【対魔忍RPG】まりの大冒険 ふたたび

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132 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:51:23.47 ID:5z9OpdEU0
(くそっ…サイボーグだったのか…。油断した…!)

巨大な岩盤の陰で、紅が腹の痛みを必死でこらえながら様子を覗っている。

「だ、大丈夫ですか…?」

「問題ない…。この程度…。しかし…」

(旋風陣を受けても無傷…。そしてあの怪力…。どうする…?)

(やはり、“奥の手”を使うしか…だが、このダメージでは…)
133 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:52:21.10 ID:5z9OpdEU0
「紅さん」

「なんだ…?」

「私に、考えがあります」
134 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:53:33.93 ID:5z9OpdEU0
ドクン。

まりを振り返った紅の心臓が激しく収縮した。

眼鏡の奥の瞳が鋭い輝きを放っている。

顔を合わせただけで、彼女の感情が流れ込んでくるようだ。

『決意』『覚悟』――そして――激しい『怒り』――

紅が今まで目にしたことがない“篠原まり”が、そこにいた。
135 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:54:38.81 ID:5z9OpdEU0
(いや、違う…。私は…。私は、このまりを知っている…)
136 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:55:26.52 ID:5z9OpdEU0
――(君の力が必要だ。協力してくれるか?)

――(はいっ!でも、どうやって…)

――(互いの為すべきことを。対魔忍であれば、それはわかるはず)
137 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:56:24.46 ID:5z9OpdEU0
「フッ…。あの時と同じ、だな」

「でも、今度は立場が逆です」

「確かに…。ならば…」

「“互いの為すべきことを”、ですよね!」

「ああ!」
138 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:57:09.40 ID:5z9OpdEU0
ひらり、と紅が岩盤を飛び越え、狂二の前に降り立つ。

「なんだ、出て来たのか…。ちょうどいいや、お前を俺の女優第一号にしてやる!」

「悪いが、私は黙って凌辱されるような女ではない…。対魔忍なのでな」
139 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:58:18.78 ID:5z9OpdEU0
「ハアッ!」

紅が狂二に切りつける。

キイイイイン!

「切れねーよ!」

ボッ!

難なくガードした狂二の拳が唸りをあげて紅を襲う。

「くっ!」

紙一重でかわすも、狂二のラッシュは止まらない。
「ハーッ!」

ボボボボボボッ!

(間合いを保て…!つかず離れず…!コイツの意識を、私に集中させる!)
140 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 18:59:44.27 ID:5z9OpdEU0
「動きが鈍いぜ!ダメージ抜けてねえんだろお!?」

ブアッ!

「ウッ…」

致命的なアッパーが紅の顎をかすめ、体勢が崩れる。

「もらったあっ!」

狂二がトドメの一撃を紅に放つ。
141 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:01:53.52 ID:5z9OpdEU0
ゴッ!

そのとき、背後から隆起した岩が狂二に襲い掛かった。

「ワンパターンだなあ!対魔忍!」

しかし狂二は振り向きざまに裏拳で岩を破壊――

「はああああああああ!!!」
142 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:02:43.86 ID:5z9OpdEU0
「なにっ!?」

さすがの狂二も完全に不意を突かれた。破壊した岩の中からまりが飛び出し、全力の右ストレートを打ち込んできたのだ。

(これは…マズイ!)

ガアアァン!

紅の斬撃をもろともしない狂二が、まりの拳を両腕でガードした。そこに込められた恐るべきパワーを瞬時に感じ取ったのだ。

(よし、狙い通りです!)
143 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:04:18.15 ID:5z9OpdEU0
――(すげーだろ?実はもう脳以外は全部機械なんだぜ…俺…)

(違う…そんなはずありません!)

――(奴隷娼婦抱いてもさ…ナンパした女抱いてもさ…ダメなんだよ…。俺は…兄貴と同じなんだよ…。『殺しながら抱かねえと』さ…)

(この人にはある…機械化できない場所が!失いたくないものが!)

ドッ!!
144 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:04:50.36 ID:5z9OpdEU0
まりの前蹴りが――規格外の破壊力を込めた足刀が――狂二の股間に突き刺さった。
145 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:05:31.00 ID:5z9OpdEU0
「ここは生身…ですよね!」

――グジュリ。

「……ぷにっ」
146 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:06:41.14 ID:5z9OpdEU0
狂二は聞いた――股間の左で、腐った果実を踏みつけたような音がするのを――

(つ、潰れえっ!?つぶれたアッ!?お、俺の、おれのがあっ?!!?!!)

(せ…生殖器は機械ではないッ!まりのやつ、とんだ奇策を…!)
147 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:07:45.33 ID:5z9OpdEU0
「うりゃあっっ!」

すかさず狂二に肉薄したまりが、一本背負いで狂二を投げ飛ばす。

ドンッ!

「がはっ!?」

「ふんっ!」

後頭部と背中をしたたかに打ち付けた狂二の胸めがけて、まりが全体重をかけたエルボーを落とす。

ドガッ!
148 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:09:34.83 ID:5z9OpdEU0
「ぐうっ…ううう〜っ!」

なんとかガードした狂二だったが、まりの右手は流れるような動きで狂二の股間を捕らえている。

右側を。
149 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:10:09.86 ID:5z9OpdEU0
「ナイスディフェンス、です」

ギュッ。

「やめッ!」

ぐちっ!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」
150 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:11:18.20 ID:5z9OpdEU0
狂二は口から泡を吹き、がくがくと痙攣しながらのたうち回る。

ばっ、と飛びのいて距離をとったまりが、渾身の力を込めて両拳を地面に叩きつけた。

「土遁・裂閃牙!!!」

地面から巻き上がった土砂が蛇の形で渦を巻き、一斉に襲い掛かる。

ガガガガガガガガガガガガガガ!

「ぬうああああああああアアあああぁああああ!!!」

狂二のサイボーグ・ボディが、徐々に、徐々に砂に削り取られていく。
151 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:12:02.11 ID:5z9OpdEU0
タッ。

紅が飛んだ。

「絶技ッ!旋・風・陣!」

ゴオオオオォォオオオ――!!

「うああああああああああああああああああああああああああああ…」

断末魔が風にかき消され――やがてそれが止み――砂と金属片が、雨のように降り注いだ――。
152 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:14:56.19 ID:5z9OpdEU0
「おい、立てるか?」

「だ、だいじょうぶですぅ〜。ちょっと…力、抜けちゃって…あはは…」

地面にへたりこんだまりを紅が引き起こした。
153 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:15:43.75 ID:5z9OpdEU0
「…本当に強くなったな、まり」

「ふえっ!?」

「私は、まだどこかで君を見くびっていたのかもしれない…」

「いえいえいえいえ!?そんな、ほ、褒めすぎですよう…。」

顔をふにゃけさせながら照れるまり。

(しかし、まさかあんな戦法を思いつくとはな…そら恐ろしい子だ…)
154 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:16:31.21 ID:5z9OpdEU0
――実のところ、紅の顔には、若干の“苦笑い”が浮かんでいたのだが…。

「えへへへ…」

当のまりは、知る由もない――。
155 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:17:37.42 ID:5z9OpdEU0
――
――――
――――――
156 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:19:12.65 ID:5z9OpdEU0
――一週間後。

まりは、センザキにある紅のアジトを訪ねていた。

「あの後、倉庫に残されていた悪趣味なデータは全て回収した。…やはり、5年前に悪党どもを手引きしたのは美春さんだったらしい」

緑茶を運んできた紅が続ける。

「森浦さんの店に努める前の美春さんは、かなり荒んだ生活をしていたらしい。ようやく足を洗って、まっとうな人生を歩もうとしたところで森浦さんに雇われて…。プロポーズされたときは、本当に嬉しかったのだろうと思う」

「――だが、その幸せはあと少しのところで打ち砕かれてしまった。激昂した美春さんは昔の仲間に連絡を取ってしまい…あの惨劇に繋がってしまった…」
157 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:21:01.18 ID:5z9OpdEU0
「でも、いくらなんでも…。あんなことをするなんて…」

「まさしく、“魔が差した”のだろうな。人は感情を爆発させると、時に思いもよらないことを――自分でもどうしてこんなことを、と思うようなことをしてしまう。自分のなかに巣くう“魔”に負けて破滅していく人を、私は何人も見てきた」

ズズ…と茶を啜った紅が苦々しげに顔をしかめる。

「対魔忍として戦い続けるならば、魔族や魔物だけでなく、人の心に潜む“魔”とも戦わなくてはならない。それが私たちの宿命なんだ」

「――だから、こういったことにも慣れていかなくてはいけない」
158 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:21:39.04 ID:5z9OpdEU0
紅が茶碗を置き、折りたたまれた便箋をまりに差し出した。

「これは…?」

読んでみろ、と紅が目で語り掛ける。
159 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:22:18.22 ID:5z9OpdEU0
――心願寺紅様・篠原まり様

この度は娘の仇を討って頂き、感謝のしようもございません。

ようやく私も、天国の娘に謝罪に赴く決心がつきました。

これも全て、お二人のおかげです。

本当に、ありがとうございました――

160 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:23:48.75 ID:5z9OpdEU0
「…!!」

「私も、すぐ家に駆け付けたのだが…。間に合わなかった…」

「そんな…!そんなのって…!!」

「気にするな。君は立派に任務を果たした。その後に起きたことは君のせいじゃない」

まりは俯いた。

涙が頬を伝わり、森浦の遺書に滴る。
161 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:24:50.92 ID:5z9OpdEU0
「約束の報酬だ。それと…」

「私、いいです」

「受け取るんだ。それが依頼者への礼儀になる。それと、人の話は最後まで聞くものだ」

ドサッ。

紅がテーブルの上に置いたのは、札束が入った封筒と――何十冊ものノートだった。

162 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:26:24.59 ID:5z9OpdEU0
「…?」

「森浦さんのレシピ・ノートだ。好きに使ってほしいという書置きが残されていてな」

「ええっ!?これ、全部ですか!?」

「ああ。すごいぞ、和・洋・中、君が好きな甘いものまでばっちり網羅されてる」

「ふわあ…」
163 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:27:33.50 ID:5z9OpdEU0
「…まり。よければなんだが…私と料理の練習をしないか?」

「え?」

「いや、私もこういう漫画みたいなセリフは好きじゃないんだが…。ほら、あるじゃないか…。“森浦さんの料理を私たちが受け継げば、私たちの中で森浦さんは生き続ける”…とか…なんとか…」

紅が照れ臭そうに頬をかきながら目をそらした。
164 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:28:36.39 ID:5z9OpdEU0
「…ふふっ。ふふふふ…」

「わ、笑うなよ!私だって言おうか迷ってたんだぞ!でも、君が落ち込んでいたから…」

「ふふふ…すみません、紅さんが…まさかそんな…ふふふふふ…」

まりが眼鏡をずらし、人差し指で涙をぬぐう。

165 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:29:26.37 ID:5z9OpdEU0
「…ありがとうございます。私なんかでよければ、ぜひ!」

「うむ。料理は食べさせる相手がいれば上達が早いと言うからな。二人で試食しあえば効率がいいだろう」

「楽しみです、紅さんの料理!」

「私もたまにはあやめに手料理を振舞ってみたいしな…。それと、あいつにも…」

「あいつ?」
166 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:30:34.87 ID:5z9OpdEU0
「あ!?いやいや、あー…、あつい、暑いなあ、今日は!暑い!うん!」

(うわっ!?めちゃくちゃベタなやつだ!)

「もしかして、例の“王子様”のことですか?」

「なっ!!??!?」

紅の顔が爆発した。
167 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:31:53.90 ID:5z9OpdEU0
「なななっ、なんの話だっ!?そ、そんなことは――」

「去年、酒場にご一緒したときにオークさんたちが言ってました」

「し、知らんっ!知らんぞっ!というか、酒の席での話を間に受けるんじゃないッ!」

「でも」

「知らないっっ!!!そんな奴はいないっっっッ!!」

紅はノートの山から一番上のものをひっ掴み、顔に押し付けるようにして読み始めてしまった。

168 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:32:48.10 ID:5z9OpdEU0
(わかりやすいなあ…)

紅の、普段のクールさからは想像もつかない取り乱しぶりに唖然とするまり。

「じ、じゃあ、わたしはこの“和菓子@”って書いてあるやつからにしますね…?」

「………」

無言。
169 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:33:26.21 ID:5z9OpdEU0
(はわわ…。ちょっと、怒らせちゃったかな…?)

紅の様子を覗いながらゆっくりと表紙を開く。

“団子”“汁粉”“揚げまんじゅう” ――和菓子好きの彼女にはたまらない言葉が並んでいる。

(…でも、いつか聞きたいな…紅さんの“王子様”の話…)
170 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:33:57.35 ID:5z9OpdEU0
(きっとその人も、紅さんみたいに素敵な人なんだろうな…)

そんなことを考えながら、まりはページをめくりはじめた――。
171 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:38:37.94 ID:5z9OpdEU0
おしまい

ちなみにまりの大冒険は5/22まで復刻中なんだ
みんなで対魔忍になるんだ
絆が深まるんだ
172 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:54:28.37 ID:5z9OpdEU0
>>32
見直したら誤字ったのが直ってなかったのでもういちど

「…まり、もし良ければなんだが…このまま私の仕事を手伝って貰えないか?」

「えっ」

「せっかくのオフに申し訳ないんだが、君の力があれば私も心強い。もちろん報酬も」

「やりますっ!私、頑張りますっっ!!」

(また紅さんと一緒に戦える!)

高翌揚感でハイになったまりが恐るべきスピードで屋台を引いていく。
173 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 19:57:42.25 ID:5z9OpdEU0
え、なんで、、、打ち直してるのに、、、
174 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 20:00:01.67 ID:5z9OpdEU0
「高翌揚感」ね

禁断の誤字二度打ち…!

175 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 20:01:04.73 ID:5z9OpdEU0
高 揚 感 ね

禁断の三度打ち…!
176 : ◆H5MbwxPKRo [sage]:2020/05/16(土) 20:01:42.87 ID:5z9OpdEU0
おそらく何かのNGに引っかかったものと考えられる
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/16(土) 21:02:39.25 ID:SuYoBnOx0
恐らくだがメール欄が「sage」になってるからだ、俺みたいに[saga]になってればフィルターが掛からん


高揚感

高揚感→高翌揚感

魔力→魔翌力

みたいになる
178 : ◆H5MbwxPKRo [saga]:2020/05/17(日) 10:57:30.06 ID:K5P1soMu0
高揚感
179 : ◆H5MbwxPKRo [saga]:2020/05/17(日) 10:58:16.57 ID:K5P1soMu0
なるほどね
情報提供感謝なんだ
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/18(月) 02:32:40.39 ID:8IkpDSgyo
まりの大冒険はいいシナリオだったね
この話も好き二人ともかわいい
おつでした
181 : ◆H5MbwxPKRo [saga]:2020/05/18(月) 11:23:14.07 ID:aVSP4FXC0
誤字とかNGワードとかでグダったけど楽しんでもらえたなら幸いなんだ
実は構想だけだけどクリア主人公の話も考えてあるんだ
完成させられるかはわからんけどなブヘヘへ
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