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交換日記『私、あなたに会ってみたい』
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145 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 19:54:04.84 ID:Mb5flnRC0
ーーー自室ーーー
男「……」ガサゴソ
男「んー…」ジー
男「これは要らない」
男「……」ガサゴソ
男(友のやつ、悲しませちゃうだろうなとは思ってたけど、あれはまったく予想外だった)
男(あの後LINEしても返事ないし……なんかすごい情けないな、俺)
男(こういう時どうするべきなんだろ。恋愛マスターが居るなら教えて欲しいよ…)
男「……」
男「あーダメだダメだ、全然集中出来ない。持ってく荷物、明後日までにまとめとかないとなのに」
男(大学から一人暮らしを始めるから。それもあって自分の中で宙ぶらりんなままの友との関係をはっきりさせとこうとしたんだよな…)
男「いいや、一回押し入れから全部出しちゃおう」
ガサッ、ズズズ
男(出てくる出てくる)
男(使わなくなった教科書、リコーダー、部活のラケット)
男(こっちはアルバム系。小、中ときてここに高校の卒アルが追加されるわけだ)
男(うわ…これおもちゃ箱か?めちゃくちゃ埃かぶってる。ゆっくり取り出さないと)
ゴソ...
男「……?」
男(奥にまだ何かあるな)
スッ
男「……これって……」
(あちこち破れた赤い着物の人形)
146 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 19:55:08.38 ID:Mb5flnRC0
男「……………」
男「……………」
男(――!)
男(そうだ……俺が隠したんだった)
男(まだ小学校にも上がる前。ボロボロになったからって捨てようとする母さんを誤魔化すために、自分で捨てたって嘘をついてここにしまい込んだ)
男(隠し続けてるうちに忘れて……そのままいつしか高校生になってたんだな…)
男「………」
男「………委員長………」
ーーーーー
委員長「じゃあ、委員の補佐として推薦しておくね。これからよろしく♪」
委員長「それとも私口説かれてるのかな?」クスッ
委員長「全部全部男くんとの大事な思い出…♪」
委員長「いいなぁ…幸せだなぁ…」
ーーーーー
男(………)
男「」バッ
タッタッタッ(階段を駆け下りる)
男母「あらどっか行くの?」
男「ちょっと学校!」
男母「アルバムお母さんにも見せてよ〜」
男「後で!」ガチャッ
.........
147 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 19:55:36.47 ID:Mb5flnRC0
ーーー夕方 空き教室ーーー
男「はぁ…はぁ……ふぅ」
男(…来てしまった)
男「……」...テクテク
男(ここの机だったっけな)
男(…さっきの記憶…)
男(俺の学年に委員長という人は居ない)
男「……」
男(けど、夢と言うにはこの記憶はあまりにも鮮明過ぎる)ソー
男「…!」
男(ノート……本当にあった)
男「………」
男(怖くないと言えば嘘になる)
男(それでも)
ーーーーー
委員長「やだ……やだよぉ……」
委員長「男、くん……」
ーーーーー
男「……………」
...ペラ
(白紙)
148 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 19:56:34.97 ID:Mb5flnRC0
男「……」
ペラ、ペラ
男「……はは、真っ白だ」
男(だったら後ろのドアも)
タッタッタッ ガラッ
(西日の差し込む廊下)
男「だよな」
男(あんな漫画みたいなことが現実で起こるわけないか。所詮は単なる奇妙な夢…)
男(……夢……)
男「………」
男「こんにちは」
カァ、カァ...
男(………)
男「帰ろう」
149 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 19:57:02.15 ID:Mb5flnRC0
ーーーーーーー
男「……」テクテク
男(夢っていうのは大抵起きればすぐ忘れちゃうんだけど、時々強烈に頭に残ったりする)
男(それが悲しい夢なら涙が出てることもあるし、怖い夢なら夢でよかったって胸を撫で下ろすこともある)
男(それで言うと、この夢はどうなんだろう)
男「……」テクテク
男(……夢の話より今は現実か)
男(やっぱり友ともう一度話し合ってみよう)
ガチャリ
男母「おかえり。そろそろ夕飯出来るわよ」
男「うん」
男母「それとアルバム!持ってきて早くっ」
男「後で持ってくって」
トットットッ
男(部屋散らかしっぱなしのまま出てきちゃったんだよなそういや)
男(…端に寄せとくかな)
男(!あれ、部屋のドア閉めてたっけ?まぁいっか、母さんが閉めたんだろ)
ガチャ パタン
男「先に友に電話だけで…も……」
委員長「」スー..スー..
150 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 20:00:04.99 ID:Mb5flnRC0
男「……うぇっ!?」
委員長「…ん…んー…」
委員長「おはよ、男くん」
男「ぇ……委員長…?」
委員長「うん」ニコ
男「……?……!…?」
委員長「ふふっ、私が居るのがそんなに不思議?男くんが放り出していったんじゃない」
男(放り出して……そういえば人形が見当たらない)
委員長「男くんが火をつけたのは、"あっち"の世界での私。こっちの私はずっとしまわれたまま」
委員長「男くんがやっと見つけ出してくれたから、またこうしてお話出来るの」
男「夢じゃ、ないんだ」
委員長「夢で片付けちゃうなんて酷いなぁ」
男「……」...ジリ
委員長「私が怖い?」
男「それは…あんなことされたら」
委員長「私と居るの嫌だった?」
男「一緒に居る云々の話じゃなくて…」
委員長「…ふふっ」
委員長「ね、遠いよ男くん。こっちで一緒にあったまろ?」
男「………」
委員長「そんな警戒しなくても、もう私は男くんを連れてくことも"向こう"に戻ることも出来ない。あなたに燃やされちゃったもの」
委員長「ただのお人形さんです」
男(…そんなこと言われても…)
151 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 20:01:36.72 ID:Mb5flnRC0
委員長「焼かれるの、苦しかったな」
男「っ」
委員長「熱くて、痛くて、悲しくて…」チラッ
男「……あの時は……"帰らないと"としか考えられなくて……」
委員長「慰めて?」
男「へ」
委員長「慰めてくれないと、泣いちゃう」
男(な、泣く?想像出来ない…)
委員長「……しくしく」
男「…絶対泣いてないでしょ」
委員長「いいですよー、代わりに男くんの毛布もらうから」ギュ
委員長「スゥー……はぁ…男くんの匂い♪」
男「ちょ、嗅がないで…っていうか委員長服!なんでそんなズタズタなの!?」
委員長「男くんにやられたんだよ?」
男「えぇ…?」
男(あ、委員長の着物って女ちゃんのあれか)
委員長「男くんが着替えさせてくれるんだよね」
男「とか言って、近付いたら何かする気なんだよね…?」
委員長「しないよ。男くんがいいって言わない限り」
男「いいって言ったら?」
委員長「押し倒す」
男「ほら!」
委員長「くふふ♪」
男(言ってることはあんまり変わってないはずなのに、なんだろう、今の委員長を見てるとさっきまでの恐怖は薄れてくる)
152 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 20:02:41.36 ID:Mb5flnRC0
委員長「でも、お洋服の一つくらいは男くんに選んでもらいたいなー」
男「…人形用の服とかでもいいの?」
委員長「もちろん」
委員長「男くんお引っ越しするんだよね?楽しみだね二人暮らし♪」
男「つ、ついてくる気?」
委員長「だって私はあなたのものだよ。あなたのことが大好きな、あなたのお人形」
委員長「いつまでも傍に居させてね」ニコッ
男「」ドキッ
男(…い、いやいや惑わされるな。この人に俺はどんなことをされかけたか)
ドタドタドタ バタン!
男「!?」
友「男!これでどうだ!これで少しはお前の理想にも近付いて――」
(スカート、髪型、薄いメイク、女の子らしい格好の友)
委員長「……」
友「あーー!」
友「なんでお前が居るんだよ!?」
委員長「ここ私の家よ?」
友「男ん家だろ!どっか消えたんじゃなかったのか!」
153 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 20:04:13.19 ID:Mb5flnRC0
男「友、委員長のこと覚えてるの…!?」
友「あぁ。忘れるかよこんな粘着ストーカー」
友「男は全っ然気付いてねぇみたいだったけど、こいつ四六時中お前に付き纏ってたんだぜ?オレが見張ってたんだが…迂闊にもやられちまってよ」
友「こいつは普通の人間じゃねぇ。お前にも言うつもりだったが、目覚ましたら全員こいつのこと忘れてたから都合がいいと思ってたんだ」
委員長「泥棒猫さんに言われたくないなぁ。私と男くんの間に図々しく割り入ってきて」
友「男はお前のじゃない。第一お前がなんと言おうと今男と付き合ってるのはオレだ」
委員長「そう?私達はもう何回も熱い口付けを交わした仲よ?」フフッ
友「は?」
友「…おい男、まさかオレと別れたがったのって…」ジロ
男「ち、違う!俺も委員長が本当に居たんだって今さっき――!」
ワー! ギャー!
男母「賑やかね〜」
男母「今日は何してるのかしら?友ちゃんもあんなにおめかしして…」
男母「お夕飯、友ちゃんの分も作ればよかったわ〜」
154 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 20:05:49.91 ID:Mb5flnRC0
友「――男はこいつの正体知ってるんだな!?」
男「話す!話すから落ち着いて…!」
友「いや…その前にさっきの、キ、キスについて聞かせろ」
男「そ、それは向こうが無理矢理」
委員長「男くんからしてくれたこともあったのに」
男「あれだって委員長が…!」
友「」バッ
男「わっ!」サッ
ポスッ
委員長「いらっしゃい♪」ギュ
友「避けんなって」ニコニコ
男「まず話を聞いて!?頼むから!委員長も離して…!」
委員長「なんで?このまま見せつけちゃおうよ」
友「ほぉ…」
男「煽らないで!」
男(思えば、どうしてこんな状況になってるのだろう)
男(始まりはあの交換日記?いや、女ちゃんをもらったことか?それとも友の告白を受けたりしたから…?)
男(……そうじゃないな。多分、俺が"何もしなかった"からこうなってるんだ)
男(しゃんとしなくちゃ)
155 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 20:06:36.45 ID:Mb5flnRC0
委員長「…初めまして、こんにちは」ボソ
男「?何か言った?」
委員長「ううん。何も」ギュー
友「いつまで抱きついてんだよ!」ガシッ
委員長「きゃーこわーい♪」
ギャーギャー!
.........
ー終わりー
156 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/30(木) 20:09:48.06 ID:Mb5flnRC0
以上で完結となります。
最初は、夏なのでホラーな話にしようかと思っていました。
徐々に徐々に病んでいくようなお話もそのうち書きたいです。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
157 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/30(木) 20:28:24.99 ID:+GMfBDFKo
おつでした
梅雨明けに相応しい、これからが気になる良作をありがとう
158 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/30(木) 22:34:20.45 ID:4AlzW8kw0
おつ
ホラー描写とこれからが楽しみな爽やかな、夏にぴったりの良作でした。
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