【一部キャラ安価コンマ】村長「勇者よ、必ずや優勝して参れ」勇者「へいへーい」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 08:35:08.93 ID:TV7CYEvDO
はい
184 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/06/10(水) 08:52:28.04 ID:CjYIfkGDO
コンマ65で登場キャラ四人目は

キャラ名:テイシロ 神官 (白髪の短髪で白いローブを着た少年)
性別:男
年齢:12
得意戦型:魔法
備考・希望:天外孤独の身であり自分の出生について知るために旅をしている 扱う魔法は光や雷系

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/10(水) 09:53:50.71 ID:imbL3IYe0
186 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/06/11(木) 00:24:28.57 ID:6ovQVFQC0
>>171の台詞

アッシュ「アディオス、お嬢さん方」

は、本当は

グローバ「アディオス、お嬢さん方」

です。こういうミスはなくしたいですね…
187 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:19:21.51 ID:GZ1lpObE0
5章前半投下します。
188 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:20:01.37 ID:GZ1lpObE0
ーーー王都城 中庭ーーー

侍女「……」トットットッ

侍女「……」トッ...

姫騎士「はっ」ビュン

姫騎士「せあっ!」ビュオッ

姫騎士「まだまだ甘いな…」

侍女「…姫騎士様」

姫騎士「!侍女か」

姫騎士「どうした、私に何か伝言か?」

侍女「いえ、偶々通りかかったので」

侍女「…自主訓練ですか?」

姫騎士「あぁ。こうして体を動かしていないと鈍ってしまいそうでな」

侍女(日々あれだけの時間を鍛錬に費やしているのだから、鈍るなんてことあるはずがないのに)

姫騎士「侍女。今ここには二人しかいないんだ、畏まらなくていいんだぞ?」

侍女「そういうわけにはいきません。私は貴女のお付きですので」

姫騎士「ははっ、真面目だな侍女は」

侍女(……)

姫騎士「そうだ、せっかく来たんだ付き合ってくれないか?」

侍女「はい。剣のお相手をすればよろしいですか?」

姫騎士「そうではない」

姫騎士「少し外へな」

侍女「…いつもの場所ですか」

姫騎士「うむ」




189 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:20:36.39 ID:GZ1lpObE0
ーーー王都ーーー

リア「ここが王都……」

リア「驚きです、道が土じゃないですよ魔法使いさん…!」

魔法使い「そうねー。これ敷き詰めてあるのはレンガかしら」

アッシュ「似ていますが、少々異なります。これは石畳と呼ばれるもので、職人が一つ一つ切り出した石をこのように秩序立てて並べ、固めるのです。レンガが使用されるのは家屋の屋根などですね」

魔法使い「雨が降っても泥濘まなくていいわね」

盗賊(石畳も見たことねぇって、こいつらどんな田舎に住んでたんだ)

アッシュ「さすがに闘技場の地面は土ですがね。これはどこの国でも共通のはずです」

魔法使い「石の上でやれって言われても勝手が違うものね」

勇者「……」

魔法使い「ほら勇者、大会も村で稽古してた環境とそう変わらないみたいよ」

勇者「ん」

魔法使い(気のない返事…)

魔法使い「…もうっ、シャキッと歩く!さっきから見てて危なっかしいわ」

勇者「別に、どう歩こうが勝手だろ」

魔法使い「こっちが嫌なのよ。目の前でちんたら歩かれる方の身にもなって」

勇者「そんなん知らん」

魔法使い「あんたね…!」

リア「勇者さん、前っ」
190 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:21:19.01 ID:GZ1lpObE0



ドン



勇者「」ドサッ

姫騎士「すまない。余所見をしていた」

姫騎士「立てるか?」スッ

「ん?ありゃ姫騎士様でねーか?」

「おぉ本当だ!我らが英雄姫騎士様じゃ!」

勇者「……」スクッ

「なんじゃあの男、姫騎士様の手を無視しおった」

「礼儀知らずなやつめ」

姫騎士「怪我をしていないなら、良かった」

姫騎士「ん?」

アッシュ「……」

姫騎士「アッシュ?アッシュじゃないか?」

アッシュ「はい。お久しぶりです」

姫騎士「どこへ行っていたんだ!急に辞めて出て行くものだから心配したんだぞ。王都を離れていたらしいではないか」

アッシュ「少し旅に出ておりました。そういう気分だったのです」

姫騎士「旅か。アッシュにはいつも苦労をかけていたからな。すまなかった」

アッシュ「謝らないでください。貴女様のせいではございませんから」

姫騎士「だが、元気そうで安心したよ」
191 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:21:44.74 ID:GZ1lpObE0

姫騎士「しばらくここに留まるのか?」

アッシュ「そのつもりです」

姫騎士「なら丁度いい。今度の闘技大会是非見に来てくれ。アッシュから教わった技をいつも磨いてきたんだ」

姫騎士「優勝を勝ち取る私の姿を君に見せたい」

アッシュ「…楽しみにしております」ニコッ

侍女「……」

アッシュ(……)

侍女「行きましょう姫騎士様」

姫騎士「いいのか?侍女もアッシュと積もる話があるのでは――」

侍女「次の訓練まであまりお時間がありません」

姫騎士「そうか、急がないとな」

姫騎士「私はもう行く。機会があれば腰を落ち着けて話そう」

アッシュ「はい」

侍女「」ペコリ



スタスタスタ...


192 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:22:15.91 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「……ねぇアッシュさん、今の人って」

アッシュ「分かってしまいますよね、さすがに」

アッシュ「そうです。あのお方が、私が元仕えていたお人、姫騎士様です」

アッシュ「国王様が大切になされている一人娘であると同時に」

アッシュ「――この国最強の騎士でもある」

魔法使い「そうだったのね、あの人が…」

リア「だから王都の事情に詳しかったのですね」

魔法使い「けどあの人アッシュさんのこと探していたみたいよ?私たちが初めて会った時、執事を辞めさせられたって言ってなかった?」

アッシュ「えぇ」

アッシュ「私を辞めさせたのは彼女ではありませんから」

魔法使い(…感じる。この人の中で燻っているなにか)

魔法使い(きっとアッシュさんもアッシュさんなりに目的があってここに居るんだ)

アッシュ「ひとまず移動しましょう。ここでボーッとしていては目立ってしまいます」

魔法使い「そう、ね」




193 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:22:59.26 ID:GZ1lpObE0
ーーー受付所ーーー

ガヤガヤ

受付嬢「はーい!皆さん押さないで下さい!順番に!順番にですよ!」

「おいてめぇ今割り込みしただろ?」

「おや、気付かなかったよ。気配が弱小過ぎて」

「んだと!?」

受付嬢「そこ!問題を起こしたら出場資格剥奪ですからね!」

ザワザワ

勇者母「あらあら」

勇者母「人がたくさん……これじゃ勇者がどこに居るのか見えませんね」

勇者母「でも!」

勇者母「大会の受付場所で待ってればいずれ会えますよね」ニコニコ

「なぁあんた、受付済ませるなら早くしておくれ」

「そうだよ後がつかえてんだ!」

勇者母「まあごめんなさいね」

「そんなのええから早よう」グイ

勇者母「あら?」

グイグイグイ

勇者母「あらあらあら…」




194 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:23:59.85 ID:GZ1lpObE0
ーーー宿 勇者の部屋ーーー

勇者「……」ボー

勇者「………」

勇者「」ゴロ...

勇者「……」ボー



ーーーーー

グローバ「藁に縋るのは勝手だが、こうやって現実も見せてやらねえとかわいそうだぜ」

ーーーーー



勇者(はっ、これが現実ってか)



コンコン



魔法使い「入っていい?」

勇者「入りたきゃ入れば」

ガチャ

魔法使い「ごめん寝てたかしら」

勇者「眠くない」

勇者「で、みんなそろってどうしたよ?ここ部屋広いけど四人で寝るのはさすがにキツくねーんか?」

アッシュ「私とリア様は付き添いですよ」

リア「……」

勇者「?」
195 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:24:30.22 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「勇者、大会のエントリーに行くわよ」

勇者「おう、そのうちな」

魔法使い「そのうちっていつよ」

勇者「そのうちはそのうち」

魔法使い「それで結局出ない気なんだ」

勇者「んなこと言ってねーし」

魔法使い「だったら今から行くの!遅かれ早かれ受付はしてこないといけないんだから」

勇者「……明日な」

魔法使い(……)ギリ...

魔法使い「いい加減にしなさいよ」

魔法使い「いつまでそうやってうじうじしてるつもり?あのセクハラじいさんに負けてからずっとそうじゃない!私たちに見せびらかすみたいに落ち込んでさ!」

魔法使い「同情すればいいのかしら?よしよし、あんなの気にしなくていいですよーって?」

アッシュ「魔法使い様、少し抑えた方が…」

魔法使い「一回負けたからってなに!?あんたの言う最強はたかがそれっぽっちで終わるものなの!?」

勇者「っ」
196 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:25:02.74 ID:GZ1lpObE0

勇者「…言ってくれんじゃん」

勇者「一回でも負けたらそれもう最強じゃないっしょ。それに俺っち気付いたんよ」

勇者「上には上がいる」

勇者「グローバ爺さんが教えてくれた。俺っち一つ賢くなったんだぜ。身の丈を知ったっての?」

魔法使い「…なに、それ」

勇者「出来もしねー優勝とかほざいてるよかよっぽど利口だろー」

魔法使い「じゃあ…あんた何のためにここまで来たの…?」

勇者「んー、記念?」

勇者「参加賞くらい持ち帰ってやんねーとなー。なはは」

魔法使い(……なんなの。なんなのよ)

魔法使い(私は、そんな言葉あんたの口から――)

魔法使い「もういい!」ダッ

タッタッタッ

リア「あ…」

勇者「……」

アッシュ「……」

アッシュ「今の言葉、本心でございますか?」

勇者「モチのロンよ。これが大人になるってこったろ?ちゃんと現実を見れてる」

勇者「最強だのなんだのが許されんのはケツの青いガキか、世界のてっぺん取ってるやつだけさ」




197 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:25:37.20 ID:GZ1lpObE0
ーーー夜 魔法使いの部屋ーーー

魔法使い「……」

魔法使い(…眠れない。早く寝て忘れちゃいたいのに)

魔法使い「………」



ーーーーー

勇者「一回でも負けたらそれもう最強じゃないっしょ」

勇者「出来もしねー優勝とかほざいてるよかよっぽど利口だろー」

ーーーーー



魔法使い「………バカ」

魔法使い(違うでしょ…)



ーーーーー

幼勇者「いいかげん泣きやめって。魔法の一つ失敗したくらいなんだってんだい」

ーーーーー



魔法使い(私がずっと追いかけて来たのは、ずっと見てきたあんたは……)

魔法使い「…嫌いよ…」



「魔法使いさん、起きてますか?」



魔法使い「…リアちゃん?」

リア「はい。ちょっとお話したくて、来ちゃいました」

魔法使い「……ふふ、いいわよ入ってきて」

カチャリ

リア「お言葉に甘えますね」エヘヘ




198 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:26:28.73 ID:GZ1lpObE0
ーーー宿 屋根ーーー

勇者「……」

勇者「空はでけーなー」

勇者「このまま俺っちのこと、吸い込んでくれねーかなー…」



ーーーーー

魔法使い「一回負けたからってなに!?あんたの言う最強はたかがそれっぽっちで終わるものなの!?」

ーーーーー



勇者「………」

勇者(みっともねぇ)

アッシュ「ここにおられましたか」

勇者「……」チラッ

アッシュ「危ないですよ、屋根の上など。落ちたら大怪我です」

勇者「それ鏡見て言ってみ」

アッシュ「隣、失礼致します」

スッ...

アッシュ「綺麗な空ですね」

勇者「………」

アッシュ「勇者様、闘技大会での優勝、本当に諦めてしまわれたのですか?」

勇者「諦めるも何も、最初から無理難題だって判明したしな」

勇者「俺っち、グローバのおっさんに手も足も出なかった。なのにそれより強ぇのがまだいるんよな?」

勇者「小さな村の間抜けが一匹、大口叩いてたってだけよ」

アッシュ「前にも言いましたが、貴方はまだ強くなれます」

勇者「大会まであと二週間ちょいしかないのに?」

勇者「たった二週間じゃ小手先のみみっちい技身につけるくらいしか出来ねーぜ」

アッシュ「では魔法使い様をあのままにしておくのですね」

勇者「……なんでそこで魔法使いなんだよ」

アッシュ「これでも長年女性の傍に付き添ってきたものですから、その手の機微には敏感なのです」ニコッ

勇者「…関係ねーよ、別に」




199 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:26:59.31 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「今日は何の話をしよっか?魔法のことはいっぱいお話してきたものね。思い切ってお互いのちょっと恥ずかしい失敗談とかいってみる?」

リア「えっとですね、今日はあの……恋の話……とか…」

魔法使い「え?なーに?」

リア「…魔法使いさんて、勇者さんのこと好きですよね?」

魔法使い「!?」

魔法使い「そ…えぇ!?ななな何言ってるのかしら!?そんなことあるわけ…!」

リア「見てたら分かりますよ。魔法使いさん真っ直ぐですもん」

魔法使い「うぐっ」

魔法使い「……うん、好きよ」

魔法使い「けどもう違うの。私が好きだったあいつはどっかに行っちゃった」

リア「好きな勇者さん…?」

魔法使い「そ」

リア「それって、いつも明るくて、楽しそうで、前向きな勇者さん?」

魔法使い「大分美化されてるわね」フフッ

魔法使い「…まぁそんな感じかな」

二人「……」

リア「お二人は確か…同じ村の幼馴染みさんなんでしたよね。魔法使いさんはいつから勇者さんのこと、好きだったんですか?」

魔法使い「ま、まだこの話続ける…?」

リア「……」ジッ

魔法使い「…いつからだろうね」

魔法使い「気が付いたら、いつもあいつのことを追いかけてた」

魔法使い「ちっちゃい頃の私ってね、すごく泣き虫だったの。魔法を一度失敗したくらいでえんえん泣いてたわ」




200 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:27:30.94 ID:GZ1lpObE0

勇者「――で、その度に俺っちが慰めてやってたんよ。なーんかほっとけなくってさー」

アッシュ「意外ですね。今の魔法使い様の凛々しさからはとても…」

勇者「本当になー。口うるさくて暴力まで振るってくるし。リアくらいおしとやかでいりゃあまだかわいいんだがね」

アッシュ(私には、そう変わった理由も、なんとなく勇者様にあるような気がしますよ)

勇者「…でも、一つ言えんのは」



ーーーーー

幼勇者「めそめそしてんな!おれっちがいてやっから!」

幼勇者「おっきくなったらおれっちがお前のこと」

幼勇者「一生守ってやっからよ!」

ーーーーー




201 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:27:57.49 ID:GZ1lpObE0

魔法使い「そんな子供の時の言葉、ずっと忘れられなくてさ」

魔法使い「馬鹿みたいよね、あいつはもうそんなのとっくに頭に残ってないのに」

リア「…待ってるんですね、勇者さんのこと」

魔法使い「……」

魔法使い「あいつね、闘技大会に出るからって一人で村を出て行こうとしたのよ。我慢ならなくてあいつを闘技で負かして無理矢理付いてきてやったわ」

リア「え、勝ったんですか…!?」

魔法使い「もちろんハンデ有りでね」

魔法使い「でも、あんな勇者見せられることになるなら、大会自体に反対した方が良かったわ…」

魔法使い「別に私は、あいつが世界で一番強くなくたって……私の中で一番でいてくれれば……」




202 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:28:23.07 ID:GZ1lpObE0

アッシュ「迎えに行ってあげないのですか?覚えていらっしゃるのなら尚の事」

勇者「冗談っ。俺っちもっとグラマラスな女の人の方が好みだし、あんなべったり付いてきて文句ばっか言うようなやつなんざ」

アッシュ「そこまで想っていただけるとはなんとも素敵な方です」

勇者「へ、代わってやろうかい?」

アッシュ「私は勇者様にはなれませんよ」ニコッ

勇者「……」

勇者「…今更遅いんよ」

勇者「弱っちい勇者くんじゃああいつは見てくんねーさ。今頃失望してんだろ」

勇者「最強じゃなきゃ意味ねーんだ」

勇者(……え?なんで?)

勇者(最強……なんで最強じゃないとダメなんだっけ)



ーーーーー

「――だれにも――、――さいきょう――だい――!」

ーーーーー



勇者(なんだ、今の…?)




203 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:29:00.22 ID:GZ1lpObE0
ーーー翌朝 食堂ーーー

魔法使い「……」パク、パク

勇者「」カチャカチャ

アッシュ「……」スッ

リア「……」モムモム

魔法使い「ごちそうさま」

魔法使い「私、外散歩してくる」

スタスタ...

リア「わ、私も行きます…!」テッテッテッ

勇者「……」カチャ...

勇者「俺っちも腹いっぱいだわ。残りはアッくんに任した」ガタッ

(部屋に戻っていく勇者)

アッシュ「朝食は重要ですが、この量は些か…」

アッシュ「貴方も要りますか?こちらの料理などはまだどなたも手を付けていませんよ」

盗賊「……欲しけりゃ仲間の居場所を吐けってんだろ?」

アッシュ「無論です」ニコッ

盗賊「無理な相談だぜ。同胞を裏切る行為は絶対しねぇ」

アッシュ「そうですか。ともすればこれが最後の晩餐になったかもしれませんのに」

盗賊「…あん?」




204 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:29:28.63 ID:GZ1lpObE0
ーーー王都 大通りーーー

リア「ふわぁ…!改めて見てみると、どの建物も全部大きいんですね…!」テクテク

魔法使い「そうねぇ。前寄った町にもお店とかはいっぱいあったけど、ここまで立派に構えてはなかったものね」テクテク

魔法使い「…リアちゃん、無理して私と出てくることなかったのよ?」

リア「無理なんかしてませんよ。魔法使いさんと一緒にいるの好きですから」ニコリ

リア「どっちかと言えば、魔法使いさんの方が無理してるんじゃないですか…?」

魔法使い「……」

魔法使い「いいのいいの。もう気にしないことにしたからあんなやつ」

魔法使い「私たちは私たちでせっかくの王都を目一杯楽しんじゃいましょ」

リア「……はい」

リア(気にしてないなら、そんな寂しそうに笑ったりしないですよ…)

魔法使い「リアちゃん見て!」

リア「?」

魔法使い「あれ、王都の大聖堂よ!」

魔法使い「ここに来てからもやもやすることばっかりだったし、一度吐き出してすっきりさせとこっか」




205 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:29:59.33 ID:GZ1lpObE0
ーーー大聖堂ーーー

魔法使い「王都一の教会って聞いてたけど、あんまり人はいないのね」

リア「そうですね……もしかしたら世の中が平和なおかげかもしれませんね」



「すぴー……zzZ」

「だめよダーリン、こんなところでキスなんて…」

「大丈夫少しくらい罰は当たらないさ」



魔法使い「…平和以前の問題な気が…」

リア「あはは…」

白髪の少年「……」(手を祈り合わせる)

魔法使い「あの子のお祈りが終わったら私たちね」

少年「主よ、どうかお願いいたします。この声が届いているのならば、どうか僕についてお教えください」

少年「僕は一体どこから来たのか、どこへ向かうべきなのか……」

少年「それだけで、いいのです…」

魔法使い(随分熱心なお願い事ね。お祈りって声に出すものだっけ…?)

少年「……行くか」スクッ

少年「…っ!!」

リア「…?」

少年「あ……あぁ…!」

タッタッタッ

ガシッ!

リア「えっ!?」

少年「きみは僕の兄妹か!?僕を探しに来てくれたのかっ!?」ユサユサ

リア「ひあぁ…」

魔法使い「ちょっと何してるの!?手離して!落ち着きなさい!」



.........




206 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:31:21.03 ID:GZ1lpObE0

少年「僕はテイシロ…って、名乗ってる」(以降、テイシロ)

魔法使い「名乗ってる?」

テイシロ「……」

魔法使い「…そのテイシロくんが、なんでリアちゃんに掴みかかったりしたのかしら?リアちゃんの知り合い?」

リア「いえ…初めてお会いします…」

テイシロ「掴みかかったんじゃ…!さっきは衝動的に動いてしまっただけで!」

魔法使い「……あのね、いくら子供でも女の子にひどいことは絶対にやっちゃいけないの。分かるでしょ?」

テイシロ「そんなつもりはないんだって…!」

テイシロ「…家族かと思ったんだよ」

リア「家族…ですか?」

テイシロ「うん…」

テイシロ「僕、孤児院で育てられたんだ。西国の」

テイシロ「物心ついたときから周りには僕を育ててくれた神父様と、僕と同じような子供ばかり……両親の顔どころか自分の本当の名前さえ知らない」

テイシロ「だから、自分の生まれがどうしても知りたくて飛び出してきた」

魔法使い「飛び出してきたって…一人で?」

テイシロ「僕はもう12だ。それなりの分別はつくし、常識だってある。変な輩が来ても魔法で退治出来る!」

魔法使い「そう言っても、危険なことに変わりはないわよ。こんな幼い子を一人で……大丈夫なの?その孤児院…」

テイシロ「神父様を悪くいうな!」ダン

リア「」ビクッ

テイシロ「あ…ごめん」
207 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:32:05.13 ID:GZ1lpObE0

テイシロ「身寄りのない子を何人も育ててくれて、僕らにとっては親も同然の人なんだ。何かあっても平気なようにって神官としての魔法も教えてくれた」

テイシロ「…でもお優しい神父様だからこそ、僕が旅に出るのには反対した。真実は時に、君たちを傷つけるからって」

テイシロ「神父様には手紙だけ置いて、黙って出てきたんだ」

リア(……)

テイシロ「それでこの国の王都まで来たのはよかったんだけど、広いしまともに取り合ってもらえないしで困っててさ」

テイシロ「唯一の手がかりと言えばこの白い髪だけ。情けないけど、神様に頼めば道を示してくれるかもなんて、ここでお祈りしてたら」

魔法使い「リアちゃんが来たってことね」

テイシロ「うん」

リア(…この子、ずっと孤独の中で生きてきたんだ)

リア(少し前までの私と同じ…)

テイシロ「けどごめんなさい。全然関係なかった」

テイシロ「僕のことなんかこれっぽっちも知らないみたいだ」

テイシロ「迷惑かけた。それじゃ」

魔法使い「待――」

リア「待って!」

テイシロ「!」

リア「私にも、協力させて」

リア「私もあなたのご両親を探すの、手伝います」

テイシロ「え…いやいいよ、同情してもらいたくて話をしたわけじゃ…」

リア「強がらないで」

テイシロ「つ、強がってなんか…!」

ギュ(手を握る)
208 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:33:22.97 ID:GZ1lpObE0

リア「…それでも、だよ」

リア「さっき途方に暮れたって言ってたばかりでしょう?」

リア「それに、一人よりは絶対に良いよ」ニコッ

テイシロ「」ドキッ

魔法使い(強くなったわね、リアちゃん)

リア「魔法使いさん、お願いです。この子の――」

魔法使い「いいわよ。私も同じこと言おうとしてたから」

リア「ありがとうございますっ」

テイシロ「…そ、それじゃ、よろしく…えっと…」

リア「リアンノン。でも長いからみんなリアって呼んでくれるの」

魔法使い「魔法使いよ」

テイシロ「魔法使いさんに…リア」

リア「うん♪」

リア「私もシローって呼ぶね」エヘヘ

テイシロ「っ…お、おう…」

魔法使い(ふふっ)

リア「でも、闇雲に動き回るだけじゃ意味ないですよね……資料館みたいなものがあれば、情報収集が出来るんですけど…」

魔法使い「んー……ん!」

魔法使い「アッシュさんなら何か知ってるかもしれないわ。彼、色んなお国事情を見てきたでしょうから」




209 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:34:41.96 ID:GZ1lpObE0
ーーー宿ーーー

魔法使い「戻ったわよ……あら?」

リア「アッシュさん、いませんね…」

テイシロ「……」キョロ、キョロ

魔法使い「……」

テクテク

魔法使い「」コンコン



勇者「あー?なんだよー?」ガチャ



魔法使い「アッシュさんは?」

勇者「なんか盗賊引き渡しに行くっつって出かけてった」

魔法使い「あぁ、治安維持所に行ったのね」

リア「どうしましょう…私たちも向かいましょうか…?」

魔法使い「すぐに帰ってくるはずよ。ここで待ってましょ」

魔法使い「シローくんもそれでいい?」

テイシロ「!うん、平気」

勇者「……」

バタン

テイシロ「…今の人」

魔法使い「あー、あれは勇者っていうんだけど、いないものと思っていいわよ」

テイシロ「……」

テイシロ(生気がまるで感じられない人だった。何があったんだろう…?)



.........




210 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:35:15.60 ID:GZ1lpObE0

アッシュ「なるほど、テイシロ様のご両親を…」

魔法使い「そうなの。アッシュさん聞いたことないかしら?どんなに小さなことでもいいのよ」

アッシュ「……申し訳ありません。残念ながら私にはそのようなお噂を聞いた記憶はないですね…」

テイシロ「…そうだよな。そう都合よく見つけられるなんて…」

リア「……」

アッシュ「いいえ。諦めるのはまだ早いですよ」

リア「!あるんですね…!なにか糸口になるものが…!」

アッシュ「私にはありませんが、王都に住んでいらっしゃる賢者様なら、ご存知かもしれません」

テイシロ「賢者…」

アッシュ「はい。ご案内致しましょう」




211 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:36:44.99 ID:GZ1lpObE0
5章前半はここまでです。
212 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 06:38:03.42 ID:GZ1lpObE0
賢者のキャラ決め安価を行います。
前回同様、安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5〜100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>213>>216
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 08:36:18.35 ID:stPt1+Lu0
キャラ名:賢者 レラ 茶髪の髪をしたかなりのナイスバディの女性であるが普段は酒を飲んで常に酔っ払っている
性別:女
年齢:33
得意戦型:剣術 魔法
備考・希望:かつては貴族の血筋の天才少女として名をはせていたが、今はなんだかんだで勘当状態であり、王都で占い師としてひっそり生きている
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 13:49:55.67 ID:BZEfVpoU0
キャラ名:名前ガルヴァ・容姿小柄で禿げ頭な老人 
性別:男
年齢:90
得意戦型:魔法 体術
備考・希望:飄々とした気のいい老人
戦闘スタイルは魔法使いで戦う通常モードと魔翌力のほとんどを身体強化に充てるマッチョモードを使い分けて戦う
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 14:15:31.71 ID:Q5+4V5U30
キャラ名:ルーファ 賢者(金髪で右目が髪で隠れている。ローブを着ている。結構な美人。)
性別:女
年齢:35
得意戦術:魔法 剣術
備考・希望:クールな性格。聞き上手で色んな人の悩みなどを聞いてきている。様々な魔法が使うことができ戦闘では魔法を中心に戦う。長めの木剣を所持しており魔法だけではなく剣術も得意でかなりの腕前である。幼い頃に両親が事故で亡くなり施設で暮らしていた過去がある。
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 14:50:43.43 ID:lsb1jqGDO
キャラ名:シュナ・賢者・黒いブカブカのローブを着た幼児体型の女性。前髪で目が隠れている
性別:女
年齢:???歳(自称永遠の10代)
もし年齢をはっきり決めなければ駄目なら35歳で
得意戦型:魔法 体術
備考 希望 天然ボケで捉えどころのない部分もあるが基本的には物静かで大人しい性格
体術は柔術やコマンドサンボなどのような間接技中心
217 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 15:06:19.76 ID:GZ1lpObE0
候補が出揃ったため、>>218のコンマで決定します。

00〜24:レラ
25〜49:ガルヴァ
50〜74:ルーファ
75〜99:シュナ

>>216 年齢をはっきりなどの制約は特にないので大丈夫ですよ
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 15:08:32.14 ID:kpQWqz9/0
219 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/14(日) 15:11:04.34 ID:GZ1lpObE0
コンマ14で賢者は

キャラ名:賢者 レラ 茶髪の髪をしたかなりのナイスバディの女性であるが普段は酒を飲んで常に酔っ払っている
性別:女
年齢:33
得意戦型:剣術 魔法
備考・希望:かつては貴族の血筋の天才少女として名をはせていたが、今はなんだかんだで勘当状態であり、王都で占い師としてひっそり生きている

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/14(日) 18:23:02.41 ID:lsb1jqGDO
乙です
次の更新期待してます
221 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:45:53.38 ID:d2dAFaLW0
5章後半投下していきます。
222 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:46:52.36 ID:d2dAFaLW0
ーーー王都 裏路地ーーー

ザッザッザッ

リア「ほ、本当にこのような場所に賢者様がいらっしゃるのでしょうか…?」

アッシュ「最後に訪れたのは2年ほど前ですが、その間に居住を変えたという話は聞いておりません」

魔法使い「アッシュさん旅に出ていたんじゃなかったの?」

アッシュ「賢者様は様々な意味で有名人ですから、お噂くらいは耳に入ってきますよ」

勇者「……アッくん、本当なんだろーな?例の賢者、めっちゃ美人のナイスバディって」ボソッ

アッシュ「ここにきて嘘は吐きませんよ」ボソッ

勇者「っし」

魔法使い「なによ?」

勇者「なんでもー」

リア「…あっ…!」ツルッ

テイシロ「っ!」グイ

テイシロ「気を付けてな。ここ足元急だから」

リア「うん…ありがと」ニコリ

テイシロ「…し、心配だからこのまま手つないで――」

アッシュ「見えましたよ、あれです」



(占い処 八卦)

掛け札『臨時休業中』



魔法使い「占い…?」

アッシュ「今は占い師として暮らしているのですよ」

トントン

全員「………」

リア「…留守にされてるのでしょうか」

アッシュ「いいえ、この札を掛けている時は大抵」

トントントン

ガチャ キィ...

テイシロ「ドアが勝手に…」
223 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:47:32.87 ID:d2dAFaLW0



「入っておいで」



アッシュ「失礼致します」

ゾロゾロ

妙齢の女性「これはまた、賑やかそうな子達じゃないの」

勇者(おぉ…で、でけー!)

アッシュ「突然の訪問をお許しください、レラ様」

妙齢の女性(以降、レラ)「アシュ坊は変わらないねぇ。以前と一言一句同じ挨拶だ。あの子のお付き辞めて、今度はその子らの執事になったってわけかい?」グビッ

アッシュ「また明るいうちから酒など…お体に悪いですよ」

レラ「くはは、余計なお世話よ」ヒック

魔法使い(この人が賢者。…イメージと全然違うけど…)

魔法使い(この小屋の中を見る限り、間違いないんでしょうね)

アッシュ「今の私は執事ではなく、ただの夢追人です」

レラ「ふ〜ん…ご苦労なこったい」

レラ「んで、あたしに何の用だい。表の札は見たろ?占い稼業はお休みだよ」

リア「…あの!賢者様、お願いがあってここに来ました…!」

リア「シローの…テイシロさんのご両親について、教えていただけませんか…!」ペコッ

テイシロ(リア…)

テイシロ「お願いします!」ペコリ

レラ「そう来たか」チラッ

勇者(?今こっち見た?)
224 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:48:49.86 ID:d2dAFaLW0

レラ「……」グビッ

レラ「偶にいるのよ。ここを何でも屋か何かと勘違いしてる輩がさ。あたしは神様じゃないんだ、この世の全てを把握なんてしちゃあいない」

リア「……」

アッシュ「レラ様でも分からないとなりますと、これはもうテイシロ様の孤児院から手がかりを見つけ出す他ないかもしれませんね」

レラ「はやるなよアシュ坊。誰も分からないとは言ってないよ?」

テイシロ「え…!」

レラ「見えるのさ、あたしには。その水晶玉にバッチリとねぇ」

(机上に鎮座する水晶玉)

魔法使い「…何が映ってるんです?」

レラ「知りたいかい?教えてやってもいいけど、ただじゃ面白くない」ククッ

レラ「そうだね、そのテイ坊とやらがあたしと闘技をして勝ったら、教えてやろう」

リア「…何故ですかっ。彼は生まれてからずっと、自分のことを何も知らずに生きてきたのです…!」

リア「せっかく届きかけたのに、その道を塞ぐようなこと…!」

レラ「欲しければ勝ち取るんだよ」

レラ「何もしないで答えが寄ってくるほど、世界は甘くないよ」

リア「そんな…」

テイシロ「…僕、やるよ」

テイシロ「賢者様はチャンスをくれた。断る理由はない」

テイシロ「それにもしかしたら、賢者様が精通してるのは知識だけで、闘技はからっきしかもしれないしさ」

レラ「くふ…よく言った。手加減はしてやるさね」

レラ「じゃ、場所整えるから脇に退いててくれ」

テイシロ「え?は、はい」
225 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:49:16.09 ID:d2dAFaLW0

レラ「"拡張"」

グイン!

勇者たち「!?」

リア「一瞬で…」

テイシロ「部屋が…」

魔法使い(広くなった…)

魔法使い(元々この小屋、外から見た大きさと中の広さが違ってた。この人が使用している魔法、信じられないけど――)

レラ「"生成"」

ズズズ...

勇者「あ、これ闘技場か」

魔法使い(空間操作魔法)

魔法使い(すごいなんてもんじゃない。こんなの現代に扱える人が残ってるなんて…)

レラ「興味あるかい?使えると何かと便利よ」

レラ「あんたなら、修行を積めばあるいは」

魔法使い「私…ですか?」

レラ「」グビ、グビ

レラ「ヒック、火魔法が得意で胸の控えめな女の子1名、募集しておこうか」クスッ

魔法使い「っ!?」

勇者「ぷっ」

魔法使い「」ジロッ

レラ「アシュ坊、審判頼めるかい?」

アッシュ「畏まりました」



.........




226 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:49:49.35 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「……」

レラ「そう硬くなりなさんな。勝てるものも勝てなくなっちゃうよ?」

(宙に浮く木剣)



勇者「剣、浮かしながら戦う気かね」

アッシュ「完全に遊んでますね、あれは。レラ様は魔法の腕は言うまでもありませんが、元々剣術にも長けているのですよ」

アッシュ(私もかつてはレラ様のようにと)

魔法使い「いくら何でも無茶よ。あの人の魔法は文字通り次元が違う」

勇者「あぁ確かに、異次元だよな」

(レラのふくよかな胸)

魔法使い「…なんであんたまで来たの?」

勇者「駄目か?俺っちも賢者さんつーの見ときたかったのよ」

勇者(優勝賞品の美女が手に入んないんだ。尚更王都のお色気さんたちを見逃す手はない!)

魔法使い「余計な茶々いれんじゃないわよ」

勇者「うぃーす」

リア「……」

リア(シロー…)ギュ...


227 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:50:55.71 ID:d2dAFaLW0

レラ「ぼちぼち始めようかねぇ」

テイシロ「…っ」

アッシュ「それでは、両者前へ」

テイシロ(気圧されるな…僕には神父様から教わった魔法がある…!)

テイシロ(子供だからって甘く見てると)

アッシュ「始め!」

テイシロ(足元をすくわれるんだ!)

テイシロ「"通雷"!」

レラ「"通雷"」

バチンッ!

テイシロ「は…?」



魔法使い「打ち消した…全く同じ威力の同じ魔法で…」

勇者「そんな驚くことなん?」

アッシュ「魔法の強さには個人差がありますからね。寸分の狂いもなく打ち合わせることは普通出来ません」



レラ「やるねぇテイ坊。綺麗な花火じゃないか」

テイシロ「くっ…」

テイシロ「"射光"!」

レラ「"集光"」

ピカッ!

シュルルル...

レラ「これだけあれば夜は電気要らずで過ごせそうね」ククッ



魔法使い「集光なんて魔法あったかしら?」

アッシュ「適当に名前を口にしてるだけです。あれくらいの芸当であれば詠唱などせずに為せるはず」

リア「……」


228 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:51:26.28 ID:d2dAFaLW0

テイシロ(今のはほとんど全力だったのに)

テイシロ(駄目だ…単純な魔法じゃ絶対に勝てない)

テイシロ(けどまだ終わりじゃない)

テイシロ「…"光速"」

シュンッ

レラ「!」

テイシロ「喰らえっ!」

スカッ

レラ「」スー...

テイシロ(透過した…!?)

ポンポン(木剣に肩を叩かれる)

レラ「くふふっ。あたし実は幽霊だからさ、物理攻撃は効かないのよ」



勇者「え、マジで」

アッシュ「ジョークですよ。生身の人間です」

リア(光速は確か、魔力で作った道の上を瞬間的に移動する魔法…)

リア(じゃあ賢者様が行った瞬間移動は何…?)

魔法使い「厳しいわね…。大の大人が赤ちゃんの相手をしてるようなものよ」



レラ「さて、お次は何を見せてくれるのかな?」

テイシロ「ちきしょう…」

テイシロ(だったら、全部の魔力使い切るつもりでやってやる!)



.........




229 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:51:59.45 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「"落雷"!」

パキン

レラ「ふぅ、酔いも覚めてきそうね」

テイシロ「はぁ…はぁ…」

テイシロ(これも駄目)

レラ「どうしたの?あれからあたしを一歩も動かせてないよ」

テイシロ(こっちは常に全力で打ってるのに、詠唱も無しに全て無効化される)

テイシロ(光速を仕掛けようにもその度にあの木剣が進路上に先置きされてて突っ込めない)

テイシロ(僕が何をしようとしているか、全て読まれてる…)

レラ「まさかこれで終いなんて言わないよねぇ。こんなんじゃ君、いつまで経っても親のことなんか分かりゃしないよ」

レラ「それともその程度の覚悟だったってことかい?」

テイシロ「……」

レラ「まぁいいさね。知らない方が幸せなことだってある。今の生活が苦痛じゃないんなら元に戻ってあげた方が、いいんじゃないかな」

テイシロ「っ」



ーーーーー

神父「テイシロ、お前は私達の家族だ」

神父「何も遠慮することはない。これからも共に暮らし、共に泣き、共に笑おう」

ーーーーー



テイシロ(そう言って手を差し伸べてくれた神父様を置いて、僕はここに来たんだ)

テイシロ(真実を知ったその上で、神父様たちと一緒に生きたいと言うために!)
230 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:53:40.84 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「僕は…絶対に諦めない!」

レラ「じゃあ、どうする?」

テイシロ(効くか効かないかとか、疲れる疲れないだとかもういい)

テイシロ(全身全霊ありったけを込める!)

テイシロ「僕の本気の本気の本気だっ!」

レラ「……」ニッ

テイシロ・レラ「「"光子"!」」

ブワァア!

――ズシャンッ!



魔法使い「うっ…すごい余波ね…」

アッシュ「あれだけのエネルギーがぶつかっていますからね…!」

勇者(…あいつ)



テイシロ「うぉおおお!」ゴォォ!



勇者(なんであんなに必死になってんだ。どうせ負けるって分かってる試合だろうに)

勇者(ガキだからか?死ぬ気になれば何とでもなると思ってんのか…?)

勇者(んな無駄な労力使ってまで勝ち取る必要があるもんなのかよ)



ーーーーー

「――だれにも負けない、さいきょうの――」

ーーーーー



勇者(……?)


231 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:54:20.25 ID:d2dAFaLW0

レラ「くははは!いいじゃない!子供にしては大した魔力だよ」

テイシロ「おおおおぉ…ゲホッ…!」



リア「あ…!」

リア(あんなに急速に魔力を放出して、とても苦しいはずなのに…)

リア(やめて、って言ってあげたい。私もあなたの旅に付き合うよって)

リア(でも――あなた自身が、あなたの目がまだ戦っているから)

リア「負けないで、シロー…!」



テイシロ(…!)

テイシロ「ぉ……らぁああああああ!!!」

ゴウッ!

レラ(んっ!?)

レラ「この子は…!」ジリ

アッシュ「!」

レラ「"封魔"」

ブシュー

テイシロ「わ…」フラ

トサッ...

レラ「ドクターストップ」

レラ「勝ち取れとは言ったさ。でもね、命を落としちゃ本末転倒だよ」

テイシロ「」グッタリ
232 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:54:51.23 ID:d2dAFaLW0

テイシロ「」グッタリ

アッシュ「レラ様」

レラ「分かってる。今回は無効試合としておくよ。あたしはここで待ってるから、いつでも――」

アッシュ「そうではなく、足元が」

レラ「ん?」チラッ

アッシュ「場外、ですね」ニコッ

レラ「……」

レラ「なんだい、あたしの負けか」ククッ

リア「シロー!」テテテッ

リア「ねぇ…!聞こえるっ?私が誰だか分かる…!?」

テイシロ「……リア……」

リア「よかった…」ギュ



.........




233 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:55:40.57 ID:d2dAFaLW0

レラ「」スッ

――ヒラ(宙空に現れる紙)

テイシロ「っと、と」パシッ

テイシロ「…地図?」

レラ「王都の一画さね」

レラ「印の付いた家がある。そこが、さっき水晶に映ってた場所だよ」グビッ

レラ「ぷはっ、運動後の酒は格別だねぇ!」

テイシロ「ここに行けば、僕の生まれが…」

レラ「今から行くもよし。一晩寝てから行くもよし。…行かないという選択肢もある」

レラ「後はテイ坊のしたいようにしな」

テイシロ「行きます」

レラ「ふっ」

ポスッ

レラ「まったく、無茶な坊やだよ。自分の身を省みずに魔力を酷使しようだなんて」

レラ「まさに捨て身ってやつかい!」ワシャワシャ

テイシロ「おぅ…おぉ…」ナデラレ

レラ「まぁ、心意気は伝わったよ」

レラ「あんた立派な男になれる」

テイシロ「…うん!」

リア「賢者様、ありがとうございます」

レラ「お礼を言われるようなことはしてないさ」

レラ「労いならテイ坊にかけておやり?その方が嬉しかろうよ」

リア「ふふ、そうですね」

リア「頑張ったね、シロー」ナデナデ

テイシロ「っ…ね、労いってこれかよ」

リア「嫌だった?」

テイシロ「嫌じゃないけど、同い年にいい子いい子って、なんかさ…」

リア「………シロー?」

リア「私ね、多分あなたより5つくらい歳上だと思うなぁ」ニコニコ

テイシロ「…え!?!?」
234 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:56:08.58 ID:d2dAFaLW0

アッシュ「レラ様、私からもお礼を言わせてください」

レラ「よしてくれよ。お人好しばかりかいあんた達は」

レラ「用が済んだならお帰り。あたしは敗北の慰め酒をやらなくちゃならないんだからさ」グビッ

魔法使い「…いつか、その…」

魔法使い「魔法、教わりに来てもいいですか?」

レラ「…くふっ」

レラ「気が向いた時に来なよ」ニッ

勇者「……」

アッシュ「今度上質の酒を持って参ります。ではこれにて」

ゾロゾロゾロ

レラ「待った」

レラ「そこの、一番後ろのだけちょいと残りな」

勇者「…え」

勇者「俺っち!?」




235 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:57:22.33 ID:d2dAFaLW0

レラ「んく、んく…」グビ、グビ...

勇者(こんなお姉さんに呼び止められるなんて、俺っちってもしかしてスーパーウルトラツイてる?)

勇者(何してくれるんかな。まさか、まさかまさかの…!?)

勇者「うへへ…」

レラ「酒、飲むかい?」

勇者「いえっ、お酒よりも既に貴女の美しさに酔ってますので」キリッ

レラ「くっは!あたしを口説く気かい!」

レラ「安くないよ?遊びならやめとくれ」

勇者「遊びなんてとんでもない!」

レラ「ま、それはいいさね」

勇者(流された…)

レラ「あんたを呼び止めたのは、簡単なことさ。悩みがあるんだろう?」

勇者「へ……大会のこと?」

勇者「それなら平気だぜ。もうとっくに解決したかんよ」

レラ「――どうしても思い出せないことがある」

勇者「!!」

レラ「差し詰めそんなところだろうね」

勇者「………」



ーーーーー

「――さいきょうの――」

ーーーーー



勇者(……)

レラ「特別サービスだよ。水晶玉をよーく見ておきな」

勇者「え…?」

勇者(水晶玉?綺麗だけどただそれだけ…)

勇者(!…なにか、映ってる…?)
236 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:57:51.72 ID:d2dAFaLW0



ーーーーー

幼魔法使い「グスン…ヒック…」

幼勇者「魔法使いよーまた泣いてんのかー?」

幼魔法使い「だってぇ…かんたんな魔法もできなくて…」

幼勇者「めそめそしてんな!おれっちがいてやっから!」

幼魔法使い「…こんなだめなわたしでも、いてくれるの…?」

幼勇者「あたぼうよ!心配すな、おっきくなったらおれっちがお前のこと一生守ってやっからよ!」

幼魔法使い「…えへっ…うん…!」

幼魔法使い「勇者わたしね、いっつも楽しそうに闘技をしてる勇者がすき」

幼魔法使い「だれにも負けない、さいきょうの勇者がね、だいすき!」

幼勇者「へへっ、任しとけ!」

幼勇者「おれっちこそ、未来えーごーさいきょうの男だかんな!」

ーーーーー


237 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:58:21.45 ID:d2dAFaLW0

勇者「………あ」

勇者(さいきょう………最、強………)

勇者「………そっか………」

レラ「……」グビッ

勇者(……………)

勇者「」ダッ!

ガチャッ バタン!

レラ「…ドアはもう少し静かに閉めて欲しかったかな」

レラ「若いって、いいねぇ」

レラ「……くふ」

レラ「頑張れ、英雄の息子よ」

グビッ...




238 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:58:51.07 ID:d2dAFaLW0
ーーーーーーー

タッタッタッ!

リア「あ、戻ってきましたよ…!」

勇者「」タッタッ...

勇者「ふぅ…ふぅ…」

魔法使い「賢者様何ておっしゃってたの?というかなんであんたそんなに急いでんのよ」

勇者「アッシュ!いやアッシュ先生!」

アッシュ「…!」

勇者「お願いだ!大会までの残り時間目一杯、俺っちに稽古をつけてくれ!」

勇者「俺っち、勝ちたい!勝って勝ってそんで――」

勇者「最強になりてーんだ!」

魔法使い「勇者…?」

テイシロ(さっきまでとは、別人みたいな顔付きになってる)

アッシュ「小手先の技しか身につかないかもしれませんよ?」

勇者「それでもいい!強くなんならなんでもするさ!」

アッシュ「……分かりました」

アッシュ「生半可な修行では優勝など到底無理です。弱音吐いて逃げ出さないようにしてくださいね」ニコッ




239 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/18(木) 23:59:26.83 ID:d2dAFaLW0
ーーー翌日 宿近く 無人の野原ーーー

勇者「……」(ジッと黙祷)

勇者「……」

アッシュ「エントリー済ませて参りましたよ」ザッザッ

アッシュ「どうですか?少しずつ分かるようになってきましたか?」

勇者「…アッシュ先生、確か俺っちに稽古をつけてくれるんだよな」

アッシュ「えぇ」

勇者「これは、なんなんでしょうか」

アッシュ「礼儀を知る修行です。これも歴としたお稽古ですよ」

アッシュ「勇者様は少々お相手に対する敬意を忘れがちですからね」

勇者「んなこと言われたって、敬意なんてどう意識しろってんだ…」

アッシュ「だからこその修行です。これを機に他者を敬う気持ちを覚えましょう」ニコッ

アッシュ「礼儀を知ることで、より相手が鮮明に見えてくるのですよ」

勇者「…頑張ります」

魔法使い「ここにいたのね」

魔法使い「アッシュさん、私たち賢者様が教えてくれた場所に行ってくるわ」

アッシュ「テイシロ様の、ですね?」

魔法使い「そう」

アッシュ「どうぞお気を付けて。我々はここにおりますので何かあればいらしてください」

勇者「……」ジッ

魔法使い「……」

魔法使い「ん、分かった」




240 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:00:19.59 ID:74TzIOeD0
ーーー王都 郊外ーーー

魔法使い「地図だとこの辺のはずよね」テクテク

リア「似たお家が多いので注意しないといけませんね…」テクテク

テイシロ「……」

リア「シロー?」

テイシロ「あ、ごめん」タッタッ

魔法使い「……怖い?」

テイシロ「…怖くない」

テイシロ「って言ったら嘘だけど、それで怖気付いちゃうくらいならここまで来てないよ」

魔法使い「もっともね」

リア「魔法使いさん、ここじゃないですか?」

(一戸の民家)

魔法使い「間違いなさそうね。周りもこの地図通り」

テイシロ「……」

コンコン

魔法使い「ごめんください」

テイシロ「………」

リア「大丈夫」

テイシロ「うん…」
241 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:00:56.79 ID:74TzIOeD0



カチャ...



初老の女性「…どちら様?」

魔法使い「いきなりごめんなさい。どうしてもお聞きしたいことがあって来ました」

魔法使い「テイシロ、という男の子を知ってますか?」

初老の女性「テイシロ?いいえ、知らないわ」

魔法使い「この子が貰った名前です」

魔法使い「この子、小さい頃からずっと孤児院で育ってきたらしいんです。自分を産んでくれたお母さんの名前も知らずに。それでご両親のことを探して旅をしている最中なんです」

初老の女性「孤児院…?」

テイシロ「……っ」

初老の女性「!」

初老の女性「あなた、もう少しお顔を上げてくれるかしら…?」

テイシロ「ん」

初老の女性「……その孤児院には、恰幅のいい神父さんが居て、花の綺麗な丘があった?」

テイシロ「!…はい」

初老の女性「そう、やっぱり…」

初老の女性「ここじゃなんだから、上がっておゆきなさい」




242 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:01:38.83 ID:74TzIOeD0
ーーーーーーー

勇者「……」ジッ

アッシュ「……」

勇者「……」ジッ...

アッシュ「……」

勇者「………んあー!」

アッシュ「勇者様」

勇者「これ本当に意味あるんか!?座って考え事してるだけじゃ!?」

アッシュ「強くなりたいのでしょう?」

勇者「そうだけど…!」

アッシュ「とはいえ、無理強いはしません」

アッシュ「勇者様が無駄と感じられるのでしたら、体術か剣術の鍛錬に移ってもよろしいですよ」

勇者「……」

勇者「いや、やる」

勇者「俺っちが強くなるために必要なんだよな?だったらやる」

アッシュ「…ふふ、合格です。では体術の鍛錬から行いましょうか」

勇者「はい?」

アッシュ「試すような真似をしてしまい申し訳ありません」

アッシュ「今、貴方は私を信じ、託してくれましたね。自らだけでなく相手も思考に組み込む。それが礼儀の原点と言えるでしょう」

アッシュ「そのお気持ち、お忘れなきよう」ニコッ

勇者(こ、こんなんでよかったのか…?)

アッシュ「さぁ何してるのです?早く始めますよ。時間は極めて少ないのですから」

勇者「…おう!」




243 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:02:53.42 ID:74TzIOeD0
ーーーーーーー

初老の女性「粗茶くらいしか出せなくてごめんね」

魔法使い「いえ」

初老の女性「よっこいしょ。…どこから話したものかしらね」

テイシロ「……」

初老の女性「結論から言うと、あなたの父親は生きているし、母親はどこに居るかも分からないの」

リア「お父様は生きているんですね…!」

初老の女性「けど、あなたのことは知らない」

テイシロ「え…」

初老の女性「10年以上前のことよ」

初老の女性「あなたの母親はとある貴族の男性と恋をしたの。平民の女が貴族の殿方と許可無く交際することは禁じられてる上に、相手は婚約も決まっている身でね。それでも二人は強く惹かれ合って、何度も逢瀬を重ねたんだって」

初老の女性「でも、貴族様の行動を怪しんだ婚約者に見つかってしまい一転、彼女は追われる身となった。そうして逃げる折、私のところに転がり込んで来たのよ」

魔法使い「お知り合いだったんですよね?」

初老の女性「そうね。昔からの付き合いだった。けど私が事情を知ったのはその時が初めてで……あれだけ泣きじゃくって謝る姿を見るのも初めてだったわ」

リア「ご友人も危険に晒してしまうから…」

初老の女性「それもあったかもしれないねぇ」

初老の女性「彼女は、自分が抱えた赤ちゃんに謝っていたのよ」

テイシロ「――っ」

魔法使い「それが…」

初老の女性「……」コクリ

初老の女性「聞けば一人でお産をしたっていうじゃないの。誰にも知られるわけにいかないからって」

初老の女性「そして彼女はこう言った」
244 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:03:32.07 ID:74TzIOeD0



ーーーーー

「お願い…!この子を西国の孤児院へ預けて欲しいの…!私といるとこの先絶対に幸せにはなれないから…」

「ごめん、ごめんね…!身勝手な母でごめんねっ…!」

ーーーーー



初老の女性「その際、誰の子かを一切伏せて…とね」

初老の女性「だからあなたのことを知っているのは、あなたの母親と私だけ。父である貴族様も知らない」

テイシロ「……」

初老の女性「その綺麗な白い髪は、母方譲りなのよ」

初老の女性「彼女が今どこに居るのか、逃げ続けているのかそれとも……あれから連絡はないわ」

リア「…貴族様にお会いするのは…」

初老の女性「やめた方がいい。ただじゃ済まないよ」

魔法使い「ですよね…」

初老の女性「あなたはあなたで、幸せになる道を見つけてあげなさいな」

テイシロ「……はい」

初老の女性「それにしても、今はそうすると…12歳!」

初老の女性「とっても大きくなったわねぇ」ニコ...




245 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:04:37.24 ID:74TzIOeD0
ーーー帰り道ーーー

テイシロ「……」

リア「……」ソワ...

魔法使い「……」

リア(シロー…)

リア(ちゃんと事実を知ることが出来たのに、分かったのはシローがひとりぼっちになっちゃうってことだけ…)

リア「……」グッ..,

テイシロ「よし、決めたっ」

魔法使い・リア「「!」」

テイシロ「僕、大きくなって、誰かを守れるくらい強くなったら母さんを探しに行く」

テイシロ「大切な人を守れるんだぞって、母さんを安心させに行くんだ!」

魔法使い「きっと喜んでくれるわよ」

テイシロ「僕になんて名付けようとしたのかも聞きたいしな」ヘヘッ

テイシロ「魔法使いさん、リア、ここまでしてくれて本当にありがとう。自分の生まれを知れたこと、僕後悔してないから」

リア「…うん!どういたしまして」

テイシロ「神父様が心配してるだろうから、明日には帰ろうと思う」

テイシロ「だからさ、その……」

テイシロ「…リア!」

リア「ん?」

(着ていたローブを脱ぐ)

テイシロ「これ!預かっててくれ!」

テイシロ「僕が強くなって……守れるようになったら、取りに来るから」

リア「え、え…?でも、これ神父さんからもらったものじゃないの…?」

テイシロ「い、いいんだ!僕なりの決意だから!」

魔法使い(まあ…大胆ね。これ、ほとんど告白じゃないの)フフ

リア「……分かった」

リア「待ってるね」ニコリ




246 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:05:03.14 ID:74TzIOeD0
ーーー宿ーーー

魔法使い「もう真っ暗…思ったより遠かったのね」

...グゥ

テイシロ「……//」

リア「お腹、空いちゃったね」

テイシロ「うぅ…」

魔法使い「ふふっ、夕食にしましょうか」

魔法使い(アッシュさんと勇者がまだいないけど)

魔法使い(……)

魔法使い(稽古、なのよね)




247 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:05:30.46 ID:74TzIOeD0
ーーー特訓2日目 大会まであと13日ーーー

勇者「」ヒュッ、ビュオ

アッシュ「まだまだ遅いです!余計な場所に目を向けない!」

アッシュ「速く速く!」

勇者「せあっ!!」ギュン!

アッシュ「そうです!」

...ザッザッ

テイシロ「…す、すごい」

勇者「」ダダンッ

テイシロ(僕もあれくらい強くなれるかな)

テイシロ「あのさ、取り込み中に悪い。僕これから西国に帰るよ」

アッシュ「お一人で平気ですか?」

テイシロ「うん。賢者様のこと、感謝してる」

アッシュ「はいお元気で。またどこかでお会いしましょう」ニコッ

アッシュ「ほらまた!目線が泳いでますよ!」




248 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:06:10.82 ID:74TzIOeD0
ーーー特訓4日目 大会まであと11日ーーー

アッシュ「――よし、いいでしょう。5分間の休憩にします」

勇者「ゼェ……ゼェ……」

勇者「5分…ゼェ…せめて、10で……!」

アッシュ「なりません」

アッシュ「休憩後はまた剣術です。勇者様の強みである体術と剣。どちらも満遍なく伸ばしていきましょう」

勇者「ひーっ…りょーかい…」

勇者「こりゃ…ハァ、ぜってー優勝して…美女ちゃんに癒してもらわんと…!」

アッシュ「おや、当てがあるのですか?」

勇者「賞品だよ賞品、大会のさ」

アッシュ「そのようなものはありませんが」

勇者「………なぬぃっ!?」



.........




249 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:07:12.58 ID:74TzIOeD0
ーーー特訓9日目 大会まであと6日ーーー

レラ「や。来ちゃった」

アッシュ「レラ様。貴女様が外へ出られるとは些か珍しいですね」

レラ「人を引き籠もり扱いしないで頂戴な」

レラ「んー?」

勇者「」ヒュッヒュッ!

ズアッ!

レラ「ほぉ。意外と様になってるじゃないか」

アッシュ「やはり驚異的なのです、彼の伸びは。たった数日でここまでものにしてしまうのですから」

レラ「……」ニィ



ザッザッザッ



レラ「元気そうね、坊や」

勇者「あっ、賢者のお姉さん!」

レラ「えらい量の汗だ。ちゃんと風呂は入りなよ?」

勇者「水浴びときゃ平気さ。ちっと汗くさい方が男っぽかったりしねーか?」ハハッ

レラ「くふ、嫌いじゃないさね」

レラ「なぁあたしと手合わせしてみないかい?」

勇者「お姉さんと?」

アッシュ「いいかもしれませんね。レラ様は私よりも剣の腕は上。姫騎士様と戦うことを考えれば願ってもない申し出です」

勇者「だけどよ、俺っちあんな魔法使われたら対処できっかどうか…」

レラ「魔法は使わない。正々堂々剣だけの交わし合いさ」

レラ「アシュ坊、それ借りるよ」

アッシュ「どうぞ」(木剣を渡す)
250 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:07:41.62 ID:74TzIOeD0

勇者「ま、マジすか」

レラ「どれどれ」ザッ

タユン

勇者(やべ、集中できっかな…)チラ

レラ「よそ見してたら伸しちまうよ?」スッ

勇者「!」

ガン!

勇者(重っ!今の動きからこの衝撃っ!?)

勇者(俺っちだって…!)

勇者「」ヒュッ

レラ「ほれ」ガンッ

勇者「ふっ!」ヒュンッ

レラ「ここ」ガンッ

勇者(もらった!)

ギュン――

レラ「」クルン

勇者(!?)

バシィ!

勇者「ぎゃっ!」

レラ「はい一本」

アッシュ「剣も変わらず、衰えていませんね」

勇者「っつー…なんだよ今の」

レラ「なかなか華麗だったろう」

勇者「どんな腕の使い方してんだ…」

勇者(…けど、見えない動きじゃなかった)

勇者「お姉さんもっかい頼む!」

レラ「くふっ、次は受け止めてくれよ?」



.........




251 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:08:20.17 ID:74TzIOeD0

ザンッ!

勇者「ぐはっ」

ドサッ

勇者「うぅ…ちくしょー…」

レラ「そろそろ一息入れようかね」

勇者「問題ねー!俺っちまだまだやれんさ!」

レラ「あたしが休みたいのよ」

レラ「ねぇ、水持ってきて頂戴」

アッシュ「はい、ただいま」

タッタッタッ...

勇者「水ぅ…助かる…!」

勇者「でもさ、お姉さんなら魔法で水くらい出せんじゃないの?」

レラ「!」

レラ「くくっ、鋭いね」

レラ「坊やお伽噺は好きかい?」

勇者「おとぎ話?」

レラ「そうさ」

レラ「昔々、とある国に一人のお姫様がいました」

レラ「小さな国のお姫様は王様にとても愛されて育ち、お姫様もまた、そんな王様のことが大好きでした」

レラ「ある日王様はお姫様の"力"に気付きました。その"力"は人々の胸を打ち、国に幸福をもたらす特別なもの」

レラ「そうしてお姫様の"力"で、国はみるみるうちに大きくなっていきました」

レラ「今日も王様はお姫様を頼りに、お姫様は大好きな王様の求めに応えるため"力"を使い続けます」

レラ「めでたしめでたし」
252 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:08:52.90 ID:74TzIOeD0

勇者「え、終わり?」

レラ「終わり」

勇者「なんてーか…雑っ」

勇者「まさかお姉さんのことだったり」

レラ「それこそまさかだよ」

勇者「ふーん…」

勇者「なんか楽しくなさそうだな、そのお姫様」

レラ「……」

勇者「あー、まぁ、本人たちが幸せならそれでいいんかなー」

レラ「フッ、そうさね」

勇者「お姉さんは大会出ないん?」

レラ「あたしは出ないよ」

勇者(軽く優勝しちゃいそうなのになぁ)

勇者(ぶっちゃけ勝てる気がしない。…今はまだ)

レラ「出たくても出れないしね」

勇者「?」

アッシュ「お待たせ致しました」

勇者「おっ!サンキュ先生!」

勇者「んく、んくっ」

アッシュ「飲み過ぎてお腹を重くしないように」

レラ「じゃ、それ飲んだら再開だ」




253 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:09:25.27 ID:74TzIOeD0
ーーー夕方ーーー

魔法使い「アッシュさんお疲れ様。これ、差し入れ持ってきたの」

アッシュ「これはこれは。わざわざありがとうございます」

勇者「ぐー……すー……」

魔法使い「寝てる…」

アッシュ「仮眠中なのです。今日は特に激しいメニューでしたから」

勇者「ぐがー……」

魔法使い「何も土の上で寝ることないのにね」

魔法使い「どうなんですか、勇者は。強くなってます?」

アッシュ「驚くべき速度で成長しています。1教えれば3か4程を出来るようになるのです」

アッシュ「大会の優勝もいよいよ現実味を帯びて参りましたよ」

魔法使い「…そうなんだ」

勇者「むにゃむにゃ……」

魔法使い「………」




254 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:09:52.71 ID:74TzIOeD0
ーーー特訓14日目 大会前日ーーー

勇者「」スササッ

クルッ ブォン!

アッシュ「お見事です」

勇者「ふ〜。お姉さんの技、使ってみると結構おもしれーなー」

アッシュ「技に頼り過ぎないようにするのですよ」

勇者「オーケーオーケー。心得てるぜ先生」

アッシュ「よいでしょう」

アッシュ「さて、これにてお稽古は終了に致します。もう前日ですからね、怪我や疲れを残さないよう過ごすのが最後の鍛錬です」

勇者「…いいんか?俺っち、これで勝てる?」

アッシュ「勝てます」

アッシュ「と言いたいところですが、それは貴方次第ですね」

アッシュ「勝つと思えば勝てるかもしれません。負けると思えば負けてしまうでしょう」

勇者「………」

勇者「負けるわけないっしょ!俺っち、最強なんだかんさ!」

アッシュ「では、勝つしかありませんね」

勇者「だからもうちっとだけ自主練してく」

アッシュ「無理は禁物ですよ」

勇者「うぃっす」

アッシュ(…久々に、あそこへ行ってみましょうか)




255 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:10:34.67 ID:74TzIOeD0
ーーー小さな池のほとりーーー

アッシュ「……」

アッシュ(変わってしまいましたね、ここは)

アッシュ(あの頃はもっと広く見えたものです)

アッシュ「…いえ、変わったのは私の方ですか」フッ



...ザッザッ



侍女「……」

アッシュ「…!」

アッシュ「懐かしいですね。貴女とここに居ると、昔を思い出しますよ」

侍女「…何故戻ってきたのです?」

侍女「言ったはずです。貴方では姫騎士様を救えないと」

アッシュ「旅先で捕らえた盗人を届けにきただけですよ」

侍女「受付所で貴方の姿を見たという者がいます」

アッシュ「そのついでに、英雄を育てていました」

侍女「英雄…?」

アッシュ「えぇ。最強の、ね」

侍女「……っ」

侍女「それが姫騎士様を救うと?」

アッシュ「さて。彼はただ、勝ちたいだけのようですから」

アッシュ「結果として救われる者なら、いるかもしれませんがね」ニコッ
256 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:11:11.02 ID:74TzIOeD0

侍女「貴方は……そこまで愚かだったのですか」

侍女「生半可な手出しでは傷を負うだけです。その者も、姫騎士様も」

侍女「手を引きなさい」

アッシュ「引きませんよ」

侍女「……」

アッシュ「……」

侍女「…姫騎士様は、この国の英雄です」

侍女「かつて小さく発言権もなかったこの国を、闘技の実力だけでここまで押し上げたお方」

侍女「民衆と、何より国王様の多大なご期待を背負って日々必勝の闘技に明け暮れる…」

侍女「…何故、こうなってしまったのですか…」

アッシュ「……」

侍女「彼女に剣の才能があったから…?彼女が国王様のことを誰より好いているから…?」

侍女「今の姫騎士様は国によって作り上げられた偶像であるというのに、当のご自身が、それを受け入れ続けている…」

侍女「私はもうあのお姿を見ているのが辛い……この手で助け出すことが出来ないのが、悔しい…!」グッ...

アッシュ「………」
257 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:11:52.00 ID:74TzIOeD0

アッシュ「子供の頃、この池の周りで三人、よく遊んでいました」



ーーーーー

「姫ちゃん!向こうにきれいなお花があったよ!」

「ほんとか!アッシュー!見に行くぞー!」

「今行くー」

ーーーーー



アッシュ「姫騎士様は誰より、花が好きでしたね」

アッシュ「そしてそれを知る国民は一人もいないのでしょう」

侍女「……」

アッシュ「催事で娯楽街へ繰り出した時は、密かに遊技場を見学に行く計画も立てましたね。結局頓挫してしまいましたが」フフ

侍女「………」

アッシュ「私は彼を信じています。彼の強さを知っています」

アッシュ「明日の優勝者はきっと、前大会と違う方になる」




258 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:12:42.75 ID:74TzIOeD0
ーーー夜 宿 アッシュの部屋ーーー

アッシュ(正直なところを言えば、確率はまだ五分よりも低い)

アッシュ(ですが私に出来ることはやりました)

アッシュ(後は任せましたよ)

アッシュ(勇者様)




259 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:13:10.80 ID:74TzIOeD0
ーーー魔法使いの部屋ーーー

魔法使い「そっか、明日なんだ」

魔法使い(勇者のあのやる気。多分賢者様と二人で居た時に何かがあった)

魔法使い(気になるけど、結局今日まで訊けなかったわ…)

魔法使い「…明日教えてくれるかしら」



ーーーーー

勇者「最強になりてーんだ!」

ーーーーー



魔法使い「……ふふ」




260 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:13:39.01 ID:74TzIOeD0
ーーー勇者の部屋ーーー

勇者「もう寝なきゃなんねー時間か」

勇者(剣と体術…あとちょっとでなんか掴めそうなんだよなー)

勇者(先生に体調管理も強さのうちって言われちったかんな…)

勇者「…ま、何とかなんさ!」



ーーーーー

幼魔法使い「さいきょうの勇者がね、だいすき!」

ーーーーー



勇者(ぜってー勝って、ぜってー見せつけてやる)

勇者「へへっ、待ってろよ最強」




261 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:14:06.36 ID:74TzIOeD0
ーーー城 侍女の寝室ーーー

侍女「………」

侍女「………」

侍女「………」

侍女(……また戻ってきてよ……)

侍女(姫ちゃん……)




262 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:15:47.96 ID:74TzIOeD0
ーーー姫騎士の寝室ーーー

姫騎士「む?」

(萎れかけの生け花)

姫騎士「しまった、水を替えていなかったか」

スッ...ザー

キュ、キュ

チャプン

姫騎士「これでいい」

姫騎士「明日になる前に気付けてよかった。優勝者褒賞まで帰れないからな」

姫騎士(………)

姫騎士「そう、いつもと同じだ」

姫騎士「勝てばいい」

姫騎士(お父様の望むように)

姫騎士「ただ、勝てばいい」




263 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:22:03.60 ID:74TzIOeD0
5章はここまでとなります。

言及されなかったレラの過去はどこかで触れたい…と思ってはいます(出来なかったらごめんなさい)。
264 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 00:23:57.83 ID:74TzIOeD0
6章では闘技大会が行われます。
そこで、大会に登場する一部のキャラを四人ほど、安価とコンマで決めたいと思います。
安価で6つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって四人決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5〜100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



※それぞれのキャラに大きく尺を割けないため、サクッと扱われる可能性もありますがご了承ください。

あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>265>>270
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 07:33:00.20 ID:jov3uy5i0
キャラ名アニキンドリス(美術家) スキンヘッドで筋肉ムキムキの男 褌一丁で戦う
性別男
年齢30
得意戦型体術
備考・希望:実はそれなりに名の通った戦う芸術家 作品のインスピレーションを求めるために戦う
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 09:23:27.14 ID:OfilA1NB0
キャラ名:ミント (格闘家 ピンク髪にポニーテール、モデル体型でへそが出ている服を着ていて革手袋をはめている)
性別:女
年齢:19
得意戦術:体型と魔法
備考・希望:明るい性格。貴族の娘で貴族の生活が嫌になり家を出て旅をしている。。火、水、土、光、闇の魔法が使えて身体能力も高い。手や足に魔法を纏って戦うことができる。実はアッシュの隠れファンでもある。
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 11:11:34.90 ID:n8DK9ZVDO
名前 ナタリー(魔法剣士
緑色のショートの髪をしている)
性別 女性
年齢 20
得意戦型 魔法と剣術
備考・希望 炎の魔翌力を宿した剣と氷の魔翌力を宿した剣の二刀流で戦う
性格はおっとりのんびりやだが、戦いのときは若干ハイテンション
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 12:07:13.05 ID:KD+oaXa5O
キャラ名:ダグ・ミグ 細身なノッポ。モブっぽい
性別:男
年齢:39
得意:拳法(普段はナイフ投擲で遠距離型と相手に誤認させ、近距離なら弱いと思い込んだ相手に強力な打撃を与える)
備考:普段は武器屋のオヤジだが正体は盗賊団首領。武器屋に訪れた相手の強さや交遊関係を探り、勝ち目が薄いと感じると相手の身内や恋人を手下に拐わせ人質にする卑劣漢。拐った相手が女なら最初に自分が強姦し、後は手下に与え徹底的に輪姦させる外道。
※自分が負けたらお前の女はこうなるぞ
と脅す感じで
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 15:59:16.21 ID:8SdmmTF9O
キャラ名:ラッキー 剣士(アフロ。褐色肌。サングラスをかけている)
性別:男
年齢:28
得意戦術:剣術
備考・希望:陽気な性格ですごい強運の持っている。大会にも何度も出場しており運だけで勝ち進んだこともある。他の人から「幸運のラッキー」と呼ばれている。剣術も我流だがかなり強い。
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 17:47:43.06 ID:mnwhRXK7O
キャラ名:ジンガ(鋭い目付きをした悪人面、長身の細マッチョ。ボサボサの黒髪、褐色の肌など。ごろつき風の男。)
性別:男
年齢:35
得意戦型:剣術と魔法
備考・希望:
幻術を得意とする身のこなしが軽い魔法戦士。装備は数打ちの長剣や投げナイフ、急所を守る程度の防具、ボロボロのマントなど。
みすぼらしい姿をしたごろつきのように装っているが、その正体は他国からの間者であり強者達の情報を集め場合によっては引き抜く任務を帯びている者の一人である。
闘技大会では使わないが、本来は猛毒や暗器などを用い手段を選ばず戦う。
271 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 18:11:48.83 ID:3/V/rXVU0
候補6人が出そろったので、まず二人を>>272>>273のコンマで決めます。
被った場合はその一人をまずは採用します。

00〜15:アニキンドリス
16〜31:ミント
32〜47:ナタリー
48〜63:ダグ・ミグ
64〜79:ラッキー
80〜96:ジンガ
97〜99:再安価
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 18:13:59.46 ID:12dtkJgU0
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 18:16:37.63 ID:n8DK9ZVDO
はい
274 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 18:27:53.85 ID:aF6kzQvyO
コンマ46と63で、

名前 ナタリー(魔法剣士
緑色のショートの髪をしている)
性別 女性
年齢 20
得意戦型 魔法と剣術
備考・希望 炎の魔翌力を宿した剣と氷の魔翌力を宿した剣の二刀流で戦う
性格はおっとりのんびりやだが、戦いのときは若干ハイテンション

キャラ名:ダグ・ミグ 細身なノッポ。モブっぽい
性別:男
年齢:39
得意:拳法(普段はナイフ投擲で遠距離型と相手に誤認させ、近距離なら弱いと思い込んだ相手に強力な打撃を与える)
備考:普段は武器屋のオヤジだが正体は盗賊団首領。武器屋に訪れた相手の強さや交遊関係を探り、勝ち目が薄いと感じると相手の身内や恋人を手下に拐わせ人質にする卑劣漢。拐った相手が女なら最初に自分が強姦し、後は手下に与え徹底的に輪姦させる外道。
※自分が負けたらお前の女はこうなるぞ
と脅す感じで

の2名は決定です。
275 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/19(金) 18:30:39.47 ID:aF6kzQvyO
残りの二人を>>276>>277のコンマで決めます。
被った場合はその一人をまずは採用します。

00〜24:アニキンドリス
25〜49:ミント
50〜74:ラッキー
75〜99:ジンガ
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 18:39:31.28 ID:Oi91mQV5O
はい
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/19(金) 18:39:53.90 ID:1C9O9znpO
278 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/06/19(金) 18:48:27.86 ID:aF6kzQvyO
コンマ28と90で、

キャラ名:ミント (格闘家 ピンク髪にポニーテール、モデル体型でへそが出ている服を着ていて革手袋をはめている) ?性別:女 ?年齢:19 ?得意戦術:体型と魔法 ?備考・希望:明るい性格。貴族の娘で貴族の生活が嫌になり家を出て旅をしている。。火、水、土、光、闇の魔法が使えて身体能力も高い。手や足に魔法を纏って戦うことができる。実はアッシュの隠れファンでもある。

キャラ名:ジンガ(鋭い目付きをした悪人面、長身の細マッチョ。ボサボサの黒髪、褐色の肌など。ごろつき風の男。) ?性別:男 ?年齢:35 ?得意戦型:剣術と魔法 ?備考・希望: ?幻術を得意とする身のこなしが軽い魔法戦士。装備は数打ちの長剣や投げナイフ、急所を守る程度の防具、ボロボロのマントなど。 ?みすぼらしい姿をしたごろつきのように装っているが、その正体は他国からの間者であり強者達の情報を集め場合によっては引き抜く任務を帯びている者の一人である。 ?闘技大会では使わないが、本来は猛毒や暗器などを用い手段を選ばず戦う。

が決定です。
279 : ◆YBa9bwlj/c [sage saga]:2020/06/19(金) 18:49:52.46 ID:aF6kzQvyO
6章は3回に分けて投下します。
次回の投下はまた後日となります。
280 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/28(日) 05:52:01.83 ID:qKbALpwl0
6章1/3、投下します。
281 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/28(日) 05:57:07.82 ID:qKbALpwl0
ーーー翌朝 闘技大会会場ーーー

アッシュ「ここ王都で開催される闘技大会には予選と本選がございます」

アッシュ「午前はまず予選です。予選は32あるブロックの中でそれぞれ総当たり戦を行い、最も戦績の良い者のみが本選へ進むことが出来ます」

アッシュ「午後に入れば本選です。予選で選び抜かれた32名が勝ち抜き形式で戦うことになります。つまり本選で5回勝利すれば優勝というわけですね」

アッシュ「あちらに大きな闘技場が二つ見えますが、第1から16ブロックの方々は左、17から32ブロックの方々は右の会場で本選を進めていくのです。決勝はどちらかで行われるので、観客が集中し、いつもパンクしてしまうのですがね」

アッシュ「ちなみに予選の方はあちらこちらに用意された屋内の闘技場で行いますよ」

勇者「へぇー。で、俺っちはどこなん?」

アッシュ「勇者様は第9ブロックですので、そちらから行くと近いですね」

魔法使い「こんなにたくさん出場者がいるのね…」ミマワシ

魔法使い「これで総当たり戦なんかやってたら終わらないんじゃないの?」

アッシュ「いえ、ブロック内で1位の方が確定した時点でそのブロックの予選は終わりですからね。最初の数試合で勝利数の多い者を優先的に戦わせていくので、全勝してしまえば手早く簡単に本選へ行けますよ」

リア「でも…それって休みなく戦うってことですよね…?すごく疲れそうです…」

アッシュ「えぇ。今大会は一つのブロックに少なくとも20人は居ますから、それだけの連戦となれば普通は疲労困憊となってもおかしくありません」

勇者「へーきだよ。体調は万全だし、即行決めればいいだけっしょ!」

アッシュ「…おっしゃる通りです」フフッ

アッシュ「今の勇者様ならそう難しいことでもないでしょう」

魔法使い(………)

魔法使い「…あのさ、勇者――」



アナウンス『間もなく予選を開始します。出場者は各自自分のブロックの会場で待機していてください』


282 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/06/28(日) 05:59:19.87 ID:qKbALpwl0

勇者「おー。お呼び出しってか?」

勇者「うし、じゃあ俺っち行ってくるわ」

アッシュ「出場者以外は闘技が始まってからでないと入れないので、私達は後ほど向かいますね」

勇者「そん頃にゃ終わってっかもなー!なはは!」

タッタッタッ...

リア「勇者さん、元気になってよかったです」

アッシュ「彼の中で何か思うことがあったのでしょう」

魔法使い「……」

リア「勇者さんがああなったの…賢者様に呼ばれてた後でしたよね?アッシュさん、何があったか聞いてます?」

魔法使い「!」

アッシュ「いいえ。恐らく質問したとしても我々には教えてくれないでしょう」

アッシュ(一人を除いては)

リア「そうなんですか…?」

魔法使い「………」



桃色ポニテ「あー!アッシュ様!?」


325.69 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)