花子「新しい!」貞子「生活!」メリー「なの!」

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2 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:16:36.85 ID:S4U2UQtS0
【赤い部屋】

隣人(先輩と出会ってから3年目。私は二回目の部署異動で先輩の下へと帰ってきました!ついでに合鍵ももらいました!)

隣人「せーんぱーい!おっはようございまーす!あっさでっすよー!おっきてくださーい!」

隣人(このやりとり、まるで新婚さんのよう!)

貞子(残念ですね!それはすでに私が通った道です!)

隣人(メイド研修生は職場に帰れ)

貞子(研修場所から発信していますが?)

隣人(同じ都市伝説だからって何の説明も無しにテレパシーを使っていいと思うな!)

男「」

おっさん「心臓マッサージ!心臓マッサージ!ああもう!なんで現実で会う前に死ぬんだよ!」

隣人「・・・・・・」

おっさん「都市伝説法28条とか勘弁だぞ!せめてコンビニまで来いよ!」

隣人「・・・・・・」

おっさん「よ、よし。心臓は動き出した。じゃあ、あとは、人工呼吸?」

隣人「市ネ」
3 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:17:11.82 ID:S4U2UQtS0
男(・・・・・・よく見た天上だ)

隣人「あ、先輩。起きましたか」

男「隣人。今回は俺なんで入院してるんだ?」

隣人「『夢の結末』っていう都市伝説に・・・・・・襲われる前に心筋梗塞で意識を失っていたらしいです」

男「マジかよ」

隣人「おそらく夢の中での出来事がショックで心臓が止まったんじゃないかと思ってます」

男「えっと、その都市伝説は?」

隣人「骨も残さず溶かしました」

男「だからうちの姉ちゃんみたいなことすんなって!」

隣人「先輩の敵は私の敵!死すべし!」

男「守ってくれる意思はありがたいんだけどさぁ・・・・・・」
4 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:18:15.87 ID:S4U2UQtS0
隣人「とりあえず、すでに社長には連絡してますんで。しばらくは身を休めてください」

男「わかったけど・・・・・・なんでこんなに襲われるんだろうな」

隣人「あ、それ次期社長から聞いたんですけど、先輩って生命力が異様に低いらしいです」

男「はい?」

隣人「次期社長の彼女さんが占い師らしくて、いつ占っても死相が見えるらしくって」

男「死相・・・・・・」

隣人「むしろなんで今まで生きて来れたのか不思議なぐらいだそうですよ」

男「俺、そんなに命がやばいのか」

隣人「お姉さんも度々先輩の事を都市伝説から守ってるって聞いてますし」

男「ん?でも都市伝説から狙われるのと生命力とか関係なくないか?」

隣人「あー、都市伝説とか命を奪う怪談系って死にそうな奴しか狙わないんですよ。これ一部にしか知らされていないんですけど」

男「なんでだ?」

隣人「生命力にあふれてるやつを殺すと死神から目を付けられるそうで」

男「都市伝説界隈もたいへんなんだな」

隣人「なんで先輩の生命力がこんなに低いのかは・・・・・・ちょっとわからないです」

男「ふしぎだな。人より体力はあるつもりなんだが」

隣人「あ、生命力って肉体は関係ないんで。魂だけなんで」

男「・・・・・・鍛えても無駄ってことか」

隣人「お姉さんぐらいに強くなれば余裕で都市伝説ぐらい跳ね除け・・・・・・でも先輩襲われなくても死ぬしなぁ」

男「自分の心臓の弱さを実感してるところだからやめてくれ」
5 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:19:15.84 ID:S4U2UQtS0
隣人(花子さんは収録のために山奥へ。貞子さんはメイド研修でアマゾン川へ。メリーさんは打ち合わせのために仕事場に宿泊中)

隣人(つまり!一歩抜きんでるには今がチャンス!この間を活かして先輩へ猛アタックするしかない!)

隣人(先輩の入院の期間に合わせて有休はとりました!この入院生活中がチャンス!甲斐甲斐しく世話をして、先輩のハートをいただいちゃいます!)

隣人(・・・・・・気を抜いたら物理的にハートをもらうことになりそうなんで注意しましょう)

男「てか、隣人の仕事は?」

隣人「私有休とりました。先輩の看病のためです」

男「いや、入院してるから俺の看病は看護師さんが・・・・・・」

隣人「私が!お世話!するんです!ナースさんにも色々教わりました!尿瓶とか!尿瓶とか!尿瓶とか!」

男「落ち着け。変態に片足突っ込んでるぞ」

隣人「頭の先からつま先まで私がお世話しますから!先輩はどうぞベッドで横になってくつろいでください!」

男「けが人でもないし普通に動けるんだが」

隣人「いいから!」

男(ここ1年で分かったこと。こいつは押しがメチャクチャ強い。基本的に引かない。そこがめんどくさい)

男(・・・・・・悪い子じゃないんだけどな。ぶっちゃけ見た目は割と好みだし)
6 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:19:56.57 ID:S4U2UQtS0
隣人「・・・・・・どうしよう」

隣人(結局あの後何事もなく普通に先輩は退院してしまった。うん、特別怪我とかはなかったし。お世話とか何もできてないです)

隣人「・・・・・・自意識過剰、だったのかな」

隣人(人として生きるって決めてからも、この赤い目はずっとコンプレックスだった。先輩はそんな私の瞳をきれいだって褒めてくれた)

隣人「・・・・・・いわゆるビジネストーク、だったのかも」

隣人(なんだか、全部が不安になってくる。先輩にとって、私はただの後輩にしか過ぎないんでしょうか)

隣人(・・・・・・いや、実際にそうですよね。先輩の事をストーカーしてたのは私だし、先輩は私が隣に住んでるってことすら知りませんでしたし)

隣人「まあ、隠してたのは私ですが」

隣人(・・・・・・このままで、終わってたまるものですか。先輩が私の事をどう思っていようとも、私は先輩の事が好き)

隣人「この想いだけは誰にも負けない。その自信はある。だから、絶対に負けない!」

花子「・・・・・・」

隣人「とはいえ、合法的な手段で先輩を虜にするには・・・・・・」

花子「あのー・・・・・・」

隣人「はひゃいっ!?は、花子さん!?いつから!?」

花子「『どうしよう』のとこからかな」

隣人「最初からじゃないですか!」
7 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:20:39.34 ID:S4U2UQtS0
花子「ゴハンできたから呼びに来たんだけど、なんかごめんね?」

隣人「あああ、なんでこんな独り言を言ってるところを母親に見られたような気分を味わってるんですか・・・・・・」

花子「ほら、私貞子とかメリーと違ってトイレからトイレに移動するってことでわかりにくいから、ね?気付かないのも仕方ないよ」

隣人「せめて玄関から入ってくれれば・・・・・・」

花子「オートロックだから鍵閉まってるし」

隣人「ああもう!高い防犯意識のバカー!」

花子「私らにとっては関係ないのが救いだよね」

隣人「関係ないから今こんなことになってるんですよー!」
8 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:21:29.50 ID:S4U2UQtS0
メリー「あ、やっと来たの。遅いの」

花子「いろいろあったんだよ、いろいろ」

隣人「改めて私たち都市伝説の力の理不尽さがわかりましたよ・・・・・・」

男「気になったんだが、おまえら前の会社を辞めたりしてないのか?」

隣人「辞めましたよ」

メリー「辞表は叩きつけてきたの」

花子「辞めまーすってメールは送った」

貞子「郵送で退職願を出しましたけど」

男「それでも能力は残るんだな」

メリー「私は生まれつきみたいなものだしなの」

貞子「私も似たような感じです。死んでますけど」

花子「私もだねー。死んでるけど」

隣人「赤い部屋の方は先天的、S県月宮の方は後天的ですけど両方残ってますね。不思議ですけど」
9 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:22:19.96 ID:S4U2UQtS0
隣人(メリーさん達も帰ってきていつもの日々が戻ってきました。私はご飯時だけ先輩のお部屋にお邪魔させてもらってる感じです)

隣人「・・・・・・ずるーい!あの三人だけずるいー!私も先輩と同じお部屋で過ごしたいー!同じベッドで眠りたいー!」

隣人(まああの三人と違ってそもそも私は養われる必要がなかったから仕方ないといえば仕方ないですが・・・・・・)

隣人「それにしてもあの三人はびっくりすぐほどアクションを起こしませんね。私が言えた話ではありませんが」

隣人(環境が一新されたことで向こうはその環境に馴染むのが大変で色恋にまで意識を向けている余裕がないんでしょうか)

隣人「・・・・・・それか、もしくは今の状況を壊したくないとか」

隣人(見ていたから知っています。隣の部屋の住人たちはみんな仲がいい。表面的に、ではなくもっと底の部分で)

隣人(私と違って、彼女たちは都市伝説に成る前は想像もできないような地獄を見てきたはず。あの三人のトラウマは計り知れない)

隣人「・・・・・・誰か一人が抜きんでると、残り2人のトラウマが発動してしまう?」

隣人(だからあの3人は互いに動けないのでは・・・・・・)

隣人(そうすると、私が先輩にアプローチをすることはあの心地よい環境を壊してしまうこと、なんでしょうか・・・・・・?)
10 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:23:21.36 ID:S4U2UQtS0
隣人(拝啓、先輩、社長。助けてください。私は今――)

次期社長「御社への志望理由としては3つあり――」

隣人(次期社長の新卒採用の面接をしています)

隣人(いやいやいや、あなた結構な頻度で会社に来てましたよね!?就活の時期とは言っても面接とかなしに顔パスで通りますよね!?私も話したことありますし!)

隣人(なんで新卒3年目の私にこんな大物の相手を任せているんですか!?理路整然と話すし志望理由も素晴らしいの一言に尽きるし!)

隣人(経験豊富だから話の引き出しにも事欠かないし!何を質問しても言葉に詰まることなく個性がありつつもきれいな返答がきますし!)

隣人(社長もなんで私を人事課に配属したんですか!?先輩、助けて・・・・・・)
11 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:28:10.67 ID:S4U2UQtS0
隣人「はぁぁぁぁ〜・・・・・・」

男「よっ、お疲れ」

隣人「あ、先輩。ミルクコーヒー・・・・・・先輩、よく私の好きな奴覚えてましたね」

男「まあな。で、どうだった?次期社長の面接は」

隣人「どうだったもなにも緊張しましたよ!なんでこっちがガチガチにならないといけないんですか!?」

男「まあそれは仕方ない。俺たちにとっても馴染みのある子だとはいえ、まさか就活の場に来るとは思ってなかったからなぁ。俺も履歴書が送られてきたときには驚いたよ」

隣人「ってことは先輩、あらかじめ知ってたんですね!?」

男「そりゃな。課長も慌ててたけど、どこか納得してたよ。あの子ならこういうことするってな」

隣人「先輩たちはなんでそんなに落ち着いてるんですか・・・・・・」

男「隣人は夜勤だからあんまり会ってなかったか?あの子は誠実で公平性を大事にする子なんだ」

隣人「いや、それは見ればわかりますけど・・・・・・」

男「勤続30年の部長に聞いたら、あの子は5歳のころからここに来て実質勤続17年だってさ。うちの業務のことは全部知り尽くしてるよ。社長がいろいろ連れまわしてるし」

隣人「それだったらなおさら就活とかいらないじゃないですか。顔パスで通りますよ。みんな大歓迎ですよ」

男「そりゃそうだけどな。それじゃあ他の奴が納得しないだろって」

隣人「え?」
12 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:29:51.66 ID:S4U2UQtS0
男「実際、社長から次期社長にそういう話はしてたらしいんだ。就活とか面倒な手続き踏まなくても全部やっとくよって。ただ、あの子はそれを拒否したらしい」

隣人「えっ!?なんでっ!?みんな納得しますよ!?あー次期社長がやっと正式に入ってくれたかーってなりますよ!?」

男「みんなそのつもりだったんだけどな。ただ、社長に直談判したらしい。『そんな裏口入学のようなことはしない。正面から堂々と入って見せる』って」

隣人「えー・・・・・でも、落とすに落とせないじゃないですか、そんなの」

男「続きがあるんだ。『そうじゃないと、今の社長のようにみんなが付いていきたいと思う人間にはなれない。次期社長として見据えてくれているならなおさらだ』ってな」

隣人「うー、それを聞くと確かにそうですかね・・・・・・」

男「あと、あの子今のバイト先からも経営者にならないかって話を持ち掛けられているらしい」

隣人「なんですか彼。優秀にもほどがありませんか」

男「新卒の就活ってのは企業が学生を選ぶのと同時に、学生側が企業を選ぶ場所なんだ。だからこそ俺たちは学生に対して平等に、そして真摯に接さなくちゃいけない」

男「そうじゃないと、学生側が選んでくれないぞってな。これ全部部長の受け売りだけど」

隣人「そう、ですね。私は就活とかしたことないんでそういうのよくわかりませんでしたけど、そっか。どっちにも選ぶ権利があるんだ」

男「まああの子なら問題なく採用されるだろ。実際面接してても何の問題もなく終わっただろ?」

隣人「はい。正直非の打ち所がありませんでした」

男「実力もあるからなぁ。業務知り尽くしてるから業界研究とかそんなレベルじゃないくらいの分析もかけてくるし。俺も説明会で質疑応答されたときは気が気じゃなかったよ」

隣人「どんな質問されたんですか?」

男「説明会で説明しきれなかったこと全般。多分あの場にいた他の学生はうちについて詳しく知り尽くしてしまっただろう」

隣人「知ってるのによく聞いてきますね」

男「向こうからしたらちゃんと説明できるか試してたんじゃないのか?まあ部長が対応してくれたからなんとかなったけど・・・・・・俺一人だとヤバかったな」

隣人「・・・・・・偉い人の考えることってよくわからないなぁ」
13 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:30:27.50 ID:S4U2UQtS0
隣人(選択肢がある人ってすごいと思う。余裕があるから)

隣人(次期社長みたいな人だったらどこでも選り取り見取りだろうし、そりゃわざわざ選別みたいなことするよね)

隣人(・・・・・・先輩も、そうなのかな)

隣人「先輩にとって、私は選択肢のうちの一つに過ぎないんでしょうか」

隣人「それとも、そもそも選択肢に入っていないんでしょうか」

隣人「栓パいは、棉詩の琴は堂トモ面っていナい・・・・・・?」

隣人「・・・・・・宣杯、お兄ちゃん、先輩」

隣人「・・・・・・エへへ」

メリー「こらー」ガツッ

隣人「ひゃぐっ!?」
14 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:31:26.66 ID:S4U2UQtS0
メリー「自分の世界に入り込むななのー。お前がそれやると面倒なことになるのー」

隣人「め、メリーさん?いつのまに・・・・・・」

メリー「夕飯時なのに来ないから心配してきたの。カバンに電話入れっぱなしだから気付かれなかっただけなの」

隣人「あ、すいません」

メリー「まったく、死体でも幼女でも人形でもないくせに贅沢言い過ぎなの」

隣人「え?」

メリー「貞子なんか裸エプロンでも汚いとか言われて終わってるの。そんな程度でへこむななの」

隣人「え、先輩酷くないですか?」

メリー「あいつ多分性欲が薄いの。理由はわからないけど」

隣人「性欲が薄いって、別に先輩はごく一般的な性癖ですし・・・・・・」

メリー「お前がなんでそれを知ってるかは聞かないでおいてやるの」

隣人「・・・・・・あっ」

メリー「ん?」

隣人「先輩、もしかして生命力が小さいから性欲が薄いんじゃ・・・・・・?」

メリー「え?アイツの生命力が小さい?」

隣人「だから都市伝説に狙われやすいんですって。この前も狙われて心臓止まってましたし」

メリー「あー・・・・・・」

隣人「そう考えると、どうにかして先輩の生命力を大きくすることが最優先なんでしょうかね」

メリー「わからんの。姉の言うことを真に受けると小さい頃からそうらしいしなの」

隣人「もしかして生まれつきそうだとしたら、難しいですかね」

メリー「そもそも生命力を大きくする方法を知らないからなんとも言えないの。それよりも夕飯だからさっさと来いなの」

隣人「あ、はい」
15 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:32:23.04 ID:S4U2UQtS0
隣人「社長〜、助けてくださ〜い」

社長「え、なんですか?どうしましたか?」

隣人「次期社長の採用面接とか先輩のこととかいろいろあってもう頭の中ぐちゃぐちゃなんですよ〜!」

社長「ああー・・・・・・男くんに関する話はともかくとして、大甥の担当は次回から部長ちゃんがしますから大丈夫ですよ」

隣人「ほんとですか?ほんとにあの重圧から解放してもらえるんですか?」

社長「はい、大丈夫ですよ。・・・・・・しかしまさか正面からくるとは」

隣人「それですよそれぇ!次期社長の内定なんか最初から決まってるようなものなんですからこんなことしなくていいじゃないですか!」

社長「人事課の人たちは割とそう言ってますよね。私はすんなり入ってくれるとは思ってませんでしたが・・・・・・」

隣人「なんかもう一個?行先があるんでしたっけ?」

社長「多分、それがなくても」

隣人「え、なんで?」

社長「そういう不正が嫌いなんですよね、彼。基本的になんでも正面突破しようとしたりして。それを貫き通せるところがかっこいいんですよね」

隣人「あの、社長?」

社長「まあそう言うわけですから採用人事の中でも一番手の部長ちゃんにお願いしてるわけです。彼女もまた立場だとかそういったもので判断しませんから」

隣人「あの人、貫禄ありますもんね」
16 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:33:26.04 ID:S4U2UQtS0
社長「それで、男君のことはどうしたんですか?」

隣人「あっ、えーっとですね、先輩の生命力が小さいから大きくしてあげたいなという話でして」

社長「んー、注ぎ込めばいいんじゃないですか?」

隣人「それができたら苦労しませんって」

社長「できますよ?」

隣人「へっ?」

社長「こう、魔力を生命力に変換して注入すればわりかしなんとかなります。ただ、器がそもそも小さいとかだとどうしようもないですけど」

隣人「生命力の器・・・・・・そんなものが?」

社長「はい。あとはそうですね、これは私の師匠から聞いた話ですけど、禁呪の生命リンクを使えばなんとかなるという話もあります」

隣人「生命リンクって、それ言ってよかったんですか?」

社長「言ったところで出来る人は限られてますしね。やり方も知らないとできないですし」

隣人「なるほど。ちなみにどんな人ができるんですか?」

社長「えっと、どうでしたっけ。確か種族が違うことが大前提で、あとは性別も違ってる必要がありまして」

隣人「それで、やり方は?」

社長「えーっと、うろ覚えですけどキスがどうとか言ってたような・・・・・・まあお互いの生命力をつなげるバイパスさえ作ってしまえばいいので、アドリブで何とかなるって師匠は言ってましたけど」

隣人「なるほど、ありがとうございます」

社長「いえいえ。悩みが解決できるなら・・・・・・あれ?」

隣人「先輩っ!今行きますからねっ!」フッ

社長「あっ!い、行っちゃった・・・・・・こ、これってあれですよね?隣人ちゃんが実行しちゃう流れですよね?」

社長「・・・・・・えーと、資料は多分社長室に置いてあったから・・・・・・念のため隠しておきましょう。お姉ちゃんの家あたりに」
17 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:34:10.77 ID:S4U2UQtS0
隣人「せーんぱーい!キスしましょー!」

男「断る」

隣人「えっ!?」

男「えっ?」

貞子「何を言ってるんですか隣人さん!私だってまだ・・・・・・あ、やりましたね。人工呼吸で」

花子「なんならおっさんともやってたのよね?いいじゃん、別に」

隣人「あれは未遂で止めました!代わりに私がしました!」

男「緊急事態下の行動と意識があるうちのキスを一緒くたにするな!」

メリー「てか、いきなりどうしたの?お前も貞子みたいに性欲に頭が支配され始めたの?」

隣人「ちーがーいーまーすー!先輩の生命力を増強する方法が見つかったんですー!」

男「えっ?まじでそんな方法があるのか?」

貞子「男さんの生命力?」

隣人「はい!なんでも、生命リンクの禁呪を使えばどうとか」

男「却下」

メリー「あほかなの」

隣人「なんでですかー!?」
18 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:34:37.11 ID:S4U2UQtS0
男「禁呪ってついてる時点で使っていいもんじゃないだろ」

メリー「生命リンクってのも名前がヤバいの。多分片方が死んだらもう片方もってやつなの」

花子「どこぞのお空の世界みたいな話だよね」

貞子「生命リンク・・・・・・それはゾンビでもできるんでしょうか?」

メリー「やろうとすんななの。だいたい、それはなんのためにやるの?」

隣人「だって先輩の生命力が強くなれば性欲も・・・・・・あっ、えっと、今のは聞かなかったことに」

男「できるわけないだろ」

メリー「貞子と一緒に頭冷やせなの」

貞子「えっ、私もですか?」

花子「むしろなんで逃れられると思ったし」
19 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:35:24.42 ID:S4U2UQtS0
隣人「・・・・・・追い出されちゃいましたね」

貞子「一晩反省していろとのことでしたのでまあいいでしょう。それよりも、ですよ」

隣人「はい!先輩とリンクする方法ですね!」

貞子「いや、それは別にどうでもよくて」

隣人「えっ?」

貞子「隣人さんが本気で誘惑すれば多分男さん手を出しますよ」

隣人「えっ?えっ?」

貞子「誘惑っていうか、むしろ自分から迫れって話でして。私の場合冗談めいてるってのがあるからまともに相手してくれませんが、隣人さんはそうじゃないでしょう」

隣人「あの、貞子さん?」

貞子「はい、なんですか?」

隣人「あの、その、そんな敵に塩を送るようなこと・・・・・・」

貞子「別にそんなつもりはありませんよ。もともと養ってもらえる立場を維持するための手段みたいなところがありましたし。ちゃんとした収入がある今となってはそこまでこだわりはないですね」

隣人「ええっ!?」

貞子「もちろん求められたらいつでもこの体を差し出しますよ?でも男さんは私の身体を求めてくれないので。残念ですが待つしかありません」

隣人「あ、あの、それだったら、その、私まるで独り相撲してたみたいな」

貞子「あ、もしかして私たち三人がライバルだと思ってました?」

隣人「そうですよっ!」

貞子「それは誤解です。そもそも私たちはスタートラインにすら立っていませんから」

隣人「えっ?」
20 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:36:06.76 ID:S4U2UQtS0
貞子「確かに私たち三人とも男さんのことは好きですよ。身体を求められたら喜んで差し出しますし、死ねと言われれば死ねます。そんなレベルです」

隣人「それでも、スタートラインに立っていないんですか?」

貞子「はい。だって元々の立場が殺す殺されるの関係だったわけですよ?そして養う養われるの関係に移行したわけです。こんなので色恋なんてできるわけがないじゃないですか」

隣人「で、でも!」

貞子「そうですね、言うなれば疑似的な家族です。そんな関係を私たちは楽しんでいるんです。だから、それ以上は望んでいない」

貞子「でも、隣人さんは違いますよね。男さんとは会社の先輩後輩という立場から入って、別に貸し借りがあるわけでもない。部屋の件はリフォームが終わった時点で清算済みですしね」

隣人「・・・・・・」

花子「ただあまりにもストーカー気質だから基本的に自分から行けないんでしょ?だから燻ってる」

隣人「花子さんまで・・・・・・」

花子「『赤い部屋』ってそういうやつだしね。S県月宮もあれは拒絶されてるし・・・・・・っと、それはともかく。とりあえず当たって砕けろ、話しはそっからでしょ」

隣人「で、でも、そんなこと・・・・・・」

花子「あんたは尊敬する大好きな先輩からのアドバイスすらも聞けないって言うの?」

隣人「いや、花子さん達は別に」

花子「maleにそう言われたんでしょ」

隣人「!」
21 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:37:04.63 ID:S4U2UQtS0
貞子「まあ我々からの話はこれくらいにしておきましょう。あとは自分で決めることです」

花子「そだね。あ、貞子はちゃんと一晩頭冷やして置けってメリーが言ってたから」

貞子「え?私戻れないんですか?」

隣人「・・・・・・ありがとう、ございます。私、やってみます」

貞子「はい、がんばってください。ところで布団を一式貸していただけるとありがたいのですが」

隣人「私の部屋に来客用の布団はありませんよ?」

貞子「・・・・・・」

隣人「・・・・・・」

貞子「ベッド借りますね!」バサッ

隣人「あっ、ちょっと!それ私の!」

貞子「アドバイス代だと思ってくださーい」

隣人「こ、ら、どきなさいよ・・・・・!」ググググググ

貞子「い、や、で、す・・・・・・・私は、柔らかくて暖かいベッドで眠る・・・・・・!」ググググググ

ミシッ

貞子「ん?」

隣人「どかないと、溶かしますよ・・・・・・!」

ミシミシッ

貞子「あ、あの、ちょっとヤバい音が」

隣人「どおりゃあああああああ!!!!」

バキッ

隣人「・・・・・・」

貞子「・・・・・・」

隣人「うわああああああああああああああ!私のベッドがあああああああああああああああ!!!!!」

貞子「ああ、えーっと、はい。これは私が悪いですね。ちゃんと弁償しますから落ち着いてください」

メリー「貞子ー、布団持って来てやったのー。感謝しろなのー・・・・・お?」

隣人「ベッド、ベッド・・・・・・おきにいりの・・・・・・初任給で買った・・・・・・」

メリー「・・・・・・おまえら本当にめんどくさいの」
22 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:37:45.39 ID:S4U2UQtS0
隣人「・・・・・・当たって砕けろ、か」

隣人「うん、そうだよね。自分で何も言わずに、察して欲しいだけだとか、そんなのずるいよね」

隣人「他の三人も、ああは言ってるけど心のどこかでは先輩の事を恋愛的な意味で好きなはず」

隣人「・・・・・・そんな三人が背中を押してくれているのに、私ばっかりが逃げてはいられない」

隣人(今なら、次期社長の気持ちのなんとなくわかる気がします。ちゃんと正面から堂々といかないと、他の人が納得できない)

隣人(そして何より、自分が納得できない)

隣人「・・・・・・うん。がんばろう。私だってあのアザラシ製菓の社員なんです。こんなところで二の足を踏んでられません!」
23 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:38:16.97 ID:S4U2UQtS0
隣人「先輩、話があります!」

男「ん?」

隣人(メリーさん、貞子さん、花子さんに背中を押されてついにこの日が来ました。先輩に、私の想いを伝える日が!)

隣人「せ、せせせ、先輩っ!ほ、本日はお日柄もよく」

男「いきなり他人行儀だな」

隣人「わ、わわた、わたわた、わたしとっ!」

隣人「私と子作りしてくださいっ!」

男「は?」

メリー「あほかなの!行き過ぎなの!」スパーン!

貞子「はい、一回退散ですね」

花子「男、そのままそこで待機」

男「あ、はい」

男(女子たちの仲がよろしくて何よりだけど、ちょっと疎外感。俺が家主なのに)
24 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:38:44.62 ID:S4U2UQtS0
メリー「はい、復唱。まずはお付き合いから」

隣人「まずはお付き合いから」

貞子「結婚云々は後の話」

隣人「け、結婚だなんて・・・・・・まだはやいですよ」

花子「初手で子作りを迫ってたやつが名にそんな純情ぶってんの?」

隣人「き、緊張しただけなんです!緊張しただけですから!ちょっと頭の中がバグって過程が飛んじゃっただけですから!」

メリー「よーし、わかったの。男ー、テイク2行くからそのまま待機なのー。トイレとか大丈夫なのー?」

男「大丈夫だけどそれ同じ室内でやる話か?」
25 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:39:28.13 ID:S4U2UQtS0
貞子「はい、テイク2スタートです。隣人さんが話しかけるところから」

隣人「は、はひっ!」

男「あんまり緊張すんなよ」

隣人「ほ、本日はお日柄もよく!」

男「うん、いい天気だな。外に出かけたいぐらいの快晴だ」

隣人「ああーっと、ええーっと、そ、そのっ!」

男「うんうん、落ち着いてな。一回深呼吸して」

隣人「は、はい!すーっ、はーっ、すーっ、はーっ・・・・・・よし!」

隣人「せ、先輩っ!あなたといると、月がきれいですね!」

男「・・・・・・今昼間だけど」

隣人「はえっ!?ああ、ええーと、今のはですね、その、ま、毎朝私が作った味噌汁を飲んでください!」

男「貞子さんの仕事を奪わないでやってくれ。朝食は今貞子さんが張り切ってるんだから」

隣人「ああーと、ええーと、そのっ、そのっ、そのっ!」

隣人「先輩の子種で私を孕ませてくださいっ!」

メリー「はい、もっかい退散なの。男、もうちょっと待ってほしいの」

男「お、おう」

男(もうこれ3回目やる必要なくね?)
26 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:40:03.81 ID:S4U2UQtS0
メリー「はい、復唱。穿った表現は使わない」

隣人「穿った表現は使わない」

貞子「まっすぐ思いをぶつける」

隣人「まっすぐ思いをぶつける」

花子「すぐ孕みたがらない」

隣人「すぐ孕みたがらない」

メリー「よし、大丈夫なの?今度はちゃんと行けるの?」

隣人「い、行けます!はい!」

メリー「じゃあ、ゴーなの!」

隣人「はいっ!」
27 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:40:54.11 ID:S4U2UQtS0
貞子「テイク3です、どうぞ」

男「うん」

隣人「せ、しぇしぇしぇんぱいっ!」

男「隣人、落ち着け」

隣人「本日はお日柄もよく」

男「さっきと同じパターンになってる。落ち着け」

隣人「ああーっと、ええーっと、そ、そのっ、あのっ、あれですっ!」

男「・・・・・・隣人。俺と、結婚を前提にお付き合いしてください」

隣人「はいっ!結婚を前提にお付き合い・・・・・・えええええっっっ!?!?!?!?」

男「・・・・・・俺自身も隣人のことが異性として好きなんだ。だから、これが俺の本心だ」

隣人「ああああっと、ええええっと、そのっっっっ!!!!」

男「どうだ?」

隣人「ごめんなさいいーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」フッ

男「・・・・・・え?」

花子「・・・・・・あいつ!ワープで逃げやがった!」

男「お、俺、ふら、れた?」

貞子「振られましたね」

メリー「しかも告白してこようした相手に振られたの」

男「・・・・・・」ドシャァッ

貞子「あああっ!男さんが真っ白に!」

花子「ちなみに、振られたの人生で何回目?」

男「さ、3回目・・・・・・」

花子「成功回数は?」

男「ゼロ・・・・・・」

メリー「・・・・・・まあ、どんまいなの」
28 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:41:43.84 ID:S4U2UQtS0
隣人「社長ーっ!社長ーーーっ!どうしましょうーっ!私、私、先輩に告白されちゃいましたーーーーっ!」

社長『わ、わかったから落ち着いてください、ね?よかったじゃないですか。私も応援していた身として喜ばしい限りですよ』

隣人「で、でもっ、わ、私っ!頭が真っ白になってっ、お断りしちゃってっっっ!」

社長『・・・・・・はい?』

隣人「ごめんなさいって言って逃げてきちゃって、そのっ、あのっ、ええっとっ!」

社長『はー・・・・・・。こればっかりは私が口出しすることでもありませんからどうとも言えませんが、一つアドバイスをするのならば早く訂正をしに行った方がいいですよ』

隣人「で、でもっ!私今っ、先輩の顔真っすぐ見れませんっ!今も顔から火がでそうでっ!」

社長『言い訳してる暇があったらぐずぐずしてないでさっさと行きなさい。じゃないと、二度と伝えられないかもしれないんだから』

隣人「しゃ、社長?」

社長『これ以上は言いません。勝手にしなさい』ピッ

ツーツーツー

隣人「えっ、しゃ、社長?で、でも、私・・・・・・」

隣人「・・・・・・先輩、お兄ちゃん、先輩」

隣人「仙、牌・・・・・・鬼イちゃん・・・・・・だめっ!」

隣人「いちいち曇るな、いちいち昂るな。自分から逃げるな。先輩から逃げるな」

隣人「いつまでも社長に、先輩に、みんなに甘えるな。行け、自分で。立て。足を動かせ。行けっ!」ダッ
29 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:42:17.24 ID:S4U2UQtS0
ガチャガチャ

隣人「・・・・・・」

ガチャガチャ

隣人(合鍵、部屋に忘れてきた)
30 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:43:27.55 ID:S4U2UQtS0
メリー「えー、紆余曲折あったけどとりあえず交際開始おめでとうなの」

隣人「ありがとうございます」

男「ありがとう」

貞子「今日は私が研修で学んだメイド料理のフルコースですよ!たくさん食べてくださいね!」

花子「アマゾンのメイド研修で学んだメイド料理・・・・・・?」

メリー「ワニとか使いそうなの。それはそれで気になるの」

貞子「まあ使えなくもないですが、メイド料理の基本はどんな食材でも素早く丁寧においしく仕上げることです。ですからアマゾンでは現地でとった食材をその日の内においしく食べられるように処理をしてですね」

男「まあその話は後で食べながらゆっくり聞こう。てか、隣人はいいのか?」

隣人「なにがですか?」

男「こう、恋人が他の女と同棲してて」

隣人「今更ですよ。私にとってもお三方は恩人ですし、先輩の家族みたいなものなら私の家族みたいなものです!」

男「・・・・・・あと、先輩って呼び方はなんとかならないのか?」

隣人「あー、えーっと、お、おおおお、男、さん・・・・・・だ、だめですっ!むず痒いですっ!全身がむかむかしますっ!」

男「ひでぇ」

メリー「諦めろなの。私らが好きなだけ呼んでやるから我慢しろなの」

男「いや、お前らに呼んでほしいわけじゃないからな?」

メリー「ひどいの。死んで詫びるしかないの。死ねなの」

男「貞子さーん、メリーさんの分は虫料理のフルコースにしてやってくれー」

貞子「わかりましたー」

メリー「謝るの!謝るからそれは勘弁なの!私が長野県民みたいに虫ばっか食えないの!」

男「長野県民に謝れ」

隣人「だめですよー、先輩ー。メリーといちゃいちゃしてたらー」

男「別にいちゃついてるつもりはないんだが」

花子「あー、だめなんだー。彼女いるのに他の女といちゃつくなんてひどい男ー」

隣人「私とももっといちゃつきましょう!ほら!えーっと、先輩死ね!」

男「・・・・・・ごめん、割とショックだわ」

隣人「ごめんなさいっ!これは違うなって思いました!先輩死なないでー!」

To be continued...
31 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:46:49.17 ID:S4U2UQtS0
完結編第一話、【赤い部屋】をお送りしました。
ちょっとリアルの方が忙しかったり息抜きしてたりで遅くなりました。このスレはこのまま使います。
次回は【トイレの花子さん】です。書き溜めたら投稿します。男君は死にます。
メリーちゃんまだ泣かない。

前回までのお話。ホントは>>1に貼る予定だったけど貼り忘れてた。

メリー「もしもし、私メリーさん」男「ひいいぃっ!」バタッ
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1589716394/
貞子「来ーるー♪きっと来るー♪」男「うぐっ」バタッ
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1589907382/
花子「きゃーっ!」男「うわっ!?」ガンッ
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1590151594/
隣人「あのー?」男「んー?」ゴクゴク
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1590647822/
【都市伝説】姉「ババアうざい」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1590992009/
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/07(日) 22:10:32.59 ID:En6SgQ85o

男何回死ぬんだよ上条さんかよ
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/08(月) 09:24:09.97 ID:F/obBsj00
乙。みんな違ってみんな良い。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 14:17:36.45 ID:JJqGyfT2o
隣人のS県月宮って何ですか?
このSSは面白いから見れるけど、都市伝説は怖くて調べられないチキンにそれとなく教えてほしい
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 07:57:20.46 ID:rPKRuho7O
>>34
お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない の出典元
あまり怖くないし釣り宣言出てるから調べても大丈夫だよ。
36 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:03:09.59 ID:RYojhWOb0
【トイレの花子さん】

花子「はいどーもー、寝起きドッキリの時間でーす」

花子「えー、今日はウチのお兄ちゃんお姉ちゃんたちに寝起きドッキリを仕掛けてみようと思いまーす」

花子「さて、まずはお兄ちゃんから・・・・・・」

男「」ギシッギシッ

花子「・・・・・・?えっ、まさかあんまし見ちゃいけない感じ?私らが隣人の部屋で寝泊まりしてる間に向こうはしっぽりやってる感じ?」

花子「あー、寝起きドッキリは中止かなー・・・・・・?」

マント男「死ぬなッ!まだ質問していないってのっ!くそっ、このベッド良く弾むからやりづれぇ!畜生っ!」

花子「・・・・・・」

マント男「なぜこの私がこんな男の介抱なんぞやらにゃならんのだ!都市伝説法めっ!」

花子「続きは私がやっとくからあんたは消えろ」
37 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:03:47.39 ID:RYojhWOb0
男(・・・・・・またここか)

花子「やー、また死んでたね、男」

男「花子さん。まあ、ここにいるってことはそうなんだろうな」

花子「ちなみに今回の死因は寝る前に水を飲み過ぎて胃液が逆流して気管に入って窒息したからだよ」

男「マジか。よく生きてたな、俺」

花子「私が助けに来たからねー。あ、ついでに怪人赤マントに襲われてた」

男「え、どうなったんだ?」

花子「今頃下水処理場で泳いでるんじゃない?」

男「花子さんもなんか逞しくなったな」

花子「死なれたら困るの私たちだしね」
38 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:04:17.32 ID:RYojhWOb0
花子「はぁーあ、これだと寝起きドッキリ企画はだめだなー」

男「ああ、前言ってたあれか。別に続行してもいいじゃないか」

花子「男の場合寝起きポックリになりそうだし」

男「言い返せねぇ」

花子「なんかヤバい心臓病患ってるとかないよね?」

男「そんなはず、ないんだけど」

花子「それにしては心臓止まりすぎじゃ」

男「んー、そう聞くと心配になってきた。一回姉ちゃんに聞いてみるか」

花子「昔っからよく止まってたとかだったら笑うよね」

男「まあ無いと思うけど」
39 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:05:44.86 ID:RYojhWOb0
姉『止まってたわよ?』

男「はひ?」

姉『こう、都市伝説とか云々関係なくてね。ちょっと道で転んでそのショックで心臓止まったりとか。そのたびに私が殴って再起動させてたけど』

花子「うわー、的中ー」

姉『だから多分心臓に止まり癖みたいなのがついてるんじゃないかってお医者さんが言ってたわね』

花子「そんな捻挫癖みたいな」

男「心臓に止まり癖ってなんだよ!?止まったら死ぬだろ!?止まるんじゃねえよ!」

姉『大企業に就職して安定した生活を送ればそういうショックからも遠ざかると思ってたんだけれどね。さて、そろそろ仕事に戻るから切るわね』

貞子『お姉さーん!お風呂場の掃除終わりましたー!』

姉『確認しに行くわ。待ってて。それじゃあね』ピッ

花子「・・・・・・貞子、元気そうだね」

男「生き生きしてるよな。死んでるけど」
40 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:06:48.58 ID:RYojhWOb0
花子「はーっ、芸能人って楽じゃないなー」

隣人「どうしたんですか?」

花子「こう、もっと華やかなきらきらした世界を思い描いてたんだけどさ。実際はそうじゃないなーって」

メリー「JSYouTuberならパンツでもチラ見せしとけば一気に再生数上がるんじゃないの?」

花子「事務所の方針でそういうのはNG。水着来たりもモデルとかアイドルの人しかやらないしさー。今は実況の練習中」

貞子「実況に練習とかあるんですね」

花子「ゲーム実況するのも楽じゃないんだよね。こう、あんまり汚い言葉は使っちゃダメ。無言もダメ。魅せプレイもいる。うん、割とつらい」

隣人「やっぱりプロの人になるとそのあたりも考えてやらないといけないんですね」

花子「ウチに所属してる人らの中で一番実況がうまかったのは歌手だった」

貞子「なんで歌手が実況してるんですか」

花子「この前山奥に行った時にさ、お試しでいろいろやらせてもらったりやってもらったりしたわけよ。そこで見せてもらってさ」

メリー「そういえばそれの配信とかしないの?ひそかに気になってるの」

花子「今度テレビで流すって。今編集とかいろいろやってるとこらしい」

隣人「先輩、それまでに退院できるでしょうか」

花子「わかんね」

メリー「アイツの場合退院してもまた入院するかもしれんの。そうなる前に今検査してもらってるところだから仕方ないの」

貞子「心臓に止まり癖があるとか聞かされたら人間ドッグとかその他諸々全部行ってもらわないと困るじゃないですか」

隣人「入社時と、3年に一回会社から受けさせられるんです。今年先輩は受ける年なので、タイミングが良かったですね」

メリー「でも今まで特にそう言うのが見つかってないってことはやっぱり原因不明な気がするの」

花子「はぁー、世の中そううまくいかないもんだねー」
41 :ぷよテト楽しいよね ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:08:27.88 ID:RYojhWOb0
花子(ゲーム配信とかちょろいぜ!って思ってたんだけど、実際そううまくいかないなー)

花子(ゲームうまいだけじゃできないんだね。ってか、私以外もそこそこ強いし)

歌手「はっち連鎖〜♪」

アイドル「なんで私が5連鎖組んでる間にそんなに組めるかな?」

ダンサー「やっぱこのゲームぷよの火力だけおかしくないですか?テトで相殺しきれないんですけど」

花子「テト側も連鎖で対処・・・・・・って行きたいところだけど、それやろうとする前に超火力で落とされるんだよね。あっ、詰んだ」

歌手「いぇーい!大・勝・利!」

花子(5回に2回ぐらいの確率で誰かしらに負ける。変なとこからぶっささったりするのマジ勘弁)

歌手「花子ちゃん、ほら、もっとなんか喋って!実況の練習!」

花子「ええー?えーっと、こっちはテトだからとりあえず開幕DT砲組むかパフェ積みするかでぷよ側の手を潰しましょう。潰しきれなくても相殺でぎり耐えたりします」

アイドル「いっくよー!つながれっ!そこっ!くらえっ!」

ダンサー「テトリス!テトリス!Tスピン!これで耐える!」

歌手「ここは一回受けて、発火っ!よし、行ける!」

花子「えーと、7連鎖ぐらいかな?とりあえずDTで相殺して」

アイドル「ああああっ!一杯落ちてきた!いや、まだ舞える、まだ私は戦えにゃーーーーっ!」

ダンサー「一回耐えさえすれば持ち直せるのがテト側の良い所ですよね」

花子「そだねー。ほいっ、よっと、まだっ、ここっ、T挟んで、もっかい!追加ッ!」

歌手「ちょ、ちょちょちょっと待って?そっち何連!?やばくない!?あああ急いで組まないと」

花子「まだまだいけるよー、ほいほいっとな!」

ダンサー「えーと、15連とか対処しきれないですね。対戦ありがとうございました」

歌手「やーらーれーたー」

花子「ふぅー、きっついわぁー・・・・・・」
42 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:09:22.98 ID:RYojhWOb0
男「そういや、明日花子さんの生配信だよな」

花子「そう!初生配信!JS設定だから昼間しか無理ってんで土曜の昼になったの!」

メリー「へー、なの。享年って大変なの」

貞子「メリーさんは何歳で登録したんですか?」

メリー「服のタグについてあった製造日を男に言っといたの」

男「俺は伝えられたそのままに社長に言った」

隣人「つまり花子さんも成人済の年齢を言っておけば時間の制約がなかったのでは?」

花子「登録してから言われても困るよ・・・・・・」

男「まあ明日は俺も隣人も貞子さんもメリーさんも休みだし全員で見るからな」

花子「宣言されると妙に緊張するんだけど」

男「スパチャってどうやるんだっけ?」

隣人「中抜きされるから直接渡した方がよくないですか?」

花子「こらそこ!そういうこと目の前で言うな!」
43 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:10:38.97 ID:RYojhWOb0
花子『どもー、はなちゃんねるのはなちゃんでーす。えー、今日が最初の生配信ってことでどきどきしてまーす。よろしくおねがいしまーす』

男「おっ、映った映った」

隣人「貞子さん、セッティングありがとうございます」

貞子「いえいえ。私も大きい画面で見たいですしね」

メリー「モニターに関しては貞子に任せておけば間違いないの」

花子『えー、生配信ははじめてでいろいろと緊張しててなにやったらいいかぶっちゃけ頭真っ白になって飛んでるんで、事前の予告通りのゲストに来てもらいます。アイドルさーん』

アイドル『早いよ!?私あと10分ぐらい余裕あったんだけど!?』

花子『いっそ全員呼ぶか』

歌手『呼ばれる前に出るか』

花子『・・・・・・ダンサーは?』

歌手『律儀に呼ばれるまで待機してるよ』

花子『ではさっそくゲームの方を始めていきたいと思います』

ダンサー『呼んでくださいよ!私待ちぼうけじゃないですか!台本だと私しょっぱなに呼ばれるって書いてあるんですけど!』

アイドル『この子弄り上手だね』

歌手『相方欲しいね。弄られる側』

花子『ってことで事務所の売れっ子三人組に来てもらいましたー。はい拍手ー。ついでにスパチャ投げてねー』

アイドル『露骨!』
44 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:11:13.45 ID:RYojhWOb0
隣人「うん、生き生きしてますね」

男「でも結構緊張してるな」

メリー「さっきから目線があっちいったりこっちいったりしてるの」

貞子「芸能人も大変そうですね」

隣人「先輩たち、よく見てますね」

男「なんだかんだアレと一緒に暮らしてもう半年以上経ってるしな。ある程度はわかるよ」

隣人「じゃあ私は今何を考えているかわかりますか?」

男「隣に座りたい、かな?」

隣人「ぴんぽんぴんぽん!正解でーっす!」

メリー「お前らうるさいの」

貞子「いちゃつくな呪い殺しますよ」
45 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:12:50.46 ID:RYojhWOb0
花子「えーっと、今回の企画ではとりあえずオンラインに潜って勝ったらウィニングライブをする、と」

アイドル「どこぞの未配信のアプリみたいなことするんだね」

花子「で、負けたらどうするの?」

アイドル「・・・・・・あー、どうしよ。ちょっと待ってね、歌手、集合」

歌手「あいさ」

ダンサー「あれ、私は?」

アイドル「そっちつないどいて」

ダンサー「あ、はい。えーっとですね、じゃあはなちゃんには簡単に自己紹介してもらいますか」

花子「え?あー、はなちゃんです。本名は花子です。よろしくおねがいします」

ダンサー「だめですよー、そんな自己紹介じゃ1次面接で落とされちゃいます」

花子「就活じゃないんだから」

ダンサー「私も就活生ですからねー。副業オーケーの会社を中心に受けてるんですが、これが中々受からなくてですねー」

花子「芸能人なのに?結構売れっ子なのに?」

ダンサー「売れっ子っていっても私自身のダンスはそこまで見てもらえてなくて、どっちかっていうとハプニングを期待されてて・・・・・・あれ?なんだか涙が出てきました」

花子「かわいそうに。そのままのダンサーでいてね」

ダンサー「ハプニング期待なの変わらないじゃないですかぁ!」

歌手「おまたせー。負けたら私が後ろでLOSER歌うから」

花子「えっ」

アイドル「ダンサーは歌に合わせてLOSERを踊る」

ダンサー「お任せあれ!」

花子「アイドルは?」

アイドル「私は音楽かける係。あと今から音源使うためにカラオケ会社に許可取ってくる」

花子「この場で!?」

アイドル「しかたないでしょ。じゃんけんに負けたんだし」

歌手「いえー!私の勝利ー!」

花子「そんな権利関係の話をジャンケンで決める!?」
46 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:14:31.05 ID:RYojhWOb0
男「・・・・・・配信が始まって10分。未だにゲームが始まらないな」

隣人「でも見てください。スパチャすっごい投げられてますよ。花子ちゃん関係ないですけど」

メリー「調べたらここの事務所の売れっ子四天王のウチ3人を呼んでるらしいの。そりゃみんな投げるの」

貞子「花子ちゃん、がんばって!」

男「どっかのタイミングで花子さんにも投げとかないと機嫌悪くなりそうだ」

隣人「口座の準備はできてます!」

メリー「いくら投げるつもりなの。落ち着けなの」

貞子(あの社長さんとかが知ってたら軽く云百万単位で投げてくれたりしませんかね)
47 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:15:09.06 ID:RYojhWOb0
花子「えー、じゃあさっさとはじめよう。今回はスマッシュなブラザーズ。うん、余裕だね」

歌手「どうかなー?おっ、マッチングしたね。じゃあはりきってどうぞ!」

・・・・・・

花子「勝利っ!対戦ありがとうございました!」

アイドル「はい、じゃあウィニングライブね」

花子「え、一戦ごと!?」

アイドル「そうだよ?」

花子「や、やってやんよ!これで再生数増えたらCD出してもらえるらしいし!」

歌手「がんばれー。・・・・・・あ、電話だ。ちょっとごめんね。もしもし、歌手ですけど。え、LOSERカバーしないかって?いや、私まだ歌ってないですし」

花子「売れっ子すごいなー。すぐ話が舞い込んでくる」

ダンサー「じゃあはりきってどうぞ!はなちゃんで、曲は『トイレの花子さん』です!」
48 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:16:03.43 ID:RYojhWOb0
男「まんまじゃねーか!」

隣人「まあ知ってるの私たちぐらいですし」

貞子「ふりふりの衣装着て踊ってますよ!かわいいですね!」

メリー「あの衣装はウチの提供なの」

貞子「えっ?」

メリー「私の仕事先の仕立屋に土下座して頼み込んだの。おかげでいつもより多めに服を着ることになったの。大変だったの」

男「あー、あのドレスを作った人か。納得だ」

隣人「いいなー、かわいいなー。ねえ先輩、私も・・・・・・」

男「無茶言わんでくれ。あそこの服いくらするか知ってるだろ。ウェディングドレスまで待ってくれ」

隣人「やったっ!」

貞子「いちゃつくなっ!」
49 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:17:15.90 ID:RYojhWOb0
花子「はぁ、はぁ・・・・・・」

歌手「あ、次マッチングしたよ」

花子「や、休ませてくれないの?」

歌手「配信時間決まってるんだから!はなちゃんにはちょうどいいハンデでしょ!」

花子「あ、あったりまえじゃん!やってやんよ!」

ダンサー「おおー、威勢いいですね」

アイドル「ゲームしてる間暇だね」

ダンサー「じゃあ私後ろで踊っておきますね」

アイドル「パッフェルベルのカノン流しとくね」

ダンサー「踊れと!?」

歌手「私弦楽器担当するから、アイドルは管楽器ね」

アイドル「楽器ないんだけど」

歌手「ボイパで」

アイドル「ボイパって打楽器だよね?」

歌手「まあ楽器の音を声で再現すればいいでしょ」

アイドル「アドリブで練習したこともないやつをやれと」

歌手「いけるいける!」

花子「よし!ゲームセット!」

ダンサー「あ、終わりましたね」

歌手「はいじゃあウィニングライブねー」

花子「ま、またぁ!?これってもしかして体力企画!?」

歌手「しょっぱなだから多少無茶ぶりしなきゃいけないじゃん」

アイドル「なんのために山奥でトレーニングしたと思ってんの」

ダンサー「山奥ではガールズトークと飯盒炊爨しかしてませんが?」

花子「わーん!事務所の先輩たち頭おかしいよー!」

ダンサー「私も含まれてますか!?」
50 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:18:11.04 ID:RYojhWOb0
花子「ぜぇーっ、ぜぇーっ、つ、つぎ!」

歌手「この子根性あるね」

アイドル「多分大物になるよ」

ダンサー「次の対戦相手は・・・・・・あっ」

花子「ん?どしたの?」

ダンサー「あー、この相手、多分知り合いです」

歌手「えっと?あー、多分大学の後輩だわ」

アイドル「あ、ほんとだ。ゲームうまい子だ」

花子「まあいいや!ごめんね先輩たちの後輩さん!私の再生数のために犠牲になって!」

・・・・・・

歌手「I'm a LOSER どうせだったら遠吠えだっていいだろう♪もう一回もう一回行こうぜ僕らの声♪」

花子「あああああああーっ!!!むかつくーーーーー!!!」
51 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:19:18.45 ID:RYojhWOb0
男「今だ!スパチャの準備を!」

隣人「できました!」

貞子「送信です!がんばって!」

メリー「花子、がんばれなの!」

隣人(この全員が一体になってる感じをみると、花子ちゃんって我が家の末っ子っていうかお姫様ですよね)
52 :はなちゃんねる生配信中 ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:20:12.92 ID:RYojhWOb0
アイドル「あ、はなちゃんあてにスパチャ来てますよ。がんばってーって」

花子「え、ほんとに?よし!次こそは!・・・・・・って、連戦!いや、やってやる!勝ち越させない!」

歌手「ここいらで一つ踊ってみようぜ♪夜が明けるまで転がってこうぜ♪」

アイドル(これ、連敗し続けたら歌手は歌い続けてダンサーは踊り続けることになるのかな?それはそれで面白そうだしいいか)

・・・・・・

歌手「あいむあるーざーどうせだったらとおぼえだっていいだろっ、もういっかいもういっかいいこうぜぼくらのこえっ!」

ダンサー「はぁー、はぁー」

アイドル「あのー、はなちゃん?」

花子「勝つまで!勝つまで辞めない!私は止まらない!」

アイドル「あの、ふたりがそろそろ限界だから」

花子「勝てばいいんでしょ勝てば!」

・・・・・・

歌手「はぁーっ、はぁーっ、き、きっつ・・・・・・何回歌った・・・・・?」

ダンサー「だ、ダンスって、連続で何十回もやることを想定されてないんです、よ・・・・・・・」ガクッ

花子「・・・・・・うーーーーーっ!くやしいーーーーーーーーーーっ!」

アイドル「はい、時間切れー。世界戦闘力を落としまくったはなちゃんはどうなってしまうのでしょうか!それではまた次回ー!」
53 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:20:51.60 ID:RYojhWOb0
男「・・・・・あの花子さんが全戦全敗だと?」

隣人「我が家でゲーム大会開いたら優勝かっさらっていく花子さんが・・・・・まさかあんな」

メリー「相手の動きが頭おかしかったの。なんか花子の攻撃が全然当たらないの」

貞子「なんですかね、あのぴょんぴょんした動き」

男「まあ、相手が悪かったってことで」

花子「ただいまっ!テレビ使うよっ!」

男「お、おかえり」

メリー「トイレワープまで使って帰ってくるとは、どうしたの?」

花子「何って、特訓よ特訓!負けっぱなしでいられるもんですか!絶対ボコし返してやる!」

貞子「はい、がんばってください!」
54 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:21:43.16 ID:RYojhWOb0
―1週間後―

男「・・・・・・あれから花子さん、ずっと引きこもってるな。隣人の部屋に」

メリー「寝てる時以外はゲームしかやってないの。ごはんも置いとけ状態なの。おかげで向こうで寝れないの」

隣人「心配ですね。ちゃんと食べてはいるみたいですけど・・・・・・」

貞子「あの連敗が彼女を変えてしまったんですね」

男「いや、さすがによろしくないだろ。ちょっと一言言ってくる」

メリー「でもあいつ、今聞く耳持たないの」

男「やり方はいろいろあるさ。まあ任せてくれ。対処法は姉ちゃんのお嬢様から聞いてるんだ」

メリー「なんでお嬢様とかいう身分の人が引きこもりの対処法を知っているのか甚だ疑問ではあるの」
55 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:23:22.04 ID:RYojhWOb0
花子「ああもうっ!こんな反確の動きしたらダメっ!」

男「花子さーん」

花子「うっさい!話しかけんな!」

男「・・・・・・うん、予想通りの展開だ」

男(ここでブレーカーをひとつまみ)

バツン

花子「・・・・・・!?!?!?!?!?」

花子「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ”!?」

男(ヒドイ絶叫だ。とても女子とは思えない)

花子「なっ、なんでっ!?なんで電気消えたのっ!?電源っ!復帰っ!」

男「はい、そこで終了。終わりにしろ」

花子「お前かっ!なんてことすんのよ!」

男「花子さん、自分の姿鏡で見たか?すごいことになってるぞ」

花子「うっさいっ!ほっといて!」

男「臭いもすごいし・・・・・・風呂にも入ってないだろ」

花子「うっさいっての!アンタに指図される謂れはない!」

男「あるに決まってんだろ。家主だぞ。こっちは隣人の部屋だけど、隣人からもクレームが出てる」

花子「あっ、うっ、そのっ」

男「とにかく、一回風呂入れ。んで、こっちの部屋に来い。いいな?」

花子「で、でもぉ!」

男「1時間以内だ!返事っ!」

花子「は、はいっ!」
56 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:24:26.99 ID:RYojhWOb0
隣人「・・・・・・あれがお嬢様式」

貞子「今どきのお嬢様は引きこもりを強制的に外に出させるんですね」

メリー「引きこもりとかニートは家主に対して地位が低いの。そのカードを切られたら従うしかないの」

貞子「もしくは必死で懇願する」

メリー「たとえ身体を差し出してもなの。手は出してこなかったの」

隣人「あの、もしかして期待した事とかありました?」

貞子「正直に言うとありました」

メリー「期待というか、いつ来られてもいいようにはしてたの。いざやることやるとなって駄目でしたで捨てられたら悲惨なの」

隣人「ちなみに、みなさんはどのあたりまで付き合えます?」

貞子「死なない上に五体満足でいられるならなんでも」

メリー「身体さえ壊れなければ穴は全部使ってくれていいの」

隣人「私が言えた話じゃないですけどお二人の愛も結構重いですよね」
57 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:25:02.02 ID:RYojhWOb0
花子「お、お風呂あがりました」

男「よし。じゃあそこに正座。三人はちょっと隣に行っておいてくれ」

隣人「はーい」

メリー「これって向こうでやればよかったんじゃないの?」

男「ついでに掃除も頼む」

貞子「なるほど。今までメリーさんや隣人さんが済ませてしまうから活きなかった私のメイド仕込みの掃除スキルが活きる時ですね!」

メリー「掃除機とゴミ袋と適当に持っていくの」

隣人「掃除機なら私の部屋にもありますよ?」

メリー「こっちのこの前買い替えた最新式だから性能いいの。くるくるぽんなの」

隣人「なるほど」

男「早く行ってもらっていいか?」

隣人「あ、ごめんなさい」
58 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:25:30.98 ID:RYojhWOb0
男「さて、花子さん。今から俺はお説教をします」

花子「・・・・・・はい」

男「その前に、だ。なんで花子さんに怒ってると思う?」

花子「え、なんでって。・・・・・・引きこもって迷惑かけたからじゃないの?」

男「違う」

花子「え?えーと、お風呂にちゃんと入ってなかったから?ほら、男って綺麗好きっていうか臭いの嫌いだし」

男「そうじゃないな」

花子「ええっと、それじゃあ・・・・・・ええっと、ええっと?」

花子「・・・・・・わかんない」

男「うん、まあいいだろう。俺が怒ってるのは花子さんが自分の生活や身体をないがしろにしたからだ」

花子「・・・・・・は?」
59 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:26:15.04 ID:RYojhWOb0
男「社長が言ってたが、人外の存在でも生活が崩れることによって病気になったりするそうだ。んで、そうなったときに病院にいくのは大変らしい。人間の病院じゃ診れないからな」

花子「・・・・・・病院ぐらい自分でいけるし」

男「そういう話じゃない」

花子「ほっといたらいいじゃん!私だって今は自分でお金稼いでるし!病院代も自分で払える!男に迷惑かけないでしょ!」

男「ああ、花子さんが完全に自立してるっていうなら俺はそこに文句を付けられない。そうなると無関係だしな」

花子「だったら!・・・・・・出ていけって、言うの?私は、ここを出て行ったらいいの!?そういうことなの!?」

男「違う!」

花子「じゃあ、どういうつもりなのよ!」

男「俺もメリーさんも貞子さんも隣人も、花子さんのことは家族の一人として考えている。だから、自分をないがしろにすることには怒るんだ」

花子「なによ、それって・・・・・・」

男「仮にさ、俺が毎日酒を浴びるほど飲んで食べ物も油物とかラーメンとかばっかりで、みたいな生活を送ってたらお前ら文句つけるだろ?」

花子「そりゃそうよ!そんな生活してたら男すぐに死んじゃうじゃん!」

男「でも、都市伝説のとこはもう辞めたんだから法に縛られてるわけじゃないだろ?」

花子「そういうことじゃないでしょ!」

男「ああ。今花子さんが思ってることは、俺たちが花子さんに対して思っていたことだ」

花子「あっ・・・・・・」
60 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:27:20.15 ID:RYojhWOb0
男「仕事をする上での多少の不健康な生活なら見逃す。ただ生活がまともに送れないようになるっていうのなら、俺は仕事場に乗り込んででも花子さんを辞めさせる」

花子「で、でも・・・・・・」

男「今まで3人まとめて養ってきたのは誰だと思ってるんだ。今更元に戻ったところでまだまだ余裕だよ」

花子「でも、私、もっと強くならないと、あそこにいられないし・・・・・・」

男「本当にそうだっていうのなら、それこそ辞めさせる。だが、本当にそうなのか?花子さんの事務所は花子さんにゲーマーとして最強の腕を望んでるのか?」

花子「えっと・・・・・・」

男「少なくとも見ている限りだとそうじゃなかった。どっちかっていうとバラエティ枠だろ?芸能事務所だし」

花子「そう、かも」

男「そもそも前の生配信思い出してみろよ。勝ったらライブして負けたら後ろでライブされてたんだろ?あれ見て誰が全戦全勝を望むんだよ」

花子「・・・・・・」

男「確かに、花子さんはそれを望んでるかもしれない。ただ、そのために生活をないがしろにするのであれば是が非でも辞めさせる。それが家主としての俺の意思だ。異論はあるか?」

花子「・・・・・・ない」

男「ならばよし。それに、特訓するなら特訓するでその動画も録ったりできるんだろ?そういうのも配信して稼いで行きゃいいじゃんか」

花子「あっ、そっか。男ってけっこうがめついね」

男「これでも大企業の社員なんでね」
61 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:27:56.81 ID:RYojhWOb0
メリー「花子ーーーーっっ!終わったなら手伝えなのーーーーっ!」

貞子「なんですかあのゴミの量!しかもあなた、トイレにも全然行ってなかったみたいですね!トイレの花子さんのくせに!」

男「えっ」

花子「い、いや、それは、ね?反省してるから・・・・・・ね?」

男「あの」

隣人「先輩、聞かない方がいいです」

男「え、そこまでなのか?」

隣人「はい。そしてですね」

隣人「渡シの部屋をあん名風に津かッて汰コトについて御噺があり升」

花子「あっ・・・・・・」

男「よし!俺の分の説教終わり!こってりしぼられてこい!」

花子「やだーーーーー!許してーーーーーー!!!!」
62 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:28:42.87 ID:RYojhWOb0
花子「ひぐっ、えぐっ、えぐっ」

隣人「これに懲りたら今度から気を付けるように!」

花子「はい・・・・・・ひっぐ」

メリー「よし、説教も終わったみたいだしご飯にするの」

隣人「あれ、いつのまに?」

貞子「隣人さんのお説教が長かったので買い出しから調理まですべて済んじゃいましたよ」

男「よしよし、もうご飯だからそろそろ泣き止もうな」

花子「うん・・・・・・ひっぐ、ぐすっ」

メリー「たまには子供らしく叱られるのもいいもんなの」

貞子「私はしょっちゅう叱られてますけどね」

メリー「お前は問題行動が多すぎなの。メイドならもっと慎みを持てなの」

貞子「自分の欲には抗えません!」

メリー「駄メイドなの」
63 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:30:22.74 ID:RYojhWOb0
花子(なんか、こうやってしてると改めて一緒に暮らしてるって言うのを感じられる気がする)

花子(お互いに無関心じゃいられない、過干渉になっちゃうこともある。これが、家族、だよね)

花子(もちろん嫌なことだってある。でも、それ以上にいいことの方が多い)

花子(・・・・・・うん、がんばろう。とりあえずみんなが安心して生活できるぐらいには)

隣人「先輩、最後の一個、あーんしてください」

男「え?あーん」

花子「ぱくっ」

隣人「・・・・・・ちょっとぉ!?花子さん!?」

花子「べー、だ。いちゃいちゃしててさっさと食べないのが悪いんだよーだ。ごちそうさまー」

貞子「そうです!のろけを見せられるこっちの気持ちにもなってください!」

メリー「花子、よくやったの。いちゃつくならよそでやれなの」

男「そんなにいちゃいちゃしてたつもりはないんだけど・・・・・・」

花子「いやー、男からあーんしてもらって食べるご飯はおいしいなー!これを食べれない彼女さんはかわいそうだなー!」

隣人「こんのっ!いいでしょう花子さん、宣戦布告とみなしました!」

花子「ラグナロクオンラインで待ってるよー、月宮」

隣人「すぐインしますから!あなたを詐欺罪(食い逃げ)と窃盗罪で裁きます!覚悟の準備をしておいてください!いいですね!」

男「・・・・・・うん。元気になったみたいで何よりだな」

To be continued...
64 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/11(木) 17:38:58.94 ID:RYojhWOb0
完結編第二話【トイレの花子さん】をお送りしました。
花子さんは子供らしさを大事にして書いたつもりですが、自分で書くとメスガキ感が出ないな。
もっと家庭内煽ってほしい。それで返り討ちにしてわからせたい。
次回は【呪いのビデオ】です。男は死にます。
メリーちゃんに二人羽織であつあつおでんを食べさせたい。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 18:08:10.17 ID:yfiy/yPr0
いつの間にかにきてた、乙。そしてまた死ぬんかい。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/11(木) 18:32:06.58 ID:5pmKScv6O
死んでばかりだなぁ
67 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 15:57:41.99 ID:dgPNsq/R0
【呪いのビデオ】

貞子「荷物運んでもらってありがとうございます」

男「このぐらいお安い御用だよ。男だしな」

貞子「メタな話をしますけど男さん自分の名前を言っているのか性別の事を言っているのかわかりにくいですね」

男「そういうのは無しの方向で」

貞子「ふふ、でも助かりました。セールでちょっと買い込み過ぎちゃって」

男「これ社用車だからバレないうちに荷物はナビを通して家に入れといてくれ」

貞子「はーい」

男「てか開いてくれたら俺がツッコんどくけど」

貞子「え、いいんですか?」

男「これくらいなら任せてくれ!」ドンッ

貞子「もう、男さん。そんなに強く胸を叩いたらまた止まっちゃいますよー」

男「」

貞子「・・・・・・あれ?男さーん、もしもーし」

貞子「・・・・・・死んでる」
68 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 15:58:24.11 ID:dgPNsq/R0
男「・・・・・・またここか」

貞子「はい、いつもの病院です。お医者さんもまたかって顔してましたよ」

男「ええっと、今回は何に襲われたんだ?」

貞子「・・・・・・しいて言えばパッション屋良?」

男「え?」

貞子「もしくはゴリラ?」

男「え、あの?俺の死因はなんですか?」

貞子「男さんが自分で胸を強くたたいたときに心臓が止まったことですね」

男「・・・・・・もしかして、今回都市伝説とか諸々は無関係?」

貞子「イエス」

男「・・・・・・弱いなぁ、俺」

貞子「まったくですよ。大手スーパーの駐車場で心臓マッサージを始める私の身にもなってください。あとAED持って来てくれたり救急車呼んでくれたりした人にも感謝してください」

男「毎度お世話になってます。ありがとうございます」

貞子「これはアレですね、家に帰ったらご褒美ックスですね」

男「え、なんて?」

貞子「ご褒美ックスですよ、ご褒美ックス」

男「聞き間違いじゃなかったか。聞き間違いであってほしかった」

貞子「もう一回言いましょうか?ごほう」

男「言わんでいい!」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/16(火) 15:58:55.52 ID:YYrE5d6io

コントかのように死ぬな男
70 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 15:59:07.63 ID:dgPNsq/R0
貞子「うむむ、実際のところ男さんの心臓の弱さにはびっくりしますね」

花子「今回の死因には流石に草も生えない」

隣人「これ、まともに結婚とかできるんでしょうか・・・・・・プロポーズの緊張で心筋梗塞とか起こったら私どんな顔して救命すればいいのかわかりませんよ」

メリー「そうは言ってもどうにもならない問題なの。今まで通り死んだらすぐに蘇生するで対処するしかないの」

貞子「何が面倒って死因の予想がつかないことなんですよね。あの人勝手に死にますし」

隣人「ショック死、窒息死、失血死、中毒死。ここに心筋梗塞とかが加わると本当にヤバいです」

メリー「心臓を叩いて動かすのは漫画とかでよく見るけど逆をまさかやるとはなの。しかも自分に」

花子「実はアイツ北斗神拳の伝承者で自分自身の心臓が止まる秘孔を突いたとかそう言うの無い?」

貞子「男さんがそうならお姉さんも多少はそっち系の知識がありそうですが、まあ聞いている限りはないですね」

花子「ネタにマジレスされると反応に困るんだけど」

貞子「そう言うネタかと思いました」
71 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:00:19.71 ID:dgPNsq/R0
貞子「今日も今日とて男さんは病院生活・・・・・・・」

メイド「また?」

貞子「はい。自分で胸を叩いた衝撃で心臓が止まっちゃって」

メイド「そういうときは反対側から同じ大きさの衝撃を伝えて対消滅させるのよ」

貞子「それ体の中で衝撃がぶつかり合ってもっとひどいことになりませんか?」

メイド「もしくは一瞬ずらすことによって心臓が止まると同時に心臓に衝撃を与えて動かすって言う荒業があるけど」

貞子「私にはそのタイミングを計ることができないですね」

メイド「難しいわね・・・・・・いっそのこと新しいのに取り換えられたらマシになるかもしれないけれど。私じゃダメなのよね」

貞子「え、お姉さんそんな方法考えてたんですか?」

メイド「だって私なら心臓が止まったところで自分で蘇生できるし」

貞子「思ったよりぶっ飛んだ思考でした」

メイド「ただ、血液型がね。私はAで男はBだから。姉弟で違うってのも面倒なのよね」

貞子「その壁は乗り越えられないんですね」

メイド「それもできないかと思ってね、幼馴染に血液全部抜いて入れ替えるとかできないかって聞いてみたのよ。所謂交換輸血ってやつ?」

貞子「だから思考がぶっ飛んでるんですって」

メイド「でも造血細胞とか諸々も入れ替えないといけないから現代科学じゃ無理だって言われたのよね」

貞子「今更ですけどお姉さんものすごくブラコンですね?」

メイド「そうかしら?普通だと思うけど」

貞子「普通の姉は弟のために心臓とか血液とかを丸々差し出そうと・・・・・・あれ、思うのかな?」

メイド「さっき言った幼馴染も弟のために医師免許取ったりしてるし、私の後輩も弟妹たちのために遠方で稼げる方じゃなくて近場の仕事を選んだし」

貞子「世の中のお姉さんはすごい人ばかりですね・・・・・・・ほんとうに」
72 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:02:09.23 ID:dgPNsq/R0
メイド長「あら、世の中には私みたいに両親も兄弟も放ったまま10年以上あってない姉もいるのよ?」

貞子「メイド長?なんかまた複雑そうな家庭ですけど」

メイド長「ただ単に若気の至りで家出しただけだけど」

貞子「思ったより単純でした」

メイド長「あの頃はただの不良娘でね、家族には迷惑ばっかかけたもんよ。そんな私が今ではこんな大きなお屋敷のメイド長。人生なにがあるかわからないもんだわ」

メイド「私だって就活に失敗してお嬢様に拾われるまではメイドなんて選択肢なかったし」

貞子「ここのメイドさんたち、結構複雑な事情が多いんですね」

メイド長「まあ本家のお嬢様の専属メイドは趣味でやってるけど」

メイド「幼馴染で放っておけないからという理由だけで始めてましたね。忠誠心は高いけどいかんせん公私を分けられないところが玉に瑕でしょうか」

貞子「趣味でメイドさんやってる人もいるんですね。ちなみにここ、執事さんを見ないんですけどいらっしゃらないんですか?」

メイド長「執事研修をできるものがいなくて」

メイド「この女所帯の中で少数の男性に仕事をさせるのはかわいそうだと思わない?」

貞子「あー」

メイド長「とはいえ、昔はいたわよ。メイドの一人と結婚して普通の会社に行ったりバーテンダーの道に進んだりといろいろあって皆辞めちゃったけど」

貞子「あっ、やっぱり執事とメイドの恋愛とかもあるんですね。いいなー、そういうの憧れるなー」

メイド「統計確率で考えると1%切るわよ」

メイド長「そうホイホイあったら私ら独身じゃないわよ」

貞子「あ、はい。ごめんなさい」
73 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:02:55.20 ID:dgPNsq/R0
貞子(実際、男さんの問題は心臓だけじゃないですしね)

貞子(お酒で死んだり打ち所が悪くて死んだり)

貞子(どうも死ぬってことに対する運がとても悪い気がします。悪運が無いといいますか)

貞子(でも結果として誰かが蘇生してると考えるとそうでもないんでしょうか?)

貞子(心臓交換とかそういう話はメリーさんにはしないようにしておきましょう。彼女ならワンチャン自分のをあげるとか言いだしそうですし)

貞子(んー、こう考えるとみなさん愛が重いですね。恋人である隣人さんはともかくとして、メリーさんといいお姉さんといい心臓『程度』とか言っちゃいそうな人が多い)

貞子(私は流石に心臓を捧げたりはできないですね。死にたくないですし)

貞子(・・・・・・こう言うと私が薄情に見えてきますね)

貞子(隣人さんにああは言ったものの、私だって本当は男さんのこと・・・・・・)

貞子(・・・・・・そろそろ、潮時ですかね)

メリー「すごいの。考え事してるだけでみるみるうちに家がきれいになっていくの」

花子「やばいね。新居みたいにピッカピカだよ」

隣人「これがメイド修行を終えた貞子さんの実力ですか・・・・・・私も花嫁修業の一環として教わった方がいいんでしょうか」

メリー「隣人はまず感情のコントロールからなの。なんかあるとすぐスイッチが入って昂るのをやめるの」

花子「トレーニングやってみる?頑張って煽るけど」

隣人「花子ちゃん言い返したら泣くじゃないですか。嫌ですよ」
74 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:03:58.74 ID:dgPNsq/R0
貞子「んー、寮って言っても結構いろいろあるんですねー。どこも細かい規則みたいなのはなさげですけど・・・・・・」

男「ん?貞子さん、それ何のパンフレット?」

貞子「メイド寮のパンフレットです。どこもそこそこの違いがあって割と悩むんですよね」

男「・・・・・・メイド寮?」

貞子「はい」

男「ってことは、ここを出るってことか?」

貞子「はい。そのつもりです」

男「・・・・・・仕事の都合でってことなら仕方ないけど、長居したら迷惑だからとかそう言う理由で出るっていうのなら反対するぞ」

貞子「迷惑だからというわけでもなくて。もちろん仕事場が近くなるので楽だというのもあるんですが、それ以上にプライベートの空間がほしいというか」

男「あー、なるほど。ウチ12畳一間だしな。個人部屋を用意しなかったのは俺の落ち度だ。悪かったな」

貞子「いえいえ、居候の身でそんな贅沢なこと言えませんよ。ただ、こうやって安定した稼ぎを得ている以上はやっぱり自立すべきですしね」

男「おお・・・・・・ついに貞子さんから自立の一言が!」

貞子「嬉しいですか?」

男「当然だろ。もう俺の手が必要無くなったってことだろ。精神的にも経済的にもさ。つまりは成長なわけだ。嬉しくて当然だろ。まあ、寂しくもあるけどな」

貞子「・・・・・・なるほど」

男「え?」

貞子「ああいえ、なんでもないです。男さんにはたくさんお世話になりましたし、また折を見て恩返しにも来ますから」

男「機織りでもしてくれるのか?」

貞子「メリーさんはモデルついでに服飾も学んでるそうですね。残念ながらメイド業に新しく物を作るという概念がありませんので」

男「あったらやってくれるのか。てかメリーさんはメリーさんで新しいスキルを身に着けてるのか」

貞子「モデル兼任の弟子みたいなものらしいですね。聞いたところによるとメリーさんを雇ってる方も元人形だとか」

男「まじかよ。世の中の人形ってよく動くんだな」

貞子「ほんとにですよ」
75 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:04:51.70 ID:dgPNsq/R0
貞子(男さんが私たちを性的な目で見ない理由がわかりました)

貞子(彼にとって、私たちは庇護対象だったわけです。自分の娘のようなもの)

貞子(一部の変態を除いて一般の父親が娘に欲情しないように、男さんも私たちを女として見ていなかった)

貞子(・・・・・・そりゃスタートラインに立ってるわけないじゃないですか。自分で言ってて正解だったなんて)

貞子(彼が養うと決めてからは無意識に父親気分になっていた。もしくは、養うことを決めるために父親になり切っていた?)

貞子(まあ父親として見ると多少無茶なことは言っていますが・・・・・・本当に心の底から嫌がることを本気で言うことはありませんでしたね。多分)

貞子(よく考えると以前からそういう気はありましたね。隣人さんの騒動のときも私たちを自立させようとしたりだとか)

貞子(あの時は厄介払いみたいに受け取ってしまいましたが、今考えると巣立っていってほしかっただけなのではないでしょうか)

貞子(ならば、こうやって自立することがなによりもの恩返しになる。きっと、男さんも心から喜んでくれる)

貞子(・・・・・・ええ。それが一番なハズなのです。男さんが喜んでくれるのなら、私も嬉しい)

貞子(それなのになぜ、こんなにも寒く感じてしまうのでしょうか)

貞子(・・・・・・いけません。依存したままでは男さんが心配してしまいます。滅私奉公、それこそがメイドの性分)

貞子(今こそ、自立の時なのですから。もしかしたら私を見習って他の2人も自立しようとするかもしれませんし)

貞子(あの二人よりも成熟している私が、見本にならないといけないのです。みんな、自分の道を歩む時期が来たんです)

貞子(・・・・・・寂しいです、男さん)
76 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:05:27.34 ID:dgPNsq/R0
男「えーでは、貞子さんの門出を祝って、かんぱーーい!」

「「「「かんぱーーい!」」」」

メリー「・・・・・・って、乾杯したのはいいんだけど、なんで貞子が全部料理作ってるの?」

貞子「当たり前です。メイドが料理を作らなくて誰が作るのですか」

メリー「今日ぐらいゆっくりしてればいいのになの」

花子「まあまあ、いいじゃんいいじゃん。作りたいんなら作らせればさ」

男「貞子さん、メイドやる以前から料理上手だったけどメイドになってからさらに上達したよな」

貞子「先輩方の教えがうまかったからですね。あとは私のセンスでしょうか」

メリー「謙遜してるのか自尊してるのかわからない言い方やめるの。でもおいしいの」

隣人「・・・・・・私もメイド料理を」

貞子「アマゾンのジャングルで1週間生活したいですか?」

隣人「やっぱいいですごめんなさい」
77 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:06:22.56 ID:dgPNsq/R0
男「メイド修行といい芸能人レッスンといい大変そうだな」

メリー「山奥とかジャングルとかすごいの。こちとら空調が整った空間でしか過ごしてないの」

花子「山奥も楽しかったよ。普通にキャンプって感じで」

貞子「ジャングルの中は・・・・・・先輩メイドたちに驚かされましたね。なんでワニのデスロールにコークスクリューで対抗して勝利するのか」

男「なんだそれメチャクチャ聞きたい」

貞子「みなさん素でそのあたりの猛獣より強いんですよね。あの場所では私たちが食物連鎖の頂点でした。私も随分と鍛えられましたし」

隣人「貞子さんもお姉さんがやってたみたいなやつできるんですか?メイド真拳」

貞子「メイド真拳とはメイドとして日々行う業務を拳法に取り入れた武術です。なので動きを覚えたら自然とメイド仕事ができるようになりました」

男「メイド業務よりも先にメイド真拳を覚えたのか」

貞子「はい。特にお姉さんからはかなり熱心に教えていただきましたよ」

男「姉ちゃん、弟子欲しがってたからな・・・・・・」

メリー「花子やばいの。これは私たちも強化が必要なの」

花子「えーと、芸能人のスキルとしてはやっぱりダンスで竜巻おこしたりサイン色紙を飛び道具にして切り裂いたり?」

メリー「衣装モデルはなんなのなの。服を着替えてその服に合った動きをする能力とかなの?」

隣人「製菓会社勤めとしましてはお菓子で戦うべきなんでしょうか?コーラの原液なら使えますけど」

男「仕事=戦闘力みたいな考えをやめろ」
78 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:06:55.93 ID:dgPNsq/R0
貞子「それでは、行ってきますね」

男「ああ。がんばってな。気が向いたらまた遊びに来てくれ」

メリー「いつでも戻ってきたらいいの。てか週一ぐらいで掃除しに来てくれたら嬉しいの」

隣人「先輩がすぐモノを散らかしちゃいますからね」

貞子「自分でしてください」

男「が、がんばる」

花子「メイド仲間さんたちにも配信見ろって言っといてね」

貞子「はい。メイド全員で見ます」

花子「ついでにスパチャも投げてね」

貞子「低評価連打なら」

花子「ぶっ殺すぞテメェ」

男「まあメリーさんが言ってたように、いつでも戻ってきてくれていいからな。困ったことがあったら相談にも乗るし」

隣人「貞子さんには助けられましたから、先輩に相談しにくかったら私でも大丈夫ですよ!」

貞子「・・・・・・ええ。そうさせてもらいますね。ではみなさん、また会いましょう!」
79 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:08:13.60 ID:dgPNsq/R0
―1か月後―

同僚「貞子さん。今日の夜、時間は空いてますか?」

貞子「え?はい。私はいつでも暇ですよ」

同僚「その返答はなんて反応したらいいか・・・・・・まあ暇ならちょっとご飯食べに行きませんか?焼肉が食べたいんです」

貞子「それならこう、奥様の前でぽろっともらせばA5ランクの焼肉が食べられますよ」

同僚「貞子さん強かですね。ってそうじゃなくて!違うんです!私はあのチープでごはんといっしょに無限に食べられる焼肉が食べたいんです!」

貞子「まあその気持ちもわからなくは無いですが」

同僚「そしてそのままカラオケオール!」

貞子「明日の仕事に差し支えますよ」

同僚「なに言ってるんですか。明日はお休みじゃないですか」

貞子「あ、そうでしたね。どうも休日の感覚があまりなくて」

同僚「あー、まあわかりますよ。部屋から出ても同僚だらけですしね。自分が休みでも他の出勤する人とか見てたらあれ、今日ってどっちだったっけって思いますし」

貞子「専属の人とか大変そうですよね。同僚さんも今専属メイドの研修中でしたっけ?」

同僚「はい。未だお嬢様から太鼓判をもらえないですけど・・・・・・」

貞子「あのお嬢様もたまにメイドに交じってメイドをやってる様子を見ますが、あれはいったい?」

同僚「なんとあのお方、3年でメイド長から一流メイドの認定を受けた超エリートさんなんです。そして彼女も現職メイドらしいです」

貞子「お嬢様なのにメイドを・・・・・・?」

同僚「ですです。なぜかうちのメイドたちが有休をとるタイミングを把握してて、5人以上抜ける時に入ってくれるんですよ」

貞子「へぇ、いわゆるピンチヒッターってやつですか」

同僚「そして私は彼女の妹たちの専属を勤めるルートに入ってしまっているので仕事ぶりを評価されるわけです・・・・・・」

貞子「毎度お疲れ様です」
80 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:08:58.93 ID:dgPNsq/R0
貞子(寮や職場の人たちは本当に良い人たちばかりです)

貞子(なにかと気にかけてくれますし、かわいがってもらえてますし)

貞子(なんていうか、大学のサークル仲間とかこんな感じなんでしょうかね。大学行ってないですけど)

貞子(見た目同い年ぐらいの人たちも友達って感じで気兼ねなく話せますし)

貞子(ええ、本当に良い人たちばかりで・・・・・・)

貞子(・・・・・・これで、よかったのです)

貞子(子供はいつか、巣立たないといけない。彼にとって私が子供だと言うのなら、そうするのが一番なのです)

貞子(・・・・・・専業主婦とか、正妻とか。夢のまた夢だったわけですね)

貞子(アンサーが言っていた通り、ただの願望。夢が叶わないから現実なのですし)

貞子(・・・・・・あの家は、温かかった)

貞子(本当に家族みたいでした。男さんは遠慮なしにいろいろ言ってきて、メリーさんは口うるさくあれをしろこれをしろと言ってきて、花子さんがわがままを言うわけです。それに便乗して隣人さんも男さんに甘える)

貞子(そうすると男さんが困って、メリーさんがまた口うるさくなって、隣人さんがシュンとして花子さんが煽って)

貞子(そして私は、メリーさんを諌めたり花子さんと一緒になって煽ってみたり隣人さんを横目にアピールしてみたり)

貞子(花子さんの仕事ぶりをみんなで応援したり、メリーさんの写真を見てあれこれ言い合ったり、隣人さんと男さんをもてはやして見たり嫉妬してみたり)
81 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:09:43.29 ID:dgPNsq/R0
貞子(・・・・・・今は、どうでしょうか。みなさん、確かにとてもいい人たちばかりです)

貞子(不必要に和を乱したりはしない。同じ仕事をしているから話も合うし共感もできる)

貞子(でも、なんだか壁を感じてしまう。相手のプライベートに必要以上に踏み入らないように気を遣っている)

貞子(そりゃそうです。どこまで行ってもただの同僚で他人なんですから。仲が悪くなったりするとそれだけで立場も悪くなりますからね)

貞子(だから、一定の線引きをせざるを得ない。あくまでも同僚、あくまでも友達。そんな距離感を感じてしまう)

貞子(こういうの、ホームシックっていうんでしょうね。いずれは慣れるんでしょうけど)

貞子(でも、考えてしまう。もし私があのままあの家に居続けたらどうなっていたのか。変わらないけど心地よいあの日々が続いていたんじゃないでしょうか)

貞子(・・・・・・そして私は、自分の想いを押し殺したまま、男さんたちを眺め続けて)

貞子(・・・・・・なんだ。諦めきれてないじゃないですか)

貞子(こうやって離れれば忘れられると思ったのに。仕事の忙しさや新しい生活への苦労が考える暇さえ与えてくれないと思ったのに)

貞子(この職場はとってもホワイトで、お休みも多くて自由も多い。仕事もそこまで忙しくない。だから、時間はたくさんある)

貞子(メイド長曰くこの隙間の時間を使ってみなさん趣味をしたり婚活をしたりしてるらしいですけど)

貞子(今の私にとっては、それすらも煩わしい。考える時間がなければ、悩みなんてなくてすむのに―――)
82 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:11:18.94 ID:dgPNsq/R0
ブーブー

貞子(電話、メリーさんから?)

貞子「もしもし、メリーさん?貞子ですけど」

メリー『貞子!今手空いてるの!?』

貞子「ええっと、休憩中です。あと15分ぐらいで仕事に戻ります。急いでる様子ですけど、なにかありました?」

メリー『やばいのやばいの!男のおじいちゃんからの電話で、その家からこの街まで向かう道の地蔵が破壊されたって!』

貞子「お地蔵さんが破壊された、なるほど、それは確かに・・・・・・え?」

メリー『つまり八尺様が男を狙って来てるの!なのにこんな日に限って男はスマホを二台とも置き忘れて外出してるの!』

貞子「えええっ!?だ、誰か近くには!?」

メリー『わからないの!今私ら全員で行きそうなところを必死で探してるの!行先をちゃんと聞いてればこんなことにはならなかったのになの!』

貞子「なるほど、わかりました」

メリー『仕事で忙しいっていうなら無理は言わないの。貞子も今は自分の生活があるの。ただ、一緒に探してくれたらすごく助かるの』

貞子「ええ、もちろん行きます。男さんの、みんなのためですから。ではいったん切りますね」

メリー『ごめんなの!頼んだの!』ピッ

貞子「・・・・・・さて、と。同僚さん、ごめんなさい!急用が出来たのでしばらく抜けます!」

同僚「はいは・・・・・・え?さ、貞子さん!?どこに行くんですか!?おーい!!!!せめて行先をーーーー!!!!」

同僚「・・・行っちゃった。スマホも置きっぱなしで、よっぽど急いでたんですね」

同僚「はぁ、しかたありません。穴埋めはしておきますか」

同僚(ていうか今、テレビの中に入っていったよね?貞子さん、もしかしてそっちの人なの?)

同僚(・・・・・・心配だなぁ。メイド長に報告して私も探しに行きますか)
83 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:11:58.95 ID:dgPNsq/R0
男(・・・・・・貞子さん、元気にしてるかな)

男(姉ちゃんとは正確には職場が違うからあまり様子は聞けないし。新しい環境で馴染めてたらいいんだけど)

男「まあ、同居してた時よりはいい環境だよな。個人部屋あるし飯も豪華だろうし」

男(・・・・・・便りが無いのは元気な証拠って言うしな。むしろ清々してるのかも)

男「とはいえ、気になるのも事実。誰かを通してそれとなーく話が聞けないもんかね。次期社長とか」

男(あの人あの屋敷に結構出入りしてるらしいしな。もしかしたら貞子さんの事も知ってるかも)

ポポポポポポポポポポ

男「・・・・・・なんか、懐かしいフレーズ?鼠先輩だっけ?」

ポポポポポポポポポポ

男「にしてはやけに単調な・・・・・・」

八尺様「ポポポポポポポポポポ」

男「・・・・・・」

男(で、でけぇ!俺よりでかい!立ったまま女に見下ろされるのとか子供の頃以来だぞ!?)

男「あ、あの、何かご用ですか?」

八尺様「ポポポポポポポポポポ」

男「・・・・・・大きくて、ポポポポ。なーんか聞いたことあるような」

八尺様「ポッ」ブンッ

男「えっ」

「男さん!!!!!」
84 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:12:45.15 ID:dgPNsq/R0
―メイド真拳奥義
 お帰りくださいませ―

ガッ

男「!?」

八尺様「ポッ、ポポポポッ」

貞子「自分の拳は自分で喰らいなさい!」

男「さ、貞子さん!?」

貞子「男さん、これやばいですよ!八尺様ですよ!」

男「・・・・・・えっ?また都市伝説!?しかもこんな白昼堂々!?」

八尺様「ポポポポ」

貞子「男さんのお爺さんのから電話があったそうで、八尺様が男さんを狙っていると聞きました」

男「爺ちゃんから!?」

貞子「ってことは昔から八尺様に目を付けられてたってことですね。男さん、やっぱりあなたの運おかしいですよ」

男「なんだかなぁ・・・・・・でも貞子さん、仕事は?」

貞子「抜けてきました!大事な時に大事な人を守れなくて何がメイドですか!」

男「メイドってそういうものだったっけ?」

貞子「とにかく!私が来たからにはもう安心です!メイド真拳はカウンターによって相手の攻撃を無力化することに特化した拳法!決して負けることはありません!さあ、どこからでもかかってきなさい!」

八尺様「・・・・・・」

貞子「・・・・・・」

八尺様「・・・・・・」

貞子「・・・・・・あれ?」

男「カウンター特化って言ったから攻撃を仕掛けてこないんじゃないか?」

貞子「・・・・・・そうでした!」
85 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:13:29.92 ID:dgPNsq/R0
貞子「ど、どうしましょう!男さん!私やメリーさんを撃退したときみたいになにかいいアイデアはないですか!?」

男「あれは二人とも小細工頼りだからなんとかなっただけだっての!こんな物理で攻めてくるやつは無理だ!」

八尺様「ポポポポポポポポ」

貞子「このまま根競べをするっていうのもいいですけど・・・・・・ってか、男さんはどうしてこんな場所に?」

男「あー、実家がこのへんで、姉ちゃんとちょっと話をしようと思って・・・・・・」

貞子「なるほど。だからお屋敷からそこそこ近いんですね。てか、御実家電車で一駅ぐらいの距離なんですね」

男「ああ、うん。あとここ、前の家からもそこそこ近い」

貞子「あー、なるほど。つまり実家から離れたのは私たちのせいですね。ごめんなさい」

男「いや、それは別にいいんだが・・・・・・」

八尺様「ポポポポポポポポ」

男「どうするよ、これ」

貞子「私も構えを解くわけにはいきませんし、向こうの狙いは男さんですから男さんも動いたらいけませんし」

男「つまりあれだな、八方塞がりってわけだな。八尺様だけに」

貞子「男さん、さては結構余裕ですね?」

男「状況が状況だからどうにも緊迫できなくてな」

貞子(実は私は結構神経使ってますけどね!とがらせてますけどね!カウンター狙いってかなり疲れるんですけどね!!!!)
86 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:14:01.57 ID:dgPNsq/R0
「おーーーーーい!」

男「ん、あれは・・・」

貞子「え、同僚さん?」

八尺様「ポッ」ブンッ

貞子「しまっ――」

男「貞子さんっ!!!」バッ

貞子(だめ、避けられない。男さん、前に出ちゃダメ――)

同僚「でりゃああああっ!」バキッ

八尺様「ポッ!?」
87 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:14:43.63 ID:dgPNsq/R0
同僚「大丈夫ですか貞子さん!っと、あと先輩の弟さん!」

男「あ、う、うん。大丈夫。貞子さんは?」

貞子「へ、平気です、けど」

八尺様「ポポポポポポポポ」

同僚「えーと、あなたに個人的な恨みはありませんがこの方たちは私の仲間と先輩の弟なのでできれば退散していただけるとありがたいのですが」

八尺様「ポポポポ」

同僚「その気はないわけですね、はい。では申し訳ありませんが人間じゃないっぽいですし退治させていただきます」

貞子「でも、メイド真拳ってカウンター特化だから退治って言っても」

同僚「たしかに、メイド真拳では向こうから攻撃してこないとだめですね。ですからこれは、メイド真拳ではありません!」

―捧愛拳
 慈愛―

同僚「はあああっ!!!」ズドン

八尺様「ポポポポポッ!?」バタッ
88 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:16:09.03 ID:dgPNsq/R0
同僚「これがメイド真拳亜流・捧愛拳です」

貞子「えーと、これももしかしてそのうち私も?」

同僚「あ、これはお嬢様が独自に発展させたものなのでお嬢様から教えてもらわない限りは別に習得する必要はありませんよ」

男「何者なんだ、お嬢様・・・・・・」

貞子「それにしても、八尺様を一撃で・・・・・・都市伝説バリアってなんでしたっけ」

同僚「ああ、あれって人間限定でしたよね?私、シルキーっていう魔物でして。なので対人間バリアが効かなかったわけです」

男「姉ちゃんみたいにバリアごとぶっ倒したわけじゃないのか」

同僚「そんな先輩やお嬢様みたいなことできませんよー。じゃあ私はちょっとこの人を回収してメイド長に報告してきますから・・・・・・っと、忘れてた。貞子さん、これ、おきっぱなしでしたよ」

貞子「あ、私のスマホ。ありがとうございます」

同僚「いえいえ。それにしても貞子さんも、恋人さんがいらっしゃるなら言ってくれればよかったのに。メイドだからってお屋敷第一じゃなくていいんですよー?」

貞子「あ、えっとこの人はですね」

同僚「だーいじょうぶです。私、みんなからスピーカーって呼ばれてますから」

貞子「大丈夫な要素どこにありますか!?」

男「あの、同僚さん?」

同僚「メイド長や奥様旦那様には私の方からうまーく言っておきますので、おふた方はこのままゆるりとお過ごしください。それでは失礼しますねー」シュッ

男「・・・・・・あの人、予備動作無しで見えなくなるぐらいジャンプしたぞ」

貞子「お姉さんもお嬢様の専属って言ってましたし、必須スキルなのかもしれませんね」

男「メイドのか?」

貞子「・・・・・・メイドって、なんなんですかね」

男「わからん。とりあえず出てきたらSSのジャンルが変わることだけは確かだ」

貞子「・・・・・・とりあえず、一旦帰りましょうか」

男「ああ。メリーさんたちも心配してるだろうし。連絡も・・・・・・あっ、スマホ忘れた」

貞子「もう、肝心な時に抜けてますね、男さんは」

男「すまん、連絡頼む」

貞子「はいはい、お任せくださいっと」
89 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:16:57.43 ID:dgPNsq/R0
メリー「はぁ、なんだかんだ無事でよかったの」

花子「心配したんだからね!貞子が駆けつけてなきゃどうなってたことやら!」

男「ご迷惑とご心配をおかけしまして申し訳ありません」

隣人「まったくですよ。貞子さんもお仕事中にごめんなさい」

貞子「いえ、有休消化という形にしてもらいましたし大丈夫ですよ」

男「こんな形で有休使わせて悪いな。なんかで返したいところだが」

貞子「なるほど、つまりご褒美ックスですね」

男「すまん、聞こえなかった。二回目は言わなくていいぞ。てか言うな」

貞子「ご褒美ックスですね!!!!」

男「言うなっつっただろ!」

隣人「なるほど、つまり私は対抗して恋人ックスを求めろと」

メリー「お前ら相変わらず頭の中がピンク過ぎなの」

花子「貞子も一ヶ月離れて過ごせば多少はピンクも抜けると思ったんだけど、変わらずだねー」

貞子「私を染めたければペンキでも持ってきなさい」

隣人「私の部屋に赤ペンキならありますよ」

男「被るか塗るかどっちがいい?」

貞子「冗談ですごめんなさい」

メリー「こいつらついにタッグを組みだしたの」

花子「いちゃいちゃしやがって。リア充爆発しろ」
90 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:17:43.04 ID:dgPNsq/R0
貞子(・・・・・・このやりとり。なんだか懐かしいですね)

貞子(たったの1ヶ月離れていただけなのに、なんでこんなにも懐かしんでしまうのでしょうか)

貞子(今日のごはんは、これは隣人さんの味ですね。みんな味付けが違うのでわかりやすいです)

貞子(メイドの食事はレシピがありますから味が均一化されてるんですよね。品質保証はありますが、面白味は無いです。おいしいんですけど)

貞子(・・・・・・なんでしょうね。こうやって冗談を言い合ったり叱られたり同調したり便乗したり、たったこれだけのことなのにとても温かい)

貞子(実家のような安心感とは言いますが、まさにこういうことなんでしょうね)ポロポロ

貞子(本当に、心地よくて、過ごしやすくて、温かくて、帰って来たって思えてしまって)ポロポロ

メリー「さ、貞子!?どうしたの!?」

隣人「ま、まずかったですか!?泣くほどのはずれがあたりました!?」

男「ペンキは被せないし塗らないからな?大丈夫だぞ?」

花子「多少はピンクのままでもいいって!ね?」

貞子「違うんです、そうじゃないんです。そうじゃないんですけど、そうなんですぅ・・・・・・」ポロポロ

メリー「言ってることが支離滅裂なの!」
91 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:18:20.63 ID:dgPNsq/R0
貞子「どうして、どうしてなんですかね。どうして、涙が出ちゃうんですか。どうして、こんなにも心地いいんですか。もう、帰るつもりなんてなかったのに、帰ってきたって思っちゃうんですか」ポロポロ

男「さ、貞子さん?帰るつもりがなかったって・・・・・・」

貞子「・・・・・・お酒!お酒ください!そこの棚の下!私の秘蔵のリキュールがありますから!」

隣人「えっと?・・・・・・あ、これですか?」

貞子「はい!そのままください!」

隣人「あ、はい。何で割ります?ロックとか炭酸とか・・・・・・炭酸水あったかな」

貞子「んぐっんぐっんぐっ」

隣人「ラッパ飲み!?」

メリー「貞子やめるの!それは直で飲むことを想定されたもんじゃないの!体壊すの!」

貞子「うるさいです!飲まなきゃやってられないんです!達観してるメリーさんにはわからないんです!」

メリー「何の話なの!?」

花子「ほら、せめてロックで割るとか」

貞子「お子様は黙ってなさい!」

花子「誰がお子様だこら!日本酒寄越せ!私も飲む!」

隣人「あ、はい。日本酒ですね」

男「貞子さん、とりあえず一旦落ち着いて」

貞子「男さん!男さんが悪いんですからね!」

男「え、俺?」
92 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:19:25.14 ID:dgPNsq/R0
貞子「折角恋人ができてそっちに集中するかと思ったのに!扱いを全く変えてこなくて!」

隣人「花子ちゃん、どうぞ。貞子さんもちょっとチェイサー入れて」

貞子「こんなかわいい恋人さんがいるんですよ!?良妻ですよ!?早く結婚しろ!」

隣人「貞子さん?突然褒めてどうしました?そんなこと言われてもお酒しか出ませんよ」

メリー「出すななの」

男「えっと、貞子さんが何を言いたいのか」

貞子「もっと恋人らしくしてくれれば、さっさと結婚してくれれば私だって諦めがつくのに!なんで態度が変わらないんですか!」

隣人「・・・・・・はい?」

貞子「私だって、私だって本当は、本当は・・・・・・ほんとう、は・・・・・・zzz」

花子「寝たね」

メリー「寝たの」

隣人「貞子さん・・・・・・先輩?」

男「・・・・・・いや、ここまで言われて察せないほど鈍感じゃないけどさ。とりあえず貞子さんを布団に移そう」

メリー「貞子のやつ、衝撃の暴露をして寝やがったの。明日記憶残ってたらこいつ大変なの」

花子「にしてもなー、貞子も変な気回してたんだねー。あんだけピンクピンクって自称すらしてたのに随分と控えめじゃん」

隣人「・・・・・・私のせい、なんでしょうか。私が」

メリー「それは隣人が気に病むことじゃないの。私ら居候組の意見としては全会一致だったのは確かだし、そこに関しては変わりはないの」

花子「ただ、こいつがそれとは関係なしにバカで不器用だったってだけでさ。って言っても気にするなって方が難しいよね。どう、メリーもなんか暴露してみる?」

メリー「私が暴露することなんか何もないの。しいて言えば家賃もうちょい払わせろなの。なんなら全額持つの。今のメリーさんにはそれくらいの余裕があるの」

男「全員一律で均等にって話だっただろ。俺も金には困ってないし」

隣人(・・・・・・卑怯だな、私)
93 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:20:00.55 ID:dgPNsq/R0
貞子「ん・・・・・・あれ、朝・・・・・・あれ、部屋の窓ってこんなに大きかったっけ・・・・・・?」

貞子「・・・・・・?あれ?私の部屋じゃない?」

貞子「・・・・・・?えーと?このベッドは見覚えがあります。男さんのです。そして床には男さんとメリーさんが寝てます」

貞子「隣人さんと花子さんがお隣で?メリーさんと隣人さん逆じゃありません?」

貞子「・・・・・・って、そうでした。私昨日八尺様の件のあとそのまま家に帰ってきて、みんなでごはん食べて、えーと」

メリー「ヤケ酒して告白まがいのことして寝やがったの」

貞子「ああ、そうなんですね。ありがとうございま・・・・・・え?」

メリー「おはようなの。二日酔いとかは?」

貞子「いえ、全然。ていうか、告白?誰が?」

メリー「貞子が」

貞子「誰に?」

メリー「男に」

貞子「・・・・・・え?」

メリー「正確に言うと、恋心の暴露なの。自分で暴走して言うだけ言って潰れやがったの」
94 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:21:07.60 ID:dgPNsq/R0
貞子「・・・・・・そう、ですか。言っちゃったんですね、私」

メリー「言いやがったの。おかげで隣人がちょっと気を揉んでるの」

貞子「ああ、バカだなぁ。なんてバカなんでしょう。私って、ほんとに」

メリー「このまままた出て行くの?」

貞子「・・・・・・だって、いられないじゃないですか。こんなことじゃ」

メリー「んなことしたって男も隣人ももやもやしたまんまなの。どうせやるなら言いたいこと全部言えなの」

貞子「もう、うるさいですね。メリーさんだっていろいろ言ってないくせに」

メリー「人形は持ち主への愛が重くなるのは仕方ないことなの。メリーさんが生まれた経緯だって愛情が憎悪に変わったからなの。そういうものなの」

貞子「それを言えって言ってるんですよー」

メリー「残念ながら私は貞子と違って頭がピンクじゃないの。愛情ってのはもっといろいろあるの」

貞子「・・・・・・ええ、本当に。私からの愛情と、男さんからの愛情は似て非なるものですから。だから、一緒にはいられないんです」

メリー「そんなの当然なの。男からすれば私らは養う対象なんだからそういう目で見るわけにはいかないの。じゃないとそれは養うんじゃなくて搾取になるの」

貞子「そんなこと」

メリー「男からすればそうなっても仕方ないの。こいつの姉を見たらわかるの。あいつも愛が重かったの。ってことはこいつも重いの。だからそういうことは絶対にしないの」

貞子「・・・・・・」

メリー「貞子。もしちゃんと言いたいことを言えたなら、その後でめちゃくちゃいい情報を教えてやるの」

貞子「え?」

メリー「一般の職場や社会じゃ知り得ない情報なの。さ、わかったらさっさと言えなの」

貞子「え?え?で、でも」

メリー「私はとりあえず隣人に教えてくるの。いい報告待ってるの」

貞子「あ、ちょっと!メリーさん!」
95 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:21:56.77 ID:dgPNsq/R0
男「・・・・・・あ、れ・・・・・・?朝、か・・・・・・?」

貞子「あっ、お、男さん。おはようございます」

男「ああ、おはよう、貞子さん。・・・・・・昨日の事、覚えてるか?」

貞子「いえ、全然」

男「そ、そうか」

貞子「ですが、メリーさんから全部聞きました」

男「えぇっ?」

貞子「・・・・・・メリーさんは、多分お姉さんですね。口うるさいながらもみんなをまとめて引っ張ってくれる我が家のお姉さん」

男「え、いきなりどうした?」

貞子「花子さんは生意気な妹です。でも、とってもかわいいんです。だからつい甘やかしちゃうところもあります」

貞子「隣人さんは、娘みたいな感じですね。やろうとしてることを応援してあげたくなりますし、自分の事よりも優先してあげたい」

男「すまん、悪いが話が見えない」

貞子「私から見たこの家のみんなの役割ですよ。暗くて冷たい井戸の底とは違う、明るくて温かい家庭。ここはそんな場所だと思ってます」

男「・・・・・・」

貞子「家族、って言うんですよね、こういうの。男さんから見たらきっと、私やメリーさん、花子さんは娘のような感じなんだと思うんです」

貞子「他のみんながどう思ってるのかはわかりませんが、少なくとも私はこう考えてました。だから、今までの環境を壊したくなかったんです」

貞子「でも、ダメでした。私たちが男さんの幸せを邪魔しちゃいけませんから。だから、私は隣人さんの後押しを決めたんです」

貞子「それでも、私自身の想いが消えるわけじゃありません。忘れたくって遠くに離れても、この場所の温かみを忘れることができない」

貞子「ごめんなさい、男さん。私は弱い女です。良妻賢母になんかなれません。大和撫子にもなれません。私には、この家庭を守ることなんてできません」
96 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:22:33.84 ID:dgPNsq/R0
貞子「男さん、私はあなたのことが好きです。異性として、1人の男性として、あなたの事を愛しています」

男「貞子さん・・・・・・」

貞子「盛大に振ってください。容赦なく切ってください。あなたを呪い殺そうとした女が、あなたに受け入れられていいはずがないのです」

男「貞子さん」

貞子「あなたの幸せを奪おうとした女が、幸せになっていいはずがないのです。一度人生を終えた女が、新たな人生なんて歩んではいけないんです」

男「貞子さん!」

貞子「だから、おねがい・・・・・・ひどいことを言って、私を捨ててください。じゃないと私、弱い女だから、期待してしまうんです!もしかしたらって思ってしまうんです!」

男「貞子さんの気持ちはわかった。これまでちゃんと向き合ってこなかったのは俺のせいだ。悪かった」

貞子「ダメです、そんなこと言わないでください。これは私のわがままで、私が勝手に思ってるだけの事なんですから」

男「でも、俺にはもう隣人が――」

メリー「はいそこまでー、なのー」
97 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:23:57.08 ID:dgPNsq/R0
貞子「・・・・・・メリーさん?今結構いいところなんですけど?」

メリー「ちゃんと言いたいこと言えたら。良い情報教えてやるって言ったの。私はそのへん嘘つかないの」

貞子「それにしてもタイミングってものがあるでしょう!」

メリー「そうなの?むしろ最高のタイミングだと思うの」

男「メリーさん、俺結構頑張って話を進めようとしたんだけど」

メリー「進められたら困るのはこっちなの。いいの?私らは隣人も含め人外なの。そこはオッケーなの?」

貞子「ええ、もちろん」

メリー「んで、人と交われる人外ってのは子供が作りにくいものなの。寿命が長いってか実質無いから仕方ないの」

男「そういや隣人もそんなこと言ってたな。妊活するのも大変だって」

メリー「だから婚姻に関する法律は人間用じゃなくて人外用の方が適用されるの。これは現代社会のどの国でも一緒なの」

貞子「えっと、つまり?」

メリー「人外法では婚姻の数に制限は無いの。そもそも婚姻規定は人外側は浮気すんなってぐらいしかないの」

貞子「・・・・・・あの?」

メリー「ていうか!注釈で書いてるの!種の存続のために必要な場合は例え相手が同じであろうと好きなだけ婚姻を結んでいいって!」

貞子「ええっと、それってつまり、その?重婚オッケーってことですか?」

メリー「これのいいところは婚姻を結ぶ側の相手の婚姻数の制限が撤廃されることなの。これは仕事先で教えてもらったの」

貞子「・・・・・・えーと?じゃあ私はなんで悩んでたんですか?振ってくれとか言った話は?」

メリー「独り相撲なの。男も」

男「・・・・・・マジかよ」

隣人「マジらしいですね。私も今社長に確認とりました。結婚とかの話は常識で考えるから人外法のことまで頭が回らない人の方が多いんですって」

メリー「私ら人外って面倒なことに一度パートナーを決めたらその相手としか子作りできないらしいの。だからこんな法律でも作っておかないとどんどん数が減っていくらしいの」

隣人「私たちがよく目を通す都市伝説法には婚姻関係の話とか全くないですしね。あれ罰則しか載ってないですし。これはマジでびっくりです」

貞子「・・・・・・うふふ、つまり、私があんなに悩んでいたのは全部無駄だったって、こと」

貞子「うふ、うふふ、うふふふふふふ」

隣人「わーっ!貞子さん!落ち着いてください!そのままだと昂り症状でちゃいますからー!」
98 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:25:12.47 ID:dgPNsq/R0
男「・・・・・・ってことで、貞子さんは我が家で再び過ごすことになったから」

姉『わかったわ。それにしても重婚ねぇ。どおりでお嬢様が気にしなくていいと言っていたわけだわ』

男「やっぱりお嬢様は貞子さんの事知ってたか」

姉『ええ。愛する人のために身を引くという行為に感心していらっしゃったわ。だからこそ仕立屋さん、メリーさんの職場の人ね。彼女に人外法のことを教えるよう伝えたんだって』

男「世間は狭いなぁ。まあコネだらけだし仕方ないか」

姉『一区切りついたら実家に帰って挨拶させなさいよ。私もちゃぶ台ひっくり返してみたいし』

男「姉ちゃんがひっくり返したら天井抜けるだろ。やめろよ」

姉『そうそう、八尺様のことなんだけど、彼女はお爺ちゃんの家のかかしにしておいたから安心して良いわよ』

男「安心できねぇよ!なにしたんだ!」

姉『ちょっと説得しただけよ。お爺ちゃんの家で農業を手伝えば命だけは助けてあげるって言ったら帰ってくれてね』

男「・・・・・・説得方法については聞かないでおく」

姉『賢明ね。それじゃあ、切るわよ』

男「うん。それじゃあ」
99 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:26:09.09 ID:dgPNsq/R0
貞子「八尺様レベルの物理都市伝説が襲ってくるとなると、やっぱ戦闘力最強の私が男さんのそばにいないといけませんね!」

メリー「まじでメイドってなんなのなの」

花子「なんか寝て起きたら貞子が元気になっててうざいんだけど」

貞子「今の私は無敵です!何が相手でも怖くないです!」

メリー「それ首から上がパックンチョされるフラグなの」

隣人「それにしてもあれですね。法律に縛られた結果法律に助けられるっていうこの状況、すごいですね」

メリー「この話は法に始まり法に終わったの。法治国家万歳なの」

花子「で、二股男さんの感想は?」

男「あれだけ言われて振ったら俺極悪非道どころじゃないよね?その呼ばれ方には納得できないよ?」

貞子「えっ、じゃ、じゃあ私とはその場の雰囲気と義務感で結婚を前提としたお付き合いを始めたということですか・・・・・・?」

男「ああいや、そういうわけじゃないって!くっそ、花子ォ!」

花子「やーいやーい、ふったまったおっとこー!」

メリー「まあ男はこれ以上相手を増やさないように頑張ってなの。これ以上増えたら私が面倒見切れないの」

花子「ねぇ男ー、二股から三股になってみる気はない〜?私新しい衣装欲しいんだけど〜」

隣人「花子ちゃん、前半部分を本気で言っているならともかく冗談で言っているなら怒りますよ」

貞子「少なくとも私たち二人はその部分に本気で悩んでたのでそこを茶化すとキレますよ」

花子「ごめんなさい。まあ芸能人的にもJS的にも一般男性の恋人はやばいし私に少なくともその気はないよ」

隣人「なるほど。で、メリーさんは?」

貞子「メリーさんのお気持ちはまだ表明してもらってませんね、ええ」

メリー「プロポーズされたら受け入れてやるの。そうじゃなかったら人形相手はやめとけなの」

貞子「聞きましたか男さん、受け入れ準備万端ですって!」

隣人「先輩!三股行っちゃいましょう!」

男「お前らは俺に不貞を勧めるな!」

To be continued...
100 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/16(火) 16:33:35.91 ID:dgPNsq/R0
完結編第三話【呪いのビデオ】終了です。ビデオ要素と呪い要素はトイレに流しました。
貞子さんが貞子っぽいことなにもしてない。しいて言えばモニターに飛び込んでワープしたぐらい。どうしてこうなった。
正直貞子さんと付き合わせるつもりはもともとなかった。なかったけど話の流れで付き合ってしまった。こいつら勝手にしゃべりだすから困る。
書いてたら愛着が出てきて幸せになる方向に持っていきたくなるから仕方ないね。
現在の家庭内戦闘力は 貞子>隣人>花子>男>メリー って感じ。
貞子はコンボをつなぐタイプ。隣人はデバフと一撃の火力で攻める。花子さんも秘技アリダンゴからの恐怖のベンキ流しが決まれば10割持っていける。
次回!メリー死す!デュエルスタンバイ!
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/16(火) 18:54:46.36 ID:Z1gXtBU/0
やっふぅ!
男、男ならガツンといけぇい!
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