勇者「パーティーに回復役を加えたい」僧侶(29)「うう…」

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34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/01(水) 21:18:14.54 ID:HaEE9IPW0
耳年増なせいで疑われるとかアラサーはマジ地獄だわ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 20:30:42.62 ID:NJX33lhU0
僧侶「はい!というわけで村に到着だよ〜お疲れさま」

勇者「まずは宿に向かおうか。悪いが僧侶、案内してくれ」

僧侶「うん、宿屋はこっちのほうに――わっ!?」ドンッ

村人青年「いてっ」ヨロ

戦士「おいおい僧侶、前見て歩けって!」

僧侶「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

村人青年「いやゴメン、オレもよく見てなかったから……僧侶?」

僧侶「…ん?キミは……」

村人青年「あ……!!ちょ、長老〜〜!!」ダッ

魔法使い「走って行っちゃったね」

戦士「なんだ、お前の知り合いか?」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 20:33:30.16 ID:NJX33lhU0
僧侶「う〜ん…知り合いって言ったけど、みんな家族に近いかな?」

僧侶「私、この村で長く暮らしてたんだ」

勇者「なら積もる話もあるんじゃないか。さっき彼が長老と言っていたな、俺たちも会っていいか?」

僧侶「もちろん。きっと長老も喜ぶと思うよ」

魔法使い「でもそれなら、貴女はわざわざ宿に泊まるより家に帰ったほうがいいんじゃない?」

僧侶「ううん。私も一緒に泊まるよ」

戦士「なんでだよ…親に年取った顔見せたくないってか?」ハハッ

僧侶「残念だけど、そうじゃないんだなぁ」

勇者「!おい戦士、早く宿を取って挨拶に行こう」

戦士「わ、ちょ…引っ張んなって!」

魔法使い「……変なこと言っちゃって、ごめんね」

僧侶「えっ?……ふふ、魔法使いちゃんは鋭いね。気にしないから大丈夫だよ」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 20:35:06.42 ID:NJX33lhU0
長老「ふぉふぉふぉ、これはこれは勇者どの。ようこそ遠いところこの村へお越し下さった」

勇者「初めまして。僧侶には旅の仲間として世話になってるから挨拶だけでもと」

長老「そうかそうか…そして僧侶、久しぶりに戻ったのう。元気そうで何よりじゃ」

僧侶「はい。おかげさまで」

長老「しかしまぁ、最後に会うたのは15年…いや20年前じゃったか?ずいぶんと老けたのう!!ふぉふぉふぉ!!」

僧侶「老けっ!?いやいやそんなに経ってないですから!10年前くらいですから!長老のがボケちゃってますからー!!」

長老「ふぉっふぉっ、そうカリカリするでない。こやつが僧侶の帰りを嬉しそうに知らせてくれたぞい」

村人青年「ちょっと長老!オレは別に嬉しくなんか」

僧侶「あれ〜?キミ、大きくなったらお姉ちゃんと結婚するって言ってなかった〜?」

村人青年「そんなの昔の話だ!誰がこんなおばさんなんかと!」

僧侶「お、おばっ!?」グサッ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 20:38:57.49 ID:NJX33lhU0
長老「めでたいことに、こやつも今年で成人じゃ。それに結婚も決まっておる」

僧侶「け、結婚っっ!?!?」グサグサッ

村人青年「いちいちそんなこと言わなくてもいいよ長老……まあ、そういうことだから」

魔法使い「ねえねえ、誰と結婚するの?」

村人青年「孤児院で一緒だった幼馴染と…この間、プロポーズしたばかりなんだ」

僧侶「プ、プロポーズ………」ズーン

勇者(孤児院?)

長老「その様子じゃと僧侶には耳の痛い話じゃったかの!?ふぉふぉふぉ!!」

魔法使い「長老、意外と鬼畜」

僧侶「おめでとう…おめでとう…」トボトボ

戦士「お、おいどこ行くんだ?挨拶はもういいのか?」

僧侶「酒……飲まずにはいられない……」

戦士「この感じだとまた明日は旅立てなくなるぞ、いいのか勇者?」

勇者「…俺には止められそうにない」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 20:42:13.67 ID:NJX33lhU0
勇者「ところで長老、少し聞きたいことが」

長老「なんだね?わしが分かる話ならなんでもしてやるぞい」

勇者「彼はさっき孤児院と言っていたが、それは一体」

村人青年「なんだい勇者様、知らずにここまで来たのか。ここはみなしごで集まって暮らしてる村なんだ」

長老「いかにも。この村の教会は孤児院としての役割も担っていてな、両親を失った子らと共に一つ屋根の下暮らしておるのじゃ」

勇者「つまり、僧侶も」

長老「そうじゃ。そなたらの旅に同行しておる僧侶もこの村の孤児院で育った」

戦士「えっ……それじゃあ僧侶の親御さんは」

村人青年「ここにいるオレら孤児のほとんどは魔族の襲撃で両親を失った。それはあの人だって同じはずだよ」

戦士「……お、俺……」

魔法使い「気にしてないとは言ってたけれど」

勇者「……」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 20:45:25.48 ID:NJX33lhU0
村人青年「……お姉ちゃんは強かった」

村人青年「いつも笑って話しかけてくれて、不安で不安で仕方なかったオレらもお姉ちゃんと一緒にいれば安心だって思ってた」

長老「しかし彼女は村を出て行くと言ったんじゃ。それこそ15年前じゃったかのう…」

長老「僧侶になって教会に恩返しがしたい、と彼女は話しておったがその実はわしにも分からん」

村人青年「それから僧侶の修行の合間にもちょくちょく顔を出してくれてたけど、魔王を倒す旅に出るって言ってからは今日まで帰ってこなかったんだ」

長老「そうじゃな。こやつの言う通り旅に出たのが、だいたい10年ほど前じゃった」

魔法使い「でも貴方、さっきこんなおばさんなんかって」

村人青年「……照れ隠しだよ。オレもみんなもお姉ちゃんのことが好きに決まってる」

村人青年「もう会えないと思って諦めてたけど、本当は結婚式にも来てほしいって幼馴染のあいつと話してたくらい」

魔法使い「それは難しいかもしれないわね…主にメンタル的な意味で」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 20:49:30.67 ID:NJX33lhU0
勇者「とにかく、俺たちも魔王討伐の決意を更に固めないといけない」

魔法使い「ええ。僧侶も、心のどこかにきっと同じ思いがあるはず」

戦士「俺、酷いこと言っちまったかな……」

長老「ふぉっふぉっ!そう気に病むでない。彼女はそなたらが思う以上に強い娘じゃよ」

村人青年「オレらも勇者様の旅を応援してる。オレが言うのも変だけど、お姉ちゃんのことよろしく」

勇者「ありがとう。任せてくれ」

長老「ふぉっふぉっ。話の流れじゃと明日の朝にはもう旅立ってしまわれるのかの?」

戦士「いや、それは無理だな」

長老「なんと!そんなにこの村が気に入ったと申すか」

魔法使い「明日は僧侶が二日酔いで動けないからよ」

村人青年「えぇ……」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 21:26:34.48 ID:H4+8bmuDO
乙乙
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 22:10:59.66 ID:NJX33lhU0
出発の朝

僧侶「み、みんなごめんねー…また飲みすぎて出発遅らせちゃって……」

勇者「…ああ。構わない」

戦士「……」

魔法使い「体調はよくなったかしら?」

僧侶「う、うん…?あれ怒られる覚悟だったんだけどどうしちゃったのかな?むしろ雰囲気重くなってません?」

勇者「……」

魔法使い「長老と青年さんから、貴女の話を少し聞いたわ」

戦士「…あの!お、俺……」

僧侶「あ〜そういうこと!いいのいいの、過去の話なんだから気にしないでよ」

戦士「……ごめん」

僧侶「それにキミたちと違って私は年長者だから?精神年齢も高いっていうか?落ち着いた大人の女性っていうか?ん??」

戦士「……」

僧侶「いじってもらえないのもつらい」グスン
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 22:13:59.51 ID:NJX33lhU0
勇者「長老、この3日間世話になった。ありがとう」

長老「よいよい。旅に疲れたらまたいつでも帰ってくるとよいわ」

勇者「魔王を倒したら必ず戻ってくる」

魔法使い「ええ。青年さんが幸せになった姿を私も見たいわ」

僧侶「……」

長老「ほれ、そなたからも」

村人青年「勇者様と仲間の皆さん、どうかお気を付けて」

魔法使い「それだけ?」ニヤッ

村人青年「…もう分かったよ!お姉ちゃんも!魔王を倒した後でもいいからオレらに会いに来てくれよな!」

僧侶「お、お姉ちゃん!?」キュン

村人青年「孤児院のみんなは、今でもお姉ちゃんのこと好きだから」

僧侶「そ、そんなぁ……///でへへ……私やっぱりここで暮らそうかな」

魔法使い「ざんねん!僧侶の冒険はこれで終わってしまった!」

僧侶「魔法使いちゃんって時々ツッコミきついよね」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/03(金) 22:15:14.28 ID:NJX33lhU0
今度こそ一旦切り
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/04(土) 02:57:39.95 ID:Mqyf7ieJo
乙!
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/08(水) 12:00:58.47 ID:JTVZHDR5o

魔王を倒した後はもう三十路だろうなぁ…
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/14(火) 08:32:49.33 ID:kFEWbecBO
おつ
この雰囲気すきよ
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/18(土) 10:10:48.66 ID:7BkPVb9JO
面白い
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/15(土) 15:13:15.08 ID:dXyScYcZo
まだかなー
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:20:07.49 ID:ZUZzr8X20
やがて旅は進み

戦士「本当にここまで辿り着いちまうとはな…」

勇者「いかにも魔王が好きそうな風貌の城だ。酒場で聞いた噂とやらは本当だったんだな」

僧侶「え?ま、まあね…」

魔法使い「心なしか道中のモンスターも少なかった気がするわ」

戦士「よし、俺はもう心の準備も済ませたぜ。とっとと中に入って魔王の奴をぶちのめしてやろうぜ!!」

僧侶「……戦士ちゃん、正面の入口は行き止まりのダミーだよ。奥に繋がる裏門はこっち」

戦士「お、そうなのか…?というかお前、よくそんなとこまで知ってるな」

魔法使い「まるで、以前にも来た事があるみたいね」

僧侶「……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:22:08.64 ID:ZUZzr8X20
城内部

戦士「おいおい、どうなってんだこりゃあ!?モンスターが一匹も出てきやしねえ!」

勇者「ああ…もぬけの殻、と言った状態に近いな」

魔法使い「もう誰かに攻略された後だったりして」

戦士「そんな感じだよなぁ。なあ僧侶、お前もそう思わないか?」

僧侶「へっ!?あ〜……そう、かもね…」

戦士「?なんだよ、いつもはうるさいのに今日は煮え切らないな」

勇者「とにかく、ここまで来たからには俺たちが目指す場所は一つしかない。先を急ごう」

魔法使い「ええ、そうね」

勇者「…事情は聞かない。魔王の間まで案内できるな?僧侶」

僧侶「……うん」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:24:25.91 ID:ZUZzr8X20
勇者「…着いた」

戦士「この扉の向こうに魔王が……さすがに俺も、胸騒ぎがしてきたぜ」

魔法使い「本当にいるのかな?」

僧侶「……」

勇者「開ければ答えはすぐに分かる。いいか、くれぐれも準備だけは怠るなよ」

戦士「おう!」ドキドキ

魔法使い「いつでもいいわ」

僧侶「うん。大丈夫」

勇者「よし、行くぞ」

キィィィ‥‥
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:26:41.78 ID:ZUZzr8X20
???「…おや、久々の来客ですか」

戦士「お、お前が魔王か!今日こそここで息の根を止めて、世界に平和を取り戻してやるからな!!」

???「ずいぶんと血の気の多い方ですねぇ…まぁまぁ、まずは初めましてのご挨拶でも――と思いましたが」

???「どうやら、その必要がない方もいるみたいで」

戦士「な、なに……?」

僧侶「……」

???「あなたもずいぶんと懲りないようですねぇ、とはいえ数年ぶりですか。僧侶の方」

魔法使い「やっぱりね…」

勇者「……」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:28:20.12 ID:ZUZzr8X20
???「おっと、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は魔王様の側近……いいえ、正確には側近だった者です」

側近「そしてここは魔王城だった場所。私が何を言いたいのか、もうお分かりですね?」

勇者「……魔王はここにはいないというわけか」

側近「その通り。話が早くて助かりますねぇ」

戦士「あーもうなんなんだよ!全然理解できねえよ!!」

魔法使い「戦士、落ち着いて」

戦士「これが落ち着いていられるかって!そもそもなんでこいつと僧侶は知り合いなんだよ!?」

側近「その様子だと、仲間には話せなかったんですか」

側近「歳だけは取ったように見えますが…そうやっていつまでも逃げ続けるのは変わらないんですねぇ……ククッ……」

僧侶「……」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:30:05.15 ID:ZUZzr8X20
側近「それで、どうするんですか?ここで私を倒そうと言うのですか?」

戦士「当たり前だ!!お前が魔王にとって最大の味方だった事実があるなら、俺たちにとっては最大の敵に決まってるだろ!!」

側近「それで世界に平和が戻るとでも?」

戦士「はぁ!?」

勇者「戦士、気持ちはよく分かる。俺も冷静でいられるのがやっとではあるが、もう少し話を聞こう」

戦士「チッ……勇者がそう言うなら」

側近「いやはや、命拾いしましたか……話の分かる勇者でホッとしましたよ」

魔法使い「……むかつく奴」

勇者「…今の状況を、説明してくれ」

側近「いいでしょう。分かりました」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:32:13.73 ID:ZUZzr8X20
側近「長話をすると血の気の多い方に斬られてしまいそうですから、簡単に」

側近「今から10年ほど前、魔王様はある勇者パーティーによって瀕死にまで追い込まれました」

側近「その時、魔王様は残された僅かな魔翌力を使って別世界へのゲートを開いたのです」

魔法使い「命からがら逃げたってわけね…」

側近「…まぁ、そうなりますね。そして私とこの場所だけが取り残された、ただそれだけの話です」

側近「私は魔王様の側近と言っても雑務を任されていただけの身ですから、戦闘能力もなければ軍の統率能力もありません」

側近「もちろん世界の征服になど興味はありませんし、王を失った魔物群はそれぞれの生活をしているに過ぎません。まぁ…中には人間を襲う者もいますが」

勇者「それで城の周りにはモンスターの気配が無かったのか…」

側近「賢い魔物ほど、人間を襲うリスクを理解していますからねぇ」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:34:36.68 ID:ZUZzr8X20
戦士「待ってくれよ、ならお前と僧侶の関係はどういうことなんだ?それだけじゃ何の説明にもなってないだろ」

側近「はぁ…あなたは頭が悪いですね。ここまで話してもまだ分かりませんか」

魔法使い「その勇者パーティーの一人が、僧侶だったのね」

側近「ほら、理解できていないのはあなただけみたいですが?」

戦士「なっ……じゃあその時の勇者は!?どうしてお前だけが一人残って!?」

僧侶「……」

戦士「おい、僧侶!!黙ってちゃ何も――」

勇者「…よせ。戦士」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:36:17.70 ID:ZUZzr8X20
側近「さて…話は終わりました。これ以上は無駄な時間だと思っていただければ幸いです」

勇者「……」

側近「旅の目的を失った勇者がこの城を後にする姿はこの目で何度も見てきました。なぁに、あなたもその内の一人になるだけですよ」

側近「これでも、あなたを悪く思うつもりはありませんよ?目的を失ったという点では、私も同じですから。ククッ……さあ、それが分かったら早く帰って下さい」

勇者「……退こう」

魔法使い「…そうね」

戦士「クソッ……何なんだよ…!どうすりゃいいんだよ…!!」

勇者「それと、僧侶」

僧侶「……」

勇者「…一度、話がしたい」

僧侶「……そうだね、わかった」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:37:08.90 ID:ZUZzr8X20
つづく
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:45:11.28 ID:ZUZzr8X20
>>57
誤字ってた
×魔翌余力→○魔翌力
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:47:48.03 ID:ZUZzr8X20
ポンコツかな?
×魔翌余力→○魔翌力
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 22:49:01.02 ID:ZUZzr8X20
???
まあいいや、失礼しました
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/26(水) 23:10:34.54 ID:XSL7Tyjy0
メール欄に「saga」を入れると「魔力」になるよ
入れないと「魔翌力」になる
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/26(水) 23:22:28.88 ID:iBi6+EaPo
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/27(木) 00:04:23.63 ID:z0OLEoLco

投下嬉しい

どうしてお前一人だけが(売れ)残って!?とはなんて残酷な問いを……
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/27(木) 14:27:14.57 ID:Lcr4UWxDO
僧侶(数年ぶり ○度目)
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:00:19.64 ID:8TMIZhNi0
とある町の酒場

勇者「今日は、魔王城で起きた出来事について状況の整理がしたい」

勇者「そして、心の整理もだ。それはきっと俺だけじゃないと思う」

戦士「そりゃそうだな」

魔法使い「ええ、流石に私も…」

勇者「そのためには僧侶。これまでの冒険で何があったのか…知っている事を俺たちにも教えてほしい」

僧侶「うん。今日はそのつもりで来たよ」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:02:11.45 ID:8TMIZhNi0
僧侶「で、でもどうして酒場なの?ちゃんと話し合わなきゃいけないと思うし、それなら静かな宿屋とかの方が――」

勇者「こっちの方が僧侶は話しやすいんじゃないか?それに話の中で思い出すのが辛い出来事もあるかもしれない。もし言葉に詰まったら、酒を飲めばいい」

僧侶「勇者様…そんな気遣いなんて…」

勇者「――って、戦士が言ったんだ」

戦士「ちょっ…おい勇者!!」

僧侶「せ、戦士ちゃん……」ウルッ

戦士「だぁ〜もう話す前から泣くなって!ただ、なんだその…飲まなきゃやってられねえってのが、ちょっと分かったような気がしただけだよ」

魔法使い「……」ニヤニヤ

戦士「お前もニヤニヤするなっての!!さっさと本題に入ろうぜめんどくせえ!!」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:04:14.38 ID:8TMIZhNi0
僧侶「そ、それでまず何から話せばいいかな…」

勇者「そうだな。まずは、あの魔王城に行ったのは何回目だったんだ?」

戦士「俺もそれが真っ先に知りたいぜ。気になってメシも喉を通りゃしねえ」バクバク

僧侶「三回目だったよ。一回目は、あの側近が言っていた通り魔王と戦った時のパーティーの一人が私だった」

僧侶「あと一歩で倒せるって所まで追い詰めたんだけど、結果的には逃げられちゃった」

戦士「まあ正直、そんな実力者だったとは思わなかったぜ」

勇者「僧侶が仲間になってからの旅がいかに順調だったかを思い返せば、納得もいく」

魔法使い「となると次に気になるのは、その時の勇者、よね……」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:06:14.47 ID:8TMIZhNi0
僧侶「…その時の勇者様は、魔王を追って別世界に行った」

僧侶「私以外の、残りのパーティーの二人も一緒にね」

戦士「…ならどうして、お前は魔王を追わなかったんだ」

僧侶「……勇気が無かったから、かな」

勇者「……」

僧侶「もしかしたら孤児院の村で長老から聞いたかもしれないけど、私が旅を始めたのは元々教会に恩返しするためだったから。別世界に行ったら、もう教会には戻れないかもしれない」

僧侶「…まあ、それも言い訳なんだけどね。あの時の私はちょうど今のキミたちと同じくらいの年齢でさ、正直……怖かったんだ」

戦士「…なるほどな。おい、もう一杯飲めよ」

僧侶「えっ?ふふっ…どうしたの、今日は優しいね」

戦士「うるせえな!なんとなくそんな気がしたんだよ!!」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:08:18.10 ID:8TMIZhNi0
勇者「この前村に寄った時は、しばらくぶりと言っていたな。一回目の旅が終わっても村には戻らなかったのか」

僧侶「うん、だって魔王に逃げられちゃいました〜!とは言えなかったから」

僧侶「同じ理由で、王様にも会いに行ってないんだ」

魔法使い「だから、王様も冒険者も皆、魔王がこの世界にいないという事実を知らない……そういう訳ね」

僧侶「…うん」

戦士「でもさ、それってちょっと無責任じゃないか?魔王がいない事を自分だけ知っててそれを黙って旅してるなんてよ」

戦士「そんな事されたら、俺じゃなくたって仲間は納得いかねえだろ」

僧侶「…戦士ちゃんの言う通りだよね、だから私は責められた。それが二回目の旅」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:10:17.12 ID:8TMIZhNi0
僧侶「二回目の旅は今のキミたちと同じで、魔王城で側近に会うまでこの事を話さなかった」

僧侶「みんなからすごく怒られたよ。どうして話してくれなかったんだ、自分だけ知ってて騙したのか、って」

僧侶「結局それが原因でパーティーも解散しちゃった。だからみんなは旅をやめて今もどこかで暮らしてるんだと思う」

戦士「…まあ、僧侶には悪いが無理もない話だな」

僧侶「…うん」

勇者「俺からも一つ、気になる点がある」

勇者「僧侶が村に戻りづらいという話は分かった。だが…旅を続けている以上、王様には報告すべき事なんじゃないか?」

勇者「確かに…魔王に逃げられた事、そして別世界に行く勇気が無かった事、それを敢えて自ら王様に報告するのは俺でも嫌だと思う」

勇者「ただ、それはこの世界に残った僧侶にしか出来ない役目でもある。二回目の旅のように、不幸な思いをする冒険者を出さないようにするためでもあると思うが」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:12:29.05 ID:8TMIZhNi0
僧侶「そうだよね…本当はそうしなきゃいけないんだよね」

僧侶「でもね、魔王がこの世界にいないことをみんなが知ったら…きっと旅に出る人はいなくなる」

僧侶「そうしたら、私には行く場所も帰る場所もなくなっちゃうかもしれないって。そう思ったら言えなくてさ」

勇者「……」

僧侶「だから、一回目の旅が終わってからはずっと冒険者酒場にいるんだ。ただ居場所がほしいだけなのかもしれないし、心のどこかで旅に出なきゃいけない、魔王を倒しに行かなきゃいけないって思ってるのかもしれない」

僧侶「魔王がいないって知ってるのにね。私に勇気が無かったせいで、一緒に旅してくれるパーティーまで巻き込んで……私の問題なのにさ、最低だよね」

僧侶「そして、今回はキミたちを巻き込んでしまった」

僧侶「……本当に、ごめんなさい」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:14:23.27 ID:8TMIZhNi0
戦士「今更謝られても事実は変わらないしな。事情が分からないと納得できるモンもできねーが、それが分かれば細かい事は気にしないぜ」

魔法使い「私は何か事情があるとは気付いてたけどね、話してくれてスッキリしたし元々怒ってもいないわ」

僧侶「みんな……」

勇者「だな。それに俺は目的を失ったつもりもないし、これからも目的を果たすため旅を続ける」

僧侶「え?それって……」

勇者「魔王を倒すという目的に何ら変わりはない。だから俺は魔王を追う」 

勇者「付いてきてくれるか?戦士、魔法使い」

戦士「勇者ならそう言うと思ってたぜ!当たり前だ!」

魔法使い「ええ、勿論よ」

僧侶「……」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:16:16.75 ID:8TMIZhNi0
勇者「そして、僧侶は――」

僧侶「…私も行くよ」

勇者「ああ。その答えが聞けて安心した」

勇者「というより、嫌だと言われても僧侶には付いてきてもらうつもりだった。僧侶の実力には今までの旅で何度も助けられているし、まして魔王を倒すためには俺たちのパーティーにとって絶対に必要な存在だからな」

戦士「それにこのままじゃいけないって自分でも思ってるんだろ?酒場のオッサンにも言われてたもんな!今度こそ魔王を倒して旅を終わらせようぜ、俺たち四人でさ」

僧侶「みんな……ありがとう……」

魔法使い「そもそも僧侶は最初からそのつもりだったんじゃない?だからケジメを付けるために長年帰ってなかった村にも寄ったの、違う?」

僧侶「…まいったなぁ、魔法使いちゃんは本当に鋭いね」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:18:53.02 ID:8TMIZhNi0
戦士「なんだよ、最初からそのつもりだったなら尚更話してくれてもよかったんじゃないか?」

僧侶「…本当にごめんね。三回目の旅に出た時にさ」

僧侶「その時は今までと違ってみんなに話したんだよ。そうしたらみんな途中で旅をやめちゃってさ」

僧侶「前みたいに仲違いにはならなかったし、みんなそれぞれ幸せに過ごしてるみたいなんだけどね」

戦士「あ〜…最初に会った時、パーティー内恋愛だのどこぞの王子がどうのこうのグチグチ言ってたのはその話か……」

魔法使い「だから途中で話したらまたパーティーが解散して旅が終わってしまうんじゃないか、そう思ったのね」

僧侶「…うん、そういうこと。本当は私も誰かに付いてきてほしかったのかもしれない、ずっと勇気が出ないまま今まで過ごしてきちゃったから」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:21:27.78 ID:8TMIZhNi0
僧侶「それ以降は、私もお酒が飲めるようになってますます酒場に入り浸るようになった」

僧侶「たまに酔った勢いで魔王と戦って逃げられた話をしてみたりもしたけど、酔っ払いの妄言だと思って誰も信じてくれなかった」

戦士「まあ…飲んだくれに突然そんな話されたって普通は信じないわな」

魔法使い「よくいるわよね、飲みながら昔の武勇伝を語り出す人」

僧侶「ヴッ……ま、まあそんな感じだったからさ、やがて誰からも相手にされなくなっちゃったんだよね」

僧侶「でね、そんな中で声をかけてくれたのがキミたちだったんだよ」

僧侶「冒険に誘われるのなんて本当に久しぶりだったし、それにキミたちすごくやる気があるみたいだったから、きっとこれが最後のチャンスなんだなって…そう思って…」

戦士「んで怖くなって言い出せなかったって話か。まあ、それは仕方ないかもしれないな」

魔法使い「珍しく戦士が話をちゃんと理解できてる」

戦士「そうか!?いや〜褒められるとテンション上がるな!ハハッ!」

魔法使い「やっぱりダメみたい」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:23:27.46 ID:8TMIZhNi0
僧侶「でもみんな、本当にいいの…?」

勇者「何の話だ」

僧侶「向こうの世界に行ったら、もうこっちには帰ってこれないかもしれないんだよ」

勇者「関係ない。魔王を倒す旅に出た時点で、生きて帰れる保証だって無いんだ。そんな覚悟はとうに出来ている」

魔法使い「それは勇者だけじゃなくて、私たち皆同じよ」

僧侶「それに、もしかしたら魔王を追った当時の勇者様がもう倒しちゃってるかも……」

戦士「手柄を取られてちゃ困るけど、んなもん行ってみなきゃ分からないんだろ?なら行くしかねえじゃねーか!」

勇者「ああ、その通りだ。魔王を倒すという目的が達成できていない以上、その目的に向かって進む他道はない」

僧侶「……心強い仲間に出会えて、お姉さん嬉しいよ」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:24:57.00 ID:8TMIZhNi0
勇者「さて…話はまとまったな」

勇者「いよいよ俺たちの旅も大詰めだ。来るべき戦いに備えて、残された時間はしっかりと準備を整えよう。それでいいな?」

魔法使い「ええ、分かったわ」

戦士「賛成だぜ!」

勇者「今日は話してくれてありがとう。僧侶」

僧侶「い、いやそんな…むしろ私が謝らなきゃいけない方で……」

魔法使い「いいえ。こちらこそ、貴女の事が知れて嬉しかったわ」

戦士「もうそういう堅苦しいのはやめようぜ!なんか昔は色々あったかもしれないけど、今は俺たちで旅を続ける!そのためにまずは魔王を追う!はい終わり!」

勇者「そうだ。その話なんだが、魔王のいる別世界に行く方法を教えてくれないか?それによって出発の日取りを決めたい」

僧侶「え?知らないよ」

勇者「……は?」

僧侶「あの時は魔王が開いたゲートにみんな飛び込んでいったけど、もうとっくに閉じちゃってるし」

勇者「………」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:25:37.79 ID:8TMIZhNi0
つづく
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 01:14:54.01 ID:Ydhd6v+DO

行き方知らない で終わるのかとヒヤヒヤしたぜww
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/23(火) 15:05:18.27 ID:g7K/iuHVo

投下来てるじゃねーか!ってなったぜ嬉しい
別世界行くだけでなく戻ってくることもできないと魔王どうなったかが世間的には不明のままになってしまうな…
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