翼の生えた少女「私を天使と呼ばないで」

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44 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:51:28.93 ID:911yWUWG0
ーーー正午 モニタールームーーー

監視員「ふぁーあ…」

監視員「まずいなぁさすがに夜勤からのぶっ続けは体に堪える…。あいつが体調なんか崩さなきゃ今頃眠れてたのになぁ」

監視員(いけないいけない。こんな愚痴所長の耳に入ったら惨事だ)

監視員(腹減らないけど、何か食べとかないと保たないよなぁ)

監視員「…ん?」



内隔壁ロック『チカッ、チカッ』




45 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:52:03.71 ID:911yWUWG0
ーーー執務室ーーー

秘書「よろしいのですか所長?送り届けるだけなら私でもこなせますが」

所長「なに、ここへ来る時も私が付き添ったのだ。帰りも付き合ってやるのがある種の作法だろう」

所長「それに彼の感想も聞きたいのでね」

秘書「…承知しました」

所長「私が空けている間の管理は、また君に一任する。昼食は道中彼と共にとることにしよう」

所長「車の手配だけ頼む」

秘書「はい」



...ザザ



所長「む」

監視員『所長、確認したいことが』

所長「なんだ?」

監視員『内隔壁のロックが解除されているようなのですが、今はどのような作業が行われているのですか?』

所長「内隔壁だと?」チラ

秘書「隔壁に係わる作業予定はありませんが…」

所長「誰が作業をしているんだ」

監視員『それが、どのカメラにも作業員が見当たらないので所長に確認をと思い…』

所長「なに?」

所長(アレを隔離する空間の出入り口は内隔壁と外隔壁の二重ロックになっている。外隔壁は食事を与える為に日に三度開閉されるが、内隔壁は点検時意外にロックを解除することはない)

所長(元より内隔壁の制御スイッチは、男君が実験で使用していた部屋の出入り口に設置されている。アレの翼も届かぬ上、我々に見つからぬよう触れることなど不可能なはずだが…)
46 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:52:46.62 ID:911yWUWG0



ーーーーー

男『…おう…』

少女『……』ファサ

ーーーーー



所長(…まさか)

時計『12:08』

所長「おい、原因究明は後だ!一番近い者に連絡して大至急ロックをかけろ!」

所長「それから食事係に外隔壁を開けるなと伝えろ!」

監視員『そ、その、一番近い人物が食事係でして…』

所長「っ」

所長「早く止めろ!!」

監視員『はいっ!』




47 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:53:22.63 ID:911yWUWG0
ーーーーーーー

食事係「今日も麗しの天使様に餌を届けに来ましたよっと」

食事係「気分は飼育員だ」

カチッ

食事係「天使様の食事にしては全く美味しそうじゃないのはすごいよな」

...ゴゴゴ

監視員『聞こえるか!?おい!』

食事係「?なんでしょう?別に俺は食べたりしませんよ?」

監視員『よく聞け、絶対に外隔壁を開けるんじゃないぞ!』

食事係「え?いやもう」

ゴゴゴ...

食事係「開きましたけど…」

食事係「…!?」



少女「……」



食事係「な、なん……」

少女「……」

少女「ご苦労様」

バサッ――





グシャッ




48 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:53:49.39 ID:911yWUWG0
ーーー男の部屋ーーー

男「……」ボー

男「今日で終わりなんだよな」

男「…すんげー長い1ヶ月だった」

男(ここに連れてこられた時は借金のツケでやべーことされんじゃねーかって思ったが、終わってみればなんてことはない)

男(これで俺の借金はチャラ。また明日から打ちに行けると考えたら…今から高まってくるな!)

男(あとはこの1ヶ月のことを綺麗さっぱり忘れりゃいいんだろ?最高の儲け話に乗れたもんだ)



ーーーーー

少女「…フフ」

ーーーーー



男「……」

男(なんだかんだ、楽しくはあったかもしんねーな)

男「さーてと、お迎えが来るまで待ちますか」




49 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:54:20.57 ID:911yWUWG0
ーーーーーーー

パンッ パァン!

少女「……」ペタ、ペタ

職員A「く、くそ…!」

職員A(銃がまるで効かん!)

職員B「来るな…来るなぁ!」タァン!

職員A「取り乱すな!俺達で無力化出来なくとも応援が来る!それまで足止めするんだ!」パァン!

少女「……」ペタ、ペタ

職員A(全て翼で弾いている…通常の銃では意味がない…!)

職員A「そうだ催涙弾があったな?奴にぶつけるぞ!」

職員B「そ、そうでし」



ザンッ



職員B「た……?」

ゴト(転がり落ちる職員の頭)

職員B「ひ……ぁ……」

少女「……」

職員B「た、たすけ…」



ズシャッ



職員B「」

少女「……」

少女「」ガサゴソ

(地下エレベーター用カードキー)

少女「……」



ペタ、ペタ




50 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:55:01.03 ID:911yWUWG0
ーーーーーーー

男「…昼過ぎには出るって言ってたよな?」

男「そろそろ来んのかね」



ビー! ビー!



男「!?」

男「なんだなんだ!?」

男(これも何かのテストか!?警報音みてーな音だけど…!)

ビー! ビー!

男「………」

男「…だ、誰も来ない」

男(連絡もない)

男「じっとしてるべきなのか…?」



タァン! ババババッ!



男「」ビクッ

男(今の…銃声?)



パンッ! パンパンッ!

「こっちじゃない回り込め!」

ズガガガッ

ビシャッ

「ぐあああぁ!」

タァンッ タァン!


51 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:55:38.59 ID:911yWUWG0

男(な、何が起きてんだよ…)

男(俺も逃げた方がいいか!?でも今の部屋の外から聞こえてきやがった…!)

男(あぁ、くそ!ようやく帰れるって時に…!)

男「!そういや電話っ!」

男(この部屋に唯一備え付けられてた固定電話があったな!使う機会なかったがこいつで所長さんに繋げれば…)

男(…番号知らねー)

男(やばいやばい怖ぇ。間違いなく異常なことが起きてる…!)

男(とにかく隠れた方がいいのか!?)

男「…?静かになったな…」

男「………」

男(………)

ソー...

男(…少し、少し開けるだけなら…)



...カチャ



男「……」

男(……誰もいない?)

男(あんだけ騒がしかったのに)

男(反対側は……)





少女「…見つけた」ポタ..ポタ..




52 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:56:36.32 ID:911yWUWG0

男「――!」

少女「……」

男「…きみは…」

男(この翼……どう見てもあの子だ)

男(体中に付いてるのは……血……?)

男「」ギョッ

(周囲に散乱する職員の死体)

男(なんだよ、これ…!)

少女「……」スッ

ガシッ

男「へ…?」

グイッ!

男「うお!」

男(ち、力強っ)

少女「」クルッ

男「待っ――」



タッタッタッ




53 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:57:20.99 ID:911yWUWG0
ーーーーーーー

少女「」タッタッタッ

男「なぁおい…!止まってくれ!」タッタッ

男(なんだってんだ!?俺はなんでこの子に…!?)

男(ものすごい力で引っ張られる…!)

「居たぞ!ここだ!」

「撃て!絶対に止めろ!」

男「ひっ」

パンッ! ズダダダッ!

男「うわああぁ!」

男(死ぬっ…!!)

少女「」バサッ

カンカン、カンッ

少女「邪魔」

グシュッ

「う…あぁっ!」ブン!

ザシュッ

――プシャー

男(は…?)

男(ひ、人が、首が……)

男「……う」

男「おえぇぇ」ビチャ、ビチャ
54 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:58:28.92 ID:911yWUWG0

男(死んだ……人間が豆腐みたいに……!)

男「はぁ…はぁ…ぅぷっ」

少女「…立って」

男「や、やめて、くれ…!」

少女「………」



スゥ(翼で男を掴む)



男「あ…嫌だ…離して…っ!」

少女「……」バサ...

男(どうして俺ばかりこんな目に遭うんだ!?)

男(俺もさっきの人みたいに、こ、殺され)

男「帰してくれえぇ!死にたくないぃっ!」



スタッ、スタッ




55 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:59:02.53 ID:911yWUWG0
ーーーーーーー

男「ああ…ああぁ…!」

少女「」スタッスタッ



『非常口』



少女「…!」



ドガッ



男「う…」

男(眩しい…外だ…)

少女「ねぇ」

少女「空を飛ぶのって楽しいかな」

男「そ、そら…?」

少女「うん」

男「…っ…」ビク、ビク

少女「……」

少女「きっと、楽しい」
56 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 02:59:29.03 ID:911yWUWG0



秘書「動かないで」チャキ



男「秘書さん…!」

秘書「この銃は普通の銃とは違うわ。遺伝子を破壊する薬品が弾に塗布されてる。掠るだけで体組織が死んでいくのよ」

秘書「大人しく戻りなさい。私も出来るだけこれを撃ちたくはないの」

少女「………」

少女「………」

少女「」フッ

秘書(え――)



ブワァッ!



バサ..バサ..



秘書「……」

秘書(今の…)




57 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/20(木) 03:00:52.82 ID:911yWUWG0
一旦ここまでとなります。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/20(木) 14:45:49.26 ID:gjN9Yh+9o
続けて
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/20(木) 15:43:52.18 ID:ptbzL0mdo
読んでる
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/20(木) 18:17:13.30 ID:NymNTeXN0
応援。
61 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:51:50.80 ID:2+mgJcSb0
ーーー執務室ーーー

所長「対象は北北西に向けて飛び去った。間違いないな?」

秘書「はい」

所長「そうか」

所長「内隔壁のロックを解除したのは恐らく男君だ」

所長「実験終了間際、アレと男君の不可解なやり取りがあった。あの時彼に指示したのだろう」

所長「翼を広げたのはカメラの死角を作り、声を拾わせないため……部屋外カメラを増設するべきだったね」

秘書「申し訳ありません。追い付いていながら取り逃してしまい…」

所長「君はよくやったさ。あそこで撃たないのは正しい判断だった。何のためにこのような立地に施設を構えたと思っている」

所長「既に捜索隊を派遣した。特にアレの逃げた方角には選りすぐりの者を向かわせてある」

秘書「…所長、被害の方ですが」

秘書「職員の死者が16名。いずれも一般職員ですがこの数は運営に支障をきたす恐れがあります」

所長「補充は出来そうか?」

秘書「当てはあります」

所長「ならいい。それよりもアレの逃走時の映像を解析したい」

所長「貴重な実践データの山だろうからね」

秘書「……すぐに持ってこさせます」

所長「もう一つ興味深いのは、男君を連れ去ったことだ」

秘書「……」

所長「まだ彼の利用価値はありそうだね」




62 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:53:02.11 ID:2+mgJcSb0
ーーーーーーー



バサッ、バサッ



男「……」

男(寒い…。周り海か空しか見えねーのってこんな不気味なのか…)

男(……)

少女「」バサッ

男「っ…」

男(俺はどうなっちまうんだ)

男(この子に拉致られて、最後にはぐしゃぐしゃに…)

男(ダメだ、震えてきた……さっきから最悪の想像ばっかぐるぐるしてやがる…)

男「……な、なぁ」

少女「……」

男「殺すのか…?俺も……」

少女「ううん、殺さないよ。人は殺さない」

男「じゃあ俺をどうするつもり……なんですか…」

少女「……」
63 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:53:42.35 ID:2+mgJcSb0

男「おっ!?」

少女「楽しくない?」

男「はい…?」

少女「空、飛ぶの」

男「…ちょっと怖い」

男(引っ張られてる腕が痛いし、掴んでるのが血だらけの女の子だってのがもっとおっかない)

少女「怖い…」

バサ...

男「……?」

少女「……」

男(落ち込んでる…?)

男「……あのさ」

男「とりあえず、どっかに降ろしてくれないかな」

少女「泳ぐ方が好き?」

男「そうじゃなくて…」キョロキョロ

男「!」

男「あそこ、島みたいのが見える」




64 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:54:09.92 ID:2+mgJcSb0
ーーーーーーー

男「ん゙んー…」ポキポキ

男(いつの間に全身バッキバキだ)

男(上から見た分にはここ、人も住んでなさそうな小さい島だった)

少女「……」ジー

男(そんな所でこの子と二人きり)

男(……殺人鬼……)

少女「……」ジー

男「…な、なんだ?」

男(やっぱり俺に何かするつもりだよな)

男(…全力で、走って逃げる。こんな助けも呼べない場所で隠れられるか分かんねーけど、所長さん達が探しに来てくれるよな…?)
65 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:54:54.39 ID:2+mgJcSb0



...キュウ



少女「……」

男「……」

少女「お腹空いた」

男「……!」

男「おま、まさか俺を――」

少女「」バッ

ヒュー ザブンッ

男(海に飛び込んだ!?)

ザパァ

男(と思ったらすぐ出てきた…?)

少女「……」スタッ

魚「」ビチビチ

男「あ…」

少女「これ、おいしいと思う?」

男「…いや、見たことないけど…魚は大体食えんじゃねーか?」

少女「………」

少女「」アーン

男「待て待て。せめて焼くくらいしないと」

少女「…お腹空いたの」

男(……)

男「あー……その前によ」

男「体、洗おうぜ」

男(どこもかしこも血まみれだ)



.........




66 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:55:22.75 ID:2+mgJcSb0

男「これは…」

男(体洗って綺麗にして、全裸なのもさすがにあれだから着るものを用意したんだが…)

少女「………」

男(そこらに生えてたでかい葉を巻き付けただけ。スカート代わりに草を編んで作ってみた腰巻きも、でかい翼と相まってどう見てもそういうコスプレにしか見えない)

少女「チクチクする」

男「あーうん、俺が悪かった。それはやめよう」

男「俺のシャツでいいか…」

ゴソゴソ

男「ほら」

少女「……」...ソー

男「っと、そうだ」

ビリッ ビリビリ

男「こうしときゃ翼も通せるよな?…もっと大きい穴じゃないとダメか?」

少女「…平気。貸してみて」

(シャツを着る)

男「ぶかぶかだけど…かえって良かったかもな」

少女「……あったかい」

男「何も着ないよりはそりゃマシだろう」

少女「……」

少女「」スンスン

少女(…♪)
67 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:55:50.64 ID:2+mgJcSb0

男「匂いなんて嗅いでどうす……!」

男「服は食いもんじゃねーからな!?」

少女「それくらい知ってる」

少女「ねぇ、もう食べてもいい?」

男「ん?うーん…」

男(さっき10匹程追加で捕まえてきた魚……俺もこんな状況だが少し腹減ってきたし、食ってみたいのは山々なんだけど)

男「生で食うのはどうしてもな…火どうにかして起こせねーかな」

男「なんだっけ、確かとがったものを木に擦り付けて摩擦で着火だったか?火花を散らすとかも聞いたことあんな」

少女「火花があればいいの?」

男「でも俺なんも持ってねーや…」

少女「……」

バサ...



ガキィ! パチパチパチッ



男「うおぅ!?」

少女「これで焼けるかな」

男「……」ポカン

男(もしかして金属質に変化させて打ち合わせたのか)

男(…便利だ)

男「枝とか枯れ葉とか、燃えるもん集めてこよう」



.........




68 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:56:18.89 ID:2+mgJcSb0

男「ふー、意外と食ったな」

少女「おいしかった」

男「そうか?魚だけは飽きてくる。醤油くらいあればまだマシなのに」

少女「醤油。しょっぱい黒い水よね?」

男「おう。食ったことないのか?」

少女「あるけど……味、覚えてない」

男(そんな昔なのかよ)

男(そういや、あの施設では何を食ってたんだろうな)

男「……」

男「何か食えそうものがないか、島を探してみようぜ。きのこだの草だのはどれが食えんのか分かんねーけど、運よけりゃ果物くらい見つかるかもしれないしよ」

少女「…!うん、行く」

男「よーし、高い場所は任せたぞ」




69 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:57:26.99 ID:2+mgJcSb0
ーーーーーーー

少女「……」サッ、サッ

少女「」ピョン

男「ちょっと速くねーか…?」

少女「あなたが遅いの」

男「遅いって…足場も悪いし俺はそんな身軽に動けないんだよ。あんま跳ね回ってると転ぶぞ?」

少女「転ばないよ。私はあなたと違って――」ツルッ

ズテッ

男「……」

少女「……」

男「ぷっ」

少女「………」ファサ

ポイッ

男「んぁ?」

ムカデ「」カサカサ

男「!?」ブンブン

カササ...

男「びびった…何も虫投げつけることないだろ…」

少女「……」ツーン

男(やることがまるっきり子供だな)
70 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:57:54.01 ID:2+mgJcSb0

男「お!あそこの木の上、紫の実っぽいのが見えないか!?」

少女「……」

バサッ



ガサ、プチッ



少女「これ」

男「そうそう…ってちっちゃ!しかも硬いし……あれか、街中に生えてっけど何の実なのか謎な植物と同じようなやつか」

少女「焼けば食べれる?」

男「焼いても炭になる未来しか見えねーな…」

少女「……」パク

少女「…!、?」

男「お、おい」

少女「」ゴク

少女「…ぅー…」

男(何とも言えないっつー顔してやがる)

男「さては渋かったな?」

少女「しぶい?」

男「そういう顔になる味のことだ。また一個賢くなったな、ははっ」

少女「…ん」

男「いや俺は食わないぞ?」

少女「ん」

男「だから押し付けないで…!」
71 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:58:32.46 ID:2+mgJcSb0

男「そ、そうだ炙ってみよう!そうすりゃもしかしたら甘みが出てくるかもしれない!」

少女「本当?」

男「おう。…多分…」ボソッ

少女「もっと取ってくる」

男「え」



バサッ ガサガサ



男「………」

男(適当言っちまったけど何とかなるよな)



「キーッ!キャッキャッ!」



男「!」

猿「ウィー…」ノソ

男「猿か。こんなところにいるもんなんだな」



――ドサッ



男「おぶっ!?」

男(痛ぇ思いっきりケツ打った…!)

少女「」ギュー

男「…?どうした」

少女「……っ」

男(震えてる。あんなにはしゃいで飛び回ってたよな…?)

男(ひょっとして)

男「…猿が怖いのか?」

少女「」ギューッ

男「痛い痛い!分かった、こっから離れよう。な?」




72 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 00:59:55.92 ID:2+mgJcSb0
ーーー夜ーーー



パチパチ...メラメラ



男「ほら焼けたぞ、食うか?」

少女「……」

(受け取る)

少女「」ハムハム

男(…俺はなにしてんだろうな)

男(人殺しの女の子と仲良くサバイバル……意味分からん字面だ。逃げるどころか一緒に飯食うとか)

男(でもなぁ)

少女「食べないの?」

男「俺はいいや。腹減ってない。むしろ喉渇いた」

少女「…水は出せない」

少女「私も飲みたい」

男(なんつーかほんと、翼のせいでガラッと印象変わってるけど年相応の子供にしか思えねーんだよな)

男(はしゃいで転んで小さいことでムキになって)

男(……)
73 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 01:00:34.49 ID:2+mgJcSb0

男「訊いてもいいか」

少女「?」アム

男「なんで俺を連れてきたんだ?」

少女「…あなたが人だから」

男「?人だったら俺以外にもいっぱい居たろ」

少女「あの場所に人は居ないもの」

男「え、つまり…所長さんや秘書さんも…」

少女「違う。もっと、おぞましい」

男(な、なんだよ……なんなんだよ)

男「……きみは、あの施設で何をされてたんだ?」

少女「……」

少女「痛いこと。苦しいこと」

少女「汚いこと。気持ち悪いこと」

少女「――殺すこと」

男「……」

少女「あそこは地獄」

男(……)

男「だから逃げ出した…?」

少女「…あなたが、今日が最後だって言ってた」

少女「それが一番嫌だった」

男(どうしてそこで俺なんだ)

男(俺は言われた通り会話してただけで、こんなことになるなんて1ミリも聞いてない)

男(やっぱ、明らか怪しい話に乗るんじゃなかった)
74 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 01:01:40.76 ID:2+mgJcSb0

ヒュオー

男「っ…さみぃ」

男(あぁ…俺の平穏が遠のいていく…)

少女「……」...スス



ポスッ



男「…!」

少女「こうすればあったかい?」

男「…そう、だな」

少女「」ギュ

少女「……あなただけだったの」

少女「何も感じない、何も考えないようにしてたあの箱の中で、眩しかった」

少女「あなただけが、私を"私"として見てくれた」

男(私として…)

少女「楽しいなんて感覚、久しぶりに思い出した」

少女「あなたと一緒に居ればもっと色んな楽しいこと教えてくれるのよね?」

男「…しりとりとかか?」

少女「うん、好き」

男「………」

男「俺を連れてった理由はなんとなく分かった気がする」

男「ずっと訊き忘れてたんだけど、きみ、名前は?」

少女「……少女」

男「少女か。俺は」

少女「男」

男「…散々自己紹介してたなそういえば」
75 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 01:02:33.36 ID:2+mgJcSb0

男「言っとくが、俺は面白い人間でもなんでもないぞ?」

男「元々借金返済のためにきみと話してただけだ。そんな奴と居ても楽しいわけがない」

少女「………」

男「つまりなんだ、その」

男「俺なんざおいて、一人で逃げた方が絶対いいと思うわけでな」

男「どうせ戻る気はないんだろ?俺は邪魔になるだけだしよ、どう考えてもその方が…」

男「少女?」

少女「」スー..スー..

男(…寝てる)

男「……」

男(体温高いな、この子)

男「……」ソー

フサフサ

男(柔らかい。こうやって触ると普通の羽だ)

男(可変質……なんだっけ。んな漫画みてーな力がこの翼にあんだよな。実際見ちまったし、あれだけ大量に付いてた血のシミも綺麗になくなってる)

男(……)

男(ぶっちゃけ、もうどんな事実が飛び出してきてもおかしくないよな。この子についてもあの研究所についても)

男(……俺はとんでもないことに首突っこんじゃったんじゃねーのか。所長さんに見つけてもらえたとして、無事帰してくれるんだろうか)

男(何もかもがやばいものに思えてくる)
76 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 01:08:07.13 ID:2+mgJcSb0

男「………」

男(ここであったことは全部幻覚だ)

男(島を離れて、人の居る場所でこの子を逃がす。その足で所長さんの元へ向かう。俺は何も知らないし、聞いてない。少女が勝手に逃げただけ。1ヶ月の期間は過ぎたんだからぜってーそのまま帰ってやる)

少女「」スー..スー..

男「…悪いな」

男「俺は本当、つまんねー人間なんだ」




77 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 01:09:07.18 ID:2+mgJcSb0
ーーー執務室ーーー

秘書「えぇ、そうです。では指定の4名を明日から。よろしくお願いします」

ピッ

秘書(これで失った16名と増員分2名は確保)

ピリリリッ

秘書「!」ガチャッ

所長『私だ。人員補充は順調かね?』

秘書「はい、滞りなく。ただいま完了致しました」

所長『何よりだ。君に任せた仕事は憂う必要がないのが素晴らしい』

秘書「光栄です、所長」

所長『私の方も解析が終わったところでね。結果を共有しておく』

所長『男君に隔壁のロックを解くよう唆したのはやはりアレだったよ。壁の反射に僅かだがアレの唇の動きが映り込んでいてね。しかしその際に発したのは空調のスイッチを切ってくれという嘘だった』

所長『秘書君、これが何を意味するか分かるか?』

秘書「…脱走のための嘘…ですか」

所長『実験は大成功に終わったということだ』
78 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 01:09:45.17 ID:2+mgJcSb0

所長『残る最終フェーズさえクリアしてしまえば我々の理想は体現される…人の歴史が変わるのだ!』

所長『ハハハッ!』

所長『もう少しだ、秘書君。最後まで力を貸してくれ』

秘書「勿論です」

所長『今からそちらへ戻る』

プツッ

秘書「……もうすぐなのですね」

秘書「私はどこまでも付いていきます」

秘書(例え貴方にとって、都合の良い駒でしかないとしても)



ーーーーー

少女「」フッ

ーーーーー



秘書「………」




79 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/08/27(木) 01:12:15.13 ID:2+mgJcSb0
今回はここまでです。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/27(木) 10:23:40.90 ID:rG+1NQBYo
雰囲気が今のところエルフェンリートぽいですね。
まぁオマージュ元なんだろうけど…
81 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:22:25.36 ID:2LXOD4WP0
>>80

まさか気付いてくれる人が居るとは。
その通りです、エルフェンリートをかなり参考にしています。後は9Sなんかも少々ですね。
結末が読めてしまうかも知れませんが、よければお付き合いください。
82 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:24:14.53 ID:2LXOD4WP0
ーーー朝ーーー

少女「」ギュー

男「…そろそろ離してくれない?」

少女「嫌。また居なくなる」

男「ちっと用を足してただけだって。なんならトイレも付いてくるか?」

少女「うん」

男「…冗談だ」

少女「……」

男「それより、いつまでもここに居るのはまずい」

男「じっとしてたらいつか見つかんだろうし、そもそも俺たちの生活が危うい」

男「移動しなきゃな。昨日みたく俺を運んでいってくれ」

少女「………」
83 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:24:47.59 ID:2LXOD4WP0



...バサ



男「昨日は確かあっちの方から来たんだよな。じゃあ…」

男「向こうに真っ直ぐ行ってみるか。太陽目印にすりゃ迷わねーだろう。そんで、真昼になっても海しか見えねーようならここに引き返す」

少女「太陽?どうやって?」

男「どうやってって…太陽のある方に進んでけばいい」

少女「あれ動いてるじゃない」

男「東から昇って西に沈むだろ?今朝はちょうど向こうから出てきたんだからそっちが東、昼過ぎたら西側に来る」

男「それで方向は分かるはず。多分」

少女「東から西…」

少女「知らなかった、そんな風に動いてるのね」

男(時計もないからいつが真昼なのか分かんねーけど、まぁなんとかなんだろ)

少女「もっと聞かせて。私の知らないこと」

男「…太陽が動いてる理由は?」

少女「……」キラキラ

男(こんくらいの知識もないのか)

男(…学校も行けてないんだろうな)

男「続きは移動しながらな」

男「あぁそれと、今回は出来るだけ低く飛んでくれねーか?おっかなくてしょうがない」

少女「ん」



バサ、バサッ




84 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:26:45.28 ID:2LXOD4WP0
ーーーーーーー

男「つまり、空に星が見えんのはでっけー太陽みたいなやつが光ってるか、太陽の光を反射してここから見えるようになったかのどっちかってこった」

少女「反射。鏡みたいになってるんだ」

男「鏡じゃないが…近くにあるやつは反射した光でも見えるんだよ。月とか火星とか」

少女「そう」ミアゲ

男「星探してんのか?昼間はせいぜい月がぼんやり見えるくらいだぞ」

少女「………」

男(…あの地下からじゃこんな空も見えなかったわけか)

男(にしても)



サーー(低空飛行する少女)



男(波が近ぇ。あっという間に通り過ぎてく。スカイダイビングってこんな感じか?)

男「」パッ

ビュオー

男(おおぉ…!俺は今風になってる!)

少女「…何やってるの?」

男「風を感じてんだ。こんな強ぇ風なのによく平気で飛んでられるよな…!」

男「おっと!ははっ」
85 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:27:16.50 ID:2LXOD4WP0

少女「……」

少女「」グン!

男「おっ!?」



グワァ



男(体が引っ張られる――)



グィン



少女「風、感じられた?」

男「……」

男「すげースリルだった!なんだ今の!」

男「今度は横じゃなくて縦に一回転してみてくんねーか!?」

少女「こう?」



グルン!



男「っほほぉ!?」

男「こいつぁいい!リアルジェットコースターってか?」

男「飛んでる時さ、たまにこんな風に緩急付けてくれっ」

少女「………」

グン、グンッ

男「おー!?」

スサー!

男「はっはは!」

少女「♪」



.........




86 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:27:44.24 ID:2LXOD4WP0

男「……う」

少女「……」

男「ごめ…もうちょいゆっくり飛んで…」

男(調子に乗り過ぎた……気持ち悪い)

男「スゥー、ハァー…」

男(どっか適当な所で一休みしたい…)

少女「……」

男(もう日も真上か。どこ見ても海しかねーよな…こんな時に…)

男(そろそろ引き返すか…?けど、あとちょいで何かしら見えて……)

男「………」

男(…引き返すかぁ。せめてもう少し揺れないよう出来ないか少女に相談して――)

男「…!なあ、あれ!」

男「あそこに見える影、陸地じゃねーか…!?」

男「見えるか?あっちだあっち!」

男(助かった!色んな意味で…!)

男(人に見られたら絡まれちまうかもしれねーがそんなことよりとっとと地に足つけたい)

男「…少女?」

少女「……」



ヨロ...



ボシャンッ


87 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:28:12.67 ID:2LXOD4WP0

男(!?海に…)

男「…ぷはっ!」

男「おいどうした!?」

少女「」グッタリ

男「少女!起きろ!なぁ!」

ザプン

男「ぅくっ……!」

男(くそ、波が…流される!)

男「っはぁ…は…!」

男(陸が見えんのに…こんなとこで死にたくない!)

男(泳いであそこまでたどり着くしかねーんか…!)

男「ごはっ…!?」

男(やば、水飲ん――)



ザブン...




88 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:29:18.60 ID:2LXOD4WP0
ーーー執務室ーーー

所長「そうか、見つけたか」

『あぁ、火を焚いた跡がな。後始末はしてったみたいだが、雑もいいところ』

所長「飼育島に降りていたとはね。なんと面白い皮肉じゃないか」

所長「逃げた方角は?」

『そこまでは分からない。離れてから1時間も経ってないだろうが』

所長「分かった、捜索範囲を絞ろう。近隣諸島に人員を割り振る。詳細は追って伝えるが、散開している者も合流させる」

所長「それまでは引き続き島内を捜せ」

『了解』

所長「繰り返すが、アレを捕縛する際は速やかかつ確実に無力化しろ。抵抗が激化するようなら出直すんだ」

『殺さなきゃいいんだよな?』

所長「そうだ。何をしてもいい。場合によっては民間人の数人、被害が出ようと構わん」

秘書「……」

所長「発見したらすぐに知らせろ。以上だ」ピッ

秘書「飼育島ですか」

所長「恐らくもう居ないだろうな」

所長「アレの合成実験だけは唯一、島の動物を用いずに行ったのだがね。それでもあの島に引き寄せられたのはただの偶然か、身に刻まれた宿命か」

秘書「……民間人への犠牲ですが……」

所長「気がかりかね?数人程度であれば揉み消すのは容易い」

秘書「大衆に目撃されてしまうと厄介かと」

所長「多少の無茶は必要だね。その時は君にも動いてもらう」

秘書「それは、少々危険ではありませんか?事を収められても所長への足が付いてしまう可能性があります」

秘書「最悪の場合、彼女の処分も視野に入れておかれた方がよろし――」

所長「秘書君」

秘書「っ、はい」

所長「足が付く、とは何たる言い草だ」
89 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:29:44.92 ID:2LXOD4WP0

所長「我々が為していることは悪か?否、我々ほど人類への貢献を考えている者は居ない」

所長「そうだな?」

秘書「…はい」

所長「なればこそ、アレは失くしてはならない」

所長「まだ未熟児も同然なのだ。力を使い過ぎれば可変質性の制御を失い体の瓦解を招く恐れもある」

所長「数人の犠牲などむしろ必然。支払われるべき代償ですらあるのだよ」

秘書「しかし…もし所長が捕まってしまったら研究は誰が…」

所長「そのための君だ」

所長「私が消えた後、本研究を最もよく知る君が、引き継ぐのだ」

秘書「………」

所長「私はね、アレによって作り替えられていく新しい世界が見たい…」

所長「仮に私の命と引き換えで実現するというのなら今すぐにでも自害しよう。だが現実は違う。世界はあの子を必要としている」

所長「次代のホモ・ヴォランテ。その始祖となる人間」

所長「最早この研究は私達だけの意思に留まるものではない。ゆえに頓挫することなど許されぬ」

秘書「……」

秘書「承知、しています」




90 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:30:13.01 ID:2LXOD4WP0
ーーーーーーー

男「ぐー……ぐごー……」

男「……!」ハッ

男「……」

男(どこだ、ここ)

男(俺は確か海ん中で…)

男「………」

少女「」スー..スー..

男(二人分のベッドに、少女もちゃんと居る)



老婆「おや、気が付いたかい?」



男「!」

老婆「あらやだいけないねぇ。びっくりさせるつもりは無かったのよ」

老婆「おじいさん!目を覚ましましたよー!」

...トットットッ

老人「おぉ、よかったわい。寝たきりにならんかと心配しとったんじゃ」

老婆「だから言ったじゃないの、見つけた時に生きているんだから神さんに生きなさいと言われたんですよ」

老人「またお得意の神様かい。後から急変することもあろうに。ばあさんは楽観的過ぎていかん」

男「…えっと」

老人「おぉすまんの」

老人「見ての通り、老いぼれ二人じゃ」

老婆「それでは分かりませんよ、おじいさん。おじいさん、おばあさんと言わないと」

老人「同じじゃろう」

老婆「あら…それもそうねぇ」

老婆「おほほ」

老人「わはは」

男(えぇ…)
91 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:30:55.72 ID:2LXOD4WP0

老人「お前さん方のう、昨日岸に打ち上がっとったんじゃよ。最初は仏さんかと思ったがまだ息があるときた。年寄りの身にはキツかったがの、ここまで運んできたんじゃ」

老婆「あの時は驚きましたねぇ。桃太郎みたいで」

老人「そんなら、運んでくるのはばあさんの役目じゃな」

老婆「あれま」

男(あそこから波に押されて漂着したっつーことか)

男「…ここは?」

老婆「私らの家よ。面白いものはないけど、許してね」

男(俺たち二人を運んだんなら、今も布団からはみ出てるあの翼もがっつり見られたってことだよな)

男(…やばいんじゃねーか?)

老婆「これ。お食べ」

男「…?」

老婆「お腹空いてるでしょう?お食事出来るまで飴ちゃんなめてなさいな」

男「……」

男「飯って、こいつの分も作ってくれるんですか?」

少女「」スー..スー..

老婆「もちろんよ。もしかして、何か嫌いなものでもあるのかしら」

男「それは知りませんが…」
92 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:31:26.50 ID:2LXOD4WP0

男(……)

男「…何も言わないんすね。こいつのこと」

老人「そのご立派な羽のことかの?」

男「………」

老人「大変じゃったよ」

男「っ」

老人「傷付けずに運んでくるのは」

男「…ん?」

老人「ばあさんが引き摺るなとうるさくてのう…」

老婆「こんなに綺麗なんですから、ぞんざいにしてはいけませんよ。女性の体に傷なんて……ねぇ?」

男「は、はぁ」

男(気にしてない…?)

少女「……ん……」

老婆「まあ。こちらも無事みたいね。一安心」

少女「!!」バッ

男「ま、待て!この人たちは違うから!俺と少女を助けてくれたんだよ」

少女「……」

老人「ほぉ、少女ちゃんと言うのかい」

男「あ…俺は男っす…」

老婆「男ちゃんと少女ちゃんね。うんうん、覚えた覚えた」ニコニコ

老婆「ほいじゃあお食事こさえてこようかねぇ」

老人「火はわしが扱うぞ。ばあさんだとまた取手を焦がしかねん」

老婆「もう大丈夫ですよ。心配性なんですから」

老人「それを聞くのは5回目じゃの」



トットットッ...


93 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:32:02.53 ID:2LXOD4WP0

少女「……」

男「……」

少女「行こ、今すぐ」

男「出てくって?」

少女「」コク

男「…今日くらいここに匿ってもらわないか?」

少女「………」ジー

男「まぁまぁ聞けって。大人しくしてんのも危ねーけど、よく知らないとこうろちょろすんのはもっと危ない。せめて1日だけでも様子見ようぜ」

男「腹も減ったろ?」

男(そんでもって、少女には悪いがみんな寝静まった夜に一人出ていく)

少女「……」

ストッ テクテク

男「な、なに」

少女「……」クイッ

男「袖?え?」

少女「頭」

男(頭……こう?)

ポンポン

少女「…♪」

男「……」ナデナデ

男(こんな奴に頭撫でられて嬉しいもんかね)

ピョコン

男(翼が跳ねてる。犬みたいだな)

男「クフッ」

少女「?」

男「いや、なんでも」




94 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:32:50.46 ID:2LXOD4WP0
ーーーーーーー

老婆「さぁさ、遠慮しないで食べてね」

少女「……」

男「おぉ」

男「」ズズッ、パクッ

男「うまっ」

老婆「お口に合ったようでなにより」ニコニコ

老人「少女ちゃんもほれ、好きなもんからでいいからね」

男「毒とか入ってなさそうだし大丈夫だよ」ボソッ

少女「…そうじゃなくて」

(一膳の箸)

男「…箸使ったことねーのか?」

少女「……」

男「あの、スプーンとフォークいいっすか?」

老婆「はいはい。えーっと、どこだったかねぇ」

老人「わしが取る」

ゴソゴソ

老人「あいよ」スッ

少女「……」(受け取る)

少女「………」

少女「」ハム

少女「…!」

少女「」ハム、アム!

老婆「おいしいかい?」

少女「…、…」ムグムグ

老人「子リスのように頬張れるならうまかったんじゃないかの」

男「ちょ、おい羽が当たってる」

老婆「あらあら」

老人「わはは」




95 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:33:52.86 ID:2LXOD4WP0
ーーー夜 寝室ーーー

男「はぁ〜、風呂入ったらどっと疲れた…」

男「1日入れねーだけでここまで違うか。日本の風呂文化恐るべし」

少女「んー…」ゴロン

男「ってそうか、少女は1日どころじゃないんだったよな」

少女「くすぐったかった」

男「シャワーの時暴れるからだ」

少女「…私を押し出そうとした」

男「だってあの湯船だぞ?まさかその羽が入るとは思わないからさ」

少女「……」バサ

男「お、怒んなよ…もうしないって」

男「それよかもう寝た方がいいんじゃねーのか?体調だって万全とは限らんだろ。昨日気失ってたんだし」

少女「今はもう平気」

男「ふーん。ま、俺は寝るから少女もぼちぼちな」

男「電気消すぞー」

カチッ

男(今のうちに寝とけば明け方くらいには目覚めるはず)

男「……」

男「……」



パサ



男「………」

男「なんで、こっち入ってくるんだ?」

少女「」モゾモゾ

男「待て待てさすがに無茶だ。寝っ転がったらどうしても羽がぶつかる」

少女「もうしないって言ったのに」

男「布団は無理だろ…その羽が畳めるってんなら話は別だけど」

少女「……」
96 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:34:24.55 ID:2LXOD4WP0

...スルスル

少女「これでできた」

男「人をぐるぐる巻きにしてできたはないんじゃねーか…」

男「寝るならそっちで寝てくれって」

男(これじゃあ動けん)

少女「……」

男(…そんな顔すんなよ)

少女「…おいしかった」

男「夕飯か?そうな」

男「お前、これまではどんなもん食ってたんだ?」

少女「知らない」

男「え?」

少女「紫だったり黄色だったり」

男「なんだそりゃ」

男「…ハンバーガーって知ってる?」

少女「ううん」

男「ラーメンは?」

少女「めん…食べ物?」

男「うまいぞ。コスパもいい」

少女「……」

男「じいさんたちに頼めば食わせてくれるかもな」

少女「…でも負けちゃう」

少女「最後が"ん"で終わってる」

男「?……くっ、ははっ」

男「本当しりとり好きな」





男(結局、翼に巻かれた俺は少女が朝起きてくるまで寝返りも打てなかった)




97 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:35:06.48 ID:2LXOD4WP0
ーーーーーーー

老婆「」トットッ

老婆「あら」ヨロ...

バサッ

少女「…間に合った。痛くない?」

老婆「ありがとうねぇ少女ちゃん。この歳になると足元も危なくって」

少女「私が見てれば転ばないかな」

老婆「いいのよ。あなたは自分の好きなことをしなさいな。男ちゃんなら向こうの部屋に居たわよ」





男(成り行きで転がり込んだ老夫婦の家はどうやらこの二人しか住んでないみたいで、人のいないド田舎、ばあさんたちは俺らのことを問い質しもしないで置いてくれた)




98 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:35:35.45 ID:2LXOD4WP0
ーーーーーーー

老人「ほぉ、少女ちゃん箸が使えるようなったんじゃな」

少女「練習したの」

男「一日中付き合わせやがって…」

老婆「上手ねぇ」

少女「♪」カチカチ

男「箸で音鳴らすとか行儀はまだまだだな。下手っぴ下手っぴ」

少女「……」

ブスッ

男「いった!?おい!」

老婆「まあまあ許しておやりな」

老人「男くんの言葉もよくないのう」

男「俺が悪いんすか…」





男(そんなぬるま湯の環境に居たら一人どっか行くのも面倒になってきちまって)




99 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:36:04.45 ID:2LXOD4WP0
ーーーーーーー

男「スズメ」

老婆「めんだこ」

老人「うーむ……こうもり」

少女「り?り、り…」

男「リスはさっき言ったからな」

少女「分かってる」

少女「りー…」ウーン

老婆「少女ちゃん少女ちゃん」

老婆「コショコショ」

少女「…ゃま?」

老婆「そうそう」ニコニコ

少女「リャマ」

男「いやそれは無しでは」

老婆「ばあちゃんは今から少女ちゃんチームだから」

男「チーム制…?」

少女「私、まだ男に勝ったことないの」

老婆「そうなのかい?よし、ばあちゃんがたくさん知恵貸したる」

男「ふっ、タッグ組んだとこで俺の牙城が崩せると思うなよ?」

男「じいさん、行くぜ」

老人「……」

老人「わしも今から少女ちゃんチーム」

男「え!?」





男(気が付きゃのんびり時間が過ぎていた)




100 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:36:43.88 ID:2LXOD4WP0
ーーーーーーー

少女「………」

少女「………」

男「いたいた。ばあさんが探してたぞ。見せたいものがあるってよ」

少女「……」

男「何見てんだ?空?」

少女「…空は広いのね」

少女「海は動いてて」

少女「雲は少し怖い」

男「……」

男「雲は上に乗っかることができんだぜ。フカフカのクッションみたいにな」

少女「!飛べば行ける?」

男「嘘だよ」クク

少女「………」

バサバサ

男「悪かった…!目はやめて目は…!」





男(施設を脱走した時こいつに抱いた恐怖はもうすっかり消え失せていた。なんだか第二のスローライフが始まったみてーだ。ともすればこのままここで暮らしてくのもありなんじゃないだろうか。ゴミゴミうるさいものがなんもない)

男(パチ屋も無いのはちょっと惜しいが)




101 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:38:51.98 ID:2LXOD4WP0
ーーーとある夜ーーー

男(あーこのままじゃ見つかっちまうよなぁ。そのうちどっか行かねーといけないんだろうけどさー…)

男(いやでも、一週間も経つのに音沙汰ないってことはこいつはもう諦めたって線もワンチャン)

男「……」

男(今署長さんに見つかったら少女はどうなるんだろう)

男(全力で捕まえにくる?それとも殺される…?)

男(どっちにしたってあいつの自由もくそも無くなんのは明白か)

男(…別に、赤の他人がどうなろうと知ったこっちゃない)

男「………」

男(って…思ってたんだがな…)

男「はー……」

男「やめだやめだ。明日の予定でも考えとくか」

男「……人間、スマホが無くても意外と何とかなるもんなんだな」
102 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:39:18.73 ID:2LXOD4WP0



ペタ、ペタ



少女「……」

男「いいところに戻ってきた。明日ちょびっとだけ遠出してみねーか?砂浜沿いでも山沿いでも探検してみたい気分でよ」

男「お、そのヘアピンもらったんか」

少女「…うん」

男「さてはいっちょ前におしゃれでも始める気だろー。あのばあさんなら喜んで手伝ってくれそうだ」

少女「……」

タッタッタッ

男「おっと…」

少女「」ギュー!

男「…どうかしたのか?」

少女「っ……」

男(震えてやがる)

男(…無人島に居たときもこんなことがあったような…)
103 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:40:49.52 ID:2LXOD4WP0

少女「怖いの…」

男「……」

少女「……私は……」

少女「あなただけでいい…!こんなにいっぱいもらっても、また壊れちゃうから、男が居ればそれでいいの…!」

男「壊れるって、何がだよ……俺と居たっていいことなんか…」

少女「」フルフル

男(そうだ、あの時は猿に怯えて俺に飛びついてきたんだったっけな)

男(……)

男「少女」

男「お前が何をされてきたのか、教えてくれないか」




104 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/09(水) 02:41:17.06 ID:2LXOD4WP0
今回はここまでです。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 03:18:44.17 ID:HDpOH+950
超応援。まるでジブ○アニメのような美しい情景と物語が目に浮かぶ。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/09(水) 03:30:47.06 ID:+uUjh3nPo


やっぱりエルフェンリートオマージュだったのね
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/12(土) 17:36:00.81 ID:lR1LsSQM0
いよいよ核心へ!
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/14(月) 13:58:06.64 ID:SzajDXTSo
こう言うのだいすき
109 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:12:22.95 ID:4ZD4psty0





私は元々、あなたと同じ人間だった。




110 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:13:07.54 ID:4ZD4psty0
=======



ーーー養護施設ーーー

男子児童「これ、おまえの昼だってさ」

(ごちゃ混ぜになった昼食)

少女「……」

男子児童「のこさず食えよ」ニヤニヤ

少女「…こんなことして楽しいの?」

男子児童「あぁ?えさをやろうってのに生意気だな」

男子児童「おら」バシャッ

少女「っ…」

クスクス

児童A「いいにおいじゃん。床もきれいになめとけよ。きゃははっ!」
111 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:13:39.91 ID:4ZD4psty0

保育士「お風呂に入りたいって…また汚しちゃったの?」

少女「やられたんです」

保育士「前もそう言ってたけど、みんなに訊いても知らないって言ってたわよ」

保育士「お風呂の時間は決まってるんだから、汚れないように気を付けるのよ」

少女「……」
112 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:14:06.91 ID:4ZD4psty0

少女「」フキフキ

少女「……!」

少女(服がない…)

少女「……」ギリ

友「少女ちゃん!よかったまだ居た」

友「はいお洋服。また隠されてたから」

少女「友ちゃん…」

友「あとね、お着替えできたら付いてきてほしいの。わたしのお昼こっそりとっといたんだ。いっしょに食べよ?」

少女「……うん、ありがと」ニコ
113 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:14:41.46 ID:4ZD4psty0

養護職員「またあの子?」

保育士「相変わらずイタズラが続いてるみたいでね」

保育士「面倒だわ。余計な仕事ばかり増えてくのよ」

養護職員「親御さん、手続きもしないで置いていったんでしょ?里親も見つからないし困ったものね」

保育士「それに、なんだかあの子気味が悪くて」

養護職員「同感。何考えてるのか全く分からないわよね…」



少女「………」




114 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:15:08.82 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

友「できたっ」

友「少女ちゃん少女ちゃん」

少女「?」

友「じゃん!問題です、この人はだれでしょう?」

少女「人なのー?それ。木とかじゃなくって?」クスッ

友「ひどーい。少女ちゃんだよー、せっかくかいてみたのになぁ」

少女「これが私…」

少女「…友ちゃんもかいてあげよっか」

友「ほんと?かいてかいて!」

少女「私なりにかいてあげるからね。ふふ」

友「?どーいうこと?」

男子児童「よう、楽しそうじゃん」

友「あ…」

少女「……」

男子児童「もっとおもしろいこと教えてやるよ」

少女「いい。どっかいって」

男子児童「へっ」グイッ

友「きゃっ」

少女「ちょっと!」

取り巻き「おっと静かになー」ガシッ

少女「!離して…!」
115 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:15:35.38 ID:4ZD4psty0

男子児童「見てみぃこいつ。ゴキブリホイホイ!」

男子児童「中にほら」

ゴキブリ「」ウネ...

取り巻き「おえー、まだ生きてんだ」

男子児童「お前さ、これのグルメリポーターやれよ。食べて感想言うやつ。いつもゴキブリみたいなやつと遊んでんだからよゆうっしょ?」

友「ひっ…いや……」

少女「ふざけないで!」

男子児童「ふざけてないよめっちゃおもしろそうだろ?」

男子児童「んじゃ、友さんはりきってどうぞ〜」スッ

少女「お前…!」

男子児童「口開けろって」グッ

友「…っ!」フルフル

少女「」ブン

取り巻き「うお!?」

少女「ああぁ!!」ダッ

男子児童「なっ、てめ…!」

ドタッ!

「少女があばれてる!」

「先生呼ぼう!」



.........




116 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:16:04.16 ID:4ZD4psty0

保育士「暴力はいけないよって教えたよね?どうしてそれが守れないの?」

少女「……」

友「先生ちがうの!あいつらが虫を食べさせようとしてきて…」

保育士「……どんなことされても叩いたり蹴ったりしちゃダメ。男子児童くんお怪我しちゃったのよ。二人とも後で謝ってきなさいね」

友「そんな、先生!」

スタスタスタ...

友「……ひぐ……グス……」

少女「…ごめんね」





毎日、何のために生きてるんだろうって思ってた。




117 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:16:49.02 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

少女「……」アム

友「……」パク、パク

男子児童「なーこんなかに箸も使えないやつがいるってマジー?」

クスクス...

保育士「……」

少女(……)

少女「…ごちそうさま」

保育士「もういいの?」

少女「お腹いっぱいなんです」

ガチャ

施設長「こんにちは。みんないい子にしてたかしら?」

施設長「少女ちゃんと友ちゃん、こっちにいらっしゃい」
118 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:18:10.73 ID:4ZD4psty0

施設長「この人が、あなたたちの新しい親御さん」

所長「やあ初めまして。君が少女さんで、友さんだね?」

所長「ふぅむ…」ジロジロ

友「」ピク

少女「……」

所長「うん。元気そうで何よりだ」

所長「これから君達のお父さんになる。気軽にパパとでも呼んでくれると嬉しいな」ニッ



.........




119 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:19:02.27 ID:4ZD4psty0

(車内)

所長「それではね。素晴らしい子供たちをありがとう」

施設長「どうか大切に、愛してあげてくださいね」

所長「無論、大事にすると約束しよう」

保育士「二人とも元気でね!ちゃんと言うこと聞くのよ」

養護職員「寂しくなるわ…」

少女(…嘘ばっかり)



バタン ブロロロ...



養護職員「…良かったわね」

保育士「えぇ。あの子にとっても私達にとっても」

保育士「それにしても里親の申請なんていつあったのかしら」

養護職員「そうねぇ。あの人も家庭訪問や面接なんかも受けてるはずだけど、そんな話全く聞いてないわ」

養護職員「施設長、あの男性はどのような人なのです?」

施設長「あの人は特別なんですよ」

二人「?」

施設長「あなた達は少女ちゃんと友ちゃんが健やかに育つようにお祈りしてるだけでいいんです」ニコ
120 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:19:45.62 ID:4ZD4psty0

所長「ここから3時間ほど車で移動するからね。トイレに行きたくなったりお腹が空いたりしたらすぐに言ってくれ」

少女「……」

友「……し、少女ちゃん……」ヒソヒソ

少女「どうしたの?」ヒソヒソ

友「わたし、ちょっとこわい…」ヒソヒソ

少女「…大丈夫。もし何かしてきても私が守ってあげる」ヒソヒソ

友「……」ギュ

所長「はは、まだ慣れないかな?当然だね、知り合って1日も経っていないからね」

所長「今から行くのは君達のために用意した新居だ」

所長「ちょっとずつでいいさ。ゆっくりとお互いのことを知っていこうじゃないか」

少女「………」





その時はもう、どこだっていいやって、あの無味な場所から離れられるならなんでもよかったの。
なにより私だけじゃなくて、友ちゃんも居たから。





=======
121 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:20:13.80 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

秘書「……」カチ、カチ

モニター『対象No. 91 氏名:XXX XXX 合成オブジェクト:マクジャク 状態:衰弱』

秘書「……」カチ

モニター『対象No. 91 氏名:XXX XXX 合成オブジェクト:マクジャク 状態:死亡』

秘書「…第三負荷実験には耐えませんでしたか…」

秘書「……」ス、スッ...



モニター『対象No. 104 氏名:少女 合成オブジェクト:――』



秘書「………」




122 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:20:47.92 ID:4ZD4psty0
=======

所長「さ、着いたよ」

少女「これが、新しい家…?」

友「わー…おっきい」

所長「こんな山の中ですまないがね。うるさいよりはいいだろう?」

所長「私はここに住んでいない。君達には女性の世話係をつけておくから用がある時は彼女に言いつけなさい」

所長「しかし私も父親だ、時々はここへ様子を見にくる。そしたら団欒でもしてくれると嬉しいね」

友「……」(少女の影に隠れる)

少女「…分かりました」




123 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:21:41.23 ID:4ZD4psty0
ーーー数週間後ーーー

世話係「今日は所長様がおいでになる日ですから、出迎えてあげてくださいね」

友「はーい!」タッタッタッ

少女「あ、友ちゃん!まだ来る時間じゃないよ!」タッタッタッ

世話係「ふふ、仲良くなったわねぇ」



.........





少女「はいストップ!」

友「つかまっちゃったー」

少女「もう、いつの間にか追いかけっこになってるし。所長さんが来るの、お昼過ぎてからだよ?」

友「待ちきれなくって」エヘヘ

少女「…友ちゃん変わったね。初めはあんなに怖がってたのに」

友「うん!だって面白いし良い人だもん。わたしパパのこと好き!」

友「でももちろん少女ちゃんの方が好きだよ」ニコッ

少女「!…私も」

友「少女ちゃんはパパきらい?」

少女「嫌いじゃないけど…」

友「じゃあ今日は一緒に遊んでもらえるかきいてみよ!」

少女「…ん。そうだね」



ーーーーー

保育士「それに、なんだかあの子気味が悪くて」

養護職員「同感。何考えてるのか全く分からないわよね…」

ーーーーー



少女(少なくともあの人たちよりはずっと良い人…だよね)

少女(…私ももっと、所長さんに近付いてみようかな)
124 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:22:07.49 ID:4ZD4psty0

友「え?お引っ越し?」

所長「そう。実は君達に内緒で準備していたのだよ。ここだとどうにも不便だろう?」

友「うーん、わたしはこのお家も好きだけどなぁ」

所長「向こうなら私が毎日顔を出せる」

友「じゃあ行く!」

少女「と、友ちゃん」

所長「不満かね?」

少女「え、と…」

所長「君と同じくらいの子も何人か居るが、皆良い子達だよ」

所長「それとも、まだ私のことが信じられないかな?」

少女「……」

少女「行きます。…お、お父さんがそう言うなら」

所長「はははっ、ありがとう」




125 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:22:52.28 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

友「ここ?」

所長「そうだよ」



『国立医療生体研究所』



友「くに、たつ、い……せいたい…?」

少女「病院なんですか?」

所長「入ってみれば分かるさ」

少女(…なんだろう、なんか、やだな…)

「「……」」ザッザッ

少女(さっきから後ろを付いてくるこの人たちも、お父さんは私たちを守るためって言ってたけど…)

友「少女ちゃん!何してるのー?」

少女「!…うん」タッタッ



.........




126 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:23:21.52 ID:4ZD4psty0

友「ねぇパパ、この中のどれかがわたしと少女ちゃんのお部屋なんでしょ!」テクテク

所長「利口だね。そうさ、君達だけの特別な部屋がこの先に待っている」カツカツ

友「どんなところ?またお手伝いさんがいるの?」

所長「もっともっと過ごしやすい所だよ。面倒なことは何一つしなくていい」

所長「炊事も掃除も、洗濯、買い物、果ては他人のご機嫌取り。煩わしいことなど一切考える必要のない生活を、君達には送って欲しいのだ」

友「?」

所長「お姫様のような生活だよ」

友「わぁー…!」キラキラ

少女(お姫様……こんなところにあるのかな…)

少女(変な感じがさっきよりも…)

友「おひめ様だって!かわいいお洋服着られるかな?この前読んだ本みたいに!」

友「少女ちゃんはおひめ様になったら何する?」

少女「私は……やっぱり、今までの家がいい」

友「ふぇ?なんで…?」

少女「ここはなんか、広過ぎるかなって」

少女「あの、私、友ちゃんと静かに暮らせるならそれで…」

所長「――到着だ」



『合成室1』  『合成室2』


127 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:24:35.92 ID:4ZD4psty0

少女「…?」

友「どっちのお部屋ー?」

所長「両方だよ」

所長「おい」

「「はっ」」

ガシッ

少女・友「「!?」」

グイ、グイッ!

友「やっ…!?」

所長「衣服は捨て置け、もう不要だ」

少女「っ…!」

友「やだやだ!パパ、やめてよぉ!」

所長「傷は付けるなよ。失敗因子を増やしたくないのでね」



所長「さて、実験の開始だ」





それは生きてるのか死んでるのか分からない苦しさだった。
苦しいって気付いたのもしばらく後で、1秒か、もしかしたら1分だったのかもしれないその時間は、自分が粉々に砕かれてすり潰されて混ぜられるような気持ちの悪さでね。
…今も覚えてるの…。




128 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:25:03.82 ID:4ZD4psty0

少女「……ゔ……」

少女(あれ…私、生きて…)

少女「…!?」

少女(なにこれ!?)

バサ..バサ..

少女(羽?翼…!?私の背中にくっ付いてる…?)

所長「美しさで言えば、こちらの方が上だね」

少女「!」

所長「どう思う、秘書君」

少女「…何、したの?」

秘書「おっしゃる通りですが、種々のデータが取れるまで優劣は付けられません」

少女「ねぇ…」

所長「はは、それはそうだ。早速明日からフェーズ1に入れてくれたまえ」

少女「ねぇ!こっから出して!これ取ってよ!!」

所長「まあ落ち着きなさい。慌てなくてもいい」

所長「君は人類の救世主となるのだよ」ニィ





その目は私を映してなんかいなかった。
そして次の日から、地獄が始まった。




129 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:26:15.26 ID:4ZD4psty0

ボキンッ

少女「あ゙がっ…」

――痛いこと。





ゴポ..ゴポ..

少女「……、っ……」

――苦しいこと。





少女「いやっ…!触りたくない…!」

――汚いこと。





少女「ひ…!あ……」

――気持ち悪いこと。





もう何も考えたくなかった。
私に向けられる狂った視線も、見ず知らずの他人を信じた自分の馬鹿さも、生まれた意味も何もかも。
ただ唯一気がかりだったのは友ちゃんのこと。連れて来られた日以来会ってなかったから。もしかしたらあいつらの隙を見て友ちゃんと逃げ出せるかもしれない。
そんなことを思ってた。
あの時までは。




130 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:27:17.89 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

所長「やぁ元気かね」

少女「……」

所長「顔色は悪くないね。最近食事を残し気味と聞いていたから不安だったのだよ。君には健康体でいてもらわないと」

少女「……」

所長「今日は君にいい知らせを届けにきたんだ」

所長「君のお友達を連れてきた」

少女「!」



..ベタ..ベタ



少女(友ちゃん…!)

少女「――え」

友「……」

少女(顔は、確かに私の知ってる友ちゃんだ…けど…)

少女(体が毛むくじゃら……腕も、足もあんなに太くなかった……)
131 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:27:48.12 ID:4ZD4psty0

所長「あの子は哀れな失敗作のお猿さんだ」

所長「あれを殺すんだ、少女」

少女「…!?」

所長「でないと君が死んでしまうぞ?」

少女「…しない。絶対、そんなこと――」

バキッ

少女「ぎゃっ…」

ドサ

少女(今のは何…?)

少女(まさか…)

少女「友、ちゃん…?」

友「えへへ、痛かったよね、ごめんね?」

友「でもね、約束してくれたんだぁ」

友「少女ちゃんを殺したら、元に戻してくれるって。えへっ、元の暮らしに帰してくれるんだって…!」

友「少女ちゃん…わたし、少女ちゃんが泣きそうな時とかいじめられてる時も一緒にいてあげたよね…?だからね?」





友「わたしのために、死んで?」





頭の中が一瞬で真っ白になった。
もうどこにも望みなんかないんだって。



友「」スッ...



そうして私は



=======
132 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:28:17.48 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

少女「私、は……」

男「無理に話さなくていい」

男「何があったのかは、おおよそ分かったから」ギュ

少女「……っ」ギュー

少女「…ごめんなさい…」

少女「けど、男には…最後まで知ってほしい…」

男「……」




133 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:29:00.04 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

モニター『対象No. 104 氏名:少女 合成オブジェクト:可変質有機体 状態:逃亡』

モニター『対象No. 105 氏名:友 合成オブジェクト:ニシローランドゴリラ 状態:死亡』

秘書「………」

秘書(所長が、キメラに興味を示したのは10年以上も前)

秘書(人間とそれ以外の動物を組み合わせた生物。1個体が複数の異なる遺伝情報を有する状態…これを人工的に作り出す研究)

秘書(当然、許されるわけがない)

秘書(けれど…)



ーーーーー

所長「君も感じるだろう。醜く濁った人間の多いこと。程度の低い争いを、飽きもせず日夜繰り返している」

所長「分かるかね?人は進化しなければならないのだよ。その為には倫理などという足枷は邪魔だ」

所長「その下らない価値観が、我々人類の発展を妨害しているのだ」

ーーーーー



秘書「……」

秘書(そしてここまで来てしまった)

秘書(…私は貴方に見て欲しかっただけなのに)



ーーーーー

少女「」フッ

ーーーーー



秘書(あの笑みがいつまでも脳裏にまとわりついてくる)

秘書(これまで見たどんな表情よりも自然な笑顔で)

秘書(今の私を嘲笑うかのように…)

秘書「…所長…」




134 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:32:42.97 ID:4ZD4psty0
=======

所長「ほう、これは予想以上だね…!」



友「」



少女「……」

所長「これほど適合した例は初めてだ!」

所長「そうか君だったのだな!嗚呼、進化というのはかく美しくあるべきだ」

少女(……)

所長「共に次代を築き上げようじゃないか」

所長「私の天使殿」

少女「………」





それからの記憶は、あんまりはっきりしてないの。
何をされても何も感じなくなってた。
思い出せることといえば、こんなことくらい。




135 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:33:18.81 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

カチッ プシュー...

「出なさい」

少女「……」

「何をしている、早くするんだ」

少女「……」スク...

ペタ、ペタ

「どうかしたのか?」

「あぁいえ、これの動きが遅いもので」

「具合が悪いんじゃないのか?」

「今朝は異常はなかったのですが…」

少女「………」バサッ

ビシュッ

――ビチャビチャ、ゴトッ...

「……は?」

少女「……」



バサッ



.........




136 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:33:44.82 ID:4ZD4psty0



ビー! ビー!



少女「……」ペタ..ペタ..



ビー! ビー!



少女「……」ペタ..ペタ..



ゴトン、ゴトン



少女「……」

所長『大人しくしていなさい。その空間は完全に隔離された』

所長『いけない子だね。父親の言うことが守れないのかい?』

少女「………」

所長『心苦しいが、悪い子にはお仕置きが必要だ。君には外部との直接接触を断ってもらう』

所長『安心したまえ、良い子にしてたらまた出してあげるさ』

=======
137 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:34:26.81 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー

少女「…あとは、あなたが来るまでずっと…あの場所に居た」

少女「暗くて冷たい……」

男「………」

男(つまり、あそこは医療関係施設を装ったイカれた人体実験場だったってわけか)

男(少女がどんなことをされてきたかなんて、所詮想像しかできねーけど…)

男(…なるほどな、猿にされた親友か)

少女「……」ギュ...

少女「今の暮らしはね、とっても温かくて安心する。でも私が居たらいつか必ず壊れてしまう…」

少女「私にはもう普通の人生を送るなんて出来ないの。だって…"人"ですらないんだもん…!」

男「んなことはない」

男「一寸の虫にも五分の魂、って知ってるか?」

少女「……」フルフル

男「平たく言うと、どんな生き物にもそれ相応の気持ちだとか考えがあるってことだ」

少女「……」

男「いやすまんすまん、少女が虫だって言ってるんじゃなくてな?」

男「人だろうが何だろうが、幸せに生きてく権利はあるんじゃねーかな。猫なら猫生、犬なら犬生……少女なら少女生ってか」

男「俺なんか下らねー遊びで借金作りまくって親にも勘当されて、挙句臓器を売られそうになったりもしたけどよ、そいつは結局、俺が好きに生きてきたっつー証なんだよ」

男「こんなクズの話じゃ参考になんねーか」ハハッ
138 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:34:54.82 ID:4ZD4psty0



バサ...



男「…羽、くすぐったいな」

少女「」ギューッ

少女「私とあなたは違う……どうしようもなく、違う……」

少女「それでも、あなたの言葉の一つ一つが嬉しくて……私の中に満ちてきて…」

少女「男は私の光なの…!」

少女「お願い…私の前から居なくならないでっ…!」

男「……」ナデナデ

男(……)

男(この子は)

男(どうすれば幸せになれる?)

少女「男……男ぉ……」

男「ここに居るよ」ナデナデ

男(俺がこの子を背負うのか…?ガキの一人抱き上げたこともない俺が?)

男(…そんなこと…)




139 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:37:46.49 ID:4ZD4psty0
ーーーーーーー



ザザ



隊長「俺だ。最後の島に着いた」

隊長「あぁ、散開の手筈はさっき伝えた通りだ。見つけ次第即座に連絡を送ろう」

隊長「くどいな。殺すな、だろ?重々承知だ」

ザッ

隊長(この国で合法的に引き金を引けるチャンスなんだ。お上と言えど水を差して欲しくはないな)

隊長「行くぞお前ら。相手は既に何十人と殺しているモンスターだ。気ぃ抜くんじゃねぇぞ」

隊員たち「「「はっ」」」




140 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/09/15(火) 01:38:46.53 ID:4ZD4psty0
今回はここまでです。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/15(火) 10:41:27.96 ID:OOIZj9Mio
おつ
142 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/09/17(木) 00:56:00.12 ID:pOkIQYvC0
とても今更ですが>>63の最初、

男「おっ!?」

となってますが、正しくは

フワッ!

男「おっ!?」

の2行です。
これがないと>>62からの繋がりが謎ですね。失礼しました。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/17(木) 08:40:43.90 ID:L8g3q1O80
ここの施設の所長って卿がつく二つ名で呼ばれてたり白い笛を持ってたり口癖が「おやおやおや………」だったりする?
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