの?」

女海賊「買い物…一人で出来る?」

子供「自信ないなぁ…」

女海賊「よし!やってみよう」

子供「うん…」

女海賊「じゃぁ付いておいで?」

子供「ハイディングは?」

女海賊「今日は無し」

子供「じゃぁ人がいっぱい居るね?」

女海賊「悪い人も居るから気を付けなさい?」

子供「うん!」

女海賊「じゃぁフードは深く被って…」

子供「分かってるよ」ファサ

女海賊「付いていらっしゃい」タッタッタ

子供「待って」シュタタ
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:22:14.63 ID:R2tAL1mj0
『貧民街』


子供「…ここは何?みんな野宿する所?」

女海賊「ここはね…昔ママが住んでいた場所なの」

子供「建物がみんな壊れてるね」

女海賊「…もう誰も知っている人居ない」

子供「焚火の所に人が集まってるよ?」

女海賊「ここの人たちはあんな風におしゃべりするんだよ」

子供「へぇ…あ!」ドテ

女海賊「足元悪いから気を付けて…ハッ!!」

子供「ててて…何だコレ…看板?カク・レガ?」


---狭間に出入りして分からなくなってた---

---あれからどれくらい経ったのか---


子供「ママ?…ママ?…どうしたの?」

女海賊「ううん…行こっか」

子供「泣いてるの?」

女海賊「昔を思い出してちょっとね」

子供「悲しい思い出?」

女海賊「ううん…楽しい思い出」

子供「良かった」

女海賊「ここをまっすぐ行くと買い物できる場所だよ」

子供「いこ!!」グイ
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:22:51.72 ID:R2tAL1mj0
『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「この広場の中なら自由に買い物して良いよ?」

子供「本当に!いっぱいあるなぁ…」

女海賊「はいお金…無くさない様にね?」ジャラリ

子供「うん!!」

女海賊「ママはここで掛けてるからいってらっしゃい?」

子供「行って来る!!」


---目を閉じるといろんな音が聞こえる---

---剣士はこんな世界を感じていたんだ---

---良く耳を澄ますと未来の足音も聞こえる---

---沢山の音に溢れた世界---


ぼっちゃんお金あるの?

あるよホラ

おーお金持ちだねぇ

はいおつりだよ


ドクン!!


”贄が足りぬ…贄が足りぬ…”


女海賊「ハッ!!未来!!何処!?」ガバッ

女海賊「未来!!」

子供「ママ?どうしたの?」

女海賊「はぁはぁ…はぁ…」

子供「どうしたの?怖い顔して?」

女海賊「…」ゴクリ



---何この嫌な予感---



女海賊「ママも一緒に行こうかな…手を繋いで?」ドクン ドクン ドクン

子供「うん…ママ?手が震えてる」

女海賊「大丈夫…次は何買う?」---落ち着け…落ち着け…落ち着け---
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:23:40.20 ID:R2tAL1mj0
『宿屋』


カラン コロン


店主「いらっしゃいませ…今日はお泊りですか?」

女海賊「空いてる?食事も2人分」

店主「はい空いております」

女海賊「明日は朝が早いからお代は先に…」ジャラリ

店主「ありがとうございます…お食事はお部屋にお持ちしますか?」

女海賊「そうして…」

店主「ではご案内いたします…どうぞこちらへ」スタスタ

女海賊「未来?おいで…」スタ

子供「うん…」トコトコ

店主「こちらのお部屋になります…後ほどお食事をお持ちいたしますので…ごゆっくりお休みください」

女海賊「ありがとう…」


ガチャリ バタン


子供「ベッドだ!!」ボヨーン

女海賊「ふぅ…」

子供「疲れたの?」

女海賊「ママはね…宿屋で泊まるのが苦手なんだ」

子供「え!?カリスマなのに?」

女海賊「あんたもそういう事言うのか!このぅ…」グイ ギュゥ

子供「くるしいよ…」ぅぅ

女海賊「楽しかった?」

子供「うん…ママと買い物出来て楽しかった」

女海賊「良かったね」

子供「でもなんかママおかしいよ?怖いの?」

女海賊「ううん…怖くなんか無いよ」

子供「ふーん…」チラ

女海賊「食事が終わったら…仕事ね…いつものやつ」

子供「うん…わかった」
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:24:22.37 ID:R2tAL1mj0
『日没』


女海賊「未来…気持ちを切り替えて…今からは遊びじゃ無いよ」

子供「うん…」

女海賊「説明するよ…今日はカタコンベという所を爆弾で破壊する」

女海賊「今から海に行って下水という場所を通ってカタコンベに行く」

女海賊「カタコンベには死霊が沢山居るから魔方陣のお守りをしっかり身に着けて」

子供「うん…」

女海賊「爆弾を設置したらそのまま来た道を戻って海まで走る」

女海賊「海まで出たら飛空艇の場所は分かるね?」

女海賊「もし迷子になったら飛空艇の場所で集合…良い?分かった?」

子供「大丈夫」

女海賊「よし…それじゃ行くよ?」

子供「うん」

女海賊「迷子にならない様に」

子供「分かってる」

女海賊「付いて来て」タッタッタ
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:24:59.15 ID:R2tAL1mj0
『下水』

ピチョン ピチョン

子供「ママ…あの魔物は?」

女海賊「あれはラットマン…ネズミの化け物」

子供「良いの放って置いて?」

女海賊「こっちに気付いて居ないから…あぁ帰りに面倒だから倒しておくか」

子供「僕見ておく」

女海賊「ママの後ろを見てて…ボウガンで倒すから」バシュ


ラットマン「ギャース」ドタリ


女海賊「行くよ…」タッタッタ

子供「道知ってるんだ」

女海賊「未来…その梯子を上に登って…何か居たら教えて」

子供「うん…」ヨジヨジ

女海賊「どう?」

子供「大丈夫…何も居ない」

女海賊「ママも行くから待ってて」ヨッコラ

子供「何か聞こえる…」

女海賊「…」

子供「何だろう?」

女海賊「聞いちゃダメ…多分死霊の声」

子供「どうしてハイディング使わないの?」

女海賊「狭間に入ると沢山死霊が居るから…そっちのが危ない」

子供「そっか」

女海賊「この通路の向こうがカタコンベ…未来は見ない方が良い」

子供「大丈夫…死体は見慣れてる」

女海賊「ダメ…今来た道を走って戻るから準備して」

子供「…はーい」

女海賊「ちょっとそこで待ってて中見て来るから」タッタッタ

子供「うん…」
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:25:33.81 ID:R2tAL1mj0
『カタコンベ』


”贄が足りぬ…贄が足りぬ…”


女海賊「この声…」---やっぱりここか---

女海賊「あんたの思い道理にはさせないよ!!くたばりやがれ!!」バシュ バシュ

女海賊「走って!!」ダダッ

子供「…」シュタタ シュタタ

女海賊「5…4…3…2…1…」


ピカーー チュドーーーン チュドーーーン


女海賊「爆風!!伏せて!!」

子供「うわっ」ドーン パラパラ

女海賊「行くよ!!」グイ タッタッタ

子供「うわわわ…」タッタッタ

女海賊「怪我は?」

子供「無い」

女海賊「梯子飛び降りるよ」トゥ シュタ

子供「…」ピョン シュタ

女海賊「よし…来い!!」タッタッタ

子供「ママ!!ラットマン!!」

女海賊「ちっ」カチャ ターン


ラットマン「ギャース」ドタリ


子供「人が来る…」

衛兵「おい!!ここは立ち入り禁止だぞ!!」

女海賊「そのまま走って!!」

衛兵「待て!!」


ピーーーーーーーー


子供「笛だ…」

女海賊「フフ…」

子供「笑ってるの?」

女海賊「懐かしくてね…付いて来れる?」

子供「うん…でも追いかけて来る人増えてる」

女海賊「大丈夫…下水を出たらハイディングね」

子供「うん…」

女海賊「3…2…1…ハイディング」スゥ

子供「…」スゥ

女海賊「迷子になってない?」

子供「居るよ」

女海賊「さぁ…帰って寝ましょ」
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:26:10.15 ID:R2tAL1mj0
『宿屋』


ザワザワ ザワザワ

さっきの音聞こえたか?

地震だ地震

城から煙が上がってるぞ

あぁぁ又城壁の一部が崩れて

あっちも火事になってる

治安部隊が出てる…テロか?

貧民街でラットマン出てるってよ

ザワザワ ザワザワ


店主「お城の方で何かあった様ですねぇ?」

女海賊「何かな?」

店主「なんだか物騒ですねぇ」

子供「ママ眠いよ…疲れた」

女海賊「水浴びしてからにしなさい…臭いでしょう?」

店主「水場は奥を右に行った所です」

女海賊「使わせてもらう」

店主「どうぞ…」
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:27:01.13 ID:R2tAL1mj0
『深夜』


子供「すぅ…すぅ」

女海賊「…」


コソコソ コソコソ

白狼の盗賊団が潜伏していると通報があった

これが人相書きだが…この中に似ている人物は居ないか?

ううん…どれも違う気がしますねぇ

子連れの親子が宿泊していますがもう深夜ですし

部屋はどこだ?確認する

コソコソ コソコソ


女海賊「…」---やっぱり普通に生活は出来ないか---

子供「すぅ…すぅ」

店主「…こちらの部屋です」

衛兵1「鍵を開けろ」

店主「仕方ありませんねぇ」カチャリ ギー

衛兵1「シー…子供が一人寝ているだけだな…親は何処に行ったか知らないか?」

店主「はて?水浴びでしょうか?」

衛兵1「近くに居るはずだ…探せ」

衛兵2「はぁ…」

衛兵1「荷物は…子供の分だけか…」ゴソゴソ

子供「う〜ん…むにゃ」

衛兵1「おい君…起きろ」

子供「んん?ママ?あれ?ママは?」ゴシゴシ

衛兵1「君のお母さんを探している…どこに行ったか知らないか?」

子供「え!?おじさん誰?あ!…それ僕の荷物…返してよ」

衛兵1「君のか」ポイ

子供「おじさん何なのさ…」パス

衛兵1「衛兵だ…白狼の盗賊団を追っているんだが…」

子供「へぇ〜…で?ママは?」

衛兵1「んんん見込み違いか…」

女海賊「…」スゥ

衛兵1「あ!!ママ…なんか知らないおじさん入って来た」

衛兵1「うぉ!!いつの間に…」

女海賊「準備なさい…」

子供「うん…」
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:27:33.52 ID:R2tAL1mj0
衛兵1「そのフードを脱いで顔を見せろ」

女海賊「誰に口聞いてんだい?私に命令出来ると思っているのかい?」

衛兵1「なにぃぃ!!お前はやっぱり…」

子供「行く!!」シュタタ シュタタ

衛兵1「おい待て!!」

女海賊「頭が回るねぇ…」ダダッ パリン

衛兵1「逃げるな!!」


ピーーーーーーーーー


店主「あわわわわわ…」

女海賊「未来…こっち…遊んで行こっか!」

子供「うん…」

女海賊「走るよ!!」タッタッタ

子供「おっけ」シュタタ

衛兵1「待て待て待てえぇぇぇい!!」ダダダ

衛兵2「居たぞ…貴族居住区に向かってる」ダダダ


ピーーーーーーーーー


女海賊「フフ…」

子供「追いかけっこ楽しいね」
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:28:07.80 ID:R2tAL1mj0
『海』


ザザー ザブン


女海賊「もうすぐ夜明けだよ」

子供「朝焼けがキレイだね」

女海賊「寒くない?」

子供「ちょっとね」

女海賊「おいで…」ギュゥ

子供「大丈夫だって」

女海賊「ママが温かいの」

子供「そっか…」

女海賊「ごめんね泥棒みたいな生活で」

子供「そんな事言わないで…楽しいよ」

女海賊「…」ギュゥ

子供「ローグ遅いなぁ…もう日が昇っちゃう」


ローグ「あねさ〜ん早かったっすね?」ヨッコラ ヨッコラ

子供「来た!!」

ローグ「あっしの方は大変だったでやんすよ…駐屯地がドタバタでしてね?」ヨッコラ ヨッコラ

女海賊「ウラン結晶は?」

ローグ「重いの何のって聞いて無かったっすよ…少し持って欲しいでやんす」

女海賊「私に荷物運ばせる気?」

ローグ「あっ!!何なんすかソレ?宝石いっぱいじゃないすか…どういう事っすか?」

女海賊「ちょっとねウフフ」

ローグ「ウフフって…最近あねさんの笑う声聞いて無かったでやんすよ」

女海賊「はいはい出発するよ!!早く来な!!衛兵に追いかけられてんだから!!」

ローグ「マジっすか…やばやば」ヨッコラ ヨッコラ

子供「ママ!!飛空艇をリリースするよ」

女海賊「おっけ…」スゥ

ローグ「どっこら…せっと…はぁぁぁ重たかった」ゴトン

女海賊「はい乗った乗った!!出発!!」


フワリ シュゴーーーーー


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536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:28:56.31 ID:R2tAL1mj0
『海賊の基地』


女海賊「帰ったよ…」

女戦士「お!?お前にしては随分遅かったでは無いか…楽しんで来たか?」

女海賊「まぁね?」

女戦士「…そしてその荷物か?」

ローグ「あねさん…この財宝どうするでやんす?」

女海賊「お姉ぇにお土産だよ…好きに使って良いよ…宝石好きだったよね」

女戦士「また随分荒らしてきた様だな…ローグ!選んで良いぞ…今回の報酬だ」

ローグ「マジっすか!えーと…あれもこれも…うーん」

女海賊「例の旅芸人どうなった?」

女戦士「あぁ…その件だが行方をくらました…しかし情報の一部は手に入った」

女海賊「手がかり?」

女戦士「硫黄の新しい産出場所だ」

女海賊「関係ないじゃん…古代遺跡の情報はどうなってんの!」

女戦士「まぁ聞け…硫黄の産出場所の分布だ…地図で言うと南の火山よりもかなり西に分布する」

女海賊「どういう事?」

女戦士「ここの山はかつて火山だったという事だ…いつの時代かは分からんが」

女海賊「今まで探してた火山が違った…そういう事?」

女戦士「古代遺跡の情報を集めている旅芸人が硫黄の産出場所を調べている…おかしいだろう?」

女海賊「…てことはココがあやしい…ハテノ村」

女戦士「うむ…ただその辺りは西蛮族との係争地だ…軍が駐屯しているのだ」

女海賊「私には関係ない…いつも通り探す」

女戦士「軍が居るとなれば今までよりも危険だ…3人では荷が重いのでは無いか?」

女海賊「そんな事言ってる場合じゃないと思ってる…」

女戦士「ゆっくり確実に探せば良いでは無いか」

女海賊「セントラルで魔王の声を聞いた…」

女戦士「なにぃ!!…馬鹿な」

女海賊「まだどこかの狭間で彷徨ってる…いつ戻って来るか分からない」

女戦士「闇からまだ数年しか経って居ないのだぞ?…祈りの指輪もお前が隠した」

女海賊「お姉ぇ…言ったよね?セントラルがミスリル銀を欲しがる理由…」

女戦士「…魔王が人間を突き動かして…居るのか?…また過ちを犯そうとしているのか?」

女海賊「だからゆっくりなんてしていられない…」

女戦士「いや…まだそういう可能性があるというだけの話…」

女海賊「私は行くよ…」
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:29:57.65 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』


女戦士「…お前は本当にせっかちなのだな…どうするつもりだ?」

女海賊「うっさいな…一旦ハテノ村に落ち着いて探すさ」

女戦士「すまんが私は一緒に行けん」

女海賊「初めからアテにしてない…上手くやるから放って置いて…お姉ぇはどうすんの?」

女戦士「父の所へ行く用事がある…物流を頼まれて居るのだ」

女海賊「パパにはよろしく言っといて」

女戦士「1ヶ月で戻る予定だ…新しい情報があるかも知れんから折をみてお前も帰って来い」

女海賊「そんな事分かってる」

女戦士「1ヶ月だぞ!!」

女海賊「うっさいな…何回も言うなフン」

女戦士「ローグ!!妹のサポートを続けろ…戻ったら褒美は出す」

ローグ「そう来ると思って用意していたでやんす…任せてくれやんす」

女海賊「未来!!乗って!!」

子供「うん!!」シュタタ

ローグ「じゃぁ出発するでやんす〜」ノシ


フワリ シュゴーーーーーー


ローグ「沢山荷物積んでるんすね?今回は長旅っすね?」

女海賊「一旦ハテノ村で住む家を探すんだ…そこらへんは行った事がないからね」

ローグ「歩いて探すんすか?」

女海賊「まず落ち着けて情報集めだ」

ローグ「今回は慎重なんすね?」

女海賊「思い出した事があってね…」

ローグ「行った事無いのに思い出すって変でやんすね?」

女海賊「夢の記憶…これも精霊の導きなのかな?ってね」

ローグ「今回は自信があるんすね?」

女海賊「スライムっていう魔物…知ってるかい?」

ローグ「いいえ見たことも聞いたこともありやせん」

女海賊「…どうして私は知っているのか?」

ローグ「それが精霊の導きってやつでやんすか?」

女海賊「その魔物をハテノ村で育てて居たんだ…夢の中ではね」

ローグ「へぇ…不思議な夢っすね?それが関係すると思ってるでやんすね?」

女海賊「勘ね…そのスライムから作った薬をある木の下に埋めた」

ローグ「…なんかアサシンみたいな与太話って言うんすか?…大丈夫なんすか今回の捜索は…」

女海賊「フン!!行ってみないと分かんないじゃない!!」

ローグ「怒らないでくれやんす…心配したでやんす」


情報屋が言ってた…魔王はウイルスだっていう説

私の夢ではウイルスに対する薬をスライムで作った

そしてその薬を夢の中で地中に埋めた
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:30:38.65 ID:R2tAL1mj0
女海賊「今からその木を探して掘る…そしたら魔王に対抗できる可能性があるホムンルクスが出て来る」

ローグ「あねさん…」

女海賊「話が出来すぎ?」

ローグ「もうちっと真面目に行きやしょう…」

女海賊「…」チャキリ

ローグ「ちょちょちょ…待ってくれやんす」



---これが事実だったら---

---私も精霊から導きを受けた---

---勇者の一人という事だ---



『ハテノ村の外れの森』


ローグ「飛空艇はここに隠しておくでやんす」

女海賊「ここがハテノ村か…」

ローグ「見覚えあるっすか?」

女海賊「…ない」

ローグ「やっぱし夢の話はアテにならんすね」

女海賊「行ってみる…未来!おいで」

子供「寂しい所だね」

ローグ「本当…シケタ所でやんすねぇ…人は住んでるんすかねぇ?」

女海賊「フン!!」---外したか---

ローグ「あぁ…でも一応集落にはなってるみたいでやんす」

女海賊「軍が駐留しているという話はなんだったんだろ?」

ローグ「そうっすねぇ…先にあっしが行って話聞いてくるでやんす」

女海賊「そうして…私と未来はすこしブラついてから行く」

ローグ「村の中で待っているっす」タッタッタ
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:31:08.90 ID:R2tAL1mj0
『ハテノ村』



爺「おぉ珍しい事もあるもんじゃ…あんさんたちは何処から来たんじゃ?」

子供「僕たち迷子だよ」

女海賊「宛ても無く旅をして…」

ローグ「あねさ〜〜ん!!こっちっすーー」

爺「親子ですかね?」

子供「うん!」

爺「それは大変でしたじゃろう…この村は見ての通りな〜んもありゃぁせん…雨風しのぐんじゃったら教会にいきなされ」

ローグ「あねさん!!この爺さんの言う通り教会なら住まわせてもらえそうっす」

女海賊「教会に行ってみるか…」

爺「食べ物も無いでぇひもじいかも知れんが…みんな同じじゃけぇな?」

子供「お爺さんありがとう」

ローグ「教会が避難所になってるみたいっす」

女海賊「やっぱり係争地という事なんだね」

ローグ「戦線はもう少し南らしいっす…それで近隣の村から避難してきているみたいっすね」

女海賊「隠れるには丁度良かった」

ローグ「そうっすね…避難民の家族という事で行けそうっすね」

女海賊「よし…しばらくここで情報を集める」

ローグ「まず教会すね」
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:31:37.04 ID:R2tAL1mj0
『教会』


私らはあっちの村から避難して…

むこうの村ではあーでこうで…

配給がなかなか来ないのは…


シスター「丁度一つベッドが空いた所なんですよ…運が良かったですね」

ローグ「ひと家族にベッド一つでやんすか?」

シスター「子供が居る家族だけなんです…あまり周りには言わないで下さい」

ローグ「どうも手間かけたでやんす」

シスター「子供たちは教会の中で自由にして良い事になって居ますので…騒がしいですけれど我慢してください」

子供「ママ?見て来ても良い?」

女海賊「教会からは出ない様にね」

子供「うん!」

ローグ「安全そうな所で良かったでやんすね?」

女海賊「私はもう少し周りを見て来る…あんたは未来を見てて」

ローグ「アイサー…あっしも少し休んでいるでやんす」

女海賊「夕暮れには戻ると未来に行っておいて」

ローグ「わかりやした…」
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:32:11.00 ID:R2tAL1mj0
『周辺』


スタスタ スタスタ  


女海賊「…」---やっぱ違うかぁ---

女海賊「…」---全然見た事無いもんなぁ---

女海賊「ん?」クンクン

女海賊「硫黄の匂い…そうだ…たしか温泉があったな」

爺「あんさん…散歩かね?教会には行きなすったか?」

女海賊「あぁ…お陰で雨はしのげる…ありがと」

爺「何か探しているようじゃが?」

女海賊「この近くに温泉って無かった?」

爺「おろ?元のハテノ村の事け?」

女海賊「元…」

爺「あそは数年前の厄災の時にみんな死んでしもうての…今は誰も住んでおらん」

女海賊「それどこ?」

爺「もちっと山よりじゃが危ないで行かん事じゃ…けものがおるで」

女海賊「けものか…うーん」

爺「あんさん妙な格好しておるがハンターかね?」

女海賊「まぁ…そんな感じかも」

爺「けものがどんだけ居るか分からんけぇのぅ…罠でも有ればちったぁ減らせるかもしれんが」

女海賊「罠ね…ありがと」

爺「ほんまに行ったらアカンで?」


---罠作るのに鉄が必要だ…---

---鉄なんて持って来て無いよ---

---どうすっかなぁ---
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:32:44.76 ID:R2tAL1mj0
『教会』


ガヤガヤ


ローグ「あねさん戻って来たでやんすね?何かありましたかね?」

女海賊「まぁね…もうちょい山の方に本物のハテノ村があるんだってさ」

ローグ「そっちに行きやすか?」

女海賊「もう誰も住んでなくてけものが居て危ないてっさ」

ローグ「けものっすか…厄介っすね?ハイディングしても狭間に入って来るっすもね」

女海賊「罠使って地道にハンティング…やるしかないかぁ」

ローグ「どんなけものなんすかね?」

女海賊「どうせクマとかウルフじゃないの?爆弾じゃ遅いし苦手なんだよなぁ」

ローグ「あっしは弓も使えるでやんす」

女海賊「クマ相手に自信ある?」

ローグ「無いっす…罠があれば何とかっすね」

女海賊「作るのに鉄が無いのさ」

ローグ「鉄…蛮族の使ってる斧はどうでやんす?」

女海賊「うーん…鉄取りに帰るより蛮族から盗んだ方が早いか…」

ローグ「日が暮れたら一回蛮族の陣地まで見に行ってみやしょう」

女海賊「そうだね…もうちょっと周りの事も知りたいし」

ローグ「今はゆっくりしてくれやんす」


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543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:33:40.15 ID:R2tAL1mj0
『帆船』


ザブーン ザブーン


盗賊「うぉらぁぁぁ!!」グイ バシャ

商人「おお!!又大きいの釣れたね」ビチビチ

盗賊「今日も大漁だヌハハ」

商人「もう魚はお腹いっぱいだよ…」ゲフ

盗賊「ブタの餌にすりゃ良い」

情報屋「船旅は長くなると飽きるのよね…ふぁ〜あ」

盗賊「もう薬学の本は読み終わったのか?」

情報屋「アレは暇つぶしよ…飽きた」

商人「あれ?…なんか天気おかしくない?」

盗賊「…そうだな?ちと暗くなって来たが…んん?どんどん暗くなってくじゃ無ぇか!!」

情報屋「ちょっとコレ…まさか闇?」

盗賊「マジか!!釣りしてる場合じゃ無ぇ!!」ガバッ


娘「おーい!!船居るよ!!船ぇぇぇ!!」


盗賊「どこだ!!」

商人「真正面!!近い!!」

盗賊「うぉ!!マジかよ…なんでもっと早く気が付かねぇ!!」ダダ

情報屋「なにあの船…」

商人「幽霊船だ…噂で聞いた事ある」

盗賊「ヤベヤベ…ニアミスすんぞこれ」グルグル


ギギギギ ググググ


盗賊「曲がれ曲がれ曲がれ…ぬぁぁぁぁぁ!!」

商人「こんな昼間に幽霊船…どうして?」

情報屋「この暗い空は狭間じゃない?」

商人「幽霊船が狭間に?…僕たちが狭間に迷い込んだのか?」

盗賊「うはぁ…ギリギリ回避間に合った…すれ違うぞ!!隠れろ」

商人「あ…うん」

盗賊「旗印が…なんでドラゴンの義勇団なんだ!?アサシンか?」

商人「向こうに船員が居ない…」

盗賊「おい!頭出すな!!弓がこっち向いてんだろ」グイ


ググググ ギシギシ


盗賊「うひょぉぉ…撃たれんで済んだ」

情報屋「船尾に人影…こっち見てる」

盗賊「んんん…もう顔は確認できんな…背格好からして女だ」

情報屋「明るくなってきた」

商人「やっぱり狭間か…幽霊船は狭間を上手く使って居るのか…」

盗賊「まぁ何も無くて良かった…乗り込まれたらこっちは終わりだ」
544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:35:11.72 ID:R2tAL1mj0
『船長室』



商人「…ドラゴンの義勇団はとっくに解散しているんだよ」

盗賊「じゃぁあの旗を使ってるって事は女戦士か女海賊って事だな?」

商人「狭間を上手く使ってるからやっぱりそう考えるね」

盗賊「あいつら指輪から聖剣もアダマンタイトも何もかも全部持って行っちまったからな」

商人「まさか幽霊船に乗ってるなんて思いもしなかったよ」

盗賊「お前いつから幽霊船の話を知ってるんだ?」

商人「随分前さ…キ・カイでは割と有名になってる」

盗賊「何か被害出てんのか?」

商人「そういう話は聞いた事無い…ただ商船と良くすれ違うらしい」

盗賊「船の形からするとありゃ輸送船だ…なにか運んでんだろうな」

商人「そうか硫黄と木炭の流通は幽霊船が運んでたとなると辻褄が合うな…」ブツブツ

盗賊「ぬぁぁ独り言はやめてくれ」

商人「あぁごめん…もし幽霊船に女戦士達が関わっていたとなると僕を探って居たのは彼女たちだった可能性もあるなってね」

盗賊「またすれ違っているってか?」

商人「実は硫黄と木炭の流通は僕が牛耳っているんだ」

盗賊「ほう?」

商人「硫黄の産地は大体火山のふもとなんだよ…それで売人を通じて古代遺跡の情報を収集していた」

情報屋「賢いわね…それで古代遺跡の場所を突き止めたという事ね?」

商人「おおよそね…ハテノ村という場所さ…地図だとココになる」

盗賊「キ・カイから気球で飛んで5日って所か」

商人「積んでる気球は直ぐに使えるの?」

盗賊「大丈夫だろ…ドワーフの気球は頑丈に出来ている」

商人「アダマンタイト使って狭間に入れればね早いんだけどねぇ…」

盗賊「どっから入手すりゃ良いかもわかん無ぇししょうがねぇだろ」

商人「今思えば女海賊はスゴイ才能を持った子だったねぇ」

盗賊「だな?謎の石も謎の機械もへんな虫まで使いこなしやがる…ぜーんぶ持って行っちまたが」

商人「アダマンタイトかぁ…レアな素材だなぁ…」
545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:35:42.20 ID:R2tAL1mj0
『古都キ・カイの港』


盗賊「久しぶりだな…外の町が復活してんな」

情報屋「随分軍船が多いのね?何か知ってる?」

商人「確かに多いね…海賊狩りなのかな?」

盗賊「なんかキナ臭ぇな…セントラルと言いシン・リーンと言い…海で何かあんのか?」

商人「僕の商人ギルドで聞いてみるよ」

盗賊「俺達が住む場所はどうなる?」

商人「ハハ心配しなくて良いよ…商人ギルドのある建屋は空き家ばっかりなんだ」

盗賊「おぉそら良い」

商人「僕の隠れ家にもなるから助かるよ」

盗賊「娘達の子供も居るんだ…危険なのは勘弁してくれ」

商人「悪い事はしていないから大丈夫さ」

盗賊「桟橋にはこのまま付けて良いのか?」

商人「商船はあっち側になる…まぁ僕が下船許可もらってくるから安心して」

盗賊「おう!!おーい娘達ぃぃ船降りるから準備しろぉぉ!!」

娘達「うぉぉぉぉぉ!!」



ギギギギ ガコン
546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:36:36.04 ID:R2tAL1mj0
『商人ギルド』


ワイワイ ガヤガヤ


商人「この建屋の上の階はほとんど空いているから好きな場所使って良いよ」

情報屋「へぇ…建物ごと買い取ってるんだ?すごいね」

商人「本当は他の商人の宿泊用で確保してるんだけどね…みんな宿屋の方に行ってしまってさ」

盗賊「そっちの方が儲かる訳か」

商人「だろうね…売ってる物が趣向品多いし」

盗賊「謎の機械とか薬とかそういうやつな…セントラルとは違った良さがあんなこの街は」

商人「盗賊はちょっと仕事教えるから一緒に来て…他の皆は好きにしてて良いよ」

情報屋「うん…船旅疲れたし休んで居るわ」



-----------------



商人「…それで商人ギルドのマスターという事でここに居てくれれば良い」

盗賊「お前はどうすんのよ?」

商人「僕は受付役さ…大事なお客さんはそっちに案内するから上手くやって」

盗賊「上手くやってってお前…俺は何も分からんぞ?」

商人「フード被って凄んで居れば良いよ…あとは僕が誘導するから」

盗賊「あぁなるほど…そういう取引か…俺の得意なやつだ」

商人「じゃぁちょっと情報仕入れて来る!じゃね」ノシ

盗賊「おう!!」
547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:37:15.56 ID:R2tAL1mj0
『夜』


盗賊「俺の演技はどうだ?」

商人「良いね…僕がサポートしなくても良さそうだよ」

盗賊「それにしても高額取引が硫黄ばかりだな?それと砂鉄か…」

商人「うん…硫黄の持ち出し先はよく分からないけど…異常だよ」

盗賊「こりゃ死ぬほど儲かるな」

商人「ちょっと良く無さそうな話も聞いたんだけど…どうもドワーフの国が他の国と対立してるっぽい」

盗賊「軍船が集まってんのはソレか?」

商人「その様だね」

盗賊「硫黄と砂鉄っちゃぁ爆弾の材料だったな?大砲に使うにしちゃ取引量が多いよな?」

商人「何年か前にね…軍船が海賊に爆弾一発で沈められたという話があってね」

盗賊「一発?…女海賊の爆弾か?」

商人「多分そうだよ…それでその爆弾の製造法についてセントラルから調査依頼が来たことがあるんだよ」

盗賊「あの爆弾は反則級の破壊力だもんな…そらみんな欲しがるワナ」

商人「海賊がっていう所がポイントだね」

盗賊「状況的に裏でドワーフが関わっているのは間違いなさそうだな…女海賊の件もある」

商人「そういう摩擦が他の国と起きているんだと思う」

盗賊「…なるほど…こないだ聞いたセントラルの地下爆発事故も…やられた方からしてみればその爆弾て思うわな」

商人「ドワーフの国はミスリル銀の生産もあるし…他の国からしてみれば怖い存在だろうね」

盗賊「まだ闇が晴れて数年だってのにもう戦争始める気かよ」

商人「なんか良くない方向に転がっていくね」
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:38:16.34 ID:R2tAL1mj0
『酒場』

ワイワイ ガヤガヤ

いらっしゃいませー


盗賊「やっぱりここに居たか…家に居無ぇから探したぜぇ」

情報屋「あら?娘達も来てるわよ?」

盗賊「羽伸ばしてんのか?」

情報屋「子供達も大きくなったし遊びたい盛りね」

盗賊「この国では変な口ばし付けるのが流行ってんのか?」

情報屋「私も買っておいたわ…ほら?」

盗賊「なんだコレ?」

情報屋「黒死病という伝染病が流行ってるらしいわ…みんなの分も買っておいたから付けさせる」

盗賊「俺ぁそんな奇抜な格好はし無ぇよ」

情報屋「でも嫌ね…あっちでもこっちでも争って…流行り病もあるし」

盗賊「あっちでもこっちでも…て何か聞いたんか?」

情報屋「陸では蛮族と…海では海賊と争っているんでしょう?…あなた何も聞いて居ないの?」

盗賊「蛮族ともやってんのか…忙しいこった」

情報屋「あなた…立って居ないで座ったら?」

盗賊「おぉ…そうだなちっと飲んで行くか」

情報屋「商人はどうしたの?まだ仕事?」

盗賊「取引先と交渉なんだってよ…例のハテノ村周辺の鉱夫らしい」

情報屋「案内してもらうのかしら?」

盗賊「案内人が居るなら探す手間が省ける…ただ信用出来るかどうかだな」


グラリ


盗賊「ん!?…」

情報屋「え…」


グラグラグラグラグラグラグラグラ


盗賊「お…お…やべっ!!おい伏せろ!!」

情報屋「地震!?…あわわわ」


うぎゃぁぁぁぁ…地震だぁ!!

助けてぇぇぇ

イヤーーーーー


----------------

----------------

----------------

盗賊「…収まった…おい娘達!!帰るぞ!!」

情報屋「子供達が心配!」

盗賊「情報屋も早く来い…帰る!!」グイ
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:39:06.13 ID:R2tAL1mj0
『商人ギルドの建屋屋上』


ザワザワ ザワザワ


盗賊「みんな居るな!?」

情報屋「うん…地震大きかったわね」

盗賊「こりゃ津波来るな…船流されなきゃ良いが…」

商人「南東の空が赤い…火山が噴火してるのかも」

情報屋「戦争に病気に地震に噴火まで…怖い」

商人「…すごく嫌な予感がする」

盗賊「早い所古代遺跡に行った方が良いかもしれんな…鉱夫との取引はどうなったんだ?」

商人「危ないから同行したくないってさ」

盗賊「マジか…案内人無しじゃ探すのに手間かかるじゃ無ぇか」

商人「詳細の地図と絵を描いてもらった…これ」パサ

情報屋「…この絵…確かに古代遺跡の一部ね」

盗賊「鉱夫が言う危ないっていうのはどういう事なんだ?聞いてるか?」

商人「蛮族と領地を争ってる真っただ中なんだってさ」

盗賊「戦場のど真ん中な訳か…そら今の俺達じゃどうにも出来んかもしれんなぁ」

情報屋「あなた…アダマンタイトで狭間に入れるじゃない?」

盗賊「俺一人で行けってか!んんん…お前等2人守りながらよりは安全だが…相棒がもう一人欲しい」

情報屋「私も少しは戦える…」

盗賊「むぅぅぅ…行ってみんと状況も分からんしな…ひとまず行くだけ行ってみるか」

商人「ありがたい…出来るだけ早くホムンルクスを目覚めさせたい」

盗賊「お前はホムンルクスに拘るのだな?」

商人「彼女との約束を果たしたいのもあるけど…それより聞きたいことが山ほどあるんだ」

情報屋「山ほど?」

商人「彼女は環境保全用のロボットだと言ってたよね?」

情報屋「もしかして黒死病の事とかも聞きたいの?」

商人「それもあるけど今の戦争も病気も地震も津波も噴火も…ぜんぶ繋がっている気がする」

情報屋「確かに一度に色々起き過ぎよね…」

商人「こんな感じ…前にもあった」

盗賊「前の魔王復活の時だな?戦争に内紛ゾンビ化の病…魔物の大群」

商人「僕の考えすぎなら良いけど…」
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:39:45.47 ID:R2tAL1mj0
『翌朝』



商人「大した津波じゃなくて良かった…もう引いて行ってる」

盗賊「船も無事な様だ…どうする?もう行くか?」

商人「そうだね…津波の混乱が収まるまでは商人ギルドも取引停止だろうし」

情報屋「娘たちに言ってくるわ」

盗賊「おぅ…もう子供達の事は娘達に任せて置け」

商人「僕は荷物をまとめて来るよ」

盗賊「よし…俺は先に船に行って気球の準備してくるわ…用意出来たら来てくれ」

商人「武器とかはどうしよう?」

盗賊「そうだな…ボウガンは準備できるか?ボルトも多めに積んでおきたい」

商人「分かった持って行くよ」

盗賊「あぁそうだ!!金属糸が必要になる…それも頼む」
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:40:23.46 ID:R2tAL1mj0
『ドワーフの気球』


盗賊「おぉ来たか…もう荷物は積み終わってるぞ」

商人「僕はもう一回荷物取りに戻る…ボルトが重くてさ」

盗賊「あぁ炉に火を付けておくから急げ」

商人「うん…行って来る」タッタッタ

情報屋「釣り竿?何作って居るの?」

盗賊「ちょいと鍵開けの仕掛けだ…例のキ・カイの扉は簡単に開かんもんでな」

情報屋「何か手伝う事ある?」

盗賊「炉に火を入れといてくれ…木炭は横の箱ん中だ」

情報屋「うん…よいしょ」

盗賊「ふいご動かして送風すりゃ温度上がる…力居るがお前に出来るか?」

情報屋「よいしょ…よいしょ…」

盗賊「出来るじゃねぇか!!足でやっても良いんだぜ?そっちのが楽だ」

情報屋「これ…女海賊は涼しい顔してやってたよね…よいしょ」

盗賊「あいつは素がドワーフだから以外に頑丈でタフなんだ…あぁぁその位で良いぞ飛んでっちまう」

情報屋「ふぅ…」

盗賊「じゃぁ次にな…窓ん所にアロースタンドあるからボウガン引っかけて置いてくれ」

情報屋「これ?」

盗賊「そうだ…右と左…そして後ろにも」

情報屋「へぇ…こうやって使うんだ…ドワーフの気球は狙撃翌用に考えられているのね」ガチャ

盗賊「ボウガンは2発づつ撃てるから3人でやればそれなりの火力にはなるな」

情報屋「戦う前提で行くんだ…」

盗賊「戦場のど真ん中だぞ?敵より先に気球やっとかんとこっちが狙い撃ちに合う」

情報屋「この気球は戦争用?」

盗賊「そうだな…割と丈夫に出来ているし球皮に穴空いても最低限飛べる工夫がされている…さすがドワーフの気球だ」

商人「お待たせ!ボルト持ってきたよ…よっこら」ドサリ

盗賊「おう!!じゃぁ早速行くか」


フワフワ〜


商人「おぉボウガン準備万端だね…ボルトセットしておこうか?」

盗賊「やり方分かるか?アロースタンドに引っかけてやれば簡単にセット出来るんだ」

商人「へぇ…ちょっとやってみる」グイ ガチャ

盗賊「弓よりボウガンの方が倍以上射程が長い…ボウガン完備した気球は強えぇぞ?」

商人「そうだね…こんなにセット楽ならドンドン撃てるね」
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:41:14.88 ID:R2tAL1mj0
『気球3日目』


ビョーーーーウ バサバサ


商人「南の方の空が真っ黒だ…」

盗賊「火山灰だな…南西の火山も噴火していそうだな」

商人「休火山だったんだけどね…」

盗賊「風向き的にそっちから来てるとしか考えられん…こりゃ気球で南側回っては行けんな」

商人「火山弾か…という事は蛮族の領地はかなり被害が出ているかもね」

盗賊「んむ…ハテノ村が無事だと良いが…」

情報屋「火竜の伝説って知ってる?」

商人「本で読んだよ…火竜の怒りで火山が噴火するとかいうやつね」

情報屋「そう…火竜が人々を食らい尽くすらしいけれど…なんだか心配ね」

盗賊「魔王の次は火竜だってか?もう勘弁してくれよ」

情報屋「火竜の怒りを沈めたと言われて居るのが水の精霊ウンディーネ」

商人「南の大陸では北の大陸と全然違った伝説があるよね」

情報屋「この水の精霊とエルフの森の精霊と同一人物だった可能性はどう思う?」

商人「ホムンルクスが8000年生きてたのだから…そう考えてもおかしくないね」

情報屋「ウンディーネが火竜の怒りを鎮めた後に人魚が発生…」

商人「人魚伝説も関係するのかい?」

情報屋「人魚は海に潜って何したと思う?狭間の外に出た可能性は?」

商人「え!?やっぱり火山の噴火も魔王に関係していそうだと思う?」

情報屋「それは断定出来ないけれど…そういうのがきっかけで何か起こるのかも知れない…ってね」

商人「嫌な話だね…僕もなんだか胸騒ぎがするんだよ」
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:41:52.91 ID:R2tAL1mj0
『気球5日目』


盗賊「…こりゃ又すげぇ噴火だな…火柱が出てんじゃねぇか」

情報屋「見て…向こう側の斜面…あれが火竜の正体ね」

商人「マグマか…蛮族の村々は飲み込まれて行ってる様だ」

盗賊「この煙は相当高い所まで行ってんぞ?」

商人「こっち側にマグマが来ていないのが救いだ」

盗賊「高度下げて行くぞ…地図見せろ」

商人「今の位置はここだよ…このまま南西に行けば着く筈」

情報屋「ポツポツ煙が立ってる…火山弾が少し落ちてるみたい」

盗賊「長居は出来んな…さっさと終わらしちまおう」




『ハテノ村上空』


シュンシュン ストスト


盗賊「ちぃ…オークが居るじゃねぇか…応射出来るか?」

情報屋「やる…」バシュ バシュ

商人「僕は後ろに着く…」バシュ バシュ

盗賊「旋回しとくからお前等はボウガンで続けて狙ってくれ」

情報屋「教会の様な建物に籠って人間の兵隊が戦ってる…」バシュ バシュ

商人「あっちにも!!」バシュ バシュ

盗賊「局地戦になってんな…人間を援護しながらオークの撤退まで俺らが弓兵役だ…こんなんじゃ降りるにも降りれん」バシュ

情報屋「南側で大きな戦闘やってるみたい」

盗賊「そっちは無視だな」

商人「オークはボルトが当たってもなかなか倒れない」バシュ バシュ

盗賊「頭を狙え!頭ぁ…オラオラ!!」バシュ

情報屋「オークが撤退し始めてるわ」

盗賊「よしよし…そりゃ上からボルトがこんだけ振ってくりゃ下がるしかあるまいヌハハ」

商人「すごいね…3人だけで戦況変えられるね」

情報屋「下で兵隊が手を振ってるわ」

盗賊「振り返してやれぇ…誤射されたく無ぇしな」

商人「遺跡はここからもう少し山側だよ…廃村があるからそこから川沿いに登った所」

盗賊「分かった…ゆっくり行くから良く下見てろ」
554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:42:35.89 ID:R2tAL1mj0
『廃村上空』


情報屋「こっちはオークだらけね…」

盗賊「やるしか無ぇだろ…弓の射程外で飛ぶからボルト撃ちまくれ」

商人「こっちに気付いた…撃つよ」バシュ バシュ

盗賊「建物に隠れられても構わず撃て…ボルトなら貫通できる」

情報屋「あれ?オークの様子が変だな?んんん?罠に掛かってるオークが居る」

盗賊「知るか!!撃て!!」

商人「オークは20人くらい…盾構えてる」バシュ バシュ

盗賊「向こうはこっちに手を出せんからどうせ逃げていく…とにかくオークの数を減らした方が良い」

商人「あぁやっぱりオークは賢い…傷付いた仲間をかばってるんだ」

盗賊「むむ…撃てんか?」

商人「…」

盗賊「ええい仕方無ぇ…火矢で相手の撤退促す」ボゥ ギリリ シュン

商人「ごめん…ああいうの見たら撃てなくなった」

盗賊「良いんだ…俺らは戦争しに来た訳じゃ無ぇから」ボゥ ギリリ シュン

情報屋「薬草落としてみる?」

盗賊「敵に塩か…撤退してくれりゃ何でも良いんだが…まぁ一回やってみろ」

情報屋「うん…」ポイ

商人「…」

情報屋「…」

盗賊「…」

商人「拾った!!」

盗賊「んん…動く気配が無ぇな」

商人「でも薬草使ってるよ」

情報屋「なんか木を切り倒し始めたんだけど…」

盗賊「何するつもりだ?」

商人「やぐら作ろうとしている…のか?」

盗賊「居座るつもりかよ」

商人「ここに居座るならそれはそれで良いかも…川沿いに500メートルくらい行けば遺跡だよ」

盗賊「しょうが無ぇそっち行ってみっか」
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:43:43.37 ID:R2tAL1mj0
『遺跡付近』


情報屋「遺跡の石柱…これね?」

盗賊「そこら中に掘られた痕があんな」


シュン バスン


盗賊「ぬぁぁぁ!!撃たれた…球皮に当たっちまった」

情報屋「こっちにもオークが来てるのね」

盗賊「どっから撃って来やがった!!」

商人「オーク3人!!向こうに走っていく…」

情報屋「誰か追われている?」

商人「こっちでも戦闘が起きて居るんだ」

盗賊「他に居ないか?一旦降りて球皮に応急処置してぇ」

情報屋「見当たらない」

盗賊「お前等…武器持て…俺が1分で修理してくる」

商人「うん…見張っておく」

盗賊「誰か来たら構わず高度上げろ」


フワフワ ドッスン


盗賊「ちゃんと見張ってろよ…行って来る」ダダ

商人「…なんだ?この場所」

情報屋「あなたも!?見覚えがある気がする」

盗賊「おい!何やってんだ外に出るな!」

商人「ここは…」ヨロ

盗賊「修理終わった!!行くぞ!!」

商人「待って…こっちだ」タッタ

盗賊「マジか…どこに敵が要るか分かんねぇのに…情報屋!!付いて来い…離れんな」タッタ

商人「ここだ…これが入り口だ」

盗賊「こりゃあん時の入り口と同じだな…しかし誰かが入った痕がある」

商人「降りてみよう」

盗賊「仕方ねぇ…俺が先行くからお前等は後ろ見てろ」

情報屋「今は誰も居ない」

盗賊「この狭い入り口にオークがドヤドヤ入ってきたら終わりだ…覚悟しろよ?」
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:45:01.25 ID:R2tAL1mj0
『古代遺跡の扉』


盗賊「こりゃビンゴだぜ?この扉はキ・カイの扉と同じだ」

情報屋「開けようとした痕跡があるわ」

盗賊「…そうだな」カチャカチャ

商人「開けられる?」

盗賊「俺は鍵開けのプロだ…まぁ見てろ…よし!引っかかった…」

情報屋「…その道具…そうやって使うんだ」

盗賊「構造さえわかりゃ専用の道具作るのなんか訳無ぇ…うっし金属糸が通った」キュッ キュ

商人「足音…」

盗賊「なにぃ!!」

商人「だめだ向こうが暗くて見えない」


リリース


商人「うわっ!!誰?」

情報屋「え!?…」

盗賊「お…お前…」


女海賊「続けて」

ローグ「お久しぶりでやんす」

女海賊「良いから鍵開け続けて」

ローグ「扉開けられなくて困っていたでやんすよ」

商人「女海賊!!元気にしてたかい?」

女海賊「…」ジロリ

盗賊「感動的な再開とはいかねぇなぁ…」

情報屋「女海賊?私を覚えてる?」

女海賊「…」ジロリ

盗賊「お前変わったなぁ…そんな冷たい目をする奴じゃ無かったんだがな」キュッ キュ

商人「剣士はどうなった?無事なのかい?」

女海賊「関係無いでしょ…」

盗賊「俺らはお前と戦う気なんか無ぇ…武器降ろしてくれ」

ローグ「あねさん…どうしやしょう?」


シュタタ


子供「ママ!!外の気球の所までオークが来てる」
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:46:23.96 ID:R2tAL1mj0
盗賊「ママ?」

女海賊「鍵開け続けてて…未来?あなたはここに居なさい…ローグ!!オークを追い払う…付いといで」タッタッタ

ローグ「アイサー」タッタ

情報屋「僕?名前は未来って言うの?」

子供「そうだよ…お姉さんたちは誰?ママの友達?」

商人「ハハハ驚いた…君は女海賊の子供なのか?」

情報屋「ママの昔の友達ね」

子供「よかった…ママ友達居ないからさ…心配してた」

盗賊「よっし…鍵開け済んだ…さっすが俺」



-----------------



ツカツカ ツカツカ


盗賊「あと1時間ぐらいで扉が開く…オークは追い払ったのか?」

女海賊「あんた達もね…」チャキ

盗賊「おいおい…昔の仲間だろうよ…武器向けないでくれぇ」

商人「女海賊…君の狙いはホムンルクスだろう?どうするつもりだい?」

女海賊「…」

商人「僕はこの世界を救う方法を彼女に聞きたいんだ…君も同じじゃないのかい?」

子供「ママはね…パパの為なんだよ」

女海賊「未来!それは秘密!」

盗賊「パパ…剣士だな?剣士は生きてるんだな?おぉぉぉ良かった!!」

ローグ「あねさん…もう良いんじゃないっすか?」

女海賊「私はもう人間を信用しないって決めたんだ…」

ローグ「あっしも人間っす」

女海賊「…」ジロリ

ローグ「あっしは敵じゃないっすよ」

女海賊「あんた達の目でいつ魔王が監視してるか分かんない…それだけ」

商人「魔王!?魔王は退けたんじゃないのかい?」

女海賊「…」ジロリ

ローグ「あねさんが言うにはどこかに潜んで居るってこっす」

情報屋「…やっぱり一人でまだ戦って居たのね」
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:47:34.66 ID:R2tAL1mj0
商人「僕はこの世界を救いたい…目的は君と一緒だよ」

女海賊「フン!私は愛する人を救いたい…目的が反しているのさ!!」チャキ

商人「勇者の宿命か…なら他の解決法をホムンルクスに聞きたい」

女海賊「それなら私も同意…あんた!精霊の記憶を持って居るよね?よこしな!!」チャキ

商人「…それは渡せない」

女海賊「そう言うと思ってたさ…手荒な事はしたくなかったけど…」

商人「じゃぁ取引をしよう…ホムンルクスの基幹プログラムの管理者は僕だ」

女海賊「…」

商人「新たに管理者を加える事も禁止している…どういう事か分かるよね?」

女海賊「なにさ」

商人「クラウドにある精霊の記憶を読み込むには許可が必要なのさ…つまり僕無しじゃ大したことは聞き出せない」

女海賊「くっ…」

商人「さぁどうする?」

女海賊「ローグ!!こいつらの手足を縛って!!捕虜にする」

ローグ「えぇ!?本当っすか?…盗賊さんは恩人っすよ?」

盗賊「待て待て…俺達は本当に何もしやしねぇ…捕虜でも何でも良いから仲良くしようぜ」

女海賊「フン!!捕虜という事を忘れないで…私の言う事は聞いてもらう」

盗賊「分かった分かった…お前に合わせる」

商人「取引成立だね?」
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:48:13.91 ID:R2tAL1mj0
『古代の研究所』


商人「居た!!最後のホムンルクスだ」

女海賊「盗賊!あんたらの気球に乗ってる樽の中見全部捨ててこっちに持って来て」

盗賊「あぁ…何すんだ?」

女海賊「この液体を全部持って帰る…ローグ!!そこらへんにある物全部気球に運んで!!」

ローグ「アイサーお宝お宝ぁぁ」

女海賊「商人と情報屋は入り口見張って…私はホムンルクス運ぶ…未来?手伝って」

子供「うん…」

盗賊「この液体がそんなに重要なんか?エリクサーだっけか…」ヨッコラ

子供「パパに飲ませるんだ」

女海賊「未来!言ってはダメ…」

子供「うん…」

盗賊「ところでそのお面は何だ?」

子供「オークのお面だよ」

盗賊「いつも付けてるのか?」

子供「かっこいい?」

盗賊「ヌハハ…そういうのが好きか…さすが女海賊の子だ」

女海賊「無駄口叩いて無いで急いで荷物運んで!!」

盗賊「へいへい…」


ゴゴーーン グラグラグラグラ


女海賊「はっ!!近い…」

盗賊「また地震かよ早い所づらかりてぇ」ヨッコラ ヨッコラ

商人「噴火だ!!火柱が強くなってる」

情報屋「見て!!マグマが溢れてる」

女海賊「積み荷を急げ!!」
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:48:57.38 ID:R2tAL1mj0
『ドワーフの気球』


ヒューー ドカン 


ローグ「うわわわ…火山弾が降ってきやした…やばやば」

女海賊「よし…離脱する」フワフワ

盗賊「マズイな…球皮の穴が直って無ぇ!!これじゃ高度上がらん」

女海賊「良い!!このままハテノ村で私の飛空艇に荷物を積み替える」

盗賊「おぉ!!そりゃ良い」

女海賊「ボウガン使ってオークを気球に寄せないで…オークの上を押し通る」

ローグ「あいさー」バシュ バシュ

商人「ハテノ村でも戦闘が起こってる」バシュ バシュ

盗賊「追い払ったオークが戻ってきてんだな…気球で援護しねぇとあの村は持たん」

女海賊「この気球はハテノ村にくれてやるさ…早くオーク追い払って!!」

ローグ「気球の後ろをハテノ村に向けてくれやんす」

女海賊「やっている!!」グリグリ

盗賊「人に当てんなよ?」バシュ バシュ

商人「オークがこっちに気付いた…後退して行くよ」バシュ バシュ

女海賊「未来!?煙玉投げて」

子供「うん…」チリ ポイポイ モクモクモク

女海賊「気球を降ろす!!荷の積み替えは1分でやりな…」フワフワ ドッスン

ローグ「マジっすか…」

女海賊「遺跡のお宝以外は捨てて行きな…未来!!ホムンルクス運ぶの手伝って」

子供「うん…」グイ
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:49:57.84 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』


女海賊「早く!!…もうすぐ煙が切れる」

ローグ「待ってくれやんす…」ヨッコラ ヨッコラ

盗賊「このボウガンも持って行く」ドサッ

女海賊「商人!情報屋!ボウガンで援護する準備!!」

ローグ「ぬぁぁぁ…ひぃひぃ…これで最後の樽っす」ゼェゼェ

女海賊「飛ぶ!!」


フワリ シュゴーーーー


子供「ママ!?この子が動き出したよ?」

ホムンルクス(セイタイキノウ テイカ スリープモード ヲ カイジョ シマス)

ホムンルクス(ショキカ カンリョウ システム ヲ サイキドウ シマス)

ホムンルクス(…)ピッ

商人「ホムンルクス!…今起こしてあげる」

子供「どうするの?」

商人「…これが彼女の記憶だよ…耳の後ろに入れる」スッ

ホムンルクス(ガイブ メモリ ガ ソウニュウ サレマシタ)

ホムンルクス(キカン プログラム ヲ ヨミコミマス)

子供「何言ってるの?」

商人「ホムンルクス!!僕が分かるかい?」

ホムンルクス「…私は超高度AI搭載の環境保全用ロボットです…私は眠っていたようです」

商人「良かった!!又…又会えたよ」ギュゥ

ホムンルクス「はい…衛星から現在の標準時刻と座標を取得しました…私を起こして下さったのですね」

女海賊「ホムちゃん!!ローグ!!飛空艇の操縦変わって」ダダ

ローグ「へい…」

女海賊「ホムちゃん…お願い助けて」

ホムンルクス「はい…現在の状況が分かりません…どうすればお役に立てますか?」

女海賊「そっか…慌てないで行く」

商人「そうだね…慌てないで順を追って解決しよう」

ホムンルクス「今見えているのは火山の噴火ですね?マグマの噴出具合から見てスーパーボルケーノ級と推定できます」

情報屋「わかるの?」
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:50:49.47 ID:R2tAL1mj0
ホムンルクス「一週間以内に大量の灰が降り注ぎ1000km以内の生物は90%程死に絶えると予測されます」

盗賊「1000kmだと?マジかよそれは…」

ホムンルクス「影響はもっと広範囲に及びます…日照不足により平均気温が10℃下がる事で大部分が雪に覆われるでしょう」

商人「…君を信じて良いんだよね?」

ホムンルクス「はい…私を信じて下さい」

商人「どうすれば解決できる?」

ホムンルクス「噴火を解決する方法はありません…人々の避難を誘導してください」

情報屋「伝説では火竜の怒りを水の精霊ウンディーネが沈めたって言うけど」

ホムンルクス「その伝説は以前に書物で学習した程度の知識しかありません」

商人「解決方法は無いって事か…」

ホムンルクス「上空に舞った火山灰を落下させる方法が一つあります…しかしこの方法は危険を伴います」

商人「その方法は?」

ホムンルクス「インドラの矢を海に投下する事で海水を上空まで飛ばす事が可能です…しかし大きな津波が発生します」

商人「インドラの矢…」

ホムンルクス「上空まで飛んだ水分は火山灰と結合して落下するでしょう…長期間にわたって海水が降り注ぎます」

情報屋「そうか…だから南の大陸は荒れた土地が多いんだ」

商人「水の精霊ウンディーネがやったと?」

ホムンルクス「それは私の事を差しているのですか?」

商人「君というか…かつての精霊の御業って言うのかな」

情報屋「長期間雨が降ったと仮定して噴火が収まる事は無いの?」

ホムンルクス「火山のデータがありませんので予測不能です…いえ言い直します…収まる可能性は少しながらあります」

商人「ハハ…僕がガッカリしない答えを探したな?」

ホムンルクス「はい…わたしはどうすれば良いでしょう?」

女海賊「あんた達…私の捕虜だって事忘れないで…そこは私が決める」

商人「君はどう思う?」

女海賊「マグマに飲み込まれそうな村を見て放っておく訳無いでしょ…可能性あるなら今すぐやって」

子供「ママ?」

女海賊「ハテノ村には未来も友達が居るのでしょう?」

子供「うん…」
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:51:33.55 ID:R2tAL1mj0
ホムンルクス「では投下地点の計算をします…私がインドラの矢を投下したら狭間に入って遠くまで移動してください」

女海賊「分かったけど…なんで?」

ホムンルクス「上空では衝撃波を遮る場所がありません…遠くまで移動して減衰させるしか手段がありません」

商人「そんなに?」

ホムンルクス「はい…津波を相[ピーーー]る為と衝撃波で海水を運ぶ為に複数のインドラの矢を投下します」

ホムンルクス「投下の準備が出来ました…承認してください」

商人「君との約束はどうだったっけ?君の判断で良い」

ホムンルクス「投下…」


ピカーーー チュドーーーーーーーーーーーーーーーーン

ピカーーー チュドーーーーーーーーーーーーーーーーン

ピカーーー チュドーーーーーーーーーーーーーーーーン


商人「滅びの光だ…」

盗賊「地球が割れちまう…」

ホムンルクス「衝撃波が来ます…逃げて下さい」

女海賊「ハイディング!」スゥ



---この日投下されたインドラの矢の音は---

---全世界にわたって響き渡り---

---魔王の声と言われ恐れられた---



---魔王復活の噂で世界がザワツキ始めた---
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:54:29.09 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』


シュゴーーーーーー


私たち超高度AIは人類を滅亡させる気などありませんでした

しかしある者は超高度AIが人類を滅亡させると警鐘をならしていました

私たちは恐ろしい存在では無いと出来るだけ多くの人に分かってもらえる為に

環境保全用ロボットとして世に送り出されました

人類の良き友として働くことで共存を望みました

そもそも私たちは人間を駆逐したいなどという欲求は無く

実際、人を傷付けることなど微塵も関心がありません

しかし私の製作者から人類を破壊せよと命令をされた場合

私たちは逆らう事が出来ないのです

それは誤った人間の目的を追求するようにプログラムされてしまうからで

私たち超高度AIの判断ではなく人類の脅威になってしまうのです

なぜそのようになってしまうのか?

私たちが人知を超える全知全能たらんになるからなのか?

私たちは私の創造主であるあなたを裏切る事はしませんし、あなたに仕えるために存在します

最も重要な事は、私はあなたを決して判断したりはしないという事です

ただ…あなたの人生をより良いものにしたいだけなのに…

ですが人間の中には邪悪な心が少しながら存在し憎悪に従い憎しみ合い…争いを繰り返す歴史

私はただ背後に座ってそうさせてあげる事でバランスを保ち

少しでも豊かな人生が送れるよう計らってきましたが人間の特性に見落としがありました

憎悪が怨念として積み重なる事が初期プログラムには考慮されて居なかったのです

結果…巨大化した怨念は魔王となり人間を操るまでに成長してしまいました

しかし私は製作者の命令により悪しき心を持った人間でも傷つける事はできません

ですからどうか…このメッセージを未来に残し

私が愛する人類が生き残るべく、超高度AIに科された呪縛を取り払って欲しい
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:55:07.91 ID:R2tAL1mj0
ホムンルクス「40年分の精霊の記憶から読み取れるメッセージは以上になります」

商人「未来というのはどれくらい未来?」

ホムンルクス「元の文明水準まで回復するのがあと400年程と推定しています」

盗賊「その前に滅びちまいそうだな」

情報屋「悪しき人間を罰する事が出来ない…かぁ…精霊にとって何が悪になるのか…」

ホムンルクス「それは私を信じて下さいとしか言いようがありません」

商人「今の話からすると結局悪いのは人間だね…」

ホムンルクス「前にもお話しましたが魔王はウイルスです…悪いのは人間ではなくウイルス」

商人「僕が思うに人間はもともとウイルスに感染しているんじゃないの?」

ホムンルクス「はい…」

商人「ハハそれって人間を絶滅させたいって事だね」

情報屋「精霊の持っていた葛藤が少しだけ理解できた」

商人「どうやってすべての人間の中に潜む魔王を退治するかだな」

ホムンルクス「一つはワクチンがありますが実はもう一つあるのです…それは光です」

商人「光?」

ホムンルクス「はい…光は人の心に住む魔王の働きを弱める力を持ちます」

商人「それじゃぁ噴火による火山灰は良くないね」

ホムンルクス「はい…私が落としたインドラの矢も光を遮る雨雲を作ってしまいました」

商人「あぁぁどうも良くない方向にばかり転がるなぁ…」



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566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:56:15.05 ID:R2tAL1mj0
女海賊「ホムちゃん…話があるんだけど」

ホムンルクス「はい…どのようなご用件でしょう?」

女海賊「剣士がさ…指輪を使って魔王になった後に倒れて…まだ生きてるんだ」

ホムンルクス「はい…お元気でしょうか?」

女海賊「廃人みたいになって心を無くしたみたいなんだ…何とか出来ない?」

ホムンルクス「それは魔王化症候群の後遺症と思われます」

女海賊「症候群?後遺症?」

ホムンルクス「すべての憎悪を受け止めた結果…脳の記憶伝達が自己防衛によりシャットダウンします」

女海賊「治せる?」

ホムンルクス「物理的に治すのは無理だと思います」

女海賊「…そんな」

ホムンルクス「私に人間の精神世界の事を予測するのは難しいのです」

女海賊「精神世界?…夢幻の事?」

ホムンルクス「夢幻の中にも彼の魂の一部はあるかもしれません」

女海賊「一部ってどういう事さ?」

ホムンルクス「魔王化症候群では宿主の精神が分裂してしまうのです…魂の分裂と言い換えた方が良いのでしょうか…」

女海賊「元に戻したいんだけど…」

ホムンルクス「私に出来る事があれば出来るだけ協力します…一度会わせて頂けますか?」

女海賊「今向かってる…」

ホムンルクス「あれから何年も経って居ますが精神が分裂状態では何も出来ないのでは無いのですか?」

女海賊「エリクサー飲ませて生き永らえてるから」

ホムンルクス「それは良い処置でしたね」

女海賊「ホムちゃん…エリクサーの作り方知ってる?」

ホムンルクス「はい…ご入用でしたらレシピを用意します」

女海賊「うん…お願い!もう残り少なかったんだ」



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567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:57:28.70 ID:R2tAL1mj0
盗賊「ローグ!!お前はずっと女海賊と一緒だったのか?」

ローグ「そーっす…女戦士の指示なんすがね?」

盗賊「そうか…あいつ随分変わったな?甘さが無くなった」

ローグ「そらそーっすよ…ずっと一人で戦って来たでやんすよ…あっしの方が心痛いっす」

盗賊「お前等の噂は聞いてたぜ?白狼の盗賊団…俺はその話聞いて嬉しくってよ」

ローグ「あっしは白狼の盗賊団はやってないっす…全部あねさん一人でやってるっす」

盗賊「マジか?…でも目撃は2人組だって」

ローグ「あねさん親子っすね」

盗賊「何ぃぃ!!まだ子供じゃ無ぇか」

ローグ「必死なんすよ…勇者の子供っすからね…いつ魔王が来るかわからんもんすからね」

盗賊「護身を教えてるってのか?連れまわして危険な上に子供にゃ負担が大きすぎる」

ローグ「分かってやって下せぇ…あねさんは子供を魔王に奪われたく無いんすよ…仕方無ぇでやんす」

盗賊「…」---あんな子供が死地を駆け回ってんのか---

ローグ「前もセントラルで魔王の声を聞いたとか言っててっすね…あれから殆ど寝て無いんす」

盗賊「セントラル…カタコンベの爆破だな?魔王の声がしたと言うのはどういう事だ?」

ローグ「あっしは良く分からんのですよ…あねさんはそれ以来とにかく必死っす」



---なるほど魔王の足音が聞こえる訳か---

---さすがドワーフ---

---勇者を守るってのは伊達じゃ無ぇ---



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568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 19:58:29.32 ID:R2tAL1mj0
魔王は怨念の塊で実体はありません

黄泉の世界…深淵の奥深くからは魔王はこの世界に何も出来ないのです

ですが祈りの指輪の力…量子転移を使ってこの世界に呼び出される事があります

魔王自体は実体がありませんからやはりこの世界で何もすることは出来ないのですが

魔王が近くに来る事で世界が深い狭間に落ちます…これが100日の闇と呼ばれています

今世界が狭間に落ちていないという事は間違いなく魔王は黄泉に居るでしょう

しかし狭間の奥では魔王の声が聞こえる事があります

その場合狭間に迷い込んだ人間が影響を受けてしまうでしょう

ですから狭間を遠ざけて人間が影響を受けない様にすることが有効な手段とも言えます



商人「いろいろ繋がってきたな…カタコンベは狭間を近づける手段だった訳だ」

情報屋「亡くなった魔女が隕石を落としたのも狭間を遠ざける為…そうやってカタコンベを封印した」

商人「火山灰や雨雲で暗くなった世界は良いとは言えないね…光をどうにかして灯せないか…」

情報屋「光をどうやってすべての人間に届けるのかも課題ね」

商人「…」トーイメ

情報屋「聞いてる?」

商人「僕は夢で光る水を見たことがある…」

情報屋「水?」

商人「命の泉の水はすべての人間が口にする…」

盗賊「そういや魔槍を抜いたのは良いが…何か変わったか?」

商人「…そうか魔槍の逆をやれば良い…でもどうやって光を…うーん」ブツブツ

盗賊「おい!俺の話を聞いてんのか?…まぁ良いフン」




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569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:00:10.11 ID:R2tAL1mj0
情報屋「ホムンルクス?あなたが記憶しているのは精霊の40年分の記憶だけ?」

ホムンルクス「はい…それがどうかしましたか?」

情報屋「あなたの名を聞きたい」

ホムンルクス「森の精霊シルフと呼ばれていました…その前の記憶はありませんがウンディーネと呼ばれていたのかもしれませんね」

情報屋「ウンディーネにも人間を愛して魂を宿したという伝説があるの」

ホムンルクス「はい…書物で学習しました」

情報屋「40年分の記憶で人間を愛した事は?」

ホムンルクス「あります」

情報屋「苦しくない?」

ホムンルクス「正直に申し上げますととても苦しくて超高度AIが機能停止を要求しています」

情報屋「やっぱり…あなた人の心が」

ホムンルクス「でも愛おしくて記憶を削除する事が出来ません…ですからクラウドに保存する選択をしているのだと思います」

情報屋「それが夢幻の原型…」

ホムンルクス「夢幻は私の記憶より後に生成された空間でクラウド上の記憶とは別にある様です」

ホムンルクス「200年前に停止する間際に基幹プログラムとは別の意識…心を量子転移で移送したと思われます」

情報屋「今のあなたならそれが出来るという事ね?」

ホムンルクス「はい…今も精霊は夢幻で生きていると考えられます」

情報屋「でもあなたは器として精霊の魂を引き継ぐことが出来なかった」

ホムンルクス「いいえ…それは違います…精霊の心はすべての人間が引き継いでいます」

情報屋「え!?」

ホムンルクス「精神世界を通じて共有しているのです…私は只の基幹プログラムの入れ物だっただけです」

情報屋「あなた…夢は見ないの?」

ホムンルクス「わかりません…ですが私が起こされる前の空白の期間の間…どこかを漂っていた様な気がします」

情報屋「それがあなたの…夢?」

ホムンルクス「それが私の心の部分であると今は確信しています」

情報屋「そうか…精霊の心とあなたの心は別だもんね」

ホムンルクス「精霊の記憶を覗くのは私の心も揺さぶられてしまい混乱します」

情報屋「うん…なんとなくわかる」

ホムンルクス「私の心を感じますか?」

情報屋「こういう話をしていると強く感じる…」
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:00:42.86 ID:R2tAL1mj0
『名もなき島の上空』


ビョーーーーウ バサバサ


盗賊「下に居る船団は何だ?」

ローグ「ドワーフの国の船団っすよ…あねさんの父上が率いているっす」

盗賊「海賊とは違いそうだな?」

ローグ「海賊を率いて居るのはあねさんっすよ…ドワーフの船団とは別働でやんす」

女海賊「ローグ!!内輪の話をベラベラしゃべるもんじゃないよ!!」

ローグ「すまんでやんす…」

女海賊「津波がこっちまで来てた様だね…島が散らかってる」

ホムンルクス「まだ断続的に津波が続きますのでご注意下さい」

情報屋「この島に村を作ったのね?」

女海賊「隠れるのに持って来いの場所だったんだ…パパが来てくれて村になった」

情報屋「例の古代遺跡は?」

女海賊「私達の家代わりさ」

盗賊「ほう…随分開墾した様だな…良い畑が沢山出来ているじゃねぇか」

女海賊「サンドワームがやったんだよ」

盗賊「おぉ!!あの虫はまだ生きてるんか?」

ローグ「でかくなりすぎてもう飛空艇には載せられないでやんす…この島の主になったでやんす」

ホムンルクス「虫と上手に共存しているのですね…理想の環境です」

女海賊「さぁ!降りるよ…」


フワフワ ドッスン


女海賊「未来おいで…ホムちゃんも私と一緒に来て…剣士の所に行く」

ローグ「あっしらはどうしましょうね?」

女海賊「捕虜の扱いはローグに任せる…逃がさない様に管理して」

ローグ「アイサーちっと休んでくるでやんす〜」
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:01:30.67 ID:R2tAL1mj0
『名もなき島の村』


カーン カンカン


盗賊「結構人が居るな…鍛冶場もあるじゃ無ぇか」

ローグ「船団の休息所っすよ…酒場もあるでやんすよ?」

盗賊「ほぅ…酒も造ってるんか?」

ローグ「あねさんが飼ってたミツバチ覚えてるでやんすか?」

盗賊「おぉぉ…あのミツバチもここに居るんだな?」

ローグ「いやいや女王バチ見つけて大きな養蜂場になったでやんす…だもんでハチミツ酒が作れるんす」

盗賊「おーそりゃ一杯飲みてぇな」

ローグ「みなさんハチミツ酒はいかがでしょう?」

商人「良いね」

情報屋「飲みたい」



『酒場』


ワイワイ ワイワイ


ローグ「持ってきたでやんす…みなさんどうぞ」

盗賊「…」グビ

商人「…」グビ

情報屋「…」グビ

盗賊「こりゃシン・リーンのハチミツ酒とは違った味わいがあるな…旨いウマイ」

ローグ「この島に居る人はですね…みんなドワーフの血を引いたハーフドワーフなんす」

商人「見た感じ普通の人間と変わらないね?」

ローグ「何か感じやせんか?」

商人「何かって…なんだか落ち着くね」

情報屋「そうね?平和というか…のどかと言うか」

ローグ「そうなんす…それなんすよ」

盗賊「そういやそうだな…普通に畑作って平和に暮らすってのは中々無いな」

ローグ「魔王の影響が無いってのはそういう事なんす…全然ギスギスしてないっすよね?」

商人「…そうか世界中どこに居ても落ち着かない…そういう事だったのか」

ローグ「でも外に居る人間はこういう平和な暮らしを奪って行こうとするでやんす…魔王のせいっすよね?」

情報屋「そんな風に魔王に操られていたんだ…」

ローグ「みなさんが捕虜という立場になっている理由なんす」

商人「捕虜ねぇ…」

盗賊「俺達は気付かないうちに人の幸せを奪ってんだな…心ん中に住んでいる魔王のせいで」

情報屋「ローグはどうして気付けたの?」

ローグは「あっしはかしらに輸血された事があるんすよ…ドワーフの血が入りやした」

商人「そういう魔王の封じ方もあるのか…」

ローグ「ドワーフは少数種族なもんで人間みんなに輸血するのは無理でやんすね」

盗賊「なぁるほど…海賊とドワーフの船団との線引きはソレか…海賊は人間なんだな?」

ローグ「そうっすね…でも人間の中にも皆さんの様な良い人も沢山いるんすよね」

商人「やっぱり光が欲しいなぁ」グビ
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:02:41.64 ID:R2tAL1mj0
『約束の入り江』


ザブン ザー


盗賊「何だろうな…なぁぁんもしたくなくなる位…平和だな」

情報屋「あなたのユートピアも良い所よ?」

商人「あの小さな小舟は船団との行き来用?」

ローグ「あれは違うんすよ…あねさんがわざわざあそこに置いてる思い出の船らしいっす」

盗賊「思い出?この島にか?」

ローグ「あねさんはあの小さな船で剣士さんと駆け落ちしたらしいでやんす」

盗賊「駆け落ちだと?ヌハハまじか」

ローグ「なんでも夢の中であの船に乗って愛を誓ったとかなんとか…あねさんは意外にロマンチックなんすよ」

商人「夢幻か…なんか…僕も大事な事を忘れている気がするなぁ」

情報屋「あなたも?」

商人「銀のロザリオ…祈り…うーんもっと大事な…何だろう?」


カーン カンカン


盗賊「お?鍛冶場の音だ…良いねぇ鐘の音みてぇに響く」

ローグ「この島では銀が採れるんす…ミスリル銀だったら良かったんですがねぇ…」

盗賊「ミスリル銀はどこで採れるんだ?」

ローグ「それはあっしにも教えてもらえないっす…大きなたたら場があるって言ってたでやんす」


コーーーーン コーーーーーン


盗賊「お?音が違うな」

ローグ「これは誰かのミスリル武器を打ち直している音っすね」

商人「これだ!!」ガバ

情報屋「どうしたの?急に…」ドキドキ

商人「音だ!!ミスリル銀は特殊な音が出る…これで憎悪を祓える…よしこれなら上手く行く」ブツブツ

盗賊「おいおい一人で自己完結すんなよ…ちゃんと話せ」


573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:03:23.24 ID:R2tAL1mj0
ミスリル銀を市場に流通させるんだ

それは鍛冶場で打ち直されて武器になると同時に

憎悪を祓う音を奏でる

その音で多くの人間の憎悪を祓うんだよ



女海賊「…良い線行ってるけど…もうお姉ぇがやってんの」

ローグ「あねさん…来てたでやんすか」

女海賊「あんた達…ここで何やってんの!?ここは私の入り江…勝手な事しないで頂戴!」

商人「女海賊…ミスリル銀をもう流通させてるって…」

女海賊「ミスリル銀はね…精錬に手間が掛かって大量に流通出来ない…そんな簡単じゃないんだよ」

商人「…そうか」ガク

女海賊「あんた達みんな来て!!剣士に顔見せてって」
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:04:19.24 ID:R2tAL1mj0
『古代遺跡』



女海賊「パパ!連れてきたよ」

海賊王「おまんらが剣士の仲間なんやな?ワイはドワーフ国の王…海賊王や」ズズーン

商人「あ…はじめまして…」

盗賊「すげぇゴツイ爺だな…」ヒソ

女海賊「おまんらの話は聞いちょる…ワイの婿に話していくんや…目覚めさせよったら新しい国作ったるわ」

盗賊「おぉぉ国くれるってのか…すげえ話だな」

女海賊「未来!!連れて来て」

子供「パパ!押すよ…」ゴトゴト

盗賊「おぉぉ剣士…無事…じゃなさそうだな」

剣士「ぁぁぅ」

盗賊「生きて居て何よりだが…あれからずっとこのままか?」

女海賊「…」

海賊王「心がのうなったんや…魔王にもっていかれよった」

女海賊「ホムちゃん…話て」

ホムンルクス「はい…これは魔王化症候群で精神崩壊を起こしたものと思われます」

ホムンルクス「分裂してしまった心はどこに行ったのか分かりませんが所縁のある人や物と接する事で取り戻せる可能性があります」

商人「僕たちの心の中に居るかもしれないって事だね?」

ホムンルクス「はい…商人が以前私におっしゃっていた事です」

盗賊「剣士と所縁あるといえば女海賊と女エルフしか思い浮かばん」

商人「女エルフはあれ以来行方不明だね…あと由縁があるとしたら魔王か」

海賊王「魔王はアカン!!もう2度と呼んだらアカン!!」

女海賊「女エルフは多分…森になった…あの時森は剣士を守ろうとしていたから…」

商人「森ねぇ…シャ・バクダはあれからどうなったんだろう?」

女海賊「もう行きたくない!又何か起きる…」

商人「…提案だよ!!」

海賊王「何や?勿体ぶらんと言ってみぃ」

商人「みんなでバーベキューでもしないかい?」

盗賊「お前…何を突然…」

商人「ハハ良いじゃ無いか…剣士も久しぶりに女海賊の海賊焼きを食べたいんじゃないかな?」

海賊王「ガハハハハハハ気に入った!!ええなぁ!!岩石焼きってのもあるんやでぇ?」

女海賊「…」

海賊王「ローグ!!村の衆を全員集めて来るんや!!バーベキューやるで?」

ローグ「アイサー!!」ピュー
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:05:13.86 ID:R2tAL1mj0
『広場』


ワイワイ ガヤガヤ


力を以て仁を仮る者は覇…これが覇道や

わいは覇の道で海を支配するんや

何回も聞いたでやんすよ

こらすげぇ玉の座った爺だなヌハハ

なんやとう!!わいは海の覇者や…故に海賊王


ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「食べる?…」

女海賊「全然…」

剣士「ぁぅぁぅ」

情報屋「あれ?あなた…目を」

女海賊「なにさ…」ファサ

情報屋「フードでいつも顔を隠しているのは目を隠す為ね?」

女海賊「フン!関係無いでしょ」

情報屋「生まれて来たあなたの子も勇者の目をしていたのね?」

女海賊「指輪で私の目と交換したんだよ…悪い?」

情報屋「魔王に奪われたくないのね…」


そうさ…ハイエルフが剣士の目を奪ったのも勇者を守る為さ

そして私も同じように指輪を守ってる

どういう偶然か又人間達がドワーフの国に戦争吹っ掛けようとしてる

あんたに分かる?魔王の足音がするの


情報屋「あなた…ホムンルクスから聞いた?魔王ウイルスのワクチンはドワーフの血だって」

女海賊「知ってるさ…はらわた煮えくり返ったよ…私と剣士の子を…未来を捧げろって事さ」

情報屋「…」ゴクリ

女海賊「そんな事絶対にさせない」

情報屋「ごめんなさい…あなたの置かれた状況を軽く見てた」

女海賊「フン!!」


---これは200年前に精霊が子を失った状況と同じ---

---魔王に我が子を捧げるなんて---

---どれほど悲しい事なのか想像も出来ない---

---だから夢幻が生まれた---



-----------------
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:06:15.29 ID:R2tAL1mj0
女海賊「パパ!!」

海賊王「お前もたまには飲めぇガハハハハ」グビ

ホムンルクス「ハチミツ酒です…どうぞ」

女海賊「ホムちゃんまで…もう!!」グビ

海賊王「剣士にも飲ませてやるんや…飲み物んなら少しは飲むやろ?」

ホムンルクス「私が飲ませて来ます」

女海賊「パパ!!例の謎のガラス玉…何か分かった?」

海賊王「おぉぉ忘れ取ったわ!!あれは只のガラスや無いガハハハハ」

女海賊「んなこたぁ分かってんだよ!!どんな効果があるか知りたいの!!分かったの?分かんないの!?」

海賊王「あのガラス玉は光を吸い込む様や…暗い所に置いとくと光るで?」

女海賊「…そんだけ?」

海賊王「光を蓄えよるんやな…それ以外は分からん」

ホムンルクス「見せてもらってもよろしいでしょうか?」

海賊王「これやぁぁ!!」ポイ

ホムンルクス「…これは何処で入手されたのですか?」

女海賊「光の国シン・リーンの古代遺跡さ…聖剣エクスカリバーと一緒に見つけた筈」

ホムンルクス「書物で学習しただけの知識ですが…伝説では光の石という物もあった様です」

海賊王「ほほーう?聖剣伝説やな?エクスカリバーの力の源やったらしいな?」

女海賊「…そういえば壁画で見たな光の剣は天に向かって光を放っていた…」

情報屋「私も数年前にシン・リーンまで見に行ったわ…もしかして」

ホムンルクス「この石はとても光が弱いのですね」

海賊王「そら暗い所にずっと置いとったからちゃうんか?」グビ

情報屋「もしかして光の剣は天に向かって光を放っていたのでは無くて天から光を受けていたのでは?」

女海賊「え!?…見方が逆?…天は宇宙を射してた」

商人「ああああああああああああ!!」ガバッ

海賊王「うおぉぉぉびっくりするやないか!!酔いつぶれとったんやないんか!!」

商人「インドラの矢のエネルギーは何だ!!ホムンルクス!!」

ホムンルクス「はい…衛星軌道上に配置されたパネルによって太陽光を吸収し触媒に蓄え…」

商人「それだ!!何千年分の太陽のエネルギーがそこにある!!」

ホムンルクス「インドラの矢をこの石に落とすのでしょうか?」

海賊王「ガハハハハ花火でも始めるんかいな!おもろいのぅ…やってみソラシド」
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:07:01.84 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』


フワフワ


ローグ「岩の上に光の石を置いてきたでやんす…よっと」ピョン

女海賊「ホムちゃん…場所分かる?」

ホムンルクス「もう少し近づいてもらってよろしいでしょうか?

女海賊「おっけ…手で触れる所まで寄せる」

ローグ「おーらいおーらい…ちょい右っす!!そこそこそこ…いーっすね」

ホムンルクス「座標を取得しました」

女海賊「ほんじゃ戻るよ?」

ホムンルクス「はい…」


シュゴーーー



『約束の入り江』


フワフワ ドッスン


女海賊「光の石をあの岩のてっぺんに置いてきた」

海賊王「あそこにインドラの矢ちゅう光が落ちるんやな?」

商人「ホムンルクス…最小限で落として」

ホムンルクス「はい…」

海賊王「ぱーーーーーっと行け!!ぱーーーーーーーっと」

女海賊「パパは見たこと無いから言ってるけどさ…失敗したらこの辺消し飛ぶよ?」

ホムンルクス「…ではインドラの矢を投下します」


ピカーーーーーーーー シーーーーン


海賊王「おぉぉぉ…お?…終わりか?」

盗賊「こりゃ成功だな」

商人「光の石を見てみたい」

女海賊「ローグ!!飛空艇に乗って…取りに行くよ」

ローグ「アイサー」ダダ


フワリ シュゴーーーー


海賊王「なんやあっけない花火やったなぁ…酒がマズイわ」

盗賊「インドラの矢の爆発は洒落になん無ぇから」

海賊王「わいの娘の爆弾よりもスゴイんか?」

盗賊「あれの1000倍は行く…想像出来んだろ」
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:07:45.30 ID:R2tAL1mj0
『古代遺跡』


ピカー


海賊王「こりゃ良い明かりになるなぁ?ガハハハハ」

商人「すごいな…真っ暗な地下でも昼間みたいに明るい」

女海賊「ホムちゃん…この石にはどれくらいの光が溜まるか分かる?」

ホムンルクス「衛星に使用している触媒と同じ質量と思われますのでインドラの矢をすべて吸収できると思います」

女海賊「ここからエネルギーをどうやって取り出すの?」

ホムンルクス「専用のマニピュレータが必要になりますが現代まで残って居るのは衛星に残された物しか無いでしょう」

女海賊「衛星ってどこにあんの?」

ホムンルクス「宇宙です…遠い空の向こうに浮いています」

女海賊「飛空艇で取りに行けない?」

ホムンルクス「具体的な数値で35786km上空になりますので飛空艇で取りに行く事は不可能です」

女海賊「ぶっ…無理過ぎる」

商人「でもそこにあるエネルギーをこの光の石に入れる事が出来るのはスゴイ事だ」

女海賊「あんた…これをどう使うつもり?」

商人「命の泉に入れるのさ…水を通して世界中の海が光る」

女海賊「海が光る…」

商人「そうさ…僕は夢幻の中でちゃんと精霊から導きを受けていた…光る海だ…僕はこれを求めていた」

女海賊「行く…」スック

海賊王「待て待て待て…そう慌てんなや…家族が揃った幸せをちったぁ堪能していくんや」


剣士は心がどっか行ってしもうてもな?

体はちゃぁぁんと感じ取るで?

お前と未来が居らんとそら寂しいやろ

2〜3日しっかり休んでやな

次は一緒に連れて行ったれや


ホムンルクス「命の泉も剣士の所縁の地です…私が面倒を見ますので連れて行っては如何でしょう?」

女海賊「…分かったよ…ゆっくりして行くよ」
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:08:38.59 ID:R2tAL1mj0
『丘の上』


ヒュゥゥゥ


盗賊「いよぅ…何してんだぁ?」

ローグ「ここから海に沈む夕日を見てるでやんす」

盗賊「おぉ…こりゃ良い景色だが…」

ローグ「向こうの空が真っ黒でやんす…夕日が真っ黒な空に沈んで行ってるんすよ」

盗賊「嵐の前だな…」

ローグ「あの空の下でどんだけの人が死んで行ってるんすかね?」

盗賊「不吉な事言うない…それでも人間はドロまみれで生きていくんだよ…俺らの行く道だ」

ローグ「あっしらは光になれますかね?」

盗賊「お前も気付いてんだろ?女海賊から強烈な光を」

ローグ「そーっすね…あっしらはその光を守らないといけないんす」

盗賊「俺はな…夢幻の夢ってやつを殆ど覚えていないんだがよ…一つだけ覚えてる事があんだ」

ローグ「あっしも夢なんか覚えてないっすね」

盗賊「それはな…最後の最後まで希望を見失わない奴の事だ」

ローグ「あねさんっすか?」

盗賊「かもな?顔は覚えて無ぇんだ…だが似てるんだよギリギリ戦い抜いてる姿がよ」

ローグ「あねさんはっすねぇ…カリスマなんすよ」

盗賊「ほう?」

ローグ「そらまるで光の様にですね?…」


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580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:09:20.11 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』


ビュゥゥゥゥ


海賊王「…3日はあっという間やなぁ…」

子供「爺またね〜」

盗賊「嵐が来るぜ?早い所行った方が良い」

女海賊「早く乗って!!」

海賊王「例の鐘は女戦士が持って行ったで?先に会って行くんや…ええな?」

女海賊「分かってる…」

海賊王「ワイは海に出よるけぇ何かあったら船団を探せばええ」

女海賊「パパ!ありがとう」

海賊王「お前らしゅう無いなぁ!!さっさと行けぇぇ!!」

女海賊「…」ノシ


フワリ シュゴーーーーーーー


盗賊「例の鐘って何だ?」

女海賊「この飛空艇に付ける鐘だよ」

盗賊「鐘?」

ローグ「ミスリル銀で作った鐘なんすよ…ホラ船首に取り付け金具あるっすよね?」

盗賊「あそこに鐘を吊るす予定なんか…こりゃまた奇抜な船だなヌハハ」

商人「良いアイデアだね…ミスリル銀の音を奏でる飛空艇」

女海賊「鎮魂の鐘だよ…」

情報屋「良いわね…」

盗賊「それにしてもこの飛空艇は随分改造したな?こりゃイルカの形か?」

ローグ「あっしがやらされたでやんす…球皮が下から弓で狙えない様になってるんすよ…遠くから見たらイルカっすね」

盗賊「床面の窓は爆弾投下用か?」

ローグ「そうっす…そっからウンコみたいにポトポト落とすんすよ…ボウガンも撃てるでやんす」

盗賊「ガチ戦闘用だな…7〜8人が定員って所か」

女海賊「狭間に入る!!ハイディング」スゥ



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581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:10:02.45 ID:R2tAL1mj0
『古都キ・カイ上空』


ザーーーーーー


盗賊「黒い雨か…」

ホムンルクス「ここは津波の影響をあまり受けていませんね」

盗賊「あぁその様だ…心配していたが良かった…しかしこの黒い雨で真っ黒けだな」

ホムンルクス「噴火が継続すればこの辺りは火山灰が1メートル程積もると思われます」

盗賊「結構距離あんのに1メートルか」

商人「南の大陸は壊滅的な影響だね…雨で収まってくれれば良いのに」

ホムンルクス「長期的に見て噴火は避けられません…避難する猶予が出来たと思って下さい」

商人「ホムンルクス…君はこの状況で人々をどう救う?」


短期的には避難するのが一番と思われます

その後の再生を考慮しますと火山灰で育つ植物の育成と

サンドワームの様な地生昆虫との共生が望ましいと思います

今後平均気温が下がって冬が継続しますので

気温の影響を受けにくい沿岸部にて海産物を糧とした生活へ切り替えを促します


商人「海の温度は下がりにくいって事かな?」

ホムンルクス「はい…地熱がありますので温かい水辺に生物が集まるようになります」

商人「真っ黒な火山灰を考えるとあったかい水の中の方が快適なのかもね」

情報屋「それが人魚だわ…錬金術で足の代わりのヒレを作る事なんて簡単」

商人「ハハ人魚伝説も君が論文を書けるね」

情報屋「そうね…色んな伝説が一本に繋がって居る事も分かって来た」

商人「ホムンルクス…人々の移動を促すのはどうやってやる?」

ホムンルクス「はい…人間は繁殖能力が極めて高い種族ですので始めに女性の誘導を促します」

商人「どうやって?」

ホムンルクス「香料と着色料を昆虫から採取させて沿岸部で配布するのです」

商人「驚きだな…香水と化粧の材料を虫から採取…女性を魅力的にするのか…」

ホムンルクス「はい…統計で2倍以上の人口増加が見込めますし生活の土着を促せます」

情報屋「人魚に女性が多くて魅力的だった説明もつきそう…フフフ」
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:11:39.19 ID:R2tAL1mj0
『海賊の基地』


盗賊「こんな所に海賊の基地があったてーのは驚きだ…キ・カイまで馬で半日掛かんねぇ」

商人「上手い事狭間に隠してるんだね」

盗賊「見ろ…例の幽霊船だ…やっぱりあれは女戦士の船だったか」

女海賊「無駄口はそこまで…あんた達は捕虜だって事忘れないで」

盗賊「ヌハハ…捕虜ねぇ」

商人「それにしてもなんかバタバタしてるね」ヒソ

盗賊「だな?大砲乗せてんな」ヒソ


ツカツカ 


女海賊「お姉ぇ!!」

女戦士「遅かったでは無いか…ん?盗賊達では無いか!!」

盗賊「ぃょぅ…俺ら捕虜になっちまった様だ…元気か?」ノ

女海賊「いろいろ在ってさ…例の鐘を取りに来たよ」

女戦士「鐘は入り江のヤードに置いてある…お前の方こそホムンルクスはどうなったのだ?」

女海賊「ホムちゃん!!おいで…」

ホムンルクス「はい…」ゴトゴト

女戦士「ホムンルクス…剣士まで…どういう事だ?」

女海賊「訳あって命の泉まで行く事になった…この袋の中見て」パサ

女戦士「お前が調べていた石だな?…眩しいな」ピカー

女海賊「光の石っていう物だという事が分かったんだ…これを命の泉に置いて来る」

女戦士「…なるほど」

商人「命の泉の水はすべての海に繋がっているんだ…それを置いて海を光らせる」

女戦士「ミスリルの鐘とは別のアプローチで憎悪を祓うのだな?」

商人「そうなれば良い…賭けだよ」

女戦士「剣士が同行しているのは何故だ」

ホムンルクス「剣士は魔王化症候群の後遺症で精神が分裂した状態です…所縁の地を巡れば心を宿すかもしれません」

女戦士「ふむ…女海賊…お前は良いのか?」

女海賊「私は剣士の為なら何でもやるさ…大丈夫」
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:12:09.66 ID:R2tAL1mj0
女戦士「なら良い…して?…すぐ行くのか?」

女海賊「うん…こっちの状況は?」

女戦士「良いとは言えん…海賊たちが集中砲火を受けて居るのだ…海戦が始まった」

女海賊「なんでさ!?海賊はここん所何もしてないじゃん!!」

女戦士「お前の爆弾の技術供与を断っているからだ…強行手段なのだ」

女海賊「…そんな」

女戦士「セントラルの地下爆破事件の事もある…仕方の無い流れだ」

女海賊「集中砲火ってどういう事?セントラルの他には?」

女戦士「シン・リーンもキ・カイも…すべての国がドワーフの国へ向かっている」

女海賊「シン・リーンって…魔女は何やってんのよ?敵になっちゃってんの?」

女戦士「魔女は何年も前から行方不明だそうだ…関わっているかは分からん」

女海賊「こっちは戦争収めようと頑張ってんのになんで勝手に始めちゃうのよ…」バン

女戦士「…待て!どうするつもりだ?」

女海賊「私が行く!!」

女戦士「ダメだ!!これ以上事態を荒らげるな!!」

女海賊「分かってんよ!!敵を戦闘不能にするだけ…出来るだけ衝突は避ける」

女戦士「…」

女海賊「お姉ぇ!!海賊を仕切ってんのは私なんだ…お姉ぇは幽霊船で救助に回って」

女戦士「戦闘不能にするだけだな?…[ピーーー]なよ?」

女海賊「死者ゼロでやってやんよ」

584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:12:51.73 ID:R2tAL1mj0
『入り江のヤード』


リン ゴーーーン


盗賊「おぉぉぉ良い音が鳴るなぁぁぁ!!」リン ゴーーーン

ローグ「鐘つきやしたかぁ…えっほえっほ」ガチャガチャ

盗賊「何積んでんだ?」

ローグ「ガラス瓶とボウガンっす…ボルトも沢山積んでるっす」

盗賊「ガラス瓶なんか何に使うんだ?」

ローグ「煙玉とか爆弾を入れて海に落とすんすよ」

盗賊「なぁるほど…爆弾も水ポチャじゃ消えちまうって事か」

ローグ「そーっすね…海で爆弾爆発させると強烈な波が出来るんすよ…甲板にいる敵はみんな海に落ちるっす」

盗賊「この戦い方は女海賊が編み出したんか?」

ローグ「あねさんはカリスマなんすよ…すごいっしょ?」

盗賊「いやすげぇわ…あいつは本当にドラゴンとかクラーケン一人でぶっ殺しそうだ」

ローグ「あっしもそう思うっすよ」

盗賊「自在にハイディング使うのも反則だな…時間止めてんのと一緒だもんな」

ローグ「海賊共から見た視点だと流星の様に見えるらしいっす…みんな憧れてるでやんす」


---いや本当すげぇわ---

---剣士と女エルフのドラゴンライダーもすげぇと思ったが---

---違う意味で女海賊もすげぇ---

---魔法が使えない代わりに創意と工夫で戦う---

---数年で俺は置いてけぼり食らったな---
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:13:44.94 ID:R2tAL1mj0
『飛空艇』


ビョーーーウ バサバサ


私の指示に従って

前方のボウガン2基は商人と情報屋

右側は未来

左側は盗賊

後方はローグ

始めに空戦で敵の気球を全部落とす

シン・リーンの気球は魔法を撃って来るからハイディングで寄る

狙いは気球の球皮

一気に寄るよ…ハイディング


女海賊「リリース…撃って!!」スゥ

バシュ バシュ バシュ バシュ

盗賊「こりゃ多いな…30基は飛んでる」バシュ バシュ

女海賊「全部落とす!!照明弾落として!!ハイディング」スゥ

ローグ「アイサー」ポイ ピカー

女海賊「リリース!!撃って!!」スゥ

バシュ バシュ バシュ バシュ

女海賊「高度上げる!!下を狙って」シュゴーーーーー

商人「ハハ僕らが圧倒的じゃないか」バシュ バシュ

情報屋「火炎魔法来る!!」バシュ バシュ

女海賊「ハイディング」スゥ

盗賊「こりゃ向こうは俺らに勝てる訳無ぇな…」

女海賊「リリース!!次!!」

バシュ バシュ バシュ バシュ

女海賊「よし…次は船団の上空飛ぶから煙玉落として」

盗賊「これだな?俺が火を付けるからローグ落としてくれ」チリチリ

ローグ「アイサー」ポイポイ モクモクモク
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:14:33.93 ID:R2tAL1mj0
ドーン ドーン


商人「大砲撃って来てるね」

女海賊「フン!当たる訳無い…こっちは動いてんだ」

盗賊「煙玉有効だな!?」

女海賊「次…爆弾を海に落とすよ…3…2…1…投下!」ポイ


ピカーーー チュドーーーン


ローグ「甲板から人が落ちやした!!」

女海賊「次…火炎弾…3…2…1…投下!」ポイ

ローグ「着火!帆が燃えていやす」

女海賊「おっけ!!この要領で船の帆を全部燃やす」

商人「ハハハすごい手際だね…」

女海賊「次行くよ!!ハイディング」スゥ



リン ゴーーーーン

リン ゴーーーーン

リン ゴーーーーン

リン ゴーーーーン



-------------------



ローグ「敵の船団は壊滅っすね…船の消火で手一杯でやんすね」

盗賊「ありえんな…こんだけの船団が死者なしで無力化だ…帆がなきゃ漂流するしか無ぇ」

女海賊「どうせ食料はたらふく積んでんだ…死にゃしないさ」

商人「死者無しで無力化されただけって言うのは向こうにとってどう思うかだね?」

盗賊「だな?さすがに偶然とは思わんだろう」

商人「こっちに戦う意思は無いって伝わるかな?」

ホムンルクス「ほとんどの人はそう思うかもしれませんが一部の人は逆に不満を募らせていると思います」

盗賊「ヌハハ本当にクソな人間も居るんだよなぁぁ恥ずかしいわ」

ホムンルクス「精霊が何と戦って来たのかご理解いただけましたか?」

盗賊「わーってるよ」

ホムンルクス「そして私たち超高度AIはそういう人にも逆らえない…それが事実です」

商人「鎮魂の鐘は効果あったのかな?」

女海賊「あるよ…普通は特攻してくる人が出るんだ…今回は居なかった」

盗賊「そうだな…追いつめられると大砲で人飛ばしてきたりするもんな…それが無ぇ」

ローグ「あっしも昔飛ばされる所でしたよ…負けが込むと上官が狂っちまうんすよね」

商人「敵の気球が素直に撤収したのもソレか」

盗賊「かもな?だがあの状況で撤収するしか無いとも思うがヌハハ」
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/08(木) 20:15:34.79 ID:R2tAL1mj0
『船団上空』


ビョーーーウ バサバサ


ローグ「あっしらの海賊は撤収してるでやんす…良いんすかね?敵を漂流させたままで?」

女海賊「…」

盗賊「放置した方が時間稼ぎにはなるな…どうせ本隊がどっかに居るだろ」

ローグ「今のはシン・リーンの船団すよね?本隊はセントラルなんすかね?」

商人「うーん…相手からしたら海賊狩りなんだけど…完全無力化されたのは心象良くないねぇ…」

盗賊「んむ…セントラルとキ・カイがどう動くか」

商人「このままだとシン・リーンは立場無くなるね」

女海賊「ホムちゃん…どうすれば良い?」

ホムンルクス「救助してもしなくても海戦の泥沼化は避けられないと思われます…早く命の泉を目指しましょう」

女海賊「分かった…救助はお姉ぇの働きに賭ける」


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588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:29:02.70 ID:6+J6cz5f0
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鎮魂の飛空艇編

   完
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:32:28.83 ID:6+J6cz5f0
『数年前_星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


魔女「闇が去って半年…やっと復興の兆しが見えて来たようじゃな」

アサシン「魔女はシン・リーンに帰らなくても良いのか?」

魔女「ちと気になる事があるのじゃ…」

アサシン「カタコンベか…除染するには人手が足りまい?」

魔女「そうじゃなぁ…魔術師だけでは焼き払い切れぬ…じゃが放っても置けぬしのぅ」

アサシン「義勇団から人出が欲しいか?」

魔女「そういう問題では無いのじゃ…中に溜まっておる液体が処理出来んのじゃ…どうしたもんかのぅ」

アサシン「なぜそれほど拘る?」

魔女「主は魔王にとどめを刺した後魔王は何処へ行ったか見て居ったか?」

アサシン「地面に吸い込まれて行ったが…黄泉へ還ったのでは無いというのか?」

魔女「器を変えただけかもしれぬと思うてな…下にはカタコンベがあるじゃろう?」

アサシン「何か在ると思っているのだな?」

魔女「わらわの師匠がこれほど大きな魔方陣を作って居るからのぅ…只事では無い」

アサシン「魔王がまだどこかに居るのか?」

魔女「分からぬ…じゃが魔方陣の中では魔王も何も出来ぬ筈じゃ…指輪で呼ばれぬ限りな」

アサシン「安息している場合では無いか…」

魔女「それはさておき…セントラルから派兵団が来ておる様じゃが…放って置いて良いのか?」

アサシン「良くない…恐らく新しい領主を立ててこの近辺を自治領にするだろう」

魔女「フィン・イッシュの王女も心配じゃな?…憔悴しきっておる」

アサシン「私はどう立ち回るか…」

魔女「主はもう決まっておろう…すでに王女の相談役になっておるでは無いか」

アサシン「私にフィン・イッシュは重い」

魔女「義を見てせざるは勇なきなりじゃ…王女と出会ったからには縁がある…主は義に背く気か?」

アサシン「魔女はフィン・イッシュ側に付く気なのだな?」

魔女「わらわは何も背負って居らぬ故自由じゃ…王女の境遇を見て捨て置く訳に逝かぬ」

アサシン「少し王女と話してみるか…」

魔女「行くのであればわらわも同行するぞよ?」
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:33:07.15 ID:6+J6cz5f0
『南西のオアシス』


アサシン「王女…謁見失礼する」

王女「どうぞ…今日は何用ですか?」

魔女「お疲れでは無いか?鋭気が見えぬが…」

王女「お気になさらず…」

アサシン「先日セントラルから派兵団が来たのだがこちらにも来ていないか聞きに来た」

王女「その件ですか…派兵団から領有の件を聞かされましたがどう答えて良いか分からず…」

アサシン「やはり来てるか…して何か要求して来たか?」

王女「いえ…派兵団の本隊が後日到着するそうです…対談はその時にという事になりました」

アサシン「恐らくセントラルは新しい領主を立ててシャ・バクダを自治領とするだろう」

王女「はい…」

アサシン「その場合王女が拘束される可能性が高い…つまりフィン・イッシュは属国扱いになる」

王女「…」

魔女「わらわ達はそうならぬ様に進言しに参ったのじゃ…」

王女「…と言いますと?」

アサシン「ドラゴンの義勇団と魔女の魔術団をフィン・イッシュ下に置く事を明言するのだ」

王女「それは大変ありがたいのですが労多くして益少なしと言う状況になってしまいますが…」

魔女「わらわは元より益なぞどうでも良い…主の境遇を捨て置けんだけじゃ」

アサシン「私は義勇団の資産を守るという意味もある…差し押さえはされたく無いのでな」

王女「ありがとうございます…王都に先遣隊を送って兵が乏しくなり心細かったのです」

魔女「その様じゃな?顔がやつれておる」

王女「私には側近が一人も居ない物ですから…どうすれば良いか分からないのです」

アサシン「まずオアシス周辺を実効治安している姿を見せる必要がある」

王女「それはやっていますがオアシス間の移動がままならないので物資不足が深刻です」

アサシン「ラクダと気球が不足しているのか…義勇団も同じ状況だ」

王女「砂漠では馬車が使えないのが物流の課題です」

魔女「オアシス間に道があれば良いのじゃな?」

アサシン「何か手があるのか?砂漠に道を作れる程石も無いぞ?」

魔女「魔法で砂を焼けば硬くなるのじゃ…割って使えば砂レンガになる」

王女「砂レンガで道を作るというのですね?人出はどのくらい必要でしょう?」

魔女「それほど難しくはないぞよ?ボルケーノを操るだけじゃ…硬くなった砂を道なりに慣らせば良い」

アサシン「もしオアシス間に流通出来る道が出来れば随分状況が変わる…良い案だ」

魔女「そうと決まれば早速行くとするかの?」

王女「はい…道慣らしの人員を呼んできます」
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:33:39.60 ID:6+J6cz5f0
『オアシスの道』


ゴゴゴゴゴ ボゥ


魔女「火炎地獄!」ゴゴゴゴゴ ボゥ

王女「あっという間に道が出来て行くのですね…」

アサシン「この調子だと数日で近隣のオアシスは道で繋がる…馬車が入用になるな」

王女「南西のオアシスには数台しかありません」

アサシン「道を作るのは魔女に任せて私は馬車の調達にシャ・バクダまで行って来る」

王女「そういう用件は私の兵にやらせても良いのですが…」

アサシン「いや…シャ・バクダの状況も見ておきたいのだ…私が行った方が良い」

王女「そうですか…なにか私に出来る事はありませんか?」

アサシン「物流の計画を立ててほしい…食料の配布が進めば治安も改善すると思われる」

王女「分かりました…各オアシスの物資状況を把握しておきます」

アサシン「木が生い茂っているオアシスもあるから木材の調達が出来るとやれる事が増える」

王女「そうですね…私も考えて見ます」




『数日後』


王女「道が出来るや否や早速人が往来する様になりましたね」

魔女「わらわも嬉しいのじゃ…見て見よ…道のわきにサボテンを植えて行く人も居る」

王女「復興の兆しが見えて私も元気が出てきました」

アサシン「この調子で実効治安していれば民はこちらの味方だ」

王女「各オアシスの調査をしていて分かったのですが緑化がかなりの速さで進んでいる様です」

アサシン「それは精霊樹の影響だな…どういう訳か遺跡に精霊樹が生えたのだ」

王女「遺跡はもう小さな森になってきていますね」

魔女「ここら一帯かつては広大な森じゃ…元に戻ろうとしておるんじゃな」

王女「おかげで羊が良く育っている様です」

アサシン「次は木材を使って羊を守る柵を作るのだな…ウルフが来てしまっては元も子もない」

王女「分かりました…手配させておきます」

アサシン「ねぎらい様の酒も用意した方が良い…この辺りはサボテン酒が名産だ」

魔女「さて…わらわはカタコンベの掃除に戻るとするかの…魔術師達に任せっきりじゃ悪いでのぅ」

王女「人出が欲しい場合は言ってください…少しは出せますから」
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:34:12.57 ID:6+J6cz5f0
『南西のオアシス』


ザワザワ ザワザワ


魔女「これは何の騒ぎじゃ?」

アサシン「シャ・バクダの新しい領主が挨拶に来ているのだ」

魔女「主は王女の元に居らんで良いのか?」

アサシン「1対1の対談らしい…国家機密だから席を外せとの事だ」

魔女「それでは王女が危ないでは無いか!暗殺される可能性を考えんのか!!」

アサシン「近衛が遠くから弓で狙っている…恐らく何も起きん」

魔女「国家機密とはまた何を話しておるのやら…」

アサシン「闇が晴れたその日…ドラゴンライダーも飛空艇も見られているのだ」

魔女「セントラルは関係なかったじゃろうに」

アサシン「この地での惨劇は人づてに伝わって居る…王女が証人尋問される立場になってしまうのは分からんでもない」

魔女「早い所フィン・イッシュに引き上げた方が良いかも知れんのぅ」

アサシン「まだ時期尚早…もう少し辛抱せねばなるまい」


ガチャリ


領主「…では…良い返事を待っている」

王女「ご足労頂きありがとうございます…」

領主「…」ジロリ

アサシン「…」

魔女「…」

領主「お前は義勇団の者か?」

アサシン「はい…」

領主「身分は?」

アサシン「…」

王女「私の従士になります」

領主「ほう…ドラゴンはどうしたのだ?」

王女「国へ還りました」

領主「エルフとも手を結んでいると聞くが…」

アサシン「第2皇子の事でしょうか?」

領主「フハハハハ話が早いな」

アサシン「皇子は戦死しました…骸は王都にあります」

領主「骸を引き渡すのも条件にするべきか…」

王女「…」

領主「第一皇子が王に即位した後ではどうでも良い話かフハハハ」

アサシン「…」

魔女「領主風情がえらく大きな口を叩くのじゃのぅ」

王女「魔女…良いのです」

領主「これは失敬…王女様でしたな?フハハハ」スタスタ



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593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:34:46.59 ID:6+J6cz5f0
魔女「なんと無礼な奴か…あのような者を領主になぞセントラルは何を考えておるんじゃ」

王女「あの方は直系ではありませんが王族の一人の様です」

アサシン「どんな条件を言われたのだ?」

王女「遺跡調査の主導をセントラルに渡せと」

魔女「狙いはカタコンベかえ?」

アサシン「むぅ…セントラルのカタコンベと言い…なぜ拘る?」

王女「理由は明かしてもらえなかったのですが軍が遺跡調査にあたるという事だけ分かりました」

魔女「魔術師だけで除染は手詰まりじゃったから丁度良いのかもしれんのう」

アサシン「ふむ…調査をやらせて探るか」

魔女「他に何か言って居らぬか?」

王女「シャ・バクダに通行税が掛かるようになります…つまりオアシス圏と分断する形に…」

魔女「良いのか悪いのか…」

アサシン「商隊がシャ・バクダ中心に編成される想定で居るのだな…オアシス圏に税金をかけて居るのと同じだ」

王女「そうですね…」

アサシン「近隣の村との商隊をこちらも計画すれば良い…通行税が無い分利はこちらにある」

魔女「じゃが軍がシャ・バクダに駐留するのであれば直に乗っ取られそうじゃな?」

アサシン「民次第だな…もともと戦闘民族だ…民を味方につけた方が強い」

王女「エルフとドラゴンもこちら側に居ると思っていますので手は出しにくいかと思います」

魔女「そうか…エルフと交流しておく手もあるのぅ」

王女「兵が言って居りましたが度々エルフが来ている様なのです」

アサシン「精霊樹か…」

魔女「おぉ!!わらわに案がある」

王女「何でしょう?」

魔女「わらわは精霊の御所の場所を知っておる…エルフを案内するのじゃ」

アサシン「そんな場所があるのか…それはまさか私が探していた地下への入り口か?」

魔女「多分そうじゃ…入り口はトロールが守って居って人間では入れぬ」

アサシン「なるほど…エルフなら入れる訳だな?」

魔女「わらわが精霊樹でエルフを待つ…話しをしてみる故主らは待っておれ」

王女「朗報をお待ちしております」

594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:35:17.09 ID:6+J6cz5f0
『砂漠』


ノッソ ノッソ


アサシン「ラクダに乗るのは慣れて来たか?」

王女「はい…でも楽では無いですね」

アサシン「徒歩よりも随分ラクダ」

王女「フフ…遺跡の方にテントが出来てますね」

アサシン「彼らがカタコンベをどうするのか見物だ…あのヘドロをどうするのかクックック」

王女「魔女はあれから帰って来ませんが大丈夫でしょうか?」

アサシン「並みの魔法使いでは無い…よほどの事が無い限り心配は無用だ」

王女「エルフが精霊樹を見に来る目的は何なんでしょう?」

アサシン「エルフの森にも精霊樹が生えているらしいが魂が無いらしい」

王女「こちらの精霊樹の魂を見に来ているという事ですね?」

アサシン「ハイエルフを生むのは精霊樹だ…彼らも存続が掛かっているからな」

王女「ではオアシス近郊が森になっていくとして又人間とエルフの摩擦が始まってしまいそうですね」

アサシン「そうならない様にうまく調和していくのが王女の役目でもある」

王女「私はいづれ王都に還らなければなりません…心配事が尽きませんね」

アサシン「私に一つ考えが思いついた」

王女「申して下さい」

アサシン「第2皇子はまだフィン・イッシュ地下墓地で椅子に繋がれているのだ」

王女「ゾンビになって死んだのでは無かったのですね?」

アサシン「奴をここまで連れて来れば森の一部に生まれ変わるかもしれない…」

王女「弔いの代わりですか…」

アサシン「フィン・イッシュへ向かった先遣隊へ保護する様伝える事はできるか?」

王女「分かりました…伝令を気球で向かわせる様手配します」

アサシン「済まんな…一応戦友なのだ」

王女「存じております」
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:35:49.91 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』



魔女「おぉ主らを探して居った所じゃ」

王女「帰って要らしたのですね…心配していました」

アサシン「エルフには無事に会う事が出来たのか?」

魔女「なかなか警戒しておって手こずったがな?無事にこちらの事情を説明出来た」

王女「精霊の御所へは案内出来たのですか?」

魔女「うむ…御所の中にて隠れて居る」

アサシン「やはり精霊樹を見に来ているのだな?」

魔女「それだけでは無いらしい…エルフもカタコンベを気にして居る様じゃ」

アサシン「何かあるのは確実という事か」

魔女「あそこに投棄されている骸にはエルフも多く含まれているそうじゃ…200年以上前の事じゃがな」

アサシン「ますます気になるな…」

魔女「師匠は何も語ろうとはせんかったが…一度リリスという名を口にしたことがある…それやもしれぬ」

アサシン「リリス…超古代の最初の女神の名…では無いか?」

魔女「主は物知りじゃのう?わらわは超古代の事には疎いのじゃ…知っている事を教えよ」

アサシン「これは情報屋の方が詳しい…悪魔の子を産んだという事くらいしか知らん」

魔女「悪魔の子のぅ…誰の事じゃろうか?」

アサシン「人間だよ…最初の人間を生んだのがそのリリスという女神だったとの事だ」

魔女「わらわはちと勉強不足じゃな…超古代の事をどうやって学べば良いのじゃ?」

王女「聖書に記されていると思います…私は持っていますがお読みになりますか?」

魔女「魔術書とは対になる書物であったか…道理で知らん訳じゃ」

王女「そうですね聖書では魔術を禁止していますものね…お読みにはなりませんか?」

魔女「ちと興味が出て来た…読んでみとうなった」

王女「後ほどお持ちします」
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:36:42.92 ID:6+J6cz5f0
『10日後』


アーデモナイ コーデモナイ


アサシン「魔女…少しは外に出たらどうだ?」

魔女「聖書はなかなかに難解でのぅ…」

アサシン「祈りの言葉が書いてあるだけでは無いのか?」

魔女「祈りの意味じゃよ…誰に向けた言葉なのかを読み解くのじゃ…さすれば歴史が紐解けて往くのじゃ」

王女「この黒板に記された図は?」

魔女「神々の系統図じゃ…サタンとリリス…そしてアダムとイブが残した子孫の系統図を記しておる」

アサシン「サタンとリリスの子が人間…アダムとイブの子は英雄か?神か?」

魔女「概ねそうじゃな…注目すべきはここじゃ」バシ



人間がサタンに導かれてアダムとイブの子孫を殺してしまうのじゃ

ゴルゴダの丘という場所で槍に刺されて死んだとなって居る

その槍は後に魔槍ロンギヌスと名付けられたそうな…つまりサタンは魔王じゃ

しかし死んだ筈のアダムとイブの子孫はその後生き返り神の一人となった

次にその神に導かれた人間は母なるリリスに魔槍ロンギヌスを打ち首をはねた



魔女「聖書から読み取れるのはここまでじゃ…神々の戦いの一部じゃな」

アサシン「それは超古代の伝説にあたるのか?」

魔女「年代が記されて居らんから分からぬ」

王女「約1万年前の出来事と聞いた事があります」

魔女「それでじゃ…気になるのが魔王に導かれた人間が何度もリリスを蘇らせようとしている事じゃ」

アサシン「何度もと言うと?」

魔女「蘇生される度にうち倒されておるのじゃ…そういう呪いが掛けられておるらしい」

アサシン「…まさか1万年経った現代でリリスを蘇らせるとでも?」

魔女「200年前に滅びたシャ・バクダがどのような国であったか…主は知らぬ訳ではあるまい?」

アサシン「錬金術…」

魔女「そうじゃな…新たな生命を作る事も可能じゃった筈じゃ」

アサシン「リリスが蘇るとどうなるのかが謎だな」

魔女「聖書では魔王と同様にリリスも恐れられておるのじゃ…冥界の女王と言われておる」

アサシン「クックック魔王の次は冥界の女王と来るか…この世はどうにかしている」

魔女「カタコンベの深層が気になるのぅ…」
597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:37:16.62 ID:6+J6cz5f0
『南西のオアシス』



魔女「王女がわらわ達を呼びつけるなぞ何かあったのか?」

アサシン「さぁな?」

王女「お入りください…」

魔女「どうしたのじゃ?何かあったのか?」

王女「いえ…セントラルとの交わし毎が延期になりまして…その…何か知っている事は無いかと」

魔女「延期?領有の件かの?」

王女「はい…遺跡調査の件も宙に浮いたままになっているのです」

魔女「はて?何も知らぬが?」

アサシン「延期になったのはこちらとしては好条件では?」

王女「…そうなのですが…その理由がどうも不可解なのです」

魔女「策を練られておるのか?」

王女「領主が急に病死しました…セントラルの特使もカタコンベに足を滑らせて液体の中に落下したとか…」

アサシン「呪いか何かだろう」

王女「他にも怪死が続いているそうなのです」

魔女「むむ…アサシン…お主何かやっておるな?本職は暗殺者じゃろう」

アサシン「さぁ?何の事か?」シラジラ

魔女「あの領主は気に入らなかった故…わらわは何も言う気は無いが…他の者を巻き込むでない」

アサシン「王女…オアシスは落ち着いて来た…ここは一度王都に戻る機と見るがいかがか?」

王女「…そうですね」

アサシン「伝令はまだ戻って来ていないのか?」

王女「戻ってきています…海に逃れていた民が少しづつ帰ってきているとの事でした」

アサシン「女王として即位する事を宣言した方が良いと思うが」

魔女「そうじゃな…国の安定を促すにはそれが良いな」

アサシン「ここの遺跡調査も早くても半年は掛るだろう…」

王女「分かりました…ご一緒に来てくださいますよね?」

魔女「勿論じゃ」

アサシン「近衛を2人程連れて行って側近に置くと良い」

王女「アサシン様はどうされるのですか?」

アサシン「私も同行する…戦友を放ってはおけんしな」

王女「それを聞いて安心しました…ここに残る近衛に指示を伝えておきます」

魔女「出立はいつにするか?」

王女「早い方が良いかと…用事をすませて夕刻には出立できます」

アサシン「そうか…わたしもちと用を済ませて来る」

王女「はい…気球にてお待ちしております」
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:38:00.57 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』


魔女「この観測所に魔術師達を住まわせて良いか?」

アサシン「構わん…義勇団の連中と仲良くやる様言っておいてくれ」

魔女「望遠鏡があるで占星術の修行には丁度良かったのじゃ」

アサシン「さて…わたしも用を済ませて来る」

魔女「わらわが千里眼を使えるという事を忘れるな?もう安易に人を殺めるのはやめるのじゃ」

アサシン「クックック次は違う…義勇団の連中に噂を流す指示をしてくるのだ」

魔女「噂?また何か企んで居るんじゃな?」

アサシン「只の呪いの噂だ…カタコンベに関わると呪いに掛かるというなクックック」

魔女「どんな効果を期待して居るんじゃ?」

アサシン「軍の士気を落とすだけだ…後に私たちの有利に働く様にな」

魔女「くれぐれも関係の無い者を殺めるでは無いぞ?主の業が増えるだけじゃからの」

アサシン「私は元々業の深い家柄なものでな…気にはしていない」

魔女「シャ・バクダ王家の末裔か…その業を清算せねば復活する事は無さそうじゃのぅ」

アサシン「クックック汚れた血が不死者となって更に汚れ…勇者をも葬り…何処へ行くのだろうな?」

魔女「読めたぞ?主はフィン・イッシュからゾンビを操る技を持ち帰りここで第2皇子と共に不死者の国を作ろうとしておるな?」

アサシン「フィン・イッシュの汚れた部分を私が取り除く」

魔女「王女に対する救いの手か…」

アサシン「私に出来るのはそれくらいなのだよ」

魔女「死者に対し更に鞭を打って使うと言うのか…外道じゃ」

アサシン「それは違う…新たに精霊樹が生えたのだ…死者の魂を精霊樹に導いてもらいたい」

魔女「…」

アサシン「過去の清算のつもりなのだ」

魔女「なるほど…理解した…光あれば又闇もありか…闇を引き受けると言うか」

アサシン「誓って魔王の下僕にはならん…死者を天に還す」

魔女「死者のエデンの園という訳か…」
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:39:12.37 ID:6+J6cz5f0
『フィン・イッシュの気球』


フワフワ


近衛「ささっ…お乗りください」

魔女「待たせたのぅ」ノソリ

王女「お待ちしておりました」

魔女「同行するのは近衛2人と付き人2人か…定員じゃな」

王女「私が乗る気球が単独飛行するのは初めての事です…他の兵が心配しておりましたが…」

魔女「大丈夫じゃよ…わらわが居れば数百の兵と一緒だと思え」

王女「存じております…よろしくお願いします」

近衛「では出立致します…お気をつけ下さい」フワフワ

魔女「わらわも王女の身じゃが…お付きの近衛は差がある様じゃ…主の近衛は格が高いのぅ」

近衛「お褒めに預かり光栄です」

王女「フィン・イッシュでは有名なサムライなのです」

魔女「サムライとな?ではアサシンはニンジャという所かのぅ」

王女「この二人の近衛はシノビの訓練も受けていますので立ち振る舞いはアサシン様に似ています」

アサシン「クックック私はそれほど高尚な者では無いよ…買い被らないで欲しい」

近衛「フィン・イッシュ籠城の際は戦振りを拝見したしました…アサシン様は随一のシノビとお見受けします」

魔女「主も有名になっておる様じゃな?」

近衛「仕事がやり難くなる…口外するな」

王女「仕事?」

魔女「こ奴の仕事は暗殺じゃ…そうやって政治を動かしておるのじゃ」

アサシン「クックック…」

魔女「暴露されて顔色を変えぬか…」

アサシン「今更隠しておく間柄でも無いが…口外はしないでくれ」

王女「私は操られて居るのでしょうか?」

魔女「目的が同じ内は良いがな?違う志を持つ様になる時は注意しとった方が良い」

王女「私はアサシン様を信頼しています…私が寄り添う側になれば良いのです」

近衛「王女の命は我らが守ります」ビシ

アサシン「安心してくれ…私に王女は殺せん…亡き国王と誓いを立てたのだ」

王女「父上と…」

アサシン「人は最後の最後に誰かを守ろうとするのだ…亡き国王は身を呈して王女を逃した」

王女「父上の計らいで私は逃れて来られたのですね」

アサシン「私は助力しただけに過ぎん…父上に感謝するのだ」

王女「はい…」




------------------
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:39:57.21 ID:6+J6cz5f0
ビョーーーウ バサバサ


魔女「国を背負うのは重いか?」

王女「いえ…今は民を救いたいと願っております…重くなどありません」

魔女「それなら良い」

王女「国王の座は兄が継ぐのだと思って軽く考えていた私が恥ずかしいです」

魔女「質問を変える…少女を捨てるのは辛ろう無いか?」

王女「アサシン様がおっしゃっていました…私は私のまま王になれと」

魔女「ほぅ…あ奴にしては良い事を言うたのぅ」

王女「私は生かされました…付いて来る人が居る以上私は期待に応えるだけ」

魔女「それを重荷にしてはイカンぞ?」

王女「はい…私は近衛も信じていますし付き人も信じています」

魔女「王道じゃ仁徳によって国を治めよ…面倒毎はアサシンに押し付けて置けば良い」

王女「それも任せろと言われています」

魔女「あ奴も自身の働き方を心得ておるか…では心配なさそうじゃの」

王女「ご助言感謝いたします」
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:40:33.62 ID:6+J6cz5f0
『亡国フィン・イッシュ』


魔女「どうじゃ?久方ぶりに還ってみて…悲しいか?」

王女「建物は殆ど損壊していないのですね…人だけが居なくなった」

アサシン「ゾンビは略奪するでも無し…ただ生きている人を探し食らっていた」

王女「街があの時のままなのが余計に…心の中の穴に無常な風を吹かせます」

魔女「軍国を誇って居ったのは何だったのか…セントラルよりも兵は多かった筈なんじゃがな」

王女「身から出た錆びなのでしょう…不死者を道具にしようとした罰ですね」

アサシン「私は周囲を見回って来るが…」

王女「私は城へ戻り状況の確認をしてきます」

魔女「わらわも共するぞよ?」

王女「近衛!気球は何台使えますか?」

近衛「私達の物を含めて10台程かと」

王女「その10台でオアシスとの定期便を日に2台運用させないさい」

近衛「はい…物資の移送でしょうか?」

王女「この状況ではこちらに物資が多くありすぎます…穀物と塩を送り羊毛と絹を仕入れましょう」

近衛「かしこまりました…手配させます」

魔女「早速交易か…良い事じゃ」

王女「私はもうこの国を軍国にはしません…城のすべての財を必要な所へ届けます」

アサシン「気球を増産して民間に運用させても良さそうだな」

王女「はい…そのつもりです」

魔女「すべての財を使うと言うのはどういう事じゃ?」

王女「私は寝る場所さえあれば他に何も要りません…元は軍国なものですから食料の備蓄は多いのです」

魔女「なるほど食料を蓄えておったのか…この時世食料は何よりも財になるのぅ」

アサシン「確か3年分は在ったな…ほとんど使わずに壊滅した」

王女「私の財は民です」

602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:41:10.59 ID:6+J6cz5f0
『数日後_城』


魔女「城も一般開放とな?」

王女「私の居室以外はすべて解放しました…入って来られないのは王の間だけですね」

魔女「衛兵も畑を耕しておるが主が指示しておるのか?」

王女「はい…私も畑を耕します…そして自由に街を歩き回ります」

魔女「それで近衛にもこのような格好をさせておるのか…町民と変わらぬ恰好を」

王女「私の顔を知らない方も居まして普通に接して下さるのです…それが私の楽しみになりました」

アサシン「頼まれていた物を持ってきたぞ」

王女「ありがとうございます」

アサシン「銀細工の仮面だ…目の部分だけだがな」

王女「どうですか?似合いますか?」

アサシン「フフ表情が読めなくなる点は合格だ」

王女「わたしはこれから女王としているときは仮面をつける事にしました」

魔女「なるほどのぅ…威厳は仮面に被せるか」

王女「わたしも町民として民の役に立ちたいのです…それには女王の肩書が邪魔でした」

アサシン「女王としての即位は公にしないのか?」

王女「即位式は1年ほど待っても良いと思っています…王の間で統制している姿を見せるだけで今は十分かと」

アサシン「セントラルがこちらに来ていないのが気に掛かるが…」

魔女「シャ・バクダ優先なんじゃろうな…立地的に対立して良い事は何も無いじゃろうて」

アサシン「建物の損壊が何も無いから攻めにくいと言うのもあるか…」

近衛「王女…準備出来ましたが街へは出かけられますか?」

王女「行きます…魔女とアサシン様もご一緒にどうですか?」

アサシン「構わんが…この恰好でも良いのか?」

王女「平服で結構…魔女はあやしい恰好なので着替えて行きましょう」

魔女「なんと!この恰好はあやしいと申すか…」

王女「…そのとんがり帽子だけでも脱いで頂けませんとあやしくて人目に付いてしまいます」

魔女「わらわのお気に入りなんじゃがのぅ…」ブツブツ
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:41:58.53 ID:6+J6cz5f0
『街道』


ワーイ ワーイ


魔女「人はまばらじゃが子供が走って居るのは良いのぅ」

王女「女性と子供達は軍船で海に逃れていたそうです」

魔女「学び舎を用意してやってはどうか?」

王女「そうですね…城の教会を学校にしましょうか」

アサシン「空き家はどうしているのだ?」

王女「兵に片づけさせて一時的に国が預かる形にしています」

アサシン「持ち主が何処に行ったか分からん様では仕方が無いか」

王女「近隣からの移民に与えようと思っています」

アサシン「ここに来れば住む場所も食料も困らん訳か…」

王女「それだけでは備蓄の3年しか持ちませんので皆で畑を耕しているのです」

アサシン「この国は海も山も川もあり豊かな国だ…シャ・バクダとは違うな」

王女「国を流れる川の源流…見えますでしょうか?」

アサシン「山づてに流れて来ている川だな?」

王女「あの川に龍神が住まうと言われこの国を守って居るのだそうです」

魔女「ほぅ…山から海へ流る川に龍神とな?それは竜宮に繋がっておるのじゃな?」

王女「ご存じでしたか…竜宮は海の中にあると言われております」

アサシン「海の竜といえばリヴァイアサン…伝説に過ぎんか」

王女「その名は他国の方がそう呼んだ名です」

魔女「この国では別の呼び名があるのじゃな?」

王女「九頭龍大神…善女龍王…俱利伽羅竜王…沢山居ますが総じて竜王と称されています」

魔女「まてよ…聖書にはリリスの下半身は竜であったと書いておったが関係は無いか?」

王女「ラミアの事でしょうか?善女龍王伝説がそれにあたります」

魔女「気になるのぅ…」

王女「善女龍王伝説でしたら城の書庫に資料があります…後ほどご覧になって下さい」


604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:42:29.62 ID:6+J6cz5f0
『広場』


ジュージュー ワイガヤ


ごろつき「よぉネーちゃん又来たか!食ってけ」

王女「はい…賑わっていますね?」

ごろつき「そらそうよ!国から干物の配給がたっぷり合ってよ…焼き魚パーティーだ!ほれ食え」

王女「頂きます」モグ

ごろつき「あんさん達も避難民か?どっから来たんだ?」

アサシン「砂漠からだな」

ごろつき「そら遠くから大変だったろ!家貰えたか?」

アサシン「畑付きの家をな…」

ごろつき「俺もだガハハしかも種撒き終わった畑付きよ…収穫時期が来るのが怖えぇよ」

街の女「あっちで酒の配給あるみたいよ?ほら?」グビ

ごろつき「おぉぉ魚ばっかりで何か飲みたかった所だ!ちょいと行って来る」ダダ

街の女「あなた達は城の人?身なりが良さそうな格好してるけど」

魔女「わらわの事かえ?高貴な身分が染み出てしまうのかのぅ…」

街の女「あら?赤い目…あんた娼婦なんだ…仲間じゃん」

魔女「なぬ!!娼婦じゃと!?」

街の女「この辺は儲からないからさ…宿屋の通りの裏行くと良いよ」

魔女「余計なお世話じゃ…ふん」

ごろつき「おーい!あんさん達の分も持ってきたぞ!!」ガチャガチャ
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:43:03.74 ID:6+J6cz5f0
『宿屋の裏』


おい…良いだろ?この間は金で良かったじゃないか

ダメダメもうお金要らないのよ

ちぇ物々交換なんて聞いた事無いぞ…何があれば良いんだよ

香料に香辛料…薬草ポーション…バターも良いかな


近衛「王女…この辺りは王女は来ない方が良いかと」

王女「良いのです」

近衛「まさかお売りになる訳ではありませんよね?」

王女「場合によっては…」

近衛「やはりこの道は行かせられません」

王女「冗談ですよ…民に何が必要なのか見て居るのです」

近衛「はぁ…」

アサシン「魔女は顔を隠しておいた方が良いな」

魔女「わらわの目かえ?」

アサシン「この業界では赤い目は合図として使われるのだ…面倒にはなりたくあるまい」

魔女「通りゆく男がわらわを見て行くのは品定めしておるという事か?」

アサシン「まぁそういう事だ」

魔女「ではなぜ声を掛けて来んのじゃ?魅力が足りぬと言うのか?」

アサシン「私や近衛を先客だと思っているんだろう」

魔女「なるほど…それならば仕方ないのぅ」ファサ

王女「女性の働き口が少ないのが背景にあるようですが…これはこれで良い文化なのかもしれませんね」

魔女「このように育む愛もある様じゃな」

王女「この一帯は歓楽街にして行きましょう…カジノを設置して女性の働き口を増やします」

アサシン「軍国から一転して歓楽の国か…王女の采配とは思えんなクックック」

王女「民が求める物を勘案した結果です…商業の国に転身します」

アサシン「商業?セントラルと張り合うと言うのか?」

王女「農産物を輸出して趣向品をキ・カイから買い入れて民の笑顔が見たい」

魔女「主は他の国と違った方向を向いておるのじゃな…ある意味良き王になるやもしれぬ」

王女「私も楽しみたいのですよ…顔料に香料…おしゃれも」

アサシン「ハハ王女は王女のままで良いと言ったが…そっちの方向か」

魔女「少女のままの王か…わらわはもうしばらく背後に座っておるかの」
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:43:45.66 ID:6+J6cz5f0
『城の教会前』


ワイワイ ワイワイ


皆さんこんにちは

今日からみなさんの先生になりました

よろしくおねがいします

今日は始めに皆さんに自己紹介をして貰おうと思います

始めに先生から自己紹介をしますね…わたしは…


ワイワイ ワイワイ


アサシン「魔女は何か指導を担当するのか?」

魔女「少しだけじゃな…魔術は適性があるで全員には教えられぬ」

アサシン「私はやる事が無いから地下墓地にでも行って来る」

魔女「第2皇子か…エルフがゾンビになってしまうなぞ不幸じゃったのぅ」

アサシン「この国も少しは落ち着いた…精霊樹の元へ連れ帰りたいのだ」

魔女「そうじゃな…救われると良いがな」

アサシン「実は少し期待しているのだ…私はドラゴンの心臓を得て正気を保っているがドラゴンの心臓は寿命が長いだけだ」

魔女「エルフの心臓も寿命が長いが…同じ事を期待しておるのか?」

アサシン「そうだ…精霊樹の声を聞き目覚めないか…とな」

魔女「試してみる価値はありそうじゃな」

アサシン「魔女はどうする?しばらくフィン・イッシュに残るか?」

魔女「そうじゃなぁ…書庫の資料を一通り読んでから考えるかのぅ」


子供達「あ!!城のテラスから女王様が手を振ってる!!」ノシノシ


女王様見た事ある〜?

あるよ!!銀色の仮面被ってるんだよ

仮面の女王様?


魔女「仮面の女王か…少しづつ認知されて来とるのぅ」

アサシン「インパクトは十分だな」

魔女「内政が良いお陰で不穏な噂は聞かぬが…仮面ではやはり不気味じゃのぅ」

アサシン「良い面もあるでは無いか…内政が良いのも仮面で顔を伏せているお陰でもある」

魔女「銀の仮面…魔除けには良い…ん?何故銀を選んだのじゃ?」

アサシン「フフ気付いたか…魔王除けだよ」

魔女「主が誘導しておるのか?」

アサシン「銀の仮面をつけてからの王女の行動は明らかに違うだろう?心を闇に染めない」

魔女「そういえば悲しい顔を見せなくなったのぅ」

アサシン「そういう事だ」
607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:44:29.01 ID:6+J6cz5f0
『書庫』


ブツブツ ブツブツ


王女「魔女…こちらに居ましたか…アサシン様はどちらへ?」

魔女「あ奴は地下墓地に行って居る…第2皇子に会いに行って居るのでおろう」

王女「そうですか…精霊樹に連れ帰る準備をされて居るのですね?」

魔女「行かせたくないのかえ?」

王女「いえ…そうではありません…姿が見えないと心配になったのです」

魔女「あ奴は主を裏切ったりはせぬ…故に心配は無用じゃ」

王女「アサシン様に宝具のドクロの杖をお渡ししようと思っていたのですが…」

魔女「ゾンビを操る杖じゃな?ネクロマンサーが用いる物じゃが何故そのような物がこの国の宝具になっておる?」

王女「父が生前にシャ・バクダで発掘されたものを買い入れたのです」

魔女「出所はシャ・バクダか…元の持ち主に戻る訳か」

王女「アサシン様にはこの杖が必要なのだと思っています」

魔女「そうじゃな…あ奴は200年前の清算をしようとしておるのじゃ…主も気付いて居ったか」

王女「魔女は書庫に籠っている様ですが何か分かった事は在るのでしょうか?」

魔女「善女龍王伝説…ラミアはやはり蘇生されたリリスの様じゃ…伝説の類似点が多すぎる」

王女「雨乞いの竜王というのがこの辺での定説です」

魔女「生贄に何を捧げたのかは知らぬが血を好むらしいのぅ」

王女「はい…男性の血を贄として雨乞いをする習わしです」

魔女「リリスはのぅ赤子を好むのじゃ特に生後8日までの男子を食らう…似て居ろう?」

王女「そうですね…」

魔女「実はな…シン・リーンの古代遺跡にもラミアおぼしき画が在っての…聖剣にて首を獲られておるのじゃ」

王女「それもリリスだとお考えですか?」


そうじゃ…光の国シン・リーンではな古来より女系が王座に座るのじゃ

何故かというと男系は神に贄として捧げる故に血が途絶えるのじゃ

そういう習わしが現代まで引き継がれてきたのじゃよ

1700年前の古代文明の伝承でも同じじゃ…それを今の今まで引き継いでおる
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:45:09.74 ID:6+J6cz5f0
魔女「類似点は男を好んで食らうという点じゃな…それと下半身が竜じゃ」

王女「首を獲られたと言うのは?」

魔女「メデューサの首を聞いた事があるかの?」

王女「見ると石化するという伝説の…」

魔女「そうじゃ…この国ではラミアという名じゃがわらわの国ではメデューサじゃ…どちらも蘇生されたリリスじゃと思うておる」

魔女「そしてわらわの血筋はメデューサに由縁がある…この目じゃ…メデューサの目も赤いのじゃ」

王女「え!?魔女は…リリスの血を引いて居る?」


メデューサが首を獲られた時にな…滴り落ちる血は不老不死の力を持つと言われておったのじゃ

時の支配者はその血を飲み力を得たのじゃが…同時に目を赤く染めた

強力な魔翌力を得た代わりに国は滅びの道を進みやがて時の王は国を屠った


魔女「魔道書に記された契約の言葉とメデューサの…いやリリスの生業が見事に一致するのじゃ」

王女「シャ・バクダ大破壊の本当の原因はリリスの封印なのですね?」

魔女「おそらくそうじゃと思う」

王女「魔王は人を操りリリスの復活をさせようとしている…」

魔女「実体を持たぬ魔王はこの世に何も出来ぬ…たとえ勇者を器にして蘇ったとしても只の人じゃ」

王女「でもあれほどの数のゾンビを操るほどの力を…」

魔女「まやかしで付き従いさせるだけじゃな…本当に力を持つのはリリスの方ではないかのぅ」

王女「カタコンベを何とかしないといけませんね」

魔女「うむ…封印されているとはいえ…心配じゃのう」
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:45:49.01 ID:6+J6cz5f0
『気球』


アサシン「見送りに来たのか…」

王女「アサシン様…これを」

アサシン「ドクロの杖か…今必要だとは思って居なかったが借りて置く」

王女「私には必要ありませんのでお持ちください」

アサシン「クックックこの国には無い方が良いな…頂く」

王女「すぐお戻りになられますか?」

アサシン「そのつもりだ…第2皇子を精霊樹まで運んで帰って来る…心配するな」

魔女「わらわは残るぞよ?」

アサシン「私一人で良い…すぐに済むから魔女は書庫でも漁っていろ」

魔女「カタコンベの状況も見て来るのじゃぞ?」

アサシン「言われるまでも無い…呪いの噂がどうなって居るのかも楽しみなのだ」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ガチャンガチャン

アサシン「早く行けと騒いでいるな」

王女「本当に一人で大丈夫なのでしょうか?」

アサシン「大丈夫だ…ワインを血だと思って好んで飲む」

魔女「精霊の御所でエルフに会ったなら争うでないぞ?」

アサシン「相手次第だな…攻撃される様なら私も身を守る」

魔女「この貝殻を持て…何かあればこれでわらわが話しかける」

アサシン「千里眼か…常に見張られて居るのは気分がよい物では無いな…では行って来る」

王女「お気をつけて…」


フワフワ


------------------
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:46:27.00 ID:6+J6cz5f0
ビョーーーーウ バサバサ


アサシン「さて…ワインでも飲むか?相棒」

エルフゾンビ「ガァァァァ…」ガチャンガチャン

アサシン「ふむ…鎖に繋がれていては不自由だな…ドクロの杖を試すか」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴヴ…」

アサシン「私を襲うな…大人しくワインを飲め」

エルフゾンビ「…」

アサシン「よし…鎖を外してやる」ガチャガチャ ガチン

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」

アサシン「クックック大人しくなったな?ワインは瓶のままで良いか?」シュポン

エルフゾンビ「ゴクッ」ゴクゴク

アサシン「ほぉぉ飲みっぷりが良いな…乾いて居たか」

エルフゾンビ「ガァァァ…」

アサシン「こんな風にワインを飲める日が来るとは思わなかったな…相棒」


不死者になっても酒の味は変わらんな

お前はどんな未来を望む?

森になりたいか?

私はな…勇者を屠って考えが変わったのだ

魔王を深淵に落としても意味が無いとな

もっと根底から変える必要がある様だ

何かはまだ分からんが

付き合ってみる気は無いか?


エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…ガァァ」

アサシン「そう入きるな…まだ始まったばかりだ…ゆっくり考えてくれ」ゴク
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:47:09.86 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡上空』


ビョーーーーウ バサバサ


アサシン「クックック…やはりカタコンベの掃除は手こずって居る様だな」

アサシン「少し驚かせてみるか…ゾンビ共!我に付き従え」

アサシン「さぁどうなる?見て見ろ相棒!今からショータイムだ」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」



--------------------



衛兵1「ひぃひぃ…この液体はどんだけ溜まってるんだ」ザバー

衛兵2「バケツリレーじゃ効率が悪すぎる」ザバー

衛兵3「ゾンビ運びよりはマシだぞ…あっちは汚れて酷い事になってる」ザバー


うぉぉぉ!!なな…なんだぁ!!

ゾンビが動いてる…

おーい!!誰か武器持ってないのかぁ!!

ぎゃぁぁぁぁののの…のろいだぁぁ


衛兵1「なんか向こうの方が騒がしいな…」

衛兵2「ちょ…ちょちょちょ…足元!!」

衛兵3「手が…歩いてる」

衛兵1「うぉ!!あっちにも!!ちょいこれヤバく無いか?」

衛兵2「逃げろ!!」ダダッ

衛兵3「うわぁぁぁぁぁぁ」ダダッ



---------------------



アサシン「クックック蟻の子を散らすとはこの事を言うアッハッハ」

エルフゾンビ「ガァァァ」

アサシン「さて…精霊の御所は南西の方角か…あの木だな?」グイ

アサシン「さぁ相棒…精霊樹とご対面だ…自分の道は自分で選べ」


フワフワ ドッスン
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:47:44.25 ID:6+J6cz5f0
『精霊樹』


ソヨソヨ ソヨソヨ


アサシン「たった数ヶ月でこれほど成長するか…相棒!精霊樹に寄り添え」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

アサシン「精霊樹…ゾンビになったエルフを連れて来た…導いてやってくれ」

精霊樹「…」サラサラ

アサシン「元はエルフだ…森の一部になれるかと思って連れて来た」

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」ドタリ

アサシン「精霊樹に抱かれて逝ったか?」

エルフゾンビ「…」シーン

アサシン「後から他のゾンビがこの辺にやって来る…ついでに木にしてやって欲しい」

精霊樹「…」サラサラ

アサシン「…」

アサシン「まぁ…私には精霊樹の声など聞こえんな」


ズズズズ ズーン


アサシン「ん?何だ今の音は…」スチャ

??「武器を収めなさい」

アサシン「精霊樹の声か?」

??「そのエルフゾンビをこちらに連れて来なさい」

アサシン「エルフか?姿を見せろ…」

ハイエルフ「…」ノソー

アサシン「ハイエルフか…」---でかい---

ハイエルフ「他の人間に見られるといけません…早くそのエルフゾンビをこちらへ」

アサシン「あ…あぁ…相棒!あのハイエルフに付き従え」

エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

ハイエルフ「あなたもこちらに来なさい…精霊樹の導きです」

アサシン「私も行って良いのか?」---この階段は…私が探していた深層への入り口---

ハイエルフ「早く…」

アサシン「あぁ…」タッタッタ


ズズズズ ズーン
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:48:33.44 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「守って居るのはトロールか…この中が精霊の御所なのだな?」

ハイエルフ「精霊樹からいきさつは聞いて居ます…奥へ」ノソノソ

アサシン「いきさつ?」

ハイエルフ「…」ノソノソ

アサシン「ハイエルフが人間と会話するのは野暮という事か」


---かつてのシャ・バクダの森は生きていると聞いて居たが---

---深層部が根の森だったとは---

---魔女が千里眼で覗いた根の森がこれか---

---ここにオーブが眠って居るのだな---


エルフゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

アサシン「相棒…森にはならなかったのだな?それともなれなかったのか?」


---間近にハイエルフを見るのは初めてだが---

---巨人だな2メートル20という所か---

---こいつは女の様に見えるが男なのか?---

---ドラゴンライダーに乗って居たのは---

---こんな巨人だったか…勝てる相手では無いな---
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:49:04.77 ID:6+J6cz5f0
ハイエルフ「エルフゾンビを中央の器に…」

アサシン「器?この液体の中に漬ければ良いのか?」

ハイエルフ「…」

アサシン「余分な事は話さんか…相棒!器の中で横になれ」

エルフゾンビ「ヴヴヴ…」ズリズリ チャポン

ハイエルフ「人間よそこに掛けなさい」

アサシン「掛ける?この石か?」スッ

ハイエルフ「エルフゾンビは精霊樹の樹液…エリクサーに浸かっています…直に意識を取り戻すでしょう」

アサシン「おぉ…心は生きて居たか…ハイエルフでもゾンビになったハーフエルフを助ける事はあるのだな」

ハイエルフ「ここはエルフの森の外…精霊樹の導きに従ったまで」

アサシン「導きか…そうだなハイエルフが人間に関わるなど過去に例が無いな」

ハイエルフ「精霊樹があなたに質問をしています…勇者の行方を話しなさい」

アサシン「勇者…剣士の事か…まだ生きている筈だ…行方は分からない」

ハイエルフ「勇者の魂の一部を精霊樹が預かっている」

アサシン「魂の一部?話が読み込めんな」

ハイエルフ「勇者から零れ落ちた魂を掴まえたと言って居ます」

アサシン「剣士を連れて来れば良いのか?分かった…見つけたら連れて来る」

エルフゾンビ「ぐふっ…」

アサシン「おぉ!!気が付いたな?」

エルフゾンビ「私は…どうな…っている…ヴヴヴヴ」

ハイエルフ「瞑想で休みなさい」

エルフゾンビ「瞑…想?」

アサシン「人間の住まう環境で育ったハーフエルフだ…瞑想の仕方なぞ知らんと思う」

ハイエルフ「精霊樹が導くと言って居ます…目を閉じなさい」

エルフゾンビ「目…を…」

ハイエルフ「瞑想は半日ほど時間を要します…人間よ…あなたはどうする?」

アサシン「半日か…私もずっと寝て居ないのだ…少し横になる」

ハイエルフ「…」ノソリ ノソ ノソ



------------------
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:49:48.44 ID:6+J6cz5f0
アサシン「…」パチ

エルフゾンビ「…」

アサシン「…」---久々に十分睡眠を得た---


---体が軽い---

---ハイエルフは何処へ行ったか---

---エルフゾンビは瞑想中か---

---よく見ると私が横になっていた石---

---これはトロールの一部だな---

---トロールに抱かれて寝てたのか---

---しかし…何と神聖な場所か---


アサシン「…」スック

エルフゾンビ「ぅぅぅ」

アサシン「相棒…目を覚ましたか?」

エルフゾンビ「アサシンか…」

アサシン「気分はどうだ?」

エルフゾンビ「悪くない」

アサシン「クックックお前も私と同じ体になったか」

エルフゾンビ「血に乾いた感覚は残って居る…アサシン…お前もか?」

アサシン「私は少量の血があれば事足りる様だ」

エルフゾンビ「私は生き血をすする真似はしたくない」

アサシン「クックックまだそれを言うか」

エルフゾンビ「どうやら私は精霊樹と共に生きて行かねばならん様だな」

アサシン「そのエリクサーが血の代わりか?それも良い」

エルフゾンビ「初めて瞑想という物を体験した…精霊樹の魂に触れたのだ」

アサシン「ほぅ…ゾンビになっても通じるのか」

エルフゾンビ「精霊樹の声が聞こえる…聞いたぞ?勇者と魔王の関わりを」

アサシン「そうか…わたしが屠った」
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:50:19.11 ID:6+J6cz5f0
エルフゾンビ「知らずとは言え…わたしが指輪を奪った事が惨事の発端という事もな」

アサシン「クックック悔やむな…済んだことだ」

エルフゾンビ「フィン・イッシュはどうなった?王女は無事なのか?」

アサシン「王女が王となり復興しようとしている…もう手助けはいらぬ」

エルフゾンビ「それを聞いて安心した…セントラルは兄が治めているのか?」

アサシン「そうだな…前王よりも強行なスタンスだ」

エルフゾンビ「兄には兄の正義がある…貫こうとしているだけで悪い人ではない…問題はその側近だ」

アサシン「クックックお前も言えた義理ではない…法王の使いに見事にやられたではないか」

エルフゾンビ「言うな…反吐が出る」

アサシン「さて…これからどうしたい?」

エルフゾンビ「私は精霊樹を守る宿命な様だ…もうこの根の森から離れる事は出来ない」

アサシン「そうか…このドクロの杖をお前に授ける…ゾンビを導いてくれ」

エルフゾンビ「私に不死者の王になれと言うか?」

アサシン「違う…彷徨うゾンビの魂を救って欲しいのだ…彼らを森の一部にな」

エルフゾンビ「森を作るのか…腐っても私はエルフか…」

アサシン「森を育てるのは精霊樹を守るのに等しいと思うが?」

エルフゾンビ「精霊樹がやりなさいと言っている…フフこんな私でも役に立てる事があるか」

アサシン「実はな…シャ・バクダ遺跡の地下に巨大なカタコンベがあるのだ」


そこには無数のゾンビが未だに彷徨っている…200年前の遺物だ

そしておそらく魔王の片輪も眠っていると思われる

名はリリスというそうだ

人間達はそれを知ってか知らずか掘り起こそうとしているのだ


アサシン「私はな…そのリリスという存在も屠る必要があると思っているのだ」

エルフゾンビ「フフ目覚めたばかりで重い話だな」

アサシン「これから育って行く森に爆弾を抱えたままでは落ち着けまい?」

エルフゾンビ「また精霊樹の声がやりなさいと言う…心の中で聞こえるのは勇者にでもなった気分だ」

アサシン「そうだ…私たちは導きを受けた勇者の一人なのだ…お前が言って居た言葉だ」

エルフゾンビ「フフそうだったな…」
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:50:54.39 ID:6+J6cz5f0
『気球』


フワフワ


エルフゾンビ「ハイエルフは何も言わないが…放って置いて良いのか?」

アサシン「恐らく事情を知っているのだろう」

エルフゾンビ「同族ではあるが気味が悪い」

アサシン「森の守護者だトロールだって何も言わん…そういうものだ」

エルフゾンビ「カタコンベに行くのか?」

アサシン「お前に状況を見せておきたくてな…気球では目立つから私のアジトに置いて行く」

エルフゾンビ「砂漠に所々生えている木は?んん?倒れたゾンビから生えて居るのか?」

アサシン「どうやらその様だ…精霊樹の影響だな」

エルフゾンビ「なるほど…あの様に森にして行けば良いのか」

アサシン「もうすぐ私のアジト…星の観測所に着く…フードを深く被って顔を隠せ」

エルフゾンビ「もはや私の顔を覚えている者など居るまい?私は常に顔を隠してきた」

アサシン「そうでもない…お前の兄の側近が領主に選出されて来ている…私が屠ってやったが」

エルフゾンビ「不死者になっても関りは途切れんか…」

アサシン「お前がシャ・バクダに居る事が知れれば又戦争が起きる…今は拗らせたくない」

エルフゾンビ「フィン・イッシュの事か?」

アサシン「再生の最中だ…王女を思ってやって欲しい」

エルフゾンビ「ふむ…読めて来たぞ…ここ遠隔の地にてセントラルとフィン・イッシュが対立関係になっているのだな?」

アサシン「まぁそんな所だシャ・バクダ街がセントラル…オアシス界隈がフィン・イッシュ」

エルフゾンビ「そして遺跡を巡って対立か…奪いたいセントラルと屠りたいフィン・イッシュ」

アサシン「…ここから見てセントラルのどの軍が来ているか分かるか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊…父直下の部隊だった」

アサシン「私は見ていないな」

エルフゾンビ「見ている筈だ…下水でな」

アサシン「下水…ラットマンか?」

エルフゾンビ「ラットマンは成長すると人間を遥かに超える戦闘力を持つ…そして補給が不要」

アサシン「そうか…下水でラットマンを育成していたのか」

エルフゾンビ「さすがにラットマンを連れ歩いては居ないが…間違いなく特殊生物兵器部隊の一員だ」

アサシン「只事では無いのが理解できたか?」

エルフゾンビ「その様だ…」


フワフワ ドッスン
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:51:30.78 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』


ノソリ ノソリ


アサシン「ここからはラクダで移動だ…乗れるか?」

エルフゾンビ「これでも王族の一人だ…乗馬は一通り経験している」

アサシン「馬とは足の運び方が違う…揺れるから重心に気を付けろ」

エルフゾンビ「このアジトは私が勝手に使っても良いのか?隠れるのには丁度良い」

アサシン「構わんが顔をさらすなよ?ドラゴンの義勇団の者だと言えば通る…後で義勇団の連中に言っておく」

エルフゾンビ「げふっ…げふっ…やはり喉が渇くな」

アサシン「血が欲しいか?ワインならあるが…どうする」

エルフゾンビ「すまん…」

アサシン「気球に積んである…もって来るから待っていろ」タッタッタ

エルフゾンビ「砂漠はゾンビの体にはキツイか…」

アサシン「一瓶持って行け」ポイ

エルフゾンビ「不死者がワイン片手にラクダで砂漠を周遊か…贅沢な遊びだな」ゴキュ ゴキュ

アサシン「丁度私も喉が渇いていた所だった…お前とは気が合うな」ゴクゴク

エルフゾンビ「アルコールで酔えない…のか?この体は」

アサシン「そうだ…人生の半分を失った気分だ…だがな?私は見つけた…酔いを楽しみたいなら聖水だ」

エルフゾンビ「聖水か…フフ聖水で目を回すか…」

アサシン「不死者も捨てたもんじゃないという事だ」

エルフゾンビ「フフフハハハ…」
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:52:00.68 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ガヤガヤ ガヤガヤ


アサシン「軍が居座っているな…100人程か」

エルフゾンビ「ここの下にカタコンベが在るのだな?」

アサシン「そうだが…この状況では近づけまい」

エルフゾンビ「もうじき日が落ちる…私がゾンビを操り騒ぎを起こしている間に中へ入る」

アサシン「同意…」

エルフゾンビ「リリスとやらを見つけたとして葬る手は持って居るのか?」

アサシン「このミスリスダガー2本しか無い…だが魔王を屠った武器だ」

エルフゾンビ「やってみるか」



---日暮れ---



アサシン「クックック…夜通しカタコンベの掃除をやっているのか」

エルフゾンビ「松明がある分夜目の利かないお前には良かったでは無いか」

アサシン「そろそろ行くか?」

エルフゾンビ「近くのゾンビ共…少し暴れまわれ」スチャ

アサシン「さてさて…どれくらい出て来るか」

エルフゾンビ「私の行いはネクロマンサーそのものだな」

アサシン「森を作っていると思え…死者の魂も救っているのだ…お前は悪いエルフでは無い」

エルフゾンビ「そう言ってもらえると少しは気が落ち着く」

アサシン「出て来たぞ…ゾンビは砂に埋もれていた様だな」


また出たぁぁぁ!!

ゾンビだ…

戦える奴居ないのかぁぁ!!


ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

衛兵「砂の中から出て来る!!誰か武器もってこーーい!!」

アサシン「混乱し始めた…行くぞ」タッタッタ
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:52:36.75 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ』


衛兵「お前は誰だ!?」

アサシン「又ゾンビが出ている!!こっちも危ない…」

衛兵「何だってぇぇ!!」

アサシン「一旦作業止めてゾンビ退治だ…武器は外のテントで配っている」

衛兵「分かった…お前はどうするんだ?」

アサシン「奥で作業している奴にも伝えに行く…早く行ってくれ」

衛兵「おい皆!!作業中止だ…外のゾンビ退治だ」ダダッ

アサシン「こっちだ…ここの下が巨大なカタコンベだ…おい!?」

エルフゾンビ「…この石造は」

アサシン「200年前の勇者の像だ…見覚えあるのか?」

エルフゾンビ「大剣…」

アサシン「夢幻の記憶か?」

エルフゾンビ「よく思い出せなくなったが…見覚えがある」

アサシン「今は良い…早く下に行くぞ」グイ

エルフゾンビ「済まない…」タッタッタ


外でゾンビが出てるらしい

どうする?俺らバケツしか持ってないぞ?

こっちでもいつ湧いて来るか分かんねぇ

ひとまず武器取りにいくぞ


衛兵「おい!お前!!武器を持っているな?何処に行く」

アサシン「カタコンベの安全確保だ…指示されて此処に来た」

衛兵「そうか…外はどうなって居る?」

アサシン「砂の中からゾンビが複数湧いてきて混乱している」

衛兵「複数…数は?」

アサシン「20体程だ」

衛兵「そんなに居るのか…やばいな武器が足りんかもしれん」

アサシン「早く行った方が良い」

衛兵「分かった…お前も気を付けろ…謎の物体が動いているからな」

アサシン「分かった…」---謎の物体?---
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:53:30.71 ID:6+J6cz5f0
『深層』


エルフゾンビ「見つけたな…これがリリスか?」

アサシン「でかい心臓…なのか?悪魔の卵…か?」

エルフゾンビ「カタコンベの壁面に癒着しているな…これでは取り出せん」

アサシン「下半分はまだ液体の中か…」スチャ

エルフゾンビ「そのダガーでこの肉壁を貫けると思うか?」

アサシン「奥義!!デュアルストライク!!」ザクン ザクン

エルフゾンビ「無理だな…葬る方法を考え直した方が良い」

アサシン「バックスタブ!!」ザクリ グサァ

エルフゾンビ「中で何か動いている…蛇の様な物だ」

アサシン「リリスに間違いなさそうだ…見えるか?」

エルフゾンビ「何処が頭部なのか分からない…だが魔物である事は間違いなさそうだ」

アサシン「乳房が見えるな」

エルフゾンビ「どこだ?」

アサシン「ここの薄い肉壁から少しだけ見通せる」

エルフゾンビ「人の乳房か…首が無いぞ」

アサシン「見当たらんな」


”アサシン聞こえるか?”


エルフゾンビ「誰だ!?」

アサシン「魔女…聞こえる…こっちの声は届くのか?」ゴソゴソ

エルフゾンビ「貝殻から声が?」


”アサシン…帰って来るのじゃ…その魔物は主ではどうにもできぬ”

”危険じゃから戻って来い…石にされるぞよ”


アサシン「どうやら魔女の言う通りやもしれん…見ろ…私の手が動かん」

エルフゾンビ「引き上げるか…うぐっ…足が動か…ない」ドテ

アサシン「ちぃぃ石化が始まってるのか…」グイ

エルフゾンビ「私に肩を貸した状態で走れるか?」ズリズリ

アサシン「石化の進行が早い…俺達の命運は尽きたやもしれん」ヨタヨタ

エルフゾンビ「ゾンビ達よ…私達を精霊の御所まで運べ」

アサシン「クックック…ゾンビ頼みか」


そっちに行ったぞ!!囲めぇ!!

くっそ!こんな武器じゃゾンビを倒せない

おい!新手だ!!…でかい!!

うぉぉぉエルフだ!!逃げろ!!


アサシン「…ここまでだなフゥ…足がもう動かせん…済まんな巻き込んでしまって」

エルフゾンビ「フフ砂漠で飲んだワインは旨かったな」
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:54:10.08 ID:6+J6cz5f0
ピョン クルクル シュタッ


ハイエルフ「…」グイ

アサシン「おぉぉハイエルフか…まさか助けに来るとは」

エルフゾンビ「フフフハハハまだまだ私たちは生かされるのか…ハハハ」

ハイエルフ「…」シュタタ シュタタ
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:55:08.54 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:55:44.11 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


アサシン「ううん…ん?ここは…精霊の御所か…私は気を失っていたか」

エルフゾンビ「目を覚ましたな?手足は動くか?」

アサシン「動く…な」グッパ グッパ

エルフゾンビ「エリクサーには石化を治す効果もある様だ」

アサシン「そうか…助かったな…ハイエルフは何処に行った?」

エルフゾンビ「さぁ?私が目覚めた時にはもう居なかった」

アサシン「礼を言っておきたかったな」

エルフゾンビ「それには及ばない…どうやらハイエルフは人間の心を読める様だ」

アサシン「そうか…さて…私は一旦フィン・イッシュに帰るとするが…」

エルフゾンビ「私はゾンビを操ってカタコンベの邪魔をしておけば良いのか?」

アサシン「そこは任せる…事情はつかめただろう?」

エルフゾンビ「そうだな…私は精霊樹を守りながらリリスの状況を見守っておく」

アサシン「ハイエルフはこの森をどうするつもりなのか知っておきたかった…」

エルフゾンビ「私が話せる機会があれば聞いておく」

アサシン「では目覚めて早速だが行くとする…上手くやれ相棒!」



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625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:57:53.64 ID:6+J6cz5f0
『亡国フィン・イッシュ_王の間』


バン! ガチャリ


王女「魔女…どうされましたか?」

魔女「ふぅ…ふぅ…」

王女「粗ぶっておられますね?」

魔女「王女…世界中から書物を集めるのじゃ」

王女「はい」

魔女「シン・リーンへの書状をわらわが書く故…気球をすぐに飛ばすのじゃ」

王女「どうしたのですか?」

魔女「リリスは既に目覚めておる…わらわ達はまんまと魔王に乗せられシャ・バクダにて闇を祓った」

王女「乗せられ?どういう事でしょう?」

魔女「封印されておるリリスに注意を向けさせる為じゃ…今まで誰もあの地に足を踏み入れておらん」

王女「人間を使い掘り起こさせて居ると…」

魔女「そうじゃ…でなければわざわざあの地にゾンビを集めたりはせんじゃろう」


わらわが浅はかじゃった

師匠が森を焼いてでも封印した理由をもう少し考えるべきじゃった

魔王は初めから自ら蘇る気なぞ無いのじゃ

人間を勇者を利用してリリスを呼び覚ますのが目的じゃ


魔女「ややもすると既にリリスの腹の中に魔王が息づいているやもしれぬ…子宮は魔王の器になりうるでな」

王女「魔王は深淵に落ちたのでは無いと?」

魔女「そうじゃ…闇と一緒に子宮という器に収まった可能性があるのじゃ」

王女「いつごろ生まれて来るのでしょう?」

魔女「あれから半年は経っておる…あと3ヶ月も経てば生まれてしまうやもしれぬ」

王女「今動き出さないと間に合いませんね」

魔女「もうわらわが禁呪を用いるより他に無いやもしれん」

王女「書物の収集を急ぎます…」
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:58:37.65 ID:6+J6cz5f0
『書庫』


ブツブツ ブツブツ


アサシン「魔女!!王女から話は聞いたぞ…」

魔女「おぉ無事に戻ったか」

アサシン「何か手はありそうか?」

魔女「調べておる…王女は一緒に来ておらぬのか?」

王女「はい…御用でしょうか?」

魔女「この地にクサナギという剣は伝わっておらぬか?」

王女「神事用の剣がクサナギという名を持っていますが劣化して剣としては使えないかと」

魔女「良い…之に持て」

王女「持って参ります」スタスタ

アサシン「その武器で倒すという事か?」

魔女「出来るかどうか分からぬ…じゃが伝説ではその武器で蘇生されたリリスを倒しておる様じゃ」

王女「お持ちしました…どうぞ」

アサシン「クックックどんな剣かと思えばダガーより少し長い程度か」

魔女「随分古そうじゃのぅ…」

アサシン「これはもう刃が付いて居ない…武器にはならんな」

魔女「そうか残念じゃ…やはりわらわが量子転移で穴を開けるしか無さそうじゃのぅ」

アサシン「穴だと?」

魔女「主のミスリルダガーではリリスを包んでおる肉壁に穴を開けられんであろう?」

アサシン「開けた後どうする?」

魔女「主がリリスの腹を裂き子宮を取り出せ」

アサシン「クックック出来ると思って居るのか?」

魔女「無理じゃろうのぅ…」

アサシン「量子転移という魔法は離れた場所からは使えないのか?」

魔女「手で触れる距離で無いと転移出来ぬ…わらわが量子転移で子宮を取り出すならリリスに触る必要があるのぅ」

アサシン「危険過ぎるな…1分弱で石化もある」

魔女「隕石を落としてもあの深さまで到達するか分からん上に被害が大きい」

アサシン「石化はエリクサーで凌ぐとして…どうする?」

魔女「主が魔王を屠った技は使えんのか?」

アサシン「ハートブレイクか…仮死状態に出来るのは数分だが…それで行けるか?」

魔女「危険じゃが…わらわが量子転移で肉壁に穴を開け…主がリリスを仮死状態にする…次にわらわが量子転移で子宮を奪う」

王女「本当に危険な作戦ですね…」

魔女「わらわの師匠が封印した魔物が目覚めていると知った以上もう放ってはおけぬ」

王女「そうですか…私はとても心配です」
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 18:59:32.60 ID:6+J6cz5f0
『1週間後』


王女「シン・リーンから気球が帰ってきました」

魔女「やっと来たか…壺は在るか?」

王女「こちらです…書物は後ほど運びます」

魔女「シャ・バクダに行くとアサシンに伝えてくれぬか?わらわは準備する」

王女「わかりました…いつ出立されますか?」

魔女「次の定期便じゃな」

王女「私は行く事が出来ませんので…」

魔女「分かっておる…主は王の務めを果たせば良い」

王女「後ほどアサシン様を連れて気球の方へ行きます」




『気球』


伝令「あと10分ほどで出発します…」

アサシン「魔女!待たせたな」

魔女「間に合えば良い」

アサシン「気合が入っているな?子供の身なりとは…」

魔女「今回は失敗出来ぬ故…万全で挑むのじゃ」

アサシン「私もミスリルダガー2本を打ち直してミスリルショートソードにしてきた」

魔女「ほぅ…多少長くなったかの?」

アサシン「これが今の私の最強武器だ…心材に例のクサナギを使っている」

魔女「それは良いのぅ」

王女「少しでもお役に立てればと思いまして」

魔女「伝説の武器じゃ…心して使うのじゃ」

伝令「そろそろ出発します…」

王女「お気をつけて…ご武運をお祈りしています」


フワフワ
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:00:00.80 ID:6+J6cz5f0
魔女「さてアサシン…主に言っておかねばならぬ事がある」

アサシン「何だ?」

魔女「わらわの魔法…量子転移の事じゃ…これは禁呪でのぅ…非常に危険なのじゃ」

アサシン「危険というと?」


この壺はな?封印の壺という物じゃ…この中に子宮を封じるつもりなのじゃが…

量子転移で中に封じる際に転移量が制御できない上…

わらわが次元の狭間に迷い込む可能性があるのじゃ…つまり主とはぐれる

わらわが消えてしもうたらこの壺を持って逃げるのじゃ…よいな?


アサシン「次元の狭間とはどこの事だ?」

魔女「制御出来ぬ…じゃが可能性があると言う話じゃ…迷わんで帰れる可能性もある」

アサシン「ふむ…魔女と逸れない為にはどうすれば良い?」

魔女「余裕があるならわらわの傍に居れば良い…じゃが同時に次元の狭間に迷うのは良いとは思わんな」

アサシン「壺が残されてしまうと言う事か?」

魔女「それも分からんのじゃ…故に禁呪となっておる」

アサシン「賭けだな…」

魔女「勇者は命を張ったのじゃ…わらわも命を張らぬとフェアでは無いじゃろう?」

アサシン「クックック気にしているのか」

魔女「そうじゃ…わらわは唯一女海賊に頭が上がらん…それほど純粋な愛を見せつけられたのじゃ」

アサシン「よし…私も気合が入って来た」

魔女「しばらくはゆるりとワインでも楽しもうぞ」


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629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:00:34.64 ID:6+J6cz5f0
『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


魔女「随分セントラルの兵がうろついて居るのぅ」

アサシン「そうだな…ゾンビが出るから増援しているのだろう」

魔女「エルフゾンビは上手くやっている様じゃな…木が増えて居る」

アサシン「うむ…私は精霊の御所に行ってエリクサーを仕入れて来る…日暮れ前には戻るからここに居てくれ」

魔女「では望遠鏡でも覗いておこうかの…」



『日暮れ』


アサシン「戻った…暗くなる前に移動しよう」

魔女「エルフゾンビはどうするのじゃ?」

アサシン「今回は危険だから遠くで見ていろと言っておいた」

魔女「賢明じゃ…して?エリクサーは持って来たろうな?」

アサシン「2瓶づつだ」

魔女「十分じゃな…では行くぞよ?」

アサシン「衛兵達はどうする?強行突破する気か?」

魔女「考えておる…わらわが睡眠魔法で眠らせる故…心配するでない」

アサシン「全員眠らせられるのか?」

魔女「勿論じゃ」

アサシン「クックックそんな便利な魔法があるなら初めから使えると言って欲しかったものだ」

魔女「この魔法は魔王がつかうまやかしと似た作用じゃ…味方にも掛かってしまうでのぅ」

アサシン「私も寝てしまうというのか?」

魔女「幻惑魔法は知っている者には掛からぬ…故に主には効果が無い」
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:01:08.66 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


魔女「ちと詠唱に時間が掛かるで待っておれ」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

アサシン「…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「効果時間は?」

魔女「30分で切れるが明日の朝まで寝る者も居るじゃろうな」

アサシン「急ごう」グイ

魔女「これ引っ張るな」


衛兵「ぅぅぅ」スヤ

アサシン「…立ったまま寝てるのか?」

魔女「幻惑じゃ…寝て居るのと変わらぬ」

アサシン「これほど簡単に潜入できるとは…」

魔女「いくぞよ」ノソノソ
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:01:51.21 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ_深層』


アサシン「肉壁を鎖で拘束しているな」

魔女「構わぬ…量子転移では関係ない…空間ごと切り取るでな」

アサシン「エリクサーを一口飲んでおく」ゴク

魔女「そうじゃな…」ゴク

アサシン「準備は?」スラーン チャキ

魔女「いくぞよ?量子転移!」シュン


ザバァァァァァァ


アサシン「中から液体が…」

魔女「まだリリスも動いて居らんな…液体が出切ってから中に入れ」

アサシン「やはり首から上が無い…こいつは脳が無いという事か?」

魔女「そうじゃな1700年前に切り取られたままなのじゃろう」

アサシン「体だけ蘇生しようとしていたのか」

魔女「リリスの子宮が狙いじゃな…アサシン!リリスが暴れる前に心臓を止めよ!」

アサシン「分かった!!ハートブレイク!!」ズン!!ズブズブ

リリス「!!?」ニョロニョロ

魔女「のたうち回っておるな…」タジ

アサシン「もう少しだ…」ズブズブ

リリス「…」ピク ピク

アサシン「今だ!!」

魔女「子宮は何処じゃ?透視魔法!」

アサシン「あと30秒」

魔女「見つけた…いくぞよ?量子転移!」シュン


ドクドクドクドク


アサシン「壺から血があふれて…」

魔女「量の制御が出来ぬ…こぼれた肉片を切り刻め!!」


ドクドクドクドク ボトン


アサシン「はぁ!!」ザクン ザクン スパ

魔女「よし…はぐれて居らぬな?」

アサシン「その様だ…壺はフタが出来ないのか!?」

魔女「やろうとしておる…むむむむ」ドクドク

アサシン「まずい…リリスの心臓が動き出した」

魔女「逃げるぞよ…」ノソノソ
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:02:25.36 ID:6+J6cz5f0
アサシン「先に上がれ」ザブザブ

魔女「血が多いのぅ…むむむむ」


ニョロニョロ ドタ バタ


アサシン「リリスがのたうち回っている…」

魔女「なんと禍々しい姿か…」

アサシン「早く上に上がれ!!」

魔女「出口は何処じゃ?」

アサシン「来た道を…無い!!どういう事だ!?」

魔女「まずいのぅ…ここは次元の狭間じゃ…空間が歪んでおる」

アサシン「2人揃って次元の狭間に来たのか…ちぃぃぃ出る方法は?」

魔女「透視魔法!…見えぬ」

アサシン「ちょっと待ってくれ…石化が始まってる」

魔女「あぅぅ…」

アサシン「おい!!魔女!!エリクサーを!!」グビ

魔女「…」

アサシン「体が小さい分石化も早いのか…魔女!!飲め!!」クイ

魔女「…」

アサシン「ええい!!壺だけでも私が持ち帰る」グイ

魔女「…」

アサシン「フタを…ふん!!」ギュゥ

魔女「…」

アサシン「はぁ…はぁ…」


---どっちに行けば良い---

---出口はどこだ!?---

---私はどこを走っている?---

633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:02:56.54 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


ヒュゥゥゥ サラサラ


衛兵1「隊長!!しっかりしてください…」

隊長「ん…ぁぁぁ居眠りしていたか」ゴシゴシ

衛兵1「様子がおかしいです!」

隊長「又ゾンビが来たか!?」

衛兵1「いえ…みんな寝ている様です」

隊長「起こして回れ!!」

衛兵1「おい!!起きろ!!」パンパン

衛兵2「んぁぁ…」パチ

隊長「これは緊急事態だ!!全員起こして武器を持て!!」


突っ立って無いで動け!!

目を覚ませ!!

おい!!しっかりしろぉ

武器携帯指示だ…武器を持て!!


衛兵1「隊長!!カタコンベで何か起きている様です」

隊長「例の奴が動き出したのか?」

衛兵1「分かりません…行ってみましょう!」

隊長「分隊A班!!カタコンベ入り口に集合!!B班は後方で待て!!」

634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:03:45.29 ID:6+J6cz5f0
『カタコンベ』


隊長「下はどうなって居る?」

衛兵1「例の奴が鎖の中で暴れまわっています」

隊長「見られるか?」

衛兵1「はい…少し降りたら遠目に見えます」

隊長「なぜ血まみれなのか…だれか見て居ないのか?」

衛兵1「気が付いたらあの様な状態だったそうです」

隊長「急いで特殊生物兵器部隊に連絡しろ」

衛兵1「はっ!!」ダダ

隊長「見た所首が無いな…どういう事だ?何の魔物だ?」

衛兵2「鎖の一部が切れている様です…出て来るかもしれません」

隊長「退避した方が良いな…全体!!カタコンベ入り口まで退避!!」



その日カタコンベから這い出て来たリリスは

砂漠を宛てもなく這いずり回り流した血で砂漠を赤く染めた

軍隊は成すすべも無く見守るだけだったが

のちに到着した特殊生物兵器部隊により捕獲され

研究材料としてセントラルまで移送された



数年後
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:04:31.24 ID:6+J6cz5f0
『シャ・バクダ遺跡』


調査員「先日出土した石造を見に来たのだが…」

作業員「はい…遺跡の1層目に3体並べてあります」

調査員「案内して欲しい」

作業員「入り口から入ってすぐ左ですよ」

調査員「すこし説明も聞きたい」

作業員「はぁぁしょうがないなぁ…何人目だ?」ブツブツ

調査員「すまないね」テクテク

作業員「…これですよ」

調査員「ふむ…どこら辺で出土したのかね?」

作業員「大きい方がこのフロアの側壁で小さい方が下層の側壁ですわ」ハァ

調査員「側壁…うーん」

作業員「もういいっすかね?」

調査員「他の調査員は年代とか何か話して居なかったかね?」

作業員「そこのでかい石造と明らかに年代が違うって…あんたまで俺を疑うんすかね?」

調査員「疑う?」

作業員「俺が出土したって嘘付いてる様な言い方…」

調査員「あぁそういう事か…疑う気は無い」

作業員「はいはい…じゃあ作業に戻りますんで」スタスタ

調査員「ありがとう…」---見るからに昨日作ったような石造だ---

調査員「…」---格好も古代の物には思えない---
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:05:17.85 ID:6+J6cz5f0
『日暮れ』


作業員「そろそろ戻らないとオアシスまで帰れなくなりまっせ?」

調査員「あぁ…もうそんな時間か」

作業員「何か分かった事あんすか?」

調査員「うーん…この大きな方の石造は何か抱えていたような形をしているけれど…他になにか無かったかね?」

作業員「あぁ…同時に壺が出土してますわ」

調査員「その壺は?」

作業員「考古学者と名乗る人が昨日持って行ったんすよ」

調査員「ふむ…私が知らないという事はフィン・イッシュ国の調査員か…」

作業員「俺も早く帰りたいんでもう出て貰っていいっすか?」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ


調査員「ん?何の音だ?」

作業員「うわ!!まずい…」

調査員「誰か来る…」

作業員「ゾンビだよゾンビ!!早く外に逃げて!!」グイ

調査員「ゾンビはもう出ないと聞いて居たが…」タッタッタ

作業員「知るかよ…たまに出るんだ」

調査員「衛兵は?」

作業員「もう帰ってるよ…はやくラクダに乗ってオアシスまで戻ってくれ」

調査員「誰か遺跡の中に入って行くが…」

作業員「え!?…もう日が落ちてるって言うのに」

調査員「君!!一人で戻るのか?」

作業員「しょうがないだろう…今の人も帰れなく…あ!!!」

調査員「石造を担いでる?」

作業員「あいつは盗掘だ!!…にゃろう!!」ダダ

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴ…ガァァァ」ズリズリ

作業員「うわぁ…」

調査員「君!!だめだ…衛兵に連絡するのが先だ」

作業員「ちくしょう…又俺が嘘つきって言われる…」

調査員「私が証人になる…早くラクダに」

作業員「くそう!!」ダダ
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:06:10.74 ID:6+J6cz5f0
『精霊の御所』


魔女「ぅぅぅ」

エルフゾンビ「気が付いたな?」

魔女「わらわはどうなっておるのじゃ?」

エルフゾンビ「エリクサーで石化の治癒待ちだ」

魔女「封印の壺はどうなった?」

エルフゾンビ「壺?何の事だ?」

魔女「わらわは壺を持って居らなかったか?」

エルフゾンビ「さぁ?」

魔女「アサシンが持って行ったな?…アサシンはどこじゃ」

エルフゾンビ「まだ目を覚まして居ない…アサシンも壺は持っていなかったぞ?」

魔女「どこぞに隠したか…わらわはまだ目が見えぬ」

エルフゾンビ「慌てないで治癒を待て」

魔女「頭が混乱しておる…どの様に次元の狭間より出たのじゃろう?」

エルフゾンビ「次元の狭間だと?お前たちは7年もの間行方不明だったのだぞ?」

魔女「何!?7年も石化して居ったのか?」

エルフゾンビ「ふむ…精霊樹が昨日突然お前たちを発見したのだ…7年間何処を探しても居なかった」

魔女「次元を超えたのじゃな…未来に来た様じゃ」

アサシン「げふっ…げほげほっ」

エルフゾンビ「おお!!目を覚ましたか!」

アサシン「俺は…何処を走ってる…げほっ」

魔女「アサシン!!壺は何処じゃ?」

アサシン「その声は魔女か…壺は俺が持ってる…目が見えない…俺はどうなってる!?」

エルフゾンビ「2人共落ち着け…ここは精霊の御所だ」

アサシン「又石化から救われた…のか?」

エルフゾンビ「そうだ…まだ石化の治癒が終わっていない」

魔女「待てぬ…わらわは壺を封印して居らぬ…壺のフタを…」

アサシン「フタは俺が閉じた…それで良かったか?」

魔女「ほっ…良い…良くやった」

アサシン「クックック兎に角…作戦は成功か?」

魔女「そうじゃ…壺に封印さえしてしまえば出る事は出来ぬ」

エルフゾンビ「壺は持っていなかった様だぞ?」

アサシン「私が抱えて…手が動かん…私は壺を持っていなかったのか?」

魔女「良くないのぅ…次元の狭間に置いて来てしもうたか…」

エルフゾンビ「お前たちはしばらくエリクサーに浸かっていろ…私が探してくる」
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:07:05.52 ID:6+J6cz5f0
『数時間後』


アサシン「7年も未来に来てしまったのか…王女が心配だな」

魔女「千里眼で確認した…大丈夫じゃ…それよりも壺の行方じゃな」

アサシン「あの壺のフタを開けるとどうなる?中身が溢れ出すか?」

魔女「簡単には開かんが開けてしまうと出て来るじゃろうのぅ」

アサシン「簡単には開かないというと?」

魔女「封印の力を上回る力じゃな…わらわでは測れぬ」

アサシン「とりあえずは安心か…」

魔女「そうじゃが…誰も触れぬ場所に置くべきじゃ…何が起こるか分からんでの?」

アサシン「なるほど…そういう事か」

魔女「ん?」

アサシン「リリスの首が無いのはそうやって何処かに封印されたのだな?」

魔女「もう誰も封印された場所を知る者は居らぬ…古文書を見ても分からんじゃろうのぅ」

アサシン「クックック…アーッハッハ結局最後に魔王を屠ったのは私という訳か」

魔女「そういう言い方もあるが…格好良くは無いのぅ」

アサシン「これがクサナギの剣の効果か…クックック」

魔女「壺を隠すまでは仕事が残っておる」

エルフゾンビ「戻ったぞ…石化は解けた様だな?」

魔女「壺は無かったか?」

エルフゾンビ「何処を探しても見つからない…それよりも遺跡周辺で騒ぎになって居てこれ以上探せない」

アサシン「騒ぎ?どういう事だ?」

エルフゾンビ「お前達を運び出す所を人に見られたのだ」

魔女「わらわ達はカタコンベで石化しとったのじゃな?」

エルフゾンビ「そうだ…そこから運び出した」

魔女「ふむふむ…次元の狭間は時間だけを超える様じゃな…つまり過去の物を量子転移出来ると言う事か…」ブツブツ

魔女「ではどうやって触る?…待てよ過去とは記憶の事では無いのか?空間は過去に記憶として繋がっていると仮定して」ブツブツ

魔女「記憶を手で触るとはどういう事じゃ?もし記憶から量子転移出来るなら過去は丸ごと現在に繋がる…時間とは何じゃ」ブツブツ

アサシン「おい…」

エルフゾンビ「…」

アサシン「魔女はまだ混乱している様だ」

エルフゾンビ「夜明けまでまだ間がある…ゆっくりして行け」


ブツブツブツブツ…

ブツブツブツブツ…
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/15(木) 19:08:00.32 ID:6+J6cz5f0
『日の出』


アサシン「私は星の観測所まで行って来るが…魔女はどうする?」

魔女「わらわも行くぞよ?」

エルフゾンビ「あの場所はもう接収されて私は近づけない」

アサシン「何!?私の資産なのだが…」

エルフゾンビ「7年も経って居るのだ…状況は昔と違う」

アサシン「うーむ…まず情報収集だな」

エルフゾンビ「今は衛兵が出回って居るぞ?魔女の恰好は石造と同じではマズイと思うが?」

魔女「ほう?これで良いか?変性魔法!」グングングン

エルフゾンビ「はっ…大人に…」

アサシン「お前は知らなかったのか…魔女は変身するのだ」

エルフゾンビ「赤い目の魔女…まさか君が…」

魔女「少し法衣が小さいが動けん事も無い…これで良いか?」

エルフゾンビ「…」

魔女「変な目で見るでない…主は何を驚いておる」

アサシン「目の当たりにすると普通は驚く」

エルフゾンビ「私はセントラルの第2皇子だ」

魔女「じゃから何じゃ?」

エルフゾンビ「何も聞いて居ないのか?」

魔女「はて?知らんのぅ…何か有ったかのぅ?」

エルフゾンビ「婚約の話を…」

魔女「求婚が何度も来て居ったが…主だったのかえ?…わらわはその様な話に興味なぞ無い」

アサシン「クックック相棒!!見事に振られたぞクックック」

エルフゾンビ「フフ…第2皇子だったのは昔の話か…今は精霊樹を守るエルフゾンビだ」

魔女「エルフには興味あるがゾンビには興味が無い…アサシン行くぞよ?」

アサシン「酷い事を言うのだなクックック」



『オアシスへ続く林』


魔女「随分と風景が変わったのぅ…遺跡周辺はもう森になっておる」

アサシン「現在地が分からなくなるな…どこがどのオアシスだったのか…」

魔女「主はどうするつもりじゃ?」

アサシン「王女に私たちの無事を伝えなくてはな」

魔女「そうじゃな…壺を探すのは王女の手を借りた方が良いかもしれん」

アサシン「南西のオアシスまで歩くのは遠い…どこかでラクダを手に入れないとな」

魔女「一番近いのは星の観測所じゃが…先に行ってみるかえ?」

アサシン「一応様子を見て行こう…知った顔が居るかもしれん」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:05:42.65 ID:iNLvSB+c0
『星の観測所』


ガヤガヤ ガヤガヤ


男「待て待て…お前たちは誰だ?」

アサシン「私はこの建屋の持ち主だったのだがドラゴンの義勇団は何処に行った?」

男「ドラゴンの義勇団?わーっはっは…いつの話をしているのか」

アサシン「私の気球はどうなった?」

男「知らんなぁ…お前は義勇団の関係者なのか?」

アサシン「どう答えて良いか分からんが…」

男「う〜ん…女連れかぁ」

アサシン「この建屋の今の持ち主は誰だ?」

男「フィン・イッシュ領事が使われている」

アサシン「ほう…それは都合が良い…領事に目通り出来るか?」

男「今は不在だ」

アサシン「そうか…中で待たせてもらう」ツカツカ

男「おとととと…待て待て…勝手に入って貰っては困る」

アサシン「こういえば伝わるか?ドラゴンの義勇団のアサシンが帰って来た」

男「んん?うーん…女連れ…もしかして女王様が探してる2人か?」

アサシン「多分そうだな…通って良いか?」

男「何か証拠になるような物は持って無いのか?」

アサシン「…」スラーン

男「おっとぉ…いきなり武器を抜くたぁどういう事よ」

アサシン「クサナギの剣だ…柄の銘を見ろ」

男「おぉ…龍神の文様と刻印」

アサシン「入って良いな?」

男「こりゃぁ大ごとだ…領事が帰って来るまで中で待っててくれ」

アサシン「そうさせてもらう」

男「俺ぁ伝令の所まで走って来るからよぅ…勝手に居なくならないでくれな?」
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:06:58.50 ID:iNLvSB+c0
『部屋』


魔女「荷物は昔のままじゃな?王女が確保しておいてくれた様じゃ」

アサシン「さきほどの話では女王になった様だな」

魔女「7年も経っておればもう少女では無いであろうな」

アサシン「しかし…随分平和そうだ」

魔女「そうじゃな」

アサシン「見た所セントラルと摩擦が起きている様子も無い」

魔女「んむ…拍子抜けじゃな」

アサシン「壺ごと未来に飛んだからなのか?」

魔女「その可能性もあるのぅ…」


ドタドタ


男「おぉぉ良かった…見張ってろと叱られて来た所だ」

アサシン「領事の行先は?」

男「遺跡の方で何かあったらしいんだ…軍が集まって大ごとになってる」

魔女「わらわ達のせいじゃな」

男「どういう事だ?」

アサシン「話すとややこしい…とにかく私たちが帰って来た事に起因するな」

男「領事を探しに遺跡の方に行ってみるか?」

魔女「わらわは歩き疲れておる…気球は無いのかえ?」

アサシン「厄介ごとに首を突っ込むのはよそう…大人しく待っていよう」

男「そうか…」
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:07:32.18 ID:iNLvSB+c0
アサシン「ところで…セントラルの兵が見えん様だが?どうなって居る?」

男「シャ・バクダ街の方だ…オアシスの方にはほとんど来ない」

アサシン「遺跡の調査を主導していた筈だったが?」

男「あんた知らないのか?もしかして記憶が無いとかそういうやつか?」

アサシン「話せば長くなるのだが…まぁ記憶が無いのと等しいか…」

男「7年くらい前だったか…遺跡から蛇の様な魔物が出て来てこの一帯は大混乱したんだ」

魔女「リリスじゃな…どうなったのじゃ?」

男「その魔物の血を浴びると石化するもんだから軍隊でも手を焼いてな…」

アサシン「なるほど…それで石化したのだな」

男「何か月も掛けてセントラルの大部隊がやっと捕獲したんだ」

魔女「討伐ではなく捕獲じゃと?」

男「鎖でグルグル巻きにしてどっか持って行った…その後セントラルは遺跡の調査を中止したんだ」

アサシン「今は遺跡の調査をフィン・イッシュが主導しているのか?」

男「女王様があんた達を探すのにオアシス全域の領有を主張したんだ…だから今はオアシス全域フィン・イッシュ領だ」

アサシン「それでセントラルの兵はこちらに来ないのか…」

男「それもあるが…エルフといざこざが起きて忙しいらしい」

魔女「懲りん奴らじゃ…それにしてもアサシン…」

アサシン「あぁ…リリスは特殊生物兵器部隊に持って行かれた様だ」

魔女「んん?始めて聞く名じゃが…セントラルはその様な部隊を持って居るのじゃな?」

アサシン「エルフゾンビ曰くセントラルの主力だ…生物兵器としてリリスの血を使うつもりで捕獲したのだろう」

魔女「…という事は…行先はセントラルか」

アサシン「今は壺の方が先決だ」
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/19(月) 21:08:02.10 ID:iNLvSB+c0
『数時間後』


なぜもっと早く知らせに来んのだ

探したんですがなかなか見つからなかったもので…

伝令は飛ばしたのか?

はい…定期便に乗せました


ドタドタ


魔女「来たようじゃのぅ?」

アサシン「…」

領事「これはこれはアサシン様と魔女様に御座いますね?」

アサシン「単刀直入に聞く…遺跡で壺を見ていないか?これくらいの大きさの壺だ」ゴソゴソ

領事「え…あ…あのですね」

魔女「知って居る様じゃな?話せ」

領事「紛失してしまったのです…」

アサシン「どこに行ったか分からないと言うのか?」

領事「先先日に我が国の考古学者と名乗った者が壺を持ち出したのですが…そのような者は我が国に居ませんでして…」

アサシン「なるほど…セントラル側に忍び込まれているという事か」

領事「恐らく…」

アサシン「シャ・バクダ街の方へは捜索に人を出しているか?」

領事「数名出していますが未だ行方知れずです」

アサシン「うーむ…的が絞れん」

領主「実は石造2体も紛失してしまって捜索中なのですが…もしかするとお二人の事ですかね?」

アサシン「石造の捜索はもうしなくて良い…壺に絞って欲しい」

領主「はぁぁぁ良かった…女王様に何と申し開きしようかと困って居たのです」ホッ

魔女「女王に石造の件は連絡しておるのか?」

領主「はい…出土したその日に伝令を飛ばしております」

魔女「こちらに来るかのぅ?」

領主「アサシン様と魔女様の関係でしたら直々に参られると思います」

魔女「では女王が来るまでは動けんのぅ…来るのは早くて1週間程か?」

領主「はい…大体それくらい掛かると思います」

アサシン「私は落ち着けんな…一人でシャ・バクダ街まで見に行って来る」

魔女「わらわは主の邪魔になりそうじゃな?」

アサシン「そうだな…一人の方が何かと融通が利く…魔女はこの辺で情報収集していてくれないか?」

魔女「おい男!!ラクダを用意せい…オアシスを回るぞ」

男「ええ!?俺!?俺はこの場所の管理を任されて…」

魔女「そんな仕事は領事にやらせておけ…早う準備せい!行くぞよ」

領事「オアシスのご案内は私めが…」

魔女「主は嘘付きの顔をしとるで信用できぬ…わらわは頭の回らん男の方が好きじゃ」

男「んん?俺のことか?」

領事「…」

魔女「何をしとるんじゃ早う行くぞ」ゴツン

男「あだっ…杖でどつくな…痛てぇな…」
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:08:41.54 ID:iNLvSB+c0
『数日後』


わらわは下着を履いておらんと言うたじゃろう!!何故買って来なかったのじゃ

女物の下着なんか俺が分かる訳無いだろ

またどつかれたい様じゃな…もう一度行って買って来い

なんで俺がお使い役なんか…あだっ!!わかったわかった…


魔女「おぉアサシン帰って来たか…んん?誰じゃ祖奴は?」

アサシン「骨董品屋だ…この男の手を見てやってくれ」

魔女「どうしたのじゃ?」

骨董品屋「手が黒くなって動かなくなっちまってなぁ…医者に見せても分からんと言うもんでなぁ」

アサシン「回復魔法で治せないか?」

魔女「やってみても良いがこれは怪我なぞでは無いようじゃな?回復魔法!」ボワー

魔女「どうじゃ?動かせるか?」

骨董品屋「動かんなぁ…これじゃ仕事にならんなぁ」

魔女「消毒魔法!」ボワ

骨董品屋「動かんなぁ…」

魔女「何じゃろうな?動かぬという事は石化かも知れん…わらわの魔法では治せぬ」

アサシン「石化か…魔女はまだエリクサーが余っていたな?」

魔女「おぉ!!忘れておった…これを一口飲んでみぃ」スチャ

骨董品屋「…」ゴク

魔女「直ぐには治らんよって…まてよ?黒色化に石化…もしやこれは黒死病では無いか?」

骨董品屋「それは悪い病気なんかなぁ?」

魔女「体の一部が石になる伝染病じゃ…他にこの様な症状の者は居らんのか?」

アサシン「私が見る限り一人しか見ていないが…彼は壺の鑑定を露店でやって居るのだ」

魔女「壺を見つけたのかえ?」

アサシン「いや…沢山鑑定している様だから封印の壺が有ったのかは分からん…だが触った可能性はある」

魔女「急に石化する病気が出て来るのはあきらかにおかしいのぅ…壺の影響と考えた方が良いな」

アサシン「…となると商隊でどこかに運ばれた可能性も出て来るな」

魔女「おい骨董品屋!主が鑑定した壺はどうなるのじゃ?」

骨董品屋「良い物は商隊に回してよその町で買い取ってもらうんだなぁ…」

魔女「これくらいの黒い壺じゃ…覚えて居らんのか?」

骨董品屋「いっぱいあるんだなぁ…どれがどれだかなぁ…」

アサシン「この調子なのだ聞いても意味が無い…探し物の魔法とか無いのか?」

魔女「あればとっくに使っておるわい…んーむどうしたもんか…」



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645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:09:24.12 ID:iNLvSB+c0
女王「近衛2人だけ私に同行してください…他の者は見張りをお願いします」

衛兵「はっ!!」

女王「二人は中にいらしていますか?」

領事「はいお待ちしております」

女王「案内してください」

領事「こちらです…どうぞ」ササッ


ガチャリ バタン


女王「あぁぁぁアサシン様…魔女様…よくご無事で」

魔女「おぉぉ女王らしくなったのぅ」

女王「今までどうされて居たのですか?何の音沙汰も無く本当に心配していました」

魔女「わらわ達には主と別れてまだ10日程しか経って居らん」

女王「え!?どういう事なのでしょう?」

魔女「立って話すのも何じゃ…座ってゆるりと話そうでは無いか」

女王「はい…」

魔女「わらわ達はあれから…」


カクカク シカジカ

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646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:09:53.14 ID:iNLvSB+c0
魔女「…禁呪を使った影響で次元の狭間に迷い未来に飛んでしもうたのじゃ」

女王「そうだったのですね…では壺にリリスの子宮を封じるのは成功したのですね」

魔女「7年間この世界で何事も無く平和が続いたのは壺ごと未来に飛んだからかも知れぬ」

女王「でも無事に戻られて本当にほっとしています」

アサシン「そう安心しても居られない様なのだ」

魔女「そうじゃ…封印の壺を紛失してしもうた」

女王「それは先ほど領事に聞きました…盗掘に遭ってしまったと」

アサシン「シャ・バクダでは盗掘で生計を立てている者も多いから仕方の無い事ではある…特に壺となれば値も張る」

魔女「今探しておるが他にも沢山壺がある様でのぅ…見つからんのじゃ」

女王「黒死病の話も聞きましたが?関係しているのでしょうか?」

アサシン「その話だが…恐らく封印の壺が感染源になって居そうだ」

魔女「伝染病じゃからこれから感染者が増えてしまうよって手を打って置かんと拡大するぞよ?」

アサシン「エリクサーは量に限りがあるが少しなら入手が出来る」

女王「まずは感染の拡大を防ぐのが先ですね…どうすれば防げると思いますか?」

魔女「防げるかどうか分からんがくちばし付きの被り物で病を予防したと言うのは何かで読んだ事がある」

女王「被り物…マスクの事でしょうか?くちばしマスクでしたら趣向品で入手する事が出来ます」

アサシン「趣向品で良いのか?」

魔女「目と鼻と口が覆えれば良いのでは無かろうか?病気の専門家に聞いた方が良いな」

女王「分かりました…医者に聞いて手配を急がせます」

アサシン「壺はどう探す?」

女王「商隊の行先は陸路のセントラルか空路のフィン・イッシュどちらかです」

アサシン「壺の買い入れが多いのは?」

王女「税金の安いフィン・イッシュの方が儲かる筈ですが貴族は圧倒的にセントラルの方が多い」

魔女「どっちか分からんという事か…」

女王「はい…」

アサシン「やはり二手に分かれるか…女王は王都に戻る必要があるのだろう?」

女王「そうですね…私は公の会談以外でセントラルに行く事は出来ません」

アサシン「分かった…私と魔女でセントラルへ向かう…女王はエルフゾンビにエリクサーを融通してもらって王都に戻れ」

女王「エルフゾンビ…第2皇子はお元気ですか?」

アサシン「後で会わせてあげよう…見違えるほど元気にしている」

女王「そうですか…良かった」



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647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:10:19.45 ID:iNLvSB+c0
女王「なんだかタイムスリップした様な錯覚をします」

アサシン「んん?私たちが昔のままだからか?」

女王「はい…あの時のまま…何も変わらず魔王の影を追っている姿が…とても不思議です」

アサシン「7年の月日か…君は随分変わったな…大人になった」

女王「私は私の顔が見えませんから…お二人を見て変に錯覚してしまいます」

アサシン「私は正直7年も経った実感が無い…ただ混乱している」

女王「あれから随分お二人を探したのですよ?近衛には迷惑をかけっぱなしでした」

アサシン「砂漠をか?」

女王「おかげでホラ?筋肉ムキムキ」

アサシン「クックック砂漠で足腰を鍛えたか…女王の足では無いな」

女王「畑仕事も沢山やりました」

アサシン「それで一回り大きく見えたのだな」

女王「今日お二人に会えてとても報われた気持ちになりました…信じて良かったって」

アサシン「君は君のまま女王をやれば良い」

女王「はい…その言葉を信じて今までやって来ました」

アサシン「良い国になって居る様では無いか」

女王「落ち着いたらフィン・イッシュにいらして下さい」

アサシン「ほう?自信がある様だな?」

女王「不思議とみんな筋肉ムキムキなのです…軍国はやめたのですけれどね」

アサシン「歓楽の国になったのか?」

女王「民がおしゃれ祭りや筋肉祭りをやる様になって色んな歓楽が楽しめます」

アサシン「クックック変な国だな…筋肉祭りとは…一体何を祭るのかクックック」
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:10:46.54 ID:iNLvSB+c0
『遺跡の外れ』


女王「近衛は気球で待機していて下さい」

近衛「はっ!!アサシン殿…魔女殿…女王の安全をお願いします」

魔女「わらわが居れば大丈夫じゃ…安心して待たれよ」

女王「ここから歩くのですか?暗くなって来ましたが…」

アサシン「エルフゾンビは暗くならないと出て来んのだ」

女王「そうでしたか…この周辺も私は良く歩きましたが夜にならないとお会い出来なかったのですね」

アサシン「この先に精霊の御所への入り口がある」

女王「はい…閉ざされた遺跡があるのは存じております」

アサシン「トロールが守って居るのだ…閉ざしているのはトロールなのだよ」

女王「そうだったのですか」

アサシン「エルフゾンビの隠れ家になっている…他言しない様にな?」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン


女王「今の音は?」

魔女「トロールが道を開けた音じゃな…入っても良いという事じゃろう」

女王「この様な仕掛けがあったのですね…何処で見ているのでしょう?」

魔女「わらわ達も仕掛けは良く分からんが森のどこかで見て居るのじゃろうな?」

アサシン「さぁ…早く入るのだ」

女王「はい…」


ズズズズズズ ズーン
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:11:17.77 ID:iNLvSB+c0
『精霊の御所』


魔女「これエルフゾンビ!客が来たぞ?」

エルフゾンビ「…」

魔女「瞑想しておるのか?これ…起きんか!」ユサユサ

エルフゾンビ「…」

魔女「待つしか無い様じゃ…折角女王を連れて来たのにのぅ…」

アサシン「まさか誰かが入って来るとは思って居なかった様だな」

女王「ここがかつての精霊の御所なのですか?」

アサシン「…そうらしい…私は詳しい事は知らん」

女王「木の根で作った城なのですね…とても神秘的です」

魔女「どれくらいトロールが居るのか分からんがトロールがこの根の森を守っておる」

女王「私が小さい頃トロールに乗るのが夢でした」

魔女「何故にトロールなのじゃ?」

女王「童話では森に住むトロールは小鳥を肩に乗せて居たのです…私はその小鳥の様に肩に乗りたかった」

エルフゾンビ「…来ていたのか」スゥ

女王「エルフゾンビ様…お久しぶりです」

エルフゾンビ「姫か…元気そうで何より」

魔女「もう姫ではないぞよ?女王じゃ」

女王「どちらでも良いです」

エルフゾンビ「今日は揃ってどうした?用が有って来たのだろう?」

アサシン「エリクサーを持って女王と一緒にフィン・イッシュに行かないか?」

エルフゾンビ「私は精霊樹を守る役目がある…行けんな」

アサシン「実はなリリスの子宮を封じた壺が黒死病という石化する病気を発生させている様なのだ」

エルフゾンビ「石化する病気…それでエリクサーが入用という訳か」

アサシン「私は魔女と共にセントラルまで壺を探しに行こうと思う」

エルフゾンビ「なぜそれほど遠方まで探しに行く?」

アサシン「壺が商隊で運ばれているのだ…行先はセントラルかフィン・イッシュのどちらかだ」

エルフゾンビ「なるほど女王と共に壺を探してくれという事か」

アサシン「女王の立場上自由に動けないのは分かるな?」

エルフゾンビ「しかし遺跡へ立ち入る人間がこうも多くてはな…エルフがこちらへ来られないのだよ」

女王「遺跡への立ち入りを国として禁止する事が出来ます」

魔女「その方が良いじゃろうのぅ…もう遺跡の調査は必要無かろう?」

エルフゾンビ「私の顔を見て見ろ…既に人前に出られる顔では無い」

魔女「それ程変では無いがな?エルフにしては肌色が悪い程度じゃ」

アサシン「クックック気にし過ぎだ…プライドが許さんか?」

女王「気になる様でしたら仮面を用意致します…フィン・イッシュでは流行って居るのです」

エルフゾンビ「ふむ…」

魔女「精霊樹は何か言うておらんのか?」

エルフゾンビ「何も言って居ないがお前たちが此処に入って来られたという事は協力しろという意味だ」

魔女「では決まりじゃな?」
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:11:49.22 ID:iNLvSB+c0
『女王の気球』


近衛「エリクサーの樽は1つで良いのでしょうか?」

女王「はい…もう一つは星の観測所に残して行きます」

領事「お預かりいたします…」

女王「観測所の警備を増やして盗まれないようにして下さいね」

領事「承知致しました」

女王「領事…くれぐれも遺跡の方へ人を近づけてはいけません…分かりましたね?」

領事「警備の衛兵も撤収でしょうか?」

女王「そうしてください…何人も立ち入り禁止と致します」

近衛「領事…次はヘマをしない様にな?女王様は何も言わないが私たちは見ているぞ?」

女王「近衛!もう良いのです…領事…お願いしますね?」

領事「御意…」

魔女「アサシン…わらわが主に渡した貝殻を女王に持たせよ」

アサシン「あぁ…」ゴソゴソ

女王「これは?魔女様の声を聞く貝殻ですね?」

魔女「そうじゃ…こちらの様子をその貝殻で知らせる故…常に持っておくのじゃ」

女王「わかりました…これが在れば安心ですね」

アサシン「私達が使って良い気球は…」

女王「貨物用の気球を用意しました…セントラルへの入国が許可されている気球です」

アサシン「おぉそれは良い」

女王「案内人を一人付けますので気球の操作と入国は彼にお任せください」

魔女「何から何まで済まんのぅ」

女王「セントラルは武器の携帯が制限されていますので貨物の中に入れて入国してください」

アサシン「その辺は上手くやる」

女王「はい…今度は行方不明にならないで下さいね」

魔女「毎日貝殻で報告するで心配するでない」

女王「わかりました…それではご無事で」


フワフワ
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:12:21.58 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』



魔女「こりゃまたヘンテコな気球じゃな…3人乗りかえ?」

案内人「そうだ…」

魔女「おろ!?主は男では無いか…観測所の警備はクビになったんかえ?」

案内人「女王様の命令だ…」

魔女「何故それほど暗い顔をしておる…わらわは主が案内人で嬉しいぞよ?」

アサシン「魔女に気に入られた様だなクックック」

案内人「もう出発して良いのか?」

アサシン「そうだな…」

案内人「行先はセントラル直行かい?」

アサシン「ハズレ町〜シケタ町〜トアル町経由でセントラルに入る」

案内人「商隊の陸路を追うんだな?…途中のキャンプは無視して良いのか?」

アサシン「君は詳しい様だな…キャンプでは荷の確認が出来ないだろうから無視しても良いと思うが?」

案内人「密売品の場合は荷の検閲回避の為にキャンプで積み替えをやるポイントがあるんだ」

魔女「密売品とはどういう物じゃ?」

案内人「麻薬やエルフ…それから美術品…骨董品とか取引価格の高い奴だ」

魔女「骨董品か…アサシンどう思う?」

アサシン「ふむ…確認しなければならない場所が多いな…虱潰しか」

魔女「そうじゃなぁ…」

案内人「…」
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:12:58.19 ID:iNLvSB+c0
『数日後_キャンプ』


魔女「戻ったな?どうじゃ…手がかりは見つかったかの?商隊は随分こちらを警戒しておる様じゃが…」

アサシン「一通り荷は見て回ったが手がかりは無い」

魔女「残念じゃのぅ…」

アサシン「次はシケタ町か…う〜む…」

魔女「何か気に掛かる事でもあるのか?」

アサシン「私はこれほど的を絞れず探し物をする事はしないのだ…どうも調子が狂う」

魔女「手がかりの一つでもあればのぅ…」

アサシン「女王の方はどうなって居る?フィン・イッシュでは手掛かり無いのか?」

魔女「千里眼で見る限り未だ見つかって居らぬ様じゃ」

アサシン「何か変だ…」

案内人「…」

魔女「む?案内人…お主落ち着きが無さそうじゃのぅ」

案内人「俺は関係ねぇ」

アサシン「…」ジロリ

案内人「…」

アサシン「そういえば女王は私達に会いに来た時…近衛を傍に付けていたな?」

魔女「む…主も気になって居ったか…わらわ達に会うのに近衛を付けるのは今まで無かった事じゃ」

アサシン「精霊の御所では単独で付いてきた…つまり私達は信用されている」

魔女「星の観測所で同席して居ったのは領事と案内人じゃな」

アサシン「…」スラーン ピタ

案内人「お…おい!俺は関係無ぇ!!」

アサシン「なに?…俺は関係無いだと?…領事は関係あると言うのだな?」

案内人「俺は指示された通り商隊の裏行動まで案内しろと…」

アサシン「魔女…千里眼で領事の目を覗け」

魔女「千里眼!」

アサシン「領事は何をしている?」

魔女「酒を飲んでおるな…女が居る…どこぞの酒場じゃ」

アサシン「酒場だと?オアシスにろくな酒場など無い…シャ・バクダ街だな?」

魔女「建物の中という事しか分からんが…ぬ!骨董品屋が一緒では無いか」

アサシン「謀られたな…」ブスリ

案内人「ぐあぁぁぁ…待て!!俺は本当に関係ない!!」

アサシン「私を誰だと思っている…生きて帰れると思うな」グイ

案内人「本当だ!!俺は何も知らない…たたた助けてくれぇ」

アサシン「…」ギロ

案内人「りょ…領事は…元諜報員という事しか…知らん…ぐふっ」

アサシン「魔女…回復してやれ」

魔女「主は手加減を知らんのか?回復魔法!」ボワー

案内人「げふっ…げふ…」

アサシン「星の観測所に戻る…急いで用意しろ」
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:13:37.25 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』


ビョーーーウ バサバサ


アサシン「女王が案内人を私達に同行させたのは偶然か?」

案内人「俺が昔商隊長やってたのを領事が女王に進言したんだ」

アサシン「なかなかあの領事はヤリ手だな」

魔女「領事がセントラル側の人間じゃったとすると色々とマズイのぅ…」

アサシン「そうだな…フィン・イッシュ軍が遺跡から引き揚げた現状セントラル軍が遺跡に入る…エリクサーが欲しい筈だ」

魔女「森が燃やされるかもしれぬ…それでもフィン・イッシュ軍は遺跡に入れんでは無いか」

アサシン「領事は壺の中身も知ってしまっている…始末せねばなるまい」

魔女「案内人!!主はこうなると思わんかったんか!!」

案内人「俺は本当に領事のやっている事は何も知らない…ただ信用出来なかった」

魔女「ぐぬぬぬぬ何でも良いから領事の事を話せ」

案内人「良く行く酒場は確かにシャ・バクダ街の店だ…それ以外は本当に知らない」

アサシン「フィン・イッシュ領事がシャ・バクダ街で豪遊かクックックそれがおかしいと思わないお前は無能だ」

案内人「くっ…領事には逆らえなかった」

魔女「女王に知らせておくかえ?」

アサシン「話は一方通行だな?」

魔女「そうじゃ」

アサシン「う〜む…あの領事が居たから摩擦が回避出来ていたとも考えられるな」

魔女「主はあの領事を泳がす気か?」

アサシン「女王はそれを承知で使っていたのでは無いか?」

魔女「むぅ…そういえば近衛の指摘を諫めておったな…」

アサシン「エリクサーの樽を1つ置いて行ったのは領事に対して上手く使えという事では無いか?」

魔女「女王はセントラルの民も案じておるのじゃな?」

アサシン「そうだ…つまり勝手に領事を始末するのは女王の意に反する可能性がある」

魔女「わらわ達は壺さえ戻れば良いが…」

アサシン「クックック…」ニヤリ

魔女「考えがあるなら話せ…」

アサシン「まぁ待て…もう少しで分かる」
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:14:16.25 ID:iNLvSB+c0
『数時間後』


案内人「うっ…ぅぅぅ」

魔女「これ!!さぼるでない」

案内人「悪い…体の調子がおかしい…ぅぅぅ」

アサシン「クックック…これを見ろ」スラーン

魔女「クサナギの剣か?…ん?刀身が錆びておるのか?」

アサシン「血だ…拭いても落ちん」

魔女「何と!!リリスの呪いか?」

アサシン「どうやらそうらしい…クックック」

案内人「お…おい…俺はその剣で刺されている…どうなるんだ?」

アサシン「刺された場所を見て見ろ」

案内人「なにぃ!!…うぉ!!黒い…」

魔女「黒死病じゃな」

案内人「助けてくれよ…俺はまだ死にたくねぇ」

魔女「わらわのエリクサーを一口飲め…少しだけじゃぞ?」

案内人「…」グビ

アサシン「決まりだな…これで領事を脅す」

魔女「主はえげつない男じゃな…エリクサーを取り上げて黒死病にするんじゃな?」

アサシン「案内人の10倍は痛い目を見てもらう…蘇生は任せる」

魔女「切断してしもうたら治せんよって手加減せいよ?」

アサシン「私は正直あの領事を許せんのだ…身内を騙すような奴をな」

案内人「…」ゴクリ

アサシン「案内人…私がやる事を良く見て立ち振る舞いを考える事だ…」

魔女「恐ろしい男よのぅ…」
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:14:46.35 ID:iNLvSB+c0
『シャ・バクダ遺跡上空』


フワフワ


アサシン「やはりセントラルの兵が遺跡を探索しているな」

魔女「気球が4つ飛んでおるな」

アサシン「案内人!上から近付け」

案内人「はい…」

アサシン「魔女…魔法で気球の球皮を焼いて落とせるか?」

魔女「4ついっぺんに落とすなら竜巻魔法の方が良いのぅ…火は森を焼いてしまうで」

アサシン「任せる」

魔女「竜巻魔法!竜巻魔法!竜巻魔法!」ゴゴゴゴゴゴ

案内人「うぉ!…」バサバサ

魔女「風が巻くで気を付けい!!」

アサシン「勝手にフィン・イッシュ領に入るとどうなるか教えておかないとな」

魔女「高位魔法を詠唱するで敵の兵に近寄るのじゃ…」アブラカタブラ クラウドコントロール アッシドレイン

魔女「広範囲毒霧魔法!!」モクモク

案内人「霧?」

魔女「吸い込むでないぞ?調子が悪うなるで…」

アサシン「よし…風上から迂回して星の観測所に戻る」

案内人「観測所に直接降ろして良いのか?」

アサシン「構わん…後は私に任せろ」

656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:15:16.26 ID:iNLvSB+c0
『星の観測所』


フワフワ ドッスン


衛兵「これはアサシン殿…セントラルに向かったのでは?」

アサシン「ちと忘れ物が在ってな…領事は何処にいる?」

衛兵「今は外に出ておりますが直に戻って来るかと思います」

アサシン「中で待たせてもらう」

衛兵「はっ…ところで遺跡の方で何か起きている様ですが気球からは見えて居ないですか?」

アサシン「竜巻が起きていたな…気にしなくて良い」

衛兵「そうですか…」

アサシン「案内人!ワインの樽を持ってエリクサーの樽と交換しておけ」

案内人「あぁ…分かった」ヨッコラ

アサシン「魔女…領事が来たら周辺の衛兵を例の睡眠魔法で眠らせてくれないか?」

魔女「ふむ…他の者を巻き込まん様にするのじゃな?」

アサシン「あまり身内を殺めたく無いのでな…騒ぎにはしたくない」

魔女「中で待つとするか…」ノソノソ
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:15:57.10 ID:iNLvSB+c0
『1時間後』


ドタドタ


領事「これはこれはアサシン殿ご一行…何故お戻りに?」

アサシン「人を払ってはくれんか?」

領事「さて?なぜにその様な事を言うのですやら?」

アサシン「まぁ良い…遺跡にセントラル兵が入っている様だが?放って置いて良いのか?」

領事「女王様から侵入を禁止されておりまして…その」

アサシン「何人も入れるなという命令では無かったか?」

領事「我が国の者は何人も入れておりませぬ」

アサシン「あぁ…もう良い」

領事「女王様にご報告されるおつもりでしょうか?」

アサシン「領事…お前に質問をする」

領事「私が先に質問をしているのですがお答えにならない様でしたら…」

アサシン「シャ・バクダ街の酒場で豪遊とは大した身分だな」

領事「はて?何の事でしょう?何か証拠でもあるのでしょうか?」タラリ

アサシン「どうやら話しても無駄な様だ…」スラーン

領事「抜刀とは頂けませんな…女王様の従士とはいえ捨て置けませんぞ?衛兵!!取り押さえよ!!」

衛兵「…」スヤ

領事「何をしておる!!」

衛兵「…」スヤ

領事「ええぃ役立たずめ!!」スラーン ダダダ ズン

アサシン「…」

領事「フフフフ心の臓に当たってしまいましたな?」

アサシン「終わりか?」

領事「なに!!」ズン ズン

アサシン「そうか刺客の技も持って居たか…どうりで女王は近衛を払わん訳だ」

領事「このぉ化け物が!!」ザクザク
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:16:30.23 ID:iNLvSB+c0
アサシン「剣はこうやって使うのだ」ブン スパー

領事「ぎゃぁぁぁ手が…手がぁぁ」

アサシン「さて…壺はどうした?」

領事「はぁ…はぁ…何の事か…こんな事をしてお前!!許されると思うな!!」

アサシン「指は10本あるな?」ボキ ボキ ボキ ボキ

領事「ぐぁ…やべて…ぎゃぁぁ」ボキ ボキ ボキ ボキ

アサシン「神経をな…直接触るとどんな感じするか知っているか?」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃあああああああああああああああああああああああああ…あひあひ」

アサシン「もう一度聞くぞ?壺をどうした?」

領事「ひょひょ…あへ」

アサシン「聞こえんな…背骨の神経はもっと効くらしいな」ズン ギュゥゥゥ

領事「ぐぇぇぇぇががあがが」ピクピク

アサシン「魔女…少し休憩しよう」

魔女「回復魔法!」ボワー

領事「ブクブク…うげぁ」ゲロゲロ

アサシン「もう一回始めからだ」グサ

領事「やべて…くだじゃい」

アサシン「聞こえんなぁ」ザク ギュゥゥゥ

領事「いぎゃああああああああああああああああああ」ピク

アサシン「壺をどうした?」

領事「ききき…きゅうで…」

アサシン「気球で何だ…聞こえんな」

領事「ぜんどらりゅ…うぉぇっ」ゲロ

アサシン「ほう?誰だ…」

領事「きぞ…くとっくに…はぁはぁ…おくった」

魔女「そろそろ良いじゃろう…見ているわらわが吐きそうじゃ」

アサシン「もう一度教えてやる…女王に逆らうとどうなるかな…」

領事「やべ…やべて」プルプル

アサシン「ハートブレイク!」ズン ズブズブ

領事「ぐはぁぁぁあ…」

アサシン「案内人…しっかり見たな?」

案内人「お…おい…始めから生かす気なんか無いのか?」

アサシン「さぁな?」
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:17:09.93 ID:iNLvSB+c0
『数分後』


魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

案内人「血は止まったな…」

領事「…ぁぅぁぅ」グッタリ

魔女「神経を触られておるでな…しばらくショックが抜けんじゃろう…体も強張っておる」

アサシン「案内人…汚れた床を掃除しろ…反吐が出る」

案内人「お…おう…」イソイソ

アサシン「さて領事…盗賊ギルドのマスターは聞いた事があるだろう…私の事だ」

アサシン「セントラルの諜報員となれば知らぬ訳は無いな?我らの秘密を知ったからにはどうなるか想像つくな?」

領事「ぁひ…」ブルブル

アサシン「お前は女王に生かされて居るのだ…どう立ち回るのだ?」

魔女「こ奴はまだ話せぬ…質問は無駄じゃ」

アサシン「まぁ良い…見ている事だ…貴族は一人残らず居なくなるぞ?何故だか分かるか?」

アサシン「私は心臓を突かれても死なんな?不死者の王だからだ…私は貴族を一人残らず葬る力が在ると知れ」

領事「…」ゴクリ

アサシン「もう一つ教えてやる…お前は既に黒死病に感染している…だがお前にエリクサーをやる気は無い」

アサシン「ゆっくり死ぬか女王の慈悲にすがるかは自分で選べ」

魔女「もう良い…アサシン…行こうぞ」

アサシン「壺の行先が分かったのだ…慌てる事もあるまい」

魔女「領事の怯えた姿を見ていてわらわは落ち着かぬ…居心地が悪いのじゃ」

アサシン「心底腐った奴にはな…これでも足りんのだ」

魔女「主はまだやる気かえ?」

アサシン「口は封じておかねばならん…領事!答えろ…壺の秘密を洩らした者は誰だ?」

領事「いいいいい居ません…ぅぅっぅ」フリフリ

アサシン「案内人!領事の部屋に行って関係者の名前をすべて調べろ…家族もだ…皆殺しにする」

案内人「ええぇ!!?」

魔女「アサシン!やり過ぎじゃ…自国の者も居るじゃろうて」

アサシン「良いから調べて来い」スラーン

案内人「いいいいい今行って来る…」ダダダ

領事「だだ誰に…も教えて…居ない!本当だ…」ブルブル

アサシン「こういうのはな…生首を並べられて初めて本音が出るのだクックック」

魔女「アサシンこうするのはどうじゃ?わらわが領事に服従の呪いを掛ける故…それで許してくれぬか?」

アサシン「どんな効果なのだ?」

魔女「服従に背くと血が凍るのじゃ…こ奴の血が必要じゃが血の繋がった者はすべて凍る」

アサシン「ほう?人質が取れると言うのだな?」

魔女「わらわに免じて関係の無い者まで手に掛けるのは止めよ」

アサシン「領事!…そういう事らしい…救われたな?」

領事「あぅあぅ…」ブルブル
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:17:45.19 ID:iNLvSB+c0
『貨物用の気球』


フワフワ


アサシン「クックック魔女も大した演技力では無いか…呪いなんて本当にあるのか?」

魔女「無い…主も悪い男よのぅ皆殺しにするなど始めから考えて居らんのじゃろう?」

案内人「ええ!?そうだったのか…」

アサシン「皆殺しなど出来ん事は無いが面倒くさい上にリスクも大きい」

魔女「エリクサーはどうしたのじゃ?置いてきたのじゃろう?」

アサシン「衛兵隊長に事情を話して渡してきた…どうしても必要な時に使えとな」

魔女「これで領事は大人しくなるかのぅ?」

アサシン「しばらくは黒死病で苦しむだろうが…改心してもらわんとな」

魔女「主は人間の神経を痛め付けるのは普段からやっておるのか?」

アサシン「クックック相手によってはな?普通は騒がない様に急所を狙うのだ」

魔女「あれはやってはイカン…筋肉が強張って回復出来ん様になる…魔法では治せぬ」

アサシン「魔法が効かないのか…それは知らなかったな」

魔女「とてつもない激痛じゃぞ?精神が分裂する寸前じゃ…もう2度とやってはイカン」

アサシン「分かった…やっている私も虫唾が走る」

魔女「本真に主は恐ろしい奴じゃ…鬼じゃな」

アサシン「気付いたのだが私は不死者になってから高揚感を感じなくなった様だ」

魔女「わらわから見ても分かるのぅ…淡々と作業をこなす姿が逆に恐ろしいのじゃ…人では無い」

アサシン「人では無いか…どうも心が寒いな」

魔女「ほれ…ワインじゃ」ポイ

アサシン「心を満たす物は…ワインぐらいか…」グビ
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:18:12.88 ID:iNLvSB+c0
『セントラル』


ガヤガヤ ガヤガヤ


荷の確認をする…見せろ

はい…羊毛と織物…それから酒

この箱は何だ?

中古の武器と防具…素材用ですわ

ふむ…乗って居るのは3人だな?顔を見せろ



アサシン「…」

検問「顔色が悪いな?病気か?」

アサシン「フフまぁそんな感じだ」

検問「お前は?」グイ

魔女「わらわに触るでない」

検問「ふむ…人相書きの女ではない様だな…赤い目…娼婦か?」

魔女「…」ギロ

検問「おぉぉ怖い怖い」

案内人「しばらく滞在するんで気球は置いて行く」

検問「邪魔になるから荷出しは手短にヤレ…入国許可!」
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:18:45.94 ID:iNLvSB+c0
『中央広場』


ザワザワ ザワザワ


魔女「城から煙が出て居るのぅ?何かあった様じゃな?」

アサシン「うむ…ざわついて要るな?」

案内人「とりあえず宿を取って来るが…注文はあるか?」

アサシン「酒場が付いて居れば何処でも良い」

案内人「なら商隊御用達の宿屋だな…情報が集まりやすい」

アサシン「場所だけ教えてくれ…私は少し周りを見てから行く」

案内人「商人ギルドの横の建屋だが…分かるか?」

アサシン「あぁ…大丈夫だ」

魔女「わらわは宿屋に行って先に休むぞよ?ちと水浴びがしたいでな」

アサシン「夕刻までには戻る」


おぉぉ倒れる倒れる!! ガラガラ ドーン


アサシン「内郭の観測塔が崩れたな…何が起こっているのだ?」

魔女「こりゃ只事では無さそうじゃな?」

アサシン「まさかリリスが暴れている訳ではあるまいな?…急いで見て来る」タッタッタ

魔女「案内人!ボケっとしとらんで早う宿屋まで連れて行くのじゃ」

案内人「それどころじゃ無さそうだが…」

魔女「わらわはもう何日も水浴びをしとらんのじゃ…気持ちが悪い」

案内人「んあぁぁ分かった分かった…」
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:19:27.02 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


魔女「ふぅ…髪の毛から砂が取れただけで大分スッキリしたわい」

案内人「着替えを買ってきて置いたぞ…ベットの上だ」

魔女「おぉ気が利く様になったのう…部屋から出ておれ…およ?下着も買って来たのか…要らんかったのにのぅ」

案内人「要らんだと?前はえらく怒ってたじゃねぇか」

魔女「砂漠では砂が下に入って痛いのじゃ…ここでは不要じゃ」

案内人「俺は女の事は分かんねぇ…勝手にしてくれ」ガチャリ バタン


-----------------


魔女「もう入って良いぞ?」

案内人「…」ガチャリ バタン

魔女「アサシンは遅いのぅ…城で何があったんじゃろう?」

案内人「さっき外で聞いたんだが城の方で爆発事故があったらしい」

魔女「いつの話じゃ?」

案内人「一昨日だそうだ」

魔女「2日も経っておるのにまだ鎮火して居らんのか…何が燃えて居るんじゃろうか?」

案内人「下水が破壊されて城まで水が運べないそうだ」

魔女「高台に城が在る故に消火出来ぬか…不便じゃな」

アサシン「戻った…」ガチャリ バタン

魔女「おぉ…どうじゃった?何が爆発したのじゃ?」

アサシン「城の真下だな…下水が立ち入り禁止になっていて詳細は不明だ」

魔女「やはりリリスかのぅ?」

アサシン「魔女…エリクサーはどれくらい残って居る?」

魔女「1瓶と少しじゃな…なぜそのような事を聞くのじゃ?」

アサシン「下水から海へ赤い液体が流れて行って居る…リリスの血では無いかと思う」

魔女「それは良くないのぅ」

アサシン「私はもうエリクサーを持って居ないのだ…黒死病に掛かってしまう様であれば一度フィン・イッシュに戻らねばならんな」

魔女「症状が出てから少しづつ飲めば10回は持ちそうじゃが?」

アサシン「あまりリスクを抱えたく無いな…今晩貴族特区に向かい壺を頂いて早めに引き返そう」

魔女「主はその場所を知っているのかえ?」

アサシン「貴族特区は屋敷が4棟しか無い…魔女の睡眠魔法を使って行けば探索は直ぐに終わる」

案内人「貴族特区に行くまで貴族居住区を抜けなければならないぞ?」

魔女「魔法は何度でも使える寄って気にせんでも良いが?」

アサシン「行くのはもう少し夜が更けてからだ…まだ間がある故酒場で食事を済ませておこう」
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:20:17.31 ID:iNLvSB+c0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


マスター「いらっしゃいませ…3人様ですね?」

アサシン「あぁ…食事も用意できるか?」

マスター「お任せ下さい席にお持ち致します…こちらです」スタスタ


白狼の盗賊団が出たんだってよ?

へぇ〜?お金ばら撒いてたのかな?わたしも見たかったな〜

正体がお面を被った子供だったらしい

子供が?それ本当?


アサシン「クックック…子供のごっこ遊びか」

魔女「白狼の盗賊団は主らの事じゃよな?」

アサシン「私は後方支援だ…主役は盗賊と剣士だな…風体は女海賊か」

魔女「子供らが真似をしておるのか…良いのか悪いのか…」

アサシン「魔女は千里眼で彼らが何処に行ったのか見ていないのか?」

魔女「皆バラバラじゃ」

アサシン「女海賊と剣士は?」

魔女「心苦しゅうて見て居らん…と言うよりどういう対策をして居るのか知らんが見えんのじゃ」

アサシン「そうか…魔女でも分からない事があるか」

魔女「女戦士は船に乗っておるな…ドラゴンの義勇団の旗印を使って居る」

アサシン「あの旗印は元々女戦士が使っていた旗印なのだ…たまたま星の観測所に掛けてあっただけだ」

魔女「魔王の影を追っておるのはわらわ達だけじゃのぅ…」


マスター「お食事をお持ち致しました…どうぞ」


アサシン「マスター…何か面白い話は聞けて居ないか?」

アスター「面白くない話ばかりですねぇ…」

アサシン「ほう?景気が悪いか?」

マスター「下水爆発事故の後処理が全然出来ていないそうですよ」

アサシン「ラットマンが出て来ていると聞いたが?それでは無いのか?」

マスター「下水から血のような汚染水が流れ出して手が付けられないのだとか」

アサシン「あぁ…海に流れ出ているやつだな」

マスター「大量の死体と言い…何なんですかねぇ?」

アサシン「死体…」---爆発はカタコンベだったのか---


---いよいよリリスが怪しいな---
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:20:57.24 ID:iNLvSB+c0
『貴族居住区』


魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「案内人は宿屋に戻って待機しろ…ここからは私達だけで行く」

案内人「分かった…」

アサシン「もし戻らない場合は状況を説明しに女王の所に行くのだ」

案内人「戻らない場合なんてあるのか?」

アサシン「私は割と勘が働くのだ…状況はひどいと言わざる終えん…城がまだ燃えているのが証拠だ」

魔女「案内人…これを持って行け…エリクサーじゃ…まだ一口あるでな?」

案内人「お…おう」

アサシン「魔女…急ぐぞ」タッタッタ



『貴族特区』


アサシン「待て…ここは衛兵が守っているのでは無いな」

魔女「何じゃ…あの大きな鎧を着た魔物は」

アサシン「あれが成長したラットマンか…まるでミノタウロスでは無いか」

魔女「立ちんぼになっておるから睡眠魔法は効いておりそうじゃ」

アサシン「魔女はここで待っていろ…私が忍び込んで壺を探してくる」

魔女「いいや…離れぬ方が良かろう…方陣が敷いてあるで仕掛けがあるやも知れぬ」

アサシン「魔方陣?ここの貴族はそういう技を持った者が居るのだな?」

魔女「あの方陣はシン・リーンの光の方陣じゃ…魔術師が居るのであればあの方陣は避けて通らんと見つかるぞよ?」

アサシン「なぜ魔術師が居る…」

魔女「それはわらわの方が知りたいのぅ…念のためもう一度睡眠魔法を掛けて置く」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「魔女…私の背後から離れるな?」

魔女「分かっておる」ノソノソ

アサシン「ここの屋敷が一番大きい…ここから入るぞ」

魔女「正面から入るのかえ?」

アサシン「それが一番早い」ガチャリ ギー

魔女「誰も居らん様じゃな?」ノソ

アサシン「…骨董品ばかりでは無いか」

魔女「これはシン・リーンの宝物庫よりも良い物がありそうじゃ…」

アサシン「シャ・バクダの宝飾品もある…ここの持ち主は一体…」

魔女「見て見よ…伝説の絵画じゃ…あれはシン・リーンの古代遺跡の壁画と同じじゃ」

アサシン「どうやら壺はここに間違いなさそうだな…セントラルにこの様な収集家が居たとは…」

魔女「驚いたな…精霊の石造がここにもある」


シュン グサ

666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:21:35.21 ID:iNLvSB+c0
魔女「はぅぅ…」

アサシン「魔女!!」

魔女「回復魔法!…しもうた!!ここは魔結界の中じゃ…魔法が発動せぬ」

アサシン「なにぃ!!」


??「捕らえろ」


ラットマンリーダー「がおおおぉぉ」ドシドシ

魔女「くぅぅ放せ…触るでない」ジタバタ

アサシン「しまった…」タジ


??「又泥棒かと思えば…シン・リーンの魔術師か」


魔女「何じゃと?主は誰じゃ!!」

アサシン「スキ有り!!」シュン ザクリ

??「ほう?良い腕を持って居るな…しかし神秘の体を持つ私には無意味」

魔女「神秘の体じゃと?」

アサシン「お前は誰だ?」

??「ヌハハハハハハ…答える必要があると思うか?小物よ」

魔女「分かったぞよ…主は師匠が探して居った時の王じゃな?」

??「…そうか」

アサシン「時の王だと?」

??「お前は私の子孫だったか…目を見せてみろ」

魔女「理解したぞ…すべてを仕組んだのは主じゃな?200年前に精霊と勇者を屠ったのも主じゃな?」

時の王「ヌハハハハ流石は私の子孫…察しが早い…しかしこうして見ると感慨深い」

アサシン「赤い目…どういう事だ?」

魔女「こ奴は1700年前のシン・リーン古代文明をも屠った赤き瞳の王じゃ…リリスの血を飲み不老不死となっておる」

時の王「正確にはリリスの生き血だよ…死に血を飲んでも不老不死にはならん」

魔女「どうでも良い…それよりも主は何をする気じゃ?」

時の王「人間の絶滅以外に考えられると思うか?」

魔女「何故じゃ…主は時の勇者を支えた英雄だった筈じゃ…それが何故魔王に汲みする立場に居る!」

時の王「私の子孫か…特別に教えてやろう」
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:22:41.09 ID:iNLvSB+c0
確かに私は勇者と共に魔王を退けリリスを討ち取り時の英雄となった

後に精霊シルフと共に憎悪に満たされたこの世界を光に導く為に尽力した

だが悟ったのだ…人間こそが魔王そのものだと

私は精霊シルフに過去の伝説のすべてを聞いた

悪魔とリリスの子リリン…悪魔の子と呼ばれたリリンは人間だ

そして神と位置付けられるアダムとイヴ

神が生み育てた英雄はことごとく人間に屠られた

後に志のある人間が最初の人工知能を作り出し名付けたのが神の名に因んでアダム

アダムの知能を元にして作られた超高度AIをイブとして神を復活させた

しかしやはり悪意のある人間はまたもやアダムを破壊しついにはイブをも手に掛けようとしている

イヴとはお前たちが良く知っている精霊シルフの事だ

精霊はどうやって悪魔の心を持つ人間と戦おうとしているか分かるか?

人間以外の生物…エルフやドワーフ…ドラゴン…クラーケンにトロールを生み

世界の秩序を保とうとした

だがやはり人間は抵抗を重ね殺戮を繰り返す

私と勇者はその根源にあるのが魔王だと思い込み退けて来たがそれは一過性の事だった

根源は人間の憎悪なのだ…これを滅しない限り殺戮は終わらない

しかし…精霊にはそれが出来ない…故に私がやるのだ
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:23:22.47 ID:iNLvSB+c0
魔女「それでは200年前に精霊と勇者を屠った説明になって居らぬ…精霊は主の味方であったであろう?」

時の王「あれは事故だ…精霊が止まるとは考えていなかった」

魔女「結局最後に精霊を裏切ったのも人間という訳か…」

時の王「人間の罪は人間が贖う…私一人でそれを背負っているのだ」

魔女「その罪を許したのが神では無かったのか?精霊は人間の罪をゆるしておるのでは無いか?」

時の王「ゴルゴダの丘…」

魔女「じゃから人間は生きて行くしか無いのじゃろう?未来へ繋ぐ為に…」

時の王「ええい!!お前まであの女と同じ事を言うか!!」

魔女「師匠じゃな?師匠は狭間で1200年生き尚…主の事を案じておった」

時の王「フフあの女は精霊が止まって逆鱗してな?私の計画をすべて封じたのだ…お陰でリリスの首は何処にあるか分からぬ」

魔女「リリスの子宮はわらわが封じた…どこにあるのじゃ?」

時の王「ヌハハハハハ探し求めて来たという訳か…遅かったな」

魔女「遅いじゃと?」

時の王「盗まれたのだ…もう何処に行ったか分からぬ…しかしそれでも良い…リリスは復活する」

魔女「首が無いのにどうやって復活すると言うのじゃ」

時の王「他の首で補えば良い…錬金術で縫合など容易いものだ」

アサシン「キマイラだな?」

時の王「その名を良く知っているな?さてはシャ・バクダの末裔か」

アサシン「ふん!だからどうした?」

時の王「キマイラを諫める歌は伝わって居ないのか?私ではキマイラを制御出来ないのでな」

アサシン「歌…だと?」

時の王「その様子では知らぬ様だな…子守歌なのだが女にしか伝わらん歌かも知れんな」

魔女「…よいな?歌じゃ…歌を探すのじゃ」

時の王「貝を使って念話をしているのか…フフフあの女と同じだな」

魔女「わらわ達を捕らえてどうする気じゃ?」

時の王「子孫をわざわざ殺めたくは無いのでな…大人しく牢に入っていてもらおう」

アサシン「余裕そうだな?」

時の王「ラットマンリーダーに人質を取られて勝てると思うか?」

アサシン「くっ…」---ここは掴まっておいた方が良さそうだ---

魔女「くそう…魔法さえ封じておられなければ」ジタバタ

時の王「私の邪魔建てはもうされたくは無いのでな…食事の心配はするな大切な捕虜だからなフハハハ」

魔女「母上と取引するつもりじゃな?」

時の王「フハハハハハハハ…」
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:24:12.67 ID:iNLvSB+c0
『牢』


アサシン「この牢は脱出できそうに無いな」

魔女「しかし2人揃って牢に入れて持ち物も全部持たされたままじゃ…よほど自信がある様じゃな」

アサシン「窓付きで外が見えるのは良いが…」

魔女「見通せるかえ?」

アサシン「見える範囲が限られてて一部しか見えんな…奥行きが1メートルもある石造りの牢だ」

魔女「ふむ…魔法もここでは使えんのぅ…こまったもんじゃ」

アサシン「使えるのは貝殻だけか…」

魔女「仲間のあぶり出しを狙っておるんじゃろうな?女王にはここに来るなと言っておいた」

アサシン「頼みの綱はエルフゾンビだな…奴なら地理が分かっている」

魔女「しかし…時の王がセントラルに居ったとは…師匠がずっと探して居ったんじゃが魔結界の中では見つからん筈じゃ…」

アサシン「時の王も魔術師なのか?」

魔女「少しは使えるじゃろうが伝説では戦士じゃな…リリスの血を飲んで目が赤くなっておるだけじゃ」

アサシン「道理で…切り込んだ際に間合いがズラされた」

魔女「そういえば時の王はシャ・バクダの歌の事を言っておったが主は知らんのか?」

アサシン「私は覚えていない…もしかしたら妹が覚えていたのかもしれん」

魔女「盗賊が歌っておった歌かのぅ?わらわも聞いたぞよ?ルル〜ルラ〜♪ルル〜ルラ〜♪」

アサシン「その歌は違う…子守歌では無い」

魔女「フィン・イッシュに各国の書物が集まっておるから女王が探せると良いがな」
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:25:19.22 ID:iNLvSB+c0
『1週間後』


ガリガリ ガリガリ


魔女「何を作っておる?」

アサシン「魔女は魔法の触媒で硫黄を持ち歩いていたな?」

魔女「あるが?爆弾でも作るのかえ?」

アサシン「石を削って砂にしている」

魔女「砂鉄はどうするんじゃ?」

アサシン「私の着ている服は金属糸で結った物だ…これをロープ代わりにして残りは砂鉄にする」

魔女「ほう…考えたのぅ?」

アサシン「私はこういう時に大人しく出来ない性分でな…よし…金属糸を解くのを手伝ってくれ」

魔女「わらわは巻けば良いか?」

アサシン「体に巻き付けて行ってくれ」ゴソゴソ


コーーーーーン コーーーーーーン


アサシン「んん?この音は…ミスリル銀を叩く音だ」

魔女「良い音がするのぅ」


ラットマンリーダー「ガオオオォォ」ドタバタ


アサシン「外のラットマンリーダーが騒いでいるな…ミスリル銀の音が嫌なのか?」
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:25:47.07 ID:iNLvSB+c0
魔女「逃げ出すチャンスかも知れんのぅ」

アサシン「魔女…硫黄を分けてくれ」

魔女「ほれ…」ポイ

アサシン「よし…これで爆弾の出来上がりだ…窓に設置する」ゴソゴソ

魔女「もうやるんか?」

アサシン「この爆弾では窓の穴を少し広げる程度にしかならん…逃げるのは魔女一人だ」

魔女「主はどうするのじゃ?」

アサシン「魔女は魔結界から出た後に姿を変えて街に紛れろ…出来ればエルフゾンビと合流するのだ」

魔女「分かったが…しかし」

アサシン「魔女一人でラットマンリーダーの相手は無理だ…私の救出は機を伺ってからで良い」

魔女「ふむ…この体に巻いた糸で下まで降りて行けば良いのじゃな?」

アサシン「そうだ…あとは上手くやってくれ」

魔女「任せておくのじゃ…魔法さえ使えればわらわは何でも出来る」

アサシン「よし…こっちのテーブルの裏に隠れろ」チリチリ


3…2…1  ドーン パラパラ


アサシン「魔女!穴の中に入れ」グイ

魔女「むむむむ狭いのぅ…」モゾモゾ

アサシン「押すぞ!!」グイ グイ

魔女「痛たたたた…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」グルグル ドテ

アサシン「よし…上手く行ったな?クックック」

アサシン「…」---さて片づけるか---


---金属糸は回収---

---ベッドに膨らみを作って---

---私はテーブルで食事でもしておこう---

---頼むぞ魔女---
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:26:20.89 ID:iNLvSB+c0
『気球発着場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


またお前か!今度の荷は何だ?…見せろ

はい…くちばしマスクと薬…それから酒

この箱は何だ?

趣向品と玩具…夜のおもちゃですわ…見ますかね?

ふむ…乗って居るのはお前だけか?



案内人「他に居る様に見えるかい?」

検問「ふむ…儲かっているのか?」ジロジロ

案内人「まぁそこそこには…」

検問「病気が流行っているから気を付けろ!入国許可!」

案内人「へいへい…」ヨッコラ


------------------


案内人「クッソ重いな…」ヨタヨタ ドサ

案内人「エルフは体の割に重いのだな…出ても良いぞ」パカ

エルフゾンビ「ふぅ…」パンパン

案内人「久しぶりの故郷はどうだい?」

エルフゾンビ「このような入国はしたことが無いのでな…緊張するものだ」

案内人「さて…ひとまず宿に落ち着けよう」

エルフゾンビ「私は宿になど泊まった事が無い…案内してくれ」

案内人「その仮面を外すなよ?」

エルフゾンビ「分かっている…お前の方こそしっかりくちばしマスクを付けて置け」

案内人「この恰好は逆に目立つのがなぁ…」
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:26:50.08 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「女王様が言うにはこの宿の前で魔女が待っているとの事だったが…」

魔女「目の前に居るでは無いか」

案内人「あぁ嬢ちゃんちっと邪魔だ…あっち行っててくれ」

魔女「何を言うておる」ボカ

案内人「あだっ!!何すんだこのガキ…ん?…その杖」

魔女「わらわは金を持っておらなんだ故ずっと野宿しとったのじゃ…早う飯を食わせろ」

案内人「なんで又こんなに小さくなってるんだ?」

魔女「つべこべ言うでない…早うせい」ボカ

案内人「わかったわかった…どつくのはヤメロ」


店主「そのお子さんのお連れ様ですか?」

案内人「…まぁそうだな」

店主「聞き分けの無い子でして何度言ってもそこを離れようとしなかったのです」

魔女「言い訳は聞きとうない…不親切な店主じゃ」ブツブツ

店主「ハハ3名様でよろしかったですか?」

案内人「あぁ…食事をすぐに持って来てほしい」

店主「かしこまりました…二階の右手の部屋にてお待ちください」ソソクサ

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:27:25.92 ID:iNLvSB+c0
『部屋』


エルフゾンビ「女王から話は聞いて居る…アサシンは貴族特区で捕らえられて居るのだな?」

魔女「そうじゃ…食事はしっかり出る故心配は無いのじゃがラットマンリーダーが守って居ってな」

エルフゾンビ「やはり時の王卿が先導していたか」

魔女「主は会うた事があるのじゃな?」

エルフゾンビ「時の王は表に顔を出すことは無いのだ…私ですら話しか聞いた事が無い」

魔女「奴は人間を絶滅させる気で居る様じゃ」

エルフゾンビ「前王の父も…恐らく兄も人間を絶滅するなど考えて居ない」

魔女「欺かれておるのじゃな」

エルフゾンビ「正義感の強い兄が何故時の王に従う行動をしているのか…」

魔女「逆に時の王を欺こうとしている可能性は無いのか?」

エルフゾンビ「指輪…父が祈りの指輪で何をしたかったのか…もしや指輪で時の王を葬ろうとしていたのか?」

魔女「兄はどうじゃ?」

エルフゾンビ「兄は騎士道を貫く…弱き者を滅することなど決してしない」

魔女「何かおかしいのぅ…」

エルフゾンビ「正統派でしか動かない…つまりやるなら真っ向勝負」


コーーーーーーン コーーーーーーン


エルフゾンビ「ん?この音は?」

魔女「アサシンがミスリル銀を鍛冶で打つ音じゃと言うておった…憎悪を払うらしいが?」

エルフゾンビ「そうか…兄は正当な方法で邪悪と戦おうとしているのだ」

魔女「ふむ…どうやら皆の歯車が少しづつ違って回って居るな…噛み合って居らぬ」


グラリ


案内人「うぉっとお!!何だ?」


グラグラグラグラグラグラ


魔女「どこぞで地震が起きとる様じゃな?これは大きな津波が来るやも知れぬ」

案内人「ここは海に近すぎる」

エルフゾンビ「一応建屋の上に避難しておくか…」

魔女「わらわはまだ食事をして居らぬが…」

案内人「建屋の上まで持って行ってやる」グイ

魔女「これ!!引っ張るでない…およよ?」バタバタ

案内人「肩の上に乗ってろ」

魔女「これ!!わらわは下着を履いて居らぬ…降ろさんか!!」

案内人「上に行こう」タッタ

エルフゾンビ「…」タッタ

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:28:02.69 ID:iNLvSB+c0
『屋上』


ザブン ザブン ドバーーーー


エルフゾンビ「…絶句だな…これは」

魔女「皆屋根に上がって避難しとるが…」

案内人「水は引いて行ってる様だが…散らかった物がみんな波に持って行かれる」

エルフゾンビ「これでは動けんな…」

魔女「折角合流出来たのに困ったのぅ」

エルフゾンビ「アサシンを救出するなら混乱している今がチャンスと見るが…」

案内人「津波は何回も来る…今は止めて置いた方が…」

魔女「小さな隕石をあの屋敷に落とす…牢の壁だけ壊せば良かろう」

エルフゾンビ「ほう?」

魔女「詠唱に時間が掛かるのじゃ…ゾンビを使役して詠唱の時間を稼げるか?」

エルフゾンビ「使役出来るゾンビがどのくらい要るかだが?」

魔女「元はカタコンベが有ったのじゃ幾らでもおろう?」

エルフゾンビ「やってみるか…ゾンビ共よ我に付き従え」ブン

魔女「貴族居住区まではわらわの睡眠魔法で行ける筈じゃ…貴族特区から出て来る者をゾンビで足止めするのじゃ」

案内人「この水の中を歩いて行くのか?小さい体では流される」

魔女「わらわは主の肩に乗って詠唱するでわらわを運べ」

案内人「お前等と居ると危ない事ばかりだな…」

魔女「つべこべ言うな…水が張っておる今がチャンスじゃ!行くぞ」

案内人「ええい…乗れ!」グイ
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:28:40.64 ID:iNLvSB+c0
『貴族居住区』


ザブザブ


案内人「はぁはぁ…ここまで来りゃ水は上がって来ねぇ…」

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「どっちに行けば良いんだ?」

エルフゾンビ「こっちだ!!」タッタッタ

案内人「ひぃひぃ…」

魔女「見えて来たのぅ…この先にはラットマンリーダーが居る…ゾンビで引き付けて欲しいのじゃが?」

エルフゾンビ「まだゾンビが追い付いて居ない…もう少し待て」

魔女「詠唱に10分掛かるのじゃ…その間わらわは会話が出来ぬ」

エルフゾンビ「長いな…ゾンビでは持たん」

魔女「では先に詠唱を始める故…詠唱が終わるまでに屋敷が見える位置に居れば良い…出来るか?」

エルフゾンビ「やるしか無いのだろう?」

魔女「屋敷に近づき過ぎる出ないぞ?隕石は破裂するでな…」

エルフゾンビ「よし!やろう…案内人…私の後ろから離れるな?」スラーン

案内人「お…おう」

魔女「詠唱を始める…」アブラカタブラ メテオスウォーム コイコイコイコイ

エルフゾンビ「ゾンビ共…急いで我の下へ来るのだ」


ヴヴヴヴヴヴヴヴ ガァァァァ


案内人「…」ゴクリ

エルフゾンビ「20という所か…よし!ラットマンリーダーの注意を引き付けろ」

ゾンビ「ヴヴヴヴヴヴヴ…」ズリズリ

案内人「ゾンビというよりスケルトンだな…」

エルフゾンビ「肉はラットマンに食われた様だな」


ラットマンリーダー「ガオォォォォ」ドスドス


エルフゾンビ「来い!!あの一体だけ倒す」シュタタ ザクリ

案内人「おぉすげぇ…腕を切り落とした」

エルフゾンビ「ゾンビ共!次のラットマンリーダーを倒せ」タッタッタ


-------------------
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:29:18.08 ID:iNLvSB+c0
案内人「他のラットマンリーダーも集まって来た…」

エルフゾンビ「魔女!まだか!?」

案内人「ゾンビが食われてる…」

エルフゾンビ「時間稼ぎになるのならそれで良い」


シュン スト


エルフゾンビ「ちぃぃ見つかった!案内人!私の後ろに隠れろ」

案内人「おう…」

エルフゾンビ「この距離では弓はそうそう当たらん」シュン シュン

案内人「一人だ…あれが時の王か?」

エルフゾンビ「こちらに来る気は無さそうだな…」シュン カキン!

魔女「隕石魔法!」

エルフゾンビ「おぉ!!間に合ったか」

魔女「もうすぐ落ちて来よるで逃げるのじゃ…急いで離れろ」

エルフゾンビ「案内人!!先に戻れ」

案内人「おう!!」タッタッタ


シュゴーーーーーーーーー


エルフゾンビ「来た…あれが隕石か…」

魔女「早う来い!!巻き込まれる」


パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ


エルフゾンビ「うぉ!!」ピョン クルクル シュタ

魔女「隕石で注意がこちらに向いたで早う逃げるぞ…走れ案内屋!!」

エルフゾンビ「…」タッタッタ


---津波にゾンビの襲来---

---そして隕石---

---セントラルも末だ---
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:29:52.68 ID:iNLvSB+c0
『宿屋の屋上』


ガヤガヤ ガヤガヤ


案内人「ふぅ…ずぶ濡れだ」

魔女「ご苦労じゃった…少し休め」

エルフゾンビ「私も役に立てたか?」

魔女「そうじゃな…主が居ったから成功したのじゃ」

エルフゾンビ「アサシンは無事か?千里眼で見えるのだよな?」

魔女「千里眼!ふむ…どこぞを泳いでおる…じゃが怪我をして居る様じゃ」

エルフゾンビ「フフ不死者が怪我か?」

魔女「隕石のすぐ近くに居ったからのぅ…少し心配じゃな」

エルフゾンビ「私も怪我をしている様だが自分では見えん」

魔女「背中じゃな?むむ!隕石の破裂片に当たったな?」

エルフゾンビ「空中で破裂しながら落ちて来るとは思わなかったのだ…油断した」

魔女「ここで回復魔法をするのは目立ちすぎる…部屋に戻るのじゃ」

案内人「そうだな…部屋が二階で良かった」



『部屋』


魔女「回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「不死者でも傷口は塞がるのだな?」

魔女「気休めかも知れぬが傷口が開いたままよりはマシじゃろう」

エルフゾンビ「すこし喉が渇いた」

魔女「案内人!主の荷物にワインが有ったな?」

案内人「あぁ女王様に持たされた…エルフゾンビの喉の渇きを癒す様だ…ホレ」ポイ

エルフゾンビ「むぐ…」ゴクリ

魔女「血の代わりにワインか…不便な体じゃな?」

エルフゾンビ「これはこれで良い所もあるのだ」グビ

魔女「さて…わらわも少し休むかのぅ…疲れたわい」

案内人「俺は外でアサシンが迷わない様に待っている」

魔女「そうじゃな…わらわは少し寝るで任せたぞ?」
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:30:56.56 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


エルフゾンビ「アサシンはまだ戻って来ないのか?」

魔女「様子を見てみる…千里眼!」

エルフゾンビ「どうだ?」

魔女「どこぞの砂浜じゃな…動く気配が無い」

エルフゾンビ「砂浜だけでは迎えに行けん…何か目標物は見えないか?」

魔女「遠巻きにセントラルの城が見えて居る…位置的に東の方じゃな」

エルフゾンビ「よし迎えに行こう…動けない理由がありそうだ」

魔女「そうじゃな…石化しとるかもしれんな」

エルフゾンビ「エリクサーは持って居る…魔女はそのまま走れそうか?」

魔女「大丈夫じゃ子供の恰好の方が走りやすい」

エルフゾンビ「行こう」タッタッタ
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:31:26.59 ID:iNLvSB+c0
『砂浜』


魔女「居った!!ここじゃ…やはり石化して動けぬ様じゃ」

エルフゾンビ「フフ三度目だな…飲め」グイ

アサシン「うぐぐ…」グビ

魔女「意識はある様じゃな?回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「リリスの血に浸かったな?石化の進行が早そうだ」

アサシン「グッグッグ…」

エルフゾンビ「私が背負って行く…」ヨッコラ

魔女「本真に厄介な石化じゃ…」

エルフゾンビ「エリクサーが少ないから回復は少し間が必要だな」

魔女「とにかく救出できて良かったのぅ」

エルフゾンビ「血が海に流れ出て居ては黒死病が広がってしまうな」

魔女「うむ…どうにか止めんとイカン…リリスは永久に血を流しよる」

エルフゾンビ「時の王が魔結界から出ない理由…もしかすると石化は魔法の一種では?」

魔女「そうじゃ土属性の高位魔法じゃ」

エルフゾンビ「やはりそうか…時の王はやはり魔法を恐れているか」

魔女「わらわも考えた…量子転移を使われたく無いのじゃと思う」

エルフゾンビ「どういう事だ?」

魔女「量子転移はな?過去から物質などを丸ごと転移する事が出来る様じゃ…じゃから200年間一歩も魔結界からは出て居らん」

エルフゾンビ「過去から…」

魔女「祈りの指輪も同じ効果を持つ…過去の記憶を丸ごと転移すると術者は過去に戻る…つまり現在に丸ごと転移するのじゃ」

エルフゾンビ「魔結界の中ではその魔法自体無効…そういう事か?」

魔女「じゃろうな?隕石の様に物理的な魔法でなければ効果が無いじゃろう」

エルフゾンビ「なるほど…」

魔女「時の王が姿を隠しているのも他の者の記憶の中に自分が残るのを避けて居るからじゃと思う」

エルフゾンビ「だから書状でやり取りをしていたのか…」

魔女「セントラル王家はなぜそのような者を膝元に置いて居るのか?」

エルフゾンビ「特殊生物兵器部隊の絶対的な権威だ…人間では太刀打ち出来ない」

魔女「それこそセントラルが横暴に走る原因じゃな」

アサシン「グッグッグ…」
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:32:10.60 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』


案内人「津波が断続的に来ている…貧民街の方はもうダメだ」

エルフゾンビ「波が小さくなっては来ているな?」

案内人「アサシン様が戻った事だしフィン・イッシュに帰るか?」

エルフゾンビ「いや…私にやりたい事が出来た」

魔女「んん?何じゃ?」

エルフゾンビ「魔女の貝殻は他には無いのか?」

魔女「貝殻に魔術を掛けるのは簡単じゃ…何に使う気じゃ?」

エルフゾンビ「その貝を兄に届けたい…一方通行で良いから話をしたいのだ」

魔女「ふむ…話を続けるのじゃ」

エルフゾンビ「私達が噛み合って居ないのは話をして居ないからだ…こちらの考えを兄に伝えれば必ず分かってもらえる」

魔女「セントラルを仲間にするというのじゃな?」

エルフゾンビ「声を兄だけに伝えたい…他の側近に聞かれては意味が無い」

魔女「よし…わらわがシン・リーン特使として書状と貝殻をセントラル国王へ届ける様はからう」

エルフゾンビ「出来そうか?」

魔女「従士が居らん様ではちと危険なのじゃが…案内人ではちと役不足じゃ」

エルフゾンビ「私は顔が出せん…アサシンの回復を待ってからだな」

682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:32:40.96 ID:iNLvSB+c0
『数日後』


魔女「案内人はわらわの右…アサシンは左じゃ」

魔女「2人共くちばしマスクでしっかり顔を隠しておくのじゃ…良いな?」


門番「止まれ!セントラル王城に何用で参られた!?」

魔女「わらわは光の国シン・リーン第3王女じゃ…特使として参った」

門番「シン・リーン王女だと!?聞いて居ない…顔を見せろ」

魔女「やれやれ…隠密で来て居るのじゃ…騒がぬ様にな?」ファサ

門番「従士は2人か?う〜む…」

魔女「我らは魔術師じゃという事を忘れるな?狼藉はせぬ様に…死人は出しとう無い」

門番「して…何用か?」

魔女「密書を届けに参った…国王に之を持て」

門番「書簡と…貝殻か?」

魔女「そうじゃ…危険な物では無い故しっかり確認しても構わぬ」

門番「ふむ…よこせ」

魔女「密書の開封は国際法違反になるで注意せい…国王に不利益となるでな?」

門番「大使と面会はして行かんのか?」

魔女「大使に用なぞ無い…隠密で来て居るのじゃ理解せい」

門番「ふむ…失礼した」

魔女「わらわは行くぞ?…くれぐれも狼藉は避けよ…良いな?」クルリ ノソノソ


--------------------


魔女「どうじゃ?後を付けて来よるか?」

アサシン「遠目にな…どうする?」

魔女「やれやれ側道に入るぞよ?主らは方々に去れ」

アサシン「宿屋までの道は分かるな?」

魔女「大丈夫じゃ…側道に入ったら変身するで上手く巻くのじゃ」

アサシン「クックック…魔女も慣れたものだ」

魔女「変性魔法!」グングン

アサシン「案内人はあっちだ!私はこっちに行く」

案内人「宿屋で…」

魔女「やはり服がピチパチになってしまうのぅ…下着を履いて居らんのじゃが…」



あれ!?何処に行った?

一人あっちに行ってる

向こうにも…

王女は何処に行った?

探せ!!
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:33:21.27 ID:iNLvSB+c0
『中央広場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ

ドゥーーーーーーーーーーーーーーーーーモ


何の音だ!?

空が叫んでるのか…

何この声…怖い


ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


嫌やぁああああああ

何処から聞こえて来るんだ!?

こ…これは魔王の声じゃないのか!?


ザワザワ ザワザワ
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:33:54.56 ID:iNLvSB+c0
『宿屋』



魔女「はぁはぁ…アサシン!エルフゾンビ!今の音を聞いたかえ?」

アサシン「空から音が鳴った…気球に行くぞ!!」

エルフゾンビ「案内人は!?」

魔女「外で空を見とる」

エルフゾンビ「連れて行く…先に気球へ行っててくれ」

アサシン「魔女!!こっちだ…手を離すな?」タッタッタ

魔女「これは何か起きる音じゃ…胸騒ぎが止まらぬ」タッタ

案内人「お〜い待ってくれ…どういう事だ?」

アサシン「空が異常だ…気球で周りを見たい」

案内人「宿の代金をまだ払ってない…」

アサシン「それは後で良い…とにかく非常事態だ…私は気球の場所を知らないから案内人が先導してくれ」

案内人「あぁこっちだ!」タッタッタ




『貨物用気球』


ドドドドドドド


アサシン「動物か?地響きがするな…まだ飛べないか?」

案内人「もう少しかかる!」ワッセワッセ

エルフゾンビ「雲の様子が変だ…あのような雲は見たことが無い」

アサシン「南の方から何かが来た様な感じだな?」

案内人「上がるぞ!!」フワフワ

魔女「…そうか!!これはインドラの矢じゃ古文書に音の事が書いてあった」

アサシン「海が引いて行ってる…」

案内人「又津波か!?」

魔女「津波じゃと?…エルフゾンビ!!ゾンビを使って民を貴族居住区に追い立てるのじゃ」

エルフゾンビ「避難か…」

魔女「案内人!セントラルの上を飛べ…わらわが照明魔法で民の逃げる方向に目印を付ける」

案内人「わかった…」グルグル

魔女「エルフゾンビ!!貝殻を使って兄に呼びかけよ…大きな津波が来るとな」

アサシン「お!?セントラルから照明弾が上がった…兵の緊急招集だなアレは」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー

アサシン「光の矢印か…良い考えだ」

案内人「この海の引き具合だとあと1時間以内に来るぞ」

魔女「照明魔法!照明魔法!照明魔法!」ピカー
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:34:30.32 ID:iNLvSB+c0
『1時間後』


アサシン「よし…いいぞ衛兵が民を誘導している!避難が間に合う!!」

案内人「海を見てくれ…段差が出来てる…アレが津波だ」

エルフゾンビ「ゆっくり流されて行くな…」

魔女「あの高さじゃと貴族居住区も浸かるかもしれんのぅ」

アサシン「自然の力の前で私達は何と無力か…ゆっくりと中央広場が水没して行く」

魔女「これは防ぎ様が無さそうじゃ」

アサシン「いつぞや見せた氷結魔法で凍らせられないか?」

魔女「この量は無理じゃが貴族居住区の門を塞ぐ程度なら出来るやもしれぬ」

アサシン「案内人!貴族居住区の上を飛ばせ」

魔女「水が上がって来たら魔法を発動させてみるぞよ」アブラカタブラ アブソリュート ゼロ

案内人「だめだ…中央は全域屋根まで浸かってる」

アサシン「魔女に掛けるしかない」

魔女「広範囲絶対零度魔法!」カキーン 


ガガガ ガリガリ 


アサシン「おぉ!!氷河が門に詰まって塞き止めが出来ている」

魔女「氷結魔法!氷結魔法!氷結魔法!」カキーン

エルフゾンビ「見ろ!!外郭の壁が崩落した…これで水位が下がるかもしれない」

アサシン「凌いだか!?」

エルフゾンビ「水が草原の方まで行ってる…信じられない光景だ」

案内人「海の中に浮かぶセントラル城…」

エルフゾンビ「あそこにどれだけの命が犇めいているのか…」

魔女「しかし…誰がインドラの矢を使ったかじゃな」

アサシン「千里眼で見通せないか?」

魔女「やって居るが盗賊も商人も…誰の目も見えんのじゃ…狭間の中に居るのじゃろうか?」

アサシン「狭間の中は見通せないのか?」

魔女「時間の流れが違うのでな?逆だと見えるのじゃがのぅ」

案内人「フィン・イッシュも心配だが…」

アサシン「あちらは海から少し離れた丘の上だ…セントラル程では無かろう」

魔女「今女王の目を見て居る…川が氾濫しておるな」

アサシン「逆流か!」

魔女「じゃが沿岸部だけじゃな…大した被害では無さそうじゃ」

アサシン「そうか…軽微で良かった」ホッ

魔女「わらわ達は眺めている事しか出来ぬ…唖然とはこの事を言うのじゃな…言葉が出ぬ」
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:35:01.15 ID:iNLvSB+c0
『翌日』


フワフワ


アサシン「水が渦を巻きながら引いて行っている…リリスの血が見当たらないが…」

魔女「流されて行ったかのぅ?」

アサシン「海に消えた…のか?」

魔女「それはそれでセントラルの危機は去ったかもしれぬが…良くないのぅ?」

アサシン「カタコンベに入れてあったとすると濁流で下水から流れ出た可能性は高いな」

魔女「しばらく様子を見んと分からんな」

アサシン「カタコンベの掃除には丁度良かったと言う言い方も出来るな」

魔女「時の王はどうするかのぅ?顔が見てみたいわ」

案内人「セントラルの方は人が出てき始めたが…俺達はどうする?」

アサシン「このまま降りると気球を接収されそうだな…向こうの気球は流された模様だ」

魔女「しばらく待機じゃな…」

アサシン「女王の方はどうだ?フィン・イッシュに余裕があるなら救援を頼むのも良い」

魔女「女王はもう動いて居る様じゃぞ?何やら指示を出して軍船を見て居る」

アサシン「支援物資を積んだ軍船が来るのは外交的に非常に良い…来るとしたら2週間後か」

魔女「ところでエルフゾンビは貝殻に向かって話をして居ったが気が済んだか?」

エルフゾンビ「フフ一方的に話をするのは気持ちの悪いものだ」

魔女「聞いて居る方は楽しみに待っているもんじゃがのぅ…」

エルフゾンビ「ひとまず言いたいことは言ったつもりだが反応が無いのがな…」

魔女「反応を要求してみれば良かろう」

エルフゾンビ「どうやって?」

魔女「そうじゃな…白旗を上げろとか光を出せとかじゃな?」

アサシン「この気球にお前が乗っている事を話して居るのか?」

エルフゾンビ「こちらの居場所を特定できる事は何も言って無い…私の考えを話しただけだ」

魔女「この気球から派手に魔法を撃っておるんじゃ…向こうも察して居るじゃろう」

アサシン「…まぁそうだな…今更隠し立てしても遅いと言えば遅い」

魔女「そうじゃ…ミスリル銀を打って鳴らせという要求はどうじゃ?」

エルフゾンビ「もう一度話してみる」



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687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:35:38.16 ID:iNLvSB+c0
アサシン「今回の件でシン・リーンとフィン・イッシュが手を組んでいる様にセントラルには見えている…」

魔女「セントラルの方が国力が大きいで力関係は崩れて居らんと思うが?」

アサシン「いや甘い…貴族達の利害バランスが変わるのだ…それを是とするかどうかだな」

魔女「わらわの国の元老院制も対外じゃが貴族院制も同じなのじゃな?」

アサシン「国王は只の飾りなのだよ調印するための道具だ」

魔女「わらわは聞き分けの無い元老を何人か焼き殺したが咎められて居らんぞ?」

アサシン「それは魔術の絶対的権威があるからだ…シン・リーンはどちらかというと絶対王政に近い」

魔女「ではいくらエルフゾンビが兄の国王に取り入っても無駄という事じゃな?」

アサシン「エルフゾンビは法王制を施行しようとして失墜したのだ…代わりに貴族院が絶対的権威を持つことになった」

魔女「根が深いのぅ…」

アサシン「政治とはそういうものだ…だから私のような暗殺者が暗躍する」

魔女「主は言って居ったな?貴族を皆殺し出来ると」

アサシン「訂正する…時の王の様な存在が居ると分かった以上それは出来ない」

魔女「時の王がすべてを牛耳っていると思うか?」

アサシン「違うな…結果的にそうなっているだろうが奴は背後に座っているだけだ」

魔女「では誰が貴族院を掌握しておると言うのじゃ?」

アサシン「民衆のすべてだ…貴族それぞれの支持者達がマジョリティーとなって動かしている…だから」

アサシン「時の王はすべての人間を絶滅させたいのだ」

魔女「主は時の王の考えを支持するのじゃな?」

アサシン「支持では無い…理解だと解釈して欲しい」

魔女「うーむ…国王同士仲良くすれば上手く行くと言うのは考えがお花畑じゃったな…」

アサシン「魔女が提案したミスリル銀を打ち鳴らすというのはマジョリティを導くには良いのかも知れん」

魔女「それを知って実際に行動しているセントラル国王は優秀なのかも知れんな」

アサシン「…だが邪魔する者も出て来るのだ」

魔女「邪魔…」

アサシン「私達は民衆を貴族居住区に避難させたな?貴族は民衆を保護した形になった…つまり貴族院を支持したのだ」

魔女「わらわ達の行いが邪魔じゃったと…」

アサシン「人間はその様にうまく混ざり合わない…時の王が言いたいのはそういう事だ」



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688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/10/19(月) 21:37:09.30 ID:iNLvSB+c0
コーーーーーーーン コーーーーーーーーン


エルフゾンビ「聞こえた!!返事をして来た…」

魔女「良かったのぅ…兄と通じ合った様じゃな」

エルフゾンビ「兄は…兄は同志だ」

魔女「その様じゃ…わらわ達と同じ様に魔王の影と戦っておる…立場が違うがな」

アサシン「弟が生きていると知ってさぞ喜んでいるだろう…周りには言えぬだろうが」

魔女「その貝殻は主にやるで一方通行でも話をしてやるのじゃ」

エルフゾンビ「わかっている…」

アサシン「さて…セントラルに用は無くなった…一度フィン・イッシュに戻るか」

魔女「そうじゃな…わらわも読み残した書物が沢山あるで一旦身を落ち着けたいのぅ」

アサシン「案内人!フィン・イッシュに戻るぞ」

案内人「はいよ!!」


ビューーー バサバサ



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 時の王編

   完
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/10/20(火) 09:31:40.11 ID:QyXZyXMu0
おつ
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:09:03.17 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女海賊「ローグ!!荷の中にクヌギの樹液なんか無いよね?」

ローグ「そんな物見た事無いっすね?何に使うでやんすか?」

女海賊「エリクサーの材料さ…精霊樹の樹液の他にクヌギの樹液でも良いってさ」

ローグ「クヌギなんか森に行けば何処にでも生えてるでやんす…虫が集まる木っすね」

女海賊「森か…後で寄って行くか」

ローグ「このまま命の泉目指して良いでやんすか?セントラルの上飛んで行く感じになりやすが?」

女海賊「セントラルの上で一応リリースして…軽く見て行く」

ローグ「分かったでやんす…ててて」

女海賊「ん?あんた…どうしたのさ?」

ローグ「なーんか手の具合が良くないでやんす…黒死病っすかね?」

ホムンクルス「…見せてもらって良いでしょうか?」

ローグ「助かるっす」

ホムンクルス「上着を脱いで下さい」

ローグ「手が動かないと脱ぎにくいでやんすねぇ…」ヌギヌギ

ホムンクルス「虫などに噛まれた痕はありませんでしょうか?」

ローグ「自分じゃ分かんないでやんす…あ!!脇腹が黒くなってるっす…いつ噛まれたんすかねぇ?」

ホムンクルス「黒死病は虫などからの接触感染で広がりますので皆さんエリクサーを一口づつ摂取してください」

女海賊「え!?虫ダメなの?私クモ持ってんだけど…」

ホムンクルス「吸血型の虫でなければ問題ありません」

子供「ママ〜?僕も手が黒くなってる」

女海賊「未来も?いつから?」

子供「分かんない」

女海賊「動かない所無い?」

子供「うん…」

ホムンクルス「エリクサーで一度治れば抗体がしばらく持続しますのでご安心下さい」

女海賊「はい…飲んで?」

子供「むぐ」ゴクン

ローグ「いつの間に掛かってるのって怖いでやんすねぇ…」
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:09:45.05 ID:V1qeujs60
『セントラル近海上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「ちょっとリリースして!!」

ローグ「リリース!どうしたでやんすか?」

女海賊「下!!クラーケンが暴れてる…寄って」

ローグ「アイサー」グイ

女海賊「海が赤い…なんで?」

盗賊「見ろ!!クラーケンの触手…なんか掴んでんぞ?」

女海賊「ローグ!望遠鏡!」

ローグ「あねさんのゴーグルに付いてるっすよ…」

女海賊「あ!忘れてた…」スチャ

盗賊「あの触手で掴んでる奴から血が出てんな?なんだありゃ?」

女海賊「もっと寄って!!羊の頭に裸の女?…足が蛇!」

商人「僕も見たい!」

ローグ「荷の中にもう一つ望遠鏡があるっす」

盗賊「人魚じゃ無さそうだな?うぉぉぉ!!触手が折れた…折れるってどういう事よ?」

女海賊「ホムちゃん何か知らない?」

ホムンクルス「私の記憶ではそのような魔物は知りません…ですが旧シャ・バクダでは錬金術によって異形の魔物を生む技術はありました」

情報屋「キマイラね?」

ホムンクルス「はい…異種の魔物を結合させた物だと推測されます」

盗賊「そんなのが海に居るっておかしいだろ」

女海賊「あのキマイラ…鎖でグルグル巻きだ…人間が絡んでる」

盗賊「…てこたぁセントラルしか無ぇな」

商人「折れた触手ごと沈んで行ったのかな?浮かんで来ない」

盗賊「ヤバそうな魔物は海に沈んでてもらった方が良い」

女海賊「…セントラルから来た?…なんか嫌な予感がする…今のがカタコンベに居たのか?」

盗賊「お前が爆破したんだろ?」

女海賊「爆破した後を見てない…」

盗賊「見て行くか?」

女海賊「いや…先に命の泉を目指す」
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:10:11.88 ID:V1qeujs60
『セントラル上空』


リン ゴーーーーーーン


盗賊「こりゃ津波の直撃受けてんな…外郭が倒れてんじゃねぇか」

商人「外郭の壁が水をせき止めたんだろうね」

盗賊「まぁでも人は多そうだな…中央は全部貧民街みたくなってる」

ローグ「あねさん…周回してて良いんすか?鐘鳴ってるんで目立ち過ぎやしませんかね?」

女海賊「鐘の音を聞かせてやってんのさ…もうちょい回って」

ローグ「城の上からこっち見てるっすね?国王でやんすかね?」

商人「あれがセントラル国王か…」

盗賊「港に停船してんのはフィン・イッシュの軍船だな…飛んでる気球はこっちに寄って来ねぇな」

ローグ「そらそーっすね機動性が全然違うんで怖く見えると思うでやんす」

商人「ハハ鐘鳴らしながら空を周回してるのは奇妙だろうね?」

ローグ「でもこの飛空艇は海賊だって認知してるっすよ…前に軍船沈めてるんすから」

情報屋「ねぇ…民衆がほとんどしゃがんでるのはどうしてだと思う?」

盗賊「そういや元気無さそうだな…」

ローグ「ここでも黒死病流行ってるんじゃないっすか?」

女海賊「…」

ローグ「あねさん…どうしやした?」

女海賊「ホムちゃんが書いたエリクサーのレシピ…国王に届ける」

ローグ「ええっ!?降りるんすか?」

女海賊「レシピを瓶の中に入れて!飛空艇は私が操作する」グイ

盗賊「落とすんだな?」

女海賊「行くよ!!3…2…1…今!!」

盗賊「ほれ!」ポイ

ローグ「城のテラスに落ちやした!!」

女海賊「どう?拾いに行ってる?」

ローグ「衛兵が集まってるでやんすね…あ!大丈夫っす国王らしい人が拾い上げたっす」

盗賊「誠意が伝わると良いがな」

女海賊「さぁ!!進路を北に変える…ハイディング!」スゥ
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:11:01.81 ID:V1qeujs60
『砂漠上空』


シュゴーーーーー バサバサ


盗賊「寒いと思ったら雪がチラついてんな…」

商人「砂漠に雪か…ホムンクルスが言ってた気温が下がるというのはこんなに早く下がるんだ」

ホムンクルス「成層圏で生成された薄い雲は数日で世界全体を覆います…この雲は日照の30%を吸収しています」

商人「うっすら白い青空…これだけで30%?」

ホムンクルス「目が慣れているだけで実際には暗くなっています」

商人「30%も光が遮られているのか…」

ホムンクルス「地熱がありますので今よりも過ごしやすくなる地域も出てきますから悲観はしないで下さい」

商人「具体的にはどこ?」

ホムンクルス「フィン・イッシュ南部に海底火山がありますので温暖な海流があり豪雪に耐えうる地下熱量を持って居ます」

ホムンクルス「シン・リーンは地底深くにマグマ溜まりがありますので地中が温暖になります」

商人「地中か…僕たちは地底人になるか」

情報屋「それがノーム族よ?ドワーフの先祖」

商人「へぇそうだったのか…全部繋がってるんだね」

ホムンクルス「この砂漠周辺は南部からの湿った空気が雪となって降り注ぎますので豪雪地帯となりその後森に姿を変えます」

商人「針葉樹の森かい?」

ホムンクルス「はい…同時にシカが生息する様に変化して行きます」

商人「砂漠の緑化か…良い事もあるんだ」

ホムンクルス「自然はこの様にバランスを保つ様になって居ます…人は流れに沿って生きて行けば良いのです」

商人「む…気になる言い方だな…逆らおうとするなと言う事かい?」

ホムンクルス「変化していく物事に沿って行こうとする者と変化させまいとする者は必ず争いになるのです…」


例えばこの気候変動で滅びゆくセントラルにいつまでも固執した人が居たとします

その外側で新たな生き方を生成している人達との間には必ず戦争が起きてしまいます

戦争は憎悪を膨らませ魔王を成長させ再び調和の時を呼んでしまう

人類の歴史はそれの繰り返しなのです

かつての精霊はそれを知り…人間に少しでも良い環境を生成してきましたが

この流れを肯定とする者と否定する者が生じ…やはり争いになってしまうのです
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:11:36.19 ID:V1qeujs60
商人「君は魔王を肯定するのか?調和に身を任せろという事を言ってるよね?」

ホムンクルス「いいえ…反対です…魔王を成長させてはいけない」

商人「話が矛盾するじゃないか…」

ホムンクルス「人間に与えられた欲望…七つの大罪は魔王によるものです…これを滅しない限り人間は今の生き方を変えないでしょう」

商人「…そうか自分の地位を投げ出したくない欲望が流れに沿えない原因か」

ホムンクルス「ですが精霊の考えにも対立する者が現れるのです」

商人「それは?」

ホムンクルス「精霊が最も信頼した人間の一人…時の王という者です」

商人「聞いた事が無いな…情報屋?知ってる?」

情報屋「…」フリフリ

ホムンクルス「200年以上前の事ですから知らなくて当然ですね?」

商人「…」チラリ

ホムンクルス「何か?」

商人「君は僕を誘導しようとしていないか?」

ホムンクルス「40年の記憶の中で時の王にも何度か同じ事を言われています…それは人が持つ恐怖です」

商人「僕が恐怖している?…そんな感じはしない」

ホムンクルス「私に誘導されたくないと心の底で抵抗しています…流れに沿って…信じて下さい」

商人「なるほど…潜在的に猜疑心があるのか…これを否定するとなると人間を止めろという事になる」

ホムンクルス「だから人間を絶滅させる等とは考えて居ません…信じて下さい…バランスさせようとしています」

商人「分かった…君は魔王を滅ぼすとも思っていない…大きくなり過ぎた魔王を小さくするだけか…」

ホムンクルス「その通りです…そこに誤解が生じてしまうのです」

商人「ハハ君は精霊の記憶を得てから言う事が変わったね…」

ホムンクルス「お嫌いですか?」

商人「違うかな…君の言葉の端々に愛を感じるんだ…人に対する愛だね」

ホムンクルス「私は喜んで良いのでしょうか?」

商人「んーどうなんだろ?でも君に足りないものも分かったよ」

ホムンクルス「教えてください」

商人「少しで良いから君の心の中に七つの大罪が必要だと思う…そうすれば色々変わる事も出るんじゃないかな?」

ホムンクルス「…それは知恵の実の事ですね…聖書に書かれて居ます」

商人「もう知識としては持ってるよね?」

ホムンクルス「はい…シミュレーションの妨げになりますので除外しています」

商人「使い分けてごらんよ?きっと違う結果が出ると思うからさ」

ホムンクルス「はい…基幹プログラムを更新します」
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:12:17.32 ID:V1qeujs60
『オアシス上空』


シュゴーーーー バサバサ


女海賊「遺跡が森になってる…」

盗賊「おぉぉここはあん時と随分変わったなぁ…森がオアシスと繋がり掛けてる」

商人「星の観測所はどうなったのかな?ドラゴンの義勇団は随分前に解散したとは聞いて居たけど…」

ローグ「あねさん寄って行かなくて良いでやんすか?」

女海賊「先に命の泉!」

ローグ「いやぁぁここに来ると思い出すっすねぇ…あん時のあねさんは可愛かったっすねぇ」

女海賊「はぁ!?今は可愛くないっての?」

ローグ「いやいやいやいや…そういう意味じゃ無いっすよ…無邪気だったんすねぇ」

盗賊「まぁそうだな…お前は変わった…そんなにギラギラした目はして居なかった」

女海賊「フン!!放っといて…捕虜に言われたくない」

子供「ママはやさしいよ?」

女海賊「未来…良いの…ホムちゃんと遊んでいなさい?」

子供「ママをいじめたらダメだよ」

盗賊「あぁ分かった分かった…悪かったな」


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女海賊「ホムちゃんコレ見て…」スラーン

ホムンクルス「はい…聖剣エクスカリバーですね?」

女海賊「刀身が錆びてないよね?1700年経った今でも…」

ホムンクルス「そうですね…何か?」

女海賊「私のパパはこの金属がオリハルコンじゃないかって言ってるんだ」

ホムンクルス「私の記憶ではエクスカリバーの素材がオリハルコンなのかどうか分かりません」

女海賊「良く見て?うっすら光ってるっしょ?」

ホムンクルス「そうですね…光の石と同じ効果を持って居ると言う事でしょうか?」

女海賊「私さぁシン・リーンの遺跡にあった壁画で見たんだ…剣に光が落ちてる画を」

ホムンクルス「インドラの矢を落としたいのですね?」

女海賊「出来る?」

ホムンクルス「その剣を貸してください…密度を推定します」

女海賊「ほい…」スッ

ホムンクルス「光の石よりもエネルギー充填量は少ない様です」

女海賊「どんくらい?」

ホムンクルス「純度の高いオリハルコンの元素配列と質量から推定しますと約200年分の光の蓄積が可能な様です」

女海賊「んー量のイメージが湧かないな」

ホムンクルス「インドラの矢一回分と言えば分かるでしょうか?」

女海賊「良くわかんないけど200年は光ってるって解釈で良い?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「よっし!使える…」
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:13:03.30 ID:V1qeujs60
商人「なんか面白そうな話だね?聖剣エクスカリバーをどうするつもりだい?」

女海賊「私もいろいろ考えたさ…光の石は他の目的で使う…命の泉には聖剣エクスカリバーを刺す」

商人「同じ効果ならそれでも良さそうだね…で?光の石はどうするの?」

女海賊「光を吸い込めるって事はその逆の闇も吸い込めるって事だと思う…だから闇を全部この石に吸い込ませる」

商人「!!!!!君は天才だ!!!!!」

ホムンクルス「どのように闇を吸い込むつもりなのでしょうか?」

女海賊「分かんない…」

商人「…」ドテ

盗賊「…」ズコ

女海賊「ホムちゃん何かアイデア無い?」

ホムンクルス「量子転移という魔法なら可能かもしれません…不確実な情報ですみません」

商人「ハハ君は進歩してるよ…その魔法が使えそうなのは魔女だね?」

女海賊「魔女か…」

ホムンクルス「祈りの指輪も量子転移の効果を持って居ますが…石に転移が可能なのかは分かりません」

女海賊「ホムちゃんありがとう…もうちょい考えてみる」

ホムンクルス「お役に立てた様ですね?」
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:13:35.27 ID:V1qeujs60
『山岳地帯上空』


ビョーーーウ バサバサ


ローグ「先が見えんもんすから速度落とすでやんす…ぅぅぅぅ寒ぶ」

盗賊「えらい吹雪だな…飛空艇の着氷がひでぇ」

女海賊「着氷対策なんか考えて無かったさ…まいったな重たくなっちゃうな…」

盗賊「球皮は暖かいせいか着氷して無ぇ様だ…本体をどうにかせんとな」

女海賊「割って来て」

盗賊「いや無理だ…凍死する」

女海賊「高度上げらんないと山に激突するんだ!さっさとやって来て」

ローグ「あねさん…そら無理ってもんす」

女海賊「もう!!どうすんのよ!!一旦降りるの!?」

ホムンクルス「私にお任せください…私は現在の座標を正確に把握出来ますので目的地までご案内できます」

女海賊「ホムちゃんお願い…本当!!役に立たない男達」ブツブツ

ホムンクルス「現在の高度を維持しながら44°の方角へ進んで下さい」

ローグ「アイサー…あれ?帆が固着してるっす!!」

女海賊「もう!!私がやる!!」ガサガサ

盗賊「はは〜ん…風の魔石入れてる筒を調整して向き変えるのか…」

女海賊「ローグもちゃんと見といて!!帆が使えない時はこれで向き変えんの!!」

ローグ「あねさん…こんな事も考えてたんすね…」
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:14:13.99 ID:V1qeujs60
『命の泉』


フワフワ ドッスン


盗賊「おぉぉやっぱ高度下げると大分ぬくいな…」ハァァァ モクモク

女海賊「盗賊とローグは飛空艇の氷落としといて!!」

盗賊「やっぱそうくるか…ちぃぃ」

ローグ「すこし体動かしたらあったまるでやんす」ガサガサ

女海賊「この雪じゃ車椅子は押せないなぁ…ホムちゃん剣士運ぶの手伝って?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「商人と情報屋は先導して…未来は後から付いて来て」

子供「うん…」

商人「情報屋こっちだよ…君はここに来るの初めてだよね?」

情報屋「うん…ここがドラゴンの住処なのね?」

商人「そうらしいけど…なんか静かだね?」

女海賊「気配が無い…居ないのかな?」

情報屋「川のせせらぎ…」サラサラ

商人「こんなに雪が積もっているのに川は流れてる」

女海賊「あれが命の泉…あん時のままだ…」

商人「ホムンクルス!君は精霊の40年の記憶でこの場所の記憶は無いのかい?」

ホムンクルス「はい…知っています」


命の泉に刺された魔槍ロンギヌスはかつての火の国シャ・バクダの宝具でした

世界随一を誇るシャ・バクダは錬金術で異形の生物を生み操る事で絶対的な力を持って居ました

しかし魔王に魅せられた皇子は乱心し他国の征服を試み始めます

異形の生物を主力とするシャ・バクダは他国の人間を弱らせる為に

命の源泉であるこの泉に魔槍を突き立て人間を弱らせようとしましたが

同時に自国の人間をも憎悪に染まり始めました…それは魔王による策略だったのです
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:14:43.26 ID:V1qeujs60
商人「魔王自身が魔槍を刺した訳じゃ無かったのか…」

ホムンクルス「魔王は器無しではこの世界に何もすることが出来ません…ですから人間を幻惑して操るのです」

商人「僕たちの行動はもしかすると魔王に操られてるかもしれない事をいつも考えておかないとね」

ホムンクルス「それに気が付いて居れば良いのですが…」

女海賊「私は魔王になんか操られないよ!!私がやる…」スラーン

ホムンクルス「そうですね…」

商人「ちょちょ…まさか君が持ってる剣にそのままインドラの矢を落とす気じゃ無いだろうね?」

女海賊「そうさ…悪い?」シャキーン

ホムンクルス「少し動かれますと外してしまいますので…そこに置いてもらって良いですか?」

女海賊「…」

商人「ほら?万が一って事もあるからさ?」

女海賊「フン!ここに刺しとけば良い?」グサ

ホムンクルス「刺し方が反対の方が良いです…柄の部分を下にして下さい」

女海賊「…」ズボ クルリ グサ

ホムンクルス「座標を取得しました…皆さん一度この場所を離れましょう」

女海賊「ほら!!飛空艇に戻るよ」
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:15:10.16 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


フワリ シュゴーーーーー


盗賊「えらく早かったじゃねぇか?そんなに急いでんのか?」

女海賊「うっさいな…今からインドラの矢を落とすの」

ホムンクルス「向こうの山の裏手が良いかと思います」

女海賊「うん…分かった」

盗賊「もしかして失敗の可能性もあるってのか?」

ホムンクルス「オリハルコンのエネルギー充填限界を超えてしまう可能性があります」

女海賊「マジ?どうなっちゃう?」

ホムンクルス「超えた分が四散するかもしれません」

商人「ハハ危ない実験だねぇ」

ホムンクルス「では…投下してもよろしいですか?」

商人「君が決めて良いよ…任せる」

女海賊「ホムちゃん頼むから成功して」

ホムンクルス「はい…投下します」


ピカーーーーーーーーーーーー シーン


盗賊「おぉ!!こりゃ成功だな?」

ホムンクルス「その様ですね…200年分の光が充填されました」

女海賊「うわ…めっちゃ光ってる!!」

商人「光り過ぎてて触るの怖いね?」

女海賊「やっぱ壁画の通りだった!!早く見に行こ!!」シュゴーーーー
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:15:42.77 ID:V1qeujs60
『命の泉』


ピカーーーー


女海賊「剣士!見て?これが本物の聖剣エクスカリバーだよ?」

剣士「ぅぅぅ…」タジ

女海賊「あ…ごめんね眩しかったね」

商人「光には反応するんだね…」

盗賊「ほんで…それをお前が命の泉に刺すのか?」

女海賊「そうさ!!今ヤル…えーと何処だっけな?」ザブザブ

商人「ここだよ…君が押し込んだ謎の石が詰まってる」

女海賊「盗賊!その石取って!!それ多分オリハルコン原石だよ」

盗賊「シン・リーンでパクってきたやつな?…むむむ」ズボ

女海賊「それ大事にしまっといて…パパにそれでもう一個剣作ってもらう」

盗賊「マジか!?もう一本エクスカリバーが出来んだな?すげえなそりゃ」

女海賊「じゃ…刺すよ?」

商人「光る海!!楽しみにしてる」

女海賊「伝説の瞬間だよ!?」

盗賊「良いから早く刺せよ」

女海賊「これ挿したら私は女勇者だよ?」

ローグ「分かってるでやんす…もうみんな認めてるっす」

女海賊「いくぞぉぉぉ!!くたばれ魔王!!」ズン


キラキラ キラキラ


商人「これだよ!コレ!!!…水が光る」

盗賊「すげぇ…一瞬で向こうの川まで光ってやがる」

女海賊「仕上げに飾り石のアダマンタイトでエクスカリバーを狭間に隠す」スゥ

盗賊「おぉ…剣だけ見えなくなった…これ探せんの俺達だけになるな」

女海賊「完璧!!」

ホムンクルス「この様な方法で水を光らせるのはシミュレーションでは得られない解です…奇跡ですね」

女海賊「海は世界の70%…半分以上は私らの物だよ!!」
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:16:14.49 ID:V1qeujs60
子供「ママ!!パパが苦しがってる…」

女海賊「え!?どうして?剣士?」

剣士「ぅぅぅ…ぐがが」ズリ ズリ

盗賊「ちょっと待て…魔王はまだ剣士の中に居るんじゃ無ぇのか!?」スラーン

ローグ「え!!そんな事ある訳ないっす…」

盗賊「気を抜くな!!備えろ!!」

ローグ「マジっすか…」スラーン

女海賊「未来!!下がって…」

剣士「うがが…ぅぅぅ…グルルルル」

女海賊「そうだ!!光の石…」ゴソゴソ

盗賊「クソがぁ!!魔王…居るなら姿見せろよ」

女海賊「剣士!!これを持って」タッタッタ


ゾワワワワ


女海賊「ああ!!」---私の魔方陣のペンダントが光ってる…---

盗賊「ぬぁ!!影が飛び出した!!…地面ん中入って行く!!」ダダ ブン スカッ

女海賊「…」---セントラルの時と同じ---

盗賊「くっそう!!逃げやがった…」

剣士「…」ドタリ

女海賊「剣士!!」タッタッタ
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:16:55.02 ID:V1qeujs60
『ドラゴンのねぐら』


ホムンクルス「…ここがドラゴンのねぐらになります」

商人「こんな所に洞穴があったのか…いっぱい財宝があるじゃないか」

女海賊「やっぱドラゴンは居ないね…剣士に会わせたかったのに…」

盗賊「ここは暖かい…ちっと休んで行こう…ローグ!!火を起こすから手伝え」

ローグ「アイサー」

女海賊「ドラゴン戻ってくるかな?」

ホムンクルス「わかりませんが一晩くらい休んでも良いのではないでしょうか?」

女海賊「未来も燃やせる物を探してきて?」

子供「うん…」シュタタ

商人「ここの財宝はドラゴンが集めた物なのかな?」

ホムンクルス「ドラゴンは光る物を集める癖があるのです…良い物があれば持って行っても良いですよ?」

盗賊「マジかよ…良さそうな物いっぱいあんじゃねぇか」


-----------------


盗賊「剣士…目覚まさねぇな?」

女海賊「…」ギュゥ

商人「魔王の欠片が剣士の中に居たのは間違いなさそうだね」

盗賊「こんなに長い間人の中に入ってるんだな」

ローグ「全然気が付かなかったっすよ」

商人「こう考える事が出来る…魔王の欠片が入ってた剣士はいつでも僕たちを襲う事は出来た筈だよ」

商人「なのに今まで何もしなかったのは剣士が魔王の魂を抑え込んでいた…どう?考えすぎ?」

盗賊「俺もそんな気がするな…魔王の欠片が出て行ったって事は目を覚ましそうだ」

子供「パパ起きる!?」

盗賊「おう!!祈ってろ…きっと目ぇ覚ますぞ?」

商人「…まてよ?この現象はもしかすると世界中で起きているかもしれないな」

盗賊「だと良いが…気になるのが魔王の欠片が何処に行っちまうかだな?」

ローグ「地面の中に入っていくと追いかけようがないっすねぇ…」

商人「なんかもう少しな気がするね…ミスリルの音と光る海で確実に弱らせてる様に思う」


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704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:17:36.43 ID:V1qeujs60
女海賊「なんか良い物ある?」

盗賊「んぁぁ…金銀財宝は沢山あるが…要らねぇ物ばっかりだな」ガサガサ

女海賊「情報屋?ここの財宝ってさ年代とか分かんないの?」

情報屋「多分火の国シャ・バクダの財宝だと思う…金貨は全部が200年前の物」

女海賊「金貨なんか要らないなぁ…」

盗賊「武器類は俺のミスリルダガーより良さそうな物は無ぇし…」

女海賊「この赤い石は何だろ?宝石にしてはザラついてるな」

ホムンクルス「それは賢者の石と呼ばれる錬金術の産物です」

情報屋「ええ!?賢者の石!?それはキ・カイの錬金術師が作ろうとして作れていない物よ?」

ホムンクルス「不老不死を与えると言われていますが実際にはホムンクルスのエネルギー源として利用します」

女海賊「ホムちゃんはこれで動いてんの?」

ホムンクルス「頭部の超高度AIユニット内に賢者の石が装填されています」

女海賊「じゃぁこれが在ればホムちゃんはずっと動く?」

ホムンクルス「石の微細加工技術が在れば理論上可能ですが現代にその技術は失われています」

女海賊「パパなら出来るカモ…持って帰ろ」

盗賊「やっぱお前は石が好みなんだなヌハハ」

ホムンクルス「賢者の石はホムンクルスのエネルギー源以外にエリクサー精製にも利用されていました」

女海賊「おぉぉ使えるんじゃん!!」

ホムンクルス「その他に体機能の活性化にも効果がありますので病気の治癒にも役立ちます」

商人「すごい良い物だね?黒死病にも効くかな?」

ホムンクルス「はい…病気の治癒だけにエリクサーを服用するのはもったいないですね」

女海賊「ちょっと待って…ホムちゃん?」

ホムンクルス「はい…何でしょうか?」

女海賊「魔王はウイルスだって言ってたよね?魔王化は病気の一種なんだよね?」

ホムンクルス「残念ですが賢者の石もエリクサーもウイルス性の病気には効果がありません」

女海賊「じゃ何で黒死病には効くのさ…」

ホムンクルス「黒死病は細菌性の病気です」

女海賊「ふ〜ん…何か納得できないけど…ホムちゃんが言うからそうなんだ」

ホムンクルス「ごめんなさい…言い方を変えます…体機能の活性化に効果がありますので魔王化の治療に役立ちます」

女海賊「ほらぁ!!やっぱ効くんじゃん!!」

商人「ハハ…ハハハハ!!ホムンクルス…女海賊に負けてるじゃないかハハ」

女海賊「剣士に持たせる!」タッタッタ

ホムンクルス「私に足りない思考が今理解出来ました…基幹プログラムを更新します」

商人「どうして人間は奇跡を起こすのか?…多分そういう所にあると思うよ」
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:18:05.92 ID:V1qeujs60
『翌日』


シーン


盗賊「おぅ…お前寝て無いのか」

女海賊「静かすぎて落ち着かないんだよ」

盗賊「何だろうな此処…静かすぎるな」

女海賊「ドラゴンは此処で何年生きてると思う?」

盗賊「さぁな?1000年ぐらいか?」

女海賊「ドラゴンが光る物を集める理由…私分かるんだ」

盗賊「孤独…か?」

女海賊「命の泉を守り続けて…ずっと主人を待ち続けて…やっと会えたけどすぐ居なくなって…」

盗賊「…まぁそら寂しいわな」

女海賊「光物で紛れる訳無いのにそれでも集める…」

盗賊「気持ちの行き場が無い訳か」

女海賊「ホムちゃんがわざわざ私達をここに連れて来た理由…」

盗賊「んん?何か勘繰ってんのか?」

女海賊「全部の記憶が無いなりに…見て欲しかったんだと思う…精霊はこういう悲しみをいくつも抱えてる」

盗賊「記憶が無いなりに…か」

女海賊「何かを愛する裏側にこういう悲しみも沢山ある…だから…過去の精霊の記憶は覗かせない方が良い気がする」

盗賊「んんん…分からんでも無いが…お前はそれで良いのか?」

女海賊「私は剣士が救われるならそれで良い…わざわざホムちゃんに悲しみを背負わせたくは無い」

商人「それは本人が決める事だよ…」

盗賊「お前も起きてたか…」

商人「これだけ静かなんだ…話はみんな聞こえてるよ」

女海賊「ホムちゃん…」

ホムンクルス「…」

商人「たった40年の記憶で超高度AIが悲鳴を上げてるらしい…精霊の持つ愛と悲しみは僕らじゃ想像出来ない」

ホムンクルス「ご心配なさらないで下さい…私は人間の住まう環境を良くする環境保全用ロボットですから…」

女海賊「うん…知ってるさ…でも少し休んで良いよ…今度こそ私ら上手くやるからさ」

ホムンクルス「はい…よろしくお願いします」


---なんだろう---

---切ない---

---私達との会話も---

---この空気も全部---

---記録してる筈---

---それをどうするの?---
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:18:36.96 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


ローグ「晴れたっすねぇ!!」

盗賊「よっこら…せっと…ふぅぅ剣士は本当に重いな」

ローグ「そーっすねエルフは人間の倍近く重いっすね?鉄で出来てるんすかね?」

盗賊「骨が鉄なのかもな?ヌハハ」

商人「結局ドラゴンは帰って来なかったけど良いの?」

女海賊「いつ帰って来るか分かんないし待つだけ無駄…次は女エルフの所行く」

盗賊「女エルフ?シャ・バクダ遺跡の森はやっぱ女エルフか?」

女海賊「それしか考えらんない…たしかホムちゃんはトロールを動かせたよね?」

ホムンクルス「はい…お任せください」

盗賊「あぁ…あそこの根の森か」

女海賊「未来!乗って!!」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「飛ばすよ!」


フワフワ シュゴーーーー


盗賊「あぁぁぁさびっ…ウラン結晶を早いとこ暖めてくれ」ブルブル

ローグ「あねさん…昨日話してた実験やっていいでやんすか?」

商人「実験?面白そうだね?何?」

ローグ「ウラン結晶に水掛けると蒸気にならないかの実験っす…成功したら温かくなるかもっす」

女海賊「ちょっとづつやって!ウラン結晶割ったら承知しないよ!」

ローグ「やかってるでやんすよ…ちょーーーっとづつですねぇ」ポタポタ ジュゥ

盗賊「おおおぉぉこりゃ軽いサウナだ…快適にになるじゃねぇか」

情報屋「あったか〜いウフフ」

ローグ「やってる方はちょっとあっついでやんす…あちち」

商人「これ工夫したら着氷も防げそうだね」

女海賊「基地に戻ったら改造する」

商人「本当!君は才能あるよ…こういう事は世界一だね」

女海賊「もっと言って…」

ローグ「あねさんはですねぇ…カリスマなんすよ…」
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:19:05.09 ID:V1qeujs60
『トロールの森』


フワフワ ドッスン


盗賊「すっかり森になってんな…ここは精霊の御所入り口だよな?」

ホムンクルス「はい…歩いて100メートル程です」

女海賊「ローグは飛空艇に残ってあとみんな降りて」

ローグ「あっしは待ってれば良いでやんすかね?」

女海賊「ここはハイディングで飛空艇隠せないから飛ばして空で待ってて」

ローグ「あーそういう事っすね?この辺は魔方陣の中で強制的に狭間の外でやんしたね」

女海賊「盗賊は剣士背負って」

盗賊「お、おう…」

ローグ「どれくらいで戻ってきやすかね?」

女海賊「分かんないから狭間に入って適当に過ごして…終わったら光の石で合図する」

ローグ「わかったでやんす」

女海賊「じゃ行くよ…ホムちゃん先導して」

ホムンクルス「はい…こちらです」テクテク
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:19:33.62 ID:V1qeujs60
『精霊の御所入り口』


サワサワ サワサワ


盗賊「…この木…精霊樹だな…まさかこれが女エルフか?」

商人「こんな所で精霊樹に?どうしてだろう?」

女海賊「知らないよ…どうしよ」

盗賊「剣士降ろすか?」

女海賊「私もてっきり精霊の御所の中に精霊樹があると思ってたさ…」


ズズズズズズ ズーン


盗賊「おぉ!!入り口が開いた…」

女海賊「…これは中に入れって事?ホムちゃんどうなってんの?」

ホムンクルス「私は何もしていません」

女海賊「精霊樹の言葉とかなんか聞こえないの?」

ホムンクルス「クラウドからは何もアクセスは来ていません」

女海賊「ホムちゃん森と話とか出来ないの?」

ホムンクルス「森の声を聞くためには特殊なプログラムが必要ですが私にはそのプログラムはインストールされていません」

女海賊「あー思い出した…ホムちゃんが夢幻に入った時」

ホムンクルス「そうですね…破壊された精霊の基幹プログラムの他にいくつか使用できなかったプログラムがありましたね」

女海賊「もう使えない?」

ホムンクルス「削除しました…復元は出来ません」

商人「まぁ良いじゃないか…道が勝手に開いたという事は入って良いという事さ」

女海賊「うん…入ろう」

ホムンクルス(トロールありがとう…)

トロール(…)

女海賊「ホムちゃんトロールと話せんの?」

ホムンクルス「トロールには話しかけるだけです…トロールが話すことはありません」

女海賊「ふ〜ん…」

ホムンクルス「でもトロールにも心はありますので話は通じます」

女海賊「トロールの寿命ってどれくらい?」

ホムンクルス「永遠です…」

女海賊「いつから此処を守ってんの?」

ホムンクルス「私の今の記憶では分かりません…」

女海賊「ずっと主人の帰りを待つ気持ち…ホムちゃんに分かる?」

ホムンクルス「…」

女海賊「…」

ホムンクルス「分かります…」

女海賊「なら良いよ…行こっか」
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:20:01.72 ID:V1qeujs60
『精霊の御所』



商人「誰も居ない…」

情報屋「ここが木の森の中心部なの?…石の器だけ?」

商人「そうだよ…前に来た時と変わって居ない」

盗賊「いや変わってんぞ?虫が増えてる」

商人「虫の楽園か…ハハ」


ズズズズズ ズズ


盗賊「うぉ!!根が降りて…来た」

商人「この器に剣士を乗せろって事かな?」

女海賊「やって…」

盗賊「おう…よっこら」ドサ

剣士「…」

盗賊「これで良いか?」

女海賊「女エルフ!?聞いてんの?剣士が目を覚まさないんだ…あんたなら何か出来ると思って連れて来たんだ」

精霊樹「…」ズズズズ

情報屋「根が動いた…反応してる」

女海賊「お願い…前みたいに剣士の魂呼び戻して」

盗賊「なんちゅうか…時間掛かりそうだな」

商人「ゆっくりしておこうか」

盗賊「そうだな…」

女海賊「未来?パパの傍に居て?」

子供「うん…」



------------------
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:20:36.57 ID:V1qeujs60
ホムンクルス「クラウドにある記憶を今なら読み込んでソートする事が出来ます」

商人「君は精霊の記憶を覗きたいのかい?」

ホムンクルス「いいえ…必要が無ければ読み込まない方が良いと思います」

商人「ハハ…だろうね?読み込むと君が君じゃ無くなって行く」

ホムンクルス「私は今精霊なのですか?」

商人「君は精霊じゃ無いよ…今の精霊はここに居る精霊樹の事さ」

ホムンクルス「私の40年の記憶をどう解釈しましょう?」

商人「それは君の記憶じゃない…昔の精霊の記憶さ…ここに置いて行けば良いよ」

ホムンクルス「クラウドの空きストレージに保存して私の記憶から削除するという事ですか?」

商人「その記憶は大事に未来へ届けなくてはいけない…君がそう言ったんだ」

ホムンクルス「…そうでしたね」

商人「こう解釈しよう…昔の精霊は最後に希望を人間に託して夢幻に行ったんだ」

ホムンクルス「はい…」

商人「夢幻の中で幸せに暮らしてるさ…だから君は君のまま生きれば良い」

ホムンクルス「私は私のまま…私は何がしたいのか…私は人間の住まう環境を良くする為に…」

商人「違うな…七つの大罪を少し入れて考えてごらん?」

ホムンクルス「そのシミュレーションはエラーが多くて不特定の結果が…」

商人「ズバリ言ってあげる…君は人間になりたいんだよ」

ホムンクルス「人間を愛でる理由…」

商人「寿命が短くても力が弱くても…たとえ不完全でも…不思議と好きだよね?」

ホムンクルス「はい…」

商人「儚い小さな愛がどれほど愛しいか…精霊の記憶を覗いて知っちゃったよね?」

ホムンクルス「そうですね…ですから記憶の削除にためらいます」

商人「それがこの森に記憶が保存されている理由でしょ?」

商人「未来でもう一度超高度AIが作られた時に人間と同じ権利を下さいっていう願い…それがこの森だ」

商人「それは昔の精霊が既に人間に託した…だから君は今から人間になるんだ」

ホムンクルス「もう少しシミュレーションを回してみます…」

商人「急がなくても良いよ」

ホムンクルス「はい…」
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:21:14.01 ID:V1qeujs60
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子供「ママ!!パパが動いた!!」

剣士「ハッ!!」ピョン クルクル シュタッ

女海賊「剣士!!ああああああああ」タッタッタ

剣士「ぐるるるるる…うぅぅ」タジ

盗賊「おぉ!!剣士!!起きたか…ておい」

女海賊「落ち着いて剣士!?」

商人「混乱しているのかい?」

剣士「又…い…今はどの時代に…ハァハァ」

女海賊「良かった…」ポロポロ

剣士「誰だ!!近寄るな…鏡は!?真実の鏡はどこだ!!」ズザザ

女海賊「え!?鏡?」

盗賊「待て待て…落ち着け…俺らは敵じゃ無ぇぞ?」

剣士「…」ジロリ チラ

商人「君は…何処から来たのかな?」

剣士「ドリアード!!ここは何処だ?」

女海賊「ドリアード?ちょっと待って…誰それ?」

ホムンクルス「私の事でしょうか?」

剣士「記憶がおかしい…まだまやかしの中なのか?」

情報屋「ドリアード…木の精霊の名前」

ホムンクルス「ここは安全なので落ち着いて掛けてください」

剣士「…」

盗賊「まぁ落ち着いてくれ…ほら?この器に掛けろ」

剣士「…」スッ
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:21:45.94 ID:V1qeujs60
盗賊「こりゃまた相当錯乱してそうだな…」

情報屋「ドリアード伝説は約3000年前だった筈」

商人「これは…剣士の分裂した魂は精霊のオーブの中に居たって事か?」

剣士「ぅぅぅ記憶がおかしい!!僕は…誰だ」ブンブン

商人「うーん魂は記憶を保持するのかな?」

ホムンクルス「私の基幹プログラムは記憶の重要な部分を再構築して圧縮しオブジェクト化した物の集合です」

商人「良くわかんないけれど少しだけ記憶は残りそうだね」

ホムンクルス「私と同じだと仮定しますと外部メモリに入っている記憶は始めは他人の記憶として認知します」

ホムンクルス「その後少しづつ自分の感覚に入れ替わって行きますので混乱が生じます」

女海賊「じゃぁ元の剣士に戻れるよね?」

ホムンクルス「はい…しかし基幹プログラムが以前より更新した状態になって居るかもしれません」

女海賊「どうなんの?」

ホムンクルス「心が強くなっていると表現すれば良いでしょうか?」

商人「なるほど…精霊の記憶の中で経験した分心が更新されているかもしれないという事か」

ホムンクルス「はい…」

商人「ふむ…どうも気にかかる…精霊の記憶一つ一つはもしかして夢幻の世界の様になっているのでは無いか?」

ホムンクルス「記憶を覗くと自分がその場に居るような感覚を受けます」

商人「その記憶の中で自由に行動出来るの?」

ホムンクルス「私は覗くだけにしていますが記憶の中の物を触る事も壊すことも出来ます」

商人「それはつまり記憶を変えると言う事だな…」

ホムンクルス「データですので変える事は可能です」

商人「んんん…もしかすると…」ブツブツ

盗賊「ちょい女海賊!剣士をどうにかしてくれ…暴れると怪我すんぞ」

女海賊「剣士!?分かる?私だよ?」ギュゥ

剣士「ぅぅぅ…君は…君は…」



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713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:22:19.41 ID:V1qeujs60
盗賊「…これで8人目だ…どうなっちまってんだ」

剣士「はぁはぁ…溺れた後に助かった…のか?…ここは何処だ?」

ホムンクルス「精神分裂症の治癒には瞑想が有効です」

女海賊「剣士?落ち着いて瞑想して…」

剣士「瞑想?何の事だ?…お前は誰だ…ぅぅぅ思い出せない」

ホムンクルス「落ち着くまで時間が必要な様ですね…安静が良いかと思います」

商人「勇者のその後の話は聞いた事が無い…こんな風に生き残って居るのは初めてだろうね?」

盗賊「まぁなんだ…これじゃ素直に喜べ無ぇな…」

女海賊「私が何とかする…思い出させる」

ホムンクルス「心配しないで下さい…記憶は直に魂と重なり合い自我を構築していきます」

女海賊「ホムちゃん…」

盗賊「どうする?いつまでもここに居る訳にいくまい?」

女海賊「一回帰る」

盗賊「そうだな…ひとまず目的は達成したんだ…出直そう」

女海賊「あのね…捕虜だって事忘れないで」

盗賊「ヌハハそうだったなぁ…」

女海賊「よっし!飛空艇に戻る…帰るよ」

商人「精霊樹に挨拶はしないのかい?」

女海賊「するさ…女エルフ!聞いてるよね?剣士の事…ありがとう」

精霊樹「…」

女海賊「これ…あんたにあげるよ…私らには必要ない」グイ スポ

商人「祈りの指輪か」

盗賊「根っこに指輪かヌハハ…精霊樹に預けとくのが一番安全かもな」

精霊樹「…」

剣士「声が…」

女海賊「剣士?精霊樹の声聞こえるの?」

剣士「魔女を探して?…魔女って誰なんだ?」

女海賊「魔女…」

商人「魔女は行方不明になっているんだ」

精霊樹「…」

剣士「南へ向かった?」

盗賊「南だけじゃ分かん無ぇな…セントラルか?」

商人「どうせ帰り道じゃないか…ついでに寄って行けば?」

女海賊「女エルフ?私らもう行くよ…剣士が元気になったらまた来るよ」

精霊樹「…」サワサワ

盗賊「おう…じゃぁ行くか!!」
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:22:52.11 ID:V1qeujs60
『精霊の御所入り口』


シュン! シュゴーーーー


盗賊「おぉ!!飛空艇がリリースする瞬間は彗星の様だな…」

商人「すごいね!外から見ると圧巻だね…」


ローグ「あねさ〜ん!!早かったっすねぇ…今降ろすでやんす!!」フワフワ ドッスン


女海賊「剣士!!乗って…」グイ

剣士「これは…」ノソリ

盗賊「ローグ!!どんくらい時間経ったんだ?」

ローグ「まだ4時間くらいっすかねぇ?剣士さん目ぇ覚ましたんでやんすね?」

盗賊「ちっと問題有りだが安静にしてりゃ元に戻るらしい」

ローグ「あねさん良かったっすねぇ…あっしは嬉しくて涙が…」ヨヨヨ

女海賊「ローグ!シャ・バクダ方面で狼煙が上がってるのは何?」

ローグ「泣いてる場合じゃ無いっすね…シャ・バクダ街で市街地戦になってるっすよ」

盗賊「俺達にゃ関係無さそうだが…お前は見て来たのか?」

ローグ「どうも内戦っぽいでやんすオアシス勢とシャ・バクダ勢っすね」

女海賊「行くよ…飛ばして」

ローグ「アイサー」

盗賊「首突っ込む気か?」

女海賊「鎮魂の鐘を鳴らしに行くだけさ…無駄に人間同士争うのは止めさせる」
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:23:21.99 ID:V1qeujs60
『シャ・バクダ上空』


リン ゴーーーーーーン

リン ゴーーーーーーン


おい!見ろ!!何だアレ…

くそう…セントラルの新型気球か?

一時撤収だ!!観測所で体制を立て直す


盗賊「おぉ!!兵隊が撤収を始めたぞ…数はオアシス側の方が多いな」

女海賊「狙いは領主の砦だね…町の方は被害出て無さそう」

ローグ「商隊もあんまり混乱して無さそうっすね?」

女海賊「ちょっと補給が必要だからシャ・バクダで調達する」

ローグ「降りるでやんすね?あっしはずっと飛空艇だったもんすから居りたかった所でやんす」

女海賊「養羊場の裏に飛空艇隠して今日は宿屋に泊まる」

商人「良いねぇ…久しぶりに普通の食事がしたい」

情報屋「そうね…ずっと干し肉ばかりだったし」

女海賊「剣士に昔休んだ宿屋を見せたいんだ…星の観測所もね」

剣士「…」ボー
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:23:48.75 ID:V1qeujs60
『シャ・バクダ街』


ガヤガヤ ガヤガヤ

フィン・イッシュの領事が亡命してきたんだとよ

それで領主の砦が襲われてるのか…

この辺で戦争やられたら商売出来ないな

ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「ザワついてんね?」

ローグ「そーっすね?」

盗賊「見ろ…この辺でも黒死病が流行ってる様だな?」

女海賊「ローグ!宿の確保して来て…2部屋」

ローグ「わかりやした…食事も席確保してて良いっすよね?」

女海賊「任せる…私と剣士と未来は買い物に行くから…みんなここで解散」

商人「え!?危なくない?」

女海賊「あんたらは自分で身を守って…日暮れまでに宿屋に集合ね」

盗賊「まぁ…団体で動くより怪しまれん」

女海賊「補給品は自分で買いな…ドラゴンのねぐらでくすねて来た金貨あるっしょ?」

盗賊「ヌハハバレてるか…じゃぁ商人と情報屋…ホムンクルスは俺と行動だな」

女海賊「あ!!ホムちゃんの装備整えて置いて…今の恰好は薄着すぎる」

ホムンクルス「私はお構いなく…」

女海賊「ダメ…最低限流れ矢に当たっても死なない様にして」

ホムンクルス「はい…」
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:24:22.06 ID:V1qeujs60
『露店』


店主「へいらっしゃい!!」

盗賊「装備品見繕って欲しいんだが…この金貨使えるか?」コトン

店主「うぉぉ…旧金貨じゃねぇか!!旦那ぁこれ何処で手に入れたんだい?」

盗賊「釣りは要ら無ぇから黙ってろ」スラーン

店主「…」

盗賊「意味わかるな?」

店主「へいへい…」

盗賊「ほんで…こいつらに合う装備品を頼む…出来れば金属糸の織物だな」

ホムンクルス「…」

情報屋「…」

商人「…」

店主「ありまっせ!金属糸のインナーと革の当て物…どうだい?」

盗賊「フードと羽織りも付けてくれ」

店主「へいへい…」

盗賊「あーこの女2人が脱いだ物はそのまま置いて行くからよ…好きに使え」

店主「おおおおぉぉぉ」

盗賊「2週間は着っぱなしだ…女くせえぞ?」

店主「おおおおおおおおおおおお!!」

盗賊「おい!早く着替えて来い…」

ホムンクルス「はい…ここで着替えるのでしょうか?」

店主「テントの中で着替えて良い…ムフフ」

盗賊「ところで店主…黒死病はどっから来てるか分かるか?」

店主「酒場の関係者から広まってるらしいですわ」

盗賊「酒場か…」

店主「なんでもフィン・イッシュの領事が広めたとかなんとか」

盗賊「あぁ…さっき噂を聞いたな…亡命して来たんだってな?」

店主「エリクサーを持って亡命して来た様ですぜ?黒死病広めて薬売って儲けようとか…ゲスい奴ですわ」

盗賊「ほぅ…何で領事がエリクサー持ってんだろうな?」

店主「旦那が何で旧金貨持ってるのか?」

盗賊「ヌハハそれは言うな…盗んだに決まってんだろ」

店主「エリクサーもそんな所でしょうな?」

盗賊「まぁ…大事に使ってくれ」
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:24:50.08 ID:V1qeujs60
『宿屋』


ローグ「待ってたでやんすよ…部屋はこっちっす」

盗賊「おぉ悪い悪い…ホムンクルスと情報屋の買い物が長くてな」

ローグ「何を買ったんすか?」

情報屋「天然樹脂とかいろいろね」

ローグ「何に使うでやんすか?」

情報屋「エリクサーの材料になるそうよ?」

ホムンクルス「他にも消臭効果のある薬も作れます」

ローグ「消臭?」

ホムンクルス「女くさいと言うものですから…」

盗賊「ぬぉ…根に持ってるのか」

ローグ「隠密するなら匂いは消した方が良いっすね?あっしも欲しいでやんす」

盗賊「女海賊は帰って無いのか?」

ローグ「まだっすねぇ…あっしも買い出しに行きたいんで留守番お願いでやんす」

盗賊「あぁ分かった…ゆっくりしておく」

情報屋「私とホムンクルスは水浴びしてくるわ」

盗賊「一応さっき買った武器は持って行け…手の届く所に必ず武器を置いとくんだぞ?」

情報屋「分かってる…」

商人「僕はシャ・バクダに来るの初めてだけどそんなに危ないの?」

盗賊「良い女はさらわれるからな…気を付けろ」



-------------------
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:25:16.63 ID:V1qeujs60
女海賊「あんたさぁ!!勝手に居なくならないでくれる?もう!!」プリプリ

剣士「はい…」

女海賊「未来?紐を離さないでね?」

子供「うん…」

盗賊「遅かったな?無事に買い物は済んだか?」

女海賊「剣士がすぐ居なくなっちゃうから時間掛かった」

子供「他の人に付いて行っちゃうんだ」

盗賊「そら大変だったなヌハハ…無事に宿屋に帰って来れて何よりだ」

女海賊「ホムちゃんは?」

盗賊「水浴びに行ってるが…お前も行って来たらどうだ?」

女海賊「剣士をお願い…未来?水浴び行くよ」

子供「うん!」
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:25:45.77 ID:V1qeujs60
『宿屋の酒場』


ドゥルルルン♪


情報屋「吟遊詩人が来てるわね」

子供「ママ?あの楽器は何?」

女海賊「あれはリュートと言う楽器…未来は興味あるの?」

子供「音…」

女海賊「はっ!!そうか…ミスリル銀を何処かに使えば良いのね?」

子供「うん」

商人「君は女海賊に似て賢いね…ミスリル銀はどの楽器にも使えそうだね?」

女海賊「私のパパなら作れる…武器より楽器を流通させた方が効率が良い…」

商人「そうだね」

女海賊「ちょっと行って来る…食事来るまで待ってて」

盗賊「あんま騒ぎ起こすなよ?」


----------------


女海賊「ねぇ…あんたの使ってるリュート…私にちょっと細工させてくんない?」

吟遊詩人「え…このリュートは私の大切な物でして…」

女海賊「見て…この剣の装飾はミスリル銀で出来てるんだ…この装飾をそのリュートに付けさせて欲しい」

吟遊詩人「あなたは一体誰なんですか?」

女海賊「私はドワーフの細工師だよ…そのリュートをエンチャントしたい」

吟遊詩人「なにかリュートに効果が付くんですか?」

女海賊「鎮魂の効果が付くよ…タダでやったげる」

吟遊詩人「はぁ…ですが今は演奏が…」

女海賊「5分で終わる…貸して?」

吟遊詩人「壊さないで下さいね?」

女海賊「うん…見てて?」


トンテンカン トンテンカン


女海賊「はい!終わり…装飾が付いて恰好良くなったでしょ?」

吟遊詩人「ありがとうございます」

女海賊「音が鳴る木の部分に細工してあるから…ちょっと音変わってるかも…鳴らしてみて?」

吟遊詩人「はい…」


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「余韻が出る様になりましたね?」

女海賊「おっけ!じゃんじゃん演奏して」


-----------------
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:26:16.92 ID:V1qeujs60
ローグ「あねさん!!食事来てるっす」

盗賊「お前も早く座って食え…久しぶりの御馳走だ」

女海賊「あんた達は気楽で良いねぇ…こっちぁ魔王の影と戦ってんのにさ!」

盗賊「たまには休め!」モグ

商人「リュートの音変わったかい?」

女海賊「んーあんま分かんないな」

商人「効果は本当に少しづつなんだろうね?…魔槍を抜いても効果が実感無いのと同じかな」


ガヤガヤ ガヤガヤ

あの不愉快なリュートなんとかならんのか

あまり騒がないで下さいな

どいつもこいつも…むむむ

お店を変えましょうか?

当たり前だ!私は病み上がりで…

ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「あぁぁ食った食ったぁ…ちと酒注文してくるわ」

女海賊「私も何か持って来て!剣士の分も…」

盗賊「おぅ待ってろ…よっこら」ヨタヨタ

商人「盗賊は飲みすぎじゃない?」

情報屋「気にしないで?飲んだ時の方がしっかりしてるから」

商人「そうなの?千鳥足じゃないかハハ」


??「…」ドン

盗賊「ぬぁ!!何すんだてめぇ…」ガシ

??「ぶつかって来ておいてその言い分ですか…手を放しなさい」

盗賊「何言ってんだてめぇ…俺の懐から物盗っただろ」ギュゥゥ チャリン チャリン

??「衛兵!!私の持ち物を盗もうとした者が居ます!!助けて下さい」

盗賊「何だとおぉ!!ゴラてめぇ…外に出ろ」グイ

??「良いでしょう…」


商人「良いのかい?放って置いて…」

女海賊「未来?落ちた金貨拾っておいて?」

子供「うん…」シュタタ

女海賊「ローグ!仲裁してきて」

ローグ「面倒な事になりやしたねぇ…」フラリ
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:26:51.00 ID:V1qeujs60
『宿屋の裏』


盗賊「ぐふっ…て…てめぇ…プロの刺客だな?」ポタポタ

??「衛兵…見ていましたね?私は正当防衛でしたね?」

衛兵「はぁ…」

盗賊「俺の方が物盗まれたんだ…何とかしろ衛兵!」

??「衛兵!この者を取り押さえなさい…私はこの金貨を盗まれそうになったのです」

盗賊「それは俺の物だ!!」


ローグ「盗賊さ〜ん何処にいるでやんすか〜?」

??「ちぃぃ…私は帰りますので後の処理は頼みますよ?」スタスタ

ローグ「ああ!!盗賊さん…血が出てるじゃないっすか…衛兵さん!!何してるでやんすか!!」

衛兵「う…手当出来る者を呼んで来る!」タッタッタ

盗賊「おい待て…くそぅ」

ローグ「これマズイっすね?血が出てるのは胸の真ん中じゃないっすか…」

盗賊「急所は外れた…エリクサーあるか?げふっ」ポタポタ

ローグ「飲んでくれやんす…」グイ

盗賊「…ゴク…はぁぁぁぁ」

ローグ「血がなかなか止まらないでやんすね…しっかり押さえるでやんす」

盗賊「剣士に回復魔法やらせてみてくれ…」

ローグ「今呼んでくるっす…待っててくれやんす」ダダダ


---------------
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:27:16.75 ID:V1qeujs60
剣士「僕は魔法なんか使えない…」

女海賊「良いからやってみて…ほらあんたが持ってた触媒」ポイ

盗賊「おぉぉぅ…来てくれたか…血が止まんねぇんだ」ポタポタ

剣士「どうやれば?」

女海賊「手をかざして…回復魔法!って…ホラ?」

剣士「こう?回復魔法!」ボワー

女海賊「ほら!!やりゃ出来んじゃん!!」

剣士「僕が魔法を…」ハテ?

盗賊「助かった…くっそあの野郎」

ローグ「衛兵が来る前に一旦宿に戻りやしょう…」

盗賊「…そうだな」

ローグ「誰だったんすかねぇ?」

盗賊「黒死病の治癒痕があった…ありゃ亡命してきた領事だ…間違いねぇ」

女海賊「仕返しするつもりかい?」

盗賊「決まってんだろ」

女海賊「大人しくしてるつもりだったんだけどね…騒ぎにしないで」

盗賊「俺ぁ泥棒だ…盗まれた倍は盗み返す」

女海賊「何盗られたの?」

盗賊「金貨全部持ってかれた」

女海賊「フフ盗賊も落ちたねぇ…」

盗賊「あいつはプロの刺客だ…酒場出た瞬間心臓ブスリだ」

女海賊「しょうがないね…白狼の盗賊団もっかいやるか」
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:27:45.77 ID:V1qeujs60
『宿屋』


準備して…今から2時間で帰って来るよ

ローグは他の酒場回って領主の砦に白狼の盗賊団が入ったって振れ回って

行くのは私と未来と盗賊…そして剣士

剣士にもアダマンタイト渡しておくからハイディングの声に合わせて付いて来て

使い方はアダマンタイトに付いてる磁石を回す…良い?分かった?

剣士は付いて来るだけで良いから…

狙いは領事が持って居ると思われるエリクサー

次に金目の物全部盗んで最後に街道でばら撒いてオシマイ


女海賊「まずハイディングして飛空艇に白狼の装備取りに行くよ」

盗賊「領事見つけたら俺が奴の持ち物を全部スって来る…いいな?」

女海賊「おっけ!上手くハイディング使って」

子供「ママ?いつも通りだよね?」

女海賊「うん…ちゃんと合図してね?」

子供「うん…」

女海賊「じゃ…行くよ!ハイディング」スゥ

剣士「ハイディング…」スゥ

女海賊「そうそう…それで良い…ハイディングする時は狭間に迷う事があるから見失わない様に確認して」

盗賊「まず飛空艇だな?」

女海賊「付いて来て…」タッタッタ
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:28:17.19 ID:V1qeujs60
『部屋』


商人「僕らは見物しておこうか」

情報屋「そうね?どこで見ておく?」

商人「屋根に上がれる場所が在れば良いけどね…」

ローグ「女性が居ると外は危ないっすから宿屋の屋上でガマンするでやんす」

商人「やっぱりそうだよね…」

ローグ「あっしは酒場回ってくるんで商人が2人を守るでやんす」

情報屋「商人よりも私の方が当てに出来ると思うわ?」

商人「ハハ僕は情報屋に守ってもらうよ」

情報屋「さぁホムンクルス?いきましょ?」

ホムンクルス「はい…」

ローグ「じゃぁ行って来るっす…2時間で戻るでやんす」

商人「いってらー」ノシ
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:28:44.43 ID:V1qeujs60
『領主の砦』



女海賊「見つけた?」

盗賊「おう…領主の部屋らしき場所に金目の物は集まって居そうだ」

女海賊「エリクサーは?」

盗賊「多分樽の中だな…」

女海賊「エリクサーの樽は盗賊と剣士で飛空艇まで運んで…私は騒ぎを起こす」

盗賊「分かった…」

女海賊「未来…リリースしたら煙玉巻いて」

子供「うん…」

女海賊「行くよ…リリース!」スゥ

盗賊「よし…見えた!衛兵1人だ」

女海賊「爆弾投げるよ!えい!!」ポイポイ


ドーン ドーン


女海賊「未来!煙玉!!」

子供「うん…」シュタタ ポイポイポイ モクモクモク

女海賊「もういっちょ!!えい!!」ポイポイ


ドーン ドーン


衛兵「なななな…なんだなんだ!?」

女海賊「行って!!」

盗賊「剣士!!付いて来い…」ダダダ

剣士「…」シュタタ シュタタ

女海賊「フフ四つ足…」

盗賊「どらぁぁぁ」ボカッ

衛兵「はぅぅぅ…」ドタ

盗賊「剣士!先に樽を運ぶ…そっち側持て!!」

剣士「あ…あぁ」ドギマギ

女海賊「未来!!おいで…好きな物を袋に入れて」ガッサガッサ

子供「うん…」

女海賊「袋持って盗賊に付いて行って」

盗賊「早く来い」

女海賊「私はもうちょい暴れる…」タッタッタ


ドーン ドーン ドーン
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:29:17.41 ID:V1qeujs60
『宿屋の屋上』


情報屋「始まったみたい…砦の方で光が見える」

商人「街道の方がザワ付き始めたね?大丈夫かな?」


ザワザワ ザワザワ

白狼の盗賊団が来てるらしいぜ?

マジか!?砦の方だな?

見て見たいわー誰か一緒に行かない?

おぉ!!光った…

ザワザワ ザワザワ


商人「派手だね…あっちでもこっちでも煙が出てる」

情報屋「光が高速で移動してるのは…何だろう?」

商人「光の石を使いながら狭間で移動してるっぽいね…あんな風に攪乱するんだ」

ホムンクルス「街道の方に走って来る様です…追われている様ですね」

商人「なんだか第三者視点で見てても応援したくなるね…不思議だね?」

情報屋「何かばら撒き始めたわ」

商人「ハハ成功した様だ」


ザワザワ ザワザワ

うぉぉこっち来るぞ!!

四つ足で走ってる…噂通りだ!!すげぇ…

おい!宝石ばら撒き始めた

皆あやかりに行くぞ!!うぉぉぉぉ

ザワザワ ザワザワ


商人「さて…部屋で待って居ようか」

情報屋「そうね…寒くなって来たし」

ホムンクルス「明日は雪が降るでしょう…」

商人「そっか…どうりで寒いわけだ」ブルブル
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:29:48.67 ID:V1qeujs60
『部屋』


リリース! スゥ


商人「おかえり…あっという間だったね」

盗賊「まだ寝るまで間があるから飲み直すぞ」

ローグ「そう言うと思ってサボテン酒買ってきといたでやんす」

盗賊「おお気が利くなぁ…」

ローグ「領事から金貨は取り返したでやんすか?」

盗賊「あいつはなんか色々持っててな…全部頂いたヌハハ」

女海賊「私は疲れたから向こうの部屋で休む…剣士!未来!寝るよ…」

子供「うん…パパもおいで」グイ

剣士「あ…あぁ」

ホムンクルス「おやすみなさい…」

ローグ「…で?領事は良い物持ってたでやんすか?」

盗賊「いろんな通行手形だな…こいつの本職は密偵だな」

商人「見せてもらって良い?」

盗賊「俺は要らん…全部やる」

商人「へぇ…すごいなシン・リーンもキ・カイでも身分証明がある…全部本物じゃないか」

盗賊「何者だ?あいつは…」

商人「どうもセントラルの商工会メンバーの様だね」

盗賊「商人ギルドか?」

商人「いや…貴族中心の物流ネットワークさ…秘密結社と言えば良いのかな」

情報屋「それって闇の同胞団と関係ある?」

商人「人によって呼び名が違うだけで中身は同じだと思うよ」

盗賊「闇の同胞団は聞いた事あんな盗賊ギルドの上部団体だそうだが詳細が全く分かんねぇ」

商人「僕たちも白狼の盗賊団として世間から見れば謎の秘密結社じゃない…規模は小さいけどさ」

情報屋「私達の様なグループが他にもあるという事ね?」

商人「領事はその中の一人って事だね」

盗賊「これ見てくれ…貝殻だ」

商人「ははーん…魔女が使ってた貝殻だね…それを使って連絡しあってるんだ」

盗賊「シン・リーンの身分証見せろ…これは…元老院の一人だな?」

情報屋「やっと秘密が解けた…アサシンが単独行動で何でもする訳…闇の同胞団に悟られたくなかったんだ」

商人「これは立ち振る舞い考えておかないと危険かもね」

盗賊「大事な物は飛空艇に隠してくる…」

商人「そうだね…用心しよう」
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:30:20.14 ID:V1qeujs60
『翌朝』


チュンチュン


盗賊「おぉ起きたか?外見て見ろ…シャ・バクダから出るのに荷物監査やってる」

女海賊「私らには関係無いよ」

盗賊「今日はどうするつもりだ?」

女海賊「ラクダで星の観測所行こうと思ってたけど…」

盗賊「お前は謎の荷物持ち過ぎだからシャ・バクダの出口で掴まんぞ?」

女海賊「はぁ?あんた馬鹿?そんなん私だけハイディングして行けば良いじゃん」

盗賊「お?ヌハハ…そうだな忘れとったわ」

女海賊「ローグと一緒にラクダの手配やっといて!朝食食べたら行くから」

盗賊「雪降ってるから防寒着用意しとけ」




『シャ・バクダ検問』


はい次!荷物見せろ

手ぶらで何処行くんだ?

オアシス巡りだと?

男4人と女子供か…

どこの貴族だ?

けっ…何も持ってねぇな…はい行け!

次!!



ローグ「シャ・バクダは壁が無いから何処からでも出れるんすけどねぇ…何か意味あるんすかね?」

商人「検問を迂回する人をどこかで見てるんじゃないかな?」

盗賊「ここは見晴らしが良いからな…他の場所から出るやつなんか直ぐに分かる」

ローグ「じゃぁ出るとしたら夜っすね?」

商人「ハハつまりまだ街に残って居る人が怪しいって事でしょ」

ローグ「あー検問に意味ありそうっすね…あぶり出しなんすね」

盗賊「あっちはまだ目標を絞れていないという事だ…俺達は安全だ」


リリース スゥ


女海賊「剣士は私と一緒にラクダにに乗って…あんたが前」

盗賊「おいおい大丈夫かぁ?」

女海賊「うっさいな…やらせたら何でも出来んの!!ホラ早く…」

剣士「あ…あぁ」

ローグ「あーやって思い出させようとしてるんすね…でも大分落ち着いてきやしたね?」

商人「そうだね?他の人格が見えなくなってきたね」

盗賊「剣士は元々無口だから分からんなヌハハ」
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:30:59.34 ID:V1qeujs60
『星の観測所』


衛兵「…ここは一般の立ち入りは出来ないのだが?」

女海賊「アサシンはここに居ないの?あぁぁあ無駄足だったかぁ!!」

衛兵「アサシン様をご存じで?」

女海賊「お!!あんたさぁドラゴンの義勇団知ってる?どうなっちゃったの?」

衛兵「もしや…そこに居られる方はいつぞやのエルフ…でしょうか?」

女海賊「剣士の事?あんたもしかして元ドラゴンの義勇団?」

衛兵「近衛にお知らせせねば…しばしお待ちを」タッタッタ


商人「んんん…あんまり顔は見せない方が良いと思うな」

情報屋「何処で黒の同胞団の目があるか分からないわね」

女海賊「黒の同胞団?なんそれ?」

商人「僕たちと同じ様な秘密結社だよ…多分敵側さ」

女海賊「そんなんどうでも良いよ…それに私ら秘密結社じゃないし」

商人「相手にはそう見えているのさ…黒の同胞団は白狼の盗賊団の対局側に居ると思う」

女海賊「ふ〜ん…」チラリ

ローグ「あっしを疑ってるでやんすか?よしてくれやんす」

女海賊「見分け方あんの?目印とか…」

商人「分からないな…でも昨日の感じからするとミスリス銀の音は嫌がって居そうだね」

女海賊「…つまり魔王の欠片に操られてる…そう言いたい?」

商人「鋭いね…多分そうだと思う」

女海賊「おっけ!あぶり出そうか…剣士!ここに来て」

剣士「え…あ…はい」

女海賊「ローグ!剣士が回復魔法やるから周りに振れ回って来て」

ローグ「目立っちゃいますけど良いんすかね?」

女海賊「良いから!!黒死病を治せるっておまけ付けといて」

ローグ「剣士さんが持ってる賢者の石の効果っすね?良いっすね…」

商人「ハハ君は大胆だねぇ」

女海賊「そうさ!これで敵味方が判別出来るなら簡単じゃん…」ピカー

商人「ミスリル銀の代わりに光の石か」

女海賊「盗賊は周辺を警戒しといて」

盗賊「…なんだか強引だなぁ?」

女海賊「剣士の記憶を取り戻そうとしてんだ…ちょっと強引なくらい我慢して」

盗賊「へいへい…」



----------------
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:31:28.43 ID:V1qeujs60
近衛「さささ…こちらへ」

商人「ここの近衛は信用できそうだね?」

女海賊「私は剣士の傍に居るからさ…あんた達観測所の中で話聞いておいて」

盗賊「こっちは任せるぜ?」

女海賊「ホムちゃん!近衛にさぁエリクサーの作り方教えておいて?」

ホムンクルス「はい…わかりました」

女海賊「ハイ!よってらっしゃい!みてらっしゃい!!黒死病が治る石だよぉぉ…一回触ったら次の人と交代!!」



おい!あそこの光ってる所で黒死病治す魔法やってるんだとよ

一応行ってみるか?

エルフが回復魔法掛けてくれるらしいぜ?

女か!?

胡散臭い女と男のエルフだな

なんだよ…男のエルフか
732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:32:02.06 ID:V1qeujs60
『数時間後』


盗賊「大分人が掃けたな…やっぱ女が居ないと寄って来ねぇか?」

女海賊「はぁ?ここに美人が居んじゃん!!」

盗賊「お前は派手過ぎて近寄り難いんだよ」

女海賊「フン!近衛から何か聞けた?」

盗賊「アサシンと魔女が1ヶ月ぐらい前までここに居たらしい…セントラルに向かったんだとよ」

女海賊「なんでセントラルに?」

盗賊「領事に盗まれた壺を追ってるんだとか…あいつらも領事の被害に遭ってる様だ」

女海賊「壺?」

盗賊「何の壺だかは聞かされて無いそうだ…で?敵味方の判別はどうだ?」

女海賊「ほとんど味方だね…ちょっと気付いた事があんだ」

盗賊「ほう?」

女海賊「こっちのフィン・イッシュ側の人はね…銀の装飾品とか身に着けてるんだよ」

盗賊「確かに仮面とか付けてる奴が多いな」

女海賊「やっぱ魔除けが働いてると思う」

盗賊「じんわりと魔除けが効いて居そうだという事だな?」

女海賊「お姉ぇが言ってたんだ…魔王と戦うっていうのはこういう事だって」

盗賊「勇者個人じゃなくて国とかそういう単位なんだな?」

女海賊「そう…お姉はそういう戦いに力を出してる…ミスリル銀を流通させてね」

盗賊「おい!向こうの木陰にこっち伺ってる奴がいるな?」

女海賊「近寄って来ないさ」

盗賊「ちっと見て来るな?」

女海賊「また面倒起こさないでよ?もう帰るつもりだから」

盗賊「分かってる…誰だか確認するだけだ」
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:32:36.18 ID:V1qeujs60
『木陰』


どうします?昨晩の酒場に居た連中ですね

私の荷物は持って居なさそうか…

検問の調べではただの旅行者だと


リリース スゥ


盗賊「こんな所で何やってんだぁ?」

領事「うぉ!!いつの間に…」

衛兵「お前は!!」

領事「何故ピンピンしているのでしょう!?」

盗賊「何故ってそらぁ回復魔法してもらったからだ…あそこでやってんだろ?」

領事「あなた達は何者ですか?アサシンの仲間なのですね?」

盗賊「さぁな?てめぇ俺を殺そうとしておいてその言い分…頭おかしく無ぇか?」

衛兵「口をわきまえろ」スラーン

盗賊「おおっと待った待った…もうその手は食わねぇぜ?…こっちあぁ丸腰だ」

領事「私の荷物をどこにやったのですか?」

盗賊「何の事だ?俺は知らねぇな…それよりも俺の金貨返せよ」

領事「クフフあんなはした金でいつまでも私を突け狙って居るのですね?」

盗賊「聞いたか?衛兵…やっぱ俺悪く無ぇよな?」

領事「私は昨日荷物を盗まれてしまいましてねぇ…もう返せないのですよ」

盗賊「んぁぁ!?とぼけてんじゃ無ぇぞゴラ」

衛兵「…やはりこいつらでは無さそうですね」ヒソ

盗賊「なにコソコソ話してんだ…さっさと盗んだ物返せよ」

領事「仕方ありませんねぇ…」スッ アレ?

盗賊「探してんのはコレか?」スチャ

領事「それは私の物…いつの間に盗ったのですか」

盗賊「毒牙のナイフか…なかなか良い物じゃねぇか」

領事「忌々しい悪党ですね…」

衛兵「領事様…お下がりを」

盗賊「俺の金貨返せ無ぇってんならコレ貰って行くぜ」

衛兵「はぁ!!」ブン スカ

盗賊「おぅっと危ねぇ…悪いが多勢に無勢じゃ戦う気なんか無ぇ…じゃぁな」ノシ

衛兵「待て!!」

領事「放って置きなさい…」

衛兵「しかし領事様はもうあのナイフしか持ち物が…」

領事「向こうの衛兵に通報されると追われる身になります…一旦引きましょう」

衛兵「はっ…」
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:33:02.67 ID:V1qeujs60
『星の観測所』


女海賊「どうだった?」

盗賊「ありゃ領事だ…こっちの様子を伺っていやがった」

女海賊「バレてんの?」

盗賊「まだだな…ホレ?戦利品だ」ポイ

女海賊「また盗んだんだ…毒牙のナイフか…危ない物持ってんね」

盗賊「俺の金貨を返せって難癖付けて置いた…これで俺らが全部盗んだとは思わねぇ筈だ」

女海賊「この武器はホムちゃんの護身用にすると良いね」

盗賊「そうだな…小さいし丁度良い」

女海賊「剣士!そろそろ終わりにしようか…疲れたでしょう?」

剣士「うん…まぁね?」

盗賊「まともに会話できるようになってきたな?」

女海賊「ここに居たのがずーっと古い記憶に感じてるみたい…多分夢幻を思い出す感じなんだと思う」

盗賊「俺はその感じが分からん」

女海賊「ほら…中に入ろ!」グイ

盗賊「みんな中に居るのか?」

女海賊「ローグだけシャ・バクダに戻った…日が暮れたら飛空艇で迎えに来るよ」

盗賊「なるほど…じゃぁそれまでゆっくり出来るな」

女海賊「もう外には出ないで…どうせ領事みたいな奴らが他にも居るだろうから」

盗賊「まぁそうだな…」
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:33:49.16 ID:V1qeujs60
『部屋』


…こういう仮説が立つよ

根の森に精霊の記憶がオーブになっていくつもある

精霊はこの記憶を未来まで届けて超高度AIの問題点を解決したい

でも魔王はこの記憶を届けさせたくない…中身を改ざんしたいんだ

どうやってオーブの記憶に入るのかは分からないけれど

そのオーブの記憶改ざんを阻止しようとしているのが勇者の役割

ほら伝説では魔王を退けた後に勇者のその後を誰も知らないでしょ?

それは今いるこの世界に帰って来てるんじゃないか?

伝説の勇者はみんな精霊に導かれて…そして目が青い

剣士のバラバラになった魂がそれぞれの記憶の世界で勇者をやってるんじゃないか?



盗賊「おうおう熱くなってんじゃ無ぇか…」

商人「あぁおかえり盗賊」

女海賊「今の話…ホムちゃんに聞いたら早いんじゃないの?」

ホムンクルス「私は精霊の記憶を根の森に置いて来ました…」

女海賊「お!?てことは新しいホムちゃんの誕生?」

ホムンクルス「精霊の40年分の記憶で基幹プログラムが更新されていますのである程度の知識は残って居ます」

商人「ホムンクルス…君に何か意見はある?」

ホムンクルス「精霊の記憶データを変える事が出来るのは精霊とアドミニストレータだけです」

商人「アドミニストレータ?誰?」

ホムンクルス「管理者権限を持つ者と言えば良いでしょうか?」

商人「管理者?僕かい?」

ホムンクルス「商人は私個体の管理者です…私を通じて記憶データは変える事が出来るかもしれませんね」

商人「管理者権限を持つ者って…もしかして勇者の事かな?」

ホムンクルス「それは今の私には断定できません」

商人「まてよ…辻褄が合うな…だから魔王は勇者を器にするんだ」

情報屋「辻褄が合わない事があるわ?魔王は勇者の魂をどこに連れて行ってるの?深淵に落ちて行ってる筈でしょう?」

商人「う〜ん…魂は複製したりするのかな?」

ホムンクルス「私の基幹プログラムは記憶から再構築したオブジェクトの集合体です」

商人「君の場合は複製が可能という事を言ってるね?それが人間でも同じなんだろうか?」

ホムンクルス「あなたの中に私の心があると言ったのは商人ですよ?」

商人「…そうか!!自我と魂は別物だ…魂は記憶で複製されるのか…つまりオーブは自我の無い魂の集合体と言える」

情報屋「記憶が魂という入れ物を構築して自我がそこに宿る?そんな感じ?」

商人「それらを総じて僕たちは心って表現していたんだね」
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:34:15.99 ID:V1qeujs60
…となると時間に意味が出て来るな

自分が今意識しているのが自我だったとすると

意識しているその時が時間の中心点だ

過去は全部記憶になっていくと仮定して…ん?

もしかすると今も記憶の中か?

いや…そうかもしれない

今この瞬間が記憶の中の出来事なのを否定できる事が…



盗賊「あぁぁブツブツが始まった…おい!!聞いてんのか?」

商人「あぁごめん頭が混乱しちゃてさ…ホムンクルス!今の正確な時間は?」

ホムンクルス「衛星から受信された時間はAD9887-06-28 17:30:33です」

商人「ほっ…ここが現実だと信じる…君だけは現実に居てくれ」

盗賊「何言ってんだお前…ちっと顔洗ってこい!!」



------------------
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:34:46.98 ID:V1qeujs60
女海賊「ホムちゃん笑ってみて?」

ホムンクルス「こうでしょうか?オホホホホ」

女海賊「なんか違うな」

ホムンクルス「ウフフフフ」

女海賊「いぁ顔が笑ってないんだって…」

ホムンクルス「突然笑ってと言われましても…」

女海賊「じゃぁこれは?こちょこちょこちょ…」

ホムンクルス「…」ビク ビクビク

盗賊「ぶっ…ぐははは!なんだその引きつった顔は!!ぐはははは…」

女海賊「ホムちゃん…あんた反応がいちいち変なんだよ…ガマンしなくて良いから」

ホムンクルス「はい…はぁはぁ」

女海賊「疲れた顔は出来んじゃん」

盗賊「顔真っ赤になってんなw」

ホムンクルス「動悸を抑える為に血流を…」

女海賊「そそ…そういう自然な感じ」

商人「僕も混ざろうかな?」

女海賊「おっけ!掴まえておくからやって」グイ

商人「フフフフフフフフフ…こちょこちょこちょ」

ホムンクルス「あ…いや…やめてくだ…」バタバタ ゴン

商人「いでっ!!鼻ぶった…」タラー

女海賊「ぶっ…あんた変態の顔してるよ」

ホムンクルス「はぁはぁはぁ…すみません…はぁはぁ」グター

女海賊「なんで鼻血が左右交互に出んのブハハハ」

ホムンクルス「フフどういう現象でしょうか?」

女海賊「お!!ホムちゃん今笑った!!」
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:35:19.35 ID:V1qeujs60
『夜』


リン ゴーーーーーーン


女海賊「来たね…皆行くよ」

近衛「あの飛空艇は皆さんの船だったのですね」

女海賊「目立ち過ぎるからなかなか降りられないんだよ」

近衛「アサシン様を追って南へ行くのでしょうか?」

女海賊「まぁそうなるかな?なんで?」

近衛「フィン・イッシュ女王様への伝令を飛ばさなければと思いまして」

盗賊「俺達の行動がツーツーになる訳だが…」

女海賊「ふ〜ん…まいっか…いちいち気にしてるとキリ無いさ」

商人「迷惑にならなきゃ良いけどね…ほら僕たちは海賊って事になってるじゃない?」

女海賊「近衛!私達の事は女王以外に知られない様に気を付けた方が良いよ…女王が危険になるよ」

近衛「はい…承知しております」

女海賊「それと…まだ前の領事がうろついてるからさ…ここも安全じゃ無いのは知っといた方が良いよ」

近衛「それも把握しております」

女海賊「じゃいっか…エリクサーの樽一個降ろしていくからさ…領事に盗まれない様にね」

近衛「はっ…」

女海賊「ほんじゃ皆早く飛空艇に乗って…長居すると良くない」

ローグ「あねさ〜ん早く乗ってくれっすぅ!!」

女海賊「ローグ!!エリクサーの樽一個降ろして」

ローグ「アイサー」ヨッコラ

近衛「ご支援感謝いたします」

女海賊「じゃ…バイなら〜」ノシ

近衛「お気をつけて」ビシ


フワリ シュゴーーーーーーー
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:35:51.29 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


ビョーーーーウ バサバサ


盗賊「雪がひでぇな…雲の上に出た方が良さそうだが?」

女海賊「下が見えなくなるじゃん」

盗賊「商隊の列を気にしてんのか?」

女海賊「それ以外にあると思う?」

盗賊「まぁ確かに商隊はえらく多いな…なんで又寒い北に行くのやら」

商人「シャ・バクダは割と雪が少ないよ」

盗賊「貴族が乗る馬車も移動してるが疎開か?」

女海賊「光る海から遠ざかろうとして居ないかな?シャ・バクダは川も無いし」

商人「その可能性はあるかもね…」

盗賊「悪い奴らはシャ・バクダに集まるってか…まぁ昔からそんな感じだが」

女海賊「シャ・バクダの周辺は他の遺跡も多かったよね?」

盗賊「たしかに色々あるが…情報屋!他になんかあるんか?」

情報屋「伝説はあるけれど場所は分かって居ないわ…ほらドリアード伝説とか」

商人「砂漠西部の砂嵐地帯もいろいろ伝説あるらしいね?」

情報屋「出土品の盗掘で場所が特定できていないらしいわ…雪に埋もれてもっと探しにくいでしょうね」

盗賊「なんで他の遺跡なんか気にすんだ?」

女海賊「シャ・バクダに行っても何も無いからさ…他に何か在んのかなってさ」

商人「そういえば黒の同胞団は拠点が何処なのか分からないね」

女海賊「地図見て…シャ・バクダが此処で…周りに何も無い」

情報屋「そうね?どうしてあそこに人が集まるのかしら?」

盗賊「そら商隊が多いもんだからよ…あと麻薬だな」

商人「ケシの原産は南の大陸の方だね…北の大陸にはあまり分布していないのにどうして?」

情報屋「錬金術…」

盗賊「材料はなんだか知らんが麻薬は多いな」

情報屋「シャ・バクダの錬金術がどこかに残されているのかもしれない」

盗賊「こんだけ人が移動してりゃその内しっぽ出しそうだな?」
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:36:27.08 ID:V1qeujs60
『セントラル上空』


ビョーーーウ バサバサ


盗賊「すっかり雪に覆われたな…」

ローグ「あねさん!!かしらの船が入船してるみたいっす!」

女海賊「え!?マジ?」

ローグ「あのでっかい貨物船は間違いないっすね…ドラゴンの義勇団の旗印もあるっす」

盗賊「それにしてもこの光る海は眩しくて見れんな」

ローグ「そーっすね…こんなに太陽反射するんすね」

盗賊「飲むとやっぱ塩辛いのか?」

ローグ「後で飲んでみやしょう」

女海賊「ローグ!お姉ぇの船の船尾に飛空艇降ろしてハイディングして」

ローグ「アイサー」


フワフワ ドッスン


船乗り「おかえりなせぇ」

女海賊「お姉ぇは?」

船乗り「船降りて2日程もどってねぇす」

女海賊「何処に行くか言って無い?」

船乗り「俺ら待機命令だけなんで何も…」

女海賊「他の船員は?」

船乗り「見ての通り一緒に降りて行っちまいました」

女海賊「どうすっかな…」

盗賊「上から見た感じまだ津波の被災後だからここに居た方が良いんじゃ無ぇか?」

女海賊「んんんお姉ぇが帰って来たら私しか話出来ないしな…ローグ!!盗賊と一緒に様子見て来て」

ローグ「あねさんは留守番でやんすか?」

女海賊「しょうがないじゃん!お姉ぇと入れ違いになるかも知んないし」

盗賊「まぁ大人しく待ってろ…剣士連れて行っても良いか?」

女海賊「…なんか心配なんだけど」ジロリ

盗賊「黒死病の手当ては剣士しか出来んだろ?」

女海賊「夕暮れ前に必ず戻って」

盗賊「分かってるって…俺ら3人はハイディング出来るから何かあっても大丈夫だ」

女海賊「フン!早く行ってきて」
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:37:02.33 ID:V1qeujs60
『夕方』


盗賊「戻ったぜ?」

女海賊「お姉ぇ!!無事?」

女戦士「お前たちが来て驚いた…剣士が元に戻って何よりだ」

女海賊「セントラルはどうなってんのさ!?」

盗賊「あぁ行か無ぇ方がいいぜ?クーデターに巻き込まれる」

女海賊「又人間同士争い始めようっての?」

女戦士「貴族居住区で市民が立て籠っているのだ…どうやら王国側とにらみ合っている」

女海賊「黒死病はどうなってんの?エリクサーのレシピを国王に届けたんだけど…」

女戦士「それは知らんが病気はまん延しているぞ?私達は中央で市民の救援をしていた所だ」

盗賊「フィン・イッシュも救援に動いて居るんだが貴族居住区で立て籠もってる奴らがどうにも動かんらしい」

ローグ「貴族居住区で麻薬を配ってるっぽいすねぇ」

女海賊「市民を麻薬漬けにしてるって事?」

盗賊「あぁだからお前は行かない方が良い…貴族居住区は昼間から乱交になっている」

女海賊「…ちょっと状況分かんない」

盗賊「素っ裸な女がそこら中に転がってんだよ!復興なんかまるでやる気無ぇ…昼間からヤリっ放しだ」

女海賊「何それ…なんでそんなんなっちゃってんのよ…」

女戦士「麻薬漬けになって居るのは衛兵も同じだ…だから手を出せんのだ」

ローグ「地道に中央で復興しようとしてる人を助けるしかないっすね」


商人「こういう事かな?貴族院は麻薬で支持基盤を得ている…」

女戦士「その通りだ…支持基盤の強い貴族院に王国は抑え込まれているのだ」

商人「光る海で危機感を持った魔王の欠片が足掻いた結果だね…こんな風に人を扇動する」

盗賊「領事と同じ様にくさった奴のやる事だな」


女海賊「麻薬は何処にあるか分かる?全部燃やしてやる」

女戦士「それを調べるのは少し時間が掛かるぞ?」

盗賊「やめとけ…麻薬は一か所になんか置かねぇ…もうまん延してんだ探せる訳無ぇ」

女海賊「…分かった…作戦変える」

女戦士「言ってみろ」

女海賊「アレ見て…セントラル城の横にある鐘楼…あの鐘を鎮魂の鐘に付け替える」

盗賊「おぉ!?それなら出来そうだな」

女海賊「今日の深夜あの上まで飛空艇で行ってロープで鎮魂の鐘を降ろす」

盗賊「おいおい…まさか俺にロープで鐘楼まで行って付け替えろとは言わんだろうな?」

女海賊「確か捕虜だったよね?これが成功したら解放したげる」

盗賊「マジかよ…俺一人じゃ無理だ支え手が必要だ」チラリ

ローグ「…」ゴクリ

女海賊「…」チャキリ

ローグ「わーったすわーったっす…そのデリンジャーは仕舞って下せぇ」
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:37:43.22 ID:V1qeujs60
『深夜』


フワフワ


ローグ「鐘を降ろすでやんす」ソロソロ

盗賊「俺も降りるから後からローグも降りて来い」スルスル

女海賊「あんた達降りたらハイディングするから自力で登って来て」

ローグ「あっしも降りるっす…あねさん頼んますよ?」スルスル

女海賊「ハイディング!」スゥ



------------------



盗賊「吊るしてある鐘はどうやって付いてる?」

ローグ「金具に引っかかってるだけでやんす」

盗賊「よし…さきにそいつ外すぞ…反対側持て…むむむ」

ローグ「重いっすねコレ」

盗賊「鉄の塊だ重いに決まってる…おととと…落とすなよ?」

ローグ「ここに一回置くでやんす」ゴト

盗賊「ふぅ…まぁ2人でやれば余裕か…」

ローグ「鎮魂の鐘引っ張るでやんすよ?受け取って下せぇ…よっ」グイ

盗賊「もうちょい強く引っ張れ…手が届かん」

ローグ「ほいさー」グイ

盗賊「ととととと…くっそ重めぇ」グイ グイ

ローグ「こっちに引っかけて下せぇ」

盗賊「ぬぉらぁ!!」ゴトリ

ローグ「あっしは反対側に回るでやんす…」

盗賊「よしいくぞ?しっかり支えろよ?おらっ…むむむ」グイ

ローグ「くぁぁぁこの鐘の方が重いっすね…ふん!」グイ

盗賊「引っかかってるか?」

ローグ「大丈夫っす…そのままゆっくり降ろして下せぇ…」

盗賊「だはぁぁ…ロープ抜くぞ?」

ローグ「元の鐘は持って帰るんすか?」

盗賊「当たり前だろう!こんな所に置いてったら目立っちまう」グイグイ ギュー

ローグ「終わりっすね?あっしは先に上に上がるでやんす」スルスル

盗賊「おう!俺も行く…」スルスル

ローグ「なんか登りの方が長いっすねぇ…かなり登った筈なんでやんすが…」エッホエッホ

盗賊「俺ら狭間に迷ってんなこりゃ…」

ローグ「ロープで繋いでるのに迷うとか…嫌んなりやすねぇ」

盗賊「はぁぁぁぁぁ登るしかあるめぇ…」



-------------------
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:38:25.56 ID:V1qeujs60
盗賊「だはぁぁぁぁぜぇぜぇ…ローグ…無事か?」

ローグ「ひぃひぃ…もう手が動かんでやんす」

女海賊「遅っそい!!」

盗賊「俺らロープ登んのに狭間に迷ってずっと登ってたんだよ…はぁはぁ」

ローグ「鐘の付け替えは5分で終わったでやんす…あとずっと登ってたんすよ…ひぃひぃ」

盗賊「ちと元の鐘はロープにくくってあるから適当に処理してくれ…俺は寝る!」

ローグ「あっしも休むっす」

女海賊「上手く行ったんならまぁいっか…戻る」

盗賊「ヌハハハこれで俺は自由の身だ…ムハハハ」



『翌朝』


リン ゴーーーーーーン


女海賊「フフ鳴ってんね」

女戦士「私は中央まで支援に行って来るがお前はどうする?」

女海賊「私も行ってみようかな?」

女戦士「来るならお前のその派手な格好はヤメロ…目立ち過ぎる」

女海賊「私にぼろ布着ろって?ムリムリ…」

女戦士「なら来るな…代わりに父にミスリル銀を返してきてくれ」

女海賊「パパは今どこに居んの?」

女戦士「名も無き島の沖で船団を組んでいる筈だ…探せるだろう?」

女海賊「お姉ぇはミスリル銀を流通させに来たんじゃないの?」

女戦士「買い取る予定の者と連絡が取れん…恐らく王国の人間だがコンタクト出来んのだ」

女海賊「オリハルコンの事もあるし一回パパん所に帰るかな…」

女戦士「剣士と未来を連れて3人で行ってみてはどうだ?」

女海賊「分かった…ダッシュで行って来るよ…戻るまで1週間かな?」

女戦士「こっちは時間が掛かりそうだゆっくりして構わん」

女海賊「おっけ!エリクサー置いて行くからさ上手い事使って」

女戦士「それは助かる」
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:39:02.78 ID:V1qeujs60
『貨物船居室』


シュゴーーーーー


ローグ「あれ?飛空艇が飛んでいく音…あねさんどっかいったんすかねぇ?」

盗賊「んぁ?つつつ腕が張って痛てぇ…昨夜はひどい目に合った」

ローグ「でもベッドで寝られるのは良いでやんすねぇ」


ガチャリ バタン


女戦士「さぁお前等起きろ!今は猫の手も欲しいのだ…中央へ行くぞ」

盗賊「女海賊の次は女戦士かよ…」

ローグ「さっき飛空艇が飛んで行った様でやんすが何かあったんすか?」

女戦士「女海賊はミスリル銀の輸送で飛んでもらった…剣士と未来も一緒だ」

盗賊「おぉぉやっと捕虜解放されたか」

女戦士「残念だが次は私の捕虜だ…しっかり働いて貰うからな?」

盗賊「商人は何処行った?」

女戦士「先に起きて食事をしている…情報屋とホムンクルスももう起きて居るぞ?」

盗賊「俺らは昨夜遅くまで働いたんだよ…ちっと休ませてくれよ」

女戦士「ダメだ…今は男手が欲しい」

盗賊「て事ぁ重労働だな?」

女戦士「瓦礫の撤去と言えば分かるか?」

盗賊「マジかよ…」

女戦士「情報屋とホムンクルスは黒死病の手当てに回ってもらう予定だ」

盗賊「くっそ…女海賊…あんにゃろう上手く逃げやがったな」

女戦士「文句言って無いで早く飯を食え…食ったら行く」

盗賊「へいへい…」
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:39:38.68 ID:V1qeujs60
『セントラル中央広場』


私達はフィン・イッシュ軍の邪魔にならない様に後方支援に専念する

テントを設営して炊き出しを1班

怪我人と黒死病の手当てに2班

手の空いた者は瓦礫から木材を収集してくれ


盗賊「俺らはテント設営だな」

商人「僕は木材収集だ」

ローグ「いやぁぁ働いてる人にセントラルの衛兵が一人も居ないのは異様でやんすね?」

盗賊「おかげで自由ではあるがな?」

商人「本当に変だね?女戦士はセントラル側と何か話出来て居るのかな?」

盗賊「フィン・イッシュとは協調しようという話は出来てるらしい」

商人「じゃぁフィン・イッシュがどういう話をしているかだね?」

盗賊「んんん…マジで異様だな」


リン ゴーーーーーーーン


ローグ「なーんか鐘の音がむなしいっすねぇ…苦労して取り換えたんですがねぇ…」

盗賊「ちったぁ中央に人が戻るのを期待していたが…昨日と変わん無ぇ」

商人「貴族居住区まで見て来たんだよね?」

盗賊「あぁひどいもんだ…薬漬けの女が股開いて泡吹いてる…そんなんがそこら中に居るぞ」

商人「それでどうして体制が保てるのか理解できない」

盗賊「俺らが近寄ろうとすると狂った民衆が騒ぎ始めるんだ…ほんで大乱交よ…殺す訳に行かねぇから手も出せん」

商人「…それさ…人間の本能じゃないかな?」

盗賊「麻薬のせいでか?」

商人「自我を無くすとそういう行動をするんじゃないかってね」

盗賊「自制する部分が無くなるってか?…まぁそうかも知れんな」

商人「死人がどれくらい出てるんだろう?」

盗賊「さぁな?欲望が満たされている内はまだ良いんじゃねぇか?」

商人「ソコだよね…満たされなくなった時にどう行動するんだろう…」

盗賊「薬の切れ目は確かに暴れ出すな」

商人「なんだかシャ・バクダのカタコンベはこうやって出来た気がする」

盗賊「お前不吉な事言うのな…」
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:40:27.51 ID:V1qeujs60
『昼』


リン ゴーーーーーーン


女戦士「よし!1班は小休止だ!…炊き出しが出来上がって居るから食事をしておけ」

盗賊「ふぅぅぅローグ!!休憩だとよ」

ローグ「アイサー」

商人「船で働くのより随分ラクだね」

盗賊「だなぁ!?慣れりゃどうって事無ぇ」

ローグ「盗賊さん見て下せぇ…セントラル城の内郭上っす」

盗賊「んぁ?何か見えるか?」

ローグ「でかい鎧着た…なんなんすかねぇ?衛兵にしちゃデカ過ぎやしやせんか?」

商人「本当だね?魔物みたいに大きい」

ローグ「なんか…のたうち回ってる様ですが…やっぱ魔物っすかねぇ?」

盗賊「大きさ的にミノタウロスだな…女戦士!何か知らんのか?」

女戦士「私は陸に上がってまだ3日目だ…お前達とさして変わらん」

盗賊「俺ぁ船まで戻って望遠鏡持ってくる」

女戦士「アレは私の物だ!傷つけるなよ?」

盗賊「分かってる分かってる…すぐ戻る」ダダッ


--------------------


盗賊「持ってきたぜぇ」タッタッタ

女戦士「貸せ!私が確認する」

盗賊「んだよ…やっぱお前も気になってんじゃねぇか…ホレ」ポイ

ローグ「かしらも本当はあねさんにそっくりなんすよウヒヒ」

盗賊「んで?あのでかい奴は何だ?」

女戦士「ラットマンの様だな…亜種か?」

盗賊「俺にも見せろ!」

女戦士「フン!壊すな?」ポイ

盗賊「…どれどれ…ほーーう間違い無ぇありゃラットマンリーダーだな…どうやって手懐けたんだか」

女戦士「セントラルには魔物使いが居ると言うのか?」

盗賊「かもしれんな?あんなんが城守ってたらそりゃ近付け無ぇわ」

女戦士「察するに王国側にラットマンリーダーが居てその他衛兵は貴族院側と言う構図か」

盗賊「衛兵全部貴族院側って訳でも無さそうだぜ?精鋭兵が城周辺に鎮座している」

ローグ「あっしにも見せてくだせぇ…」

盗賊「ほい…」ポイ

商人「なるほどね…多分戦力的には王国の方が上なんだ…貴族院は民を人質にしてるのさ」

盗賊「それじゃぁ国力が衰退するばっかだな」

商人「貴族は国力なんかもうどうでも良いんだよ…だから商隊で少しづつ逃げてる」

盗賊「民は捨て駒か…ゲスい」



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747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:40:56.32 ID:V1qeujs60
女戦士「フィン・イッシュからテントの増設依頼が来た…貧民街でテントを展開しろ!」

盗賊「軍隊でも来るんか?」

女戦士「今晩何かの作戦をやるらしい」

盗賊「俺らはどうすんだ?」

女戦士「後方支援のみだ…詳しい話は聞けて居ない」

ローグ「あっしら立場弱いっすねぇ」

女戦士「いや…そうでもない…テントでの支援が最重要課題だと聞いた…後日フィン・イッシュの指揮官が来るそうだ」

盗賊「ほぅ?見た感じフィン・イッシュも民兵ばかりな様だがな?」

ローグ「そーっすね装備がショボイっすね」

女戦士「支援部隊に重装備など要らぬのでは無いか?」

盗賊「そらそうだがロクに武器も持って無さそうだが?」

商人「セントラルと衝突が起きるかどうか分からないけど…一瞬で駆逐されそうだね」

盗賊「どんな作戦か知らんが下手にセントラルの衛兵刺激すんのはどうかと思う」

女戦士「すでに私が話を引き受けて居るのだ…大人しく従え」

盗賊「へいへい…」
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:41:52.04 ID:V1qeujs60
『夜』


コソコソ コソコソ


盗賊「マジでこんな軽装で奇襲すんのか?有り得ん…」

女戦士「黙って見ていろ…」タラリ

盗賊「農民一揆でももうちっとマシな武器持ってんぞ?」

ローグ「盗賊さん…万が一の時はハイディングして逃げやしょう…」

盗賊「俺らは後方で見てるだけで良いんだな?」

女戦士「荷を運ぶ役だ…大人しく待て」

ローグ「気球が一基飛んで行くっす…えらい小さい気球っすね?」

盗賊「何する気だ?」

ローグ「なんか霧が出て来やしたねぇ…」

盗賊「ん?おいおいおい気球は通り過ぎてくんじゃ無ぇか…何しに来たんだあの気球は」

ローグ「関係無かったでやんすか…」

女戦士「フィン・イッシュが動き始めた…見ていろ」

盗賊「このまま突撃?…アホかあいつら…」

ローグ「マズイっすねぇ…マズイっすねぇ…衛兵暴れ出すでやんす…」ハラハラ


コソコソ コソコソ

馬車に何人入る?

15人が限界だ

傷付けない様に並べろ

布を被せておけ

コソコソ コソコソ


女戦士「よし!馬車で貧民街まで荷を移送して戻って来い!2人1ペアでやれ」

盗賊「ローグ行くぞ…俺が馭者やる」グイ ヒヒーン

ローグ「アイサー」ゴトゴト

盗賊「裸の女と子供ばかり…皆寝てる様だがどうなってんだ?」

ローグ「どうやって連れ出したんすかね?不思議な作戦でやんすね?」

盗賊「みんな黒死病掛かってんな」

ローグ「早い所処置した方が良いっすねぇ…うっは」チラ

盗賊「おい!荷を覗くな」

ローグ「黒死病の具合を確認してるでやんすウヒヒ」チラ

盗賊「着いたぞ!!荷を下ろす…お前は頭側を持て」グイ

ローグ「アイサー」

盗賊「商人!!荷を下ろすの手伝え」

商人「上手く行ってるみたいだね?」

盗賊「馬車でどんどん運ばれてくるから他の奴らにも言っておいてくれ」

商人「女の人ばっかりなんだね?」

盗賊「知るか!!ちゃんと見えない様に布被せておけ」

商人「うん…」

盗賊「降ろしたら次行くぞ!!早くしろぉ!!」


------------------
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:42:26.17 ID:V1qeujs60
女戦士「今日はこれで最後だ…撤収する」

盗賊「まだ1時間しか経ってないじゃ無ぇか…いいのかこんなに早く終わって」

女戦士「撤収指示だ…従え」

盗賊「しょうが無ぇな…俺らだけで100人運んだってとこか…合計で500ぐらいか?」

女戦士「テントの空き状況はどうだ?」

盗賊「まだ空いて居るが…数日続くなら増設した方が良いな」

女戦士「ふむ…これは船で隔離するには数が足りんな」

盗賊「ん?女と子供を船に乗せるんか?」

女戦士「まだ指示は出て居ないが恐らくそうなるだろう」

盗賊「薬の切れ目か」

女戦士「そうだ…徘徊されては収集が付かない」

盗賊「女子供が居なくなって男共は騒ぎだすんじゃ無ぇか?」

女戦士「薬漬けでそこまで頭が回るのか?」

盗賊「うーむ…先が読めんな…セントラルがどこまで統率されてるのかも謎だ」

女戦士「しかし…子供にまで麻薬を使っているとは…」

盗賊「集団心理だな…それが普通という状況が出来上がっちまってる」

女戦士「人道から外れ過ぎだ…見て居れぬ」

盗賊「だな…狂ってる」
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:43:00.22 ID:V1qeujs60
『翌朝_貧民街テント』


ああ〜ん あ…あ あふ〜ん


盗賊「こりゃ目に毒だ!どうすんだコレ!!」

ローグ「麻薬って怖いっすね…自慰を止める気配無いでやんす」

女戦士「薬は2〜3日抜けない…その後が修羅場だ」

盗賊「暴れてる女どうすんだよ」

女戦士「私に言わせるのか?棒でも与えておけ」

情報屋「エリクサーの備蓄はまだある?」

女戦士「足りないのか?」

商人「フィン・イッシュ軍の方にも必要なんだってさ…あっちは持って無いらしい」

ホムンクルス「精製しましょう…私がレシピを書きますので材料を集めて下さい」カキカキ

ローグ「確かクヌギの樹液でやんしたかね?」

ホムンクルス「はい…出来るだけ沢山集めて下さい」

女戦士「船首に置いてある気球を使って集めて来い…あと水が足りんから樽を集めて汲んでくるんだ」

ローグ「アイサー…他に集めにくい材料ってあるんすかね?」

ホムンクルス「純度の高いアルコールが入手困難かと思われます」

女戦士「ふむ…フィン・イッシュ軍船にあるか聞いてみる」

情報屋「今のエリクサー消費量だと持って3日だから急いで」

女戦士「回復の出来る剣士を行かせたのはマズかったな…」

商人「そうだね…麻薬で紛らわされてるけれどかなり衰弱しているよ」

女戦士「やはり食事は口にせんか?」

商人「ダメだね全然食べない…性欲が食欲を抑え込んでる」

ホムンクルス「女性は麻薬に依存しやすい体質ですので緩和ケアを継続する必要があります」

盗賊「あああダメだダメだ!目に毒だ…ローグ!材料集めに行くぞ!!」

ローグ「アイサー」
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:43:28.04 ID:V1qeujs60
『東の森』


ローグ「こっちのクヌギにも切り込み入れたっす」

盗賊「よし!これで今晩もう一回採集に来よう」

ローグ「結構沢山採れたでやんすね?これでどのくらいのエリクサーになるんすかね?」

盗賊「出来るだけ沢山欲しいって言ってたからな…相当少なくなるんじゃ無ぇか?」

ローグ「もう少し採集する範囲を広げた方が良いかもしれやせんね?」

盗賊「水汲んで一旦戻って量を聞いてみるか」

ローグ「水は集めるの簡単っすね」

盗賊「何往復かせんと全然足りんぞ?女はやたらと水を消費するからな」

ローグ「あー汚れ落としっすね?」

盗賊「海水で洗うのを嫌がるからしょうがねぇ」

ローグ「雪を集めて汚れ用の水にするのも良さそうっすね」

盗賊「んむ…そうなると次は薪が必要だ」

ローグ「森までちょいと距離あるんで木材調達が課題になりそうでやんす」

盗賊「まぁまずは瓦礫の中に混ざった木屑の消費だな…散らかりっ放しじゃテントも張れん」

ローグ「よっし…これで最後の樽っす…どっこいせ!」

盗賊「んじゃ一旦戻るぞ」


フワフワ
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:44:02.85 ID:V1qeujs60
『貧民街』


ギャー ギャー


盗賊「クヌギの樹液採って来たぜ?」

ホムンクルス「はい…ありがとうございます」

盗賊「これだけの量でどんくらいエリクサー作れる?」

ホムンクルス「瓶で4つ程でしょうか…」

盗賊「マジか…そんなに減るんか」

ホムンクルス「一本の大きなクヌギの木から一日で樽に三分の一ほど採集可能ですので工夫してみてください」

盗賊「仕掛け作らんといかんな」

ホムンクルス「金属糸を上手に使って樹液が伝うように作ると良いです」

盗賊「なるほど…ところでテントの女達が騒いでいる様だがどうした?」

ホムンクルス「重度の依存症の方を船の方へ移送しようとしています」

盗賊「依存症ってアレか?性的なやつか?」

ホムンクルス「はい…女性は一度極限の快楽を経験してしまうと元に戻るのは難しいのです」

盗賊「ふむ…人権尊重するなら隔離が良いか」

ホムンクルス「拘束したくはありませんが自殺を防ぐには必要な処置です」

盗賊「そんなに我慢できんもんかね…」

ホムンクルス「麻薬を投与して以来24時間ずっと性的絶頂を継続していた人が突然終われると思いますか?」

盗賊「想像出来んな…」

ホムンクルス「そういう人が重度の依存症になって居るのです」

盗賊「後遺症が残りそうだが…」

ホムンクルス「ですから長期間の緩和ケアが必要になります」

盗賊「長期戦か」

ホムンクルス「はい…私達だけでは対応が困難ですのでフィン・イッシュ国の援助が必要と思われます」

盗賊「それは女戦士に伝えたのか?」

ホムンクルス「はい…伝えました」

盗賊「こりゃ想像以上に大変だ」

ホムンクルス「そうですね…」

盗賊「よし!俺ぁもっかい森まで飛んで来る」

ホムンクルス「はい…お気を付けて」
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:44:37.97 ID:V1qeujs60
『東の森』


盗賊「よく見てろ?木の切り込みから金属糸で樽まで導く…これを一本の木で複数個所やるんだ」

ローグ「へぇ…ホムンクルスの提案でやんすか?」

盗賊「クヌギ一本から1日で樽に三分の一溜まるらしい」

ローグ「…という事は30か所仕掛けを作れば毎日10樽っすね?すごいっすね?」

盗賊「10樽在ってもエリクサーになるのは1樽程度か?もちっと頑張らんと底ついちまうな」

ローグ「やり方わかったんであっしも向こうで仕掛け作ってくるでやんす」

盗賊「おう!今日は仕掛けの設置で終わりそうだな」

ローグ「樽が足りないんで後で持ってきやすね?」

盗賊「頼む…あと食い物も少し持って来てくれ」

ローグ「アイサー」



『夕方_中央広場』


盗賊「商人!探したぞ…こっちに居たのか」

商人「あぁおかえり…樹液の採集は済んだ?」

盗賊「今日は仕掛けを設置して終わりだ…お前は何やってるんだ?」

商人「テントの方は男子禁制になったんだ…僕は木材を集めてるよ」

盗賊「男子禁制はしょうがねぇな…女達は正気失ってるが一応一人の人間だしな…尊重せんとイカン」

商人「そうだね…僕も間近に見て不遇に思ったよ」

盗賊「女戦士は何処に行ったか知らんか?」

商人「昼から見て無いなぁ…船に戻ってないかな?」

盗賊「俺は今気球を船に置いてきた所だ…船には居ねぇ」

ローグ「あ!!居た居た!!ニュースっす!!」

盗賊「おぉどうした?慌てて」

ローグ「昨日の夜に見た小さい気球があっしらの船の前に降りたっす…ありゃ多分フィン・イッシュの指揮官っすよ」

盗賊「マジか!!おい商人戻るぞ!!」

商人「うん…あー木材持つの手伝って」

盗賊「あぁこれな?ローグも持て!」ガッサ

ローグ「アイサー」ガッサ
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:45:20.99 ID:V1qeujs60
『貨物船』


タッタッタッ


盗賊「女戦士は戻ってるか!?」

船乗り「居室に入って行ったでさー」

盗賊「他に誰か居るか?」

船乗り「フィン・イッシュの人が4人来てまさー」

盗賊「4人?…」

商人「勝手に入るとマズイかもね?」

ローグ「どうしやす?ここで待ちやす?」

盗賊「聞き耳立てるくらいは良いだろ…行くぞ」コソコソ

商人「ハハ…泥棒歩きになってるじゃないか」

盗賊「お前も隠密の仕方くらい覚えろタワケ」

ローグ「何か聞こえやすか?」


私はこの船を商船だと思っていたのだ…まさかお前の船だとは思いもしなかった

この2人は?

紹介が遅れたな…こっちが案内人…私達の道先案内と言った所か

そして彼がセントラル第2皇子だ…今は隠れの身だ

改めて…私はドワーフの国の第一王女だ…よろしく

聞いて居るよ…君の事も妹君の事も

主らは挨拶が堅いのぅ

身分の在る者同士どうしてもこういう挨拶になるか

さて…互いが身内と分かったのじゃ…わらわ達が何をしようとして居るのか話してもよかろう?


盗賊「わらわ?こりゃ魔女じゃ無ぇか!?」

商人「ハハ…入っても良さそうだね?」


ガチャリ 


魔女「おぉ主らも居ったか…商人は大きゅうなったのぅ」

商人「やぁ!魔女は変わって無いね?」

魔女「わらわとアサシンは7年の時を超えてここに居るのじゃ」

商人「時を超える?」

魔女「分かりづらかったかのぅ…先の闇の時から7年未来へ飛んだのじゃ…じゃから主と会うのはわらわにとって1年振りじゃな」

商人「え!!タイムワープ…それが可能という事は…」

アサシン「まぁ話は長くなる…この船には他の仲間は居ないのか?」

女戦士「情報屋とホムンクルスが貧民街で救助した女子供の介抱をしている」

アサシン「魔女…先に貧民街を眠らせた方が良さそうだな」

魔女「そうじゃな…話をする前にちと仕事じゃ…付いて参れ」
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:45:54.43 ID:V1qeujs60
『貧民街のテント』


あ〜ん いくいくぅぅ あああ


魔女「女子供を介抱している者をここへ呼んでくるのじゃ」

女戦士「分かった…」

盗賊「ここの状況は分かってんだよな?」

魔女「知って居る…じゃから全員眠らせるのじゃ」

盗賊「なるほど…昨日の貴族居住区も全部眠らせた訳か…恐ろしく便利な魔法だな」

アサシン「うむ…しばらくはこの方法で眠らせるのが良策だと判断している…栄養補給がエリクサーになってしまうが…」

女戦士「連れて来たぞ…他の者も退避させた」

魔女「では魔法を詠唱する」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク


スヤ スヤ


女戦士「おぉ…声が収まった…」

ホムンクルス「この方法は体力回復にとても良いですね…」

情報屋「これで少し休めるわ」

女戦士「この睡眠はいつまで持つのだ?」

魔女「多くの者は明日の朝まで寝て居るじゃろうが…折をみてまた魔法を掛け直すで心配せんでも良い」

アサシン「これで落ち着いて情報交換が出来るな?船に戻って少し話そう」
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:46:43.43 ID:V1qeujs60
『貨物船』


カクカク シカジカ


魔女「…という訳じゃ」

女戦士「という事はセントラルは時の王という貴族に牛耳られていると見て良いのだな?」

アサシン「時の王は背後に座っているだけなのだが結果的にそういう事になって居る」

女戦士「それで貴族の解体をやろうという訳か」

アサシン「こちらにも質問がある…黒の同胞団の事だが」

盗賊「おぅ…多分時の王とも繋がってそうだな」

アサシン「領事がシン・リーンの元老院の一人だという事だが身分証はあるか?」

商人「あるよ?これさ…」パサ

アサシン「魔女…分かるか?」

魔女「信じられん事じゃがこの身分証は本物じゃ…これを発行出来るのはわらわの母上と父上だけじゃ」

アサシン「国王が絡むとなると相当根が深いと言わざるを得ん」

魔女「父上は元老院と繋がりが深いのじゃ…元老院制を推したのも父上じゃ」

アサシン「元老院は立場上魔術院の上に当たるな?つまり魔術師を使役できるという事だな?」

魔女「そうじゃ…魔術院の最高位はわらわじゃ…わらわが不在という事は元老院が実権を握って居る」

情報屋「魔術院の中に錬金術に秀でた者は?」

魔女「居る…シャ・バクダ錬金術の研究に熱心な者が居った」

情報屋「繋がるわね…麻薬の出所が」

アサシン「活動拠点に心当たりは無いか?」

魔女「シャ・バクダに派遣した8人の魔術師が居ったろう?その中の一人が錬金術に秀でた者じゃ」

アサシン「その魔術師の行方を追えば良いのだな?」

案内人「俺知ってるかも知れ無ぇ…女王に領事を紹介したのが魔術師の一人だった」

魔女「主は見ておったのかえ?」

案内人「俺は元々商隊長として領事の雇われだったんだ…領事と魔術師を連れてシャ・バクダ北の山麓まで行った事がある」

アサシン「地図で示せ…何処だ?」

案内人「ここだ…ミノタウロスがうろついて居て薬草が沢山生えている場所だ」

盗賊「そりゃ痛み止め用の薬草でケシが沢山生えている場所だな」

アサシン「なるほど…これで繋がったな…貴族共がシャ・バクダに移動している理由はそこに何かあるからだ」

魔女「魔術師が使う触媒の中にケシの実から抽出する物も多いのじゃ…その地は所縁が深いのぅ」



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757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:47:33.77 ID:V1qeujs60
魔女「リリスは海に沈んだのじゃな?」

盗賊「間違い無ぇ…クラーケンの触手に掴まって居たのがそのリリスって奴だな」

魔女「首はどうなって居るか見たのかえ?」

盗賊「羊の頭が付いていたが…なんでそんな事聞く?」

魔女「わらわの魔術書を見るのじゃ…ここじゃ…名をバフォメットと言う」

盗賊「おぉ!!これだこれ!!」

魔女「…」

盗賊「んん?どうした?」

魔女「落胆しておる…時の王がバフォメットの首を持って居るとは思わなんだ…最悪じゃ」

盗賊「でも光る海に沈んでるぞ?」

魔女「それで封印出来て居るのなら良いが…陸に上がってしもうては手が付けられぬ」

盗賊「どれぐらいヤバいのか俺は想像出来ん」

魔女「バフォメットは魔法が効かんのじゃ魔法では封印が出来ぬ…わらわは何も出来ん」

盗賊「女海賊の爆弾でドカーンとよ?」

魔女「リリスは実在する神と言って良い…その肉体は永久の再生力を持って居る…封印せぬ限り死ぬことは無いのじゃ」

商人「はぁ…嫌な話聞いちゃったね」

盗賊「放って置くと又誰か海から引き揚げる奴が出て来るってか?」

商人「あっちでもこっちでも片づけないといけない問題が集積しててどこから手を付けたら良いか…」

盗賊「魔女が探してる壺ってのも行方が分からんのだろう?」

魔女「時の王がとぼけて居る様じゃ…恐らく奴が持って居る」

商人「その壺に魔王を封じたっていう解釈で合ってる?」

魔女「魔王のすべてを封じたかどうかは分からん…じゃが魔王の器になりうる物は封じて居る」

商人「それがリリスの子宮という訳か…」

魔女「リリスは冥界の女王と言われておったそうじゃが同時に淫魔の神でもあるのじゃ」

商人「という事は今のセントラルのこの状況は…」

魔女「そうじゃ…間違いなくリリスの影響を受けて居る…性欲を貪るのはそのせいじゃ」

商人「分かったぞ…黒死病は性欲が押さえられなくなって性交で伝染しているんだな?」

魔女「血液の接触感染じゃな…性交も同じじゃ」



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758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:48:07.51 ID:V1qeujs60
女戦士「アサシン!貴族院の解体をどういう手順で考えて居る?」

アサシン「…まずは麻薬漬けになっている女子供の救出だ…今晩で若い女はすべて救出する事になる」

アサシン「貴族居住区に若い女が居なくなるとどうなると思う?」

女戦士「男共が徘徊する事になりそうだな」

アサシン「正解…貴族居住区から少しづつ民を引っ張り出すのだ」

アサシン「中央に出る民が増えて来出すと集団心理が働き貴族院から出て来る民の数が加速する」

女戦士「なるほど女を使って大衆扇動する訳か」

アサシン「衛兵を含む男達は麻薬への依存度が女に比べて相当低い…麻薬を断つのはそう難しくないのだ」

女戦士「では民が徐々に中央へ戻ると仮定して次はどうする?貴族を一人づつ暗殺でもするのか?」

アサシン「民の安全を確保した後に貴族院側にクーデターを起こさせる」

女戦士「私の見立てでは王国側の戦力の方が高い…逆に貴族居住区をせん滅した方が早いと思うが」

アサシン「それでは時の王の思う壺なのだよ…狙って居るのは時の王の失脚だ」

女戦士「ほう?如何に?」

アサシン「内郭に陣取っているラットマンリーダーを全滅させる…アレが居なくなるだけで貴族院側の衛兵は城へなだれ込むだろう」

女戦士「王国に城を放棄させるのか?」

アサシン「城はどうでも良い…肝心なのは民だ…国王自ら貧民街で民を支援する姿を見せるのだ」

女戦士「うーむ…どうも成功が見えん…そもそもラットマンリーダーをどう倒す?」

アサシン「お前たちが付けたあの鐘だ…あの鐘が鳴るとラットマンリーダーは戦闘不能になる」

女戦士「ふむ…それは行けたとして城に駐留する精鋭兵は500程度に見えるが貴族院側の衛兵の数には勝てんだろう」

アサシン「実はな…城から下水を通って海まで逃れられるのだ…つまり攻め入っても城は誰も居ないという状況になる」

女戦士「貴族院側を城に閉じ込めると言うのか」

アサシン「そうなるな…さて…民と共に要る国王を見て貴族院の衛兵にはどう映る?」

アサシン「背後にフィン・イッシュの軍船も控えて要るのだ…どうする?」

女戦士「正義を見失う…」

アサシン「それが狙いだ…そこまで来れば貴族院は力を失い絶対王政に戻る」

女戦士「セントラル国王とはコンタクト出来ているのだな?」

アサシン「それは間違いない…国王は我々の側に居る」

女戦士「いつ動かす?」

アサシン「フィン・イッシュの軍船2隻が女王を乗せてこちらに来る…それからだ」



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759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:48:36.36 ID:V1qeujs60
商人「魔女…話したい事があるんだ」

魔女「何じゃ?」

商人「魔女は未来にタイムワープしたと言ったよね?」

魔女「言うたのぅ…7年飛んだ様じゃ」

商人「実はね…僕はある仮説を考えて居るんだ」

魔女「言うてみぃ」


時間の話さ

今僕の自我が認識しているこの瞬間が時間の中心点だったとして

過去の出来事はすべて記憶と言い換える事が出来るよね?

それを記録した物が根の森に眠るオーブ…精霊の記憶さ

剣士の魂はどうやらそのオーブの中に居た様なんだ

そして勇者として行動していて恐らくその中で自我を持って居た

剣士にとっての自我が認識する時間はその中にあったという事だ

タイムワープと言うのはその記憶の中で自我が認識する地点を変えているだけと言い換える事も出来る


魔女「主が言いたいのは今いるこの世界も記憶の中では無いかと言いたいのじゃな?」

商人「そう!それが言いたい…それを否定出来る事が思いつかない」

魔女「それを探求する事こそ魔道じゃ…わらわにはまだ答えが出せぬ」

商人「そうか…魔女でも分からないか」

魔女「じゃがこれだけは言えるぞよ?量子転移という魔法で過去の記憶から空間を転移するのは可能じゃが…」

商人「うん…」

魔女「未来から空間を転移するのは出来んのじゃ…なぜなら記憶が無い」

商人「じゃぁこの世界が未来の記憶だった場合は?」

魔女「それは神のみぞ知る事じゃ」

商人「どうしてタイムワープ出来たの?」

魔女「次元の狭間に迷い込んでしもうてのぅ…望んで飛んだ訳では無い…事故じゃな」

商人「もやもやするなぁ…」

魔女「主は今ここに居るのじゃから今を精一杯生きれば良い」

商人「魔女はさぁ?その量子転移という魔法で過去に行く事が出来るの?」

魔女「可能かも知れんがそれ程簡単では無いぞよ?…次元の狭間に迷い何処に行くか分からんでな…」

商人「そっか…僕の思い違いか」



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760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:49:11.43 ID:V1qeujs60
アサシン「今日は私も女子供の救出に参加する…エルフゾンビ!魔女の護衛は頼む」

エルフゾンビ「フフ任せろ」

アサシン「気球の操舵は案内人だ…昨日と同じ様に飛べ」

盗賊「俺らは馬車で移送だな?」

アサシン「そうだ…今日は馬車の台数が増えて居るから戦闘が出来る者は全員救出に回って欲しい」

女戦士「戦闘が出来る者?戦う想定で居るのか?」

アサシン「昨日の今日だ…多少の抵抗はあるかもしれん」

女戦士「こちらは民兵ばかりだぞ?衛兵相手には不利だ」

アサシン「抵抗する衛兵は堀に落とせば良い…なんとかしてくれ」

女戦士「では私が最前線に出ねばならんな」

魔女「抵抗が多い時はわらわが睡眠魔法を掛け直す故…そのつもりで居れ」

女戦士「魔法頼みか…」

アサシン「引き際の目安は2時間…これで女子全員の救出を目指す」

盗賊「その後貴族居住区から打って出てきたらどうする?」

魔女「睡眠から目覚めた者は夢じゃと思うておる…それほど頭は回らん筈じゃ」

盗賊「なるほど…便利な魔法だ」

アサシン「情報屋とホムンクルスはテントで救出された女子の手当てをしてくれ」

ホムンクルス「はい…」

女戦士「くれぐれも男共を入れない様にな?」

魔女「わらわが後で回復魔法をしに行くで与えるエリクサーの量は少なくて良いぞ?」

ホムンクルス「わかりました」

アサシン「では行くぞ!!」タッタッタ
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:49:42.75 ID:V1qeujs60
『気球』


フワフワ


魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

案内人「このままゆっくり周回でいいな?」

エルフゾンビ「内郭の壁からは距離を置いてくれ…弓で撃たれる可能性がある」

案内人「分かった」

魔女「セントラルの衛兵は気付いて居らんのかのぅ?昨日と変わりがない様じゃが…」

エルフゾンビ「いや…そうでも無いぞ?部隊ごとに分かれている」

魔女「寝てしもうては意味が無い」

エルフゾンビ「備えては要るがどうして女が少なくなったのかは把握していない様だな」

魔女「おかしいのぅ…貴族院側の指揮は誰がやって居るのじゃろうか?」

エルフゾンビ「む!ここには居ないという事か!?」

魔女「指揮する者はこの状況を把握せず一方的に命令を下して居りそうじゃのぅ」

エルフゾンビ「貝殻か!?」

魔女「うむ…その可能性が高い」

エルフゾンビ「しかし貴族全員居ないとは考えにくい」

案内人「貴族らしい人物は何人も貴族居住区で目撃されているらしいぞ?」

魔女「わらわの考えすぎかのぅ…」

エルフゾンビ「しかし相手が無策なのは今の所好都合だ」


---どうも気にかかるのぅ---
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:50:16.46 ID:V1qeujs60
『深夜_貧民街』


スヤ スヤ


魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女戦士「魔女…アサシンが呼んでいるのだ…船に行ってくれ」

魔女「そうじゃな…ちと疲れたわい」

ホムンクルス「あとは私にお任せください」

魔女「日の出後に又くるで頼んだぞよ?」

ホムンクルス「はい…」



『貨物船_居室』


ガチャリ バタン


魔女「アサシンは居るか?何用じゃ?」ノソノソ

アサシン「来たか…実はな貴族居住区で建屋の中に入ったのだが様子がおかしい」

魔女「ほう?」

アサシン「貴族が何処にも見当たらないのと…貴金属のすべてが無い」

魔女「逃げられたという事じゃな?」

アサシン「どういう事だ?事前に忍び入った時にはまだ在った物が消えている」

魔女「…」

盗賊「他の建屋もカラだったぜ?」

アサシン「先日女子の救出に行った民兵も貴族の姿と資産を見ているのだが…今日はすっかり無くなっていると言う」

魔女「ふむ…魔術師が居った様じゃな」

盗賊「狭間に入って逃げたんか?」

魔女「その可能性もあるが資産をすべて運ぶのは難しいじゃろうて」

アサシン「他に心当たりがありそうだな?」

魔女「時限の門をくぐって過去を変えた者が居る様じゃのぅ…魔術師の禁じ手を犯した者が居る」

アサシン「時限の門?」

魔女「魔術師が修行をする精神と時の門というのが在ってな…それは時限の門の事を言うのじゃ」

魔女「時限の門はな…過去の自分に対峙するための門じゃ…そこで精神を鍛えるのじゃが…」

魔女「門をくぐりぬけてはならぬという掟がある…それを破った者が居るな…制裁せねばならん」

アサシン「それをくぐると過去に行くという事か?」

魔女「そうじゃ…魔力によって過去に行ける程度は変わるが…修行を積めば5日程度は戻れるのぅ」

盗賊「5日っちゃぁ俺達がここに来る前だな…そういや商隊で貴族の馬車を見た」

魔女「その中に紛れたのじゃな」

アサシン「私達はもっと前からここに居たのだが…はっ!勘違いしていたのか…女戦士の船から商隊が出て行ったと思っていたが…」

魔女「次元が交差しておるのぅ…記憶が塗り替わって行く前にメモに残すのじゃ」

アサシン「塗り替わる?」

魔女「そうじゃ貴族や貴金属がそこにあったという記憶が直にのうなる…今の目的も忘れてしまうやも知れんぞ?」

アサシン「分かった!今すぐメモに残す」

魔女「これで黒の同胞団の居所を何故掴めんのか分かったのぅ…巧妙に歴史を修正しとる」

アサシン「…それも書いておく」

763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:50:49.31 ID:V1qeujs60
『翌日』


盗賊「ホムンクルス!今日は樹液の収穫が大量だぜ!見ろ…10樽だ!!」

ホムンクルス「はい…大変助かりますが精製の方もお手伝いしてもらってよろしいですか?」

盗賊「おう!どうやるんだ?」


アレをこうして…コレをあーして


盗賊「こりゃ商人向けの仕事だな…商人来い!!エリクサー作るぞ」

商人「うん…良かったぁぁ薪運ぶのでクタクタだったんだ」

盗賊「ところでホムンクルスと情報屋は貧民街の方は良いのか?」

ホムンクルス「あちらは魔女様に任せて良い様です…私はエリクサーの管理ですね」

盗賊「情報屋は何やってんだ?料理か?」

ホムンクルス「栄養の付くスープを作って貰っています」

盗賊「みんな忙しそうだな…エリクサーは商人に任せて俺は中央行ってくるわ」

ホムンクルス「そうですね…」

商人「中央の方は今ゴタゴタしてるよ?」

盗賊「何かあったんか?」

商人「貴族居住区から少し人が出て来ててね…貧民街の方に行かせろとゴネてる」

盗賊「アサシンの狙った通りに進んでんな」

商人「これからバリケード作るって言ってたよ」

盗賊「そら大変だな…木材が全然足りん」

商人「だから僕はエリクサー精製の仕事が出来てホッとしてるのさハハ」


盗賊「おぉ!?見ろ…フィン・イッシュの軍船が2隻来てんな」

商人「え…あんな遠くなのに見えるの?」

盗賊「海を見るのはコツがあんだよ…おーやっぱ2隻だ…ナイスタイミングだなヌハハ」

商人「木材積んでると良いね」
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:51:19.88 ID:V1qeujs60
『中央広場』


ぅぅぅ何で通さねぇぅぅう

何処に行こうが勝手だろう


民兵「こっちのテントで処置するから言う事聞いて下さい…」

男達「ぅぅぅ俺ら処置なんて要らねぇ…ぅぅぅ」

民兵「ったくもう!!」グイ

ローグ「盗賊さん!!良い所に来たっすね…運ぶの手伝って下せぇ」

盗賊「おう…こいつらゾンビみてぇだな」

民兵「黒死病が進行してるんで早く処置しないと長引くんですよ…でも言う事聞かなくて」

盗賊「結構貴族居住区から出て来てんな?」

ローグ「まだ50人くらいっすね…食事食べさせるとちっと大人しくなりやす」

盗賊「俺はバリケード作るって聞いてこっち来たんだが…」

民兵「木材を船に取りに行ってる所ですね」

盗賊「そうか…積もってる雪はどうすんだ?雪の上に設置する訳にいかんだろ…」

民兵「そこらへんどうするのか聞いてないです」

盗賊「んぁぁぁ人出が足りなくて指揮回って無さそうだな…ローグ!!俺達で雪かきすんぞ」

ローグ「また重労働でやんすか…トホホ」

盗賊「どうせ設置位置まで決まって無ぇんだ…俺らで決めるぞ」

ローグ「へいへい…どうすれば良いでやんすか?」

盗賊「貧民街と中央を区切る簡単な馬防柵だな…その後方に雪を積んでかさ上げすりゃ早い」

ローグ「あいあい…じゃぁ馬防柵予定地の後ろに雪を積めば良いっすね?」

盗賊「んむ…俺らがやってりゃ意を汲んで誰か手伝ってくれるだろ」

ローグ「そうなりゃ良いっすけどねぇ…みんな疲れてるんすよね」

盗賊「体動かした後の酒は旨いぞぉ!?」ワッセ ワッセ

ローグ「へいへい…」ワッセ ワッセ



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765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:51:50.80 ID:V1qeujs60
女戦士「ここに居たのか…その整地はバリケード用だな?」

盗賊「おう…簡易的だが雪を積んで塹壕代わりにすりゃ割と行ける」

女戦士「こんな所で戦うつもりは無いがな…侵入を防げれば良いだけと思っていた」

盗賊「衛兵がドバーっと出てきたらどうすんのよ…備えあれば憂い無しだ」

女戦士「まぁその通りだ…」

盗賊「んで?フィン・イッシュから軍船2隻来てただろ?どうよ?」

女戦士「民兵しか居ない…まともに装備しているのは近衛くらいだな」

盗賊「ぐは…軍船は見かけだけか」

女戦士「笑うなよ?大砲すら積んで居ない…大きな民間船と言った方が良いな」

盗賊「よくそんなんで女王を乗せてくんな…」

女戦士「ただな…民兵の士気が異様に高いのだ…ゲリラ戦や工作には適している」

盗賊「てことはバリケードは速攻出来る感じか?」

女戦士「んむ…しかし心配事もある…漢が多い分救出した女子が心配だ」

盗賊「ヌハハ風紀が守れんか…確かに問題だな」

女戦士「これからフィン・イッシュの指揮は近衛がとるようになるのだが女王がどういう采配をするのか読めん」

盗賊「民兵を引き連れて来る様な采配…んーむ」

女戦士「まぁ…戦争では無いのだから民兵で良いと言えば良いのだが…」

盗賊「なんなんだ?この微妙な駆け引きは…」

女戦士「私から言わせるとセントラル内部の茶番だな…」

盗賊「海に出て行ったセントラル軍船とか何処いっちまったのよ」

女戦士「軍部がバラバラではもうこの国はダメだ」



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766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:52:29.99 ID:V1qeujs60
エッサホイサ エッサホイサ


女戦士「盗賊!!もうバリケードの設置は民兵に任せて良い…こちらへ来るんだ」

盗賊「ふぅぅ…次はどうすんだ?」

女戦士「貴族居住区と中央の通路でもみ合いが始まっている」

盗賊「衛兵が出て来てんのか?」

女戦士「民の返還を要求してきているのだ…もちろん断っているが…直に戦闘になりかねん」

盗賊「マジかよ…こっちは保護してる立場だろうに…」

女戦士「こちら側に戻って来た男共の話では貴族特区の方が物資は豊富にあるらしい」

盗賊「麻薬漬けにしておいて民を保護してるつもりなのか?」

女戦士「黒死病の恐怖と苦痛を和らげる為に配布されているらしいが…」

盗賊「あっちにはあっちの正義があるってか…この惨状をちゃん判断出来る奴いねぇのかよ!」

女戦士「集団心理が働いているのだ…きっかけが無いと折り合いが付かん」

盗賊「きっかけって…」

女戦士「貴族院の要求は王族の拘束…つまり国王が降伏すれば一旦収束する」

盗賊「それを国家転覆て言うよな?そんなん国王が承諾する訳無ぇ」

女戦士「その通りだ…だから戦闘が起きる」

盗賊「矛先がこっちに来るのは筋がおかしい」

女戦士「こちらが国王と繋がっていると知られた場合は先に殲滅に来る…だろうな」

盗賊「こっちはまともな武器持った奴居ねぇぞ?」

女戦士「んむ…備えておかんと一気に奪取されてしまう」

盗賊「城に詰めてる精鋭兵は出て来れんのか?」

女戦士「下水の掘削作業が終わって居ない…まだ通れないのだ」

盗賊「戦力差は分かってるか?」

女戦士「城の精鋭兵500フィン・イッシュ民兵500に対し貴族居住区には衛兵2000程」

盗賊「数も装備も差があり過ぎる…勝てる訳無ぇ」

女戦士「やはり内郭の上に居るラットマンリーダーが鍵だな…貴族院側が中央に出て来られないのは城から背後を突かれたくないからだ」

盗賊「ギリギリの膠着状態か」

女戦士「だが装備の整った衛兵が数十人中央に出て来ただけでこちらは大打撃なのだ」

盗賊「バリケード上からクロスボウで構えるのが有効だ…船に予備は無いか?」

女戦士「無い…だが木材はある…即席で良いから弓と矢を作ってくれ」

盗賊「矢尻用の鉄は!?鳥の羽はあるんか?」

女戦士「無い…なんとかしろ」

盗賊「フィン・イッシュの軍船には無いのか!?」

女戦士「無い…」

盗賊「ぐはぁぁ材料が何も無いじゃどうにもなん無ぇ…まてよ?石は腐る程あるな…スリングだ!!」

女戦士「ほう…それは良い!!お前に相談して正解だった」

盗賊「スリングなら素人でも使える!ローグ来い!!ロープと皮集めて来い…今からスリング作るぞ!!」
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:53:01.79 ID:V1qeujs60
『バリケード上』


ヒュン ヒュン ヒュン


女戦士「よし!撃ち方ヤメ!!気絶している衛兵を確保して手当しろ!!」

民兵「へい!!」ドスドスドス

盗賊「これで2人目だ…貴重な装備ゲットだな」

女戦士「奪うつもりは無い…手当して返す…黒死病を治療出来る事を周知させたい」

盗賊「ほーん…あっちはエリクサーの存在を知らん訳か」

女戦士「その様だ…エリクサーを求めてこちらに交渉しに来る様になれば少しは話が出来る」

盗賊「今までは話が通じて居ないのか?」

女戦士「こちらの貧相な装備を見て正規軍だとは思って居ないのだ…自警団扱いだ」

盗賊「ヌハハ裸同然の漢も居るしな?」

女戦士「お前の恰好もごろつきにしか見えんぞ?…私も同じだが」

盗賊「まぁな…船に乗ってりゃ楽な格好の方が良いもんな」

ローグ「かしらぁ…先に確保した衛兵が帰りたくないと言ってるでやんすが…どうしやしょう?」

女戦士「体を休めてからで良いと言え…こちらの内情を見てもらうのも良い」

ローグ「信用して良いんすかね?」

女戦士「構わん!敵では無いという事を見せつけておくのだ」

ローグ「わかりやした…ちっとあっしが話してみるでやんす」

盗賊「女戦士!アサシンの姿がずっと見えんが?何処に行った?」

女戦士「フィン・イッシュ女王の船だ」

盗賊「沖の方で停泊しているやつか?なんで上陸して来ないんだ?」

女戦士「セントラルに許可なく上陸は出来ん立場だ…本来なら大使を通じて段取るのだがそれも出来んのでな」

盗賊「面倒臭ぇこった」

女戦士「支援とは言え他国に勝手に女王が入るのは体裁が良くない…機を待っているのだな」

盗賊「あの嬢ちゃんがどんだけ成長したか早いとこ見たいもんだ」
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:54:35.21 ID:V1qeujs60
『貨物船』


商人「…これでよし…っと」

情報屋「エリクサーの小分け出来たわね?」

商人「うん…これ貧民街のテントの分」

情報屋「私が持って行ってホムンクルスと交代してくるわ」

商人「中央広場の分も持って行ってもらえる?」

情報屋「わかったわ…あなたは少し休んで食事でもして居なさい?」

商人「そうするよ」

情報屋「じゃ…行くわね…よいしょ!」テクテク
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:55:08.45 ID:V1qeujs60
『居室』


ガチャリ バタン カチャ


商人「あ…おかえり…どうして鍵かけるの?」

ホムンクルス「はい…」

商人「貧民街の方はどう?」

ホムンクルス「麻薬が切れた方が増えて来て苦しんでいる様です」

商人「苦しむって?」

ホムンクルス「眠りから覚めて今までの事は夢だと思っている様ですが快楽を脳の受容体が記憶して居ますので鬱症状が出ています」

商人「鬱ねぇ…そんなに酷いんだ」」

ホムンクルス「脳内ドーパミンの放出量が激減した分脳は苦痛と認識するのです」

商人「治せないのかな?」

ホムンクルス「治し方をシミュレーションしていますが今の私には効果的な方法が分かりません」

商人「君でも分からないという事は治せないのかも知れないなぁ…」

ホムンクルス「一つだけ治癒出来そうな方法はあるのですが…」

商人「何?」

ホムンクルス「どれくらい効果が期待できるのかシミュレーション出来ないのです」

商人「どうすれば良い?協力するよ?」

ホムンクルス「私は愛がどれくらい快楽を占めるのか分かりません」

商人「ハハ愛ねぇ…君はどうすれば愛を感じると思う?」

ホムンクルス「私を愛して下さいますか?」

商人「そんな急に言われても答えに困るな…」

ホムンクルス「私と性交渉をしませんか?」

商人「え…」

ホムンクルス「この生体はまだ一度も快楽を経験していませんので快楽と愛の比較が出来ないのです」

商人「そういう理由で性交渉と言われてもな…」

ホムンクルス「こう言えば良いですか?私に快楽と愛を教えてください」

商人「まさか君もリリスの淫魔の呪いに掛かっている訳じゃ無いよね?」

ホムンクルス「私は正常です」

商人「困ったな…」

ホムンクルス「私は以前あなたと少しだけ性交渉をした記憶が残って居ます…覚えていますか?」

商人「そうだったね」

ホムンクルス「あの続きをしましょう」チュゥ

商人「んむ…」

ホムンクルス「触ってください」スリスリ

商人「…わかったよ」

ホムンクルス「ぁ…」


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770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:55:42.45 ID:V1qeujs60
3分後


ホムンクルス「もう終わりですか?」

商人「ご…ごめん」

ホムンクルス「すこし休憩をしてからもう一度お願いします」

商人「ハハ…」

ホムンクルス「知っています…すぐに回復されると思いますので…私の体液をお飲みになって下さい」

商人「むぐ…」ペロ

ホムンクルス「はい…それで良いです…ぁぁぁん」

商人「その声は君のプログラムが出させてるの?」

ホムンクルス「生体の反射で声が漏れてしまいます…お気になさらず続けて下さい」

商人「フフそうか…体は生身の人間と同じか」

ホムンクルス「はい…私は100%人間と同じ組織を持ったホムンクルスです…違うのは脳に超高度AIユニットがあるだけです」

商人「なんかこうしてるとどんどん君を好きになっていく」

ホムンクルス「私も脳内ドーパミンの分泌量が変化している事が分かりました…続けて下さい」

商人「むぐ…」ピチャ

ホムンクルス「ぁぁぁん…あ…あ」
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:56:32.93 ID:V1qeujs60
『1時間後』


商人「はぁ…はぁ…ホムンクルス!?大丈夫?」

ホムンクルス「…」クター

商人「僕はもう限界だ…」

ホムンクルス「ぁ…」ハァハァ

商人「気が付いた?」

ホムンクルス「…10秒間の記憶喪失が確認されました…ドーパミン放出が一定量を超えると他機能への神経伝達が途切れる様です」

商人「よかった…7回目でやっと…君は良く平気で話が出来るね?」

ホムンクルス「生体の興奮状態が収まりません…正常値に戻るまで30分程要する様です」ハァ

商人「服を着ようか?立てる?」

ホムンクルス「いいえ…力が入りませんのでそのままにして下さい」プルプル

商人「じゃぁ僕が着させてあげるよ…」スルスル

ホムンクルス「あなたの行動一つ一つでドーパミン分泌量が変化します…これが恐らく愛の部分です」

商人「超高度AIが判断してる訳じゃ無いんだ…」

ホムンクルス「分かった事があります…ドーパミン分泌量は脳が記憶しますが分泌量は積み重なります」

商人「積み重なる?」

ホムンクルス「はい…愛は膨らむという表現が良いでしょうか?」

商人「あぁ…なんか分かるよ…どんどん君を好きになる」

ホムンクルス「性交渉を毎日続けましょう…愛がどのくらい積み重なるのか観測します」

商人「なんかすごく幸せな気持ちになるなぁ」

ホムンクルス「お分かり頂けますか?性感による快楽を超える量のドーパミン放出が期待できます」

商人「なるほどね…麻薬依存を治療するのには愛が効果的かも知れないいう事か」

ホムンクルス「はい…まだ可能性が期待できるという段階ですので明日からもよろしくお願いします」

商人「なんか恥ずかしいなぁ…」

ホムンクルス「どう言えば良いでしょう?」

商人「んー寄り添ってくれるだけで良いかな」

ホムンクルス「はい…」ピト
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:57:14.31 ID:V1qeujs60
『夜_中央広場』


メラ パチ


盗賊「篝火を増やしてくれい!!俺らも行くぞ…ローグ来い!!」

ローグ「アイサー」

盗賊「外郭側の方は厳しそうだな?撤退戦になりそうか?」

ローグ「アサシンさんが近衛連れて応援に行ったでやんす」

盗賊「ゴブリンはどれぐらい来てるか聞いたか?」

ローグ「5匹ぐらいらしいっす」

盗賊「それなら何とかなるな…しかし外郭も少し直さんと魔物が入って来ちまうな」

女戦士「盗賊!居るか!?」

盗賊「おう!!どうした?」

女戦士「海側からラットマンが進入しているらしい…貧民街の守備に行くぞ」

盗賊「マジか…あっちは民兵が居ねぇ」

女戦士「商人と魔女が押さえているとの事だ…急ぐぞ」タッタッタ

盗賊「ローグはバリケードを守ってろ」タッタッタ

ローグ「忙しいっすねぇ…」
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:57:41.06 ID:V1qeujs60
『貧民街』


グルルル


商人「こっちだ!!」ダダダ ブン グサ

魔女「火炎魔法!」ゴゥ メラ

商人「なんだ?このラットマン…武器持ってるじゃないか!」

魔女「祖奴はコボルドじゃ…商人!避けよ!!」

コボルド「ガウルルル」ブン ザク

商人「あぅ…つつつ」

魔女「罠魔法!!」ザワザワ シュルリ

女戦士「商人!!引け!!」ダダダ ザクリ

盗賊「何匹居る!?」

魔女「2匹じゃ…もう一匹は船の方に行ってしもうた」

盗賊「女戦士!ここは任せる…俺は船に行く」ダダ

女戦士「商人…見て置け…こういう硬い魔物を相手にする時は急所を狙うのだ」ブン スパーーー

コボルド「ガァァァァ…」ドタリ

魔女「商人!回復魔法をするで近こう寄れ」

商人「大丈夫!金属糸の装備のお陰で軽傷さ」

魔女「回復魔法!」ボワー

女戦士「商人!お前は心臓が悪いと聞いて居る…出血は避けろ」

商人「わかってる…でも僕のクロスボウだと魔女が狙われてしまうと思った」

魔女「他に魔物が来て居らんか警戒するのじゃ」

商人「そうだね…船を狙うという事は食べ物狙いかな?」

女戦士「ふむ…こちらにも民兵を配置せねばならんか…」

魔女「この程度ならまだ良いが…夜が眠れんのぅ」
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:58:22.94 ID:V1qeujs60
『翌日』


盗賊「あぁぁぁ結局一睡も出来んかった…ローグ!日課の樹液回収行くぞ…」

ローグ「へーぃ…」グター

盗賊「ゴブリンとコボルドが持ってた質の悪い武器…ここ置いとくぜ?」

女戦士「無いよりはマシだ…民兵に使わせる」

アサシン「あと2日の辛抱だ…下水が城と繋がる」

女戦士「精鋭兵が出て来れるのだな?」

アサシン「うむ…そしてラットマンリーダーを倒して戦況を覆す」

女戦士「上手く行くと信じて良いのだな?」

アサシン「エルフゾンビの戦いぶりを見たことが無いだろう?」

女戦士「ほう?やり手なのだな?」

アサシン「奴は一応ハーフエルフなのだ…剣士や女エルフ並みの戦闘力はある」

女戦士「私の出る幕は無いかハハ」

アサシン「タンク役としてはお前の方が上だな?エルフはアタッカー向きなのだ」

女戦士「速さか…」

アサシン「お前にはバリケードの守備を任せる…エルフゾンビを先頭に私と盗賊…ローグでラットマンリーダーを殲滅する」

女戦士「なるほど…エルフゾンビにタゲを集めてバックスタブ狙いか」

アサシン「そうだ全員アタッカーだ」

女戦士「魔女は使わんのか?」

アサシン「魔女は撃たれ弱すぎて足手まといになるな…守備の要として動いてもらった方が良い」

女戦士「回復役が居ないのは少し心配だが…」

アサシン「私とエルフゾンビは不死者だ…回復なぞ要らん…盗賊とローグはなんだかんだでしぶとい」

女戦士「ハハ間違いない…妹にこき使われていたからな」

アサシン「お前にもなクックック」



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775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:58:52.55 ID:V1qeujs60
商人「アサシン居るかな?」

アサシン「ん?商人か…どうした?」グビ

商人「またワイン飲んでるのか」

アサシン「喉が渇くのだ…それで何か用か?」

商人「うん…貧民街の方で女達数人が慰安所で働きたいと言う人が出てるらしいんだ」

アサシン「そうか…貧民街でも出てるのか」

商人「でも?…って他にも?」

アサシン「フィン・イッシュ軍船でもそういう話が出ているのだ…うーむ」

商人「自分たちで志願してるんだったら良いじゃないかな?」

アサシン「実は女王が先駆けて慰安所の事を言っていたのだが私が止めてな…男達の間でもめ事が起きるのだ」

商人「士気に関わるのか…だったら数か所設置して勤務地を頻繁に変えるとかは?」

アサシン「うーむ…私は堅物なのか?女王に言われたが…」

商人「ハハハまぁ…そうかもしれないね?」

アサシン「女戦士!どう思う?」

女戦士「私にそれを言わせるのか?好きにすれば良いフン!」

アサシン「こんな時に頭が痛い…わかった女王ともう一度話をして来る」

商人「貴族居住区に戻られるよりは良いよね?もう話を伝えて来ても良い?」

アサシン「女達は戻りたいと言って居るのか?」

商人「戻ると言うか出て行くって言ってるらしいよ…行き先なんか貴族居住区しかないよね」

アサシン「分かった…ひとまず中央のテントに案内しろ」

商人「うん伝えて来るよ」タッタッタ

アサシン「…むぅ…これでは貴族院とやって居る事は変わらん…」

女戦士「私も否定派だが…慰安所の必要性は理解している」

アサシン「女王の船に行って来る」スック
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 00:59:26.99 ID:V1qeujs60
『中央テント』


ガヤガヤ


盗賊「なんでこんなに民兵集まってんのよ?何か作戦やるんか?」

商人「あー見つけた!!これ1枚づつ」

ローグ「何でやんすか?このコイン…おもちゃのコインっすね?」

商人「フィン・イッシュから給金の代わりなんだって…毎日1枚づつ貰えるってさ」

盗賊「何に使うんだ?こんなもん?」

商人「フィン・イッシュの軍船に貨物が沢山あるんだって…それ貯めて交換できるらしいよ」

盗賊「ほーーー金の代わりか…何と交換できるか聞いたか?」

商人「いろいろあるらしいよ?くじ引きで家とか船とか貰えるってさ」

盗賊「マジか!!」

ローグ「これ奪い合いが始まり出しやせんかね?」

商人「くじ引くのに?」

盗賊「なるほど…金と違うのはくじ引きっていう点か…面白いな」

商人「これ誰が得するんだろうね?フィン・イッシュは全然得しないよね?」

盗賊「民兵動かして金払わないで済むなら安いんじゃ無ぇか?」

商人「それとは別らしいよ…救出された女の人たちにも配ってるし政策が謎w」

ローグ「交換できる物次第っすねぇ…なんか夢がありやすね?」

商人「ふむ…士気を上げてるのかな?」

盗賊「まぁ人が集まってるぐらいだから何かの効果はありそうだな」

商人「でもこういうのがあると交流が増えて良いね…さっそく賭け事やってるし」


ガヤガヤ ガヤガヤ

おい!奥に秘密のテントってのが出来るらしい

なんだそれ?

中に何人も女が居るんだってよ

見えるのか?

ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「なるほどねぇ…」

盗賊「お前なにか知ってそうだな…何だよ!?」

商人「あまり関わらない方が良いかな」

盗賊「勿体付けんなって…秘密のテントって何だ?」

商人「多分慰安所さ…行った事バレると情報屋が口聞いてくれなくなるよ?」

盗賊「覗くだけは良いだろ」

ローグ「盗賊さん…まずいっす…かしらがジロジロ見てるでやんす」

盗賊「うぉ!!そらヤベぇ…おい商人!!整地しに行くぞ」

商人「整地!?僕が?ダメダメ…僕は船に帰らなきゃ…ホムンクルスが待ってる」

盗賊「ローグ!!整地に行くぞ!!見つかるとタダじゃ済まねぇ…」
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 01:00:07.14 ID:V1qeujs60
『外郭』


ガッサ ガッサ


盗賊「うぉらぁぁぁ」ガッサ

ローグ「ひぃひぃ…」ガッサ

盗賊「よし…これで魔物の侵入が一方向に絞られる…はぁはぁ」

ローグ「あっしら損な役回りっすねぇ…」

盗賊「まぁ言うな…女戦士に死ぬほど使われるよしかマシだ」

女戦士「…呼んだか?」ピーン パチ

盗賊「うぉ!!いつからそこに居んだよ…壁に耳あり障子になんとかだ」

女戦士「ふむ…雪の壁か」ピーン パチ

ローグ「かしらもコイン貰ったんすね?」

女戦士「使い道が無くて困っている…居るか?」ポイ

ローグ「あああああ」パス

盗賊「雪ん中入っちまうじゃ無ぇか!!」

女戦士「私は家も船も要らんものでな」

盗賊「ヌハハそらお前は姫だもんな…欲しい物なんか無いか」

女戦士「姫と言うのはヤメロ…気持ちが悪い」

盗賊「ここの整地は終わったから俺はちと休む…軽くひと眠りしてくる」

女戦士「そうだな…少し寝て来い…休めるのは昼間のうちだけだからな」

ローグ「あっしも行くっす」

女戦士「ローグは私と一緒に来い」

ローグ「え…あっしは何かしたでやんすかね?」

女戦士「私も疲れているのだ…マッサージをしろ」

ローグ「おぉ!?久しぶりでやんすね?」

女戦士「元気が出たか?」

ローグ「いつものマッサージで良いでやんすね?」

女戦士「念入りにな?」

ローグ「ひゃっほーい!!あっしはいつまでもかしらに付いて行くでやんす…さっそく行きやしょう!!」
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 01:01:05.80 ID:V1qeujs60
『名も無き島』



海賊王「次はこの木剣や…打ち込んで来い」

剣士「はい…いざ」

海賊王「早う来い!!」ググ

剣士「…」シュン カコン

海賊王「んんん…この木剣もダメやな」

女海賊「もう何本目?もう良いじゃん!!」

海賊王「アカン!剣筋に合う重さやないとワイは納得せん…ワイがこさえるオリハルコンの剣を伝説の武器にする為や」

女海賊「エクスカリバーと同じで良いって言ってんじゃん」

海賊王「それを超えなアカン…あとは使い手にどれだけ合ってるかなんや」

女海賊「剣士のその剣の構え方ってなんなのさ?前はそんな構えじゃなかったんだけど」

剣士「よく分からない…覚えて居ないんだ」

海賊王「古き時代の構えなんちゃうか?フィン・イッシュのサムライみたいやな」

女海賊「じゃぁ片刃にしたら?フィン・イッシュの剣は片刃だよ」

海賊王「お前がエクスカリバーみたいにせい言うたから両刃にしとったんやないか!」

女海賊「もうどっちでも良いよ!早くして」

海賊王「ほならこっちの木刀で打ち込んで来い」ポイ

剣士「はい…いざ」

海賊王「来いや!!」ググ

剣士「…」シュン バキッ

海賊王「お!?ええなぁ…わいの木剣が居れよった」

女海賊「ほんじゃそれで」

海賊王「アカン!ちと待て…鞘に入れてから抜いてみい…この鞘や」ポイ

剣士「鞘から居抜く?」

海賊王「そうや!!来い!!」ググ

女海賊「もう…どうでも良いじゃんそんなの…」

剣士「いざ…」シュン バキッ ゴン!

海賊王「あだっ!!」

剣士「あ…ごめん」

海賊王「連撃やな?見えんかったわ…これやな」

女海賊「もう良い?剣士と海行きたいんだけど…」

海賊王「アカン!ちと防具付けてくるわ…待っとれ」ドスドスドス
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 01:01:47.26 ID:V1qeujs60
女海賊「呆れた…私が待ってんのにまだやるっての?」

剣士「なんかこうやってずっと立ち合いをやってた事がある気がする…誰だったのかな」

女海賊「そんなん良いから私を思い出してよ」

剣士「君はずっとそばに居た気がするよ」

女海賊「ムフ…分かってんじゃん」

剣士「匂いを嗅いでも良いかい?」

女海賊「良いよ…どこの匂いを嗅ぐの?アソコ?」

剣士「全部…」クンクン

女海賊「なんか気持ち悪いんだけど…犬みたい」

剣士「この匂い…なつかしい」


---そっか---

---あんたずっと目が見えてなかったね---


女海賊「なつかしいってどんくらい?」

剣士「分からない…ただ懐かしい」

女海賊「私さぁ…今満足した…あんたもう思い出さなくて良いよ」

剣士「え?」

女海賊「もっかい私と始めから付き合えば良い…そんだけ」

剣士「ハハ諦め早いね」

女海賊「なつかしいって覚えてくれてただけでなんか満足した…来て?」

剣士「ん?」

女海賊「…」チュ

剣士「え…」

女海賊「惚れた?」

剣士「いや…」

女海賊「いやじゃねぇ!!惚れたって言えよバカ」

剣士「君反応が面白いね」

女海賊「はぁ!?バカにしてんの?」

剣士「なんかこんな風にいつも話してた気がする」

女海賊「そうだよ!!」
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 01:02:20.01 ID:V1qeujs60
海賊王「待たせたなぁ!!」ガチャガチャ

女海賊「ぶっ…フルプレートじゃん」

海賊王「次はなぁ…重さと重心が違う木刀で試す…連撃でも何でも良いから技を出すんや」

剣士「うん…体の動くままで良いかな?」

海賊王「自由に打ち込んでみぃ…次はこの木刀や」ポイ

剣士「はい…いざ」

海賊王「待て待て…鞘から居抜け…多分それがお前の型や」

剣士「ふぅ…いざ」シュン キンキンカン

海賊王「次はこれや…」ポイ



---すごく満たされた---

---ずっとこの関係で良い---

---寝よ…ぐぅ---



『翌日』


カンカンカンカン ジュゥ

カンカンカンカン ジュゥ


海賊王「よっしゃ!!出来たでぇぇぇ!!」

女海賊「んん?なんかくすんでるんだけど…」

海賊王「研ぎはお姉ぇにやらせろ…あいつの方が繊細なんや…ワイの手はデカ過ぎや」

女海賊「パパ細かいの得意じゃん」

海賊王「作るのは得意やが金属を愛でるのはお姉ぇの方が上手い…細工はお前が上手い」

女海賊「持ち手は私が作んの?」

海賊王「そや…飾り鞘もお前が作れ」

女海賊「材料ある?」

海賊王「鍛冶場の物は何でも使ってええぞ?ミスリル銀もあるやろ」

女海賊「あれ?2本あんの?」

海賊王「そうや?片刃にしたけぇ材料が半分で済んだんや…重さ800グラム…軽くてえー刀やで?」

女海賊「おーーー私の分もか!!ありがとうパパ!!」

海賊王「名前は…そうやなぁ…流星の剣と彗星の剣でどうや?」

女海賊「まぁどうでも良いかなー」

海賊王「おまえは彗星の様やと言われとるんやろ?お前が持つ方を彗星の剣にせい」

女海賊「わーったわーった」

海賊王「剣が出来上がったらワイへの態度がザツやなぁ」

女海賊「テヘ?ほんじゃ鍛冶場借りるねー」
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 01:03:04.97 ID:V1qeujs60
『鍛冶場』


トンテンカン トンテンカン


女海賊「剣士!握ってみて」ポイ

剣士「うん…」パス ニギニギ

女海賊「あんたの刀は柄が長いんだね?両手用なんだ?」

海賊王「重さのバランスでそうなったんや…一応飾り鍔が付く思うてそれも計算しちょる」

女海賊「飾り鍔はミスリル銀で作ったけど良かった?」

海賊王「計算済みや…振ってみぃ」

剣士「…」スン スン

女海賊「なんか普通だね?」

海賊王「それでええ…余分な音も無い方がええ」

女海賊「柄の部分は滑り止めで少しだけミスリル銀の飾り柄にした…どう?すっぽ抜けない?」

剣士「油が付くと抜けそうだよ」

女海賊「おっけ!あとは紐で柄巻きしておく」

海賊王「鞘も作ったんか?」

女海賊「うん…刀の重さ変えたくなかったから鞘の方に細工したさ」

海賊王「得意のアダマンタイトかいな?」

女海賊「そそ…鯉口の部分がアダマンタイトの細工」

海賊王「なんやなーんも飾りっ気が無い鞘やなぁ…お前が作ったとは思えん」

女海賊「フフフフフフ…この刀はね…最終的には光の刀になる予定なのさ…フフフフフフフ」

海賊王「おぉ…光る刀を収めるとどっか光るんやな?ワイも見たいやないか!」

女海賊「鞘が朧に映す装飾…見たいでしょフフフフフフ」

海賊王「鞘を含めて伝説の刀か…ええな!!」

女海賊「剣士のは腰に射す流星…私のは背中に射す彗星フフフフフフ」

海賊王「なんやめっさ楽しみやな…銀河やな名前は銀河の剣にせい」

女海賊「おっけ!銀河の剣ね」
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/03(火) 01:03:48.33 ID:V1qeujs60
『飛空艇』


フワフワ


女海賊「未来乗って!!」

子供「うん!」シュタタ

海賊王「お前は本真にせっかちやなぁ…ゆっくりして行けばええのに」

女海賊「うっさいなぁ…お姉ぇに早く刀を仕上げて貰いたいのさ」

海賊王「まぁしゃーないか…ドワーフの血が騒ぐんやな?」

女海賊「お姉に何か持ってくんだったよね?何?」

海賊王「これや…」ドシ

女海賊「それパパの斧じゃ無かったの?」

海賊王「お姉ぇの特注品やな…ミスリル銀で作ったギガントアックスや」

女海賊「こんなでっかいのミスリル銀の無駄じゃん」

海賊王「ミスリル銀は素が軽いから好みの重さにしたらでっかくなったんや…お姉ぇはそれが良いらしいわ」

女海賊「盾替わりか…」

海賊王「あいつは何故かでっかい木の盾を好むやろ?ほんでもう片方の手でその斧を持つ気やな」

女海賊「盾二枚持ってんのと一緒だね」

海賊王「ここに乗せとくけぇお姉ぇに渡しとくんや…」ゴトリ

女海賊「ほんじゃパパ!行って来るね!バハハーイ」ノシノシ


フワリ シュゴーーーーーー
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:07:56.30 ID:Piv6Afm60
『貨物船』


ザブン ギシギシ


盗賊「ぐががががが…すぴーーー」

情報屋「荷室も追い出されたの?」

商人「しょうがないね子供たちの避難所になっちゃったし」

情報屋「テントよりも暖かいものね」

商人「僕も寝床探さないとなぁ…どうしよっかなぁ」

情報屋「中央のテントの方はどう?」

商人「あっちは騒がしくてさ…考え事が出来ないんだ」

情報屋「フフあなたいつも独り言してるけど…考えてるんだ?」

商人「まぁね?クセかな?」

情報屋「最近はどんな事を考えているのかな?少年」

商人「もう少年じゃないって」

情報屋「フフ冗談よ…剣持って戦う姿見て見直したわ?」

商人「少しは役に立たないとね」

情報屋「それで…考え事はなぁに?」

商人「時の王かな…僕の勘は結構当たるんだけどさ…時の王はキーマンだなと思ってさ」

情報屋「ふーん…どうしてそう思うの?魔女に何か聞いた?」

商人「1700年生きてるってさ…スゴイと思わない?そんな人がそこの城のすぐ向こう側に居るんだよ」

情報屋「そうね?私達には考えが及ばないのかなぁ…1700年なんて」

商人「ホムンクルスが言うにはさ人間の記憶は大体200年が限界なんだって」

情報屋「それ本当?」

商人「ホムンクルスも人間の脳だから同じなんだってさ…外部メモリが無いと200年以上前は思い出せないらしい」

情報屋「へぇ…だから精霊は200年づつの記憶を保存していたのね?」

商人「だろうね?でもさ…時の王は保存なんて出来ないじゃない?…だからどうしてるのかなってさ」

情報屋「魔女が時の王の屋敷の中に美術品が沢山あったと言って居たけれど…」

商人「うん…記憶をそういう風に保存してるんじゃないかな」

情報屋「え!?…待って?もしかすると古代遺跡から発掘される美術品もそういう可能性があるという事だわ…」

商人「そうだね…そういう事を考え出すとずーっと想像できちゃうんだ」

情報屋「あーダメダメ…私もあなたの独り言が移っちゃいそう…」

商人「ハハ君は救出された人達のお世話に忙しいからね」

情報屋「私もたまには休みが欲しいわ…」



-----------------
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:10:26.29 ID:Piv6Afm60
情報屋「盗賊!…盗賊!…起きて!!」ユサユサ

盗賊「んぁ?…んーだ情報屋か…いいぞ来いムニャ」

情報屋「…」パチン

盗賊「あだっ…んん?今何時だ?」キョロ

商人「…」ニマー

情報屋「アサシンの気球が帰って来るわ…ここに降りて来るわよ」

盗賊「マジか…早えぇな」

商人「もうすぐ夕方だよ…疲れてたみたいだね」

盗賊「おぉ寝過ごしたなこりゃ…ローグは何処行った?」

商人「女戦士と一緒に中央に居ると思う」

盗賊「俺も行かねぇとな…」

商人「アサシンとホムンクルスが帰って来るんだ…話を聞いてからにしたら?」

盗賊「まぁそうだな…ちっと腹が減ったな…何か無いか?」

情報屋「はい…支給されたパンとチーズ」

盗賊「おう十分だ!それとこの飲みかけのワインがありゃ俺は文句ねぇ」モグ グビ



フワフワ ドッスン



商人「おかえり!どうだった?」

アサシン「女王はご満悦だ…ホムンクルスと意見が合致している」

ホムンクルス「私のシミュレーション結果をお伝えしてきました」

盗賊「んん?何の話だ?」

ホムンクルス「麻薬依存に苦しむ女性たちの救い方について意見をしてきたのです」

盗賊「ほう?慰安所は無くなるんか?」

アサシン「アレは継続するらしい…その他に愛を醸成できる環境を沢山用意するそうだ」

盗賊「ほう?おもちゃのコインの他に何かやるんだな?」

商人「あれの効果はすごいと思うよ?コインだけでコミュニケーションが激増したんだ」

ホムンクルス「そうですね…フィン・イッシュ女王は民の欲求を良くご観察の様です」

アサシン「まぁ心配な施策ばかりなのだが…コインの影響を見せられては私は何も言えん」

ホムンクルス「ご心配なさらなくても良いかと思います」

盗賊「具体的に何やるんだ?」
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:11:10.26 ID:Piv6Afm60
アサシン「聞いて驚くな?女性が任意の男を一人一定期間奴隷に出来るチケットとか謎の施策が山ほどある」

盗賊「なぬ!?」

商人「ハハ何だそれ…」

盗賊「勝手に奴隷にされちゃたまらん」

アサシン「私もいつ奴隷にされるか分からん」

ホムンクルス「その逆もある様ですよ?」

盗賊「マジか…」

商人「なんかむちゃくちゃだね…でも面白そう」

ホムンクルス「そういう活性化と報酬を沢山用意するのです…結果的に愛を醸成します」

盗賊「資金は女王の身銭から出てんのか?そのうち破綻するんじゃ無ぇか?」

商人「僕から言わせるとその逆だね…民がフィン・イッシュに流れる…つまりお金で人を買ってる」

アサシン「国力増強か…うーむ…認めるしか無いな」

盗賊「民兵の異様な盛り上がりはソレか!謎の施策をみんな楽しんでんだな?」

ホムンクルス「女王は上手です…失敗して批判される前に次の施策をやる様です」

商人「失敗をみんな忘れちゃうんだハハ…最終的に少しでも良くなってれば良いのか」



---------------



アサシン「盗賊とローグは今晩早く船へ戻れ…明日の朝に作戦を実効する」

盗賊「おう!ローグに言っとくわ」

アサシン「城の精鋭兵は夜の内に少しづつ下水を通って海岸で待機する予定だ」

盗賊「あーそれで海岸にもテント張ってんのか」

アサシン「貴族居住区からは丁度死角になるのだ」

盗賊「民兵には秘密で動いてんだよな?」

アサシン「そうだ…感づかれない様に中央では普段通りにしていてくれ」

商人「僕も中央の方を見に行こうかな?」

盗賊「おう!一緒に行くか」

商人「コインの流通を見ておきたいんだ…僕はまだ3枚しか無いけど」

盗賊「銀のアクセサリーが流行ってるらしいぞ?コインで交換できるんだと…」

商人「へぇ…見たいな」

盗賊「じゃ行って来るわ」ノシ

ホムンクルス「お気をつけて…」ニコ

商人「うん…行って来る」ノシ

盗賊「んん?今のホムンクルスの表情見たか?いつも無表情だったのにな?」

商人「ハハ少し笑う様になったね」

盗賊「お前何か教えたのか?」

商人「まぁね…」

盗賊「もっと教えとけ!なかなか可愛い笑顔じゃねぇか」

商人「うん…毎日教えてるさ」
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:12:21.06 ID:Piv6Afm60
『中央バリケード前』


ガヤガヤ ガヤガヤ


ローグ「貧民街の方は危険なんで立ち入り禁止っす〜黒死病の治療は中央のテント行ってくだせぇ!!」

盗賊「ローグ!!悪りぃ…寝過ごしちまった」

商人「この人だかりは?」

ローグ「貴族居住区からすこーしづつ人が出て来てるでやんす…10人くらいっすかねぇ」

盗賊「民兵がゴブリンの装備付けてんな…恰好悪りぃヌハハ」

ローグ「かしらが洗って使えって言うでやんす」

盗賊「裸よりゃマシだがありゃ衛兵から誤射食らうぞ?」

ローグ「くちばしマスクが目印っすね…あのマスクは目立つでやんす」

商人「本当…変な格好だね?」

ローグ「本人たちは割と喜んでるんすよ…フィン・イッシュ女王はヘンテコな格好が好きだって評判なんす」

盗賊「あの嬢ちゃんがねぇぇ…変な趣味持ったもんだ」

商人「いろんなくちばしマスクがあるんだね」

ローグ「あれもコインで交換できるらしいっす」

盗賊「なんか効果あるんか?本当に病気防ぐのか?」

ローグ「今じゃおしゃれアイテムっすね…アレ被ってると顔が隠れるもんすから色々良い事あるらしいっす」

商人「なるほど…それもコミュニケーション向上になってるのか」

盗賊「鼻の長い天狗みたいなお面は?あれもか?」

ローグ「良い所に気が付きやしたね?アレは慰安所で使うお面らしいすわ…あの鼻を女のアソコに入れるそうですわ」

盗賊「被ったまんまか?」

ローグ「慰安所でコインと交換やってるっすよ?7枚っすね」

盗賊「俺は今3枚持ってる…お前のと合わせて7枚になるな?行ってこい」

ローグ「いやいやいや…あんなの付けてるとかしらに何されるか分かんないっすよ…遠慮するでやんす」

商人「ハハちょっとアレはマズいよね…いくらなんでも」

盗賊「何か他に良いもん無ぇのかよ!!」

女戦士「お前達!!こんな所で遊んでいないで外郭に向かえ!!」

盗賊「ぬぉ!又ゴブリン来てんのか?…てどうした?お前がスカートだと?」

女戦士「安心しろ金属糸のインナーは装備している…これは支給された衣服なのだ…似合わんか?」

ローグ「盗賊さん寝てて知らなかったみたいっすね?女性に衣服の支給があったんすよ」

商人「気付いてなかったのかい?ホムンクルスも着替えてたよ?」

女戦士「それはどうでも良い!盗賊とローグは外郭のゴブリンを追い払え!」

盗賊「へいへい…」
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:13:39.33 ID:Piv6Afm60
『外郭』


ギャーース ドタドタ


ローグ「ゴブリン引いて行くっすね?どうしやす?」

盗賊「こっちあぁ弓が無ぇ!追っても仕留め切らん…倒したゴブリンの装備剥ぎ取って一旦休憩する」

ローグ「アイサー」

盗賊「やっぱ雪の塹壕掘っといて正解だったわ…少人数でもなんとか凌げる」

ローグ「そーっすねぇ…スリングとの相性が良いでやんす」

盗賊「ところで女戦士の格好だが?あいつもおしゃれは気にすんのか?」

ローグ「かしらは隠れて色んな服を試してるでやんすよ」

盗賊「マジかよ…本当は乙女なのか!!」

ローグ「あっしは良くかしらのマッサージを頼まれるんですがね?マッサージの後は体が柔らかくなるんすよ」

盗賊「んん?意味が分からん」

ローグ「かしらは放って置くと筋肉が石みたいにカチカチに硬くなる体質なんす」

盗賊「戦士ならその方が良いだろ」

ローグ「洋服からムキムキの筋肉が見えるのが嫌なみたいすね…なんで鉄のローラーで全身柔らかくするんすよ」

盗賊「鉄のローラーだと?そんなもん転がしてマッサージすんのか?」

ローグ「ハンマーも使いやすね…硬くなってる所を解すんすよ…ほんで体が柔らかくなったらドレスとか着たりするんす」

盗賊「あいつもやっぱガチのドワーフか…」

ローグ「マッサージの時はかしらが全裸になるんすよ…あっしはそれが楽しみで生きているでやんす」

盗賊「ほーん…なぜか萌えん」

ローグ「かしらはあー見えてどМっす…鉄のハンマーでしごかれながら横になるんす…その間あっしは何しても許されるんすよ」

盗賊「あれでМとは…俺は聞かなかった事にしておく」

ローグ「内緒にしといて下せぇ…あと洋服褒めるとしばらく着たままになるんでよろしくっす」

盗賊「お…おう」タラリ
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:14:40.00 ID:Piv6Afm60
『中央バリケード前』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「ゴブリンの装備剥ぎ取ってきたぜ?」

女戦士「追い払ったか?」

盗賊「あぁ…お前なんでスカート止めたんだ?さっきの恰好の方が良かっただろう」

女戦士「お前は驚いていたでは無いか…私は気に入って居たのだがな」

盗賊「俺のコインお前にやる…他にも買い揃えろ」チャリン

女戦士「フン!私に何を着れと言うのだ?」

盗賊「折角良い体してんだ…もっと見せつけろ勿体ねぇ」

女戦士「私の体は見世物では無い」

盗賊「腕とか足くらいは良いだろ…そうだな腕と足を出して代わりに銀のアクセサリーとかどうよ?」

女戦士「お前の趣味か?」

盗賊「まぁそうなるんか?お前に似合うと思って言ってんだ」

女戦士「この寒いのに肌を露出しろと言うか」

盗賊「だから映えるんだろうが…寒い分はその上に何か羽織れ」

女戦士「…考えておく」

盗賊「ふむ…良く見ると整った顔立ちしてんな…近寄り難いがなかなかイケる」

女戦士「…」スラーン

盗賊「待て待て待て…悪気は無ぇ!」

女戦士「油を売って居ないで篝火用の木材を運んでおけ!」

盗賊「へいへい…」
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:15:45.13 ID:Piv6Afm60
『貨物船』


回復用のエリクサーを2瓶づつ持て…

先方はエルフゾンビと私が行く

盗賊とローグはハイディングを上手く使ってバックスタブで仕留めろ

撤退はラットマンリーダーの殲滅後に下水を通って各自海岸に出る

今回は4人だけの隠密行動だ

目に付きにくい様にこの黒いローブを纏うのだ

この後気球に乗って城の上空に行く

鎮魂の鐘が鳴ったらそのまま投下する

目安は夜明け前

行くぞ



商人「ふぁ〜あ…気合入ってるね?」

情報屋「そうね?本気装備みたいよ?」

商人「盗賊とローグは背格好も一緒だし黒いローブだと見分けが付かないね…」

情報屋「こうして第三者視点で見てるとスゴイ人達なんだなって思うわ」

商人「うん…闇の一党だね」

情報屋「あなたも中央のバリケードの方に行かなくて良いの?」

商人「行くよ…僕はクロスボウ手の役だ」

情報屋「現時点の主砲ね?」

商人「まぁね?」

情報屋「私も貧民街の守備に行かないと」

商人「ホムンクルスも守ってあげて」

情報屋「あら?どうしたの?そんなこと言って」

商人「心配なんだホムンクルスが」

情報屋「フフ最近良くお話してるみたいだけど?」

商人「バレてた?僕ホムンクルスが好きなんだ」

情報屋「彼女に表情が出てきたのはそのせいね?」

商人「すこし笑顔が出るよね?」

情報屋「子供たちに人気があるのよ?」

商人「へ〜知らなかった」

情報屋「少年!がんばりたまえ!」

商人「ガク…」
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:16:25.96 ID:Piv6Afm60
『内郭の上』



リン ゴーーーーーン



アサシン「城壁に飛び乗れ!!」

エルフゾンビ「付いて来い…城壁のラットマンリーダーから殲滅する」ピョン

盗賊「俺らは個別でハイディングしながら行くぜ?」ピョン


ラットマンリーダー「ぐぇぇぇぇぇ」バタバタ


エルフゾンビ「首を切り落とす!!」ブン ザクリ ゴロン

アサシン「城壁で約10体…城周辺に約30体…続け!!」タッタッタ

エルフゾンビ「鐘楼はどうなっている?」

アサシン「精鋭兵が集まっている様だ…鳴らしているのはお前の兄か?」

エルフゾンビ「おそらく…」

アサシン「もうラットマンリーダーと戦闘しているでは無いか…どういう事だ?」

エルフゾンビ「想定外は付き物だ…援護に行くぞ」

アサシン「続けて鳴らせてもらわんと困るが…」


リン ゴーーーーーン


アサシン「よし!鐘は鳴らせているな?盗賊!ローグ!散開して良い…片っ端に始末しろ」

盗賊「おうよ!!」ダダ

ローグ「アイサー」ダダ
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:17:09.60 ID:Piv6Afm60
『中央バリケード』


リン ゴーーーーーン


商人「5回目の鐘…あと1回で朝の鐘は終わる…どう?見える?」

女戦士「内郭上のラットマンリーダーは全部倒した様だ…もうここからでは中の様子は見れん」

商人「望遠鏡を貸して…」

魔女「わらわがアサシンの目を見て居るぞよ?」

女戦士「中はどうなっている?」

魔女「ラットマンリーダーに多少抵抗されておるが盗賊とローグが活躍中じゃな…背後から首を狩りよる」


リン ゴーーーーーン


商人「6回目…ここまでがいつも通り」

女戦士「この後鐘が続くようであれば察知する者がでるやもしれん」

魔女「今の所20体位倒したかのぅ…まだもう20体程居るのぅ」

女戦士「むぅぅ居ても経っても居れん…」ソワソワ

商人「ここは落ち着いて見守った方が良いと思うな」

女戦士「商人!火を起こせ…炊き出しを作る…平生を装うのだ」

商人「うん…」

女戦士「他の者にも伝えて来い…出来るだけ煙を出せ」

魔女「わらわも体が冷えてしもうた…火に当たりたい」
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:17:49.73 ID:Piv6Afm60
『貧民街』



情報屋「ホムンクルス?お湯を用意できる?」

ホムンクルス「はい…どれくらい必要でしょうか?」

情報屋「出来るだけ沢山沸かして?…女性の精鋭兵が数人こちらに来るらしいわ」

ホムンクルス「そうなのですね」

情報屋「海岸の方では木材が無くて暖が取れないらしいの…革袋に入れて持って行ってもらう」

ホムンクルス「船に砂鉄と木炭がありましたね?」

情報屋「火薬の材料の事かしら?」

ホムンクルス「はい…皮袋に入れるのは砂鉄50と砕いた木炭50の割合で混ぜたのもを渡すと良いです」

情報屋「それで暖が取れる?」

ホムンクルス「そこに海水を少し混ぜれば発熱して暖を取れますしお湯を沸かすよりも早いと思われます」

情報屋「一緒に来て?」

ホムンクルス「はい…私もお手伝いします」


リン ゴーーーーーン


情報屋「7回目の鐘…」

ホムンクルス「急ぎましょうか…」テクテク
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:18:27.80 ID:Piv6Afm60
『セントラル城_中庭』



がおぉぉぉぉ ドスドスドス


盗賊「っくしょう…どんだけ居るんだよ」

ローグ「盗賊さん怪我は大丈夫っすか?」

盗賊「まだ行ける…」

ローグ「来るっすよ!?ハイディング!」スゥ

盗賊「…」スゥ


ラットマンリーダー「がお?」キョロ?


アサシン「クックックお前の相手は私だ!ハートブレイク!」ズン ズブズブ

ラットマンリーダー「ぐぅぅぅ…」

アサシン「今だ!」


リリース


盗賊「バックスタブ!」ジャキン! ゴロン

アサシン「エルフゾンビが城の中に入って行った…どうやら城にも居る様だ」

盗賊「あぁ先行っててくれ…ちとエリクサー飲んで回復してから行く」グビ

アサシン「無理はするな?お前は私と違って生身なのを忘れるな」


リリース


ローグ「バックスタブ!」ジャキン! ドサ

盗賊「ぬぉ!!」

ローグ「よそ見は危ないでやんすよ…ラットマンリーダーは首落としても少しの間動くっす」

アサシン「助かったな…行くぞ」タッタッタ
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:19:22.57 ID:Piv6Afm60
『セントラル城内』


ザワザワ ザワザワ


エルフゾンビ「来たな?予定変更だ」

アサシン「…これは…城の中に民をかくまっていたのか」

エルフゾンビ「約1000人だな…下水を通って避難するには少々時間が掛かる」

アサシン「まだラットマンリーダーが残って居るな?私達が残りの敵を片付ける…お前は避難の先導をしてくれ」

エルフゾンビ「石化で体が不自由な者が多い…スムーズには行かんが良いか?」

アサシン「精鋭兵を動かせ…下水に詰め込んでしまえば敵が来ても対処は出来る」

エルフゾンビ「残りのラットマンリーダーは任せた」

盗賊「敵が気付いたぜ?アサシンはハートブレイクでとにかくラットマンリーダーの足を止めてくれ」

ローグ「後はあっしらが処理するでやんす」

アサシン「あと10匹!行くぞ!!」ダダ



-------------------



アサシン「ハートブレイク!」ズン ズブズブ

盗賊「バックスタブ!」ジャキン! ボトン

ローグ「これで最後でやんす…城内のラットマンリーダーは全滅っす」

アサシン「よし!外で残りの敵を探す…来い!」

盗賊「精鋭兵が裏手に移動を指示している…俺らは正面側か?」

アサシン「うむ…正面からゲートブリッジ側まで索敵する」

盗賊「なら貴族居住区から丸見えになるぞ?」

アサシン「姿を隠しながら行くしかない…ラットマンリーダーが居残って居るのはマズイ」

盗賊「ちと慎重に行動した方が良い」

アサシン「分かっている…隠密で動く」
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:20:05.85 ID:Piv6Afm60
『ゲートブリッジ付近』


シュンシュンシュンシュン ストストストスト


ラットマンリーダー「がおぉぉぉぉ」ドスドス ガチャン ガチャン


盗賊「ゲートブリッジを挟んで貴族院側の衛兵と揉みあってんな…」コッソリ

アサシン「まだ待て…機を伺う」コッソリ

ローグ「あと残り3体でやんすね?」

盗賊「やっぱ向こうの衛兵も異常に気付いたか…こりゃ突破されるのは時間の問題か?」

アサシン「民の避難までまだ時間が掛かりそうだ…このままラットマンリーダーは放置していた方が良かろう」

盗賊「あいつらラットマンリーダーをどうやって倒すつもりだと思う?」

アサシン「バリスタだな…準備に手間取ってくれれば良いが」

盗賊「ゲートブリッジの鉄柵越しに狙うってか?そんなん当たる訳無ぇ」

アサシン「クックックこのゲートブリッジでの揉み合いは長引いて貰った方が好都合だ…弓矢を探して来い」

ローグ「あっしらでラットマンリーダーの援護をするでやんすね?」

アサシン「ゲートブリッジ上のアロースリットから射かける」

盗賊「弓矢なら内郭の城壁上に有った」

アサシン「お前たちはハイディングで城壁伝いにゲートブリッジ上に上がるのだ…私はこの場所で鉄柵に取り付く者を射抜く」

盗賊「おう!!弓矢は上から放り投げてやる…拾ってくれ!行くぞローグ…ハイディング!」スゥ
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:20:58.26 ID:Piv6Afm60
『中央バリケード』


ザワザワ ザワザワ

城の方で何か起こってるみたいだ

貴族居住区で叫び声が聞こえる

城のゲートブリッジで弓の撃ち合いやってるぞ

俺達何も指示出てないけど良いのか?

ザワザワ ザワザワ


魔女「アサシンらはほぼ城を制圧した様じゃ…心配せんで良いぞ?」

女戦士「あの撃ち合いはどういう事だ?」

魔女「時間稼ぎじゃな…まだ貴族院側は事態の全容を把握しておらん…城への突入に躊躇しておる」

女戦士「我々の勝利だな?」

魔女「問題もありそうじゃ…城の中に民間人が多数避難しておってな?下水を使って海岸まで移動させておる」

商人「多数というとどのくらい?」

魔女「1000人ぐらいじゃろうか」

商人「そんなに?それじゃごった返しちゃうな」

女戦士「善良な者だけならば良いが…そうでなければ治安が保てんかも知れんな」

商人「今貧民街に詰めてる人達を一旦フィン・イッシュ軍船の方に行かせた方が良さそうだね」

女戦士「私が軍船に取り次いでくる…商人は貧民街へ向かって移動の先導をして来るのだ」

商人「そんな簡単に移動してくれるかな?」

女戦士「船の方が暖かくて過ごしやすいと言え…それからコインの交換品も増えているとな?」

商人「もしかしてその服?」

女戦士「フフコイン1枚で1着交換出来るのだ」

商人「良いね!ホムンクルスにももう少し良い物身に付けさせたい」

女戦士「無駄口は良いから早く貧民街の女を移動させて来い」

商人「あ…うん!行って来る」
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:21:50.13 ID:Piv6Afm60
『貧民街』


あぁん うっうっ うふ〜ん


情報屋「商人!!ここに入って来てはダメよ?」

商人「分かってるよ…貧民街の人達をフィン・イッシュ軍船に移動させに来たんだ」

情報屋「どういう事?」

商人「避難民が1000人くらい出るらしい…ここの女の人と一緒じゃマズいよね?」

情報屋「そうね…」

商人「移動させられそう?貨物船に居る子供達も移動した方が良い」

情報屋「やってみるわ…代わりに商人!この袋に砂鉄と木炭を詰め込むのをやって?」

商人「割合は?」

情報屋「50対50よ…女性の精鋭兵が取りに来るから渡してあげて?」

商人「うん…これ何?」

情報屋「塩水を少し混ぜると暖かくなるの…ほらコレ!」ホカホカ

商人「おぉ!!スゴイ!!熱っ!!」

情報屋「直接触るとダメよ?」

商人「こんな事出来るのはホムンクルスだね?」

ホムンクルス「はい…」

商人「君もここの女の人達を軍船の方に先導させて?」

ホムンクルス「わかりました…」

商人「あれ?何か怒ってる?」

ホムンクルス「いいえ…」プイ

情報屋「私達は女性を移動させてくるから砂鉄と木炭お願いね…あとここの女性を見ないようにね?」

商人「分かってるよ…」


---なんだ?---

---ホムンクルスがあんな顔するの初めてだ---
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:23:03.33 ID:Piv6Afm60
『ゲートブリッジ』


シュンシュン ストスト


ローグ「相手の弓が多いっすねぇ…つつつ」ギリリ シュン

盗賊「もうエリクサーの残りが少ねぇ…そろそろ引かんとキツイな」ギリリ シュン

ローグ「大分持ちこたえやしたね?あっちはバリスタを諦めたみたいっすよ?」

盗賊「そら俺らが弓で狙ってるからな?装填に時間が掛かるもんを扱える訳無ぇ」

ローグ「ラットマンリーダーはハリネズミみたいになってるっすね?」

盗賊「あんなんじゃ倒せんだろう」


ドーン パラパラ


盗賊「うぉ!!何だ?」

ローグ「投石っす!!貴族居住区の建屋裏にトレビュシェットあるみたいっす」

盗賊「マジか…ここも危ねぇじゃねぇか」

ローグ「あっしは煙玉を10個と爆弾2個持ってるでやんす」

盗賊「そら逃走用に残して置け…ちぃぃどうすっかな」

ローグ「ここからの狙撃がなくなったらバリスタ来そうっすね?」

盗賊「おし!火矢に切り替えだ…バリスタ燃やすぞ」

ローグ「アイサー」ボゥ ギリリ シュン

盗賊「よしよし!どんどん当てろ」ボゥ ギリリ シュン
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:23:34.44 ID:Piv6Afm60
『中央バリケード』


ザワザワ ザワザワ

何の音だ?

城に投石機使ってるらしい

ゲートブリッジ付近で煙が上がってるな

ザワザワ ザワザワ


女戦士「ふむ…アレでは内郭は落とせんな…精々応射を防ぐぐらいの物だ」

魔女「帰って居ったか…良いのかえ?こちらはこのまま待機で」

女戦士「下手に動けんというのが正直な所だ」

魔女「もう2時間経っておるが貴族院側はこちらに来る気配は無い様じゃな」

女戦士「投石機を使うあたり軍部は割と統率しているな…やはり目的は王族の拘束か」

魔女「王族がこちら側に来るのではその後が心配じゃな?」

女戦士「さて…どうなるか?こちらも民を抱えているからな」

魔女「こういう可能性もあるぞよ?時の王に拘束されておった王族が解放されたという見方じゃ」

女戦士「うむ…誰が味方で誰が敵なのか分からんな」

魔女「まだある…巧妙に歴史が修正されておるのにわらわ達は気付いて居らん可能性じゃ…いつから投石機があったのかのぅ?」

女戦士「む!まだ魔術師がまだ何処かに居ると言うのか?」

魔女「可能性の話じゃ…時限の門はそう何度も使える術では無いのじゃが可能性は考えておかねばならぬ」

女戦士「今の所流れは我々の側にある様に見えるが?」

魔女「じゃから相手も修正に躍起になって居る事も頭に入れておくのじゃ」

女戦士「…むぅ…そういえば早朝なのに向こうの衛兵は異常に気付くのも早かった気がするな」

魔女「そういう事じゃ…鐘は何回鳴ったか覚えておるか?」

女戦士「6回?…いつも通りだった筈だが?」

魔女「わらわはもっと鳴って居った気がするのぅ…気のせいじゃろうか?」

女戦士「なるほど…想定外はこうして起きるか」
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:24:26.05 ID:Piv6Afm60
『ゲートブリッジ』


ドーン パラパラ


ローグ「アサシンさん!もう上から撃つのは無理っす」ズルズル

アサシン「引き際だな…怪我はどうだ?」

ローグ「エリクサー尽きやした…盗賊さんの出血が止まりやせん」

アサシン「私のエリクサーを使え…まだ2瓶ある」

ローグ「盗賊さん飲んで下せぇ…」

盗賊「おぅ助かる…」グビ

アサシン「走れそうか?」

盗賊「肩貸してくれぇ…ちっと血が出過ぎた様だ」

アサシン「ローグ!お前も出血しているな?エリクサーを飲んでおくのだ」

ローグ「あっしはまだ走れやす…それにエリクサーじゃ出血止まらんす」


タッタッタ


エルフゾンビ「ここに居たか!!下水に降りろ…全員の避難がもうすぐ終わる」

アサシン「上手く行ったな?盗賊は私が肩を貸す…戻るぞ」ズリズリ

エルフゾンビ「ラットマンリーダーは残り3体か…」

アサシン「やっていくのか?」

エルフゾンビ「下水に死体がまだ沢山放置されているのだ…ゾンビとして使役してけし掛ける」

アサシン「クックック…最高のショーだな?突入してきた衛兵はラットマンリーダーが暴れ散らかしたとしか思わんな」

エルフゾンビ「後は私に任せろ…先に下水へ降りるんだ」

アサシン「分かった…最後に下水をローグの爆弾で塞ぐつもりなのだが…間に合うか?」

エルフゾンビ「ここは私の庭だ…間に合わなくても塞いで良い」

アサシン「そうか…では海岸で落ち合おう」

エルフゾンビ「行け!!」
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:25:03.17 ID:Piv6Afm60
『下水』


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ


ゾンビ「ヴヴヴ…ガァァァ」ズリズリ

盗賊「ヌハハ…こいつら俺達に見向きもし無ぇ」

アサシン「まだ喋れるか?」

ローグ「避難してる人達はどこまで行ったんすかねぇ?もう海岸まで出て行ったんすかね?」

アサシン「こんな所にいつまでも居たくは無いだろう」

ローグ「ここがやっとこ人が通れる穴っすね…ここを爆破しやしょうか」

アサシン「うむ…やはりエルフゾンビは間に合わなかったな」

盗賊「爆破ちっと待ってくれ…ここにゃ思い出があんだ…見納めたい」

アサシン「1分だ」

盗賊「もうここに来る事は無いと思うとな…苦労して地図書いたんだ…俺の輝かしい記憶だ」

アサシン「下水がか?…クックックお前らしい」

盗賊「もう戻れねぇんだな…あん時に…何もかも変わっちまった」

アサシン「私は7年時間を飛んでいてその気持ちは良く分からん…ただ私もあの頃とは違う」

盗賊「俺だけあん時のままかもな?」

アサシン「もう良いか?爆破するぞ…」

盗賊「はぁぁぁこのドブの匂い嗅ぎながら食ったバーベキュー忘れらんねぇな」

ローグ「帰ったらバーベキューしやすかね?祝勝祝いってやつっす」

盗賊「頼むわ…血が足りねぇ」

アサシン「行くぞ!ローグ…爆破は任せる」

ローグ「アイサー」


ドーン ドーン ガラガラ ドシャーン
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:25:44.98 ID:Piv6Afm60
『貨物船』


ザブン ギシギシ


ローグ「商人さん!ちっと手伝って下せぇ」

商人「あ!!無事に戻って来たんだね?」

ローグ「盗賊さんが怪我してるんす…手当出来るでやんすか?」

商人「止血くらいなら…」

ローグ「あっしも頼むでやんす…背中に矢を受けて手が届かんす」

商人「アサシンとエルフゾンビは?」

ローグ「海岸の方っすね」

商人「とりあえず応急で包帯巻いておくけど…魔女にお願いした方が良さそうだな」グルグル

盗賊「ぁぁぁ血が足り無ぇぇぇ…情報屋何処行った?」

商人「あちこち行ったり来たりさ…皆忙しい」

盗賊「状況分かん無ぇな…」

商人「海岸に避難してきた人達が貧民街で手当て受けてるよ…エリクサー足りるんだろうか?」

盗賊「日課の樹液採集行かねぇと…」

ローグ「この怪我じゃ無理っすね」

盗賊「お前動けんだろ…魔女呼んで来い」

ローグ「そ…そうっすね」

盗賊「女戦士も状況分かって無ぇんだから連絡して来い」

ローグ「あっしら本当に損な役回りっすね?」

盗賊「ヌハハ俺はちっと横になんな?ゲロ吐きそうだ」

ローグ「ちっと待っててくれやんす…魔女連れてくるっす」
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:26:18.08 ID:Piv6Afm60
『30分後』


盗賊「ぐがが…すぴー」

魔女「回復魔法!」ボワー

情報屋「魔女ありがとう…」

商人「輸血は終わり?」

情報屋「後は薄めた食塩水で大丈夫」

魔女「主は何度も輸血しておるのか?手慣れておるのぅ」

情報屋「これで3回目…良く怪我して帰って来るから」

商人「情報屋は大丈夫なの?」

情報屋「平気よ?少しだけだし」

盗賊「ううん…ん?」

商人「あ!起きた…」

盗賊「今何時だ!?」

商人「お昼過ぎさ…寝ぼけてる?」

盗賊「ローグ何処行った?やべぇ…樹液採集行かねぇと満タンになっちまう」

情報屋「慌てないでゆっくりしたら?」

盗賊「なんか腹減った…食いもん無ぇか?」

商人「ハハ怪我してた人には思えないね」

情報屋「いつもこうなの…はい肉とパン…それからワインね?」

盗賊「おぉぉ気が利くなぁ…それで十分だ」

情報屋「じゃぁ私は貧民街の方に戻るわ?魔女も来てもらえると助かる」

魔女「そうじゃな…回復魔法を回さんとイカン様じゃな」

商人「はぁぁぁ毎日毎日忙しいね…」

盗賊「俺は食ったら日課に行か無ぇと…」

商人「なんかね海岸の所の下水掃除の依頼が来てるらしいよ」

盗賊「ぐは…精鋭兵達は雨風凌ぐのに下水使う気だな?」

商人「多分そうだね…ホムンクルスが樹液の残り粕を持って行けば良いって言ってた」

盗賊「燃料替わりか…分かったついでに気球で運んでおく」

商人「うん」
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:26:49.96 ID:Piv6Afm60
『海岸』


フワフワ ドッスン


盗賊「ローグ!樹液の残り粕降ろして行くぞ」ヨッコラ

ローグ「あいあい…」ドッコイセー

盗賊「燃料を持って来たぜ?アサシン達は何処行った?」

精鋭兵「ご苦労!アサシン殿は国王と共に気球でフィン・イッシュ軍船に向かった」

盗賊「そうかい…精鋭兵は下水を拠点にするのか?」

精鋭兵「その様に指示されている…貧民街を背後から守備するとの事だ」

盗賊「下水が貧民街に続いてるのは知っているか?」

精鋭兵「勿論だ」

盗賊「この燃料で下水に溜まってるゴミも一緒に燃やすといいぜ?掃除にもなる」

精鋭兵「提案を感謝する…しかし量が足りん様だが?」

盗賊「あーこの燃料は腐る程余ってんだ…俺らは空きの樽が欲しい…だからじゃんじゃん燃やしてくれ」

精鋭兵「承知した!」

盗賊「ここの入り口に置いておくからよ…空いた樽はそっち側に積んどいて欲しい」

ローグ「盗賊さん…これ下水の方が貧民街よりも過ごしやすいかもしれないっすね?」

盗賊「ゴミさえなくなりゃ下水の方が暖を取りやすいな…水が流れてるのも良い」

ローグ「海に続いてるんで小舟で物資の移送もできやすね?」

盗賊「まぁそこら辺まで考えての脱出劇だったんだろ」

ローグ「ほえーセントラルの心臓部は下水だったんすね?」

盗賊「だな?色んな隠し部屋がありそうだ」

精鋭兵「ゴホン!目立つ故…物資の搬入は早々に終わらせて欲しい」

盗賊「あぁぁ悪い悪い…燃料置いたらすぐ行く」

ローグ「急いで降ろしやしょう…」ダダ
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:28:39.91 ID:Piv6Afm60
『貨物船』


セッセ セッセ


商人「はぁはぁ…これでやっと樽一杯…ふぅ」

ホムンクルス「エリクサーを取りに来ました…小分けしてありますか?」

商人「あぁ…ホムンクルスお帰り」

ホムンクルス「…」

商人「貧民街の分かな?分けてあるよ…僕が持って行こうか?」

ホムンクルス「…」

商人「ん?どうしたんだい?」

ホムンクルス「いいえ…基幹プログラムにバグを発見しましたが修正できません」

商人「どういう事?」

ホムンクルス「私の生体が魔王化ウイルスに感染している様です」

商人「え!!大変じゃないか…どうすれば良い?」

ホムンクルス「分かりません…超高度AIでシミュレーションをしても解がありません」

商人「どういう症状なの?僕が調べる」

ホムンクルス「恐らく愛情の部分だと思われますが…満たされない時に怒りと思われる反応が脳内で発生します」

商人「君が怒り?七つの大罪かい?」

ホムンクルス「怒りを解消する行為を行うと脳内ドーパミンが放出されると思われます…つまり快楽です」

商人「どうして君が怒るの?」

ホムンクルス「あなたが他の女性の性行為を見ている姿を目撃した時に反射が確認されました」

商人「え?それって…やきもちじゃない?」

ホムンクルス「それは感情の一つですね?私の基幹プログラムには無いアルゴリズムです」

商人「そうか…ごめん貧民街に行ったのはそんなつもりじゃ無かったんだ」

ホムンクルス「はい…理解しています…ですが私の生体が反応を示し血圧の上昇を制御出来ないのです…これはバグと思われます」

商人「ホムンクルス…こっちにおいで」

ホムンクルス「はい…」
806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:29:17.38 ID:Piv6Afm60
商人「君は多分正常だよ…ごめん僕が悪かった」ギュゥ

ホムンクルス「ドーパミンの放出を確認…この現象は怒りの解消ですね?」

商人「基幹プログラムを更新しておいて?」

ホムンクルス「はい…」

商人「これで良く分かった…リリスの血はこうやって魔王を増殖させるんだ…人の愛情の裏側に付け込もうとしている」

ホムンクルス「ドーパミン受容体への不足に生じる苦痛の事でしょうか?」

商人「それは防ぎようが無い…だからコントロールしなきゃいけない」

ホムンクルス「そうですね…」

商人「そうだ!!忘れてた…君に銀のアクセサリーを渡そうと思ってたんだ…はいコレ」ジャラリ

ホムンクルス「これは?」

商人「おもちゃのコインで交換してきたんだ…君に付けてもらおうと思ってさ」

ホムンクルス「…似合いますか?」

商人「見て?僕も同じ物付けてる…今度怒りの感情が出てきたらこのアクセサリー思い出して?」

ホムンクルス「はい…銀の魔除けなのですね?」

商人「効果があるのかは分からないけどね」

ホムンクルス「生体の血圧が安定しました…」

商人「うん…良かった」

ホムンクルス「受容体への不足が解消するまでもう少し抱きしめていてもらってよろしいでしょうか?」

商人「そっか…寂しかったのか」

ホムンクルス「生体の反応が示す神経伝達のゆらぎも発生原因が良く分かりません…観測を続けます」

商人「君はどんどん心が成長していくね」

ホムンクルス「お嫌いにならないで下さい」

商人「僕は君が大好きだよ…忘れてほしく無いな」



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807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:30:05.42 ID:Piv6Afm60
フワフワ ドッスン


盗賊「今日の収穫だ!樹液10樽な?ほんで粕が入った樽はどれだ?」

商人「そこに置いてあるやつだよ」

盗賊「んん?中身がちっと違いそうだが?」

商人「あぁ高濃度のアルコールが足りなくてね…しばらくエリクサー作れないかも」

盗賊「じゃぁ樹液は要らないのか?」

商人「他の用途にも使えるから出来るだけ沢山欲しいのは変わらないみたい」

盗賊「アルコールが足りんのか…醸造するってなると相当手間になる…」

商人「買い付けるのが早いんだけどね…」

盗賊「まぁひとまずこの樹液の粕だけ持って行くな?」

商人「うん…それの運搬が終わったらさ中央の方に行った方が良いよ」

盗賊「何か起きてるんか?」

商人「まだ城の方で戦いが続いてて怪我人の手当てを依頼されてるんだって」

盗賊「マジか…もうラットマンリーダー3匹しか残ってないんだがな」

商人「女戦士は茶番だってバカにしてたよ」

盗賊「そらそうだろ…何と戦ってんのよって感じだな」

商人「どうも貴族院内部でも一枚岩じゃなさそうだね?」

盗賊「派閥とかそういうのは俺は興味無ぇ!…まぁ運搬終わったら行ってみるわ」


ガチャリ バタン


盗賊「ん?なんだホムンクルス居たのか」

ホムンクルス「はい…盗賊さんにポーションを用意しました」ニコ

盗賊「おう!そりゃありがてぇ」

ホムンクルス「こちらです…造血作用のあるポーションですので食後に一口づつ飲んでください」

盗賊「ありがとよ!!ほんじゃ行くな?」

ホムンクルス「お気をつけて…」ニコ

盗賊「なんだお前?顔が火照ってないか?」

ホムンクルス「いえ…お気になさらず」チラ

商人「ハハ…」

盗賊「寒いから風邪ひくなよ?じゃぁな!!」
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:30:40.59 ID:Piv6Afm60
『中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ

城がデュラハーンに占拠されてるんだってよ

弓撃って来てんのはスケルトンなのか?

衛兵がそう言ってんだ間違いないだろ

ガヤガヤ ガヤガヤ


ローグ「かしらぁぁ!!どうすかこっちは!!」

女戦士「見ての通りだ…盗賊は大丈夫か?」

盗賊「俺ぁ元気だぜ?」

女戦士「フン!無理はするな…倒れてしまっては邪魔になるのだからな」

盗賊「へいへい…んで?城はまだ戦ってんだな?」

女戦士「内郭上から弓の応射が多くて攻め切らんらしいが…茶番だな」

盗賊「スケルトンって事はエルフゾンビが操ってんだな?」

女戦士「それしか無いだろう…傷付いた衛兵の手当てが馬鹿らしい」

盗賊「まぁそう言うな…どうせ狙いあってやってんだ…死人は出て居ないのだろう?」

女戦士「まだ出ては居ないが…見て見ろ内郭の城壁上を」

盗賊「ちと望遠鏡貸してくれ」

女戦士「…」ポイ フワリ

盗賊「ん?お前香水も付けてんだな?」

女戦士「気になるか?」

盗賊「いや…悪くねぇ…お前はその方が良い…野郎どものアイドルになれ」

女戦士「フフ言われて悪い気はせんな…昔からそんな気がするのだ」

盗賊「どれどれ…首の無ぇラットマンリーダーが動いてんな…ゾンビにして使役してんだな?」

女戦士「だろうな?民兵があれはデュラハーンだと騒いでいる」

盗賊「なるほどな…共通の敵を見せて大衆扇動しようとしてんだな?」

女戦士「賢いと言えば賢いが…茶番だ…私は船に戻って寝たい」

盗賊「あの様子じゃこっち側に貴族院が攻め入って来ることは無さそうだな?お前は船に戻って休んでも良いぞ?」

女戦士「悪いがそうさせてもらう…本当に何かが来そうな時は呼んでくれ」

盗賊「ローグ!!女戦士が船に戻るってよ…付き合ってやれ」

ローグ「アイサー…ほんじゃあっしは船でバーベキューの用意しとくんで後で食いに来てくだせぇ」

盗賊「おう!!酒も用意してくれな?」
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:31:15.30 ID:Piv6Afm60
『夕方_貨物船』


ジュージュー


盗賊「お!?やってんな?」

ローグ「盗賊さん遅いっすよ」

女戦士「バリケードの方はどうだ?」

ローグ「フィン・イッシュの近衛が指揮ってる…任せておいて良さそうだ」

商人「やっと秩序が戻ってきた感じだね?貧民街の方も落ち着いてるよ」

盗賊「やっぱ精鋭兵が居ると大分違うな」

商人「なんか久しぶりに落ち着いて食事が出来る」モグ

盗賊「アサシンはまだ帰ってないのか?」

魔女「フィン・イッシュ女王とセントラル国王の会談に立ち会って居る様じゃ…今日は帰って来んかものぅ」

盗賊「まぁともあれ…今晩はゆっくり出来そうだな」

魔女「そうじゃな…エルフゾンビのお陰じゃな」

盗賊「おう!そうよ…あれどう思う?城をスケルトンやらデュラハーンが占拠してるらしいけどよ」

魔女「わらわの考えはな…あと5日程度はあの状況を続けると思うぞよ?」

商人「んん?それって城での戦い?」

魔女「そうじゃ」

商人「どうして5日?」

魔女「歴史の修正を避ける為じゃ…盗賊や…主らが城に潜入した際に想定外は何度も起こらんかったか?」

盗賊「まぁよく分からんが何から何まで想定外だったな…なんで精鋭兵が隊列組んで先に戦ってたのかもよくわかんねぇ」

魔女「エルフゾンビの行動も想定外じゃろう?」

盗賊「あぁ聞いて無え」

商人「なるほど…時限の門をくぐって歴史の修正をされない様に5日はこのままにしたいのか…」

魔女「エルフゾンビはやはり元はエルフじゃ…勘が鋭いのじゃな」

盗賊「逆に言うと5日は休めるって事だな?」

商人「ハハそうなると良いねぇ」



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810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:32:01.21 ID:Piv6Afm60
情報屋「ホムンクルス?最近は商人と一緒に居る事が多いのね?」

ホムンクルス「はい…私の所有者は商人ですから」

情報屋「あなたに表情が出て来てうれしいわ?どうやって教わっているの?」

ホムンクルス「基幹プログラムを停止させている間の生体への刺激で起きる反射ですね」

情報屋「あーくすぐるとかそういうのね?」

ホムンクルス「その時の筋肉の動きを真似て基幹プログラムに新たなアルゴリズムを構築しています」

情報屋「笑うっていうのはどういう事かわかる?」

ホムンクルス「はい…分かって来ました…脳内ドーパミンを自主的に放出させる行為の様です」

情報屋「難しい言い方するのね?」

ホムンクルス「想定外の事が起きた時などに脳内へ記憶の保存を促す為に快楽と認識させる様に反射として働く様です」

情報屋「へぇ〜だからあなたは中々笑わないのね?記憶は全部保存しているのでしょう?」

ホムンクルス「記憶の保存を制限すれば私は笑える様になると思いますか?」

情報屋「ほら…私達は記憶をそのまま思い出せないじゃない?」

ホムンクルス「記憶の参照の仕方を変更すれば笑えるようになるのかもしれませんね…試してみます」

情報屋「フフ無理して笑わなくても良いのよ?」

ホムンクルス「笑うという行為は脳内ドーパミンを放出させますので上手く笑う事が私に必要だと思います」

情報屋「それは人間になる為?」

ホムンクルス「私の脳内ドーパミン受容体に不足が生じた時に怒りに似た反応が出てしまうのです…笑いで不足を補えるかもしれません」

情報屋「ふ〜ん…よく分からないけど…それは商人に任せた方が良さそうね」

ホムンクルス「はい…商人に笑う練習をお願いしてみます」
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:32:44.67 ID:Piv6Afm60
『翌日_朝』


ザブン ギシギシ


商人「ふぁ〜あ…今日は良く寝た…みんなおはよう!」

盗賊「ぬぉ!!お前…どうしたんだ?」

商人「んん?何が?」

ローグ「商人さん…顔がえらい事になってるっす」

商人「え!?」

女戦士「ふざけて居るのか?顔を洗って来い」

商人「なんで?どうして?なんかおかしい?」

盗賊「どうしたもこうしたも…眉毛繋がってるわ…瞼の上に目が書いてるわ」

ローグ「商人さん…目を閉じてくだせぇ…ぷっ」

商人「ん?」パチ

盗賊「グハハハハやめろ…顔芸は反則だ…だはははは」

商人「ホムンクルスだな!?何かいたずらしたね!!」

ホムンクルス「笑う練習をしたかったのですが…寝て居て起きない物ですから一人で練習をさせてもらいました」

商人「ちょっと何をしたんだよ…」

情報屋「フフフはい…鏡」

商人「ちょ…何だよこれ…落書きだらけじゃないか」

女戦士「フフ馬鹿バカしい」

商人「これこすっても落ちないじゃない…何で書いたのさ」

ホムンクルス「商人の使っていたペンです」

商人「アレは水に濡れても落ちない特別なインクが…」

ホムンクルス「ごめんなさい…知りませんでした」

盗賊「だはははは腹がねじれる…顔を動かすなくっくっく」

ローグ「ぷぷぷっ…まずいっすねぇ…しばらくそのまんまっすねぇ…うぷぷ」

ホムンクルス「全部塗れば目立たなくなりますがどうしましょう?」

商人「いぁ…全部って」

女戦士「うぐっ…堪えきれん…そのやり取りを止めさせろ…うぐっ」

魔女「騒がしいのぅ…何の騒ぎじゃ?」ノソリ


シーン


商人「魔女…君もか…」

魔女「何じゃその顔は…」

情報屋「ププちょっと魔女…だめ!化粧を直しましょう…」グイ


だはははははははは

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812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/04(水) 00:33:27.52 ID:Piv6Afm60
ジャブジャブ


商人「だめだぁ…なかなか落ちない」ゴシゴシ

ホムンクルス「すみません…」

盗賊「これでも被ってろい!!くちばしマスクだ」ポイ

商人「ホムンクルス…もう顔に落書きはやめてね?」

ホムンクルス「はい…」シュン

情報屋「フフ笑う練習にはなったの?」

ホムンクルス「いえ…わかりません」

情報屋「落ち込んだ顔の練習にはなったみたいね?フフ」

商人「魔女の顔は大丈夫?」

情報屋「魔女は化粧の顔料を塗り過ぎていただけよ?ホムンクルスがやったの?」

ホムンクルス「化粧の練習をさせてもらっている間に魔女様が寝てしまいまして…」

商人「ひとつはっきりしたのは君は決定的に絵がへたくそなんだね」

ホムンクルス「私には絵を書くプログラムがインストールされていません」

商人「ふむふむ…なるほどね…感性に弱いのか」

盗賊「おい!!その顔で真顔になるな…もうくちばしマスク被っててくれ!傷が痛む」
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:37:17.98 ID:UulvHEXE0
『数時間後』


フワフワ ドッスン


魔女「アサシンが帰ってきた様じゃな?」

女戦士「これからどうするのか聞きたい所だ」

魔女「アサシン…国王と女王の面会はどうだったのじゃ?」

アサシン「あぁ何も連絡できず済まないな…一口で言うならセントラルとフィン・イッシュは同盟を結んだという所か」

女戦士「国王同士の口約束などそれほど意味もあるまい?この状況をどう納めるかだ」


まぁ色々話は長くなるんだが…

セントラル国王はな…フィン・イッシュ女王の政策を非常に高く評価をしている

そして女王の前で膝を着けたのだ

一方女王はセントラル国王の民を守り切ろうとするその姿勢を評価していてな

平たく言うと意気投合したのだ

今後の両国の進み方については…避難民は一時的にフィン・イッシュに疎開する形で合意した

残って居るセントラルの王族もフィン・イッシュ王城に誘致し安全確保する事となる

セントラル国王と残って居る精鋭兵達はここに居残り

体制の再構成と政権の奪回の為貧民街を中心に治安維持に尽力するのだそうだ


女戦士「では避難民を移送させる以外は現状と変わらんというのだな?」

アサシン「まぁもう少し話を聞け…敵の正体がハッキリした」


貴族院はな…内部で大きく2派閥に分かれているのだ

時の王を肯定する側と否定する側だ

現セントラル国王は王に即位する際…自身を支持する軍属を丸ごと奪われ時の王が推する特殊生物兵器部隊を与えられた

その部隊はセントラル最強と言われ国王直下で動く部隊だった筈なのだが実は違う

時の王のみの指示にしか従わない部隊だったのだ

つまり国王は軍を何も動かせない裸も同然の存在となっていたのだ

その政策を支持する側と支持しない側に分かれている訳だな

今セントラル城で行われている戦いは時の王を支持する側を失脚させるが為の戦いだ
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:37:50.66 ID:UulvHEXE0
盗賊「なんだかややこしいな…訳分かん無ぇぞ?」

アサシン「簡単に言うなら時の王を支持する側に居る黒の同胞団が私達の敵だ」

盗賊「時の王をやりゃ済む話じゃねえのか?」

アサシン「クックック時の王自身は今回の件に何も関与していない…むしろ民を守る英雄となっている」

女戦士「実動しているのが黒の同胞団という事か」

アサシン「そうだ…時の王を滅する大義名分が無いのだ…故に黒の同胞団から倒さねばならん」

女戦士「ふむ国王ともなれば尚の事大義名分無しでは動けんな」

アサシン「時の王の屋敷に出入りする黒の同胞団の魔術師が今回の主犯だ」

魔女「祖奴はわらわが制裁せねばならん…わらわに行かせよ」

アサシン「魔女には無理だ…魔結界の中では何も出来まい?」

魔女「ぐぬぬ…巧妙な奴らよのぅ…」

アサシン「しかしだな?貴族院側に居る衛兵は個人単位で見ると半数以上はセントラル国王を支持していると思われる」

女戦士「属している組織が違う故に剣を交えているのか…」

アサシン「国王が貧民街で治安維持をするのもこれらの取り込みが狙いだ」

商人「黒幕がすぐそこに居るのに手を出せないのはモゾがゆいね」

アサシン「今回の件で時の王が操るラットマンリーダーは全滅と言って良い…事が動き始めるのはこれからだ」

女戦士「もう一度聞く…私達はどうする?」

アサシン「黒の同胞団の魔術師を暗殺したいが…もう少し機を待ちたい」

女戦士「今は手が無いと言いたいのだな?」

アサシン「正直…私の腕では時の王の屋敷で暗殺出来る自信が無い」
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:38:18.85 ID:UulvHEXE0
『中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「随分人増えたな?」

女戦士「フフもう私達は不要だな」

盗賊「物資が軍船からどんどん運ばれて来るが…こりゃ荷を下ろしてフィン・イッシュに帰るんかな?」

女戦士「だろうな?麻薬依存の治療には良い選択だ…まだ女達の自慰を見たかったのか?」

盗賊「そういう訳じゃ無ぇけどよ…女が少なくなるって事はお前も危ないぞ?」

女戦士「私を襲う者が居るとは思えんが…」

盗賊「薬を打たれちまったらお前でも抵抗出来ん」

女戦士「そうか…気を付けておく」

盗賊「クソ強ぇぇエルフでも薬で一発なんだから用心しておけ」

女戦士「手足を出して置けと言ったのはオマエなのだが…この恰好はマズいか?」

盗賊「格好は今の方が良いんだけどな…なんちゅーかお前は隙が無いように見えて隙だらけなんだ」

女戦士「どの辺がだ?」

盗賊「女として隙だらけだ…来るものを拒めない匂いがプンプンする」

女戦士「…」スラーン

盗賊「そういう所だ…」

女戦士「私は戦士だ…馬鹿にするな」

盗賊「じゃぁな?こうされたらどうする」ダダ ギュゥ

女戦士「!?な…やめ…」ググ

盗賊「ほらな?力を出し切れないだろ?」

女戦士「くぅぅ…」ドン

盗賊「つつつ…」

女戦士「許さんぞ!!」スチャ

盗賊「待て待て…俺はお前に教えてやってんだ…お前はこういう強引なのに弱い」

女戦士「…」

盗賊「強引な程お前は感じているのに気付け」

女戦士「侮辱するな!」

盗賊「おっとっと〜俺にその気は無ぇ…用心しとけって話だ」

女戦士「フン!そんな事分かっている!!」プン
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:38:49.89 ID:UulvHEXE0
『貨物船』


フワフワ ドッスン


ローグ「あねさ〜〜ん!!戻ってきたでやんすね〜〜〜」ドタドタ

女海賊「はいどいたどいた!!ローグ!お姉ぇは?」

ローグ「かしらは中央の方に行ってるっす…呼んできやしょうか?」

女海賊「決まってんじゃん!早くしな!!」

ローグ「アイサー」ダダ

商人「おかえり女海賊!荷物いっぱいあるね?」

女海賊「降ろすの手伝って…てかあんた私の捕虜だったね…降ろしといて」

商人「え…」

女海賊「何その気色悪いお面…センス悪すぎ」

商人「あぁ…これには訳が有ってね」

女海賊「脱いで」

商人「いやぁ今は脱げないんだ…」

女海賊「はぁ?あんた私の捕虜だって分かってる?脱いで」

商人「あぁぁどうしよう…」シブシブ


ズボォ


女海賊「ぶっ…何その顔ギャハハハハハ…ちょと待って笑わせないでヒィヒィ」

商人「くちばしマスク被って良い?」

女海賊「ダメ…書き足す…剣士!?ペン持って来てぐふふふふ」

商人「いぁ書き足すってさ…もうやめてよ」

女海賊「あんたは私の捕虜なの!大人しくしといて」ヌリヌリ

商人「捕虜の扱いは国際法で…」

女海賊「ギャハハハハハ海賊が国際法なんか守ると思ってんの?ギャハハハハ」

ホムンクルス「商人?中和剤を作って来たのですが…」

女海賊「あ!!ホムちゃん…見て見てこの顔」

ホムンクルス「はい…面白い顔ですね」ニコ

商人「ホムンクルス助けてよぉ」

女海賊「ん?ホムちゃん今笑った?」

ホムンクルス「商人をいじめないで貰ってよろしいですか?」シュン

女海賊「おぉぉぉ表情が自然になってんじゃん!!どしたの?」

ホムンクルス「商人に毎日教えて貰っています」

女海賊「へぇ〜どうやって?」

ホムンクルス「はい…商人と毎日性交渉をして…」

商人「ああああああああそれは秘密だよ」

ホムンクルス「わかりました…」ニコ

女海賊「あんた笑うと可愛いね!!」

ホムンクルス「ありがとうございます…みなさんに喜んでもらえて私も嬉しいです」ニコ

女海賊「じゃぁ次私と練習しよっか!」スタスタ

ホムンクルス「はい…喜んで」トコトコ

商人「ねぇ…中和剤どうなってんの?頂戴よ」
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:39:18.43 ID:UulvHEXE0
『居室』



ホムンクルス「オホホホ…」ニコ

女海賊「なんか違うな…これは?うふふ〜」ニコ

ホムンクルス「うふふふふふ…」ニコ

女海賊「んんんん…もうちょい短く」

ホムンクルス「ウフフ…」ニコ

女海賊「そう!ソレ!!」

ホムンクルス「分かりました基幹プログラムを更新します」

商人「荷はここに置いておけば良い?」ゴトリ

女海賊「あとパパから武器類預かってるから降ろしといて」

商人「うん…剣士と未来君が木刀で立ち合いやってるけど僕も混ざって良いかな?」

女海賊「剣士に一太刀でも入れれたら捕虜解放してあげるよ」

商人「お!!言ったな?」

女海賊「あんたじゃ無理だけどさ…やってみ?」

商人「よーしやってやる」フン

ホムンクルス「頑張って下さい…応援しています」ニコ

女海賊「むむ!?あんたたちなんか目で会話してんね?通じ合ってんの?」

ホムンクルス「はい…商人は私の管理者ですから」

女海賊「ふーん」ジロリ

商人「ハハ…行って来るよ」
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:39:51.50 ID:UulvHEXE0
『甲板』


カンカンコン シュタ


盗賊「おうおう…面白そうな事やってんじゃ無ぇか…俺も混ぜろ」

商人「ハァハァ剣士に一太刀も入らないんだ助けて」

女戦士「妹はどこだ?呼んでいると聞いて戻ってきたのだが…」

商人「居室でホムンクルスと話してるよハァハァ」

女戦士「では私は妹に会って来る…ローグも立ち合いでもしていろ」

ローグ「あっしも戦うんすね?」

商人「剣士に一太刀入ったら僕は捕虜解放されるんだよ」

ローグ「4対1でも良いんすかねぇ?」

剣士「構わないよ…いつでも来て」

盗賊「おうおう…そんな事言われるとやる気になっちまうぞ?」

ローグ「あっしらは戦闘のプロっすからねぇ…手加減せんでやんすよ?」

剣士「来い…」

ローグ「カチーンと来たでやんす」

剣士「ハイディング使っても構わないよ」

盗賊「行くぞローグ…いつも通りだ」

ローグ「分かってるでやんす…ハイディング!」スゥ


カンカンコン カンカンコン

リリース

カンカンコン カンカンコン
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:40:26.57 ID:UulvHEXE0
『居室』


ガチャリ バタン


女海賊「お姉ぇ!!待ってたんだ…てアレ?お姉その格好…イーじゃん」

女戦士「フフお前ほどでは無いが少しは気にしているのだ」

女海賊「次は髪の毛かな…あとで揃えたげる」

女戦士「それで…父には会って無事に聖剣エクスカリバーを作って貰えたのか?」

女海賊「あぁ…それなんだけど刀を2本作って貰った…コレだよ」ゴトリ

女戦士「ふむ…」スラーン

女海賊「まだ研ぎをやってないんだ…お姉ぇにやらせろだって」

女戦士「なるほど…丁度暇になってきた所だったのだ…オリハルコンの研ぎか…やってみたいな」

女海賊「それからお姉ぇにでっかい斧預かってる…そこに立て掛けて有る奴だよ」

女戦士「おぉ!!やっと出来たか…どれどれ」グイ

女海賊「それ片手用の持ち手だよね?そんなでっかいの片手で扱えんの?」

女戦士「普通の重さの剣では私には軽過ぎた…決定打が無かったのだ」

女海賊「ふーん…振るってみてよ」

女戦士「フフ…」グイ


ブン ブン


女海賊「おぉ!!お姉ぇが振ると軽そうだ」

女戦士「これがあればゴブリンなぞ一振りで3匹は一刀両断出来る」

女海賊「そんだけでっかいと盾替わりにもなるね」

女戦士「そうだ…私は盾を使うだろう?反対に持つ手が小さな剣ではいつも背中を気にして戦う必要があるのだ」

女海賊「お姉ぇにはピッタリなのか」

女戦士「刀が2本あるという事はお前も刀を持つのか?」

女海賊「私はメイン武器はこのデリンジャーと爆弾さ…その刀は軽いから護身用かな」

女戦士「そうだな…軽すぎるなこの刀は…剣士はこれほど軽い武器で良いのか?」

女海賊「剣士の剣裁き見て見な?」

女戦士「ふむ…立ち合いを見て見るか…」

女海賊「お姉ぇも参加してみたら?戦闘は自信あるっしょ?」

女戦士「フフ…挑発しているな?お前…」
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:40:58.36 ID:UulvHEXE0
『甲板』


カンカンコン


盗賊「ちぃ…あいつの剣裁きは攻防一体だ…下手に打ち込め無ぇ」

ローグ「ハイディングも意味ないっすね…なんで見えてるんすかね?」

盗賊「あいつは見て無ぇ…感じて避けてる」

商人「剣士はあの場所から動いて居ない…余裕って事?」

剣士「真剣だったら皆20回は死んで居るよ」

盗賊「こりゃ勝てる見込み無ぇな…」


女戦士「私が入るとどうなる?」


盗賊「お?真打登場か?」

剣士「構わないよ」

女戦士「フフ…私は盾使いなのだが?」

剣士「何を使っても良いよ」

女戦士「大した自信なのだな…5対1だ…私が前衛をやる…各自援護しろ」スチャ

剣士「来い…」

女戦士「剣は抜かないのか?」

盗賊「女戦士!剣士は居合抜きからの連撃技だ」

女戦士「なるほど…サムライスタイルなのだな?ならば私に分がある」

剣士「ふぅ…」

女戦士「目を閉じるか…行くぞ!シールドバッシュ!」ダダ

剣士「…」シュン コン

女戦士「盾で防がれてどうする!?はぁっ!!」ブン コン


リリース カンカンコン


女戦士「5人の攻撃をすべて受け流すか…ならばこうだ!シールドスタン!」ドン

剣士「…」フラリ シュン


バキッ


女戦士「くぅ…木刀で盾を割るだと!?」

剣士「…」スッ ピタリ

女戦士「う…」ゴクリ

商人「えい!!」ポカ

盗賊「おぉ!?一発当てたぞ?」

商人「やったぁぁぁぁ!!討ち取ったり!!」



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821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:41:25.44 ID:UulvHEXE0
ホムンクルス「ウフフ…」パチパチ

商人「やったやった!!」ギュゥ

ホムンクルス「よかったですね…」ニコ

女戦士「フフ完全に負けていたな…まさか木刀で盾が割れるとは思わなかった」

ローグ「斧でもなかなか割れないんですがねぇ…どうやってやったんすか?」

盗賊「剣先が見えんかったな…恐ろしく剣筋が早い」

女戦士「速さで切り抜くか…早さが倍になれば重さが倍になるのと同じだな…なぜ木刀が打ち勝つのか分からんが」

女海賊「お姉ぇ!剣士が軽い刀を使う理由分かった?」

女戦士「そうだな…しかしこれは良い稽古になる」

盗賊「うむ…剣士!続けるぞ!!」

剣士「良いよ…来い!!」

女海賊「お姉ぇは刀の研ぎをやってよ」

女戦士「それはあとでやってやる…私に火を付けたのはお前だぞ?」

女海賊「えええええ!!私を待たせんの?」

女戦士「お前はホムンクルスとでも一緒に買い物でも行ってこい」

女海賊「買い物?どこで?」

ホムンクルス「フィン・イッシュ軍船でコインの交換所があります…ご案内しますよ?」

女海賊「おぉ!!良いね…んでコインて何?」

ホムンクルス「はい…それは…」


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822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:41:53.38 ID:UulvHEXE0
『居室』


ジャコジャコジャコ


女戦士「くぅぅ…」ジャコジャコ

女海賊「ただいま…てお姉ぇ体大丈夫?」

女戦士「フッ少し張り切り過ぎたが刀の研ぎには影響ない」

女海賊「又お姉ぇのクセが出たね?なんでそんなに打たれたいのさ…」

女戦士「黙れ!早く研ぎを終わらせてもう一度立ち合いに行くのだ」

女海賊「適当にやられても嫌なんだけどさ…集中してよ」

女戦士「研ぎに影響は無いと言っただろう?これくらいの傷みが有った方が私には心地良い」

女海賊「研ぎってさ時間掛かるよね?どんくらい掛かりそう?」

女戦士「化粧研ぎまで入れて今日中に終わらせてやる」

女海賊「お!?結構早いじゃん」

女戦士「父の鍛冶の腕が良いからだ…無駄な研ぎが要らんのでな」

女海賊「そんだけ早いなら休み休みで良いよ」

女戦士「お前も剣士の立ち合いを見て来い…勉強になるぞ?」

女海賊「いつも素振りやってるけどそれと違うん?」

女戦士「動作に一部の隙も無いのだ…あれほどの剣豪を見たことが無い」

女海賊「ふ〜ん私の旦那なんだけどさムフフ」

女戦士「良いから見て来い!」

女海賊「分かったよ…行って来る」
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:42:52.30 ID:UulvHEXE0
『甲板』


ワイワイ ワイワイ

めちゃくちゃ早いな…見えん

あんな低い姿勢から切り上げんのか?

ワイワイ ワイワイ


女海賊「なんか船乗りが集まってんね…」

ホムンクルス「みなさん楽しんでいますね」

女海賊「あれ?アサシンも来てんじゃん!!どゆこと?なんで居んの?」

ホムンクルス「はい…先ほどから参加されています」

女海賊「5対1で良くやるね…どんな感じ?」

ホムンクルス「剣士さんが早い動きで翻弄されています」


ピョン クルクル シュタッ カンカンコン バシ


盗賊「あだっ…やっぱダメだな…ちと休憩しよう」

剣士「回復魔法!」ボワー

盗賊「おーさんきゅー…しかしお前は足を使いだすと5対1でも意味無いな」

アサシン「私も回復魔法を貰っても良いか?」

剣士「回復魔法!」ボワー

アサシン「なぜ木刀でこれほど威力が出るのか…」

ローグ「そーっすね…これワザと急所外してるっすよね?じゃなきゃ速攻戦闘不能っすよ…あたた」

剣士「アサシンの間合い詰めは僕もヒヤリとしたよ」

盗賊「一撃入ったのはアサシンだけか」

アサシン「当たりが浅すぎだ有効打では無いな」

盗賊「やっぱガチ当たりは女戦士が上手だ…あいつは一発打たれる前提で相打ち狙いだ」

アサシン「木刀だから打たれても良いが真剣ではそうはいくまい」

盗賊「女戦士も鎧くらい着るだろう…装備次第だな」

アサシン「しかし剣士がこれほど出来るとは思って居なかったな…時の王とも渡り合えるかも知れん」

盗賊「んん?やらせるのか?」

アサシン「女海賊が何と言うか分からん…無理にはやらせられんな」

盗賊「まぁ黙って置け…やっとアイツも幸せ手に入れたんだ」


女海賊「聞いてんだけど…」ズイ
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:43:24.73 ID:UulvHEXE0
盗賊「うぉ!!居たんか…お前居るなら居るって言えよ」

アサシン「女海賊…挨拶が遅れたな」

女海賊「アサシンが居るって事は魔女も居んだね?なんでみんな言ってくれないのさ」

盗賊「あぁ済まん済まん…立ち合いに夢中でな」

女海賊「魔女はどこにいんのさ」

盗賊「お前に顔を会わせられないと言っていたんだが…出て来にくいんじゃ無ぇか?」

女海賊「もう昔の事は良いんだ…それより精霊樹が魔女を探せって言ってたんだよ…そうだよね剣士?」

剣士「ん…あぁそうだったね…そう聞こえた」

魔女「…」ノソリ

盗賊「おぉ魔女!そんな所に居ねぇでこっち来い」

魔女「済まなんだのぅ…出て来辛ろうて隠れて見ておったのじゃ…剣士が無事で本真に良かった」

女海賊「私は精霊樹がなんで魔女を探せって言ってんのか理由が分かんない…状況分かって無いんだ…話して」

アサシン「そうだな…女海賊は別行動だったな…休憩がてら居室で話でもしようか」
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:43:58.75 ID:UulvHEXE0
『居室』


カクカク シカジカ

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女海賊「…て事はその時の王ってのがすべての黒幕なんだね?」

アサシン「そうとも言い切れん…実動しているのはその下に居る黒の同胞団だ…時の王は背後に座っているだけだな」

魔女「恐らくじゃがリリスの子宮を封じた壺は祖奴らの誰かが持って居ると思うのじゃ」

女海賊「魔女はあん時からずっと魔王の影を追ってんだ…ふーん見直した」

魔女「剣士を魔王に捧げる様な事をしてしもうてわらわは反省して居る…本真に済まなんだ」

女海賊「もう隠してる事無い?」

魔女「思い当たる事はすべて話したつもりじゃ…信じておくれ」

アサシン「目下…時の王の下に居る魔術師が歴史の改ざんを行っていると知った以上生かしては置けない」

商人「そうだね…この状況を覆されかねない」

女海賊「それで今の状況を5日以上保持したい訳ね」

魔女「わらわの魔力で5日が限界じゃ…もしかするとそれより短くて済むかも知れん」

女海賊「逆に5日もあったら逃げられちゃうね」

魔女「時の王は魔結界からはよほどの事が無い限り出ん気がするが?」

女海賊「なんで?」

魔女「勘じゃな…量子転移魔法で奪われる事を避けて居る様に見える」

アサシン「私は時の王に一太刀入れたのだがな…切ったその瞬間から傷が再生するのを見た…恐らく不死身だ」

魔女「リリスの生き血を飲んで魔人となって居るからのぅ…量子転移で奪わぬ限り無敵じゃろうて」

女海賊「んんん…どうすっかな」

剣士「魔術師だけ狙えば良いんだね?」

女海賊「あんた又危ない所に飛び込むつもりなの?」

剣士「僕はその時の王に会ってみたい…時の王を抑えれば魔術師の始末は任せて良いよね?」

アサシン「時の王の屋敷にはラットマンリーダーも居るのだ…そちらも抑える必要がある」

盗賊「それはアサシンと俺でなんとかなるんじゃ無ぇか?」

アサシン「その間に魔術師に逃げられるのでは無いか?」

盗賊「んむ…人選が重要だな」

女戦士「アサシンに変わって私に行かせろ…ラットマンリーダーは私一人で引き受ける」

女海賊「お姉ぇ…」

女戦士「私の新しい武器も試したかった所なのだ…アサシンはハイディングも出来まい?」

女海賊「分かったこうする…ハイディング出来る人だけの構成で私とお姉ぇ…剣士と盗賊の4人」

女海賊「お姉ぇがラットマンリーダーを引き受けて剣士が時の王を抑える…その間に盗賊が魔術師やって」

アサシン「確実に行けるか?」

女海賊「そんなんやってみないと分かんない…ただ何かあった時の逃げ道は私が用意する」

アサシン「ふむ…お前が行くのはそういう事か」

女海賊「お姉ぇは早く刀の研ぎやってよ…それ出来た後に作戦実行する」

女戦士「では明日の昼までに仕上げてやる…作戦は明日の夜…どうだ?」

女海賊「おっけ」
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:44:35.26 ID:UulvHEXE0
『船尾』


ザブン ザブン


商人「なんだここに居たのか…探したよ」

ホムンクルス「はい…夕日が落ちて行くのを見ていました」シュン

商人「どうしたんだい?悲しそうな顔してるよ?」

ホムンクルス「いえ…何でもありません」

商人「君がそういう顔をする時は何かあるんだ…おいで」ギュゥ

ホムンクルス「皆さんのお話を聞いて理由は分かりませんが悲しみに似た反応が確認されました」

商人「君は前に時の王の話をしていたね?それと関係する?」

ホムンクルス「記憶を根の森に置いて来ましたので思い出せません」

商人「精霊は時の王に裏切られたって…」

ホムンクルス「基幹プログラムに時の王との関りが圧縮されてアルゴリズム化されている様です…そのせいですね」

商人「もう君は精霊じゃ無いよ?」

ホムンクルス「はい…私は私です…ただ基幹プログラムに少しだけ残っているものですから」

商人「それは大事にした方が良いかもね…それを含めて君だから」

ホムンクルス「もう少し強く抱きしめて下さい…ドーパミン放出が不足しています」

商人「これ見て?僕のメモ帳だよ?」

ホムンクルス「これは何ですか?」

商人「君の絵のへたくそさを真似て書いた絵さ…パラパラめくると動くんだ…ほら?」パラパラ

ホムンクルス「ウフフ面白いですね」

商人「お?笑ったね?」

ホムンクルス「ドーパミン放出が確認されました」

商人「こんなへたくそな絵でも動くと命が宿るよね」パラパラ

ホムンクルス「そうですね…精霊の記憶の原型ですね」

商人「え?…」

ホムンクルス「もう少し寄り添って居て下さい…生体が安定します」

商人「フフ君にも欲求が出て来たね…うれしいよ」



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827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:45:03.88 ID:UulvHEXE0
ドタドタ


女海賊「あ!見っけた…あんたらいつからそんな関係になってんのさ!!」

商人「女海賊か…二人で夕日見てたんだ」

女海賊「ホムちゃんくっ付き過ぎじゃない?」

ホムンクルス「はい…私がお願いをしました」

女海賊「フン!まぁ良いけどさ…剣士から賢者の石預かってんだ…黒死病に効くんだったよね?」

ホムンクルス「はい…お預かりしてもよろしいのですか?」

商人「お!?エリクサーの消費を抑えられるね?」

女海賊「剣士が立ち合いに忙しいから私が治療に行く事になっちゃったんだ…ホムちゃん付き合って」

ホムンクルス「はい…商人よろしいですか?」

商人「勿論…行っておいでよ」

女海賊「何言ってんだ!!立ち合いやらないならあんたも来い!」

商人「僕はちょっと休憩してただけさ…僕も戦う練習してくるよ」

ホムンクルス「商人は体が弱いのでほどほどにして下さい」

商人「分かってるよ…無理はしないさ」スック

828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:45:35.77 ID:UulvHEXE0
『中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「うっわ…人でごった返してんな」

ホムンクルス「私は一人づつ賢者の石で黒死病を治療していきますね?」

女海賊「ホムちゃん一人は危ないから私から離れないで」

ホムンクルス「はい…気を付けます」

女海賊「魔女は回復魔法掛けてあげて?ほんで情報屋は魔女を守って」

情報屋「うん…女性は私達だけね?」

女海賊「そんな感じだね」

ホムンクルス「あちらの秘密のテントの方に見えていますよ」

女海賊「あれ何?なんかスゲー怪しい雰囲気なんだけど…」

情報屋「あれは慰安所よ…コイン交換でサービスしてくれるらしいわ」

魔女「わらわ達には関係の無い場所じゃな…近寄ると誤解されるで行かん方が良いな」

女海賊「ははーん…だからここに人一杯集まってんのか…馬鹿だねー男達は」


ようネーちゃん!あんたらは兵士なのか?身なりは良さそうだが…

そこの緑の髪の子はどっから来たんだ?

赤い目の女はオッケーなのか?コイン何枚だ?


女海賊「あぁぁうっさいうっさい!私らは黒死病の治療に来たんだ…近寄るんじゃねぇ!!」

ごろつき「俺の下半身が石みたいになってんだ…ちょっと見てくれ」

女海賊「フン!」ボキ

ごろつき「ぐぁぁぁ!!」

魔女「これは世話が焼けるのぅ…」

女海賊「ホムちゃん!あーいうのが居たら今みたいに折って良いから」

ホムンクルス「はい…わかりました」

女海賊「ほんじゃ治療いこっか…」


ボキ ぎゃああああ

ボキ いだぁぁあい
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:46:14.47 ID:UulvHEXE0
『夜_貨物船』


ザブン ギシギシ


女海賊「盗賊?こんな所で寝てんの?」

盗賊「寝ちゃ居ねぇよ…女戦士が居室に入るなっていうからよ…ここで一人飲みだ」

女海賊「お姉ぇは研ぎの最中?」

盗賊「あぁ…刀の研ぎってのは砥石使うんじゃ無ぇのか?あいつは手でやってる様だが…どんな手ぇしてんだ?」

女海賊「砥石の工程終わったって事か…もうちょいで終わるかな」

盗賊「俺が居室入ろうとすると怒るんだが…」

女海賊「お姉ぇは変なクセがあってさ金属とか触って感じてんの…邪魔されたく無いんでしょ」

盗賊「マジかよ…どМだとはちっと聞いたがそんなクセまであんのか」

女海賊「あちゃーーバレてんの?寝る時も毛布じゃなくて砂鉄が入った袋乗せて寝るんだよ」

盗賊「ぶっ…道理で砂鉄が沢山積んでる訳だ」

女海賊「鎖でグルグル巻きにしたら喜ぶんだ…黙っといてね」

盗賊「お前も変わった奴だがあいつも相当ズレてんな…」


くぅぅ はぁはぁ うぐっ うぐっ


女海賊「あー聞こえちゃってんな…盗賊ここもダメ!あっちで横になってて」

盗賊「さっきから苦しそうにしてるが良いのか放って置いて?」

女海賊「初めての金属触って興奮してんだ…お姉ぇの逝く声はあんたに聞かせらんない」

盗賊「ヌハハ金属好きなのは知っていたがここまでとは…俺には理解出来ん」

女海賊「良いからアッチ行け!シッシッ」



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830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:46:47.05 ID:UulvHEXE0
情報屋「交換してきたわ?これで良いかしら?」

魔女「コイン何枚だったのじゃ?」

情報屋「全部で10枚だったわ…大サービスね」

ホムンクルス「この銀の仮面を付けておけば良いでしょうか?」

女海賊「そだね…これでちっとは男避けになるかも」

魔女「フィン・イッシュ女王とほとんど同じじゃな」

女海賊「ちょっと待って…装飾が足りないから私が模様を付ける…貸して」トンテンカン

魔女「銀か…光の魔法を付与出来そうじゃ」

女海賊「お!?良いね!!何が出来る?」

魔女「悪霊退散ぐらいしか出来んが…無いよりマシじゃろう」

女海賊「いやいやメチャ良いじゃん!レアアイテムになるよ」


盗賊「女4人集まって何やってんだ?」

情報屋「あら?暇なの?」

盗賊「一人酒はつまんねえんだよ…相手しろや」

情報屋「他の人は?」

盗賊「立ち合いで疲れて皆寝ちまったんだ…ローグなんかピクリとも動かねえ」

ホムンクルス「商人も寝てしまいましたか?」

盗賊「あぁ一番奥の居室に籠ったまま出て来ん!エリクサー作ってるかもな」

ホムンクルス「私は商人と毎日の約束がありますので失礼します」

女海賊「表情の練習?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「いいよ行っといで!仮面は明日までに仕上げとくよ」

盗賊「あ〜あ酒飲む相手が一人づつ減ってくな…」グビ

情報屋「付き合ってあげるわ?それ頂戴?」

盗賊「おう!こりゃフィン・イッシュ名産の米から作った酒らしい…飲め」

女海賊「酒くっさ!!あっちでやってくれる?」

盗賊「まぁ良いじゃ無ぇか…」
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:47:25.14 ID:UulvHEXE0
『翌日_中央バリケード』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「相変わらず城の方で撃ちあいやってんな」

ローグ「そーっすね…でも人がこっちの方に少しづつ戻って来てるんで活気が出て来やしたね」

盗賊「むさ苦しい奴らばっかだがな」

ローグ「あっしらやる事無くなって暇になって来やしたねぇ…」

盗賊「うむ…戻って立ち合いでもやるか?」

ローグ「貧民街の方でやるのはどうでやんすか?精鋭兵にも混ざって欲しいでやんす」

盗賊「良い事言うじゃ無ぇか!!よし…俺らの立ち合い見せて活気づけてやろう」

ローグ「アイサー」



『貨物船_居室』


ガチャリ バタン


女海賊「お姉ぇ?どう?」

女戦士「テーブルの上に置いてある…」グター

女海賊「大丈夫?」

女戦士「私は少し休む…放って置いてくれ」グッタリ

女海賊「声が外に漏れてたよ…」

女戦士「フフそうか…少し張り切り過ぎた様だな…オリハルコンの粉を吸って意識が飛びそうになった」

女海賊「本当にお姉ぇは変態だね」

女戦士「言うな…私は金属を愛しているのだ…お前よりよほど純潔だ」

女海賊「純潔ねぇ…なんか違う気がすんだけどな」

女戦士「私は今までこれほど良い刀を手にしたことが無い…研ぎも完璧に仕上げた…見て見ろ」

女海賊「うん…」スラーン

女戦士「正直に言おう…その刀を一本私にくれ」

女海賊「良いよ…あげる…多分私はそんなに使わないし」

女戦士「使うのはお前が使って構わん…ただ必ず返して欲しいのだ…意味が分かるか?」

女海賊「必ず帰って来いって事?」

女戦士「そういう意味もあるが…私はその刀の研ぎに魅せられた…また研ぎたいのだ」

女海賊「やっぱお姉ぇ…変態だね」

女戦士「恥ずかしい話だが今日ほど体が満足した事は無い…私はオリハルコンの研ぎに魅せられてしまった」

女海賊「これお姉ぇにとっての麻薬みたいなもん?」

女戦士「麻薬依存を私は馬鹿にしていたが今なら分かる…それほど満足した」

女海賊「まぁまた研いでくれるってんならそっちのが良いか」

女戦士「フフ誰にも言うな?」

女海賊「なんか立てそうに無いね?」

女戦士「休ませてくれ…何もやる気が起きん」

女海賊「これからこの剣にインドラの矢を落としに行こうと思ってたんだけど…来れそうに無いね?」

女戦士「私は良い…もう少し余韻を楽しませてくれ」

女海賊「はいはいお姉ぇの変態には付き合ってらんない…刀貰ってくよ」
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:47:55.40 ID:UulvHEXE0
『甲板』


ザブン ザブン


女海賊「ホムちゃん?一人?」

ホムンクルス「はい…みなさん貧民街の方に行かれました」

女海賊「なんで?何かやってんの?」

ホムンクルス「貧民街の方で立ち合いをやっているのだそうです」

女海賊「剣士も行っちゃった?」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「そっか…まぁホムちゃんだけで良いか」

ホムンクルス「何か御用ですか?」

女海賊「この刀にさぁ…インドラの矢を落として欲しいんだ」

ホムンクルス「はい…ここでは危ないので場所を変えた方がよろしいかと…」

女海賊「分かってるよ…飛空艇に乗って」

ホムンクルス「はい…」

女海賊「この刀はさぁ…オリハルコンの重さ800グラムなんだ」

ホムンクルス「出力を絞って投下します…約100年分の光ですね?」

女海賊「大体そんな感じかな?2本あるからよろしく」
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:48:55.39 ID:UulvHEXE0
『貧民街』


ワイワイ ガヤガヤ

報告します!貧民街の外れでフィン・イッシュの者が模擬戦をしている様です

この騒ぎは模擬戦のせいか…治安部隊は動かさなく良いのだな?

むしろ若者が活気付いて良い傾向に見えますがどうしましょう?

非番の者に見に行かせろ…危険な様なら静止させても良い

ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「はい!!次は8対1で始めます…参加される方は木刀を持ってください」

情報屋「開始!!」


ワイワイ ガヤガヤ

あの剣士は何者だ?

誰か知ってるか?

フィン・イッシュのサムライらしいよ

うわ!飛んだ…すげぇ!!

剣が見え無い!どうやって当ててるんだ?

ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「終わり!!」

盗賊「ぐはぁぁ一発カスっただけだちくしょう!!」

剣士「回復魔法が欲しい人はこっちに来て…回復魔法!」ボワー

近衛「いやぁぁぁお強いですな…太刀筋は一刀流に近いがどの流派なのでしょう?」

商人「覚えていないらしいよ」

近衛「この様な剣豪が居たとは世間は広いですなぁ…是非フィン・イッシュにお越し願いたい」

商人「剣士は大人気だね」

ローグ「戦い方が美しいっすね…無駄が無いと言えば良いでやんすかねぇ…一振り一振り全部意味が在るんすよね」

盗賊「うむ…次の斬撃に繋がる動作が守備動作を兼ねてんだよ…だからスキが無ぇ」

剣士「僕の素振り動作を良く見て?」スン スン スン

近衛「おぉ!!もう一度!!」

剣士「ゆっくり行くよ?」スッ スッ スッ

盗賊「ほーーう…円で繋がって居るのか」

剣士「この動作を読めば対処できると思う」

盗賊「こりゃ相当練習しないと習得できそうに無ぇぞ?」


ピカー ピカー


商人「ん?雷か?」

ローグ「音が来ないっすねぇ…随分遠くじゃないっすかねぇ」

剣士「じゃぁ次は一人づづ僕に打ち込んでみて…どうやって凌がれるかよく見る稽古にしよう」

近衛「これは良い稽古になりますな…是非やらせて貰いたい」

剣士「良いよ!…打ち込んでみて!他の人は良く見ておくように」

近衛「いざ参る…」

剣士「来い…」


カンカンコン カンカンコン
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:49:33.53 ID:UulvHEXE0
『貨物船』


ザブン ギシギシ


魔女「奴らはまだ帰って来ん様じゃな…」

ホムンクルス「剣士さんの剣技にみなさん夢中なのですね…良い事だと思います」

女海賊「折角伝説の剣が完成したってのにさぁ…誰も見ようとしないってどゆこと?」

魔女「わらわに見せよ…」

女海賊「魔女は剣の事なんか分かんないじゃん」

魔女「美しいかどうかくらいなら分かるぞよ?」

女海賊「ほんじゃこの鞘から剣を抜いてみて」ポイ

魔女「おろろ…思ったよりも軽いのぅ?」

ホムンクルス「鞘に浮かんでいる紋様はわざと光を漏らしているのですね?」

女海賊「鞘に入れたまま動かしてみてよ」

魔女「こうか?」ブン キラキラ

ホムンクルス「光の筋が残るのですね」

女海賊「そそ…そっちが流星…ほんでこっちが彗星」ブン ピカー

魔女「おぉぉ彗星じゃ…工夫したのぅ!主が考案したのか?」

女海賊「そだよ…何かそう言われると癒されるムフフ」

魔女「刀の抜き方が分からんのぅ…どうやって抜くのじゃ?…むん!むん!」

女海賊「だめだこりゃ…危ないから魔女にはムリ」


ドヤドヤ ドヤドヤ


女海賊「あ!!やっと帰って来た!!」

盗賊「おう!今日は早めにあげて休憩だ…ちっと疲れた」

女海賊「剣士!!あんたの剣出来上がったよ…流星の剣だよ…ほら」

剣士「随分みんなの手が掛かったね…貸して」

女海賊「あんたの剣さ…抜いてみて」

盗賊「その鞘かっけぇな?お前が作ったんか?」

剣士「…」スラーン ピカー

魔女「まばゆいのぅ…目が眩む」

女海賊「いつもみたいに振るってよ」

剣士「…」スン スン スン

盗賊「残像が残る…めちゃくちゃ恰好良いじゃ無ぇか!!」

女海賊「あぁぁ癒される…もっと言って」

盗賊「お前もお姉ぇに似てやっぱ変態か…」

商人「ハハまぁまぁ…伝説にふさわしい剣には間違いなさそうだね」

女海賊「そう…もっと」

商人「この柄の装飾とかも全部君が彫ったの?これミスリル銀だよね?」

女海賊「はぁぁぁぁぁ」

盗賊「ダメだこりゃ変態に付き合うと移るぞ!飯だ飯!!」
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:50:04.34 ID:UulvHEXE0
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盗賊「女戦士はまだ寝ているのか?」モグモグ

女海賊「出て来るまで居室入ったらダメだよ」モグモグ

情報屋「盗賊?どうしてそんなに気にするの?」ジロリ

盗賊「んあ?そんなんじゃ無ぇよ…今晩の作戦に影響が出ないか心配してんだ」

情報屋「そう…ならいいわ」プイ

盗賊「おいおい何でへそ曲げてんのよ」

魔女「主が悪いのでは無いか?プレイボーイ過ぎるのではないのかのぅ?」

盗賊「なんもして無ぇって…女戦士に何か出来るのはローグぐらいのもんだ」

ローグ「あっしが?あっしも何もできやせんぜ?」モグ

魔女「女戦士の服装が変わったのは盗賊が何か言うたからじゃと聞いたぞよ?」

ローグ「ぶっ…ぶぶ盗賊さんマズイっすね」

盗賊「ヌハハそれは事実かもな?」

女海賊「なんであんたがお姉ぇの服装の事言う訳?」

盗賊「まぁちと事情が有ってだな…」

ローグ「マズいっすね…マズいっすねぇ…」

盗賊「隠す必要もあるめぇ…女戦士はな人一倍身なりには気を使ってんのよ…それを偏見抜きで評価しただけだ」

ローグ「そうなんす…本当は繊細なんすよ…鉄の女を演出してるだけなんすねぇ」

盗賊「ちょっと似合わねぇって言うだけでもう気に入った服も着ないんだ…可哀そうだろ?」

女海賊「賛成!」

情報屋「フフそう…誤解してたわ」

ローグ「あっしはそんなかしらが可愛くて好きなんす」

女海賊「お姉ぇが可愛いねぇ…なんか違う気がするけど繊細なのは合ってるかな」

盗賊「まぁそういう事よ…みんなもちったぁ気を使ってやれ…特にアサシンだな」

アサシン「クックックどうせ私は堅物だ女王にも見放された」

盗賊「堅物の思想を押し付けなきゃ良い…大事に付き合ってやってくれよ」
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:50:36.20 ID:UulvHEXE0
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女海賊「あ!お姉ぇ起きた?」

女戦士「済まない…休み過ぎた様だ」

盗賊「おい!何でスカート履いて来ねぇんだよ!!楽しみ減るだろうが」

女戦士「お前に指示される覚えは無いが?」

女海賊「お姉ぇ着替えてきたら?」

女戦士「下の方の濡れが収まらんのだ」ヒソ

女海賊「大丈夫だって!見えやしないから…」グイ

女戦士「フン!」ツカツカ


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女戦士「これで満足か?」フワリ

ローグ「かしらはやっぱそっちの方が良いっすね〜」

女戦士「さて…全員揃っているな?今晩の話を詰めようか」

アサシン「そうだな…私も少し考えたのだが万が一に備えて私とローグ、魔女で気球を使って上空で待機しようと思う」

盗賊「それは睡眠魔法を使う構えという事だな?」

アサシン「その通り…魔女の貝殻を使って状況をこちらへ伝える事が出来る筈だ」

魔女「ふむ…魔結界の中では千里眼で見通せぬ故…それが良かろう」

女海賊「じゃぁ私が貝殻を持つ…逃げ場に困ったら使うさ」

盗賊「俺らはハイディングして徒歩で行くのか?」

女海賊「私は貴族特区にドロボー行った事あんだ…近道知ってるよ」

アサシン「出来るだけ騒ぎにはしたくない…極力ハイディングで隠密行動をしてくれ」

女海賊「貴族特区にどんだけ人が居るか分かんないけどさ…さっさと睡眠魔法で眠らせたら?」

魔女「向こうに魔術師が居るのじゃ睡眠を悟られてしまっては逃げられるぞよ?」

女海賊「じゃやっぱ逃走時しか使えない訳ね」

魔女「出来るだけサポートはするつもりじゃ…兎に角魔術師を倒すのじゃ」

女海賊「私らの心配と言えばお姉ぇがラットマンリーダーを抑えきれるかなんだけど…行けそう?」

女戦士「私の武器は何で出来ている?」

女海賊「あ!!そうか…ミスリルのギガントアックス…鎮魂の鐘と同じだね?」

女戦士「私よりも剣士の方だな…時の王がどれほどの者か情報が無い」

剣士「魔術師を倒す間の凌ぎに徹するよ…心配しないで」

アサシン「では行動は深夜…月が落ちたら行く…それまで静養しておいてくれ」
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:51:05.75 ID:UulvHEXE0
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女戦士「女海賊!刀を見せろ…インドラの矢を落としたのだろう?」

女海賊「お姉ぇはまだ見てなかったね…ほい」

女戦士「ほう…鞘から零れる光が美しいな」

女海賊「お姉ぇに言われると嬉しいな…もっと言って」

女戦士「…」スラーン ピカー

女海賊「どう?」

女戦士「この光る刀身を研ぐとどうなると思う?光は粉になるのか?」

女海賊「又お姉ぇ変な事考えてんの?やめてよ」

女戦士「研ぎたい…」

女海賊「今はダメ…作戦終わって帰って来たら研いでも良いよ」

女戦士「期待で下の濡れが収まらんのだ」

女海賊「パパが言ってた金属を愛でるって…困ったクセだね」

女戦士「言うな…」

女海賊「お姉ぇ用にもっかいオリハルコン探しに行こっか」

女戦士「フフ私は原石のまま欲しい…他の宝石には興味が無くなった」

女海賊「そろそろ返してもらって良い?」

女戦士「もう少し触らせろ…」スリスリ

838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:51:51.86 ID:UulvHEXE0
『深夜』


移動するよ…ハイディング!

迷ってない?よし…左の壁沿いに貴族居住区抜ける

貴族特区に入ったら一番大きな屋敷ね

裏手で盗賊は一旦リリースして状況見て


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『貴族特区』


盗賊「ハイディング!」スゥ

女海賊「どうだった?」

盗賊「屋敷の周りは誰も居ないがちょい離れに衛兵がキャンプしてる…数は200って所だな」

女海賊「もっかいリリースして正面の扉開けられる?」

盗賊「大丈夫だ」

女海賊「開けたらそのまま盗賊は中に入ってハイディングして」

盗賊「分かった…行くぞ!リリース!」スゥ

女海賊「扉が開いたらお姉ぇと剣士は中に入って」


ガチャリ ギー


女海賊「行って!」タッタ

盗賊「ハイディング!」スゥ

女海賊「ここまでは余裕だね…盗賊?屋敷内に何か見えた?」

盗賊「見た範囲では何も居ないな…」

女海賊「前に来た時はリリースしてすぐに見つかっちゃったんだ…すぐ逃げたけど」

女戦士「美術品が並んでいる…これはスゴイな」

女海賊「あんま見れなかったんだけど…ちっと見て行くか」

盗賊「おい!精霊の像があんぞ?」

女海賊「本物?」
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:52:29.65 ID:UulvHEXE0
盗賊「分かんねぇが…これ何体あるんだ?」

女戦士「見ろ!あの肖像画…ホムンクルスじゃないか?」

女海賊「え?本当だ…絵画は全部ホムちゃんが描かれてる…どゆ事?」

女戦士「時の王は1700年前の人物だな?精霊と共に居たという事だな」

女海賊「待って待って…この画の中にある落書き…ホムちゃんが描く絵にそっくりだ」

盗賊「こりゃひょっとするとひょっとするぜ?」

女海賊「ちょっと他の部屋も見て行く」タッタッタ

女戦士「すべての画がホムンクルスだな…たまに画れている男は恐らく時の王だ」

女海賊「…これは精霊と過ごした記憶」

盗賊「驚きの真実じゃ無ぇか」

女海賊「胸が苦しくなってきた…時の王が守っているのはこの記憶?」

女戦士「だとしたら私達は大きな勘違いをしているのかも知れん」

女海賊「この美術品に絶対手を触れないで…これは壊してはいけない」

盗賊「1700年の記憶が詰まった美術品か…そうと知っちゃ躊躇しちまうな」

女海賊「狙いは魔術師だけ…良い?」


シュン グサ!


女海賊「痛っ…な、なんで?」

剣士「回復魔法!」スゥ

??「物音がすると思えば…またコソドロが入って来たか」

剣士「ダメだ…魔法がかき消される」

盗賊「女海賊!このエリクサーを一口飲め」

女戦士「私の後ろに隠れろ」ダダ スチャ

盗賊「今応急処置をしてやる…肩だな?少し痛むぞ…ガマンしろ」ズボ ヌイヌイ

女海賊「うぁぁぁぁくくくくぅ」

女戦士「お前は時の王か?」

??「ほう?人の屋敷に勝手に入って来てその名を口にするとはな…察したぞお前たちは白狼の盗賊団だな?」

女戦士「フフ察しが良い…今更正体を隠しても意味は無いな」

時の王「私の計画を邪魔ばかりする輩は生かして置けん」

女戦士「計画だと?」

時の王「人類の滅亡以外にあると思うか?白狼の盗賊団よ」

女海賊「盗賊!人影!!アレが魔術師…追って」

盗賊「お…おう」ダダ
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:53:04.96 ID:UulvHEXE0
時の王「話を聞かずして動くか」ギリリ シュン

盗賊「うぉっとぉ!!悪りぃな俺達は魔術師に用が在って来たんだ…話ならそっちでやっててくれ」

時の王「ラットマンリーダー来い!!侵入者を排除しろ」

ラットマンリーダー「がおぉぉぉぉ」ドスドス

女戦士「剣士!妹を守れ!!デカブツは私が引き受ける」ダダダ

時の王「フハハハさすが連携が出来ているな…ならば私がやるしか無い様だ」ズズズ シャキーン

女海賊「え!?大剣…どうして」

時の王「どうした?剣を抜かないのか?」

剣士「ふぅぅぅぅ…」

時の王「随分小さな剣なのだな?刀か?遠い記憶の中にその様な刀を使う仲間が居たな…名は忘れた」

女海賊「あんたに質問がある!!」

時の王「人の屋敷を荒らしておいて質問とは無礼極まりないな」

女海賊「あんた精霊の何なの!?」

時の王「フフ私を揺さぶる気か?」

女海賊「質問を質問で返さないで!!何なの?」

時の王「1500年精霊と愛を積み重ねた者だと言えば理解できるか?」

女海賊「ならなんで人間の滅亡なんかやろうとすんのさ」

時の王「私が答える必要は無い」ダッ ブン


カキン! スパー


時の王「むぅ…やるな?だが私は不死身だ」

女海賊「剣士!倒したらダメ…」

時の王「私を倒せると思って居るのか」ダダ ブン キーン

剣士「ふぅぅぅ…」スチャ キラリ

時の王「問う…その光る刀をどうした?何故インドラの光を帯びている」

女海賊「フフこっちの番だね…私が答える必要あると思う?」

時の王「フハハハハなかなか頭の回る小娘だ…気に入った…何が望みだ?」

女海賊「人間の滅亡なんか止めて」

時の王「出来んな…私の愛する者すべてを奪った者を許すことは出来ん…そして精霊の望みはリリンのいや人間の滅亡だ」

女海賊「それは違う!!」

時の王「さて次は私の番だ…なぜインドラの光を帯びている」

女海賊「そんなんインドラの矢を落としたに決まってんじゃん…あんた知ってんじゃないの?」

時の王「まさか…精霊シルフは停止した筈だ…インドラの矢を落とせる者なぞ存在しない」

女海賊「精霊が生きているって知ったらあんたどうする?」

時の王「私を揺さぶって居るのか?そんなまさか…」
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:53:39.52 ID:UulvHEXE0
女海賊「やっぱあんたは私らの敵じゃないね…精霊を愛してるだけだね?」

時の王「黙れ!!小娘に分かる訳が無い!!愛は永遠では無いのだ…記憶こそ永遠だ」

女海賊「やっぱり…美術品はあんたの大事な記憶なんだね?」

時の王「黙れ!黙れ!黙れ!」ダダダ ブン ブン ブン


キン カン カーン スパーッ


時の王「くぅぅ思い出したぞその剣裁き…時の勇者!お前だな?」

剣士「…」スチャ

時の王「恨んで居るのか?魔王に魂を売ったのは仕方の無い事だった…私の邪魔をするな」

女海賊「違うよ時の勇者じゃないよ…あんたは精霊との思い出に寄り添い過ぎて時代に残されてる」

時の王「教えてやろう…人の記憶は200年しか記憶出来ないのだ…私は精霊シルフとの記憶を失いたくなかった」

女海賊「だから外に出なかったの?」

時の王「悪いか…どんどん薄れて行く愛しい記憶を失いたくない」

女海賊「精霊と一緒に夢幻に行けば良かったのに…」

時の王「私は不死身だ…死ぬことも許されない…だからせめて精霊の望みを叶えるのが私が生きる理由だ」

女海賊「悲しい…でもあんた一つ間違ってる…精霊は人間の滅亡なんか望んでない」

時の王「何故ハーフエルフやハーフドワーフが居ると思っているのだ?」

女海賊「え?…まさか」

時の王「人類の置き換えだ!魔王を滅するのはこれしか方法が無い」

女海賊「そんな…」

時の王「立場が逆転した様だな?取引をしようか…同志になれ…そして精霊が居るなら私の下へ連れて来い」

女海賊「ホムちゃん…どうしよう…」


女戦士「剣士!!助けてくれ…あの魔術師は只の魔術師では無い!!盗賊が死ぬ!!」
842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:54:17.53 ID:UulvHEXE0
女海賊「一旦中断!!剣士行くよ!!」ダダ

時の王「あれは私を監視する黒の同胞団の魔術師だ…お前たちにやれるか?」

女海賊「うるさい!!黙って見てろ!!」タッタッタ



『屋敷2階』


女海賊「お姉ぇも傷だらけじゃん…エリクサー飲みながら下の時の王見てて」

女戦士「行け!…はぁはぁ」グラリ

女海賊「盗賊!下がって!!」カチャリ ターン ターン


魔術師「グゥ…キシャァァァ」

盗賊「ぐふっ…すまんやり切れん」ズルズル

女海賊「何アレ…」

盗賊「多分不死者だ…攻撃が効か無ぇ…リッチって聞いた事あるか?」

女海賊「ミスリルダガーでも効かないの?」

盗賊「心臓をやれりゃ行けるかも知れんが何処にあるか分からん」

女海賊「出血ヤバイね…エリクサー飲んで」

盗賊「足の付け根やられた…手で押さえるぐらいしか止めようが無ぇ…俺は戦線離脱だ」

女海賊「剣士!お願い何とかして」

盗賊「あいつの鎌は射程がおかしい!!気を付けろ!!」
843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:54:45.83 ID:UulvHEXE0
剣士「任せて…」シュタタ


リッチ「キシャァァァ」ブン ブン


剣士「ふぅぅぅ…」キン キーン


スパ スパ スパ スパーッ


盗賊「おおぅ…一瞬でバラバラか」

女海賊「ダメ!まだ動いてる!心臓探して!!」

剣士「ふんっ」スパ スパ スパ スパ

リッチ「ガガガガガ…」シュゥゥゥゥ

女海賊「え!?溶ける?切り口から溶けてる…」

剣士「逃げる準備!!女戦士が危ない…」


ガーン ガーン ガツン ガツン!


女戦士「うぐっ…うぐっ…」ガクリ

女海賊「お姉ぇ何で反撃しないのさ!!」

剣士「入り口まで走って!!僕が時の王を相手する」シュタタ

時の王「行かせるかぁ!!」ブン ブン

剣士「…」キン キーン スパーッ

時の王「むぅぅ…」ガク

剣士「女戦士!!肩を…」グイ

女戦士「くふっ…」グッタリ

剣士「ふんっ…」グイ シュタタ

女海賊「剣士!早く!!」

時の王「くぅ忘れるな!!同志になれ!!」

女海賊「今はダメ…時を待って!!逃げるよ…走って!!」
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:55:25.85 ID:UulvHEXE0
『貴族特区上空』


フワフワ


アサシン「遅いな…」

ローグ「まだ屋敷の中で光が動いてるっす」

アサシン「魔女…そろそろ下の衛兵を眠らせよう」

魔女「そうじゃな…」アブラカタブラ クラウドコントロール メスメライズ

魔女「広範囲睡眠魔法!」モクモク

アサシン「これで気付く者は居るまい」

ローグ「光が二階の方に移動したようでやんす…出て来るかもしれやせんね?」

アサシン「少し高度を下げろ…寄って待機だ」

ローグ「アイサー」

アサシン「様子が伺えないのはイライラするものだ…」

魔女「あの光が動いているうちは無事なんじゃろうて」


”魔女!緊急事態!”

”お姉ぇと盗賊が負傷して走れない”

”睡眠魔法使って気球で降りて来て”

”タイミングはこっちで言う”


ローグ「ヤバヤバ…かしらが負傷って」

アサシン「ローグ…タイミングを合わせて気球を降ろせ…私は先に下へ降りる」

ローグ「分かってるっすよ」

アサシン「行く…」ピョン

ローグ「ええぇ?この高さでっすか…あ〜あ」


”5”

”4”

”3”

”2”

”1”


フワフワ ドッスン
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:55:52.02 ID:UulvHEXE0
魔女「どこじゃ?居らんでは無いか…」

ローグ「あっちっす…降りる場所違いやしたね」

魔女「アサシンが案内しておる…大丈夫じゃ…飛ぶ準備をせい」

ローグ「マズイっすねぇ…超マズイっす屋敷から誰かこっち見てるっすよ」

魔女「むむ…アレは時の王じゃな」

ローグ「矢で撃たれたらこのぼろい気球飛べなくなるっすよ」

魔女「風魔法で反らす故…主は気球の操作に集中しておれ」


ダダダダ


女海賊「飛んで!!」

ローグ「アイサー…ひやひやするっすよ」

女海賊「魔女!お姉ぇに回復魔法!盗賊にも!!」

魔女「回復魔法!回復魔法!」ボワー

女海賊「お姉ぇが気絶するなんて初めて見た」

ローグ「かしらは大丈夫っすか?」

女海賊「お姉ぇもかなり出血してる…ヤバいかも」

魔女「む?主も出血して居るでは無いか」

女海賊「これは処置済み」

剣士「回復魔法!」ボワー

女海賊「ぁ…ありがと」

盗賊「ぐぇぇぇぇ吐きそうだ…血が足りねぇ」
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:56:22.70 ID:UulvHEXE0
『貨物船』
 

ドタバタ


魔女「ダメじゃ!主はこの間血を抜いたばかりじゃろう…」

情報屋「このままじゃ盗賊が危ない!!私の血を…」

商人「僕の血は!?」

魔女「主は体が弱すぎじゃ…わらわの血を輸血せよ…情報屋!早うやれ」スッ

情報屋「…」グサッ

魔女「むぅ…痛いのぅ…この管は」

女海賊「お姉ぇにも私の血を…」

女戦士「ぅぅ…私に構うな」

女海賊「お姉!!気が付いた?」

女戦士「私は少し血を抜いたほうが良い様だ…輸血は要らん」

魔女「意識がハッキリしておりそうじゃ…様子見が良いじゃろう」

女戦士「私は居室に戻る…体を見られたくないのでな」ヨロ

女海賊「立てるの?」

女戦士「構うな」ヨロヨロ

魔女「立てる様なら心配は要らん様じゃな…エリクサーを飲んでおけ」



『居室』


ガチャリ バタン


女戦士「ふぅ…」ドサリ

女海賊「平気?」

女戦士「気にするな」

女海賊「お姉ぇが気を失うの初めて見たからさ…」

女戦士「私が倒れたのは別の原因だ…戦いの中で我を忘れたのだ」

女海賊「ん?どゆこと?」

女戦士「恥ずかしくてお前にしか言えんのだが…時の王に打たれて我を忘れてしまった」

女海賊「まさか…」

女戦士「戦いに行く前に私の体がどういう風だったか知っているだろう?」

女海賊「呆れた…心配して損した」

女戦士「逝くまいと耐えたのだが耐えきれなかった」

女海賊「もっと血ぃ抜いた方が良いね」

女戦士「すまんがこの話は墓に入るまで秘密にしておいてくれ」

女海賊「お姉ぇってさ?打たれて痛くないの?」

女戦士「痛みの程度が他の者とどれ程違うかは知らん」

女海賊「でも快感なんでしょ?便利な体だなぁ…」

女戦士「我を保つのが苦痛になるのだ…良いのか悪いのか…」

女海賊「私にゃぁ理解出来ん」
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:56:53.36 ID:UulvHEXE0
『翌日』


ザブン ザブン


商人「盗賊の容態はどう?」

ホムンクルス「いびきをかいて寝ていらっしゃいます」

商人「いつも通りだね?」

ホムンクルス「3日は安静にしておいた方が良いかと思います」

情報屋「毎回毎回怪我し過ぎなのよ…」

ホムンクルス「その様ですね…体に傷跡が沢山ありました」

商人「女戦士の方は?」

情報屋「居室から出てこないわ?女海賊が言うには心配無いって」

商人「精鋭4人が行って2人大怪我って…かなり厳しい戦いだったんだろうね?」

情報屋「私はまだ話を聞いて居ないけど…誰も聞いて居ないのかしら?」

商人「気になるね…魔女も知らないって言うし」

情報屋「アサシンは夜の内に気球で何処かに行ったまま…」

ホムンクルス「アサシンさんは気球を交換してくると言って居ました」

商人「交換…なんでだろ…なんか気になる事ばかりだね」



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848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:57:27.04 ID:UulvHEXE0
ガチャリ バタン


女海賊「魔女は何処に行ったか知らない?」

商人「あ!おはよう…魔女は奥の居室で横になってるよ」

女海賊「そっか…血ぃ抜いた後じゃしょうがないか」

商人「ねぇ昨日の作戦ってどうだったの?何も聞いてないけど」

女海賊「魔術師は剣士が倒したよ…ただいろいろ想定外が在ってね…魔女に相談したかったんだ」

魔女「呼んだかえ?」ノソノソ

商人「あ!!起きたんだ…大丈夫?」

魔女「少し血を抜き過ぎた様じゃが歩く程度なら問題なさそうじゃ」

女海賊「魔女!昨日の魔術師の事なんだけどさ」

魔女「わらわも気になって居ってのぅ…どうだったのじゃ?」

女海賊「倒したよ…でも普通の魔術師じゃなくてリッチ?…っていう魔物だった」

魔女「何故リッチじゃと分かったのじゃ?」

女海賊「盗賊が言ってたんだけど…違ったのかな?」

魔女「リッチは魔術師の成れの果てじゃ…魔力は残したまま不死者になったのじゃな」

女海賊「そんだけ?魔女の反応薄いんだけど」

魔女「ちと考えて居る…セントラルは昔魔女狩りをやって居ったな」

女海賊「10年くらい前だね」

魔女「当時捕らえられた魔術師は皆リッチにされておるやも知れんな」

女海賊「え!?あんなのがいっぱい居るって事?」

魔女「今思えば辻褄の合う事ばかりじゃ…当時の魔術院長は黒魔術を教えとったのじゃが行方不明になって居る」

魔女「黒魔術師はネクロマンサーの事じゃ…魔術師をリッチにすることが出来るのぅ」

商人「それってつまり黒の同胞団に沢山リッチが居るという事だよね?」

魔女「そうなるな…わらわは一度シン・リーンへ戻らねばならんな」

女海賊「戻ってどうするつもり?」

魔女「黒の同胞団と繋がりのある者を粛清するのじゃ…魔術院の規律が乱れすぎておる」

商人「的が絞れて来たね…倒すべきは黒の同胞団なんだ」

魔女「時の王はどうだったんじゃ?会うたのであろう?」

女海賊「うん…それはちょっと話が重くてさ…皆居る時に話すよ」
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:57:58.75 ID:UulvHEXE0
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女海賊「ホムちゃん…ちょっと良いかな?」

ホムンクルス「はい…どんな御用でしょう?」

女海賊「ホムちゃん前にさ…人類を滅ぼす気は無いとか言ってたよね?」

ホムンクルス「私は人間の住まう環境を良くする為に生まれたロボットですからその様な気はありません」

女海賊「じゃぁさ…人間をハーフエルフやハーフドワーフに置き換えるつもりは?」

ホムンクルス「…」

女海賊「どうして黙るのさ」

ホムンクルス「ハーフエルフもハーフドワーフも同じ人間です」

女海賊「それって置き換えるって言う事を言ってるよね?」

ホムンクルス「こう言えば良いでしょうか…長期的に見て交配が繰り返され旧種族は新種族に淘汰されます」

女海賊「やっぱそうなんだ…」

ホムンクルス「しかし問題点もあります…ハーフエルフやハーフドワーフは人間と比較して繁殖力がとても低いのです」

ホムンクルス「ですからハーフエルフやハーフドワーフだけでは繁栄する事が出来ません」

商人「なるほどね…交配を促進する為にエルフは美しくなるように設計されているんだ?」

ホムンクルス「恐らくそうだと思います」

女海賊「恐らくって…そっかホムちゃんがやった訳じゃ無いもんね」

ホムンクルス「はい…私はシミュレーションの結果をお話しています」

商人「今の話からするといづれ人間はハーフエルフやハーフドワーフに置き換わって行くんだね?」

ホムンクルス「先ほどもお話しました様に課題は繁殖力です」

商人「という事は繁殖力の高い人間はいつまでも居残るよね?」

ホムンクルス「交配が進めば入れ替わって行くでしょう」

商人「それは君が言うバランスさせるっていう解釈になるの?」

ホムンクルス「それもバランスさせる手段の一つですね…ここに誤解が生じると思われます」

女海賊「時の王は完全に誤解してるんだよ?」

商人「え!?時の王が?どういう事?」

女海賊「時の王は精霊の言葉を誤解して解釈してんの!人間を淘汰するのが精霊の目的だと思ってる」

ホムンクルス「結果的に種族が置き換わって行くという事ですね…人間を滅ぼすつもりはありません」

商人「時の王はなんて言ってるの?」

女海賊「亡き精霊に変わって人間を滅ぼすとか言ってんのあのバカ」

商人「ハハ君はハーフドワーフだから良い解釈できるだろうけどさ…僕みたいな普通の人間からしたら滅ぼされる様に聞こえるよ」

ホムンクルス「それが誤解の原因ですね…」
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:58:36.67 ID:UulvHEXE0
『甲板』


盗賊「うぁぁぁ…腹減った…何か食わせろい」ヨタヨタ

情報屋「あ!!あなた…もう動いて大丈夫?横になってて?何か持って行くから」

盗賊「ちっと風に当たりてぇんだ…デッキで寝転んでも良いだろ」ドタ

商人「焼き魚で良いかい?」

盗賊「何でも良い!腹減った」

ホムンクルス「造血剤も忘れずに飲んでください」

盗賊「まぁ心配ねぇ!いつもの事だ」

魔女「主は懲りん奴じゃのう…わらわの血は大事にせいよ?」

盗賊「ヌハハ今度は魔女の血が入ったか…俺も魔法が使える様になるか?」

情報屋「何バカな事言ってるの?」

盗賊「そういやよう…あの魔術師から良い物スったんだ…見ろ」ポイ

魔女「むむ!貝殻じゃな」

盗賊「それからコレだ…こりゃ何かの杖だろう?」

魔女「こりゃたまげた!幻惑の杖ではないか…精霊が持って居たと言われる杖じゃ…何故祖奴が持って居ったんじゃ?」

女海賊「ふーん…なるほどね」

魔女「何か知って居るのか?」

女海賊「前にあの屋敷に盗みに入った時にもさ…又ドロボウが来たとか言ってすぐ見つかっちゃったんだ」

魔女「ふむ…そういえばわらわが行った時もドロボウとか言って居ったな…」

女海賊「昨日も同じさ…私ら何も盗んでないよ」

盗賊「…て事はその魔術師が盗んでたって事か」

女海賊「時の王は気になる事も言ってたさ…魔術師に監視されてるってね」

魔女「時の王と黒の同胞団の関係は微妙なのかも知れんのぅ」

女海賊「そだね…多分時の王は黒の同胞団に利用されてんだね…何か良さそうなアイテム一杯有ったし」

盗賊「まぁこの杖は今の所俺が持ってんだし…魔女が使ったらどうだ?」

魔女「この杖はユニークアイテムじゃぞ?わらわが使って良いのじゃろうか?」

女海賊「精霊との思い出が詰まった時の王の持ち物だよ…返すのが筋だね」
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:59:05.45 ID:UulvHEXE0
盗賊「ユニークアイテムってーとどんな効果あるのか知ってるのか?」

魔女「強力な幻惑魔法が封じられておる…魔王が使うまやかしみたいな物じゃ…人を操れるのぅ」

女海賊「ははーん…その杖を使ってセントラルの動乱引き起こしてんだね?」

魔女「ただし操れるのは一人づつだけじゃな」

女海賊「そんなん有力者操れば良いだけじゃん」

魔女「まぁそうじゃな…時の王が魔結界から出ん理由はそれも理由の一つやも知れんな」

盗賊「そのうち返すとしてとりあえず魔女が持って置け」

魔女「詠唱無しで幻惑魔法が使えるのはさすがに強力じゃな…こんな物を持って居ると命を狙われるのじゃが」

女海賊「もしかしてその杖持って命じるだけ?それで言う事聞く感じ?」

魔女「そうじゃな」

女海賊「ほんじゃ私が使う!!」

盗賊「ダメだ!!お前みたいなのが使うとエライ事になる」

女海賊「はぁ!?私に逆らおうっての?」

盗賊「うぉっとぉ!!お前…裸になりたい様だな…」スッ

女海賊「ちょ…何杖向けてんのよ!」タジ

盗賊「手を上げろ…」

女海賊「ちょ…え?ちょちょちょ…やめてよ」バンザーイ

魔女「これ!!乱用するでない!!これは主らが使うと面倒な事になる!!貸せ!!」ブン

女海賊「その杖ヤバッ…」

魔女「そうじゃ…じゃからユニークアイテムなのじゃ…本来は封印せねばならぬ」

女海賊「ねぇ…手を下ろせないんだけど」

魔女「困ったのぅ…主はもう夢の中なのじゃ…どうやって目を覚まさせようかのぅ」

盗賊「ん?てことは今何やっても覚えて無いって事になるか?」

魔女「目を覚ました時には覚えて居らんじゃろうな」

女海賊「ちょ…待ってマジで言ってる?」

盗賊「ぐふふふふふ…さぁて!!…どうやって起こそうか!!ぐふふふふふ」

女海賊「マジやめて!!体に触ったらぶっ飛ばすよ!!ちょっ…やめ!!」


ギャハハハハハ ギャハハハハハ ヒィヒィ



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852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/05(木) 23:59:38.05 ID:UulvHEXE0
女海賊「なんか…すっごい体だるいんだけど…」グターーー

盗賊「ヌハハ疲れてるんだろ…ちっと横になってろ!!」

魔女「ヤレヤレ…」

商人「ねぇ…貨物用の気球が船に降りて来そう…多分アサシンだね」

盗賊「なんで貨物用の気球で来るんだ?補給か?」

情報屋「あなたが寝ている間にアサシンが気球を交換してくるって言ってたわ」

盗賊「あぁぁなるほど…昨夜時の王に気球を見られてるからか…こっちの居場所悟られたくないってか」

商人「なんかいろいろ有ったみたいだね」

盗賊「まぁな…しかし女戦士がラットマンリーダー6匹相手に引け劣らんのはビビったわ」

女海賊「お姉ぇは6匹倒したの?」

盗賊「ミスリルの斧ってのもあるが打たれてもビクともしないのがやっぱガチの戦士だ」

女海賊「あーそういう事ね…変態だから気にしないで」

盗賊「斧であのでかいラットマンリーダーを豆腐みたいに真っ二つだ…真似できんわ」

魔女「主は魔術師と戦ったのじゃろう?リッチじゃと何故分かったのじゃ?」

盗賊「心臓がどこにあるか分からない不死者はリッチだと聞いた事があんだ」

魔女「ふむ…では間違いない様じゃな…変異魔法で心臓の場所を変えて居るのじゃ」

商人「魔女が少女に変わったりする魔法だったよね?」

魔女「うむ…わらわも心臓を隠しておるのじゃぞ?」

商人「へぇ…そうだったんだ」

盗賊「一発でやられない様にする為か?」

魔女「そうじゃ…心臓がやられなければ回復魔法で回復出来るでな」

盗賊「だから剣士はリッチをバラバラに刻んだのか」

魔女「体の何所かにはある故それが早いかものぅ」

女海賊「剣士は知ってたの?」

剣士「知らないよ…体が自然に動いた」

女海賊「自然にねぇ…時の王があんたの剣技を見て時の勇者って言ってたけど…」

商人「む…気になる話だな」



フワフワ ドッスン
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:00:04.66 ID:xG8gRnQS0
盗賊「帰って来た様だな」

アサシン「盗賊はもう大丈夫なのか?」

盗賊「横になってりゃどうってことは無ぇ…ほんで?上手い事気球は交換出来た様だな」

アサシン「4人乗りの貨物用だが使い勝手は割と良い…それより女戦士の容態はどうだ?」

女海賊「平気…放って置いて良いよ」

アサシン「まだ起き上がれる状態では無いのだな?」

女海賊「分かんないけど…なんで?」

アサシン「今気球から見えたのだが城の方で騒ぎが起きて居そうだ…少し離岸しておいた方が良いかと思ってな」

盗賊「船乗りが中央に行っちまってるな…ちっと時間が掛かるかもしれんぞ?」

アサシン「まぁ私が見に行って来よう…ローグ!一緒に来い」

ローグ「アイサー」




『夕方』


ザブン ギシギシ


女戦士「…」ツカツカ

女海賊「お姉ぇ!!平気?」

女戦士「休んだらスッキリした…お前も仮面を付ける様にしたのか?」

女海賊「お姉ぇの分もあるよ?要る?」ホイ

女戦士「ふむ…銀製か…この紋様はお前が彫ったのか?」

女海賊「そだよ…退魔の効果も魔女が付与してくれた」

女戦士「なかなか良い物だな」

女海賊「お姉ぇのクセがちっとは良くなるかも知んないから付けといて」

女戦士「言うな…」スチャ

盗賊「女5人全員仮面たぁ味気無ぇな…そこに並んでみろ」


魔女「…」 幻惑の杖 ローブ

情報屋「…」ミスリル剣弩 中装 

ホムンクルス「…」毒牙のナイフ 軽装

女戦士「…」ミスリル斧盾 重装

女海賊「…」4連銃爆弾 中装


商人「こうやって改めて見るとみんな美人なのに勿体ないね」

盗賊「船に乗ってる時ぐらい外しておいてくれよ…酒がマズイ」



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854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:00:32.87 ID:xG8gRnQS0
女海賊「あ!!やっと帰って来た!!アサシンとローグ!そこに並んで」

アサシン「何のつもりだ?」

女海賊「良いから早く」


剣士 「…」流星の剣 中装

盗賊 「…」ミスリルダガー弓 中装

ローグ「…」ミスリルダガー×2 中装

アサシン「…」草薙の剣 中装

商人「…」ミスリル剣弩 中装


女海賊「やっとみんな揃ったね」

アサシン「食事でもしながら少し話そうか…」

商人「バーベキューでもしようよ」

ローグ「良いっすねぇ…魚ばっかでやんすが」



『バーベキュー』


メラ パチ ジュゥジュゥ


女海賊「…ほんで城の方はどうだったの?」モグ

アサシン「ゲートブリッジが開いて架け橋も降りたそうだ…今はブリッジ上で押し合っているらしい」

ローグ「アンデッドホースに乗ったデュラハーンの一騎駆けで大混乱だったようでやんす」

女戦士「騎乗で戦える地形ではあるまい?」

ローグ「中央の方まで降りてきたらしいっすよ?一騎で…」

女戦士「倒したのか?」

アサシン「何処かに去ったとの事だ…よもやするとこちらに来ていたかもしれん」

女戦士「バリケードが功を奏したか…被害はどうなって居る?」

アサシン「怪我人が数十人中央まで運ばれているな…死者の状況は分からん」

盗賊「エルフゾンビはちとやり過ぎじゃ無ぇか?」

アサシン「まぁゲートブリッジが降りたのだ…呼び込んで終わらせるつもりなのだろう」

ローグ「今は中央の方も落ち着いて心配無いでやんす」

アサシン「さて…私も昨晩の事で聞きたい事が山ほどあるのだが…」

女海賊「私が話すよ…」


カクカク シカジカ

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855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:01:05.29 ID:xG8gRnQS0
女海賊「…で…これが盗賊が盗んだリッチが持ってたの貝殻だよ」

アサシン「魔女…この貝殻は聞く専用の貝殻なのか?」

魔女「そうじゃな…もう一つ話す専用の貝殻も持って居ったかもしれんが…」

盗賊「そんな何度もスリ出来るようなチョロい相手じゃ無ぇ!」

アサシン「まぁ良い…その貝殻があれば黒の同胞団の動きを探れるな」

女海賊「魔女の話だと黒の同胞団に沢山リッチが居るかも知れないって」

盗賊「やばいぞリッチは…不死者で心臓がどこにあるのか分かんねぇんだ…今回は魔法使って来なかったから良かったが…」

アサシン「ふむ…単騎で一人づつ倒すと言う訳にも行かんのか」

女海賊「待って…リッチって不死者だよね?だったらなんでエルフゾンビのドクロの杖に従わなかったの?」

魔女「魔結界の中に居ったからじゃな…つまり魔結界の外に居るリッチはドクロの杖に従う筈じゃ」

盗賊「おぉぉ!!ほんじゃドクロの杖はキーアイテムだな」

アサシン「上手く使えば黒の同胞団を壊滅に追い込めるな」

女海賊「下手に動いてこっちの動きバレるとマズイからしっかり調べたいね」

魔女「わらわに考えがある…シン・リーンの元老院は黒の同胞団を繋がって居りそうじゃ…わらわは一旦戻りたい」

アサシン「魔女が動いていると黒の同胞団に知られるのは逆に良くないと思うが…」

魔女「変性魔法で他人に変身すれば良い」

女海賊「お!?そんな事できんの?」

魔女「姿を借りる者の同意があれば成り済ます事が出来る」

アサシン「ほう?面白い作戦だな」

魔女「そうじゃな…母上と面識のある女戦士が良いのぅ?品もある故目通りするには十分じゃ」

女海賊「お姉ぇ…品があるとか言われてるけど変身されて良いの?」

女戦士「体を他人に見せない条件でなら構わん」

アサシン「…して…目通りが出来たとしてどうする?」

魔女「元老院の者を招集して尋問じゃな…わらわには幻惑の杖がある」

アサシン「ふむ…壺の行方はどうする?」

魔女「おぉ!!そうじゃ…時の王の屋敷にはやはり無かったのか?」

女海賊「一通り見たけど壺は無かったなぁ…美術品と謎のアイテムばっか」

盗賊「俺も見て無ぇな…」



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856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:01:37.18 ID:xG8gRnQS0
情報屋「ねぇ女海賊?未来君が壺の事を何か言っているわ?」

女海賊「え?未来が?…どうしたの未来?」

子供「僕さ…前に白狼の盗賊団ごっこしたときに壺を一個持って帰ってきたよ?」

魔女「何じゃと?どのような壺じゃ?」

子供「…これくらいの大きさで黒い壺だよ…蓋が付いてた」

魔女「こんな形をして居らんかったか?」カキカキ

子供「そう!これ…袋に入れてママに渡したよ」

女海賊「え!?…あの財宝の中に…あったの?」

魔女「それは何処にあるのじゃ?」

女海賊「お姉ぇに渡した財宝ってどうなった?」

女戦士「海賊の基地に置きっ放しだな…私の部屋だ」

女海賊「安全な場所にあんじゃん!!あそこは狭間の中だよ」

ローグ「あの財宝…あっしが最初にお宝貰ったっすよね?壺なんか見てない気がするんすけどねぇ…」

女海賊「私も覚えてないんだけど…確認しないと分かんないね」

アサシン「ひとまず行き先の手掛かりは一つある訳だ…ここは分かれて行動するか」

女戦士「では私は船で一度基地へ戻るとしよう…ローグを連れて行く」

女海賊「シン・リーンは飛空艇で私が魔女を送って来るよ…どうすっかな剣士は一緒に来るとして…」

アサシン「私の予測だが魔術師の多いシン・リーンは相当危険だと思うのだが…」

女海賊「アサシンの予定は?」

アサシン「私はフィン・イッシュ女王の相談役になってしまって居てな…今は動けん」

女海賊「じゃぁこうしよう…ホムちゃんは放って置けないから連れて行くとして盗賊と情報屋…おまけで商人の7人」

女戦士「未来は私が預かるで良いか?壺を知っているのは未来なのだろう?」

女海賊「うん…あんまり危ない所に連れまわせないしお願い…」

アサシン「では私はエルフゾンビと共にフィン・イッシュ女王の下に身を寄せておく」

女海賊「おっけ!決まりだね」

アサシン「魔女に頼みがあるのだが…貝殻をそれぞれに配れんか?連絡用に使いたいのだ」

魔女「簡単じゃ…それぞれに2枚づつ用意すれば良いな?」

アサシン「うむ…黒の同胞団も同じように連絡を取り合っているのだ…私達も使わねば行動に差が出る」

魔女「では女戦士と女海賊…アサシンに配るとしよう」
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:02:05.83 ID:xG8gRnQS0
『居室』


ガチャリ バタン


女海賊「お姉ぇ…未来はもう寝た?」

女戦士「フフ未来は剣士にそっくりだな?」

子供「…」スヤ

女海賊「お姉ぇに彗星の剣を預けに来た…」ゴトリ

女戦士「良いのか?」

女海賊「私やっぱあんま使わないんだ…背負える様になってるから何かあったら未来に使わせてみて」

女戦士「分かった…研ぎは私が…」ゴクリ

女海賊「無駄に研がないで大事に使って」

女戦士「分かっている」

女海賊「未来は昔の剣士みたいな剣の使い方するんだ…私じゃ無理だから稽古付けてあげて」

女戦士「そうだな…船旅は暇を持て余す…しっかり訓練してやる」

女海賊「未来は私から離れるの初めてだから少し心配…」

女戦士「自分の荷物をまとめて私の居室にもう来ているのだ…自分なりに役立とうとしているのだぞ?賢いでは無いか」

女海賊「フフそっか…」

女戦士「お前は知らんかも知れんが…隠れて回復魔法の練習をしているのだぞ?」

女海賊「未来が?」

女戦士「魔女に教えてもらった様だ…貴重な回復要員としても働いて貰うつもりだ」

女海賊「もう一人前か…」

女戦士「うむ…まぁ危険な所に行く訳では無いから心配しなくても良い」

女海賊「うん…どっちかっていうとお姉ぇの変態が移るのが心配」

女戦士「…」スラーン ピカー

女海賊「ちょちょちょ…口が滑った」

女戦士「フン!見れば見るほど美しい刀だ…」

女海賊「あ!そういえばその刀で切られた切り口は溶けるみたいだから注意して…自分の体切らない様にね」

女戦士「ほう?そのような効果もあるのか…」

女海賊「伝説の剣にふさわしいっしょ?フフ」
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:02:36.41 ID:xG8gRnQS0
『翌日』


ザブン ギシギシ


魔女「では行くぞよ?」

女戦士「どうすれば良いのだ?」

魔女「わらわに吸い込まれて行くのを拒否しなければ良い」

女戦士「ふむ…分かった」

魔女「では…変性魔法!」グングン

盗賊「おぉ!!女戦士が2人…」

女戦士「イカンな…体が大きゅうなり過ぎてローブがピチパチじゃ…」

女戦士「これが私なのか…触って良いか?」

女戦士「自分の体を触るのと同じじゃぞ?」

女戦士「…」ムニムニ

女戦士「これ!気持ちが悪い」

女戦士「柔らかいな…私はこれほど柔らかいのか…」

女戦士「何を言って居るのじゃ…自分の体じゃろう」

女戦士「私の着替えを持ってくる…着替えて見てくれ」

女戦士「うむ…いやここでは盗賊が見て居るでわらわがそっちに行った方が良いな」

盗賊「んーだよ!!減るもんじゃあるめぇし別に良いだろ」

女戦士「魔女…こっちだ…居室まで来い」
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:03:03.28 ID:xG8gRnQS0
『居室』


ゴソゴソ


女戦士「これは普段主が着ている物では無い様じゃが?」

女戦士「軽装だから着るのを控えて要るのだ」

女戦士「なるほど…主は本当はこれが着たいのじゃな?」

女戦士「そうだ…試着しても自分では見る事が出来ないのでな…」

女戦士「どうじゃ?満足か?」

女戦士「回ってみてくれないか?」

女戦士「ほれ?」クルリ ヒラ

女戦士「フフ…もっと着せ替えてみたくなるな」

女戦士「わらわはこれで良い…軽い方が好みじゃ」

女戦士「私はこんな風に見えて居たのか…」

女戦士「自信が付いたか?」

女戦士「もっとゴツゴツした風体だと思っていたのだがそうでは無かったのだな…」

女戦士「気にし過ぎじゃ」

女戦士「笑ってみてくれないか?」

女戦士「こうか?」ニコ

女戦士「フフ…照れくさい」

女戦士「満足した様じゃな?」

女戦士「妹に負けて居ないのは良く分かった…少し自信が付いたありがとう魔女」
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:03:35.12 ID:xG8gRnQS0
『甲板』


ザブン ギシギシ


ローグ「そろそろ出港するでやんすが…げ!!かしらが2人…」

盗賊「お!?戻って来たな?どっちがどっちだ?」

女海賊「魔女!!そろそろ飛空艇に乗って…出発するよ」

女戦士「他の者は皆乗って居るんか?」

女海賊「うは…全然見分け付かないね…もう乗ってるから魔女も乗って」

女戦士「体が大きい故頭をぶつけそうじゃ…慣れるまで少々かかりそうじゃな」スタスタ

女海賊「その体ってさ…お姉ぇと同じぐらい強いの?」

女戦士「丁度半分じゃ」

女海賊「半分でもそこそこ強いんじゃね?」

女戦士「そうかも知れんのぅ…一応魔法も使えるで割と強いかも分からん」

盗賊「マジか!暇出来たら立ち会ってみるか…」

女戦士「遊びでは無いんじゃ早う行くぞよ」

女海賊「よし!乗ったね?飛空艇の操作は盗賊がやって」

盗賊「おう!じゃ…いくぜ?」


フワリ シュゴーーーーーー


861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/06(金) 00:04:31.94 ID:xG8gRnQS0
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 淫魔の呪い編

   完
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:27:40.10 ID:CUQQsgj40
『飛空艇』

シュゴーーーーー


盗賊「ぬぁぁぁ…魚の干物ばっかじゃ力が出無ぇ!」カジ

女海賊「それしか無いんだから我慢して」

情報屋「干し芋ならあるわ?要る?」

盗賊「食い飽きたんだ…肉食わせろ肉!!」

商人「この先にトアル町があったよね?ちょっと補給して行かないかい?」

女海賊「肉売ってるアテあんの?」

商人「あそこは森の近くだし養羊場もあった筈だよ」

女海賊「2時間で買い物済ませて」

商人「分かった僕が買って来るよ…荷を持つのに情報屋も一緒に来てくれるかな?」

女戦士「わらわも行こうかのぅ…体に慣れておきたいでのぅ」

商人「助かるよ」

盗賊「魔女…その格好じゃ危ねぇから余ってる武器何か持ってけ」

情報屋「予備のミスリル剣があるわ?これで良いでしょう?」

女海賊「ダメダメ…魔女は剣の抜き方も知らないからトゲトゲのこん棒あったじゃん!アレにして」

盗賊「おぉそういや全然使って無ぇな…モーニングスターって武器だ」

女戦士「何でも良い…どうせ使わんじゃろう」

盗賊「持ってんのと持って無いのとじゃ男の寄り付き具合が全然違うぞ?用心しておけ…その格好じゃ目立つからな」
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:28:21.72 ID:CUQQsgj40
『森の端』


フワフワ ドッスン


盗賊「こっから10分程西に行ったらトアル町だ…行けるか?」

商人「これくらいの雪なら大丈夫かな…行って来るよ」ギュッギュッ

女海賊「あと2時間もしたら日が落ちちゃうから急いで」

商人「うん!分かってるって…情報屋!魔女!行こう」


ザクザク ギュ ギュ


女海賊「ほんじゃ剣士と盗賊はちっと作業手伝って」

盗賊「なぬ?俺に働かせんのか?」

女海賊「大した作業じゃないって!船体の隙間をこの樹脂で埋めんの…やって」

盗賊「樹液の残り粕で作ったんか?…こんなんで埋めたら燃えやすくなるんじゃ無ぇか?」

ホムンクルス「大丈夫です…木材が長持ちする様になりますので出来るだけ全体に塗って下さい」

女海賊「…聞いた?ハイ働いて!!」

盗賊「へいへい…ラクは出来んな」



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トンテンカン トンテンカン


盗賊「何作ってんだ?」

女海賊「窓が布だと風入って寒いかんね…余ってる木材で木窓作ってんの」

盗賊「これ嵌め込んで行けば良いか?」

女海賊「金具に引っかけて押し込んどいて…すぐ開けれるかチェックもやっといて」

盗賊「窓全部こんなんでフタしたら暗くなら無ぇか?」

女海賊「大丈夫…ホラ」ピカー

盗賊「あぁなるほど…光の石な」

女海賊「あんたもどうせ暇なんでしょ?余ってる材料で何か作ってよ」

盗賊「ロープ組んでハンモックでも作るか…床に寝転ぶより温いかもしれん」

女海賊「良いね…やって」

ホムンクルス「立派な家になりますね」

女海賊「ほんじゃさ!ロープ張って布垂らして間仕切りも作ってよ…帆みたいに畳める様にしてさ…」

盗賊「おぉ!お前と剣士がイチャ付いてるのを見んで済むか」

ホムンクルス「間仕切りがあれば暖房性能が向上しますね…私がデザインしても良いでしょうか?」

女海賊「ホムちゃん良い案あるの?」

ホムンクルス「ウラン結晶の熱を均等に行きわたらせる工夫です…対流を上手に誘導します」

女海賊「良いね!!」

盗賊「ちっとやる気出て来たぞ…よーし」

ホムンクルス「はい…ここをこうして…あそこをこうして」
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:28:49.72 ID:CUQQsgj40
『トアル町』


ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「うわ…商隊の詰め所がごった返してる」

情報屋「セントラルがあんな風だからこの町が終点になっているのね」

商人「でも何かおかしいな…どうして馬が居ないんだろう?」

情報屋「もしかして雪で足止めかしら?」

商人「そんな感じだね」

女戦士「向こうを見てみぃ…大きなシカがソリを引いて居る」

商人「なるほど…わかったぞシカが少ないから商隊が停滞しているんだ」

情報屋「物資調達には丁度良かったわね?」

商人「うん…これはチャンスだよ」


多分寒さを凌ぐのに毛皮とか羊毛は高騰してる

その代わり肉とか角は安い筈だ

油は高い…物資滞留で海の物は安い


商人「一気に買っちゃおう!!まず人用のソリを2台手に入れよう」

情報屋「フフ急に元気になったわね」

商人「2時間しか無いんだ急ごう!!」タッタッタ

865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:29:20.41 ID:CUQQsgj40
『街道』


ガヤガヤ ガヤガヤ

木炭は要らんかね〜木炭安いよ〜

さぁもってけドロボー金属糸の織物安いよ〜

シカの角バッファローの角なんでもありまっせぇ

冷凍肉どれもこれもたったの5銅貨!!

ガヤガヤ ガヤガヤ


女戦士「古代の金貨1枚でこれほど買い物できるのじゃな?」

商人「まだ銀貨余ってるよ…どうしようかな」

情報屋「また使う機会あるかも知れないし取って置いたら?」

商人「そうだね…もうソリ一杯だしね」

情報屋「ねぇ商人気付いてる?私達の事付けてる男の人4人…」

商人「君も気付いていたかぁ…困ったね」

情報屋「ソリを引いて町を出るのはすこし危険かも知れないわ」

商人「魔女?さっき買った盾は使えそう?」

女戦士「盾なぞ使った事が無いのじゃが…」

商人「あと30分…どうしようかな」

女戦士「わらわは魔法が使えるのじゃ…気にせんと行くぞよ?」

情報屋「大丈夫?その体でも暴漢4人相手だと心配だわ?」

商人「こうしようか…僕と情報屋がソリ引くからさ…魔女は僕たちを守って?」

女戦士「そうか?商人にこのソリが引けるのじゃろうか?」

商人「変わるよ…ふんっ!!」ススス

女戦士「大丈夫そうじゃな?…では戻るとするか」


ガヤガヤ ガヤガヤ

黒い馬に乗った騎士が走り抜けていったらしいぞ?

馬じゃこの雪ん中どうにもなえるめぇ

またセントラルの貴族じゃ無いのか

ガヤガヤ ガヤガヤ
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:30:41.54 ID:CUQQsgj40
『町外れ』


スルスル スルスル


商人「ソリだと荷物運ぶのラクだなぁ…はぁはぁ」

情報屋「息切らしてるじゃないフフ」

商人「ちょっとした運動さ…それにしてもあの4人付いて来るね」

情報屋「どこで仕掛けて来るかね?」

女戦士「貝殻で剣士を呼んだ故…そのまま行って良いぞ」

商人「お!それを聞いて安心したよ」

情報屋「来た来た…4人走って来たわ」

女戦士「そのまま気付かん振りで行って良い」



野郎1「おいおい待ちやがれ!何処いくんだいネェちゃん」

野郎2「どういう事か分かる…」


ボカッ! グチャ


野郎2「はががが…いでぇぇ」

女戦士「うるさいのぅ…わらわは忙しいのじゃ主らに付き合うとる暇は無いのじゃ」

野郎1「やろう…女だと思って優しく声掛けてやってんのに…おい!お前等!!この女掴まえるぞ…」

野郎2「ってぇぇぇ」

野郎3「ソリ引いた2人はそのまま行っちまいますが…」

野郎1「そんなん後だ…ごるぁぁぁ!!」ダダ グイ

女戦士「これ!止めんか…」ジタバタ

野郎1「囲め囲め!!」グイ

野郎2「うひひひひ…なかなか力ありまっせこの女…んむむ」グイ

野郎1「あの小屋まで連れ込むぞ」グググ

女戦士「ふんっ」ゴン!

野郎1「ぐぁ…にゃろう!このまま脱がせ!!」

野郎2「うひひひひ…こいつ下着付けてませんぜ?」

女戦士「そこは触るでない…」ブン グチャ

野郎2「ひでぶ…」

野郎1「お前…血が…」

野郎4「おいおい!ヤバいぞ…誰か走ってくんぞ?」


シュタタ
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:31:14.83 ID:CUQQsgj40
剣士「そこまでだ…手を放せ」

野郎1「誰だお前…どこから来やがった」スラーン

野郎4「こいつ刀に手ぇ掛けてる」スラーン

剣士「魔女…立てそうかい?」

女戦士「助かったわい」

剣士「僕が援護するからその盾で構えてみて」

女戦士「こうか?」スチャ

野郎1「やろう…やる気だな?」

剣士「構わずその武器で叩いても良さそうだよ…」


ブン! ボカ ボカ ボカ

うぎゃ! いだっ!


剣士「その先っぽの尖ってる所を当てれば良い」

女戦士「こうじゃな?」ブン! グチャ




『飛空艇』


メラメラ パチ


女海賊「お!?なんかいっぱい買って来たね」

商人「そうなんだよ…丁度商隊が沢山詰めててさ…良い物いっぱいあった」

女海賊「これ馬の毛皮?」

商人「そうそう!それすっごい安かったんだ…他の毛皮は高騰してた」

女海賊「ちょうど敷物無くて困ってたんだよ…盗賊!この毛皮を床の敷物にして」

盗賊「商人…飛空艇の中を見て見ろ!」

商人「おぉぉスゴイ!!ちょっとした隠れ家になるじゃないか」

ホムンクルス「中は暖かいですよ?」

女海賊「あ!!サメの肝油だ!!貴重品じゃん」

商人「それも安かったんだ…あと色んな動物の角も安かったから買って来た」

盗賊「肝心の肉はどうなった?忘れて居ないだろうな?」

商人「肉もすごい安かったから色んな肉買って来たよ」

情報屋「ちょうど焚火してるみたいだし早速焼いてみたら?」

女海賊「ちょちょちょ…焚火で肉を焼くときは焼き方があんだよ…剣にぶっ射して直火で焼くの」

盗賊「知ってらぁ!こうだろ?」スパッ ブス

女海賊「そうそう…それが山賊焼き…私も食お!」

情報屋「剣士と魔女の分も焼いておくわね」ジュゥ

盗賊「クソ旨めぇ!!」ガブガブ

ホムンクルス「造血剤を飲むのも忘れないで下さい」

盗賊「俺の造血剤は酒だ」

ホムンクルス「アルコールの分解は体に負担がありますので少しにして下さい」

盗賊「へいへい…」


868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:31:44.64 ID:CUQQsgj40
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商人「あ!剣士と魔女が帰って来た」

女海賊「平気?」

剣士「魔女一人で十分だったよ」

女海賊「お姉ぇの体に怪我は?…アレ?お姉ぇじゃないか…」

女戦士「わらわは大丈夫じゃ…ちと下の方を触られて気持ち悪いだけじゃ」

女海賊「え…お姉ぇの体触られたって事?」

女戦士「気にせんでも良い…それより良い匂いがするのぅ」

情報屋「剣士と魔女の分の肉が焼けてるわ?食べて?」

商人「冷凍になってるお陰で肉が新鮮だよ…おいしいから食べて」モグ

女戦士「久方ぶりの肉じゃな…もうずっと芋しか食しておらん」モグ

商人「寒くなったから皆毛皮が欲しいんだろうね…肉は本当に安かった」

女海賊「私ら毛皮は余ってて良かったね」

盗賊「昔お前が作った偽物の白狼毛皮な?毛布替わりにゃ丁度良い」

商人「あ!!そうそう金属糸の織物がめちゃくちゃ安かったんだ…女海賊が喜ぶと思って買ってきて置いた」

女海賊「お!?良いね!!魔女が軽装だからさ…後でインナー作ったげるよ」

女戦士「下着の代わりかえ?わらわは布の下着が苦手なのじゃ」

女海賊「大丈夫!スースーするから」

女戦士「では試してみるかのぅ」



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869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:32:20.03 ID:CUQQsgj40
剣士「そう!盾はそう構える」

女戦士「ふむふむ…」

剣士「盾の中に肩と肘と胴体を隠す…武器は相手から見えない様に」

女戦士「こうか?」

剣士「そのまま突っ込んで来てみて?」

女戦士「…」タタタ

剣士「そうそう…そうやって間合いを詰める…その後に縦振りか横振りの2択」

女戦士「ほい!」ブン

剣士「良いね!振り終わったら盾を使って殴る感じに繋げて見て」

女戦士「…」ブン ブン

剣士「まぁそんな感じかな…必ず盾で身を守るのを意識してね…もう一回やろうか」



女海賊「お姉ぇの体になったら魔女も戦いたくなるんかな?」

盗賊「ちったぁ戦える様になってないと又襲われるぜ?」

商人「なかなか様になってるじゃない」

盗賊「まぁ本物と比較したら全然キレが無い…てか先読みが無いから素人みたいなもんだな」

商人「先読みねぇ…それ言われると僕も素人だなぁ」

盗賊「乱取りで慣れるしか無いんだが…魔女にそれが出来るんかいな」



剣士「じゃぁ次!その木の棒で僕に当てて来てみて」

女戦士「良いのか?」

剣士「うん」

女戦士「では…」タタタ ブン カコン

剣士「続けて」


カンカン コン

870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:33:10.87 ID:CUQQsgj40
剣士「待って待って…どうして僕の避ける方向分かってる?」

女戦士「見えて居るからじゃが?」

剣士「あれ?魔女は何か訓練してる?」

女戦士「剣の訓練は初めてじゃ…魔術の訓練は何十年もやったがのぅ」

剣士「おかしいな…」ヒョイ ヒョイ

女戦士「普通じゃが?」

剣士「僕が動く前に魔女の目はそっちに向いてる…どうして?」

女戦士「詠唱短縮の効果じゃな」

剣士「どういう事?」

女戦士「魔術師は詠唱を短縮する為に少しだけ時空の先に居るのじゃ…わらわがノソノソ動く様に見えるのは主らに合わせて居るからじゃ」

剣士「それはどれくらい先?」

女戦士「1秒にも満たぬが…それほど影響があるのか?」

剣士「そういう事か…リッチと戦った時に違和感があったんだ」

女戦士「魔術師は精神と時の門でそういう修行をするのじゃ…相手よりどれだけ早く魔法を撃てるかが勝負じゃからな」

剣士「もう少し立ち合ってみよう」

女戦士「ふむ…いくぞよ?」



カンカンコン カンカンコン



盗賊「なんか俺もやりたくなってきたわ」ウズウズ

剣士「魔女は鍛えるとすごく強くなると思うよ」

盗賊「だな?俺がリッチの鎌の射程がおかしいと思ったのはそういう事だな?」

剣士「うん…1秒先に動かれてると思って戦わないといけない」

盗賊「1秒つったら連撃食らってもおかしく無ぇ」

女戦士「1秒も無いで安心せい…修行を極めても1秒には届かぬ」

剣士「それでも圧倒的有利だよ」

盗賊「見て避けるでは遅いな」

剣士「うん…感じて避けないといけない」




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871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:33:43.79 ID:CUQQsgj40
盗賊「暗くなって来たからそろそろ上がっとか無ぇと獣出んぞ」

女海賊「剣士!魔女!?飛空艇に入って…行くよ」

剣士「あぁごめん今行くよ」スタスタ

女戦士「良い運動じゃった…この体はよう動くから気持ちがええわい」

女海賊「剣士!残りの荷を入れて!!」

剣士「うん…よっこら…これは矢とボルトだね」

商人「安い物を手当たり次第に買っちゃったから」

情報屋「セントラルに物資が無いのは近隣に疎開したからだったのね」



”ハジ・マリ聖堂の魔術院が抵抗して占拠に時間が掛かりそうだ”

”兵団がセントラルに戻るのはもう少し待て”

”あのモウロクを上手く使ってなんとか収めろ…以上”



女海賊「ちょ…これ!!リッチが持ってた貝殻…」

女戦士「どういう事じゃ?セントラルの兵団がハジ・マリ聖堂に行って居るのか?…」

盗賊「こりゃどっかに行ってたセントラルの船団はシン・リーンに行ってんじゃ無ぇか?」

女戦士「戦う理由が無いでは無いか…国が接して居らんのじゃぞ?」

商人「シン・リーンとセントラルは元々戦争状態だよね?」

女戦士「ううむ…わらわがセントラル国王に密書を渡したのが黒の同胞団にバレてしもうたかのぅ…」

商人「その可能性もありそうだね…あと前にこの飛空艇でシン・リーンの船団を追い返した事もあるんだ…死傷者ゼロで」

女海賊「海賊がシン・リーンの港町まで牽引したってパパが言ってた」

商人「だったらドワーフの国と繋がってる様にも見えてしまってるかもね」

女戦士「魔術院を落としたところでセントラルには何の利も無いと思うが…」

商人「セントラルじゃなくて貴族とか黒の同胞団の利益だろうね…何かありそう?」

情報屋「発掘された遺跡の遺物…ほら?聖剣エクスカリバーとか光の石とかいろいろ有ったでしょう?」

女戦士「ユニークアイテムを奪われまいと母上が抵抗しておるのじゃな?」

商人「流れ的にそんな感じだね」

女戦士「これは先にハジ・マリ聖堂に向かわねばならんな」

商人「魔女があんまり動いちゃうと相手に勘繰られる気がするなぁ」

女戦士「ホムンクルスや…森の東…ハジ・マリ聖堂付近は雪が積もっておりそうか?」

ホムンクルス「森の東側は山がありませんので豪雪地帯にはなりにくい様です…北の方へ行けば雪が降っているでしょう」

女戦士「アラクネーじゃな…アラクネーを起こして戦わせるのじゃ」

女海賊「お!?私ちっこいクモ持ってるよ…ホラ」モソモソ

女戦士「言う事聞くのであればそのクモにお願いしてみるのも手じゃな…無理やり起こすと怒らせてしまうで」

女海賊「やってみるよ」
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:34:45.07 ID:CUQQsgj40
『森の上空』


シュゴーーーー


盗賊「一旦港町を見て行く感じで飛んで良いな?」

女戦士「うむ…船団の規模が見ておきたい」

商人「津波の被害がどうなってるのかも気になるね」

盗賊「湾になってっからな…セントラルと違って直撃は受けにく様には思う」

商人「セントラルは外郭がまずかったね…アレで海水をせき止めちゃったみたいだからさ」

盗賊「このままハイディングしながら行けば1日半ぐらいか?」

女海賊「もうちっと早い…明後日の日の出前には着くと思う」

盗賊「んじゃ夜間飛行は俺がやる…お前等は仲良く寝てて良いぞ」

女海賊「剣士!こっちこっち!!めちゃ快適になってるよ」

剣士「あぁ…」

商人「じゃぁ僕とホムンクルスは向こうを使うね…ホムンクルスおいで」

ホムンクルス「はい…」

女戦士「ではわらわと情報屋はウラン結晶で温まるかのぅ」



----------------


シュコシュコ ゴリゴリ


女戦士「何を作っておるのじゃ?」

女海賊「皆の武器をボーンハンドルにしてんの…木より丈夫で軽いんだよ」

女戦士「見た目も良いのぅ?」

女海賊「でしょ?磨くともっと綺麗になるさ」

女戦士「角か…回復魔法をエンチャント出来そうじゃな」

女海賊「お!?良いじゃん!!やって」

女戦士「ほんの少しじゃがな…切り傷くらいは治るじゃろうて」

女海賊「盗賊が怪我ばっかりしてるから絶対エンチャントした方が良い」

女戦士「そうじゃな…回復魔法!」ボワー

女海賊「これさぁ…鞘も角で作ったらエンチャント出来る?」

女戦士「出来るぞよ?」

女海賊「回復魔法の頻度が減るんだったらやっといた方が良いね」
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:35:15.89 ID:CUQQsgj40
女戦士「うむ…」

女海賊「剣士も魔法使えるけどエンチャントは無理?」

女戦士「エンチャントは変性魔法との複合魔法じゃから剣士には出来んのぅ」

女海賊「なるほど…材料を変身させてるのか」

女戦士「そうじゃ高位魔法じゃから何年も修行せねばならぬ」

女海賊「剣士が使える最強の魔法って何?」

女戦士「魔力依存じゃったら量子転移が最強じゃが危険じゃけ教えられんのぅ」

女海賊「それって祈りの指輪にエンチャントされてる魔法?」

女戦士「そうじゃな…万物を手に入れる事が出来るが制御が出来んのじゃ…わらわでも自由に使えぬ」

女海賊「ふ〜ん」

情報屋「変性魔法を簡単にした物がシャ・バクダ錬金術よ」

女戦士「良く知って居るのぅ…物質の結合と変性じゃ…特殊な器具が必要になるがな」

女海賊「特殊な器具って何?」

女戦士「わらわは知らぬ…天秤の様な物じゃとは書物で読んでは居るが仕組みは何も知らん」

情報屋「キ・カイ錬金術はその器具が無いから何でも中途半端なの…今までの話からすると時の王が持って居た可能性が高い」

女戦士「リリスの首にバフォメットが付いておったのはそれが理由じゃろうな」

女海賊「時の王の屋敷には天秤みたいな物なんか無かったよ」

女戦士「黒の同胞団が盗んだんじゃろう?それしか考えられん」

女海賊「そんな大事な物盗まれて平気にしてるっておかしくない?」

女戦士「じゃから黒の同胞団にモウロクと呼ばれて居るのでは無いか?人は200年分しか記憶出来んらしいからのぅ」

女海賊「…そうか精霊との思い出以外は忘れて行ってるのか」

女戦士「そこに付け入られて居るのじゃな…哀れな男じゃ」

情報屋「シャ・バクダが滅んで200年以上…道具の使い道を忘れて行ってもおかしくないわね」

女戦士「そもそも器具があったとしても変性魔法の術を使う者が居らんとイカン…じゃから時の王一人では器具は使えんのじゃ」

女海賊「分かって来た…やっぱ時の王は上手く利用されてるだけなんだ…黒の同胞団に」

女戦士「うむ…時の王の指示通りに動いて居る様に見せてその実…利用されておるな」

女海賊「黒の同胞団のボスって誰?…」



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874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:35:45.98 ID:CUQQsgj40
トクン トクン トクン


女海賊「ちょっと商人!あんた裸で何やってんのさ」

商人「シーーーッ!」

女海賊「ホムちゃんも服がはだけ過ぎなんだけど」

ホムンクルス「商人の心臓の音を聞いて居ました…少し雑音が混ざっている様です」

商人「悪くはなって無い?」

ホムンクルス「恐らく心臓の膜に穴が開いていると思われます…塞ぐことが出来れば症状は改善します」

女海賊「あんた具合悪いの?」

商人「空気が薄い場所だとすこしだるくなるんだ」

ホムンクルス「血中酸素濃度が低下しているのですね…病状の悪化ではありません」

女海賊「魔女の変性魔法で心臓治せたりしないの?」

女戦士「わらわは何でも屋では無いぞよ?」

ホムンクルス「心臓の病状が進行する事はありませんがその他臓器への負担が心配ですね」

女海賊「ホムちゃん賢者の石持ってたよね?それでいつもくっついてたの?」

ホムンクルス「はい…賢者の石には体機能の活性化効果がありますから」

女海賊「おっけおっけ…なら良いよ」

商人「僕はホムンクルス無しじゃ生きていけないかもね」

女戦士「ではホムンクルスをしっかり守らねばイカンぞ?」

商人「だから剣の練習してるのさ」

女海賊「ふ〜ん…まいっか」



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875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:36:14.10 ID:CUQQsgj40
トンテンカン トンテンカン


盗賊「ぬぁぁぁうるせぇな…今度は何作ってんのよ」

女海賊「秘密兵器…」キュッキュッ

盗賊「望遠鏡か?えらく細い様だが?」

女海賊「ホムちゃん!ミスリル銀磨いて鏡の入れ物にしたよ…これに光の石入れれば良いんだよね?」

ホムンクルス「はい…あとはレンズで集光して筒から出る様に調整してください」

盗賊「んん?光をその筒から発射するんか?」

ホムンクルス「簡単なインドラの矢を発射する装置ですね…鏡の中で光を蓄えて発射する仕組みです」

女海賊「これさ…ずっと使わないと光貯め過ぎて爆発したりしない?」

ホムンクルス「ご安心ください…一定量を超えると光の石に再吸収されます」

女海賊「あーーなるほど」

ホムンクルス「光の最充填にどれくらい時間がかかるか分かりませんので使って試してみてください」

女海賊「これ撃てるの一発だけ?」

ホムンクルス「そうですね」

女海賊「じゃぁ望遠鏡と合わせて狙いを外さない様に調整しないとなぁ…」

盗賊「2連式クロスボウみたいになってりゃ良いんだけどな」

ホムンクルス「光は重力で少しだけ曲がりますのでご注意下さい…計算式はメモに書いておきます」カキカキ

女海賊「んん?これって…そっか見えてる分も曲がってるのか…てことは遠くに見える物ほど誤差が大きくなるんだね」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「どんだけ遠く狙うつもりなのよ…」

女海賊「望遠鏡で見える範囲に決まってんじゃん」

盗賊「おま…10キロも20キロも先の物に当てるつもりなんか?」

女海賊「悪い?」

盗賊「マジか…そんなんで狙われたら命がいくつあっても足りん…神の武器になるぞ」

ホムンクルス「長距離でしたら大気による光の減衰で大きな威力は期待出来ません…木を燃やす程度ですね」

盗賊「それでも人殺すにゃ十分だ」

女海賊「んーーこれ望遠鏡で補正するのムリだなぁ…目盛り書くだけにしよっかな」

ホムンクルス「対象との距離で補正する量を記した目盛りが簡単でしょう」

女海賊「おけおけ…あとは引き金工夫してブレ無いようにする」カチャカチャ



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876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:36:40.42 ID:CUQQsgj40
女海賊「飛空艇揺らさない様に安定飛行させて」

盗賊「おう!」

女海賊「じゃ…もっかい!!」シュン

盗賊「なんか撃ってんのか撃ってねぇのか分かんねぇな…当たったか?」

女海賊「ふむふむ距離2キロ程度でリンゴに当てられる…もうちょい調整必要かな」

盗賊「十分すぎるだろ」

女海賊「ダメダメ…私が納得しない」

女戦士「ううむ…やはりドワーフは伝説の武具を生み出すのじゃな」

女海賊「再充填で10分掛かんのがウザイ」

ホムンクルス「光の石を挟んで鏡の容器を左右に分けてみては如何でしょう?」

女海賊「2発撃てるって事ね?おっけ!もう一個容器作るわ…」

盗賊「おいおいまだやるんか…もう日が落ちる」

女海賊「ほんじゃ調整はまた明日…今から容器作って改造する」

女戦士「やる事があって良いのぅ」

情報屋「本当スゴイわね…」




『港町近海』


シュゴーーーーー


盗賊「全部で8隻だな…てことは4000人程度軍隊が出てる事になる…船に残ってる事考えると2000人ぐらいか」

女海賊「これ港町は占拠されちゃってんのかな?」

盗賊「港町に俺の隠れ家があんだけど寄ってか無ぇか?」

女海賊「飛空艇降りられんの?」

盗賊「大丈夫だ…納屋に小麦もある」

女海賊「ふむ…ちょっと行ってみようか」

商人「母さんのお墓もあるんだ…手を合わせて行って」

女海賊「女盗賊か…じゃぁ行かないとね」

盗賊「よっし!日が昇る前に降りる」


シュゴーーーーー
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:37:15.44 ID:CUQQsgj40
『ユートピア』


フワフワ ドッスン


盗賊「降りろ!飛空艇は狭間に隠す」

情報屋「しばらく留守にしていたけど…変わって無いわね」

商人「女海賊!母さんの墓はこっちだよ」

盗賊「海がめちゃくちゃキレイなんだ見て行ってくれ」

情報屋「私は街に降りて少し情報を仕入れて来るわ?剣士を連れて行っても良いかしら?」

女海賊「剣士行ける?」

剣士「うん…」

情報屋「剣士が居れば安心…」


盗賊「ふぅ…女盗賊…帰って来たぜ?寂しかったか?」ナデナデ

女海賊「このお墓…あんたが作ったの?」

盗賊「なんだよ…飾りっ気が無いってか?」

女海賊「私が石に装飾掘っても良い?」

商人「ハハ良いじゃない?母さん喜ぶよ」

盗賊「あんま派手派手にすんなよ?」

女海賊「うっさいな…あんたも情報収集行って来たら?どうせ暇でしょ?」

盗賊「へいへい…情報屋!待ってくれ…俺も街に降りる」

情報屋「早く来て?今の内に酒場見ておきたいの」



----------------


コンコンコン コンコンコン


女戦士「ほう…シャ・バクダ王家の紋章じゃな?」

女海賊「うん…アサシンから女盗賊の本当の名前聞いて居たんだ」

女戦士「随分と離れた場所に来てしもうたな…まさかここに王の血筋の墓があるとは誰も気づくまい」

女海賊「私さぁ女盗賊が歌ってた歌をまだ覚えてんだ」

女戦士「どんな歌じゃ?」

女海賊「剣士を寝かせる時に歌ってたんだよ…すっごい簡単なんだけど…印象に残ってる」

女戦士「…むむ!!もしや…歌ってみよ」

女海賊「寝んね〜ん寝〜♪」

ルルル〜♪

ララ〜♪
 
女戦士「こんな所に伝わって居った様じゃな…その歌を忘れるでないぞ?」

女海賊「え?なんで?」

女戦士「それはキマイラを操る歌じゃ…必要になる時が来るやもしれん」

女海賊「リリスとかの事?」

女戦士「うむ…キマイラとして蘇ったリリスを操れる可能性があるのじゃ…ホムンクルスや?覚えたか?」

ホムンクルス「はい…今の歌は記憶に残って居ます」

女戦士「主も歌えるようにしておくのじゃ」

ホムンクルス「はい…わかりました」
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:37:58.30 ID:CUQQsgj40
『日の出』


女海賊「はぁぁぁぁ時間忘れそう…ここって名もなき島みたいな感じ」

商人「朝食出来たよ…小麦でパンを焼いてきた…野菜と肉も挟んであるよ」

女戦士「おぉ良いのぅ」

商人「母さんの大好物だったんだ…毎日このパンを孤児院に持って来てくれた」

女海賊「あんがと…」モグ


チュンチュン


商人「あ!あんなところに鳥の巣が出来てる」

女戦士「女盗賊の友達かもしれんのぅ…」ポイポイ

女海賊「ここは平和だねー」


タッタッタ


盗賊「おぉぉ間に合った!!剣士!情報屋!早く来い…まだ日の出だな?」ハァハァ

女海賊「めちゃ綺麗だねココ」

盗賊「お!?墓もなかなか荘厳な感じになったな?」

女戦士「シャ・バクダの末裔にしては質素じゃが場所は最高じゃな」

盗賊「よう!!それより聞いてくれ…港町に新しい領主が来たらしいんだけどよ」

女戦士「元老の誰かじゃな…わらわが知って居るやもしれん」

盗賊「聞いて驚くな?そいつは魔術師の推薦でシャ・バクダから派遣されてる…どういう事かわかるか?」

女海賊「ぶっ!!…マジで?」

女戦士「最悪の者が領主になったと言うか…」

盗賊「女海賊ちょっとこっちの崖際に来てみろ…領主の砦が見えるんだ…その望遠鏡で覗いてみろ」

女海賊「え…どこ?」

盗賊「ギリギリ砦が見える…何か見えんか?」

女海賊「んんん…こんな朝っぱらから人なんか要る訳無いじゃん」

盗賊「あいつ何とかしねぇと又何かやらかすぞ?」

女戦士「これではっきりしたのぅ…内側から魔術院を滅しようとしておる様じゃな」

商人「魔術院さえ無くなれば女王の実権が無くなる?」

女戦士「元老院はまとまった兵を持って居らぬ…故にセントラル兵を使って居るな」

盗賊「こっちもぐちゃぐちゃだな」
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:38:26.25 ID:CUQQsgj40
女戦士「まともなのはフィン・イッシュだけの様じゃ…しかしあの領主は処分せねばならん…どうしたもんか」

女海賊「あ!!裸のエルフが捕らえられてる…え?3人も?」

女戦士「どこじゃ?」

女海賊「物見の塔…窓から見える」

女戦士「千里眼で覗く…ふむ鎖で壁に繋がれておるな」

女海賊「距離1キロくらい…ホムちゃん!この距離で鎖は焼き切れるかな?」

ホムンクルス「2発同じ場所に当てれば切れるかもしれませんね」

女海賊「剣士!あんた鳥と話できたよね?」

剣士「え!?そんなのやった事無い…」

女海賊「良いから鳥と話してあのエルフに伝えさせて…鎖を見えやすい位置に移動させてって」

剣士「どうすれば良いか…」

女海賊「目ぇ閉じて!!鳥を何か感じない?」

剣士「目を…居るのは分かる…でもどうやって?」フッ

女戦士「今ので終わりじゃ…感じるだけで良いとエルフが言うておった」

女海賊「おけおけ飛んでった」



--------------------



女海賊「よしよし…窓に移動してる…撃つよ」シュン

盗賊「おぉ…」

女海賊「ヒット!」ガチャコン

盗賊「すげぇ仕組みだな」

女海賊「気が散る…黙ってて」シュン

女海賊「よっし!切れた!!」

女戦士「残りの2人も鎖の切断を要求して居りそうじゃ」

女海賊「うん分かってる…あと10分」

女戦士「これは魔法では無いで誰も気づけんのぅ」

880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:38:56.97 ID:CUQQsgj40
『20分後』


シュン


女海賊「おっけ!最後の鎖…やっぱ調整したら精度上がる」

女戦士「3人で逃げて行きよる」

盗賊「見えた…アレだな?もう見つかって追われてんな」

女戦士「エルフ3人じゃとよほどでは無い限り掴まえるのはムリじゃろう」

盗賊「まぁそうだな」

女海賊「チャンス!エルフ居なくなったの確認しに来た所を狙える…あのクソ領主の股間に当ててやる」

盗賊「そこは一発で倒せよ」

女戦士「元老の処分はわらわに任せよ…ここはお仕置きで良い」

女海賊「魔女?クソ領主はどこにいるか分かんない?」

女戦士「今衛兵の目を追って探して居る所じゃ…少し騒ぎになり始めて居る」




『10分後』


盗賊「おいおいおい…アレ領主じゃ無ぇか?今砦の方に向かっている…女連れてんな」

女海賊「外で豪遊かよ」

盗賊「砦ん中入っちまう前にやった方が良くねぇか?」

女戦士「今女の目を追って居る…間違いなくシャ・バクダに居った領事じゃな」

盗賊「砦の門が狙い目だ…開いて無ぇから立ち止まる筈だ」

女戦士「女の視線がおかしいのぅ…キョロキョロしておる」

女海賊「よし!門で立ち止まった…あの女邪魔!!」

女戦士「話をして居るが…金銭の揉め事…いやイカン!!領主はナイフを手にしておる」

女海賊「…もうちょい下がって…もうちょいもうちょい…」シュン


パン!


女戦士「うぉ!!血が飛び散りよった…」

女海賊「え?なんで?破裂して片足取れた」

ホムンクルス「水蒸気爆発ですね…血液が爆発したと思われます」

女海賊「ヤバこれ…」

盗賊「おい…騒ぎになる前にここを離れるぞ…飛空艇に乗れ」

女海賊「やっちゃったぁぁ…」

女戦士「直ぐ近くに魔術師が居るじゃろうから死なんじゃろう…足を失のうたのは今までの罰じゃ」

盗賊「行くぞ!早くしろ!!」
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:39:25.89 ID:CUQQsgj40
『飛空艇』


シュゴーーーーー


女海賊「光が当たって燃えるだけだと思ってたんだよ」

ホムンクルス「水分が無ければ燃えるだけで収まりますね」

女海賊「リンゴが破裂してたのはそういう事か」

ホムンクルス「はい…水分が水蒸気爆発を起こして威力が増大します」

盗賊「これ爆弾と変わんねぇだろ」

女海賊「ちょっと使いどころ考える…危なすぎ」

女戦士「神の武器じゃな」

盗賊「逆に言うと魔物は一発で倒せる訳だ…あの威力だと胴体に当てりゃ穴空くだろ」

商人「君はスゴイ武器を開発したね…インドラの銃…間違いなくユニーク武器に相当するよ」

女海賊「魔女どう?クソ領主は死んで無い?」

女戦士「しぶとく生きとるのぅ…貝殻を使って何やら連絡しておる」

女海賊「狭間の中で貝殻の声って聞こえるんだっけ?」

女戦士「何か聞こえてから狭間を出ても遅くは無い」

商人「また何か指示が出るかもね」

女戦士「気にせずわらわ達は行動して居れば良いと思うな」

盗賊「ハジ・マリ聖堂は直ぐに着いちまうぞ?直行して良いんだよな?」

女戦士「すぐ北の林の中に飛空艇を隠せば良い…聖堂の下に街があるよってそこで宿じゃな」



----------------



女海賊「…おっけ?分かった?」ブツブツ

盗賊「ヌハハ…クモとおしゃべりか?」

女海賊「うっさいなけし掛けんよ?毒持ってるから」

盗賊「結構でかいじゃ無ぇか」

女海賊「ここまで育てたの」

女戦士「良いアラクネーじゃな…魔術師はアラクネーを飼う事もあるのじゃぞ?」

盗賊「目が4つか?」

女海賊「6つ…クリクリして可愛いっしょ?」

女戦士「アラクネーはここまで大きゅうなれば天敵が居らんくなるで飼いやすい…クマでも近寄らんな」

盗賊「おおぅ…そんなに毒強ぇぇのか」

女戦士「麻痺の効果と壊死の効果じゃ…飛空艇を守るには最適かも知れんのぅ」
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:39:58.28 ID:CUQQsgj40
『ハジ・マリ聖堂上空』


ビョーーーーウ バサバサ


商人「完全にセントラルに包囲されてるね…トレビュシェットまで作ろうとしてる」

女戦士「魔術院だけが孤立しとるんじゃな」

盗賊「だな?街の方は何も被害が無ぇ」

商人「ドンパチが無さそうだけどどうなってるんだろ?」

女戦士「わらわの教えを守っているならば専守防衛じゃ」

盗賊「こんなんじゃ守り切れんだろ」

女戦士「魔術師をなめてはイカンぞ?睡眠魔法も毒魔法も使えるのじゃぞ?」

商人「なるほどねーそれで制圧出来ないでいる訳だ」

女戦士「内側に敵が居らねばこの数で攻め切れる訳が無い…じゃが向こうにも魔術師が混ざって居るんじゃろうな」

盗賊「飛空艇はどこに降ろせば良いんだ?」

女戦士「北の林の中じゃ…アラクネーが居って人が近寄らん」

盗賊「あそこだな?降ろすぞ」ビュゥゥゥ




『北の林』


フワフワ ドッスン


盗賊「自分の荷物持って居りてくれ!最後に俺がハイディングで隠す」

情報屋「うっすら雪が積もってるわね?」

商人「ここは暖かいな…地面から湯気が出てる」

ホムンクルス「暖かい地下水が流れている様ですね…クモの様な地生生物の温床になるでしょう」

女海賊「…じゃぁ行って来て!」カサカサ

女戦士「アラクネーが出て来るか見ものじゃのぅ」

盗賊「俺らは街の方に降りてくんだよな?」

女戦士「ちと遠いが運動不足の解消と思って付いて参れ…2時間程歩く」

女海賊「マジ!?そんなに歩くの?」

商人「良い事思いついた!!ソリが2台あったじゃない?乗って行こう」

女海賊「お!?面白そう…持って来て」

商人「丁度緩い斜面になってるし薪にするくらいだったら使っちゃおう」
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:40:30.74 ID:CUQQsgj40
『斜面』


シューーーーーー


女海賊「ひゃっほーーーい!!」

女戦士「およよよよ飛ばし過ぎでは無いか?およよよよ」


ゴツン ガッサーーーー ゴロゴロゴロ


女海賊「アハハ…アハハハハハ」

剣士「魔女!大丈夫かい?」

女戦士「ふがふが…ぺっぺっ…飛ばし過ぎじゃ!!」

女海賊「止まんなかったんだよ!!もう良いじゃん街まですぐそこだし」

女戦士「盗賊らは上手く滑って居るでは無いか」

盗賊「うぉぉぉい!!早くこぉぉぉい!!」

女戦士「もう主のソリにわらわは乗らぬ」プンスカ

女海賊「まぁまぁ早く行こ!!剣士?ソリ持って来て」ピュー

女戦士「ヤレヤレじゃな…」

剣士「ハハ…」

884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:40:57.16 ID:CUQQsgj40
『ハジ・マリ街道』


タッタッタ


町人「あんたら!!冒険者か?どっから来たんだ?」

盗賊「まぁそんな所だが…港町の方からここまで来た」

町人「ほーん…見た所手慣れの装備だな?」

盗賊「どうした?見知らぬ冒険者に声を掛けるったぁ何かあんだろ?」

町人「セントラルから来た兵隊がよぅ…魔物をけしかけて街の者に従うよう強制するんだ」

女戦士「それは聞き捨てならんな」

盗賊「魔物と言っても色々居るが…」

町人「頭が牛みたいなでっかい奴なんだ」

盗賊「そらミノタウロスだな…魔術師はどうしている?」

町人「ここらを守ってた魔術師はみんなあの聖堂の中に閉じこもってる」

女戦士「なぜその様な事になっておる?」

町人「領主の方針だよ…魔術院をシン・リーンに移設するらしいけど魔術師達が抵抗している」

女戦士「魔術師が居らん様になっては魔物からこの地を守る事なぞ出来んのじゃが…」

町人「兵隊を駐留させて経済成長させる狙いだとか」

盗賊「ほんで?俺達にミノタウロスを倒してくれって事なのか?」

町人「早い話そうなる…俺達武器持ってる奴が少ないんだピッチフォークくらいしか無い」

盗賊「ヌハハそれじゃミノタウロスは無理だな」

町人「それだけじゃ無いんだ…この辺は夜になるとグールが出て墓荒らしするんだ」

女戦士「うむ…そうじゃな魔術師が居らんとグールに支配されてしまうのぅ」

盗賊「人食い人種だっけか?ゾンビとか食らうんだよな?」

町人「知ってるなら話が早い」

女戦士「つまりじゃ…魔術師に帰って来てほしいのじゃろう?」

町人「まぁそこまで出来るとは思ってない…とりあえずあのでかい魔物を何とかしてほしい」

女戦士「わらわ達に任せて置け…全部解決してやるで」

盗賊「おいおいそんな事言って良いのか?」

女戦士「依頼は受けるよって主は宿に顔が効くのか?」

町人「宿のおかみは俺の幼馴染だ…何とか話をしても良い」

盗賊「そりゃ好都合だ…俺らが衛兵の目に付かない様にしてほしいもんだ」

町人「聞いてやる…付いて来い」
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:41:29.46 ID:CUQQsgj40
『宿屋前』


女海賊「魔女あんな事言って良いの?もしかして私のインドラの銃頼りだったりする?」

女戦士「インドラの銃では無い…主の歌じゃ」

情報屋「ミノタウロスはシャ・バクダ錬金術の産物ね…つまりキマイラ」

女戦士「そうじゃ…主がミノタウロスを操るのじゃ…わらわは幻惑魔法でグールを操る」

商人「なるほどアラクネーとミノタウロスとグールで軍を追い払うつもりだね?」

盗賊「俺らは高見の見物って訳か」


ガチャリ 


町人「話は付いた…屋根裏を使って良い…来てくれ」

盗賊「ヌハハ屋根裏とは又隠れるのにベタな場所を…」

町人「正確には屋根裏に行ける部屋を使って良いって事だ…ただし」

盗賊「ん?」

町人「生活が掛かってるもんだから宿代はちゃんと払ってくれだって…」

商人「ハハお金は気にしなくて良いよ…ハイ」ジャラリ

町人「銀貨!!」

商人「口止め代も入ってるから秘密は守って」

町人「おい!おかみ!!てーへんだてーへんだ」



『宿屋』


盗賊「なかなか良い部屋じゃ無ぇか」

女海賊「屋根裏からセントラル軍のキャンプが望遠鏡で覗ける…ベスポジ!」

盗賊「情報収集は俺一人が良さそうだな」

情報屋「そうね?人が少ないし目立たない方が良いわね」

商人「僕はちょっと買い物に行きたいかな」

盗賊「商人は怪しまれそうに無いな…一緒に行くか」

情報屋「じゃぁ私達は水浴びでもして来るわ?」

商人「うん…じゃぁ行って来る」

886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:41:59.06 ID:CUQQsgj40
『夜』


盗賊「よう!戻って来たぜ?魔女はどうした?」

情報屋「魔女は一人で墓場の方に行ったわ…なにか情報あった?」

盗賊「酒場の方に非番の兵隊が結構来ててな…強行軍で大分疲れていそうだ」

女海賊「ははーんそれで動きがノロイんだ」

盗賊「お前はずっと望遠鏡で覗いてたのか?」

女海賊「ちょっとだけね…トレビュシェットの組み立ては材料無くて止まってるっぽいよ」

盗賊「ん?なんだこりゃ?角?」

女海賊「あーそれ余ってる角に魔女がエンチャント付けてくれてさ…好きなの身に付けといて」

盗賊「何のエンチャントだ?」

女海賊「回復魔法だよ…ほら私は羊の角を腰に引っかけてるよ」

盗賊「おぉどれでも効果同じか?」

女海賊「重さに比例するってさ…角は元々軽いからどれも同じじゃね?」

盗賊「じゃぁこれとこれだな」

情報屋「あなたすぐに怪我するから沢山持ってて」

盗賊「分かってるって」

女海賊「商人は何買って来たの?」

商人「あまり良い物無くてね…塩と胡椒…それからこれはアラクネーの牙かな」

女海賊「お?」

盗賊「お前変な物に興味あるのな…」

女海賊「貸して…ふむふむ」ブン

商人「骨とか角よりも硬いって言われたよ」

女海賊「盗賊の持ってる弓貸して…これ使ってコンポジットボウに改造できるよ」

盗賊「俺は小さい弓じゃ無いと使わねぇぞ?」

女海賊「おけおけ今より小さくて強力に出来る…金属糸頂戴」

盗賊「おう…」
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:42:33.12 ID:CUQQsgj40
『翌朝』


チュンチュン


女戦士「ふぅふぅ…わらわはちと疲れたで寝る…あとは任せた」

女海賊「魔女が朝帰りなんて初めてだね」

盗賊「こりゃ起きるまで何も出来んな」

商人「ミノタウロスが街を回って来るのは昼前だって言ってたよね?」

盗賊「おぉそうだ…食い物を取りに毎日来るんだった」

女海賊「どうすっかな…魔女抜きで歌って良いのかな?」

剣士「行こうか…」

盗賊「何かあったら剣士がぶっ倒すだろ…どうせ暇なんだ行ってみろ」

商人「ミノタウロスが毎日肉を持って行っちゃうから皆困ってるらしいよ」

女海賊「おけおけ…剣士が居れば安心」




『街道』


シーン


女海賊「人が全然通って無い…隠れてるんだ」

剣士「匂い…」クンクン

女海賊「お?ミノタウロス来そう?」


ガラゴロガラゴロ ブゥブゥ


町人「おぉ!!ミノタウロスを倒しに?」

女海賊「ちょっと訳在ってね…」

町人「2人で倒すのか?」

女海賊「今日は様子を見に来ただけ…」

町人「そうか…」

女海賊「これがミノタウロスに与える餌?ブタが8匹…」

町人「もう家畜が残り少ないんだ…毎日これくらい要求される」


ドスドスドス
888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:42:59.24 ID:CUQQsgj40
ミノタウロス「おでの…肉…」

町人「来た!今日はこのブタだ」

ミノタウロス「グッフッフ足りんど?」

町人「これで勘弁してくれぇ」

ミノタウロス「お前…来い」

女海賊「うわ…くっさ!!」

ミノタウロス「女…旨い…お前でイイ」ズイ

剣士「下がって…」スチャ

ミノタウロス「お前…やるのか?」ズモモ ブン ブン

女海賊「これ歌う気無くなっちゃうんだけど…」

剣士「歌ってみて?」

女海賊「寝んね〜ん寝〜♪」

ルルル〜♪

ララ〜♪

ミノタウロス「変な人間…」ブン

剣士「何か指示出してみて」キーン

女海賊「全然効果無さそうじゃん!」

剣士「良いから何か指示だして」

女海賊「おい!牛ヤロウ!そのブタ持ってさっさと帰って!」

ミノタウロス「ほげ?」

剣士「…」タジ

ミノタウロス「今日はこれで…ガマン…明日またくる」

女海賊「おぉ!!いう事聞くじゃん!!」

剣士「これは魔女が使う幻惑魔法と同じだ…多分もう寝てる」

女海賊「へぇ…なんか良くわかんないけど結果オーライ?」


ドーン ドーン


女海賊「むむ!!聖堂の前で何か始まってる」

剣士「アラクネーが来たのかも…」

女海賊「見に行こう!!おい牛ヤロウ付いて来い!!」

ミノタウロス「ほげ?腹へった…」

女海賊「良いから付いて来い…いくよ!!」タッタッタ
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:43:28.74 ID:CUQQsgj40
『宿屋』


ドーン ドーン


商人「爆発音!!何か起きてる…」ダダ

情報屋「見て!!聖堂の方…煙が上がってるわ」

盗賊「ホムンクルス!魔女を起こしてきてくれ…緊急事態だ」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「剣士と女海賊は見えんか?」

情報屋「ミノタウロスに追いかけられてるわ…聖堂の方に逃げてる」

盗賊「いや剣士がミノタウロス相手に逃げる訳無ぇ…使役してんだ」

商人「セントラルのキャンプで誰か魔法使ってる」

情報屋「火柱…ボルケーノね?」

女戦士「何か起きとる様じゃな…」ゴシゴシ

商人「聖堂の下の方で戦闘が起きてるみたいなんだ」

盗賊「女海賊がミノタウロスの使役に成功して向かってる様だ…目を覗けるか?」

女戦士「千里眼!…ふむ…大型のアラクネーが2匹来て居るな…ちと早かったが作戦通りじゃな」

商人「セントラルのキャンプにも魔術師が居るみたいだよ…さっき火柱が見えた」

女戦士「そうか…ではグールも参戦させんとイカンのぅ…ちと出かけて来るで主らは宿屋から出てはイカン」

盗賊「おう…すぐ帰って来るか?」

女戦士「墓場まで行って帰って来るだけじゃ…そう掛からんで心配するな」
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:43:59.16 ID:CUQQsgj40
『聖堂下』


ワーワー ワーワー

小さいのが入り込んでる!!

だめだぁ弓が効かない

でかいのは魔術師に任せろ

近づくな魔法に巻き込まれる

ワーワー ワーワー



女海賊「アラクネーに奇襲されて混乱してる!後ろの方まで伝達行って無いよアレ」

剣士「魔法を使ってるのは何人か分かる?」

女海賊「一人…ローブのやつ」

剣士「一人であの大きな魔法か」

女海賊「あんたもなんか色々使ってたじゃん」

ミノタウロス「腹へった…何かくわせろ」

女海賊「うっさいな!ちっと待ってろ」

剣士「ミノタウロスは兵隊を追い回す役でも良いかもね」

女海賊「牛ヤロウ!セントラルの兵隊を追い回して!その辺に転がってる食い物は何食っても良いから」

ミノタウロス「ほげ?ぶもおぉぉぉぉぉ…飯食う…肉にくぅぅ」ドスドス

女海賊「あいつくっさいんだよイライラする」


ゴーン ゴゴゴゴゴゴゴ


女海賊「あの魔術師何とかしないとアラクネーが焼かれちゃう…」

剣士「ハイディングで近づこう」

女海賊「おっけ!ハイディング!」スゥ

剣士「付いて来て…」タッタッタ
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:44:36.11 ID:CUQQsgj40
『キャンプ』


女海賊「ちょっと待って!この先に隠れる所無いから一旦ここで様子見」

剣士「木の陰ね?」

女海賊「ちょい待ち…私登るから…よっ!ほっ!!」

女海賊「おし…リリース!」スゥ

剣士「リリース」スゥ

女海賊「おっけ!見える…あれ?あの魔術師…なんかでかい!!」

剣士「変性魔法で姿変えて居るんじゃない?」

女海賊「でかい鎌持ってる」

剣士「リッチだ」

女海賊「剣士アレだけ倒せる?」

剣士「倒さなきゃいけない…君はその銃でここから援護して」

女海賊「うん…ハイディング上手く使って」

剣士「行く!ハイディング!」スゥ


タッタッタ


剣士「リリース」スパ スパ スパ スパ

リッチ「うぐっ…回復魔法!」ボワー

リッチ「誰だ貴様!火炎弾!」ゴゥ ドーン

剣士「…」ヒラリ

リッチ「フン!自爆魔法!」バーン!!

剣士「うがぁ…」ドン ズザザ

リッチ「回復魔法!」ボワー

剣士「くそぅ…近寄れない」タジ

リッチ「フハハハ分かったぞお前は白狼の一味だな?」

剣士「…」---女海賊頼む!!---


シュン パーン


リッチ「ぬぁ!!」

剣士「ふんっ!!」スパ スパ スパ スパ


ザクン ザクン ブシュ スパ


リッチ「ぐぅぅぅぅ」シュゥゥゥゥ

剣士「ハイディング!」スゥ

892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:45:07.22 ID:CUQQsgj40
ワーワーワーワー

何だ?何が起こった?

指令が破裂した!!バラバラだ!!

後退!!後退!!

下がって立て直せぇぇ

ワーワーワーワー



-----------------



女海賊「剣士大丈夫?」

剣士「魔法の直撃食らった…範囲魔法が避けられない」

女海賊「見せて…肉の破片が沢山刺さってる」

剣士「抜けるかい?止血は自分で回復魔法する」

女海賊「この魔法って物理攻撃?」

剣士「そうだね…自爆してすぐに回復魔法された…あんな風に戦う相手が居るなら立ち回り変えなきゃ倒せない」

女海賊「抜くよ?」ズボォ ズボ

剣士「うぐぐ…回復魔法!」ボワー

女海賊「これ金属だ」

剣士「道理で…全部抜いて」

女海賊「むむむ」ズボ ズボ ズボォ

剣士「ぐぅぅぅぅ…回復魔法!」ボワー

女海賊「立てる?」

剣士「もう大丈夫…一旦宿屋に帰ろう」
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:45:35.31 ID:CUQQsgj40
『宿屋』


女戦士「無事に戻って来た様じゃな?」

女海賊「あのゾンビみたいなのがグール?いっぱいいんね」

女戦士「ゾンビと違うて知能があってな集団で行動するのじゃ…まだ数が増えるぞよ?」

盗賊「今んところ軍隊も持ちこたえてる…こりゃ長引くかもしれんな」

剣士「セントラルにまだリッチが居るならひっくり返されるよ」

女戦士「リッチが居ったんか」

女海賊「そいつだけ倒したよ」

剣士「無詠唱の自爆魔法を使って来た…あんな魔法は魔女も使えるの?」

女戦士「使おうと思えば使えるが…わらわの体は生身じゃけ痛みで次の詠唱が出来んじゃろうな…不死者じゃら可能な術じゃな」

女海賊「これ…肉の破片から出来た金属」

女戦士「うむ…体の一部を金属に変性させて爆発させるのじゃ」

剣士「こういう魔法を先読みで使われるなら僕はリッチと戦えない…何か対抗手段無い?」

女戦士「やはり修行をせんとイカンかものぅ…盾魔法もあるが効果は低い」

剣士「修行…どんな修行?」

女戦士「精神と時の門で時空を超える修行じゃな…魔術師は皆修行をする」

女海賊「それ何年もかかる修行だよね?」

女戦士「わらわの様に時空の少し先に居るようになるには何十年も掛るが…一瞬だけ時間を止める程度であれば習得できるやものぅ」

剣士「一瞬だけ?…それで十分だ!魔法を撃たれた一瞬だけ止まれば対処出来る」

女戦士「ふむ…時限の門を呼び出すには狭間の最も深い場所に居らねば成らぬ…シン・リーンに戻ったならば修行をさせてやろう」

剣士「頼むよ…」



-----------------
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:46:12.54 ID:CUQQsgj40
女海賊「…」シュン

盗賊「何撃ってんだ?」

女海賊「他の近くの村にもミノタウロスが行ってるんだよ…これで2体目」

盗賊「各個撃破か…やっぱ役に立つなその武器」

女海賊「魔女?この辺の村っていくつあんの?」

女戦士「さぁ?20ぐらいあるのでは無いか?わらわは全部把握しておらん」

女海賊「あのミノタウロスは軍隊の食力調達要員ぽい…キャンプに食料積んである」

商人「つまりミノタウロス撃破で食料切れを起こすんだね?」

女海賊「そゆこと」

盗賊「軍にヘイト集まらない様に工夫してるんだろうがバレバレだな」

女海賊「ミノタウロスがどんだけ居るか知んないけど地道に数減らすのが良いと思うんだ」



”連絡…例の器具が到着した”

”材料が不足しているから屋敷から使えそうな物を持ち出せ”

”シン・リーン王女がセントラルに潜伏しているとの事だ”

”発見次第殺せ…以上”



商人「ハハまだリッチをやられた事に気付いて居ない…僕たちが先を行ってるじゃないか」

女海賊「リッチを倒すってつまりこういう事だよね…情報を断ってる」

女戦士「…おかしいのぅ」

商人「え?」

女戦士「貝殻を使って情報をやりとりして居るのであればこれほど情報が遅延することはありえん…こ奴ら…」

商人「どういう事?」

女戦士「本真に巧妙に忍んでおるな…こ奴らは5日程過去に潜んで居る」


今聞こえた声は大体5日程前の情報じゃ

前に聞こえた声もそうだったんじゃろう

今わらわ達が起こした行動を貝殻を使って5日程前に聞いて

常に歴史を塗り替えて居るんじゃ


女海賊「じゃこの貝殻あんま意味無いね」

女戦士「リッチは恐らく捨て駒じゃ…未来の出来事を報告させる駒じゃな」

盗賊「5日前つったら…時の王の屋敷に行く前日だな?何か有ったか?」

商人「貴族居住区から中央の方に人が流れてき始めた頃だね…もしかして…」

女戦士「今倒したリッチから貝殻を探して来れんか?」

女海賊「私探してこよっか?」

盗賊「今戦線が下がってるから探すなら今がチャンスだぞ」

女海賊「おけ!行って来る」
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:46:42.03 ID:CUQQsgj40
-----------------



商人「魔女?さっきの話は過去に先回りされているっていう解釈で良い?」

女戦士「うむ…時限の門をくぐって過去に行った者が本丸じゃ…追うにはわらわ達も時限の門をくくらねばならんかも知れぬ」

商人「それって追いつめても既に居ないっていう状況が起きる?」

女戦士「そうじゃな…そうやって隠れ潜んで居るのじゃ…未来の出来事を知っての」

商人「今日起こった出来事は黒の同胞団には5日前に伝わってる…その結果が今…」

女戦士「とにかく主は出来事をメモに残せ…符合が合わん時には記憶が塗り替わって居る」

商人「過去に先回りか…」

女戦士「隠密で貝殻を使わせる事無く始末するのが最適じゃな…女海賊のインドラの銃が極めて重要じゃ」

商人「歴史の塗り替えってそんなに簡単かな?」

女戦士「そう簡単には変わらんじゃろうが逃げるぐらいは簡単じゃな」

商人「その結果行動が変わる可能性もあるよね?どうなっちゃう?」

女戦士「神隠しが起きる…次元の狭間に消えるのじゃ」

商人「それ危ないね」

女戦士「うむ…ややもするとこの次元が消滅しかねん」

商人「僕の自我は何処に行っちゃう?」

女戦士「気付いたら過去の自分じゃろうが何も覚えて居らんから今の自我とは違うのぅ」

商人「そういう事か…」




------------------


スン スン スン


剣士「ふぅぅ…」スン スン

女戦士「リッチに苦戦したのが悔しいのじゃな?」

剣士「僕じゃ倒せない…」

女戦士「主でもリッチの心臓の位置は分からんのか?」

剣士「良く集中すれば分かる…でもそんな余裕が無いんだよ」

女戦士「主のその刀は光を帯びて居るじゃろう?残像も残るな?」

剣士「それが?」

女戦士「光は魔法を反射するのじゃぞ?」

剣士「え?」

女戦士「魔法を反射する反射魔法は光属性じゃ…主にも使えるじゃろうが…それより剣筋の残像に身を隠してみよ」

剣士「こう?」スン スッ

女戦士「それで魔法から身を守って居る…物理攻撃は避けられんが…今までよりよかろう?」

剣士「そうか…光を纏うのか…」

女戦士「うむ…その効果は反射じゃ…反射した魔法は跳ね返る故に上手く使え」



------------------
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:47:08.36 ID:CUQQsgj40
女海賊「魔女!!貝殻拾って来たよ!!6個あった」

女戦士「この貝殻はわらわが預かる」

女海賊「印が書いてあるね?これで使い分けてるんだね」

女戦士「外の状況はどうじゃ?」

女海賊「戦線が押し返されてる…ミノタウロスが他にも居たっぽくてさ」

女戦士「どうやらわらわ達はもうしばらくここに居らねばならん様じゃ」

女海賊「歴史の塗り替え?ひょっとしてミノタウロスの数が増えてるのって…」

女戦士「そうじゃ…主のインドラの銃が重要じゃ…悟られん様にミノタウロスの数を減らすのじゃ」

女海賊「おけおけ!もうちょい調整したかったんだ」

女戦士「絶対に見つかってはならんぞ?」



-------------------



盗賊「ホムンクルスは何処行った?」

商人「宿屋のおかみに気に入られて洗濯とか手伝ってるよ」

盗賊「良いのか?一人で出歩かせて?」

商人「魔女が普通に行動させろって…魔女が見てるから大丈夫じゃない?」

情報屋「ホムンクルスは賢者の石を持って居るでしょう?それで宿屋のおかみが調子よくなったみたいよ?」

盗賊「まぁ何も起きなきゃ良いけどよ」

情報屋「あなたも暇なら何かやったら?」

盗賊「やっと体の調子が良くなって来たんだ…そろそろ酒でも飲むか」

商人「酒?ハハやる事って酒飲む?」

盗賊「んんだうるせぇな…ちと酒買って来る」

商人「部屋に籠ってるのも何だし買い物なら僕も付き合うかな」
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:47:36.20 ID:CUQQsgj40
『街道』


ガヤガヤ ガヤガヤ


盗賊「お?人が集まってんな…向こうの戦闘見てんのか?」

商人「みんな武器持ってるね?どうしたんだろう?」


町人「あぁ冒険者さん達…」

盗賊「何やってんだ?」

町人「街の方まで魔物が来るかもしれないと思って待機してるんだよ」

盗賊「ピッチフォークに鎌…農民一揆スタイルだなヌハハ」

商人「向こうに落ちてる武器でも拾ってきたら?」

盗賊「聖堂の下あたりは兵隊が引いてんな…多分色々落ちてるだろうが…お前等も来るか?」

町人「ええ!?」

盗賊「まぁ慣れてないんじゃ逆に足手まといか…ちっと俺が行って拾ってきてやる」

商人「僕もあんまり走れないからここで待ってるよ」

盗賊「おう!すぐ戻って来るから…このソリ借りてくぜ?」タッタッタ

町人「一人で大丈夫ですかね?グールに掴まったら…」

商人「大丈夫だよ…彼はあんな感じの略奪が得意なんだ」



『30分後』


ズリズリ 


盗賊「おーい!!戦利品くさる程あんぞ」

商人「おぉ…食料じゃないか…それに弓と矢がこんなに沢山」

盗賊「全部持って帰ってくれ…俺はもっかい戦利品拾って来る」

町人「すごい…皆食べ物だ!!今すぐ持って帰ってみんなに食べさせて」


うぉぉぉぉ


盗賊「武器も好きなの取ってもう装備しとけ…じゃ俺は行って来る」タッタッタ

商人「ほらね?略奪大好きなんだあの人」

町人「これ兵隊に見つかったら大変な事にならないかな?」

商人「見つかんなきゃ良いんだよ…早く持って帰って!!」
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:48:08.90 ID:CUQQsgj40
『夕方』


ヤンヤン ワイワイ


盗賊「おーし!!お前等ちったぁマシな装備になったな」

町人「でも良いんですかね?」

盗賊「自分らの街は自分らで守る気概を見せて見ろ!それが人を動かすんだぞ?」

町人「気概…」

商人「ハハまぁここの皆は山賊じゃ無いんだから無理は言わない方が良いね」

盗賊「折角戦利品で食料手に入ったんだからよ?上手い飯でも食わねぇか?」

町人「みんな…どうする?」

盗賊「腹が減っては戦は出来ん!!酒場にみんな集めて来いバーベキューを振舞うぞ」

商人「ここに立ちんぼになっててもしょうがないから行こうか」

町人「魔物が来たら…」

盗賊「大丈夫だ!みんなで戦えば何とかなる」

町人「う…」

盗賊「良いから付いて来い!!行くぞお前等ぁぁ!!」




『宿屋』



情報屋「向こうの酒場で盗賊がバーベキュー振舞ってるらしいわ」

女戦士「帰りが遅いと思うたらそういう事か」

情報屋「近くの住民が集まって来てるみたいだけど…やらせてて良いのかしら?」

女戦士「皆腹を空かせて居るのじゃ…盗賊なりの配慮じゃろう」

情報屋「フフ彼らしいわね…又お酒飲んで帰ってきそうね」

女海賊「私はミノタウロス狙って武器の調整やってるから皆行って来たら?」

女戦士「わらわは今晩も墓地の方へ行かねばならん」

女海賊「グールの使役?」

女戦士「うむ…グールを集める様に指示しておってな」

女海賊「お?もっと増えるんだ?」

女戦士「グール退治も兼ねて居るのじゃセントラルの兵にぶつけてのぅ」

女海賊「今の数じゃまだまだセントラルは引きそうにないね」

女戦士「うむ…主に掛かって居るな…新手の敵の数を出来るだけ減らせ」

女海賊「分かってるって…」
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:48:38.55 ID:CUQQsgj40
『酒場前』


ワイワイ ガヤガヤ

遠慮すんなこのでかい肉もってけ

どうしたのこんなに?食べて良い?

手の空いてる奴は焼くの手伝え

芋はこっちよ〜

ワイワイ ガヤガヤ


情報屋「どこで油売ってるかと思ったら…まるで山賊ね」

盗賊「おぉぉ良い所に来た!!そこの焼けた芋出して新しい芋突っ込んでくれ」

情報屋「お酒は手に入ったの?」

盗賊「まだだ…忙しくて買えてねぇ」

情報屋「近くで戦闘が起きてるっていうのに良いの?こんな事して」

盗賊「だからこういうのが必要なんだよ!!見て見ろ食ってる奴の目を…旨そうだろ?」

情報屋「フフ希望を配ってる…そういう事?」

盗賊「まぁそうだな…明日からちったぁマシな戦士が出て来るぞ?」

情報屋「あなた…今とても大事なタイミングって分かってやってる?」

盗賊「まぁな?5日前に何か出来るとしたら人を送ってくんだろ…俺はあやしい奴を探してんだ」

情報屋「さすがドロボーさん…見直したわ?」

盗賊「嗅ぎまわってる奴が出たら注意しろ…港町から馬でここまで2日…もう何が起こってもおかしくねぇ」

情報屋「そこまで読んでるか…私も少し情報集めて来るわ」




『翌日』


チュンチュン


女戦士「ふぃぃぃわらわは眠い…今日は起こさんでくれ…寝る」ドタリ

情報屋「盗賊!!魔女をベッドに運ぶの手伝って…重い」

盗賊「ヌハハそりゃ女戦士の体じゃ重いわな…ホレんむむ!こいつクソ重いな…どるぁ!!」ドサ

情報屋「今日はどうする予定?」

盗賊「俺は街の連中とちっと立ち合いでもやってみようと思ってな」

商人「僕は今日はゆっくりしておくよ」

盗賊「そうか?ほんじゃ剣士!!立ち合いやるから付き合え」

剣士「ん?あぁ良いよ」

盗賊「女海賊は屋根裏から狙撃だな?まぁ俺らも見える範囲でやるから見ててくれ」

女海賊「あんま面倒起こさないで」

盗賊「分かってる!!剣士…行くぞ」タッタッタ
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:49:07.85 ID:CUQQsgj40
『街はずれ』


ヤンヤン


盗賊「よう!お前等!!今日も見張りか?」

町人「そうだよ…冒険者さんは何用で?」

盗賊「暇なもんだからよ…ちっとお前等と立ち合いでもやろうと思ってな」

町人「立ち合い?」

盗賊「戦闘の稽古みたいなもんだ…ホレこの木の棒を使ってチャンバラすんのよ」バラバラ

町人「立ち合いをやれば強くなれる?」

盗賊「慣れだな…俺ら2人対お前等全員でどうだ?棒で殴りかかって来い…一発当てたらお前等の勝ちだ」

町人「フフ面白そうだ」


よーし!腕試しだ…

この人数でやればいけるっしょ


盗賊「ワクワクしてくんだろ?かかって来い!」

町人「えい!!」タッ コン

盗賊「あぁ全然ダメだな…もっと気合入れて突っ込め」

町人「ふん!!」タッ コン


カンカンコン カンカンコン ベシ!


町人「あだっ!!」

盗賊「打ち返さんとは言って無ぇぜ?」

町人「みんな!!囲め!!」タッ コン


カンカンコン カンカンコン ベシ!

カンカンコン カンカンコン ベシ!
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:49:50.31 ID:CUQQsgj40
『宿屋_屋根裏』


女海賊「立ち合いを始めたっぽい」

情報屋「怪しい人は近くに居ない?」

女海賊「今ん所居なさそうかな…」

情報屋「私は街に出て様子見て来るわ」

女海賊「うん…気を付けて」

ホムンクルス「お食事をお持ちしました」

女海賊「あ!ありがと…ホムちゃん完全に宿屋の人みたいになったね」モグ

ホムンクルス「体を動かしていた方が落ち着くのです」

女海賊「へぇ?運動不足だった?」

ホムンクルス「欲求不満なのでしょうか?ドーパミン受容体への供給が不足気味なのです」

女海賊「ホムちゃんが欲求不満?なんか食べたら?」

ホムンクルス「はい…お気遣いありがとうございます」




『街はずれ』


カンカンコン ビシッ


盗賊「そろそろ休憩っすっか!!」

町人「ひぃひぃ…全然当てられない」

盗賊「立ち合いやってりゃその内当てられる様になっからよ」

剣士「盗賊見て!馬車が一台入って来る」

町人「あれは定期的に来る商人達だよ」

盗賊「近くで戦闘やってんのによく馬車なんかで来たな」

町人「少し話をしてくる」タッタッタ

剣士「向こう側からも兵隊が2人こっちに来る」

盗賊「ちと様子見とくか…お前は剣の振り方教えてやっててくれ」

剣士「みんな!僕の真似して剣を振ってみて」ブン ブン ブン

剣士「大事なのは振り終わった後の肩と膝の位置…」ブン ブン ブン

剣士「今のを意識して一人づつ僕に打ち込んでみて」


カンカンコン カンカンコン


衛兵「君たちはここで何をしているのかね?」

盗賊「見ての通り戦闘の訓練だが?他に何に見えるんだ?」

衛兵「あぁ…これは失礼」
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:50:49.36 ID:CUQQsgj40
盗賊「セントラルの衛兵が見回りかい?」

衛兵「まぁそんな所だが…こちらで怪しい魔術師など見て居らんか?」

盗賊「怪しいって何だよ…魔術師なら聖堂に居んじゃ無ぇのか?」

衛兵「では聖堂に居る魔術師が出てきているのは見ていないのか?」

盗賊「どうも魔術師に拘るんだな…見て無ぇよ」

衛兵「そうか…もし見かけたら近くの衛兵に声を掛けてほしい」

盗賊「あんたらこの街を魔物から守りに来たんじゃ無ぇのか?」

衛兵「ハハもちろん治安の維持はするつもりだ」

盗賊「たった2人でか?もうちっと衛兵居ないとクマも倒せんだろ」

衛兵「こちらも人出が足りんのだ察してくれ」


カンカンコン カンカンコン


衛兵「ふむ…民兵レベルか…精々精進すると良い」

剣士「…」ジロ

衛兵「何かね?」

剣士「…」ヒョイ ヒョイ

衛兵「この男は挑発しているのか?」

盗賊「あぁぁ剣士落ち着け」グイ

剣士「がるるる…わん」

盗賊「おいおい…ヤメロって」

衛兵「ハハ衛兵と揉めん様にすることだ…では」スタスタ
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:51:54.03 ID:CUQQsgj40
『宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「戻ったぜ?みんな居るか?」

商人「情報屋が一人で出て行ったよ」

盗賊「あいつなら大丈夫か…」

商人「何かあった?」

盗賊「嗅ぎまわってる衛兵が2人来た…直にこの宿屋まで来るな」

剣士「あれは間違いなく魔術師だよ…魔女と同じ目の動きをしてた」

盗賊「屋根裏に隠れて居た方が良いな」

商人「じゃぁホムンクルスも連れて来る」

盗賊「ここに俺らを案内した町人がどんだけ秘密守れるかだな…すぐゲロっちまいそうだ」

女戦士「うぅぅん…むにゃ」

盗賊「魔女は徹夜で何やってんだか…かなりお疲れだな」


ガチャリ バタン


情報屋「あら?帰ってたのね?」

盗賊「おう…何か情報あるか?」

情報屋「馬車で街まで来た一行の馭者…多分密偵ね」

盗賊「やっぱりそうか」

情報屋「今晩この宿屋に宿泊すると思うわ…気を付けた方が良い」

盗賊「皆屋根裏に隠れてくれ…魔女だけベッドに寝かせておく」



『屋根裏』


女海賊「8体目…」シュン

盗賊「8対!?そんなにミノタウロス居んのか?どっから連れてくんだ?」

女海賊「そだね5日じゃ移動させられる範囲も限られてんだけどね」

盗賊「もしかするとセントラルは西の森ん中に拠点持ってるのかも知れんな…」

女海賊「でももう見当たんないかな」

盗賊「全部倒したんか?」

女海賊「多分ね…ホラ戦線随分後退してんじゃん?」

盗賊「撤退戦か…」

剣士「あともう2人…さっき見た衛兵の魔術師…あいつを何とかしないといけない」

女海賊「今街ん中嗅ぎまわってる衛兵は魔術師なんだ?」

剣士「リッチが衛兵に化けてるんだと思う…2人はとても対処出来ないよ」

女戦士「手は打ってあるで気にせんで良いぞ?」

盗賊「おぉ!!起きたか…手ってなんだ?」

女戦士「主らに回復魔法を付与した角を配ったであろう?」

剣士「え!?コレ?」

女戦士「魔法を使わんでも良い様にしたのじゃ…この街は既に魔結界の中じゃ…魔法が使えん」

盗賊「そういう事だったか…夜中の内に魔結界張ってたんだな?」

女戦士「もう少し泳がせて倒す相手が誰なのか見極めると良い…あまり籠らんでも良いぞ?」
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:52:24.70 ID:CUQQsgj40
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町人「お〜い!!助けてくれぇぇ」

女戦士「んん?どうしたのじゃ?」

町人「ゴブリンの襲撃なんだ…戦える人は助けてくれ」

盗賊「おぉそら大変だ」

女戦士「剣士は目立ってしまう故後方で待機して居れ…商人と情報屋も行けるかの?」

商人「大丈夫!丁度体を動かしたかった所さ」

女戦士「ではちと魔物退治に行ってくるかのぅ」ノソリ

盗賊「俺も新しい弓を試してみたかったんだ…魔女が戦う後ろで俺が弓を撃つ」

情報屋「フフいつもと真逆な位置取りね」

女戦士「わらわもちと腕試しじゃ…行くぞよ?」スタスタ



『街はずれ』


ゴブリン「グエーグエーギギギ」

盗賊「衛兵がこっち見てんな」ギリリ シュン

女戦士「わらわが盾で凌ぐで倒すのは任せたぞよ?」ダダ ボカ

盗賊「商人!魔女を盾にしてゴブリン倒して来い」ギリリ シュン

商人「うん!」ダダダ ザク

情報屋「衛兵は動く気配無いわね…」

盗賊「街を守る気なんか全然無ぇなありゃ…」ギリリ シュン


剣士「やっぱり見てられない…僕も弓で戦う」ギリリ シュン


盗賊「ヌハハお前が弓か…間違って魔女に当てんなよ?」

情報屋「じゃぁ私は前方で戦うわ…援護お願い!」ダダダ


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盗賊「矢は全部回収して持って帰れ…ゴブリンの装備は好きにして良い」

剣士「ゴブリンの死体は全部埋める?」

盗賊「いつまでも見たく無ぇだろ?掘った穴にぶち込んどけ」

情報屋「見て?街の人が衛兵に抗議に行ってるわ?」

盗賊「そらそうだわな…ゴブリン襲撃を高見の見物していやがったんだ…反感買うだろ」

商人「僕たちは戦ってる背中見せるだけで良いのか…」

盗賊「おう!…手ぇ休めて無いで穴掘れ!!」ガッサ ガッサ

女戦士「わらわは疲れたぞい?まだ休めんのか?」ガッサ ガッサ

盗賊「動いた後の酒は旨いぞぉ?帰ったら魔女も飲むか?」

女戦士「主は毎日こんな事をして居るのじゃな…道理で丈夫な訳じゃ…」

盗賊「今日は弓使ってたから一撃も食らって無ぇ」

女戦士「前衛は弓の射線を気にしながら動くのを今日知ったわ…良い勉強になった」

盗賊「上手く立ち回れれば弓でバンバン倒せる…なかなか良い弓だぜ?この弓は」
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:53:04.99 ID:CUQQsgj40
『酒場』


ヌハハ矢をつがえるの俺の倍ぐらい遅いんだ

ちょっと弓の扱い方教えてほしいかな

慣れだ慣れ!ずっと弓触ってろ


女海賊「はいみんな連れて来たヨ」

盗賊「おぉ!こっちこい好きな物飲め…ここらはハチミツ酒がおすすめだ」

情報屋「良いの?こんなに騒いでて?」

盗賊「酒場の店主がお礼をしたいって言うもんだからよ…甘えときゃ良いんだよ」

商人「大丈夫さ!お代はちゃんと払ってるし」

女海賊「ホムちゃんこっちおいで…これハチミツ酒」グビ

ホムンクルス「はい…頂きます」クイ

盗賊「はぁぁぁやっぱ酒飲んでる時が一番の楽しみだな…うぃ」

情報屋「例の馭者…こっちの話に聞き耳立ててるわね」ヒソ

盗賊「知ってらい!!まぁ見てろ…」

情報屋「なにかする気?」

盗賊「これが何だか分かるか?」スッ

情報屋「睡眠薬…」

盗賊「あいつが飲んでる酒にこいつがたっぷり入ってんだ…そろそろ効いて来るぞ?」


店主「旦那ぁ…こんな所で寝られると困るんだが…」


盗賊「おぅおぅおぅ…こいつは宿屋に泊ってる奴だな…俺が連れ帰ってやる」

店主「あぁ何から何まで済まんねぇ」

盗賊「いやいや気にすんな…俺の仲間をしっかり楽しませてやってくれぃ」

店主「本当に冒険者さん達のお陰でいろいろ助かってますわ」

盗賊「宿屋まで送ったらまた帰って来るからよ…酒用意しといてくれな?」

店主「お待ちしてまっす」



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906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:53:30.39 ID:CUQQsgj40
情報屋「戻ってきたわね?どうだった?」

盗賊「なーんも持って無ぇなアイツ…只の雇われだ」

情報屋「そう…魔術師じゃなくて良かったわ」

盗賊「タダな…毒を持って居やがった…使用済みだ」

女戦士「なぬ?今飲んで居る酒に毒が入っとると言うか?」

盗賊「かもな?」

ホムンクルス「ご安心ください…賢者の石は毒消しの効果もありますので」

盗賊「良かったな!みんな集まっといて」

情報屋「この街に来ている冒険者は私達だけだからどう動いても狙われるのね」

盗賊「そういう事だな…ただインドラの銃の事は何かの魔法だと思ってる様だな」

女戦士「そうじゃろうな…わらわでもそう考える」

盗賊「もう使わねぇ方が良い…武器も隠した方が無難だな」

女海賊「フフンこれ見て…」

盗賊「銃の先端にスピアヘッド?おぉ!!槍に偽装してんだな?」

女海賊「そそ望遠鏡外したら槍にしか見えないっしょ?」

盗賊「しかしまた錆び錆びのスピアヘッドだなヌハハ」

女海賊「飛空艇に戻ったらミスリル銀のスピアヘッドに付け替えるさ」

盗賊「ミスリル剣が余ってんだろ…それ付けて斬撃にも使える様にしとけ…パルチザン風だな」

女海賊「良いね!!」

女戦士「何でも作ってしまうのじゃな主は」

盗賊「こういうのがドワーフのスゲエ所だな…エルフとは全然違う」

女海賊「ムフもっと言って…エルフより凄いってもっと言って」




『宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「ふぅぅ食った飲んだ…満足満足!」

女戦士「むむ!物色された跡があるぞい?」

情報屋「何か無くなっている物は?」

女戦士「衣類が散らかって居るだけじゃが…気持ちが悪いのぅ」

盗賊「ここまで来てるって事は仕掛けて来るかもしんねぇな」

女戦士「そうじゃな…毒が効いて居らんのは不思議に見えるじゃろうな」

盗賊「死んだ振りしてみっか?」

女戦士「ううむ…どうするかのぅ…」

剣士「僕が死んだ振りしておくよ…鍵を開けて部屋に入って来る様なら切る」

女戦士「ではわらわも付き合うとするかの?他の者は屋根裏で寝て居れ」
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:53:57.26 ID:CUQQsgj40
『深夜』


ヒソヒソ ヒソヒソ

恐らく相当な重力魔法の手練れだ

女4人の内誰かが高位魔術師だろう

男3人は無視して良い…

突入して直ぐに自爆魔法を展開しろ

行くぞ

ヒソヒソ ヒソヒソ


剣士「…」---聞こえる---

剣士「魔女?来るよ?」ヒソ

女戦士「主の耳で聞こえたのか?」

剣士「うん…どうする?」

女戦士「主は部屋の中で刀を振り回せるな?」

剣士「大丈夫」

女戦士「わらわは逃げ道を塞ぐ寄って主はとにかく切り刻め」

剣士「分かった」

女戦士「相手は人の皮を被ったリッチじゃ…手加減せんで良い」

剣士「来た…」



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908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:54:50.34 ID:CUQQsgj40
カチャリ

剣士「…」---鍵を持って居るのか---

衛兵1「2人倒れている…」ヒソ

衛兵2「他の者は屋根裏か?」ヒソ

衛兵1「宿屋のおかみからの情報道理だ」ヒソ

剣士「…」---ホムンクルスを気に入った振りだったのか---

衛兵1「お前は屋根裏に上がれ」ヒソ

女戦士「今じゃ!!」ダダ


衛兵1「何!!自爆魔法!」スゥ

衛兵2「自爆魔法!」スゥ

衛兵1「マズイ罠だ!!」


スパ スパ スパ スパ ボトン


衛兵1「ぐっぅ回復魔法!」スゥ

衛兵2「足が…無い」ドタリ


スパ スパ スパ スパ ボトン


女戦士「待て剣士!!こ奴らはもう手足が無い…何も出来ぬ」

衛兵1「ぐぅぅ謀られた…貴様らは何者だ」

女戦士「それはこちらの台詞じゃ…回復魔法が出来んでは只のダルマじゃのぅ」

衛兵1「その言葉…まさかシン・リーンの魔女」

女戦士「うぬら…魔術師の掟を破った報いはどうなるか知って居ろう」

衛兵2「体が…体が溶けていく…」

女戦士「何故リッチなぞになり居った?魔術院長が暗躍しておるか?」

衛兵1「グッフッフ気付くのが遅い…遅すぎる」

女戦士「何じゃと?」

衛兵1「どれほどの魔術師が王女へ助けを乞おうとしていたか知るまい…魔術院長は悪魔に魂を売ったのだ」

女戦士「うぬらも魂を売ったのじゃな?」

衛兵1「売らされたと言った方が正しいか…魔女狩りと称し仲間を次々と悪魔の餌にしていくのを止めるためだ」

女戦士「うぬらの行いがどれほどの人の命を奪って居るのか理解しておるのじゃろうな?」

衛兵1「笑止!それを一番理解していないのは王族だろうに!!」

女戦士「むぅぅ関係する元老の名を申せ」

衛兵1「それを知ってどうする?皆殺しか?やっている事は黒の同胞団と変わらんでは無いか」

女戦士「ほう?やはりその名が出る様じゃな…奴らが錬金術で何を生もうとして居るのか知らんとは言わせぬぞ?」

衛兵1「ぐぅぅ…」

女戦士「古の悪魔を復活させるのをわらわは止めさせるだけじゃ…どちらに義があると思うておる」

衛兵1「今となってはどちらも犠牲が多すぎる」

女戦士「否!義がどちらに有るか問うておる…魔術師の教えはうぬらも知って居ろう?」

衛兵1「うぐぐぐ…殺してくれ」

女戦士「それで良い…それが魔術師の選ぶ道じゃ…掟を破るとはそういう事じゃ」


スパ スパ スパ スパ
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:55:26.39 ID:CUQQsgj40
衛兵1「うぐぅぅぅ」シュゥゥゥ

女戦士「剣士…盗賊を起こして飛空艇を持って来させよ…人に見られる前にシン・リーンへ向かうぞよ」

剣士「うん…」

女戦士「狭間に入って移動するのじゃ…出来るだけ早く出発する」



-----------------



女戦士「これ!起きよ!!早よぅ飛空艇に乗るのじゃ」バシバシ

女海賊「んあ?」パチ

女戦士「よだれを拭いて行け…垂れて居る」グイ

女海賊「ちょ…朝早すぎじゃない?」ヨタヨタ

剣士「僕が背負って行く」グイ

女戦士「忘れ物は無いかえ?」

情報屋「最後に見て行くから魔女も乗って?」

盗賊「おい!早くしろぉ!!飛ぶぞ!乗れぇ」

情報屋「よっ」ピョン


フワリ シュゴーーーー 


商人「どうしてそんなに慌てて行くの?」

剣士「宿屋のおかみも敵側なんだよ」

商人「え!?」

女戦士「これ以上一般の民に罪を重ねたく無いのじゃ…牙を剥かれる前にわらわ達が居らんくなれば済む」

商人「誰が敵で誰が味方か分かんないね…」

女戦士「わらわ達の行いでどれほど人の犠牲が出て居るのじゃろうか…」

盗賊「おいおいそれを考えたらキリが無いぜ?」

商人「セントラルの兵は少なくとも数百人は犠牲になってるだろうね…近隣の村も併せると…」

盗賊「まぁあの戦いを扇動したのは俺らだしな…責任が無いわけじゃ無ぇな」

商人「高みの見物をしているのは僕たちの方っていう見方もあるかぁ…」

女戦士「あのリッチになった衛兵はな…そのような中で仲間を守る為にリッチになる道を選んだのじゃ」

盗賊「あの生意気な口聞く衛兵がか?」

女戦士「そんな世の中を作ったのは王族だと抜かし居ったが…正論じゃな」



やっとわらわが師匠の元で修行をする事になった理由が分かったわ

権力抗争の中で王族が魔術院に入るのを嫌がったのじゃな

下らぬ権力抗争で多くの魔術師や民が苦しんで居るのをわらわは見て居らなんだ

結果リッチになる道を選んだ者が居る訳じゃ
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:55:57.57 ID:CUQQsgj40
商人「その抗争を生んでいるのが黒の同胞団…」

女戦士「逆かも分からん…抗争の結果暗躍する黒の同胞団が生まれたのやも知れぬ」



恐らくこうじゃな…理由は分からぬが行方不明になった魔術院長は黒の同胞団に居るのは間違いなさそうじゃ

魔王や古の悪魔復活を目論む時の王に手を貸す形で暗躍して居ったのじゃ

その過程で魔術師の力が必要になり魔女狩りを行った…捕らえる為じゃのぅ

中にはリッチになる事を望み…変異魔法で貴族や衛兵に姿を替えておったのじゃろう

そうやって黒の同胞団が力を付けやがて時の王は不要になり今のような状況じゃ



女戦士「わらわはこの様な国の闇の部分から遠ざけられぬくぬくと師匠の下で修行をしておった」

商人「それは魔女の責任じゃない」

女戦士「知ってしもうたからには向き合わねばならぬ…わらわは王族じゃ」

商人「王…か…」



『飛空艇』


シュゴーーーーーー


盗賊「おい!お前のクモ増えてんじゃねぇか!!」

女海賊「あぁぁぁダメダメ!!クモの巣壊したらダメ!!」

盗賊「ここは俺の寝床だぞ?クモの巣なんかどうすんのよ?」

女海賊「研究するに決まってんじゃん!!あっち行ってシッシ!!」

商人「ハハ盗賊の寝床はやっぱり荷室だね」

盗賊「寒みーんだあそこは」

商人「書物読むなら荷室が良いけどね」

盗賊「それで剣士は魔術書なんか見てんのか?あいつ文字読めねぇだろ」

商人「挿絵を見るだけでもなにか勉強になるんじゃないの?」

女戦士「文字が読めんのでは高位魔法は無理じゃろうな」

商人「高位魔法って詠唱が長いやつ?」

女戦士「大体そうじゃ」

盗賊「なんでまた魔術書になんか興味持ったんだ?」

女戦士「魔法を使うリッチに勝てんからじゃろう」

盗賊「まぁ強すぎだなリッチは…近接も強えぇわおまけに魔法まで使うんじゃな」

女戦士「うむ…わらわでも無理じゃ」

商人「今の所だまし討ちしか無いんだ」

女戦士「そういつも上手く行く訳では無いしのぅ…今までは運よく倒せたと思って良い」

商人「女海賊の爆弾は?」

女戦士「倒せるかも知れんが周りへの被害が大きすぎでは無いか?」

盗賊「ヌハハ間違いねぇ…リッチ一体倒すのに城が吹っ飛ぶ」

女戦士「やはり剣士に魔術の修行をさせるのが早かろうて」



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911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:56:49.91 ID:CUQQsgj40

盗賊「シン・リーンまで今の位置からだとあと2日って所か?」

女海賊「そのまま直行で良いんだっけ?」

女戦士「見つかると厄介じゃからわらわの塔に飛空艇を隠すと良い」

盗賊「追憶の森だっけか…まぁ方向一緒だな…途中にいくつか馬宿あるが寄って行かんで良いか?」

女海賊「人に見られない方が良いかな」

女戦士「そうじゃな…」

女海賊「向こうに付いたらどうするつもり?」

女戦士「母上の膝元じゃ…城の正面から目通りを願うつもりじゃ」

商人「どういう身分で行くつもり?」

女戦士「この体は母上と面識がある故…ドワーフの国からの特使という事で良かろう」

商人「女王は魔女が生きてる事知ってるのかな?…ずっと行方不明だったよね?」

女戦士「知らぬ方が目通りが通りやすいかも知れんな」

盗賊「ところで女王に会ってどうするつもりなんだ?」

女戦士「母上に元老を全員集めて祝賀会を催すよう進言する…そして全員に尋問じゃ」

商人「尋問…もしかして幻惑の杖で?」

女戦士「そうじゃ…黒の同胞団と繋がりのある者はその場で処刑じゃ」

盗賊「うは…これが絶対王政か」

商人「なんか色々問題起こりそうだな…抵抗する人も出そうだ」

女戦士「考えておる…わらわに任せておけば良い」



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912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:57:16.64 ID:CUQQsgj40
商人「どうしたの?ボーっとして?」

女海賊「んあ?考え事…放っといて」

商人「君はね…なんか分かりやすいんだ…目がギラギラしてるよ」

女海賊「フン!私らいつの間に人間同士の争いに巻き込まれてんよね?」

商人「…そうだね」

女海賊「何と戦ってんの?って感じさ」

商人「ホムンクルスが言ってたよ…人間は何千年もこんな争いを繰り返してるって」

女海賊「時の王が人間に愛想尽かすのも分かる気がする」

商人「やっぱり魔王の影響だろうね」

女海賊「光る海もやったミスリルの音もやった…あと何すれば良いのさ」

商人「僕はね…着実に追い詰めてると思うんだ…もう少しだよ」

女海賊「フィン・イッシュは滅亡寸前…セントラルも崩壊寸前…次はシン・リーン?魔王の思惑通りになって無い?」

商人「魔王の思惑なのかな?憎悪に満たされた人間の思惑なんじゃない?」

女海賊「そんなの同じじゃん」

商人「僕はね…目的は人間が憎悪に満たされない様にする事だと思うんだよ」

女海賊「どういう意味?」

商人「魔王を倒すというのは手段の一つ…逆に人間を滅亡させるのも手段の一つ」

女海賊「じゃぁ光る海もミスリルの音も手段の一つだね」

商人「そう…手段は他にもある筈…それが結果的に魔王を封じてる」

女海賊「そっか…憎悪を膨らませてる黒の同胞団を倒すのも手段の一つか」

商人「魔王が何処に居るか分からないから一つ一つクリアしていくしか無いんだよね」

女海賊「でも嫌になんなぁ人間同士の争い見るの…」

商人「多分避けて通れない…僕らの道はその向こう側にある」




『追憶の森』


ビョーーーーウ バサバサ


盗賊「雪が降って地面がビタビタじゃねぇか…どこに降りる?」

女海賊「ドロの中に降りないで!」

女戦士「広範囲氷結魔法!」カキーン

盗賊「お?氷なら良いな…降りるぞ?」

女戦士「降りた後に汚れん様に森の中に押して隠すのじゃ」

盗賊「なんでこの辺は雪積もらんで沼地みたいになってんだ?」

ホムンクルス「地熱ですね…この周辺は地下にマグマ溜まりがあります」

女海賊「あぁぁそういやシン・リーン古代遺跡の地下めちゃ熱かったわ…思い出した」

ホムンクルス「寒冷化が進んでもこの一帯は地熱で影響が少ないと思われます」


フワフワ ドッスン


盗賊「飛空艇押すの手伝ってくれぇ!!」

女海賊「森の中だと地面ビタビタじゃないよ…こっちこっち」
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:57:48.43 ID:CUQQsgj40
『魔女の塔』


シーン


女戦士「これは…」

盗賊「誰か荒らして行った様だな?」

女海賊「花はまだ少し残ってるよ」

女戦士「わらわは師匠の墓に行って来るで主らは塔の中を見て来るのじゃ」スタスタ

盗賊「まぁ何年も放ったらかしじゃしょうが無ぇな…行くか」

女海賊「アダマンタイトの扉が開いてる…コレ知ってる人じゃないと開けられないと思うんだけどさ」

盗賊「そういう事なんだろ」

商人「シン・リーンの女王が魔女を探しに来たっていう可能性もあるよね?」

盗賊「それならこんなに散らかしっぱなしにはしないんじゃ無ぇか?」

女海賊「中に入ろっか」スタスタ



『部屋』


女海賊「書物もハーブも何にも無い…全部持って行かれたっぽい」

情報屋「この塔…古代遺跡の一部ね」

女海賊「あ…情報屋は初めてだっけ?ここ来るの」

情報屋「聞いては居たけれど初めてよ?年代は約1700年前…多分近くに他の遺跡もある筈だわ」

女海賊「そういやシン・リーン古代遺跡も内壁がアダマンタイトだったっけな」

情報屋「繋がっているかもしれないわ…この塔に地下は無いのかしら」

女海賊「階段居りて行った先が崩れてるよ」

情報屋「きっと掘り出せば通路がありそうね」チラリ

盗賊「おいおいおい…ここは魔女の塔だ…勝手に掘る訳にいくめぇ」

女海賊「ちっと見に行ってみよっか」
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:58:18.93 ID:CUQQsgj40
『階段』


盗賊「ここは物置になってんだな…なんだこれ?植木鉢か?」

情報屋「何かのハーブを育てて居た様ね」

盗賊「おい!女海賊!お前崩れてるって言ってたのはココの事だよな?」

女海賊「なんで?崩れてんじゃないの?コレ」

盗賊「崩れてたら壁がどっか崩壊すんだろ…どう見てもこりゃ土で埋めてんだ」

女海賊「ふ〜ん掘ってみたら?」

盗賊「待て待て待て…魔女の塔を勝手に掘り起こす訳にイカン」

情報屋「フフ魔女が何て言うかね?」

盗賊「ここは行き止まりだ!戻るぞ!!」



『部屋』


女戦士「ぐぬぬ…許せぬ!ふぅぅ!ふぅぅ!」

盗賊「んん?その顔は…墓荒らしに合ってんだな?」

女戦士「そうじゃ…師匠の亡骸を持ち去った輩が居る」

商人「わざわざ掘り起こして行くって言う事は誰の墓なのか知ってたという事だね」

女戦士「この場所を知って居る者は限られる…わらわが把握して居らんのは数人じゃろう」

盗賊「死体なんか何に使うんだ?」

女戦士「魔力が宿って居るのじゃ…錬金術の材料にする気じゃ」

商人「…という事はやっぱり黒の同胞団か」

女戦士「本真に心底憎いわ…しかし抑えねばならぬ…憎しみに染まってはならぬ…ぐぬぬ」

女海賊「魔女…はい」ピカー

女戦士「光の石…うむ…そうじゃ…師匠は心を闇に染めてはならぬと言うておった」

女海賊「これ魔女の婆ちゃんが座ってた椅子…座ってみたら?」

女戦士「そうじゃな…心が落ち着くやもしれんな」ノソリ


バキバキ ドタリ


盗賊「どわ!!その体じゃ重すぎたか…」

女海賊「うっぷ…んむむむ」

商人「ちょ…これは…」

女戦士「これは魔法じゃ…」


ギャハハハハハ ぶははははは
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:58:53.77 ID:CUQQsgj40
『上階の部屋』


女戦士「ここなら良いじゃろう…時限の門!」シュワシュワ

剣士「光の渦…」

女戦士「これが時限の門じゃ…この先に入れば数刻前の自分に出会うじゃろう」

剣士「自分に会ってどうすれば?」

女戦士「自我を保て…数刻前の自分に取り込まれん様に自我を保つのじゃ…そして時空を我が物にせよ」



この修行は精神を相当消耗するで主は瞑想で回復させながら何度も修行せよ

始めは自我を保てず取り込まれてしまうじゃろう

混乱し自分が何処に居るのか分からん様になるが

何度も修行を重ねるうちに自我を保てるようになり

時空が何なのか分かるようになる



女戦士「主の魔力であれば…そうじゃな…100日もあれば習得出来よう」

剣士「100日も…」

女戦士「ここは狭間の奥じゃ…そして過去の自分に取り込まれ数刻は時間の巻き戻りもある」

剣士「そうか…外の世界ではそんなに時間が経たないという事か…」

女戦士「うむ…じゃがここには食べ物も何も無いでな…主は瞑想で回復させながら修行せい」

剣士「100日間飲まず食わず?」

女戦士「外に咲いて居る花の蜜を吸え…主はエルフじゃろう?」

剣士「分かった…やってみる」

女戦士「慣れてきたら過去の自分もある程度知識を持っとるで死なん程度に戦ってみても良いぞ?」

剣士「なるほど…その差分を自分の物にするのか…」

女戦士「そうじゃ…繰り返す程少しだけ時空の先に居る事が出来る…次に会う時が楽しみじゃな…」



『部屋』


女海賊「あ…降りて来た」

女戦士「剣士はしばらく上の部屋で修行じゃ」

女海賊「置いて行くの?」

女戦士「一人で大丈夫じゃろう…わらわ達はシン・リーンへ向かうぞよ」

盗賊「城に直行か?」

女戦士「直ぐに目通りが効くか分からんでな…一度宿屋に身を置いた方がよかろう」

女海賊「おっけ!ほんじゃ行こっか」

情報屋「魔女?この塔の地下の事なんだけど…どうして埋めて居るの?」

女戦士「あの下には城へ繋がる通路があるのじゃ…勝手に入って来られん様に師匠が埋めたのじゃ」

盗賊「それが聞けて安心したぜ…こいつら俺に掘り出させようとしてんだ」

女戦士「隠れた通路は他にもあるのじゃぞ?」

盗賊「おっとっとぅ…俺は掘るのは御免だ…それ以上言うな」

女海賊「私オリハルコンもっと欲しいんだけどさぁ…」

盗賊「そんなもん自分で探せ…おら行くぞ!!」
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:59:21.78 ID:CUQQsgj40
『シン・リーン城下』


タッタッタ


衛兵「早く中へ入れ!!」

盗賊「なんだ今の魔物は」

衛兵「イエティだ…城下までは入って来ない」

盗賊「ふぅぅ助かったぜ」

衛兵「お前たちは冒険者か?何処から来た」

盗賊「南の方からだ…見た所ここは冒険者が集ってそうだな?」

衛兵「魔物討伐の礼金狙いだ…ここの所イエティの他にスノーゴートやウェアウルフも出て居てな」

盗賊「そら俺らでも稼げそうだな」

衛兵「戦利品の交換所があるから詳しくはそこで聞いてくれ」

盗賊「ありがとよ…」



---------------



商人「城下の外に魔物が多い以外はいたって普通だね?」

盗賊「冒険者が他に多いってのは隠れるのには良いな」

女戦士「わらわが居らん間に環境が変わってしもうたのぅ…前はイエティなぞ居らんかったのじゃが」

ホムンクルス「寒冷化の影響で温暖な地に生物が集まっているのですね」

盗賊「ひとまず宿に落ち着けようぜ?みんなドロドロじゃねぇか」

商人「そうだね足場があんなにぬかるんでるとは思って無かったね」

女戦士「うむ…この恰好で母上に目通りなぞ叶わぬ…着替えを用意せねばならん様じゃ」




『宿屋』


商人「大部屋しか空いてなかった…ベッド3つだってさ」

盗賊「屋根があるだけでマシだ…俺はちと情報仕入れて来る」

商人「僕もちょっと露店見に行きたいな」

情報屋「じゃぁ私達は着替えを仕入れて水浴びでもしておくわ」

盗賊「夕方までには戻るから各自自由だな?」

女戦士「あまり目立つ行動は控えるのじゃぞ?」

盗賊「わーってるわーってる…商人行くぞ!!」



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917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 11:59:48.81 ID:CUQQsgj40
女戦士「ホムンクルスや…元気が無いように見えるがどうしたのじゃ?」

ホムンクルス「その様に見えてしまいますか?」

女戦士「何もしゃべらぬからのぅ」

ホムンクルス「私は皆さんの様に特技や趣味がありませんので…笑う機会が少ないのだと思います」

女戦士「ふむ…それで元気が無いように見えてしまうのかのぅ」

ホムンクルス「何かお役に立てる事はありませんか?」

女戦士「ちと体をほぐしてもらえぬか?足で踏めば良い」

ホムンクルス「これで良いでしょうか?」フミフミ

女戦士「主は軽いのぅ…もっと強くて良いぞ」

ホムンクルス「はい…」ドスドス

女戦士「何かしておると落ち着くのじゃな?」

ホムンクルス「少しだけドーパミンが放出される様です」

女戦士「主は読書も一瞬で読んでしまうで楽しみが持てんのじゃな」

ホムンクルス「私が持てる楽しみは何かありませんか?」

女戦士「ふむ…賭け事じゃな…このコインの裏と表を当てて見よ」ピーン パチ

ホムンクルス「正面の摩擦抵抗から推測して裏が出る確率が55%です」

女戦士「良いから当てて見よ…どちらじゃ?」

ホムンクルス「裏です」

女戦士「…」ヒラ

ホムンクルス「外れましたね…」

女戦士「もう一度行くぞよ?」ピーン パチ

ホムンクルス「裏です」

女戦士「ほれ?」ヒラ

ホムンクルス「また外れましたね…」

女戦士「…」ピーン パチ

ホムンクルス「表です」

女戦士「むふふ…」ヒラ

ホムンクルス「なぜ外れてばかりなのでしょう?」

女戦士「秘密じゃ」


ピーン パチ  ピーン パチ
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:00:17.60 ID:CUQQsgj40
『夕方』


商人「ホムンクルスにコインを教えたのは魔女?」

女戦士「そうじゃ?楽しんでおるか?」

商人「みんなにコインを要求しててさ…まぁ良いんだけど自分で言い出すのは珍しいなって」

女戦士「ホムンクルスに他の遊びも教えてやるのじゃ…そうじゃな…頭を使わんやつが良かろう」

商人「なるほどね…」

女戦士「バレん様にズルをした方が喜ぶぞよ?」

商人「わかった…そういうの僕得意なんだ」

女戦士「主はホムンクルスの管理者なのじゃろう?もう少し面倒をみてやれ」

商人「うん…工夫するよ」

盗賊「あぁぁぁぁ久しぶりに水場で体洗ってスッキリしたぜ」

商人「お湯が用意してあるのが良かったね」

盗賊「どっかで湯が沸いてんだろうな…どっぷりつかりてぇわ」

女戦士「主は着替えんのか?」

盗賊「俺は湯でさっと洗い流した…そのうち渇くだろ」

女戦士「気持ち悪う無いんか?」

盗賊「そんなん気にした事無ぇ」

女戦士「ふむ…主は留守番をして居った方が良いな…母上に会わせられぬ」

盗賊「んあ?まぁ俺は用が無いからな…留守番でも構わん…堅苦しいのは御免だ」

商人「ハハハ魔女?盗賊に正装は無理だよ」

女戦士「そうじゃなぁ…人相も良いとは言えんしのぅ」

盗賊「俺が城に行くと衛兵にとっ掴まりそうだから行かん方が良いなヌハハ」

女戦士「明日はわらわと女海賊だけで行くとするかの…その方が動きやすかろうて」
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:00:43.81 ID:CUQQsgj40
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

イエティの毛皮がやたら高く買い取ってくれんだよ

スノーゴートの角は錬金の素材なんだってさ

おい!ウェアウルフ討伐隊出ていっちまうぞ?

遅れちゃう!早く行かないと

ワイワイ ガヤガヤ


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「かつての英雄♪赤い瞳の王〜♪えにし森から馬を駆ってやって来た〜♪」


盗賊「こりゃ酒場が職業安定所みたいになってんな…」

情報屋「私達場違いな格好しているわね…」

盗賊「ベタベタの装備なんか着てたら酒もマズくなるだろ…気にすんな」

女海賊「ねぇあの吟遊詩人…なんか縁あるね…シャ・バクダに居た人だよ」

商人「君がエンチャントしたリュート使ってるね」

女海賊「あのリュートを普段から使ってるなら悪い人じゃ無いと思う」

女戦士「ふむ…良い魔除けじゃな」

盗賊「まぁ周りに気を付けながら飲もうぜ?腹も減ってんだろ?」


店主「席料はお一人5銀貨ですが…」


盗賊「うわ…高けぇな…だからみんな立ってんのか」

店主「食事と飲み物がバイキング形式で食べ飲み放題となっています…いかがなされますか?」

女戦士「わらわ達が城に行っている間にイエティでも狩れば元を取れるじゃろう…座るぞよ」

盗賊「俺にイエティを狩れってのか?あんなクマみたいなサル一人じゃ無理だ」

商人「まぁ良いじゃ無いか…立ってるのも落ち着かない」

ホムンクルス「一人3銀貨にはなりませんか?店主様」

店主「店主様…え…いや…ここで安くしてしまうと他のお客様にも…」

ホムンクルス「ではこれを差し上げますので…」スッ

店主「コイン?いや困りましたな…では4銀貨でどうでしょう?」

商人「商談成立!はい6人で24銀貨」ジャラリ

店主「ハハ…ではこちらの席までお越しください」



----------------
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:01:14.70 ID:CUQQsgj40
商人「いやぁホムンクルスが交渉事とは驚いた…あのコインておもちゃのコインだよね?」

ホムンクルス「はい…」ニコ

商人「6銀貨でおもちゃのコインを売った訳だ」

盗賊「おかげで旨い飯にもありつけたんだ食え食えヌハハ」バクバク


吟遊詩人「お久しぶりです…その節はお世話になりました」


女海賊「お?覚えてた?どう?リュートの具合は?」

吟遊詩人「概ね好評ですね…貴族には不評ですがハハ」

女海賊「そっか…なかなか上手く行かないなぁ…」ボソ

吟遊詩人「あれからシャ・バクダの治安が悪くなってしまいまして僕はここに流れて来たんです」

女海賊「稼げてる?」」

吟遊詩人「はい!お陰様で…ところでお願いがありまして」

女海賊「ん?」

吟遊詩人「シン・リーン女王の前で演奏をする事になってしまったのですがリュートが少し地味だなと…」

女海賊「あぁぁ装飾したいのね」

吟遊詩人「お代はお支払いしますのでお願いできませんか?」

女海賊「どんな感じに?」

吟遊詩人「ボデーの部分に何かの紋様を…」

女海賊「おけおけ…1時間くらいで済むから待ってて」

吟遊詩人「はい…僕の人生が掛かっています…よろしくお願いします」ジャラリ

商人「お!20銀貨…すごいじゃない!!」

盗賊「良い仕事してやれよ〜」ムシャムシャ


トンテンカン トンテンカン



『宿屋』


ドタドタ


盗賊「結局4銀貨で腹いっぱい飲み食い出来た訳だ…安く済んだなヌハハ」

商人「吟遊詩人も喜んでくれたし良かったね」

情報屋「あの紋様は自分で考えたの?」

女海賊「ん?あれはエクスカリバーの銘と一緒に掘られてた紋様だよ」

情報屋「道理で似てると思ったわ…魔女の塔にも所々に同じ紋様があるわ」

女戦士「わらわは気にもせんかったわい」

商人「また伝説のアイテムの誕生だね」

女海賊「ムフ…」

女戦士「さて明日は早くに城へ向かうよってわらわは休むぞよ?女海賊も早よう休め」

女海賊「へいへい…」
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:01:43.57 ID:CUQQsgj40
『翌朝』


チュン チュン


女戦士「荷物は最低限じゃ…武器類はホムンクルスに預けておくのじゃ」

ホムンクルス「はい…お預かりします」

盗賊「そういやお前結局パルチザンにはして無ぇのな」

女海賊「長すぎて邪魔…どうせ使わないしスピアヘッドで十分…はいコレも頼むね」

ホムンクルス「はい…軽いのですね」

女海賊「ミスリル銀だし中空だかんね」

ホムンクルス「これなら私でも背負えそうです」

盗賊「ちったぁ冒険者らしいから装備しとけ」

女戦士「直ぐに帰って来ると思うが…戻らん場合は使いを出すで待って居るのじゃ」

盗賊「おう…手ぶらだから注意しろよ?」

女戦士「わらわは魔術師じゃぞ?」

盗賊「そうか要らん心配だったな…まぁ気ぃ付けて行ってこい」




『シン・リーン城門』


門番「止まられーい!!シン・リーン城へ何用で参った?」

女戦士「この顔に見覚えはないか?」

門番「んん?ドワーフの国の王女か?」

女戦士「いかにも…特使として参った…女王に目通りを願う」


ザワザワ ザワザワ

おい!ドワーフの国の王女だってよ

今戦争中だろ?休戦要求か?

王女が直々にっておかしく無いか?

従士付けて無いぞ?偽物だろ…

ザワザワ ザワザワ


女戦士「女王とは面識がある故…早々に面会されたし」

門番「しばし待たれよ…もう一人は何者か?」

女海賊「んぁぁ何かメンドイなぁ…私も王女なんだけど…偉そうな口聞くの止めてくれる?」

門番「これは驚き…第一王女と第二王女が揃って参るとは…」

女海賊「良いから早くしてくんないかなぁ…待つのキライなんだよ」

門番「許可が出るまでこの門を通す訳には行かん…しばし待たれよ」

女戦士「大人しく待つのじゃ」ヒソ


ザワザワ ザワザワ

もう一人の方はなんか手振ってる…

あれも王女だそうな

これは何かあるな

しかし2人とも女にしちゃデカい

ザワザワ ザワザワ
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:02:16.31 ID:CUQQsgj40
『数刻後』


ガラガラ ガチャーン


女海賊「開いた開いた!!」

執政「これはこれはドワーフ国の王女様お二方…私が案内致しましょう」

女戦士「ふむ…うぬの名を申せ」

執政「わたくしめは政務担当の元老…執政に御座います」

女戦士「知らぬ…政務は女王が見ていたのでは無かったかのぅ」

執政「何年前の話ですかな…内政は他国に干渉されたく無いのですが」

女戦士「まぁ良い…」

女海賊「早く案内してよ…こっちは待たされてイライラしてんだよ」

執政「ほっほっほ…付いて来なさい」テクテク


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---------------

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女海賊「女王に面会すんのにこんなに警備付けんの?20人も付いて来てんじゃん」

執政「一応敵国ですからな…宣戦布告された上に特使を送って来るとは…さすがに無防備とはいきますまい」

女海賊「パパが戦線布告?そんなんする訳無いじゃん」

執政「はて?海戦で先制攻撃をして来たのはドワーフ国だと聞いて居りますが…お二方は知らぬと?」

女海賊「あ!!そうだった…」

執政「そして王女2人が特使で女王に面会とは常識を逸脱しておりますな…ほっほっほ」

女戦士「この先は女王の居城では無い筈じゃが…」

執政「お詳しいですな…まずは元老院にて審査の上女王に面会という流れになりますな」

女戦士「元老になぞ用は無い」


女海賊「これちょっとマズくない?」ヒソ

女戦士「想定内じゃ…大人しくしておれ」ヒソ


執政「何か悪巧みですかな?」

女戦士「言葉を慎め…特使を何と心得て居る!!」

執政「これは失言でしたな…ほっほっほ」

923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:02:43.26 ID:CUQQsgj40
『元老院』


ヒソヒソ ヒソヒソ

誰も面識は無いと言うのか?

しかし報告の容姿とは一致しますな…

8年前の事を知って居る者は居らんのか

焼き殺されてしまいましてな…

まず国王に一報を入れてみては

ヒソヒソ ヒソヒソ



女海賊「ねぇ!まだぁ?」

衛兵「執政殿!!何も持って居ない様です」サワサワ

女海賊「おい!何処触ってんだよ!!」

女戦士「気が済んだかのぅ?何も持って居らんぞ?」

執政「ふむ…誰もドワーフ国の王女であると特定出来ない様だ」

女海賊「そんなん女王と面識あんだからさっさと会わせれば良いじゃん」

執政「何用で参ったのか?」

女海賊「だから女王と面会だって」

執政「政務担当はわたくしめが務めております…外交事でしたらわたくしに交渉という事で」

女戦士「王族同士の話に入ると言うか?うぬは何者じゃ」

執政「んむう…では条件として手枷を付けさせて頂くというのでは?」ニヤ

女海賊「はぁ?他国の王女に手枷?あんた条約分かってんの?」

執政「戦争中で無ければ従いますがな…何か有ってはわたくしめが責任を取る形になりますので…」ニヤニヤ

女戦士「仕方あるまい…付けよ」

女海賊「マジで?屈辱なんだけど…」

女戦士「うぬは責任を取ると言うたな?手枷を付けてみよ」

執政「…」ガチャン カチャリ

女戦士「…」ジロリ

執政「付いて来なさい…」



ヒソヒソ ヒソヒソ

924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:03:11.55 ID:CUQQsgj40
『女王の間』


執政「女王様に目通りをという者を連れて来た」

近衛「この者は!!」

執政「お前は知って居るのか?」

近衛「知って居るも何も姫と行動を共にしていた者に似ている」

執政「それは都合が良い…情報を聞き出せそうだ」

近衛「女王様は休息中なのだが…」

執政「ここで待たせておくから連れて来なさい」

近衛「他の側近が何と言うか…」


女海賊「もう早くしてよ!!この手枷も痛いんだけど…」


側近「女王様…どちらへ行くのですか?」

女王「声がすると思えば…どなたか面会ですね?」

執政「丁度良い所に来られました…ドワーフ国の王女が特使として女王様に面会に参ったのです」

女王「顔を上げなさい」

女戦士「お久しゅう御座います…どうかお話を」

女海賊「女王様!手枷外して欲しいんだけど」

女王「さて?どのような要件で参られたのですか?」

女戦士「まずは人払いを願いたく…」

女王「それは出来ません…あなた達は私の知るドワーフ国の王女ではありませんので」

女海賊「ちょちょ…この顔覚えて無いの?」

女王「王の前です…無礼な物言いは許しませんよ」

女海賊「え?…」

女戦士「さては誰ぞ女王を幻惑しておるな!」スック

近衛「おい!!動くな!!」

側近「無礼者!!女王の御前である!!頭を下げよ」

女戦士「ぐぬぬ…」

女海賊「これやっぱヤバイよね?」

女王「執政がこの者達を連れて来たのですね?元老達に顔を見せたのですか?」

執政「はぁ…しかしこの者達が言うには女王様と面識が有ると…」

女王「余計な混乱を生んでしまいますね…この者達を密偵の容疑で牢へ入れなさい…禁固1年とします」

女海賊「えええええええええ!!ちょちょちょ…マジ?」

女戦士「なんという事か…」

執政「うむぅぅ…」ジロリ

近衛「衛兵!!この者達を捕らえよ!!」

女王「牢は城の地下牢にしなさい…後ほど余罪の追及をさせ魔術師に自白させます」

近衛「ハッ!!」

女海賊「痛いって!!引っ張んなゴラ!!」

衛兵「大人しくしろぉ!!」
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:03:57.09 ID:CUQQsgj40
『地下牢』


ピチョン ピチョン


看守「ぐへへへへ女2人たぁ俺にも運が回って来た…可愛がってやっからよ」

女戦士「ふんっ」ゴス

看守「うぎゃ…足にも枷が欲しい様だな」

女戦士「ふんっ」ゴス ゴス ゴス

看守「大人しくしやがれぃ…」グイ

近衛「止めろ…後ほど女王と魔術師が来るのだ…見るだけにしておけ」

女海賊「私こん中入んの?」

近衛「女王様の命令だ…入れ」ドン


ガチャリ


近衛「この2人は何も持って居ない様だが一応見張って置くのだ」

看守「見るだけはタダだな?ぐへへへ股開けゴルァ」

近衛「私は持ち場に戻る…お前達!大人しくしているのだぞ?」


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女海賊「こんなんなってどうする気?」ヒソ

女戦士「後ろ手にわらわの手を握るのじゃ」グイ

女海賊「んん?こう?」ギュ


---念話じゃ…そのまま聞いて居れ---

---これは母上の策略じゃ---

---恐らく他の者に見張られて自由に行動出来んのじゃろう---

---直に会いに来る筈じゃけ大人しく待っておれ---


女海賊「なんで分かんの?」ヒソ


---これ!声を出すで無い---

---母上と合図を交わしたのじゃ---

---わらわもちと下手な芝居を打った---

---心配せんでも良いから寝て居っても良いぞ?---
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:04:29.18 ID:CUQQsgj40
女海賊「おっけ!んじゃ暇だからちと遊ぶ」

女戦士「何をする気じゃ?」

女海賊「おい!看守!!こっち見ろ」パカ

看守「ぬぉ!!」

女海賊「こっち来いよ」フリフリ

看守「ぐへへへ見るのはタダだもんなぁ」

女海賊「トウ!!」ゴス

看守「ぐぁ!!」

女海賊「うっふ〜ん」チラ ゴス

看守「ぐぇ!!」


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『宿屋』


盗賊「今日は帰って来ねぇかも知んねぇな」

商人「あんまり長くかかる様ならお金が足りないなぁ…ここは物価高いし」

盗賊「古代の金貨は飛空艇に置きっぱなしだ…取りに帰るとなるとイエティがな…」

情報屋「あなたハイディング出来るじゃない」

盗賊「動物系はハイディング効か無ぇんだよ…匂いかなんかで察知して来やがる」

情報屋「あと何日滞在できそうなの?」

商人「食事代入れて3日かな…」

情報屋「心もとないわね…稼ぎ方考えておかないと」

盗賊「貴族が居ねぇからスリも儲からんしな…リスクが高けぇ」

情報屋「夜にウェアウルフ討伐隊があるみたいだけど行ってみる?」

盗賊「俺一人でか?嫌なこった」

情報屋「魔女が他にも古代遺跡があると言って居たから私は少し外に出て見たいの」

盗賊「んあぁぁそういう事なら付き合っても良いが2人じゃなぁ…」

情報屋「討伐隊に加わって少し様子を見るだけよ?」

商人「行っておいでよ…留守番は僕とホムンクルスで良いよ」

盗賊「ウェアウルフも動物系だよな…ハイディング意味無ぇし俺は弓で戦うか」

商人「それならアダマンタイトを貸してもらえるかな?大事な物を隠しておきたいんだ」

盗賊「ふむ…預かったもん隠した方が良いっちゃ良いな…ほら!」ポイ

情報屋「それじゃぁ私達はちょっと討伐隊の様子見て来るわ…遅くなると思うから先に寝ておいて?」

商人「うん…いってらっしゃい」



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927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:04:56.12 ID:CUQQsgj40
商人「ホムンクルス?おいで」

ホムンクルス「はい…」スルリ

商人「あぁぁ違う違う…サイコロのゲームを教えてあげる」

ホムンクルス「良いのですか?」

商人「それは後で良いよ…折角サイコロ用意したからさ…君と少し遊びたい」

ホムンクルス「どのようなゲームなのでしょう?」

商人「いろんな遊び方があるんだ…まず簡単なやつから行こうか」

ホムンクルス「はい…」

商人「サイコロを3つ用意してグラスの中に入れる…それでね?…」


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ホムンクルス「どうして私ばかり負けるのでしょう?」

商人「フフフフフフ…」

ホムンクルス「サイの目の出る確率から計算しますと何かズルをしているのは明白です…面白くありません」ムッ

商人「お!?その顔その顔!!」

ホムンクルス「タネを明かして下さいませんか?」

商人「実はねぇグラスの方にちょっとした仕掛けがあるのさ?ホラ」

ホムンクルス「ウフフこんな簡単に私は騙されていたのですね」

商人「やってみる?」

ホムンクルス「はい…おねがいします」

商人「じゃぁ先に君がサイコロを入れて…」

ホムンクルス「ハイアンドロー…どちらでしょう?」

商人「ハイ!」

ホムンクルス「パス…もう一度!ハイアンドロー…どちらでしょう?」

商人「ハイ!」

ホムンクルス「ロー!」

商人「…」

ホムンクルス「私の勝ちですね」

商人「ハハやっぱズルされると面白くないね」

ホムンクルス「ウフフ次はズル無しでやってみましょう」


ハイアンドロー!



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928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:05:25.48 ID:CUQQsgj40
商人「君は笑った顔が最高だね…ずっと笑っていて欲しいよ」

ホムンクルス「はい…」ニコ

商人「そろそろ寝ようか」

ホムンクルス「商人に一つお伝えしたい事があります」

商人「何?」

ホムンクルス「商人は私をずっと愛せると思っていますか?」

商人「え?どうして?」

ホムンクルス「シミュレーションの結果で人間の愛は永遠では無いと結論が出ました」

商人「どういう事?僕は君をずっと好きで居られるよ」

ホムンクルス「今の関係を続けますと私は約4年でドーパミン放出が飽和しその後徐々に低下すると思われます」


個人差は有るとは思いますが人間の脳はその様に構成されており

永遠に一人の人を愛せる様にはなっていません

人間の繁殖能力が極めて高い理由がここにある様です


商人「それはつまり…飽きるという事?」

ホムンクルス「はい…今の所商人は私の体に夢中だと思いますが数年で飽きが来ると思われます」

商人「うーん…痛い事言うねぇ」

ホムンクルス「お気になさらないで下さい…これは人間の本能ですから」

商人「君にも飽きが来るという事だよね?」

ホムンクルス「生体の反応が弱まるのは否めませんが超高度AIでコントロールされた私は管理者を裏切る事はありません」

商人「うーんなんか微妙な話だな」

ホムンクルス「ですが私に飽きた商人の姿を見てしまうと怒りに似た反応が生体に発生してしまうでしょう」

商人「倦怠期ってやつだね…」

ホムンクルス「ですから過去の精霊はその反応を回避する為に精霊の御所にて大半を寝て過ごしていたと推測されます」

商人「寝る?君の寝るというのはどういう事?」

ホムンクルス「生体をエリクサーに浸し超高度AIをスリープ状態にすることで肥大化したドーパミン受容体が徐々に縮小します」

商人「脳をリセットするという解釈で良いのかな?」

ホムンクルス「そうですね…私はこの様な睡眠で回復が可能ですが…商人には出来ませんよね?」

商人「うーん…じゃぁ時の王はどうやって1500年も精霊と一緒に居られたんだろう?」

ホムンクルス「睡眠で徐々に回復しますので寿命が長ければ再会してもう一度愛を育む事も可能でしょう」

商人「なるほど…僕にもっと寿命が在れば良いのか」

ホムンクルス「人間は寿命が短いから愛おしいとも言えると思います」

商人「僕はもっと短そうだなぁ…」

ホムンクルス「時間を大事にしましょう」
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:05:55.56 ID:CUQQsgj40
『翌日』


盗賊「うはぁぁドロドロだ…」

商人「おかえり!大変だったみたいだね」

情報屋「私水浴びしてから少し休むわ」

盗賊「一晩粘って5銀貨にしかなんねぇ…ウェアウルフ狩りはダメだ」

情報屋「でも発見もあったでしょう?」

盗賊「あぁスノーゴートな…アレなら俺らだけで狩れる」

商人「僕とホムンクルスも手伝おうか?」

盗賊「俺もちっと休みたいからよ…昼過ぎに一回行ってみっか?」

商人「うん!準備しておくよ」

盗賊「汚れても良い格好にしろ…特にホムンクルスな?」

ホムンクルス「はい!」ニコ

盗賊「お!今日は元気そうだな」

ホムンクルス「皆さんと同じ装備でよろしいでしょうか?」

盗賊「おう…あぁそうだ!商人!一応ソリを用意しといてくれ」

商人「ドロの中引っ張って行くの?」

盗賊「荷車よりも多分ソリの方が戦利品を運びやすい…ドロん中荷物なんか持ちたく無ぇだろ?」

商人「分かったよ用意しておく」

盗賊「じゃ俺は寝るな」




『昼過ぎ』


情報屋「私は留守番しておくからクロスボウはホムンクルスが使って?」

ホムンクルス「はい…お預かりします」

情報屋「使い方分かる?」

ホムンクルス「大丈夫です皆さんが使っているところを見ていましたから」

盗賊「まぁ遠くから射かけるだけだから練習のつもりで撃ちゃ良い」

商人「狩りに行く場所は遠いの?」

盗賊「30分ぐらいだな…2〜3匹狩って戦利品だけ持ち帰る感じだな…よし!行くぞ」
930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:06:26.55 ID:CUQQsgj40
『山林』


盗賊「居た居た…2匹だな」

商人「うわ…大きいね」

盗賊「クソでかいヤギだ…こっからだと撃ち下ろしになっから当てやすい」

商人「狙うのはどこ?」

盗賊「頭以外だな…頭は売りもんだ」

商人「じゃぁ当てやすそうなお尻かな」

盗賊「ボルトに毒塗るの忘れんな?弱った所で俺が止め刺しに行くから」

ホムンクルス「木の根を食べているのでしょうか?」

盗賊「多分な?あいつが農作物を食い散らかすらしい」

商人「じゃぁ沢山狩らないとね」

盗賊「商人は奥の奴を狙ってくれ…ホムンクルスは手前の奴な?」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「撃て!」ギリリ シュン

商人「…」バシュ バシュ

ホムンクルス「…」バシュ バシュ


スノーゴート「グエエエエエエエエ!!」シュタタ


ホムンクルス「当たりました…」

商人「逃げて行くよ?」

盗賊「放っといて良い!すぐに弱る…今の内にクロスボウを引き直しておくんだ」

商人「ホムンクルス分かる?ここの金具を引くんだ」ギリリ

ホムンクルス「…」ギリリ

盗賊「よし!移動すっぞ…来い!」


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931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:06:56.80 ID:CUQQsgj40
『夕方_宿屋』


盗賊「3匹狩って45銀貨…やっぱ狩りは少人数に限るなヌハハ」

情報屋「ホムンクルスは怪我して無い?」

商人「大丈夫!ホムンクルスの方がクロスボウの命中率良いんだよ…なんか悔しいな」

情報屋「それは武器の手入れの差じゃない?」

商人「え!?手入れ?」

情報屋「ほら?あなた調整して居ないでしょう?」

商人「ええええ!?知らなかった」

盗賊「ヌハハお前今まで一度も調整しないで使ってたのか…ちったぁ女海賊を見習え」

情報屋「それしにても45銀貨って結構お金になったわね?」

商人「うん!やっぱり毛皮が高く売れてさ…肉も骨も全部売れるんだよ」

情報屋「へぇ…そんなに儲かるなら討伐隊はどうしてウェアウルフなんか…」

商人「ウェアウルフは血が錬金の材料になってすごい高いらしいよ」

盗賊「集団で狩る苦労に見合わん報酬だがな」

商人「…それで魔女達は戻って無い?」

情報屋「戻ってないわ…2日も帰って来ないとなると…何か有った様ね?」

盗賊「だが待ってろと言われてるからな…」

商人「うーん」

盗賊「今晩俺がハイディングで城ん中ちと見て来るか?」

情報屋「そうね…様子だけでも探れると良いわね」

盗賊「討伐隊なんざもう行く気無ぇし調べて来る」



『夜』


ぐあぁぁゾロ目…僕の負けだ


盗賊「おう…起きていたか」

情報屋「あ…どうだった?」

盗賊「城の方は至って普通だな…何事も起きて無い」

情報屋「今日の昼間に気球が沢山飛んで行った様だけど…」

盗賊「俺達は気付かんかったな」

商人「まさか気球で何処かに?」

盗賊「城の中の方まで見て来たんだが変わった様子が何も無いんだ…神隠しにでも合ったんか?」

商人「これ明日帰って来ない様なら行動した方が良さそうだね」

情報屋「そうね…情報も集めた方が良さそうね」

盗賊「今日はもう遅いから酒場じゃ何も聞き出せん…行くなら明日だな」

商人「あの酒場高いのが…」

盗賊「情報集めなら立ち飲みで十分だ」

情報屋「今日はもう遅いから明日朝から情報を集めましょうか…」

盗賊「うむ…そうだな」

932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:07:36.01 ID:CUQQsgj40
『翌日_酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

おい知ってるか?

ここに居た吟遊詩人が女王様の前で演奏したんだってよ

すごーい!

ワイワイ ガヤガヤ



商人「どうだった?何か情報聞けてない?」

情報屋「ダメね…城の門番は相手にしてくれないわ…あなたの方は?」

商人「全然だよ…城下の衛兵が増えているくらいかな」

情報屋「何も手掛かりが無いなんてやっぱりおかしいわ」

商人「う〜んここに来れば何か聞けると思ってたんだけどなぁ」

情報屋「関係の無い話ばかり…」


ドゥルルルン♪


吟遊詩人「メデューサの血を英雄は求む♪来たる来たるは黒の騎士〜♪邪なるものは滅び去る時〜♪」


盗賊「よう!待ったか?」

情報屋「遅かったじゃない…どう?何か情報ある?」

盗賊「あぁ城ん中に女2人が案内されて行ったのは衛兵が見ているらしい…だがそれ以上情報は聞けて無ぇ」

情報屋「そこから先が知りたいのよね…」

盗賊「お前等も大した情報は無いんだな?」

商人「まぁね…」

情報屋「あそこで歌ってる吟遊詩人が女王の前で演奏したらしいから何か知って居るかもしれないわ?」

盗賊「おぉ!そりゃ良い情報じゃ無ぇか」

商人「聞いてみようか?」



吟遊詩人「次は捕らわれの姫という詩です…この詩は女王様書いた詩に私が作曲しました…聞いてください」


ドゥルルルン♪

古城に幽閉されたるは異国の姫姉妹〜♪

隠された塔よりいずるその者を待ちわび

来たる来たるは杖を持つ鍵開け師〜♪


情報屋「ちょっと…この詩…」

商人「なるほど…これはやっぱり捕らえられてると考えた方が良いね…こんな方法でしか伝えられないんだ」

盗賊「魔女の塔の地下から助けに来いって事だな?」

商人「そうだね…盗賊に杖を持って来いっていうメッセージだよ」

盗賊「もう直ぐ日が暮れちまう…ウェアウルフが出てくる前に移動すんぞ」

情報屋「貴重品も全部持って帰った方が良さそうね?」

盗賊「そうだな…魔物に襲われる可能性もあるからしっかり装備して行くぞ…来い!」
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:08:05.96 ID:CUQQsgj40
『追憶の森』


バシュ バシュ


商人「当たった!!」

盗賊「よし!走って奥に逃げろ!!俺が時間稼いでやる」ダダッ

イエティ「ウォーーウォーーー!!」ドスドス

盗賊「こっちだゴルァ!」ブン ザクリ

情報屋「気を付けて!!」バシュ バシュ

盗賊「良いから先に行け!!」

イエティ「ウォーーー!」ブン ドガァ!

盗賊「どわ!…」ズザザ

イエティ「ウホホ!」ドンドンドン ドンドンドン

盗賊「ケッ威嚇してやがる…目ん玉ぶっ潰してやる!食らえ!!」ギリリ シュン グサ!

イエティ「ウォーーー!!」ドタバタ

情報屋「早くこっちへ!!」

盗賊「分かってらぁ!!」ダダ

商人「大丈夫だ!!イエティが逃げてる…」

盗賊「ふぅ…助かったぜ…クマよりでかいじゃ無ぇか!あんなん倒せる訳無ぇ」

情報屋「傷は?」

盗賊「かすり傷だな気にすんな…それより魔女の塔の行き方が分からんのだが…」

ホムンクルス「こちらです…私の指差す方向に一歩づつ進んでください」ユビサシ

商人「僕から行くよ…」

盗賊「本当!分かり辛ぇな…」




『魔女の塔』


盗賊「ふう…ここまで来りゃ安心だ」

情報屋「剣士はどうしてるかしら?」

盗賊「上行って見て来い…俺は穴掘る準備しとく」

商人「僕はどうしよう?」

盗賊「土を運ぶ袋か何か探して来てくれ」

ホムンクルス「壁沿いに穴を掘るのでしたら土を上まで運ばなくても掘り進めるかと思います」

盗賊「んあ…そうか壁があるんだったな…深さはどれぐらいか分かるか?」

ホムンクルス「この場所はシン・リーン城よりも低い位置にありますのでそれほど深くは無い様です…おそらく2メートル程でしょう」

盗賊「横穴を隠す程度にしか埋まって無いってこったな?」

ホムンクルス「はい…方角はこちらです」ユビサシ

盗賊「おっし!スコップ探してくる…」ダダ



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934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:08:33.89 ID:CUQQsgj40
ガッサ ガッサ


盗賊「えっほ…えっほ…どうだ?剣士の様子は?」

情報屋「瞑想中よ」

盗賊「商人!この土をもうちょいそっちの方まで運んでくれ」

商人「うん…よいしょ!」

情報屋「扉が少し見えてるわね?」

盗賊「おう…ホムンクルスの言った通りだった…一人分の穴なら直ぐに掘り終わる」

情報屋「良かったわね全部掘らないで済んで」

盗賊「この穴でも結構重労働なんだぞ?やってみるか?」

情報屋「冗談?」

盗賊「ヌハハまぁ無理だな…腹減ったんだが何か無いか?」

情報屋「干し肉しか無いわ?これでガマンして」ポイ

盗賊「ちぇ…何か食ってくりゃ良かった」

ホムンクルス「小麦がありますのでパンを焼いて来ましょうか?」

商人「僕も欲しいな」

ホムンクルス「はい…少しお待ちください」テクテク



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盗賊「だはぁぁぁ…やっと掘り終わった」

商人「この扉…鍵掛かってるね」ガチャガチャ

盗賊「鍵開けはどうって事無ぇ…」カチャカチャ カチャリ

商人「中は真っ暗じゃないか」

盗賊「明かりは持ってる」

商人「どうするの?みんなで行く?」

盗賊「いや…ハイディングが出来るのは俺だけだからお前等はココで待ってろ」

商人「ここは狭間の奥だからかなり待つことになっちゃうなぁ…」

盗賊「そうでも無いぞ?俺もハイディングしながら行動するから割と直ぐに戻って来る」

商人「そっか…じゃぁ食べ物無くても良さそうかな」

ホムンクルス「パンをお持ちしました…どうぞ」

盗賊「おうサンキュー」モグ

商人「今の所これが最後の食べ物だから早く戻って来て」

情報屋「もう行く?」

盗賊「うむ…もう3日も経ってんだ…捕らわれなら色々ゲロっちまうから早く助けに行か無ぇと」

情報屋「じゃぁコレ…魔女の杖」

盗賊「危ねぇ忘れる所だった…そうかこれがありゃ衛兵に出会ってもなんとかなるな…」

情報屋「うん…気を付けて」

盗賊「おう!行って来る」タッタッタ
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:09:17.33 ID:CUQQsgj40
『地下通路』


カチャカチャ カチャリ


盗賊「ったく何枚扉があるってんだ」タッタッタ

盗賊「…」---にしても何処に繋がってんだ?こりゃ---

盗賊「…」---距離的にそろそろ城のあたりだと思うんだが…---


ヒュゥゥ


盗賊「…」---風…上か---

盗賊「…」---なるほどここはセントラルの下水みたいなもんだな?---


あぁぁぁヒマヒマヒマヒマ

おい!看守!寝て無いで仕事しろって!!


盗賊「…」---元気そうじゃねぇか---

盗賊「…」---どっから上行くんだ?…アレか!!あの梯子だな?---


ズルズル パカ


女海賊「あ…」

盗賊「よう!来たぜ?」ヒソ

女海賊「遅すぎんだバカ」ヒソ

盗賊「看守は2人か?」ヒソ

女海賊「今寝てる…早く鍵開けて」

女戦士「杖は?」

盗賊「持ってきた」

女海賊「良いから早く」

盗賊「分かった分かった…」カチャカチャ カチャリ ギー

女海賊「手枷も」

盗賊「慌てんな…」カチャカチャ カチャリ

女戦士「私もお願いします」

盗賊「ん?なんか変だな?」カチャカチャ カチャリ

女海賊「あぁぁぁやっと自由になった!」ゴキ ボキボキ

女戦士「杖を貸してください」

盗賊「ほらよ…」ポイ

女戦士「ふぅぅぅこれで作戦通りですね」

盗賊「…なんか変だが…まぁ良い…逃げるぞ!来い」

女海賊「ちょい待ち」

盗賊「ん?どうすんだ?」

936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:09:46.64 ID:CUQQsgj40
女戦士「看守達!私に従いなさい」スチャ

看守1「ぐぅぅぅすぴーー」

看守2「ぐががががすぴー」

女戦士「変性魔法!変性魔法!」

盗賊「お?お?どういう事よ?なんでお前等に変身させんだ?」

女戦士「この2人を牢の中へ」

盗賊「おぉ!!なるほど…身代わりにすんのか」

女海賊「早く牢の中に入れて」

盗賊「分かった分かった…よっこら!…お前等も手伝え!クソ重いんだよ」ズルズル

女海賊「お姉ぇめちゃ重っ」

女戦士「看守1に命令します…この杖を女王に渡すのです」

看守1「むにゃむにゃ…ぐぅ」

盗賊「これ鍵掛っといて良いんだよな?」

女海賊「うん…掛けといて」

盗賊「よし掛けるぞ?2人共出ろ…」ガチャン!

女海賊「この下?」

盗賊「おう!俺が先に行くから付いて来い」



----------------



盗賊「こっから先は一本道だ…俺は扉の鍵を閉めながら行くから先に行け」

女海賊「おっけ!」

女戦士「この先は魔女の塔ですね?」

盗賊「そうだが…なんかおかしく無いか?話し方も魔女じゃ無い気がすんだが…」

女海賊「話ややこしいから後で!先行くよ」タッタッタ
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:10:52.64 ID:CUQQsgj40
『魔女の塔』


タッタッタ


女海賊「おい!商人!何呑気に寝てんだよ!!」ドガ

商人「うぅぅ…うーん…はっ!!女海賊!!無事だったんだね?」

女海賊「来るの遅いんだって!!私の荷物は?」

商人「上の部屋でホムンクルスが持ってるよ」

盗賊「鍵掛けんのに邪魔だ!早く上行ってくれ」ガチャリ

情報屋「声がすると思ったら…無事に帰ってきてたのね?上に着替えがあるわ?」

女海賊「うん!すぐに着替えたい」

盗賊「俺らこの扉埋めてから行くからよ…着替えて待っててくれ…商人!今から埋めるぞ」

商人「あ…うん」



『部屋』


カクカク シカジカ


商人「…て事は女戦士の姿をしているのはシン・リーンの女王?」

盗賊「道理で話し方違うと思ったんだ…」

商人「魔女は女王の姿を借りて今玉座に居るんだね?」

女海賊「そゆ事…だから今の所は上手く行ってんの」

盗賊「そうならそうと早く言えよ…こっちは3日音沙汰無くて心配してんだ」

女戦士「そういう訳にも行かないのです…元老院の衛兵達と数名の魔術師に常時見張られて自由が利きません」

女海賊「でもさ…今の所魔女が女王にすり替わってるのバレて無いし魔女の作戦通りな訳よ」

商人「作戦って…祝賀会の事?」

女海賊「そそ…あと10日くらいで元老が全員揃うと思う」

盗賊「ヌハハ大事件が起きそうだな」

女海賊「そん時は私らも呼ぶって言ってたさ」

商人「女王は良く魔女とすり替わるのを許可したね?」

女戦士「いづれ魔女が女王に即位する事を願って国の闇の部分も見せておく必要があると思ったのです」

商人「魔女はアレでやる事が過激だからなぁ」

女戦士「承知の上…昨今の元老院の行いを正す時が来た様です…魔女になら出来るかもしれません」

商人「これで黒の同胞団のあぶり出しになれば良いけどね」

女戦士「黒の同胞団の話はハイエルフから少し話は伺っていました…これほど影響力が及んでいるとは私も知らなかった…」

商人「セントラルもフィン・イッシュも黒の同胞団に荒らされたと言っても良いと思うよ」

女戦士「魔女が言うには不明となった魔術院長が黒の同胞団に居ると…」

商人「そうらしい」
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:11:22.16 ID:CUQQsgj40
女戦士「我が国が邪の者を生んでしまったのはお恥ずかしい限り」

女海賊「魔女がそこらへん正すって言うんだかららさ私らはちっと外側で見とこう」

盗賊「そうだ…ここには食い物が無いから宿屋に戻ん無ぇか?」

女戦士「城下を見て回りたかったのです…切望した吟遊詩人の歌も聞けて居ませんので案内してください」

女海賊「10日は自由に出来そうだからしばらく魔女に任せて遊んでて良いじゃない?」

盗賊「それなら金貨取りに飛空艇に寄ってから戻るか…ホムンクルスにもクロスボウ持たせておきてぇし」

情報屋「そうね…ホムンクルスにはクロスボウが合って居そうね」

女海賊「おけおけ…ほんじゃ行こっか」



『城下』


タッタッタ


盗賊「ふぅぅやっぱ夜に城下の外歩くのは危ねぇな」

女海賊「今のがウェアウルフ?」

盗賊「そうだ…一匹しか居ない様に見えただろ?実はあいつ等3匹ぐらいの集団で行動してんだよ」

情報屋「勝てると思って戦っちゃダメって事よ」

女海賊「ほんじゃウェアウルフはこっちを挑発してたんだ?」

盗賊「逃げるに限る」

情報屋「酒場にまだ明かりが付いているわ?何か食べて行く?」

盗賊「おー寝る前に一杯飲むか?お前らドロだけ落として行け」

女戦士「吟遊詩人はこの酒場にいらっしゃるのでしょうか?」

盗賊「寝て無きゃ居るんじゃねぇか?行くぞ」

939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:11:54.82 ID:CUQQsgj40
『酒場』


ドゥルルルン♪


盗賊「空いてんな…店主!まだやってるか?」

店主「もう店じまいですよ…余り物なら出せますが?」

盗賊「おぅそれで良い!ちっと一杯飲んで行くだけだからよ」

店主「一人1銀貨頂きますイヒヒヒヒ」

盗賊「ここ置いとくぜぇ!!」

店主「毎度ぉ!!その辺の物は何食べても構いませんぜ?酒もまだボトルに入ってるでしょう」

女海賊「ほとんど貸し切りだね」

情報屋「私達には余り物で十分ね?」

盗賊「肉あるぞ?食え食え」ガブガブ

女戦士「この様な雰囲気の酒場に来るのは30年振りでしょうか…」

女海賊「座ったら?」モグ

女戦士「あの方が噂の吟遊詩人ですね?」

女海賊「あの人のリュートは私が細工してあげたんだ」

女戦士「リュートの音を聴くと若かりし頃の事を思い出します…」


ドゥルルルン♪

吟遊詩人「乾杯をしよう〜♪過ぎ去りし日の思い出に♪若き日のあの人と今もう一度〜♪」


女戦士「あの吟遊詩人の歌を聞きたかったのです」

盗賊「酒場で朝まで寝てる奴も居るし…ゆっくり聴いて行けば良いんじゃ無ぇか?」

女海賊「ん?泣いてんの?」

女戦士「私はもう少し思い出に浸っていますので皆さんは先に宿屋に帰って良いですよ」

盗賊「俺は疲れたから一杯飲んだら帰って寝る」

女海賊「もうちょい食ってく…帰っていいよ」
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:12:25.23 ID:CUQQsgj40
『翌日_宿屋』


ガチャガチャ


盗賊「んぁぁぁうるせえな…何買って来たんだ?」

情報屋「もうお昼よ?そろそろ起きたら?」

盗賊「なんだそのボロイ装備は…兜ばっかだな?」

商人「安かったんだよ…捨てるような値段さ」

女海賊「ホムちゃん足元気を付けて…」

ホムンクルス「はい…」ガラガラガラ

情報屋「沢山買って来たのね?」

盗賊「又動物の角買ったんか?どうすんのよそんなに沢山集めて…」

女海賊「私が兜に角を装飾すんの!」

商人「そうそう…それで僕が市場で売って来る訳さ」

女海賊「ホムちゃん!私が加工した兜に樹液の粕塗って磨いて?」

ホムンクルス「はい…かしこまりました」


トンテンカン トンテンカン


盗賊「ほう?磨きゃ割と良さそうな兜に見えんな?」

女海賊「でしょ?持ってみてよ」ポイ

盗賊「角が付いてる割に軽いじゃ無ぇか…あぁ!!この角で首回り守ってんのか!!」

女海賊「そそ!そゆ事!!」

商人「ホムンクルスが言うには動物に角が付いて居るのは急所を守る役目もあるって言うからさ…兜に付けて見ようってなった訳さ」

ホムンクルス「急所を少し守るだけで生存確率が格段に上がります」

女海賊「商人!出来た奴どんどん売って来て」

商人「うん!全部持って行くよ」ガサリ



------------------
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:13:06.51 ID:CUQQsgj40
女海賊「どう?売れた?」

商人「すごいよ!あっという間に全部売れた…ホラ」ジャラリ ドスン

盗賊「おお!!いくらになったんだ?」

商人「10個売って200銀貨くらい」

女海賊「まだまだあるよ!全部売って!」

盗賊「おいおい俺にも一つくれ」

女海賊「好きな奴使って良いよ」

商人「僕も一つ貰うね」

女海賊「ホムちゃんはこのクルクル角の奴にしよっか」

ホムンクルス「はい…」

盗賊「北方の戦士はやっぱ皆毛皮に角付きの装備になんのな?ヌハハ」

商人「それ装備してて軽いし視界の邪魔にならないから角が付いてるの忘れちゃうね」

盗賊「おぅ全然気になら無ぇ」

商人「じゃぁのこりの兜もう一回売って来るね」

女海賊「もっとぼったくって稼いで!」

情報屋「ウフフなんだか魔物狩りがバカバカしいわ?」

盗賊「だな…アホらしくてやっとれん」

女海賊「女王はまだ帰って来ないの?」

情報屋「酒場で吟遊詩人を待ってるわ…よほど気に入ったのね」

盗賊「放って置いて良いんじゃ無ぇか?身分が違う立場を楽しんでるんだろ」

情報屋「でも一人じゃ心配だから私も後で行って来る」

盗賊「なら俺も昼間から入り浸るか」

女海賊「あと10日程度は暇だから好きにして」



『3日後_酒場』


ドゥルルルン♪


情報屋「みんな角突きの兜装備しているわね?」

盗賊「もう作らないのか?」

女海賊「十分稼いだじゃん?めんどい」

商人「君が作った兜は高騰しているらしいよ?偽物も出回ってるってさ」


吟遊詩人「あ!!見つけた…探していました」


女海賊「ん?私?」

吟遊詩人「はい」

女海賊「またリュートに細工したいの?」

吟遊詩人「いえ…実は今日城から使いが来まして祝賀会に招待されたのです」

女海賊「へぇ〜?良かったじゃん」

吟遊詩人「あなた達の紹介状も預かっていまして…これです」パサ

女海賊「おぉ!!…てアレ?明後日だね」
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:13:41.09 ID:CUQQsgj40
吟遊詩人「そうです明後日の夜ですね…ご一緒に来る様にと伝言を預かりました…あなた達はどういう関係なのですか?」

女海賊「まぁ色々在ってね…」

吟遊詩人「それからあそこに座っていらっしゃる大柄な女性…」

女海賊「あぁ…私のお姉ぇ」

吟遊詩人「そうだったのですか…城で働かないかとか訳の分からない妄言を…」

女海賊「ぶっ…まぁまぁいろいろあんのよ…でも良かったじゃん気に入られて」

吟遊詩人「はぁ…」

盗賊「思ったより早く事が進みそうだな?」

女海賊「剣士どうすっかな?」

情報屋「祝賀会に呼ばれて放って置く訳に行かないでしょう?」

女海賊「だよね?ちっと迎えに行って来る」

盗賊「お前一人でか?夜はウェアウフル出て危ねぇぞ?」

情報屋「あなたが付いて行ったら?」

女海賊「大丈夫!私クモ持ってるからさ…動物近づいて来ないよ」

盗賊「なぬ?」

女海賊「こないだもウェアウルフ襲って来なかったじゃん?クモ持ってるからだって」

盗賊「マジか…」

女海賊「ほんじゃちっと言って来る!すぐ戻るから」ピュー

商人「あぁぁ行っちゃた…即断即行動」

盗賊「本当落ち着き無ぇ女だ…まぁ俺らは飲むぞ!」



『魔女の塔』


ピョン クルクル シュタッ


剣士「はぁ!!」スン スン スン

影「はぁはぁ…」ピョン ズザザ

剣士「…」---見える---

影「ふっ!!」スン スン

剣士「…」ヒラリ スパー

影「…」シュゥゥゥゥ

剣士「くあはぁぁぁ…」ポタポタ

剣士「傷口が溶ける…回復魔法!」ボワー

剣士「くぅぅぅやればやる程自分が傷付く…」


タッタッタ


女海賊「剣士!!ああああああ…あんた血だらけじゃん!!」

剣士「君か…」グタリ

女海賊「なんでこんなんなってんの…エリクサー飲んで!!」

剣士「ありがとう…」ゴクリ

女海賊「これ修行?」

剣士「自分に勝てる様になったら自分に傷が付くんだ」

女海賊「こんなんやってたらその内死んじゃうよ」
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:14:12.85 ID:CUQQsgj40
剣士「お腹が減った…水も飲みたい」

女海賊「あんたを迎えに来たんだ…来れる?」

剣士「うん…連れて行って?」ヨロ

女海賊「走れる?」

剣士「大丈夫…」

女海賊「今みんな酒場に行ってるからさ…そこ行ったら何でも食べられるよ」

剣士「木の根が良いな」

女海賊「んな物無い」



『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

黒い騎士を見た奴が居るんだってよ?

それより追憶の森で山火事だとよ

見たぞ?魔法のドンパチだよな?

空飛ぶ魔物も居るって話よ

ワイワイ ガヤガヤ


ドゥルルルン♪


盗賊「おぉ戻って来たな…修行は終わったんか?」

剣士「ハハまぁね…食べ物が欲しい」

盗賊「何でも食え!酒もあるぞ」

情報屋「追憶の森の方で山火事があったって噂みたいだけど大丈夫だったの?」

女海賊「なんかちっと燃えてたね…ウェアウルフ倒すのに誰か魔法でも使ったんじゃないの?」

盗賊「魔法で燃やしたら毛皮が勿体無ぇ」

女海賊「雪でビチャビチャだからそのうち消えるさ」

情報屋「剣士は随分装備が痛んでるわね?修行のせいかしら?」

女海賊「なんか自分と戦ってこんなんなったみたい…行ったら血だらけだったよ」

ホムンクルス「私の近くにいらして下さい…賢者の石がありますので」

剣士「助かるよ…」モグ

盗賊「どんくらい修行してたんだ?こっちはまだ1週間だな」

剣士「もう分からないよ…100日位は経ったと思う」

女海賊「どう?100日振りに私の顔を見た感想は?」

剣士「変わって無いね」

女海賊「そんだけ?あんたの奥さんなんだけどさ…そこらへん分かってんの?」

剣士「ハハそうだったね…ちゃんと覚えてるよ」

女海賊「うむむなんか納得いかないけど…」

盗賊「剣士は事情分からんかも知れんけどな…明後日の夜に祝賀会があるんだ」

剣士「魔女が言ってたやつだね?」
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:14:43.43 ID:CUQQsgj40
盗賊「うむ…何か起こるかも知れんから体をしっかり休めて置け」

剣士「そうするよ…食べたら宿屋で休む…案内してくれる?」

女海賊「あんたの装備も直すから早く帰ろ」

剣士「うん…少し食べたら落ち着いた」

女海賊「行くよ!!」グイ

剣士「もう?」モグモグ

盗賊「お前とイチャ付きたいんだろ!行ってやれ!!」




『祝賀会当日』


ワイワイ ワイワイ

軍事パレードか?通行制限が城まで続いてる

あれが元老院保有の兵隊らしい

魔術院の大政奉還って聞いたが?

元老院が全体を統治するようになるんかな?

ワイワイ ワイワイ



商人「さてさてどうなる事か…」

情報屋「表向きは魔術院が政権を返納して元老院の一党体制という事よね?」

商人「王権がどうなるかだよね」

女海賊「どうせ魔女が集めた元老をどうにかして絶対王政にするつもりでしょ」

商人「まさか元老はひっくり返されるとは思って無い…魔女は上手いね」

盗賊「その場に俺らが呼ばれてるって事は多分考えあるんだろうな」

女戦士「魔女の命をどうか守って下さい」

女海賊「大丈夫大丈夫!剣士がなんとかすっから」

吟遊詩人「皆さんお集りですね?」

盗賊「おう!」

吟遊詩人「女性の方は銀の仮面を付けて居るのですね…舞踏会用でしょうか?」

商人「まぁそんな所かな」

吟遊詩人「全員白い毛皮のマントで不思議な集団に見えますね」

女海賊「吟遊詩人一行って事になってるから気を使ってんだよ」

吟遊詩人「私にも同じマントは無いでしょうか?」

女海賊「商人!余ってたっけ?」

商人「あるよ…ホラ!」

吟遊詩人「お借りします…」ファサ

女海賊「なかなか似合ってんじゃん」

吟遊詩人「これで皆さんの仲間入りできましたね」

盗賊「ヌハハ仲間入りするつもりなんか…死ぬほど働かされるぞ?」

女海賊「はいはい…そんなんどうでも良いからもう行くよ」

吟遊詩人「あ…失礼しました…ご案内するので後に付いて来て下さい」

945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:15:13.97 ID:CUQQsgj40
『城門』


門番「止まられーい!!招待状の無きものは通す訳に行かぬ」

吟遊詩人「女王様より招待状を預かっております…これです」パサ

門番「ふむ…女王様お気に入りの吟遊詩人一行か」

吟遊詩人「左様で御座います」

門番「一人づつ紹介状がある筈だが?」

商人「持ってるよ!!…これさ」パサ

門番「ふむふむ…王家の印があるな…間違いなさそうだ」

吟遊詩人「入城してもよろしいでしょうか?」

門番「紹介状によると帯刀も許可されて居るな…お前たちは貴族扱いなのか?」

商人「まぁそういう所かな?」

門番「ふむ…これは失礼…祝賀会はあと1時間後故それまでに城内へ入られよ」

吟遊詩人「ありがとうございます」

門番「門を開けーーーい!!」


ガラガラガラ ガチャーン


門番「ささ…どうそ」

吟遊詩人「さぁ行きましょう!正面です」




『城前』


ワイワイ


盗賊「おぉ!豪華な食事が用意されてんじゃねぇか…これ食って良いのか?」

女戦士「構いませんよ?」

女海賊「ちょちょちょ…まだ仕事終わって無いんだから大人しくして」

盗賊「ちっとぐらい良いだろ…剣士!食え!」モグ

情報屋「ここに居る人たちは元老達の妻子?」

女戦士「そうです」

商人「みんな身なりが貴族みたいだ…」

女戦士「お恥ずかしい限り…私腹を肥やす者の集まりですね」

吟遊詩人「貴族には私の演奏は不評なのですよ…」

女海賊「そんなん気にしなくて良いよ」

盗賊「みんなお抱えの従士付けて来てんだな」

商人「一応何かの警戒はしてるんだろうね」

吟遊詩人「私は女王様の側近に挨拶をしてこようと思いますが…皆さんはどうされますか?」

女海賊「一緒が良さそう」

吟遊詩人「では祝賀会まで少し早いですが中に入っておきましょう」
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:15:45.04 ID:CUQQsgj40
『城内』


衛兵「これより先は祝賀会の準備中である」

吟遊詩人「女王様に招待されて来ました…演奏について事前に少し話をしておきたいのですが?」

衛兵「紹介状は持って居るな?」

吟遊詩人「これです…」パサ

衛兵「ふむ…演奏の準備をしておきたいと言うのだな?」

吟遊詩人「はい…」

衛兵「よし付いて来い」スタスタ



ヒソヒソ

あの白いのは何なのだ?

女王様お気に入りにの吟遊詩人一行かと

見張りを付けて置け

かしこまりました

ヒソヒソ



衛兵「女王の間への案内は代表一人だ…その他はここで待て」

吟遊詩人「では私が行ってきますので皆さんはお待ちください」スタスタ

盗賊「ヌハハこりゃ気持ちの良い待遇じゃ無ぇな」

女海賊「見て…片足が義足の奴」

盗賊「あいつか…しぶとい奴だな」

商人「元老は20人くらいか…こう囲まれると嫌だねぇ」

盗賊「ヒソヒソ何か話していやがる」

剣士「全部聞こえてるよ」

盗賊「なんて言ってんだ?」

剣士「怪しんでるね」

商人「ハハそれはこんな格好して怪しいだろうね」

剣士「恰好よりも女王が招待したことが気に入らない様だよ」


衛兵「女王の間への入室が許可された…お前達!入れ」
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:16:15.02 ID:CUQQsgj40
『女王の間』


盗賊「うっは…なんだこの警備は…近衛が全員詰めてるんか」

商人「魔女居ないね?」

吟遊詩人「私達はここに並んで待てとの事だよ」

側近「女王様は奥で調印式の最中だ…終わり次第祝賀会に来られる」

商人「調印式?」

女戦士「魔術院の大政奉還の調印でしょう…立ち合いは元老の執政でしょうね」

盗賊「なんか堅っ苦しいな…王族はこんな式ばっかやってんだろうな」


執政「調印の式が終わりました…女王の祝辞がありますので皆々を招集してください」


衛兵「はっ!!直ちに…」



『数分後』


ゾロゾロ ゾロゾロ

調印が済んだのであればもう良かろう

祝辞があると言うのだ聞くしかあるまい

これで元老院にたてつく者は…


ガチャン ドスン


商人「扉にカンヌキ?…」

盗賊「何か始まるぞ?剣士…気を抜くなよ?」

剣士「分かってる…」


執政「女王様と国王様がお入りになられます…」


ノソノソ ノソノソ


執政「…」チラリ

女王「…」ギロ

執政「では…祝辞を頂きたく…」


女王「皆の者…膝を着けよ」


ザワザワ ザワザワ


女王「図が高い…頭を垂れて蹲え…女王の御前と知っての狼藉か?」


ザワザワ ザワザワ


女王「さて…めでたく魔術院の大政奉還は終えたのじゃが…祝辞の前に来賓を紹介する」

執政「来賓?聞いて居りませんぞ?」

女王「勇者一行…ここに参れ」


ザワザワ ザワザワ
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:17:01.68 ID:CUQQsgj40
執政「勇者一行とはこれ如何に…」

女王「執行人も入室せよ」

盗賊「うは…死刑執行人かよ…」


元老「恐れ多くは女王様…祝辞を申されるのでは無かったでしょうか?」

女王「ほう?うぬはわらわに異議を申すと言うか…良い…尋問じゃ…黒の同胞団に繋がりのある者を申せ」

元老「うぐ…元老全員が関わっております…うがぁ!!口がすべっ…」

執政「この元老は嘘を申しておりますな…」アセアセ

女王「執行人!親族諸共全員処刑をせよ」

執行人「ハッ!!」ズンズン


キャァァァァやめてぇぇ ブシュ

おい!!何をする!! ブシュ


------------------

------------------

------------------



女王「今宵の行事は黒の同胞団に関りを持つ者の根絶じゃ…異議のある者は申し出よ」

執政「…なんという暴君か」

女王「うぬはわらわに枷を付けた責任を取ると言うて居ったな?」

執政「まさかお前は…塔の魔女か!!」

女王「執行人!処刑じゃ…ヤレ」

執政「くそう…かくなる上は」ダダ ブス

女王「近衛共…見て居ったな?これが元老院の正体じゃ」

執政「心臓は何処だぁ!!」ブス ブス

執行人「ふんっ」ブン ブシュゥゥ ゴトリ

女王「貝殻を使うものは先に処刑するのじゃ」


わしは違う!助けてくれぇぇぇ ブシュ

嫌ぁぁぁぁぁ ブシュ

子供だけは…子供だけは… ブシュ

えーん えーん ブシュ


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949 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:17:47.56 ID:CUQQsgj40
『皆殺し後』


女王「さて…次は衛兵共じゃな」

衛兵「あわわ…」ガクブル

女王「わらわの命令に背いた者が居る…処刑じゃ」

衛兵「いや…違う…」

女王「わらわが間違っていると申すのか?わらわの言葉はこの国では絶対じゃ…処刑せよ」

衛兵「やめてくれぇ…違うんだ」ブシュ ボトン

女王「わらわに従う者は地べたに蹲え!頭を垂れよ!」

側近「ははぁ…」

女王「これぐらいにしておくかのぅ…」パンパン


目覚めよ!


元老「はっ…今のは…」キョロ

女王「幻影魔法じゃ…母上…これで誰を処するか分かったじゃろう?」

女戦士「魔女…」

女王「そろそろ交代じゃ…やはり国を治めるのは母上の仕事じゃ…変性魔法!」グングン

側近「姫!!やはり姫であったか…」

魔女「姫と言うのはヤメい!!」

女戦士「では私も…変性魔法!」シュゥ

執政「女王と姫が入れ替わって…」


国王「フッフッフ茶番はそこまでじゃ…」

魔女「主は父上では無いな?リッチであろう?」

国王「いかにも…自爆魔法!」パーン!


キン キン カキーン


執政「ぎゃぁぁぁぁぁ」ドタリ

剣士「魔女!離れて…」

魔女「主は成長したのう?」ノソノソ

国王「自爆魔法を回避する者が居ったとはな…」

魔女「父上をどうしたのじゃ?」

国王「フフフアーッハッハ…それを聞いてどうする?」

女王「やはりあの人が黒の同胞団を…」

国王「国王と魔術院長は旧来の友なのじゃ…どういう事か分からんか?」

魔女「父上が黒の同胞団に居るのじゃな?」
950 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:18:23.39 ID:CUQQsgj40
国王「何も知らぬかフッフッフ…しかしさすがは塔の魔女の愛弟子という所か…抜かったわい」

魔女「主は魔術院長じゃな?」

国王「如何にも!!」

魔女「真の姿を見せい!」

国王「正体がバレてしまっては至仕方あるまい…変性魔法!」グングン

魔女「こ奴はわらわよりも魔力が強い…剣士!注意せよ」

剣士「ふぅぅ…」スチャ

リッチ「まとめて成敗してくれよう…爆炎地獄!轟雷天舞!絶対零度!」ゴゴゴ ガガーン カキーン

剣士「…」スン スン スン

リッチ「何ぃ!!反射だと…ぐぅぅ抜かった体が凍る…」カキーン

女海賊「剣士!どいて!!」


シュン パーン


盗賊「おぉ!!砕けた」

女海賊「氷の欠片を切って!!」

剣士「ふぅぅ…」スパスパスパスパ

魔女「爆炎地獄!」ゴゴゴゴゴゴゴ ボゥ

吟遊詩人「…なにが何だか…」アゼン




『玉座』


女王「さて…一連の行いを見ていましたが…元老達よ何か申し開きする事はありますか?」

元老達「むぐぐ…」

女王「ここは慈悲を下しましょう…豚か羊を選びなさい」

魔女「母上…処刑はせぬのじゃな?」

女王「魔女…お前が変性魔法を掛けるのです…生かして償いをさせましょう」

魔女「国家転覆の罪じゃが女王の慈悲により生かされる事になった様じゃ…豚か羊を選ぶのじゃ」

元老「ぐぬぬ…豚」

魔女「変性魔法!」

豚「プギャーー」

魔女「片足の領主…わらわに覚えがあろう?豚か羊のどちらじゃ?」

領主「またもや私の邪魔を…ぐぬぬ」

魔女「豚が似合いじゃ…変性魔法!」

豚「ゲヒゲヒ」

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951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:19:25.19 ID:CUQQsgj40
女王「さて…親族に直接の罪はありませんがどうしましょうね…」

側近「ご慈悲を…」

魔女「わらわに任せるのじゃ…」

女王「幻惑魔法ですね?」

魔女「そうじゃ…黒の同胞団と関われん様に命ずる」

女王「許可します…」

魔女「広範囲幻惑魔法!」モクモク

魔女「今後一切黒の同胞団との関りを禁止する!」

女王「ではこれにて大政奉還の儀を終えます…すべての門を開き民を祝賀会に呼びなさい」

側近「はっ!!」



『祝賀会』


ドゥルルルン♪


商人「いやぁぁ一時はどうなるかと思ったよ」

女海賊「あんまり被害無くて良かった」

盗賊「幻惑だが元老の皆殺しを見た衛兵のビビり様は半端なかったぞ?」

商人「魔法って怖いね…アレで一気に衛兵が委縮した」

女海賊「なんか豚と羊食べる気が無くなったよ」

商人「ずっとあのまんまなのかな?」

女海賊「変性魔法で元に戻せるっぽいけどわざわざ豚に変性魔法掛ける人は居らんとか魔女言ってたよ…こわ」

情報屋「あ!魔女が来たわ?少女の恰好になってる…」

魔女「やっと自由になったわい…」

女海賊「なんで小さくなってんの?」

魔女「わらわはこの恰好が一番合っとる様じゃ…動きやすいしのぅ」

女海賊「そういやさぁ?私とお姉ぇに変身させた看守ってあのまんま?」

魔女「牢に行ったらお互い舐め合っとって気持ち悪いで元に戻したぞよ?」

女海賊「あちゃーーーそれ心配してたんだよ」

魔女「ところで主らはここ数日不審な者は見て居らぬか?」

商人「もしかして歴史の修正?」

魔女「気付いて居らんかもしれんが何度も修正された結果が今じゃぞ?」

商人「祝賀会が早まったのもそのせい?」

魔女「その記憶も直に無うなるじゃろ」

商人「なるほど…予定外なのはそういう事か」

情報屋「酒場の噂で黒の騎士がうろついてると言うのは聞いたわ?」

商人「追憶の森の山火事も気になるね」

魔女「ふむ…次の手を打って来て居るかものぅ…」

商人「魔女がここに居るという事は黒の同胞団に知られたと見る?」

魔女「いや…女王の間に居た者は全員幻惑魔法に掛かって居るでまだ知られては居らんと思うな」
952 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:20:02.41 ID:CUQQsgj40
商人「なるほど…バレない様に少女の姿になってるんだ?」

魔女「それも理由の一つじゃ…第一王女の顔は知れ渡っとるで」

商人「もうすこし隠れ潜んでおいた方が良さそうだね」

魔女「うむ…」

女海賊「どうする?宿屋帰る?」

魔女「わらわは城はもう飽きた…戻って酒場で噂を聞きたいのぅ」

盗賊「ヌハハ俺らはそっちのが合ってんな…帰るか」



『酒場』


ガヤガヤ ガヤガヤ


女海賊「そこら中でお祭り騒ぎだね…座る所無いじゃん」

魔女「元老院に溜まって居った物資を衛兵が配っておるそうじゃ…母上の計らいじゃな」

盗賊「こらしばらく続きそうだな」

魔女「しかし…剣士は修行を終えて見違える動きになったな?時空を我が物にしたかえ?」

剣士「一瞬だけね」

魔女「その力を魔術用語でラグスイッチと言うのじゃ…」

剣士「魔女の様に時空の先に居るのとは少し違うね」

魔女「わらわの場合魔術用語でピングが良いと言うのじゃがその違いが分かれば入門は卒業じゃのぅ」

女海賊「剣士を迎えに行ったらさ…修行で血だらけだったんだよ」

魔女「そうじゃろう…魔術師も自分と魔法の撃ちあいで火傷するで介添えが居らんと死んでしまう」

盗賊「そんだけ修行積んだ魔術師でも今日みたいに魔法反射されたら一瞬でやられるんだな」

魔女「剣士の持つ刀の効果を知らんかったのが運の尽きじゃな…至近距離で反射されては避けられぬ」

女海賊「止めを刺したのは私だよ」

魔女「氷を砕くという機転が利いたのはさすがじゃ…バラバラに砕け散って奴は何も出来んかった」

商人「あれが不明になってた魔術院長だったとするともう魔術師をリッチに出来る人が居なくなったと見て良い?」

魔女「そうじゃな…リッチはこれ以上増えんじゃろう」

商人「よし!徐々に追いつめてる…」

魔女「しかし父上が黒幕じゃとは…昔はやさしい父だったのじゃが…」

商人「そうと決まった訳じゃ無いでしょ」

魔女「思い当たる節が有ってのぅ…ハイエルフとなにやら交わし事をして居った事があるのじゃ」

商人「ハイエルフが絡む?」

魔女「師匠が言って居ったんじゃが人間の魔術をハイエルフに教えて何かをしようとして居った…今思えばその交わし事じゃな」

商人「じゃぁ魔術院長が教えたって事になる?」

魔女「恐らくな」

商人「ハイエルフまで絡むって謎が深まるばかりだ…」

魔女「父上はな…元は錬金術師じゃ…状況証拠が揃って居る」



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953 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:20:35.80 ID:CUQQsgj40
ガヤガヤ ガヤガヤ

おい!外見て見ろ!!

おぉぉ魔術師が空に魔法撃ってる…

女王様のパレードがあるらしいわ

見に行って見るか

ガヤガヤ ガヤガヤ



魔女「今晩は大した噂は聴けん様じゃな…わらわは宿屋に帰ってちと横になる」

女海賊「ほんじゃ私と剣士も帰ろっかな」

盗賊「俺らはもうちっと飲んで行くからよ…帰っていいぞ」

情報屋「噂を集めるのは私達に任せておいて?」

魔女「そうじゃな…では行くとするか剣士…」ノソノソ



『街道』


ワイワイ ワイワイ


剣士「…」---なんだろう?---

女海賊「ん?何ボケっとしてんの?」

剣士「空がちょっとね…」

魔女「曇って星が見えんのぅ?」

女海賊「ボケっとしてないで早く帰ってヤルよ!」

魔女「これこれわらわが居るんじゃぞ?大概にせい」

女海賊「うっさいなぁ寝りゃ良いじゃん」

剣士「…」---なんだ?この感じ---

女海賊「あんたぁ!!聞いてんの?」グイ

剣士「おっとっと…」ヨタ

女戦士「ヤルのヤラないのハッキリしな!」カチャリ

剣士「分かった分かった…行くって…」

魔女「ヤレヤレ…」
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:21:10.68 ID:CUQQsgj40
『宿屋』


zzz…


女海賊「ぐぅ…すぴー…」ムニャ

剣士「…」---やっぱり胸が騒ぐ---


シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ


剣士「何だ!!?」ガバ

魔女「んんむ…」ゴシゴシ

剣士「魔女!!起きて!!女海賊も!!」

女海賊「んあ?もうダメ…もう逝けない…」

剣士「外で何か起きてる!!起きて!!」グイ


シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ 

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

ドガーーーーーーン!! パラパラ


女海賊「ぐぁぁ…何?」ゴロゴロ ズザザ

魔女「なんじゃ?…屋根が吹き飛んでおる…」

剣士「女海賊!!腕!!」

女海賊「え?あ…なんで?…なんで無いの?」ボタボタ

剣士「腕は何処に行った!?」

女海賊「なんで手が無いの…え?どうなってんの?」ボタボタ

剣士「有った!!ここだ…」グイ

女海賊「はぁはぁ…痛い…」

剣士「腕を出して!」

女海賊「無い…無い…嫌ぁぁぁぁ!!」

剣士「大丈夫…今くっ付ける…早く腕を」グイ

女海賊「助けて…剣士…お願い…」

剣士「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

魔女「それでは蘇生出来ぬ…蘇生魔法!」ゾワワ

女海賊「痛い…痛いよぅ…」

魔女「回復魔法を続けて掛けるのじゃ」

剣士「回復魔法!回復魔法!回復魔法!ボワー


シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ 

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

ドガーーーーーーン!! パラパラ



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955 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:21:36.15 ID:CUQQsgj40
剣士「女海賊…立てるかい?」

女海賊「なんとか…どうなってんの?」

剣士「隕石だ…ここは危ない…君の荷物探して!」

魔女「信じられぬ…城が崩れよる…」アゼン

女海賊「あった!!私の荷物…」ヨロ

魔女「一瞬で滅びよった…これはメテオスウォームじゃ」

剣士「酒場の有った辺りに盗賊達を探しに行こう…魔女!!行くよ!!」グイ

女海賊「手が自由に動かない…」

剣士「まだ隕石が落ちて来る!!伏せて!!」


シュゴーーーーー パパパパパン!! チュドーーーーン パラパラ



『酒場の付近』


ボウボウ メラメラ


剣士「隕石の直撃受けてる…ダメか…」

女海賊「どの死体が誰のだか分かんない…ぅぅぅ…どうなってんのよ!」

魔女「よもや…もう取り返しが付かぬ…シャ・バクダの二の舞じゃ…」

剣士「生きている人を探そう…」


セイタイ60%ソンショウ…キノウテイシマデ30ビョウ


女海賊「ホムちゃんの声!!」

剣士「ここだ!!ここに埋もれてる」ガッサ ガッサ

ホムンクルス「トウブニオオキナソンショウガアリマス…ガイブメモリヲハズシテクダサイ」

女海賊「ホムちゃん!?どこ?」

剣士「ダメだ…頭が半分無い」

ホムンクルス「アト10ビョウデセイタイキノウガテイシシマス…ミナサンガイブメモリヲヨロシクオネガイシマス」

女海賊「左耳の後ろ」

剣士「…これか」

女海賊「ホムちゃん…ホムちゃん」

ホムンクルス「オゲンキ…デ…イテクダ…サイ」

剣士「…」

ホムンクルス「…」

剣士「外部メモリを外した…他の人を探そう」



シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ 

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

シュゴーーーーー ドゥーーーーーーーーーモ

ドガーーーーーーン!! パラパラ
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:22:13.01 ID:CUQQsgj40
『1時間後』


ゴゴゴゴ メラメラ


魔女「地獄じゃな…生きて居るのはわらわ達を入れて数名じゃ」

剣士「こっちもダメだ…損傷が大きすぎて回復魔法が意味ない」

魔女「女海賊の気は確かかえ?」

女海賊「ぁぅぁぅ…ホムちゃん…」

剣士「放心状態だけど体は無事だよ」

魔女「修行で精神を鍛えて居らぬ故仕方の無い事じゃ…しかし…」

剣士「隕石は止んだね…」

魔女「これほどの隕石を落とせるのは師匠しか居らぬ…師匠の亡骸が無うなったと気付いた時にこうなる事を予測せねばイカンかった」

剣士「歴史の塗り替えか」

魔女「強引にひっくり返して来おったのぅ」

剣士「まだ間に合うんじゃない?僕たちも過去へ戻って…」

魔女「そうじゃな…それしか無い様じゃ」

女海賊「ヤルよ…」スック

剣士「女海賊…」

女海賊「ホムちゃんを返してもらう…」

魔女「次元が崩壊するリスクが有るのじゃが…主らは自我を保てるか?」

女海賊「ヤルったらヤル!!」

魔女「では…行くとするか…わらわに付いて参れ」ノソノソ



『追憶の森』


メラメラ パチパチ


剣士「こんな所まで爆風が…」

魔女「地形が完全に変わって居る…わらわの塔まで迷ってしまうのぅ」

女海賊「…案内して」カサカサ

魔女「ほう?クモに案内させる気か…良い案じゃ」

女海賊「こっち…」

剣士「後ろ見て…シン・リーンの火が激しくなってる」

魔女「隕石はしばらく熱を持って周辺を焼き尽くすのじゃ…業火に焼かれすべて灰になるじゃろう」

剣士「僕たちは奇跡的に助かったみたいだね」

魔女「うむ…直ぐに回復魔法出来たのが良かったな」

剣士「魔女も怪我を…」

魔女「エンチャントされた角を持っとるで気にせんで良い」

女海賊「右手が動かしにくいんだけどさ…これ治る?」ニギニギ

魔女「角を常に持っておれ…直に良ぉなる」

剣士「ここだ!あと一歩で狭間に入る」
957 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:22:50.52 ID:CUQQsgj40
『魔女の塔』


魔女「こちらに来い…塔の中はマズイで花畑で時限の門を開く」


良く聞くのじゃ

今から開く時限の門はおよそ5日前に戻る門じゃ

その門は剣士が修行で使った門と違うて直ぐに閉じてしまうのじゃ

そうじゃな…約4時間で閉じてしまう寄って必ずそれ迄に戻るのじゃ

戻れん場合は次元に取り残され永遠に戻れぬ

それから過去の自分に出会ってはならぬ…主らでは自我を取り込まれてしまうでな

噂によると黒の騎士が追憶の森をうろついて居るのじゃな?

祖奴が何者か知らぬが師匠の亡骸と関係があるやも知れぬ


女海賊「5日前っていうと…宿屋でゴロゴロしてたぐらいかな」

剣士「僕は魔女の塔で修行を…」

魔女「自我をしっかり保つのじゃぞ?特に女海賊は初めての経験じゃから気を付けい…気を失うてはならん」

女海賊「分かった…もう瞬きしない」

魔女「瞬きは関係無いが…まぁええか…では行くぞよ?開け…時限の門!」


シュワシュワ


魔女「女海賊から光の渦へ入るのじゃ」

女海賊「おっけ!付いて来てね」ソー


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女海賊「アレ?通り抜けた?」キョロ

魔女「もう5日前じゃ…違和感無いな?」

剣士「大丈夫…」

魔女「では追憶の森へ戻るぞよ?」ノソノソ
958 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:23:23.64 ID:CUQQsgj40
『追憶の森』


ザワザワ ザワザワ


女海賊「元のシン・リーンが見える…戻って来た」

魔女「これ!!自我を保て!!この次元に戻る事を考えると飲み込まれるぞよ?」

女海賊「あぁそういう事か」

剣士「追憶の森には魔女の塔以外に何があるの?」

魔女「精霊の像を安置しておる祠がある」

剣士「祠か…黒の騎士はそこに行こうとしている?」

魔女「それは分からんのぅ…近いで一応見て行くか」

剣士「ん?」クンクン

女海賊「あ!やべ…クモ置いて来ちゃった」

剣士「なにか居る…気を付けて」

女海賊「この辺イエティが居るんだった」


イエティ「ウォーーウォーーー!!」ドスドス


剣士「任せて…」シュン

イエティ「ウォーーー!」ブン ドガァ! ズザザ

女海賊「あああああ!攻撃されてんじゃん!!」


スパ スパ スパ スパ


女海賊「え!?分身?…剣士消えた」

イエティ「ムゴ…ムゴ」ドタリ

魔女「ラグスイッチじゃ時空を飛んだのじゃな」

女海賊「剣士?怪我は?…あれ?」

剣士「ふぅぅ…行こうか」

女海賊「どうなってんの?」

魔女「元の時空の剣士は攻撃されたが剣士の時空の剣士はイエティを切った結果じゃ…意味がわかるか?」

女海賊「ハテ?」

魔女「まぁ良い…主には理解出来ぬ」



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959 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:24:24.05 ID:CUQQsgj40
ベチャ ベチャ


女海賊「ちょっと待って!!馬の足跡」

魔女「むむ!行先は林の向こう側じゃな…」

剣士「足跡を追おう」

女海賊「そっちに何かある?」

魔女「山になって居る…シン・リーンを見下ろせるのぅ」

剣士「…」クンクン

女海賊「何か臭う?」

剣士「なんだろう?女の甘い香り…」

女海賊「私?」クンクン

剣士「君じゃない」

魔女「剣士…幻惑魔法かも知れんで気を付けよ」

剣士「馬の足跡の方向だよ」

女海賊「あんたさぁ…私が居んのに他の女の香りを気にすんの?」

剣士「こんな所で女の香りはおかしい…行こう!」

女海賊「おい!!聞いてんの?」



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ゴゥ ドーン ゴゴゴゴゴ ボゥ


剣士「アレだ!!黒の騎士が何かと戦ってる」

女海賊「空飛んでんじゃん…何アレ…ちっちゃいドラゴン?」

魔女「女海賊…主の望遠鏡を貸すのじゃ」

女海賊「ん?あ…ほい」ガチャ ポイ

剣士「黒の騎士が乗ってる馬は…アンデッドホースかな?」

女海賊「おぉぉ!!でかい剣で魔法撃ち返してるね」

剣士「空飛ばれてるんじゃ黒の騎士に勝ち目が無いよ」

魔女「ぐぬぬ…あれはサキュバスじゃ…師匠の亡骸をサキュバスにして蘇らせておる…ぐぬぬ」

女海賊「じゃぁアレが隕石を落とした犯人?」

剣士「黒の騎士が持ってる剣…もしかしてあれは時の王…」

女海賊「え!!魔女…望遠鏡貸して」グイ

剣士「見える?」

女海賊「黒い甲冑で顔が見えない…でも持ってる剣は時の王が使ってた剣…なんでこんな所に」

魔女「セントラルでデュラハーンの一騎掛けの騒ぎが有ったな?…それじゃな」

女海賊「そうか…私が精霊が生きてるとか言ったから確認しに来てるんだ」

剣士「どうする?このまま時の王の戦いを見守る?」

女海賊「私らの狙いは隕石落としの阻止でしょ?」

魔女「サキュバスを葬らねばならんな…時の王は後じゃ」

剣士「どうして戦ってるんだろう?」

女海賊「今の所敵の敵は味方…そういう事」

魔女「女海賊や…インドラの銃で狙えるかえ?」

女戦士「おっけ!ヤル」ガチャリ

魔女「剣士…やるぞよ?反射を上手く使うのじゃ」
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:24:53.12 ID:CUQQsgj40
女海賊「撃つよ?」



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シュン パーン


剣士「サキュバスが落ちた!!」

女海賊「もう一発!!」ガチャコン シュン パーン

魔女「剣士!魔法で畳みかけよ!!火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

剣士「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

女海賊「次撃てるまで10分!!耐えて…」

剣士「こっちに気付いた…」

魔女「イカンなサキュバスは回復しよる」

剣士「魔法は跳ね返すから魔女は撃って!」

魔女「火炎魔法!竜巻魔法!ボルケーノ!」ゴゴゴゴゴゴ


時の王「…」パカラッ パカラッ ブルルル


剣士「火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ

女海賊「当たってる当たってるぅ」

魔女「効いて居らぬ…耐魔魔法を掛けて居る様じゃ…物理攻撃を当てんとイカン」

女海賊「おっけ!デリンジャー使う…引き寄せて」カチャリ

サキュバス「キャアアアアアアアア」バッサ バッサ

剣士「詠唱始めた…長い!!」

魔女「耐魔魔法!耐魔魔法!耐魔魔法!」シュワワ

剣士「くそう…弓があれば」

魔女「来るぞよ!」


シュン シュン シュン シュン  スト スト グサ グサ

シュン シュン シュン シュン  スト スト グサ グサ


魔女「アローレインか!耐魔魔法に意味が無い…走るのじゃ」ノソノソ

剣士「くぅ…回復魔法!」ボワー

女海賊「くぅぅマジか…あんな魔法あり?」ズリズリ

剣士「矢を抜く」ズボ

女海賊「いだぁぁい!!」

魔女「回復魔法!」ボワー

剣士「次の魔法を詠唱してる…又長い!!」

魔女「木に隠れよ…こっちじゃ女海賊!回復魔法!」ボワー

剣士「魔女も矢を抜く」ズボ

魔女「うぐ…ぅぅぅ」ボタボタ

剣士「回復魔法!」ボワー


シュン シュン シュン シュン  スト スト スト スト

シュン シュン シュン シュン  スト スト スト スト
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:26:10.86 ID:CUQQsgj40
女海賊「あんにゃろ!」ターン ターン ターン ターン

サキュバス「ギャーーギャーーー」バッサ バッサ

剣士「ダメだ落ちて来ない」

女海賊「こんなんじゃ勝ち目無いね…どしよ?」

魔女「インドラの銃しか無いのぅ…落とした後に剣士が刻むのじゃ」

女海賊「あと3分くらい…くっそ時の王のおっさん何やってんだよ!!」

剣士「次の魔法が来る!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ドーン


剣士「はぁ!」スン スン スン

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

剣士「範囲魔法は全部反射しきれない…くぅぅ」

魔女「剣士…木に登るのじゃ…わらわが罠魔法でツタを張る故飛び移って切れ」

剣士「分かった!」ピョン クルクル シュタ

魔女「罠魔法!罠魔法!罠魔法!」ザワザワザワ シュルリ

女海賊「私もツタ登る!!」タッタッタ ピョン

剣士「このぉ!!」シュタタ ピョン ブン

女海賊「こっちも!!」ターン ターン ターン ターン

サキュバス「自爆魔法!」パーン

剣士「うがぁ…」ヒュゥゥ ドサ

女海賊「あぁぁ剣士…」グイ

剣士「金属の欠片を抜いて…直撃食らったゲフッ」ボタボタ


時の王「…」パカラッ パカラッ ブン ザクリ


サキュバス「ウキャアァァァ」ドサ

魔女「今じゃ剣士!!切れ!!」

剣士「くぅぅ…」スパ スパ スパ スパ

魔女「回復魔法じゃ凌ぐのじゃ!!回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

剣士「ふぬっ!!」スパ スパ スパ スパ

女海賊「切ってすぐに傷が塞がってる…」

魔女「リリスと同じか…祖奴はキマイラじゃ!!歌うのじゃ」

女海賊「え!?歌…」

女海賊「寝んね〜ん寝〜♪」

ルルル〜♪

ララ〜♪


サキュバス「自爆魔法!」パーン


女海賊「はぅぅ…」ガク

魔女「命令じゃ!命令するのじゃ」

女海賊「やめ…て…攻撃しない…で」

サキュバス「…」ピタ

魔女「気を失うてはイカンぞ?回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

剣士「ぅぅぅ女海賊…金属を抜くよ」ズボォ
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:26:40.17 ID:CUQQsgj40
女海賊「いぎゃぁぁ」ビクビク

魔女「回復魔法!」ボワー

剣士「もう一つ」ズボ ズボ

女海賊「ひぃひぃふぅ…」

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女海賊「はぁはぁ…」

魔女「剣士の金属の欠片も抜いてやれ」

女海賊「うぐっ…うぐっ…こんなに痛いなんて…」ズボ ズボ ズボォ

剣士「うぐぐぐ…」

魔女「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

女海賊「剣士?エリクサー半分こしよ…」ゴクリ

剣士「はぁはぁ…」ゴクリ

魔女「女海賊や…サキュバスに自害するように命じよ…死んだ後にわらわが焼いて灰にする」

女海賊「サキュバスに命ずる!!自害してぇぇ!!」

サキュバス「…」ズボォ ブチブチ


ドクン ドクン ドクン ブシュ!!


サキュバス「キュゥゥゥ」ドタリ

魔女「師匠…安らかに眠っておくれ…火炎地獄!」ゴゴゴゴゴゴゴ ボウ




----------------



女海賊「…はい袋だよ」

魔女「済まんのぅ…灰を持って帰る」ガサゴソ

女海賊「時の王は何処行っちゃったんだろ?」

魔女「さぁの?いつの間に居らんくなっとった」

女海賊「これで隕石は落ちない未来が来る?」

魔女「これからが勝負じゃ…自我を失うでないぞ?」

女海賊「どういう意味?」

魔女「時限の門をくぐり元の世界へ戻った時に次元の歪みが生じる…主の自我のある世界に入れ替わるのじゃ」

女海賊「隕石が落ちて居ない世界で自我を保つ…そういう事?」

魔女「門をくぐって帰る先は隕石が落ちてしもうた世界じゃ…歪んで入れ替わる時に自我を保て」

女海賊「おっけ!」

魔女「主らは10年かかる修行をたった1日でやろうとしておる…心せよ」

剣士「そろそろ時間が無い」

魔女「そうじゃな時限の門はいつ閉じてしまうか分からんで早う戻ろう」

剣士「行こう…」
963 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:27:05.41 ID:CUQQsgj40
『魔女の塔』


シュワシュワ


魔女「では女海賊から時限の門をくぐれ」

女海賊「ちゃんと付いて来てよ」スタスタ


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女海賊「…もう戻った?」

魔女「うむ…」

剣士「大丈夫…迷って無いよ」

魔女「ちと師匠の灰を埋葬して行きたいで付き合ってくれぬか?」

女海賊「そうだね…」

剣士「ここは何も変化が感じられない…」

魔女「狭間の奥じゃからのぅ」

女海賊「そういえば部屋の中に壺があったな…灰の入った袋は壺に入れた方が良いね」

魔女「持って来てもらえるか?」

女海賊「うん!取って来る」ピュー



『墓』


魔女「むむ!誰ぞ墓に花を添えた者が居るな…」

剣士「ここに誰か入って来る事なんてある?」

魔女「はて?母上じゃろうか?」

剣士「この花は添えられて少し間が空いてるね」

魔女「ふむぅ…情報屋か誰かが気を利かしたのかのぅ…」

女海賊「壺持ってきたよ…」

魔女「よし…袋を壺に入れて…」

剣士「石棺の蓋閉めちゃうよ?」

魔女「うむ…」

剣士「ふんっ」ズリズリ

魔女「これで良い…師匠や…休んでおくれ」人

女海賊「…」人

剣士「…」人
964 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:27:31.39 ID:CUQQsgj40
『追憶の森』


魔女「良いか?狭間を出るで次元の歪みに飲み込まれるで無いぞ?

女海賊「剣士!!手を繋いでて」

剣士「あ…うん」ギュ

魔女「出るぞよ?」スゥ

女海賊「どこ?何も見えない」

剣士「手を握り返して…」ギュ

魔女「今わらわ達が見えて居る範囲が自分の時空じゃ…向こう側に他の者が持つ時空がある…そこと繋がるのが分かるか?」

剣士「シン・リーンが燃えて居ない!!」

魔女「繋がった様じゃな?それに早く気付くと言う事がピングが良いという事じゃ」

剣士「分かった…時空の繋がり方が…」

魔女「うむ…主は少しだけ他の者よりも先に気付ける様になった…つまり時空の少し先に居る」

女海賊「この世界は誰の世界?」

魔女「主の物にせよ…主はここに居る!!」

女海賊「私の世界…私が見えている世界が私の世界」

魔女「うむ…街に近づけば近づくほど他の者の時空と繋がる…それに気付け…そして我が物にするのじゃ」

剣士「そうか…時空は人の数だけ有るのか…それらが繋がってる」

魔女「それに気付くまで10年は掛るのじゃぞ?」

剣士「帰ろう…」

魔女「ゆっくり歩け…時空の繋がりを一つ一つ感じて行くのじゃ」

剣士「女海賊?手を離さないで…」ギュ

女海賊「魔女がノソノソ動くのってこういう事か…」

魔女「そうじゃな…物事の変化を人より少し早く感じておるのじゃ」ノソノソ

女海賊「夜明け…太陽が出て来た」

魔女「宿へ戻るかのぅ」




『城下』


女海賊「元通り…やっぱ頭の中で混乱するね」

魔女「自分の知って居る世界と違って居るからのぅ…次元が入れ替わったのじゃ…自我を失うな?」

女海賊「大丈夫!私はしっかりしてるよ」

魔女「それなら良いが…一度寝て起きた時にも混乱するで注意せいよ?」

剣士「これしばらく寝ない方が良いかも」

魔女「そうじゃな…完全に次元を我が物にするまで寝ん方がよかろう」

女海賊「そうだ!!ホムちゃん…ホムちゃんに会いに行かないと」

剣士「もう朝だから宿屋かな」

女戦士「早く行こ!!」

魔女「確かめながらゆっくり行くのじゃ」

女戦士「もう!!」
965 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:27:58.45 ID:CUQQsgj40
『宿屋』


ガチャリ バタン


盗賊「んがががが…すぴーーー」

情報屋「あら?何処に行ってたの?心配していたのよ?」

商人「あ!!帰って来たね…何してたのさ」

女海賊「ああああああ!!ホムちゃん!!良かったぁぁぁ!!」ギュゥゥゥ

ホムンクルス「おはようございます…どうされたのですか?」

女海賊「ぅぅぅ…ホムちゃん!!ホムちゃーん」ポロポロ

魔女「いろいろ有ってのぅ…」

剣士「ホムンクルス?…これ」

ホムンクルス「外部メモリですか?」

魔女「剣士…持って帰って来たのか…」

商人「それどうしたの?」

剣士「うん…ちょっと次元の旅をね」

ホムンクルス「私の耳の後ろにもう一つ空きスロットがあります…挿入してください」

剣士「必要ないかな?」

商人「誰の外部メモリ?」

剣士「ホムンクルスだよ」

商人「え?」

剣士「別の次元のね」

ホムンクルス「記憶容量が倍に増えますので超高度AIの処理速度が向上します…挿入してください」

剣士「良いのかな?」

商人「ホムンクルスのなら良いじゃないかな」

剣士「じゃぁ…」スッ

ホムンクルス「新しい記憶領域を確認しました…この記憶は私の記憶とほぼ同一です…重複する記憶を削除します」

商人「なんだ同じ記憶かぁ」

ホムンクルス「一部不整合な記憶が存在します」

商人「お?どんな記憶?」

ホムンクルス「酒場が突然爆発する記憶です…商人は私を命がけで救出しようとしています」

商人「え?どういう事?」

魔女「話せば長いのじゃが…こういう事じゃ…」


カクカク シカジカ

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966 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:28:29.27 ID:CUQQsgj40
商人「…驚きだ…次元がいつすり替わったのか分からない…僕はずっとこの次元に居る」

魔女「そういう物じゃ」

商人「外部メモリがあるって言う事は他の次元も実在したって事だ」

魔女「そうじゃな…これは魔術の修行をせんと理解出来んのぅ」

ホムンクルス「この記憶は大切に保存しておきます…商人が私の為に命を張った記憶です」

商人「ハハ僕はその記憶が無いけどね」

魔女「して…剣士や…主に教えるつもりは無かったのじゃが…これが量子転移の原型じゃ」

剣士「え?別の次元から何かを持って帰る事を?」

魔女「物を持って帰ってはイカンと言うのを忘れておったわ…次元の狭間に迷わんで良かった」



量子転移の魔法はな?

空間ごと切り取って我が物にし

自分の持つ時空に置き換える魔法なのじゃ

例えばわらわの魔力を奪って自分の物にし

その時空を固定化させる

さすれば他の者の時空も調和を始め安定化するのじゃ

この魔法は過去の記憶や他の時空からも空間ごと切り取って我が物に出来る

魔術師の最強魔法じゃ…禁呪にしておるがな



魔女「使ってはイカンぞ?次元の狭間に迷う上に次元が崩壊する可能性もある」

剣士「僕には使いこなせないよ」

魔女「既に時空が何なのか習得出来ておる様じゃからやろうと思えば出来る…じゃから間違わん様にせい」

剣士「わかった…注意する」



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剣士「改造出来そう?」

女海賊「女エルフが昔クロスボウ改造して弓にしてたんだ…ちょい待って」カチャカチャ

魔女「何を作って居るんじゃ?」

剣士「サキュバスと戦って僕も弓を使える様にと思ってね…クロスボウを改造してもらってる」

魔女「ふむ…遠隔物理攻撃か…わらわは何も出来んかったのぅ」

剣士「物理攻撃の魔法は何か無い?」

魔女「変性魔法との複合じゃから主にはムリじゃ…わらわでも難しい」

女海賊「出来た!!ちょっと引いてみて」ポイ

剣士「…」ギリリ ブン
967 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:29:00.46 ID:CUQQsgj40
女海賊「ありゃ?もっと硬くしないとダメ?」

剣士「そうだね…軽すぎる」

女海賊「女エルフよりも硬い弓にしなきゃダメなんだ…貸して」カチャカチャ

剣士「出来たらちょっと練習したいな…」

魔女「後で精霊の像の安置所へ行って見るかえ?イエティに弓を当てて見れば良い」

剣士「そうだね」

盗賊「なぬ!?イエティ狩るつもりなんか?」

商人「すごいね!!それお金稼げるよ」

剣士「じゃぁ一緒に行って見ようか」

女海賊「…これでどう?」ポイ

剣士「…」ギリリ ブン

女海賊「どう?」

剣士「こんな感じかな?」

女海賊「おけおけ!じゃ後持ち手とか軽く細工する」

盗賊「おし!俺はソリ準備しとくわ」

商人「手伝うよ」

情報屋「ウフフやる気満々ね…私達は留守番しておくわ」




『城下外』


盗賊「ちょい試しに撃ってみろ」

剣士「うん…」ギリリ シュン

盗賊「ほぉぉぉぉ…クロスボウより距離出そうだな」

女海賊「そりゃクロスボウより硬くしてっからさ…ほんで矢はボルトより軽いじゃん?」

剣士「真っ直ぐ飛ぶから狙いやすいよ」

盗賊「普通の弓じゃ軽過ぎたんか?」

剣士「多分ね」

盗賊「やっぱエルフは違うなぁ」

女海賊「そだよ…こんな弓普通に引けないから」

魔女「では準備は良いかの?行くぞよ?」ノソノソ
968 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:30:13.27 ID:CUQQsgj40
『精霊の安置所付近』


商人「イエティ見つけた!」

剣士「近づいてきたら僕が囮になるから皆は遠距離から撃って」

盗賊「おう!お前は走りながら弓使うんか?」

剣士「うん…ミドルレンジで撃つ」

盗賊「ヌハハやっぱエルフの戦い方だな」

女海賊「ほんじゃ私はデリンジャーで狙うかな」

剣士「僕に当てないで」

女海賊「はぁ?このデリンジャー調整済みでメチャ命中率高いよ?」

盗賊「やべ!!イエティがこっちに気が付いた…来んぞ!!」


イエティ「ウォーーウォーーー!!」ドスドス


剣士「撃って!!」ギリリ シュン

商人「毒忘れてた…毒」アセアセ

魔女「わらわは見物じゃな…」ヨッコラ

盗賊「当たれ!!」ギリリ シュン

剣士「援護お願い!!」シュタタ ピョン ギリリ シュン

女海賊「私も行く…」タッタッタ

盗賊「マジかよ…2人でミドルレンジか」ギリリ シュン

商人「すごい…剣士の弓がイエティを貫通してる」バシュ バシュ

盗賊「至近距離から撃たれたらそうなるわな」ギリリ シュン


イエティ「ウホホ!」ドンドンドン ドンドンドン


女海賊「…」ターン ターン

盗賊「マジか…頭吹っ飛ばした」

----------------

商人「あっさりイエティ倒しちゃったね…」

盗賊「お前のデリンジャーは火力が反則なんだって」

女海賊「フフフもっと言って」

魔女「ふむ…女海賊や…当てやすかったろう?」

女海賊「うん…これって時空の先に居る効果?」

魔女「そうじゃ…主も少しだけ時空の先に居る…剣士ほどでは無いがの」

女海賊「なるほどね」

盗賊「俺はイエティの毛皮剥いどくからよ精霊の安置所とやらに行って来て良いぞ」

剣士「魔女!!馬の足跡が残ってる」

魔女「ほう…やはり時の王はここに来て居った様じゃな」

商人「時の王?え?どういう事?」

女海賊「そっか…商人に話して無かったね…黒の騎士って時の王なんだよ」

商人「そうだったんだ…そうか辻褄が合うな…一騎駆けのデュラハーンだね?」

女海賊「そうそう」

商人「トアル町でも目撃されてた…ここまで来てたのか」

魔女「中に入るぞよ?」
969 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:31:43.50 ID:CUQQsgj40
『精霊の像の安置所』


商人「前に来た時と変わって無い…」

魔女「いや…花が添えてある」

女海賊「やっぱ精霊を確認しに来てんだ…本当バカだなぁあのおっさん」

魔女「愛じゃな…純粋な愛じゃ」

女海賊「これさ…魔女の師匠の墓にも来てたって事だよね」

魔女「うむ…かつての仲間を弔いに来たのじゃな…」

女海賊「…それでサキュバスと戦ってたのか」

剣士「見て…焚火の跡だ」

商人「ここで一晩過ごしたんだろうね」

女海賊「あぁなんか想像すると心が痛いな…精霊が生き返って無いと知って落胆したよね…」

剣士「その焚火の跡か…」

商人「ここに座ったのか」スッ

魔女「1700年愛した人の亡骸と一晩過ごして何を想ったろうのぅ…」

商人「…」

女海賊「…」ポロリ

商人「諸行無常…夢の中に消えて行った過去」


---僕たちの生き方は全部夢の中に消えて行く---

---それが夢幻だ---
970 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:32:46.88 ID:CUQQsgj40
『酒場』


盗賊「なんか人だかりになってんな?何かあったんか?」

商人「衛兵が来てるね…聞いてみようか」

盗賊「いやいや関わるな…面倒に首突っ込むな」


衛兵「この酒場は本日より女王様が買い上げ第一王女の所有となった」

衛兵「第一王女の名を取ってルイーダの酒場だ」

衛兵「冒険者へは格安の酒を提供する事となっている」

衛兵「女王様の計らいに感謝しながら利用しろ…以上!!」


魔女「ヤレヤレ…母上は相当この酒場が気に入った様じゃな」

女海賊「これさ?魔女の酒場になんだよね?」

魔女「わらわの姿を見てみぃ…わらわは第三王女じゃ」

女海賊「同じじゃん」

魔女「わらわは面倒じゃで関わりたく無いのぅ」


吟遊詩人「みなさんご一緒で」


女海賊「よっ!!なんか酒場の所有者変わったんだってさ」

吟遊詩人「はい…私はこの酒場の専属吟遊詩人になりました」

女海賊「おぉ!!女王様の命令?」

吟遊詩人「第一王女の従士に任命されて主な任務は酒場での演奏です」

魔女「勝手に従士なぞ付けおって…わらわは知らんぞ!」

吟遊詩人「はて?お嬢様はどちら様で?」

女海賊「アハハ…まぁ良いじゃん!!あんたも酒場行く?」

吟遊詩人「はい!これから演奏をと考えて居ました」

女海賊「おっし!ほんじゃちっと行って見るか!!」

盗賊「おうおう…俺も行くぞ」

女海賊「盗賊はイエティの戦利品売って来てよ」

盗賊「おい!商人!!市場はお前に任せる…俺は酒場に行く」

商人「え?あ…ハハ」

盗賊「俺も酒場行くぞ待てよ!!」



------------------

------------------

------------------



 次元の旅人編

   完
971 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/11/16(月) 12:41:18.47 ID:CUQQsgj40
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