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ロード・エルメロイU世「最初からそれがお望みだろう、レディ?」
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/06/15(月) 22:30:11.76 ID:uimHEu7hO
「夜分に失礼。我が兄よ」
「……何の用だ」
魔術で気配と足音を消して義兄の執務室を訪れるのはもはや癖のようなもので、どれだけ迷惑がられてもやめるつもりはない。
「いや、なに。珍しい逸品を手に入れたので晩酌に付き合って貰おうと思ってね」
手に下げた酒瓶が見えるように持ち上げると、ようやく机上のレポートから視線を上げた義兄の目が見開かれた。
「それは、貴腐ワインか?」
「そうとも。我が兄も興味があると思ってね。その反応を見るに、どうやら私の推察は正しかったようだ。ようやく私も義妹として義兄の好みがわかるようになって嬉しいよ」
「別に好みというわけではないが……レディの誘いを断るのは礼儀に反する。今、グラスを用意する。そこにかけて待っていろ」
「ふふ。ああ、待つとも。酒瓶を持って消えたりしないからそう慌てることはないよ」
魔術講師として如何なる時にも沈着冷静たれと日頃から生徒に教えている彼は口調こそいつも通りではあるものの、グラスが仕舞ってある戸棚を開ける仕草は忙しなかった。
そんな義兄の慌てふためきぶりに満足しつつ、執務室に備えつけられたソファに腰を下ろして、私は自らの嗜虐心を満たした。
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