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【一部キャラ安価コンマ】村長「勇者よ、必ずや優勝して参れ」勇者「へいへーい」
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283 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 05:59:53.92 ID:qKbALpwl0
アッシュ「?」
桃色ポニテ「やっぱりアッシュ様だ!こんなとこで会えるなんて感激ですー!」ズイッ
アッシュ「あ、貴女は…?」
桃色ポニテ「私ミントって言います!今年で19になるピチピチの女の子です!今はしがない旅の格闘家をやらせてもらってまーす♪」(以降、ミント)
魔法使い(なにこのあざとさ全開オーラは)
アッシュ「そうでしたか」ニコッ
魔法使い(そしてさすがの社交辞令ね…)
ミント「アッシュ様が執事を辞めてこの国を出られたと聞いて、私すごく落ち込んでたんです…3日も寝込んじゃいましたよぉ…」ウルウル
ミント「でもでも、こうしてここで会えたのって私たちきっと運命みたいなものがあるんですね!」
アッシュ「そ、そうかもしれませんね…」
ミント「アッシュ様も大会に出られるんですか?」
アッシュ「私は観戦だけですよ」
ミント「なんだ残念です…せっかくアッシュ様の凛々しいお姿が見れると思ったのに」
ミント「じゃあじゃあ、私が頑張るところ見ててくださいね!15ブロックでやってますので!」
ミント「あ、いけない!もう行かなきゃ!」
ミント「アッシュ様また後でー!」
ピューン
魔法使い「……嵐のような人だったわね」
リア「踊り子さんみたいな格好してました…」
アッシュ「えぇ」
魔法使い「初対面なのよね?」
アッシュ「記憶の限りでは。彼女は私をご存知のようでしたが」
アッシュ「旅の格闘家ですか…聞いたことないですね」
リア「アッシュさん、魔法使いさん、そろそろ予選が始まるみたいですよ…!」
アッシュ「行きましょうか」
284 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:00:57.26 ID:qKbALpwl0
ーーー予選会場ーーー
勇者「」ヒュン
「ぐ…」
勇者「よっ」
ガキン!
「うあ…!」
勇者「」ビシッ
勇者「まだ続ける?」
「…降参します」
審判「勝者、勇者!」
勇者「ありがとーございました!ってな」ヘヘッ
アッシュ「言うことなしですね。教えたこともしっかりと実践出来ているようです」
魔法使い「えーと、これであいつは9勝目?」
アッシュ「10戦10勝、今のところ無敗です」
アッシュ「ここで負けてしまうようでは困りますけどね」
審判「次の闘技も続けてもらって構いませんか?」
勇者「いいっすよ!ウェルカムウェルカム」
審判「それでは38試合目、――」
魔法使い「……」ジー
リア「…勇者さん、かっこいいですね」
魔法使い「そうね」
侍女「………」
.........
285 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:02:06.53 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
姫騎士「はっ!」ビュンッ
バキッ
「ひっ!?ま、参りましたぁ!」
審判「勝者、姫騎士!」
オオオォ…!
「相手の木剣折っちまったぜ」
「はぇーなー、これで第1ブロックの予選終わりだろ?他はまだまだやってんのに」
「ばっか当然でしょ。なんたって姫騎士様がいらっしゃるんだから」
「剣を振る姿、いつ見ても神々しいですな…!」
姫騎士「対戦感謝する。いい闘技だった」
第1ブロック本選進出者 姫騎士
286 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:02:41.38 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
「ぐぁ…!」ズサ...
審判「場外!」
審判「勝者、ジンガ!」
ジンガ「……」
「なんだあの男…」
「おっかねぇ顔してんな。あの格好も…どっかの賊かなんかか?」
「賞金目当てに律儀に予選から参加してるって?賊の野郎が?そりゃ傑作だ!ははは!」
ジンガ「……」ジロッ
「馬鹿っ、聞こえるって…!」
「むぐぐ…」
ジンガ「……ふん」
ジンガ(強者共が集まると聞いて来てみたが、見かけるのは雑魚ばかり。めぼしい奴は居ないな。所詮は元弱小国家か)
ジンガ(やはり、国の英雄と謳われる彼女しか…)
第2ブロック本選進出者 ジンガ
287 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:03:13.58 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
審判「勝者、勇者!」
勇者「しゃあ!これで全勝!」
リア「やった!」
アッシュ「全ての試合を最短で終わらせる…まさに最善手と言えますね。本選では特に体力勝者になることが多いですから」
魔法使い「…あいつ、あんなに真面目に闘技出来たのね」
アッシュ「礼儀を知りましたからね」
魔法使い「礼儀?」
「ねーあの人すっごく強くなかった?」
「うん、私も見てた!格好良かったわねぇ…どこの人なのかしら」
魔法使い(……)
魔法使い「もう勇者のブロックでは試合ないのよね?だったらさっさとあいつ連れ戻しに行きましょ」スタスタ
リア「は、速いです魔法使いさん…!」テテテッ
第9ブロック本選進出者 勇者
288 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:03:47.03 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
ピキピキ
ボオォ!
緑色ショート「ねぇ逃げ回ってたら終わらないよぉ?氷漬けか丸焼きどっちがお好みかな?あはは!」
「や、やべぇよこの女…!」タタタッ
「審判、降参!降参だ!早くあの女を止めてくれ!」
審判「勝者、ナタリー!」
審判「さぁ勝負はつきました。もう攻撃してはなりませんよ」
緑色ショート(以降、ナタリー)「えー、おしまい?」
ナタリー「そうですかぁ」
ナタリー「…もう帰る時間ー?」ポケー
審判「いえいえ、あなたには午後の本選がありますから」
第10ブロック本選進出者 ナタリー
289 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:05:09.88 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーーー
グローバ「ふぬっ!」
「ぐぼぉ!?」
「あ……ぁ……」
ドサッ
審判「…気絶」
審判「勝者、グローバ!」
「おい見たか?あのおっさんの闘技。女相手にしてる時、異様に体触りまくってたぜ」
「見てた見てた。羨ま…じゃなくて反則になったりしないのかね?」
「はー、俺もあれだけ強かったら合法的にお触りできんのかなー」
グローバ「悪いな若造。落とすつもりはなかったんだが勢い余っちまったぜ」
グローバ「男に興味ねえもんだからよ!がはは!」
第14ブロック本選進出者 グローバ
290 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:05:47.36 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
ミント「"火球"」ボッ
「っ」サッ
ミント「"引潮"」ザー!
「わっ!」ヨロ...
ミント「"魔手"!」グォー
ガシッ
「しまった!」
ミント「さ、捕まえたよー!これでとどめといっちゃいましょー!」
「…ここで終わるわけには!」
ブチッ!
ミント「すっごい馬鹿力!?」
ミント「でも逃さないから!"閃光"」カッ
「くぅ…!」
ミント「」スタタッ
ミント「最後は、土の力で吹っ飛んじゃえ!」
ドスン!
「ぐふ…」
審判「場外」
審判「勝者、ミント!」
ミント「名付けて大地のパンチ!えっへへー」
「派手な戦い方だなぁ」
「あの服を見るに、元々曲芸士なのではないか?」
「でも実力はあるみたいだ」
ミント(アッシュ様見ててくれたかな〜♪)
第15ブロック本選進出者 ミント
291 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:06:18.71 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
「く…そぉ……」ガクッ
審判「…うむ、気絶だな」
審判「勝者、ダグ!」
ダグ「へへぇ、どうもどうも」
「ほぉ、あれ武器屋の主人だよねぇ?あの人あんなに強かったんだ」
「びっくりです……木剣をあんな風に使うの初めて見ましたよ」
「いいぞー武器屋!そのまま優勝したら俺の年収分買い物してってやらー!」
ダグ「どうぞご贔屓に!うちの武器を使えばこのような芸当は朝飯前になりますぞ!」
「よく言った!」
「今度あんたんとこに発注かけようかねぇ」
ダグ「……」ニヤ
第25ブロック本選進出者 ダグ
292 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:07:01.14 ID:qKbALpwl0
ーーー正午 本選会場前ーーー
ガヤガヤ
勇者「人しかいねー。どいつもこいつも考えることは同じかよ」
魔法使い「勇者、まだ本選始まるまで時間あるんだからお昼の後でもいいんじゃない…?」
勇者「いーや、今見ておきてーの。どんな奴とあたるか分かればもしかしたら対策できっかもしんないじゃん。魔法使いも前に言ってたことだぜ」
魔法使い「そうだけど」
アッシュ「しかしこの人集りでは少々手間ですね」
ドン
リア「あっ…!」グラ
魔法使い「危ないっ」ガシッ
リア「ご、ごめんなさい…」
魔法使い「大丈夫?」
リア「はい…」
魔法使い「もう、ぶつかったなら謝っていきなさいよね」
ミント「アッシュ様発見!」
ミント「ねね、私の戦うところ見てくれましたっ?みんな綺麗に倒しちゃうとこ!」ズズイ
アッシュ「い、いえ…私はこの者の付き添いで来ただけですので…」
ミント「ん!?」
勇者「へ?」
ミント「んーー…」ジー...
ミント「あんた名前は?」
勇者「勇者」
ミント「勇者くん!絶対あんたに勝ってアッシュ様の視線独り占めにしてやるから!」
勇者「おう…?」
293 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:08:20.61 ID:qKbALpwl0
ミント「それでそれでアッシュ様はここで何をしていたんですか?」
アッシュ「本選の対戦表を見に来たのですが、ご覧の通り立ち往生を余儀なくされていましてね」
ミント「そういうことでしたら私に任せてください♪」
魔法使い「ちょっと、まさか力尽くでどかす気じゃ…」
ミント「そんな野蛮なことしませんー」
ミント「…ね、そこのお兄さん?」
「あん?」
ミント「私、どうしてもそこ通りたくって…」
ミント「すこーしだけ、道開けてくれませんかぁ?」ギュ
「し、しょうがねぇな…ほれ」
ミント「ありがと♪」
ミント「行きましょ、アッシュ様」
アッシュ「…はい」
(人をかき分け前へ)
アッシュ「ありました。勇者様見えますか?」
勇者「どれどれ…」
魔法使い(第1ブロック、姫騎士。この国の人に言わせれば当然なんでしょうね)
魔法使い(で、勇者は……)
魔法使い「……え」
アッシュ「順当に行けば準決勝で姫騎士様とあたりますね。ですがその前に」
魔法使い「…14ブロック、グローバ…」
アッシュ「準々でバーランド卿ですか」
294 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:08:53.57 ID:qKbALpwl0
勇者「………」
魔法使い「勇者…」
勇者「任せろって!」
勇者「あんだけ先生に稽古つけてもらったんだ。この間の俺っちとは一味も二味も違うってこと、思い知らせてやんぜ」
勇者「他にやば強い奴はいないんか?」
アッシュ「はい。後は知らない名前ばかりですね」
勇者「ならその二人蹴散らせば優勝ってことか!目標がクリアになってよかったわ」
勇者「腹減ったし昼にしようぜぃ。俺っちトイレ寄ってくっから先行っててくれ」
テクテクテク...
リア「…この前のことがあったので心配でしたけど、立ち直ってくれたんですね、勇者さん」
アッシュ「バーランド卿も大会に出場するとおっしゃってましたからね。覚悟を決めたのでしょう」
魔法使い「………」
ミント「ねーそのグローバって人強いんですか?私と2回戦でぶつかるんですけど!」
アッシュ「えぇ、強いですよ。準優勝候補と言っても差し支えありません」
ミント「えっ、そんなに!?」
ミント「…アッシュ様!絶対応援しててくださいね!」
295 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:09:22.51 ID:qKbALpwl0
勇者「……」テクテク
勇者「……」テク...
勇者「………」
勇者「はぁぁぁ……」
勇者「くっそ……マジかぁ…」
勇者「あー……」
勇者「勘弁してほしいぜー……へへ…」
296 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:10:38.20 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
侍女「姫騎士様、バーランド卿がいらしているようです」
姫騎士「なに?彼は退役したと聞いたが」
侍女「グローバという名で出場されています」
姫騎士「ふむ……14ブロック。この者だな」
姫騎士「私との闘技は4戦目か」
侍女「如何いたします?現役を退いたとはいえ他国の公爵様がこの大会に参加されるのは…」
姫騎士「構わないさ。それしきのことお父様も気にはしないだろう」
姫騎士「相手が誰であろうと勝つだけだ」
297 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:12:06.56 ID:qKbALpwl0
アナウンス『間もなく本選を開始します。本選出場者第1から16ブロックの方、及び17から32ブロックの方はそれぞれの会場へ向かってください」
298 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:14:06.65 ID:qKbALpwl0
ーーー本選左会場ーーー
「まだ始まんねーの?」
「あとちょいだよ」
ガヤガヤ
「席空いててラッキー!こっち姫騎士様が出場するからな、何人立ち見が出ることか」
「わしも30歳若ければ健闘したんじゃがのぅ」
「ちょっとそこの頭邪魔!しゃがんでくれない?」
ワイワイ
リア「ひろーい…」
魔法使い「大きいとは思ってたけどここまでなんてね…私たちの村が収まっちゃうくらいあるじゃない」
アッシュ「他国からの人々も多く呼べるようにと、国王様が増築に増築を重ねたのです」
アッシュ「今や国のどの建物より大きいですよ」
アッシュ(何とも皮肉なものです)
勇者「……」
アナウンス『皆様、大変お待たせ致しました。ただいまより闘技大会本選を開始致します』
アナウンス『第1戦第一試合。姫騎士、ジンガ』
姫騎士「……」トットットッ
ジンガ「……」ザッザッザッ
ウオオオオ!
「待ってました!」
「姫騎士様ー!」
「このためだけに生きとるわい…!」
魔法使い「すごいわね…」
リア「お相手さん、ちょっと気の毒です…」
アッシュ「しかと見ててください、勇者様。あの方を超えなければこの国における最強は名乗れません」
勇者「あぁ」
299 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:15:45.44 ID:qKbALpwl0
ジンガ「お初にお目にかかる、ジンガと申す者だ。この辺境国で最も強いと言われる貴女と戦えること、誇りに思う」
姫騎士「ふっ。光栄なことだな。では辺境の代表として恥じない闘技を見せねばなるまい」
審判「両者前へ!」
姫騎士・ジンガ「「……」」ザッ...
審判「始めっ!」
ジンガ「」ダッ
ジンガ(その強さの所以たる剣の腕、見せてもらおうか)
バッ、バッ
ジンガ「……」グワッ
ガッ!
姫騎士「……」
ジンガ(ほう)
「さすが姫騎士様じゃ。初手も難なく防ぎおる」
「つーかあいつフライングしてなかったか?」
「あんな粗悪な成りしてんだ、中身も相応なんだろうよ」
300 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:16:47.34 ID:qKbALpwl0
姫騎士「……」スッ
ジンガ(来るか)
姫騎士「」シッ――
ジンガ「…!」
ガンッ、ガッ
ズバッ!
ジンガ「ぐっ!?」
ジンガ(この動きは…!)
ダンッ
ビュオッ
ジンガ(視界に捉えきれぬっ)
姫騎士「」ヒュッ
ジンガ(刺突か!)
ガィン!
ジンガ「」バッ(距離を取る)
姫騎士「……」
姫騎士「醜態を晒してすまない」
姫騎士「今ので終わらせるつもりだった」
ジンガ「……なるほど」
アッシュ「あれが姫騎士様の剣技です」
アッシュ「彼女にとって剣とは、文字通り身体の一部なのです」
アッシュ「剣戟が及ぶ範囲は広く、正面に居ながらにして視界の外から斬ることが出来る。それでいて正確無比な一撃」
勇者「……」
301 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:17:30.62 ID:qKbALpwl0
ジンガ(噂は本物のようだな)
ジンガ(…使う予定はなかったが、仕方ない)
ジンガ「"幻視"」
「な、なんだ!?会場が…!?」
魔法使い(幻術…しかもこれほど大規模の)
ジンガ「」スサッ
ジンガ(視覚を脅かすこの術とて、素人ならいざ知らずこやつのような猛者には1秒で状況を把握されるだろう)
ジンガ(――だが、その1秒でいい)
ジンガ(それが戦闘では命取りとなる)
サッ、サッ!
ジンガ(これにて、終演)
――スタッ
姫騎士「」ス...
ジンガ(な、に…!?)
ギュオッ!
ジンガ「!!」ガンッ
ガン!ガンッ、ギィン!
姫騎士「もう休憩は無しだ」
ジンガ「く…!」
302 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:18:01.61 ID:qKbALpwl0
魔法使い「なんで…真っ直ぐ走ってったわよ、あの幻惑魔法の中で」
魔法使い「魔法を無効化してる?」
アッシュ「いえ、そうではありませんが」
アッシュ「姫騎士様に甘い小細工は通じないのです」
勇者「あれが小細工なんかい…」
アッシュ「ジンガという御仁、彼も相当な手練れとみえます」
アッシュ「しかし保ってあと1分というところでしょう」
.........
303 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:19:54.32 ID:qKbALpwl0
姫騎士「はっ!」
ガキン!
ジンガ「―っ」
...カランカラン
姫騎士「まだ続けた方がよいか?」
ジンガ「……ふっ」
ジンガ「彼我の実力差が見えぬ程、愚者ではないつもりだ」
ジンガ「降参する」
審判「勝者、姫騎士!」
ワアアァ!
リア「剣、弾いちゃいましたね」
魔法使い「これが王都の闘技……」
アッシュ「えぇ」
アッシュ(本国における闘技とはそれ即ち姫騎士様と同義)
アッシュ(才能に愛された者が、努力によってその才を惜しみなく引き出した果て。凡人には決して手の届くはずもない領域…)
304 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:20:22.13 ID:qKbALpwl0
アッシュ「勇者様、如何でしたか?彼女に数段劣る私では助言など出来ませんが、貴方なら何かしら活路を見出せたのではありませんか?」
勇者「…アッシュ先生」
勇者「俺っちがそんなに頭の良いこと出来ると思う?」
魔法使い「あんたねぇ…」
勇者「へーきよへーよ。敵が強いほど、勝負は燃えんじゃん」スクッ
魔法使い「どこ行くの?」
勇者「準備運動。俺っちも試合あるし」
タッタッタッ...
姫騎士「いい闘技だった」
ジンガ「同意しよう」
ジンガ「貴女が何故この国の英雄と呼ばれるか、しかと理解することが出来た」
ジンガ(このような辺境には勿体ない、素晴らしい逸材だ。是非我が国へ欲しい)
ジンガ(であればどう手を打っていくべきか。一度本国へ戻るとしよう)
姫騎士「……」トットットッ(背を向け去って行く)
ジンガ「…いずれ、ルール無用の場での手合わせも願いたいものだ」
305 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:21:41.39 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
侍女「お疲れ様です」
姫騎士「あぁ」
侍女「次の闘技までお休みなされますか?」
姫騎士「いや、バーランド卿の試合が見たい」
姫騎士「彼の闘技を目にしたことはあるが、万に一つも油断を残したくないんだ」
姫騎士「慢心は敗北を呼ぶ」
侍女「…はい」
306 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:22:38.28 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
アナウンス『第1戦第五試合。勇者、ナタリー』
勇者「いぇい。どーもどーも!」
ナタリー「ふあ…」ノビー
「見ろよあのねーちゃん、剣二本持ちだぜ」
「二刀流ってやつ?初めて見るな」
魔法使い「剣を二本使うって、単純に考えれば一本で戦うよりも手数を多く出来そうよね」
アッシュ「それがそうでもないのですよ。二つの剣を同時に扱うということは、本来不要なはずのもう片方の腕の振り方を考える必要がありますし、重心を集中させることも難しくなってしまいます」
アッシュ「余程身体の制御に卓越していない限り一刀を振る方が効率的なのです」
リア「じゃああの人、とっても強いのでしょうか…?」
アッシュ「問題はないかと。二刀で名を馳せた方を私は知りません」
「あの娘っ子かわいいなぁ。どうにか仲良くなれんもんかいなぁ」
「やめとけやめとけ。おめぇ予選見てないんか?あいつ闘技してる時別人のようになんだ。嬉々として相手をいたぶるのよ」
リア「……」
魔法使い「……」
アッシュ「…大丈夫です。きっと」
審判「両者前へ!」
勇者「よろしくな、いい試合にしようぜ〜」
ナタリー「よろしくー」
審判「始め!」
勇者「」タタッ
ナタリー「…あは!」
ボッ
アッシュ「あれは…」
307 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:24:21.16 ID:qKbALpwl0
ナタリー「」ブン!
ボオォ...!
勇者「うぉっと?」サッ
ナタリー「えい♪」
ピシィッ
勇者「!」ヒョイ
勇者(火と氷?剣を振って飛ばしてくるって、こいつは…)
リア「アッシュさんがやっていたことと、そっくりです」
アッシュ「そうですね。魔法剣…私のものは不完全ですが、彼女は上手く魔力を流動化しています」
魔法使い「あれなら無理に力を込める必要もないわね」
魔法使い「綺麗に収束されてる分、アッシュさんのような威力はないけれど」
アッシュ「しかし私以外に魔法剣を使う方がいるのですね」
ミント「知らないんですか?最近流行ってるんです!」
アッシュ「!…ミント様」
ミント「来ちゃいました♪」
ミント「流行の発端はアッシュ様なんですよー?」
ミント「アッシュ様の戦うお姿を見て、魔力を宿して攻撃するっていうスタイルが広まってきてるんです」
アッシュ「私が?人前で披露した覚えはないのですが…」
ミント「私が広めちゃいました」エヘ
アッシュ「……」
ミント「私も使えるんですよ!こう、拳に込めて」
ミント「ドカンと!」
アッシュ「…ふぅ、闘技の世界も日進月歩ですか」
308 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:25:15.38 ID:qKbALpwl0
勇者「」サッ、サッ
ナタリー「おにーさんすばしっこいねぇ」
勇者「だろー?俺っちもそう思う!」
ナタリー「面白いなぁー」ブォン
ピシピシピシ
勇者(つっても避けてばっかじゃ終わんねーから)
勇者「」ビュン
タタタッ
ナタリー「っ!」ブォッ
勇者「よっ!」バッ
ナタリー「わ…」
勇者(よし、この距離ならもう――)
ナタリー「…にひ」
勇者「!!」
勇者(上かっ!?)
ナタリー「"氷柱"」
バキィン!
パラパラパラ...
ナタリー「わぁ…」
ナタリー「すごいねー、壊せちゃうんだぁ」
勇者「へっへ。魔法は見慣れてっかんよ」
309 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:25:58.27 ID:qKbALpwl0
勇者「今の会場を涼しくしようとしてくれたんよな?粋なサービスだぜ」
ナタリー「……」
ナタリー「あはは♪」
ナタリー「ねーもっともっと遊ぼう?疲れて疲れて疲れ果てちゃうまでいっぱい!」
勇者「おーう!」
勇者「…って言いたいとこなんだが、わりぃ、俺っちちょーっと急いでんだ」
ナタリー「えー?楽しくないー?」
勇者「もち楽しいぜ」
勇者「けど、これ以上待たせんのも酷だかんさ」
ナタリー「?」
勇者「つーわけで」
勇者「勇者くん、突撃します」シュンッ
ナタリー「!速いんだぁ…!」
ボオオォ!
勇者「」サッ
スタタタッ!
ナタリー「"包炎"!」
勇者「遅い遅い!」ダンッ
ナタリー「いいよぉ!あっつあつの火炎で受け止めたげるから!」
ナタリー「その剣、炭にしちゃう!」ブワァ
310 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:27:11.64 ID:qKbALpwl0
勇者「」バッ
――クルン
ナタリー(あ…)
バシッ ガスッ!
勇者「……」...スタ
カラン、カラカラ...(転がる二本の木剣)
ナタリー「あれまぁ」
勇者「どうよ」
勇者「俺っちにも剣はたき落とすくらい出来んだぜ」
ナタリー「……♪」
ナタリー「審判さーん。私の負けー」
勇者「え?」
審判「勝者、勇者!」
「やるなあの男」
「最後の剣の動き、見えたか?」
「1回転?いや、なんだろうな」
アッシュ「まずは1勝ですね」
魔法使い「今の初めて見たわ。あれも特訓の成果?」
アッシュ「レラ様直伝の技です。この短期間で習得出来るのはさすがという他ないですね」
ミント「むむ……勇者くんめ、なかなか……」
311 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:27:40.34 ID:qKbALpwl0
勇者「よかったんか?俺っちてっきり」
ナタリー「うん、いいの」
ナタリー「その代わりぃ、今度たくさん遊んでねー」
勇者「お安い御用よ」b
ナタリー「…えへー」
姫騎士「侍女、あの勇者という男」
侍女「はい。先日通りで行き会った者です」
姫騎士「アッシュと共に居た奴だな」
侍女「……」
ーーーーー
アッシュ「そのついでに、英雄を育てていました」
ーーーーー
侍女(……)
312 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:28:09.26 ID:qKbALpwl0
ーーー本選2回戦ーーー
審判「勝者、姫騎士!」
姫騎士「ありがとう、いい闘技だった」
姫騎士 本選3回戦進出
ーーーーーーー
審判「勝者、勇者!」
勇者「ふー。体、あったまってきたかな」
「今度は剣使わずに勝っちまった」
「全身武器みてぇな戦い方だ。こいつはもしかしたらもしかするかもな」
「まぁ姫騎士様には敵わんさ」
勇者 本選3回戦進出
313 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:28:59.60 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
勇者「よっ」
リア「勇者さん!おかえりなさい」
アッシュ「体術も好調のようですね」
勇者「先生のおかげだよ。剣も体も、今までで最高に気持ちよく動かせる」
魔法使い「…勇者」
勇者「うん?」
魔法使い「あ、いえなんでもない…」
勇者「で、俺っちの次のお相手さんは」
アッシュ「今まさに、ですよ」
ミント「"光弓"!」ヒュヒュッ
グローバ「うりゃ、ほっ」パシ、パシッ
ミント「〜!」
ミント「"加重"!」
グローバ「ん?」グ...
ミント(よしっ)
ミント「"落石"」
...ゴゴゴ
ミント「潰れちゃえ!」
ゴォォ!
グローバ「"剛腕"」
ズンッ!
314 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:29:47.85 ID:qKbALpwl0
「い、岩が…」
「おっさん生きてんのか…?」
勇者「へっ」
グローバ「むぅん!」ブンッ
ガァン!
ミント「うっそ…」
ミント「おじいちゃん元気良すぎっ」
グローバ「がはは!元気だけが取り柄なもんでなあ!」
グローバ「"敏捷"!」
ビュンッ!
ミント(来る…!)
グローバ「」ダダダッ
ミント(速いけど、むしろ好機!)
ミント(私の"魔法拳"お見舞いしてやる!)タッ
スタタッ
ミント「いっけぇ!」グワッ!
――ガシッ
ミント「…!?」
グローバ「…へへぇ」
サワサワ
ミント「ひっ」
グローバ「やわっこいねえ。やっぱこれよこれ!ゴツい岩なんざ触ったことでなーんも面白くねえ!」
ミント「は、離してっ!」ブンッ
グローバ「おっと」
パッ
315 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:31:39.35 ID:qKbALpwl0
ミント「このぉ…さっきからベタベタしてくると思ったら…!」
ミント「変態っ!」
グローバ「人聞きが悪いなあ。戦いの最中に偶然触れ合っちまっただけだぜ?偶然」
ミント「何が偶然よ!うぅ…アッシュ様が見てるのに…」
グローバ「嬢ちゃん、貴族だろ?」
ミント「」ギクッ
ミント「…しし知りませんが?」
グローバ「隠さんでいいがな。嬢ちゃんの気持ちも分かる」
グローバ「貴族なんていつんなってもつまらんしな。どこで何するにしたって義務だの家柄がついて回る」
ミント「そう!そうなの!」
ミント「おじいちゃん、あなたももしかして…」
グローバ「と、言っとった知り合いが居たなあ。そいつが女なんだが、いいケツしてたもんで全然話入ってこんかったわい!」
ミント「……」
ミント「ない。これが貴族はさすがに」
グローバ「嬢ちゃんも肌のハリは負けとらんだろう!わはは!」
ミント「っっ」ゾワゾワ
ミント「絶対はっ倒してやるんだから!」
.........
316 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:32:28.07 ID:qKbALpwl0
ツン
ミント「や…!」ブンッ
グローバ「」ヒョイ
グローバ「ん〜、お次はどこがいいかねえ」
ミント「う…もうやだぁ…」ナミダメ
「……」ゴクリ
「なんつーか、美少女の泣き顔って……悪くないな」
グローバ「よおし」ニヤリ
ミント「…!!?」
ミント「こ、降参しますー!審判さん、もう終わり!」
審判「勝者、グローバ!」
グローバ「おん?なんでえ、これからがいいトコだってのによお」
魔法使い「……アッシュさん、あとであの人元気づけてあげて」
アッシュ「そうですね…一言くらいかけましょうか」
勇者(ま、こうなっちまうよな)
侍女「品の無い戦いです」
姫騎士「しかし勝ちは勝ちだ」
姫騎士「案ずるな、私には指一本触れさせはしない」
317 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:32:56.09 ID:qKbALpwl0
ーーー本選右会場ーーー
ダグ「」ヒュ、ヒュヒュッ
...ピタ、ピタピタ
ダグ「…どうなってやがる」
勇者母「……」ニコニコ
「こりゃまた、マジックショーでも見せられてる気分だ」
「場所が場所ならそうなってるやろ。武器屋のやつ、小せぇ木剣大量に持って何すんのかと思ったら投擲たぁな」
「武器の使い方を俺達に見せてくれてんだろうぜ」
「だが一本も届かないんじゃあなぁ」
ダグ(投げナイフの効かねぇ相手なら山程見てきたが、宙で止める奴は初めてだ)
ダグ(ここらじゃ見ない顔の女と思っていたが、ただ者じゃねぇ)
勇者母「あなた、勇者という男の子を見ませんでしたか?この舞踊祭に出ているはずなんですけど…」
ダグ「大会にかね?はは、それなら反対側の会場でやってんだろうさ。さっき名前を見かけたからね」
勇者母「あら、見落としていたのでしょうか」
勇者母「早く渡してあげたいのですが…きっとあの子も――」
ダグ(金持ち貴族か、あわよくば賞金か。戯れで出場してみたが、こいつはとんだ掘り出しもんかもな)
ダグ(飛び道具が通用しねぇなら)
ダグ「」バッ!
ダグ(直接叩くまで!)
.........
318 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:33:38.47 ID:qKbALpwl0
審判「勝者、勇者母!」
オオオォ...!
「やべぇな、あの女」
「武器屋の近接戦もすごかったが…」
「あれは本当に女…いや人間か…?」
ダグ「いやぁ参った参った。とてもお強い!」
ダグ「どちらの出身の方ですかな?」
勇者母「しがない小さな村ですよ」
ダグ「ほぉ」
ダグ「うちは王都で武器屋やってるもんでね、よかったら寄ってっておくれ。武器はあなたをもっと強くしますぞ!」
勇者母「覚えておきます」ニコッ
勇者母「もうすぐで勇者に会えるのですね♪」
ダグ(この女、いつか必ず…)
319 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:34:39.70 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
姫騎士「気になるな」
侍女「先程の相手ですか?お望みとあらば素行調査を致しますが」
姫騎士「いや、勇者だ」
侍女「…!」
姫騎士「奴の戦い方は剣術と体術。剣の腕など私から言わせれば青二才だが…」
姫騎士「まだ何かある」
侍女「何か、ですか」
姫騎士「うむ」
姫騎士「奴の出番は次だったな」
侍女「はい。バーランド卿との闘技です」
姫騎士「席を移そう。ここでは少し見えづらい」
320 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:35:50.96 ID:qKbALpwl0
ーーーーーーー
「よしいけー!」
「ぶちのめせー!」
「俺はセクハラ爺さんに賭けてんだ!負けんなよー!」
ワーワー!
リア「声が…耳に響きます…」
アッシュ「本選も準々決勝ですからね。先の姫騎士様の試合もあります、こちらの会場を観に来る人の方が多いのでしょう」
ミント「……」ギュ
アッシュ「…ミント様、そろそろ離していただいても…」
ミント「もうちょっと」
リア「でも、勇者さんのお相手……」
魔法使い(……勇者……)
グローバ「なんだここまで来れたのか小僧!」
勇者「白々しいおっさんだぜ。見てた癖に」
グローバ「すまんなあ、俺は美人しか目に映らんのよ」
審判「両者前へ!」
グローバ「しかしいいのかい?またこの前みてえに一発で沈むさまを連れの嬢ちゃんに見られちゃうぞ?」
勇者「…へ、いい試合にしよーぜ」
グローバ「フッ。腹、括ったってことかい」
審判「始め!」
グローバ「手加減は無しだ」
グローバ「"硬化"、"敏捷"、"剛腕"」
グローバ「」ドゴッ
勇者「」ダッ
321 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:39:19.10 ID:qKbALpwl0
グローバ(向かってくるか。悪くねえ判断だが)
グローバ「歯食いしばっとけよ!」ズドドド!
勇者「……」タタタッ
グローバ(お粗末!)
グローバ「」ズオッ
勇者「」スッ
ドゴォン!
グローバ「…ほお」
「地面が抉れた…」
「とんでもねぇなあのジジイ」
アッシュ「バーランド卿の身体強化魔法は硬化、敏捷、剛腕の3つ。これだけですが、大砲よりも速く瞬発し、鋼の如き四肢から繰り出される重たい一撃はまさに必殺」
アッシュ「魔法の使えない勇者様にとっては元々相性の悪い相手なのです」
ミント「…魔法、使っても倒せなかった」
アッシュ「あくまでも打つ手が増えるというだけですので…」
322 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:39:51.68 ID:qKbALpwl0
グローバ「ふんぬっ」ブォッ
勇者「」サッ
勇者(よしっ、見える)
グローバ「おお!」グンッ!
勇者「」ヒラッ
勇者(焦るな、奴の次の動きは――)
グローバ「」グ...
勇者(右!)
グローバ「どう!」
勇者「」スサッ
グローバ「やるじゃねえの小僧!ならこれでどうよ!」
ドドドドッ!(猛烈な連続攻撃)
勇者「っ」サササッ、ササッ
リア「腕が増えたみたいです…?」
アッシュ「二本ですよ。霞むほどの動きでそう見えますが」
アッシュ「当たれば勝敗が決してしまうでしょうね」
魔法使い「……っ」
勇者(……)
ドドドドッ
勇者(………)
グローバ「」ズ――(腕を思いきり引く)
勇者(ここだっ!)
――バシィン!
魔法使い「あ…!」
323 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:40:28.92 ID:qKbALpwl0
グローバ「おっ!?」
勇者「ちっ」
サッ、サッ(距離を取る)
グローバ(剣を、当てられたか?)
グローバ(この小僧に?)
勇者「…おっそろしく硬ぇ脇だな」
グローバ「男は硬くてなんぼだろお」
勇者「硬過ぎても嫌われるんじゃねーの?」ケッ
グローバ(こいつは本当にあの時の小僧か?)
勇者「やーっぱ中途半端な攻撃じゃ、でけーイノシシを退治すんのは無理か」
グローバ「!」
グローバ「ぬはは、少しは出来るようになったみたいだなあ?」
勇者「おっさんのおかげさ」
勇者「感謝してんだぜ、あんたのおかげで俺っちはもっと強くなれた」
勇者「"現実"ってのを思い出せたんだ」ニッ
グローバ「……」
グローバ「面白くなってきたな!えぇ?小僧?」
勇者「そう…だな!」ダッ!
.........
324 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:40:57.55 ID:qKbALpwl0
グローバ「むん!」
勇者「っ」サッ
勇者「おらっ!」
ガンッ
「いいぞ!いけいけ!」
「爺さんさっさと決めちまえ!」
グローバ(こっちの隙間を縫って的確に剣を叩き込んできやがる)
グローバ(一回でも俺の拳を当てられれば終わりなんだが…)
勇者「」ヒョイ
グローバ(すんでのところで回避。さっきからこればっかだ)
グローバ(だがそれは小僧とて同じ)
バシッ
勇者「っ!」
グローバ(俺の体にいくら木剣をぶつけたところで無意味。こいつが有効打を喰らわすとしたら、顔面しかねえ)
グローバ(それを狙ってきたところを…叩く!)
325 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:42:25.90 ID:qKbALpwl0
魔法使い「…見てるのが怖いわ」
魔法使い「このまま長引いたら、またあの時みたいに…」
アッシュ「疲労で少しでも動きが鈍くなってしまったら、危険ですね」
アッシュ「ですが今は、彼を信じましょう」
ミント「うー、勇者くんは恨めしいけど…あのおじいちゃんが勝つのはもっと嫌…」
勇者「」グワッ
グローバ(大振り…!)
グローバ(いよいよか!)
ガキンッ
勇者「くぅ…!」
グローバ(体狙い?効かねえことなんぞとっくに分かっとるだろうに)
グローバ(何を企んどる?)
勇者「ほんとにどこもかしこもカチカチだな!」
グローバ「俺をおちょくってんのか!」ブォン!
勇者「滅相もない!」
勇者「確かめてたんだ、よ!」
シュッ!
「投げ付けた!?」
「あの距離でか!」
326 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:43:05.18 ID:qKbALpwl0
グローバ(これが狙いか!)
グローバ(顔面への投剣。なるほど腕を振りきった後じゃ防御も避けることも出来ねえ)
グローバ(――けどなあ)
ゴツンッ
グローバ「がはは!俺は石頭なんだ!」
グローバ(額に向かって投げたのはナンセンス!)
グローバ(これでこいつはその体だけで戦うしかなくなったわけだ)
グローバ「早まったな小僧!体術は俺の土俵――」
スッ
グローバ「!!」
グローバ(いつの間に…!)
グローバ(顔はやらせん!)
勇者「」グ――
グローバ(いや…また体か!?)
ズドンッ!
...ドス、ドシン
327 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:44:00.92 ID:qKbALpwl0
リア「…!」
アッシュ「ふふ」
グローバ「ぐ…小僧…」
審判「…場外!勝者、勇者!」
ワーー!
リア「やりました…!」
アッシュ「フェイントからの見事な掌底。バーランド卿をあそこまで吹き飛ばしたのは勇者様が初めてではないでしょうか」
ミント「すっご…」
グローバ「いやあ驚いた」
グローバ「小僧、お前さん強くなったな」
勇者「言ったろ?俺っち優勝候補者だって」
グローバ「ただのイキったガキじゃなかったっつーことか!わはは!」
グローバ「しかし残念だ。せっかく姫の豊満なボディを堪能しようと思ってたんだがなあ」
勇者「豊満…確かに」
グローバ「お?お前さんも分かるかい。いい目してるぜ」
グローバ「ま、俺の代わりに楽しんできてくれや。姫との手合わせをよ」ニカッ
勇者「言われなくても」ヘッ
328 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:44:32.09 ID:qKbALpwl0
勇者(……)
勇者「」クルッ
勇者「スゥー…」
勇者「よく聞けお前ら!」
勇者「最強は、この俺っちだ!!!」
ウォオオオオ!
「愉快なやつよのう」
「はっはっは!いいぜ、あんたに賭けたろうじゃねぇの!」
魔法使い「――」
魔法使い「」タッタッタッ
リア「あ、魔法使いさん」
アッシュ「行かせてあげましょう」
リア「…はい」フフッ
329 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:47:58.56 ID:qKbALpwl0
姫騎士「………」
姫騎士(……)
侍女「……」
王「ここにおったか」
姫騎士「お父様。何故こちらへ?」
王「それは儂の言葉だ。お前が客席の前まで来るとはな」
王「あの男、それ程の使い手か?」
姫騎士「……」
姫騎士「心配には及びません。見かけない者が勝ち進んでいたもので、観察していただけです」
姫騎士「私の敵ではありません」
王「そうか。お前がそう言うのなら安心だ」
王「分かっておるな姫騎士よ。お前はこの国の光、希望なのだ。負けることは許されぬ」
王「国の為、儂の為に、勝て」
姫騎士「お任せ下さい」
姫騎士「私の愛するお父様」
330 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:48:39.52 ID:qKbALpwl0
ーーー選手入場路内ーーー
勇者「……はー」
勇者「やったんだな、俺」
ーーーーー
グローバ「なぁまさかおめえよ、このポンコツをぶつけようってんじゃねえだろうな?」
ーーーーー
勇者「……へへ、そのポンコツはここまで強くなりましたとさ」
...タッタッタッ
勇者「…!」
魔法使い「はぁ…はぁ…」
勇者「魔法使い?どうしたんだよ」
魔法使い「あんたを、探しにきたのよ」ハァ..ハァ..
勇者「あー戻ってこなかったからか?俺っち次の試合に備えてちょっち休憩してたんだ」
魔法使い「………」
勇者「なんか、怒ってらっしゃる?」
魔法使い「……おめでと」
勇者「んぇ?」
魔法使い「あのおじいさんに、勝ってくれたから」
勇者「…おう、サンキュ」
魔法使い「またみっともなく負けでもしたらどうしてくれようかと思ったわ」
勇者「蒸し返すなって。ありゃ生まれて初めて負けたもんだかんよ、ちっとびっくりしただけさ」
魔法使い「この前までめそめそいじけてたものね」
勇者「負けっぱなしは気に喰わねーし、一念発起してやったのよ、俺」
勇者「前よりずっと強くなってんだろ?」
魔法使い「……やっぱり……あんたは……」
勇者「今度はなんだよ?」
331 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:49:22.37 ID:qKbALpwl0
ツー...
勇者「…!?」
魔法使い「ぅ……グス…」ポロ、ポロ
勇者「え、お前…」
魔法使い「バカ……バカ…!」
魔法使い「もう、戻ってこないかと思ったんだから…」ポロポロ
勇者「…泣き虫魔法使いちゃんは戻ってきちまったみたいだな?」
魔法使い「うるさい…!」
勇者「ほら、泣くなって。俺っちはここにいんだから」
魔法使い「だってぇ……」ポロポロ
魔法使い「本当に、消えちゃったと思ったんだもん…!」
魔法使い「いつもいつも私を引っ張って……どんな時も楽しそうで……」
魔法使い「私の大好きなあんたが…!」
332 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:50:08.62 ID:qKbALpwl0
勇者「……」
魔法使い「……………!!??」
魔法使い「わ、私何言って…!」
魔法使い「忘れて!今のはその…とにかく忘れてっ!」
勇者(……)
勇者「俺、行くわ」
トットットッ
魔法使い「っ…」
魔法使い(そう、だよね)
魔法使い(こいつにとっての私なんか……)
トッ...
勇者「……」
勇者「待ってるやつがいるんよ」
魔法使い「…え?」
勇者「子供ん頃からずーっと、最強の俺っちを待ってるやつがさ」
勇者「早く行ってやんねーとまた泣き出しちまう」
魔法使い(――!)
魔法使い「…覚えて、たの…?」
勇者「勝ってくる」
勇者「勝って戻ってくるからさ」
勇者「もう少しだけ、待っててくれ」
魔法使い「………うん」
魔法使い「絶対、勝ってよ」
勇者「へへっ」
333 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:50:48.88 ID:qKbALpwl0
アナウンス『ただいまより第4戦を行います。選手は入場してください』
アナウンス『準決勝。姫騎士、勇者』
334 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/06/28(日) 06:52:11.04 ID:qKbALpwl0
今回はここまでです。
次回、姫騎士戦です。
335 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/06/28(日) 14:27:52.82 ID:jJkraU1X0
乙乙
336 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:35:35.34 ID:ElQ0xIuM0
6章2/3、投下します。
337 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:36:05.33 ID:ElQ0xIuM0
ーーーーーーー
「姫騎士様ー!我らがついておりますぞー!」
「勇者ー!男を見せろよこの!」
タッタッタッ
魔法使い「間に合った?」ハァ..ハァ..
リア「魔法使いさん!よかったです、今始まるところですよ」
ミント「……」ジー
魔法使い「あれ、アッシュさんは?」
ミント「昔の友人に会ってくるとかでどっか行っちゃった」
ミント「そして私はアッシュ様からこの子のお守りという大事な使命を任されたのです!」フンス
魔法使い「…そう」
姫騎士「……」
勇者(うひゃーおっかねー)
勇者(美人でグラマラスときてんのに、すげー威圧感だぜ…)
姫騎士「緊張しているのか?」
勇者「ん?いやー間近で見るとこーんな綺麗な人なんだなって」
姫騎士「面白い男だ。賛辞と受け取っておこう」
338 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:36:37.78 ID:ElQ0xIuM0
侍女「………」
...コツコツ
アッシュ「元気がありませんね」
侍女「何をしにきたのですか?」
アッシュ「観戦ですよ。お一人でいるよりは寂しくないでしょう?」
侍女「…不要な気遣いです」
アッシュ「そう仰らずに」ニコッ
姫騎士「君の闘技見せてもらったよ。大層な演出家だな、最強殿」
勇者「なはは、どーも」
姫騎士「さぞ、強いのだろうな」
勇者「期待してくれていいぜ。勝っても負けても退屈はさせないかんよ」
姫騎士「楽しみだ」
審判「両者前へ!」
ザッ...
姫騎士(……)
審判「始め!」
339 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:37:08.05 ID:ElQ0xIuM0
ダッ
勇者(相手の力量が測りきれてねーうちは様子見に回んのも大事だって、先生も言ってた気がすっけど…そんなん俺っちの性に合わねー)
勇者(先手必勝っ!)
勇者「」ブォン!
姫騎士「……」
カン、カンカンッ
カァン!
勇者(びくともしねー…)
勇者(なら!)
ガンッ、ガンッ、ガィン!
勇者「とりゃ!」ビュン
姫騎士「」スッ
ガツン!
勇者「なっ」
「剣の横腹を殴った…」
「よく見えますね、さすが姫騎士様」
アッシュ「……」
340 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:38:11.20 ID:ElQ0xIuM0
勇者(俺っちの剣なんか素手で十分ってかい)
勇者(そんならこっちだって…!)
勇者「」グンッ
姫騎士「」バシッ
勇者(左!裏拳!回し蹴り!)
ガッ、ガッ
ビシッ!
勇者(剣先を蹴っても止められるんか!?)
勇者(…転ばしてやる!)
勇者「」バッ
――ヒラッ
勇者「!」
姫騎士「」バッ
勇者「おわっ!」
ドタン!
リア「勇者さんの技が効かない…」
魔法使い「それどころか足払いを返してきたわね…」
アッシュ(自分の得物である剣を防御だけに使う)
侍女「…煽りつけていますね」
アッシュ「えぇ」
341 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:39:00.43 ID:ElQ0xIuM0
姫騎士「……」
勇者(こいつ…偉そうに見下してきやがって…)
勇者「よっこらせっと」
勇者「あーあ、こんなに土汚れ付いちまって」パンパン
姫騎士「………」
勇者「あんた、剣が得意なんだろ?別に俺っちに合わせてくれなくてもいいんだぜ」
姫騎士「あぁ」
姫騎士「言われずともそのつもりだ」
シュンッ
姫騎士「」シッ――
勇者「っ!」
ガァン!
バシッ、ガッ
ズバッ!
勇者(くっ…!)
勇者(どんなリーチしてんだよ目が追いつかねー…!)
姫騎士「」ダン
勇者(左か!?)
ガキッ!
勇者(正面!)
ガン!
姫騎士「」ビュオッ
勇者(右上――違ぇ!)
ビシィッ!
勇者「つっ…!」
サッ、サッ(距離を取る)
勇者「いってー…」
姫騎士「……」
勇者(追撃してこない、か)
勇者(舐められてんなー)
342 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:39:40.02 ID:ElQ0xIuM0
侍女「あれが、貴方の言う英雄ですか?聞いて呆れますね。姫騎士様に打ち勝つどころか一撃入れることすらままならないではないですか」
アッシュ「確かに、このままでは難しいでしょうね」
侍女「まさか手加減していると?」
アッシュ「いえ、彼に手心を加える余裕はないでしょう」
侍女「……」
勇者(…やっべぇ)
勇者(思ってた何倍も強ぇ。本当に勝てんのかよ、こんな怪物に)
ーーーーー
魔法使い「絶対、勝ってよ」
ーーーーー
勇者(………)
勇者「……へへ」
勇者(いけねーいけねー。怯むなよ俺)
勇者(負けると思ったら負けんだ)
姫騎士「楽しいのか?」
勇者「まぁね。あんたは?」
姫騎士「…愚問だな」
姫騎士「闘技とは、勝敗を明確にするためのものに過ぎない」
勇者「勝ったら嬉しくない?負けたら悔しいけどさ」
姫騎士「勝利の中にあるのは次の勝利だけだ」
勇者「ひゅー、王者の言うことは違うねぇ」
勇者「でも、勝つのは俺っちだかんなっ!」ダッ
姫騎士「」ダッ
.........
343 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:40:19.69 ID:ElQ0xIuM0
ーーーーー
王「これは驚いた…」
王「姫騎士よ、お前には剣の才能がある」
ーーーーー
ーーーーー
王「よくぞ優勝してくれた!これで諸国達も我が国を無視することは出来なくなるだろう」
王「お前は最高の娘だ。愛しておるぞ」
ーーーーー
姫騎士「」ビュンッ
バシンッ
勇者「ぐっ…」
344 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:41:14.40 ID:ElQ0xIuM0
ーーーーー
王「よいか、最早お前の勝利はお前だけのものではない。儂と、この国をも背負っておるのだ」
王「愛しい我が娘よ、お前の強さは誰にも破られてはならん。お前が負けることは国の落ち目に繋がる」
王「敗北に未来はない」
王「勝つのだ、姫騎士」
王「勝って勝って勝ち続けるのだ!」
ーーーーー
姫騎士「」スッ
ビシッ
勇者「っ」
345 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:41:42.17 ID:ElQ0xIuM0
姫騎士(そうだ)
ガン!
姫騎士(私は勝たなければならない)
ガキッ
勇者「ぬぉ!」
姫騎士(例え公爵の当主が相手であろうと)
ガンッ!
姫騎士(昔馴染みの執事が離れていこうと)
バンッ
勇者「ぐぅ…!」
姫騎士(無心に)
ヒュッ
勇者「」サッ
姫騎士(ただひたすらに…)
勇者「そらっ!」バッ
クルッ――
姫騎士(勝利を望めっ!)
バキィン!
勇者「――っ」
勇者(マジ、かよ…!?)
346 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:43:22.17 ID:ElQ0xIuM0
ミント「あれま」
リア「剣が……」
ミント「お姫ちゃん、色んな人の剣折ってるよねー」
ミント「同じ木剣使ってるはずなのになんでそんなこと出来んだろう?」
「ありゃ心も折れるわな」
「勇者っちゅーのも頑張っとったが、姫騎士様相手じゃ歯も立たん」
「よく保った方だ」
魔法使い「………」
347 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:43:50.67 ID:ElQ0xIuM0
勇者(ちくしょー…お姉さんの剣技も通じないときたか)
勇者(体術でどう攻めていく…?)
姫騎士「審判殿、この者に新しい剣を用意してくれないか」
勇者「…は?」
審判「それは…」
姫騎士「どうした?ルールに抵触してはいまい?」
審判「ですが」
姫騎士「早く」
審判「は、はい」
ザワザワ...
「どういうこと?」
「相手に情けをかけてらっしゃるとか…?」
「今まで見たことないわ…」
侍女「姫騎士様自身が、試合の継続を望んだ」
アッシュ「それ以外に考えられませんね」
アッシュ「…彼女はこの闘技の中で何かを見つけようとしている」
侍女「何を」
アッシュ「分かりませんが……今の強引な申入れは、さながら子供のわがままのようです」
348 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:44:17.54 ID:ElQ0xIuM0
審判「こちらです」
勇者「……」
(剣を受け取る)
姫騎士「再開しようか」
勇者「…は、優しいお姫様だこと」
勇者「そうやっていつまでも余裕ぶってると、足元すくっちゃうからな?」
.........
349 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:45:26.14 ID:ElQ0xIuM0
ガンッ!
カン、カァン
ズバン!
「辛ぇだろうな、あんだけやられてよ」
「降参すりゃええのに」
アッシュ(無論、勇者様にとって辛い戦いであることに間違いはないでしょう)
アッシュ(相手を軽んじることなく全力で立ち向かっての、この力量差ですから)
侍女「……」グ...
アッシュ(しかしそれ以上に)
アッシュ(この会場で今、誰よりも辛いのは…)
350 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:46:19.55 ID:ElQ0xIuM0
勇者(くっそ…!)ブンッ
ガン
勇者(どこから攻めても剣だけで防がれる)
ガツッ
勇者(蹴りも殴りも平気で止める)
姫騎士「」ズオッ
勇者「っ!」ギィン!
勇者(癖とか弱点ねーのかよ…!)
勇者(こんなん続けたとこで全身痣だらけにされるだけだ)
姫騎士「」スサッ
ズバッ
勇者(体力も…)
勇者「…っ」
勇者「このっ!」ビュンッ
姫騎士「」ヒラッ
勇者「!?」
勇者(やばい、カウンターが…)
ブォンッ
ガァン!
勇者(っぶねー、何とか合わせた)
勇者(返す刀だ!)ダン
――ヨロ
勇者「あっ」
勇者(しまっ――)
姫騎士「」シッ
ドゴッ!
勇者「がっ…!?」
ドサッ...
351 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:47:01.66 ID:ElQ0xIuM0
魔法使い「!…」
リア「あぁ…!」
ミント「うわ、痛そう…」
勇者「げほっ…げほっ!」
姫騎士「……」
勇者「っはぁ……はぁ……」
姫騎士「……」
姫騎士「どうした、最強」
勇者「ゔぅ、え゙ほっ…」
姫騎士「何を暢気に寝ている」
勇者「は……は……」
姫騎士「…っ」
姫騎士「最強なんだろう!?誰にも負けないのだろうっ!?」
姫騎士「絶対に勝つことこそ"最強"の至上命題!」
姫騎士「その程度の力で最強を騙るな!不愉快極まりない!!」
352 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:47:40.01 ID:ElQ0xIuM0
「どうしたんじゃ姫騎士様…?」
「すごい剣幕…」
アッシュ「自らの勝利が何を意味するのか、あの方は誰よりも知っているのです」
アッシュ「彼女にかけられた期待とプレッシャー。それが彼女を必勝へ追い込む…」
アッシュ「恐らく姫騎士様にとっての勝利は、甘美な快でも栄誉な誇りでもない」
アッシュ「ただただそこにある空気に同じ。呼吸して肺を満たすもの」
侍女「だから、許せないのでしょうね」
侍女「自由にこの場所で舞い、戦うあの男が」
アッシュ(…最強とはその実、横に並ぶ者のいない孤独な存在なのです)
アッシュ(そう……私では駄目だった…)
353 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:48:06.76 ID:ElQ0xIuM0
姫騎士「……」
勇者「」
審判「……」
姫騎士(……)
審判「…きぜ――」
ノソ...
姫騎士「…!」
勇者「だーれが、その程度の力だって?」
勇者「俺っちまだ負けてねーし」ヘヘ...
「立つのかよ」
「すげぇ根性だな」
勇者「こいよ最強」
姫騎士「……」
勇者「そんなに言うならさ、手本を見せてくれよ」
勇者「あんたの言う"最強"ってやつを」
姫騎士「…いいだろう」
姫騎士「身を以って教えてやる」
.........
354 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:48:33.55 ID:ElQ0xIuM0
バシッ、バシィン!
ズバッ
勇者「」ヒュン
ガッ
勇者「……」ブンッ
パシッ
姫騎士「」シッ
ダァン!
勇者「ぐぁ…」
ミント「ひ、酷いわね。あそこまで一方的に…」
ミント「下手したらこれ、勇者くん死んじゃうんじゃ…?」
リア「そんなこと…。だって闘技ですよっ…!」
ミント「でもさっきから動きもおかしいじゃない。剣持ち替えようとしたり手と足同時に出したり」
魔法使い「大丈夫よ。あいつは死なないから」
魔法使い「負けもしない」
ミント「えぇ…?」
355 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:49:35.11 ID:ElQ0xIuM0
勇者(袈裟斬り)
姫騎士「……」サッ
勇者(膝蹴り)
ガツン
姫騎士「」ヒュッ
ザンッ
勇者「っ」
勇者(もう一丁斬り上げ)
ーーーーー
アッシュ「――さて、今日はこの辺りで体術鍛錬へ切り替えます」
勇者「また?せっかくいい感じに剣の体になってきたのに」
アッシュ「勇者様、あまり長く剣の鍛錬を続けてると、稀に体術の動きをしますよね」
勇者「そうなん?全然意識してないんだけど…」
アッシュ「我慢は身体に毒です。無意識下でも体術を鍛えたいと思っているならそうしてあげるのが最も伸びが良いですから」
アッシュ「貴方の場合、逆も然りなので体術と剣術をバランスよく切り替えていくのがベストでしょう」
勇者「なんじゃそりゃ」
ーーーーー
勇者(肘打ち――)
ガシッ
勇者「…!」
姫騎士「いつまでこの茶番を続ける気だ?」
姫騎士「お前の望む最強とは何か、存分に分かっただろう」
勇者「…ケチケチしてんなって。もうちょい見してよ」
姫騎士「断る。遊びに付き合うのはここまでだ」
パッ...
姫騎士「」ビュオッ!
ゴスッ
356 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:51:51.49 ID:ElQ0xIuM0
「頭ときたぜ…」
「なんで奴は倒れない?」
「ゾンビなんじゃねぇか?ははっ」
リア「勇者さん…」
ミント「もう見てらんない…」
魔法使い「……」
勇者「」フラ...
姫騎士「しぶとさだけは認めてやろう」
姫騎士「…終わりだ」スッ
姫騎士(こやつもこれまで下してきた有象無象と同じ)
姫騎士(私はただ)
ブワァッ!
姫騎士(勝ち上がるのみっ!)
――バスッ
357 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:52:27.12 ID:ElQ0xIuM0
侍女「……!」
アッシュ「……」
リア「っ…」(目を瞑る)
ミント「え…」
魔法使い「……」
姫騎士(……む)
勇者「…いひっ」
魔法使い「もう」
魔法使い「遅いじゃない、まったく」フフ
ミント(足裏で受け止めたの…?いつの間に)
358 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:53:02.73 ID:ElQ0xIuM0
勇者「ようやく分かったぜ」
勇者「剣と体は別々のもんじゃねーのさ」
勇者「そういうこったろ?お姫様」
姫騎士「…何がだ?」
勇者「つまり」
勇者「――反撃開始ってこと」ザッ!
姫騎士「……」ガンッ
――ヌッ
姫騎士「っ!」ガッ
勇者「」グルン
ガツッ、ガィン!
姫騎士「く…!?」
「んん?剣で姫騎士様を押しとる」
「バッカ見えないか?手、足、胴全部使ってる!」
「人間の動きかよあれ!?」
勇者「まだまだ!」
姫騎士「…っ」
359 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:53:42.22 ID:ElQ0xIuM0
侍女「あの男は何をしたの…?」
アッシュ「…そういうことでしたか」
アッシュ「勇者様は闇雲に戦っていたのではありません。剣術と体術の連携…言うなれば融和点を探っていたのです」
アッシュ「合点がいきました。きっとあれが――」
アッシュ「彼の才能」
勇者(上段、足掛け、胴斬り!)
カンッ、スサッ――ガキッ!
勇者(回し蹴りからの)ゴッ
勇者「」ピョン
姫騎士「っ」
ガン、ガンッガン!
勇者「前転宙返りー!」スタッ
勇者「からの切り返しっ!」ダッ
姫騎士「ちょこざいなっ」
ガァン! ドスッ
ダダッ、バシッグルッ
勇者「へへっ!ちゃんとついてきてくれよ!」
勇者「もっともっとあげてくぜーっ!」
姫騎士「この…!」
リア「すごい……速過ぎてくらくらしてきました……」
ミント「おっどろいた。剣と体、お互いの攻撃の隙間を補い合ってる…」
ミント「そりゃあ攻撃速度は格段に上がるけども、あんな芸当出来ないって普通!」
360 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:54:53.21 ID:ElQ0xIuM0
勇者「よっ」サッ
姫騎士「っ!」ガッ
勇者「ははっ!」シュッ
姫騎士「」バスッ
姫騎士(なぜ…)
勇者「こっち!」
姫騎士(なぜ笑える)
勇者「ほら遅え!」
姫騎士(楽しいのか?闘技(これ)が?)
勇者「ボーッとしてっとおいてくぞ!」
姫騎士(…そんなわけはない)
勇者「それっ!」
姫騎士(そんなわけがないんだ!)
姫騎士「はあっ!!」シッ――
ガキィッ――
361 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:55:20.35 ID:ElQ0xIuM0
カラン、カラ...
姫騎士(……剣が……)
勇者「……」
勇者「拾っていいぜ。さっきのお礼だよ」
勇者「剣持ってないあんた倒したところで最強は名乗れないっしょ?」
オオオオォ!
「おうおう格好付けやがってよー!」
「てめぇってやつは男の中の男だ!」
姫騎士「……ふっ、調子に乗るなよ」
362 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:56:59.72 ID:ElQ0xIuM0
ーーーーーーー
カンッ、ガガッ、ズバッ!
「いいぞ勇者!そこだ!」
「守るのは危険ですぞ姫騎士様!」
ワーワー!
勇者「うらっ!」
ヒュッビュオッ
姫騎士「ふっ!」
スッ、ガンッ
姫騎士(速い)
ガッ――
姫騎士(一瞬でも気を抜けばやられる)
スサッ――
姫騎士(全力で迎え撃つ)
ダン――
姫騎士(全力で捌ききる)
シュッ――
姫騎士(この感覚はなんだ…?)
363 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:57:46.11 ID:ElQ0xIuM0
ーーーーー
王「どうだ?初めて剣を握ってみた感想は」
王「おぉ、上手だな。まだ小さいのに父さんより強いやもしれんな、はは」
王「ん?そうかそうか楽しいか!」
王「父さんもとても楽しいぞ――」
ーーーーー
勇者「せいっ!」
姫騎士「」シュバッ
ガァン!
勇者「うおぅ!?」
姫騎士「ここは君だけの闘技場ではないのだよ!」
勇者「分かってらぁ!」バッ
ガンガン、ガンッ
勇者「今はあんたも居るもんな!」
姫騎士「そういうことだ!」ダッ!
姫騎士(…ふふっ)
364 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:58:18.21 ID:ElQ0xIuM0
侍女「!…ねぇ、今…」
アッシュ「貴女にも見えましたか」
侍女「姫騎士様、笑って……」
ーーーーー
幼姫騎士「えい!」
幼侍女「きゃっ…あーあ、また負けちゃったー」
幼姫騎士「ふふん、わたしにはアッシュがついてるからな!」
幼侍女「姫ちゃん強いー」
幼侍女「あ、そういえばね、王様が新しいお花買ってきたんだって!」
幼姫騎士「お父様が!?今すぐ見に行くぞ!」
幼侍女「見境なーい」アハハ
幼侍女「お花、いちばん好きだよね〜」
幼姫騎士「何を言う。花も好きだがお前たちと遊ぶのも、楽しくて大好きだぞ」ニッ
ーーーーー
侍女「…姫ちゃん…!」
365 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:59:04.05 ID:ElQ0xIuM0
勇者「」シュンッ!
姫騎士「うぐ…!」
姫騎士(読み切れない…!)
姫騎士(かつて経験したことのない速度の中に身を置いている)
姫騎士(奴は当然のように加速していく)
ビシュ、ビシュッ
バババッ!
姫騎士(徐々に端へ追い詰められていることなどとうに分かっている)
姫騎士(しかし避けるという選択は無い。あり得ない)
姫騎士(何故ならこやつを負かせば私は)
姫騎士(私は――!)
姫騎士「はあああぁっ!!」
勇者「うおおおぉっ!!」
ガンガンカンッドスッ
ゴツッ、ザザッガィン!
サッ!ガキッガガガッ
366 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 02:59:33.18 ID:ElQ0xIuM0
勇者「」グルンッ!
姫騎士「っ――」
ゴッ!
姫騎士(回し蹴り…!)
――ドサッ...
審判「………」
審判「場外。勝者、勇者!」
367 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 03:00:21.71 ID:ElQ0xIuM0
「「「おおおおおおおおぉぉ!!」」」
リア「やりました!やりましたよ魔法使いさん!勇者さんが…!」
魔法使い「うん、そうね。やってくれたわね…!」
ミント「この試合、夢に出てきそう」
侍女「あれが英雄……」
アッシュ「上出来です、勇者様」
アッシュ「…ありがとうございます」
姫騎士「……………」
姫騎士(……私は負けたのか)
姫騎士「………」
姫騎士(そう、か)
勇者「地べたで寝てると肩こるぜ」
姫騎士「……」
勇者「聞こえないんか?あの大合唱」
368 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 03:01:52.63 ID:ElQ0xIuM0
「姫騎士様!最高の試合でしたぞ!」
「今日ここにいられたこと、神に感謝致します!」
「あなたは紛うことなき国の英雄だっ!」
「「「姫騎士!姫騎士!姫騎士!」」」
姫騎士「…何故…」
勇者「勝ったのは俺っちなのによー。このアウェー感だもんな」ヘッ
勇者「さすがお姫様は人気者だ」
姫騎士「……」
姫騎士(敗北は死。…そう言い聞かせてきた)
姫騎士(国の為に、お父様の為に)
姫騎士(でも……)
姫騎士(私は、間違っていたのかもしれない)
勇者「な?楽しかったろ?」
姫騎士「………」
姫騎士「そうだな」フッ
(顔のそばに咲く一輪の花)
姫騎士(あぁ…綺麗だ……)
369 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/02(木) 03:05:07.92 ID:ElQ0xIuM0
姫騎士戦、ここまでです。
こういう戦闘描写を上手に表現するには地の文の方がいいんでしょうね…
次回の投稿で完結となります。
370 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/02(木) 07:32:06.81 ID:tWh9PQfS0
乙です
最後まで楽しみにしてます
371 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/07/02(木) 07:55:17.61 ID:mMPEBaUDO
乙
372 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/07/02(木) 13:50:50.55 ID:vyzzvRgm0
おつー
373 :
◆YBa9bwlj/c
[sage saga]:2020/07/05(日) 03:58:29.46 ID:mygcD0E70
今更ながら、姫騎士と辞書のキャラカードを置いておきます。
キャラ名:姫騎士(小国の英雄 綺麗なスタイルに茶髪のロング)
性別:女
年齢:18
得意戦型:剣術
備考:小さい頃父である国王に剣の才能を見出され、開催した闘技大会で優勝を果たして以来、常に勝つことを望まれるようになった。圧倒的な剣の腕前で何者をも寄せ付けない。アッシュ、侍女とは幼馴染み。
キャラ名:侍女(姫騎士のお付き 落ち着いた物腰の女性)
性別:女
年齢:18
得意戦型:剣術
備考:姫騎士の傍で様々な身の回りの世話をしている。中でも剣の鍛錬には熱心に付き合うが、これは姫騎士を今の状況から救い出してあげたいという気持ちの裏返し。生半可な力のアッシュでは姫騎士の現状を変えることが出来ないと考え、アッシュに執事を辞めさせた。姫騎士ほどではないが、剣術に長ける。
374 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:10:10.01 ID:mygcD0E70
>>373
辞書ではなく侍女ですね…。
それでは6章3/3投下していきます。
375 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:12:57.19 ID:mygcD0E70
ーーーーーーー
勇者「よ、無敵の男参上」
リア「勇者さん!」テッテッテッ
リア「とっっても素敵な闘技でした!楽しくてわくわくして…!私、勇者さんたちの旅についてきて本当によかったです!」
勇者「俺っちの勇姿ちゃんと目に焼き付けたかー?」
アッシュ「勇者様、貴方には感謝してもしきれません」
勇者「なーに言ってんだ先生。礼言うのはこっちだよ。先生のおかげで俺っちはここまで来れたんだ」
アッシュ「私はもう先生ではないですよ」ニコッ
勇者「サンキューな、アッくん」
ミント「……」ジー
ミント(自由に楽しそうに試合してた。あんな風に戦えたらもっと面白いのかな)
魔法使い「ん」(手を上げる)
勇者「?、あぁ」
パン(ハイタッチ)
勇者「言った通りだろ?」
勇者「約束は守る」ピース
魔法使い「…いっぱい待ったんだから」
376 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:13:33.49 ID:mygcD0E70
「お、最強野郎じゃねぇか。いかす試合だったぞ!」
「決勝も面白いもん期待してるからなー!」
勇者「へへっ」
グローバ「よう」
勇者「グローバのおっさん!」
グローバ「ケチくせえじゃねえか、あんな隠し玉持ってたなんてよ」
勇者「奥の手は最後まで温存って、先生の教えさ」
グローバ「その割には随分めっためたにされてたがな、がはは!」
グローバ「んでよ、姫の体はどうだった?」
勇者「ん?んー…」
勇者「…剣の感触しか残ってねー」
グローバ「かー!何のために戦ってたんだい小僧」
グローバ「まあいい。直接確かめる楽しみが増したぜ」
グローバ「小僧、体貸しな」
勇者「えっ。おっさんまさかそっちのケが…!?」
グローバ「なわけねえだろ?ほれ」
ポワァ...
魔法使い「治癒魔法…?」
ミント「に、似合わな過ぎる」
勇者「おぉ、楽んなってく…」
グローバ「俺からの餞別だ。決勝の相手もそれなりに強えらしいが、またまた女だとよ」
グローバ「精力復活させとかんとなあ!わはは!」
377 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:15:16.66 ID:mygcD0E70
ーーーーーーー
姫騎士「……」トットッ
姫騎士「……!」トッ...
侍女「……」
姫騎士「こんなところで待っていたのか?」
侍女「はい」
タッタッタッ
――ヒシ
侍女「…おかえり……姫ちゃん…」ギュー
姫騎士「……ただいま」
姫騎士(懐かしい呼び名だ)
姫騎士「私は、負けてしまったよ」
侍女「だから何だと言うんですっ…。それで何を失いましたか?」
侍女「あの敗北は、失ったものより戻ってきたものの方が大きいのですから…!」
姫騎士「…辛い思いをさせてしまったな。すまない」
侍女「」ギュ...
378 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:15:42.30 ID:mygcD0E70
..カツ..カツ
姫騎士(…!)
王「……」
姫騎士「…お父様…」
姫騎士「優勝に届かず申し訳ありません。言い訳のしようもなく私の力不足が招いた失態です」
姫騎士「どのような処罰もお受け致します」
王「………」
王「よい」
姫騎士「…?」
王「よいのだ、姫騎士」
姫騎士「え…」
王「思えば、我が国は十分に豊かとなった」
スッ(背を向ける)
姫騎士(……)
王「…お前の部屋の花、枯れかけていたのでな。新しい株を増やしておいた」
王「好みに合うか、分からぬが」
姫騎士「!」
姫騎士「……うん、ありがとう」
379 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:16:26.15 ID:mygcD0E70
ーーーーーーー
ザワザワ
ドヨドヨ
「押すなって、見えねぇだろ」
「押してねーよ」
ゾロゾロ...
ミント「人が多過ぎるぅ…暑苦しいよー」
アッシュ「例年の風物詩ですね。別会場の方々が決勝を見に集まってくるのです」
ミント「ね、アッシュ様。勇者くんのあの戦い方、私にも出来るかな」
アッシュ「どうでしょう。二週間の特訓を経たとはいえ、彼の才能と地力があってこそのものでしょうから」
ミント「特訓!?アッシュ様直々に!?」
ミント「それってお願いすれば私にもやっていただけるのでしょうか…!」キラキラ
アッシュ「そ、そうですね……今は少々時期が…」
アッシュ「!、そうです!魔法使い様にどうしてもお聞きしておきたいことがあったのです」
魔法使い「ん?」
アッシュ「元々勇者様の戦術は高い水準にありました。バーランド卿も仰っていましたが、とても優秀な師に教わっていたのだと思います。彼に稽古をつけていたのはどのような方なのですか?」
アナウンス『ただいまより、第5戦を行います。選手は入場してください』
魔法使い「そうね、あいつに闘技を教えてたのは――」
アナウンス『決勝戦。勇者、――』
魔法使い「あいつの母親なの」
アナウンス『勇者母』
魔法使い「優しいんだけど少し底知れないところがあってね……って」
魔法使い「えっ!?!?」
アッシュ「どうされました?」
380 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:17:57.84 ID:mygcD0E70
勇者「なんで、母さんが…!?」
勇者母「あら、やっと会えましたね勇者♪」
勇者母「これ忘れていってましたよ」
(勇者の木剣)
勇者「え、あ、うん」
魔法使い「えー……」
リア「魔法使いさん?…もしかしてあの女の人…」
魔法使い「うん…あの人が勇者のお母さん」
アッシュ「それはそれは」
審判「両者前へ!」
審判「始め!」
勇者母「優勝に手をかけていたのですね。あなたのことですから少しだけ心配していたのですけど、やっぱりあなたは自慢の息子です」
勇者「…だろ?」
勇者「そうだろそうだろう!ちゃんと修行してたかんな!俺っち前よりずっと強くなったんだぜ!」
勇者母「そうですか!ではでは勇者の成長を母に見せてくださいな」ニコニコ
勇者母「審判さん、危ないので離れていてください」
審判「はい…?」
勇者母「まずは他の皆さんを巻き込まないように…」
勇者母「"結界"」
フォン
381 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:18:50.64 ID:mygcD0E70
「うわぁ!?」
「なんだなんだ?こりゃガラスか?」
魔法使い「な、なっ…」
リア「見たことない魔法です……けど」
アッシュ「えぇ、私にも分かります。この魔力の強さは、ともすればレラ様より…」
ミント「鳥肌立ってきた…」
勇者母「さぁ、初めは準備運動ですよ。これから唱える魔法、しっかりと避けきってください」
...ゴゴゴ
勇者「え…母さんちょっと待って」
ビキ..バチッ..
勇者「魔法よく分かんねーけどさ、やばいやつじゃないのこれ…?」
勇者母「いきますよ勇者!」
勇者「ちょちょちょ、話聞いて――」
勇者母「"天雷"」
ピシャッ――
ズガァン!
バキバキバキ!バチンッ!
ゴロゴロ――ドゴォンッ!
382 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/07/05(日) 04:19:41.72 ID:mygcD0E70
「きゃあっ!?」
「ひぃぃぃ!」
魔法使い「何よこのでたらめな魔法…!?」
リア「ひぅ」(魔法使いに抱きつく)
アッシュ「こちらには来ないようになっているのでしょうが…」
アッシュ(本能的に防御反応をとってしまいますね…!)
バチ...
ピリ、ピリピリ...
勇者母「もうよいですね」
フォン(結界を解く)
勇者母「さて勇者、次はあなたの得意な剣を」
勇者「」チーン
勇者母「……あら?」
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