花子「新しい!」貞子「生活!」メリー「なの!」

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1 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:15:40.46 ID:S4U2UQtS0
男:なぜか都市伝説の方々に命を狙われ続ける一般男性。部署異動した。

メリー:一殺30万の都市伝説生活から年棒2千万の勝ち組生活へ。

貞子:男の姉の下でメイド修行中。

花子:芸能事務所に入り、歌って踊れるYouTuberになるためレッスンに明け暮れている。

隣人:男の部屋のリフォームが完了したので隣の部屋の住民に戻った隣人さん。部署異動して男の部下に。

姉:人外じみた動きをする人間。本職のメイド。彼氏募集中。

社長:一年の3割を出張に費やす社長。雇ってください。

スマホ:多分今までの話の中のMVP。

トイレ:ワープゾーン。

モニター:出入り口。

壁:壁紙を張り替えたときに隣人の趣味で赤色にされた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1591532140
2 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:16:36.85 ID:S4U2UQtS0
【赤い部屋】

隣人(先輩と出会ってから3年目。私は二回目の部署異動で先輩の下へと帰ってきました!ついでに合鍵ももらいました!)

隣人「せーんぱーい!おっはようございまーす!あっさでっすよー!おっきてくださーい!」

隣人(このやりとり、まるで新婚さんのよう!)

貞子(残念ですね!それはすでに私が通った道です!)

隣人(メイド研修生は職場に帰れ)

貞子(研修場所から発信していますが?)

隣人(同じ都市伝説だからって何の説明も無しにテレパシーを使っていいと思うな!)

男「」

おっさん「心臓マッサージ!心臓マッサージ!ああもう!なんで現実で会う前に死ぬんだよ!」

隣人「・・・・・・」

おっさん「都市伝説法28条とか勘弁だぞ!せめてコンビニまで来いよ!」

隣人「・・・・・・」

おっさん「よ、よし。心臓は動き出した。じゃあ、あとは、人工呼吸?」

隣人「市ネ」
3 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:17:11.82 ID:S4U2UQtS0
男(・・・・・・よく見た天上だ)

隣人「あ、先輩。起きましたか」

男「隣人。今回は俺なんで入院してるんだ?」

隣人「『夢の結末』っていう都市伝説に・・・・・・襲われる前に心筋梗塞で意識を失っていたらしいです」

男「マジかよ」

隣人「おそらく夢の中での出来事がショックで心臓が止まったんじゃないかと思ってます」

男「えっと、その都市伝説は?」

隣人「骨も残さず溶かしました」

男「だからうちの姉ちゃんみたいなことすんなって!」

隣人「先輩の敵は私の敵!死すべし!」

男「守ってくれる意思はありがたいんだけどさぁ・・・・・・」
4 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:18:15.87 ID:S4U2UQtS0
隣人「とりあえず、すでに社長には連絡してますんで。しばらくは身を休めてください」

男「わかったけど・・・・・・なんでこんなに襲われるんだろうな」

隣人「あ、それ次期社長から聞いたんですけど、先輩って生命力が異様に低いらしいです」

男「はい?」

隣人「次期社長の彼女さんが占い師らしくて、いつ占っても死相が見えるらしくって」

男「死相・・・・・・」

隣人「むしろなんで今まで生きて来れたのか不思議なぐらいだそうですよ」

男「俺、そんなに命がやばいのか」

隣人「お姉さんも度々先輩の事を都市伝説から守ってるって聞いてますし」

男「ん?でも都市伝説から狙われるのと生命力とか関係なくないか?」

隣人「あー、都市伝説とか命を奪う怪談系って死にそうな奴しか狙わないんですよ。これ一部にしか知らされていないんですけど」

男「なんでだ?」

隣人「生命力にあふれてるやつを殺すと死神から目を付けられるそうで」

男「都市伝説界隈もたいへんなんだな」

隣人「なんで先輩の生命力がこんなに低いのかは・・・・・・ちょっとわからないです」

男「ふしぎだな。人より体力はあるつもりなんだが」

隣人「あ、生命力って肉体は関係ないんで。魂だけなんで」

男「・・・・・・鍛えても無駄ってことか」

隣人「お姉さんぐらいに強くなれば余裕で都市伝説ぐらい跳ね除け・・・・・・でも先輩襲われなくても死ぬしなぁ」

男「自分の心臓の弱さを実感してるところだからやめてくれ」
5 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:19:15.84 ID:S4U2UQtS0
隣人(花子さんは収録のために山奥へ。貞子さんはメイド研修でアマゾン川へ。メリーさんは打ち合わせのために仕事場に宿泊中)

隣人(つまり!一歩抜きんでるには今がチャンス!この間を活かして先輩へ猛アタックするしかない!)

隣人(先輩の入院の期間に合わせて有休はとりました!この入院生活中がチャンス!甲斐甲斐しく世話をして、先輩のハートをいただいちゃいます!)

隣人(・・・・・・気を抜いたら物理的にハートをもらうことになりそうなんで注意しましょう)

男「てか、隣人の仕事は?」

隣人「私有休とりました。先輩の看病のためです」

男「いや、入院してるから俺の看病は看護師さんが・・・・・・」

隣人「私が!お世話!するんです!ナースさんにも色々教わりました!尿瓶とか!尿瓶とか!尿瓶とか!」

男「落ち着け。変態に片足突っ込んでるぞ」

隣人「頭の先からつま先まで私がお世話しますから!先輩はどうぞベッドで横になってくつろいでください!」

男「けが人でもないし普通に動けるんだが」

隣人「いいから!」

男(ここ1年で分かったこと。こいつは押しがメチャクチャ強い。基本的に引かない。そこがめんどくさい)

男(・・・・・・悪い子じゃないんだけどな。ぶっちゃけ見た目は割と好みだし)
6 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:19:56.57 ID:S4U2UQtS0
隣人「・・・・・・どうしよう」

隣人(結局あの後何事もなく普通に先輩は退院してしまった。うん、特別怪我とかはなかったし。お世話とか何もできてないです)

隣人「・・・・・・自意識過剰、だったのかな」

隣人(人として生きるって決めてからも、この赤い目はずっとコンプレックスだった。先輩はそんな私の瞳をきれいだって褒めてくれた)

隣人「・・・・・・いわゆるビジネストーク、だったのかも」

隣人(なんだか、全部が不安になってくる。先輩にとって、私はただの後輩にしか過ぎないんでしょうか)

隣人(・・・・・・いや、実際にそうですよね。先輩の事をストーカーしてたのは私だし、先輩は私が隣に住んでるってことすら知りませんでしたし)

隣人「まあ、隠してたのは私ですが」

隣人(・・・・・・このままで、終わってたまるものですか。先輩が私の事をどう思っていようとも、私は先輩の事が好き)

隣人「この想いだけは誰にも負けない。その自信はある。だから、絶対に負けない!」

花子「・・・・・・」

隣人「とはいえ、合法的な手段で先輩を虜にするには・・・・・・」

花子「あのー・・・・・・」

隣人「はひゃいっ!?は、花子さん!?いつから!?」

花子「『どうしよう』のとこからかな」

隣人「最初からじゃないですか!」
7 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:20:39.34 ID:S4U2UQtS0
花子「ゴハンできたから呼びに来たんだけど、なんかごめんね?」

隣人「あああ、なんでこんな独り言を言ってるところを母親に見られたような気分を味わってるんですか・・・・・・」

花子「ほら、私貞子とかメリーと違ってトイレからトイレに移動するってことでわかりにくいから、ね?気付かないのも仕方ないよ」

隣人「せめて玄関から入ってくれれば・・・・・・」

花子「オートロックだから鍵閉まってるし」

隣人「ああもう!高い防犯意識のバカー!」

花子「私らにとっては関係ないのが救いだよね」

隣人「関係ないから今こんなことになってるんですよー!」
8 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:21:29.50 ID:S4U2UQtS0
メリー「あ、やっと来たの。遅いの」

花子「いろいろあったんだよ、いろいろ」

隣人「改めて私たち都市伝説の力の理不尽さがわかりましたよ・・・・・・」

男「気になったんだが、おまえら前の会社を辞めたりしてないのか?」

隣人「辞めましたよ」

メリー「辞表は叩きつけてきたの」

花子「辞めまーすってメールは送った」

貞子「郵送で退職願を出しましたけど」

男「それでも能力は残るんだな」

メリー「私は生まれつきみたいなものだしなの」

貞子「私も似たような感じです。死んでますけど」

花子「私もだねー。死んでるけど」

隣人「赤い部屋の方は先天的、S県月宮の方は後天的ですけど両方残ってますね。不思議ですけど」
9 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:22:19.96 ID:S4U2UQtS0
隣人(メリーさん達も帰ってきていつもの日々が戻ってきました。私はご飯時だけ先輩のお部屋にお邪魔させてもらってる感じです)

隣人「・・・・・・ずるーい!あの三人だけずるいー!私も先輩と同じお部屋で過ごしたいー!同じベッドで眠りたいー!」

隣人(まああの三人と違ってそもそも私は養われる必要がなかったから仕方ないといえば仕方ないですが・・・・・・)

隣人「それにしてもあの三人はびっくりすぐほどアクションを起こしませんね。私が言えた話ではありませんが」

隣人(環境が一新されたことで向こうはその環境に馴染むのが大変で色恋にまで意識を向けている余裕がないんでしょうか)

隣人「・・・・・・それか、もしくは今の状況を壊したくないとか」

隣人(見ていたから知っています。隣の部屋の住人たちはみんな仲がいい。表面的に、ではなくもっと底の部分で)

隣人(私と違って、彼女たちは都市伝説に成る前は想像もできないような地獄を見てきたはず。あの三人のトラウマは計り知れない)

隣人「・・・・・・誰か一人が抜きんでると、残り2人のトラウマが発動してしまう?」

隣人(だからあの3人は互いに動けないのでは・・・・・・)

隣人(そうすると、私が先輩にアプローチをすることはあの心地よい環境を壊してしまうこと、なんでしょうか・・・・・・?)
10 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:23:21.36 ID:S4U2UQtS0
隣人(拝啓、先輩、社長。助けてください。私は今――)

次期社長「御社への志望理由としては3つあり――」

隣人(次期社長の新卒採用の面接をしています)

隣人(いやいやいや、あなた結構な頻度で会社に来てましたよね!?就活の時期とは言っても面接とかなしに顔パスで通りますよね!?私も話したことありますし!)

隣人(なんで新卒3年目の私にこんな大物の相手を任せているんですか!?理路整然と話すし志望理由も素晴らしいの一言に尽きるし!)

隣人(経験豊富だから話の引き出しにも事欠かないし!何を質問しても言葉に詰まることなく個性がありつつもきれいな返答がきますし!)

隣人(社長もなんで私を人事課に配属したんですか!?先輩、助けて・・・・・・)
11 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:28:10.67 ID:S4U2UQtS0
隣人「はぁぁぁぁ〜・・・・・・」

男「よっ、お疲れ」

隣人「あ、先輩。ミルクコーヒー・・・・・・先輩、よく私の好きな奴覚えてましたね」

男「まあな。で、どうだった?次期社長の面接は」

隣人「どうだったもなにも緊張しましたよ!なんでこっちがガチガチにならないといけないんですか!?」

男「まあそれは仕方ない。俺たちにとっても馴染みのある子だとはいえ、まさか就活の場に来るとは思ってなかったからなぁ。俺も履歴書が送られてきたときには驚いたよ」

隣人「ってことは先輩、あらかじめ知ってたんですね!?」

男「そりゃな。課長も慌ててたけど、どこか納得してたよ。あの子ならこういうことするってな」

隣人「先輩たちはなんでそんなに落ち着いてるんですか・・・・・・」

男「隣人は夜勤だからあんまり会ってなかったか?あの子は誠実で公平性を大事にする子なんだ」

隣人「いや、それは見ればわかりますけど・・・・・・」

男「勤続30年の部長に聞いたら、あの子は5歳のころからここに来て実質勤続17年だってさ。うちの業務のことは全部知り尽くしてるよ。社長がいろいろ連れまわしてるし」

隣人「それだったらなおさら就活とかいらないじゃないですか。顔パスで通りますよ。みんな大歓迎ですよ」

男「そりゃそうだけどな。それじゃあ他の奴が納得しないだろって」

隣人「え?」
12 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:29:51.66 ID:S4U2UQtS0
男「実際、社長から次期社長にそういう話はしてたらしいんだ。就活とか面倒な手続き踏まなくても全部やっとくよって。ただ、あの子はそれを拒否したらしい」

隣人「えっ!?なんでっ!?みんな納得しますよ!?あー次期社長がやっと正式に入ってくれたかーってなりますよ!?」

男「みんなそのつもりだったんだけどな。ただ、社長に直談判したらしい。『そんな裏口入学のようなことはしない。正面から堂々と入って見せる』って」

隣人「えー・・・・・でも、落とすに落とせないじゃないですか、そんなの」

男「続きがあるんだ。『そうじゃないと、今の社長のようにみんなが付いていきたいと思う人間にはなれない。次期社長として見据えてくれているならなおさらだ』ってな」

隣人「うー、それを聞くと確かにそうですかね・・・・・・」

男「あと、あの子今のバイト先からも経営者にならないかって話を持ち掛けられているらしい」

隣人「なんですか彼。優秀にもほどがありませんか」

男「新卒の就活ってのは企業が学生を選ぶのと同時に、学生側が企業を選ぶ場所なんだ。だからこそ俺たちは学生に対して平等に、そして真摯に接さなくちゃいけない」

男「そうじゃないと、学生側が選んでくれないぞってな。これ全部部長の受け売りだけど」

隣人「そう、ですね。私は就活とかしたことないんでそういうのよくわかりませんでしたけど、そっか。どっちにも選ぶ権利があるんだ」

男「まああの子なら問題なく採用されるだろ。実際面接してても何の問題もなく終わっただろ?」

隣人「はい。正直非の打ち所がありませんでした」

男「実力もあるからなぁ。業務知り尽くしてるから業界研究とかそんなレベルじゃないくらいの分析もかけてくるし。俺も説明会で質疑応答されたときは気が気じゃなかったよ」

隣人「どんな質問されたんですか?」

男「説明会で説明しきれなかったこと全般。多分あの場にいた他の学生はうちについて詳しく知り尽くしてしまっただろう」

隣人「知ってるのによく聞いてきますね」

男「向こうからしたらちゃんと説明できるか試してたんじゃないのか?まあ部長が対応してくれたからなんとかなったけど・・・・・・俺一人だとヤバかったな」

隣人「・・・・・・偉い人の考えることってよくわからないなぁ」
13 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:30:27.50 ID:S4U2UQtS0
隣人(選択肢がある人ってすごいと思う。余裕があるから)

隣人(次期社長みたいな人だったらどこでも選り取り見取りだろうし、そりゃわざわざ選別みたいなことするよね)

隣人(・・・・・・先輩も、そうなのかな)

隣人「先輩にとって、私は選択肢のうちの一つに過ぎないんでしょうか」

隣人「それとも、そもそも選択肢に入っていないんでしょうか」

隣人「栓パいは、棉詩の琴は堂トモ面っていナい・・・・・・?」

隣人「・・・・・・宣杯、お兄ちゃん、先輩」

隣人「・・・・・・エへへ」

メリー「こらー」ガツッ

隣人「ひゃぐっ!?」
14 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:31:26.66 ID:S4U2UQtS0
メリー「自分の世界に入り込むななのー。お前がそれやると面倒なことになるのー」

隣人「め、メリーさん?いつのまに・・・・・・」

メリー「夕飯時なのに来ないから心配してきたの。カバンに電話入れっぱなしだから気付かれなかっただけなの」

隣人「あ、すいません」

メリー「まったく、死体でも幼女でも人形でもないくせに贅沢言い過ぎなの」

隣人「え?」

メリー「貞子なんか裸エプロンでも汚いとか言われて終わってるの。そんな程度でへこむななの」

隣人「え、先輩酷くないですか?」

メリー「あいつ多分性欲が薄いの。理由はわからないけど」

隣人「性欲が薄いって、別に先輩はごく一般的な性癖ですし・・・・・・」

メリー「お前がなんでそれを知ってるかは聞かないでおいてやるの」

隣人「・・・・・・あっ」

メリー「ん?」

隣人「先輩、もしかして生命力が小さいから性欲が薄いんじゃ・・・・・・?」

メリー「え?アイツの生命力が小さい?」

隣人「だから都市伝説に狙われやすいんですって。この前も狙われて心臓止まってましたし」

メリー「あー・・・・・・」

隣人「そう考えると、どうにかして先輩の生命力を大きくすることが最優先なんでしょうかね」

メリー「わからんの。姉の言うことを真に受けると小さい頃からそうらしいしなの」

隣人「もしかして生まれつきそうだとしたら、難しいですかね」

メリー「そもそも生命力を大きくする方法を知らないからなんとも言えないの。それよりも夕飯だからさっさと来いなの」

隣人「あ、はい」
15 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:32:23.04 ID:S4U2UQtS0
隣人「社長〜、助けてくださ〜い」

社長「え、なんですか?どうしましたか?」

隣人「次期社長の採用面接とか先輩のこととかいろいろあってもう頭の中ぐちゃぐちゃなんですよ〜!」

社長「ああー・・・・・・男くんに関する話はともかくとして、大甥の担当は次回から部長ちゃんがしますから大丈夫ですよ」

隣人「ほんとですか?ほんとにあの重圧から解放してもらえるんですか?」

社長「はい、大丈夫ですよ。・・・・・・しかしまさか正面からくるとは」

隣人「それですよそれぇ!次期社長の内定なんか最初から決まってるようなものなんですからこんなことしなくていいじゃないですか!」

社長「人事課の人たちは割とそう言ってますよね。私はすんなり入ってくれるとは思ってませんでしたが・・・・・・」

隣人「なんかもう一個?行先があるんでしたっけ?」

社長「多分、それがなくても」

隣人「え、なんで?」

社長「そういう不正が嫌いなんですよね、彼。基本的になんでも正面突破しようとしたりして。それを貫き通せるところがかっこいいんですよね」

隣人「あの、社長?」

社長「まあそう言うわけですから採用人事の中でも一番手の部長ちゃんにお願いしてるわけです。彼女もまた立場だとかそういったもので判断しませんから」

隣人「あの人、貫禄ありますもんね」
16 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:33:26.04 ID:S4U2UQtS0
社長「それで、男君のことはどうしたんですか?」

隣人「あっ、えーっとですね、先輩の生命力が小さいから大きくしてあげたいなという話でして」

社長「んー、注ぎ込めばいいんじゃないですか?」

隣人「それができたら苦労しませんって」

社長「できますよ?」

隣人「へっ?」

社長「こう、魔力を生命力に変換して注入すればわりかしなんとかなります。ただ、器がそもそも小さいとかだとどうしようもないですけど」

隣人「生命力の器・・・・・・そんなものが?」

社長「はい。あとはそうですね、これは私の師匠から聞いた話ですけど、禁呪の生命リンクを使えばなんとかなるという話もあります」

隣人「生命リンクって、それ言ってよかったんですか?」

社長「言ったところで出来る人は限られてますしね。やり方も知らないとできないですし」

隣人「なるほど。ちなみにどんな人ができるんですか?」

社長「えっと、どうでしたっけ。確か種族が違うことが大前提で、あとは性別も違ってる必要がありまして」

隣人「それで、やり方は?」

社長「えーっと、うろ覚えですけどキスがどうとか言ってたような・・・・・・まあお互いの生命力をつなげるバイパスさえ作ってしまえばいいので、アドリブで何とかなるって師匠は言ってましたけど」

隣人「なるほど、ありがとうございます」

社長「いえいえ。悩みが解決できるなら・・・・・・あれ?」

隣人「先輩っ!今行きますからねっ!」フッ

社長「あっ!い、行っちゃった・・・・・・こ、これってあれですよね?隣人ちゃんが実行しちゃう流れですよね?」

社長「・・・・・・えーと、資料は多分社長室に置いてあったから・・・・・・念のため隠しておきましょう。お姉ちゃんの家あたりに」
17 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:34:10.77 ID:S4U2UQtS0
隣人「せーんぱーい!キスしましょー!」

男「断る」

隣人「えっ!?」

男「えっ?」

貞子「何を言ってるんですか隣人さん!私だってまだ・・・・・・あ、やりましたね。人工呼吸で」

花子「なんならおっさんともやってたのよね?いいじゃん、別に」

隣人「あれは未遂で止めました!代わりに私がしました!」

男「緊急事態下の行動と意識があるうちのキスを一緒くたにするな!」

メリー「てか、いきなりどうしたの?お前も貞子みたいに性欲に頭が支配され始めたの?」

隣人「ちーがーいーまーすー!先輩の生命力を増強する方法が見つかったんですー!」

男「えっ?まじでそんな方法があるのか?」

貞子「男さんの生命力?」

隣人「はい!なんでも、生命リンクの禁呪を使えばどうとか」

男「却下」

メリー「あほかなの」

隣人「なんでですかー!?」
18 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:34:37.11 ID:S4U2UQtS0
男「禁呪ってついてる時点で使っていいもんじゃないだろ」

メリー「生命リンクってのも名前がヤバいの。多分片方が死んだらもう片方もってやつなの」

花子「どこぞのお空の世界みたいな話だよね」

貞子「生命リンク・・・・・・それはゾンビでもできるんでしょうか?」

メリー「やろうとすんななの。だいたい、それはなんのためにやるの?」

隣人「だって先輩の生命力が強くなれば性欲も・・・・・・あっ、えっと、今のは聞かなかったことに」

男「できるわけないだろ」

メリー「貞子と一緒に頭冷やせなの」

貞子「えっ、私もですか?」

花子「むしろなんで逃れられると思ったし」
19 : ◆GiMcqKsVbQ [saga]:2020/06/07(日) 21:35:24.42 ID:S4U2UQtS0
隣人「・・・・・・追い出されちゃいましたね」

貞子「一晩反省していろとのことでしたのでまあいいでしょう。それよりも、ですよ」

隣人「はい!先輩とリンクする方法ですね!」

貞子「いや、それは別にどうでもよくて」

隣人「えっ?」

貞子「隣人さんが本気で誘惑すれば多分男さん手を出しますよ」

隣人「えっ?えっ?」

貞子「誘惑っていうか、むしろ自分から迫れって話でして。私の場合冗談めいてるってのがあるからまともに相手してくれませんが、隣人さんはそうじゃないでしょう」

隣人「あの、貞子さん?」

貞子「はい、なんですか?」

隣人「あの、その、そんな敵に塩を送るようなこと・・・・・・」

貞子「別にそんなつもりはありませんよ。もともと養ってもらえる立場を維持するための手段みたいなところがありましたし。ちゃんとした収入がある今となってはそこまでこだわりはないですね」

隣人「ええっ!?」

貞子「もちろん求められたらいつでもこの体を差し出しますよ?でも男さんは私の身体を求めてくれないので。残念ですが待つしかありません」

隣人「あ、あの、それだったら、その、私まるで独り相撲してたみたいな」

貞子「あ、もしかして私たち三人がライバルだと思ってました?」

隣人「そうですよっ!」

貞子「それは誤解です。そもそも私たちはスタートラインにすら立っていませんから」

隣人「えっ?」
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